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【黄龍】邪気眼の恋路とユカイま仲間達【伝説】 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 20:30:50.41 ID:aciajzIo
まとめwiki
http://www36.atwiki.jp/onnanokokara/

前スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1245170406/

愉快痛快なネトラジ(凍結中)
http://203.131.199.131:8050/test0109.m3u


【テンプレ】
朝登校するとたゆき兄がとびかかってきた

「おい!新スレだぞ!前スレほとんど俺らで使い切ったっぽい!」

ゆき兄がオーバーアクションで説明してくる
おいおい、そんなことわざわざ…

「うええ!?マジで!?」

って1スレまるまる俺らで使い切るって凄いわ!!
そんな長期間戦ってたのか俺達…

「長いよなー、俺らの戦いどこまで続くんだろうな」

ゆき兄がボヤきだす
その言葉に俺は全力で応える

「わからないけど…必ず生徒会を倒してみせる!
 というわけでモニターの前の皆!応援よろしく!!」
「うわー、たまゆら暑苦しい」

イラッとした

ま、詳しいことはwikiを見て!
小説の流れを最初から知りたければ2スレぐらい遡れ!
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ミートウィークだ! @ 2024/05/22(水) 18:54:34.16 ID:oa3Fli280
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1716371673/

【安価とコンマ】或る無名のウマ娘 6 @ 2024/05/21(火) 23:03:45.14 ID:LycZD2yqo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1716300225/

開くと貯金が増えるスレ @ 2024/05/20(月) 21:35:55.08 ID:MOxGLALr0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1716208554/

イケパンみっちん39 このスレには可愛いパンダが居るにぇ! @ 2024/05/19(日) 19:47:17.65 ID:skVyN/3XO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1716115637/

僕の記憶が全て消えても生まれ変わったらまた君を探す @ 2024/05/18(土) 22:27:06.84 ID:7xX40cGt0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1716038825/

グレみんと快楽の座 @ 2024/05/17(金) 22:24:15.47 ID:DUS3Z54Xo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715952254/

【習作】安価コンマでワンピース @ 2024/05/16(木) 21:19:27.48 ID:QUcgFIEu0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715861966/

テンリュデネ・ゾー @ 2024/05/14(火) 20:47:34.15 ID:aewHWgbao
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715687253/

2 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/19(土) 21:11:32.04 ID:E26xHI2o
ユカイま乙!wwwwwwwwwwwwwwww
3 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:02:19.91 ID:aciajzIo
邪眼学園黄龍譚
13限目 - ドリームスナッチャー -

10/24(火) 夜

「とりあえずゆき兄をヤチャマルに見せないと…
 でもその前にこいつを壊さないと…」

俺の目の前にある放送機材
しかしどうやってぶっ壊そう…

「どいてろ」
「え?」
「はッ!」

高橋が放送機材にカカト落としを叩き込む
ガガァン!!と物凄い音がした
ボタン類などが吹っ飛んで機材が大きく凹んだ

「もう数発か」

間髪入れずに今度は側面に
強烈な蹴りが叩きこまれた
金属と金属を全力で叩きつけるような音が放送室に何度も響いた
俺はただ呆然とその光景を見続けた

「ふぅっ、こんなもんか」

高橋の足技を叩きこまれ続けた放送機材はもはや
かろうじて原型を留めると言った程度のスクラップと化していた

「…じゃ、俺は行くぞ」
「あ、えと…」
「聞きたいことは沢山あるだろうが…
 話すつもりは無いんでな
 助かってラッキーぐらいにとらえとけ」
「…」
「じゃあな」
4 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:04:00.58 ID:aciajzIo
それだけ言うと高橋は黒い廊下に消えていった
…不思議な奴だ、それにしてもあの足技は…
と、そんなこと考えてる場合じゃない
ゆき兄を抱え上げボロボロになった放送室から出る
まだそんなに遅い時間でもないしヤチャマルは保健室にいるかもしれない
急いで保健室に向かうと明りと煙が漏れていた
まだ魔よけの香を炊いてるのか?

「ヤチャマル!入るぞ!」
「お?」

ちゃんとした返答を待たずにドアを開ける
七輪でヤチャマルでサンマを焼いていた
あっけにとられてサンマを凝視しているとヤチャマルが呟いた

「や、やらないぞ…」
「違う違う、ゆき兄を治療してくれ!」
「わかった、それじゃその間サンマを見ていてくれ」

ゆき兄をベッドに寝かす
さて、やるかーっと言った感じでヤチャマルが近づいてくる

「あ、焦がしたらお前を焼いてやる、焼き鳥にして串に刺してやる」

シャッ!とカーテンが閉められた
とりあえずヤチャマルに任せてサンマの焼き具合を見ていることにした
机の上にうちわがあったのでそれであおぐ
カーテンの奥からはカチャカチャという音やシャッ!という音が聞こえてくる
そしてサンマからはジュウジュウと…
アンバランスだ…何だこの保健室は…

そのままサンマを見ていると
ジュウジュウという音に混じってカラカラとドアが開く音がした
ちらりとドアのほうを見ると宝物を見つけたような目のほろにがが覗いていた

「そのサンマ、誰の?ねぇ誰の?」

ドア越しに小声で聞いてきた
こちらも小声で言い返す

「ヤチャマルのだよ、食ったら殺されるぞ」
「ちょっとだけなら…2尾あるし1尾なら…!!」

手を掴んで物凄い力で押してくるので
俺は必死に押し返す
5 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:05:16.74 ID:aciajzIo
「食わしたら俺まで殺されるだろ…!」
「お前に迷惑はかけないから…!!!」
「食った時点で俺も巻き添えが確定なんだよ…!!」
「もう何日もマトモな物を食ってない俺に…!!
 この匂いは拷問だとは…おもっ…わんかね…!!」
「知る…かよ…!!ぐぐぐ…!!」

必死に保健室の中に入ってこようとするほろにがを押し留める
ほろにがはあの手この手で侵入しようとしてくるが
何とか必死に妨害していた
すると後ろからシャッ!とカーテンが開く音が聞こえた

「ふぅ、終わったぞ…!!?!!!?」

…しまった、ほろにがに気を取られて…
サンマを見ていなかった…
七輪の上のサンマは真っ黒に焦げ
ブスブスと不安を煽る煙をあげていた

「…たまゆら」
「は、はいぃ!!」

状況を察したほろにがが逃走を図ろうとした
しかし今度は俺が保健室の中に引っ張り込もうと必死だった

「ば、ばか!離せ!!」
「ヤチャマル!こいつ!こいつのせいだから!!」
「やめろコラァ!!俺は関係ねぇ!!!」

ヤチャマルがゆっくりとこっちに近づいてくる
気のせいか鬼の面をかぶってるような気がする

「連帯責任だ」
「「うぁぎゃああああああああああああ!!!!!」」
6 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:06:57.72 ID:aciajzIo
1時間後

「どうだ?
 自分達で焼いた北海道直産の生サンマの味は?
 よーく味わえよ?」
「…ガリガリで凄く苦いです」
「同じく…」

ほろにがと俺が同じタイミングで喋る
2人してボコボコにされた
途中で彼岸が見えた気がした
さらにもはや炭と化した生サンマを味わって食わされることになった

「とりあえずゆき兄だが
 命に別状はないぞ」
「ガリガリ…よかった…ガリポリッ…」
「…たまには無傷で戦えないのかお前らは」
「ポリガリ…ヤチャマルーそりゃガリガリッ
 おこちゃまにスマートな戦いはガリボリ無理だって…」
「パキッ誰がおこちゃまだボリン」
「ここで喧嘩するなよ
 また殴るぞ」
「ポリポリ…ゴクン」
「バリバリ…」

炭サンマを食い終わり
俺は立ち上がった

「帰るのか?」
「…疲れたからさ
 ゆき兄のこと任せた」
「わかった、任せろ」
「ポリポリ、お疲れーバリン」

口の中がかなり嫌な感じだった
とりあえず口をゆすぎたい
ガンになりそうだ…

寮に戻り今日のことを考えた
天下の言っていた黄龍の意思とはどういうことだろう
そしてなぜ堕人は俺たちに目もくれずに天下に襲い掛かったのか…
…いや、きっと考えてもわからないんだろう
寝よう、明日になれば皆も俺のことを思い出してるはずだ…
7 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:07:52.35 ID:aciajzIo
10/24(火) 深夜

「…ん…?」

ふと、目が覚めた
そして視界に入ってきた光景に驚いた

「…空?」

部屋で寝ていた俺がいつの間に外に出たんだ?
いや、それよりも空がなんというか茶色だった
身体を起こして辺りを見回す
枯れ果てた大地がどこまでも続いている、起伏も何も無い大地が
延々と続き地平線が見えていた
空は茶色くどんよりとした空気が漂っていた
一体俺はどうしてこんなところに…
とはいえ過去にいったりと色々と修羅場を経験した俺は今更驚くこともなかった
また何か変な状況になったんだろうか

「…しかしどうしよう…」

360度地平線
目指すべきものが全く見当たらない
さすがにこの状況は…

「誰かいないかー!!」

叫んでみたものの俺の声が虚しく響くだけだった
普通に考えて誰かいるわけは無いのだが叫んでしまうのはやはり人の性か
とは言うもののこのままじゃ埒があかない
とりあえず適当に歩いてみることにした

いけどもいけども景色は変わらない
ただ茶色い、大地も、空も
歩を進めるたびにつま先が砂を蹴り上げ、小さな砂塵が舞う
次第に歩くスピードが遅くなってきた気がする
確かな道しるべが存在しないこの場所ではそれすらも分かりづらい
俺は段々、焦りと不安を感じ始めていた
8 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:10:31.27 ID:aciajzIo
そのときだった

「ふふ…」
「誰だ?」

どこからか、声が聞こえた
女の微かな笑い声
次の瞬間、周りの地面が大きく隆起した

「なんだ!?」

大きく膨れ上がった大地はそのまま人の上半身の形となった
土の巨人、そんな表現がぴったりだった
そして巨人はその拳を俺に向かって振り下ろした

「やべぇ!!」

咄嗟に横に飛びのく
地面に叩きつけらた拳の衝撃
そして宙を舞う大量の砂煙

「一体なんなんだよ!!」

武器は無い
あっても勝てる気がしない
とにかく逃げるしかない
必死に後ろに向かって走ると巨人は俺を掴もうとその手を伸ばしてきた

「うわっと!!」

右へ左へ、ジグザグに移動しながら
なんとか巨人の手を避ける
そして気づいたがどうやら巨人は動けないらしい
手の届かない範囲へと抜けた俺はどうやら安全のようだった
しかしこいつは一体なんなんだ…
安心したのも束の間、今度は遠くからズシーン、ズシーンと何か大きなものが歩いてくる音がした
音の方向を見た

「…テディベア?」
9 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸[ [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/19(土) 22:10:46.08 ID:E26xHI2o
俺のサンマが・・・(#^ω^)ビキビキ
10 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:13:00.93 ID:aciajzIo
片目が取れ、腹部が切り裂かれた巨大なテディベアが
同様に巨大なチェーンソーを持ってズシーン、ズシーンと音を立てながらこちらに向かってきていた
近づくにつれチェーンソーの音が大きくなっていく
そしてある程度近づくと、テディベアはチェーンソーを俺に振り下ろしてきた

「何なんだよここは!!!」

動きは割と緩慢だったので避けるのは容易だった
だがチェーンソーが地面に当たった瞬間に物凄い音と同時に大量の土砂が俺に降り注いだ

「ぶぇっぺっ…!」

思わず目を瞑った
その瞬間ギュォオオオオオオン!とけたたましいチェーンソーの音が響いた
目を開けると横からチェーンソーが近づいてきた
まずい、避け…れない…!
頬に風を感じ、頬にチッと何かがかすった
11 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:14:50.66 ID:aciajzIo
10/25(水) 朝

「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

俺は絶叫をあげてベッドから転げ落ちた
…あれ?あれれ?
とりあえず自分がベッドから落ちたことだけはかろうじて理解できた
ゆっくりと身体を起こす
窓からは朝の日差しが気持ちいいぐらいに差し込んでいた
なんだか酷い悪夢を見た気がする…が、思い出せない
夢って割と起きた瞬間なら覚えてるもんだけどな
まぁそういうこともあるか…
深くは考えないことにしてとりあえず学校に向かう用意をした

教室につくと俺の机はちゃんとあった
周りの皆もちゃんと俺のことを思い出していた
というか忘れたこと自体がなかったことになってるようだ
リカが近づいてくる

「おはよ、たまゆら君」
「おはよ」
「何者かに放送室がほぼ破壊されてたって話知ってる?」

知ってるもなにも犯人すら知ってる
広い意味なら俺も犯人かもしれないが…

「ああ…うん…」
「生徒会かな?
 たまゆら君どう思う?」
「多分違うと思うんだけどさ…はは」
「何か歯切れ悪いね…
 そういえば今日もゆき兄きてないなぁ」

傷が開いて現在絶賛療養中
なんて言えるわけも無く
引きつった笑顔でいつものことだよと言っておいた
リカは納得したようだった
少し、胸が痛くなる思いだ…
…ゆき兄ならヤチャマルがなんとかしてくれるから心配は無いだろう
などと考えてるうちに授業が始まった
12 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:17:52.04 ID:aciajzIo
10/25(水) 午前

なんだろう、何だか凄く眠い
おかしいな、昨日ちゃんと寝たのに
黒板の字が歪んで見える
先生の声も何だか遠い…
寝ちゃ駄目だ…寝ちゃ…

「…あれ?」

ふと周りを見ると誰もいなくなっていた
先生、周りの皆、誰もいない
いつの間にか皆が消え去っている
無音の教室にただ俺だけが取り残されている

「え…何で…?」

恐る恐る廊下に出て他の教室を覗いて見る
どの教室にも誰もいない
昼だと言うのに校舎全体が不気味な雰囲気に包まれていた

「やっぱり…生徒会の…?」

それしか考えられない
…そういえばゆき兄は無事なんだろうか
ふと、そこまで考えた時に頬がズキリと痛んだ

「?」

触れてみるとぬるっとした感触と痛み
どうやらどこかで切ったか何かしたらしい
そんな覚えは無いんだがな…
と、そこまで考えた時だった
突然静かだった校舎に音が響いた
コツーン、コツーン、と誰かが廊下の奥の階段を上がってくる
敵か…?まずいな、黄龍鉄甲は持ってきてない…
コツーン、コツーン、とゆっくりと何かが上がってくる
そして段々とその音は接近してくる
カツンッ!と音がして足音が止まる
もう、曲がり角を曲がってすぐの場所にいるはずだ
逃げなくちゃ、とにかく今はまずい
そんなことを考えてるが意思とは裏腹に俺の足は動かない、動いてくれない
そして、何かがゆっくりと姿を現した…

「…ウサギ?」
13 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:18:45.94 ID:aciajzIo
正確には大きなウサギのぬいぐるみ
成人男子より少し小さい程度だろうか
全体的にピンク色だがところどころペンキをぶちまけたみたいに黒くなっている
ボタンで作られているその目はどこか虚ろな感じで不気味さを増長させていた
ウサギは2足歩行でゆっくりこっちに歩いてくる
いや、それよりも、ウサギが手に持っているもののほうが重要だった
斧、それも血濡れの
そして気づいたウサギの身体でペンキをぶちまけたように所々黒くなってる部分は
乾ききった返り血なのだと
得体の知れない奴とは何度も戦ってきたが
こいつはヤバい、完全に俺の理解の範疇を超えている
俺は、廊下を真後ろに、全力で走り出した
ウサギは追いかけては来なかった
いや、追いかけては来ているがその動きはゆっくりだった
歩いているのとほぼ変わらない、これなら逃げ切れる!!

だがしばらく走っておかしいことに気がついた
廊下が終わらない
どこまで走っても終わらないのだ
突き当たりまでいけば階段があるはずなのに
いけどもいけども廊下が終わらない
そもそも普段なら両端の階段がどちらも見えるはずなのに
走っても走っても廊下に果ては無い
壁と、誰もいない教室に挟まれた延々と続く廊下
そんな馬鹿なことがあるわけないのに
ふと、後ろを振り向いてみた

「なッ!?」

かなりの距離を走ったのに
ウサギはさっきとほとんど変わってない位置でゆっくりとこちらに歩いてきていた
ゴトッ、ゴトッ、と斧を地面に当てながら

「何なんだよクソッ!!」

俺はまた走り出す
走りながら何度も振り向く
ウサギは歩いている
俺は走っている
なのに距離が縮まらない
それどころか段々と狭められている気がする
嫌な汗が、全身から噴き出るのを感じた
すると今度は正面からギュオオオオオオン!とけたたましい音が聞こえた

「…え、ちょ!?」
14 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:19:36.41 ID:aciajzIo
遥か前方に、テディベアがいた
そうだ、夢で出てきたチェーンソーを持ったテディベア…
大きさは普通の人間程度に小さくなっているが
取れた片目、大きく破れた腹部は間違いなく俺を切り裂こうとしたテディベアだった
そしてそいつはチェーンソーを振りかざしながらこちらに向かってきた
前門のテディベア、後門のウサギって感じか?笑えねぇよクソ!!!
とにかく逃げるなら横しかない
俺は横にあった教室に入る
時間稼ぎにしかならないかもしれないがすぐさまドアに鍵をかける
なんとか、ここから脱出しないと…
ふと、顔をあげて正面を見る
そして、戦慄した

「なんで…」

目の前に、テディベアとウサギがいた
虚ろな眼が、「もう逃がさない」と言っているようだった
すぐさまドアを蹴り破ってでも逃げようとしたが足が動かない
地面から生えたいくつもの手が俺の足にからみついていた

「何なんだよ…!ここ何なんだよ!!!!」

ギュオオオオオオン!とけたたましいモーター音
テディベアとウサギがゆっくりと近づいて来る
まずい…やられる…!!!
頭に、何かが触れた
その瞬間、世界が暗転した
15 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:20:39.89 ID:aciajzIo
「うわああああっ!?」

ドガシャーン!と言う音と共に身体に衝撃
同時に周囲から笑い声
あれ?
正面を見ると呆れ顔の先生が立っていた

「やっと起きたか、たまゆら」
「あ、あれ…先生?」
「お前、朝からずっと寝てるそうだな…
 全く…」
「え…あ…すみません」
「気をつけろよ」
「はい…」

椅子を戻し席に座る
時計を見るともうすぐ昼休みだった
あれ、俺1限目からずっと寝てたのか…?
椅子なら無様に転げ落ちた俺を見て周りがクスクス笑っている
かなり恥ずかしくなった
いや、それよりも何か…夢を見てた気がする
でも思い出せないな…
何だったっけ…
16 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:21:32.55 ID:aciajzIo
10/25(水) 昼休み

身体がダルい
寝すぎだろうか…
リカがてこてこと寄ってきた

「よく寝てたねぇ」
「あ…うん…」
「まだ寝ぼけてる?」
「あ、いやいや」

リカは少々呆れたような感じだった

「そんなに夜更かししたの?」
「ちゃんと寝てたはずなんだけどなぁ…」
「熟睡出来てないとか」
「うーん…よくわかんないな」
「まぁほら、おいしいもの食べれば大丈夫!
 はいよ、お弁当!」
「お!やった!」

リカからお弁当を受け取る

「っと、ごめんね
 友達と約束しちゃったから私は一緒に食べれないよ」
「ああ、いいよ
 ありがとね」
「うん!ごめんね!」

そう言ってリカは友達のところに行ってしまった
じゃあ俺も食べようかな…と思ったが
どうも周りの奴らのニヤニヤした視線に気に障る
屋上で食べることにしよう

「…こんなところで会うとは…
 うれしいよ…たまゆら君…」
「…」

初めて寮以外で小川の姿を見た気がする
いや、それよりもまさか遭遇するなんて…

「…お弁当…一緒に食べないかい?」

断りたい、物凄く断りたい
だけど弁当もって1人で屋上に来ているんだぞ俺は
明らかに食べる気マンマンなやつが断るのもおかしな話…
まぁ、別にいいか、物食ってりゃこの人も静かだろ
とりあえず承諾して一緒に昼飯を食うことになった
17 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:23:28.55 ID:aciajzIo
…重い、凄く空気が重い

確かに静かなのだ
ただ2人して黙々と弁当を食べている
それがどうも重くるしい
味なんかわかんねぇよコレ…
しばらく食べているとポツリと小川が言った

「…凄いよね、この学校は?」
「え?」

いきなり言い出すから何かと思った
具体的に何がどう凄いのだろう

「…物凄い量の闇が渦巻いている
 こんな場所、世界中探しても数えるほどしか無いと思うよ」

…また始まったようだ

「だがどんなものにもバランスがある」
「バランス?」
「強大な闇があると言うことは
 逆に強大な光も存在する必要がある」
「…光がなければ影は出来ないとかいう奴ですか?」
「そうさ、すさまじいほどの闇が長期に渡り存在するこの学校には
 同時に凄まじいほどの光が存在しているはずだ」
「…」

卵焼きを口に運びながら黙って小川の演説を聞く

「しかしおかしなことがある、光がまるで見えないということだ
 この学園には闇しか見えない
 闇がある以上確実に光は存在するはずなのに
 光はまるで見えない、もし光が無いというのなら自然の摂理に反している
 …そういう意味でもこの学園は狂っている」

そうだな、この学園は狂ってる
だがそれは一部の人間が狂わしてるだけだ

「…だが僕には干渉するほどの力は無いし
 あったとしてもどうにかしようとも思わない
 狂った世界が正しき世界に押し潰されるか
 逆に正しき世界を狂った世界が飲み込むのか
 この学園はある意味新世界の卵となる可能性を秘めている」
「…」
「それでね、一つ良い事を教えてあげる」
「良い事?」
「5番目だ」
18 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:25:10.57 ID:aciajzIo
小川の瞳に怪しい炎が揺れている気がした

「…この学園には誰も入ってはいけない隠された部屋がある
 その場所に知らずに立ち入った者は永遠の眠りに落ちる」
「…永遠の…眠り?
 死ぬってことか?」
「結果はね…」

それだけ言うと小川はゆっくりと屋上のドアに向かった

「ごちそうさま、楽しい時間だったよ」

そのままゆっくりとドアの隙間に消えていった
永遠の眠り…か
…何か忘れてるような…気がする
とても重要なことを…

駄目だ、思い出せない
昼休みはもう少し時間があった
…ゆき兄の様子でも見に行こうかな
そう思って俺は保健室に向かった
19 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:26:05.22 ID:aciajzIo
保健室の扉を開ける
だるそうにヤチャマルが椅子に座っていた

「ゆき兄目は覚ました?」

ヤチャマルがぼけーっとしたままベッドのほうを指差した
見るとベッドの上に座り込んでるゆき兄が見えた

「目が覚めたのか!」
「ん、ああ、悪かったな
 俺がぶっ壊してやるっつったのに」
「そんなのいいさ…
 そもそも俺の白虎の力が暴走したときの傷のせいだろ…」
「責任を感じるな」
「でも…」
「俺が隠してたのはお前に責任を感じさせないためだ
 ここでお前が責任を感じたら俺の苦労が無駄になるだろ」

ぼけーっとした感じのままゆき兄はそう言い放った
確かにそれはそうなんだが…

「たまゆら」
「え?」

椅子に座ってダラけきっていたヤチャマルが後ろに立っていた
20 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:27:24.68 ID:aciajzIo
「何?」
「気の流れがガタガタだぞ」
「うん?」
「ちょっとこっち来てみろ」

言われるがままに椅子に座る
頭にヤチャマルの手が置かれた
しばらくすると段々頭がすっきりしてきた

「…割とマシになったがまだ歪みが酷いな
 昨日の戦闘で大怪我したりしてないか?」
「いや、別に…」
「…心のほうから来てるのか…?」
「ハハッ、なんなら一緒に午後はサボるか?」
「サボるというか休んだほうがいいというのは同意だな
 最近ハードに戦ってるみたいだしな」
「うーん…」

言われてみれば最近ゆっくり休んだ記憶も無い
ここはお言葉に甘えるか

「それじゃあ午後はここで過ごそうかな」
「連絡しといてやるよ
 空いてるベッドを勝手に使え」
「つっても俺の隣しか空いてねーよ」

とりあえずゆき兄の横のベッドに上がる
自室のベッドと違って保健室のベッドはなんというかまた別の感じで安心する
独特の匂いというか何と言うか…
そんなことを考えてるうちに昼休みが終わった
21 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:28:38.78 ID:aciajzIo
10/25(水) 同時刻

「会長、お疲れのようですね」
「…ああ」
「一体いつ寝てるんですか?」
「合間を縫って寝ているさ
 …そういえば姫はどこに?」
「例の場所に」
「そうか」
「転校生、今度ばかりは無理でしょうね」
「どうかな」
「…会長は転校生をどう思っているんですか?」
「奴は強いよ」
「認めていると言うことですか?」
「認めてはいる、だが決して相容れはしないだろう
 強い力と力は共存できない、隙を見て相手の喉笛に食らいつく」
「思想の違い、というやつですか」
「ある意味ではこれも自然の摂理なのかもな」
「と、言うと?」
「…バランスだよ」
22 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:29:29.16 ID:aciajzIo
10/25(水) 午後

ぼーっと保健室の天井を見る
皆勉強してる中、寝ているのはとても快適だ
特別な気分っていうか
しかし隣のベッドにはその特別をかなりの頻度で味わっている奴がいる
見るとイヤホンをつけて何かゲームをやってるようだった
カチ、カチとボタンの音がしている
その音を聞いていると保健室の丁度良い温度と相まってウトウトしてくる
別に我慢しなくていいんだ…寝てしまおう
さっきのヤチャマルの気功のおかげで気分よく寝れそうだ…

ふと、頭に痛み
何だろう、と目は開けないまま手を伸ばす
鋭い痛みと、ぬるりとした感触
驚いて慌てて目を開けた

「ここは…」

枯れ果てた大地がどこまでも続いている、起伏も何も無い大地が
延々と続き地平線が見えていた
空は茶色くどんよりとした空気が漂っていた
って何かこの光景前にも…

「…思い出した、ここは夢だ」

歩いて歩いて歩き続けて
巨人やチェーンソーを持ったテディベアに襲われる夢だ
そういえば授業中もテディベアとウサギに襲われる夢を見たな
いや、待てよ…
頬に手を当てて見る
カサカサした感触、血が乾いてかさぶたが出来ていた
そして頭の傷
夢が、続いている?

「気づいた?」
「誰だッ!?」

振り向くと、女子生徒がいた

「はじめまして、私は舞姫、生徒会書記」
「生徒会…!?」

咄嗟に後ろに飛びのく
だけど舞姫は動こうとはしない

「ここは夢の世界」
「…お前の…仕業なのか」
「そしてここは私の世界でもある…
 誰一人この世界では私を倒せない」
23 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:32:54.66 ID:aciajzIo
舞姫がゆっくりとこちらに歩いてくる
どうする、黄龍鉄甲は無い
いや、そもそも夢の世界に持ってこれないだろ…

「…夢の中で傷つけられても肉体が実際に傷つくことは無いよ
 だけど精神は切り刻まれていき…
 もしこの世界を死を迎えたなら、肉体は永遠に目覚めはせず
 いつしか心臓も止まり、静かに死んでいく」
「冗談じゃねぇ…!!」

必死に起きようとしてみる
頬をつねったり叩いたりと何とか目覚めようとする

「無駄、この夢は自分の意思じゃ目覚めれない」
「そんな…」
「1度目は…ベッドから落ちたのかな
 2度目は誰かに起こされた?
 それでもこの夢の記憶は目覚めた瞬間に消えてしまう」

そうか、どちらも自分の意思で起きたのではない
起きてしまったのと、起こされたんだ

「もう逃がさない
 ここで死んでもらう」
「ふざけんな!!」

だが舞姫の身体が霧のようにぼやけ、消えた
同時に遠くから地響きとモーター音
間違いない、あいつがまた来たんだ
チェーンソーテディベアが…
その予感は当たることには当たったが更に斜め上を言った
四方を囲むように4体のチェーンソーテディベアがこちらに向かってきていた

「嘘だろ!?」

慌てているうちにもどんどん奴らは近づいてくる
どうする!?どうすればいい!?
逃げるにしてもこの夢の世界で逃げ切れるのか!?
いや、それでも対抗する手段を持たない今は逃げるしかない
一か八か、まだテディベア同士の距離が離れてる今のうちに
どれか1体の横を抜けるしかない
俺は真正面のテディベアに向かって走り出した
俺が走り出したと同時にテディベアがチェーンソーを振り上げた
当たればひき肉決定だろうな
チェーンソーの射程距離に入った瞬間にテディベアはチェーンソーを振り下ろしてきた
横に避けると地面に叩きつけられたチェーンソーの刃が砂を巻き上げた
朝の夢がフラッシュバックした
深く考えたわけではなかった、ただ反射的に飛んだ
足スレスレを、チェーンソーが横に通っていった
これで抜けられる!と思ったも束の間
通行止めだと言わんばかりにチェーンソーが目の前に突き出された
24 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:35:22.04 ID:aciajzIo
「うわっ!?」

あわてて回りを見ると完全に囲まれていた
逃げようが無い
テディベア達はチェーンソーが大きく唸り声をあげた
そして一点集中と言わんばかりに全てのチェーンソーが俺に向かってきた
とにかく方向も考えずに俺は飛んだ
肩に刃が触れる、服が破れ、血飛沫が視界の端に見えた

「がっ…!!」

着地も取れずにヘッドスライディングのように地面を滑る
すぐさま後ろを振り向くと綿が吹き荒れていた
テディベアのチェーンソーが他のテディベアの身体を切り裂いていた
それでも刃は止まらない
ほとんど真っ二つに切り裂かれたテディベアの上半身が地面に落ちた

「ぐっ…!!」

右肩を押さえ、走り出す
神経が右肩に集中したように激痛が絶え間なく襲い来る
だが何かにつまづいて転倒する
何だ!?
足を見るとピエロが俺の足首を掴んでいた

「よぅ兄弟、そう急ぐなよ
 見てくれよ、人体切断マジックに失敗して俺の身体はバラバラだ
 今は接着剤で保ってんだぜゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」

ピエロは俺の足首を掴んだまま狂ったように笑い出した

「離せ!離せよ!!」
「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッハ!?
 ハッ…ガッ…ギャアアアアアア!!」

ピエロの口の端が裂けていく
笑いすぎて避けたのか!?
肉がバクリと裂けて血がドロドロこぼれ落ちる
ある程度まで裂けるとピエロの口の中からピンク色の物体がずにゅりと出てきた
同時にピエロの上顎から上が宙に飛んだ
空中でパンッ!と音を立ててハトがパタパタ飛んでいた
そして残ったピエロの体の中からウサギが出てきた
そう、血塗れの斧を持ったあのウサギだ

「なんなんだよ…!こんなところにずっといたら気が狂う!!」
25 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:36:17.00 ID:aciajzIo
抜け殻のようになったピエロの手を振り解いて立ち上がる
早く逃げないと
真正面の地面に斧を振り下ろすウサギの影が見えた

「うわっ!?」

咄嗟に避けるとガァン!と音を立てて
俺のいた場所に斧が突き刺さった

「ちっくしょう…!」
「キャハハハハハハ!!」
「今度は何だよ!!」

もう泣き声に近かったかもしれない
前方に沢山の目の無い子供がいる

「せんそーごっこだ!」
「撃て撃てころせ!あいつをころせば英雄だ!!」

正面からボウガンの矢のようなものが大量に放たれた
必死に伏せる、後ろからドスッ!ドスッ!ドスッ!と矢が何かに刺さる音がする
きっとウサギに大量に命中したんだろう
26 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:37:12.51 ID:aciajzIo
「キャハハハハハハハハ!!
 的だ的だ!!」

笑い声、そしてギュオオオオン!というチェーンソーのモーター音

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

笑い声と絶叫が周囲に響き渡る
もう顔をあげることが出来ない
今正面で起こってることを見るのが夢だとはいえ恐ろしかった
これは本当に夢なのか
いや、ここでの死が現実ならここは…

「キャハッ!」
「!」

至近距離から甲高い笑い声が聞こえて目を開けた
まさに至近距離、数cmという場所に目の無い子供の生首
でもその首は楽しそうに笑っていた

「げーむ、おーばぁ」
「!?」

顔を上げるとテディベアがチェーンソーを構えていた
そして周りとボウガンを構えた子供たちが取り囲んでいた
テディベアの上にさっきのピエロが立っていた

「さぁいよいよ終幕でございます!!
 最後の演目はタネも仕掛けもありません!
 奇跡の人体切断マジック!!成功の際は皆様惜しみない拍手をお願いしまぁす!!」

ギュオオオオオオオン!と今まで1番大きく聞こえるチェーンソーのモーター音
同時に周囲から響き渡る歓声とけたたましい笑い声
死ぬ、そう思った

チェーンソーが振り下ろされる
駄目だ、もう無理だ…!!!
27 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:38:17.32 ID:aciajzIo
10/25(水) 夕方

「たまゆら!おい!起きろ!!!」

声が聞こえる

「ええい!とっとと目を覚ませ!!」

パァン!!と顔面に強い衝撃
思わず目を開けた
ぼんやりとした視界の真ん中にゆき兄がいた

「たまゆら…?おい…」
「…ん…何…?」
「めちゃくちゃうなされてたぞ…」
「…?」

服は寝汗でびっしょりだった
酷い夢を見た気がする…
でも…思い出せない…
すごく、重要な夢だったような…

「…悪夢を…見た気がするんだ」
「悪夢…それであんなにうなされてたのか?」
「わからない…
 でも…とにかく酷い夢だった気がする…」
「おい、何騒いでんだー?」

ヤチャマルが顔をのぞかせた
そして俺を見るなり表情が険しくなった

「…たまゆら…何をした?」
「え?」
「さっき直した気の流れがもう歪みまくってるぞ…
 ありえない…」
「え、でも…寝てただけだよ…
 酷い夢でうなされてたらしいけど…」
「夢…?」

ヤチャマルは何かを考え出した
ゆき兄のほうを見るとゆき兄も神妙な顔つきだった
28 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:39:15.43 ID:aciajzIo
「寝ると気が乱れる、か…」
「外部的な要因が入り込むことによって
 気が乱れ結果的に悪夢を見ているとか」
「しかし誰も来なかったんだろ?
 寝ている者の意識に特別な機材などを用意しないで干渉できるとか…」
「…忘れたかヤチャマル?
 この学園には不可能ができちまう奴らがひしめいてんだぜ?」
「なら、それが前提だとしてどうやって回避する?」
「本体を叩くべきだろうな
 重要なのは本体の位置だが」
「だが守りは…それに…で…だから」
「いや…に…なって…で」

何だか俺を放っておいて2人で話し込みだした
どうしよう、何か声をかけたほうがいいのか?

「ああ、悪い悪い」

ゆき兄が振り返った

「とりあえず寝るな」
「は?」
「対抗策がそれぐらいしか思いつかねぇんだよ
 だから本体を叩くまで寝るなっつってんだよ」
「待ってよ、別に生徒会のせいって決まったわけじゃ…
 普通に悪夢を見ているだけかもしれないし」
「そりゃそっちのが何倍も楽だけどな
 生徒会の仕業だったらどうすんだ?
 色々と楽観的に見る俺だが今回は事情が違う」
「…」
「それにどっちにしろ奴らとはやりあうハメになるんだ
 こっちが先手を打てればそれに越したことはない」
「そう…だね、わかった」

とは言ったものの
29 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:41:04.51 ID:aciajzIo
「放送室のときと同じで本体が誰かわかんないだろ?」
「さっき考えてたんだがよく考えれば見当はついたぞ」
「え?」
「白やんの隠し玉がこれ以上無ければ
 執行部はもう全滅してるんだ
 ってことは書記の舞姫か、会計のスイカどっちかだな」
「あ、そうか…
 なんで放送室のときに気づかなかったんだ」
「まぁテンパってたしな」
「とりあえず、その2人を探し出せばいいわけ?」
「そういうわけが…
 生徒会って普段はどこで何をしているかわからないからな」
「ちょっとちょっと」
「ん?」

後ろからヤチャマルが話に口を挟んだ

「生徒会の人間なら生徒会室にいけば
 いなかったとしても行き場所ぐらいはわかるんじゃないか?」
「…いや…それは」
「敵陣にノコノコ出向くなんて無謀すぎるぞ…」
「虎穴に入らずんば虎子を得ずっていうだろ」

確かにとんでもなく危険だろうが
現状それ以外に方法も無い気がする
それに寝れないのも困る
堕人モノザネとの共闘のこともあるし
なんとか戦闘に持ち込まずに白やんと話だけでも出来ないだろうか
舞姫の居場所を教えてくれるかどうかは別として…

「…行ってみる」
「おいおい!たまゆら、正気か!?」
「他にアテも無いだろ?
 …戦闘にはならないように努力する
 なったら逃げる」
「…どうしても行くのかよ」
「ああ…」
「チッ、わかったよどうせ止めても行くんだろうな
 ここで待ってるから早く行って来い」
「わかった」

保健室を出る
一応、部屋から黄龍鉄甲を持っていくことにした
そして生徒会室の前まで来た
…黄龍鉄甲をはめてると殴りこみに来たかと思われるような…
とりあえず手に持つだけに留めておこう
30 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:41:56.38 ID:aciajzIo
深呼吸をして気持ちを落ち着かせる
心臓はさっきからバクバクと今にも止まりそうだ
震える手でドアをノックする
返答は無い
もう1度ノックする
やっぱり返答は無い
俺はドアに手をかけた
カギは…かかってないようだった
ドアの隙間から中を覗く
誰もいないみたいだった
思い切って室内に入って見る

…まるで校長室みたいだな
革張りのソファやらなんやらと…
いったいどこの世界にこんな高級感漂う生徒会室があるんだよって話だ
薄暗く、夕日の赤い光が窓から差し込み、静寂に包まれたこの部屋はとにかく不気味だった
なんとなく不安が広がる
…保健室に戻ろう

「珍しい客人だな」
「!?」

真後ろに、白やんがいた
いつの間にここまで近づかれたんだ!?

「…直接俺を倒しに来たか?」
「違う!」
「なら、なぜここに来た?」
「…舞姫のことを知りたくて」
「フン」

白やんはゆっくりと歩き
椅子に座った、夕日を背に椅子に佇む白やんの姿からは
異様なほどの威圧感
押しつぶされそうなほどのプレッシャーを全身に感じる

「…俺が、自らの部下である舞姫のことを教えると思うか?」
「…」
「どうせ彼女の技に囚われて打開策を見出せず苦肉の策でここに来たのだろう」
「じゃあやっぱり…寝てる時に何か…!?」
「…知ったところで逃れられはしない」
「舞姫はどこだ…!」
「さっきも言ったが…俺が教えると思っているのか?」
「クッ!」

思わず黄龍鉄甲に手が伸びる

「力ずくでも…と、言った所か?
 構いはしないがな…」
「…」
31 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:42:49.91 ID:aciajzIo
いや、駄目だ
ここで戦うわけにはいかない
勝てる気も全くしない
俺は手を戻す

「…賢明な判断だな」
「クソッ…」
「わかったら、出て行け
 もうじき下校の鐘が鳴る…」

白やんの威圧感が一段と増した
骨の髄まで震えるような恐怖
駄目だ、まだこいつには程遠い
俺は無言でドアを開けた
白やんは何も言わない、それがまた悔しかった
ドアを叩きつけるように閉め、俺は保健室に戻ることにした
圧倒的な壁を感じた、今の俺では決して越えることの出来ない壁のようなものを
初めて白やんと出会って時に比べて俺は確かに成長してる
だけどそれでもまだあいつには届かない
そんな現実をたった一瞬の邂逅で嫌と見せ付けられた気分だ…

「ん?」

廊下の奥に、誰かが立っていた
ただ何だかシルエットがおかしい
そいつはゆっくりとこちらへと向かってきた
窓から差し込む夕日に照らし出されたその姿は

「困ってるようだなぁ、同士よ」
「…ノスフェラトゥ」
「…生徒会の奴の居場所を探してるんだろぉ?」
「ああ…」
「キシシシ…」

耳につく笑い声を出しながら
ノスフェラトゥの鋭い爪がゆらゆらと遊ぶ
32 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:44:06.32 ID:aciajzIo
「やつはこの校舎内のどこかに、いる」
「…詳しい場所は?」
「それは…チッ…邪魔が」
「え?」

バサッ!と音がしたと同時に突風
突然起こった突風に思わず目を瞑ってしまう
目を開けるともうノスフェラトゥの姿はなかった
どこに行ったんだ…?

「たまゆら君、何やってるの?」
「ほえ?」

今度は後ろにピュアがいた

「あ、いや…何でもピュアこそ何を…?」
「図書室を閉めて今から帰るところさ」
「ふーん…
 そういえばあれ、どうなったの?」
「あれって?」
「この学園に隠されたどうとかこうとかさ」
「……何のこと?」
「え…前にあれだけ言ってただろ」
「覚えてない」
「冗談だろ?」
「……本当に覚えてないな
 何かの勘違いじゃないか?」
「え…でも…」

ピュアの目は真剣だった
勘違い…いや、そんなはずはない
しかしこれ以上しつこく聞くのもちょっとな

「…まぁ勘違いなら勘違いでいいや」
「たまゆら君ボケてるねぇ
 それじゃ僕は帰るから、たまゆら君も早く帰ったほうがいい」
「ああ、じゃあなピュア」

ピュアは行ってしまった
俺も保健室に戻ることにした
何だか頭が重い…
33 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:44:58.80 ID:aciajzIo
10/25(水) 夜

「ただいま」
「おかえり、どうだった?」
「校舎内にいるってことぐらいは突き止めた」
「…おいおい、すげぇな
 てっきり追い返されるだけと思ってたが」

本当はノスフェラトゥに教えられたというのは黙っておこう

「校舎内か…
 さてどうするか」
「一緒に探し出すしかないんじゃない?」
「まぁそれもそうだな」
「それじゃ行こ…う…?」

視界がグニャリと歪む
頭が、重い…

「たまゆら…?おい!?」

ゆき兄の声が、遠ざかっていく
まずい…な…
寝たら…いけない…
床が、近い
34 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:45:51.20 ID:aciajzIo
「…!!!!」

気がつくと、周りは荒野だった
枯れ果てた大地がどこまでも続いている、起伏も何も無い大地が
延々と続き地平線が見えていた
ってこれ3回目じゃねぇかよ…!!
思い出した…まずい、この世界じゃ舞姫には絶対に勝てないのに…!!

「今度は逃がさない」
「!!」

後ろに舞姫が立っていた

「今度は強制的にこの世界に連れ込んだ
 もう現実で誰が何をしようが目覚めることはないよ」
「…そんな」
「終わりね」
「クソッ…!!!」
「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」
「うわっ!?」

上空から落下してきたピエロが俺の身体に絡みついた

「さぁさぁ戻って参りました我らがスター!
 次こそ華麗なる人体切断マジックが成功するのか!
 もう逃しません!モウ、ニガサナイ…」
「離せ…よせ…やめろ!!」
「キャハハハハハハ!!
 悪あがき!悪あがき!ワルアガキ!!ブザマ!!ミジメ!!ミットモナイ!!!」

周囲には目の無い子供達
おびただしい数の子供たちが俺を指差して笑っていた
気がつくと、俺は台のような物に仰向けに磔にされていた

「よせ!やめろ!!」
「それでは切り裂き人の登場です!」

ギュオオオオオオオン!と遠くからチェーンソーの音が聞こえてくる
空には大量の風船が飛んで
花火がパン!パン!と音を立てている
周りはまるでサーカスのようになっていた

「よ、よせ…やめてくれ…!」

身体が動かない
チェーンソーの音が徐々に大きくなり
視界にあのテディベアが見えた
35 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:46:51.49 ID:aciajzIo
「さぁこのチェーンソーの切れ味は抜群!
 触れれば肉を抉り骨すら粉々!!
 切断というより粉砕です!試してみましょう!!」

チェーンソーが振りぬかれる音と風を感じた
そして凄まじい叫び声
顔に何かがピチャッと散った
奥歯がガチガチ震え出す
夢なんだこれは、だけど今の俺には現実だ
どうしたらいいんだよ、逃げられない

「さぁ!今度こそ正真正銘の終幕です!!」

テディベアが台の横に立った
無機質で、虚ろなその瞳が、俺をじっと見つめている

「やめろ!やめろぉぉぉぉぉぉおおお!!」

無我夢中で手足を暴れさせる
だけど拘束は外れない
動けば動くほど肉に食い込みキツくなる

「それではカウントダウンです!!」
「ふざけんなぁあああああああああああああ!!」
「3!」
「よせ!!!」
「2!!」
「待て!待ってくれ!!」

テディベアが、チェーンソーを振り上げた

「1!」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「0!!!」

無情にも、チェーンソーが振り下ろされる
間違いなく、首を切り落とす軌道
切り落とす、いや違う
首が、粉砕される

「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!」

死ぬのか?俺は?
死ぬ…まだ、死ぬわけにはいかないんだ
俺は、死んでも死ぬわけにはいかないんだ
まだ、約束を果たしてないんだ
ここで、死ぬわけにはいかないんだ!!!!
36 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:48:33.74 ID:aciajzIo
金属音が周囲に響き渡った

「ゲヒャヒャ…あ、あれぇ!?」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

チェーンソーの刃を、俺の右手が押し留めていた
いや、正確には右手についている黄龍鉄甲が押しとどめていた
チェーンソーが振り下ろされた瞬間に
右手の拘束具がちぎれた、そのまま何も考えずに本能的に右手でチェーンソーを止めようとした
右手ごと首を吹っ飛ばされて終わりのはずだったが
俺の右手には黄龍鉄甲があった
そして凄まじい火花を散らしながら、チェーンソーを止めている
手に伝わる振動もまた凄まじく気を抜けば手が千切れるんじゃないかと思うほどだ

「グッ…くっ…そぉぉぉ!!」

ピエロが驚愕の声をあげる

「夢が逆に飲み込まれて…!
 誰だ…本体の眠りを妨げるのは…!?」

本体の眠りを妨げる…
ゆき兄…!?
やってくれたのか!?

「おおおおおお…らぁあああああああああああああああ!!!」

ガキィーン!!と金属が弾ける音
渾身の力で振りぬいた黄龍鉄甲によって
チェーンソーの刃が砕け散った
バランスを崩したテディベアが後ろに倒れこんだ
同時に、全ての拘束具が自然に引きちぎれた
どういうことかはわからないがチャンスだ
俺は立ち上がった
なんだか、力が沸いてくる
ピエロが叫んだ

「マジックショーの主役がどこに行くつもりだい!!?
 まだこの夢は終わっていないんだ!!」
「キャハハハハハハハハハ!!!」

おびただしい数の目の無い子供たち
自由になったが…どう切り抜ける!?
ピエロが叫んだ
そして同時に目の無い子供の集団が俺に飛びかかってくる
その瞬間、頭に言葉が走り抜けた
37 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:50:06.19 ID:aciajzIo
『死を知り、さりてと死を退けたお前に
 黄龍鉄甲はさらなる力を目覚めさせる』

いいぜ、来い…!

『ならば聞け、新たなる力の名は――…』

新たなる力の名は…!





「…ッ!!!目覚めろ!!青龍ゥゥゥゥゥゥゥウウ!!!!」
38 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:52:38.16 ID:aciajzIo
(BGM http://www.youtube.com/watch?v=ZIjgrFkqxEk)

辺りに衝撃波が走った
飛びかかってきていた目の無い子供達は吹き飛んでいく
黄龍鉄甲が2つに分離した
2つは青い龍の頭を模して、俺の左右にふわふわと浮いている、使い方は頭に流れ込んで来る
起き上がり始めた目の無い子供達がこちらの様子をうかがっている
俺は手を前にかざした

「…其は我、其は龍、司るは青き力、我が敵を滅せよ…!!」

キィィィンと高い音がする
同時に目の無い子供たちがまた一斉にこちらに飛びかかってきた
そして龍の頭を模した物から四方八方に青く光る光弾が発射された
命中した場所で小型の爆発を起こすその光弾は的確にこちらに飛びかかる敵を仕留めていく
2つの龍の頭はいわゆるビットだ
攻撃範囲は抜群に広いし、俺の意思で自由自在に動かせるから360度をカバーできる
その変わり俺の防御力はかなり落ちるみたいだが…
しばらくすると目の無い子供たちは飛びかかってくるのをやめた
そして1ヶ所に集まり、1つの塊のようにこちらに向かって突っ込んできた

「一気に決めてやる!」

龍のビットが互いに放った青いビームのようなもので繋がれる

「行け!!絡め取れ!!」

高速で放たれたビット
まるでゴールテープのように目の無い子供達の集団はビームを力で引きちぎろうとする
だがビットは高速で周囲を回転する
そして塊は青いビームのようなロープでグルグル巻きにされて拘束されていく
1人残らず、絡め取る

「爆ぜろ!!!」

青いビームのロープが白く輝き出す
そして、凄まじい大爆発を起こした
断末魔の叫びをあげる時間さえ与えないほどの
ビットが俺の周りに戻ってくる
爆発した場所には大穴が開いていた

「…馬鹿なっ…夢が…夢が…!」

大穴の向こうにピエロが立っていた
どうやらもう援軍は無いみたいだな

「セット…」

俺はピエロを指差した
ビットが俺の正面に移動した
39 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q [BGMしくってるよ!!死ね俺!!!]:2009/09/19(土) 22:54:24.19 ID:aciajzIo
「く、くそぉ…ここはひとまず撤退して…!!
 次の夢で…!」

ピエロが逃げ出す

「ゲヒャヒャヒャ!さすがにこの距離で俺に決定打は与えられまい!!」

決定打が与えられない?
馬鹿言ってんじゃねぇ
ビットが青く輝き出す

「青龍のアギトからは逃れられない」

俺は腕を構えた
ビットの輝きは最高潮
受けて見ろ、これは青龍が力

「貫き通せ…!」

俺は全力で
ビットを殴り飛ばした
白い光弾と化したビットは絡まりあいながら青い光の尾を引いてピエロへと高速で向かう

「殴り飛ばしただけでそう簡単に当たるかよぉ!」

ピエロは右へ左へと高速でステップする
だけどムダだ
2つのビットも右へ左と動きながら確実に距離を詰めていく

「自動追尾!?」
「逃れられない、そう言ったはずだ」

ビットの速度がさらに上がる
青い光の尾が更に伸びる
それは、伝承に伝わる青龍そのもの

「うっ、あっ、ひっ、あああっ…!」
「夢の終わりだ!!!
 青龍爆雷貫通撃!!!」
40 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:55:20.00 ID:aciajzIo
青龍の雄叫びが聞こえた気がした
さらに加速をつけたビットがピエロの背中に直撃した

「がふっ…!」

それでも勢いは弱まらない
ピエロの足が地面から離れる
そして今度は空へと向かって打ち上げられる

「がぁぁぁああああああああああ!!!」

超高度、そこまで上がり
ビットは2つに分かれた
空中で身動きできないピエロは何が起こったのかを理解できていない
1つのビットはさらに上昇し、超々高度からピエロへと高速落下を開始する
もう1つのビットは下からピエロに向かい高速で上昇する

「噛み砕け!!!!」

2つのビットが、ピエロに食らいついた
そして巻き起こる、大爆発

「あっ…がっ…ぎぃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

枯れ果てた夢の世界の空に
青い大輪の花が咲き誇った
同時に、周囲の景色が消えていく
気がつくと、真っ白な、何も無い空間に立っていた

「…ここは」
「夢の…終わり…」

振り向くと、ピエロが立っていた
41 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:57:59.14 ID:aciajzIo
「まだやるのか?」

ピエロは静かに首を振った
そして、ピエロの背中がモゾモゾ動いた
ピエロの中から出てきたのは、女子
抜け殻となったピエロの皮は、地面にべちゃりと落ちた

「…舞姫…か?」
「ええ…」
「…夢の終わりってことは?」
「もうすぐ…元に戻るよ…
 まさか夢の世界で…私が敗れるなんて…」
「俺だけの力じゃないんだろ?」
「干渉が無ければ、私が勝ってたと思うんだけどね」

辺りに声が響いた

「起きろよ!このくそ女!!
 くそ!どんだけ深い眠りなんだよコイツは!!!」

ゆき兄の声だった
…やっぱり、ゆき兄だったのか

「あの子に眠りの邪魔をされなければ…ね」
「…」
「でもいいの…長い長い夢はもう終わる…」
「…夢?」
「会長を…止めてあげて…
 あの人は…縛られてる」
「どういう意味だ?」

辺りがゆっくりと闇に包まれていく

「今度は、現実で会おうね」
「待て!縛られてるってどういう意味だ!?」
「君なら…必ず…」

辺りは完全な闇に包まれた
もう声は聞こえない…
そして、俺の意識も急速に消えていった…
42 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/19(土) 22:58:52.71 ID:aciajzIo
10/25(水) 深夜

「こいつは…俺が必死に走り回ったってのに…
 幸せそうに眠りやがった」
「まぁゆき兄のお陰だろ
 ほら、労いのコーラでもやるよ」
「おー、ヤチャマル悪いね、あはあは」
「それで夢の世界に引きずりこんだ犯人は?」
「ああ…なんか、やる気なくしたから…
 放っておいて戻ってきたわ」
「なんだそりゃ」
「女は殴らん」
「説得力が無いな」
「…ま、黒い煙も確認したしな
 もう大丈夫だろうよ
 それより今のうちにたまゆらにイタズラしとこうぜ
 この寝顔見てたら腹立ってきた」
「筆ペンならあるぞ」
「額に肉だな」










13限目 - ドリームスナッチャー -
43 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/09/19(土) 23:37:00.38 ID:U9yu0Woo
ゆきに乙!

姫の能力怖ぇwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
1:1なら勝てないじゃねぇかwwwwwwwwwwwwwwww
44 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸[ [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/20(日) 00:39:42.32 ID:Q..Bnlso
ゆき兄おつ!

姫おそろしすwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
45 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/20(日) 16:58:14.57 ID:Lyppy6DO
ちょwwwwwwwwwwww前スレ>>1000wwwwwwwwwwwwwwww


まずは住所さらしてもらおうか、話はそれからだ
46 :ミギー :2009/09/20(日) 17:24:01.41 ID:N7XeXsDO
http://imepita.jp/20090920/625010
わお!前歯曲がってるのばれちった!
47 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/20(日) 17:54:59.96 ID:Lyppy6DO
>>46
おまwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


ツッコミどころそこじゃねぇよwwww
48 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/20(日) 18:56:21.80 ID:wytekDoo
グロ中尉
49 :ピュアハート [('A`)]:2009/09/20(日) 18:57:36.71 ID:/Q//AkSO
>>46
オカ板に転載してくる
50 :ミギー :2009/09/20(日) 19:24:21.48 ID:N7XeXsDO
>>49
なぜ前歯が曲がってるのかオカ板の方に聞きたい
51 :ホロニー :2009/09/21(月) 09:46:46.07 ID:5pGxekSO
あ、やべ
加速したのに1000取り忘れた
52 :ホロニー :2009/09/21(月) 10:00:13.46 ID:5pGxekSO
52なら無事に何もなく母子共に健康でウチに帰ってくる
53 :ミギー :2009/09/21(月) 18:27:59.24 ID:gUnvV6DO
53だったらホロニーの赤ちゃんの名前はミギ子男の子だったらミギ太郎
54 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/21(月) 18:28:47.62 ID:mLWh.eso
ミギ子決定か…
55 :ピュアハート [('A`)]:2009/09/21(月) 18:40:48.40 ID:yaZ.eUSO
右子…不憫な娘……
56 :ミギー :2009/09/21(月) 20:07:56.59 ID:gUnvV6DO
多分私みたいに知性的で慈愛にあふれる子になるよ!よかったね!
57 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/21(月) 20:29:20.06 ID:eIw5McDO
え…?
58 :ピュアハート [('A`)]:2009/09/21(月) 20:34:48.25 ID:yaZ.eUSO
えっ
59 :ホロニー :2009/09/21(月) 21:00:23.20 ID:5pGxekSO
まぁ…
ミギーみたいなのになったら、
ある意味1番幸せなのかもな…









おつむ的な意味で。
60 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/22(火) 15:58:41.05 ID:J6FCqaQo
ちょうねむい…
61 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [久々にうp]:2009/09/22(火) 19:55:18.42 ID:cl5V1UA0
http://imepita.jp/20090922/716070
62 :ミギー :2009/09/22(火) 20:24:47.97 ID:4WYRw.DO
ほろにーほろにー!イケメソほろにー!
63 :ミギー :2009/09/22(火) 20:27:30.34 ID:4WYRw.DO
ん…AU端末…?
ホロニーで合ってるのかね…?
64 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/22(火) 22:17:31.88 ID:5HyCFMDO
メガネうpと聞いておはようございます!
65 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/22(火) 22:19:55.29 ID:5HyCFMDO
>>63
末尾AOじゃなくてA0だからPCなんだぜ…?
66 :ほろ苦い人 :2009/09/22(火) 22:26:43.25 ID:cl5V1UA0
一瞬確認しちまっただろーがwwwwwwwwwwww
散髪記念じゃ
67 :そら :2009/09/24(木) 08:18:33.87 ID:KUTSpUDO
おはようございました


変身!
68 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/25(金) 10:39:16.37 ID:7PtEgkDO
しげるが24時間スレスト達成したと聞いて(ry
69 :そら :2009/09/25(金) 12:40:05.08 ID:SmJwpYDO
ほろ兄さんのが長かったのに何故
70 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/25(金) 12:50:25.53 ID:7PtEgkDO
あ、気付かなかったwwwwwwww


なんだろ…
ぽろにーだとざまぁ感がわかないからだな、きっと

ゆき兄だったら24時間達成の10分前からきっちりスタンバってるわwwww
71 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/25(金) 14:19:50.59 ID:QCrW4v.o
時間の感覚が消えている僕には
もう遥か過去も未来も一緒くたに見える
そして明日が締め切りなのを今思い出してあせっている
72 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸[ [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/26(土) 20:56:32.42 ID:lPgv3F.o
もうすぐ締め切りだな
73 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 21:58:31.86 ID:m.qm/NYo
大丈夫です間に合いました
74 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/26(土) 22:00:34.56 ID:lPgv3F.o
おk
75 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:00:44.63 ID:m.qm/NYo
邪眼学園黄龍譚
14限目 - アウトブレイク -

10/25(水) 深夜

「…こんな時間に緊急召集とは」
「…姫はやられたよ」
「なッ…」
「残り2本の楔では力不足らしい
 今にもそこらじゅうから堕人が溢れてきそうな勢いだ」
「…方法が1つ」
「何だ?」
「…アルゴルの使用許可を」
「アルゴルだとッ!?
 何を考えている!?」
「わかってます、アルゴルは僕が作り出した最強最悪の…
 その名の通りのまさしく"悪魔"そのものです
 一度放てばそう時間もかからず学園は地獄そのものと化すでしょう」
「それを理解していながらなぜ?」
「堕人の出現は抑えられるでしょう」
「だが学園そのものが崩壊してしまえば意味は無いぞ」
「アルゴルによって堕人の出現を抑え
 学園がアルゴルに飲み込まれないうちに転校生を叩き
 新たな楔を仕立て上げる、これしか無いでしょう」
「…」
「全ての責任は僕が背負います
 …使用許可を」
「…3日だ」
「と、いうと?」
「アルゴルを放ち、3日以内に転校生を断罪できなかった場合は
 すみやかにアルゴルを取り払う」
「わかりました、ではそのように…」
「…」
76 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:02:42.86 ID:m.qm/NYo
10/25(水) 同時刻

「…ウ…ア…」
「お目覚めだねぇ、風哭…」
「ウゥゥウウ…」
「…憎いだろぅ?妬ましいだろぅ?
 何も知らぬ馬鹿どもが蔓延り偽りの安寧に身を委ね
 意味も無き生をのうのうと過ごしている
 無限に続くような地獄を延々と渡り歩いてきた俺たちの上で…
 奴らはずっとそうして生きてきた
 羨ましくもあり、妬ましくもあり、どうしようもないぐらいに憎らしい
 呪われたこの身ではどれだけ望んでも帰ることは出来ない
 だが闇に堕ちきった我らにも希望はある…
 共に目指そう、我らの希望、大いなる存在を…」
「仰せの…ままに…」
「クカカカカカカカッ!!!」
「鬼哭…もうすぐだ…
 もうすぐ…終わる…」
77 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:06:24.61 ID:m.qm/NYo
10/26(木) 早朝

「んん…」

目が覚めた
どうやら自分は保健室にいるようだった
周りを見渡すと隣のベッドではゆき兄が寝ていた
どうやら保健室に寝かされてたみたいだな…

「よっと…」

ベッドから降りてカーテンを開けるとヤチャマルが机に足をあげて爆睡していた
起こすと怒られそうだな
時間も割と早いので1度寮に戻って準備してから
普通に登校するのがいいかな
動くのが若干めんどくさいけど、しょうがない
保健室を出ようとしてふと壁にかけてあった鏡を見る
額にでかでかと肉と書かれて
まぶたに目、口周りにヒゲ、頬に傷と花丸
他いたるところにこれでもかと言うほどの落書きを施されていた

「…こいつら…」

寝ている2人を殴ったろかと思ったが
一応ゆき兄には助けられたし、ヤチャマルは後で殺されそうだし…
やめとこう…

とりあえず顔を手で隠し
自分の部屋に辿り着くまで誰にも会わないことを願って俺は走り出した
早い時間でよかった…
78 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:09:03.61 ID:m.qm/NYo
10/26(木) 朝

寮に戻ると速攻で顔を洗った
幸い油性ではなかったようで洗ったらすぐ落ちた
油性だったと思うとゾッとする

「ふぃー…」


顔を拭きながら学校に行く準備をする
しかし自分で言うのもなんだが俺って真面目だなぁ
命を賭けた戦いをしてるのに毎日素直に登校…か
よっぽどゆき兄のほうが健全なのかもしれないな
どっちがいいとも言えないし、考えるのはやめておこう
さて、それじゃ今日も真面目に学校いきますか…と


教室につく
ゆき兄はおらず何人かが仲のいい者同士で話してる
いつもどおりの光景だ
そして俺の姿を見るやいなやリカが走りよってくるのもいつも通り

「おっはよ〜」
「おはよ」
「…今日もゆき兄来てないんだね」

そういえば最近、ゆき兄は運が悪いというか何というかで
まともに登校している気がしない
ちゃんと進級できるんだろうか
大怪我したりと休むに値する理由はおおいにあるとは思うが
いかんせん本人にやる気が無いのが問題だな

「うーん、ゆき兄はサボりなわけじゃなくて…あ、いや…」

大怪我して休んでるとか何とか言って
無駄に不安にさせることも無い気がした

「サボりじゃなくて?」
「やっぱりサボりかもしんない」
「…うーん、今度ちゃんとお説教しなきゃ」

すまん、ゆき兄
まぁ説教ぐらいで死ぬことも無いだろうし耐えてくれ
そんなこんなで話してるうちに授業が始まった
ゆき兄まだ寝てんのかなぁ
79 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:14:49.76 ID:m.qm/NYo
10/26(木) 昼休み

今日はリカがお弁当を作ってきてはないようだった
仕方ないので購買で何かしら買って食べるか
寝すぎたのかあんまり食欲が沸かないが…

購買につくと何だか普段以上に人だかりが出来ていた
なんだろう、安売りでもしてんのかな?
それだったらモタモタしてる場合じゃないな
俺は滑り込むように人だかりの中に飛び込んだ
人を押し分けて進んでいるとオラァ!だのなんだのと声が聞こえた
何の叫び声だ?と気になったが人ごみを抜けて理解した

「てめぇこの野郎!!」
「んだこらぁ!!」

男子生徒が殴りあいの喧嘩をしていた
周囲にはその男子生徒の友達らしきやつが2人を抑えようとしていた
わりとヤバそうな雰囲気だが、なんだかな
いつもいつも命を賭けた戦いとかしているとこういう光景ですら平和的なものに思えてくる
まぁ関わることでもないな
ヒートアップしてる男子生徒たちを尻目に購買でパンを買った
食べるとすれば…やっぱ屋上かなぁ

というわけで屋上に上がっていると
男子生徒が階段を下りてきてすれ違う
なんだろう、なんだかフラフラしてるなこいつ

「…おい」
「え?」

突然呼び止められる

「何ですか?」
「…今俺にガンつけたろ?
 何様だテメェ…!?」
「は?」

いきなり絡まれた
どんな時代のヤンキーだよこいつ
どう言い訳しようか考えているといきなり胸倉を掴まれた
驚いて持っていたパンが階段を転がった

「やる気か!?やる気なのかテメェ!?
 上等だ!!やってやる!やってやっからな!!」
「ちょ…!?」

何だコイツ!?
やる気か!?って自分から掴みかかってきてるんじゃねぇかよ
まずいな、どうやって切り抜けよう
とか考えてるうちにますます相手はヒートアップしてきている
80 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:16:17.36 ID:m.qm/NYo
「ウゼェ…!ウゼェ…!どいつもこいつも…!!
 殺してやる!!死んじまえ!!」
「なッ…」

相手の腕が振り上げられた
やべぇ、こいつ本気だ
思わず目をつぶる
間髪入れずドガッ!!と音がする
殴られた!…と思ったが痛みが全く無い
ゆっくりと目を開けてみる

「何やってんだお前?」
「高橋…」

俺を掴んだいた男子生徒が後ろに倒れそうになる
ってここ階段だぞ!?

「おっと」

高橋がそいつを支える
どうやら高橋が気絶させたらしい

「喧嘩売ったのか?売られたのか?」
「…売られた」
「ならやっちまえばよかったのに」
「なんつーか…性分」
「…チ、相変わらず甘い甘い」

高橋は支えていた男子生徒を階段の踊り場に寝かせた
81 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:17:14.83 ID:m.qm/NYo
「…お前、生徒会の1人倒したみたいだな」
「え?何で知ってる…の?」
「俺は何度も言った、生徒会を倒すなどというのはやめておけってな
 だがもうそれは言わない、言ってもどうせ聞き入れないだろ?」
「…ああ」
「ただ…背負う覚悟だけはしておけよ
 手負いの獣は、なりふり構わず襲ってくるぞ」
「…あ、ああ…」
「…それじゃあな」

高橋はそれだけ言って去っていこうとした

「待って」
「ん?」

俺は思わず高橋を呼び止めていた
聞きたいことは山ほどある、だけど言いたいことがまとまらない
そんな状況で俺の口から出た言葉は

「結局、お前は…敵なのか?味方なのか?」
「さぁな」

問いに答えることなく
高橋は落ちていたパンを拾い上げ俺に投げてきた
それをキャッチするちポフッと音がした
高橋は言ってしまった
背負う覚悟か…そんなもの…もうとっくに…
食欲は失せていた
その場でパンに食らいつき早々に教室へと戻ることにした
82 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:19:54.19 ID:m.qm/NYo
10/26(木) 放課後

授業が終わり、とりあえずゆき兄の様子を見に行くことにした
保健室い向かっているとまた誰かが喧嘩をしているのが目に入った
今日はなんだかやけに喧嘩が多いな
そんなことを思いながら保健室に入る

「またかよ!!…ってたまゆらか」

ヤチャマルは物凄くダルそうな顔をしていた
いつものことなのだが今日はその数倍ダルそうだった

「どうしたの?」
「いや…ちょっとな…」
「今日はやたらと怪我人が来るんだよ」
「ゆき兄」

保健室の奥からゆき兄が顔を出した
手には板チョコを持っていた

「そういえば今日は喧嘩が多いなーとは思ってた
 俺も絡まれたりしたわ」
「かなりの怪我をする殴り合いの喧嘩とか滅多にあるもんじゃないんだけどな
 おかげで疲れた…」
「まぁそういう日もあんだろ
 普段サボってるヤチャマルには丁度いいんじゃないか?」
「お前が言うか…?
 別に叩き出してやってもいいだぞ?」
「…いや、すいません
 さて、んじゃあ寮に戻るか」
「あ、俺も戻るよ」

ゆき兄と一緒に寮に戻ることにした
帰り際に気になったことを聞いて見た
83 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:21:04.05 ID:m.qm/NYo
「舞姫はどうなったの?」
「ん、ああ、寝てたと思ったらいきなり身体から黒い煙が噴出したからな
 こりゃあたまゆらが勝ったかと思って放っておいて帰ってきた」
「結局あいつはどこで寝てたの?」
「校舎の奥にある普段は鍵かかってる倉庫だよ
 びっくりしたぜ、中入ったら魔法陣と蝋燭で完璧な呪術仕様だ」
「でもよくそこにいるってわかったね」
「あちこち駈けずり回ったんだぞ…
 そしたらほろにがが前に忍び込んだところで怪しい所があったって教えてくれてな」
「それが倉庫だったと」
「ああ、魔法陣と蝋燭の後を見てここは怪しいと思ってたらしい」
「…ということは間接的にはほろにがにも助けられたのか…俺は」
「ま、そういうこっちゃな
感謝してんならカップ麺でも差し入れとけ」

ほろにがはおちゃらけてるがここぞと言う時はとにかく頼もしい
あいつ真面目に戦ったら相当強いんじゃねぇかなぁ
なんて考えてると寮についた

「じゃあな、たまゆら」
「ああ、それじゃな」

部屋に戻る、さてこれからどうしようかな
とりあえず夜になったらカップ麺でもほろにがに持っていってやるかなぁ
84 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:23:38.75 ID:m.qm/NYo
10/26(木) 夜

「とっとっと…こぼれるこぼれる…」

カップ麺にお湯を入れてゴミ捨て場に向かう
しかしすっかりゴミ捨て場に居ついたなぁ、あいつ
ゴミ捨て場についてほろにがを呼ぶ

「おーい、ほろにがー」

…返事は無かった
普段ならゴミの山からズボッと出てくるはずなのだが…

「おっかしいな、ほろにがー、いないのかー」

相変わらず返事はない
おいおい、麺が伸びるじゃねぇか…
まぁあいつなら麺が伸びても普通に食べそうだが
カップ麺を地面においてしばらく待ってみることにした
…さすがにもう寒いな
ずっと野外で寝てるほろにがは風邪とか引かないんだろうか
でも絶対ひかなそうだな、なんとなく

「…よぉ、器」
「は?…ってうおお!?」

思わず後ろに飛びのいた
目の前にいたのは放送室で俺を襲った…天下
85 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:24:42.78 ID:m.qm/NYo
「テメェ…!?」
「そう殺気立つな
 今日は別にお前を試そうともしていない」
「なんだと…?」
「朱雀、白虎、そして青龍まで覚醒させたお前には器としての力は充分にあるようだからな」
「…お前は一体、黄龍の意思って何なんだ」
「キヒャヒャヒャ…
 お前は何も知らないでいい」
「ふざけるなよ…」
「戦いを続ければ、いずれ分かるさ
 矮小な人の思惑などは運命は等しく全てを飲み込む」
「どうやら教えてくれる気はなさそうだな」
「安心しろ、俺は味方だ
 表だって動いてはやれないがな」
「信じられないな」
「お前が何を信じようとも運命は流れ続け
 やがてひとつの真実へと辿り着く」
「…」
「それじゃあな、器…」
「待てッ!」

天下は高く飛び上がり
空中を走るようにどこかへ行ってしまった

「…天下、あいつは…」

考えてもどうせわからないだろう
やがて真実に辿り着く…か
なんだか疲れた
ほろにがも戻ってこないし寮に帰ろう
寮に戻ると俺はそのままベッドに倒れこむように眠りに落ちた
わからないことが多すぎて
なんだか、イラつく
86 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:27:06.48 ID:m.qm/NYo
10/27(金) 朝

目が覚めた、あまり寝た気分はしない
けっこう長い間寝てたはずなのに身体がずっしりと思い
悩んでたり心配事があると深く眠れないんだな…
とはいえ起きてしまったものはしょうがない
うだうだしてるより学校へ行ってしまおう

教室につくと何だか変な空気だった
なんというか会話が無く静かなのだ
普段ならわいわいがやがやとうるさいはずなのに…
まぁこういう日もあるんだろうと自分で納得して席につく
チラと隣の席の奴を見ると頭を抱えてブツブツ呟いていていた
…空気が恐ろしく悪い
教室は沈黙を保っている、やっぱり何かあったんだろうか…
意を決して誰かに聞いてみるか?と思ったその矢先だった

「あああああああぁぁぁぁあ!!!!」

絶叫と共にガシャーンと音がした
机が吹っ飛んでいた、いや蹴り飛ばされていたというほうが正しい
何が起こったかわからない
突然窓際の席のやつが机を蹴り飛ばしていた
それを見た数人の男子が立ち上がってそいつに近づいていった
なだめにいったんだろうと思っていたがその予想は次の瞬間に砕け散った

「うあぁぁぁぁぁああああ!!」

いきなり、1人が殴りかかった
呆気に取られているとまた1人、1人と殴りあいに参加する
何が起こってるっていうんだよ!?

「うぜぇ!どいつもこいつもうぜぇ!!」
「しね、しね!しんじまえ!!!」
「あぁぁぁあああああああ!!!」

もはや乱闘状態だった
止めようにもどうしていいかわからない
ふと周りを見ると何人かは机にうずくまって頭を抱えている
立ち上がって乱闘に参加する奴もいた
おかしい、いくらなんでもおかしい
まさかまた執行部が何か…!?

「くっそ!!」

俺は教室から飛び出した
とりあえず、保健室だ
それからゆき兄と合流して…
87 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:28:46.79 ID:m.qm/NYo
「ぶっころしてやる!!!」
「こっちのセリフだ!!」
「全員消えちまえ!!俺以外みんな消えろよぉぉ!!」

ガシャーン!とガラスの割れる音や重いものが吹っ飛ぶ音
そこらじゅうの教室などから怒号が聞こえる
学校全体がこんな感じなのか?
すると前からえび助がフラフラと歩いてきた

「えび助!?」
「…たまゆら…くん…」
「どうした!?大丈夫か!?」
「…止められない…」
「え?」
「早く…僕から離れて…
 もう、耐えられない…」
「何言ってんだえび助!?」
「…きっと…生徒会の…
 動き出して…でも…まさかここまでするなんて…
 早く…逃げて…」
「えび助!?おい!しっかりしろよ!」
「…」
「えび助!?」
「…死んじまえ」
「え?」
「俺に触るなぁぁぁぁ!!!」

いきなり、えび助は俺の顔をブン殴った
咄嗟のことで反応できずに俺は思いっきり後ろに吹っ飛んだ

「えび助…!?」
「いつもいつも…上から目線で何様のつもりだ…
 ぶっ殺してやる…!!」

えび助の目には怪しい光が揺れていた
どうやら本気で俺に攻撃をしかけようとしてるようだ
口の中が切れたらしく血の味がする
駄目だ、これが生徒会のせいならえび助と戦うわけにはいかない
今はとにかく逃げるしかない

「えび助、必ず助けてやるからな!!」

俺は必死に逃げ出した
後ろではえび助は叫び声をあげている
そこらじゅうでいろんな奴らが殴り合いの喧嘩をしているようだ
…白やん、生徒を守るとか言って
結局お前の正義ってのはこの程度なのか…!!!
保健室に辿りつきドアを開ける
88 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:30:18.35 ID:m.qm/NYo
「ヤチャマル!」
「たまゆらか、お前は平気なのか?」
「何が?」
「…どうやらお前はまだ平気なようだな」
「…何か知ってるのか?」
「こいつが全部話してくれたよ」
「わー!たまゆら君無事だったんだ!!」
「うお、リカちゃんもいたのか…
 ゆき兄、こいつって?」
「たまゆらにも説明頼むわ」
「はい」

部屋の奥からゆき兄とリカに続いて出てきたのは…

「舞姫…」
「現実で、会えたね」
「…いや、それよりも教えてくれ
 一体何が起こってるんだ?」
「恐らくスイカの仕業」
「スイカ…生徒会の会計だったっけ」
「ええ、彼は創造主の力を与えられている
 彼は新種の生命体を作り出すことが可能なの」
「…それがこの状況とどういう関係が?」
「アルゴルを使ったんだと思う」
「アルゴル?」
「アラビア語で悪魔を意味する、それがアルゴル
 スイカが作り上げた寄生生命体で最も危険な物…」
「寄生…生命体…?」
「アルゴルに感染した人間は異常なほどに攻撃性が増大し
 同時に敵意の塊のような状態になって他者を傷つけることに戸惑いを感じなくなる」
「つまり乱闘やら何やらを起こしてる奴らは全員そのアルゴルに感染していると?」
「間違い無いと思う
 アルゴルの本当の恐ろしさはその爆発的な感染力
 感染してからだいたい6時間で発症するからまだ症状が現れて無い人のことも考えると
 もう学園全生徒の3分の2ぐらいは感染してると考えたほうがいいわ」
「その、アルゴル、弱点はないの?
 ほら、ワクチンとか」
「…私は知らないかな…それを知ってるのはスイカだけと思う
 アルゴル自体、あまりにも危険すぎるということで会長はその使用を禁じていたし
 あ、でもアルゴルは寄生主が学園の外に出た瞬間死滅するらしいから
 この惨劇が学園から日本中に広がることはないよ」
「それがせめてもの救いだな」
89 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:32:20.56 ID:m.qm/NYo
話を黙って聞いていたゆき兄が会話に混ざってきた

「要するに俺らが今やらなくちゃならないのは
 スイカを捕まえてアルゴルをどうにかしないといけねぇってことだ
 だけど、問題があるとすれば…」
「すれば…?」
「発症してないだけで俺らもすでに感染してる可能性があるってことだ」

その一言で全員が押し黙った
…しばらくの沈黙の後に続けてゆき兄が言った

「…だが何もしないわけにもいかないからな
 感染してようが感染してなかろうがやることは一つ
 迅速にスイカを捕まえるだけだ」
「…そうだね」
「一応、アルゴルに感染している奴らを調べて見る
 上手くいけば治療法が見つかるかもしれない」

ヤチャマルがなんだか医者っぽい顔になっている
普段のだらけっぷりとはえらい違いだ

「おー、ヤチャマルさんマジかっけーっす」
「あん?」

とぼけた声が聞こえたと思ったら
机の下からほろにがが這いずりでてきた

「…いつからいたんだ?」
「ずっと…なんだか出て行ける雰囲気じゃなくて」
「…危機回避能力だけは相変わらず最強だな
 さて、それじゃたまゆら、行くか」
「俺は一度黄龍鉄甲を取りに帰らなくちゃ」
「わかった、ええと、それと姫さんよ」
「うん?」
「スイカの居場所で心当たりはないか?」
「…生徒会室にいる以外はいつもどこにいるかわからないから…」
「そうか…まぁしょうがねぇ
 行くぞ、たまゆら」
「うん」
「…スイカは危険すぎるの
 だから…気をつけて…」
「…わかった」

俺とゆき兄は同時に保健室から飛び出した
俺は一旦寮へと戻って黄龍鉄甲を取り、再び戦場と化している学校へと戻る
90 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:37:01.05 ID:m.qm/NYo
10/27(金) 午前

もはや完全に学校はスラムのようになっていた
そこらじゅうの窓ガラスは割られて何人もの生徒が倒れている
絶対に許さねぇ…!!
しかしよく考えたら俺はスイカの容姿も知らない
舞姫からもっと詳しく聞いておけばよかった

「うぅぅぅ…!」
「!?」

目の前に3人の男子生徒が立ちふさがってこっちを睨んでいた
まずい、捕捉された
そう思った瞬間に3人は一斉に飛び掛ってきた
3方向から…防御できても2方向が限界だ…
その瞬間、俺の横を風が吹き抜けた
ドガガガガガッ!と音がして3人がその場に倒れた

「峰打ちだ、安心しろ」
「お前…」
「…初めまして、と言えばいいか
 転校生たまゆら、だな?」

木刀を持って剣道着を着た男子生徒が俺を助けてくれた
あの一瞬で3人を一気に気絶させたのか…?

「俺は元執行部、剣三郎
 今は、ゆき兄の友」
「…あっ」

そういえば俺が前にぶっ倒れてる時に
ゆき兄が1人執行部を倒したって言ってたな
それがこいつか!

「行け」
「え?」
「ゆき兄からお前を助けてやってくれと言われてな
 俺も生徒会のこの非道には少々頭に来ている」
「おまえ…」
「さぁ早く行け、後ろは俺が守ってやる
 お前は前だけを見て進め」
「…ありがとう」
「…もう俺は偽りの平和などに縛られはしない
 己の信ずる友のために、この刀を振るう!!」

俺は走り出した
あても無い、だけどこうなったら…
僅かな可能性に賭けるとしたらあそこしかない
辿りついたのは昨日も来た生徒会室
俺は扉を蹴り破って中に入った
だが室内には誰もいない
91 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:40:10.71 ID:m.qm/NYo
「白やん!出て来い!!!」

叫ぶように白やんを呼ぶが返事が無い

「クソッ!!!」

苛立ち、机を蹴り飛ばした
書類の束がバサバサと宙を舞う
どうする、どうすればいい…!
後ろから足音が聞こえた
振り向くと10人以上の目の空ろな生徒達が入り口を塞いでいた

「あぁぁぁぁぁ!!!!」
「殺してやらぁぁぁぁあ!!」

まずい!人数が多すぎる!!!
後ろの窓、いや正確には窓の外から声が聞こえた

「伏せろ、転校生」
「!?」

考えるよりも早く身体が咄嗟に動いた
俺が伏せると同時に窓ガラスが割れる音がした
そして黒い羽が室内に舞い散った
この羽は…!?
羽が命中した生徒たちはバタバタ倒れていく

「ふん、能力も持たない雑魚がいくら群れたところでこの程度さ」

割れた窓枠に足をかけこちらを見ているのは
間違いない、黒やんだった
92 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/26(土) 22:41:05.49 ID:lPgv3F.o
ここでまさかの剣wwwwwwwwwwwwwwww
93 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:42:00.18 ID:m.qm/NYo
「…お前、俺を助けてくれたのか?」
「悪い冗談だな、お前のせいで俺の能力の大半は失われたんだぞ?
 見てみろ、羽根の威力が著しく落ちて凡人1人殺せない
 全くムカつく…」
「…」
「だがここでお前がやられるのはもっとムカつく」
「え?」
「行けよ、とっととこの騒動を終わらせろ
 うるさくって寝れやしねぇんだよ」
「…ハハハ」
「何がおかしいんだよ」
「典型的なお前を倒すのはこの俺だ!って奴だな
 ツンデレか?」
「なっ…!?」

黒やんが赤面した

「そんなんじゃねぇ!!
 とにかくさっさといけ!!!」
「ああ、ありがとな」

とりあえず生徒会室から出る
しかしこれでいよいよアテが無くなったぞ
しらみ潰しに探すしかないのか?
すると携帯が鳴った、電話…?ゆき兄から?
俺は走りながら電話に出た

「たまゆらか
 一旦保健室に戻れ」
「どうしたの?」
「ラチがあかねぇからな
 一旦作戦会議だ、ヤチャマルがアルゴルについて何か掴んだかもしれねぇからな」
「わかった」

俺は保健室へと引き返すした
94 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:44:20.86 ID:m.qm/NYo
10/27(金) 午後

「状況はかなりマズい
 乱闘が乱闘を呼び負傷者多数だ
 だが完全に発症している奴らは手当てすることすら出来ない」
「1日この状態で放っておいてみろよ
 完全に学園はぶっ壊れるぜ」
「なんてもん作り出してんだよスイカって奴は…」
「ヤチャマル、アルゴルの治療法はわかったのか?」

ヤチャマルが首を振った

「…わかったことといえばアルゴルは脳に影響を及ぼすってことぐらいだ
 外科手術などで物理的に取り除くことは不可能」
「八方塞りか…」
「しかしこのまま放っといたら死人が出るぜ?
 つーか俺が思うに感染した奴らを全員学園の敷地外に誘い出せばいいんじゃねぇか?
 学園の敷地外に出たらアルゴルは死滅するんだろ?」
「いや、そりゃ無理だ」

ほろにがの意見をゆき兄がすっぱり否定した

「試してみた、だがどうも学園の敷地外には出ようとしない
 俺が敷地外に出たらその瞬間、興味が無くなったかのように攻撃対象を他の人間に変える」
「行動すらも操るってことかよ…
 なんつー生命体だよ…」
「本来寄生虫などの生命体は宿主を死に至らしめることは稀なんだがな
 そういう意味でもアルゴルは最強最悪の寄生生命体だ」
「はぁ…どーすっか…」

皆暗い顔でどうするか考えていた
スイカを見つけなければ全く話にならないのだ
だけど完全に雲隠れしてやがる
その時保健室のドアがガラリと開いた

「ううっ…」

入ってきたのは傷だらけの男子生徒だった
その場にいた全員が顔を見合わせた

「感染してるか!?」
「わからん…だが、少なくとも発症はしていないようだ」
「おい、お前大丈夫か?」
「書庫室…隠れてたら…突然…うっ…」

それだけ言うと男子生徒は気を失った
書庫室…そんな場所あったっけ…
95 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:46:38.95 ID:m.qm/NYo
「書庫室…そうか…
 あそこのことを完全に忘れてた」

ゆき兄が呟いた
俺はゆき兄に聞いて見た

「書庫室なんてあったっけ?」
「図書室の奥にあるんだよ
一般生徒は普段絶対に行くことはないからな知らないのも無理はない」
「じゃあもしかしたらそこにスイカが?」
「可能性はある」
「他にアテも無いし、行ってみよう」
「そうだな、行ってみるか」

倒れた男子生徒をヤチャマル達に任して
俺とゆき兄は保健室を飛び出した
すでに校舎内には負傷して気を失った生徒がそこらじゅうに倒れていた
おかげで襲われることもなく図書室へと辿り着いた

「…酷い有様だったね」
「ああ…」
「ゆき兄、俺は絶対にスイカを許さない」
「ならその気持ちを黄龍鉄甲に乗せてぶつけてやれ」
「ああ!」

本棚をくぐり抜けていくと書庫室と書かれたドアの前に辿り着いた
確かにこんな場所今まで知らなかった…

「それじゃあけるぞ」

ゆき兄がドアに手をかけてゆっくりと開けようとする
カギはかかってないようでカラカラと音を立ててドアは開いた
書庫室の中は埃っぽくて随分長い間人が立ち入った形跡はなかった
だが部屋の中心で、一人の男が本を読んでいた
96 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:51:42.13 ID:m.qm/NYo
「…初めまして、転校生」

男は本から目を離さずに呟いた

「お前がスイカか」
「ああ」

スイカは本をパタンと閉じ
こちらに向き直る

「…アルゴルを止める方法を聞きだしにきたんだろう?」
「そのとおりだ」
「僕もね、アルゴルを使うのは本意ではなくてね
 出来るなら今すぐに止めたいんだ」
「ならさっさと!」
「だがそれが出来ないのは君という存在があるからだ
 …君がここで素直に僕にやられてくれればアルゴルはすぐにでも止めると約束しよう」

俺は首を横に振った

「悪いがそれは出来ない
 それに俺達はお願いしてるんじゃない、止めろと言ってるんだ」

黄龍鉄甲を構える
同時にゆき兄も剣を構えた

「やはり素直に聞き入れてはくれないか…」
「止めないというなら…力づくでも」
「…落ち着け、そろそろ時間だ」
「どういう意味だ?」
「おかしくはないか?自分の居場所を嗅ぎ当てられたのに顔色ひとつ変えない僕が」
「…」
「保健室に行き、ここの場所を教えた生徒がいるだろう?
 あいつは僕が支配している、正確にはあいつの身体を支配している奴を僕が支配しているんだが…」
「何だと…!?」
「…僕が作り出した子はアルゴルだけじゃないのさ
 さて、時間だ」
「さっきからその時間てッ…!?!?」

頭に物凄い痛みが走った
同時に吐き気がこみ上げる
耐え切れずに、膝をつき頭を抱えた
97 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:53:45.52 ID:m.qm/NYo
「たまゆらッ!?」

汗がにじみ出る
頭が割れると錯覚するほどの頭痛が襲う
痛い、痛い、痛い、痛い…!!

「どちらにせよアルゴルを使用できるのは明日までだ
 その前に君を仕留めなきゃいけないんでね」
「お前…たまゆらに何をした!?」
「僕は何もしてない」

ゆき兄とスイカの会話を頭を抑えて聞き続ける

「…殴られたろう?アルゴルに感染した奴
 その時にお前は感染している
 酷い頭痛のあとにすぐに発症する」
「…そん…な…」
「…だが君だけは確実に殺さないといけないのでね」

スイカが動けない俺へと突っ込んできた
避けれない、動けない、ゆき兄も間に合わない
スイカの身体が、ドンッ!とぶつかる衝撃
同時に、太ももに何かが刺さる痛み

「テメェ!!」

ゆき兄がスイカを掴み壁に叩きつける

「たまゆらに何をした…!」
「…今、彼に打ち込んだのは僕が作り出した最強の死神…
 感染能力は皆無な故に直接打ち込む必要があった
 そのためにアルゴルの発症時間を予測してここにおびきよせたんだ」
「死神…!?」
「カルディア、それが死神の名」
「カルディア…?」
「…ククッ、死ぬぞ、そいつ
 カルディアは打ち込まれて24時間以内に必ず宿主を死に至らしめる」
「なんだと…」
「カルディアは人の体内に入ると一直線に心臓を目指す
 そして…死に至らしめる
 そいつの命は残り24時間
 ここでお前が僕を殺そうともそれは変えられない」
「止める方法を言え!!」
「無理だね、カルディアは1度感染すると僕ですら止めることは出来ない
 …ああ、安心しろよ、カルディアはアルゴルですら食い殺してしまうからね」

カル…ディア…
何だ…視界が霞む…?
98 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:55:07.10 ID:m.qm/NYo
「…クックックック
 足掻いてみろよ、万が一にもカルディアを退けることができたなら…
 その時は負けを認めてやるよ」

急速にこみ上げる吐き気を抑えきれなくなり
俺はその場に嘔吐する

「ほら、始まったぞ
 カルディアの進行が…」
「クソォッ!!」

ゆき兄がスイカから手を離してこちらに駆け寄ってくる
心臓の鼓動が、早い、今にも張り裂けそうで…
全身が、熱い…!

「たまゆら、大丈夫か、おい!」
「カルディアは身体のあらゆる器官にダメージを与え…
 極限に近い苦痛をもたらす…」
「たまゆら、歩けるか!?」
「足が…動かない…動けな…い…」

意識が朦朧とする
気を抜くと吹っ飛びそうになる意識を必死に繋ぎとめる
身体が揺さぶられるのがわかる
ゆき兄が俺をおぶったらしい

「足掻いてみせろよ…」
「テメェは…必ずぶっ殺してやる」
「クックック…」

揺れが伝わる
ゆき兄が俺を背負って必死に走っているんだろう
俺の命が、後24時間しかないとか…冗談じゃないが…
段々と身体中に激痛が走り出した
頭のてっぺんから足の先まで全身にくまなく巡る痛みが
24時間の命というのを否応なく俺に感じさせる

「ヤチャマル…たまゆらが!…な!?」
「グ…」
「おい!皆どうした!?」
「さっきの…奴だ…突然大暴れして…
 同時に発症した奴らがなだれこんできた…!」
「…もしかして…全員、殴られたりとか…
 接触してしまったのか…」
「…」
「…最悪だ…」

どうやら自体は考えうる限り最悪の方向に進んでいるらしい
それが朦朧と意識でわかった最後の記憶だった
そこから俺の意識は闇へと落ちていった
全身の痛みが、止まらない…
99 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:56:17.03 ID:m.qm/NYo
10/27(金) 同時刻

「…一体何をしたの、あなた達は」
「…堕人が出現するのを食い止める為に俺達は強い陰の気を持つ者を作り上げ
 それを楔として堕人の出現を止めていた
 しかしたまゆらのせいで楔は最早堕人の出現を止めることは出来なくなった
 だから苦肉の策ではあるが堕人を一時的に止めるために一般生徒全員を使うことにした
 スイカの能力で今学園内には憎悪、恐怖、殺意…極限に近い陰の気が渦巻いている
 わかるな、それ自体は堕人の出現止める蓋と化しているんだ」
「やり方はどうあれ堕人から一般生徒を守ろうとしているのは認めていた
 だけど堕人の出現を止めるために一般生徒全てを危険に晒すなんて本末転倒じゃない!」
「一時的なものだ…期限は3日と決めた
 もう2本の楔では堕人は抑え切れなかった!」
「それでも…これだけは言える
 あなたは間違ってる!」
「…ッ!!」
「…」
「…すぐにわかるさ、たまゆらが死に、全てが元通りになれば…」
「わからない…わからないよ…」
「君にはまだしばらくここにいてもらう…」
「ゆき兄…たまゆら君…」
100 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/09/26(土) 22:58:39.44 ID:m.qm/NYo
10/27(金) 同時刻

「やってくれるなぁ…!!!
 あの男ぉ…!!!」
「ノスフェラトゥ様…いかがいたしましょう…」
「どうしようもない…ここまで陰の気で溢れ返ってしまえば
 我々も動くことが出来ないだろうよぉ…」
「成り行きを見守るしかないと…?」
「クソッ…クソッ…!まさかこんな手段に出やがるとは…!
 八つ裂きにしておくべきだったか…!」
「ですが我々では…奴は…」
「ああ、わかってるさ風哭…!
 …とにかく今はあいつが何とかするのをなんとかするのを待つしかない」
「奴がやられれば我々はまた…」
「…勝て…たまゆらぁ…
 我々の悲願のためにも…まだお前に死なれては困るんだよ…!!」



14限目 - アウトブレイク -
101 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/26(土) 23:12:15.04 ID:lPgv3F.o
ゆき兄おつ!


え・・・?
俺も感染したん・・・?

ちょっと季節はずれのスイカ割りしに行ってくる^^
102 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/09/26(土) 23:48:06.46 ID:FEFAM9Mo
ゆきに乙!

なんか皆出てきてテンション上がってきたwwwwwwwwww
103 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/27(日) 00:38:21.54 ID:5a7Xhww0
ゆきにー乙

この時期にスイカあるかわかないけど見つけたら叩き割るか
104 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/30(水) 02:47:23.57 ID:0zSEooDO
書き込み薄いよ!なにやってんの!
105 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/30(水) 06:07:46.92 ID:8NkZPsAO
朝だぜい
106 :そら :2009/09/30(水) 09:59:32.59 ID:lQ5SUMDO
おはようございます




一昨日からずっと遊びっぱなしなんですが
飲み過ぎ食べ過ぎキモチワルイ…('A`)
107 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/09/30(水) 20:04:40.76 ID:JWiYfADO
http://imepita.jp/20090930/720710



「なんだこれwwwwwwwwwwwwww」

「ちんこwwwwwwwwwwwwwwwwww」

「ちんことわざってなんだよwwwwwwwwwwwwwwww」

「目のうえのwwwwwwwwwwちんこwwwwwwwwwwwwww」

http://imepita.jp/20090930/720860

「形が嫌すぎるわwwwwwwwwwwwwwwwwww」
108 :ミギー :2009/09/30(水) 21:03:46.38 ID:Maap5kDO
深爪が痛そうだわよ…
109 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/30(水) 21:05:36.94 ID:lVKwK.DO
>>107
アウアウだろwwwwwwwwwwwwwwww
110 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/09/30(水) 21:11:28.28 ID:JWiYfADO
>>108
爪を噛む癖が直らなくて全部ガタガタになってる

さらに最近右足の親指が巻き爪だったということを知った

>>109
モザイクかけたらもっとアウアウ
111 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/09/30(水) 21:13:44.73 ID:JWiYfADO
これはなにで出来てるかわかるかなー?



http://imepita.jp/20090930/763280
112 :ミギー :2009/09/30(水) 21:35:59.21 ID:Maap5kDO
>>110
巻き爪痛いよねー
そして私は突き指中!

>>111
版画…?
113 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/09/30(水) 21:44:15.23 ID:lVKwK.DO
>>110
両足とも巻き爪だぜ…
ワイヤー矯正中に上段蹴りして爪割れてから諦めた/(^o^)\

>>111
版画と違うん…?
114 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/09/30(水) 21:48:29.62 ID:JWiYfADO
答えはお寿司についてる緑のギザギザだ

包丁でカットして作ったらしい
115 :ミギー :2009/09/30(水) 22:09:15.94 ID:Maap5kDO
>>114
すげー!!!!!
よくもそんなにバランがあったなwwww
116 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/09/30(水) 22:12:51.31 ID:JWiYfADO
あぁ…あれバランって言うのか
117 :トニートニー黒やん :2009/10/01(木) 00:07:00.71 ID:gMLiZoDO
http://imepita.jp/20091001/002250

http://imepita.jp/20091001/002390
118 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/01(木) 00:09:33.09 ID:VTHvF6so
>>117
チョッパーやん!
顔が見えません!!
119 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/01(木) 00:11:11.95 ID:gMLiZoDO
>>118
人様に見せられる顔じゃないです
120 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/01(木) 00:16:31.78 ID:VTHvF6so
>>119
その服装ならメガネうpすべき

tkチョッパーの帽子ってスーツ系でも意外と違和感ないんだなwwwwww

121 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/01(木) 00:21:41.37 ID:gMLiZoDO
>>120
眼鏡から離れろwwww
122 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/01(木) 00:26:00.47 ID:VTHvF6so
>>121
えっ?
123 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/01(木) 00:32:30.69 ID:gMLiZoDO
>>122
えっ
124 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/01(木) 00:53:52.37 ID:VTHvF6so
メガネに萌えずして何に萌えろと・・・



あ、スーツとネクタイがあるなwwww
125 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/01(木) 00:59:50.78 ID:8VVSwMUo
黒やんが復活と聞いておはようございます
126 :ミギー :2009/10/01(木) 06:43:31.76 ID:3plZZEDO
>>125
黒やんやん復活祭に乗り遅れたようだね!
127 :リリーホワイト :2009/10/01(木) 07:11:09.50 ID:gMLiZoDO
朝ですよー
128 :そら :2009/10/01(木) 12:06:24.43 ID:AIe3MsDO
善きかな善きかな
129 : 【吉】 :2009/10/01(木) 22:12:35.36 ID:/VxMpLIo
ズルズルやで〜
130 : 【大凶】 :2009/10/01(木) 22:14:13.54 ID:Dvgou.DO
そーいえば1日だったなwwww
131 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/01(木) 22:15:07.77 ID:Dvgou.DO
え……また…?
132 :リリーホワイト :2009/10/02(金) 07:17:01.08 ID:zp4PQgDO
朝ですよー
133 :ミギー :2009/10/02(金) 07:49:59.80 ID:UfmLsoDO
しげるをばかにできないくらい日焼けした!
134 :そら :2009/10/02(金) 08:21:38.13 ID:9lflwADO
まずは一人目
135 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/02(金) 08:37:37.33 ID:zp4PQgDO
蒼白くなった
136 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/02(金) 11:46:31.67 ID:VN7lIPIo
これで±0
137 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/02(金) 17:14:21.94 ID:gXfikEAO
そして世界はまわる
138 :ミギー :2009/10/02(金) 19:21:02.61 ID:UfmLsoDO
http://imepita.jp/20091002/695401

http://imepita.jp/20091002/695110
139 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/02(金) 19:26:46.03 ID:zp4PQgDO
ひどい
140 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/02(金) 19:56:32.13 ID:JnjkqADO
保存し……なくていいか
141 :ピュアハート [('A`)]:2009/10/03(土) 00:37:01.06 ID:MFz972SO
グロ注意
142 :リリーホワイト :2009/10/03(土) 08:48:46.71 ID:IuxCNkDO
朝ですよー
143 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/03(土) 16:37:45.21 ID:eeLzMYSO
さっさと小説書けやゴルァ
144 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 21:58:26.19 ID:jrj8L3ko
今週分GO!
145 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:00:02.40 ID:jrj8L3ko
邪眼学園黄龍譚
14.5限目 - 絶望の中の希望 -


某日、時刻不明

俺の剣が彼女を貫いた
刃に伝わる血が鞘に辿り着き、冷たい床に落ちる
ポタポタと、足元に血溜まりが出来ていく

「あ…あああああぁぁ…」

声は、声にならない
絶望から捻り出したかのような声だけが絶えず俺の口から発せられる
剣が、ズルリと、彼女の身体から抜ける
支えを失った彼女は血だまりの中へと倒れる

『世に安寧を』

ふざけるな!!!
認めない!!絶対に認めてたまるか!!
俺の身体は俺のものだ!!

