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【渇望せよ】邪気眼の恋路とユカイな仲間達【闇に輝く光を】 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/17(水) 01:40:06.64 ID:KfYBVmko
まとめwiki
http://www36.atwiki.jp/onnanokokara/

前スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1240311690/

愉快痛快なネトラジ(凍結中)
http://203.131.199.131:8050/test0109.m3u

【テンプレ】
「長い…時だった…これでやっと…
 私はあの獄より解き放たれ…
 君には…すまないと思う…だけど…」

消えゆく男は俺にむかって何度も頭を下げていた

「リベラ・メは…神の剣ではあるが…けして聖なる剣ではない…
 忘れるな…その力に…善悪などない…」

あの時俺は第十三代目リベラ・メ正統継承者となった
しかしそれは無限に続く力の獄への扉を開いてしまった
それでもまだ俺は倒れるわけにはいかない、なぁそうだろう?

【とりあえずの紹介】
ゆき兄:最強クラスの邪気眼と妄想力と創造力を持った新人類
ゆき:ゆき兄の妹、フリーザレベルの攻撃翌力はあると思うよ
高橋:ゆき兄の友達、なんかもう色々最強クラス。でも邪気眼とかはない

あとはwikiを見るなり脳内補完なりご勝手に!
だって僕眠いから!
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【進撃の巨人】俺「安価で巨人を駆逐する」 二匹目 @ 2024/05/01(水) 21:08:53.38 ID:iiJDb4My0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714565332/

旅にでんちう @ 2024/05/01(水) 14:47:47.55 ID:KgjR8ljxO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1714542467/

【クリスマス・年末・年始】連休暇ならアニソン聴こうぜ・・・【避難所】 @ 2024/04/30(火) 10:03:32.45 ID:GvIXvHlao
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1714439011/

VIPでガンダムVSシリーズ避難所【マキオン】 @ 2024/04/30(火) 07:03:33.32 ID:jpWgxnqGo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1714428212/

今日も人々に祝福 @ 2024/04/29(月) 23:42:06.06 ID:cZ/b8n+v0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1714401725/

ポケモンSS 安価とコンマで目指せポケモンマスター part12 @ 2024/04/29(月) 20:01:59.10 ID:OQox+0Ag0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714388519/

私が書いた文だ 一度読んでみて @ 2024/04/29(月) 13:03:50.96 ID:zomKow9K0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714363430/

私が書いた文はどう? @ 2024/04/29(月) 12:48:33.59 ID:6mJNXBCE0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714362513/

2 :ミギー :2009/06/17(水) 08:04:31.96 ID:IS4azUDO
おつ!
3 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/17(水) 12:16:12.13 ID:9enwQcUo
おつ!
4 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/17(水) 16:40:49.77 ID:Y1nBBMDO
>>1
ロリうんこ兄おつ!
5 :健康体 :2009/06/17(水) 20:42:33.94 ID:wuWNYIDO
やったぁ!健康だ!
6 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/17(水) 20:47:22.14 ID:Y1nBBMDO
>>5
超オメwwwwwwww
7 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/17(水) 22:19:11.58 ID:Z7dfUrIo
ゆきに乙
8 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/18(木) 04:44:48.51 ID:1Zqm2nEo
お腹痛くて眠れんばい
9 :リリーホワイト :2009/06/18(木) 06:31:16.47 ID:d54XjwDO
朝ですよー
10 :ミギー :2009/06/18(木) 06:36:51.02 ID:XYDSHADO
寝ぼけて目にスプレー発射してしまったwwwwwwwwwwwwwwでも平気wwwwwwwwwwwwwwwwww
11 :ピュアハート [('A`)]:2009/06/18(木) 13:09:31.78 ID:PbiFi6SO
>>10
もう梅雨だし湿気が頭まで回ったか
12 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/18(木) 14:39:54.27 ID:7kmdY.DO
なにやら急に仕事が暇になった件


多分夕方までやる事ないわwwwwwwww
13 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/18(木) 22:33:48.79 ID:1Zqm2nEo
締め切りが…!締め切りが…!!

でもあと2日もあるし大丈夫だな
14 :リリーホワイト :2009/06/19(金) 05:43:18.16 ID:ynfBC.DO
朝ですよー
15 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/19(金) 20:53:17.91 ID:7j5M0O6o
ヤチャマルさーん!!
僕締め切り守るために睡眠時間削ってんですよ!

褒めてー!給料くれー!
16 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/19(金) 21:22:58.24 ID:jFQM..DO
>>15
誉めてつかわす
だが、給料はやらぬ!

取りにくるならコーラぐらい買ってやんよwwww
17 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/19(金) 21:48:18.81 ID:7j5M0O6o
ってもう締め切り明日なんですよね…

あと約24時間12分…
18 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/19(金) 22:08:32.21 ID:8Lnff2so
>>17
ついに原稿落とす日がくるのか・・・
19 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/19(金) 22:18:23.20 ID:jFQM..DO
そしたら罰ゲームだな…
20 : ◆OXlxrC4o3M :2009/06/19(金) 22:23:37.82 ID:O.uUnMAO
締め切りがある人はたいへんですね

続きを書こうにも、やる気がでない僕みたいな人には耐えられない

間を持たせるための物語だったはずなのに。
21 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/19(金) 22:49:17.17 ID:7j5M0O6o
罰ゲームだと…?
22 :リリーホワイト :2009/06/20(土) 05:54:39.08 ID:Wc4rMQDO
朝ですよー
23 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/20(土) 06:25:46.42 ID:frqkhSko
おはよーっす
24 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/06/20(土) 18:53:00.96 ID:Wc4rMQDO
『スレスト殺し』の異名を持つ僕が回避
25 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 19:47:53.24 ID:JoCDRAEo
締め切り守れたのはいいが…
10時に家にいるかいないか…それが問題だ…
26 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/20(土) 21:21:29.64 ID:DbXHLRMo
>>25
え?家にいないの?
27 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 21:42:01.00 ID:JoCDRAEo
いや、多分もう大丈夫だと思う
じゃあ予定通り10時からでっていう
28 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:01:21.42 ID:JoCDRAEo
4限目 -宵闇の徘徊者-

9/30(日)深夜

「…うっ…あぁ…痛ぇよぉ…」
「これが生徒会なのかよ…ちくしょお…」
「…最近どうにも違反者が多いな…
 転校生と何かしら関連があるのか…?」
「…無いわけじゃながなぁ」
「誰だッ!?」
「俺はぁ…ノスフェラトゥ…」
「ノスフェラトゥ…?
 …生徒なのか?その仮面ひっぺがしてやろうか?」
「…待ちなぁ…別に執行部に逆らう気はないよぉ…」
「…」
「…違反者が多いのは転校生が執行部は何の脅威でもないと
 いろんな奴に言ってるからさぁ」
「なんだと…?」
「放っておけばどんどん違反者は増えるだろうねぇ」
「…つまり奴を倒せば元に戻るというわけか…!
 ふざけた真似をしやがる!」
「頑張ってねぇ…」
「待て、結局お前は誰なんだ」
「…さっきも言ったろぅ…俺はノスフェラトゥ…
 この学園の未来を憂う者だよぉ…クックッククク!」
「…消えた…?…まぁいい、それより今は…
 転校生…調子に乗りやがって…!!」
29 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/20(土) 22:02:30.95 ID:DbXHLRMo
ハジマタ!
30 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:03:51.74 ID:JoCDRAEo
10/1(月)朝

窓から朝の光が差し込み、鳥の声が聞こえる
なんとも清々しい朝だった
執行部もどんどん倒して、いや、救ってるし憂鬱なはずの月曜がなんとも気持ちがいい
いい気分で学校に行こうと部屋を出ると廊下にゆき兄がいた、どうみてもパジャマで

「…」
「…おはよう」
「またサボる気か!?」
「今日だけは間違いなくサボったほうがいい、そういう天啓が聞こえてな」
「…天啓って」
「なにやらテンションが高いようだが…
 出来ればお前もサボったほうがいいぞ、絶対、間違いなく」
「はいはい、気が向いたら昼からでも来いよ」
「人の好意を…まぁいいや、行けば意味がわかるぞ」
「はぃ?…まぁいいや、いってくるよ」
「頑張れよ」
「ん…ああ…?」

いまいち最後の頑張れよの意味が理解できなかった
しかしその真意は教室に入って2分後ぐらいに理解できた



「だからねだからね…私とゆき兄はそういうんじゃなくて…!
 あれはあいつが悪いの!!だって誰だって突然あんな抱きしめられた…!!
 ってか不安だったしあいつなら別に何も考えてないだけだし別によくはないけどいいかなって思ったりして!
 心細かっただけだし!だからちょっと嬉しくああああ!じゃなくてほっとして!!」
「…もうわかったから」
「絶対わかってなぁぁぁぁい!!!!」

このやり取りが一体どれぐらい続いているのだろうか
何を言っても全く話が伝わらないというか、いや、恐らくリカ自身もすでに自分が何を言ってるか理解していないんだろう
…確かにゆき兄の言った通りサボるのが最善の選択だったかもしれない
正直に言うとめんどくさい、物凄いめんどくさい、コレ

「わかってるよ、別に恋人じゃなくて
 家族みたいなもんでお互い恋愛感情はない、だろ?」
「そうだよ!だからそれがね!あらぬ誤解を生むんだけどね!
 あの時のことは忘れて!忘れて…!
 あぁぁぁううぁ…!!」

結局この後も授業が始まるまで延々と話を聞くハメになった
31 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/20(土) 22:06:28.94 ID:DbXHLRMo
リカ可愛いよリカ
32 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:06:32.67 ID:JoCDRAEo
10/1(月)昼休み

昼休みなってまたリカに捕まる前に俺は教室から逃げた
食べながらあの話を聞けたもんじゃないからだ

「…シャインいってみよっかな」

そういえば1人でシャインにいったことはまだなかった
たまにはいいだろう、1人でゆっくり食べるのも
そう思ってシャインに向かう

店内に入るとカナさんが近づいてきた

「いらっしゃいませー、あれー?たまゆらくん1人でくるなんて珍しいねー」
「うん、ちょっとね」
「それじゃお席はー…」

てこてこと案内されてついていく
店内はけっこう客が多かった

「こちらでよろしいですね!」

その接客用語何かおかしくない?
と、案内された席を見ると

「…なんでだよ」

引きつった顔でカナさんを見ているゆき兄がいた

「えー、だってーお客さん多いですしー
 知らない人と相席させるよりかはいいかなって」
「…今日は1人で食いたい気分なんだが…
 まぁ…いいか、たまゆらなら」
「おー、友情ー」
「うるせぇ、さっさと仕事しろ」
「はーい、ご注文お決まりになりましたらおよびくださーい」

そう言ってカナさんんはパタパタとどこかへ行ってしまった
俺は呆然とそれを見つめているしかなかった
33 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/20(土) 22:07:02.86 ID:u4LpOsDO
wwktkwwktk
34 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:08:43.42 ID:JoCDRAEo
「…そう呆けてないで座れよ」
「…なんで学校サボってるくせにシャインにいるの…?」
「いや腹減ったけど買っておいたカップ麺が尽きててな
 …ま、座れ」

促されるままに椅子に腰掛ける
メニューを手渡されたので適当にカルボナーラを注文した
料理が運ばれてくる間ゆき兄は縮めたストローの袋に水滴を垂らして遊んでいた

「あ、そういえば…リカちゃんにどう説明すんの?」
「…そうだな…どうせ今日は1日パニくってるからいいとして…
 明日になりゃあ嫌でも説明させられるだろうな」
「ごまかす?」
「無理だな、下手にごまかすより全部言ったほうがいいだろうな」
「そっかぁ…」
「信じるかどうかはまた別だがな」
「普通信じないよなぁ」
「ま、あの状況を目の当たりにしてるからな」
「んー、そか」

そんな話をしてるとカルボナーラが運ばれてきた
珍しく男の店員だった

「お待たせしました、こちらカルボナーラだ、冷める前に食ってくれよ」
「…はい」

男の店員はカルボナーラを俺の前に置いていった
視線を戻すとゆき兄が苦しそうに笑いを堪えていた

「…ククッ…」
「なんだよ」
「阿部さんに気に入られたんだな」
「え…?」
「精々気をつけとけよ、クックック…」

背中に物凄い悪寒が走った
ゆき兄は吹きそうになるのを何度も堪えながらコーラを飲んでいた
なぜか食欲が失せた…

「…ふむ、寮に戻って寝るのもめんどうだな」
「折角来たんだから午後の授業に出たらどうだ?」
「そっちのほうがめんどくせぇよ」

どうやら完璧に来る気はないらしい

「保健室で寝るか…」

そう言うとゆき兄はシャインを出て行ってしまった
俺もカルボナーラを完食して適当に昼休みを過ごすことにした
35 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/20(土) 22:11:26.89 ID:DbXHLRMo
阿wwwwwwwwwwwwww部wwwwwwwwwwさwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
36 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:12:01.31 ID:JoCDRAEo
10/1(月)放課後

「学生の分際で随分とこってるな、特に右肩」

別にゆき兄が気になったとかそういうわけではない
そういうわけではないのだが俺は保健室にいる

「ヤチャマル、たまゆらの奴死ぬほど幸せそうな顔してるぞ」
「随分こってるからな、気持ちいいんだろう」

違うんです、肩が気持ちいいのもあるけどヤチャマルに指圧してもらうのが気持ちいいんです
来てよかった保健室

何でこうなったかというと放課後になったら起こしにきてくれと
ゆき兄からメールで言われ渋々ながら起こしにくると
ゆき兄がサボるために謙譲した日本酒で上機嫌だったヤチャマルが肩をほぐしてやろうと言ったから

「…まぁ気持ちいいのは最初だけだが…」
「よし、そろそろ本気で行くぞ、いいかたまゆら」
「え?ああ、どうぞ…がぁあああああああああ!?!?!?!」

何だ!?肩がおかしい!?
っていうか何これ!?指圧ってこんなに痛いものだっけ!?

「いや、ちょっ…!?」
「こっちか!!」
「ぎぃやああああああああああああああああああ!!!」
「この骨か!?」
「骨ぅぉがぁうぁあああああああああああ!!!?」
「これか!!」
「それ首ッ…!!!!!!」

ゴキャッという音を最後に俺の意識が途切れた
なぜか綺麗な花畑が見えた気がした
あと川が
37 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:16:24.28 ID:JoCDRAEo
10/1(月)夜

「…?」

目が覚めると自分の部屋だった
確か俺は花畑でフラワーアレジメントを楽しんでいたはずだが…
しかし立ち上がると全身に物凄い爽快感を感じた
身体があまりにも軽い、すげぇ!
なんか今なら全力でフルマラソン出来そうな気がする
ふっと携帯を見るとメールがきていた
ゆき兄からだった

『ヤチャマルの指圧は強烈だからな、初めて食らう奴はだいたいお前みたいに気絶する
 ただし効果は抜群だからな』

なるほど、確かに効果は抜群みたいだ
むしろ効果ありすぎるような気がしないでもない
なんというか全身の血液が沸騰寸前のような気がして身体が熱くてたまらない
10月とはいえ夜でもけっこう蒸し暑い
とりあえず俺はパンツ姿になった、パンツにも手をかけたが一応このラインは止めておくことにした
窓を開けると涼しい風が部屋に入ってきた

「ふぅっ…」

ぼけーっと窓から外を眺める
そういえば桃花と戦った日に廊下であった仮面…
確かノスフェラトゥと名乗っていたっけ
奴は執行部と何か関係があるのか、いや、少なくともあんな格好で深夜の校舎にいるやつが一般人なわけはない
だとすれば重要なのは敵なのか味方なのかだ
…だけど結界を破る方法を教えてくれた以上完全な敵というわけでもないはずだ
もちろん、完全に味方と言えるわけでもないが

「…ん?」

男子寮から少し離れた場所に女子寮がある
窓を開けると女子寮の外観が見える
その女子寮の裏手あたりで誰かがコソコソと隠れるように何かしているのが見えた

「何だありゃ…?」

しばらく見ているとその誰かはどこかに消えてしまった
何だろう、壁でも古くなってて修理でもしてたのかな
まぁいいや、今日はもう寝よう
起きててもどうせ暇だと思う、寝れるかどうかが問題だが
38 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/20(土) 22:16:54.74 ID:u4LpOsDO
阿部さん自重……しなくてもいいかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
39 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:21:42.06 ID:JoCDRAEo
10/2(火)朝

「ックシュン…」

朝起きると昨日の自分が恨めしくなった
パンツ1枚で窓を開け放して眠ったせいでどうも風邪を引いたみたいだった

「あっちゃ〜…とりあえず薬飲んでいくか…」

こういう場合、敷地内に寮があるというのは便利だ
登校にさほど手間がかかるわけでもないしどうにもヤバくなったらさっさと早退すればいい
教室につくと珍しいことにゆき兄が俺より早く登校していた

「…よぉ」
「おはよ…ヘクショッ!」
「おいおい…風邪か?」
「ずびー…うーん、どうもそうみたい」
「おっはよー」

ゆき兄と話しているとリカが駆け寄ってきた

「おはんょ…」
「あれ?どしたの?」
「風邪引いたみたい」
「大丈夫?」
「んー、大丈夫、危なくなったら保健室いくし」
「…そっか、ところで2人とも今日のお昼ご飯どうするの?」
「いや、特に決めてないよ、ゆき兄は?」
「俺もだ」
「じゃあこの前のお礼にお弁当作ってきたからよかったら食べてよ!」
「マジ!?」
「ふーん…」
「何よゆき兄、嬉しくないの?」
「いや、楽しみだ」
「うっ…うん…」
40 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:21:59.18 ID:JoCDRAEo
珍しいな、ゆき兄が楽しみだなんてストレートに言うなんて
あーあ、またリカが少し赤くなってる

「…じゃあ俺は昼までどこかにいるわ」
「うぉい!!!」
「風邪引きのたまゆら君でも授業出るんだから健康ならちゃんと出なさいよ!」
「お前を助けたせいで身体が色々痛くてな」
「…う…」
「アデュー」
「…うう…弱みを握られた…」
「ヘクチッ…あ〜…」
「…本当に大丈夫?
 この時期に風邪引くって何したの?」
「…わかんない」

風邪を引いた理由はあまりにも馬鹿らしく
とてもじゃないが言えるものではなかった
41 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:25:35.72 ID:JoCDRAEo
10/2(火)昼休み

昼休みになるとゆき兄は教室に戻ってきた
テンションから察するに寝起きらしい
リカからお弁当を受け取って3人で屋上で食べることにした

「うお…!?」

お弁当箱の蓋を開けると…一言で表すと凄い!

「相変わらず料理だけは得意だな」
「だけって何よ…」
「いただきまーす………!!!
 やべぇ凄いうまい!!!」

お世辞じゃなく本当においしい
最近こう手作り的な物を食べたことも少なかったので本当においしい

「…絶賛だな」
「いやー嬉しいなぁ、でもそんなにガッつくと喉に詰まるよ」
「そんじゃ俺も食うか」
「手は洗った?」
「…母親かお前は」

楽しく談笑しながらお弁当を突付いていく
程なくして食べ終えた俺はリカにお礼を言った

「本当おいしかったよーありがとう」
「そう?嬉しいな、また作るね…
 …でさ…その…そろそろ聞かせてくれないかな…」

俺とゆき兄は顔を見合わせた
だけどまぁしょうがないとも言える
予定通り全てを包み隠さずリカに伝えることにした
42 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/20(土) 22:27:54.85 ID:DbXHLRMo
告白シーンの予感!
43 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:30:39.44 ID:JoCDRAEo
執行部のこと、黄龍鉄甲のこと
リカは静かに俺たちの話を聞いてくれた
ゆき兄もたまに話を補足する以外は黙っていた
全部を話し終え、一呼吸置いてからリカは喋りだした

「そうだったんだ…信じられないけど…
 あの時のことを考えると…全部本当なんだよね」
「全部嘘だったら随分と楽だったよ」
「…私も…何か手伝えないかな?」
「駄目だ」

ゆき兄がきっぱりと言った

「…でもゆき兄だって特別な力はないのに頑張ってるし」
「別に俺は頑張ってねぇよ、ただそこに居て
 ただ出来ることをやってきただけだからな」
「…」
「ついて来なくても、お前は役に立ってる」
「え?」
「なぁたまゆら、お前何のために戦ってる?」

突然話を振られて戸惑う
何のために戦う、か
…そういえば俺の戦う理由はなんだったっけ
ただ、自分が出来るから精一杯やってきただけなんだけど
精一杯やるって決めたのは…

「…救うため」
「…何を?」
「…しげるに言われたんだ、僕と同じあいつらを助けてあげてくれって…
 だから俺はしげるやえび助や桃花みたいに歪められて自分を失ってしまった奴らを助けてやりたい
 俺にはその力があるから、それにあいつらを救っていけばこの学園の生徒達も救われる気がする」
「…相変わらずお人好しだな」
「はははは、違うよ
 俺は、自分の楽しい学園生活のために戦うんだ
 今日みたいな、ね」

ゆき兄が微かに笑った
見間違いじゃなく本当に少しだけど、笑った

「言うようになったな…
 まぁそういうわけだよリカ」
「…何が?」
「今日みたいに、お前が弁当でも作ってくれば
 それで充分ってことだよ」
「…そっか…そうだね
 私がいっても足手まといになるだけだしね…
 うん!わかった!これからもちょくちょくお弁当作ってくる!」

リカが笑顔でそう言った
よし、なんとか上手くいったようだ…これからもちょくちょくか…楽しみだ
44 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:35:39.21 ID:JoCDRAEo
「…あ、そうだ
 さっき出そうとしてたんだけどね、お菓子あるよ?」
「準備がいいなお前は」

気がつくとゆき兄はコーラを飲んでいた
いつも思うがこいつは異次元からコーラを取り出す能力でもあるんだろうか

「へへー、チョコパイ、3個あるから1個づつね」

リカからチョコパイを1つ受け取る

「それじゃいただきまーす」
「いただきまーす」

俺とリカがチョコパイを食べようとしたその瞬間だった

「…ぶッ!?」

ブバガァァァァァァァァアアっと凄い音がいた
同時に俺とリカに大量のコーラ(ゆき兄の口に含まれていた)が降り注いだ
頭からコーラを浴びた俺とリカはビシャビシャになり
髪や服の端からポタポタとコーラの雫が垂れていた

「…」
「…」
「ゴホッ…ゲホッ…!」
「…ゆき兄…喧嘩売ってる…?」

リカがプルプル震えながらチョコパイを握りつぶしていた
背後に修羅が見える気がする

「ゲホッカハッ…わ、悪い…
 お、俺急用思い出したから…!じゃ!」
「待てコラァァァァァァアア!!!」
45 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:38:09.98 ID:JoCDRAEo
逃げ出したゆき兄をリカが鬼のような形相で追いかけていった
あっというまに2人は屋上から消え去った
残されたのは全身からコーラの匂いを漂わせるビシャビシャの風邪引き男の俺だけだった

「…」

どうしようもない虚しさが襲ってきた
にしても突然あんな盛大に吹くなんてコーラが気管にでもクリティカルヒットしたのか
髪の毛からポタポタとコーラを滴らせながらこれをどうしようか考えていた
すると目の前にすっとタオルが差し出された

「…使って」
「…え?」

顔をあげると、女子生徒がタオルを差し出していた
透き通るような長い黒髪、対照的な白い肌
華奢な身体、そして儚げな雰囲気はまるで現世から切り離されてしまった異質な存在のようだった
しばらく、呆然とする

「…いらないの?」
「…あ、ごめん」

我に返りタオルを受け取って身体を拭く
呆然としていたのを突っ込まれた気恥ずかしさからなんとなく目を合わせられないでいた
あらかた拭き終えてタオルを返そうと思って顔を上げると女子生徒はもういなかった

「あれ?」

辺りを見回すと校舎へと入るドアのところに彼女がいた

「おーい!タオル!タオル!」

大声で叫ぶと彼女はこちらを見て俯いた
しかし立ち止まることなくそのままドアを開けて階段を降りていった
慌てて追いかけたが
すでに彼女の姿は無かった、俺の手にはところどころコーラの色に染まった白いタオルが残っていた
46 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:44:43.73 ID:JoCDRAEo
10/2(火)放課後

授業が終わって帰ろうとすると廊下でどうみても顔に殴られた跡があるゆき兄待っていた

「…」
「…」
「…あ、俺帰るから」
「…まぁ待てよ…ちょっと待っとけ」

そのまましばらくそこにいるとリカが出てきた

「…ゆき兄…わかってんでしょうね…?」

声が恐ろしい
殺意すら感じる

「…わかってるよ…
 ほら行くぞたまゆら…」
「話が見えない」
「…後で話してやるから来い」
「何で風邪引きのたまゆら君まで連れていこうとしてんのよ…
 ってあれ?そういえば昼ぐらいからたまゆら君元気になってない?」
「…あれ?そういえば…」

言われてみれば鼻水も出ないし
全然体調は普通になっていた

「…いつの間にか治っちゃったみたい」
「そういうこともあるんだねぇ…
 …んじゃまぁ…いっか」
「…よし、たまゆら、来い」
「だからどこにだよー…」

そのまま引きずられるように校舎を出た
到着したのは女子寮だった


「…女子寮で何を?」
「いや、それがな、最近なんか不審者っていうか何かが出るとか噂になってるらしくてな
 コーラぶっかけた侘びとしてしばらく見張りをしろって言われたんだ」
「何で俺まで…俺もぶっかけられたし」
「…この前も言ったが…来る"かもしれない"ものを1人でずっと待つのは…な」
「帰っていい?」
「駄目」
「…」
「いいじゃねぇかよ、別にあいつもそんな夜遅くまで見張りしてろなんて言わないだろうからな」
「…しかし不審者ねぇ…あ」
「あ?」
「あ…いや…なんでもない」
47 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:47:35.49 ID:JoCDRAEo
昨日の夜に窓から見えた女子寮の近くをうろついていた影
あれがもしかしてそうだったんだろうか…
待て待て、そうだったら本当に不審者がいるってことじゃないか

「…武器とかあったほうがいいんじゃない?」
「ん…あー…まぁ…そう…かもしれないな…
 本当に不審者なんていたらの話だが」
「野球部からバットでも借りてこようか?」
「…随分本気なんだな…
 いやまぁそりゃいいけど逃げるなよ
 逃げたら追いかけて永劫コーラ地獄に叩き落とすぞ」
「…なんか凄く微妙な名前だなその地獄…」

俺は練習中の野球部に頼んでバットを2本ほど貸してもらった
なんでバットがいるんだ?って顔をされたが濁しておいた
女子寮の見張りをするためとか言ったら野球部も見張りに加わりそうだった
逆にそうなると人数が増えすぎるので不審者も警戒するだろうし
多分リカも怒る
バットを2本担いで女子寮に戻る

「はい、バット」
「んー…さて退屈で味気ない時間の始まりだ」

バットを抱えて座り込んでる俺たち2人を女子生徒がチラチラ見ながら何人も通り過ぎていく
確かにこの状況では俺たちのほうがよっぽど不審者だ

「…なぁ…ここ目立つからもうちょっと目立たない場所にいかないか?」
「…それもそうだな」

俺たちは女子寮の裏手に移動した
よく考えたら丁度この辺が昨日俺が窓から影を見た辺りだった
しばらくするとゆき兄が愚痴りだした

「…しかし何で俺がこんなことをしなきゃいけねぇんだ」
「…コーラ吹くからだろ?
 ていうか何で吹いたの?」
「あれはー…そのー…気管に入ったんだよ…」
「ふーん…」

何か怪しい
こいつまた何か隠してる気がする

「ふぁぁ…ねみぃ…」
「寝るなよ…」
「…わかってるよ」

そのまま無意味に時間は過ぎていき
いつしか辺りは暗くなり始めていた
48 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:52:33.48 ID:JoCDRAEo
10/2(火)夜

「あ〜…ちきしょ〜…
 暇すぎるわ…こんなんならさっさと不審者出てこねぇかな…」
「本当だねぇ…ていうかまだいなきゃいけないの?」
「リカからメール来ると思うんだけどな…
 あーくそ、ちょっと寒いな」
「ただ座ってるだけじゃ何だから女子寮の周りをぐるって見回りしてみないか?」
「…ぼーっとしてるよりマシかもな
 でも頼むから逃げるなよ」
「もうここまで来たら逃げないよ…
 それじゃ別々に見回る?」
「じゃあ俺右から回るわ」
「おっけー、じゃあ俺左からね」

というわけで俺は左周りに女子寮の周りを回ることにした
とはいうものの別に怪しい奴なんて誰もいない

「…むしろゆき兄が逃げそうだなぁ…」

ぼやきながら歩いていると
ふと女子たちの声が聞こえた

「…?」

辺りを見回すと少し高い位置にある窓から聞こえていた
カーテンが閉まっているが僅かに隙間があった
しかもなぜか窓の真下にご丁寧に足場になりそうな箱が置かれていた

「…」

いや、待て、さすがにそれはマズいんじゃなかろうか
男子禁制の女子寮を覗くなんて見つかったらそれこそアウトじゃないか
いやでもなんでこんなところに都合よく足場っぽい箱が置かれてるんだ
おかしいだろ、あ、これはもしかして不審者が置いた?
ということは不審者はここから女子寮を覗いてたってことか?
ならばほんの少し…そう、不審者の目的を知るためにも…
ってそれはないだろ、落ち着け俺
しかし意思とは裏腹に俺はすでに足場に立っていた
そのまま少し背伸びをしてこっそりとカーテンの隙間から中を覗く
49 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:54:38.19 ID:JoCDRAEo
「!!!?」

声をあげそうになった
これは…更衣室…
しかも沢山の女子が着替えの真っ最中!!

「…若い子っていいよなぁ」
「…うんうん」
「肌なんかスベスベだしな」
「うんうん」
「張りというかツヤというかねぇ本当…」
「うんうん…ん?」

ふと横を見ると知らない男がいた
新しい足場を用意して俺と同じような体制だった

「あ…!」

声が出そうになった
その瞬間に口を押さえられた

「馬鹿!大声出したらバレるぞ…!!」
「むぐ…ん…!」
「暴れるな…!おっ…うわっ…!!」

バランスを崩した俺たちは仲良く足場から落下した
幸い地面は芝生だったので落下音はなかった

「…たぁ〜…」
「…お前が不審者か…!?」
「不審者って…あー…いや俺はな…」
「おーい、たまゆら何やってんだよ」
「!?」

振り向くと後ろにゆき兄がいた

「…全く何座り込んでサボッてんだ…あ?そいつは?」
「あ、こいつが不審者で」
「覗きがいるぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「は?」

怪しい男が大声で叫んだ
そしてそのまま物凄い速さで逃げていった
50 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:56:37.04 ID:JoCDRAEo
「あ、おいちょっと待っ…」

同時にガラッと上の窓が開く音がした
見上げると驚いたような顔の女子と目が合った

「たまゆら、今の何…」

不思議な顔をして近づいてきたゆき兄が俺の視線の先を見たまま固まった
その場にいた全員が固まって動けなくなった
次の瞬間、辺りに耳を劈くような女子の絶叫が響き渡った





「待て!違う!誤解だ!!別に覗いてたわけじゃない!!」
「そうなんだ!!むしろ他に覗いてた男がいるんだ!!」
「信じられるか!変態ども!!」
「バットまで持って何するつもりだったんだ!!」
「違う!俺たちは見張りでウゴァッ!?」
「不審者がいるって聞いたからみはっがっ…!?」
「[ピーーー]!変態ども!」
「殺虫剤もってきてよ!!」
「火はどこ!?」
「よせ!火はやめっ…!あぎゃあああああああ!!」
「だから誤解なんだぁあああああああああああああああ!!」
「矢もってきた!」
「竹刀もあるよ!」
「よせやめろ!!ごばっぶッ…」
「ゆきにっげっばごぼっ…」



1時間後
俺とゆき兄はボロ雑巾のようになり
ゴミ捨て場で空を見上げていた

「…たまゆら」
「…何?」
「あの男、絶対[ピーーー]」
「奇遇だね、俺も丁度そう思ってた」

フラフラと立ち上がる俺とゆき兄

「しかしあいつどこに逃げたと思う?」
「…うーん…」
「いつつ…とりあえず今日は帰ろう…
 明日聞き込みして探し出して絶対あの野郎ブチ殺してやる」
「そうだね…」

俺とゆき兄は痛む体を引きずって寮へと帰った
51 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 22:58:51.40 ID:JoCDRAEo
10/3(水)朝

登校するとなぜか皆がニヤニヤしていた
正確には男子がニヤニヤとこちらを見て女子はまるで軽蔑するような視線でこちらを見ていた
どうやらすでに噂になってしまったらしい
リカですら目を合わせてくれないのが正直心が痛んだ
どうしてこんな目に合わなきゃいけないんだ
くそ…あの男絶対に許さねぇ…!

「…たまゆら」
「ゆき兄…」

ゆき兄は悲しげな目で俺を見ていた
どうやらゆき兄も同じらしい

俺たちは固く握手をして
あのクソ野郎を絶対に捕まえることを誓った
52 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:01:06.54 ID:JoCDRAEo
10/3(水)昼休み

教室にいると皆の目線が痛いので屋上に逃げることにした
しばらくするとゆき兄が来た

「たまゆら、あいつの情報かどうかはわからんが色々聞き込みしてきたぞ」
「え?」
「カナから聞いたが…最近どうもシャインの食料が減っているらしい
 野良猫かネズミかと思ってたらしいがそれにしては減りが早いってな」
「ほうほう…」
「…つまりあいつがもしこの学園に潜伏してるんだったら
 夜中にこっそりシャインに忍び込んで食料を盗んでるわけだ」
「なるほど…」
「毎日盗ってるかどうかはわからないが食料品だからな
 かなり頻繁には盗んでるだろう、だから今日の夜中にシャインで見張っておけば…」
「なるほどー…遭遇する可能性があるよね
 でもシャインって24時間営業だろ?」
「どうせ夜中は客なんてほとんど来ないらしいからな
 食料倉庫と裏口のドアはキッチンから死角にあるからな
 そこでだ、シャインの店長に頼んで表向きは普通の営業状態だが臨時休業にしてもらってだ
 それで俺たちが見張りをする、どうだ?」
「…いいけど、出来るのか?」
「まぁシャインも食料泥棒には困ってるらしいしな
 それにあの店長はけっこう話がわかる人だからな」
「そっか…はぁ…それにしても皆の視線が痛い…」
「…ああ、俺もああいう冷たい視線は慣れてるが…
 さすがに今回は別格だな…なんかもう蔑みまで入ってる気がする…」
「…信用されてないね俺らって…」
「最初に「やめろ、泥棒」と、叫んだ人物が
 えてして宝を盗んだ本人である…E.コングリープの格言だ…」

後ろから突然聞こえた聞き覚えがある声に振り向く
そこにはピュアがいた
53 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:07:56.77 ID:JoCDRAEo
「やぁたまゆら君」
「ども…」
「それからゆき兄、久しぶりだね
 最近図書室に来ないね、前はあんなに熱心に通ってきてくれてたのに」
「調べ物はすんだからな、それより今の格言…」
「ああ、色々と噂が立ってるようだけどね
 僕は君らが覗き魔なんて信じてないよ」
「ピュア…」
「だいたい覗きなんてするより本の1冊でも読んでたほうがよっぽど楽しいだろうに」
「いやー、それもどうかと思うぞ」
「…ふむ、まぁ君らが覗きをしても何の得にもならないだろうしね
 きっと何かの間違いだろうとは思っていたが…
 その様子を見るとどうやらやはり濡れ衣らしいね」
「あったりまえだ」
「…まぁ、人の噂もなんとやら…しばらくすれば皆忘れてくれるさ」
「待ってられないからな、さっさと濡れ衣は晴らすさ」
「…苦しみは人間の偉大な教師である。苦しみの息吹のもとで魂は発育する…
 エッシェンバッハの言葉だ、覚えておくといい」

それだけ言い残すとピュアは屋上を去っていった
何しに来たんだろう…

「…一応あいつなりに励ましてくれたんだろ」
「そっか…いい人だね、ピュアって」
「まぁ…変な奴だけどな」
「ゆき兄が言えた言葉じゃないと思うけどね…」
54 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:09:37.54 ID:JoCDRAEo
10/3(水)放課後

放課後になり俺とゆき兄はシャインに足を運んだ
昼休みに相談したことをカナさんに話した

「へ〜…大変だねー2人とも…
 うーん…ちょっと店長呼んでくるよ、奥の席で待っててね」
「うん、ありがとう」

奥の席の椅子に座って待つことにした
待ってる時にゆき兄に聞いてみた

「ねぇ、シャインの店長ってどんな人なの?」
「ああ、お前もこの前会ってるぞ」
「え?」

すると奥から見覚えのある顔の男の人が現れた

「やぁお待たせ、すまないね、ちょっとトイレで色々あってね」

…阿部さんだったな確か
そうか…この人が店長だったのか…

「それで食料泥棒を捕まえるのに協力してくれるんだって?」
「…ああ…はい」
「だから今日だけ夜は臨時休業にしろって?」
「…まぁ…そうなります…」
「…ふむ、確かにどうせ夜は客もほとんど入らないし食料泥棒を捕まえるためなら…
 …うん、いいよ」

何だ意外とすんなり通ったな
ゆき兄の言った通り随分と話がわかる人だ

「…ああ、待った…その代わりと言っちゃなんだが」
「代わり?」
「この後夜まで少しケツ貸して…いや、付き合ってくれないか?」

何だって…?
チラリとゆき兄のほうを見ると口元を隠して必死に笑いを堪えてるようだった

「それはどういう…」
「俺はノンケでもかまわず食っちまうんだ」
「…」

いや、ちょっと待ってくれ
話が見えない、いや、見えるけど見たくない
阿部さんは真っ直ぐな視線で俺のほうを見つめてきた
その光景を見たゆき兄が堪え切れなくなったのか微かに押し殺した笑い声が聞こえてきた
こいつ…確信犯(誤用)か?
55 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:10:58.37 ID:JoCDRAEo
「…たまには趣向を変えてみたいな…
 ゆき兄君、付き合ってくれないか?」

その一言を聞いた瞬間、ゆき兄の顔から笑いが一瞬で消えうせた
それどころか一気に血の気が引いていた

「な…え…?」
「たまにはガチムチじゃなくて華奢な子とも…ね?」
「いや…ね?って…」

ハハハ…ざまぁみろ…人を生贄にしようとした罰だな
精々阿部さんに掘られてヒィヒィよがってろ

「ちょ、ちょっと待ってくれ!!
 俺は…その…やっぱたまゆらがいいと思うんですけど…!
 ほら、だってこいつの筋肉とかけっこう阿部さん好みっていうか…!」
「…ああ…それでもそうだな」

ウットリとした目で阿部さんが俺の身体を見つめてくる
背筋に冷たいものが走る、まるで視線で犯されてるような気分だ

「いやいやいやいや!男なら初志貫徹でしょう!!
 ほ、ほら、俺と阿部さん…お、お互いをまだよく知らないし…
 やっぱり知ってる分…ゆき兄のほうが…!」
「ばっ…馬鹿いうな…!
 阿部さんは会ったばかりの予備校生とも公衆便所でかましちまうような人なんだぞ!」
「おいおい、そんな昔のことは忘れてくれよ
 …さてどっちにしようかな…」
「ぜ、是非たまゆらで…!」
「い、いやゆき兄で…!」

こッ…この野郎…!俺に押し付ける気全開だ!
この最悪の役回りを俺に押し付けて1人で逃げる気だ!!

「…うーん…どちらも捨てがたい…」
「いやほら!やっぱり身体の相性ってもんがね!
 俺みたいな折れそうな身体抱いても気持ちよくなんてないから!」
「大丈夫だ、優しく包み込んでやる」
「うっ…」

馬鹿め!軽率に動いて自爆しやがった!
このまま行けばこのオホモダチ的な役回りはゆき兄だ!!

「…それじゃゆき兄君あっちに…」
「い、いや…はぁー…あのー実は…
 たまゆらも前からこういのに興味があったらしくて…」

は?
56 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:12:34.80 ID:JoCDRAEo
「ん?そうなのか?
 …じゃあ3Pでもするか」

なんだと…!?
ゆ、ゆき兄の野郎…!全てを捨てる覚悟で俺を道連れにする気だ!!
くそ!悪魔のような顔で笑ってやがる…!でもどこか寂しげだ…

「それじゃたまゆら君も…」
「い、いや…その…俺…今日、腹の調子が…」
「男は度胸、なんでも試してみるもんさ
 前と後ろ両方から出しまくるのも気持ちいいと思うぜ」
「いや…それは…ちょっと…」
「あ、じゃあ…俺はー…そういう汚物プレイは嫌いだから辞退しよっかなー…」

この野郎!逃げる気だ!絶対に逃がさない!!
俺だけなんて耐えられるか!こうなりゃ俺だって道連れにしてやる!!

「うーん…それじゃあ2人で話し合って決めてくれるかい?
 なるべく早く頼むよ」

阿部さんがそう言ったので俺とゆき兄は少し離れた場所に移動した

「…たまゆら、行けよ」
「…嫌だ…」
「いや、ここはたまゆらが行くべきだろ…
 今まで何度もピンチを救ってやったろ…?」
「最終的に敵を倒してきたのは俺だろ…?
 だからここはゆき兄が行くべきだと思わない…?」
「…」
「…」
「…正直俺は物凄い嫌だ」
「そんなもん俺だって嫌だ…」
「でももう無理だろ…阿部さんその気になってるぞ…
 見てみろよ…今にもズボンのチャック全開にしそうだぞ…」
「ていうかもうさ…ズボンの上からでもわかるぐらいエレクトしてるよね…」
「…どうする?」
「…どうするも何も…」
「…あー…ここ暑いな…ちょっとコーラを…」
「待て…逃げる気だろ」
「いや…コーラを買ってこようと…」
「…駄目だ」
「…クッ…!!」
「…絶対逃がさねぇ…!!」
「たまゆら…てめぇ…!
 そんなに友達を肉食動物の餌にしたいか…」
「その言葉そっくりそのままお前に返すよ…」

睨み合いを続けていると阿部さんが話しかけてきた

「まだかい?そろそろ待ちきれないんだけど?」
57 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:13:27.55 ID:JoCDRAEo
俺とゆき兄はまた顔を見合わせた

「どーしろってんだよ…」
「しらねぇよ…」

神様、どうか僕達を助けてください
お願いします…

と、いよいよ神頼みをはじめたその時だった

「あれ?2人とも何やってるの?」
「…えび助?えび助!!」
「え…何?」

俺はえび助の両足をガッシリと掴んだ
さらに凄い速度でゆき兄がえび助を後ろから抱えあげた

「え?え?」
「ごめん…えび助!そしてありがとう!!」
「阿部さん!受け取れ!!!」
「えっ…ちょっ…!?」

俺とゆき兄は抜群の呼吸でえび助を阿部さんに向かって投げた
阿部さんは見事にえび助をキャッチした

「ウホッ…」
「え…?」

もう我慢の限界だったのか阿部さんは状況を把握しきれてないえび助を抱きかかえたまま
トイレへと駆けていった

「…助かったな…」
「…うん…でも尊い犠牲だったね…」

しばらくトイレからはバターンやガターンと騒々しい音が聞こえてきた
だがそれもやがて静かになった、しかし微妙にえび助の悲鳴のような声も聞こえる気がした

俺たちは耳を塞いで何も聞かないことにした
俺のせいじゃない俺のせいじゃない俺のせいじゃない
俺のせいじゃない俺のせいじゃない俺のせいじゃない

大事な物を失ったえび助の顔は見たくはなかったので
俺たちは罪悪感をお土産にシャインを出て一旦寮で休むことにした
さようなら、綺麗なえび助、そして本当にごめん
58 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:17:07.22 ID:JoCDRAEo
10/3(水)夜

「…けっこう寒いな…」
「空調切れてるからねぇ…」

夜になり、もう一度シャインに来た
えび助の犠牲により阿部さんはちゃんと約束を守ってくれたようだ
店内には誰1人としていなかった

「…ふむ、さて…どこでどう見張るかねぇ…」
「この冷蔵庫の隙間はどうかな?」
「狭くないか?」
「奥行きがあるから大丈夫だよ、ここなら裏口から入ってこられても見つからないし
 倉庫の入り口をすぐ塞げるからいいんじゃない?」
「そうだな、じゃあここにするか…」

壁と冷蔵庫の狭い隙間に無理やり押し入る
やっぱり2人はちょっと狭い

「…狭いな…」
「我慢しろよ…細いんだから…」
「お前ももうちょっと痩せればいいんだよ」
「うるさい黙れ」
「…しかし来てくれるといいんだけどな…」
「…うーん…どうかなぁ…」
「ここまでやってこなかったら最悪だな…」
「ああ…えび助という犠牲も払ったのにな…」

えび助のことを思い出すと罪悪感で胸が一杯になる
だから俺は考えることをやめた
ぼーっと誰かが入ってくるのを期待して待ち続ける…
…暇でしょうがない…

「すー…すー…」
「っておい!何寝てんだよ!!」
「…あぁ…まぁ…つい眠くなった…」
「寝るなよ…」
「わかったよ…」
59 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:17:57.44 ID:JoCDRAEo
2時間後…

ゴソゴソと言う音が聞こえパチリと目を開けた
…しまった、寝るなよと言いつつ寝てしまったらしい
ちらっとゆき兄のほうを見ると狭い場所で器用に寝ていた
…あれ?じゃあこの音ってどこから?

そーっと覗いてみると明らかに怪しい奴が倉庫の中でゴソゴソやっていた

「!」

思わず声を出しそうになったが堪える
落ち着いたところでゆき兄を突付いて起こす

「んー…」

馬鹿!声を出すな!!!
慌てて両手でゆき兄の口を塞ぐ

「!?…?」

かなり驚いた顔をしていたがどうやら状況を察したらしい
指で倉庫のほうを指差すとゆき兄は頷いた
そして指を3本立てた
ジェスチャーから察するに3,2,1で飛び出せということらしい
俺は頷く

3,2,1!!

「そこまでだ!!こそ泥兼覗き魔ぁ!!」
「ぬぉっ!?」
「無駄だ!完全に入り口は固めたぞ!!」
「うっ…ぬぐぐ…」
「お前のせいで俺らは覗き魔と蔑まれ…!
 絶対に許さねぇ…!」

俺とゆき兄は倉庫の奥に謎の男を追い詰めていく
そしてもう逃げ場が無くなった男はポケットに手を突っ込んだ

「凶器か!?」

しかし出てきたのは凶器ではなくタバコだった
男はタバコに火をつけるとぷはーっと一服しだした
60 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q [ちょっと用がある!急ぐ!ゆっくり読んで感想きかしてくれ!]:2009/06/20(土) 23:20:32.45 ID:JoCDRAEo
「いや〜…よくぞこの俺を捕まえた」
「まぁ…一目瞭然だが生徒じゃあないな…」
「ふふん、俺は銀河宇宙連邦から派遣された特殊工作探偵、名前はほろにが」
「はぁ?」
「地球に来た理由はα星ケンタルス座第3研究所から逃げ出した
 生体宇宙兵器マンボラスがこの学園に逃げこんだらしく俺は捕獲のためにガッ!?」

ボゴォンと気持ちいい音がした
ゆき兄が落ちてた大根でほろにがの頭を叩いた

「…で?本当のところは?」
「いってぇ…!全く話は最後まで聞けガキ!」
「…話してみろよ」
「…学園に潜伏してた理由はマンボラスは擬態能力を持っていて地球人そっくりに変身できる
 だけど地球人に俺の正体を知られるわけにはいかずどうしようか迷った末に
 こっそりこの学園の生徒達を観察して擬態しているマンボラスを見つけようとしてなガッ!?」

ベチャッと音がした
今度はトマトを顔面に投げつけた

「おお…新鮮なトマト…
 だからちゃんと話を聞けってこのガキ!」
「もういい…時間の無駄だ
 たまゆら、誰か読んできてくれ」
「あ、うん」
「ちょっと待ってよ!坊ちゃん!!それはあかんて!ちゃんとしたこと話すからいかんといてーなー!
 ふざけたのは謝るから本当ちょっとそれだけは堪忍してーやー!!」
「ちょ…離せ…!!」
「ふふふふふ…1度掴まえた女は離さないことから昔はスッポンのほろちゃんと言われててな…
 精力もいつもスッポンドリンクとか飲んでたしかなり…」
「ええい!うっとおしい!!
 スッポン関係ねぇだろ!!!」

思わず足元にあったゴボウで頭を叩いた
パシーンと音が響いてゴボウが折れた

「おお…細い割りに中々の高威力…
 いやそうじゃなくてほんま頼むよー!人呼ばないでー!お願いだから話聞いてー!!」
「ゆき兄…これどうする…?」
「…どうせ逃げれもしないしな…うざったいから聞くだけ聞いてやろう」
「おお、なかなか話がわかるじゃないか…」

俺とゆき兄は入り口を固めて奥にほろにが置いて話を聞くことにした
61 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:21:45.40 ID:JoCDRAEo
「…えーと…まぁ探偵ってのは本当なんだよ」
「探偵がどうしてこの学園に?」
「守秘義務ってもんがあってな…」
「話せないなら警察に引き渡すだけだが」
「あーもーわかったわかった…話すよ、話せばいいんだろ
 …はぁ…えーとだな…どこから話せばいいか…」
「この学園に忍び込んだのは何のためなんだ?」
「依頼人が言ったんだよ、この学園を調べて欲しいってな」
「依頼人って?」
「あー、めんどくせぇ、1から順に話してやるよ
 …依頼人はこの学校に通ってた生徒の親御さんだよ」
「生徒の?」
「ああ、最も…その生徒は今行方不明だけどな
 学園から脱走してそのまま行方不明になったらしい…
 親御さん八方手を尽くして探したんだがどうしても見つからなくてな
 この学園も協力を打ち切った、だけどどうしても納得いかないらしくてな
 親御さんはこの学園自体に何かがあるんじゃないかと睨んで俺に調査を依頼してきたんだよ」
「それでなんで覗きとか食料泥棒とかしてるんだよ」
「いやー…ただ覗いてたわけじゃなくてな一応情報収集してたんだよ
 まぁちょっとエロ心が働いたというか…男の本能だな
 食料泥棒については…しょうがないだろ…食わないと死ぬし」
「そのエロ心とお前が逃げる際に叫んだ言葉のせいで俺たちが覗き魔にされてるんだが」
「あ、そーなん?まぁそれが狙いだったんだけどね」
「…この場で殺してやろうか…」
「まぁ待って待って…ていうかあん時は…
 ほら、そっちの坊ちゃんが俺より先に覗いてたぜ?」
「は?」

ほろにがが俺を指差し、ゆき兄がこっちを見た
言い訳することも出来ず引きつった笑いで目線を逸らした

「たまゆら…お前…」
「まぁしょうがないって、あんなん男なら誰でも見ちゃうよ」
「…」
「さてと…ところで君らに聞きたいんだけどね」
「あ?」
「…この学園、普通じゃないだろ?」
「…言ってる意味がよくわからないな」
「ふっふーん、しらばっくれちゃってぇ〜
 …ちょっと調べただけで色々キナ臭い話がゴロゴロ出てくるんだぜ?
 それもちょっと普通じゃ考えられないような…ね?
 そんな普通じゃないようなことがゴロゴロ出てくる学校が普通なわけないだろ?」
「…」
「何か知ってるんじゃないのかい…?
 教えてくれれば相応のお礼はするけどね…」
「…何も知らねぇよ」
「…ふーん、あっそ…教える気はないってか…じゃあそっちの君は?」

ほろにががチラリと俺を見た
話せるわけがない、いや話してもどうせ信じないだろう
俺が首を振った
62 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:22:27.53 ID:JoCDRAEo
「…ふぅん…ま、何か隠してるのはよくわかったよ
 やっぱり情報は自分の足で稼ぐしかないってか…」
「…もういい、お前は突き出せば俺らの汚名も晴れてそれで終わりだ」
「おいおい、約束が違うだろー?」
「話は聞いてやっただろ?」
「ああ、そうだった…
 でもねー…そこで相手に猶予を与えちゃうところがまだまだ甘チャンだね」
「何だと?」
「ほらよ」
「え?」

ぽんっと目の前に何か黒い塊が投げられた
次の瞬間、ほろにが俺とゆき兄に体当たりして間を抜けていった

「待っ…」
「じゃあねー!もう会いたくないぜガキども!」
「てめっ…!」

その時、物凄い衝撃が身体に走った
正確には鉄の塊で頭をブン殴られたような衝撃
クラリと意識が飛びそうになる
頭の中で大きな鐘がガンガン鳴ってるような感覚
なのに頭が真っ白になり何も考えれなくなった

「あっ…かはっ…」

何も聞こえない
ゆき兄のほうを見ると頭を抑えて辛そうにしながらこちらを向いて口をパクパクさせていた
声は聞こえない
そのまま床にへたり込む
しばらくすると徐々にゆき兄の声が聞こえだす

「だ…じょ…か…」
「ス…グ…ド…ら…ば…る…」

ただ途切れ途切れで上手くは聞こえない
しかし指先の動きから少し待てと言うのは理解できた
じっとしていると完全ではないがちゃんと聞こえるようになった

「…大丈夫…か」
「…なんとか…今の…何?」
「…恐らくスタングレネードか…それに近いものだ…」
「スタングレネード…?」
「…爆発と同時に…大音響を起こし…敵に知覚衝撃を与える手榴弾だ…
 …対象をショック状態にし…隙を作る武器さ…
 あんなもん持ってるなんてな…全く…最初のおどけた態度といい…とんだ食わせ者だ…」
「…逃げられちゃったね…」
63 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:23:27.69 ID:JoCDRAEo
その時、入り口のドアが開いた

「おーい!お二人さん!大丈夫かー?」

阿部さんの声がした

「一応大丈夫です」

返事をすると阿部さんが心配そうな顔で近づいてきた
なぜかツナギ姿だった

「様子を見に来たら物凄い音が響いてな
 何かと思ったよ」
「…追い詰めたんですけどね…」
「予想外の反撃で逃げられました」
「そうか、まぁ無事でよかった」
「…まぁこれで…濡れ衣は晴れるかな」
「ああ、俺がちゃんと言っておいてやるよ」
「阿部さん…かっこいいっすね」
「その言葉はベッドの上で聞きたいね」
「…はは、遠慮します」
64 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:24:37.41 ID:JoCDRAEo
10/3(水)深夜

しばらくシャインで休んでなんとか普通に動けるようになったので俺は寮に戻ることにした
ゆき兄は俺より至近距離でスタングレネードの直撃を受けたらしくもう少し休んでいくと言ったので
とりあえず阿部さんに任せて俺だけが寮に帰ることにした
…しかしスタングレネードって凄いな、多少服に焦げ目がついたが身体はなんともない
そんなことを考えながら寮へ戻っていると道の先に誰かが立っているのが見えた
誰だろう、こんな時間に

その時、さーっと、月を隠していた雲が流れ
道の先にいた男が月光に照らされた

「…あれは、制服?」

その男は学園の制服を着ていた、いや正確には制服の上に白いコートを纏っていた
そして、こちらを見ていた

「…執行部じゃ…ないよな…」

ふっ、と目を逸らした
その瞬間だった

「転校生、たまゆらだな」
「え…なッ!?」

至近距離から声が聞こえ驚いて逸らした目を戻すと白いコートの男は目の前にいた
なんでだ?一瞬前まではまだ数メートルは離れてたのに…?
こいつ…執行部なのか?

「…俺は邪眼学園生徒会会長…白やんだ」
「え…?」
「動くな、動けば命は無いぞ」
「うっ…」

何だ…この感覚…
目の前にいる男は何もしていない、ただ立っているだけだ
それなのにとてつもないほどの恐怖を感じる
見た目は細身で本気でやりあえば俺のほうが勝てる気がするのに
本能が、こいつには勝てないと拒絶している

「…お前は…なぜ執行部を倒す?」
「…お、お前が…執行部に力を与えてるのか…?」

首に、何か冷たいものが当たった
無機質な、何か、それは、刃のような…
65 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:25:11.95 ID:JoCDRAEo
「質問するのはこちらだ…答えろ…
 なぜお前は執行部を倒している?」
「はぁ…はぁ…」
「この程度で恐怖に囚われたか…脆いな…
 答えられないのなら選択肢を提示してやろう
 …執行部を打ち倒し自らが学園の法となりたいが故か?」
「…違う」
「…ならば、己の力を誇示したいがためか?」
「…違う」
「…ならば何故?」
「俺は…皆を救いたいから…」
「救う…ふん…救う必要が無い者に救いだと?」
「必要がないって…あいつらは皆自分のやったことを後悔して…」
「お前が倒さなければ後悔なんてしない」
「それは…」
「お前は自分のやっていることがわかっているのか?」
「え…?」
「お前は…学園を平和にしたいと思って戦っているんだろう?
 そのために執行部を倒している…違うか?」
「いや…違わない…」
「…それが正義と信じているのか?」
「…ああ」
「…もしも、犠牲を出すことが悪で…
 犠牲を減らすことが正義ならば…現状ではお前が悪だ…」
「何だって…?」
「…お前が執行部を倒すことにより出所はわかんが…ある噂が流れ始めた…
 執行部なんて恐れる存在ではないというな…
 それ故に規律を破るものが増え始めた…」
「…」
「わかるな?畏れを忘れた彼らは揃って規律を破り始めた…
 故に、断罪されるものの数はどんどん増えている…」
「あ…」
「貴様の中途半端な正義が犠牲を増やしているんだ…」
「そんな…」
「…羊が安全に暮らせるのは羊飼いの存在があってこそだ
 柵を飛び越えた羊を狼から守ってくれる存在はどこにもいない」
「…」
「わかったら…これ以上は何もするな…本当ならこの場で貴様を処理してもいいんだが
 三度執行部を退けた貴様に敬意を払い今回は警告で済ませておこう」

首に触れていた、冷たいものが離れる

「だが忘れるな、貴様如き、いつだって屠れることをな」

それだけ言い残し、白やんは夜の闇の中に消えていった
後には、俺だけが残った
66 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:25:33.89 ID:JoCDRAEo
「はぁ…はぁ…うっ…うぇぇぇえ…げっ…がはっ…はぁー…はぁー…」

急速に込み上げた嘔吐感に耐え切れず
俺は道端に胃の中の物を吐き出した

あれが…生徒会会長…白やん…
本当にあれは…人間なのか…?
勝てる気がしない…あんな奴に…
このまま執行部を戦い続けるということは…いつかはあいつとも戦うということか…?
そのとき…俺は…勝てるのか…?
あんなやつに…勝てるのか…?

身体が、寒かった
震えは止まらなく、どれだけ止めようと頑張っても止まらなかった
まるで悪魔に心臓を鷲掴みにされている気分だった
戦い続けるということは…いつかは…あいつと…

月が、怪しく、笑っていた
まるで俺の心を見透かすように…

4限目 -宵闇の徘徊者-
67 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/20(土) 23:26:21.43 ID:JoCDRAEo
ちょっと用事ができたから最後急いじゃってごめんね!
ゆっくり読んでな!!
68 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/20(土) 23:40:41.09 ID:DbXHLRMo
ゆきに乙!

生徒会長が俺・・・だと・・・?
69 :リリーホワイト :2009/06/21(日) 04:52:01.07 ID:k4fd9YDO
朝ですよー
70 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/21(日) 08:57:12.46 ID:o8PanMDO
ゆき兄おつ!

ほろにークソワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
tk白やん白ランじゃないのかよ!wwww
例え学校の制服がブレザーでも1人だけ白ランな漢らしい白やんが見たかったお…(´ω`)



まぁシリアスなシーン台無しになるけどねwwwwwwww
71 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/21(日) 11:51:55.58 ID:C52lV.go
>>70
>>漢らしい白やん

ここに世の中の物理法則に矛盾した一言が!
72 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/21(日) 12:20:51.50 ID:C52lV.go
生体宇宙兵器マンボラス
http://imepita.jp/20090621/440770

・擬態能力を持ちあらゆる集団に溶け込む
・両手のマラカスが基本兵装
・武器を与えると何でも使いこなす
・基本的に普段は踊り続けている
・必殺技は超広範囲に渡りマンボNo.5の音楽とともに大爆発を起こす「ビートヒーツエクスタシー」

ちゃーちゃちゃらっ!ちゃっちゃっちゃっちゃーちゃー!
ちゃーちゃちゃらっ!ちゃっちゃっちゃっちゃーちゃー!
ちゃちゃちゃ!ちゃっちゃっちゃっ!ウッ!!(ドカーン)
73 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/21(日) 20:16:55.15 ID:KYWCRMDO
>>71
矛盾してねーよwwwwwwwwww凄く漢らしいよwwwwwwwwww
74 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/06/21(日) 20:21:01.53 ID:k4fd9YDO
>>73
( ^ω^)は?
75 :ピュアハート [図書委員]:2009/06/21(日) 21:25:32.39 ID:hY8Ty2SO
>>73
またまたご冗談を
76 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/21(日) 22:02:21.86 ID:o8PanMDO
>>73
またまたご冗談をwwwwwwww
77 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/21(日) 22:32:14.71 ID:jOJ49M6o
|樹海| λ............トボトボ
78 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/21(日) 23:42:42.57 ID:L8IE0IE0
|男塾| λ............トボトボ|樹海|............
79 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/22(月) 00:02:46.21 ID:NWR3hd.0
|花園| λ............トボトボ|男塾|............|樹海|............
80 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/22(月) 00:41:29.48 ID:l0r7BbQo
|神楽| λ............トボトボ|花園|............|男塾|............|樹海|............
81 :リリーホワイト :2009/06/22(月) 05:10:27.59 ID:Xm./oADO
朝ですよー
82 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/22(月) 22:28:59.18 ID:4j/CIIco
漢らしさ度は白やんよりヤチャマルのほうがよっぽど上
83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/22(月) 23:36:05.64 ID:WZWjyyg0
男前度はどっこいだけどな
84 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/23(火) 00:54:33.36 ID:1h4PRMDO
なんか誉められたwwwwww
85 :リリーホワイト :2009/06/23(火) 06:29:27.62 ID:R3pbAgDO
朝ですよー
86 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/23(火) 18:22:25.55 ID:lTCkghso
携帯料金払ってなかったらとめられてたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
87 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/23(火) 19:49:09.38 ID:1h4PRMDO
>>86
バカスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwバカwwwwwwバカwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwバwwwwwwwwwwカwwwwwwwwwwスwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
88 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/23(火) 20:22:03.34 ID:lTCkghso
>>87
でもすごいよ!
料金払ったらその瞬間に元に戻るんだぜ!!
89 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/23(火) 20:37:46.35 ID:EyldkqUo
>>88
そんな経験しないで済む方がいいです^^;
90 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/23(火) 20:51:01.48 ID:1h4PRMDO
>>88
そうだね、すごいね^^;
91 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/06/23(火) 20:55:00.20 ID:R3pbAgDO
>>89
(´・ω・)
92 :そら :2009/06/23(火) 21:32:28.01 ID:Zl6J4UDO
(・ω・`)
93 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/23(火) 21:35:14.26 ID:lTCkghso
>>91>>92
僕達仲間だよ!
94 :そら :2009/06/23(火) 21:39:40.37 ID:Zl6J4UDO
それは無いわ
95 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/24(水) 02:35:33.64 ID:ktFywgDO
でも払ったらすぐ携帯が使えるようになるシステムってどうなってんだろうな
96 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/24(水) 03:10:42.30 ID:ppDPOiso
>>95
すごいよね
コンビニで払ったけど5分も立ってなかったよ
97 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/24(水) 07:43:47.44 ID:44TSjUDO
コンビニあるんだ…
98 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/24(水) 17:39:01.19 ID:ppDPOiso
>>97
どんだけ田舎と思ってんすかwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
99 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/24(水) 19:24:33.72 ID:KRThU3wo
>>98
でも徒歩で行けないし10時くらいに閉まるんだろ?
100 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/24(水) 19:32:09.51 ID:ppDPOiso
>>99
徒歩なら15分だな
一応24時間だ
101 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/25(木) 05:45:36.37 ID:yrWM/1oo
早く寝たら異常に早起きして暇
102 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/25(木) 06:00:42.39 ID:yrWM/1oo
暇だから途中まで替え歌作った、桃とかに歌って欲しい


【ヤチャマル】
怯え逃げろ 世界の真ん中を
くしゃみすればどこかの森で鬼が乱舞
鬼の強さマジやばい でたらめ
情けなく逃げ回る
仕方がない ヤチャマルは強い

生き残りたい!!生き残りたい!!
まだ生きていたいんだ!!
深夜のラクガキで今、殺されそう!!
生き残りたい!!途方にくれて!
首を絞められていく!!
本気でお酒、あたえないと!
僕は死にたくない…

鬼はやがて東へ向かうだろう
今チャンス 今西の方へと逃げる
かなり息が切れて胸が辛い
迫り来るヤチャの音
殺される、骨も残さず

生き残りたい!!生き残りたい!!!!
まだ生きていたいんだ!!!!!
深夜のラクガキで今、殺されそう!!!
生き残りたい!!途方にくれて!
首を絞められていく!!
本気のお酒、あたえないと!
僕は死にたくない…
103 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/25(木) 08:28:24.80 ID:hKlgwQDO
ゆき兄が自ら死亡フラグを立てたようです^^
104 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/25(木) 09:52:10.94 ID:yrWM/1oo
>>103
インスピレーションが沸いたんだからしょうがないじゃん!
105 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/25(木) 10:22:56.26 ID:HKdG7K.o
あれ…?リリーさん…?
106 :そら :2009/06/25(木) 10:45:52.01 ID:Mqunn.DO
リリーさんまた携帯止まったんじゃないですか?
107 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/25(木) 12:39:41.89 ID:hKlgwQDO
ばか!携帯止まったのは黒やんだろ

リリーさんはあれだよ
月に一度のアレですよ
108 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/25(木) 14:12:46.11 ID:m8PtHLIo
なにそれこわい
109 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/25(木) 19:32:25.36 ID:v91nuKUo
>>102
実に良くできた歌詞だと思う
110 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/25(木) 20:44:26.54 ID:yrWM/1oo
>>109
だろ?

生き残りたい!生き残りたい!の部分でパッと思いついたんだ
111 :たまゆら :2009/06/26(金) 03:03:15.10 ID:ZWdJnbMo
      _,,, 
     _/・e・)
   ∈ミ;;;ノ,ノ
     ヽヽ
112 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/26(金) 05:24:24.02 ID:cAP9WZso
      _,,, 
     _/ - e-) -3
   ∈ミ;;;ノ,ノ
     ヽヽ-
113 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/26(金) 06:48:20.11 ID:F4sknSco
>>112
こっちのほうが好き
114 :たまゆら :2009/06/26(金) 08:38:59.57 ID:ZWdJnbMo
      _,,, 
     ( ゚∋゚)
   ∈ミ;;;ノ,ノ
     ヽヽ
115 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/26(金) 08:41:12.56 ID:F4sknSco
>>114
お!いいよ!ちょっと好感度あがったよ!
116 :たまゆら :2009/06/26(金) 09:24:50.52 ID:ZWdJnbMo
     ミ\   ノノノノ  彡
      \ \( ゚∋゚)/
       \ \/ /
         /   丿
     ∈ミ;;;ノ,ノ
       ヽヽ
117 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/26(金) 09:33:27.55 ID:pxQAZsDO
嫌な進化だな…
118 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/26(金) 09:43:28.62 ID:F4sknSco
>>116
ギリギリ許せるか許せないかの本当ギリギリなラインだな
アンバランスさがムカつく…
119 :そら :2009/06/26(金) 10:43:18.92 ID:DtKzdkDO
悔しいけど笑ってしまった
120 :たまゆら :2009/06/26(金) 12:21:49.67 ID:ZWdJnbMo
   ∩∩       ノノノノ
  ( ・x・)      (*゚∋゚)    
 ミ_u,,uノ     ミ_u,,uノ
"~"    """  :::     "~""~" 
"""    :::          "
121 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/27(土) 06:40:32.74 ID:v4.Iz6DO
どようび!
122 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [カレー萌え同好会会長]:2009/06/27(土) 13:34:53.05 ID:Nmqj8wDO
どどようび!
123 :そら :2009/06/27(土) 15:07:58.46 ID:tWDmDoDO
どどどようび!
124 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/27(土) 20:46:23.77 ID:u9b63oYo
締め切りに追われる俺
間に合うかなぁ…
125 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/27(土) 20:58:28.40 ID:Nmqj8wDO
あと1時間しかないなwwwwwwww
126 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/27(土) 21:23:52.74 ID:SNEQGT6o
入稿迫ってるぞ!急ぐんだ!
127 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/27(土) 21:30:09.98 ID:OeD9okSO
ロリうんこ先生早くして下さいよ
128 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/27(土) 21:59:53.03 ID:u9b63oYo
後2時間猶予欲しいな…(ノД`)
いや、1時間半
129 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/27(土) 22:03:11.12 ID:SNEQGT6o
ついに原稿落としたかwwwwwwwwwwwwwwww
130 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/27(土) 22:08:06.54 ID:u9b63oYo
>>129
ちょっと予想外なことが多くてな…
131 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/27(土) 23:33:54.53 ID:u9b63oYo
明日にしよう
今日はもう遅い
132 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/27(土) 23:38:56.47 ID:SNEQGT6o
諦めるのかよwwwwwwwwwwwwwwwwww
133 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/27(土) 23:44:42.35 ID:u9b63oYo
>>132
今日のがいいの?
確かにもういけるけど
134 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/27(土) 23:49:44.63 ID:nD54Kx20
>>133
構わん
投下したまへ
135 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/28(日) 00:10:42.99 ID:zCZMdsDO
>>133
小説マダー?
136 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 00:20:58.72 ID:zIxlxbko
5時限目 - その名は死 -

日付、時刻不明

「うおぉぉぉぉぉおおおお!!」

自らを奮い立たせる雄叫びをあげつつ俺は黄龍鉄甲を振りかざす
しかしその雄叫びは自らの恐怖を押し[ピーーー]ためなのは誰の目にも明白だった

「吼えても力の差が埋まることなどない」

俺の渾身の1撃は、いとも簡単に白やんの片手で止められた
根性とか、勇気とか、能力の相性とかそういう物ではない
根本的に違う、圧倒的な実力差
それは、例えば生まれつき虎が持つ力と努力をして強くなったネズミを比べるようなものだ
ネズミがどれだけ力をつけようと、虎には勝てない

「己が愚行を悔いろ」

白やんのその顔はいつもと変わらず感情を読めない
しかし俺は感じていた、白やんの全身から感じる強烈な気配
その気配の名は、"死"

「うあ…あ…!!」

手を振り解き、後ろに倒れ尻もちをつく
立ち上がろうとしても、足が震えてうまくいかない
這いずりながら俺は必死に逃げ出した

「クッ…ククク…!
 実に見苦しい…!」

初めて、白やんの表情が変化した
とても楽しそうな、狂気に満ちた笑み

「…俺に弓引く者がこうして力の差を見せ付けられ
 無様に這いずり回る姿は…なんとも面白い」

言葉にかまってる暇は無い
俺は少しでも遠くに逃げようと必死だった

「だが歯向かった罪は償ってもらおう…
 償いの名は…死だ」

白やんが取り出した刃は動きを止めることはなかった
居合いの達人が剣を抜き、相手を切り伏せることまでが止まることのない1つの動きのように
白やんの刃は、取り出し相手の首を落とすまでが止まることがない1つの動き
叫び声をあげる間も無く、俺の首は地面に転がった…
137 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 00:25:51.77 ID:zIxlxbko
10/4(木)朝

「うわぁあああああああああああああああ!!!!」

絶叫と共にベッドから跳ね起きた
呼吸が荒い、全身汗だくだった

「…夢…か…」

ほっとしたのも束の間、途端に震えが襲ってきた
こんな夢を見るなんて、あのたった少しの邂逅がどれほど俺の脳髄に恐怖を植えつけたのか
…思い出すだけで寒気がする
直視すれば、まるで地獄を覗いたと錯覚するようなあの目

「…クソ」

気を紛らわそうと思い俺は登校することにした
休んでもよかったのだが…習慣というものは恐ろしい


教室につくと珍しいことにゆき兄がいた

「…酷い顔だな
 寝てないのか?」
「いや…」
「昨日のスタングレネードがそんなに聞いたか?
 俺はもうピンピンしてるぜ」

いつもどおりやる気なさそうにそう言うゆき兄に少し安堵した
異世界を覗いてしまったとも錯覚している俺にはこの普段どおりの日常が何より安心した

「…ゆき兄」
「あん?」
「生徒会について…教えてくれ…」
「…」
「…頼む…」

ゆき兄は少し考え込んでいた
しかし前のようにすぐに断るということはなかった
138 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 00:32:20.50 ID:zIxlxbko
「…そうだな…ここまで来たらもう隠していても仕方ないだろう」
「…うん」
「生徒会は主に3人だ
 生徒会長の白やん…書記の舞姫…会計のスイカ…
 最もこの3人は廊下でたまたま出会えるような奴らじゃないけどな
 普段どこにいて何をしているかも不明だ」
「たった3人なのか?」
「数が多けりゃいいってわけでもないだろうからな」
「…」
「…本当にどうしたんだ?今日のお前変だぞ?」
「…昨日の夜、生徒会長、白やんに会ったよ」
「何だって!?」
「…これ以上何もするなと…警告された
 それでさ…俺思ったんだ…あいつには…絶対勝てないって…!!」
「…」
「勝てるわけがない…あんな…あいつは人間じゃない…!
 あんな恐怖生まれて初めてだ…!」

俺が震えているとゆき兄はスッと離れていった

「…話すべきではなかった」
「え?」

突き放すような、冷たい声に驚く
そのままゆき兄は自分の席に突っ伏した

「…」

モヤモヤとした気持ちのまま
俺は授業が始まるのを待つしかなかった
139 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 00:41:04.83 ID:zIxlxbko
10/4(木)昼休み

あれからゆき兄とどうにも気まずくなった俺は屋上へ逃げるようにあがってきた
隅っこのほうに座り込むと空を見上げ、ぼーっとしていた
するとふっと影が視界に入った

「…随分と覇気が無いな」
「お前ッ!?」

聞き覚えがある声に慌てて起き上がる
目の前には、不良男…高橋がいた

「…何の用だ…!」
「別に」

スッと俺に向かって手が伸ばされた
その瞬間、脳裏に白やんの姿がフラッシュバックした

「うわぁああああああああああああああ!!」

叫び声をあげ、その手を思いっきり弾いた
あまりにも力を入れすぎたのか手がビリビリしていた
高橋は弾かれた手を見つめていた

「…何があったか知らないが…恐怖に囚われたか…」
「はぁ…はぁ…」
「…まぁそれならそれでいい」

それだけ言うと高橋は去っていこうとした

「待て…!」
「…」
「お前は…俺が救いと信じている行動が破滅を呼ぶと言った…!」
「ああ」

そう、前に会った時、高橋はそういった
それは昨日白やんが言っていた俺が執行部を倒すことで執行部への畏れが薄れ
断罪される一般生徒が増えているこのことを表していたのか

「…俺が執行部を倒して学園全体の生徒会への畏れが薄れている…
 このことを言っていたのか…?」
「…違うな」
「え?」
「…それはあくまでも過程だ」
「過程?」
「…忠告しておく、これ以上犠牲を増やしたくなければ…
 もうお前は何もするな」
「…」
「じゃあな」

それだけ言って、高橋はどこかに言ってしまった、俺はまた空を見上げた、綺麗な青空だった
140 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 00:51:43.38 ID:zIxlxbko
10/4(木)放課後

学校の裏手にあるゴミ捨て場
そこに俺は立っていた、黄龍鉄甲を抱えて
少し迷った後、ゴミの上に黄龍鉄甲を投げ捨てた

これでいいんだ、これでいい
ゆき兄も前に言っていたじゃないか、俺が命を賭ける理由なんかどこにもないって
逃げても誰も責めないって…
そう…誰からも責められないし、俺は死にたくないからこうしてる
戦っていればいつか死ぬかもしれない
理解はしていたがどこか信じてはいなかった
でも白やんの瞳を見て、俺はわかってしまった
だからこうすればいい、死にたくなんてないから

俺はゴミ捨て場から走り去った
雨がポツポツと降り出していた
しばらく走り、校舎の角を曲がり、ゴミ捨て場が見えなくなり
俺は壁にもたれかかった

俺は死にたくない、そんなのごめんだ
臆病者と言われてもいいし、責任がどうとかもクソくらえだ
圧倒的な"死"そのものを見たことが無い奴らなんて口では何とでも言える
だからこれは俺の望んだことだ、なのに…

「どうして…こんなに…悲しいんだ…」

雨が降り続いて、俺の身体を濡らしていく
どうせなら、溢れてくる涙も何もかも流してくれればいい
雨は、止まない、涙も、止まらない…
141 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/28(日) 01:01:16.84 ID:zCZMdsDO
始まってた!

