【忍殺】ザ・グレート・トレイン・ラブリー他【オリキャラ】

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/22(月) 20:36:58.20 ID:1Cw3rFBJ0
◆シリーズ
ネオフクオカ・キリング・チェインズ(名鑑No.01~16)
http://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1538991340/l50

(これまでのあらすじ)
 物語の舞台は暗黒大陸キューシュー、ネオフクオカ・コロニー。
ニンジャのために母を失った少女ミラ・ツヅリは、ナラク・ニンジャソウルの憑依を得て孤独な復讐を開始した。
敵は母の仇ナイトニンジャが名を連ねるニンジャ組織カタナハント・ユニオン、そしてそれに競合するカブナカマ・カルテル。
果たして彼女の次なる標的は……
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/22(月) 21:21:23.61 ID:ftHfCJc8O
おお、まさかの続編!
待ってました!
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:15:51.96 ID:a8g1GZCO0


 ザ・グレート・トレイン・ラブリー

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:17:15.04 ID:a8g1GZCO0

 プアーン!高らかな汽笛とともに鉄道列車「キクチ400」号が行く。
ヘッドライトが闇を裂き、線路の横で骨をかじっていたバイオハイエナが逃げ出した。
キューシュー北部、ネオフクオカ西方の荒涼たるツクシ平野。
ノースキューシュー・コロニーと西ツクシ鉱山都市を結ぶ路線である。

 前方のカチグミ客車や中程の戦闘車両は重厚な装甲を纏っているが、後方のマケグミ車両はいかにも古くヤワな作りだ。
最後尾の客車などガタガタと揺れて今に分解しそうだが、中は粗末な格好の人々でスシヅメである。
ネオフクオカやノースキューシューで食い詰めた移民たちだ。
天井の小さなタングステン灯だけが照らす薄暗い車両の中で、彼らは揃ってうつむき加減だった。


「……」


 その中にキャスケット帽を目深に被り、コートを着込んだ少女の姿があった。
吊り革を掴むために少し背伸びしているが、どれほど車両が揺れようとその体は揺るがない。
彼女は移民たちと同じように足元に目を落としていたが……今、不意に顔を上げる。


「……!」パッ


 CABOOOM……
爆発音とともに車両が一際激しく揺れ、天井のタングステン灯が明滅した。


乗客「アイエエエ……何事でしょうか」

乗客「きっと野党の襲撃ですよ……ああ、ナムアミダブツ……!」


 乗客たちは青い顔をしてブッダに祈る。
その中に少女の姿はすでになかった。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:18:24.50 ID:a8g1GZCO0


 ブオンブオン!バオオオオーッ!


野盗A「ヒャッハーッ!」

野盗B「タリホー!タリホー!」


 エンジン音も高らかに、後方からキクチ400号に追いすがる改造バイクの群れ!
ツクシ平野に跳梁跋扈する野盗団「キラーチョンマゲV3」だ!
ヘッドライトの光の中に浮かび上がるノボリには、「囲んで棒で叩く」「容赦が無い」「ガンモ」等の威圧的文言がショドーされている。コワイ!

 集団の先頭を駆けるのは改造バイクではなくサイバー馬だ。
今、バイクの一台が速度を上げて馬に並走する。


野盗C「ワイルドバンチ=サン!ミサイルがアウト・オブ・アモーです!」


 ワイルドバンチと呼ばれた馬上の人物は、先を行くキクチ400号を睨んだ。
彼のニンジャ視力は後方車両あたりが煙を吹いているのを見通す……然り、彼はニンジャだ。
茶色のニンジャ装束の上からカラクサ模様のフロシキ・マントを羽織り、胸にはクロスカタナ紋のバッジ。
彼はネオフクオカを本拠とする暗黒ニンジャ組織カタナハント・ユニオンの構成員なのである!


ワイルドバンチ「一発か二発当たったみてえだ、景気付けにしちゃ上等だろ。後は近づいてロケットで仕留めるぞ、シマッテコーゼ!」

野盗「「「シマッテコーゼ!」」」


 バオオオオーッ!パラリラパラリラ!
一層速度を上げたワイルドバンチに率いられ、野盗たちは危険なニトロを発動し左側面から列車へ接近する。
しかし列車側も野盗に対し無策ではない。
列車の中程の戦闘車両が上部の砲塔を旋回させ、壁には銃眼が開いて銃口が突き出す!
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:18:51.50 ID:a8g1GZCO0

野盗A「ウォーホー!」ジャキッ


 BOOOO!CABOOOM!野盗のロケットランチャー攻撃が戦いの口火を切った!
BRATATATA!黒煙越しに銃眼から銃撃!


野盗A「グワーッ!」ドカーンッ

野盗B「アバーッ!」ドカーンッ


 被弾した野盗たちはバイクから放り出され、地面に体を打ち付けてソクシ!
CABOOOM!転倒したバイクが爆発!
さらに砲塔の榴弾砲が火を噴く!ドウンッ!CABOOOM!


野盗C「アババーッ!」ドカーンッ

野盗D「アイエエエーッ!」ドカーンッ


 数人が吹き飛ばされて脱落!
しかし残った野盗たちはなおも攻撃を続行!
その先頭に立つのはワイルドバンチである!
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:19:26.97 ID:a8g1GZCO0

ワイルドバンチ「さあさあ皆様お立会い、ワイルドバンチ=サンのヤブサメショーでござい!」ジャキッ


 彼は鞍からニンジャウィンチェスターライフルを抜き、右腕一本で狙いをつけて列車を銃撃!BLAM!


鉄道兵「グワーッ!」ドタッ


 戦闘車両内部で銃眼に向かっていた鉄道兵の一人が撃ち殺された!


ワイルドバンチ「ブルズアイ!お次!」グルン ジャキッ


 ワイルドバンチはライフルをくるりと回してリロードし、再び銃撃!BLAMN!