それでも身体は俺の意思に反する
血に染まった剣を握りなおし再び俺は剣を振り上げる

「あぁああああああああああああああああああああああああ!!!」

絶叫が、響き渡った
146 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:05:27.91 ID:jrj8L3ko
10/27(金) 午後

「クソッ!どうすりゃいいんだよ!!」

状況を整理する意味も兼ねて今の状況を皆に説明した
そして最悪だということを再確認してしまい
俺は声を荒げて机をぶっ叩いた
たまゆらはカルディアとかいうので動ける状況ではないし
ここにいる皆もアルゴルに感染して動けるのは俺だけ
例えスイカを倒しても最悪アルゴルもカルディアも止めることはできない
…アルゴルが止まったとしてもカルディアはスイカにも止められないと言っていた
となるとたまゆらの命は明日の昼過ぎまで…?
認めない、そんなの…

「アルゴルの発症まで6時間…
 たまゆらの命は24時間…」
「…ぐ…」
「ヤチャマル…?」
「たまゆらを…治す」
「…治せるのか?」
「薬や気功で外部からの治療は不可能…
 なら切って直接やるしかない…!」
「無茶言うなよ!?
 こんな場所で手術する気か!?
 そんなんするぐらいだったらどっか適当な病院に運んで…」
「スイカの作り出した未知の寄生生命体にそのへんの医者が対応できると思うか!?
 時間が無いんだ!ここでやるしかない!」
「しかし…」
「器具はある、携帯無菌室も確かあったはず…
 やってやれないことはない…
 重要なのはカルディアが一体どんな奴なのかということと
 アルゴルの発症…」
「…グズグズしてる時間はない…か」
「皆手伝ってくれ…10分、いや5分で用意を済ませる」
「…わかったよ」

全員ぼろぼろの身体に鞭打ってヤチャマルの指示通りに動く
あっというまに保健室の一角に膨らました風船のような部屋が設置された
ヤチャマルが器具の消毒とかをしている
147 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:09:01.42 ID:jrj8L3ko
たまゆらの顔色はとにかく悪い、青ざめるを通り越して土気色だ
その時保健室のドアが開く音

「ゆき兄はいるか!?ゆき兄は!?」
「剣三郎…?
 …なんでパンツ一枚なんだよ」
「乱戦で…道着が敗れたんだ…」
「プッ」

リカが我慢できずに吹いたらしい
それに釣られて我慢していたであろうほろにがが爆笑を始めた

「がーはっはっはっは!!ひーひひひ!」
「プ、ププッ…クックック…」
「わ、笑うな!!!」
「あー、わりぃ、わりぃ
 それでどうした?」
「うむ、俺と黒やんで暴れまわっていた一般生徒をほとんど気絶させた
 一時的ではあるがしばらくは安全だと思う」

腕を組んでそう話す剣三郎
しかしパンツ一枚で威厳も何もあったもんじゃない

「…待てよ
 気絶した奴らを外に投げ出せばアルゴルを死滅させれるんじゃないか?
 ていうか皆も一旦外に出ればアルゴルの発症は免れるんじゃ?」
「ああ、そりゃ無理だ」
「え?」

窓の外に黒やんが立っていた

「お前…どういう意味だよ」
「なんといえばいいか
 学園全体が見えない壁のようなもので覆われてるぜ?
 壁っつーかドームだな、上空からの脱出も不可能だ」
「スイカの野郎…用意周到にも程がありやがるな
 カルディアをたまゆらに打ち込んだあとに先んじて仕掛けたってことか」
「どうやら本気でたまゆらを確実に殺そうとしてるみたいだな」

会話にほろにがが割って入ってきた

「んじゃあ今からどうするかってのが問題だ」
「…最優先はたまゆらを何とかすることだが俺達には無理だ
 外にも出れないとなるとスイカ自体をどうにかするしかない」
「…やっぱそうなるか
 めんどうだけど発症して暴れまわるのもゴメンだからな
 今回ばかしは全力で手伝ってやるよ」
「ああ」
「ゆき兄、ほろにが」
「あん?」
148 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:11:10.75 ID:jrj8L3ko
ヤチャマルが指で水道を指している
どうやら手を洗えと言ってるようだ

「それとコレな」

ぽんっと投げ渡されたのは服だった
…どうみても手術着とかいう奴だが

「手伝え」
「はぁ!?」
「なんで俺らが!?」
「血に慣れてるだろ」
「いやいや…」
「とにかく1人じゃ無理なんだ
 経験が無いにしたって人手がいる」
「リカとかのほうがまだ役に立つ気がするんだが」
「…普通の女子高生が胸かっさばいて手術されてる同級生を見て平静を保てるか?」
「うーん…」
「総合的に見ればお前とほろにがが適任なんだ」
「…わかったよ」

俺は剣三郎と黒やんに向き直った

「2人は、スイカを探してくれないか?」
「承知した」

剣三郎はすぐに了承したが
黒やんはそっぽを向いている

「…俺はお前らの味方になったつもりはない
 勝手にやらしてもらう」
「そうかよ…好きにしろ」

黒やんは保健室から出て行ってしまった
…まぁ無理やり手伝わせても面倒ごとが増えるだけだろう
149 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:12:22.51 ID:jrj8L3ko
と、なると残りは姫とリカをどうするかか…
チラ見すると姫は割と冷静だがリカは…まぁ仕方の無いことか
俺は2人に近寄った

「これから俺達はたまゆらを助ける
 …2人は、じっとしておくんだ」
「でも…でも…」

リカが泣きそうな顔で突っぱねようとする
不安でどうしようもないが何かしたくてしょうがないんだろう
健気ではあるが…

「…俺達がここから離れられなくなる以上はお前らが目に付かない場所にいるのはまずいんだ」
「…」
「見張り、ぐらいだな
 保健室に誰かが接近してきたら知らせてくれ」
「う、うん…」
「それと」
「?」
「アルゴルの発症の兆しが見えたらすぐに言え
 いいな?」
「…わかった」
「頼んだぜ、姫」
「うん」
「じゃあ、ちょいとたまゆらを助けてくる」

俺は手術着に着替えて手を念入りに洗った
ほろにがの顔から普段のおちゃらけが消えていた

「準備できたぜ」
「時間が無い、急ごう」
「了解、たまゆら、死ぬなよ」
150 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:14:17.11 ID:jrj8L3ko
10/27(金) 夕方

俺とヤチャマルとほろにがは携帯無菌室の中に入る
なんか巨大な風船の中に入った気分だな
真ん中の台にたまゆらを乗せ麻酔を打つとほどなくしてたまゆらは眠った
それを見届けたあとヤチャマルが説明しだした

「2人に多くは求めてない
 1人は俺に器具を渡してくれ
 もう1人は術野を広げるなどだ」
「じゃあ俺が器具を渡してやるよ」

ほろにがが器具渡し役に立候補した
となると俺は直接たまゆらの身体を触らなくちゃいけないってことか…

「…オフポンプでやるしかないか」
「オフポンプ?」
「心臓手術は基本的に心臓を止め患者に人工心肺を繋いで行う
 だが心臓が動いたまま施術するのがオフポンプだ」
「大丈夫なのか…?」
「…難易度は跳ね上がるさ…
 だけどさすがに人工心肺なんてものは用意できていないからな
 選択肢はこれしかない」
「…」
「とにかく話してる時間も勿体無い
 始めるぞ!!!消毒しろ!」
「は、はいっ!」

すごい剣幕に押されてほろにがが機敏に動き始めた
ヤチャマルが手に持ったメスを見つめている

「…今更…救われようとは思わない…
 だが…この命だけは…」
「…ヤチャマル?」
「…なんでもない、それじゃ…」

ヤチャマルのメスが、たまゆらの胸をスッと滑るように入った
次の瞬間、一瞬の迷いもなくスパッ!と見事にたまゆらの胸が切れた
血が、とぷんと流れ出す

「…血は吸引してくれ
 輸血が足りなくなった場合は使いまわす」
「あ…ああ…」

掃除機みたいな機械を血だまりに当てると凄い勢いで血が吸われていく
血とかには割かし慣れているが…
この量は確かに少し心を揺さぶられるな
151 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:15:35.92 ID:jrj8L3ko
「…筋膜を切り開く」
「ああ…」

正直、あまりやることは無い
ヤチャマルの手の動きはまさに神速
一体何人分の作業を1人でやっているのか
何も知らない俺には全くわからないがとにかく恐ろしいスピードだと言うのは理解できた
…前から不思議だった
どうしてこれほどのスキルを持っているのにこんな学校の保険医なんだろうか
この技術があればもっともっと地位も名誉も手に入るんじゃないのか…
そうこうしてるうちに筋膜が切り開かれ
俺達が頭の中でよく思い描く人体というものが姿を現した


「…恐らく、肋骨を切り開く必要があるだろうな」
「そうなのか?」
「カルディアがどんなものかわからない以上
 下手に刺激したあとに切り開くんじゃ遅い可能性がある
 …切るぞ、正直キツい光景だとは思うが絶対に目を逸らすなよ」
「…ああ、わかったよ」

高速で回転する丸鋸のようなものをヤチャマルが取り出した
キュイーンという音がその切れ味を物語る

「…行くぞ」

丸鋸が骨にあてがわれた
何かが散る
骨を削る耳障りな音が辺りに響き渡る
ほろにがはただ目の前で行われてる非日常をぼーっと見つめている
俺も色々経験してきたがこれほどのことは…初めてで
グラつきそうになる足元を必死に抑えていた
しばらくすると肋骨が切れたらしい
隙間が開いて心臓が見えた…がどうも想像とは違うな
鼓動に合わせて動いてはいるが

「…心臓はどこ?」
「心膜の中だ、今から心膜を切る」
「…」

言うが早いか
心膜がスパンッと切り開かれる
152 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:17:19.14 ID:jrj8L3ko
そして現れた心臓を見たとき
俺も、ほろにがも、ヤチャマルですらも絶句した

「何だ…これは…!?」
「…心臓が糸のようなもので包まれてる…!?
 いや…縛られてるのか!?」
「…ど、どうするんだよコレ…」

心臓は蜘蛛の糸のようなもので覆われていた
何も知らなければ体内に白い塊があるようにしか見えなかった
ヤチャマルはしばらく考えていた
マスクをしているから口元はわからないが
明らかに苦虫を噛み潰したような顔だった
しばらくして、意を決したようにヤチャマルは言った

「…とにかくこの糸を切るぞ」

メスの先端を刺し込み
慎重に上に引っ張り糸を切ろうとする
かなりゆっくりだ…いや、何が起こるかわからない以上当たり前か…
糸が、プツンと切れた
…何も起こらない

「…大丈夫なようだ
 このまま切って行くぞ」

少しずつ少しずつ丁寧に糸を切断していく
なんとも言えない緊張感が辺りに漂う
やがて、糸が切り開かれ
やっと心臓が見えた

「…心臓自体は…何ともなっていないようだが…」
「…何がどうかよくわからないが…」
「それとも中に潜伏しているのか…?」
「ん?」
「どうしたほろにが?」
「いや、今何かが…動いたような」
153 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:19:40.71 ID:jrj8L3ko
そう言ってほろにがが糸の膜をめくろうとした
その瞬間、ヤチャマルが物凄い剣幕で叫んだ

「不用意に触れるな!」
「なッ!?うわっ!?」

何かが、糸の膜と心臓の隙間から飛び出した
そいつが通った場所が、切れた
血が、流れ出す

「おッ!?おいッ!?
 何やったんだお前!?」
「しらねぇ!?何かが!」
「病原体の自走による裂傷生成だと…!?」
「反対側の糸の膜の裏だ!!」
「…いや、小刻みに中で動き回ってる
 出てくるぞ…!!」
「!?」

シュッ!と何かが飛び出した
小さな蜘蛛のような生物
こいつが、カルディア…!?

「とにかく縫合を…」

カルディアを裂け、ヤチャマルが切られた心臓を縫い始める
俺とほろにがは、カルディアから目が離せなかった
宿主の心臓を躊躇無く切り裂く寄生生命体…それがカルディア…
こんな奴、どうしろって言うんだ…
人体のグロさや、血の量、それ以上に異形とも言えるカルディアのその姿に戦慄
思わず、自分の胸を押さえる

「…とりあえずの縫合はしたが
 カルディアをどうにかしなければ」
「ピンセットか何かで摘んで引きずり出せないか?」

ほろにがが提案する

「…やってみよう
 何が起こっても対処できるようにしておけ」

ヤチャマルがピンセットを持った
俺は皮膚を広げて少しでもやりやすいようにする
ほろにががヤチャマルを凝視してその手は器具をいつでも取れる位置に置いていた
ピンセットが、カルディアを挟もうとした
その瞬間、カルディアが動いた

「!?」

バシュッ!と血が吹き出た
俺の顔に、血しぶきが散った
154 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:21:14.09 ID:jrj8L3ko
「吸引しろ!縫合する!!」
「わかった!」
「は、針と糸!!」

こいつ、捕まるのを察知して心臓を傷つけたのか!?
たまゆらの顔色はさっきよりも格段に悪くなっていた

「…どうするんだよ!?」
「…直接摘出はできないか…」
「だからって特効薬とかも無いんだぜ!?」

焦りが感じられる
無理やり引きずり出そうとすれば心臓を切り裂かれる
だとしてもカルディアに特効薬なんか存在しない
ヤチャマルは何かを取り出した

「それは?」
「医療用レーザーだ」
「…何する気だ?」
「焼き殺してから摘出する」
「大丈夫なのか!?」
「…少しミスれば…」

ヤチャマルは口をつぐんだ
ああ、俺だってそれがどういう意味かぐらいわかるさ
だけど今はヤチャマルを信じるしかない
ほろにがと俺はヤチャマルの手元をじっと見詰めた
先端がカルディアに近づいていく

「行くぞ!」

発射されたレーザーが、カルディアに命中した
ジュワッ!という音がして同時にカルディアが動き出した

「逃がすか!!」

発射と停止を小刻みに繰り返し
ヤチャマルは逃げ回るカルディアに断続的にレーザーを当てていく
レーザーから逃げ回っている以上カルディアは心臓を傷つけることは出来ないらしい
ただ、このレーザーが効いているのかどうかがわからない
いや、逃げるということは少なくとも危機を感じているということか…?
とにかく今は俺達は何も出来ない…
ただ、ヤチャマルがカルディアを倒すのを待つしかない…
155 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:24:53.87 ID:jrj8L3ko
10/27(金) 同時刻

「見つけたぞ…!」
「んん…?
 お前…剣三郎だったか」
「アルゴルを止めろ!」
「…ああ、もう止めてもいいんだけどさ
 せっかくだし時間一杯までどうなるのかを見てみたいんだよね」
「ふざけるな!!!
 生徒会はいつからそんなに腐った!!
 俺が執行部に名を連ねたのは少なからずの正義を感じたからだ!!
 この非道のどこに正義がある!」
「パンツ一枚でそんなこと言っても凄みが無いなぁ」
「…斬る!」
「うおっ!?」
「殺った!!」
「…ん、ふふ…」
「…何!?」
「執行部風情が…生徒会を甘く見るなよ…」
「馬鹿な!?なぜ生きていられる!?」
「普通の人間なら…死んでるよ…
 躊躇わず命を奪おうとするなんてな…
 正義だなんだとほざくお前も…所詮生徒会と変わりはない…」
「違う!!!」
「ひとつ、教えてやるが…
 会長と姫がどう思っていたかは知らないが
 俺は生徒会を正義とも思っていない…そして誰一人仲間とも思わない」
「何だと…!?」
「生徒会なんて…支配のための道具に過ぎない…
 いずれ会長すらも駆逐してやるよ…最初から俺は誰一人信用していない」
「奇遇だな、俺もお前を信用してなかったよ」
「黒やん!?」
「勝手にしろと言われたからな
 ここで俺がコイツをぶっ倒すのもいいってことだろ?」
「いいさ、どうせ最終的には全部潰すつもりだった
 ここでお前らはやってやるよ」
「舐められたもんだ」
「お前だけは…許すわけにはいかないッ!」
「創造主の力…見せてやる…」
156 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:28:37.93 ID:jrj8L3ko
10/27(金) 夜

かなりの時間が立った
ヤチャマルはずっと逃げるカルディアにレーザーを当てる鬼ごっこを繰り返している
その目は、真剣だった
俺とほろにがは、何も出来ない
ただ、見ていることしかできない
ふと、ほろにがが外に出た

「おい…」
「縛ってくる…俺も戻れないだろうしな
 ヤチャマルを見ておけ」
「…え?」

外に目をやると
リカと舞姫に話しかけた後にロープで手足を縛ろうとしていた
そうか…アルゴルの発症時間か…
ってヤチャマル!?

「はぁ…はぁ…」

ヤチャマルは明らかに体調が悪そうだった
アルゴルの発症前の頭痛か!?

「お、おい…ヤチャマル…大丈夫か?」
「…大丈夫だ…」
「大丈夫って…明らかに…」
「…ここでやめたら…意味が無いだろう!!!…ッ!?」

ヤチャマルが、倒れこむ

「おいっ!?」

レーザーの機械が、宙を舞った
カチャン、と床に跳ねる音
俺はヤチャマルに駆け寄った

「はぁっ…はぁ…ぐっ…」

それでも必死に立ち上がろうとするヤチャマル

「やめとけよ!もう無理だ!」

その言葉を聞いたヤチャマルが俺の胸倉を掴んだ
そして言った

「ここで諦めたらたまゆらの命は無い!!
 今もたまゆらは戦ってる!!必死に生きようとしている!!
 救えるのは俺だけだ!!ここで諦めれば結果的には俺がたまゆらの命を奪ったことになる!!
 もう嫌なんだ!!人の命を…奪うのは…!!」
「…命を、奪うこと…?」
157 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:31:42.21 ID:jrj8L3ko
その瞬間、たまゆらの身体がビクンと跳ねた
ヤチャマルが俺を突き飛ばして勢いよく立ち上がった

「カルディアが自身の危機を感じて暴れだしている…!
 まずい、このままじゃ、レーザーを…!」
「…レーザー!?」

確かさっきヤチャマルが倒れた時にどこかに吹っ飛んでた…
あった、反対側の足元だ!
俺は地面を蹴り飛ばすように飛び出した
頭から、反対側の床に突っ込み、キャッチした

「投げるぞ!」

レーザーの機器が、宙を舞い
ヤチャマルはそれを見事にキャッチした

「やらせるか!!」

ヤチャマルはレーザーをまたカルディアに当てだした
俺は立ち上がって、無言でそれを見続けた
もう何も言わない
ヤチャマルにそれだけの覚悟があるのなら…
外から、バスン!と音が聞こえた
見ると椅子に縛られたほろにがが暴れていた
…知っている人間が発症したのを見ると辛かった
だから俺は外を見ないようにした
ヤチャマルも明らかにスピードが落ちていた
無理もない、アルゴルに関係なくもう6時間ぶっ通しなんだ
確かにレーザーはカルディアに効果はあるんだろう
だが…カルディアは一向に弱る気配を見せない
…間に合うのか、これで
158 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:34:41.25 ID:jrj8L3ko
「…少し、昔話でも…聞かせよう」
「え?」

唐突に、ヤチャマルが呟いた
意味がわからなくて返答できなかったがヤチャマルは続けた

「…俺は…昔とある機関に所属していた…
 表向きは…そこの医者…裏の顔は…殺し屋」
「殺し屋…」
「疑問は持たなかった…殺し屋であろうと自分の選んだ道…
 顔を隠すために…殺しの際は鬼の面を被った…
 ついたあだ名が鬼面夜叉…笑える話だ」
「…鬼面夜叉」
「…沢山の命を奪った…殺して、殺して、殺し抜いて…
 罪悪感も無い、ただ…命じられるままに…それだけが俺の生き方だった…
 だけどある日突然、俺はその生き方を失った…」


――辺りは、屍で埋まっていた

「君は実に有能だった
 有能すぎたのだ…」
「だから、自らの地位を脅かす存在になる前に処理すると?」
「…別におかしなことは無い
 人の歴史を紐解くとそのようなことは珍しくもない」
「野心なんか…無い」
「それは私がよくわかってる
 だが本人がどうであれ他者は必ず評価をつける」
「…」
「お別れだ、鬼面夜叉」

その時、初めて死に恐怖したよ
数え切れない程の人間を殺しておいて
今更すぎる、死への恐怖だ、笑えるだろう?
そしてその時、初めて自発的に殺した
鬼の面を被っていなかったが、あの時俺は本当の意味での鬼面夜叉だった
生き長らえても、先は見えなかった
生きる意味は失われ、自ら組織を叩き潰し
残ったのは残ったのは鬼面の夜叉が1匹…

だけど俺は生きていたかった
許されるとは思わないし、許されるつもりもない
報いなら受けようと思う
それでも、最後の瞬間まで生きていたかった
各地を点々として、気がついたらここにいた
普通の医者として生きなかったのは理由は手術が怖かった、自分のミスで命が消えるのがな…
今?ああ、勿論、怖いさ…
メスを握った時から…ずっと恐怖で押しつぶされそうさ…
でも今たまゆらを救えるのは俺しかいない
俺が死の恐怖に怯えたように、たまゆらだって今恐いはずなんだ…
見捨てない、もう命を奪うのは…ご免だ
159 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:38:18.01 ID:jrj8L3ko
「…なぜかな…
 こんな状況なのに…話したくなったよ」
「ああ…」
「…」

ヤチャマルは黙ってしまった
ただ、その手は変わらずカルディアにレーザーを当て続けている
すると突然カルディアの動きが止まった

「え…?」
「何…?」

カルディアは動かない
ヤチャマルはレーザーを当て続ける
それでもカルディアは動かない

「…やった…のか?」
「…こんな突然絶命するものなのか…?」
「とにかく今なら摘出可能かもしれない」

ヤチャマルはピンセットを取り出し
ゆっくりと、カルディアを掴もうとする
ピンセットの先端がカルディアに触れる、だが何も起こらない
カルディアは完全に沈黙していた
ヤチャマルのピンセットがカルディアを挟んだ
やったか…!?

「いや…」

カルディアを引っ張ると心臓までもが引っ張られた
まるでカルディア自身が心臓の一部と化しているように
160 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:41:28.23 ID:jrj8L3ko
10/27(金) 同時刻

「ぐっ…」
「随分手こずらせてくれたじゃないか…」
「ちく…しょぉ…」
「どう殺して欲しい?」
「待てよ」
「んん…?お前…?」
「俺はこういうの向いてないんだけどな
 テメェだけは腹が立ってしょうがねぇんだよ」
「…どこから忍び込んだのかは知らないが
 運が悪かったな…」
「ハッ、そりゃこっちのセリフだぜ
 お前は俺を怒らせた、運が悪いにも程がある」
「言ってくれるじゃないか…」
「お仕置きの時間だ
 言っとくけど今の俺は手加減できねぇぞ、自業自得だがな」
161 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:46:43.28 ID:jrj8L3ko
10/27(金) 深夜

動かなくなったカルディアを心臓から引き剥がそうと必死に頑張る俺達
だがカルディアはがっちりとくっついている

「…駄目だ、これ以上引っ張ると心臓のほうが裂けてしまう
 この短時間でレーザーに耐える身体に進化たのか…
 だが外殻の強度が増したせいで動きを犠牲にした…」
「じゃあどうするんだよ?」
「…」

ヤチャマルは無言でメスを取った

「何する気だ?」
「カルディアが食らいついた部分ごと切除する」
「心臓を切り裂く気か!?」
「開いた穴は左右を繋ぎとめて塞ぐさ…
 カルディアの位置を考える幸か不幸か不可能じゃない位置だ」
「だけど…」
「問題は…俺のほうか…」

ヤチャマルの手はガクガクと震えていた
間違いない、アルゴルが発症してるんだ
それを精神力で抑え込んでるって言うだけでも凄いが
この状態で手術なんか出来るわけが…

「…普通じゃ無理だろうな…」
「え?」
「だが俺は…夜叉だ…
 夜叉は恐れない、夜叉は退かない…
 ただ敵を滅する…俺が今滅するべき敵は…カルディア…」
「ヤチャマル…」
「…あとは…俺に任せてくれ…」
「だけど…」
「…例えカルディアの摘出に成功しても
 スイカ自身はまだ残っている…倒せるのはお前しかいない」
「…」
「鬼と化した夜叉は1人で戦うものさ…」
「俺は…鬼だろうが悪魔だろうが、ヤチャマルは味方だと思ってる
 たまゆらは任せた、俺はスイカは止める」

俺は無菌室から外に出た
不安がないと言えば嘘になる
それでも…
162 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:54:39.35 ID:jrj8L3ko
「ん?」

縛られた舞姫とリカは疲れ果てたのか眠っていた
それはいいんだがほろにががいない
どこに行きやがったんだ?
嫌な予感がする
俺は保健室を飛び出した
しかしどこにいるかもわからない…などうしよう
そう思っていたが廊下の奥から戦闘音が聞こえた
誰かと誰かが戦っている…?
音のする方向へと、走る

「うおぉぉぉっ!!!」
「がはぁっ!!」

ほろにがの声…と、スイカ?
戦ってるのか?

「ほろにがッ!」
「おおっ!?ゆき兄か!」
「お前、アルゴルは…!?」
「今んとこは抑え込んでるが…」
「抑え込む…?」
「それよりも今はあいつだ」

ほろにががスイカを指差す
昼間見た時と違いスイカの顔から余裕が消えていた

「次から次へと…ゴキブリか貴様らは…!」
「これで2対1だ、降参したほうがいいんじゃないか?
 最も降参しても許してはやらねーけどな」

ほろにががニタニタ笑ってそう言った
なんだか知らないけどこちらが押してるみたいだな
そう思っているとほろにがは顔はスイカに向けたまま小声で話しかけてきた

「…こいつ、攻撃は全く大したことないが
 ダメージを全然与えられない」
「…むぅ」
「少なくとも打撃は無理だ
 剣で切って見ろ」

それだけ聞くと俺は踏み出した
スイカは動かない、いや、避ける素振りすら見せない
正気かコイツ…!?
俺の剣は、スイカのわき腹に命中し、切り裂いた
だけどおかしい、手ごたえが軽すぎる
すぐに後ろを振り向く
スイカのわき腹は無残に切り裂かれていた
中心より半分より左は切断され、バランスを失えば上半身が地面に落ちてもおかしくない
だが、血が出ていない…
163 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:57:06.29 ID:jrj8L3ko
「酷いこと…するじゃないか」
「効いてないのか!?」
「化け物かコイツ!」

ほろにがと俺でスイカを挟み込む
グジュグジュと嫌な音がしたかと思うとスイカの傷口が塞がった

「…お前、一体どういう能力だよ」
「創造主だよ」
「言ってる意味が…」
「…そろそろ遊んでる時間も勿体無くなったよ
 終わりにしようか」

スイカが手をほろにがにかざした
あの距離から攻撃する手段を持ってるのか…?

「ダクテュロス」
「なッ!?」

スイカの右手が崩れた
まるで絡み合った糸が解けるように
そして大量の糸、いや、触手はほろにがへと向かっていった

「くおっ!」

ほろにがが横に転がって避けようとする
だが触手も方向転換しほろにがを執拗に追う
俺は走り出していた
後ろから1撃を食らわしてやる!
剣の射程範囲にスイカを捕らえる
このタイミングなら対応できない!

「ケルコス」
「…がッ!!?」

腹部に強い衝撃
俺は衝撃で後ろに吹っ飛ばされる
背中から冷たい廊下に叩きつけられる
激痛をこらえ剣を支えに立ち上がる

「…何が起こった…!?」

スイカはこちらを振り返ってはいない
だったらなぜ…

「無駄だよ、俺には適わない
 俺はすでに人の領域を遥かに超越した」
「クッ…」
「人の領域ねぇ…」
164 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 22:59:37.68 ID:jrj8L3ko
逃げ回りながらほろにがが呟いた

「…教えてやるよ
 どこまで行こうと、人は人でしかなれないんだ」

そう言ってほろにがが姿勢を低くしてスイカに向かって飛び込んだ

「…」
「リーチが伸びれば返りが遅くなる
 自明の理だろ?」

触手の束の下を走り抜けるほろにが
確かにこの状態ならほろにががスイカ本体に到達する

「ケルコス」
「甘いぜッ!打撃は効かないんだろ?」

ほろにがが頭上の触手の束を掴んで床を蹴った
返ってきた触手の先端は軸をズラされほろにがの横をすり抜けた
スイカがバランスを崩す

「うおっ…!?」

前のめりに倒れこむ
その視線が見たのは黒い銃口

「化け物が相手なら使用も止む無しだからな」
「キッ…サァマァァァァァ!!!!」
「風穴開けてやるよ」

発砲音が、冷たい廊下に響き渡った
スイカが、後ろに倒れる
その光景は酷く遅く、スローモーションのようだった
ドシャッ!と音がして仰向けに倒れるスイカ
着地したほろにがは銃口を一吹きした

「人には知恵があるんだよ、化け物」
「ほろにが…」

俺は倒れているスイカの横をすり抜けてほろにがに近づいた
ほろにがはバツが悪そうな顔をして銃をしまう

「使う予定は無かったんだがな…」
「銃なんて持ってたのか…」
「まぁおかげで勝てたしいいんじゃねーか?」
「それ俺のセリフだろ」
「…しかしありゃ何なんだ」
165 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:02:11.20 ID:jrj8L3ko
ほろにががスイカを見る
右腕は途中からが触手の束のようになり先端はあちこちにバラけている
異形…その言葉がピッタリだった
そう思っていると触手の1本がビクンと動いた

「何!?」
「…今のは…危なかったぞ…」
「生きているのか!?」
「眉間に弾丸ブチ込まれても生きているなんてな…
 いよいよ本物の化け物だな」

ゆっくりとスイカが立ち上がる
ペッ!と何かを吐き出しとカッキィーンと硬い音がした
見ると銃弾が転がっていた

「…はぁ…はぁ…許さない…
 これだけは使いたくなかったが…
 お前らは許さん…!」
「やべぇな、どうやらまだ隠し玉があるらしいぞ」
「…何をする気だ」
「ゲネアー…」

そうスイカが言うとスイカの全身がビクビクと痙攣を始めた
そして、額が角が生え出した

「な…」

呆然としてる俺たちの目の前でスイカの身体が変化していく
いや、もう変化などというものではなかった
右腕はウネウネと動く大量の触手のままだが
左腕は巨大な刃と化し、口からは2本の牙がのぞいている
166 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:05:37.84 ID:jrj8L3ko
「グゥゥゥゥゥ…」
「…やべーんじゃねーかこりゃ」
「同感だな…」
「…俺は体内に何万という自ら作り出した虫を飼っている…
 普段は眠っているが起こすことも出来るし状況によっては俺が目覚めさせることもできる…
 …今俺の体内の虫すべてを目覚めさした」
「…なるほどな、そういうことか」
「俺の身体が傷つけばある虫が傷を癒す
 俺たちは共生しているんだ…」
「化け物が」
「…この姿を見た貴様らを生かしておくわけには行かないな…
 全力を持って、断罪してやる…」
「勝手になった癖に無茶を言うな」
「黙れ!!」

怒りに呼応するかのように
スイカの背中から何かが突き出てきた
本物の化け物じゃねぇかよ

「一旦退いたほうがよさそうだ」
「同感だ」

2言だけ会話を交わすと俺とほろにが一目散に逃げ出した

「逃げるのか貴様ら!!」
「あいにく化け物相手に正面切ってやりあう趣味は無いんでな!」

逃げ出すのは簡単だが保健室を襲撃されるのはまずいな
一度姿をくらました上で保健室を守れる位置に身を隠すのが妥当か
おおむねほろにがも同じ考えだとは思うが…
167 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:06:43.63 ID:jrj8L3ko
10/27(金) 夜明け

「術式…終了…か…」
「…命を奪うためだけに生まれた生物か…
 なのに…それ単体では生きていけないか弱さ…」
「哀れな…生物だ…」
「…後はお前の回復力だけだが…
 常人なら数ヶ月は動けはしないだろうな…」
「俺も…限界か…
 だがここで暴れてたまゆらを傷つけてしまえば元の木阿弥だ…」
「グゥッ…」
「しばらく…眠る…
 あとは任せたぞ…ゆき兄…」
「…」
「この人間…随分と…」
「まぁいい…起きろよ、たまゆら」
「わかるはずだ、黄龍の鼓動が…
 …究極の進化はいつも滅びの目前にある
 今のお前にならわかるはずだ、魂と肉体の境界を失い
 夢幻のようなか細い意識の中に唯一強く鳴動する黄龍の息吹を…
 それに触れた時、お前は真なる器となる…
 その時こそ…全てが…」
168 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/03(土) 23:06:53.22 ID:IuxCNkDO
なにこのネロ・カオス
創世の土ですね
169 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:08:43.23 ID:jrj8L3ko
10/27(金) 同時刻

「もう夜明けか…」

あれからスイカと遭遇はしていない
運がいいのか、それとも向こうに本気で探す気がないのか
…たまゆらは大丈夫だろうか

「デェテ…コォイ…」
「…!」

廊下の奥から不気味な声が響く
もはやそれは人の声ではない
だがスイカの声だと直感的に理解した
ズルズル、ビチャッ、ズルズル、ズチャッと水分を含んだ何かが歩く音
…それと何かを引きずる音がする
そっと顔を出して覗いてみる、こっちは暗がりだから大丈夫なはずだが…

「!?」

思わず声をあげそうになり口を手で押さえる
引きずられていたのは剣三郎と黒やんだった
衝動的に飛び出しそうになった
だけど落ち着け、飛び出してどうなる
これはスイカの挑発だ、乗ったらいけない挑発に乗るわけには…
これが最善なんだ、激昂して飛び出せば相手の思う壷だ

だが心はざわめく、荒れ狂う波が押し寄せるように
…最善ではある
だけど…かっこわりぃな…
でもこれが現実なんだ、物語のように上手くはいかない
だけど…やっぱり…格好悪いな…
信じてた頃もあった…だがそれ故に俺は背負い切れない罪を…
繰り返さないためにも…ここで飛び出すわけには…!!

「酷い扱いだな
外見だけじゃなく心まで醜悪な化け物だな」
「…ほろにが?」

いつの間にか後ろにほろにががいた
スイカのほうをまっすぐ見つめていた

「なぁゆき兄、避けられる戦闘は避けるってのは理屈に敵ってるよな」
「…」
「…だけどよぉ、理屈や効率に縛られて自分の心を裏切るっては…
 なんつーか、馬鹿げてるよな」
「え…」
「俺は、心を裏切らない
 それでどんな不利益を被ろうともそれだけは絶対に無い
 今よぉ、どうしてもムカついてるんだ…アイツがな」
170 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:10:37.25 ID:jrj8L3ko
それだけ言うとほろにがは飛び出した
止める隙すらなく、ほろにがはスイカの前に立ちふさがった

「オマェェ…」
「よぉ、化け物」
「…ナゼ、キサマ…アルゴルヲハッショウシナイ…」
「ん〜、そりゃあ…
 確固たる意思を持った人間を虫如きが操れるわけねーってことだろ」
「ナラ…チョクセツ…コロシテヤル…」
「やってみろ、化け物が」

心を裏切るのは馬鹿げてる、か
そうだな、そうだったよ
結局、逃げてるだけか、俺は
罪の十字架を背負った気になって自らを肯定していただけか
…心のままに、戦う…

「待てや、クソ野郎!!」
「キサマ…」
「ゆき兄、一緒にやるか」
「そうだな、一緒にやろうぜ」
「とはいえどうしたもんかって状態だよな
 銃弾すら効かねぇんだぜ?」
「微塵切りにでもしてやれば倒せるんじゃねぇか?」
「…乗ったッ!」

俺とほろにがスイカに向かって走り出す

「ナメルナァァァァ!!!」

スイカが左腕の巨大な刃を横薙ぎに振るう
受けるか?それとも…?
一瞬考えたが本能的に俺は飛んだ
ほろにがも同じ考えに辿り着いたようだった

「ケルコス!!」

スイカの後ろで何かが動いたと思ったその刹那
空中で、横から強い衝撃
さっきのときと同じだ…何かが高速で…
思考はそこまでだった
吹っ飛ばされた衝撃でほろにがを巻き込み、壁に叩きつけられる

「がっは…」
「ど、どけよ!」
「悪い…」
171 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:12:20.15 ID:jrj8L3ko
なんて悠長に話してる場合じゃなかった
正面ではスイカが刃を振り下ろそうとしていた

「まずい!避けろ!!」
「うおおっ!?」

飛びのくようにその場を避ける
刃はコンクリートに深く突き刺さった
避けて正解だったか、とても受けきれるような代物じゃないな

「ヌ…」

スイカの動きが止まる
コンクリートに突き刺さった刃が抜けないようだった
チャンスと思ったが俺たちが動くよりも早くスイカがあいている右腕をこちらに突き出した

「ダクテュロス…プース…」

右腕がほどける
そして大量の触手となり、こちらへ高速で向かってくる
全てを貪欲に食らい尽くそうと
幸い攻撃に転じていなかったお陰で避けることは簡単だった
転がるように直撃を避ける
だがスイカの猛攻は止まらない
引き抜いた左腕の刃が振り回される
あまりにも違いすぎるリーチが圧倒的不利な状況を招く
大振りな動きは避けることは出来てもそのリーチのせいで攻撃に転じることが出来ない
それはほろにがも同じなようだった

「クソッ!このままじゃラチがあかねぇぞ!!」
「わかってるけどどうすりゃいいんだよ!!」
「トラ、エタ」
「何ッ!?うおっ…!?」

スイカを挟んだ反対側でほろにがが転倒した

「馬鹿!?何やってんだよ!?」
「足に何かが…!?」

見るとほろにがの足には糸のようなものが絡み付いていた
糸はスイカの足から出ていた
まずい!これはやべぇ!!

「ほろにがぁぁぁぁぁああ!!!」

スイカを越えてほろにがに近づこうとするが
近づけない、スイカはこちらこそ見ていないが縦横無尽に動き回る触手が邪魔をする
切っても触手は減らない、むしろどんどん量が増しているようだった
まずい、このままじゃ…
172 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:13:23.58 ID:jrj8L3ko
「折角とっときのを取って置いてたんだがな」

絶対絶命の状況なのにほろにがはめんどくさそうに呟いた
この状況で何言ってるんだよ!?

「まぁいい、くれてやるよ
 極上の酒だぜ?」

ほろにがが、倒れたままスイカに向かって何かを投げつけた
パリーン!とガラスが割れる音がした
ビチャビチャと液体がこぼれる音がする
だがスイカは意に介していない
そしてほろにがに向かって左腕を振り上げた

「派手に燃えちまえ」

カチンシュボッと音がして
刃が振り下ろされるとほぼ同時に何かがスイカへと投げられた
だが刃が止まらない

「上半身が無事なら避けれるんだなコレが」

ドゴォォォン!と音がした
そして次の瞬間にスイカの身体が勢いよく燃え上がる

「ウォォォォォォォォ!!!!!?」
「火で焼き尽くすってのは基本だよな」

ほろにが上半身を捻って1撃を回避していた
火で怯んだのか足の拘束も解けたらしく立ち上がる
触手もすでに俺を狙っているというよりも暴れていると言ったほうが正しい
俺は剣を構えなおしてスイカに向かった
確かに半端な斬撃じゃあ効かないだろう、半端なら…

「うおぉぉおおおおおおお!!」

俺は勢いよく飛び上がった
渾身の力を込め、俺はある一点を狙い剣を振り下ろした
皮膚を斬り、肉を裂き、骨を砕く
殺意の1撃を全力で叩き込む
反発する力を力で押さえ込み、落下の力を込めて一気に押し返し
何かが飛び散る、意外にも音は無かった
ただ斬ったという感触だけが俺の手に残る
燃え盛るスイカの動きが止まる
動きを司る脳はすでに身体と繋がっていないのだから
俺の着地とほぼ変わらないタイミングで
ゴトン、と重い物が床に落ちる音

「はぁ…はぁ…」
「…終わった…か?」
173 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:15:36.12 ID:jrj8L3ko
スイカの身体は動かない
ただ燃えているだけ
俺とほろにが燃え尽きるまでそれをジッと見ているしかなかった
やがて火の勢いは衰え、黒こげになった物質だけが残された

「…」
「やるせねぇな…」
「仕方ないさ…」

そう、仕方が無い、仕方が無いこととは言えやるせない…
…いや、こういう汚れ役は俺がお似合いなのかもな
たまゆらには人は殺せない…

疲れ、やるせなさ、どうしようもない不快感
そういった様々な感情が頭の中を交錯する
すると突然身体に何かが絡みついた
そしてそれを判断するよりも早く、全身が締め付けられた

「くあっ!?」
「がっ…!?」

何が起こったのか、身体に巻きついているものは何なのか
そのままゆっくりと足が地面から離れていく
同時に全身にかかる圧力も増していく
メキメキと骨が軋む音がして全身に激痛が走る
俺を締め付けているのは黒く焼け焦げた触手の束
その大元もまた黒く焼け焦げたスイカの身体だった
ほろにがも俺と同じように虚を突かれて触手に捕らえられたらしい

「コイツ…!首を落とされてもまだ…!?」

必死に触手を引き剥がそうとするが異常な力で締め付けられ一向に引き剥がせない
それどころかさらに締め付けは強くなる
血液が逆流し、内蔵が押しやられる感覚
手から力が抜け、剣がカランと床へと落ちる

「…かはっ…」

意識までもが追いやられる感覚
まずいな…ここまでか…?
朦朧とする意識が俺の最期を教えてくれているようだった

その霞かかったような世界に足音が響いた
廊下を、ゆっくりと歩いてくる足音
誰か知らないけど、逃げたほうがいいと思うんだがな…
と、言ってもこの化け物の姿を見りゃ大抵の奴は逃げ出すわな
足音が、走り出したように変化した
逃げたか、ああ、当たりだ、こんなやつに突っ込む奴がいたら見てみたい
…あー、俺とほろにが、か
174 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:16:42.51 ID:jrj8L3ko
その瞬間、身体が楽になった
同時に地面に落下する浮翌遊感
軽い衝撃の後、自分から触手が離れているのを理解した

「何だ…!?」

どうして助かったのかわからない
だが助かったのは事実だ
そして視界に飛び込んできたのは信じられない光景
通常ありえない、その光景

「たまゆら…?」
「お前だけは…絶対に殺してやる…!!!」

スイカの身体の中心に、深々と黄龍鉄甲が突きこまれていた

「お前!?どうして動けるんだ!?」
「…やっぱりこれじゃ無理か」
「お、おい!?」

俺の問いには答えずたまゆらはスイカから距離を取った
そして胸の前に黄龍鉄甲をかざした
一呼吸置いて、たまゆらは叫んだ

「目覚めろッ!!!玄武!!!」

たまゆらの黄龍鉄甲が変形した
変形、いや、分裂と言うべきか
分かれた黄龍鉄甲は両肩を肩パッドのように覆い
残ったパーツは両手の甲を覆った

「お前だけは…!お前だけはぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ウゴゴゴ…」

スイカの身体が不気味は唸り声をあげる
そしてガバァッ!と肋骨が開く
胸部には縦に裂けた巨大な口と不規則に並ぶ牙ような物体
そこに向かってたまゆらは走り出す
突っ込む気か!?無茶だ!?
走り出したたまゆらめがけて牙のような物体が発射された

「避けろ!!串刺しになるぞ!?」
「避けない…!!」

その発言の通り、たまゆらは避けなかった
無数の牙が、たまゆらの身体に突き刺さる
生きていられるはずはなかった、なのにたまゆらは走り続ける
突き刺さったキバがガランガランとたまゆらの身体から落ちていく
信じられないことにたまゆらの身体に空いた穴は一瞬で塞がっていく
無数に乱射される牙をすべてその身で受け、たまゆらはスイカの目前に辿り着く
175 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:19:06.67 ID:jrj8L3ko
「押し流せ!!玄武浄撃重羅意拳!!」

たまゆらの右腕が縦に裂けた口の中に突きこまれた
そのまま、たまゆらは床を蹴った
バチュウッ!と嫌な音が聞こえたと思うとたまゆらは口の中に吸い込まれていった
否、食われたのではない、飛び込んだのだ
ブチブチブチッと何かを引き裂く音が聞こえる
そして、スイカの身体に穴が開いた
たまゆらが、スイカの身体を貫通したのだ
そしてスイカの身体がドロドロと溶け始めた
水の塊のようになり、徐々にその身体は崩れ落ちていく
ビシャビシャと大量の水となり
窓から差し込む朝日にキラキラと光り
最期には大量の水だけと化した…
あれだけの化け物が、あっけなくその命の終わりを告げた

「…たまゆら
 お前、どうして…」
「玄武の力…」
「あん?」
「よくはわからない…けどわかるのは…
 玄武の力の最大のポイントは異常な回復力なんだと思う」
「…異常な回復力ね」
「俺がカルディアで倒れてる時に何があったのかは…
 だいたいわかってるよ…」
「…何も言うな
 今はとにかく…休もうぜ…」
「…」
176 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:20:10.02 ID:jrj8L3ko
10/27(金) 午前

「スイカの気が…
 消えて…いや、消えてはいない…がか細くなった」
「…やられたと…言うのか?」
「…」
「アルゴルも消えるはず…
 これだけ弱れば…楔としての役割も…」
「いよいよ堕人の進行が始まる」
「もう、後戻りは…出来ないか」


10/27(金) 同時刻

「朱雀、白虎、青龍、玄武
 四方を守る聖獣は全て揃った…」
「…もはや真なる目覚めは目前
 そして奴はもはや息吹に触れた」
「楔…いや、封印もあと1つか
 それで俺の役割も終わる」
「楽しみだな、たまゆら
 これからもっともっと面白くなるぜ…
 俺にとっても…お前にとっても…そしてお前を取り巻く全ての人間にとっても…な」


邪眼学園黄龍譚
14.5限目 - 絶望の中の希望 -

177 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/03(土) 23:25:11.13 ID:jrj8L3ko
づぇぇい!
今回は時間かかった気がしたぜ!
178 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/03(土) 23:33:53.13 ID:7e2ysF6o
ゆきに乙!

え・・・何で皆こんなにカッコいいの?wwwwwwwwwwwwwwww
嫉妬するレベルwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
179 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/04(日) 00:15:39.52 ID:u9yMWyU0
やんやん空気wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
180 :そら :2009/10/04(日) 01:25:22.34 ID:m3FtDEDO
>>181で指定された戒名に電凸し>>182について会話する
181 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/04(日) 01:40:00.43 ID:lNw1I6DO
尻の人
182 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/04(日) 01:42:02.67 ID:lNw1I6DO
あ、やっぱりピの人で



安価は一個ずらしてくれ
183 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/04(日) 06:55:33.28 ID:VEBkcooo
起きてから気づいたよ、クソッタレ

まだやる気があるならFF10について話すべし
184 :リリーホワイト :2009/10/04(日) 07:18:41.35 ID:lNw1I6DO
朝ですよー
185 :そら :2009/10/04(日) 07:55:44.28 ID:m3FtDEDO
やはりいきなり過ぎて安価決定に随分時間が掛かりましたね


ま、時間無いから昼過ぎにやりますけど
186 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/04(日) 09:37:15.75 ID:AVfIAOAo
ゆき兄おつ!

昨日は寝落ちしてたwwwwwwwwwwサーセンwwwwwwwwwwwwww
そして俺の過去が明らかにwwwwwwww


tk剣ワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
今朝剣がリアルにパンツ1枚で寒いとか言ってた件

シンクロしすぎだろwwwwwwww
187 :リリーホワイト :2009/10/05(月) 07:27:42.19 ID:pkFSH2DO
朝ですよー
188 :ほろ苦 :2009/10/05(月) 21:09:55.10 ID:09Xc.TI0
おまいらに一生で多分一度の頼みがある
嫁に陣痛が来たらしいから、ガキと嫁の無事を祈ってくれ
189 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/05(月) 21:30:01.79 ID:NnvckkDO
>>188
母子ともに無事に元気な赤ちゃんがすぽーんと生まれますように!

願掛けに今日は禁酒するお!(`・ω・´)シャキーン
190 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/05(月) 21:30:51.44 ID:pkFSH2DO
祈祷してくる
191 :そら :2009/10/05(月) 21:44:21.08 ID:CBSb8QDO
黙祷
192 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/05(月) 22:01:21.85 ID:yi7GOBQo
>>188
頑張れ!奥さんも子供も頑張れ!
193 :ピュアハート [('∀`)]:2009/10/05(月) 22:33:24.85 ID:DPE0YcSO
嫁さんも娘子もがんがれ超がんがれ
194 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/06(火) 00:00:40.40 ID:1sz2IO.o
願掛けに神社いってきたけど古墳も行ってくるわ!
195 :リリーホワイト :2009/10/06(火) 07:51:39.10 ID:DA7WcIDO
朝ですよー
196 :ミギー :2009/10/06(火) 07:51:45.18 ID:0ZuR4gDO
ミギ子誕生日と聞いて
197 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/06(火) 07:52:43.87 ID:DA7WcIDO
ミギ子なんてそんな悪魔の子みたいなのが生まれてたまるか
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/06(火) 10:24:44.05 ID:8NzEKMDO
ミギ子が生まれるために関東は雨…
199 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/06(火) 10:57:38.16 ID:Dw2S1QDO
ミギ子…

こないだのうpみたいのが産まれたら困るだろwwwwwwww
200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/06(火) 11:51:33.25 ID:2rcQvQAO
ミギ子とか.....





縁起でもない
201 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/06(火) 12:19:54.01 ID:upHLqbY0
ミギ子が産まれたら
産声は「ボンバヘ!ボンバヘ!」ですね
202 :ほろにー :2009/10/06(火) 13:38:05.82 ID:DFR3.cSO
おまえらwwwwwwwwwwww




無事産まれたぜ。


ありがとう。
203 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/06(火) 13:48:33.80 ID:Dw2S1QDO
>>202
おおおおおおおお!!!!

超おめ!!


今日はお祝いに飲むわ^p^
204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/06(火) 14:42:51.79 ID:2rcQvQAO
おめでとおおおお!
205 :そら :2009/10/06(火) 15:37:24.39 ID:F7VSpYDO
おめでとうございました!


>>203
休肝日一日だけとか
206 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/06(火) 19:37:32.15 ID:1sz2IO.o
祝いコーラ祭りやろうぜ
お前ら俺んちにコーラもって集合な!!
207 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/06(火) 19:41:02.81 ID:DA7WcIDO
>>202
おめでとー!

>>206
じゃあ僕はメントス持ってくわ
208 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/06(火) 20:29:54.12 ID:Dw2S1QDO
ゆき兄がコーラ風呂に入ると聞いて(ry
209 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/06(火) 22:09:16.48 ID:6IDTNB6o
>>202
おめでとおおおおおおおおおお!!!!

http://imepita.jp/20091006/795830
210 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/06(火) 22:40:36.10 ID:Dw2S1QDO
>>209
油断してたらメガネうpとな…?


ふぅ…
211 :リリーホワイト :2009/10/07(水) 08:32:48.90 ID:uKoGvwDO
朝ですよー
212 :リリーホワイト :2009/10/08(木) 06:55:51.91 ID:XzC2P2DO
朝ですよー
213 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/08(木) 07:21:41.31 ID:SuJqqdko
夢の中で白やんが大胸筋を鍛えていた

それだけ
214 :そら :2009/10/08(木) 08:57:59.88 ID:MB8eK.DO
白さん「ブラじゃないよ!大胸筋矯正サポーターだよ!」
215 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/08(木) 09:25:38.56 ID:XzC2P2DO
なんでそれブラしてんの?
216 :そら :2009/10/08(木) 10:44:09.74 ID:MB8eK.DO
だぁーかぁーらぁー!
ブラじゃないってばぁー!
大胸筋矯正サポーターだよぉぉー!!
217 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/08(木) 11:01:00.54 ID:XzC2P2DO
それPAD?
218 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/08(木) 19:23:37.73 ID:mXykDIAO
いいえ、ネズミです
219 :リリーホワイト :2009/10/09(金) 10:33:03.34 ID:5cN7HwDO
朝ですよー
220 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/09(金) 10:48:53.29 ID:1kKxvcDO
珍しい時間にリリーさんwwww
221 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/09(金) 18:38:37.32 ID:yjf.0q2o
アンニョンポヨポヨ!
222 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/09(金) 23:58:44.69 ID:0190h2AO
( ΦωΦ)にゃすにゃす
223 :リリーホワイト :2009/10/10(土) 06:26:30.70 ID:GJssooDO
朝ですよー
224 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/10(土) 21:56:01.05 ID:y1joMOUo
もうすぐですよー
225 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/10(土) 22:24:01.87 ID:y1joMOUo
(#^ω^)ゆき兄・・・
226 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:27:32.87 ID:i1eo.kAo
すまない寝てた

急いで今からはじめようじゃないか
227 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:28:42.95 ID:i1eo.kAo
邪眼学園黄龍譚
15限目 - カーニバル -

11/6(月) 朝

あれから1週間とちょっとが立った
アルゴルの事件は集団ヒステリーとかそういうので片付けられた
幸いだったのはアルゴルが発症している時は本人の記憶が飛ぶらしいことだった
傷ついた校舎の復旧なども終わり学園は平穏を取り戻してきた

「ふぁ〜ぁ…」
「おはよ、ゆき兄」
「あぁ…はよ…」
「おっはよ〜!」
「ああ、リカちゃんおはよう」
「ゆき兄もおはよう〜!」
「…」
「お、は、よ、う!!!」
「だぁぁぁ!うっせーな!!寝てるんだよ!見りゃわかるだろ!」

平穏だ、最近こういうのが少なかったから懐かしく感じる
この1週間白やんのほうから襲ってくることもないし
平和そのものだった…
しかし平和の中にも戦いがあることを
俺は身を持って体験することになる
228 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:30:06.27 ID:i1eo.kAo
11/6(月) 昼休み

「あー、お腹いっぱいだご馳走様
 リカちゃんありがとね」
「どういたしまして」

リカが作ってくれたお弁当を3人で食べ
屋上でだらだらとした時間を過ごす
すると唐突にリカが言った

「そういえばもうすぐ学園祭なんだよねぇ」
「ん、ああ…」

ゆき兄が寝っ転がりながら生返事を返す
そういえばHRなどで学園祭のことを言われたな
あと廊下とかにポスターが沢山貼ってあった
それで気になって俺は聞いた

「そういやうちのクラス出し物とか決めてないよね?」
「あ、たまゆら君は知らないか
 うちの学校は出展は個人からグループ単位なんだよ」
「?」
「つまり、やりたい奴は勝手にやれってことだよ」
「ああ、なるほど」

ゆき兄がわかりやすく1発で説明してくれた
リカは続ける

「やりたいことがある人は何をするかなどどこでやりたいかを提出するの
 あとはそれが審議にかけられ問題無いと判断されれば厳正なる協議の結果、場所などが割り振られるの!
 あとは生徒の自由!」
「生徒の自由といえば聞こえはいいが要するに教師どもがめんどくさがりなだけだ」
「…なるほど」
「…!そだ、この3人で何か出してみない?」
229 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:31:09.98 ID:i1eo.kAo
と、リカが勢いよく言った
俺は次に来るであろうゆき兄のセリフは予測がついていた

「お断りだ、めんどくせぇ」

予想的中

「えー、いいじゃん、何かやろうよー」
「絶対やだ」
「えー…」
「いいか、祭りでもそうだがこういうことは楽しんだもん勝ちなんだよ
 生徒は平等なはずなのに何で俺らが汗水たらして他の奴を楽しませなきゃいけねぇんだよ」
「あー、はいはいはい、わかったわかった
 それじゃたまゆら君、何かやらない?」
「え?俺?」
「うん」
「…うーん…でも何やろう?」
「やめとけやめとけ、リカに意見を聞くと
 最終的にはクソの役にも立たないボランティアみたいなことやらされるぞ」
「お前は黙ってろ」
「ほぶぅがっ!」

寝転がっていたゆき兄の顔面に思いっきり拳が叩きこまれた
まぁ折角だから何かやってみるのも悪くは無いが…

「うん、そうだな、やる方向で考えとくよ」
「お〜、さすがたまゆら君、話がわっかるぅ〜」
「しかし何をやろうかな…」
「あはは、ま、考えておいてよ、そろそろ教室もどろっか」
「ゆき兄は?」
「あー、いーよいーよ、放っておいても死にゃしないって」

ピクピクと痙攣しているゆき兄を放置して
俺たちは教室へと戻った
230 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/10(土) 22:33:42.60 ID:y1joMOUo
学園祭kt!!
231 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:36:07.86 ID:i1eo.kAo
11/6(月) 放課後


しかしああは言ったものは一向に思いつかないな
飲食系は多く被りそうだからパスするとしても
他に思いつかないな…

「っと、今日も保健室に行かないとな」

俺は足早に保健室に向かった

「ちはーっす」
「来たか、たまゆら」
「おーう、たまゆら」

ヤチャマルとほろにがが座っていた
ほろにがついに居ついたのか…?

「どうだ?身体の調子は?」
「うん、全然問題ないよ」

術後経過を見るということで
あれから毎日保健室に通っていた
最も玄武の力でまるで手術など無かったかのように身体のほうは快調だった

「うん…問題無いようだな
 黄龍鉄甲ってのは大したもんだ」
「なーんで、たまゆらだけそんないい物を持つかねぇ」
「俺だってわからないよ」
「ふん、ま、いいさ、配られたカードで勝負するしかないってね」
「しかし、玄武の力か…
 あまり勧められる力じゃないな」
「どうして?」

ヤチャマルが神妙な顔つきになった

「恐らく傷ついた部分の細胞の分裂、増殖を異常促進させるんだろう
 めんどくさいから説明を省くが要するに傷は治るが寿命を削ってると思え」
「寿命…を…」
「だいたいオメーらはいちいち傷を作り過ぎなんだよ
 たまには俺みてーに無傷でエレガントに勝利してみろ」
「スイカのときはどうみてもピンチだったと思うけど」
「そんなこと忘れました〜」
「クッ…」
「まぁ座れ、茶ぐらい出してやるよ」
「ああ、うん…」

ヤチャマルに促されて椅子に座った
目の前に紅茶がおかれた
一口飲んだ後、学園祭のことを聞いてみることにした
232 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:40:53.29 ID:i1eo.kAo
「ヤチャマルは学園祭の時も普通に保健室営業?」
「んー、そうだけど、どうしたよ」
「いや、何か出展しようかなって思っててさ」
「ふーん、いいんじゃないか?」
「それが何をしようか迷っててね…」
「俺が高校の時は何やったかな〜」
「え?ほろにがに高校時代があったの?」
「突然パッと沸いたんじゃなかったのか?」
「んなわけあるかぁ!!!写真だってあるわぁ!」

ほろにがが懐から1枚の写真を取り出して机の上に置いた

「自分の高校時代の写真持ち歩いてるってどう思う?」
「ぶっちゃけキモい」
「もう見せねぇ!!!」

ほろにがが写真をシュバッ!と元に戻した
それを見たヤチャマルが後ろから首を締め出した

「気になるから見せろ」
「グゲゲゲ…すたっぷすたっぷ…!!
 待て、落ち着け!!」
「見せろ」
「わかったから手を離せ!!」

パッとヤチャマルの手がほろにがから離れた
むせながら写真をまた懐から取り出したほろにが
と、思ったらそれを丸めて口の中に突っ込んだ

「!?」
「ふももふ…やっふぁりほれのほうほうじふぁい…
 みふぇるふぉはふぉっはいはい」
「吐け!ギャラクティカマグナム!!!」

ヤチャマルの拳がドッゴォ!!と凄い音を立ててほろにがの腹部にめり込んだ
若干ほろにがの目玉が飛び出た気がした
233 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:43:04.58 ID:i1eo.kAo
「おっぶげぇ…」
「…!待て吐くな!!」

次の瞬間、ヤチャマルはほろにがの首を強烈に締め上げた
ほろにがは顔が真っ赤になって涙目になっていた

「おぶるげげげげげ…!」
「吐くなら外で吐け!ここで吐くな!!」
「いや、ヤチャマル、それ死ぬって」
「いやでも離したら出すぞ!こいつ絶対出すぞ!!!」
「首を窓の外に!」

俺が窓を開けるとヤチャマルがこっちに向かってきた
てっきと首を窓の外に出して手を離して吐かせると思ったんだが
ヤチャマルを首を掴んだまま外にほろにがを投げ飛ばした
ほろにがの身体がしなやかに宙を舞った

「おぶろろろろろろろろ…」

べちゃっびちゃっぼちゃっと音が聞こえる
外を見る気にはなれなかった
ヤチャマルは何事も無かったかのように窓を閉めてカーテンを閉めた

「…で、何だっけ」
「いやもういいや…帰る」
「おつかれさん」

俺は保健室を出た
今頃保健室の裏手には全身ゲロにまみれた可哀想な男が倒れているんだろうか
哀れな
234 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:45:06.49 ID:i1eo.kAo
11/6(月) 夜

ぼーっと風呂に入っていると
誰かが入ってきた
阿部さんだった、背筋が凍った

「やぁたまゆら君、奇遇だね」
「なな、なんで阿部さんが寮の風呂を使うんですか!?」
「こまかいことを気にしてちゃイチモツは大きくならないぜ」
「何を…」
「俺も湯船に浸からせてくれよ」

そういって阿部さんは風呂に浸かった
それだけならまだしも俺に密着してきた

「…」
「助けてダーリンくらくらりん♪」
「…」
「ババンバパンパンパンッ!アッー!ビバノォー!ンノォ!」

なんだこの状況は
出るに出れないじゃないか
しかしこのままのぼせて動けなくなってしまっても同じことだ
息苦しくなって段々呼吸が荒くなってくる
いや、阿部さんも呼吸が荒々しい
しかし阿部さんは得物を見つけた肉食獣のような…まずいまずいまずいまずい…!
そのとき、ガラリと扉が開いた
235 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:46:26.67 ID:i1eo.kAo
「あれ、たまゆらく…」

えび助が、そこまで言った瞬間にドアを閉めた
そしてドタンガタン!ドガン!と慌てているような音が聞こえた

「ウホッ!」

そう叫んだ阿部さんがザパァッ!と勢いよく立ち上がった
湯煙でよく見えなかったが阿部さんは完全に戦闘態勢のようだった
猛スピードで阿部さんは脱衣所へと向かった

「あぁぁぁあああああああああ!!!!」

えび助の悲痛な叫び声が聞こえる
俺は悪くない、俺は悪くない、俺のせいじゃない
心を閉ざして身体を洗っているとまた阿部さんが入ってきた

「汗かいちゃったからもうひとっぷろ浴びよう
 えび君も洗ったほうがいいぞ、全身ヌルヌルだろ?」

阿部さんの後ろに尻を押さえて泣き腫らしたような目をしたえび助がいた
哀れすぎて声もかけられない

「呪ってやる…」

えび助の呪詛のような声が聞こえた
聞こえないフリをして俺は早々に風呂から上がった
236 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:47:43.80 ID:i1eo.kAo
「風呂上がりのコーヒー牛乳うまー」
「おお、たまゆら」
「あ、剣三郎…」

剣三郎はなぜかまた胴着を着ていた
普段着にも使用しているんだろうか

「…そういえば先の戦いでの礼を言ってなかったか
 俺が未熟だった故に手をわずわせて申し訳ない」
「ああ、いや、いいんだ
 剣三郎のおかげで助かったしな」
「…もっと強くならなくてはな」
「そういえば剣三郎は学園祭で何かやるのか?」
「学園祭…剣道部はローリングすもも祭りをやる」
「…どういうの?それ?」
「数々のトラップをくぐりぬけてすももをゲットしてゴールする」

意味が、わからない
しかし剣三郎の顔は真剣そのものだった

「…がんばってね…」
「うむ、それじゃあ俺はこれで」
「…?」

剣三郎が背中を向けて気がついたが袴の尻の部分が盛大に破れていた
袴だけならまだしもパンツも破れていた
そして尻がプリンッと顔を出していた

「…剣三郎…それ…」
「気にするな
 どんなときも冷静さを失わないための訓練だ」

馬鹿なんじゃないかと思った
俺はそれ以上突っ込むことをやめて部屋に戻った
しかしローリングすもも祭りが気になって中々眠れなかった
237 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:49:54.48 ID:i1eo.kAo
11/7(火) 朝
夢の中で剣三郎が坂道で巨大なすももを転がしていた
気になってしょうがない、詳細を聞いておけばよかった…
学園祭はどうやら今週末の土日に2日に分けて開催されるらしい
登校するとゆき兄が珍しく起きて机に座っていた

「ゆき兄…」
「ひどいクマだな」
「ローリングすもも祭りって何だと思う?」
「…は?」

ゆき兄がコイツ何言ってんだという風に変わった
いや確かに俺だって突然こんなこと言われたら何言ってんだコイツ、とはなる

「…いや、やっぱりいい、忘れて」
「…あ、ああ…」

若干気まずくなりながら俺は自分の席についた
…忘れよう、忘れよう

「おっはよーう!!」

頭の中から記憶を消そうとがんばっていると
元気のいいリカの声で我に返る

「決めたよ!」
「何を?」
「出し物!」

リカの手には数枚の何かが書かれた紙があった
昨日の夜に書いたんだろうか

「と、いうわけでたまゆら君これ提出してきて!」
「どこに?」
「えーと、生徒会…長…」
「…」

お互い黙ってしまった
生徒会長って白やんじゃねぇか
この状況で白やんにこっちから会いに行くってどういうアレだよ

「…だ、大丈夫だよ…他にも沢山の人が生徒会長に書類渡しにいくし…
 こっそり紛れ込ませてくれば…」
「いや、でも」
「そ、それじゃ後頼んだから!」
「ちょ!ま!?」

リカはそそくさと逃げていってしまった
…これ、本当に渡しにいかなきゃ行けないの?
ゆき兄に助けを求めようとして振り向いた
すでに逃げていた
238 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:51:09.93 ID:i1eo.kAo
11/7(火) 昼休み

そして俺は生徒会室の前にいる
リカから渡された紙を持って
…黄龍鉄甲とか持ってきたほうがよかったかなぁ
いやでもそれじゃどう見ても殴りこみじゃないか
しかし白昼堂々俺とバトルするなんて…いやしかしもう前とは状況が違うしなぁ…
ウダウダ考えてても昼休みが終わってしまう
俺は意を決してドアを開けた

「…」
「…」

いきなり目が合った
思わず逃げ出したくなるのを堪える

「たまゆらか…何の用だ
 俺を倒しにきたか?」
「い、いや、これ…」
「…出展希望か」
「うん…」

白やんが紙の束を受け取って読み始めた
俺はとてつもなく居心地が悪かった
ポツリと白やんがつぶやいた

「…お前、これ本気か?」
「え…うん…本気なんじゃ…ない?」

内容を読んでいなかったが
それほどヤベェことでも書いてあるんだろうか

「…ローリングすもも祭りといい今年はどうしてこう」
「ぶふぅっ!」

白やんの口からローリングすもも祭りという単語が出ることが予想外すぎて
俺は思わず吹いた
239 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:52:54.92 ID:i1eo.kAo
「…」
「ああ、いや…続けて続けて…」
「…いいだろ、許可してやる」
「…ありがとう」
「こっちの紙だけあればいい
 残りは持って帰れ」

1枚だけ白やんは机の中に入れた
突き帰された残りの紙束を受け取ると足早に俺は生徒会室を後にした

「はぁー…寿命縮むかと思った
 しかし白やんが本気かって…何書いてあったんだこれ?」

突きかえされた紙に書かれていることを読んで見る
読み勧めるうちに血の気が引き始めた
要約すると

『邪眼学園最強決定バトルロワイヤル!飛び入り歓迎!
 学園を舞台にそれぞれのネームプレートを奪い合え!
 ネームプレートは1枚1点、タイムアップ時に1番ポイントが多い人が優勝!!
 なお、シャインの全面協力により優勝者にはシャインお食事券10万円分
 解説リカ・カナ 現時点参加決定者たまゆら』

「リカちゃん何考えてんだぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!」
240 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:55:09.89 ID:i1eo.kAo
11/11(土) 午前

こうして、気がつくと学園祭1日目
バトルロワイヤルの開催は2日目なので今日は1日フリーだった
…しょうがない、とりあえず明日のことは忘れて楽しもう
学園内を見て回るとおいしそうな匂いなどが辺りに漂っていた

「あ、たまゆらさん
 チョコバナナ食べません?」
「しげる…いやいいよ」
「さっきゆき兄さんが3本買っていきましたよ」
「起きてるのか…」
「それと明日はよろしくお願いします」
「何が?」
「参加するんですよね?バトルロワイヤル?」
「しげるも…?」
「ええ、お手柔らかにお願いします」
「ああ…それじゃ俺他んとこいくから」

なぜしげるはあそこまでやる気なんだろう
強制参加となった俺はあまりテンションが上がらなかった
そして俺はローリングすもも祭りが気になって剣道場に向かった

「ちがーう!それはそう使うんじゃない!!」
「木刀だ!木刀を使え!」

何か楽しそうな声が聞こえてくるので小走りで剣道場の中に入った
台に乗った剣三郎が木刀で天井から吊るされたすももを突付いていた
何をやっているんだコイツは
考えるのもめんどうになった俺は剣道場をあとにした
…しかしまぁ皆思い思いに楽しんでるな…
普段は絶対見られないような奴らま…?

「高橋?」
「ん」

目の前から綿菓子の袋をぶら下げた高橋が歩いてきた
なんだこの予想外の姿は
ちなみに袋にはプリキュアが印刷されていた

「何だよ」
「い、意外と庶民的…だよね」
「うるせぇ蹴るぞ」
「やめてくれ…内臓が破れる」
「…あいつどこいったんかなー」

高橋はふらふらと言ってしまった
うーむ、意外な一面を見れた気がする
ちょっと楽しくなってきた
その後もプラプラとあちこちを見て歩いた
丁度少し小腹が空いてきたところにおいしそうなソースの匂いが漂ってきた
241 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/10(土) 22:55:24.71 ID:NVYuicYo
ローリングすもも祭りwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww気になるすぐるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
242 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:57:46.51 ID:i1eo.kAo
「いらっしゃいませ、いらっしゃいませー」
「あ、桃花だ…焼きそば屋やってんだ」
「あ、たまゆら君焼きそば食べる?大盛りにしとくよ?」
「それじゃひとつ…」
「おっとたまゆら君、焼きそばよりタコ焼きはどう?」
「透過!?」
「営業妨害する気!?」
「いや、そんなつもりは無いけどね
 それよりタコ焼きどう?」
「やめときなよ、そいつの作ったタコ焼きなんて
 タコの代わりに銃弾が入っててもおかしくないって」
「まだ根に持ってんのかよ!(5話参照)
 そんなんいったらその焼きそばカミソリでも入ってんじゃねーのか?」
「はぁ!?てめぇ音楽室来いよ!」
「音楽室でしか力を発揮できないんですね〜
 雑魚能力ですよね〜」
「透過…おい、挑発はそのへんで…」
「ぶっころす!!」
「うおいっ!ヘラ!!ヘラ危ないッ!!」
「ちょ!おい!桃花!熱いッ!このヘラ熱い!!」

俺はあわてて逃げ出した
透過を置き去りにして

「悪い透過!あと任せた!」
「しょんな!!」

全く…余計腹が空いた…
それにしてもあの2人は相性が悪いな
どうしよう、どっか適当に食べる物…
243 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 22:59:52.55 ID:i1eo.kAo
「たまゆらさん!」
「…」
「え…この組み合わせって…」

蝶と雷雲の組み合わせは何か凄い違和感を感じた
…蝶は笑顔なのだが、雷雲の顔は不機嫌というかこの場にいることを嫌がってるような…

「…なに?」
「一緒に巡りません?」
「…2人で?」
「いえ、雷雲君も…」
「…俺は…」
「不満そうだけど雷雲君もたまゆらさんに負けたんだろ?」
「俺は負けてねぇ!」
「…」

蝶が黙った
うーん、雷雲だけは白虎の暴走で一気に仕留めたからな…
多少…あれだな…
とりあえず何か言ったほうがいいかな…?

「あのさぁ、雷雲」
「んがっ!?」
「!?」

蝶の右手が雷雲の顔面を掴んだ

「なら俺にも勝てるんだな?
 能力にかまけて正面からぶつかるようなお前が俺に勝てるんだな?」

え、何コレ?
蝶怖い、凄く怖い

「…う…」
「このままお前の頭蓋骨の"目"を突いて砕いてやってもいいんだぞ?
 痛みを反射させることが出来ても即死には効果無しだろ?」
「すいません、すいません、すいません…」

手を離して振り向いた蝶は笑顔だった

「というわけで納得してくれたみたいです!
 それじゃ一緒に行きま…あれ、どこ行くんですか!?おーい!たまゆらさぁぁぁん!!」


冗談じゃない!
あんな重い空気の場所に混ざれるかよ!
つーか蝶って執行部の隠し玉だったけどどういう位置にいやがったんだよ!!
ああもう!落ち着けない!
どっかで普通に何か食べてぇ…
244 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:02:18.51 ID:i1eo.kAo
11/11(土) 午後

だいぶ時間が立ってしまい
ウロウロしてると体育館についてしまった
コスプレショーが開催されてるらしい、何でもありだな
ちょっと覗いてみるか…って何かステージ上にいる奴は見覚えがあるような

「次は飛び入り!なんと謎のヒーローノスフェラトゥのコスプレです!!」
「ははは、おまえらぁ、会いたかったかぁ?」
「おおー!なりきってますねぇ!」
「そりゃぁ本物だからなぁ」
「しかし本物のノスフェラトゥはそんな格好なんですかね?」
「当たり前だぁ、だって俺が本物だからなぁ」

…色々と突っ込みたいことはあるんだが…
俺はそっと体育館を後にした
しばらく戻っていると反対側からゆき兄が歩いてきた

「何やってんだ、たまゆら」
「いや…ちょっと…色々ウロウロしてて」
「そうか」

ゆき兄は体育館側に歩いていこうとしていた
待てよ、ゆき兄とノスフェラトゥは…
いやいや、まずい!!

「ちょ、ちょちょ、ちょっと待って!」
「何だよ」
「腹減ったから何か食べにいこうぜ!」
「さっき適当に食ったよ、1人でいけよ」
「いやいやいや!もっと食べたほうがいい!」
「コスプレショーみたいんだよ、面白そうだから」

やめろ!あんなギャラリーの前で突発的に殺し合いが始まったら阿鼻叫喚の地獄絵図だぞ!!
なんとかしても止めなくては!!

「一緒に食べに行ってくれぇぇぇ…」
「何か今日気持ち悪いなお前!!」
「あーいたぞー!発射!!」
「!?…たまゆら盾になれ!」
「うえ!?」

状況を理解する前に顔に何かがベチャリと当たる
呼吸が止まり、視界が真っ白に染まる

「あ!人柱使いやがった!」
「頭を使ったと言え」

ゴシゴシと目の周りを拭う
これは…よくあるパイ投げのパイ…なのか?
視界が開けると女子生徒…どっかで見たな、どこだっけ
245 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:04:34.19 ID:i1eo.kAo
「お祭り気分ではしゃぐのはいいけど
 やる気の無い人間を参加させるのは反対だぞ」
「ベーだ、ゆき兄が相手してくれないから悪い」
「ゆき兄…」

俺はゆき兄に近づいた
ゆき兄は俺の顔を見ると笑いを堪えだした

「パイまみれでひっでぇ顔だな、ははは」
「いや、謝れよ!」
「そんなん投げたほうに言え」
「あっはー、ごめんなさーい」
「…ねぇ、ゆき兄この子誰?」
「あー…」

明らかにめんどくさいという顔をしている
顔を近づけてきてこっそりと耳打ちしてきた

「…前にほら、リカの弁当のときに一波乱起こした…」
「ああ!通りで見覚えがあると思ったよ!」
「名前はミギーってな」
「で、このパイ投げはなんなんだよ」
「俺が知るかよ」

とりあえずゆき兄の興味は体育館から逸れたらしい
パイを顔面にくらったけどまぁ…もっとめんどくさいことにならなくてよかった
しかしまだ油断ならない、ゆき兄が体育館にいこうとしたら止めなくては…
よくわからない言い合いを続けるミギーとゆき兄
するとまた誰かが近づいてきた

「ミギー、そろそろ戻ってよー」
「あ、キリン…もうそんな時間かー、ちぇー」
「ああ、戻れ戻れ」
「ねぇゆき兄また遊んでよ」
「暇ならな」
「わかった、それじゃあね!…と、見せかけて!」
「んな!?」

新しくきたキリンも合わせて、2人が同時に大量のパイを乱射した
今度はゆき兄も予想できず俺も手に届く範囲にはいなかった
見事にパイの1発がゆき兄の顔面を捉えた
しかしそれだけでは飽き足らずパイは延々と乱射される
頭のてっぺんから足の先までゆき兄が真っ白になっていく

「キリン!あれ出して!アレ!!」

シャーっと廊下の奥から何だか物凄いものが台車に乗って
多数の生徒に押されて現れた

「自動パイ連射式ガトリング砲!うちらのクラスが3日3晩かけて作った目玉だい!」
「目標補足!撃てー!!!!」
246 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:07:14.50 ID:i1eo.kAo
目の前を、無数のパイの弾丸が横切った
バシッバシッ!などではない
ドガガガガガガガガガガガ!!!言った具合に物凄い量のパイがゆき兄に叩きつけられている
さすがに答えたのだろうか、ゆき兄はフラフラと逃げだそうとした

「甘い!銃座は360度回転するんだい!」

すげー、手が込みすぎだろうと思っていると目の前に大きな白い塊が現れ…
え、ちょっと待てよ、この位置って

「道連れだ」
「おまっ!!!」

それ以上言葉を発する前に身体中に凄い衝撃が走った
あっという間に視界が白に覆われていく
ちょっ…これ…パイ投げの威力じゃない…!
逃げ出そうにも命中するパイの衝撃が強すぎて逃げれない
痛ッ…ちょっ…
もうなんか自分がパイの材料になった気がしてきた
つーか、息が…
っと、そこでピタッと衝撃が止んだ
…?

「駄目だ、機関部が焼けついちゃったみてぇ…」
「冷却が上手くいってねぇんだよ、急ごしらえだったからな」
「まぁとりあえず直しておこうぜ」
「はい、撤収撤収」

ガラガラと台車を押していく音が遠ざかる
ちなみに視界は真っ白で何も見えない

「あー、面白かった!それじゃねゆき兄!」

どうやらミギーも去ったらしい
パイの塊となった俺とゆき兄だけが取り残された
お互い大量の衝撃を受けたせいかしばらくぼーっとしていた

「何これ…?」
「どこの出し物…?てか何なのコレ?」

あれ、この声、リカとカナだ!!
その瞬間身体が動いた
247 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:10:33.15 ID:i1eo.kAo
「もがーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

絶叫、それに反応してゆき兄も動いたらしい

「ぬがーーーーーーーーーーーー!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「化け物がいる!!化け物がいる!!!」
「白い化け物がいる!!」

いや、違う違う!
俺だって俺!!
なんでこのパイ取れないんだよ!!

「もががってもがー!!!」
「ふごごんがががばふけろ!!」
「捕まったら襲われる!!」
「ふがげろ!!!」
「おいおい、なんの騒ぎだよ」
「ヤチャマルさぁぁぁん、助けてぇぇぇえ!!」

ヤチャマル…だと…
間違いなく逃げたほうがいいと本能が告げた
ゆき兄も同じだったのかドタドタと慌てだす音が聞こえた

「はしゃぎすぎだな、お仕置きだ」
「ほがーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ぷげーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
248 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:13:11.85 ID:i1eo.kAo
11/11(土) 夕方

俺とゆき兄は2人でゴミ捨て場で横たわっていた
いや、お互い意識はあるんだが今日という日の不幸を噛み締めていた
ただ無言の時間が流れていく
そういえば…結局何も食べてない…腹減ったな…

「お前ら何やってんだ?」
「ほろにが…」

目をやるとほろにががゴミ捨て場の前に立っていた
両手に大量の食べ物を抱えている

「そ、それどうしたんだ?」
「余り物を貰ってきたりした、皆わりとくれたからな」
「…ゴクリ」
「んだよ、その目は…あげないぞ…」

俺の考えてることを読み取ったのかほろにがは食料を後ろに隠した

「ちょっとだけ…朝から何も食べてなくて…」
「俺なんか2日間、しなびたバナナの皮しか食ってないわ!!」
「ぬ…」
「食料は自分でゲットするもんだぜ」
「…はぁ、やっぱりくれないか」
「おい、たまゆら」
「なにー?わっと…」

ゆき兄から振り向きざまに何かが投げられる
キャッチすると紙袋の中に冷え切ってはいたがイカ焼きが入っていた

「後食おうと思ってたけど忘れてた
冷えたの食う気にはならないからそれでいいならやるよ」
「いいのか!?ありがとう!」

俺は冷えたイカ焼きを早速口に含んだ
確かに冷えてるが空腹も手伝って充分にうまい
しばらく夢中で食らいつく
確かにこれだけじゃ少なすぎるがとりあえずの空腹は満たされた

「ごちそうさま」
「おう」
「…」

そのまま動こうとせずにぼーっとする
ほろにががバクバクいろんなものを食う音だけが響き渡る
249 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:14:04.13 ID:i1eo.kAo
「今日はもう終わりみたいだな」
「…そうか」
「明日出るんだろ?バトルロワイヤル」
「…みたい…ね」
「俺は出ないからな、まぁ頑張れよ」
「おい、たまゆらぁ、俺は出るからな!」

そう言ってほろにがは
たこ焼きをスナック菓子のように放り投げて口でキャッチした

「え?」
「シャインお食事券10万円分とか最高じゃねぇか…!」
「ああ、なるほど…」
「さってと…帰って寝るかな」
「寝るの早いな!!」
「起きててもやることねぇからな…ふぁ」

ゆき兄はあくびをしながら行ってしまった
グラウンドではがやがやと言う声が響いている
…皆が帰り出してるらしい
俺も帰ろう、色々あって疲れたし明日はよくわからないバトルロワイヤルだ…
250 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:15:10.18 ID:i1eo.kAo
11/11(土) 深夜

「う…ぐっ…」
「オオオオ…」
「まだ…やれる…!!斬り払え…!!!」
「ウォォォオ…」
「…ハァッ…ハァッ…」
「…苦労をかけるな」
「…!?
 …いつからそこに…いらしていたんですか?」
「…数分前とでも」
「お恥ずかしい所を…」
「…いや、わかっている
 このところずっと夜な夜な1人で堕人を切っていたんだろう?」
「…」
「…従来通りなら、夜祭もやるつもりだった…と」
「今…夜の学園はまさに堕人の巣のような状況です…」
「3日間」
「え?」
「俺が止めてやる、だから休め」
「…」
「もうすぐ…決着がつくはずだからな…
この学園に渦巻く全ての…」
251 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:17:24.95 ID:i1eo.kAo
11/12(日) 午後

「え〜、それではいよいよ
 今年の学園祭のメインイベント
 邪眼学園最強決定バトルロワイヤルを開催します!!!
 実況は私リカが担当します!解説はシャインの名物店員カナさんです!」
「よろしくお願いします〜!!」

…どうしてあの2人はあんなりノリノリなんだろう

「それではまずはルールの説明です
参加者の皆さんにはそれぞれネームプレートが配られています
 基本的にそれを奪い合ってもらうことになります、1個につき1点です
 日没と同時に集計が行われ最もポイントが高かった人が優勝です
 なお自分のネームプレートが奪われたらその場でゲームオーバーです」

なるほど
つまり自分のネームプレートを守りながら戦う必要があるってことか

「相手から奪ったネームプレートはタイムアップ時に持っていなければポイント加算はされませんが
 奪われないようにどこかにまとめて隠して置いて後で回収などはオーケーです
 最も隠し場所が見つかってほかの参加者にとられる可能性もありますが…
 つまり自分のプレート以外ならどうしようと勝手というわけですね」
「私にも説明させてよー」
「わわ、ちょっ…きゃっ…椅子…
 ガタン!…ガガッ…ジッ…ザー…」
「…ふぅ、すみません
 戦闘区域は学園校舎全体です、校舎から外に出た場合はプレートの有無に関わらずその場で失格です
 校舎内には至るところにカメラが設置され
 その映像はこのグラウンドに置かれた超大型モニターに映し出されます」
「どこのカメラを写すかはリカちゃんが決めるんだよ!」
「なるべく臨場感溢れるようになるように頑張りますね
 なおネームプレートには発信器が埋め込まれており皆さんの動きは全てこちらに伝わります
 基本的に何でもありですが故意の設備の破壊や明らかな殺意のこもった攻撃などは反則として失格にします
 …っとこんなところかな?」

一体どっからこんな機器やら集めてきたんだろう…
メインイベントっても一般の学園祭にしては…ああ、この学校普通じゃなかった

「それでは参加者の方は受付でネームプレートをもらって
 校舎の中に入ってください、事前に参加申請してない方も今なら飛び入りおkです
 30分を過ぎると校舎への立ち入りは禁じられバトルスタートになります」

覚悟を決めて受付に行くとやたら並んでいる
え、これ全員参加するの?多すぎない?
252 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:19:17.68 ID:i1eo.kAo
「あ、たまゆら君こっちこっち」
「ん?」

リカが手招きしている
近づくとネームプレートを渡してくれた

「けっこう予想以上に飛び入りが多いなぁ…」
「事前に参加申請してたのはどんな人がいるの?」
「えっとね、剣三郎さんとか元執行部は何人かエントリーしたかな
 あとほろにがと阿部さんとか」
「…阿部さん?」
「そ〜なんですよ〜」
「うわっ、カナちゃん…」
「うわって何ですかうわって!
 いやそれよりも店長ってばタダで10万円分のお食事券は勿体無いなぁ
 ここはいっちょ俺も楽しませてもらおうか、ついでに優勝すれば損無しだからな
 とか、なんとか」
「…あの人が参加するのか…
 嫌な予感しかしねぇな…」
「しかしこの飛び入りの量は予想外ですよ〜」
「上手くいけば戦わずに優勝できるかもしれないから
 参加するだけ参加してみようって奴らだよ、大半がすぐに落ちる」
「あ、ゆき兄」

並んでいる人たちを指差しながらゆき兄が説明してくれた
まぁ確かに運がよければ別に戦う必要は無いんだよな…

「早く校舎に入っとけ
 今のうちにいい場所をスタート地点として陣取っとけ」
「う、うん」
「ああ、もう1つ」
「ん?」
「序盤に気をつけろ」
「え?」
「はじまりゃあわかるさ、健闘を祈るぜ」
「う、うん…わかった、それじゃ言って来る」

校舎内は割とワイワイガヤガヤしていた
協力していこうぜ!と仲間を募ってる人もいる
協力…ねぇ…マラソン大会の最初みたいだな、一緒に走ろうよのアレ…
うろうろしているとジジッと音がして校内放送用のスピーカーからリカの声がした

「それではそろそろ開始です〜
 準備はいいですか〜?」
「カウントダウン開始〜!!」
253 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:20:12.51 ID:i1eo.kAo
準備といってもな…
周りを見てみたが近くには誰もいないようだ
ゆき兄が序盤に気をつけろと言っていたが…
しかし黄龍鉄甲も無い俺がどこまで渡り合えるものか
ああ、でも全員素手だから条件は一緒か

「3」「2」「1…」
「スタート!!!」


スタートの音が響いたとほぼ同時
遠くから絶叫が聞こえた

「はーはっはっはー!!!10万円分の食事券は頂くぜぇー!!!」
「久しぶりの乱交パーティーだぜ!楽しませてもらおうか!!」
「アッー!!!」
「ごぶぅぁー!!!」

まさか、あの2人、序盤から大暴れか!?
まずいな、ここでポイントが大きく突き放されたら…!


- 校庭 -

「ぬぁんと序盤から大混戦!!
 飛び入り参加の皆様があっという間にネームプレートを奪われていきます!!」
「ほろにがって人は普通に強いね!
 店長…じゃなかった阿部さんも普通に強いけど何か妙な動きが多いね!
 後ろに回ったり、組み伏せたりと!」
254 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:21:29.65 ID:i1eo.kAo
- 校舎2階 -

「さて、どうすべきか…」

とりあえず巻き込まれたくないので絶叫のする方向とは
反対側に歩みを進めてみる
すると前から3人ほど…

「センパイ、こいついいんじゃないっすか」
「おうおう、ネームプレートさっさとよこしな!」
「早くよこさないと痛い目見ちゃうぜ!?」

不良なのかな…
どうやら結託して3人で狩る気らしいな
さっさと渡して逃げたいのは山々なんだが参加した以上どこまで行けるかも試してみたい
とは言っても黄龍鉄甲も無いしな

「ブー!時間切れ!!
というわけで強制的に奪っていくぜ!!」

リーダー格の男が拳を突き出してきた
…遅い?

パッシィィィィン!!と気持ちのいい音が響く
男の拳を俺は受け止めていた

「なぬ!?」
「熊殺しのセンパイの殺人パンチを受け止めた!?」
「なんだこいつ!!」
「…」

今度はこちらからパンチを撃ってみる
様子見のつもりだったのだがあっけなく男の顔面に命中した
ボゴッ!と音が響いて男が後ろに吹っ飛んだ

「熊殺しが吹っ飛んだ!!」
「んなアホな!?」
「センパイ!冗談っすよね!?」
「…」
「駄目だ!泡吹いてるぞ!!」

こいつら、見掛け倒しにも程があるじゃないか
255 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:22:29.36 ID:i1eo.kAo
「おい」
「うわ、やべぇ!!ちくしょうくらえ!!!」
「ちょっと、待てよ…待てって!」

突っ込んできたので思わず拳を突き出すと向こうから辺りに来て顔面に命中した

「ぷえ…」
「もらったぁ!!」

もう1人が後ろに立っていた
考える前に身体を捻り、そのまま脇腹に蹴りを叩き込んだ

「ぷぉっ…」

バターン!と勢いよく倒れる
…どうしよう、とりあえずプレートを奪えばいいのかな


- 校庭 -

「たまゆらさん!!3人に襲われたもののあっというまに返り討ちです!!」
「たまゆら君すげー!かっこいいー!!」

「…ま、当然だわな
 何度も死線をくぐり抜けてきたんだ
 黄龍鉄甲があろうがなかろうがあいつの戦闘能力は並の奴じゃ相手にならんほど高まってる
 本人は気づいてないだろうが…」

「えー…もうすでに半数以上がネームプレートを奪われ敗走
 勝機が無いと悟った人たちも戦線離脱…
 大混戦はここでなくなりそうです」
256 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:23:33.26 ID:i1eo.kAo
- 校舎2階 -

何人か絡んできた奴らがいるのだが俺は順調にプレートを奪っていった
自分のと合わせてええと、今7点か…

「む」
「げ!剣三郎!」
「たまゆら…いざ尋常に勝負!!」
「いきなりかよ!!」

剣三郎がこちらに向かってくる
だが突然剣三郎の動きが止まった

「こ、これは…!?」
「楽しそうじゃないか、俺も混ぜてくれよ」
「ああ、あああ、阿部さん!?」

剣三郎の背後に阿部さんがいた
その顔は楽しくてしょうがないという顔だった

「…!この者…なんという邪悪な気…!!!」
「尻を出してるなんて誘ってるのかい!?」
「アアアアアアアアアアッー!!!!」
「剣三郎ォォォォォォォォオオオ!!!」
「待ってな、たまゆら君、すぐに君も…!何だ!!抜けない!!!!
 こいつ、ガッチリ締め付けてやがる!!」
「逃げろたまゆらぁぁぁぁぁぁ!!
 ここは俺が食い止める!!」
「クソッ!なんて締め付けだ!!うぉぉぉぉぉぉ!!離せ離せぇぇぇぇ!!」
「日々鍛錬を積んだ俺の尻をそう簡単に征服できると思うな!!
 さぁ今のうちに逃げるんだたまゆらぁぁぁ!!」
「くっ…!!」
「うぉぉぉぉぉぉお!しゃらくせぇぇぇ!!内臓まで貫いてやる!!
 マキシマムドリルバーストォォォォ!!!」
「アアアアアアッー!!!!!
 らめぇ!とんじゃう!とんじゃう!」

剣三郎…すまない!!
そしてありがとう…!!

- 校庭 -

「なんだか物凄いことになってます
 ちなみに画像にはモザイク処理を施してます」
「店長マジになってる…」
257 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:25:39.96 ID:i1eo.kAo
- 校舎3階 -

「はぁっ…はぁっ…
 剣三郎…お前の犠牲は無駄にはしない…」
「あ!!」
「げっ…ほろにが…!!」

ああ、なんでこう次から次へと!!

「プレートよこせぇぇぇぇえ!!!」
「誰がやるかよ!!剣三郎が純潔を捨ててまで守ってくれたプレートだ!!」

突っ込んでくるほろにがの目には狂気が宿っていた
食欲、そしてそこから生み出される無尽蔵の食への執念
それが彼の人格を狂わして1匹の悲しい悪魔を…ってんなこと言ってる場合じゃねぇ!!!
変なこと考えたせいで対応が取れねぇ!!

「もらったぁぁぁぁぁあああ!」
「オッサン邪魔だぁぁぁぁ!!」

ガコーン!と音がしてどこからか飛んできた金ダライが見事にほろにがの後頭部に命中した
ほろにががバランスを崩して俺の横をすっ転んでいった

「ほげぇぇーーーー!!!」
「やっと見つけたぞたまゆらぁあああああ!!」
「え、えび助…!!」
「最初にシャインで阿部さんに…(4話参照) 
 それからことあるごとに使われてんだよ俺は!!
 風呂場で堪忍袋の緒が切れた!!復讐だ!!!」
「あれは俺のせいじゃないだろ!!」
「関係あるかァーーー!!!!」
「理不尽な!!」

飛び掛ってくるえび助
え、何で飛び掛って…!?
どしゃっ!と俺に全体重をえび助が乗せてくる
俺は後ろに倒れて仰向けになる

「このままふん縛って阿部さんに届けてやる!!」
「馬鹿それだけはやめろ!」
「知るかぁぁぁぁ!!」
258 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:26:39.95 ID:i1eo.kAo
必死に抵抗する
冗談じゃねぇ!!今の阿部さんの前に縛ってもっていかれたら全身酷いことになる!!

「仕留めたぁぁぁ!!!!」
「なぬっ!?ホゲェァー!!!!」
「えっ!?」

いきなりえび助が吹っ飛んでいった
壁まで吹っ飛んで叩きつけられる
生身であんな技が出せる奴っていったら…

「高橋まで参加してんのかよ!!いよいよヤベェよこれ!!」
「おいコラァ!ガキどもぉ!!」
「げ、ほろにがも復活した…」
「あ?何だオッサン?」
「おーおー、にくったらしいガキだ…
 まぁいい、プレート全部置いていきやがれ!!」
「そりゃこっちのセリフだぜ?」

あ、何かこの2人相性悪いみたいだ
となると今のうちに…!
俺はこっそりと立ち上がってそろそろと逃げ出す
その前にえび助の持ってるプレートをもらっておこう…

「クソガキがぁぁ!風穴開けたらぁぁぁ!!」
「顔面ボコボコにしてやるよオッサン!!!」

- 校庭 -

「弱者が淘汰され強者が生き残る…
 まさに今校舎内は太古の時代です!!」
「意味わかんないけど、言わんとすることは理解できるよ」
「カナちゃんは、誰が優勝すると思う」
「うーん、たまゆら君に賭けたいなぁ個人的に
 でもやっぱ店長…阿部さんが大本命かなぁ
 さぁ見物人の皆さんベットベット!!」
「賭博行為は駄目だよぉ!」
259 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:28:12.50 ID:i1eo.kAo
- 校舎3階 -

階段に辿り着く
降りれば2階、上がれば屋上
2階は阿部さんがいるかもしれないし、屋上は退路がない!どうすればいい!
迷っていると階段を高速で駆けあがって来る音が聞こえた

「ウォォォォォー!!!たまゆらはどこだーーーー!!!」

獣の咆哮、間違いなく阿部さんだった
駄目だ!下には行けない!屋上に上がるしかない!!
階段を駆け上がり、屋上のドアを蹴りあける

「飛んで火にいる夏の虫っと」
「げっ!!透過!!」

開けた瞬間、少し前に透過の姿が見えた
まずい、こいつ待ち伏せ戦法してたのか!!
透過は銃を構えた

「エアガンだから安心していいよ
 そら!そら!そらぁ!!!!」

パパパパパァン!と音が響く
慌ててその場から飛びのく

「逃がさないって」

やべぇ!当たる!
と、思った瞬間ドアが吹っ飛んだ
吹っ飛んだドアは透過に命中しドアごと吹っ飛んでいく

「ハンゲバブッ!?」
「誰だ!!」
「ぜぇっ…ぜぇっ…」
「た、高橋!?」
「たまゆら…、いや今はいい!!とにかく手伝え!ここを塞げ!!」
「どうしたんだよ、ほろにがと戦ってたんじゃ…」
「ガタイのいい下半身裸の男が乱入してきてそれどころじゃなくなったんだよ!!」
「阿部さんかよ!!もうなんか暴走してるなあの人!!」

とにかくドアを塞ごうと吹っ飛んだドアをはめ直して
とりあえず気絶した透過で抑えることにした
260 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:29:24.76 ID:i1eo.kAo
「よし、これで…」

同時にドアがガタンガタンガタンガタン!と大きく揺れた

「ききき、きたぁぁぁぁ」
「クソ、俺としたことが自ら退路を断っちまうなんて…」

そして魔界と現実を隔てていたドアがついにガターン!と落下した
その先には天を貫くパンデモニウムを携えた悪鬼がいた

「ギャアアアアアアアアアア!!!」
「さぁ、たまゆら…おいで…」
「やだやだやだやだやだぁぁぁぁ!!」
「クソッ…万事休すか…!!」
「…!何だ…!!」
「掘られる気分は…どうだ?」
「雷雲!!」
「貴様…さっき掘ってやったはず…!!」
「…ああ…掘られた…
 たまゆら…俺の能力覚えてるよな?」
「!」
「倍返しだ!くらえ!」
「ウォォォォオォォォオォォ!!」

阿部さんがヨダレを垂らしながら絶叫した
逃げるなら今しかない!!

俺は雷雲と阿部さんの横をすり抜けた
同じように高橋も屋上から脱出する

「ウォォォォォォ!!待てぇぇぇえ!!」
「お前の相手は俺だろう!!」
「アァァァアアアアッー!!!」

- 校庭 -

「屋上は酷いことになってますねぇ
 正直あんまりモニターしたくありません」
「一部の人は喜んでると思うよ〜」
「ちょっとキャラが濃すぎると思うけど…」
261 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:32:12.87 ID:i1eo.kAo
- 校舎3階 -

3階に降りる

「見つけたぜ!!」
「ほろにがっ!しつけぇなお前!!」
「たまゆら、あいつの脅威も無くなったし共同戦線も終わりだ」
「ケリつけようぜ」

クソ、逃げれないか…
ほろにがと高橋と俺の三つ巴か…
勝機があるとするならお互いが潰しあってくれるぐらいか

「そらぁっ!!」
「うおらぁっ!!」

と思っているとほろにがと高橋が打ち合いを始めた
よっしゃ!狙い通りと思っていると軌道を逸れた高橋の蹴りがこっちにまで飛んできた

「うわっうわっ!」
「2人ともボコボコにしてやるよ!!」
「おいおい!!おい!おい!待て待て!!」
「たまゆら吹っ飛べぇぇぇ!!」

絶叫と共にほろにがの拳が向かってきた
高橋の蹴りのせいで体勢が揺らいでいるので直撃した

「がっは…!」
「もらったぁぁぁぁ!!」

立て続けに高橋の蹴りがこっちに向かってくる
まずい!直撃する!!

「必殺千年殺し!!!」

と、声が聞こえたと思ったら高橋の動きが止まった
そのままぶっ倒れた

「かはっ…」
「ふふふ、僕の浣腸は緻密な計算の上で確実に直腸にまで届く…
 しばらく動けないはずですよ」
「しげる!!」
「おっと、勘違いしないでください
 助けたのではなく彼を倒すチャンスを逃したくなかっただけです」
「後ろだ!」
「ぬっ!」
262 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:33:54.77 ID:i1eo.kAo
ほろにがが姿勢を低くしてしげるの後ろにいた
しげるは気づいているようだが動かない

「その手、その動き…浣腸か!
 だが無理だ!読まれた以上、ケツ筋を閉めることで回避できる!!」

しげるの尻がキュッ!と引き締まったようだった
しかしほろにがは動かなかった

「…あれ?」

その瞬間、ほろにががニタリと悪意に満ちた笑顔になった
まずい!

「時間差万年殺し!!!!」

ドッスゥ!!と音がした気がした
しげるが白目を剥いてその場にぶっ倒れた
ケツ筋が緩んだ瞬間を的確に狙って無防備になった所を強烈な1撃で仕留める
ほろにが…こいつ…プロだ

「クク、年季が違うんだよ…
 俺は親指を使うこでその威力を数倍にまで跳ね上げている」
「クソッ…」
「さて、これでもう生き残りは俺らぐらいじゃねぇか?
 腹も減ったしここいらで終わろうぜ…」
「…クッ」
「ほら、どっちにしろもうすぐ日没でタイムアップだしな」
「ひとーつ、人の世蔓延るガチムチを」
「!?」
「ふたーつ、ふらりと現れ後ろを取って」
「げ…こいつまた…」
「みっつ、見事に突き貫く」

ゆらーっと現れたのは阿部さんだった
こ、こいつ…まだ…

「また邪魔するのか変態ヤロー」
「それはこっちのセリフだな」
「上等だ…」

三つ巴になった…
どうやらもう覚悟を決めるしかなさそうだ


- 校庭 -

「いよいよクライマックスですねぇ」
「優勝候補同士のガチバトル…
 こりゃあ勝負の行方が見えないねぇ」
263 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:35:25.53 ID:i1eo.kAo
- 校舎3階 -

阿部さんに後ろを見せるわけにはいかない
しかしほろにがから目を離すことも出来ない
後ろを守りつつもほろにがから目を逸らさない
こうなると必然的に壁を背にして戦うことになる
しかし動けない
不用意に動けば手があいているほうから襲撃される
それは2人も同じのようで誰一人動かない膠着状態のまま時間が過ぎる
しかし阿部さんはもう我慢できなかったようだった

「ウォォォォー!!!」
「んなっ!?俺かよ!!」

絶叫しながらほろにがに突っ込む阿部さん
掘られたくないのだろう、物凄い勢いでそれを回避するほろにが
だがそのせいで体勢が崩れる
阿部さんの追撃はなおも続き二人はもみ合いになる
今がチャンスか…!?
俺は横からとりあえず仕留められるほうを仕留めようと近づいた
そして、阿部さんに向かって拳を振りぬいた

「おっと、せっかちだなたまゆら君」
「うおっ!」

阿部さんは咄嗟に飛びのき俺の拳は空を切る
くそっ!一旦体勢を直さないと!

「仕切りなおしなんかさせないよ」

間を置かずに阿部さんがこちらに突っ込んできた
やばい!と思ったとき腕を利用して仰向けの状態のままほろにがが阿部さんのほうへ滑っていった

「くらえ、変態」
「何!?ハォォォウッ!!!!」

メシャ、という音が聞こえた気がした
ほろにがの爪先が、完璧に阿部さんの股間
詳しく言うなら、玉を捕らえていた

「オォォォォォォー…」

変な声をあげてドサリと倒れる阿部さん
どうやら…悪魔は倒れたようだ…
と、なると後はほろにがか…
それなら今の隙を逃すわけには!!
俺は座り状態になったほろにがに走って近づくと同時に拳を繰り出した
264 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:37:36.48 ID:i1eo.kAo
「もらったぁ!!」
「あめぇんだよ!!」

拳と拳が、チッ!とこすれあった
そして互いの拳は互いの顔に命中した

「がぱっ!」
「うばっ!」

お互いが後ろにすっ飛ぶ
衝撃でポケットにいれていた今まで集めたネームプレートが当たりに散った

「グッ…くそっ…」
「くそっ…たまゆらやりやがる…
 そういや俺とお前はマジで戦ったことはあんまり無かったよな…」
「ああ、そういやそうだったな…」
「丁度いい、どっちが格上か決めようぜ!」
「…フン!望む所だ!!」

立ち上がってお互いに構える
恐らく、これが最後
お互いにこの1撃に全力を乗せるに違いない
だとすれば後はどうやって相手の攻撃を避け1撃をクリーンヒットさせられるか…
裏の読みあい…
そして少しの間の後、お互い示し合わせたかのように同時に相手に向かって走り出した
ただぶつかり合えば恐らく俺が読み負ける
だから俺は、飛んだ

「奇抜だがタイミングを誤ったな!空中じゃ避けれねぇぞ!!」
「承知の上さ」

ほろにがの拳をよく見る
一瞬たりとも目を離さず
どんな些細も動きも見逃すな!!

「ぶっとべぇ!!!」
「おおおおお!!」

足の裏に、とても強い衝撃
だが何とか押さえ込み、俺は拳をほろにがの顔面に向けた

「こいつっ!足で…!
 だがまだ左手があるんだよ!!」

俺の拳はほろにがの顔面を打ち据えた
だが1テンポ遅れて腹部に衝撃
ほろにがの左拳がみぞおちに深く突き刺さっていた
265 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:39:38.82 ID:i1eo.kAo
「ぐぇ…」
「がはっ…」

もつれ合うように2人で吹っ飛んで倒れる
その瞬間、静かだった校舎内にリカの声が響いた

「ターイムアーップ!!タイムアップです!!
 これにてバトルロワイヤルは終了です!お疲れ様です!!!」
「…終わったみたいだぜ」
「…んだなぁ…」
「…まぁでも…ほら、あれだよ…」
「…いい勝負だったってか?」
「…うん」
「へっ、ガキがいっちょまえに…
 だがまぁ」

ほろにががスッと右手を差し出してきた

「いい勝負だった」
「へへっ」

俺達は固い握手を交わし…
その瞬間右手に激痛が走った

「だぁああああああああああ!!!」
「油断大敵火がぼーぼー、必殺画鋲地獄」
「て、てめぇ…!」
「お、おい待て待て待て!もうタイムアップだってば!!
 よせ!消火器はまずいって!!おおおおい!!」
266 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:42:09.12 ID:i1eo.kAo
11/12(日) 夜

校庭でヤチャマル達に善戦を称えられながら
集計結果を待つ
ほろにがと俺…どっちが勝ったのか…

「集計終わりました!
 優勝者は1−Aの蝶!!!」
「なぬ!?」
「何だと!?」

ほろにがが納得いかねぇ!と行った具合で文句を言い出す

「なんでだ!明らかに俺かたまゆらだろ!
 だいたい蝶なんか見なかったぞ!?」
「えーっとですね…カナ、説明を」
「解説しまーす
 ほろにがとたまゆら君はですね〜
 クロスカウンターの時に集めたネームプレートをブチまけちゃったじゃないっすか
 あれ拾ってないからタイムアップ時にポイントに加算されてないんですよ
 だから2人は最終的には1点です」
「なお、優勝者の蝶はこそこそ隠れながら皆さんが倒して気絶やらしてた参加者のプレートを
 こっそりと集めまくってたら勝っちゃったとコメントしてます」
「何じゃそりゃぁぁああああああああああああああああああああああ!!!」

あんだけがんばってこの結末かよ…
皆掘られたりして得た物は無くて失った物は多いなぁ…

「ははは、散々だなたまゆら」
「ゆき兄…」
「ま、いいじゃねぇか、割と楽しかったんだろ?」
「う、うん…」
「もう祭りも終わりだ、ほら見とけ」
「え?」
267 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/10(土) 23:43:26.13 ID:i1eo.kAo
ヒューン!という音が聞こえたと思ったら
ドーン!と大きな音が辺りに響いた
おいおい、これってまさか…

「たまやー…ってな」
「花火までやんのか…この学園すげーなぁ…」
「お!いたいた!おーい!皆で花火バックに写真撮ろうよ!」
「めんどくさい」
「いいからいいから!ほらたまゆら君も!!」



「…」
「ここは花火を見るには特等席だな」
「そうね」
「…ずっと閉じ込めてしまってすまないな
 だけどもうすぐ終わる…許してくれ」
「責めるつもりはないは
 いつかこうなるのは予想していたから…」
「辛い使命も、己を縛る枷も…
 せめて花火の間だけは忘れるといい」
「…うん」




「クックック、綺麗だなぁ」
「ウウ…ウウウウ…」
「…」
「闇に光り輝き一瞬で消える…かぁ
 …まるで未来を暗示してるのかのようだなぁ…」
「…成る程」
「ま…今宵ぐらいは夢を見させてやろうかぁ…
 我らも、たまには過去を想いを馳せるのも…悪くはない…」
「同感ですね」
「ウゥゥゥ…」


その花火は、戦いに生きる者、そうでない者
全てに平等に降り注いだ
祭りは終わる、またいつもの日々が戻ってくる
だけど僕らは決して、今日の花火を忘れないだろう
ただ純粋に、打算も何も無く舞い踊るように戦えた今日を


15限目 - カーニバル -
268 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/10(土) 23:50:33.55 ID:NVYuicYo
ゆき兄おつ!


結局ローリングすもも祭りってなんなんだよ・・・
269 :深淵槍裂歓声暮色枕辺涙色番蝶 :2009/10/10(土) 23:55:56.38 ID:nAcofiw0
ゆきにー乙!


阿部さん無双こええwwwwwwww
270 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/11(日) 01:17:07.61 ID:hdSa8Zko
ゆきに乙!