舞ちゃん予想外wwwwwwwwwwwwwwww
142 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 01:03:16.49 ID:zIxlxbko
どれくらい時間が立ったのか
不意に声がした

「たまゆら君!?どうしたの!」

驚いた表情のリカがそこにいた

「ビショビショじゃない!また風邪ひいちゃうよ!?
 ほら、とりあえずこっち来て…!」

服を引っ張られ校舎に引きずり込まれた
小さなタオルで身体を拭かれる

「一体どうしたの…?」
「…俺さ」
「うん?」
「怖くなった…戦うことが…」

リカの手の動きが止まる
失望されるか、怒られるか、どうでもいい、死ぬよりかはマシだ
そう思った
だけどリカは何も言わなかった

「…」
「…」
「…たまゆら君が背負っているものはとても重くて…
 逃げ出してしまいたくなるのもわかる…私は何も言えない…」
「…」
「…でもたまゆら君はそれでいいの?」
「…死ぬのは嫌だ…!
 どうして…俺だけが…!こんな運命を背負わなきゃいけないんだ!
 たまたま俺のところに黄龍鉄甲が現れただけなのに…!!」
「たまゆら君…」

とんっと、頭に手が置かれた
優しく撫でるように

「今日は…もう帰ろう?
 そろそろ鐘も鳴るから、ね?」
「うん…」

寮に戻った俺は風邪を引かないように服を着替え
そのままベッドに倒れ込んだ
そしてそのまま意識は闇に落ちていった
143 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 01:09:58.11 ID:zIxlxbko
10/4(木)夜

「会長が転校生に接触したらしいねぇ」
「へぇ…」
「それじゃぁ今頃怯えてるだろうな」
「そりゃそうだ、あの人は"死"そのものだ」
「さてそれならどうする?」
「どっちにしろ断罪は必要だろ?三人もやられてるんだ」
「そうだな、噂の出所があいつという情報もあるしな」
「信用し難いが、結局断罪することに変わりはないか」
「…今の転校生なら誰がいっても同じだろうな」
「じゃあ俺にやらせて」
「文句は無い」
「決まりだな」
「…決行はいつにしようかな…」
144 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 01:15:02.80 ID:zIxlxbko
10/4(金)朝

憂鬱だ…
黄龍鉄甲を捨ててスッキリしたはずなのに気分がとても憂鬱だ…
沈んだテンションのまま学校に向かう

ゆき兄は来ていなかった
心配そうな顔でリカが話しかけてきた

「…大丈夫?」
「うん…大丈夫…」
「…」
「…」
「あ…と、次の授業で使う道具もってきてって先生に頼まれてたや…」
「…うん」
「…ごめんね」

リカはそそくさと廊下に出て行ってしまった
…もうどうにでもなれ
145 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 01:21:16.87 ID:zIxlxbko
10/4(金)昼休み

屋上に出てみると空は晴天だった
俺の心とは裏腹に、気持ちいい天気
…俺の決断は間違ってはいない…
なのにどうしてこんなに悲しくなるんだろう
間違いではない、が、俺は本当に納得しているんだろうか?
カチャと、屋上のドアが開く音がした

「…たまゆらさん」
「…しげるか!?
 怪我は!?もう大丈夫なのか?」
「ええ…」
「心配したんだぜ?」
「はは…ごめんなさい
 隣いいですか?」
「ああ」

しげるが隣に座り込む
そしてお互い無言のまましばらくゆっくりと時間が過ぎていく
ポツリとしげるが呟いた

「…えび助さんと桃花さんも救ったみたいですね」
「…うん」
「正直な話、どうせ駄目だろうなって思ってたんです」
「え?」
「だってそうじゃないですか
 死ぬかもしれない戦いにわざわざ自分から進む人なんているわけない…
 そう思ってました、今までは」
「…俺は死ぬかもしれないとは思ってたけど実感が沸かなかっただけさ」
「それでもたまゆらさんは救ってきたじゃないですか」
「…」
「たまゆらさんなら…きっと…」
「きっと?」
「…いえ、何でもありません」

そうだった
死ぬかもしれない、だけど俺はそれを3度乗り越えてる
だけど次が上手くいく保証は…無い
昼休みが終わりかけ、しげるは自分の教室へと戻っていった
俺はそれからしばらく、空を見ていた
146 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 01:33:57.51 ID:zIxlxbko
10/4(金)放課後

帰ろうとすると先生に呼び出された
何かと思ったがどうせ戻ってもやることはないので行ってみると
単純に資料やらなんやらの整理の手伝いだった
意外と時間を取られてしまい、下校時刻ギリギリになってしまった

グラウンドに出ると辺りは少し薄暗くなっていた
…おかしいな、下校時刻ギリギリとはいえこの時間ならまだグラウンドには誰かしらいるはずなのに
グラウンドには人がいなかった、いや、グラウンドだけじゃない
辺りを見回しても誰もいない
背筋が寒くなった、とはいえ帰らないわけにはいかない
偶然だ、と自分を納得させて俺は足を踏み出した
ザリ、ザリ、と砂を踏む音がする、いつもは気にしないこの音が静寂の中で不気味さをかもしだす

「伏せろたまゆらぁぁぁあ!!!」
「えっ…!?」

後ろから、誰かに体当たりをされた
そのままもつれるように2人で地面に転がる

「がっ…ぐっ…!」
「ゆき兄!?」
「ボサッとすんな走れ!!!!」

ゆき兄が俺を突き飛ばした
その瞬間、頬を何かが掠った

「えっ…?」
「立て!!立って走れ!!!」

慌てて立ち上がり、理解できないままにグラウンドを走り出す
頬に鋭い痛みを感じて手を当てるとヌルリとした感触があった
同時にパシッ!と足元の土が弾けた
驚いて止まりそうになる俺の背中にまたゆき兄の声が響いた

「怯むな走れ!!不規則に動きながら走って走り抜けろ!!」

振り向くと肩を抑えながらゆき兄も走りながらこっちへ向かってきていた
その気迫に押され、俺もまた全速力で走り出す
さっきまで自分がいた辺りの土がパンッ!と弾け飛ぶ
状況が理解できないまま俺は必死に走り続ける

「グラウンドを抜けたら塀に隠れろ!!狙撃手は屋上だ!!」
「狙撃手!?」
「話は後だ!!走れ!!」

必死に、ただ必死に、出来る限り右へ左へと動きながらグラウンドを抜けようとする
耳に聞こえるのは地面が爆ぜる音
奥歯を噛み締めながら自分でも驚くほどの持久力でグラウンドを抜けた
147 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 01:41:35.11 ID:zIxlxbko
「はぁっ…はぁっ…ゆき兄早く!!」

走ってくるゆき兄の姿が見える
肩を抑えている手の隙間から血が流れていた
次の瞬間だった

「がっ…!!」

ゆき兄が地面を擦るようにかなりの勢いで転倒しグラウンドに倒れた
ズボンのふくらはぎの辺りが破れ、そこから血が流れていた
慌てて飛び出そうとするとゆき兄が叫んだ

「かまうな!行け!!」
「ふざけんなよ!!」
「もう自分には関係ないんだろ!?だったら行け!!」

関係ない…関係無い…!
俺は死にたくなんかない…けど…!!

「目の前で倒れてる奴を放っておけるほど俺は強くないんだよ!!!!」

俺はまたグラウンドに飛び出した
死にたくはない、だけど死ぬ気はない
ゆき兄を助けないと!!
その時

「えっ!?」
「なっ!?」

辺り全てが闇に包まれた
これは…まさか…!?

「たまゆらさん!こっちです!!」
「しげる!?」
「早く!長くは持たない!!」
148 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 01:46:10.74 ID:zIxlxbko
火事場の馬鹿力とでもいうんだろうか
ゆき兄を担いだ状態、いくらゆき兄が軽いとは俺は爆走していた
しげるの声を頼りに、闇の中を必死に走り続けていく

「…もう…限界…!」

パシィン!と何かが弾けるような感覚
同時に辺りに色が戻ってくる
グラウンドの出口は目前だった

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

走る、いやもはやそれは跳ぶと言ったほうが正しい
渾身の力で踏み出し、俺は宙を舞った
何かが、頭をかすめた
それでも意識を失うことなんかは無く
俺は安全圏へと滑り込んだ

「はぁっ…はぁっ…」
「…たまゆら」
「…ちょっと…待って…呼吸が…」

かなりの酸欠状態で頭がグラングランしている
必死に回復を待っているとしげるが走りよってきた

「大丈夫ですか?」
「ああ…ていうか…しげる…あの力…」
「取り戻せたみたいです
 前ほどではないですが…お陰で助けることが出来ました」
「ありがとう…助かったよ」

つーっと頭から何かが垂れてきた
触ってみると血がだらだら流れていた

「とりあえず寮に戻って手当てしましょう
 あまりここにいるのも危険でしょうし」
「そうだな…」
149 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 01:52:48.76 ID:zIxlxbko
10/4(金)夜

「幸い2人とも軽い傷で済んでよかったです」
「…ゆき兄がいなかったら死んでただろうな」
「…ま、それはお互い様だ」
「でも…どうして…」
「…しげる、少し…席を外してくれるか?」

ゆき兄に言われ、しげるは部屋の外へ出て行った
部屋には俺とゆき兄だけが残った

「…たまゆら、俺は確かに、前に言った
 命を賭ける理由は無い、逃げても誰も責めないと」
「…ああ」
「だけど、もうお前は引き返せないぐらい関わってしまった
 逃げても誰も責めない、戦うことを止めても誰も文句は言わない
 でも…例えお前がそうだとしても、奴らはさっきみたいにかまわず襲ってくる」
「…」
「生き残りたいなら、戦うしかない」
「…」
「…」
「…怖いんだ」
「あ?」
「わからないんだ、自分でも…どうしてこんなに怯えているのか…
 頭ではわかっているのに…身体は言うことを聞いてくれない!!
 怖くて!怖くて…!何も解決しないのに…ただひたすらに逃げたいんだ…!」
「…」
150 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 02:11:58.08 ID:zIxlxbko
「…どうして…こんな…」
「…死の能力か」
「え?」
「…話に聞いたことはあるんだ…あまり信用してはなかったが…
 生徒会長白やんが持つ力の一つに対象の脳に強烈な死のイメージを付着させることが出来る…と」
「強烈な…死のイメージ…」
「…どういう効果なのか興味はあったが…
 今のお前のようになるんだな…」
「直す方法は無いのか…?」
「わからん」
「…そんな」
「とはいえ所詮イメージ…気の持ちよう次第…
 だけど…多分そんな簡単なもんじゃないんだろうな」
「うん…」

死のイメージ…やはりあの時に植えつけられたんだろうか…

「…しかし戦えないとしても奴らは襲ってくる
 このままじゃどちらにせよ…」
「…」
「たまゆら」
「うん?」
「ただやられるのを待つか、最後の最後まで抵抗し続けるか
 どっちがいい?」
「…断然後者」
「…わかった」
「何かあるの?」
「この後、少し出るぞ」
「え…うん、わかった…」

少し時間を潰し
ゆき兄に連れられて俺たちは寮を出た
151 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 02:18:19.65 ID:zIxlxbko
10/4(金)深夜

「ついたぜ」
「え…ここって…」

連れてこられたのはイビルアイだった
最も時刻が遅すぎてすでに店は閉まっているが

「アルコールの力で忘れさせようってこと?
 つーか…どっちにしろ店閉まってるよ?」
「いや、開いてるよ
 むしろイビルアイはここからが本番…」
「…えぇ?」

ゆき兄はドアを開けてさっさと中に入っていった
慌てて俺も続く
中は電気が消えていたが蝋燭のぼんやりとした灯りが辺りを照らしていた

「…もう閉店だけど?」
「いや、俺だよ俺、久しぶりー」
「…ゆき兄か、いらっしゃい
 後ろの子は…確か前に来た…」
「あ、たまゆらです…」
「そう…ふふ、イビルアイにようこそ」
「はぁ…」
「まぁ座れたまゆら」
「う、うん…」

促されるままカウンターの椅子に腰掛ける
神楽君が正面に立つ

「今日は…どんなものをお求めで?」
「自らの中に飛び込んで自らに救う悪魔を打ち祓うようなモノが欲しいかな?」
「ふむ…」
「な、なぁゆき兄…これどういうこと?」

ニヤニヤしながらゆき兄がこちらを向いた
それからゆっくり喋りだした
152 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 02:24:22.21 ID:zIxlxbko
「イビルアイはな、表向きはバーなんだが
 営業終了した深夜から日の出にかけては特殊なアイテムを扱ってんだ」
「特殊な…アイテム?」
「古今東西あらゆる魔術や練金術などの儀式道具やアクセサリ
 ルーンストーンにマジックカード、オイル、キャンドル、インセンス
 オカルトアイテムならここにくればだいたい揃ってる」
「…さらに神楽君は本物の魔術士だ」
「え?」
「本当にこの学園は想像を絶することばかりだよな」
「魔術士といっても漫画とかであるような炎を出したりとかはできないけどね…
 魔術とはあくまでも人間の意志を宇宙の事象に適用することによって
 何らかの変化を生じさせることを意図して行われる行為だからね…」
「へ、へぇ…」
「さてゆき兄、これなどどうかな?」

神楽君はカウンターの上に小さなガラスの小瓶を置いた
小瓶の中では液体が揺れていた

「詳細は?」
「極限まで濃度をあげたオール・パーパスにより空間浄化を遥かに超越し使用者をあらゆる外的刺激から遠ざける
 そしてアストラル・トラベルによって意識を非物質界へと旅立たせる…
 その際周囲に結界魔方陣を緻密に張り巡らせ意識を内面世界へと追い立てる
 そしてエクソシズムによって心に取り付いた邪霊や悪魔を追い出す…
 そんな感じの神楽特性魔法薬だ」
「ほうほう」
「難点があるとすれば…体内の邪霊や悪霊を追いやるということは
 攻撃と防御を同時にこなす…分かりやすく言うと白魔術と黒魔術を同時にこなすというわけでね
 魔術の知識も何も無い一般人が使うとなると最悪意識不明の昏睡状態…
 死にはしないだろうが目が覚めなくなる可能性がある
 あとは基本的に魔翌力の高まりを誘発しないといけないから深夜にやらないといけないことだろうか…」
「…なるほどな、やっぱりリスクは高いか」

真剣な顔つきで話を聞いていたゆき兄がクルリとこちらを向いた
153 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 02:31:41.42 ID:zIxlxbko
「と、まぁ聞いての通りだ」
「…最悪昏睡状態って?」
「というか、実際何が起こるか神楽君にもわからないんだろ?」
「そうだね…内面世界というのは個人のイメージの産物だからね
 そこで起きること全てはまた個人によって変化する…」
「要するに本当に何から何まで予測不能ってことだな」
「まぁね…」
「たまゆら、やるかやらないか、お前の自由だ」

ゆき兄は俺に小瓶を渡してきた
小瓶の中では透明な液体が揺れている
その揺れがなんだか俺の心みたいだなと思った
右に傾き左に傾く、何もしていなければ水面は平静を保つ
だけど外部からの刺激を受ければすぐにまた揺れ動く
同じなんだろう、人の心も

「やるよ、俺」
「ここまであれしといて何だが…いいのか?」
「ああ、どうせやられるならやれることは全部やっておきたい
 そこに少しでも…可能性があるなら」
「そ、か
 じゃあ神楽君これ…」
「代金はいいよ」
「いいの?」
「結果を聞かせてくれればね…すごく興味深いから
 そうだ、これも持っていくといい」

神楽君からシルバーアクセサリのような物を受け取る

「これは?」
「僕が作った特別性のタリスマンさ
 身に着けておけば自らの力で運命を切り開こうとする時にきっと幸運を与えてくれる」
「…ありがとうございます」
「どういたしまして」
「さて、それじゃあ戻るかねえ」
「まぁ待ちなよ、折角だから何か飲んでいきなよ
 明日は休みだろ?」
「それもそうだな、んじゃ俺コーラな
 たまゆらは?」
「…牛乳」
「はぁ?」
「ここの牛乳はおいしいんだよ!」

なんだか少し気が紛れた
3人で仲良く話しながら牛乳を飲み、しばらくして寮へと返った
寝る前に神楽君からもらったタリスマンを見つめた
自らの力で運命を切り開く時…か
154 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 02:41:04.63 ID:zIxlxbko
10/5(土)朝

朝目が覚めたら連絡しろとゆき兄が言っていたので
さっさと連絡すると呼び出される
またもや連いてこいと言われ素直についていくと体育館だった
床には紙が一杯に敷き詰められ、数人がその紙に何かを書いていた

「全く…神楽君も人が悪いわ…
 こんな超大型魔方陣とは聞いてなかったぞ」
「魔方陣…?」
「言ってたろ?
 結界魔方陣を周囲に緻密に張り巡らせるって」
「ああ…」

確かにそんなことを言ってたような気もする

「しかしいかんせん魔方陣がデカすぎたからな…
 何人か応援を呼んだんだ、今魔方陣を書いてるあいつらな」
「え…あれって…!?」

よく見ると魔方陣を書いてる人たちは
全員見覚えがあった

「ふぅ…あ!たまゆら君!」
「リカちゃん…」
「来ましたか、待っててください
 今日の夜までには間に合わせます」
「しげる…」
「たまゆら君…この前のことは無かったことにしてあげるから…」
「えび助…」
「腰がいた〜…でもちゃんと書き上げるから!」
「桃ちゃん…」
「全部事情を知ってるのはこの4人だけだからな…
 本当はもっと人手が欲しかったが…」

ゆき兄がそう呟くとリカが割って入った

「ゆき兄〜私たちで大丈夫だよ
 絶対に書き上げるから!!」
「そうだな…俺も参加するか…」
「あ、じゃあ俺も…」
「ダメ!!!!!!」
「ダメです!!」
「ダメだ!!!」
「ダメだよ!!!」
「ダメでしょ!!」

5人から一斉にダメだしされた
驚いて鳩が豆鉄砲くらったような顔になったと表現するのがぴったりだった
155 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 02:48:04.64 ID:zIxlxbko
5人から一斉にダメだしされた
驚いて鳩が豆鉄砲くらったような顔になったと表現するのがぴったりだった

「え…なんで…?」
「…お前は体力を温存しとくべきだ
 それに…」
「それに?」
「夜中にここで儀式を行う、ということがどれほど危険かってことだ」
「…執行部…!」
「いくらあらゆる外的刺激を遠ざけるといっても直接接触されればアウトだ
 それが内面世界にどういう刺激を与えるのかはわからんが間違いなくいい方向には転がらないだろ」
「…」
「最悪そのままやられ…
 もし成功したとしても執行部を完全に倒せるのはお前だけだ
 だからたまゆらはとにかく体力を温存してくれ」
「でも…」
「大丈夫、絶対間に合わせるから!」
「任せておいてください」
「ここの紋章違うんじゃね?見本は…」
「この部分が…」

皆はせかせかと床に敷き詰められた紙に筆で魔方陣を書いていく
純粋な感謝の気持ちを胸に秘めて俺はそれをずっと見守っていた
156 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 02:52:16.43 ID:zIxlxbko
10/5(土)午後

リカが作ってきてくれたお弁当を突付いてから皆はまた魔方陣を描く作業に戻っていった
ここまででだいたい3分の1ほどが完成していた。

「ふぃー」

隣にゆき兄がトスンと座り込んだ

「休憩?」
「ちょっとな」

いつものようにいつの間にか手にコーラを持っている
それをうまそうに飲みながらゆき兄は話し出した

「皆歯痒いんだろうな
 全部任せなきゃいけないことと、何もしてやれないことが」
「…充分だよ」
「…そうか」
「みんなの気持ちは充分に伝わってる
 必ず…俺の中に巣食う"死"を撃ち祓うよ」
「ほらよ」

ゆき兄はコーラを差し出してきた
俺はそれを受け取る

「たまゆら」
「何?」
「勝てよ」
「…ああ!」

ゆき兄はコーラを一気に飲み干してまた魔方陣を描く作業に戻っていった
他の皆も必死に図面とにらめっこしながらひたすらに巨大魔方陣を形作っていった
皆の期待に答えるためにも俺は飛び出していきたい気持ちを必死に抑え込んでいた
157 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 02:54:36.72 ID:zIxlxbko
10/5(土)夜

「完成したな…」

ゆき兄が呟いて皆でガッツポーズをした

「よっしゃぁ!」
「やったね!!」
「これであとは…!」
「たまゆら、準備はいいか?」

俺は立ち上がった

「万全だ!」

俺は小瓶を握り締めて促されるままに魔方陣の中央に仰向けに寝転がった

「…その小瓶の中の液体を飲めば
 神楽君の話では自らの内面世界に飛び込めるはずだ
 そこからはたまゆら、お前次第だ」
「…わかってるさ」
「…必ず、目覚めろよ」
「ああ!!」

一呼吸置いて、俺は一気に小瓶の液体を飲んだ
ガッツーン!!!とハンマーで頭を殴られたような衝撃的な味を感じたのも束の間
一気に俺の意識は闇へと落下していった
正確には細いトンネルのようなものをピンボールのように弾け跳びながら進んでいく感覚だった




「…よし、どうやら行ったようだ」
「たまゆらさん…」
「どうか…」
「…じゃあ俺らも俺らの戦いをするとしようか」
「…ええ」
「リカはここでたまゆらを見守ってやってくれ
 …最も突破されたら…できれば逃げてほしい」
「…」
「置いてけない、か
 わかったからそう睨むな」
「それじゃ行きましょうか、えび助さん桃花さんゆき兄さん」
「ああ」
「ちょっと待て、俺は他にやることがある」
「え?」
「…大事なことだ、行ってくる」
「あ!ちょ…行っちゃった…」
「仕方ない、ここは俺たち3人でやるしかない」
「そうだね」
158 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 03:00:55.48 ID:zIxlxbko
10/5(土)時刻不明

ここはどこだろう
真っ暗で何も見えない
ここが俺の内面世界とかいうところなのか?
しかし灯りが無いことには…

と、思っていると辺りが明るくなった
…意思が反映されるのだろうか?便利だ…!?!?
俺は目を見開いた
明るくなった視界に飛び込んできた景色に絶句した

赤い空に混じり気の無い純粋な黒い大地
無数に突き立てられた黒い十字架、その根元から黒を鮮やかな赤に染める血が流れていた
指先が震えだす、恐ろしく不気味、でもそれだけではない
見ているだけで気が狂いそうになるほどの不快感
クラリと倒れそうになるのを頭を抑え必死に耐える
霞みそうな視界の先で十字架の隙間を縫って誰かが歩いてくるのが見えた

「…転校生」
「白やん…!?」

それは間違いなく、生徒会長の白やん
白やんは黒い十字架に触れながらゆっくりとこちらに歩いてくる
全ての十字架に血が滲みだし、ポタポタと雫が垂れてくる
まるで血の雨を降らすように

「う…!!」

全身が震えだす、強烈な恐怖が俺の身体に絡みつく
奥歯がカチカチと音を立てる
頭に浮かぶのは殺され、十字架に磔にされる俺の姿
嫌だ、嫌だ、嫌だ…
自分の身体を抱きしめその場に膝をつく
視界が涙で滲んでいく
ゆっくりとこちらに向かってくる白やんの姿がユラユラと陽炎のように揺れている

「ああ…あ…!」

目の前に辿り着いた白やんは動きを止めた
表情を崩さぬまま、静かに片手を振り上げる
その振り上げられた右手が、俺にはまるでギロチンの刃のように見えた
無慈悲に、ただ受刑者の命を消し去る、止まることの無い断罪の刃
そして、刃は放たれた
159 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 03:09:20.44 ID:zIxlxbko
10/5(土)深夜

「くそぉ…!!」
「執行部から外された雑魚どもが揃いも揃って…」
「黙れ!!」
「無理だ、お前らじゃ俺は倒せないよ
 …いいから、そこをどけ」
「行かせない!!絶対に!!」
「…ああ、うざったい…」
「ぐっ…!!」
「正義の意味すら失った馬鹿どもが俺に勝てるわけないというのに…」
「はは…お前の正義なんて…ちっぽけだぜ…」
「…そうさ、だけど俺たちは気づけた…」
「大衆を操作するために作られた正義なんて…」
「気づけたから…気づかせてもらったから…」
「俺たちは本当に自分の信じた正義に従ってここにいるんだ!!」
「だから絶対にたまゆら君の所には行かせねぇ!!」
「…よーくわかったよ…お前らそこまで腐り果てたんだな…
 堕ちたとはいえ元執行部…穏便に済ましてやろうと思ったがその必要もないようだ…
 …しょうがないか…全員蜂の巣にしてやるよ…」
「来るぞ!!」
「えっ…?」
「馬鹿なっ…!?」
「安心しろ、弾切れなど無い…
 それが俺の"力"だ」
160 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 03:13:08.95 ID:zIxlxbko
10/5(土)時刻不明

白やんの刃が頬を掠めた
俺は必死に、振り下ろされた白やんの刃を避けた
這いつくばったままで距離を取り、俺は立ち上がった
膝が震えて上手く立てなかったけど、なんとか立ち上がった

「はぁ…はぁ…!」

白やんは動かない、虚ろな目でただこちらを見ていた
ゴクリと唾を飲み込む、奥歯を噛み締めると同時に恐怖を噛み潰す
震えるな、死にたくないなら、全力で切り抜けることを考えろ
怖い、怖いけど、死ぬのはもっと怖い

「…う…ぐっ…!!!」

拳を握り締める、強く強く
握り締めた拳の痛みが、俺に冷静さを取り戻させてくれた
逃げてどうする、俺はこいつを乗り越えるためにここにきたんじゃないか
怖いのは当たり前だ、それでもこれを乗り越えなければ何も変わらないじゃないか
もう俺1人の問題じゃない、皆の想いを無駄になんか出来ない
1人で戦ってると思ってた、全部押し付けられてるんだと心の底では思ってたのかもしれない
でもそれは違うとわかった、だから俺はこいつを乗り越える
そして戦う、これからも…俺は皆を救ってやる、そしてそれが俺自身も救われることに繋がることを祈って…!

「転校生…たまゆら…
 断罪する…」

白やんの目が見開かれた
右手を突き出し、高速でこちらに向かってくる
恐れるな、目を背けるな
今までずっと目を背けてきた"死"に今度は自ら立ち向かうんだ
寸前まで迫るその右手
それが触れる寸前に、上半身をズラし、ギリギリでそれを避ける
避けられる、大丈夫だ
例え"死"を目前にしたとしても、恐怖に囚われず冷静になればいい
そうすれば必ず避けられる…!!
161 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 03:22:23.00 ID:zIxlxbko
また距離を取る
しかしどうすればいい、避けることはできてもどうやってこいつを倒せばいい
避けることが出来たとしても倒せなければ意味がないじゃないか
考えているうちにまた白やんがこちらに向かってきた

「くッ…!!」

その手をまたなんとか避ける
考えていても仕方ない、武器はないけどやるしかない!!
攻撃後の隙を突いて、俺は白やんの身体に拳を叩きこんだ

「…」

肉にめり込む感触
だけど白やんの表情は変わらない
効いてないのか!?

「断罪…」

まずい!!!
咄嗟に白やんの身体を蹴り飛ばし、その反動で距離を取った
不思議だ、思った通りに身体が動く
それになんだかあれほど怖かった白やんが今はそれほど怖くない

「断罪…する…断罪す…る…!」

そうか…
そういうことか…

俺は白やんに近づいた
もう恐れはなかった

「断罪する…断罪する…」
「もうやめろ」

すっと、優しく触れるように
白やんの身体に手を当てた

「本物は、もっと恐かった」

同時に手のひらに何かが集まるような感覚
そしてそれが爆ぜた
白やんの形をした"死"は後ろに跳ね飛ばされた
そして、倒れかけていた十字架に、胸から突き刺さった

「グゥオォォ…!オッ…アッ…!」

胸からビチャビチャと血を流しながら
"死"はもがいていた
それでも十字架から抜けることは出来ずに暴れていた
162 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 03:30:21.68 ID:zIxlxbko
「…お前は俺のイメージする死の形」
「ウオォオ…!」
「だから、俺がお前の攻撃を避けた時にもうお前の力はほとんど無くなった…」
「…ガァギャッ…」
「…2度と惑わされない、形の無い"死"なんかに…!
 死ぬことを恐れるのは当たり前だし、誰だって恐いけど…
 恐いからって何も出来なければ何も変えられはしない!!」

俺は"死"の頭に手を置いた

「消えろ!!」
「グッギイ…ガッ…ゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!!!」

何かが収束し、限界まで圧縮される感覚
そしてそれが一気に爆ぜ、光が溢れ出した
目を開けないほどの眩い光が辺りに立ち込め、全てを包んでいく
同時に身体がグイッと何かに引き戻されるような気になった
いや、気のせいじゃなくて確かに何かに引っ張られていく
最後に、うっすらと目を開けたとき
視界いっぱいに広がる…草原が見えた気がした
163 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 03:36:36.89 ID:zIxlxbko
10/5(土)深夜

「…何だこれは…ここで何をしていた?」
「…来ないで!」
「ここにもいたか…いや?でもお前は…」
「いかせねぇぞ!!」
「…まだ立ち上がってこれたか」
「…絶対に…いかせ…」

パァンという音が体育館に響き渡った
その音が俺の意識を覚醒させた
最も意識は戻ったがおぼろげで身体が動かせなかった
何が起こっているのか、よくわからない

「…さてと、邪魔するなら君も死んでもらおうか」
「…恐いけど…!ここで逃げたら私は一生後悔する!!
 だから逃げるもんか!!例え死んだってここから逃げ出すもんか!!
 皆だって逃げずに戦った!私だけ逃げ出すものか!!」

リカの叫び声
ハハ、何だ俺よりよっぽど勇気あるじゃないか
皆も儀式の最中にずっと俺を守ってくれてたんだね…
ありがとう…ごめん…
動け、俺の身体、助けるんだ、皆を
その勇気に、応えろ!!!!

「…そうか、なら死ぬといい
 正義の名の下に…」

その瞬間、俺は一気に跳ね起きた
パァンという音が響くとほぼ同時に跳び、リカを抱え込みそのまま床に着地した

「…たまゆら君」
「ごめんね、遅くなった…」

リカを降ろし入り口を見る
倒れている、しげる、えび助、桃花…
少し離れた場所に銃を持った男が立っていた

「…お前が…やったのか…?」
「初めまして、執行部の透過っていいます
 お察しの通りこいつらは俺がやりましたよ
 …こちらからも質問よろしいですか?ここで何をしていたんです?」
「…さぁね」
「…ま、いいか
 どうせ恐怖に囚われてるあんたは何も出来ずに僕に撃たれるんだろうしね」

透過は銃口をこちらに向けてくる
震えるな、恐いのは仕方ない
だけどそれに囚われてしまえば何もできない
例え恐くても目を背けるな…!!
164 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 03:44:39.66 ID:zIxlxbko
「…お前本当に会長にあったのか?」
「…ああ」
「まぁいい、これではっきりする」

指先が微かに動くのが見えた
その瞬間、思いっきりかがむように動いた
パァンという音が響いた
身体は何とも無い

「…馬鹿な…死の恐怖に囚われた奴が…
 いとも簡単に死を連想させる銃を前にして平静を保ち
 あまつさえ銃撃を避けるだと…?」
「…恐怖なら、乗り越えた」
「そんな馬鹿な…ありえない…!!」
「おぼろげなイメージに囚われてるお前らとは格が違うってことさ」
「誰だ!?」

入り口にはゆき兄が立っていた
その手に何かを携えて

「受け取れたまゆら!!!」

思いっきりゆき兄がそれを投げてきた
透過の横を抜け、流星のように体育館を貫き俺の手がそれをキャッチする
物凄い衝撃で手が痺れる、投げられた物の正体は…

「黄龍鉄甲!!!」
「なんとか見つけてきてやったぜ」
「…サンキュー!」

慌てて黄龍鉄甲を右手に装着する
よし、これで戦える

「…ククク…クハハハハ…!!」

突然透過が笑い出した

「…怯えているだけの奴を倒しても仕方がないということだな…
 だがどちらにせよ僕の勝利には変わりはない!!
 接近戦しか出来ないお前は僕には勝てない!!」

透過が銃をこちらに向ける
まずいな、次は本気で来るはずだ
165 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 03:47:39.95 ID:zIxlxbko
「僕の能力は無限弾丸…
 その名の通り無限に弾丸を作り出す能力
 無限に続く連射を耐え切れるものなどいない!!」

俺はリカを軽く突き飛ばした
どこかに隠れておけという意味でだ
それを察したのかリカは倉庫に隠れていった

「見逃してくれるとは優しいな」
「お前らを倒した後にゆっくりと断罪してやるさ」
「なら…絶対に倒れるわけにはいかないな」
「同感だな」

確かに銃というのはとにかく分が悪いが
透過は俺とゆき兄に挟み撃ちにされてる状態だ
どちらか片方でも接近して銃を押さえれば充分に勝機はある

「お前ら…挟み撃ちだからどうにかなると考えてないか?」
「え?」
「甘いんだよ…!!
 それで不利になるってんならとっくに逃げてんだよ!!」

透過は懐からもう1丁ほど銃を取り出した
片手に1丁づつ、二丁拳銃となり両手を広げ
俺とゆき兄に同時に銃を乱射し始めた!!

「くっそ!」

俺たちは走り回る、そう簡単に当たるわけはないと分かっていても
やはり1発でも当たればアウトという緊張感は容易に飛び込むことを阻害する
かといって飛び込んで1発当てなければそのうち俺たちが負ける

「どうすりゃいいんだよ!」
「ほらほらほらぁ!もっと逃げ惑え!!」
「あんまり調子乗ってんじゃねぇぞ!!
 たまゆらぁ!!耳塞げよ!!!」
「え?」

ゆき兄が空中に何かを投げた
いや、これは前も似たようなことが…!!
俺は慌てて耳を塞いだ

次の瞬間、あの時、ほろにがを追い詰めた時と同じように身体に物凄い衝撃が走った
これは…スタングレネード…
あのときと多少違うことは耳を塞いだおかげか多少クラリときたが
そこまで意識が吹っ飛ばされそうにはならなかったことだった
166 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 03:50:58.29 ID:zIxlxbko
「ぐっ…」
「たま…ゆらぁ!」

ゆき兄の声でなんとか意識を繋ぎとめ正面を見ると
透過は銃を落とし、頭を抑えて背中を丸めていた
俺は走り出した、今しかない!!
一気に接近し、黄龍鉄甲の1撃を叩き込む!!
しかしもう数メートルというところで透過の目が見開かれた

「なっ…めるなぁぁ…!!!」

あと少しというところだったのに
身体を丸めた状態で脇の下から銃口が覗いているのが見えた
まずい!全速力だから避け切れない!!
なんとか避けようとするとスタングレネードが軽く効いていたせいでバランスを崩す
そのまま俺は横に転倒してしまう

「たまゆらッ…!!くそっ…!!」
「近づくなぁ!!」

乱射するような音してゆき兄の慌てる声が聞こえる
俺も慌てて立ち上がろうとする

「おっと」
「!」

頭にゴリッとした感触
万事休すだろうか

「舐めやがってぇ…!」
「…」
「はぁ…はぁ…だけどここまでだな…?
 どうだ…さすがに恐怖したか?」
「恐怖なんて…いつだって恐いさ…」
「何だと…?」
「恐くて当たり前だ…俺は命を賭けて戦ってるし…
 戦いの先にあるのはお前らの救い…
 人の進むべき道を背負って戦ってるんだ…恐いにきまってるだろ?」
「…それなら、[ピーーー]ばいい」
「…恐いのは当たり前だけど…恐いからって動かないと何もできないしな
 それに俺は1人じゃないって知ったから」
「終わりだ!!」
167 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 03:57:54.75 ID:zIxlxbko
パァンという音が体育館にこだました
俺のすぐ横の床がビシッと音を立てた
だけど俺はまだ生きていた
野球ボールが、足元にコロコロと転がっていた

「助けてくれる奴らがいるんだ
 だから俺は最後まで戦える」
「馬鹿なッ…!」
「けっこうお前も役たつんだな…」

ゆき兄の視線の先には倉庫があった
正確には倉庫から顔を覗かせてるリカの姿が

「ゆき兄よりかは役に立ったかもね!」
「俺は誰かさんが捨てた唯一の武器を取りにいくので疲れてたんだ…
 ま、これで今回は締めだな」

しゃがんだ状態で足を踏ん張る
顎までのラインが完全に無防備だった

「クッ…!!!!」

銃をこちらに向け直そうとする
だけど俺のほうが早い!!
俺は思いっきり腕を上に振りぬいた

「昇龍…けぇぇーーーーーん!!!!!」

いつもとは違いゴガッという堅い感触
そのまま一気に上に振りぬく
同時にまたパァンという音が響いた
頬の、絆創膏を掠めた銃弾は絆創膏を引き剥がし、床に穴を開けた
そして透過は、そのまま宙に打ち上がった

「ごぁっ…がぁああああああああああああああああ!!」

宙に打ち上がった透過はそのままドスンと体育館の床に打ち付けられた
ピクピクと小さく動いてはいたがもう戦えないだろう
168 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 04:00:51.89 ID:zIxlxbko
「…昇龍拳ときたか」
「いや、思いついてな」
「ちなみにリュウ派か?」
「ケン派」
「相容れないな」
「そうだな」

ニヤニヤと笑いあう俺たち2人を見てリカがいった

「男ってどいつもこいつもゲーム好きなんだなぁ
 …まぁそれよりもこっちの3人を…」
「待て、まだアレが起こらない」
「そうだね」
「…アレ?」

倒れている透過に視線を移す
ジワジワと身体から黒い煙が上がっていた

「コレ」
「ああ、あるほど…」

いつもの通り
透過は暴れながら溢れ出ていく黒い煙を留めようと必死だった

「うっぐ…だめ…だ…!!行くな…!!
 行かないで…くれ…!!
 正義を…正義を執行するには…力が…
 力なき正義に…意味なんかないのに…駄目…だ…
 あっ…がっ…ギィアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

リカが耳を塞いでる
毎回聞く断末魔、今まで深くは考えていなかったが
一体これは何なんだろうか

しばらくするといつもどおり黒い煙の流出は収まった
ゆき兄がリカに向かっていった

「こっちはもういい、倒れてる3人の介抱をしてやってくれ」
「うん、わかった」

リカは入り口に走っていった
俺とゆき兄は透過に近づいた
169 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 04:02:53.21 ID:zIxlxbko
「…」
「何も言わないんだな」
「…くそっ!!」

透過は突然銃を俺に向けた
驚いたが銃からはカチンカチンという音しかしなかった

「…はは…もう無理か…
 弾を作れないんじゃ…意味がないか…
 俺の負けだ…」
「…お前はどうしてこうなったんだ?」
「…力…守るための…
 この銃は…」

黄龍鉄甲から光が溢れ出す
光は透過のポケットに集まった
どうやら今回もうまいぐあいに行きそうだ
辺りが光に包まれていく、暖かい光に…
170 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 04:06:38.86 ID:zIxlxbko
――何が正義で何が悪なのか
少なくとも僕は小さな頃はそれがはっきりしていた
だから僕は悪が許せなかった


「…また喧嘩したのか」
「僕は悪くない」
「…相手に怪我をさせたろ?」
「僕は悪くない、あいつらからやってきたんだ」
「やれやれ…
 お前は本当に正義感が強いな…
 だけど怪我をさせちゃいけない、どんな理由があれ言うことを聞かないからと相手を傷つければ悪だ」
「…でも僕が怪我をさせられそうだった」
「…ああ、そうだな…
 自らが傷つけられるのを防ぐために相手を傷つけるのは罪ではないとされる…
 だけどその線引きってのが曖昧でな…難しいな、正義って」


正義とはあまりにも不確かだった
見方を変えればすぐに正義が悪となり、悪が正義となってしまう
…さらに、いつしか正義を貫くには力が必要だと小さな僕は知った

「がっは…」
「だっせ…喧嘩売ってきたわりに弱いなこいつ」
「喧嘩を売ったわけじゃない…ただ注意…ガハッ!」
「うぜぇんだよ!」
「俺らがお前に迷惑かけてんのかよコラ!!」
「がっ…げほっ…」
「ケッ、めんどくせぇ…おい、もういこうぜ?」
「ぐぅ…」

力、力が欲しい、純粋な、力
その力を、俺が正義として振るう
誰もが認める強い力…!!!
171 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 04:10:30.38 ID:zIxlxbko
「…坊主、何やってるんだ?」
「これが欲しいんだ…」
「馬鹿いうなよ、やれるわけないだろ?」
「あんたらは力を持ってるのに…そんなに強い力を持ってるのに…
 どうして見逃すんだよ…!!!」
「え…!?」
「僕なら…僕は許さない…絶対に悪を許さない…!!!」
「…坊主、手を出しな」
「え?」
「ほら、これをやる」
「何…これ?弾?」
「薬莢っていうんだけどな撃ったあとのカスみたいなもんさ」
「これだけあっても意味がない…」
「確かに…力無き正義ってのは無意味かもしれない
 だけど力を全てを抑え付けるのも正義と言えるか?」
「…」
「どんな人間も1色なわけじゃない、正義があれば悪もある
 俺も坊主もな」
「…」
「それでも力で抑え込むことが必要な時もある
 でも間違えるな…悪を倒すために力を振るうんじゃない
 誰かを守るために力を振るうんだ
 よく言われてることだけどな、だけど俺にはこれが真理だと思うぜ」
「…守るために…」
「ああ、それが正義だ」

…強い力を振るったとしても…
正義と称してそれを振るうことは正義ではない…
誰かを守るために振るい、自らを正義と称さない力こそ純粋な正義


「…よぉ坊主、でかくなったな」
「え…」
「思い出してくれたか?力の意味を」
「…はい」
「…なら、立ち上がれ」
「え?」
「誰だって間違えてしまう
 間違え続けてそれを正していき人は自らの理想に近づいていける」
「…」
「お前は、ここで諦めないだろ?」
「ええ…」
「なら行きな」
「…ありがとう、ございました…」
「礼なら、お前の目の前にいる奴に言ってやれ」
「…はい!」
「忘れるなよ、正義とか悪とか口で並べ立てるもんじゃない
 何かを成して、結果的にそれが正義か悪になるか、だ」
172 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 04:13:44.81 ID:zIxlxbko
――光が消えた
透過がポケットから取り出し、握り締めていたのは薬莢だった

「…終わったか」
「みたいだね」

透過は泣いてはいなかった
だけど何かに耐えるように唇を噛み締めていた

「くっ…そぉぉぉお…!!」

透過はガン!と体育館の床を思いっきり殴りつける
何度も何度も殴りつける

「よせ!」

慌てて止める
その拳には血が滲んでいた

「…結局僕が信じてたのは…偽りの正義だった…
 僕は僕が最も軽蔑していた行為にどっぷりと浸かってしまっていた…!
 幻想の正義の名のもとに…何人も力で抑え込んでしまった…!!
 クソォッ…!!クソ…!!」
「…自分が信じた道が間違ってることに気づいたなら…
 また新たに信じた道を進んでいけばいいだろ?」
「…」
「他の3人もそうだった
 ここにいた皆は強制されてきたわけじゃなかった…
 皆自ら来てくれたんだ
 それはこれがきっと正義と思ったから…」
「…君は自分がしていることが正義と思っているのかい?」
「…いいや、思ってないさ
 俺がこうして執行部を倒していくことで犠牲者が増えてることも知ってる
 だけど俺は死にたくない、だからこうして戦い続ける
 もし悪なら…いつか報いを受けるかもしれない…
 それでも生きたいという本能が悪だとは思わない」
「生きるため…か…そうか…
 君は…強いな…
 正義という旗を掲げ自分の成すことが全て正義だと思っていた俺よりよっぽど…」
「…」
「目が覚めたら…俺も…あいつらのように…」

その言葉を最後に、透過は目を瞑った
寝顔は安らかだった
173 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 04:16:12.13 ID:zIxlxbko
「たまゆら」
「うん?」
「どうやらあっちの3人も大丈夫そうだぜ
 幸いだったな、どうやら動きを止めて裏切り者として後でゆっくり処刑するつもりだったらしい」
「そっか…」
「ま…皆けっこう負傷したから両手を挙げて万歳ってわけにはいかないな」
「ところでスタングレネードなんてどこから持って来たの?」
「……黄龍鉄甲を探してたらな、ゴミ捨て場に落ちてた
 たぶんあのほろにがって奴が落としたんだろ」
「そっか…なんにせよ助かったよ」
「ああ…」
「ゆき兄」
「あん?」
「死ぬことは恐いけど、もう俺は立ち止まらない」
「…期待してるぜ」
「帰ろう、皆で」
「そうだな、帰るか
 後始末は明日でいいだろ」
「ちゃんと来いよ」
「気が向いたら、な」

いつもそれだな、と思い
俺たちは動けない皆に肩を貸して寮に戻った
この暖かさがある限り
もう俺は死に囚われたりはしない
いつか忘れてしまえば思い出せばいい
この夜に見た、綺麗な満月を
174 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 04:16:47.95 ID:zIxlxbko
「死のイメージを乗り越えるなんてなぁ…
 さすが黄龍の器といったところかぁ…」
「…今回は終わったかと思ったけどこいつぁ幸運だぁ…」
「全部俺の計画通りだぁ…
 その調子でどんどん奴らを倒してくれよぉ…」
「全部終わった時…その時こそ俺がぁ…
 殺し合え…道化どもぉ…!」
「ククククク!アーハハハハハハ!!」

5時限目 - その名は死 -
175 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 04:17:20.06 ID:zIxlxbko
ゲームしながらうpなんかしなければよかったと後悔した

疲れたお
176 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/28(日) 08:04:31.08 ID:h3MAzCco
ゆきに乙!
さすがに寝落ちしたわwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

昇龍拳クソワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
177 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/28(日) 10:25:06.49 ID:zCZMdsDO
ゆき兄乙!
同じく寝落ちしたおwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


昇龍拳wwwwwwwwwwwwwwwwシリアスなシーンなのに昇龍拳wwwwwwwwwwwwwwww
178 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 11:34:09.73 ID:zIxlxbko
おは尿

ちなみに内容通り僕はリュウ派です
179 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/28(日) 11:56:13.46 ID:zCZMdsDO
ケンの方が昇龍拳横に伸びるから便利じゃない…


初期の方しかやってないから最近のは知らんけどww
180 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 14:02:18.45 ID:zIxlxbko
>>179
まぁぶっちゃけどっちでもいいんだけどな…

俺はダルシム使うから
181 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/28(日) 15:19:15.54 ID:zCZMdsDO
>>180
ヨガテレポートwwwwwwwwwwww


まぁ俺も春麗使うからどっちでもいい
182 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/28(日) 17:07:20.14 ID:h3MAzCco
リュウケンは普通すぎて使う気にならんな

春麗かキャミィしか使えないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
183 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 19:44:00.58 ID:zIxlxbko
しかし問題はたまゆら本人が
ケン派なのかリュウ派なのかだ
184 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/28(日) 20:45:08.80 ID:h3MAzCco
>>183
「ストU自体やったこと無い」に一票
185 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 20:57:10.57 ID:zIxlxbko
にゃんたま
http://imepita.jp/20090628/753620
186 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/28(日) 20:59:34.78 ID:zCZMdsDO
>>185
ぬこ!!!!
(*´Д`)ハァハァ


好みの柄だwwwwwwww
187 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 21:05:26.31 ID:zIxlxbko
http://imepita.jp/20090628/758930
188 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/28(日) 21:12:04.02 ID:zCZMdsDO
>>187
ナイスだ!!



くれwwwwwwww
189 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/28(日) 21:40:58.64 ID:zIxlxbko
>>188
クール宅急便とかでいいのかな?
190 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/06/28(日) 22:23:57.51 ID:zCZMdsDO
>>189
ぬこ死んじゃうからwwwwwwwwwwww
191 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/28(日) 23:18:14.01 ID:h3MAzCco
>>189
ちゃんと真空パックにするんだよ?
192 :そら :2009/06/29(月) 05:20:58.55 ID:ybVg0ADO
カラオケに行っていたら朝になっていた
193 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/29(月) 08:16:23.41 ID:.fDElTwo
目が覚めたら朝になっていた
194 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/29(月) 22:14:42.23 ID:si3Do0go
そして気づいたら夜ですね
195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/30(火) 06:59:48.01 ID:IHOVS9Ao
そして今日もまた朝がやって来るのである
196 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/30(火) 12:41:09.46 ID:eNhYJADO
後半へつづく
197 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/30(火) 19:14:50.59 ID:v8Csw8oo
後半マダー?
198 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/30(火) 20:08:11.91 ID:WIgjiYIo
やべぇ丸一日完全に眠り続けてしまったwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
199 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/06/30(火) 20:52:55.82 ID:WIgjiYIo
これはきっと俺が起きていると不都合があると感じた機関の連中が
ガス兵器を俺の部屋に投げ込んだに違いない

恐らく原稿を落とさせることが目的…
200 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/06/30(火) 21:33:17.24 ID:ANz1TbMo
火曜日にして既に言い訳を考えてるのかね?^^
201 :そら :2009/07/01(水) 02:33:50.72 ID:CDzXdEDO
ワイシャツにアイロンかけてたら火傷したよ


しげる
202 : 【末吉】 :2009/07/01(水) 07:47:59.16 ID:S7iwPQUo
2009年半分終わっちまった・・・
203 :そら :2009/07/01(水) 08:35:45.28 ID:CDzXdEDO
後二ヶ月でティーンが終わる…!?
204 :ほろ苦 :2009/07/01(水) 20:17:39.09 ID:EVW5hUSO
来月でアラサーの仲間入りだと…?
205 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/01(水) 20:38:57.92 ID:rt5AWvso
俺って既にアラサーの仲間入りしてたのか・・・?
206 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/01(水) 23:21:59.71 ID:OdOZBgDO
アラサーですがなにか…?
207 :たまゆら :2009/07/01(水) 23:47:52.12 ID:9O.PEUAo
>>206
そんなことない!そんなことないよ!!
俺の中ではヤチャマルは永遠のセブンティーン!!!!
208 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/02(木) 00:55:16.54 ID:w5hld2DO
>>207
それだと酒飲めねぇよwwwwwwwwwwwwwwww
209 :そら :2009/07/02(木) 01:16:54.94 ID:Y0K6FsDO
飲酒出来る ←重要
210 :そら :2009/07/02(木) 08:01:57.15 ID:Y0K6FsDO
朝ですね
211 : :2009/07/02(木) 20:39:26.17 ID:SBKrM9Y0
>>107
気のせいだろ
212 :そら :2009/07/03(金) 01:10:42.80 ID:xTlGvoDO
黒さん…?
213 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/03(金) 01:42:41.86 ID:TGVnPL2o
疲れました、探さないでください。って書置きを残して
逃走したい気分だぜ…!
214 :そら :2009/07/03(金) 07:49:53.65 ID:xTlGvoDO
朝ですたい
215 :「パターン青!使徒です! 」 :2009/07/03(金) 21:37:09.64 ID:cjfqcSUo
名前テスト
216 :「汚された、私の心が。加持さん、汚されちゃった」 :2009/07/03(金) 21:38:39.26 ID:xOXlK6DO
仕事終わんないよー\(^o^)/
217 :たまゆら :2009/07/03(金) 21:40:36.37 ID:TLTe.l6o
             ∧_∧
            /   川  
          /     ゚∋゚)   使徒です
          /       /
         /   ,    /
        / l  ;'   / :|
        | |  |   /|  |
        / | / ,:'"   'i |
       /  | |/     | |
     /   | |`;、    | |
      l   /| |  l   | |
     |   | | |  |   | |
     |  / | |  |   | |
     l  /  刈  l   刈
     / /    〉 〉
    / /    / / 
    | |      | | 
    |.|     |.|
    |. |      |. |
    L>    L>    
218 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/03(金) 23:19:37.12 ID:TGVnPL2o
>>217
タマエルか
219 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/04(土) 10:30:04.54 ID:.NkW1y6o
編集長すいません!今日の学園モノ無しで頼みます!!

LR同時押し(逃走)
220 :ピュアハート [('A`)]:2009/07/04(土) 10:31:53.49 ID:eNEwI2SO
リリーさん……
221 :編集長 :2009/07/04(土) 11:33:18.89 ID:2/5LJ.DO
>>219
なんだと…?


おkおk
担当召喚して缶詰めフラグだな
222 :担当 :2009/07/04(土) 12:27:02.82 ID:DWei8wDO
………。






…………zzZ
223 :編集長 :2009/07/04(土) 12:35:20.86 ID:2/5LJ.DO
>>222
寝んなwwwwwwwwwwwwwwww編集長が仕事してんのに寝んなwwwwwwwwwwww
224 :そら :2009/07/04(土) 12:36:25.88 ID:DWei8wDO
結婚式に遅刻な時ってどうしたら良いんでしょうね
225 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/04(土) 17:14:21.97 ID:DyXKBogo
笑えばいいと思うよ
226 :そら :2009/07/04(土) 17:55:50.25 ID:DWei8wDO
良い式でした
227 :黒やん@他人の携帯 :2009/07/04(土) 18:40:23.28 ID:K16L.YDO
あぁ…そういえば今日は…




おめでとうございます












あー、早く携帯復活しねーかなー
228 :そら :2009/07/04(土) 19:17:58.40 ID:DWei8wDO
早く復活すると良いですね
229 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/04(土) 19:59:51.97 ID:2/5LJ.DO
ジェバンニにお願いするしかあるまい…
230 :たまゆら :2009/07/05(日) 01:41:30.79 ID:Ob4nH9so
 ミヽ    ノノノノ  /彡
  \\(゚∈゚ ) //
    \\  / / 感動した
     \   〈
       /⌒ヽ
       /ノ\丿
      彡ヽ( /
           \\
           彡ヽ
231 :たまゆら [翼をください]:2009/07/06(月) 10:13:02.26 ID:Lbnpp.AO
こんなスレスト・・・許せない!!
232 :そら :2009/07/06(月) 10:27:11.68 ID:cI5HmcDO
えー…
233 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/06(月) 11:25:50.01 ID:63Foe7.o
よく寝た

Q,僕は何時間寝ていたでしょうか
234 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/06(月) 16:06:41.85 ID:jMRwOMDO
>>233
ホントはまだ寝てるんだろ?
235 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/06(月) 20:58:10.02 ID:ghlzcuU0
>>233
まだ、ねてるのか?
236 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/06(月) 20:59:04.32 ID:63Foe7.o
寝ぼけてるとメールの文面が意味不明になることをこの前知った
すごいよ!何書いてるかぜんぜんわかんねぇ!
237 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/06(月) 23:20:16.23 ID:jMRwOMDO
>>236
メールうp!
238 :そら :2009/07/07(火) 08:32:52.75 ID:fplSx.DO
('A`)ウボァー
239 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/07(火) 10:09:03.22 ID:jXr.eRoo
ヤチャマルが僕を無理やり起こして自分に寝ぼけメールを送ることを強要された

なんという屈辱
いつか必ずヤチャマルをひざまづ(ry
240 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/07(火) 11:04:50.02 ID:3BOlhIDO
>>239
はい死亡フラグが立ちましたー
241 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/07(火) 12:06:26.48 ID:cZHLTwDO
>>239
メールイミフすぎワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


まぁ普段からイミフだから問題ないだろ
242 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/07(火) 15:01:58.80 ID:eXZu/wAO
ところで小説は?
243 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/07(火) 19:17:14.44 ID:ersl1roo
>>242
たぶん「作者取材の為、今週は(ry」ってやつだろうwwwwwwwwww
244 :そら :2009/07/08(水) 07:14:45.86 ID:.DVUmADO
朝ですよって
245 :ピュアハート [('A`)]:2009/07/08(水) 08:45:02.47 ID:sKxIi6SO
もうやだこの季節
246 :そら :2009/07/08(水) 09:03:09.60 ID:.DVUmADO
チッリチリ!
  チッリチリ!
   お前の髪の毛チッリチリ!
  ∩∩∩∩∩∩
  ( ・x・)・x・)・x・)
 /  \ \ \
⊂ )  ノ\つ\つ\つ
 (_ ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ
  ヽ ヘ | ヘ | ヘ |
ε= ノノJノJノJ
247 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/08(水) 10:26:54.43 ID:qoIA0poo
憂鬱だな

織姫と彦星がヒートライザした昨日に比べてとても憂鬱だ
248 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/08(水) 11:23:06.89 ID:H/mF.oDO
織姫と彦星……


仕事サボりまくって父ちゃんに怒られて離ればなれにされたニートの星な夫婦の事か
249 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/08(水) 23:54:02.50 ID:B7MzcHIo
七夕は子供が一年分のお菓子を集めるイベントであってだな・・・
250 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/09(木) 07:07:26.22 ID:Ve8ad7Io
七夕は来月だろjk・・・
251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/09(木) 07:45:53.53 ID:QGnJTOso
>>250
仙台住民乙
252 :そら :2009/07/09(木) 08:20:47.01 ID:mDShOMDO
仙台は八月何ですか
253 : :2009/07/09(木) 20:10:36.98 ID:RivI3Z.0
「単位が欲しい」←友人

「ハンバーグが食べたい」←友人

「健康になりたい」←僕



七夕で書いたお願い
254 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/09(木) 20:18:57.57 ID:LxTxWIDO
>>253
なんか切実なのが混じってる件


イ`…
255 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/09(木) 21:51:19.38 ID:gRj4ewQo
そういや七夕の願い事か…
もう過ぎたけど一応

「締め切り守れなくても編集長が怒りませんように」
256 :編集長 :2009/07/09(木) 22:13:27.09 ID:LxTxWIDO
>>255
二度目はない^^
257 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/10(金) 05:18:52.02 ID:j4x1vYAO
(´・∀・`)うふふ
258 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/10(金) 07:24:32.96 ID:8uZqr.DO
もうやだ雨
お家帰りたい
259 :そら :2009/07/10(金) 10:54:23.08 ID:YjqJ.MDO
風が強い



魔弾のPVごっこするなら今の内!
260 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/10(金) 12:21:18.06 ID:.r7io2DO
>>259
うpだな^^
261 :そら :2009/07/10(金) 16:23:47.32 ID:YjqJ.MDO
嫌です面倒くさい^^
262 :そら :2009/07/11(土) 00:52:07.44 ID:rErZ6YDO
ドラクエ9
ネタバレ注意
興味ない人だけご覧ください
http://img384.imageshack.us/img384/2638/sb91.jpg

http://img382.imageshack.us/img382/304/sb92.jpg

http://img384.imageshack.us/img384/3199/sb93.jpg

http://img33.imageshack.us/img33/4895/sb94.jpg

http://img4.imageshack.us/img4/1213/sb95.jpg
263 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 01:57:13.81 ID:YjrqcbQo
>>262
敵の名前が軒並み素晴らしい
264 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/11(土) 19:03:16.78 ID:XyQ3/qwo
もはやドラクエとかやる気しねぇwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
265 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 21:45:53.98 ID:YjrqcbQo
時間ないから今日の分はしゃっしゃとうpするよー
266 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 21:48:58.02 ID:YjrqcbQo
番外編 - Supplemental Biography -

どんな物語にも語られることの無い側面が存在する。
それらをほんの少しでいい。
時を遡り、見ている者の視点を変えるだけで
狭められた世界は新たな広がりを見せるだろうから。

10/5(土)深夜

「そいつは大事なもんだ、返してもらおうか?」
「知ってるか?大人の世界ってのは弱肉強食なんだぜ?」

執行部を物理的に無力化できる唯一の武器
それがたまゆらの持つ黄龍鉄甲
死のイメージに囚われてしまったたまゆらが捨ててしまったものの
あいつは必ず内に潜む死のイメージを打ち破り目覚める
その時に必ず必要となる
だから俺はたまゆらが捨てた黄龍鉄甲を回収し、人目のつかない場所へ隠しておいたのだが…

「というわけで欲しけりゃ力づくで取り返してみろ
 ただーし、今回は俺も若干本気でいかせてもらうぜー
 大人の怖さってやつを知っておいたほうがいいみたいだからな」

自称探偵のほろにが
まさか回収前にこいつに横から取られるのは予想外だった
最も同じタイミングで回収に来たのは運がよかったが…

「ほらよ!行くぜガキンチョ!」
「あー!めんどくせぇな!!」

ほろにがが突っ込んでくる
とにかく黄龍鉄甲だけ取り戻せばコイツに用はない
なんとか取り返して、適当にあしらうか
しかし、やけに走るスピードが遅い…
よく見ると黄龍鉄甲を紐を掴んでぶら下げるように持ってるせいで
ブラブラ揺れてそれが太ももに当たって非常に走りにくいらしい

「ワー!太ももに冷たい鋼鉄の刺激が!
 とても走りにくい!まるで俺の帰りを待つボンドガールならぬビターガールが足を掴んでいるようだ!!」
「ああもう…どこまで本気かわかりゃしねぇな!!」
267 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 21:51:31.41 ID:YjrqcbQo
めんどくさいので俺も走り出してやった
姿勢を低くし、出来る限りの速度を出し寸前で身体を捻り黄龍鉄甲をもぎ取ってそのまま逃げる
大丈夫だ、問題無い、だいたい本体じゃなくて紐を掴んでる以上容易にもぎ取れる
最悪紐がちぎれるかもしれないがまぁそんぐらいいいだろう

「ガキンチョ足速いな!!」
「お前が遅いんだよ!!」

距離が狭まる、その瞬間に俺は少しだけ右にズレ
黄龍鉄甲をもぎ取り、そのまま右をすり抜けていく!
って…何!?

手を伸ばしたその瞬間、黄龍鉄甲がスルリと逃げた
しかし加速はついた足は止まらない
クソ!とりあえず1度すり抜けて距離を取ってもう1度やるしかない!

と、そこまで考えた時
後頭部に強烈な衝撃が走った

「がッ…!?」

バランスを崩しその場に無様に転倒する勢いがついていたせいで仰向けなる
すぐさま立ち上がろうとしたがそれよりも早く腹部に衝撃
間髪いれずに胸に重さを感じた

「ぐふッ…!!」
「よーしよしよし、動くなよガキンチョ〜
 動いたら踏み抜くぞ〜アバラ逝っちゃうぞ〜」

仰向けになった俺の胸にほろにがが足を置いていた

「下手なことは考えるなよ〜?
 お前が何をするよりも俺が足を踏み抜くほうが早いぜ?」
「クソッ…!この狸が…!とぼけた態度とは裏腹に随分とまぁ…!」
「それが大人って奴だ、学習しとけ」
「…全部計算づくだったわけかよ…」

ほろにがの右手には黄龍鉄甲の紐が絡み付いていた
握ってるように見せかけていただけで実際はがんじがらめにしていたらしい

「ちなみに足遅かったのも演技だぜ
 お前が突っ込んできたら冷静に右腕を上にあげりゃあこの鉄甲も上がるからな
 てーよくお前がひっかかったらスピードのせいで対応できないお前の後頭部に
 こう、鉄球みたいに回転させる要領でぶつけてやればいい」
「悪知恵が働きやがる…」
「大人の世界では悪知恵が働く奴は重宝されるんだよーん
 だいたいこのぐらい充分予測可能だぜ?
 先読みできなかった時点でオメーの負けだよ」
「…じゃあお前これは読んでたか?」
「ん…んがっ!?」
268 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/11(土) 21:51:36.35 ID:XyQ3/qwo
時間フライングぎみじゃねぇかwwwwwwwwwwww
269 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/11(土) 21:53:38.35 ID:XyQ3/qwo
ほろにー性格悪いなwwwwwwwwwwwwwwww
270 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 21:55:33.07 ID:YjrqcbQo
大の字にぶっ倒れてる俺の右手にはスタングレネードが握られていた

「おいおい、いつの間に…」
「…盗みの腕で勝ちてぇとは思わねぇがな」
「…ピンを抜いて投げても爆発までには数秒のタイムラグがあるんだぜ?
 だけどお前のアバラをヘシ折る時間なんか1秒にも満たないんだぞ
 それにスタングレネードじゃ致命傷を与えることはできねぇぜ」
「ふん、どんだけ耳を塞いでも多少は効くだろ
 アバラがヘシ折れる激痛に耐えれればそれで全く問題ない」

ほろにがの視線はスタングレネードと俺の目を交互に移動していた
頭をボリボリ掻きながら何かを考えているようだった

「それじゃ勝負だな」
「あー!もうわかったわかった!」

ほろにがの足がスッと俺の胸から退いた
ゆっくりと立ち上がる

「近頃のガキンチョはこええこええ
 目がマジなんだからなー…もうまいっちゃうよ…」

ブツブツ言いながらがんじがらめにした黄龍鉄甲の紐を解くほろにが
ほどなくして紐は手から全部解けた

「あ〜あ…痺れちゃった…ほらよ」
「おっと」

投げ渡された黄龍鉄甲をキャッチする
手をブンブン振りながらほろにがが喋ってきた
271 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 21:57:04.40 ID:YjrqcbQo
「…んーまぁ近頃のガキンチョにしては中々根性があるというか度胸があるというか馬鹿というか…
 名前聞いといてやろうか?」
「何で上から目線なんだよ」
「ふっふーん…王者はどんな時でも頭を下げるべきではないのさ」
「同感だな」
「…」
「…」
「王者と思ってるクチか…ハァ…めんどくせぇ
 それじゃ俺行くわ、なんかしらんが向こう見ずも程ほどにしとけよ」
「…余計なお世話だ、それともう1つ言いたいことがあってな」
「何だ?」
「ゆき兄だ」
「は?」
「名前」
「…おー…そうかそうか
 まぁ頑張れやガキンチョ」

そう言ってほろにがは塀を乗り越えてどこかに行ってしまった

「名前聞いた意味ねぇじゃねぇかあの野郎」

1人なった俺はそう呟いて歩き出した

「だいぶ時間取っちまったな
 頼りない戦士さんにさっさと届けてやらないとな
 やられてなけりゃいいがな…」

俺は体育館に走り出した
若干まだ頭がグラグラしてるような気がするが構ってられない
全く今度何か奢ってもらわねぇと割に会わないな
272 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 21:58:45.77 ID:YjrqcbQo
…と、このように決して本来の道にいれば見えない物語も存在するのだ
全てを語るにはとても時間が足りないがいつどんな時でもこのような見えない物語は存在している
それじゃ今度は語られる事が無かった物語ではなくて語られなかった物語を見てみようか
俗っぽく言うと…NG集とでも言うのかな?

