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【妖怪と人間】ここだけ妖怪世界part4【新規歓迎】 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/12(土) 23:47:23.73 ID:M42Tu5Upo
科学の発展と共に忘れ去られた同胞達よ!
妖怪、変化、退魔の狩人
人の間に暮らす者、人知れぬ山奥に隠れし者
人を喰らいて生きる者、彼らより人を護る者、そして、人と共に歩む者
草木も眠る丑三つ時、忍ぶ人目もありゃしない
今宵こそ、失われた力を思う存分振るうがいい!
避難所(雑談、設定投下などはこちら)
ttp://jbbs.livedoor.jp/internet/10398/


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開くと貯金が増えるスレ @ 2024/05/20(月) 21:35:55.08 ID:MOxGLALr0
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イケパンみっちん39 このスレには可愛いパンダが居るにぇ! @ 2024/05/19(日) 19:47:17.65 ID:skVyN/3XO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1716115637/

僕の記憶が全て消えても生まれ変わったらまた君を探す @ 2024/05/18(土) 22:27:06.84 ID:7xX40cGt0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1716038825/

グレみんと快楽の座 @ 2024/05/17(金) 22:24:15.47 ID:DUS3Z54Xo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715952254/

【習作】安価コンマでワンピース @ 2024/05/16(木) 21:19:27.48 ID:QUcgFIEu0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715861966/

テンリュデネ・ゾー @ 2024/05/14(火) 20:47:34.15 ID:aewHWgbao
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715687253/

薬師とか錬金術とか、田舎とか @ 2024/05/13(月) 23:03:05.43 ID:nAT+1SmNo
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【安価】刃牙の世界で美少女が活躍するようです @ 2024/05/12(日) 21:23:05.29 ID:vRdDvVa7o
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2 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/13(日) 15:56:36.23 ID:sXT4cYwoo

29さいのたかゆきが2get!

    / ̄ ̄ ̄`´ ̄ ̄ ̄ヽ      >>1  おれ、たかゆき29さい
    / ノヘゞ/ヾ丿ヽ丿`ヽ)ヾ    >>3   笑った俺に糞似てるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww鏡かよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
   ノ 丿 ´_   _` ヾ, )  >>4   俺すっげ肩幅広いんだwwwwwwでさVネックのTシャツ好きなのwwwwww
   ( (   ノο) 丿οゝ 丿/   >>5   俺さ昔から腕組むの癖なんだよねwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwこれ直さないとwwwwwwwwww
   ヽゞ   ̄ノ。。丶 ̄  ゝ´    >>6   誰が痩せてるって言ったよwwwwwwwwwwwwwwwwww29にもなるとメタボがデフォだろwwwwwwwwww
     \  ノ廿ヽ   ノ     >>7   ピザの癖して寒がりだからwwwwww家ではTシャツもズボンにインするんだ俺wwwwwwww
       ヾ 丶_イ  /     >>8   完成したwwwwwwwwwwwwwwwwww遺影これにするわwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
        `ヽ__/       >>9   おかんにご飯はよ食べろって言われたから食べてくるわ
                  >>10-1000 お前等言っとくけど俺ニートじゃないからな
                          ちゃんと働いて毎月家にお金も入れてる爽やか青年だから
                          あーおかんのビーフシチューおいしかった
3 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/13(日) 22:58:32.87 ID:xKSnhiDqo

                  _
                  γ,-‐o、ヽ ` 、
               | i ゚  i. |   \       
          .       ゝ`‐-‐´ノー-、   `:、      
                  ̄      ヽ.  ヽ.     
                           l   l    
                              l   l    
                           ,!   l    
                          /    l     
                       /    |    
                          , '      |     
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       / ⌒ ヽ           ヽ⌒ ' 、   |
     /.  ,. 、 \         ゝ二, -'"  |
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    / ,i´     ヽ  \       |        l
.   ,i /        `:、   `‐、   /         i、__
.  .i./         \    ` ´           i、    ̄ ` 、 
   i!               `‐.、               i,. -―-、   l
                 ヽ、           i、  ノ  /
                       |          i、 / /

           ク ッ キ ー (アメリカ産)
4 :平次郎狸 [sage]:2011/02/13(日) 23:02:12.25 ID:e613HZdMo
夜の住宅街を歩く赤ジャージの男が一人。
最近、この町できな臭いことが起きているため見回りを兼ねて町を回っているのだった。

「ここらへんは……異常は無いか。」
5 :混沌 :2011/02/13(日) 23:12:17.87 ID:JUvWyELXP
>>4

 赤い点が平次郎のジャージを伝い、
 徐々に登って頭へに止まった。

「お命頂戴!」

 パスッ、と空気が弾けるような音が鳴る。
 レーザーサイトと消音機の改造がなされた拳銃が火を噴いた。

「ふふふふッ、まぁコレぐらいじゃ死にませんよねぇ!」

 駐車されてあった外車の中から現れる、
 パーティースーツの男。

「はじめまして、妖怪・平次郎さま。
 ワタクシは混沌、紫狂の幹部であり。窮奇に最も近しい人間でございます」

 拳銃を持った手を胸にあて、深々と頭を下げる長身の男。

「まぁこんなところで争いあうのもなんです。場所を変えましょう」

 混沌、と名乗る男は。
 外車を指差して語りかける。

「ふふふ、誰かを乗せてドライブなんてキュウちゃん以外は初めてですよ」

 そのキュウちゃんも一回しか乗りあってくれなかったのだが。
6 :平次郎狸 [sage]:2011/02/13(日) 23:19:26.71 ID:e613HZdMo
>>5
額に刺すような殺気を感じ瞬時に額を鉄に変える。

ガッ!

瞬間、大きな金属音が鳴り響き平次郎の首が後ろに倒れた。

「っ痛ぇなぁ!どこぞのもんじゃ!不意打ちしやがる奴は!」

しかし即座に首を起こし怒鳴り散らす。
が、そんなことにも動じず妙な格好をした男が慇懃無礼に挨拶をしてきた。

(ん?紫狂?どっかで聞いたような…。ってこいつらが今、町を騒がしてる…。)

「いいだろう。その誘いに乗ってやる。さっさと車出しな。」

男の切ない内情を無視しさっさと車に乗り込んだ。
7 :混沌 :2011/02/13(日) 23:33:41.62 ID:JUvWyELXP
>>6

 混沌は車を走らせる。
 狭い住宅街の道を走り抜けていく。

「我々、紫狂はね。ただのテロ集団のように皆様から思われているようですが」

 ハンドルを握る。
 スイスイと器用に車を滑らせる。

「とんだ誤解なんですよ。
 我々も皆様妖怪と同じく、百鬼の主を目指しているだけなのですから」

 頬が僅かに歪む。

「まぁ、確かに。やり方が少し回りくどいですがね」

 バックミーラーに不気味な色を湛えた目が映った、
 目は挑発するように平次郎を覗き込む。

「平次郎さん、貴方の求めるべき道はなんですか?
 何が為に主になるか、誰が為に戦うのか。その源泉となる何かはありますか?」

 周りの住宅はどんどん少なくなっていく。
 車はとうとう山のすぐ麓、舗装すらされていない地面がむき出しの枯草野に留められる。

 そこはかつて妖怪・おそろしが争った場所だった。

「さて、ここなら存分に暴れられそうだ」
8 :平次郎狸 [sage]:2011/02/13(日) 23:44:06.80 ID:e613HZdMo
>>7
混沌からの言葉に即答。

「喧嘩が好きだから平和も好きだから人が好きだから強くなりたいからだから俺は俺のためだけに戦う以上!」

一息に言い切る。

「まぁ、ようはただ難しいこと考えず祭りに参加してるだけだけどなぁ。」

平次郎の脳内は至って単純。ただひたすら自分のために。それだけを考えている。

「もっと簡単に言うとこの戦いにおいて手段と目的が入れ替わってるんだよ、俺は。主になるため戦うんではなく戦うために俺は主を目指す。」

そう言ってバックミラーから見える混沌の目を見据える。平次郎の瞳には混沌に負けないほどの戦闘に対する狂気が迸っていた。

「ここらへんか。どら、どっこいしょ。」

そう言って車を降りストレッチを始めた。
9 :混沌 :2011/02/13(日) 23:54:58.49 ID:JUvWyELXP
>>8

 車から降り、遠くを見据えるように呟く。

「私は・・・窮奇の為です」

 突如、辺りをおぞましいプレッシャーが覆い尽くした!
 刺激的なような、抑圧的なような。
 信念、情熱、怒り、喜び! あらゆる感情を内包した・・・狂気!!

「ヴェリタス・カモタール!! やはり妖怪は野蛮だ!
 お祭り? 戦いの為に主を目指す? 野蛮だ野蛮だ野蛮だ野蛮だ!!」

 目と口を大きく見開き。
 ストレッチを始める平次郎に向かって拳銃を乱射する。
 空気の弾けるような音が、連続する。

「嬉しいですね! 実に都合が『良い』!!
 誰かの為に戦ったり、愛に生きる妖怪だったらどうしようかと思いましたよ!!」

 しばらくすると、空撃ちのような音になる。
 カシャリ、と弾倉を落とし。弾丸を再び込める。

「結局勝ち負けを決めるのは!
 守るべきものが! 果たすべき約束がある者なんですよぉ!!」

 お前が言うな!
10 :平次郎狸 [sage]:2011/02/14(月) 00:03:19.68 ID:ksONQ7bCo
>>9
混沌の心地よい狂気を浴び平次郎もハイになってきた。

拳を金剛に変化させ構えを取り次々と自分に当たる銃弾を弾きながらジグザグに前に進む。

「野蛮!?だからどうした自分の為に戦っている分お前よりマシだ!他人に自分の闘争の理由を求めるお前よりはな!予言しよう!その志は簡単に折れてしまうことを!」

そう言い放つ。近づきつつある平次朗がリロードの隙を逃すわけが無い。一気に距離を詰め喉笛目掛けて突きを放つ。
11 :混沌 :2011/02/14(月) 00:20:33.40 ID:NFvKE7AvP
>>10

「ガ・・・フゥ!」

 喉元の一撃。
 避ける行動も間に合わず、吹き飛ばされて気道が裂ける。

「ふ、ふふぅ・・・! そんな予言当たるとかトンチキ狸がぁ!!」

 突如、裂けて血を吹く喉元が生き物のように蠢き!
 覆いつくして再生する! 何事も無かったかのように!

 狂気が膨らむ、混沌の眼が爛々と輝いた!

「折れないね! 挫けないね! 諦めないね! 絶ーーー対にっ!
 見失わないねぇええええええッ!! 獣の感情論と人間の信念を一緒にすじゃねぇ!!」

 感情倍増。辺りの土がビリビリと震え始めた。

「ふふふぅ! 少々ハイになりすぎました。
 しかしやはり! 妖怪を仕留めるには妖怪の力が一番のようだ!」

 跪いていた地面の僅かな出っ張りを摘み。
 ズボズボと引き抜く・・・! それは一振りの剣だった。

「人間国宝の打った名刀ですよ。
 贋作ですが・・・本家の性能を十分再現できている!」

 スラリと鞘が抜かれ、不気味な妖気を湛えた紫苑の刀身が月光に煌めく。
 風を切り、振りぬかれる。混沌の狂気に呼応し、妖気が爆発的に上昇する!

「“神剣 天羽々斬”!! かのヤマタノオロチを殺した日本最古の退魔の力!!」

 地面を一瞬抉り。大きく放物を描くように跳び上がる!!
 剣術としてはありえない方角、上空から平次郎に斬りかかる!!

「あははははははははははははぁ!!!」
12 :平次郎狸 [sage]:2011/02/14(月) 00:35:43.72 ID:ksONQ7bCo
>>11
吹き飛ばされて猶勢いづく混沌に戦闘狂の精神がより一層研ぎ澄まされる。

「面白いことを言う!人も所詮獣ではないか!ハハハハハハ!」

腹を抱え笑う。

「人にも獣にも実際境界など無い。どちらも同じようなものさ。常に足掻いている点がな。」

一瞬だけ僧としての顔を覗かせた。が、妖刀を目にすると口が裂けんばかりの笑顔を浮かべる。

「素晴しい!信念の結晶とも言える素晴しい刀だ!これに打ち勝つのは相当骨が折れるだろう!」

そう言い放ち平次郎も飛び上がる。今まさに自分に切りかかろうとしている刃を金剛にした右腕で突き出しながら逸らす。

キィーーッ!ギャリギャリギャリ!

不協和音を出しながら逸らす。が、変化が起きた。妖刀が腕を切断しつつある。
さしもの平次郎は驚くが笑みをより一層深くし右腕を犠牲にしながらも左手を胴体目掛け振り抜いた。
13 :混沌 :2011/02/14(月) 00:46:37.51 ID:NFvKE7AvP
>>12

 1m半もある巨大な片刃剣と、金剛が空中で火花を散らす。
 金属の切断音のような音の後、腹に突き上げられる一撃。

「が・・・ふぅっ!!」

 吹き飛ばされ、地面に落下。
 スーツの下のYシャツが破け、破れた肉が露出するが。
 やはり! 蠢くように再生していく!!

「ふふふぅ! そうですねぇ!! 人間も、妖怪も。
 どっちも同じ・・・たいした差にはならないですねぇ!!」

 気色の悪い、人間離れした動きで起き上がる混沌。
 狂気はさらに深く深くなっていた!!

「そう! この世には二つの存在しかない!!
 『窮奇ちゃん』か! 『それ以外』か!! この2点のみだ!!」

 大剣を構え、直線的に突進! 大きく振りぬく。
 剣の妖気だけを利用して! でたらめに攻撃する!

「キュウちゃんマジ天使ぃいいいいいいいい!!!」
14 :平次郎狸 [sage]:2011/02/14(月) 00:57:43.18 ID:ksONQ7bCo
>>13
殴り抜くと着地する。

ドサッ!

体は無事に着地するものの右腕が肩から離れ地面に落てしまう。しかしそれに見向きもせずただ混沌を目で追う。

「なかなかの狂気だ。なかなかの歪みだ。だが足りない!」

そう言うと左手で金剛のままの右腕を拾い上げる。意識を集中させるように目を瞑ると右腕の形状が変化していく。

「四百余年戦いに明け暮れた俺にはまだ生ぬるいわ!」

変化が完了する。そこにあったのは身の丈をゆうに超える大剣。しかしそれは形を模しているだけで切れ味などは全くもって無さそうだ。

「金剛の右腕を更に強化し硬度を未だ未踏の地に跳ね上げる!これでどうだぁ!」

こちらも技巧などなくひたすらに打ち合う。剣の莫大な妖気に対し純粋な力。正に怪力を持って妖刀を跳ね除けようとする。
15 :混沌 :2011/02/14(月) 01:08:02.23 ID:NFvKE7AvP
>>14

 響きわたる、甲高い金属同士の衝突音。
 莫大な妖気の大剣と未踏の強度を誇る刀同士がぶつかり、火花を散らしあう!

「ふふふふふふふふふふふぅ!!
 無駄だ無駄だぁああああ! いかに硬かろうが! 重かろうが!!」

 巨大な妖気と狂気が混ざり合い!
 悪神のような形になる!!

 ミシミシと、硬いものが砕けていく音がする!

「妖気で作られた物はぜーーーーんぶ無意味ぃ・・・いいいい!?」


――バキリ、と音がした。

 急に手応えを失い、混沌は振りぬいて地面に転倒しかける。

「が・・・ふぅ!?」

 神剣の刃は吹き飛ばされ、金剛の刀によって叩き伏せられてしまった。

 巨大な刀身と重さ、そして超人的な力同士のぶつかり合いが仇となった。
 神剣の柄は、ボッキリと折れて混沌に握られていた。
16 :平次郎狸 [sage]:2011/02/14(月) 01:14:39.00 ID:ksONQ7bCo
>>15
呆気に取られ目の前の光景を見守る。

「は?」

折れた。ぽっきりと折れている。そのせいで今やお互いに体勢が崩れてしまった。平次郎は右手を振りぬいた形に。混沌は地面に転倒しかけるほど体が低い形に。
ならば今できる最善を。平次郎は最初の銃弾を防いだときのように額を金剛にすると下がっている混沌の頭に向け思いっきり頭突きをかました。

「どっせい!」
17 :混沌 :2011/02/14(月) 01:23:59.01 ID:NFvKE7AvP
>>16

「ぐ・・・ふぅおぁっ!!」

 頭突きの直撃。
 激しい、衝撃と共に一瞬混沌の意識が跳ぶが・・・。

「ぶ、ふふふぅ!!」

 叩き伏せられた拘束が抜け、
 混沌は一気に立ち上がって平次郎から距離をとる。

 頭蓋がわれ、血が噴出し。うっすら脳のようなものが見えていた。

「くく、く・・・無駄だ、無駄だぁあああ。ワタクシを悩殺できるのはキュウちゃんだけ」

 やはり肉が蠢き、砕けた頭蓋を覆っていくが。
 骨が飛び出している故かなかなか上手く再生できない。

「く、ぅうう!! 痛いっ! おまけに血も肉も足りなくなってきました!!」

 再生が上手くいかず、激痛が走り。
 傷口を押さえながらうめき声を上げる。
 よろよろと車にもたれかかった。

「ふ、ふぅ・・・! まいったな、攻撃手段も失ってしまった。
 しかたない・・・今日は逃げさせてもらいますよ!!」

 車からいきなり大口径砲のようなものを撃ち出し!
 その隙に車に乗り込む混沌。
18 :平次郎狸 [sage]:2011/02/14(月) 01:32:50.95 ID:ksONQ7bCo
>>17
頭突きの体勢のままでいたため混沌を逃してしまう。遅れながらも顔を上げると異常な光景を目にしてしまった。

「なんなんだ、その丈夫さは……。」

流石にその再生能力に疑問を持つ。つい考え込んでしまうがその途端今までの比ではない銃を見て硬直しかける。しかし発射の瞬間には立ち直り、盾のように大剣を構え銃弾を防いだ。
しかし、如何せん力を込められなかったようだ。予想外の威力に剣ごと吹き飛ばされてしまった。勢い良く立ち上がり、車を見るものの既に走り始めた後だった。
19 :混沌 :2011/02/14(月) 01:39:13.40 ID:NFvKE7AvP
>>18

 黒い煙を吐きながら急発進、する外車。
 ドリフトのような急カーブで。怯む平次郎を残し逃走する。

「ぐ・・・やはりっ! ワタクシは・・・!」

 混沌が自ら平次郎を襲った理由、それは。

『キミって口だけの金ズルだよね。私は弱い男は嫌いだね』

 と、窮奇に言われてしまったことだった。
 めくるめく悔しさと、これから罵倒される未来に興奮し。
 混沌は脳血を流しながら住宅地を運転していた。
20 :平次郎狸 [sage]:2011/02/14(月) 01:44:17.13 ID:ksONQ7bCo
>>19
一人ぽつんと残る平次郎。大剣を金剛の右腕に戻すとそれをじっと見つめる。

(やべぇ…、どうしよこれ……。つか今更ながら痛い……。)

しばらく考えても結局答えは出ず左手でそれを肩に担ぎながら家に帰るのだった。
脳内はさっきの戦いの反省ばかり。あそこはこうするべきだった。ここはこれでよかった。等と自己評価。
自然と頬は釣り上がっていくのだった。もっともそれは歪んだ笑みだったのだが……。
21 :大蜈姫 [saga sage]:2011/02/14(月) 21:36:17.67 ID:QcZU+bACo
【辺りの妖怪たちの間に、噂あり】
【曰く、大百足の首領が、何やら妙なことをしているとか】

(※プライバシー保護のため音声は変えてお送りします)
猫又「大きな百足が視界を横切ったかと思ったら、目の前に鼠の死体が転がっていて……」
河童「大きな百足が突進してきたかと思ったら、頭の上に胡瓜を乗せてたんっすよ……」
22 :蛇神 [sage]:2011/02/14(月) 21:45:38.03 ID:iQj7vfHmo
少し遠くから夜風が街の喧騒を運んでくる。
暗い水の流れる橋の上を、車の灯が通ってゆく。

「やっぱりここでまた会えるとは、限りませんよね」

あの夜、平次郎狸と飲み交わした川岸で、小さくなった蛇神はぽつりと呟いてしゃがみ込んだ。
今、彼を探して蛇神はあちこち歩き回っているのだ。
23 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/14(月) 22:03:59.88 ID:hg19LzjRo
>>22
2月14日。所謂、バレンタインデーという日。
街全体が妙に浮足立っていたが、その理由を山の妖怪たちが知る由もない。
袂山から降りてきた送り雀は、けたたましい街の上空を飛び越え、河原までやって来ていた。
普段この時間に、一人で街に出ることはないのだが、――というか、出してくれないのだが、今はそれを止めるものはいない。
それに、今日は特別月が明るい夜だ。
遠くへ散歩ついでに、水浴びでもしようと、河原に立ち寄っていた。

「……あれ?」

ふと、とあるニオイを感じ取った四十萬陀は、川岸へ降り立った。
見えてきたのは、小さな蛇神。
24 :蛇神 [sage]:2011/02/14(月) 22:23:06.22 ID:iQj7vfHmo
>>23
仄かに蛍火色の光を放って、足元を照らしていた蛇神は
聞こえてきた羽音と、そこに現れた覚えのある気配にあたりを見回した。

「あなたは夜雀の、四十萬陀さんですね?」

鳥の姿と会うのは初めてだが、気配は人の姿の時と同じ。
狼を癒した時、この夜雀は黒蔵のことを気に掛けていた。
あの後のことを知ったら、彼女は悲しむだろうか。
25 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/14(月) 22:32:03.15 ID:hg19LzjRo
>>24
「えっと、ミナクチ様、じゃん?」

犬御を助けてもらった事もあり、どうも君付けなどで呼ぶような気にならなかった四十萬陀は、
平次郎狸の呼び方を借り、彼をそう呼んだ。
――そっか、この姿で会うのは初めてなんだった
はた、と気付く。

「うん、そうじゃん。えっと……この間はありがとうじゃん
 アイツ――助けてもらった仲間からも、直接お礼を言わせたいんだけど、今、連絡が取れなくて」

四十萬陀は、困ったようにそう言ったが、

実際は、取れなくて、というのは正確ではない。
取ろうと思っても、避けられてしまう――というのが、本当の所だった。
26 :蛇神 [sage]:2011/02/14(月) 22:38:39.56 ID:iQj7vfHmo
>>25
「あの狼が元気でいるならば、お礼など不要です」

あくまでも、ただ食事をしただけのこと、なのだ。
力の足りない今は、傷を請け負うだけでも蛇神には十分な利となる。
そして蛇神は、すまなそうな表情で夜雀に言う。

「こちらこそ、あなたに警告を頂いたのに後手に回りました。
 実はあの時、既に窮奇は黒蔵に接触していたのです。
 何をどうやったのかは不明ですが、黒蔵を鳴蛇に変えました。
 おそらく黒蔵の腹の中のヒダル神を使ったのだろうとは思いますが……」

小さな蛇神は、ため息をついて肩を落した。
27 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/14(月) 22:50:17.74 ID:hg19LzjRo
>>26
――元気、なのかなぁ
四十萬陀も、そこのところは自信がない。
山にいる姿は仲間たちが目撃しているから、生きていることは分かっているのだけど。

「……!!」

蛇神の言葉に、四十萬陀は目を張った。
途端、あの時の黒蔵の姿がフラッシュバックする。
――ああ、そうか、だから。彼は、窮奇に会ってしまったのか。
四十萬陀の中で、出来事同時が繋がった。

「……黒蔵君は、」

だが、繋がったところで、
震える声で、四十萬陀はミナクチに訊ねた。

「今、どうしてるじゃん? 私、全然、黒蔵君が、どうなったのか、知らなくて――」
28 :大蜈姫 [saga sage]:2011/02/14(月) 22:55:25.60 ID:QcZU+bACo
>>26,27
【静寂の中、カサカサと何かが這う音がする】
【辺りに漂うのは、わずかばかりの酒の香りと、内臓の匂い】
【内臓は残念ながら、夜雀の好物の人間の女子供のものではなく、野豚のようだ】
29 :蛇神 [sage]:2011/02/14(月) 23:04:05.04 ID:iQj7vfHmo
>>27
「幸い、雪男の氷亜さんと露希さんの助力で捕縛することができたので、
 今は露希さんのところで封じ込めてあります。
 でもこのままでは……最悪の状況もあります。
 なんとかしてヒダル神を除ければ黒蔵も元に戻るのでしょうが…」

蛇神は少しためらったが、後で知るよりは今のほうがいい。
実際に口にしたのはここまでだが、あとは心の底だけで呟いた。

(私が黒蔵を食うか、逆に腹へ潜ってヒダル神を捕え共に黄泉の国に赴くか……)

水の神としての役目である。鳴蛇がいる限り、降雨への影響は続く。

>>28
「おや?どなたかいらっしゃるようです」

どこかで覚えのある気配のようで、蛇神は首をかしげた。
30 :四十萬陀 七生 :2011/02/14(月) 23:12:59.99 ID:hg19LzjRo
>>29
「……そう、露希君のところにいるんだ」

最悪の状況、なんて、考えたくもないけれど、
ミナクチが言うのなら、その可能性も低くはないのだろう。
――『この器よりも強くて、言うことをよく聞く器をくれるんなら、考えなくも無いわ』

「……」

四十萬陀は、黙った。
何を考えているのか、俯かれた顔から覗くことはできない。

>>28
つん、と四十萬陀の嗅覚が臭いを感じ取った。
お世辞にも、イイニオイとは言えないそれ。
五感の敏感な四十萬陀は、沈んだ意識をそちらへ逸らした。

――酒、と、内臓と、妖気……

草を揺らして這う音を捉えた四十萬陀は、警戒態勢に入った。
31 :大蜈姫 [saga sage]:2011/02/14(月) 23:16:49.23 ID:QcZU+bACo
>>29,30
【現れた大百足は、左右に開く両顎を、ニターリと開く】

【トン、と上物の酒と野豚の内臓をその場に置いて言う】

こいつぁ、あたしからの“ぷれぜんと”だよ

>>30
アンタが人間の女子供が好きって話までは調べがついたんだがね、
流石に手に入れるのはやめといたんで、野豚で我慢しておくれ
野豚じゃ嫌というなら、まあ別の何かを探してくることにするさ
32 :蛇神 [sage]:2011/02/14(月) 23:25:42.32 ID:iQj7vfHmo
>>31
「む、百足の姫君っ!?」

蛇神は驚いて、一瞬、ぷれぜんとの意味を図りかねた。
力の弱った今の蛇神には、とても怖い相手。
何百年か前に一度だけ見かけたその姫が、今は一族の首領であることを蛇神は知らない。

(はるか昔に一族同士が争った、因縁のある百足の一族……。
 今は和議を結んではいるが、その姫がなぜここに?)

蛇神の表情は色を失っている。
夜雀の前でなかったら、へたり込んでいたかもしれない。
33 :四十萬陀 七生 :2011/02/14(月) 23:33:29.19 ID:hg19LzjRo
>>31
大百足に驚いた四十萬陀は、思わず声を上げて後退りした。
ぱしゃり、と跳ねた水が羽に掛かる。

「え、えっと……あ、ありがとうじゃん……」

人間の女子供好き、というのは間違っていないが、(というか、どこで調べたじゃん?)人間食は自主規制中である。
変わりに置かれた野豚などは、ニオイは好きではないが、仲間の送り狼や送り犬などが気に入りそうだ。
と、そんな事を言っている場合ではなく、
四十萬陀は、もう一度大百足の姿をきちんと眺めた。
全長10mほどの巨大な百足の妖怪。ここまでとなると、中々いない。記憶が正しければ、確かこの妖怪は――

「……君、大蜈姫じゃん?」

噂で聞いた程度ではあるが、その姿に聞き覚えがあった。
――でも、なんでこんな所に、百足の姫様が…

>>32
「だ、大丈夫じゃん?」

動揺している様子の蛇神を、心配するように尋ねる。
34 :大蜈姫 [saga sage]:2011/02/14(月) 23:37:17.08 ID:QcZU+bACo
>>33
おや、蛇のお方ならご存知だとは思ってたけれど、そちらにも知られてるとはねぇ
……といっても、そういやもう何百年も生きてたかい、なら知ってても当然ってところかい

>>32,33
知ってるかい?
人間達の間じゃあ、今日は贈り物を送る日だそうだ
本当は、妙な土の塊を贈るそうなんだが……そんなもん貰ったって困るだろう?

だから変わりに、ちょいと好きそうなモノを調べさせてもらったよ
35 :蛇神 [sage]:2011/02/14(月) 23:44:56.61 ID:iQj7vfHmo
>>33
「え、ええ。大丈夫です……多分」

大蜈姫には襲ってくる気配はない。
驚きから回復して蛇神は、ぷれぜんと、の意味を思い出す。

>>34
「ぷれぜんと、ですか。姫君のお気持ちを頂けるのは光栄ですが……なぜ私に?」

(姫君というものは、色々と唐突なことをなさるものだとは聞いていたけれど)

まさかこの姫様に、人間のお祭りに便乗するお茶目な所があるとは思いもしなかった。
そういえば、竜の姫君も色々と唐突だった。

(こういう場合、女性からの贈り物って素直に受け取ってもいいものなんでしょうか)

そこで悩むのか、ミナクチ。
しかし多分、受け取る以外の選択肢は用意されていない!
36 :四十萬陀 七生 :2011/02/14(月) 23:49:35.98 ID:hg19LzjRo
>>34
「……あ、だから街が妙に盛り上がってたんだね」

河原へ来る途中通った場所は、どこもかしこも『バレンタイン』という文字で溢れかえっていた。
ここ数十年でよく聞くようになった言葉で、特に気にしてもいなかったが、
なるほど今日は贈り物を送る日なのか。と四十萬陀は一人納得した。

「うん、この贈り物は凄い嬉しいじゃん」
(……でもどうやって運ぼう)

一度山に戻って、送り妖怪たちを呼んでくるしかないか……。

>>35
「ご、ごめん、ミナクチ様。私、一回山に戻って仲間呼んでくるじゃん」

四十萬陀は言いにくそうに言うと、翼を広げて、夜空に飛び立った。

//先落ち失礼します;
37 :大蜈姫 [saga sage]:2011/02/14(月) 23:54:46.20 ID:QcZU+bACo
>>35
おおっと、勘違いなさんな
あたしは別に、“あんたのために”やってるんじゃあないんだからね【ニヤリ、と笑う】
目についた妖怪皆にやってるんだよ、あんたはそのついでさ

>>36
おっと悪かったねぇ
言ってくれりゃ、あんたの都合のいい場所に持っていくことにしたんだが……ま、いいかい
38 :蛇神 [sage]:2011/02/14(月) 23:59:10.91 ID:iQj7vfHmo
>>36
「はい。どうぞ、お気をつけて」

そうか、人間の街も盛り上がっていたのか。
鳴蛇のことに掛かりきりで他を見ていなかったことに、蛇神はこの2人のお陰でようやく気付いた。

もしかしたら百足の姫君は、人間のすぐ傍で過ごしてみたのかもしれない。
人の祭りの賑わいは、妖怪の心も浮き立たせるものだから。

//お疲れ様でしたー

>>37
「ついで、でしたか。それでも光栄です」

あっさりさらりと言ってのけた大蜈姫に、逆にほっとして蛇神も笑顔になった。

「この香り、随分良いものを選んでくださったのですね」

かなり上物の酒だ、これを『ついでに』と言えるのは百足の姫君だからこそだろう。
39 :大蜈姫 [saga sage]:2011/02/15(火) 00:04:47.57 ID:XKwYeyp1o
>>38
そんなにお気に召したのなら、良かったがねぇ
しかしいい物って、そいつは偶然じゃあないかい?

ま、無事受け取って貰えてあたしも安心だよ
それじゃあたしは、別の奴らにも“ぷれぜんと”を届けてくるよ

また会ったらよろしく頼むよ、蛇のお方

【空中に向けて立てた尻尾をふらふらと左右に振りながら、闇の中へと消えて行った】
40 :蛇神 [sage]:2011/02/15(火) 00:13:31.63 ID:e+BtCb6So
>>39
「実は、お役目の時以外で酒を頂く機会はそうないものですので。
 ぷれぜんと、どうもありがとうございます」

おそらく今の体の大きさに合わせてくれたのだろう。
小さく拵えてある酒甕に、大蜈姫の心配りを嬉しく感じたと同時に、
どこで誰が見ているのか判らないものだ、とも蛇神は思った。

そしてその懸念は的中し、後に竜宮で冷やかされることになったのだった。


//絡みおつでしたー
41 :バトー :2011/02/15(火) 21:19:57.02 ID:R4lcfGbDO
町外れ、人が少ない通りに異様な姿の何かが動いている

「ここいらはこの時間帯は人が少ねえか…」
「何か面白そうな奴でもいるかと思ったんだがなあ…」

それは馬の頭…と言うか、馬の被り物を被った長身の男
男はジーンズを履いて達筆で『馬』と書かれたシャツと茶色のジャケットを着ている

彼は辺りを変わらない表情で見回しながら、無防備に道の真ん中を歩く
端から見れば彼が一番面白い奴、もとい変な奴かもしれない
42 :十夜「」&七郎『』 :2011/02/15(火) 21:27:51.22 ID:pWpPVraAO
>>41
一人の少年が一匹の狐を肩に乗せ歩いている。

『…十夜、気をつけろ。あいつ…』

狐が警戒し、男の方を横目で見る。

「あ、怪しい人…」
怯える少年。

『そうじゃない、あいつ…妖怪だ。恐らく鬼か何かだと思うが…』

「な、なんでこんな所に…」

二人は警戒しながら様子をうかがう。
43 :バトー :2011/02/15(火) 21:34:39.37 ID:R4lcfGbDO
>>42
不意に、男が立ち止まる

「おい、そこの」

そして、少年に顔を向けずに声をかけた後、クイッと首を捻り少年に顔を向けた
首の皮は不自然なシワが入り、微妙に変形した顔の冷たい目が少年と狐を捕らえる

「怪しい鬼が散歩してちゃ悪いか?安心しろ、悪さはしねえ」
「…それとな」

「俺は地獄耳なんだ、地獄出身なだけにな」
「だから内緒話をするんならもっと俺から離れてした方がいいぞ?」

トントン、と自分の頭頂部にある耳を右手人差し指で叩きながら少年に言った
44 :十夜「」&七郎『』 :2011/02/15(火) 21:39:27.92 ID:pWpPVraAO
>>43
「うわっ…」

男に怯える少年。

『あー、聞こえてたのか…そりゃ悪かったな。以後、気をつけるぜ。』

対して狐は軽く返した。

45 :バトー :2011/02/15(火) 21:47:16.98 ID:R4lcfGbDO
>>44
「何、気にするな」
「こんな事でいちいち怒ってちゃ仕事が成り立たないからな」

バトーからHAHAHAHAHAと笑い声がする
笑うと表現しなかったのは、笑い声はすれど表情は全く変わっていないため、だからと言って怒っている様子でもないが

「所で…ほう」
「人間と狐か、狐憑き…いや違うな」

顎に右手をやり、少年に体を向けて観察を始めた
興味津々のようだが、頭のせいでかなり不気味
46 :十夜「」&七郎『』 :2011/02/15(火) 21:56:14.32 ID:pWpPVraAO
>>45
十夜(怖い…)

観察されている少年。かなり怖がっている。

『俺は管狐だ。そう言うあんたは、地獄出身の鬼だっけ?』

狐は警戒は解かずに話す。
鬼という、強大な存在を目の当たりにしたのは初めてだからである。
47 :バトー :2011/02/15(火) 22:07:27.57 ID:R4lcfGbDO
>>46
「管狐とそれを連れる人間の子供、か…面白い組み合わせじゃないか」

ふむ、と言って少年と狐をさらにじっくりと見る

「ああ、そうだ、地獄の鬼、詳しく言えば馬頭鬼だな」
「あっちじゃ獄卒をしていたんだがな、飽きたからこっそり現世に出てきたんだ」

観察する体制をやめ、自分の事を簡単に説明
簡単に言うと仕事に飽きて抜け出して来ただけである

/すいません、風呂に入ってくるので返事遅れます
48 :十夜「」&七郎『』 :2011/02/15(火) 22:16:26.87 ID:pWpPVraAO
>>47
「お、面白い…ですか?」

相変わらず、怯えたままの少年。

『ま、珍しいかもな。昔はもっと、管狐を連れた人間がいたんだがな。』

しみじみと過去を思い出す狐。

十夜(馬頭鬼…獄卒…うぅ…なんか怖そう…)


『こっそりって、大丈夫なのか?やばいんじゃないのか?勝手にこっちに来ちゃ。』

呆れ顔の狐。若干、心配しているのも見られる。


/わかりました。
49 :バトー :2011/02/15(火) 22:44:19.96 ID:R4lcfGbDO
>>48
「俺も現世はよく知らんが、人間と妖怪の仲はどうなんだ?」
「俺が昔罪人に聞いた時はそれ程良くなかったらしいがなあ」

彼にとってはつい最近、人間にとっては遥か昔の事を思い出して

「まあ、いい事ではないだろうな」
「こっそりとは言えそろそろ相棒辺りには気付かれているかもしれんな」

「まあ別にいいだろう」と付け加えて、バトーは笑った

/ただいま帰りました
50 :十夜「」&七郎『』 :2011/02/15(火) 22:57:15.91 ID:pWpPVraAO
>>49
『人間と妖怪の仲ねぇ…ま、良いって訳ではねぇな。人間の味方もいれば、敵もいる。中立だってたくさんいるしな。』

淡々と話す狐。警戒心は解けてきたようだ。

「僕も時々襲われたりするし…
でも、七郎は…あ、七郎ってこの管狐の名前です。七郎は、大切な友人だと思っています。」

少年の方も、恐怖がなくなったきた。慣れてきたのだろう。まったく、怖がっていないという訳ではないが。


『相棒か…心配はしてるわけないよな。あんた強そうだし。連れ戻しに来たりしねぇのか?』

淡々とした表情で問いかける。
51 :バトー :2011/02/15(火) 23:11:57.46 ID:R4lcfGbDO
>>50
「ふむ、昔に聞いた話によればほとんどの人間は妖怪を悪く言っていた物だが…」
「時が経てば変わる物だな」

狐の話を興味深そうに聞いて、昔の体験と比べて話す

「七郎か…いい名前を貰っているな管狐」
「少年、友達は大切にするんだぞ?じゃないと俺が地獄に連れていくぞ?」

少年を、まるで子供を驚かすようにして冗談めかして笑う
言うまでもなく笑い声はするが表情は変わらない

「どうだかな…強いのは否定したくないが心配はするかも解らん」
「連れ戻すにしても一人で来てくれるならいいが、閻魔翌様なんかに言い付けられると参ってしまうな」

52 :十夜「」&七郎『』 :2011/02/15(火) 23:22:59.31 ID:pWpPVraAO
>>51
『まぁ、妖怪自体数が減っちまったからな。それでも結構山の中とかにはいるみたいだし、人に紛れてる奴も結構いるぜ。』

今までに合ってきた妖怪達を思い出しながら言った。

「え…?じ、地獄って…」

怯える少年。冗談に聞こえていない。

『十夜、ビビる必要ねぇって…お前は友達思いな奴だろ?』

狐は肩の上から少年に話しかけた。

『閻魔って…おいおい…余計な騒動をおこしたりするなよ?巻き込まれるのはごめんだからな。』

呆れ顔で返した。
53 :バトー :2011/02/15(火) 23:33:56.88 ID:R4lcfGbDO
>>52
「成る程な、俺のように人間に化けているのが殆どか」
「そういえばこの前山であったニワトリと猿は人には化けてなかったな…つまり山に行けば解りやすい妖怪が見付かるのか」

少し前の記憶と七郎の言葉を掛け合わせ、自分独特の理論を完成
因みに彼を見るに人間に化け切れてないように見える、特に頭の辺りが

「冗談だ、そこまで怖がるな少年」
「七郎の言う通り、お前みたいな奴ならそんな事はないだろう」

少年の怖がる様子を見て楽しそうにフォローの言葉を入れた

「流石にそれはないと思うがな、もしそうなったら耳にタコが出来るまで説教を聞かされてしまう」

この言葉を聞くに結構大事ではなさそうだ、そもそも説教で済むのかは謎だが
54 :十夜「」&七郎『』 :2011/02/15(火) 23:41:37.32 ID:pWpPVraAO
>>53
『ああ、山に行けばいるんじゃねぇか?』
(頭のことにはつっこむべきかなのか?)

頭の方をチラチラ見る。

「冗談…良かった…」

ほっとため息をつく少年。

『おいおい、説教で済むのかそれ?』

55 :バトー :2011/02/15(火) 23:53:33.52 ID:R4lcfGbDO
>>54
「山か…血の気の多い奴も多そうだな」

楽しみそうに言って、両手の掌と拳をぶつけて笑う
どうやら求めているのは、血の気の多い奴とのコミニュケーションらしい

「説教を嘗めたら行けないぞ、正座の足の痺れは鬼もつらいからな」

正座が辛いという鬼らしからぬ理由、それで説教が恐ろしいようだ

「…ふむ、腹が減ったな…人参でも買いに行くか」
「それから山へ行って、喧嘩相手探しだ」

自分のこれからの予定を簡単に立て、うむと頷く

「少年、名はなんだ?俺の名はバトー、馬頭鬼のバトーだ」

56 :十夜「」&七郎『』 :2011/02/16(水) 00:02:14.07 ID:+ISGs7LAO
>>55
『喧嘩好きなのか?まぁ、頑張れよ。』

その様子を見て、喧嘩好きと判断。

「鬼でも正座って辛いんですね…」

少年はそんな鬼を見て、なんとなく親しみがわいてきた。

「僕は、稲山十夜です。」

57 :バトー :2011/02/16(水) 00:08:27.61 ID:mTw+PdhDO
>>56
「当たり前よ、力を持ってんのにそれを使わないでどうするってんだ」
「力があるなら―――持て余すのは手前の力に失礼ってもんだ」

ニヤリと笑って(表情は変わらないがそんな雰囲気)、自分の両拳をぶつけ合わせる

「十夜に七郎だな、もし地獄に来た時は俺を探しな、少しだけ融通を効かせてやるよ」

「それじゃあな」、と最後に一言かけて、バトーはどこかへと歩き出した
58 :十夜「」&七郎『』 :2011/02/16(水) 00:25:03.82 ID:+ISGs7LAO
>>57
『自信あるみたいだな。』

「なんか、かっこいいかも。」

二人ともさすがといった感じで見つめていた。

『俺はともかく、十夜は地獄には行かねーって。まぁ、俺が地獄行きだった場合は頼むぜ。』

ヘラヘラと笑いながら答えた。

「さようなら。」

『縁があったらまたなー』

手を振って見送る少年と狐。
そこでふと、何かを思い出す少年。

「ねぇ…七郎、今思い出したんだけど、バトーさんに前に七郎が襲われた山の妖怪のこと話さなくてよかったの?危ないんじゃ…」

『大丈夫だろ。あいつは強そうだし、止めたって聞かないだろ。それに、血の気を求めてるんならそれでいいんじゃないか?
あの妖怪が罪人なら、あいつの仕事とも関わってくるかもしれないしな。』

「うーん…それもそうかも。」

少し心配を残した表情の少年とそうでない狐は、そんな話しをしながら帰っていった。
59 :バトー :2011/02/16(水) 00:26:57.08 ID:mTw+PdhDO
>>58
/乙でした
60 :バトー :2011/02/16(水) 22:28:01.97 ID:mTw+PdhDO
暗い夜の山道、街灯も無い夜道を、風が草を揺らす音が彩る
何かが出ても何ら不思議ではないような不気味な夜道で、ざっくざっくと無防備な足音が動き回っていた

「…中々いねぇなあ、妖怪ってのも」
「折角いい夜だってのに何にも見付かりゃしねえな…」

それは馬の頭…と言うか、馬の被り物を被った長身の男
男はジーンズを履いて達筆で『馬』と書かれたシャツと茶色のジャケットを着ている

「おーい!妖怪さんよーい!…って呼び込んで来りゃ苦労はしてねえか」

不振な格好の男は草を踏み分け、大声で妖怪を呼び込み歩き回っている
61 : :2011/02/16(水) 22:31:53.13 ID:yPRvgEFm0
>>60
暗い夜道、緑色のパーカーを着た男が歩いている。

「義手…使いにくい。こんなんで戦えるのかな…。」

彼の左手は義手。そんな時、声が聞こえた。
ふと目の前には二足歩行の馬が。

「ええと…馬?」

なんとも失礼な。しかし、澪にはこれしか頭に浮かばなかった。
62 :バトー :2011/02/16(水) 22:38:23.96 ID:mTw+PdhDO
>>61
「おぉっと、呼んだら来たな」

まさか本当に呼んだら出てくるとは思っていなかった、目の前に現れた男を見て大袈裟に立ち止まる

「馬…惜しいな、俺はただの馬じゃなく馬頭鬼、地獄の鬼さ」

チッチッと人差し指を振って見せ、表情が変わらない目に男を写す
見た目はどう見てもただの人間―――正し馬の頭は除く―――である
その樹脂系で出来てそうな馬の頭が一番の問題であり、ブッチ切りにおかしな点ではあるのだが

「そういうあんたは何者だい?義手を付けてるような人間はこんな所にいちゃ危ないぜ?悪い妖怪が出るらしいからな」
「いや…もしかしたら、あんたがその妖怪だったり…するのか?」
63 : :2011/02/16(水) 22:43:47.24 ID:yPRvgEFm0
>>62
「馬頭鬼ですか…」

地獄の使い、自分の前に居ると言うことは何かしにきたに違いないと思った。
言葉を失う――

「まぁ…妖怪です。八岐大蛇の……。手は訳ありで切っちゃって。」

黙りこくるのも悪いと思い、話す。
64 :バトー :2011/02/16(水) 22:49:41.10 ID:mTw+PdhDO
>>63
「八岐大蛇…ほう」
「…八岐大蛇?」

男の正体を聞いて、一度頷いて納得
…が、直ぐにもう一度、自分にも相手にも確認しなおすかの様に繰り返す

「八岐大蛇と言うと…あの八岐大蛇か?」
「首が八本だとか、山を跨ぐ巨体だとか、かの有名な妖怪の?」

ずい、と男に少し顔を近付け、問い掛ける
表情が変わらない馬の頭が話し掛けながら近付いてくるのは、かなり不気味だと思われる
65 : :2011/02/16(水) 22:55:32.96 ID:yPRvgEFm0
>>64
「……実はこれも訳ありで首は5本しかないですが、そうです。」

馬の人の顔が不気味なため、少し俯く。
初対面でこれほど近づかれたら怖いに決まってる。

「それで…貴方の目的は……?」

さて、本題に入る。
自分を目的に来たわけではなさそうだが、地獄の鬼がここに来るのは不自然。
きっと何かがあると思い、聞いてみる。
66 :バトー :2011/02/16(水) 23:01:50.95 ID:mTw+PdhDO
>>65
「ほぉう…こんな大物までいるとはな…現世に出て来て正解だったか」

男から顔を離し、右手を顎にやって男を観察しながら言う
何か、少し嬉しそうにも見える

「目的か、そうだな…まあ」
「暇潰しに喧嘩相手を探しに来た、そんな所か」
「地獄での仕事に飽きてきたんでな、こっそり抜け出して楽しそうなこっちに来たんだ」

男に対し彼がする解答は内容、答え方含めとても豪快な物で、やった事も何かやってはいけない事のように思える事だった

/すいません、風呂に入ってくるので次のレス少し遅れます
67 : :2011/02/16(水) 23:07:52.24 ID:yPRvgEFm0
>>66
「ケンカ!?そんなっ…」

自分は強くない、そう言いたかった。
義手で力も十分に発揮できる訳でもなく、下手をすると殺される。
澪にとって、悩む選択となった。――が、

「……いいですよ、その代り本気で行きます。」

とりあえず、持てる力は出し切ってみようと決意。

/了解です。

68 : :2011/02/16(水) 23:08:39.60 ID:yPRvgEFm0
>>66
「ケンカ!?そんなっ…」

自分は強くない、そう言いたかった。
義手で力も十分に発揮できる訳でもなく、下手をすると殺される。
澪にとって、悩む選択となった。――が、

「……いいですよ、その代り本気で行きます。」

とりあえず、持てる力は出し切ってみようと決意。

/了解です。

69 : :2011/02/16(水) 23:09:07.97 ID:yPRvgEFm0
>>66
「ケンカ!?そんなっ…」

自分は強くない、そう言いたかった。
義手で力も十分に発揮できる訳でもなく、下手をすると殺される。
澪にとって、悩む選択となった。――が、

「……いいですよ、その代り本気で行きます。」

とりあえず、持てる力は出し切ってみようと決意。

/了解です。

70 : :2011/02/16(水) 23:09:30.51 ID:yPRvgEFm0
>>66
「ケンカ!?そんなっ…」

自分は強くない、そう言いたかった。
義手で力も十分に発揮できる訳でもなく、下手をすると殺される。
澪にとって、悩む選択となった。――が、

「……いいですよ、その代り本気で行きます。」

とりあえず、持てる力は出し切ってみようと決意。

/了解です。

71 :バトー :2011/02/16(水) 23:34:41.12 ID:mTw+PdhDO
>>67
「…ほう?相手になってくれるのか?」
「こう言っては何だが、片腕が無いからと容赦はしないぞ?」

男の言葉を聞いて、首を鳴らし、指を鳴らし

「そうだ、本気で来い、そうでなくては面白くない」
「殺しはしないから安心しろ、少し痛いかもしれんがな」

両の拳を握って戦闘体制を作り、男に闘気を放つ
拳を握る腕の筋肉が膨れ上がるのが、微かに服の上からでも解るだろう

「馬頭鬼のバトー、参る」

/ただいま帰りました
72 : :2011/02/16(水) 23:38:54.21 ID:yPRvgEFm0
>>71
剣を鞘から抜く、その剣には恐ろしいほどの妖力を宿している。
紫色に、そして黒いオーラが出る。

「では、こちらから行きます。」

両手で剣を持ち、走る。接近戦のようだ。
73 :バトー :2011/02/16(水) 23:42:51.69 ID:mTw+PdhDO
>>72
「剣士か、面白い」
「一つ言っておこう、素手と武器持ちでは武器に部がある、しかし…」

その場に立って、男に対峙したまま、右腕を後ろに思い切り振りかぶる
右腕の筋肉が、服の上からでも見て解るくらいにまで隆起した

「その理屈が、俺にも通るとは限らんぞ?」

力を溜め、男を待ち構える
74 : :2011/02/16(水) 23:47:45.18 ID:yPRvgEFm0
「理屈?どうでもいいんだけどね。」

妖力はより一層、厚く濃くなる。切れ味も増し、懐へ走る。

「さて、貴方はどう戦いますか?」

剣を横に払う
75 :バトー :2011/02/16(水) 23:58:07.37 ID:mTw+PdhDO
>>74
「どう戦うか?決まっている」

目の前で横に振るわれた剣が今にも自分を切り裂かんと迫ってくる
それに対して、彼は落ち着いた様子で、とんでもない行動を以て対象した

「小細工無しの!喧嘩殺法だ!」

力を溜めた右腕が消える…いや、一瞬にも思える速さで拳が剣へと打ち出された
普通なら、こんな事をすればただでは済まない、腕が真っ二つである
正し、先程彼が自分で言ったようにその理屈は通じず、強靭な筋肉と硬い皮、頑丈な骨等からなる鉄塊の様に硬いその拳は、表面に傷は付けどそこで剣の侵入を阻んでいる
そして、そんな鉄塊の様な拳をたたき付けられた剣、それを持つ手に衝撃がいかないとは言い切れるだろうか
76 : :2011/02/17(木) 00:07:36.80 ID:TR+8Rb+30
>>75
「……っぅ、そんなの聞いてないよ。」

剣は食い込んだ物の、左手に激痛がはしる。
たった一発だったが、左手は限界のようだ。

「剣が駄目なら…こうする。」

剣を引きぬき、距離を置く。そして、自らの腹に剣を押し込む。
多量の血が飛び散り、腹と地面を赤く染めて行く。

「ぐっ…血の代償は……これだ…」

その血は広がり、腰の高さくらいまで赤い液体は溜まった。
馬頭鬼はこの血の沼でどうやって戦うのか、見ものだ。
77 :バトー :2011/02/17(木) 00:19:31.40 ID:q749PUDDO
>>76
「当たり前だ、言っていないからな」

ぶんぶんと右手を振るい、自分の血をふるい落としながら軽く返す
男が自分の腹に剣を刺したのも、何か考えがある物と落ち着いて見ていた

「…成る程、血の池か」
「地獄を思い出す、俺は沈める側の立場だったがな」

腰まで浸かった血の池を、腕を組みながらしみじみと見回す
これによる直接ダメージは無いが、下半身が液体に浸かると言うのは起動力が落ちてしまう、近接を基本とする彼には厄介である

「…ならば、こうするとしよう」

そう言うと、両手の掌を合わせて開く様な形にして、その両手を引いて溜める体制を取る
合わさった両手の間に、徐々に赤黒い妖気が炎の様に集まってきた
78 : :2011/02/17(木) 00:25:20.08 ID:TR+8Rb+30
>>77
「隙…だよね…?」

赤黒い血の池の水を操る、更にはそこに電気を流す。
水では無いため、電気は通しやすく当たればひとたまりもないだろう。
電気を帯びた波が馬頭鬼に向かって来た。

「(勝った…?)」
79 :バトー :2011/02/17(木) 00:36:24.40 ID:q749PUDDO
>>78
「ぬうううううううぅぅぅぅぅ!!!」

妖気を溜める、どんどん溜める
体に電流が流れ痺れても、体のダメージと引き換えにしても妖気を溜める
元よりこの状況ではかわせないと解っていた、ならば攻撃をくらいながらも自分も攻撃を出そうとの考え

電流で焼け焦げ、体から煙を上げながらも妖気を溜める
そしてとうとう、両手の中に溢れんばかりの妖気が溜まる

「いくぞ…!お返しだ!!」

合わせた両手を開き、男へと向けて妖気を打ち出す
妖気の塊は巨大に、赤黒い髑髏の形を取って男へと向かっていく
何か特殊な効果等は無い、ただ力強いだけの、それでも十分な巨大な力の塊だ
80 : :2011/02/17(木) 00:42:47.98 ID:TR+8Rb+30
>>79
「なっ……ぐはぁっ!」

咄嗟に剣で守ったが、あまりの強さに剣が弾き飛んだ。
澪はそのまま池に倒れる。
その時、彼は何を思ったか、とてもいい笑顔だった。
81 :バトー :2011/02/17(木) 00:51:08.45 ID:q749PUDDO
>>80
「…ふむ、もう少し溜める時間を短く出来ていれば攻撃に間に合ったかもしれんな」

赤黒い煙が上がる両手を下ろし、自分の攻撃をそう評価した

この男の戦い方、至極簡単な物
力が強い代わりに攻撃までの動作が遅く、後手を強いられる
ならばと逆に、攻撃を受けきって無理矢理カウンターを叩き込む、という戦い方を取るのである

「どうだ?まだやれるか?」
「俺はそうだな…まだ体が何とか動くようなので、やれそうだが」

82 : :2011/02/17(木) 00:58:58.54 ID:TR+8Rb+30
>>81
「はぁはぁ……限界です…、強いんですね。」

息切れをしながら、答える。
過去に殺されなければ、もっと対等に戦えるとか考えたりもした。

「そういえば名前がまだでしたね…澪と言います……」

83 :バトー :2011/02/17(木) 01:04:50.00 ID:q749PUDDO
>>82
「…そうか、楽しかったぞ」
「またいつか、よければ一戦交えようじゃないか」

両腕を組み、男を見てそう告げる

「澪だな、解った」
「俺の名はバトー…っと、最初に言ったか?まあいいか」
84 : :2011/02/17(木) 01:08:00.97 ID:TR+8Rb+30
「バトーさん…ですね、分かりました。

ところで、二つお聞きしたいのですがいいですか?