鉄道兵「アバーッ!」ドタッ


 また一人絶命!
ワイルドバンチは揺れる馬上から走行する列車の銃眼を狙い撃っているのだ!
ニンジャであっても容易ではない所業である!
車両上部の砲塔がそちらへ狙いを定めるが、ワイルドバンチが三度発砲するほうが早い!


ワイルドバンチ「テイクザット!」ジャキッ


 BLAM!
CABOOOM!砲塔が爆発!
砲口越しに砲弾を狙撃したのだ!タツジン!
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:20:09.72 ID:a8g1GZCO0

ワイルドバンチ「ハッハハハ!おいお前ら、俺は乗り込んで中から攻める!ここは任せたぜ!」

野盗「「「ヨロコンデー!」」」


 ワイルドバンチは野盗たちに後を任せ、サイバー馬の腹を蹴ってさらに加速!ギャロップ!
後方ではミサイルを被弾したマケグミ車両が何台か切り離しの憂き目を見ているが、そちらへ向かう者はいない。
今回の襲撃の狙いは初めから前方のカチグミ車両なのだ。
ワイルドバンチはサイバー馬をカチグミ客車後方の荷物車両に並走させ、ライフルを鞍に戻し、躊躇なく跳んだ!


ワイルドバンチ「イヤーッ!」ピョーン ガシッ


 荷物車両の側面扉にしがみつく!
ニンジャ腕力でロックを破壊し、扉を開けて颯爽と荷物車両内部へ侵入!


ワイルドバンチ「おっほっほ、ヨダレが出ちゃうな……でもこれは後回しだ」


 周囲に積み上がるカチグミたちの荷物を見回しつつ、荷物車両の狭い通路を抜ける。
右手にリボルバー拳銃を持ち、車両接合部、カチグミ客車への扉を開く!


ワイルドバンチ「コンニチハーッ!」ガラッ

「イヤーッ!」ブンッ


 ワイルドバンチは車両に足を踏み入れた途端、横合いからアンブッシュを受けた!
奇妙に透き通るダガーでの刺突!
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:20:43.73 ID:a8g1GZCO0

ワイルドバンチ「!イヤーッ!」バサッ


 ワイルドバンチはそちらへ向けてフロシキ・マントを翻した。
ダガーがマントを貫き、その奥の肉体を……手応えなし!


ワイルドバンチ「ハッハハハ!アブナイ!」ゴロゴロッ


 ワイルドバンチは素早く身をかわし、前転で車両前方へと退避していた。
ウツセミ・ジツだ!
襲撃者は舌打ちしてからマントを振り捨て、アイサツする。


アクアエッジ「ドーモ、はじめまして。カブナカマ・カルテルのアクアエッジです」ペコリ


 カブナカマ・カルテルはノースキューシューを本拠地とするニンジャ組織で、カタナハント・ユニオン目下最大の敵対勢力だ。
ノースキューシューと西ツクシを結ぶこの鉄道はカブナカマの資金源の一つであり、それこそワイルドバンチがこの列車を襲撃した理由だ。


ワイルドバンチ「ドーモ、アクアエッジ=サン。カタナハント・ユニオンのワイルドバンチです」ペコリ


 ワイルドバンチは立ち上がってアイサツを返し、車両内部を見回した。
シャンデリア等豪華な丁度が施された空間だが、今はアクアエッジのほかは無人だ。
CABOOOM……後方から野盗と列車の戦闘音が聞こえてくる。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:21:28.08 ID:a8g1GZCO0

ワイルドバンチ「まさかニンジャ・ガードマンが乗り込んでるとはな。カチグミどもをどこへ隠しやがった?」

アクアエッジ「お前らの手の届かぬ場所だ。それにしても、カタナハントは列車強盗をしなければならないほど食い詰めているらしいな」

ワイルドバンチ「なに、お前らのシノギを邪魔してやれって上に言われたのさ」

アクアエッジ「せせこましい真似を……フン、しかしマケグミどもならいざ知らず、カチグミ乗客が死ねばこの路線にケチがつくのは確かだ。手を出させるわけにはいかんな」


 アクアエッジがダガーを振りかざす……否、それはただのダガーではない。
超常的な力で成形された水の塊、スイトン・ダガーだ。


ワイルドバンチ「なら、どうするってんだ?」ジャキッ


 ワイルドバンチは左手でリボルバー拳銃を抜いた。
右手と併せて二丁拳銃だ。
それを交差し、腰を落とす……これはテッポウ・ニンジャクランに伝わる暗黒武道、ピストルカラテの構えだ。


アクアエッジ「お前を殺す。イヤーッ!」ブンッ


 アクアエッジが踏み込み、スイトン・ダガーで斬りつける!


ワイルドバンチ「御免被る!イヤーッ!」サッ


 ワイルドバンチはバックステップでかわし、右手のリボルバーで銃撃!BLAM!


アクアエッジ「イヤーッ!」パッ


 SPLASH!アクアエッジはダガーを握りつぶして飛散させ、銃弾をブリッジ回避!
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:22:55.50 ID:a8g1GZCO0

ワイルドバンチ「イヤーッ!」ブンッ


 発砲の反動を乗せた回し蹴りで追撃!


アクアエッジ「イヤーッ!」バッ


 アクアエッジはバク転で車両接合部まで後退し回避!


ワイルドバンチ「イヤーッ!」ジャキッ


 ワイルドバンチは回避した先めがけ左手のリボルバーを発砲!BLAMN!


アクアエッジ「イヤーッ!」ブウンッ


 アクアエッジが右手を虚空にかざすと、空気中の水分から瞬時に新たなスイトン・ダガーが生成された!
それを水平に振り抜き銃弾を切断!
おそるべき切れ味だ!


アクアエッジ「イヤーッ!」ビュンッ


 さらにはそれを投げつける!
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:23:32.06 ID:a8g1GZCO0

ワイルドバンチ「イヤーッ!?」サッ


 ワイルドバンチはすんでのところで身をかわし、右手のリボルバーで牽制射撃!BLAM!