9/23(日) 深夜

俺は今校舎の中を化学室に向かって歩いている
右手に黄龍鉄甲をはめて
あれから部屋に戻りどうしようか考えた
しげるは言った「あいつらを助けてくれ」と
そして俺にはその力がある…やってやる
それが俺に出来る精一杯のことだから
悩んでも何一つ変えることが出来ないなら…自ら動くしかない

そして俺は化学室の前についた
深呼吸して気分を落ち着かせ、ゆっくりとドアに手をかけた
ドアを開け、中に入る、月灯りに照らされた化学室
奥の机の上に、えび助が座っていた

「逃げずに来るとは…度胸があるというか、何というか
 …面白い武器だね、どこで買ったの?」
「…」
「…まぁどんな武器を持ってこようと僕には勝てないと思うけどね
 逃げずにちゃんと来た勇気を称えて僕の力について教えてあげるよ」

えび助の後ろで何か大きな影が動いた
何かがいる、とても巨大な…熊のような

「おいで、ハグリッド」

ハグリッドと呼ばれたそれがずいっと前に出てくる
月光に照らされたハグリッドという奴は髭と髪が融合してどっから髪でどっから髭なのかわからないような大男だった

「え、えび助、今度はあいつが俺たちのラヴを邪魔する奴か?」
「ああ、そうだ、だからあいつを倒すんだ」
「わ、わかった、俺頑張るぜ」
「そうそう、尻の穴に入れてるうまい棒を砕かないようにね
 砕いたら後でお仕置きだよ」
「お仕置き…か、されたいな…」
「なら行け!ハグリッド!」
「おう!」
273 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:01:05.03 ID:YjrqcbQo
すでに若干気持ち悪さを感じたもののとりあえず抵抗しないわけにはいかないだろう
突っ込んでくるハグリッド、だがとてつもなくスピードが遅かった
適当に位置をズレるとハグリッドはそのまま薬品棚にぶち当たった
薬品棚がブッ壊れて試験管やら何やらがバリンバリン割れてハグリッドのモジャモジャ頭に破片が囚われていた

「わ、割れちまった!ついでに砕けちまった!うまい棒が!」
「この馬鹿が!どんだけ脳みそ足りねぇんだウドの大木が!!
 あとで俺のうまい棒エビフライ味でヒィヒィ言わせてやる!!」
「もっと罵ってくれ!そしてヒィヒィどころか限界を見せてくれ!!」

なんなんだコイツらは
もう帰りたい
そんなことを思ってるとドアがガラリと開いた
まさかゆき兄が助けに来たのか?
そう思ってドアの方を見るとツナギ姿の逞しい男が仁王立ちしていた

「随分と面白そうな展開じゃないか、俺も混ぜてくれよ」
「…あのー…貴方は一体…」
「俺は阿部高和ってんだ
 挨拶代わりにこれを見てくれ」

そう言うと阿部という男はツナギのチャックを下ろしはじめた
中には何も着てないようでそのうちに天高くそそり立った[ピーーー]を露出させた

「…」

呆気に取られる俺の後ろで生暖かい息遣いが聞こえてきた
しかも二重奏、どうやらえび助とハグリッドのようだ

「ハハッ、後ろの2人はやる気マンマンみたいだな
 テントどころかビンビンビンラディンだぜ
 お前はどうだ?混ざるか?」
「…いえ、遠慮します」

それだけ言って俺は阿部という男の脇をすり抜けて化学室を後にした
アッー!だかオッー!だかよくわからない叫び声が聞こえたが聞かなかったことにした
もうどうでもいい、部屋帰って寝よう
274 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/11(土) 22:03:28.67 ID:XyQ3/qwo
この話だったら引いてたわwwwwwwwwwwwwwwww
275 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:05:21.11 ID:YjrqcbQo
と、このように語られなかった物語というのも存在するんだ
それじゃそろそろ番外編というわけで番外編ならではのスペシャルな物語と見てみようか…



時刻不明、場所不明、世界不明

目が覚めると周りは森だった
なぜ自分がここにいるのか全くわからなかった
よく見ると着てる服もなんだかよくわからない
唯一黄龍鉄甲だけは理解できた

「なんで俺は森なんかにいるんだ?」

考えてみるがまるで思いつかない
唐突に森の中で寝ているなんて早々あることでもない
考えていると目の前をゆき兄が横切った
なぜか黒いマントというかコートを羽織っていて若干話しかけづらかった
だけどとりあえず聞いてみた

「ゆき兄…ちょっとちょっと…」
「あん?」
「なんで俺たちこんなところにいるの?
 あとその格好何?」

ゆき兄は引きつった顔でじっと見つめてきた
しばらくそのままで停止していると腕を引っ張られ木陰に連れ込まれた

「俺にその気はないぞ!」
「馬鹿、ちげぇよ
 あのな、今回は番外編なんだよ」
「番外編?」
「そうそう、今週は番外編ってことで王道RPG風に俺たちが勇者ご一行で
 魔王を倒すっていう普通のファンタジー世界だ」
「番外編なんてやってる暇あるの?
 先週取材のために休んでるんだしさっさと本編進めないと…」
「あーいいんだよいいんだよ
 どうせ漫画家とかも楽したいために普段は出せないネタを出せる番外編書くんだから」
「そんないろんな方面から怒られるようなこと言うなよ…」
「とにかく今回は番外編なんだ」
「…わかったよ」
「俺が魔眼使いで剣と魔法も最強クラスだ
 お前が武闘家な、FFっぽく言えばモンクな
 リカもいるんだがあいつは僧侶、いわゆる白魔道士だな」
「なんか1人だけチートキャラがいるぞ」
「役得役得、それとリカは物凄くノリノリでなりきってるぞ」
「…」
「ま、ほれ、とりあえず戻るぞ
 とにかくほら郷に入りては郷に従えって言うだろ」
「わかったよ…」
276 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:06:14.47 ID:YjrqcbQo
納得するしかないので納得しきれなかったが無理やり納得することにした
戻るとリカがいた、白いローブ姿の

「あ、いた
 2人ともどこ行ってたの?」
「この辺の地図を埋めてきた」
「あ〜、オートマッピング機能とかあったら地図とか埋めないと気に入らないタイプなんだ」
「そうそう、地図の暗い部分が段々減っていったりするのは快感」
「うんうん、わかるわかる、俗に言うマップ塗り潰し症候群だね
 そんなことよりも早く洞窟に行って子供達を助けようよ!」

ぼーっとやり取りを聞いていると
ゆき兄がこそっと耳打ちしてきた

「な、こいつノリノリだろ?」
「…うん、ノリノリだね」
「何こそこそ話してるのよ!早く行かないと村の子供たちが死んじゃうかもしれない!」
「安心しろ、この手のストーリーはどれだけレベル上げしようが宿屋で休もうが
 必ずギリギリのところで救出したりするもんだ」
「そういう思い込みが取り返しのつかない事態を招くんだよ!
 例えば某ゲームでは本筋でゾンビになりそうな子供を助けるためにアイテムを取りにいくけど
 間に合わなかったら本当にゾンビになっちゃって数多のプレイヤーにトラウマを与えたんだよ!」
「でもあれは明朝までって何度も警告されてたからな
 どちらかといえばあれは時限イベントだろ
 こうレベルでも上げとこうと思って本筋ほっぽりだして雑魚を戦い続けて大変なことになるっていったら
 サガシリーズとかな…ダンターグとかとんでもないことになったりして…」
「いやでもサガシリーズは有名すぎてそれも何か違う気が」

何の話をしているのかサッパリわからない
つーか今回の番外編はこういう話を垂れ流したかっただけか?
話が進まないので自分から進めることにした

「なぁ2人とも、なんにせよ早く進めるにこしたことは無いんじゃない?」
「早く進めすぎると例えばその時でしか行えないサブイベントが消滅したりと…
 俺は気にするタチだからな」
「あとモンスター図鑑とかあったら時期限定でしか戦えないモンスターとかねぇ」
「…とにかくこれじゃ話が進まないから行こうよ!」

半ば強引に2人を押して森を進んだ
今回ずっとこんな調子で話が進むんだろうか
277 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:07:27.37 ID:YjrqcbQo
「というわけで問題の洞窟についたな」
「えっとね、ここまでの流れはとある村で子供が連れ去られ
 犯人は村で長い間恐れられていた魔物であることを突き止めた私達が
 その魔物のねぐらである洞窟に着いたって感じだよ」
「説明ありがとう
 わかったか?たまゆら?」
「…やっとわかったよ
 教えてくれないんだもん…」
「あれ、そうだっけ」

洞窟を暫く進んでいく
途中に何度かモンスターが出てきたが全部ゆき兄の1撃で屠られていく
道が二股に分かれていた

「さてどっちかねぇ…」
「とりあえず右から行ってみない?」
「宝箱を取りこぼししたくない人にとってこのような分かれ道は非常に重要だ」
「気になるなら後でまた来ればいいじゃない」
「普通はそうするんだがダンジョンによっては2度と来れなくなったりするからな
 洞窟だと落盤とかな」
「2度と来れなくなるって言うとFF[とかアレだよね」
「あれはなぁ…まさか街に入れなくなるとは…」
「ショックだったなぁ…CC団関連のイベントこなしてないと寂しくてしょうがなくて…」
「だからさぁ…そういうプレイしたこと無い人に優しくない会話はやめようよ」
「いいんだよ、どうせ番外編とか外伝とかそういう名のつくものはファンサービスのために作られたもの
 もしくは製作者のオ○ニーなんだからな」
「だからなんでそう怒られるようなことを…
 というか本編とえっらいキャラが違わない?」
「そりゃおめー番外編にまで本編のあの重苦しい空気を持ってきたくねぇし
 だいたい本編だとお前が頼りないから俺がサポート役になるし
 正直めんどくさくてしょうがない」
「そんなことを今ぶっちゃけられても…」
「俺が活躍しないしーだからーこの番外編で活躍しようと思ってー
 そのためにあえて番外編もたまゆら視点にしたんだよ
 たまゆら視点なら俺のかっこいいシーンを克明に描写できるだろ?」
「番外編の名を借りたただのオ○ニー作品じゃねぇかコレ!」
「だからさっきも言ったろ外伝とか番外編とか名がつくものは
 基本的に製作者のオ○ニーみたいなもんだって」
「2人とも何言い争ってるの!!
 というか変な言葉を連呼すな!!!!」
278 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:08:39.33 ID:YjrqcbQo
2人してリカに怒られる
杖で頭をブン殴られ昏倒しそうになった
結局分かれ道は右から行ってみることになった
しばらく進むと行き止まりだったが宝箱が置いてあった

「なんでこんなところに宝箱とかあるんだろうねぇ」
「たまゆら、それは突っ込んではいけないRPGのお約束だ」

そのままゆき兄が普通に宝箱を開けた

『ゆきにい は たからばこ を あけた!
 たからばこ には どうのつるぎ が はいっていた!』

「なんかシステムメッセージ物凄い古めかしいんですけど!!
 しかも銅の剣ってめっさ序盤やん!!」
「慎重派のプレイヤーは村の周りなどでちびちびと金を稼ぎメンバー全員分の店売り最強装備を揃えるが
 次のダンジョンで買った装備品が宝箱などから出てきてダブるのはお約束だ」
「最近のゲームは特別なことしない限りお金稼ぎの苦労とかないけどね〜」
「まぁとりあえずこれは後で売るか
 ほら元きた道バックバック」

言われて戻ろうとすると突然あたりが真っ暗になった
同時になんだかよくわからない単純な音楽が聞こえてきた

「え?何これ?」
「エンカウントに決まってるだろ」
「なんでところどことファミコンばりにローテクなの!?」

『ごぶりんがあらわれた!』
『ゆきにいのこうげき!』
『ごぶりんに8790ダメージ!』
『ごぶりんは倒れた』
『ゆきにいたちは5EXPをてにいれた』

「うぜぇぇえええ!いちいちこれ見ないといけないのかよ!!」
「…最近の奴らは根性が無いな」
「しょうがないよ、たまゆら君あんまりゲームやらないんだから」
「今のゆとり世代にネクロマンサーとかやらせてみたいわ」
「邪聖剣ネクロマンサーは難度高すぎでしょ…
 というかそもそも60文字以上でひらがなとカタカナと英数が交じり合うパスワードは嫌がらせとしか…
 マザー1とかいいぐらいじゃない?」
「ああ、そのぐらいが丁度いいのかもな
 ホーリーローリーマウンテンとかいきなり雑魚が半端なく強くなるけどな」
「あそこは逃げの一手だしねー」

ゆき兄とリカは楽しそうにゲーム談義しながら歩いている、擬音で表すとキャッキャッ!キャッキャ!
俺は強烈な疎外感を感じている
クソ、これだからオタクが群れるとウゼェんだよ…
279 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:10:21.46 ID:YjrqcbQo
先に進んでいると幾度と無く敵と遭遇したが
全てゆき兄に1撃の元に斬り捨てられていた
俺は全く戦っていないのにレベルだけが上がっていった

「あ!セーブポイントだ!」
「となると少し進むと間違い無くボス戦だな」
「そういうもんなの?」
「最近のゲームはそういうもんだ
 FC時代とかなら通常エンカウントと同じ演出でボスが出てきたりしてたから恐ろしくでしょうがなかったぜ」
「不自然な1マス通路とかは怪しいんだよね〜」
「とりあえずセーブしとくぞ
 体力は大丈夫か?」
「えーとね、ステータスは…」

ゆきにい HP4365/4378 MP666/666
リカ   HP367/367 MP120/120
たまゆら HP879/879 MP0
クリフト HP0/253 MP67/67


「何か変なの混じってるんだけど!!!
 しかも死んでるし!!
 ていうかゆき兄チートすぎだろ!!!」
「どおりでさっきからウィンドウが真っ赤で不安を煽ると思った」
「なんでところどころドラクエ風なの!?」
「まぁ、いいじゃねぇか
 とりあえずボス戦いこう、ボス戦」
「よくねぇし!クリフトどこにいるんだよ!!」
「その辺で棺桶にでも入ってるんじゃねぇの?」
「主人公の資格ねぇ!!」
「主人公に資格とか求めてもねぇ…
 経験地が配分されるRPGだったら育てたいキャラ意外あえてぶっ殺して経験地を1人つぎ込むやり方とかあるし」
「ゆき兄〜、それやったらつまんないよ〜」
「リカは万遍なく育てるタイプだからな」
「FF9で最終ダンジョンで使ってなかったクイナ入れたら
 すごい勢いでレベル上がって気持ちがよかった」
「あーあるある、あれ楽しいよな」
「だから内輪で盛り上がるな!!」
「ふむ…詳しい内容についてツッコミを入れるような奴がいないから
 もう1人仲間が欲しいな」
「なんか凄い役立たずって思われてない!?」
「もういいから早くボス倒そうよ」
280 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:11:20.96 ID:YjrqcbQo
促され微妙に険悪な雰囲気なまま奥に進む
するとなんか三つ首の犬がいた

『ケルベロスがあらわれた!!』
『ゆきにいはクリフトをつかった!』

「ちょっと待てちょっと待て!!!!」
「なんだよ」
「意味わかんねぇよ!!クリフトを使うってなんだよ!!」
「なぜか道具欄にあったんだよ」
「死体を粗末に扱うな!!」
「もうコマンド決定したんだからしょうがないだろ」

『ゆきにいはクリフトをおおきくふりあげた!』
『ケルベロスに400ダメージ!』

「殴打武器なの!?」
「普通に攻撃したほうがよっぽど強いな」
「それはゆき兄のステータスがおかしいんだよ!!!」

『ケルベロスのこうげき!!』

「たまゆら君危ない!!」

『リカはクリフトをほうりなげた!』
『ケルベロスのこうげきはクリフトにあたった!』
『クリフトの身体はバラバラに砕け散った…』

「クリフトォォォォォォオオオオオオオ!!!!!」
「まぁどうせ効きもしないザラキ野郎だしいなくなっても困りはしない」
「鬼かお前!ザラキはクリフトが悪いんじゃない!中途半端な学習AIが悪いんだ!!」
「まぁどうせ後で復活させれるさ」
「命を大事にしろぉぉぉぉお!そんなんだからゲーム脳って言われるんだぁぁ!!」
「うるせぇな!ゲームと現実の区別がつかなくなるとか言われるけどそんなわけねーだろ!
 普通の人間はちゃんとつけてるから現実で出来ないことをゲームに求めるんだよ!!
 クリフトはどうせ後でカント寺院に連れてくから大丈夫だって!!」
「どこだよ!」
「あのね、たまゆら君、カント寺院っていうのはWizシリーズに出てくる場所で
 ドラクエでいうなら教会みたいな場所」
「設定統一しろよ!!!
 ええい!もういい!ケルベロス倒す!!」
281 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:13:09.65 ID:YjrqcbQo
『たまゆらのこうげき!』
『ケルベロスに21ダメージ!』

「たまゆら弱すぎだろ」
「クリフトより弱いんだね〜」
「ゆき兄のステータスがおかしいだけだよ!!!」
「はいはい、そんじゃケリつけるか」

『ゆきにいのこうげき!!』
『ゆきにいは封神七十七式極限流星乱舞をはなった!!』
『ケルベロスに封じられし神の怒りが天より降り注ぐ!!』
『ケルベロスに9999ダメージ!!』『ケルベロスに9999ダメージ!!』
『ケルベロスに9999ダメージ!!』『ケルベロスに9999ダメージ!!』
『ケルベロスに45932ダメージ!!』
『ケルベロスは倒れた』

「ちょっと待ってくれ!!おかしいだろ!!!」
「封神七十七式極限流星乱舞は5連続の多段攻撃で
 最後の1撃だけはダメージキャップが外れるんだ」
「そういうことじゃねぇ!!
 もうなんか色々おかしいだろ!!!
 序盤にいていいキャラじゃねぇし!
 しかもシステムメッセージまでさっきまでひらがなばっかりだったのに漢字使うようになってるし!!」
「最初に面白くないと見せかけて段々面白くなると心に残るもんだ」
「いやだからそういうことじゃなくて…」
「サクサク進んだほうがいいだろ」
「うんうん、時間が無い社会人ゲーマーには最近のサクサク進むRPGのほうがウケがいいんだよね〜」
「社会人違うから俺たち!」
「いいから早く話進めようぜ
 このままじゃ魔王まで行けねぇぞ」

無理やり話を遮られ奥に進むと子供がいた
これが連れ去られた村の子供か…

「よし、帰るぞ」
「あれ?今の子供は?」
「ああ、ここにいるぞ」

どうぐ
クリフトの腕
クリフトの頭
薬草
→村の子供

「道具扱いなのかよ!!!というかクリフトォォォォオ!!!!」
「砕け散ったクリフトのパーツが道具袋に入ったようだな」
「さらっと言うなよ!!」
「まぁ子供がアイテム扱いされててもおかしくはない
 最近だってゼル伝のムジュラとかデク姫もアイテム扱いだからな」
「…もういちいち突っ込むのがめんどくさい
 もう何も言わないからさっさと戻ろう…」
282 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:16:07.50 ID:YjrqcbQo
結局その後もやっぱりモンスターはゆき兄が皆殺しにしていた
俺とリカは何もやることがなかった
ただしフィールドでいきなりリカがクリフトの頭を"使った"
パーティー全員のHPが回復した
これについてゆき兄は「ドラクエの賢者の石みたいなもんなんだな」と言っていた
村に戻ると村長がお礼を言ってきて代わりに魔の山を登る方法を教えてくれるとかなんとか
ゆき兄とリカがそのまま行こうとしたので俺はクリフトを生き返らそうと懇願した
しぶしぶとカント寺院という場所に行くことにした

「カント寺院にようこそ」
「このバラバラになった緑の奴を生き返らせたいんだけど」
「よろしい…では…」
「ああ、お約束っすね」
「ささやき!!」
「ささやき!!」
「いのり!!」
「いのり!!」
「えいしょう!!」
「えいしょう!!」
「ねんじろ!!」
「ねんじろ!!」

『クリフトは灰になった』

「クリフトォォォォォォオオオ!!!!」
「うむ、これがWiz名物の復活させようとしたらロスト現象だ」
「うんうん、育てまくったキャラでこうなると目も当てられないよね」
「なんでそんな冷静なの!?」
「馴れてるから」
「それに別に思い入れのあるキャラでもなかったし」
「ゆき兄はともかくリカちゃんまで鬼だ!!」
「番外編だからな」
「それじゃさっさと先に進もうか」

結局クリフトは永遠に消え去ることになった
それでもヘラヘラ笑ってる2人を見てなんとなく恐怖を感じた
道中また知らない人にわかりづらい会話をしていた

「いや、だから、俺はPARは容認派だぜ?
 楽しみかたなんて人それぞれなんだしチートで本来のシステムではありえない楽しみ方もできるしな」
「たまに死ぬほどチートを毛嫌いする人いるよねー」
「まぁそれも人それぞれだしな
 モンハンとかで顕著になったよな、チート派と非チート派の争いとか」
「あー、なったねー」
「俺も容認するとはいってもああいう場に改造を持ってくるのは駄目だと思うな
 チートするのもいいが個人個人で楽しむか同じようにチート派の人間とやらないとな」
「うんうん、こういう話だとゆき兄真面目だね」
「いやー普段からこの真面目さが出ていれば…」

しばらく進むと魔の山が見えてきた
紫色の雲が頂上を隠していていかにも魔って感じだ
283 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:17:39.46 ID:YjrqcbQo
「魔の山を越えたら次の街だ」
「ちょっと待ってゆき兄」
「なんだよ」
「これ番外編なんだよね?」
「うん」
「今週で終わるんだよね?」
「そのつもり」
「この調子でやってて終わるの?」
「いや、多分おわらねぇな」
「駄目だろ!!!」
「まぁいいだろ、番外編を1回で終わらす必要なんてないし
 また間でやればいいだろ」
「いやまぁ…それはそうだが…」
「あんま気にすっとハゲるぞ
 ほんじゃ行くかね」

山道をザクザクと登る
無言で登っているとリカは喋りだした

「ねぇねぇ山っていったら何を連想する?」
「マザーボム」
「FF4かぁ…」
「FF4といえばゼロムスのビックバーンが懐かしいところだな」
「ダークマター盗んだらビックバーンの頻度落ちるんだっけ?」
「オカルトだよ」
「オカルトといえばバキュラに…」
「256発か」
「そうそう」
「壊れないけどな」
「2人ともそんなブツブツいってる暇あるの?」
「1本道だしな」
「エンカウントもないみたいだしね」

普通のRPGでもゲーム上では明記されてないだけで
こうやってベラベラ喋りながら勇者ご一行は歩いてるんだろうか
しかし意外だったのはリカがとんでもなくゲーマーだということか…
やはり小さい頃から一緒にいるゆき兄の影響なんだろうか
しばらく歩くとエンカウントするようになった
もう突然真っ暗になったりゆき兄の超攻撃翌力とかアナログ的なことには全く動じなくなった
馴れって本当に怖いな

「ふむ」
「どうした?」
「基本的に山タイプのダンジョンは頂上でボス戦になることが多い」
「そうなの?」
「そうでなけりゃ出口寸前だな
 ちなみにそろそろセーブポイントがあるはず」

しばらく歩くと本当にあった
284 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:19:59.77 ID:YjrqcbQo
「…なんでわかるの?」
「ゆき兄ほどのゲーマーになると感覚でわかるらしいよ
 私はさすがにその域までは行ってないけど…」
「知らん人が見たらエスパーと思われるな…」
「ボス戦あるんだろうな
 ここまででだいぶレベルも上がってるからたまゆらとリカの2人でやってみるか?」
「大丈夫かな」
「危なくなったら助けてやるって」

というわけで次のボス戦は俺とリカの2人で挑むことにした
ちょっと進むと何か変なのがいた

「ちょっと待った!ここを通りたかったら通行料置いてきな!!」
「あ、ピュアじゃん」
「あれ、今回番外編じゃないの?」
「盗賊役なんだ」
「ちょっとイメージと合わないね…」
「意外性を狙ったのか単に思いつきで配置されたのか…
 いや、とにかく…えっと…台本…
 あー…っと、俺は泣く子も黙る盗賊団"格座党"首領のピュアハートだ!」
「角砂糖?」
「馬鹿馬鹿しいネーミングだな」
「ちょっと待って…台本と全く違うんだけど」
「アドリブアドリブ」
「あ、ピュア、この2人完全に色々無視ってるから
 勝手に進めたほうがいいよ」
「あ、うん…
 えーと、それじゃ行くぞ!!」

『ピュアがあらわれた!』
『ゆきにいはガードした!』

「じゃあ俺はガードじてるから勝手にやってくれ
 危なくなったら助けてやるよ」
「了解〜」
285 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:22:10.68 ID:YjrqcbQo
『ピュアの攻撃!!』
『たまゆらに421のダメージ!』

ゆきにい HP4378/4378 MP666/666
リカ   HP367/367 MP120/120
たまゆら HP458/879 MP0

「うお…けっこう強いぞ」
「そりゃお前防具がゴミみたいなもんだしな」
「なんで揃えてくれないんだよ!!」
「俺が強いから普通に進めたら必要ないし」
「まずその普通がおかしい!!」

『リカは村の子供をつかった!』

「ちょっと待って!!なんで持ってるの!?」
「バグだな、よくあるよくある」
「なんなのこの世界!?
 っていうか使うなよリカちゃん!!」

『掲げられた村の子供より放たれた魔翌力が天変地異を引き起こした!!』
『ピュアに7655のダメージ!』
『ピュアは倒れた』

「子供SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!」
「というかさっきからリカの奴
 キャラしか使ってないな」
「白魔道士っていうか人間使いだよね…」

丸焦げになって服がやぶれてあられもない姿のピュアに同情する
ごめんね、こいつらもう完全にチートだよ
その格好のままピュアはポツポツ喋りだした

「…その…ね…台本なら…
 俺を倒したその強さに感服して俺が仲間になるんだけどね…
 なりたくない…」
「じゃあ道具欄にいれて連れてくか」
「は?」

ああもうなんだこの世界、ていうかなんだこのゲームは
無茶苦茶すぎる登場人物の性格に問題ありすぎる
結局ピュアは道具欄に入れられてしまった
ちなみに戦闘で使うとパーティー全体が微量回復した
ゆき兄に「序盤過ぎると全くつかえねぇ効果だな」と鼻で笑われていた
こうして僕達は魔の山を越え次の街にたどり着いた

次回!
魔法国家ヤンバルクイナにたどり着いた一行に待ち受ける強大な敵とは!
ピュア様の運命は!次はこの番外編いつやるか未定だぞ!
それじゃまた会う日まで!!ジャスティスッ!
286 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:23:26.93 ID:YjrqcbQo
…という、わけで今回はこれで終わりだよ
次回からはちゃんと本来の話が語られるよ
それでも忘れないで
どんな話にも必ず語られることのない物語があったことを…

それじゃ、また、話の狭間で会おう
287 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/11(土) 22:25:19.71 ID:XyQ3/qwo
人がまるでゴミのようなストーリーですねwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

この話はこの話でたまにやってもいいかもなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
288 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:33:22.07 ID:YjrqcbQo
http://imepita.jp/20090711/811090
著者近影




ごめん1回やってみたかった!
289 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/11(土) 22:35:30.54 ID:XyQ3/qwo
この為に髪立てたのか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwww
290 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/11(土) 22:37:18.15 ID:YjrqcbQo
>>289
そうです!!
291 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/11(土) 22:46:29.72 ID:rCJCCsDO
どこからツッコミ入れていいのかわかんねぇwwwwwwwwwwwwwwww

とりあえず道具欄自重wwwwwwww
292 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/11(土) 22:50:15.10 ID:rCJCCsDO
>>288
部屋がいつもより片付いてる事に驚愕した
293 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/12(日) 21:04:16.33 ID:q7v7Hbko
ハーゲンダッツうめー
ダッツうめー
294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/12(日) 21:25:00.32 ID:VPS6Lkk0
ハーゲンダッツなんて高級品くったことねぇ!
295 :ピュアハート [道具箱]:2009/07/12(日) 22:10:04.43 ID:H5mgqISO
>>293
よこせ今すぐにだ
296 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/12(日) 23:57:25.13 ID:q7v7Hbko
ダッツは本当にリッチなアイスだと思う
297 :そら :2009/07/13(月) 10:28:35.22 ID:Oa6ynADO
眠い!
298 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/13(月) 13:01:33.99 ID:bs7phsDO
寝すぎて眠い!

昨日は5時間くらいしか起きてなかったおwwww
299 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/13(月) 13:58:43.87 ID:Ki6k8sgo
昼間っから1人鍋してる俺


寂しすぎる
300 :そら :2009/07/13(月) 14:34:13.54 ID:Oa6ynADO
睡眠時間は二時間半



何故鍋
301 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/13(月) 15:16:57.62 ID:bs7phsDO
>>299
コーラ鍋なら許す
302 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/13(月) 21:13:00.25 ID:Ki6k8sgo
>>301
ちょっとだけやってみたんだが
なんか魔女の大釜みたいになったぞ
303 :そら :2009/07/13(月) 21:30:37.53 ID:Oa6ynADO
阿呆や。ほんまの阿呆がおる
304 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/13(月) 22:27:43.33 ID:bs7phsDO
さすがゆき兄!俺たちにできない(ry


もちろん憧れたりはしないがww
305 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/13(月) 23:09:45.33 ID:Ki6k8sgo
ヤチャマルがコーラ送ってくれたら
鍋に並々注いでそれで普通に鍋やってやるよ!
306 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/14(火) 01:35:05.95 ID:PknuvcDO
めんどく(ry
307 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/14(火) 14:00:51.34 ID:2W8VmN.o
まんはったんまんはったん
308 :ピュアハート [道具]:2009/07/15(水) 08:35:19.70 ID:4oso7ESO
汗がだらだらのあさですよ
309 :そら :2009/07/15(水) 10:27:28.07 ID:lhSqlADO
焼ける
310 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/15(水) 11:15:36.22 ID:.rlB1oDO
元に戻るんですね、わかります
311 :そら :2009/07/15(水) 11:27:48.51 ID:lhSqlADO
しゃらっぷ。顔色が悪いだけです
312 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/15(水) 14:37:23.35 ID:YKEatHoo
小夜子…
君との思い出は数えるほどしかない。
君を思い出させる物は
数え切れないぐらいある。
そしてなにより、なにより君の笑顔が忘れられない。

…遅いかな

今頃になって言うのは。
俺は…
俺は…
俺は君が好きだった

君の事を大切に思っていた
313 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/15(水) 14:46:19.98 ID:lhSqlADO
―ファイア―

―ドロップ―

―ジェミニ―


―バーニング・ディバイト―


ダディ「ざよごぉぉぉぉ!!」
314 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/15(水) 22:56:39.59 ID:wrounyYo
生臭いものが食べたい
そう、生臭さを感じる食べ物…

…いや、実際全く食べたくないんだが…
でも何か俺の中にある好奇心が食べて見ろと言っている…
315 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/16(木) 18:24:53.42 ID:QwjyOIco
なんか絶望を感じるほどのシカトっぷりwwwwwwwwwwwwww
世の中おかしいですねwwwwwwwwwwwwwwww
316 :ピュアハート [('A`)]:2009/07/16(木) 18:37:20.66 ID:kb03ZsSO
>>315
ゆき兄自体から生臭さを感じたんだよ
317 :そら :2009/07/16(木) 18:56:49.31 ID:ve30r6DO
皆暇じゃないんだよ
318 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/16(木) 18:58:19.04 ID:QwjyOIco
>>316
そういえば何か生臭いって誰かいなかったか?
あ、ヤチャマルは血生臭いだからな、返り血で
319 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/16(木) 20:09:59.95 ID:GjXrg2DO
>>318
ゆき兄の返り血ですね、わかります^^
320 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/16(木) 22:01:24.02 ID:QwjyOIco
>>319
ハハハ、戯れに遊んでやろうか
来いよ!

あぶっしゅっごぱっげっごぶぅっばぶぃっべはっ(ドプシュー)
321 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/16(木) 22:34:07.99 ID:GjXrg2DO
馬鹿めwwwwwwww
322 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/16(木) 22:41:35.18 ID:QwjyOIco
>>321
今度は武器使っていい勝負にしようぜ!!

じゃあ俺は剣使うね!
323 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/16(木) 23:45:57.13 ID:GjXrg2DO
>>322
じゃあ俺はサテライトキャノン!
324 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/16(木) 23:49:03.38 ID:QwjyOIco
>>323
何を取っても勝てる気がしない…!
タイム!タイム!ウェポンチェンジ!!!

俺ダークネスカノン使う!
俺が作ったダークネスカノン!
325 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/17(金) 00:07:50.29 ID:O3y63wDO
じゃあスタープラチナに変更するお( ^ω^)
326 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/17(金) 00:13:45.40 ID:1r6im8wo
>>325
そういうものでもいいの?

じゃあ俺の武器は自動ヤチャマル追尾セクハラ兵器ね
『たまゆら』っていうんだけどね
327 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/17(金) 00:19:56.49 ID:O3y63wDO
>>326
2人まとめてフルボッコにしてやんよwwwwwwwwww
328 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/17(金) 00:23:07.00 ID:1r6im8wo
>>327
攻撃デバイス:たまゆら(驚異的再生能力を持つが攻撃翌力は大して無い)
防御デバイス:神楽オートマトン

-絶対防衛ライン-
ホワイトデバイス
ブラックデバイス

総大将:俺


さぁ突破できるものならしてみるがいい!
329 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/17(金) 01:33:09.17 ID:O3y63wDO
たまゆら→フルボッコ
神楽くん→たぶん動かないからスルー
白やん→きっと逃げてる
黒やん→ゆき兄の為に働くとは思えないがチョコ的な賄賂でおk


うん、問題ない^^
330 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/17(金) 02:04:21.29 ID:1r6im8wo
>>329
クソ!どいつもこいつも役立たずめ!!

やはり俺が直に手を下すしかないのか…!!
331 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/17(金) 02:34:51.81 ID:2GFGdNMo
        ヽ彡
    ノノノノ /ノ
   ( ゚∋゚)/ _ノ|//_ パォパォ
  /⌒\// \  __/
  ( ⌒ミ│ ∠彡/・..・/|>
  \  |// / - / /
   ( ヽ/⊂/ ̄/|二⊃
    \ ) | ̄ ̄|/
    //  / ̄/
    ヽミ  (_) (_)
332 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/17(金) 20:18:41.77 ID:TanmekEo
まぁ、ゆき兄側に居たとしてもそこまで忠誠誓ってるわけじゃないだろうしな
333 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 16:17:45.13 ID:46jN7oso
今日締め切りじゃん!
334 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/18(土) 18:08:02.01 ID:vepKz1ko
>>333
もっと早く気づけよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


間に合うよね?^^
335 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/18(土) 18:36:51.62 ID:9r4FVcDO
>>333
まだ3時間半もあるから大丈夫だよな^^
336 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/18(土) 22:24:36.71 ID:9r4FVcDO
原稿落としたか…



これは罰ゲームだな^^
337 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 22:25:34.08 ID:46jN7oso
待て待て

落としてない落としてない
338 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 22:28:51.97 ID:46jN7oso
6時限目 - 胎動 -

10/5(日)午後

目を覚ますと時計は12時を回っていた
とても気持ちがいい
昨日の戦い終わり、死のイメージすら乗り越えた俺は何だか色々と安心していた
もう何が起きても決して立ち止まらない
そんなことを考えていると部屋のドアがノックされた

「はい?」
「小川です」
「んがっぐ…!?」

まっ昼間にそちらからお出ましというのは初めてだった
予想外の来訪にかなり驚いたが追い返すわけにもいかない

「ちょ…ちょっと待ってくださいね…」

深呼吸して気持ちを落ち着ける
普通の顔で対応しなくては…
しばらく気持ちを落ち着けて…といっても数秒ぐらいだが
ゆっくりとドアを開けた
昼間というのに陰気な顔をした小川がそこにいた
さっきまでの気持ちのいい気分は一転してブルーになった

「…」
「…あの…なんの用でしょう…」
「…伝えておかなければいけないと思った」
「…何を?」
「不安定な足場を支えてる柱が崩れていく…
 だから足場を支えるために残った柱はさらに強くなる…」
「…」
「僕は君が何をしているのかはわからない
 ただ君が関わった七不思議から魔が消えていくのを感じる…
 だがそのぶん、残りの魔が増大している…」
「…小川さん…前から聞きたかったんだけど…
 あなたは一体…」
「僕は何でもない…ただ少し…他の人よりそういうものに敏感なだけさ」
「…」
「小川」
「え?」
339 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 22:30:27.51 ID:46jN7oso
廊下の先にゆき兄がいた

「こりねぇ奴だな…
 また何も知らない奴を怪しげな宗教に勧誘してやがるのか?」
「別に…ただ忠告してあげてるだけさ…
 それにゆき兄は関係ないだろ?」
「ああ、そうだな…確かに俺には関係ない
 だけど、友達が怪しい奴に絡まれてるのを見過ごすわけにはいかないな」
「…ゆき兄、君は変わったね」
「あ?」
「…それとも元に戻っているのか…
 まぁいいや、僕はもう行くよ…」
「…」

小川は行ってしまった
後には俺とゆき兄だけが残った

「あのさ、ゆき兄」
「…まぁあいつのことは気にするな
 真面目に話を聞いたところで意味がない」
「うん…」

しかし小川の話は少なくとも出鱈目というわけではない
個人的には七不思議について最も知っているのは小川なのかもしれないという考えすらあった
とはいえなんだかゆき兄は小川がそれほど好きではないようだし
ここでそれを言うのも何だろう…

「ところで昼飯は食ったのか?」
「いや、さっき起きたからね」
「俺も今からシャイン行くんだが、どうだ?」
「行く行く」

俺とゆき兄はシャインに行くことにした
すでにお昼時は過ぎていたため店内に人はまばらだった
少しするといつも通りカナさんが近づいてきた
340 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 22:34:56.79 ID:46jN7oso
「いらっしゃいませ〜
 お〜、たまゆら君いらっしゃ〜い!」
「こんちはー」
「…ほぇー」
「え…何…?」
「…うーん、本当にゆき兄君と仲いいなぁと思って…」
「…え?そう?」
「いやだってゆき兄って今までずっと1人ぼっちっていうか孤独で
 常に1人だったし、誰かと絡んでてもどこかそっけなかったりしてたのに
 たまゆら君といる時だけは素っていうかなんていうか…」
「おしゃべりはいいからさっさと席に案内してくれ」
「あ、ゆき兄恥ずかしがってるんだね〜」
「…席に案内しろ」
「はいはい、そんな怖い声出さなくても案内しますよー
 こちらにどうぞー」

席に案内されて座る
ほとんど間を置かずにゆき兄が喋りだした

「この阿部スペシャルっていうメニューは何なんだ…?」
「店長がこの前考えた料理なんだけどねぇ
 私もどんなものか知らない
 店長に聞いたら『注文された人だけのお楽しみだ』って言われちゃった」
「…たまゆら、食ってみろ」
「え…ゆき兄が食えよ…」
「…じゃんけんで決めるというのはどうだ?」
「…いいよ」

手の骨を鳴らし気合を入れる

「じゃーんけーん…」
「ぽん!」

俺チョキ、ゆき兄はグー
ただしなんだか一瞬ゆき兄の手が遅かったような

「遅だしじゃない…?」
「いや、普通普通、僅かな誤差だ」
「…納得いかない!3回勝負だ!」
「素直に頼めよ!」
「はいはい、喧嘩しなーい、それじゃ2人とも阿部スペシャルね
 少々お待ちくださーい」
「ちょ…おいカナ!!!」
「ちょ、ま!カナさん!!」

俺たちの制止も聞かずにカナは奥に引っ込んでいってしまった
341 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 22:39:38.70 ID:46jN7oso
「…」
「…ゆき兄」
「…ああいう奴だったことを忘れていた…」
「…はぁ…」

2人して落ち込んでいると
気を紛らわせようとしたのかゆき兄が話しかけてきた

「そういやぁあの3人だが
 縫わなきゃいけない傷もなんぼかはあったが全員すぐに回復するとよ」
「しげる達?」
「ああ」
「そか…ゆき兄は?」
「ああ、まぁ何箇所か弾が掠ったりしてるが大丈夫だ
 ヤチャにも一応見せておいたしな」
「そっか、ならよかった」
「…しかし透過はあの銃とかどっから手に入れたのかねぇ」
「しかし皆人間離れしすぎてるから銃ぐらいじゃ全く動じなくなったねぇ」
「同感だ」
「お待たせしましたー阿部スペシャルでーす」

カナさんの両手には高級レストランとかで出てくるような…
料理が見えないような銀色の蓋みたいなもんが乗せられた皿が2つあった
その2つは手早く俺達の前に並べられた
その威圧感にゆき兄と俺は手を出せなかった

「…開けてみろよ」
「…ゆき兄こそ」
「…」

ゆき兄が皿に顔を近づけてそっと蓋を少し浮かした
素直に応じるとは珍しい

「匂いは…何だこの匂い?」
「どんな匂い?」
「よく…わからん…悪い匂いではないが…」

俺も同じように蓋を少しだけ浮かし
隙間から匂いを嗅いでみる
…確かに悪い匂いではないが…
なんだろう…特定が困難というか混ざってるというか…

「どうする…?」
「どうするも何も頼んだんだし食うべきだと思うんだけど」
「…わかった、開けるぞ…」
「いっせーので一緒に開けよう」
「…行くぞ、いっせーの…!!」
「せっ!!!!」
342 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 22:45:47.44 ID:46jN7oso
目の前には1枚の皿に盛り付けられた多数の料理があった
ご飯、トンカツ、キャベツの千切り、八宝菜、エビフライ、焼きそば、焼きシャケ
色々と混ざり合って見栄えは悪いもののまずくはなさそうであった
しかし一体この不思議な匂いはどこから匂っているのだろう

「…意外と、普通だな…」
「ああ…見た目は悪いが…料理としては…普通だ」
「…あれ?」

ゆき兄のほうの阿部スペシャルを見るとどうも何か違うような気がする
具体的には色合いが…?いや料理全てが…

「なぁ…ゆき兄…もしかしてこれ…」
「…」
「余った食材を適当にブチ込んだだけじゃ…」
「言うな…」
「…あ、味はいいかも…」

味は悪くはなかったが
なんだか釈然としないものを感じた
食事の後シャインを出るとゆき兄が渡したい物があるというので
ゆき兄の部屋に一緒に戻った

「どこにやったっけな?」

ゆき兄が探しているときに手持ち無沙汰な俺は部屋を見渡して見た
桃花の時に1度入ったことはあるがあの時は一瞬だったからなぁ
乱雑に置かれた本とゲームで足の踏み場は無く
いろんな物が積み重なって雪崩でも起きそうな壁際
ところかまわず散らばっているコーラの缶とペットボトル
…そしてベッド周辺だけ綺麗さを保っているか、なるほど、わかりやすい

「あった」

棚から取り出してこっちに持って来たのはPSP?
そのままPSPを俺に渡してきた
343 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/18(土) 22:47:26.95 ID:vepKz1ko
阿部スペシャル適当だなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
344 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 22:48:29.16 ID:46jN7oso
「え…」
「貸してやるよ」
「え…でも俺ゲームやんないし…」
「…男は皆ゲーム好きと思ってたんだがな
 そんなだからお前は遊び心というか…茶目っ気が足りねぇんだよ」
「…」
「ほら、やってみろ
 これならアクション初心者から達人まで幅広く遊べるから
 シナリオとシステムも悪くない」
「なんてソフト?」
「ファイナルクエストSaGaクロニクルプロファイルブレス女神水滸伝アームズハンタープラネットIIDX」
「…は?」
「まぁいいからやってみろ」
「…うん」

名前が何か適当に混ぜ合わせたような感じがするが
本当に面白いんだろうか…
345 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 22:51:44.60 ID:46jN7oso
10/5(日)夜

「くそっ!この野郎!!」
「ヒートアップしてるとこ悪いんだがもう夜だぞ」
「ぬぁぁぁあああ!!」
「聞いてないな…」

ボスを倒しふと見ると窓の外が暗くなっていた
時刻は夜8時を回っていた
ゆき兄がカップ麺をズルズル食べていた

「え?何でもうこの時間なの?」
「…そりゃハマりまくったからな」
「全然気づかなかった…」
「面白いゲームは時間を忘れる
 逆に言えば時間を忘れるような…色々と解き放ってくれる物こそ面白いんだろうな」
「…?」
「…とりあえずそれ貸してやるから
 でもちゃんと飯は食えよ、俺が言うのもなんだがな」
「うん、ありがとう」

PSPを貸してもらいゆき兄の部屋から出る
自分の部屋に戻って続きをやろうと思っているとピュアと偶然出会った

「やぁ」
「あ、こんばんわ」
「それは…」
「あ、これPSP、ゆき兄から借りたんだ」
「ゲームが好きなのかい?」
「いや、あんまり興味なかったんだけど…
 これは本当に面白くて…」
「ゲームというのもあるいは形を変えた書物なのかもしれないね…」

不意にすっかり忘れていたことを思い出した
なぜこのタイミングで思い出したのかわからないがとにかく思い出した
丁度いいのでピュアに聞いてみることにした
346 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 22:52:55.70 ID:46jN7oso
「あのさ…ノスフェラトゥって単語知ってる?」
「――ルーマニア語での吸血鬼を意味する単語だ
 吸血鬼ではなく、不死者という肩書きになる事もあり
 言葉の原義は「病気を含んだ」と言う意味だ」

さすがというかなんというか
一体ピュアの頭の中にはどれほどの知識があるのだろうか

「ノスフェラトゥは
 同じ吸血鬼でも、どこかスタイリッシュで耽美なイメージがあるヴァンパイアと違い
 醜悪な外見とされる事が多い
 最も吸血鬼に耽美なイメージが付与されたのは1897年にブラム・ストーカー著作のドラキュラが流行してからであり
 それまでは吸血鬼というのは単なる蘇った死者と見るのが一般的で醜悪な外見というのはある意味正しいとも取れる」
「へぇー…そうだったんだ」
「ふむ、だいたいそんな所か」
「ありがとう」
「何、聞きたいことがあったら何でも聞いてくれればいいよ
 人に覚えた知識を語るのはとても楽しいからね」
「ははは、そっか
 じゃあまた気になることがあったら聞くよ」
「楽しみにしてる、それじゃあね」

礼を言ってピュアと別れる
ノスフェラトゥか…
意味はわかったが、奴の正体まではやっぱりわからないか…
まぁあれから見かけることもないし気にしすぎなんだろうか
とりあえず部屋に戻ってゲームの続きをやろう
ああ、でも明日は月曜か…
347 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 22:56:19.91 ID:46jN7oso
10/5(日)深夜

寝るかどうか迷ったがもう少し進めてみることにした
机に座りもたれかかるようにしてゲームを起動する
しばらくやり続け時計を見るとすでに午前1時を回っていた
さすがに寝たほうがいいだろうとPSPの電源を落とした

「さて、と」
「随分と熱中してたなぁ」
「うわぁおぉおおおおおおおお!?」

驚いて椅子から転げ落ちる
いつの間にか後ろに仮面…ノスフェラトゥがいた
俺の部屋だぞ、しかも一体いつの間に入ってきた!?

「な、なんのようだよ…」
「そうビビるなぁ…
忠告に来てやっただけだぁ」
「忠告?」
「ヒヒッ」

ノスフェラトゥは飛び上がった
いや、飛び上がったといえばいいのか何と言うか…
重力を完全に無視したように天井に"立っていた"
348 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 22:59:46.88 ID:46jN7oso
「な…?」
「お前はこれまで4人の執行部を倒したぁ
 こりゃ本当にすげぇことだぁ
 ただなぁ…」
「ただ…?」

仮面の目の部分から除く瞳が大きく開かれる

「残った奴らは格が違うんだぁ」
「格…?」
「これからお前の前に立ちはだかるのは今までとは比べ物にならないほど強大な力だぁ
 馬鹿の一つ覚えみたいに鉄甲でブン殴ってるだけじゃこの先は生き残れないぜぇ…」
「…」
「俺の忠告を妄言と取るか真実と取るかはお前の自由だぁ」
「…お前は一体何者なんだ…
 なぜ執行部のことを知っている…」
「ククク…」

スルリと、音も立てずにノスフェラトゥは天井から地面に回転して着地した
重量などを全く感じさせないその動きに背筋に冷たいものを感じた

「前も言ったが…俺はノスフェラトゥ…学園の闇に生きる者…
 そしてこの学園の未来を憂う者だぁ…」
「未来を…」
「敵は同じということさぁ…」
「…信じていいのか?」
「そりゃぁ…お前の勝手だぁ」
「…」
「それじゃぁ…また会おうぜぇ…」
「ちょっと待っ…わぷっ!」

突然部屋の中なのに突風が吹いた
反射的に目を瞑ってしまう
すぐに目を開けたがもうノスフェラトゥの姿はどこにも無かった
349 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/18(土) 23:01:48.56 ID:9r4FVcDO
ゲームのタイトルも適当だなwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
350 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:03:27.66 ID:46jN7oso
10/6(月)朝

極限近く寝不足である
寝ようと思っていたところに突然のノスフェラトゥの来訪
奴を信じていいのか信じてはいけないのか
その疑問は俺を睡眠から遠ざけるには充分すぎたのだ
半分寝ているような状態で教室に辿り着く
俺より早く登校していたゆき兄がうなだれてる俺に話しかけてきた

「酷い顔だぞ、そんなにあのゲームやり続けたのか」
「…いや…それが…」

昨日の夜のことをゆき兄に話す
一緒に桃花の時に結界を破る方法を教えてくれたのもノスフェラトゥだったということも話しておいた
最初はやる気なさそうに頭を掻きながら聞いていたゆき兄だが段々と表情が険しくなってきた
話し終えてしばらくゆき兄は沈黙した

「…」
「ゆき兄…?」
「…あ、いや…」
「…何か知ってるの?」
「知らない」
「…嘘じゃ、ないよな?」
「本当だ」
「…そう」
「…だが…いや…なんでもない」
「いいよ、どうせ知ってても何も話してくれないんだろ」

ゆき兄は視線を少し逸らした
何て言おうか考えてるような顔をしていた

「…ごめん、困らすつもりじゃなかった」
「…俺が知ってることなんてほとんど意味を成さないさ…」
「…だから別に話さなくてもいいって…」

それだけ言って俺は机に突っ伏した
ゆき兄が周りをウロウロしてるのが気配でわかったが
しばらくすると離れていった
ゆき兄、君が何を知っているのかは知らない
それでもきっといつか話してくれると信じたい…
351 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:06:38.14 ID:46jN7oso
10/6(月)昼休み

今日は一人で屋上でパンをかじっている
ゆき兄は午前中にどこかに雲隠れしてしまい
リカは女子と一緒に食べていた
そして気づいたのだがゆき兄やリカと仲良くしまくっていたせいで俺は他の仲良しグループに入れていないのだ
物凄いショックを受け結局1人で屋上で食べている

「う〜む…もっといろんな奴と仲良くしておけばよかった…」

若干後悔しながらパンを食べ終わる
ゴミを固めて捨てにいこうとすると柵に手をついて空を見ている子が目に入った
長い髪、透き通るような白い肌
前にゆき兄にコーラをぶっかけられた時にタオルを差し出してくれた子だ
話しかけようと思ったが一体なんと話しかければいいものか
とまどっていると振り向いたその子と目が合った

「あなたは…」
「あ、えとえと、この前…
 その…タオル…ありがとう」
「ああ…」

それだけ言うと女の子はまた視線を空に向けた
若干、というかかなり、滅茶苦茶きまずい
いたたまれなくなりその場を離れようとする

「…淀んだ闇に流れこむ光はより大きな流れを作り出し
 やがてそれは止められぬ流れとなり…全てを飲み込んでいく…」
「え?」
「…」

すっと、女の子は俺の横を通り過ぎ屋上から去ろうとする

「あ…」
「貴方に黄龍の加護がありますように」
「え!?ちょ、待っ…!?」

慌てて引きとめようとするものの女の子は足早に屋上から去ってしまった
352 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/18(土) 23:07:56.72 ID:9r4FVcDO
何故かノスフェラトゥの台詞を若本ボイスで再生してしまった…



シリアスにならねぇwwwwwwwwww
353 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/18(土) 23:08:38.38 ID:vepKz1ko
下手すると便所飯コースか・・・
354 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:09:59.02 ID:46jN7oso
「偶然…?いや、でも…」
「よいしょっ…っとぉ」
「え?」

スタンッ!と着地するような音が後ろから聞こえた
振り向くとゆき兄が立っていた

「え…え…?」
「ふぁ〜…よく寝た…
 ん、おお、たまゆら」
「寝てた…って?どこで?」
「貯水タンクの上でな」
「…ずっと?」
「ああ」
「なんだ…そうだったのか…」
「…チ、一雨来そうだな…」

ゆき兄がそう呟くので空を見てみたが
別に雨が降りそうな雰囲気でもない

「そうかぁ?…あれ?」

すでにゆき兄はいなくなっていた
なんだってんだもう

355 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:14:47.23 ID:46jN7oso
10/6(月)放課後

昼休みを過ぎてから徐々に天気が崩れ始めて
放課後になると窓の外は雨がザァザァと降り注いでいた
ゆき兄は天気予報でも見たのだろうか
何にせよ濡れるとめんどくさい
今日は特に用事も無いしゆき兄もあれから見ないしリカも部活にいったしさっさと帰ることにする
カバンを掴んで廊下に出ると先のほうに人だかりが出来ていた

「…何だろう」

気になったので近づいてみる

「おい、早く連れてってやれ!」
「手伝えよ!!」
「血が止まらねぇんだ!!」
「くそ!ただちょっと話してただけだろうに!!」

人だかりの中心には腕から血を流して倒れている生徒が2人いた
この光景は、前にも見たことがある気がする
そう…しげるの…時に見た…

「う…」

強烈な不快感を感じ壁によりかかる
血を流していた生徒は他の生徒に保健室に運ばれていった
残った生徒同士のひそひそ話が聞こえる

「…最近酷くねぇ?」
「一切の容赦がなくなってる感じだよな…」
「こんなんで俺らの安全を守ってるとか言われても…」
「…教師も皆怯えてるんだぜ」
「グチグチいってると俺らも…」

明らかに、前より執行部に対する皆の不満が増えている
断罪が増えているからなのか、それとも今までは見逃されていた行為も容赦なく断罪されているからなのか
それにしても、何なんだこの不安は…
不意に屋上の少女の言葉が思い出された

『淀んだ闇に流れこむ光はより大きな流れを作り出し
 やがてそれは止められぬ流れとなり全てを飲み込んでいく』
356 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:19:19.69 ID:46jN7oso
10/6(月)同時刻

「…なぜ勝手に行動した」
「勝手?校則を破る者を断罪するのが僕らの役目だろう?」
「忠告すらせずに?」
「生ぬるいんだよ、忠告で済ますから愚かな大衆はつけあがる」
「…ヒヒッ」
「どうせカスどもが転校生に淘汰されたんだ
 人員不足だろ?だったら芽から摘むほうが手間がかからなくていい」
「…」
「そうだ、残った奴らでゲームをしようぜ
 何人断罪できるかだ、一般生徒は1P、無能は教師たちは3P、転校生は10Pだ、どうだ?」
「面白いじゃないか」
「勝手にやればいい」
「ずっと反吐が出そうな正義を抱える奴らと一緒にいることを我慢してきたんだ
 これぐらいの楽しみはないとね…」
「ヒャッヒャッヒャ!
 じゃあこんなところで時間潰してるわけにはいかねぇな!」
「お前はどうするんだ?」
「興味ないな」
「…ふん」
357 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:22:17.46 ID:46jN7oso
10/6(月)同時刻

「執行部の暴走か…」
「また仕事増えちゃいましたね〜」
「どうします?今なら僕らが行けば鎮静化できますよ?」
「…好きにさせておけ」
「いいんですか?」
「執行部は本能で自らの役割を理解する
 与えられた役割をこなしているなら奴らが何をしようとも関係はない」
「しかし本当にいいのですか?
 一般生徒の不満は間違いなく高まりますよ」
「好きなだけ言わせ続けて、同時に恐怖を食らわせ続ければいい
 …そして不満を全て吐き出し恐怖で胃袋を満たし気持ち悪くなった奴らは叫びだす
 法による正義をな…」
「わかりました」
「だが気になることもある」
「…やはり転校生ですか」
「俺が執行部に与えた力を消し去るあの力…
 あれはまるで…」
「さすがの会長もあの力までは完全には出来ていませんか」
「だが役に立たないこともない」
「どちらに?」
「利用できるものは例えそれが自らに刃を向ける者であろうと利用すればいい」
「…いってらっしゃいませ」
358 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:30:11.92 ID:46jN7oso
10/6(月)同時刻

しばらく気持ちを落ち着けてから
俺はようやく不快感から脱し、寮に戻ることにした
もう校内に人の姿は見えなかった、そろそろ下校の鐘が鳴るからだ
下駄箱について靴を履き替える
その時、後ろから物凄い威圧を感じた
この感覚、前にも味わったことがあった
全身から冷たい汗が噴き出るような感覚、絶対的な死の恐怖
恐る恐るゆっくりと振り向く

「…やっぱり…お前か…!」
「…フ、死のイメージを乗り越えたとはいえ…
 やはりまだ完全に拭い切れてはいないんだな」

白やんがそこに立っていた
あの夜と変わらぬ圧倒的な恐怖を携えて

「何の用だ…まさかまた俺を…」
「それが望みならばそうしてやってもいいが?」
「ぐ…」

揺ぎ無いその瞳が相変わらずとてつもない恐怖を俺に与えてくる
まるでアリを見るようなその瞳に映る自分は命の価値すらも無いと感じられてくる

「…どうした?顔面蒼白だぞ?」
「…ク、クソッ…」
「…安心しろ、今日は貴様をどうしようなどと思っていないさ」
「え…?」
359 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:33:28.70 ID:46jN7oso
「…執行部が暴走を始めている」
「暴走?」
「貴様が執行部を倒していくことによりバランスが崩壊した
 後に残っているのはタチが悪い…そしていよいよ暴走を始めた」
「…だからさっき…」
「原因はお前にある、この現状を憂うならばお前が鎮めろ」
「…なんだと?」
「俺は言ったはずだがな、お前の中途半端な正義が犠牲を増やすと」
「お前なら…簡単に止められるだろう」
「俺は別にこんなことどうでもいいんでな」
「…じゃあなぜ俺に止めろと言ってくる!」
「見せてみろ」
「…何を?」
「お前の正義が、中途半端なのかどうかを」
「…」
「とはいえ…簡単なことだ
 お前は今まで通り執行部を倒していけばいい」
「…」
「急がないと犠牲はどんどん増えるがな…」
「…!クソ野郎!!」
「愚かな大衆は何も解決しないと理解していても
 吼えるだけだ…お前も同じか?」
「…絶対に…!!」
「ん…?」
「絶対にテメェをそこから引き摺り下ろしてやる!!!」
「…やってみろ…それじゃあな…
 幸運を祈ろうか…クックッ…」

白やんは去っていった
降り続く雨は土砂降りとなっていた
恐怖を通り越して沸いた怒りの感情
奴の思い通りに動くのは絶対にごめんだが一歩も後ろに退くものか
何人執行部が残ってるのかは知らないが1人残らず叩き潰してやる
360 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:35:42.24 ID:46jN7oso
10/6(月)夜

寮に戻り自分の部屋で考える
今後は迎え撃つんじゃなくこちらから攻撃を仕掛けるべきなのかもしれない
しかし執行部はどこの誰かもわからないし…
あえて校則を破りおびき出すしかないのか?
その時ふっと思いついた

別にそんなことしなくても7不思議を当たっていけば
奴らに辿り着けるんじゃないか?
ただ担当していないえび助や透過もいたし全員というわけではないが…
となるとやはり重要なのは小川だろうか
あいつはなぜか七不思議に詳しい
そして俺は209号室へと向かった
自ら小川に会いに行くなんて全く想像できなかったな
ドアをノックする

「…小川さん」

キィ…と音を立て、ドアが小さく開いた
しかし全ては開かず隙間から闇の中に小川の目だけが見えた
それはなんだか地獄からこちらを覗く悪魔の目のように見えた

「…君か…僕を尋ねてきたと言うことは…」
「七不思議について教えてください」
「…成る程…そうか…
 だけど…全ては語れない」
「…何でですか」
「何事にも順がある…
 だから今君に教えてあげられるのは…」

ドアの隙間から青白い腕が伸びてきた
そして指が3本立てられる
361 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:37:23.63 ID:46jN7oso
「3番目だ」
「…3番目の噂…」
「…ある生徒達が深夜に校内に忍び込み…屋上で騒いだ…
 その中の1人が不意に後ろから視線を感じる…
 振り向くとそこには一羽のカラスがいた…
 カラスは別段その生徒達を恐れることも無くただジッと見ていた…」
「…」
「翌日…その生徒達は皆死体で発見された…
 目は抉られ…肉は食いちぎられ…
 屋上は地獄絵図…そして死体に紛れ大量のカラスの羽根が落ちていた…
 これが3番目の噂…人食いカラスだ…」
「人食いカラス…」
「…参考になったかい?」
「…ああ、ありがとう」
「とても…楽しみだ…」
「え?」

ドアがパタンと閉まる
最後の一言が微妙に引っかかったが…
とりあえず部屋に戻ることにする

戻る途中に廊下でゆき兄に出会った
いや、正確には待ち伏せされていたというのが正しいというか…
俺の姿を見るとすぐに話しかけてきた
362 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:39:44.65 ID:46jN7oso
「小川と何を話していた?」
「…七不思議について聞いていた」
「何のためにだよ…」
「白やんにまた会った」
「何だと…?」
「…俺が執行部を倒していくことで残った奴らが暴走を始めたらしい
 白やんは止めてみろと言った」
「…挑発か…」
「…俺は今日の放課後、執行部の暴走というのを垣間見た
 なんにせよ白やんは執行部を止める気はない…俺が止めないと犠牲者が増える」
「…相変わらずの考え方だ」
「それに何だか…引き下がれない」
「あん?」
「白やんは言ったんだ…俺の正義が中途半端なのか見せてみろって…
 だからこれは死のイメージを乗り越えた俺に対する白やんからの挑戦状…
 なんかそんな気がする」
「そういう…勝手に意地張って何かしでかそうとする奴は嫌いじゃない」
「ああ、話が逸れた
 とりあえず今後はこちらからガンガン攻めていこうと思ったんだ
 だから執行部の居場所の手がかりになる七不思議を聞いてたんだ」
「…そうか…確かに…どちらにせよ全面的な宣戦布告をした以上は…
 そっちのほうがいいのかもな」
「少し怒られるかと思ったよ」
「そんなん今更だろ」
「そっか、それで手伝ってくれるの?」
「寝てなけりゃあな」

ゆき兄は自分の部屋の方へ戻っていってしまった
ああ、多分来てくれるなぁと思いながら俺も部屋に戻って深夜に備え準備をする
準備といっても別に何をするわけでもない
なんつーか今から戦うぞーと覚悟を決めるというか何というか…
何度も戦ってきて段々感覚が麻痺してきている気がするが
怯えて動けなくなるよりはよっぽどこっちのほうがマシか
そんなことを考えてるうちに時間は過ぎていった
363 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:42:10.14 ID:46jN7oso
10/6(月)深夜

時刻が0時を回った頃
俺は黄龍鉄甲を手からぶら下げていつもの侵入に使う場所へ向かう
ゆき兄は先に来ていた

「ハハ、やっぱり来たんじゃないか」
「…」

ゆき兄は反応せず、腕を組んで窓を見ていた

「…どうしたの?」
「アレ見ろアレ」

アレと言ってゆき兄が指差したのは窓だった
何の変哲も無い窓

「窓がどうしたの?」
「…鍵かかってるぜ」
「うぇい!?」

慌てて窓を開けようとするが確かに開かない
普段は開いてるくせにどうしてこういう時だけ…

「…さてどうする?」
「日を改めるって手もあるけど…」
「困ってるようだなガキンチョども」
「他に入れそうな場所を探すか?」
「そう都合よくあるかなぁ?」
「普段ならお前らが困ろうと全く気にしないんだが
 今回は特別にどうしてもと頭を下げるなら…」
「まぁガラスの1枚ぐらい叩き割っても俺はかまわんが」
「…それは…やめとこうよ」
「無視してんじゃねぇゴルァァァァ!!(巻き舌)」

ゆっくり後ろを振り向くと
前にシャインの倉庫で一戦やらかしたほろにががいた

「…またあんたか」
「そんな邪険にすんなよー
 前回のことは謝るからさー」
「思い出したら腹立ってきた」
「あー、待て待て待て待て
 過去にこだわるな、大事なのは今だ
 それより、お前ら校舎の中に入りたいけど入れないで困ってるんだろ?」
「…まぁそうだが」
「おいでおいで」

ほろにがが手招きしながら変なステップを踏んで校舎を回っていく
俺とゆき兄は顔を見合わせた
364 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:44:50.92 ID:46jN7oso
「…どうする?」
「何を考えてるか知らないが…
 あいつが直接執行部と関わりがあるわけじゃあないからな
 とりあえずついていってみよう」
「わかった」

ゆき兄に賛成し、ほろにがについて行くことにした
しばらく進むと非常用階段に辿り着いた

「ふんふんふふ〜ん」
「おい、オッサン」
「オッサンじゃねぇーよ!!!」
「…ここは普段使われてないから
 間違いなく鍵がかかってると思うんだが」
「普段使われていなからこそ注意がおろそかになるもんだ」

ほろにがはポケットから何か取り出した
どうみても、鍵

「じゃじゃじゃーん」
「盗ったのか?」
「借・り・た・だ・け
 ほれ、開いたぞ」
「…ありがとう」

校舎内に入って屋上を目指す
俺の後ろにゆき兄とほろにががついて歩いてきている
ん?

「何でお前がついてくるんだよ!!!」
「いや鍵開けてやったからな」
「答えになってねぇよ!!」
「いやー何お前らについていけばこの学園に隠された謎がちっとはわかりそうで…」

ゆき兄と顔を見合わせる
さすがにコイツの執行部とか黄龍鉄甲の力とかそういうのは見せるのはマズい
考えてることは同じだったようで一呼吸置いたあと俺とゆき兄は猛ダッシュした

「あ!!待てガキンチョども!!」
「たまゆら、あとで落ち合うぞ」
「おっけー!」
365 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:47:53.61 ID:46jN7oso
それぞれ別々に走り出す
ほろにがはワンテンポ遅れて追いかけてきたが
どちらを追うか迷ったらしくて足がもつれて転んだみたいだった
後ろからドガバガシャーンゴロンゴロンズドン!!とバイオレンスな音が響いた

「消火器きた!消火器あたった!
 これマジ消火器!普通に消火器だから!!」

騒いでるほろにがを完全にシカトして一応遠回りして屋上に向かった
屋上に続くドアの前でゆき兄を待つことにした
待ってる最中に思ったがやっぱり夜の校舎というのは恐怖を感じる
1人でいるとそれはなおさらだ
ほろにがはこんな場所を何日もたった1人で調べてるのか…
とぼけた態度ではあるが、芯は強いのかな
そんなことを考えながら待っているとゆき兄が階段を上がってきた

「んじゃ行くか」
「うん」

俺とゆき兄は屋上のドアを開ける
月と星の光で屋上は比較的明るい雰囲気で少し安堵した
しかし誰もいない
人食いカラス…いや、普通のカラス、それどころか鳥すらいない

「誰もいない…」
「…いや、気をつけろ
 何か…いる…」

ゆき兄に言われ黄龍鉄甲を構えて辺りを見回す
しかしどこにも人の姿は見えない
張り詰めた空気が辺りを支配する
366 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:52:14.63 ID:46jN7oso
「カァー!」
「何ッ!?」

いつの間にかカラスが足元にいた
こいつが人食いカラス…?

「カァー!カァー!カァー!」

突然辺り一面からカラスの鳴き声が響く
物凄い音量、一体何匹のカラスが集まればここまでの大合唱になるんだ!?