ダメだwwwwwwwwwwwwwwwwww笑いポイントが多すぎるwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

271 :リリーホワイト :2009/10/11(日) 06:48:46.14 ID:TsMv8kDO
朝ですよー
272 :ミギー :2009/10/11(日) 06:58:41.41 ID:2fLAiADO
最近毎週ポケモンサンデー見てる
273 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/12(月) 08:06:09.86 ID:M1qCEoDO
朝ですよー
274 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/12(月) 08:07:12.10 ID:M1qCEoDO
ははっ
275 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/10/12(月) 08:17:06.24 ID:bWc7TXEo
ははっ
276 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/12(月) 15:36:54.35 ID:ypn7IQDO
今起きた!


今日はリリーさんじゃないんだwwww
277 :リリーホワイト :2009/10/13(火) 07:03:19.03 ID:AaN6PoDO
朝ですよー
278 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/13(火) 22:59:58.17 ID:zEwSkb.o
寝すぎた・・・
279 :リリーホワイト :2009/10/14(水) 06:52:35.20 ID:A32kiwDO
朝ですよー
280 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/14(水) 23:53:16.50 ID:S.QYksDO
今日も過疎ってんなwwwwwwwwwwww









こないだまた年とったから記念にうp
明るさ+1で誤魔化した事は反省していないwwww

http://imepita.jp/20091014/857520
281 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/15(木) 00:23:00.78 ID:jArwp2DO
明るさを足すと顔色が大変なことになる僕







夜叉丸[ピーーー]歳になったのか
282 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/15(木) 00:27:18.65 ID:IRuOjoDO
ですよねwwww





ええ、日曜日に無事[禁則事項です]歳になりました
283 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/15(木) 00:29:44.48 ID:jArwp2DO
記念に白やんあたりが眼鏡うpでもしてくれんじゃないかな
284 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/15(木) 00:31:17.51 ID:IRuOjoDO
!!!!!


そ れ だ !
285 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/15(木) 00:32:57.89 ID:IRuOjoDO
興奮しすぎて1個だけスペース半角になった
286 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/15(木) 00:37:02.95 ID:IRuOjoDO
tk黒やんもメガネうpしてくれればいいと思うよ?
287 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/15(木) 01:04:19.45 ID:jArwp2DO
急に携帯のカメラ壊れちゃったからうpは無理みたい><
288 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/15(木) 01:22:29.46 ID:IRuOjoDO
前にも聞いたな、それwwwwww
289 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/15(木) 01:25:37.58 ID:jArwp2DO
じゃあ最初からカメラついてなかったからうpできないや><
290 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/15(木) 01:37:18.04 ID:IRuOjoDO
おまwwwwwwwwwwwwこないだうpしてたじゃねぇかwwwwwwwwwwww
291 :ミギー :2009/10/15(木) 07:00:18.47 ID:wF5.BQDO
ヤチャマルおめーっ!

ヤチャマルの誕生日に何年かぶりに朝ごはんに白飯食べたよ!
292 :リリーホワイト :2009/10/15(木) 07:17:11.60 ID:jArwp2DO
朝ですよー
293 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/15(木) 07:18:32.81 ID:jArwp2DO
>>290
あれは僕のふりをした白やんなんだよ!!
294 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/15(木) 07:33:05.81 ID:IRuOjoDO
>>291
なぜに白米wwwwwwww

>>293
^^;
295 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/15(木) 07:57:50.73 ID:jArwp2DO
>>294
本当本当!
296 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/15(木) 21:14:53.55 ID:jArwp2DO
あ、ここで止まっちゃうんだ
297 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/15(木) 22:15:23.93 ID:vRNV2nko
クライマックスですので乾坤一身で必死に書き上げています
298 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/16(金) 07:38:52.99 ID:eE013dEo
早起きした僕がリリーさんに変わって
爽やかな朝をお送りします

こちら山口でした
299 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/16(金) 08:56:44.56 ID:J2rMrEDO
爽やか…?


あ、うざやかの間違いか
300 :そら :2009/10/16(金) 10:29:52.03 ID:Q19G9QDO
うざやか!
301 :リリーホワイト :2009/10/16(金) 11:21:06.20 ID:hcvbVMDO
朝ですよー
302 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/17(土) 06:47:33.67 ID:aMre5k.o
嗚呼太ましい…
303 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/17(土) 06:58:56.92 ID:h8XblsDO
\白岩さん/
304 :そら :2009/10/17(土) 08:20:58.39 ID:PZeI0cDO
太ましい白やんに見えた
305 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/17(土) 09:01:17.15 ID:h8XblsDO
そんな白やんやだ……
306 :そら :2009/10/17(土) 09:27:03.84 ID:PZeI0cDO
私も嫌です…
307 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/17(土) 09:53:56.08 ID:FKmLYUDO
俺も嫌だ…
308 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/17(土) 10:03:22.48 ID:h8XblsDO
でも筋骨隆々なしげるは見てみたい気がする
309 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/17(土) 10:18:55.34 ID:FKmLYUDO
黒光りする筋肉か…
310 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/17(土) 10:27:58.42 ID:h8XblsDO
ビルダーだな
311 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/17(土) 11:07:05.93 ID:FKmLYUDO
\キレテル!キレテル!/
312 :そら :2009/10/17(土) 11:27:39.98 ID:PZeI0cDO
えっ
http://imepita.jp/20091017/412040
313 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/17(土) 11:43:34.69 ID:FKmLYUDO
>>312
どこから突っ込むべきか…


視力の左右差自重wwwwwwwwww
314 :そら :2009/10/17(土) 11:51:08.76 ID:PZeI0cDO
>>313
それより私は痩せすぎで要観察ななが気に食わない
これ就職に使うとか言うし、落ちたら困るんですけど
315 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/17(土) 11:56:40.39 ID:FKmLYUDO
>>314
それは全然問題ないだろwwwwwwww

白やんが無事就職できてるわけだし
316 :そら :2009/10/17(土) 12:08:04.03 ID:PZeI0cDO
>白やんが無事就職
安心しました
317 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/17(土) 21:11:46.46 ID:h8XblsDO
174で51はやばいwwwwwwww
318 :ミギー :2009/10/17(土) 21:50:09.34 ID:.qBUJsDO
なんとなく、友達に顔が乳首みたいだと言われたことを思い出した
319 :そら :2009/10/17(土) 21:52:30.61 ID:PZeI0cDO
>>317
貴方には絶対に言われたくない!
320 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/17(土) 21:54:51.52 ID:h8XblsDO
>>319
171で49より174で51のがやばくね?


あ、でも最近は48ぐらいかもしれん
321 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:01:03.18 ID:xti3wGoo
今週からいよいよクライマックスだよー
それじゃはじめるよー
322 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/17(土) 22:02:48.43 ID:FKmLYUDO
>>320
どっちも大差なうわなにするやめ(ry
323 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:03:28.97 ID:xti3wGoo
邪眼学園黄龍譚
16時限目 - 決着 -

11/12(日) 深夜

校舎の裏、そこにある茂みの中でガサガサと動く者
不定形の卵塊のようなソレはビクビクと小刻みに震える
そして、一部に亀裂が走る
亀裂から出てきたのは、人の腕
続いて頭がゆっくりと這いずり出してくる

「くぁぁぁ…!!!」

ビチャッビチャッと水気を含んだ音が周囲に響く
やがて卵塊はその形を崩していく
後には這いずりだした男だけが倒れていた

「再生蟲を仕込んでいなかったら生きてはいなかった…
 まさかここまでこの俺が…追い込まれるとは…!!
 クソッ…!クソがッ…!!!次こそ必ず…!!」
「野心、憎悪、憤怒、狂気、そして…絶望」
「誰だッ!!」
「心地いいな、その衝動…」
「貴様は…!?」
324 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:05:44.46 ID:xti3wGoo
11/14(火) 深夜

土砂降りの雨が降りしきる中で
俺と白やんは互いに肩で息をする
荒れた呼吸は静まらず、心臓の鼓動は張り裂けるように早い

「最初に会った時とは…
 まるで別人のような強さだな…
 この短期間で…何が貴様を強くした…」
「俺は…!」

ビシャと、足元の水溜りの水が跳ねた
踏み出した足が塗れた地面を蹴り出し、湿った土を蹴り上げる
白やんの持つ鎌が怪しく揺らめく
それが合図。
堰を切ったように刃が煌き、刃に産み落とされる白い輝き。
白やんが駆け出しても光は動かない、ただ刃を白く光らせ続ける。

「終わりだ、最後の楔は必ず俺が守り抜く」

白やんが鎌を振るった。
無数の輝きが、一斉に風を裂いて飛ぶ。
その先には俺、飛来する輝きは圧倒的速度の化身。
視界が、真っ白に染まっていく
325 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:07:21.10 ID:xti3wGoo
11/13(月) 朝

「ふぁ〜あ…」

朝の日差しを身体に受けて目を覚ました
もっと寝ていたかったが…そうもいくまい
昨日あれだけのことをやったのに代休も無いなんてな…
幸い筋肉痛にはなっていない、戦いの賜物かな
出来ればもう戦いはゴメンだ
けれどそうも行かないだろう
まだ白やんという最大の敵が残っている。
だけどそれさえ乗り越えれば全てが終わる
約束も果たせる、60年前のあの場所での約束も…
…色々あった、けれどやっと終わりが見えたんだ
必ず、白やんを倒そう

「って考えてる場合じゃなかった
 とっとと用意しないと」

俺は服を着替えて
カバンを持って学校へと向かった
教室は学園祭の翌日だと言うのにいつもより騒がしい
そう思っていると皆が近づいてきた

「おいおい、たまゆらすげーなお前!」
「え、何が…?」
「昨日のバトルロワイヤルだよ!
 優勝は出来なかったけどお前滅茶苦茶強いじゃねーか!」
「不覚にもかっこいいと思っちまったぜ!」
「そ、そうかな」
「もっと自信もっていいと思うぜ!」
「そうそう、見直しちまったぜ!」

皆に褒められていい気分になりながら席についた
しばらくしてリカが登校してきたが俺と同じように昨日のバトルロワイヤルについて話されていた
そういえば今日はゆき兄は来ていないか…
遊び疲れたのかな
326 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:09:44.06 ID:xti3wGoo
11/13(月) 午前

酷く、眠い
なんだろうな、たっぷり寝たはずなのに
先生の声があまり頭に入ってこない。
朦朧とする意識を必死に現実に留めようとする
だがこういう時はいくら頑張っても眠気には抗えない。
目を閉じ、一瞬意識を失い、気がつくと目を覚ます。
それを何度も何度も繰り返していく…
そういえば前もこんなことがあったな
確かあれは、そう、姫に夢の世界に誘い込まれた時…








さやさや、さやさやと細い音が俺を包んでいた。
触れ合う葉と葉が風に唄う。
葉…?

「!?」

飛び起きて周りを見渡す。
一面に広がる緑、大海を思わせる広々とどこまでも続く草原。
空は青く、小さな雲が流れていく。
ここは…また姫の夢か?
しかし前に来た時と比べて随分と…違う。
陰鬱だった空気を一掃され
とても気持ちがいい、春の日のような暖かい日差しに照らされ。
吹き抜ける風によって草が唄を奏でる。
とても、暖かな、夢だ
327 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:12:06.74 ID:xti3wGoo
突然、一際強い風が吹いた。
ざあっと、草が音を立てて大きく揺れる
後ろから声が聞こえた。

「たまゆら君…」

姫の声だった
俺は振りぬいて聞いた。

「…またやる気なの?」
「違うよ、ちょっと話があってさ」
「わざわざ夢に呼び出さなくてもさぁ」
「ごめん、ごめん、自分のクラス以外にはなんとなく行きづらくて…
 特に下級生の教室になると」

共感はできるな、確かに下級生の教室って入りづらい
敵意も無いようだし俺は黙って話を聞くことにした

「それで話って?」
「…会長が、いよいよ動くみたい」

覚悟はしていた、思ったよりも遅いぐらいだ
猶予をくれた、ということだろうか
しかしやはり実際に事実を突きつけられると動揺が全身を駆け巡る。

「多分、近いうちに何かしらのアクションはあると思う
それが今日か、明日か、明後日か、その次かとか詳しいことはわからないけど」
「…そっか」
「…怖くは、無い?」
「怖いさ…ずっと怖い…いつもいつも怖くて怖くて逃げ出しそうだ
 それでも逃げ出さないのは…支えてくれる人たちがいるから
 それに逃げるのはもうやめた」
「そっか…」
「伝えてくれてありがとう」
「どういたし――!?」

姫が驚愕の表情を浮かべると同時に周囲の草花が一気に枯れ果てていく
空はゆっくりと青から赤へと景色を一変させていく

「夢が…干渉を受けてる…!?
 現実…からじゃない…同じ夢…無意識の世界から来る強い力…!!」
「ひ、姫!?」
「あ…駄目…夢が…弾ける…!!!」

ぱん、と音が周囲に木霊した
同時に夢が収束し、小さな塊となる
その小さな塊に内包された俺。
頭の中に無数の景色が飛び込んでくる
早回しのビデオを見ているみたいにあらゆる景色が高速で移り変わる。
目をつぶってもそれは消えることはなく瞼の裏で展開される無数の景色。
やがて世界は真っ白になった。
328 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:15:06.43 ID:xti3wGoo
目を開けても真っ白、閉じても真っ白。一点の曇りも存在しない純白の世界。
そして俺の前に人が立っていた。
正確には男がどうかもわからない、光の集合体が人の形を成してるだけだった。

「強制転移は骨が折れるな」

全方向から包むように響くその声。
その声から目の前にいる奴は男だと判断した。

「お前は…誰だ…」
「ある意味ではお前に最も近く、最も遠い者、と言えばいいか」
「謎かけやってる暇はないんだよ!
 ここはどこだ!姫はどうした!」
「ここは俺の世界、無意識下に作り出された空虚の空間
 同じ無意識下に存在する夢の世界にいたお前を引きずり込むために構築された空間」

淡々と質問に答える、その存在
話は出来るようだ…

「あの女は別にどうもなっていない
 ただ夢に穴を開けただけだ、今はただ眠っている、もしくは目が覚めているか」
「…俺を招待してどうするつもりなんだ?」
「それはゆっくり話そう
 座るといい」

フッと目の前に椅子が現れた
まるで王様が座るかのような豪華な椅子だった
罠か、それとも…?
どっちにしろ、よっこらせと座るわけにはいかない

「このままでいい」
「…では話を進めようか
 だいたいの事情は理解しているが故に聞きたいのはたった1つ」
「何だ?」
「君はどうあっても生徒会長、白やんを倒すつもりか」

こいつはなぜ知っている?
やはり生徒会に関わりがある人間?
それとも堕人か?もしくは黄龍の意思と言っていた天下の仲間か?
何にせよ俺の答えは決まっていた

「倒す」
「…なるほど、いとも容易く言い切れる程の強い覚悟か
 ではどうしてそこまで?一般生徒を守るためだけか?」
「…約束だからだ
 俺は堕人を完全消滅させなくちゃいけない」
「…」

光の塊は黙ってしまった
何かを考えてるようにも見えるし
ただ沈黙しているだけのようにも見れる
329 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:17:16.69 ID:xti3wGoo
「…まぁいい、状況がどうであれ私がお前に希望を見出したのは事実だ」
「希望?」
「だが人の心は脆い
 脆弱で、繊細で、危うげ…
 しかし事実の否定は許さない
 お前が為すこと、そしてそれによって起こる事実を決して否定はするな」
「似たようなことを前にも誰かに言われたような気もするな」
「私が君をここに呼んだのは状況と君の意思の確認だ
 白やんが勝てば学園はこれからも何も変わらない
 君が勝てば学園に長い時をかけて施された闇を打ち崩す可能性はある」
「用件が済んだならそろそろ開放してくれないか?」
「いいだろう
 だが忘れるなよ…何が起ころうとも決してそれから目を背けるな」

その言葉を最後に世界にポツポツと黒い染みが広がっていく
あっという間に純白の世界は黒に包まれた
完全な黒に包まれた世界、もう声も聞こえない

「うわぁ!!!」

叫び声と共に飛び起きた俺の視界に見慣れた光景が移っていた
白い天井、白いカーテン
シャッ!とカーテンが開いてこれまた見慣れた顔

「起きたか」
「あれ…ヤチャ…保健室…いつの間に?」
「授業中にいきなりぶっ倒れてここに運びこまれたんだよ
 普通に爆睡してるみたいだったから過労と思って寝かせておいた」
「…」

記憶ははっきりしていた
姫に夢に誘い込まれて話を聞いた後に突然何者かに姫の夢から引きずり出されて
状況確認されて事実を決して否定するなと言われた
夢か現実なのか…よくわからない、夢は夢なんだろうけど
330 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:19:18.34 ID:xti3wGoo
11/13(月) 昼休み

昼休みなったところで俺は保健室を後にした
教室に戻るとリカが近づいてくる

「大丈夫だったの?」
「なんとかね…」
「やっぱり昨日のバトルロワイヤルが尾を引いてる?」
「いや…そういうわけじゃないんだけどね」
「…本当に大丈夫?」
「大丈夫だって」

心配そうな顔で覗き込んでくるリカ
笑顔でなんとかごまかそうとする俺
しばらく後、リカは顔を離した

「…お弁当食べる?」
「うん」
「じゃあ屋上いこっか」

リカは自分のカバンからいつものように3人分の弁当箱を取り出した
とりあえず、ごまかせたんだろうか
ゆき兄がいないのはしょうがない
俺とリカは2人で屋上に上がった
広げられたお弁当をつつきながら、時間が過ぎていく
…俺は、この時間を守りたい
だから、戦うんだ…

「ねぇたまゆら君」
「ん?」

顔をあげるとリカがこっちを見ていた
不安そうな顔

「な、なに…?」
「もうすぐ、最後の戦いなんだよね」
「え…」
「…ちょっと考えれば私にだってわかるよ」
「そう…だね…」

返す言葉が見つからず俺は黙ってしまった
リカも同じように沈黙を続けてる
気まずい…

「そうだ、あのね、昨日の写真、写真部に頼んで即効現像してもらったんだ」

そう言ってリカは懐から1枚の写真を取り出して俺に渡してきた
花火をバックに、俺とゆき兄とリカ、カナ、ヤチャマル、ほろにが
なんだか気恥ずかしいな
331 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:21:33.02 ID:xti3wGoo
じっと写真を見つめているとリカが呟いた

「…勝てるかな」
「…正直わかんないな」
「そうだよね…」
「戦う前から勝ち負けを考えるな」
「え?」

頭上に影
影の主はタンッ!と屋上に着地する

「寒くなってきたとはいえ屋上サボりはやっぱ気持ち良いわ」
「ゆき兄…」
「たまゆら」
「何?」
「あれこれ考えるより、戦え、そんで勝て
 白やんが相手なんだ、無駄なことを考える余裕なんて無い」
「…」
「あらゆるパターンを想定して勝負に挑むのは秀才だ
 だが最良を越えた計算外のパターンを弾き出すのが天才
 秀才は天才には勝てない、生まれもった脳の差だ」

ゆき兄が指を銃の形にしてこめかみに当てる
ニヤリと笑ってさらに問う

「頭の中にあるたったこれだけの器官が全てを決める
 絶対的な天運、それが必要不可欠
 そして白やんは間違いなく天才の部類」
「…」
「天才にあれこれ考えて挑むと負ける
 だけど、天才をブッ倒す奴もいるんだ」
「それは?」
「馬鹿だよ、馬鹿だけが唯一天才を討てる」
「…はぁ?」

リカもよくわからないというか呆れたような顔になっている
かまわずにゆき兄は続ける

「馬鹿は何も考えない
 何も考えないってのは全てだ
 そこにあるのは無限のパターン、それは時として天才すら凌駕する」
「言ってることがよくわからない」
「ま、そうだろうな
 わかってたほうが驚くよ」
「お前…」
「悩むなってことだよ
 あーあ、腹減ったな、まだ余ってるか?」

ゆき兄はお弁当の残りをつまみ出した
悩むな、か
難しいな、悩むなってのも…
332 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:23:48.41 ID:xti3wGoo
「あ」

間の抜けた声でウィンナーを口に突っ込みながらゆき兄が言った

「悩むなってのと思考停止は違うからな」

余計ややこしくなった…
頭がこんがらがる
俺はめんどうくさくなって深く考えるのをやめた
クックックと押し殺した笑い声が聞こえた

「それでいいんだよ」

ゆき兄はそう言っておにぎりを口に突っ込んだ
今日はいつにもましてよくわからないなコイツ…
しばらくゆき兄はそのまま食べ続け満腹になったのか大きなあくび

「それじゃ俺はまた適当にどっかで…」
「授業出なさいよ!」
「…気がむいたらな!」
「コラ!待て!!」

走って逃げ出すゆき兄と追いかけるリカ
あっという間に2人の姿は屋上から消えた
また置いてけぼりのパターンか…
すると突然、ガァン!!と屋上に音が響いた
驚いてドアのほうを見る

嘘だろ?
こんなに早く?
333 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:24:59.25 ID:xti3wGoo
「白…やん…」
「…」

返答は無く
コツ、コツ、と足音を響かせながらゆっくりと歩いてくる
まずい、武器は今持ってないぞ!!
コツ、と白やんの足が止まる
目が合った瞬間、全身を稲妻が駆け巡ったかのような衝撃
今までの白やんとは違う
酷く危険な揺らめきを携えたその目は直視することもままならない
だけど目が離せない
まるで蛇に睨まれた蛙のような状況
ぞくりと背筋に冷たいものが這いずるような感覚
呼吸が乱れ、口の中が乾く

「…これが俺だ」

威圧的、そして誇り高い、全てを統べる者の声

「俺は死の塊
 イメージなどとは比べ物にならない、質量を持った死の具現」
「はぁ…はぁ…」
「明日…いや正確には15日の深夜0時
 時計塔の前に来るといい
 決着をつけよう」
「…明日…」
「…」

白やんは踵を返し、来た時と同じように
コツ、コツ、と足音を立てながら屋上から去っていった
その姿が完全に視界から消えた時
俺はその場にへたり込んでしまった
334 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:27:29.17 ID:xti3wGoo
11/13(月) 放課後

憂鬱な気分なままなんとなく保健室に足を運んで見る
ヤチャマルとほろにががわんこそばを食っていた

「ふがははは…21杯目だ…」
「19杯目…!」

…毎度のことながらこの2人は何をやっているんだろう
ほろにがが勢いよくカパァン!とお椀を机にたたきつけた

「ぶはぁー!もうそばがねーよ」
「クソッ…負けた…
 ん、たまゆら、いつからそこにいた?」
「今だけど…何やってんの?」
「大量のそばが手に入ったからどうしようかと悩んでたら
 ほろにがが来たからわんこそばの食い合いでもしようと思ってな」
「いやー、最近マトモな物食えることが多くて何よりだ
 …あん、どうした浮かない顔して」

ほろにがが指さしながら問いかけてくる
浮かない顔か…確かに今の俺はしてるんだろうな
ゆき兄は勝ち負けを考えるなとは言われたが…
正直勝てる気が全くしない
ほろにがとヤチャマルにぽつりぽつりと俺は話し始めた

「…もうすぐ最後の戦いなんだ」
「へー」
「でも正直勝てる気がしないんだ」
「ふーん」
「…真面目に聞いてる?」
「お楽しみポイントも何も無い愚痴なんて聞きたくねーやい」

そう言ってほろにがはそっぽを向いてしまった
こいつに話した俺が馬鹿だった
335 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:28:31.06 ID:xti3wGoo
呆れているとヤチャマルが俺に聞いてきた

「んで、勝てる気がしないからどうするんだ?
 助っ人でも頼みにきたのか?」
「助っ人…いや、そんなんじゃないよ」
「…気持ちはわかるが、それなら何もしてやれないな」
「そーゆーことだ
 腹決めて戦ってこいや」
「…そうだね」
「話して楽になれるのなら話すといい
 それも一応保険医の仕事だしな」

話して楽になるか…
…でも解決にはならない
俺は静かに首を振った

「…そうか、まぁゆっくりしていけ
 茶でも飲むか?」
「ヤチャマル、俺こぶ茶」
「お前にはボーフラ入りの水で充分だ」
「さすがにボーフラ入りはなぁ…」

少しだけ、ほんの少しだけ気が楽なった
覚悟っていうか、腹をくくったというか、どうにでもなれと思ったか
いずれにせよ、少しだけ気持ちが和らいだ
明日、全てが終わる…
この長い戦いに決着がつくんだ…
336 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/17(土) 22:31:04.66 ID:Sm1FgDIo
リアルについこないだ新蕎麦買いだめしたばっかりな件
337 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:31:26.18 ID:xti3wGoo
11/13(月) 深夜

(BGM) http://www.youtube.com/watch?v=f68DOPif7cQ&feature=related

暗い校舎の中に響く足音
足音の主、邪眼学園生徒会長、白やん
静かな殺意を秘めたその目
見据える先は暗い廊下の奥
その手には白い大きな剣
カツン、と一際大きい音が辺りに響き渡る

「…見つけたぞ」
「これはこれは…」

相対するのは、仮面を被りし悪魔
その名はノスフェラトゥ
目の奥の殺意を揺らし、白やんが言葉を紡ぐ

「もうお前を放っておくこともできなくなったのでな」
「…クックック…それはまた…」

仮面の奥から響く、くぐもった笑い声
長い鉤爪をゆらゆらと揺らすノスフェラトゥ
逃げる気配など微塵も感じさせない

「お前が何を考えているのかはわからない
 だが間違いなくお前の目的は俺達に取っていい結果にはならないはず
 たまゆらと決着をつける前にお前を仕留めておかないと安心して戦いに望めないのでな」
「…クックック」
「斬り払え、狂刃ホワイトジョーカー」

その言葉と同時に剣が変形しその形を鎌に変える
しかしノスフェラトゥは動かない
沈黙の後に、言葉を発する

「…どうやら、逃がしてはくれないようだねぇ」
「気づいたか、周囲には強烈な陰の結界
 堕人は入ることも出ることも許されない」
「やるしか…ないかぁ…」
「安心しろ、一瞬で消し去る」

白やんが一気に飛び込む
白き大鎌が一気に振り抜かれる
その狙いはノスフェラトゥの首
338 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:32:29.52 ID:xti3wGoo
「ヒャヒャッ!!」

バサァッ!と黒いマントを翻しノスフェラトゥが飛び上がる
ありえない反応速度
だが白やんは眉一つ動かさずに斬撃の方向を変える
刃がマントを抜ける

「…浅いか」

パサッと地面に落ちるマントの一部分
ノスフェラトゥを斬ることは出来ていなかった

「…どうやら今度ばかりは本気のようだなぁ…
 仕方ない…なるべくなら避けたかったが…」

ノスフェラトゥは天井に"立っていた"
ぶら下がっているというようなことではない
まるでそこだけ重力が反転したかのように両足で天井に立っていた

「…お前の能力は…」
「人、いや、地球の物体全てが生まれながらに晒されている力を知っているか?」

問いかけながら、ノスフェラトゥは白やんから少し離れた場所に着地する
白やんは表情を崩さず、冷静に問いに対する答えを述べる

「…重力制御、それがお前の能力か」
「さすが生徒会長サマ
 理解が早い」
「なるほど、厄介だな」
「ククッ、それが厄介って顔かねぇ…」

白やんは無言で大鎌を構えノスフェラトゥへと向かう
一歩一歩がまるで跳躍
瞬時に間合いを詰めていく

「ヒャハッ…」

ノスフェラトゥの笑い声
刹那、白やんの足が地面から離れる

「!」
「串刺しだぁ」

制御を失った白やんの身体
向かう先はノスフェラトゥの鋭い鉤爪の先端
貫かれる瞬間、火花が散る
後ろへと吹き飛ぶ白やん、足と指で地面をこすりながら着地する
体勢を崩しよろめいたノスフェラトゥが仮面を抑えながら後退する
339 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:33:43.77 ID:xti3wGoo
「…反応速度、判断力、覚悟、どれを取っても最上だなぁ…」
「俺は生徒会長だからな」
「…だがこれでわかったろぉ…
 俺には勝てない、刃を引っ込めろ」
「笑えない冗談だ…
 …だがこのままでは勝てないのも事実か」
「ククッ、物分りがいいことで…」
「なら、技を変えようか」
「…何?」

白やんが大鎌を回転させ始める
高速の回転が風を呼ぶ
吹き荒れる風がノスフェラトゥのマントをはためかせる
そして勢いを乗せたまま白やんが鎌を振るった
当然ながら届くはずがない
しかし白やんの鎌の刃からガキン!と音が響いた
音を合図に、刃の中心部分が割れた
鎖に繋がれた先端がノスフェラトゥへと高速で向かう

「まさかの仕込み鎌かぁっ!!」

ノスフェラトゥが飛び上がる
鎌の先端は数秒前までノスフェラトゥが立っていた地面に突き刺さる
繋がれた鎖がジャラジャラと音を立てる
次の瞬間、鎖が物凄い勢いで先端に巻き取られ始める

「こいつ…!鎖に引っ張られて…!」
「これなら重力は関係ないだろ?」

白やんはノスフェラトゥの真下
握られている白い大鎌
ノスフェラトゥは身動きが取れない

「消えろ、堕人」
「待っ…」

言い終わりを待たずに回転するように振るわれた大鎌
その刃は縦にノスフェラトゥの身体を切り裂いた
鮮血がほとばしり、刃を紅に染める
だがそれで終わりではなかった
縦に振るわれた鎌は斜めの軌道を描き
勢いが衰えぬまま、今度は横にノスフェラトゥを切り裂いた

「…げっ…はぁ…!!」

ピシッ!と音を立て
ノスフェラトゥの仮面に亀裂が入った
白やんが鎌を投げ捨てる
ガァン!と音がして硬い廊下に刃が突き刺さる
340 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:35:07.41 ID:xti3wGoo
「砕けろ」

白やんの右拳がノスフェラトゥのヒビの入った仮面に叩きこまれた
破砕音、そしてノスフェラトゥの仮面が、砕けた
勢いよく後ろにぶっ飛んだノスフェラトゥは背中から地面に叩きつけられた
そしてピクピクと短い痙攣を繰り返し
やがて動かなくなった
着地した白やんは動かなくなったノスフェラトゥにゆっくりと近づく

「…こいつは…!?」

仮面の下の顔
気絶しているその顔
それは間違いなくこの学園の生徒
名前は、小川
たまゆらに七不思議について繰り返し教えてきた小川

「…ノスフェラトゥは堕人ではなく…人だったと…?
 なら…同胞という言葉は一体…」

小川は何も語らない
ただ意識を失い、横たわっているだけだった…
341 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:37:09.61 ID:xti3wGoo
11/14(火) 昼休み

「そんじゃま、パーッとやっか」
「うっうっ…焼肉なんて久しぶりだ…」
「泣くなよ…」
「はい、いっぱい食べてねたまゆら君」
「いいのかな、保健室で焼肉なんて」
「構わん」
「主がこう言ってるからいいんだろ」
「誰だよ!!俺のカルビ食べたの!」
「っせぇ!まだ一杯あんだからいいだろ!!」

前祝い、とでも言うのか
今日の昼は保健室に集まって焼肉となった

「うぃー、酒も久しぶりだ」
「ほろにがぁぁぁ!それは俺が隠しておいた取っときの!!」
「にぎゃああああ!!」
「ぎゃはははは、ほろにがの目玉が飛び出した!定規もってこいよ定規!」

騒々しい…
このメンツが集まるとどうしてこう騒々しくなるんだ
でも…楽しいからいいか
不思議と、笑顔がこぼれる

「楽しいか?たまゆら?」

ゆき兄が横に座る
俺は頷いた

「そうさ、それがお前の戦う意味だったろ」
「…ああ、そうだね」

守りたいのは、これなんだ
この日々を、この楽しい日常を、守りたいんだ
誰かのためとかじゃなくて
ただ俺はこの日々を守りたいんだ

「忘れるなよ、絶対」
「…ああ」
「…そうだ、これ、やるわ
 手、出せ」
「え?」

言われた通りに手を出すと硬い物を握らされた
それは、眼球をあしらったペンダント
…趣味悪いなぁ
342 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:39:19.02 ID:xti3wGoo

「何これ?」
「神楽君に頼んで作ってもらったんだよ
 効果も何も無いが…俺は気に入ってる」
「へぇ…」
「やるよ」
「…もらっとく」

俺はペンダントを握り締めてポケットへと入れた
それを見たゆき兄は小さく笑って立ち上がった
そしてそのままドアのほうへ

「どこいくの?」
「ヤボ用」
「珍しいな」
「…悪いな、今日は加勢には行けそうにねーや」
「大丈夫、なんとなく1人で決着をつけようと思ってたから」
「…そっか」
「圧倒的に不利なはずなのに…何でだろうね」
「…お前ならきっと勝てるさ
 お前は…強い」
「…なんかむずがゆいな…ゆき兄に素直に褒められると」
「それじゃ…俺、行くわ…
 じゃあな、たまゆら」
「あ、うん、いってらっしゃい」

ゆき兄はゆっくりとドアを閉めていった
またもや珍しいな、普段ならドアを足で無理やり閉めていくのに…

「おい、たまゆらー
 早く食わないと肉がなくなるぞー」
「お、おい!まだ全然食ってねぇよ!!」
「フハハハハ!タンは全て俺の胃袋の中だ!」
「この野郎!!!」

守るんだ、勝って、絶対に
白やんがどれだけ強かろうとも俺は絶対に負けるわけにはいかない
黄龍鉄甲も何も関係ない
これは俺が始めた、俺の戦いなんだ
ここまで来た以上、絶対に勝つ、勝たなきゃいけないんだ
343 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/17(土) 22:40:17.34 ID:baLQ2S.o
お・・・小川・・・?ウソだろwwwwwwwwwwww
344 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:40:24.30 ID:xti3wGoo
11/14(火) 深夜

身体はバッチリ、怪我も疲労も無い
頭も眠くもなんともない
黄龍鉄甲、ちゃんとある
いつも思うが戦闘準備っていうのに俺の準備はすぐ済むな…
時刻はもうすぐ深夜0時
さて、行くか

寮の外に出るとどうも嫌な空気だ
湿っていると言うか何て言うか…
そのねばりつくような空気が余計に不安感を煽る
それでももう引き返すことは出来ない
一歩一歩、踏みしめるように時計塔の前へと向かう
時計塔に辿り着いた時
時刻は丁度深夜0時
佇んでいた影がゆっくりとこちらを向く

「…ここまで来た以上
 もう言葉はいらないだろう」
「同感だ」
「決着をつけよう
 お前の正義と俺の正義、どちらが上か」
「…ああ」
「…斬り払え、狂刃ホワイトジョーカー」

白やんの持っている剣が鎌へと形を変える
そしてそれを構える白やん
俺も黄龍鉄甲を構える
前に一緒に堕人と戦った時のことを思い出す
…あの時は鎌しか使っていなかったが必ず白やんは今までの敵と同じように特殊な能力があるはずだ
それを見極めないと…
ポツ、ポツ、と雨が降り始める
やがて雨の勢いは増す
ザァザァと降りしきる雨の中、俺と白やんは動かずに睨み合う
どれくらいの時間が過ぎたのか
一瞬とも永遠とも取れる長い時間の果てで白やんが小さく呟いた

「…行くぞ」
345 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q [テンションあげていこう]:2009/10/17(土) 22:43:10.18 ID:xti3wGoo
(BGM) http://www.youtube.com/watch?v=Sc1KEYXzsFo&feature=related


その言葉を放って一瞬の間を置いて
白やんが姿勢を低くしてこちらに向かってきた
手に握られている大鎌が縦に振られた
身を翻しそれを避ける
鎌の先端は地面に突き刺さる
だが勢いは止まらずガガガガガッ!と地面を削り今度は横薙ぎ
俺は後ろに跳び退き鎌のリーチから抜ける
だが1秒にも満たない跳躍なのに着地した時にはすでに次の振りが来る
四方八方、縦横無尽、白やんの鎌の刃はまるで分裂でもしたかのように高速で振りぬかれる
それを操る白やんは身体を捻り、軽く跳躍し、時には身体を回転させ
まるで舞い踊るかのようにその刃を見事に操っている

「目覚めろッ!朱雀ッ!!」

俺は朱雀の力を解放する
瞬時に分裂した黄龍鉄甲は翼となり俺に飛翔能力を与える
後ろに下がっても追い詰められるならば上だ
だが白やんの大鎌の先端がこちらに向かって高速で射出された

「何ッ!?」

咄嗟に身体を回転させてそれを避ける
ジャラジャラと身体の横で鎖が揺れている
それを理解した瞬間に鎖がこちらに寄ってくる
下では白やんが横に走っていた
巻き取られたらまずい!
慌ててさらに上へと飛ぼうとする
その時鎖が勢いよく白やんの方向へと引っ張られた
翼に強い衝撃
返ってきた刃の先端が翼に命中
空中でバランスを失い落下を始める
下には笑みを浮かべた白やん
振りぬかれる寸前の大鎌

「うぉぉぉぉっ!!!」

咄嗟に刃に向かって拳を振るう
ガキィン!と乾いた音が辺りに響く
なんとか着地するがすぐさま体勢を立て直した白やんの次が来る
避けれない、受けるしかない!
同じように辺りに響く金属音
衝撃で手がちぎれそうになる
346 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:44:40.85 ID:xti3wGoo
「クッ…」

白やんが初めて顔を歪ませた
そうか、避けるのはまだしも撃ち合いなら反動の具合は鎌より鉄甲のほうが有利か
ただこっちはほぼダイレクトに身体に衝撃が伝わる
有利とは言っても長期戦には向かないか…
白やんの懐に飛び込む
鎌という武器の死角
それは完全な隣接距離
そうだ、この距離が白やんが攻撃できずに俺が攻撃できる唯一の場所
だが白やんの表情は崩れない
それが咄嗟に攻撃にブレーキをかけた
思わず飛んだ
足払い、それを避けるために
だがその隙に鎌の先端が俺を狙う
響く金属音、散る火花
白やんが後ろに下がった、俺も下がって距離を開ける
今度は遠距離、それなら…

「目覚めろッ!青龍ッ!!」

黄龍鉄甲は分離し2個のビットが浮かぶ
そして青い光弾がビットから乱射される
白やんは迫り来る光弾を鎌で切り裂く
小さな爆発、しかし白やんには届かない
1振りで2つ、3つの光弾を切り裂く白やんの見切り能力の高さ
時に刃を高速で振るい、時に刃を止め迅速かつ正確に光弾を切り捨てていく
そこから生まれる圧倒的防御力
そして迫り来る光弾をものともせずにこちらに向かって迫り来る

「…ッ!絡め取れ!!」

青い光の帯でビット同士が連結する
ビットは不規則に揺れながら白やんを絡め取ろうと動く
すっと、白やんが右手を鎌から離し前へと突き出した
その手のひらに、青い光の帯が触れた時
まるで弾けるように青白く光る残滓だけを漂わせ、光が消滅した
347 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:46:03.50 ID:xti3wGoo
「なッ!?」

ビットは白やんの両脇を抜けあらぬ方向へ
俺の目の前には鎌を構えなおした白やん
完全な鎌のリーチ、そこは死の距離
青龍形態じゃあ殴って刃を弾くことも出来ない
避けることしか出来ない、だが避けれるのか?
だけど避けようとしない限りは100%避けれない
無我夢中と言ってもいいかもしれない
追撃、回避後の体勢、激突、それらを何も考えないまま俺は力任せに横に飛んだ
縦に振られた鎌が、風になびいた髪をハラリと斬り落とす
避けたものの受身は取れず、雨でドロドロになった地面に肩から落下する
全身が泥まみれになったとしても白やんの怒涛の攻撃は続く
俺が手足をついて、ただ無様に、情けなく逃げ続けることしか出来ない
だがさすがに限界があった
白やんの鎌が大きく振り上げられた
まずい、やられる
だが後ろから飛来した光弾が刃に命中し小さな爆発
刃の方向が僅かにズレる
頭へと振り下ろされた刃の先端は頭を通り過ぎ右肩を貫いた

「ぐぅっ…!!目覚めろッ!!玄武ッ!!」

悲鳴と雄叫びが入り混じったかのような声で俺は叫ぶ
同時に左手で突き刺さった刃を弾いた
刃が肩から抜けると瞬時に傷が塞がった
それを見ていた白やんが言った

「…細胞の異常活性…
 そんな能力まで…」
「ふん…まだまだこれからだ…」
「…」

白やんが鎌を横薙ぎに振るう
俺の両手が刃を受け止めた
手のひらに刃が食い込み、切り裂かれる皮膚の痛み
肉を切らせて骨を断つ、玄武の超回復があってこそ為せる技
白やんの表情が歪む

「…貴様!」

俺は鎌の刃を下から膝で蹴り上げた
刃が上に跳ねる
その隙を逃さずに俺は懐に飛び込むと同時に拳を叩き込もうとした
この状況なら足払いも間に合わないだろう!
だが白やんは鎌から手を離していた
あの一瞬でそこまでの判断を?だけどガードも間に合わないだろう!
間に合ったとしてもこの1撃は生身でのガードなんて突き破る!!
348 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:48:00.14 ID:xti3wGoo
だが予想とは裏腹に白やんは右手をただ前に出しただけだった
拳が、右手に触れたその瞬間、俺の身体から勢いが消えた

「…え?」

理解が出来ぬまま
俺の身体は止まっていた
そして振りぬかれた白やんの左拳が頬を打ち抜く
状況把握出来ぬまま強烈な衝撃で俺は吹っ飛び地面に叩きつけられる
血の味がする、口の中が切れたようだ
クラリとしながらも強引に立ち上がる
青龍の時といい…今といい…白やんの右手には何かがある…

「その右手…どういう能力だ…」
「俺の右手は俺の意思によりあらゆる力に死を与える
 右手に触れた力は如何なる力であろうとも死を迎える
 死ぬとは勢いを失い、威力を失い、力の塊は霧散する」
「なるほど…確かに…滅茶苦茶強いわ…それ…」
「正直、死の右手を使う必要は無いと思ったが…」
「…」

使うしかない、あの力を
今の俺の体技じゃあ白やんに勝つことは出来ない
…正直、使いたくはなかった、制御不能の殺意の力
だけど、勝つにはこれしかない
死神に勝つには…血に飢えた虎になるしかない!!
349 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:49:20.17 ID:xti3wGoo
「目覚めろ…白虎…」

降りしきる雨の動きがゆっくりとなり
地面に当たり広がる水の冠までもが視認できる
俺は前に駆け出した
鎌の動きがよくわかる
自分以外の時間が遅くなったような世界で
いとも容易く刃を抜ける
そして白やんに向かい爪を振りぬいた
先端が服を裂き、肉を擦り取る
雨に混じって、血が宙を舞う

「がっ…」

初めて、俺の攻撃がすんなりと命中する
それを喜ぶと同時に胸の奥から湧き上がる黒い衝動
殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ
圧倒的かつ無尽蔵の強い飢餓感
食らえ、食らえ、食らえ、食らえ、食らえ
脳髄を駆け巡る白い閃光、殺意、血への渇望

「ウオオオォォォォォォォォ!!!」

この咆哮の主は俺であって俺ではない
白虎の咆哮、殺戮の主の宣戦布告
衝動が、足を、手を、身体を突き動かす
超加速の勢いを乗せた白虎の爪が振りぬかれる
そして、休む間を与えない四方八方からの連続攻撃

「ぐぅっ…」

初めて白やんの表情に焦りが見えた
圧倒的防御力を上回る絶対的攻撃速度
このまま一気に仕留める!!
ズザァァッ!と湿った土と靴がこすれる
俺が動きを止めると白やんはフラリと崩れ落ちそうになった
俺は構えた

「…噛み砕け…白虎断極烈殺斬!!」

全てを飲み込む白虎の速度
そして全てを噛み砕く白虎の牙
だがその時、俺の目に飛び込んできたのは光輝く白やんの大鎌
流れるように振りぬかれる鎌、しかしあまりにもリーチが遠すぎて俺に刃は届かない
ヤケになって偶然あたることを願って振ったのか?
どちらにせよこれで俺の勝ちだ
そう確信した時、白やんが呟いた

「ブレット・オブ・デス」
350 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:51:28.73 ID:xti3wGoo
振りぬかれた刃から、光が離れた
そして光の塊はこちらへと飛来する

「なっ!?」

予想外の攻撃
対応することが出来ずに光が俺に直撃する
光が炸裂し焼けるような痛み、空が下に、地が上に
ドバシャッ!と水溜りに頭から落下する
同時に白虎の力が失せていく
両腕が酷い火傷をしたみたいになって激痛が走る

「遠距離攻撃まで…持ってんのかよ…」
「…死のイメージ、狂刃ホワイトジョーカー、死の右手、ブレット・オブ・デス
 この4つの力の前には如何なる力も死する…
 …だがしかし俺に4つ全てを使わせる程とは…」

雨が強くなる
空が光り、雷鳴が轟く
土砂降りの雨が降りしきる中で
俺と白やんは互いに肩で息をする
荒れた呼吸は静まらず、心臓の鼓動は張り裂けるように早い

「最初に会った時とは…
 まるで別人のような強さだな…
 この短期間で…何が貴様を強くした…」
「俺は…!」

ビシャと、足元の水溜りの水が跳ねた
踏み出した足が塗れた地面を蹴り出し、湿った土を蹴り上げる
白やんの持つ鎌が怪しく揺らめく
それが合図。
堰を切ったように刃が煌き、刃に産み落とされる白い輝き
白やんが駆け出しても光は動かない、ただ刃を白く光らせ続ける

「終わりだ、最後の楔は必ず俺が守り抜く」

白やんが鎌を振るった。
無数の輝きが、一斉に風を裂いて飛ぶ。
その先には俺、飛来する輝きは死の化身。
視界が、真っ白に染まっていく
駆け巡る戦いの記憶
何が俺を強くした?
ここまで傷つきボロボロになるほどの戦いで何を得た?

衝撃、激痛、焼けつくような痛み
…耐え難い激痛
発狂するかのような痛みの中で記憶の渦が螺旋を描く
笑顔、笑顔、笑顔…笑いあって…
何でもないような…楽しい日々…
無数の記憶が走馬灯のように巡る
351 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:52:43.21 ID:xti3wGoo
――初めまして、たまゆらっていいます――


――お礼には忠告してやるよ、校則は守れよ――


     ――人が誰かを心配するのは人がそれだけ心に余裕を持ってるからなんだって――


――人は誰しも真実を見たがるが…――

                          ――俺は絶対にお前らを正義と認めない!!――

     ――全部嘘だった、どんなに楽かな――

                      ――だったら止めてみろ!お前の力で!!――

 ――守りたいんだ、ただそれだけ――

                                ――俺が、救ってやる!!――

         ――…この力で…お前を殺してやる――

                                    ――願わくば、全てを終わらせて――

    ――希望を見出した、それだけで充分だ――

              ――さぁ早く行け、後ろは俺が守ってやる――

                          ――丁度いい、どっちが上かはっきりさせようぜ――

――ここまで来た以上、絶対に――
352 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:53:38.21 ID:xti3wGoo
巡る記憶の果て
思い描く1枚の写真、笑ってる、俺達
俺は、戻るんだ
白やんを倒して、必ず戻るんだ
だから、倒れるわけにはいかないんだ!!

意識が覚醒する
インパルスが脳を駆け抜ける
痛みで引きつる身体に力を込める
漂う肉の焼け焦げる匂い
降りしきる冷たい雨すら心地いい

「…全弾直撃だぞ…なのに死なないどころか倒れないだと…!?」
「…白やん…」
「!?」

俺は、右手を天に掲げた
空が荒れ、雨は激しく降りしきり、雷鳴は絶えず鳴り響く

「…お前は強い…とても…強くて…本来俺が敵う相手じゃないのかもしれない…
 それでも俺は…負けるわけにはいかないんだ
 見えていなかった物が、やっとわかった
 俺は帰らないといけないんだ、お前を倒して、あの日常に帰るんだ…」
「…戯言を…」
「互いに笑い合える日常に、誰一人欠けてはいけないんだ…
 俺の正義、皆が幸せな世界に…」
「…夢物語だ、誰かの幸せの裏には必ず誰かの不幸が存在する」
「そうさ…わかってる…
 でも正義なんてそんなもんだろ…理想を掲げ…どこまで理想に走り続けられるか
 いつか俺も力尽きてしまうのかもしれない
 夢見た世界なんてどこにも存在しないことを知ってしまうのかもしれない…
 それでも今は…走り続けるだけだ」
「…なら、越えて見せろ…!!
 死という強すぎる力によって縛り付けられた俺の運命という力を!!」
「終わりにしよう、正義と正義がぶつかり合う、こんな悲しい戦いは…」
353 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:54:32.65 ID:xti3wGoo
白やんの鎌の刃が輝き出す
そしてそのままこちらに走り出す
俺も走り出す
まるで止まったような時間
振り下ろされる、死の刃
振りぬかれる俺の拳
刃にぶつかる鉄甲、刹那、弾ける閃光
響く、爆発音、遅れてくる、ビシリと言う音
散らばる金属片
黄龍鉄甲、今こそ全ての力を
この戦いに決着をつける最後の1撃を
黄龍鉄甲から金色の光りが溢れ出す
全てを包み込む暖かな光が周囲の景色を掻き消していく
驚愕の表情を浮かべる白やんの顔が見える
砕け、黄龍

バキィィン!と、響き渡る音
それは白い道化師の断末魔
周囲に飛散する鋭い金属が礫のように俺の身体を穿つ
だけど止まらない、止まるわけにはいかない
金色の光を放つ黄龍鉄甲が、白やんの顔を捉えた
白やんは目を閉じた
その顔は、微かに微笑んでいたようだった
酷くスローモーション
振りぬかれた拳が白やんの顔を打ち抜いた
刃を失った大鎌が手から離れ回転しながら地面を跳ねる
そして白やんは宙を舞い、ぬかるんだ地面をえぐり、衝撃の痕跡を地面に残した後
その動きを止めた
354 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:57:11.56 ID:xti3wGoo
(BGM停止)

「…はぁ…はぁっ…」

絶え絶えの呼吸
同時にジワジワと感じる全身の痛み
思わず地面に膝をつく
白やんは動かない

「…強いな…たまゆら…本当に…」
「なっ…」

まだ動けるのか!?
もう俺に戦える力は残ってない…
万事休すか…?
だが、白やんが次に紡いだ言葉は意外なものだった

「…武器も失った、俺の負けだ」
「は、ははっ…」
「負けたというのに…清々しい…」

終わった…!
俺はやっと…!!

喜びに身を任せようとしたその時だった
周囲がドゴォン!と揺れた
これは…!?
355 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 22:59:02.81 ID:xti3wGoo
『ウォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

響き渡る咆哮
これは…また…!?
似たようなことが何度もあった…これは一体…
だがいつもと違うのは揺れが収まらないこと
まるで長い地震のように延々と揺れ続ける地面
焦りと不安が胸中に渦巻く
そのときパチパチパチと拍手の音が響く

「お疲れ様ぁ…やっとこの時が来た…」

拍手の主
仮面、長い鉤爪、黒いマント
白やんが叫ぶ

「なぜ貴様がここにいる!?
 お前は完全拘束して監視下においたはずだ!?」
「クックック…俺はノスフェラトゥ…その名の意味するは不死なる者…」

ノスフェラトゥは押し殺したような笑い声を仮面の下から響かせる
長い鉤爪が早く鋭く揺れ動く
いや、それよりも俺が目を疑ったのはノスフェラトゥの後ろ
おびただしいほどの数の堕人
周囲を埋め尽くす程の闇、闇、闇

「なんで…生徒会を倒せば…
 堕人は消滅するんじゃ…」
「実に…実にお前はよく働いてくれた!!
 俺の思惑通りお前は生徒会を撃ち倒し見事に全ての封印を解いた!!
 いよいよ大いなる者が蘇る!!
 我らは融合を果たし忌まわしきこの闇の肉体より解き放たれる!!」
「…そんな…」
「だが…まだ姑息な手を使って復活を邪魔しているらしいな…
 ここまで来た以上、遠慮はいらない
 同胞よ!全てを食らい尽くせ!!可能性のある者は殺せ!可能性のある物は砕け!!」
「たまゆらぁっ!!」
356 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 23:00:47.72 ID:xti3wGoo
白やんが叫び声をあげこちらに何かを投げてきた
慌ててそれをキャッチする
投げられたそれは…鍵…?
時計塔、と刻印がされた鍵

「行け!行けばわかる!!」
「…わ、わかった」

俺は慌てて時計塔の扉を開けようとする

「シャァァァァア!」

不気味な、喉笛から空気の漏れるような音を出しながら
堕人が後ろから俺に飛びかかってくる
だが飛び出してきた影に掴まれ地面に叩きつけられる

「白やん…!?」
「行け!」
「…あ、ありがとう」
「礼はいい!早く行け!!」

俺はドアを半ば蹴り破る勢いで開けた
ボロボロのコンクリートの狭い部屋、時計を動かす機械があちこちに剥き出しになっている
前方に鉄製の梯子が見える、あれを昇ればいいのか!?
背後からは無数の堕人の叫び声
耳障りなノスフェラトゥの笑い声

不意に頭にある言葉が思い浮かぶ
『お前が為すこと、そしてそれによって起こる事実を決して否定はするな』

くそっ…くそッ!!!
梯子を昇りきると長い長い螺旋階段
俺はひたすらに階段を駆け上がる
やがて頂上辺りで見えた小さな鉄製の扉
開けようとするもあかない、鍵がかかっているようだった
白やんから受け取った鍵を指してみるとガチャリと鍵の外れる音がして扉が開く
中に飛び込み、驚く
ベッドや机、人の生活観が滲み出る小さな小部屋
なぜ時計塔にこんな部屋が?
辺りを見回すと部屋の隅に小さな影
357 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 23:02:02.02 ID:xti3wGoo
「…君は…」
「…目覚める…あれが目覚める…」

ガタガタと震えてる"彼女"は顔面蒼白
俺は、この子を知っている
屋上、ハンカチ、記憶が蘇る

「どうして…ここに…」
「…たまゆら君…」
「…いや、とにかくここは危険だ!
 とりあえず逃げよう」

俺はきのこさんの手を取って部屋から飛び出した
螺旋階段を半ば転がり落ちるように降りていく
状況が全くわからないがとにかく今はこの子を安全なところに
だが螺旋階段の中腹まで来たところで足が止まる
前方に奴がいた
仮面の男、ノスフェラトゥ

「…なるほど、それが最後の…」
「貴様…」
「それの命、頂くぞ」

ノスフェラトゥが鉤爪を前にしてまるで滑るように飛び込んできた
避けれない、無理に避けてもきのこさんが貫かれる
いや、それよりも周りが狭すぎる

「ちくしょぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」
「終わりだぁ!!!」


16時限目 - 決着 -

358 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/17(土) 23:03:18.89 ID:baLQ2S.o
ゆきに乙!

うおおおおおお!テンション上がったwwwwwwwwwwwwww
359 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/17(土) 23:12:38.05 ID:Sm1FgDIo
ゆき兄乙!


白やんチートすぐるwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
tk気になるとこで切りやがってwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
360 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/17(土) 23:34:34.50 ID:xti3wGoo
邪眼学園黄龍譚
次回予告

ついに生徒会との決着…
しかしそこに現れたノスフェラトゥ率いる堕人の軍勢
追い詰められたたまゆらときのこさん
そして次々と現れる4体の上級堕人
集う仲間、学園を守るためにすれ違う正義が今一つになる!

「我が名は鬼哭、獄の果てより出ずる者…」
「我は慟哭、嘆きの果てより出ずる者…」
「私は哀哭、悲しみの果てより出ずる者…」
「俺は風哭…罪の果てより出ずる者…」

待て!次回!
361 :リリーホワイト :2009/10/18(日) 07:33:29.86 ID:msU7aMDO
朝ですよー
362 :そら :2009/10/18(日) 07:36:06.00 ID:LWVzEEDO
寒いです
363 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/18(日) 11:34:12.06 ID:qfqZecDO
暑いです
364 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/18(日) 14:41:26.13 ID:msU7aMDO
眠いです
365 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/18(日) 17:28:06.24 ID:UVoJFMoo
今日は裸族です
366 :そら :2009/10/18(日) 17:40:17.56 ID:LWVzEEDO
>>365
うpか
367 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/18(日) 17:57:17.50 ID:msU7aMDO
>>365
変態!
368 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/18(日) 18:58:43.58 ID:qfqZecDO
>>365
変態!
369 :神楽ちゃん :2009/10/18(日) 21:30:23.00 ID:2WoYvkso
>>365
これから蛹になるんですね!変体!

370 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/19(月) 01:31:17.15 ID:wiK0/MDO
アニキで止まるなんてことは僕が許さん!
371 :リリーホワイト :2009/10/19(月) 05:50:43.54 ID:wiK0/MDO
朝ですよー
372 :リリーホワイト :2009/10/20(火) 07:19:31.71 ID:/MvIVoDO
朝ですよー
373 :そら :2009/10/20(火) 12:26:11.89 ID:X97PNIDO
世界のキッチンから
ほろにがカラメル・オレが美味しい
374 :ほろ苦 :2009/10/20(火) 12:39:44.65 ID:.jnBcESO
ほろ苦いキャラメルとはこれいかに。

しげるはっきりしろよ!
375 :そら :2009/10/20(火) 12:59:08.39 ID:X97PNIDO
焦がした砂糖とバターみたいな
カラメルソースみたいな
376 :リリーホワイト :2009/10/21(水) 08:24:15.51 ID:GwomRoDO
朝ですよー
377 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/21(水) 17:39:54.04 ID:YiD7F4wo
アイスうめぇ
378 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/21(水) 18:12:15.74 ID:RXA6OkDO
歯医者に早く着き過ぎて入りづらい件
379 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/22(木) 01:10:44.44 ID:UuC8wUDO
ゆき兄ちょっとこれやってみてよ



http://m.ichiten.com/
380 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/22(木) 01:15:29.77 ID:uAHa2jko
>>379
342pt
381 :深淵槍裂歓声暮色枕辺涙色番蝶 :2009/10/22(木) 01:16:03.75 ID:CioQPyE0
>>379
2,880pt
382 :そら :2009/10/22(木) 01:20:45.56 ID:3l.OpoDO
2,001pt
383 :蛯名 :2009/10/22(木) 01:34:46.31 ID:PT8ibIAO
2,113pt
384 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/22(木) 01:59:02.53 ID:UuC8wUDO
>>380
342wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
385 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/22(木) 02:02:47.74 ID:UuC8wUDO
ちなみに僕は2447pt
386 :破邪顕正幸福迅雷恵比寿之助 [「壊滅領域(ポータブルペナルティ)」]:2009/10/22(木) 02:18:54.05 ID:PT8ibIAO
http://pha22.net/name2/c/
これを思い出した
387 :kagura [sage]:2009/10/22(木) 03:45:04.20 ID:cP1K.NIo
1.230pt・・・
388 :切断脳髄(ゴシックパラダイス) [sage]:2009/10/22(木) 03:50:41.48 ID:cP1K.NIo
ゴッシゴシにしてやんよ
389 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/22(木) 05:30:35.48 ID:UuC8wUDO
色々やってみた

http://usokomaker.com/busyo/?a=Maker&oo=%F0%EA%C2%CC%C5%B7%C2%AD%CD%EB%B8%F7%B0%EC%C1%AE%B2%E0%CF%B0%CD%E5%B9%F5%CD%E3%C5%B7



この死に様はたぶんリアルにありそう



http://usokomaker.com/cabajo/?a=Maker&oo=%B9%F5%A4%E4%A4%F3

とにかくエロいってちょっと待て



http://usokomaker.com/2waza/?a=Maker&oo=%B9%F5%A4%E4%A4%F3&oo2=%C7%F2%A4%E4%A4%F3



http://usokomaker.com/2waza/?a=Maker&oo=%B9%F5%A4%E4%A4%F3&oo2=%A5%A2%A5%CB%A5%AD



http://usokomaker.com/combi/?a=Maker&oo=%B9%F5%A4%E4%A4%F3&oo2=%C7%F2%A4%E4%A4%F3
390 :リリーホワイト :2009/10/22(木) 07:25:57.79 ID:UuC8wUDO
朝ですよー
391 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/22(木) 11:12:58.09 ID:f9yu3UDO
>>389
エロいワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


戦国プロフだけやってみた
http://usokomaker.com/busyo/?a=Maker&oo=%C1%F3%B3%A4%C0%B1%B8%F7%C8%E1%B0%A5%C5%BE%B2%BD%CC%EB%BA%B5%B4%DD%BF%B7%C0%E3%B9%AC

座右の銘とホトトギスなぜバレたしwwwwwwwwwwww

死に様はあり得そうで困る
392 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/22(木) 11:16:32.79 ID:UuC8wUDO
>>391
兜で吹いた
393 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/22(木) 11:21:49.68 ID:f9yu3UDO
>>392
あれさ、パッと見はちょっとかっこよくね?
意外と気に入ったんだがww
394 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/22(木) 11:27:45.72 ID:UuC8wUDO
>>393
僕のがかっこいいもん!

http://usokomaker.com/kabuto/r/%B9%F5%A4%E4%A4%F3
395 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/22(木) 11:39:12.38 ID:f9yu3UDO
>>394
なんか意外な漢字だなwwww


バナ丸でやってみた
http://usokomaker.com/kabuto/?a=Maker&oo=%A5%D0%A5%CA%B4%DD
複雑な心境です…
396 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/22(木) 11:41:48.05 ID:UuC8wUDO
\若丸/
397 :そら :2009/10/22(木) 17:50:13.45 ID:3l.OpoDO
http://usokomaker.com/busyo/?a=Maker&oo=%B6%F5%C5%B7%CC%A4%B3%AB%BA%D5%CA%D2%E5%BA%CD%E5%C5%C0%C5%F4%C7%ED%CD%EE%C8%E0%CA%FD


勝ちたくて…
398 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/22(木) 18:55:56.73 ID:.7F9ygoo
http://usokomaker.com/busyo/?a=Maker&oo=%C7%F2%C6%FC%B5%F5%B6%F5%CE%D8%B2%F6%BB%B3%BB%E7%BF%E5%CC%C0%B2%DA%BF%A4%B8%E3%BB%D2

「雪」とか「薙刀」とか凄く好みだったのに死に様・・・
399 :リリーホワイト :2009/10/23(金) 06:25:23.51 ID:MMxSLgDO
朝ですよー
400 :そら :2009/10/24(土) 01:47:41.72 ID:fRqTgIDO
酒が気管支に入って死にそう!
401 :リリーホワイト :2009/10/24(土) 07:24:12.77 ID:vV3LfgDO
朝ですよー
402 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/24(土) 07:52:50.24 ID:LhxMZ5ko
もーにん!
403 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/24(土) 09:02:06.59 ID:HH7fyhc0
もーみん!
404 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/24(土) 11:17:20.42 ID:y17ryN.0
むーみん!
405 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/24(土) 11:33:42.19 ID:i8q/hkDO
えーりん!
406 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/24(土) 12:19:33.01 ID:vV3LfgDO
どこどこ?えーりんどこ?
407 :そら :2009/10/24(土) 16:04:02.33 ID:fRqTgIDO
いねぇよ
408 :ミギー :2009/10/24(土) 21:03:59.95 ID:jqzrCUDO
りーえんはどこっ!?
409 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:02:10.45 ID:PSyzbM6o
そんじゃ行こうか
今日、土曜だよね…
410 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:04:13.75 ID:PSyzbM6o
邪眼学園黄龍譚
17時限目 - 闇集結 -

11/14(火) 深夜 (推奨BGM) http://www.youtube.com/watch?v=JGLXfMei-rM&feature=related

降りしきる土砂振りの中で蠢く闇を薙ぎ倒していく影
残された唯一の武器、死の右手を振るいたった一人で時計塔の入り口を守り抜く男
邪眼学園生徒会長、白やん
その光景を長い爪を遊ばせながら見つめているのはノスフェラトゥ

「さすがと、言ったところだなぁ」

呟くと同時に前へ出る
白やんはそれを見て吐き捨てるように言葉を紡ぐ

「1度俺にやられた分際でまた俺に勝負を挑む気か」
「クックック…」

仮面をおさえ、漏れ出る笑い声
あまりにも不気味なその光景

「確かに俺は負けた…わざとな」
「何だと…」
「強大な陰の力を持つお前を闇の塊である俺が倒すことは出来ない
 だからあの場はやられた振りをしてやり過ごすしかなかった…
 そのために俺は今までたまゆらとお前が戦うように仕向けてきた」
「黒幕はお前だったということか」
「真の意味では全ては遥かな昔から始まっていた…」
「聞く気も起きんな」

白やんがノスフェラトゥへと向かう
ノスフェラトゥは動かない、そしてただ一言

「手負いの分際でその気概か…
 だがもう俺も力を抑える必要も無い」

その瞬間、白やんの身体が地面に叩きつけられる
メキッと音がして地面にめり込んでいく

「がッ!?」
「重力からは決して逃げられない
 そして後は…」

ノスフェラトゥの足元から4つの影が飛び出してくる
4体全てが異様な風貌、明らかに人ではないその姿
そのうち1体は白やんは見覚えがあった、忘れようと思っても忘れられない
全身を血塗れの包帯でグルグル巻きにされ包帯の隙間から覗く蜘蛛のような大量の目

「…鬼哭、風哭、慟哭、哀哭。後は任せたぞ、俺は逃げた鼠を追いかける」
「グッ…待て…」
「クカカカカカカッ!!」
411 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:06:57.87 ID:PSyzbM6o
11/14(火) 数分後

「…なるほど、それが最後の…」
「貴様…」
「それの命、頂くぞ」

ノスフェラトゥが鉤爪を前にしてまるで滑るように飛び込んできた
避けれない、無理に避けてもきのこさんが貫かれる
いや、それよりも周りが狭すぎる

「ちくしょぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」
「終わりだぁ!!!」

死を覚悟したその時、ノスフェラトゥの背後に誰かの影

「ぬ!?」

ガキィン!と影の放った蹴りがノスフェラトゥの鉤爪に止められる
ヒュウッと口笛を吹いたような音がした影が言った

「俺の蹴りを止めるとはな…
 その爪…細いのに物凄い強度だな」
「た、高橋ッ!?」
「よう」
「邪魔をするなぁッ!!」
412 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:08:07.56 ID:PSyzbM6o
ノスフェラトゥの爪が高橋に襲い掛かる
狭い足場で器用に身を翻しそれを避け続ける高橋

「何してる!さっさとその子を連れて逃げろ!!」
「でも…」
「ガタガタ抜かすな!!行け!!」
「わ、わかった…」
「させるかぁっ!!!」

ノスフェラトゥの叫び声
時計塔の内部に反響する金属音

「グッ…」
「俺相手に余所見とはいい度胸じゃないか」
「貴様…何者だ…!」
「ただのはみだし者だよ」

高橋の援護のお陰でノスフェラトゥを抜ける
梯子まで辿り着き降りようとする

「…先に降りらせて」
「え?」
「いいから!」

納得いかないがきのこさんを先に降ろさせる
頭上からはガキン!ガキン!と金属音が響いている
高橋は大丈夫なんだろうか…いや、今は信じるしかない
きのこさんが降り切ったのを見て俺は半ば飛び降りるように梯子を降りた

「ッ!?」
413 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:10:09.94 ID:PSyzbM6o
目の前に不気味な4体の堕人
その後ろに倒れている白やん
一体がこちらに飛び込んでくる
黒いローブで全身を覆い顔もフードの中も真っ暗で顔を知ることは出来ない

「我は慟哭、嘆きの果てより出ずる者…」
「下がって!きのこさん!」

慟哭の周囲に黒い剣が現れる
1本、2本、3本、4本…
しかし慟哭はローブから手を出さなかった
剣は慟哭の周囲を高速で回転し始める
これは…避けるしかない!!
思わずきのこさんを引っつかんで横に飛びのく
コンクリートがガリガリガリガリと削れる音が響く

「…いい判断だ
 触れればかすり傷じゃ済まなかったぞ」

慟哭が小さく呟く
次に入り口からこちらに向かってきたのは黒いメイド服の生気の無い女の顔した堕人
周囲とあまりにも不釣合いなその姿に戸惑いを覚える

「私は哀哭、悲しみの果てより出ずる者…」

宙に浮かび、両腕をさっと広げる哀哭
左右に伸ばされた袖先から黒い光が帯状に伸びる
2本の帯は弧を描き勢いよくぶつかり合う
衝突、そして拡散
帯は無数の細い糸と化し、狭い室内に降り注ぐ
バスッ、そんな音がした
痛み、貫かれる激痛、左肩を細い光が貫いた
ガスッ!ガスッ!とコンクリートの床と壁に小さな穴が無数に開く

「…あの方の邪魔をする者は殲滅する」

ガラス玉のような瞳をこちらに向け
哀哭はそう言い放った
414 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:11:52.36 ID:PSyzbM6o
しかし次に来たのは別の奴
哀哭の下を潜り抜けて接近してくる者
血塗れの包帯、無数の蜘蛛の目

「我が名は鬼哭、獄の果てより出ずる者…」

鬼哭の身体の血塗れの包帯の一部がシュルシュルとほどけいていく
そして解けた包帯が物凄い勢いでこちらに飛来した
左肩から来る凄まじい激痛
それを必死に堪え俺はまた飛んだ
ズガン!と砕ける音、包帯が突き刺さった壁のコンクリートがバラバラと崩れ落ちる

「クカカカカッ!よく避けた!!」

なんとか玄武の力で左肩を回復しておきたいところだがそんな暇が無い
おそらく、4体目が来る
その予想は的中する
ボロボロの布を全身に纏い飛び込んでくる鋼鉄の仮面
いや、仮面ではない、なぜならそれには周囲を見るための穴も呼吸をするための穴も無い
顔の形に作られた、ただの鋼鉄の板

「俺は風哭…罪の果てより出ずる者…」

風哭の腕が、後ろに下がる
思わず黄龍鉄甲をつけた右手を打ち出す
ガキィンと音が響く、衝撃が左肩に響き痛みが増す

「…拳士か」

風哭が後ろに跳び下がる
左肩を抑えて膝を突く
目が、霞む…
霞む視界の中で黒いローブの堕人、慟哭の声が聞こえた

「…遊びはここまでだ」

4体がゆっくりと近づいてくる
くそっ…くそっ!ここまで来て…!!
出口はすぐそこなのに…!!

「終われ、その命…」

慟哭の周囲を舞う1本の剣が俺に向かって振り下ろされる
415 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:14:10.74 ID:PSyzbM6o
「させるかぁっ!!」

飛び出す影、剣が止まる
無条件で触れるだけで剣の力を殺せる
その能力の持ち主はただ1人

「…白やん」
「ぐっ…」
「お前の血が欲しいぃぃぃぃいいい!!」
「殲滅します」

白やんの左右から襲い掛かる鬼哭と哀哭
鬼哭の血塗れの包帯、そして哀哭の黒い光が白やんの身体に突き刺さる

「ごふっ…」

びちゃびちゃと流れ落ちる血
赤、赤、赤…
身体から、口から、とめどなく流れ落ちる命の雫

「いやぁぁぁぁぁぁあああ!!」

背後から絶叫、泣き声の入り混じる叫び声
喉はカラカラで皮膚がチリチリと焼け付くような感覚
目の前で起きたことを認識するのに脳の処理速度が追いつかない
だが俺は駆け出していた
きのこさんの手を引き、出口に向かって
そこに立ちはだかる影

「行かせるわけには行かない」

風哭、出口に立ちはだかる影

「どけ!!」
「無理な相談だ」

風哭に向かって振られた俺の右腕
優しく掴み、捻られる、力の方向をズラされて地面に叩きつけられる拳
コンクリートの床にぶつかった鉄甲が跳ね上がる
腹部に強い衝撃
叩きこまれた風哭の膝

「ぐっ…!おぉぉぉおおお!!」

明滅するような意識をギリギリで留め力を失った右腕に再度力を込め振りぬく
だが崩れた体勢で振るった拳があたることはなく
僅かに風哭が身体に纏う布をかすめただけに留まる
チャリンと、金属音
風哭の首元から何かがキラリと覗いた
あれは…?
416 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:15:26.52 ID:PSyzbM6o
「おっらぁぁぁあああああ!!」
「何ッ!?」

突撃してきた何かにぶつかられ風哭がバランスを崩す
出口までの道が開ける
そして声が響く

「さっさと逃げろよ、たまゆら」
「ほろにが…どうして…!?」
「前に言ったろ、俺には俺の目的があるってな
 とりあえず逃げろや、外の雑魚どもは蹴散らしておいたからな」
「…ありがとう!!」

俺は外に飛び出した
周囲は倒れている下級堕人で埋め尽くされていた
しかしどこに逃げればいい?
寮…は駄目だ、皆が巻き添えになる
迷って足が止まる、背後から派手に何かがぶっ壊れた音

「うおおおおッ!?」
「ぐはっ…!」
「…」

ドシャッ!ビシャッ!バシャッ!と3つの音
振り向くと地面に倒れる高橋とほろにが、そして大量の出血により周囲を赤く染める白やん
時計塔の中からゆっくりとこちらに向かってくる4体…いや、5体
鬼哭、風哭、慟哭、哀哭、そしてノスフェラトゥ
417 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:17:01.69 ID:PSyzbM6o
「手間をかけさせてくれるなぁ」
「まずいな…こいつらマジで強いぞ」
「…終わりだ、まとめて消えろ!!!」

ノスフェラトゥの叫び声と同時に4体が一斉にこちらに向かってきた
やられる…!!!
その時、光が差し込んだ
光に触れた瞬間に4体の堕人は風に吹かれた煙のように霧散する
何だ!?何が起こった…!?

「しまった…夜明けかぁぁ…!!」

ノスフェラトゥが仮面を抑えながら苦しそうな声をあげる
その身体が宙にゆっくりと浮き始める

「…命拾いしたようだな…!
 明日の夜が…貴様らの最後だ…!!
 せいぜい最後の時間を楽しんでおけ…!!」

それだけ言うとノスフェラトゥの身体が黒い塵のようになり
大気に溶けていく
後に残ったのは傷だらけの俺と高橋とほろにがときのこさん
そして瀕死の白やんだけだった
助かったのか…俺達は…
そう思った瞬間に、視界が真っ暗になった
叫び声が聞こえる、だけどもう…思考が…働かない…
418 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:19:23.36 ID:PSyzbM6o
??/?? 時刻不明 (推奨BGMなし)

ここは何処だ
俺はどうなった?
朦朧とする意識、ぼやける視界
そこに声が響く

「真実はいつもとても辛く耐え難い苦痛をもたらす
 …それ故、人は仮初に希望を見出す
 だが知ってしまった以上、覆すことが出来ないのが真実だ
 事実を否定するな、それは己の存在すら否定するということ」

この声を俺は知っている
徐々に視界もはっきりしてくる
白い世界、中央の椅子に光の塊が座っていた

「…お前は…」
「生徒会の全滅こそが堕人の目的
 最も…彼らの最終目的はさらにもう1段階の手順を踏むようだがな」
「お前は…知っていたのか…
 こうなることを…」
「お前がやっていたことは目的とはまるで逆
 与えられた情報だけを盲信してしまった結果…
 だが完全な間違いというわけではない
 堕人の完全消滅にはどちらにせよこの状況という段階を踏まなくてはいけない」
「どういうことだ?」
「全ては一つ、小さな小さな点からそれは始まり
 堕人、生徒会、そしてお前と無数に広がった」
「それは何だよ…俺は今からどうすりゃいいんだよ!!」
「1つの戦いを終えた今という時間は新たなる分岐点
 無限に広がる未来の中には全てを終結させる未来もきっと存在している…
 それに辿り着ける確率は置いておくとしてな」
「…つまり、どうしろってんだよ…」
「お前の信ずるままに」
「それじゃ意味がねぇ!今すぐ堕人をどうにかする方法を教えろ!!」
「…もしお前が戦い続け…生き残るなら…
 道はやがて見えるだろう…」

光の塊がうっすらと消えかかる

「待て!待てよ!!」
「よく考えろ、そして決めろ、歩むべき道を…」
「待ってくれぇぇぇぇぇええええ!!」

世界が、弾ける
白の世界は割れたガラスのようにガラガラと音を立てて崩れ落ちる
俺は崩れた世界から落ちていく
どうしようもない絶望感だけを胸に携えて…
419 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:22:09.27 ID:PSyzbM6o
11/15(水) 午後

まどろみの意識の中で聴覚を刺激する幾多の声
言い合うような、半ば諦めているような
そこから伝わる焦燥感と絶望感
そっと目を開けると白い天井とカーテンが視界に飛び込んでくる
カーテンを勢いよく開ける

「たまゆら…起きたのか…」

俺は無言で壁にかかっている時計を見た
時刻は午後1時…夜までもう時間が無い
ほろにがと、ヤチャマルと、きのこさん
3人の顔は重苦しい
脳にこびりつく言葉、一つの戦いを終えた今こそが分岐点
誰一人言葉を発しないまま
コチコチと時計の秒針が無情に時と刻んでいく
沈黙の中でカーテンが開かれる音が背後から聞こえる
振り向くと身体に包帯を巻かれた白やん

「もう起きれるとは…大した回復力だ」
「…話しておかなくてはならない…」

辛そうな顔をしながら白やんは言った
ヤチャマルは椅子に白やんを座らせた
椅子に座り、しばらくして落ち着いたようで白やんは語り始めた

「堕人の狙いはきのこさんの命…
 奴らの言っていた大いなる者というのが何なのかはわからない
 ただそれを果たすためにはきのこさんの命を奪うことが絶対に必要なはず…」
「なら、きのこさんを学園から遠ざければ…」
「無理だ…こうなった以上、奴らに行動範囲の制約は無い
 目的であるきのこさんが学園外に出れば奴らも追いかけてくる
 …そして間違いなく無関係な人たちもその手にかける」
「…」
「…方法があるとすれば」
「あるのか!?」

思わず白やんに詰め寄る
落ち着け、といったジェスチャーをされる
頬をかきながら座りなおす

「…あるとすれば…
 あの上級堕人4体とノスフェラトゥを倒すしかない
 下級は物を考える知能は持っていないからな、指揮官を失えば殲滅は容易いはずだ」
「あの…4体とノスフェラトゥを…?」
「…無関係の人たちの犠牲を考えなければ
 逃げ続けることは出来る
 俺達に残された道は逃げるか、戦うか
 たまゆら、お前が決めろ、門を開けたのはお前だ」
420 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:28:08.55 ID:PSyzbM6o
救いの無い選択肢
そして決断は俺に委ねられる
重い、どこまでも重い選択に苦悩する
戦って勝てるのか?かといって逃げて無関係な人を巻き込んでいいのか?
苦悩の末、俺の口から出た言葉

「…逃げるわけには…いかない
 だけど…勝算はあるのか…?」

その言葉を聞いた白やんが静かに微笑んだ
まるでこうなることを見越していたかのような目
そこに宿る確かな覚悟
酷く危険な揺らめきだった死の力
その揺らめきは収束し静かな、それでも確かに輝く闘志と変わる

「確かに奴らは強い、生半可な人間じゃあ敵わない
 だが都合よくこちらには生半可じゃない奴らが沢山いるのでな」
「え…?」

白やんが携帯を取り出した
だれかにかける仕草をした後
携帯に口を近づけて言った

「戦える者を総動員しろ
 今夜、堕人を1匹残らず殲滅する」
「なっ…」

パチン、と勢いよく携帯を閉じた白やん
こちらに向きなおり小さく笑う

「奴らを分断し各個撃破する
 重要なのは戦力の割り当てときのこさんの死守
 …どうする?」
「…どうするっても…」
「…なぁアイツは俺にやらしてくれないか?
 あの包帯野郎だよ」

ほろにがが志願してくる
包帯野郎…鬼哭のことか?
421 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:31:36.32 ID:PSyzbM6o
「断る理由はないし、ほろにがが戦ってくれるならたのもしいけど」
「そ〜こなくっちゃぁ!」
「1人で大丈夫か?」
「ああ、全然いけるぜ、問題ねー問題ねー」
「…心配だな」
「たまゆらぁ〜、俺の強さ知ってんだろ?
 …それにアイツには…」
「?」
「いや、なんでもない」

ほろにがはどことなく真剣な表情で顔を伏せた
どこかいつもと違うほろにがに違和感

「…おそらく奴らも今日でカタをつけるつもりだろう
 下級堕人の数もこれまでと比べ物にならないはずだ」
「そっちにも戦力を省かないといけないわけか…」
「そういえばゆき兄はどうした?」

ヤチャマルの問いかけに俺も思い出す
そういえば全く姿を見せていない…
ヤボ用があると言って昨日の夕方に保健室を出て行ってから見ていない
…寮にいるのか?

「とにかく今は夜までに戦力を集めれるだけ集めるしかない」
「ちょっと待て」

ほろにががずずいっ前に出てきて
白やんに指を突きつけた

「…何だ」
「知ってることを全部話せ
 1から10まで包み隠さず」
「堕人の狙いはきのこさんの命…
 だから守り抜くじゃあ納得がいかないか?」

冷静に言葉を繋ぐ白やん
ほろにがのしかめっ面は変わらない

「…気になっているのはなぜこの子だけが狙われるかだ
 軟禁していたことと言いお前は全部知ってるんだろ?」
「…」
「話せない…ってか?」
「…俺は何も知らない
 ただこの子が堕人に狙われるというのに早い段階で気づき保護していた」
「…この後に及んで嘘をつく、か」
「お、おい…2人とも」
422 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:37:43.36 ID:PSyzbM6o
険悪なムード
白やんを睨み付けるほろにがと視線を床に落とす白やん
確かに白やんはまだ何か隠しているが…
今は仲間割れしている場合じゃあ…いやでもやっぱり話さないというのは…
どっちにつこうか悩んでいるとほろにがが舌打ちをした

「…まぁいい、どうせ俺は1人で動くつもりだったしな」
「…」

ほろにがは頭をかきながら椅子に座りなおす
とりあえず収まったようだ…
ちょっと冷や汗が出た…

「…そうだ、たまゆら」
「ん?」
「…少し…来てくれないか?」

白やんに指で促され保健室から出る
ドアを閉めた白やんは小声で言ってきた

「…お前と戦う前の夜に俺はノスフェラトゥと戦った」
「え?」
「割れた仮面の下の顔は…この学園の生徒、小川だった」
「小川!?」
「しっ!」

白やんが口の前に指を持ってきた
思わず黙る
しかしノスフェラトゥが小川…?

「だが奴は知っての通り現れた
 …小川は姫の力を使って意識の完全拘束状態にあるにも関わらず、だ
 身体も拘束しているし確認も取ったが昨夜小川に不審な動きは何一つ無かった」
「ってことは…?」
「俺が戦ったノスフェラトゥ、小川と
 昨日現れたノスフェラトゥは別物ということになるが…
 別人とは俺には思えない」
「小川自身は何て?」
「…何も覚えていないと言っていたよ」

小川がノスフェラトゥ…
昨日のノスフェラトゥの言葉を考えれば確かに真実だと考えれる
小川は俺に執行部の情報を与えてきた
ノスフェラトゥ自身も幾度となく俺にヒントを与えてきた
全部あいつの掌で踊らされていたと思うとイライラするな…

「…あれこれ考察しても仕方が無いがな」
「まぁね…」
「俺は行く、また夜に会おう」
「おい、怪我は大丈夫なのか?」
「…大丈夫…さ」
423 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:39:19.97 ID:PSyzbM6o
白やんは行ってしまった
鬼哭と哀哭にやられた傷が大丈夫とは思えないが…
それはそうと本当にゆき兄はどこに行ったんだろう
今は猫の手だって借りたい時なのに…



- 夜が来る、何よりも暗い夜が来る
それは全てを終わらす深淵の闇か
  それとも黎明をより輝かせるための闇か
照らし出されるのは希望か、絶望か… -
424 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:42:01.39 ID:PSyzbM6o
11/15(水) 夜

日が落ち、暗い夜に包まれた校庭
そこに集まる、力たち
風が吹く、ごうっと音を立て、まるで生物のように校舎が鳴動する
否、鳴動したのは校舎ではない
校舎から溢れ出るように蠢く闇、堕人
その闇、全てを埋め尽くすかのような数
絶対的な黒の中に浮かぶ白い顔、仮面
"笑う"という感情だけを残し作られた仮面
真なる顔を覆い隠し仮初の顔を常に映し出す
ノスフェラトゥ、全ての敵
大きな声が響く、獄の底より響くような声

「実に盛り上がる!!
 まさに最後を飾るに相応しい舞台だ!!!
 クックック、キヒャッハッハッハッハ!!!」

狂ったように笑い声をあげるノスフェラトゥ
楽しくて楽しくてしょうがないと言うように
無防備にただ耳障りな声で笑い続ける
白やんが一歩前に出た

「笑っていられるのも今のうちで
 今日この時を以って貴様ら堕人は全て殲滅する」
「ヒャハッ…」

ノスフェラトゥの笑い声が止まる
そして仮面を爪の先でカン、カンと叩く

「…堕人は、悪か?」
「何?」
「立場が変われば悪も正義も逆転する…
 俺達からすれば…」

ノスフェラトゥは淡々と抑え場の無い口調で続ける
後ろで蠢く大量の闇もさきほどまでとは違い静かに鳴動している
425 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:43:26.99 ID:PSyzbM6o
「…恋人が死に事実を認めたくないが故に闇を振るった者
破壊を憎むあまり何よりも完全な破壊者になった者
 嫌われたくないから意思を操り都合の悪いことを排除していた者
 絶対的な正義を盲信したが故に全てを力でねじ伏せた者
 空虚な思想で何も考えずただ現れる者を潰していく者
 己の力を更に高めるため仮初の正義に身を委ねた者
 力に溺れ力を誇示するために戦い続けた戦闘飢餓の者
 恐怖に怯えるあまり濁りきった闇に落ちた者
 自ら戦う手段を持たず狡猾に相手を絡めとる者
 全てを信じず力を持て余した悪魔の思想を持つ者
 …根本的な解決にならないと知っていながら全てを停滞させ腐らせた統治者
 醜い、醜い、醜い、醜い、醜い!!!!!!
 それに比べて我らのなんたる純粋なことか!!
 虚飾や思想に縛られることなくただ純粋に1つの物をただ求め続ける!!
 本能が!衝動が!生きろと!生物としてあるべき姿に戻れと突き動かす!!
 それをなぜ!なぜ!なぜ!なぜ!なぜ!!
 いともたやすく心を蝕まれる貴様達が邪魔をする!!
 弱者弱者弱者弱者!!!脆い脆い脆い脆い脆い!!!!
 吼えるしか能が無い牙を抜かれた野良犬の分際で!!!!」

ノスフェラトゥの声は完全な狂気
聞くだけで吐き気を催すような、狂った声、存在してはならない声

「違う!!」

俺は叫んだ、腹の底、心の底から
全身全霊を以てノスフェラトゥを否定する
狂った叫びは俺に問うた

「何が違うという!?
 お前は見てきたはずだ!!
 戦いの中で薄っぺらい正義に隠された渦巻く人間の悪意!欲望!狂気!」
「皆怖いだけだった!自分を失いそうな恐怖の中でただもがいていただけだ!!
 お前のような奴がわかったふうな口を聞くな!!!
 人は迷う、だからこそ人であれるんだ!
 決して一人では存在できない未完成な光と闇の間に産み落とされた孤独な存在…でも
 だから寄り添う!だから戦う!迷って迷ってあがいてあがいて、最後には手を取り合えることを信じて!!
 そして今ここにいる皆が俺の答えだ!!
 思想も何も無くなったお前らなんて本当の化け物だ!!」
「化け物…違う違う違うちがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!!
 我らこそが最も純粋な生命!!どんな生命も決して敵うことはない!!
 もう議論も飽きた!!八つ裂きにしてやるぁぁぁぁぁぁ!!」
426 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:46:49.71 ID:PSyzbM6o
もはや声になってはいない、ノスフェラトゥの雄たけび
闇が、蠢く
収束、そして拡散
闇の塊はその姿を散らし無数の堕人を化していく
肩に誰かの手が置かれた
振りぬくとしげるがいた

「…行きましょう、一緒に
 僕はもう、貴方と手を取り合える」
「しげる…」
「俺もいける、阿部さんのことは許したわけじゃないけどさ
 今はそんなこと考えてる余裕も無いだろ?」
「えび助…」
「私もきっと出来る
 大した力は無いけど無いよりはマシでしょ?」
「桃花…」

身体に伝わる温もり

「僕はこれが本当の正義だと思う
 …正義の味方は1人じゃない、必ず仲間がいる」
「透過…」
「迷いが無ければ、剣の切れは冴え渡る…
 今ならきっと鋼鉄ですら両断することが出来る」
「剣三郎…」
「空虚な思想だなんてな…
 ムカつくよ、あの仮面野郎、全員串刺しにしてやる」
「黒やん…」

温もりが、力に変わる
想いが、流れ込む

「…これ終わったらもっかい俺と戦ってくれよ
 今度は…普通に殴り合いで」
「雷雲…」
「僕はあの時からずっと信じていましたから
 たまゆらさんは間違ってないって」
「蝶…」

黄龍鉄甲、想いを受けて輝け
深淵の闇ですら眩く照らす金色の光を

「さてと、いよいよだな
 腕がなるぜぇ」
「ほろにが…」
「まさか決別したはずの過去に自ら舞い戻るとはな…
 だがもう心無い鬼では無い、鬼が振るう力は守るための力」
「ヤチャマル…」
427 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:48:13.10 ID:PSyzbM6o
俺の前に出る白やん
顔は見えないが、その後姿に気圧されるような威風

「…ずっと、迷っていた
 本当の正義は何なのか…
 …もう迷わない…互いに手を取り合う…それだけでこんなにも心は安らげるんだな
 差し伸ばしていなかったのは俺のほうか…」
「白やん…」
「こぉぉぉぉぉぉろぉぉぉぉせぇぇぇぇぇぇ!!!」
「来るがいい!堕人ども!!
 手を取り合うことが出来る人の本当の力を見せてやる!!」

ノスフェラトゥの耳を劈く絶叫
そして雄叫び、意思を持たぬ本能の群れ
襲い来る、圧倒的な闇

「来るぞ!!1匹残らずブチのめせ!!!」
「「「おお!!!!」」」
428 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:49:33.21 ID:PSyzbM6o
(推奨BGM) http://www.youtube.com/watch?v=aNkluo0DQkU&feature=related

吹き荒れる嵐の風のような闇がこちらに向かってくる
迎え撃つ、仲間達
しげるの目くらまし、えび助の全方位爆撃、桃花の音の力での感覚汚染
透過の弾幕、黒やんの鋼鉄の羽根、剣三郎の一刀両断
痛みを引き受け堕人に叩き返す雷雲、1撃の下に大地を砕き堕人を砕く蝶
それぞれが持てる力を振り絞り目の前の堕人を倒していく
次々と黒い霧となり霧散する堕人
だがそれを上回る速度で仲間の死骸とも言える黒い残滓を掻き分けてくる本能の闇
それでも俺達は引き下がらなかった
揺るがない覚悟『1匹たりとも堕人をここから先に行かせない』
覚悟を背負った強い力が激流の如く全てを飲み込み押し流そうとする闇を押し止めていた
殲滅の意思、自分たちの居場所を守ろうとする意思
確かに人の心は脆弱で、繊細で、危うげで容易く心を闇に落とす
でもそれ故に、何かを強く信じれたのならそれはきっと…
きっと、闇を撃ち払う力になる!

堕人の残滓、宙に漂う黒い霧が歪む
そして歪んだ空間を砕くように現れる者
血塗れの包帯、蜘蛛の目、恐怖の具現
上級堕人、鬼哭

「クカカカカカッ!!
 これだ!これこそが俺が求めていた戦場!!」
「きこぉぉぉぉぉぉぉぉぉく!!!!」

追いすがる下級堕人を振り切って
ほろにがが鬼哭に向かって走り出した
それを見た鬼哭が笑ったような気がした
包帯の下で、楽しそうの
そして逆側で地面から何かが飛び上がった
しなやかで流れるような長い天に舞う黒髪
微かな月の光に照らされる冷たく輝くその肢体
風を受けはためくスカート、戦場には似つかわしいその姿
跳躍距離、ざっと2メートル
上級堕人、哀哭

「殲滅します」

宙に舞った哀哭の両手の袖口から黒い光が放たれる
だが光と光が衝突の寸前
哀哭より更に高く飛び上がる影
そして哀哭の頭上に振り下ろされる足
429 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:51:05.96 ID:PSyzbM6o
嫌な音が周囲に木霊する
凄い勢いで地面に叩きつけられる哀哭
だがまるで痛みなど感じてない素振りですぐに立ち上がる
その目は自分の邪魔をした者に向けられていた
ガラスのような瞳に憎悪の炎を燃やして見つめいる

「戦うメイドさんか…個人的には好きなんだけどな
 …でも今回は鬼面夜叉の力、見せてやるよ」

頭上から風を切り裂く不気味な音
4本の剣を周囲に回転させながら舞い降りる闇
その着地地点にいた下級堕人が一瞬のうちに黒い霧と化す
肉のようなものが切り裂ける音、骨が力任せに砕かれるような音
巻き起こされた風が黒い霧を舞い上げその中心に佇む者
上級堕人、慟哭

「人如きがどこまで足掻けるか、見物だな」

慟哭の後ろ、闇の中から右手で下級堕人の頭を掴み現れる影
投げ捨てられた堕人はその姿を霧散させる
武器を失ってもなおその力は衰えない
それこそが邪眼学園生徒会長の真なる強さ

「…お前は俺によく似ている」
「武器を失った人如きが我と並ぶつもりか?」

徐々に押し返されてきているのがわかった
現れた鬼哭、哀哭、慟哭のせいでバランスが崩れだした
…待て、なぜあの3体だけ?
咄嗟に辺りを見回した
月の光を隠す天を舞う影
見上げると、空を駆け抜ける闇
黒い流れ星、戦場を突き抜けていく

「…よく気づいたな
 だが手遅れだ」
「風哭ぅぅぅぅぅ!!!」

戦場を抜けた風哭、追いかけようとするも亡者のように掴みかかってくる堕人
だが風哭が校庭を抜ける寸前、火花が散った
それに弾かれるように風哭は勢いを失って地面に落下する

「間に合ったぁ…」
「立体式焼失結界…
 急ごしらえだがなんとか正常に展開できたな」

神楽君と姫が、協力して作っていた学園全体を覆う
神魔混合属性結界
ギリギリで間に合ったそれが風哭を阻止した
堕人を振り払い、俺は風哭へと向かう
430 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:52:39.05 ID:PSyzbM6o
「うおぉぉぉぉおお!!」
「…」

風哭の鉄の面に黄龍鉄甲の1撃が叩き込まれる
鉄と鉄を力任せにぶつけたような感覚
チャリン、と風哭の首元から光る何か
やっぱりだ、見間違いじゃなかった
心臓の鼓動が早くなり、逆巻く記憶の渦の中
見覚えのある、その光る何か
あのタリスマンは、間違いない
神楽君にもらった物、そして風太に渡したままにしていた物

「…風太…?」
「…俺は、風哭」

骨が軋む音、直接揺さぶられるような脳への衝撃
視界がぐるんと一回転
理解の外、追いつかない思考の先
地面に叩きつけられる俺
わけがわからないな、どうして風太がもったままのタリスマンを持ってるんだ
全然わからないけど…

「それなら尚更寝てるわけには行かないんだよ!!!」
「…俺は、風哭…風哭…!」

ノスフェラトゥが笑う
身をよじり、ゲラゲラ、ゲラゲラと不快な笑い声
呼応するかのように殲滅の速度を凌駕し次々と湧き上がる下級堕人
まるで無限とも思えるようなその数に徐々に気圧とされていく皆
431 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:53:33.95 ID:PSyzbM6o
「キリが無いですね
 …目くらましだけの自分の力が恨めしいです」

しげるが苦虫を噛み潰したかのような顔でそう呟く
鋭い爪を振り上げ切りかかる下級堕人を避けていく
だがその足に倒れていた堕人が封じる

「しまった!」

目の前に迫る無数の闇と爪
爆発音、叫び声をあげ吹き飛んでいく堕人
煙の中に立つ破壊の王

「油断すんなよ
 …しっかしこの数はさすがにまずいな…
 完全な接近戦にもってかれると爆発物は使えねぇし…」

焦りから来る一瞬の油断、闇に堕ちた者どもはその隙を見逃さなかった
闇の中から来る闇の塊
虎のような姿の、影

「いッ!?」

鋭い爪と牙がえび助に向けられる
その速さ、獣のそれ
狙いは正確、得物の喉笛を食いちぎろうとする
突如響く旋律、獣の目に惑い
獣はえび助の脇を抜け、自ら地面に頭を叩きつけ転倒する
ヴァイオリンを構えた桃花が旋律をかき鳴らす
音の力による感覚汚染が獣の殺意をえび助か逸らした
倒れた獣はグルルルルル…と不気味な唸り声をあげ今度は桃花に飛びかかる

「やばっ…」
「次元斬」

光る閃光が獣の体を通り抜ける
牙は桃花に届かず、真っ二つになった獣はその姿を霧へと変える
息つく暇も与えずにまるで津波のような堕人の大群

「下がれ」
「剣三郎…でも…」
「いいから」

剣三郎の前方にはまるで黒き山、闇の塊
それが地鳴りをあげ剣三郎へと接近する
剣三郎は深く腰を落とし刀に手をかけた

「…この1撃に答えを乗せよう」
432 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:55:08.37 ID:PSyzbM6o
剣三郎は動かない
静かに目を閉じて荒れ狂う堕人の群れの前で静かに待つ
覆いかぶさるように堕人の群れが剣三郎を飲み込もうとする
その瞬間に閃光が走った
黒き山が、真一文字に切り裂かれ爆散する
黒い粒子が風に舞い、全てを切り裂く次元刀の刀身に静かに降り注ぐ
その光景を見つめている大きな銃を携えた者
50口径のキャリバーライフル、戦車の装甲ですら1撃の元にブチ抜く大型ライフル

「援護射撃完了っと」

そこに唸り声を上げて飛びかかる影の獣
咄嗟に飛びのく透過

「悪いが、俺だって遊んでいたわけじゃないんでね」

懐から取り出したのは銃、50口径リボルバー
装填されているのは500S&Wマグナム
最大最強の拳銃弾
普通の人間が放てばあまりにも大きすぎる反動で自らが傷つく代物
それほどのものが右手に1丁、左手に1丁、究極の2丁拳銃
発砲音、いや、それは衝撃音
獣の眉間に打ち込まれた弾丸は貫通を遥かに超越し周囲の闇を消し飛ばした

「趣味が悪いな、1撃にかけりゃいいってもんじゃないだろ
 …こういう敵が沢山いる状態は特に」

いつの間にか近くにいた黒い羽根を持つ男
闇の中でもより黒く穢れ無き漆黒
静かに、周囲に向かって羽根が放たれた
黒き羽根の鋼鉄の弾幕、無数の羽根は堕人に突き刺さり、貫き、その姿を散らせて行く
不気味なうなり声をあげ倒れる堕人は漆黒をより際立たせる黒い霧と化していく
433 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:55:59.92 ID:PSyzbM6o
「羽根ちょいともらうぜ」

弾幕の中に自ら飛び込んだ男の全身に羽根が突き刺さる
顔を苦痛に歪め、それでも笑みは絶やさない
そして両手を前に突き出し1体の堕人の頭を掴んだ

「お前にやるよ、この痛み…
 お前に触れてる他の奴らにも全部伝わるけどな」

周囲の堕人の身体に纏めて穴が開く
ヒュウヒュウと空気の漏れる音が辺りに響く
地面に倒れこむ大量の影が霧散していく
風に煽られ天を彩るその塵を同様に霧の中で見ている者

「…あいつも割かし強くなったなぁ」

余所見をして呟きながらもその手が堕人を突いた
瞬時に堕人の身体は砕けちる

「執行部の隠し玉としてのメンツってのが俺にもあるんでね」

蝶は地面を突いた
地盤が揺れ、ビシリと校庭にヒビが入った

「今度は堕ちたら戻ってこれねぇぞ」

地面が、口を開いた
大地が動きその全てを飲み込む口に堕人が落ちていく
叫び声をあげながら飲み込まれていく堕人

咆哮と、断末魔の叫びと、雄叫びと、黒い霧、赤い血
生と死が行き交う戦場
それでもなおもノスフェラトゥは笑い続ける
まるでこれを喜劇だとでも言うかのように
434 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:57:16.09 ID:PSyzbM6o
鬼哭の包帯があらゆる方向に伸び、大地を抉る
周囲は最早校庭という面影を残してはいなかった
必死に攻撃を避け続けるほろにが

「近づけねぇぞ!!クソッ!!」

まるで曲芸のように辺りを縦横無尽に飛び回る鬼哭
予想外の方向から放たれる殺戮の包帯
常人ならば避けることすら出来ぬその軌道
だけどほろにがは危うげながらも攻撃を避け続ける
鬼哭が笑う

「面白い面白い面白い…!
 場所を変えよう!邪魔の入らないところで思う存分やろう!!!」
「ああ!?」

鬼哭がほろにがに背を向けて飛び跳ねるように校舎の裏手に向かう
普通に考えれば罠、だけどほろにが追いかける

「待てッ!ほろにが!!」

走って行くほろにがの後ろ姿に声をかけるヤチャマル
その足元に黒い光が煌く

「ちぃっ!」

光が地面から上に向かって飛び上がる
咄嗟に飛びのかなければ全身を貫かれていた
無機質な、透き通るような冷たい声

「貴女に余所見をする暇は与えません
 …スケジュールが狂いました、迅速にお死になさい」
「このあと一杯やりたいんでね
 そりゃ無理な注文だ」

哀哭の袖口からまた黒い光
しかし放たれはせずに光の帯は袖口に停滞する
その形状は、剣

「接近戦に移行…」

動きにくいメイド服を意に介さず
長い黒髪を風になびかせながらヤチャマルへと走り抜ける哀哭
振りぬかれる右腕が正確に首へと向かう
それを必要最小限とも言えるゆるやかな動きで受け流すヤチャマル
立て続けに振りぬかれる左腕
読み通りと言った具合で刃が首を落とす前にヤチャマルは哀哭の左肩に軽い打撃
直後、哀哭が飛んだ
435 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:58:33.71 ID:PSyzbM6o
「何ッ!?」

腕と同じように、両足に黒い光の剣
サマーソルトのようにその足の剣はヤチャマルを捉える
長いスカートをはためかせ、布が風を受けバタバタと音をさせる
血が、迸る
ガスッ!と足の剣を地面に突き刺す着地した哀哭
表情一つ崩さずに淡々と唇を動かす

「…あの状況に対応するとはお見事な反応速度です
 最も人にしてはですが」

ポタリ、ポタリ、とヤチャマルの足元に赤い雫が落ちる
流れ出る血は頬につけられた切り傷から滴り落ちる
ヤチャマルは哀哭から目を離さない
殺し屋として生きてきた己の歴史が理解させた
目を離せば確実に殺られる、と
哀哭も動かない、微動だにせず
そこだけ時間が停止したかのような不気味な空気
そして対照的に戦場を駆け抜ける2つの風
進路にいる者は全て切り裂かれ、砕かれる、殺戮の風

慟哭と白やん
戦場を駆け回りながら激戦を繰り広げる
否、そうではない
武器を持たない白やんを慟哭が追い詰めているだけ
慟哭の周囲を高速で回転する4本の剣
1本なら"死の右手"を使えばどうとでもなる
だが4本、例え1本を止めたとしても残りの3本に切り刻まれる
だからこそ白やんは決定打を与えられずに逃げに徹するだけだった
それでも決して後ろは見せず、勝利に繋ぐための回避の連続

「…逃げるだけしか出来ないのなら終わりにさせてもらうぞ?」

慟哭の冷徹な呟き
4本の剣が宙に散る
その中の1本が白やんに向かう
死の右手で受けるか、それとも避けるか
白やんが選んだ行動は回避
横に飛ぶと剣は地面に突き刺さる
だが着地地点に間髪入れずに2本目が向かう
確実に命中する位置、身体を捻ろうとも決して逸らすことは出来ない
白やんは右手を剣に向かい突き出す
切っ先が掌に触れた瞬間に剣は勢いを失う
…すでに迫る3本目と4本目、前後からの挟み撃ち
落下する2本目の剣を、白やんの左手が掴む
そのまま振るった剣が正面から飛来する剣を弾き飛ばし
瞬時に持ち手を左手から右手に変えた白やんは後ろを見ずに背中に剣を持っていく
弾ける金属音、飛来した4本目も弾き飛ばす
436 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 22:59:57.68 ID:PSyzbM6o
僅かに慟哭の声に感嘆の意思が宿る

「…驚いた、たかが人と侮っていたが」
「これで武器は手に入った…
 剣に込められたお前の力は死んだ」
「クク、問題無い…」

小さく笑った慟哭
ローブの下から覗く刃
1本、2本、3本、4本、5本、6本…

「剣なら沢山ある…
 1本くらいお前にくれてやろう」
「なるほど…真っ当な剣士じゃないみたいだな…」

そして戦場と少し離れた場所
校庭の終わり、結界のすぐ傍

「そのタリスマン…どこで手に入れた」
「…俺という存在が生まれた時から常に在った」
「お前は…風太なのか!?」
「知らない…風太など…!
 俺は…風哭だぁぁぁぁああああ!!」

風哭がボロ布に手を突っ込んで取り出した物
人間の骨で作られたような、銃
銃口がこちらを向いた
キィン…という何かが収束する音
とてつもない危険を本能が察知する
俺は走り出した、あの銃は間違いなくヤバい!!