一つは、貴方が【人間の味方】かどうかです。

二つ目は、死んだ物が蘇ることはあり得るのか…?」
85 :バトー :2011/02/17(木) 01:17:03.36 ID:q749PUDDO
>>84
「難しい質問をするな、期待した答えじゃなくても文句を言うなよ?」

右手の指を一本立て、澪に見せる

「まず一つ目、俺は敵味方だのの話に入るつもりは無い」
「人間だろうと妖怪だろうと、楽しそうなら喧嘩するし、喧嘩を吹っ掛けられたら受けるだけだ」
「…まあ、閻魔翌様に怒られるから無益な殺生はせんがな」

一つ目の問いに答えた後、指をもう一本立て、二つ目

「二つ目に、人が生き返るかどうかについてだが…」
「…すまん、それは俺もよく知らん、輪廻ならともかくそのまま生き返るってのはどうだったか…」
「まあ、無いとも言い切れんし、有るとも言えんな」

そう言って、二つの問いに答えた後に自分の体や頭をほろう
86 : :2011/02/17(木) 01:21:06.17 ID:TR+8Rb+30
>>85
「そうか…でも、ありがとう。
おかげでいい気分転換になった。もしよかったら、今度地獄へ連れてってくれ。」

そう言い残し、ふらふらと歩きながら闇夜に消えた。
澪は今夜、大切な物を一つ見つけた気がした。

/夜遅くまで、ありがとうございました!!お疲れさまでした。
87 :バトー :2011/02/17(木) 01:23:11.23 ID:q749PUDDO
>>86
/乙でしたー
88 :蛇神 [sage]:2011/02/18(金) 21:57:20.35 ID:kQoy2M3co
冬の山道、日は傾いて影は青い。
今日もまた平次郎狸は見つからなかった。

蛇神には心を閉ざしてしまうヒダル神に、その名を明かさせることは難しい。
それでも死者の霊魂なら、せめて戒名でもつけてやれれば状況が変わるかと、
僧侶である平次郎を頼みの綱に、蛇神は今日も探し尋ねる。

街中を捜し、街近くの山を捜して、どれほど歩き回っただろう。
平次郎が自分の鱗を持っているから、おおよその方角は見当つくのだけれど
都合よくそちらに水場があるとは限らない。
暮れ行く山の中、足元を小さな蛍火で照らしながら、小さな蛇神は歩いていた。
89 : :2011/02/18(金) 22:04:20.28 ID:6kKpKWxAO
>>88
そのすぐ近く、浮かない顔をした少女が歩いていた。
髪には、紫水晶。怪しく輝いている。

(結局、何をしても外す気になれない…もう、手遅れなのか…)

自身の闇、いつまでたっても水晶を外せないことにすっかり傷心していた。
90 :蛇神 [sage]:2011/02/18(金) 22:09:18.97 ID:kQoy2M3co
>>89
向こうから歩いてくる少女の影に気付いて、小さな蛇神は顔を上げた。
相手に蛇神の姿が見えればこの身の丈だけで人ではないことは判るだろう。
そして小さな姿の後ろに伸びてゆれる影は、人ではなくて蛇の形。

(姿は一人であるのに、気配はなぜか二つ?)

何かに憑依された人であろうか。いや、それにしては気配が……。
こんな山道に、少女一人。物の怪か、それとも…。
訝しく思いながら蛇神は立ち止まった。
91 : :2011/02/18(金) 22:14:15.52 ID:6kKpKWxAO
>>90
ふと、気配に気づき、蛇神の方を見る。

「な…何者だ…!」

警戒と恐れの混じった声で叫ぶ。
このような行動の原因は、ここ最近の出来事で警戒心が高まっていたことだ。

92 :蛇神 [sage]:2011/02/18(金) 22:21:39.14 ID:kQoy2M3co
>>91
「あなたには、私が見えているようですね。
 私は蛇神のミナクチと申します。どうやら驚かせてしまったようで」

小さな人は物腰柔らかく、一礼した。
後ろで伸びた影の蛇も、おなじく瞳に一礼してみせる。

「獣さえ少ない山中、もうまもなく日も落ちます。そんな時間、若い女性が一人でなぜここに?
 あなたの持つ気配は常人のそれとは異なりますが、身の危険は感じないのですか?」

怯えた様子の瞳に、丁寧に蛇神は問いかけた。
93 : :2011/02/18(金) 22:32:50.80 ID:6kKpKWxAO
>>92
「え…神様!?す、すみません!無礼な態度を…」

驚き、慌てて頭を下げて謝る。

「……少し修行を…」

ただそれだけ答えた。修行というのは、本当だった。強くなれば、水晶を外せるかと思ったのだ。

「私は…大丈夫です…」

どこか不安そうな表情で目を反らす。
瞳の中に、助けてほしいという思いはあった。しかし、今水晶を外したら、本当に心が壊れてしまう気がした。
だから怖かった、助けを求めるのが…
94 :蛇神 [sage]:2011/02/18(金) 22:42:38.61 ID:kQoy2M3co
>>93
「神とは言えど、私は下っ端ですから。
 役割を担う以外は、他の物の怪や妖怪とさほど変わりはありません。
 どうか気楽にして貰えたら私も嬉しいです」

慌てて頭を下げる瞳に、慌てて蛇神も応える。
なにしろ、下っ端な上に左遷されて日も浅いのだ。

「あなたは修行中の身なのですか」

それにしては気配が危うい。どこかバランスが悪くて、力を発揮できないようだ。
大丈夫だと言うその台詞も、声の調子は言葉を裏切って戸惑い、震えている。
しかし修行中なのは本当のようだ。
自分もまだまだ修行中の神である。ならば……。

「ここで出会ったのも何かの縁でしょう。何か、私に出来る修行のお手伝いでもしましょうか」

今は何が一番、彼女の助けになるだろうかと思案しつつ蛇神は尋ねた。
95 : :2011/02/18(金) 22:53:35.68 ID:6kKpKWxAO
>>94
「そうなのですか…しかし…」

気楽にと言われても、どう接すればいいかわからず困惑する。

「はい…私は、強くなって大切な人から託された夢を叶えなければならないのです。
そして、大切なみんなを守りたいのです。」

震える声で己の修行する理由を語った。

「て、手伝いなんて…そんな…悪いですよ…」

困惑しながらも、遠慮する。
96 :蛇神 [sage]:2011/02/18(金) 23:05:16.62 ID:kQoy2M3co
>>95
大切な人のため、と言う少女の言葉には確かな重みがあった。
声は震えてはいるが、そこに嘘はない。

「どうにも気が進まないのであれば、無理にとはいいません。
 でも、もし力を得る気があるならば、あなたの名と本性とを教えてくれませんか?
 そうすれば、私の力をお貸しできます」

あくまでも提案であって、嫌ならば断ることもできる。しかし。
 
 「あなたの持つ気配の中には、何か不安定なものがあります。
 それがあなたの力を殺いでいる。
 でもそれは、あなた自身の意思がなければ除くことはできないもの、
 なのだと思います。心当たりはありませんか?」

警戒で心の硬くなってしまった少女に、なんとかこの言葉が届いて欲しい、
そう蛇神は願った。
97 : :2011/02/18(金) 23:13:31.76 ID:6kKpKWxAO
>>96
「ですが、神様の力など私には…もったいないと…」

悩んでいる、力は借りたいが自分にはもったいないというのもあるが、水晶を外すのが怖いというのもあった。
しかし、次の言葉で変わった。

「私の…中に…」

紫水晶のことだ。すぐにわかった。

「それは…この水晶じゃないでしょうか?」

震えた指で、自身の髪で怪しく輝く紫水晶を指差す。
98 :露希 :2011/02/18(金) 23:18:29.83 ID:tAQgJk+f0
山道を一人の少女と一匹の龍が歩く。
とても寒いため、龍と少女は大きなマフラーをしながら。
気づくと見覚えのある二人が。
邪魔をしないよう、そうっと近づく。
99 :蛇神 [sage]:2011/02/18(金) 23:19:35.09 ID:kQoy2M3co
>>97
「もったいないから、と使わずに置かれるほうが、よほどもったいなくありませんか?
 神頼みとは、普段はすっかり忘れておいて、困った時にこそするものでしょう?」

少し笑いを含んで蛇神は問うた。

「そう。その水晶が外せないのですね。
 でもそれを外すにはあなたの意思が必要です。
 ほんの一つ思い切る手助けを、私はするだけなのですよ」 

さて、果たしてこの少女は名を明かしてくれるだろうか。
100 : :2011/02/18(金) 23:27:06.67 ID:6kKpKWxAO
>>98
なにやら、真面目な表情で蛇神と話しをしている瞳。
そのせいか、露希には気づいていない。

>>99
「使わない方が…そうか…そうですよね…
では、私の名は瞳です。力をお貸しください。」

決心し、深々と頭を下げる。
101 :露希 :2011/02/18(金) 23:30:39.73 ID:tAQgJk+f0
>>99
「………こんばんは。」

にゅっと入ってくる。真面目そうだったので抱くのは止めた。

>>100
「こんばんは。」

真面目に話しているので少し真面目に。
紫水晶のことだと察知した露希は無言で瞳を見つめる。
102 :蛇神 [sage]:2011/02/18(金) 23:36:24.39 ID:kQoy2M3co
>>100
「では瞳さん。少しの間ですが、あなたの力を映します」

名を明かした少女の前で、蛇神の小さな姿が人から青い蛇に変わる。
蛇は少女の足元で一振りの、抜き身の太刀となった。

『さあ、私を手にとって』

瞳の心へ直接、深い声が響く。
同時に少女を誘うが如く、鏡のような刀身に蛍火色の炎が走った。

『私を手にすればあなたの目の前に、あなたの迷いが姿を現します。
 どんな姿になるのかはあなた次第ですが、いかなる姿であれ、それをお斬りなさい』

刀に触れたなら、水神の満たす力が、ゆっくりと瞳の心を安心で満たすはずだ。
そして迷いなく刀を振り切ることができれば、それで全ては終わる筈。
瞳は一体何を見て、どうするだろうか。
その選択どうなるにしても、水の神は瞳の心に寄り添い、その力を貸すだろう。
103 : :2011/02/18(金) 23:53:12.62 ID:6kKpKWxAO
>>101
「露希か…こんばんは…」

静かに真面目な表情で言う。

「露希、見ていてくれ…私はこの水晶と必ず決別する。」

露希の方を見て、静かに優しく微笑む。

>>102
静かに無言で太刀となった蛇神を手に取る。

「私の…迷い…」

瞳の迷い、それは己の心の闇、不安。
すなわちそれは、瞳自身の姿だった。

「私は…私は…」

それを見て、何度もくじけそうになる。
しかし、思い出した。
かつて絶望の中にいた自分を救い、自分に夢を託した青年のことを――
今、自分を支えてくれる友人達のことを――
友人達の中で、最も大切な親友のことを――
そして――

「私は…迷いを断ち斬る!」

それを一刀両断した。
104 :蛇神 [sage]:2011/02/19(土) 00:05:12.72 ID:ZM+nbm6Lo
>>103

 ぱきん

青い蛇の顎の中で、紫水晶が砕けた。
同時に、斬りつけた瞳の影も、瞳自身の手の中の刀も消えうせる。

「よかった、あなたの迷いが無事に晴れて。
 水を司る他に私の持つのは、幻をみせる力なのです。
 あなたの中の迷いを、あなたの外に映し出して思い切る手助けとしました。
 心の中を弄ることはいくら私が神でも、相手が望まないと出来ないことなのです」

瞳が名を明かしてくれたから助力できた。
全ては瞳自身が望み、願ったからこそ。
蛇神がしたことは、瞳の背中を、願う方向へと押すだけ。

>>101
「覚えがあると思えば、あなたの気配でしたか。
 ご覧の通り、もう瞳さんは弱くなどありません。
 己自身の力で、強くなりました
 あなたが全ての見届け人として、ここに居て下さったようですね」

露希に微笑む人の姿の蛇神は、少し背が伸びたようである。

「あの紫水晶、思わぬ量の力を秘めていました。
 お陰で私も少しだけ、力を得ることができました」

背が伸びたといえまだようやく1尺、30cmほどである。
105 :露希 :2011/02/19(土) 00:11:08.34 ID:CfX3Ddv60
>>103
優しく、微笑んだ。
親友の気持ちを共感できるもの、それがその人の親友。
きっと露希は瞳の親友になれたと思う。

そして――瞳はやりきれた。その喜びを受け止めてあげたかった。

>>104
「ミナクチ様……。ありがとうございました。
瞳を…私の親友に力を下さって……ボクからも感謝します!」

声が震えていた。きっと感動によるものだろう。

そして、背が伸びたミナクチを撫でた。
106 : :2011/02/19(土) 00:17:15.82 ID:mAf2NY7AO
>>104
「外せた…やった…やったよ…風月…」

己の闇を断ち切って、水晶を外せたことに喜ぶ。

「蛇神様、ありがとうございます。」

再び深く頭を下げ、礼を言った。


>>105
「露希もありがとう。あなたが支えてくれたおかげだよ。」
嬉しそうに笑顔を向ける。
107 :蛇神 [sage]:2011/02/19(土) 00:26:16.57 ID:ZM+nbm6Lo
>>105>>106
「いえ、元々瞳さんは力を持っていたのです。
 ただ十分に発揮することが出来なかっただけで、
 私はそれを邪魔していた迷いを取り除いただけですよ」

砥石で丁寧に研いだ刃の切れ味が増すように、蛇神は瞳の力を最大限に引き出しただけのことだ。
刃を鈍らせる曇りを取り除き、輝きを増した瞳という刀は、これからどのような道を辿るだろうか。
それを見届けるのはそう、瞳の隣を一緒に歩む露希のような者達。

「この度、あなたのお陰で私も少し力を得ました。
 私もまた修行中の身、あなたに出会えたことは本当に幸いだったのですよ
 私にも、しなくてはならぬ務めが一つ控えています」

何とかしてあの鳴蛇とヒダル神、双方を救うことはできないだろうか。

>>106
蛇神は少し厳しい表情で、露希に頭を下げた。

「露希さん。すみませんがもうしばらく、黒蔵をお願いします。
 今、探している人が見つかったら、ヒダル神を取り除こうと思いますので」
 
108 :露希 :2011/02/19(土) 00:37:01.64 ID:CfX3Ddv60
>>106
「おめでとう!!これで怖いものは無くなったね。
あ、そう言えばこれを渡そうと思ってたんだ。」

取り出したのは正方形の、リボンでラッピングされた可愛い箱であった。

「少しだけ遅れちゃったんだけど…チョコだよ。後で食べてね。」

>>107
「黒蔵君は大丈夫ですよ。食事と睡眠はさせているので。(ひそかに抱いているのは内緒)

それより、ミナクチ様もお疲れになっていませんか?」

修行の身であり、黒蔵を助ける人を探しているので疲れているはず。

「お酒のアルコール分を極力下げて、チョコレート風味にしました。疲労回復効果もあるので…」

109 : :2011/02/19(土) 00:48:01.07 ID:mAf2NY7AO
>>107
「私の力…か…
それでも、蛇神様には感謝します。本当にありがとうございます。」

再び、深々と礼をした。
瞳の闇は、すっかり晴れたようだ。

「蛇神様の務め?」
務めというものが気になった。


>>108
「おお!ありがとう、露希。」

笑顔でチョコを受け取る。

「本当は、私も露希にチョコを渡したいんだが…あいにく、そういうのは苦手でな…今度、いろいろ教えてくれないか?」

110 :蛇神 [sage]:2011/02/19(土) 00:57:37.02 ID:ZM+nbm6Lo
>>108
「ありがとう、露希さん。実は、この身の丈ですので、山道はだいぶ疲れます。
 この近くに水場を知っていたら、教えてもらえませんか?
 あと、私達神格にある者は、供物や贈り物に込められた想いを受け取るので、
 あなたの気持ちがこもった物はなによりの薬です」

黒蔵がどんな扱いをされているのかは露ほども知らず、ニコニコと贈り物を受け取る蛇神。

零が食事を作ってくれる度に黒蔵は意識がお空の彼方へ飛ぶので、そんな時に
露希に抱かれようが焼かれようが一切気付かないだろうなーとか中の人は思う。


>>109
「私の務めは、降雨の障害となる鳴蛇を亡き者とすることです。
 一切の感情を抜きにして執行せよ、ということなのですが、悪あがきをしているんです」

諦めの悪い蛇ですからね、と肩を竦めて蛇神は寂しげに笑った。

竜宮で衣蛸に調べてもらったところ、あのヒダル神を産んだ地上の食糧不足は、
やはり神界の意図していた気配が濃厚だった。
疫病神や飢餓神の水上の通行を妨げるべからず、という当時の文書が水界に残されていたのだ。

(ただヒダル神を祓ってしまうのではなく、元は人の子であるなら、
 何とかして穏便にあの世へと送り出してやりたい)

「そのために今、平次郎という名の狸のお坊さんを、捜しているんですよ」
111 :露希 :2011/02/19(土) 01:09:21.67 ID:CfX3Ddv60
>>109
「うん、勿論だよ!!」

露希は手先は器用で、家事などは楽々こなせる。
しかし、兄妹なのに兄の致命的な料理の下手さにはがっかりである。

そして、ミナクチの話を聞き始める。

>>110
「水場でしたら、この先の林を抜けたところにありますよ。」

水場を教えた。


112 : :2011/02/19(土) 01:12:20.58 ID:mAf2NY7AO
>>110
「なるほど…蛇神様が望む結果になるよう祈っております。
もし、私にできることがあれば何でも言ってください。」

静かに優しく言った。

「平次郎…会ったことがあるかもしれない…私も捜してみます。いいですよね?」

記憶を遡る。


>>111
「ありがとう、露希。本当、露希には世話になってばかりだな。」

少し恥ずかしそうに笑う。
113 :蛇神 [sage]:2011/02/19(土) 01:18:47.41 ID:ZM+nbm6Lo
>>111>>112
「すぐそこですか、どうもありがとう」

露希のお陰でこの山道が短くなる。
そして瞳の申し出に、蛇神は深く頭を下げた。

「是非ともお願いします。もうあまり時間が残されていないのです。
もし平次郎さんが見つかったら、鱗を水に浸してくれるよう伝えて下さい。
そうしたら直ぐにでも、私と平次郎さんは露希さんの所へ向かいます」

今までに沢山の人に助けてもらっているのだ。
これを少しでも結果に繋げねば。

「では、私は引き続き平次郎さんを捜します。お二人とも、また今度お会いしましょう」

水場に向かって、小さな蛇神は駆け出していった。


//お二人とも、絡みありがとうございました
114 :露希 :2011/02/19(土) 01:24:43.06 ID:CfX3Ddv60
>>112
「だって、ボク達親友だもん♪」

その言葉には純粋な意味が込められている。
露希は瞳が好きと言うこと。

「また会いましょうね。いつでも待ってますから。」

>>113
「分かりました。黒蔵君は任せてね。」

二人を後にし、飛び立った

/絡みお疲れ様でした。ありがとうございましたー。
115 : :2011/02/19(土) 01:37:20.32 ID:mAf2NY7AO
>>113
「わかりました。私も捜してみます。
それでは、また。」

最後にもう一度お辞儀をして、蛇神を見送った。

(平次郎…狸の僧…あれは確か、おそろしと戦ったとき…)

少しずつ思い出す。
思い出したからといって、見つける手がかりになるわけではないが、捜すには顔を知っていた方がいいだろう。


>>114
「ああ、私達は親友だ。」

瞳も露希の事は、好きである。瞳にとって大切な存在だ。

「ああ、それじゃあまたな。」

手を降って、去っていった。



/絡み乙&ありがとうございましたー
116 :四十萬陀 七生/東雲 犬御 :2011/02/19(土) 20:12:54.55 ID:2/LwnrjNo
――ざわり、ざわり。
森を、木々の間を、悪意を纏った風が抜けていく。

手のひらに滲む汗を、握りしめて、
四十萬陀の喉がひゅうと息を掠めた。

『・・・迷ってるんだな?
 でもな、もしそいつが変な事に足突っ込んで、変な方向に曲がっていくときに助けれるのは。

 知る恐怖にうち勝てた奴だけなんだぜ?』

あの日、虚冥に言われた言葉が脳裏を過る。

土床の上に染み込んだ、赤黒い血。
たった今行われた惨劇を証明するように、その場所に広がる生臭い血臭。
地面に転がる、無残な獣妖怪の屍。

それら全てを、目の前の男が行ったなどと――四十萬陀は到底、信じることはできなかった。
だけど、知ってしまった現実は、残酷なもので、
口許を血で塗らした犬御は、見開いた目を細めて、重苦しい口を開いた。

「尾けてたのか」
「……信じたくないじゃん。犬御、君、」

声を震わせる。
犬御は、自嘲的に口許を歪ませた。

「山内での妖怪の争いは禁止、だったか」
「違うじゃん!! 私が言ってるのは、そんなことじゃない。はぐらかすんじゃないじゃん。
 犬御、その妖怪を――喰らったんだね」
「だったら、どうした?」

強くなるため、喰らった。元々は、目の前の小さな夜雀を守るためのはずだった。
けれど狼は、踏み外した道にすらもう、気付けない。

「手に入らないんなら、奪っちまえばいい」
「……犬御?」
「七生ィ。――強くなったぜ、俺は」

目を細め、悪意に満ちたその笑みに、四十萬陀は背筋を凍らせた。
強く、大きく、そして邪悪な妖気が、犬御から溢れている。彼はもう、自分の知っている彼ではない。
ぎり、と四十萬陀は唇を噛んだ。
逃げろと警鐘を鳴らす頭を振って、四十萬陀は山中に援護を求める鳴き声を響き渡らせた。

「何だよ、やる気か?」
「東雲犬御――君を、裏切り者として、袂山から追放するじゃん!!」

総計、10匹の戦闘用送り妖怪たちが、その場に集結した。
どの妖怪の表情も、芳しくない。当然だ。今まで仲間だったものを、追放するのだから。
対して犬御は、愉快そうに肩を震わせた。

「……イイねぇ、全部ぶち壊して、お前を手に入れてやるよ!! 七生!!」
117 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 20:25:42.76 ID:0o9vUoZ2o
>>116
森の山の中に袈裟を着た化け狸の姿がある。
だが奇妙なことに袈裟の右腕の部分は腕が入っていないかのように風に吹かれるだけ。
そう、混沌との戦いで右腕を切り落とされた平次郎はその感覚補正や右腕の活用法について考えながら修行しているのだった。

「よしっ、感覚は掴めたか……。」

そう呟き右腕があるであろう場所に視線を向けた。

「ん? これは?」

突如山中に鳴声が響き渡る。それはいつぞや聴いたことのある――

「夜雀の声か!? 七生の嬢ちゃんになにかあったのか!?」

地面に置いてあった右腕を引っ掴み声の発信源に疾走していった。

そこには七生含む送り妖怪たちに囲まれた男。
邪悪な妖気を発しておりそいつが非常にまずい存在であることが容易に認識できた。

「なんだかよく分からんが平次郎狸参上! 嬢ちゃん、困ってんなら手を貸すぜ?」
118 :四十萬陀 七生/東雲 犬御 :2011/02/19(土) 20:34:42.08 ID:2/LwnrjNo
>>117
突如現れた妖気に、四十萬陀は背後を振り向いた。
化け狸を視界に捉えると、その表情は驚きと共に明るくなる。

「平次郎君!!」「――テメェは……!!」

戦力として乏しい四十萬陀たち送り妖怪にとって、平次郎狸の助太刀はまさに救済。
だが、犬御にとっても、探し求めていた彼の登場は、都合の良いものだった。

「嬉しいねえ、わざわざ獲物からコッチに来てくれるとは……!!」

ニィと笑い、鋭い牙を顕わにする。
119 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 20:42:15.46 ID:0o9vUoZ2o
>>118
「やほっ!」

そう言って左手で持っていた右腕を挨拶するように振る。

「そこで俺を見てる君……あれだね、俺のこと捕食対象としてみてるっしょ?」

ビシバシと感じる食欲に塗れた視線。だが平次郎は動じず涼しげに受け流すだけ。

「久しぶりだな、そんな風に見られるなんて。」

カラカラと笑いながら金剛の右腕を形状変化させ大刀に変える。勿論切れ味なぞ無くただただひたすらに硬くしてあるだけ。

「それで七生の嬢ちゃん、こいつをしばいてやりゃいいのかい?」

そう言って大刀を左手で一振り。たったの一振りで轟音と共に突風が吹き荒れる。
120 :四十萬陀 七生/東雲 犬御 :2011/02/19(土) 20:51:57.12 ID:2/LwnrjNo
>>119
「平次郎君、その腕……!」
「あぁ、もちろんだ。悪いが、アンタを喰わせてもらうぜ」

その語り口は、まるで既成事実を話しているかのようだ。
四十萬陀は、やり切れない思いを抑え付けるように言った。

「――そうじゃん。平次郎君に助けてもらったのに、悪いけど……
 コイツをこの山から追い出す!! それを手伝って欲しいじゃん!!」

言うのと同時に、突風が吹き荒れる。
それを見て、邪魔にならないよう、四十萬陀は送り妖怪たちを平次郎狸の背後に移動させた。

「私たちは微力だけど、囮程度にはなるじゃん」
121 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 20:59:34.33 ID:0o9vUoZ2o
>>120
七生の発言に引っ掛かる点が。

(平次郎君に助けてもらったのに?)

そう言われ気付く。この男がミナクチ様に治療された七生の仲間であることを。
平次郎の額に青筋が浮かぶ。

「ほう?お前七生の嬢ちゃんに対する恩を忘れ不逞を働くつもりだったのかい?」

平次郎の中で何かがプツンと切れた。

「この恩知らずめが! 貴様の腐った性根叩きなおしてやる!」

そう言って刀を無造作に構えた。そして後ろを見ずに言う。

「囮なんかいらん。これは俺があいつに説教くれてやるだけだ。そこで見とけ。」

そう言うと一息で犬御の前に跳び怪力を持って袈裟に剣を薙ぐ。
122 :四十萬陀 七生/東雲 犬御 :2011/02/19(土) 21:10:53.01 ID:2/LwnrjNo
>>121
「で、でも……!」

言い淀む暇もなく、平次郎狸は地面を蹴った。
それを迎え撃つ形で、犬御が構える。

「ハッ! イイねイイねぇ、来いよ化け狸!!」

いくら鋭い爪とはいえ、平次郎狸の怪力と大刀を前にしては、犬御のそれは意味を成さない。
しかし今の彼には、力がある。
――貰い受けた力、そして、奪った力。

紫水晶の首飾りに手を当て、犬御は妖力を解放した。
地面が土を盛り上げる。
平次郎狸の薙いだ剣にぶつけるように、窮奇の術である、針山の一部が召喚された。
紫に光る柱が、地面から飛び出る。
123 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 21:16:47.79 ID:0o9vUoZ2o
>>122
針山により大刀が止まる。が平次郎は口が裂けるような笑みを受けべた。

「で? なに?」

鬼と渡り合った怪力で無理やりに大刀を振りぬいた。切る能力が無い大刀は針山を穿ち壊しながら犬御へと向かう。

「小細工を弄するな!これは喧嘩でもない!てめぇの食事でもない!ただの俺の説教の場だ!」
124 :東雲 犬御 :2011/02/19(土) 21:23:30.14 ID:2/LwnrjNo
>>123
バキィンと高い割れる音と共に、紫柱は崩れ去った。
犬御の眉間に皺が寄せられる。
本能に身を任せ、元より低い沸点がさらに低下している犬御は、声を荒立てた。

「ムカつくな……! 説法なんざ、聞く気はねぇよ!!」

妖怪を喰らい、奪った妖力で作り上げた鎌鼬。
それを纏った爪を、最後の針山を壊した平次郎狸に向かって振りかざす。
125 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 21:36:11.36 ID:0o9vUoZ2o
>>124
針山を壊し大刀を振り切った体勢から爪から逃れるように一旦跳躍し後ろに下がる。
しかし鎌鼬が胸元を浅く切り裂いた。

「そうか……。ならば無理やりにでも聞いてもらうぞ!」

そう言うと大刀を右腕の形状に戻し七生の方に放り投げた。

「七生の嬢ちゃん、ちょっとそれ頼んだわ」

すると平次郎は全身を一瞬で金剛に変化させた。
その姿を元の体とはかけ離れておりむしろ人型に近かった。
色は鈍く光る黒色でやはり欠けた右腕が目立つ。

「第二ラウンドだ。覚悟しろよ。」

先程よりも上がったスピードで犬御に詰め寄ると頭部を目掛けて鋭い回し蹴りを放つ。
126 :四十萬陀 七生/東雲 犬御 :2011/02/19(土) 21:47:29.88 ID:2/LwnrjNo
>>125
「えっ、わ――!」

右腕を受け取り、慌てて顔を上げる。
そこには、全身を金剛に変化させた平次郎の姿。
四十萬陀が目を見開くのと同時に、犬御は地面に唾を吐き捨てた。

「最終ラウンドまで持ってくつもりはねェぜ。
 ……このラウンドで終わらせてやるよ」

頭部に向かい、金剛の回し蹴りが飛んでくる。
それをガードしようと、犬御は左腕を盾にする、が――

「ガッ!!?」

固さと威力を持って放たれたその蹴りは、当然素手で受けきれるほど甘いものではない。
ガードの上から頭部を揺らされ、犬御は地面に叩きつけられた。

「――ッ!!」

そのまま跳ねるようにして起き上がったが、左腕は力なく下を向いている。まず、砕けているだろう。
127 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 21:54:23.70 ID:0o9vUoZ2o
>>126
「まだ終わらんぞ?」

起き上がるまでの間に目で追えないほどの速さで前方に移動する。
そして立ち上がった瞬間を狙い顎先に向かって撥ね上げるように前蹴り。
ヒットすれば脳が揺さぶられ脳震盪を起こすであろう鋭さだ。
が、ここで右腕が無いことが災いした。
僅かに重心がずれ蹴りの威力が削られる。
128 :東雲 犬御 :2011/02/19(土) 22:05:17.82 ID:2/LwnrjNo
>>127
「ぐッ……」

左腕の痛みに、僅かに口端から呻きを漏らす。
だが、次にその口端は吊り上げられた。

――鉱太郎、テメェから奪った力、使わせてもらうぜ……!!

狙われた顎先を防御する為、
犬御は、鉱太郎から得た力である、獣面文様の防御障壁を生み出した。

威力の削られた前蹴りを、障壁が受け止める。
重い一撃。だが、その蹴りが狙い通り顎先を打つことはなかった。

「っらあぁ!!」

その隙を付き、犬御は再び、鎌鼬を纏った爪を乱暴に振るう。
狙いなどない、めちゃくちゃな振り方だ。
129 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 22:14:33.64 ID:0o9vUoZ2o
>>128
「なっ!?」

予想外の防御に驚く。
そしてその隙を狙われた攻撃に対して対処が遅れてしまった。
爪の一撃が体表の金剛を削り肉を露出させる。
が、その攻撃が大振りなことがが幸いした。それが対処を容易にさせ片腕で次々と振るわれる爪をいなすことが出来た。

130 :東雲 犬御 [sage]:2011/02/19(土) 22:21:09.19 ID:2/LwnrjNo
>>129
「チィッ」

吐き捨てるように舌打ち。
そして、数歩後ろに距離を取り、態勢を立て直そうとする。

(左腕のダメージがデケェな……)

骨の砕けた左腕がひどく傷んだ。
無意識にそれを庇ってしまうのか、動きも元より若干鈍い。
131 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 22:32:46.69 ID:0o9vUoZ2o
>>130
距離をとった犬御の状態を改めて観察する。
ダメージは左腕、それによって動きにも影響が出ている。
先程の打ち合いでそれがより確認できた。

「そろそろ勝負をつけさせてもらうぞ。」

正面を切って宣言。
左腕を腰の位置に構える。

「右腕が無いもんで見てくれが悪いが勘弁してくれや。」

力を溜める…溜める…溜める…。
意識するのは足元から。力を徐々に収束させる。足から腰へ、腰から胴へ、胴から左腕へ。
それは弓を引き絞る動作を幻視させた。
力が極限まで高まる。
その瞬間――
爆発的な勢いで震脚。その勢いで距離を詰め渾身の正拳突きを放つ。

「喝っ!!」

それは胴体の中心を捉えるだろう。
132 :東雲 犬御 [sage]:2011/02/19(土) 22:48:31.77 ID:J2b/YtxSO
>>131
「あぁ……!? ナメてんじゃねェぞ、狸が!!」

宣言された言葉に、口汚く吠え返す。
しかし、その内心で犬御は追い詰められていた。
同じ片腕がないもの同士だというのに、歴然とした力の差。
視界の端に、平次郎の背後に隠れ、
哀しみを孕んだ視線でこちらを見る、四十萬陀の姿を捉える。

――俺じゃ勝てねぇってのか……!? ふざけんじゃねぇ!!

それが、余計に犬御を焦らせた。

目の前で平次郎が力を溜めている。明らかに、強力な攻撃が来る前触れだ。
だが、犬御は足を動かせなかった。
来る――そう思えば思うほど、体は硬直するものだ。それは妖怪でも、人間でも、違いはない。

「クッ……ソがぁぁ!!」

胴体に向かい、攻撃が放たれる直前。
避けることは不可能と判断した犬御は、防御のみに力を回した。
窮奇の針山と、鉱太郎の障壁を二重に張り、正拳突きを受けとめようとする。

しかし、極限まで高められた金剛の突きを、果たして防御できるものなのか――
133 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 22:58:10.49 ID:0o9vUoZ2o
>>132
「オラァアアアアァァアァァ!」

裂帛の気合いを込める。
左腕にはたとえどんな障害があろうとそれを打ち砕き殴り抜く意志が込められていた。

バチバチバチッ!

激しい音を立てながら左腕が障壁と拮抗する。

パリンッ!

動きは止まったかのように見えたが力は死なず。障壁を一枚目突破。

パリンッ!

更に勢いがつき二枚目突破。

ガガガガガッ!

もはや止まらない。左腕はその金剛に傷を付けながらも針山を打ち崩し――
その拳は全ての障害を打ち払い犬御の身に届こうとしていた。
134 :東雲 犬御 :2011/02/19(土) 23:10:58.74 ID:J2b/YtxSO
>>133
「なッ……!!」


(破られ、る)


――それからは、一瞬だった。
全ての障害を越えた正拳突きは、犬御の胴体に衝撃を与えると同時に、

「ぐ、はあ゛ッ!!」

山の茂みの向こう側に、犬御を吹き飛ばした。
口腔から血が吐き出され、地面に落ちる。

「が、ぼっ」

痛み。恐怖。――醜態。
わなわなと体を震わせるが、犬御は立ち上がることが出来なかった。
あの時、防御を間違えていたら? 確実に、己は死んでいた。

――逃げなければ、いけない

視界の奥には、平次郎狸と四十萬陀たちの姿。
それを焼き付けながら、木を支えに、犬御はよろよろと立ち上がった。
135 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 23:20:47.07 ID:0o9vUoZ2o
>>134
立ち上がる犬御を殴った位置から見据える。

「逃げんのか?」

犬御を見る目は冷たくも厳しい視線。

「なにがあったのかは知らねぇし俺が言えることもあまりだろう。
 だが確実に言えんのはお前には恩を仇で返そうとした罪がある事だ。それを自覚しろ。」

七生の方に振り返り問う。

「こいつどうするんだ?って追い出すって言ってたか……。それじゃこのまま見逃していいんだな?」
136 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 23:21:16.42 ID:0o9vUoZ2o
>>134
立ち上がる犬御を殴った位置から見据える。

「逃げんのか?」

犬御を見る目は冷たくも厳しい視線。

「なにがあったのかは知らねぇし俺が言えることもあまりだろう。
 だが確実に言えんのはお前には恩を仇で返そうとした罪がある事だ。それを自覚しろ。」

七生の方に振り返り問う。

「こいつどうするんだ?って追い出すって言ってたか……。それじゃこのまま見逃していいんだな?」
137 :四十萬陀 七生/東雲 犬御 :2011/02/19(土) 23:31:13.07 ID:J2b/YtxSO
>>135
聞くつもりなどない、ないが。
平次郎の言葉が、耳について離れない。

「俺は、ッ、」

こぽり。口から溢れる。
――俺は、死ぬわけにはいかない。それは何故だ?
守るためだったはずなのに、今、それを手放そうとしている。

(……七生)

四十萬陀は、よろよろと逃げようとする犬御を、悲しそうな目で見ていた。
平次郎の言葉に、頷きで返す。

「犬御は、きっと、……」

――裏切り者。
そういって、追放したけれど。
四十萬陀はまだ信じていた。彼が、必ず戻ってくると。


だが、その言葉を犬御が聞くことはない。
送り犬の姿に戻ると、犬御は何も言わずに、山を降りていった。
138 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 23:40:59.35 ID:0o9vUoZ2o
>>137
七生の頷きを見ると平次郎も犬御が立ち去るのを見守るだけだった。
ふと見た七生の目には悲しみがある。

(禍根は未だ残っている……か……。)

「七生の嬢ちゃん、今回は事情を聞かないで置こう。
 君自身がこれを解決しないことにはその悲しみも晴れないだろうからな。
 だが、もし力を貸して欲しかったら言ってくれ。微力ながらも力添えをしよう。」

化け狸の姿に戻って右腕を受け取りながら言う。
139 :四十萬陀 七生 :2011/02/19(土) 23:48:29.47 ID:J2b/YtxSO
>>138
「……平次郎君」

平次郎の言葉に、ふにゃりと四十萬陀が表情を崩す。
右腕を渡すと、今まで張っていた緊張の糸が解かれたように、くたりと膝を着いた。

「ありがとうじゃん、本当に」

そう言って、頭を下げる。
送り妖怪たちが、四十萬陀の周りに集まりだした。
140 :平次郎狸 [sage]:2011/02/19(土) 23:53:31.95 ID:0o9vUoZ2o
>>139
七生の周りに集まる送り妖怪達を見て微笑む。

「いい仲間を持ってるな。うん、これだけ慕われていたら心配もそうは要らないな。」

そう言うとカラカラと豪快に笑いながら平次郎は去っていった。
141 :蛇神 [sage]:2011/02/20(日) 00:01:50.63 ID:1BZSw6AVo
袂山を流れる川から、小さな青蛇が陸に上がった。
まだ冬の寒さの中、とても小さな、しかし不自然な光景だった。

(平次郎さんの気配は、この近くですよね。でも、血の匂いも?何かあったのでしょうか)

青い蛇はするすると森の中へ走ってゆく。平次郎狸を探し尋ねて、急ぎ足だ。

>>140
山の妖怪たちの気配が集まっている辺りに求める姿を見つけ、
蛇神は息を切らして駆けつけた。
ほっとした様子で、身の丈一尺ほどの人の姿となり、声をかける。

「よかった、ようやく見つかった!
 平次郎さん!あなたのお力を借りたくて参りました」

そして切り落とされた右腕に気付き、小さな蛇神の表情が変わる。

「まさか……平次郎さんも、窮奇に出合ったのですか?」

一番考えたくない、しかし、尋ねなければならない重い問いを、ためらった後に口にした。
142 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/20(日) 00:08:39.46 ID:QBjbBsRSO
>>141
「ミナクチ様?」

突然の来訪者に、四十萬陀が腰を上げる。
周囲の仲間たちに何か指示すると、送り妖怪たちは各々山に散っていった。

「平次郎君に用じゃん?」

――何かあったんだろうか、と悪い予感が胸を過る。
143 :夜行集団 :2011/02/20(日) 00:14:26.70 ID:YjMxYGoo0
>>141
その蛇神の登場の一息後、茂みから一人の過剰な厚着のホストと、白い体毛の狼が姿を表した。
その狼は以前、この山の調査の為に派遣された雪男、氷亜の部下である。

「ここです。いや〜探し出すのに苦労しましたよ」
「ありがとう。う〜ん、でももう終わっちゃったみたいだよ?」
「マジですか!?」

先ほどの殺伐とした空気をぶち壊すような登場であった。

「あっ、少年!!申し訳ないんだけどこの状況の説明してくれるかい?」

>>142
「おや、君は何処かで・・・」

と話しかけようとしたが、その四十萬陀の表情から手出しできない空気を感じ、話しかけずにいた。
144 :露希 :2011/02/20(日) 00:19:35.01 ID:f7ikWcE60
>>141-143
そこへ、白い龍に乗った少女が降りてきた。

「皆さん、こんばんは。皆、揃ったようですね。
準備が出来次第、声を掛けてください。」

>>143
「氷亜さん、後で食べてね。」

小声で言って渡したのは箱。中身もすべて妄想でお任せします。
露希の心のこもったチョコレートです。
145 :平次郎狸 [sage]:2011/02/20(日) 00:21:23.20 ID:f91/CmlMo
>>141
神気が近付いて来たせいか一瞬警戒してしまう。
が、それが慣れた人の物だった為一気に緊張が緩んだ。

「や、ミナクチ様!こんばんは!」

力を貸して欲しいと聞き笑みを浮かべる。

「ミナクチ様の頼みならばどんなことでもしましょうぞ」

平次郎は即座に快諾した。が表情を変えた蛇神に自分も釣られて緊張して問いに答える。

「や、俺が会ったのは窮鬼のツレの混沌と言う男でして……。そいつに右腕をやられっちまいました。」

そういって右腕を持ったまま片腕だけで肩を竦めた。

>>143
突如現れた一人と一頭に警戒する。
が、どうやら危険はなさそうだ。

>>144
さらに現れた一人と一頭に唖然。
幻想種でも最高位の龍を久しぶりに見て卒倒しそうになった。
146 :蛇神 [sage]:2011/02/20(日) 00:29:37.03 ID:1BZSw6AVo
>>142-144

「皆さんもいらっしゃったのですね」

蛇神はその場の他の者にも一礼する。

>>145
平次郎狸に向き直ると、蛇神はその場にいる全員にもわかるよう、手短に事情を説明した。
自分の神使の黒蛇と、その腹の中に封じていた飢えの神、ヒダル神とが、窮奇と名乗る者の手によって
鳴蛇へと変えられたこと、そのままでは、黒蛇もヒダル神も消されねばならぬこと、
ただ、ヒダル神も元は人の子の魂であり、できれば穏便に冥土へと送ってやりたいこと。

「ヒダル神は私は酷く嫌っていて、私の呼びかけには応えません。
 せめてヒダル神の名を知れば動かすこともできるかもしれませんが、難しいでしょう。
 そして死者であるヒダル神に新しく名を送ることができるのは、僧侶である平次郎さんなのです」

ヒダル神に戒名をつけてやって、できれば弔って欲しい。
それが平次郎への蛇神の頼みだった。

「でもその前に、あなたの腕を治さなくては」

平次郎と蛇神の足元に、小さな鏡の水溜りが広がった。
147 :四十萬陀 七生 :2011/02/20(日) 00:34:49.44 ID:QBjbBsRSO
>>143
「……あっ」

茂みから現れた真っ白な狼。
嫌でも目につくその姿。その特徴に、四十萬陀は声を上げた。
袂山に現れた、知らない妖怪――真っ白な狼。
和戌(わいぬ)が言っていた特徴と酷似していた。

それに、隣にはホスト(らしき)妖怪の姿もある。
彼が虚冥の仲間の氷亜だとすれば、間違いないだろう。

(前にこの山を調査しにきたっていう妖怪じゃん……?)