「たまゆら…上見てみろ…」
「上…?なッ…!?」

頭上には黒く蠢く巨大な塊があった
気がつくと月の光などは全て遮られて辺りは闇に落ちていた
闇には無数のカラスの瞳が浮かび上がり
その全てがこちらを見ていた

「な…なにコレ…」
「不吉にも程があるなコリャ…」
「カァッ!!」
「まずい!!たまゆら伏せろ!!!!」

その刹那まるで戦場で飛び交う銃撃のように
高速で何かが周囲を縦横無尽に貫く
けたたましい翼の音と鳴き声
身体に走る肉を裂くような激痛
急所を隠すように本能的にうずくまってもその地獄は止むことがなかった

「ん、なろぉっ…!
 前と同じだ!たまゆら耳塞いどけ!!!」
「…!!わかった!!!」
「くらいな、カラスども!!」

ゆき兄に言われた通り耳を塞ぐ
またアレを使うのか…というか前回使ったのにまだ持ってたんだ
そして次の瞬間、背中に物凄い衝撃を感じた
同時に闇が散り散りになり月の光が差し込んだ

「ギャア!ギャアギャア!!」

それでもしばらくカラスのけたたましい鳴き声は止まなかったが
時間が立つと屋上は来たときと同じ平穏を取り戻した

「いっつ…大丈夫か?」
「なんとか…」

服がところどころ切り裂かれ
肌が露出していた部分は大小の多数の切り傷ができていた
動くたびにズキズキと痛むがなんとか大丈夫なようだった
367 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:54:42.14 ID:46jN7oso
「やってくれやがったな…おいコラ出てきやがれ!!」

ゆき兄が叫ぶ
返事は無かったが、後ろでガンと鉄を叩くような音がした
振り向くと貯水タンクの上
屋上で最も高い場所に誰かが立っていた
その背に月を背負って

「…10ポイントが僕のところに飛び込んでくるとは運がいいな」

そう言い放った男はところどころ破れたボロボロの黒いマントのようなものを羽織っていた
長い黒髪の黒はマントの黒と混ざり合い
白い月に照らされたその男は絶対的な黒

「聞くまでもないだろうけど…執行部か?」
「ああ…黒やん、だ」
「…随分とやってくれだが
 お前の手下は皆散り散りだぞ」
「カラスとは…今でこそ迷惑な鳥とされているが
 古来より世界各地で神の使い、あるいは神そのものとされている」
「あん?」
「…なぜ示し合わせたかのように世界各地でカラスが神聖視されていたのかはわからない
 ただ人は惹きつけられていたんだろう、カラスの持つその神聖さに…」
「何だお前、カラスフェチか?」
「…そしてカラスはとても頭がよくてね
 敵が自らの命を脅かすような攻撃手段を持っていないと気づいた場合…」

周囲からバサバサと音が聞こえてきた
サーッと、幕が降りるように段々とまた月の光が覆い隠されていく

「気をつけろよ、カラスの爪は…鋭いんだ」
「カァー!カァー!!」

段々とさっきと同じように辺りが闇に包まれだす
普通に理解できる、これは物凄くまずい状況だ

「ど、どうする!?」
「一旦退却するのがいいかもしれないな…」
「賛成!!」

言うが早いかドアに向かって走り出す

「…言ったろ?カラスは頭がいい…と
 お前らの浅知恵なんか…お見通しだよ」
「なッ!?」

ブワッ!と闇が大きく横を突っ切り
唯一のドアが闇に包み込まれた
368 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/18(土) 23:59:34.96 ID:46jN7oso
「…くそっ…!」
「終わりかな、これで10ポイント…」
「さっきから10ポイントって何のこと…!!」
「鴉突…」

闇が一気に爆散する
まるで高速回転する闇のドームに閉じ込められたような錯覚
これが全て銃弾のように行き交うとしたらどれだけの破壊力が生み出されるんだ?
必死に脱出する方法を考えるがどうしても思いつかない
数え切れないほどのカラスを殲滅するほどの力は俺たちには無い
ゆき兄と背中合わせになり牽制しながら突破口を探すが
どうしても見つからない
そしてその焦りが一滴の汗を雫にして床に落とした
それがまるで合図だったかのように一気に周りの闇が爆ぜた

「がッ…!!!」
「ゴフッ…!?」

さっきと違い切り裂かれるような痛みだけではない
塊を叩きつけられたような打撃に似た衝撃
同時に何かが突き刺さるような激痛
その全てが絶え間なく襲い掛かる
顔を上げることすらできずただ急所を抑えてうずくまるしかなく
攻撃が止むのを祈るしかなかった

「…弱いな、が、恥じるなよ
 戦いには相性ってもんがあるんだよ
 たまたま俺とお前の相性が抜群だっただけのことさ
 最もお前にとっては最悪ということかもしれないが」

もうその言葉すらも霞みがかかったようにぼやけて聞こえなかった
ただこの地獄が止むのを待つしかなかった

「たまゆらぁ…!!」
「!?」

名前を呼ばれて腕の隙間からゆき兄のほうを見ると
ゆき兄は立っていた
とても立てるような状況じゃあないのに
いや、その通りだ、時折身体に衝撃を受けて足がふらついてる
同時に足元には血だまりが出来ている
369 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/19(日) 00:04:56.26 ID:29nvv.DO
黒やんktkr!!
370 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/19(日) 00:18:58.29 ID:dBXQtmgo
「何やってんだよ!伏せろよ!」
「伏せててもジワジワなぶり殺しにされるのを待つだけじゃねぇか…!」
「でも…!」
「お前言ったろうが!!
 これは白やんからの挑戦状なんだって!!意味わかんねぇ意地張ってたろうが!!」
「あ…」
「いいか…!!
 正義とか悪だとか何だとか俺には知ったこっちゃねぇよ!!
 戦う理由に正義だ悪だブラ下げてくる奴にはヘドが出る!!
 どんだけ奇麗事並べたって戦いなんて所詮は意地の張り合いだ!!
 意地張ってここに来たってんなら死んでも自分の張った意地から逃げ出すんじゃねぇ!!!!!」
「…ゆき兄…!!」

俺はゆっくりと、立ち上がろうとする
腹部に衝撃

「グフッ…!ぐぐ…!」

奥歯を噛み締め、痛みを噛み潰す
そうだ、俺がここにいるのは白やんを引きずり下ろしてやるという意地だ
絶対に負けてたまるか…
激痛をこらえながらなんとか立ち上がる
371 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/19(日) 00:20:07.16 ID:dBXQtmgo
「そうだ、どんな強大な力に襲われても可能性はある
 それでもうずくまってるなんとかなるのを待ってるだけじゃ何とかなる可能性は0に等しいんだ…」
「ハァハァ…!だけど…どうすればいいんだ…?」

こうしてるうちにも身体はドンドン傷つけられている
もう長くは持ちそうにない

「立ち上がることが出来たら
 あとは信じてればいいさ」
「何を?」

その時
カンッとコンクリートを何か硬いものが跳ねるような音がした
次の瞬間だった
辺りを眩いばかりの閃光と爆音が包んだ
その光と音に追い立てられるように意識が吹っ飛んでいく
意識が途切れる寸前に誰かの高笑いのようなものが聞こえた

「ハッハッハ!俺に感謝しろよガキンチョどもぉ!!」



6時限目 - 胎動 -
372 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/19(日) 00:22:36.22 ID:tof.6OIo
ゆきに乙!

本気モードの黒やんwwktk
373 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/19(日) 00:23:41.91 ID:dBXQtmgo
やはりうpは疲れるお
374 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/19(日) 00:28:44.51 ID:tof.6OIo
>>373
今度会った時はコーラ奢ってやんよ
375 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/19(日) 00:33:46.31 ID:29nvv.DO
ゆき兄乙!

黒やん1話に収まりきらない強さ把握wwwwwwww
376 :そら :2009/07/19(日) 11:23:48.22 ID:NxonaIDO
・友人が10人以下。さらにはほとんどが音信不通。
・アドレス帳登録数が50件以下。使用頻度は身内が8割以上。
・一日の平均メール数が5通以下
・ほぼ毎日なんらかの形で1時間以上2chする。但しオナネタ探しを除く
・誕生日イベントによくからみ、一人ホームパーティーを計画する
・昼食や夕食を友人とたまには食べたいがそんな相手はいない。
・1日に2回以上死にたくなる
・月に1回は自分の殻にひきこもる
・年収1000万円以上の職でなければ働いたら負けと思っている
・非生物の友人、恋人、嫁が70人以上居る

全部当てはまらなかった奴は非リア充じゃあねえから非リア充自慢や非リア充風自慢するのはやめようね^^
リア充が非リア充自慢してもつまらないだろwwwwwwwwwwwwwwwwww





何この無理ゲー
377 :ピュアハート [('A`)]:2009/07/19(日) 13:48:53.05 ID:aMLDvcSO
>>376
全該当余裕でした
378 :そら :2009/07/19(日) 13:50:36.58 ID:NxonaIDO
>>377
嘘だ!!
379 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/19(日) 15:52:09.17 ID:3.DL4Bco
>>377
何この人気持ち悪い
380 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/19(日) 16:16:31.18 ID:29nvv.DO
え…?

俺リア充だったの…?
381 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/19(日) 16:23:33.93 ID:29nvv.DO
>>377
当てはまるのにリア充だと…?
382 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/20(月) 10:09:03.28 ID:CB6Lwf60
・友人が10人以下。さらにはほとんどが音信不通。
 田舎ゆえの知り合いは多いが遊んでくれるやつは2人のみ。

・アドレス帳登録数が50件以下。使用頻度は身内が8割以上。
 携帯を変えてないので100件以上登録されているが、必要なのは5件程度

・一日の平均メール数が5通以下
 今月まだメルマガ以外のメールがない・・・だと・・・?

・ほぼ毎日なんらかの形で1時間以上2chする。但しオナネタ探しを除く
 余裕すぐるww

・誕生日イベントによくからみ、一人ホームパーティーを計画する
 実家ゆえの無条件イベントはふくまれるのか?

・昼食や夕食を友人とたまには食べたいがそんな相手はいない。
 ・・・

・1日に2回以上死にたくなる
 こんな僕でも生きてていいですか。

・月に1回は自分の殻にひきこもる
 一人で暗い部屋にいるとどうもねぇww

・年収1000万円以上の職でなければ働いたら負けと思っている
 日当で生きてますが、負け組みですか?

・非生物の友人、恋人、嫁が70人以上居る
 HDにいっぱいww

項目 10
該当  7

全部当てはまったわけじゃないから、俺ってリア充?wwwwww



orz=3 <スレストを回避〜〜
383 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/20(月) 19:11:23.24 ID:ruQwZ86o
そうか俺って滅茶苦茶リア充だったんだな…
384 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/21(火) 08:58:13.46 ID:OHA8P.DO
眠いお…

なぜ休み明けはいつも寝不足なのか
385 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/07/21(火) 12:14:19.62 ID:qA3nx6DO
ダメだ…やっぱり休み明けはダメだ…
386 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/22(水) 03:33:38.54 ID:8lVzNnko
あー死ぬかと思った
本気で死ぬかと思った

なんだこの大雨
387 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/22(水) 10:38:47.12 ID:eJ3nZsDO
>>386
テレビ見たら凄い事になってたな
388 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/24(金) 08:24:31.59 ID:/yz16UDO
スレストしすぎワロタwwwwwwwwwwww
389 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/24(金) 08:56:34.33 ID:/yz16UDO
そろそろ1ヶ月か…


黒やんの携帯はいつ復活するのか…(´ω`)
390 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/24(金) 09:36:33.81 ID:Q1bMjjko
締め切りに追われる俺

鮫(ヤチャマル)
俺(ウサギ)

捕まると皮を剥がれる
391 :たまゆら :2009/07/24(金) 15:40:12.37 ID:zA2Wd.AO
>>390
その括弧のくくり方だと・・・

まるで鮫よりヤチャのほうが獰猛というか野生に見えるようなwwwwww
まったくwwwwww間違えちゃだめじゃないwwwwww


本当は夜叉丸(鮫)だろ?そうだろ?これが正しいんだろ?That's right?






え?
392 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガロドン萌え同好会会長]:2009/07/24(金) 15:47:09.63 ID:/yz16UDO
×夜叉丸(鮫)
○夜叉丸(メガロドン)




こっちの方がなんかカッコよくね?
393 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/24(金) 21:46:23.39 ID:Q1bMjjko
>>391
間違いなんだがあながち間違いでも無いような…

>>392
あんなに口がデカいんですか!
394 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 12:26:42.34 ID:/XsNqaEo
ふぅ、今週も締め切り守れたっす
編集長に皮を剥がれなくて済んだっす
395 :編集長 :2009/07/25(土) 15:32:45.32 ID:mxTIDkDO
うむ、ご苦労
396 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/25(土) 15:34:25.63 ID:mxTIDkDO
飲みながらビデオ消化してるんだが…


イースかわいいよイース
397 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/25(土) 15:37:15.14 ID:mxTIDkDO
そしてイースもといキュアパッションを見てると…




フルフル装備で狩りに出かけたくなるから困る
398 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/25(土) 21:54:42.04 ID:jYRywKQo
もうすぐ時間だよ!
399 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/25(土) 22:08:54.63 ID:mxTIDkDO
wwktk
400 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 22:44:13.77 ID:/XsNqaEo
すいません締め切り守ったけど
入稿忘れて寝てました
401 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/25(土) 22:49:00.31 ID:mxTIDkDO
おまwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


ちゃんと1時間くらい前に起きて待ってたのに
402 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 22:55:34.32 ID:/XsNqaEo
7時限目 - 爆炎浄化 -

10/6(月)深夜

黒やんとの戦いで追い詰められ
あと少しでやられると思った
しかし突然の大爆発で意識が吹っ飛んだ
…どうやらまだ俺は生きているみたいだ
朦朧とした意識の中で数人の声が聞こえていた

「お前ら一体何に首を突っ込んでる?」
「関係ない」
「ま、ま、落ち着け、ほらせんべい食うか?」
「勝手に食うな」
「お、日本酒…」
「死にたいのか?」
「…とにかくただカラスに襲われただけだ」
「この前からお前の周りは怪我が多すぎる」
「…関係ない」
「なら治療もしてやらないさ」
「…なぁガキンチョ
 もう全部話したほうがいいとは思うぜ」
「お前が聞きたいだけだろ」
「ま、それもあるが…」
「…ゆき兄が話したくないならこっちに聞くさ」

誰かが頬をぺちぺちと叩くのがわかった
薄っすらと目を開くととても眩しい光が飛び込んできた

「目を開けろ」

ライトのようなものを当てられる
目がチカチカする
ふっと光が止んだ後まばたきを数回繰り返してやっと視界がクリアになってきた

「正常だ」
「…そうか」

見回すと保健室だった
室内は暗く、机の上に置いてあるキャンドルの柔らかい光が辺りを照らしていた

「…俺は…」

状況が把握できずにぼーっとしていると
ベッド脇の椅子に座っていたほろにがが話しかけてきた
403 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 22:57:08.61 ID:/XsNqaEo
「屋上から物凄い数のカラスの鳴き声が聞こえて
 言ってみたらビックリするぐらいのカラス地獄
 しかもなんかおめーらの声がするじゃないかだから咄嗟に閃光弾を投げてやったんだよ」
「…閃光弾?」
「フラッシュ・バンって言うんだぜ
 音と光と衝撃で相手を気絶させる強烈な奴だ」
「あんたに助けられるなんてな…」
「おいおい、折角助けてやったのにその言い草はなかろう
 ぶっ倒れたお前ら2人をここまで運んできてこのおっかないネーチャン呼んできたのは俺だぞ」
「…まぁ…その…ありがとう…」
「うむうむ」

話がひと段落ついたのを見計らったのか今度はヤチャマルが近づいてきた
近づいてきたと思ったら次の瞬間俺の寝ているベッドにドガァッ!と踵落としが入った
ベッドが今にも壊れるんじゃないかというほど軋んでいた

「質問だ、正直に答えろよ」
「は、はい…?」
「何に首を突っ込んでいる?」
「…それは」

言ったところで信じてもらえるのだろうか
そもそも言っていいのだろうか
そっとゆき兄のほうを見ると壁によりかかって遠くを見ていた
これは好きにしろっていう意味か…

「答えろ」

短い言葉の裏に潜む威圧感
言い逃れはできなさそうだ、話すしかない…
結局俺はヤチャマルとほろにがに全部を話した
意外にも2人とも終始真面目な顔で話を聞いてくれた

「…なるほどな、執行部がそんな能力を持っているとはな」
「学園に隠された謎ってのはそういうことか…
 っか〜、こりゃでけぇヤマだぜ」
「2人とも…信じてくれるの?」
「まぁな」
「頭ガチガチの奴らと一緒にすんなよ
 俺の脳は柔軟だからな」

なんだか安心した
絶対に信じてくれるわけがないと思っていたから
404 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 22:59:57.99 ID:/XsNqaEo
「それで、たまゆらとゆき兄は執行部と戦ってるわけだな」
「…そうです」
「で、今日は負けたと」
「…」
「つーかおめーら実際俺がいかなかったら本当にヤバかったんだぜ」
「そうみたい…つッ!?」

突然全身にビキンと激痛を感じた
反射的にうずくまる

「全身に切り傷と擦り傷だ
 しかし重要なのは断続的に衝撃を受け続けたせいで内臓にまでダメージがいっている」
「…くそっ…」
「治るまで無理はするな」
「だけど…このままじゃ他の生徒が巻き添えを…」
「たまゆら」

壁際にうずくまっていたゆき兄が話しかけてくる

「何?」
「今行って勝てるのか?」
「それは…」
「確かに俺たちは奴の能力について知らなかった分遅れを取った
 しかし奴の能力がわかった今また行ったとしてあの能力に対抗できるか?」
「…」
「今行っても死にに行くようなもんだ」
「じゃあどうすればいいんだよ!!」
「…」

沈黙が保健室を包んだ
短いようで長い沈黙、重苦しい空気
そしてゆき兄がその沈黙を打ち破るように言葉を発した

「…命を賭ける覚悟があるなら」
「え?」
「…その覚悟があるなら…方法はある」
「…どんな方法?」
「鍵はヤチャマルだ」

全員の視線がヤチャマルに集まる
ヤチャマルは頬をかきながら何か考えてるような顔をしている
405 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:00:53.14 ID:/XsNqaEo
「気断命脈…か、よく知ってたな」
「昔酔っ払った時に話してくれたろ」
「じゃあよく覚えてたな」
「まぁな」
「その気断命脈って…?」
「俺もよくは知らんが…ヤチャマル教えてくれ」
「…要するに自らの潜在能力を開花させる修行だが…
 さっきゆき兄も言ったが命を賭けないと…」
「つーかさ、一言いいかい?」

黙って話を聞いていたほろにがが口を挟んできた
いつもどおりの若干イラッとする口調で

「前から思ってたんだけどさぁ
 命を賭けるとかどうとかこうとかガキンチョのくせに背負いすぎだろ」
「駄目な大人の典型みたいな奴にそんなことを言われるとはな」
「…おーおー言ってくれるねぇ」
「お前ら喧嘩するなら外に放り出すぞ」
「…はいはい」

微妙に険悪な雰囲気になりつつ
保健室はまた沈黙に包まれた

「…ヤチャマル」
「ん?」
「気断命脈…やり方を教えてください」
「…本気か?」
「このままじゃ勝てない…黒やんに勝てないんだ!!」
「たとえ気断命脈の修行を乗り越えたとしても
 黒やんに勝てるかどうかはわからないぞ?」
「それでも可能性があるなら…」
「…」

ヤチャマルは椅子に腰掛け何かを考え出した
ほろにがはいつの間にかタバコを吸っていた
ゆき兄は窓の外をぼうっと見つめていた
しばらくしてヤチャマルが口を開いた

「…どちらにせよ今は無理だ」
「何でですか!?」
「お前の身体はお前が思っている以上に酷い状態だ
 その状態で気断命脈を行うのは…」
「だけど時間がない!」
「囀るな!!!」
「えっ…」
406 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:02:09.93 ID:/XsNqaEo
大声を張り上げたのはほろにがだった
全員が驚いてほろにがのほうを見た

「本当にイライラするガキンチョだな全くよぉ
 何自分で何もかも背負ってる気になってやがんだよ
 ガキはガキらしく目上の人の言うこと聞いてりゃいいんだよ」
「…」
「いいか、限界を越える修行と限界を突き破る修行は違ぇんだよ
 命を賭ける修行と命を捨てる修行ってのは違ぇんだよ」

そこでヤチャマルが言った

「たまゆら、1週間だけ我慢しろ
 1週間普通の学校生活を送るだけでいい」
「1週間…」
「うん、1週間
 準備もあるしな、これは絶対に譲れない」
「…」

ヤチャマルに従うしかない
今のままでは黒やんには絶対に勝てない
勝てる可能性があるとしたらこの修行だけ
と、なるとヤチャマルに逆らうべきではない
だけど1週間…今の執行部の状態を考えると…

「…わかりました」
「…」

ヤチャマルの手が頭に置かれた

「え?」
「1週間後の放課後、もう1度ここに来い」
「…」
「よし、それじゃ今日は帰れ」
「ネーチャンネーチャン、俺ここに泊まってもいいか」
「死にたいのか?」
「…じょ、冗談っす…今日もどこか適当な場所で夜を明かすのか…」
「ゆき兄、帰ろう」
「…いや、先に帰っててくれ」
「えぇ?」

先に帰れとどうしてもゆき兄が言い張るので
結局俺は1人で帰ることにした
1週間の制約を受けたのが気に食わなかったのだろうか…
ただ怒ってる感じでもなかったが…考えてても仕方ないか
とにかく身体がダルい…今日は帰ったら即寝だろう…
407 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:03:32.63 ID:/XsNqaEo
10/6(月)同時刻

「帰ってきたよ」
「仕留め損なったみたいだね」
「引き際を弁えずに戦い続けて負けるような奴とは違う」
「要するにアクシデントに弱い臆病者ってことだろ?」
「死にたいのか?」
「フフフフン…いいよ?やってみろよ?」
「よせ」
「止めるな」
「お前らが本気でやりあうと部屋が壊れる」
「チッ…」
「ところで転校生はまだ挑んでくると思うか?」
「圧倒的な力の差を理解してなければな」
「…なら、とりあえずの目的は達成したか」
「仕留めてはいないが…」
「まぁ不穏な動きをするなら次こそ仕留めればいいだろ」
「随分甘いな」
「正直あいつにばかりかまってもいられないだろ?」
「…なるほどな」
408 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:04:38.45 ID:/XsNqaEo
10/7(火)朝

目が覚める、だけどベッドから動けない
身体もとてつもなくダルかった
全身の痛みはヤチャマルの治療のおかげでだいぶ和らいでいるが
それを遥かに上回る倦怠感
それでもなんとかベッドから這い出して学校に向かう
途中何度も倒れそうになって休んだほうがよかったのかと思いながらも教室に辿り着いた
遅刻ギリギリで入ると教室の中にゆき兄はいなかった
酷い顔をしていたのか心配そうな顔をしたリカが近づいてきた

「たまゆら君…酷い顔だけど…大丈夫?」
「なんとか…」
「昨日…戦ったの?」
「…負けたけどね」
「え…」

なんて言ったらいいかわからない
そんな顔でリカはしばらく俯いた
だから俺が先に言葉を発した

「…次は負けない」

その一言だけを
それを聞いたリカもたった一言だけ返してきた

「…無茶だけは…しないでね…?」
「うん…ありがとう…」


それから俺はヤチャマルに言われた通りに
一週間、ただひたすら普通に学園生活を送った
だけど身体のだるさは日が立つごとに増していき
ゆき兄の姿も見ることがなかった
姿を見せないことは多いが1週間も見せないとなるとさすがに心配になるが
恐ろしいほどの身体のダルさが行動を阻害していた
さらにこの1週間で一般生徒の生徒会への不満は極限まで高まり
それに比例するように執行部の断罪は増えていた
その断罪はもはや生徒だけに留まらず教師にまで及ぶようになり
誰もが恐怖に怯え逃げ出すことも出来ない
学園全体が疑心暗鬼の渦に囚われまさに最悪の状態とも言えた
俺にはそれを打ち破る力があるのに何も出来ないことが悔しかった
自らの無力さを嘆き、異常な程の身体のダルさに苛まされ
かなり最悪の1週間だったが俺は何とかそれを乗り切った
いよいよヤチャマルとの約束の放課後が迫ってきたが
身体のダルさは取れずにいた…
409 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:05:41.83 ID:/XsNqaEo
10/13(月)放課後

保健室のドアを開けるとヤチャマルが椅子に座って本を読んでいた
俺の姿を見ると本を机の上に置いて話しかけてきた

「よく1週間我慢したな」
「…何も出来ないってのがどんなに惨めかよくわかった…」
「それで、命を賭ける覚悟は?」
「あるさ…だけど」
「だけど?」
「なんだか身体がとてつもなくダルいんだ…
 こんなんで大丈夫なのかな?」
「それは大丈夫
 それと黄龍鉄甲持ってきたか?」
「言われたとおり…」
「ほんじゃこっち来い」

身体のダルさの何が大丈夫なのかよくわからないが
ヤチャマルは保健室から出て行くの連いていく
そのまま体育館に入った
体育館には誰もいなかった
俺が入るとヤチャマルはドアに鍵をかけた

「始める前にまぁ言っとくが…
 気断命脈は失敗すれば死ぬような本当に危険極まりない修行でな…
 ただ立場上失敗したらそのまま[ピーーー]とも言えないから
 まぁ…本当に危ないと思ったら途中で強制的に終わらせるぞ」
「その場合どうなるの?」
「わからん…いや、死ぬことはないと思うが」
「…まぁどちらにせよやらないと始まらない」
「よし、じゃあこっちに来い」

ヤチャマルは俺の頭に手を当てた

「…気脈"全開放"」

その瞬間、身体のダルさは全て吹っ飛んだ
同時に全身から沸き立つような衝動が溢れ出した
恐ろしい程の爽快感、同時にじっとしていられないほどの躍動
410 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:06:51.02 ID:/XsNqaEo
「すげぇ…!何だこれ…!?」
「手短に説明するぞ
 実は一週間前からすでに仕込みは始まってたんだ」
「え?」
「あの夜、お前の気脈を意図的に狭めたんだ
 その結果、恐らくこの一週間身体がとんでもなくダルかったはずだ」
「うん、滅茶苦茶ダルかった」
「そして今それを一気に開放した
 塞き止められて分の気が爆発的に全身に行き渡っている
 今たまゆらの身体は普段は出せない力もいとも簡単に出せるだろう」
「うんうん」
「だが逆を言えば身体を自ら痛めつけてるのと同じだ
 長時間その状態が続けば確実に死に至る」
「…」
「いいか、死に至る前に潜在能力を引き出すんだ
 それが気断命脈…命を賭けた修行だ」
「わかった」
「制限時間は…30分というところかな
 よし、じゃあ始めるか、来い」
「え?」
「ん…ああ、戦うんだよ」
「誰と?」
「1人しかいないだろ?」

さも当たり前のように言い放つヤチャマルにあっけに取られる
状況が把握できないままにぼーっとしてしまう

「時間がないっていうのに…
 ええい、じゃあこっちから行くぞ!」
「え?え!?」

突っ込んでくるヤチャマルを見る
目がマジだった
拳が振りぬかれる、ぼうっとしていたせいで避けれない
ゴガッと、頭蓋骨に音が響いた気がした
衝撃、浮翌遊感、そして…

「ぐごげがががががッペガッブッ!!!??」

ゴム鞠のように体育館をバウンドしながら壁際まで吹っ飛ばされる
何が起こったか全くわからずただ呆然としていた
411 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:08:09.32 ID:/XsNqaEo
「立て」
「な…な?」
「仕方ないな、やりやすいようにしてやるか」

ヤチャマルが懐から鬼の面を取り出した
そしてそれを顔につけた

「久しぶりだなぁ…これつけるの
 さぁ来い…本気でな」
「う…」

その言葉は冗談なんかではない
本気でやらないとこっちがやられると本能でわからせるのには充分だった
黄龍鉄甲を構える

「うおおおおおおおおおお!!」

叫び声と同時にヤチャマルに走りよる
いつもより数倍身体が動く
今ならどんな動きでも出来る気がする
左右に不規則に動きながらヤチャマルに接近する
今の俺なら普段以上のリーチを出せる…!!
ある程度近づいたところで床を蹴った
弾丸のように宙を貫き、1撃!!

「ふん」
「…え?」

片手で、止められる
そのまま床に頭から叩きつけられる

「ガグァッ!??」

ベキベキパキバキンと音が聞こえる
あわてて飛び上がり距離を取る

「どうした?その程度か?」
「くそぉっ!!」

どれだけ考えて隙を作ろうとしても
全て避けられ受け止められ何度も何度も壁や床に叩きつけられる
痛みは殆ど感じないそれどころかやられればやられるほど身体がヒートアップしていくのがわかる
だけど攻撃が全くあたらない
そしてそれがイライラさせる
412 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:09:07.68 ID:/XsNqaEo
「…くそぉ…!くそぉ…!!」
「20分立ったぞ、どうした」
「ちくしょおおおおおおおおおおお!!!!」

涙目になりながら、なんとか拳を当てようとする
どんなに不規則に動いて接近してもヤチャマルは隙を作らない
そしてカウンターを受ける

「ガッ…」
「…まだわからないのか」
「何だって…?」
「これは修行だ、相手を倒すことが目的ではない
 そこをよく考えろ」
「はぁ…はぁ…」

修行、相手を倒すことが目的ではない…
じゃあどうしろってんだ…

「…お前は黄龍鉄甲に使われているだけだ」
「使われてる…?」
「武器に使われてる奴が…自らの武器を使いこなす奴には勝てない」

俺が黄龍鉄甲に使われている…?
そんなことは…無い…はず…
いや…本当にそうなのか…?
…そうだ、確かに、俺は使われているのかもしれない
俺は今までどうにかして敵に黄龍鉄甲で1撃を食らわすことだけを考えていた…
間違っては無い…だけど…俺は勝つことは考えていなかったんじゃ…
…そうだ、黄龍鉄甲に頼るんじゃないんだ…
黄龍鉄甲も…勝ちへの手段として考えるんだ…

「はぁー…はぁー…」

静寂、自分の鼓動の音がやけに大きく聞こえる
同時に全身を巡る血液の音すらも聞こえるような気がする
ヤチャマルは動かない
ただ鬼の面を介してこちらをじっと見つめている
一歩、俺は前へ踏み出した
そして右腕を構えた
そのまま目を瞑る、右腕に流れる何かが黄龍鉄甲に注ぎ込まれていくのを感じる
どのぐらいの時間、それを感じていたのかわからない
永遠とも言えるし、一瞬とも言えるような時間を確かに感じていた
あれだけ熱かった身体が今では落ち着いている
不意に、声が聞こえた
頭に直接響くような、あの声
413 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:10:34.68 ID:/XsNqaEo
『更なる高みを望むか』

ああ、もっともっとだ
誰一人、犠牲にしない力が欲しい

『お前が望み、我の声に耳を傾けるなら
 比類なき破邪の拳は自ずとお前に答えるだろう』

力を、俺に力を
この学園に蔓延る暗雲を全てブチ破る力を

『ならば聞け、新たなる力の名は…』

どうした!?おい!
おい!!答えろ!!!

「おい!!おい!!たまゆら!!!!」
「あ…あれ?」

目を開けると、目の前にヤチャマルがいた
俺は、いつの間にか床に倒れていた
慌てて立ち上がろうとするものの身体に力が入らずに床に倒れてしまった

「あ…あれ…何で…」
「…もう限界だったんだ、だから強制的に気脈を絶った」
「そんな…時間は!?」
「30分は過ぎたよ…」
「そんな!後少しなんだ…なんかそんな気がするんだ…!!
 もう少し…もう少しでいいから!!」
「無理だ…もう身体が限界だ、これ以上続けると本当に命が…」
「くっ…そぉぉ…!!ちくしょう!!ちくしょお!!!」

涙が零れ落ちた
身体は思うように動かずに
しばらくヤチャマルに身体の気の流れを正す治療とかいうのを行われ
寮に送り届けられた
結局、修行は失敗した…
だけど無駄ではなかったはずだ
俺はあの時、何かを掴みかけた…
414 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:12:08.09 ID:/XsNqaEo
10/14(火)朝

「ぐ…」

目が覚めると、身体はマトモに動くようになっていた
昨日の夜に布団の中で何度もまたあの声を聞こうと頑張った
だけど聞こえる事は無く結局いつの間にか眠りに落ちてしまった
落ち込みながらも半ば惰性的に学校へと向かった
学校の雰囲気は最低最悪
誰もが人と関わろうとせず休み時間であろうと学校全体は静寂を保っていた
こんなものが正しいはずがない
周囲を支配する雰囲気はその場にいる人間全てに影響を及ぼす
リカもどうにも俺に話しかけずらそうだった
ゆき兄は相変わらず登校してきていない
静かな教室で俺はある覚悟を決めていた
それが愚か過ぎる選択であったとしても、もう放っておくことが出来なかった…
415 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:13:11.92 ID:/XsNqaEo
10/14(火)昼休み

昼休みでも学校は静かだった
誰もが1人で机に座り淡々と食事を取るその光景はまるで監獄のようだった
それを見ていられなくて俺は屋上に上がってきた
すると、見た顔がいた

「…お前か」
「…高橋…」
「…随分とまぁ焦燥しきった顔をして、ククッ
 前に忠告してやったろう?それに逆らってまで執行部を倒し続けた
 そしてこの状態だ、満足か?」
「黙れ…」
「何一つ救えてない、お前の仲間は傷つき倒れていく
 そして状況はどんどん悪化している」
「黙れ!!!」

思わず、俺は高橋を殴りつけた
だけど、止められた
俺の拳を握ったまま高橋は喋り続けた

「…お前はそれでもまだ執行部を倒し続けるというのか?」
「倒す…!倒さなきゃ…いけない…!!」
「…」
「確かに…今の状況は最悪かもしれない…!
 それでも救って…他の誰かが犠牲になっても…その人も救って…
 ずっとずっと…救っていけば…きっといつか…!!」
「奇麗事を抜かすなッ!!!!」

バシンッ!と拳が跳ね除けられ
腹部に高橋の鋭い蹴りが打ち込まれた

「ガッ…ハッ…!!」
「…お前のように理想論や奇麗事を心から信じていた奴がいた…
 だけどそいつは…どうにもならない現実を突きつけられた…
 何もかも救うなんてことは決して出来ないと…どんなに頑張っても…どんなに自分を犠牲にしても…
 泣きながら、絶望に打ちのめされ、誰かが犠牲になると知っていても…
 それしか方法が無いと、それが最善だと、誰よりも知ってしまった…あいつの気持ちがお前にわかるか…!!」
「…」
「だから俺はお前がムカつくんだ…
 どうしてもイライラする…!!」
「…それが誰かは知らない…
 だけど…俺がその人と同じ道を歩むとは限らない…!」
「あいつとお前じゃ背負ってる者の重さが違うんだよ…!!」
「それは…お前が決めることじゃないッ!!」
「何ッ!?がっ…!?」

今度は、俺の拳が高橋の顔を打ち据えた
顔を抑え、少し後ろに下がる高橋
指の隙間から除く目には、怒りと、悲しみが垣間見えた
416 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:14:36.58 ID:/XsNqaEo
「ハァ…ハァ…いつかお前にもわかる…
 このまま執行部と敵対を続けていけば…そのうち…わかる…」
「…どういう意味だ」
「…」

すっと、前に出てきた高橋
刹那、顔面に衝撃が走った

「カハッ…!?」

不意の衝撃で後ろに転倒する

「…もう1度言う…いつかお前は…自分のしていた後悔し…
 自らを呪う時が…必ず…来る…」

その言葉を残して高橋が屋上から去っていくのがわかった
仰向けになった俺の視界に写るのはいつも変わらない晴天…
突き抜けるような、混じり気の無い青
…惑わされることなく、この空のようなただひたすら…純粋でいられたなら…
どんなに…楽だったんだろうか…
しばらくそのまま、空を見ていた
どれぐらいそうしていたのかわからないが
不意に視界に、何かが現れた
目線を写すと、あの子がいた…

「鼻血、出てるよ」
「…またこういう展開か」

ハンカチを受け取り
鼻血を拭く

「…」
「…前から思ってたけど君は…不思議だね」
「…?」
「何か…初めて会った時からなんていうか…他とは違うような感じだったんだけど…
 それに今だって…よく知らない相手とは話すの怖いでしょ?」
「…そうだね、よく知らない人と話すのは怖い…」
「じゃあ何で…」
「…鼻血を流して倒れてる人にハンカチを渡してあげるのは怖くないから」
「…そう…だね…」
417 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:16:14.41 ID:/XsNqaEo
傷つき、倒れてる人を、放っておけない、そういうことか
そうだ、だから俺は…戦うんだ…
先に何があろうとも…
スッと、女の子は立ち上がった

「…ハンカチ、いいの?」
「いいよ別に」

そこで俺は思い切って聞いてみた

「名前、なんていうの?」
「…きのこ」
「…覚えた」
「そう」

ドアがパタンと閉められた
ふぅ、と一息ついて俺はもうしばらく屋上で過ごすことにした
辺りを見回す、約1週間前、俺はここで戦って歯が立たなかった
あの大量のカラスを操る力
1匹2匹倒したところでどうすることも出来ないほどの数
あれを打ち破るにはどうすればいい?
あの時俺たちが助かったのはほろにが来たから…
確か…閃光弾…フラッシュバンを投げたっていってたな
それでカラスを無力化し、回復するまでに黒やんを倒せば…
しかしそう簡単に行くとも思えないが、今のところ方法はこれしか…
418 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:17:08.12 ID:/XsNqaEo
10/14(火)夜

夜になり、俺は校舎周辺をうろついていた
とりあえずほろにがに会おうとしているのだが
どうでもいいときに現れるくせに会いたいときには姿を見せない
一体どこにいるんだか…
校舎の裏手のゴミ捨て場を見てみる
ほろにがはいないが足がゴミの隙間から出ていた
…足?

近づいて見ると、確かに足だった
なんだか微妙にイビキのような音が聞こえる
そっとその足を掴んで思いっきり引っ張ってみた

「おわぁあああああああお!!」

ゴミの山が崩壊し中から頭に黒く変色したバナナの皮を乗せたほろにがが現れた

「な、な、何だ何だ!?」
「あんた…一体なんてとこで寝てんだよ…」
「お?おー?お前か…
 いや、最近寒くなってきたからよ…」
「まぁそんなことはどうでもいいんですけど…
 ちょっとお願いがあって」
「お願いだぁ?」
「フラッシュバン、ください」
「おーおー、フラッシュバンね、えーとそれじゃコレ…ってやるかボケェ!!!」
「…ノリツッコミ」

よっこらしょといいながらゴミの山に座りなおすほろにが
ちなみにまだ頭の上にバナナの皮が乗っている
419 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:18:01.45 ID:/XsNqaEo
「なんでまたいきなりそんなこと言い出すんだよ」
「執行部を倒すから」
「…あー、そういえば…なんだっけ…き…きざんめいにゃく?あの修行成功したのか?」
「気断命脈…成功は…してないんすけど」
「それでなんで行こうとしてんだよ、おかしいだろ
 前も言ったがよ、命を賭けるのと命を捨てるのは全然ちげぇんだぞ」
「…もう嫌だ」
「あん?」
「俺のせいで今学園は最悪だ…
 もう引き下がれないから…」
「…放っとけよ、1番大事なのはテメェの命だろ」
「じゃああんたは雨に打たれてる赤ん坊を見たら見捨てて逃げるのか?」
「質問の意味がよくわかんねぇが…見捨てるわけにはいかねぇだろ…」
「同じさ…放っておけないんだ…」
「…」
「ついて来いとか言わないけど
 あのカラスの大群を打ち破るにはこれしか方法が思いつかないんだ…
 お願い…します…」

考えるようにほろにがは顎に手を当てていた
しばらくすると溜め息を吐きながらポケットから何かを取り出した

「…ほら、持ってけ」
「…ありがとう、ございます」
「お前が死のうと俺には関係ないしな
 まぁ…なんつーか餞別代りにくれてやるよ」
「…倒せたら…ご飯でも持ってきてあげる」
「…そうか、まぁ…グッドラック」
「ありがとう」

ほろにがからもらったフラッシュバン
このたった1個のフラッシュバンが、俺の運命を握っている
時刻はそろそろ0時を回る
本当に愚かな選択をしたのかもしれない
だけどもう、俺は…
420 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:19:12.32 ID:/XsNqaEo
10/14(火)深夜

屋上へと上がる
静かだけど、感じる、誰かの纏わりつくような視線を
呼吸を整え、俺は叫んだ

「出て来い!!」

しばらくすると、カツンッと音がした
音のした方向を見ると、黒やんが立っていた

「…驚いた、まさかまだ力の差を理解していないなんて」
「…」
「大人しくしていれば…死ぬことも無かったというのに…
 …だけど来たものはしょうがない…今度は逃がさない…」

俺は黄龍鉄甲を構える
カラスの大群にこれが役に立つことはないがフラッシュバンを持っていることを悟らすわけにはいかない

「…今度こそ、餌になれ…」

気がつくと、黒やんの頭上に、あの時のような黒い蠢く巨大な塊があった
そして塊が爆散するように四方八方に散った
あの時と同じように、カラスの大群の俺の周りを高速で回転を始める
まだだ、ドームのようになった時にフラッシュバンを使うんだ
自分も意識を失ってしまうかもしれないが
そんなのなったときはなったときだ

ピシッと、頬を何かが掠る、血が流れるのを感じる
今更多少の傷なんてどうでもいい
俺はただ動かず、その場に立ち尽くした
頬から滴る血が地面にピチョンと音を立てた時
ついに光が消えた、カラスが俺の周囲を完全に取り囲んだ証拠だった
421 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:20:12.43 ID:/XsNqaEo
「よし…!」

懐からフラッシュバンを取り出す、そのときだった
手にバシィンと衝撃が走り、フラッシュバンが地面に落ち、カラカラと転がった

「しまった…!」

慌てて拾おうとするが身体に連続的に四方八方から衝撃が走った

「ガハッ…!!」

視界の端にあるフラッシュバンは黒いカラスの塊の中に消えていった
その時、黒やんの声が響いた

「残念だったな
 まぁ何かしらしてくるだろうとは僕もカラスもわかってたからね
 しかし…あんなものでなんとかなると思って来るとは…舐められたにも程がある…
 [ピーーー]よ」

ドームが、狭まりだす
しかもその速度は速い
あの回転に巻き込まれたら本当にやられる…!
だけどどこにも逃げ場は無い

「どうだ?死の恐怖ってのは?
 …そういえばお前会長の死のイメージ乗り越えたんだっけな…
 だけどこれはイメージじゃない、現実だぜ?」
「それでも…」
「あん?」
「俺は自分の張って意地から逃げ出さない!!
 最後の最後まで足掻いてやる!!」

黄龍鉄甲を構える
全く意味がなさないとしても突破できる可能性を信じる

「本当に馬鹿だな…
 お前と話すのすら馬鹿らしくなってきたよ…!!
 僕のカラスたちのエサになれ!!」

一気に周囲が狭まってくる
それでも俺はただ一点を見つめそこに可能性を信じた
その瞬間、声が響いた
422 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:21:29.17 ID:/XsNqaEo
「俺を忘れんじゃねぇよ
 ダブル・クロス!!!」
「えっ…!?」

その声は、間違いなく、ゆき兄の声だった
その声こそが可能性
狭まったカラスたちの回転に巻き込まれる寸前で突然がカラスたちがバラバラに散った
月の光が、俺を照らした
そしてゆき兄の姿が見えた

「馬鹿な…カラスたちのコントロールが…!?」
「効果は1時間が限界だが…それだけお前を倒すのには充分だ」
「貴様…何を…!?」
「ゆき兄…」
「おいおい、たまゆら、また俺に助けられるっていういつものパターンだな」
「どうして…ていうか…その身体…」

ゆき兄はなぜか上半身裸だった
その身体は傷だらけで身体のあちこちに包帯を巻いていた
包帯を巻かずに露出してる傷も沢山あった
見てるこっちが痛くなる様なその姿は少なからず黒やんにも畏れを抱かせていた

「…まぁこの身体のことは置いておけ
 ここに来たのはほろにがが教えてくれたのさ」
「え?ほろにがが?」
「ああ」
「どうなろうが知ったこっちゃないって言ってたのに…」
「放っとけないって言ってたぜ?」
「え?」
「理由聞いたら雨に打たれてる赤ん坊をお前を見捨てるのか?って言われたぜ」
「…は、ははっ…なんだ、あいつ…」
「さて、と」

俺とゆき兄は黒やんのほうを向いた

「さぁどうする?
 これでお前は無力化したも同然だぜ?」
「ク、ククッ…クックック…」
「…何がおかしい?」
「つまり…本気を出さなきゃいけないってわけか…」
「なんだと…」
「お前らが今まで倒した奴らの能力…
 周囲を闇に落とす…触れた爆発物に変化させる…音で人を操る…弾丸を無限に作り出す…
 どいつもこいつも遠まわりな能力だ…」
「何を言って…」
「戦闘に置いて勝利を得るなら必要な能力は実にシンプル…
 相手の攻撃が届かない場所から一方的に攻撃できる能力だ…」
「…たまゆら、気をつけろよ」
「見せてやる…最も単純で…最強の力を!!」
423 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:23:14.81 ID:/XsNqaEo
周囲の空気がビリビリと振動する
黒やんの背中から、何かが突き出た

「ぐっ…!がぁっ…!!」
「あれは…何だ…!?」

突き出たものが辺りに羽根を撒き散らしながら
月光の下にその全貌を現した

「翼…!?」

そして、黒やんが空へと、飛んだ

「なッ!?」

次の瞬間、空からナイフのように鋭く尖った羽根が放たれた
咄嗟に飛びのいてそれを避ける俺とゆき兄
羽根は、コンクリートの地面に突き刺さる

「…これが最も単純で最強の能力」

空から黒やんの声が響く
月光に照らし出されるそれはまるで天使のような、悪魔

「鋼鉄の羽根がもたらす飛翔能力はお前たちの攻撃が届かない場所へ導く最強の防御
 同時に無限に放たれる羽根は一方的に攻撃できる最強の攻撃だ」
「これじゃ…手が出せない…」
「この姿にさせたことは褒めてやろう
 だがここまでだ、お前らに一方的に僕に嬲り殺しにされるんだよ!!」

また羽根が放たれた
だがスピードは比較的遅めで肉眼で捉えることが出来る
そして軌道も直線なので避けること自体は難しくはない!!

「そう、避けることは簡単だ…単発ならば」
「え?」

目の前に、羽根があった

「うわっ!?」

慌ててそれも避ける
だが避けた先にまた羽根がある
それを繰り返し、右足に羽根が突き刺さった

「がっ…!?」

バランスを崩し転倒する
黒やんはその隙を見逃さなかった
自分の遥か上空から空を斬る不気味な音が聞こえる
424 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:24:15.12 ID:/XsNqaEo
「たまゆらぁっ!」

飛び込んできたゆき兄が俺を抱えて飛びのく
さっきまで自分の倒れていた場所に羽根が突き刺さるのが見えた
地面を転がり身体が傷つきながらも止まったと同時に立ち上がる
悠々と空に浮かんでいる黒やんは不適な笑みを浮かべていた

「戦闘では低所より高所のほうが圧倒的に有利
 そして僕はどんな敵であろうと高所にいられる…
 さらに相手が近接攻撃しか出来ないのなら僕は無敵だ」
「くっ…そぉ…!!」
「諦めろ、僕には勝てない」
「諦めない!!!絶対にだ!!」
「ならこれを避けてみせろ、ただし逃げ場はないぞ!!」

大量の羽根、一斉に放たれた
空を埋め尽くすほどの、無数の死を呼ぶ黒い羽根

「たまゆらぁぁぁぁ!!!!!!!」

ゆき兄の叫び声が聞こえた
目の前に羽根に向かって黄龍鉄甲を振る
何本かの羽根が弾かれるのを感じた
だけど、その直後、全身に突き刺さる羽根…
途端に襲う、耐え難い激痛

「がっ…ぐっ…はぁー…はぁー…!!!」

足が震え、膝をつきそうになるのを耐える
顔を上げ、黒やんを見据える

「…なぜ倒れない…!?」
「たまゆら!!」
「貴様は動くな!!」
「うおっ…くそっ…!!」
「倒れないならもう1度やればいい!!」

また俺に無数の羽根が放たれた
避けることなど出来ない
だから俺は、必死に弾けるだけの羽根を弾く
それでも、全てが弾けるわけではない

「ぐぅぅぅぅぅう!!!」

ふらりと意識が遠くなり、前に倒れそうになる
だが足を踏み出し、必死に耐える

「倒れない…だと…!?
 馬鹿な…!」
425 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:25:26.69 ID:/XsNqaEo
黒やんが驚愕しているのがわかった
自分でもびっくりだ、ここまで踏みとどまれるなんて
あの時と同じだ、自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる
同時に全身を巡る血液の音まで聞こえる気がする

「はぁー…はぁー…」

俺は黄龍鉄甲を構えた
右腕から何かが流れ込むのがわかる
俺は静かに目を閉じる
あの声が、聞こえた

『更なる高みを望むか』

俺は望む、誰も犠牲にしない力を…!
誰も犠牲にならない未来を切り開ける力を…!!!

『お前が望み、我の声に耳を傾けるなら
 比類なき破邪の拳は自ずとお前に答えるだろう』

何度でも、何度でも俺は望む…!
そして…何度でもお前の声に耳を澄ます…!!

『ならば聞け、新たなる力の名は――…』

新たなる…力の名は…!!!



「ならば…最大の技で息の根を止めてやる…!!
 絶技…!黒桜花!!」
「たまゆら!!避けろォォォォォオ!!」

俺はその声でそっと目を開けた

「避けない、打ち破る…!!!」
「ふん、血迷ったか、打ち破ることなど不可能だ」

空高く舞った無数の羽根が、まるで桜の花を思わせる
そしてその全てが一点集中し、俺に向かってきた
426 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:27:03.30 ID:/XsNqaEo
「新たなる力…その名は…」
「消えろ!!!」
「焼き尽くせ!!スザァァァァァァァァク!!!!」

その瞬間、視界全てが燃える炎のように赤く染まった
黄龍鉄甲から、赤い光が溢れ出し…砕けた
いや、砕けたのではない、分裂した
表面部分が2つに別れて本体から離れ
その2つは俺の背中へとついた
右手に残った部分は軽くなり形状も鋭角が多くなっていた
俺に接近してくる多数の羽根が燃えていく

「なんだと…!?
 僕の羽根が…焼き尽くされた…!?」
「あいつ…!」

辺りに、爆風にも似た熱を持った風が吹き荒れた
その風が去った後、俺の視界は元に戻っていた

「はぁ…はぁ…!!」
「たまゆら…その姿は…」
「…朱雀の力、天を舞う朱き聖獣」

俺の背中には赤く光を放つ、翼があった
その姿に誰よりも驚いていたのは、黒やんだった

「…何だ…こいつ…一体何を…」
「はぁ…終わりだ…!黒やん!!」

俺は右腕を構え足に力を込めた
ただ一点、黒やんを見つめて

「…うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

踏み出すと同時に、俺は高く、高く、飛んだ
ただ1点を目指し、赤い炎のような尾を引きながら天空へと放たれるその姿
それは、神話で語られる、朱雀
427 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:28:14.10 ID:/XsNqaEo
「馬鹿な!この高度まで!?クソッ!!」

黒やんが翼を閉じて自分の身を守ろうとする
その翼に向かって渾身の力で右腕を振りぬいた
ガガガガガッ!!と力と力がぶつかり合って互いが互いを弾き飛ばそうとしている感覚
同時に、何かが焼けるような匂いがした

「…馬鹿な…僕の翼が…燃えていく?」
「朱雀の炎は全てを焼き尽くし浄化する…!!」
「ぐ…ぐ…ぐぞぉ…僕がこんな…奴に…!!!!」

ボシュウッ!と音がした
黒やんの翼の大半が焼き尽くされ
ついにその形状を留めることが出来なくなり、月夜に大量の羽根をばら撒き…散った

「…そんな…負けるのか…この…僕が…!!!」
「終わりだ!!」
「ク…ソがぁあああああああああああ!!!!!!」
「邪なる力を焼き尽くせ!!!朱雀爆炎大焔帝!!!!!!」

翼の赤い光が周囲に爆散した
そして右腕が赤く光り輝いた
炎を纏い全力で振りぬかれた拳は黒やんを遥か地面をへと叩き落とした

「ゴワッがッギャァァァァァァア!!
アガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

断末魔の叫びを上げながらグラウンドへと高速で落下し
叩きつけられた地面にビシリと亀裂が走った
間違いなく…あれはもう動けないだろう…

「はぁ…はぁ…終わった…」

ゆっくりと高度が下がっていく俺は屋上に着地した
同時に黄龍鉄甲が元の姿に戻った
後ろでゆき兄が心配にこちらを見ていた
428 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:29:17.97 ID:/XsNqaEo
「…ま、なんとか大丈夫みてぇだな」
「うん…」
「…」
「…」
「やったな」
「ああ!…あれ…」
「おっと」

身体から力が抜けて倒れそうになる
だけどゆき兄がなんとか支える

「だいぶ疲労したみたいだな」
「どうも…そうみたい…」
「そうだ、あいつ大丈夫かな」

ゆき兄が屋上の端から下のグラウンドを覗いた
俺もなんとか下を覗く

「大丈夫みたいだな
 見ろよ、騒いでるぜ」
「煙が…抜けていってる…」
「ああ…勝ったんだな…」
429 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:30:15.74 ID:/XsNqaEo
だが次の瞬間、周囲が揺れた
一瞬地震かと思ったが違う、これは桃花のときにも起こった

「…ォォォオオオオオオオオオ!!!!!!!」

思わず耳を塞いだ、同じだ、あの時と
人間の恐怖などという概念を遥かに超越した先のような感覚を感じさせるこの唸り声
これは一体…何なんだ…!?
しばらく耳を塞いでいると、やがて声は聞こえなくなった

「…ゆき兄…今のは…」
「……」
「ゆき兄?」
「…あ…悪い、何でもない…」
「…?」
「それより黒やんは…あれ?」
「ん?どうしたの?」
「いないぞ…」
「はぁ!?」

言われて下を覗き込むと確かにさっきまでいた場所に黒やんはいなかった
まさかあの状態でまだ動けたのか…?

「…どうしよう」
「まぁ…しょうがない…あいつの中の黒い煙は出たしもう能力は使えないだろう
 とりあえず…今日は帰ろう…」
「そうだね…あ、でもごめん」
「あん?」
「今日は…ちょっと…限界…みたぃ…」

意識が、プツッと電源を切ったテレビみたいに途切れるのを感じた

「お、おい、たまゆら!おい!しっかりしろよ!」

完全に気を失う直前に聞こえたその声が
ああ、今回も何とかなったんだな…と思えて
安心した
430 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:31:08.21 ID:/XsNqaEo
10/14(火)同時刻

「…クソォ…絶対に…許さねぇ…!!
 力は消えたが…もう1度会長に…!!
 今までよりもっと強い力を…もっと…その力で…
 奴らをズタズタに引き裂いてやる…!!!」
「ハッハッハ、随分こっぴどくやられたなぁ」
「…誰だッ!」
「ノスフェラトゥ…」
「何だお前…」
「別に覚えなくても問題ないなぁ
 お前は俺の目的のために利用させてもらうらなぁ」
「なんだと…?
 なッ…おい、よせ…」
「可哀想だけどぉ…
 ま、命までは取らないからなぁ
 しばらくベッドの上でゆっくり過ごしてなぁ」
「く、くそっ…よせっ…やめろ…!!
 やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「じゃあなぁ!」




「ふむ、それにしても器の奴なかなかやるなぁ」
「絶体絶命のタイミングで朱雀を発動させるとはぁ…」
「こりゃあ本当に…ひょっとすると…ひょっとするなぁ…」
「まぁそろそろ仲良しごっこも終わりかなぁ…」
「クククッ、ククッ、クックックックック…!!!」


7時限目 - 爆炎浄化 -
431 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/25(土) 23:32:04.77 ID:/XsNqaEo
駆け足のうpになった
スマンカッタ

反省はしている
432 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/07/25(土) 23:33:04.74 ID:jYRywKQo
ゆきに乙!

なんか今回の登場人物全員かっこよすぎる気がwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
433 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/26(日) 00:01:17.17 ID:L4MZjUDO
ゆき兄乙!

俺強すぎワロタwwwwwwwwwwwwwwww
しかし黒やんはすごく黒やんらしいな、どことは言わないがww
434 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/26(日) 01:41:15.10 ID:NJ3njeQo
http://momizi.xrea.jp/src/vip15966.jpg
435 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/26(日) 07:45:46.39 ID:L4MZjUDO
久々にリアルタイムでスーパーヒーロータイム!



見終わったらいい加減寝よう…
436 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/26(日) 08:06:59.67 ID:L4MZjUDO
なんか懐かしい感じのライダーきたwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
437 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/27(月) 03:57:57.85 ID:68vHdAAO
(´・∀・`)
438 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/27(月) 09:42:01.81 ID:eychYX6o
とってもダルい月曜日
439 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/27(月) 13:08:31.32 ID:h7Asa6DO
月曜日に仕事してると

「こんな事してる場合じゃない…!
早く帰ってゼロの使い魔の続き見ないと!!」

って思う
440 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/27(月) 13:34:03.54 ID:eychYX6o
>>439
鬼の面かぶってたまゆら殴り飛ばすのが仕事だろ!
441 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/27(月) 13:50:52.53 ID:h7Asa6DO
>>440
それはストレスかいs…げふんげふん何でもない^^
442 :たまゆら :2009/07/27(月) 14:06:01.74 ID:/xVuRYAO
まあなんだ


わざと殴られてやってることに気づいたとき、お前は俺に土下座するっ!!



試験おわったおわったヽ(゜▽、゜)ノヽ(゜▽、゜)ノヽ(゜▽、゜)ノヽ(゜▽、゜)ノ
夏休み開始や〜\(^_^)/
443 :ほろ苦 :2009/07/27(月) 19:27:39.41 ID:1VQlqESO
夏休み(笑)






休みイラネ
金寄越せ
444 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/07/28(火) 08:51:04.00 ID:ifYV3IDO
>>443
その考え方には同意せざるをえないwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
445 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/29(水) 12:30:56.93 ID:9iktyAAO
(´・∀・`)
446 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/29(水) 15:39:11.51 ID:Frm89oIo
あー、うどん食いたいー
447 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/29(水) 17:51:05.31 ID:s99fYoDO
>>446
うどん国に食べに行ってついでに土産持参で三重県にくればおk
448 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/29(水) 19:19:24.76 ID:Frm89oIo
>>447
うどん国か…

旅費は俺が出すからうどん代出してくれ!!
449 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/29(水) 21:08:31.09 ID:s99fYoDO
>>448
うどん代だけでいいのか…?

1食分なら出してやらんこともない!
たぶん500円以下だしwwww
450 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/29(水) 23:01:26.39 ID:Frm89oIo
>>449
謙虚だろ

でもやっぱり3食うどん代出して
451 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/30(木) 01:50:19.01 ID:weZfnYDO
>>450
だが断る!
452 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/07/30(木) 02:16:47.95 ID:mWhOSMDO
うどんはポン酢につけて食べるのがベストだと思う
453 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/30(木) 17:34:45.52 ID:XNKhYV6o
>>452
白やんだけじゃないの…?
454 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/30(木) 18:47:43.84 ID:weZfnYDO
夏のうどんは冷やしで、うどん醤油+ツナおろし+スダチで食べるのがベストだと思う
455 :たまゆら :2009/07/30(木) 19:48:05.67 ID:w5DyI6AO
昨日うどんにシチューかけたら美味しかったよ
456 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/30(木) 20:24:17.49 ID:XNKhYV6o
>>455
それは本気でおかしいと思ったwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
457 :たまゆら :2009/07/31(金) 00:21:32.67 ID:eTl/HK2o
・・・いや、これはうどんの無限の可能性の片鱗だと思うな。
たとえば鍋。締めにうどんをする人は多いが、その味は味噌しょうゆチゲ千差万別。しかし全てを受け入れるうどん。
ごまだれで食べてもおいしい。カレーをかけても美味しい。
こってりからあっさりまで、どんな味でも絡めてみせる・・・それがうどんなんだよ!!


そんなうどんに、正しいも正しくないもおかしいもないんだよ。あるのは、フリーダム。インデペンデンス。

 ノ彡       /彡
 | |  ノノノノ  / /
 \ \( ゚∋゚)/ノ
   \ \/ /
    ヽ   (,
     ヽ ⌒ ヽ
458 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/07/31(金) 12:14:00.78 ID:FW9Stq.o
モンハン3…買うべきか買わざるべきか…
459 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/31(金) 16:28:34.22 ID:LCenQp6o
買うべき。
2つ買うべき。
一つおくれ。
460 :ほろ苦 :2009/07/31(金) 18:30:55.33 ID:CZ.zjkSO
>>458
明日誕生日の俺に買い与えるといいよ
461 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/07/31(金) 19:48:18.63 ID:twt1jgDO
>>458
Wiiと一緒に買って僕に貢ぐべき
462 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/07/31(金) 20:18:07.47 ID:p79thQDO
>>458
以下同文

>>461
復活オメwwwwwwwwwwwwwwww
463 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/01(土) 00:00:24.35 ID:zMcRN7A0
おwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwたんじょうび
 おwwwwwwwwwwwwwwwwめでとうございますwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
464 : 【吉】 :2009/08/01(土) 02:42:28.48 ID:frWR0Pso
てs
465 : 【末吉】 :2009/08/01(土) 06:04:38.18 ID:seNyddEo
ぴんくぐれーぷふるーつ
466 :リリーホワイト :2009/08/01(土) 06:04:43.90 ID:gsYSugDO
朝ですよー
467 : 【末吉】 :2009/08/01(土) 06:07:14.66 ID:seNyddEo
まだまだ31日の深夜30時ですよ!
468 : 【末吉】 :2009/08/01(土) 08:11:20.73 ID:CRvi7/s0
いいことありますように
469 : 【大凶】 :2009/08/01(土) 10:14:37.01 ID:AkyQMwDO
月初めか…(´ω`)
470 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/01(土) 10:24:20.14 ID:AkyQMwDO
大凶…ああ、心当たりがあるな…


鬱だ死のう…(´ω`)
471 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/08/01(土) 15:27:01.65 ID:SasII..o
ほろにー誕生日おめでたうございます!
20代後半へようこそ^^
472 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/01(土) 20:48:27.25 ID:AkyQMwDO
遅くなったけど、ほろにー誕生日おめでとう!


そしてまた人の誕生日ダシにしてケーキ食べるおwwwwwwwwwwww
「ほろ苦キャラメル(ry」とか書いてあったからこれにしたww

キャラメルマンゴー
http://imepita.jp/20090801/746590
473 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/01(土) 21:50:57.53 ID:AkyQMwDO
黒やんが携帯復活したんでパソコン買いましたよ報告したら呪いの言葉をいただいた件



黒「2ヶ月くらい前に撮ったメガネうp削除しよう…」

生きる希望が…(´;ω;`)ブワッ
474 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/08/01(土) 22:00:02.51 ID:SasII..o
うpの予感!
475 : 【中吉】 :2009/08/01(土) 22:01:54.96 ID:zMcRN7A0
>>473
まさに大凶
476 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/01(土) 22:06:02.42 ID:gsYSugDO
>>473
許さない、絶対にだ
477 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:06:51.97 ID:cTNfOCAo
7.5時間目 - 切り開くは可能性 -

10/15(水)放課後

「で、たまゆらはまだ目覚めないってことか」
「ああ」

ベッドの上には昨日から眠り続けているたまゆらがいた
机の上に置いてあった煎餅をかじりながら俺は気になったことを聞いてみた

「どういう状況なんだ?」
「過度の疲労、具体的に言うと全身を巡る気が著しく減ってる」
「治るのか?」
「まぁ気が減ってるだけだからそのうち目覚めるよ
 あと数日は起きないと思うが…」
「ふーむ」

煎餅がバリンと割れた
粉が床にパラパラと落ちる

「それよりも修行中に気づいたが
 厄介なのは執行部よりも黄龍鉄甲だな」
「あん?」
「あの武器は一時的に全身の気の流れを加速させる効果があるようだ
 だから戦闘中は多少の痛みも麻痺するし通常出しえないような力も出せる
 かつその時負った傷の治りも早い」
「いいこと尽くめだな
 通りでまぁこれまで執行部の奴らと渡り合えてきたんだな」
「…が、問題はそのあとだ
 気断命脈と同じように異常に加速した気の流れは確かに身体能力の爆発的な増長などをもたらす
 だが代わりに恐ろしいほどの気を消耗し肉体にかかる負担も相当だ
 だから戦闘が終わって気の流れが通常に戻った瞬間に圧倒的な気の不足が起きる」
「で、結果がコレか」

俺はベッドの上のたまゆらを見た

「…まぁ確かに今回はハードだったしな」
「しかしまさか…実戦で覚醒するとはな
 下手したら本当にやられてたぞ」
「起きたらブン殴ってやればいい」
「そうだな
 あ、それとお前も服脱げ」
「はぁ?」
「いいから脱げ」
「キャー襲われるー」

ガゴンと、顔面に衝撃が走った

「…すいませんでした」

素直に上半身裸になる
478 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:08:38.48 ID:cTNfOCAo
「酷い傷だな、ズタズタじゃないか」
「…まぁ、な」
「というかちゃんと全部の傷を処置しろ
 化膿したらめんどうだぞ」
「途中でめんどくさくなっちまってな」
「ほら消毒してやるからこっち来い
 …つーかこんだけあるとぶっかけたほうが早いな」
「は?ぶっかけるって…」
「染みるかもしれん」
「は?おい、ちょっと待っ…」



放課後の校舎に俺の絶叫が響き渡った
479 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/01(土) 22:08:43.81 ID:gsYSugDO
とうとう最後の携帯厨か……











よっしゃ!三途の川オフやろうぜ!
480 :そら :2009/08/01(土) 22:09:05.17 ID:kT3nugDO
携帯復活したけど影の薄い私は誰にも覚えられてないはず



ほろめとうございます
481 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/08/01(土) 22:10:01.69 ID:SasII..o
バナ丸先生の治療パネェwwwwwwwwwwwwwwwwww
482 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:12:53.26 ID:cTNfOCAo
10/15(水)夜

「がぁ…クソ…!ヤチャマルの野郎…!!
 乱雑な治療にほどがあるぞ…!医療ミスの領域だろコレ…!!」

全身のズキズキした痛みを堪えて
俺はカップヌードルにお湯を入れた
お湯を入れたカップヌードルを持ったまま俺は寮の外に出た
そのまま校舎裏のゴミ捨て場に向かった

「おーい、ほろにがー」

呼びかけるとゴミの山がゴトンガタンと動いた
そして隙間ならほろにがが顔を出した

「お、メシか」
「ほら」
「おー、サンキュサンキュ」

ほろにがはMy箸を懐から取り出して
カップヌードルをズルズル食べだした
俺はその横に腰掛けた

「ほーが、ほはへふふぉうひはて
 ほほんなはひーはふーへほ?」
「食ってから喋れよ!!」
「ほーはな」

ほろにが麺を高速ですすりだし
あっという間に汁まで飲み干した

「ぶはー、ごっそさん
 いやー、すまんすまん、どうにもこうにも腹が減っててな
 最近は黒いバナナで空腹を満たしていたからな…」
「悪食にも程があるな」
「黒いバナナは甘みが増すんだぞ、ほら食うか?」
「いらん」

ほろにがは真っ黒なバナナを食べだした
483 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:14:44.90 ID:cTNfOCAo

「最近の若い奴は胃腸が弱くて駄目だな
 俺なんか子供のころから生き残るために食えるものなら何でも食ってきたから
 今ならこの程度で腹を壊すことはない」
「ああ、そーかいそーかい
 ほんなら俺は帰るぞ」
「まぁちょと待てよ」

服の裾を掴まれて
また座りなおす

「…俺はどっちかと言うとあっちのたまゆらってガキンチョよりも
 お前のほうに興味があるな」
「ふーん」
「つれないねぇ…
 …ん…?お…おおおお…?」
「どうした?」
「腹が…ぬおっ…これは…まずい…
 ト、トイレ…!!いかん…急がなければならないが走ったら…!!はぉう!!」
「俺は帰るぞ!!」
「…おい…ちょっと手伝え…!」
「誰が手伝うか!!」

俺はダッシュで寮に戻る
後ろからほろにがの恨みのこもった声が聞こえた
だけど完全にシカトして俺は寮へと戻った
484 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/08/01(土) 22:16:54.29 ID:SasII..o
ほろにーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ほwwwwwwwwwwwwwwwwろwwwwwwwwwwwwwwwwにwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
485 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:18:44.81 ID:cTNfOCAo
10/15(水)深夜

「随分と寂しくなったねこの部屋も」
「そうだな」
「…で?」
「俺が行こう」
「俺じゃないの?」
「お前は動くな」
「つまんね…ま、いっか」
「…俺も随分動いてなかったからな
 そろそろ技が鈍る…」
「…そうか、それなら行ってらっしゃい」
「意外と素直に引き下がるんだな」
「気が乗らないや」
「じゃあ僕はどうしようかな…」
「一般生徒の断罪をしておけ」
「最近やりすぎて飽きちゃったし…
 張り合う相手もいなくなっちゃったしね
 それよりももっと面白いこと見つけたから、そっちのほうが興味ある」
「…そうか」
「ま、がんばって…」
486 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:21:27.08 ID:cTNfOCAo
10/16(木)朝

早めに目が覚めた俺は
10日ぶりぐらいに朝から学校に登校した
今学校は執行部の暴走によって疑心暗鬼の渦に囚われて
雰囲気は最低最悪でまるで監獄のようと聞いていたが…
どうも様子がおかしい
おかしいというが一般的には普通なのだが生徒同士が普通に会話していた

「なぁ聞いたかあの噂」
「聞いた聞いた、執行部のことだろ」
「ノスフェラトゥだっけ」

ノスフェラトゥ、たまゆらが言っていた仮面の男のことか…?
ちょうどリカがサボりまくってた俺に説教をしに来たので話を聞くことにした

「一体何があったんだ?」
「ええとね、何でも一般生徒を執行部から守ってくれる正義の味方が現れたとか…」
「たまゆらのことか?」

半分冗談で言ってみた
しかし予想通りそうじゃないと言われた
487 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:23:34.96 ID:cTNfOCAo
「私も最初はたまゆら君のことかと思ったけど…
 ノスフェラトゥとかいう仮面の男?だったかな?」
「どっからその噂が出たんだよ」
「火曜日の夜に執行部を倒している姿を生徒の誰かが見たそうなの
 でそのときに自分のことを執行部と戦って生徒を守る者ノスフェラトゥ名乗ったらしいよ」
「それで?」
「それでその…昨日から断罪がピタリと止んで
 皆こりゃ本物だって…」
「火曜の夜…たまゆらがあいつを倒した…
 それならその後か…?」
「でも、私は知ってるよ
 本当に皆を守ってるのはたまゆら君とゆき兄だって」
「…あいつだけだよ、俺は皆を守ってるわけじゃない」
「…」
「…しかし大衆ってのは愚かだな
 いとも簡単に踊らされやがる…いや、それよりも今重要なのはノスフェラトゥか…
 そいつは一体何が目的なんだ…?」

しかし考えてもわかるはずもない
ならば考えるだけ無駄だ
気にかけておくだけに留めておこう

「…何も知らない故に真意がわからずとも喜ぶ
 全てを知ってる俺らから見れば滑稽だが…本来これがあるべき姿なんだろうな」
「ゆき兄…」
「今日は授業には出てやるよ
 真面目には聞かないがな」

俺は椅子に座った
リカは文句を言い続けていた
488 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:25:58.38 ID:cTNfOCAo
10/16(木)昼休み

「あふぁ〜〜…はふぅ」

かなりの大あくびが出た
まぁ午前中最初から最後まで寝続けてりゃ当たり前か
校内をうろついてるとどこもかしこもノスフェラトゥの話で持ちきりで耳にタコが出来そうだった

「ま、それだけ不満だったんだろうな
 執行部のことが
 抑圧された不満が放出すると共に一種のヒーロー像が投影されてるってとこか?」

誰に言うでもなくブツブツと呟きながら廊下を歩いていると
反対側から鬼気迫る勢いで走ってくる誰かが見えた

「…ピュアか」
「あっ!!」

キキィー!と効果音が聞こえるんじゃないかというぐらいの速度で止まる
勢いが凄過ぎて顔が近づく
汗だくで呼吸が荒く鬼のような形相だった

「…普段とは全く違ってアクティブだな
 どうかしたのか…?」
「今日登校してきたら図書室が荒らされてたんだよ!!
 ああもう本当最悪だよ!!あちこちに本をバラまきやがって!!
 ページに折り目がついたらどうするんだって感じで今まである程度まで整理してたんだ!!
 落ち着いたら犯人が許せなくなってブッ[ピーーー]て[ピーーー]を[ピーーー]で[ピーーー]に…!!」
「お、落ち着け…俺じゃない!
 首を…絞めるな…!!」
「あ、ごめん」

パッと首から手が離される
いかん、こいつ見境なくなってる

「…そうだ!ちょっと一緒に犯人を捕まえてくれ!!」
「…なんだその突拍子もない発想は
 だいたい犯人わかんねぇんだろ」
「…うーん…じゃあ現場検証しよう!」
「なんで俺が…うおっ!?」
489 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:28:43.09 ID:cTNfOCAo
無理やり手を引っ張られて図書室まで走らされる
振りほどこうとしたが異常に力の入ったピュアの手は振り解けなかった
そのまま殆ど投げ込まれるように図書室に飛び込む

「…なぁ現場検証ってももう片付けたんだろ?」
「僕が思うに犯人も僕と同じように無限の知識の探求者なんだ
 しかしいくら知識を吸収し無用になったからといって本を乱雑に扱っていいわけではない!!
 敬意を表して深く頭を下げて1mmの狂いもなく本棚に戻すべきなんだ!!」
「…わかったわかった、それで何の本が盗まれたんだ?」
「いや、本は盗られてない
 犯人はきっと貪るように知識を片っ端から食らって…」
「盗られてない…?
 図書室には鍵がついてたんだろ?」
「当たり前じゃないか、かけ忘れることはない
 鍵は24時間僕が管理してる、しかしご丁寧に犯人はドアをこじ開けやがったんだよ!!」