「俺は風哭!!罪の果てより出ずる者!!
 それ以上でも以下でも無い!!」

銃口から、断末魔の叫び声
あれは、放たれた音
紫に光る圧倒的なエネルギーの射出
わずかに靴の先が触れた
ジュワッという音
靴の先端が、丸ごと"消えた"
幸いにも俺の足は無事だったというのは神に感謝するべきなのか…
射出された紫の光は結界に命中する
エネルギーが結界の壁を走り抜ける
周囲は紫色の光に照らされまるで真昼のような明るさになる
それを見て慌てる神楽君と姫

「なんて威力だよ!?
 結界が吸収しきれずに溢れた分が爆散しやがった!」
「…並の結界なら1撃で破壊されてた…」
437 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 23:01:18.22 ID:PSyzbM6o
2人の会話から察するにやはりあれは桁外れの威力らしい
直撃どころか掠っただけで即死するような代物
恐ろしく危険な武器

「俺は…風哭…
 罪の果てより…罪…罪…とは…何だ?」

頭を抑える風哭
わからない、風哭は風太なのか?それとも…
くそ、迷うな、迷えば拳が鈍る
今は、例えあれが風太であったとしても、迷うわけにはいかない!!
438 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/24(土) 23:02:11.23 ID:PSyzbM6o
「ヒャッハッハッハッハッハッハ!!!!
 あがけぇ!もがけぇ!!!そして後悔を抱いて死んでいけ!!
 お前達に未来は無い!!いや全てに未来などは無い!!
 どのみちいつか死を迎える限りある命!!
 我は不死なる者ノスフェラトゥ!!限りある者どもよ!平伏せよ!!
 その血を以て瑞光となれ!!遍く大地と海を血に染めろ!!
 ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」


17時限目 - 闇集結 -
439 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/24(土) 23:24:43.02 ID:nDgji.co
ゆきに乙!

なんだよこれwwwwwwめちゃくちゃテンション上がる展開wwwwwwwwwwwwwwww
戦闘始まる前のシーンでちょっと泣いちゃったしwwwwwwwwwwwwww
440 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/24(土) 23:33:17.32 ID:vV3LfgDO
白やん涙腺脆すぎwwwwwwww
441 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/25(日) 00:05:49.70 ID:gYYzhmso
ゆき兄おつ!


ちょっとやんごとなき事情で時間と曜日忘れてたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwサーセンwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


全員出てくるとかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwテンションがwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwうぇwwwwwwwwうぇwwwwwwwwwwwwwwwwww
tk俺も参戦しとるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
あとBGMがいい仕事しすぎwwwwwwwwwwwwwwwwww
442 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/25(日) 08:31:29.28 ID:9ibe4SQ0
浅!
443 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/25(日) 08:32:22.04 ID:9ibe4SQ0
違う!朝!
444 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/10/25(日) 08:59:31.68 ID:D5P9PBgo
もーにん!
445 :リリーホワイト :2009/10/25(日) 10:17:29.31 ID:QfzFi2DO
朝ですよー
446 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/25(日) 11:55:58.01 ID:tgLRrwAO
夢であるように
447 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/26(月) 04:05:13.76 ID:B3k4RsDO
朝ですよー
448 :韋駄天足雷光一閃迦楼羅黒翼天 :2009/10/26(月) 04:14:18.51 ID:B3k4RsDO
ははっ
449 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/10/26(月) 07:52:26.41 ID:bo2WJDco
はははっ
450 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/26(月) 09:54:04.23 ID:LrIG/YDO
ははははっ
451 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/26(月) 12:06:05.72 ID:y/iWLWoo
はははははっ
452 :そら :2009/10/26(月) 13:47:54.21 ID:s8zDNkDO
http://imepita.jp/20091026/496000
遂に…あの人が帰ってくる!
453 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/26(月) 13:55:19.94 ID:LrIG/YDO
>>452
mjd!?
454 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/26(月) 15:08:44.44 ID:IqabXFco
>>453
帰ってくるのか…彼が!!


携帯が鳴らなくておかしーなーと思っていたら
止まっていた
455 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/26(月) 15:19:47.20 ID:LrIG/YDO
>>454
気付けよwwwwwwwwwwww
456 :ほろ苦 :2009/10/26(月) 21:34:53.06 ID:wnXSYeo0
>>453
フイタwwwwwwwwwwwwwwwwww

これはあれか
ほろにがスピンオフの帯か

ね。ゆき兄^^
457 :そら :2009/10/27(火) 08:07:50.86 ID:aM.mt2DO
朝ですねー
458 :そら :2009/10/28(水) 07:47:08.52 ID:bOMhTIDO
朝ですかー
459 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/28(水) 08:39:08.56 ID:dSIgf2DO
朝ですな…(´ω`)
460 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/28(水) 16:00:53.34 ID:GFQkz7Yo
さっきあったこと
買い物いったら同級生(女)がいた

同「あ、ゆき兄君じゃん、久しぶり〜」
俺「おー久しぶりー」

でね、そいつのお腹が大きくて
薬指に指輪してたから

俺「あ、結婚したん?」
同「うん」
俺「そっか、いつ子供生まれるの?」
同「いや妊娠はしてないよww」
俺「え、でもそのお腹…ハッ」
同「…」
俺「…」

俺は逃げるようにその場を立ち去った
461 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/28(水) 16:49:46.10 ID:1jeiBkAO
アウトー
462 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/28(水) 16:59:59.39 ID:dSIgf2DO
>>460
これは気まずいwwwwwwww
463 :ピュアハート [('A`)]:2009/10/28(水) 22:00:14.04 ID:eUv0IgSO
撲殺フラグだな
464 :そら :2009/10/29(木) 07:41:54.89 ID:X7M0IQDO
朝ですなー
465 :ミギー :2009/10/29(木) 16:59:24.06 ID:3sd5O6DO
友達を腰に乗せて腕立て伏せしたら腰が物故割れた
466 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/29(木) 19:56:16.40 ID:LNmB4MAO
頭は前から壊れてるもんな
467 :ピュアハート [('A`)]:2009/10/29(木) 22:06:14.07 ID:2JF7vISO
相も変わらずアホなことをやりなさる
468 :そら :2009/10/30(金) 07:49:01.26 ID:RSc2VcDO
朝ですさー
469 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/30(金) 15:40:14.41 ID:qim8uDgo
さて今だ携帯が直らない
困ったものだね
470 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/30(金) 21:54:14.65 ID:i0URcwDO
>>469
直らない…?


止まってるんじゃなかったっけ?
471 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/30(金) 21:56:42.84 ID:qim8uDgo
>>470
あ、うん、そうよ
とまってるのがなおらない

お金払ってないから当然なんだが
472 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/30(金) 22:25:26.01 ID:i0URcwDO
>>471
さっさと払えwwwwwwww
473 :ミギー :2009/10/31(土) 08:02:06.82 ID:no7FTADO
あー腰痛いー
これ言ったら友達みんながニヤニヤしてきて困る
474 :そら :2009/10/31(土) 08:04:06.84 ID:suKVUoDO
朝ですわー
475 :そら :2009/10/31(土) 08:20:26.07 ID:suKVUoDO
>>473
男子高校生ですか
476 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 21:59:37.81 ID:8/37lvgo
えー、今週はクライマックスのクライマックスというわけで
普段より1.5倍ぐらい増量されてます
心してどうぞ
477 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:02:14.53 ID:8/37lvgo
邪眼学園黄龍譚
18時限目 - ノスフェラトゥ -


11/15(水) 夜 (推奨BGM) http://www.youtube.com/watch?v=GWaVc1wcUiA&feature=related

「ヒャッハッハッハッハッハッハ!!!!
 あがけぇ!もがけぇ!!!そして後悔を抱いて死んでいけ!!
 お前達に未来は無い!!いや全てに未来などは無い!!
 どのみちいつか死を迎える限りある命!!
 我は不死なる者ノスフェラトゥ!!限りある者どもよ!平伏せよ!!
 その血を以て瑞光となれ!!遍く大地と海を血に染めろ!!
 ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」

響き渡るノスフェラトゥの笑い声
とても耳障り
ずっと聞いてると吐き気と頭痛を催しそうなほどの嫌悪感を沸き起こす笑い声
それでも今は目の前の脅威から目を離すわけにはいかない

「…うう…うおあああ…!」

頭を抑えながら呻く風哭
やはりこいつだけは他の堕人と比べて何かが違う
何が、と具体的にはわからない
強いて言うならば無理やり押えつけられてるような意思の力

「…もしお前が本当に風太なら…
 どうして…」
「グッ…!違う…俺は…風哭!!」

風哭の銃がこちらを向いた
震える銃口、左手で鋼鉄の仮面を抑え揺れる身体でこちらを狙う
銃口が跳ねる、発射されたのは紫の光弾、さっきと違う?
だが速度は速かった
あっという間に目前に迫り来る光弾
正面、左、右、回避の可能性を潰すように連続で発射される
ならば!

「目覚めろッ!!朱雀!!」

俺は宙に飛び上がる
光弾は足のすぐ下を突破し地面を抉る
風を切り裂き、滑空するように風哭へと突進する
478 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:03:38.86 ID:8/37lvgo
「あぁぁああ!!」

風哭の声にならない声、恐怖の感情、苛立ちが込められた声
放たれる光弾をスピンしながら左右に避ける
そして右手を振るう
空を切る拳
風哭が高く高く跳躍
遥か上、月の光を受けた鋼鉄の仮面が銀色の光を放っていた
銃撃音、直後、背骨が折れるような衝撃

「げはッ…」

地面に叩きつけられ、地面に残す傷痕
撃たれた、いや違う…
背中を突き刺すように落下してきた風哭の足に命中したんだ
だけどどうやって一瞬で加速を乗せて落下してきた
後ろに着地する風哭
手に持っている骨の銃は2丁
後ろに向かって、放たれる銃撃
バーナーのように風哭の後ろに拡散する巨大な紫の光
それを視認するとほぼ同時に風哭は周囲の空気を切り裂き俺に恐ろしいスピードで向かってくる
足は少し地面から浮き、滑るように
理解した、銃からのエネルギーの射出を推進力にしている
あまりにも早すぎるそのスピード
感情も何も感じられない鋼鉄の面、月の光に照らされるそれはまるでこの世ならざるもの
鋼鉄の面がすぐ近く、ゴウッ!と言う風を切る音
紫の光の帯が空に向かって伸びていく
視界から消える風哭、目の前には薄っすらと輝きを残すエネルギーの残滓
思考が止まる、消えて、エネルギー残滓、上に昇った紫の光
理解した時は手遅れ
振り下ろされる鉄槌

ごがん

頭蓋骨の中を駆け巡る鈍い音
視界が白に染まりそうなる
痛みはなく、それはすでに衝撃
立っているのか、倒れているのか
それすらもわからないほどの思考の狂い
倒れるわけには行かない、その気力だけが意識を繋ぎとめていた
だがそんな決意すら容易に奪う、風哭の攻め

がつん、がつん、がつん、がきん、がきん、ごきり
がつん、がつん、がつん、がつん、めきめき

何が起こっているのかわからない
痛みすらも感じることが出来ない衝撃の渦
白い視界、揺れる世界、揺れているのは脳
腕や足、動いているのかすらもわからない
479 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:06:25.21 ID:8/37lvgo
だけど何故か、どうしようもなく悲しい
手も足も出ないというのが悲しいんじゃない
風哭が俺を攻撃する度に衝撃と共に伝わる戸惑い
そしてそれを上回る苛立ち、絶望
まるで先の見えぬ暗闇の中でもがいているよう
チャリン、チャリンと金属がぶつかる音
なぜかその音が、風太の声に聞こえた気がした
『助けてくれ』と、言っているような

結界の外で慌てふためく2つの影
神楽君と姫は殴り続けられるたまゆらを見ているだけしか出来ない

「どどどど、どうしようどうしよう!?
 このままじゃたまゆらが死ぬ!」
「だけど私達が動いたら結界が崩れる!」
「んなこと言ってもこのままじゃ…!」
「退け」
「えっ?」

2人の間を風が抜けた
風は飛び上がり結界に激突した
火花のような物が炸裂し、風は結界の中へと侵入した

「生身でこの結界に穴を開けた…!?」
「誰…あれ…?」
480 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:07:35.81 ID:8/37lvgo
風哭がたまゆらの首を掴み持ち上げる
呻くたまゆら、抵抗の意思は感じられない
いや、正確には抵抗したくても出来ない
鋼鉄の仮面の下から響く声

「…俺は風哭…過去も何も無い…
 ただ罪から生まれ罪に還るだけ…
 だから!!お前を殺さないといけない!!!」

風哭の腕が大きく振り上げられた
天高く、力無く吹き飛ぶたまゆらの身体
掲げられる風哭の銃

「終わりだ!!」

そこに飛び込んだ風
風哭の銃が回転しながら宙を舞う
1テンポずれて、今度は風哭自身が吹っ飛んだ

「ごふっ…」
「おっと」

落下してくるたまゆらを両腕でしっかりとキャッチする
それは誰よりも強く、並ぶことの無い蹴り技の持ち主
人を遥かに超越したとも言える体技を持つ、高橋
受け止めたたまゆらをそっと地面に寝かせると風哭へと向き直る

「ここから俺が相手だ
 …俺はたまゆらほど甘くねぇぞ
 俺の蹴りは鉄すらブチ破る…」
「邪魔を…するなぁぁああああああああ!!」
「フン、相手にとって不足は無し、か」
481 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:09:22.86 ID:8/37lvgo
校舎の裏、けたたましい笑い声と破壊音
血塗れの包帯に身を包んだ悪魔
壁から地面に、地面から壁に、壁から壁に
跳躍しながら高速でほろにがに向かって全てを砕く包帯を放ち続ける

「クカカカカカッ!!」
「くそっ…」

ほろにがほどの戦闘能力を持っていたとしても
予測不能な攻撃を見てギリギリで避けるだけが精一杯
とてもじゃないが反撃に移ることが出来なかった
そしてその事実がほろにがを苛立たせる
武器も持たず、素手だけなのに
相手は人じゃなくて壁や地面を飛び回り下手な弾丸より威力の高い攻撃を乱射する
圧倒的不利な状況
だがほろにがは諦めていなかった
ただその目は反撃の一手、勝利に繋ぐ可能性だけを探し続けていた

「距離を詰めるだけなら曲がり角で待ち伏せなり強引に飛び込むなり…
 微妙だし危険過ぎるしなー…」
「ブツブツ言ってる暇が?」

風を裂く音、飛来する死の布
ほろにがの足元を突き崩す

「うおっと」

軽い跳躍でそれを越えるほろにが
鬼哭は壁から壁へと飛び移りながら後を追う
その状況でほろにがの顔には笑み
後ろから追いかける鬼哭がその笑みを見ることは出来ない
笑みの理由、それは勝利への一手を見つけたこと
勝負は次の鬼哭の攻撃
失敗すればいよいよ打つ手無し
命を賭けるギリギリの状況下、だからこそほろにがは笑みを浮かべる
それが油断となったのか、ほろにがの足がもつれた
482 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:11:19.51 ID:8/37lvgo
「うおっ…」

勢いをつけたまま前に転倒しそうになる
その隙を鬼哭が見逃すわけが無かった
死がほろにがに迫り来る

「なんてね」

倒れながら両手がしっかりと地面を捉えていた
勢いという力を使い、手を支点としほろにがは前へと宙返り
すぐ後ろでコンクリートの砕ける音
ほろにがの手が、包帯を掴んだ

「キャッチだ」

微かに笑みながらそう言うほろにが
だが鬼哭が一際大きい笑い声をあげた

「クカカカカカッ!!!
 だからどうした!お前ごと巻き取って串刺しにしてやる!!」

ほろにがの身体に物凄い力が加わる
否、包帯から、そしてそれを掴んでいる手を介して
ほろにがの靴が地面と擦れて音を立てる
引っ張ろうとする力とそれに対抗する力のぶつかり合いが足に恐ろしい力をかけている
このままじゃあマズいと判断したほろにがは両手で包帯を掴みなおす
だが鬼哭の力も更に増していきこすれた地面と靴からは薄っすらと煙が上がる
ゴムの焼けるような匂いがほろにがの嗅覚を刺激した

「へっくしょい!!」

くしゃみ、それが原因でほろにがの身体から一瞬力が抜けた
足が地面から離れ、一気に身体が鬼哭へと向かう
その先で待ち構える無数の血塗れの包帯
だがほろにがは手を離して落下し硬い床を跳ね転げる
包帯を戻し鬼哭が笑う

「クカカカカッ…残念だったな!」

ほろにがが懐からぐしゃぐしゃになったタバコの箱を取り出して
1本を口に銜えライターで火をつけた
大きく煙を吸って吐き出しながらほろにがは言った

「…そう残念でもねぇーんだぜ?」
「…ああう?」
「吹っ飛べ、クソ野郎」

その言い終えた瞬間
爆発音、熱風、衝撃、吹き飛ぶ鬼哭の身体
辺りに立ち込める火薬の香り
その匂いを嗅ぎながら鬼哭が叩きつけられ開いた壁の大穴を見るほろにが
483 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:13:00.42 ID:8/37lvgo
「粘着テープとグレネードを組み合わせて…さしずめ粘着手榴弾か?
 包帯を両手で掴んだ時に張り付けといたわけだ
 気づかないで包帯を巻き取ったお前の負けだ」

誰に言うでもない種明かしをし、タバコを指で弾く
地面に落ちたタバコを足で踏みつけその場を去ろうとする
3歩と歩いた所で背後から瓦礫の崩れる音
そして、鬼哭の声

「あぁ…はぁ〜…」
「!?」

ほろにがが振り向くと穴の向こうに立っている鬼哭
全身の包帯は所々が焼け焦げている
間違い無くかなりのダメージを受けてはいる
だが、鬼哭は楽しそうに笑い声をあげる
周囲に飛び散る黒い液体

「血だぁ…ぼたぼた、ぼたぼた流れてるよぉ…」
「こいつッ…」
「あはぁぁぁぁぁぁあ!!!」

跳躍する鬼哭
先ほどと違うのは一直線にほろにがに向かうこと
顔の包帯がほどけ、隙間から覗く鋭い無数の牙
唾液の糸を引きながら大きく開く顎
真っ赤な舌がうねり、久方ぶりの肉を今か今かと待ちわびる

「チッ…」

身を捻るほろにが、肩を掠める貪欲なる牙
飛び散る赤い血、抉れる肉
着地する鬼哭の口からぴちゃぴちゃと音が鳴る
右肩を抑え痛みに耐えるほろにがにはそれが酷く不快

「あはぁ…」
「…化け物め」
484 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:14:16.06 ID:8/37lvgo
鬼哭の身体を纏っていた包帯は所々が焼け焦げて破れている
手は5本の指が1つに束ねられているような全てを貫くような手
身体は皮膚がなく筋繊維と骨格が剥き出しになっている
それは異形の進化を遂げた、人の形を残すだけの存在

「…60年、長いようで短い歳月」
「あはぁ?」

ほろにがは小さく呟いた
鬼哭は血に塗れた舌を出したまま振り返る

「直接お前には恨みは無いが…
 一族の仇…っていうか俺の人生を生まれる前から狂わした責任は取ってもらうぞ」
「意味がわからないよ…
 それよりもっとお前の肉を食わせてくれよぉぉぉ!」

鬼哭が天を仰ぎ、その口を大きく開く
悪鬼、それ以外に表す言葉が見つからないほどの醜悪な力
それに怯むことなくほろにがは言う

「格闘術、剣術、棒術、銃撃、爆発物…
 使える武器は数あれどその中で俺が最も得意とする武器は
 子々孫々と受け継がれ続けた、忍刀【生者必滅】と忍刀【生殺与奪】…」
「二刀流ゥ…?」

懐から取り出された小さな二振りの刀
逆手に持った二つの刀の刀身が小さく揺らめく

「テメェの命、頂くぞ」
485 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:15:30.37 ID:8/37lvgo
校庭の空に拡散する黒い光
天より降り注ぎ大地に突き刺さる光撃
そして振りぬかれる4本の光の剣
その無数の攻撃を見事に避け続けているヤチャマル
無表情でただ光を撒き散らしヤチャマルの首を落とそうとする哀哭

「ハァッ…ハァッ…」
「息が上がってきたようですね
 人にしては随分と頑張りましたがもう限界でしょう
 …久方ぶりに私も楽しい時を過ごせました」
「ああ、そりゃ何よりだ」
「が、これ以上予定が狂うのはさすがに問題があります
 ですからこれにて終幕にさせて頂きます」

哀哭の袖口から放たれる黒い光
今までと違う圧倒的な射出量
網のように広がりヤチャマルを包み込むように拡散する
回避不能、発射から着弾までの僅かな時間に相対する者に絶望を与える攻撃
だがヤチャマルの目には迫り来る黒い光が別の物に見えていた
迫り来る、無数の弾丸
呼び起こされる過去の記憶
殺し屋として生計を立てていた中で絶望に囚われるような絶対絶命の状況はいくつもあった
だが今でもヤチャマルは生きている
どんなときでも絶望に囚われないその心が幾度となく窮地を打ち破ってきた
ヤチャマルの拳が振られた

「生身の拳で弾けるほど甘くはないです
 コマ切れにおなりなさい」

勝ちを確信したであろう哀哭の冷たい声
拳が黒い光に触れる
まるでそれは剣が砕けるよう
光は破片となり砕け散り、絶望の弾幕に穴を開ける
地面がコマ切れになった中でヤチャマルの足元だけは無傷
そこにしっかりと立っているヤチャマルもまた無傷
だが哀哭の顔からは動揺が感じられない
ただ虚ろなガラス玉のような目で起こった光景を見つめているだけ
唇を小さく動かしヤチャマルに問う

「…貴女は本当に人間ですか?」
「…ただの鬼さ…お前と同じ、哀しい夜叉さ」
486 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:17:50.88 ID:8/37lvgo
小さく、哀しげに答えるヤチャマル
だがその眼には確かな反撃の意思、戦いへの覚悟
そしてヤチャマルは前へと踏み出した
哀哭の袖口から黒い光の帯
帯は無数に枝分かれしヤチャマルの行く手を阻む

「弾丸に比べると遅すぎる」

それだけ言うと身体をねじり、軽く飛んだ
身体スレスレを黒い光が掠めて行く
小さく切れる頬、まさに紙一重の回避
着地、黒い光の隙間に降り立つヤチャマル
そして拳が哀哭に振りぬかれる
人形のように整った顔の頬に叩き込まれるヤチャマルの拳
メキメキ…と小さな音がヤチャマルには聞こえていた
黒い光が弾けて消える
そして後ろへと吹き飛び地面を抉って行く哀哭の身体
小奇麗だったメイド服が泥にまみれ、それでも勢いが止まることは無い
だが地面を転がる哀哭の手が開かれる
ガギギギギギ、と何かが削れる音
吹き飛ぶ哀哭の勢いが緩んでいく
完全に勢いを失い停止した哀哭がゆっくりと立ち上がる
口の端から零れ落ちる黒い液体が青白いな肌を彩っていた

「命中の際に拳から大量のエネルギーの放射を確認…
 …中国武術などに見られる気功と見てよろしいでしょうか」
「…正解」
「なるほど、先ほどの私の攻撃を砕いたのも衝突の際に多量のエネルギーを放出し
 一点集中で脆い部分を狙い砕いたということですね」
「それも正解…だけど何か調子狂うな…」
「…」
487 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:20:09.67 ID:8/37lvgo
哀哭の細い身体が小さく揺れる
静かで、とても落ち着いた波紋のひとつも無い水面を彷彿とさせる哀哭
しかしその身体の奥からあふれ出すような躍動感。
哀哭の手が大きく動く、黒い光、いや、光のような飛沫。
輝ける闇の粒、空を駆けるあまりにも美しい暗黒の焔。
その輝きに見惚れることも無くヤチャマルは上へと跳んだ。
ぼうっとヤチャマルの足音から異音。
拳大ほどの地面に開いた穴、穴の周囲は黒く焦げつき異臭を放つ。
続けざまに大気を切り裂いて飛ぶ暗黒の流星群。
ヤチャマルの手に握られている鬼の面。
黒い流星はヤチャマルの身体を貫いた。
その左下辺りにもヤチャマル。
貫かれたほうは蜃気楼のように揺らめき消える。
それでも哀哭の攻撃は止まらない
瞬きの間も与えずに次々と撃ちだされる暗黒の焔。
それを避けるヤチャマルも人間技とは思えない程の動きを連続して行う。
一瞬の間に周囲が焼け焦げた臭いに包まれ大地には大量の破壊孔が開く。
流れ弾は下級堕人にも命中しその姿を一瞬で霧へと還す。
射撃が止んだ、同時に穴だらけになった地面に両の足でしっかりと着地するヤチャマル
いつの間にか被っていた鬼の面。
鬼面夜叉、かつて決別したはずのその姿。
それを見た哀哭の顔から初めて微々たるも確実な感情が見て取れた。
それは小さな小さな、微笑。

「とても…素晴らしいです
 からっぽの世界の果てでこのような…」
「ああ、そりゃ…何よりだ」
「ですから、もっと、もっと…
 貴女の命が終えるまで…!」
488 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:21:46.28 ID:8/37lvgo
ヤチャマルと哀哭から離れ、時計塔の下
その真下、膝をつき、汗と血を地面に滴らせる白やん
手には刃が砕けた黒い剣
正面には黒いローブ、慟哭
周囲に漂う8本の剣、その隙間から慟哭の発する声が聞こえる

「…傷が開いたようだな
 その身体でよくここまで頑張ったと褒めてやろう」
「グッ…」
「お前には運が悪いことが3つある…
 人に生まれてしまった事、堕人に歯向かってしまったこと
 そして…相手が俺だったと言うことだ」

8本の剣全ての切っ先が白やんへと向けられる
先端が月の光を反射し絶望を彩る

「我が8本の剣から無尽蔵に繰り出される突きは空間ごと抉り取る
 …その傷では避けれまい」
「せめて…鎌さえあれば…」
「終焉だ」

白やんの視界一杯に広がる黒い剣の鋭い切っ先
無意味に等しいかもしれない
だが白やんは右手を前へと突き出した
死の右手に触れた物は如何なる物でも力を失う
…8本の前にはそれも無力なのだが
それは白やんにも充分すぎるほどに理解出来ていた
全身に突き刺さる衝撃
貫かれる激痛、襲い来る死への恐怖
脆い心は津波のように流され、永遠の安息に抱かれることを良しとする
衝撃は、止まない
489 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:23:47.74 ID:8/37lvgo
時計塔の頂上に月光に抱かれた影
手に持つ巨大な大鎌
白く、純白の鎌、表面に彫られたあまりにも美しい死神の彫刻
影が、死神を高く放り投げた
月の光を刃が反射し、地上へと続く一筋の光

「何だ、この光は…!?」

慟哭が上を見あげ、剣の攻撃が止まる
全てを切り裂くように回転しながら舞い降りる死神
白やんは聞いていた
遥か頭上より響く聞こえるはずの無い声を

『死を知り、死を統べ、自らの道を阻む全てに死を与えろ
 死の力は悪ではない、迷い無く正として使う今こそ死神は究極の輝きを放つ
 受け取れ、未来を切り開く力、狂死刃ホワイトデスジョーカー』

白やんの右腕が、高く空へと伸びる
まるでそれは失った半身を求めるように
吸い込まれるように、白き死神は白やんの元へ

「させるかッ!!」

黒い8本の剣が白やんを取り囲み、一斉に飛びかかる
全方位からの攻撃、避けることは不可能
白やんの手に、狂死刃ホワイトデスジョーカーが舞い降りる
そして8本の剣は白やんの身体に8方向か突き刺さる
いや、突き刺さるはずだった
金属音が辺りに響き渡り、弾かれるように8本の剣が宙を舞う
そして剣は空中でその形を崩し塵と化していく

「…何だと…!?」

ありえない、そう言いたげな慟哭の声
声に混じる微かな、恐怖
8方向からの絶命の1撃、その全てが弾かれた事実から来る恐怖
490 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:25:12.38 ID:8/37lvgo
「貴様ぁっ…!!」

慟哭のローブの下から次々と刃の切っ先
現れた剣は次々に慟哭の周囲を取り囲む
総数44本、まるで剣の塊がそこにあるかのような状態
白やんがゆっくりと立ち上がる
動くたびに身体のあちこちから鮮血が噴き出す
それでも白やんは立ち上がった、その手に最強の死の力を携えて

「手負いと甘く見たか…!
 ならば肉片のみになるまで切り裂いてやる!!」

黒い44本の刃が白やんへと一斉に向かう
白やんが小さく笑った

「無駄だ」

振り抜かれる白い大鎌
砕ける黒い刃、宙空に残される白い軌跡
持ち手を変え、2撃目、3撃目
四方八方、縦横無尽に周囲を切り裂く死神の刃
これこそ、白やんがもつ力
圧倒的見切り能力と絶対的な武器への熟練度
武器を取り戻した白やんに最早慟哭の小手先の技は通用しない
迫り来る44本の刃が全て塵と化し、後には白い光の残滓のみを残す

「…邪眼学園生徒会長、白やんが…お前を断罪する」
491 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:27:23.61 ID:8/37lvgo
そして校庭の端で響く金属音と断末魔の叫び声
風哭と、高橋
銃を推進力として抜群の機動力を持つ風哭に
無理に追いかけずに渾身の1撃を叩き込むように立ち回る高橋
対照的に徐々に動きが遅れて来る風哭
ダメージのせいだけでは無く、風哭自身の思考に何かが起こっていた
戦いながら呟く言葉は高橋にも聞こえていた

「俺は…風哭…
 風哭…俺は…どこから…」
「チッ…うるせぇ野郎だな…」

風哭の銃が高橋に向けられる
一瞬の間の後に断末魔の叫びを放ち銃口から爆散するエネルギーの射出
生身の人間なら直撃すれば骨も残さず消し飛ぶほどの力
だが高橋は臆することも無くそこに飛び込んだ
地面と射出されるエネルギーの僅かな隙間に身体を滑り込ませる
地面を滑り、辿り着いた風哭の足元
風哭は爆散して放たれるエネルギーによって視界が狭められていた
必然、予想外の場所に現れた高橋への対応が遅れる
気づいた時にはすでに遅い、鉄すらも蹴り破りコンクリートすら易々と砕く高橋の蹴りはすでに放たれていた
下から天を貫くように上へと放たれた蹴りは身を引いた風哭の鋼鉄の仮面へと命中し
鋼鉄の仮面が、宙を舞った

「うぉぉぉぉおあああああああああああああ!!!」

絶叫する風哭
仮面の外れた顔を両手で抑え悶え苦しむ
その叫び声が、傷つき倒れている者に覚醒を促した
492 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:29:11.28 ID:8/37lvgo
鼓膜に響く絶叫は遥か過去の約束の叫び声
彼との約束、すぐそこに…
寝ているわけには行かない、ここで倒れるわけにはいかない…
目を開く、霞かかる視界に映る者
風哭…?いや、違う…

「風ッ…太…」

かすれるような声を絞り出した
聞こえたのかどうかも定かではない
だけど、風太の絶叫が止んだ
そして、聞こえた、懐かしい声

「…たま…ゆら…君…」

視線が交錯する
疑念が確信に変わったその時、風太の身体に衝撃
身体をくの字にして後ろへと吹き飛ばされる風太
衝撃の主は、高橋…

「トドメだ」
「よせぇぇぇぇぇぇえええええ!!」

膝を突く風太へと向かう高橋
そしてそれを止めようと立ち上がったものの足が上手く動かない
俺の叫び声には耳を貸さず、高橋の全てを蹴り砕く足が風太へと向かう
どうすればいい、どうすれば…?
止めるには…止めるには…!!

「やめてくれぇぇぇえ!!!目覚めろッ!!青龍ゥゥゥゥゥ!!!」

変形とほぼ同時に発射された青い光弾
無防備な高橋の背中へと直撃する

「がッ…!?」

予想外の攻撃、完全なる直撃
高橋は転倒し地面を転がっていく
俺は叫んだ

「風太ァァ!!!何があったんだ!教えてくれ!!!」
「たまゆら君…これは…奇跡か…?」
493 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/31(土) 22:31:01.93 ID:qAkow.Qo
風太・・・(´;ω;`)ブワッ
494 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:31:15.82 ID:8/37lvgo
高橋が立ち上がった
額が切れたのかその顔は血化粧に彩られる
その目がこちらを向いた
完全なる、敵対の目

「…たまゆら…貴様…
 どういうことだ…納得の行く説明をしてもらおうか?」
「こ、こいつは敵じゃない!!」
「敵じゃないだと…?
 ふざけるなぁッ!!!」

高橋が今度はこっちへと向かってきた
恐怖、圧倒的な高橋の力が全て自分に向かってくる

「話を聞いてくれッ!」
「黙れ!!」

高橋が飛び上がる
回転して、伸ばされた足
まるで断頭台
避けようとしたが全身を巡った激痛
それが俺の動きを止めた

「終われ!!たまゆら!!」

こんな、ところで…
絶望の暗雲が心を覆っていくのを感じていた
伝わらない、その悲しさに涙が零れた
頭上に感じる風、高橋の終焉の1撃…

「たまゆら君ッ!!!」
「!?」

とても嫌な音
骨が砕け、内臓が潰されるような異音
頭に降り注ぐ液体、黒い、雨
ゆっくりと上を見る
口から黒い血を流す風太、その顔はとても、辛そうで…

「堕人が…他者をかばっただと!?」
「あ…ああ…」
「大丈夫…か?」

声が出ない、頷くことしか出来ない
何度も頷いた俺を見て
口から血を流しているのに、とても辛そうなのに…
風太は笑ったんだ
力なく微笑むその顔を見て、俺は聞いた
495 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:32:32.12 ID:8/37lvgo
「何が、何があったんだよ…風太…!」
「…獄の果て…罪の意識を抱いた俺は…
 堕人に落ちるには充分すぎた…ノスフェラトゥはあの鋼鉄の仮面で…記憶を奪い…
 …俺を…利用して…」
「…利用…?」
「話さないと…いけないことは沢山…
 でも…すまない…もう…ごぶっ…!」

びちゃびちゃ、びちゃびちゃ
大量に流れ出す黒い液体

「逝くな…2度も…俺の目の前で…逝かないでくれ…」
「…地獄の果てで…見れた天国…か…
 もう思い残す…こと…」

風太の身体が、黒い霧となり
風に散って行く
必死に掻き集めようと手を伸ばしても
指の隙間から零れていく風太であった物…
どれだけ、どれだけ望もうが…戻ることは無いその欠片…

「ああぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!」
「…たまゆら、お前はあいつと何が」

そこまで高橋が言った時
その背後に迫る、爪
微塵も気配を感じさせずに現れた"奴"
高橋の腹部をその爪が貫く

「がはっ…!!」
「…風哭…やはり裏切り者は裏切り者でしかなかったかぁ」

現れたのは、ノスフェラトゥ
誰にも気づかれることなくここまで接近していたのか
こいつが、風太を利用した
こいつのせいで、また風太は死んだ
そして…堕人の…全ての黒幕…

「ノォォォォスフェラトォォォォォォオオオ!!!!!!」
「ククッ!いいぞ!来い!!
 直々に串刺しにしてやろう!!」
496 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:35:26.08 ID:8/37lvgo
そして校舎内でぶつかる2つの影
鬼哭とほろにが
飛びかかる鬼哭をほろにがの忍刀が弾き飛ばした

「ギャゥガァッ!?」

黒い血を宙に撒き散らしながら
壁に手を突き刺し、そこに"着壁"する鬼哭
ほろにがを無数の瞳で睨みながらおぞましき声で喋る

「すげぇすげぇ…!俺の身体が紙切れのように安々と…!」
「びびったか?」

ヘラヘラと笑いながら忍刀をクルクルと指を使って回転させるほろにが
涼しげな顔で尋常ならざる切れ味を誇る忍刀をまるで自分の身体の一部のように操る
だが重要なのはそこだけではない
壁、天井、床を利用し予測不可能の軌道で高速で飛びかかる鬼哭
それを的確に捉えカウンターとして切りつけるほろにが自身の能力の高さ
それが戦闘飢餓の鬼哭の魂をまた揺さぶっていく

「楽しい、楽しいよぉぉぉぉぉ!!
 いつぶりだ!ここまで血が騒ぐのは!!!」
「…お前は、覚えているか?」
「何をだぁ!?」
「かつて、人であった頃の自分を」

ほろにがが刀の切っ先を鬼哭に向ける
無数の鬼哭の目が刃に写る
鬼哭は首をかしげる

「…?」
「忘れたのなら思い出させてやろうか
 お前は忍の一族として生まれ、類稀なる才能を持っていた
 だがお前は忍の掟とかそんなものはどうでもよかった
 お前は血が好きで、人を[ピーーー]のが大好きなただのイカレ野郎だった
 そしてその狂気が極限に達した時、お前は一族を皆殺しにした」
「…うあ…ぁぁ?」
「ま、中には生き残った奴らもいたがな…
 …そしてお前は自らの狂気を満足させるために自らをある部隊に売り込んだ
 それが七三一部隊、戦争によって生まれた悪魔の部隊」
「クカカカカカカカッ!!!!」

突然、鬼哭が笑い出す
頭に手をあてただただひたすらに笑う
そしてゆっくりと喋りだした
497 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:37:38.88 ID:8/37lvgo
「思い出した…!思い出した!!
 お前は生き残った奴の子か!?
 一族の仇を討ちに来たか!?」
「生き残ったのは俺の爺さんだ…
 七三一部隊が最後に使っていたのが60年前のこの学園
 …依頼が来た時はこれも運命かと思っちまってな
 お前を見た時、なんとなくわかっちまったよ、お前が話に聞いていたイカレ野郎だったってこともな
 さっきも言ったが正直俺は仇とかってガラじゃねぇんだよ
 もう依頼も割りとどうでもいいしな
 お前さえいなければ俺はド貧乏の底で生活なんてしなくてもよかったとか…
 色々考えちまうわけだよ、物心つかない時から暗殺術とか叩きこまれるしよぉ
 ただなぁ…それ以上に」
「以上に?」
「引き受けたからには俺がお前を倒さないと格好悪いだろ?」

ほろにがが地面を蹴った
その速度はまるで弾丸の如く
刀を前に突き出し、鬼哭へと向かう

「幻魔翌烈残影」
「クカカカカカッ!!!」

鬼哭が飛んだ
ほろにがは鬼哭の下をすり抜ける
着地した鬼哭が振り向き様にその手を何も無い場所に向かって突き出す
何も無い空間、そのはずなのに金属音が響き渡る
そこには鬼哭によって刀を止められたほろにがの姿

「すり抜けて行ったのは幻
 実体は回り込み後ろからの1撃だろぉ?」
「チッ…」

舌打ちしながらほろにがが後ろに飛び退き距離を取る
鬼哭が長く真っ赤な舌で裂けた唇とジュルリと舐める

「思い出した、ということは…
 つまり、お前の技は全て知っているんだよ
 クカカカカカカカッ!」
「ま、そうだろうな
 だったら避けれなくなるまで斬り続けるだけだ!!」

そう叫ぶとほろにががまた鬼哭へと向かった
流れるように二振りの刀で鬼哭を斬りつける
それを避け、手の先で弾き続ける鬼哭
ほろにがの息は上がらない、淡々と相手の命の届くまで刀を振り続ける
徐々に、弾かれる金属音が減り、肉を裂く音が響き出す

「グギャッ…」
「どうした?もう終わりか?」
「…クカカカッ…お前は最高だ…初めて殺してしまうのが惜しいと思ったよ」
「戯言を」
498 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:39:22.79 ID:8/37lvgo
ほろにがの刀が、鬼哭の首へと狙いを定める
左手の刀が鬼哭の手を受け止め右の刀が首をかき切る
避けることも受けることも出来ない最後の一撃
刀が、振られる
散った火花、刃は止まっていた

「な…!?」

刃を受け止めたのは、鬼哭の鋭く尖った歯
死を恐れていない者だからこそ出来る技
命を奪う刃を目前にしても決して退くことなく刃へと向かえる者だけの技
そしてそれ以上に人間を遥かに超越した鬼哭の顎の力
その顎に、更なる力が入った
金属の砕ける音、飛び散った破片

「馬鹿なッ…」
「喉笛を噛み千切ってやるよぉぉぉぉ!!」

鋼の刃すら砕く鬼哭の鋭い歯がほろにがの頚動脈へと向かう
その無数の目は狂喜し、鮮血を渇望する
ほろにがの背筋に走る冷たい物
心臓を握られているかのような感覚
無我夢中で、ほろにがは鬼哭に渾身の力で蹴りを叩き込む
わずかに逸れた鬼哭の貪欲なる口
だが逸らしきることは出来ずに、ほろにがの右肩へとその鋭い歯が食い込んだ
そして、肉が引きちぎられた

「がぁぁぁぁぁ…!!」
「あはぁぁぁぁあ!!!」

鬼哭が離れ、ほろにがは右肩を押さえて膝をつく
ごっそりと肉を持っていかれた右肩は恐らくもう使い物にならない
鬼哭はピチャピチャとほろにがの肉を食らいながら喋る

「お前の動きは完全にわかってる…
 どう足掻いても俺に勝つことは不可能だ」
「ヘッ…馬鹿言うな…
 お前がのうのうと寝ていた60年と…
 爺さんの代から続いた俺へと受け継がれた60年はまるで違う」
「どう違うという!お前はここで死ぬ!
 俺に全ての肉をかじり取られてなぁぁぁぁぁあ!!!」

鬼哭の口が、更に大きく開く
そして全てを噛み砕くかのようにほろにがへと向かう
その1撃で全てを終わらせるかのように
狙いは、頭
容易く頭蓋骨を砕き、脳髄を齧り取るであろう鬼哭の牙
ほろにががゆっくりと顔を上げた
499 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:41:10.74 ID:8/37lvgo
「…臨」
「!?」

ほろにがが、消える
虚を突かれた鬼哭の背中に、鋭い斬撃

「がハァッ…!」

すぐさま振り向きその鋭い手を振るうがそこにほろにがの姿は無い
鬼哭の記憶には無い動き
そして間を置かずに今度は側面から斬撃

「…兵」
「ゲハッ…」

畳み掛けるように四方八方からの連撃
鬼哭はほろにがの姿をその無数の目を以ってしても捉えることが出来ない
それはほろにがが持つ最大の奥義
鬼哭が堕人に堕ちてから60年で作り上げられた
鬼哭を倒すための思いの結晶
地獄すらも生ぬるい9連続の斬撃

「…闘…者…皆…陣…烈…在…前…」
「…!」

そして鬼哭の頭上に刀を振り下ろそうとするほろにがの影
鬼哭の蜘蛛の瞳が、その刃を見た
それは自らに死を与える、因果応報の刃

「封魔九印剣!!!」

突き刺さる音
頭部に深く突きこまれた、ほろにがの刀
頭蓋骨を貫通し刃の根元まで突き刺さった刀
虚ろな蜘蛛の瞳が、ほろにがを見ていた

「クカカカ、これが…俺の、求メテ…イタ…」
「地獄に戻れ、クソ野郎」

その言葉に呼応するかのように
鬼哭の身体はその形状を維持することが出来なくなったかのように
徐々に煙と化し、爆散した
ほろにがはそれを見届けると懐からタバコの箱を取り出した
だけど箱からはタバコは出てこずにほろにがは箱を握りつぶし
そして壁に背を預け座り込んだ

「ちぇっ…ついてねーの…」
500 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:43:26.32 ID:8/37lvgo
時計塔の下、無数の剣を切り払い慟哭を追い詰めていく白やん
慟哭は宙を舞い、剣を出しては白やんへと向かわせる
だがその全てが白やんへと届かずに
切り払われ、白い光を残して消滅する

「なんだこの人間は…!人間如きが…!」
「例えお前の剣が無限であったとしても俺の命に届くことは無い」
「ふっ…ざけるなぁぁぁああああ!!人間如きがぁぁあああああ!!!」

慟哭のローブの下から覗く無数の刃
今までとは違い圧倒的な数
次々と現れる剣は塊、1つの巨大な剣を形成する

「666本の剣が全て貴様に向かう!!
 いくら貴様でも666本全てを切り払うのは不可能だろう!!」
「…」

白やんの表情は揺るがない
全てを貫くであろう666本の剣から成る1本の巨大すぎる剣
それを目の当たりしても白やんはただ静かに佇む

「終焉だ!!」

剣が、白やんへと向かう
白く輝く鎌の刃を見た白やんは少しだけ笑った
迫り来る剣に臆することなく呟く

「…なぁたまゆら、お前が強くなった理由
 今わかった気がするよ…
 俺に足りなかったのは…きっと…」

白やんが構える
その目に宿る、強い意志
誰にも折ることが出来ない覚悟の力

「散れ!!」
「…ジャッジメント・オブ・デス!」

狂死刃ホワイトデスジョーカーが光輝いた
そして、振りぬかれた刃から発射される光弾
否、それはもはや弾ではない
あまりにも巨大な、全てを飲み込むかのような光の塊
周囲を眩く照らし、黒く巨大な剣すらも飲み込んでいく
その光の中で慟哭の声が響く

「馬鹿なッ!!なぜ!なぜ人間如きが我らに対抗できる!!」

砕けるように消えていく666本の剣
やがて白い光が消えて行く
光が消えた時、慟哭の目に写ったのは地面に膝をつく白やん
501 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:45:35.87 ID:8/37lvgo
その時、白やんの足元から黒い手が突き出してくる
黒い手は白やんの足を掴んだ

「!?」
「下級どもか…!いいぞ!そのままそいつを掴んでおけ!!」

慟哭のローブから現れる剣
まるで流れ落ちる滝のように次々と現れ宙へと浮かぶ
ドームのように白やんの周囲を包み込む

「…これが俺の最強の技
 1000本の剣が敵を包み込み串刺しにする」
「…仲間ごと串刺しにするつもりか」
「敵を滅するためには犠牲は付き物だ
 御託はもう充分だ!串刺しになってしまえ!!」

1000本の刃が、一斉に白やんへと向かう
白やんの鎌が、足元の下級堕人を切り裂いた

「無駄だ!もう避けることは不可能!
 全方向から来る1000本の剣を切り払うことも不可能だ!!」
「…全部切り払う必要は無い」

白やんが正面に向かって走り出す
全てを埋め尽くす刃に向かって

「ジャッジメント・オブ・デス」

先ほどよりかは小さい光を正面に向かって撃ち出した白やん
剣のドームに、穴が開いた
白やんは体勢を低くした

「甘い!1000本からなる剣の包囲は崩せん!!」

穴がすぐに塞がれる
だが白やんは表情を変えずにそこにもう1発の光弾を発射する
しかしそれで開いた穴もすぐに塞がれる

「無駄だ!」

そう叫んだ慟哭
その正面の剣が弾け飛び、そこから何かが飛び出した
それは、鎌の先端
虚を突かれた慟哭だがかろうじてそれを避ける
だが鎌は軌道を変え、慟哭の腕に鎖をからませた

「なにッ…!?
 だがこれも無駄だ!何をしようとその包囲からは抜けられない!!
 これで俺の動きを封じたつもりだろうが逆だ!
 お前のほうが動きを封じられたのだ!!」
502 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:48:11.86 ID:8/37lvgo
剣のドームが、収束していく
だが慟哭の正面、鎖が出ている部分が白く光り輝き出した
そして剣が弾ける
包囲網を抜け、飛び出した白やん
右手を前に突き出し、迫り来る剣の力を全て殺し、剣の包囲を抜けて
慟哭が、声にならない声を微かにあげた

「な…」
「光弾は鎌の先端を包囲から抜けさせるために
 "膜"を薄くするため必要だった
 あとは鎖に引っ張られて死の右手で急所を庇えば抜けることは出来る」

鎖に巻き取られ、一直線に慟哭へと向かう
ガキン!と白やんの持つ鎌から鎖が外れる
完全な、死の射程距離
白やんが鎌を振りかざした

「我が人間如きに…やられるというのか!?」
「お前の運が悪いことは3つある
 信じあえる仲間がいなかったこと、相手が"俺達"だったこと
 そして…俺の逆鱗に触れたことだ!!!」

白やんの鎌の刃が、横一文字に慟哭を切り裂いた
だが止まることはなくそのまま今度は縦に
そして右下から左上に、右上から左下に
新たに剣を出す暇すら与えない空中での連続の斬撃
そして斬れば斬るほどに輝きを増す刃

「断罪の時だ、慟哭」
503 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:49:04.96 ID:8/37lvgo
慟哭の腹部に刃が深く突き刺さる
白い輝きが慟哭のローブや、フードから溢れ出す
慟哭の痙攣が振動となり鎌へと伝わる

「ジャッジメント・オブ・デス!!」

体内に直接撃ち込まれた白き死の輝き
光に押し潰されるかのように慟哭のローブが徐々に霧へと姿を変える
溢れ出す光は全ての闇を包み込む
その光の中で慟哭の絶叫が響き渡る

「何故…何故、何故ぇぇぇえええええええええ!!!?」
「俺はもう、1人で戦っているのではないからな」
「チ、ク、ショ、オォォォォオオオオオオオオオオオォォォォォ…」

ボフッと音を立てて慟哭の身体が全て黒い霧と化す
光は収束し、あたりは静けさを取り戻していく
それは人にも、堕人にも、全ての者に平等に降り注ぐ死の静寂
地面に着地する白やん
同時にその口から赤い鮮血

「…どうやら…ここまで…か…
 だけど…どうしてかな…お前なら必ず勝てると…思えるよ…
 任せた…ぞ…戦友たち…」

その言葉を残し
白やんは地面と倒れこんだ
白く輝く死神の鎌が月光を反射していた
504 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/31(土) 22:50:13.89 ID:1BIFXhwo
俺TUEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!
505 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:55:17.56 ID:8/37lvgo
白やんと慟哭の戦いの最中
校庭では黒き破壊の炎を撒き散らす哀哭と1人の鬼が戦いを繰り広げていた
焼け焦げ、穴だらけの大地、まさに地獄の如く
その地獄で円舞曲を踊るように戦い続ける2人
宙を走る黒き焔、それを避け、哀哭へと向かう鬼面夜叉

「…貴女はとても強い
 ですが私がノスフェラトゥ様から受けた命令は最後の封印の処理
 故に私は貴女がどんなに強かろうと倒さねばいけません」
「…」

返事はせずに、ヤチャマルは哀哭へとひたすらに突き進む
哀哭は静かに続ける

「ただ放つだけでは避けられるのはすでに理解しました」

その発言の後
哀哭の身体が真横に高速で動いた
黒く焦げ付き、煙を浮かばせる地面

「真横への高速移動…?」
「真横だけではありません」

バシュッ!という音
そしてジグザグに高速で移動しながら哀哭はヤチャマルへと接近する
そのまま放たれる黒い焔
正面へと転がるように避けるヤチャマル
弧を描くように真横から背後へと続く地面を削る音
真後ろから響く哀哭の冷たい声

「焼滅しなさい」

ヤチャマルの背後から迫る何かが風を切り向かう音
振り向かずともそれが何かは理解できる
全てを焼き尽くす暗黒の焔
タン、タン、タンと、3つの音
次いで地面が抉られる破壊音
正面へと転がるように抜けたヤチャマル
だが地面を削るような音が真後ろから側面へと

「人である限り、私についてくることは出来ません」
「…チッ」

ヤチャマルの視界に微かに映る哀哭
その靴から黒い炎が噴出している
大地を焼け焦がす炎の噴出
それがあらゆる方向への高速移動を可能にしていた
鬼の面の下で、ヤチャマルが言葉を紡ぐ
506 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:56:46.92 ID:8/37lvgo
「…昔なぁお前みたいに上からの命令を淡々とこなす奴がいたんだ
 善か悪なども考えず、ただ命じられたままに作業のようにこなす奴がな」
「何を言っているのですか?」
「お前の結末が、見えるって意味かな」
「…理解しかねます」

哀哭の靴から、今までの数倍とも言える炎が噴出した
異常な加速、まるで哀哭そのものが弾丸のようにヤチャマルへと向かう
その右手は黒い剣と化し、左手には揺らめく暗黒の焔
まず放たれたのは焔、ヤチャマルを焼き尽くすべく一斉に放たれる
避ける場所など無いかのように広がる焔
だがヤチャマルの目は唯一、避けられる場所を見つける
右に飛び、その唯一の回避ポイントへと向かう

「そう、逃げ場はそこしかない
 だからこそ私の右手が貴女を殺れる」

正面に、冷たく微笑む哀哭
その右手が、滑らかに、振り下ろされる
乾いた音が響く
すれ違いざまの1撃を放った哀哭が少し離れた場所で止まる
間を置かず、何かがカランと地面に落下する
それはすっぱりと斬られた鬼の面の右上部分

「…紙一重で避けましたか…
 それと…カウンターで私の腹部に1撃…」
「普通なら倒れてるはずなんだけどな」
「…そうですね、人間なら、倒れているはずです」
「はぁ…どーしたもんか…」

ヤチャマルが困ったような声をあげる
哀哭は口元に手をあてしばらく考えるような素振りを見せる
…そして口元から手を離し冷たい声で呟く

「風哭、鬼哭、慟哭…そう…やられたのね…」
「何?」
「…どうやらもう遊んでいる暇はないようですね…
 温存しておきたかったのですが…貴女に使いましょう」

哀哭の両手が空へと向けられる
両の袖口から螺旋を描き空へと向かう黒き帯
するすると帯と帯とが絡まりあい
空中に巨大な"何か"を形成する
それは黒き巨人の上半身
圧倒的な、大きさを誇る全てを破壊すべく哀哭によって生み出された者
冷たい声がまた響く
507 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:58:10.26 ID:8/37lvgo
「デウス・エクス・マキナという言葉をご存知ですか?」
「聞いたことはある」
「ラテン語で"機械仕掛けの神"という意味です
 そしてこれこそが私の作り出した、デウス・エクス・マキナです」
「フン…」
「さぁ終わりにしましょう
 機械仕掛けの神の1撃は誰であろうと防ぐことは出来ません」

巨人が動く
その右腕を天高く振りかざす

「クッ…!!」

哀哭へと走り出すヤチャマル
だが、振り下ろされる巨人の手から抜け切ることが出来ない
巨人の咆哮が大地を、空を揺るがす
全てを叩き潰す鉄槌が、ヤチャマルへと迫る
その時だった
何処からか放たれ、巨人の頭部へと向かう黒い光の弾
空を切り裂き周囲に螺旋状のエネルギーの奔流を巻き起こす黒き光弾
それが、巨人の頭部へと命中し爆発した
巨人の腕が止まった
身をよじるように動いた巨人、その指先が徐々に塵と化していく
哀哭の叫び声、その声には驚愕、動揺

「馬鹿な…!?
 デウス・エクス・マキナのエネルギーが撃ち消され…て!?
 そんなこと…ノスフェラトゥ様以外に出来るわけが…!!」
「そんな顔も出来るんじゃないか」
「!?」

哀哭の目の前で構えるヤチャマル
右手の掌が、哀哭の腹部にゆっくりと押し当てられた
殴打ではなく、ただ優しく、包み込むように
508 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 22:59:24.88 ID:8/37lvgo
「夢想…!光鬼発勁!!」

爆発音のような腹腔に響く音
周囲が一瞬、明るく輝く
そして、哀哭が、崩れ落ちる

「な…ぐッ…」
「はぁ…はぁ…」

哀哭の表情が焦るように変化する
今までの哀哭からは想像もつかない表情の変化
それは自らの身体が動かないという恐怖から来る物

「なぜッ…!たかが腹部への打撃で…!
 なぜ身体が…ピクリとも動かないの…!?」
「…」

ヤチャマルが鬼の面を投げ捨てた
カラン、と音を立て鬼の面は地面を転がり
…そして砕けた

「夢想光鬼発勁は体内で練り上げた気を相手の体内に撃ち込む俺の最終奥義
 人であろうと、機械であろうと、何であろうと
 直撃を受けて動ける奴はまずいないさ
 …というか普通なら即死するような威力だけどな」
「くっ…」
「最も…これを使うとな…俺の気もほとんど枯渇するんだ…
 もう…動けねぇなぁ…」

そしてヤチャマルがその場に倒れこむ
黒き巨人、デウス・エクス・マキナの残滓がただ宙を舞っていた
戦いの終結を知らせるかのように




そして…

堕人を率いる狂った王と戦い続ける…
509 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:00:25.50 ID:8/37lvgo
「ノォォォォスフェラトォォォォォォオオオ!!!!!!」
「ククッ…!!!」

黄龍鉄甲を振りぬく
ノスフェラトゥは時にゆるやかに、時に素早く避け続ける
奥歯をかみ締め、ただノスフェラトゥを倒すために拳を振り続ける
コイツのせいで…コイツのせいで風太はまた…!!
風太だけじゃない…コイツがいたせいで多くの悲しみが生まれた…
コイツだけは絶対に俺が!!

「目覚めろッ!!!白虎ォォォォォォォオオオオ!!!」

叫ぶと同時にノスフェラトゥへと向かう
ズタズタに切り裂いてやる!!!
お前のせいで生まれた…
いくつもの悲しみ…怒り…涙…
嘆き…痛みを…思い知れ!!!
爪が、ノスフェラトゥの身体を切り裂いた
後ろへと吹き飛ぶ、いや、自ら飛んでいくノスフェラトゥ
その着地地点に倒れている2人
ヤチャマルと…アレは…哀哭?
砂煙をあげてノスフェラトゥは2人の真ん中に着地する
哀哭が声をあげた

「…ノスフェラトゥ様…」
「…どうやら全滅か…
 やはり頼れるのは自分だけ…かぁ」
「お願いします…今一度私にチャンスを…
 私は…貴方様のお力に」

哀哭の言葉を最後まで聞くこと無く
ノスフェラトゥはその鋭い爪を哀哭の背中へと突き立てた
迷いなく、ただ"処理"するかのように

「…ノ…ス…」
「2度目など、無い」
「…い、いやァァァァァァアアアアァァァアアアアアァァァ…」

哀哭の絶叫、頬を伝う、黒い涙
その身体がゆっくりと黒い塵と化していく
しなやかな身体も、身に纏っていた黒いメイド服も
何もかもが塵と化す
510 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:02:15.55 ID:8/37lvgo
俺は動けなかった、今初めて俺はノスフェラトゥという存在の恐ろしさを認識した気がした
ノスフェラトゥがこちらを向き直った

「たまゆら、本気で行くぞぉ?
 覚悟はいいか?」

手の震えを握りこむように抑え込み
俺は返事をした

「覚悟するのは…お前のほうだ!!!」
「…どのみち大いなる者と迎合するのは俺だけでいい
 我らは全にして個、個にして全だからな」
「ふざけるなぁッ!!!」

ノスフェラトゥへと飛びかかる
白虎の爪を振り下ろす
ガキィン!と金属音
信じられなかった
誰が相手だろうと全てを切り裂いていた白虎の爪が、止められていた

「な…!?」
「…ククッ…」

ノスフェラトゥの反対側の手の爪が振りぬかれる
白虎の力を持ってしても避けれない
否、手を掴まれ、避けることが出来なかった
振りぬかれた爪は、俺の身体の肉を切り裂いた
スローモーションに動く世界で、飛び散っていく俺の赤い血
同時に白虎の力が消えていく感覚
そして切り裂かれた身体に突然襲い来る激痛

「がッ…」

思わず左手で傷口を抑える
身体が前屈みになったその瞬間、傷口に更なる衝撃
視界に映ったノスフェラトゥの足
後ろへと吹っ飛び、地面に背中から叩きつけられる
痛みを押さえ込みすぐに立ち上がろうとする
だが強い力で後頭部を地面に叩きつけられた
視界がゆがみ、気持ちが悪い、頭がクラクラする
すぐ頭上からノスフェラトゥの声が響く
ノスフェラトゥは俺の頭を足で地面に押さえつけていた

「…お前は本当に今までよくやってくれた
 だからこそ、私が本気で、直々に手を下してやる
 限りある命で足掻け、そして脳に刻み込め
 不死なる者、ノスフェラトゥ、その強さを」
「…けるな…」
「何?」
「ふざけるなぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!
 目覚めろッ!!玄武!!!」
511 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:03:47.77 ID:8/37lvgo
光が弾け、ノスフェラトゥが飛び退く
俺は立ち上がる

「こんな痛み…どうってことない…!!
 …お前を倒さないと…痛みは止まらない…!!
 だから俺は…どんなに痛くても…止まるわけには行かないんだ!!!」
「…ククッ…いいだろう…
 ならばお前には更なる絶望を与えよう…」

ノスフェラトゥが天を仰ぎ両手を広げた
空を切り裂く焔…空が…燃えていく!
天を埋め尽くす劫火はまるでこの世の終わりのような光景
紅蓮の業火に埋め尽くされた空
ゆっくりと、ノスフェラトゥの手が動いた

「…何をする気だ!!!」
「絶望しろたまゆら!!」

俺がノスフェラトゥへ向かって走り出したと同時に
天を漂う紅蓮の業火は地上へと降り注いだ
まるで流星のように、結界に穴を開け
地上へと降り注ぐ
校庭のあちこちで爆発が巻き起こる
業火は、敵も味方も関係無く無差別に降り注ぐ

「やめろぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!」

ノスフェラトゥへと黄龍鉄甲を振る
弾かれる衝撃、無理やり押さえ込みもう1撃
だが、ノスフェラトゥは後ろへと飛び退く
着地し、小さな笑い声をあげる

「聞こえるか、たまゆら?
 お前の仲間の悲鳴が?」
「…!」
「そしてホラ、空を見てみろ」

ノスフェラトゥが指を指す場所
空中に浮かぶ黒い球体
球体の周りが歪んでいるようにも見える

「…あれは重力制御で作り出した極小ブラックホール
 徐々に落下し、地面に辿り着いた時にこの学園を飲み込むだろう
 無論、最後の封印が隠れている寮もな…」
「…テメェ…」
「落下まで10分と言った所だ
 さぁ、抗ってみせろよぉ?」
512 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:05:22.77 ID:8/37lvgo
(推奨BGM 無音)

頭の中で、何かがブチリと切れた音がした気がした
周囲に降り注ぐ業火のせいだけじゃない、身体が熱い
両の目は最早ノスフェラトゥしか見えない
俺は、もう何もいらない
ただ1つだけこいつを倒すための力が欲しい
全ての悲しみを止めるために、全ての絶望を終わりにするために
何を失っても…こいつだけは…!!!
こいつ…だけはッ…!!!
右手が、震えだす
違う、震えてるのは…黄龍鉄甲…?
黄金色の光が、黄龍鉄甲から溢れ出す
暖かい…光…脈打つような力の意志…
声…声が聞こえる…

『真なる目覚めの時
完全なる覚醒、お前はそれを望むというのか?』

望むッ…!!
それでこいつが倒せるというのなら…!!

『…ならば聞け
 破邪の拳に秘められし究極の力…
 その力の名は――…』
513 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:06:42.36 ID:8/37lvgo


「どうしたぁ…?
 戦意喪失か?」

ノスフェラトゥがゆっくりと俺に近づいてくる
俺は顔をあげた

「…ノスフェラトゥ」
「んん?」
「…もう、お前の声は聞きたくもない」
「どういう意味だ?」
「…目覚めろ…!!!黄龍ゥゥゥゥウウウウウ!!!!!」
514 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:09:21.26 ID:8/37lvgo
(推奨BGM) http://www.youtube.com/watch?v=FhLfLUtBZA4&feature=related

金色の光が、弾けた
衝撃の波がノスフェラトゥは後方へと吹き飛ばす

「グオオッ!?」

黄龍鉄甲が形を変える
質量を無視した、変形、否、増殖
変形を繰り返し右腕全体を覆う黄龍鉄甲
それだけには留まらず、鉄甲は鎧と化し、全身を覆っていく
両腕には、如何なる物も切り裂く黄龍の爪を携えた拳
両足に、大地すらも掴む黄龍の爪
あらゆる攻撃を弾き返す黄龍の龍鱗の如く神々しく輝く鎧
黄龍鉄甲の究極の力…
いや、違う、これこそが黄龍鉄甲の本来の姿
全身を巡る躍動感、熱くたぎるような血液
淡い金色の光で周囲を優しく照らしつつも荒ぶるような力を感じる
これが…四神を統べる、黄龍の力…!
吹き飛ばされたノスフェラトゥが立ち上がる
そして、俺を見る

「…その姿は…」
「ノスフェラトゥ…!!行くぞ!!」

地面を蹴ったと同時に離れていたはずのノスフェラトゥがすでに目の前
脚力とかそういう問題では無く、瞬間移動にも近いようなその動き
蹴り出した地面が砕けるほどの勢い
咄嗟に右腕を振るう
黄龍の爪が、ノスフェラトゥの身体を切り裂く
次に左腕
こちらも容易にノスフェラトゥの身体に食い込み、裂く

「ゲハァッ…!!」

後ろへと吹き飛んで行くノスフェラトゥ
その勢いは校庭を端から端へと突っ切り校舎の壁に激突する
コンクリートにヒビが入り、その部分がまるで鉄球を叩きつけられたかのようにヘコむ

「馬鹿なッ…なんだこの威力はぁ…!」
「ノォスフェラトォォォォ!!!」
「クッ…!!!」
515 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:10:40.58 ID:8/37lvgo
結界の外では皆が姫と神楽君の協力によって避難していた
堕人の軍団との戦いと降り注ぐ紅蓮の業火によって全員が満身創痍の状態だった

「…誰かが戦ってる」

そう呟いたのはしげるだった
ぽん、としげるの肩にえび助が手を置いた

「…たまゆら君しかないだろ」
「あの業火の中でたった1人で…」

燃え盛る業火に阻まれ結界の中は見えない
それでも響く戦いの音
その場にいる誰もが理解していた
全てを背負い、業火の中で戦っているのは誰なのかを

「クッ…!」
「待て、剣三郎…
 足手まといになるだけだ」
「しかし…」

結界の中へと戻ろうとする剣三郎を黒やんが静止する
気持ちは誰もが同じ
それでも今行けば足手まといになるだろうということは誰もが理解していた
ただ祈ることしか出来ない自分たちが悔しくてしょうがない

「…たまゆら君は、必ず勝つ」

桃花がそう小さく呟いた

「当たり前じゃないですか」

蝶はそう返事を返す
それでもその手は震えている

「僕達の想い…託します…」

透過が小さく呟き、祈るように手を組んだ
それを見た雷雲も恥ずかしそうに手を組んだ
気がつくと、誰もが手を組み祈りを捧げていた
仲間の、勝利を祈って
516 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:11:33.02 ID:8/37lvgo
「グォォォォッ…!!」

焼け付いた地面を転がっていくノスフェラトゥ
右手の鉤爪は砕け、その身に纏うマントもすでにボロボロになっていた
全身につけられた黄龍の爪による傷跡
そこから赤い血が流れ出す

「…クソッ…ブラックホール維持のために重力制御は使えない…
 この力…対抗できぬ…!!」
「お前の負けだ、ノスフェラトゥ!!」
「舐めるなァァァァァァアアアアア!!!!」

ノスフェラトゥが左手の鉤爪を振りかざし向かってくる
俺は両手を前に突き出した
ずっと聞こえていた
皆の声が、俺を想う気持ちが
だから、俺は負けない
負けるわけには、いかないんだ!!!

『頼みましたよ、たまゆらさん!』
『俺達の、いや、この学園の未来、たまゆら君に託すぜ!』
『生きて帰ってきてよ!たまゆら君!!』
『本当の正義ってのはきっと君なんだ!』
『そのムカつく奴、ぶっ潰してくれよ!』
『俺達はいつだって共に戦ってる』
『俺を倒したんだから、必ず今回も勝ってくれるよな!』
『たまゆらさん、貴方を信じた僕は間違ってなかったと証明してください!』
『終わらない悪夢なんて無い!きっと終わる!』
『たまゆら、学園を救ってくれ…束縛ではない、真の解放で!』
『お前ならきっと出来るさ、なんたって俺が認めた奴なんだからな!お前は!』
『全部終わったら…サボりぐらいは許可してやんよ!』
『また…お弁当作るから、皆で食べようね』
『たまゆら君が時空を超えて俺に会ったのは…
 きっと…意味があったんだろうな…
 今、全てに終わりを!!』

想いに答えろ、黄龍鉄甲、そして、俺の想いをこの一撃に乗せろ
全ての根源を滅殺しろ!!!

「…黄龍」
『待て、たまゆら!!』
「…ゆき兄!?」
『仮面だけを狙え!』
「…わかった!」

ノスフェラトゥが迫り来る
仮面だけに狙いを定め

「たぁぁぁまぁぁぁゆぅぅぅらぁぁぁぁあああああ!!!」
「黄龍烈破滅閃双撃破ァァァ――――――!!!!」
517 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:12:25.10 ID:8/37lvgo
両手より放たれた金色のエネルギー
細く絞られた全ての邪を粉砕する究極の力は
ノスフェラトゥの仮面に直撃した

「おぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!」
「グガ…ガ…!!
 馬鹿なッ…!この威力…人が出せる出力を遥かに超越して…!!」

全エネルギーを仮面へと叩き込む
今ならわかる、俺が執行部と戦い続けた意味が
戦いの中で知った皆の想い、記憶の欠片が揺ぎ無い絆を生み出して
その想いが、力に変換されて行く
これが、本当の黄龍鉄甲の使い方
四神の力で誰かと繋がり、黄龍の力でその想いを束ね
そして、全ての敵を滅[ピーーー]る!!

「ウゥゥッァァッ…!!!」

ノスフェラトゥの仮面にヒビが入る
爆発的なエネルギーに晒されているノスフェラトゥは動くことが出来ない
仮面から覗く目、そこには異常な程の憎悪
だけど、恐れるわけには行かない!!!
例えお前がこの世界全ての憎悪
をぶつけて来たとしても
共に戦う仲間がいる限り、俺は決して何も恐れない!!!



『たまゆらさん!行きますよ!』
『たまゆら君!これで終わりにするぞ!!』
『たまゆら君!私達の持てる力の全てを君に!』
『受け取れ!たまゆら君ッ!』
『こいつを2度とこの世に出させるな!たまゆらぁッ!!』
『この身が砕けようとも…たまゆら!君と共に戦う!』
『全部持ってけ!俺の力を!たまゆらぁッ!!』
『たまゆらさん!使ってください!僕の力全てを!!』
『どんな存在にも必ず砕ける場所は存在します!たまゆらさん!受け取ってください!!』
『俺の力、お前に預けたぞ!』
『もっていきな、たまゆら!正真正銘俺の最後の力だ!!』
『鬼の力、お前ならきっと使える!受け取れ!』
『きっと、私の力も…たまゆら君ッ!!』
『消えることなど怖くはないッ!だから最後まで君と共に!』

「うぅぅぅぅぅオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「まだ…出力が上がると言うの…かぁぁぁぁあ!!?」

金色の光がさらに輝きを増す
周囲に旋風が巻き起こり石や砂が舞い上がる
518 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:14:29.35 ID:8/37lvgo
『終わりにしようぜ、たまゆら』
「ゆき兄…」
『全ての想いが束ねらる一瞬に全てを乗せて撃ち込んでやれ』
「ああ!!!」
「ぐぅぅぅぅぅ…!!」
「終わりだ!!ノスフェラトゥ!!!!」





『究極黄龍破邪滅閃双撃翌龍波ァァァ――――――!!!』



全ての闇を撃ち砕くかのような爆発的な黄龍のエネルギー
その全てがノスフェラトゥの仮面に直撃した
仮面を分断するかのように、大きな亀裂が走った
そして、ノスフェラトゥの絶叫

「グゲェアァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!
 アアァァァアァアアアアアアアア…!俺ハッ…!!不死ナル者…!!
 ナゼェ!!ナゼ俺ガコンナッ…!コンナァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

仮面が、亀裂に覆われ
ノスフェラトゥの身体が糸の切れた人形のように力を失った
そして、黄龍鉄甲からのエネルギーの射出が途絶える
空に浮かぶノスフェラトゥの作り出した極小ブラックホールがゆっくりと消滅していく
全てを焼き尽くすはずだった業火もその勢いを急速に失って行く
やがて、ブラックホールが完全に消滅する
519 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:18:45.67 ID:8/37lvgo
同時に黄龍の鎧は元の黄龍鉄甲へと戻る
俺の身体から力が抜け、地面に膝をつく

「ハァッ…ハァッ…
 勝った…ついに…勝ったのか…!?」

ノスフェラトゥは動かない
ただ立ち尽くし、微動だにしない

「…タ、マ、ユラァァァ…」
「なッ!?」

こいつ、まだ…!?
立ち上がろうとするが力がまるで入らず立ち上がれない
焦っている俺に折れた鉤爪を向け
亀裂まみれの仮面の下でノスフェラトゥは途切れ途切れの声で続ける

「ワレハ…フシナルモノ…
 カナラ…ズ…マイモドリ…キサマヲ…コロ…ス…
 カナラ…ズダ…ナンドデモ…ナンドデモ…!!
 キサマノマエニ…アラワレ…グ…ガッ!!」

バキィンと音が響いた
ノスフェラトゥの仮面が粉々に砕け散った
仮面の下に現れた顔
それは、俺のよく知る顔

「…ピュア…?」
520 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:19:37.52 ID:8/37lvgo
ピュアは、そのまま地面へと倒れる
動かない身体を必死に動かしピュアへと這いずって近づく
肩に手をかけ、必死に揺さぶる

「ピュア…どうしてお前が…
 どういうことなんだよ…!?」
「う…」
「ピュア、おい!」

ピュアがゆっくりと目を開く
その瞳が俺の顔を見る

「たまゆら君…」
「ピュア…どうしてお前が…?」
「ここは…どこだ…?
 僕は…何をしていたんだ…?」
「覚えて…いないのか?」
「…時計塔…」
「え?」

ピュアの手が、俺の手を掴んだ

「時計塔の地下…
 この学園は…やっぱり…」
「な、何言ってるんだ?」
「う、ゴフッ…」

ピュアの口から大量の吐血
その血が、俺の頬に散る

「ピュ、ピュア…」
「僕は間違って…いなかっ…グッ、ゴボッ…」
「もう喋るな!」
「…止め…なくちゃ…」
「ピュア…おい…
 ピュアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」





18時限目 - ノスフェラトゥ -
521 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/10/31(土) 23:22:34.38 ID:qAkow.Qo
ゆき兄おつ!

風太のセリフでうるっときた・・・(´;ω;`)ブワッ
522 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/10/31(土) 23:23:17.05 ID:1BIFXhwo
ゆきに乙!
すっげぇテンション上がったわwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

ピの人の存在を完全に忘れてた事は反省していない
523 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/10/31(土) 23:31:24.98 ID:8/37lvgo
来週からいよいよ最終章突入
黄龍鉄甲とは何なのか、そして黄龍の意思とは…?

すべての謎が明らかに!
524 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/01(日) 03:19:37.40 ID:Xu3G3ZAo
まとめ出来たのでここに置いておきますね
http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/24.html
525 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/01(日) 03:28:58.10 ID:Xu3G3ZAo
間違えた
トップはこっちだった
http://www26.atwiki.jp/jaganou/
526 : 【凶】 [sage]:2009/11/01(日) 09:26:49.44 ID:KjfrStQo
大凶だったら首吊る
527 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/01(日) 21:32:04.34 ID:Xu3G3ZAo
>>526
生きれてよかったな!!
528 :そら :2009/11/02(月) 13:30:27.86 ID:Jr04noDO
朝ですか!?
529 :ミギー :2009/11/02(月) 14:50:52.69 ID:iKA9/IDO
てけとーに服着たらあかずきんちゃんみたいになった

でもこのまま出掛けてやる
530 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/02(月) 15:15:43.64 ID:c5Mjf6DO
>>528
朝じゃねーですww

>>529
うp!!
531 :ミギー :2009/11/02(月) 19:01:39.45 ID:iKA9/IDO
>>530
ご想像にお任せします

友達にはお姫様みたいだと言われた
532 :そら :2009/11/02(月) 20:22:05.82 ID:Jr04noDO
寝過ぎましたよね


さーて、明日のナビスコカップ決勝に朝四時から並ぶぞー
533 :そら :2009/11/03(火) 05:09:27.14 ID:9oFZXYDO
朝!寒い!新宿寒い!
534 :そら :2009/11/03(火) 09:03:59.28 ID:9oFZXYDO
ブラックニッカ意外とうめぇ
535 :ほろ苦 :2009/11/03(火) 11:50:27.02 ID:PhrqX6SO
毎度毎度の事だが…



休日ドライバーは[ピーーー]
氏ねじゃなくて[ピーーー]
人轢いて多額の慰謝料と賠償金払う為に
借金こさえてまで金の無心して
あげく首が回ら無くなった末に
後悔しながら首吊って[ピーーー]
536 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/03(火) 16:36:35.35 ID:360AvGco
>>535
以上、ビターを通り越して
完全ブラックなほろ苦さんでした

…何があったかはご想像に任せよう
537 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/03(火) 22:54:54.97 ID:wWT0TN6o
WHISKY!
538 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/04(水) 19:30:01.67 ID:6lZBfzg0
WHISKY!
539 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/04(水) 20:49:34.28 ID:EXxypXso
寒い

眠い

つまり死ぬかもしれない
540 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/04(水) 22:59:23.62 ID:EXxypXso
次回予告

全ての真実、それは痛みと共に
最も近く、遠い者、全てを知る最強の力
始まりの地にて、長き戦い、その始まりにたまゆらは触れる
何もかもを覆す激流となって…

「猛り狂え、黄龍――」



邪眼学園黄龍譚
19時限目 - 真実にて猛る最強の力 -

11/7 PM:10:00 Coming Soon ...
541 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/04(水) 23:48:39.44 ID:JdP3U0go
WHISKY!
542 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/05(木) 01:26:31.65 ID:AuFEkAAO
こんばんわ
暇なので今から15分以内に安価がでたら明後日実行します

彼女に対する行動安価で

さて人はいるかな(^p^)
543 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/05(木) 01:37:03.20 ID:LFzIXB.o
一緒に歩いている途中で唐突に

「あ、ごめんオナラしたわ!くっさ!超くっさ!
 離れろ!早く俺から離れろォォォォォオオ!!!」

と、周囲に聞こえるほどの音量で絶叫する
544 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/05(木) 01:38:08.05 ID:LFzIXB.o
約11分だな
後はがんばってくれ
545 :そら :2009/11/05(木) 02:08:46.71 ID:MZJDMEDO
周囲に迷惑を掛けるタイプの安価書く人って
546 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/05(木) 03:49:03.64 ID:LFzIXB.o
私男だけど昔周囲に迷惑どころじゃない
安価ばっかり実行してたことがあるの
547 :そら :2009/11/05(木) 07:49:01.54 ID:MZJDMEDO
何かごめんなさい
548 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/05(木) 11:51:39.91 ID:2Vdym2DO
ゆき兄のは鬼畜安価しか覚えてないなー

トンカツに自分の写メ送ったりとかwwww
549 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:01:58.35 ID:5KONFMco
刮目セヨ…
550 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:02:50.06 ID:5KONFMco
邪眼学園黄龍譚
19時限目 - 真実にて猛る最強の力 -

??/??

暗い通路、まるで地の底へと続くような
埃っぽく冷たい空気を蓄えた石の通路
僅かな蝋燭の灯りだけが先を照らしている
足音が反響し、ただ闇へと向かう俺の心をざわつかせる
やがて俺は少し開けた場所へと辿り着いた
広場、その真ん中に立っている男

「…来た、か」
「高橋…なんでここに…」
「戻る気は?」

俺は静かに首を横に振った
暗く、冷たい、広場
その真ん中で後方に在る扉を守るように高橋が、構えた

「…誰1人この先に行かせるわけにはいかない
 例え相手でお前であろうと」
「聞かせてくれ、この先には何があるんだ?
 お前がそうまで守る物って…」
「…この先には…全ての始まり…
 そしてあの日、沢山の罪が生まれた場所…」
「…」
「…堕人は消えた…お前の活躍によってな
 これ以上足を踏み入れることはただの蛇足だ…
 それでもお前は、この先に進むと?」

高橋の目に宿る確かな、覚悟
暗い広場の中でもわかる
魂の輝きを宿した、悲壮なまでの覚悟
何者にも折ることが出来ない意志の力
だけど、その覚悟を持ってるのは、高橋だけじゃない
551 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:03:46.75 ID:5KONFMco
「…俺はただ…知りたいんだ…
 全ての始まりと言われるそれが何なのかを…」
「真実を暴くことで幸せになれるとは限らない
 知ってしまえば更なる痛みと生み出すだけかもしれない」
「…そうだな…
 そんなこと…もう痛いほど…味わってきたよ…
 でも、それでも、退き下がるわけにはいかないんだ
 …どうしてもここを通さないと言うなら…
 高橋、お前を…倒す」

俺は黄龍鉄甲を構えた
それを見た高橋はため息をついた

「…風哭、いや、風太だったか…」
「!?」
「あいつにトドメを刺したのは俺だ
 その事実は受け入れよう…
 だから、本気で来い、俺も本気でお前を止める」

高橋の周囲の空気が凍りついたかのように一変する
その身体が何倍も大きくみえる
全身に突き刺さるような、殺気
…本気なんだ、高橋は
本気で俺を殺してでも止めるつもりなんだ…
身体の中で何かが熱く、滾る
交錯する視線、ぶつかり合う殺気と殺気
意志と意志、どちらが上回るのか
答えを見つけようと、高橋と俺は互いに互いの命へと走り出した
552 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:04:57.63 ID:5KONFMco
11/18(土) 午後

保健室のベッドの上で眠り続けるピュア
倒れてからずっと眠りっぱなし、聞きたいことは山ほどあるのに聞きだす術は無い
微かに語られた断片は時計塔の地下、その言葉
60年前で俺が見た時計塔の地下にあった巨大な機械…
そして現代の地下にある大穴…
ピュアは、何を知っているんだろうか
そして「止めなくちゃ」その言葉の意味は…
…いや、俺が本当に知りたいのはそんなことじゃない
眠り続けるピュアの身体を掴む、シーツにしわが出来る

「…お前が…ノスフェラトゥだったのか…?
 それとも…何かの間違いだったのか?」

それだけが、ただ知りたい
なぁ、目を開けてくれよ、それで笑顔で「違う」と言ってくれよ…
お願いだから、お願い…だから…
保健室のドアが開く音、足音は近づいてくる
振り向かずに俺はシーツを強く掴み、頭をうずめていた
肩に置かれる手

「…たまゆら」

顔をあげ振り向くとそこにいたのは白やん
心配そうな顔、その表情は以前の白やんからは決して想像することは出来なかった

「気になるのはわかる
 だけど少しは休んだほうがいい」
「…そう、だね」

小さく返事をして俺はまたピュアのほうを向いた
静かな寝息を立て続け、その口は何も語ることは無い
後ろから白やんのため息が聞こえた

「…少し、話したいことがあるんだ」
「何?」

振り返らずに俺は聞き返した

「…ここじゃ話せない
 少し、来てくれないか?」
「…わかった」
553 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:07:03.25 ID:5KONFMco
俺は立ち上がり、白やんと共に保健室から出た
廊下を歩き、連れて行かれたのは生徒会室。
部屋に入ると白やんは椅子を出した、机の上にコーヒーが置かれた
一口ほど口をつけ、俺は白やんに聞いた

「それで、話したいことって…?」
「…」

白やんが窓の外を見る
太陽の光に薄く照らされるその横顔
ゆっくりと、白やんは喋り始めた
それは全てを覆すかのような、真実
手から、コーヒーカップが落ちて
陶器の割れる音、絨毯に広がる黒い染み

「…冗談、だろ?」
「いや…全て本当だ…」
「は、ははは…」

なぜか、乾いた笑いが零れ落ちた
呆然とする俺に白やんは続けた

「もしも、全てを知りたいと言うなら…」
「…?」
「…少し待て」

そう言うと白やんは机から紙とペンを取り出して
何かを書き始めた
地図、のようなものか…?

「ふむ」

書き終えたのか白やんはその紙を俺に渡してきた
やはり、地図、学園の…?

「あれ?」

見ているとどうもおかしい
あるはずのない通路が書かれている
その通路の先には大きな部屋が書かれている
こんな通路と部屋ってあったかな…?

「そこに行け」
「え?」
「…ただ、そこで何が起こるか、俺には予測不可能だ」
「…」

それだけ言うと白やんは黙ってしまった
紙をポケットに入れると俺も無言のまま生徒会室から出る
…この場所に、全ての真実が?
554 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:10:09.59 ID:5KONFMco
とりあえず一旦寮に帰ることにする
寮の前まで来ると見覚えのある顔が立っていた

「たまゆら君…」
「リカちゃん…ど、どうしたの?」

不安そうな顔のリカ
思わず何があったのかを聞いた

「…ゆき兄、どこ行ったんだろうと思って
 焼肉パーティーのときからいなくなって連絡もつかないし…」
「…」

確かに、ゆき兄はあれ以来どこかに消えてしまった
だけどノスフェラトゥとの戦いの時、黄龍を発動させた時にゆき兄の声は聞こえた
どこにいるのかはわからないけど、少なくとも死んでるというわけじゃあない

「…大丈夫だと思う
 もう生徒会も堕人もいないわけだし」
「あ…そっか…そうだよね…
 ただどっかでブラブラしてるだけなのかな?」

若干リカの顔に余裕が戻った

「多分そうだと思うよ
 そのうちひょっこり帰ってくるんじゃないかな?」
「…うん、そうだね…」

納得したリカは俺にお礼を言って女子寮へと戻っていった
とはいったものの、本当にどこに言ったんだろう
相談したいことは山ほどあると言うのに…
何か、ゆき兄が行った場所の手がかりになるようなのは…
555 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:13:11.72 ID:5KONFMco
11/18(土) 夜

俺は今、ゆき兄の部屋の前にいる
もしかしたら部屋にいるかもしれないという淡い期待を抱いて
だがすでに10回はノックしている
それで反応が無いということは間違いなく部屋にはいないんだろう、室内からは物音一つ聞こえない
何の気なしにドアノブに手をかけてみる
ゆっくりとドアノブを回して引いてみる
予想に反して、ドアが開いた

「開いてる…?」

少し躊躇したが別に泥棒しに来たわけでもない
あくまでも突然いなくなったから心配して手がかりを探しにきただけだ
うん、そう、だからとりあえず中に入るべきだ
1人で勝手に納得して部屋へと入る

「真っ暗か、電気電気…」

壁のスイッチを押して電気をつける、2度の明滅の後蛍光灯によって部屋が照らされる
…部屋は相変わらず汚かった
コーラの缶とペットボトル、スナック菓子の袋や服などががあちこちに散乱し
ベッド脇には漫画が塔のように積まれ今にも倒れそうになっている
この部屋からあるかどうかもわからない手がかりを探すのは無理な気がする…
ふと、汚い部屋の中で不自然に生理整頓された机が目に入った
まるでそこだけ空間ごと切り離されたように

「…?」

気になって机に近づくと数冊かのノートが置いてあった
表紙には何も書かれてはいない
勝手に見るのはどうも気が進まないが、不自然なまでに整頓された机の上に置かれたノート
それがどうしても気になり、適当な1冊を手に取った
少し見て戻せばいい、どうせゆき兄のことだからくだらないことしか書いていないはずだ
そう思いノートを開いた
そこには日付と、何行かの文字

「…日記か…ゆき兄ってマメに日記書くような奴じゃないと思ってたけど」

だが別に毎日書いてるわけではないようだ
途切れ途切れに、酷いときは1ヶ月ぐらい日付が飛んでいる
とりあえず日記なら大したことは書かれていないだろう、あまり人の日記を見まくるのもいい気分じゃない
ノートを閉じようとした時、ある1文が目に入った
見間違いかと思い、もう1度確認する

『20XX 5/21
 特異な形状をした堕人が現れる
 戦闘能力は今までと比べ物にならないほど高い
 どうやら他にもこのような奴らがいるらしい
 便宜上、上級堕人と称す』
556 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:15:12.61 ID:5KONFMco
「…!?」

自分の目を疑った、しかし何度見ても見間違いではない
日付は、1年前の5月21日
ゆき兄はこの頃から堕人を知っていた?
いや、知っているどころかこの文章はまるで戦ったかのような…
慌てて他のページも調べて見る
ノートに綴られた過去の字列、そこに必死に目を走らせる
机の上に置かれた全てのノートを開き、そこに書いてある文章を片っ端から読んでいく
途中から日記形式では無くなり、無数の文字がビッシリとページを埋め尽くしている
大半はひどく乱れた殴り書き、その中から必死に判読可能な文章だけを探していく

『衰弱が激しい、これだけでは駄目だ』

『解決策が思い浮かばない
 考えれば考えるほど頭が痛くなる』

『根本的な解決ではない』

『楔』

『堕人の出現にはやはりアレが関係している可能性は高い』

『生徒会による深夜の校舎への侵入の禁止
 順ずる校則違反の罰の強化
 迷い出た堕人の殲滅、状況安定』

『酷く眠い、だけど眠れない』

『図書室、資料、陰陽、五行思想
 仮説、強すぎる陽に引かれた陰、それが堕人』

『思い違い、極面に目を奪われている可能性』

『60年前、軍の施設、しかしそれ以上の情報ははいくら調べても出てこない』

『×引かれた
 ○元からいたものが目覚めたもしくは出てこれるように』

『状況、依然安定』

『生徒会への不満が高まっている
 反動が来ないことを願う』
557 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:17:25.41 ID:5KONFMco
次々とページを捲っていく
心臓の鼓動はまるで早鐘を打つように異常なほど早い
奥歯がカチカチと音を立てる
なんなんだ、これ…一体ゆき兄は何をしようとして…?
そして、非常に見慣れた文字が俺の目に飛び込んできた

『転校生、たまゆら、10円』

『たまゆら、器として覚醒、運命と言えば聞こえはいいが…』

『保護』

『困ったことになった
 可能性が無いわけではないが賭けるには余りにも分が悪い』

『楔が抜ける、早く決断しなくてはいけない』

『賭けてみよう、たまゆらに
 しかし背負わせるにはあいつは優しすぎる
 もしもの時は…』

『しばらく剣を使うことになりそうだ、皮肉なことだ』

『ノスフェラトゥ』

『なぜ名前を知っていたか?』

『恐らく堕人
 しかし何か他とは違う、統率者か?』

『黄龍の意志、不確定因子
 残された時間は僅かだということだろうか』

『カルディアからヒントを得る』

『決着がつけば楔が全て消えることになる
 最終封印が残ってるとしても過去の状態と照らし合わせると…
 様子を見に行ったほうがいいかもしれない』
558 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:18:52.23 ID:5KONFMco
それ以降は何も書かれていなかった
後には白紙のページが延々と続いている
呼吸を整えようとするがうまくいかない
一体これは何なんだ、これは本当にゆき兄が書いたのか…?
もしそうだとしたら…これじゃまるで最初から全部知っていたような…!
俺はノートを机の上に置いた
見るんじゃなかった。そう思った
静かな水面に投じられた小さな石、だけどそれは心をかき乱すには充分すぎた。
不安が、胸中を満たしていく

「…最後の一文、様子を見に行ったほうがいいって…
 ゆき兄はそこに行って…?
 でも、どこなんだ…?あっ…」

ポケットに手を突っ込む
指に触れる紙、そっとそれを取り出す
白やんの言う、全てを知れる場所…
もしかして、ここなのか…?
559 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:21:18.26 ID:5KONFMco
??/?? (推奨BGM) http://www.youtube.com/watch?v=7p-0cbmKbDM&feature=related

「うおぉぉぉぉおおお!!」
「…」

俺の攻撃を高橋は完璧に避けていく
その回避には一片の無駄は存在しない。
完全なる必要最小限の動きで全てを避ける、高橋はほとんど動いてないに関わらず黄龍鉄甲はかすりもしない。
一瞬頭に沸く焦り、その瞬間腹腔が爆発したかのような衝撃。
視界から高橋が遠ざかる、背中に感じる風、そして、全身の骨を直接殴られたかのような、痛み。
蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられた、それだけは理解できた。

「うっ…ゴブッ…」

口の中に生暖かい大量の液体
それを血と判断する前に、正面の空中で足を振り上げる高橋

「目覚めろッ!玄武ッ!!!」

黄龍鉄甲の玄武の力を目覚めさすと同時に両手で高橋の足を防ぐ
腕を襲う、"壊滅的"な威力の衝撃
その衝撃が俺の立っている場所の石で出来た床を砕く
なんだこの威力…!?玄武じゃなかったら腕ごと砕かれてる…!

「回復と同時にガードか…
 随分的確な判断が出来るようになったんだな」
「たっ…かはしぃ…!」

足を離し、距離を取る高橋
その身体から何かが噴き出しているのが見えた
黒い、炎のようなものが全身から発せられている

「まさか…お前も能力者だったのか…?」
「…確かに力はもらった、だが」

そこまで高橋が喋った時
視界が反転した
宙を舞う、俺の身体、そして追撃しようと襲いかかる高橋

「俺はただ、身体能力が人の限界を超越した、それだけだ」

振り上げられる高橋の右足…
鉄を突き破り、コンクリートを砕き、そして…風太を殺した…
破壊の、化身
防ぐ術無く、破壊の化身は無情に俺の身体を撃ちぬいた
何も理解出来ぬまま、俺の身体は地へと向かい
硬い床に叩きつけられ、床を砕き、大小様々に砕かれた床石に埋もれる
560 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:23:08.09 ID:5KONFMco
「あ…ああ…」

伸ばす手が、虚空を切る
立ち上がることが出来ない、意識が、途切れ…
うまく呼吸が出来ず、呼吸しようともがけばもがくほど広がる血の味
溺れるような苦しさ、痛みが駆け抜け、それが意識を奪い去ろうとする
必死に繋ぎ止めたところで身体は動かない
途切れそうな視界の端に見える高橋

「ノスフェラトゥを倒したお前の力はその程度のものなのか?
 ここまで来たお前の覚悟はそんなちっぽけなものなのか!?
 お前が今まで背負ってきた想いは俺1人に押し潰されるようなものなのか!!」

そんなわけ、ない
俺はッ…俺が今まで背負ってきたのは…!
俺の、俺の覚悟は…!!
手が、ピクリと、小さく、確かに動いた
そしてそれが全身へと伝わり、ゆっくりと、だけどしっかりと俺は立ち上がった
それを見た高橋が小さく笑う
そうだ、こんなところで、負けるわけにはいかないんだ…!!
必ず、真実を掴む、だからこそ俺はここに来たんじゃないか…!
なのにここで倒れるわけにはいかないんだ!!

「使え、たまゆら
 ノスフェラトゥさえ圧倒した黄龍の力を!
 お前が持てる力の全てを出し切られないと俺は越えられないッ!!!」

静かに、黄龍鉄甲を構える
出来るかな、ノスフェラトゥの時は半ば無我夢中だったけど…
いや、出来るさ…だって俺はもういつだって…
どんなときでも、1人で戦っているわけじゃないから
戦いの中で見つけた絆を信じられたなら、いつだって黄龍はその想いに答えるから
だからきっと、俺は高橋に勝てる
勝たなきゃいけないんだ!!!

「目覚めろッ――!黄龍ッ!!!!」

黄龍鉄甲から金色の光が溢れ出し、変形する
両腕は如何なる物も切り裂く黄龍の爪を携えた拳
両足は大地すらも掴む黄龍の爪
あらゆる攻撃を弾き返す黄龍の龍鱗の如く神々しく輝く鎧
全身を駆け巡る熱く滾る血液、動かずにはいられないほどの身体の奥から沸いてくる躍動感
ノスフェラトゥすらも圧倒した、究極の力

「行くぞ、高橋」
561 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:24:12.80 ID:5KONFMco
蹴り出したと同時に床石が砕けた
ノスフェラトゥの時と同じ、飛び込んだと思った時にはすでに高橋は目の前
右腕を振るう
だが、高橋は上半身を捻り、それを避ける
いや、完全に避け切れてはいなかった
僅かだが黄龍の爪が高橋の服を切り裂いた

「あぁぁぁあああ!」

間髪いれずに左腕を叩き込もうとする
そこに高橋の足が来る

「舐めるなッ!!!」

黄龍の爪と高橋の蹴りがぶつかり会う
金色の光と黒い炎が弾け飛び、暗闇の広間を照らし出す

「うぉぉぉぉぉおおお!!」
「連牙双脚!!!」

両の拳を高橋へと振るう
高橋は両脚でその全ての拳を蹴り弾く
敵の攻撃を弾き、自らの攻撃を相手に叩き込もうとする応酬
金色の光と黒い炎はまるで線香花火のように弾けては消え、弾けては消え
黄龍の力に互角に渡り合う高橋
高橋と攻撃を撃ち合う度にその蹴りから伝わる高橋の想い
「絶対にこの先には誰も行かせるわけにはいかない」、その覚悟が、高橋の力を数倍に引き上げていることが理解できた
だけど、何度も言うけど…

「俺だって生半可な覚悟でここまで来たんじゃない!!!!」

一際大きい金色の光が弾ける
まるで闇に咲き誇る金色の華、美しく、儚く、あまりにも神々しい
より強い力で蹴りを弾かれた高橋がバランスを崩す
そして出来る、高橋の胴体へと攻撃を直撃させるライン

「食らえッ!!!」

渾身の力を右腕に込め振りぬく
完全に通る、間違いなく直撃だ
そう確信した時、顔に衝撃
上半身が横にずれ、渾身の1撃は直撃せずに僅かにかするように命中する
そして逆に俺の身体に黒い炎をまとった高橋の脚が直撃する
黄龍の鎧越しでも充分すぎるほどの威力が俺の身体に伝わる
後ろへと吹っ飛ぶが今度は壁に叩きつけられる前に衝撃を殺し、滑るように着地する
いや、それよりも…!
562 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:26:11.72 ID:5KONFMco
「クソッ…」

高橋の手が、ポケットから外に出ていた
蹴り技しか使わず防御も脚でこなす高橋、手は回避の時以外はポケットから出ていることは無かった
その高橋が直撃を避けるためといえど手を使い俺を攻撃した
つまりそれだけ追い詰められたってことだ…
だけど素直に喜ぶことは出来ない、脚だけでほぼ互角の戦いだったというのにそこにさらに手からの攻撃が加わるとなると…
…いや、簡単じゃないか
攻撃が激化するというなら、それを更に上回ればいい
今までの俺なら無理だった、でも今の俺なら…!

「たまゆらァァァァアアアアア!!!」

高橋が、纏う黒い炎、立ち上るそれはまるで黒き龍
両脚に加え、両腕、4つの武器から繰り出される怒涛の攻め
どんな防御も貫き、敵と絶命させる
だけど、俺はそれを全て弾く
腹部を穿とうとする高橋の脚を、俺の脚が弾き飛ばした

「馬鹿なッ…この蹴撃、俺と同じ…!?」
「お前に使えて俺に使えないことがあるかぁぁぁあ!!!」

1撃、1撃、残像を巻き起こすほどの高速の攻撃を弾き飛ばす
徐々に、殆ど分からないほどゆっくり、だけど確実に高橋の攻撃速度が低下を始める
何百発の撃ち合いをした者にしか分からないほどの変化
黒い炎と金色の光に混じり、赤い何かが飛び散っていく
それは血、黄龍の力と生身で撃ち合いを続けた高橋の脚と腕に蓄積されたダメージ
限界を越えたダメージに耐え切れなくなった高橋の身体
それは裂傷、打撲、断裂となり、撃ち合いの度に皮膚が裂け、血を周囲に撒き散らす
苦痛に歪む高橋の顔、それでも攻撃は止まらない

「もうッ…やめろッ…!!」
「グッ…オォォォオオオオオオ!!」

もう、最初の頃のような攻撃のキレは完全に無くなっていた
どれだけ強い力を持っていようがあそこまで傷ついてしまえば…
なぁ、お前はどうしてそこまでして…
正直俺はどうしようもなかったとしても風太を殺したお前が、やっぱり許せない
だけどもしお前をそこまでさせるほどの覚悟の理由がこの先にあるというのなら
やはり、俺は行かなくちゃいけない、そして、見なくちゃいけない
だから俺は、お前を…
俺の右足が、後ろへと下がる
高橋の右足も後ろへと下がり、攻撃が停止する
この1撃で勝負をつける、互いがそう思った
高橋の四肢より零れ落ちる、いや、流れ落ちる血液が床に血溜まりを作っていく
やがて、血溜まりが、跳ねた
左足を軸に、渾身の力を右足に込め、相手の身体に叩き込む
ほぼ同時の発射、だが…
563 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:27:24.07 ID:5KONFMco
「…!?」

先に相手の命へと辿り着いたのは、高橋ではなく俺の足
そして衝撃で後ろに吹き飛ばされた高橋の攻撃は俺に命中することは無かった
宙を舞い、遥か後方へと吹き飛び壁へと叩きつけられる高橋
壁石が砕け、それだけでは飽きたらず衝撃で出来た亀裂が天井にまで到達する

「ガッハッ…!」

高橋の口から大量の吐血
それが白いシャツの胸元を赤く染め上げた
黒い炎は、すでに消えていた
同時に黄龍の鎧は鉄甲へとその形を戻していく
勝った、という実感は沸かなかった、ただ何故か無性に悲しくなった
それと同時に周囲が揺れた、いや、揺れたのは部屋
天井へと走った亀裂が広がっていき、その隙間から土が零れ落ちる
広場が、崩れていく
頭上から、ひときわ大きい何かが崩れた音
見上げると、崩れた天井、大量の瓦礫、降り注ぐ
まずい、避けれな…
そこに飛び込んだ、黒き龍、自らの血で赤く染まる足が、瓦礫を粉々に砕く

「…え?」

高橋が着地すると同時に何かが折れるような音
右足が、ありえない方向へと曲がっていた

「ぐぅっ…!」
「高橋!」

高橋が俺を睨み、叫んだ

「勝ったんだろお前は!!行け!!
 言って全てを知って来い!!!」
「でも…高橋お前も…!」
564 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:29:09.36 ID:5KONFMco
そこまで喋った時
高橋は俺の胸元を血に染まる手で掴んだ
そして小さな、だけど確かな声で言った

「俺の覚悟を、踏みにじるな」

身体に強い衝撃
高橋の左足が、俺の身体に叩き込まれた
吹き飛んだ先にあったのは扉、高橋が守り通そうとした扉
身体が叩きつけられ、扉が大きく開き、通路に投げ出される

「何をッ…」

慌てて立ち上がり崩壊を続ける広場へと戻ろうとする
そこに、叫び声

「来るんじゃない!!!!
 お前が俺を倒したのは振り返るためか!!?
 ここはまだ道の途中だ!お前が目指すべき場所はその先だ!!!」
「だからって…見捨てられるわけないだろ!!!」
「…お前は、甘すぎるんだよ
 だけど、その甘さはアイツが忘れてしまったものだ…
 忘れるしかなかった、それでも…アイツは…」

瓦礫が、ドアの前に大きな音を立てて落下した
隙間から見える広場も最早広場とは言えない、瓦礫の、山

「行って来い、そして出来るなら、あいつを救ってやってくれ
 俺には、出来なかった、結局俺も加害者でしかなかったんだ
 …頼んだぜ、たまゆら」

高橋が、笑った
全ての憂いを吹き飛ばすように、初めて高橋が見せた笑顔
だけど、どうしてだろう、その笑顔はまるで死に向かう者が見せた最後の…
瓦礫が、まるで滝のように
俺の目の前に落下した瓦礫が完全に通路と広場を遮断した

「高橋ィィィィイ――――――――!!!!!
 うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

もう声は聞こえない
ただ、崩れ落ちる崩壊の音だけが瓦礫越しに聞こえる
いつしかそれも止み、残るのは静寂のみ…
瓦礫を見つめる俺の瞳から零れ落ちる、涙
どうして、泣いているんだ?俺は…?
高橋は風太を殺した張本人なのに、どうしてこんなに…

「悲しい…んだよ…!!ちく…しょぉぉぉ…!!」

流れる涙を止めることも出来ずに、地面に膝をつき
ただ、泣き続けた、理由もわからずに…
565 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:31:40.53 ID:5KONFMco
11/18(土) 深夜

白やんのメモに導かれ、廃屋街へとやってきた
どうやらここから謎の通路に侵入できるらしい
倒壊した家と家の隙間、メモを確認するとやはりここ
地面を注意深く調べる、するとどうも感触がおかしい一角を発見した
土ではない、なんだか硬すぎる
表面の土を払っていくと鉄板のようなものが現れた
近くの廃材をひっかけてテコのように鉄板を引き上げる
鉄板の下には地下へと向かう続く階段、その先はまるで深淵に続いているかのよう
暗闇をポツリポツリと照らす壁に設置された蝋燭
…蝋燭に火がついているってことは、誰かがこの先に?