>>144
「白龍!? は、はじめて見たじゃん……
 って、露希君!」

山で生きる四十萬陀にとって、白龍など、噂で聞いても、普段見ることのない種類だ。
同時に、見知った人物が、そんな珍しい生き物に乗ってきたことに目を見開く。

「準備、って……何の準備じゃん?」

状況が掴めず、四十萬陀は首を傾げた。

>>146
蛇神の話を聞いた四十萬陀は、口をぽかんと開けて、
それから、久方ぶりに目を輝かせた。

「そ、それって、黒蔵君が助かるかもってことじゃん……!?」

ヒダル神の話は聞いていた、が、これで希望が見えてきた。
148 :夜行集団 :2011/02/20(日) 00:35:35.60 ID:YjMxYGoo0
>>144
「・・・SAY YES!!!!!!」

露希のチョコレートにテンションが欧米になる氷亜。バレンタイン当日に貰え無かった事で
数日と落ち込んでいた分、そのノリはもはや若干南米の人ですら引くほどだ。

>>145
あの狸の僧侶は、と横目で平次郎を見やり、ふと記憶を呼び起こす氷亜。
以前に穂産姉妹と戦い、その結果、この集団に「殺さず」という新たな掟を作らせた張本人。

しかし、今はそのような情報よりまずは今の状況把握が大事と黙っておく事にした。
149 :夜行集団 :2011/02/20(日) 00:36:55.32 ID:YjMxYGoo0
>>148
//スイマセン、四十萬陀山と蛇神さんのレスはパスです。
150 :露希 :2011/02/20(日) 00:40:21.02 ID:f7ikWcE60
>>145
白龍「こんにちは♪」

とりあえず挨拶。
>>146
露希「黒蔵君を助けてあげてくださいね…。」

>>147
露希「今から、黒蔵君を助けに行きます。その準備です。」

今の現状を軽く説明。

>>148
露希「氷亜さん…。」

あまりのテンションの高さについていけなくなった
151 :平次郎狸 [sage]:2011/02/20(日) 00:45:29.94 ID:f91/CmlMo
>>146
犬御を治療してくれたときの様に水面に映った平次郎の怪我が蛇神の方に移っていく。

「わざわざありがとうございます!」

嬉しそうに完治した右腕を振り回す。右腕の状態を確認した後――

「その頼み、承りました。拙僧が微力ながらも力添えさせてもらいましょうぞ。」

>>150
「こ、こんにちはー」

若干引き攣りながらも挨拶。脳内には昔闘って下した龍の思い出が駆け巡っていた。
実際龍は軽度のトラウマである。

//七生さんと夜行集団さんへのレスはパスです
152 :蛇神 [sage]:2011/02/20(日) 00:53:25.79 ID:1BZSw6AVo
>>147>>150
(この夜雀のためにも、なんとかして黒蔵もヒダル神も救わねば)

絶対に助けられる、と明言できないことが蛇神には歯がゆかった。
自分がもっと力を持っていたら。
ただ担った役割を担って得た力だけではなく、もっと他の能力も得ることが出来ていたら。
この運命の縺れを苦も無く鮮やかに解いて見せられるだろうに。

>>148
氷亜はなんだかとても幸せそうだ。
彼がいると、運を引き寄せるには丁度良いかもしれない。

>>150
「あなたは独自の情報網で動いていたようですね。話が早くて助かります」

蛇神はふわりと露希と白龍の様子に笑った。
色々な人からの協力を得ている。後は力を尽くすのみ。

>>151
「お引き受け頂けて良かった!感謝します」

蛇神は泣き出しそうな顔で、感謝の言葉を述べた。
しかし今は、泣いている場合ではない。

「では、急ぎ移動しましょう」

足元の鏡の水面が、露希の家の風呂場を映し出す。
そのバスタブでは縛られた黒衣の少年が半身を水に浸して眠っていた。
すぐに水面が乱れて渦を巻く。

>>ALL
「皆さん、この水面を通って下さい。直ぐに付きますから」

水面に踏み込めば移動は完了するはずだ。
153 :夜行集団 :2011/02/20(日) 00:57:28.29 ID:YjMxYGoo0
>>150
「ふふふ、一年で同じ人物から2度もチョコをもらうなんて・・・なかなか大吉なことじゃないか・・・!」

不敵に(本意は不気味に)笑う氷亜は、それが虚冥であったとしても絡みいくことに戸惑うであろう。
しかし、露希との温度差+α露希のどん引きに我に帰った。

「い、いや〜・・・ほら、あるよね?
 たまにテンションが自分の思ってる以上に飛びぬけちゃう事って・・・」

しどろもどろにごまかす氷亜の姿に雪山の主の威光はなかった。
ついでに言うと、英語に暗い氷亜のひねりだしたSay yesは、彼の言いたかった「やったー!!」
でなく「はい、と言え!!」になってしまっている。

>>151
しかし、その異様なハイテンションも平次郎の治療を傍観していくとだんだん冷めていった。
そしてそのちゃんと機能し始めた脳で状況の考察を試みる。

「(この山の異変の原因と戦い、勝ったってところかな?)」

>>152
「僕に何ができるかは分からないけど、全力は尽くさせてもらおう」

そう言って氷亜は水面に入っていく。
154 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/20(日) 00:58:00.67 ID:QBjbBsRSO
>>150
「……といっても、私は特に何も準備するものないね」

自分に何ができるか分からない。
何もできないかもしれない。
――それでも、

>>152
黒蛇の姿が、水面の奥に映る。
それはすぐに掻き消えてしまったけれど、四十萬陀が覚悟を決めるには、それだけで十分だった。

「黒蔵君……」

手ぶら。身一つ。
とにかく、突撃だ。

四十萬陀は、何一つ躊躇う事もなく、水面に足を踏み入れた。

//平次郎さん、夜行さんパスしてます
155 :露希 :2011/02/20(日) 01:02:33.96 ID:f7ikWcE60
>>ALL
「では…行きましょうか。黒蔵君の元へ。」

皆が色々な思いを秘めている。
なんとしてでも、黒蔵を助け出す――

水面へ身を入れた。
156 :平次郎狸 [sage]:2011/02/20(日) 01:03:54.33 ID:f91/CmlMo
>>155
「了解しましたー。」

そう言って水面に向かって踏み込んだ。

(いや〜、それにしても空間移動とは……。いつか術式教えてもらうかぁ。戦闘の時役立ちそうだし。)

脳内はやはりいつも通り平和なバトルマニアだった。
157 :平次郎狸 [sage]:2011/02/20(日) 01:07:44.94 ID:f91/CmlMo
//すいません、蛇神様以外パスです
158 :蛇神「」 鳴蛇『』 [sage]:2011/02/20(日) 01:07:52.54 ID:1BZSw6AVo
>>ALL
バスタブの中、菖蒲の葉に縛られて鳴蛇の黒蔵は眠っていた。
その頭の上に青い蛇がよじ登り、そこで人の姿を取る。
黒蔵の髪に掴まり、額に張られた鱗を蛇神が突付くと黒蔵は目を覚ました。

「ヒダル神、我が呼びかけに応えよ」

『何よ?そこに居ると喰うわよ』

酷く不機嫌そうに、黒蔵の中のヒダル神が黒蔵の口で応え、頭をうっとおしげに振る。
振り落とされそうになり、慌てて蛇神はバスタブの縁に飛び移った。

「お前に新しい名を与える。その名を持って冥府へ下れ。輪廻の輪へと帰るが良い」

『嫌。せめてその前に、あんたを食わせてよ、蛇神。ちっぽけな腕一本じゃ物足りないわ』

拒否をするのが楽しくて仕方が無い、という風にヒダル神はけらけら笑った。
159 :氷亜 :2011/02/20(日) 01:12:11.48 ID:YjMxYGoo0
>>158
「・・・僕にはどうすることもできなかったから、そのままにしていたけど。
 少年、その名を与えるという事であの神を救えると思っていて良いんだね?」

一応確認してみる氷亜。
今、自分にできそうな事はないがそれでも、念のために戦闘の準備は整えておく。
160 :四十萬陀 七生 :2011/02/20(日) 01:18:09.01 ID:QBjbBsRSO
>>158
「――ヒダル神……」

黒蔵の姿をしているし、体は黒蔵のものであるはずのそれは、
喋り方も違えば、見せる表情も違う。
何か喋っていいのか、喋ってもいいのかすら分からない。
けれど、

「……お願い、ミナクチ様の言う事を聞いてほしいじゃん」

開口一番、四十萬陀は、きっぱりとそう言った。
161 :露希 :2011/02/20(日) 01:20:59.66 ID:f7ikWcE60
>>158
「へぇ、偉そうだね。いい度胸じゃん。
これ食べる?」

取りだしたのは朝、零の作った目玉焼き…のはずだが赤褐色の皮のようになっている。
脅す準備は出来た。後は、皆が頑張るだけだ。

//後はスルーです
162 :平次郎狸 [sage]:2011/02/20(日) 01:22:45.32 ID:f91/CmlMo
>>158
「この子がヒダル神に取り付かれた子とヒダル神か……」

平次郎には本体の黒蔵に赤い着物姿の童女が淡く重なって見えた。

(ふむ……、この子の行動原理は……【ミナクチ様への怨み】【ヒダル神としての在り方】くらいしか読みとれんか)

さらに観察。

(童女姿と言うことはかなり早くにヒダル神に堕ちたか……。【子どもとしての寂しさや残虐さ】も軸だな)

「戒名を与える前に君の名前を教えてくれないかい? 無理にとは言わないんだが……」

しゃがみこみ目線を合わせて語りかける。その行為には慈愛が満ち溢れていた。
いくらヒダル神とは言っても姿が童女ならそれに応じた精神年齢の筈。
しかも子どものままヒダル神に堕ちたなら今まで優しさに触れることは少なかっただろう。
子供にとってそれはとても酷なことだ。
だから平次郎は少しでもその穴を塞げるようにと慈愛を持って接した。

//ヒダル神以外へのレスはパスです
163 :蛇神「」 鳴蛇『』 [sage]:2011/02/20(日) 01:28:20.55 ID:1BZSw6AVo
>>159
確実なことはまだ、何も言えない。ただ、蛇神は悲しげな表情で首を振った。

「ヒダル神が名を受け入れ、弔うことができれば、或いは。
 氷亜さん、どうか今は、鳴蛇をしっかり押さえていて下さい」

何とかして黒蔵の頭の上に乗ろうと苦戦しながら蛇神が叫んだ。

>>160
四十萬陀の声に、黒蔵本人の意識が揺れた。

『え?四十萬陀っ?なんで?』

その声に、蛇神が先に反応した。

「黒蔵か!?起きているなら、ヒダル神にその名を明かさせろ!お前にしか出来ない」

『―――言わないわよ!あんた達なんかには絶対に!!』

ヒダル神が強く抵抗する。

>>161
が、露希に何かを突きつけられて一瞬ひるむ。
露骨に嫌な顔をして、ヒダル神は意識の底の方へと逃げ込もうとする。

>>162
ヒダル神を引きとどめたのは、平次郎狸の言葉とそれが含む慈愛。
かつて蛇神の厳しさを拒否した童女は、平次郎狸に興味を示した。

『あなた、だあれ?あたしを苛める?それとも美味しく食べさせてくれる?』

何か真っ当な食べ物を与えれば、ヒダル神の気持ちが動くかもしれない。
何しろ捕縛されてからこっち、零の手料理フルコース続きなのだから、飢えの神でなくても
餌付けはされるだろう。

蛇神は、ヒダル神の隙を伺うことにした。
164 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/20(日) 01:38:08.45 ID:QBjbBsRSO
>>163
「黒蔵君、聞こえてるの!?」

四十萬陀は思わず、バスタブの縁に手を掛けた。

――私にも出来ることがある。黒蔵君の意識を、引き上げる!

「……ヒダル神、ううん、黒蔵君。
 私だよ、四十萬陀じゃん。聞こえてる?」

激しい抵抗をするヒダル神に、そっと近付く。
165 :氷亜 :2011/02/20(日) 01:41:29.58 ID:YjMxYGoo0
>>160
四十萬陀の毅然とした態度に、驚きつつも少し焦る。

「コラコラ、そんないきなりに、相手を刺激するようなこと言っちゃ・・・」

交友の少ない四十萬陀にでも注意したのは単純。
この部屋にいる全員は今の間だけでも運命共同体。
体面などその空間で気にしている暇はないのである。

>>161
「露希、それはダメだと思うな・・・また動かなくなっちゃいそうだし・・・」

もちろん、露希への注意は他の者へのよりも早いものである。
ホントに危険だという事にも起因しているが。

>>162
「任された!」

氷亜はその体に氷猩猩の物である怪力を若干その身に宿し、ヒダル神の体を抑えた。
しかし、いつでも氷猩猩の体に移行できる心構えをしながら。

>>164
ヒダル神のもとに不意に接近した四十萬陀。
しかし氷亜は今度は何も言わなかった、いや言えなかった。
氷亜には、彼女のその強い思いからくる無茶を諌める言葉は持っていないのである。

//平次郎さんはパスです
166 :平次郎狸 [sage]:2011/02/20(日) 01:46:10.33 ID:f91/CmlMo
>>163
「俺は平次郎っていうお兄さんさ。俺を食べさせることは出来ないが約束しよう。俺は君を苛めないよ。それに狸なんか食ったら腹壊すぞぉ」

カラカラと気持ちよく笑う。あくまで会話を楽しむように。

「俺を食わせる代わりといっちゃなんだが――」

ごそごそと袈裟の中を漁り出てきたのは可愛くラッピングされたクッキーだった。

「現代では親愛の情を示すためにお菓子を渡す日があるんだ。少し遅れてはいるがこれをあげよう」

ニッコリと笑顔で渡す。
この狸は基本子供が好きである。無限の成長の可能性を秘め自分の中の志を想起させてくれるからだろう。
もちろんヒダル神も例外ではなかった。

>>ALL
「みんなもどうだい?」

そう言って一人ひとりに手渡していく。

「みんな……相手が子供だということを忘れちゃいけねぇよ。なるべく優しく、怯えさせないように頼むぜ」

みんなの強硬な姿勢を諌める。平次郎自身は問い詰めるよりなるべく穏便に解決させようとしている。
167 :露希 :2011/02/20(日) 01:46:21.32 ID:f7ikWcE60
>>162
「ねぇ、このお菓子…あげてみて?」

台所から持ってきたのは露希のお菓子(ちなみに今日は麩菓子&かりんとう)。味は問題ないはず
>>164
七生の思いが強く伝わる。
その優しさは本物であって、強さがあった。
>>165
「うん…そうだよね。今回ばかりは危険だし…ね。」

//蛇さんパスです。
168 :蛇神「」 鳴蛇『』 [sage]:2011/02/20(日) 01:59:53.48 ID:1BZSw6AVo
>>164>>165
四十萬陀の意図を汲んで、蛇神は頷いた。

「黒蔵へ呼びかけをお願いします」

氷亜が抑えてくれたお陰で、黒蔵の頭の上に蛇神は安定していられる。
蛇神は黒蔵の額の鱗に手をあてて力を少しづつ注いで行く。
ヒダル神が平次郎狸に気を取られている間に、黒蔵の意識をしゃんとさせなければならない。

(記憶を探れ、黒蔵。ヒダル神の名を探せ)

黒蔵の意識がゆるゆると動き、思考を始める。

>>166,167
二人の持ってきたお菓子は童女の興味を引いた。
口にすると、その味のよさに鳴蛇の顔に自然と笑みが浮かぶ。

「お兄さんは平次郎さん。あたしの名前は……」

ふと、ヒダル神は行き詰った。
あまりにも長い間、誰にも呼ばれなかった。ヒダル神、それが名前の代わりで。
 
〔何だっけ?あたしの名前、なんて呼ばれてた?〕

ヒダル神は戸惑った。
人の子として名前で呼ばれた期間は、この童女にとってあまりにも短くて。

―――ぽたり。

鳴蛇の頬から涙がバスタブの水面に落ちた。

(隙あり!)

蛇神はすかさず、黒蔵の意識を揺すり起こした。

「思い出せ!あったことの全て、記憶のなかをさがせ!」

バスタブの水面が鏡となる。そこに記憶の全てが映し出される。
蛇神の力は幻を映す。しかし、神使としての黒蔵が持つのは…真実を映す力。

水界で身を削られた記憶。捉えられたときの記憶。飢えながら山をさまよった記憶。
親族を貪った記憶、そしてヒダル神を喰らった記憶。
遡る記憶はやがて、ヒダル神の記憶を引きずり込む。
峠で動けなくなった記憶、人買いから逃げ出した記憶、人買いに引き渡された記憶、
そして最後に、親と一緒に居るときの記憶。

「あたしの名前……なお、だった」

囲炉裏の傍で、大きな皺だらけの掌に頭を撫でられていた、童女の記憶が蘇った。
169 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/20(日) 02:08:11.36 ID:QBjbBsRSO
>>165
「あ、う、……ごめんじゃん」

思わず、事を急いてしまったようだ。
焦るのは、よくない。急いては事を仕損じる、という言葉もあるくらいなのだから。
そう言い聞かせ、息を整える。

……だけれど、黒蔵の姿を使い、言葉を喋っていると思うと……。
複雑な気持ちになる四十萬陀がいるのも事実なのだった。

(こんな時なのに、……こんな時だからこそ、落ち着くじゃん。私)

>>166
「ありがとうじゃん」

平次郎のお菓子は絶品なのだ。
素直に喜べる心境ではなかったが、平次郎の言葉に、淡く頷いた。

>>168
――黒蔵君の意識を引き上げることで、ヒダル神の記憶を浮き上がらせる……
その為に、静かに呼び掛け続けた。

「なお、君……なお君っていうんじゃん?」

浮き上がった記憶と、ヒダル神の名前を呼ぶ。

//露希さんパスしてます
170 :氷亜 :2011/02/20(日) 02:09:51.07 ID:YjMxYGoo0
>>166>>168
差し出されたお菓子、そして注意する側だと驕っていた自分に向けられた注意。
少しばつが悪くなりなりながらも、その手は離さない。

「気持ちは分かるよ・・・!!
 でも、今、僕にはどうすればいいのか・・・!!」

今、手が離れれば何が起こるか、自分では判断しきれないのである。
目で蛇神に、自分はどうすればいいかの判断を仰いだ。



//露希さん、四十萬陀さんはパスします。
171 :露希 :2011/02/20(日) 02:12:46.20 ID:f7ikWcE60
>>166
「ありがとうございます。」

クッキーを貰い、自然と笑顔になる。

今、自分のすべきことは見守ること。
常に先を予想して、皆を見つめる。

//夜行さん、七生さん、蛇さんはパスです
172 :平次郎狸 [sage]:2011/02/20(日) 02:15:59.85 ID:f91/CmlMo
>>167-168
「そうか、なおちゃんか。いい名前だ。教えてくれてありがとう。」

ワシワシと頭を撫でる。

「露希の嬢ちゃんもありがとう。助かったよ。」

こちらもワシワシと撫でる。
しかし問題はここからだ。この子を縛るヒダル神の呪いを引き剥がす。
死後の名である戒名を与えれば生前の縛りからは逃れられるはず。

「俺は君にもう一つの名前をあげようと思うんだ。そうすればこんなところに居る必要ない。
 自由になれるよ。
 もう一度人をやりせると言うわけではないけれど……君がまだ見ぬ世界を見ることも出来るようになる。
 無理やりあの世に行けって言う訳じゃないんだ。どうだい? 受け取ってくれるかな?」

//氷亜さんと七生さんへのレスをパスです
173 :蛇神「」 鳴蛇『』 [sage]:2011/02/20(日) 02:21:44.78 ID:1BZSw6AVo
>>169>>170
「そのまま居てください、それだけで良いのです。
 四十萬陀さんは黒蔵を支えているし、氷亜さんは運を呼んでいますから」

ヒダル神の名は明かされた。
童女が新たな名を受け入れたなら、すかさず腹の中から連れ出さなくてはならない。

>>172
「うん…うん……ひっく」

ヒダル神はただ頷いて泣き続ける。
人の子としての記憶が一度に押し寄せ、親に捨てられた悲しみ、人買いへの恐怖、一人の寂しさ、
心細さが一気に蘇ってきたのだから。

童女が新しい名を受け取ったら……次は蛇神があがく番だ。
174 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/20(日) 02:25:04.93 ID:QBjbBsRSO
>>173
「名は明かした……これからどうするじゃん? ミナクチ様」

バスタブの縁に寄り添ったまま、ミナクチに尋ねる。
四十萬陀は知らなかった。
これから、蛇神が一仕事こなさなければいけないことを。
175 :氷亜 :2011/02/20(日) 02:31:56.76 ID:YjMxYGoo0
>>173
「なら、しっかりと押さえとかなくちゃね!!」

混乱は無くなった。
自身と自信を取り戻し、きっちりヒダル神、もとい、なおを抑え込む氷亜。
しかし、先ほど力を抜いたのとはまた別のニュアンスで、彼女が苦しまないように緩めた。
176 :露希 :2011/02/20(日) 02:33:31.55 ID:f7ikWcE60
>>173
「なおちゃん…っていうんだ。辛かったよね…」

少し悲しげな表情をしながら見る。

「ミナクチ様、頑張ってください。」
177 :平次郎狸 [sage]:2011/02/20(日) 02:35:42.62 ID:f91/CmlMo
>>173
「そうか、受け取ってくれるか。」

顔を綻ばせる。

「それじゃあ名づけよう。君の名は今から【豊山嬉浄童女】だ。悪いな、ちょっとしたルールで院号は付けられない。許してくれ。
 本来なら字の解説まですんだががこの名の意味は君によ〜く考えてもらいたい。」

泣く童女に苦笑してしまう。

「おぉ〜おぉ〜。泣くな泣くな。今は一人ぼっちじゃないんだから。な?」

平次郎はより一層優しく頭を撫でた。

//童女以外の方へのレスはパスです
178 :蛇神「」 鳴蛇『』 [sage]:2011/02/20(日) 02:55:11.57 ID:1BZSw6AVo
>>ALL
「皆さんのお陰で、ここまで来れました。ありがとう」

居合わせる全員に、礼を言う。そして

「黒蔵、口を開けて」

神の命に、神使が従う。
小さな蛇神は鳴蛇の喉へ呼びかける。

「なお、【豊山嬉浄童女】、出ておいで。誰も苛めたりしないから」

『…ひっく…なんかね……駄目なの』

ヒダル神のこもった声、鳴蛇の口を通じてではない返事が、喉の奥から聞こえてきた。

(すんなり行く筈が無いと思っていましたが……)

覚悟を決めた青い蛇は、するりと鳴蛇の喉を潜る。

腹の中で泣いていた童女はもう、あの赤い着物ではない。
黒蔵の妹の姿はとらず、なおだったときの古びて継ぎの当たった醒めた灰色の着物である。
顔立ちも痩せて、ずっと幼い。
その童女の手足に、木の根のようなものが絡みついて、腹の中に縛っていた。

「今すぐ、とってあげますから」

これは封印の残り滓だろう。蛇神は迷わず引き抜いて千切った。
自由になった童女は、にっこりと笑って立ち上がった。
蛇神に押し上げられて喉を上ってゆく童女は次第に姿を変え、
木の枝を削った粗末な人形に代わってゆく。

(これが、この子の寄り代だったのか)

平次郎狸に供養してもらおう。
そう思った蛇神の背後から、黒い触手が絡みついた。

(……!!)

窮奇の残した、神格を逆転する黒い技。
満たす力がじわじわと侵される。

そうと知らない外の人々の前で、鳴蛇の口から一気に水が溢れた。
かたり、と流れからこぼれる木の人形。

『平次郎さん!その人形を供養してやってください!
 私は……!!』

ぴしり、と蛇神に皹が入った。
平次郎狸の腕の傷を引き受けて、力があまり残っていなかった。
菖蒲湯の湯気は、蛇に毒だった。

『夜刀八玄 黒蔵!! 我が代理を申し付ける!!』

名を呼ばれた瞬間、黒蔵は蛍火色の炎で包まれ、
炎が消えると水と共に小さな翡翠の蛇の輪を吐き出した。
自分の尾を咥えたその翡翠の蛇には、中ほどに黒く皹が入っていた。

何が起こったか判らぬままに、黒蔵は鳴蛇の翼を失い、掌に翡翠の輪を受けていた。
179 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/20(日) 03:04:27.05 ID:QBjbBsRSO
>>178
「!?」

一件落着した――そう、安堵した途端の出来事だった。
黒い触手が、蛇神に絡みつく。
四十萬陀は何が起こったのか分からず、目を見開いた。

「ミナクチ様……!? ミナクチ様!!」

名前を呼び、小さな蛇神と黒蔵を交互に見遣る。

「な、何が起こってるじゃん……!?」

理解の範疇を越えた出来事に、四十萬陀は何も出来ずにいた。
180 :氷亜 :2011/02/20(日) 03:09:10.69 ID:YjMxYGoo0
>>177
「(あんなにも寛大で慈愛に満ちた者は、姫以外に見た事がない・・・)」

なおを宥める平次郎の姿が、桔梗姫のそれと氷亜には重なって見えた。
そして、このものには敵わないと知る。

「(僕がああなるのに、いったいどれくらいかかるんだろうなぁ・・・)」
>>178
と、一件落着したと思った。
安心しきっていた氷亜も、其の突然の事態の変容に何も理解できない。

「少年!?」
>>ALL
「と、とりあえずみんな落ち着くんだ!!」

そう行って置かなくてはいけないと判断したが、その声はなによりも、自分に向けた言葉であった。
181 :露希 :2011/02/20(日) 03:13:19.61 ID:f7ikWcE60
>>ALL
「平次郎さん、なおちゃんをお願いします、氷亜さん、ミナクチ様を助けなくては!」

下手をするとミナクチ様が――瞬時に判断した。
この状況では【チームワーク】が必要とされる。

絶対に救ってみせる…
182 :平次郎狸 [sage]:2011/02/20(日) 03:16:19.50 ID:f91/CmlMo
もう全て無事に終わると思っていた。だが予想は覆る。
目の前の異常に対し為す統べは無かった。

「ミナクチ様! 何があったのですか!? ミナクチ様!?」

とりあえず蛇神様の言いつけ通りに人形を供養するため一旦懐に入れた。

「これはいったい!?」

黒蔵を包む炎と吐き出した翡翠色の蛇に唖然とする。

「まさか……」

>>180
「あぁ、そうだな。落ち着くべきだ。」

氷亜の言葉に表面上は落ち着きを取り戻した。しかし内心は焦りと不安で包まれていた。

>>181
「おう、了解だ。」

露希の言葉に少なからず不安が払拭される。

(この子はとても強く賢い子だな。俺も負けてられんか……)

//七生さんへのレスはパスです
183 :黒蔵 [sage]:2011/02/20(日) 03:20:17.80 ID:1BZSw6AVo
>>179-182

黒蔵にも、何がなんだか判らない。
しかし一つ確かなのは、蛇神にいきなり真名を呼ばれて代理を申し付けられたこと。

「…ええと、これ、解いてもらってもいい?」

情けない声でおずおずと、翡翠の輪を持ったまま、菖蒲で縛られた両手を目で指して尋ねた。
腹の中で何があったかは、これを解いてもらえたら判るかもしれない。
黒蔵の、真実を映す水鏡で。

「あとこれ、多分蛇神」

翡翠でできた輪の蛇は、つるりと滑らかで何も話さない。
184 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/20(日) 03:25:47.73 ID:QBjbBsRSO
>>180-181
氷亜と露希の言葉に、四十萬陀はハッとする。

(そ、そうじゃん。落ち着くじゃんっ……!)

とはいえ、状況が理解できたわけではない。
聞こえた声に、バスタブを見ると――

>>183
「あっ、く、黒蔵君……!!」

元に戻っている! と感銘を受ける暇もなく、(表情は感激そのものだったが)
四十萬陀は、慌てて黒蔵の手を結ぶ菖蒲を解いた。

「それが、ミナクチ様……?」

やはり、さっぱり分からない。
四十萬陀はなんて事ない一下級妖怪なのだから、当然といえば当然なのだが。
185 :黒蔵 [sage]:2011/02/20(日) 03:44:03.53 ID:1BZSw6AVo
>>184
「体が、思うとおりにう、ごかない」

バスタブの縁に手をついて立ち上がろうとしたが、力が入らない。
結局、翡翠の輪を口に咥えると、黒蔵は蛇になってずるりとバスタブをはみ出し床に蟠った。

「うう、なんかいろいろ酷い目にあった」

翡翠の輪がちりん、と口から落ちる。
脇腹の傷は、零お手製の、栄養価だけはとりあえずあったっぽい物体Xのお陰か、
一応塞がってきてはいるようだ。

「ごめん、四十萬陀、今俺すげー眠くて…」

菖蒲湯の中以外なら、どんなところででも寝れる、と黒蔵は思った。

(お礼いわなきゃ……)

そのまま黒蔵は風呂場の床を占拠して眠りこけた。
186 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/20(日) 03:52:13.11 ID:QBjbBsRSO
>>185
「わわ、」

床にずり落ちてくる黒蔵を支えながら、口から落ちた、ミナクチらしい輪を拾い上げる。
眠そうな、本当に眠そうな黒蔵を見ていると、何だかこちらまで眠くなってくるようだ。

「……お疲れ様じゃん」

くす、と笑みを溢す。
髪の毛をくしゃりと撫で、翡翠の輪を黒蔵の頭に乗せた。

「ほんとに、お疲れ様」

ぽろりと、いくらかの涙の粒が落ちる。
けれどその顔から、ずっと微笑みが消えることはなかった。
187 :四十萬陀 七生 :2011/02/20(日) 21:46:13.09 ID:fltDmCPuo
袂山の中腹。
川のせせらぎが心地よい河口に、セーラー服の少女が佇んでいた。
まだ風は冷たいが、陽の光が暖かい。そんな普段通りの日常。
――だけれど、そんな日常の中に、ぽっかりと空いてしまった穴。

「……ハァ」

これは自分で決めたことだ。後悔はしていない。
だけれど、水の流れを眺めて立ちすくむ、四十萬陀の表情は沈んでいた。
188 : :2011/02/20(日) 21:55:52.55 ID:402ipC7AO
>>187
「七生?七生じゃないか。」

川辺を偶然通りかかった瞳。

「どうしたんだ?こんな所で。」

浮かない表情の七生を心配そうに見つめる。
189 :四十萬陀 七生 :2011/02/20(日) 22:02:40.67 ID:fltDmCPuo
>>188
瞳に声を掛けられ、四十萬陀は顔を上げた。

「……瞳君」

そう言って、瞳は心配そうにこちらを覗き込んでくる。
四十萬陀は首を振ると、

「ちょっと考え事じゃん。最近、色々あって
 瞳君は、今日も修行じゃん?」

小首を傾げてそう返した。
190 : :2011/02/20(日) 22:09:23.62 ID:402ipC7AO
>>189
「ああ、私はまた修行さ。
それにしても、考え事、か…何か悩みでもあるのか?私でよければ相談にのるよ。」

心配そうな顔で返す。
191 :四十萬陀 七生 :2011/02/20(日) 22:22:53.66 ID:fltDmCPuo
>>190
「……ありがとうじゃん」

少し顔を俯かせて、四十萬陀は話始めた。
ぽつりぽつり、言葉を途切れさせながら。

「仲間がね、掟を破ったの。
 瞳君は、会ったことあったよね。東雲 犬御っていう、送り狼」

「掟を破るってことは、仲間を裏切るってことじゃん。
 ケジメはつけなくちゃいけない。――だから、追放した。他の人の手まで借りて、傷付けて」

ぐ、と唇を噛んで、

「覚悟を、決めたことなのに、どうしてこんなに苦しくなるじゃん……?」
192 : :2011/02/20(日) 22:32:16.33 ID:402ipC7AO
>>191
「仲間……あの時の…
追放…彼が何をしたのか知らないが、話し合いで解決はできなかったのか?」

相変わらず、心配そうな表情を向ける。

「彼は…七生にとって、大切な存在だから苦しいんじゃないか…?」

大切な存在がいなくなるのは、苦しいこと。瞳はそうわかっていた。
193 :四十萬陀 七生 :2011/02/20(日) 22:41:12.84 ID:fltDmCPuo
>>192
「犬御は、やっちゃいけない事をしたじゃん。
 話し合いで解決できるほど、簡単じゃないこと――」

彼は袂山の妖怪を殺し、喰らった。
恐らくはその力を、自分のものにする為に。
それは四十萬陀たち送り妖怪にとって、例え仲間だとしても、
決して許してはならないこと。

「大切な、存在」

四十萬陀は、瞳の言葉を反芻するように繰り返した。

「――そうじゃん。アイツは、幼馴染で、バカで、喧嘩っ早かったけど、
 私にとって、大切な存在だったじゃん……」

途方もない、どうしようもない気持ちに、胸が締め付けられる。
194 : :2011/02/20(日) 22:53:22.65 ID:402ipC7AO
>>193
「そうか……」

しばらく、難しい顔で考えこむ。

(なんとかして、彼と七生が元の関係に戻る方法を考えたいが…私に何ができるんだ…)

大切な存在がいなくなる――それは、とても苦しくて辛いこと。

(取り返しのつかなくなる前に、なんとかしなければ…最悪、彼も七生も…)

しばらく考えた後、口を開く。

「七生は…今、どうしたいんだ?」
195 :四十萬陀 七生 :2011/02/20(日) 22:58:34.91 ID:fltDmCPuo
>>194
「……わかんないじゃん」

四十萬陀は、重苦しく呟いた。

「傷付いた犬御が、どこにいくかも分からない。
 分かっていたとしても、私は迎えに行ける立場じゃない。
 犬御が戻ってきてくれることを、信じるしかないじゃん――……」
196 : :2011/02/20(日) 23:10:28.75 ID:402ipC7AO
>>195
(思っていたより事は深刻のようだな…)

「そうか…だったら、彼を信じよう。七生が彼の事をこんなに気にかけているんだ。彼もきっと、七生の事を気にかけているさ。
信じよう。七生にとって、彼が大切な存在だろう?だからきっと、彼にとっても七生は大切な存在のはずだ。」

しっかりと七生を不安にさせないよう、精一杯力強く言った。
197 :四十萬陀 七生 :2011/02/20(日) 23:24:49.02 ID:fltDmCPuo
>>196
瞳の力強い言葉に、四十萬陀はゆるりと顔を上げた。

「……ありがとうじゃん、瞳君。
 そうだよね。信じて待っているなら、
 いつまでもうだうだ、悩んでるわけにはいかないよね」

うん、と頷き、ほほ笑む。
瞳の優しい言葉が、ただ嬉しかった。
四十萬陀は、誰かに背中を押してほしかったのだ。

「ちょっと元気出てきたじゃん!
 そうだ瞳君、お腹空いてない? 焼き魚、御馳走するじゃん」

冗談めかした、あどけない笑いを浮かべる。
198 : :2011/02/20(日) 23:32:22.18 ID:402ipC7AO
>>197
「ああ、その通りだ。」

と、笑顔を向ける。

「んー、そうだな、修行後だからちょっとへっているな。いいのか?」
199 :四十萬陀 七生 :2011/02/20(日) 23:43:53.11 ID:fltDmCPuo
>>198
「もっちろんじゃん! えーと、じゃあ……」

と、四十萬陀は何か思いついたように、人差し指を弾いた。

「そうじゃん、瞳君、釣りとかする?」

言うなり、「ちょっと待ってて」と、茂みの奥に入っていく。
しばらくして戻ってくると、その手には、手作り感たっぷりの釣竿。

「私は薪拾ってくるから、これ使って魚釣ってて欲しいじゃん!」
200 : :2011/02/20(日) 23:49:59.60 ID:402ipC7AO
>>199
「釣りか…やったことはないな。近くで見たことはあるが…」

たしか、風月がよくやっていた。
それ以外にも、古い友人がやっているのを見たことがある。

「…まあ、何事も経験だろう。やり方はわかるしな。」

そう言って釣竿を受け取る。
201 :四十萬陀 七生 :2011/02/20(日) 23:58:59.77 ID:QBjbBsRSO
>>200
「大丈夫、大丈夫。簡単じゃん
 じゃ、お願いね!」

四十萬陀は確かに瞳に釣竿を渡すと、すたこらさっさと茂みの奥へ掛けていった。
河口には、誰かここで釣りをすることがあるのか、都合よく木の株が置かれていた。
透明な水面には、魚影をいくつも伺うことができる。


背の高い木々が連なり、木の葉の間から日差しが差す、幻想的な場所。
そこへ薪を拾いに来た四十萬陀は、栄養の多い柔らかな土を踏みながら、足元の枝を一本拾い上げた。

(きひひ、瞳君はどのくらい釣るのかな?
 そういえば、最近あの川で凄い大きな魚を見たって聞いたけど……、それを釣ってたら、びっくりだな)
202 : :2011/02/21(月) 00:08:32.95 ID:1U8hEOvAO
>>201
「さて、たしかこうやって…こうか…でもって、これを…とうっ!」

水面に向かい、釣竿を降る。

「ふうっ…これでかかるまで待てばいいんだよな…」

木の株に腰掛け、魚がかかるまで待つことにした。

203 :四十萬陀 七生 :2011/02/21(月) 00:16:34.13 ID:8DlEhvXSO
>>202
ぽちゃん、と釣り針と共に重しが川底に落ちていく。
突然のことに、魚影はぱっと散ってしまうが、それも一瞬。
すぐに何事もなかったかのように、魚たちが戻ってきた。

――それから、沈黙。
川のせせらぎ、鳥のささやき、それら以外何も聞こえない時間が続く。
正直、退屈な時間であることに間違いない。
気の短いものなら、早々に投げ出したくなるような時間だろう。しかし、釣りとはそういうものだ。
これを乗り越え、じっと獲物がかかるのを待つしかない。
204 : :2011/02/21(月) 00:21:36.70 ID:1U8hEOvAO
>>203
「………」

無言でいたが、しばらくたって。

「なかなかかからないものだな…」

そう呟いた。
205 :四十萬陀 七生 :2011/02/21(月) 00:34:23.22 ID:8DlEhvXSO
>>204
――と、
瞳が呟いたのと同時に、川の上方で大きな水音がした。
周囲に大きく響き渡る、轟音。それは、何か『巨大なもの』が水上で跳ねた音のようにも聞こえた。
薪を拾っている最中、それを聞いた四十萬陀は、はっとして顔を上げた。

(瞳君……)

現れたのだ、噂の魚が。
彼女なら大丈夫だろう、とは思うが。四十萬陀は考える。
それから、薪を拾い上げる手を早めた。



もの凄い勢いで、下方に下る巨大な魚影。
というより、背鰭が水面から出て、まるで鮫のようだ。
体長は軽く2mはあるように見える。
巨大魚、袂山の主は、もうすぐにでも瞳の元に辿り着こうとしていた。
206 : :2011/02/21(月) 00:39:35.68 ID:1U8hEOvAO
>>205
(む、この音は…大物?)

上方の方を見る。

(来る…!)

近づいてくる巨大魚。これは、逃したくない。
そう思い、集中する。

(来い!)

巨大魚がかかるよう、祈った。
207 :袂山の主 :2011/02/21(月) 00:48:13.30 ID:8DlEhvXSO
>>206
その祈りが届いたのか、そうでないのかは定かではないが――
主は大きな口を開くと、瞳の持つ釣竿の先に垂れた餌に食らい付いた。

ギシッ!! と激しい音がして、釣竿が軋む。
食い付いた主は、激しく泳ぎ飛び跳ね、暴れていた。
水しぶきがあちらこちらに飛び掛かり、土を濡らしていく。
これだけ大きな魚がかかっても折れない所を見ると、見かけよりもずっと頑丈なようだ。
しかし、相手は主。激しくしなる釣竿が、あまり長く持つとは思えない。

あまりに重い負荷が、釣竿にかかる。
少しでも気を抜いたら、持っていかれるどころか、あっという間にそのまま川に引きずり込まれるだろう。
208 : :2011/02/21(月) 00:53:21.73 ID:1U8hEOvAO
>>207
「くっ!」

予想していたよりも、強い力。
思わず立ち上がり、竿を引く。

「私はこれでも修行を積んだんだ!これしきの力に…負けるものかぁ!」

力を込め、さらに強く竿を引く。
209 :四十萬陀 七生 :2011/02/21(月) 01:03:23.67 ID:8DlEhvXSO
>>208
ザパァァン!!

釣り上げられた巨大魚の全貌が、空中で逆光にさらされる。

玉のような水しぶきが跳ね、瞳の上にも降り掛かる。

袂山の主が、遠心力によって瞳の頭上を越え、背後に落とされた。

ズウゥン! と地響き。一体、何百kgあるというのだろう。
とはいえ、見事な一本釣りであった。
袂山の主が、地上で巨体を跳ねさせる度、ズンズンと地面が揺れる。
と同時に、薪を抱えた四十萬陀が戻ってきた。

「瞳君! 凄い音したけど大丈夫じゃん――って、
 えぇええぇー!?」

四十萬陀が、釣り上げられた巨大魚を見て、予告通りに目を見開いて驚いた。
210 : :2011/02/21(月) 01:13:19.20 ID:1U8hEOvAO
>>209
「わっ!」

釣り上げた巨大魚と降りかかる水しぶきに驚く。

「す、凄いのを釣ってしまった…」

驚き座り込む。

「あ、おかえり七生!凄いのを釣ったぞ!」

戻ってきた七生に報告する。
211 :四十萬陀 七生 :2011/02/21(月) 01:20:57.13 ID:8DlEhvXSO
>>210
2m級の巨体魚が地面に横たわる、その光景を見て、四十萬陀はぽかんと口を開けて立ち尽くした。
がしゃがしゃ、と思わず腕から薪が落ちる。

「こ、これ最近噂になってる巨体魚じゃん……!?
 瞳君、これ釣ったの? 凄い凄い! 凄いじゃん!」

ぱあっと顔を明るくして、瞳に駆け足で近付く。
凄い、凄いととにかく褒め称えながら、立ち上がるのを支えるため手を差し出した。

「さすが瞳君じゃん! 今日は魚パーティーじゃんっ!!」

うれしそうに四十萬陀が言う。
212 : :2011/02/21(月) 01:28:32.24 ID:1U8hEOvAO
>>211
「い、いや、運が良かっただけだよ。そうでなければ、素人の私がこんな巨大魚釣れるわけないさ。」

恥ずかしそうに笑う。

「魚パーティーか…良いな、それ!」

213 :四十萬陀 七生 :2011/02/21(月) 01:33:04.00 ID:8DlEhvXSO
>>212
「運で主が釣れたら苦労しないじゃん!
 って、この大きさじゃもっと薪がいるね……皆を呼ぼうっと」

四十萬陀はそう言うと、再び茂みの奥に入っていく。

「瞳君も手伝ってじゃーん!」

奥から、声だけが聞こえた。

//明日もあるので、ここで切り上げさせて頂きます。絡み乙&ありがとうです
214 : :2011/02/21(月) 01:40:36.15 ID:1U8hEOvAO
>>213
「そ、そうかな。まぁ、修行のおかげ…かな?」

照れくさそうに笑う。

「わかった。今、行くよ。」

そう言って、瞳も茂みに入って行った。

/了解です。絡み乙&ありがとうございましたー
215 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/21(月) 05:50:18.54 ID:P29kE0Pr0
216 :東雲 犬御 :2011/02/21(月) 22:56:05.19 ID:t2JRv9Eoo
外が闇に包まれて、静まり返る丑三つ時。
その中でも更に深く影を落とす路地裏から、ずるずると足を引き摺って、
黒い巨体の男――犬御が体を出した。

街灯の明かりでぼんやりと光る道路の、左右を見る。
人間がいない事を確かめると、犬御は壁伝いに重たっくるしく表に出た。

(……血は止まったが、傷が塞がらねぇ)

じくじく、痺れるように痛む傷。
山を降りてここまでやって来たのはいいものの、体力も限界に達したのか、
犬御は街灯に背を預けると、崩れるようにしてその場に座り込んでしまった。

(く、そ)

――ここまでなのか。醜態を晒してまで、逃げてきたというのに。
苦々しく呻くことすら億劫だった。薄れていく意識に、身を預けようとする。
217 : :2011/02/21(月) 23:08:30.39 ID:1U8hEOvAO
>>216
修行帰りの道、ずるずると引き摺る聞き慣れない音。
瞳はその音に気づく。

(なんだ?この音は…?)

気になり、音の聞こえる方へ歩き出す。
やがて、街灯の近くにでる。そこで見たのは――

(!?あれは…!)

以前会った、七生が気にかけていたあの狼。
218 :東雲 犬御 :2011/02/21(月) 23:16:45.05 ID:t2JRv9Eoo
>>217
(……あ、?)

妖気を感じた犬御は、閉じかけていた瞼を薄く開いた。
焦点の合わない赤い目が、瞳がいる方向を見る。

(妖怪、か。チッ、こんな、ときに)

妖気だけでは、前に一度会った妖怪だと犬御は気付かなかった。
相手が気性の荒い妖怪ならば、ここで襲われてもおかしくはない。
自分がやって来たように、
喰われてしまう可能性だってある。

だが、犬御は体を持ち上げることができなかった。
頭が重い。今にも、意識を手放してしまいそうだ。
219 : :2011/02/21(月) 23:25:18.89 ID:1U8hEOvAO
>>218
「…あなた、東雲犬御、だよな?」

こんな所で会うとは思わなかった。
そう思いながら、静かな声で尋ねた。

「私は七生の友人だ。前に一度会ったよな。
あなたの現状は、七生から聞いている。山へ戻るつもりはないのか?」

率直に聞く。
220 :東雲 犬御 [sage]:2011/02/21(月) 23:39:15.17 ID:8DlEhvXSO
>>219
(……何だ、コイツ。七生のダチだと? 俺の事を、知ってるみてェだが。
 チッ、視界が霞みやがる。顔が良く分からねー……)

瞳の顔を見上げると、犬御は力なく、自嘲的な笑いを浮かべた。
電灯の明かりで、口許に赤黒い血がこびりついているのがよく分かる。

「……ハッ、」

犬御は、何とか上ずった声を上げた。
低い声は擦れて、ひゅうひゅうと息が混じり、聞き取りにくいが、静かな夜にはよく響いて聞こえる。

「俺の現状、知ってンなら、よぉ。俺がどういう状態か、分かってンだろ。
 ……今更、戻るだと? 舐めたクチ聞くのも、いい加減に、っしやがれ。カハッ」

一言喋るたびに、傷がじくりと痛む。
仕舞いには、血を吐き出す始末だ。
221 : :2011/02/21(月) 23:48:03.79 ID:1U8hEOvAO
>>220
「ひどい傷だな…」

犬御の傷を見て、そう呟く。

「七生が心配していたぞ。それに、その傷じゃ死んでしまうかもしれない…
山に戻って、治療を受けるべきだと思うが…」

心配そうな表情を向け、静かに話す。
222 :東雲 犬御 [sage]:2011/02/21(月) 23:58:19.96 ID:8DlEhvXSO
>>221
「……オイ、テメェ。それ以上、俺の前で、山の話しやがったら、ブチ[ピーーー]、ぞ」

明らかに出来もしないことだ。
だが、そう言うまで、犬御にとって今一番聞きたくない言葉は『袂山』だった。
そもそも、今の心境のまま犬御が山に戻ったとしても、仲間たちが受け入れてくれるはずもない。

「……、おい、それ」

突然、何かを見つけたように、犬御は赤い目を見開いた。
そして、瞳に向かい、ふらふらと腕を伸ばす。
胸元で、ぎらりと紫水晶の首飾りが瞬いた。

求めるように空を掻く犬御の指先は、瞳の髪飾りに向けられていた。
223 :東雲 犬御 [sage]:2011/02/22(火) 00:14:49.68 ID:QHYxsvnSO
>>222修正
「……オイ、テメェ。
 それ以上、俺の前で山っつー単語、出してみろ。ブチ殺 すぞ」

今の状態を見れば、誰だってそんな事が出来ないのは目に見えている。
だが、そこまで強がってでも、犬御にとって『袂山』というワードは聞きたくないものだった。

――そもそも、今の状態の犬御が山に戻ったところで、仲間たちが受け入れてくれるはずもない。

「消えろ……安ぃ説教なんざ、聞く気は、ねえぞ」

犬御の胸元で、街灯の光を反射した紫水晶の首飾りが、不気味な光を放った。
224 : :2011/02/22(火) 00:25:14.11 ID:1+wbk6BAO
>>223
「…すまない。
…だけど、七生はあなたのことを本当に心配しているんだ。それだけは、わかってくれ。」

一瞬怯むが、すぐに必死になって言う。
その時、ふと紫水晶の光が目に入る。

「…!?その水晶は…!?」

思わぬ物を見て驚く、と同時に嫌な記憶が思い出される。もう二度と見たくなかった光かもしれない。
しかし間違いない、以前窮奇に渡されたあの水晶。瞳を苦しめ、心を崩壊寸前まで追い詰めたあの水晶だった。
225 :東雲 犬御 [sage]:2011/02/22(火) 00:33:46.54 ID:QHYxsvnSO
>>224
そんな事、分かっている。
そう叫びにも近い声を上げようとした時、

(――あ、あ?)