わざわざ鍵のかかったドアをこじ開けてまで入ったのに何も盗まれてない?
そいつはちょっと腑に落ちないな…

「…じゃあ本のほかに何か盗られた物は…?
 仮に普通の泥棒だとしてそいつが欲しがりそうなものは…」
「…」

ピュアは腕を組んで眉間にしわを寄せながら考えだした
しばらくそのまま静止し、沈黙したあと口を開いて一言

「無い」
「…無いって…本当か?」
「この学園ははるか昔からあって図書室にある本には歴史的価値のあるものもいくつかある
 ただし本以外になるとペンやら消しゴムやら貸し出しカードやら…
 まぁつまり泥棒が欲しがるようなものはひとつもない」
「…で、本はブチまけられていたが盗まれたものはないか…」

普通に考えるなら何かを探すために本をぶちまけたが見つからなかった
それかピュアの言うように本に書いてあること自体が目的だった…
前者とは思うが…あ、そうだいいこと考えた

「じゃあピュア、犯人が何の知識を得ようとしていたのか調べてみればいいじゃないか」
「何?」
「だからー、ブチまけられてた本のタイトルとか内容とかを照らし合わせれば
 犯人が何について調べようとしたかわかるだろ?」
「そうか!
 そこから見つけ出すんだな!」
「そうそう、それじゃそれが済んだら俺を呼んでくれ」
「わかった!」

そして俺はさっさと図書室を出た
ぶちまけられた本は全部整理されて元の棚だし
本の内容に目的がなかったら法則性なんて見つかるはずもない
せいぜいその無駄な作業を延々繰り返しときやがれ
490 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:34:37.48 ID:cTNfOCAo
教室に戻るとリカが小走りで近づいてきた
手には封筒みたいなものを持っていた

「ゆき兄…」
「なんだよその不安げな顔は」
「さっき知らない男子生徒がこれをたまゆら君にって…」
「封筒ねぇ…貸してみろ」

手渡された封筒を破り開けようとする

「開けるの?」
「ラブレターってわけでもないだろ
 っと…中にはまた紙か…」

その紙を取り出すと
表に大きく堂々と果たし状と書いてあった

「…明日の夜に1人で剣道場まで来い
 執行部より、だってさ」
「…でも…たまゆら君は…」
「絶賛お休み中だ」
「…」
「…心配すんなよ
 なんとかなるさ、これ俺預かっとくぞ」
「…うん」
「授業を受ける気分じゃなくなったな」
「あっ!ちょっと待っ…」

リカが文句を言い終わる前にドアをピシャリと閉めた
俺はそのまま走って教室からとにかく離れた
491 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:37:34.43 ID:cTNfOCAo
10/16(木)放課後

授業が終わったのを見計らって保健室を覗いてみた
たまゆらはすやすやと寝息を立てている

「うーむ…」
「ゆき兄、お前授業サボってたろ」
「サボってねぇよ」
「ヨダレのあとがついてるぞ」
「む…」

口周りを拭いてから俺は椅子に座った
ヤチャマルがコーラを目の前にポンと置いてくれた

「あ、悪いな」
「というかお前が勝手に保健室の冷蔵庫に入れていったんだろう
 邪魔だから早く減らして欲しいんだよ」
「あー…そういや忘れてたわ
 …ふーむ…」
「また何か考え事があるのか?」
「これだこれ」

懐から取り出した執行部からの果たし状をヤチャマルに投げる

「…果たし状とはまた古風だな
 やろうというなら受けてたつぞ?」
「馬鹿!違う!構えるなよ!!」

立ち上がって拳を構えるヤチャマル
慌てて椅子の裏に隠れる

「…冗談だ」
「冗談にしてもタチが悪いぞ…」
「しかしどうするんだ?」
「あー…やっぱり明日じゃたまゆらは起きないか?」
「仮に今目覚めたとしても明日の夜じゃじゃ体調万全とは言いがたいな」
「果たし状を出してくるぐらい正々堂々した奴なら
 たまゆらの状態を話したら全快まで待ってくれないかねぇ?」
「…可能性が無いわけじゃないがそれだけに賭けるにはいささか…」
「…だよなぁ…」

しばらくお互い無言になる
俺は天井を見ながらどうすべきか思考を巡らせていた
492 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:39:34.72 ID:cTNfOCAo
「…しかし少し意外だな」
「あん?」

ポツリとヤチャマルが呟いた

「なんというか執行部はもっとこう…手段を選ばないという印象だったが…
 わざわざ果たし状を送ってくるなんて…」
「…ま、中にはそういう奴もいるってことだろ」
「んー…今思ったがたまゆらが動けないならゆき兄がやればいいじゃないか」
「は?」
「…だってそのために…」
「違う」
「…」
「俺はただ…」
「…ただ?」
「…」
「…あー…まぁゆっくり考えろとは言えないがとりあえず今日は時間があるんだあるんだ
 それまでどうするか考えとけばいいさ」
「それもそうだな
 それじゃ引き続きたまゆらの面倒頼んだぜ」
「というか別に何もしてないんだけどな
 栄養を点滴で入れてるだけだ」
「そーかそーか」

俺は保健室を出て寮に戻ることにした
明日の夜ってことはもうそんなに時間がないな…
どうすればいいやら…
493 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:43:15.39 ID:cTNfOCAo
10/16(木)深夜

深夜になるまで寮で無意味に時間を潰していた
時計が午前2時を回ったあたりで俺は寮を抜け出した
目的の場所につきボロボロの扉を開ける
ギィという音が響いて中からやわらかい光がさし込んできた

「…いらっしゃい、イビルアイにようこそ」

カウンターの椅子に深く腰をかける
懐から小瓶を取り出して目の前に置いた

「役にたったみたいだね」
「ああ」
「ダブル・クロス…自らに敵対する者を混乱させるマジックオイル…」
「ただしカラスにしか聞かなかったけどな」
「そりゃあ…まぁね
 人間に効果を及ぼそうと思ったら日常的に嗅がせるか食べ物に混ぜておくか…
 さらには魔方陣を使用した中規模儀式ぐらいは必要だろうね」
「ま、おかげで助かったんだけどな」
「何よりだ…で、何を飲む?」
「コーラに決まってる」

コトンとコーラの入ったグラスが置かれた
それを掴むと一気に飲み干した

「っかっはぁー」
「相変わらずいい飲みっぷりだ…
 それで?本題はなんだい?」
「…よくわかってることで」
「ゆき兄がわざわざ小瓶を返しに来るだけとは考えられないからね」
「俺がここに来たのは…可能性を探しにな」
「可能性?」
「そ、可能性」

俺は自分の考えてることを全て話した
神楽君は静かに黙って俺の話を聞いていた
全て話し終えるとゆっくりと口を開いた

「魔術師としてもとても興味深い話だ」
「だろ?
 だから…まぁよければ手伝って欲しいんだ」
「…」

神楽君はカウンターの下から大きな箱を取り出し
それを置いた
中には液体が入った小瓶が沢山入っていた
494 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/08/01(土) 22:48:03.68 ID:SasII..o
神楽くんキタ!
495 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:52:13.65 ID:cTNfOCAo
「…ありがとう」
「説明するのは省く、だけどそれぞれの効果がラベルに書いてあるから…
 あとは直感と判断力の問題だな」
「あ、ぜんぜん大丈夫」
「…ま、うまくいったら話を聞かせてよ」
「そればっかりだな、神楽君は」
「だけど気をつけてな…そもそも出来るかどうかも…
 理論的には可能だけど…」
「…ああ、承知の上さ」

また、目の前にコーラの入ったグラスが置かれた

「おごりだから飲みな」
「そりゃどーもっと…」

また思いっきり飲み干し
大きな箱を抱えて俺は寮へと戻った
とりあえず寝ることにしよう
496 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:54:53.24 ID:cTNfOCAo
10/17(金)午前

「ん……はっ!?」

目を開けると時計はすでに11時を回っていた
机に突っ伏して寝ていたらしい
目の前には散乱した小瓶があった

「説明読んでるうちに寝ちまったか…
 めんどくせぇし、このままサボってやろうか…」

ふと携帯を見るとメールが着信していた
差出人はリカで
昨日の午後の授業をサボったことについて文句をダラダラと書き綴ったメールだった
…どうやら今からでも行ったほうがいいらしい
まぁどうせ授業には出ないからいいか…
適当に用意をして学校に向かった
497 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:56:19.33 ID:cTNfOCAo
10/17(金)昼休み

学校につくと丁度昼休みになっていた
とりあえずリカに学校に来たということを見せておいて…
そのあと適当にどっかで時間を潰すか
そう思って教室に行ったもののリカの姿は無かった

「おかしいな、シャインとかで食ってんのかな」

リカの机の周りをウロウロしていると
クラスメイトの道下が話しかけてきた

「あ…ゆき兄、リカちゃんなら欠席だよ…」
「はぁ?」
「朝から来てないしね…連絡もないみたいだし…
 おっと…早く阿部さんのところに行かないと…」

道下はとっととどこかに行ってしまった
と、思ったら途中で何かを思いついたように戻ってきた

「なんだよ、俺はノンケだぞ」
「うんうん、わかってるわかってる…
 そうじゃなくてこれ…」

また封筒を手渡される

「たまゆら君宛てだけどね…
 ずっと来てないからたまゆら君と仲がいいゆき兄に渡しておくよ…
 会ったら渡してあげてね…さてトイレトイレ…いや別に溜めておけばいいか…」

ブツブツ呟きながら道下は嬉しそうにどこかに行ってしまった
どこに行ったのかは考えたくはないな…
さてこの封筒、十中八九執行部からだろうな
俺は屋上に上がった
498 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 22:59:02.91 ID:cTNfOCAo
屋上はいい感じに風が吹いて気持ちがよかった
いつもの場所に寝転がって封筒を開けて見る

「中には紙が1枚…と写真?…なッ!?」

『逃げたらこの子がどうなっても知らないよ?』

紙はその一文だけ
写真には縛られているリカが写っていた

「あの馬鹿野郎!!また捕まりやがった!!」

思わず紙をビリビリに引き裂いた
いかん、落ち着け
とにかくこれで夜のことをシカトするわけにはいかなくなった
たまゆらが起きないにしろそれを伝える奴がいるというわけだ
…俺しかいないじゃないか
人質を取るような奴が相手じゃ状況説明だけじゃ済まない気もするが…

「クソッタレ…あの馬鹿野郎…
 どうしてこう次から次へと…問題を巻き起こすんだ…!」
「ゆき兄が言えた立場じゃないよ」
「あん?…!?!?!!?」

やや後方、そこに1人の女子生徒
それは、俺の、最大の罪

「くっ…!」
「待って!!」
「…」
「…逃げないで…話を聞いて…」

心臓の鼓動が、加速する
奥歯を噛みしめる
振り向かずにただ言葉だけを発する

「…今さら…話なんて…」
「昔のことはもういいよ…」
「…あれが…許されるのか?」
「私はもう…」
「世界中全ての人間が俺を許したとしても…俺は俺を許さない…
 そして全てを知っていながら今だ罪を犯し続ける俺を…誰が許せる…」
「…」
「…俺は…君に会わす顔なんて無いよ…きのこさん…」
499 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:00:28.41 ID:cTNfOCAo
「…じゃあそのままでいいから話を聞いてよ
 あの時みたいに逃げないでね…」
「…ああ、あんときな…たまゆらとリカで三人で弁当食ってた時だな…
 あんときはびっくりしてコーラ噴いちまったよ…」
「…その…たまゆら君…
 ゆき兄は気づいてるでしょ?」
「最初からわかってた…器だってことも…」
「私は…たまゆら君に…儚くて今にも消えてしまいそうな小さな…
 だけど確かな光…希望という可能性が見えたよ」
「…だけどそれはいとも簡単に闇に押し潰される
 昔みたいに…」
「じゃあ何でたまゆら君を助けてるの!?」

きのこさんの声が一段階大きくなった
怒っているようにも、泣いているようにも聞こえるその声に
胸が締め付けられるようだった

「…それは…」
「ゆき兄も、たまゆら君に希望を見出したんでしょ?
 この学園を呪われた運命から解き放つ希望を…」
「…そうだね…だけど今は同時に不安だ
 次はもう…決断するしかないのだから…」
「…ゆき兄」
「…もしもたまゆらが決断するのなら…その罪は…重すぎる」
「だからって…ずっと1人で背負っていくの…?」
「他に方法がないじゃないか!」
「…」
「…」

沈黙が辺りを支配した
長い静寂の果てできのこさんが紡いだ言葉は

「…ゆき兄は…何をどうしたいの?」
「…俺は…ただ…」
「もう…流れは始まってしまってる
 逃げれないんだよ…?」
「…逃げれない…か」
「…」
「…わかってたよ…そんなことは…
 だから…俺は…」
500 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:07:29.24 ID:cTNfOCAo
俺は歩き出し
ドアに手をかけた

「…俺が本当に避けたいのはね…
 …いや、いいや…それじゃあね…
 出来れば…もう…俺には…」
「…」

俺は、屋上から立ち去り
階段を降り
人気の少ない階段を壁の隙間にもたれかかった

「…くっ…そぉぉぉぉおお!!」

思わず壁を殴りつける
痛みすら厭わず、ただ感情を拳に乗せぶつけていた

「はぁっ…はぁっ…!!」

涙がポタリと、地面に落ちた
顔を抑え必死に自分を抑えようとする

「…逃げれないんだよな…だったら…
 俺がやることは…」

昼休みが終わろうとしていたが俺はずっとその場に立ち尽くした
ただ、自らを嘆き続けて
501 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:11:13.68 ID:cTNfOCAo
10/17(金)放課後

いつしか放課後になっていた
疲れて、眠ってしまっていたらしい

「…」

ある場所を思い描いて
俺はそこに向かった
校舎を裏手の進み、しばらく行った場所にある
朽ち果てた時計塔
すでに使われていないこの時計塔は時を刻むことはもう無い
ただその名残だけを残すだけの悲しい遺物

ドアに手をかける
当然と言えば当然だが鍵がかかっていた
中に入るのを諦めてただ時計塔を見上げる
時を刻み、時を告げるというたった一つの役割を失った時計塔
それはまるで死んでいるようにも見えた
だけど、俺は思い出す
ここに来るたびに否応なく思い出させられる…
もう随分昔のことのように思える
502 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:12:24.82 ID:cTNfOCAo
「こんなところで何やってんだよ〜」

背後から間の抜けた声が聞こえる

「いたのか、下痢男」
「いくらなんでもそのあだ名はやめろよ!!」

振りぬくとほろにががそこに立っていた

「時計塔ね〜…何かいいものあるのここ?」
「何も無いと思うぜ」
「…ま、そらそーだわな」
「丁度よかった、あれを渡してくれ」
「え…ああ…
 ってもう使うのか…?」
「…使うさ」
「…なんかわからんが…覚悟を決めたってツラだな…
 いいよ、ついてこい」

ほろにがについていき
いつものゴミ捨て場にたどりついた
ゴミの山を漁りだすほろにが

「お、あったぜ」

手に、布に包まれた長い物を持ってゴミの山から滑るように降りてくる

「ほらよ」

それを受け取り俺はさっさと寮へ戻ろうとする
俺の後ろからほろにがが言った

「勝てよ、ゆき兄」
「…当たり前さ」

少し笑いが出た
同時に少しの感謝
勝ってやるさ、何がなんでもな
503 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:13:17.23 ID:cTNfOCAo
10/17(金)夜

「こんなもんか…」

準備を済まし、俺は剣道場に向かった
入り口の鍵は開いていたので中に入る
剣道場の丁度真ん中に剣道着を着て正座している男がいた

「…随分とまぁ…かたいな」
「…」

男は傍に置いていた刀を取り
ゆっくりと立ち上がった

「…どうみても転校生ではないな
 逃げたか?」
「あいつは体調不良で俺が代役だ」
「…舐められたものだ…たかだか一般生徒が代役などと…」
「それよりもリカは無事なんだろうな?」
「…何のことだ?」
「とぼけんなよ、お前が取った人質だよ」
「知らんぞ」
「…すっとぼけやがって
 まぁいい、あとでゆっくり聞きだしてやる」
「何を言っているのかよくわからないが…
 要するにお前を倒せば転校生たまゆらと戦えるんだな?」
「そいつはわかんねーな…戦えるかもしれないし…戦えないかもしれない…
 ただ一つ…俺を倒さないと永遠に戦えないかもな」
「…勝負する相手の名を知らぬのは失礼に値するな
 名乗れ」
「人に名前を聞くときは自分からって教えられなかったか?」
「…執行部が一人、剣三郎」
「ゆき兄だ」
「そうか、ゆき兄、いざ尋常に勝負…!」

剣三郎が刀に手をかけ、抜いた刃が窓から差し込む月光を反射しキラリと光る
銃を使うやつもいたし今さら真剣なんてのも可愛いもんだな
それよりも重要なのはこいつの能力がどんなものかってことだ

「…俺の刃は受けることは出来ん」
「あん?」

トンッと音がしたと同時に一気に剣三郎が踏み込んできた
同時に横薙ぎに刀が振られた

「つぉっ!!?」

咄嗟にしゃがみ込む
髪の毛がパラパラと落ちるのが見えた
504 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:14:20.03 ID:cTNfOCAo
「いい判断だ」

剣三郎は後ろに飛びのいた
また距離が開く
とりあえずこっちも武器を出しとくか
俺はほろにがから受け取った物を包みから出した
中から出てきたのは剣

「…ほう、お前も剣士なのか」
「お前は刀で俺は剣、奇遇だな」
「…しかしその剣見たところ…」
「ああ、まぁ一応切れるっちゃ切れるが基本的に儀式用の装飾剣だな」
「…舐めているのか何か考えがあるのか」
「やってみなくちゃわかんねぇだろ?」
「…残念だったな」
「あん?」

剣三郎はゆっくりと歩き、壁際に転がっていた何かを持ち上げた
それは黒くて、丸い、何か

「これは何だと思う?」
「…ボール?」
「…砲丸投げに使う砲丸さ」
「よくそんな重いものを片手でもてるな」
「…ふんっ!」

ぽんっと砲丸が真上に投げられた
その砲丸を、刀が抜けた

「なっ!?」

鉄製の砲丸は、いとも簡単に綺麗に真っ二つに分断された
ガゴン!ガゴン!と落下音がその重さを伝えてくる

「…俺の能力はこの刀そのものだ
 次元刀と呼ばれるこの刀は如何なる物でも抵抗なく切り裂く」
「マジかよ…
 つまり受けれない…避けるしかないってことかよ」
「そのとおり、それじゃ行くぞ…!」
「初戦から厄介だぜ…!」
505 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:15:27.01 ID:cTNfOCAo
またトンッと剣三郎が一気に間合いを詰めてきた
そのまま勢いを乗せたまま右からの袈裟斬り
身体を寄せてそれを避ける

「お、おおおおおおおッ!?」

それだけでは終わらず四方八方から切りつけられる
必死に避けまくりながら後ろに下がって刃のリーチから抜けようとする
避けるってのはともかく打ち合いすら出来ないってのは不利すぎると実感する
…可能性が無いわけじゃないが効果がなければいよいよ打つ手が無い

「うおっ!?」

僅かに刃がこめかみをかすった
考えてる暇は無い、どちらにせよこのままじゃやられるだけだ
それにもう俺は逃げれないからな!!
懐から小瓶を取り出しそれを自分の剣の刃にぶっかけた

「何のつもりだ?」
「可能性かな」

グッと足に力を入れてその場に踏みとどまる
剣三郎の刀が一気に振り下ろされる

「殺った!!」
「フランキンセンス&ミルラ!!」

ガッキィィィィン!!!と激しい音がした
対抗できるという可能性は、見事に剣三郎を倒せるという可能性に繋がった
何よりも驚いていたのは剣三郎だった

「なぜ…次元刀が…受け止められる…!?」
「フランキンセンス&ミルラの効果は浄化、保護、ヒーリング、聖別などでな…
 これで刃部分を保護したんだよ…」
「何だと…!?」
「剣への付与が成功するかどうかは賭けだった
 さらには成功したところでその刀を受け止められるかもな
 分の悪い賭けだったが…ここまでは俺の勝ちだ」
「ぐ…!」
「そう睨むなよ
 対抗は出来るようになったが対等じゃないんだぜ
 圧倒的攻撃翌力を持つお前のほうが断然有利だ」
「チッ…」

剣三郎が後ろに飛びのき距離を取る
確かに対等になったとは言い難いが流れはこちらに傾いたはずだ
少なくとも先週を丸々潰した価値はあったな
そう、あの夜…
506 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:17:18.41 ID:cTNfOCAo
10/6(月)深夜

「ゆき兄、帰ろう」
「…いや、先に帰っててくれ」
「えぇ?」

たまゆらが帰ったのを見届けた後
ヤチャマルとほろにがが話してきた

「で、何が目的なんだ?」
「俺もそれなりに執行部に対抗できる力が欲しくてな」
「…それでか」
「とは言っても異能力を持つあいつら相手にどこまで対抗できるかわからねぇが…
 このままじゃたまゆらは俺を守ろうとしてやられるかもしれないしな
 そういうのはごめんだ」
「…よし、じゃあとりあえず外に出よう」
「いってらっしゃ〜い」
「お前も来るんだよこの不法侵入者!!」
「ギャー!髪の毛引っ張らないで!!」

3人で外に出るとヤチャマルがとても大きな木箱を持ってきた
ドガチャン!とその木箱が地面に置かれる

「好きな武器を選べ」
「…中に入ってるの全部武器か…」
「…こりゃまたすげぇな」
「中には使い物にならないものもあるがな」
「学校にこんなもん置いてるなんてアブネーネーチャンだ」
「やっぱり…剣かな」
「よし、不法侵入者、相手になってやれ」
「だから俺はほろにがだって…つーかこれ真剣じゃねーかよ」
「短期間の修行ってのは命を賭けてなんぼだよ
 …つか隠してもわかるぞ、お前相当の使い手だろ」
「…本気でやっていいのかよ?」
「命を奪う気でやれ」
「本当におっかねぇネーチャンだ…
 しょうがねぇ!ガキンチョ、来い!!」

それから俺はほろにがと真剣同士で戦った
というかもはや殺し合いに近かった

「…ぜぇー…はぁー…げほっ…」
「はぁ…はぁ…歳取るとけっこう疲れるな…!!
 大丈夫かよガキンチョ」
「死んでねぇけど…死ぬほどいてぇ…
 ばっさり斬りやがって…」
「安心しろ、傷自体は浅い…
 とっさに後ろに避けたんだな…ふむ…」
「つーかガキンチョ…お前本当に初めて剣を使ったのかよ…
 俺も何度か危なかったぞ…」
507 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:18:45.49 ID:cTNfOCAo
ヤチャマルが俺の傷の手当てをしながら話す

「…さすがというか何と言うか…
 まさに才能だな…すでにそのまま我流として使えそうな剣技だ…」
「そりゃ…どーも…」
「かつ相手の命を奪うことを躊躇わない冷酷さに
 時として自ら命を捨てるように飛び込む…死を恐れない…
 すごいなゆき兄は」
「げほっ…いいから…さっさ治療してくれよ…」
「だけど致命的な弱点がある」
「ああ?」
「ああ、戦ってて俺も気づいたよ」
「心技体…ゆき兄は心も技もとても強い…
 だけどたった1つ、体がそれに追いついていない」
「…」
「要するに筋力だな
 力が足りない…引いては持久力が無いから技が最大限の威力を発揮できないんだ」
「…なら、それをどうにかすればいいってのか…?」
「…なるべく力を使わない振り方などを習得すればいいが…
 それでもやはり筋力は重要だ」
「…」
「だがそんな短期間で筋力がつくこともない
 こればかりは…」
「やらねぇよりかはマシだろ…
 それにそれだけじゃ駄目なんだ…
 例え剣の腕は達人並になったとしても異能力を持つ執行部にはそれだけじゃ駄目なんだ…」

そこでほろにがポツリと呟いた

「しかしそんなやつらが相手じゃ魔法でも使わない限り勝てないんじゃねぇのか?」
「…魔法…?魔法…そうか…魔術…」

剣と魔術の融合
もしそれが可能ならば執行部とも渡り合えるかもしれない
それが、たった一つの可能性
それから1週間、たまゆらが気断命脈のために気を蓄えてる間に
俺は剣と魔術の融合が可能かを考えつつほろにがを相手に必死に修行という名の殺し合いを繰り返していた
目的はあまり意味はなくとも筋力をつけることと常に死と隣り合わせに身を置くこと
お互い真剣を使ってるだけあって全身はズタボロになった
並行して黒やんのカラスを無効化する方法を探した
これについては神楽君のマジックオイルを単品で使用すればなんとかなりそうだった
しかし剣と魔術の融合で重要なのは剣そのものだった
原理はよくわからないが普通の剣や刀では魔翌力の伝達が上手くいかないらしい
結果、俺は武器そのものとしてはとても弱いが非常に魔翌力の伝達がいいらしい装飾剣を使うことにした
幸いなことに武器としての使用を想定されていなかったらしい装飾剣は普通の剣よりも余程軽かった
重要なのはそれが実践に耐えうるかどうかだった
508 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:21:25.98 ID:cTNfOCAo
10/17(金)夜

剣と剣がぶつかり合う
魔翌力で保護された俺の剣は全てを切り裂く次元刀を完全に受け止めていた
しかしいつ効果が切れるともわからない
あまり長引かせるとまずい
俺はまた小瓶を取り出す

「…いくぜ?剣三郎…これが俺の可能性だよ…!」

俺は小瓶の蓋を開け、頭上へと投げた
オイルが俺に降り注ぐ

「なんだ…!?」
「このオイルの名は…ドラゴンズブラッド…
 潜在能力を引き出し力を得る…同時に膠着状態を打破するような時にも使用されるマジックオイルさ」
「ドラゴンズブラッド…!?」

剣三郎が剣を弾き、後ろに飛びのいた
その瞬間、俺の手が動いた

「飛べ!!」
「早いッ!?」

横薙ぎのに振るわれた剣が、確かに剣三郎を捕らえた
斬ることはできなかったが、少なからず衝撃を剣三郎へと与える

「ぐうっ…!」

よろめいたもののなんとか着地する剣三郎
…いける、充分に戦える

「…強いな…ゆき兄…一般生徒と舐めていたのは謝ろう…」
「そりゃどーも」
「ならば俺も剣士としての礼儀を持って
 全力で相手をしなければいけない…」

剣三郎が刀を鞘に納めた

「何を考えて…いや、そういうことか」

刀に手をかけたまま、腰を落とし
目はしっかりとこちらを見据えたまま動かない

「…居合いか」
「そう…この1撃に俺の全てを乗せよう」
「確かにチマチマ戦うよりそっちのが俺も好みっちゃ好みだな…」

しかしこの状況はけっこうまずい気がする
居合いは1撃必殺のカウンター攻撃、しかも剣三郎が持ってる武器は直撃すれば間違いなく即死するような代物
構えに入られてしかも間を置いた時点で圧倒的にこっちが不利だ
509 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:24:36.39 ID:cTNfOCAo
とはいえ考えていても仕方ない
カウンターということは向こうから攻撃はできないということだ
とはいえあまりにも隙だらけだと切りかかってくるだろうしここは慎重に…

とりあえず手当たり次第の持ってきたマジックオイルを剣にぶっかけた
そのまま剣を構える
お互い下手に動けずジリジリと精神力だけが削られていく
汗が頬を伝い落ちる

「…ん?」

何か、手が震える
おかしいと思いそっと手を見る
確かに震えてるが…これは手が震えてるというよりも…?

「隙あり!!」

剣三郎が叫びと共にこちらに突っ込んできた

「待ッ…」
「一閃!!」

刃が煌くのが見えた
間違いなく腹部が分断される…こりゃ終わったか…?
キィィィィンという金属音が響く

「…なんだと…?」
「…え?」

剣三郎の刀は俺の剣によって止められていた
俺は何もしていなかったのに

「見切った…のか…?」
「いや、見切ってはないんだが…おお!?」
「なっ…クソ!!!」

突然剣が勝手に動き剣三郎に斬りかかった
いや、正確には斬りかかっているのは俺なんだがそれ自体は俺の意思じゃない
どちらかといえば剣が俺の身体を操っている感じだった

「クッ…ヤケになったか…!?
 なんて荒々しい剣だ…!!」
「いや、俺の意思じゃなくて…!
 クソッ…こんなんで勝っても嬉しかねぇよ…!」
510 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:25:48.63 ID:cTNfOCAo
止めようとするものの剣は止まらない
そしてついに俺の剣が剣三郎の次元刀を弾いた

「なッ…!?」

そのまま、切っ先は剣三郎の喉に当てられた
完全に決着がついた
しかし俺の腕は止まらず剣三郎の喉を突き破ろうとしている

「…ぐ…くそ…」
「何をしている…勝負はついた…
 早くトドメを刺せ…」
「馬鹿いうな…完全に俺の手で勝たなきゃ寝覚め悪いだろ…
 それにテメェが死んだらリカの居場所が…」

まるで見えない何かを綱引きをしているような感覚
必死に剣をとどめようと剣に抗う
汗が流れ落ち、もう腕が限界に近づきだした頃
剣はゆっくりと俺の意思に従うようになっていた
やがて剣は普通の状態へと戻った

「はぁ…はぁ…」
「…」
「…よし」
「…負けた上に情けをかけられるとはな」
「…お前、他の奴とは随分違うみたいだな」
「あんな奴らと一緒にするな」
「…人質を取ってよくいう」
「だからそれは何のことだ?」
「とぼけんなよ、ほら負けを認めたならさっさとリカを返せ」
「だから人質って…」
「いやー、立派立派
 まさかそいつを倒すとはなぁ」
「誰だッ!?」

後ろから不気味な声が聞こえ
振り向くとそこには仮面をかぶった奴とナイフを突きつけられているリカがいた

「…テメェ…!?」
「…なんだ貴様は…!?」

剣三郎も驚いている
どうやら本当に知らなかったようだな
511 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/01(土) 23:25:52.18 ID:AkyQMwDO
剣が真面目キャラだと…?
512 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:27:18.00 ID:cTNfOCAo
「…仮面…そうかお前がたまゆらが言ってたノスフェラトゥって奴だな」
「ご名答ぅ、いやしかし予想外だったよぉ…
 まさかそいつに勝てるとはねぇ…」
「いいからとっととリカを離せ」
「…ほらよぅ」

リカが突き飛ばされこっちによろめいてくる
慌てて倒れそうになるリカを支える

「おい、大丈夫かよ」
「うん…ごめん…また捕まっちゃった」
「まぁそれは今はいい
 それよりも…」

リカを離して俺はノスフェラトゥをもう1度見た
仮面、男か女かもわからない機械的な声、マントを羽織った不気味な姿
執行部を倒す者として暗躍する謎の英雄?
何が目的だこいつは…
そんなことを思っていると剣三郎が怒りを露わにしていた

「…どういうつもりだ貴様…!」
「どーいうつもりもなにもないよぉ
 ただちょっとお膳立てをしてあげただけさぁ」
「…残念だが
 お前は俺がとにかく嫌いなタイプだ…
 敵か味方かなんてのもどうでもいい!散れ!!」

剣三郎が床に転がっていた次元刀を取って
ノスフェラトゥへと向かっていった

「血の気が多いねぇ…」
「…!?待て剣三郎!!引け!!」
「何!?」
「ま…役立たずはいらないからねぇ…」
513 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/01(土) 23:28:18.94 ID:cTNfOCAo
何が起こったのかわからなかった
剣三郎が、宙に浮き、そのまま自らノスフェラトゥの鋭い爪へと突き刺さった
ポタ、ポタ、と床に血だまりが出来ていく

「かはっ…」
「…残念だったねぇ」

ズルリ、とノスフェラトゥの爪が剣三郎の腹部から抜けていく
ボタボタと、さっきより大量の血が床に落ちる
そこにビチャリと言う音を立て剣三郎が横たわった

「この野郎…!!」
「そう怖い顔するなよぉ…
 今日はそういう気分じゃないからねぇ…
 それじゃあね…また会おう…ゆき兄?」
「待てッ!?」

ノスフェラトゥは笑い声をあげて外へと逃げていった
まるで亡霊のように滑るようにするりと

「クソッ!!」
「ゆき兄、この…えと…剣三郎はどうするの!?」
「ええと…とりあえず保健室に…運ぶ…いや、動かさないほうがいいのか?」
「じゃあ私ヤチャマル呼んでくる!」
「待て!さっきのやつがいるかもしれない」
「じゃあゆき兄が呼んできて!」
「そしたら逆にあいつが戻ってくるかもしれねぇだろ!!」
「じゃあどうすんのさ!」
「とりあえず止血なりなんなりして2人でヤチャマルのとこに運ぶぞ!!」
「わ、わかった!どっかに救急箱とかあるはずだよね!!」

リカがドタバタと救急箱を探してる間
俺が剣三郎の傷口を押さえながらノスフェラトゥの言葉を思い出していた
なぜ、あいつは俺の名前を知っていたのか
些細なことだが、それがどうしても気になっていた




7.5時間目 - 切り開くは可能性 -
514 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/08/01(土) 23:34:12.94 ID:SasII..o
ゆきに乙!

剣かっこよすぎワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
515 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/02(日) 00:09:37.39 ID:NNDco2DO
ゆき兄乙!

だが、剣は尻神様のイメージが強すぎるんだwwwwwwww
516 :リリーホワイト :2009/08/02(日) 05:59:56.01 ID:7UF9xEDO
朝ですよー
517 :そら :2009/08/02(日) 09:37:57.17 ID:0gBn9wDO
仮面ライダー!ブラァーッ!



見逃した
518 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/02(日) 21:29:01.81 ID:7UF9xEDO
おはようございます
519 :そら :2009/08/02(日) 21:30:02.04 ID:0gBn9wDO
流石黒さん…いつも通りだ!
520 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/02(日) 22:23:53.91 ID:NNDco2DO
何時に寝たんだよwwwwwwwwwwww
521 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/02(日) 22:41:33.94 ID:7UF9xEDO
昼の12時だったかな
522 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/02(日) 22:50:03.11 ID:n4MuLfwo
レイアたんが僕を足で押し付けて
グチュグチュやってくるエロっちい新技を披露してくれました
523 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/02(日) 22:53:26.64 ID:n4MuLfwo
あ、ちなみにグチュグチュやられて
ピクピク状態の僕はそのまま秘伝のサマーソルトくらって乙りました

すごいんだぜ
グチュグチュからサマーまで一連の流れだから避けようが無いんだぜ
524 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/03(月) 00:41:59.87 ID:iIVOTYDO
早くピンクバケツ作れよ
525 :リリーホワイト :2009/08/03(月) 07:58:27.85 ID:iIVOTYDO
朝ですよー
526 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/03(月) 19:49:24.34 ID:djwXwnA0
夜なのかー
527 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/03(月) 19:54:07.97 ID:gkDrlX6o
睡眠と食事を削って
悪鬼のごとくモンハンをやり続ける
528 :破邪顕正幸福迅雷恵比寿之助 :2009/08/03(月) 21:09:49.51 ID:iExaNQAO
インポになった\(^O^)/
529 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/03(月) 21:36:12.07 ID:9otbtQDO
>>528
ちょwwwwwwwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwwwwwwww


イ`
530 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/03(月) 21:42:14.46 ID:9otbtQDO
昨日からゆき兄にレスしようと思って忘れてたり直後の衝撃発言で放置してるけど、ゆき兄だから別にいいよねwwww


いや、むしろドMなゆき兄なら喜んじゃうか
531 :ぽろりー :2009/08/03(月) 23:10:59.35 ID:f36QbYQ0
ゆき兄だからおk

>>528
一過性のものだからキニスンナ
532 :破邪顕正幸福迅雷恵比寿之助 :2009/08/03(月) 23:22:44.97 ID:iExaNQAO
>>529
きっと罰があたったんだ('A`)
これからは善行をつんで生きるお(´;ω;`)

>>531
ありがたい
明日治ってることを信じてるぜ
533 :リリーホワイト :2009/08/04(火) 08:31:29.31 ID:ED32JcDO
朝ですよー
534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/04(火) 19:12:29.39 ID:Xm9Cmi.0
夜なのかー
535 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/05(水) 00:17:28.98 ID:updwZ.DO
新しい携帯が微妙に使いづらいでござる
536 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/05(水) 01:41:00.86 ID:QolDhEDO
どんまいでござる

そして働きたくないでござる
537 :リリーホワイト :2009/08/05(水) 06:58:27.14 ID:updwZ.DO
朝ですよー
538 :そら :2009/08/05(水) 07:23:51.72 ID:e5Xrx.DO
にんにん
539 :ナイト :2009/08/05(水) 08:32:26.50 ID:updwZ.DO
汚いな流石忍者きたない
http://imepita.jp/20090805/306910
540 :そら :2009/08/05(水) 08:41:53.59 ID:e5Xrx.DO
かく!れん!じゃ!
にんじゃ!にんじゃ!
541 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/05(水) 08:46:04.98 ID:updwZ.DO
まさかこんな時間に人がいたとは
542 :そら :2009/08/05(水) 10:28:48.59 ID:e5Xrx.DO
私忍者ですから
543 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/05(水) 10:43:53.25 ID:QolDhEDO
この時間は見逃すだろ…jk…


(´;ω;`)ブワッ
544 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/05(水) 10:56:01.56 ID:updwZ.DO
>>542
お主も隠密か

>>543
僕もそう思ってた
545 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー同盟]:2009/08/05(水) 12:51:42.50 ID:CbqEzIDO
今日はちょっと韓国まで行ってきますね

サムゲタン食べたい
546 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/05(水) 13:01:10.36 ID:QolDhEDO
>>545
行ってらwwwwwwww
547 :そら :2009/08/05(水) 13:09:16.46 ID:e5Xrx.DO
>>545
韓国海苔よろしく
548 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/05(水) 14:07:51.55 ID:gduAYwwo
      ____
    /        \
   /             ヽ
   |              |
  /_______\
  | -─(<・>)-(< ・>)   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  (6      ̄   \ ̄| <   このスレもディケイドに
  |         ̄  /   |  破壊されてしまった
    \   /二二/ /     \_________
    /\      /\
       ̄ ̄ ̄
549 :ピュアハート [図書委員]:2009/08/05(水) 15:10:25.85 ID:se0uMgSO
>>545
チヂミよろしく
550 :そら :2009/08/05(水) 16:04:50.96 ID:e5Xrx.DO
http://imepita.jp/20090805/578060
えっ?
551 :そら :2009/08/05(水) 16:08:20.76 ID:e5Xrx.DO
http://imepita.jp/20090805/578060
えっ?
552 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/05(水) 16:37:59.51 ID:QolDhEDO
>>550-551
大事な事なので2回(ry
553 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/05(水) 20:23:33.95 ID:ZmQ6XUDO
黒やん携帯変えるペース早くね?wwwwww
554 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/05(水) 21:07:24.01 ID:updwZ.DO
>>553
補償お届けサービス使ったら新機種くれたんよ
555 :リリーホワイト :2009/08/06(木) 07:12:46.61 ID:KeuA3sDO
朝ですよー
556 :うにゅー :2009/08/06(木) 20:54:29.50 ID:rF7Wyek0
よるなのー
557 :はっとり君 :2009/08/07(金) 00:28:58.45 ID:VRz7XQAO
深夜でござる
558 :はっとり君 :2009/08/07(金) 00:30:54.45 ID:VRz7XQAO
深夜でござる
559 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/07(金) 01:33:51.86 ID:Si7V/Loo
大事な事なので2回(ry
560 :空天未開砕片綺羅点灯剥落賢者 :2009/08/07(金) 03:22:47.68 ID:sf1RPcDO
( ゚д゚)y-~ …これが若さって奴かね
561 :空天未開砕片綺羅点灯剥落彼方 :2009/08/07(金) 06:37:16.25 ID:sf1RPcDO
さぁ、家に帰ろう





あ、学校だわ
562 :リリーホワイト :2009/08/07(金) 07:04:48.57 ID:IlPcFcDO
朝ですよー
563 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/07(金) 08:22:16.16 ID:IlPcFcDO
http://imepita.jp/20090807/300990

まくら返せよぅ
564 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/07(金) 09:35:36.37 ID:ErFsv.DO
今日は残ってた!

ぬこかわいいよぬこ(*´д`*)
565 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/07(金) 19:48:55.83 ID:Hx4zLdY0
よる━━━━(゚∀゚)━━━━!!
566 :リリーホワイト :2009/08/08(土) 06:24:26.21 ID:pGTIc.DO
朝ですよー
567 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/08(土) 21:55:15.31 ID:ddDz2kY0
ようこそ邪気眼スレへ
るんるん気分で待っているそこの君!
だまって10時にf5ボタンを押すんだ
ねた子を起こすスレ主ゆき兄の物語がはじまるよ!
568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/08(土) 21:56:45.78 ID:ddDz2kY0
ようこそ邪気眼スレへ
るんるん気分で待っているそこの君!
だまってf5ボタンを押すんだ
ねた子を起こすスレ主ゆき兄の物語がはじまるきがするよ!
569 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/09(日) 00:25:20.35 ID:Q2blsF.0
始まらないんですね わかりまうs。
570 :そら :2009/08/09(日) 00:40:17.40 ID:JkxWFUDO
可哀想に見えたので


多分、モンハンのやりすぎで今頃死んだように寝ているのでしょう
しかし、全く音沙汰がないのは納得しかねますね
571 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/09(日) 02:07:58.14 ID:yyaKrwIo
うっかり寝過ごしたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


まぁ、今週はゆき兄モンハン三昧で原稿落とすと思ってたしな・・・
572 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/09(日) 08:38:03.77 ID:GPa2lkAo
ごめんね
来週はちゃんと出すからごめんね
573 :そら :2009/08/09(日) 08:54:44.24 ID:JkxWFUDO
ゆき兄さんが邪気眼小説書かないなら私がライダー小説を(ry
574 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/09(日) 09:25:17.17 ID:.0XnRYDO
じゃあ僕はポケモン小説を
575 :そら :2009/08/09(日) 09:45:36.84 ID:JkxWFUDO
>>574
楽しみにしてますね
576 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/09(日) 09:57:49.23 ID:.0XnRYDO
(´゚д゚`)
577 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/09(日) 10:00:28.52 ID:znKmEQDO
wwktk!
578 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/09(日) 11:05:33.22 ID:.0XnRYDO
じゃ、じゃあゆき兄の原稿が間に合わなかったら書く……かも
579 :そら :2009/08/09(日) 11:50:47.32 ID:JkxWFUDO
きたこれ!
580 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/09(日) 12:35:40.01 ID:d7d1kkDO
これは期待wwww
581 :ピュアハート [('A`)]:2009/08/09(日) 16:30:00.60 ID:VKTSRkSO
wktkwktk
582 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/09(日) 19:50:44.39 ID:yyaKrwIo
今年も衝動買いしますた・・・
柄が好みだったんだ!仕方あるまい!


もちろん出かける予定はないwwwwwwwwwwwwwwwwww
http://imepita.jp/20090809/710520

後ろ
http://imepita.jp/20090809/710810










おまけ
http://imepita.jp/20090809/711160
583 :ミギー :2009/08/09(日) 20:22:05.78 ID:znKmEQDO
美しい!!!!
私の浴衣と似てる!
584 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 [和服萌え同好会会長]:2009/08/09(日) 21:14:56.91 ID:.0XnRYDO
>>582
いぃぃぃやっはああぁぁぁぁぁぁぁぁ
585 :ピュアハート [('A`)]:2009/08/09(日) 21:17:06.33 ID:VKTSRkSO
>>582
ふつくしい……
今度オフに着てくればいいよ!

>>583
久しぶりにみた
586 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/09(日) 21:23:33.61 ID:yyaKrwIo
>>583
さすがタコ姉妹wwwwwwwwwwwwwwwwwwおそろかwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

>>584
メ欄wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

>>585
めんどくさ(ry
587 :ミギー :2009/08/09(日) 21:38:51.43 ID:znKmEQDO
>>585
そんなに私のことを考えてたのか!フハハ!
588 :たまゆら :2009/08/09(日) 23:03:11.51 ID:8BMD6y.o
       ノノノノ
      ( ゚∈゚ )
     /⌒` ´⌒ヽ
   //ヽ 人 ノ\\
 (( \\   ノ //
    / ̄ ̄ ̄\彡´
    / /\ノ\ )
   / /    //
   \\    \)
    (/
589 :破邪顕正幸福迅雷恵比寿之助 :2009/08/09(日) 23:43:30.18 ID:M0hGjoAO
ここでカードを2枚伏せてターンエンドだ!!
590 :恋するドラゴン :2009/08/09(日) 23:51:28.71 ID:.0XnRYDO
己のターン!
591 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/10(月) 00:39:22.69 ID:TczpymY0
              ゚.ノヽ
             、-'   `;_' '
             (,(~ヽ'~
             i`')
             | i'
          。/   !
         /),-'' ,,ノ
      ‐-、/    i
 ,  ゛ 三 ミ 
( ( (((`・ω・´))) ) )ノ<もうすぐ行くよー
 ヾヽミ 三彡, ソ    
/ )ミ13彡ノ
592 :リリーホワイト :2009/08/10(月) 07:50:33.52 ID:SBTbvgDO
朝ですよー
593 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/10(月) 16:23:18.62 ID:/hPP46DO
-消えゆく世界が交わる-


ゆき兄「…お前もライダーか?」


-消え去るはずの世界は交わり-


しげる「戦わなければ生き残れない…ってか」


-新たな世界となる-


剣三郎「変身ッ!!」


戒名組による、ライダーの戦いが今始まらない
594 :よるだよ :2009/08/10(月) 20:04:29.30 ID:VWhGBR20

>>593

………いわなくても、わかるな?
595 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/11(火) 03:39:54.57 ID:3yWMvUDO
夕食後に2〜3時間寝たら寝れなくなった件


朝起きれる気がしねぇ…
596 :リリーホワイト :2009/08/11(火) 08:27:48.72 ID:fC2bRQDO
朝ですよー
597 :ミギー :2009/08/11(火) 11:19:38.76 ID:.7NRpcDO
>>595
プロの私にかかると昼寝しても12時には寝れる
598 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/11(火) 20:43:52.12 ID:VXjUo8w0
YO!RU!!DA!!!UO!!!!
599 :ハットリ君 :2009/08/12(水) 02:18:51.05 ID:pSUFp6AO
深夜でござる
600 :リリーホワイト :2009/08/12(水) 09:01:19.80 ID:wPZTVoDO
朝ですよー
601 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/12(水) 16:31:44.43 ID:GMKD.Kco
ああ…やることいっぱいあったのに…
また爆睡しちゃった…
602 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/12(水) 20:49:18.32 ID:mJH9nTM0
よるなのかしら
603 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/12(水) 20:55:53.08 ID:jdHw1dgo
やけにダルいな・・・と思ったら室温31度だった件


ドライモードでももう少し涼しくなっていいと思うんだ・・・
604 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/12(水) 23:18:13.98 ID:mJH9nTM0
冷房?我が家は

 E うちわ

ひと夏超えるとスウィングUP
クーラーなんてそもそもn(ry
暑いよ…
605 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/13(木) 00:32:33.11 ID:.5TzGkDO
冷蔵庫のような部屋に生息してます
606 :ハットリ君 :2009/08/13(木) 01:31:05.85 ID:GIr8WEAO
深夜でござる
拙者お腹が空いたでござる
607 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/13(木) 02:54:26.89 ID:cX4.jiMo
     ヽ丶、 `-、 \ヽ ヽ
   ,=二、>'二:>、 ヾ 、ヽヽ、 ヽ
       ///'=ヾYヽ ミ上ヽい_ヽ
     l i :i:8,.-''' ´    ヽ....` ' - 、
     ヾiノ''´/        ヽ:::::::::::::::ヽ
     ,r'  /        ヽ i::::::::::::::::::::ヽ
.    ,r''/  i     i     ヽヽ、ヽ、:::::::::ヽ
   / ,i  i i ;   i i    ヽ ',ヾ ::ヽ::: :::::ヽ
.   l i i   i i i   ヾ、    ヽ、 ヽ ::ヽ::: :::::l
   l i i    i i i   ..ヾ、:::::::_:;;;ヽヽ ヽ::ヽ:: ::::l
.  l  い  :ヽヾ,::::::,.. --''' ´:::::::::::::\ヽ ヽ_::::l
.  l  ヾ、 ..::::ヽヽ'´  ,,. - ─ -::::::::::ヽ:,'´ ',:|
   l  ヾ、 ,,.- ´   '´ ,,r'i゙゙゙゙、ヽ、:::::::::i::i  :l:|
   ヽ .::::>´,r''''     '( ヽ、 iノ゙::::::::::::i::i o,ノ:|
   ヽ:::イ /,'r'l゙゙ヽヽ    ''''' ´ ::::::::::::::ヽi_ノ:l:|
     `'''ヽ、'ヽヽノ ::::::....     :::::::::::::::i',:l:::リ
       ヾ 、' ´  l:::::::::::::     ::::::::::::i::i:i::i     寝ない子ダレダ?
         `丶  ' -:::::::_,,.- 'ヘ  :::::::::/::::i:,'
         ヽ    ヽTt''' ´ l :::::/;;;;ヲ,'ヮ
           ヽ、   ヽ:::::ノ ::/'''´ ノ::i
,,            ` '' - ..., _,. ' rヵ'ワリ、 ::d
`゙゙ =、- .._     _r-/'''' -' .'.ゝ_ -、 く_  i、
:.:.:.:.:.:`''-二,r-''''´:.:.:.y ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::``゙゙゙'''' ─ - .:::::.._
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.、';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i'''' ─ - ,,,,,__,r'´゙゙ヽ;;;; ̄''フ' ニ、
:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:',;;;;;;;;;;;;;;;;r;;...,;;i    ,,. -''/:.:.:.:.:.:.}ー- ,i´' ,r´,r´ミ、
:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ;;;;;;;;;;;;l;;;;;l;;;l    r':.::.:.:.:.:.:.:.:r─'、  :i  i i' {  }    
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_:::::;;;i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.゙ー- ,,,_ ヽ:::::::i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::.:.:i i  i' ,r'ヾ
 i  ̄ '、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.:..:::::::::::i;;;r'`''''-',:.:.:.:.:.:.:.:.:.i::::::::::.:.:i i:::::i:::ヽ _ノ 
 ',   ヽ:.:.:..:....:::::::::ヽ、_::,ィ'''フ;;i ....:::::ヽ、:::::::::::ヽ::::::::...ヽゝ、_丶ー'
. ヽ  ..:::ヽ、::::::::::::::_;;::ノi  `''' ノ:::::::::::::::::::`''-t 、;;_ヽ--:::::_,ノ i
   iヽ__,,.-1゙''i'''''''゙゙゙´::::/;;;/i'i'''´::::::::::::::::::::::::::::人 `ーニニ-'  ∧
608 :リリーホワイト :2009/08/13(木) 09:50:17.31 ID:.5TzGkDO
朝ですよー
609 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/13(木) 19:29:54.50 ID:.5TzGkDO
人差し指の付け値が痛ーい
610 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/13(木) 19:44:32.03 ID:L/U.McDO
ゲームのやりすぎ的な?
611 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/13(木) 20:01:16.43 ID:.5TzGkDO
>>610
いやいやそんな馬鹿な
612 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/14(金) 01:24:29.61 ID:5VZLJ2DO
>>611
モンハンの(ry
613 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/14(金) 01:52:35.22 ID:u3MypsDO
>>612
今だに兄貴とやってるからな



でももう治った
614 :か蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/14(金) 02:18:10.56 ID:5VZLJ2DO
>>613
治ったのかwwww

まぁ、原因がモンハンならもっと前に発症してるよなww
615 :そら :2009/08/14(金) 02:18:53.01 ID:SDX8KYDO
流石廃人
616 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/14(金) 02:24:29.61 ID:u3MypsDO
>>614
違和感はあるけど痛くはない

>>615
廃人違う
617 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/14(金) 04:03:38.32 ID:u3MypsDO
>>614
今気付いたけど名前の最初の「か」ってなんだwwwwwwwwwwww
618 :リリーホワイト :2009/08/14(金) 08:09:53.50 ID:u3MypsDO
朝ですよー
619 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/14(金) 08:37:12.55 ID:5VZLJ2DO
帰省中なんだが
休みなのに8時に叩き起こされたお…眠いお…(´ω`)


>>617
「かいみょう」で登録してあるからなんかミスったwwwwwwwwwwwwww
620 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/14(金) 11:18:43.34 ID:NKnsskDO
どじっこヤチャたんかーわいー
621 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/14(金) 12:47:14.32 ID:T8azNiko
どじっこヤチャたんかーわいー
622 :リリーホワイト :2009/08/15(土) 13:16:13.40 ID:aiWmVsDO
昼ですよー
623 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/15(土) 19:03:14.07 ID:Z6RJjRYo
今日親戚とか集まってて
まとまったうp時間とれないから明日でいいかな?
624 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/15(土) 19:11:41.82 ID:iZrodsDO
明日だと…?

ああ…
明日の0時ですね、わかりました^^
625 :そら :2009/08/15(土) 20:19:31.48 ID:rVwFIgDO
黒さんのポケモン小説の出番ですね!
626 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/15(土) 20:24:29.59 ID:iZrodsDO
>>625
そ れ だ !
627 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/15(土) 20:56:40.03 ID:aiWmVsDO
待て待て待て待て待て待て待て待て!

こんな時ぐらいゆき兄を待ってあげようぜ!
628 :リリーホワイト :2009/08/16(日) 09:00:41.36 ID:fZhSPIDO
朝ですよー
629 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/16(日) 09:24:33.12 ID:YJjXfXAo
ポケモン小説マダー?

と孫が申しております
630 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/16(日) 22:04:25.30 ID:VODHAUAo
10時過ぎたな


ゆき兄め・・・
631 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/16(日) 22:10:00.09 ID:fOctJwDO
わざわざ挿し絵的なものを用意したのに…





ゆき兄くる前に消そうかwwww
http://imepita.jp/20090816/793030
http://imepita.jp/20090816/793550
632 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/16(日) 22:12:28.57 ID:nUGk4pYo
>>631
ちょっとまってよ!
お盆なんだよ!親戚一同ダブダブ状態なのよ!!
633 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/16(日) 22:22:19.92 ID:VODHAUAo
>>632
ダブダブ状態ってなんだよwwwwwwwwwwwwwwwwww
634 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/16(日) 22:31:01.37 ID:nUGk4pYo
>>633
アルコールでダブダブボタボタ的な
635 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/16(日) 23:00:44.38 ID:VODHAUAo
>>634
なるほど
636 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/17(月) 00:33:44.29 ID:PzDQk6DO
しかし…


うpしても反応がないと寂しいのぅ…(´ω`)
637 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/17(月) 00:41:52.99 ID:qmgbCUDO
>>636
酒ビンかっこいいですね
638 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/17(月) 00:54:26.38 ID:PzDQk6DO
>>637
見てたのかよwwwwww
639 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/17(月) 01:25:25.46 ID:qmgbCUDO
>>638
そりゃあね
640 :そら :2009/08/17(月) 01:55:03.86 ID:rdNjUADO
で…ポケモン小説は?
641 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/17(月) 02:34:35.02 ID:qmgbCUDO
>>640
わかったよ……明日から本気出すよ…








で、しげるのライダー小説は?
642 :そら :2009/08/17(月) 02:39:19.74 ID:rdNjUADO
>>641
わー…




な、何のことだか私にはサッパリ…
643 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/17(月) 03:09:21.06 ID:qmgbCUDO
>>642
僕も明日から頑張るからしげるも頑張って書いてね
644 :そら :2009/08/17(月) 03:41:41.65 ID:rdNjUADO
>>643
明日もとい今日から学校なんですが
後バイトと教習が

まぁ…合間の暇潰しに頑張ってみますかね
645 :リリーホワイト :2009/08/17(月) 06:24:06.74 ID:qmgbCUDO
朝ですよー
646 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/17(月) 07:26:37.59 ID:fsILV.AO
今日は暑い日になりそうだ
647 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/17(月) 13:11:32.62 ID:/w9ZPsAO
ぼんばへっ!
648 :そら :2009/08/17(月) 14:41:49.69 ID:rdNjUADO
お父さーん!
649 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/17(月) 15:03:27.99 ID:PzDQk6DO
ボンバヘッ!

といえばミギーだな
650 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/17(月) 15:11:43.30 ID:qmgbCUDO
ボンバヘッ
651 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/17(月) 15:26:54.12 ID:fsILV.AO
ボンバー
652 :ミギー :2009/08/17(月) 15:57:43.37 ID:udZtfkDO
もぅ…///みんなったら///
653 :そら :2009/08/17(月) 17:37:50.06 ID:rdNjUADO
>>652
え、誰
654 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/17(月) 19:16:37.48 ID:qmgbCUDO
私だ
655 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/17(月) 19:24:52.82 ID:fsILV.AO
そうか
ミギーなら良かった。だがてめーはだめだ
656 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/17(月) 19:33:39.69 ID:/w9ZPsAO
よく見ろ

それは残像だ
657 :ミギー :2009/08/17(月) 20:35:38.75 ID:udZtfkDO
私のために喧嘩しないでよぅ…///
658 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 21:59:53.10 ID:t4qc9xco
そろそろうpいくよー
659 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:06:21.89 ID:t4qc9xco
8時間目 - 激痛 -

視界は真っ暗闇
まるで深い泥沼をどこまでも落ちていくような感覚
そんな場所に佇む俺に誰かが語りかけていた

『…レ…ロ…ト…ハナテ…』

その声からは怒りも悲しみも喜びも楽しさも感じない
ただまるで弾け飛びそうなほどのピリピリした感じを受けた
ただその声はよく聞こえない

『ワ…ウ…キ…ナテ…』

声の主は俺に何を伝えたいのだろうか
ただ何度も何度も、消えそうな言葉を俺に投げかける
お前は誰なんだ

『ワレヲ…トキハナテェェェェエエエエ!!!!』

絶叫、轟音、もうそれは声ではなく
ただの雄叫び、それでも何を言っているかはしっかりと理解できた
突然、世界が回転した
より深い暗黒に頭から落下していく
やがて声が聞こえなくなる
最後に聞こえた、小さな、そしてハッキリとした声
それはまるで呪詛のように耳の奥にへばりついたようにずっと俺の頭の中を巡っていた




『我をこの牢獄より解き放て』

660 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:08:57.14 ID:t4qc9xco
10/17(金)深夜

「おい!出血が止まらねぇぞ!!」
「まずいな、貫通している
 気の流れがグチャグチャだ」
「どうすんだよ!?」
「…仕方ない」
「…ってオイ!何する気だ!?」
「この状態で内気功は使えない
 なら直接しかない」
「ここでやんのかよ!?」
「時間が無い、ゆき兄…はいい、リカちゃんだけ手伝ってくれ」
「正気か!?」
「わ、わかりました…がんばります…」
「大丈夫かよ?」
「やるしか…ないし…」

頭が重い、何か聞こえるが起き上がる気力がない
ゆき兄とリカとヤチャマルの声が聞こえる
とても慌しく焦っているような声
そこで俺の意識はまた消えていった


661 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:12:15.41 ID:t4qc9xco
10/18(土)早朝

少し眩しさを感じて目を開けた
窓から朝日が差し込んでいた
頭がクラクラする、随分寝ていたらしい
同時に、鼻にツンとした臭いを感じた

「…?……!?」

声が出ないことに気がついた
驚いてもう1度喋ろうとする

「…あ、あー…あー…あー」

今度はちゃんと出る
声を当分発していないと出し方を忘れてしまうと聞いたことはあるが
これがそういうことなのか
周りを見渡すとここはどうやら保健室のようだった
確か俺は黒やんと戦って…倒した…んだよな…
そういえばゆき兄はどこにいるんだろう
そもそも俺はどのくらい寝てたんだろう
ゆっくりと身体を起こす、まるで鉛のように重かったがなんとか立ち上がった
それにしてもこのツンとする匂いはなんだろう、どこかで嗅いだことがあるような…
シャッ!と勢いよくカーテンを開けた
その瞬間、飛び込んできた光景に驚愕した

あたり一面血まみれ
白くて清潔さを感じさせる保健室は血があちこちに飛び散り
乾いて変色した部分や鮮やかな赤が折り重なり恐ろしい光景だった
何も言えずに呆然としていると壁の隅に血まみれになった白衣を着てうなだれているヤチャマルが見えた
その横で同じような姿でうなだれてるリカがいた

「ヤチャ…マル…?」
「…」

返事はなかった
もう1度、大きめの声でヤチャマルを呼んで見た

「…起きたか、たまゆら」
「あ…うん…いや、それよりこれは…」
「…何、少し頑張っただけさ
 疲れたから寝かせてくれ…」
「え…うん…」
「聞きたいことはゆき兄に聞け
 おやすみ…」
「お…おやすみ…」

それだけ言うとヤチャマルは寝息を立て始めた
これ以上聞ける雰囲気ではないと判断した俺は静かにゆっくりと血まみれの保健室を後にした
662 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:15:57.02 ID:t4qc9xco
保健室から出てすぐの壁にゆき兄がよりかかって寝ていた
そっと揺り起こして見る

「ん…」
「起きろよゆき兄」

ゆっくりとゆき兄の目が開いた

「…やっとお目覚めかい」
「…俺、どのくらい寝てたの?」
「4日ぐらいだな…今日は土曜日だぜ?」
「そんなに…寝てたのか」
「…話しておかなきゃならないことは沢山ある
 とりあえずここじゃなんだしな…寮に戻るぞ」
「うん…うわっ…」

足がふらつき、よろけそうになった

「…4日寝てたからか、すっ転ぶなよ」
「う、うん…」

フラフラする頭と身体でなんとか寮にたどりついた
ゆき兄と一緒に自分の部屋に入った
部屋に入るなりゆき兄はベッドに腰を下ろした
663 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:20:26.34 ID:t4qc9xco
「さて…何から話せばいいものか」
「…」
「…とりあえず俺も…戦えるようにはなったぞ」
「え?」
「これについての説明はめんどくさいから省くぞ」
「…うん、まぁ…いいけど…」
「執行部を1人倒したんだ、だけどそこでノスフェラトゥが現れた」
「ノスフェラトゥって…あの仮面の奴か!?」
「そうだ、多分たまゆらと接触した奴と同一人物だろうな」
「俺が倒した執行部は剣三郎っていうんだけどな
 そいつは執行部にしてはなんつーか武人肌でな
 正々堂々戦おうとしていたみたいなんだが、ノスフェラトゥがリカを人質にとってな
 それを知った剣三郎が激怒してノスフェラトゥに突っ込んだんだが返り討ちにあったんだ」
「剣三郎ってやつも特殊な能力もってたんだろ?」
「ああ…かなり強烈だ
 だけどノスフェラトゥも恐らく何かの能力を持っている
 何が起こったかよくわからなかったがな…」
「…じゃあノスフェラトゥも執行部の1人…?」
「いや、剣三郎はノスフェラトゥのことを知らなかったみたいだ
 となると執行部か生徒会の誰かがノスフェラトゥとして暗躍してるのか
 それとも俺たちにも生徒会にも属さない第3勢力かだ」
「…」
「それともう1つわかってることは…
 ノスフェラトゥは敵だな、少なくとも俺にとっては」
「そうか…得体の知れない奴だとは思ってたけど
 ノスフェラトゥは何が目的なのかな?」
「わからない、ただ執行部と俺たちをぶつけたいのは確かだ
 そのためにわざわざリカを人質に取ったんだからな」
「…くそ、俺が寝てる間にそんな」
「それとノスフェラトゥについてだけどもう1つある」
「何?」
「学園中にノスフェラトゥの噂が広まってる
 執行部を倒し学園に平和を取り戻す正義のヒーローって感じでな」
「え…?」
「実際は俺たちの手柄を横取りしてるんだけどな
 だけど皆は信じてしまう…」
「…」

いつも突然現れ、突然消える正体不明の怪人ノスフェラトゥ
目的こそわからないが、ゆき兄の話を聞く分では少なくとも味方ではないらしい

「あ、それと何で保健室血まみれだったの?」
「ありゃあヤチャマルが剣三郎を治療したんだよ
 …つーか血まみれになってたのか…」
「そっか…なんか納得した…」
664 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:27:05.28 ID:t4qc9xco
そのとき、俺のお腹が盛大に音を立てた

「…う」
「…そういやぁ、点滴だったからな…
 何も食ってないわけか」
「そうみたい…」
「ただ突然固形物をガッツリ食うのはよくない気がするな
 スープなりおかゆなり食ってろよ」
「うん…わかった…」
「それじゃ俺は寝る…」
「寝るの?」
「…戦ったうえにずっと起きてたからな、じゃあな」
「あ、うん…」

ゆき兄は部屋を出て行った
1人取り残された俺は買い置きしていた忠告を無視して食料を漁った
一瞬吐きそうになったが空腹には勝てずに無理やり食料を胃袋に押し込んでいった
だがあまり量を食べることはできずに空腹が満たされたぐらいで食べるのをやめた

しばらく頭の中で俺が寝ていた時にあったことを整理することにした
ゆき兄が執行部を1人倒した
しかしゆき兄を執行部の元におびき出したのはノスフェラトゥだった
そしてノスフェラトゥはゆき兄と戦っていた執行部を倒して消えてしまった
そして今ノスフェラトゥは学園のヒーローとされている
たった4日ほど眠っていただけで色々ありすぎだろう…

そのときドアが勢いよく開いた
ゆき兄だった

「寝るんじゃなかったの?」
「今日の夜イビルアイ集合な、8時くらいだ」
「え…?」
「ヤチャマルが話しておきたいことがあるってよ
 それじゃちゃんと来いよ」
「…わかった」

ゆき兄はまた勢いよくドアを閉めていった
夜の用事はできたが、今から夜まで一体どうすればいいだろう
4日間眠っていたおかげか全く眠気もなく
かといって特にやることもない
…いや、そういえば前にゆき兄から借りたゲームが…
665 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:32:44.32 ID:t4qc9xco
10/18(土)夜

ちまちまゲームをやり続け結局夜まで時間が潰れた
時計を見るとそろそろ約束の時間だったので寮を出てイビルアイに向かう
途中でゆき兄と出会ったので一緒に行くことにした
イビルアイに入るとヤチャマルがカウンターに座っていた
こちらを見て神楽君がいった

「いらっしゃい、イビルアイにようこそ」
「…来たか、まぁこっちに座れ」

促されるままにヤチャマルの隣の椅子に座る
俺の横に座ったゆき兄に神楽君が話しかけた

「ねぇどうだった?」
「とりあえず成功はした…ただ」
「ただ?」
「お陰で勝てたっちゃ勝てたんだが…
 途中で俺の意思に反して剣が勝手に動いてな」
「ふむ…興味深いね…
 魔翌力と宿したと同時に意思を持った…?」

何を話しているかはわからなかったが真剣に話しているので
とりあえず口出しはしないでヤチャマルに用件を尋ねてみた
ヤチャマルはグラスを置いてこちらに向き直った

「身体はもういいのか?」
「…うん、大丈夫…だと思う…」
「用件ってのは黄龍鉄甲のことさ」
「黄龍鉄甲の?」
「ゆき兄には話したが、黄龍鉄甲は戦闘中に使用者の気の流れを著しく加速させる
 結果、通常では出しえない力を発揮できるし、その時に負った傷の治りも早い
 だがそれは限界以上の力を出し続けているようなものだ
 使い続けて身体が平気なわけがない、簡単に言うと命を削って力を搾り出してるようなものだ」
「…」
「特に今回の衰弱は酷かったな、4日も眠り続けるほどだ」
「それは…もう戦うのをやめろって言ってる?」
「いや」

ヤチャマルはグラスを手に取り飲みながら話し出した

「ただ知っておいて欲しかっただけさ
 戦いをやめるも続けるもたまゆらの自由だからな」
「…そっか」
「まぁジュースでよければ飲め」
666 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:38:49.27 ID:t4qc9xco
その時、入り口のドアがカランと音を立てた
振り向くと隙間から誰かが覗いていた

「ヤ〜チャ〜マ〜ル〜さ〜ん…
 いっぱいおごってくれませんか〜…」

この声は…と思った瞬間にヤチャマルがカウンターの上にあったマドラーをブン投げた
高速で放たれたマドラーはドアの隙間から覗いてたアイツに見事に命中した

「うぉあだぁ!?」

ドターンガターンビターン!な感じの音がドアの向こうから聞こえた
そしてすぐに声の主が飛び込んできた

「でこに刺さったぞ!今刺さったぞ!!
 マドラーがブスッと刺さったぞ!!」
「…ほろにが…」
「おろ、ガキンチョ、起きたのか」
「…」
「なぁなぁ一杯奢ってくれだぎゃぁッ!?」

ヤチャマルが10円玉を投げつけたらしい
見事にそれはまたほろにがのおでこに命中した

「いっ…つぅ〜…!
 頭割れたかと思った…!!」
「学生にたかるような脳みそは1度叩き割って洗浄したほうがいいかもな」
「おお、怖い怖い
 いやだってよぉ…ここにきてからアルコールなんて全く摂取してないしな
 ほら俺だってたまには息抜きを…ね?」
「…全く落ち着いて飲めなくなったな…」
「…よし、ゆき兄奢ってくれ」
「うるせぇ下痢男」

下痢…?

「だからいくらなんでもそのあだ名はやめろと…」
「とにかく奢らないぞ」
「…」
667 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:40:04.46 ID:t4qc9xco
ほろにがは後ろでウロウロしていた
もはや誰も相手にしていなかった
神楽君ですらシカトしていた
しばらくすると深いため息をついてドアから出て行った
それを見届けるとヤチャマルが言った

「放っとけ放っとけ」

次にゆき兄が言った

「俺もコーラが飲めなくなったらと考えると…
 まぁ…ちょっと可哀想だな」

次の瞬間ドアが盛大に開いてほろにがが飛び込んできた

「可哀想だろ!?可哀想なんだよ!!
 だから一杯頼むわ!!」
「前言撤回、ゴミ捨て場に帰れ」
「チッ…」

またほろにがはドアを開けて出て行った

「…絶対また外で聞き耳立ててるぞ」
「…」

しばらく全員が無言だった
するとゆき兄が立ち上がった

「話も終わったみたいだし俺は帰るぞ」
「もう帰るの?」
「眠いんだよ」
「…俺はどうしよう」
「特に用も無いならいればいいんじゃないか?」
「…うーん…じゃあもうちょっとここにいるや」
「おうよ」

ゆき兄は手を振りながらイビルアイを出て行った
ドアの向こうから

「ここにいんなよ…邪魔だろ」
「なぁ〜ゆき兄〜…一杯でいいんだよ〜」
「しつこい…」

などというやり取りが聞こえた
それからしばらくヤチャマルと神楽君と他愛もない話をしながら
イビルアイで時間を潰した
668 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:41:16.43 ID:t4qc9xco
10/18(土)深夜

「久しぶりですね会長」
「…来た理由はわかってるな?
 ノスフェラトゥについてだ」
「…ええ、ただの愉快犯かと思っていましたが」
「…早急に手を打て」
「尽力しますよ」
「…」
「執行部も少なくなってきてましてね」
「だろうな」
「…ですがご心配には及びませんよ
 楔は守り通します…」
「…残り4つ
 恐らくそろそろ影響が出始める」
「だからこそ僕らが必要になる…そういうことですね」
「…そう、それが生徒会の…」
「心得てますよ…」
669 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:42:15.78 ID:t4qc9xco
10/19(日)午前

時間が11時を回ったあたりでイビルアイを出て
自室でなんやかんやとしたあと眠った
寝れるかどうか微妙だったがすんなり寝れたのだ
目が覚めると時刻は午前10時少し過ぎだった
適当に顔を洗ってベッドに腰を降ろして今日はどうしようか考えた

「やっぱり別段やることはないんだよなぁ…」

とても平和な日、そう思う
ずっと戦いっぱなしで気の休まるときがなかったからな…
こうしていると戦っていることを忘れてしまいそうだった
窓を開けて見た、気持ちのいい陽射し、同時に何人もの大声
どこからどうやら学校のほうから聞こえているようだった
気になった俺は他にやることも無いので言ってみることにした

寮を出て学校に向かう
グラウンドには人だかりが出来ていた
まさかまた誰かが断罪されて磔にでもされてるんじゃないかと思ったがそうではないらしい
輪の中心で誰かが演説をしていた

「生徒会を許すな!!」
「許すな!!」
「生徒の安全を考えない生徒会なんて必要ない!!」
「必要ない!!」
「教師も皆怯えてるならば僕らがやるしかない!!」
「やるしかない!!」

これは…生徒会への反抗?