白やんから渡された紙を握りつぶす
ゆき兄、やはりここにいるのか…?
漂ってくる冷たい空気とカビたような匂い
それが余計に心中の不安を煽って行く
誰か呼んでくる…?いや、全員堕人との戦いの傷で消耗しきっている
3日立ったといえ完全に回復しているとは言えない、何が起こるか分からないこの先に連れていくことはできない
黄龍の力を受けて回復している俺じゃないと…
深呼吸して気持ちを落ち着ける
そして、俺は深淵へと続く階段へと踏み出した
その先に在るであろう、真実を目指して
566 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:34:41.07 ID:5KONFMco
??/??

瓦礫と化した広場を背に、俺は通路を進み始めた
もう戻ることも出来ない、ただ先へ進むしかない
壁画に囲まれた、人1人がなんとかすんなり進める程の狭くるしい通路
ふと、壁画に目をやる

「…これは、虎?」

反対側の壁画に目をやる
そこには炎を纏ったような鳥のような絵
さらに歩を進めると、巨大な亀のような絵
そして身体を捻っている龍の壁画
間違いない、これは四神の絵だ
だがなぜ四神の絵が書かれているのか?
黄龍鉄甲と関係があるのか…いや、無いほうがおかしいだろう
…今考えるのはよそう、この先に行けば全てがはっきりするはずだ
俺はまた先へと進みだした
長い、長い通路、まるで永遠に続いているかのような
もしこの先が行き止まりだったら?などという縁起でも無い想像をしてしまう
胸を埋め尽くす、どうしようもない不快感
それらを必死に抑え込み、出来るだけ何も考えないように必死に先へ先へと歩みを進める
どれだけ歩いたのか、何時間?何十分?それとも数分?
俺の目の前に扉が現れた
その扉には朱雀、白虎、青龍、玄武が彫られていた
まるでこの先に全ての答えがあることを示しているように
ゆっくりと扉に手をかけて、力を込める
ギィ…と音が響き、開いた扉の先から灯りが漏れてくる
ガタン、と一層大きな音を響かせ、完全に扉が開いた

「すっ…げぇ…」

それしか言葉が出なかった
その部屋は天井や壁に幾つもの松明が設けられ
周囲の壁は炎によって出来た灯りを煌きと共に反射する
黄金で彩られた壁、天井、床、幻想的な光景
長方形のように部屋は奥へと続いていた
煌きの中をゆっくりと奥へと進んでいく、まるで別世界に迷い込んでしまったように現実感が希薄だ
やがて奥に何かが見えた
それは、黄金で作られた、龍の彫像
部屋の最奥の壁を背に鎮座する、まるで神像
その足下に作られた祭壇のような場所、そこに、"彼"が座っていた
いつものように、お気に入りのジュースを飲みながら
567 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:36:46.57 ID:5KONFMco
(推奨BGM) http://www.youtube.com/watch?v=xMdZ7kRX6dE

「ゆき兄ッ…!」
「来るな」

走り出そうとした俺をゆき兄が制止した
その声は、今まで聞いたことも無いような、魂すらも凍てつかせるような冷たい声
驚きからか、それとも声に込められた力からか
何かはわからないが、俺の身体は動きを止めた
グシャリと、ゆき兄はコーラの缶を握りつぶした
そして小さく喋りだす

「俺とお前が出会って、まだたったの3ヶ月だ
 …長いようで短い時間、なのにこの3ヶ月でいろんなことがあった」

俺は黙ってゆき兄の話を聞いていた
そうするしか出来なかった、ゆき兄から発せられる雰囲気が俺にそうせざるを得ないという状況に陥らせていた

「俺は忠告したよな、校則は守れよって…
 …本当ならお前の横槍がなければ全てはいずれ解決するはずだった」

何を言って…
568 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:37:38.05 ID:5KONFMco
「…確かに、ここまでのお前の活躍は素晴らしかった
 堕人を殲滅し、学園の闇を全て払ったかには見えた
 …だけど覚えているだろ?与えられた情報だけを妄信してしまった結果、堕人の枷を完全に外してしまったことを
 同じさ、黄龍鉄甲とは何なのか、なぜ堕人が現れるようになったのか
 疑問に思いながらも自ら知ろうとはせずに戦い続けた
 お前は、また与えられた情報以上のことを知ろうとはしなかったんだ」

記憶に残るどこかで聞いた言葉…
『お前がやっていたことは目的とはまるで逆
 与えられた情報だけを盲信してしまった結果』
どこで、この言葉を、俺は聞いた?
違う、覚えてる、覚えてるけど、認めたくないだけだ…
認めてしまえば、俺は…

「…黄龍とは、超自然エネルギーの集合体
 本来言葉で表すことは不可能だが便宜上"黄龍"と称されているだけに過ぎない
 そして黄龍の器とは膨大な量の超自然エネルギーを先天的に身に宿せる者のことを言う
 世の理が乱れた時、黄龍は現れ、導かれた器は黄龍を宿し、世の理を正す…
 黄龍鉄甲は器に与えられる、黄龍の力を引き出すための媒介としての役割を果たす」

違う、違う、違う…!
嘘だ、嘘だ、嘘に決まってる!
これじゃまるで、まるでゆき兄が…!!!

「聞いたんだろ?
 白やんから、生徒会のこと」
「!!」

そう、聞かされた
生徒会室で、俺は…
569 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:38:53.20 ID:5KONFMco
11/18(土) 午後

手から、コーヒーカップが落ちて
陶器の割れる音、絨毯に広がる黒い染み

「今、何て言った…?」
「…生徒会長、書記、会計
 1つだけ足りない役職がある…生徒副会長…」
「そいつが、まだ残ってるっていうのか!?」

語尾を荒げ、白やんに問う
白やんは静かに首を横に振った

「違うんだ、たまゆら
 …俺の本当の役職は邪眼学園生徒"副会長"」
「ってことは…」
「…本当の生徒会長が誰かは俺も知らない
 彼はいつも顔を隠して、マントで全身を覆っていたから…
 あの人は俺に死の力と、他者の能力を覚醒させる力を授けて
 生徒会を作り、そして堕人から学園を、きのこさんを守れと…
 あとはたまに、指令が来たり、接触して指示をくれたり…
 …隠していてすまなかった…だけど言うわけにはいかなかったんだ…」

信じられない、だけど、白やんの顔は真剣そのもので
嘘をついてるとも思えない
俺は、信じられなくても信じるしかなかった
それでも一縷の望みを賭け、もう1度、聞きなおした

「…冗談、だろ?」
「いや…全て本当だ…」
「は、ははは…」
570 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:39:46.48 ID:5KONFMco
??/??

白やんから聞いたこと
そして全てを知れるというこの場所
そこにいたゆき兄、これらから導き出せるのは…

「それじゃあ…じゃあ…」

聞きたくは無い
だけど、聞くしかなかった
俺の、望んだ答えが返ってくることだけを願う
でも、返ってきたのは、あまりにも無情な

「…俺が、邪眼学園生徒会長だ」

なん、だよ、それ…
それじゃあ、今まで全部、知ってたのかよ
知ってて、ずっと、遊んでいたのか?
一緒に戦ったのも、死にそうになってたりしたのも、全部、演技だったとでも言うのかよ
認めない、そんなの、認めない…!!
認める、もんかッ…!!!

「…世の理を正す、と言ったが
 黄龍を宿した器に与えられるのは全てを支配するほどの圧倒的な力だ
 ……俺はそれがどうしても欲しくてな
 お前がいなければ今頃俺の物になっているはずだったんだが…」
「…ゆき、兄ィィィ…!!!」
「見ろよ」

ゆき兄が背後から何かを取り出す
それは、とても見覚えがある形
571 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:41:21.59 ID:5KONFMco
「黒い、黄龍鉄甲…?」
「…俺も器なんだよ、黄龍のな、お前と違う点といえば俺は陰に属する黄龍の器…
 ただ器として目覚めた時点じゃ黄龍を宿しきるのは不可能でな…
 力を蓄えつつそのうち宿してやろうとしたが…お前が来やがった
 器が2つ在っては黄龍の力が2分しちまう
 だから古より器が2人現れた時はそいつらは戦う運命なんだよ」
「それって…」

ゆき兄が祭壇から飛び降りた
その手に、黒い黄龍鉄甲を装着して

「俺らも戦わなくちゃいけないってことだ」

ゆき兄の言葉が、胸に突き刺さる
戦う、ゆき兄と?今まで共に戦ってきたのに?でもそれは全部嘘?俺はずっと騙されていた?
わからない、わからないんだ…信じたい、けど…!!!
俺は…俺ッ…はッ…!!!!
深い闇に落ちていくような感覚、何を信じるべきなのかもうわからない
でもその時、頭に浮かんだ言葉
『与えられた情報だけを盲信してしまった結果』
『よく考えろ、そして決めろ、歩むべき道を…』
そうだ、まだ、全てを信じるには早すぎる
与えられた情報だけを妄信するな、考えろ、今のゆき兄の話だけじゃ納得いかないところがある
語られる言葉だけが真実じゃない、戦うことで見える真実だって存在する

「…違う」
「何?」
「ゆき兄は、まだ何か隠してる…!
 そうじゃなきゃ今までのことに説明がつかない!!」
「全部フェイクだよ…全部な」
「嘘だァッ!!!!」

声を荒げ、全身全霊を以て否定の叫び声
全身がビリビリと痺れるような叫び声の余波
ゆき兄は何も言わず
静かに、黒い黄龍鉄甲を構えた

「嘘だと思うなら、身体に分からせてやる
 真実の痛みって奴をな」
572 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:44:43.73 ID:5KONFMco
(推奨BGM) http://www.youtube.com/watch?v=6pqbr0-Gxmc&feature=related

俺もゆっくりと黄龍鉄甲を構える
どちらも動かずに、ただ一瞬たりとも目を離さずに相手を見続ける

「…力づくでも…!本当のことを喋ってもらう!!!」
「やってみろ」
「目覚めろッ!!白虎ォォォォォォォッ!!!!」

白虎の力を発動させると同時にゆき兄へと向かう
白き虎の爪がゆき兄へと振りぬかれる
その爪が、受け止められる

「なッ…!?」

振り解けず、それがブレーキとなり、不自然に足が地から離れ宙へと浮く
背中に、衝撃、同時に手を離され、そのまま正面の壁と叩きつけられる
白虎の力が消えていく…何が、起こった…!?
クラクラする頭を抑えながら壁から離れもう1度ゆき兄に向き直る
何も無かったかのように、ゆき兄はただ佇んでいる

「圧倒的攻撃翌力と速度で敵を翻弄する白虎の力…
 だがその分防御力は犠牲になる
 そして最大の武器である速度が逆に動きを読まれると最大の弱点になる」

ただ淡々と説明するゆき兄
クソッ…!ゆき兄こんなに強かったのか…!?
573 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:45:58.97 ID:5KONFMco
「目覚めろッ!朱雀ゥゥゥゥゥッ!!!」

発動と同時に天井近くまで上昇する
ゆき兄はただこちらをじっと見つめてる
1撃で決めてやれば…!!
羽根から炎が噴出し、灼熱の空気を生み出す

「朱雀爆炎大焔帝!!!」

炎が右腕に収束する
同時に翼から放たれた爆炎が圧倒的な加速力を生み出す
右腕を突き出し、炎のエネルギーを全て叩き込む!!
一直線に向かう炎の矢、それを目の当たりにしてもゆき兄は眉一つ動かさない
それが逆に、ひどく不気味に感じた

「くだらねぇ」

小さくゆき兄が呟いた
同時に最早寸前まで迫っていた俺の拳をゆき兄の黄龍鉄甲が
とても自然に、まるで虫を追い払うかのようにとても軽く、弾いた
拳がズレ、力の方向がズレるそして、視界には壁
状況を理解する暇すら与えてくれず、全身を襲う衝撃と熱、爆風
大きな穴が開いた壁、全身を襲う激痛、朱雀の力が…消える…
ぼやける頭にゆき兄の声が響く

「使いどころをよく考えろ
 爆発的推進力ってある意味諸刃の剣だ
 こんな狭い場所で使えば少し力の方向をズラされただけで今のお前みたいに容易く自爆に繋がる」
「ク、ソッ…!!!」

立ち上がるとパラパラと砕けた石が地面に落ちる
全身の皮膚が引きつれるようでとても動きにくい
倒れそうになりながらも必死に立ち上がる
それを見たゆき兄はいつものように、めんどくさそうに言った
574 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:47:35.50 ID:5KONFMco
「…次は?」
「…目覚めろッ!!玄武ゥゥゥゥ!!!」

玄武の力が発動すると共に身体の痛みが一気に引いていく
これで行ける!そう思った時、目の前に、黒い塊
脳を揺さぶる鋼鉄の拳
身体に叩き込まれる直接骨を砕くような連撃
内臓すらも突き破るような、研ぎ澄まされた1撃
玄武の防御能力と超回復能力すらも上回る殺戮の連続攻撃
何も出来ない、まさしくそんな状況でただ攻撃に身をさらし続けるしか出来ない
やがて、玄武の力が途絶える
そして、吹っ飛んでいく世界、違う、飛んでいくのは俺
天井、激突、落下、床、また激突…

「か、はッ…!?」

攻撃が、まるで見えない
頭に1撃受けて意識が飛びそうになったとはいえ…そんな…!

「超回復能力を持つ相手を倒すには1撃で即死させるか
 回復能力を上回る程の勢いで攻撃し続けるか、そのどちらかだ」
「クッ…!目覚めろ青龍ゥゥゥゥゥ!!!」

黄龍鉄甲が分離しビットがゆき兄へと向かって行く
なんとか上半身を起こす
放たれる無数の光弾、ゆき兄がこちらに向かって走り出した
だが距離は充分にある、この距離ならビットの光弾を当てる余地は充分にある!!
左に右に高速で動き、ゆき兄へと光弾を発射するビット
着弾と同時に巻き起こる小さな爆発すら避け、ゆき兄はひたすら俺へと向かってくる
だが光弾の1つが、確実な命中するラインへと乗った
背後からの1撃、避けることは不可能、やったか!?
だがゆき兄は走りながら身体を回転させ、振り向きざまに光弾を黒い黄龍鉄甲で弾き飛ばした
そしてそのまま何も無かったかのように俺へと向かってくる

「避けられるのは避けて
 どうしても当たるものは弾けばいい、普通だろ?」
575 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:48:31.11 ID:5KONFMco
普通、確かにそうなのだが
無数に乱射される光弾の中から自分に当たる物だけを見切るなんて…
しかも背後だぞ、あり得ない…!
充分だと思った距離は、もう後僅かしかなかった
迫り来る、黒き鉄槌、湧き上がる、恐怖

「うわぁあああああああああ!!!」

一際大きい光弾が、ゆき兄の背後から発射された
それは必死に自分を守ろうと放った光弾
ゆき兄が、飛んだ、いや、舞った
爪先をかする光弾、そして光弾を過ぎ去るより早く、黒い黄龍鉄甲が光弾へと叩きつけられた
光弾は軌道を変え、向かう先は、俺
視界が青白い光に染まっていく、そして…全身を焼け焦がすような痛みと、鼓膜を突き破るような爆音…

「自動追尾で発射するってのは
 ま、こういうことも起こるんだぜ?」
「うっぐっ…」

強すぎる…なんだよ…この力、こんなの…反則じゃないか…
圧倒的すぎる…

「舐めんなよ、たまゆら
 俺も黄龍の器だぜ?そしてお前より歴は長いんだ
 例えお前が全力で来たとしても俺は倒せねぇよ」

全力で、来たとしてもか
そうだ…まだ、全力じゃ…ない…!!
まだ残ってる…まだ可能性はある!
俺は立ち上がる、ポタ、ポタと足元で血が跳ねる

「目覚めろッ――!黄龍ッ!!!!」
「来るか…黄龍の力…」
「うぉぉぉぉおおおおおおお!!!!」

金色の光の爆散と同時にゆき兄へと突っ込む
金属音が響き渡り、俺の拳とゆき兄の黒い黄龍鉄甲がぶつかり会う
弾き飛…ばない…!?互角なのか…!?
何も変化していない黄龍鉄甲で黄龍と渡り合えるっていうのかよ!?
576 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:49:50.28 ID:5KONFMco
「…やっぱり」

ゆき兄が呟いた

「何だよ!」
「お前は俺には勝てないわ」
「どういう――!?」

右腕が、弾き飛ばされた
一気に押し込まれた力に耐え切れず、真上へと弾き飛ぶ
ゆき兄の顔は無表情、ただ無意識に何かを為すように
その黒い黄龍鉄甲が、視界を遮る
顎を救い上げるように、下から上へと
足が地面から離れ、宙へと浮き上がる浮翌遊感
視界が真っ白になり、一瞬の間を置いて床へと落ちる
黄龍の力でも、駄目、なのか…!?そんなのって…!

「…やはり駄目か」
「な、ん…」

声は、声にならない
かすれるような途切れ途切れの言葉しか出てこない
立ち上がろうとしたが、足に力が入らない
必死に立ち上がろうとして転倒するを繰り返す俺を見ながらゆき兄が言った

「…俺の黄龍鉄甲にはお前みたいに沢山の変形は無いんだ
 俺の変形は一つしかない…」
「えッ…!?」
「猛り狂え、黄龍――」
577 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:51:05.79 ID:5KONFMco
(推奨BGM) http://www.youtube.com/watch?v=SI2x5W8u5B0&feature=related

黒い風、いや、衝撃波が周囲を揺らす
痺れるような空気、金色ではなく、黒き光を放つゆき兄の黄龍の鎧
あまりにも美しい黒き光は、俺と同じように一種の神々しさを併せ持っていた
しかし違うのは、放つ光の圧倒的な量の差
淡く周囲を照らす俺の金色の光とは違い、周囲を飲み込むかのように眩い黒い光
本能が告げる、絶対的な力の差
同じ力を扱うものだからこそ分かる、決して埋めることが出来ない差
その目が、赤く輝き、絶対的な黒の中で自らの存在を誇示する
これが、ゆき兄の黄龍鉄甲…

「アァァァァ――…」

それは、唸り声なのか、それともただの呼気の振動なのか
その声に触れる者全てを一片の欠片も残さず焼き尽くすと錯覚するような絶大なるエネルギー
動けない、白やんの時のようにイメージに縛られて動けないんじゃない
爆発的に放射される形の無いエネルギーが波動となり"物理的"に身体を押えつける
そんなことありえるはずがない、だけど現に俺は動けず、叩きつけられるようなエネルギーを感じていた
まるで床に磔にされたように、指の1本すら思い通りにならない
猛り狂う、俺と同じ、だけど圧倒的な力、それがゆっくりと近づいてくる
心臓の鼓動が、とても大きい、呼吸する音が頭蓋骨に響く
とても勝てる気がしない、いや、そんな次元の話じゃない、力の桁が違いすぎる
逃げるか?逃げ道なんてないだろう?じゃあどうすればいいんだよ!!
1人で自問し、1人でパニクって…俺は何がしたいんだ…!
勝たなきゃいけないのに…勝たなきゃ…!!
578 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:52:34.41 ID:5KONFMco
「ぐっ…おぉぉぉおお…!」

右腕に渾身の力を込める
押えつけてくる力に抵抗し、ガクガクと震えながら
掌をゆき兄へと向ける、チャンスは今しかない
油断してる今、全エネルギーを叩き込むしか方法が思いつかない
それでどうなるかはわからない、それでも地に膝をつけるぐらいは出来るかもしれない
ノスフェラトゥさえ圧倒した、黄龍の力を…!叩き込む!!

「黄龍烈破滅閃双撃破ァァァ――――――!!!!」

右手の掌から放たれた金色の光
ノスフェラトゥの動きすら封じ、撃ち倒した爆発的エネルギー
それがゆき兄へと一直線に迫る
黒い炎が弾け、金色の飛沫が散る
無表情で、右手を突き出したゆき兄、そこに命中した金色の究極の破邪の力
力は、そこでまるで壁にぶつかったかのように上下左右へと爆散する
ゆき兄は届かない、片手で俺の全てのエネルギーを受け止めている
勝て、ない、何をしても、俺は、ゆき兄に、勝てない
想像、予想、未来、そのどれでもない、それらのどれよりも確実な事実
心が絶望に閉ざされていく、戦う気力は削がれて行く
そんな俺の心に呼応するかのように金色の光のエネルギーの放出が止まる
右腕が、落下し、ガツンと音を立てて床に転がった
もう力が、入らない…

「…それじゃあな、たまゆら
 信じないかもしれないけどな、お前と友達になれてよかったと思ってるよ
 器とか、そんなものが無ければ…きっと俺は…」
「ゆき兄ッ…!俺…!」
「だが、これが現実だ、捻じ曲げられることは決して出来ない真実
 可能性という無数の世界から選ばれたたった一つの世界
 …どんなに残酷で、無情だとしても決して変えられはしない!!」

ゆき兄の身体から放たれていた黒い光が収束した
来る、俺と同じ、最強の力
最も威力は俺の何倍、いや、数十倍、数百倍?
だけどすぐに考えるだけ無駄だと悟った、どのみち、負ける
579 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:54:01.78 ID:5KONFMco
「お別れだ、たまゆら
 …今まで、ありがとう」

ありがとう?何で今更そんなこと言うんだよ…
意味分からないよ、分からない、けど…
俺は知ってるんだぜ?
…冷たいフリして、他人の痛みなんか知らないフリして、やってられかってフリして
でも、それが全部嘘で、本当は、誰よりも…!
それすらも嘘だとは、俺は絶対に思えない
この3ヶ月で、沢山の君を見た、共に戦い、共に笑った…!
偽りなんかじゃない、確かな暖かさを俺は感じた、だから…だから…!
力の入らなかった拳に暖かさを感じた、痛いほどに強く握った拳が紡ぎだす覚醒の力

「…黄龍冥撃夢幻黒蓮破ァァァ――――!!!」

黒い、全てを覆い尽くそうとする、破壊の力
部屋すらも飲み込んでしまいそうな極大エネルギー
もしこれが、君がずっと、1人で抱え込んできたものと言うなら…!!!
この闇から君を救い出す!!!今までと同じように!必ずゆき兄を救う!!
絶対の、絶対の、絶対にだッ!!!!

「究極黄龍破邪滅閃双撃翌龍波ァァァ――――――!!!」
「なにッ!?」

俺の身体から放たれた金色の光が黒い炎と激突した
周囲に金と黒と撒き散らし、拮抗する2つの波動
荒ぶる2つのエネルギーの激突が大気を奮わせ衝撃波を生み出す
松明が倒れ炎が消える、それでも放たれる2つのエネルギーの輝きが部屋を照らし続ける
580 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:55:32.61 ID:5KONFMco
夢か現か、ぶつかり合う2つの力の狭間に揺れた景色

それは倒れている人の中で、何かに抗い続ける、ゆき兄の姿
自らの足に剣を突き立て、苦悶の表情を浮かべながらも覚悟を持ったその瞳

『器が我に逆らうかァァアアアアア!!』
「俺たちの世界は俺たちが作るんだ!!
 お前の出る幕なんか無い!消えろォォォオオオオオ!!!」
『消えろ、か、ハハハハハッ、無様だな!
 人ごときが森羅万象より産み落とされた我を消滅させることなど出来ぬ!』
「…クッソォォォオオオ!!」

景色が、変わる
血まみれの少女を抱き、自らの血に染まり
涙を零し続ける、ゆき兄

「ちくしょ…おっ…なんで…こんな…!!
 俺はッ…!俺はぁぁああああああああああ!!!
 あぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

絶叫、込められた痛いほど伝わる悲痛な想い
断片的な記憶から伝わる過去の事実
ゆき兄、何があったんだ…どうして…話してくれなかったんだ…!
俺が弱いから?もっと、もっと強ければ、話してくれたのか?
強く、なるから、俺はもう誰にも負けないから…!負けないから!!!
581 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/07(土) 22:56:41.82 ID:5KONFMco
「うぉぉぉおおおおおおおおおおおッ!!!」

金色の光が更に増大する
それはまさに闇を貫く流星

「尽きることなく無尽蔵にエネルギーを増大させていく…!
 これがッ…たまゆらの強さ…!!だけど…」

ゆき兄の黒い炎が爆散し、一気に収束する
俺の金色の光が徐々に押され出す、いや、飲み込まれていく
これでもまだ…足りないのか!?

「俺には届かない」

黒い炎が金色の光を貫いた
そしてそのまま黄龍の鎧すらも…
黄龍の鎧すらも貫く爆発的なエネルギーが全身を"噛み砕く"
5体が引き裂け、爪の先まで砕け散るような感覚
鼻腔を突く、肉が焼けるような匂い
意識に"穴"が開く、泡が弾けて消えるように"穴"はどんどん増えて…
全てが闇に落ちる寸前に聞こえた、強く、悲しい声

「…お前には、黄龍の力と宿命は重過ぎる…」

意味を問おうとしたが
だけど、もう俺の口から言葉は出なかった
最後に見たのは、悲しそうにうつむく、ゆき兄の顔



19時限目 - 真実にて猛る最強の力 -
582 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/07(土) 23:35:41.48 ID:t2BaBwEo
ゆき兄おつ!


この発想はなかったわwwwwwwwwwwwwww
tkおいしいとこ持ってくなよwwwwwwwwwwwwwwww
583 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/11/07(土) 23:46:52.77 ID:7.mjyUEo
ゆきに乙!

俺会長じゃねぇのかよwwwwwwwwwwwwwwwwww
あんだけ頑張ったのにwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
584 :そら :2009/11/09(月) 07:54:57.05 ID:GHbMDUDO
朝…げつようび…
585 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/09(月) 13:00:11.84 ID:7gXhvcDO
今週の月曜日さん……あんまり優しくないです…(´ω`)
586 :ミギー :2009/11/09(月) 22:14:33.16 ID:K7g45wDO
私は…旅立ちます!!大都会TOKYOへ!!!!
待ってろ東京人!!!!!
587 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/10(火) 00:51:43.63 ID:RuHppVUo
え?東京来るの?
588 :そら :2009/11/10(火) 01:06:47.53 ID:xHEPQADO
えっ?
589 :ピュアハート [('A`)]:2009/11/10(火) 19:43:20.01 ID:dzE0YYSO
修学旅行か
590 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/11(水) 00:02:03.96 ID:PHCJGwUo
祝!ポッキー&プリッツの日!
591 :そら :2009/11/11(水) 07:59:28.63 ID:ahzFL6DO
ポッキーとかプリッツとかの場合じゃない雨
592 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/11(水) 17:32:18.58 ID:Xry773Eo
暗くなると活動を開始するまんまヴァンパイアな僕
593 :ピュアハート [('A`)]:2009/11/11(水) 20:11:40.34 ID:MXMvMkSO
>>592

ニンニクそっちに送っとくわ
594 :ほろ苦 :2009/11/12(木) 01:16:47.64 ID:Iw3Ha2A0
ちょっとお借りしますよ

http://www.nicovideo.jp/watch/sm8781378
595 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/12(木) 19:39:08.91 ID:ztsvIQDO
>>594
エロボイスなのに癒されたおwwww
596 :ミギー :2009/11/13(金) 18:19:48.40 ID:ZXMvHoDO
友達が
「東京の人は冷たいだべさー」
とか言い出して死にたかったwwwwwwwwwwwwww
597 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/13(金) 20:38:20.62 ID:yu2QhgDO
>>596
なぜに東北弁wwwwwwwwwwww
598 :そら :2009/11/14(土) 02:58:16.31 ID:FbeNBsDO
ほwwwwwwろwwwwww酔wwwwいぃwwwwwwwwwwwwwwww
599 :ミギー :2009/11/14(土) 16:17:17.99 ID:yJPzIcDO
http://imepita.jp/20091114/585590
友達の美しすぎる足
600 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/14(土) 17:22:32.75 ID:R87WrMDO
>>599
ニーソだったら完璧だったのに…!!
601 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 18:03:40.04 ID:tnMtIYAO
>>600
お手本を見せてください!
602 :ミギー :2009/11/14(土) 19:34:58.03 ID:yJPzIcDO
>>600
今度はかせますね!
そしてお手本を見せて下さい!!
603 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 20:10:10.82 ID:Jx/0GAIo
>>600
お手本!お手本!
604 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:47:19.85 ID:nJYu.u.o
>>600
お手本と言わざるを得ない!
605 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/14(土) 20:54:43.92 ID:R87WrMDO
なにこの流れwwwwwwwwwwww



だが断る!
606 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 21:12:27.87 ID:Netk0sAO
とかいいつつやってくれる夜叉丸^^
607 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 21:13:24.26 ID:UINTeLs0
これは期待
608 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/14(土) 21:25:16.66 ID:R87WrMDO
>>601-604 >>606-607がメガネうpしたら考えてみる^^
609 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:02:43.24 ID:dLhmYBko
カランカラン

土曜10時は黄龍譚の時間ですぅー
それではラストまで残り2話、今週もいってみよぅー
610 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:05:03.31 ID:dLhmYBko
邪眼学園黄龍譚
19.5時限目 - 黄龍降臨 -

??/?? 黄龍降臨の間

肉が焼ける匂いが周囲に漂い、身体から黒い煙をあげながら倒れるているたまゆら
さすがにもう動けはしないだろう…
パチパチと、静かになった室内に音が響く

「ずっと見てたのか、天下」
「ええ…」

影が歪んでいく、正確には壁の手前
歪んだ空気は徐々に色を得て行く
そして、天下の姿となる、微笑を浮かべながら俺に拍手を送る
俺は、天下の胸倉を掴み上げ、壁へと叩き付けた
それでも冷静に天下は言葉を紡ぐ

「…無理なのは知ってるだろ?
 僕は一部分だ、いくら殺したところで…」
「…クソッ」

俺は天下を離した
乱れた胸元を直しながら天下はゆっくりとたまゆらに近づいた

「…ふぅん、チャクラだけにダメージを集中させたのかい
 殺したほうが手っ取り早いのになぜそんなことを?」

ニヤニヤと笑いながら
たまゆらの身体に触れる天下
天下のほうなど見ずに俺は黄龍の鎧を元に戻しながら返答した

「命まで奪う必要は無いんだろ
 ……ま、今までの礼も含めてそれだけに留めておいた」
「…クックック…!どうせ結末は同じなのにかい?」
「…」

奥歯を噛み締める
天下は半ば笑い声が混じった声で続ける

「長かった…この1年半、自らを縛る鎖を呪い、呪い続け…!
 何度君を引き裂いてやろうかと思ったか…!
 でももういいんだ、もう終わる、君が黄龍を受け入れればそれで終わる」

1年半…もうそれぐらい立つか…
俺は黄龍鉄甲を見た、鈍き漆黒の輝き
それは俺の最大の力でもあり、罪の象徴でもある
決して消える事の無い…
611 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:08:22.13 ID:dLhmYBko
1年前、春

喉を下る刺激が心地よく、俺は缶を垂直にし一気に流し込んでいた

「よくまぁ、その量を一気飲みできるな」

呆れたような口調でそう言いながら高橋が何かを投げてきた
左手でそれをキャッチすると、ぶにゅっとした感触
視線をやると中身の餡子がちょっと飛び出した饅頭があった

「やるよ、食え」
「饅頭ねぇ…」

ピリピリと音を立てながら包装紙を破る
半分ほど破ったところで饅頭にかぶりついた

「うん、うん…けっこううまいなコレ…」
「それより本当に行くのかよ?」
「面白そうじゃね?
 もしかしたらなんかこう、財宝とかあって一攫千金かもよ?」

指についた餡子を舐めながら高橋に返答する
饅頭ってなんか物足りないんだよな、食い終わった後が

「しかしよぉ…隠されてた怪しい通路って…
 なんかヤバい気もしねぇか?場所もあの廃屋ばっかのとこだろ?」
「ああ、あそこだぜ?」
「しかし瓦礫に埋もれて隠れてのをよく見つけたな
 つーかお前あそこで何してたんだ?」
「廃屋街って面白いじゃん」
「…いや、意味わかんねぇ」

高橋が頭を抑えて顔を伏せる
そのまま小さく呟く

「つか、1人で行きゃあいいじゃないか」
「それはそれで怖いし」
「お前な…」

頭痛がする、そう言いたげな感じで高橋が呆れ果てたような目でこっちを見つめた
指に突いた餡子を全部舐めとると俺は親指を立てて高橋に笑顔を送った
それを見た高橋は溜息をつきながら言った

「今回だけ、だからな?」
「ああ、わかってる、今回"こそ"今回だけ、だろ?」
「…それで?いつ行くんだ?」
「膳は急げって言うし、今日の夜行こうぜ
 まぁヤバそうだったら途中で戻ればいいだけのことだろ?」
「…まぁな」
「んじゃ11時過ぎぐらいに廃屋街な!」
612 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:11:04.80 ID:dLhmYBko
そう、偶然見つけた、真実へと至る道
好奇心をそそられた俺は高橋を誘って探検してみることにしたんだ
今思えば、どうしてそんなことをしたのかな
好奇心は猫を[ピーーー]って格言もあるのに、昔の俺は何も考えていなかった
いや、考えようとしなかったんだ…
それで夜になって…

「お前から誘ってきたのに何で寝てるんだよ!!」

高橋がまだ頭が覚醒しきってない俺の手を引っ張って廃屋街へと連れていく
俺はぐぁんぐぁんと半目で頭を揺らしながら
おぼつかない足取りで廃屋街へとたどり着いた

「あー…」
「あー…じゃねぇよ!!
 ほら、ついたぞ、入り口はどこだよ」
「ん、これだよ」

俺は印をつけておいた場所を見つけ
土に隠れている鉄板の端を思いっきり上に持ち上げた
ガゴッと音がして現れる地下へと続く石造りの階段
月明かりによって照らし出される暗黒、続く先は光すら届かぬ深淵の闇
漂う冷たい空気、なのにまとわりつくようなとてつもなく不快な瘴気
隣で高橋が生唾を飲む音が聞こえた

「…おい、本当に、ここ入るのか…?」

若干震えた声で高橋が俺に聞いてきた
正直俺も少し怖い、正確には物凄く怖い
しかしだからこそ高橋を連れてきたのだ、この恐怖を紛らわすために
それに恐怖よりこの先に何があるのかという好奇心が勝った
俺は高橋に向かって親指を立てた
高橋は覚悟を決めたように懐中電灯を取り出した、用意がいいなコイツはと思った
懐中電灯の明りに照らされる深淵しかしその光すらも最奥を照らすことは無い

「…危ないと思ったらすぐ逃げる…で、いいんだよな?」

最終確認といわんばかりに高橋は俺に向かって聞いてきた
俺は無言で何度も頷いた
高橋は大きく息を吐いて、階段へと足を踏み出した
俺も高橋の服の裾を引っ張り続いておりる
ひんやりとした空気に体が震える、俺と高橋はゆっくりと1歩1歩足を踏み外さないように階段を降りていった
響く音は俺たちの足音と呼吸音だけ
懐中電灯の光だけが先を照らし、完全なる深淵へと向かっていく
やがて階段が終わる、先に続く長い通路
高橋が唾を飲み込む音がヤケに大きく聞こえた
613 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:12:46.72 ID:dLhmYBko
「まだ…行くよな」

どうやら高橋もあまりに学園の地下にあるあまりに不気味なこの通路を見て
恐怖よりも好奇心が勝ったらしい、俺の返事も待たずに足を踏み出す
懐中電灯の光が左右にゆらゆらと揺れる
壁に書かれている絵の意味を考える余裕も無く、先へ、先へと
ただ、歩き続ける、まるで地獄の底に続いているかのような道をひたすらに
足元から背中を這いまわり脳髄に到達する恐怖
深淵の闇に隠れた後ろから誰かに見られているような恐怖
心なし多く聞こえるような足音、小さな囁き声
気のせいに決まってる、気のせいだ
ここにきて俺は少々後悔していた、来るんじゃなかったと、ここは人が足を踏み入れていい場所じゃないのではないかと思い出した
しかしどうせ戻るにしてもまたあの長い長い暗闇を抜ける必要がある
…それにどうせ高橋は前へ前へとグングン進んでる
俺たちは無言で延々と通路を歩き続けた
階段を降りてからどれだけ歩き続けたのだろうか
唐突に高橋の足が止まる
そして正面で懐中電灯の明りに照らされていたのは大きな、両開きの扉…
通路もそうだが、なぜ学園のこんな場所が?いつ、誰が、何のために作ったんだ?
高橋も同じ疑問を抱いているだろう
…答えはこの扉の先にあるのか…?ならば…
俺は高橋の前に出てゆっくりと扉に両手をかけ、力を込める
周囲の壁に反響する不気味な音を響かせ、ゆっくりと扉が開く
扉が開いても相変わらず真っ暗だったがどうやらかなり広いらしい
俺に続いて高橋も足を踏み入れる
周囲を見渡すようにあちこちを懐中電灯で照らしていく

「…かなり広い部屋みたいだな」
「部屋っていうか、広場かな…」

閉塞感から開放されたからかそれとも暗闇に慣れたのかわからないが若干心に余裕を取り戻す
とても広い広場でしばらく動けずにそこに立ち止まる
すると突然、俺じゃなくかといって高橋でも無い声が響いた

「…誰?」
「え?」

声の聞こえたほうに高橋が懐中電灯を向ける
深淵の闇の中に、少女が立っていた
透き通るような周囲の闇に同化するような長い黒髪
それらが浮き立たせる、白い肌
俺と高橋は言葉を発することなく、少女に釘付けになった
恐怖とか、驚きじゃない、深淵の闇で出会ったその少女にある種の"神々しさ"を見たから
例えるなら、闇の中に咲き誇る、1輪の白い花
614 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:15:00.96 ID:dLhmYBko
「…誰なの?」
「えっ…あっ…」

もう1度聞き返されて我に返る
しかし冷静に考えてみろ、誰?と聞きたいのはこっちのほうだ
こんな闇の中に1人でいる少女ってどう考えても怪しすぎるだろ
だけど不思議と、逃げようとは思わなかった
怖くない、むしろなんだろう、彼女を見ていると、切なくなった…
なぜかはわからないけど、その表情がどうしてだか…とても悲しい物に見えた

「俺は…高橋、こっちはゆき兄…
 君は…誰だ?なぜここにいる?」

高橋が問いに対する答えを返す
そして、今度は彼女に問いかける
小さな声、だけど淀みなく、彼女は言う

「私はきのこ、なぜここにいるか…
 ずっといた…ずっと…守ってきた」
「守って?」
「すぐにここから出て行って…
 ここは人が足を踏み入れてはいけない…そういう場所だから」

それだけ言うときのこと名乗った少女は俯いた
俺と高橋は顔を見合わせた
互いにどうする?といった表情でお互いの言葉を待ってるような状態
確かにここは人が足を踏み入れてはいけない場所、そういうのはなんとなく俺たちも感じている
だけどここまで来てノコノコ元来た道を戻るというのも…
そう考えていた時、頭に軽い痛み

「つッ…!」
「どうした?」

突然頭を抑えて呻いた俺を見て高橋が慌てる
心配そうに顔を覗き込んでくる

「いや…急に頭痛が…」

『来い』

「…!?」

頭に直接響くような声
頭蓋骨の中を反響し、何度も、何度も

『来い…こっちだ…来い…』

「誰かが…呼んでる…」
「え?」
615 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:16:48.78 ID:dLhmYBko
高橋がはぁ?と言う顔をした
俺にしか、聞こえてないのか…?
頭痛が酷くなり、頭に響く声は大きくなっていく

「ぐぅっ…!!」
『来い…!』『我を解き放て…!』『こっちに来い…!』
『暗き獄より我を…!』『器よ…早く…!!』
「うっぐ…!!」

頭痛は、まるで頭が割れるんじゃないかという痛みへと変貌する
立っていられずに、俺はその場に倒れこむ

「ぁっがぁ…ぎぃ…」

押し寄せる痛みは激しさを増していく
地面を掻き毟る指は爪が剥がれ落ち、血を滴らせる
その痛みを感じる事もさせてくれないほど、頭痛は容赦無く直接脳を掻き回すかのように…
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い…

「ゆき兄!?おい…!?」

高橋が慌てている
だけどその声は俺には届かない
頭痛と共に、俺に届く声は誰かの、呼び声だけ

『来い…』

「うぅ…」

立ち上がり、前へと足を踏み出す
一瞬、頭痛が治まる、がすぐにまた割れるような痛みが押し寄せる
もう一歩、前に進む、また治まる、だけどまたすぐに元に戻る
痛みから逃れようと足を前に出し続ける
その進行方向にあの少女が立ちはだかった

「駄目…この先は…!」

どいてくれ、頼む、痛いんだ、死にそうなほど、痛いんだ
お願いだ、道を、開けてくれ…!
そこを、退け

「共鳴してる…駄目!行ったら駄目!!」
「ど、け…!!」

自分の口から出た声が、自分でも信じられなかった
憎悪の塊のような、聞く者の魂を震え上がらせるような言霊を携えた声
悲しげな顔は、より悲しげに、それでも少女はその場を動こうとはしない
多分、後ろでは高橋が今の俺の声を聞いて信じられないと思っているんだろう
だけどそんなこと、今はどうでもいい
今は、この痛みを何とかしたい、それだけでいい
616 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:19:50.62 ID:dLhmYBko
「…どけぇッ!!!」

俺は、少女を突き飛ばした
そして頭を抑えながら、震える足でその横を通り抜ける
後ろに倒れ、尻餅をつく少女はそれでも尚も叫ぶ

「駄目ッ!!その先に眠っている物を起こしたら…!!」
「知る…か…!!」
「ゆき兄ッ!おいッ!!」

後ろから高橋の声
だけど、どうでもいい
この痛みが、俺を縛る、何も届かないほどに
頭を抑えながら導かれるままに先へと進む
半ば体当たりするように現れた扉を開ける
扉の先にある通路をただ痛みを和らげるために進み続ける
開け放たれた扉が閉まる直前に聞こえる少女の叫び声

「駄目ェェェェェェェッ!!!!」

その叫び声は、閉まる扉に阻まれて、俺に届くことは無かった
1人で深淵の闇に包まれた通路を歩き続ける
歩みを止めれば襲い来る狂ってしまいそうなほどの頭痛
ただそれから逃れたい一心で先に何があるのかなど考えず俺は歩き続ける
どれだけ歩いたのか、目の前にまた扉
扉に描かれている…鳥と、亀と、虎と、龍…?

『来い…』

声はどんどん大きくなる、立ち止まっては駄目だ
俺は一気に扉を開け放った
扉の先は、俺の想像を遥かに超越した場所だった
部屋に入ると同時に頭痛は嘘のように止んだ
それよりもその部屋に俺は目を奪われた
いくつものかがり火の炎に照らされた壁、床、天井、その全ては金色に光り輝いていた
本当に財宝が眠ってたってわけか…?なんてことを思いながら先に進んで見る
途中に、ボロボロの何かが落ちていた
気になって拾い上げて見るとそれは紙…だけど随分と色あせている
何か書かれているが…読めない
かろうじて龍のような絵だけは判別できた、なんだろう、コレ…
とりあえずその紙をポケットにねじ込み、また奥へと進んで見る
やがて何かが見えてくる

「すげ…何だこれ…龍…?」

黄金で作られた大きな大きな、龍の像
炎の輝きに照らし出されたソレからは圧倒的な威圧感と神々しさ
なんでこんなもんがここに…
もう少し近くで見てみようと思い、その像に近づいていくと
像の前に小さな机のような物が置かれていた
まるでここに供え物をしろって感じだな…
617 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:22:39.89 ID:dLhmYBko
そこまで近づくと、また頭に声が響いた
今まで1番ハッキリと、大きな、声

『よくぞ来た…器よ…』
「誰だ…!」
『我は黄龍…世の理を司りて、四神を束ねし存在…
 証を…器として…証を…』
「!?」

突然右腕にずっしりとした重みを感じた
黒い、グローブ…?いや、鉄甲?いつのまに…?

『器よ…我を受け入れ…世の理を正せ…
 天運によって選ばれし…世に…救いを…』

いまいち要領を得ないが…面白そうではあるな
ヒーローになれってか?望むところだ
元々そういうのには憧れてたから、俺だって男の子だから

「ああ、わかった、それじゃどうすればいい?」
『証を…かざせ…黄龍鉄甲を高く掲げろ…』
「こうか?」

俺は像に向かって右手をあげた
金色の光を反射する像から何かが薄っすらを浮き出てくる
ホタルの光のような、儚く、淡い金色の光
それが螺旋を描き、広がって、美しく壮大なタペストリーのような模様を宙空に描いていく
その光景に目を奪われていると、突然背後で大きくドアの開く音

「止めて!!」
「君は…」

振り向くと、さっきの広場で出会った少女がいた
息を切らしているのは長い通路をここまで走って来たからだろう
そういえば切羽詰ってとはいえさっき突き飛ばしちまったんだよな…
謝っとこうかな…

「あの…さっきは…」

謝ろうと思って口を開いたその時
俺の言葉を遮るような、絶叫にも近い少女の声

「駄目!その黄龍は狂ってる!!!」
「え?」

狂ってる?
よくわからないが、ここから離れろと言っているのは間違い無い
若干躊躇したがとりあえずその場を離れようとし、後ろに振り返った、刹那

『もう、遅い』
「何ッ!?」
618 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:24:19.84 ID:dLhmYBko
背中に、恐ろしい衝撃、皮膚を焼き切り、内臓までも焼け焦がすような激痛
穴を開けられた皮膚に焼けた鉄の棒を力任せにねじ込まれていくような感覚
痛みを衝撃ではなく、痛みと脳が判断した瞬間に俺の口から出たのは痛みの絶叫

「がぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!?」

尋常ならざるほど視界が揺れるのは激痛によって目の焦点を失ったから
全身がガクガク震え、自らの息はまるで炎を吐いてるかのような熱を帯びる
頭のてっぺんから足の指先まで全身を万遍無く内側から焼かれる痛み、発狂するほどの死の痛み
顔を必死に逸らすと俺の背中には黒いレーザーのような物が直撃している
それはさっきまで俺の目の前にあった金色の龍の像の口から放たれていた

「…ゆき兄ッ!?」

高橋の声が聞こえた
震える視界に映る、少女の傍で呆然とした顔をする高橋
何が起こってるか、わからないと言った具合で
少女がこちらに走って来た

「離れろぉぉぉお!」

少女は俺の身体を突き飛ばす
同時に黒い光は途絶え消える
だけど俺の痛みは止まらない、床を転げ回り、悶え苦しむ
さらに頭に響く声

『全ての命を散らせ』
『狂ってしまった世界を浄化せよ』
『何もかもを消し飛ばし、全てをあるがままの状態に』

止めろ、そんなの、望んでない…!
俺は…そんなこと…望まない!!
こんなの…違う…!!

『お前は我を受け入れた』
『抗うな』
『器として本分を果たせ』
『全てを回帰させよ!!』

嫌だ…!嫌だ…嫌だ…!出来ない…出来るわけが無い…!
そんなものが…救いであってたまるか…!!!
619 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:26:29.56 ID:dLhmYBko
「ゆき兄ッ!大丈夫か!?」

高橋が近づいてくる
視界に映る、高橋の顔

「お前…泣いてるのか…?」

泣いてる?どうして…俺は、泣いてるんだ?
痛みのせいか?それとも真実を知った悲しみからか?
いや、そんなことより…

「逃げろ…高橋…」
「え?」
「逃げろォォォォオオオオ!!!」

逃げろ、という叫び声とは裏腹に、俺の右手は無防備な高橋の腹部に叩き込まれた
信じられない、そんな顔をして高橋は身体を折り曲げ後ろへと吹き飛んだ
壁に叩きつけられ、手を俺のほうに伸ばす
だけど、その手が力なく地面に落ちる

「うぅ…あぁぁああああ…!あぁぁ…!!」

俺はゆっくり立ち上がる、俺の意思ではない
まるで操り人形みたいに、誰かが俺の身体を動かしてる
俺の瞳は少女を見る、よせ、やめろ、動けよ、俺の身体…!!

「…」

少女は俺を睨んでいる
当たり前か、忠告を無視してこんなことになった奴に同情する余地なんか無いだろう
だけど気づいた、少女の視線の焦点は俺ではない
俺のすぐ真後ろ、何も無いはずの空間を睨んでいる

「…お前は誰だ?」

俺の口から出た、俺じゃない誰かの言葉
俺の声、だけど発しているのは俺ではない
少女はその問いに小さく答える

「最後にあの人は守人として
 決して誰も貴方という暴走した力に近づかないために私を作った
 そしてもし発動しても、押さえ込むために、言うなれば私は最後の保険…」

この子は、何を言っている
俺の声で、俺ではない者が喋る

「何を言う…我は生まれるべくして生まれた存在…
 世の理が乱れた時に現れ…世を正す…」
「違う…確かに貴方は何も悪く無い…
 あの人は最後に気づいた、自分が決して踏み入れてはいけない領域に踏み込んだことに
 だから私をここに置いた、私は百年ここにいて…守り続けた」
620 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:29:24.67 ID:dLhmYBko
百年、ここにいた?
ずっとこんな暗い場所に百年も…?
ふと気がつくと、右手の黒い鉄甲の形が変わっている
まるで鉄甲と同化した剣のように鋭い刃が光っていた

「…ねぇ、聞こえてる?
 貴方に入り込んだ黄龍の力は人工的に生成された所謂狂った力…
 もしそれが完全に発動すれば…世の理どころじゃない、全ての生きとし生ける者が死滅する!」

それは多分、俺に向けられた言葉
全ての生きとし生ける者が死滅か…はは、ゲームとかでよくある設定だな
残念なのは…俺がそっち側に来ちゃったってことか…
…ま、もう俺は戻れないんだろうな
視界の端で力なく壁に背を預けている高橋、その足元には赤い血だまり
ゴメンな、俺に付き合わせてこんなことに…
ただ、コイツだけは絶対に許さない

「抗って…!その力に飲まれないで…!!」
「無駄だ、もはや我は器と完全に同化しッ…!?」

あんまり調子乗ってんじゃねぇぞ…!!
さっきから人を物扱いしやがって…!テメェに思い通りにならないことがあるって教えてやる…!!

「…調子…乗りすぎだ…クソ野郎…!」

それは俺の声、俺じゃない誰かの声じゃない
紛うことなき、俺の意思によって紡がれた言葉
自らの足に突き立てた剣による激痛が、僅かだが俺の身体の支配権を俺に戻した
誰かの声は追いやられ、また俺の頭に直接働きかける

『器が我に逆らうかァァアアアアア!!』

憎悪を込めるかのような絶叫
吹き飛ばされそうな意識を繋ぎとめ俺は声を紡ぐ

「俺たちの世界は俺たちが作るんだ!!
 お前の出る幕なんか無い!消えろォォォオオオオオ!!!」
『消えろ、か、ハハハハハッ、無様だな!
 人ごときが森羅万象より産み落とされた我を消滅させることなど出来ぬ!』
「…クッソォォォオオオ!!」

足から剣がズルリと、血を滴らせながら抜ける
同時にまた身体は俺の意に反して動くようになる
やはり、俺が死ぬしかないのか…!?
もう1度、もう1度だけ一瞬でいいから支配権が俺に戻れば…!!
そう思っていると少女が目の前に飛び込んできた
右手が、突き出されようとする

よせ、やめろ、やめろ、やめろォォォオオオオオオオオオオ!!!
621 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:31:57.92 ID:dLhmYBko
酷くスローモーションな世界
少女の視線と俺の瞳が交錯する
深く静かな悲しみの内に眠る、確たる意志
それを見た瞬間に、右手に伝わる、柔らかくも重たい感触
胸の中心を貫き、背中から切っ先を覗かせる刃
少女の口から鮮血、だけど、その顔に微笑み
両手がしっかりと、刃を掴む

「…黄龍鉄甲は黄龍の力を引き出す媒介
 逆に言えばそれは形無きエネルギーの集合体である黄龍本体へと通じる唯一の道…」
「何を…する気だ!!!」
「私は擬似的な黄龍の器…
 力を引き出さずに永遠にその身に黄龍を封じ込める…牢獄…!」

黒い黄龍鉄甲が物凄い勢いで震えだす
右腕が千切れるんじゃないかと思うほどの圧倒的な負荷
それでも少女はしっかりと刃を握り、暴れる刃によってその手を傷つけられようと決して離さない
俺の口を介し、黄龍は喋る

「…器でも無い者が、我の力を全てその身に留めることなど不可能だ」
「ええ、そうね」

そうね、と言いながらも少女はクスリと笑った
まるでその言葉は想定のうちだとでも言うように

「確かに莫大な量のエネルギーである黄龍全てを身に閉じ込め切ることは出来ない…
 でも私は"力"は封じない、力の方向性を決める"存在"、即ち"黄龍の意志"だけをこの身に封じ込める!!」
「!?」
「私の中で永久に眠りなさい、黄龍!」
「キィサァマァァアアアアアアアアアアアア!!!」

何かが、黄龍鉄甲を介して、彼女に流れ込んで行くのを感じた
同時に頭に響く声は薄れて行く
身体のあちこちに弾けるような衝撃を感じる
全身を巡るエネルギーが指令塔を失って暴走し、ぶつかり合っているような感覚
互いにせめぎ合い、押し合い、炸裂するように弾けながら力が1ヶ所に集中する
そして、俺の胸が"裂けた"
赤い血を噴水のようにブチまける、その鮮血は目の前にいた少女にも降り注ぐ
むせ返るような血の匂い、そして裂けた胸から勢いよく放たれた7つの光の塊
光の塊は壁や天井をすり抜けてどこかに消えて行く
それを見届けると、一気に全身から力が抜けた
自らの血で出来た血だまりの中に倒れ込む
あれだけ血が出たというのに寒くない、むしろ全身が焼けるように熱くて冷たい床が心地いい
どうやら、俺は生きているようだった
だけど意識は朦朧として、視界はぼやけている
622 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:34:39.04 ID:dLhmYBko
「う…」

黄龍鉄甲を右手から外し、投げ捨てる
ガコォンと、音が耳に響いた
どこに向かって手を出したんだろう、何を掴みたかったんだろう
ただ何もわからないまま、倒れたまま右手を前に出した
虚空を掴もうとする右手、何も掴めず、それでも何かを掴もうと、何度も何度も空を切る
不意に、暖かく、柔らかい何かが右手に触れる
それは俺の右手を包み込み、聞こえてくる、命の脈動
…視界を定める、触れているのは、少女、いや、きのこさんの両手

「…ぐッ」

左手で胸を抑え、這いずるように倒れている彼女へと近づく
ゆっくりと、力無く倒れる少女を抱きかかえる
その儚さ、美しさは血に染まる…汚してしまったのは…俺…

「ちくしょ…おっ…なんで…こんな…!!
 俺はッ…!俺はぁぁああああああああああ!!!
 あぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

涙が、零れ落ちる
止めようとしても、溢れてきて、止めることが出来ない
どうしてこんなことになった?
全部俺のせいだ、俺がここの入り口を見つけなければ、興味なんか持たなかったら
高橋すらも巻き込んでしまった、忠告を受けたらすぐに引き返せばよかった
全部、俺のせいなんだ…俺の浅はかさが招いたんだ…!
自らを呪い、侮蔑する、絶望の嘆きを叫び続ける
そんな俺の頬に暖かい脈動
叫びを止め、そっとそれを握る

「…大丈夫、今なら間に合うから」
「どういう…意味?」
「…君の中には大量の黄龍のエネルギーが残ってる
 それを分け与えれば…あの人も息を吹き返す…
 君の胸の傷もほとんど傷が塞がってるでしょ…?」
「…!?」

胸を触って見ると確かに血にまみれてはいるが傷口なんて存在していなかった
これが、黄龍の力…?

「さ、早く…手遅れにならないうちに…」
「でも、分け与えるってどうやって…?」
「黄龍の力は本来無原罪の…いわゆる白紙のような力…
 使う者の想いによって様々な世界が描かれる…君が望めば…どんな力でも…」
623 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:36:40.41 ID:dLhmYBko
俺はゆっくりきのこさんの手を地面に置き
壁によりかかる高橋へと近づく
もう生気を感じられず、白いシャツは乾いて変色した血によって赤黒く染められている
俺はそっと高橋の胸に右手を押し付けた
冷たく、鼓動も何も感じられない、意志を失ったたんぱく質の塊
逝かせるものか、決して逝かせはしない
お前を逝かせるわけには行かない、この程度でお前が死ぬわけなんて無い
生き返れ、黄龍の力が正義だろうが悪だろうが何だっていい…!
誰にも負けないように、どんな力に晒されてもお前の力なら武器なんか無くたって…!
生きろ、生きてくれ!高橋!!
強く、強く俺は願った

右手から金色の光が溢れ出す
その光はゆっくりと高橋に吸い込まれていく
青ざめた顔に、薄っすらと赤みがさし、トクン、と小さなでも確かな心臓の鼓動が聞こえた
そして、ゆっくりとその目を開けた

「…あれ…」
「高橋…」
「…何泣いてんだ?」
「悲しい涙じゃないのは確かかもな…」

それから、俺と高橋はきのこさんから詳しく黄龍の話を聞いたんだ
100年前、ある研究機関が中国伝承に伝わる黄龍に興味を持ち、ある仮説を立ち上げた
黄龍とは大地を巡る気、龍脈の流れが滞り、気が凝り固まった存在ではないのかと
戦乱などで大地に多数の血が巡れば龍脈の流れは滞る、それはつまり世の理が乱れたということ
凝り固まった気が黄龍となり器に宿って世の理を正す、それは圧倒的力を持つ黄龍の器による統治を指すのではないかと
そして研究者たちはさらにもう1歩踏み込んだ研究を始める

龍脈より気を抽出し、人工的に黄龍を作りだそうという、自然の摂理に反する実験
実験の内容は龍脈に届くほどの大きな穴を大地に開け、専用の機械を用い大地に影響が出ないように
少しずつ、少しずつ、龍脈から溢れた気を溜めていくという気の遠くなるような実験
更に機械は大規模な物でなくてはいけない、科学とは対極に位置する気という物を扱うというのも問題だった
まず龍脈からエネルギーを抽出する塔を研究者達は建てた
しかしそれだけでは駄目だった、エネルギーを循環させる設備、膨大な量のエネルギーを溜め込んで置ける設備
カモフラージュとして傍目からはただの大きな施設にしか見えぬように彼らはそれを作り続けていった
624 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:41:58.80 ID:dLhmYBko
だが1人だけ人工的に黄龍を作るということに内心反対していた研究者がいた
膨大な量の自然エネルギーの塊、確かに上手くいけばとんでもない利益をもたらしあらゆるエネルギー問題を解決する鍵になるだろう
だが強すぎる力は諸刃の刃、成功したところで扱えなければ何が起こるかは予想もつかない
…結局途中で研究は中止になる、しかし施設は配置そのものが存在しているだけで徐々に龍脈からエネルギーを抽出する
完全に取り壊されない限りは仮説が正しいとするならいつか黄龍は完成してしまう
黄龍自体はエネルギーの塊であるからそれ単品では問題ではない、だがもし器が現れ、黄龍を受け入れてしまったら…

だから反対していた研究者は最後に守人としてきのこさんを作った
あらゆるパターンを想定し、どんな力にも存在する方向性、意志を封じることが出来る存在として
その研究者の名前は"天鈴楓"、通称でこたん
彼女の予測は当たり、誕生した黄龍は狂った力、器と結びつけば全ての命を滅ぼそうとする
約束を守り、きのこさんは100年一人で守り続けた、暗い地の底で…

黙って話を聞いていた俺と高橋
信じないわけにはいかないだろう、あれだけのことが目の前であって
高橋も1度死んで息を吹き返してるんだ
話し終えたきのこさんに俺は聞いた

「…それで、これからどうするの?」

きのこさんは俯き少し考えるような仕草をする
しばらくすると顔を上げて言った

「…またここで…過ごすよ…」
「そんなの駄目だ!!」

思わず叫んでしまった
きのこさんはびっくりした目でこちらを見る
高橋は頬をかきながら冷静に俺を見ていた

「…100年…ずっとこんな場所に1人でいて…
 ずっと守ってきた…それがどんなに辛いことだったのか俺たちには想像もつかない…!
 黄龍はもういない、ここに留まる必要なんてないだろ?俺たちと一緒に行こう。」
「…」

呆然として俺を見るきのこさん
何でこんなこと行ったのかわからない
ただ、100年もこんな場所に1人でいた彼女が可哀想に思ったのかもしれない
同時に、俺が黄龍を目覚めさせてしまったという負い目もあったのかもしれない
とにかく俺はきのこさんを外に連れ出そうとした
だけどきのこさんは静かに首を振った
625 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:44:19.59 ID:dLhmYBko
「…黄龍はいなくなったわけじゃない
 ただ意志を封じただけ、方向性を失った力はバラバラに砕けて散った
 もしかしたらまたいつか復活する可能性もあるから…だから離れるわけには…」
「…復活」

その言葉は俺に重くのしかかる
確かに、あの力を復活させるわけにはいかないだろう
だけど、それじゃ永遠に…きのこさんはこの暗い闇の中で…?
長い沈黙、そのあとゆっくりと俺は言った

「…なら復活の可能性を俺が全て潰してやる」
「え…?」
「…俺はきっと許されないことをしたんだろうね…
 眠っていたものを起こしてしまっただけじゃなく…永遠に続く恐怖まで呼び起こしてしまった…
 でも君に助けられたから…俺は君を助けたい…!
 決して許されなくても…!それでも俺は…!」
「…」

その後、とりあえずきのこさんは了承してくれた
何かあったらすぐに戻るという条件付きで
住む場所は高橋と人に見つからないサボり場所を探していて忍び込んだ時計塔の上にある部屋がいいんじゃないかということになった
どうやら人間とは違うらしくきのこさんは何も食べなくても別に平気なようだった
そのうち堕人が現れるようになる
きのこさんに聞くと強く光を放つ黄龍の力に呼び寄せられて出て来るんだろうと言うことだった
堕人も気にかかるがきのこさんも日に日に体調が悪くなって行った
でこたんという研究者の想定を越えていたのかどうか知らないが、封印のせいなのは明らかだった
何日も眠れぬ夜を過ごし、堕人を殲滅しながら解決策を高橋と話し合った
黄龍を完全に封じ込め、さらに堕人まで封じ込めるには…

そしてある日、思いついた
要するに学園に散った7つの黄龍の欠片が光を放っている
それに引き寄せられるように堕人が現れる、つまりバランスが取られようとしているのだ
ならば意図的に堕人と同じ陰に属する気を増大させれば、それでバランスが取られ
堕人の出現は食い止めることも出来る
さらに7つの欠片がある場所に強い陰の気を配置すればそこにある黄龍の力の欠片はバランスが取れ安定する
楔とは、堕人を封じる存在ではない
黄龍の欠片を封じるための存在、堕人の封印は本来二の次なのだ
完全にピースがはまったような気がした
しかしそれはつまり…
626 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:45:31.51 ID:dLhmYBko
「…だけどそんなことをしたら」

高橋が不安そうに言う
自分でもどうなるかはわかってる
それでもこれしか方法が無い、苦渋の選択だが、事態は一刻を争う

「学園の平和と、世界中全ての命…
 どちらを取れと言われたら俺は…情けないな…
 1を捨て10を得るか、10を捨て1を得るか、捨てなきゃいけない1なら俺が補うって決めてるのにな…」
「ゆき兄…」

高橋が俺の肩に手を置いた

「お前は、間違っては無いさ」
「…そうだと、いいけどな…
 …どうしようもないだけさ…」
「この学園に、新たな秩序を作ろう」
「…傷つく人が、出てもか」
「…やるせないな」

結局、俺たちはその作戦を実行した
全てを話すわけにはいかない、だから何も知らない人間にまず力を与える
最初の人間は割りと無作為に選んだ
いや、たまたま廊下ですれ違った時、その輝きの無い瞳に資質を見たからだ
彼には最低限のことだけを伝えた、堕人を倒せ、きのこさんを守れ
そして俺の代わりに生徒会長として一般生徒を放課後は学園から遠ざけろ
俺は、彼に力を与えた、高橋と同じように
とても強い死の力と、他人の力を覚醒させる能力
俺と少し違うのは、俺は力を与える、俺が望めばどんな力でも与えてやれる
彼の能力は元々ある力を覚醒させる、トラウマや陰に近い思想から力を実体化させる
彼…白やんは全てを承諾した
627 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:47:15.03 ID:dLhmYBko
実際白やんはとてつもなく有用だった
最初こそ指示は与えていたがそのうち完全に俺のやることは無くなった
七不思議の噂を流布し、そこになるべく人が近づかないようにしたぐらいだ
最も生徒会がたまに暴走を始めたりするのはアレだったが
そのぐらいの犠牲は仕方ないと見てみぬふり、だった
それがまた、どうしても自分の心を掻き乱していく
友達と笑っても、心のどこかで湧く罪悪感
いつしか、俺は段々と皆と距離を置くようになっていった
それでよかった、何も知らないふりをして笑うほうがよっぽど辛かったから
夏がきて、秋がきて、冬がきて、また春、夏、秋…

堕人も滅多に現れず、黄龍の封印も安定している
これでいいのかもしれないと思っていた時に、たまゆらが転校してくる
なんでかわからないが、近い物を感じた俺は警戒を緩めた
その理由はしげるとの戦いで理解した
たまゆらも、黄龍の器だった…ただし俺とは対極に位置する陽の黄龍の器
本当なら適当にしげるをあしらってたまゆらには2度と生徒会、七不思議に関わるなと念を押そうとしたのだが…
どうすればいいのか、俺は迷った
生徒会が消えれば、堕人が、そして黄龍が復活する、それだけは避けないといけない
何度か、たまゆらを手にかけようとした、でも出来なかった
迷っているうちに、何度もたまゆらを助けることになる
そのうちに傷つき倒れても、何度でも立ち向かっていくたまゆらに、誰かの面影を見た
その瞬間、俺はたまゆらに賭けてみようと思った
裏から色々手を尽くした、鎌を失った白やんのために新しい鎌を生み出してやったり
黒い巨人に1撃を加えてやったり…
だけど、もしもたまゆらが黄龍と融合すれば…たまゆらはその手で世界を滅ぼす…
たまゆらがそれに耐えられるわけがない
…その時は、俺が…始まりが俺ならば、最後も俺で終わらすしかない…
1番辛い場所を、たまゆらに丸投げなんて…
628 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:48:46.34 ID:dLhmYBko
??/?? 黄龍降臨の間

「何を考えているんだ?」

天下がこちらを見ていた
相変わらず口元には微笑

「いや…」
「もうすぐ、封印は解ける…完全に…
 その時は、受け入れろ、もう逃げ場などない
 今更お前がどう足掻こうが、もう間に合わん、復活は確定的だ」
「…」

天下は、たまゆらが楔を破壊すると同時に弱まったきのこさんの封印から漏れでた
黄龍の意志の、断片
人の姿を取るが、根底は人ではない、自ら肉を作り出したエネルギーの集合体
いくら殺したところで復活する

「…約束、守れなかったなぁ…」
629 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:50:45.82 ID:dLhmYBko
同時刻、時計塔最上階

「はぁ…はぁ…」

胸を押さえ、苦しそうに呻くきのこさん
心臓の鼓動はとてつもなく早く、全身は焼けるように熱を持つ

「抑え…切れない…!」

机に倒れ込むより寄りかかる
積まれていた本がドサドサと崩れ落ちる
その時、部屋のドアがガチャリと開いた音がする

「誰…白やん…」
「いや…」

そこにいたのは白やんではない
招かざれる客、黒いマント、白い仮面、長い鉤爪

「なんで…!?」

2度の死すら乗り越え、またも現れる究極の悪意
その名は

「…限りある者よ、平伏せよ…!
 我は…不死なる者!ノスフェラトゥ!!!」
「くっ…!」

ノスフェラトゥに半ば体当たりするように脇をすり抜け逃げようとするきのこさん
だがその髪の毛をノスフェラトゥが鉤爪の無い左手で掴んだ

「うっ…」
「わざわざ来たんだぁ…そう邪険に扱うなぁ…」

きのこさんはノスフェラトゥを振りほどこうと暴れるが
ノスフェラトゥはその手を離さない
それどころかギリギリと力を込めて引っ張ってくる

「…ふん、わざわざこなくてもよかったな…
 お前に施された封印はもう皮一枚で繋がってるような状態だな」
「…」
「ま、俺もそろそろ余裕が無くなってきててなぁ…
 早いとこ…迎合を果たし完全なる者に…そしてたまゆらを…奴の仲間を惨[ピーーー]る…!!」

鉤爪をカチカチと鳴らすノスフェラトゥ
その言葉の節々から憎悪が滲み出ていた
きのこさんからしてみれば絶体絶命の状況
630 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:51:56.19 ID:dLhmYBko
「ふふ…」

それなのに彼女は小さく笑った
面白そうに、嘲笑するように、小さくても確かな笑い
無論それをノスフェラトゥが聞き逃すはずは無かった

「何がおかしい…?」
「滑稽すぎるわ、貴方は」

凛とした声でハッキリとノスフェラトゥを"滑稽"と称す
今まさに命を奪われんとする状況で躍り出た
ノスフェラトゥに対する嘲笑の言葉

「何だと…?」
「…限りある者ども平伏せよ?不死なる者?馬鹿みたい…
 貴方は怖いだけでしょう?たまゆら君が、いえ、たまゆら君だけじゃない全ての人間が怖いんでしょう?
 限りある命だからこそ一際大きく輝こうとする人間の力に怯えているんでしょう?
 貴方は自分には永遠に手に入らない物に怯えると同時に憧れているだけ
 不死の力に振り回されてるだけの、ただの哀れな道化よ」
「…道化…俺が…道化?」
「図星ね?完全なる者に固執するのは自分がどう足掻いても人になれないのを知ってるからでしょう?
 人の輝きに怯えると同時に羨ましくて、切望して止まない…
 仮面をつけてるのは怯え、憧れる顔を見られたくないからでしょう?
 プライドだけは無意味に高い…自分を曝け出せなくて…
 取り繕っている表面と内面のギャップにまた自らを嫌悪する」
「…だ、黙れ…!!」
「怯え、怖がって、だけどその輝きに魅了され、憧れて、切望してでもどうしても手に入らないから壊そうとする
 私にはまるで貴方が暗闇の中で泣き続けている子供に見えるわ
 …哀れよ、ノスフェラトゥ」
「黙れぇぇえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」

ノスフェラトゥの耳を劈く絶叫と共に
きのこさんの背中に鉤爪が突き刺される
背中に突きこまれた鉤爪の先端は胸を切り裂き、その切っ先を空気に晒す
口から血を流しながらも、きのこさんはもう1度言った

「…貴方は最初から負けているのよ、ノスフェラトゥ
 本当は、気づいているくせに…」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れッ!!!
 黙れッ!黙れッ!黙れよオマエッ!!!
 怯えてなんかいない!!憧れてなんかいない!!
 喋るな!黙れ!!黙れ!!黙れェェェエエエ!!!!!」
631 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:53:39.35 ID:dLhmYBko
何度も何度も、爪を抜いては刺し、抜いては刺す
爪を抜くたびに噴出す鮮血が周囲を赤に染めていく
鉤爪は真紅に染まり
跳ね散った返り血により、白い仮面も赤く染まっていく
やがて、きのこさんの手がブラリと力に失ったようにうなだれた
それでもノスフェラトゥは爪を突き刺すのを止めない
泣き声が混じったような声で否定と呪詛の言葉を淡々と呟きながらただ爪を突き刺し続ける
やがてその動きも止まり
真紅に染まったノスフェラトゥは放心したようにその場に立ち尽くす
きのこさんがドサリと床に倒れる
それを見ていたのか見ていないのか、ノスフェラトゥはブツブツと喋りだした

「怯えてなんかいなぃ…!憧れてなんかいなぃ…!
 恐れてなんかいなぁぃ…!切望なんかしていなぃ…!
 オレは道化じゃなぃ…哀れでもなぃ…!オレは…オレはノスフェラトゥ…!
 不死なる…不死…なる者…あぁぁあああ…!!」

頭を抑え、その場にうずくまるノスフェラトゥ
きのこさんが最後にノスフェラトゥへと放った言葉
それはノスフェラトゥ自身がずっと心の奥底に押し留めていた感情
自分より遥かに脆弱で、虫ケラのように思っていた人に対する、怯え、恐怖、憧れ、切望
それはノスフェラトゥにとって、何よりも耐え難い"真実"
突きつけられた真実から逃れることは最早ノスフェラトゥには出来なかった
全身を返り血に染め、否定と呪詛を吐き続けるノスフェラトゥ
そんな彼の後ろで倒れているきのこさんの身体から何かがゆっくりと出てきた
それは金色の光球、しばらくきのこさんの真上で停滞した後一気に壁を貫き、どこかへ向かっていった
うずくまっていたノスフェラトゥはフラフラと立ち上がった

「そうだ…なればいい…完全なる…存在に…
 迎合するんだ…恐れるものか…憧れるものか…」

呟きながら、ノスフェラトゥは静かに血で赤く染まった部屋を出て行った
残されたのは…最後の封印の抜け殻のみ…
632 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:54:53.75 ID:dLhmYBko
同時刻 黄龍降臨の間

「きひゃひゃひゃひゃひゃ!!!
 来たぞ!!封印が解けた!!」

突然天下が笑い出した
封印が解けただと…馬鹿な、早すぎる!
まさか、きのこさんの身に何かが…!?
慌てて時計塔に向かおうとする俺の手を天下が掴んだ

「どこへ行く気だ…?
 今更逃げることは出来ないぞ…?」
「逃げねぇよ!!少し様子を見てくるだけだ!!離せ!!」
「まぁそれでもいいが…オマエが消えればそこで倒れてるたまゆらのほうを器にするだけだ」
「…!?クソッ!!!」

俺は天下の手を振り解いた
天下は心底楽しそうに笑い続ける

「諦めろ、どうせ皆死ぬんだ」
「天下ェェェェェェェェエ!!!!」
「見ろ、来たぞ…我が本体…!!
 今こそ、黄龍が降臨する…!!!」
「!」

龍の像の正面に、光が集まっていく
1年半前と同じだけどあの時と違うのはハチ切れそうなほどのエネルギーが荒々しく暴れている
螺旋を描き、広がる、眩いばかりのエネルギーの総体

「ヒャハハハハハハ!!復活だ!!
 ついに我は完全なる復活を果たしたぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」

天下の身体が浮き、光の塊となり、像へと吸い込まれていく
地響きのように周囲が揺れ動き、天井から砂がパラパラと落ちてくる
"完全なる意志"を取り戻した黄龍の力は段々と統率が取れてくる
ゆっくりと力と力がまるで織り込まれるように、互いを包み込むように重なっていく
そして、それは1つの形を作り上げる
伝承に伝わる、黄龍の姿を
633 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:55:48.84 ID:dLhmYBko
『ウォォォォォォオオオオオオオオオオオオ!!!!』

黄龍の咆哮、後ろに吹っ飛びそうになる
おかしい、以前よりエネルギーが強い気がする…
気のせいなんかじゃない、間違いない…!

「そうか…時計塔によって新たに汲み上げられた…龍脈の気まで取り込んだんだな…!!」

見ただけでわかる、こんな力が世に解き放たれれば世界が終わる
だけどもう封印することも出来ない
身を持たない膨大な量のエネルギーである黄龍を倒すことも出来ない
万事休すか…
でも、安心しろよ、たまゆら…
世界を滅ぼす罪を、お前に背負わしはしない
人類最大の罪とも言えるこれを背負うのは、もう罪にまみれている俺がお似合いだ

『器ァ…!!器はどこだぁ…!!』
「黄龍!!」
『そこに…いたかぁぁああああああ!!!』

俺は両手を広げた、黄龍を受け入れるために
目を瞑り、これから起こることを考える
自分の意志とは無関係に殺戮を繰り返すんだろうな
これだけのエネルギーを全部使えるんだ核兵器を受けても死なねーんじゃねぇかな
…駄目だな、嫌なことばっかり思いついちまう
いっそのこと、一瞬で世界全部消し飛ばしちまうってぐらいのほうがまだ救いがありそうだ
全身に叩きつけられる黄龍の波動
もう避けようと思っても間に合わないな…終わり…か…
634 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:56:46.05 ID:dLhmYBko
「ゆき兄ッ!!!!!」
「えッ?」

横から飛んで来た誰かが、俺の身体を巻き込んだ
2人で仲良く転がって、俺の背中ほんの数ミリと言った所を黄龍が掠める

「たまゆら…」

壁に叩きつけられ、回転が止まる
器を見失った黄龍は壁にぶつかり、爆散する
それを見たたまゆらが叫んだ

「やった!あいつ自爆したぞ!」
「いや、駄目だ!今のあいつには完全なる意志がある!すぐに元に戻るぞ!!」

俺の言った言葉とおり、周囲に散った金色の力はすぐにまた一箇所に集まり
先ほどとなんら変わりの無い黄龍の姿へと戻る

『どこだァァァァァァァアアア!!!器ァァァァァアアアアアア!!!』

黄龍の叫び声、暴れまわる超自然エネルギー
自らを宿す器を探し、部屋を破壊しつつ爆散しては集結し、爆散しては集結し…
それを横目で見ながら俺はたまゆらに食ってかかった

「どういうつもりだ!折角俺が…!!」
「よくわかんないけど…アレ倒せば…全部終わるんだろ?
 アレさえ倒せば…俺たち、また笑えるんだろ!!!?」
「…無理だ、エネルギーの総体である黄龍を倒すのは不可能だ
 意志を封印して散らすことももうできない…!」
「…気なら!?俺の究極黄龍破邪滅閃双撃翌龍波と…
 ゆき兄の…えとほら、似たような技を同時に叩き込めばなんとかならないかな!?」
「それも無理だ…どんなに出力を上げてもアレほど莫大なエネルギーの前には吸収されて終わりだ」
「えーと、えーと、じゃあ…!!」
「無理なんだよ!こうなっちまった以上、黄龍は倒せないんだ!!!」

思わず、叫んだ
たまゆらは何かを言おうとしたが俯いて黙ってしまった

『そォォォォこォォォォかァァァァァアア!!!!』

黄龍が向かってくる
勝てないんだよ、黄龍には…だからたまゆら…
お前が器になったら…最後に心残りが出来ちまう、だから早く逃げてくれ
そんな俺の心とは裏腹に、たまゆらは俺の前で向かってくる黄龍に向かって構えた
その右手に、黄龍鉄甲
635 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 22:58:09.53 ID:dLhmYBko
「馬鹿よせ!!無理だ!!!」
「どっ…」
「ん?」
「どっ…どんな強大な力に襲われても可能性はある
 それでもうずくまってるなんとかなるのを待ってるだけじゃ何とかなる可能性は0に等しいんだ…
 そう教えてくれたのは…ゆき兄じゃないか」
「…!」
「言ったじゃないか…ゆき兄…!
 死んでも自分の張った意地から逃げ出すなって…!!
 俺は、逃げない、絶対に!!!
 ゆき兄がそう教えてくれたから!!だから俺は立ち上がる!!
 そして信じるんだ!!可能性を!!!」
「…たまゆら…お前…」

俺は右手を見る、そこにあるのは黒い黄龍鉄甲
…そうだ、俺は何故受け入れようとしていたんだ
最後の最後まで、足掻いてみればいいのに、どうして最初っから諦めてたんだ…
俺はまだ…戦える!!

「目覚めろッ――!黄龍ッ!!!!
 究極黄龍破邪滅閃双撃翌龍波ァァァ――――――!!!」

そうだ、エネルギーの総体である黄龍を倒すには
直接的な攻撃ではなく、同様のエネルギー…気を使っての攻撃にしか可能性は無い
だが、人が作り出せるエネルギーが黄龍に効くのか…?

『笑止…自らの力で撃たれる愚か者などおらぬわァッ!!
 あまり調子に乗るなァ!!器がァッ!!!』
「くっそ…」
「そのままだ、たまゆら」
「ゆき兄…!?」
「猛り狂え、黄龍――」

黄龍鉄甲が変形し、黒き鎧と化す
そしてそのまま俺は右手を、全ての元凶、そして自らの力の源へと向けた
効くとか、効かないとか、そんなことを考えるのはもう止めよう
例え効かなくても、最後の一瞬まで足掻いてみよう

「…黄龍冥撃夢幻黒蓮破――――!」

俺の右手から放たれた黒き力、陰に属するエネルギー
それがたまゆらから放たれていたエネルギーに絡みつく
ぶつかり合うことなく、互いが互いに螺旋を描き、決して交じり合わず、それでも決して反発することなく
陰陽、2つの力が、同時に黄龍の額にと命中し、爆発が起こる
そのとき黄龍の巨体が、揺れた
636 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/14(土) 23:00:35.79 ID:dLhmYBko
『ナッ…ニィィィイ…!?』
「効いた…!?」
「…そうか…陰陽どちらにも属さない…
 言うなれば、それ単体で完全なるバランスの攻撃…!
 決して他に飲み込まれることない攻撃…これなら…!!」
『キィサァァァマァァアラァァァァァァ!!!!!!!』

黄龍の咆哮、常人なら失神してしまいそうなほどの怒りの咆哮
溢れ出す怒気は、心の底からの恐怖を呼び起こす
だけど俺は恐怖なんか沸かなかった、その怒りは微かだが俺たちの勝利という可能性に繋がる気がしたから

「…まさか今さらお前に教えられるなんてな」
「ゆき兄…」
「正真正銘、ラストバトルだ
 覚悟はいいか?たまゆら?」
「ゆき兄こそ、準備いいの?」
「ハハッ、言ってくれるじゃねーか」
「ハハハハッ、ゆき兄に感化されたかな」
「笑っちまうな…
 …だが残りの笑いは、勝った時まで取っておこうぜ!!」

俺とたまゆらは黄龍に向き直った

『器ゴトキィガァァァァァァァァァァ!!!!!』
「来い!!人は手を取り合えるだから何だって越えられるんだ!
 そいつを今から教えてやる!!」
「生きようとしている者がどれほど強いか叩きこんでやる!!
 馬鹿げた夢はここで終わりだ!!!」

俺とたまゆらはお互いに狙いを定めた
何も言わずとも感じられる、互いの想い

『フザケルナァァァアアアアアアアア!!!!』

黄龍が向かってくる
全てを飲み込むかのようなその巨体
それが目前まで迫った時、ほぼ同時に俺とたまゆらは叫んだ

「「人の運命は人が決める!!お前の出る幕なんか無い!!!」」
「究極黄龍破邪滅閃双撃翌龍波ァァァ――――――!!!」
「黄龍冥撃夢幻黒蓮破ァァァ――――!!!」

黄龍の牙が、俺たちに届く寸前で巻き起こった大爆発
絶叫と共に後ろに仰け反る黄龍
微かな勝利の可能性は徐々に大きくなっていく
いや、信じよう、この小さく不確かな、可能性を!!



19.5時限目 - 黄龍降臨 -
637 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 23:23:56.95 ID:Jx/0GAIo
おつかれ〜
638 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/15(日) 12:04:45.44 ID:G.9UWoYo
ゆき兄乙!



寝不足で飲んだら途中で寝落ちしたwwwwwwwwwwサーセンwwwwwwwwwwww

白やん選んだ理由適当かよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
そして結局ゆき兄がなんかかっこいい感じになっとるwwww
639 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/15(日) 17:42:54.12 ID:4tdll.DO
氷結 林檎&シードルがなかなか美味かったんで調子こいてみた



相変わらず期間限定に弱いですwwwwwwwwwwww
http://imepita.jp/20091115/635340
640 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/15(日) 18:16:07.82 ID:c7GGV/Y0
やらないといっておきながら期待にこたえてくれたヤチャに惚れ直した
641 :たまゆら :2009/11/15(日) 18:51:07.77 ID:H0pHlIAO
>>639
|ω・)
642 :ミギー :2009/11/15(日) 19:30:53.98 ID:uW7HRsDO
>>639
愛してる
643 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/11/15(日) 20:55:23.64 ID:.hJxsLYo
>>639
携帯の待ち受けにした
644 :そら :2009/11/15(日) 21:54:24.09 ID:kWN8OADO
>>643
変態だ
645 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/11/15(日) 23:04:07.37 ID:.hJxsLYo
>>644
むしろ当然の結果だと思うんです
646 :ほろ苦 :2009/11/16(月) 12:31:30.67 ID:Ua.ni.SO
>>639
保存したら嫁に見られたので、
やんやんって事にしたら納得しててワロタ


その後バレて怒られたけど。
647 :そら :2009/11/16(月) 16:56:26.74 ID:FiCqvsDO
>>646
ダメやん



あれ、実はこれ白やんじゃない?
648 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/16(月) 17:51:41.14 ID:mqLabdco
白やん疑惑tktrwwwwwwwwww



持ってるのが日本酒じゃない時点で(ry
649 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/16(月) 18:46:11.19 ID:mqLabdco
豪快に誤字ってるのに今気づいたが気にしないww
650 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/17(火) 05:30:56.36 ID:on9CVu2o
凄く寒い
あとお腹痛い
651 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/17(火) 10:38:04.68 ID:qAD7bQDO
>>650
ま た 拾 い 食 い か
652 :そら :2009/11/18(水) 16:48:32.08 ID:OThGgkDO
やっと復旧か
653 :ミギー :2009/11/18(水) 18:32:10.63 ID:l2RgrYDO
新型インフルエンザにかかった/(^O^)\
654 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/18(水) 21:02:24.95 ID:xWbTFago
豚フル亜型が出現する日も近いな…
655 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/19(木) 22:57:30.28 ID:tC6bK5Yo
部屋がまるで極寒地獄のように寒い
マンモスだって1撃で凍りつく大寒波
656 :深淵槍裂歓声暮色枕辺涙色番蝶 :2009/11/20(金) 01:42:33.68 ID:NvziZjA0
眠いからと目を覚ますために水で頭を洗ったら死ぬかと思った
657 :ミギー :2009/11/20(金) 18:40:51.12 ID:9YphpIDO
>>655
それでも生きている君を褒めてあげよう
>>656
よく生きていたね!
658 :シータ「ええ。私、父も母も死んじゃったけど、家と畑は残してくれたので、何とか一人でやっていたの。」 :2009/11/20(金) 21:37:53.51 ID:BGQuvPwo
ラピュタの時間ですよ
659 :そら :2009/11/20(金) 22:08:14.43 ID:2T61W.DO
飲み過ぎた






660 :シリータ :2009/11/20(金) 22:41:27.37 ID:61UvyA.o
40秒で電話しな!
661 :そら :2009/11/21(土) 10:53:29.13 ID:0HYeNsDO
電車に松田賢二みたいな格好良いオッサンがおる!
662 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/21(土) 11:38:33.52 ID:6BUUdEDO
>>661
斬鬼さん!斬鬼さん!
663 :そら :2009/11/21(土) 12:24:12.19 ID:0HYeNsDO
思わず新宿でストーカーした
664 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/21(土) 12:51:28.59 ID:6BUUdEDO
>>663
おまwwwwwwwwww


で、隠し撮りうpは?
665 :そら :2009/11/21(土) 13:00:13.91 ID:0HYeNsDO
流石に辛かった
待ち合わせに遅刻してたし
666 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/21(土) 15:09:10.05 ID:6BUUdEDO
ストーキングしてなくても遅刻な時間だったんですね、わかりますww
667 :そら :2009/11/21(土) 16:14:57.49 ID:0HYeNsDO
当たり前でしょう!
668 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:03:41.05 ID:u8McrmQo
レディィィゴォォォオ!
669 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:05:06.26 ID:u8McrmQo
邪眼学園黄龍譚
20時限目 - 君が守った希望 -

??/?? 黄龍降臨の間

大爆発を起こした黄龍の口から煙が立ち昇る
仰け反り、のたうち回る黄龍
勝てる、のか?俺たち、こいつに勝てるのか?
ゆき兄のほうを見ると信じられないという顔をしていたが、微かな笑み、希望を感じる
勝てる、1人なら勝てなくても2人なら…!

『グゥゥォォォ…!!無駄な足掻きはやめろォォォ…!
 受け入れろ…!!我を受け入れろ!!』

黄龍の吹き飛んだ部分が修復されていく
ゆき兄が肘で俺を突付いてくる

「何…?」
「威勢良く啖呵切ったものの…
 ダメージは与えられてる…だけど微々たる物だ…
 …その微妙なダメージを与えるには俺らは自分の最大の技を放たないといけない」
「…」
「意味わかったよな?」
「じゃあどうすんのさ!?」
「…待て、考えてる
 不運なのは…」
『我を受け入れろォォォォォォォオオオ!!!』
「ゆっくり考えさせてくれるような相手じゃないってことかな」

ほぼ同時に俺とゆき兄は互いに左右に飛びのく
今まで自分たちが立っていた場所に黄龍が激突する
ゆき兄は着地しながらどうすべきかを必死に考えている
ゆき兄だけに任せておくわけには行かないだろうが…俺は黄龍についての情報は全く無い…
どちらにせよ一緒に攻撃しないとダメージは与えれらないんだ、今は避けて避けて避けまくるしかない

『チョロチョロとォォォォォォオオ!!!』
「パワーが増した分、動きが多少遅くなってるな…
 この分ならしばらく時間は稼げそうだな…」
670 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:08:21.18 ID:u8McrmQo
??/?? 時計塔

「馬鹿な…なんだこれは…!」

白やん信じられない光景の目の当たりにしていた
血に染まった部屋、倒れているきのこさん
一体何が起こったというのか、それを考えるより早く白やんはきのこさんを抱きかかえる
しかしきのこさんに触れたその瞬間、白やんは全てを悟った
死の力を持つ白やんだからこそ、すぐに理解できた
すでに彼女が事切れていることを

「…う…ぉぉぉぉぉぉおおおおッ!!!」

激情に任せ床を叩く
最初はただ、守れと言われたから守っていただけだった
ただそれでも長く触れ合う内にいつしか白やんは命令だからじゃなく自分の意志で彼女を守ろうとするようになった
堕人を殲滅し油断していた自分を恨めしく思う
硬い床を叩き続けた白やんの手からは血が滲んでいる
その痛みで少しだけ冷静になった白やんは考え出した

「…ここまでのことをするのは…少なくとも生徒ではない…
 かといって泥棒や強盗の疑いも薄い…
 やはり…堕人か…?まだ生き残りが…?」

そこまで考えたとき、時計塔が大きく揺れた
いや、時計塔じゃない、地面が大きく揺れている
白やんは事切れたきのこさんを担いで時計塔から出る
揺れは収まらない、それどころか段々酷くなっていくように感じる
しかし突然揺れがピタリと収まる

「…これは…何が起こっているんだ」
「おー、生徒会長
 今なんか変な地震だったなー」
「!?」

振り向くとそこにいたのはほろにがだった、手に一升瓶を持っている
ほんのり赤く染まった顔が白やんが背負っているきのこさんを見た瞬間に一気に青ざめていった
671 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:10:53.19 ID:u8McrmQo
「…いかん、久しぶりで飲みすぎたか…」

目頭をグリグリと押さえた後にもう1度ほろにがはきのこさんを見る
ほろにがの手がプルプル震えながら指先がきのこさんを指す

「…なんか、凄く死んでるように見えるんだけど
 気のせいだよ、な…?」

白やんは首を横に振った
そして小さく呟いた

「…残念だが…気のせいではない」
「は、ははは、嘘だろオイ、洒落キッツいぜ…」

まだ信じられない、といった具合でほろにがが白やんに近づく
そして背中に背負ったきのこさんをマジマジと見つめた後に
片手をきのこさんの首筋に当てる

「…」
「…」

2人とも一言も発しないまま無言の時が流れる
しばらくして、ほろにがが叫んだ

「ふざけんなよテメェ!!!なんでこんなことになってんだ!!」
「そんなもの俺が知りたい!!!」
「…とにかく、すぐにヤチャマルのとこに」
「無駄だ、すでに完全に事切れてる…蘇生することはない」
「なんでわかんだよ!!」
「ずっと死に触れてきた俺だからわかるんだよ!!」
「ッ…!」

ほろにがは何かを言おうとしたが口篭り、一升瓶を投げ捨てて歩き出した
それを見た白やんがその背中に言う

「何処に行く気だ」
「仕事だ」
「…仕事?」
「そ、仕事、犯人見つけてやるよ」
「待て」

去っていこうとするほろにがを白やんが止める
ほろにがの足が止まる

「…協力しないか」
「…今回だけな…」
672 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:14:14.49 ID:u8McrmQo
その瞬間、また地面が大きく揺れた
ほろにががガバッと姿勢を低くして地面に耳をつけた

「地震…じゃねぇ、地面の下で何かが暴れてる…?
 きかんぼうのモグラが頭振ってんのか?」
「何を馬鹿なことを…」

白やんがそこまで言った時、突然時計塔の入り口が勢いよく開け放たれた
まるで強い力に耐え切れなくなったかのように
そして開け放たれた入り口から轟音と共にまるで爆発するように金色の光が噴出した

「ベトナムかここはーッ!!!」

あらゆる物を吹き飛ばすような荒ぶる金色の光を咄嗟に飛びのいて避ける白やんとほろにが
光が走った地面は強い熱を帯び、煙を上げる
白やんが時計塔の中を見ながら呟く

「今のは…一体…」
「ほろにがぁッ!」
「おおっ、ヤチャマル!」

走りながら近寄って来たのはヤチャマルだった
慌てて起きてきたようで寝巻きの上にコートを羽織っていて頭は寝癖が跳ねていた

「何だこの圧倒的な気は!?
 そこらじゅうの地面から噴出してるぞ!」
「俺だってわかんねぇよ!!時計塔の扉が吹っ飛んだと思ったらいきなり何か噴出してきやがった!!」
「時計塔…!?」

全員が時計塔を見る、静かに扉を開け佇むだけの時計塔
なのに恐ろしいほどの威圧感と存在感を際立たせる
頭上から、ガチリと、音が響いた
同時に鐘の音が辺りに響いた
ゴォーン、ゴォーン、と不気味に、何度も何度も
673 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:16:18.01 ID:u8McrmQo
「なぜ…時計塔が動く!?」

白やんの驚愕の声
時を刻むことなく何年もその動きを止めていた文字盤の秒針がゆっくりと動き始めたのだ
ヤチャマルが何かに気づいたように叫ぶ

「なんだ…地面の下から物凄い気が駆け上がってくる…!?」
「おいおいおいおいおい!!!やべぇんじゃねぇのか!?」

ほろにがが叫んだ直後
開け放たれた扉から見える室内の床が盛り上がり砕ける
そしてそこから金色の光が噴出する
天井を砕き、螺旋階段の中央を貫く光の柱
時計塔の頂上にまで駆け上るその光は頂点で爆散し空へと散っていく
たちまち空には暗雲が立ち込め、雷を伴う激しい土砂降りを巻き起こした
雨に打たれながらなおも立ち上る光の柱を見てほろにがが呟いた

「…なぁ、ヤチャマル、気のせいかな
 上へと登っていった光が…俺には龍に見えるんだ…」
「龍が…雨を呼んだと言うのか…!?」
「一体何が起こってるというんだ…!!」

後ろで、誰かが湿った土を蹴り上げる音がした
咄嗟にヤチャマルが振り向くと、そこには苦しそうに身体を抑えてうめき声を上げならが雨に濡れ
ドブネズミのようになっているピュアがいた

「ピュア…お前、起きたのか!?」
「…抽出量を制御する装置が無くなって…
 龍脈を塞いでいた床も大破して…溢れ出している…!」
「何を言ってる…?」
「このままじゃ…、学園は…」
674 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:19:17.53 ID:u8McrmQo
??/?? 黄龍降臨の間

『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

黄龍の鳴動、その身体がさらに巨大化して行く
同時に黄龍から感じる力の波動も増していく
勝ち目は無いかもしれない、それは俺もゆき兄も充分に理解出来ていた
人がどれだけあがこうと、巻き起こった"天災"の前には為す術も無いというのを痛感させられる
それでも諦めずに俺たちは黄龍の巨体から繰り広げられる攻撃を避けながら
隙が出来た瞬間を狙いゆき兄と同じ部分に自らの最大攻撃を撃ち込む

「黄龍冥撃夢幻黒蓮破!!」
「究極黄龍破邪滅閃…!?」

力が入りきらずに俺の攻撃が止まる
放たれたゆき兄の黒い波動は黄龍の身体に吸い込まれるように消える
思わず膝を突く、黄龍の鎧からは徐々に金色の光が消えていく

「たまゆらッ!」

ゆき兄が駆け寄ってくる
荒い呼吸を整えようとするが喉に異物が詰まったように上手くいかない
心臓の鼓動は裂けるように早く、心なしズキズキと痛みが走る
余りに巨体となった黄龍は狭いこの室内では上手く動けずに天井を破壊するように暴れまわっている

「…高橋との戦闘と俺との戦闘、そこに最大技の乱発だ
 気力、体力共にもうお前は限界だ」

確かに自分の身体が限界なのは自分が1番理解していた
しかし俺とゆき兄の2人の同時攻撃じゃないと黄龍にはダメージは与えられないんだ
倒れるわけにはいかない

「まだ…行ける…!」
「馬鹿言うな!とっくに限界なんだろ!」

俺はゆき兄の襟首を掴んで叫んだ

「俺がここでいなくなったら黄龍は倒せないじゃないか!!」
「お前が命を賭ける必要は無い!!これは俺の問題だ!!」

そう叫び返された
思わず、ゆき兄の顔面を殴りつけた
予想外の行動に避けれずに直撃して、その場に倒れこむゆき兄
675 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:22:24.47 ID:u8McrmQo
「…まだ、命を賭ける必要なんて無いとか言ってんのかよ…」
「…」
「ずっと、戦ってきて、これが最後なんだ…これさえ終われば皆笑えるんだ…!
 ここまで来て自分一人の問題で片付けようするなよ!!
 俺だってもう覚悟をしてここまできたんだ!命を賭ける必要が無いとか勝手に決めるなァッ!!」

ゆき兄は黙っている、目を伏せて唇を噛んで何かを堪えるように
そして頭上で響く黄龍の咆哮が耳を劈く。
見上げると黄龍は体勢を整え終わりこちらへと向かって来ようとしていた

「まずいッ…!」
「たまゆら、もう1発だけ撃てるか」

ゆき兄が小さく呟き聞いてくる
俺は頷いた

「…チャンスは一瞬、口から体内に叩きこんで内側から吹き飛ばしてやる
 倒せはしなくても運がよければ再結集までに若干の猶予があるはずだ」
「わかった…!」

黄龍がその顎を大きく広げながらこちらへと向かってくる
鋭く、そのままでも充分武器として使えそうな牙がその存在を誇示している
伸ばした右腕にコツン、と音を立ててゆき兄の左腕が当たる
狙う場所はただ1点のみ、恐れるな、迎え撃て
この1撃だけは絶対に不発なんて格好悪いことにはさせない
今までで一番の威力の1撃にしてやるんだ、そう決意する

『ウォォォオオオオオオオオオオッ!!!』

黄龍の牙が寸前に迫る
全身を焼け焦がすような呼気、灼熱の空気
それでも決して目は背けない、決して可能性を見逃さないために!!