突然、瞳の態度が急変した。
驚きと共に、苦々しい表情が瞳の顔に浮かぶ。
それに犬御も驚いたが、すぐに瞳が何に釘付けになっているかがわかった。

じゃらり。
ふらつく腕で、首飾りを持ち上げる。

「何だ、テメェ。これが、何だか、知ってンのか……?」
226 : :2011/02/22(火) 00:39:59.61 ID:1+wbk6BAO
>>225
「あ、ああ……その水晶は…どこで手に入れたんだ…?」

勘違いであってくれ、そう願いながら震えた声で恐る恐る聞く。
227 :東雲 犬御 [sage]:2011/02/22(火) 00:46:53.80 ID:QHYxsvnSO
>>226
一瞬、言うのを躊躇ったが、

「……窮奇。
 そう、名乗る奴から、借りてるモンだ」

言っても問題ないだろうと判断した犬御は、
そう瞳に呟いた。

(――何だ、ァ? コイツ、の、怯えた顔は……)
228 : :2011/02/22(火) 00:54:49.12 ID:1+wbk6BAO
>>227
「窮…奇…」

震える声で呟く。
まさか、その名をここで耳にするとは思わなかった。

「……駄目だ…
窮奇になにを言われたかはわからないが、あなたはきっと騙されている!奴を信じては駄目だ!」

震える自分を押し払い、大声で叫ぶ。
229 :東雲 犬御 [sage]:2011/02/22(火) 01:01:37.95 ID:QHYxsvnSO
>>228
「っ、う、お。やめ、ろ、いきなり、叫ぶんじゃ……」

ずきずきと、反応するように傷が痛んだ。
犬御の顔が苦痛に歪む。
同時に、限界が訪れたように、ふっと意識が遠くなった。

(騙されてる、だァ?
 いいや、アイツは、間違っちゃいねェ。俺は、確かに、妖怪を喰らって強くなった。
 だが、何だ、この結果は。
 どこで間違って。どうして――……)

今更、疑問に思ったところで、仕方ないことを、
瞼が薄く閉じられ、細く細く、虚ろな赤い瞳が覗く。
犬御は首飾りを握りしめたまま、意識を手放した。
230 : :2011/02/22(火) 01:08:42.65 ID:1+wbk6BAO
>>229
「あっ!す、すまない…大丈夫か?」

申し訳なさそうに犬御を見つめる。

「気絶してしまったか…しかも、水晶を握りしめて…
この怪我じゃ無理に水晶を取るわけにもいかないし…どうするべきか…」

その場で考え込む。しかし、いい考えは思い浮かばない。
231 :東雲 犬御 :2011/02/22(火) 01:14:02.29 ID:QHYxsvnSO
>>230
「……」

憔悴した表情で眠る犬御。
気絶しているようだが……。

と、突然、どこからか人の気配がした。
道端で倒れている犬御を見たら、通報程度ならしてもらえるかもしれない。
232 : :2011/02/22(火) 01:24:28.67 ID:1+wbk6BAO
>>231
「うーん…やはり、事情を知っている蛇神様か露希に相談するしかないな…」

そう結論を出し、犬御に目をやる。

「彼は…このままにしておく訳にはいかないな…
しかし、私では彼を運ぶことなど不可能だな…」

自分と犬御の体格を比べてみる。どう考えても運ぶなど不可能だ。
そこで、人の気配を感じる。

「人の気配…見つかったら厄介だが…
説明して保護を…いや、こんな状況、なんて説明すれば…」

混乱し、焦りだす瞳。
233 :バトー :2011/02/22(火) 22:32:57.92 ID:Y6zZ64WDO
暗い夜の森の奥深く、木の枝を踏み付け掻き分け、五月蝿く足音がしていた

それは馬の頭…と言うか、馬の被り物を被った長身の男
男はジーンズを履いて達筆で『馬』と書かれたシャツと茶色のジャケットを着ている

「…モロに喰らったのはまずかったか…暫く左腕は無茶出来んな」

男は右手で左腕を庇うように抑え、歩いている
234 :倒れる木 :2011/02/22(火) 22:41:39.96 ID:5YngvZ1kP
>>233

 ミシリ、ミシリと音が鳴る。
 大きな、重いものが軋む音だ。

「行くぞぉー! 行くぞぉー!!」

 謎の、突然の掛け声と共に。

 隣にある大樹が、森を歩く者の元へと倒れこんできた!
235 :バトー :2011/02/22(火) 22:48:47.84 ID:Y6zZ64WDO
>>234
「…む?」

何かが軋む音と、掛け声が聞こえて
そちらを見れば、なんと唐突に樹が倒れて来るではないか

考えるよりも逃げるよりも早く、男は行動した

「―――ふんッ!!」

右手を左腕から離し、拳を握って体を捻る
樹に体を向けながら、その回転行動の勢いを込めて、鋼鉄の様な硬さの拳を樹へと振り抜く
力によって、樹を破壊して難を逃れようとした
236 :倒れる木 :2011/02/22(火) 23:00:23.55 ID:5YngvZ1kP
>>235

 スカッ、と幻覚のように。陽炎のように。
 拳は倒木をすり抜け、倒木は男の身体をすり抜ける。

 幻覚・・・。
 しかもかなり低レベルの。

「なんじゃい兄ちゃん、驚きゃせんのか」

 暗い森にふよふよと浮かぶ、胡坐をかいた老人。
 見たところ天狗のような姿をしている。

 指で輪を作り、被り物越しに男の瞳を見据える。

「むむむ、この妖気の色は・・・。冥界の者じゃな、なにしに参った?」

 とぼけた様な、諌めるような。
 真意の掴みにくい声色で老人は語りかける。


“妖怪目録”

【古杣−ふるそま−】

 怪音現象の1つ、山中で倒木のような音が響く。
 『空木倒し』『天狗倒し』など様々な別名で語られる。
 その正体は天狗や下級の山神、または狸や狐などと謂われる。
 種族としてのカテゴリーではなく、類似性や同一行動のカテゴリーのようだ。
237 :バトー :2011/02/22(火) 23:08:24.47 ID:Y6zZ64WDO
>>236
「…む?」

確かにタイミングは会っていた、そのはずなのに手応えが無い
おまけに、樹が倒れて来る衝撃も無い
不審に思っていると、知らない声が聞こえ、表情の変わらない顔をそちらに向ける

「そういうあんたは、天狗か?」
「随分と悪戯が好きなようだな」

握った右手拳を解き、老人を見上げて言葉を返す

「何、あっちからは暇潰しに来ただけだ、大した用事は無い」
238 :古杣 :2011/02/22(火) 23:24:22.76 ID:5YngvZ1kP
>>237

「天狗ではあるがこの山の神でもあるぞー。そうじゃ、悪戯が好きじゃ。
 そしてお前さんがノーリアクションだから若干苛立っておるぞ」

 ホケーっと男の話を聞き流すが。
 動機を聞いて思わず笑い出す。

「暇つぶしか・・・カァーカッカ!
 悠久の時間を生きとるようなヤツがよう言うわい!」

 胡坐をかいたまま口を大きく開いて笑いたてる老人。
 笑いをやめ、男を指差す。

「するとお前さん百鬼の主には興味ないのか。
 いや、なさそうじゃな。見るからに興味なさそうじゃ」

 座った体勢に疲れたのか、そのまま空中にゴロンと寝そべる老人。

「時代も変わったのー、あっちで陽の理を巻き込んだかと思ったら。
 平気な顔して死者がこの世に顔を出すか、老人としては感心せんなー」

 そういう割にはあくびを交えてつらつらと話す。
 挑発するように右手をヒラヒラさせる。

「最近は山神の方も物騒でのー。
 あっちの山こっちの山で次々と古い友人が闇討ちにあっちょる」
239 :バトー :2011/02/22(火) 23:37:47.04 ID:Y6zZ64WDO
>>238
「いや、悪いな、余り長い事地獄で生きてきた物で恐怖と言う物を忘れてしまったようだ」

天狗、山の神とあっては余り失礼な態度は取れないと思い、一応の謝罪
目上と感じても敬語は一向に使う気は見せないが

「百鬼の主、か…確かに俺は興味は無いが…」
「俺が会った奴の中には、百鬼の主となって良からぬ事を企む輩もいるように思えたぞ」

少し前の出来事を思い出し、右手を顎にやる
確かあの男が言っていた“キュウちゃん”と言う物、実際に会った訳ではないがその思想は良い物とは思えなかった
そしてあの男、恐らく人間ながらあれ程の力と退魔の魔翌力…それをまともに受けた左腕は、まだダメージが残っている

「訂正するが、俺は死人ではないぞ、地獄で生まれただけで一応命はある」
「…とは言え、生人と死人の違いなぞ俺にはよく解らぬがな」

「…山神が闇討ちに?神が負けるのか?」

老人の他愛も無い話に、興味深そうに食いついた

/すいません、風呂に入ってくるので次遅れます
240 :古杣 :2011/02/22(火) 23:58:58.88 ID:5YngvZ1kP
>>239

「ひひひ・・・神とはただの肩書きだ。
 魚や鳥や妖怪や人と同じ、いくつか分類された概念の1つに過ぎんよ。
 つまるところワシは弱い。神様らしい力など無いに等しい。
 雄大な連峰や霊験あらたかな山ならいざ知らず、こんな標高700mにも満たぬ、
 マイナーな山の神など高が知れよう」

 やたら妙な話をする。
 さらに話は複雑を極めていく。

「もっと正確に言うと、ワシは神格を持っちょらんからのー。
 むしろお前さんら妖怪に近しい、だからそんなに畏まらんでええぞー」

 腕枕で寝転ぶ老人。

「良からぬ事を企むヤツか・・・。
 まぁ争いで決めるんだからそりゃ居るじゃろうな。
 山神の知り合いにもやたら攻撃的なヤツも居ったしのー」

 目を細め、今は亡き知り合いに思いを馳せる。
 そやつは怪物に喧嘩を売り、共倒れしたと聞く。

「眠くなってきたわい、
 お前さんから聞きたいことが無いならワシぁもう消えるぞ」

 ふらりと立ち上がる老人。
241 :バトー :2011/02/23(水) 00:10:50.15 ID:IhKxVEZDO
>>240
「成る程な、神は信仰が力になるとは聞くがな」
「この山そのものがあんたの神の力の強さになる訳か」

右手を顎にやったまま、頷きながら話を聞き

「…そうだな、一つ質問だ」
「攻撃的な神もいると言っていたが、そんな神の居場所を知ってたりしないか?」

表情の変わらない顔を老人に向けて言った言葉は、こうとも取れる
『神に挑みたいから、戦える神を教えてくれ』と

/ただいまかえりました
242 :古杣 :2011/02/23(水) 00:33:59.68 ID:ArhD53HSP
>>241

「残念だがもう居らんよ、彼奴は焼け死んだ。怪物と相打ちでな」

 懐かしむように、儚げに呟く。
 しかし思案をめぐらせ、その質問の意図を測る。

「・・・まぁこの街には強い妖怪が沢山集まっておる。
 わざわざじじい共に喧嘩を売らんでも、相手は見つかるじゃろう」

 半分しか開かない目で、男を見据える。

「じゃが多分、主の血を沸き上らせるような相手は見つからんぞ。
 失うものも求めるものもない冥界の者を相手取るほど、妖怪は生に退屈しちょらんからの」

 少しずつ姿が薄れ、闇の霞に消えていく。
 近くの木がミシミシとなり始めたような気がした。

「誰がために在るのか、何が為に拳を振るうのか。
 わざわざ現世に来たのならば、それを探してみるのも悪くないじゃろ」

 やがて風に溶け入り、かき消すように消えてなくなった。
243 :バトー :2011/02/23(水) 00:38:10.00 ID:IhKxVEZDO
>>242
/お疲れ様でした
244 :黒蔵 [sage]:2011/02/24(木) 22:23:54.98 ID:HHsLx052o
>>560
黒蔵はキュウちゃんの気配は知ってても、顔とか居場所は知りませんしね。
袂山の神様か何かと思ってて、思いつくあたりを探しに行くのもアリかな。
実はキュウちゃんの手料理をたらふく食いました、って聞いたら、
混沌さんがえらい勢いで怒ってくれそうな予感はするんですが。


>>559
ヘタレに初っ端から真っ当なバトルなぞ出来るわけが無いんですよ。
245 :黒蔵 [sage]:2011/02/24(木) 22:25:03.32 ID:HHsLx052o
誤爆った
246 :窮奇 渾沌 :2011/02/24(木) 22:48:29.60 ID:E8PwnPL5P

 日も傾きだした頃。
 山道を歩く、2人の男女。

 男のほうはパーティースーツ、女のほうはズボンのスーツの姿。
 いずれもハイキングや観光とは思えぬ風体である。

「ふふふぅっ! いやぁ――
「黙っててくれないかな?」

 男のしゃべりを制する女性。
 辺りは異様な雰囲気で覆われている。女性はニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている。

「ホーントに参ったよ! 新規メンバーの内、一人は負傷で一人は脱退。
 思ったより全然、コトが進んでくれないね」

「昨今、妙な妖怪達にも目を付けられてますしねぇ!」
「誰のせいだよぉ!」
「もふぉ!!」

 鋭いローキックが男のふくらはぎに刺さる。

「はっきり言って状況はサーイアクだね。
 その上私の魂の欠片まで取られたら紫狂は崩壊しちゃうよ」

「ふ、ふふふふふぅ・・・またまたご冗談を」

 女性は若干焦ったようなフリをする。
 神社の付近にたどり着き、ふくらはぎを抑える男に話す。

「私は大親友の四十萬陀ちゃんに掛け合ってくるからさ。
 キミはもう1つの欠片を取ってきてよ」

「ふ、ふぅ・・・。お任せあれ! 貴女の為ならたとえ「じゃ任せたよ」

 しゃべり続ける男を無視して女性は歩き出した。
247 :四十萬陀 七生 :2011/02/24(木) 23:07:57.50 ID:WrLQFHdgo
>>246
木々の葉が、夕日に当てられてオレンジ色に映っている。
まだ肌寒い冬空の下、枝の上に体を丸まらせて、小さな夜雀はうとうとうたた寝していた。

そこへ、茂みをガサリと揺らして、息を切らした送り鼬が降りてきた。
音に反応して、四十萬陀が顔を上げる。

「七生、起きてって!」
「起きてるよ。どうしたじゃん、狢奈(むじな)?」

慌てた様子の、狢奈と呼ばれた鼬は、尻尾をぱたぱた揺らす。

「男と女。知らない妖怪が二人来てるって!」
「知らない妖怪? それって、……!!!」


――ざわり。
身の凍るような邪悪な妖気が、四十萬陀の羽を奮い立たせた。
この気配は、知っている。

「……狢奈、和戌(わんこ)たちに準備するよう伝えてじゃん」
「え? う、うん……分かったって!」

何かに気付いたらしく、狢奈は素直に頷くと、するすると幹を伝い降りて行った。
248 :黒蔵 [sage]:2011/02/24(木) 23:09:03.05 ID:HHsLx052o
泉に戻って直ぐ、黒蔵は袂山へ向かった。
蛇神を侵す黒い皹の原因として黒蔵が思い当たるのは、窮奇と名乗った顔も知らぬ相手。

しかし、どこへ行けば窮奇に会えるのか。
黒蔵にとって唯一の手がかりは、窮奇が四十萬陀を知っていたこと。
ならば、まずは袂山へ行って見よう。
もしかしたら四十萬陀が窮奇を知っているかもしれない。

山道を歩く黒蔵に、竜宮から支給された武器は柄を2m弱の鎖で結び合わせた2本の短剣。
衣蛸に引き合わされた武官の蟹が、人の姿でも蛇の姿でもある程度扱えるのはこの辺だろう
と、選んでくれたものだ。

(お前は基本、接近戦しか出来ないだろ。使うなら間合いのある武器がいい。
 ただ、視力が悪いから飛び道具は使えないし、間合いの長い槍は両手がないと使えない。
 相手の攻撃は受ける覚悟で接近戦に持ち込むしかないな)

……と蟹に言われたのだが、最初から
お前負けるだろ、絶対負けるだろ?と言われている気しかしない。

「だって本気で戦ったことなんて、俺、一度しか無いしよー」

しかも負けた。フルボッコにされて。
てくてくと山道を登ってゆくと、少し先に誰かが居るのに気がついた。

>>246
(人間?)

少し離れた場所で気配を伺おうとしたが、黒蔵の足元でピシリと小枝が折れた。
249 :窮奇 :2011/02/24(木) 23:15:51.41 ID:E8PwnPL5P
>>247

「やぁやぁ・・・おはこんにちばんわぁ!」

 来た。
     . .
 いや居た。


 狢奈がいなくなったと同時に。
 不気味な、へばり付く様な。毒々しいあの悪意が辺りに流れ出す。
 木の下から見上げていた。木下から声をかけた。

 親しげに、友人と軽く挨拶をするような声で。
 ギョロリと目を見開き、絡み取るような声色で語りかける。

「ずいぶん顔色が『悪い』ねぇ! ちゃんとご飯食べてるぅ?」

 ニタニタとあの厭らしい笑みが迫ってくる。

「見るからに栄養状態が『悪い』よ! 大丈夫かなぁ?」
250 :渾沌 :2011/02/24(木) 23:25:23.11 ID:E8PwnPL5P
>>248

 ビシリという小さな音を耳が拾う。
 ギョロリ、と気味の悪い動きで振り向く男。

「ふふふぅ・・・! おやおや、いきなり当たりですかね?」

 ニコニコと笑いながら歩み寄ってくる男。

「ワタクシは妖気と言うものが感じられませんから一応お聞きしたいのです。
 貴方は妖怪ですか? それとも神さまですか? 精霊ですか? 悪霊ですか?
 魑魅ですか? 魍魎ですか? ・・・あぁゴメンなさい。無駄な質問をしてしまいました」

 突如。スーツを破って、懐からショットガンの銃口が飛び出す。
 聞くか聞かないか、言い終えるか終えないかの瞬間に発砲。

 爆音と共に無数の小さな弾丸が黒蔵を吹き飛ばそうと迫った。

「あ゛ぁーーーーーーーッ! ゴメンなさいねぇええええええ!!
 一番重要な質問を後にまわしてしまいましたよぉぉおおおおおおおお!!」

 笑顔は一変し、狂気の表情を浮かべる。
 辺りは汚濁したような、精神を錯乱させるような。サイケデリックな雰囲気に染まり始める。

「なぁあああああんでアナタからキュウちゃんの香りがするんですかぁああああああ!?」
251 :四十萬陀 七生 :2011/02/24(木) 23:28:52.21 ID:WrLQFHdgo
>>249
「――!!!」

弾けるように木から飛び立ち、四十萬陀は目下を見下ろした。
そこの居たのは、纏わりつくような笑みを浮かべる窮奇。
心臓が跳ねる。実際に向かいあうのは、『あの時』振りだ。
だけど、『あの時』とは違う。

「何しに来たじゃん……窮奇!!」

親しげな口調とは相対して、
鋭い、純粋な敵意だけを込めた声で、四十萬陀は返した。
252 :窮奇 :2011/02/24(木) 23:35:00.90 ID:E8PwnPL5P
>>251

「あっはっはー! 質問に質問で返さないでくれないかなぁ、四十萬陀ちゃん!
 何しに来た? 酷いなぁ。大親友としてキミが心配だから来たんだよ!
 心の中を理解した仲じゃないか!!」

 一方的な、利己的な友情宣言。
 捻じ曲げられた真実が四十萬陀に圧し掛かってくる。

「まぁ、不愉快な冗談はさておいて。
 『良い』話を持って来たんだよぉ! まぁ聞きなよぉ」

 ずるずると、木を這い登る。
 先ほどまでに四十萬陀が居た場所に、あの不愉快な悪意の本体が居座っている。

「キミと犬御くんを仲直りさせてあげようと思ったんだ!」
253 :黒蔵 [sage]:2011/02/24(木) 23:38:40.66 ID:HHsLx052o
>>250
「え?ぇぇえええっと、俺はそのあの…」

やばい、気付かれた!って、こいつ人間??
っていうか、その口の早さ半端じゃなく早くね?
じゃなくて早いのは口だけじゃなくて手もかよオイ!

思考は動けど、口も手も追いつかない黒蔵。

「ぃでうだぁぁぁあぁ!!」

ゴメンなさいね、という相手の台詞が聞こえたときにはもう、
無数の弾丸が黒蔵を打ち抜き、吹き飛ばしていた。
その体は後ろの樹に受け止められてずるりと根元に崩れる。

「ってぇな。
 ところで…キュウちゃんの香りって何だよ。わかんねぇよいきなり言われても」

体のあちこちに小さな穴が開き、痛みと出血とが黒蔵の感情を冷やした。
どうやら怒ると口数が減る性質らしい。

傷だらけの黒蔵が短剣を抜いて構えると、サイケな雰囲気の中に地を這う妖気が混じりはじめた。
254 :四十萬陀 七生 :2011/02/24(木) 23:46:01.60 ID:WrLQFHdgo
>>252
「……悪いね、最っ高に気分が悪いじゃん」

四十萬陀は遅れて憎まれ口を叩いた。
全身から放たれる、嫌悪感。
大親友、なんて冗談じゃないとばかりに。

窮奇から、『良い』話が提案された。
四十萬陀の小さな瞳が、驚きに見開かれる。

弱った心に差す、邪悪に塗りたくられた、一筋の希望。

――だが、

「……やっぱり、犬御をおかしくしたのは君の仕業だったじゃん?」

敵意が、沸き立つ怒りに変わる。
四十萬陀は、威嚇するように翼を広げた。

「二回も騙されるほど、私は鳥頭じゃないじゃん。
 ――私の大切な仲間を、よくも。無事でこの山を出られると思うなじゃん!!」
255 :渾沌 :2011/02/24(木) 23:48:32.60 ID:E8PwnPL5P
>>253

 ガチャリ、と弾倉を操作し。
 使用済みの弾が排出される。

「あ゛ぁあああああ! こぉれはぁすいませんねぇえええ!!」

 再び爆音が鳴り、黒蔵へ向けて2発目の散弾が放たれる。

「キュウちゃんとはですねぇ! 絶対無敵かつ可憐で秀麗!
 情緒纏綿で仙姿玉質でありながら沈魚落雁のまたの如し。
 八面玲瓏と媚眼秋波を備え、比翼連理に恋焦がれるワタクシを閉月羞花に誘い
 明眸皓歯の窈窕淑女なのですよぉおおぉおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!」

 狂気、明らかに狂った精神。
 地を這う妖気にも気づかず、次の弾丸を装填する。
256 :黒蔵 [sage]:2011/02/24(木) 23:59:08.91 ID:HHsLx052o
>>255
「亀甲!その力を貸せ!」

黒蔵は短剣の片方を地に突き刺した。
岩板が持ち上がり、黒蔵の前で盾となる。
しかしこれで一本目の短剣の力は使ってしまった。
弾丸を避けた岩の上へ飛び上がり、黒蔵は混沌に近づこうとする。
すこしでも間合いを詰めなくてはならないが、相手が飛び道具を持っているので、
圧倒的に不利ではある。
しかし、手の届くところにさえ来られれば。

「それ答えになってねぇぇええええええ!!!」

黒蔵は混沌へと走った。
走りながら、次第に狂気に絡みつかれてゆく。
動くほどに血が流れ、思考が鈍ってゆく。
それでも、戦わねば死ぬのだ。
自分が死んだら蛇神は……いや、それは考えたくも無い。
257 :窮奇 :2011/02/25(金) 00:00:39.13 ID:7hhCv7WzP
>>254

「・・・?」

「何言ってるのかな、四十萬陀ちゃん」

 キョトンと、ポケーっと。
 言っていることがまるで理解できない、という表情を作る。

「大事な仲間? あぁ〜、うん。なるほどねぇ〜、恋のすれ違いだねぇ」

 ヤレヤレ、というような動作をする。
 ふぃー、と。まったく心のこもっていないため息をつく。

「彼の名誉の為に言っとくけどさぁ、
 犬御くんはなにもおかしくなっていないよぉ。むしろ健全だね!」

 ニヤニヤとした、不気味な笑みが。
 再び心を破壊しようと、黒い触手を伸ばす。

「彼があんな風になったのはね、キミの為なんだよぉ。四十萬陀ちゃん!」

「犬御くんは力に飢えていた。キミを守る力が欲しい、とね。
 だから教えてあげたんだよ、手っ取り早く強くなる方法をね」

「冷静に考えてみなよぉ、コトの発端はあの人間じゃないかぁ?
 あんなメチャクチャな条件を力ずくで押し付けられてさぁ、
 対抗戦力を持たなきゃこの山の生態系が危ないだろう?」

 ニタニタニタニタ。

「キミを守る為なんだよ、キミに笑っていて欲しいからなんだよ。
 『悪い』のは犬御くんじゃない、彼は『良い』ヤツ。


 そ れ は 一 番 キ ミ が 知 っ て い る だ ろ う ?」


 発動する『逆心』。
 心の美点を汚し、奈落へと引き込んでいく。
258 :渾沌 :2011/02/25(金) 00:07:51.13 ID:7hhCv7WzP
>>256

 避けもしない。
 逃げもしない。

 その体質からか、相手の手負いからか。
 侮っているのか。

 否、殺意と狂気が!
 理性や本能すらも飲み込んでいたのだ!


「蛇って、ピカピカする金物が苦手なんですよね?」


 装てんされていたのは、錫の弾丸!!

「ストラス・ヴィーーチェ!! 吹き飛びなぁああああ!!!」

 銃口が火を噴いた。
259 :黒蔵 [sage]:2011/02/25(金) 00:18:50.52 ID:DJuczQCqo
>>258
(金……気…ッ!)

錫の弾丸に腹を打ち抜かれて吹き飛ばされ
黒蔵は仰向けに地に叩きつけられた。

(コイツ!!なぜ俺が蛇だと知っている?!)

一瞬の驚きが、狂気に染まりかけた黒蔵の意識を引き戻した。

(どういうことだ?)

尋ねようにも、言葉の代わりに血が溢れるばかりだ。
しかし尋ねたところで、真っ当な返事が返ってくるとは思えない。
荒い息を付きながら、黒蔵は地面から混沌を見上げた。
まず呼吸を落ち着かせないと、次の手が打てない。
260 :四十萬陀 七生 :2011/02/25(金) 00:19:40.40 ID:xATY5vsAo
>>257
「私のため……?」

窮奇の笑みが迫る。
四十萬陀は、顔を俯かせた。

――私を守るために、力を欲した?

「……そうじゃん。私が一番、犬御の側にいた。
 私が一番、アイツのことをよく知ってる」

それは、四十萬陀にとって確信であり、
良い仲間を持っている、『誇り』でもあった。

(昔からちっとも変わってないじゃん)

心の中で、少しだけ笑う。
誰よりも分かっているからこそ、四十萬陀の心はもう、屈しない。

「アイツが良いやつなんて、そんなこと百も承知じゃん」

明瞭とした、透き通るような強い声。
はっきりとした覚悟が、そこにはあった。

「だけど、間違ったやり方を吹き込んだのは君じゃん。
 そして、アイツが間違った道を行くなら、私がそれを止めさせる。絶対に連れ戻す。
 
 ――幼馴染を、なめないでほしいじゃん!!」

四十萬陀は、高く高く鳴いた。
仲間を、狢奈に集めさせた、袂山全力の戦力を集結させたものたちを呼ぶために。
261 :渾沌 :2011/02/25(金) 00:28:25.81 ID:7hhCv7WzP
>>259

「おぉおおおおおおっとぅ!!
 ワタクシはお間抜けな悪者じゃあなぁああいのでぇ!
 ピンチをチャンスに変えさせませぇええええええーーーん!!」

 腹に開いた大穴に、革靴が蹴り入れられた。
 征服するように、圧迫するように体重を乗せる。

「ふふふぅ! まるで標本ですねぇ!! んん〜〜?」

 ジロジロと黒蔵の体を物色し、やがて翡翠の首飾りに目を留める。

「ぉおんやぁああああ? コレからキュウちゃんの香りがしますねぇえええ!?」

 その翡翠の輪を掴み、引きちぎろうと引っ張る。
262 :渾沌 :2011/02/25(金) 00:33:01.94 ID:7hhCv7WzP
>>260

「 ・ ・ ・ ッ!」

 折れない相手、屈しない心。
 窮奇の笑顔が僅かに引き攣る。

「あ、ははははぁ・・・。な、るほど、ねぇ・・・!」

 辺りに感じ出す妖気。
 全員間違いなく格下だが・・・、数が予想外。

「・・・まいったなぁ」

 だが、ニヤニヤとした笑みはまだ崩さない。
 悪意は揺るがず、草木が嘶き始める。
263 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/25(金) 00:33:41.60 ID:7hhCv7WzP
//262の名前欄は窮奇です
264 :黒蔵 [sage]:2011/02/25(金) 00:40:39.38 ID:DJuczQCqo
>>261
「くはっ!」

混沌に革靴で傷を抉られて、苦鳴が漏れる。
しかし腹に穴が開いていては大声を出すほどの力が出ない。
せいぜい顔を歪めて、細く空気を吐く程度である。

(この野郎!)

翡翠の輪に近寄る混沌を転がったままじっと睨みつける。
混沌の顔が十分に近寄ったとき、黒蔵は素早く握った短剣を振るった。
その刃ではなく鎖の部分を、混沌の首に巻きつけるために。

(だから何なんだよキュウちゃんの香りって。
 こいつには説明させなきゃならない。だから殺しちゃいけないんだ)

狂気に流されないように、ただの殺戮へ流れないように、
辛うじて残った理性が黒蔵を律する。
265 :渾沌 :2011/02/25(金) 00:48:48.35 ID:7hhCv7WzP
>>264

「・・・!?」

 水神の力を持つ神器が、突如襲い掛かる。
 冷たい鎖が首を縛り上げ、肉に食い込んでいく。

「かッ・・・ふぅ!? あ゛、
 あ゛ぁぁぁぁああああああ!! 熱ぃいいいい!!」

 その不浄たる身、魂には効果が在ったようで。
 鎖の触れた部分からブスブスと煙が上がってくる。
 キナ臭いようなにおいが辺りに立ち込める。

 グボリ、と音を鳴らし。後ろに退くように足を引き抜いてしまう。

「くっふぅ!・・・ふふふぅ!!」

 汚濁した瞳が再び黒蔵を見据え、
 二門型のショットガンを構え、再び銃口を向ける!

 銃声と共に、2発目の錫の弾丸が放たれた!!
266 :袂山精鋭部隊 :2011/02/25(金) 00:50:32.24 ID:SaVqtCISO
>>262
――集まったのは、総勢14匹の送り妖怪。

「アンタかい、袂山がおかしくなった原因ってのは」

窮奇の登る木を取り囲むようにして、送り妖怪たちが詰め寄る。
その中で一歩前に出たのは、灰色の毛を持つ送り犬。
そして、それより少し大きな体格をした、群青色の毛を持つ、送り狼だ。

「犬御の兄貴を誑かしたって? そりゃ容赦できないぜよ」
「ちょっと和戌(わんこ)、翠狼(すいろう)、しっ! 出しゃばらないの!」

小声で注意したのは、四十萬陀と同じ送り雀。
こちらは、羽が少し紫を帯びている。
中には、あの小さな送りイタチの姿もあった。

四十萬陀が翼を広げながら、挑戦的に言う。

「さぁ、観念するじゃん窮奇。
 一匹一匹は弱くても――私たちの力は集団でこそ発揮されるじゃん」
267 :窮奇 :2011/02/25(金) 01:00:03.36 ID:7hhCv7WzP
>>266

「 ・ ・ ・ 。」

 笑顔が崩れ、明らかに苛立ったような不快そうな表情になる。
 汚泥する悪意は引いていくが、変わりに禍々しい妖気が溢れ出す!
 スーツを破り、純白の翼が現れた。

「針山八合目!! 針葉樹林の剣ヶ峰!!」

 全力の発動。
 地響きのような爆音と共に、次々と巨大な石英の槍が噴出し!
 辺りを“串刺す白い森”へと変えてしまう。

「舐めないでくれるかなぁ! キミ達が集団ならさぁ!
 私は一騎当千なんだけどぉ!!」

 競り上がった白い氷山の上で、窮奇は吼える。
 先ほどの悪意も余裕も消し飛んでいた。
268 :黒蔵 [sage]:2011/02/25(金) 01:02:16.63 ID:DJuczQCqo
>>265
鎖に触れて煙を発する混沌に、黒蔵は一瞬目を見張る。
短剣の力についての説明は受けたが、鎖については何も聞いていなかった。

2発目の錫の銃弾が黒蔵の胸を打ち抜いたその時、
丁度黒蔵は、もう一本の短剣を振り上げていたところだった。
その刃先が地面を抉る。

「蛇抜け!」

黒蔵の横たわった地面がズン、とすり鉢状に窪んだ。
自動車がすっぽり入るくらいのその窪みから、水と土が渦巻いて流れ出す。
それはかなり規模は小さいが、確かに土石流だった。

そこまでで黒蔵は意識を失い、土石流の流れに飲まれて混沌へと押し流されてゆく。
流れはすり鉢の直径と同じほどの幅、流域はせいぜい100mかそこらだろう。

蛇抜けとは、山に住む蛇が起こすとされた、土石流の古い呼び名である。
269 :渾沌 :2011/02/25(金) 01:12:42.23 ID:7hhCv7WzP
>>268

「ふ、ふぅっ! ははは・・・ちょぉおおおおおっとだけ驚きましたよ!」

 鎖が解け、いつもの調子を取り戻す渾沌。
 錫の弾丸も命中し、余裕を取り戻して近づいて言うところに・・・

「なんですか・・・。なんなんですかぁ! ソレはぁああああああああ!!」

 突如、目の前から吹き上がる。
 巨大な、膨大な土と水の塊。人間からすれば明らかに常軌を逸した量。
 ダンプが迫ってくるような圧迫感。

 慌てて、ショットガンを構えるが。
 あいにくの二連式、カチリカチリと虚しくなるだけだった。

「がっ! ふぅうううううううううう!!」

 渾沌の細身が、土石流に飲み込まれた。
270 :袂山精鋭部隊 :2011/02/25(金) 01:13:42.21 ID:SaVqtCISO
>>267
「おっと!」

翠狼が、ひゅうと下手な口笛を鳴らす。
地面にいた送り犬や送り狼たちは、あたりの木や岩を利用して飛び上がった。
この場所は1000年間の知り尽くしている。地の利はこちらのものだ。
とはいえ、先ほどの窮奇の攻撃で、地の利もあまり意味をなさないものになったが。

「そんなに怒って、どうしたぜよお嬢さん!!」

翠狼は飛び上がると、口を大きく開いた。
ぼこぼこ音を立てて、妖力による水弾が生まれる。
威力の低い三発の水弾を、窮奇に向かい発射した。

――と、同時に、反対方向から三発の炎弾が放たれる。
和戌のものだ。

「五月(いつき)、薄霧を張るじゃん」
「了解よ七生!」

五月と呼ばれた、紫の送り雀は飛び上がると、
空中で翼をはためかせた。
すると、周囲に薄霧が立ちこめてくる。
これは、相手に気配を悟られにくくするものだ。
271 :窮奇 :2011/02/25(金) 01:22:03.05 ID:7hhCv7WzP
>>270

「はっ! 中途半端なケモノの術なんて大した事ないよっ!!」

 3つの水弾を翼で弾き飛ばすが。
 思わぬ衝撃を受け、若干頬が歪む。

 氷山の上に立ち、辺りを見据える窮奇。

「・・・目晦ましかぁ。まぁ、意味ないけどね!!」

 アバウトになら、簡単になら。
 直接目を合わせずとも逆心は発動できる。

 ・・・しかし、気づいたときには。
 その発動したタイミングが、若干の遅れを取ってしまう。

「・・・ッ! しまっ――
272 :黒蔵 [sage]:2011/02/25(金) 01:25:12.47 ID:DJuczQCqo
>>269
混沌と黒蔵が一緒くたに流される。その距離およそ50m。
流れは最初の勢いこそ強かったが、途中で黒蔵の意識が途切れたことと、
そもそも自然の力を捻じ曲げて使っているのだから、流れの先では次第に緩くなる。
押し流されただけなら即死はしないだろう。

……もっとも、土砂に埋まればダメージは大きいのだが。

混沌が埋まらなかった理由は単に、その体の下に大蛇化して完全に伸びた黒蔵がいたせいである。
少し離れたところで尻尾だけを泥から突き出し、胴体は丁度、混沌の半身を支える形で埋まっている。
頭はというと、完全に土砂の下である。

混沌にとって泥まみれでキュウちゃんの元に帰らねばならないのは、死以上に屈辱かもしれない。
しかし、この大蛇を探れば、キュウちゃんの香りの翡翠の輪が見つかることは確かでもある。
273 :黒蔵 [sage]:2011/02/25(金) 01:25:46.66 ID:DJuczQCqo
>>269
混沌と黒蔵が一緒くたに流される。その距離およそ50m。
流れは最初の勢いこそ強かったが、途中で黒蔵の意識が途切れたことと、
そもそも自然の力を捻じ曲げて使っているのだから、流れの先では次第に緩くなる。
押し流されただけなら即死はしないだろう。

……もっとも、土砂に埋まればダメージは大きいのだが。

混沌が埋まらなかった理由は単に、その体の下に大蛇化して完全に伸びた黒蔵がいたせいである。
少し離れたところで尻尾だけを泥から突き出し、胴体は丁度、混沌の半身を支える形で埋まっている。
頭はというと、完全に土砂の下である。

混沌にとって泥まみれでキュウちゃんの元に帰らねばならないのは、死以上に屈辱かもしれない。
しかし、この大蛇を探れば、キュウちゃんの香りの翡翠の輪が見つかることは確かでもある。
274 :袂山精鋭部隊 :2011/02/25(金) 01:38:15.26 ID:SaVqtCISO
>>271
その頃、上空では。
もう一匹の送り雀――二葉が、薄霧に妖力を込めていた。
これにより、薄霧の中にいる送り妖怪同士は、意思の疎通が可能になる。

四十萬陀はノンストップに、指示を飛ばした。

「油断禁物だよって、お姉ちゃん」

指示を聞いて背後から近付いていたのは、小さな送りイタチ。
そしてぬるりと、尻尾で足に絡み付き、引っ張ろうとする。

元は人間を驚かすために作り上げた妖術で、本当はこのまま地面に潜り込むのだが、今は針山の上だ。
――しかし、足止めできれば十分。

「喰らえッ!!」

鋭い爪に炎を纏わせた和戌が、直接窮奇に襲い掛かった。
275 :渾沌 :2011/02/25(金) 01:38:25.51 ID:7hhCv7WzP
>>270

 生き埋めのように、ピクリとも動かない土砂から生えた腕。
 しかし指先は掻き毟るように動き出し、やがて自身の身体を土砂から引きずり出す。

「ぐっ・・・ふぅ!!」

 粘着性の、水気を含んだ土砂から。
 身体を引きずり出す渾沌。

「ふふふふふぅ! 油断しましたねぇ!!」

 ズルズルと這い出し、土砂の上を歩く渾沌。
 パーティースーツは泥だらけである。

「しかぁし! ワタクシ、ただでは起きませんよ・・・」

 大蛇に近寄り、翡翠を探ろうとする渾沌。
 しかし直後に、あの窮奇の妖気を感じ取る。

「むっ! これはキュウちゃんの波長!!」

「魂の欠片は・・・。えぇい!! 1割よりも残った八割ぃいいいいい!!
 うわぁああああああああん、キュウちゃぁああああああん!!」

 謎の叫び声を上げ、泥に何度もつまずきながらも。
 混沌は走り去っていってしまった。
276 :黒蔵 [sage]:2011/02/25(金) 01:51:06.69 ID:DJuczQCqo
>>275
混沌が去っただいぶ後。
突き出した蛇の尻尾がひくひくと動いて、ずるりと泥の中へ潜った。
しばらくしてぷくりと泥の上に泡が立つ。

泥の上に大蛇の頭が突き出てふぅと一息つき、そのまま再び意識を失う。
天には星が冴え、冬の夜はしんしんと更けていった。
今夜も冷え込みそうだ。
この様子では明日の朝、地面が凍りついているかもしれない。

//絡みありがとうございました
277 :窮奇 :2011/02/25(金) 01:56:14.10 ID:7hhCv7WzP
>>274

「・・・ッ! この!!」

 突如足に絡みついた、小さなケモノ。
 払いのけようとするが、その直後に。炎を纏った鋭い爪が迫る!

「グッ・・・!!」

 翼でのガード。強固で硬質な、簡易の盾だが。
 ジリジリと削られ、肉が焼かれていく。

「ちっ!!」

 全力で和戌を弾き飛ばし。
 その勢いを持って氷山から飛び降りた。
 針の先端を足にかけ、自在に跳び渡る。が、攻撃手段が残っていない。

 立ち止まっている間にも、次々と迫撃が来る。

「〜〜ッ!! 畜生がぁああ!! こんな・・・」
「キュウちゃん! 今回は撤退しましょう!!」

 突如、現れた泥だらけの男。
 先ほどから全力疾走していたはずなのに、まったく息が切れていない。

 ギリギリと歯を食いしばりながら恨めしそうに妖怪達を睨む。
 あとついでに不快そうに渾沌を一瞥する。

「・・・しょうがないねぇ。次は、こうは行かないだろうさ!!」

 地面から巨大な妖気の渦が現れ、土の塚となって窮奇と渾沌を飲み込んだ!
 妖蛙・わいらに抱え込まれ、悪意と狂気は地面へと潜っていく。


 山に吹く風が、辺りを清めていった。
278 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/25(金) 02:05:09.38 ID:SaVqtCISO
>>277
「ちッ!」

弾き返された和戌も、とまらずに再び攻撃に移る。
立ち止まる暇はあたえない。
――これなら、いける。四十萬陀がそう思った時だった。

「仲間か!?」

翠狼が声を上げる。
突然現れた、パーティースーツの男。
だが、どうやら撤退云々の話をしているようだ。
感付いた五月と二葉が、二人に突っ込む。

「逃がさないわよ!」
「……」

だが、それは間に合わなかった。
二人は、巨大な妖気の渦に巻き込まれた去っていった。

「ごめん七生、逃がし――七生?」
「――追い払った……」

呆然と、四十萬陀がつぶやく。
その表情は、嬉しいのか、悲しいのか、複雑なものだったが、
周囲の送り妖怪が集まって、やったんだよと言ってくれて、
四十萬陀は、そこに笑顔を浮かべた。
279 :袂山精鋭部隊 [sage]:2011/02/25(金) 02:05:54.97 ID:SaVqtCISO
>>278
名前欄ミスりました
280 :食人鬼 [sage]:2011/02/26(土) 21:43:32.17 ID:v76LibqEo
夜、雑多な繁華街。
ビルの隙間から濁った二つの瞳が人の群れを眺めていた。

「あの人は……妖怪? 違うなぁ。あの人は……あぁ、あの子じゃないか。こんなところに居るなんて。離れたら駄目だって言ったのに……」

ぶつぶつとなにかを呟きながらふらふらと通りに向け歩き出す。その青年の瞳には一人の女性しか映っていない様子だった。
人とぶつかり文句を言われながらどんどんと女性に近付いていく。
文句を言った人はその異常さに気付いたのだろう。顔を強張らせ足早に離れていった。
彼からは濃厚な血の匂いがするのだ。常人ならば恐怖を感じるだろう。
281 :春風 陽 :2011/02/26(土) 22:00:47.57 ID:LxSnyDWrP
>>280

「あぁ兄さん。ちょーーとお話伺っても良いかね?」

 ぶつぶつと呟く青年の肩に、凡字の布が巻かれた手が置かれる。
 穏やかな、5月の日向のような雰囲気だった。

「探し人とか何か? だったら俺も手伝ってやるからさ」

 血なまぐささに少し顔を引き攣らせながらも、
 それに押されないように、めいいっぱい明るい声で語りかける。

「俺、こう見えて“案内屋”だからさ」

 齢、20程の青年が。
 鬼に語りかけた。
282 :食人鬼 [sage]:2011/02/26(土) 22:11:17.78 ID:v76LibqEo
>>281
肩に置かれた手に気付きその方向に顔を向けた。
その顔には生気が無く、さっきまでは濁っていた瞳は今や奈落が広がっているようでなんの感情も読み取れなかった。

「何? あぁ、案内? え、あ、僕は【あの子】を探してて。でも今【あの子】が居たから」

そういって女性の方に振り向くが既に人ごみの中に消えてしまっていた。

「いなくなっちゃった。だから離れちゃ駄目だって言ったのに。【あの子】はほんともう……」

話しかけられていながらも独り言のように呟き続ける。
そこには人の理性が感じられず狂気しか垣間見れなかった。

「ごめん。大丈夫だよ。またすぐ見つかるから。【あの子】も僕を探してくれてるから」

会話が噛み合わない。やはり狂っているのだろう。
そのまま食人鬼は青年の手を払いふらふらと女性が消えた方に歩き始める。
283 :春風 陽 :2011/02/26(土) 22:23:21.66 ID:LxSnyDWrP
>>282

 噛み合わない会話。
 文字通り、話にならない精神状態。
 困ったように頭を掻き、話しかける。

「まぁ待て、てかもう率直に言うぜ。
 アンタ妖怪だろ? 少なくともただの人間じゃねぇよな、見るからに」

 自分を無視して歩き出そうとする青年の腕を掴む。

「大丈夫じゃねぇよ。多分、あの子はアンタの探す【あの子】じゃねぇ。
 んでもってだな、俺の勘じゃあアンタの言う【あの子】は簡単にゃあ見つからねぇような気がする」

 言葉の断片を拾い集め、会話を繋げる青年。
 ヘラリ、と笑いかける。

「まぁまたすぐに見つかるんだったらさぁ、
 ちょっち来てくれよ。俺との出会いは今回が初めてだしな」
284 :食人鬼 [sage]:2011/02/26(土) 22:33:50.44 ID:v76LibqEo
>>283
青年に手を引かれて食人鬼の動きが止まる。
なおも女性が消えて行った方向を見つめていたが青年の言葉に反応を見せた。

「妖怪? 僕が?そうなんだ。いや、そうだったっけ。そうだ。思い出した。妖怪を倒して僕が強くなれば【あの子】も僕の所に帰ってくるって。愛してくれるんだった」

そう言って初めて表情らしい表情を見せた。しかしそれは歪んだ笑み。それはなにか大切なものが壊れていることを窺わせる笑みだった。

「あぁ、そうだね。あの人は【あの子】じゃないし。それに会うのも難しいよね。いや、簡単だよ。僕が強くなればいいんだ」

壊れた笑みを深めた。そして青年の最後の言葉に乗ることにした。

「うん、いいよ。着いてってあげる。それに君、案内人さんなんだよね。それじゃ妖怪の居るところに案内してよ。簡単でしょ?」
285 :春風 陽 :2011/02/26(土) 22:43:56.86 ID:LxSnyDWrP
>>284

「あぁ、そうだな! よし、こっちだぜ」

 相手が思いの外乗り気だったので、
 少し調子付いた声で語りかける。

「強くなりてぇのか、じゃあ殴り合いだ!
 男は涙と痣の数だけ強くなれるんだしな!!」

 腕を引く、できるだけ人混みから遠ざけるように。

「流石にここじゃ殴り合いはできねぇだろ。
 お巡りさん来ちゃうだろうし。
 あと単純にお前を人から遠ざけたい、ヤバそうだから」

 やがて、人通りのまったくない荒廃した通りに出る。
 小さな高さ制限2.5mのトンネルが、異界と現実を隔てているようだった。

「じゃ・・・おるぁああああ!!」

 いきなり、殴りかかる青年。
 大振りの右ストレートが顎を狙う。

「ひひひ! よーいドンまで待ってくれると思ったかぁー?」
286 :食人鬼 [sage]:2011/02/26(土) 22:54:26.81 ID:v76LibqEo
>>285
おとなしく青年に手を引かれ移動する。

「殴り合いで強くなるの? 食べればいいんじゃないの?」

食人鬼の行動パターンは今は一つに統一されている。
【あの子】を探しその人が【あの子】じゃ無いことが分かると喰らう。
それだけだった。

「え?」

いきなり殴られ呆然とする。顎を殴られた勢いで大きく頭が後ろに傾ぐ。
しかし青年の言葉からもう案内が終わったと判断する。

「あ、あ、あ、案内オワリ? キミがヨウかい? キミを食べタらつよくなれるンダヨね?」

ここから新しい行動パターンが生まれる。
【あの子】に会うため、強くなるため、喰らうために今、力を振るおうとする。

「いただキマス」

首を元の位置に戻すとその勢いのまま青年の頭目掛け喰らいつこうとする。
287 :春風 陽 :2011/02/26(土) 23:07:36.85 ID:LxSnyDWrP
>>286

「うおぉっ! あぶねぇっ!!」

 いきなり飛び掛ってきた牙から飛びのくように避ける。
 いや、この男・・・“飛び掛られる前”に避けていた!!

「はっはー! 残念ながら俺は妖怪ではないな!
 だがその質問への返答はYesだ!
 なぜなら俺の名前は“陽”であり、かつ俺は霊的力を持った人間だからだ!!」

 余裕なのか、礼儀のつもりなのか。
 物凄い早口で挑発染みた返答をする!

「あとついでに言っとくぜ!
 俺は案内屋だからアンタみたいな妖怪を、
 和解させる気はあれど、倒す気はない!
 俺がアンタを殴った理由は実に単純だ!!」


「アンタのイケ面がムカついたからだ!!」 ド ン !!


 最悪である。

「さぁ、案内してやるぜ! 和解してやるぜ! 安寧させてやるぜ!
 アンタの迷い、分かち合ってやんよ! アンタが嫌と言ってもなぁっ!!」

 物凄い早口と共に、男の周囲には霊気が逆巻き始める。
 しかしその霊気は徐々に濁り始め、やがて目の前の鬼と似たような性質になっていく。
288 :食人鬼 [sage]:2011/02/26(土) 23:18:14.32 ID:v76LibqEo
>>287
避けられたせいかイラついたような表情を浮かべる。

「食べsAセてョ。強くなれルンでショ?」

どんどんと話す言葉が人間離れしている。正常な人のする発音で無い。
が、イケ面というワードに反応。

「え? アリがとウ?」

戸惑う食人鬼。しかし青年の周りから嫌な気配がするのを感じると表情が無くなる。
あれはマズイ。食人鬼の中の何かが告げる。ならばそれが形をなす前に――――

   潰 す !

人間離れした勢いでその現象を引き起こしているであろう青年にむけ左拳を振るった。
その勢いは凄まじく本物の鬼に近い領域にあった。
289 :春風 陽 :2011/02/26(土) 23:27:02.05 ID:LxSnyDWrP
>>288

「いいぞおぅ! 男の喧嘩は拳だぁ!!」

 妖気を纏い、全身全霊での迎撃!
 同調させ、ピンポイントで鬼の左拳と人間の右拳がぶつかり合う!

 激しい衝撃を受け、後ろに飛び退く。

「ぐ・・・おおおおおお!」

 右の拳の肉は裂け、血が噴出していた。
 しかし泣き声を涙と共に飲み込んで、さらに挑発する。
 先ほどと同様、再び霊気を出し。鬼のモノへ近づけていく。

「HEY! ほら、次が来るぜぇ!!」

290 :食人鬼 [sage]:2011/02/26(土) 23:34:52.07 ID:v76LibqEo
>>298
鬼の力を振るえたとしても肉体強度は人のそれと変わらない。
青年と同じように食人鬼の拳は砕け、腕にまでダメージが行っているようだ。

「……っく!」

未だ青年の周りから嫌な気配は消えない。食人鬼に焦りが生まれてくる。

「う……ウワアァAaAaあぁあアァ!」

まるで子供が癇癪を起こしたような声を上げもう一度突っ込んだ。
今度は右の拳を子供の喧嘩のように上から青年に叩きつけようとする。
291 :春風 陽 :2011/02/26(土) 23:43:53.69 ID:LxSnyDWrP
>>290

 春風 陽の力の正体は凡術である。
 「身剄融合」に特化した【風−カ−】の凡術だ。
 その性質は未来予知や、破壊力のある大技などでは断じてない。

「うぉらああああああ!!」

 全力で迎撃する左の拳。
 しかし・・・

「ッ!!」

 甲高い、鈍い音が春風の細胞を痺れさせた。
 折れた、完全に。利き腕ではなかったからか。
 しかし彼を支配する。興奮、沸騰、アドレナリン!