「恐れるな!僕らには心強い味方がいる!!」
「そうだ!生徒会を打ち倒し学園に平和を取り戻すヒーロー!」
「ノスフェラトゥ!!ノスフェラトゥ!!!」
「「「ノスフェラトゥ!!ノスフェラトゥ!!!」」」

ノスフェラトゥ…
ゆき兄の言ったとおり奴は一般生徒にはヒーローとして扱われてる
しかしここまでなのか?
…いや、それはともかく…ここにいる生徒はこんなことをしていて大丈夫なんだろうか…
もしこれが生徒会や執行部に見つかったら…
いやこれじゃ見つけてくださいと言っているようなものだ
俺は一歩前に出た

「あの…」
「ん?」

周囲の視線が一斉に俺に集まった
若干ひるんだが逃げるわけにもいかない
670 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:43:48.48 ID:t4qc9xco
「こういうのやめたほうがいいと思います…
 生徒会に見つかったら…」
「何言ってんだ!ノスフェラトゥが僕らを助けてくれる!」
「そうさ!彼は僕らを見捨てない!!」
「違う!!あいつはそんなんじゃない!!執行部を倒しているのは…」

大声を張り上げた
周囲がシンと静まりかえった
気がついたら取り囲まれていた

「…お前、執行部なのか?」
「え?」
「…そうか…お前も執行部か…」
「え…違…」
「来い!!」
「なッ…うわっ…!」

6人ほどに囲まれ、腕や足を掴まれて連れていかれる
校舎裏に連れていかれそこで地面に投げつけられる
背中に痛みが走る

「うっ…」
「テメェら執行部のせいで俺たちは…」
「ブッ殺してやる…」
「待て…誤解…」
「今更ごまかしても遅いんだよ!!」

なんだ、何かがおかしい
この場にいる全員何かがおかしい
目がギラギラしているというか…とにかく危ない
逃げようにも周囲を囲まれて動けない
どうすればいい…どうすればいいんだよ
671 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:44:43.03 ID:t4qc9xco
「あれあれ…先輩、1対6で喧嘩とはなかなかハードですね」
「え?」

声の聞こえた方向を見ると1人の男子生徒が立っていた
その男子生徒はゆっくりと俺のほうへ近づいてきた
全員が男子生徒に注目していた
男子生徒は全員を見渡すと俺に向き直っていった

「先輩、こいつら俺がやっていいですか?」
「え…?」
「おい、テメェいきなり出てきて何言ってやがんだよ!!」

リーダー格の男が男子生徒の肩を掴んだ

「…1人」
「あ?がごっ…!!?」

振り向き様に、リーダー格の男の顎に男子生徒の肘が叩き込まれた
後ろにリーダー格の男は後ろに吹っ飛んだ
全員に動揺が走った

「ほら来いよ、遊びたいんだろ?」

男子生徒は指で挑発している
それに激昂した残り5人が雄叫びをあげて一斉に男子生徒に飛び掛った
672 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:46:17.04 ID:t4qc9xco
10/19(日)同時刻

「あれ?ゆき兄こんなところで何してるの?」
「ん…よぉリカ…たまゆら見なかったか?」
「いや、見てないよ?部屋にいるんじゃない?」
「部屋にもいなかったんだ」
「んー…休みだしどこかに遊びにいったんじゃない?」
「だといいんだが…なんか胸騒ぎがしてな」
「また勘か…」
「杞憂ならいいんだが…」
「ん、向こうから走ってくるのは…ほろにが」
「おいおいおいおい!ゆき兄!
 たまゆらのガキンチョが絡まれてたぞ」
「どこでだ!?」
「校舎裏だよ校舎裏!びっくりしたわー!」
「見捨てたのかよ!」
「だって俺あんまり人に見つかるわけにはいかねぇんだよ!
 だからこうしてゆき兄に伝えにきたんだよ!」
「…くそっ!おい、リカここで待ってろ!」
「う、うん…気をつけてね」
673 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:47:14.27 ID:t4qc9xco
10/19(日)同時刻

「もう…許してください…」
「俺たちが…悪かったです」

何が起こっているのか
俺を取り囲んだ6人は全員1人の男子生徒に叩き伏せられた

「つまんねぇ奴らだなぁ…
 ほら、立てよ!立たないとこのまま死ぬぞ!!」
「ゴハッ!!」

倒れている奴の腹部に容赦なく蹴りを叩き込む男子生徒
蹴られた生徒は口から汚物を吐き出していた
男子生徒の表情は嬉々とした喜びを感じさせた

「お、おい…さすがにやりすぎ…」
「んー?」

男子生徒がこちらを振り向く

「…あんた、こいつらにリンチにされそうだったんだぜ?
 なんで庇うの?」
「だけど…いくらなんでもやりすぎ…
 このままじゃ本当に死んで…」
「死んでいいじゃん、こんな奴ら」

あっけからんとした"死んでいい"という発言
背中に冷たい感覚

「何を…」
「力も無い癖に真実かどうかもわからない救いにすがって
 自らが力を得たように錯覚してもなお群れることでしか自らを誇示できない馬鹿どもは死んだほうがいい」
「お前…まさか…」
「…紹介が遅れたね、執行部の1人…雷雲…
 よろしくね、たまゆら先輩」
「う…」
「まぁそんなわけでさ…こいつらは死んだほういい」
「待てよ!!」

あわてて雷雲を後ろから抑える
特に抵抗する様子も無い
674 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:50:26.40 ID:t4qc9xco
「甘いね…そんなんで僕に勝てるのかな?」
「とにかく…やめろ!!」
「はいはい…よかったな、お前ら、今回は見逃してやるよ
 さっさと消えろ、目障りだ」
「う、うわああ…」

6人は一目散に逃げ出した
残ったのは俺と雷雲の2人だった

「離してくださいよ」
「…」

ゆっくりと警戒しながら束縛を解いた
雷雲は向き直って動かない

「会長から先輩を倒せって言われてるんですよ」
「…」
「…どうします?なんならここでやってもいいんですよ?」
「たまゆら!!」
「え、ゆき兄?」

ゆき兄が向こうから走って来る
それを見た雷雲はため息をついた

「…邪魔が入ったようですね
 ま、どうせすぐに戦うことになると思いますけどね」

そう言い残すと雷雲は去っていこうとした
ゆき兄とすれ違った瞬間、ゆき兄が若干驚いた顔をした
雷雲が去るとゆき兄がすぐに近づいてきた

「たまゆら…今の奴は…」
「執行部…らしい」
「大丈夫か?」
「あ…なんていうか…あいつが助けてくれたんだけど…」
「あいつが…?」
「少し…やりすぎだとは思ったけど」
「あいつは…ヤバいぞ」
「え?」
「すれ違うときに目が合ったんだ…
 狂喜を感じるほど楽しそうな目だった…」
「…」
「あいつと戦うのか…」
「逃げられないと思う…」
「あいつとの戦いのときは…絶対に俺をよべ」
「え…?」
「いいな」
「あ、ちょっとゆき兄…」
675 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:51:19.67 ID:t4qc9xco
ゆき兄はさっさと行ってしまった
雷雲…やはり俺は執行部との戦いから逃げられないか
いや、別にそれはいい
重要なのはあいつに勝てるかだ
もう1度黄龍鉄甲の朱雀を発動させることができれば…
しかしヤチャマルが忠告してくれたように
あれを使うと命を削る…か
しかしそれでも殺されるよりかは幾分マシなんじゃ…

「おいすー」
「…ん?」

顔をあげると目の前にほろにががいた
片手にポテトチップスの袋を持ってバリバリ食っていた

「いやリカって子によぉ数日マトモなものを口にしてないって言ったら
 コレくれたんだよ、いい子だなぁガッハッハ」
「プライドはないのか…」
「生きてく上では邪魔なだけだそんなもん
 長生きしたきゃ変なことに首突っ込まないことだな
 おっと…もう頭のてっぺんまでどっぷりか」
「そういうあんたこそこんなことに首突っ込んで長生きとか言えたもんじゃねぇけどな」
「まぁこれが生きてくための仕事だからな
 それに…」
「それに?」
「……いや、なんでもない」
「?」
「…ま、いいじゃねぇか
 俺の事情なんて知ったこっちゃねぇだろ?」
「…それもそうだが」
「それじゃあな、ガキンチョ、せいぜい長生きしろよ」

そう言うとほろにがはフラフラとどこかに言ってしまった
俺も戻ろう…
676 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:55:57.12 ID:t4qc9xco
10/19(日)午後

戻りついでにシャインで昼食を取っていくことにした
店内に入るとカナが走りよってきた

「いらっしゃいませ〜シャインにようこそ〜…ってあれぇ?
 なんかたまゆら君見るの久しぶりだぁ」
「はは、ちょっと身体を壊して寝入ってたんだ」
「え〜そうなんですか〜?
 もう大丈夫なんです?」
「もう平気だよ」
「病み上がりが1番怖いんですよー
 こういうときこそシャイン特製
 "ウホッいい感じ何回でもいけちゃうよ!スタミナ抜群丼!"でも食べて栄養つけてください」

なんだろう、とても食べたくない
そのままカナに席に案内してもらった

「それで何にします?」
「えーと…」
「あ、それじゃウホッいい感じ何回で
「ハンバーグ定食!!!!」
「…」
「ハンバーグ定食…」
「かしこまりましたーハンバーグ定食1つー」

危なかった…また勝手に決められるところだった
名前が長かったおかげで助かった
ハンバーグ定食を待っていると誰かが前の席に座った

「やぁたまゆら、久しぶり」
「ピュア…」
「少し聞いてもらいたいことがあるんだ」
「ん?」

ピュアはニコニコしながら話し始めた

「最近図書室に泥棒が入ってね」
「ええ?」
「まぁそれはいいんだ、それでその関係で本を漁っていたんだが…
 とても興味深いことがわかった」
「うん?」
「関連性を求めて本から本を渡り歩く
 そこに一つの答えが浮かび上がる」
「答え…?」
「…この学園には…謎が多すぎるのさ」
「謎?」
「設備が多すぎる、一見必要ないようなものすらね」
「…」
「俺は思うんだ、この学園は学校というカムフラージュを施した
 なんらかの目的を持った建物として建てられたと」
677 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:57:43.10 ID:t4qc9xco
「…考えすぎだろ?」
「…そう、まだ疑惑の域を出ない
 確信に至るには深い懐疑の森を抜ける必要がある」
「…」
「すまない、たまゆら君が気にすることはない
 ただ勝手に僕が思っているだけだ」
「あ、いや別に謝らなくても」
「…見当外れならそれでもいい
 だけどもし真実が僕が思っている通りならそれを知らしめたい
 だからやれるだけやってみようと思うんだ」
「どうするつもり?」
「…僕にできることは本を読んで
 そこに込められた真意を掴み取ることだけさ」
「お待たせしましたーハンバーグ定食でーす」

カナがハンバーグ定食を運んできた
それを見たピュアは席を立った

「それじゃあね、ゆっくり食べな
 また何かあったら話してあげるよ」
「あ…うん、それじゃあね」
「ああ、またね」

ピュアは行ってしまった
ハンバーグ定食を口に運びながらピュアの言ったことを考えていた
いくらなんでも考えすぎだろう
学校は学校以外の何でも無い
だけどなぜか気になってしまいハンバーグ定食の味が全くわからなかった…
678 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 22:58:50.49 ID:t4qc9xco
10/19(日)夜

部屋で適当に時間を潰していた
退屈だがこういう時間は嫌いじゃない
特に執行部との戦いの中でこういう時間は貴重だとも思える
平穏というものはいつも突然崩れ去るものだから…

「本当に最近心休まるときってのが少ないな…」

そう呟いた時だった

「その通り、平穏なんてのは偽りだぁ」

後ろから聞こえた声
咄嗟に黄龍鉄甲を取り構えたまま振り向く

「ノスフェラトゥ!!!」
「ククッ、こんばんは…だなぁ」
「テメェ…!!」
「血の気が多いなぁ…?」
「黙れ!ゆき兄から全部聞いたぞ!
 どういうつもりだ!何が目的だ!!」
「カッカするなよぉ…同志だろぉ?
 お互い執行部を倒すのが目的だろぉ?」
「リカちゃんを人質に取ってまで
 ゆき兄と執行部を戦わせたお前に同志なんて言われる筋合いはない!!」
「ああ…そのことで怒ってるのかぁ…
 それについては謝るよぉ、悪い悪い」
「…信用できない」
「悲しいなぁ…じゃあほらぁお詫びに執行部…雷雲だっけ?
 あいつについて教えてやるよぉ」
「何だと…?」
「率直に言うと、今のオマエじゃあいつにはどう足掻いても勝てないねぇ
 ゆき兄と協力したところで勝てる可能性なんて1%にも満たないだろうねぇ」
「なら俺はその1%に満たない可能性に賭ける」
「聞こえはいいがそんなの馬鹿のやることだぜぇ?
 勝つには、やはりソレが鍵だぁ」
679 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:00:01.64 ID:t4qc9xco
ノスフェラトゥはその長い爪で黄龍鉄甲を指差した

「いいかぁ?お前は先日ソレの秘められし力の1つ朱雀を解放した
 だけど雷雲には朱雀では勝てないんだぁ」
「…なぜ…知っている?」
「…ククッ、いいかソレにはまだ力が秘められてるんだぁ
 その力を解放できるかどうかが鍵だぁ」
「お前は一体何者なんだ…」
「…何度も言ったろう?
 俺はな、生徒会が邪魔なんだよぅ」
「…」
「…期待してるぜぇ?それじゃあなぁ」
「待てッ…?」

ノスフェラトゥがこちらに走ってきた
咄嗟に腕を前に組んで防御姿勢を取る
だけどノスフェラトゥは俺の横をすり抜けて窓から飛び出した
3階だぞここは!?
慌てて窓から外を見る
夜が広がっているだけでノスフェラトゥの姿はもうどこにもなかった
…奴は一体…
680 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:01:00.50 ID:t4qc9xco
10/19(月)朝

あまり眠れなかった
昨日は日曜だと言うのに気疲れすることが多すぎた
ノスフェラトゥのことは気になるが今はともかく雷雲だ
仕掛けてくるとしたら学校も始まったことだし今日ぐらいだろう
教室につくとリカが話しかけてきた

「おはよーたまゆら君」
「あ、おはよう」
「なんか疲れ顔だよ?」
「寝不足かな…」
「あー、テスト勉強してたんだね」
「え?」
「あれ?」
「いや、テスト勉強って?」
「…あー…そっか寝てたから聞いてないんだよね…
 今週末から2学期中間テストだよ」

聞 い て な い

なんだそりゃ、この頭が痛い状況にさらにテストなんて絡んでくるのか

「…まぁ…たまゆら君は執行部とのこともあるし…
 私のノートを貸してあげるから」
「…心遣い痛み入ります…」
「そもそも俺は紙切れ一枚で個人の力量を判定するってのが気に食わない」

いつの間にか後ろにゆき兄がいた

「ゆき兄…テストの日ぐらいサボるなよ?」
「…ああ…」
「信じられないな…」
681 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:02:16.88 ID:t4qc9xco
10/19(月)昼休み

シャインには昨日行ったので購買でパンを買って屋上で食べることにした
ゆき兄も誘ったが「今日はいい」とどこかに行ってしまった
リカも友達と食べていたのでしょうがなく1人で食べることにした
屋上につくととても会いたくない奴にあった、高橋
逃げようとしてすぐにドアを閉めて階段を降りようとした

「待てよ」

観念して後ろを振り向く

「そう睨むなよ、今日は別に何もしやしねーよ」
「…本当かよ?」
「ノスフェラトゥ…」
「え?」
「こんだけ噂になってんだ、知ってるだろ?」
「…まぁ」
「そいつを探してる」
「どうして…?」
「…どうしても嫌な予感がしてな
 一般生徒を煽り生徒会と対立させる
 自らの手は汚さずな、それがどうにも気に食わない」
「…お前は、生徒会を守ろうとしているのか」
「…生徒会自体を守ろうとしてるわけじゃない
 俺が守るものはもっと別にある…
 だけどそのためには気に食わなくても生徒会を存続させる必要がある」
「お前は…何を背負っているんだ?」
「…お前に話すようなことじゃないさ
 何も情報は出てこないようだな、それじゃ俺は行くぜ」
「…」
682 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:04:21.34 ID:t4qc9xco
高橋は屋上から去っていった
あいつも何かを知っているのか…
そうこう考えてるとまた誰かが屋上に入ってきた

「先輩、調子はどうですか?」

その声に飛びのく
入り口には雷雲が立っていた

「ふん、怯えてますね」
「…雷雲」
「安心してくださいよ、今はやりません」
「…」
「執行部員の本当の戦いは深夜ですからね…」

…どうやら本当にここでやるつもりは無いらしい
それでも警戒態勢は解かずに話し続ける

「深夜、どこにいけばいい?」
「あれ?やる気マンマンですね?
 まぁ話が早くて助かります…
 そうですね、深夜0時にグラウンドでいいですよ」
「…わかった」
「楽しみにしてますよ…逃げたら…
 想像にお任せしますよ、クスクス」

笑いながら雷雲は行ってしまった
どのみちやるしかない
なら早いほうがいい
ただ気になるのはノスフェラトゥの今のままでは勝てないということか…
とにかくゆき兄に連絡しないと…
683 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:08:07.67 ID:t4qc9xco
10/19(月)放課後

「やっぱり今日の夜か、来るんじゃないかと思ってた」

放課後の教室でゆき兄が机に座ってボヤいていた

「深夜0時にグラウンドだってさ」
「…わかった」
「その…勝てるかな?」
「勝てるかどうかはしらねぇ、でも勝たなきゃいけねぇんだろ」
「…うん」
「さっさと帰るぞ…
 いつもどおり夜までに覚悟を決めとけ」
「ああ」

俺はゆき兄と一緒に寮に戻った
そう、勝たなきゃいけないんだ、勝とう
たとえ可能性が1%に満たなくてもそこに賭けるしかない
684 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:09:30.80 ID:t4qc9xco
10/19(月)深夜

時計が0時丁度をさした
グラウンドには俺とゆき兄、そして雷雲
しかしゆき兄が持ってる剣は本物なんだろうか…

「逃げずに来ましたね」
「ああ、来てやったぜ」
「…じゃあ始めましょうか」

そう言いつつも雷雲は動かない
警戒してる素振りもない、隙だらけだ

「…たまゆら、気をつけろ、下手に飛び込むな」
「わかってるさ…」

誰も微動だにしないまま時間だけが過ぎる
雷雲はあさっての方向をぼーっと見つめている
何を考えているんだ…?

「…どうしたんですか?
 攻撃しないんですか?」
「え?」
「ハンデですよ…さ、抵抗しないから1発どうぞ」

そう言って雷雲は手を広げた
挑発…?
それとも本当に1発ハンデなんてふざけたことを考えているのか?
もしそうなら、1発当てればやつの能力を無効化できる俺の勝利が確定する
こいつは黄龍鉄甲の力を知らないのか?
…どうする?
雷雲は動かないただこちらを見ている
…これで決まればそれでもいい、どちらにせよあいつが動かないならいつまでたっても終わらない!
虎穴にいらずんば虎子を得ず、やってやる!!
俺は一気に雷雲に向かって走り出した

「たまゆらッ!」
「1撃だ!これで決めて速攻で終わりにしてやる!!」

雷雲はそれでも動かない
もう完全に射程距離だ、舐めやがって!
この1発で終わりにしてやる!!
685 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:12:06.24 ID:t4qc9xco
「吹っ飛べ!!!黄龍天光破邪爆裂拳!!!」

雷雲は避けなかった、全速力で走った勢いを乗せた黄龍鉄甲の1撃は雷雲の顔を完璧に捉えた
ゴガァッとした感触
そのまま雷雲は後ろに盛大に吹っ飛び地面に叩きつけられた

「…勝った?」
「…」

雷雲は地面に倒れている
本当に勝てたのか?

「…違う」
「え?」

ゆき兄が呟いた

「煙が出ない」
「あっ…」

そうだ、確かに今までは黄龍鉄甲の1撃を当てれば黒い煙と共に執行部の力は消えていた
しかし雷雲の身体からは一向に煙が出る気配が感じられない
状況が把握できずに動けないでいると雷雲がゆっくりと起き上がった

「…痛いねぇ…たっぷりもらった…この痛みを…
 ククッ…そう、そうさ…この痛みこそ生きてる証…!
 激痛の中にこそ生きている実感が溢れ出す!!」

雷雲が突然飛びこんできた
咄嗟のことで対応できず、完全に射程距離にとらえられた
雷雲の両の掌が俺の胸に当てられた

「さぁ痛みを知って生を実感しろ!!」
「なにッ!?」

世界が吹っ飛んだ
いや、正確には俺が吹っ飛んだ
全身を貫く強烈な衝撃、身体の内から粉々に砕け散ってしまいそうな衝撃
地面と空が逆転し、意識すらも彼方へと吹き飛びそうになる
そして地面に叩きつけられる激痛でおぼろげな意識がはっきりし同時に体中に激痛が走った

「が…あがっ…」
「たまゆら!!大丈夫か?」
「だ、い…ごぼっ…」

急激な嘔吐感がこみ上げた
なんとかそれを押さえ込む、口の中の液体からは強烈な血の味がした
686 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:13:58.26 ID:t4qc9xco
「はぁー…はぁー…」
「1撃でこの威力かよ…」
「さぁかかってこい…俺にもっと痛みを…!
 生きている実感をよこせ!!」
「たまゆら!ちょっと待っとけよ!
 今あの野郎斬り倒してやる!!」

視界の端でゆき兄が剣を持って雷雲に向かう
身体が思うように動かない

「斬れろ!!」

ゆき兄の剣が、雷雲の右肩から左わき腹に走り抜けた
やったのか!?

「斬られる痛みってのもいいもんだな!お前も味わえよ!!」
「何ッ…!?」

視界の端
ゆき兄の胸から、鮮血が飛び出した
信じられないと言った顔で、その場にゆき兄が崩れ落ちる

「ゆき兄ぃぃぃぃいいいい!!」

無理やり身体を起こし立ち上がる

「がっ…斬撃だと…!?
 …こいつ…受けた攻撃を…?」

死んではいないみたいだが明らかにゆき兄は重症だった
倒れ込んだ場所に血だまりが出来ている
その目の前で雷雲が笑っていた
687 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:19:54.11 ID:t4qc9xco
「そうだよ、俺は痛みを蓄積させるんだ…
 そして狙った場所から開放するんだ…その威力は数倍に跳ね上がっている…
 開放と同時に受けた傷も治る…さぁ…もっとだ…もっと俺に痛みをよこせ…」
「黄龍鉄甲の1撃まで…蓄積させることができるっていうのかよ…
 これじゃ…勝てない…」
「だけど勿論、相手の攻撃を待ってるだけじゃ駄目なんだ…
 だから俺は通常戦闘に置いても…」

倒れているゆき兄を飛び越え
雷雲がこちらに向かってきた

「強いんだよ」

雷雲の拳が顔に叩きこまれた

「かは…ッ…この…!」

思わず黄龍鉄甲で殴ろうとする
でも駄目だ、また返される!
そう思うと拳が止まる

「いい判断だぜ、次にくらったら全身の骨が砕けるだろうな
 だけどどっちにしろ生かして返さないがな!!」

腕をすり抜け下からアッパーが顎に直撃する
足から力が抜け、倒れそうになる
そこに雷雲の膝が叩きこまれた

「げぶぇっ…」
「さぁ痛みで実感しろ!お前は生きている!!
 これから死に至るその時まで痛みだけがお前の生きている証だ!!」

次々に全身に叩き込まれる猛攻
目の前が霞んでいく
襟首をつかまれ、吊るされる

「終わりだ…」

雷雲がそう言ったその時
視界の端に何かが見えた

「終わるのは…テメーだ…!」

ゆき兄が剣を構えて雷雲の後ろにいた
剣先は首を狙っていた
688 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:22:15.15 ID:t4qc9xco
「…ハァ…ハァ…1撃で仕留めたなら蓄積もクソもねぇだろ?」
「やってみろよ?さぁ痛みを俺にくれよ?」
「…死にやがれ!!!」
「ただし俺が今こいつに触れていることを忘れるな」
「…!!!」

ゆき兄の剣が止まった
雷雲は笑っている

「その甘い考えが死を招くんだぜ?」

俺を地面に投げ捨て
雷雲は振り向き様にゆき兄の剣の刃に自らの腕を当てて思いっきり腕を引いた
雷雲の腕に大きな傷が開き、血が流れ出た
そのまま手をゆき兄の身体に当てた

「飛べよ」

何かが引きちぎれるるような、嫌な音がした
ゆき兄が力なく地面に崩れ落ちるのが見えた
それはやけにゆっくりで、スローモーションのようだった
殺された?ゆき兄が、殺された…?


「うっ…あっ…あああぁ…!!」
「次はお前だよ」

雷雲は笑っていた
その笑みに純然たる殺意を覚えた
殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる!!
世界が狭まっていく
同時にあの声が聞こえだす

『お前が力を望むのならば…』

「力をよこせ!!あいつを殺してやる!!!
 必ず殺してやる!!」

『ならば聞け新たなる力の名は…』
689 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:27:15.63 ID:t4qc9xco
雷雲はゆき兄の剣を拾い上げ
それを持ってこっちに向かってきた

「さぁ終わりだ…痛みの先にある死に向かえ!!」

雷雲が剣を振りかざした
同時に俺は、叫んだ

「お前を殺してやる!!目覚めろ白虎ォォォォォオオ!!!!!」

辺りが真っ白な光に包まれた
同時に、振り下ろされる刃がとてもはっきりと見えた
690 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:29:13.88 ID:t4qc9xco
雷雲はありえないという表情で地面に叩きつけられた剣を見つめていた

「あの状況で、どこに…逃げたっていうんだ…?」
「ここだ…」
「!?」

俺は、剣が当たるより早く
雷雲の後ろに回りこんだ
振り返った雷雲が、言った

「なんだ…その姿は…?」

朱雀の時と同じように
黄龍鉄甲が分裂し、変形した
今度は4つに分裂し、両手両足を装甲が覆った
そのどれにも、鋭い爪がついていた

「…この力で…お前を殺してやる…」
「ハハッ!少し姿を変えたぐらいで俺を倒せると思ってるのか!?
 今までボコボコにやられてたお前がよぉ!!」

ゲラゲラと笑い出した雷雲
その顔が、とてつもなく、イラついた

「お前の笑い顔は2度と見たくない…!!
 全身切り刻んでやる…!!」

その言葉と同時に走り出した
そしてすれ違い様に、雷雲の身体を、爪で切り裂いた
そのまま走りぬけ、気がつくとグラウンドの端までついていた

「な…?」

雷雲の身体から血が流れ出す

「…いつ…斬られた…?
 て…いうか…あいつは…どこにいった…?」
691 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:30:20.00 ID:t4qc9xco
その声が聞こえていたもの
俺はそれに答えずもう1度走り出した
そして同じように、すれ違い様に爪で切り裂く
走り、切り裂き、走り、切り裂き、走り、切り裂く
例え雷雲が痛みを蓄積させることが出来ようとも
完全に俺を視認できない雷雲には痛みを開放することは不可能だった
逃げようにもこの速さからは逃げれない

「馬鹿なッ…こんなッ…
 痛みが…ああ…痛みが…」

もはや雷雲は倒れてもおかしくない状態だった
だけど俺がそれを許さない
斬ると同時に、弾き飛ばし、倒れさせない
まるでコマのようにその場をフラフラと回転する
それは血に染まった、赤いコマ

「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!」

掌を合わせると爪が、まるで牙のよう
感覚でわかる、これが白虎の力の最終奥義

「消えろ!!白虎断極烈殺斬!!!」

白虎の全てを噛み砕く大牙の1撃
これで終わりだ!!!

「よせたまゆらぁぁぁあああああ!!」

…ゆき兄…!?
不意のゆき兄の叫び声に、俺の攻撃が止まる
その瞬間、雷雲が地面に倒れた

「そいつはもう意識を失ってるんだ…」
「ゆき兄…生きてたの…?」
「ははっ…」

ゆき兄は力無く笑いながらシャツを捲った
シャツの下では何かが切り裂かれていた

「ヤチャマルから借りた…鎖かたびらだ…
 最もさすがに鎖かたびらだけじゃすまなかったがな…」
「よ、よかった…生きてたんだ…」
「もう雷雲も戦えないだろう…
 お前の勝ちだよ…」
「…そっか勝ったんだ…」
692 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:36:46.31 ID:t4qc9xco
『殺せ』

「え?」
「どうした?」
「今、何かが」

『殺せ』

「つぅっ…!頭が…!!」
「たまゆら!?」

『殺せ!!』

「もう勝負はついた…!
 もういい…!!」

『殺せ!!!!』

「あぁああああああああああああああああ!!!!!」
「た、たまゆら…?」

まるで檻の中から、テレビの画面を見ているように
俺の意思とは無関係に身体が動いている
止まれと叫んでも、どんなに止まれと願っても止まらない

「ウゥゥゥウウウ!!!」
「たま…うわッ!?」

爪がゆき兄を切り裂こうとした
やめろよ、やめてくれ

「ウォオォオオオオアアアアアア!!!」
「たまゆら、正気に戻れ!!」
「ガァァァアアアア!!!」

そして俺が雷雲にやったのと同じ攻撃がゆき兄を襲った
肉眼で捉えられないほどの速度ですれ違い様に切り裂く
何度も、何度も…
やめてくれ!!ゆき兄は違うんだ!!
693 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/17(月) 23:40:43.36 ID:t4qc9xco

「たまゆらっ…!!」

ゆき兄が倒れそうになる
俺の身体は両手を前に組んだ
よせ、それだけはやめろ、お願いだ、やめてくれ

「…白虎断極烈殺斬…」
「たまゆらぁああああああああああ!!」

やめてくれぇぇぇえええええええええええええええええええ!!




8時間目 - 激痛 -

694 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/17(月) 23:48:30.24 ID:tJNTG2w0
ゆきにー乙
695 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/17(月) 23:59:10.80 ID:opMrm.oo
ゆき兄乙!

雷くんドM仕様かwwwwwwwwwwwwwwwwww
696 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/18(火) 00:11:37.53 ID:2ROdpAAO
読みながら盛大に笑ってた
697 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/18(火) 00:12:49.65 ID:xouiHUA0
おっつぉっつ!
698 :ハットリ君 :2009/08/18(火) 05:16:06.70 ID:4EwP1QAO
早朝でござる

ファズはいいでござる
699 :リリーホワイト :2009/08/18(火) 09:26:36.28 ID:EWMIEUDO
朝ですよー
700 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [目標・すがすがしい筋肉]:2009/08/18(火) 10:57:00.94 ID:1.tTWIAO
http://imepita.jp/20090818/392510
途中経過の図
701 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/18(火) 11:08:25.17 ID:EWMIEUDO
筋肉!
702 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/18(火) 11:41:21.72 ID:1xwDUASO
チクビーム垂れてるから、胸筋鍛えたらいいんじゃね
703 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/18(火) 17:25:02.63 ID:QxJ/8IDO
ちょっと分かりにくいからメガネかけてうpしてみてよ^^
704 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/18(火) 17:49:43.41 ID:1.tTWIAO
>>701
筋肉筋肉!

>>702
ええ、これでもマシになったんです
これからどんどん鍛えていくんです
ありがとう

>>703
メガネかけてるよ
705 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/18(火) 20:10:16.18 ID:QxJ/8IDO
>>704
メガネわかりにくいお…(´ω`)
706 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/18(火) 20:53:13.32 ID:xouiHUA0
よるだよ
707 :リリーホワイト :2009/08/19(水) 06:06:42.67 ID:rHViNMDO
朝ですよー
708 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/19(水) 19:11:09.91 ID:ThybCNoo
夜さー
709 :そら :2009/08/19(水) 19:14:14.15 ID:PG3oLkDO
懐かしくなったら死亡






ダイゾウじいさんとガン
710 :ミギー :2009/08/19(水) 19:48:10.85 ID:bBKMcEDO
ペコちゃんに似てると最近よく言われます

http://imepita.jp/20090819/711750
711 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/19(水) 20:08:00.84 ID:rHViNMDO
ボンバヘッ
712 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/19(水) 20:09:40.56 ID:7bXq8YDO
>>709
セフセフ!

>>710
ボンバヘッ



tkまさかの無修正wwwwwwwwwwww
713 :ミギー :2009/08/19(水) 20:18:28.79 ID:bBKMcEDO
>>712
ニキビ隠したい
714 :フリテンボーイ :2009/08/19(水) 21:33:01.81 ID:cQjurrAo
>>713
再うp
715 :ミギー :2009/08/19(水) 21:41:23.95 ID:bBKMcEDO
>>714
たそは、かれ!!

http://imepita.jp/20090819/779600
716 :フリテンボーイ :2009/08/19(水) 21:50:48.42 ID:cQjurrAo
>>715
多謝!!
717 : 白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/08/19(水) 21:52:08.60 ID:hddimPQo
ふぅ・・・
718 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/19(水) 22:50:45.37 ID:k8fTJeo0
まだみれる・・・だと・・・


ふぅ・・・
719 :ピュアハート [図書]:2009/08/20(木) 01:29:45.59 ID:MQkvngSO
ほ…ろ……よ………い………

http://imepita.jp/20090820/050170
720 :ーギミ :2009/08/20(木) 02:09:35.69 ID:.U9JmsDO
……い………よ……ろ……ほ………
721 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [朱雀=鳥=]:2009/08/20(木) 09:44:09.24 ID:AIrRQEAO
http://imepita.jp/20090820/322580
メガネリクエストにおこたえしなければ
722 :リリーホワイト :2009/08/20(木) 10:12:02.53 ID:Ef9yTYDO
朝ですよー
723 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/20(木) 11:45:44.70 ID:QsiJ4UDO
>>721
服を着ろwwwwwwwwwwww


あれだな、脱いでメガネうpだと剣とかぶるな
724 :たまゆら :2009/08/20(木) 17:38:04.35 ID:lHoy9WUo
>>723
あいにく彼のような高貴な下半身は持ち合わせておりませんので。
上半身担当なんですよ、わたくし。
725 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/20(木) 21:23:56.40 ID:WuKwTl.o
>>724
うるせぇボルケーノが!
726 :そら :2009/08/20(木) 21:44:56.97 ID:rLw4toDO
え、何でこの人キレてるん?
727 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/20(木) 21:53:50.17 ID:WuKwTl.o
いや、キレてないですよ
ただ変態キャラのくせに下半身がどうとか言い出すたまゆらさんを見損なったんです!!

というかたまゆらパンツはいてるの?
728 :そら :2009/08/20(木) 21:54:59.50 ID:rLw4toDO
カラオケいきたい






http://jp.youtube.com/watch?v=7S43vx4Zxms&rl
729 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/20(木) 22:00:16.75 ID:o6mIRoQo
アマゾンwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


歳誤魔化してるだろ・・・
730 :たまゆら :2009/08/20(木) 23:44:26.06 ID:lHoy9WUo
>>727
はいてるに決まってるだろうインフェルノ
俺は誰かさんみたいにブラブラ解放してねーよこのでか○ん!!
731 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/21(金) 04:04:41.82 ID:/g11FqAo
>>730
ブラブラ解放…
尻侍のことか!
732 :リリーホワイト :2009/08/21(金) 07:07:42.28 ID:OBJ3t2DO
朝ですよー
733 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/21(金) 07:21:27.07 ID:Eih.zsAO
今日も暑いのぅ
734 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/21(金) 07:39:42.36 ID:a3Em7Fco
金曜日!
735 :そら :2009/08/21(金) 08:20:25.32 ID:xeG4lcDO
激しく眠い

>>729
何を言ってるのですか
仮面ライダー好きなら当たり前の予備知識ですよ
736 :そら :2009/08/21(金) 08:21:34.06 ID:xeG4lcDO
激しく眠い

>>729
何を言ってるのですか
仮面ライダー好きなら当たり前の予備知識ですよ
737 :そら :2009/08/21(金) 08:22:44.37 ID:xeG4lcDO
あぁもう眠くて重複したよちくせう
738 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/21(金) 12:43:41.57 ID:tdq49ADO
どどんまいwwww
739 :ポロリー :2009/08/21(金) 14:09:19.70 ID:eMwQXoSO
仕事サボってデズニーシー楽しいです^^
740 :そら :2009/08/21(金) 17:38:13.03 ID:xeG4lcDO
ほwwろww酔wwいwwwwwwww
741 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/21(金) 18:02:15.99 ID:tdq49ADO
>>739-740
おまいらwwwwwwwwwwwwww
742 :そら :2009/08/21(金) 18:45:35.04 ID:xeG4lcDO
>>741
きついようwwwwww度数62℃はきついようwwwwwwwwww
743 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/21(金) 18:55:33.27 ID:tdq49ADO
>>742
スピリタスの出番ですね^^
744 :そら :2009/08/21(金) 19:07:48.63 ID:xeG4lcDO
ふぅ…酔い覚めてきた
745 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/21(金) 19:52:45.50 ID:88w6TGw0
>>743
スピリタスをショットガンでのんだら度数おなじくらいになるんじゃね?wwww
ちょっと塩を入れてやるファイヤーうぉっかもうまいよな?wwww

>>744
酔い覚ましに↑やればちょうどいいよ!
746 :そら :2009/08/21(金) 20:20:08.71 ID:xeG4lcDO
>>745
こんな強いの飲んだの事態が初めてなんですが
747 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/21(金) 22:53:24.53 ID:88w6TGw0
>>746
それがだんだんくせになってくるんだよww
まぁ一番おいしくかんじるのはウィスキーなんだがなwwwwww

君もWHISKY道にはいらないかい?
748 :そら :2009/08/21(金) 23:22:01.67 ID:xeG4lcDO
>>747
喉が焼ける感じが癖になりつつあるのは否定できないですが
あまりのめり込みたくはないと思ってますwwwwww
749 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/22(土) 05:03:46.59 ID:m9v7SUAO
早朝だわいな
750 :ミギー :2009/08/22(土) 06:11:10.31 ID:6j7y36DO
ああああ頭かち割れそううううう
751 :リリーホワイト :2009/08/22(土) 07:23:38.54 ID:rIlo66DO
朝ですよー
752 :そら :2009/08/22(土) 07:42:50.88 ID:MyWHeoDO
おはようございます




二日酔いって何ですか
753 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/22(土) 19:38:21.75 ID:BFohDPw0
>>752
ほろ酔いの先にある宝物さ
754 :そら :2009/08/22(土) 21:10:12.38 ID:MyWHeoDO
>>753
成る程、吐かないか心配だ


今日は梅酒でほwwろww酔wwいwwwwwwww
755 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/08/22(土) 21:52:53.61 ID:rIlo66DO
のぼせた
気持ち悪い
756 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/22(土) 21:56:33.21 ID:9/h02cko
先生間に合いません!
しかし理由があるのです!

書いたのはいいけど保存せずにそのまま閉じた俺が馬鹿だったんです!!
もう少し時間を下さい!人間はきっと美しい地球を取り戻してみせます!
757 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/08/22(土) 22:11:58.12 ID:pGdBT9Yo
>>756
日付が変わる前なら許してくれるんじゃね?
758 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/22(土) 23:23:19.74 ID:diVzLG6o
おはようございます・・・


俺が起きる前にできてれば許したのにな^^
759 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 02:58:06.40 ID:7gkwGbco
やと書き直し終わりました…
もう皆寝てるだろうけどうpだけはしとくです…
好きな時間に好きなように読んでもらえるといいのです
760 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 02:59:22.59 ID:7gkwGbco
邪眼学園黄龍譚
9時限 - 堕人 -


10/19(月)深夜

「…白虎断極烈殺斬…」
「たまゆらぁああああああああああ!!」

白虎の力を発動させた俺は雷雲を倒すことは出来た
だけど身体が言うことを聞かなくなった
そして白虎はその牙をゆき兄に向けた
止まらない、ダメだ、この攻撃が命中すれば間違いなくゆき兄が死んでしまう
だけどもうゆき兄は満身創痍でとてもこの技が避けれる状況じゃない
誰でもいい、頼む、俺を止めてくれ

白虎の大牙が、ゆき兄を噛み砕く
その寸前に辺りに響いた、金属音
牙は、止まっていた、いや、止められていた

「ふんぎっぎぎぎぎ…!!」
「ほろにが!?」
「ギリギリ…セーフか…!?
 って何て…力だ…こんにゃろ…!!」

縦に構えられた鉄パイプが白虎の牙を受け止めていた
しかし鉄パイプは曲がり、今にもねじ切れそうそうだった
俺の身体はそれでも力を緩めない
761 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:00:14.46 ID:7gkwGbco
「…あ、これヤバい…
 やっぱり来るんじゃなかった…諦めていい?」
「いや、ちょ、馬鹿!
 諦めるよな!!」
「いや、だって…これもう…鉄パイプ…ちぎれる…」
「俺はもう動けねぇんだぞ!!
 それに今力を緩めたら2人とも噛み砕かれるぞ!!」
「あ、そうか…
 でもまぁ諦めるって言ったのは助かる確証あってこそでな」
「はぁ?」
「上出来だ、ほろにが」
「ヤチャマル!?」

俺の身体の後ろにヤチャマルがいた

「悪いな、たまゆら」

ヤチャマルの手が背中に触れる

「絶気断脈」

次の瞬間、何かが弾け飛ぶ感覚
同時に視界が真っ暗闇になり、地面に倒れる
正確には倒れたのかどうかすらもわからない
全身の感覚が消え失せ、何も見えない、何も聞こえなかった
まるで意識だけの存在になって永遠の闇に落とされたのかのような
何も出来ない、生きているのかもすらわからない
気が狂いそうなほどの恐怖が俺を包んだ…
762 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:01:06.94 ID:7gkwGbco
10/19(月)同時刻

「…会長」
「…これでもう…
 全く転校生といいノスフェラトゥといい…」
「だから、僕が行きます、行かせてください」
「…いや、あいつを呼べ」
「あいつ?」
「最後の執行部員だ」
「…あんなやつを呼び出したところで
 それにあいつが素直に命令を聞くかどうか…」
「お前は俺の命令に背くのか?」
「う…いえ…わかりました」
「出来る限り早くここに来いと伝えておけ」
「…了解、しました」
763 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:02:06.84 ID:7gkwGbco
10/20(火)明け方

一体どのくらいの時間が立ったのか
1分のようにも感じるし、1日のようにも感じる
俺は死ぬまでこのままなんだろうか
そんなのは絶対に嫌だ…だけどどうしていいかわからない
必死に恐怖に耐えていると不意に辺りに光が戻った
ゆっくりと辺りを見渡すと
そこは保健室だった、またこのパターンか…

「気がついたか」
「あ…ヤチャマル」
「すまなかったな、暴走したたまゆらを止めるには強制的に気の流れを断ち切るしかないと思ってな」
「気の流れ…」
「それもどこをどう止めていいかわからなかったから全身を止めたからな…
 5感全てを奪われた世界はとてつもない恐怖だったろ?」
「…うん、一生あのままかと思ったよ…」
「まぁあの場合それしか方法が思いつかなかったんだ許してくれ」
「大丈夫…
 そうだ!!ゆき兄は!?大丈夫なのか!?」
「あーあー、騒ぐな騒ぐな、俺なら平気だ、傷は意外と大したことなかったみたいだ」

部屋の奥からゆき兄の声が聞こえた
どうやら無事だったらしい

「…ごめんね…ゆき兄…本当に…ごめん」
「…気にするなよ、俺は平気だからな」

その言葉を聞いて少し安心した
同時になぜ自分がああなったのか、不安が沸いてくる

「…一体どうして俺は…」
「理由はわからんが…原因はやはり…
 黄龍鉄甲だろうな」

ヤチャマルが右手に黄龍鉄甲をぶら下げていた

「…俺…もう少しでゆき兄を…」
「…気にするな、といっても気にするんだろうが…
 まぁ誰も死んではいないんだあまり気に病むな」
「…」
「とは言っても…今後も暴走する可能性がある以上は…まぁ…」
「だからさーやめちゃえばいいわけよー」
「ほろにが!」

ヤチャマルを押しのけてほろにがが近づいてきた
そしてベッドで寝ている俺の横に立った
764 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:03:11.88 ID:7gkwGbco
「前も言ったけどなぁ、お前ガキのくせに背負いすぎだっつーの
 毎回毎回こんなふうになって悩むよりかはさっさと逃げたほうが楽だぜ?」
「…」
「逃げてもあいつらは襲ってくるとか言ってもよぉ
 最悪学校を辞めるなり転校するなりで遠くに逃げちまえばいいだろ?
 いくら生徒会の奴らが特殊な能力や絶対的な権限を持ってたってさぁ
 誰にも行き先を告げずに学園自体からおさらばして遠くに逃げちまえばいいだろ?」
「逃げる、か…考えたことなかったな…」
「まぁ、気持ちはわからんでもないけどな
 お前らぐらいの歳の時は自分にしか出来ない、自分がやらなくちゃいけない
 これは自分に課せられた使命、だとか何とか勘違いしちゃうんだよねー
 そういう時期なのになんかよくわからん武器まで手に入れちゃったら
 そりゃそうなるのもわかるけどよ」
「…」
「でも逃げたきゃ逃げれるんだぜ?その、なんだっけ、ああ、黄龍鉄甲?
 それをどっか適当にぽーいって投げ捨てて遠くに逃げればそれで解決だ
 使命なんかより自分の命だって、少なくとも俺がお前ならとっくに逃げてるな」
「…違う」
「え?」
「もう使命だとかそういう問題じゃないんだ…!
 俺が戦うことで他の誰かが傷つけられてしまうのも知ってる!!
 色んな奴らに言われてきてもうそんなことは充分理解してる!!
 それでも俺が戦うのは止めないのはただの意地なんだ…!
 絶対に1歩も後ろに下がれない意地なんだよ!!」
「…意地…か…」
765 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:05:00.07 ID:7gkwGbco
ほろにがはくるりと俺に背を向けた
そして頭を掻きながら言った

「…悪かった
 そーいうことなら…意地なら仕方ないよな…」
「…ほろにが」
「…まぁ…誰だって貫きたい意地ってもんがあるんだよな…」
「…あれ…そういえば…
 なんでほろにがとヤチャマルは助けに来てくれたの?」
「ああ、あれ?いや、寝てたらウオオーとかグアアーとかやかましくて寝れなくてよー
 誰か喧嘩でもしてんのかと見に行ったらお前らが何かやっててよー
 で、しばらく見物してたんだけど危なそうだったから助けに入ろうと思ったんだけど…
 なにぶん1人だと心細くてヤチャマルを呼びに行って戻ってきたらあんな状況だったんだ」
「…」
「いや、何だよ、その顔
 だいたい俺が命を捨てる覚悟でゆき兄とお前の間に飛び込まなきゃ今頃どうなってたか…!
 ちょっとは感謝して欲しいもんだね!」
「正確には私が間に向かって蹴り飛ばしたんだけどな」

ヤチャマルからのツッコミが入った
バツが悪そうな顔でほろにがは黙ってしまった

「…でも一応感謝するよ」
「ん、おお」
「それと、雷雲は…」
「あー、あのズタボロの雑巾みたいになって倒れてた奴ね」
「雷雲なら隣のベッドで寝てるぞ
 最も当分目は覚まさないだろうが…」
「…そっか…」
「それよりたまゆら」
「ん?」
「暴走の原因がわかるか?」
「…」
「…わからないだろうな」
「あの時、雷雲を倒した後に頭の中に声が響いたんだ」
「声?」
「殺せ、殺せって…そしたら頭が割れるように痛くなって
 あとはもう身体が言うことを聞かなかった」
「…」

しばらくの沈黙の後
ほろにがが口を開いた
766 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:05:54.63 ID:7gkwGbco
「黄龍鉄甲を使えるのはたまゆらだけだろ?
 たまゆらがわからないっつーのなら誰にもわかんなくねぇか?」

確かにそれもそうだ
黄龍鉄甲のことをよく知っている奴なんて誰も…
いや、たった1人だけ俺以上に黄龍鉄甲のことを知っている奴がいた

「…」
「たまゆら?」
「…ごめん、何かわかったかもしれない
 寮に戻る」
「おい、たまゆら…」
「無理やり止めた気の流れはすぐには治らない、まだ休んでおけ」
「大丈夫、動けるから」

ベッドから降りる
若干足元がふらつくが問題は無い
そういえばさっきからゆき兄が静かだ

「ゆき兄、俺先に戻るけど」
「…俺は疲れたからもう少し休んでから戻る」
「そっか…わかった、ごめんなゆき兄
 しっかり休んでてくれ」
「……ああ」

保健室を出て廊下を進む
外はもう薄っすらと明るくなっていた
あいつを探さなければ
黄龍鉄甲に秘められた力を知っていたアイツ
ノスフェラトゥなら…恐らく…

しかしノスフェラトゥはいつもこっちの都合関係無しに突然現れる
奴が現れたのはいつも夜だった
恐らく今日はもう無理だろう…
とりあえず俺は寮に戻った
767 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:07:46.00 ID:7gkwGbco
10/20(火)朝

寮に戻ってなんだかんだとしているとすぐに学校の時間になった
どうしようか多少迷ったが身体のほうはもう問題が無いようだったし
もしかしたらノスフェラトゥの情報が掴めるかもしれないと思い行くことにした

教室について辺りを見回す
ゆき兄の姿は無い、やっぱり休んだか…
周りの奴らがテストについて話している
…とてもじゃないがテスト勉強をする気にはなれないな
リカがノートを貸してくれるのかせめてもの救いか…

「おはよーたまゆら君ー」
「おはよう」
「ゆき兄今日もサボったかー」
「…昨日さ、戦ったから…今日はしょうがないよ」
「あ…そうなんだ…ごめん」
「いやいや、謝らなくても」
「でもたまゆら君はちゃんと来てるのにね」

昨日のことを話そうかどうか迷った
俺が暴走してゆき兄を傷つけたことを
いや、余計な心配をさせることはない、ゆき兄は無事なんだからそれでいい

「…そうだね」
「あ、テストのノートのほうは任せてよ」
「うん、ありがとう」

そこまで話してチャイムが鳴った
リカは自分の席へと戻っていく
俺はどうやったらノスフェラトゥに会えるかを考えていた
768 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:11:11.78 ID:7gkwGbco
10/20(火)午前

「来たか」
「あ、あの…」
「転校生を倒せ、執行部はもうお前だけだ」
「む、無理ですよ!怖いじゃないですか!!」
「それでも倒すんだ」
「そんなぁ…だって僕戦いとか怖いし…痛いし…」
「…」
「うぅ…わかりました…出来るだけやります…」
「確実にやれ」
「あぅぅ…」
「…」
「…会長、奴が素直に命令を聞くとは」
「そう、奴は素直に命令を聞かずに逆らう
 しかしそれは逆に言えば…」
「?」
「死のイメージで縛り付けた執行部員の中で唯一私に逆らうことが出来るということだ」
「…!」
「奴は臆病者だ」
「ええ…」
「だが臆病者故に…強い」
769 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:12:22.73 ID:7gkwGbco
10/19(火)昼休み

食欲があまり沸かない
ヤチャマルの言っていた気の流れを強制的に止めたことによるものだろうか
まぁ別に一食ぐらい食べなくてもさほど問題はないのだが…

特にやることも無く廊下を歩いていると誰かがこっちを見ていた
その視線に気づくとそいつはビクッとして動きが止まった

「?」

近づいていくとアワアワとした感じでキョドりだす
そして目の前まで行くと突然頭を下げだした

「ごごごご、ごめんない!ごめんなさい!
 別にガンつけたわけじゃないんです!ごめんなさいごめんなさい!!!」

何だこいつは

「…いや、別にそんな喧嘩売ってるわけじゃ」
「そ、そうなんですか!?本当ですか!?
 突然殴ったりしません!?」
「殴らないって…」
「あ、あの…それともう1個、お、怒らないで聞いてください…」
「何?」
「僕、その、執行部なんです…」
「!!」

咄嗟に身構える

「ひゃぁあ!ごめんなさい!ごめんなあい!!」

目の前の執行部と名乗った男子生徒は尻餅をついて
そのまま後ろにズルズルと逃げていく
…これが執行部?

「あ、あのあの、僕その、か、会長に、転校生を倒せって言われたんですけど
 でも僕、戦いとかそういうの嫌いで、なんとか穏便に済ませないかなって、おお、思って」
「…」
「だだ、駄目ですか?やっぱり戦わなきゃ駄目ですか!?」
「…いや、そりゃ…戦う気が無いっていうなら…」
「ほ、本当です?」
「…うん、まぁ…」
「よ、よかったぁ〜…」

どうにも調子が狂う
こいつが本当に執行部なんだろうか
770 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:13:15.47 ID:7gkwGbco
「…そのー…僕、蝶っていいます…」
「…うん」
「ぼ、僕ですね…力をもらったのはいいんですけど…
 怖くて1回も使ったことなくて…だから執行部でもお荷物扱いだったんですけど…
 もう僕以外たまゆらさんにやられたから僕しかいなくて…」
「待て!執行部がもう蝶以外いないだと!」
「あ、あぅ、こ、これ言ったらまずかったのかな?
 あ、でももう言っちゃったし…えと、そうです…」
「…そうか!」
「それであの…出来れば…一切僕とは戦わずに…お願いしたいんですけど…」

話を聞くぶんにはこいつは本当に執行部のお荷物だったんだろう
力を使ったことが無いってことは断罪をしたことも無いってことで
執行部がもういなくなってきてしまい苦肉の策でこいつを送り込んできたってわけか
白やんのやつも必死だな
だけどこいつが戦いたくないというなら無理に戦う事も無い

「…わかったよ、俺だって執行部は皆殺しとか言うつもりもないし
 蝶とは戦わないよ」
「本当ですかぁ…!よかったぁ…!!
 ありがとうございます!お礼にパンでも奢らせてください!!」
「え…おい…」
「早く早く!」

蝶は走り出して手招きしている
しょうがなくついていくと購買でカレーパンやらなんやらを買って俺に渡してきた
771 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:14:50.87 ID:7gkwGbco
「それじゃあ僕これで…また会いましょう!」

パンを渡すと蝶はどこかに行ってしまった
…執行部にもあんな奴はいたんだなぁ…
しかしこの大量のパンをどうするか…
あ、そうだ

俺はそのまま裏のゴミ捨て場に行った

「おーい、ほろにがー」
「はいは〜い」

ゴミ山の中からほろにがが姿を現した

「お、なんだ、たまゆらか、どうしたよい」
「パンやるよ」

袋ごとほろにがに向かって投げた
見事にキャッチするとほろにがは袋の中を覗いて言った

「うっは!こんなにパンくれんの!?
 お前マジいい奴だな!見直したぜ!!」

言うが早いか、途端にほろにがは大量のパンをバクバクと食いだした
かなり豪快な食べ方だ

「ふんもっふ…!がはっぷもぎゃっぷ…!!
 ずびずるばーばんーこくちゃぴーぶるるっる…!!」
「いや、どういう食い方してんだよ
 つーかガッつき過ぎだろ」
「んがっぷ…いや、やっぱり普通の食べ物はうめぇーよ
 もう黒いバナナは嫌だったんだ…最近はしおれたリンゴとか…」
「…そうか…よかったな…んじゃ俺行くから」
「ん、んー、さんきゅー、ふがっぷ、んが」

ほろにがにパンを渡して戻っいると丁度昼休みが終わった
俺は教室に戻ることにした
772 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:19:30.05 ID:7gkwGbco
10/20(火)放課後

とりあえず今からどうするかが問題だって
部屋に戻ってノスフェラトゥを待つか、それとも奴の情報を集めるか
しかし恐らくこの時間にやつは現れないだろう
と、なると情報を集めていたほうがいくらか生産的だろう

とはいえ確かにノスフェラトゥは学園全体で噂になっているが
実際はほとんどの奴は姿を見たことはない
もちろん、誰も居場所なんか知らない
やっぱりノスフェラトゥがまた直接俺に接触してくるのを待つしかないのか
なんてことを考えていると前方からフラフラと歩いてくる…ピュアがいた
そして突然ピュアが倒れた

「お、おい!」

慌てて駆け寄って揺り起こす
少し呼吸が荒い

「…あ、ああ、たまゆら君か」
「どうした、大丈夫か?」
「すまない…少し…貧血のようだ」
「貧血?」
「ここ最近…あまりしっかり寝た覚えが無くてね…」

ピュアがゆっくりと立ち上がった

「…もう少しなんだ…もう少しで…」
「ピュア?」
「…」

鬼気迫る、そんな感じでピュアはただ一点だけを見つめていた

「すまない、それじゃ僕はいくよ」
「ま、待てよ…」
「…僕には、僕の…やることが…
 誰にも…譲れない…」

ピュアはフラフラとおぼつかない足取りで廊下の先へと歩いていった
心配だったが、恐らく何を言ってもとまらないだろう

「…奴を探そう
 俺は俺のやることを…」
773 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:26:01.29 ID:7gkwGbco
情報を集めるということだけは意外と簡単だ
ノスフェラトゥ派の生徒はもう学園のほとんどだ
しかし、その情報は全て推測の域を出ない
酷いものになると宇宙からやってきたどうのこうのとかわけのわからないものまである
しかし1つだけ気になった情報があった
曰く、ノスフェラトゥは時計塔に住み着いている、と

他に有用な情報も無く、俺は時計塔に向かった
校舎や他の建物に囲まれとても目立たない、もうその動きを止めた時計塔
普通に学園生活をしていると気づきもしないだろう
実際ここに来るのは初めてだった

「うーん…」

入り口のドアを開けようとしたがカギがかかっていた
他に入れそうなところも見当たらない
しばらく辺りをウロウロしてみるもやはり侵入できそうなところは無い
扉をブチ破れば入れるだろうが…さすがにそこまではぁ…
そんなことを考えていると、下校の鐘が鳴った

「あっ…」

一瞬慌てた、が
気にしないことにした転校してきてから下校時間は守れとか言われてきたが
もう執行部も減っている、あまり神経質になることもない、そう思った
思っていたが…突然周りの空気が変わった

「え…?」

冷たい空気、なのに蒸し暑く絡みつくような不快感
そして至るところから見られているような…

「なんだ…?」

そのとき、背後から何かの気配がした
咄嗟に振り向くと、後ろには人の姿はしているが人ではない何かがした
なぜわかったのかはわからない
ただ一目見た瞬間に理解した
こいつは人ではないと

「ウゥゥウウウ…」

その人ではない何かが呻き声を上げた
こちらにゆっくりと近づいてくる
黄龍鉄甲は無い、どうする…!?
774 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:34:49.25 ID:7gkwGbco
「ウオォォォォ…!!」

その人ではない何かが、俺に向かって飛びかかってきた
そして近くに来た時、恐ろしいものを目にした
そいつの両の目は白目も黒目も存在しない
ただの真っ赤な目
本能がこいつはまずいと理解する、逃げなくちゃいけない
だけど、目に興味を逸らされた俺は避けれない…!
思わず目を瞑ってしまう
しかしいつまでたっても痛みは来なかった
おそるおそる目を開けると…

「…!」
「下校時間はとっくに過ぎたぞ、転校生」
「白やん!!?」

黒い人ではない何かは、白やんの右手の剣に後ろから貫かれていた
そしてその身体がまるで溶けるようにどろどろと溶けていき
やがてその水は蒸発するように黒い煙になって消えていった
黒い煙…これは…まさか…!?
人では無い何かがいなくなり、白やんはこちらを見ている

「…下級堕人すらも倒せないとはな」
「ダヒト…?」
「だから下校の鐘は守れと言っているんだ、我々は」

白やんが剣をこちらに向けた
775 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:35:46.23 ID:7gkwGbco
「う…」
「最も今までは堕人なぞ滅多に現れなかったのだがな
 最近は多くはないが頻繁に現れている
 なぜだかわかるか?」
「…知るかよ」
「今にも水が溢れ出しそうな入れ物から水がこぼれないようにするには蓋をすればいい」
「…?」
「この学園が入れ物で、蓋の役目を担っていたのは我らと執行部だ」
「何だと…?」
「最も我らはそれを楔と呼んでいるがな」
「楔…」
「堕人は命を求めて生者を襲い喰らう
 そして奴らは日没と同時に活動を開始する
 我々が一般生徒を守っていたというのは理解できたか?」
「…」
「お前が執行部を倒していくことで楔の数が減り
 堕人が徐々に姿を現していくということだ」
「う…」
「だから我々はお前を倒さなくてはいけない
 …堕人については執行部の奴らは知らないがな」

白やんの剣が上に振り上げられた
まずい、やられる…
だけど剣はそのまま収められた

「だが俺は今お前程度に構っている暇はないんでな
 堕人殲滅が俺の目的なんでな」
「はぁ…」
「それにお前はそのうち勝手に倒れるだろうしな…」

それだけ言うと白やんはさっさとどこかに行ってしまった
俺はその場にへたりこむ
とりあえず、今日は寮に戻ろう
776 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:37:22.60 ID:7gkwGbco
10/20(火)夜

部屋に帰ったものの気は重かった
生徒会の奴らはただ校則に背く奴らを気の向くままに断罪しているわけではなかった
しかし奴らのやってることは正しいのか正しくないのか…そんなのはわからない
俺はどうすればいいんだろう
少なくとも生徒会が黒人の手から一般生徒を守っているのは事実だろう
しかしだからといって…
もう俺には何がどうなのかわからない、俺だけが何も知らず、ただ戦っている
1番勝手なのは…俺じゃないか…

「随分落ち込んでるなぁ」
「!!!!」

後ろを振り向く
奴がいた、俺が今最も会いたかった奴が

「俺に会いたかったんだろぅ?」
「…なぜ、知っている?」
「クカカカ、そりゃぁねぇ…わかるからわかるんだよぉ」
「…ノスフェラトゥ、お前が知っていることを全部教えろ!!」
「ヒヒッ、全部、か」
「全部だ」

ノスフェラトゥはしばらく沈黙した

「…とりあえず、何が聞きたいんだぁ?」
「まず、黄龍鉄甲の暴走のことだ」
「ああ…」
「教えろ…!」
「…白虎の力は殲滅の力、圧倒的な攻撃によって相手の命を削り取る
 殺意によって目覚める白虎は目に付く者全てが動かなくなるまで戦いを止めない」
「…つまり、あれは白虎の力が?」
「そういうことだぁ
 その代わり、白虎の力は絶対的だぁ」
「…」
「他に聞きたいことはぁ?」
「…なぜお前は生徒会を消そうとしているんだ?」
「一般生徒を力を押さえつける生徒会なんて無いほうがいいと思わないかぁ?」
「それは生徒会が堕人から一般生徒を守っていることを知っての上でか?」

ノスフェラトゥが黙った
何かを考えるように爪の先で仮面をコンコンと叩く
777 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:40:01.43 ID:7gkwGbco
「堕人について知ったのかぁ」
「知っていたのか!!!」
「…だが勘違いしてるぜ、堕人については原因がある」
「原因?」
「堕人は渦巻く闇に呼ばれる」
「闇?」
「自らの存在に近い者が集まっている場所に惹きつけられ姿を現すんだぁ」
「どういうことだ?」
「生徒会の力は闇、つまりは陰の力
 陰の力を持つ能力者が大量にこの邪眼学園にいるんだ
 そりゃぁ堕人も集まるに決まってらぁ」
「…ということは
 生徒会全員を倒せば自然に堕人も現れなくなるってことか?」
「ま、そういうことだぁ
 つまりどう転んでも生徒会を叩き潰せば全ては丸く収まるんだよぉ」
「…」
「余計なことは考えずに戦え
 お前は正しいよぉ?たまゆらぁ?」
「俺は…自分が正しいとかそんなことは考えてない」
「そうかぁ…だが生徒会を完全に倒せば堕人の発生も収まるのは本当だぁ
 奴らが勢力を増やすたびに増えてくる堕人に手を焼いて
 執行部員に楔とやらの役割を持たせていたんだ、まぁつまり自分たちのためだな
 奴らが一般生徒のことを考えてることはないぜぇ?」
「…」
「それでぇ?他に聞きたいことはぁ?」
「…お前が何者なのか」
「学園の闇を憂う者、ノスフェラトゥ、それだけだよぉ」
「…」
「…わかった、じゃあもう…いい…」
「そうかそうか、それじゃまたなぁ?頑張れよ?
 ヒャーッハッハッハッハ!!」

ノスフェラトゥは一瞬でその場から消え去った
…全てを丸く収めるにはやはり生徒会、白やんを倒すしかない
奴のいうことを1から10まで信じるわけにはいかないが…
どちらにせよ今日明日に白やんを倒せるわけではない
決着がつくときまでには何が真実なのかは自分で見つけてやる
778 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:52:07.19 ID:7gkwGbco
10/21(水)朝

朝になって学校へ向かった
皆テストの話をして朝からノートを広げてる奴らや
半ば諦めて馬鹿話を繰り広げてるようななんか普通の学校ぽい光景を久しぶりに見た気がした
しかしたまに耳に入ってくるノスフェラトゥについての話
やはり逃れられないってことか
確かテストは金曜からだったが…こんな状況で…うーん…
そういえば今日もゆき兄が来ていない
このままテストも完璧にサボりそうな気がしてならないな
779 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 03:54:17.69 ID:7gkwGbco
10/21(水)昼休み

昼休みになりシャインでも行こうかなと思って教室を出た

「たまゆらさん!」
「ん?」

廊下で蝶が待っていた

「な、何?」
「あの、ちょっと…パンを買いすぎちゃって…
 よかったらこれどうぞ」

そう言って蝶はカレーパンを渡してきた

「いいのか?」
「小食なんですよ…
 なのにあれもこれもいいなって思うとつい買いすぎちゃって…
 捨てるのも勿体無いしもらってください」
「そうか、悪いな」
「それじゃ」

蝶はとことこと戻っていった
あいつは本当に執行部に向いてないな
しかしカレーパン1個を昼食にするってのもな…
やっぱりシャインで食って、これはまたほろにがにでもやるか

シャインにつくといつもいるはずのカナさんがいなかった
代わりに阿部さんがいた

「よぉたまゆら君、なんとなく久しぶりだな」
「ああ、どうも…」
「やはりいい身体してるな、ちょっとトイレにいかないか?」
「遠慮します」
「ツれないねぇ、まぁいいか、こちらにどうぞ」

阿部さんに席に案内される

「ご注文は?」
「んー…」
「最近のお勧めは昨日作ったばかりの新作のガチムチプリンだけど」
「…カレーライスで」
「デザートにガチムチプリンは?」
「カレーライスで」
「…かしこまりました」

なんだよガチムチプリンって嫌な予感しかしないよ
780 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 04:01:19.52 ID:7gkwGbco
「ガチムチなんだけど尻は意外とプリンッとしている
 そんな男の身体の魅力を余すことなく伝えたプリンで」
「説明しなくていいですから!気が変わったりしませんから!」
「そうか…残念だ」

阿部さんは素直に引き下がった
シャインに問題があるとしたらこのように作った創作料理を食わせようとしてくることだろうか
いや、些細な問題だし確固たる意思を持って断ればいいのだが…
気の弱い奴だったら食わされるよなぁ…
とか考えてるとカレーライスがきたので食った
その後俺はまたゴミ捨て場に向かった

「おーい、ほろにがー」
「お!またパンか!!」

昨日と同じようにゴミ山の中からほろにがが飛び出した

「今日はカレーパン1個だけどな、ほら」

カレーパンを放り投げる
見事にキャッチしたほろにが

「じゅうぶん、ああ、やっぱり普通の食べ物っていいなぁ…」

袋を破りかぶりつこうとするほろにが
が、動きが止まった

「どうした?」
「クンクン…」

かぶりつかずにずっとカレーパンを匂っている
カレーの匂いが好きなんだろうか

「おい、たまゆら」
「ん?」
「これ、どこで手に入れたんだ?」
「え、友達にもらったんだけど」
「捨てとけ」

カレーパンが投げ返された
突然でキャッチできなくてカレーパンが地面に落ちた
781 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 04:08:44.02 ID:7gkwGbco
「なんだよ勿体ないな…腐ってたのか?」
「香辛料の匂いでよくわからんかったが…
 食ったら死ぬぞ、間違いなく毒入りだ」
「え…?」
「何が入ってるかはよくわからねぇが…」
「別段カレーパンの匂いしかしないけど」
「俺の鼻は特別だからな
 犬にがとか呼ばれてたこともあって…」
「本当かよ」
「なんにせよ絶対毒入ってるぞそれ
 だいたいそうじゃなかったら俺が食わない理由がないだろ?」
「…まぁな」

毒入りだってことは、毒を入れたのは蝶?
あの常にビクビクしてる奴が?
しかし確かに毒でも入ってなきゃほろにがが食わない理由は無い

「ほろにが、悪かったな、とりあえずこのカレーパン渡した奴を問い詰めてくるわ」
「おうおう、まぁ何かの間違いってこともあるだろうしな」
「じゃあいってくら」
「はいはいいってらっしゃいよ…
 あーまたしおれたリンゴ食うのか…」

校舎に戻り走り回って蝶を探す
何組かどうかを聞いておけばよかった
走り回って疲れてそろそろ昼休みが終わるぐらいにさしかかったとき

「あれ?たまゆらさん?」

後ろから蝶の声が聞こえ
振り向くとビクッとした感じで蝶が後ずさった

「うわぁ!僕何かしました!?ごめんなさい!!」
「あ…いや…」

いざ相対してみるとなかなか言い辛いことに気がついた
まさか面と向かってカレーパンに毒を入れたか?などとは聞けないし
かと言ってここまできて聞かないのも…
782 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 04:09:35.69 ID:7gkwGbco
「あの…もしかしてカレーパン…嫌いだったんですか?」
「う…そう…じゃなくて」
「ごめんなさい…」

なんだか聞ける雰囲気じゃなくなってしまった

「…あー、と…いや、あの、あのカレーパンどこで買ったの?」
「え?購買ですけど…」
「あ、あーそうなんだ…実はなんか腐っててさ…」
「本当ですか!?腐ったカレーパンとか…会長に行ったほうがいいのかぁ…」
「あー、や…まぁ、たまにはそういうこともあるだろうしさ
 今回はほら、別にいい…みたいな」
「…そうですかぁ?わかりました…」

そこでチャイムが鳴ってしまった

「あの…それじゃ僕戻りますんで…」
「あ、ああ、俺も戻る」
「その…ごめんなさいでした…」
「いや、いいんだ」

蝶は自分の教室のほうへと戻って行った
結局聞けなかった…
とはいえしょうがないか…と、自分を無理やり納得させて俺は教室に戻った
783 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 04:11:31.00 ID:7gkwGbco
10/21(水)放課後

放課後になり特にやることも無くぼーっとしていた
蝶のことも気になるが堕人というあの黒い人の形をした奴らのことも気になる
もし堕人すらも俺が倒せるなら…
そんなわけで今日は黄龍鉄甲を持ってきていた
とりあえず鐘が鳴るまではじっとしていることにした

しばらく時間が立って、鐘が鳴った
同時に行動を開始した
特に目的も無いまま、廊下を歩く
誰もいない校舎はなんだかとても恐怖を感じさせる
しかしどれだけうろついても堕人に出会う気配は全く無い
昨日感じた冷たい気配すらも微塵も感じない

「うーん…」

しばらく考えた
やはり出やすい場所とかあるのだろうか?
となるとやはり昨日の時計塔の場所か?
思いついた俺は早速行ってみることにした
時計塔の近くまで来たとき、空気が変わったのを感じた
間違いなく、いる
この先を曲がると時計塔が見える
全身に絡みつく冷たく、しかしねっとりまとわりつくような蒸し暑い空気
黄龍鉄甲を構え、意を決して時計塔の前まで歩く
時計塔の入り口に3体ほどの黒い影

「オォォオオ…」
「アァァアア…」
「ゴァアアア…」

何をしているのかわからないが
時計塔の入り口の壁をガリガリ削っているようにも見える
俺の足元でコツンと、石が跳ねた
同時に3体の影がこちらを振り向いた

「…オォォォオオオオ!!」

途端に3体全てが俺に襲い掛かってきた
だけど意表を突かれた昨日とは違う
身体をひねりカウンター気味の1撃を1体に当てる

「オォォォォォオオオ!!」

雄叫びの後、ボフゥッ!とした感じで堕人の身体が煙のようになり消滅した
どうやら黄龍鉄甲でこいつらを倒すことは可能なようだ
さらによく見ると堕人の動きは比較的遅い
一般人より少し遅い程度のスピードで全く問題なく残りの2体も同じように消滅させることが出来た
倒せる、ていうかこいつら弱いじゃないか
784 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 04:15:26.89 ID:7gkwGbco
「何をしている!!」

後ろから怒号が聞こえた
振り向くと白やんが立っていた

「白やん、俺でも堕人は倒せる」
「そういうことじゃない!!無闇に堕人を倒すんじゃない!!」
「何…!?」

『オォォォオォオオオオオオオオ!!!!!!』

突然辺りにとても大きな大音量が響いた
まるで何十体もの堕人が同時に叫んでいるようなそんな大声

「馬鹿が…!」
「ど、どういうことなんだ…?」
「下級堕人は確かにそう強い相手でもない…!
 だが下級が3体以上集まっている場所には下級堕人を遥かに凌ぐ上級堕人がいる可能性がある!
 上級堕人は普段は実体化しないが下級堕人の残滓を媒介にすることによって実体化するんだ!
 何も知らないくせに独断で勝手に倒しやがって!転校生!!やはりお前はこの学園の災厄だ!!」
「そんな…!止められないのか!?」
「もう遅い!!実体化するぞ!!」

辺りに突風が吹き荒れた
同時に地面のある一点より黒い水がゴボゴボと湧き出した
そこからゆっくりと、何かの手が出てきた
続いて顔、身体とゆっくりと何かが姿を現した

それは両腕が剣と化した額に第3の眼を持つ骸骨
さっきまでのおぼろげな黒い奴らと違い
そいつは完全に物質として感じられる

「…我は死…モノザネ…」
「喋った!?」
「上級堕人の中には人語を理解するほど知能が高い奴らもいる」
「どうするんだ?」
「…やるしかない、貴様にも手伝ってもらうぞ」

白やんの剣が変形する
何だあれ…鎌?