「今だたまゆらッ!!」

ゆき兄の声が耳に届いた瞬間に俺は掌に全ての想いを結集させる
小刻みに震える腕を押さえ込み、狙いを済ます
コンマ数秒の間を置いて、俺は叫んだ

「究極黄龍破邪滅閃双撃翌龍波ァァァ――――――!!!」

それに完璧に合わさったかのようなタイミングでゆき兄も叫んだ
俺と対になる最強の攻撃の名を

「黄龍冥撃夢幻黒蓮破ァァァ――――!!!」

放たれた光と闇、陰と陽
螺旋を描き、黄龍の口へと吸い込まれる
その力は圧倒的エネルギーの権化である黄龍の身体を切り裂いて行く
それを見届けると俺とゆき兄はまるで最初からそう決めてあったかのようにお互いにその場から離れた
光と闇の渾身の力の光弾は黄龍の身体の中心部で収束し爆発を巻き起こす
676 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:26:44.99 ID:u8McrmQo
『オオオオオオオオオォォォォオォオオオオオオ!!!』

その雄叫びは痛みから来る絶叫なのか、それともまたしても得物に寸前で逃げられた怒りから来る絶叫か
黄龍の身体の中心がボコリと膨れ上がる
その丁度反対側もまた膨れ上がる
次から次へと黄龍の身体のあらゆる場所が膨れ上がる、それは体内で連鎖的に爆発が起こっていることを容易に連想させた
膨れあがった黄龍の皮膚はやがて伸縮の限界を越え、その一部に亀裂が走った
そこから溢れ出す金色の光、亀裂はどんどんその数を増やして行く

『器がァァァァァァアアアアアアアア!!!』

バァン!とまるで巨大な風船が爆発するような、音が周囲に響く
耳鳴りに襲われる俺の視界に映るのは辺りに吹き飛ぶ、バラバラになった黄龍の巨体
勝ったのか、俺たちは?
そう思ってゆき兄を見る、だけどゆき兄の表情は曇ったままだった

「…思った以上に爆散したな、今のうちに―――」

そこまでゆき兄が喋った時
突然、横の壁が爆発するように砕け散った
破片が黄龍の鎧に弾かれる、それよりも驚愕したのはぽっかりと壁に開いた穴からゆっくりと出てくる存在
土煙が薄れていき、俺の目に映る2度と会うはずもないと思っていた存在
究極の悪意、殺戮の王、醜悪なる者、その名

「我は、不死なる者…、ノスフェラトゥ…」

自らの目を疑った、完全に倒したはずのノスフェラトゥ、それがまたこうして目の前に佇んでいる
だがなぜかわからないが、前より数十倍の危険さを感じていた
その理由は白いはずのノスフェラトゥの仮面が誰かの返り血で真っ赤に染め上げられていたこと
黒いマントのあちこちにも血がべったりと付着して中には乾ききっていない部分まである
同様に鉤爪も深紅に染まっている
だけどそれだけではなく、雰囲気が明らかに前とは違っていた
本能が拒否している、こいつはここにいていい存在ではないのだと

「…なぜ生きているんだ…」
「恐れてなどいなぃ、憧れてなどいなぃ…
 誰が、誰がお前らなど恐れるか…」
「質問に答え―――」
「恐れてなどいない!!憧れてなどいない!!
 我は不死なる者!最も完全に近い存在!なぜ恐れなければいけない!なぜ憧れなければいけない!!
 完全になるんだ!完全に!誰にも何も言わせない!ヒャーハッハッハッハァ!!!」

こちらの質問に答えず、意味のわからない言葉を叫び、笑い狂うノスフェラトゥ
戦慄、あまりにも異質なその存在
そして理解する、ノスフェラトゥは今や完全に壊れていると
何があったのかはわからない、だが以前のノスフェラトゥから感じられていた余裕や人を食った雰囲気はもう微塵も感じられない
小刻みに震えながら自らの身をその鉤爪で掻き毟る、いや、削り取る
677 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:41:54.73 ID:u8McrmQo
「俺はぁ…死なない…どれだけ血を流しても…どれだけ…身を削っても…
 なぜだ…なぜ死は俺に安息を与えない…!安息を永遠に奪われ…!
 なぜ闇の中で1人孤独に生きていかなければいけない…!?
 俺に教えてくれよ、教えてくれよ…なぁ!?」

ノスフェラトゥはこちらにその仮面を向ける
赤く血に染まった仮面、それは完全なる恐怖の具現
思わず唾を飲み込んだ、ノスフェラトゥは動かない、まるでビデオの一時停止のように微動だにしない
全く動いていないのに、声だけは響く

「あの小娘は言ったことなど…違う、違う、違う、違う、違う!!
 恐れるものか!俺は完全なんだ!!
 だから最終封印は俺の手で解けたんだ!俺が選ばれるべきなんだ!!
 この血は俺を馬鹿にした報いだ、報いだァァァァア!!!」

俺の横から、ゆき兄がノスフェラトゥに向かって飛び出した
一瞬だけ見えたその顔は怒りに満ち溢れていた

「きのこさんに何をした貴様ァァァァァァアアアアア!!!!」

怒号と共に、その拳とノスフェラトゥに向かって振りぬくゆき兄
避ける素振りも、受ける素振りも見せずに、ただノスフェラトゥはその拳を受け入れた
直撃した拳の威力がノスフェラトゥを激しく吹き飛ばし轟音と共に壁に叩きつける
壁が砕け、ノスフェラトゥの仮面の目の部分から血が流れ出す、まるでそれは涙のよう

「死ななぃんだ…これでも俺は…死ななぃんだ…!」
「なら死ぬまで殺してやらァァァァァァアアアア!!」

ゆき兄の追撃、壁に叩きつけられたノスフェラトゥへと向かう
ノスフェラトゥは動かない、だが呟いた

「ダクテュロス…」
「何ッ!?」

ノスフェラトゥの右腕が服を裂き、ほどけた
ゆき兄に向かい、鉤爪をつけた右手が物凄い勢いで飛来した
その爪は黄龍の鎧を貫き、ゆき兄の腹部に突き刺さった
信じられないといった顔でゆき兄は腹部に刺された鉤爪を掴み、顔を上げてノスフェラトゥを睨んだ

「…この技はッ…お前…スイカかッ…!?」

確かにあの技は自ら作り出した虫を体内に寄生させていたスイカだけが使える能力
だけど、なんでスイカが…

「小川と、ピュアだけだと思ってたんだが…な…
 いつの間に、スイカにまで…」
「お前は、俺の不死の秘密を解いているのかぁ…?」

不死の秘密…?
その言葉に疑問を抱いているとゆき兄は不適に笑っていた
678 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:43:55.58 ID:u8McrmQo
「…お前は特定の身体を持たない…いわば人に取りつく意識生命体なんだろ…
 そのために対象には仮面を被らす必要があるんだろ…」
「よく気づいたな…そうだ…それ故に俺は死なない…死ぬことが出来ない…」
「なら…話は簡単だ…」

それだけ言うとゆき兄は自らの拳で腹部に突き刺さっていた鉤爪を上から叩きつけた
鋼の砕ける音がして砕けた鉤爪がバラバラと散る

「何度でもその仮面を砕いてやる!」
「ダクテュロス…」

ノスフェラトゥの両腕がほどけた
駄目だ、いくら黄龍の力を発動してるゆき兄といえどあの量は…!
助けに行こうとしたが身体に上手く力が入らない
膝が笑い、その場から動けない、俺の身体は思った以上に限界を通り越していたのかもしれない
それを自覚した時、足から力が抜けてその場にへたり込む
同時に黄龍の鎧がただの黄龍鉄甲へと戻って行く
無数の触手がゆき兄に襲いかかる
ゆき兄は後ろに飛び退き距離を取って両手を構えた

「まとめて焼き尽くしてやるッ!!
 黄龍冥撃夢幻こッ…くッ…!?」

ゆき兄の膝がガクンと地面についた
同時に身体を覆っている黄龍の鎧がパラパラと宙に消えて行く
俺と同じだった、ゆき兄の身体もとっくに限界を通り越していたんだ
完全に無防備になってしまったゆき兄にノスフェラトゥの触手が一斉に襲いかかった
1本が身体に巻きつき、右腕、左腕、左足、右足、そして首と順に次々と触手が身体に巻きついていく
そのままゆき兄の足が地面から離れ宙に浮く

「グゥッ…!くそッ…離せッ…!!」
「お前を殺せば、俺は、完全に近づけるのか?
 なぁ教えてくれ、教えてくれよぉぉぉ…」
「がっ…あぁぁ…!!」

ゆき兄の表情が苦悶に満ちる
金魚のように口をぱくぱくさせているのはきっと上手く呼吸が出来ないから
触手によって全身を締め上げられてるようで、身体全体が痙攣している

「ゆき兄ッ…ぐっ…」

立ち上がろうとする足に痛みが走り、その場に倒れこむ
このままじゃ…ゆき兄が…!
679 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:47:37.52 ID:u8McrmQo
??/?? 時計塔

「時計塔をぶっ壊せって正気か!?」

ほろにがは驚愕の表情でピュアにそう問うた

「正気だ」

問いに対し、ピュアは迷い無く答えた
時計塔を破壊するというとんでもないことをさも当然と言うように
あまりにもさらりと言い放つもんだから反論しようとしたほろにがは何もいえなくなる
そこにヤチャマルが意見する

「…確かに異常な事態だが、壊すとなると…」
「いや、壊すといっても地下の穴を塞げばいいんだ、それだけである程度は抑制が効く
 とにかく時間が無い、暴走した力がここまで溢れ―――」

背後から爆音、無数のガラスが一斉に割れていく
幸いガラスがほろにが達に降り注ぐことは無かったが
それだけで少なくとも時間が無いということだけはその場にいた全員が理解した
白やんがきのこさんをそっと地面に降ろし、つぶやく

「信じよう、時計塔地下の穴を塞げばいいんだな?」

それを聞いたほろにがが腕をぐるぐると回し始めた

「しゃーねぇ、どうせこの学園からもそろそろおさらばだ
 最後のサービスだぜ」
「これほどの量の気を放置してたら何が起こるかわからんからな
 ただ問題は力の噴出を続ける穴をどうやって塞ぐか…」

口元に手をあて考え込むヤチャマル、それをほろにがはニヤニヤと下から覗き込んで笑う。

「らしくねぇなぁ?悩むなんて…
 俺らなら噴火してる火山の火口を塞ぐぐらい楽勝だって」
「一体その自信はどこから…」
「まぁとにかく行こうぜ、行って考えよう
 …って、あれ?生徒会長は?」

ほろにがが辺りを見渡すと白やんはさっさと時計塔の中に入って行こうとしていた
一瞬だけ振り返りほろにがとヤチャマルに向かって喋りかける

「置いてくぞ」
「おい、待てよォ!」
680 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:49:07.45 ID:u8McrmQo
慌てて後を追うほろにが
1人残ったヤチャマルはピュアに向き直った

「お前はここで待っていろ」
「しかし…」
「大丈夫だ」

ただそれだけ行ってピュアの肩を叩いてヤチャマルも時計塔へと飛び込んだ
目指すは時計塔地下の大穴
龍脈の気を吸い上げるための、どこまでも深い穴を塞ぐために
時計塔の中に飛び込んだ3人がまず感じたのは空へと昇りきらずに残留している爆発的な龍脈の気

「うおっ…んだこりゃ…何もねぇのに…
 気を抜いたら押し潰されちまいそうだ…!」

それを感じているのはほろにがだけじゃあなかった、返事こそしないものの白やんもヤチャマルも同じ状態だった
足を1歩踏み出すのですら何百という重りをくくりつけているかのような鈍さ
少しでも気を緩めた瞬間、外に叩き出されてしまいそうな空気
辺りのコンクリートは真っ黒に焦げついている

「それで…どっから地下にいけるんだ…!?」

白やんが指差した場所、壁際の地面に人一人がやっと入れそうな穴があった
鉄で出来た梯子が地下へと続いている
穴には蓋がかぶせてあったような感じだが下からの強い衝撃で蓋はどこかに吹き飛んでいる

「先に行くぞ…」

白やんが呟いて穴へと向かい、梯子を使わずにそのまま身体を滑り込ませて飛び降りる
続いてヤチャマルも同じように穴へと飛び降りる

「待てよ、俺も…っギャァァァァァァアア!!」

ほろにがも飛び降りたが2人より体格が良かったせいで
穴の淵に思いっきり背中をこすり叫び声を上げながら盛大に落下した
見事に尻から落下し、これ以上ないぐらいに口を大きく開けて声にならない声を漏らす

「恥骨がッ…恥骨が複雑骨折ッ…」

のたうち回るほろにがを意にも介さず白やんとヤチャマルは金色の光を吹き上げる穴へと近づく
弱まり、強まり、また弱まり、また強まる、そのサイクルを繰り返す金色の光の噴出
しかし決して止まることはなく永続的に空へ向かい続ける光の柱
圧倒的エネルギー量、止める方法を2人は考えていた
これほどの噴出力だ、適当に塞いだとしてもすぐに破壊されてしまうだろう

「…気というのは専門外だな…
 ヤチャマル、どうすればいい?」
「どうすればいいと言われても…」
681 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:50:30.96 ID:u8McrmQo
考え込む2人をよそにほろにがは辺りを見渡しながら尻をさする
相手にしてもらえずスネたようにポケットからタバコを取り出し口に加えて火をつける
煙を吐いていると不意に身体がぶるっと震えた
困ったように視線をあちこちに向けてタバコを加えたまま大きな機械の物陰にこっそりと移動する
そこでしばらくゴソゴソと動いた後に機械に向かって静止する

…じょろじょろじょろ…ちゃぱぱぱぱぱ…

「ふぅっ…」

斜め上を向いて恍惚とした表情でタバコをふかすほろにが
足元には黄金河が出現していた
そこに、パチリと火花が散った

「あん?っと…」

疑問を口にした瞬間、ポロリとタバコが落ちた
ゆっくりと落下するタバコが自らの排出したものに触れた瞬間
目の前の機械に青白い電撃がバチリという音と共に走り、炸裂した

「ほげェェェェェエ!!!!あだっ、んぎゃっ、ぐげっ、だぉぅッ!!」

後ろにぶっ飛び、地面に叩きつけられ、叫び声を上げながら転がるほろにが
爆発音とほろにがの叫び声に驚いたヤチャマルと白やんが振り向くと
下半身丸出しでうつぶせに倒れているほろにが、その頭の先に激しく鳴動しながらバチバチとスパークしている機械があった

「お前何やったんだよ!?」
「ななななな、何もしてねぇよ!?」

そう言いながら必死にパンツとズボンを上げるほろにが
ほろにがは思っていた「この役回りは明らかに剣三郎なのに」と
まるでほろにがには興味がないようにガタガタと動く機械を見ていた白やんが呟く

「…嫌な予感がするぞ…!」
682 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:52:33.62 ID:u8McrmQo
??/?? 黄龍降臨の間

「ゲホッ…ガハッ…」

地面に四つんばいになったゆき兄が喉を抑えて咳をする、首元には締め付けられた後が痣となって残っている
ノスフェラトゥがゆき兄を完全に絞め殺そうとした時、部屋の中心に巨大な金色の光が集合した
それは咆哮と共に、龍を象る
爆散した黄龍の力がその意志によって姿を取り戻した
それを見たノスフェラトゥは突然ゆき兄から全ての触手を離した、それでゆき兄は落下し床に叩きつけられた

「大いなる物…俺に…完全なる…
 俺を、完全に…」
『器はどこだァァァァァァァァァアアアア!!』
「俺を完全なるものにィィィィィィィイイイ!!!」

黄龍と、ノスフェラトゥの互いの絶叫が入り混じる
互いの声が聞こえてないようにただ叫び続ける獣が2匹
やがて黄龍が、動けなくなっているゆき兄を視認したようだった

『そぉこぉかァァァァァァアアアアアアアアア!!!!』
「ゆき兄ッ…避けろッ!!!」

俺が叫び、ゆき兄が動くよりも早く
ノスフェラトゥが先に動き出した、繰り出されたノスフェラトゥの足がゆき兄を真横に吹き飛ばし壁に叩きつける
黄龍の直線状に、ノスフェラトゥが舞い上がった

「ヒャーハッハッハッハッハッハッハッハァァァアアア!!!!!」
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

ノスフェラトゥの身体に、黄龍が直撃した
黄龍はまるで吸い込まれるようにノスフェラトゥに吸収されていく
爆発的なエネルギーが、ノスフェラトゥの身体の中に入り込んでいく
もう黄龍の咆哮は聞こえない、ただノスフェラトゥの笑い声だけが響き渡る
やがて黄龍の巨大な身体がノスフェラトゥの身体に完全に吸収される
バキバキと、異音を響かせながらノスフェラトゥの仮面に亀裂が走り始めた
仮面が、割れる

「ヒャーッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
 取り戻した!俺は取り戻したんだぁぁァぁぁぁあああああああああああああああ!!!!
 あぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
683 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:55:10.50 ID:u8McrmQo
呼応するかのように、仮面が砕け散る
その下から出てきた顔、創造主の力を与えられし生徒会が1人

「スイカァァァァァアアアア!!」

スイカは俺の声など聞こえていないように腕を震わせながら自らの顔にその手で触れる
そのまま頭を抑えてうずくまる

「何を、俺は、何をしていた…
 あの仮面の男は、俺に何をした…!あの仮面は…俺自身…?
 グブッ…!?」

うずくまったスイカの身体がビクンと大きく跳ねた
大きく反り返るその上半身、えび反りになった身体がビクビクと震えている
何だ、何が起こっているんだ?

「あぁぁ…望んでいない…そんなの望んでいない…
 俺はただ…ただ…自らが理想とする幸せを…求めていただけなのに…!
 届かない、どれだけ手を伸ばしても…!心を殺し…人を蔑み…それでも届かない…!
 俺は踏み台なんかじゃ…」

スイカが震える腕を宙に伸ばす、その指は何かを掴もうとするように、決して届かない物を求めるように
その目から、一筋の涙が流れた

「踏み台なんかじゃないんだァァァアアアアアアアアアアア!!!!!」

叫び声と同時に、スイカの胸が大きく縦に裂けた
首元から下腹部まで大きく、とてつもない量の鮮血をぶちまけながら
大きく見開かれたスイカの瞳に自らの血が降り注ぐ

「嫌だ、あぁぁぁぁあぁぁ…!」

グジュリと嫌な音を立て大きく裂けたスイカの傷口が盛り上がった
そこから何かが飛び出すように生えてくる
それは鮮血を滴らし、ドクドクと脈動する赤い肉の塊のような…
肉の塊が物凄い勢いで傷口から噴出し、さながらそれは塔のように聳え立つ
塔、違う、これは…
グジュグジュと水気を含む音を立てながらその頂上が8方向に裂けていく
まるで、花のように、蕾がゆっくりと開くかのごとく
その中心に胎児のように丸まっていた何かがゆっくりと立ち上がる
何かは、開かれた花弁より飛び降りた
684 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 22:58:57.73 ID:u8McrmQo
「ククッ…俺は…これで完全だ…!!
 身まで手に入った…もはや何者も俺を止めることは出来ない…!
 人が一生とかけても得られぬ叡智と、力を!俺は手に入れた!手に入れたぞォォォォォオオ!!!」
「お前は…ノスフェラトゥなのか!?」
「んん?」

振り返ったノスフェラトゥ、その顔に仮面は無い、その身体にはボロ布が巻きつけられていた
ジッと俺を見つめたノスフェラトゥが言う

「思い出したよ、たまゆら…
 俺とお前は会っていた…60年前…あの全ての始まりの日に…!
 なんという因縁だ…」
「60年前…?」
「わからないか…?
 完全なる者と迎合した私は本来より著しく若返ったから無理も無いが…
 なら、これでどうだ?」

ノスフェラトゥの顔がグニャリと歪んだ
そしてその顔が、いつかどこかで見た、顔となる

「お前はッ…!?」

記憶の中にあるその顔、今より60年前の時で見た顔
必死に記憶を手繰りよせ、思い出すコイツの言葉

「君がここに来るのはわかっていた
 だから少し罠を貼らせてもらった」
「私は悲しいよ、風太君
 優秀な研究員であった君ならばこの計画の素晴らしさが理解できたはずだがね」
「生きた人間を使った実験などは道徳的には禁じられるべきものだ
 だが本音は医者だって科学者だって果ては軍隊までそういった実験を行いたいんだ
 ここはそんな欲望を代わって叶える場所だ」
「我々がいなくともいがみ合いは続く、それが人の業だ
 それにお前がここに至るまでに殺した研究員にも家族がいる者はいたのだぞ?」
「馬鹿が…もう止められんぞ…
 完全なる不死の人間になる予定だった者たちはもう自我も何も無い
 肉を喰らい、血を啜るのみのただの闇に堕ちた人に成り下がるぞ!!!」


思い出した言葉と、風太がコイツに向かっていった所長と言う言葉
まさか、こいつは…?
ノスフェラトゥの顔がまた歪み、元の若い顔と化す

「思い出したか?」
「お前は…まさか」
「俺は、七三一部隊隊長、外道…
 龍脈の気を使い不老不死の兵を生み出そうとした我らは風太の裏切りによって
 暴走し逆流した機械に巻き込まれ…不完全な不老不死、闇に生きる堕人と化した
 全ての七三一部隊は堕人となり大半の記憶すら失い、永遠の闇の中でもがき続けることになった…
 黄龍が目覚めるまではな…」
685 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:00:55.95 ID:u8McrmQo
「堕人は…七三一部隊だった奴ら…?」
「だがまぁ…俺は最早堕人ではない…
 黄龍と迎合を果たした…完全なる存在だ、あまねく大地を血に染める…
 のうのうと我らの苦しみの上で生き続けた全ての命を滅ぼす!!」
「…ッ!ただの逆恨みじゃねぇか!!」
「ヒャハッ!ヒャァハッハッハッハッハ!!」

笑い出すノスフェラトゥ、否、外道
ひとしきり笑った後にこちらに歩み寄ってくる
目の前まで来た時、顔を近づけて呟く

「恨みとは全ての人間が抱えて生きる物
 恨みに正当な理由が必要だと誰が決めた?所詮この世界は不条理…
 人は皆不可避の罪を抱える、そして逆恨みだとしても身を焼け焦がす憎悪の念は止まる事は無い
 なぜだかわかるか?たまゆらよ?」

その問いには答えずに俺は顔を背ける
血のように赤いその口を見たくはなかったら

「野心、憎悪、憤怒、狂気、欲望、そして絶望…
 それもまた、人を動かす心の力だからだよ…
 恨みを支えに生きている人間もまた数は少ないが確実に存在するそれは決して覆せない
 生まれ持った人の弱さ、そして同時に強さでもある」
「何が言いたいんだお前は!?」
「俺を動かすのは、全てに対する恨み、憎悪だ
 もう否定もしない、俺はお前達がうらやましく、そしてどうしようもなく憎らしかった
 だからこそ、壊す、お前達を、いや、世の命を全て、俺の手で血に染める
 ヒャハッ…ヒャハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

また、笑い出す、けたたましい笑い声が耳元で響き渡る
その時気づく、僅かだが俺の身体が回復してることに
だが究極黄龍破邪滅閃双撃翌龍波を撃てるとなると…1回…
黄龍には効かなかったがコイツになら…
外せばいよいよ撃つ手が無い、ゆき兄ももう動けるような状態ではない
それでもうなだれているだけじゃ、確立は限りなく0に等しい
やるしかない…やるしかないんだッ!
笑い続ける外道、今なら黄龍発動と同時に放てばほぼ零距離で全て叩き込むことが出来る
チャンスは今しかないッ!!
686 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:05:43.01 ID:u8McrmQo
「目覚めろッ――!黄龍ッ!!!!
 究極黄龍破邪滅閃双撃翌龍波ァァァ――――――!!!」
「おっ…!?」

一瞬だけ聞こえた外道の驚く声
その声はすぐに射出されるエネルギーが巻き起こす爆音に飲まれた
ゆき兄の時のように弾かれてる感じも黄龍に攻撃した時のように力を飲み込まれている感覚も無い
完全なる直撃、いけるか!?

「ヒャーッハッハッハッハッハッハッハ!!!!
 効かねぇ効かねぇ効かねぇッ!全ッ然効かねぇよッ!
 そんなものかたまゆらぁッ!?」
「そんな…!?」

間違いない俺の放つ攻撃は外道の身体に直撃し、身体を焼け焦がし、駆け巡るエネルギーが全身を噛み砕いているはずなのに
それなのに外道は笑い声を上げながらその場に立ち尽くしている

「うぉぉぉおおおおおおお!
 黄龍冥撃夢幻黒蓮破ァァァ――――!!!」

外道の右から向かってきた、黒いエネルギーの奔流が外道に直撃する
ゆき兄、もう回復したのかよ、さすがじゃん!!

「ヒャーッハッハッハッハッハ!どうした!?
 アリに噛みつかれてるぐらいだぜ!?こそばゆいぜぇ!?」
「うぉぉぉぉぉぉおおお!」
「ぐぅぅううううううううう!」

放つエネルギーが更に増大する、ゆき兄の放つ黒いエネルギーも恐ろしく出力を上げている
常人ならば触れた瞬間に骨も残さず蒸発するんじゃないかと思えるほどのエネルギー
それが2つ分直撃しているにも関わらず平然と笑い声を上げ続ける外道
やがて外道がエネルギーに晒されながらもゆっくりと動き出す

「闇の中で、記憶を失い、彷徨い続ける地獄…
 ただ募るのは生者に対する憎しみのみ…
 お前らの力がどんなに強くても、俺の憎悪は止められない、絶やすことなど決して不可能だ!!」
687 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:09:15.31 ID:u8McrmQo
外道の右手が、俺の射出しているエネルギーを掴んだ
そして左手がゆき兄の射出しているエネルギーを掴んだ
それとほぼ同時に身体から黄龍の力が抜けていく
ゆき兄の身体から立ち上る黒い炎もすでに無くなりかけている
若干のラグはあったものの俺とゆき兄はほぼ同時に黄龍の力を失った

「くはっ…!」
「くっそぉ…!」

外道の笑い声が更に大きくなる
その両の掌、右手には金色のエネルギーの塊、左手には黒色のエネルギーの塊

「消えろ!!消えろ!!消えてしまえ!!!
 俺以外の生命は皆消えてしまェェェェェェエエエエエエエ!!!!」

2つのエネルギーが、発射された
目の前を、埋め尽くしていく金色の光
それに飲み込まれた時、発狂するかのような痛みすらも軽く凌駕する痛み
叫び声をあげているのかいないのか、生きているのか死んでいるのかすらもわからない
肉が焼け焦げ、引き裂ける、内臓が潰れていく、骨が粉々に砕かれていく、あらゆる痛みが断続的に全身にくまなく襲いかかる
だがそれもすぐに終わった
視界が真っ暗になり、激痛が遠のいていく
それは嬉しいことなんだが、どうしようもなく、寒い…

「そうだ!!命の終わりこそ俺がずっと憧れて!!憎悪した!!
 俺が望んでいたのは、終わりだ、終わりなんだ、終わりだぁァァァァァアアアアアア!!!」
688 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:10:50.36 ID:u8McrmQo
??/?? 学生寮前

「おい、全員避難完了したか!?」
「何なんだよこの地震は…クソッ…!」
「おい怪我人早く運び出せよ!!」

断続的に起こり続ける、地下での戦いと龍脈の暴走により起こる地震
そして暴走したエネルギーが起こす放電現象や数々の災害
それらは校舎だけではなく学生寮すらも襲っていた
避難を始めた生徒達をかきわけてるリカ
その顔はとても暗い

「…凄く嫌な予感がする…何…これ…?」

不安に身体を震わすリカの耳に不気味な音が響いた
それは地を這うように響く鐘の音、遠く、校舎のほうから聞こえてくる
横であたふたしていた男子生徒が言った

「時計塔が、動いてるのか…?」
「時計塔…?」

ゴォーン、ゴォーン、と鳴り続ける鐘の音
不気味な音、それがなおさら不安を煽って行く

「リカさん!無事でしたか!」
「…しげる君…」

リカに近づいてきたのはしげるだった
今まで怪我人を運び出したりしていたのか汗ダクになっていた
校舎の方向を見ながらしげるは言う

「一体何が起こっているんでしょう…
 全て、終わったはずだったのに…僕達は間違えたんでしょうか…」
「間違ってなんか…」

リカがそう呟いた時だった
背後から怒号が響いた、何人かの男子生徒が口論しているようだった

「お前勝手にどこ行くんだよ!?」
「こんな場所入れるわけねぇだろ!早く逃げないと死んじまうぞ!」
「馬鹿!まだ怪我人がいるんだぞ!!」
「じゃあ俺はそいつらのために死んじまえって言うのか!?」
「そうは言ってねぇだろ!!!」

それを見たしげるが苦虫を噛み潰した顔で呟いた

「まずいな…何もわからないこの状況で皆パニック寸前だ…
 下手すりゃ地震とかの被害よりこっちのほうが…」
689 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:13:07.72 ID:u8McrmQo
口論は激化し、今にも乱闘になりそうな状態だった
ここで乱闘が起これば被害が被害を呼んで多数の怪我人…
いやもしそれで救助が遅れて寮が倒壊でもすれば、死者まで出てしまうかもしれない
それだけは断じて避けなければいけなかった、だけどどうすれば…?

「んのヤロォッ!!」

1人の男子生徒が、口論の相手に向かって拳を振りぬいた
それは、崩壊への引き金
当たれば間違いなく、狂気は伝染する
拳と男子生徒の間に、誰かが割ってはいった
バキィッ!と音がする

「え…」

割って入り、拳の直撃をその顔で受けたのは蝶だった
痛みから逃げ続けていた蝶が自ら痛みにその身を晒した
そして、さらに声が響く

「全員慌てるな!!俺の言う通りにしろ!!」

その叫び声の主は剣三郎
だがその発言に何人もの生徒が反論する

「言うとおりにしろって何様だ!」
「なんで俺らがお前らの言う通りにしなきゃいけねぇんだよ!」

その言葉に剣三郎は大きな声で返答する

「俺は執行部だ、教師、生徒会共に不在の今
 いたずらに被害を広げないために俺に従ってもらう」
「執行部だって!?」
「ふ、ふざけんな!!今までテメェらが俺たちに何をしてきたか忘れたとは言わせねぇぞ!?」
「誰がお前らの言うことなんか聞くかよ!」

反論する声がどんどん高まっていく
剣三郎は血の気が多い奴らに周囲を囲まれている
殴られる、その寸前に一人の女子が飛び出した

「待って!」

飛び出したのは桃花

「あぁ?女子はすっこんでろよ!?」
「私も執行部だから…確かに今まで私達は皆にひどいことをしてきた…!
 でもそれは元はと言えば皆を守るため…暴走したのは確かに私達の罪だけど…
 本当は生徒会と執行部は皆を守るために…!!」

嫌われることに怯え、それゆえに力に囚われた桃花が
これ以上ないぐらいに嫌われるかもしれない執行部だということを自分から明かし
暴走を始めようとする生徒を止める
690 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:15:33.51 ID:u8McrmQo
「信じられっか馬鹿野郎!」
「そうやってお前ら俺らを油断させて…!」
「黙れ、下衆ども…」
「!?」

いつの間にか反論する生徒達の中に混じっていた黒いマントの男
静かに、それでも圧倒的な存在感を放つ声が周囲を驚かせる

「助けてやろうと言っているんだ
 変わらないだろう、今までと、俺たちに従うなら安全は保証され、逆らうなら罰だ
 …逆に言えば、どんな状況になろうと生徒会執行部に命を預けるなら俺たちはそれを全力で守り抜く」

空虚な思想でただ目の前に現れる者を倒すだけの存在だったはずの黒やん
それが今、他の執行部の意に沿うように意見し、あまつさえ守り抜くと言った
僅かに、反論していた生徒たちに動揺の輪が広がっていく

「だ、だけどやっぱり…」
「執行部なんて…信用…」
「何を信じるか、自らの正義は何なのか…悪とは何のか…
 境界線など無い、守りたいという想いは時に人を傷つけてしまう
 それでも守りたいという想いだけは決して嘘なんかじゃない」

ゆっくりと現れたのは透過
絶対的正義を妄信していた彼は言う
正義と悪に確かな境界線など無いということを

「信じてくれとは言わない
 それでも、守りたかったという気持ちは嘘じゃない
 執行部になってからは狂ってしまった俺たちも、執行部に入ろうとしたのは守りたかったからだ」

反論していた生徒達は押し黙る
その中の1人がゆっくりと剣三郎に近づいた

「…どうすれば、いいんだよ」
「全員校庭の真ん中に避難、元気な奴らは怪我人を運んでやってくれ
 まだ寮に取り残されている怪我人などは執行部が探索して救助する!急げ!」
「わ、わかった!!」

1人が走り出した、それは輪のように一斉に他の一般生徒に広がった
怪我人を抱きかかえ、何人もの生徒が校庭へと避難していく
それを見て安心したような顔をする剣三郎の肩にポンと手が置かれた
剣三郎が振り向くと黒やんが手を置いていた

「こりゃ次期生徒会長はお前かな」
「生徒会長って柄ではないがな…」
「ああ、それと」
「ん?」
「ズボン、破れてるぞ、尻の部分な」
691 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:16:53.45 ID:u8McrmQo
その少し後ろでは頬を抑える蝶を桃花が介抱していた
奥歯が折れたらしく、蝶は口から血を流していた
一般生徒のために身体を張って下手すれば袋叩きにされたかもしれないのに執行部だということをバラし
パニックになるのを抑えた皆を見てリカは感じていた
それは、たまゆらがもたらした、闇に淀んだ学園の希望
全ての闇を撃ち払う、守りたいという気持ち、思いやる心、…絆の力
同時にしげるも感じていた、そして思い出していた
ツチノコの言葉、人の心にある星の煌きのような儚くも、確かに光る…
しげるは、その本当の意味が今更ながらやっとわかった気がした
星空は決して1人で作ることなんか出来ないんだ、と
剣三郎が尻を隠しながら叫んだ

「2手に分かれて男子寮と女子寮に取り残されてる生徒がいないか見に行くぞ!
 死傷者なんか絶対に出すなよ!!!」

処罰するためでは無く、守るために執行部の面々は駆け出していった
男子寮の中は断裂した電源ケーブルなどが宙ぶらりんになったり、水道管から水が溢れたりと酷い有様になっていた
剣三郎は叫ぶ

「誰かいないか!!」

その時、誰かが階段を駆け下りてきた
剣三郎がそちらを振り向くと背中に3人もの人間を抱えた雷雲がいた
自らを傷つけ、誰かを傷つけるだけだった雷雲が
必死の形相で助けるために3人もの人間を背負っていた

「これで…もう誰もいないぞ…」
「よくやった!」

だが雷雲の真上の天井にビシリと亀裂が走った
天井が崩れる、間に合わない

「雷雲伏せろォッ!!!」

咄嗟に飛び出した誰かが天井に向かって何かを投げつけた
爆発が起こり、砕けた天井の破片が辺りに散らばった

「えび助ッ!」
「…守るために壊す…か
 あのジャングルジムもよく考えればただ壊されたわけじゃなくて…
 子供の命を守るために壊されたんだよな…」

誰よりも破壊を憎んだ故に完全な破壊者になってしまったえび助
だが知った、壊すことで誰かを守れることもあり、誰かを守るために壊さなければいけない物もあるのだと
剣三郎たちは男子寮から脱出する
桃花と蝶も女子寮から2人を背負って出てくる
692 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:18:13.58 ID:u8McrmQo
「どうだ!?」
「大丈夫、女子寮もこれで全員」
「よし、俺たちも校舎に…」
「…リカさん?どうしました?」

しげるが立ち尽くすリカに声をかけた
リカは静かに、校舎のほうを見ながら佇んでいた
そして呟いた

「…たまゆら君、ゆき兄、わかるよ…きっと今も戦ってるんでしょ…?
 いつもいつも私だけ置き去りなんだからさ…
 …ね、希望が芽吹いたんだよ、だからもう学園は大丈夫…大丈夫だから…」

リカが地面に膝をつき、座り込んだ
ポタ、ポタ、と涙の雫が地面を濡らしていく

「…うっ…くっ…今度もっ…ちゃんと…帰ってくる…よね?
 大丈夫…だよ…ね?
 まだ…私…ちゃんと伝えてない…よ…ゆき兄…ゆうくん…」
693 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:19:31.13 ID:u8McrmQo
??/?? 黄龍降臨の間

…誰かの声が聞こえた気がして、意識が徐々に戻ってくる…
どうやら俺はまだ生きているみたいだった
外道は、どうなった…?
そう思った時だった、鼓膜を揺らす、外道の声

「何だッ…!?力がッ…抜けてッいくッ…!?
 龍脈の気が…戻って…!?」

目を開けると、身体を抑える外道の姿
その身体から金色の光が溢れ出ていた、まるで何かに取り出されているように
何が起こってるかわからない…が、チャンスなのか?
俺の身体は…動くのか…?
遠くから、ガラガラと瓦礫が崩れる音が響いた
そちらを見ると、血を流し身体の至る部分が焼け焦げたゆき兄がいた、立ち上がっていた

「…声が聞こえた…あいつの声が…」

ゆき兄がそう呟いた
俺も聞こえたよ、誰のかはわからなかったけど、ゆき兄はわかったのかな?

「…ここで死んじまったら…どんだけ馬鹿にされるかわかったもんじゃねぇ…
 死後もずっと馬鹿にされるのは我慢ならねぇんでな…」

一歩、外道へと近づくゆき兄
だがその身体はいつ倒れてもおかしくないぐらいフラフラで
踏み出した足が地面についた瞬間に、ゆき兄は口から血を零す

「ハァ…ハァ…目覚めろ…黄龍…!」

ゆき兄の黄龍鉄甲が変形し鎧となる
だがその黒い炎は今にも消えてしまいそうなほど儚い
それを見た外道は自らの身体を抑えながら叫ぶ

「力が抜けていくと言ってもお前を[ピーーー]程度の力ならまだ有り余っている…!
 そんなに死に急ぐなら今すぐ殺してやるァァァァアアアア!!!」

外道が、ゆき兄へと向かう
俺の身体は、動かない…

「黄龍冥撃―――」
「遅いッ!!!」
「グッ!?」

ゆき兄の攻撃が放たれるより早く、一瞬で懐に潜り込んだ外道の拳がゆき兄の腹部に叩き込まれる
そして、外道の攻撃は加速していく
避ける体力も残っていないゆき兄は砂の代わりに血が詰まったサンドバッグのよう
殴り飛ばされる度に周囲に赤い飛沫が飛んでいく
694 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:20:54.54 ID:u8McrmQo
「がはっ…ごほっ…げっ…!」
「死んでしまえ!死んでしまえ!死んでしまえぇぇぇええええ!!」

叫び声と同時にゆき兄が吹き飛ばされる
床石を抉り、轟音を立てながら俺の足元に吹き飛んでくる
もはや焦点が定まっていない虚ろな目
口元は自らが流した血で真っ赤に染まっている
外道は吹き飛ばしたゆき兄を追うこともせずに自らの身体より抜け出ていく力を留めようと必死になっている

「た、ま、ゆ、ら…」
「ゆき兄…大丈夫!?」

相変わらず目の焦点は定まっていないが、ゆき兄は静かに笑った
そしてゆっくりとその手の黄龍鉄甲を外し、俺に突き出してきた

「つか、え…」
「え?」

意味がわからず、俺はどうしていいかわからなくなる
早く受け取れと、言いたげにゆき兄は黒い黄龍鉄甲を俺の前で揺らす
腕が、動いて、俺はそれを掴んだ

「…おまえ、に…全部…託す…本当は…俺がケリを…つけなきゃ…いけないのに…な…
 だいじょ、うぶ…お前な、ら…きっ、と…陰であろうと、陽であろう、と…
 手を取り合わせ、た…お前な、ら…
 わり、あと、頼む…わ…」

ゆき兄はそれだけ言うと静かに目を瞑り、黄龍鉄甲を渡した手が力なく地面に落ちた
嘘、だろ?冗談だろ…?なぁ…?
死ぬなんて、冗談だろ?ここで死んだら、ずっと馬鹿にされるって言ってたじゃねぇかよ…
695 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:21:58.41 ID:u8McrmQo
「外道ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

どこにそんな力があったのか
俺は今までで一番大きいとも言えるほどの絶叫を放った
悲しみ、怒り、あらゆる感情が入り混じった、叫びを
その声に、外道がこちらを振り向いた

「どうした…死んだか…そいつ?
 ざまぁないな…ヒャハハハハハハ!!」
「…許さない…」
「勝つことも出来ないのに許さないと?」
「勝つ…絶対に…それに…」

ゆき兄が死ぬわけはない、意識を失っただけだ、そうに決まってる
でもゆき兄は最後に残った力を俺に託したんだ
俺たちは、一緒に戦うんだ…一緒に…!!
お前を倒して、すぐにゆき兄をヤチャマルに診てもらう…
だからお前は、一刻も早く倒さないといけないんだ…
俺は空いている左手にゆき兄から受け取った黒い黄龍鉄甲をつけた
身体の芯から湧き上がる、とても熱く、強い力、そして、悲しみと、怒りと、後悔の念
ゆき兄がずっと心に宿していた想い、激流のようなその想いを今全て理解した
だからこそ、俺は…この想いを託されたからには…

「外道ォォォ…!!」

何度倒れても、立ち上がる、そして戦う、お前が何度俺の前に立ちはだかり
何度俺を地に倒そうとも、立ち上がる、そして…お前を倒す!!!

外道は思っていた、なぜ立ち上がるのかと、力が抜けているとはいえ今だその力の差は歴然
なのにどうしてこいつらは負けるとわかっていて立ち上がるのか
絶望してヤケになったのかとも思った、だがたまゆらの目を見た時に感じた
その目から溢れ出る、自らを倒すという揺ぎ無き意志の力を
そして同時に、外道の背中に冷たい物が走る

(馬鹿な…俺は完全なる者…決して俺には誰も勝てないはずなのに…
 なんだ、この感覚は…!?)

その感覚を忘れようとするように頭を振る外道
あるはずが無いのだ、黄龍と融合を果たし完全なる者として生まれ変わった自分に
不安など、ましてや恐怖など、あるはずが無いのだ
外道はそれを確かめようと思った、つまりたまゆらの息の根を完全に止めようとする

「たぁまぁゆぅらぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!」
696 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:23:40.19 ID:u8McrmQo
??/?? 時計塔

「やべぇ…吸い込まれるッ!!!」
「ほろにがぁ!!何やったんだよ!!」
「いやちょっと立ちショーベン…」
「はぁぁぁあああああああ!?」

ほろにがとヤチャマルと白やんはそれぞれが地面の窪みや、壁に伸びているパイプなどを掴んでいた
スパークした機械が爆発したと同時に突然金色の光の噴出が止まった
それだけならよかったが今度は逆に物凄い勢いで大穴は辺りのものを吸い込み始めた
全員吸い込まれないように咄嗟に周辺の物を掴みその吸引に抗っていた

「耐えろよッ!落ちたらどうなるかわからねぇぞ!!」
「言われなくてッ…!?」

ほろにがが手に力を入れた瞬間だった
掴んでいたパイプの上部のボルトが吹き飛び、パイプが傾いた

「おわっ、おわっ…」

そして、上部の支えを失い下部のボルトまでが吹き飛んだ
パイプが宙を舞う、掴んでいたほろにがもまた同様に

「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
 こんなとこで死ぬのはいやぁああああああああああああああああああああああああああ!!」
「ほろにがァッ!!!」

地面を掴んでいる白やんが手を伸ばした
ほろにがは咄嗟にパイプから手を離してその手を掴んだ
白やんの身体に強い力が加わり、窪みを掴んでいる片腕が離れそうになるがなんとか耐え抜く

「大丈夫か?」
「…生徒会長っつうのも伊達じゃないのか?」
「フン…」
「白やん、ほろにが、こっちに移って来い
 そこからパイプ越しにここまで来れるはずだ」

遠く離れた場所のパイプに捕まっていたヤチャマルが言う
ほろにがが反論する

「まずパイプに行くのが無理なんだよ!
 白やんが手をかけてるのは小さな地面の窪み!ついでに片手は俺を掴んでんだぞ!」
「しかしそのままではいずれ吸い込まれる!!」
「だ、そーだが…生徒会長サンよぉ…どうする?」
697 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:25:10.57 ID:u8McrmQo
白やんが小さく笑う

「伊達じゃないのかと聞いたが…生徒会長などという名に意味など無いさ…
 全てを救うなんてとても俺には出来ない…だから白やんと呼べよ、ほろにが」
「…じゃあ、白やんよぉ、どうする?」
「全てを救うことなんか出来ないが…
 お前1人なら、余裕だッ…!!うおぉぉぉぉぉおおおおおお!!」

白やんの腕に血管が浮き上がる
そのままほろにがを一気に引っ張り上げパイプに届く位置まで持ってくる
ほろにがはパイプを掴んで強度を確認した

「…俺だってな、お前1人ぐらいなら余裕なんだッ…よぉぉぉおおおおおお!!」

今度はほろにがが渾身の力で白やんを引っ張り上げた
白やんの腕がパイプを掴む
2人で同じパイプに掴まって顔を見合わせる

「…まぁ本当は3人ぐらいなら余裕なんだけどな」

白やんがそう言うとほろにがは口元をピクリとさせて反論した

「いや俺も実は5人ぐらい余裕かな」
「頑張れば7人もいける」
「俺だって頑張れば10人はいける」
「11人」
「12人」

火花を散らすような2人を見てヤチャマルは呟いた

「あの2人本当は気が合うんじゃないのか…?
 ああ、いや…おいっ!!早くこっちに来い!!」

そう2人に呼びかけると2人はパイプからパイプを伝いゆっくりと移動を始める
ギシギシと危うげなパイプもありゆっくり、ゆっくりと…
その時、白やんの掴んでいたパイプが砕けた
劣化し、錆と化したパイプが負荷に耐え切れなくなったのだ

「しまったッ…!!」

白やんは他の場所を掴もうとしたがすでに遅かった
身体は浮き、穴へと吸い込まれそうになっていく
698 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:26:49.72 ID:u8McrmQo
「白やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

ほろにがが、自らパイプから手を離し、白やんのほうへと向かった

「馬鹿ッ!何をしている!!」

それを見た離れた場所にいたヤチャマルもパイプから手を離した
白やんは吸い込まれながらも驚愕の表情をして叫んだ

「な、何をしている!?
 これじゃお前らまで…!!」
「言ったろうがぁぁぁ!お前1人助けるぐらいなんでもねーんだよ!!」
「ここでお前が死んだら寝覚めが悪いッ!それに俺は保険医だッ!!
 生徒が死にそうになってりゃ助けなきゃいけねぇんだッ!!」

それでも2人の手は白やんには届かない
白やんの足が穴へと差し掛かる
その時、頭上からガァン!という音が響いた、同時に穴の吸引力が失われた
だが吸引の余波が白やんを完全に捉え、もはや後は落下するだけと言った具合だった

「手を伸ばせぇぇぇぇえええええ!!!」
「クッ!!」

白やんが伸ばした手をほろにががキャッチする
だが穴から大きく身体を出していたほろにがも踏ん張りきれずに仲良く穴に落ちそうになる

「うわっうわっうわわわわわ!!!」
「ええい!世話がかかる!!!」

ずり落ちそうになるほろにがの足をヤチャマルがガッチリと掴んだ

「やった!早く引き上げてよ神様、ヤチャマル様!」
「現金な…!!」
699 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:27:40.17 ID:u8McrmQo
ヤチャマルは地面を蹴るように身体全体を使ってほろにがを引っ張り上げる
芋掘りのようにほろにがに続いて白やんも穴から顔を出す
3人でその場にへたり込む
さすがに疲れたのか3人とも無言で座り込み続けている

「…しかし何だって急に止まったんだ?」
「上からガァン!って音がしたような気がしたが…」

3人は上を見上げた、遥か上の螺旋階段を誰かが歩いていた

「…ありゃ、ピュアか?」

ほろにががそう呟くと上からピュアの声が響いた

「大丈夫ですか!?
 歯車に鉄パイプを挟んで無理やり機能を止めました!!
 とりあえずこれで大丈夫です!!」

それを聞いて3人は顔を見合わせた

「あいつに助けられたってことか…」
「実はけっこうやる奴だったんだな…」
「つーか、俺たち何もしてないような…」
「立ちショーベンしただけかな…俺」

それを聞いて白やんがハッ!と気づいたように自分の手を見た
しばらくそのまま考えたあとにほろにがに向かって叫んだ

「手洗ってないだろ!!汚ぇ!!」
「いや男なら普通手とか洗わないだろ!!」
「洗うわ!!!」

その場で口論を始めるほろにがと白やんを見てヤチャマルはため息を吐いた

「やっぱ仲いいんじゃねぇかなコイツラ…」
700 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:28:55.65 ID:u8McrmQo
??/?? 黄龍降臨の間

「ヒャーッハッハッハッハッハ!!!」
「グッ…」

2つの手甲を使い、必死に外道の攻撃を受け続ける
だが受けるだけでもその衝撃は身体の芯から揺れるような痛みを呼び覚ます
それでも必死に受け続けていく、直撃すれば死は免れない
攻撃の手を緩めずに外道は言う

「力の流出が止まった…!残念だったなたまゆらぁぁぁぁあああああ!!」

双掌を重ねた鉄甲に叩きつける外道、自らの身体から聞こえるミシミシという音
鉄甲の中で握り締める拳に水気を感じるのは恐らく出血しているから
ガードと殴打、限界を超えた俺の身体にかかる過負荷は高橋と同じように自らの攻撃で自らを傷つけている
それでも俺は倒れるわけには行かない

「グッ…オォォォオオオ!!」

外道の双掌を弾き飛ばす、よろめいた外道の胴体ががら空き
そこに陽の黄龍鉄甲を叩き込む
殴打だというのに深く肉に突き刺さる感触、そう、攻撃はこれ以上無いぐらいに確実に命中しているのだ
なのに外道はさも平然と立っているだけ
当たってはいるが効いていない、それが俺と外道の間にある決定的な力の差
それでも諦めない、効いていないというなら効くまで殴り続ける

「オオオオオオオオオォォオオオ!!!」

自らを鼓舞するかのように俺は叫び、両椀を何度も何度も外道へと叩き込む
外道は動かない、ただ殴られ続けている

「…あまり調子に乗るなッ…」

外道の右手がゆっくりと上げられる
一旦引くかどうか迷うがここで退いたらいつまた懐に飛び込めるかわからない
ならば、今はただぶっ飛ばされるまで殴り続けるだけだ!!
視界に、外道の顔、その瞳は感情の色を感じさせない、虚無の目

「死―――!?」

振り下ろされると思った外道の拳がビクンと跳ねる
なぜか、拳は振り下ろされない
外道の顔が、憎らしげに歪んだ

「アァァァァアアアアアアアアアアアアア!!!」

同時に、頭に叩き込まれた外道の渾身の一撃
額から血を噴き出しながら、後ろへと倒れる
頭が、グラグラする
それでも、俺は…
指に力を入れる、大地を掴み、俺は立ち上がる
701 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:29:57.32 ID:u8McrmQo
「なぜお前は立ち上がる…!
 いくら器と言えどもとっくに死んでいるはずだ!!」
「俺1人なら…な…」
「どういうッ…」

外道の言葉を待つことなく、地面を蹴り出し一気に間合いを詰めた俺の拳が外道の腹部にまた突き刺さる
だがそれで終わりではない、俺はそのまま走り続ける
外道を壁に叩きつけようとして

「貴様ッ!!」

外道の手が、俺の顔面を打ち据え…なかった
なぜか、顔すれすれでその拳は止まっていた

(何故だ…何故拳が止まる…!!
 恐れていると言うのか!?完全なる者である俺が…器といえどもただの人間を恐れていると!?
 認めん、認めん、認めん…!そんなことあるはずが…!!)

外道の手が震える、震えごと握りつぶすかのように外道は強く拳を握る
あまりにも強いその力により手からは血が滴り落ちる
それが起爆剤、外道の感情のタガを吹き飛ばす

「俺は完全なのだぁぁぁぁぁァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

外道の拳が光り輝く、それは自らの気を一点に集中させたことにより起こる発光現象
どんな物でも穿ち、砕き、爆砕し、一片たりとも残さず焼き尽くす
まさにそれはあらゆる命を殲滅する、狂いし黄龍の力
たまゆらの背筋を駆け巡った冷たい空気
足元から這いずり出し、隙を見せた者を一気に絡めとる、死の空気
702 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:31:18.97 ID:u8McrmQo
??/?? 校庭

「また地震だッ…!」
「落ち着け、さっきよりかは小さいぞ…!!」
「お、おい、校舎見ろよ!何だよアレ!!」

1人の生徒が指差した先、校舎のあちこちから吹き上がる金色の光
壁を砕き、ガラスを粉砕し、天井を破壊して、あちこちから立ち昇る光は校舎の遥か上空に巨大な龍を形成していた
それは、黄龍、猛り狂う、そして神々しさに遥かに勝る禍々しさを見ている人間全てに与える
黄龍を見て呆然としている生徒の中には執行部の姿もあった、そして剣三郎が呟く

「…あれは…たまゆら…いや、違う…」
「たまゆらさんの力には似ている、でも…彼のような暖かさを全く感じない…」
「それどころか…冷たい…凍りつくような…
 見ているだけで心臓をワシ掴みにされてるような気分だ…」

校舎の上で、黄龍が叫ぶ

『俺は完全なのだぁぁぁァァァァアアアアアアアアア!!!
 あまねく命を血に染める!!!皆死んでしまえ!!皆!何もかも!!!』

その黄龍は、外道の身体から溢れ出た気が形作った謂わば幻影
外道の意志を、思想を多数の人間に知らしめるために生まれた存在
その言葉に打ちのめされる者、信じようとしない者、泣き崩れる者
黄龍の口より語られる言葉に嘘は無い、本能で人はそれを理解する
だからこそ、黄龍を宿した器は世界を統べる

『故にお前は今ここで死ぬべきなんだァァァァアアアアアア!!
 たぁまぁゆぅらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!』
「たまゆらッ!?」
「アイツ、今たまゆらって言ったぞ!?」
「まさかやっぱりアイツ、戦ってるのか…こんな…力と…たった1人で…?」

執行部の面々に広がる動揺
だけどどうすることも出来ない、どこで戦っているのかもわからない
何より自分たちが離れれば今度こそ一般生徒は暴動状態、止めることができなくなる
何も出来ない悔しさの中で、しげるが呟いた
703 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:32:15.40 ID:u8McrmQo
(推奨BGM) http://www.youtube.com/watch?v=rfGs4QoL-Tc&feature=related

「…ばれ、たまゆらさん…」
「え?」
「頑張れ!!たまゆらさぁぁぁぁぁあああああああん!!」

しげるの叫び声、一瞬の間を置いて
今度はえび助が叫んだ

「…頑張れ!たまゆら君負けるなッ!!!」

続くように、桃花、透過、黒やん、雷雲、蝶、剣三郎
全員がたまゆらのことを応援しだす
やがて、その輪は状況を理解してはいない一般生徒にも広がっていく
状況が理解出来ていないと言っても彼らは理解していた
誰かが、俺たちのために戦っていると

「頑張れーー!!絶対負けんなーー!!」
「勝てー!たまゆらぁー!!」
「そんな奴さっさとやっつけろぉぉぉお!」
「死ぬなんてごめんだぁぁ!!たまゆらぁぁ!助けてくれよぉぉ!!」
「勝ちやがれぇー!!!」
「たまゆらぁぁぁああああああああ!!」

応援が、すべての生徒に広がって行く
執行部も最初は面食らっていたが、すぐにたまゆらの応援に戻る
いつの間にか、生徒ではない奴らも生徒に混じって校舎に向かって叫んでいた
何も出来ない、ただそれでもどうにかして君を助けたい、その思いが大気を揺らす声となり、大地を揺らす衝撃となる

「コラー!あたしが惚れたんだー!勝てー!」
「同じカマ掘った…じゃなかった、同じ釜の飯を食った仲だからな
 俺も応援させてもらうよ、たまゆらぁぁぁああ!!!!お前なら勝てるぞぉぉぉぉ!!」
「ありったけのマジックアイテムサービスするから絶対生きて帰ってこいよぉぉぉ!!!!」

気がつくと、校庭は金色の光に包まれていた
暖かく、優しい、光
それが空へと立ち昇っていく

――そう――

――黄龍の世界を統べる力とは決してその強大な力で強引に統べることじゃない――

――ただ、戦うだけ、自らを信じ、戦い続けるだけ――

――強い想いを胸に抱き、傷つきも戦い続けるその姿に人々は希望を見出す――

――希望を見た人たちは、希望に向かい想いを束ね、とても強い…時として天命すらも凌駕する力を生み出す――

――それこそが、真の黄龍の力――
704 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:33:09.39 ID:u8McrmQo
「俺たちだって同じなんだたまゆらッ!!」
「ただ守りたいんだ!」
「じっとなんかしてんじゃねぇ!!たまゆらだけが戦ってるんじゃない!」
「俺たちだって覚悟していた…!」
「お前だけじゃねぇ!学園を守りたいのは俺らも一緒だ!!」
「俺たちだって同じなんだッ!!」
「お前は1人じゃない!!!」
「「「たまゆらッ!!たまゆらッ!!たまゆらッ!!!」」」


校庭の外れである4人が、その光景を見ていた
ヤチャマル、ほろにが、白やん、ピュアはその光景に驚いていた

「龍が見える…」

呆然とした顔でそう呟くほろにが
たまゆらを応援する生徒たちの身体から立ち昇る金色の光が一体となり黄龍の姿を形作る
ヤチャマルがそれを見て言った

「…凄まじいほどの想いが…いや、気が集まって黄龍を形作ってる…」
「黄龍が、空に昇る…!!」

空へと昇った龍は校舎の上で猛り狂う、狂った黄龍へと咆哮した
それを受けた狂いし黄龍も咆哮
2体の黄龍は途端に激しくぶつかり合う
金色の光を散らしながら、互いを互いを噛み殺そうと
それを見た、ほろにがはじたんだを踏み出した

「…なんか、暴れたくてしょうがねぇよ!!俺も行ってくるわ!!」

そう言ってほろにがは走り出した
残ったヤチャマルと白やんとピュアは顔を見合わせた
そして、3人は同時に頷き、ほろにがに続いて走っていった


――束ねられた想い…黄龍はそれを具現化したに過ぎない――

――人の想いは何て強いんだろう…運命すらも打ち破る程…――


真なる黄龍が、咆哮と共に狂いし黄龍の喉に食らいついた
絶叫をあげ、のたうち回る狂いし黄龍
それを見た校庭の生徒達はさらに沸き立ち、大地を揺らす
705 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:35:24.93 ID:u8McrmQo
??/?? 黄龍降臨の間

「グァウァァァガァァアアアアアアア!?!!?」

突然、絶叫し、のたうち回る外道
喉を抑え、苦しそうに

「馬鹿なッ…何がッ…!?」
「外道…!!」

俺の両手の黄龍鉄甲が光り輝きだす、今までも最も激しく煌く…
その煌きの中に浮かぶ無数の人たち、想いが伝わる
ノスフェラトゥ、いや、外道
これが真の、黄龍の力だ!!!

「目覚めろッ――!黄龍ッ!!!!」

2つの輝きが、混ざり合った
究極の陽の力と、究極の陰の力、決して相容れる事の無い2つの力はそれを遥かに上回る想いによって束ねられる
身体を覆う鎧は金色と黒が混ざり合う
黒き鎧に金色のライン、すべてを飲み込む闇と、すべてを包み込む光
そういえば前にゆき兄に借りたゲームで言ってたな
『調和する2つは完全なる1つに勝る』…だっけ?
それが真実なら…俺は…!!

「グッ…新たな変形を会得したところで俺にはッ…!!」
「おおおおおおおおッ!!!」

右腕が、外道の腹部に叩き込まれた
今までなら感触はあったもののまるで効いてはいなかった、でも今回は…

「グブゥッ…!?」
「爆ぜろォォォォォォオオオ!!!」

拳から爆発が起こる、陰と陽の力を拳の先で激突させ巻き起こす爆発
外道からすればほぼ体内に爆発をブチ込まれたような状態

「がっはぁぁ…きっさぁ…まぁ…!?」

後ろにずり退がりながら腹部を抑える外道
その瞳に宿る憎悪が更に燃え上がっていく

「…なぜだ…!体力の限界…いや命の限界のはずのお前が…!
 なぜ今になってこんなッ…!!」
「俺の力は俺一人のものじゃないからだッ!!!
 お前からしてみれば脆すぎる人の命も力も、束ねれば何よりも強いんだッ!!」
「ほざけぇぇぇぇええええええええええええええええええええ!!」
706 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:36:26.82 ID:u8McrmQo
外道が怒りの形相で向かってくる
寸前で、外道が高く飛んだ
そのまま宙を舞い、真後ろに着地する

「たまゆらぁぁあああああああああああああ!!!」

外道の拳が背中に叩き込まれる、だけど、殆ど何も感じない
そのまま振り向きざまに拳を振った、所謂裏拳
それが外道の顔を捉えた瞬間に起こる爆発

「ガァッ…!!」

煙をあげながら、顔を抑え、後ろへと後退する外道
指の隙間から覗く目、憎悪の塊

「陰の力で力を飲み込み、陽の力が力を包み込み霧散させる…!
 ふざけるなッ…!そんな力…認めるものかッ…!!!
 認めるッ…ものかぁぁああああああああああ!!!」

外道が顔を抑えながら絶叫する、見開かれた目は血に染まる
大きく開き過ぎた口は両端が裂け血を流し始める
そして、一直線にこちらに向かってきた

「たぁまぁゆぅらぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

その拳を、拳で受け止める
外道の口が大きく開かれた、その喉の奥で何かが光るのが見え、俺は咄嗟に顔をズラした
次の瞬間、外道の口から放たれたレーザーのような光が後ろの壁を貫き砕いた

「いよいよ何でもありだなッ…!爆ぜろォォォォォオオ!!!」

拳の先から起こる爆発の衝撃で外道の拳が離れる
だが次の瞬間にまた拳が煙を引き裂いて向かってきた
すぐさまそちらをガードする

「お、俺、オレ、は、完全、、死は、恐れ、な、い、いい、いぃぃ、い…!」

外道は完全に壊れていた
口から血が混じった泡を吹き、目は焦点が合わずにあちこちをグルグルを見渡している
膨らみすぎた憎悪が心を打ち砕いた、闇に堕ちノスフェラトゥとなった人間は更にそれを越え最強最悪の魔物へと変貌した
707 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:37:21.74 ID:u8McrmQo
「コロス、コロォォォォオオオス!!!」
「クッ…!!」

最早外道の攻撃に加減など無かった、1撃1撃が全力、ありったけの殺意を乗せ打ち込まれる拳
通常ならこんな調子で攻撃をし続けるとすぐに体力切れを起こすものだが
黄龍を宿す外道にそれは無い、それはたまゆらも充分にわかっていた

「爆ぜろッ!!」

両手から巻き起こる爆発の直撃を受けて外道は後ろに盛大に吹っ飛んだ
地面を転がるも、床に指を突き刺し、床を抉りながら停止する
そしてすぐに立ち上がる、その顔には笑みが浮かんでいた

「…この力で、全ての悪夢を断ち切る…」

たまゆらが両手を構えた
それはしっかりと外道を狙っていた

「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ!」

飛び上がる外道、そのまま天井に指を突き刺してそこに停滞した
たまゆらが狙いを上に上げるとほぼ同時、天井からまるで流星のように落下の速度を加えた蹴りがたまゆらを襲った

「グッ…!?」
「やはり、俺が勝つ!勝つ勝つ勝つかぁぁぁあああつ!」

叫びながらまた距離を取る外道
吸収しきれないほど威力の攻撃、陰陽極まった究極の鎧越しにたまゆらは痛みを感じた
早くしないとやはりやられるかもしれない
しかし外道はあちこちを動き回り、狙いを定めることが出来ない
生半可な攻撃では動きを止めることが出来ない、故にたまゆらは自らの最大攻撃を叩き込む必要がある
しかしそれには狙いを定めるという間が必要となる、強い攻撃だからこそ間は必然
外道は知ってか知らずかその間を作らない

「クソッ…このままじゃ…」
708 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:38:23.85 ID:u8McrmQo
??/?? 校庭

「何やってんだ!畳み掛けろ!!」
「そこだそこぉぉぉぉ!」
「噛め!抑え付けて噛み千切れ!!」
「回り込めよ!!」

校舎の上で戦う2体の黄龍
それはたまゆらと外道の戦いと同時に展開されるもう1つの戦い
たまゆらと共に戦おうという想いが生み出した黄龍と外道の憎悪が生み出した黄龍の食らい合い
互いが互いを押さえつけ、食らおうとする

「…たまゆら君」

数百人の応援の叫びの中でリカが静かに呟いた
ぶつかり合う2体の黄龍を見つめながら

「ゆき兄も、そこにいるんでしょ…?
 神様…私の全てを差し上げますから…どうか…2人を…」

神に祈ろうとし、組もうとしたリカの手を誰かが止めた
それは白やんだった

「…神なんかいない、どんな運命も人が切り開く
 人は弱いから神を信じ祈るのも仕方ない、だけど今だけは神に頼ることなどしないで置こう
 あそこで戦っているのは神なんかじゃない、俺たちの想いだ」
「…そうだね…」

リカは手を強く強く握った

「勝とう、皆で」


黄龍が、一際大きい咆哮を上げた
その爪が、狂いし黄龍の身体を押さえつけた

「行け!今だ!!」
「トドメだ!トドメ!!!」
「行けぇー!!龍ちゃぁーん!!!!!」

そして狂いし黄龍の身体に、深くその顎が突き刺さった
絶叫する狂いし黄龍、断末魔の悲鳴にも似た叫び声
同時に校庭から沸き立つ歓声
709 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:39:23.06 ID:u8McrmQo
??/?? 黄龍降臨の間

「グァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

突然絶叫と共に外道の動きが止まった
身体を抑え、もがき苦しむ、まるで身体に無数の牙を突き立てられたかのように
その理由はたまゆらが知る由も無い、だけどたまゆらは何となく理解できていた
何にせよ最大のチャンスには違いなかった

「皆、ありがとう…」

呟き、両手を構えるたまゆら
金色と黒が両掌の中で交じり合う
外道は動けない、身体を抑えたまま顔だけをたまゆらの方向に向ける

「や、め、ろぉ…」
「これで終わりだ!外道ォォォォオオオオオオオ!!!
 陰陽完全調和!!!滅殺黄龍弾!!!!」

両掌に交じり合った金色と黒が撃ちだされた
陰にも陽にも属さない調和する完全を越える究極の力
ライフル弾のような回転する小さな玉
それが、外道の額を直撃した

「ああッ…がッ…げっ…!?」

全身を痙攣させながら大きくのけぞる外道
その額に空いた穴から漏れ出す光
徐々に、身体中に穴が空き出し、そこから光が漏れ出してくる
必死に穴を塞ごうと手で押さえながら、フラフラと揺れ動く外道

「ゲッ…ガッ…身体が…ッ…そんなッ…!!」
「狂った黄龍ごと、消し飛べ!!!」
「ぎぃぁぁがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

断末魔の叫びと同時に、外道の身体から漏れ出た光が一層強まり
外道の身体は大爆発を起こした
極限まで凝縮された陰と陽の気の弾丸
体内に入り込み、全身を駆け巡り、やがて体内より大爆発を巻き起こす
それが陰陽完全調和【滅殺黄龍弾】
爆風と衝撃と熱が部屋を包み込んでいった
710 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:41:46.21 ID:u8McrmQo
??/?? 校庭

『ウォォォォオオオオオォォォォ…』

狂いし黄龍の身体が徐々に光の粒子となっていく
それはまるであの日見た花火のように暗い夜空を照らしていく
1人の男子生徒が叫んだ

「勝った…勝ったんだ…!!」

その言葉が一斉に周りに伝わった

「勝ったぞぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「やったぁああああああああああああああああああああああああ!!!」
「何が何だかわかんないけどとにかく勝ったんだぁあああああああああああああ!!!!」

喜んでいるのは一般生徒だけではない
執行部もほろにがもヤチャマルも白やんも阿部さんもカナも神楽君も喜びの声をあげていた

「やった!やったよ!勝ったんだ!たまゆらさんが勝ったんだ!!」
「本当にアイツはやってくれるぜ!」
「当然でしょ!たまゆらさんが負けるわけがないんだし!」
「ちっきしょう、何か泣けてきた!」
「さすが同じカマを掘った…いや、違った」
「店長2回目だとさすがにクドいです!!」
「おいおいおいおいおいおい!あいつ本当にやりやがったぜ!!」
「まるで夢を見てるよう…」
「見てみろ!龍が消えていくぞ!!」

狂いし黄龍が完全に消え去ろうとした頃
想いより生まれた黄龍の身体も徐々に粒子と化していく
空に昇る、金色の光
例え消えようとも、生まれた希望は決して消える事は無い
希望は根付いたのだから
それを見ながらリカが言った

「後は、ちゃんと2人で帰ってきてね…」
711 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:43:20.06 ID:u8McrmQo
??/?? 黄龍降臨の間

「ハァ…ハァ…」

爆風が過ぎ去り、俺の身体を纏っていた黄龍の鎧は2つの黄龍鉄甲に戻っていた
全て終わったと思った、だが煙が晴れた時に戦慄が走った
内部からの爆発で粉みじんになったはずの外道が、立っていた

「ウゥ…ァァ…」
「クッ…」

外道がこちらに手を伸ばしてゆっくりと近づいてくる
駄目だ、もう戦えない…!
だが予想を遥かに越える出来事が起こる
外道の伸ばした手が先から割れたガラスのようにバラバラと地面に落ちていく

「な、ぜ…だ…俺は…完全なは…ず…」
「強引に黄龍を宿すことは出来ても器で無い限り必ず限界が来る…」
「ゆき兄ッ!?」

いつの間にかゆき兄が立ち上がり、俺の横に立っていた
やっぱり、生きてたんだ…
外道がゆっくりと、ゆき兄の方向を向いた、その間にも外道の身体の崩壊は止まらない

「俺は、死ぬ…の、か…?」
「死ぬだろうな」
「そう、か…」

それだけ言うと外道は俺たちに背中を向けた
すでに両腕は砕け散り、身体も徐々に崩壊を始めていた

「60年…ずっと望んでいた…この時を…
 欲しかったのは…完全なんかじゃなくて…この優しい…安そッ…」

パキィン!と高い音が周囲に響いた
足と胴体と頭、残った外道の身体が全て一瞬で砕け散った
ガラスの破片のような外道だった者の欠片がその場にガチャガチャと落ちた
これで、全部終わったのか…

「…これで全部終わったの、ゆき兄?」
「多分な…外道ごと黄龍も吹き飛んだとは思うが」
「そっか…じゃあやっと…帰れるんだね…」
「…ああ…」
「あ、これ返すよ」

俺は黒い黄龍鉄甲を左手から外してゆき兄に返した
少し笑いながらゆき兄は受け取る
712 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:44:17.44 ID:u8McrmQo
「つってももう意味はないぞ、力の根源である黄龍が消えたんだ
 もうこいつはただの鉄甲だよ」
「…あ、そうか…」
「まぁそれでも武器として使えないことは…!?」

ゆき兄が黒い黄龍鉄甲をつけた瞬間に顔つきが変わった

「馬鹿な…!?」
「どうしたの!?」
「消えてない…!黄龍はまだ消えてない!!」
「えッ!?」

驚き、聞き返そうとした時、部屋に絶叫が響いた
これ以上ないほどの絶望を俺たちにもたらす声

『器ァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

黄龍…!?
金色の光が目の前に集結していく
そんな…こいつ、まだ…!?

「やはり…意志ある黄龍を倒すのは不可能なのか!?」
「駄目だ、もう戦えない…一旦退こう!」
「しかし…ここで退いても…!」
「外道だって何とか倒せたじゃないか!!退くことで勝機が見出せるかもしれないだろ!!」
「たまゆら…お前…!わかった…!
 …とはいえ帰り道は瓦礫で埋まってるし…」
「外道が出てきた穴はどこかにつながってるんじゃ?」
「そうか、よしわかった…!」

集結する光が徐々に龍の形を作っていく
早くしないと…時間が無い!
俺たちは慌てて外道が出てきた穴を見る、決して広いとは言えないが全速力で走れそうなぐらいには幅がある
これならいける…!あ、でも…

「どうした?早く行け」
「あいつも…一応、なんとかならないかな」

俺は祭壇の前を指差した
そこには倒れているスイカ

「…わかった、俺は充分休んだからな、俺が担いでいく
 だからお前はさっさと行け」
「行けっていって自分だけ残るのはナシな」
「わかってるよ!」

ゆき兄はスイカの近くに走っていき力なくうな垂れた手を掴んで担ぎ上げた
その時、スイカが小さくうめいた
713 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:46:03.30 ID:u8McrmQo
「…生きてる…のか?コイツ…?」
「ゆき兄!早く!!」
「今いく!!」

ゆき兄が来たのを確認して俺たちは穴に飛び込み、真っ暗な地下通路を走っていく
後ろから、黄龍の咆哮が聞こえた、どうやら完全に元通りになったらしい

「絶対振り返るなよ!前だけ見て走り続けろ!!」

後ろからそう言われただ俺たちは真っ暗闇を走り続けた
遥か後ろから聞こえる何かが崩れ落ちて行く音
そして狭い通路に反響する黄龍の叫び声

『ウツワァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』

岩盤を抉るような音、揺れ動く地下通路、振り向きたい衝動を必死に押さえ込む
足がとても痛く、息は吸っても吸っても酸素が足りない
心臓の鼓動は破れるように早い
やがて正面に光が見えた

「出口だ!!」
「突っ切れ!!!」

穴から飛び出した俺、カツンとコンクリートの地面を踏む
そして目の前にあった地面に空いた大穴

「うわッ!!」

危うく落ちそうになる、ここは…何だ?
上を見ると大きな穴が開いていた、見える歯車と機械
まさかここは…時計塔…?

「ハァ…ハァ…この大穴は…?
 ここは…時計塔…?」

地下通路から飛び出したゆき兄が大穴を見る
確かに気になるが今は構っている暇は無い、すぐにここから脱出しないと
梯子に向かおうとするが、ゆき兄は大穴を見つめている

「何やってんだよゆき兄!?早く!」
「…穴…?龍脈…?」

動かないゆき兄に駆け寄り腕を引っ張る
こんなときに何を考えて
するとゆき兄が背中におぶっていたスイカを俺に渡してきた

「行け、たまゆら」
「何言ってんだよ!?ここまで来てまた死ぬ気か!?」
「…そうじゃない」
「じゃあなんで行けって…!」
「…」
714 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:46:58.79 ID:u8McrmQo
ゆき兄は黙った、だがその目には今までと違う、新たな覚悟が垣間見えた
何をする気なのかはわからない、だけど止めなくちゃいけないと直感で理解した

「…いいから早く逃げよう!体制を整えなおせば倒す方法だって見つかるかもしれない」
「倒す方法なら見つけた、だけど今しかない」
「それってどういう――」
『みぃつけぇたぁぞぉォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

壁に空いた穴、その奥から徐々に金色の光が近づいてくる
早く逃げないと…!!

「いいから早く!!」

そう言って俺はゆき兄を無理やり引っ張ろうとする
だけどゆき兄は抵抗する
そうこうしてるうちに黄龍の声と光はどんどん近づいてくる

「ああ、わかったよ…」
「え?」

唐突にゆき兄がわかったよと言った

「やっぱナシだ、逃げよう」
「…ああ!!」

安心して手を離したその時だった
ゆき兄が、思いっきり俺を突き飛ばした

「え…?」
「わりぃな、たまゆら」

スイカを抱えて上手くバランスが取れずに俺は後ろに転倒し尻餅をつく
慌てて立ち上がろうとしたが俺の身体に覆いかぶさるようになったスイカのせいでうまく行かない

「何やって…早く逃げないと…!!」
「ははっ」

ゆき兄が笑った
なぜこの状況で笑えるのか不思議でしょうがなかった
だがその刹那、笑みの理由を俺は理解した

「もう遅いさ」
『ウケイレロォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

ゆき兄が両手を広げた
壁の穴に向かって、即ち、黄龍に向かって
そして、壁の穴から光が溢れる
俺が叫ぶよりも早く、その光はゆき兄に直撃した
715 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:47:57.72 ID:u8McrmQo
「がぁああああああああああああああああああああああああああ!!!」

光、いや黄龍は物凄い勢いでゆき兄へと吸い込まれていく
何やってんだよ、何を…その黄龍を受け入れたら…!
世界が滅ぶんだろ!?それなのに…!?
ただ呆然とし、動けない俺を尻目に黄龍はまるでなだれこむようにゆき兄へと吸い込まれていく
そして、完全に全てがゆき兄の体内へと吸収された

「グッ…がぁぁ…!!」

ゆき兄の身体から黒い炎が揺らめき立つ
それはまるで脈打つマグマのように
全身が震えているのは黄龍に抗っているからだろうか?
一体、ゆき兄は何を…!!

「ク、ククククク、ついに…器を手に入れた…
 もはや封印する者も存在しない…!!手に入れたぞ…!」

その声はゆき兄ではあるがゆき兄ではない
声を紡ぐのは、黄龍
ゆき兄の身に宿った黄龍が、こちらを向く

「手始めにお前を浄化し…
 そのあとゆっくりとこの世界を浄化してやろう…!!」

ゆっくりとこちらに近づいて来るゆき兄、否、黄龍
だが俺に到達する前に黄龍の足が止まる

「こいつッ…!またも俺に抗うかッ…!!
 だが無駄なのはわかっているだろう…!封印が無い以上、我を押し留め続けるのは不可能だッ!!」

頭を抑える黄龍
抗う…?ゆき兄が、黄龍に抗ってるのか…?

「たまゆら…」
「ゆき兄ッ!?」

その声はゆき兄本人の意志で発せられたものと理解した
716 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:50:24.37 ID:u8McrmQo
(推奨BGM) http://www.youtube.com/watch?v=M1sYczhHQ9E&feature=related

「…やっぱり…これは俺の役目なんだ…
 俺が…こいつを目覚めさしたんだからな…」
「何言ってんだよ…?役目って…?」
「…楽しかったぜ…たまゆら…
 もしいつかまた…いやいつかは無いだろうな…生まれ変わったら…今度は普通に友達として…」
「無いってなんだよ!?何する気だよ!?」
「ああ…あいつには…リカには適当言っておいてくれよ…
 俺のことなんか忘れて…勝手に生きろって…」
「何が、言いたいんだよぉ…!」

頬に涙が零れ落ちた
どうしてだろう、ゆき兄の目がとても、悲しかった

「…じゃあな…たまゆら…
 貸したゲームは…お前にやるよ…それじゃ、な…」

ゆき兄は、それだけ言って地面を蹴った
向かう先は、地面に空いた大穴

「ふざけるなァぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!」

スイカを跳ね飛ばし、俺は飛んだ
落下していくゆき兄、間に合わない、だけど必死に手を伸ばす
俺の手に、何かがかすり、無我夢中でそれを掴んだ
強い引っ張られる力、それを押さえ込んで、必死に手を離さないようにする
俺が掴んだのは、ゆき兄のつけた黄龍鉄甲についていた赤い紐

「今…引っ張り上げるから…!!」
「離せ、たまゆら」
「嫌だ…!!何やってんだよ!?何でこんな!?」

泣きながら、どうしてこんなことをしたのかをゆき兄に問う
717 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:52:38.07 ID:u8McrmQo
「…この黄龍は人の手によって抽出された龍脈の気から作り出された存在
 ならば、龍脈の流れに落としてやれば…黄龍は龍脈へと還る」
「だからって何でゆき兄ごと…!?」
「龍脈は深い地の底にある…
 黄龍だけを落としても龍脈に飲まれる前に上がってくる…
 だからあえて器である俺が受け止め、そのまま落ちればいい」
「そんなの…そんなのって…」

絶句し、言葉が上手く出てこない
そんな俺を見て、ゆき兄は言う

「落とせ、たまゆら、それで全てが終わる」
「出来るわけが…」
「…グッ!?」

ゆき兄の顔つきが変わる
そして響く声は黄龍のもの

「馬鹿なッ!この器…!我ごと死ぬ気か!?
 早く引き上げろ!!」
「ッ…!!」
「落ちれば器は間違いなく助からんぞ!?
 さぁ引き上げろ!!」

引き上げれば、ゆき兄は助かる、だけどゆき兄はすでに黄龍を宿している
手を離せば、ゆき兄は死ぬけど、黄龍も消し去れる
どうすればいいんだ、俺は…?どうすればいい?
こんな、こんな選択…したくない…!

「たまゆらー…」

今度はまたゆき兄の声
俺は答えない、ただ突きつけられた決断に迷い続ける

「…1を捨て、10を生かすか…10を捨て、1を生かすか…辛い決断だよな…
 でも俺は昔決めたんだ…でも俺はその意地から1度逃げてしまった…
 もう二度と、逃げ出しはしない、だからお前が気に病む必要は無い」

突然、手が軽くなった
下を見ると、俺の手にぶら下がっているのは、黒い黄龍鉄甲だけ
落ちていくゆき兄、酷くゆっくりと

「絶対に捨てなきゃいけない1なら俺が補う…この身でな…」

そう言って、ゆき兄は微笑んだ
心底、安心したかのような、笑顔

「さぁ、100年の悪い夢は終わりだ、黄龍
 目覚めさせてしまった俺と、目覚めたお前で共に行こうぜ…」
718 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:56:05.29 ID:u8McrmQo
その言葉を最後にゆき兄は暗い穴の底へと、奈落へと落ちていった
手を伸ばしても、決して届かない
言葉を失い、ただ光届かぬ奈落を見据える

「あ…ああああ…ああ…!」

引き上げたのは、ゆき兄の黒い黄龍鉄甲だけ
そこに残る温かみだけが、彼の証
それもやがて消えていく

「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

時計塔に響く絶叫
砕かれた天井の穴から抜けるその絶叫は空へとただ響くのみ
メキリと、上から音が聞こえたと思うと、バキバキと今度は木がヘシ折れていく音
響く金属音、チャリンと、横に落ちた小さな歯車
それが合図、時計塔が壊れていく

「…」

動く気力も起こらず、壊れていく時計塔を下から眺める
全ての始まりの場所が、音を立てて、今、崩壊する
不意に、誰かが俺の首根っこを掴んだ
振り向くと、そこにいたのは…

「高橋…?」
「ゆき兄は、お前らに未来を、希望を残したんだ…!
 それなのにお前が腑抜けてここで死んだらあいつが死んでも死にきれねぇぞ…!!」
「…俺は」
「お前が死にたいなら勝手に死んじまえと言いたいが…!
 お前は託されたんだ…!そのゆき兄の想いを踏みにじらせはしないッ!!」

手に持った、黒い黄龍鉄甲を見た
微かに残る、内側の暖かさがまるで俺に…
ポタリと、大粒の涙が、鉄甲に落ちた
崩壊していく時計塔の下で俺はただ泣き続けて…

壊れていく、全てが、音を立てて
100年の悪夢が泡のように消えていく
何もかもが崩れ落ち、語られぬ戦いが幕を下ろす
得た物、失った物、重さを量る天秤はあまりにも脆く…何も語らない…
心に残る、感情だけが未来を告げていた
719 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/21(土) 23:58:04.57 ID:u8McrmQo
落ちていく、どこまでも、深い闇を
その闇の中で、見えた懐かしい顔

「そこにいたのか、随分待たせたけど…やっと終わるよ
 約束通り、復活の可能性はこれで全部消える…
 …そう悲しそうな顔しなくてもいいじゃんか
 そりゃ本音を言えばもっと生きたいし死にたくはないよ…
 んでもさ、なんつーか…しょうがない…かな…あと思ったより怖くはないんだ
 …託せたから、かな…ある意味最も重い物を背負わせた気もするけどね…
 でも最後に君に会えたよかったよ…例えこれが幻想だとしても…俺はもう…充分だよ」

そして、目を瞑り
静かに、深い闇へと、落ちていく、どこまでも…
720 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/22(日) 00:01:18.34 ID:wuYYpIso
(推奨BGM) http://www.youtube.com/watch?v=OQ6QOyyr8sI&feature=related

翌年3/15 体育館

「…最後になりましたが、邪眼学園高等学校の更なる御発展をお祈り申し上げ、答辞とさせていただきます…
 平成XX年、三月十五日…卒業生代表、白やん」

壇上の上で淡々と卒なく文章を読み終わる白やん
拍手に包まれながら壇から降りる
卒業式が行われている邪眼学園を遠くから眺めてる男が1人いた
学園の前の道端、バイクに腰掛けながらタバコを吸う男

「丁度そういう時期か…ちょっくら寄ってくか…
 ウロついてるの見つかっても誰かの保護者って言えば問題ねぇだろ」

そう言いながら勝手にバイクをその辺に置いてほろにがは校門を潜った

「おお、久しぶりじゃないか
 ついに掘らせてくれる気になったのか?」
「ゲ…てめぇまだ居たのか…?」

ほろにがを玩具を見つけたような目で見つめるのは阿部さんだった
その手は怪しい動きをしていた

「誰が掘らせるかっつーの…」
「冗談だ」
「もー店長あんまりそういうことしないでくださいよ」
「硬いこというな、生徒にはもうやらないよ」
「そーいう問題じゃなくて…」

阿部さんに文句を垂れるのはカナだった
そんなカナを見てほろにがが呟いた

「へー、前よか胸大きくなったな、成長期か?」
「…店長、ヤっちゃってください!」
「待て待て待て待て!!!」
「ハッハッハ、掘りたいのも山々だがそろそろ式も終わったようだぞ」
「んん?」
721 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/22(日) 00:02:43.89 ID:wuYYpIso
体育館からは生徒たちがぞろぞろと出てきた
そこにちらほら混じる懐かしい顔ぶれ

「あ、お前なんでいるんだよ!?」
「おお!ヤチャマル!って何で卒業式で一升瓶もってんだよ」
「祝い酒だ」
「久しぶりに会ったことだし俺も飲ませてくれない?」
「誰が飲ませるか、誰が」
「ケチなところは変わってねぇな、あーあー、セコい人ってヤダヤダガブァッ!?」

ヤチャマルの鉄拳がほろにがの顔面に叩き込まれた

「変わってないのは攻撃の威力もだぞ?」
「よく…わかりました…」

鼻血を垂らしながら引きつった笑顔で答えるほろにが
そのほろにがにハンカチを差し出す手、白やんだった

「拭け」
「よぉ、生徒会長…」
「残念だが、もう生徒会長は引退だ」
「あ、そーなの…」
「もう堕人も黄龍も存在しないからな、力も無くなり今までの生徒会は完全に無くなったよ
 今はとても普通さ、執行部も姿を隠すようなことも無くなった」
「今の生徒会長は誰なんだ?」
「あれだよ」

白やんが後ろを指差す

「会長ー、また尻の部分破れてますよ」
「心頭滅却すれば尻また涼し…」
「意味わかんねぇっすよ…」

それを見たほろにがが笑った

「あんなんでいいのか?」
「あれはあれで有事には割りとリーダーシップがあるようだからな
 何度いっても尻はいつの間にか出ているが…」
「会長ー…じゃなかった、白やんさーん、写真撮りませんか?
 ってあれ…懐かしい顔が…」

カメラを片手に近寄ってきたのはしげるだった
722 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/22(日) 00:03:39.46 ID:wuYYpIso
「オス、久しぶりだな」
「どうしたんですか?」
「近くによったから立ち寄っただけさ」
「…ああ、そういえば白やんさん」
「ん?」
「さっきあっちで喧嘩がありましたよ?」
「止めたのか?」
「止めようとする前に雷雲さんと黒やんさんがめでたい日に喧嘩なんかすんなッ!てしばき倒してました」

ほろにがが目をパチクリさせて
しげるに聞いた

「あいつらが…?信じられねぇ…」
「色々、変わったんですよ、僕らも、あれから…」
「…そっか」
「もう皆特殊な力は無いからな
 そして、アレも無い」

白やんが呟きながら遠くを見た
その方向には時計塔があったはずだが、すでにその面影は無く青空が広がっている

「…」
「なーに懐かしい顔ブレで神妙なツラしてんすか!うまい棒食べる?」
「えび助…」
「これ新発売のうまい棒焼酎味なんすけどね、隠し味にアルコールがケケケ」
「お前酔ってるだろ!?」
「酔ってへん、酔ってへん、なー、透過〜!?」
「そうれす、酔ってへんれす」
「いや、酔ってる酔ってる!絶対酔ってる!
 つーかお前らいいのかそれって!?」
「いーんっすよ、卒業式の日に酔うぐらい正義れすって」

ヘラヘラと笑いながらそう言う透過
その肩をポン、とヤチャマルが叩いた
723 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/22(日) 00:05:25.45 ID:wuYYpIso
「一応、俺も教職だぞ」
「は、はははははは…」
「まぁまぁいいじゃねーか、卒業式なんだし」
「…ま、いいけどな」
「おー、ヤチャさん話がわかるっす〜」
「何やってるんですかー?」
「お、蝶か…久しぶりだな」
「あれ、ほろにがさんホームレスになってまた学園に住み着きにきたんですか?」

サラッと物凄いことを言い出した蝶

「…お前めっちゃ変わったな…」
「そうですか?」
「変わったよ…」
「あ、いたいた、皆〜」
「お、姫じゃん」

息を切らしながら走ってきた姫

「何やってんですか?皆で集まって?」
「怪しい不法侵入者を捕まえてたんだよ」
「仮にも一緒に戦った仲間にその言い草!?」
「立ちショーベンが何を…」
「わぁわぁ!!それは言うな!!それは!!」

慌てるほろにがを見て皆が笑う
それを物陰から見ているのが1人
724 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/22(日) 00:07:37.22 ID:wuYYpIso
「…楽しそうだな…いや、あんなくだらない集まりなんか興味ない…
 無いし…今更俺が顔を出すのも…」

そう呟いていたのはスイカ
だがぞくりと後ろから不気味な雰囲気を感じる
振り向くと2人の女生徒がいた

「ねぇねぇキリン」
「何かなミギー?」
「こういうプライド高い人が慌てふためく姿を見たくない?」
「見たいねぇ」
「それじゃどーん!」
「どーん!!!」
「うおッ!?」

突き飛ばされて転がるように物陰から皆の輪の中に飛び込むスイカ

「うおっ…」
「ハッ!?違う!別に混ざりたかったわけじゃなくて…!」
「ぎゃはははは、いきなりギャグキャラに成り下がってやんのコイツ!」
「…創造主の力を失った俺なんて無力なんだからあんまりいじめるな…所詮俺は凡人…」
「あらら、イジけちゃった」
「あ、おーい!」

桃花が友達から離れてこちらに近寄ってきた

「なっつかしい顔ぶれ〜
 そういえば皆たまゆら君見た?」
「いや見てない」
「じゃあ多分あそこにいるんだよ、皆で行かない」
「ああ、なるほど…んじゃ行きますか」
「いこいこ」

皆はぞろぞろ移動を始めた
校舎の裏へ向かって
725 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/22(日) 00:08:47.54 ID:wuYYpIso
同時刻 時計塔跡地

積み上がった瓦礫を見つめている女子生徒がいた
静かに、瓦礫を見つめたまま呟く

「忘れるなんて出来るか、ばーか…」

後ろからザクザクと何人もの足音
振り向くと、共に戦った仲間たち

「皆!ほろにがさんまでいる!」
「おう、リカちゃん、髪伸びたな」
「あれ?たまゆらは?」
「あっ、何か忘れ物があるとかいって…」
「入れ違いになったか…ま、待ってりゃ戻ってくるだろ
 にしても見事に瓦礫の山になっちまったな…」

ほろにがは瓦礫を見つめる
あの夜、時計塔は崩壊し、瓦礫の山の横に倒れていたたまゆらを見つけた
そして全てを皆は知った
ゆき兄が、全ての絶望を背負って持っていったことも
後ろから、声が響いた

「皆!」
「お、たまゆら!何取りにいってんだ?」
「これ…」

たまゆらが出したのは黒い黄龍鉄甲
ゆき兄が残した、想い

「…一緒に戦った皆で集まれるの、これで最後かもしれないだろ?
 だからせめて…これだけでも」
「そ、だな…」

たまゆらは瓦礫の中央に黒い黄龍鉄甲を立てた
ゆき兄なら今すぐにでも瓦礫の下から現れる気がした
だけどそれは夢、優しい夢
決して叶うことは無いけど、もう悲しむことはしなかった
悲しむんじゃなく、ゆき兄が残した明日を、希望を生きようと誓ったから

その光景を屋上から見ている者がいた
折れた足は完治し力を失ったから以前のような威力はもう無いものの
今だその蹴り技は健在なメチャ強い不良、高橋
最もアレ以来だいぶ真面目になったようで授業にもちゃんと出るようになったらしい
その顔には、優しい笑みが浮かんでいた
726 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/22(日) 00:09:42.43 ID:wuYYpIso
「それじゃ…今から皆でイビルアイでパーティーやるか!
 先手を打って神楽君に貸切にしてもらったから!!」
「ヤチャマル偉い!」
「よっしゃ善は急げだ!!」
「たまゆら君、行こうぜ!」
「ああ、後から行くよ、先に行ってて」
「ちゃんと来いよ!!」

皆はイビルアイに行ってしまった、薄情だとは思わない
わかっている、ここにいたら泣いてしまうかもしれないんだろ?
残ったのは、俺とリカだけ
俺は黒い黄龍鉄甲に向かった

「…この楽しさが、ゆき兄が守ったものだよ
 どこかで、見てるといいな…」

次にリカが言う

「絶対忘れない、死ぬまで忘れない
 それであの世で一生分の文句を言ってやるから覚えとけよっと」

それを聞いて、俺は少しだけ笑った
空は晴天、吹き抜ける風が心地いい
きっと、今日が終わればまたとても普通な、あの頃とは考えられないような普通な日々が始まるんだろう
その普通は、ゆき兄が守りきった物、だから僕らは日々を生きていくよ
だから、今日ぐらいはいいだろう?
思い出に、懐かしいリフレインに身を委ねても、いいだろ?

「それじゃ、いこっか、たまゆら君」
「そうだね、行こうか…」

俺たちはイビルアイへと向かった
最後に振り返ると、太陽の光を黒い黄龍鉄甲が反射してキラリと光った
なんだか、それがゆき兄が笑った気がして…
胸にこみ上げてくる想いを抑えて、俺は前を向いて歩き出した
託されたから、俺は君の分まで生きていくよ、精一杯、君が守った世界で、日々を、皆と共に…



邪眼学園黄龍譚
727 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/22(日) 00:13:05.80 ID:wuYYpIso
思えば4月から始まったなっがーいなっがーい邪眼学園黄龍譚もこれでお終い
辛かったこともあったけど楽しくもあって私は元気です

こんなクソ長い話をまた書いてみたいのですと。
それではお疲れ様でしたの。と
728 :深淵槍裂歓声暮色枕辺涙色番蝶 :2009/11/22(日) 00:22:53.27 ID:ekcTWTs0
半年以上続いていた・・・だと?


ゆき兄長い間お疲れ様です
729 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/22(日) 00:34:02.20 ID:JVEl4eMo
ゆき兄乙!


って、そんなに長期連載だったのかよwwwwwwwwww週間でwwwwwwwwwwwwww
730 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2009/11/22(日) 01:14:35.65 ID:RZf88q6o
ゆきにー乙!

本当に金出して読んでもいいくらいの話だったわwwwwwwwwww
予想はしてたけどやっぱり最後ガチ泣きしたよwwwwwwwwwwwwww

半年以上もの間お疲れさまでした。来週からの新連載も頑張って下さい^^^^^
731 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/23(月) 01:57:18.89 ID:2RIsSYAO
完結&チンコ成長記念パピコ!
732 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/23(月) 10:29:55.07 ID:2fD4o2DO
ちんこうpと聞いて飛んできますた
733 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/24(火) 12:02:34.81 ID:7SGT3.SO
ちんこマダー?
734 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/25(水) 07:37:36.32 ID:dehCGYDO
誰もしないからゆき兄がするそうです
735 :そら :2009/11/25(水) 08:04:05.92 ID:Vnu/M2DO
風邪ひいてやがる



土曜から
736 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/11/27(金) 22:41:58.92 ID:YWPRzeco
しばらく構想を練りますお

その間はたまゆらが代わりにうpるそうです^^
737 :深淵槍裂歓声暮色枕辺涙色番蝶 :2009/11/28(土) 22:36:04.77 ID:Wexrrfw0
たまゆらまだー
738 :出遅れショック坊や :2009/11/29(日) 16:32:30.32 ID:.3zIo6DO
俺がたまゆらだ!
739 :たまゆら :2009/11/29(日) 17:35:02.23 ID:D.xSg9Io
ショックwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
740 :空天未開砕片綺羅点灯剥落彼方 :2009/11/29(日) 18:45:20.91 ID:Abcc3MDO
曲者じゃ!であえー!であえー!
741 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/29(日) 19:02:57.26 ID:CbWbym2o
ちょwwwwwwwwwwショック来てるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
742 :ピュアハート [('A`)]:2009/11/29(日) 19:56:38.82 ID:DtukHcSO
ひどい出遅れを見た
743 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/29(日) 23:17:39.51 ID:H1WrU6Eo
>>741
で、うpはまだですか?
744 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/11/30(月) 10:37:34.09 ID:SQZ2iwDO
>>743
え?俺…?
745 : 【吉】 [sage]:2009/12/01(火) 00:59:22.75 ID:thLyLoko
2010年一ヶ月前記念カキコ
746 : 【吉】 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/01(火) 15:55:19.36 ID:L2.mPgDO
今年最後の運試しか…
747 : 【吉】 [sage]:2009/12/01(火) 16:10:11.27 ID:Nwf8/Qk0
大凶・・・かな?
748 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q [予告的に]:2009/12/04(金) 10:12:17.57 ID:W03lc1go
五眼という言葉がある。
それは人が持つ五種の眼であり。肉眼、法眼、仏眼、慧眼、天眼と呼ばれる。
肉眼は全ての人間が持つ普通の目であるが他四種を持つ人間は特別とされる。
中でも最上位の存在である、天眼は人がその存在を許しても天は望まぬ程の力を持つと言われている。

幼き頃より天眼により常識では理解不能な幾多の事象を垣間見て来たゆき兄。
その力は徐々に強まり、ついに怪奇は現実へと侵食を始める…

「首吊り大樹…心中した恋人達の怨念…?」
「この人形、髪が伸びてるのか?」
「こっくりさんの正体、普通に考えれば…だけど…なぜ目がこんなに疼くんだ?」
「おかしいぞ、何だこの現象…まさか蟲毒はまだ続いてるのか?」
「ひとりかくれんぼ…これはまるで…」
「この道祖神…これはまるで外敵を退けるというよりも、その逆…内側の人間を…」

広まる怪異、止まらない悪夢、押し寄せる恐怖
そして、天眼を持つ者の宿命

「俺は…死ぬのか…?」
「こんな力、望んだわけじゃない!!」
「暴いてやる、この怪異の奥に潜んでいる悪意を」

―これは、呪われし運命との戦い―

「この怪異、見えたぜ」



2010年、恐怖はやってくる
749 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/04(金) 11:57:07.86 ID:cdKnvYDO
なんか予告ktkrwwwwwwww
750 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/04(金) 16:00:30.66 ID:FCAXAOUo
邪気眼がない・・・だと・・・?
751 :そら :2009/12/04(金) 16:11:55.85 ID:eTdyj2DO
肉眼…

肉…
752 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/05(土) 05:42:06.80 ID:GTjiksAO
肉‥

トンカツ‥?
753 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/05(土) 07:23:15.44 ID:ciVOZG6o
ん?呼んだ?
754 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:17:44.39 ID:3WwhnvEo
邪眼学園黄龍譚
-Shining ray of hopeー

??/?? 時計等跡地

首に巻きつけられた彼の両手に徐々に力が入りだし、俺の呼吸を阻害していく。
抵抗する気も起きずに、ただこれは罰だと受け入れる。
彼の瞳は虚ろで、一片の光すらも感じない闇
その口が僅かに動く。

「死んでしまえ…!」

そう、これは罰
どうすることも出来なかった俺への罰…
ごめん、ゆき兄


だから、殺してくれ、君の手で
755 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:20:34.54 ID:3WwhnvEo
??/??

最後の戦いから半年以上が立った。
俺は現在3年に上がり、高校生活最後の夏休みを満喫している。
基本的に長期の休みになると皆実家に帰ったりとするのだが
どうにもめんどうくさくて結局帰るのはお盆ぐらいの時期にしてそれ以外は寮で過ごすことにした。

「しかしやることも特に無いんだよな…」

誰に言うでもなく呟いてみる
心にこみ上げる虚無感、だけどそれは今日に限ったことじゃない
あれから、どこか、世界は色を失っている
最初は小さな違和感、だけど時間が立つにつれそれは見逃せない明らかなズレへと変貌した
ジグソーパズルのピースが1つだけ足りないような、そんな気持ちだ
1人でいるとそれがより強調されてしまう、こんなことなら帰ればよかった

「…はぁ」

ため息をつきながら机の1番下の大きい引き出しを開ける
そこにしまいこまれていた黄龍鉄甲を取り出す。
息を吹きかけ表面についた埃を飛ばし、その装飾を見つめる
眺めていればありありと思い出す、戦いの日々
戦って、傷ついて、それでも戦って…
なのに、どうしてあんな結末になってしまったんだろうな…
もしかしたら他に方法があったかもしれないんじゃないか
いや、何度も考えた、その度に考えるのはやめようと思うんじゃないか
どれだけ考えても、ゆき兄は戻って来ないんだから。
何の気なしに黄龍鉄甲を手につけてみる。
それはもう、何の力も持たないただの鉄甲。

「…ゆき兄…」

机にうなだれる、窓から差し込む太陽の光が部屋を照らしている。
なのに、どうしてだか、俺の目に映る部屋は暗かった。
756 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:22:51.08 ID:3WwhnvEo
??/??

「たまゆら」

懐かしい声が聞こえた。
でも周りは真っ暗で、声の主は見えない。

「何で俺だけが?
 どうして俺だけが死ななくちゃいけなかったんだ?」

そうだよ、何で皆を置いていったんだ?

「お前がもっとしっかりしていれば…
 お前がもっと黄龍について知っていれば…」

…そう、なのかな
俺がもっと知ろうとしていればまた違った結末になったのかな

「お前のせいだ」

許して、許して、俺は…
俺だって…そんな…

「お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ」

言わないでくれ、わかってるんだ、痛いほどわかってるから
お願いだ、言わないでくれ…言わないで…!!
757 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:25:21.60 ID:3WwhnvEo
「お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ
 お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ
 オマエノセイダ、オマエノセイダ、オマエノセイダ、オマエノセイダ、オマエノセイダ」

じゃあどうしろって言うんだよ!!
俺はどうすればいいんだよ!?教えてくれよ!!!

「オマエノセイダ、オマエノセイダ、オマエノセイダ、オマエノセイダ、オマエノセイダ」

壊れてしまったラジオのように、声は俺を責め続ける
堪らず耳を抑えても声は止まない
喉がカラカラで、涙が零れ、全身がまるで鉛になったように動かない
逃げたい、逃げ出したい、聞きたくない、こんなの、嫌だ

「オマエノ――」

不意に責める声が止んだ。
同時に、目の前に誰かが佇んでる気配がした。酷く懐かしい気配。
ゆっくりと顔をあげる、そこにはやっぱり酷く懐かしい顔があったわけで

「あ…」

声をあげようとした時、彼の両手が俺の顔を掴んだ。
その力は強く、頭蓋骨を握りつぶされるような鈍い痛み。左右から頭を万力で挟まれているように錯覚する。
俺の視界に映る彼の顔、その瞳は虚ろ。
全ての光を飲み込む、深淵の闇。
彼の唇がゆっくりと動き、刻む6文字。心に絶望の穴を穿つ。

「死んでしまえ」
758 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:30:13.64 ID:3WwhnvEo
??/??

「うわぁあああああああああああああああああああ!!!」

絶叫をあげ、飛び起きる。
視界には暗い自分の部屋が映っている。
周りを見回してわかったことは今のは夢で、俺はいつの間にか眠ってしまったということだけ。
…本当に今のは夢?
そっとこめかみに触れてみる、軽く触れただけなのに鈍い痛みが走った
荒い呼吸を落ち着かせようと深呼吸をする。
今のは夢じゃない?だけど、だけどゆき兄があんなことを言うはずは無い…
無い…けれど、どうしてこんなに心がざわめくんだ?
ふと気がつくと、暗い部屋を薄っすらと照らす光に気がついた。
光源を探すとそれは俺の右腕、黄龍鉄甲から発せられていた。

「何で…!?」

黄龍は消え去って、もうこれはただの鉄甲のはずなのにどうして光るんだ!?
意味がわからず、パニックになりそうな頭を必死に落ち着かせようとする
頭に浮かんだ、時計塔
龍脈へと通じる穴があった場所、ゆき兄が全てを背負っていった場所
そして、今は瓦礫の山と化している場所
全ての始まりの場所であり、全てが終わった場所でもある。
酷い胸騒ぎ、それは期待からなのか不安からなのかはわからない。
けれど行かなきゃいけないということだけは理解出来た。
俺は部屋を飛び出し、時計塔へと向かう。
暗闇の中をただ時計塔へと走り続ける、肌にまとわりつくじめっとした空気がとてつもなく不快。
普段なら虫の声がするはずなのに、今日は静寂、自分の足音しか響かない夜はとても不気味で
まるでこの先に待ち受ける存在を暗に示しているかのようだった。
それでも行かなくてはいけない、とある種の脅迫観念に苛まされるように俺の足は時計塔跡地へと向かっていた。
759 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:34:20.59 ID:3WwhnvEo
??/?? 時計塔跡地

瓦礫の山と化した時計塔。
その瓦礫の上に、彼が立っていた。
暗い空を見上げ、その手に黒い黄龍鉄甲を携えて。
あの日の姿のまま、何も変わらずに。

「ゆき兄…?」

小さく、彼に向かって問う。
ゆき兄なのか、それともゆき兄の姿をして別の何かなのか、それを確かめるために。
彼は小さく、こちらを向いた。その目は虚ろなる闇。
交錯する目線、お互い何も言葉を発さずに、ただ見つめ合う。
しばしの逡巡の後、彼は顔を伏せたが、それは一瞬
すぐに顔を上げた、その瞳には光が戻っていた。そして言った。

「久しぶりだな、たまゆら」

そして小さく笑う。その笑顔はあの時、ゆき兄が龍脈へと落ちる時に見せたあの笑顔。
全身から力が抜けていき、その場にへたり込む

「あっ…うっ…」

折り曲げた膝に零れる大粒の涙。
神がいるというなら、俺は今全身全霊で感謝したい
ゆっくりとゆき兄がこちらに近寄って来る。

「おいおい、何泣いてんだよ」

呆れたように半ば馬鹿にするようなその口調は紛れも無くゆき兄だった
懐かしい、もう聞けないと思っていた声

「だって…よかった…生きてて…よかった…」

言いたいことは沢山あったけど、これだけしか言えない
ゆき兄は微笑みを浮かべたまま俺を見続けていた
しばらくして少し落ち着いた俺は至極当然の疑問をゆき兄にぶつけた

「でも…どうして…今になって…?」
「いやー、俺にもわかんねぇんだ…
 でもいいじゃねぇか、こうしてまた会えたんだから」

そう言って、ヘラヘラと笑うゆき兄
こんなやり取りが凄く懐かしくて、また何かが胸にこみ上げてくる

「ま、よかったよ
 こうしてまた会えて…これでやっと…」

そう言いながらゆき兄は俺の両肩に両手を乗せた

「やっとお前を殺せる」
760 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:39:15.58 ID:3WwhnvEo
次の瞬間、両肩に乗せられていたゆき兄の両手が俺の首をしっかりと掴んだ
状況を理解する間も無く、その手に力が入り始め新鮮な空気を肺に送り込むことが出来なくなる
冗談かと思ってその手を振りほどこうとするも、まるでゆき兄の両手は石のように俺の首から離れない

「なに…を…!?」

必死に抵抗を続けるもゆき兄の両手は微動だにせず、ただ俺の首を締め上げる
俺の視界に映るゆき兄の顔、その顔は憎悪と狂喜に染まり、瞳は虚ろなる闇が支配していた。

「俺は自分を善人とは思わない、ましてや聖者なんかじゃない
 だから思ったんだ、なぜ同じ器でありながら俺だけが死んでお前が生き残る?」
「それは…」
「不公平だろ、なぁだから今度こそ一緒に死のう」

喉を締め付ける力が強くなる
視界が徐々に狭まっていき、酸素を手に入れることの出来ない苦しみが襲い来る
だが意識を失いそうになる直前に喉を締め付けていたゆき兄の両手が突然離される
地面に崩れ落ち、咳き込み必死に酸素を吸う
だが顔面に叩き込まれるゆき兄のつま先

「がっ…」

そのまま仰向けに倒されると胸にズシリと重りを乗せられたような負荷
視線を上にあげると、そこには虚ろな瞳
馬乗りになったゆき兄が、俺を見下ろしていた

「死ぬべきは俺だったのか、お前だったのか
 今ならわかる、俺たちは共に在るべきだった、陽と陰の互いの象徴として」

感情無い声色で呟き続けるゆき兄
それはまるで神の啓示のように強く心を打つ

「俺たちは共に在るべきなんだ、これからも」

するすると、まるで滑るように俺の首に絡み付いてくるゆき兄の両手
なぜか抵抗する気力が沸かずに首に触れるその両手の暖かみだけを感じていた

「お前も、後悔していたんだろう?
 あの時、共に行けなかったことを」

…そう、俺は後悔していた
風太と同じように、落ちていく君を掴めなかったことに
君だけに全てを背負わせてしまったことに
君が残した希望を生きようと、俺はずっとその感情を心の奥底に押しとどめてきた
だけど、もう嘘はつけない
平和になった日々の中で渇望していたのは贖罪だったんだ
望んでいたのは、ゆき兄が帰ってくることじゃなかった
俺自身が死ぬこと。
761 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:42:20.22 ID:3WwhnvEo
でもそれを君は決して良しとはしなかったはず、だから俺はその想いを必死に見ないフリをした。
それも今となってはもう見ないフリなんて出来ない。
何よりも君がそれを1番望んでいると言うならば…

首に巻きつけられた彼の両手に徐々に力が入りだし、俺の呼吸を阻害していく。
抵抗する気も起きずに、ただこれは罰だと受け入れる。
彼の瞳は虚ろで、一片の光すらも感じない闇
その口が僅かに動く。

「死んでしまえ…!」

そう、これは罰
どうすることも出来なかった俺への罰…
ごめん、ゆき兄


だから、殺してくれ、君の手で
俺はこの死を受け入れるから。
762 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:45:32.09 ID:3WwhnvEo
一瞬、地面が揺れた
その揺れを感じた瞬間、瓦礫が轟音と共に吹き飛んだ
同時に喉を締め付けていたゆき兄の両手の力が緩んだ。
そして俺は見た。

瓦礫を吹き飛ばし、空に立ち上る金色の光を。2度と見ることの無いと思っていた龍脈の気を。
止まることなく、勢いを緩めることなく噴水のように立ち昇り、周囲に淡い金色の飛沫を散らす龍脈。
その光の中から、飛び出した影。
金色を帯びたその身体、闇夜を照らす暖かき光、光り輝く尊き意志の体現。

「ゆき兄…?」

光の中から飛び出したもう1人のゆき兄。
こちらを見て少し笑ったと思うと、俺の首を絞めていたもう1人のゆき兄へとそのままとび蹴りを叩き込む
首を絞めていたゆき兄は吹き飛び、地面をこすりながら転がっていく。
あっけに取られたまま、目の前に佇む金色の光を帯びたゆき兄を見つめる。

「なーるほどな、あれが原因か…」

そう言いながらゆき兄は俺には目もくれずに、吹き飛んだもう1人の自分へと近寄る。
吹き飛んだゆき兄は立ち上がりまるで獣のように上体を低くして唸り声をあげる。
あれは、ゆき兄じゃない
本物は、龍脈から飛び出したほう…?