「ヒャッハーーー! 足元がお留守だぜぇええええ!!」

 受けたタイミングドンピシャで、春風の足が食人鬼の重心を蹴り上げた!
292 :食人鬼 [sage]:2011/02/26(土) 23:52:07.04 ID:v76LibqEo
>>291
またも右腕は鬼の力に耐え切れず壊れていく。
しかも青年から反撃を受け足元を掬われた。足元を蹴上げらるので必然的に頭が下に落ちる。
勿論、力が強いだけの食人鬼は何かが出来るわけでもなく――

「ガっ……っふ、っう」

辛うじて背中から落ちるように調整するだけが限界だった。
痛覚が消えているわけも無く悶える食人鬼。
図らずも大きな隙を作ってしまった。
293 :春風 陽 :2011/02/27(日) 00:09:42.97 ID:KzZgiyOgP
>>292

 倒れる身体を見据え、ニヤリと笑う。

「さぁ、これで俺の勝ちだな!」

 今度は彼の右手に霊気が集約していく。
 そしてやはり性質を変えていくが・・・今回は先ほどとは違い、やけに単調だった。

「陽の魂は風となり、陰る魂は土となれ。必殺!」

 球状の妖気の塊!
 重さも強度も殺傷力も一切ない、ただ単純な衝撃!

「頸洛!!」

 振り下ろされる、頸の爆風。
 妖気がただの風となり、あたりを吹き鳴らす。

 しばらくの余韻に浸かり、倒れた鬼の横にへたり込む。

「はぁーー・・・。
 アンタの妖気! 使ってみたらメチャクチャ痛かったよ!!」

 【風−カ−】の凡術とは、その性質たる「身剄融合」とは。
 自分の肉体を周囲の大気やエネルギーに変化・同化させることである。
 春風は食人鬼の妖気の流れに合わせて身体を動かしていたのだ。
 さらに頸洛とは、己の気に周囲の大気を同調させた爆風である。

「タネ明かしだ。俺が妖気を巻いてたのはアンタに合わせるためだ。
 動きじゃなくて、アンタ存在や・・・気持ちに合わせる為にな!!」

 そう、この凡術の真骨頂とは!
 同調によって、あらゆる者と同じ存在次元に立つことが可能なのである!!
294 :食人鬼 [sage]:2011/02/27(日) 00:21:34.23 ID:CdTSi7o2o
>>293
倒れている食人鬼に追撃が決まる。
その衝撃に“この青年を喰らう”という意志は折れてしまった。
そして朦朧とする意識の中、青年の言葉を聞く。

「僕に合わせる? 僕の気持ち……」

だからか、だからあんなに自分が見透かされているような嫌な気がしたのか。
もういやだ。こんな、こんな気分は味わいたくない。
僕は【あの子】に会うんだ。こんな所ではいつくばってる場合じゃないんだ。
その意志に呼応したかのように体の傷が再生を始める。
今まで喰らってきた物の生命力を使い回復をしているのだ。
食人鬼は体勢をうつぶせに移行し這い蹲りながらも移動を始める。

「僕は……ゲフッ! 【あの子】に会いに……行くんだ。強くなったら愛してくれる筈なんだ。帰ってきてくれるんだ。きっときっときっときっときっと!」

もはや青年のことなんて視野には入っていない。
此処から逃げまた【あの子】を探しながら人を喰らおうとしている。
295 :春風 陽 :2011/02/27(日) 00:42:08.72 ID:KzZgiyOgP
>>294

「うるせぇえええ! このメンヘラ男がぁああああ!!」

 這い蹲る鬼にロケット頭突きを食らわせる。
 ふらふらと頭を抑えながら立ち上がり、
 血に濡れた右手でジャケットの胸元を掴み、立ち上がらせる。

「メソメソメソメソ鬱陶しいんじゃあああ!
【あの子】とやらはメソメソなメンヘラが好きなのかぁ!?」

 なにをやっているのか、なにを言っているのか。
 そんな問いはあさっての方向に、春風はまくし立てる。

「泣いてないでシャキっとせい!
 愛されたいんだったら愛するに値する男になれよ!
 テメェが好きな【あの子】とやらはよぉ・・・、
 ただ単純に優れているだけのつまんねぇ女なのかぁっ!?」

 早口でまくし立てた後、大きくため息をつく。
 襟首を離し、諭すように語り掛ける。

「お前はぶっちゃけ素敵じゃない、
 しかもハートは無駄に脆い。だが想いだけは無駄に強い。
 少なくとも無駄にまっすぐな気風だけはわかる、それぐらい見りゃわかる」

 びっ! っと指差す。

「お前は俺に負けた! だから無様に這いつくばって、無様に俺の言うことを聞け!」

「無駄に心を揺らすな、無駄に荒れるな、無駄に【あの子】だと思い込むな!
 行き場をなくしたその思い、
 どうしても抑えられなくなったら【あの子】じゃなくて俺を探せ!
 多分【あの子】よりも俺は簡単に見つかる、見つけたら声かけろ!
 今回みたいな喧嘩だったら、またいつでもやってやんよ!!」
296 :食人鬼 [sage]:2011/02/27(日) 00:52:14.69 ID:CdTSi7o2o
>>295
強制的に青年の方に向き直させられる。そこからの説教タイム。
殆どの言葉は狂った食人鬼には届かないがこの青年が本気で自分の事を考えてくれるのは分かった。

「分かった。そうだね、まだ僕は弱いからね。簡単に会えはしないんだ。うん、うん」

自分に言い聞かせるように言う。
今回のこの青年との邂逅が食人鬼に僅かな変化をもたらす。
ただただ【あの子】のことだけを考えていただけだったが他の事象が自分の中に入る余地は出来るようになった。
しかし食人鬼の歪んだあり方は修正することは出来ない。
未だ心の中心では【あの子】の死を受け止められずその姿を探し彷徨っている。
しかし、理性とでも言うべき芽が芽吹きつつあるのだ。
結果、青年により食人鬼の瞳にはほんの僅かな光が灯り始めていた。

「うん、また相手して。喧嘩して殴り合えば強くなれるんでしょ?」
297 :春風 陽 :2011/02/27(日) 01:01:08.88 ID:KzZgiyOgP
>>296

「テメェはアホかよ! 半分もわかってねぇ!
 まぁいいや! その半分わかりゃ十分だ! そうだ、それで良い!
 いいか、弱いヤツと殴り合っても強く成れねぇぞ!」

 酷く浅はかで、勢いと力任せの理屈。
 だが、まぁそれで良い。少しはわかってもらえたみたいだから。

 突如、頬が引き攣るような痛みを思い出す。
 そうだ。折れていた、裂けていた。かなりの重症だった・・・。

「・・・、おぅ。わかったな、弱い者イジメすんなよ!
 そ、そういうゲスな男は死んでもモテねえぞ!!」

 最後にドモりながらも、全てを言い切り。
 春風は夜道をよろよろと帰ろうとしていた・・・。
298 :食人鬼 [sage]:2011/02/27(日) 01:07:48.73 ID:CdTSi7o2o
>>297
またも言葉を聞き流す食人鬼。しかし大事そうなところはしっかり拾っておく。

「うん、分かったよ。強そうな奴選んでみる。うん、じゃあね」

そう言って手を振りながら青年が帰るのを見送った。
それを見ながら食人鬼は思った。

(何であんな痛そうなんだろ?)

残念ながら心にまで突っ込めるような人はこの場に居ない。
人の痛みを理解できるよう成長するのはまだまだ食人鬼には遠い道のりだった。
299 :夜行集団 :2011/02/27(日) 23:10:01.19 ID:/09SqTXB0
街中とは言え、日が落ちてしまってからは、一段と人が少なくなる。
ただでさえ人通りの少ないこの地域は、本当に人が居食をしているのかと思ってしまうほどに
静まり返って、闇の雰囲気が濃厚になっていた。

そんな場所に一つ、歩く人影があった。
音楽妖怪の彼(彼女)は、とある知人の知人の葬式に鎮魂歌の歌い手として呼ばれていた。
その服装は式の邪魔にならないような、頭から足もとまで覆えるほどに長い、そして黒いローブである。
300 :春風 桐彦 :2011/02/27(日) 23:19:53.85 ID:KzZgiyOgP
>>299

「惜しい人を亡くしましたなー」

 静かに歩く彼女に語りかける、喪服の青年。
 背が低く、見た目は中学生にも満たないのだが・・・。
 その実、今年で23になる。

「お嬢さん、お隣良いですか?」

 物腰柔らかく語りかける青年。
 その雰囲気は五月の日向のようだった。

 
301 :華音 :2011/02/27(日) 23:29:08.47 ID:/09SqTXB0
>>300
「ええ、どうぞです」

突然知らぬ者に話しかけられ、ひら返事を返す華音。
一応話す相手に迷惑にならないよう、頭にかぶっていたローブのフードを脱いだ。

「惜しい人と言っても、華音と顔を合わせたのは今まで数えても1、2回、
 あまり其の人についての事は全く知らないに等しいですね」

喪服、自分と同じ人物の式に参列していたのであろうか、と思う。
しかし彼から悪意は感じなかったので安心して話しを続ける。

「あなたは、あの人のお知り合いですか?」
302 :春風 桐彦 :2011/02/27(日) 23:38:25.92 ID:KzZgiyOgP
>>301

「えぇ、私と弟の師です。生前は大変お世話になりましたネ」

 遠くを眺めるような、懐かしむような。
 どこか浮世離れした心持で言葉を連ねる。

「いい人でしたよ、昨日の事のようです」

 お弁当を差し出す。

「どうですか? お昼を抜いたら辛いでしょう、妖怪であってもネ♪」
303 :華音 :2011/02/27(日) 23:47:28.42 ID:/09SqTXB0
>>302
「それは・・・ご愁傷様です・・・」

想定していた以上に故人に近しい人物であったため、少し気まずくなる。
少したじろぎ、目を伏せる。
しかし、ふとちょっとした疑問が華音の中に浮かび、聞かずにはいられなくなった。

「あの人はどのような事の師だったのですか?」

そう聞きながら出されたお弁当に喜び、警戒心なくそれを受け取り満面の笑顔。
ちょうど歌で体力が消耗していた時だった、と思いながら食べ始めようとしてその言葉に驚く。

「か、か、華音がなんで妖怪って知ってるんですか!?」

後ずさりしながら尋ねる華音。
304 :春風 桐彦 :2011/02/27(日) 23:59:01.81 ID:KzZgiyOgP
>>303

 たじろぐ様子を見て、慌ててフォローを入れる。

「い、いえいえ! 大往生だったと聞きます。歳も歳でしたし・・・。
 思い起こすことも無かったようです、笑って送り出したいのですヨ」

 とりあえず、お弁当は行き場を失ってしまった。

「『お化けや妖精と話したり、触れ合ったりする方法』ですヨ。
 普通の方には信じがたい話でしょうがネ。理解ある穏やかな人でした。
 いつしか私もあんな風になりたいものです」

 慌てる華音に笑いかける。

「上手くは言えないのですが・・・そういう雰囲気を感じるのデス。
 私は才能に乏しいのでぼんやりとしかわかりませんがネ」

 だが、すこしうんざりとため息をつく。

「弟の方は私の数倍、力と才能があります。
 しかしアレは途方も無く不器用で精神的に未熟です。
 まだ師とのお別れをを受け入れようとしていないのですから」
305 :華音 :2011/02/28(月) 00:12:39.57 ID:rvwUBa6k0
>>304
「そ、そうですか・・・触れ合う方法ってことは、華音を襲わないってことですよね?
 良かった・・・最近は退魔師の人たちも活発で華音みたいな弱い妖怪は戦々恐々です。」

落ち着きを取り戻し、肩を撫で下ろす華音。
ふうっとこちらは大きめの安堵のため息をして春風の話を聞く。

「才能と言うのは、本当に望む者のところには余り与えられませんからね・・・
 でもその弟さんが才能人であったとても、華音は御兄さんみたいに優しい人がいいです。」

なんとも的外れな意見であろうかとも思うが、華音にとっては才能云々より、その才能に
いかに挑み続ける事が出来るかが大事なのである。
音楽妖怪、楽の才能はあったとしても、それは研磨しなくてはただの宝の持ち腐れであるのだ。
306 :春風 桐彦 :2011/02/28(月) 00:27:44.22 ID:tTiW7FYiP
>>305

「・・・そうですね、本当に。望む者に与えられないのが常です」

 なにか思うところが合ったようで、
 その言葉を反芻するように考え込む。

「優しいかはどうなのでしょう、案外わかりませんよ?」

 ニヤリ、と悪戯っぽく笑いかける。

「昨今、百期の主の座を賭けた争いが始まったと聞きました。
 私はよくわかりませんが、貴女も目指している・・・ようではありませんね」

「私はあまり貴女のように、
 はっきりと言葉を持つ妖怪にはあまり会ったことがないので。
 正直なところ、妖怪の世界についてはあまり分かりません。

 しかし貴女方妖怪から見て、我々人間はどうなのでしょう。
 短い時の中をせわしなく生きる、哀れな生き物に見えますか?
 それとも傲慢不遜なおぞましい生態に見えますか?」
307 :華音 :2011/02/28(月) 00:41:00.53 ID:rvwUBa6k0
>>306
「そ・・・そんな怪しい言われると華音は疑心暗鬼になってしまいます・・・!!」

ただの悪戯なのかもしれないが、春風の笑顔に華音のチキンハートが足を後ろに後ずらさせる。
しかし一歩だけしか距離を置かなかったのは、未だにある程度の信頼はしているようだ。

「人間ですか?」

そう聞かれ首を傾げ、片手をあごにやり考える。

「うーん、そうですねぇ。
 あなたの言うとおり傲慢不遜な?おぞましい生態ではあると華音は思いますよ?

 でも、せわしなくとか哀れなどとは思った事はないです。
 妖怪は寿命が基本、とてつもなく長いものですけど、それが別に一途に幸運ではないです。
 やっぱりどれだけ生きても、生きてることが楽しいと考えない者もいますからね。
 長さじゃないんですよ。音楽と同じで、量より質、質よりどれだけ奏でるかです。

 それは人間である貴方も知っている事ではないですか?」
308 :春風 桐彦 :2011/02/28(月) 01:04:03.36 ID:tTiW7FYiP
>>307

「質より量・・・まぁ確かに、それもそうですネ!
 私自身も自堕落な一ヶ月より、誰かと楽しく過ごす一日を大切にしたいですから」

 セラセラと華音に笑いかける。

 妙なことを言う方だ。
 傲慢不遜だと、おぞましいと言いながら。
 その "人" を葬儀で粛々と送り出しているのだから。

「・・・では、そろそろ私は立ちます。
 私は桐彦です、春風桐彦。春風は春の風。
 桐は白木の桐、で彦は山彦の彦という漢字で書きます」


 立ち上がり、先ほどの言葉を思い返す。

 悠久とも言える、途方もない一生の中で。
 生きるのが楽しくないとはどういうことなのだろうか?
 どんな形であれ、生と幸福への執着がない者など思い浮かばない。

 生きていればいろんなことがあるはずだ。
 それを全て否定しながら、悲観的に受け取りながら生きているとでも言うのか?

 それとも・・・。
 魂がその場に留まり続けて、閉塞的な一生の中で出口も目的もなく。
 ただこの世に縛り続けられている状態を『生きる』と表現したのか。
 だとしたらその果てに待っているのは、永久に届かない目標への過程には・・・

 いや、これ以上考えるのはやめよう。
 どうせ一介の人間には考えもつかない概念だろうから。

「それでは」

 理想の形である、自分の師の焼香を上げる為に。
 桐彦はその場から立ち去っていった。
309 :華音 :2011/02/28(月) 01:18:18.69 ID:rvwUBa6k0
>>308
「春風桐彦さんですね、覚えました!!」

なにも打算のない、とても朗らかな笑顔を浮かべていた。
手を上に上げて大ぶりに振りながら春風を見送る華音だが、漆黒のローブという服装が其の行為の
ミスマッチ感をかもしだしていた。

「今度会えたら貴方の好きな音楽を聞かせて下さい!!
 華音の興奮の坩堝に引き込んで見せますよ!!」

別れの言葉を告げた後に集団の館でなく、また別の方向へと足を進める華音。
知り合いの人間″の家に留めてもらう代わりに、そこで讃美歌を一曲歌う予定なのである。
その歌の練習の為に、自身の服装が喪服から修道服へと変わっていかせながら華音もその場を去った。
310 :黒蔵 [sage]:2011/02/28(月) 22:43:40.94 ID:rhuvlypSo
再びの戦い、そして再びの敗北。
混沌に打ち負かされ、敗残者は地中に埋まったまま、辛うじて呼吸だけをしていた。

日が昇り、凍りついた地面が日の光で少しづつ解け、緩んだ氷からは水が滴り始める。
滴る水は集まり、ぬかるみに浮かぶ大蛇の頭から赤い染みを洗い出して近くの沢へと向かう。

薄められながらも血の匂いは確実に、下流へと運ばれていった。
311 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/28(月) 23:04:18.49 ID:T9qLzB+8o
>>310
送り狼の和戌(わいぬ)が、袂山を上方に向かって駆けていた。
その頭には、送り雀の姿も見受けられる。

「――確かに本当じゃん?」
「う、うん。五月たちにも確認させたから、間違いない……と思う」

窮奇と戦闘したあの日。
袂山の上方で、土石流が発生した。
その時は特に気に留められていなかったのだが――先日、上流から血のニオイを確認したのだ。
偵察にいった和戌たちは、それが土石流の下から流れ出ていることに気が付いた。

(もしかしたら、仲間が土石流に巻き込まれてるかもしれないじゃん……)

その可能性を捨てきれなかった四十萬陀は、和戌と共に上方まで走っていた。
既に、幾匹かの仲間たちを、土石流の場所に待機させてある。


――と、ふいに。
上方から血のニオイと共に、よく知った者のそれが流れてきた。
四十萬陀は目を見開くと、和戌の静止も聞かずに、翼を広げた。
まさか、と悪い予感が胸を過る。

土石流の現場に辿り付いた四十萬陀は、確かにそれのニオイが下から発生していることに、顔を青ざめた。
人間の体に変化すると、周囲の送り妖怪たちに指示を出す。

「皆! 手分けして土石流をどかすじゃん!!
 和戌、他の仲間たちを呼んできて!」
「う、うん……!」
312 :黒蔵 [sage]:2011/02/28(月) 23:16:01.19 ID:rhuvlypSo
>>311
土砂に半分埋もれた、泥まみれの丸太のようなものの一端で、ちかりと青光りするものがあった。
以前、鳴蛇として捕獲されたときに、黒蔵の額に貼り付けられた蛇神の青い鱗である。
助けを呼ぶかのように、それは日の光を反射した。

しかし、地面はまだ半ば凍っている。
そして土砂の中から掘り出すのには、この蛇は少々長すぎる。
この蛇が目を覚ませばいいが、そうでなければ送り妖怪たちだけでは
掘り起こすのに苦労するだろう。
しかも土石流のために足元はぬかるみ、かなり不安定なのだ。
313 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/28(月) 23:28:49.59 ID:T9qLzB+8o
>>312
「!」

視界の端で、きらりと瞬いた物体に四十萬陀は飛びついた。
蛇の鱗――やはり、と四十萬陀は確信を覚える。
この土石流の下に、蛇神が、黒蔵がいるのだ。

「四十萬陀さん! 足元がぬかるんでて、上手く掘れません!」
「こっちもです。地面もまだ少し凍っていますし……。
 和戌(わいぬ)が和戌(わんこ)さんを連れてきてくれればいいんですけど……」

「……とにかく、今は掘り進めるしかないじゃん! 皆、お願い!」

四十萬陀は仲間たちに励ましの言葉を送るが、現実は厳しい。
黒蔵がこの下にいるとすれば、もはや一刻を争う状況かもしれないのだ。

(でもこれじゃ、仲間たちだけじゃ掘り出せないじゃん)
314 :夜行集団 :2011/02/28(月) 23:33:35.15 ID:rvwUBa6k0
>>312>>313
送り妖怪達による黒蔵発掘作業が行われている場所に銀髪のホストが参加する。
一応手には空気を呼んで、ある程度丈夫なスコップが手に握られたいた。

基本的に彼は山に出かけるようなアウトドア派ではないのだが、今回は散歩とはまた違った理由である、依頼されたのだ。
依頼主といっても身内の、氷亜から。
先日、偵察に出していた氷亜の部下が、袂山で大規模な戦闘があったという報告があった。
だからと言って、山とは縁の無い彼が行く義理はないはずなのだが、そこは人情が動かしたと彼は言っていた、が

「虚冥。君、昨日姫のプリン食べたでしょ」
「 てめえ言いがかりにもほどがwwwwww」
「写真あるよ、ほら。これ知れたら姫、どんだけ泣くのだろうね〜」

「・・・頼みごとはなんだっていう・・・」

現実とはこんなものである。

「袂山でなにが起こったのかって来てみたけどwwwwwwホントに何が起こったんだっていうwwwwww

 しかも四十萬陀もいるじゃねえかwwwwww土葬中か?っていうwwwwww」

笑いながら四十萬陀に話しかける。
現実はさらに空気の読めない男がいた。
315 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/28(月) 23:40:18.65 ID:T9qLzB+8o
>>314
「虚冥くん……!?」

その声に振り向くと、四十萬陀は驚きと同時に、
手に握られたスコップを見て、泣きそうな表情を見せた。

「お、お願い。この土石流掘り起こすの……手伝ってほしいじゃん!!」

そして、勢いよく頭を下げた。
周囲の送り妖怪たちは、虚冥の存在に気を配ってはいるが、変わらず作業を続けている。

「色々事情はあるんだけど、とにかく、この中に、助けたい妖怪が埋まってるはずなんじゃん!!
 でも、私たちだけじゃすぐには掘り起こせなくて……」
316 :黒蔵 [sage]:2011/02/28(月) 23:41:48.14 ID:rhuvlypSo
>>313
四十萬陀が睨んだとおり、それは蛇の頭だった。
その大蛇の口の端から、ちぎれて泥まみれの紐の切れ端が覗く。
あの時黒蔵は、翡翠の輪を土砂の流れから守る為に、咄嗟に口に含んだのだった。

>>314
銀髪のホストの言葉どおり、まさに大規模な土葬中。
そもそもこれは黒蔵自身が起こした土石流の結果である。
初めて使った技で自爆したのだから、竜宮の蟹が聞いたら頭を抱えることだろう。
……もっとも蛸なら、抱えるのは腹になるだろうが。

歩み寄るホストの足首に、不意に何かが絡んだ。
泥まみれの鎖である。鎖の端は泥の中へ続いている。
317 :虚冥 狂骨 :2011/02/28(月) 23:51:19.51 ID:rvwUBa6k0
>>315
「お・・・おう。」

怒ってくるかと思っていた分、四十萬陀のその必死な態度に面食らった。
さっきまでへらへらしていた自分が恥ずかしくなるほど・・・

「それじゃあ、この穴掘り王虚冥が巨大なクレーターをこの地に刻んでやるっていうwwwwww」

と言う事はない。
羞恥心の皆無な虚冥はまったく悪びれる様子もなく、黒蔵のもとに歩み寄る。

>>316
いざ掘り始めようとすると、足元に鎖。
そのどろだらけの鎖を手に取ってみたら、先は泥山の中に。
たとえそれが地球の空気栓だったとしても、好奇心にかられた虚冥に躊躇はない。

「でもなぁ、さすがにこれを引くのは難儀だっていうwwwwww」

力がある方ではない虚冥は意を決した。

虚冥の体が紫色の靄に包まれ始めた、しかしそれはすぐに消え去り、その中からは狂骨が表れた。
そして体から霊たちを呼び出し、ともに鎖を引くよう命令した。
318 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/02/28(月) 23:57:34.59 ID:T9qLzB+8o
>>316
四十萬陀はしゃがみこむと、自らも土を掘り始めた。
手や服が泥に汚れていくのにも、目に入らないとばかりに、必死な表情で。

と、そこへ、仲間たちを引き連れた和戌(わいぬ)が戻ってきた。
後ろには姉の和戌(わんこ)の姿もある。

「大丈夫かい、七生」
「和戌(わんこ)! いいところに来たじゃん!」
「何も言わなくていいよ。地面の凍りを解かせばいいんだろ?」

そう言うと、和戌(わんこ)は地面に火を噴きかけはじめた。
力は決して強くはないが、これでじわじわと氷を溶かしていくはずだ。

>>317
「ホント!? お願いするじゃんっ!」

嬉しそうにぱっと笑顔を咲かせると、四十萬陀は再び土に向かいあった。
こちらは虚冥に任せることにしたらしい。
319 :黒蔵 [sage]:2011/03/01(火) 00:02:16.62 ID:gq2Ed2Xeo
>>317>>318
鎖は何かに引っかかっているらしい。
動かないそれを、狂骨の霊たちが力の限り引き上げる。
さらに和戌の炎でやがて凍った地盤が緩み、鎖の先でごろりと地中で岩が動く。

 めりめり、ぼこり

鎖の両端にはそれぞれ抜き身の短剣が一振りづつ繋がっていて、引っ張られた勢いで地中から飛び出した。
それを引き上げたことで岩が転がり、それが引き金となって次々と新たな地面の崩壊が始まった。

しばらくして斜面を土砂が落ちきると、凍っていなかった深い部分のなかに蛇の半身があった。
まだ埋まっているのは尾の部分だけ、これなら容易に引きずり出せそうだ。
320 :狂骨 :2011/03/01(火) 00:08:26.62 ID:5TBI65Z10
>>318>>319
「ああ、任された」

そういうと作業に再び取りかかる狂骨。
霊達と鎖を引っ張り続けていると土砂の崩壊が起き、蛇の体が出てきた。

「!!
 
 おい!!四十萬陀!!」

事態の好転に目を(骸骨であるのでその表現の正誤は不明だが)かっと見開き、
四十萬陀に大声で呼びかける。

「体の大体が露出した!!
 この大蛇の体、全員で引っ張り上げればもしかすると、全てが掘り出せるやもしれんぞ!!」
321 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/01(火) 00:14:32.79 ID:r6mE1eV/o
>>319
――ぼこり。

短剣が飛び出した音に、四十萬陀が再び振り向いた。
同時に、視界いっぱいに映ったのは、迫ってくる岩であった。

「……う、うわわわわ!!??」

間一髪、岩を避け、地面に転がる。
しかし岩が転がるのは止まらず、激しい地響きと崩壊音を立てて、土砂崩れが始まった。

「な、なんだぁ!?」
「ひゃああ〜〜〜」
「落ち着きなさい和戌(わいぬ)!」

送り妖怪たちも、さすがに混乱を隠せない。
突然のことで、四十萬陀は地面に尻餅をついたまま、崩壊していく斜面を茫然と眺めていた。
とても長い時間に感じられた、土砂崩れが静かになっていく。
そして、静寂が訪れたあと、残ったのは――。

「……黒蔵君!!」

>>320
虚冥の大声にはっとした四十萬陀は、よたよたと起き上がると、
上ずった声を上げた。

「皆、手を貸して!! 黒蔵君の体を引っ張るじゃん!!」

送り妖怪たちは次々に大蛇の元へ集まると、その体を引っ張り始めた。
もちろん四十萬陀も、貧弱な体を精一杯使い、黒蔵の体を引き摺りだそうとする。
322 :黒蔵 [sage]:2011/03/01(火) 00:23:32.56 ID:gq2Ed2Xeo
>>320>>321
皆に引き上げられて、ずるりと大蛇の尾が地中から抜けた。
引かれたことで傷口が引きつり、その痛みで大蛇は目を覚まし、がっ、と黒い血を吐いた。
翡翠の輪だけはそれでも離さず、紐を伝って血が滴った。

(まだあいつ、いるのか!)

一瞬、戦いの緊張が大蛇の全身を駆け巡った。
一度は鎌首を持ち上げて、威嚇音を発したが、
直ぐに自分の周りの気配が複数であることに気付く。
そして何より、知った者の匂いがした。

(…違う、あいつじゃない)

ふっと緊張が緩み、ゆっくりと大蛇は縮んで人の姿になった。
323 :狂骨 :2011/03/01(火) 00:31:33.60 ID:5TBI65Z10
>>322
「む、想像していた以上に大きいな。」

引きずり出された黒蔵を見ながらつぶやく狂骨。
作業に参加していた霊達は役目を終え、すっきりした面もちで狂骨の体に戻っていった。
すると突然大蛇の暴れようである。

「!!  なんだ!!

 錯乱でもしているのか!?」

身構え、いつでも黒蔵の急襲に対応できるようにしたが、この状況を理解した黒蔵が
その動きを止め、人の姿となったため狂骨も肩を撫で下ろす。

>>四十萬陀
そして一件落着したところで四十萬陀に状況の説明を求めた。

「して、この大蛇は四十萬陀にとってなんなのだ?」
324 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/01(火) 00:40:58.85 ID:r6mE1eV/o
>>322
「いせーの、せっ!!」

一斉に、引っ張る力を加える。
ずるずると、引き摺られる体。最後の掛け声と同時に、尾が地中から抜けた。
その勢いで、何匹かの送り妖怪たちが尻餅をつく。


「――黒蔵君!」


名前を呼びながら、
縮んでいく黒蔵に駆け寄り、四十萬陀は傷付いた体を支えた。
紐を伝って、血が滴る。

(ミナクチ様のこと、離さなかったんだね……)

心ゆるびた表情。嬉しくて仕方なくて、それでいて安心していて。
とはいえ、まだ黒蔵の状態が分かっていないため、心の底から安心という訳にもいかない。

「誰か、救護できる子たちを呼んできてほしいじゃん!」

四十萬陀の一声で、数匹の送り妖怪が森に散った。

>>323
「あ、虚冥くん!」

あどけない顔を綻ばせて、頭を下げる。

「(何でだかわかんないけど)手伝いに来てくれて、本当にありがとうじゃん。
 何てお礼を言ったらいいか……」

そこで、説明を求められる。
四十萬陀は思わず、言葉に詰まってしまった。

――「何」と聞かれても、そんなの「友達」に決まっている。
しかし何だか、よく分からない気持ちに駆られてしまい、四十萬陀はそれを声に出すことはできなかった。
そこでふと、瞳の言葉が頭を過ぎた。

「……私の大切な人じゃん」

うん。この言葉は、とてもしっくりくる。
言いながら、四十萬陀は自分自身でさえも頷いた。

「えっと、実は、この間――」

それから、この間窮奇が攻めてきたこと、土砂崩れがあったことなど、虚冥に事の次第を説明した。
325 :黒蔵 [sage]:2011/03/01(火) 00:48:09.79 ID:gq2Ed2Xeo
>>323>>324
人の姿では四十萬陀よりも小さな、全身泥まみれの少年は、翡翠の輪の無事を確認して安堵した。
無数の散弾の傷と、胸と腹には大穴が開き、失血で寒い。

(ああ、やっぱり四十萬陀だ。もう一人は誰だろう?)

のろのろと片手で持ち物をさぐり、薬の入った袋を取り出そうと苦労していたとき。

―――大切な人じゃん。

すとんと気持ちの真ん中に落ちたその言葉に、なぜか涙が溢れ出した。
痛いのか、緊張が緩んだのか、何なのか自分でもよく判らない。
涙と一緒に地面に袋が落ちて、薬の瓶がからからと転げ出た。
326 :狂骨 :2011/03/01(火) 00:55:31.14 ID:5TBI65Z10
>>324
「礼はいらん、俺としてはこの事態に至った情報の収集、そして知り合いの者に手を貸せた、
 それで十分に満足している」

ツンデレの様な返答になりながらも狂骨は四十萬陀の頭の中での渦巻く思いを感じていた。
しかし、それは言わずともその顔に浮かんでいる表情を見ればすぐに理解できるものであった。

「(―やはり良い顔をするものだ・・・)」

ぼんやりと狂骨から虚冥に姿を変えながら思う。
そして四十萬陀の窮奇に関する話に耳を傾け、いろいろな話を思い返していた。

「(窮奇、氷亜や露希、そして四十萬陀とその大切な大蛇か・・・
  なんとも波乱に事欠かん妖怪だっていう・・・)」

「なるほどwwwwwwだいたいの経緯は理解できたっていうwwwwwwサンクス」

>>325
その黒蔵の涙はあまり見てやらぬようにしている虚冥は、四十萬陀に薬の瓶を教えた。

「それが何か知らんが大事なもんか?っていう」
327 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/01(火) 01:02:02.18 ID:r6mE1eV/o
>>326
「――でも、せめてたくさんお礼は言わせてほしいじゃん。
 ほんとに、本当にありがとうじゃん」

目を細めて、感謝で満ち溢れたような顔で笑う。
いつもの調子に戻った虚冥に、くすりと微笑むと、
虚冥の言葉に下を見た。

「え?」

>>325
「?」

そこにあったのは、薬の瓶。
――黒蔵のものだろうか。首を傾げながら、それを手に取る。

「黒蔵君、大丈夫じゃん? 私の声、聞こえる?」

体を支えながら、しゃがみ込んだ。
そして、黒蔵の顔を覗き込むと、

「……黒蔵君? ど、どうしたじゃん? どこか痛むの?」

頬を伝うもの。地面にシミができている。
四十萬陀が心配げに尋ねた。
328 :黒蔵 [sage]:2011/03/01(火) 01:14:48.50 ID:gq2Ed2Xeo
>>326>>327
確かに傷口は痛むのだけれども、自分はそれで泣いているのだろうか?
四十萬陀の問いかけに、あやふやに頷いて、黒蔵は薬の瓶に手を伸ばす。

瓶の中身は人魚の血。
黒蔵と同じく、罪を背負った者の提供した、生命の一部分である。
それを飲み下して、ようやく黒蔵は口が聞ける様になった。

「ありがとう……あと、ごめん四十萬陀」

しかし、なぜか上手く話せない。
どうしてなんだろう、とぼんやり考えながら周囲を見渡した黒蔵は、
銀髪のホストの持つ二本の短剣に気付いた。

「あ。それ、なくさないで済んだのか」

少し表情に血の気が戻ってきた。
しかしまだ腹の傷の中には嫌な感触が残っている。

「…変な奴に金気を打ち込まれて、まだこっちの傷には残ってるみたいだ」

混沌に撃ち込まれた錫の弾丸は抉り出さねばなるまい。

「初対面なのに頼むのも何だけど、ちょっと傷の中探ってくれないか?
 四十萬陀は、ちょっと見ない方がいいかもしれない」

黒蔵は涙をごまかすように、慌てて虚冥に頼んだ。
329 :虚冥 狂骨 :2011/03/01(火) 01:24:03.33 ID:5TBI65Z10
>>327>>328
「あ? なんだこれ、大事なもんだったのか?」

あわよくば物的証拠として持ち帰ろうとしていた虚冥はぶっきらぼうな返答をした。
妙なやつというのは窮奇か、または別の、と考えながら二つの剣を黒蔵の隣に置き、話を聞く。

「ふん、傷の中・・・
 痛くても俺を怨むなよ?っていう」

そういうと虚冥は狂骨と成り、医術方面にたけた霊を呼び出し命令をする。
するとその霊は慎重に黒蔵の体内にある弾丸を探し始めた。
330 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/01(火) 01:26:09.87 ID:r6mE1eV/o
>>328-329
「う、ううん。謝ることなんてないじゃん」

首を振ってはみるものの、
何故だか、いつもと同じよう話せない。

「わかったじゃん。虚冥君、黒蔵君をよろしくね。
 ……黒蔵君、終わったら、傷の手当てするじゃん」

黒蔵に言われたことに素直に頷き、言葉を残すと、
治療のために薬草を取りに、四十萬陀は一旦その場を離れた。
331 :黒蔵 [sage]:2011/03/01(火) 01:40:29.44 ID:gq2Ed2Xeo
>>329
「うん、それ俺の武器なんだ。でも借り物だから無くせないの」

錫の弾丸は肋骨の内側に刺さって止っていた。
傷口をさぐられて弾丸を抜き取られている間、痛みに黒蔵は唸っていた。
悲鳴を上げるのだけは、恥ずかしいので頑張って我慢した。

「……助かった」

途方も無く長く思えた時間が過ぎ、弾丸がようやくつまみ出されて黒蔵はため息をついた。
金気さえ無くなれば痛みはかなり薬で楽になるし、回復も早くなる。
半日もすれば川までは歩けるだろう。

「助けてくれてありがとう、感謝する。俺は、黒蔵って言う。
 助けてもらったばかりで何だけど、こういう奴をみたことないか?
 こいつとは初対面なのに、俺のこと知ってた」

黒蔵は傍らにあった水溜りで、戦いの際の混沌の姿を映し出した。
水鏡の中の混沌は、狂ったように笑いながら銃を撃っている。

「どうやら人間らしいんだが、こいつが何者で、なんで俺を狙ったのかはさっぱり判らないんだ。
 この翡翠の輪に興味を示して狙ってきたけど、それも途中で気付いたからだったし」
332 :虚冥 狂骨 :2011/03/01(火) 01:51:14.54 ID:5TBI65Z10
>>330
「安心すると良い、こいつは医療に関してはエキスパートだ。
 ・・・まあ、妖怪に対して人間と同じ要領でいけるかは自信はないがな・・・」

そう自分に任せて離れる四十萬陀に告げた。
>>331
「ふぅ・・・つまみ出せたか、ご苦労だったな。もう戻ってもいいぞ。」

弾丸の摘出をし終えた霊にねぎらいの言葉を狂骨が掛けると、霊は体へと戻っていった。
そして黒蔵の方を見つめて話しかけた。

「黒蔵か。俺の名前は虚冥、今は狂骨だが虚冥と呼ぶといい。

 ・・・ふむ、申し訳ないが知らないな・・・。
 しかし四十萬陀は窮奇と言う妖怪に、ちょうど同時期に出会っていたそうだ。

 もしかすると案外、そいつは窮奇の手のものかもしれぬぞ。」
333 :黒蔵 [sage]:2011/03/01(火) 02:02:45.47 ID:gq2Ed2Xeo
>>332
「虚冥さんか。ありがとう」

窮奇。さっき四十萬陀もそう言っていた。

「俺、窮奇には一度会ったんだけど、その時は顔を見てないんだ。女だってことしか判らない。
 でも……そうか、それなら妖気が読めないのに、いきなり俺を蛇だと言ったことも、
 あらかじめ金気を容易してたのも納得できる」

キュウちゃんがどうこう言っていたが、あれは窮奇のことだったのか。

「これにキュウちゃんの香りがする、とか言ってたな」

黒蔵は掌の翡翠の輪を見る。
罪かぶりの自分が唯一安心できる居場所で、保護者でもあった者の、変わり果てた今の姿である。
334 :虚冥 :2011/03/01(火) 02:10:44.90 ID:5TBI65Z10
>>333
「お前も既にあっていたのかっていう」

暗躍し続ける妖怪、窮奇。その存在に同じく暗躍しづけた夜行集団は厳重注意をすべきだと判断した虚冥。

「キュウちゃんの香り?人間にそれが感じ取れるかは知らんが、多分妖気的なものかもしれん。
 にしても、それはなんだ?お前からは良く分からない物ばかりが出てくるっていう」

今度はその翡翠の輪が気になった。
そこからは確かに自分と似た混沌のまがまがしい狂気、そして微かばかり感じる神の力。
335 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/01(火) 02:16:45.55 ID:r6mE1eV/o
>>333-334
木籠に、傷の手当てに使える薬草を摘んでは入れ、摘んでは入れ。
他の送り妖怪にも手伝ってもらい、黒蔵の分には十分すぎるくらいの薬草が集まった。

(そろそろいいかな……)

あれからしばらく経っているし、摘出も終わったころだろうか。
四十萬陀は木籠を抱えると、元の場所へ戻りだした。
336 :黒蔵 [sage]:2011/03/01(火) 02:27:59.69 ID:gq2Ed2Xeo
>>334>>335

「ん。
 窮奇と会ったときは…色々食べさせてくれて、確か、袂山の神様みたいなものだって聞いた。
 その時は俺の呪いを解いてくれるって言うし、いい人だと思ったんだ。
 でも気付いたら腹に穴2つも開いてるし、呪いが解けるどころか封印のほうが解けてるし
 ……散々だった」

蛇神を襲ったことやら、四十萬陀の前で蛇肉を貪ったことやら、恥ずかしい記憶の方も色々と
思い出されて黒蔵は頭を抱えた。

「……これな、俺の使えてる蛇神なんだ。
 俺が色々やったせいで、こうなっちゃったんだ。全部…俺のせいで。
 この皹は穢れだって。蛇神にも祓えない穢れなんだって」
 
後悔と自責で、俯いた黒蔵が告白する。

「この皹が今、少しづつ蛇神を壊していってる。
 止めるのには、この穢れの元を殺せって言われて、多分それが窮奇なんだ…でも」

黒蔵は、殺 す、と言えずに壊すと表現した。

「でも、俺は弱い……ろくに戦ったことも無いし、力も無い。戦っても負けるんだ」

黒蔵は掌に爪が食い込むほど拳を握り締めた。
四十萬陀が傍に来て、途中からは聞こえているのにも気付かずに。
337 :虚冥 :2011/03/01(火) 02:41:45.20 ID:5TBI65Z10
>>336
一時、四十萬陀の目に闇が突然入り込んでいた理由は黒蔵であったと確信した虚冥。
しかしその闇も現在の四十萬陀と黒蔵を見れば、どうなったかは一目瞭然である。
あまり交友を深めていなかった相手だが、その者の悩みが晴れた事に安堵する。

「お前の・・・黒い大蛇の・・・

 !!

 そうか!!お前は蛇神ミナクチと一緒にいたっていう奴かっていう!!」

ようやくその輪が氷亜と会い、かつ以前滝霊王との一戦にて半壊していた夜行集団を救った
その人なのだと知った。
そして今その恩人が窮地に立たされている事も。

「弱い・・・か。自分の弱さを認めれてるだけましだっていう。

 
 よし、俺らの夜行集団のお前への手助けを、この男虚冥が約束してやるっていう!!」

どんっと胸を張る虚冥の顔は、どや顔で眩しかった。
338 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/01(火) 02:45:16.06 ID:r6mE1eV/o
>>336
『――全部、俺のせいで』
「!」

苦虫を噛み潰したような、黒蔵の声。
四十萬陀は二人の元へ駆けると、遠巻きに黒蔵が話す様子を眺めていた。

「……」

『戦っても、負けるんだ』

そういった黒蔵が、犬御を傷つけられた時の自分と、重なっているように思えてならなかった。
強く、同じように掌を握りめる。

――あの時、力がないことが、ただ悔しくて、
弱いという事実だけが、重く圧し掛かっていた。

今だって、四十萬陀は決して強いわけじゃない。
だけど、あの時と明らかに違うのは――

>>337
木籠を持った四十萬陀が、二人から見えるところまで歩いてきた。

「ただいまじゃん」

薬草が入った木籠を地面に置き、そう言う。
339 :黒蔵 [sage]:2011/03/01(火) 02:54:55.79 ID:gq2Ed2Xeo
>>337
「夜行…集団……?」

耳慣れない言葉に、黒蔵が戸惑った。

「蛇神のこと、知ってるの?知り合い?」

夜行集団というものについて、蛇神が何か言っていたかどうか、
黒蔵は必死に思い出そうとするが徒労に終わった。

(きっと、聞いた筈なのに忘れてるんだ)

普段からあまり頭は良くない自覚はある分、情けなさが倍増する。
そこに弱さを認めているだけマシだといわれても、何だか余計に落ち込むのだ。
でも、虚冥が協力してくれる事には、感謝しなくてはならない。
進んで差し伸べられる救いの手は、本当に得がたいものなのだから。

>>338
再びべそをかきかけていた黒蔵は、四十萬陀から慌てて涙を隠した。つもりだった。

「お、おかえり……ぐずっ」

こっそりと鼻を啜ろうとして、失敗した。
340 :虚冥 :2011/03/01(火) 03:03:45.10 ID:5TBI65Z10
>>338
「おうwwwwww!!早かったなっていうwwwwww!!」

どこから見ていたのか、そもそも何も見ていなかったのか、それは彼女の顔からはうかがう事は
出来なかったが、そのどちらでも良いのかもしれないと虚冥は思う。
知っていいれば、四十萬陀は黒蔵の隣にいてやれるであろう。
知らなければ、それはそれで問題ない。と

「さっそくその薬草でこいつの怪我治してやれっていうwwwwww」

>>339
「はん!! 知らないなら知らないでいいっていうwwwwwwどうせ誰にも何がどこにあるかなんざ
 分からねぇんだからよwwwwww

 知り合いっつても、知り合いの知り合いなだけだwwwwwwまあややこしいが一応あんたんとこの
 保護者さんは知ってるってこったwwwwww」

それだけ言うと虚冥は、二人に背を向け山を降りて行った。
二人の間にずっといるほど俺は野暮じゃないゼ!!とかっこつけて去っていったは良いが、
スコップを忘れ、後々そそくさと山に再び戻る事になるとは虚冥は知らない。
341 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/01(火) 03:08:30.64 ID:r6mE1eV/o
>>339
「……ぷっ」

思わず噴き出してしまった四十萬陀は、二・三度可笑しそうに肩を揺らすと、
ちょいちょいと黒蔵に向かって、手を招いた。

「黒蔵君、ちょっと、こっち来て」

>>340
「うん!」

虚冥の言葉に、元気よく返事を返す。
そして、山を降りていく虚冥に、ぶんぶんと手を振った。

「またいつでも来てじゃん、虚冥君!」
342 :黒蔵 [sage]:2011/03/01(火) 03:20:47.96 ID:gq2Ed2Xeo
>>340
急に笑いを含んだ口調になった虚冥に、黒蔵は戸惑った。
同時になんだか、さっきまでとは違う恥ずかしさに襲われて赤面した。

「あ……」

その間に銀髪のホストはさっさと歩いて行ってしまい、礼をいう暇も無かった。
黒蔵は間抜けたように口を開けて、小さくなってゆく背中を見送るしかなかった。

>>341
「う……うん。まって四十万陀。  ありがとう!」

四十萬陀に答えてから、慌てて虚冥の背中に向かって声を精一杯に張った。
その途端に腹の傷が痛んだ。

「いっ……!」

弾丸を探すのに穿られたばっかりだった傷口を涙目で抑えて、
先ほど赤面したばかりの顔を青ざめさせながら黒蔵は四十萬陀を見上げた。

「まだ立つのはちょっと無理かも」

情けなくもヘタレはへたりこんだままだった。

その夜、傷に薬がしみて一晩こっそりマジ泣きしたのを、
上手く隠せたつもりなのはやはり黒蔵だけ、かもしれない。
343 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/01(火) 21:58:48.83 ID:ACN0ynGDO
暗い夜、真っ暗な山中、更にその奥深くにある不気味な廃寺

「…はい、と言う事でね、今夜はいかにも幽霊がいそうな廃寺からお送りしておりまーす」

廃寺の前にいるのは黒い無造作ヘアーに白ニット帽、隈の深い目、蔓に縞模様をあしらった黒縁眼鏡
目玉模様のシャツに、黒いジャケットとカーゴパンツ
口に棒付き飴をくわえている男
そんな男が、誰ともない何かにレポートをしていた

『…で、どうなのじゃ?』
「俺が知るか、作者なら解るだろ?」
『…むうぅ』

男の傍らには、蒼い人魂が浮いていて、男は人魂と何かを話しているようだ
344 : :2011/03/01(火) 22:05:12.16 ID:MOuhmopAO
>>343
「ふぅ…結局あれから何の情報も無しか、やはり私一人では限界かな…」

黒い着物を着た一人の少女、山中を歩く。

「まぁ、とりあえず今は修行だな。早く、技を極めなければ。
ん?妖気…?この寺からか?」

少女は妖気を感じ、廃寺へ向かう。
345 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/01(火) 22:15:56.02 ID:ACN0ynGDO
>>344
「んー、ここも外れかにゃー?」

男は口から飛び出た棒を掴み、捻って咥内でカラコロと鳴らす
その視線は廃寺に向いており、まだ少女には気付いていない…?