「斬り払え、狂刃ホワイトジョーカー…」

白やんが鎌を振りかざし上級堕人モノザネに飛びかかる
785 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 04:16:25.58 ID:7gkwGbco
「哀れな、人、ども、我は死、モノザネ」

モノザネが飛んだ
正確には飛び上がり空中で回転しながらそのまま白やんを斬り裂こうとした

「クッ!」

キィン!と鎌の刃でモノザネの剣を弾く白やん
砂煙をあげながら地面をこすり、滑るように鎌を持ったまま体制を整える白やん
モノザネもくるくると回転しながら地面に着地する

「転校生!挟み撃ちだ!」
「わかったよ!!」

俺も黄龍鉄甲を構えてモノザネに向かって走り出す
同時に白やんもモノザネへと走り出していた

「我は死、我は死、命を、奪う」
「ブツブツとうるせぇ野郎だな!!」

黄龍鉄甲を振りかざし渾身の力でモノザネを殴りつける
だがモノザネの手の剣が黄龍鉄甲の1撃を止める
この剣、細いのに何て硬さだ…!!
反対側からもキィン!という音が響いた
どうやら白やんの鎌も止められたらしい

「くそっ!!」

一旦後ろに飛びのいて距離を取ろうとする
その瞬間だった
白やんを弾き飛ばしてモノザネがこっちへ滑るように向かってきた

「なッ!?」
「死すべき」

モノザネの剣が突き出される
まずい、避けられない、突き刺さる!!

「堕人風情が俺を舐めるなよ」

ガキィン!!と音がした
モノザネの剣がギリギリで止まった
白やんの鎌の刃がモノザネの身体にひっかけられいた
あれで止めたっていうのか?

「チッ…こいつ全身が恐ろしく硬いのか…
 となると…」
786 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 04:17:23.36 ID:7gkwGbco
白やんが鎌をひっかけたモノザネを弾き飛ばした
遠くに吹っ飛んだモノザネはまるで曲芸のように空中で回転し見事に着地した

「転校生」
「なんだよ!」
「10秒でいい、奴の動きを止めろ」
「10秒?」
「できるか?」
「…ああ!やってやるよ!!」

できるか?なんて聞かれてここで出来ないなんて言えるわけがない
なんとしてでも奴の動きを止めてやる

「我は…死…」
「うおおおおお!!」

俺は黄龍鉄甲を構えてモノザネに全速力で走りよった
モノザネの両手の剣が不規則に振られる
片方の刃を黄龍鉄甲で受け止め、もう片方をギリギリで避ける、髪の毛がパラリと落ちた
そのまま身体を滑らすように俺はモノザネの背後を取った
そして後ろから羽交い絞めにする
これで…

「哀しいな、人よ」

モノザネが自らの剣と化した手を自分に向けた
何をしているんだこいつは…いや!?まずい!!
咄嗟に羽交い絞めを解き、後ろに飛びのく
モノザネの剣は肋骨の隙間を抜け、今まで俺がいた場所を貫いた
もう少し逃げるのが遅かったら貫かれていた
そう思ったのも束の間、モノザネが振り向きざまにもう1つの手を振るった
ガキィン!!と、黄龍鉄甲にその剣が命中する

「うわっ…!!」

少し後ろにずり下がり体勢が崩れる
前を見るとモノザネが高速でこちらに向かってきていた
対応できない!

「10秒ではないが、このチャンスを待っていた」
「え?」

後ろから白やんが俺を飛び越えた
その手には鎌が握られていた

「消えろ、堕人」

白やんの鎌が振り子のように揺れる
刃の先端は高速で突っ込んできたモノザネの額にある眼に突き刺さった
その瞬間、モノザネはバランスを崩し俺の手前の地面に転がるようりに倒れた
白やんが着地する
787 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 04:23:24.22 ID:7gkwGbco
「やはりそこが弱点か」
「…哀れ…なり…人…よ…」
「闇に帰るがいい」
「オォォォォオオオオオオ!!!!」

モノザネの身体が黒い煙になっていく
断末魔の叫びにも似た雄叫びを上げながら
ゆっくりとモノザネの身体は消えていった

「はぁ…はぁ…」
「…」
「倒した…のか…」
「転校生」
「何だ…」
「今回だけは上級堕人を倒すのに協力したということで見逃してやる」
「あ?」
「だが、やはりお前はこの学園にとっては災厄だとしか思えない
 次に会ったときは問答無用だ」
「…」
「わかったら早く行け、気が変わらないうちにな」
「…」

今回は何も言い返せない
俺の勝手な行動があんな化け物を呼び寄せてしまったのだ
白やんが来なければ間違いなくやられていただろう
歯痒さと、苛立ちを抑えるように拳を握り締め
俺は逃げるようにその場を後にした
788 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/23(日) 04:24:16.28 ID:7gkwGbco
10/21(水)同時刻

「ぐっう…」
「大丈夫か?」
「…大丈夫だと思うか?」
「全く思わないな」
「はは…正直けっこうキツいわ…」
「…」
「たまゆらには言うなよ…
 あいつまた押しつぶされちまう」
「しかし」
「大丈夫さ…このぐらい…
 贖罪には…ほど遠い」
「贖罪?」
「…なんでもないさ」




邪眼学園黄龍譚
9時限 - 堕人 -

789 :リリーホワイト :2009/08/23(日) 09:25:48.30 ID:7iIDcADO
朝ですよー
790 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/08/23(日) 11:08:40.87 ID:UGj1nOko
ゆきに乙!

ほろにーのパンの食べ方ワロタwwwwwwwwwwwwwwwwww
あと蝶くんの攻撃怖いwwwwwwwwwwwwwwwwww

tk生徒会悪くないんじゃね・・・?たまゆらとノスフェラトゥ倒してしまおう
791 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/23(日) 14:09:39.36 ID:nth9lmYo
ゆき兄おつ!

カレーパン食べたくなった
責任と賠償を(ry
792 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/23(日) 20:33:28.51 ID:dq.2a/U0
よるー
793 :リリーホワイト :2009/08/24(月) 05:02:18.78 ID:o3l6fADO
朝ですよー
794 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/24(月) 12:29:56.63 ID:UwpllIDO
仕事飽きた!

やはり月曜日は無理だなwwww
795 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/24(月) 18:02:52.89 ID:kiaqYJYo
月曜日はあかんわ…やる気だない
796 :ミギー :2009/08/24(月) 18:17:06.33 ID:jAMEE.DO
>>795
ニートは曜日関係ないだろwwwwwwww
797 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/25(火) 15:41:00.30 ID:kVDlI1wo
        ____
        /     \    
     /   ⌒  ⌒ \   アイスうめぇ
   /    (●)  (●) \     
    |   、" ゙)(__人__)"  )    ___________
   \      。` ⌒゚:j´ ,/ j゙~~| | |             |
__/          \  |__| | |             |
| | /   ,              \n||  | |             |
| | /   /         r.  ( こ) | |             |
| | | ⌒ ーnnn        |\ (⊆ソ .|_|___________|
 ̄ \__、("二) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l二二l二二  _|_|__|_

798 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/26(水) 13:56:48.96 ID:.Bmf9Kso
あーやる気でねぇ
暑いのがいけないんだよ暑いのが
かといって寒いのも嫌いだし早いとこちょうどいい温度になれよ地球
もっと頑張れよ地球
799 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/26(水) 21:56:35.09 ID:8HApycg0
よるだよー
800 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/26(水) 23:50:00.35 ID:PdJ/M2AO
ねむいのだー
801 :そら :2009/08/27(木) 18:23:01.60 ID:L7j.9.DO
毎日忙しすぎワロタ
802 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/27(木) 19:02:16.30 ID:nyOm/rwo
毎日やることなさすぎワロタ
803 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/27(木) 20:02:05.32 ID:IfTW7EDO
昨日現実逃避したら納期ヤバすぎワロタwwww
804 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/08/27(木) 23:01:02.98 ID:7LDsd2DO
今週は体力仕事が多くて疲れヤバスwwwwwwwwww
805 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/29(土) 00:30:44.45 ID:Vo8biASO
ふぅ…
806 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/29(土) 05:35:09.19 ID:0Gud3sDO
土曜日!



ゆき兄今日ちゃんと間に合うよね?
807 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 06:16:53.19 ID:rjlCLPUo
>>806
間に合わせる
808 :ミギー :2009/08/29(土) 07:57:02.23 ID:Xetg1ADO
あつがなーつーいー
809 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:00:14.20 ID:rjlCLPUo
入稿しまーす
810 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:01:06.87 ID:rjlCLPUo
邪眼学園黄龍譚
10時限目 - 臆病者 -


10/21(水)夜

部屋に戻り、ベッドに腰掛ける
一体俺は何をやっているんだろうか
…やはり俺自身が災厄なのだろうか
俺だけが何も知らない気がする
皆それなりの理由を持って戦っている、ゆき兄はいまいち不明だが…
俺はただ黄龍鉄甲が現れたからというだけの理由でなし崩し的に戦っている気がする
さらに今回の堕人の件で何だか俺はもう戦う意地すら失っていってる気がする
…今日は疲れた、もう寝たほうが…いい…

10/21(水)同時刻

「寒くはないか?」
「…」
「必要な物があったら揃えよう」
「…私をさらったのはどうして?」
「堕人の活動が著しく活発化している」
「…」
「…そのための措置だ…わかって欲しい」
「…」
「堕人は必ず食い止める、それが俺に与えられた…」
「…わかってます」
「…物分りがよくて助かったよ…」
「1つだけ、質問していいですか?」
「何だ?」
「転校生、たまゆら君は…あなたにとって本当に敵と言える存在?」
「…無理さ、俺がどう思おうとも彼は俺を敵と認識してしまっている」
「でもそれはちゃんと理由を話せば…」
「あいつは正しい、だが俺も正しい
 同時にあいつは間違っていて、俺も間違っている、この意味がわかるか?」
「…」
「…もう引き返せないのさ、動き出した歯車を無理に止めと必ず弊害が起こる
 戦うしか…ないのさ」

811 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:04:01.08 ID:rjlCLPUo
10/21(木)朝

窓から差し込む太陽の光で目が覚めた
気分は重いが学校に行かないと…
足取りは重かった
生徒会はずっと堕人から生徒を守っていた、だけどそもそもの原因は生徒会で…
いや、俺が落ち込んでいるのはそんなことじゃない
何も知らないのは俺だけな気がする
何も知らない俺こそが、この学園の…災厄?
違う…俺は…ただ…

教室につくとゆき兄がいた
無言で俺は机に突っ伏してるゆき兄に近づいた
だけど何を話していいかわからずしばらくそこに立ち尽くした

「…なんだよ、何かあるなら言えよ」

そうこうしてるうちにゆき兄が先に話しかけてきた
ただし突っ伏したままで顔はあげない

「あ…その…」
「…?」
「堕人って…ゆき兄知ってた…?」
「…堕人」
「…」
「知ったのか、アレのことを」
「知ってたのか!?」
「ああ」
「どうして教えてくれなかった!?」
「…知れば迷ったろ?」
「え?」
「知ってしまえば生徒会に正義を見出してしまう
 そうすればお前は恐らく負ける」
「だから教えてくれなかったっていうのか!?
 俺にだって知る権利はあるだろう!?」
「知ったところで何も変わらない、戦いが止まるわけでもない
 なら下手に教えてお前がやられるよりかは教えないほうがいいだろう?」
「ふざけんな!!!」

思わず声を荒げてしまった
周りの視線が俺たちに集中する

「俺だけが何も知らない!何も知らずに戦ってる!!
 俺は自分の意思で戦うんだ!!だから全てを知ってどう動くかは俺が決めるんだ!!」
「…」
「なんとか言えよ!!!」
「…自分でどう動くかを決めると言う奴ほど」
「え?」
「大抵誰かに流されてるだけさ」
「どういう意味だよ」
「…実際この世界の何人が完全に自分の意思だけで動いてるんだろうな」
812 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:05:41.74 ID:rjlCLPUo
そう言うとゆき兄は立ち上がり
こちらには目もくれず教室から出て行った
どうしようもなく、イライラする
ゆき兄の言うこともわかる、確かに生徒会に正義を見出してしまっていたら
今頃俺はやられている
それでも何も知らないのがとても、辛い
俺は…どうすればいいんだろう
…いや、どうしようもないのか
結局白やんは俺を敵と考えている、なら俺がどう思おうとも戦いを仕掛けてくる
正義を見出してしまえばいつか俺はやられてしまう
なら俺は、生徒会を潰し、堕人を完全に消し去ることを…正義だと…信じよう

思わず、廊下に飛び出た
先にふらふらと歩いているゆき兄がいた
追いかけて、腕を掴んだ

「…どうした?」
「俺は…戦う…!」
「…」
「何が正義で…何が悪かなんて…もう考えない
 俺はただ生徒会をぶっ潰してやる…その先にあるものが望む物だと信じて」
「…ああ」
「さっきは…ごめん」
「気にするな、それじゃあな」
「どこいくの?」
「屋上」
「…わ、わかった」

ゆき兄は手をひらひらと振りながら屋上への階段を上がっていった
なんかスッキリした気がする
俺はゆき兄を見送った後教室に戻った
813 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:08:23.87 ID:rjlCLPUo
10/21(木)昼休み

「たまゆら君、ゆき兄と喧嘩でもしたの?」

昼休みなってすぐにリカがそう言ってきた
少し心配そうな顔をしていた

「ちょっとだけ…あ、でももう解決したよ」
「そっか、よかった〜
 あ、これノートのコピー」
「あ、ありがとう…一応これで赤点は免れるかな」
「赤点取っても多分ゆき兄も一緒だから寂しくないと思うよ」
「そういう問題じゃなくてね…」

渡された紙の束をペラペラめくる
それだけで大分やる気が削がれた…

「そういえばゆき兄どこいったの?」
「屋上いったよ」
「いこうか、今日お弁当もってきてるし、3人分」
「おおう!」

リカと一緒に屋上に上がる
どうせゆき兄は貯水タンクの影で寝転んでるんだろうな
が、予想に反してゆき兄はいなかった

「あれ…いない」
「えー、どこ行ったんだろ?」

あたりを見回して見るがゆき兄の姿はどこにもない

「お弁当が1つ無駄になっちゃう…」
「メールとかしてみたら?」
「だぁぁ!俺は眠いんだよ!!」

後ろからゆき兄の声が聞こえた
ああ、今上がってきたのか…

「あそぼーよー、あそぼーよー、昼食おごれー」
「だからっ…そんな金はねぇっ…
 引っ張るなと…!!」

女子の声が…?
振り向くとゆき兄と…下級生の女子?

「いいじゃんかーおごれーあそべー寝るなー」
「…ん、たまゆらとリカかどうした?」
「いや…お弁当…」
「ああ、お弁当な
 リカの弁当か、久しぶりだな…」
814 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:11:13.62 ID:rjlCLPUo
淡々と話すゆき兄だが服が後ろにとんでもなく引っ張れている
足元がズリズリと後退していくのをなんとか踏ん張っているようだった

「ゆき兄…」
「何だ?」
「その…後ろの…」
「…気にするな」
「いや、気にするなって」
「あーそーべぇぇえええー」
「いったぁぁぁあ!!!噛むな!おい!噛むな!!
 やめろ!!いってぇぇえええええええええ!!」
「あほへー」
「昼飯食うんだよ!!やめろ!!!離れッ…!?」

ゆき兄の顔が引きつった
視線を追うとリカが仁王立ち状態だった

「随分仲がいいようで…」
「お、おい…勘違いするな…これは…」
「はい、たまゆら君」

リカからずしりと重いお弁当を受け取る

「それじゃ私はシャインで食べるから"仲良く"お弁当食べてね」
「お、おいリカ…」
「まだ、何か?」
「う…」

あのゆき兄が気圧とされている
リカは笑顔なのだが異常にその笑顔が冷たく感じる…そのままリカは笑顔を絶やさないまま屋上から出て行った
後にはなんとも微妙な雰囲気の3人が残された

「あれまー、ゆき兄大変だね」
「誰のせいだよ誰の…」
「なぁ…ゆき兄…その子」
「これは…なんかやたらと気に入られたみたいでな…」
「あーあ、ゆき兄遊んでくれないからもういいやー」
「…散々引っ掻き回してそれか」
「じゃあねぃー」

女の子はどこかにいってしまった
普段より2割増しぐらいでゆき兄の顔がやつれている気がした
そのまま俺が持っていた弁当を指差した

「食おう…それ」
「う、うん…」

2人で三人分のお弁当は量が多かった、さらにゆき兄はあんまり食べないので俺の腹は爆発しそうだった
食い終わるとゆき兄は弁当箱をリカに返しておいてくれと言ってフラフラと屋上を後にした
膨れ上がった腹を抱えて俺はしばらくそこから動けなかった
815 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:13:42.22 ID:rjlCLPUo
10/21(木)放課後

放課後になった、あれからゆき兄は顔を見せない
そしてリカもなんだかドス黒いオーラを噴出していてとても近づけない
とても居心地の悪い教室で明日から始まるテストをどうするか考えていた
今更勉強しても意味が無い気もするが…
いや、リカのノートがあるから最低限これはやっておくべきだろう
寮に戻るより図書室でやったほうが効率が上がりそうな気がしないでもない
というわけで図書室にいくと何人かの生徒は俺と同じように勉強していた

「…たまゆら君か」
「あ、ピュア」
「勉強かい?」
「あ、うん…」
「そ、がんばって…」

それだけ言うとピュアは視線を落とした
手元には1冊の古ぼけた本があった
なんだかよくわからないが難しそうな本だった
集中しているようなので邪魔をしないように適当な椅子に座りノートを開いた
かなりわかりやすくまとめられている…
静かだということもあり割と集中できる
コツコツと書き写しては暗記を繰り返す
どのくらい時間がたったか、肩をポンと叩かれた

「ん」

振り返るとピュアだった

「閉めるよ」
「あれ、もうそんな時間なのか」
「…」

ピュアが無言で隣の椅子に座った
周りを見渡すともう図書室には俺とピュア以外誰もいなかった
816 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:17:55.64 ID:rjlCLPUo
「なに?」
「…時計塔があるよね、この学園」
「あ、うん」
「位置がおかしすぎると思わないかい?」
「確かにあんな場所にあるのはおかしいけど…」
「…そう、四方を建物に囲まれて極端に遠くからではないと文字盤が見えない
 今でこそ使われてはいないが…建築の時にそんなことわかるはずだろ?」
「つまり、こういいたいのか?
 あの時計塔は時計塔ではなく別の意味を持った建物、と?」
「…僕はそう思っているんだけどね」
「でも時計塔じゃなけりゃなんなのさ」
「わからない、そもそもこの学園自体が1つの目的に沿って建てられたというなら
 そこには僕らじゃ想像もつかないほどの思惑があったのかもね」
「時計塔…」

そういえば俺が堕人に遭遇するのは決まって時計塔の周辺だ
…あの時計塔の中には何があるんだ?

「…ま、憶測に過ぎないけどね…
 じゃあ僕は後片付けして出るからお先にどうぞ」
「…ああ」

俺は図書室を出て寮へと帰ることにした
確かにピュアの行ってることは突拍子もなく憶測の域を出ない
だがなぜ時計塔に堕人が集まる?
ピュアの言っていることとは違ってもあの時計塔は確かに怪しい
あの入り口の大きな扉…あの奥には何があるのだろう…
817 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:22:24.60 ID:rjlCLPUo
10/21(木)夜

とりあえず寮に戻って勉強をしようと思っていた
が、廊下でなるべくなら会いたく無い奴に会ってしまった

「…やぁたまゆら君」
「小川…さん」

最近小川がなぜ苦手なのかわかった
こいつから七不思議の話を聞くということはそのまま執行部との戦いに繋がる
明日からテストなんだぞ、こんなときにやめてくれ

「…最近とても闇が騒いでいるよ」
「え?」
「とても面白い、とても、ね」
「…」

こいつは何を知っているのか
堕人の存在を知っているんだろうか?

「全体的に闇が浮き足だっててね…
 だが一点だけ色濃く浮き上がってる場所がある」
「え?」
「4番目の噂…かな」

正直とても聞きたくない
だが小川はお構いなしに話し続けてくる

「ゴミ捨て場から更に奥
 学園の敷地内の隅の隅、元々は教員用の宿舎があった…
 最も今は廃屋街…闇が潜むには格好の場所さ」
「そんな場所が…?」
「…まぁ普通は知らないよね…
 夜中にそこに行くとある少年に出会えるそうだ…」
「少年?」
「出会ったら…どうなるのかな?ふふふ…」
「…」
「それじゃあね…また会おう」

小川はどこかに行ってしまった
何にせよこれで敵の場所はわかった
だが誰が行くか
テストが終わるまでは絶対に行かない、そう決めた

とはいっても気にはなる
部屋に戻ってテストのための勉強をしているが…
どうも頭に残らない
しかし絶対に行くものか今日行ったら勝てたとしても明日のテストは壊滅的打撃を受ける
どちらかというと今の俺にはそっちのほうが重大だ
無理やり頭を切り替えて必死にノートと教科書とにらめっこを続けていた
818 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:25:05.28 ID:rjlCLPUo
10/21(金)朝

気がつくと、俺は机にヨダレを垂らしていた
窓の外からは太陽の光がこれでもかと言わんばかりに差し込んでいた
しばらく呆然としていたがこうなったものはしょうがないのはしょうがない
やはり赤点だろうか…
…考えていても仕方ない、さっさと学校に行って最低限は暗記しよう

教室につくと何人かの生徒は俺と同じように切羽詰っていた
俺も必死に暗記を繰り返す、神様助けてくれ
テスト開始ギリギリになってゆき兄が教室に入ってきた
サボらずに来たのか…
819 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:34:25.24 ID:rjlCLPUo
10/21(金)午後

「たまゆら君?」
「  」
「おーい…」
「  」
「燃え尽きちゃってる…起きろッ!!!」

バシーン!と頭に衝撃
びっくりして我に返ると目の前にリカがいた

「…テストどうだった?」
「ふっ…」

笑いがこぼれた
それだけでリカは全てを察したようだった

「うん…頑張った!たまゆら君は頑張った!
 少なくともアレよりは」

リカが後ろを指差す
その先には机の上に足を乗せて完全にだらけきったゆき兄の姿があった
なぜか机の上には大量の鉛筆とシャーペンでよくわからないオブジェのようなものが作られていた
あいつ…考えることを放棄したな…

「なんかどっと疲れた…」
「まぁ今日はこれで終わりだからね
 土日挟む分月曜は余裕でしょ」
「そうありたい…」

なんか今日はさっさと寮に戻って寝たかった
教室を出て廊下を歩く

「た、たまゆらさん」
「え?」

呼び止められ、振り向くと縮こまった蝶がいた

「蝶か、どうした?」
「あ、あの、昼ご飯…シャインで…一緒にどうです…か?」
「あ、ああ…」

そういえばすっかり忘れていたが毒入りカレーパンの件
あれはやはり何かの間違いだったんだろうか
単にほろにがが間違えただけという線もあるし…
いや、深く考えないことにしよう、もう終わったことで別に誰もどうもなってないんだ
どうせ昼ご飯は食べる必要があるし、蝶に付き合ってシャインに行くことにした
820 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:35:26.55 ID:rjlCLPUo
シャインにつくとカナが席に案内してくれた
とりあえず日替わりランチを頼んだ
待ってる間に蝶が話しかけてくる
他愛も無い、なんというか普通に学生的な話題
ここんとこそういうのと無縁だったから安心するなぁ

「あれー?たまゆら君、寮に戻ったんじゃなかったの?」
「んー?」

後ろにリカがいた
どうやら友達と何人かで来たようだ

「あれ、そっちの人…」
「あ…初めまして…蝶っていいます…」
「あ、こちらこそ初めましてーリカですー
 うーん、知らない間にたまゆら君ってば友達がっつり作ってるね!」
「あー、うん」
「おっと、私もご飯ご飯っと、それじゃね」

リカは奥のほうへ行ってしまた

「…可愛いですね」

蝶がポツリと呟いた

「ん?ああ…」
「彼女ですか?」

思わず口に含んだ水を噴出しそうになった

「違う違う!」
「そうムキにならなくても」
「…んー…なんていうか彼女って言うのは何か違うんだよな
 どこがどうってのは言えないけど…」

どうも関係が言い表せない
ゆき兄のリカの関係ほどではないが非常に説明がし辛い

「…まぁ、そんなんじゃないよ」
「そうですかぁ…」

なんだか若干空気が重くなったような…気のせいか?
蝶はなぜか遠くの席に座っているリカをぼーっと見ている
…気にいったんだろうか
そうこうしてるうちに注文した日替わりランチが来たので食べることにした
食べてる最中も蝶はチラチラとリカのほうを見てる気がした
何をそんなに気にしてるんだか…
食べ終わったものの蝶は何もせずにぼーっとしていた
一体どうしたんだこいつは
821 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:37:45.52 ID:rjlCLPUo
「おーい、蝶?」
「あ、すいません、ちょっと考え事を」
「何?」
「くだらないことです」
「ふーん…それじゃ俺そろそろ帰るぞ」
「あ、はい…どうもありがとうございました…
 また一緒にお昼ご飯、食べれるといいですね…」
「誘ってくれれば他に用がなけりゃ来てやるよ」
「ええ…楽しみにしてます」

一瞬、ほんの一瞬だけ
蝶がいつもとは違う自身に満ちた笑みを浮かべた気がした
だがすぐにいつもどおりの弱々しい顔へと戻る
見間違いか…いや、でも…

「それじゃ僕もいきますよ、用事があるんで」
「あ、ああ…それじゃまたな…」
「ええ…また…」

蝶は行ってしまった
何だろう、違和感というか…なんというか
考えていても仕方ないので俺も寮に戻ることにした

寮に戻ると入り口で2人の生徒が話していた
いや、あれはもしかして…

「しげる!えび助!」
「たまゆらさん!」
「お前ら、もう怪我は大丈夫なのか!?」
「ええ、もう大丈夫です」
「俺も大丈夫、あ、それと見てくれよ」

えび助はポケットからうまい棒を1本取り出した
そしてそれを上に向かって放り投げる

「よっ」

頭上でうまい棒がパンッ!と爆発とまではいかないが破裂した
粉がパラパラと降ってくる
822 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:39:31.84 ID:rjlCLPUo
「多少だけど爆破の力を取り戻した
 最もこの程度じゃ目くらましぐらいにしかならないけどさ」
「ははは、もう必要ないだろ?」
「いや…きっと必要になるさ」
「…そうだ、桃花ももう怪我治ったのか?」
「ええ、桃花さんも完治してます」
「そっか、よかった」
「それよりたまゆらさん」
「ん?」
「僕達が透過と戦ってから執行部との戦いはどうなりました?」
「えっと…透過を倒してから次に倒したのはカラスを操って空を飛ぶ黒やん…
 そのあと痛みを蓄積させて炸裂させる雷雲ってのを倒して…
 あ、あとゆき兄が刀を使う剣三郎を倒したとか」
「あれ?ってことはよぉ、しげる」
「ええ…僕らを含めて7人」
「執行部全滅じゃないか」
「え、でも…最後の執行部って名乗る奴がいるんだけど?」
「最後の執行部…?
 しげる聞いたことあるか?」
「いや…」
「蝶ってやつで執行部にはしてはなんつーかビビリで…
 戦いたくはないって言ってやたらとフレンドリーに接してくるんだけどさ」
「最後の執行部…」
「んん…?」

2人は腕を組んで考え出した
しばらくそのままの体勢で時間が過ぎる
ポツリと、えび助が口を開いた
823 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:41:38.16 ID:rjlCLPUo
「…いつも会合のときにあの部屋に現れてたのは俺としげるを含め7人だった」

続いてしげるが喋りだす

「ということは…会合に参加しない執行部員がいた?」
「そいつが最後の執行部員?」
「でもそれならなぜ会合に参加しなかったんでしょう?」
「…本人に来る気がなかったか…
 それとも…執行部の隠し玉として会長に止められていたかのどちらか…かな」
「たまゆらさん」

突然話を振られて虚を突かれた

「え?何?」
「そいつが何者かわかりませんが…気をつけてください
 なんだか…恐ろしく危険な気がします」
「どうしてそう思うんだ?」
「…元執行部としての…勘とでも言えばいいんですかね?」
「そもそも執行部の会合は会長の命令によって行われる
 …本人に来る気がなかったとしても来ないというのは会長の命令に逆らうこと
 ということはそれだけの力があるってことだ…
 後者の場合は言わずもがな、あの会長が隠し玉として扱ってる奴が一筋縄で行くわけがない」
「とはいえただの騙りの可能性もあります」
「…まぁ用心に越したことはないだろう」

なるほど、蝶の存在は執行部員の誰も知らなかったのか…
しかしあの臆病な蝶がそんな隠し玉とは思えない
でも毒入りカレーパンの件もあるし…
それにさっきの蝶が見間違いかもしれなかったがあの不気味な笑み
やはり…警戒が必要だろう

「ありがとう2人とも
 気をつけとくよ」
「恐らく会長も焦ってます
 そいつを退ければいよいよ生徒会自体が動き出すことに…
 そうなったら」
「やめとけしげる
 …たまゆら君だってそんなのわかってるはずだ」
「…ああ」
「そうですね…すみません…」
「もし困ったことがあったら、いつでも呼んでくれ」
「大丈夫さ、その気持ちだけで」
「それじゃ僕らはこれで」
「あ、桃花にも完治おめでとうとか言っといてくれよ」
「はは、わかりました、それじゃ!」

2人は手を振ってどこかに行った
俺も部屋に部屋に戻ろう
テストが終わってすぐに帰るつもりだったけどけっこう時間くったな…
824 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:43:07.36 ID:rjlCLPUo
10/21(金)同時刻

「〜♪」
「蝶」
「うあひゃぁ!ごめんなさい!…ってあれ、会長」
「任務のほうは?」
「…任務ってなんでしたっけ」
「…」
「うわぁ冗談です!覚えてます覚えてます!
 転校生たまゆらを断罪、抵抗するようであれば処刑も止む無し!!」
「…それで?途中経過を聞かせてもらおうか?」
「ああ、あの、それがですね…
 なんていうか…その…仲良くなって…できればこのまま穏便に済ませたいなーって…」
「…命令違反か?」
「けけけ、けっしてそんなことないです!!」
「ならば早く遂行しろ!!」
「…」
「…どうした?」
「…焦るなよ、会長」
「…!」
「名コックはな、食材の下ごしらえを怠らない
 あらゆる可能性の中から成功へと繋がる可能性だけを導き出していく
 それでいいんだ、俺が手を汚す必要は無い…」
「…」
「あいつは敵意の無い者には手を差し伸べる…そういうお人よしだ
 だからこそ、そこに隙がある」
「…狡猾だな」
「まるっきり馬鹿ってわけでもないけどな
 毒を突っ込んでやったカレーパンで蹴りがつけば楽だったんだけどな」
「…それで?奴はいつ倒せるんだ?」
「時期尚早かと思っていましたが…丁度今日打ち崩せる穴が見つかったんでね
 休みの間に蹴りをつけましょうか、勿論僕は動きませんけどね
 あいつが勝手に飛び込んで勝手に死ぬそういう筋書きです」
「さすが、とでも言えばいいかな?」
「…僕はね…臆病者ですから…
 自分が戦うのは…向いてないんですよ」
825 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:45:41.91 ID:rjlCLPUo
10/21(金)夜

部屋でゲームしたりとなんだかんだしてるうちに夜になってしまった
なぜテスト期間中にゲームをしているのだろうか…
間違いなくゆき兄の影響な気がする
だけど休みを挟むし今日ぐらいは骨休め的な意味で別に問題無いだろう

ふと、後ろを振り返る
こんな夜はいつもパターンとしてノスフェラトゥが現れるのだが…
部屋には誰もいない
これが普通のことなんだが最近普通がよくわからなくなっていて非常に困る
そのときコンコンとノックの音が響いた

「たまゆら」

ゆき兄の声だった
返事をする前にゆき兄がドアを開けた

「いたか、ちょっと頼みがある」
「何?」

すっと差し出したゆき兄の手にはカップラーメンが湯気を立てていた

「何これ?食えってこと?」
「違う、ほろにがに持っていってやってくれ」
「え?ほろにがに?」
「ああ、普段なら俺が持ってくんだがちょっと今日は忙しくてな
 あ、ほろにがのいる場所わかるだろ?ゴミ捨て場だぜ?」
「うん、まぁいいよ
 じゃあちょっと行ってくるよ」
「悪いな」

ゆき兄からカップラーメンを受け取ってこぼさないようにゴミ捨て場に向かう
ていうか普通に考えて麺が伸びるはずだが…いいのかな?
校舎のまわりこみゴミ捨て場に向かう
するとゴミ捨て場のほうからウラァ!だのダリャァ!だのほろにがの声が聞こえてきた
何をやっているんだ…と思ったその瞬間だった
周囲の空気が一変した
冷たく、だけど暑苦しくへばりついてくるような空気
間違いなく、堕人が現れた時の感覚
思わず、カップラーメンを投げ捨て、俺は走り出した

「ほろにがッ!!」
「おお!?たまゆら!?
 こいつら何なんだ!?」

ほろにがの周囲を4体の堕人が取り囲んでいた
3体以上…!まずい!
826 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:47:07.34 ID:rjlCLPUo
「こんニャロ…!」
「待てほろにが!そいつらに手を出すな!!!」
「ええっ…ぬあっ…ととっ…!!
 だぁぁぁーーーーーーー!!!」

ゴミの山から滑り落ちるほろにが
慌ててそれに駆け寄る

「いっでぇ…」
「とにかく逃げるぞ!!」
「わかったわかったよ、その代わり後で説明しろよ!!」
「ああ!あいつら動きは遅いからな!全速力だ!!」
「りょーかいっとぉ!」

俺とほろにがは一気に走り出した
しばらくはこちらを追いかけてきた堕人だったが
ある程度距離が開くと踵を返してフラフラとどこかに行ってしまった
俺たちはそのままグラウンドかまで走りぬけた

「はぁー…はぁー…
 やっぱ…最近走ってないから…だりぃわ」
「…はぁ…はぁ…」
「んで、アレなんだったんだよ」
「…アレは…堕人…」
「だひとぉ?」
「なんなのかはよくわからない…
 生徒会が封じていたらしい…そして人を襲う…
 あと3体以上が集まってる時に倒すと数倍強いのが出てくる」
「なるほど…
 ま、要するに妖怪みたいなもんか」
「まぁ…そういうもんかな?」
「次から次へと本当にもう…この学園は魔窟だな…
 このヤマが終わったら1発本でも書いてみようかな」
「誰も信じねぇよ」
「まぁな…ああ!」
「何だよ」
「カップラーメンは!?俺のカップラーメンは!?
 ねぇ俺のカップラーメンは!?俺の生命線は!?」
「…悪い、どっかに投げ捨てちゃった」
「ホァァァァア!!!!」

奇声をあげて発狂しだすほろにが
いやでもあの状況じゃあしょうがねぇ…だろ?

「まぁ…しょうがねぇ…っちゃ…しょうがねぇよ…な」

意外と物分りがいいな
というか考えてることでも読まれたんだろうか
827 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:48:16.89 ID:rjlCLPUo
「…しょうがないんだが…ああああ!!!」
「今度は何だよ!!」
「おい!俺のゴミ捨て場!俺のサンクチュアリどうすんだよ!
 あいつらいたら戻れないじゃねーかよ!!」
「堕人は朝になったら消えるらしいぞ」
「朝までどうすんだよ!!」
「他に寝るとこぐらいあるだろ…」
「ねーよ!ぜんぜんねーよ!どーにかしろよ!!」

延々と騒ぎ立てるほろにが
そして結局


「よ、ゆき兄」
「…」

ゆき兄が部屋のドアをバタンと閉めた

「コラー!閉めるなー!」
「ば、ばか!騒ぐな!!」
「む、むぐ…」

ドア越しにゆき兄の声が聞こえる

「…何があったか知らないし、聞く気もないが…
 連れてきたんならたまゆらが世話しろよ」
「人を捨て猫みたいに…」
「いいじゃんかーほろにがとゆき兄仲いいだろ?
 だからさー」
「そうだよー、ゆき兄ー
 風呂入って裸の付き合いしようよー
 一緒の布団で親睦を深めようよー」

ガチャと、カギの閉まる音が聞こえた

「…冗談だったのに」
「…仕方ない…俺の部屋で寝かしてやるよ」
「ベッドは俺な、久しぶりだい」
「…」

部屋に入れるとあっという間にベッドを占領された
俺は泣く泣く床に寝た
828 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:49:53.49 ID:rjlCLPUo
10/21(土)午前

がーやらごーやらやたらとうるさい音で目を覚ます
時刻は午前9時ちょっと過ぎ
一体なんの音かと辺りを見回す

「んがー、ぐごー、しゅぴるるるる…」
「コイツか…枕がヨダレまみれに…」

イラっときて叩き起こそうとしたが手を止める
起こすとまためんどくさいことになりかねないと本能が悟った
とりあえず勉強でもしよう
そう思って机に座ってノートを開く
よし、じゃあまず数学から…

「んぐぉぉぉぉぉおお…」

…ここにxを代入…

「ごがぁぁぁぁぁあああ…」

…で、こうなって…こうなるから…

「ぐごぉぉぉぉぉぉおお…」



「ふがぁぁぁああああああ!!」

集中できるかボケェ!!!
思わずシャーペンを机に叩きつけ半ばドアをぶっ壊す勢いで外に出た
くそっ…しかし外に出ても特にやることがねぇぞ…

少しマシになってきたとはいえまだ少し直射日光ガンガンの外で1日時間を潰すのは辛い
そうだ!保健室にいこう!
ヤチャマルならちょっと事情を話せばわかってくれるに違いない!
それに保健室はある意味あの暴君ヤチャマルのおかげで凄く快適な空間だからな!
そう思ってウキウキ気分で保健室へと向かう

『昨日徹夜で飲んだから寝ています
 起こした奴は打ち首獄門、命が惜しけりゃ侵入禁止』

保健室のドアにはそう書かれた張り紙がしてあった
落胆してトボトボと保健室を後にする
くそう、一体この土曜日をどこで時間を潰せというんだ…
829 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:51:27.14 ID:rjlCLPUo
素直に部屋に戻るしかないんだろうか…
そう思って寮の前まで戻ってくると誰かがウロウロしていた

「たまゆらさんッ!!!たたた、大変です!!」
「蝶!?どうした!?」

半泣きの蝶が俺の姿を見るやいなや突っ込んできた

「僕のせいなんです!僕が…僕がっ…!!」
「落ち着いて話せ!どうしたんだよ!!」
「リカさんがっ…会長に…連れていかれました…」
「なッ!?」
「僕が…たまゆらさんを倒せないと判断した会長は直々に潰すと言い出して…!
 僕が悪いんです…こんなんだったら早くたまゆらさんに倒されてれば!!」
「そんなのはいいッ!!どこに連れていかれたんだ!!」
「あ、案内します!」
「!ちょっとここで待っとけ!!」

俺は猛ダッシュで寮に飛び込み階段を駆け上がる
部屋に飛び込むと同時にベッドの上に飛び乗る

「ふげっ!!?」
「ほろにが!!起きろ!!!」
「な、なに?」
「リカちゃんがまたさらわれた!!
 ただし今度は生徒会長が直々にさらいやがった!!
 俺は先に行くからゆき兄に伝えてくれ!!」
「ほ、ほわい!」

すぐさま机の上の黄龍鉄甲を掴む

「蝶って奴に場所を聞いてから来いって言ってくれ!」
「お、おう…」

そのまま開けっ放しのドアから俺は飛び出した
寮の外では蝶がオロオロとした感じで俺を待っていた

「案内しろ蝶!」
「こ、こっちです!!!」
830 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:53:37.76 ID:rjlCLPUo
蝶が走り出す、俺もそれについていく
白やん…やっぱりお前は…俺の敵だ!!
そして辿り着いたのはゴミ捨て場の更に奥
そう、小川から話を聞いた、廃屋街
昼間だと言うのにどんよりとした空気が漂っており…
なんというか…暗い…
もちろん、昼間の明るさなのだが視覚で感じる明るさとは違う
とにかく、できるなら長居はしたくない場所だった

「それで?リカちゃんはどこだ!?」
「あそこの、建物に入っていくのを見ました…それ以上は…」
「よし、わかった」
「あ、あの僕は…」
「蝶は今すぐ寮に戻れ
 そしてゆき兄って奴にここの場所を教えてくれ」
「え…それは?」
「仲間さ、頼んだぜ」
「は、はい!わかりました!すぐ呼んできます!!」

その言葉を聞いて俺は廃屋に飛び込んだ
中はひんやりとした空気だった
ボロボロになった家具などがあちこちにブチまけられている
使えなくなったものはこのまま置いていったのか…?
その中途半端に残存する生活臭が雰囲気と相まっていいしれぬ恐怖を煽っていた
どこかに敵がいるかもしれない緊張感がさらに俺の精神をすり減らしていった
一部屋ずつ慎重に足を運ぶ
だいたい見回ったはずなのにどこにもリカの姿も白やんの姿も無い

「リカちゃーん!!いるなら返事してくれー!!!」

思い切って大声で叫んで見る
だけど返事は返ってこない
…他の場所に移動したとかそういうのだろうか?
その時、足元からジャリ、という感触がした

「…土?」

家のほぼ中心部の床になんで土があるんだ?
よく見ると土が線のようになっている
それはキッチンに続いているようだった

「なんでキッチンから土が…
 いや、外から来たやつについていた土が落ちたのか…?」

なんにせよ手がかりはこれしかないようなので
土の線を追っていく
そして土の線はキッチンのある一点で途切れていた
いや、途切れていたというよりも…

「床下収納…?」
831 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:55:16.00 ID:rjlCLPUo
土は床下収納の蓋の縁の部分で切れていた
ここに何かがある…?
少し迷って…蓋を開けてみる

「これは…?何だ!?」

床下収納ってのは大きくても小型冷蔵庫ぐらいの大きさだと思っていたが…
蓋の先は縦穴が続いていた
まるで地の底まで続いているような深い穴が…
よく見るとどうやらこの穴は床下収納の底をぶち抜いて掘られているように見えた
となるとこれはこの家が建てられた後に作られたのか?

怪しいのはここしかないが…さすがに迂闊には飛び込めない
とりあえずゆき兄が来るのを待ってから…それから
と、そこまで考え顔をあげようとした時だった

「え…?」

後ろから背中をドンッと押された
穴が、闇が、視界いっぱいに広がっていく
ガスッと、額に土壁がこすれる痛みと衝撃
そして、狭い穴をぶつかりながら、弾き飛ばされるように落下する
身体のあちこちに痛みが走り
最後に全身に強い衝撃、呼吸が止まる

「かっ…は…ああ…!」

右肩を強くぶつけたらしい…
ズキズキと痛み、痛みで身体を起こせない
何が起きた…?突き飛ばされた…?誰に…?
白やんにか…?クソッ…油断した…!!

「はぁっ…ぐっ…」

なんとか身体をねじり仰向けになる
上のほうから差し込む微かな光
この距離を落ちたのか…
穴がせまかったからひっかかったりして落下速度が抑えられて助かったのかな…
だけどとても登れそうには無いな…
いや、ゆき兄がもうすぐここに来るだろうから
そうしたら叫んで引き上げてもらえばいいだけだ…

「ん?」

段々暗闇に目が慣れてきた
よーく目をこらして見ると底の部分は意外と拾いみたいだった
なんというか…魔神が入ってるような壷のような形状だろうか

「…地下室…なのか…ここは?」
832 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:56:20.70 ID:rjlCLPUo
ピキッ、ピシッという音が上から聞こえた
穴の底からじゃ何が起こってるのかわからない
不安に駆られているとまたピキッ、ピシッ、ピキピキとした音がした
何の音なんだ、あれは…

次の瞬間、一際大きいバキッ!という音が響いた
その音を皮切りにバキン!バゴッ!ドガン!と音が響き渡る
何が起こってるんだ!?
必死に目を凝らして上を見る
穴から見あげても天井しか目に入らない
だがその天井に全ての答えがあった
天井に、亀裂が走っていた

「…嘘…だろ…?」

呆然とする俺をよそに亀裂はビシビシと大きくなっていく
そして…

「くそっ!!!」

咄嗟に横に転がる
ガンッ!!ドガッ!バキッ!と音を立ててさっきまで俺が倒れていた場所に
天井の欠片がズガン!と音を立てて落ちてきた
衝撃で砕けた破片が散ってくる
同時に土がパラパラと俺に降り注ぐ
ドガン!バキン!ゴガン!と崩壊の音は鳴り止まない
必死に身体も丸め、頭を抱えてこの地下が崩壊しないことを祈り続けた
833 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:57:17.93 ID:rjlCLPUo
10/21(土)同時刻

「お、おい!ゆき兄急げって!!」
「あのクソ馬鹿野郎!!また捕まったのかよ!!
 つーかどこいきゃいいんだよ!」
「いや、蝶って奴が場所を教えてくれるって言ってたんだけどよ」
「じゃあそいつはどこにいるんだよ!」
「しらねぇよ!!」
「あれ…2人ともどしたの?そんなに慌てて」
「リカ!?」
「え…何…?」
「え…何…って…お前捕まったんじゃ?」
「そりゃ確かに2回ほど捕まったけど3回捕まるほどバカじゃないもん…」
「…どういうことだ?ほろにが?」
「俺に聞くなよ…
 何かの間違い…とか?」
「…間違い…?」
834 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 22:58:54.16 ID:rjlCLPUo
10/21(土)同時刻

どれくらい時間が立っただろうか
辺りは不気味な静寂が支配していた
そっと、目を開けてみる

真っ暗だった、何も見えない
手探りで辺りを調べて見る

土…瓦礫…

どうやら…穴は瓦礫で塞がってしまったらしい…
何も見えない…闇に閉じ込められてしまった…

だけど俺がここにいることは蝶がゆき兄に伝えてくれるはずだ
だったらそのうち助けが来るはず…
今は…待つしかない…この恐怖に耐えるしか…ない…
835 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 23:01:04.81 ID:rjlCLPUo

10/21(土)同時刻

「…ふぅー…
 廃屋街に忍び込んだものの"偶然"建物が崩壊…
 そして"偶然"にも彼は地下室に閉じ込められた…
 しかし誰もその行方は知らない…これで、ジ・エンドだね
 …あんたがここに来たのは僕以外は誰も知らないからね…
 ま、もしかしたら助けが来るにしてあの恐怖じゃ…数日も持たないだろうね
 ああ、不運な"事故"だね…ご冥福をお祈りしますよ…たまゆらさん…
 クックック、ハハッハッハハハハ!!」



10時限目 - 臆病者 -
836 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/08/29(土) 23:02:14.68 ID:rjlCLPUo
眠かったので駆け足のうpになった
反省はしていない、だってとてつもなく眠かったから…

あと、重すぎてイライラした
ちくしょうめ!
837 : :2009/08/29(土) 23:19:18.89 ID:8FgXgHU0
ゆき兄乙!


俺黒すぎワロタwwwwww
838 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/08/29(土) 23:33:51.93 ID:maZAQFko
ゆきに乙!

蝶くんタチ悪いwwwwwwwwwwwwww戦えwwwwwwwwwwwwwwwwww
839 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/30(日) 00:49:05.15 ID:kNk79Jko
ゆき兄乙!

蝶くんwwwwwwwwwwテラ腹黒wwwwwwwwwwwwww
840 :ぽろりー :2009/08/30(日) 01:49:18.53 ID:axGi0fw0
誰かキャラ絵描いてくんねーかなー
841 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/30(日) 08:28:17.61 ID:gEyht8.0
ゆき兄オッツンwwww


新しいライダーがキカイダーにみえr(ry
842 :そら :2009/08/31(月) 00:25:14.91 ID:kJ3FJIDO
一目見たときからバロムワンかと




後楽園遊園地で、僕とバロムクロス!
843 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/31(月) 07:06:30.70 ID:bkkJa2AO
さ、さむい
844 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/08/31(月) 09:36:23.51 ID:wpJUacDO
来週からのライダーはセンターマンか…
845 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/31(月) 20:34:31.13 ID:wrlKLAAO
おっぱい
846 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/31(月) 20:54:12.74 ID:Vh25KLA0
おっぱい!
847 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/01(火) 00:48:20.35 ID:xRh4NCAo
なんか久しぶりに外道と連絡とってみたけど
ファイナルアンサー!とか今さら言いまくってて時代錯誤を感じた
848 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/01(火) 10:36:28.90 ID:Fl1McIDO
さすが外道…
849 :ピュアハート [('A`)]:2009/09/01(火) 12:28:25.18 ID:/U6IrQSO
外道タイムリープしてね?
850 :ミギー :2009/09/01(火) 20:02:52.03 ID:0XcHG.DO
時をかける外道
851 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/02(水) 01:10:24.57 ID:uTHoa.AO
小川「俺、未来から来たって言ったら‥信じる?」
852 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/02(水) 19:09:25.09 ID:St4mAbAo
高橋がブレーキの壊れたチャリンコで坂道を下ってどかーんして
俺が坂道を転がり落ちて傷まみれになって
そしてら後ろで外道が?
853 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/02(水) 19:30:17.56 ID:cGOxeYDO
>>852
なにしてんだよwwwwwwwwwwwwwwwwバカスwwwwwwwwwwwwwwww
854 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/02(水) 20:09:28.48 ID:uTHoa.AO
( ^ω^)ヤチャマルふふふ‥
855 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/02(水) 21:22:23.14 ID:opzN6MAo
( ^ω^)ヤチャマルふふふ‥
856 :ピュアハート :2009/09/02(水) 21:41:05.61 ID:vjUEgQSO
( ^ω^)ヤチャマルふふふ…
857 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/02(水) 21:54:25.87 ID:BIy9uUco
( ^ω^)ヤチャマルふふふ…
858 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/02(水) 22:42:45.83 ID:ACFHs9A0
( ^ω^)ヤチャマルふふふ…
859 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/02(水) 23:09:12.39 ID:M3hQD86o
( ^ω^)ヤチャマルふふふ…
860 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/03(木) 00:05:10.71 ID:42LpwYQo
これはもう
( ^ω^)ヤチャマルふふふ‥と言わざるを得ない
861 :バナ丸 :2009/09/03(木) 00:53:01.26 ID:0dw3IADO
         .┌┐
        / /
      ./ / i
      | ( ゚Д゚)<ヤチャマルふふふ‥だゴラァ!!
      |(ノi  |)
      |  i  i
      \_ヽ_,ゝ
        U" U
862 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/03(木) 18:24:24.76 ID:wilqY2AO
とりあえずヤチャマルは時をかける少女を見るべきだな
863 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/03(木) 19:29:43.31 ID:0dw3IADO
去年は見たが今年は残業してた


内容とかあんまり覚えてねぇよwwwwww
864 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/03(木) 21:37:08.84 ID:0dw3IADO
まぁなんだ…


数年後とかにうっかりこのログ見たら身悶えるな

なんという羞恥プレイwwwwwwww
865 :そら :2009/09/03(木) 21:48:56.59 ID:K3SgQMDO
どどんまい
866 :たまゆら :2009/09/03(木) 23:43:48.66 ID:/Hrb/YAO
夜叉丸が変態露出羞恥プレイをすると聞いてやってきました(・ω・)/
867 :たまゆら :2009/09/04(金) 21:19:20.61 ID:k/0UN5wo
なんというスレスト。あまりにひどい。
868 :そら :2009/09/05(土) 01:09:12.90 ID:n1iChUDO
はぁっぴばぁーすでぇー、とぅーみぃー…



http://imepita.jp/20090905/040250
あーうめぇ
869 :ミギー :2009/09/05(土) 07:14:11.32 ID:IRqN86DO
しげるんるん誕生日おめでとう!!
恋のミラクルしっげるんるん♪
870 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/05(土) 08:31:23.84 ID:LTeE6gDO
誕生日オメ!


もうそんなお年頃かwwwwwwwwww
871 :ピュアハート [('A`)]:2009/09/05(土) 10:37:33.84 ID:lyS/E.SO
また一人10代の輝きを失ったか……
872 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 10:48:49.11 ID:T1hw/f.o
そうか…
しげるもそんな年頃か…おめでとう
873 :そら :2009/09/05(土) 10:51:21.89 ID:n1iChUDO
あざっす





ティーンじゃなくなっちまったお
874 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/09/05(土) 17:13:39.18 ID:lqW8dNwo
空くんはぴばすでー!

20歳過ぎた後は時間の進みが早いよ^^
875 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 21:58:43.90 ID:T1hw/f.o
さぁて今週も間に合った入稿ターイム!
876 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:00:10.90 ID:T1hw/f.o
邪眼学園黄龍譚
11時限目 - 時の輪 -

時刻不明

どれぐらい時間が立っただろうか
あれからしばらくは希望を抱いていた
ポケットの携帯で辺りを照らしてみて脱出口を探してみたり
どうにかして外と連絡を取ろうとしてみたり、当然圏外だったが…
そしてそのうち携帯の充電が切れてしまった
音も無く、光も無い、地の底
ゆき兄はどうして来てくれない
最後に携帯で見た時間は午後2時半
それから何時間たったのか、いやそれともまだ1時間もたっていないのか
…考えるだけ不毛だ…信じるしかないんだ…
助けが来ることを…

冷たい土に身体を横たえる
体力を消耗するな、なるべく動かずに、ただ待ち続けろ…
闇が、こんなに怖いものとは思わなかった
聞こえるはずの無い音が聞こえてきそうで
見えるはずの無いものが見えてきそうだ
このままじゃ、持たない…正気を失いそうだ…
877 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:01:20.89 ID:T1hw/f.o
「…が、…なって…」
「…で…に…」
「それは…で…」

人の声…?
どうして…?

暗いまどろみの中で聞こえたのは何人かの人の声
それは何かを真剣に話しているような声だった
ドアが、ガチャリを開く音がした

「…!!」
「なんだこいつは!!」
「貴様!ここで何をしている!!」

怒号と同時に、顔に衝撃が走った

「がはっ!」

痛みで目を開くと、光が飛び込んでくる、とても眩しい…
同時に何人かの白衣を着た男達、威風堂々とした老人達が視界に飛び込んできた
状況が把握できない、俺は一体どこでどうなってここにいるんだ?

「…貴様、どこから侵入した?」
「…わからない、気がついたらここにいた」
「冗談は程々にしておくといい」

カチャリと、額に冷たいものが押し当てられた
この感覚は前に透過との戦いで味わった
銃口を押し当てられている
878 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:04:08.82 ID:T1hw/f.o
「待ちなさい」
「所長」
「見たところ、割と素体として有用そうではないか」
「ですが、こんな得体の知れない輩を…」
「得体の知れないものを調べるのが私達の仕事だろう?」
「…わかりました」
「…とはいえ今はこんな奴に構っている暇もないのでは?」
「それもそうだ…ならば生体兵器の実験用にでもストックしておきなさい」
「わかりました…立て、5秒以内だ」

状況が把握できないし、頭がぼーっとする
だけどとりあえず言うことを聞かないと殺されるのは理解した
ゆっくりと俺は立ち上がる

「歩け」

後ろから銃を突きつけられ歩かされる
狭い通路を歩いていき、右へ左へ枝分かれした道を進んでいく
そして辿り着いたのは、牢屋

「さっさと入るんだよ!!」

背中を蹴り飛ばされバランスを崩してそのまま倒れるように牢の中へ
酷いことをしやがる…
そのまましばらく俺は動かない
だけど段々と頭がハッキリしてくる
ボヤけ気味だった視界が徐々に鮮明になっていく
同時に思考能力も段々と元に戻ってくる
879 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:05:53.54 ID:T1hw/f.o
「…俺は…」

間違いなくこれは夢ではない
しかしあの地下室から俺は一体なぜこんなところにいるんだ?
訳がわからない、何が起こったってんだよ
今更だいたい何が来ても驚かないとは思ったがこれはさすがに行きすぎだ

「あ、あれ?そういえば黄龍鉄甲もない…」

右腕につけていたはずの黄龍鉄甲すらも消えている
つまり完全に今の俺は丸腰なのだ
辺りを見回してもコンクリートの壁と鉄格子と鉄格子の先にあるのは狭い通路
一体どうしたものか…
困っているとコツコツと足音が聞こえてきた
奥の通路から白衣の男が何かを持ってやってきた

「食事だ」

鉄格子の下に設けられた小窓のような場所からトレイに乗った食事が差し出される
だけど、その食事は変な匂いがしていた
さらにいろんな食料をただ乱雑にグチャグチャに混ぜたようで
つまりとてもじゃないけど食べられるようなものではない

「…こんなの食えるかよ」
「ハッ、そうか、じゃあ食わずに置いておけよ
 どうせ餓死する前には実験体として使うしな」
「その実験体とかどういうことなんだよ…」
「…お前、本当にここがどういう場所かも知らずに忍び込んだのか?
 不運にも程があるな」
「忍び込んだっていうか気づいたらここにいたんだよ!!」
「気づいたらねぇ…
 まぁ俺はモルモットの妄言を真面目に聞くほど寛大な心は持ち合わせてないがな」
「くそっ!!」
「せいぜい神様にでも祈っておくんだな」

男はそう言って通路を戻っていった
俺は鉄格子にしがみついて喚いた

「ちょっと待てよ!!
 教えてくれ!!ここはどこなんだよ!!」
「…ここは禁忌を犯す者どもの集まりさ」
「意味わかんねぇよ!!ちょっと待てよ!!」

もう返事は返って来なかった
男はどこかに行ってしまった

「クソッ…!!」
880 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:09:04.45 ID:T1hw/f.o
このままここにいたら殺されるってのか?
冗談じゃない、なんとか逃げ出さないと
しかし鉄格子はとても壊せるような代物じゃない
他の部分もコンクリートの壁でどうすることもできない
八方塞とはこういうことなのだろう
しかし意外にも心は冷静だった
人の理解を遥かに越えた現象に遭遇してなんというか思考が麻痺しているような感覚だ
腐臭を放つ食事をぼうっと見つめながらこれからどうするかを考える
まずここがどこなのかを突き止めないといけない
突然こんな場所に来てしまった理由は考えれば色々思いつくが…
だけど今はそれを突き止める術は無い
しばらく考えているとまた通路の奥から足音が聞こえてきた
今度は2人分だった

「入れ、相部屋だ」
「…」

白衣の男が後ろ手で縛られた男を牢の中に叩きこんだ
縛られた男はそのまま倒れるように地面に落下した
それを見届けて白衣の男はまたどこかに行ってしまった

「うう…」
「だ、大丈夫ですか?」
「…すまない、縄を、解いてくれ」
「あ、はい…」

言われるがままにキツく縛られた縄を解いてあげる
男はしばらく焦点の合わない目で辺りを見回していた

「…」
「あの…」
「…君は、どうしてここにいるんだ?」
「え?」
「売られてきたのか?それともさらわれたのか?」
「…いや、気づいたらここにいて…」
「…?」
「…僕もよくわからないんです」
「そうか…」

しばらく無言の時が流れる
重苦しい沈黙の後、男はゆっくりと喋りだした
881 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:10:29.01 ID:T1hw/f.o
「早くここから逃げたほうがいい
 モタモタしているとすぐにでも生体実験のモルモットにされる」
「だけど、牢には鍵がかかってるし…」
「…」

男は牢の扉の前に行って鍵穴をいじりだした
開ける気なのか?

「…開けれるんですか?」
「わからない…」
「わからないって…」
「ただ何もしないで待っているよりかは幾分マシと思ってね…」
「…」

しばらく、その光景をじっと眺める
男は一心不乱に鍵穴をいじっている
ふと、聞いてみた

「ここは、どこなんですか?」
「…ここは悪魔どもの研究施設さ」
「悪魔?」
「七三一部隊ってのを知っているか?」
「…いえ?」
「七三一部隊というのは日中戦争の際に何千人もの中国人やロシア人をマルタと呼称し
 生体実験をした部隊のことさ」
「…日中戦争」
「ペスト菌を捕虜に感染させたり、真冬に裸で外に放り出しての凍傷実験
 壊疽菌実験に、毒ガス実験、細菌爆弾実験、その他にも多数の非人道的実験を繰り返した
 …ここはその七三一部隊の生き残りの者達が作った悪魔の研究施設だ」
「つまりあいつらは…今でも生きた人間相手にそんな実験を…?」
「そうさ…だから早いとこ脱出しないと俺達も実験に使われる」
「…」
「何か、硬くて小さいものを持ってないか?」
「え?」

言われて俺はポケットの中など色んな場所を探る
しかし硬くて小さいものなんて…
胸ポケットを探った時に、指先が何かに当たった

「?」

ゆっくりとそれを取り出してみる

「あ…これは…」
882 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:18:09.76 ID:T1hw/f.o
しばらく前に、イビルアイで神楽君にもらったタリスマン
すっかり忘れていた
俺はそれを男に差し出した

「これで、なんとかならないでしょうか?」
「…やってみよう」

男はタリスマンを受け取り、また鍵穴をいじりだした

「…紹介が遅れたね
 俺の名前は、風太」
「僕は、たまゆらって言います」
「…酷かもしれないが…」
「え?」
「例えこの牢を脱出したとしても
 外には武装した研究員が大量にうろついている
 生きてこの施設を脱出出来る可能性は…低いだろ」
「…だけど、ここにいてもどっちにしろ生体実験で殺されるのなら」
「…そうだな」

ガチャン、と音がした
同時に牢の扉が、キィと音を立ててゆっくりと開いた

「やった!」
「…」
「どうしたんですか?」
「しばらく牢の中で待とう」
「え?」
「丸腰じゃあ無理だ」
「…」
「恐らく、数時間後に誰かしらが様子見に来る
 鍵が開いているとは思ってもいないだろう、そこを奇襲し武器を奪う」
「…わかりました」

それからしばらく、牢の中で何をするわけでも無く時間を潰した
風太はあまり多くは喋らない
というよりも何かを真剣に考えてるような感じで
辺りはちょっと重い雰囲気だった
話しかけるのも躊躇うような雰囲気で少しずつ時間が経過していく
やがて奥からコツコツを足音が聞こえてきた
風太は一言、小さな声で任せてくれと言って俺を奥においやる仕草をした
俺は素直に壁際まで下がって風太を見た
白衣の男が、牢の前に立った

「どうだ、牢の気分は?」
「意外に快適だな」
「ハッ、そうかい
 まぁ精々ほざいておけばいい」
「…」
883 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:19:41.89 ID:T1hw/f.o
男が、通路を戻ろうとした
その瞬間、風太が牢を扉を半ば体当たりするように開けた

「なッ…!?」

虚を突かれた男の頭を、風太の両手が掴んだ
俺は思わず、固く目をつぶった
ゴキン!という音が、耳の中に響いた
そして、ドサッと何かが倒れる音がした
ゆっくりと目を開けると
首がありえない方向に捻じ曲がった白衣の男が倒れていた
急速に、吐き気が込み上げる
なんとかそれを押さえ込もうとする
だが駄目だった

「う…げぇっ………がはっ…はぁー…はぁー…」

吐瀉物を床に撒き散らす
視界に入ってくるそれが不快で、また吐き出す
繰り返していると、背中に何かぽんとおかれた
風太が背中をさすってくれた

「大丈夫か?」
「…ありがとう」
「…見せたくはなかったが…しょうがなかった…」
「…わかってます」

俺が落ち着いたのを見届けると
風太は男の白衣を脱がしてそれを俺に渡してきた

「着ておけ、ある程度のごまかしにはなるはずだ」
「でも、風太さんは…?」
「俺はこっちを持つ」

風太は白衣の男が持っていたと思われる拳銃を手に持っていた
俺は白衣を服の上から羽織った

「命を絶つ罪を背負うのは俺だけで充分だ
 それじゃ、ゆっくりついてこい」

風太に促され
狭い通路をゆっくりと進む
通路の先にはドアがあった
風太がこちらを見る、俺は無言でただ頷いた
そしてゆっくりとドアが開けられる
開かれた先は廊下のような感じだった
あれ、この感じ、どこかで見たような…

「とりあえず外に出よう」
「あ、はい…」
884 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:22:50.68 ID:T1hw/f.o
ゆっくりと通路を進む
静かだ、誰もいないのか?
そして同時に通路の景色が見たことがあるような景色だと気づく
不思議な感覚でゆっくりと前に進んでいると
先の曲がり角から数人の男達が話しながらこちらに歩いてくるのが見えた

「こっちだ」

風太が俺をグイッと引っ張って近くの部屋に飛び込んだ
そのまま口を抑えられしばらく動きが止まる
部屋の前を男達が歩いていのがわかる

「ですから…」
「…で、なり…」
「どちらにせよ…」

断片的な話し声からは何を話しているのかはわからない
ふと、壁にかけられたカレンダーを見つける
一瞬、意味がわからなかった

「行ったか…」
「…」
「どうした?」
「今年は…何年ですか?」
「ん?」
「今は西暦何年です…か?」
「…1950年だが?」
「…」

状況が、把握できない
俺はワープしたんじゃないのか?
時間を、遡ったのか?