アクアエッジ「イヤーッ!」ブンッ


 アクアエッジはすでに次のスイトン・ダガーを生成しており、銃弾をたやすく切り払ったうえ、そのまま突きかかる!


ワイルドバンチ「イヤーッ!」ブウンッ


 しかしそこへワイルドバンチの反動カラテ!
一回転しての右裏拳だ!


アクアエッジ「グワーッ!」ドガッ


 顔面を強打されよろめくアクアエッジ!


ワイルドバンチ「イヤーッ!」ジャキッ


 ワイルドバンチはこの隙を逃さず、至近距離からリボルバーを連射!BLAMBLAMBLAM!
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:24:08.43 ID:a8g1GZCO0

アクアエッジ「グッワ、イヤーッ!」ブンッ


 アクアエッジは二発被弾しつつも体勢を立て直し、再度スイトン・ダガーで斬りつけにかかる!


ワイルドバンチ「イイヤアアアーッ!」ブオンッ


 それを許さぬワイルドバンチ渾身の反動回し蹴り!
拍車付きブーツの足先がアクアエッジの首にめり込み、断ち切る!


アクアエッジ「グワアアアーッ!」ドガッ


 アクアエッジの生首がはね飛ばされ、天井のシャンデリアに衝突!


アクアエッジ「サヨナラ!」ドカーンッ


 シャンデリアごと爆発四散!
アクアエッジの首無し死体は仰向けに倒れ、右手のスイトン・ダガーはただの水に戻って床に飛び散った。
卓上ランプだけが照らす薄暗闇の中、ワイルドバンチはザンシンを解く。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:24:43.52 ID:a8g1GZCO0

ワイルドバンチ「フウーッ、手間取らせやがって……」

「イヤーッ!」ブウンッ


 やにわ前方車両へ通じる扉が開き、赤黒の影が飛び出す!
そしてワイルドバンチめがけチョップ突きを繰り出した!


ワイルドバンチ「な、グワーッ!?」ドガッ


 ワイルドバンチは振り返るが、右胸を深く抉られる!
背中から心臓を貫かんとしたアンブッシュだ!


ワイルドバンチ「新手エ!イヤーッ!」ジャキッ


 BLAM!ワイルドバンチは左手のリボルバーを発砲し、立て続けに反動カラテを繰り出す!
暗闇に閃くマズルフラッシュ、硝煙を切り裂くスピンキック!


「イヤーッ!」サッバッバッバッ


 襲撃者はブリッジからのバク転で冷静に回避し、アイサツする。
前方車両の明かりが逆光となり、そのシルエットを浮かび上がらせた。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:25:57.26 ID:a8g1GZCO0

ミラ「ドーモはじめまして、ワイルドバンチ=サン。ミラ・ツヅリです」ペコリ


 赤黒い装束、顔を半ば埋めるマフラーめいた布、チリチリと燃えるポニーテール。
襲撃者の正体はカタナハント・ユニオンとの孤独な戦いを続ける復讐者、ミラ・ツヅリだ!


ワイルドバンチ「ゲホッゲホッ!ドーモはじめまして、ミラ=サン。ワイルドバンチです」ペコリ


 ワイルドバンチは右胸の傷のために咳き込みつつ、アイサツを返す。
二人のニンジャは首無し死体を挟んで相対した。


ワイルドバンチ「アクアエッジ=サンを助けなかったところを見ると、カブナカマ・ニンジャじゃねえな……誰だてめえは?俺ことを知っていやがるのか」

ミラ「あんたのことはクリアゴースト=サンの端末で知ったわ」

ワイルドバンチ「クリアゴースト=サンだと?あいつは『ニンジャ殺し』にやられたって……とすると、てめえは!」

ミラ「そうよ、私があんたたちの言うところの『ニンジャ殺し』。今日はあんたを殺しに来たわ」


 ミラは逆光の中で目をギラつかせ、ジゴクめいて宣告した。
ワイルドバンチはメンポの裏を汗が伝うのを感じた。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/10/31(水) 18:28:09.91 ID:a8g1GZCO0
今回の投下は以上です
全年齢版に建てたつもりだったのですが、バグか何かでこちらに建ってしまったのでこちらで書かせていただきます
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/31(水) 18:44:01.82 ID:3D1RZRF9o
オツカレサマドスエ!
どうやら実際R板に立ってしまうバグだそうな…でも別にRだから猥褻を入れなきゃいけないってルールはないしダイジョブダッテ!
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 19:53:57.65 ID:r5sUd6dw0

ワイルドバンチ「……フフフ、ハッハハハ!ゲホッゲホッ!」


 しかし不敵に笑い、ピストルカラテを構え直す。


ワイルドバンチ「面白え、やってみろよ……俺はクリアゴースト=サンより強えぜ。こんな傷は、ゲッホ、ハンデにもならねえ」

ミラ「そうさせてもらうわ。イヤーッ!」ビュンッ


 ミラがスリケンを投擲!


ワイルドバンチ「イヤーッ!」ジャキッ


 BLAM!ワイルドバンチは右リボルバーで撃墜!


ミラ「イヤーッ!」ダッ ブンッ


 その火花の向こうからミラが突進、右チョップを仕掛ける!


ワイルドバンチ「イヤーッ!」ブウンッ


 ワイルドバンチは反動を乗せた左回し蹴りを繰り出す!
チョップと蹴りが交錯し、相殺!
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 19:54:29.21 ID:r5sUd6dw0

ワイルドバンチ「イヤーッ!」ジャキッ


 その横から突き出される左リボルバー!BLAM!


ミラ「!イヤーッ!」サッ


 ミラは側転で椅子の上に飛び乗り回避!


ワイルドバンチ「ゲホーッ!踊れエ!」ジャキッ


 そこをめがけて、ワイルドバンチはありったけの残弾を叩きつける!BLAMBLAMBLAM!


ミラ「イヤーッ!」パッ


 ミラは三回転ひねりを繰り出して回避!
頭のすぐ下で豪華な椅子が被弾し、滅茶苦茶に破壊される!