『いや、まだ解らんぞ、中を詳しく調べてみん事には』

「それじゃおじいちゃんが探して来なよ、魂だから壁も床も無視出来るじゃないか」

『貴様も探さんか!一人より二人の方が楽じゃろうが!』

「………」

男は怠そうに、ボリボリと頭を掻いた
346 :瞳なか :2011/03/01(火) 22:21:57.46 ID:MOuhmopAO
>>345
「…あの、あなた達、こんなところで何を?」

二人の様子を見て、警戒気味に聞いた。
ここのところ、不穏な出来事が続いているため、普段よりも警戒心が強くなっているようだ。
347 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/01(火) 22:29:11.61 ID:ACN0ynGDO
>>346
『ぬはッ!?貴様いつの間にッ!?』

少女に声を掛けられてようやく気付いたか、人魂が驚いたような声を出した

「…女の子と待ち合わせしてるように見えるかい?」

一方男は、落ち着いた様子で冗談を言いながら少女に振り向いて

「俺だって待ち合わせする女の子がいたらしてーよバカヤロー!!」

自分で言った冗談に、理不尽に勝手にブチギレた
348 : :2011/03/01(火) 22:35:15.28 ID:MOuhmopAO
>>347
「あ、驚かせてしまったのなら、すまなかった。」

申し訳なさそうに謝る。ただし、警戒は解くことなく。

「いや、そんな風には見えないな。さっき外れとか言っていたが、何かを探しているのか?」

こちらにも、警戒を解かず冷静に言った。
349 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/01(火) 22:47:02.06 ID:ACN0ynGDO
>>348
「おいおい、渾身の自虐ギャグをスルーしないでくれよ、悲しくて鼻水が出るぞ」

今のはギャグだったのか、鼻水が出るのは寒いからじゃないのかという疑問を全て投げ飛ばし、マイペースを男は保っている

「まあ、実はな…」
『刀じゃ、儂らは一降りの刀を探しておる』

男が説明しようとすると、途中で人魂がそれを遮って説明した

/すいません、風呂に入ってくるので次遅れます
350 : :2011/03/01(火) 22:52:28.10 ID:MOuhmopAO
>>349
「す、すまない…」
(ギャグだったのか…)

唖然とする少女。男のペースについていけないようだ。

「刀…か、まさかとは思うが、私の事じゃないよな?」

とりあえず、聞いてみる。その可能性は、ほとんど無いが。


/了解です。
351 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/01(火) 23:15:48.17 ID:ACN0ynGDO
>>350
『はぁ?何を言っておる?刀を探してるのに何故女子を探さなければならんのだ』

少女の問い掛けに、訳が解らないと言うように人魂が聞き返す

「いやもうこの娘でいいじゃん、寧ろ俺はこの娘がいい、もうこの娘お持ち帰りして二人で幸せに暮らそう、そんでおじいちゃんはさっさと成仏しろ」

一方男は少女に言い寄っていた

/ただいま帰りました
352 : :2011/03/01(火) 23:22:55.30 ID:MOuhmopAO
>>351
「私は、こう見えて妖刀の九十九神なんだ。
証拠は、私の腕を見ていてくれ。」

そう言うと、右腕を刀に変化させる。

「ほら。これで、わかっただろう?」

刀に変化した右腕を二人に見せた後、右腕を人間のものに戻して言った。
353 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/01(火) 23:32:55.19 ID:ACN0ynGDO
>>352
「成る程、刀の九十九神だからそう聞いた訳か」

ケロッと先程のおふざけが無かった事のように振る舞い、興味深そうに少女を見る男
この時彼は「実は俺も眼鏡の九十九神なんだ」というギャグを飛ばそうとしたが、やっぱりやめた

『ふんッ、儂の刀はそんな物とは違うわい!あれは儂の究極の一品じゃぞ!』
「脅されて命惜しさに作った挙句作者呪い[ピーーー]刀の何処が究極の一品だってのよ」

『違うッ!!あれを鍛えた時は恐怖よりも期待がじゃな…』
「でも原料に鬼丸々一匹っすよね?超悪趣味っすね先輩(笑)」
『貴ィィィ様ァァァァ!!!』

「…ま、そういう訳でお前じゃない、別の刀を探しに来た訳よ、うん」

脇で何やら怒鳴り付ける人魂を無視して、少女にそう説明した
354 : :2011/03/01(火) 23:43:17.71 ID:MOuhmopAO
>>353
「究極の一品か…なにやら、物騒な刀らしいな。」
(私も人のことを言えないかもしれないが…)

心当たりがないか、考えてみる。しかし、どうやらなさそうだ。
それと同時に、自らの過去も思い浮かべたようだ。そのためか、少し悲しそうな表情になる。

「ところで、どうしてその刀を探しているんだ?やはり、究極の一品だけに特別な思いがあったのか?」

興味本位と危険な刀を悪用するのではという警戒から聞いてみた。
355 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/01(火) 23:55:18.06 ID:ACN0ynGDO
>>354
「俺もこの爺さんから聞いたくらいでしか知らないけどな、結構その刀で呪い死んだ奴多いらしいし物騒なのは確かでしょ、うん」
「…んで、そちらさんもその物騒な刀な訳だ」

うんうん、と頷いて、自分で自分に納得しながら話を続ける
少女の微かな表情の変化にも気付いたようで、さりげなくそれとなくそれに触れる

「さあ?俺は頼まれたから探してるだけだし、どうなの?」
『そりゃあ決まっとるじゃろ!』


『…えーと、なんじゃったっけ?』
「こいつ斬っていいよもう」

本当に忘却したのか、とぼけているのか、人魂からも理由は明かされない
356 : :2011/03/02(水) 00:05:25.99 ID:DqSJ0i+AO
>>355
「なるほど、危険な刀みたいだな…」
(呪われた刀…まるで、昔の私のようだ…)

危険視され封印されているかもしれない、かつての自分のように。
そう思ったが、まだ警戒しているため伝えたりはしない。

「まあ、私はそんなに物騒な刀ではないよ。」

「…本当に忘れたのか?あなたにとって、大切な刀というわけじゃないのか?」

驚きと呆れと疑いが混ざった表情で話す。
357 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/02(水) 00:18:01.86 ID:8OMy7tqDO
>>356
「どうかな、九十九神になるくらいだ、物騒じゃないとは言い切れないだろう?」
「というか、物騒じゃない刀なんて本当はないんだけどな、刀は生き物を斬る為にあるような物、これが物騒じゃないとどうして言えようか」

武器に物騒も糞もあるか、と言った彼の表情は、何も考えていないような目をしていた

『うぅむ…昔はこう…何かはっきりした理由があった気がしたのじゃが…今となっては何と無く気にかかる感じにしか…』
「おいおいおじいちゃん、ボケるのも大概にしてくれよ」

うぅむと悩む人魂を横目で見ながら、男は口から棒を取り出し代わりに新しい飴をくわえた
358 : :2011/03/02(水) 00:30:07.40 ID:DqSJ0i+AO
>>357
「そんなことはない!!
確かに、刀は他者を傷つける武器だが、不幸を断ち斬り大切な者を守ることもできる!」

自分はそうだった、そう使われた、そう言われた、そして――そう変われた。
瞳はそう思っているため、その言葉には怒りを隠せなかった。
自分とあの人――風月を否定された気分になったからだ。

「…少なくとも、私はそういう刀だ。」

しばらくして、落ち着いたのか普通の口調に戻る。
まだ、完全に怒りは収まっていないようだが。

359 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/02(水) 00:42:40.72 ID:8OMy7tqDO
>>358
「それじゃ、そりゃお前が特別な刀なんだ、いや、持ち主が特別だったのかな?」
「どちらにせよ、ただ傷付けるだけの刀とは違うみたいだな」

少女に怒鳴られたが、余り驚いた様子は見せず、平静を保っている
飴を口の中で転がして、右手で人魂を軽く叩き

「…ま、この爺さんの作った刀よりは数億倍立派だよ」
『気安く叩くでないッ!』

一見ほのぼのした動作だが、少しおかしい、何処かが変だ
この男、容易く霊体に触れている
360 : :2011/03/02(水) 00:49:16.28 ID:DqSJ0i+AO
>>359
「わかってくれたならいいんだ…」

少し、俯き気味に答えた。

「ところで、あなたさっきから霊体に触れているが、何者なんだ?退魔士か?」

霊体に触れているのを、不思議そうに見つめる。
361 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/02(水) 01:02:08.67 ID:8OMy7tqDO
>>360
「何一つ解ってないけどな、解ってるフリしてるだけで」

眼鏡を上げながら、俯いた少女にそう言った

「イエーッス、ザッツラーイト、その通り退魔師さ」
「霊感が強くてな、触れる事も触れられる事も用意さ」

片手間に人魂を廃寺に投げ飛ばすというとんでもない事をしながら答えた
何か叫び声を上げながら飛んでいく人魂は廃寺へとホールインワンしていった
362 : :2011/03/02(水) 01:09:21.17 ID:DqSJ0i+AO
>>361
「どういう意味だ…」

機嫌悪そうに言った。

「なるほど、やはり退魔士か…
私の友人や私自身に危害を加えるつもりはないよな?」

不安と嫌悪感を示した眼差しを向ける。
363 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/02(水) 01:20:41.99 ID:8OMy7tqDO
>>362
「俺に他人の事を理解出来るような頭があると思うかい?しかもお前は俺よりも長生きで経験も豊富、おまけに種族も全く違う、種族差別って訳じゃないか、解ったなんて言える訳ないだろう?」
「結局の所、理解は出来ないしそちらさんも俺を理解するだなんて多分無理だ、俺は俺、お前はお前で全く違うからな」
「だからせめて自分で勝手に推論して納得して解ったフリさ、解るとしても薄皮程度の表面上だけ」

彼は言う、他の存在を理解するなんて誰だろうと無理だ、と
別にそれは、相手が妖怪だからって訳ではない、人間が相手でも同じく彼は解ったフリをするのだろう
ふざけているように見える彼もそれは表面上で、今垣間見えるように中身は捻くれた物が収まっているのかもしれない

「俺は自分から他人に危害は加えないよ、俺がそうするのは頼まれた時と相手から掛かってきた時だけ」
「そうして手に掛けた奴らがそちらさんの仲間だった時は、ご愁傷様」

合掌の形を作って、軽いニヘラ笑いで少女に軽くお辞儀をした
364 : :2011/03/02(水) 01:35:39.66 ID:DqSJ0i+AO
>>363
「なるほど…私とあなたでは考え方が違うようだな。
人間も妖怪もお互い心の底から分かり合おうとすれば、理解しあえる。私はそう考えるよ。そして、この考えは何と言われようと変えることはない。」

自分の考えを真っ直ぐ語る。脆く、何度も崩れそうになった考えだが――

「なら、おそらくは大丈夫だろう。私の友人には、そんな危険な奴はいないからな。」

本当に大丈夫だと思っている訳ではない、妖怪ならば退治を頼まれる可能性は十分にある。それに、もし紫狂が彼らを自分や友人を殺 すように依頼したら――
これ以上は、考えたくなかった。
365 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/02(水) 01:51:45.65 ID:8OMy7tqDO
>>364
「人と言う種族を見てみろ、同じ種族ですら理解しあえてない、そんなのが妖怪と理解しあえるとは思えないけどね」
「あれ、でも人間の俺が人の事を悪く言っていいのか?まあいいか」

人間でありながら、理解しあえないという理由としてあげるのは同じ人間の欠点
妖怪寄りの考えでも無ければ、人間中心の考えという訳でもなさそうだ

「まあでも、そういう考えを持つのはいい事だ、理解出来ないとハナっから決め付けるのはよくないしな」

「…ま、融通は利かせるつもりではいるけどな、悪質な依頼は受けないさ」

それは暗に、「頼まれたからと言って無害な奴を殺したりはしない」と言っているようで

「…って事で、余り長く話してたから風邪引きそうになってしまった」
「ここには目当ての物は無いようだし、適当に探してから帰るとするよ」

そう言って、廃寺へと歩き出した
366 : :2011/03/02(水) 02:02:34.35 ID:DqSJ0i+AO
>>365
「まぁ、どう考えるかは個人の勝手さ。実際には、やってみなくちゃわからない。」

瞳に、一切の迷いが無いわけではないが、弱気にはならない。風月の言葉を信じて――自分の支えになり、応援してくれる親友を信じて――

「悪質な依頼…か…」
(最悪の事態にならなければいいがな…)

とりあえずは注意が必要だと考えた。

「…じゃあな。」
(できれば、もう会いたくないものだな。特に、敵には回したくない。)

そう思いつつ、瞳も山を降りた。
367 :黒蔵 [sage]:2011/03/02(水) 22:23:48.19 ID:WwK9SQTeo
水沢城址公園の泉は、枯れてはいないだろうか。
何とか動けるくらいになると直ぐに、痛む体を引きずって黒い蛇は公園に戻った。
相変わらず水の量は少ないが、留守にする前から大きく変わってはいないことにはほっとした。
翡翠の輪の黒い皹が育つのも不安だが、この泉が枯れるのもまた気がかりだったのだ。

泉の傍、ぼろぼろの注連縄の張られた岩にもたれて黒蔵は座りこみ、
竜宮から借りてきた武器を改めて眺めた。
緩やかに反った、2本の短剣。
由来はよく判らないようだが、なんとなく、最初に見たときから気を惹かれるものだった。

(あの男は、なぜこの鎖に触れて煙がでたんだろう?)

混沌との戦いを想い返す。
窮奇の手下があの男なら、自分は一体どうすればいいのだろう。
今のままでは挑んでもただ殺されるだけだ。
行き詰まった感と不安ばかりが膨らんでいた。
368 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/02(水) 22:39:12.65 ID:8OMy7tqDO
>>367
「おーいおい、そんなもんに寄り掛かっちゃ呪われちゃうよーん」
「いや、呪われる事で逆に能力が開花するかもしれないけどね?俺は奨めないぞその方法」

その声はその場の雰囲気をぶち壊すように、急に鳴り響いた
愛想笑いのつもりのフヒヒという気持ち悪い笑い声を微かに口から漏らしながら、彼は歩いていく

「呪われるってのはいいことなんかじゃ…ん?何だ、刃物なんか持って、逃走者か?」

茂みから這い出し、男の姿が見えるようになるとその場で止まる
不審がるようでもなく、ただ何に対しても等しく向けられる“どうでもよさそうな視線”を男にも向けて
右手で口から飛び出した棒を指先でいじくり、歯と飴をぶつけて咥内でカラコロ音を鳴らした

彼の容姿は、黒い無造作ヘアーに白ニット帽、隈の深い目、蔓に縞模様をあしらった黒縁眼鏡
目玉模様のシャツに、黒いジャケットとカーゴパンツ
口に棒付き飴をくわえている男が、そこにいた
369 :黒蔵 [sage]:2011/03/02(水) 22:56:30.02 ID:WwK9SQTeo
>>368
「なんだお前、人間か?人間の癖に見えてんのか?」

相手に妖気を感じないので人間だろうと、黒蔵は見当をつけた。
しかし、妖怪を見ることができる人間にはあまりいい思い出がない。
今、手負いなのはそういう人間のせいなのだから。

(こいつもあの、爆音がする飛礫を放つのかな)

少し前に銃で痛い目を見た。人間には油断できない。
岩に寄りかかった小柄な少年は、飴を咥えた眼鏡の男を上目遣いに睨み上げた。
油断無く短剣を掴む手には包帯が巻かれ、血が滲んでいる。

「逃走?ちがう。俺はここを守ってる」

ぴりぴりとした気配が張り詰める。
怪我のせいもあって、黒蔵は今ひどく余裕が無かった。

(何かやられたら、すぐ噛むぞ。この距離ならやれる)
370 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/02(水) 23:05:47.12 ID:8OMy7tqDO
>>369
「そう聞くって事はお前は人間以外…まあ妖怪だろうな」
「妖怪なら呪われる道理もないか、心配して損した、損した分返してくれよ」

飴を舐めながら少年を見下ろし、何を思ったか急に目線を合わせるようにしゃがんだ

「なーる程、土地神って奴か?まさか地縛霊な訳じゃないだろうしな?」
「まあ、そんなにピリピリするなよ、ただの通り掛かりの一般人相手にそんな警戒する必要なんかないだろう?」

…とは言うが、彼の言葉とは裏腹に、どう見ようがただの一般人には見えない
が、しかし、何か目的があってここを目指してきたようにも見えない、半分嘘で半分本当、と言った所だろう
371 :黒蔵 [sage]:2011/03/02(水) 23:20:08.06 ID:WwK9SQTeo
>>370
真っ直ぐに相手と視線がぶつかった。
不意にぬるり、と少年が笑い、その纏う気配が変わる。

「お前は何が目的だ。こっちへ来いよ」

少年の姿の蛇は真っ直ぐに男の心を覗き込み、視線による支配をこの人間の男に及ぼそうとした。
警戒が要らないというが、この男は本心を明かしてはいない。
だが明かさないなら探るまでのことだ。

人間を魅了し招こうとする蛇の首からは、紐で下がった翡翠の輪が揺れていた。
372 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/02(水) 23:30:56.17 ID:8OMy7tqDO
>>371
「お前俺を近付けてナニするつもりだ?チューか?俺の唇の初めてを奪うつもりか?」
「ちなみに今舐めている飴はイカスミパスタ味だがファーストキスの味は甘酸っぱいレモン味と俺は信じているぞ」

少年の問いには答えず、呼び掛けにはふざけた回答で答える
いや、視線も表情もまったく変わらないと言う事は案外マジな可能性もある、それ以上に何も考えていない可能性の方が高いだろうが
とにかく、全く読めない、または読ませようとしていない。妖怪に容易に干渉出来る人間故の知恵か、または天然か、ふざけた様子で雰囲気ごと自分のペースを保っている

「しかしお前がそこまでと言うならば仕方ない、俺の初めてを差し上げようではないか」

ンベ、と右手で真っ黒い飴を口から取り出して

「男は度胸!なんでもやってみるもんさ!」

少年に近付く…というか完全に飛び込む形で接近を試みた
思い込みはそのままに、唇を蛸の様に突き出して、である
373 :黒蔵 [sage]:2011/03/02(水) 23:38:25.22 ID:WwK9SQTeo
>>372
腕を広げて飛び込んできた人間の男に、座ったままの少年は片足を引っ掛けた。
人の姿では小柄だが、実際には丸太ほどの太さの蛇である。
大の大人の一人や二人くらい、物理的にどうこうする程度は造作も無いことだ。

走ってきた勢いのままに、その向きだけを変えて、泉に飛び込ませる軌道へと男の体を乗せた。

「初めてとやらはいらん、だが魂なら一つ貰うぞ。人間」

男の体が通り過ぎた後、少年の右手には青い人魂が一つ握られていた。

(これ喰ったらすこし力つくな)
374 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/02(水) 23:45:14.71 ID:dXHIHBZSO
>>371
公園の前に立ちすくみ、冷や汗を垂らしているのは、一人のセーラー少女。
の、姿をした夜雀――四十萬陀だ。

(……なんだか、すごぉくまずい時に来ちゃった気がするじゃん……?)

杞憂であってくれと切に願うが、公園を覗いてみれば、
人間と向き合い、睨み付けている黒蔵がばっちり見える。
いつも通り明るい調子で乱入すべきか、それとも、このまま隠れているほうが賢明か……。
うんうん葛藤していると、

信じられない光景が、目の前に飛び込んできた。

>>372>>373
「――!?」

今にも四十萬陀の眼前で、繰り広げられようする耽美。
その光景に、四十萬陀は目を奪われ……いやいや、顔を真っ赤にして棒立ちになった。

(こっ、これは……ハッ!)

我に返った四十萬陀は、赤い赤い顔のまま、
黒蔵の貞操の危機に、公園内に駆け出した。

「だだだだだ……駄目〜〜!!」

二人の間に割り込み、遮るようにして両手を広げた。

――何じゃん。この、後悔のような胸のもやもやは……。

そのもやもやの答えを、いつか知るときが来るのだろうか。しらんけど。
375 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/03(木) 00:00:44.03 ID:p5DbsPkDO
>>373>>374
乱入してきた少女の行動は、少し遅かった
少女が割って入った時既に時間切れ、泉からは大きな水しぶきが上がっていた

…で、それで静寂が戻ったかと言うと

「こおぉぉんのっ!泥棒猫っ!!」

知らない人が見れば河童と見間違うのではないかというくらい、びしょ濡れで潰れた帽子姿の男が泉から飛び出した

「…ったく、冗談が通じないな、余り暗いとマジに女の子にモテないぞ?」
「えーと、そこの娘、止めるならもうちょい早く、ね?この季節に水はやばいから」

自分が原因なのを棚に上げて、男は自分勝手に話を進める

「で、えーと、魂だっけ?一つや二つくれてやるよ、もう一つあるし」

男が少年が握る人魂を見ながら、右手の中に燃え上がらせるもう一つの蒼い人魂

「…まあ、一つ忠告してやろう」
「俺の魂は、夏場に常温で昼間中放置した牛乳のソレとほぼ同じだ」

脅しのつもりか、よくわからないようなわからないような、嫌な例えを引っ張り出す
ちなみに、男の右手にある人魂は男の魂とは違う物、要はハッタリだ
376 :黒蔵 [sage]:2011/03/03(木) 00:18:10.37 ID:v1lGv4zco
>>374>>375
ひらり、と目の前を遮って不意に飛び込んだ黒いもの。

「なっ……四十萬陀ぁ?!!」

蛇の声が裏返った。驚きのあまり、青い人魂を手から離してしまっている。
地面に座ったままの蛇の目の前では、
なびく黒いスカートの裾からは、真っ白な……健康そうな太ももが覗く。

(確か前にもこうやって下からきわどいところを見上げたような…)

 ばふっ!!

自分の貞操を案じられていたとは一切気付かぬ鈍感蛇は、泉で水しぶきがあがるとほぼ同時に
その光景を目に焼き付けて鼻血を吹いた。

「泥棒猫…?」

この人間の男は何を言っているのか?
いやしかし、ここに座り込んだままだと色々危ない。うん。
鼻血を抑えながら、蛇の少年はよろめきながら岩に掴って立ち上がった。

(うぁ。血がもったいねー!)

滴る血に慌てて、さっき男の肩から毟り取った筈の青い人魂を捜す。
早くあれを喰わないと。手放してしまったが、辺りに漂っている筈なのだが。

探していると、濡れた男が魂を手にしているのを見る。まだあんのか。
夏場の放置牛乳?

「その程度、俺の胃袋には問題ない」

今はある程度大きな障りでも喰らうことができる。
多分、蛇神の腕喰ったせいだ。
377 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/03(木) 00:24:58.11 ID:oKtThbmSO
>>375
「わ、私は猫じゃないじゃん!
 ってそうじゃなくて、黒蔵君に何するじゃん!」

赤面状態のまま、男に向かい、指をさしてぶんぶん振りまくる。

「知らないじゃん! ど、どうせらな水浴びまくって凍えてっみ゛」

「……〜〜〜!!」

盛大に舌を噛んだ四十萬陀は、顔を俯かせ、痛みに悶えた。
……結構、動揺しているようだ。

>>376
「!?」

血が吹き出す音に驚き、後ろを振り向く。

「ひゃ、ひゃいろうる? 黒蔵くん……」

大丈夫? 黒蔵君。と聞いているのだが、
舌を噛んで、呂律が回っていない。
しかもおかげで涙目。さらに加えて耳まで赤面。

……あざとい。非常にあざとい。
378 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/03(木) 00:37:40.47 ID:p5DbsPkDO
>>376
「マジでか、知り合いの女の子みてToloveるってる割にはワイルドな腹してやがるぜ」
「…おっと、こうしちゃいられないな、俺の魂紛失とか洒落にならん、魔法少女もびっくりだ」

なんだかよくわからない話を誰に言うでもなく言いながら、男も魂を探し始める
魂が体から抜けて大丈夫なのかと疑問に思ったが、大丈夫ならまあいいやという結論を自分でつけていた

「おいおじいちゃん、あんたも探してくれよ」
『出て来たと思ったらいきなりこの扱い!?』

男が右手の人魂に話し掛けると、しわがれた声で答えた人魂が渋々と言う様子で辺りを探索し始めた

>>377
「じゃんじゃんじゃないじゃん!ちくしょー!お前も俺に厳しく当たりやがるのか!男女揃って邪険にしやがって!リア充爆発しろ!爆ぜろ!退魔師の職権乱用すんぞこんちくしょー!!」

何で俺が悪いみたいにされてるんだ…畜生!皆俺を邪魔者扱いしやがって!
昔からそうだ!霊と話が出来るからって気味悪がりやがって!俺だって好きで霊感強い訳じゃねーんだよこんちくしょーが!
おまけに寄って来る奴らは大体ペテン師だしよー!何が“気持ちが解る”だ!利用しようとしてただけじゃねーか!!それがばれりゃまた邪魔者だよ!!
そんなトラウマだらけな俺だって俺なりに元気に明るく振る舞ってんだよ!それすらも気持ち悪がられるけどな!
ちくしょー!何よりリア充が憎い!過去とかトラウマとか関係なく憎い!爆ぜろ!爆発しろ!」
『おい丑三、さっきから何をブツブツ言っておる』

怒りの余り思考が口からいつの間にか漏れていた、これもわざとふざけているのかもしれないが
あれ、なんかこいつ泣いてる?
379 :黒蔵 [sage]:2011/03/03(木) 00:49:13.50 ID:v1lGv4zco
>>377>>378
「いやあの、俺は大丈夫だけど…なんでここにっ!?何時からいたのっ??」

この男が出てくる前、一人で腐っていたところを少女に見られたかも知れない、
と思うと何だか無性に恥ずかしくて、蛇の毒気はすっかり抜かれてしまった。
派手に散った鼻血を拭いつつ、こちらも顔は真っ赤である。

人間の男がそういう意図を匂わせていたとか、それが原因でまさか四十萬陀に
際どいことを想像されていたとか、この蛇は一切気付いていない。
そんなところに気付く頭があったら、この夜雀との仲はもう少し進展していても良い筈だ。

「……って、四十萬陀のほうが大丈夫?」

自分の鼻血も、びしょ濡れの男も、青い人魂もそっちのけで、
クソガキ妖怪は舌を噛んだセーラー服少女のことを気に掛けている。
実に、青臭いお子様カップルである。
この人間の男よりも幼い外見で、しっかりデキてやがるぞこいつら、な見た目ではある。
……見た目だけだが。

「退魔師?憎い?爆発しろ?」

ふと、蛇の耳が人間の男の言葉から不穏な単語を拾った。
一気に辺りが濃厚な妖気に包まれ始める。

(こいつ、やっぱり何かする気だったか)

濃密な殺気まで漂い始めた。
380 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/03(木) 00:58:29.09 ID:oKtThbmSO
>>378
「……お、おぉう……」

あまりの勢いと怒りのオーラ(と負のオーラ?)に、ちょっとビビった四十萬陀は、

「な、なんかゴメンじゃん……」

とりあえず謝った。
人間の事情やリア充とかはよくわからないが、なぜか凄く悪い気がしてきたのだった。
おどおどと、躊躇いがちに話しだす。

「な、何か捜し物があるなら、私も手伝うじゃん……。え、えっと君は」

と、ここでストップ。
数秒後、

「……たいまし?」

今更ながら、男の台詞を反復し気付いた四十萬陀は、顔を真っ青にして後退した。

(魂持ってたり魂と話したり、ただの人間じゃないことはわかってたけど、た、退魔士だったじゃん……!?)

今のところ滅せられてないあたりを見ると、好戦的ではないようだが、だからといって安心できない。
こちらと下級妖怪もいいところ。弱さでは負けない自信がある。

>>377
「さっき来たばっかりじゃん。うん、もう大丈夫……」

言い掛けて、
周囲に漂いはじめた妖気と殺気に、四十萬陀は驚いた。
――まだ、怪我もなおってないだろうに、
無茶をさせるわけにはいかないと、慌てて黒蔵を止めにかかる。

(黒蔵君、ここで戦うのは得策じゃないじゃん!
 まだ相手は何もしてきてないし……)

とは言ったものの、先手を取られて、まずいことになる可能性もある。
四十萬陀の制止がきくとは限らない。
381 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/03(木) 01:08:19.90 ID:p5DbsPkDO
>>379
「……うーわー…これもう見てよ、渾身の自虐もネタも完全スルーされたよ、アウトオブ眼中だよ」
「二人してイチャイチャしやがって、おーおー青春ですなー」

「氏ね!おっ氏ね!二人して長生きして幸せになって氏ね!!」
『いいから探さんか!貴様の魂じゃろうに!!』

少年と少女の仲睦まじい感じの様子を見ていると、なんだか複雑な気持ちが沸き上がってきて
激励なのかけなしているのか、よく解らない言葉を送った

「んでもって冗談が本当に通じないな、いい加減俺も怒るぞ?」
「むやみやたらに人に敵意を向けるな、向けるなら相手を選べ。これは注意ではなく、警告だからな」

何度目か、また殺気を向けられて、漸く男のふざけた雰囲気が消え去る
眼鏡を上げながら少年に向ける視線は、敵意が無いのに刺すような鋭さで、例えるなら動物が縄張りを主張するときのような…強い警告の念を込めた視線

>>380
「そっちの娘の方がお前よりは賢いみたいだぞ、ダウナー少年」
「あとちゃんと謝れる子は好きだぞ、最近はごめんの一言も言えない子供が多いからな」

「…ま、彼女の前でいい所を見せたいのは解るが、相手はよく見るべきだ」
「その気になれば俺は、神すらも軽く殺せる可能性が1%でもないとは言い切れないかもしれないとは無きにしもあらずなんだぜ?」
『つまり無理なんじゃろうて』

男は口元にニヘリとした笑いを浮かべ、口の中で飴を転がしながら二人に視線を送る
彼には、敵意も殺意もなく、見えるのはただ余裕に塗れた立ち姿だけ

「まあよく考えてみろよ、俺がお二人さんを滅した所で何になる?退魔師だからってむやみに妖怪を滅する訳じゃないんだ」
「俺がそうするのはいくつかある、頼まれた時と、相手からかかってきた時、その他諸々な」
382 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/03(木) 01:27:55.57 ID:oKtThbmSO
>>381
「……」

からかわれているみたいだが、余裕のある、愉快な男の姿に、
四十萬陀は少し警戒を緩めた。
恐らく、何もしない限り向こうからは襲ってこないだろう――程度の認識へと変わる。
ただやはり、あちらは退魔士、こちらは妖怪という関係で、
心を許すことはなさそうだが。

「確かに、そうじゃん。あなたを信じるじゃん――今の所は」
383 :黒蔵 [sage]:2011/03/03(木) 01:28:10.93 ID:v1lGv4zco
>>380>>381
四十萬陀に引き止められて、蛇の殺気は少し引く。

(確かにまだ、何もしてきてないけど…)

さっきから煩く喋っている人間の男に、苛ついた蛇が言う。

「お前、ちゃんと喋れ。
 聞かれたことに答えないで、聞いてないことばかり喋るから無視される。
 俺は、お前に最初に訊いた。『何が目的だ』と」

Toloveるとかリア充とかアウトオブ眼中とか、人の中に紛れていない妖怪に言っても多分通じないのだ。
しかもこの蛇、浦島太郎状態である。
200年ばかり海に潜っていて、最近また陸に戻ってきたばかりなのだ。
人間の生み出す障りを食べることで、最近の人間の文化はちょっぴりづつ学習しつつあるが
それでもまだまだ追いつかない。
この蛇がこの人間の男に言いたいことを簡略化するとこうなる。
日本語でおk。

「その他諸々、って何だよ」

(手を出さないならいいが、出すようなら…)

まだ蛇は男をにらみつけたままであるが、話をする余地はありそうだ。
384 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/03(木) 01:34:43.16 ID:oKtThbmSO
>>383
「く、黒蔵君……」

苛立つ黒蔵に慌てるが、しかし、確かに彼の言う事にも一理あるのだ。
四十萬陀も、男の目的が知りたいのは同じ。
手を出す気はないようだし、ここは黙って、様子を伺うことにした。
385 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/03(木) 01:41:52.02 ID:p5DbsPkDO
>>383
「答えなきゃいけない義務があるか?…なーんつってな」
「目的なんてないよ、本当にただ通り掛かっただけだ、お前や、この場に直接的な目的は無い」
「そうだな…探し物をしてたら面白そうなのがいたんでからかってみましたー、的な?」

ようやく、聞かれた事に答える…が、それもそれでやることが最低すぎるような気もする

「その他はその他さ、数えきれないくらい細かい要因、まあ気にする事はない」

そして、一番気になるであろう事にはしっかりと答えず、はぐらかす
本人もよく解っていないから、なのかもしれないが

>>382
「そんなに簡単に信じちゃっていいのか?俺が嘘をついている可能性もあるぞ?」
「まあ、嘘をつくメリットはないんだけどな」

本当に、話を掻き乱す
彼としては、疑われようが信じられようがどうでもいいらしく、何を考えているのか、自分に対して不信感を持たせるような言動を吐く
386 :黒蔵 [sage]:2011/03/03(木) 01:52:33.10 ID:v1lGv4zco
>>385
「通りがかっただけ、か」

嘘はないと判断できたのは、神使としての感だろうか。
すっと、妖気も殺気も消える。

「ようやく本当のこと言ったな、お前。
 でもそうやってはぐらかしてばかりだからお前は何時までも一人なんだな」

なんだか寂しい一人身らしいことを言っていたが、この男の性格では無理も無い、
と蛇は思った。

「ウナギとか鯰にはお前みたいな奴多いけど、そういう奴は似たような奴を見つけてくっつく。
 お前も似た奴が居たら、一人じゃなくなるのかもな」

蛇の中では人魂は数に含まないらしい。

>>384
(こいつ、色々言うけど、喋ることの大半聞き流せば大丈夫だと思う)

蛇は夜雀に、丑三が聞いたら怒りそうなことを囁いた。
387 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/03(木) 02:14:32.09 ID:p5DbsPkDO
>>386
「その通りだ、こんな歪んだ性格の男に寄って来るのなんて幽霊くらいさ」
「逆に、一人でいたいからいつもふざけているの、か、も」

フヒヒ、と笑いながら飴の棒を捻る
自分の性格は自覚していて、直らないのも解っている
一人で孤立する事に実はそれ程恐怖は無い、先程はああ言っていたがただのふざけた狂言だったようだ

「俺は、俺みたいな性格の奴は男でも女でもごめんだね」

そう言うと、男は茂みの中から何かを持ち上げて、立ち上がる

「まあ最後に俺から言わせてみりゃ、別の存在に近付いた人間は得てして狂うもんさ」
「俺の狂い具合なんか、まだいい方かもしれないぜ?」

見付けた、拾い上げた、正真正銘自分の魂を右手で弄びながらそう言って

「じゃあなお二人さん、俺はもう退散するから、後は好きな事するんだな」

人魂を連れて、そそくさとその場を離れていった
388 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/03(木) 02:30:56.13 ID:oKtThbmSO
>>387
嵐のような人物だった。

「……なんだったじゃん…」

ぽかん、と
男が去っていった後ろ姿を呆然と見つめて、四十萬陀は言った。
389 :黒蔵 [sage]:2011/03/03(木) 02:40:32.03 ID:v1lGv4zco
>>387
「本当に一人で居たい奴はふざけないで穴にでも篭る」

出歩く以上は、他者と関わらざるを得ない。

「つまりまだ宙ぶらりんか。
 人間やめてこっち側にきたけりゃ何時でも来いよ。余分な魂は食ってやるからさ」

しかし余分な魂をとって、所持する魂は一つだけにしたら、
案外この人間の男は真っ当になるのかもしれない。

(あいつ、いらん数の魂背負い過ぎ。
 水子の魂ってああいう風に男にもつくんだっけか?今度、蟹にでも聞いてみよう)

何かもの凄く失礼な勘違いをしつつ、黒い蛇は退魔師を見送った。

(でも今日は、魂喰い損ねたな。喧嘩にはならなかったが)

>>388
「さぁ…多分、何にもなりたくない奴なんだと思う」

あいつはあいつでなるようになればいい。
ただし、こちらに手を出してきたら……問答無用で喰う。

単純な頭の蛇は夜雀の問いに肩を竦めた。
390 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/03(木) 02:49:37.68 ID:oKtThbmSO
>>389
「……でも、まぁ、争いにならなくてよかったじゃん」

そこだけはしっかり安心したように、
笑顔で溜め息をもらす。

「怪我も完治してないだろうに、無理しちゃダメじゃん」

にこり、と、花の咲いたような笑顔と共に、
四十萬陀は軽く頭を撫でた。

「……じゃ、私もそろそろ行くじゃん」
391 :黒蔵 [sage]:2011/03/03(木) 03:01:34.03 ID:v1lGv4zco
>>390
「もしかして、俺の無茶が心配で見に来てた、とか…?」

ひくり、と蛇が強張る。どんどん表情が情けなくなってゆく。

(うわぁぁぁ!心配かけてた上に、図星だったぁぁぁぁ!!
 駄目じゃん俺馬鹿じゃん!怪我だから自重するとか考えてなかった!) 

「……心配かけて、ごめん。うん、またな、四十萬陀」

頭を撫でてもらって、夜雀を見送って。
一番最初とは違う方向で、凹みはじめるダウナーな蛇であった。
392 :波山&極楽鳥 :2011/03/03(木) 23:08:50.11 ID:QJQtyhadP

「おおぅ! 反応に困る賑わい方だな!!」
(ちょっと! 絶対にしゃべってるの聞かれないでくださいよ!!)

 この町の市民公園にて、大々的なひな祭りが催された。
 中心部には大きなひな壇が作られ、ちらほらと屋台も出ている。
 閑散としているというには多いが、大賑わいというには少ないような人数である。

 そんな中、ニワトリを抱えた妖怪の乙女が一人。
 乙女は変化が苦手な為、体中に羽毛が残っているが。
 彼女には珍しく、厚手で長袖の服を着ているため、上手く隠せているようだ。

 問題はニワトリ、人の中でも平気でしゃべろうとする。
 ただでさえ、ニワトリを抱えているので目立つというのに。

(姉御! 甘酒貰ってくださいな!!)
(わかったからもうしゃべらないでくださいよ!)

 老夫婦から頂いた小遣いをポケットに入れ、乙女は歩き出した。

 電気照明のぼんぼりが柔らかい光を放っている。
393 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/03(木) 23:22:56.18 ID:oKtThbmSO
>>392
桃の節句の今日。
街でその名の通りひな祭りが催されることを、和戌(わいぬ)から聞いた四十萬陀は、
相変わらずのセーラー服で、山を降りてきていた。

「明かりをつけましょぼんぼりに〜……あれ、この続きなんだったっけ?」

昔子供たちが歌っているのを聞いた童謡を口ずさみながら、屋台を覗いて回る。

しかし、この賑わいだ。
騒ぎに引かれてやってくる妖怪も多いようで、ちらほらと妖気を感じる。
もちろん、四十萬陀もその一人なのだが、
当の本人は、約50年振りの人間の祭りをおおいに楽しもうと目論んでいた。

「……ん、あれって確か……」

四十萬陀が見た先には、なぜかニワトリを抱える少女の姿があった。
見覚えのある姿と、少女らから感じる妖気に、そちらへ歩きだす。
394 :黒蔵 [sage]:2011/03/03(木) 23:28:00.18 ID:v1lGv4zco
>>392
屋台の甘酒の匂いに釣られた、学生服姿の少年が一人。
傷を埋めるための食べ物を買い食いに出たら、なにやら良い匂いがするのと
人のざわめきとに引かれて公園までやってきたのだ。

祭りの空気は、人でないものも呼びよせる。
電気照明のぼんぼりが物珍しくて、きょろきょろと辺りを見回しながら歩いていると、
見知った二人(羽?)組を見つけた。

「あ」

>>393
さらに、そこに近寄る見知った姿がもう一人。

「わーい、四十萬陀もいた〜!」

3羽の鳥のほうへと向かう少年のポケットのなかで、小銭が音を立てていた。
395 :十夜「」&七郎『』 :2011/03/03(木) 23:37:12.91 ID:LcSPSuGAO
>>392
『ちょっと早く家を出すぎじゃないか?』

「うーん…そうみたい。」

話しているのは、少年と狐。二人は暇そうに歩いている。

『ま、家に戻るのも難だし、公園にでも…』

ふと、公園の方を見る狐。賑やかだ。

『あー、そういや今日は雛祭りだっけ。』

「そっか、なんかお店とかも出てるみたいだね。」

雛祭りだと思い出した二人。

『なあ、十夜。塾まで時間あるんだろ?ちょっとよっていかないか?』

「うん。せっかくだし行こう、七郎。」

楽しそうに会話した後、二人は公園に入っていく。
396 :波山&極楽鳥 :2011/03/03(木) 23:41:37.48 ID:QJQtyhadP
>>393

「ありがとうございます」
「お姉さん、外人さんかい? 日本語上手いねぇ! あとなんでニワトリなんか抱えてるんだい?」
「え、えっと・・・お祭りに連れてってくれと頼まれまして!」
「あはは! 変わってるねぇ!!」

 甘酒を配るボランティアの中年と和やかに会話をする。
 テントから離れた後、ニワトリは鋭く辺りに目を配らせる。

「・・・! 姉御っ!!」

 ニワトリこと、妖怪・波山は。
 バタバタと翼を動かし、乙女へと化けた妖怪・極楽鳥へ語りかける。

「?・・・一体どうしたんで――
「この辺に妖怪が来てまさぁ、結構な数だ」
「えっ!?」
「まぁ、お祭りだからあんまり心配ないですが・・・。
 中には結構な大きさの妖気も混じってますぜ!!」
「そ、そんな!」

 オロオロと取り乱す極楽鳥を尻目に、
 波山は和やかに翼を振り上げる。

「おーーーっ! あのヘタレ狼のツレじゃねぇか!!」
「ちょッ!! しゃべらないで!!」

 しかし心配も空振りなのか。
 周りの人間はお祭りの喧騒であまり気にしていない。

 ちなみに黒蔵の妖気も感じちゃいるが、完全無視である。

>>395

「・・・む?」

 そんな中、ふと気になる妖気を発見。
 祭りの中に紛れているものはほとんど顔見知りだが、
 この新しく入ってきたのは自分が今まで感じたこともない波長だ。

「・・・しかも、俺と同じ属性だぜ!」

 翼を振り、そちらの方を見据える。

「しかも大きさだけ見ると俺より格下(笑)!」
「ちょっと! あんまりしゃべらないで!!」

 波山の鶏冠を平手が小突いた。
397 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/03(木) 23:49:52.05 ID:oKtThbmSO
>>394
――ぴくーんっ。
話し声や足音でけたたましい騒音の中、四十萬陀の耳はしっかりと自分を呼ぶ声を捕えた。
後ろを振り向くと、こちらに向かってくる黒蔵が視界に入る。
あ、と声を上げて、

「黒蔵君じゃん、来てたんだね! あ、今日は学生服じゃん」

嬉しそうに手招きをした。

>>395
(やっぱりお祭りとなると、顔見知りの妖怪もちらほら見かけるじゃん)

波山、黒蔵を始め、四十萬陀は神社で会った少年と狐を見付けた。
確か十夜は妖怪が苦手だったはず……とは考えたが、コノ場にいる妖怪が突然襲い掛かるとは考えにくい。
祭りは大勢のほうが楽しいものだ、と四十萬陀は、

「十夜くーん!」

騒ぎの中でも分かるように、手を振って少年を呼んだ。

>>396
「お久し振りじゃんっ。あの時はごめんね〜」

軽い調子で、二人に話し掛けた。
当のヘタレ狼は入院中である。

「ニワトリ君、あんまり喋ってたら怖〜い人間に見世物小屋に連れていかれるよ……?」

波山を脅かすように、おどろおどろしく言う。
398 :黒蔵 [sage]:2011/03/03(木) 23:55:50.65 ID:v1lGv4zco
>>396>>397
以前よりはちょっっっぴりだけど、妖気を隠せるようになったので、
まだ波山達に気づかれていないと思っている黒蔵は、人の間を抜けて四十萬陀に追いついた。
斜めにかけた鞄の紐が傷にあたるので、いつものようには走れないのだが、
それでも精一杯急いだつもりである。

追いついてみると、なんと四十萬陀は波山にとんでもない脅しをかけているではないか。

「四十萬陀!そういうこと言うと、そいつに焼き鳥にされるぞっ!」

以前、波山を怒らせた黒蔵自身は、危うく蒲焼にされるところだった(と本人は思っている)
そしてこの蛇はまだ、狐と人間の少年が近づいている事には気付いていない。
399 :波山&極楽鳥 :2011/03/04(金) 00:02:23.99 ID:VDbcRXn4P
>>397

「み・・・見世物小屋・・・・!!」

 極楽鳥の顔がさっ! と青くなる。
 元々、自分も捕まってこの国に輸出されたのだ。

「ぎゃははははは! ねぇわー! それぐらい楽勝で逃げられr・・ムグッ!!
「だ、黙ってて・・・!! 言いたいことがあるなら代弁してあげるから!!」
「・・・っ」コクコク

 極楽鳥の並々ならぬ迫力に押され、波山は何度も頷く。
 何か言いたいのか。ゴニョゴニョ、と早速姉御に耳打ちする。

>>398

「え・・・ぇっと・・・」

 言おうか言うまいかしばらく悩むが。
 しゃべるニワトリをこれ以上やられても厄介なので、そのまま口に出す。

「あ、ありえねぇよボケぇ・・・
 誰も彼もがテメェみてぇに焼きたくなるようなカスじゃねぇんだし・・・」
400 :十夜「」&七郎『』 :2011/03/04(金) 00:03:19.10 ID:xwJP5jqAO
>>396
「とりあえず、何か食べようか。」

『ストップ。十夜。』

この場の妖気を感じた狐。少年と共に立ち止まる。

『分かるか?十夜。』

「う、うん…あのニワトリ…」

『あと他にも、妖気がいくつかある…気をつけろよ。』

警戒し、足を止める二人。


>>397
『へっ…どうやら、警戒し過ぎだったらしいな。』

強張っていた表情を崩し、笑う狐。見知った妖気を見つけたからだ。

「あ、四十萬蛇さん。」

七生の呼ぶ声に気づき、駆け寄っていく二人。

401 :波山&極楽鳥 :2011/03/04(金) 00:11:35.52 ID:VDbcRXn4P
>>400

(ギギギィ・・・! クソがぁ!!
 なんの妖怪かと思ったら、狐じゃねぇかド畜生がぁ・・・!!)

 波山は十夜を見据えて歯軋りをする。
 いや、ニワトリだから歯は無いけど。そして畜生はお前だろう。

 四十萬陀に駆け寄る少年を見つめ、
 今にも発火しそうな憎々しい視線を送り続ける。

(クソがぁ・・・狐でさえ、狐でさえなかったらよぉ!!)

 妖怪・波山、食物連鎖には意外と忠実。
 
402 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/04(金) 00:12:00.53 ID:Z5NZQWlSO
>>398
「へ?」

慌てたような黒蔵の言葉に、四十萬陀はぽかんと口を開けた。
その後、すぐに顔を青くするわけだが。
体を硬直させ、黒蔵と波山を二度見する。

(黒蔵君がそんな風にいうなんて、も、もももももしかして凄い強い妖怪とか……!?)

がくがくぶるぶる。

>>399
極楽鳥のほうが波山の口を塞いだのを見て、四十萬陀は胸を撫で下ろした。
見世物小屋で驚いていたところを見ると、こちらの少女は、安心して大丈夫なようだ。
――根本的なところで似ているような気がする……と、四十萬陀はちょっと思った。

「え、えっと、脅かしてごめんじゃん。自己紹介は……してたっけ?」

にゃはははー、と社交的な笑みを浮かべつつ、極楽鳥に話し掛ける。

>>400
「こんばんはじゃん、十夜君、七郎君」

ふりふり、手元で手を振る。

「あ、周りに妖怪たちがいるけど、気にしないでじゃん。皆いい人だから」

……多分。
波山のことを恐がっているが、そんな素振りを見せれば、十夜のほうも恐がるだろうと、最後は口の中に留めておいた。
403 :黒蔵 [sage]:2011/03/04(金) 00:16:28.94 ID:UITRiJkCo
>>399
蛇がぴたりと動きを止めた。みるみるうちに表情はしょげてゆき、肩が下がる。

「……カスって」

波山の悪口は何時ものことだ。
しかし、極楽鳥のお姉さんにその台詞を言われるとショックは大きい。
同じことでも言う人が違うと、心の抉られ方も随分違うものだ。
波山にとっては思わぬ効果だっただろう。

>>400>>402
蛇がしょげていると、今度は四十萬陀に声をかけるものが居た。
誰だろうと振り返ると、狐と、丁度見た目は自分と同じような年の少年である。

(知り合い?誰だろ)

全く妖気など感じられないのに、狐と一緒にいる。

(人間?)

十夜のほうに黒蔵はうっすらと警戒心を抱いた。
404 :波山&極楽鳥 :2011/03/04(金) 00:21:34.02 ID:VDbcRXn4P
>>402

「あ、はい! はじめまして。ご丁寧にどうも・・・」

 憎憎しげに視線を送る波山を抱えながら、極楽鳥はペコリと頭を下げる。

「はい、私は極楽鳥でございます。こちらは妖怪・波山ですが・・・」

 波山は再び耳打ちする。
 しかし、その内容は代弁ではなかった。

(は・・・、いやできませんって! なんなんですか、いきなり!)
(お願いしますぜ、姉御! アイツ狐だから生理的に無理なんですって!!)
(この前の狸さんや狼さんの時は大丈夫だったじゃないですか!!)
(あいつ等、炎持ってないケモノだから大丈夫なんですって!
 ケモノは大抵火に弱いから大丈夫なんですって! でもアイツ肉食獣かつ炎の特性持ちですもん!!)

 なにやら物騒な作戦会議が行われていた。
405 :十夜「」&七郎『』 :2011/03/04(金) 00:28:23.03 ID:xwJP5jqAO
>>401
七郎(なんか、めっちゃ見られてる…なんか、恨まれてる…?)