「お前のせいだ、お前のせいだって…
 ニセモノとは言え俺と同じ顔でそんな情けねぇこと連呼するんじゃねぇよ!!虫唾が走るわ!!」

叫びと共にゆき兄はニセモノのほうへと飛び込んで行く
ニセモノのゆき兄はそれを見て叫び声を挙げた

「ウオォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

その叫び声には聞き覚えがあった
常人なら失神してしまいそうなほどの怒りの咆哮
溢れ出す怒気は、心の底からの恐怖を呼び起こす
それはまさしく、災厄の元凶であった狂った黄龍の咆哮

「お前、しつこすぎるんだよ」

呟きながら、ゆき兄は右腕を振るった
黄龍鉄甲も何もつけていないのに、その右腕は光り輝いていた
その輝きが叫び声をあげたニセモノに腹部に叩き込まれた
いや、正確には叩き込まれたのではない、ゆき兄の右腕は腹部を貫いた

「ガァギ…」
「消えろ、黄龍の絞りカス」

言葉と同時に、ニセモノの身体が崩れ落ちて行く
砂金のように煌く砂のようになりながらサラサラと地面に落ち、風に吹かれ流れていく
全てが風に吹かれて消えていったのを確認するとゆき兄は踵を返して、立ち昇る龍脈へと戻っていく。
763 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:48:04.13 ID:3WwhnvEo
「待って、待ってよ!!」

ゆき兄は振り返らずに、歩みを進め続ける。
必死にそれを止めようと叫び続ける。

「馬鹿野郎!!どうしていつもそうなんだ!!
 何で何も言わずに1人で行こうとするんだよ!!俺たちがどんな思いで…!」

そこまで叫んだ時、ゆき兄の足が止まった。
振り向きはしないが、俺の声は届いてるようだった。

「今度は、今度は俺も一緒に行くから…だから…!!」

また、涙が溢れてくる
嗚咽が入り混じった声で必死にゆき兄を止めようとする。
そしてゆき兄は言った。

「俺はそんな思いを抱かせるために黄龍と共に身を投じたんじゃない
 明日を、未来を生きて欲しかったんだ」
「そんなのわかってる!!わかってるよ!!
 だけどそれでも俺たちは…ゆき兄が…誰一人欠けずに生きていく未来を歩みたかったんだ!!」
「…」

ゆき兄は何も答えなかった。
しばらくの沈黙の後、ゆっくりと顔をあげると
そこには、ニセモノじゃない、本当のゆき兄の顔が

「望んだ形とは違うかもしれないけど
 その未来はちゃんと歩めてるさ」
「ゆき…兄…」
764 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:50:47.76 ID:3WwhnvEo
ゆき兄は笑っていた。その笑顔が全ての答えのような気がして
俺はもう何も言えなくなって、ただ泣いて、泣き続けた。
泣き続ける俺の横でゆき兄は語り始めた。

「龍脈に落ちて、俺は龍脈の意志…いや、大地の意志かな
 まぁ人間からすればもっともっと大きな存在、理解出来る範囲の外にいる存在に俺は出会ったんだ
 そして俺は龍脈に同化した。
 …身体は失ったが俺の意志は残ってる、短時間なら龍脈の気で今みたいに実体化できる。
 共に同じ大地を歩むこともう出来ない、だけど俺たちはいつだって一緒だ、欠けてなんかいないさ」
「…」
「さっきのは黄龍鉄甲に僅かに残っていた狂った黄龍の力が
 お前の頭の中を読み取って作り出した…ま、黄龍の最期の悪あがきって奴かな
 しかし、あんな情けない俺が出来上がるとは…名誉毀損で訴えるぞお前…っと、そろそろ時間か」

ゆき兄の身体が薄くなって向こう側が透けて見え出した
それは決して変えることの出来ない、悲しい現実。
ゆき兄は徐々に勢いを失い出した龍脈へと歩き出した
その後姿に、俺は声をかけた。

「ゆき兄、俺は…」
「離れてても俺たちは一緒だ、だから生きろ
 誰のせいでもない、それぞれが出来ることをやった結果なんだ」
「…」

もうそれ以上何も言えなくなった
ゆき兄の身体が僅かに震えてるのがわかった。

「たまゆら、お前に会えてよかった
 お前はずっと罪の意識に苛まされていた俺を救ってくれたんだ」
「俺は、生きてていいの…?」
「当たり前さ…共に生きよう、この世界で
 いつかまた会える…時までッ…」

ゆき兄の足元に、一粒の雫が落ちるのが見えた
それは普通なら見えないけど、透けていくゆき兄の身体だからこそ見ることが出来た

「…俺も、ゆき兄に会えてよかったよ
 ありがとう、それで…元気で」
「…最期に、面白い物見せてやるよ」

ゆき兄が薄れ行く右腕を空高く掲げた
その手の先から金色の光が空へと昇り、闇夜を駆け抜ける
暖かな、闇を照らす光、まるで流星のように、とても美しく
765 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:53:16.21 ID:3WwhnvEo
その光は不思議なことに、世界中どこからでもどんな場所からでも見ることが出来た
全ての命を平等に照らし出す光、地球を包み込む優しい光
その瞬間、世界が全て繋がった気がした
でもそれは一瞬なんだってことはよくわかってた
それでもその瞬間、世界に希望が生まれた気がした
きっといつか、この世界は…僕たちと同じように…

「…ゆき兄?」

気がつくと、ゆき兄の姿はもうどこにも無かった
龍脈の穴もさっきと同じように只の瓦礫の山に戻っていた。
静かに、俺は瓦礫の山に背を向けて歩き出した。
空に煌く希望が、暗い世界を優しく暖かく照ら続けていた。



―共に生きよう、この世界で―
766 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/05(土) 22:55:07.07 ID:3WwhnvEo
??/??

「…ほろにがさん…またどこか行ってる…」

ゴミなどで半壊したほろにが探偵事務所
ホウキとチリトリを持ってどこから手をつけようかウロウロしている男が1人

「…はぁ…どれから手をつけたらいいかわかんないよ…」

ため息をついてうなだれているとドアが乱暴に開かれる

「にゃははは、今帰ったぜショックー」
「また酔っ払ってるんですか!!いい加減にしてくださいよ!
 それに今何時だと思ってんですか!」
「いいじゃん別にぃ〜…ぐぅ」
「そこで寝ないでくださぁぁぁい!!」
「あふぁぁ、いいじゃねぇか…次回作は俺のスピンオフ作品らしいぜ」
「え?マジですか?じゃあ今度こそ俺も大舞台に立てるんですか?」
「そりゃ無理じゃねぇ?だってお前の名前は…」
「はい…出遅れショック坊やですから…」
「不憫だな、にゃはははは」
「それで次回作のタイトルとかわかるんですか?」
「宇宙探偵ほろにが〜激闘マンボラス〜とかなんとか」
「うーわー…それ絶対期待できませんよ…」
「ま、お前は期待したところでどうせ出遅れるし」
「…チクショウ」


邪眼学園黄龍譚
完全終幕
767 :そら :2009/12/06(日) 00:41:45.05 ID:PydZh6DO
お疲れさまでした
768 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/06(日) 23:58:44.90 ID:.OKoKjko
ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwショックwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

出遅れるにもほどがあるわwwwwwwwwwwww
769 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/09(水) 23:52:44.80 ID:tex7QnAo
最近やることなくて暇で暇でしょうがないな
面白いことないかしら

めんたま飛び出て脳みそ炸裂するぐらいおもろいこと
770 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/10(木) 02:21:46.30 ID:oqjQncDO
>>769
ペプシあずきイッキ飲み
771 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/10(木) 09:17:44.51 ID:mmJXIcSO
>>769
ここはパー速だぜ?
安価だゴルァ
772 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/10(木) 20:25:47.94 ID:Az2lcAAO
メントスを丸飲みしてコーラ一気飲み!!
773 :たまゆら :2009/12/11(金) 20:22:41.67 ID:ozA4z.AO
あのゆき兄がついに動く・・・


これはifの世界。
就職をするゆき兄がいるというありえないパラレルワールド。
数々の世界を冒険し、ゆき兄が成長(?)する物語。


【ゆき兄が就職活動をするようです】(短編)


近所公開
774 :そら :2009/12/12(土) 14:25:57.27 ID:9Q6TWcDO
きた…!何かが…!
775 :ミギー :2009/12/12(土) 17:33:37.03 ID:f3GjPQDO
ペプシあずきマズイ
776 :ピュアハート [('A`)]:2009/12/13(日) 02:32:28.58 ID:.IX9MkSO
>>773
近所公開…?
777 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:38:29.77 ID:F4kkPFMo
【ゆき兄が就職活動を始めるようです】
*この物語は、CLANNADベースで作ってあります。知らない人は全くわけのわからないものかもしれないので悪しからず。
*また、数年前にやった某AAの物語をもとにした構成ですので、知らない人も悪しからず。


ある日のこと・・


| /  |              ! !   !!       λ  ! ヘ   }
|/  !       !    .|!‐= ミト!、 ! !      l !_ ム--ヘ― !
    !.   !   ヘ    .!ヘ Lムミヾミ|ュ!ィ. ノ  ゝムニ|ィ≦ニミ,,!  !
     !   !   ヘ   kィ'ヘ|γ c ヽ ヘ     lγγ c   `ト,/
.    !   ヘ    ヽ |.ヾ .乂_リ   ヘ   !.  弋_ リ  〃
.    ヘ    !ゝ    \  ゝz -'"     \ !  ` ト  ィ/
     ヘ   ! \   !.                   /  /
      ヘ .|ゝ  \  ヘ.           ,       /,,ィ"! 
       \! \ ト ト ヘ         l      ''"   /_/
.           ヽ|ヽ ' !\       ____    し /  ィ
              ! ハ \    て~  ̄ ̄ ~Y    / /!/
               !  \ ヽ、   ̄ ̄ ̄ ̄  / / 
                 ,ヽ| 丶、     ィ .| /.、
                /  |   ゛ -- '"  |'   !
              /   ./|            | ノ  \
ゆき兄「そろそろ働こうかな」
778 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:40:09.39 ID:F4kkPFMo
     / '               ,、 ,、           ヽ
    //               厶∨;ム           ',
 _,.イ _/        '   /  .:/   "´|               l
 ̄  /         |   .:{   .:::l     l::.   /          |
   '   ,    l  .::l   .:::li  :::::|    ,' :::. , イ    j:   l |
.   l  ::l    | .::::ト :::::ハ .::ノ|  、 ,/:::./ i  .:,':::   ,' l
.   |  .:::| :    l.:::::::|_ヽ_;;! ィく.::::!  `/::メ、_  | .::/::::  / ,'
.   |  ::::! :::.  ハ::::::l ´丈≠ミ\{  /イ テ≠ミ!、:::/::::::  / /
    l  ::l| ::::::..  ヽ::レイ_j:::::::::}     !_j:::::::::>∨:::::  / /
    ! :|ヘ :::\: .   ヽf代 ::::_rソ     { ::::_rソ jツ::: / /   
    ヽ、i. ヽ:::::::\:..  \ゞ-‐′      `‐- '/.:::/ f /
.     `  \::::.::`ヽ、 __ \_    ,    ∠-ァ‐'´   ! {
         ヘ、\ :::::: ゝ ̄   tっ    ,.イ:::.   N
        /   .:::::`ゝ: / `ヽ ヘ     ィ<::::ヽ::..:  ハ
       ,'  .::::::.:/ l/   ,/ /´>< |   \:ヘ::::..  :',
        !  .::::ル'  ____ ィ/ '  / ,!、 |、_  `ヽ:::.   !
        !  ::/V丁 .:.:.:.:. !     ' ツ  ト、-,.:ヽー-ヽ::   |__
         |  / |│.:.:.:.:.:. |    f′   7 .:.:.:.:.:.:. ',:   !'.:.>、
       /゙l  ,'  l|│:.:.:.:.: |    /-―-、/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i: //  ヽ
      l. l  !   |│ .:.:.:.:. l   /二ニヽ/.:.:.:.:.:.:.:.:.: /| /'     l
      |  ヽ{   |│.:.:.:.:.:.j    {.:.:.:.:.:.Y.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ィl/        |
桃「・・・・え?」
桃(どうしたんだろう・・・頭打ったのかな?)
779 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:41:10.81 ID:F4kkPFMo
            /   ,,,,,,--------,,,,,::.. \\    \
          / .:::::/  ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,ヽ  \ヽ    ヽ
         ./ , .::::/ ,,,,::::::::::   ヽ   "\:::: ヽ o-,,,  .ヽ
         / ./:::::l .,,-::::l:    ........\:::::::ヽヽ:::::  リヽ .ヽ,  ヽ
        ./ .l.:::::lr: .....ヽ..:::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::lヽ:::::  l ヽ,ソ  .ヽ
       ./, .ハ  .l .l::::ト:::::::ト::::::::\::::::::::::l-ヽ::l\:::::  lノヽ\  .ヽ
       l / /l ::::l:::ト:::l ヽ:ヽ\::::\-_;;;;;;;;==リ=,,ヽ::::: lン''ヽ ヽ  ヽ
       .l/ ./ l .::::l::l\l-,ミ;;ヽ "--ニ,,,='iぅ。::::ハソ.l:::: .lん'ヽ ヽ::  l
       .l '''t .ヽ :::h.l ,,====,゙゙-      .し:::ンリ .l::::.. lゝ)リ>.ソ :::: l
       .l ::::l''l'ト ::ヽ'l:l ぅ。:ハ        --"" .l::::: l 'ン::::::: :::::: l
       l ::l l l\.::ヾ.゙ヾ-ク;;  ,         .l::::::l:::::::::::::::: ::l::: .l
       .l ::ll,,l .l:::::'トヽ,, ""   .,,,--'''''''i    .l::::/i:::::::::::::::: ::l::: .l
        l ::l :ヽ!::::::::l:::::ヽ    ヽ,   .ノ    .イ::://:::::::::::/::: ::l:: .l
        .l :ヽ :::::l,::::::ヽ :ヽヽ ,,,   ゙゙ -''   //::イ/::::::: /:::::::ハ:: l
        .l :lヽ:::::ヽ::::::::::::\::::::"''r--,,,,, ,,,-''' // l/:::::: /l::::::/ l./
         ヽl ヽ:::::::ト :::::::::ヽヽ,::::::l::::,-l    ソ  l:::::: /./:::::/ l/
         丶 ヽ:::l \:::::::::::|''::::/ ン,,イ   '  /::: / ゙゙゙゙---,,,,,,,
             \l  \;;;-l::::/-''"   ,,,  ./ ヽl     / ,ン--,,
              r-rr''''  .ソ/;:==-,,,,''' '''ン   .丶   / ./  /-,,,
             / l l    ./',,,----,,'''''ン       ./ ./ /    l
            /| l .l   ./",,---,,,,, 'ン       / ./ /      l
           / | | |   ./     ./      / ././       l
神様「いいわ、その願い、叶えてあげましょう」
桃(誰!?)
780 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:42:24.96 ID:F4kkPFMo
          _,,,,,---―--ヽ、
      _,-―'"    .:  :::\::::::: \ 
    ,/       ::::: :::::::::::\::::::::\ 
  /    /   :::::l::::::::::::::::::::\:::::::::ヽ 
  / _.   │  :::::::::::l:::::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::l 
 l::/     :|  ::::::::::::ハ:::::::ト、:::::::::::l::::::::::::l 
. lハ   、 ::|,. :::::ハr+キ''l''' リ::::::::::::l::::::::::l
.  | :::l::::l :::ハ|ヽ::l リ"''(゚i;。广' |:::::::::::l::|::::l 
   l :l::::::l:::l《゚iiハl    ー' υ |::::::::l:::|::/ 
   ヽlヽ::iVヽ.''"          レi:::l::::リ
     ヽヾl:::ゝ  ' _       ノ レ:::リl 
      \、ヽ . '- '     ,イ::/
          ヽ,      _,,l:/-┐
..             ̄'二〕 |ヽ   l 
          「 ̄  .|   | l   / `ー― 、
.           | ヽ i/.ノ_,,-'' l/       \
          レ/. ト―l              ヽ
        / ヽ .|;;;;/       /       ヽ
.       /    .ヽレ゙        /          l 
.      /                l .l           l 
      ハ                ll         l 
兄「本当か!?今まで働くことを拒否してきた俺に、チャンスをくれるというのか!?」
781 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:43:31.95 ID:F4kkPFMo
          〆 /!-‐l:::l :::::/!::::::l:::::::::::::::::::::',:::: ! :::::l::',:::::l ヽ、__/:',
         ト、// |-‐::!::| :::::! l :::::|'i::::::::::::::::::::i:::::l゙i:::::il::i:::: ! ,>',:::: |
         /´:::ゝ、i〉 :::::!:it::、_i i::::::i \::::::::::::::!:_;|-!‐!l::!:::: !イiヽヽ: |
           i .::/ //∧ :::| ! \ !`ヾ、:ヽ. \::::/i|ム‐|、i:/!:: | ! ', ヽヽ!
           | / !/ i::::〉:::ト:! ,ィ≠ミ:ヽ` 丶   ' ゞ;ィ=≠ミゝ|::: l,.| i::::i |
        i i、_」i |:/∧:::゙i`代〃 ::ハ         fヾ〃:ノ/ !::: !^l |::::ソ!
        | ::i `'\! | i´t、゙i. ゝ- '    ,    ゞ-‐' ' |:::ム./'"::::::| |
        l ::| ::::::::ii、!ヽ `ヾ_ゝ    、__,..__,     /::/´::::l:::::: :! |
           !:::i :::::::::i:ヾ. `  `‐ 、_          /!:/:::::::::i::::: / |
         ! :|i :::::::ヾ ゝ       ̄ ヽ     .イ:::/:/::::::::::/::: /:: l
         | :i l ::::::::::ヽ \.       `i _, < .|`メ/::::::::/::::::/}: /
         ヽ.! ヽ :::::_;; ゝ;:〉=-. ,_._   /     メ i:::::::/‐-、/ レ
          rヽr‐t´  ./:::::::::::....` ‐、/_    __,,} ヽ:/     ̄!`i‐、_
        / ヽ y´ ̄ ̄`"‐-、 "ヾ:::::..〉 `  ´  |   `    .| } | `ヽ
       /   Y        弋‐--y'_,,-‐‐- ,,_|       / / i 、  \
       !    /          `  } -‐‐‐--==l      / / /  ` ‐  \
神「だけどあなたはすでにこの世界から働くことを拒絶されているわね。あなたと仕事の因果はつながらない運命。どうやっても就職できないのね。しかたない、拒絶しない世界を探すわ。それくらい私には造作もないこと!!」
782 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:44:24.32 ID:F4kkPFMo
                      ,. ―‐- 、
                   /´`       ヽ、
                      ,'        、} ト.
.    rr、                ,'    '   ,.イ゙V }
  ,イ川、             ,' .!  ,' .i  〈_,イ「l/        フ ヽヽ         /
  |  !」_          / ,'::! .!,': ::! .:.:| ハ〉|     / J ヽ     ̄ ̄ ̄   Λ_丿
  l  //```ヽ、       l:i::!::! :::l:::l :::l ::::,`:!:i::|
  `ーl_{     ``丶、__ _从{::|:::::l::,':::::| ::::,':::'l::l::!                 ,.┐
     \_          `/ Λ!::/:ノ!::/!::ノ::/ノノノ                 /フ′
       `¨` ー- 、_   / /  ´ ´ ''´ '´7´/´ ̄`¨¨`¬……――''"´`>ーァ'´,イ__
             \! ..___    / /               / /  '´,.-┘
                 ...___   ̄´ /     ___ ___      {___j--‐'´
              |      ̄ ̄´ ´厂 ̄´        ̄`¨¨´
                /         ノ'´
                }___、      |
            /     ``¬―v‐'
            /        ,.   |
          //        /     !
         //      ,'      '、
        / /l         !        ヽ
        \,'|         !          >
神「じゃあ、ぱぱっビューンといってらっしゃい〜」
783 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:45:34.44 ID:F4kkPFMo
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784 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:46:46.66 ID:F4kkPFMo
.   /       /    . /. : : :/ |: : .  . : : : : :  .i: : :  i  ヘ: . :i
   /      . ′ ___:/. : : /__  l: : : . : : : : : : : ,|: : : . l'   l: : .|
  ′     . : l   . : ': : : /`丶\!: : : : : : : : : : : ハ: : : : ,′   '. : !
  {    :/  : : l   : :7: : / __  l: : :A: : : : : : :j '. : :/____!: L
  |   . /  : : : !  . : :lj: /三 =- 、、l: : ハ: : : : : : ト、 |: :j_.. - ´ ̄|:「
  |  : ′ : : : l  . : lハ: l   __  ヾ、:| ハ: : : : :j   |:/_,,,,,,,,,,,,__ |!
  |  : :|  : : : :l  .: : :l:| リ   (じ)  }!`  l: : : :/ /'"´    \ヽ
  | : : :!  : : : :.|: : : : |:!、\  `´      l: : :/     r≠,   ヾヽ
  | : : :|  : : : : l: . : : : !:! >`ー… -__   |: /  、   ゞ-'′   〉
  | : : : ハ : : : : ヘ: : : : :l:|            '′< 、\、_      /´
  |: : :/ i : : : : : ヽ: : : l:|               ` \` ─ ' ´  /
  |: :/  ハ : : : : : : ト : : ト、         /              / /
  |:/   ハ : : : : : : i丶: | \       /             //:
  /′   ヘ : : : : : ハ ヽ!        |             / イ: : :
兄「はっ!こ、ここはどこだ!」
神(ここはあなたの世界と似て非なる世界。まずあなたには働くということを体験してもらうわ)
兄「頭の中で声が・・・とゆうかなんで俺裸なの!?」
神(あ、服の転移忘れてた)
785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:47:54.78 ID:F4kkPFMo
;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::...........  .l
;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ;;;;;:::::::::::::::::::::::::::::::..........ヽ.    ...l
;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::;:::::::::::::i;;;;;;;;;:::::::::::::...........    ヽ..  ........|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::;l;;::::::::::::|、;;;;;;;::::::::............::::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::l
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::;;|;;;;;:::::::::l:ヽ;;;;;;:::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::l;:::::::::::::::l
;;;;;ヽ;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::;;;lヽ;;;;::::::l:::::ヽ;;;;::::::::l::::::::::::::::::::::::::::::::l;:::::::::::/
;;;;;;;|、;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::;;;;|:::ヽ;;;:::::l,,.-‐ゝ-::::::|::::::::::::::::::;::::::::::::::|;;::::::/
;;;;;;;l:ヽ;;;;;;;;;;;;;;、::::;;;;l:::;;;ヽ''':;l/,;;;;_,ヽ、、l::::::::::::::::;;::::::::::::::l;;;:::/
\;;|::::\;;;;;;;;;;ヽ;;;;;K_;;-i;'/‐''' ̄``ヽ\i\:::::::::;;;:::::::::::::::|;;;/
:::\i:::::::\;;;;;;;;;;;;;;/::: 'l/ /⌒、). ヽ:/:)/:::::::;;;;;:::::::::i;::::l;;/
:::::::::ヽ::::::::\;;;;;;;;/ ::   、、_,,.ノ  V/:::::::;;;/;;;::::::/,:::/;/
::::::::::::::::::::::::::\;;/ :  `丶、 __,,, イ::::::::::;;イ;;;;;;:::::/;;:://
::::::::::::::::::::::::l ::::ヽ         /:::::::;/:::i;;;;;;:::://|//
::::::::::::::::::::::::l ::        /:::://::::;;};;;;;::::/、_l/
:::::::::::::::::::::::,|         /;-'''::::/_//l;;:::/: : /``ー、、_
::::::::::,、‐‐-`'___,,,,、、   /''´...:: /:|;;;;/:l/ヽ: :      ``'ヽー―---、、__
:::::::/-、`--ー‐-='、ヽ     /: l;/: /: :l : :ヽ
:::::::l (、       ノ l   /:/: : /: : : : : l: : ヽ
\:::ヽ、二_‐_ー_-_,,,,ノ /::::::/: : : : : : : :  l
::::::\:::::::::::..     /::::::::::/: : : : : : :   l
兄「なんだそのドジっこ、とゆうか待てって!こんなんじゃあ刑務所で強制労働しかまってないだろうがああああああああ!!
って人キター!?!?!?」
786 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:49:14.54 ID:F4kkPFMo
                             //  \ l __\-――‐- .
                                ,|| -―‐.:.ヘ|.:.:.:,、:.\:.:.:.:.:.:.:.:.`丶
                          /.:|!.:.:,.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.`'´l\´\.:.:.:.:.:
                            /,. -ァ|'´/:.:.:/.:/.:.:.:.i.:.:.|:.:.:.\.:\.:.:.
                         ///.:.:!/.:.:.:.:/.:.:./.:.:.:.:.:';:.:.|:\.:.:.:.:.:.:\
                          〃 /.:.:.:..:ハ:.:.:/.:.:.:.ハ.:.:.:.:.:ヽ|.:..:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:
                      /' /.:.:.:./.:.:.:.:V:.:.:.:.:.l.:.:!.:.:.:.:.:l.:l.:.:..:.:.:ヽ.:.:.:.:.:.
                          /.:.:.:./.:.:.:.:.:/、.:.:.:./l.:.|.:.:.:.:.:|.:.l.:.:}.:.:.:.:.\.:.:.:
                            l:.:.:./.:!.:.:.:./.:l.:.`メ、レ'ヘ.:.:.:.:|、:ト、ヽ.:.:_ - 、.:.:
                            |:.:.:.|:.:|:.:.:.:|:.:.l:.:.メ 、 \ V:.:.| ヾ-‐ ´ \.:.:.:.:
                            l:.:./l:∧.:.:.|:.:.l:.:.l弋歹` V:.|   弋Z歹\:.:
                , '⌒ヽ、        レ  リ l.:.:|、ハ {      ヽ|          ,ヘ
            /    ,. -ヽ             |:.:.| \V     i        /_ノ
     __     | 、    ノ__           ヽ:l  ハ     '       /:.:./
 /´    `ヽ._/   `ー/´  ヽ._           / \  r_==-、     ,.イ/レ'、
/            \  /       / `ヽ、      /   l >'´/ー-‐'  /'   r
{        ,.     y′     /   /ヽ ̄ ̄ ̄ 7 , -、| `''ヽ、 _ .. ´ /,    ハ
丶. _ .. -‐ ヘ    /       /    /   }    / /  |}         / {    ハ
          ヽ            /    /   l、    / /   /|、      / 人  ,′
           ` ー、                ハ   ,′/ i / l \.    / / / ノ\
            ヽ.__         /! |  l /   l \ ト、 `>‐ュ' ´  / 〈
              / 丶--―‐-- ´ /  ト、 |/    l   ゙| \{  } //   ヽ
「・・・おいバタコ、頭が可哀想なやつを見つけてしまった。服を着てない。」
787 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:50:40.56 ID:F4kkPFMo
      /   / |l          /       〃\ \
     〃   /  {{ / ' / /       /' \ ヽ  '、
     {!   /     ∨ / / /    \  ヽ ヽ   }
.         ,' / 〃  l  {  | j{  {   ヽ.  }  }   l│
        | :| |l  | |  l __| ハ. ヽ  -}─ト 、.,'  j│
        |/| |l  | |/j 从〈 ハ   \ 从ハ /  ハl
        |l | |l  l:ヘ ル≠ミ.{  V\い/行テ心l / l:|
        lハ.从   ヽWうト-ri`      iトー::ri }i/  l├──- 、
          ∨\  ヽ{V必.j|    ,    ゞ込ソイ'  l│-=、   >
            /l | |\_>ゞ'´        '' /l   l│ '´  /
         く  l | |  ∧     ` '     /l    l│  /
         `ーヘV   l |> _        イ|    l 厂 ̄
            |l     |/^┌}>‐-<〔┐|l   //
            |l   l |   ノ}  ̄ ̄ ̄ {z|l    | l
            |l   | |二ノ7、__r、____ 人|l    | |
            |l   | | //  .(ヽ/入   |l    | |‐-、
          /|l   | |,//  /゙>'´xく.  |l    | |  ヽ
         // |l   | l'/  y(^く/スヽ\ |l    | |  ,厶
          | '⌒|l   | |  〃>'xく\》ヽ l.|l    | |  /⌒|
「あらあら、そんなこと言ってはいけませんよジャムおじさん。怯えてるじゃないですか。
    きっと何か事情があるんですよ」
788 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:52:22.96 ID:F4kkPFMo
                      ,. ' `-'  ̄`'ヽ,
             , ―ーー-.,  /        ヽ
           /'`/ ̄⌒\V/ : / ̄      ゝ
          ///::      |v: : : :           !
         / //:::::::     lγ'/           ヘ
       ,-ー'  l l::::ヽ::::    /::{//  : : :         l
       | l   ::ヽ:::::|::::::   /:l l::l: ハ : :/l/l:    l  | | 
       | !   :::::::::::|::::::   |::l 'l::ハ: ハ: :l: :     : ハ |  l
      ∧ヽ  :::::::::::|::::::   l:::}: 'l  v l:ハ: :   : :/:ヽλノ  
     /ヾ ヽヽ :::::::::::l:::::::  l:::::::八'ヾ ___l l: :  ソλ: : ノ '
    ハ \ \\:::::::::}:::::  l:::::::彡 `''` l::|: /ノ7' l/
  //\γ  \`-- l:::::  l:::j`     l:::::::  |
  / /_ - /l__`'- __`' l::::  lr       l::::::  |
 l F- ' ` / ミ-:/  /''kl::::   ヽ        l:::::: l    
 | ι   く/  l ̄ ハ  l:::   l        |::::: ヽ
 | |    ミミ / / ヽ'|::    |       |:::::  ヽ
 | |     | K<   ヾ:::   |        {:::::  ヽ
 | |     l  | `    |:::   ト ,       ヾ::::::  l
 | |__-- ` ⌒`'''ヽ  / !:::   l ヽ      ヾ::::: l
 レ'   ,.--- ..., トv'`   !:::: ト-ミゝ      ヾ:::: l
  | ,.-`      lソ|  /ヾ:: |  l>'       ヾ:: ヽ__ ,...,_ 
./`<        | ハ__ヘ:::::l::  '--'ーー`' ,_    ヾ:     ,_ ゝ カ
ヘ_|,.-`------`L_|l,,___ |::   ,, ヽ \ ヽ   ヾ:-`''''' ̄
兄(くそ、くそ、人生終わった。手で隠すには俺のピーはでかすぎた・・・恥ずかしい・・・)
「おいバタコ!今俺のことおじさんっつったよな!?俺はまだピッチぴちのお兄さんだ!!」
「はいはい。この子、このままだと捕まってしまいますね。連れて帰りましょう」
「おう連れて帰ろう。そんなことより俺はお兄さんだ!!」
789 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:53:58.53 ID:F4kkPFMo
/  '|!i'',., .i,.  |      |l      |i  |l   /  ll   /  l|   i|      l|
    '|!i'',., .i,.  |  /  |l      |l  |l       ll       l|   l|  /  l|
   "'" "'"''。 |      |i  /  |l  |l   /  ll   /  l|   i|      l|
,. ,.,       .|  /  |l      |i  ,.iL____,,jL____,,i|,.、  l|  /  i|
  ,.;i;';、,,   |      |i      |i//             ヽ \ l|      l|
,.;;:。;:;:;:;;:;;、  |,_______|l,_______|l  l' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l,:.:`l|,_______l|,_
,.;。;;:;;:,,.;:;:;;:!"',|llillilllllllllllilllllliillilllllllil,; / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\,llillilllllllllllillllllillll
;::、;;:ll/。;:;;,.;:; ;;; ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
,.;;:。;:;;::、;;:。;:;,,'.; ,. "  ,. ,  ,。 ,.,  :   ,"  ,. ,  ,。       ., :  .,  ,  ,.,.
,.;,。、。;:;:。;:;,;;::、;、 ,. "  ,. ,   ,,i'====ー=============ー=========
..:,.;;il ill。;:;;;:::、;;:。;:;,,    。:  ,,i'
..::、;|.;il|:。;:;;;:::;;:。;,.;;.:.,,   .,  ,,i'
..:,.;;.i:.:.:。;:;;;:::、;;:。;:,,      ,,i'
790 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:55:59.19 ID:F4kkPFMo
            〃   __ ∨ ,,    、||
            |! . '´  `''´      |ト、
         .イ´   〃  |   ヽ.  |! \
.      / |!  /:.:/ //'   ::', j!    \
      / /  i! .///  j/|  i:::.V     ヽ
.     / /// V//|  / !/| |j::::ハ  '.   、 '.
    / /:/'  ///」L./.ノ |  j/」/Li.  ト、  i::. '.
    ,' /:/:   i//´! 7 /  ! / j.:厂',`ヽ.   !::: i
    ! :i.:.!:.   |/ x|/ニ/、 ! / ´レニ、ハノ!   i:::i !
    ! .!::|:..   |〃うCハ  j/   うCハ ノイ  j::ハノ
    ヽ!::|::.   |ハ!{::し:::j      い::::リ ノ ノ// /
     j/ ト、::. |  ゞ''゚~    '   `゙゚''′イ /イi〈
    ノ ,/!::{\{ /////  . -‐‐ 、 /// / ノ川|
   i iハ j::::`ト-ヽ.    (  -‐‐′   /.::::/ j i|
   { !∧!::::::!::i::::::ヘ.        .イ:::// /!ノ i
   i { 丶::::i:::!:::i:::::i::::x‐,- 、_ ..イ::::ノ:/:'/j/ j
    ヽ  \::.:ヽ!::::!:/ / /`ヽ |ハ':::/ /___/_
        \::ヽ:::j       ´)ノ::/フ7´     `丶
       x‐――/}     //  ///        \
       /     //j     ト'ー'''7 //             ヽ
.      /     /∧}     ノ!  / //            ',
渚「ど、どうしたんですかその裸の男性は!?」
791 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:57:00.77 ID:F4kkPFMo
               /.:.:,.:.:´:,.:/.:/.:.ヾ.:∨.:\:.:.:.\.:.:.:.:.:`:.:.、:.:.:.:.:.:.:.:.\.:.:\、.:\
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            {/イ.:.:.: ,'.:.::__|:|イ.:/  {.:.:.:.:.:.:.:.:.ト、.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:.:.ヽ.:.:.l.:.: |.:.:. |
            /l::::|.:.:.:.:.|:´ ̄|:トミA.  l.:.:i.:.:.:.:.:.:|  \.:.:.:.:.::|.:.:.:.:.:.:.:.:.:',:.:.:.:.!.:. l.:.: |.:.:. |
.           |:::{.:.:.:.:.|.:.:.:.∧!/ヽ\ヾ∧.:.:.:.:.|   >‐=|‐-.:.:.:.:.:.: |.:.:.: !.:.:.}.:.:.|.:.:. |
             }.:.ト、.:.: !.:.:.∧_j二._ミト\_∧.:.:.:| _//|:.: ト、.:.:.:.:.:.:.:.|:\:|.:.∧.:.ト、.: }
          _ノ,:イ(\ト、.:{´ 弋込外、¨´ \:| `¨,.ィfテ|:.:.ト.l:.:.:.:.:.:.: }:.:.:`.:/ }/ |.:.|
        _,.二 |.:j\ーlヾ   ` ̄           ゞ=!.:/ l:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:∧.   }ノ
.       ,.  ´   ,ノノ |`T                 }/ ∧.:.:.:.:./|.:.:./  ヽ
    /        / .|::∧              ,       /イl.:.:.:/ !.:/   }
.  /          ,  レ  ト、            j       /  `|.:./  |/   /
/           l     {:::丶   ヽ _            ,イ    |∧       /
              |     ∧::::: \  \ ̄三ス.  / !     l    /
              | , ´ ̄`Y´\::::\  `二¨\.><    !      |  ./
     \     /     ,.} - 、`ー 、> -- イ:::\\  |     l  /
       ヽ. /       /   }−く:::\  /::::: / \.> |      |-/
        ∨     /     /   ト、:::レ':::::::/   __|_   _j/
        /    ー'     /   /  ヽ!:::::/,ィ'´ ̄    | ̄ ∧
          {    ,.´    /    /    }///       /  / 〉
        l   {           /    ///         ! /  {
ー -- ‐ァ´ ̄∧   ヽ          '   /' /        /    |
   /   /  \  }            / /          /      !
秋夫「お土産だ!」
792 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 22:59:04.12 ID:F4kkPFMo
          / / :/   / / :/: :/ : : : : :/ : : : : : : : : \: : : : : : \: `丶、
       { /::/   / /: :.:/:.:/: :/ : : : /: : : : :.:.:.:.:.: : : :ヽ:.';:\.:.: : : : : : : : \
.        ∨:/  / /: : :.:./:.:/: :/ : : : /: : : : :.:.:.:.:.: : : : : : :.:l:.:.: : .:. : : :.: :丶: : ヽ
.        /:/ /::/: : : .:.:.;': :.:l.:./: : :__/: : : : :.:/:.:./: : : : : : j:.|:.:.:. ';.:.:. : :.| : : !: : : :'.
       〈:/ / //: : :.:/ : !: :.:.j: :'"´: 7⌒: : :.:/.:.:/:.:. : : j :/-!:.:_.:.:|:.:.:. :│:.: |: : : i:|
          ∨ / : |: : : .:|: .:.|:./|:.; : : /|: : : :/ : /:.:.: : : / :∧:ハ:.:.`メ、:.:. :│:.: l:. : : !|
        ∨=ニ| : : .:.l: .:.:.: :从:{ : 厶l: : :/ // :.: : :/ :/ 厶}:.:∧:.:.:. : j:.: : :. : : :l|
          辷圦 : : .:'; :.:. : {,ィヘ : {/心/∨ /:.:.:/// /こ}:.ハ }:.:. : /:.: /:.:.:j: :j|
        /|: : :.:.ヘ: : : :.:. :ヽ:!{{∧///'_}   / /    ∧//ハ∨:.:.:.:':.:.:/:.:.:./ :八
          /│: : :.:./ヽ: : ヽ: : :代゚ヘ:::::ノ j          {゚ヘ:::ノr' リ:/.:.:. /.:./!.:/
        /  |:.l: : :{   \.:.\:( ゝ、辷ソ         ゝ辷ン /.:.:.;.:.://  |/
.      〈  | :| : :.:ヽ   > \ `¨  ´      ′ ` ¨´厶イ/ ´
       ⌒|八: : : :.:.:`.:ー-ヘ、  ヽ丶ヽ           ヽヽ /: |
           ヽ: : : : :.:.:.:.:.:.:.:丶、        C       イ|:./
             \: : :.:\.:.:._/ ト 、          <xく.j/
              \{\∨  〈  >    __.. <∠イ ヽ
                /    \     / \    | |  }
               /       \  / ̄ ̄}  | l  〈
             ∠二二.丶       `く      |.  | |  \
汐「おーアッキーよりでっかーい」
793 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:00:29.94 ID:F4kkPFMo
               /.:.:,.:.:´:,.:/.:/.:.ヾ.:∨.:\:.:.:.\.:.:.:.:.:`:.:.、:.:.:.:.:.:.:.:.\.:.:\、.:\
            /.:.:/.:./.:/:/.:.:/:V.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:\.:.:.:.:.:.:.:\.:.:.:.:.:.:.:.:\.:.:ヾー-ヽ
             /.: /.:/.:.:./{.:l.: /.:.:.:.l.:.:.:.:.:.:.:. l:.:.:.:.:.:.\:.:.:.:.:.:.:.\.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:.\
           ,.:.:/.:/.:.:.:.:/.:.!:|:/.:/.:/|.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:.\:.:.:\:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:ヽ
            l.:/.:/.:.:.: /.:.: |:|'.:/.:/ .|.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.\:.:.:ヽ:.:.: l.:.:.:.l
            {/イ.:.:.: ,'.:.::__|:|イ.:/  {.:.:.:.:.:.:.:.:.ト、.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:.:.ヽ.:.:.l.:.: |.:.:. |
            /l::::|.:.:.:.:.|:´ ̄|:トミA.  l.:.:i.:.:.:.:.:.:|  \.:.:.:.:.::|.:.:.:.:.:.:.:.:.:',:.:.:.:.!.:. l.:.: |.:.:. |
.           |:::{.:.:.:.:.|.:.:.:.∧!/ヽ\ヾ∧.:.:.:.:.|   >‐=|‐-.:.:.:.:.:.: |.:.:.: !.:.:.}.:.:.|.:.:. |
             }.:.ト、.:.: !.:.:.∧_j二._ミト\_∧.:.:.:| _//|:.: ト、.:.:.:.:.:.:.:.|:\:|.:.∧.:.ト、.: }
          _ノ,:イ(\ト、.:{´ 弋込外、¨´ \:| `¨,.ィfテ|:.:.ト.l:.:.:.:.:.:.: }:.:.:`.:/ }/ |.:.|
        _,.二 |.:j\ーlヾ   ` ̄           ゞ=!.:/ l:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:∧.   }ノ
.       ,.  ´   ,ノノ |`T                 }/ ∧.:.:.:.:./|.:.:./  ヽ
    /        / .|::∧              ,       /イl.:.:.:/ !.:/   }
.  /          ,  レ  ト、            j       /  `|.:./  |/   /
/           l     {:::丶   ヽ _            ,イ    |∧       /
              |     ∧::::: \  \ ̄三ス.  / !     l    /
              | , ´ ̄`Y´\::::\  `二¨\.><    !      |  ./
     \     /     ,.} - 、`ー 、> -- イ:::\\  |     l  /
       ヽ. /       /   }−く:::\  /::::: / \.> |      |-/
        ∨     /     /   ト、:::レ':::::::/   __|_   _j/
        /    ー'     /   /  ヽ!:::::/,ィ'´ ̄    | ̄ ∧
          {    ,.´    /    /    }///       /  / 〉
        l   {           /    ///         ! /  {
ー -- ‐ァ´ ̄∧   ヽ          '   /' /        /    |
   /   /  \  }            / /          /      !
秋「そう、俺よりもでかい!って、幼女に何さらしてんだごらあああああああああああ」
794 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:01:22.21 ID:F4kkPFMo
 l i  .::::l  .:::::::::::::ヽ :::::lヽ::::|  __\:::::::::l::\:::::::::::::::::::::::::::::::r‐丶:::
 |イ .::/l .:::::  ::::∧ :`|`ヽ:l ̄    :::::\:::::|::::::\:::::::::::::::::::::::::r:::::::l:::
  | /  | ::: /| ::::| lヽ :l ::ヽl    _ _:\l:::::::::::ヽ/::::::::/:::::|::::::ノ::::
  l′  l : / l ::l | ヽ| :  ̄  ̄   ::::::::::::::::::::::::/:::::::::/:、::::l:/::::::
     ヽ /  ヽ:|  l           :::::::::::i::::::/::/l:/::;-∨::::ハ::::
      /    ヽ ノ           ::::::::::u://::;;;/─'''\::/ |/
            l            ::::::::::::::::/: : : :/ ̄⌒```
            \      _,,, -‐っ::::::::/.: : :/ : : : : /..: : :
             `ヽ、、   ヽ-‐''' ̄::::/..: : : :/: : : : /.. : : : : :
               /`>ー----、:::ヾ:、: : : :/: : : : / .:: : : : : :
              /  .:l: \: : : l/`::::l: ヽ: /: : : : / .:: : : :/: :
              l  .: :|: : :/>: :|_,,,,ノ : :∨ : : : :l : : :/: : : :
              | :. : : l: // : : l;;;、''´ : : : : : : : :/ .:/: : : : : :
              > :ヽ: l/: :\: :l;;;ヽ: : : : : : : : :( ''': : : : : : : : :
             r''′ : :ヽ : : : : :`ヽ、l : : : : : : : : :|  : : : : : : : :
            ノ    : :ヽ: : : : : : :(:: : : : : : : :l: :l : : : : : : : : :
            /    : : : :\: : : : : :ヽ : : : : : : :∨ : : : : : : : :
           /    : : : : : : ヽ: : : : :ヽ : : : : : : :l .  : : : : : : : :
           /    : : : : : : : :丶 : : : :ヽ : : : : : :l :: : : : : : : : :
兄「不可抗力だ・・・」
795 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:03:05.61 ID:F4kkPFMo

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                ,. ‐ ニ:/::ヽ!ヽ`丶.::::::\::::::::::::`ヽ.
              ,. '-ァ'´::::::|:::::::'::::ヽ:::::::\:::::\:::::::::::::::\
          /' /:::::::::::::|::::::::ヽ:::::\::::::\::::::\:::::::::::::::ヽ
             /:::://:::::::∧::::::::::ヽ:::::::\;斗\:::::ヽ:::::::::::::::'
          /::::/::!:::::::::|::::i::::::::::::|\/} \:::::ヽ:::::',.-、::::::::|
           l:::::|::::l:::::::: |::∧:::::::|リ/\l ,孑ァ、:::lヽ:{/' ヽ:::::!
           |::/!::::l:::::::: |::|,.=ヽ:::l   ヘ込リ ヽ| リヽ' /::::l
           |/ l:::∧:::::::|、| ,斗、ゝ   ´      、 イ::::/
            l::/ ',:::::l ヽ弋ク !             l !::/
            レ   V:|  ヽ  ヽ.          / l;′
                ヾ    \   -‐     /   l        _  -
                          丶、     , ′_ ┴/ ヽ,. - ´   /
                          丶、_.._ ´- '   /  /      /
                            ∠ |ヘ   /  /       /
                    __ - '/!ゝ┴く∨     /        /
秋「ふむ、で、お前はこの世界に職を求めてやってきた・・・と、そういうことだな」

796 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:03:57.63 ID:F4kkPFMo
           / /    jレ            l \
        / /     ヘ.       \   \jl  \
          / /       / ヽ     ヽ     リ    ヽ
.       ,' /       /        |     ', ヽ  ヽ    '.
       i ./ /    /{   /  ,'  │ }    '.    i
       | ; j     //⌒/ /  /   ∧⌒\}   l   l│
       | i |   l j _厶/ //   / j厶 |,ハ     |│
       l | |   |x价//ハ.  / / '价/心 |  /  , | j
       | l 八   、|/イト.:::jr| //   {ト.:::jr ハj /  / /|/
.         } ヽ {\ ヘ.弋__沙      ゝ_沙 /  //|/
       j | 八 \_ゝ´.:.:::::    '  :::::.:.厶イ/
       | /!   ーヘ        ー ‐     /ー'八
       | !.|  l  |  丶、        イ   ハ
        j/ |  |  !   ハ.>  _   イヽ|  j│}
         { ∧ 八 /´ }       |k'⌒ト、 ノ|/'ノ
       __ヽ{\>ヘ ∨      ヽ}   ` < __
渚「壮大なファンタジーですね!ハローワークも真っ青ですね!」
797 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:04:58.39 ID:F4kkPFMo
                             //  \ l __\-――‐- .
                                ,|| -―‐.:.ヘ|.:.:.:,、:.\:.:.:.:.:.:.:.:.`丶
                          /.:|!.:.:,.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.`'´l\´\.:.:.:.:.:
                            /,. -ァ|'´/:.:.:/.:/.:.:.:.i.:.:.|:.:.:.\.:\.:.:.
                         ///.:.:!/.:.:.:.:/.:.:./.:.:.:.:.:';:.:.|:\.:.:.:.:.:.:\
                          〃 /.:.:.:..:ハ:.:.:/.:.:.:.ハ.:.:.:.:.:ヽ|.:..:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:
                      /' /.:.:.:./.:.:.:.:V:.:.:.:.:.l.:.:!.:.:.:.:.:l.:l.:.:..:.:.:ヽ.:.:.:.:.:.
                          /.:.:.:./.:.:.:.:.:/、.:.:.:./l.:.|.:.:.:.:.:|.:.l.:.:}.:.:.:.:.\.:.:.:
                            l:.:.:./.:!.:.:.:./.:l.:.`メ、レ'ヘ.:.:.:.:|、:ト、ヽ.:.:_ - 、.:.:
                            |:.:.:.|:.:|:.:.:.:|:.:.l:.:.メ 、 \ V:.:.| ヾ-‐ ´ \.:.:.:.:
                            l:.:./l:∧.:.:.|:.:.l:.:.l弋歹` V:.|   弋Z歹\:.:
                , '⌒ヽ、        レ  リ l.:.:|、ハ {      ヽ|          ,ヘ
            /    ,. -ヽ             |:.:.| \V     i        /_ノ
     __     | 、    ノ__           ヽ:l  ハ     '       /:.:./
 /´    `ヽ._/   `ー/´  ヽ._           / \  r_==-、     ,.イ/レ'、
/            \  /       / `ヽ、      /   l >'´/ー-‐'  /'   r
{        ,.     y′     /   /ヽ ̄ ̄ ̄ 7 , -、| `''ヽ、 _ .. ´ /,    ハ
丶. _ .. -‐ ヘ    /       /    /   }    / /  |}         / {    ハ
          ヽ            /    /   l、    / /   /|、      / 人  ,′
秋「よし、お前は運がいい。この店にきたのも何かの縁だ。働け。うちの馬鹿ニートと共に働け。今日から2号と呼んでやるから働け。」
798 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:06:05.59 ID:F4kkPFMo
              ,  ---- 、, -- 、
            , .:'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:...: :、丶.
.           /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,:.:.:.:.:.:.:.ヘ:.:. :.:.ヾ丶ヽ、
          /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ト、:.:.:.:.ハ: }:.: :.:.: : ヽ `
          i:.:.:.:.:.:.:.:.ハ-l-ヘ:ト:./l7¨l':/:.:.ヽ: :i
          l:.:.:.:.:.:.:.:l Xl`ヽ ' r-、'l:.: ,: :l: l
.          l:.:.ハ:.ト、ヘ ___`__ l,ィ: :/V
    r 、 iヘ   ヘヽl:ト.ヽヽ'__` 7 イ レ'
  r 、 ヽヽ l .i    ヘl:`´ヽ.丶、__ .>'/         ,-、 iヽ ._
 _ \\〉 ` l /7 `ヘヘl` ー- ィ           ヽヽ l l .l l
 `、`ー`    ` /,、-、....--l    l,、          , 、 i ' l// ,‐,
   ¨¨l  ヽ、  ノ'  ヘヘ   ヽ--、 ,ヘ`ヾ 、-、     ヽヽ、  `'/
     ヽ.   i´   ヽヽ   ` - ..ノ   i i ヽ      ヽ ヽ  i
.      l   l   、  〉〉      i l   l l ヽ     `/  , '
.      l   l   ヽ//      .l l  ヽゝ ヽ    /  /
      i   l  /ヘ/ノ       .l l    .l  \  /  /
      i    l ∧¨ '   , --−_」 `ー-、 l   `/  /
     i    l/  l , ' , :-::::'::¨::::::::::::::`::>、ヽ、  '    /
     l    .l   l/ /:::::::::::::::::::::::::::::::::::l ' ノ ヽ    ノ
兄「はいはいっと了解な。てかここ何屋?」
(やはり俺はすごい、こんなあっさり働き口が見つかるなんて。まさに天運ニヤリ)
秋「パン屋だ。1号の指導のもと二人でこの店を町内一にしてみせろ」
799 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:07:52.99 ID:F4kkPFMo
                                     || ∩|∩  || | |__|
                ,-^-、                .|| ∪|∪  || |__|
               ((└))   ______    .||   |    ||
         |~~~|    |l_i_l|   /_____/|    || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|_
         |__|~~|       || |>-<|/ |~'|.|| ()    ||   /    //|
   |~~~|     |__|       ||=======◎,,|ヽ( ゚ ゚)ノ  .|| //   ///
   |__|    r===ュ        .||     ヾl〃 || (,,,,)ヘ  ||.二二二二.〕/||
         .|    |\       ||====== )(==||.<|    ||       |/.||
     ./ ̄|三三|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (_) ̄/|       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄
     /________________/ ..|________   ||
__/ /                     / ../         /||_/^ヽ__
   //                      /../         //|| ノノノ))
  /――――――――――――――――/ |_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_|/  ||
  / /                     ⊂ニ⊃|| ./       ||
 //                      .)  ( ||         . ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 〃   ヽ
 |++++++++++++++ (::u:::::j;;;u;;)
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ:::;;;;;;;;;ノ
800 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:09:22.46 ID:F4kkPFMo
           /::::::/:::::::/::::::::::://:::::::::::::::l::::::::::、:::::::::::::
        /::::::::/::::::::::/:::::::::::/:::|:::::::::::::::::|:::::::::::ヽ::::::::::
          /::::::::/::::::::::/:::::::::::::|:::::|::::i::::::::::::|::、:::::::::::':::::::::
       /::::::::イ::::::::::/:::::::::::::/|:::イ::∧::::::::::l:::|\::::::::',:::::::
       |::::::/ l::::::::::|::::::::::::/ レ' |/ V::::::::!、|_ヽ::::::ヽ:::
       l:::/  |::::::i::|:::::::::::l´ ̄ ̄ ` V::::::|´    \_\
       レ′ |::::::|::l:::::::::::KT亢卞  \:ハ  if刋 /、
             |::::∧ト、::::::| 弋匕ク     ヾ  弋ヒク '
             l::::| リ \:::l       i         ,
          ヽ|  /´ `ヾ,        l         ,'
             /  Y、_∧                 /_イ
               {   ´ `丶.\    ‐―    /},ハ
       ,. - ―‐{`        ` 丶、       / / |
       /¨`ヽ   ヽ.         丶、  , ´ ,. ′i|
     /    ヽ   \   ,        }_´ _/    l|
     ,′      ヽ     `ヽj      ∧∨ ヘ    |
     !       ハ   __,/      /ヘ'´ ̄`T:、  |
     l         ハ∠´_⊥ -―  ´7, {:.:.:.:.:.:.}ハ  l
    l  /     ,.-|        ,.  '´/、ヽ__/  lヽ./
    l/      /、__|_.. -‐ ´   /   /i:.:.:ハ  ! /
    /       i              ∧ /:/.:.:.:.ハ /
朋や「俺が1号こと朋也だ。さっきはよくもうちの娘にけがらわしいものを向けたな下衆野郎」
801 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:10:24.39 ID:F4kkPFMo
          _,,,,,---―--ヽ、
      _,-―'"    .:  :::\::::::: \ 
    ,/       ::::: :::::::::::\::::::::\ 
  /    /   :::::l::::::::::::::::::::\:::::::::ヽ 
  / _.   │  :::::::::::l:::::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::l 
 l::/     :|  ::::::::::::ハ:::::::ト、:::::::::::l::::::::::::l 
. lハ   、 ::|,. :::::ハr+キ''l''' リ::::::::::::l::::::::::l
.  | :::l::::l :::ハ|ヽ::l リ"''(゚i;。广' |:::::::::::l::|::::l 
   l :l::::::l:::l《゚iiハl    ー' υ |::::::::l:::|::/ 
   ヽlヽ::iVヽ.''"          レi:::l::::リ
     ヽヾl:::ゝ  ' _       ノ レ:::リl 
      \、ヽ . '- '     ,イ::/
          ヽ,      _,,l:/-┐
..             ̄'二〕 |ヽ   l 
          「 ̄  .|   | l   / `ー― 、
.           | ヽ i/.ノ_,,-'' l/       \
          レ/. ト―l              ヽ
        / ヽ .|;;;;/       /       ヽ
.       /    .ヽレ゙        /          l 
.      /                l .l           l 
(これが職場のDQN先輩の洗礼、こいつがニート・・・?てか園児の子持ちかよ!なにもんだこいつ!?)

802 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:12:26.40 ID:F4kkPFMo
             /::;::::::::::::::::::::::::::::::::::::;、{::::::::` 丶:::::\:::::::::::::::::',
        /::/::::::::::::/::::::::::::::::::/:::ヽ::::::::::::::::`ヽ:::\:::::::::::::|
       /::/::: /:::::::/::/:::::::::::/:::::l:::::::';::::ヽ::::::::::::::::\::\::::::::!
      /:; '/::::::::/:::::::/::/:::::::::::/:::::::'::::::!:::':::::::\::::::::::::::::ヽ:::\::l
     // /:::::::/:::::::/::/:::::::::::/:::::::/:::::::|:::::';::::::::::\::::::::::::::ヾ:、::\
     〃 /::::::/::!::::::|::::|::::::::::/::::::/|:::::::::l:::::::ヽ::::::::::::\::::::::::::ヾ\::\
     /   ! ::: |:::l:::::::|::::|:::::::/:::::::/::|::::::::::::::::、:::\::::::::::::\:::::::::ヾ、ヽ:::ヽ
       l:::::::|:::l:::::::|::::l:::::::l::::::/:::ハ::::::::::::::::::ヽ:::::\:::::::::::ヽ:::::::ハ  ヾ::|
      . !:::/l::ハ::::::|:::::';:::::|:::/ レ' ハ::::::::::::::lヾ \:::\:::::::::ヾ 、::',   \
    ..  ´ レ' |' l:::::l:::::::';:下 f辷弌:/\::::::::l  ュ辷7フ\::::::'  ヾ
 /         V{ヽ:::::ハ|  `¨ ´    \:::',  ` ¨´  /\ハ
/            ヾ /\ヽ       i \    ,イ   l l
ヘ                l   | 丶      l       / .l     l l
 ヽ             |   l   丶、  - -       l    | l
  ヽ       l   |   V    >r-- ,ヘ´     /     | |
    \       l    |    V   /ヾ´ ̄ ̄7\  /    | l
     \     l    !    ヽ/  ハ: : : : /  ヽ/       !  /
      \   l   l|       \ l }ー―{    /       |  !   /
        ヽ  V  |         ヽ!/ : : : ハ /         ! l  /
朋「俺はな、この町が好きなんだ。いや、嫌いだったころもあったけどな。でも、親父に育てられ、渚と出会い、娘が生まれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


803 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:13:19.66 ID:F4kkPFMo
| /  |              ! !   !!       λ  ! ヘ   }
|/  !       !    .|!‐= ミト!、 ! !      l !_ ム--ヘ― !
    !.   !   ヘ    .!ヘ Lムミヾミ|ュ!ィ. ノ  ゝムニ|ィ≦ニミ,,!  !
     !   !   ヘ   kィ'ヘ|γ c ヽ ヘ     lγγ c   `ト,/
.    !   ヘ    ヽ |.ヾ .乂_リ   ヘ   !.  弋_ リ  〃
.    ヘ    !ゝ    \  ゝz -'"     \ !  ` ト  ィ/
     ヘ   ! \   !.                   /  /
      ヘ .|ゝ  \  ヘ.           ,       /,,ィ"! 
       \! \ ト ト ヘ         l      ''"   /_/
.           ヽ|ヽ ' !\       ____    し /  ィ
              ! ハ \    て~  ̄ ̄ ~Y    / /!/
               !  \ ヽ、   ̄ ̄ ̄ ̄  / / 
                 ,ヽ| 丶、     ィ .| /.、
                /  |   ゛ -- '"  |'   !
              /   ./|            | ノ  \ 
兄「しかも勝手に語りだしたよ!!」
804 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:14:35.92 ID:F4kkPFMo
| /  |              ! !   !!       λ  ! ヘ   }
|/  !       !    .|!‐= ミト!、 ! !      l !_ ム--ヘ― !
    !.   !   ヘ    .!ヘ Lムミヾミ|ュ!ィ. ノ  ゝムニ|ィ≦ニミ,,!  !
     !   !   ヘ   kィ'ヘ|γ c ヽ ヘ     lγγ c   `ト,/
.    !   ヘ    ヽ |.ヾ .乂_リ   ヘ   !.  弋_ リ  〃
.    ヘ    !ゝ    \  ゝz -'"     \ !  ` ト  ィ/
     ヘ   ! \   !.                   /  /
      ヘ .|ゝ  \  ヘ.           ,       /,,ィ"! 
       \! \ ト ト ヘ         l      ''"   /_/
.           ヽ|ヽ ' !\       ____    し /  ィ
              ! ハ \    て~  ̄ ̄ ~Y    / /!/
               !  \ ヽ、   ̄ ̄ ̄ ̄  / / 
                 ,ヽ| 丶、     ィ .| /.、
                /  |   ゛ -- '"  |'   !
              /   ./|            | ノ  \ 
兄「しかも勝手に語りだしたよ!!」
805 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:16:58.04 ID:F4kkPFMo
                       /, -‐ァ'´::/::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::\:::::丶::::::::ヽ
                    // /::::/:::://:::::::/::::::::::::::::::::::::、:::::::::::::::`:::::::::
                      /'  /::::/:,:::::/:::/:::::::/!:::::::::::::!:::::::::::::ヽ::::::、::::::::::\
                     /:::/::::/::::/:::/:::::::/::l::::::::::::::l:::::::::::::::::\:::\:::::::::
                       /:〃:::/::::/:::/:::::::/::/|:::::::::::::∧:::::::::::::::::::ヽ::::ヽ::::::
                   /' /::::/:!::::l::::|:::::メ、:/ |,:::::::::/ ヽ|\::::::::::::::::!:::::ハ:::::
                      /::::/:::|::::|::::!::::|__レ\lハ::::::|--‐ ¨´\::::::::::l,::::::|:::::
                       |:::∧:::|::::!:::::、::|V 卞  V:::|   ィテ下\:::::l|、:::!::::
                       レ'  |∧:::ヽ::::::代zリ   ヽ|   辷ク  \|レ、| ヽ
                        V:::|\ゝ    /                i'_リ/
ェ―‐- v-‐- 、                    ヽ|   !   、           _'_//
: ヾ.,. ‐´ : : : : \                      ヽ    r―- 、      /:::::::::/
: : : : : : : : : : : : : ヽ                       \  ヽ.__ )     .イ::::::/
:; ; ;;;;; ; : : : : : : : : :',                     \   -    , '  レ'
:; ,-、;;;: : : : : : : : : : i                    _/}丶 -‐ ´    ハ
: i. 」}: : :,.-、: : : : : : :l                      / | \        / |ヽ
:,′ |: : i 」}: :,-、 : : l                ,. ィ´  l  ` ー 、 /   |  \
′ ! : l   ! :iー } : /          __  - ‐ ´   l     l     ,ヘY,ヘ   |   ',\
  {:_: !.  l: :|  lノ     ,. _-‐ ´          l     l   /  ̄ ̄`i.   |    ',
、 ヽ |   !:-!  |     /  ヽ            l     l  ∧:.:.:.:.:.:.:∧  |     ',
´   'i  |__{   !、     /     !         l     l、/ ヽ:..:.:.:./ ∨l    '
    |   | l  l }   /    |            l      l    /⌒ '、   !
朋「おっとすまん!要するに、俺は俺に生きる意味をくれたこの町そのものであるパンを作り出すことに命をかけてるんだ!パン神様降臨に命をかけてるんだ!
いいか新人、そんな神の領域とまではいわんが、せめてこれくらいの売れるパンは作れるようになれよ!」
806 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:18:34.01 ID:F4kkPFMo
   , - '' : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヘ
  /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ハ
. /: : : : : : : : : : : : : :/: : : : : : : : : : :、: : : : :. : : : : : :/¨ '' - .. _
/: : : : : : : : : : : : : :.; : : .: : : : : : : : :.iヽ:. : :.:.:.: : ,, -''ニ=-- 、 _ ''i
: :, : : : : : : : : : : : .:.:i : :.:i: : : : : : ,、: :l. ヽ:. : i:.:.:./ /, -―-、 ヽ''ヽ
./i: : : : : : : : : : : .:.:/i .:.:il:. : : : : :l i:. l  ヽ:.:.ト:./ ,' / , ' ¨¨ヽ ', ', i
' l : : .: : i : : : : : .:.i l.:.:.l l:. : : : :.l l l  ∠__l.y i i {(  ) } } i ./
. l: : .:i:. :.V: : : :. :.:i`-l...i_ ヽ:. : :.ii _ll,イ´ハV7  ',ヽ ヽー_' ノ, ' ,'./
 i : :i、:. :.:V: : :ヘ:/ひ!lヾミノ:.:./`¨ 弋'ムノ-/ / ヽ`_ー-‐_' / /
  , :.l ',:.:.:.:.:i、 : ヘi 、ゝ'_ノ- \i   ´   , ,      ̄   / /
  ,:l ヽ:.:.:.i丶 、\       l     , ,        / /
   !|  ヽ:.:l\`ーヽ -      '     i i       / /ヽ
      `  \:.:、ヽ、   ー―‐''   .l l       / /  ハ
          ` \ヘ丶、    _ /l ヽ、    ./ /   i
            /∧  ` ー/    ̄/ i` .、` ー ‐'/    l
兄「ふ、なめんなよ。三日でマスターしてやらあ!」



そして、特訓が始まった・・・
807 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:19:38.07 ID:F4kkPFMo
           /::::::/:::::::/::::::::::://:::::::::::::::l::::::::::、:::::::::::::
        /::::::::/::::::::::/:::::::::::/:::|:::::::::::::::::|:::::::::::ヽ::::::::::
          /::::::::/::::::::::/:::::::::::::|:::::|::::i::::::::::::|::、:::::::::::':::::::::
       /::::::::イ::::::::::/:::::::::::::/|:::イ::∧::::::::::l:::|\::::::::',:::::::
       |::::::/ l::::::::::|::::::::::::/ レ' |/ V::::::::!、|_ヽ::::::ヽ:::
       l:::/  |::::::i::|:::::::::::l´ ̄ ̄ ` V::::::|´    \_\
       レ′ |::::::|::l:::::::::::KT亢卞  \:ハ  if刋 /、
             |::::∧ト、::::::| 弋匕ク     ヾ  弋ヒク '
             l::::| リ \:::l       i         ,
          ヽ|  /´ `ヾ,        l         ,'
             /  Y、_∧                 /_イ
               {   ´ `丶.\    ‐―    /},ハ
       ,. - ―‐{`        ` 丶、       / / |
       /¨`ヽ   ヽ.         丶、  , ´ ,. ′i|
     /    ヽ   \   ,        }_´ _/    l|
     ,′      ヽ     `ヽj      ∧∨ ヘ    |
     !       ハ   __,/      /ヘ'´ ̄`T:、  |
     l         ハ∠´_⊥ -―  ´7, {:.:.:.:.:.:.}ハ  l
    l  /     ,.-|        ,.  '´/、ヽ__/  lヽ./
    l/      /、__|_.. -‐ ´   /   /i:.:.:ハ  ! /

朋「まずい」
808 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:20:33.85 ID:F4kkPFMo
    /.: /.:.././..:::!:. .:::{:. .ヽ:..::::. ヽ.、..::::... .:. .:. ..:::::::::::.. .:. :::.. .
  /.: ./. :/l.:l..:::::|::.. . :ヽ. .:\ 、:::.\丶.:::::::::::. .:. .::::::::::::.. .:.::..
  l. .:.:!...:| .l.|..:::::l.、::. ..:ヽ\.:ヽ >、\` ー--、:::...:::::,. _..:::.
  |. :/!..::|.::リ..::::::l::l\:. .:\ \イ{:::ノ},ベ      ヽヾ/ -ヽ::::
  レ' !. .:!. .:l.:::::::lリ __\::::::ヽ  ゞ ´          ,::l ,〈::: ' }::::
    |. .::、.:::ヽ::::ハ´ ,.-、` ー`           リ //ノ::::
    l. :. .:ト、.::\:::ヽヘソ                     /:::::::
     V.: :| ヽ:::::::ト.ハく                   / ´ヽ:::::::::
     ヽ::|  \::l ヾ丶                 ,    !::::::::
          ヾ  ヽ  ,. -‐            /   レVi:::
                  \              /    ,. ┴
                   \          ´   ,. '´
                __,ゝ、 _ . 、     ,. ´       ,.
              /(__r<_r<ヽヽ, /        /
            __⊥ -―'ー-'ー-<r'ヘ        /
          /  ´       /'⌒ヽ     , ′
      __/_,.           {.:. .:..:::\  /
   _/___  `丶、        ,l.:. .:.::::ノ V
朋「不合格」
809 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:22:22.00 ID:F4kkPFMo
                   /. : : : : : :./. : : : : : : : : : : : :V-‐- 、
                   /:/. : : : : :/. : : : : /.: :/.:/. : :}: :<⌒
               /. :/. : : : /. : : : : .ィ´≧x'∠/ . :ノ: : : :.\
                 /. :/ x=ミ〃. : : : :/ ノ´ヒ'ハヽ /. .:/! : : : :`ヽヽ
              j: :/:/ r / : : : : '´     `゛ /:/ ノj: : : : : : ハ
             /}/:八 ,/; ' ´       _ /" 斥テ. : : : : :∧
               イ: : : ゝ'       /ゝ-- `ヽ ゞ'' ノ. : : : ∧:.:.
                 |: : : / l     /⌒ヽ:::::::::::} l  イ: :/.:./  ',:.l
                }: .:/         {    V//イ   从{: :/  ノ'′
 ¬==‐- . . __   .ィヘ./   \     ヽ    }// .イ/ハ/
  |          ̄厂 \ \.     \     ー'",  i´: ノ′ /
  |        /    l   \     ヽ   /  ノ'"
  l         /       |   ハ    /´ ̄
  |      /     |ヽ/ヽ::>ーくハ
朋「こんなものをお客様にお出しできますかばかやろー!」
810 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:23:24.72 ID:F4kkPFMo
                   /. : : : : : :./. : : : : : : : : : : : :V-‐- 、
                   /:/. : : : : :/. : : : : /.: :/.:/. : :}: :<⌒
               /. :/. : : : /. : : : : .ィ´≧x'∠/ . :ノ: : : :.\
                 /. :/ x=ミ〃. : : : :/ ノ´ヒ'ハヽ /. .:/! : : : :`ヽヽ
              j: :/:/ r / : : : : '´     `゛ /:/ ノj: : : : : : ハ
             /}/:八 ,/; ' ´       _ /" 斥テ. : : : : :∧
               イ: : : ゝ'       /ゝ-- `ヽ ゞ'' ノ. : : : ∧:.:.
                 |: : : / l     /⌒ヽ:::::::::::} l  イ: :/.:./  ',:.l
                }: .:/         {    V//イ   从{: :/  ノ'′
 ¬==‐- . . __   .ィヘ./   \     ヽ    }// .イ/ハ/
  |          ̄厂 \ \.     \     ー'",  i´: ノ′ /
  |        /    l   \     ヽ   /  ノ'"
  l         /       |   ハ    /´ ̄
  |      /     |ヽ/ヽ::>ーくハ
朋「こんなものをお客様にお出しできますかばかやろー!」
811 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:55:34.52 ID:F4kkPFMo
 .. .:.:.:.  ... ...:.:.:.:.:. .:.:.:.:.:.... .... .. ... ..  .... .. ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:... ......  . .... . .... .. .:.:.:.:. .... r ⌒ヽ .:.:.. .. .
. ......:.:...:.:. .:. .:. (⌒ 、 . .. .. .     .. .......:.:.:.:.:. .:.:.:.:.:.... .:.:.:.:.:...... .. ..:.:.:.... ..:.:.:.: .: .. .. ... (⌒   ⌒) ... ..
:.:.:. ...... .:.:. (⌒   ⌒) ... .... .:.:.:. .. . :. .:.:.:.:. . . .....:.:.:.:.:....  .....   . ..:.:.:.:....:.:.:..: .:.:.. (⌒    . . ... .:.:.
 .. .... .. . (⌒      r'. ..:.:.:....   ..:.:.: .....:.:.:.:.:. .:.:.:..... r ⌒ヽ .:.:.. ... .. ... . :..:.:. . . ...   . . .. ...:.:.:.:
. .:..  .. (⌒'        .   .. .:.:.:.:.:.... .... .. ... ....:.:.:.: (⌒   ⌒) ...:.:.:.... :. :.:.:.:.. .  ... :.   .:.:.:.:. . ....
. ..:. . (         . ..  ..:..   . ... .    .. .:.:.: ...  (⌒     r'⌒ヽ ..  .. .. .... .  . .. ...:.:.:... .
... . .    .;i;';.      . ...  ......  ... ....    ...          ⌒ヽ    . .. .:.:.:.:..      ... ..
   ,.;i;';.,,;;`;;i`、    ... .      . .. .   ... ....    ...        . ...  ......       . .. .
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'::',:'':';:,.,i|!、:.,"'`::'::',:'':'`::'::',:'':'` "'"' "'''.''' "'''.''"  '::',:'':';:;..,"'`::'::',:'"'`,.;;:。;:;;::、;;:。;:;;,;:。;:;;, ,.;i;';.
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'::',:'':'`::'::',:'':'`::':'::',:'':';:;..,"'`',:'':'`::'::''::',:'':';:;..,"'`,:'':'`::'::',:'':'::',:'':';:;..,"'`::'::',  '""''|i!''"  ,i|! .....i|!,.,;:;;`;;i`:;:i;,.
'::',:'':';:;'"'"''::',:  '"'"''::',:::'::',:'':'`::'::',:'':';:;..,"'`'::',:'':';:;..,"'`'::',:'':';:;..,"'`'::',:'':';:;..,":,.,i|!、 '`'::',:、'':';:;..,..、""'|i!''"
',:'':';:;..,"'`',:'':'`::'::''::',:'':';:;..,"'`,:'':'`::              '::',:'':'::',:'':';:;..,"'`::'::',:'':'`::'::  '::',:'':';:;..,":,.,i|!、
"'''.''' "'''.''"'"''"'"' " "'''.''' "'''.''"'"''"'"' "'':';:;..,"'`',:'':'`::'::''::',:'':';:;..,"'`,:'':'`::'::',:'':'::',:'"'''.'''  "'''.''"'"''"'"
:::       ;..,"'`',:'':'`::''" ;;                    :::;..,"'`',:'':      :::;..,"'`',:'': ;:;: .
'':'`::'::',:'':';:;..,"'`',:'':'`::'::'.,"'`',:'':'`::':' "'`:       :'::',:'':';:;      ..,"'`',:'':'`::'::',:'':';:;..,"'`',:'':'`::'::'.,"'`',
  '':'`::'::',:'':';:;..,.            ';:;:;..,"'`',:'':'`::'::'':    '':'`::'::',:'':';:;..,"'`'::',:'':';:;.
                           '':'`       ::'::',:'':';:;:;..,
812 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:56:49.31 ID:F4kkPFMo
|: : : : |: : : :_._,|:_:_: /      |: : : /: : : : :    . : イ: : : / l: : : : . : : :
|: : : : |: : : : :!1 ̄7 =-、 ._   !: : / |: : : : :  . : ://: : :/   !: : : : : : : :
|: : : : |: : : : :l ≧'=ォ-..、ヽ \_|: :/ |:ノ: : : . : //: : :/   l: : : : : : : :
l: : : : :. : : : : l | /::::::::::f>、_>!: l イ: : : : : : ∨_/: ∠三 =l: : : : : : : 
ハ: : : : :、: : : : ト弋>__,:::ノ  ` V  |: : : : :/,>7'::::::r-;ヾ.v': : : : : :  .
 '、: : : : ヽ: : : :'. ` ̄ ̄ ̄>―   |: : /    {r7_,::ノ  /'′:/: : . : :
ヽ `、: : : : ト、: : :'.           j/   ` ̄ ¨¨  イ: :/: :  /:/:
: : i` ト. : : :! ヽ: :'.            :       J //: : : . //: /
: : l: :| 、 : |   \'、           i      u .ノ´: : :_: : ´: :/j /
/、: |  、: | u   `/_ -― 、__    '′     /_ ィ´: : : :/./ /
  ヽ!  ヘ:|、    〈ー− 、  ` ー-- ィ   -≠ , ′ j : : / //
        \   ` ー--  ___ ノ     /  /: /   /'′
兄「くそ!どうしてもうまく焼けない!たかがパンごときだというのに!!」

813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:58:12.19 ID:F4kkPFMo
     _ -、/         ヽ   l ヽ       l
     /    '          ヾ   l  \   _ |i
    /         i      i ヽ  , i==ヽ ̄    |l
    /          l      l. ,X/l   ,>二二_フヽ      l
   /           .ト、  ヾーl" ヽ  l /  ヽ  Xi'|      l\
   /            lヽ  、  .l υ ヽ/|    ヽ  / !|    /  lヽ\
  /        ヽ   l >ノ   l   iVl  rヽ i /  l   /   l }
  i          ヽ  / ヽ.   l   ヽ|  ` ´ ツ ノノ   / ヽ  l/
  l  l        ヽ./ i__ヽ_. l     _ -- ¨'' i  / / >  l
  l.  ハ         ヘ. lヘ    \l           / /   /i l
  l  l l        \ヘ〉iヽ  rヽ   、        /    ! l l l   l
  .l l  i         ヾーヾ\.`´ /  i           υ ノ i. V ハ |
  l i  i     i、  、 \  =ノ    `  , - −、    υ/   i、 /
   l|  ヽ    lヽ   丶、\.      /, ・ ' ¨ ̄`)ヽ   /   ヾ/
      ヽ   i ヽ    l、 ̄ヾー    <〈/ , - ¨    /     y '' ¨
       ヽ  i  \   i \ ヽ、   -` '       /      ヽ` ー
        \ i   \  ヽ ` 、`ヽ 、        /
          \i    丶、ヽ   `` \` ー--− '
兄「なんだ、何が足りないんだ!粉の配合率からコネ方、焼き時間まで完璧のはずだ!いったい何が!!」
814 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/13(日) 23:59:59.34 ID:F4kkPFMo
                             //  \ l __\-――‐- .
                                ,|| -―‐.:.ヘ|.:.:.:,、:.\:.:.:.:.:.:.:.:.`丶
                          /.:|!.:.:,.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.`'´l\´\.:.:.:.:.:
                            /,. -ァ|'´/:.:.:/.:/.:.:.:.i.:.:.|:.:.:.\.:\.:.:.
                         ///.:.:!/.:.:.:.:/.:.:./.:.:.:.:.:';:.:.|:\.:.:.:.:.:.:\
                          〃 /.:.:.:..:ハ:.:.:/.:.:.:.ハ.:.:.:.:.:ヽ|.:..:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:
                      /' /.:.:.:./.:.:.:.:V:.:.:.:.:.l.:.:!.:.:.:.:.:l.:l.:.:..:.:.:ヽ.:.:.:.:.:.
                          /.:.:.:./.:.:.:.:.:/、.:.:.:./l.:.|.:.:.:.:.:|.:.l.:.:}.:.:.:.:.\.:.:.:
                            l:.:.:./.:!.:.:.:./.:l.:.`メ、レ'ヘ.:.:.:.:|、:ト、ヽ.:.:_ - 、.:.:
                            |:.:.:.|:.:|:.:.:.:|:.:.l:.:.メ 、 \ V:.:.| ヾ-‐ ´ \.:.:.:.:
                            l:.:./l:∧.:.:.|:.:.l:.:.l弋歹` V:.|   弋Z歹\:.:
                , '⌒ヽ、        レ  リ l.:.:|、ハ {      ヽ|          ,ヘ
            /    ,. -ヽ             |:.:.| \V     i        /_ノ
     __     | 、    ノ__           ヽ:l  ハ     '       /:.:./
 /´    `ヽ._/   `ー/´  ヽ._           / \  r_==-、     ,.イ/レ'、
/            \  /       / `ヽ、      /   l >'´/ー-‐'  /'   r
{        ,.     y′     /   /ヽ ̄ ̄ ̄ 7 , -、| `''ヽ、 _ .. ´ /,    ハ
丶. _ .. -‐ ヘ    /       /    /   }    / /  |}         / {    ハ
          ヽ            /    /   l、    / /   /|、      / 人  ,′
秋「よー2号。てめーもこの丘に呼ばれたか」
815 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:02:40.54 ID:3cBet1Qo
| /  |              ! !   !!       λ  ! ヘ   }
|/  !       !    .|!‐= ミト!、 ! !      l !_ ム--ヘ― !
    !.   !   ヘ    .!ヘ Lムミヾミ|ュ!ィ. ノ  ゝムニ|ィ≦ニミ,,!  !
     !   !   ヘ   kィ'ヘ|γ c ヽ ヘ     lγγ c   `ト,/
.    !   ヘ    ヽ |.ヾ .乂_リ   ヘ   !.  弋_ リ  〃
.    ヘ    !ゝ    \  ゝz -'"     \ !  ` ト  ィ/
     ヘ   ! \   !.                   /  /
      ヘ .|ゝ  \  ヘ.           ,       /,,ィ"! 
       \! \ ト ト ヘ         l      ''"   /_/
.           ヽ|ヽ ' !\       ____    し /  ィ
              ! ハ \    て~  ̄ ̄ ~Y    / /!/
               !  \ ヽ、   ̄ ̄ ̄ ̄  / / 
                 ,ヽ| 丶、     ィ .| /.、
                /  |   ゛ -- '"  |'   !
              /   ./|            | ノ  \ 
兄「あ、アッキー。いや、飛び出したらついここに・・・ん?なんなんだここの空気は?」
816 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:03:45.37 ID:3cBet1Qo
                             //  \ l __\-――‐- .
                                ,|| -―‐.:.ヘ|.:.:.:,、:.\:.:.:.:.:.:.:.:.`丶
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                          〃 /.:.:.:..:ハ:.:.:/.:.:.:.ハ.:.:.:.:.:ヽ|.:..:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:
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                            l:.:./l:∧.:.:.|:.:.l:.:.l弋歹` V:.|   弋Z歹\:.:
                , '⌒ヽ、        レ  リ l.:.:|、ハ {      ヽ|          ,ヘ
            /    ,. -ヽ             |:.:.| \V     i        /_ノ
     __     | 、    ノ__           ヽ:l  ハ     '       /:.:./
 /´    `ヽ._/   `ー/´  ヽ._           / \  r_==-、     ,.イ/レ'、
/            \  /       / `ヽ、      /   l >'´/ー-‐'  /'   r
{        ,.     y′     /   /ヽ ̄ ̄ ̄ 7 , -、| `''ヽ、 _ .. ´ /,    ハ
丶. _ .. -‐ ヘ    /       /    /   }    / /  |}         / {    ハ
朋「不思議だろ、ここはな渚の命を救った場所なんだ。俺はこの町そのものだと思ってる。
  1号も何かを感じたのか、たまにここによるさ。
  変な話をしてると思うか?まあだからお前が違う世界から来たって聞いても疑いはしねーんだよ。」
817 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:05:00.82 ID:3cBet1Qo
|: : : : |: : : :_._,|:_:_: /      |: : : /: : : : :    . : イ: : : / l: : : : . : : :
|: : : : |: : : : :!1 ̄7 =-、 ._   !: : / |: : : : :  . : ://: : :/   !: : : : : : : :
|: : : : |: : : : :l ≧'=ォ-..、ヽ \_|: :/ |:ノ: : : . : //: : :/   l: : : : : : : :
l: : : : :. : : : : l | /::::::::::f>、_>!: l イ: : : : : : ∨_/: ∠三 =l: : : : : : : 
ハ: : : : :、: : : : ト弋>__,:::ノ  ` V  |: : : : :/,>7'::::::r-;ヾ.v': : : : : :  .
 '、: : : : ヽ: : : :'. ` ̄ ̄ ̄>―   |: : /    {r7_,::ノ  /'′:/: : . : :
ヽ `、: : : : ト、: : :'.           j/   ` ̄ ¨¨  イ: :/: :  /:/:
: : i` ト. : : :! ヽ: :'.            :       J //: : : . //: /
: : l: :| 、 : |   \'、           i      u .ノ´: : :_: : ´: :/j /
/、: |  、: | u   `/_ -― 、__    '′     /_ ィ´: : : :/./ /
  ヽ!  ヘ:|、    〈ー− 、  ` ー-- ィ   -≠ , ′ j : : / //
        \   ` ー--  ___ ノ     /  /: /   /
兄「・・・・俺は、一体何しにここに来たんだ」
818 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:06:36.78 ID:3cBet1Qo
                             //  \ l __\-――‐- .
                                ,|| -―‐.:.ヘ|.:.:.:,、:.\:.:.:.:.:.:.:.:.`丶
                          /.:|!.:.:,.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.`'´l\´\.:.:.:.:.:
                            /,. -ァ|'´/:.:.:/.:/.:.:.:.i.:.:.|:.:.:.\.:\.:.:.
                         ///.:.:!/.:.:.:.:/.:.:./.:.:.:.:.:';:.:.|:\.:.:.:.:.:.:\
                          〃 /.:.:.:..:ハ:.:.:/.:.:.:.ハ.:.:.:.:.:ヽ|.:..:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:
                      /' /.:.:.:./.:.:.:.:V:.:.:.:.:.l.:.:!.:.:.:.:.:l.:l.:.:..:.:.:ヽ.:.:.:.:.:.
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                            l:.:.:./.:!.:.:.:./.:l.:.`メ、レ'ヘ.:.:.:.:|、:ト、ヽ.:.:_ - 、.:.:
                            |:.:.:.|:.:|:.:.:.:|:.:.l:.:.メ 、 \ V:.:.| ヾ-‐ ´ \.:.:.:.:
                            l:.:./l:∧.:.:.|:.:.l:.:.l弋歹` V:.|   弋Z歹\:.:
                , '⌒ヽ、        レ  リ l.:.:|、ハ {      ヽ|          ,ヘ
            /    ,. -ヽ             |:.:.| \V     i        /_ノ
     __     | 、    ノ__           ヽ:l  ハ     '       /:.:./
 /´    `ヽ._/   `ー/´  ヽ._           / \  r_==-、     ,.イ/レ'、
/            \  /       / `ヽ、      /   l >'´/ー-‐'  /'   r
{        ,.     y′     /   /ヽ ̄ ̄ ̄ 7 , -、| `''ヽ、 _ .. ´ /,    ハ
丶. _ .. -‐ ヘ    /       /    /   }    / /  |}         / {    ハ
秋「・・・迷ったやつ、疲れたやつ、そんなやつらがここに集まるのかねー。
  いいかゆき兄、パン作りは情熱だ。いや、働くということはすべて情熱が必要なんだ。
  スキルや経験なんて後からついてくるがな、それがないと、真の成果なんてあげられないのさ。
  ああ別にお前にやる気がないと言っているんじゃない・・・そうだな、お前らしく言うなら・・・
  」
819 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:07:38.56 ID:3cBet1Qo
               /.:.:,.:.:´:,.:/.:/.:.ヾ.:∨.:\:.:.:.\.:.:.:.:.:`:.:.、:.:.:.:.:.:.:.:.\.:.:\、.:\
            /.:.:/.:./.:/:/.:.:/:V.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:\.:.:.:.:.:.:.:\.:.:.:.:.:.:.:.:\.:.:ヾー-ヽ
             /.: /.:/.:.:./{.:l.: /.:.:.:.l.:.:.:.:.:.:.:. l:.:.:.:.:.:.\:.:.:.:.:.:.:.\.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:.\
           ,.:.:/.:/.:.:.:.:/.:.!:|:/.:/.:/|.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:.\:.:.:\:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:ヽ
            l.:/.:/.:.:.: /.:.: |:|'.:/.:/ .|.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.\:.:.:ヽ:.:.: l.:.:.:.l
            {/イ.:.:.: ,'.:.::__|:|イ.:/  {.:.:.:.:.:.:.:.:.ト、.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:.:.ヽ.:.:.l.:.: |.:.:. |
            /l::::|.:.:.:.:.|:´ ̄|:トミA.  l.:.:i.:.:.:.:.:.:|  \.:.:.:.:.::|.:.:.:.:.:.:.:.:.:',:.:.:.:.!.:. l.:.: |.:.:. |
.           |:::{.:.:.:.:.|.:.:.:.∧!/ヽ\ヾ∧.:.:.:.:.|   >‐=|‐-.:.:.:.:.:.: |.:.:.: !.:.:.}.:.:.|.:.:. |
             }.:.ト、.:.: !.:.:.∧_j二._ミト\_∧.:.:.:| _//|:.: ト、.:.:.:.:.:.:.:.|:\:|.:.∧.:.ト、.: }
          _ノ,:イ(\ト、.:{´ 弋込外、¨´ \:| `¨,.ィfテ|:.:.ト.l:.:.:.:.:.:.: }:.:.:`.:/ }/ |.:.|
        _,.二 |.:j\ーlヾ   ` ̄           ゞ=!.:/ l:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:∧.   }ノ
.       ,.  ´   ,ノノ |`T                 }/ ∧.:.:.:.:./|.:.:./  ヽ
    /        / .|::∧              ,       /イl.:.:.:/ !.:/   }
.  /          ,  レ  ト、            j       /  `|.:./  |/   /
/           l     {:::丶   ヽ _            ,イ    |∧       /
              |     ∧::::: \  \ ̄三ス.  / !     l    /
              | , ´ ̄`Y´\::::\  `二¨\.><    !      |  ./
     \     /     ,.} - 、`ー 、> -- イ:::\\  |     l  /
       ヽ. /       /   }−く:::\  /::::: / \.> |      |-/
        ∨     /     /   ト、:::レ':::::::/   __|_   _j/
        /    ー'     /   /  ヽ!:::::/,ィ'´ ̄    | ̄ ∧
          {    ,.´    /    /    }///       /  / 〉
        l   {           /    ///         ! /  {
ー -- ‐ァ´ ̄∧   ヽ          '   /' /        /    |
「狂気が足りない!!」
820 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:08:52.25 ID:3cBet1Qo
.   /       /    . /. : : :/ |: : .  . : : : : :  .i: : :  i  ヘ: . :i
   /      . ′ ___:/. : : /__  l: : : . : : : : : : : ,|: : : . l'   l: : .|
  ′     . : l   . : ': : : /`丶\!: : : : : : : : : : : ハ: : : : ,′   '. : !
  {    :/  : : l   : :7: : / __  l: : :A: : : : : : :j '. : :/____!: L
  |   . /  : : : !  . : :lj: /三 =- 、、l: : ハ: : : : : : ト、 |: :j_.. - ´ ̄|:「
  |  : ′ : : : l  . : lハ: l   __  ヾ、:| ハ: : : : :j   |:/_,,,,,,,,,,,,__ |!
  |  : :|  : : : :l  .: : :l:| リ   (じ)  }!`  l: : : :/ /'"´    \ヽ
  | : : :!  : : : :.|: : : : |:!、\  `´      l: : :/     r≠,   ヾヽ
  | : : :|  : : : : l: . : : : !:! >`ー… -__   |: /  、   ゞ-'′   〉
  | : : : ハ : : : : ヘ: : : : :l:|            '′< 、\、_      /´
  |: : :/ i : : : : : ヽ: : : l:|               ` \` ─ ' ´  /
  |: :/  ハ : : : : : : ト : : ト、         /              / /
  |:/   ハ : : : : : : i丶: | \       /             //:
  /′   ヘ : : : : : ハ ヽ!        |             / イ: : :
兄「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!」
821 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:10:57.19 ID:3cBet1Qo
   , - '' : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヘ
  /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ハ
. /: : : : : : : : : : : : : :/: : : : : : : : : : :、: : : : :. : : : : : :/¨ '' - .. _
/: : : : : : : : : : : : : :.; : : .: : : : : : : : :.iヽ:. : :.:.:.: : ,, -''ニ=-- 、 _ ''i
: :, : : : : : : : : : : : .:.:i : :.:i: : : : : : ,、: :l. ヽ:. : i:.:.:./ /, -―-、 ヽ''ヽ
./i: : : : : : : : : : : .:.:/i .:.:il:. : : : : :l i:. l  ヽ:.:.ト:./ ,' / , ' ¨¨ヽ ', ', i
' l : : .: : i : : : : : .:.i l.:.:.l l:. : : : :.l l l  ∠__l.y i i {(  ) } } i ./
. l: : .:i:. :.V: : : :. :.:i`-l...i_ ヽ:. : :.ii _ll,イ´ハV7  ',ヽ ヽー_' ノ, ' ,'./
 i : :i、:. :.:V: : :ヘ:/ひ!lヾミノ:.:./`¨ 弋'ムノ-/ / ヽ`_ー-‐_' / /
  , :.l ',:.:.:.:.:i、 : ヘi 、ゝ'_ノ- \i   ´   , ,      ̄   / /
  ,:l ヽ:.:.:.i丶 、\       l     , ,        / /
   !|  ヽ:.:l\`ーヽ -      '     i i       / /ヽ
      `  \:.:、ヽ、   ー―‐''   .l l       / /  ハ
          ` \ヘ丶、    _ /l ヽ、    ./ /   i
            /∧  ` ー/    ̄/ i` .、` ー ‐'/    l
兄「はは、俺にとって大事なもんを忘れてたぜ。働くなんていうからつい常識人っぽい考え方をしちまってたじゃねーかよ!任せなアッキー!俺が、この店を、世界一にしてやらあああああああ!!!!!!!!」
822 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:15:36.42 ID:3cBet1Qo

                ,-^-、                .|| ∪|∪  || |__|
               ((└))   ______    .||   |    ||
         |~~~|    |l_i_l|   /_____/|    || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|_
         |__|~~|       || |>-<|/ |~'|.|| ()    ||   /    //|
   |~~~|     |__|       ||=======◎,,|ヽ( ゚ ゚)ノ  .|| //   ///
   |__|    r===ュ        .||     ヾl〃 || (,,,,)ヘ  ||.二二二二.〕/||
         .|    |\       ||====== )(==||.<|    ||       |/.||
     ./ ̄|三三|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (_) ̄/|       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄
     /________________/ ..|________   ||
__/ /                     / ../         /||_/^ヽ__
   //                      /../         //|| ノノノ))
  /――――――――――――――――/ |_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_|/  ||
  / /                     ⊂ニ⊃|| ./       ||
 //                      .)  ( ||         . ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 〃   ヽ
 |++++++++++++++ (::u:::::j;;;u;;)
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ:::;;;;;;;;;ノ
823 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:16:29.36 ID:3cBet1Qo
                       /, -‐ァ'´::/::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::\:::::丶::::::::ヽ
                    // /::::/:::://:::::::/::::::::::::::::::::::::、:::::::::::::::`:::::::::
                      /'  /::::/:,:::::/:::/:::::::/!:::::::::::::!:::::::::::::ヽ::::::、::::::::::\
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                   /' /::::/:!::::l::::|:::::メ、:/ |,:::::::::/ ヽ|\::::::::::::::::!:::::ハ:::::
                      /::::/:::|::::|::::!::::|__レ\lハ::::::|--‐ ¨´\::::::::::l,::::::|:::::
                       |:::∧:::|::::!:::::、::|V 卞  V:::|   ィテ下\:::::l|、:::!::::
                       レ'  |∧:::ヽ::::::代zリ   ヽ|   辷ク  \|レ、| ヽ
                        V:::|\ゝ    /                i'_リ/
ェ―‐- v-‐- 、                    ヽ|   !   、           _'_//
: ヾ.,. ‐´ : : : : \                      ヽ    r―- 、      /:::::::::/
: : : : : : : : : : : : : ヽ                       \  ヽ.__ )     .イ::::::/
:; ; ;;;;; ; : : : : : : : : :',                     \   -    , '  レ'
:; ,-、;;;: : : : : : : : : : i                    _/}丶 -‐ ´    ハ
: i. 」}: : :,.-、: : : : : : :l                      / | \        / |ヽ
:,′ |: : i 」}: :,-、 : : l                ,. ィ´  l  ` ー 、 /   |  \
′ ! : l   ! :iー } : /          __  - ‐ ´   l     l     ,ヘY,ヘ   |   ',\
  {:_: !.  l: :|  lノ     ,. _-‐ ´          l     l   /  ̄ ̄`i.   |    ',
、 ヽ |   !:-!  |     /  ヽ            l     l  ∧:.:.:.:.:.:.:∧  |     ',
´   'i  |__{   !、     /     !         l     l、/ ヽ:..:.:.:./ ∨l    '
朋「どこにいってやがった給料泥棒!働く気がねーなら帰ってママのミルク飲んで寝んねしてな!!」
824 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:19:05.71 ID:3cBet1Qo
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ヽ、_l ヽ:::::::::::::::l                      /:.:.:./  /イ:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
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ー-イ   ヽ::::::::l.                            |   \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
兄「だまってろおおおおおお!見せてやるぜぇ・・・・・俺の、本気ってやつをよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
825 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:20:11.28 ID:3cBet1Qo
        __∠二ヽ/: /  l :/|:/ ,lノ:/、_l: ハ: .  i: i
        i r‐t、ヽ二.ヽ: :i: :irキ≦∨ fl/`ヽ: } . i .|
       ノ ┴‐‐`‐ぅ {: : .ゝ:ト__o, ‐j‐-、o__,,l:/:/|:,'
       }  「 ̄「, -ッl: /l: : l  ̄fニニヽ ̄ノイ }: l:/       ___
        {  ヽ ´/ V ヘ:从  lfY⌒ l }  r‐ i:/リ       ゝt‐┴、
       ゝ  ノ _ノ      `ヽ:\ゝニニソ '/|: ィ/        r(二.ヽ ヽ
        /  /          ヽヘ>‐  ´ ll/       t‐-- 、_ノ} } /
.       /  /       ., -ュ_, ニソ     ソ7 丁>ュ   `T ヽ    /
     ,    /      // / //‐-、   __//  / /  ヽ.  、/  /
   /   /  _ -‐ ´ /./ ` ニy ニニ ィ  / /     ',  {   {
  /    /- ´     ヽ{ {    //       ' /     、 . |   l
 ,     /           ノノ    //        .:{ { ー、    \.|   'i
 i        _ -‐  ̄、{    , ,        .:` ニニ.ハ      'l   i
 i    _ -‐       /   { {       .:.:.:.:.:.:/ . \   |    'i
 `¨¨¨´           /-―  l l      .:.:.:.:.:.:.く     .\ ノ     l
兄「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
826 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:21:39.39 ID:3cBet1Qo
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  ,  ‐ ' ´  / :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.  :.:. ,
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   / :.イ/ .:.:.:.:.:.:/ .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i ヽ:.:.:.:| 丶:.:.:l:.:.:.:.:.:.:   ヾ::、ゝ    `ヽ
  // |' /:.:.:.:./ :.:.:.:.:.:.:.:.:/l:.:./l:.:.:.:.:.:.:.:ハ:.:.l  ヽ:.:l  ヽ:.:.l:.:.:.:.:.:.:.   丶,, ‐ '''''' ヽヽ
     l /:.:.:.:/ :.:.:.:.:.:.:.:/´ |:.:/  l:.:.:.:.:.:./ ';:.:|  .Xl´ 丶:l|:.:.:.:.:.:.:.   ;:、ヽ      ヾ,
    /:.:.:.:.;;/ :.:.:.:.:.:.:./ --|/,  l:.:.:.:.:/:::::`;|. /, リ" `ヾ|>リ:.:.:.:.:.:.:. / ヽ|        l
   /:.;;:: ''  i :.:.:.:.:.:.:.:/ ,-==\ l:.:.:/ヾヽ:://     ' ,/:.:.:./:.:../           l
 /,, ''    l .:.:.:.:./i:.:.i <イ    ``|/ >ヾ/:::::::  o   彡:.:;/l:.:./       ヽ    l 
./ ,, '''   | :.:.:.:ハ .l:.l  ヾ    o ; ヾ:::-::::ヽ `   彡//iシ|:.:.i        .i   ノ
/ ,,      l :.::/-、`iト、 iヽ::....  ´/   ゞ       〃 /::::::::|:.l         .l  ノ
l i       |:./   ! `ーヽ;;;;;;      ,i         ./::::::  リ         l /
l|       レ     :ヽ;;;ヽ  ..  ,   `  _ ‐'`>ヾ ノ::             , /
.l              :::::\ヾ" ヾrー_- ー _二ノ /:.              /''
.ヽ      l       :::::::\` 、丶ー '''',,,  //:               ハ
 丶      i         ::::\;;;;;;`ヽー― ''´;;/:::               / ヘ
  ヽ     l          :::::::\;;;;;;;;`ー‐´;;/:::               ./   ヘ
兄「美味しいパンを作ろうおおおおおおおお!!」
827 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:23:42.52 ID:3cBet1Qo
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\;;|::::\;;;;;;;;;;ヽ;;;;;K_;;-i;'/‐''' ̄``ヽ\i\:::::::::;;;:::::::::::::::|;;;/
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::::::::::,、‐‐-`'___,,,,、、   /''´...:: /:|;;;;/:l/ヽ: :      ``'ヽー―---、、__
:::::::/-、`--ー‐-='、ヽ     /: l;/: /: :l : :ヽ
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\:::ヽ、二_‐_ー_-_,,,,ノ /::::::/: : : : : : : :  l
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兄「できたぜ!!」
828 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:25:02.79 ID:3cBet1Qo
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::::::l:::::::::∧::メ、|∧:::::::::!、:!斗::七、::::::::::::|:::::::、::::ヾ
::::::|:::::::::|-レ' 、   V:::::| リ ヽ::| レヽ::::::::|::l__:::ヽ::::'
::::::l:::::::::|∨f卞  V:::|   ィリ无7フヽ::::|::!ハ:::∧ハ
∨:ト、::::::!弋.ク     ヽ|   辷zノ   l:::!:|) レ'  ヾ
. V| \::ゝ     i         `   レリ' /
 ヾ    !    、             /ヤ′
       ヽ.              /ハ
     , '/ 丶、 ー--(    / l  ヽ 、
_ − ´ /  |  \    ,  '/  |   l  ` 丶 、
      /   .| __\ ¨´,  '´     |   .l       `丶、
    /   l/: : : `7;::;;:7ー-、   ,'     l         `丶、
    ,    |: : : : :/;;;;;;/ : : : }  /    l             ハ
   /    ,.、{ : : : /;;;;::/ : : :/- 、/      l             / l
  /    l /: : : /;;;;;;/: : : :{   !       l            /   l
  /    / /: : : /;;;;;;;/: : : :,.ゝ、 l      l       
朋「むぐむぐ・・・・・・・・む」
829 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:26:58.43 ID:3cBet1Qo
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                 /:〃:::/::::::::::/:::::::/:/::::::::::l::::::::::::::ヽ::::\::::::::::::::::::',
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              |::::::|:::::::::::|::::/リ__\∧ ::::::| ',::|斗\:::::l、:::::::l::::::::::::/
      . - 、      |::::∧:::::::::レ':トハ::fiヽ ヽ:::::l V   \| \::|ヽ:::::/
     /   l     |::/ ヽ::::::l::::ヽ弋少  \|  x==:、   ヘ| l::/
     |   ',    |/   \::|\ト    ,           /´//
       、   l           ヾ  {    〈          ,-‐':/
  ,. --‐ ´ ̄ ̄ ヽ          ヽ            , ' l:::/
 i´          }            \  ` 二 ´    /  |ハ
 }   -―――- 、l              ゝ、    ,.  ´  /   !、
/          }      ,. - =ニ二´ -ハ`T    .  ´    〉\
ヽ  ____ ノ     ,イ        /  ヽ} /        /ヽ \
 {         }    /  !          /| ∠LY^l       //  丶
 ヽ _ ..  -- 、ハ   /  、         l /!.:.:.:.:.ヾ!      , ' /
  !         } ||  /   ヽ          リ l:.:.:.:.:/´l   /  /
  {ハー、---‐ ニイ/.| '  ヽ  \      | ト、_, ′ l  /
朋「合格だ!美味いじゃないか。さっそく明日から店にだそう!」 
830 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:28:44.19 ID:3cBet1Qo
     /::::::/:::::/::::::::::::::::::::/::::/! :::::::::::|::::::ヽ::::::::::::::\:::::::::::::::::::::::::::: !
   /::::::/:::::/::::::::::::::::::::/::::/:::|:::::::::::::|::::::::::'::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::|
    |:::::/:::::::!:::::::::::::::::::/::::/ |:::|:::::::::::::|:::::::::::l:::::::::ヽ::::::::ヽ::::::::::::::::::::::!
    l :/ !::::::l::::::::::::::::/|:::/.,__l:∧:::::::::::|ヽ:::::::|::::::::::::':::::::::::':::::!::::::::::::::'
    |/ |::::::|:::::::::::::/ーレ'- 、 リ ':::::::::::|  V::ト、::::::::::l:::::::::::!:::ト、::::::::/
    |'  |::::::l:::::::::::::トVf 下ヽ  V::::::|   ヽ| \:::::!、:::::::|::::!ハ:::::/
     l::::∧:::::::::::| 弋zり      V:::|  イ下无ア、|∧::::l::::|く V
     |::/  ヽ::::::l            ヽl   辷zク_,   V:|、:| ,〈
     |/ /∧:::::',                  `     l:| リ'  \
      / /!  \ヽ     i            /7リ′     ヽ
     , ′ / .|   ヾ      ヽ.             ∧        ',
    /  /  l     ',ヽ.     _         / ハ          ハ
  /    l  l      V \    ̄    ,. ィ´|     l         / |
/           ,     ヽ  \    ,.  '´/ ∧   l       / /
           ',       ヽ.   ¨  > 、メ ヘ   l    l      / /ヽ.
           ',       ヽ     /≦ハ   l   l     / /   }
           ',         ヽ    /三三|ト、 l     ,   /    /
朋「ってあら?ゆき兄―?2号―?どこいったー?」
831 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:29:56.98 ID:3cBet1Qo