ワイルドバンチ「サラバ!」ダッ


 ワイルドバンチはリボルバーを収めて床のフロシキ・マントをひっ掴み、手近な鎧戸をトビゲリで突き破る!CRAAASH!
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 19:55:12.83 ID:r5sUd6dw0

ワイルドバンチ「イヤーッ!フンッ!」ブンッ グッ


 空中で身を捻って車両上部へニンジャロープを投げ、壁に足を突っ張る形でぶら下がり、素早くよじ登る。
天井の上は猛烈な風の吹き付ける暗闇だ。
CABOOOM……BRATATATA……
背後でキラーチョンマゲV3と列車の戦闘音、爆煙が巻き起こる。


ワイルドバンチ「ハアーッ、ハアーッ、ゲホッゲホッ!」サッ カチャカチャ


 ワイルドバンチは血を吐きながらも素早くマントを羽織り、二丁のリボルバーをリロードした。
時間に余裕があれば胸の傷に応急処置を施し、テキメン・アドレナリンでも注射したいところだが……!


ミラ「逃げても無駄よ!イヤーッ!」ブオンッ


 CRAAASH!ミラがライジングドラゴン・アッパーカットで天井を破壊し、彼の目の前に降り立った。
車両上部で二人のニンジャが再び相対する。
彼らのフロシキ・マントとマフラーめいたボロ布がはためく。
CABOOOM……後方で爆発音。


ワイルドバンチ「ハアーッ、ハアーッ……しつこい奴め……カタナハントに何の恨みがある?」

ミラ「カタナハントは母の仇よ。ニンジャは私と家族のすべてを滅茶苦茶にした。だから殺す。ニンジャを全て殺す」

ワイルドバンチ「チッ、キマってやがる……なあ、俺、カタナハント抜けるからよ。ボンズにでもなってツクシの山寺で暮らすからさ、見逃しちゃくれねえか?」

ミラ「この襲撃で死んだ乗客たちも同じくらい生きたいと願っていたでしょうね。あんたに交渉の余地はないわ」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 19:55:52.41 ID:r5sUd6dw0

ワイルドバンチ「ああそうかよ!イヤーッ!」ダッ


 ワイルドバンチは巧みな話術で時間を稼いで呼吸を整え、突撃!
BLAM!右リボルバー!


ミラ「イヤーッ!」サッ ブンッ


 ミラはスウェーで銃撃を回避し、右フックで反撃!


ワイルドバンチ「イヤーッ!」ブウンッ


 反動右バックナックル!
フックと激突し、相殺!
左リボルバーがその下から突き出し、ミラの右脇腹を狙う!BLAMN!


ミラ「イヤーッ!」ガキン ブウンッ


 ミラは左腕のブレーサーで防ぎ、そのまま右から左へ水平チョップを繰り出す!


ワイルドバンチ「イヤーッ!」ブオンッ


 反動後ろ回し蹴り!
チョップと激突し、相殺!
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 19:56:53.23 ID:r5sUd6dw0

ワイルドバンチ「まだまだ!イヤーッ!」ジャキッ


 BLAM!ワイルドバンチは虚空を撃ち、反動で体の回転を再加速して空中でスピンキックを繰り出した!
変則アルマーダ・マテーロである!


ミラ「イヤーッ!」サッ


 ミラはこの曲芸じみたカラテに動じず、冷静に左腕のブレーサーで防御!
バシッ!強烈な打撃を受けて黒鉄のブレーサーにヒビが入るが、蹴り足は止まり、ワイルドバンチは大きな隙を晒した!


ワイルドバンチ「何!?」

ミラ「イヤーッ!」ドンッ


 決断的に踏み込んでの右ポン・パンチ!


ワイルドバンチ「グワーッ!?」ドガッ


 ワイルドバンチは顔面を強打されて転倒!
吹き付ける風に押し流され、荷物車両の上部で突っ伏した形で停止!


ミラ「終わりよ、ワイルドバンチ=サン!イヤーッ!」ダッ


 ミラも風に乗って跳躍し、飛びかかりざまカワラ割りパンチを振り下ろした!
CRAAASH!拳がフロシキ・マントを貫いて屋根に突き刺さる……肉体の手応えなし!
そこにあるのはマントだけだ!ウツセミ・ジツ!
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 19:58:16.04 ID:r5sUd6dw0

ミラ「ヌウーッ!?」

ワイルドバンチ「ハズレだ!ゲホッゲホーッ!」ゴロゴロッ


 ワイルドバンチはその横を転がり、天井から落下!
ナムサン、自害か?
否!彼は壁を蹴って跳び……列車に並走するサイバー馬の鞍へと、着地した!ゴウランガ!


ワイルドバンチ「ハッハハハ!オタッシャデー!」パカラッパカラッ


 ワイルドバンチは高笑いしつつサイバー馬を反転させ、まっしぐらに逃走した!


「……ヤーッ!……」


 カチグミ車両も、その上のミラも、彼女のシャウトも、すべてが相対速度の中で遠ざかり、夜の闇の中に消えていった。


ワイルドバンチ(かなりアブナイだったぜ……今回のことはユニオンに報告しなきゃな)


 ワイルドバンチは馬をアジトのほうへ向けようとした。
その体がぐらりと傾き、地面に落ちた。


ワイルドバンチ(ア……?何だこれ……)


 ワイルドバンチは冷たい地面でむなしくもがいた。
おびただしい血が流れ、急速に力が抜けていく。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:02:39.35 ID:r5sUd6dw0

ワイルドバンチ(どういうこったよ……胸の傷は、こんなにひどくないはず……)


 右手を体の下に差し込み、探る。
胸の中心に大穴が空いていた。


ワイルドバンチ(……チクショウ……何しやがった、『ニンジャ殺し』め……)


 横を野盗たちが通り過ぎるが、その音ももはや遠い。
サイバー馬が気遣わしげに鼻先を近づけた。


ワイルドバンチ「ゲホッ……なんだ、てめえ……サイボーグの、くせに。ハッ、ハハハ」


 ワイルドバンチは馬を撫でようとしたが、その手は途中で力を失い、地面に落ちた。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:03:16.00 ID:r5sUd6dw0