「どうした?大丈夫か?」
「…えっ…あっ…はい…」
「とにかくここを脱出するんだ、ほら行くぞ」

風太はそういうものの
俺は完全に頭が真っ白になっていた
ここが約60年前だって?
ありえないだろ、おかしいだろ
そしてそれを踏まえたうえで通路に出てわかった
ここは、1950年の邪眼学園だ

「そんな…嘘だろ…」
「さっきからどうした?」
「…」

言っても信じないだろう
60年後の未来からきたなんて
885 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:25:42.71 ID:T1hw/f.o
「…すいません、何でも無いです」
「そうか…何かあったら」
「貴様ら何をしている!!」
「!!」

通路の奥から聞こえた声
ほぼ同時のパァン!という音
そして静かだった辺りに、幾多の声

「発砲音だ!」
「侵入者か!?」
「警報を鳴らせ!!」

途端にけたたましくなる

『A-2ブロックで発砲音確認、侵入者の可能性あり
 繰り返す、A-2ブロックで発砲音確認、侵入者の可能性あり』

辺りに放送が響く
そして多数の足音がこちらに向かって来る気がした

「くそ!来い!」

風太が俺を引っ張る
正面の窓に1発の銃撃
ヒビが入った窓を体当たりでブチ破る

「ここが1階で助かった」

外に着地し、すぐさま走り出す
俺はただひたすら風太についていく

「いたぞ!」
「撃て!逃がすな!!」

後ろから銃撃音が響いた
風太が走りながら応戦している
弾が行き交う真ん中にいる俺は今にも死ぬんじゃないかと錯覚する

「たまゆら!左だ!!」
「左!?」
「林に入れ!早く!」

左の方向には手入れをされていないといった感じの
荒れ放題の林…というか森に近いものがあった
言われた通りにそこに飛び込む
続いて風太が銃で牽制しながら林に飛び込んできた
886 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:30:40.60 ID:T1hw/f.o
「まだだ!とにかく走れ!!!」

何度も不安定な地面に足をとられこけそうになり
葉っぱで肌がこすれて傷ついても俺は必死に走りぬけた
どれだけ走ったか
気がつくと発砲音は止んでいて、目の前にはへたり込む風太がいた

「はぁ…はぁ…」
「風太さん…」

風太の左肩から、赤い鮮血が流れていた
恐らく、弾が命中したんだろう

「…かすっただけだ…それよりも」

風太は左肩を抑えながら林の奥を指差した

「ここから真っ直ぐ進め、しばらく進むと塀がある…
 割と高い塀だが木を上手く使えば越えられるだろう
 越えたらとにかくここから離れるんだ」
「風太さんは?」
「俺はまだここでやることがある…」
「その傷で?」
「どのみち俺は逃げるつもりなんてなかった…
 これ以上、犠牲者を増やしてはいけないんだ…
 さぁ、君は早く行くんだ
 急がないと奴らが追ってくる」
「…俺は、帰る場所なんて無い…」
「?」
「どうして俺がここに来たのかはわからないけど…
 もし意味があるんだとしたら…
 多分ここから逃げたらもう絶対にその意味はわからないんだと思います…」
887 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:34:19.46 ID:T1hw/f.o
「…」
「連れて行って下さい」
「…生きて帰れはしない…ぞ」
「俺は死の恐怖を前にしても逃げるわけには行かないんです…
 そしてどうせこの時代に帰る場所は無い…」

風太はじっと俺を見つめてきた
そして少しだけ笑って

「いい目だな…
 俺達が忘れてしまった希望が見える気がするよ」
「…」
「…本当にいいんだな?
 本当に死ぬかもしれないんだぞ?」
「…ええ」

風太はため息をついた
そしてしばらくして言った

「中央塔の地下を目指す」
「中央塔?」
「その名の通り施設の中央に位置する塔だな
 そこにある機械を破壊する」
「…何のために?」
「この施設を吹っ飛ばすのさ…」
888 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:37:17.74 ID:T1hw/f.o
「おい、さっき侵入者がいたって?」
「取り逃したそうだぞ」
「ああ、それで捜索行ってるのか」
「みたいだな」

風太が飛び出し、片方の男の首にナイフを突き刺した
そして流れるように虚を突かれたもう1人の男の首がねじ曲がった

「…どうやら、主力部隊は俺達を探しに外に出たようだな
 今がチャンスだろう」
「随分手際がいいんですね…」
「人殺しの腕がいくらあろうと…」
「すいません…」
「とにかく今はチャンスだ、一気に中央塔まで向かうぞ」
「はい!」

風太と一緒に中央塔へ向かう
道中何人かの研究員がいたが、皆風太によってあっというまにその命を散らしていく
恐ろしく強い…彼が味方で本当によかった
あっという間に中央塔に辿り着いた
やはり、中央塔は…時計塔のことだったかのか

「たまゆら」
「はい?」
「…ほとんど迷うことなくここまで走ってきたが
 どうして道を知っているんだ?」
「…なんとなくですよ、中央塔っていうから中央だと思って」
「そうか…まぁ深くは聞くまい」
「それよりカギがかかってるようですけど…」
「ああ、こっちだ、ついてこい」

風太が塔の裏面に回る
俺もそれについて裏へと回る
何の変哲も無い地面を風太が触っている

「…ここだな」
「え?」
「ふんっ!!」

ボゴォッ!と地面の一部が浮いた
そして階段が現れた

「これ…は?」
「秘密の入り口ってやつかな
 ここから中に侵入できる」
「…わぁお」
「少し狭いが大人1人分ぐらいの余裕はあるからな
 先に入るからついて来い」
「わかりました」
889 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:42:45.25 ID:T1hw/f.o
風太が暗い穴に入っていく
俺もそれに続いた
真っ暗を穴を這いずるように先に進んでいく
ゴゥンゴゥンと何かの大きな機械が動いてる音が穴に響き渡っていた
しばらく進むと、ゴトッと音がして薄っすらと光が差し込んできた

「たまゆら、足元に気をつけろ」
「はい…」

横穴はやや高い位置の壁に空いていた
高さを確認したあと慎重に着地する
ゴゥンゴゥンと巨大な機械が動いていた

「これは…」
「ようこそ、親愛なる裏切り者よ」
「!!」

パッ!と辺りに光が差す
眩しさに目が眩む
そしてゆっくりと目を開けると
俺達は何人もの銃を持った男たちに囲まれていた
そしてその中心にいた他とは別の空気をかもしだし1人の男がいた

「君がここに来るのはわかっていた
 だから少し罠を貼らせてもらった」
「クッ…」
「おっと、動くな
 動けば蜂の巣だ」
「…」
「私は悲しいよ、風太君
 優秀な研究員であった君ならばこの計画の素晴らしさが理解できたはずだがね」

研究員…?
風太が感情を顕わにする
それは、怒りに満ちた表情
890 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:44:00.18 ID:T1hw/f.o
「戦争は終わった、七三一部隊はもう必要ない!
 悪魔の研究は終わらせるべきなんだ!!」
「…必要無い、か
 終戦を迎え5年たち、本当にそう思っているのかい?」
「…」
「懐かしいものだな、敗戦直前に重要書類を持ち出しこの施設に潜み終戦を迎えた
 そして我々は諸外国相手に新たな研究を始めた…
 目論見は当たっていた、七三一部隊の実験や研究成果は
 どの国から見ても喉から手が出るほど欲しい代物だったのだからな」
「…」
「生きた人間を使った実験などは道徳的には禁じられるべきものだ
 だが本音は医者だって科学者だって果ては軍隊までそういった実験を行いたいんだ
 ここはそんな欲望を代わって叶える場所だ」
「あんたみたいなのがいるから…
 戦争が終わってもいがみ合いが続いて行くんだ…!!
 憎しみの連鎖は終わらないんだ!!」
「我々がいなくともいがみ合いは続く、それが人の業だ
 それにお前がここに至るまでに殺した研究員にも家族がいる者はいたのだぞ?」
「…そうさ、全部わかってるさ…
 だから俺は…元より地獄に落ちるつもりだ」
「…君は失望したよ、風太君
 偉大なる実験の栄えある最初の試験体にしてあげるつもりだったが…
 もうそんな価値もないだろう」
「…所長、最後に一ついいか?」
「言って見ろ」
「重要な装置の設計図は肌身離さず持ち歩いたほうがいいぜ」

風太がそう言ったと同時に
1発の銃声、風太の持っていた銃からだった
放たれた銃弾は、大きな機械に命中し、キィンと音を立てた
同時に、あたりが爆音と共に揺れた

「貴様何をした!!」
「気をつけろよ…逆流が始まるぜ…」
「何だと!?」
「たまゆら!」
「え?」

風太が俺を手を引っ張った

「撃てぇ!!!」

怒号が響いたその瞬間だった
辺りに、突風が吹き荒れた
いや、もはや風というレベルではない
人が、吹き飛ぶほどの暴風
機械がガガガガガガ!と不気味な唸り声を上げる
891 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:46:17.58 ID:T1hw/f.o
「貴様何をしたぁぁぁぁあああああああ!!」
「たまゆら…あそこの穴に入るんだ…」

風太が指差した壁際の床をよく見ると小さな穴があった
だけど穴は小さくてとてもじゃないか一人分しか入れないだろう

「早く行け!!!」

必死に風に飛ばされないようにふんばって穴へと向かう
後ろからは何人もの人の絶叫
阿鼻叫喚の地獄とはこういう場所だろうか
天井や壁がバキバキと音を立てている
揺れる地面にバランス崩され転倒しても這いずって穴へと必死に向かう
やがて俺の片手が穴を淵を掴んだ
そして後ろを見て愕然とした
機械が合った場所に深く、真っ暗な大穴が開いていた
そしてそこに人が吸い込まれていく
ある者は涙を流しながら絶叫し、ある者は怒りの形相で雄叫びを上げながら
1人残らず穴へと吸い込まれていく

「風太!?」

吹き荒れる風の中、風太を地面に伏せていた
対面には、先ほど所長と呼ばれていた男

「風太、貴様死ぬ気か…!!」
「我々はもう存在してはいけない!
 戦争によって生まれてしまった我ら悪魔は戦争と同時に消えなければいけなかったんだ!!」
「馬鹿が…もう止められんぞ…
 完全なる不死の人間になる予定だった者たちはもう自我も何も無い
 肉を喰らい、血を啜るのみのただの闇に堕ちた人に成り下がるぞ!!!」
「後の世に闇をばら撒いてしまうのは俺としても苦悩の末の決断だった…!
 だが今止めないともう手遅れになる!!」
「本当に…馬鹿…がっ…あっ…ああぁぁ…!ああぁあああああああ!!」

所長と呼ばれた男がゆっくりと穴へとずり下がっていく
そして穴へと、落ちる

「許さんぞ!貴様ら、絶対にぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!!!」

その絶叫を最後に所長と呼ばれた男は深い穴へと
その姿を消していった…
俺はすぐさま風太に手を伸ばした
892 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:48:14.18 ID:T1hw/f.o
「掴んで!!早く!!!」
「たまゆら君…」
「早く!!」

風太は首を横に振った

「何やってんだ!!早く!!!もうもたない!!」
「たまゆら君…許して欲しいんだ」
「何をだよ!!」
「こんなものを生み出して我々を…
 君がどこから来て、これからどうするかはわからないが…」
「聞きたくねぇよ!早く掴んで!!」
「我々は恐らく長きに渡ってこの地に留まる…
 そして…何も分からぬまま人を襲うだろう…
 許して欲しい…願わくば、ここに誰も近づかないように…」
「我々はとか言うなよ!!掴んでよ早く!!」

穴の手をかけている部分がピシリと音を立てた
吹き荒れる風は、どんどん強くなっていく
その瞬間、風太を俺の手を掴んだ

「え?」

何が起こったかわからなかったが
俺はとりあえず風太を引っ張る
そのまま無言で風太は穴へと入れとジェスチャーする

「風太も後から必ず…」
「ああ」
「絶対だからな」

そう言って俺が穴に入ろうとしたその瞬間だった
後ろから、ドンッと、背中を突き飛ばされた

「あっ…!?」

穴は、少し進むと角度のきつい傾斜になっていた
俺はまっ逆さまにそこを転がり落ちる
必死に足と手でブレーキをかける

「風太ァ!!なんでだよ!!」
「…今更何をしたって…
 僕もこの部隊の一員で何人もの人を殺したのには変わりはないんだ」
「だからって死ぬことはねぇじゃねぇかよぉ!!」
「…彼らだけ死んで、僕だけ生き残るなんて虫が好すぎるさ
 僕達は同罪なんだ…」
「くそっ!!」
893 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:50:39.10 ID:T1hw/f.o
這い上がろうとするが傾斜が急すぎて思うように上がれない
それでも必死に上へ上へと

「…お別れだ、最後に君に会えてよかった」
「ふざけんなぁぁぁ!!!」

視界に風太が入った

「罪を償う気があるなら生きろよ!!
 生きて罪を償えよ!!
 そんなんただ逃げてるだけじゃねぇかぁぁぁあああ!!」
「…」

風太の後ろに何かが見えた
黒い、塊
それが、まるで手のように風太を包み込もうとしていた
必死に、腕が千切れるんじゃないかと言うほど手を伸ばして風太を掴もうとする
あと、少し、あと少しで届くのに…!!!
手は、虚空を切るばかりで、どうしても掴めない

「そうか…君は似てたんだ…
 僕が最後に実験に携わった時の被験者だった…子に…」

その言葉を最後に
風太は黒い何かに覆われ
穴へと、滑り落ちていった

「あぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

同時に俺はバランスを崩して、斜面を転がり落ちる
ただ、落下していく
身体の痛みなんかより、心の痛みのほうが、とても辛いと、思った
落下が終わり、しばらく、動けなかった

「うっ…ぐっ…ちくしょう…くそぅ…
 ちっく…しょ…!!」

ただ、俺は泣き続けた
どうしても届かなかった手が、すくえなかった自分がもどかしくて
やがて、涙が止まった頃
俺はさらに奥へと続く横穴を見つけた
もう喋る気力も無い、ただ先へと進む
深淵とも言える闇の中を、ただ手探りで進む
やがて比較的広い場所に出た
同時に俺は、力尽き、倒れた…
894 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:52:46.08 ID:T1hw/f.o
「君の母親は金で君を売った」
「そう…」
「憎らしくはないのか?」
「僕がいることでお母さんが苦労してるのはよくわかってた…
 …愛されていなければ僕が生きている意味なんて
 ここで僕が素直に[ピーーー]ばお母さんは楽になれるんだ
 それにこの研究が僕みたいな子を救ってくれるんでしょ?」
「…」
「救って、くれるんでしょ?」


「今の七三一部隊は何なのですか!?
 国の為でもない、誰かの為でもない!!
 ただ自らの欲望を満たすためだけに存在しているじゃないですか!!
 狂気の研究に手を染めてまで私たちが望んだのはこんなものなんですか!!」

「きっとこの研究が形を為せば…
 世界はまた…止めなければいけないんだ…
 この身を…呈してでも…」

「すまないな、たまゆら君
 君に託してしまったことは本当にすまないと…思っている
 僕が言えた立場じゃないかもしれないが…願わくば…全てを終わらせて…」



――わかってる、俺を救ってくれた君との約束
  俺が、全てを終わらせてやる
895 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:53:50.13 ID:T1hw/f.o
…ゆっくりと目を開ける、視界は、真っ暗
右手に硬い感触
左手で触れて見ると、それは黄龍鉄甲
…夢を見ていたのか、それとも…
いや、夢なわけがない、夢であってたまるものか…
ゆっくりと、後ろの壁に触れた
そしてそこを思いっきり叩いた
薄い土の壁が、ボコリと崩れた
そう、夢じゃない、俺があの時代に行ったのはこのためかもしれない
いや、そうじゃないのかもしれない…
彼との出会いは、間違いなく俺の戦う理由を増やした
…安心してくれよ風太…必ず…俺が…

狭い、土の通路を進んでいく
そして現れる急な傾斜を、ゆっくり、ゆっくりと…
傾斜を登りきると、朽ち果てた場所についた

「…」

だがあるはずの、穴が無い
ただコンクリートの壁と地面だけ…
…よく見ると床のコンクリートの色が違っていた
丁度円形に…
思うことは色々ある
だけど今はまだ振り返る時じゃない
壁に足をかけ朽ち果てた横穴へ入り込む
そのまま先へ先へと進み
錆付いた鉄板を持ち上げる
太陽の光が視界に入りこむ、ズキズキする
身体についた泥を軽くはたき落とした
ゆっくりと時計塔の正面へと回り込む

「な…」
「?」
「なぜお前がここにいる!?」

声の方向を振り向くと
驚愕の表情でこちらを見ていた蝶がいた
ああ…犯人はやっぱりお前なのか…
驚くほど心は冷静で、悲しくもなかった
896 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:56:11.21 ID:T1hw/f.o
「蝶…」
「うっ…」
「俺は、あの地下室で見た
 そして約束したんだ、全てを終わらせる」
「何を言って…」
「堕人は1匹残らずこの世から消滅させてやる
 そのために、俺はお前を倒さないといけない」
「…どうやら、小細工はもう無理か…!!」

蝶の顔つきが変わった
いつも何かに怯えていたような顔は触れる物全てを切り裂くような攻撃的な顔つきに変わる

「とはいえ…
 ここは一旦撤退!!」
「何!?」

蝶はこちらに背を向け一目散に逃げ出した

「待て!!」

俺はそれを追いかける
だが蝶の足はかなり早く追いつけない
そのまま蝶は廃屋街のほうへと逃げ込む

「…またここか!」

蝶の姿は見えない
だがさすがに2度も同じヘマを踏むような真似はしない
間違いなく蝶はここに逃げ込んだ
いや、逃げたというより俺をここに誘い込むためにわざと…
一歩一歩、慎重に奥へと進む。ガラン、と何かが落ちた音がしてその方向を見る
廃屋の屋根の上に、蝶が立っていた

「ようこそ、僕のフィールドへ」
「…」
「そんな怖い顔しないでよ…
 自らの力は完全に発揮できる場所に敵をおびき出すのは兵法として当然だろう?」
「…まぁな」
「さぁて、それじゃ…」

蝶が廃屋の屋根に手をつけた
同時にビキッ!と音を立てて、廃屋が崩壊を始めた
土煙をあげ、あっと言う間に1つの家屋が崩壊した
周囲に立ち込める土煙で視界が奪われる
同時に気管に侵入する小さな粉でむせ返る

「げほっ…ごほっ…」
「もらったぁ!」

煙の中から蝶が飛び込んできた
咄嗟に手を前に出すとパァァン!と音が響いて手がブルブルと震えた
897 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:57:44.80 ID:T1hw/f.o
「…チッ…」
「…」

蝶が距離を取る

「…直接戦闘には俺ホンット向いてないんだよな〜…
 さてどうしたもんかねぇ…」
「お前の能力が何かは知らないが」
「あん?」
「もう、俺には勝てないさ」
「…言ってくれるな」

蝶は手を地面につけた

「どんな能力でも、戦い方次第で…
 如何なる敵も倒せるということを…証明してやろう」
「…」
「俺の力は…あらゆる物体の目を見つけることが出来る」
「目?」
「岩にも、木にも、この世界のあらゆるものには目がある
 どんなに硬い物でも、目のただ一点に力を叩き込めば砕けるのさ」
「それで廃屋をぶっ壊したりしてたのか」
「あれは中心となってる柱の目を突いてヘシ折ってやったんだがな
 そしてこのあたりの地面の中心の目は俺の足元さ!!」

言うが早いか、蝶は足元の地面を指で突いた
突いた、というか指が地面に一気にめり込んだ
一瞬、地面が揺れた
だが、何も起こらない

「で?」
「足元注意だ」
「なにッ…!?」

次の瞬間、大地が割れた
地割れを起こすほどの…!?
898 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 22:59:38.88 ID:T1hw/f.o
「くそっ…!」

地割れに飲み込まれそうになる
咄嗟にその場から飛びのく

「無駄だ、お前の近くの大地はもう砕けている」

着地した場所の地面が脆く崩れ去った
まずい、落ちる!
そう思った時にはすでに落下が始まっていた
ギリギリで、手を伸ばし、崩れていない土を掴む

「ヒャハハ!ギリギリだなぁ!」
「おい、蝶」
「んだぁ?命乞いか?」
「…届かなかったんだ」
「あ?」
「俺がもう少し、もう少しだけ頑張っていれば…
 手が届いたかもしれなかった…」
「何言ってやがんだテメェ?」
「あの時の穴に比べれば、こんなもの何とも無い」

そう言って俺は手を離した
浮翌遊感、そして、落下が始まった
けたたましく蝶が笑っている

「ヒャハハハハ!自ら死ぬのを選んだか!!
 いい判断だぜ!!」

死ぬ、わけない
俺は約束したんだ
だから必ず

「…目覚めろッ!!!!スザァァァァァク!!!」
899 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 23:02:30.62 ID:T1hw/f.o
大爆発、とでも言えばいいのだろうか
穴から噴出した爆炎は空高く舞い上がり、それはさながら炎の柱
ここまでの炎が噴出するのは自分でも予想外だったが
蝶は俺より数倍驚愕の表情だった

「…なんだ、これ…俺はマグマ溜りでも突いたのか?」
「蝶」
「ヒッ!?」

爆炎の中に浮かぶ俺を見て蝶が怯えた顔をした
そして背を向け、逃げ出した

「臆病者ってのは…フリじゃなかったんだな」

なぜだろう、なぜか俺はそれを理解して少しだけ安心した
もしお前が今までの執行部と同じように力を手にしたことで
その力で自分を脅かす者を排除するという考えに至ったというなら
俺が、その力を消し去ってやるさ
それで、出来れば、またお前と、昼飯を食いたいな

「朱雀爆炎大焔帝!!!」

周囲の炎が右腕に集まり
同時に翼から炎が周囲に爆散する
爆発のエネルギーを推進力として一直線へと蝶へと向かう
それは、超高速で放たれる、炎の矢
刹那、蝶がこちらを振り向いた、怯えた目、そしてその奥に潜む、安堵
そして勢いをつけて全力で振りぬかれた右腕は
蝶の身体を遥か後方へと吹き飛ばした

「アァアアアアアアアアァァァァァァアア!!!!!!」

地面を抉りながら、蝶は吹き飛び
やがて廃屋の壁へと叩きつけられた
そしてその身体からは黒い煙が噴出していく
あたりには焦げた匂いが立ち込める
半ば焦土と化した地面に着地する
叩きつけられた蝶はもう動く気配はない

「カハッ…」
「!」

ビシリと音がした
蝶が叩きつけられた衝撃で、廃屋が倒壊しそうだった
いや、し始めたと言うべきか
崩れ落ちる瓦礫でこのままじゃ蝶が押しつぶされるのが容易に理解できた

「うわぁあああああああああああああああああああああ!!!」

蝶の絶叫、飛び込む俺
間に合うか!?
900 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 23:03:42.37 ID:T1hw/f.o
あの時俺は、恐れたんだ
風太の後ろの黒い塊を、恐れてしまった
だから、掴めなかった
俺があれを恐れることなく、穴から這いずりだして手を伸ばしたなら
きっと掴めたはずなんだ
もうあんな思いはごめんだ
何も掴めないでただ俺だけが生き残るのはもうごめんだ!!!!


気がつくと、俺は蝶に覆いかぶさるような体勢
蝶の目が状況を把握できていないというように見開かれる

「なんで…ですか?」
「…なんでかなぁ…」

この体勢じゃあ逃げれもしないし瓦礫を弾くこともできない
なんでかな、どうして助けようと思ったのか?
脳裏に、風太の顔が浮かんだ
やっぱり、これが理由だよな
瓦礫が迫るのが風でわかる
直撃すれば死ぬかもしれないがもうどうしようもない
だけどそれでも俺は死ぬわけにはいかないんだ


「相変わらず後先考えねーっていうか
 特級クラスのお人よしってーか馬鹿だなお前は」
「えっ?」

蝶と俺が一気に後ろに引っ張られた
901 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 23:07:24.42 ID:T1hw/f.o
「うわっ!?」

そして今まで俺の頭があった部分に大きな瓦礫がドゴン!と落下した
当たったらまず即死だった…

「で、一体お前はこの3日間何してたんだ?」
「…ゆき兄」

引っ張ってくれたのはゆき兄だった
いつもいつも絶妙のタイミングで現れてくれる
いや、ていうか3日間?

「ゆき兄、俺3日間」
「ん…ああ…」
「…嘘だろ…テストは?」
「休みを挟んだのが幸いしたな今はまだ月曜の夕方だ
 …再試ぐらい受けさせてもらえるだろ」
「…」
「どうしてですか!!」

後ろで蝶が叫んだ

「どうして…どうして僕を助けたんですか…!!
 あんな目にあわせたのに…どうして…!!」
「…託されたからかな」
「託された…?」
「俺は、ある人と約束したんだ
 その人は自らの罪を償うために死んでいった
 …誰かが誰かの犠牲にならないことを願って、自分は死んだんだ」
「…」
「なんでかな、あそこでお前を見捨てたら…
 なんか、もう駄目な気がしたんだ」
「…参った」
「ん?」
「僕の…完敗です…」
「…はは…うっ…」

安心した直後、足に力が入らなくなってその場に崩れおちそうになる
思わず地面に手をついて支える

「たまゆら…お前、大丈夫か?」
「ごめん…ゆき兄…ちょっとお願いがある」
「なんだよ…」
「…シャインおごって」
「…」
902 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/05(土) 23:08:33.16 ID:T1hw/f.o
10/23(月)深夜

「…さてどうしたものか」
「どうしたもこうしたも
 もう執行部は全滅です」
「つまり、我らが直接出向くしかないということか」
「そうなりますね」
「だがこうなると…堕人自体も」
「楔は残り3本…
 これだけは絶対に死守しなければならない」
「大丈夫ですよ
 僕達と、そして貴方自体が楔の役割なのですから…」



11時限目 - 時の輪 -
903 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/09/05(土) 23:44:14.07 ID:lqW8dNwo
ゆきに乙!

風太・・・(´;ω;`)ブワッ
あと蝶くんの能力は使い方によっては凄く強そうだwwwwww
904 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/05(土) 23:58:36.23 ID:LTeE6gDO
ゆき兄おつんこ!

風太…(´;ω;`)ブワッ
905 : :2009/09/06(日) 00:04:17.47 ID:T59oTfc0
風太ーー・・・



頑張ればこの能力で温泉とか石油掘り当てられるかな?
906 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/06(日) 17:27:46.10 ID:NmEvnQko
センターマン・・・いや、仮面ライダーW見てるんだが



中の人のハードボイルド探偵が若干ゆき兄くさい件
イラっとするおwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
907 :そら :2009/09/06(日) 17:52:23.91 ID:Klh8tYDO
ライダースレを見るとグーグル先生とか言われてますね
後ルナがキモいんですね
908 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/06(日) 17:58:48.48 ID:NmEvnQko
グーグル先生はフィリップくんとやらだな
確かにルナきめぇwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


作風がちょっとシャンゼリオンくさい
909 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/07(月) 11:21:52.52 ID:JUTEmgAO
お昼だよー
910 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [業務連絡だお( ^ω^)]:2009/09/07(月) 12:47:46.40 ID:qeoQqsDO
黒やん黒やん

今月はたしか開校記念日があったはず…


今年は間違えて学校行くなよww
911 :ミギー :2009/09/08(火) 07:44:32.74 ID:1Xbxt.DO
私の学校開校記念日とかないんだが………なにそれおいしいの
912 :そら :2009/09/08(火) 10:36:26.52 ID:sLvhK6DO
ウチのとこシルバーウィークの後
木金月午前授業で、また三日間休みなんだけど
913 :たまゆら :2009/09/09(水) 02:17:27.59 ID:V7Cn1AAO
今が休みだからなんでもいい(´ω`)

箱根で夜の露天風呂まったり(*´Д`)=з
914 :破邪顕正幸福迅雷恵比寿之助 :2009/09/09(水) 14:11:04.22 ID:ou1nokAO
毎日がエブリデイだからなんでもいい(´ω`)

トイレで携帯いじってまったり(*´Д`)=э
915 :そら :2009/09/09(水) 19:38:09.83 ID:S.xKOYDO
Hubで飲みながらサッカー見るって良いよね
916 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/11(金) 20:21:32.90 ID:KN/a2uAo
鬼のように止まってるなwwwwwwwwwwwwww
人が執筆に追われてる裏でこのようなwwwwww
917 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/12(土) 01:34:13.33 ID:rlGQccDO
マジカルバナナやろうぜ!

はいバナナといったらダイエット!
918 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/12(土) 01:47:52.13 ID:rlGQccDO
ダイエットといったらがんばる…(´・ω・`)
919 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/12(土) 01:54:13.95 ID:rFS0G6AO
がんばるといったら受験‥(´・ω・`)
920 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/12(土) 02:31:08.96 ID:rlGQccDO
受験といったら受験当日にお母さんに「受験票は持った?行く場所わかる?」と心配され「はいはいわかったよ」と生返事して家を出るも電車の中で不安になって鞄を改め一人テンパる姿をサラリーマンにじとっとした視線でみられるが無事に受験票はあり、逆に鉛筆を忘れたのに気付いた二年前…(´・ω・`)
921 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/12(土) 02:34:27.22 ID:rlGQccDO
あ、「ん」がついたから終わっちゃった…(´・ω・`)
922 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/12(土) 02:52:51.02 ID:bZJplQQ0
どこで終わったんだよwwww
923 :そら :2009/09/12(土) 02:54:23.32 ID:LlL4vEDO
>>921
涙を拭って、さぁお立ちなさい
924 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 06:53:54.07 ID:5fsEeQIo
>>923
そこのサンホラー
俺と超重力しようぜ
925 :そら :2009/09/12(土) 15:26:40.49 ID:LlL4vEDO
>>924
即ち…光をも逃さぬ暗黒の超←重↑力↓
926 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/12(土) 19:01:26.01 ID:zpHmLkDO
カラオケでドクロちゃん歌ったら店員入ってきた\(^o^)/
927 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:00:28.67 ID:5fsEeQIo
始まるわよ!
928 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:01:21.90 ID:5fsEeQIo
邪眼学園黄龍譚
12時限目 - 記憶と意思 -

10/23(月) 夕方

蝶は何も言わない
自らの完敗を認めた後、何も喋らなくなった

「…たまゆら」
「ん?」
「…何があったんだよ?」
「それは…」

蝶に騙されて生き埋めにされて
この学園の過去を見て
それで脱出して蝶を倒して
そのまま瓦礫に押しつぶされそうになった蝶を助けた?

なんというか説明しても信じてくれそうに無い上に
説明自体もとにかくめんどくさい

「…僕が」
「蝶!?」

俺が困っていると蝶が喋りだした

「…僕はたまゆらさんを騙して…
 地下に生き埋めにして殺そうとしました…」
「…」
「…なのに…彼は…僕を助けてくれたんです…
 決して許されるはずのない僕を…」
「蝶…」

ゆき兄は何も言わない
黙って蝶を見ていた
恐らく蝶はゆき兄にやられるのを覚悟しての発言だろう
だけどゆき兄は何も言わず、ただ黙って蝶を見ていた
その沈黙に耐えれなくなった俺は、蝶に話しかけた
929 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:02:15.26 ID:5fsEeQIo
「…怖かったんだろ、蝶?」
「え?」
「自分の力が、お前は怖くてしょうがなかったんだろ?」
「僕は…」
「…さっき戦ってわかったよ
 お前の攻撃には俺に対する恐怖、そして自分の力への恐怖…
 怯えしか感じなかった」
「…そうです…僕は…怖かった…
 全てが怖かった…
 僕は僕を脅かすものを退けるためにこの力を手に入れた
 だけどこの力すらも僕を脅かす、殺セ、殺セって…!!
 僕は…!僕は…!!!」
「我…解き放たれり…」
「誰だッ!!!」

辺りに響いた声
人の声ではない
同時に辺りが一気に冷たくなった
この感覚、間違いない

「堕人かッ!!!」
「クッ、クククククク!!!!」
930 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:03:07.11 ID:5fsEeQIo
正面に、黒い煙が集束した
蝶の身体から噴出した黒い煙に間違いない
そしてその煙は俺達の正面で人の形になった
全身を血塗れの包帯で巻かれ
顔には蜘蛛のような大量の目があり
その全てがこちらを見ていた

「お前、何者だ!!」
「我は…死…我は…鬼哭…」
「キコク…お前、上級堕人か…?」
「…集え…大いなる…」

鬼哭はこちらに目をくれずに高く飛んだ

「い!?」
「クカカカカカカカカッ!!!」
「待て!!」
「たまゆらっ!!」

慌てて追いかけようとした俺をゆき兄が掴んだ

「なんだよ!!早く追いかけないと!!」
「落ち着け!!
 体力を消耗したお前があいつに勝てるのかよ!!」
「だけど!!!
 俺は堕人を1匹残らず…!!」
「たまゆらさんッ!!」
「蝶!?」

ゆき兄に続いて蝶まで俺を止めようとしてきた
さすがに2人がかりで止められると動けない

「は、なせッ!!」
「だめです…行っちゃいけない…」
「蝶…」

鬼哭の姿はもう見えない
俺は抵抗するのをやめた

「…蝶」
「…」
931 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:04:08.52 ID:5fsEeQIo
その瞬間
あたりが轟音と共に揺れた

「これはッ!?」
「ウォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

そして聞こえる人ではない何かの絶叫と戦慄
桃花の時、黒やんの時にも同じことが起こった
まさかこれが、楔が抜けたということか?
しばらくすると揺れは収まり
やがて何者かの絶叫も消えていった

「…収まった…のか?」
「…たまゆらさん」
「え?うわっ!」

黄龍鉄甲から光が溢れ出す
淡い金色の光

「ははっ…久しぶりだな、コレ…」

俺は黄龍鉄甲を高く空へと掲げる
溢れ出した光は蝶の小指へと集中した

「小指…?」

そして辺りは、眩い光に包まれた

932 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:05:08.60 ID:5fsEeQIo
――物心ついた時から、僕の世界は恐怖と怯えだけだった


「掃除は終わったのか、蝶」
「…はい」
「陰気な顔だな
 その顔を見ているとこっちまで滅入ってくる」
「…すみません」
「チッ!」
「ごめんなさい!許して!」


本当の両親は知らない
僕を引き取った仮の両親はそれをまだ物の道理もわからない僕に伝え
そして僕は日々、両親からのいわれの無い攻撃に身を晒すことになった
最初はそれを受け入れていたが
年齢を重ねるごとに僕は学習した

重要なのは自らが敵意の対象にならないこと
そして仮になってしまった場合はその敵意を逸らすこと


だけど、実際はそう上手くいかない
理由など無くても他人を傷つけることに躊躇いがない人種は確かに存在していた


「どうしたの?」
「…」
「いじめられたんだ?」
「…」
「ほら、こっちおいで、手当てしてあげるから」


「どうして僕はいつもこうなんだろうね…」
「人は皆怖いんだよ
 だから自らの強さを誇示して優越感で恐怖を塗りつぶす」
「…よくわからない」
「ちょっと難しかったね
 でもね、私は本当に強いのは君のほうだと思う」
「どうして?」
「だって君は恐怖に耐えられる子じゃないか」
「僕は…ただ…」
「傷つけられるのも傷つけるのも怖いんだね?
 その優しさは強さだよ?」
「強さ…」
「その強さを、間違った方向に使わないでね?
 ほら、約束しよう」
「…」
「何があっても
 恐怖に恐怖で対抗しないようにね
 ゆーびきーりげーんまーん…」
933 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:07:49.70 ID:5fsEeQIo
――あの、約束は、どこに消えてしまったのか
記憶は残酷だ
忘れたことに気づいたころにはもう取り戻せない


「思い出してくれた?」
「…僕は」
「なら、もう、大丈夫だよね?」
「…ごめんなさい…」
「思い出せたなら…君ならきっと…
 もう1度約束する?」
「え?」
「2度と、約束を忘れないって約束」
「あ…」
「ゆーびーきーりーげんまーん
 うーそついたらーはーりせんぼーんのーます…」


――光が、消えた
久しぶりだがここが気まずいんだ

「…うっ…ぐっ…僕はっ…いつからこうなったんだ…
 自分が傷つけられるのを逃れるために平気で他人を傷つけていた…」

チラっとゆき兄を見る
同じような考えらしく気まずそうに遠くのほうを見ていた
俺は蝶の横へ座った

「恐怖は誰にでもあるし
 臆病者ってのも個性だと思う」
「うっ…ぐっ…」
「お前は歪ませたのは狂った力だ
 俺はそれを知ってるから、蝶を許した」
「…」
「…俺は生徒会を倒すよ、そして全てを終わらせる
 そのためには俺だけの力じゃ駄目なんだ
 ゆき兄や、リカちゃん、他にも色々な人の協力がいるはずだ
 そして、その中には蝶も入ってるんだ」
「僕も…?」
「誰かを傷つけた罪を償いたいと言うなら、俺と一緒に戦ってくれないか?」
「…たまゆらさん
 わかりました、僕はもう…逃げません」
「…うん」

そこまで話したところでゆき兄が近づいてきた

「それで、今からどうするんだ?」
「…鬼哭が気がかりだ」
「集え…大いなる…か」
「ゆき兄?」
「…いや、俺らがいかなくとも恐らくすでに生徒会が…」
934 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:09:00.64 ID:5fsEeQIo
10/23(月) 夜

「…我らは…我らは…」
「ここは堕人が立ち入っていい場所ではない」
「…オマエ…」
「消えろ」
「…クカッ!!」
「…何だ?」
「忌々しき楔が全て消え去るのは最早時間の問題だなぁ」
「貴様はッ!!!」
「初めまして…
 俺の名は…ノスフェラトゥ…」
「クカカカカカカ!!!」
「…鬼哭、まだ期は熟していない
 血が猛るのは分かるが時を待つんだ…」
「貴様、堕人か」
「生徒会長さん、もう止まらない
 同胞たちは直にこの地に溢れ出す」
「それを俺が黙って見ていると?」
「確かにアンタは強い…だがやり方を間違えた…
 敵を作りすぎたんだよ、貴方は」
「…」
「そして我らは大いなる存在へと集い
 全てを取り戻す」
「大いなる存在だと?」
「ククッ…それじゃあ…
 また、会おう、時が来たらなぁ…」
「待てッ!!!」
「ククッ!クックックックック!!
 ヒャーッハッハッハッハッハ!!!」
「クカカカカカカカカカカッ!!!!!」
935 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:11:05.13 ID:5fsEeQIo
10/23(月) 同時刻

「んがっふ!がふっ!!んぐっ!!ごふっ!!」
「…」
「んぐ!はんっ!むぐっ!んぐぐ!!」
「おい、たまゆら」
「んが?」
「3日間飲まず食わずだったのはわかるが
 …もうちょっと落ち着いて食えよ」
「んんぐ…っぷはー!」

大量に口に突っ込んだ料理を飲み込む
やっと身体が元気になってきた気がする

「はー、食った食った…」
「全く、シャインが安くなかったら逃げてるところだ」
「いや、本当シャインがあって助かった」
「2人ともよく食べましたねー」

カナが近寄ってきた
私服だった

「食ったのはほとんどたまゆらだ
 それよりなんで私服なんだ?」
「今日のシフトはこれで終わりです〜」
「ああ、そう…」

しばらく動くのがめんどくさくてぼーっとしていた
ゆき兄もぼーっとしていた
雰囲気に呑まれたのかカナもぼーっとしていた
入り口のほうで店員が「いらっしゃいませー」と言うのが聞こえた

「…たまゆら、そろそろ帰ろうぜ」
「ああ…そうだね」
「じゃあ私も帰ってねーよおっと」
「ゆき兄ごちそうさん」
「今度おごり返せよ」

シャインを出ようとすると女子生徒とすれ違った

「?」

視線を感じて振り向くが女子生徒はこちらを見てはいなかった
気のせいか
ゆき兄の会計が終わるのを待って
俺とゆき兄は寮へと帰った
そして俺はそのまま疲れから爆睡した
936 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:12:17.58 ID:5fsEeQIo
10/24(火) 朝

朝になってとりあえず俺は学校に向かう
俺が生き埋めになってた時にテストは終わっている
故に再試は確定だが…
まぁ逆に生き埋め脱出して12時間たらずでテストというのよりかはマシかもしれない

教室のドアをあける
皆の視線が俺に集中した
…1日休んだのがそんなに珍しかったのかな

ふと、見ると
俺の机が無かった
え、何これ、イジメ?
いや、しかしイジメを受けるような覚えは無い
これはきっとたちの悪い冗談だ、冗談に違いない

「誰だよー、俺の机移動させたのはー」

若干とぼけた感じで周りの奴らに聞いてみた
だけど返事は返ってこない
それどころか、こいつ何言ってんの?って顔で見られた
おいおい、どういうことだよ
焦りを感じていると視界の端にリカが見えたので助けを求めることにした

「リカちゃん」
「え…はい…?」
「何か…机が無いんだけどさ
 どこいったのか知らない?」
「え…でも机って…
 いや、それよりも…」
「ん?」
「…あなた、誰でしたっけ?」
「いやいやいや
 笑えない笑えない」
「…?」

悪い冗談だと思ったが…
リカの目はマジだった
というか怯えてるのが見て取れる
気がつくと周りを取り囲まれていた
937 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:14:30.16 ID:5fsEeQIo
「お前クラス間違えてんぞ」
「突然入ってきてワケわかんねーこと言ってんなよ」
「ほら、出てけよ」

皆に突き飛ばされて教室の外に出される
何だよこれ、わけわかんねぇ!

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!
 たまゆらだよ!!1ヶ月前に転校してきたたまゆらだってば!!」
「お前知ってるか?」
「しらねぇ」
「だからクラス間違えてんだよ、お前はさ」
「違う!俺はここに…」
「もうわかったから早く自分のクラスに戻れよ」
「…!そうだ、ゆき兄は!?
 なぁリカちゃん!ゆき兄に連絡とってくれよ!」

今度は視線がリカに集中した
だけどリカは相変わらず怯えた顔だった
そして言った

「さっきから何?
 私あなたのことも知らないしゆき兄って人のことも知らないよ?」
「そんな…」
「ほら出てけよ
 リカちゃん怯えてんだろ」

呆然とする俺を男子生徒が突き飛ばす
廊下に尻餅をつく

「お、おい!待てよ!!」

無情にも俺の目の前でドアがピシャリと閉められた
一体何なんだってんだよ…
リカの目は本気だった、本気で俺とゆき兄のことを忘れてる
どうすればいいんだ?
いや、そもそも何が原因でこうなったんだ?

何が原因か、と考えれば要因は1つしかないはずだ
生徒会以外に考えられない
しかし一体どうすればいい…
とにかく今はゆき兄と合流するのが先決か?
とりあえずここじゃマズい
皆が俺のことを忘れてるってことは教師も俺のことを忘れてるはず
見つかって言及されたら不審者扱いされてしまう
…いやでももしかして…ヤチャマルなら…
駄目で元々だ、とりあえずヤチャマルのところに言ってみよう
938 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:18:01.29 ID:5fsEeQIo
急いで保健室へと走り出す
保健室のドアに手をかけたその時だった

「待て!!」
「え?」

保健室の中からヤチャマルの声が響いた
思わず俺の動きが止まる

「まだ入るな、何かよくわからんが術をかけられてるな
 それもかなり強力だ、少し待て」

しばらく保健室の前で立ち尽くす
10分ほど立っただろうか

「…よし、いいぞ」

許可が出たのでドアを開ける
その瞬間、甘ったるい匂いが保健室の中から噴出してきた
さらに保健室の中は煙が充満していた

「うっ!」
「すぐ入れ!そしたらドアを閉めろ!」
「…わ、わかった…」

言われたとおりにドアを閉める
ポイッとマスクを投げられたので
キャッチしてそれをつけた
机の上に壷のような物が置いてあり
そこから物凄い量の甘ったるい煙が噴出している

「何これ…?」
「魔除けの香だ」
「香…?」
「…それで何があった?
 保健室の外にいてもここまで匂ってくるような妙な気の匂いをプンプンさせて」
「…それが」

俺はヤチャマルに皆が自分のことを完璧に忘れてることを話す
話してる最中に煙で目が痛くなってきて涙が出てきた
話を聞き終わるとヤチャマルは考え出した

「…魔術についてはよくわからんが
 まぁ皆記憶を操作させられてるんだろうな」
「うん…」
「しかしそれならどうしてたまゆらから妙な気がプンプンするんだ?」
「そんなこと俺に言われても…」
939 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:19:28.26 ID:5fsEeQIo
「…しかしかなりマズいな
 それだけの大人数がたまゆらのことを忘れるってのは…
 術はそれほど強力ってことだぞ」
「…」
「普通はここまで物凄い勢いで魔除けの香なんて焚かなくていいんだが…
 これぐらいやらないと打ち消せないほど強力な奴だ」
「うん…」
「…保健室前まで来ても私はたまゆらのことを忘れなかった
 となると、恐らく…」
「恐らく?」
「防御無しで、お前と同じ空間に入ってしまった人間がお前のことを忘れるんだ
 だから皆が術にかけられたというわけではなく
 たまゆら自身に術がかけられ、そこから周りの皆が術の効果でたまゆらのことを忘れていく
 2重に張り巡らされた攻撃だよ、こうなると術というより呪いだな」
「どうにかして解く方法はないかな?」
「…術の詳細がわからないことにはな…
 ただこれだけ大多数に影響を及ぼしてるんだ
 1度かければそのままってことは無いだろう…」
「止める手段はあるってこと?」
「術をかけ続けるのになんらかの道具が必要ならそれを破壊すればいいし…
 術者本人が何かしらの行動をしているなら術者本人を止めればいい」
「…そっか…だけど、術者が誰かもわからないんだ…」
「むぅ…」

しばらくの沈黙
その時、保健室のドアが開いた

「ぶぇっ、何だよこの煙は!」
「ゆき兄!」
「お!たまゆら、お前俺のこと覚えてたか!」
「いいから早くドアを閉めろ!」
「あ、ああ」

ゆき兄がドアを閉める
同時にヤチャマルがマスクを投げ渡す

「さすがに皆が俺のことを忘れてるのは参った…
 たまゆらも同じか?」
「ああ、ヤチャマルが言うには恐らく術をかけられたんだろうって」
「…しかし何だってこんな回りくどいことを…」
「魔除けの香にも限りがある
 早く何とかしないとそのうちお前たち2人は誰の記憶からも消滅するぞ
 もちろん、私の記憶からも…」
「しかし問題は術者もわからないってことだよな…」
「…困ったな…」

俺含む3人は全員頭に手を当ててどうするか考えた
しかしこの術がどうやってかけられたのかもわからない上に
術者の正体、居場所まで完全に不明なのだ
一体どうすればいいのか…
940 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:21:51.14 ID:5fsEeQIo
「…あ」
「どうした?ゆき兄?」
「いや、たしか…神楽君から受け取ったマジックオイルの中に…」

そう言ってゆき兄は懐に手を突っ込んで
ゴソゴソと何かを探し始めた

「えーと…あ、これだ」

取り出したのは小瓶
戦闘の際に剣にかけまくっていた小瓶だった

「スペル・ブレーキング…
 自身に向けられた術や呪いを破壊するマジックオイルらしい」
「破壊か…しかし」
「…ああ、永続的にかけ続けられてるような術だと
 オイルの効果が切れたと同時に元に戻っちまう」
「それにそのオイルが効くがどうかだな」
「それはまぁやってみないとな」

そう言ってゆき兄は頭からオイルをかぶった
雫がポタポタと垂れ、床に染みを作っていく

「…どう?」
「妙な気の匂いは確かに消えた
 とりあえず成功したようだぞ」
「…となると後は効果時間か…
 神楽君が言うには12時間程度だったが」
「その場しのぎにもほどがあるな」
「…たまゆら、お前は寮に戻ってろよ」
「え?」
「俺は執行部の奴らから情報を集めてくるよ
 近寄っても記憶が消えないこの12時間しか情報収集はできない」
「まぁ…そうだね」
「連絡はメールなり電話なりでだな
 それじゃ先に出ろ、俺がお前のことを忘れちまったら意味がない」
「わかった」
「たまゆら、ゆき兄
 気をつけてな」

俺は煙が立ち込める保健室を出て
急ぎ足で寮へと戻った
自分の部屋はちゃんと自分の部屋のままだった
当たり前のことなんだがそれが今の状況では安心した
とりあえずゆき兄からの連絡待ちか
941 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:23:41.43 ID:5fsEeQIo
10/24(火) 午後

「…遅いッ!!!」

もうすでに時刻は昼下がりだ
しかしどうすることもできない
外に出れば不用意にウロウロしていれば皆が俺のことを完全に忘れてしまう
そんなわけで不安でどうしよもなかろうとも
素直に部屋で待機するしか俺には方法がないのだ
そう思っていると電話が鳴った
着信はゆき兄からだった
あわてて携帯のボタンを押す

「もしもし!?」
「もしもし、だなぁ」
「お前ッ!?」

思わず携帯が手から滑り落ちる
落下した携帯はゴッ!と音を立て床に転がる
一瞬の逡巡の後に携帯を拾いなおし、ゆっくりと耳に近づける

「びっくりしたかぁ?」
「やっぱりノスフェラトゥか!!
 てめぇゆき兄をどうした!!!」
「ああ、待て待てぇ
 別に何もしてねぇからよぉ」
「あぁ!?」
「…そう吼えるな
 困ってるだろぅ?呪いで…」
「…何でもお見通しかよ」
「この呪術は…確かにお前にかけられてるものだがぁ…
 本来学園全体の人間に及ぶほどの大規模な呪術というのは
 それこそ超規模の儀式を断続的に続ける必要があるんだなぁ」
「…」
「その欠点を取り除くために術者はある方法を取ったんだぁ」
「方法?」
「学園全体の人間をあるものを使って
 術がかかりやすい状態に陥れてるんだぁ」
「…あるもの?」
「故に止める方法は2つある
 1つは術者本人を殺し、呪い自体を根本から破壊する…」
「…」
「もう1つはそのあるものを破壊、もしくは止める
 そうすれば呪いがその効力を発揮することは出来なくなり
 完全に無力化するはずだぁ」
「そのあるものってのは何なんだ?」
「…」

ノスフェラトゥは突然黙った
こいつ、ここまで教えておいて…!
942 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:26:12.81 ID:5fsEeQIo
「どうした!」
「…すまないなぁ…
 少し用事が出来た…」
「おい待て!!」
「学校にいる奴が定期的に耳にする音
 その音の発信源に呪力が乗せられているんだぁ」
「定期的に…耳に?」

しかし返事は返ってこなかった
携帯からはツー、ツー、と虚しい音が響いていた

「クソッ!!!」

思わず携帯を壁に投げつけそうになる
が、とりあえず思いとどまった

情報を整理してみると
俺にかけられた呪いは通常なら大多数の人間がまとめて俺の記憶を忘れるような呪いじゃない
そのために術者は全生徒にあるものを使って術がかかりやすい下地を作っておいた
こうなるとあとは俺と同じ空間にいる奴は次から次へと俺の記憶を忘れるってことか

…術者を[ピーーー]というのは現実的ではない
そもそも術者自体の居場所がわからないんだ
と、なるとやはりそのある物を破壊するしかないのか
そう思っているとまた電話がかかってきた
着信はまたゆき兄だった
ゆっくりと電話を耳に近づける

「もしもし…?」
「悪い、全然つかめねぇ」

今度はちゃんとゆき兄からだった

「悪いな、もっと早く連絡しようとしたんだが
 あちこち走り回ってるうちに携帯を落としてな」
「落としたぁ?」

それをノスフェラトゥが拾って俺にかけてきたと…?
でもいつも突然俺の目の前に現れるノスフェラトゥがなぜそんな周りくどいことを…?

「ゆき兄」
「ん?何だ?」
「こっちはある程度掴んだぞ
 信じていいかはわからないが」
「…ほう?」

俺はノスフェラトゥから聞いたことを話した
そのある物を壊せば呪いを無効化できるということを
943 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:28:11.79 ID:5fsEeQIo
「…それ、誰から聞いたんだ?」

ノスフェラトゥから聞いたと素直に言えばいいんだろうか
しかしそれを言ってしまったらゆき兄は
アイツの言うことを信じるなと突っぱねるかもしれない
ここは適当に上手くごまかすほうが得策か…?

「寮の前で…変な奴にあったんだ
 そいつがここまでは教えてくれた」
「変な奴?」
「顔はよく見えなかったけどね…
 話すだけ話したらそのままどっかにいっちゃったよ」
「…ふぅむ…」
「…」

うまく誤魔化せたのだろうか?

「…怪しすぎるのにも程があるが他に情報もないしな…
 しかし…学校にいる奴が定期的に耳にする音の発信源か…」

よかった、どうやらうまいぐあいに
誤魔化すことが出来たらしい

「…音か…」
「定期的ってのは何だろうね?」
「定期的に学園の奴らが聞いてる…
 そういえばアイツは…」
「アイツ?」
「…そうか、チャイムか」
「チャイム?」
「多分な、となると放送室か?」
「どうするの?」
「ぶっ壊してやるよ」
「おいおいおいおい!」
「とにかく待っとけ!
 すぐにブッ壊してきてやるから!!」
「気をつけろよゆき兄」

そこで通話が途切れた
…確かにチャイムなら学校生活をしてるなら絶対に耳にする
それも定期的にだ
しかしどうも嫌な予感がする
外を見るともう夕暮れ時になっていた
…逢魔が時…って奴か…
944 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:30:54.17 ID:5fsEeQIo
10/24(火) 夜

…あまりにも遅い
あれからすでにかなりの時間が経過していた
ゆき兄はどうしたんだ?
やっぱり何かあったに違いない
とにかく俺も放送室へ言ってみよう

校庭には誰もいない
そして校舎にすら人の気配はない
もう完璧に日は落ちているのだから当然と言えば当然だが
どうにもこうにも嫌な予感しかしない
背筋に張り付くような冷たい感覚を必死に振り切って
俺はなんとか放送室に到着した
ゆっくりと扉を開けると、中は静まり返っていた

ポタ、ポタ、と水滴が落ちる音がする
なんで放送室で水音がするんだ?

ゆっくりと音する方向を見る
暗闇の中で、何かがうずくまっている

「…?」

俺は電気をつけた
その瞬間、目に飛び込んできたのは

「…ゆき兄?」

大量の血をしたたらせながら
壁に背をあずけ、力なく倒れているゆき兄の姿だった

「おい!ゆき兄!!
 しっかりしろよオイ!!!」

あわてて駆け寄る
返事は無い、ただ静かに血を滴らせている
だが微かに呼吸の音は聞こえる
生きてはいるようだが…だけど何でこんなことに…!

「キヒャヒャヒャヒャ、次の相手はお前かぁ?」
「誰だッ!?」

突然聞こえた声に驚いて振り返る
だが、誰もいない
その瞬間だった
激痛が、身体を襲った
945 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:35:08.10 ID:5fsEeQIo
「え…?」

わけもわからず
床に膝をつく

「…何が起こった…」

正面から服が切り裂かれ、身体にも切り傷ができていた
傷自体は大したことが無いようだった
だがそれよりも敵の姿が見えなかったことのほうが
よっぽど俺の頭を混乱させた

「…ああ、その鉄甲…お前が器か」
「な…」

目の前の何も空間が薄っすらと浮き立っていく
まるでカメレオンがゆっくりと擬態を解くように
そして現れたのは男子生徒
その手には血のついたナイフが握られていた

「よぉ」
「何だ…お前は…生徒会か…?」
「いや、俺は生徒会じゃねぇよ」
「じゃあ何なんだ…?」
「なんだって言いだろ?
 見せてみろよ、お前が黄龍を宿すに相応しいのかを、な」
「黄龍…?宿す…?」
「…何も知らない、か
 無理も無いがな」
「ゆき兄は…お前がやったのか…?」
「3割ぐらいは俺がやったかな
 あとは勝手に自滅した」
「なんだと…?」
「全身に爪で抉られたような傷があってな
 それが開いちまったみたいだぜ?」
「全身に…爪…傷?」

まさか、白虎の力が暴走したときの傷が…?
治って、なかったのか?
それなのに今まで平気な顔をして…?

「そんな…」
「さて、お前に課せられる試練は1つ」
「…試練だと?」
「俺を倒し、そこの放送機材をブッ壊す、だ」
「お前は…一体…」
「…戦いが終わったら教えてやるよ」

俺は立ち上がって黄龍鉄甲を構えた

「いい覚悟だ、はじめようか」
946 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:37:57.55 ID:5fsEeQIo
その言葉と同時に
奴の身体がゆっくりと消え始めた

「な…」
「誰も俺を補足することはできない…
 さぁこの窮地をどう乗り切る?」
「うぉぉぉぉおおおおおおお!!」

完全に消える前に黄龍鉄甲の1撃を叩きこもうとする
だが避けられ、一瞬視界から消えた瞬間に
完全に奴の姿が見えなくなった

「クソッ!!」
「後ろだよ」
「なっ…がッ!!?」

背中に焼け付くような痛み

「うあぁぁああああっ!?」

前のめりに転倒する
背中から血が流れ出してるのがわかる

「…肉体的、精神的にも非常に脆いな
 本当に器なのか疑わしくもなるほどだ」
「なんなんだ…お前は…」
「まぁここでお前が死んだところで新たな器ぐらい…」

背後に奴が姿をあらわした
手にはナイフが構えられている
まずい、避けれない

「終わりだな」
「待っ…」

その時、放送室のドアが轟音をあげて吹っ飛んだ
ナイフが止まる
横目で俺はドアのほうを見た

「随分大ピンチじゃないか」
「何だお前」
「何で…お前が…」
「俺にもすこーしばかり理由があってな…
 加勢してやるよ、たまゆら」
「高橋…俺のこと…わかるのか?」
947 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/09/12(土) 22:39:51.06 ID:2FI2Ltwo
高橋キタ――(゚∀゚)――!!
948 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:41:20.51 ID:5fsEeQIo
ゆっくりと放送室に入ってきた高橋
無茶だ、生身の人間がこいつに勝てるわけ…

「それじゃ行くぜ、カメレオン野郎」
「!?」
「骨まで粉々にしてやるよ」

状況が理解できなかった
一瞬で間合いを詰めた高橋の足が空を舞った
その爪先は、カメレオン野郎の、顔を捉えていた

「吹っ飛べ」
「馬鹿なッ…!?」

その光景が、ヤケにスローモーションに見えた
爪先を叩き込まれたカメレオン野郎の顔は歪み
その勢いに押された身体は
まるで回転するように文字通り"吹っ飛んだ"

「ガァァァァアアアアアアアアア!!?」

回転した身体は勢いを[ピーーー]ことなく
壁へと叩きつけられた
そして壁にビシリと亀裂が走った
一体どういう威力なんだよ、あの蹴りは…!?
つーか本当に高橋、人間か!?

「…まだ寝かせる気はねぇぞ
 立てや、道化が」
「ククッ…クックック…ククク…!」
「こいつまだ動けるのか…?」

パラパラと壁の破片を散らしながら
カメレオン野郎が立ち上がる

「お前、ただの人間じゃあないな…?
高橋って言ったか…?面白いじゃないか…」
「安心しろ、俺はごく普通の一般人だ」
「そうかいそうかい…」
949 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:42:49.09 ID:5fsEeQIo
カメレオン野郎の身体はまたゆっくりと消えていく
その瞬間、高橋がまたも突っ込んだ

「消えられるとめんどうだからな」
「ククッ!!」

ガキィン!!と音がした
高橋の蹴りを2本のナイフが受け止めていた

「チッ」

飛びのくように間合いを取った高橋だが
間髪いれずにそのまま体勢を低くして回転し
流れるように2発目の蹴りを叩き込む
だが今度は金属音は響かなかった
ガゴォン!!と音がし、壁のコンクリートが砕けた

「消えやがったか」
「ヒャッハァ!!!」
「おっと」

高橋がバク転のようにその場から飛びのいた
そのまま着地する
そしてまたカメレオン野郎の姿が見え出す

「すごいなお前…
 お前が器ならすでに合格だったよ…」
「…ふん」
「だが哀しいかな…お前がいくら強かろうと…
 どれほどの修練を積もうが器になることは出来ない…!!」
「ハナっから願い下げだ
 おい、たまゆらぁ!!!」
「な、何!?」

突然名前を呼ばれ驚きながらも返事をする

「充分休んだろうが
 手伝え」
「…あ、ああ!」
950 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:45:31.36 ID:5fsEeQIo
俺は立ち上がって黄龍鉄甲を構える
カメレオン野郎は不気味に笑っていた
高橋が言った

「お前攻撃の合間には必ず姿を見せる必要があるんだろ
 長時間姿を消すことは出来ないみたいだな」

そうか、そういえば確かにこいつは
1度攻撃したあとは必ず姿を見せていた

「たまゆら、狙うならそこだ
 2人ならこの部屋のどこに姿を現そうがカバーできる」
「…ああ!わかった!」
「いいぞ…見せてみろ…!
 お前達の力ってやつを!!」

カメレオン野郎の姿が薄っすらと消えだす
そこにまた高橋が突っ込む

「砕けろぉ!!」
「ケケッ!」

ガキィン!と音が響く
駄目だ!また止められた!

「2度も同じ手を食うと思うか?」
「ほっ!」

高橋の両足は地面についていなかった
そしてもう1本の足がカメレオン野郎の腹部に叩き込まれる寸前だった
いけるか!?

「残念!」
「チッ!」

カメレオン野郎はナイフで止めていた高橋の足を弾いて
上に飛び上がり、それと同時に完全に姿を消した
着地しながら高橋は言った

「攻撃後に出現するって弱点がバレたからには
 今回の攻撃は確実に1撃必殺でくるぞ!気をつけとけよ!!」
「わ、わかった!」
951 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:47:12.28 ID:5fsEeQIo
高橋と背中合わせになり
神経を集中させる
姿は見えない、だけど足音の1つでも拾えたなら…!!
ひたすら正面に集中する
どこから来る、真正面か、右か、左か!?
緊迫した空気の中でただ精神だけがガリガリと削り取られるような感覚
それは恐らく高橋も同じだろう

その時、後ろでカツンと音がした
そしてその音を高橋は聞き逃さなかった

「そこかぁ!!!」

ボゴォン!!と音がした

「やったか!?」
「…いや!」

高橋の足は壁に突き刺さっていた
まずい!あれじゃあ対応できねぇ!!
そして俺の正面の景色が歪んだ

「物を投げれば音ぐらい出せるだろ?」

狙いは俺だった…!?
まずい、高橋の方向に注意していたせいで…!
風景を歪ますナイフの切っ先は間違いなく俺の心臓を狙っていた
駄目だ、避けれない、貫かれる…!!

「そんぐらい重々承知だったよ」

ボゴォッ!と音が後ろでしたその瞬間だった
後ろから何か大きなものが耳を掠めて飛んでいった

「何ッ!?」

ゴッ!!!と重い音が辺りに響いた
飛んできた何かはカメレオン野郎に直撃した
そして跳ね上がったそれが俺の視界に入る
重い、コンクリートの欠片、砕けた壁の破片!!!
その直撃を受けたカメレオン野郎は後ろにぶっ飛ぶ
俺は思わず、駆け出した
黄龍鉄甲を振りかざして

「蹴った先にお前がいようがどうでもよかった
 俺が壁に足を突きこんだのは狙った方向に瓦礫を蹴り飛ばすためだったからな」

俺は今まで高橋をただの不良と思っていたが
間違ってたみたいだ
こいつ、恐ろしく強い不良だ!!!
952 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:50:09.52 ID:5fsEeQIo
「ブン殴ってやれ、たまゆら」
「言われなくても!!」
「グッ…」

顔を抑えてよろめくカメレオン野郎
その足じゃもう避けれないな!!

「食らえやぁぁぁあああああああ!!」
「グッ…待て…!!」
「黄龍!!!天光破邪爆けぇぇぇぇぇえん!!」

ダッシュの勢いを乗せた黄龍鉄甲の1撃は
これ以上ないぐらいにカメレオン野郎の顔面を捉えた

「ぐぉおおおぁああああああああああああああああああああ!!!」

勢いに耐え切れずカメレオン野郎の身体が宙に浮き
そのまま壁を突き破り、廊下に吹っ飛んだ
カメレオン野郎の絶叫が夜の校舎に響き渡った

「…終わった…か?」
「…ふむ」

カメレオン野郎は動かない
さすがに今の1撃には耐え切れなかったか…?
後ろを振り向くと高橋が足についた瓦礫の欠片をパンパンと払っていた

「…助けてくれて…ありがとう」
「…ああ」
「でもどうして…」
「…俺にも理由があるんだよ」
「その理由って」
「クックック…ククッ…ククックックック…!!」
「!?」

壁にあいた穴を見る
カメレオン野郎が、不気味に、立ち上がっていた
その顔は、楽しくてしょうがないと言った顔
楽しそうに開かれた口元、そして不気味な光を宿す眼

狂喜、そんな言葉が頭に浮かんだ…
953 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:53:15.53 ID:5fsEeQIo
「今のは…効いたぞ…!
 続きを…しようか…」
「くそっ…」
「…やはり…こいつを倒すには…」

だがカメレオン野郎がこちらに向かってくる気配はない
その場に立ち尽くしている

「…?」
「力に引き寄せられたか…
亡者どもが…」
「何?」

床からボゴォッ!と人の手が突き出てきた
いや、人の手のように見えるが真っ黒で輪郭はおぼろげだ

「堕人!!!」

ズルズルと地面から這いずり出してくる堕人
何体いるかはわからないが軽く5体は越している
あっという間に周りを堕人に囲まれた
さらにその闇の中からアイツが出てきた

「クカカカカカッ!!!」
「こいつは…鬼哭!!!」

全身が血塗れの包帯でグルグル巻きで
顔には蜘蛛のような多数の目がある堕人
間違いなく、蝶の身体から出てきた堕人、鬼哭だった

「なんだってこう次から次へとトラブルが起こるんだよ!!」
「…待て、たまゆら、様子がおかしい」
「え…?」

言われてみれば堕人は俺たちを襲ってはこなかった
いや、それどころか…

「ウォォォオォォォォォオオ!!」

鬼哭を含む堕人はカメレオン野郎に一斉に飛び掛った
勿論俺達は何が起こったのかわからない
ただ目の前で起きている光景を呆然と見ているしかなかった
次から次へと飛び掛ってくる堕人をあしらいながらカメレオン野郎が叫んだ
954 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:54:27.61 ID:5fsEeQIo
「興がそがれた!!今日はここまでにしよう!!
 そして覚えておけ!我は天下!
 黄龍の復活を望む者!!即ち黄龍の意思!!!
 また会おう!!器よ!!!ヒャーハッハッハッハ!!!」
「待てッ!!」

ガシャーン!と廊下からガラスの割れる音がした
同時に堕人が一斉に割れた窓から外に飛び出していった
もう頭はマトモに働いてくれない

黄龍の復活?黄龍の意思だ?
何なんだコレ…アイツは何なんだ…
そしてなんで堕人が…
黄龍鉄甲が関係あるのか?
誰か俺に…教えてくれ…何が起こっているのかを…!!




12時限目 - 記憶と意思 -
955 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/09/12(土) 22:56:52.50 ID:2FI2Ltwo
ゆきに乙!

高橋TUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!
956 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/12(土) 22:59:47.11 ID:5fsEeQIo
まぁ次スレはもうすこし
後でもよかろーて
957 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/13(日) 20:58:13.72 ID:yQ/IezYo
ゆき兄おつんこ!

また新たな展開wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
958 :そら :2009/09/14(月) 07:03:28.41 ID:K2JhPADO
朝まで電話してしまった時
私は一体どうすべきか
959 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/14(月) 15:04:17.80 ID:kb3hPZ.o
朝まで生テレビ…

>>958
いますぐどうなるわけでもないさ!
960 :ミギー :2009/09/14(月) 19:50:36.58 ID:Hu2QwUDO
>>958
とりあえずリア充様は死んでください><
961 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/15(火) 04:58:00.08 ID:odkEYsAO
と、リア充が申しております
962 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/15(火) 20:38:37.15 ID:PbNuKLI0
よるですね。
963 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/16(水) 03:31:13.53 ID:dD7D.gDO
ひるだね!キャッホゥ!
964 :ミギー :2009/09/16(水) 07:37:20.42 ID:LcNLAUDO
夕方だよ!
965 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/16(水) 19:16:00.02 ID:W3utEQAO
朝だね!
966 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/16(水) 20:53:10.83 ID:9EvsCLYo
お腹痛い…
カオスを越えて終末が近づいてる…
967 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/16(水) 21:03:45.17 ID:gPqTlwDO
>>966
また拾い食いか?
968 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/16(水) 23:53:58.55 ID:9EvsCLYo
>>967
最近拾い食いしてないもん!!
969 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/17(木) 19:01:55.54 ID:A6p4x3M0
コンバンワ。イイヨルデスね。

>>968
またかりんとうとまちがえたのか?
970 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/17(木) 23:31:13.59 ID:0IzSSVQo
なんでかりんとうってあんなに猫糞に似てるんだろうな
製作者は思いつかなかったのか
971 :そら :2009/09/18(金) 00:53:09.42 ID:tXOFBwDO
かりんとう職人に謝れ!
972 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/18(金) 08:07:28.31 ID:csziqKso
>>971
俺が敬意を払うのは金平糖職人だけだ!
973 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [コロンビア!]:2009/09/18(金) 15:11:05.27 ID:pA5m7QDO
>>972
コーラ会社の人は?
974 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/18(金) 20:47:57.60 ID:csziqKso
>>973
尊敬してる
975 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/18(金) 22:49:10.12 ID:csziqKso
とりあえずここ使い切らないと
明日のうpが切断されちまうな

白やん任せた
976 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/19(土) 01:25:36.73 ID:YJyVPYDO
白やんガンガレ^^
977 :ピュアハート [('A`)]:2009/09/19(土) 01:31:07.56 ID:hl4cykSO
ビールうめえ
やんやんがついに覚醒するか……
978 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/19(土) 07:21:10.53 ID:MAGL/AAO
朝だい
979 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 07:51:24.21 ID:aciajzIo
ピュア様がビールうめぇとか発言することに強烈な違和感を覚える
そんな朝
980 :そら :2009/09/19(土) 10:40:12.94 ID:n6NcA6DO
ハイネケン美味しいよ?
981 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/19(土) 11:29:29.82 ID:YJyVPYDO
もったいないから普段は発泡酒…(´ω`)


tkまともなツマミじゃなければ発泡酒で十分だwwww
982 :そら :2009/09/19(土) 12:15:35.13 ID:n6NcA6DO
発泡酒は何かあんまり美味しく無いお…
983 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/19(土) 13:14:35.37 ID:YJyVPYDO
発泡酒に味とか求めてないからなー


むしろアルコール度数が重要wwwwwwww
984 :ピュアハート [('A`)]:2009/09/19(土) 14:05:22.54 ID:hl4cykSO
なんと言う酔っぱらい理論
985 :ポロリー :2009/09/19(土) 15:19:35.63 ID:EyT9QwSO
ビールはピスみたいなもんだってレヴィが言ってた。

そんな俺はラムコークが好きです
986 :そら :2009/09/19(土) 15:39:37.16 ID:n6NcA6DO
バカルディあるだけ持ってこい
987 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 20:33:15.96 ID:aciajzIo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi?bbs=part4vip&key=1253359850&ls=50

ほら、次スレだ
こっちは使い切れ


ああ…スレタイ盛大にミスった…
988 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/19(土) 21:06:37.69 ID:E26xHI2o
ユカイまワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
989 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/19(土) 21:08:13.57 ID:YJyVPYDO
もう秋か…



秋といえばひやおろしの季節だね!

(゚д゚)ウマー
http://imepita.jp/20090919/759310
990 :たまゆら :2009/09/19(土) 22:58:02.62 ID:p9ZUdfoo

 ミヽ    ノノノノ  ヽ彡
  \\ ( ゚∈゚ )//
    \⌒\/⌒/
     \    〈
       \  ソ⌒ヽ
        |\_!ノ''\\
      / 丿    ゝミ
      ( ノ
       \)
      彡ヽ
素晴らしいうpだというのに反応がないとは何事じゃ!
みな喜べ!喜ぶんだー!!
991 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:59:25.66 ID:aciajzIo
今週分は次スレにあげときましたぞ
ふぅっ…さっさとこっち使い切るべし
992 :たまゆら :2009/09/19(土) 23:24:11.03 ID:p9ZUdfoo

    ノノノノ
   ( ゚∋゚)
   /⌒Vl
  (ぃ9  |
  /   /二ミ
 ( ̄\/ヽ
 / /ヽ )
 l l  l /
 彡  ミ
ロリコンゆき兄みーつけった
993 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/09/20(日) 00:07:12.32 ID:LvSqxr2o
季節とか関係無くにごり酒の季節じゃね?

(゚д゚)ウマー
http://imepita.jp/20090920/002690
994 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/20(日) 00:45:20.67 ID:Q..Bnlso
>>993
にごりもいいよねwwww

tk「フレッシュ」でなんかワロタwwwwwwwwwwwwwwwwww
995 :ぽろりー :2009/09/20(日) 01:15:53.59 ID:30WT8aM0
ksk
996 :ミギー :2009/09/20(日) 10:41:24.02 ID:N7XeXsDO
加速加速加速加速ぅ!
997 :ミギー :2009/09/20(日) 10:42:18.40 ID:N7XeXsDO
かーそーくー
998 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/20(日) 12:53:11.79 ID:o6P1cIAO
ksk
999 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/20(日) 13:21:42.09 ID:o6P1cIAO
誰か>>1000取れ
1000 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/20(日) 13:25:33.45 ID:K3hwpS6o
1000ならヤチャマルが俺にコーラ
10リットル送ってくる
1001 :1001 :Over 1000 Thread

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
  | |  (・)。(・);    このスレッドは1000を超えました。|
  | |@_,.--、_,>    このレスを見たら10秒以内に次スレを建てないと死にます。
  ヽヽ___ノ    次スレを10秒以内に建てても死にます。

パー速@VIPService
http://ex14.vip2ch.com/part4vip/

1000超えたのでHTML化の依頼をするでござるの巻
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1195554932/

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
ゲェ〜〜〜〜〜〜ップ @ 2009/09/20(日) 12:53:46.03
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4vip/1253418826/

よく「わはー」って言ってる女の子がエロゲだかラノベにいたじゃん?名前は・・・ @ 2009/09/20(日) 09:58:21.27
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/vip4classic/1253408301/

VIPで繋げ!Liveメッセンジャー @ 2009/09/20(日) 07:14:41.95 ID:JNgg51A0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1253398481/

( ^ω^)おっ おっ おっ( ^ω^) @ 2009/09/20(日) 06:48:00.02 ID:QcHZVFQo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1253396880/

Deepな話題を追い求めるdynamic雑 @ 2009/09/20(日) 03:57:46.28 ID:OQ5Yok2o
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