ニワトリの視線に気づき、若干戦慄する狐。

「どうしたの?七郎?」

そんな狐の様子を心配そうに見る少年。

『い、いや、なんでもねぇ…』


>>402
『よう、久しぶりだな。』

「お久しぶりです。」

適当に返す狐と丁寧にお辞儀する少年。

『良い人…あのニワトリもか?』

小声で聞いてみた。

>>403
『四十萬蛇の友人か?ま、よろしくな。』

「よ、よろしく…」

軽い調子で話す狐。
対して少年は警戒、というよりも緊張している様子だ。
406 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/04(金) 00:33:12.46 ID:Z5NZQWlSO
>>403
十夜を僅かに警戒する黒蔵を見て、妖怪側に言うのを忘れていたことに気が付いた。
何と言おうかと迷ったが、

「十夜君は私の友達だよ」

とだけ言って、安心させるように微笑んだ。
じゃらじゃらと音を立てる、黒蔵のポケットを見て、

「黒蔵君、せっかくのお祭りだし、何か買おうじゃん!」

わくわくとした、子供のような表情で、四十萬陀が言う。

>>404
「ご丁寧にどうもじゃん。極楽鳥君と、波山君だね」

頭を下げた極楽鳥に返すように、おどけて笑い、

「私は夜雀の四十萬陀 七生じゃん」

会釈と共に、自己紹介する。
極楽鳥たちが物騒な会議を始めたのを見て、躊躇いがちに話し掛けた。

「ど、どうかしたじゃん……?」

会議の内容は聞こえていないようだが、聞こえていたなら飛び上がって驚いただろう。

>>405
「え、えーと……」

何と答えればいいのだろうか。
一度会っただけで、まともな会話を交わしていないため、波山に関しては口が悪いことしか分からない。

「……わ、悪い妖怪じゃない、かな?」

極楽鳥さんと一緒だし、祭りだし、暴れだすことはないだろう。
多分、というか、そうであって欲しいと四十萬陀は切に願った。
407 :黒蔵 [sage]:2011/03/04(金) 00:38:47.60 ID:UITRiJkCo
波山は怖い。人間も違う意味で怖い。
極楽鳥のお姉さんには心を抉られた。

(今、思いっきり敵陣中の気分)

そもそも人間の祭りの最中である。
黒蔵は知らないが、桃の節句、旧暦3月3日は上巳の日。
実は雛祭りには蛇にとって命取りなものがある。
このまま知らない方が幸せかもしれない。

>>405
狐と少年に声をかけられて、蛇は内心縮み上がった。
しかしどこか緊張した面持ちの十夜に挨拶され、ふとあることに気付く。

「あれ?ああ、そうか。そういう人間か」

十夜が憑き易い性質であることに気付いて蛇はほっとした。
つまりこの狐は守役なのだ。

「お前、人間だけど、退魔師じゃないんだな。安心した。
 俺、黒蔵。よろしくな」

狐と十夜に挨拶した蛇からは、僅かだが血の匂いが漂った。
408 :黒蔵 [sage]:2011/03/04(金) 00:46:00.43 ID:UITRiJkCo
>>406
「うん、何か美味しいものあるかな」

四十萬陀も居るし、今は祭りだ。
揉め事だけは今は御免蒙りたい。
何よりさっきから甘酒の匂いが鼻につく。

波山&極楽鳥には、今はちょっと近寄らないでおこう。
そう思った蛇は、ひそひそ話しをしている二羽をちらりと横目で見やる。
今、心にまで風穴は開けられたくないのだ。
409 :十夜「」&七郎『』 :2011/03/04(金) 00:47:11.15 ID:xwJP5jqAO
>>406
『ならいいんだけどよ…なんか、アイツ俺に刺すような視線向けてねぇか?』

再び小声、そしてチラッと波山の方を見る。

「さっきからどうしたの?七郎?」

そして再び心配そうに七郎を見つめる十夜。


>>407
『俺は七郎。んで、こっちが十夜。ま、よろしくな。』

「え?そういう人間て?」

そういう人間が何を意味しているのか理解していない。疑問に思う十夜。
しかし、七郎にはそれ以上疑問に思うことがあった。

七郎(なんでコイツから血の匂いがするんだよ…)
410 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/04(金) 00:55:13.53 ID:Z5NZQWlSO
>>408
「ちょっと見ない間に、人間の屋台も様変わりしてるじゃん」

つい昨日とまではいかないが、50年前と言えば、長い期間を生きる妖怪にとっては人間の半生も短いほうに当たる。
きょろきょろ辺りを見回せば、りんご飴、わたがし、はしまき、金魚すくい……等々、オーソドックスなものは大抵あるようだ。
先程から漂ってくる、甘酒の屋台もある。

「んー、黒蔵君はどこいきたいじゃん?」

四方八方から誘惑に、浮き足立つのを抑えて、四十萬陀は隣の黒蔵に尋ねた。

>>409
「き……気にしない気にしない!
 あっ、今から屋台回るけど、十夜君たちもこないじゃん?」

両手をわたわた振って、話題を逸らす。
波山たちはどうやら会議中なようだし、今はそっとしておこう。
411 :黒蔵 [sage]:2011/03/04(金) 01:01:54.60 ID:UITRiJkCo
>>409
「そういう人間ってのは、えーとな。
 俺ら妖怪に好まれるような性質の人間、ってことだ」

説明しようとして、蛇は言葉を探した。

「妖怪と一緒にいる人間は大抵、『見える』奴と『憑き易い』奴のどっちかで、
 十夜の場合はその両方にあたるわけだ。
 『見える』奴には退魔師みたいな妖怪の敵も居るけど、『憑き易い』奴ってのは
 妖怪からはむしろ逃げるから、ある意味俺らには安心なんだよ」

妖怪のほうだって、人間のことが怖いのだ。

>>410
「まずあそこで配ってる甘酒貰う!」

指差すのは、先ほど極楽鳥が受け取っていたところだ。

>>409
「二人のお勧めって、何かあるか?
 俺、人間の祭り見るのは、えーと、400年ぶりくらい?かな?」

蛇は、七郎と十夜にも弾んだ声をかけた。
412 :十夜「」&七郎『』 :2011/03/04(金) 01:13:57.50 ID:xwJP5jqAO
>>410
「え?でも、僕達邪魔じゃないですか?」

遠慮している十夜。

『せ、せっかく誘ってくれてんだし、行こうぜ。』

七郎は、波山を警戒しているのか、早くこの場を離れたいようだ。


>>411
「あ、そういうことか…」

妖怪は苦手だが、なんとなく黒蔵の気持ちは分かる気がした。

『おすすめねぇ…俺は、基本的に味噌しか食わねぇからなぁ…食べ物以外は、よくわかんねぇし。』

「うーん…僕は…」

考えこむ十夜。
413 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/04(金) 01:16:02.20 ID:Z5NZQWlSO
>>411
「行くじゃん!」

元気よく頷くと、甘酒の配られている所まで歩きだす。
ひな祭りよろしく、お雛様の格好をした少女や、服を分厚く着込んだ男性が、甘酒を配っていた。
まさか妖怪が貰いに来てるとは露知らず、四十萬陀たちに甘酒を振る舞う。
まぁ、見えないならば、普通は疑いもしないだろう。

>>412
「いいっていいって!
 十夜君たちも、甘酒飲むじゃん?」

二人の目の前で、甘酒が配布されている。
四十萬陀はもう受け取っているようだ。
414 :黒蔵 [sage]:2011/03/04(金) 01:25:28.18 ID:UITRiJkCo
>>412>>413
「甘!!!酒!!!」

ほんのりと生姜を利かせたそれを、黒蔵ははしゃいで受け取る。
周りの人間で、ここまで甘酒にテンション上げている者は居ない。

(やっぱり米から作ったものは、食べると力がつく)

滅多に飲めない甘酒は、飲むだけでじんわりと傷口が暖まって埋まってゆく気がした。
甘酒に夢中になった蛇は、十夜たちのことはすっかり意識から飛んでいるようだ。

(これ、お代わりって、もらえるのかなぁ)

あっという間に一杯空にして、黒蔵はきょろきょろとあたりを見回していた。
415 :十夜「」&七郎『』 :2011/03/04(金) 01:30:19.32 ID:xwJP5jqAO
>>413
『せっかくだから、飲むか。』

「じゃあ、僕もください。」

二人とも、甘酒を貰うようだ。


>>414
「凄く甘酒が好きみたいだね。」

『そうみたいだな。』

穏やかな表情で、黒蔵を眺める。
416 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/04(金) 01:35:09.62 ID:Z5NZQWlSO
>>414
「おおっ!? そ、そんなに甘酒好きじゃん?」

まだ四十萬陀が口を付ける前に、黒蔵は一杯目を飲み干してしまった。
凄まじいテンションの上がりっぷりに、これはかなり好きなんだろう、甘酒が。と四十萬陀は推測する。
さすがに、今飲み終えたばかりで「おかわり!」と行くのは……と微妙に気を遣い、

「黒蔵君、ハイ。私の分飲んでいいじゃん。お酒あんまり飲まないから」

……お酒と言っても甘酒であるが。
そう言って、黒蔵に甘酒を渡す。

>>415
「どうぞ」

優しそうな初老の男性が、十夜に甘酒を手渡した。
417 :黒蔵 [sage]:2011/03/04(金) 01:43:02.22 ID:UITRiJkCo
>>416
流石に、四十萬陀の分まで貰ってしまうのは気が引けた。

「ああ、好きっていうか、米から作られたものは、霊力とか特殊な武器でできた傷にいいんだ。
 ほら、俺まだ穴ここ開いてるしさ?
 人里に来ないと手に入らないもんだし、昔は凄く貴重だったんだぜ?
 酒とか餅とかは特に力がつくし」

自分の胸を指差して、蛇が言う。
服の下には、四十萬陀に貰った薬草が当ててある。
418 :波山&極楽鳥 :2011/03/04(金) 01:45:20.14 ID:VDbcRXn4P
>>406

「えぇ! 私はともかく、波山は絶対に悪い子などではありません!!」

 凛として言い放つ!
 姉御、過保護モード!!

 しかし抱えられた波山は相変わらず爛々と目を光らせていた。
 その様子に気づいたのか、姉御は小さく耳打つ

(ほら、落ち着いてください。焼き蕎麦買ってあげますから)
(マジすか!?)

 波山はクルリと振り向き、違う意味で目を輝かせた。

「皆さん、私はそろそろ失礼します」

 ペコリ、と頭を下げる極楽鳥。
 羽根を散らしながらまくし立てるニワトリを抱えながら、
 乙女の姿をした妖怪は人ごみの中へ消えていった。


//すいません、そろそろオチさせていただきます
419 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/04(金) 01:54:42.45 ID:Z5NZQWlSO
>>417
「あ……」
(そうだった。黒蔵君、傷が)

「……って、それなら余計飲んだほうがいいじゃん!」

黒蔵の傷が早くよくなるなら、甘酒の一つや二つエンヤコラだ。
手に持った甘酒を、ほらほらと黒蔵に渡そうとする。

>>418
(なるほど、こういうキャラじゃん)

何を理解したのやら、うんうん頷き、
去っていく波山たちを見送った。

//お疲れ様でした
420 :十夜「」&七郎『』 :2011/03/04(金) 01:58:01.14 ID:xwJP5jqAO
>>416
「ありがとうございます。」

甘酒を受け取った。

>>417
『うお…なんか大変そうだな…』

「そういう訳だったんだ…」

心配そうに黒蔵を見る。


>>418
『い、行ったか…』

「七郎?」
421 :黒蔵 [sage]:2011/03/04(金) 02:09:45.23 ID:UITRiJkCo
>>419>>420
「や、でも…これは…。うん……ありがとう」

結局、黒蔵は押し切られて、四十萬陀の分の甘酒を受け取った。
十夜たちの表情にも気付いて、慌てて安心させようとする。

「あ、俺ら蛇は生半可な傷ではそうそう死なないから。心配しないで。
 全身焼かれるとか、首を切り落とされるとか、串刺しにされたまま放置とかされない限りは
 まず即死は免れるかからさ」

安心させようと慌てて説明するが、十分グロテスクな話になっていることに気付いていない。
風が出て雛壇に飾られた桃の花弁が散り、甘酒のなかに落ちたのにも気付かない。

>>418
(相変わらず、波山に甘いんだなぁ)

極楽鳥の過保護っぷりに、はた、と自分の保護者を思い出す。
翡翠の輪のあの皹に、酒の力は効かないだろうか。
きっと、甘酒よりは清酒のほうがいいだろう。
効力があるかは判らない、だが、かけて見る価値はあるだろう。

(でも確か、買うには大人の姿じゃないと駄目なんだよな)

蛇はふと眉をひそめて、真剣な表情になった。
422 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/05(土) 20:29:04.74 ID:UF/LzkaSO
草木も眠る丑三つ時は、怪異なるものに出逢う刻。
しばらくヒトの活動時間に合わせ、この時間には眠りについていたものの、やはり闇夜の冷たい、張り付くような空気は、妖怪にとって心地が良い。
彼、東雲 犬御は、風の動かない空を見上げた。
まだ道程はあるが、人の住まう場所から離れ、犬御は紫狂のアジトへ向かおうとしていた。
――窮奇、彼女に会うために。
以前の平次郎狸との闘いの傷はとうに癒えている。
深夜、療養中の身の置き場であった人間の病院を抜け出すことは、彼にとってそう難しいことではなかった。

じゃらり、
ジャケットのポケットに突っ込んだ手の中で、紫水晶の首飾りが音を立てた。
入院中、医者から「不良っぽくて他の患者さんが怖がるんす」とか何とか言われて、しばらく首から掛けるのをやめていたのだ。
それからかもしれない――己に対する疑問が、沸々と、とめどなく溢れてきたのは。
妖怪を、友と呼べたかもしれないものを喰らい、守る力を……奪う力を手に入れようとするやり方に。

『あなたは騙されている』

(……確かめなきゃいけねぇ)
423 :窮奇 :2011/03/05(土) 20:35:49.19 ID:LgZzqb74P
>>422

「やぁやぁ、おはこんにちばんわぁ」

 ドロリと濁ったあの空気が佇んでいた。
 赤い春服を着た女性が、ニヤニヤと犬御を見据えていた。

「ずいぶん思い詰めた顔だねぇ」

 笑っている、嘲っている。
 相手の心中などとうに掴めている筈だろうに。

「本日は何をご所望かなぁ?」

 ふざけている、舐めてかかっている。
 再びあの悪意に塗れた触手が犬御の心を絡めとろうとしていた。
424 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/05(土) 20:43:43.64 ID:UF/LzkaSO
>>423
闇夜にぬるりと、突然現れる気配。
人に恐れを抱かせる不気味さは、人の知る所を越えた、まさしく妖怪(あやかし)を体現しているように思える。

「……そっちからお出ましとは、手間が省けたぜ」

特に驚くこともなく、犬御は彼女に向き直った。
彼女が神出鬼没なのは何時ものことだ。

「テメェなら分かってンじゃねぇのか、窮奇。俺が訊きたいことをよぉ。
 ……まぁいい、改めて最初から言ってやる」


「――テメェは、俺に何か隠してるンじゃねぇか?」


お互い、まだリーチから遠い距離にいる。
425 :窮奇 :2011/03/05(土) 20:55:50.68 ID:LgZzqb74P
>>424

「えぇーー、隠し事ぉ? あはははははははは!」

 不気味な笑みが深みを増す。
 ニヤニヤニヤニヤと、深いな表情か心に食い込んでいく。

「いっぱいありすぎてどのコトだかさっぱりわからないや!
 私が相手の心を読めるってコトかな?
 それともその紫水晶が私の分身だってコトかな?
 キミが狸に無様に負けて、山から追い出されたのを知ってるコトかなぁ!?」

 大げさな動作で、ニヤニヤと笑いながら歩み寄っていく。

「知っても大した事じゃないコトしか私は隠してないよぉ?
 それに知らない方が『良い』コトだっていっぱいあるじゃないか!」

 ついに眼前にまで迫る、その不気味な笑顔。
 濁った空気が肺に、気道にへばり付き。息をすることすらも苦しい。

「それともまだ何か知りたいのかい?」
426 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/05(土) 21:13:02.13 ID:UF/LzkaSO
>>425

「……そうだよなぁ」

濁った瞳を突き合わせた犬御は、歪みきった窮奇の嗤いを前にして、肩を揺らした。
クク、と噛み殺しきれない音が、牙の間から漏れる。
頭を垂らせば、窮奇からその表情は見えない。しかし、彼女ならば分かるだろう。

犬御の中の、後悔や怒りや憎しみといった負の感情の海。
そこから、ぽっかりと浮かびあがる『答え』。

「……馬鹿みてぇに、キャンキャン吠えてただけだってか?」

ポケットに突っ込んだ手を持ち上げ、窮奇の分身、犬御を蝕んだ悪意の結晶を掲げる。
まるで、窮奇に「受け取れ」と言っているように。

「あぁそうだ……チッ、忘れちまってた。ただ何にも考えず『ムカつくやつをブン殴る』。それが俺だったはずなのによ……」

「ありがとよ、窮奇。テメェのおかげで全部分かった」

――取り返しのないものを犠牲にした。
自嘲なら何時でもできる。後悔なら背負っていける。
だからこそ、俺に今できることは何だ?

拳を、強く強く握り締める。


「テメェをブン殴る……やっぱり、『こう』じゃなくちゃな」
427 :窮奇 :2011/03/05(土) 21:19:52.20 ID:LgZzqb74P
>>426

「えぇーー!? 返しちゃって『良い』のかなぁ?」

 紫水晶を掲げた真意を図り、
 ニヤニヤとした笑顔でソレを受け取る。

「ま、ありがたく返してもらうよぉ。こっちもカツカツだからねぇ!」

 握った拳を、濁った瞳が捉えた。

「相変わらず粗暴で短絡的だねぇ。
 そんなんだから四十萬陀ちゃんに捨てられちゃうんだよぉ?」

 ドロリと猛毒の滴る言葉が、再び犬御の心に突き刺さる。
428 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/05(土) 21:36:03.84 ID:UF/LzkaSO
>>427
「テメェの分身なンだろ。全力じゃない相手をブン殴っても、意味がねぇ」

鋭い視線を、窮奇の濁った瞳にぶつける。

「……あぁ、確かに俺は粗暴で短絡的だ。俺がやったことは、許されることじゃねぇ。アイツはケジメを付けたんだ」

別れる直前、四十萬陀の、悲しそうな顔を思い出す。
あんな顔をさせないために、強くなろうと決めたのに。
――だけど、七生はちゃんと、自分で決めた。いつかした約束の通り、七生の精神(こころ)はちゃんと強くなっている。
なら、今度は自分の番だ。

「もうテメェの言葉には、揺るがねぇよ。俺も、七生も……そうだろ」

「テメェが俺の心を折ろうとすンなら、その前に言ってやる。俺の心はもう折れてるよ。バキバキもいいところだ。粉砕骨折ってところだな」


「償えると思っちゃいねぇ。許してもらおうとも思ってねぇ。……だが、このまま終わるつもりはない。
 テメェをブン殴ったあと、汚なく生にしがみついて、醜く償ってやる。アイツらに許しを乞いてやる!」


吐き捨てるように言うと、犬御は握り締めた拳を、窮奇の顔面に放った。
その拳は、当たる寸前に、ぴたりと止められる。

「紫狂では世話になったな。心苦しいが俺は脱退させてもらうぜ。
 さぁ、テメェが始める気がねぇなら――こっちから始めるぞ」
429 :窮奇 :2011/03/05(土) 21:43:44.77 ID:LgZzqb74P
>>428

「あはははははっ! すごい自信だねぇ!!」

 受け取った紫水晶をつまんで頭上にぶら下げ、
 まるで鶫が魚を丸呑みにするように、スルスルと降ろして飲み込む。

「んむっ ・・・ぷはぁー!!」
「んー、まぁ困ったねぇ。ぶん殴られるのも喧嘩もゴメンだけどそれ以上に・・・」

 おぞましいまでの殺気が、狂気が!
 いつの間にか犬御の背後に忍び寄っていた!!

「キュウちゃんに何してくれてんですかぁあああああ!?」

 莫大な退魔の妖気を纏う凶刃が!
 犬御の背後より振り下ろされた!!
430 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/05(土) 21:56:55.97 ID:UF/LzkaSO
>>429
「――!?」

背筋が伸びるような殺気に、反射的に振り返った犬御は、それと同時に結界を張った。
退魔の妖気を纏った刀を、結界が受け止める。

「オイオイ、何でそンなに激情してるか知らねぇが……奇襲ならもう少し殺気を隠すのをオススメする、っぞ!!」

刀を弾き、その反動で後ろに下がる。
窮奇と、突然乱入してきた男のリーチから一度離れ、向き合う形を取った。

(チッ、腕が痺れる……コイツ、やりやがるな)

結形を解き、紅い瞳で睨み付ける。
431 :窮奇&渾沌 :2011/03/05(土) 22:15:31.88 ID:LgZzqb74P
>>430

「やっぱり湧いて出たよ」

 うんざりとした顔で、ポツリと呟く窮奇。
 息を荒げたパーティースーツの男が目を光らせている。
 彼の名は渾沌。呪いに塗れ、悪意に魅せられた元・人間である。

「おぉおおおおおっ! おのれぇえええええ!!
 犬ぅううううう!! キュウちゃんのお誘いを蹴りッ!
 あまつさえぶん殴るなどッ!! 万死にあたいするぅうううううう!!」

 窮奇は見るからにめんどくさそうな顔をして、渾沌と犬御を交互に見据える。
 しかし何か思いついたように、ニタリと笑みを浮かべる。

「丁度『良い』や、しばらくやってなかったしぃ・・・。たまには私も身体を動かしておくよ」

 窮奇の言葉に、渾沌は大きく振り返る。

「きゅ、キュウちゃん・・・まさか・・・」
「あ、そこのキモ男。仕留め切れなかったら後よろしくね」
「は・・・はい! 了解しました!!」

 ニヤニヤとした不気味な笑み。
 犬御に再び向き直り、朗らかに宣告する。

「いいかい犬御くん。12秒・・・12秒だ」

「9割の魂で、この不完全な身体で。
 全力で動けるのは多く見積もって・・・大体12秒ぐらいだ」

 大きく手を振り、上着を脱ぐ。

「可哀想だねぇ・・・仲直りする前に死んじゃうかもしれなくてさぁ!!」

 背中から純白の翼が現れる。
 流れ出す、溢れ出す・・・凄まじい量の妖気!!
 翼が生えた場所から、まるで虫の脱皮のように。
 巨大な本性がズルズルと這い出していく。

 その姿は巨大な天女・・・だった。
 翼が生え、紫苑の衣を纏い、犬の顔をしている。

 真っ赤な目が犬御を捉え、青い舌を伸ばしながら大きく吼える。
 山を揺るがすような、地面を振動させるような。
 雄大で、壮大で、強大で、甚大な・・・怒声だった。
432 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/05(土) 22:39:02.57 ID:UF/LzkaSO
>>431
(チッ、面倒なのが増えたな)

憎々しげに顔を歪める。
だが、ふと様子が変わった。
パーティースーツの男の表情が変わる。窮奇の不気味な笑みに、犬御はこれから起こることを予感した。
――何か、仕掛けてくる気か。
突然のことに対応できるよう、警戒態勢を取る。

窮奇が高らかに宣言したのは、時間だった。
その宣言に、犬御は訝しげに眉を潜めた。

「12秒? 何の事……だ……」


「なッ――……」


犬御は、すぐにその宣言の意味を知ることになった。
……目の前で起こった『こと』は、犬御の予想を遥かに越えたものだった。

「それがテメェの正体か、窮奇……!!」

地を揺るがす咆哮に、犬御の本能が云った。
――適わない、と。
唖然とする。血の気が引き、冷や汗が顎を伝って滴る。
だが、犬御は鳴り響く警鐘を無視して、頭を振った。
口角をあげ、あえて、一歩を踏み出す。

「いいぜ、上等だ。耐えてやろうじゃねぇか12秒!!」

ここで向き合えなければ、変われない。
手の平を突き出し、犬御は全身全霊の妖力を持ってして障壁を張った。
それは、かつて鉱太郎から奪った力。

(頼む、鉱太郎。この馬鹿畜生に力、貸してくれ……!!)

12秒間。悪魔のタイムリミットが始まった。
433 :窮奇(本性) :2011/03/05(土) 22:48:18.96 ID:LgZzqb74P
−妖怪目録−

・ 天逆毎(あまのざこ)

別名『女天狗』または『天狗神』とも呼ばれる。
天狗や天邪鬼などの始祖となる邪悪な女神。
天女の姿をしているが、犬の顔、長い鼻、鋭く伸びた耳を持つ。
その出生は創世神話にまで遡ることが出来るという。
意に沿わぬことがあれば荒れ狂い、力ある神をも捻じ伏せる。
また天邪鬼のように物事をあべこべにする事を好む。
人の心に取り付く術も持ち、この術に捕らわれた者は、
賢い者も愚かな者も皆等しく心が乱されてしまう。



 圧倒する威圧。
 激しく地面を叩き伏せ、発動させる『逆心』。

 反転させられたのは・・・ここら一帯の『重力』!!
 この邪悪な女神は、おぞましい獣面の怪物は!!
 心や、魂だけでは飽き足らず! 万象の定義すらも反転させてしまったのだ!!

 空へと落ちていく、地面。

 宙に浮かぼうとする犬御に、涎に塗れた巨大な犬歯が襲い掛かる!!

 この間・約3秒!!!
434 : :2011/03/05(土) 22:51:08.01 ID:BRNHCXh20
その悪魔の12秒を彼は見ていた、見つからないように。
ずっと窮奇をつけていた結果だ。
その天女を見る限り、犬御をやってしまうくらいの力は持っていると思った。

犬御がピンチになった時、助けるだろう。
435 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/05(土) 22:59:28.81 ID:UF/LzkaSO
>>433
唐突な足元の浮翌遊感。
まさか重力まで操るとは考えなかった犬御は、その感覚にぎょっと目を見張った。

「な、浮いっ――!!」

だが、余所見も考えを巡らせる暇もない。
瞬間、風を押しつぶし、天逆毎の巨大な犬歯が犬歯に迫る。

「ッうがああ!!」

――ドッッ!!!
激しい音を立てて、土煙が舞う。
しかし、犬歯は犬御を潰すことなく、動きを止めた。
障壁がそれを受けとめたのだ。
犬御の足元は、その衝撃波でわずかに抉れている。

――だが、

「ハアッ、ハアッ」

あまりに、あまりに重い一撃。
僅か3秒だというのに、すでに犬御の障壁は大部分が削られていた。

「……ハッ、その程度かよ。天女さんよぉ!!」

牙を剥き出し、にたりと笑う。
しかし、その笑みに一切の余裕はない。
――止まっていれば、やられる。
犬御は、獣の姿に戻り、走りだした。
436 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/05(土) 23:03:54.42 ID:UF/LzkaSO
>>435追加

しかし、この無重力状態では、上手く走ることは適わない。
鎌鼬に用いる風の力で何とか進むが、獣状態のスピードの半分にも満たない。

(くそッ……これじゃ意味がねぇ。妖力が無駄なだけだ)

――受け止めるしかねぇ!
437 :窮奇(本性) :2011/03/05(土) 23:10:56.68 ID:LgZzqb74P
>>435

 止められた虐殺。
 しかしその巨大な牙は、犬神の強固な障壁すらも噛み砕いてしまう!

 ギョロリと赤い目が、空中を駆ける狼を見据えた。
 再び逆転される『何か』。
 ニタリと笑う、獣面ですらもわかる醜悪な笑み。
 誰かの心を天邪鬼にするのは、この女神の最も得意とするところだった!

 犬御が突如、向きを変え!
 逆に巨大な天女の方へ向かって走り出してしまう!

 逆転させられたのは・・・犬御の『方向感覚』!!


 巨大な手が振り上げられる。
 こちらへ向かって嫌が応にも走り出す犬御を握り潰そうと!
 大きく振りかぶる!!


 この間、約9秒! 残りはたったの3秒!!
 しかし・・・十分すぎる! 長すぎるその刹那の時間!!
438 :  [sage]:2011/03/05(土) 23:17:02.24 ID:gs2ddgNho
>>436
犬御に併走する一匹の獣の影が現れた。
その影は犬御を追い抜きざまに振り向いて、ニヤリと笑ったように見えた。
走り抜けた灰色の影は、犬御の前方でくるりと丸まり赤い障壁となる。
赤い文様の獣面が牙をむき、これから向かってくる一撃を迎え撃とうと咆哮した。
439 : :2011/03/05(土) 23:25:59.63 ID:BRNHCXh20
「(あの影は…まさか……!!)」

零はその獣のことを知っていた、いや、知ってると言うよりは見ていたと言うべきか。
その獣は犬御に殺 されたのに、そこまでして助けるなんて――心を撃たれた。
ここは犬御を助けなくては…

黒龍剣を持ち、犬御の所に走り一撃を食い止めようとする。(1秒)
440 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/05(土) 23:33:31.97 ID:UF/LzkaSO
>>437
「な……、」

――ゾッ、とした。
その、ただただ邪悪な笑みに。
今、一番向かいたくない方向へ、勝手に体が走っていく。
巨大な手が、犬御の上方を覆い隠した。
月の光を遮る、闇より深い、絶望の影を作り出す。

(避けれねぇ)

残り何秒かなど、もう犬御には分からなかった。
己を握り潰そうと近づく天逆毎の手の動きが、途方もない時間に感じられた。
これに掴まれば、残りが何秒であろうと、確実に殺される。

絶望に、暗転。

(くそ、くそ、くそっ……)


(死ぬ訳には、いかねぇのにッ……!!)


>>438
その時だった、
犬御の前を、灰色の影が通り過ぎた。
振り向きざま、笑みが見える。

見開かれた、紅い瞳。


「――鉱、」


その名前を呼ぶ前に、影は障壁となった。
我に返った犬御は、残り少ない妖力を振り絞り、同じ障壁を張る。
しかし、その腕は、わずかに震えていた。

「……ちくしょう、何でだよ。何で……」

震える声で、喘ぐように呟く。


「鉱、太郎っ……!!」
441 :窮奇(本性) :2011/03/05(土) 23:40:41.89 ID:LgZzqb74P
>>438

 一瞬だけ阻まれる、巨大な握撃!!
 爪が長く伸びた手は・・・犬御の代わりにその影を握り潰す。

 狙いが逸れた。怒りに震えた目で、今度は大きく口を開け!
 犬御を直接食いちぎろうと迫るが!

>>439

 黒竜の一撃で、それすらも阻まれてしまった。
 側面からの迫撃を食らい、吹き飛ばされて怯む犬面。

 この間、12秒・・・ようやく時間が尽きた。


 徐々に小さくなっていく、具現化した魂。
 元に戻った重力に従い、暗い地面へと落ちていく。

 そこには、依り代を抱えた渾沌が立っていた。

「キュウちゃん!!!」

 魂を依り代で受け止めると、
 屍のようだったその身体は、眠るように胸を上下させる。

「えぇい!! わいら、来なさい!!」

 突如、地面が盛り上がり。
 窮奇を抱えた渾沌を包み込んで、地中へと消えていった・・・。
442 : :2011/03/05(土) 23:48:28.97 ID:BRNHCXh20
>>440-441
「………」

今はそっとしておくのが一番良いのだろう。
泣きたいときは泣いていいんだよ…。
443 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/05(土) 23:55:41.45 ID:UF/LzkaSO
>>441>>442
窮奇たちが去った後、
犬御は、がくりと地面に膝を落とした。
限界すら越え、妖力を使いきってしまったのだから、
体力も、スタミナも、殆ど空っきしだ。
――こりゃあ、入院延期だな、と意識の鈍った頭で、ぼんやりと思う。

ぽたり、

「……?」

突然、足元にできたシミに、犬御は首を傾げた。
それが、自分の涙だということに気付くのに、そう時間はいらなかったのだが。
気付いてしまえば、とめどなく、

「……はっ、あ、くぅ……あ、ああああぁ……」

噛み殺していたものを、全て吐き出すようにして、犬御はむせび泣いた。
ぼろぼろ、ぼろぼろ、と。
弱さをひた隠す紅い瞳から、涙が溢れだす。

「あ、あぁ、うあああ……!!」


しばらくして、
泣くことで、最後のひとかけらの体力を使いきったのか、糸が切れたように、犬御はその場に倒れた。
444 : :2011/03/05(土) 23:59:33.17 ID:BRNHCXh20
「いい情報が得られた…。」

そういい残し、犬御を後にした。

後に今日のことはレポートに書かれて、夜行集団の元へ…
445 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/06(日) 23:38:49.13 ID:GplYFQSjo
ー昼間の喫茶店、その店内にてー

「ーはぁ、今日もお客は来ませんねぇ。」

そんな風にぼやいている男が1人、その隣には黒猫が座っていた。

時刻は12時になろうかという頃。普通の喫茶店ならば最も混み合う時間帯であろう。

(こんな店に来るようなのはよっぽどの物好きかおまえの同類くらいなもんだろう。)

黒猫が男に向かって話しかける。いや、実際には猫は話すことなど出来はしない。しかし、この男にはそれがわかる。

長き年月が経つと猫の尾が二股になり化け猫となるそうだ。この男は正にそれである。しかも、化け猫の中でも上位の存在。

「まぁ、趣味の店で収益なんて期待はしてませんけど・・・」

短く嘆息をひとつ。

「はぁ・・・にしても暇ですねぇ。そうだ、ここはひとつ、かけでもしませんか?」

(?)

男が猫に提案する。案の定猫はよく分かっていないようだ。

(賭?してもいいが、その内容は?)

「それは至極単純です。」

男がニッコリとほほえみ猫に言う。

「あと1時間の間に、1人でもお客が来るかどうか、です。」
446 :招き猫 [sage]:2011/03/06(日) 23:48:27.77 ID:jTaQ07O0o
>>445
この日、クリーニング店の看板猫ミケ子は、憂さ晴らしがてらちょっと遠くまでうろつきに出ていた。

先日のおやつ争奪戦では、店の閑古鳥に桜餅を掻っ攫って行かれて、
帰ってきたときの奴は、飴玉を見せびらかしながらミケ子を馬鹿にしたのだ。
そして今日もまた、閑古鳥はミケ子の分のどら焼きを咥えてどこかへ飛んでいってしまった。

(ちょっとばかり飛べるからっていい気になってさ、きーっ!)

帰ってきたら絶対アイツ締めてやるんだから、と腹を立てながら歩いていたミケ子の鼻を
あの香りがくすぐった。

(なに、このいい香り。どこからくるの?)

先ほどまでの怒りはどこへやら。
とろんと表情のとろけた三毛猫が、香りに誘われて着いた場所は一軒の喫茶店。

(ここね、ここなのね)

にゅふふふ、と怪しい笑いを浮かべながら、招き猫の九十九神は店の扉にもたれかかった。
447 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 00:01:54.65 ID:ensAlavEo
>>446

「おや?」

「これはもしかしてもしかすると・・・お客さん・・・ですかね?」

女性の方を見て呟く、と同時に猫が小さく舌を打った。

「この賭は私の勝ちみたいですねぇ。」

してやったり、といったような顔で猫の方を見やる。

(うるせぇ。)

猫は不機嫌そうにそっぽを向いてしまった。

「いらっしゃいませ。どうぞご自由におかけになって下さい。」
448 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 00:07:10.39 ID:ensAlavEo
すいません。てっきり人だと勘違いしてしまいましたm(_)m
449 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 00:11:06.50 ID:FisA0rGUo
>>447
「にゃっ!?」

寄りかかった重みで、からん、と扉があいて、ミケ子は店内に転がり込んだ。
声をあげた人物は店主だろうか。

(いつもみたいにお腹出して甘えたら、美味しいもの出てくるのかしら)

看板猫として人間への甘えスキルはしっかり身についている。
しかし、ここには既にもう一匹の猫がいた。

(あら、他の猫が居るならアタシが甘えても不利ね。どうしようかしら)

そう考えていたところに、どうぞと声を掛けられて、三毛猫はきょろきょろとあたりを見回す。

(人間のお客はいないし、アタシに声かけた?まさかね?)

猫をお客様扱いする店はたまにあるけど、大抵それは人間の冗談だ。
猫は猫。
人間はいらっしゃいと声を掛けておやつをくれたりもするけれど、所詮そこまでなのだ。
450 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 00:19:40.79 ID:ensAlavEo
>>449

「あら、なんて可愛いお客さんでしょう。」

そう言って男は目の前の猫を店内へと導く。

(おい、そいつは客じゃないだろうがっ!!)

そう言って黒猫が怒り出した。先程の賭に負けたのがよほど不満だったのだろう。

「まぁまぁ、いいじゃないですか。彼女だって立派なお客様ですよ。」

(ふざけんな!さっきの賭は無効だ!む・こ・う!)

そんな黒猫の怒りなどお構いなしといった様子で男は三毛猫の方へと向く。

「さぁ、こちらへどうぞ、可愛らしいお客様。」

そう言って指したのは店のカウンターの一番日当たりの良い場所だった。
451 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 00:32:50.92 ID:FisA0rGUo
>>450
「なーぅ♪」

可愛い、と言われて愛想鳴きで返事をするくらいはお手の物。
この男は猫の扱いに慣れているようだ。
ならば精一杯の愛想でお返しをするのが看板猫としてのミケ子の腕の見せ所である。

しかし、黒猫は怒っているようで。

(無理も無いやね。
 他所の猫が優遇されるのを目の当たりにしたら、アタシだって不機嫌になるわよ)

「ぅなーぉ♪」

不機嫌な黒猫にも、ミケ子は愛想よく挨拶する。
ミケ子だって自分の店の看板を背負って歩いているのだ。
相手の店主に招かれたとはいえ、そこの看板猫が不機嫌なら、
なおのこと行儀良くしておかなくてはならない。

店の黒猫に礼儀を尽くしてから、ミケ子は示されたカウンターにひょい、と飛び……乗ろうとして
太った腹が引っかかる。
短い足をばたつかせて、なんとか落ちずによじ登った。

(いやぁね。ちょっと無様だったわぁ)

慌てて毛づくろいする振りをしているが、恥ずかしいので耳はひこひこと落ち付きなく動いている。
452 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 00:43:04.84 ID:ensAlavEo
>>451

「にしても・・・今度のお客さんは猫さんですか。」

少し前の事を思い出したのだろうか、クツクツと笑い出した。

「この前のお客さんは狸さんでしたし・・・なんなんですかねぇ。」

動物が、というよりは自分の同類が集まりやすいとでも思っているのだろう。とにかく、この店に普通の客が来る事なんてめったに無い。

(さぁなー・・・ったく、さっきのあれは絶対におかいしいだろ・・・ブツブツ)

黒猫が未だ根に持っているようだ。普段はずる賢くてつかみ所が無いくせに、こんな風にふてくされることもあるから可愛くて仕方がない。

「まぁまぁ、そんなに怒らず。どうです、あなたもこっちで一緒にくつろぎませんか?」

黒猫に尋ねる、としぶしぶといった様子でこちらに寄ってきた。

「とりあえず・・・喉も渇いてるでしょうから、ミルクでも持ってきますね。」

三毛の方に微笑みかける。

「待ってる間、2人でお喋りでもしてて下さいな。」
453 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 00:48:17.30 ID:FisA0rGUo
>>452
店主が奥へ下がったので、ミケ子は申し訳無さそうに黒猫に話しかけた。

「ごめんなさいね、お金になる客じゃなくって」

ミケ子のいるクリーニング店だって、客が少なくて収入は低いのだ。
招き猫の居る店に客が来ないのは、閑古鳥のせいでもあるのだけれど。

「もしアタシがこの店にお客を招いたら、あなたの機嫌も少しは直るかしら?」
454 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 00:55:25.69 ID:ensAlavEo
>>453

(さぁな、別に俺はここの飼い猫って訳でも無いし。)

まだまだ黒猫はご機嫌斜めな様である。まぁ実際、この猫とこの店にはっきりとした関係はないのだが。

(客が増えれば、あいつは喜ぶだろうよ。前に繁盛したときは楽しんでたな、確か。)

ーここで黒猫が気付く。何度か嗅いだことのある独特のこの臭いー

(あんたもあいつと同類って訳か・・・)

(まぁいいか、俺には何も関係ないしな。呼んでやれよ。・・・招き猫さん?)
455 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 01:00:57.54 ID:FisA0rGUo
>>454
「あいつと同類?」

一体どういうことかしら、と不思議に思いながらも、ミケ子はすぅ、と息を吸い込む。
しゃんと背筋を伸ばして後足で立ちあがり、店の窓の遥か向こうを見透かすように瞳孔が細くなる。
短い左手を極限まで高々と掲げると、くいくい、と招くように動かし始めた。
短い尻尾がそれにあわせてぴこぴこと揺れる。

(お客様来い来い。いい店ここにあるよ、千客万来)

宙に漂う縁の緒を手繰りこむように、招き猫は客を呼び始めた。
果たして、客は訪れるだろうか。
456 :夜行集団 :2011/03/07(月) 01:04:23.97 ID:qdhmBcnm0
>>454>>455
そんな招き猫の誘いに招かれた少女か少年が定かでない子供。
この喫茶に立ち寄る前には、その技術をもってとある家元の茶会に、大正琴の弾き手として呼ばれていた。
そのためかこの妖怪の服装は青を基調とした着物姿であった。

「(なんともいい匂いがしますね

 あちらでもお菓子が出されましたが、
 あんな量では華音にはむしろ呼び水になってしまいました!!)」

招き猫が招くのは、その妖力を持ってしてである。
普通の妖怪、霊感のある人間ならばうかつに妖気の誘うまま、こんな所へは来る筈がないのだが、
そこはさるもの。
空腹であった事で全くそういった方面に警戒をしていなかった。

「ここはお菓子がありますか・・・って、猫だらけです!!」

軽快に店へと入店する。
457 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 01:06:26.32 ID:ensAlavEo
>>455

「お待たせしましたぁ〜、お腹に優しい猫用ミルクですよ・・・って、何をしてるんですかねぇ?」

三毛の方を見ると、左手を挙げていてまるで招き猫のようだ。

(お、やっと戻ってきたか。)

黒猫が男の方を見やる。ようやく機嫌が直ってきたようだ。

(招き猫が客を招いてくれるとさ)

「招き猫・・・あぁ、なるほど。彼女は九十九でしたか。」

「ってことは少し忙しくなるかもしれませんねぇ。」

なんとも嬉しそうである。
458 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 01:12:54.05 ID:ensAlavEo
>>456

そんな風にしていると、早速招かれてきたであろう人物が1人。

「おや、いらっしゃいませ。どうぞお好きな席におかけになって下さい。」

愛想良く男は対応し、客を席に着くよう促した

「お決まりになりましたら、お気軽に声をかけてくださいね。」

「しかし・・・本当に招いてくれるとは、すごいですねぇ。」

三毛のやったことに素直に驚く、と同時に、久々の仕事だと意気込む。

「お礼にマタタビケーキでも出しましょうかねぇ。」
459 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 01:13:00.42 ID:FisA0rGUo
>>456-457
客を招くのに一生懸命だったミケ子は、店主に見られて一瞬、しまった、という表情になる。
しかし店主のほうはあまり驚いていない様子。

「ええと…もしかしてここは猫を被ってなくてもいい場所、なのかしら?」

ただの猫のふりをしていた九十九神は、おずおずと店主に問いかけた。

そこへからん、と入店したものが居る。
今度こそ、お金を落としてくれそうな客がやってきたようだ。
460 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 01:17:18.23 ID:ensAlavEo
>>459

「えぇ、別にそう気張ったりはしなくてもいいですよ。なんせここは喫茶店ですから。お客さんにはくつろいで貰わないと。」

そう三毛の方に向かって言う、と同時にその手には淡い黄緑色をしたケーキがあった。

「これはささやかなお礼です。どうぞ食べて下さいな。」
461 :華音 :2011/03/07(月) 01:21:25.52 ID:qdhmBcnm0
>>458
「はい!!いただきます!!」

華音は店主の誘導に従い、机もたくさんとならんでいるというのにあえてど真ん中の机に座った。
それは特に意味はなく、強いて言うのなら観客のもとで奏でる華音のセンターにいる癖が影響していた。

「(・・・ふむ、どのコーヒーがいいのか分かりませんね・・・エスプリッソ?)」

おしゃれな雰囲気を出そうと意気込む華音だが何分勉強不足、珈琲の種類は知らない。
そしてしばらく考えた後。

「すいません、このチョコケーキにあう珈琲をください」

安全パイであった。
462 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 01:25:38.27 ID:FisA0rGUo
>>460
ここへ来てようやく、ミケ子は店主が人間ではないことに気付いた。

「あら。……そういうことだったのね。
 もっと早く気付いていれば、ただの猫の振りして恥かかないで済んだのにぃ」

いやそれは違うのよ。もうちょっとダイエットを頑張るべきなのよ。
という自分自身の心の囁きが聞こえなくもないミケ子なのだが。

そこで差し出されたケーキは―――

(これよ!この香りよ!)

―――まさに、ミケ子をここに誘ったあの香りだった。

「ありがと。美味しそうね。頂くわ」

(ダイエットは明日から!)

目を細めてケーキとミルクを堪能し始めたミケ子の明日は何時だ。
463 :華音 :2011/03/07(月) 01:29:32.36 ID:qdhmBcnm0
>>462
「ねねねね猫がしゃべったーー!!

 って妖怪ですか。驚きましたよ」

完全に気を抜いていた華音は猫や店主の妖気に気づいていなかった。
そのためにいつもの氷亜の様な流れになってしまったのだ。

「猫さんはなんのケーキですか?」

然し相手は九十九神であるので、安心して話しかける。
464 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 01:32:20.59 ID:ensAlavEo
>>461

「はい、かしこまりました。」

そう返事をし、少し考える。普通にいけば甘いものだから、濃くいれたエスプレッソで良いだろう。しかし、

(見た感じ・・・子供・・・ですよね。だとしたら、まだ無理ですかねぇ・・・)

この店はコーヒーに対して中々のこだわりがある。お客には最も良いものを提供したいだろう。

(そうなると・・・やっぱりあれですかねぇ)

そう考え、とりあえずの注文が決まったようだ。

「それでは、チョコレートケーキとカプチーノ・キロアをお持ちしますね。」
465 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 01:37:37.73 ID:FisA0rGUo
>>463
「にゅふーん、これマタタビなのねー」

マタタビの実の味はキウイに似ている。同じマタタビ属の植物だから当たり前なのだけど。
とろんととろけているために、ミケ子は相手が不意に話しかけてきても驚かない。

「そういうあなたは何の妖怪さんかしらー?アタシは招き猫のミケ子。
 あなたはアタシがここへ招いたのよね」

相手も妖怪なら、猫を被る必要はない。

「あなたのケーキも、来たわよ」
466 :華音 :2011/03/07(月) 01:39:19.19 ID:qdhmBcnm0
>>464
「はい!ロキアでお願いします!!」

知ったかぶった華音は初歩的なミスを犯してしまったが、それにも全く気付かず
わくわくと子供らしい顔でケーキとコーヒーを待っている。

「(なんとも大人な雰囲気ですね・・・
  夜行にもこんな所があればもっとかっこよく・・・)」

大人っぽいと言っても、それにそぐなうキャラは壊滅的に少ない事も忘れいろいろと思案していた。
467 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 01:42:26.18 ID:ensAlavEo
>>465

「ふふ、気に入ってもらえたようでなによりです。」

そう言った男の顔はとても喜んでいた。そして、もう1人のお客の方へと向く。

「あ、お待たせしました。こちら、チョコレートケーキとエスプレッソ・キロアです。」

テーブルの上に、上品なケーキと湯毛を燻らせたカップが置かれた。
468 :華音 :2011/03/07(月) 01:45:06.19 ID:qdhmBcnm0
>>465
「招き猫の九十九さんですか、よろしくです。
 華音は華音です、種族は・・・なにかは分かりませんが音楽妖怪です」

向こうが自己紹介を始めたので自分も、と種族を考えてみるが分からない。
生まれも育ちも自分がなにかさえも知らないが、
華音にとっては音楽があればそれで十分だそうである。

「あなたが招いてくださったのですか!ありがとうございます!
 ・・・でもこんな大人なお店は初めてなので緊張します・・・」

耳うちで猫に話す。
469 :華音 :2011/03/07(月) 01:51:01.08 ID:qdhmBcnm0
>>467
「おお!なんだかおいしそうですね、ロキア!!」

もはや大人びた雰囲気などの考えも忘れてしまっている華音は目の前の御馳走によだれを垂らす。
そしてフォークで小チョコケーキを一口大に切り、口に含む。

「!!
 
 チョコのビターな感じと甘さが最高です!!」

そして上機嫌のまま、珈琲をできるだけ上品に口に含み

「(苦!!
  ビター過ぎます・・・)」

甘党な華音だが人がいる手前、吐き出せないので頑張って飲み込む。
470 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 01:58:38.13 ID:FisA0rGUo
>>467
「ミルクの温度も丁度いいし、このケーキのマタタビの効かせ具合も悪くないわぁ。
 あまり強すぎても酔っ払って味が判らなくなっちゃうのよね」

(ああー、また来たいわぁ。でも、アタシお金にならないお客なのよねぇ)

>>468
「音楽妖怪?つまり、祭囃子とかそういう類かしら?」

ミケ子は華音に耳打ちを返す。

「大人なお店、って肩に力を入れなくてもいいのよ。
 いいお店はどんな人だってきちんとおもてなしするものなの。
 もしメニューとか商品とか判らないことがあったら、素直にお店の人にアドバイスを求めるのが
 お客としては一番大人で賢い振舞い方よ。
 知らないことは恥じゃないし、いい店なら商品の知識を持った人がちゃんと居るんだから。
 お客様の無知を馬鹿にするような店は、そもそも在っていい店じゃないわ」

クリーニング屋の看板猫は、華音にそっと片目をつぶって見せた。
471 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 02:00:25.45 ID:ensAlavEo
>>469

(あらら・・・あれでも駄目っぽいですねぇ・・・一応、いつもより多めにミルクを入れたつもりでしたが・・・)

他のに変えようかとも思ったが、あそこまで頑張っている姿を見せられると言うに言えない。

(これは困った・・・)

なにかいい方法はないかと考える。思いつく限りでは3つ

1.無理矢理代える

2.黒猫にじゃれさせてその間に代える

3.傍観

(本当に困った・・・とりあえず、作戦その2でいきますか・・・)

そう思い、黒猫を探す。

「あ、いたいた。ちょっとお願いが・・・」

(あ?なんだよ急に・・・)

黒猫に耳打ちする。

(オーケー、やってやるよ。)

そう言うと、黒猫は客の席まで行き、着物の裾を軽く引っ張った。
472 :華音 :2011/03/07(月) 02:09:46.98 ID:qdhmBcnm0
>>470
「おお!!なんとも大人な回答です!!
 勉強になりました!!」

さて大人と何回言ったでしょうか?という問題ではないのだが、空気に飲まれ大人と連呼する華音。
ミケ子の言いたい事は理解できたが、氷亜たちのように旨く返す事が出来なかった。

「分からないですが、もしかしたら祭囃子から生まれたのかも?
 華音はどんな歌でも奏でられますよ!!なんなら一曲きいていただけますかっ!?」

結局奏でたいだけの華音。

>>471
すると黒猫が裾を引っ張ってきた。

「?
 なんですか?猫さん
 もしかして猫さんも華音の歌が聞きたいのですか?」

ふりかえり答える華音。
473 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 02:16:49.82 ID:FisA0rGUo
>>471
ミケ子はちらり、と店主と黒猫をみる。
この黒猫の気性からみて、こんな風に進んでじゃれるなら意図がある筈だ。
なんとなくその意図を察すると、華音の気をそらす手伝いをすることにした。

>>472
「そうね。お店の雰囲気に合いそうな曲はあるかしら。
 演奏するのなら、その琴を置ける空いたテーブルに移った方がいいんじゃない?」

どんな曲を選ぶのだろう、とちょっぴり楽しみにもしつつ、
華音の注意を今のテーブルからそらそうとした。

474 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 02:16:51.98 ID:ensAlavEo
>>472

(今だ・・・っ!)