「……ナラ!……」ドカーンッ

ミラ「……」


 ミラは逃げるワイルドバンチの背中めがけツヨイ・スリケンを投擲した姿勢のまま静止していた。
しかしやがて風の向こうから断末魔と爆発四散音を聞き取り、ザンシンを解く。


ミラ(こうしてワイルドバンチ=サンを殺したのはいいけど……今までの野盗との戦闘で、どれだけ無関係の乗客が死んだのかしら)


 ミラはサツバツとした感傷の中で自分の復讐に対する疑念にかられた。


ミラ(私はワイルドバンチ=サンにアンブッシュを仕掛けるために、襲撃直後からカチグミ車両に移って潜伏していた)

ミラ(彼は油断ならないニンジャだった、確実に仕留めるために必要だったのは間違いない。先頭車両に避難していたカチグミ乗客も助かった)


 ミラは暗闇の向こうにイフの未来を見通そうとするかのように目を細める。


ミラ(でも、もしも私が初めから野盗を迎撃していれば、犠牲は出なかったかもしれない。私は自分の目的のためにマケグミ乗客を見殺しにしたのね)

ミラ(その行いはカタナハントのニンジャたちと……ナイトニンジャ=サンと、どれほど違うというのかしら。私は復讐の中で、憎んでいるはずの存在に成り果ててしまっているのでは?)


 BRATATATA……CABOOOM……
銃声と爆発音を聞き取り、ミラはハッとした。
まだ戦闘は続いているのだ。


ミラ(……いや、たとえ間違っているとしても、母さんの命を奪ったニンジャを許すことはできない。今はただ、やれることをやるだけよ)


 ミラは後方の戦闘車両へ向けて駆け出した。
その先では冷たい風が吹き付ける中、戦いの炎と、ひたすらの闇が広がっている。
キクチ400号はまもなく西ツクシに到着しようとしていた。(完)
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:04:10.49 ID:r5sUd6dw0

◆忍◆ ニンジャ名鑑#17 【アクアエッジ】 ◆殺◆
 カブナカマ・カルテルのニンジャ。
空気中から水で出来た武器を作り出すスイトン・ジツの使い手。
ノースキューシュー・西ツクシ間の輸送列車に護衛として乗り込んでいたが、列車強盗をしかけてきたカタナハント・ニンジャに殺された。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:06:55.15 ID:r5sUd6dw0


 カース・オブ・ファラオ

28 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:07:36.03 ID:r5sUd6dw0

 ブンブンブン……ツクツクブンブンブーン。
通りに面した飲み屋からサイバーテクノが漏れ出てくる。
ネオン看板の「セットお得な」の文字。
行き交うサラリマン、学生、サイバーゴス、ブディズム・パンクス。
モーターサスキがネオフクオカ市警のエンブレムを頭上に投射しながら通り過ぎた。


『リゾートで、美味しいお餅ですね』


 上空のマグロツェッペリンが側面の巨大モニターから広告音声を吐き出す。
今日のネオフクオカ・ダウンタウンは曇り。
重金属酸性雨がない代わりに、煙じみたスモッグの向こうでどんよりした雲が流れていた。


『お餅であなたを癒したい……』


サイマダ(お餅が伸びてもシメキリは伸びねえよ)


 中年男サイマダは理不尽な怒りとともに落ちていた空き缶を蹴り飛ばした。
彼は売れないIRC小説家だ……否、だった。さっきまでは。
度重なる締め切りの踏み倒しで配給会社から原稿料の値下げを通告され、直談判に行った挙句喧嘩別れしてきたのだ。
三行半を突きつけてきたときの高揚もどこへやら、今となっては自分の将来への不安ばかりがグルグルと頭の中を回る。


サイマダ(酒だ。酒を飲んで忘れちまおう。部屋にケモ・ビールがあったはずだ)


 彼はすべてを後回しにして、居を構えるマンション「サンジンギ」へと向かう。
入り口の脇にボンヤリ突っ立っているコート姿の女を避けて、ガラス扉を開ける。
フロントには二人のマッポがいた。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:08:13.86 ID:r5sUd6dw0

サイマダ「!?ド、ドーモ」

マッポ「ハイ、ドーモ」


 ギョッとしつつ会釈を交わして横を通り過ぎる。
離れてから振り返ってみると、マッポたちは受付の管理人と話しているようであった。


マッポ「何でもいいんですよ。思い当たること……行方不明になった方々の共通点だとか」

管理人「いやあ、三人ともほとんど顔合わせることもなかったからなあ、わからないなあ」


 サイマダはフロントを通り過ぎ、エレベーターのスイッチを押した。
ギュグン……グイイイイン。
鉄扉の向こうでモーターが低く唸り、シャフトを鉄の箱が下降してくる。


サイマダ(行方不明。三人)


 小説家は先程漏れ聞いた会話を反芻していた。


サイマダ(このマンションから三人も行方不明者が出たってことか?偶然……にしちゃタイミングが近そうだな。ミステリーだ)
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:09:03.83 ID:r5sUd6dw0

 カウントダウンする階数表示パネルを見ていて、ふと思い出す。
小説家仲間が飲み屋で語った噂話。
エレベーターのボタンの893……不吉で不遜な数字を押すと、流浪の末ネオフクオカの地下に埋葬されたファラオの怒りを買って、深淵へと引きずり込まれるのだという。
このメガロポリスにはありふれた、胡散臭いミステリーだ。
チーン。


『一階ドスエ』


 ガーッ。
ベルとマイコ音声が鳴って、鉄扉が開いた。


サイマダ(このホラ話をもとにして名作が書けないものかなあ)