そして・・・・
                                     || ∩|∩  || | |__|
           クックー  ,-^-、                || ∪|∪  || |__|
               ((└))   ______    .||   |    ||
         |~~~| (゚∈゚)--i_,l|   /_____/|    || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/〕_
         |__|~~|  /ヽ‐-/| || |>-<|/ |~'|.|| ()    ||   /    //|
   |~~~|     |__| |_^Д^_  i.||=======◎,,|ヽ( ゚ ゚)ノ  .|| //   ///
   |__|    r===ュ  ((((((< ミ -゙|     ヾl〃 || (,,,,)ヘ  ||.二二二二.〕/||
         .|    |\ |、o-o^l|リノ||====== )(==||.<|    ||       |/.||
     ./ ̄|三三|/ ̄ (つとノ ̄ ̄ ̄ ̄ (_) ̄/|       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄
     /________________/∧_∧ヘ_∧ヘ_∧____   .||
__/ /(# )(# )///////\/,、,,、, 、,,、,,、,/ i;;::゚口゚::l口゚::l口゚::l  /||∧∧ヽ__
   //(# )(# )///////\/(::::::::;;;;)(::::::::;;;/ , 从:゚ヮ゚ノ:゚ヮ゚ノ:゚ヮ゚ノ//|(Д゚,, )__
  /――[\80]―――[\250]―― [\120] ―/ |_l_l_[ネココパン\200]==-と  \_\
  / /(∧_∧.-)/◎◎◎◎◎/ミi≧⊂ニ⊃|| ./       ||    |  |
 //(-(  ´∀)`)/;)(:o:;)(:o:;)/ミi≧ ミi,)  ( ||         . ||    しヽ_)
 | ̄ ̄(    つ . ̄[\100] ̄ ̄[\350〃   ヽ
 |++| | |+++++++++(::u:::::j;;;u;;)
  ̄ ̄.(_(__) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ:::;;;;;;;;;ノ
832 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:31:54.05 ID:3cBet1Qo
            〃   __ ∨ ,,    、||
            |! . '´  `''´      |ト、
         .イ´   〃  |   ヽ.  |! \
.      / |!  /:.:/ //'   ::', j!    \
      / /  i! .///  j/|  i:::.V     ヽ
.     / /// V//|  / !/| |j::::ハ  '.   、 '.
    / /:/'  ///」L./.ノ |  j/」/Li.  ト、  i::. '.
    ,' /:/:   i//´! 7 /  ! / j.:厂',`ヽ.   !::: i
    ! :i.:.!:.   |/ x|/ニ/、 ! / ´レニ、ハノ!   i:::i !
    ! .!::|:..   |〃うCハ  j/   うCハ ノイ  j::ハノ
    ヽ!::|::.   |ハ!{::し:::j      い::::リ ノ ノ// /
     j/ ト、::. |  ゞ''゚~    '   `゙゚''′イ /イi〈
    ノ ,/!::{\{ /////  . -‐‐ 、 /// / ノ川|
   i iハ j::::`ト-ヽ.    (  -‐‐′   /.::::/ j i|
   { !∧!::::::!::i::::::ヘ.        .イ:::// /!ノ i
   i { 丶::::i:::!:::i:::::i::::x‐,- 、_ ..イ::::ノ:/:'/j/ j
    ヽ  \::.:ヽ!::::!:/ / /`ヽ |ハ':::/ /___/_
        \::ヽ:::j       ´)ノ::/フ7´     `丶
       x‐――/}     //  ///        \
       /     //j     ト'ー'''7 //             ヽ
.      /     /∧}     ノ!  / //            ',
渚「わー、わー、わー。大繁盛です!てんやわんやです!」
833 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:32:46.63 ID:3cBet1Qo
      /   / |l          /       〃\ \
     〃   /  {{ / ' / /       /' \ ヽ  '、
     {!   /     ∨ / / /    \  ヽ ヽ   }
.         ,' / 〃  l  {  | j{  {   ヽ.  }  }   l│
        | :| |l  | |  l __| ハ. ヽ  -}─ト 、.,'  j│
        |/| |l  | |/j 从〈 ハ   \ 从ハ /  ハl
        |l | |l  l:ヘ ル≠ミ.{  V\い/行テ心l / l:|
        lハ.从   ヽWうト-ri`      iトー::ri }i/  l├──- 、
          ∨\  ヽ{V必.j|    ,    ゞ込ソイ'  l│-=、   >
            /l | |\_>ゞ'´        '' /l   l│ '´  /
         く  l | |  ∧     ` '     /l    l│  /
         `ーヘV   l |> _        イ|    l 厂 ̄
            |l     |/^┌}>‐-<〔┐|l   //
            |l   l |   ノ}  ̄ ̄ ̄ {z|l    | l
            |l   | |二ノ7、__r、____ 人|l    | |
            |l   | | //  .(ヽ/入   |l    | |‐-、
          /|l   | |,//  /゙>'´xく.  |l    | |  ヽ
早苗「これも新作パンのおかげですね」
834 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:34:43.49 ID:3cBet1Qo
        / / :/   / / :/: :/ : : : : :/ : : : : : : : : \: : : : : : \: `丶、
       { /::/   / /: :.:/:.:/: :/ : : : /: : : : :.:.:.:.:.: : : :ヽ:.';:\.:.: : : : : : : : \
.        ∨:/  / /: : :.:./:.:/: :/ : : : /: : : : :.:.:.:.:.: : : : : : :.:l:.:.: : .:. : : :.: :丶: : ヽ
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       〈:/ / //: : :.:/ : !: :.:.j: :'"´: 7⌒: : :.:/.:.:/:.:. : : j :/-!:.:_.:.:|:.:.:. :│:.: |: : : i:|
          ∨ / : |: : : .:|: .:.|:./|:.; : : /|: : : :/ : /:.:.: : : / :∧:ハ:.:.`メ、:.:. :│:.: l:. : : !|
        ∨=ニ| : : .:.l: .:.:.: :从:{ : 厶l: : :/ // :.: : :/ :/ 厶}:.:∧:.:.:. : j:.: : :. : : :l|
          辷圦 : : .:'; :.:. : {,ィヘ : {/心/∨ /:.:.:/// /こ}:.ハ }:.:. : /:.: /:.:.:j: :j|
        /|: : :.:.ヘ: : : :.:. :ヽ:!{{∧///'_}   / /    ∧//ハ∨:.:.:.:':.:.:/:.:.:./ :八
          /│: : :.:./ヽ: : ヽ: : :代゚ヘ:::::ノ j          {゚ヘ:::ノr' リ:/.:.:. /.:./!.:/
        /  |:.l: : :{   \.:.\:( ゝ、辷ソ         ゝ辷ン /.:.:.;.:.://  |/
.      〈  | :| : :.:ヽ   > \ `¨  ´      ′ ` ¨´厶イ/ ´
       ⌒|八: : : :.:.:`.:ー-ヘ、  ヽ丶ヽ           ヽヽ /: |
           ヽ: : : : :.:.:.:.:.:.:.:丶、        C       イ|:./
             \: : :.:\.:.:._/ ト 、          <xく.j/
              \{\∨  〈  >    __.. <∠イ ヽ
                /    \     / \    | |  }
               /       \  / ̄ ̄}  | l  〈
             ∠二二.丶       `く      |.  | |  \
汐「おいしー」
835 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:36:05.75 ID:3cBet1Qo
                             //  \ l __\-――‐- .
                                ,|| -―‐.:.ヘ|.:.:.:,、:.\:.:.:.:.:.:.:.:.`丶
                          /.:|!.:.:,.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.`'´l\´\.:.:.:.:.:
                            /,. -ァ|'´/:.:.:/.:/.:.:.:.i.:.:.|:.:.:.\.:\.:.:.
                         ///.:.:!/.:.:.:.:/.:.:./.:.:.:.:.:';:.:.|:\.:.:.:.:.:.:\
                          〃 /.:.:.:..:ハ:.:.:/.:.:.:.ハ.:.:.:.:.:ヽ|.:..:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:
                      /' /.:.:.:./.:.:.:.:V:.:.:.:.:.l.:.:!.:.:.:.:.:l.:l.:.:..:.:.:ヽ.:.:.:.:.:.
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                            l:.:.:./.:!.:.:.:./.:l.:.`メ、レ'ヘ.:.:.:.:|、:ト、ヽ.:.:_ - 、.:.:
                            |:.:.:.|:.:|:.:.:.:|:.:.l:.:.メ 、 \ V:.:.| ヾ-‐ ´ \.:.:.:.:
                            l:.:./l:∧.:.:.|:.:.l:.:.l弋歹` V:.|   弋Z歹\:.:
                , '⌒ヽ、        レ  リ l.:.:|、ハ {      ヽ|          ,ヘ
            /    ,. -ヽ             |:.:.| \V     i        /_ノ
     __     | 、    ノ__           ヽ:l  ハ     '       /:.:./
 /´    `ヽ._/   `ー/´  ヽ._           / \  r_==-、     ,.イ/レ'、
/            \  /       / `ヽ、      /   l >'´/ー-‐'  /'   r
{        ,.     y′     /   /ヽ ̄ ̄ ̄ 7 , -、| `''ヽ、 _ .. ´ /,    ハ
丶. _ .. -‐ ヘ    /       /    /   }    / /  |}         / {    ハ
          ヽ            /    /   l、    / /   /|、      / 人  ,′
秋「ち、2号のやつ。勝手に消えやがって・・・・祝ってやりたいところだったのによ〜」
836 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:38:19.42 ID:3cBet1Qo
                  /::/::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::V:::ヽ:::::::::::::::..
            /::/:::::::::::::;:::::::::::::;::::::::/::::::::::::::::::::Vヽ:::::::::::.
             /::::/::::::::::::::/:::::::::/::::::;/:::::::::::\::::::::ヽ::\::::::::.
          /:/7::::::/:::::/::::::::::::/:::: //:::::::: ハ:::::ヽ:::::::::::::::::、::::::.
            〃 /::::::/:::::/::::::::::::/::: / ,./::::::::: l:::l:::::::ヽ::::::::::::::::ヽ:::::.
        /'  /::::::/:::::/::::::::::::/:::〃//::::::::::::::!:::l::::::::::';:::::::::::::::::':::::::
             /::::::/:::::::l::::::::::::/::/〃`l::::::::::::::::|::::l:::::::::::':::::::::::::::::l:::::::
          l::::::::l:::::::::|::::::::::ハ/ /  l:::!::::::::::ハ:::|、::::::::l::::::::::::::::|:::::::
          |:::::::;l:::::::::l::::::::::'ヾT¬‐、lハ::::::::| ヽ| ヽ::::::;ヽ::::::::::::|:::::::
          |::::/ |::::::i::';::::::::l  f^ーり`  V::::|   .ィ‐\:|-ヽ ::::: |:::::::
          レ′ l::::::|::::ヽ:::ハ  ゞー'   V:l   {イ、_ハ} ∧:::::::l:::::/
              ∨:|;::::::|\',   ""   ノ  ヾ  丶._,ノ  ';::::/:;イ:
             ヽ| \l ハ       !     ""     V::/ レ
                     ヽ                    }:/ノ
                   _ゝ、  r‐ 、        , 'ァ‐ リ
                  / { { \  `      ,. '/
                 _/  l ヽ \    .  '//
            . -‐ ´ /     l   \ ` ´  ,イ'|、
朋「・・・いや、きっとこれでいいんだ
  あいつは、この町が、迷ってた俺を助けるために呼んだやつだったんっすよ
  おかげで・・・・俺はまた前に進む力を得ることができた」
秋「やっと・・・就職する気になったか?」
朋「いや、パンを作り続ける!」
秋「働け。」
837 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:41:15.69 ID:3cBet1Qo



| /  |              ! !   !!       λ  ! ヘ   }
|/  !       !    .|!‐= ミト!、 ! !      l !_ ム--ヘ― !
    !.   !   ヘ    .!ヘ Lムミヾミ|ュ!ィ. ノ  ゝムニ|ィ≦ニミ,,!  !
     !   !   ヘ   kィ'ヘ|γ c ヽ ヘ     lγγ c   `ト,/
.    !   ヘ    ヽ |.ヾ .乂_リ   ヘ   !.  弋_ リ  〃
.    ヘ    !ゝ    \  ゝz -'"     \ !  ` ト  ィ/
     ヘ   ! \   !.                   /  /
      ヘ .|ゝ  \  ヘ.           ,       /,,ィ"! 
       \! \ ト ト ヘ         l      ''"   /_/
.           ヽ|ヽ ' !\       ____    し /  ィ
              ! ハ \    て~  ̄ ̄ ~Y    / /!/
               !  \ ヽ、   ̄ ̄ ̄ ̄  / / 
                 ,ヽ| 丶、     ィ .| /.、
                /  |   ゛ -- '"  |'   !
              /   ./|            | ノ  \ 
兄「おいおいおいおい、飛ばすタイミング早すぎだろ!せめてお別れくらい言わせろよなー!」
838 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:42:47.02 ID:3cBet1Qo

                   , -―- 、 -― - 、
                   /  ,_ -―‐- _  \
              /  ,ィ/_ -――- _ヽ  ヽ
             / ,.-/ /´ /    \ \`ヘ ヽ. ',
                / rイ / 〃./::.{:.  l:.  ヽ:.ヽ:.ハ fヘハ
            /  〉i,'./:{{:..{:. ハ:..:. !:....  !:ヽ..',::i| |ヽ>',
              /  く/| l.::ij>k{八::.:{\:::..};ィ匕}:i| |_∧ハ
             ,'  i:ヽ| l.::|ィfチ必`\ヽ くfチ必メ'! L!Nハ
          i ! .::l.::{| ヽト, r'_;;ソ     r'_;;ソ l |:: l:..i i
          | ! !::::! ::i.:: ム ´   _' ___  ` ハ :j:: j:: l |
          | ! !::::!::∧:: {ヘ   {    }   ,イ,' /::: ,':::::i |
          ヽ!ハ::::ヽ:::ヽ:.',::>,、 ゝ._ _ノ , イ::/ / ::./:i!::::!:l
              ,‐<゙ヽ=、{ヾヽ f,/>ー<{_1`/ / :::/_ノ}::リ/
          / /⌒ン<ヽ \ ト、_   _,, レ/ {::/ }}ヽ〈'
            / /  /  | `!  V‐===-V   ヽ }} l ヽ_
         〈_ '  '   j  !   V ̄ ̄ V     / / } ヘ≦\
        / ヽ,、     /    i!   i!    / / /    j  ヽ
神「残念でした〜。タイムリミットです。どう?少しは働く楽しさがわかったからしら?」
839 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:43:58.68 ID:3cBet1Qo
   , - '' : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヘ
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: :, : : : : : : : : : : : .:.:i : :.:i: : : : : : ,、: :l. ヽ:. : i:.:.:./ /, -―-、 ヽ''ヽ
./i: : : : : : : : : : : .:.:/i .:.:il:. : : : : :l i:. l  ヽ:.:.ト:./ ,' / , ' ¨¨ヽ ', ', i
' l : : .: : i : : : : : .:.i l.:.:.l l:. : : : :.l l l  ∠__l.y i i {(  ) } } i ./
. l: : .:i:. :.V: : : :. :.:i`-l...i_ ヽ:. : :.ii _ll,イ´ハV7  ',ヽ ヽー_' ノ, ' ,'./
 i : :i、:. :.:V: : :ヘ:/ひ!lヾミノ:.:./`¨ 弋'ムノ-/ / ヽ`_ー-‐_' / /
  , :.l ',:.:.:.:.:i、 : ヘi 、ゝ'_ノ- \i   ´   , ,      ̄   / /
  ,:l ヽ:.:.:.i丶 、\       l     , ,        / /
   !|  ヽ:.:l\`ーヽ -      '     i i       / /ヽ
      `  \:.:、ヽ、   ー―‐''   .l l       / /  ハ
          ` \ヘ丶、    _ /l ヽ、    ./ /   i
            /∧  ` ー/    ̄/ i` .、` ー ‐'/    l
兄「ああ、常に俺は俺らしくいれば、どこでだって楽しめるさ。
  だから、しばらくはまた働かなくてもいーや」
840 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:45:03.28 ID:3cBet1Qo
   , - '' : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヘ
  /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ハ
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: :, : : : : : : : : : : : .:.:i : :.:i: : : : : : ,、: :l. ヽ:. : i:.:.:./ /, -―-、 ヽ''ヽ
./i: : : : : : : : : : : .:.:/i .:.:il:. : : : : :l i:. l  ヽ:.:.ト:./ ,' / , ' ¨¨ヽ ', ', i
' l : : .: : i : : : : : .:.i l.:.:.l l:. : : : :.l l l  ∠__l.y i i {(  ) } } i ./
. l: : .:i:. :.V: : : :. :.:i`-l...i_ ヽ:. : :.ii _ll,イ´ハV7  ',ヽ ヽー_' ノ, ' ,'./
 i : :i、:. :.:V: : :ヘ:/ひ!lヾミノ:.:./`¨ 弋'ムノ-/ / ヽ`_ー-‐_' / /
  , :.l ',:.:.:.:.:i、 : ヘi 、ゝ'_ノ- \i   ´   , ,      ̄   / /
  ,:l ヽ:.:.:.i丶 、\       l     , ,        / /
   !|  ヽ:.:l\`ーヽ -      '     i i       / /ヽ
      `  \:.:、ヽ、   ー―‐''   .l l       / /  ハ
          ` \ヘ丶、    _ /l ヽ、    ./ /   i
            /∧  ` ー/    ̄/ i` .、` ー ‐'/    l
兄「ああ、常に俺は俺らしくいれば、どこでだって楽しめるさ。
  だから、しばらくはまた働かなくてもいーや」
841 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:46:30.33 ID:3cBet1Qo
               /    //  /‐───- 、   \
              /r‐─‐ァーf/    /-────-、 \\ ヽ
               / ∨三/'¨7   /   / /      \厶 ハ ',
.              /  \/__,/   /  ,イ l  |       il V∧ハ
            /  _//〉‐/    /\/ |i |l | 丶    i|  l ト、 ',
             ,′ f⌒∨ /    /ハ {\! |l !{   \  i|  | トく l
            / ハ.  V    /ィfテミ、 ヽ八 ヽ    ヽ_|  l |/ |
             l l 〈_∧   ',   ハ{_f::j:リヾ    ヽ∧>七 j  ! |_  |
             | l   _ム _ ゝへ| V;之_        _ ヽハ ,' /  | \|
             | l  >'´     ヽ           ィ≡气 / /  l\/!
             | l  |   -ー―一ヘ   , 、__  ヽ    〃:/|   ∧ |
          j八 |       __}  {  `ア    ,ムイ /  ,イ__j│
         ,r≦三ヘ   ̄    ト、 ` ー'  ,. イl│ W  / | jlリ
        /  /  ハ   _,  --‐〈. >‐r<  /l│ 〃  / j /
          // /   | ハ     , イ1  /   ヽ./ ∧/   / /'
.        〆 /    い \ -<  }}/ ̄ ̄`ヽ>ーイ 、 /
      〈  /     ∨ 代\   ハ、 , -―‐- 丶 //丁fヽ
      ∧/       ∨   `三彡' \    __ ∨´  |│ l
      l |        \==彳│  \/  ` |   |│ l
神「とかいってると振り出しに戻っちゃうので、改心するまで続けましょう!さあ、次はどんな世界が待ってるのかな〜!」
842 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/14(月) 00:47:21.81 ID:3cBet1Qo
:::::::::::: : : : : : : : : :: : : : : |\: : : : : :: : : : : : : : : : : : : : : ヽ: : : : : : : : i
:::::::::::: : : : : : : : ::::: : : : : | \: : : : :l:: : : : : : : : : : : : : : :ヽ:: : : : : : : :|
::::::::::::: : : : : : : : ::i::: : : : |   ヽ:: : : ::|:::: : : : : : : : : : : : : : ヽ:: : : : : : ::|
::::::::::::: : : : : : : ::::l i:: : : /   ヽ::: : ::|、::::: : : : : : : : : : :::::: : :l::::: : : : :::::l   
::::∧::::: : : : :: : :::i l:: : :/   __,>::.:::| \:::: : : : : : : : : ::::::::: :|:::::: ::: :::::ノ
:::/ ヽ:::: : : :::: : ::|  l:: /,,,-/,,-=ヽ,::l、、ヽ:::: : : : : : : : ::::::::::: :|::::::: :::::::/
:::ト、ヽ:::: : : ::: ::::|,/|/'''',,/′ ,-‐i/\ヽ i::::: : : : : : : ::::|ヽ:::::l::::::::::::::/
>''`‐、、::::: : ::::ヽト'''' //   ( ' ' ) >' l::::l : : : :: : :::::l 丶:l:::::::::::::/
  (´。\:::::::::::::|        `ー''  /′∨: : : ::::: :::::l /i/:::::::i:::/
、  ヽ ノ \:::::::|     - 、 、___ /   /: : ::ハ:::::/,/:::::::::::::/|/
 `ー-'′  \:|              /: : :://,ゝ::/'::::::::::::::/、
:\     i               /: :/,__,-'i/ヽ::::∧:/ ヽ
ヽ::\    l               // ノ   l ヽ/ ∨  ヽ、_,,、
 `ゞ.ー  /        _     ′ /       /        ``ー--、、
   \、 ` ‐ __,,,,,--=''-‐''''\    /        /              `ー--
     \、  \''(′  _,,-)   /       /
       \、 `ー===-‐''′ /       /
兄「やめろ!家に帰せ!そろそろファイナルファンタジーだって発売するんだよおおおおおおお!!!!!」

こうして、ゆき兄の就職活動(リハビリ)は続くのであった・・・・・・・続く・・・・の?
843 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/14(月) 10:27:49.68 ID:U39Fxl.o
スッ、パチパチパチパチ(手を伸ばして拍手する)

いいよ、なかなかいい話だ
君の狂気、見せてもらったよ
844 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/16(水) 14:21:04.89 ID:qnwFMO.o
部屋をクリスマスエディションにしたい
クリスマスっぽく…

赤…?血?
845 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/16(水) 17:10:12.17 ID:DedSlADO
ブラッディクリスマスか…
846 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/16(水) 21:50:04.05 ID:IU9BfBI0
じゃぁ緑は・・・?カビ?
847 :ミギー :2009/12/17(木) 08:01:59.18 ID:2mAaGQDO
たくさんの青むし
848 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/17(木) 10:36:23.79 ID:iTfkokDO
ムックとガチャピンでいいじゃない
849 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/17(木) 11:49:21.21 ID:gjRAhM6o
躍動の緑!
850 :ほろ苦 :2009/12/17(木) 13:18:30.42 ID:kjCEOISO
類似とマラ男と聞いて
851 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/17(木) 22:27:43.31 ID:0epf0UDO
一人暮らしのインフルエンザがこんなにも厳しいなんて聞いてないよ!
852 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/18(金) 06:05:53.44 ID:XM48OgDO
>>851
そりゃ辛いわwwwwwwwwがんばってくだしあ!
853 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/18(金) 08:58:12.87 ID:CFI9wBEo
>>851
早く尻にネギ刺して寝ろよ
854 :そら :2009/12/18(金) 11:27:21.57 ID:xoEv8sDO
 V/
 ‖
 人
(゚ー゚)
855 :そら :2009/12/21(月) 08:02:00.66 ID:z2rD6MDO
くり…すま…





くりむぞん…すまっしゅ…?
856 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/21(月) 12:37:21.63 ID:C1VAZ2DO
くり…すま…




くりてぃかる…すまんこ…?
857 :そら :2009/12/21(月) 17:49:48.74 ID:z2rD6MDO
あらやだ卑猥
858 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/21(月) 18:07:59.85 ID:C1VAZ2DO
卑猥と思った人が卑猥なんです><
859 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/22(火) 12:39:32.92 ID:FZDCjADO
やちゃまるが真っ赤になってレスしたのを想像してたら寝坊した
860 :そら :2009/12/22(火) 16:49:03.18 ID:VJGAzgDO
真っ赤なおっかっおっのー
やっちゃまるさーんーはー
いっつもみーんなっのー
861 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/22(火) 23:02:07.65 ID:juuxuswo
爺ちゃんが死んだの…
いやーまさか本当にブラッディサンタがプレゼントを贈りつけてくるとはな…
862 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/22(火) 23:31:38.21 ID:0RF2NkDO
じいちゃん…(´;ω;`)ブワッ


ブラッディサンタオソロシス…
863 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/24(木) 02:55:29.44 ID:3Qx.F3Ao
12/23
    |                   \
    |  ('A`)           クーリスマスハ
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄          /

    |                   \
    |  (・∀・)         ダレニモ
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄      ヤーッテクルー/

12/24
    |                   \
    |  ('A`)           ギシギシ
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄        アンアン/

12/25
       ‖
      ('A`)
      ( )
   |    | |
   |
  / ̄ ̄ ̄ ̄
864 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/24(木) 10:58:59.35 ID:zmx6RMDO
やめろ



おいやめろ
865 :ミギー :2009/12/24(木) 13:30:19.46 ID:PzdqlQDO
レッツチョッコフォッンデュッ!
http://imepita.jp/20091224/485200
866 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/24(木) 14:43:19.84 ID:v/X/C7oo
僕はチョコピザポテトちゃん!
867 :そら :2009/12/24(木) 16:52:44.83 ID:e9Oq6cDO
クリスマスを楽しく過ごす奴は市ね!
868 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/24(木) 22:27:31.49 ID:zmx6RMDO
友達全員彼女できてた…できないと思ってたやつにも…


樹海今行ったら寒いかな?
869 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/24(木) 22:42:44.38 ID:c6/3LADO
>>868
残業帰りに先輩と独り身同士でさと行ってた俺よりマシだからイ`



しかも前に他人と食事したのがいつだったか思い出せないくらい久々な件
870 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/26(土) 00:14:57.79 ID:EdVWizw0
もう26日だ!
おまつりはおわりだ!
ただの土曜日だ!
いいかげんにしろ!
へいじつに浮かれてた奴等はとっとと寝ろ!
ん、気がつけば終わってた?

なんだって?
気にするな!
そんな一生でもいいじゃない!
うん、もう終わったんだ・・・爆撃のクリスマスは・・・
871 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/26(土) 08:42:57.39 ID:rwGtT2AO
>>870
カウントダウン開始。残り364日。
872 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/26(土) 12:44:48.64 ID:ywdOqIDO
>>870
どようも会社だよ…仕事終わ
んねぇ…
まじでリア充[ピーーー]よ
いぬもぬこも大好き
873 :ミギー :2009/12/26(土) 18:52:16.98 ID:2W0rsgDO
>>872
無理矢理すぎワロタwwwwwwwwwwwwww
874 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2009/12/27(日) 20:24:39.63 ID:oO4mR.Uo
年末が近づくと皆鬱になるというのは
この世の暗黒面が増大しているからだろうか
875 :ミギー :2009/12/27(日) 22:40:04.06 ID:tOoX6IDO
>>874
私はハッピーになるよ
876 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/28(月) 02:05:26.00 ID:01cgsmE0
>>875
頭は常に幸せそう
877 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/28(月) 16:35:19.98 ID:YoP2TcDO
>>877
いつもハッピーじゃないか頭的な意味で^^
878 :そら :2009/12/28(月) 16:47:43.67 ID:0Co63MDO
>>877
そんな自棄っぱちになるなよ…
879 :ミギー :2009/12/28(月) 17:07:56.47 ID:rAibicDO
>>877
君、可愛いねえ?こっちおいでよ
880 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2009/12/28(月) 17:48:08.05 ID:i7Gn36DO
>>877がミギー菌に侵されたようです
881 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/29(火) 00:28:57.69 ID:0sJYhFMo
>>879
いやいや、君の方が可愛いよ
882 :ミギー :2009/12/29(火) 10:07:04.23 ID:RYtCCkDO
>>881
まあね!!!!!!!
883 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/29(火) 10:42:50.07 ID:MOLaAEDO
regnumtria〜三国志戯伝〜
http://regnumtria.net/friend/check.php?c=vqgqDHb66C5.Y
三國志無料オンラインゲーやろうず(´・ω・)
884 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/29(火) 13:56:34.62 ID:x9vL1AAO
>>882
やっべ!超マブいね!
可愛いすぎて妊娠しそう!
885 :ミギー :2009/12/29(火) 16:35:38.34 ID:RYtCCkDO
>>884
えへへ///よく言われますぅ////
886 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/29(火) 22:13:46.13 ID:iVBWicDO
----------以降イラっとした人のレスが続きます----------
887 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/29(火) 22:26:52.50 ID:PaKJec.o
ムラッ
888 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/29(火) 22:27:23.32 ID:x9vL1AAO
だがさせない!

>>885
やっぱりそうか!
特に頭のネジのハズレ具合なんて崇拝できるレベルだよ(><)
889 :ミギー :2009/12/30(水) 19:42:29.23 ID:bEBJe2DO
最近前髪が禿げてるんですけど詳しい人どうすればいいか教えてください

そしてぽにょに似てるって言われるんですけど励ましてください
890 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/31(木) 11:09:27.61 ID:y2JVK6M0
残念だけど・・・手遅れです
891 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/31(木) 15:48:25.35 ID:uazUfsDO
禿げてないと強く思うことで何にも動じない心ができるから…がんがれww
892 :そら :2010/01/01(金) 00:09:08.26 ID:jYt2VsDO
あけめ
893 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/01(金) 00:30:02.44 ID:qxyhK0ko
あっけおめー!!
今年の抱負は札束のプールで泳ぐことです!!
894 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/01(金) 01:03:47.79 ID:Qpy.yTw0
あけましておめでとうございます。

>>893
とりあえず
らいねんまでに
どこだか忘れたけど
しらない国にいって札束に両替すればいいじゃない

895 :ミギー :2010/01/01(金) 01:05:00.88 ID:Ec6pCADO
幸せになりたいです!!!!!!
896 :ミギー :2010/01/01(金) 01:09:03.73 ID:Ec6pCADO
虫歯が治ってほしいです!!!!
897 : 【だん吉】 [メガネ萌え同好会会長]:2010/01/01(金) 03:19:13.16 ID:M2i8rcDO
飲んで爆睡してたら年明けてた^p^
898 :たまゆら :2010/01/01(金) 08:38:48.27 ID:7cyl3sAO
あけおめ〜!


可愛い巫女さんが全くいない件
899 :ミギー :2010/01/01(金) 09:29:41.75 ID:Ec6pCADO
新年早々ラップ音がうるさくて寝れなかったwwwwww最悪だいwwwwwwwwww
900 : 【ピョン吉】 :2010/01/01(金) 10:28:55.96 ID:oYSZcYQo
今年の運勢はいかに
901 : 【吉】 :2010/01/01(金) 16:13:50.50 ID:Qpy.yTw0
今年の運勢を占う!!






悪ければ今月の運勢でww
902 : 【中吉】 [sage]:2010/01/01(金) 20:04:47.30 ID:RdaraoDO
今年はどんな年になるかな
903 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/02(土) 22:31:58.57 ID:0COvaW2o
新作主要人物

ゆき兄
天眼を持ち、あり得ない存在の認識が出来る。
いわゆる霊能力持ち。

高橋
ゆき兄の能力について知る数少ない人物。
自分も1度でいいから幽霊を見たいとことあるごとにゆき兄を心霊スポットに連れて行く。

ハクレイ
天眼研究機関、通称EDENの日本支部総帥の若い男。
常に笑みを絶やさず、誰に対しても優しく対応するがその笑みはどこか冷たさを携える。

エンプティ
EDENより研究対象であるゆき兄を護衛するという任務を受けてゆき兄を守る男。
この世界で唯一の「あり得ない存在」に物理的なダメージを与えれる霊銃【涅槃】を持つ。

904 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/01/02(土) 22:41:03.88 ID:tHzjezko
なんか予告きてるwwwwwwwwwwwwwwwwww
905 :そら :2010/01/02(土) 23:09:26.60 ID:GBoMQ2DO
安価スレが時を経てSSスレになる不思議
906 : 【毎月1日限定ですよ。。】 :2010/01/03(日) 16:26:49.98 ID:NdpC7.DO
てすてす
907 : 【毎月1日限定ですよ。。】 :2010/01/05(火) 18:44:03.08 ID:jH3Bchs0
てふてふ
908 :そら :2010/01/06(水) 04:17:18.74 ID:Lyr7fUDO
暇だから好きなデジモンについて話そうか
909 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/01/06(水) 08:23:34.31 ID:Fmwmq6DO
ガブモン!
910 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/07(木) 06:32:51.97 ID:TOiuVVMo
ゆき、二重まぶたになるために10万貯めて整形しにいったの巻

(ガチネタです)
911 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/07(木) 12:09:49.86 ID:BnHJVgQo
証拠うp
912 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/01/07(木) 12:54:40.99 ID:lAT3x6DO
うpと聞いて(ry
913 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/08(金) 20:23:35.33 ID:UOAGWLIo
二重になってたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
凄いほどグッキリ二重になってたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ついでにまぶたの脂肪吸引までしたらしいwwwwwwwwwwwwwwww
914 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/10(日) 10:21:03.11 ID:XD1BicDO
脂肪吸引もしたのかよwwwwwwww
915 :そら :2010/01/11(月) 12:30:03.83 ID:P.uTkEDO
まるでリーマンのような出で立ちで成人式に出る学生
916 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/11(月) 22:53:48.40 ID:8jFtUIDO
リーマンみたいって言われた俺が通りますよ


ビンゴの景品だけで会費のもとが取れたぜwwww
917 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネスーツ萌え同好会会長]:2010/01/11(月) 23:05:21.98 ID:1i3pGQDO
リーマンみたいとな…?



な ぜ ス ー ツ 姿 を う p し な か っ た の か
918 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/13(水) 00:14:41.84 ID:UqFrUY2o
暗い洞窟のような場所を前もよく見ずにただ走り続ける。
転びそうなり、地面を手をついても足は止めずにただ前へと。
息はとっくにあがっていて呼吸すらも苦しく、心臓は張り裂けそう。
それでも俺はひたすらに前へと走り続ける。

「すまない、すまない…」

俺は誰に、何に対して謝っているんだろうか?
わからないけど俺は謝り続け、同時に走り続けた。
やがて小さな光が前方に見えてきた。
限界を超えている身体に鞭を打つようにスピードを上げようとする。
だがそんな俺の肩を何かが掴んだ。そして耳元で背筋を凍らすような冷たい声。

「…どうして逃げるの?」

俺の身体は動きを止め、まるで氷水をかけられたような冷たい感覚が全身を襲う。
それなのに身体にまとわりつく熱気のような感覚、相反する2つの感覚がもたらす強烈な不快感。
心臓の鼓動は否応無く高まり、駄目だとわかっているのに俺の首は後ろを振り返ろうとする。
真の恐怖は人間を惹きつける。
火に飛びこむ虫のように、人はそれが自らを滅ぼすとわかっていても惹きつけられてしまうのだ。
振り向いた俺の視界に現れた存在、それは…

「ワタシヲ、オイテイクノ?」
919 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/13(水) 00:17:11.48 ID:UqFrUY2o
怪異天眼異聞録

【怪異0 〜楽園〜】
920 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/13(水) 00:18:23.17 ID:UqFrUY2o
目を開ける、頭が重い、なんだかズキズキする。
小さな頃からずっと見てる夢を見た。
暗くて長い洞窟を謝りながらずっと走って、誰かに肩を掴まれて、振り向くと目が覚める。
いつもそこまででそれ以上は決して見れない、いや見たのかもしれないが俺の記憶には残っていなかった。
顔をあげると、いつもの俺の部屋…ではなく見慣れない部屋だった。
白い壁、白い天井、白い机…俺が寝ているソファも白い。
全てが白で構成されたその部屋は、まるで穢れることなくどこまでも純粋な、色の無い世界。
ここはどこなんだろう、最初に頭に浮かんだのはそんな疑問だった。
状況を把握できないままにただ部屋を見回していると背後からドアが開くような音がした。
振り向くと、サングラスをかけた白い服を着た男が立っていた。
圧倒的な白の中で黒く輝くサングラスだけがとても違和感を放っていた。

「楽園にようこそ」

男は小さく、そう呟いて俺の正面へと歩いてきた。
俺は男に向かって言った。

「随分想像と違う楽園だな」

男は少しだけ笑う、だが何も言わない。
しばらくすると男は俺に向かって頭を下げてゆっくりと話し始めた。

「まずは謝罪しよう、手荒な真似をして連れてきてしまってすまないと」
「…ああ」

そう言われて思い出した。
俺は確か夜道を歩いていると突然後ろから羽交い絞めにされて口に何かを押し付けられたんだ。
そしたら段々意識が遠のいて…それをやったのはどうやら目の前の男。
誘拐されたってことなんだろうか。
そんな俺の考えを見透かしてか男は続けた

「私、いや我々は何も君を誘拐して身代金を要求しようかなどと考えているわけではない
 君しか持ち得ない能力、それを使って我々に協力して欲しいのだ」
「俺しか持ち得ない能力?」

そう言うと男は自分の右手の人差し指で自分の右目を指差した。
そのジェスチャーを見た瞬間に俺はそれがどういうことなのかを悟った。
ため息をついた後に聞き返した。

「それなら説明すればいいものを、なんで強引に眠らせてまで連れてきたんだ?」
「普通に説明しても理解はしてくれまい、ゆっくりと落ち着いて話せる状態にしたかった」
「じゃあ説明してみてくれよ」

悪意が無いと踏んだ俺は若干挑発的に男にそう言ってみせる。
だが男は別に気にする様子も無く、淡々と説明を始めた。
921 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/13(水) 00:19:56.68 ID:UqFrUY2o
「我々は今の世界を憂いている、人と人とが絶え間なく争い続けるこの世界…
 だが最早争いを人の手で止めることは不可能に近い、だからこそ人を超越した力が必要なのだ」
「超越した力っても…
 俺は眼はただ…見えるはずの無い物が見えるだけで…」

男の口元が微かに動く、注視していなければわからないほどの小さな小さな微笑
そして男は続ける。

「それは力の一端に過ぎない、いや…一端どころか器から溢れた少量の水滴…
 その程度のものだ」
「…別にあんたがどう思おうと勝手だが…
 単刀直入に言う、俺には世界をどうこうするような大規模なことに協力できるような力は無いし
 協力する気も無い、悪いけど他を当たってくれ」

若干強い口調で俺は協力を拒否する。
少しぐらい顔がゆがむと思ったが男の顔はさも当然と言うように表情ひとつ変えなかった。
そして言った。

「君は生きていたいか?」

生きていたいか?その質問に背筋が冷たくなった
協力しないから[ピーーー]ということなのだろうか。
必死に平静を装いつつ、震えを押し殺した声で聞き返す。

「…それは…協力しないと[ピーーー]ってことか?」
「勘違いはしないでくれ、私はむしろ君を救おうとしている」
「救う?」

なにをもって救うというのかが俺には理解できなかった。
こいつが俺の何を知っているというのか

「君の目は、天眼という」
「てんげん?」
「天眼は人がその存在を許しても神は許さぬと言われるほどの力を持つ。
 …そして天眼の持ち主は天眼の真なる覚醒と同時に確実な死を迎える」
「…なんだって?」
「覚醒を迎える年齢は誤差あれど…遅くとも25歳を迎える前には死を迎える。
 それも通常ではあり得ないような死に様でな。」

淡々と続けるその男の話を聞いて俺は黙ってしまった。
俺が死ぬ?少なくとも25歳までには確実に死ぬだって?そんな馬鹿な…
嫌な汗が身体から噴出しじっとりとした肌にシャツがまとわりつくのがとても不快だった。
922 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/13(水) 00:22:22.26 ID:UqFrUY2o
「…何年前になるか、私は1度だけ天眼の覚醒によって死んだ男を見たことがある…
 それは凄まじい死に様だった。
 彼の頭部はほぼ原型を留めていなかった、まるで頭の中で爆弾が爆発したかのようにな。
 …あらゆる検査の結果、彼の頭部を粉々にしたのは…彼自身の右目。」
「…あり得ないだろ、それ…」
「普通では、な。
 右目が頭部全体を粉砕するほどの爆発を起こすなど通常では絶対に考えられない。
 だがそれは起きた。人知を超えた神の業。存在してはならぬ存在を消し去るための天の意志によって。
 …そしてこのままでは君も間違いなく同じ運命を辿るだろう。」

俺は頭を抱え、瞼の上から右目を軽く指で押さえた。
この眼が、いつか俺を[ピーーー]?
それもそう遠くない近いうちに、俺の頭を粉々に吹き飛ばして…?
…嘘だ、嘘に決まってる。そんなことあるわけがない…

「…嘘だ、そんなの俺は…信じない…」
「そうさ、人は皆証明されないことを信じようとはしない。
 しかし証明のしようの無いことは真実を知る人間には苦痛だ。誰からも理解を得られない。
 それはまるで決して割れないシャボン玉に内包された孤独。
 証明できそうなのに、すぐに自分を隔てる薄い膜は割れそうなのに、決して割れない。
 …君はそんな思いを何度も味わってきたはずだ。」
「…」
「私たちなら、わかってあげられるだろう
 君の孤独も、痛みも、押し隠してきた全てをな」
「俺は…」
923 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/13(水) 00:23:28.17 ID:UqFrUY2o
俺は頭を抱えてうなだれた。
グチャグチャになった思考で考えがまとまらない。
嘘に決まっていると思いたい、普通ならあり得ないんだから。
だけど俺は知っている、この世界の普通は俺にとっては普通じゃない
そしてこの世界の普通じゃないということが俺にとっての普通なのだということを。
ならばこれも、俺にとってに普通なのかもしれない。
死にたくない、俺はまだ、死にたくない…

「可哀想だな、望んで手に入れた力ではないというのに。
 たまたま持って生まれてしまったというだけで、君は今まで常に孤独にまとわりつかれていたのだろうな」
「…」
「私は凡人だ、君のような特別な目を持っているわけではない。
 だが君と同じ孤独を持つ人間には誰よりも触れてきた、全てではないが私なら君の手を取れるだろう
 そして、君を死より救うことが出来る。」
「フッ…ハハッ…ハハハハハッ!アッハッハッハ!」
「何がおかしい?」

俺は笑いながら男に向かって言う。

「さっきから偉そうなことばっか言いやがって、何が可哀想、何が救えるだ。
 素直に言いやがれ、俺が行き続けるには協力しか無いんだと」
「…君は随分と、ひねくれているな」

半ば呆れたように俺に向かって男は言った。

「ひねくれるか…
 そうもなるだろ、こんな眼を持ってずっと生きてきたんだ」

右目を指差しながら、俺は男にそう言った。
男は何も言わず、ただ静かに頷いていた。

「俺は正直、あんたが好きじゃないよ
 …だけどもう俺は…見える物を見えないと思って、本心を押しつぶして生きるのには慣れてるんだ」
「それでは?」
「…救ってみてくれよ、救えるものなら、この眼から俺を救ってくれよ
 救ってみせろよ…出来るものなら…」
「…ああ」

俺の目の前に、男の手が差し出された。
俺は迷いながらも、その手を取った。

「私は、天眼研究機関EDEN日本支部総帥ハクレイ。
 楽園に、ようこそ。」
924 :そら :2010/01/13(水) 00:24:22.66 ID:WsT2ioDO
何かいきなり始めますね
925 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/13(水) 00:24:36.91 ID:UqFrUY2o
暗い部屋の中央に1人の男が佇んでいた。
高みからガラス越しに男を見下ろしている何人もの影があった。

「天眼所有者を確保しました。
 ですが覚醒値はレベルEです。」
「それで役に立つのかね?」
「…レベルEとはいえオリジナルです。
 刻限が近づけば確実にレベルAには到達するはずです。」
「なるほど…」
「もうすでに天眼の充分なデータは収集されてます。足りないのは施設内では取れないデータ…
 つまり通常の生活において天眼がどのように作用するかです。」
「ならばオリジナルでそのデータを?」
「ええ、彼にはごく普通の生活を送ってもらいます。
 無論、悟られぬように監視をつけてですが…」
「しかしそれでこちらが欲しいデータが得られるのかね?」
「天眼は覚醒に順じて様々な怪異を日常に侵食させます。
 いえ、正確には本人が認識可能な怪異の規模が増大しているのですが…
 真の恐怖は人を呼び込みます。心配せずとも彼は自ら怪異へと向かって行くでしょう。
 望むにせよ、望まぬにせよ。またこちらからもある程度の干渉は可能です。」
「成る程…では模造品については?」
「…オリジナルを確保した以上はすでに不要でしょう。
 扱いづらい彼らにこの状況で時間を割くのも好ましくはありません。」
「いよいよ私達の楽園が近い、ということね」
「フフ、これまで巨額の資金を投じてきた甲斐があったというものだよ」
「フフフ…」
「ハッハッハッハ…」
「アッハッハハ…」

部屋の中心に佇む男、ハクレイは高みより浴びせかけられる笑い声を聞きながら考えていた。
この下卑た豚どもは天眼のことを何もわかっていないのだと。
彼の痛みを理解し、彼の全てを支配できるのは私しかいないのだと。
せいぜい今は夢に浸るがいい、気づいた時にはお前達は見下ろし楽しむ側から地べたに這いつくばり助けを哀願する側に成り下がる。
その時まで、甘美な夢に浸っているがいいさ、と。

「クク…」

小さな声でハクレイは笑った。
その声は高みより降り来る笑い声にかき消され、誰の耳にも届かないまま消えていった。
926 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/13(水) 00:26:15.89 ID:UqFrUY2o
というわけで本編は2月から始まります。
えー、今年も頑張ります。
927 :そら :2010/01/15(金) 17:16:25.97 ID:Btv9zwDO
電車でウチの母校の制服着たゆき兄さんをイケメンにしたみたいな奴がいる
928 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/01/15(金) 17:40:11.01 ID:Tj0O.cDO
なんか始まってたけどまだ読んでない^p^

>>927
なんかワロタwwww
929 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/16(土) 08:16:28.13 ID:JjDoDMAO
いよいよ明日がセンター本番ですね!

今日はぐっすり寝て英気を養いたいと思います
おやすみなさい!
930 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/16(土) 09:28:42.03 ID:csShAOYo
>>929
   . . .... ..: : :: :: ::: :::::: :::::::::::: : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
        Λ_Λ . . . .: : : ::: : :: ::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
       /:彡ミ゛ヽ;)ー、 . . .: : : :::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::
      / :::/:: ヽ、ヽ、 ::i . .:: :.: ::: . :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
      / :::/;;:   ヽ ヽ ::l . :. :. .:: : :: :: :::::::: : ::::::::::::::::::
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄
今日と明日だよ
来年こそはがんばってよ
シーズン開幕からこんなことになるなんて
931 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/19(火) 08:22:41.04 ID:t04zg5oo
   . . .... ..: : :: :: ::: :::::: :::::::::::: : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
        Λ_Λ . . . .: : : ::: : :: ::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
       /:彡ミ゛ヽ;)ー、 . . .: : : :::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::
      / :::/:: ヽ、ヽ、 ::i . .:: :.: ::: . :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
      / :::/;;:   ヽ ヽ ::l . :. :. .:: : :: :: :::::::: : ::::::::::::::::::
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄

書かなきゃいけない小説が沢山ありすぎる
932 :ピュアハート [('A`)]:2010/01/19(火) 10:24:35.81 ID:RTGeQsSO
>>931
時間は腐るほどあるだろ
933 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/01/19(火) 15:31:34.44 ID:Qn9lNMDO
>>931
毎日がエブリデイなゆき兄なら問題ないだろ
934 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/21(木) 00:41:11.86 ID:y9DdY.AO
フビライは〜ん
935 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/01/21(木) 22:44:52.22 ID:qnm1qvgo
私だって忙しいんです!
毎日毎日大変なんです!

押し寄せる思考の渦から必死に自我を守ったり色々と
936 :ピュアハート [('A`)]:2010/01/21(木) 23:40:57.44 ID:.4HhpwSO
>>935
ようは暇なんだな
937 :ミギー [sage]:2010/01/31(日) 21:27:39.47 ID:ymo7m2DO
髪を10センチ以上切ったwwww頭が軽い軽いwwwwww
938 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/01/31(日) 22:48:38.71 ID:KqmTgEAO
中味がなぁ…
939 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/01(月) 10:59:56.44 ID:FZzmnyso
中身がなぁ…
940 :ミギー [sage]:2010/02/01(月) 17:21:47.73 ID:OdwNUwDO
ちがうちがう!髪短くなったから軽いんだよぅ!
941 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/01(月) 18:01:31.92 ID:o0Z.i2DO
>>940
え…?
942 :空天未開砕片綺羅点灯剥落彼方 :2010/02/01(月) 21:13:54.27 ID:VKd3nsDO
>>940
は…?
943 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/01(月) 22:58:40.22 ID:JoNENUYo
2月です

時間とはどれだけとどめようとしても指の隙間から零れ落ちる水のように
あまりにも無情に過ぎていく
だから僕はこの世界が大好きで、同時に大嫌いなんです

あー、おなかいたい
944 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/02(火) 01:12:52.65 ID:9cSS1YDO
>>943
要約すると…

「新作うp落としそう」 
でおk?^^
945 :空天未開砕片綺羅点灯剥落彼方 :2010/02/04(木) 10:18:07.75 ID:B20oc.DO
10
946 :空天未開砕片綺羅点灯剥落彼方 :2010/02/05(金) 06:59:59.86 ID:.VIyiEDO
9
947 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/05(金) 07:12:13.55 ID:EdFUR8Yo
8
948 :空天未開砕片綺羅点灯剥落彼方 :2010/02/06(土) 12:16:47.64 ID:/h3VBIDO
8
949 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/07(日) 18:28:35.90 ID:W5e5gUDO
しかし過疎ってるな…










あ、髪切ってきますた
http://imepita.jp/20100207/663370
950 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 14:50:48.63 ID:ouMCusDO
わかる…わかるぞみんな見てるってことぐらい!!
暇だから後でパソコンから立ててきてやんよ

あとヤチャマル美人すぎわろた
951 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/09(火) 15:10:31.72 ID:aLpe0cDO
>>950
スレ立てよろww

tkアレほとんど顔隠れてるだろwwwwwwww
952 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 15:29:22.40 ID:FNVkjGU0
ほいよ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1265696835/

このスレでははじめて立てるから緊張…なんかしてないんだからねっっ!
953 :空天未開砕片綺羅点灯剥落彼方 :2010/02/09(火) 16:30:21.87 ID:0PPXDADO
やっと書き込めるぜぇ…
954 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 16:55:13.98 ID:CKpEOlUo
まだスレ立ていらなかったんじゃないか?wwwwwwww
955 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/09(火) 17:41:51.91 ID:aLpe0cDO
きっとゆき兄が埋めてくれるさ!

2月から新しい小説始まるとか言ってたし^^
956 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/09(火) 21:05:26.63 ID:j7OicM6o
今週土曜からとりあえず新しい小説はじめてやんよ!!
しかし設定を特大てんこ盛りにしたせいで自分でもわからなくなってきたという諸刃の剣
957 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/09(火) 21:12:01.03 ID:uIhCPFso
>>956
期待してます^^

自業自得ワロタwwwwwwww
958 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 23:17:35.60 ID:NuVwLVE0
>>954
すまぬ・・・ゆき様のお言葉には背けなかったのじゃ・・・!
959 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 19:50:27.91 ID:sjqDdLM0
土曜日ですね
960 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 21:44:08.28 ID:Cx46/XYo
久しぶりだな、このうp前の緊張感…
961 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:02:03.64 ID:Cx46/XYo
物心ついた時から、人には見えない物が自分にだけ見えていた。
自分が他とは違うと気づいたのはそれからしばらくしてだった。

…優越感とか、特別とか、他人とは違うとか思えていたころが今は懐かしい。
俺はある時、気づいてしまった。
自分と他の人間の間には決して理解を得られない溝があると。
伝えることは簡単なのに、どうあがいても証明することが不可能。
人生を階段と例えるなら、俺だけは皆から少し離れた場所にある別の階段を登っている。
言葉は届くし、触れることも出来る、だけどその間には必ず隙間があり
それこそが、決して埋めることが出来ない。
俺と他の人間との決定的な差。
勝っているのか、それとも劣っているのかそれすらもわからない。
ただ一つだけわかること。それは俺という存在が異端である事だけ…
962 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:03:44.56 ID:Cx46/XYo
「何を考えている?」

顔をあげると、目の前の男は無表情で俺を見つめていた。
俺は両手を広げて「さぁね」といった感じのジェスチャーをする。
男は無表情のまま机の上に置かれたコーラに手をつけた。

「それで、何だっけ。」

俺は男に向かってそう言った。
男はコーラを机の上に置いて俺を真っ直ぐ見て行った。

「今日から君の護衛をすることになった。
 コードネームはエンプティ。よろしく。」
「護衛…ねぇ…」

俺は顔を伏せた。
護衛といっても俺は"ありえない存在"が見えるだけで特に護衛が必要なことに巻き込まれてる覚えも無い。
はっきり言って護衛なんて必要はないのだ。

「俺は護衛されるような危ない事件に首突っ込んだりしてないぜ
 これからも突っ込む気はない。」
「天眼は覚醒に順じて様々な怪異を所有者に呼び込む。
 君が望まぬとも怪異は君の日常に侵食する。
 そうなれば当然、君は命の危険に晒されるようなこともあるだろう。」

淡々と目の前の男、エンプティは続ける。
俺はその説明よりむしろまるで人形みたいに感情の読めないエンプティのほうが気になっていた。
色々考えているとエンプティは続けた。

「君の日常生活に支障は及ぼさない。
 姿を見せるなと言うならば君の視界には入らないようにする。」
「…おい、24時間ずっと監視する気か?」

若干引きつりながら質問する。
24時間監視とか冗談じゃねぇぞ、俺だって見られたく時とかあるんだよ。
エンプティは考えるような仕草をする。顔は相変わらず無表情だが。
そしてそのままブツブツと呟きだした。

「…任務は護衛…時間は指定されていない…
 が…時と場合を考えずに怪異は…ならば…24時間?」
「待て待て待て待て」

マズい方向に考えだしたのを察知した俺は慌てて止める。
エンプティはこちらに向き直る。
俺はため息をついた。
963 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:05:31.78 ID:Cx46/XYo
「あのな、24時間監視されてる時点で俺の日常生活には支障を来たすんだ。」
「しかし俺の任務は君の護衛で…最優先事項は君の命でもあるし。」
「…じゃあ、こうしよう、俺が危険を感じたらお前に連絡する。
 お前は連絡が来るまでは適当に俺からやや離れた場所で好きにしとく、これでどうだ?」
「俺の一存では決められない。」
「ぬぐっ…」

人が折角妥協案を出してやったというのに…
無表情も甚だしいが、普通の人間なら24時間監視されるのが問題だってこともわかるだろうに。
しばらく睨み合っていると突然エンプティが机の上に何かを置いた。
それは携帯ぐらいの大きさの…いや、携帯かコレ?

「何だコレ?」
「携帯情報端末、PDAだ」
「あぁ、そうなの」
「君のものだ」
「は?」

意味が全くわからない、俺はこんなもん買った覚えは無いぞ。
机の上のPDAをよく見ると”EDEN”と表面に書かれていた。
EDEN…ということは?

「ハクレイ様から君に渡すように言われた。
 機能の説明もしておけと言われたので説明するぞ。」
「あ?え?」
「普通の携帯電話としての使用も可能。
 回線はEDEN機関の通信衛星を使用しているので地球上ならどんな場所でも通話可能だ。
 EDEN機関のコンピューターにアクセスするためにはまずパスワードを入力し
 その後、指紋認証、声紋認証、網膜認証の手順を踏む必要がある。
 最も、君はEDENの幹部でもなければなければ研究員でも無いから閲覧可能なライブラリは数えるほどしかない。」

ややこしい説明を噛むことなくスラスラと続けるエンプティ。
長ったらしいが要するに俺にとっては携帯と大して変わらないってことだろうに。

「それと買い物などの際はこれで支払うことも出来る。
 クレジットカードや電子マネーみたいなものだ。
 支払いは全てEDEN機関が受け持つ。」
「…そりゃ凄いな、何でも買ってくれるってことか?」
「今のところ特に指定されたわけではないからそうなるな」

俺は机の上に置かれたPDAを手に取とうとするが躊躇した。
果たして何も考えずに受け取っていいものだろうか、何か裏がありそうな気がしないでもない。
迷っている俺とは対照的にエンプティは何をするでも無く俺を無表情のままじっと見ていた。
964 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:06:39.45 ID:Cx46/XYo
怪異天眼異聞録

【怪異1 〜テケテケ〜】
965 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:08:30.66 ID:Cx46/XYo
「さて…」

相も変わらず机の上に置かれたPDAを眺めながら俺はこれからどうしようが考えていた。
とりあえずエンプティは危険を感じるなり用があったらこちらから呼ぶと散々説得すると渋々と帰っていった
それはともかく…よく考えろ俺。
目の前にある物を使えば好きなものを好きなだけ買えるんだ、許可されてるかは知らないが聞いてないんだから問題無い。
そもそも俺はあっちからすれば協力者のようなものなんだし…
買いたいものが次から次へと頭の中に沸いてくる、思わずヨダレが出そうになってきた
…だがさすがに何も考えずに降って沸いた幸運を享受するほど俺はすでに子供ではない
22歳にもなれば幸運の裏でニヤニヤと笑ってる不幸を感じてしまう。勿論その不幸は無いかもしれないのだが不安は尽きない。
やっぱりエンプティに詳細を聞いてからにしようか…
不安といえばもう1つ。俺はそっと右目をまぶたの上から触る。

――天眼は覚醒に順じて様々な怪異を所有者に呼び込む。君が望まぬとも怪異は君の日常に侵食する。――

…まさか、な
今まで生きてきてそう言ったことはなかった、今日突然何かが起こるなんてあるわけも無い。
天眼、神の決めた運命ですら捻じ曲げる力か…
俺にとってはただ見えない物を見てしまう邪魔な力でしかないんだけどな
あまり深く考えすぎないほうがいいかもしれない。よし、とりあえず寝よう。
そして俺は布団に潜り込んで目をつぶった。
966 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:09:47.15 ID:Cx46/XYo
――1日前

「君は自分が嫌いか?」
「…自分自身が嫌いなのか、それともこの力を持つ自分という存在が嫌いなのか、わからないな」

ハクレイの問いに俺はそう答える
答えは返ってこなかった。
しばらくの沈黙の後、ハクレイが立ち上がった。

「研究所を案内しよう」
「俺は研究員じゃないぞ」
「君にとって有用な施設も多いさ、ついてきてくれ」

立ち上がり、俺はハクレイについていく。
部屋から出た先は長い通路だった、白い壁はまるで宇宙船の中のような光景を思わせる。

「ここは地下に作られている」
「どこの?」
「秘密、だけどすぐにわかるだろうね…」

通路でちらほらと白衣の人たちとすれ違う。
心なしか皆俺のほうを見ている気がするが…いや、気のせいじゃないだろうな
どうにも気恥ずかしいというか場違い的なものを感じるというか微妙な気分をごまかすように頭をかく
するとハクレイが話しかけてくる。

「この研究所は広いからな、とりあえずエントランスを基点に案内しよう」
「あ、ああ」

ハクレイは手に持ったカードキーを扉の横の機械に通す。
機械音がして扉が開く。凄いな、なんつーか本当にこういうのってあるんだな。
そしてまた通路、すれ違う白衣の人々…珍しいものを見るような視線。

「すまんな」
「どうしてハクレイが謝る?」
「他に謝る者もいないだろう?」
「慣れてる、気にしないでいい」
「それは研究員も同じことさ、彼らもやがて慣れる
 …知らない物を怖がるのは誰だって同じさ、だが怖がって遠ざけているだけでは何も得られない
 だから人は何かを得るために時に危険を冒してまで知ろうとする、そしてそれが自分たちにとって脅威ではないと知り
 人はその存在を受け入れる…君もそうなるといい、少なくともここでは」
「ハクレイ…」

なぜかわからないが、ハクレイは他の人間と何かが違う気がした
どこが、とは正確にはわからないが…
少なくとも俺は不思議な安心感を覚えていた
967 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:10:53.64 ID:Cx46/XYo
「さて、ここがエントランスになるな」
「広いな…」

エントランスというだけあってかなりの広さだった。
とは言っても目立った物は無く、規則正しくいくつかのソファーが並べられており所々に申し訳程度に観葉植物が置いてある
壁際には何台かの自販機がズラッと並んでいる。

「エントランスは研究所の中心だ
 ここには実験区画、居住区画、外に通じる通路がある
 最も君は実験区画には用は無いだろうし、そもそも入れない」
「ああ、全く用は無いな」
「居住区画のほうに一応君の部屋を用意しておいた、好きに使ってくれ
 居住区画には他にも食堂や医務室やリラックスルームなど色々あるが…」
「…凄いな」
「とりあえず部屋に案内しよう」

そう言われて来た方向とは反対側の通路へと進むハクレイ
その背中を追いかけながら俺は自分の住んでる場所に近いところの地下にこんな大規模な場所があるというのを信じられずにいた
俺は知らない間に遥か遠い場所に来ているんじゃないかとも思っていた。
そんなことを考えながら進んでいると唐突に目の前にハクレイがカードを差し出してきた。

「君のカードキーだ」

俺は頷きながらそれを受け取る。
真っ白なカードに黒い文字で「eye-01」と書かれていた。
カードを眺めているとハクレイが足を止めてある扉の前に立ち、横についていた機械を指差した。

「ここだ、扉をあけて見てくれ」
「…」

俺は静かにカードを機械に通した。
ピッという機械音がした後、静かに扉が開く。
扉の奥は部屋、ベッドと、机と椅子とパソコンのような機械が置いてあった。
それほど広い部屋というわけでも無い、ただトイレと風呂とキッチンもついてあった。
1LDKのマンションを彷彿とさせる作りだった。
…そして映画のセットのように人の生活感をまるで感じられない
まぁそれは誰もこの部屋を使っていなかったということだろう。

「勿論、自宅に帰ってもいいが、緊急の時や帰るのがめんどうな時はここを使ってくれ」
「…ああ、ありがとう」
「それと居住区画の地図だ、私は仕事があるから先に戻らせてもらうよ
 君には明日にでも連絡をするよ」
「…了解」

俺はハクレイから地図を受け取る。
ハクレイは満足げに頷いて去っていってしまった。
とりあえず部屋に入ろうかと思ったが思いとどまった
考えても見ろ右も左もわからない施設の中の部屋
しかも映画のセットのごとく最低限のものしか置かれていない部屋で本当に心の底からくつろげるか?
無理だ、少なくとも俺には無理だ
とにかくここはいったん家に帰ろう、どうせ明日になれば連絡も来るらしいし。
968 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:12:36.36 ID:Cx46/XYo
「…君が天眼を持ちし者か」
「!?」

背後、それもかなりの至近距離からの声に驚いて振り向いた。
俺のすぐ真後ろに、1人の男が立っていた。
白衣ではなく、カジュアルな服装で年の頃は俺と同じか少し若いぐらいだろうか。
いや、そんなことよりも全然気づかなかった、いつの間に真後ろに?
男は舐めるように俺の全身を上から下までじっと見続けている、背筋が少し寒くなる。

「…この程度、一体奴は何を考えて…」
「どういう意味だ?」

男は無言でゆっくりと立ち去っていった。
その後姿がまるで亡霊のように揺らめきだっているように見えた。
やがて男の姿が見えなくなると同時に俺は溜め込まれた緊張を吐き出すかのように大きくため息をついた。
今の奴は一体なんだろう、あの発言はどういう意味で…
一気に不安が増してきたがどうすることも出来ない、とりあえずもう帰ろう。
そして俺はエントランスに向かって通路を歩き出した、遠くに白衣姿の人が見え、距離が縮まるにつれそれが女だということがわかった。
若いな、年は俺と同じぐらいだろうか?
すれ違うその瞬間、目が会った。
969 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:13:44.40 ID:Cx46/XYo
「え…!」
「あ…!」

足が止まった、俺も、彼女も。
心臓の鼓動が早い、自らの意思を無視するかのように心に津波にように押し寄せる感情の渦。
彼女の顔は俺の記憶の中には存在しない、なのになぜこんなに心を掻き乱される?
お互いが目を離せずにまるで何かに縛られたかのようにじっと見つめあう。
やがて、彼女のほうが口を開いた。

「あ、あの、どこかでお会いしましたっけ…?」
「あ、いや…多分会ったこと…ないと…思います…」
「ですよね…すみません…
 なんだか貴方を見た瞬間にとても懐かしい気持ちになったんです…」
「…あ…俺も…なんだか、よくわからないけど…そんな気分です…」
「おかしいですよね、会ったこともないのに…」
「そうですね、はは、おかしい、ですよね…」

しばらく沈黙があたりを支配する。
気まずい…凄く気まずい…

「あの…研究員…じゃないですよね?」
「あ、俺…なんか天眼だとかなんとか」
「貴方が?」
「みたい、です…」
「すみません!知らなかったとはいえ失礼を!」

謝りながら彼女は頭を下げた。
俺は慌てて言い返した。

「いやそんな!別にそんなにかしこまらなくても…!
 あの俺、天眼っつっても全然そんな実感ないし…!仕事とかも全然してないただのニートだし!
 だ、だから、その、俺と同じぐらいの年で研究員とかなってる君のほうが全然偉いと思うし!
 そんな頭下げたりとかいいからさ!ね!」
「…プッ」
「お?」
「あはははははははは!全然イメージと違う!あはははははは!」
「お、おお…」

突然思いっきり笑い出した彼女に驚いたと同時に俺は少し安心した。
彼女に笑顔につられて俺の顔からも自然と笑みがこぼれる。
しばらく彼女はお腹を抱えて笑い続けた。
970 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:16:15.91 ID:Cx46/XYo

「…もっと傲慢な人と思ってました、でも全然イメージと違いますね」
「…ははは」
「あの、お名前は?」
「ゆき兄」
「…私はフロス、研究員は本名で呼び合わないの」
「フロス…本名は?」
「もっと親しくなったら教えてあげる」

ニッコリと笑いながらそう言ったフロスに俺は少しドキッとする。
…なんだろう、もしかしてこれは恋というやつだろうか

「それじゃ私行かなくちゃ
 じゃあね、謙虚な天眼さん」
「あ、うん…じゃあね」

フロスは手を振りながら行ってしまった、こちらを何度も振り返りながら。
俺の心臓は爆発するんじゃないかと思うほど鼓動を早めていた
しかしなぜ俺は会ったこともないフロスを見た瞬間にあそこまで動揺したんだろう、それはフロスも同じようだった。
だとすると単純に昔何かあったけど忘れているだけ…?
記憶としては忘れていたが心が覚えていたとかそういう奴か?
…わからない、まぁいいや、忘れているだけならこれがきっかけになって思い出すかもしれないしな
とにかくもう、今日は家に帰ろう…
971 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:17:23.18 ID:Cx46/XYo
カンカンカンカンカンカン…

半分だけ起きてると言った感じの俺の耳に踏み切りの音が響いてくる。
けっこう寝た気がするがもう少し寝かせてくれ…

カンカンカンカンカンカン…

うるさいな…いつもは踏み切りなんて鳴らないのに…
…いつも?

カンカンカンカンカンカン…

待て、おかしいぞ、俺は自分の部屋で寝てるんだ
この近くに、踏み切りなんて…無い

カンカンカンカンカンカン…

じゃあこの音は一体どこから聞こえてるって言うんだ?
外…じゃない!俺の部屋に…?

全身に水をぶっかけられたような気分になる。
泥棒?いやでも泥棒だったらわざわざこんな音を鳴らすか?
そもそも何で踏み切りなんだ?
目を開けようと思ったものの恐怖で目が開けられない、しかし目をつぶっているのもまた怖いことも事実だった
…何かいないならそれでいい。だが何かいた場合が問題だ。
普通の人間なら何もいなくて安心して音の原因を探るなりなんなりするだろう。
しかし俺は"在りえない者"を見てしまう目を持っている。
同時に俺は本能で感じていた。

今、この部屋には何かがいる。と

耳に響く踏切の音は止まない、それどころかどんどん大きくなって行くようだった。
…どうすればいい、しかしこのままじゃ埒が開かないのも事実だ…仕方ない
俺は静かに、ゆっくりと薄目を開けた。
ぼやけて見える暗い室内。そこはいつもと変わらない俺の部屋。
何も変わったところは見られないのに、音だけが鳴り止まずに響き続ける。
俺は意を決して目を開くと同時に布団を跳ね除けて上半身を起こした
すると突然踏み切りの音がピタリと止んだ。

「…はぁ…はぁ…」

部屋はいつものままだった、おかしな物も見えない、余りにも普通すぎる。
だが踏み切りの音が響いていたのは間違いなかった、だからこそいつもと変わらぬこの部屋が逆に不気味に思えた。
シャツがじとりと汗で身体に張り付き、とても不快。
972 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:21:16.69 ID:Cx46/XYo
「…着替えようかな」

そう思ってベッドから足を下ろした瞬間だった。
何かが足首を掴んだ

「うわっ!?」

思わず足を跳ね上げた
ベッドの上で呼吸を落ち着かせながら冷静になろうとするが頭はとてもじゃないが冷静を保てない。
間違いない、何かがベッドの下にいる。
俺は静かにベッドの淵に手をかけた、ギシリと音を立てるベッド。
…なぜ俺は覗き込もうとしてる?すぐに部屋から出ればいいじゃないか
ホラー映画とかでわざわざ危ない場所に行ったりあからさまに怪しい場所を調べようとする主人公を馬鹿だとか思ってたじゃないか
なのに今俺がやろうとしていることはその馬鹿な行動と全く同じじゃないか!
不意にハクレイの言った言葉が頭の中に浮かんだ。

――知らない物を怖がるのは誰だって同じさ、だが怖がって遠ざけているだけでは何も得られない
   だから人は何かを得るために時に危険を冒してまで知ろうとする――

…そう、自分の理解から逸脱した世界こそ完全なる"知らない物"
だから人は人である種としてそこに触れようとする。
それは天眼を持っている俺も同じことだ。
だから、知ろうとしている。恐怖心を好奇心と探究心が抑え込み、見てはいけないものすら見てしまう。

――まるで炎に飛び込む虫の如く、真の恐怖に人は惹きつけられる――

ドクン、と心臓が跳ねる。息苦しく。喉がカラカラに渇いて。
耳には自分の浅く早い呼吸だけが聞こえる。
ベッドの上から、下を覗き込むような体勢。
あと少し頭を下げれば見えてしまう。
ゴクリと、唾を飲み込む音がヤケに大きく頭の中に響き渡る。
…止めるなら今しかない、顔をあげて、すぐに部屋から飛び出せばそれで済むことだ。
そんな意思とは裏腹に頭はゆっくりと下がる、ゆっくり、ゆっくり…

「…?」

ベッドの下には何も無い、転がり込んだいくつかのゴミがあるだけだった。
絶対に何かいると思ったのが拍子抜けしてしまった。
いや、実際こんなもんか…よくよく考えれば天眼を持っているからって年がら年中あり得ない物が見えるわけでもない。
安心すると同時に一気に気が抜けてしまった。
水でも飲んで一息つこうと俺はベッドの下から目を離し顔をあげた
973 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:23:40.59 ID:Cx46/XYo
目の前に、血塗れの顔があった。
974 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:23:58.41 ID:Cx46/XYo
頭が真っ白になる、とはこういうことだろうか。
自分の脳の処理速度を遥かに越えた状況に直面し、脳が考えることをやめたとでも言えばいいのか。
だがそれも一瞬、すぐに脳は今目の前で起こったことを処理して俺にその存在を理解させる。

「あ…ぁ…」

声は声にならなかった。かすれるような音を出すのみ。
目の前には、血に濡れ、憎悪を宿らせた瞳でこちらを見つめている少女の顔。
その唇が震えるように動いた。

「イタイ…」

痛い。そう少女は言った。
動けないまま、視線を少し下にズラす、目の前に少女の顔がある、だから視線を下にズラせば必然的に少女の身体が見える。
確かに見えることは見えた、途中まで。
少女には、下半身が無かった。
丁度腰の部分から下が存在していなかった。
あるはずの下半身の代わりに潰れてしまったような腰から赤く塗れた長い縄のような物がぶら下がっていた。
そこから滴り落ちる赤黒い血液がポタポタと音をたてながら床に血だまりを作っていた。

「君、は…」

やっと捻り出せた言葉はそれだけだった。
俺は何を聞こうとしたのか、目の前の少女が"在りえない者"であることはもう確定的に明らかだと言うのに。
少女の目が真っ赤に染まり、そこから血が流れ出した。鼻からも、耳からも、もちろん口からも血がダラダラと流れて。
少女の顔は血に染まる、否、血の海と化す。
そして、耳に響く断末魔。

「痛い!!!!痛い!痛い痛い!!!イタイ!イタイ!イタイ!イタイ!イタイ!イタイ!!!
 イタイ!!!!イタイノ!!身体ガ痛イノ!!イダァィノォ…!!!!イィ…タァ…イィィィィッ…
 アァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!ワタシの足ハドコォォ…!?
 返して!!カエシテヨォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

少女が叫ぶ度、口から吹き出る鮮血が俺の顔を塗らした。
叫び声と同時に聞こえる、踏み切りの音…カンカンカンカンカンカンカン…
地面を伝って身体に感じられる、迫り来る電車。
カンカンカンカンカンカン…カンカンカンカンカンカン…

――死にたくない!!助けて!!いやぁああああああああああああああああああああああああ!!!――

身体に何かが当たる感触。
世界が、弾け飛び、赤く染まる。
気が狂いそうなほどの痛みの中、千切れ、肉片と化して行く自らの両足…
それが、彼女の見た最後の光景だった。
975 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:26:04.07 ID:Cx46/XYo
「う…」

気がつくと俺は部屋の床に倒れていた。窓からさしこんでいる陽の光に照らされた部屋はまるで何も無かったかのようだった。
あったはずの血だまりも何も無く、全くいつもと変わらない俺の部屋。
…夢であったと思いたい、だけどあれは夢じゃない、確かにここで在ったことだと俺は確信していた。
初めてだった、あそこまで強烈に"こちら側"に干渉してきた"在りえない者"は
いや、あれはもう"干渉"なんてレベルじゃない。
彼女の死の瞬間の全てを俺は5感全てで味わい、死への恐怖、絶望、怒り、嘆き、その全てを自らの意思と錯覚するほどだった。
そして今更になって全身に震えが走った。
これが、ハクレイ達の言っていた

――怪異の侵食か――

しかしタイミングが良すぎる気がしないでもない。
今までこんなことは無かった、"見る"ことはあってもここまでの干渉をされたことは無かった。
天眼の話を聞いた翌日からこんなことが起こるなんてまるで測られてるかのようなタイミングだ。
とはいえ、どうしようもない。ハクレイの言っていることが真実だというならばこれで終わりじゃあない。
むしろ、始まり。だとすればこれから何度もこんな目に会うということだ。
今の俺には天眼の死の運命だとかなんだとかよりもそっちのほうが問題だった。
頻繁にこんなことが起これば俺の心はきっと持たない。
初めて俺は心の底からの恐怖というものを知った気がする
生きている以上は絶対に知ることが出来ない"死"に俺は触れるどころか味わってしまったのだから。

「…エンプティ」

俺は机の上に置きっ放しにしていたPDAを手に取り
エンプティに連絡を取った。
976 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:27:35.86 ID:Cx46/XYo
ハクレイは自らの机に座り、目の前に積まれた書類の束に目を通していた。
ふと、ハクレイの手が止まった。
書類を机に置いてハクレイは腕を組んで呟いた。

「ここには来るなと言っただろう、アルゴル」

いつの間にか、ハクレイの背後には1人の男が立っていた。
ドアが開いた形跡も無ければ最初からいたわけでもない。
男は突然そこに現れてい他。

「…立場が危うくなるからか?」
「違うさ、お前が1人で動くと何が起こるかわからんからな
 それで?わざわざ私の下に来た理由は?」
「聞きたいことがある」
「言って見ろ」
「なぜ今さらになって新たな天眼を必要とする?
 覚醒者ならまだわかる、だがあいつは覚醒すらしていなかった
 お前は何を考えている?」
「…彼は【楽園の鍵】となる可能性を持つ」
「鍵だと?」
「いずれ分かるさ」
「…」

男は黙ってしまった、ハクレイは無言でまた書類に目を通し始めた。
イライラする、と言った表情でハクレイを睨み付けるアルゴルと呼ばれた男。
ハクレイの口元には微笑が浮かんでいた。
977 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:29:36.60 ID:Cx46/XYo
「…というわけでだな、俺はその少女の死の瞬間を擬似的に体験した」
「…」

連絡するとエンプティはすぐに来た、ものの5分とかかっていなかった。
余りの速さに逆に驚かされたぐらいだった。
そして俺は自分が味わったことを詳細にエンプティに話した、彼は終始無言で常に無表情だった。
聞いてるのか聞いてないのかもよくわからないがとにかく俺は覚えてることを全て話した。
話し終わって沈黙が少し続いたと思うとエンプティは口を開いた。

「…踏み切りの音、下半身の無い"在りえない者"
 まるでテケテケだな」
「ああ…言われてみればそうだな」

テケテケ、割と有名な怪談。
列車に轢かれ、上半身と下半身を分断されて死んだ女性の霊。
この話を聞いた人の下に3日以内にテケテケが現れる。
と、いったまぁ至極ありがちな都市伝説の類。

「テケテケの怪談話の詳細、知ってるか?」

エンプティがそう聞いてきたので俺は記憶を辿りながら話し出した

「確か、冬の北海道のある踏み切りで女性が列車に轢かれ下半身と上半身を分断された…
 だがあまりの寒さに血管が萎縮し、出血が止まってしまい彼女は即座に死ぬことが出来ずに数分間もがき苦しんで死んでいった
 他にも列車を停止させて車掌が警察を呼びに行き乗客が列車に残っていると
 死んだはずの女性がズルズルと上半身だけで追いかけてくるっていうパターンもあったはずだが
 ああ、後共通するのはこの話を聞いた人の下に3日以内にテケテケが現れるってのだな」
「実際、冬の北海道程度の寒さでは血管が萎縮して出血が止まるなんてことはありえないんだ」
「そうなのか?」
「それに普通列車に轢かれると身体は粉々になる、そして周囲は血の霧で覆われる」
「…だが確かに俺の前に現れた奴は下半身が無かった」
「ふむ…」

エンプティは自分のPDAを取り出すとそれをいじり始めた。
俺はそれをぼーっと見つめながら「コイツは本当に俺のことを信じてるんだろうか?」という疑問を抱いていた。
そもそもこいつは俺の護衛と言ったが一般人には見ることも触れることも出来ない"在りえない者"からどう守るというのか
こいつの任務は護衛じゃなくてただの監視なんじゃないだろうか。
しばらくするとエンプティは顔をあげた。
978 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:31:09.71 ID:Cx46/XYo
「…数ヶ月前、ここからそう遠くない踏み切りで列車に轢かれ女性が死亡したという事件がある
 人通りの少ない道の踏み切りだったということもあり目撃者はおらず、自殺か他殺、もしくは事故死かと様々な検証がされた
 運転手の証言では彼女は突然線路に飛び出して来たという。
 数日前に彼氏と別れていたこともあり衝動的な自殺だったのではないかというのが警察側の見解だった」
「…違う」
「ん?」
「自殺なんかじゃない、死に際の彼女の心は死にたくないという気持ち、死への恐怖、生への渇望で一杯だった
 …最も、俺の前に現れた奴とその列車に轢かれた女性が同一人物だったらの話だけど…」
「俺達は警察じゃない、自殺か他殺か事故死なのかはどうだっていいさ
 重要なのはそいつをどうするかだ」
「どうするかって言われてもな…」
「俺と一緒にいるときに現れてくれればいいんだが、そう上手くもいかないだろうな
 それに君は24時間ずっと俺と一緒にいるのは嫌なんだろ?」
「当たり前だ」
「なら、こちらから居場所を見つけて先手を打つしかないな」

無表情で何を考えてるかわからないけど意外と考えてるんだなコイツ。
しかし、先手を打つっていっても相手は…
こいつは坊主とか何かでお経でも唱えて成仏させてやれるとか?
そんなことを考えてるとエンプティは立ち上がった

「他にアテもないからな、この踏み切りにいってみよう」
「…ああ、いってらっしゃい」
「君も来るんだ」
「…わかったよ」

俺は準備をして外に出た。
そして問題の踏み切りへとエンプティと共に向かった。
エンプティの運転する車に乗って30分ほどだろうか
住宅街から程なく離れた場所の空き地や工事現場が点在する静かな場所にその踏み切りは存在した。
車を路肩に止めて俺達は車から降りて踏み切りの前に立った。

「…花とお供え物だ」

踏み切りの横のほうに風に揺れている枯れかけた花束とお菓子の類が置いてあった。
どうやらここで事故があったのは間違いないらしい。
それを見つめているとエンプティが後ろから話しかけてきた。

「何か感じるか?」
「…わからない、だけど何か嫌な予感がする」

それは嘘ではなかった、ここに立った時から感じている冷たい空気。
まとわりつくような粘っこく、なのに心の底から冷えるような不穏な雰囲気。
ここには何かがある。そう確信していた。
そのとき、右目にズキリと痛みが走った。
979 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:32:50.73 ID:Cx46/XYo
「…ッ!?」
「どうした?」
「眼が…!」

慌てて目を手で押さえる、ズキズキと痛みが止まらない。
一体なんで突然…と思っていると指の隙間から見えた視界に何かが蠢いていた。

「…?」

線路の上で、小汚いズタ袋のようなものがもぞもぞと動いていた。
違う、アレは…!
気づいた時、彼女と目が合い、お互いがお互いを完全に認識した。

ズズッ…

ソレが、近づいて来る。
這いずりながら、ゆっくり、ゆっくりと音を立てて。
逃げようと思ったが、足が動かない、まるでその場に縫い付けられたように。
それどころか目も離せない、目の前の脅威から目を逸らせない、逸らせば、捕まる。

ズズッ…ズズッ…ズズッ…ググッ…

ソレが、顔をあげた。
その顔はやはり昨日見た顔と同じ。
血に染まった、憎悪の瞳。

カンカンカンカンカンカン…

踏み切りの音が、鳴り響く。
その音に混じり、何かを引きずるような音が近づいてくる。
ふざけんなよ、今は真昼間でここは普通に街中だぞ
なのに、なんでこんな…!

「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない…」

もう、彼女は足元まで来ていた。
手を伸ばせば触れられるような距離、足元から俺の顔を見上げているソレはブツブツと壊れたラジオのように同じ言葉を繰り返す。
気がつくと、俺の目からは涙が零れていた。
恐怖もあった、だがそれ以上に濁流のように心に流れてくる彼女の絶望と悲しみに囚われたから。

カンカンカンカンカンカン…ガタンゴトン…ガタンゴトン…

列車が近づいて来る。
彼女の命を奪った、鉄の獣が、唸り声をあげながらこちらに近づいて来る。
何かが背中に触れたと思ったら世界が反転した
転がるように前へ出て、地面に手をつく、手のひらに冷たい線路の感覚。
状況が把握できないまま、身体に感じる振動と風、そして聞こえる轟音。
刹那、彼女の心に巻き起こる感情の爆発。
あ、ああああ、ああああああああああああ、あああああああぁぁあああああああああああああ!!!
980 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:34:42.42 ID:Cx46/XYo
「ゆき兄ッ!!!!」

誰かに手を捕まれ、俺は我に返った。
その瞬間、視界が暗くなる。
俺の眼前を列車が轟音を立てて通り過ぎた、巻き起こる風に吸い込まれそうそうになるのを繋いだエンプティの手が引き止めていた。
呆然とする俺を尻目に列車は音を立てて通り過ぎていった。生ぬるい空気をその場に残して。

「…あ、ああ…」

踏み切りが上がり、辺りは静寂に包まれる。
俺はその場に膝をついた。
俺は、何をしていた?列車に飛び込もうとしていたのか?
そんな覚えは無い、だけどエンプティが俺の手を掴んでいなければきっと俺は今頃…
大粒の涙が、地面に落ちた。
これが、怪異の現実への侵食…いつどこであろうと関係無く、俺に襲いかかる…

「危ないところだった…」
「…何が起こったのか自分でもわからなかった」
「…踏み切りが鳴り出し、列車が近づいて来た
 すると君は突然線路へと身を投げ出した、俺が飛び出すのが一瞬でも遅れていたら君は今頃…」
「…ありがとう、エンプティ」
「気にするな、俺の任務は君の護衛なのだから」
「それでも…ありがとう」
「ああ…」

しばらく俺達はその場に立ち尽くした。俺は自らが生きているということを噛み締めていた。
間違いなく、俺は今殺されかけた。
生に執着する存在に、死へと引きずり込まれる寸前だった。
…俺は心のどこかで死にたいと思っていたのかもしれない、この眼を呪い、世界に居場所が無いと感じていて。
だけど、俺は死にたくない。死にたくなんか、無い!
俺はエンプティへと向き直る。

「エンプティ…」
「どうした?」
「…俺は死にたくない」
「…」

涙がまた流れ落ちた、とめどなく溢れる、感情の檻が壊れたことをあらわすように。
俺はエンプティの肩を両腕で掴んだ。
そして、心の底から、本音を吐き出した。

「…俺を助けて…ください…」

視界は涙で滲んでもう何も見えない、俺は頭を下げてエンプティに懇願した。
自分ではどうにもならない、それを思い知って。藁にもすがる想いでエンプティに助けを求めた。
そっと、俺の手にエンプティの手が置かれたのがわかった。
手を握り締められ、その暖かさが俺に生きているという実感をくれた。
981 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:36:50.10 ID:Cx46/XYo
「俺の任務は君を守ることだ、安心していい、俺は君を守り抜く」
「…うっ…あっ…」
「心を強くもて、死者に飲まれるな、つけいる隙を与えるな、生きている強さを胸に宿せ」
「…ありがとう、エンプティ」
「君が思うより遥かに、我々は君を必要としているんだ」

エンプティが心の底から俺を守りたいと思ったのか、それとも任務だから仕方なく守ると言ったのか
そんなことは俺にはどうだってよかった。
真意がどうであれ、俺は嬉しかった。
自分を呪い、自分ですら自分を呪ってきた。そんな俺に守られる価値は無いと思っていた。
だけど死に直面して気づいた、俺は自分を呪うことで逃げていただけで、死を受け入れることすら出来なかった臆病者だということに。
誰にも俺の気持ちがわかるはずはないと他人を拒絶して、そのくせ俺は自分を肯定してもらいたかった。
なのに俺は肯定されても信じることが出来ない。あまりにも多くの矛盾を抱え込んで生きていた。
皮肉なことに、死というものを極身近に感じて初めて、俺は押し隠した自分の本心に気づいた。

誰かと共に生きていたい。
ただ、それだけなんだ。

「…まだ終わっていない、この怪異はまだ…」

俺はエンプティから手を離し、涙をぬぐって顔をあげた。
…確かに今回は助かったが、次も助かる保証は無い。
ハッキリしたのは俺を狙っているこの怪異は間違いなくここで死んだ女性だということぐらいだ。
エンプティが重苦しい声で呟いた

「問題なのは俺が認識できないということだな
 助けることは出来ても、原因を絶つことが出来ない…」
「…?認識できればなんとかなるのか?」
「ああ」

一体どうやって?と聞きたかったが全く問題は無いと言った感じで断言したエンプティを見ていると
本当に大丈夫なような気がして聞く気が失せてしまった

「とにかく一旦ここから離れよう、危険すぎる」
「同感」

俺たちはいそいそと車に乗り込んで俺の家へと帰ることにした
車から外の景色を眺めながら俺は考えていた。
彼女の心に渦巻く憎悪は生きていたかった故に生きている者へ向けられる羨望によるものだということはなんとなく理解できていた。
その凄まじいほどの憎悪が生者を捕らえて引きずり込む。
生への執着が強すぎる。おかしな話ではないがそれにしてはあれほどの憎悪を持つだろうか?
生きている者への羨望の裏に潜む、ドス黒く燃え盛る何かに対する憎しみ。確証は無いが確かにそれを感じていた。
…何か引っかかる。
彼女の死をトレースした瞬間を思い出せ。
この違和感の正体は一体なんだ…?
982 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:38:58.10 ID:Cx46/XYo
「ついたぞ」
「ん…ああ」

気がつくとすでに家の前だった。エンプティに促されて俺は車から降りる。
エンプティも続いて降りてきて俺たちは家の中に入った。
年中出ているコタツに入り込んでエンプティは呟いた。

「さてどうしたものか…結局危険な目に会っただけで収穫は無かったな」
「収穫ならあった…」
「何?」
「…だけど、それが何なのかわからない、掴んでいるのに…わからない
 本に囲まれてるけど字を読む能力が無いような…もどかしい気分なんだ」
「…天眼は物事の本質を捉え、あらゆる真実を白日の下にさらすとも言われている。
 君がその気になれば…おそらく、きっと…」
「…少し、1人にしてくれないか?」
「大丈夫か?」
「何かあったら、すぐに呼ぶ」
「…」

エンプティは少しだけ考えるような素振りをして立ち上がり部屋から出て行った。
部屋には俺だけが残った。
時刻は夕闇、薄暗くなった室内。
昼と夜の狭間、俺は昔からこの時間が好きだった。

「すぅー…」

俺は大きく息を吸って目を瞑った。
…逃げ出すな、立ち向かえ、俺は生きている。
生まれて初めて、俺は自分の意思で俺の眼を使う、生きるために。
忌み嫌った生きてきたこの眼に頼るしかないというのは皮肉な話だ。
心を落ち着かせる、波紋ひとつない水面のように。
やがて、まぶたの裏の闇にぼんやりと浮かんできた光景。
983 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:40:23.39 ID:Cx46/XYo
カンカンカンカンカンカンカン…

踏切、遅くなって、急いで帰ろうとしていた。
でも丁度列車が来てしまって、ついてないと思いながら素直に踏切待ちをしていた。

ザリッ…

後ろから、砂を蹴り上げるような足音が聞こえた。
特に気にすることもなく、ただ踏切の先を見ていた…
背中に、何かが触れた。
世界が反転して…赤く染まる…

目を開けるとすでに陽は完全に落ちて部屋は真っ暗になっていた。
たった数分だと思っていたが随分と時間が経っていた。
ふと、部屋の空気が一変していることに気がついた。
まとわりつくような粘っこく、なのに心の底から冷えるような…それは彼女が死んだ踏切で感じた空気と全く同じ。
彼女が、来たんだ。

「イタイ…」

暗い部屋の隅で蠢く影、いや、彼女。
ゆっくりと顔をあげ、俺を睨みつける。
俺は拳を握り締める、怖くてたまらず、逃げ出したい。
だけど逃げるんじゃ駄目だ、それじゃ何も変わらない。

「…君は殺されたのか?」

搾り出すような声で俺は彼女に向かって聞いた。
彼女は答えずにただこちらをジッと見ている。
伝わっているのか、それとも彼女には心がもう無いのか、わからなかったが俺は続けた。

「俺は、君の死を体験した
 …そして気がついた、君は誰かに突き飛ばされたんだ」
「…アァ…ァァァ…」
「伝えたかった…のか?君は…?」

彼女の瞳が少し落ち着いた気がした。人格をも狂わすほどの憎悪に理性で蓋をされたように。
外見ではわからない、だけど俺にはわかる。今の彼女に狂気は無い。
984 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:41:28.51 ID:Cx46/XYo
「…わかっているはずだ、誰かを殺しても君が生き返るなんてことはない
 君のやってることは…君を殺した奴と同じことだ」
「わカってイた…」
「!?」

初めて、俺の言葉に彼女が反応した。
届いている、俺の声が。

「なにも変わらない…
 だけど、私はもう自分の意志では動いていない…」
「…どういう意味だ?」
「かえろう…あの場所に…そして…待とう…」

彼女の身体が陽炎のように揺らめいた。

「待ってくれ!…つゥッ!??」

その瞬間、右目に走った激痛。焼けたナイフで抉られるような痛みの奔流が襲っていた。
右目を抑えてもその痛みは止むどころか増加していく。
床に爪を立てその痛みを必死に堪えるも余りの痛みに記憶が吹き飛ばされていくような感覚。
視界が、赤く…なって…


その頃、ハクレイの部屋ではアルゴルと呼ばれた男が驚愕の表情で身体を震わせていた。

「これは…」
「どうした?」
「あの男…まさかこの短時間で…!?」

そんなことありえない、ありえるはずがないと言った面持ち。
だが彼は確かに感じていた。

「…そうか、彼が、ゆき兄が覚醒を始めたか」
「きっかけを与えたとは言え3日と経っていないんだぞ…!?
 ありえるはずがない…!」
「これが私が彼を選んだ理由だ」
「…クッ…だが、まだだ…奴はまだ"見る"ことしかできない」
「いずれ、"捻じ曲げる"ようになる」
「…そうなれば俺は用済みか?」
「…それは、その時考えることだ」
「クッ…」
「ゆき兄、昇り詰めるがいい…人を超えた力の極みまで…
 その力こそ、楽園の鍵となる…ククク…ハハハハハハ!」

ハクレイは楽しそうに高らかに声をあげて笑い出す。
それを見続けるアルゴル。
その表情は複雑で、とても暗かった。
985 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:42:44.37 ID:Cx46/XYo
「ゆき兄…!おい!しっかりしろ!」

身体が揺さぶられる感覚に朦朧とした意識が徐々に色を帯びてくる。
薄く目を開けると心配そうにエンプティが俺の身体を揺さぶっていた。
…頭がクラクラする…吐きそうだ…
俺は嘔吐感を抑えながら倒れていた体を起こして座り込んだ。

「大丈夫か?」
「…大丈夫、それよりも…連れて行ってくれないか」
「どこに?」
「踏切だ…」
「…またあそこに?」
「止めないといけない…」
「…止める?」
「見えたんだ…そしてわかった…
 彼女がやろうとしていることが」
「生きて帰れるのか?」
「…わからない、彼女の心はもうちぎれかけた糸1本で持ってるようなものだ
 その糸がちぎれてしまえば…彼女は恐らく見えていようと見えていまいと生きている人間全てに害を及ぼす…」
「俺の任務は君を守ること、そんな危険な場所に行かすわけにはいかない」
「じゃあこのまま黙って見過ごせっていうのか!?
 俺は見たんだ!知ったんだ!彼女の無念や後悔、彼女が残したあらゆる感情を!!
 彼女は死んでからもそれに縛られているんだ!俺は彼女を救いたいんだ!!!
 見るだけで救えないのか!?天眼なんか大層な名前でも所詮その程度なのか!?俺は結局何も出来ないのか!!!?」
「お前…」
「…もういい、俺1人で行く」

そう言って俺は頭を抑えて立ち上がる。
膝が笑う、気を抜けば倒れてしまいそうだ。
それでも俺は…

「全く…」

後ろから呟き声が聞こえたと思うとすっと俺の手が引っ張られた。
引っ張ったのはエンプティだった。

「肩を貸す」
「エンプティ…」
「君に危険が迫ったら、それが何であろうと私は君を守ろう」
「…ありがとう」

俺はエンプティに支えられて車に乗せられた。
そしてエンプティは車を発進させた、全てが始まったあの踏切に向かって。
車の中で感じていた、踏切に近づくにつれて嫌な感覚が増大していくのを
緊張でじっとりとしめった手のひらを握り締めて、俺は恐怖に押しつぶされそうな心を必死に誤魔化していた。
986 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:46:54.39 ID:Cx46/XYo
「…あぁああああああああああああああああああああああああああ!!」
「えっ?うわっ!?」

雄叫びと共に男に向かって全身全霊で体当たりした。
突然のことに対応できなかった男は直撃を受けて2人でもつれあうように線路の上に転がり出た。
何が起こったかわからないといった表情の男を俺は押さえつけて馬乗りになった。

「な、なんだお前突然!?」
「お前が!!お前が彼女を突き飛ばした!!」
「なっ…何をッ…」
「とぼけるな!!俺は見たんだ!!」
「お、お前…まさかあのときいたのか…ここに!?」
「いなかったさ…彼女が見せてくれた…」
「な、何を言って…!?」
「!?」

もみ合っていると不意の視界の端に何かが見えた。
確認しなくてもわかる、彼女だ。

カンカンカンカンカンカン…

踏切が鳴り出した、遮断機が降り、辺りが赤い光に照らされる。
響く音は彼女の怨念の叫び、赤い光に照らされた周囲はまるで彼女の最後の光景のよう。

「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃいいいいいいいい!!」

男が情けない声をあげた。
その視界の先、彼女がゆっくりと近づいてきていた。
足がないから両手を使って、身体を引きずりながらゆっくりゆっくりと…
振り乱された髪の隙間から覗く、視界に入れることさえ躊躇われるほどの圧倒的な憎悪を宿した瞳。

ズルッ…ズルッ…

「許してくれ!許してくれぇ!!」
「ユルサナイ…私の足を…返せ…」
「わぁぁぁあぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!」
987 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:47:50.15 ID:Cx46/XYo
これが、彼女の目的。
生きている者を殺しても自分が生き返ることは無い。
それでも自分を殺した者だけは許せない、だから彼女は…
…間違っていると言えるのか?俺は本当にそんなの間違ってると言えるのだろうか?
自分を殺した人間がのうのうと生きていくことに心を砕くような憎悪を持ってしまった彼女は間違っていると言えるのだろうか?
線路から伝わる振動が近づいてくる列車を予感させた。

気がつくと、俺はもう男を抑えていなかった。
ただ呆然と、線路に立ち尽くしていた。

男は彼女に両手両足を押さえつけられてまるで磔にされたように線路に横たわっていた。
…両手両足?

「!?」

男を押さえ付けてるのは彼女ではなかった。
彼女はまだこちらに向かってきている。
男を押さえつけてるのは、何人もの、下半身の無い人々。
どういう…ことだ…!?
状況が理解できない俺の背後から轟音と共に光が迫ってきた。
振り向くと、迫り来る死の権化。
逃げないと、そう思ったが足がまるで地面にくっついたように動かなかった。
俺の足を掴む、下半身の無い人々。その目はとても楽しそうに俺を見ていた。
彼らの口がゆっくりと動いた。

――足、いるか?――

俺は絶叫した、限界を超えた恐怖が、理性を破壊した。
視界が列車のライトで真っ白に染まった、もう音も聞こえなかった。
988 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:49:32.07 ID:Cx46/XYo
「はぁッ…はぁッ…」

俺は息を切らして踏切の外に座り込んでいた。
踏切は先ほどと何も変わっていない。いや、決定的に違うことがひとつ。
辺りは"血の霧"で真っ赤に染まっていた。
遮断機の先端からポタポタと滴り落ちる血液。
呆然とその一滴一滴を見続ける。

「危ない…ところだった…」

背後でエンプティがそう呟いた。
あの瞬間、俺が列車に轢かれて肉片になる寸前、エンプティが俺を引っ張った。
列車は俺の鼻先を掠めていった。
俺は助かった、だがあの男は助からなかった。
いや、それよりも…

「…テケテケ」
「何?」
「…列車事故で死んだ怨念たちが…俺を連れていこうとしてたんだ…
 テケテケの話を聞いて思念が同調した人間の前に現れ、同じ痛みへと引き込もうとする…
 連鎖する怪異だ、それがテケテケだ…」
「なるほど…聞いた人間のもとに現れる…
 あながち嘘ではないということか…」
「…!?」

線路の上に彼女がいた、その瞳から憎悪は消えうせ残っているのは悲しみだけだった。
復讐を終えて、彼女に残った者は…何も無い。彼女はすでに何も得ることの出来ぬ存在なのだから。
彼女の身体が塵のように徐々に消えていく。
復讐という意志の力で現世に存在していたが、もうその復讐は果たされ留まることが出来なくなったのだろう。
怨念だけで留まり、新たな死人を増やした彼女の魂はどこに行くのだろうか…

「…結局1人で空回りしただけか…何も出来なかったな…」
「…ハクレイ様は言っていた、真の天眼はあらゆる運命を捻じ曲げ
 全ての事象を思いのままに操ると。
 いつかきっと君もそうなる…」
「…実感無いな、それに覚醒したら俺は死ぬんだろ?」
「守るさ、死なせるものか」
「任務だから?」
「…」
「まぁ…どっちでもいいさ…
 帰ろうぜ…ここは、血の匂いがキツいから…」
「本部に通達しておく、事故死として処理されるだろうな」
「そうか…まぁ、間違いじゃないよな…」

俺たちはフラフラと立ち上がって車に乗り込んだ。
ふと後ろを見ると、あの男が這いずっていた、下半身を失い、両手でゆっくりと…
連鎖する怪異…だけど今の俺にはその積み上げられてきた怨念の連鎖を止めることなんか出来はしない…
せめて、新たな被害者が出ないように…祈って…
でも今日は…もう疲れた…
989 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 22:54:30.72 ID:Cx46/XYo
「…あの男は死んだ女と付き合っていた彼氏だったようだ。
 フラれて自暴自棄になっていたところに踏切待ちをしている彼女を見つけ衝動的に突き飛ばし殺した。
 だが罪悪感に囚われた彼は同じ列車事故といった話からテケテケの怪談話に同調してしまい引きずりこまれた。
 概要はこんなところか」
「彼の話を信じるならそうかと」
「…エンプティ、彼を…ゆき兄をどう思う?」
「…他者への強い拒絶の裏に隠れた自分への嫌悪…
 同時に強い救済の心、かと思えば時に死に急ぐかのような行動を取る…
 とても大きな矛盾を内包した不安定な存在。」
「そのとおり、彼は天眼を持ちし者、我らの理解の外に属する存在だ。
 彼は幼き頃からあちら側を見て生きてきた。
 だから彼は境界が曖昧だ。」
「と、言うと?」
「例えば道を歩いていて、その道が二手に別れた。
 左はよく知っている道、右は全く知らない道、普通の人間はよく知っている左へと進む。
 だが彼の場合はどちらもよく知っているんだ。」
「…つまり彼は知っているが故に警戒せずに怪異へと飛び込む可能性を持つと?」
「そういうことだよ、天眼が怪異を引き寄せるのでない
 覚醒に応じてより鮮明にあちら側を写し、死者の心と同調した彼自身が怪異へと飛び込むのだ
 彼はあちらの世界を知らないから知ろうとしているのではない、知りすぎているからこそ飛び込もうとしているんだ
 だが彼を死なすわけにはいかない、必ず…守りぬけ…」
「…わかりました、この命に代えても」
「ああ、それとこいつは蛇足だがな」
「?」
「あの時間に、あの場所を通る列車は無かったんだ」
「…つまり…どういうことですか?」
「怪異とはそういうものさ、我々の理解の外から来る存在さ
 さて、あの男は一体何に轢かれて、肉片となり死んだのかね?」
「彼はテケテケに襲われた、それだけですよ」



怪異1 テケテケ 終
990 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/13(土) 23:03:57.86 ID:Cx46/XYo
切るところもちゃんと考えて書いていたのに
1000が近いことも考えずに初めて詰め込むハメになったのは内緒です
991 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/13(土) 23:19:38.96 ID:kNpSUzYo
ゆき兄おつ!

tkクオリティたけぇなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
あ、エンプティは黒スーツでお願いします^p^
992 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [ひんぬー]:2010/02/18(木) 14:27:00.57 ID:oNsq9GQo
流れがわからないのでとりあえずksk
993 :そら :2010/02/18(木) 17:37:48.36 ID:49ZnwIDO
じゃあ…ksk
994 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/18(木) 20:20:39.60 ID:2E2Rk2DO
え?ksk?
995 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 23:16:21.74 ID:rRWW1IDO
あ、kskなの?
996 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/18(木) 23:38:15.71 ID:sbZmmoDO
1年ぶりに空手の稽古行ったら胃がきゅーってなったksk
997 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 17:53:29.05 ID:xZ3PIYDO
教習所で八時間連続で学科受けてるけどksk
998 :黒やん :2010/02/19(金) 23:41:29.80 ID:PhbJ6UDO
PSPo2おもしろいksk
999 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 23:53:54.39 ID:dIS3/XAo
>>999なら大学合格ksk
1000 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 00:00:07.73 ID:uE2hLLco
>>1000なら>>999無効
1001 :1001 :Over 1000 Thread

 ,.――――-、
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