 サイマダは取り留めもないことを考えながらエレベーターに乗る。
扉が閉まる。
目の前には階数ボタン……


サイマダ「……何階ですか?なんてな」


 サイマダは戯れに8、9、3とプッシュした。
すぐに虚しくなって、二度ずつ押してキャンセルを……


『直通ドスエ』

サイマダ「は?」


 ギュグン……グイイイイン。
エレベーターは唸りを上げて下降を始めた。
下降である。
「サンジンギ」には地下フロアはないはず……
サイマダは息を呑んだ。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:09:56.17 ID:r5sUd6dw0

サイマダ(下がってる……下がってるよな?一体何が起こってるんだ?ファラオの呪い……まさか!そんなことがあるはずは……)


 チーン。


『地下4階ドスエ』


 ガーッ。


 鉄扉はあっけなく開いた。
その先にはドージョーめいた広いタタミ敷き空間が広がっていた。
明かりは壁に並んだ電子ボンボリだけで、やや薄暗い。
突き当たりの壁には大きなトコノマがあり、左右のフスマの前には吊り下げ型の木人やダルマ・サンドバックがぶら下がっていた。


「ン?」


 トコノマを背にしてアグラしていたニンジャが手元から視線を上げ、その拍子にサイマダと目があった。
金色の装束を着て、金色の仮面を被ったニンジャだ。


「おっ」


 さらにこちらに背を向ける形でアグラしていたニンジャも振り返ってこちらを見た。
プリズムめいた虹色の装束が印象的だった。
サイマダは狼狽した。


サイマダ(アイエッ?ニンジャ……いや、扮装した発狂マニアックか?なんでこんなところに……)
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:10:35.99 ID:r5sUd6dw0

 そこでハッとする。


サイマダ(イケナイ!相手が何であろうとこの状況、俺はセキュリティを破った不法侵入者だ!職を失った上に前科まで付いたら生きていけない!)


 サイマダは瞬時にあらゆる対応を想定しシミュレーションした末、ニンジャたちが口を開く前に先手を打ってオジギした。


サイマダ「ドーモ、夜分遅くにスミマセン。サイマダ・サウジです」


 ニンジャたちは顔を見合わせた後、アグラしたままで返礼する。


ツタンカーメン「ドーモ、サイマダ=サン。ツタンカーメンです」

アメンホテプ「ドーモ。アメンホテプです」

サイマダ「重ね重ねスミマセン、夜分遅くに。エレベーターのボタンを押し間違えてしまい、誤って入り込んでしまったのです。どうか通報だけは」

ツタンカーメン「通報」

アメンホテプ「するのか?」

ツタンカーメン「まさか」


 サイマダは少しホッとした……しかしこれ以上発狂マニアックと関わるのは避けたい。


サイマダ「ではスミマセン、失礼しました。以後気をつけます、本当スミマセンでした」


 ペコペコ頭を下げながら、エレベーター内のボタンを押してドアを閉じようとした。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:11:19.93 ID:r5sUd6dw0

アメンホテプ「まあ待て」


 虹色のニンジャがこちらへ向けて手をかざした。
ガギギギギ。
閉まりかけた鉄扉が軋みながら動きを止め、やがて諦めたように再び開いた。


サイマダ「アイエッ?……あ、あの、まだ何か」

ツタンカーメン「偶然ここに辿り着くなんて大した奴。これも何かの縁だ、チャでも飲んで行け」


 金色のニンジャが平坦な声で言った。
仮面は真顔を模っており、その表情は少しも伺えない。
通報に怯えるサイマダに断る選択肢はなかった。
サイマダはおずおずとエレベーターを出て、虹色のニンジャの近くまで進む……


サイマダ(……?)


 サイマダは虹色のニンジャを二度見した。
虹色のニンジャ……アメンホテプは、アグラ姿勢のままタタミから数センチ浮かんでいるように見えた。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:11:55.05 ID:r5sUd6dw0

サイマダ(目の錯覚……?いや……まさかとは思うが、こいつら本物の……)

アメンホテプ「よっこら……」スッ


 アメンホテプは浮遊したまま、ツタンカーメンとの間に置いていたサイバー将棋盤を持ち上げた。
ツタンカーメンはトコノマに入って、その横側の壁に手を伸ばす。


ツタンカーメン「歓迎するぞ」


 ガコン。


サイマダ(ニンジャ……)


 ……ガコン。
何らかの機械的な音が二回響いた後、サイマダの姿は忽然と消えていた。


アメンホテプ「フーッ」


 アメンホテプは大儀そうに息を吐きながらサイバー将棋盤を下ろした。
ツタンカーメンがその正面に再びアグラし、何事もなかったかのようにアドバンスド・ショーギを再開する。
薄暗闇のドージョーの中、サイバー将棋盤の3Dグラフィックスが放つ青白い光が二人のニンジャを照らしていた。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/01(木) 20:13:20.68 ID:r5sUd6dw0

アメンホテプ「いい加減どうにかしたほうがいいんじゃねえのか」

ツタンカーメン「ああ。俺の陣で暴れ回ってるお前のチャリオットは三手以内には始末する」

アメンホテプ「ショーギの話じゃねえよ、このドージョーのセキュリティの話だ。迷い込んできたのは今ので三人目だろう」

ツタンカーメン「四人目だ」

アメンホテプ「より悪いわ。早いとこもっとマトモな鍵に付け替えろよ」

ツタンカーメン「なに、留守の時には今のトラップを入れておくから大丈夫だ。むしろちょっと入ってくるくらいの方が蛇どもの餌代が浮いていい。それに……」

アメンホテプ「それに?」

ツタンカーメン「このほうがミステリーっぽいだろ」

アメンホテプ「保安上の問題をミステリーの一言で片付けるのはだな……」

ツタンカーメン「だいたい、見られて困るようなUNIXやマキモノは奥の隠し部屋に置いてるんだから……ン?」


 チーン。


『地下4階ドスエ』


 ガーッ。


ミラ「ドーモ、はじめまして。ミラ・ツヅリです」

ツタンカーメン「!?」
アメンホテプ「!?」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/02(金) 18:33:25.37 ID:gpIg2lfB0

 続けざま到着したエレベーターから逆光を背にして姿を現したのは、赤黒のニンジャ少女ミラ・ツヅリだ!
ツタンカーメンとアメンホテプは反射的に飛び下がってからアイサツを返す。


ツタンカーメン「ド、ドーモ、ミラ=サン。カタハント・ユニオンのツタンカーメンです」

アメンホテプ「同じくアメンホテプです……デアエ、デアエー!」


 アメンホテプが歴史ある召集チャントを叫ぶと、部屋の左右からドタバタと物音が起こる。


クローンヤクザA〜E「ザッケンナコラーッ!」


 スパーンッ!右のフスマが開き、チャカで武装したクローンヤクザ五体が出現!


クローンヤクザ「スッゾコラーッ!」


 スパーンッ!左のフスマが開き、ドス・ダガーで武装したクローンヤクザ五体が出現!
ミラの意識が逸れた隙に、ツタンカーメンはトコノマに飾られていたケペシュ・ソードを抜き放ち、侵入者めがけ突きつけた。


ツタンカーメン「貴様、『ニンジャ殺し』だな!?どこでここを知った!?」

ミラ「このマンションにカタナハントの拠点があることに見当をつけて以来、ずっとハリコミしていた……」


 ガーッ。エレベーターの扉が閉まり、そこから差し込んでいた光が途絶える。
微かなモーターの唸りとともにエレベーターは上昇していく。
再びドージョーに闇が戻ったが、その中にあってミラの二つの瞳はギラギラと輝いている。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/02(金) 18:34:07.94 ID:gpIg2lfB0

ミラ「さっきのエレベーターの動きに不自然なものを感じて、駄目元で風聞の方法を試してみたのだけれど……まさか正解だったとはね。セキュリティ観念ってものはあるのかしら」

アメンホテプ「ほら見ろ!ほら見ろ!」

ツタンカーメン「うるせえ!『ニンジャ殺し』……殺戮嗜好者の狂人め!ここは俺のドージョーだ。トラップまみれのフーリンカザンだぞ!」

アメンホテプ「そうだ、それもこちとら十二人がかりよ。卑怯とは言うまいね?今日のところは諦めて大人しく帰るがいい!」


 二人のカタナハント・ニンジャはやたらと脅しつけたが、ミラはまったく動じる様子がない。
薄暗闇の中、タタミを踏みしめ、決断的にカラテを構える。


ミラ「全て受けて立つわ。全てを正面から粉砕した上で、あんたたちを殺す。ニンジャ殺すべし」

ツタンカーメン・アメンホテプ「「ほざけ!イヤーッ!」」


 ツタンカーメンがミラめがけ古代エジプト風のスリケンを投擲!
アメンホテプも得体の知れない光球を投げつける!


ミラ「イヤーッ!」


 ミラは側転で回避し、飛び道具は空中で衝突……
ヴォン!光球はスリケンをチリ状に分解し、エレベーターの外扉に丸い穴を開けてその向こうに飛んで行った。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/02(金) 18:35:11.62 ID:gpIg2lfB0

ミラ(ヌウーッ!あれは……)

アメンホテプ「俺のコウボウ・ジツで原子の粒にまで分解してくれるわ!イヤーッ!」


 アメンホテプが間合いを詰め、光を纏った右手で殴りつける!


ミラ「イヤーッ!」


 ミラは間一髪でブリッジ回避!
ヴォン!光は彼女の腹の数センチ上の空気を原子分解した。
しかし復讐者は一撃必殺のジツも恐れることなく反撃に出る。
逆立ちの姿勢から風車めいて足を繰り出す回転蹴りだ!


ミラ「イヤーッ!」

アメンホテプ「グワーッ!」


 CRAAASH!
追撃を繰り出そうとしていたところで顔面を蹴りつけられて吹っ飛び、フスマを巻き添えに転倒するサンシャイン!


クローンヤクザA〜E「ザッケンナコラーッ!」

ミラ「イヤーッ!」

クローンヤクザA〜E「アバーッ!」


 攻撃直後の隙を狙おうとしたチャカヤクザたちは各々スリケンに眉間を貫かれてソクシ!ストライク!
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/02(金) 18:35:57.43 ID:gpIg2lfB0

ツタンカーメン「野郎!イヤーッ!」


 ツタンカーメンがケペシュ・ソードで斬りつける!


ミラ「イヤーッ、グワーッ!?」


 左のブレーサーで防ぐも、思いがけず鋭い痛み!
見れば左腕に強化バイオコブラが絡みついて牙を立てている。
ケペシュ・ソード攻撃と同時に袖に仕込んでいたコブラを放っていたのだ!


ツタンカーメン「かかったりーッ!イ」

ミラ「イヤーッ!」

ツタンカーメン「グワーッ!?」


 しかしまったく怯まぬミラの前蹴りがツタンカーメンの追撃に先んじて突き倒した!
ケペシュ・ソードがその手を逃れてタタミに突き刺さる!


ミラ「小細工を……!」


 ミラはコブラを引きはがし、握り潰して殺す!


クローンヤクザF〜J「スッゾコラーッ!」

ミラ「イヤーッ!」

クローンヤクザF〜J「アバーッ!」


 その隙を狙おうとしたドスヤクザたちは各々スリケンに眉間を貫かれてソクシ!ストライク!
クローンヤクザ部隊はあっけなく全滅!
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/02(金) 18:36:25.07 ID:gpIg2lfB0

アメンホテプ「まだだ!イヤーッ!」


 アメンホテプが両手に光をたたえて突撃!


ミラ「イヤーッ!」

アメンホテプ「グワーッ!」


 しかし後ろ回し蹴りで迎撃され、体をくの字に折って吹っ飛びエレベーター外扉に激突!


ツタンカーメン「飛べ!アメンホテプ=サン!イヤーッ!」


 トコノマに逃げ込んだツタンカーメンが側面の壁に隠されたレバーを引く!
ガコン!タタミ敷きの空間の床が下方に開き、一瞬のうちにして巨大な落とし穴が口を開けた!
その奥底はといえば、大小の強化バイオ毒蛇が足の踏み場もないほどの過密状態で飼育されている養殖層だ!


ミラ「グワーッ!?」

アメンホテプ「イ、イヤーッ!」


 ミラがクローンヤクザたちの死体もろとも落下する一方、アメンホテプは先ほどと同様のザゼン浮遊により空中に退避!
アメンホテプはみるみる小さくなる侵入者の姿を見下ろしながら高笑いする。


アメンホテプ「ハハハハハ、オタッ……グワーッ!?」


 その装束の胸元を下方から飛来したフックロープの鉤がガッチリ捉え、穴の中へと引きずり込んだ!
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/02(金) 18:37:12.66 ID:gpIg2lfB0

ツタンカーメン「アメンホテプ=サン!?」


 トコノマのツタンカーメンが見下ろす中、ミラとアメンホテプはいよいよ明かりの届かぬ暗闇の空中で交錯した。
落下までのコンマ数秒の間に、木人拳めいた短打の応酬が展開!


ミラ「イヤーッ!」

アメンホテプ「イヤーッ!」

ミラ「イヤーッ!」

アメンホテプ「イヤーッ!」

ミラ「イヤーッ!」

アメンホテプ「グワーッ!」


 顔面をショートフックに打たれて体勢を崩すアメンホテプ!
しかし目をカッと見開いたかと思うと、右手に超常の光を纏って大振りに一閃させた!


アメンホテプ「死ね!ミラ=サン!死ねーッ!」


 ヴォォォンッ!
闇を切り裂いて、コウボウ・ジツの輝きが空気を原子分解しながらミラに襲いかかる!


ミラ「イヤーッ!」

 だがミラはブリッジの要領で大きく体を逸らし、原子分解の光を潜り抜けてみせた!タツジン!
さらには右腕を大きく振り抜いたことで半ば露わになったアメンホテプの背中に組みつき、羽交い締めにした!
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/02(金) 18:37:39.20 ID:gpIg2lfB0

アメンホテプ「何っ!?」

ミラ「あんたの負けよサンシャイン=サン、穴の底までにハイクを詠め!」


 ゴウランガ!これは暗黒カラテ奥義の一つ、アラバマオトシだ!


アメンホテプ「ヌウアアアアアーーーッ!?」


 アメンホテプは全力をもって拘束を脱しようとしたが、叶わぬ!
CRAAASH!


アメンホテプ「サヨナラ!」


 頭から養殖槽の床に激突し、爆発四散!
蛇に群がられすでに白骨と化していたサイマダの死体も、その拍子に爆散した。
ミラはその反動で飛び上がり、垂直の壁を走ってトコノマへと跳躍する。
そこにいるであろうツタンカーメンめがけ、バズソーめいた空中回転蹴りを仕掛ける!


ミラ「イイヤアアアーーーッ!……ヌウッ?」


 しかし蹴りは空振りに終わり、ミラは虚しく無人のトコノマに着地した。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/02(金) 18:38:25.23 ID:gpIg2lfB0

ミラ(……ツタンカーメン=サンはどこに消えた?)


 ミラはドージョーに一通り視線を巡らせた後、落とし穴を見下ろした。
ニンジャ視力で底を見通すと、強化バイオ毒蛇たちがクローンヤクザたちの死体に群がり、食い散らかしている。


ミラ(ファラオの呪いの正体ね)


 ミラはまもなくトコノマの隠しレバーを見つけ、引き上げた。
ガコン……タタミの床が閉まり、静寂のドージョーが戻る。
赤く酸化したバイオ血液の染みと、突き刺さったケペシュ・ソードだけがイクサの痕跡を残していた。


ミラ(ドージョーの外に逃げる時間はなかったはずだけれど……)


 ミラはコブラ毒により左腕が数十倍にも膨れ上がったかのような異常感覚を味わいつつ、タタミに下りてトコノマを観察した。
ソードの台座……「砂漠」とショドーされた掛け軸……壁の角のごくごくわずかな隙間。


ミラ(もしや!)


 トコノマに戻って、突き当たりの壁を押す。
すると、ドオン!ドンデンガエシ・トラップドアが回転し、隠し通路が姿を現した。ブルズアイ!
ミラはドージョーにもまして暗い隠し通路を用心深く進み、突き当たりのフスマを引き開ける。スターン!
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2018/11/02(金) 18:39:01.36 ID:gpIg2lfB0

ミラ「バカな……行き止まりだなんて……!」


 ミラが足を踏み入れたのは、タタミ敷きの四角い小部屋であった。
それはシュギ・ジキと呼ばれるパターンで、十二枚のタタミから構成されている。
四方は壁であり、それぞれにはコブラ、ネコ、ジャッカル、ピラミッドの見事な墨絵が描かれていた。
もはや先へ進むためのフスマは見当たらない……では、ツタンカーメンはどこへ消えたのか。


ミラ「姿を現しなさい、ツタンカーメン=サン……!」


 この謎を解くべく、ミラは右手にスリケンを握り、物音ひとつ立てぬ精緻な足運びで、部屋の中心部へと進んでいった。
額の汗を右手の甲で拭った。 
ミラはついに部屋の中央へと達する……まさにその時であった。
ツタンカーメンが後方のコブラ壁中央を音もなく回転させ、姿を現したのは!


ツタンカーメン「イヤーッ!」ブンッ

ミラ「グワーッ!」ドガッ


 ツタンカーメンはミラの背後へ忍び寄り、斜めに斬りつけるようなカラテチョップを浴びせた!
ミラは体勢を立て直すと、背後の敵めがけて死の投擲武器スリケンを放った!


ミラ「イヤーッ!」ビュンッ


 だがツタンカーメンの動きは俊敏であり、コブラの描かれたシークレットドアを回転させ、再び消えてしまったのだ。
標的を失ったスリケンは不運なコブラに突き刺さり、虚しくも止まった。
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