華音が黒猫の方を向いている隙にカップをすり替える。今度のはカフェオレだから大丈夫だろう

(これで一安心・・・)

ほっと一息。と、華音の言葉が気にかかる。

「歌・・・ですか。いいですねぇ。だったら1曲お願いできますか?あなたも聞きたいですよね?」

黒猫に尋ねると、ナーウと猫らしく短く鳴いた。

店の隅を片付け、即席のステージを作る。

「さぁさぁ、こちらへどうぞ。」
475 :華音 :2011/03/07(月) 02:25:12.03 ID:qdhmBcnm0
>>473>>474
「雰囲気に合った曲ですか・・・分かりました!!」

そういうと琴をしまい、ステージに向かう。
今現在華音には音楽の事しか頭にないので、カップの差し替えに気づくはずもない。

「ズズ・・・

 (なんだか、甘くなりましたね・・・華音の舌が昔より大人になったのでしょうか?
  まあ、美味しいので問題ないんでしょう。)」

ステージに上がる前にすこしカフェオレをすすり思う華音。
そんな短期間で壊れかけのレイディオのように成長するはずもないが、やはり全く気付かない。

「では、奏でさせていただきましょう!!」

そういって華音はチェロを取り出す。
それは華音とは体格差があまりにもあったが、そこは音楽妖怪。
持ち前の妖力でうまく演奏して見せた。
曲はジャズな雰囲気かつポップなノリを加えた、華音の作曲した歌であった。
476 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 02:31:55.40 ID:FisA0rGUo
>>474-475
いい音楽に、美味しいケーキ、ミルク。なにより落ち着いた時間が、ありがたい。

「次は一体、何時来られるかしらね…」

惜しみつつ最後の一口を食べ終えると、ミケ子は名残惜しげにカウンターを降りた。

ただの猫の振りをして生活しているミケ子には、クリーニング店の外で使える小遣いなど無い。
今日のように他の客を呼び込んでも、毎度いいお客を呼べるとは限らない。
呼んだ縁が腐れ縁だったりすると、店にも迷惑になるだろう。
477 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 02:38:35.22 ID:ensAlavEo
>>475

「ほぅ、これは素晴らしいですねぇ。」

場の空気を壊すことなく、それでいて明るさを兼ね備えている。

「これだったら、週1くらいで来て演奏して貰いましょうかねぇ」

(そんなに頻繁に呼べるほど金あったか?)

「う゛っ」

黒猫の一言で固まる。これほどの曲であったらそれなりの金額もとれるだろう。しかし、それに見合った報酬を払えるかと言えばそれはNOだ。

>>476

「来たくなったら何時でもいらして下さいね。猫さん相手にお金は取りませんよ?」

正確に言えば猫では無いのだが、この男はそこを気にするような性格ではない。

478 :華音 :2011/03/07(月) 02:42:47.10 ID:qdhmBcnm0
>>476>>477
「・・・ふう、いかがでしたか華音の歌(題名なし)は?」

演奏し終え、とてもすっきりした顔で店主と猫二匹に感想を聞く。

「喜んでもらえたら華音は幸せです!
 毎週来てもいいんですか!?」

いつも歌の都合が欲しい華音は彼の何気ない一言に食いついた。
そうすれば少なくとも週に一度が奏でる事が出来るのだ。

「できれば華音は呼んでもらいたいです!!」
479 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 02:48:02.53 ID:ensAlavEo
>>478

「え?来て貰えるんですか?でも、そんなにお金とかは・・・払えませんよ?」

「それに、お客さんもそんなに来るわけでもありませんし・・・」

そんな店に毎週来て貰うなんてばつが悪いのだろう。男はなんとも申し訳なさそうだ。
480 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 02:51:15.27 ID:FisA0rGUo
>>477
「いいの?アタシ相手にしても、お金にはならないのに?」

だからといって図々しく通うことはしないで置こう、とミケ子は思った。
それに、美味しいものは時々味わうから美味しいのだ。

「ならば、来るときにはせめて一緒にいいお客様を連れてこないとね」

いつもいつもいいお客は呼べない。そこは運だから。
でも、あらかじめ誰かを伴うのなら、この店に貢献できるだろう。

>>478
「いい演奏だったじゃない。お陰でお菓子が美味しくなったわ。
 その様子だと、またここであなたに会えそうね」

華音はこの店の常連になるだろうか。
少しでもこの店が繁盛すれば、マタタビケーキの分、ミケ子は貢献できたことになる。
481 :華音 :2011/03/07(月) 02:55:23.18 ID:qdhmBcnm0
>>479
「華音にとって音楽にお金は不要ですよ!!
 音楽はご飯、呼吸、睡眠と同じようなものなんです、だから理由が貰えるのなら歓迎です!」

お金は不用と言ったが、その華音の生きていくのに必要な生活費は、夜行集団が工面している事を
華音は知らないが、知っていても華音には商才はないのでどうしようもない面がある。

「人がいないですか・・・

 なら華音がお店の前で音楽で招き猫なんてどうですか!?」

>>480
「ありがとうございます!!」

「ミケ子さんからもお願いします!!ここで会うにはそうするのが近道なんですよ!」

なんとかして自分が演奏できるようにしようと華音は必死であった。
482 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 03:02:12.15 ID:ensAlavEo
>>480

「えぇ、というか、私はお客さんに喜んで貰えればそれでいいんです。」

「お金が払えない、とかそんな些細な理由でお客さんをがっかりさせてしまうなんて、そんなこと私には出来ませんよ。」

自分の胸の内に思っていたことを話す。と、自分の言っていることの矛盾にも気付く

>>481

「あ・・・そうですね。それを理由にして断ってしまったら、あなたをがっかりさせてしまいますよね。これでは、自分の言ってることと違ってしまいます。
分かりました。毎週土曜日に此処にいらして下さい。素晴らしい演奏をお待ちしてます。」

ほほえみと共に華音に言う。しかし、それでも少し気が引けたのか、

「あ、でも、なにも払わないってのはあれですから・・・そうだ、演奏のお代として、ケーキなんてのはどうですかねぇ?」

これが、男の最大限の譲歩、といった所であろうか。
483 :招き猫 [sage]:2011/03/07(月) 03:10:30.91 ID:FisA0rGUo
>>482
「マスター、いいお店がなくなったら、お客も寂しい思いをするのよ。
 続けるためにもちゃんと採算も考えないと。
 ほら、あの子も演奏する場所がなくなっちゃうでしょ」

そのためにはあの閑古鳥にだけは、絶対この店を知られてはならない。

(とするとやっぱり、頻繁には通わない方がいいのかも…)

「また来ることは約束するわ。美味しいお菓子といい音楽をありがとう」

マスターと黒猫と華音に挨拶すると、ミケ子は店を出た。
484 :華音 :2011/03/07(月) 03:16:17.00 ID:qdhmBcnm0
>>483
「さようなら!!ミケ子さん!!」

ぶんぶんと軽快なリズムで手を振りながら別れの挨拶をする華音。

>>482
別に気にしないでも華音の為に頼んだだけなのに、と華音は思っていたが口に出す必要はないので
黙ってケーキを喜んで受け取った。

「演奏させてもらった上に、ケーキまでもらうなんて華音は相当な幸せものですねぇ」

ぼんやりとその恵まれて恵まれた待遇に感謝しつつ、チェロを丁寧にしまう。
そして自分もケーキを完食し、いつもまにやら甘くなった珈琲も飲みほし、身支度も済ませた。


「これで華音も帰ります、今日は仲間に呼ばれているので!!
 土曜日!!楽しみしてくださいね、華音もケーキが楽しみです!!」

そういって華音は喫茶店を飛びだした。
485 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 03:19:24.86 ID:ensAlavEo
>>483

「分かりました。この店を無くさないよう、精一杯努力させて貰います。」

「それでは、またいつか。」

そう言って三毛に手を振る。ふと隣を見れば黒猫も名残惜しげに三毛の後ろ姿を見ていた。

>>484

「はい。それでは、また土曜日に。」

駆けていく華音の後ろ姿を見送る。
486 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 03:27:28.01 ID:ensAlavEo
ー男と黒猫だけの店内ー

「なんだか、久々に大切なことを思い出したような気がしますよ。」

誰に言うでもなく呟く。

(・・・まぁ、それはいいとして、さっきの約束覚えているよな?)

「さっき、とは何のことでしょう?」

男は惚けて見せた。

(忘れたとは言わせないぜ?今日の賭はオレの勝ちにするって言ったろ?だからオレも、あいつの気を引いてやったんだ。)

華音の一件であろう。黒猫は結局最後まで賭の結果にこだわっていたらしい。そこがまぁ、可愛いと言えば可愛い。

「えぇ、覚えていますよ?当たり前じゃないですか。」

(しかし、三毛とあいつは、客じゃなかったらなんなんだい?)

意地悪く黒猫が聞いてくる。こういった所はやはり憎たらしい。

「そうですねぇ・・・あの2人は・・・そう、」

男の中で1つの答えが出たようだ。

「友達、ですかね。」
487 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/07(月) 20:53:43.52 ID:plV3VuZSO
日差しも暖かになりはじめた冬の日の午後。
とある病院の外庭に、いつもの黒いジャケットとは対称的な白衣を崩し着した送り狼がいた。
両腕に三つの段ボールを抱えながら、鉄柵の扉を足蹴して開き、荷物を裏口に運び出す。
常人ではありえない回復速度から、犬御はさっそく医師に雑用を押し付けられていた。
今行っているのは、病院で出たゴミを裏口の焼却炉に運ぶ仕事である。

「よっ、と」

面倒ではあるが、それもこれも、借金を返すためには致し方ないことだ。
それにこの間、四十萬陀から「しっかりお金を返すじゃん!」との言い付けも食らってしまっていた。

――とはいえ、この最後のゴミを運び出せば、とりあえず仕事は一段落つく。
焼却炉の前に段ボールを積み重ねた犬御は、ぐいっと伸びをした。
488 : :2011/03/07(月) 20:59:08.21 ID:RxVOzMVh0
「ここが犬御君の病院かぁ。お見舞いに来たのはいいんだけど部屋何処…」

病院に来た少年はぼやく。とりあえず聞こうとふと外を見ると――

「(働かされてるーー!!)」

唖然としながら見る、回復力の早さはともかくなんで雑用に…と思ってしまう。
とりあえず、持ってきた百合の花を渡すために話しかける。

「犬御ちゃん、こんにちは♪」
489 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/07(月) 21:12:13.20 ID:plV3VuZSO
>>488
休憩といっても、これくらいの仕事、体に堪えることはない。さて何をしよう、と歩きだそうとして。
犬御は、突然現れた百合の花を持った少年に目を向けた。
少年から感じる妖気に、すっと眉を潜める。

「あぁ? 誰だテメェ」

見覚えがない。
窮奇と戦った時はそれこそ神経を集中させていて、零に気付いていなかったのだ。
しかし、そこでふと、犬御は少年に何かを感じた。

「……テメェ、俺とどっかで会ったことあるか?」

窮奇との戦いの際、
神経を集中させていた犬御は、肌に感じた妖気を僅かに覚えていた。
見覚えがなくとも、零の妖気には覚えがあったのだ。
490 : :2011/03/07(月) 21:16:00.17 ID:RxVOzMVh0
>>489
「むぅ…犬御ちゃん酷いなぁ…。窮奇との戦いのときに…ほら。」

その時のことを話す。まぁ、覚えてないのも当然だろう。あんなことがあったのだから。

「あ、犬御ちゃんのことをストーキングしてたのもばれてなかったり?」

手元の花を渡す。花からいい匂いが漂う。
491 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/07(月) 21:25:48.90 ID:plV3VuZSO
>>490
「窮奇だと?」

眉間の皺が深くなる。あの戦いの場に居たというのか。

――しかし、話を聞けば、この少年はあの時自分を助けてくれたようだった。
少年の話に矛盾はないし、嘘を言っているようにも見えない。
事実、確かに思い返してみれば、この少年の妖気は、あの時の戦いで感じていたものに違いなかった。
面食らった犬御は、ああ、だのぐう、だの唸ったあと、視線を合わせないまま頬を掻いた。

「……助かった」

不器用だが、礼を述べる。
だが、次に零が発した言葉に牙を剥いて吠えた。

「ストーキングだと!? って、何だこりゃあ……」

百合の花を渡されるなど考えていなかった犬御は、調子が崩されてしまう。
確かにいい香りがするが、いかつい2m台の大男が百合の花を持っているのはいささかシュールだ。
というか、似合わないにもほどがある。
492 : :2011/03/07(月) 22:29:47.30 ID:RxVOzMVh0
>>491
「え…恥ずかしいんだけど///////」

少し照れる様子。こんな大きな人から御礼を言われるのは初めてな零。

「すいませんが、ストーキングで貴方のことは調べさせて頂きました。
この百合は貴方のお見舞いのともう一人の為ですから。」

きっと意味は分かるだろう。
493 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/07(月) 22:41:15.24 ID:plV3VuZSO
>>492
「何照れてンだよ気持ち悪ぃ」

げぇ、と舌を出して、手元の百合を眺める。
ストーキングされていたことは頭に来るが、ここは助けられたことを差し引いて抑えておこう。
それより、零の言葉に含まれた意図が気になった。
もう一人の為――それは恐らく、あの夜雀ことだ。

「俺が持っていても仕方ねぇ。アイツにやってもいいんだな」

ぶっきらぼうに、犬御は言う。
花言葉だとか、そんな洒落たものは分からない。けれど……この花はきっと、あの夜雀に似合うはずだ。
犬御は柄になく、「ありがとよ」と小さく礼を述べた。
494 : :2011/03/07(月) 22:47:30.24 ID:RxVOzMVh0
「そっか…」

気持ち悪いと言われ少しショックを受ける。以外とガラスの心のようだ。
あとは夜雀、七生。彼女のことは露希がしっかりと守ってくれるから大丈夫なはず。

「犬御さん、貴方とはまた会うでしょう。その時は……。じゃあね。」

急に人格が変わったかのように言い残し、病院から去った。
495 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/07(月) 22:54:36.13 ID:plV3VuZSO
>>494
「……あ?」

突然雰囲気が変わった少年を見て、僅かに違和感を覚える。
だが、何かを言う前に、零は病院を去ってしまった。

「……まぁ、いいか」

彼は「また会う」と言ったが、今の自分には関係のないことだ。
と、白衣のポケットに突っ込んだ、連絡用の携帯がブルブルと震えた。
ディスプレイを見れば、医者の名前が表示されている。

「ゲッ……呼び出しかよ」

着信を取りながら、犬御は病院の敷地内に戻っていった。
496 :窮奇&神隠し :2011/03/07(月) 23:26:30.98 ID:8oar7skzP
紫狂の第2アジト・珈琲店にて

「ゲタゲタゲタ・・・もう少しやる気出してくださいよぉ・・・」

 道士服の少年が女性の傍らに立ち、お茶を入れている。
 パジャマ姿の女性の名は窮奇。
 普段は吐き気を催すような悪意を垂れ流しているはずだが・・・

「ん、ありがとー」

 今回はダルンダルンだ!!
 垂れ流す悪意すらもなんだかガッカリな威圧感である!
 お茶を受け取り、年寄り臭く音を立ててすする。

「やる気って言ってもねぇ・・・。
 これでも私は結構ショックだったんだよぉ?」

 溜息をつき、カウンターに突っ伏したまま。
 首だけを少年の姿をした妖怪・神隠しに向ける。

「殴り合いで負けるのはわりかし良くあるけどさぁ・・・。
 まさか開放状態で仕留め損なっちゃうなんて、もうやんなっちゃうよぉ」

 トロン、とした目でつらつらと言葉を連ねる。
 すっかり毒気が抜かれた口調だった。
497 : :2011/03/07(月) 23:31:05.63 ID:RxVOzMVh0
そのアジトの珈琲店にある少年が入って来た。

「こんにちはー。先日はお世話になっちゃいましたー♪黒龍もおいでっ☆」

なんともふざけた口調、カウンターに向かって喋った。

「へぇ、ここが窮奇さんのアジトねぇ…なるほどー。
えっ?コーヒーとか貰えたりするの?レモンティーとくださいー。」

本来の目的は別。しかし、気づかれないように装っている。
498 :窮奇&神隠し :2011/03/07(月) 23:39:50.40 ID:8oar7skzP
>>497

「なんだこ――
「え、やだ。無理、てゆーか帰れ」

 なにか呟こうとした神隠しを制して窮奇は拒絶。
 ドロリと濁った眼が零を見据えて、溜息をつく。

「私が心読めるの知ってるだろう?
 キミを仲間に迎え入れることも、キミを信用することは今後一切ありません。
 キミは見るからに性格『悪い』から関わりたくもないです、お出口はあちらになっております」

 ふにゃふにゃと出口を指差す窮奇。
 言葉に伴う毒すらも今回は不甲斐ない。
499 : :2011/03/07(月) 23:45:23.87 ID:RxVOzMVh0
>>498
「あー、なるほど……あの時にとどめを刺せ無かったがためにそーゆー…」

窮奇に挑発的態度を取ってみる。無意味なのは分かっているが。

「え、貴方が神隠しさん!?大ッファンなんです!!是非貴方の支配下にでも…」

勿論ファンと言うのも嘘。しかし、こちらの情報は未特定。ある程度取っておかねば。
500 :窮奇&神隠し :2011/03/07(月) 23:50:05.22 ID:8oar7skzP
>>499

「[ピーーー]」

 突如、亜空間から腕が現れ。
 零の首を〆にかかる!!

「ゲタゲタ・・・笑えねぇよぉ、おい!!
 俺はテメエ見てえな訳わからん妖怪が一番嫌いなんだよぉ!!」

 神隠しの様子を、チラリと見て。
 窮奇はやる気の無さそうに口走る。

「ハイハイ、わかったよ。
 話だけでも聞いてあげるから満足したら帰ってね」

 小さく欠伸をしながら、ぽわぽわと話しかける。
501 : :2011/03/07(月) 23:57:53.61 ID:RxVOzMVh0
>>500
「ぐぅっ!?」

突如首を絞められ、咽る。
急に表情を変え、神隠しを睨む。先程には感じられないような威圧感をかけて。

「げほ…っつぅ、訳のわからない…ねぇ。こっちも好きでやってる訳じゃないんだよね。
なんか陰でごそごそやって、瞳さんの次は東雲さんか。へー楽しいねー。
【良い】妖怪をりよーするのは」

鼻で笑い、軽蔑した眼を向ける。

「じゃーね、また来るから。」

そう言って出口を出て行った。
502 :窮奇&神隠し :2011/03/08(火) 00:04:46.59 ID:1I4EZYT6P
>>501

「おま・・・お前ぇえええ!!」
「はいはーい、二度と来ないでねー」

 いきり立つ神隠しを制止し、窮奇は右手をヒラヒラと振る。

「・・・あの」
「追いかけなくて『良い』よぉ。
 どーせあの子は敵でも味方でもロクなことはできやしないさ」

 なにか言いたげな神隠しを尻目に、窮奇は再びお茶をすする。

「それにねあの子、力だけは一丁前だった。この中で暴れられちゃかなわないだろぅ?」

 揺れる出口の扉を見ながら、窮奇はまた大きな欠伸をした。
503 :黒蔵@変化中 [sage]:2011/03/08(火) 23:53:19.66 ID:rWTi1oPvo
桃の花の二日酔いは酷いものだった。

1日目。いくつかの妖気がやってきて泉の縁で罵声を浴びせたりからかったり、
石を投げ込んだりする気配もあったのだが、
氷亜の遣してくれた夜行集団メンバーへの対応以外、黒蔵は水底から動かなかった。

2日目はもう少し動けるようになったので、この日やってきた妖怪が
木の枝で泉をかき回したとき、黒蔵は舌だけをそっと水面に出した。
舌を黒蔵本体と思い込んだか、それっとばかりに舌に掴みかかった妖怪を
引きずり込んで飲み込んだ。味からしてどうやら鼠のようだった。
他にも虫の様なのが来たり、もう少し大きい小動物のような奴も来たりしたが、
特に足の速い者以外は捕まえて飲み込んだ。

3日目にようやく本調子になって、黒蔵はかねてからの計画を実行しに泉を出た。
皹の入ったミナクチのために、人間の店へ酒を買いに行くつもりなのだ。
その為には酒を買える大人の姿にならないといけない。
まず泉の水面を水鏡に、変化したい者の姿を映すと、黒い蛇はその姿を纏った。
妖気の質は変わらないが、姿だけはいつもとは別人だ。
紫色の着物の姿をためすがめつ眺めて、変化の粗を探してみる。

(大丈夫かな)

この姿で居られる時間は短い。急いで用事を済ませなくては。
赤い鼻緒の下駄の音がカタコトとアスファルトに響く。
何時もより高くなった背の中ほどで、ゆるく括った長い黒髪が急ぐ歩調に合わせて揺れていた。
504 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/09(水) 00:14:58.99 ID:IDRzSd+SO
>>503
彼女の瞳と同じ色をした、黒いセーラー服を身に纏った少女がいた。
蛇の住む公園への道を、小走りで駆け抜けていく。その表情は、どうもしょぼくれているようだった。
理由は、二日酔いにかかった黒蔵の見舞いに行けなかったことだ。
あの祭りの日から、既に三日が経過している。
本当はもう少し早く訪れるつもりだったのだが、山のほうが何かと――某送り狼が帰ってきたり――忙しく、今日やっと見舞いに足を向けることができたのだ。
とはいえ、

(桃の花といえど、もう二日酔いは治ってるよね……)

四十萬陀は溜め息と、共に肩を落とした。
お見舞いに行くと言ったのに、約束を破ってしまった。
――黒蔵君、どう思っているかなぁ。などと、無性に心配になってしまう。

とにかく小走りを続けていると、向かい側から、黒蔵の妖気を感じた。
あ、と無意識に声が出る。
足を止めて、向こうからやってくる人影を見遣る。
……しかし、四十萬陀の目に映ったのは、彼女の知っている黒蔵ではなかった。

「……ふぇ?」

間抜けな声が出る。
だが、彼から感じるのは、確かに黒蔵のそれである。

「く、黒蔵……君?」
505 :黒蔵@変化中 [sage]:2011/03/09(水) 00:23:17.04 ID:VkBHPcvLo
>>504
春の気配が時折感じられるとはいえ、この季節なのに羽織物もなく、単の着物に素足・下駄。
道を急いでいた紫色の着物のその女は、四十萬陀の呼びかけにギクリ、と一瞬固まった。

(―――やべっ!)

一番見られたくない相手に早々に出くわしてしまった。
しかもずばり名前を呼ばれてしまったからには、人違いの振りも出来ない。

「……。」

何か言おうとしたが、何も言えず、女の姿の黒蔵はただこくり、と四十萬陀に頷いた。

(あああああああああ禿見られたほうがマシだったあああああああああああ)

硬直したままの表情の裏側では、恥ずかしさで意識が混乱しかけている。
徐々に女の頬に血が上り、首まで赤く染まっていった。
506 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/09(水) 00:35:34.19 ID:IDRzSd+SO
>>505
「……!! ……!?」

衝撃のあまり、声も出せずに、四十萬陀は金魚のように口をパクパク動かすばかりだった。
同じように硬直する目の前の女性からは、どこか黒蔵の面影を感じさせる。
――ハッ、と
我に返った四十萬陀は、これは黒蔵の変化なのだと心に言い聞かせることで、僅かに落ち着きを取り戻した。
すううはああと深呼吸をしてから、俯きがちに、黒蔵に尋ねる。

「……黒蔵君、実は女の子でしたーとか、そんなオチはあったりするじゃん……?」
507 :黒蔵@変化中 [sage]:2011/03/09(水) 00:43:31.97 ID:VkBHPcvLo
>>506
以前にコンビニで一緒に買い物をしたときは、そこまで意識していなかったのに、
今はなぜか四十萬陀にこの姿を見られたことが無性に恥ずかしかった。

「酒、買いに行くから、さ。これ、俺の母親の姿、借りてんだ」

もごもごと言葉少なに説明し目を伏せた女の面差しが、少年の姿の黒蔵と似通っているのも当然だ。
恥じいって泣き出しそうな表情が無駄に艶っぽい。
黒蔵の母がこの姿で人を誘い、精気を吸い取っていたのだから当然かもしれない。
その母を喰らったから、黒蔵はこの姿に変化できるのだ。

「俺は男」

はっきり言い切った女の言葉に、往来を通行中の人間が驚いて振り返った。
508 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/09(水) 00:52:18.54 ID:IDRzSd+SO
>>507
涙目で恥じらう黒蔵を見て、ピシャーンと雷に打たれたような衝撃を受ける。

(きっ、)


(きれいじゃん……)

ずうぅぅん……。

何というか、色々と自信を失った四十萬陀は、暗い顔で肩を落とした。
男、とハッキリとした答えを聞けたのは良かったものの。
509 :黒蔵@変化中 [sage]:2011/03/09(水) 00:59:37.01 ID:VkBHPcvLo
>>508
ちゃんと自分は男だ、と伝えたのに、なぜか四十萬陀は落ち込んでしまった。

(もしかして、俺が女だった方が四十萬陀には良かったんだろうか)

お前の悩みどころはそこか、黒蔵。
しかしそうしている間にも、時間は過ぎてゆく。

「ごめん、四十萬陀。実はこの姿で居られる時間はあまりないんだ。
 早く酒、買っちゃわないと」
 
すぐそこの商店を指差して、女の姿の黒蔵は慌てて言った。
既に着物の両袖は黒くなりかけている。
510 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/09(水) 01:08:52.76 ID:IDRzSd+SO
>>509
「えっ、あ」

黒蔵の慌てた声に、四十萬陀が顔を上げた。
既に始まっている着物の変化を認めると、両手を合わせる。

「ご、ごめんじゃん!」

引き止めてしまっていたらしいことを謝る。
突然のことで驚いてしまっが、そういえばお見舞いのことも謝らなければ。
とにかく、まずは酒を買うのが優先だろう。

「……って、二日酔い明けにお酒じゃん?」

ちゃっかり黒蔵の買い物に着いていく四十萬陀は、首を捻った。
511 :黒蔵@変化中 [sage]:2011/03/09(水) 01:17:26.49 ID:VkBHPcvLo
>>510
冬の洋装ばかりの人の中で、黒蔵の姿はやはり少しばかり人目を引く。
ちらちらと人の視線を浴びながら、女の姿の黒蔵はカウンターに向かう。

「清酒を買いたいんです。出して頂けます?」
「え?ええ」

次第に変化の解けつつある黒蔵が真っ向からその目を覗き込むと、
操られた店主は人形のようにふらふらと酒の瓶を持ってきた。

「ありがと、でも今見たことは忘れてね」

袋に入れてもらった瓶を受け取り、ふっと艶めかしい笑みで念を押すと
店主に代金を渡して黒蔵は急いで店を出る。

「間にあったぁ!」

店外に駆け出して、ほっと息をついた時。
四十萬陀の見慣れた、いつもの姿のクソガキがそこにいた。
512 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/09(水) 01:28:12.50 ID:IDRzSd+SO
>>511
店主を術式にかけているのは、間違いなく黒蔵だ。
けれど姿が違うと、まるで別人を見ているような気分になる。
黒蔵が変化した女性の姿は、艶やかで色気もあって、女の四十萬陀も見惚れてしまうほどだ。
――しかしやはり、落ち着かない。

清酒を手に入れた黒蔵は、無邪気な声を上げて、店から出た。
その頃には、黒蔵の姿は、あのいつもの見慣れた姿に戻っていて、

「……」

……やはり、こちらの姿の方が落ち着く。
安心したような笑みを浮かべて、じっと黒蔵の横顔を眺めていた。
513 :黒蔵@変化中 [sage]:2011/03/09(水) 01:36:59.31 ID:VkBHPcvLo
>>512
(やった!買った!)

腕の中の酒瓶の重みがじんわりと嬉しい。
成功の喜びに浸っていた黒蔵は、はた、と四十萬陀を振り返る。

「……あの、さ。びっくりした…よ、ね?」

今は少年の姿だが、その表情はさっきのべそをかきかけたあの顔だ。

「やっぱ、引いた?」

今、聞くのは怖い。でも聞かなかったら、ずーっと怖いままだ。
聞いてしまってからヘタレの蛇は、答えが返ってくるまでの間が一番怖いことに気付いた。
514 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/09(水) 01:49:27.87 ID:IDRzSd+SO
>>513
「そりゃあ、びっくりはしたじゃん」

不安そうな表情をして、こちらを見てくる黒蔵に、四十萬陀はあどけなく笑いかけた。
黒蔵の姿を知っている者が、あの変化を見れば、誰だって驚くはずだ。
……それに、友人に女に変化しているところを見られたら、誰だって泣きたくもなるだろう。

「でも、前にも言ったでしょ? 黒蔵君は黒蔵君じゃん」

黒蔵の不安を事も無いように、四十萬陀は笑う。

「ていうか、むしろ悔しかったというかなんというか……」

頬を掻きながら、もごもご小さな声でいう。
――あの変化した姿は本当にきれいだった。四十萬陀としては、見習いたいくらいに。

「それより、さ。お見舞い、これなくてごめんね。
 山で色々あって……」

申し訳なさそうに、四十萬陀は両手を合わせた。
515 :黒蔵 [sage]:2011/03/09(水) 01:59:01.03 ID:VkBHPcvLo
>>514
何時もどおりに笑ってくれた四十萬陀に、黒蔵はほっとした。

「俺は俺、か」

しかし、微妙な女心はさっぱりで。

「…悔しい?」

よく判らないので首を捻っていると、重ねて詫びられてしまった。

「いや、見舞いは来なくて幸いだったかも。
 めんどくさそうな奴らが俺にちょっかい掛けに来てたし、
 そういうのと出くわしてたら、四十萬陀も危なかったかもよ。
 まあ、あの狼が護衛についていればまず安心だとは思うけど」

犬御がその色々、の中心であることは黒蔵は知らない。
516 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/09(水) 02:07:54.74 ID:IDRzSd+SO
>>515
「そうだったの? 怪我とかしなかったじゃん?」

夜行集団の使いが送られていたそうだし、今現在、元気そうな黒蔵の姿がここにあるから、大丈夫だろうと思うけれど。
あの狼、と黒蔵が言った言葉に、四十萬陀は少し驚いた。

(ああ、そうじゃん。黒蔵君は、犬御が山から追い出されてたこと、知らないんだっけ)

思い出して納得した四十萬陀は、嬉しそうに微笑んだ。

「うん♪」

花が咲いたような、可愛らしい笑顔で頷く。
これは、改めて、犬御が山に帰ってきた(今頃は病院だろうが)という事実が、たまらなく嬉しく感じたためからの笑顔だ。
517 :黒蔵 [sage]:2011/03/09(水) 02:21:00.84 ID:VkBHPcvLo
>>516
「うん、怪我は無いよ」

むしろ、妖怪を喰った分黒蔵は怪我の治りが早くなったかもしれない。
そして四十萬陀の嬉しそうな笑顔に、嬉しいと同時に狼への愛情の深さも感じられて
なんだかちょっぴり寂しかったりもするのだけれど、四十萬陀が嬉しいのならそれはいいことだ。
今までに沢山心配かけてしまったのは、黒蔵なんだし。

そうして二人が歩いているうちに、公園へ向かう分かれ道へ来た。

「俺は、このまま帰っちゃうけど、四十萬陀はどうするの?」

帰ったらこれ、蛇神にかけて一晩様子みるんだ、と酒瓶を持ち上げて見せる黒蔵。
自分が飲むわけではないらしい。
518 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/09(水) 02:33:19.99 ID:IDRzSd+SO
>>517
「あ、そのお酒、ミナクチ様にかけるんだ」

なるほど、飲むわけではないのかと四十萬陀が頷く。

(一晩かけてかあ)

(…………)

「……あのさ、黒蔵君」

ふと、思い付いた。
言いだすのが、なんだか照れてしまうのは、何故だろう。
少し赤く染まった頬で、視線を逸らしながら言う。

「一人で様子を見てるだけなら、その、……私も一緒にいていいじゃん?
 迷惑じゃ、なかったら」

泊まり込もうなんて算段はない。
どうせ夜が更けてきたら、犬御が探しにくるだろう。
だけど、その間だけ……。
519 :黒蔵 [sage]:2011/03/09(水) 02:43:05.95 ID:VkBHPcvLo
>>518
「うん、もちろんいいよ。迷惑なんてことは絶対ないし」

わーい、と喜んで四十萬陀に即答する単純蛇。
四十萬陀と一緒なのが嬉しくて、浮かれながら公園のほうへ歩いてゆく。

果たしてこの鈍感蛇が、夜雀の繊細な心の動きをフォローして行くことができるのか。
そして犬御との鉢合わせはどうなるのか。
春の嵐はすぐそこに迫っているようだった。

//絡みありがとうございました。遅くまでお疲れ様でした。
520 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/09(水) 02:45:21.02 ID:IDRzSd+SO
>>519
//遅くまでありがとうございました! お疲れ様でした
521 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/10(木) 21:54:19.05 ID:0YvW9B/SO
「10、11、12、13……きちんと13個ありますね。お疲れ様っす、昼休み取っていいっすよ」

にこやかな笑みを浮かべた医師の一言を聞いて、犬御はやっと解放されたと背筋を伸ばした。
目の前には、各30kgの医療品や機具が詰め込まれた荷物が13個並べられている。
正面の門から、犬御が運んできたものだ。

「東雲さんがいて助かりました。今、荷物用のエレベーターが調整中なものっすから」
「そうかよ」

どうでもよさそうに相槌を打ち、白衣を翻らせる犬御の背中に、「昼休みが終わったら電話しますね」と医者の声がかかる。
返事もせずに聞き流しながら、犬御は1階に向かう階段を降りた。

白衣姿のまま、昼食を購入するため、犬御は病院の近くのコンビニまで足を向かわせていた。
両腕をポケットに突っ込み、前屈みで歩く姿は、まさしくチンピラである。
白衣姿が、周囲に違和感を与えること間違いない。
522 : :2011/03/10(木) 22:02:09.34 ID:0ejkxa4AO
>>521
「えーと、たしかここら辺に病院が…」

コンビニの前に一人の少女。
あれから、しばらくの時がたったが犬御はどうしているだろうか。
瞳はそれが気になり、自ら病院を目指した。

523 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/10(木) 22:12:04.53 ID:0YvW9B/SO
>>522
「……あぁ?」

あと数十mでコンビニに辿り着く、というところで、犬御は素っ頓狂な声を発した。

「アイツはあの時の……」

驚きに軽く目を見開く。
向かい側から歩いてくるのは、確かにあの時――犬御が路上で行き倒れた時――会った妖怪ではないか。
彼女に対し、犬御は大きな借りを感じていた。
あの時この病院に搬送されたのも、瞳のおかげであるし、窮奇に対して疑問を抱いたのも、瞳の一言がきっかけだ。

瞳はまだ、こちらに気付いていないのだろうか。
白衣を揺らしながら、彼女に近付いていく。
524 : :2011/03/10(木) 22:19:15.43 ID:0ejkxa4AO
>>523
「ん?ああ!あなたは!良かった。怪我は治ったんだな!」

向かいの犬御に気づき、安心し笑う。
窮奇のことや、山のこと、聞きたいことはたくさんあるが、まずはその格好に疑問に思う。

「ん?その格好は?なぜ白衣を?」

525 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/10(木) 22:35:17.59 ID:0YvW9B/SO
>>524
こちらに気付いた瞳が、安心したように笑顔を見せた。
以前は意識が朦朧としていたので、はっきりと彼女を視界に捉えるのは初めて――ではなく、二度目だ。
犬御は瞳の顔を見て、あの時よりも以前に、彼女に一度会っていたことを思い出した。
――なるほど、だからあの時、コイツは俺のことを知っていたのか……。

「あ、あぁ、まぁな」

色々と礼を言わなければならないのだが、上手くタイミングが掴めない。
白衣について尋ねられた犬御は、ひとまずそれに答えることにした。

「これか? ……ま、借金返済のためのアルバイトっつうところだな」

ひらひら、白衣の襟を揺らす。
526 : :2011/03/10(木) 22:43:59.91 ID:0ejkxa4AO
>>525
「借金……そうか、なんだかすまないな。私が払っていれば良かったんだが…
今からでも、私が払おうか?こう見えてお金は手に入れられるんだ。」

俯き気味に返す。
そして、自分が払おうかと提案。

「ところで……その、あの後はどうしたんだ?」

状況が状況なだけに若干、聞きづらそうに尋ねる。

527 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/10(木) 23:00:16.52 ID:0YvW9B/SO
>>526
「あァ? バカかテメェは。俺が『じゃあ払ってください』なんて頭下げるような奴に見えンのか?」

目を細くしてねめつける。
しかし、その眼から敵意は感じられない。
喧嘩腰はクセのようなものなのだろう。

「あのエセ敬語医者も、似たようなこと言ったと思うが……。俺がアホして入院してんだ。テメェが金払う義理はねぇだろーが」

要約すれば、「これ以上迷惑をかけるつもりはない」……ということだ。

俯きがちに、あの後のことを尋ねる瞳に、犬御はこれまでのことを簡潔に伝えた。
窮奇と決別し、戦い、そして袂山に帰ったことを。
四十萬陀とも、仲間たちとも、元通りになれたことを。
伝え終えた犬御は、咳払いをした。

「……テメェが医者を呼ばなかったら、今頃俺はここにいなかった……って、あのクソ医者が言ってた。
 それに、窮奇のアマに、俺自身に疑問を覚えたのも、テメェの言葉がキッカケだ」

視線を反らし、ぽつりぽつりと言葉を紡いでいく。

「テメェには、でけぇ借りができた。それはいつか必ず返す。
 ……助かった」
528 : :2011/03/10(木) 23:11:20.93 ID:0ejkxa4AO
>>527
「そ、そうか…それは悪かった。だけど、必要になったら言ってくれ。」

念のために言っておく。
ちなみに、瞳は風月の遺した物を売って金を手に入れるつもりだった。
大切な友人のためだからこそ。そのためならば、風月も許してくれると思ったからだ。

「そうか…良かった…本当に…あなたを救えて、七生を救えて…」

嬉しそうに笑う。
友人を救えた。つまり、大切なものを守れた。それが嬉しかった。

529 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/10(木) 23:25:25.80 ID:0YvW9B/SO
>>528
「――!」

嬉しそうな瞳の笑顔が、
犬御の中で、四十萬陀のそれと重なった。
思わず、体が硬直してしまう。
ゆっくりと息を飲み込むと、次第に肩が浮いた。
それを緩く吐き出し、赤い眼で瞳を眺める。

(……どうして、こういうやつらは)

こんなにも、感情を素直に曝け出せるのだろう。
こんなにも……眩しい笑顔を浮かべることができるのだろう。

「瞳、だったか。七生が、オマエによろしくっつってたぜ」

犬御は視線をよそに泳がせながら、瞳に言った。
530 : :2011/03/10(木) 23:31:10.03 ID:0ejkxa4AO
>>529
「…?
そうか、分かったよ。」

犬御の様子を疑問に思いつつ言った。
531 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/10(木) 23:36:48.53 ID:0YvW9B/SO
>>530
(チッ、やりにくい)

一度「似てる」と意識してしまうと、もうしばらく、マトモに瞳の顔は見れないだろう。
肉食系なのは戦闘に関してのみで、態度だけはデカいのがこの不良狼だ。

「じゃ、俺は昼飯買わなくちゃいけねーんでな」

目を合わせないまま、犬御は瞳の隣を通り過ぎようとする。
532 : :2011/03/10(木) 23:43:11.17 ID:0ejkxa4AO
>>531
「ああ、じゃあな。またいつか会おう。」

そう言って、去ろうと背を向ける。
が、すぐに振り向き――

「七生のこと、大切にしろよ。」

そう言って、また向き直り去っていった。
533 :東雲 七生 [sage]:2011/03/10(木) 23:48:29.95 ID:0YvW9B/SO
>>532
「……分かってるっつの」

振り返らないまま、瞳の言葉に応える。
その顔は、僅かながら赤く染まっているように見えた。
534 :黒蔵 [sage]:2011/03/15(火) 23:29:04.26 ID:cwPTpEVwo
城址公園の泉のほとり、大岩の前で赤面したまま座り込む黒衣の少年が居た。
自分の髪をわしゃわしゃとかきむしり、次いで頭を抱えてうずくまる。

(あああ、なんであの時あんな事言っちゃったんだろう俺)

気恥ずかしさの理由は二つ、あられもない姿の四十萬陀を構わず抱きしめたことと、
氷亜相手に、彼女は誰にも譲らないと啖呵を切ったことである。

(あれ本人に聞こえてないよね?四十萬陀あの時寝てたよね?)

大丈夫なはず、でももしかして、と悶々とする黒蔵であった。
535 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/15(火) 23:43:09.30 ID:PUvyyxgSO
>>534
大岩の前で蹲る黒蔵の背後から、鈍器を叩きつけたような乱暴な殺気が突然顕れた。
固い地面を蹴りあげる脚。
飛び上がる、黒狼。


「クソガキィィィィィィィーーー!!!」


真っ白な白衣を着崩した大男が、怒声を上げ、背後から黒蔵に飛び掛かった。
振り向けば分かるであろうその犬御の顔は、深く眉間に皺が刻まれ、青筋が立ち、完全にキレて完全にヤバい感じの表情であった。
536 :黒蔵 [sage]:2011/03/15(火) 23:54:47.96 ID:cwPTpEVwo
>>535
(なっ?!)

殺気に慌てて背後を振り返る。
既にその時は怒れる黒狼は蹴りを放っていた。

 がつっ!!

(早ぇ!!)

慌てて防御の姿勢をとろうとする黒蔵だが、黒狼の怒りをマトモに食らう。
傷の残る胸に強い衝撃が来た。

(でけぇ!)

元々人型では低身長、さらに今は蹲っていた黒蔵である。
そして犬御のほうは2m強、十分でか過ぎる部類だ。

軽々と蹴り飛ばされ丸まって転がりながらも、
本性に戻れば十分大きいはずの蛇は、驚きと悔しさ以外に
やっぱもうちょっと身長が欲しい、とか思っていたのだった。
537 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/16(水) 00:09:58.78 ID:zKeIYxxSO
>>536
勢いよく黒蔵を蹴り飛ばし、犬御はすとんと地面に着地した。
それだけでは飽きたらないのか、拳を手のひらで鳴らしながら、ゆっくりと、転がった黒蔵の方へ歩いていく。

……完全に据わった目で。

犬御は目下に黒蔵を捉える位置にやってくると、赤い目を見開き、ヤクザよろしくへの字に結ばれた唇を開いた。

「クソガキィ……テメェ、

 ――七生に何しやがった!!」
538 :黒蔵 [sage]:2011/03/16(水) 00:22:08.15 ID:OKfjQYDTo
>>537
埃にまみれたのと、蹴られたのとで咳き込みながら黒蔵は上体を起こした。
地面に座り込んで犬御を見上げる状態である。
必然的に上目遣いで睨み上げることになり、態度の悪いクソガキの様相を呈する。

「…ああっ?」

紅い瞳を睨み返しながら、相手の言葉で黒蔵の眉間に皺が寄る。
ますます態度の悪いクソガキにしか見えない。

「七生?……四十萬陀に?俺が?」

(何やったっけ?俺?)

いきなりの犬御の出現、攻撃、詰問に、黒蔵の脳みその情報処理が追いついていない。

「…あぁ?あっ!」

情報処理が完了した模様。
二度目は少し違う音で、あ、の音が発せられた。
何かに思い当たったように、黒蔵の表情がみるみる変わってゆく。

(この狼が怒ってるってことは!やっぱ聞かれてたのかアレ!)

どこか後ろ暗いところのあるその表情は、犬御の神経を逆撫でするのには十分な自白だった。
539 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/16(水) 00:47:57.93 ID:zKeIYxxSO
>>538
「何だ、その目は。イイ度胸してンじゃねぇかクソガキが……」

バチバチハチッ!
火花が散る音がなりそうな程に、お互い睨み合う。
そもそも、何故犬御は黒蔵に殴り込みにきたのだろうか。
ここで突然だが、回想に入らせていただく。

〜〜回想〜〜

その日の晩、仕事を終えた犬御が山に戻ってくると、そこにはいつもいるはずの四十萬陀の姿がなかった。
麓の神社にも、中腹の河原にも、頂上付近の岩屋にも。
……どこにもいない。
いつになく慌てる犬御に、通りかかった送り狼の和戌(わいぬ)が『な、七生さんなら、散歩ですよ』と声を掛けた。

『こんな遅くに散歩だと?』
『あ、はい……け、犬御さんには、心配するなって』
『……何かあったのか?』
『えっ!? あの、えーと、えーっとぉ』

誤魔化そうとしているのか、しかし隠すのが下手なやつだ。
そもそも臆病な和戌は犬御の好きなタイプではない。
手っ取り早く脅して聞き出そうと、犬御は怒気を含めて声を荒げた。

『早く言いやがれ!!』
『ひっ、ひえぇえ! すいませんすいません! えぇと、何だ元気がなくって、多分考え事だと……』
『何の考え事だ』
『わ、分かりませんん。今日、黒髪の、よ、妖怪の男の子に連れられてから、様子がおおおかしくってぇ……落ち込んでるというかぁ……』
『黒髪の妖怪のガキだとぉ?』

犬御ははっとした。
黒髪の妖怪の子供――確か覚えがあったからだ。
――あのクソガキ……!!
犬御は、クソガキこと黒蔵がいるであろう公園に、乗り込むことを決めたのだった。

〜〜回想終了〜〜

と、回想している間に、黒蔵の表情が変わった。
思い当たる節がある、そんな表情。
犬御の顔に再び青筋が入った。

「やはりなぁ……七生にやったことを吐きやがれ!!」

そのまま蹴りを放ちそうな勢いで叫ぶ。
言うまでもないが、四十萬陀が落ち込んでいるのは、黒蔵と露希との間に関係があると誤解しているからであるのだが。
そんなことを、飛び出してきた犬御が知る由もない。
540 :黒蔵 [sage]:2011/03/16(水) 01:06:34.40 ID:OKfjQYDTo
>>539
「何をした、って……」

(きっと真実を聞くまで納得しないぞこいつ)

「露希に四十萬陀が襲われてて、俺、物凄く慌てたんだ。
 その時に…俺が、すごく勝手な事言ったからかもしんない」

どう説明しようか。
言葉に詰まって困った黒蔵は、あたりをきょときょとと見回す。

(四十萬陀が想う相手だもんな。この狼に四十萬陀が話したのも当然だ。
ならば、いっそこいつに全部見せよう)

「上手く説明できないから、全部見せる。あそこで」

黒蔵は泉のところへ行くと、片手を水に浸した。
その表面が鏡となり、露希に押し倒された四十萬陀の姿を映し出す。
黒蔵の記憶にあるのはここからだから、この場面からしか映せないのだ。
そして水鏡の中で、あられもない姿の四十萬陀を抱きかかえた黒蔵自身が、
氷亜に四十萬陀は譲らない、と宣言したところで、黙ったまま少し俯いた。

(俺、この狼に殴られても文句言えないや)

……どうやら、何かを勝手に誤解しているのはこの蛇も同じらしい。
541 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/16(水) 01:32:36.29 ID:zKeIYxxSO
>>540
「襲われただと……!?」

まさか、それで精神的なダメージを負ったのか。犬御の脳内で、様々な憶測が飛び交う。(同時に、みるみる内に般若の如き顔になっていく)
真実を聞くまで納得しないであろうという黒蔵の予想はまるっと正解であり、「全部見せる」という言葉に犬御は拳を隠した。
そして、泉を覗き込んだ……が。


「」ピシッ


冒頭から四十萬陀が肌を曝け出し、あられもない姿になっている黒蔵の記憶を見た犬御は、ルーブル美術館も驚きの見事な彫刻へ変化した。
白目のまま硬直。ぼたぼた情けなく垂れる鼻血。なんというサービスショット。
……羨ましい! 俺幼馴染なのに!
予想外の場面でダメージを負った犬御は、鼻を抑えながら、羨望入り混じり恨みがましく黒蔵をねめつけた。

この記憶を見る限り、四十萬陀が傷付いた要因が犬御には分からなかった。あんな姿を皆に見られたからだろうか?
だが、それよりも今、気になることが一つ出来た。

「……おい、クソガキ。テメェ、譲らねぇとかほざいてたが……七生と、つつつつつ付き合ってるわけじゃねぇよなあ……」

動揺しすぎである。
542 :黒蔵 [sage]:2011/03/16(水) 01:47:09.27 ID:OKfjQYDTo
>>541
「付き合うなんて仲じゃないさ。だって四十萬陀は、お前のことが大好きなんだもん」

(俺はただ仲のいい友達で……それ以上にはなれない)

泉の縁に俯いたまま、食いしばった歯の隙間から悔しそうにそう呟くと、黒蔵は目を瞑る。
犬御の様子の異変には気付こうともしない。

(蛇と鳥だもんな。家族でさえ喰った俺が、四十萬陀も襲わないだなんて言いきれるか?)

「俺にとっては、四十萬陀は凄く大事なんだ。だから、お前が守ってるなら俺は安心できるし、
 お前がこのことで怒るのは、無理も無いと思う」

自分で言いながら、黒蔵は心の傷が嫉妬でじりじりと焼かれるのを感じた。

「俺のことを殴りたきゃ殴れよ。その代わり、俺だってお前のこと殴りたいんだ」

俯いた黒蔵の表情は伺えないが、その拳が握り締められるのは犬御からも見えた。
543 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/16(水) 02:05:00.30 ID:zKeIYxxSO
>>542
「はぁ!?」

黒蔵の口から出た言葉に、犬御は阿保みたいな声を上げた。
……「大好き」って、それが恋人的な意味ならどれほど良いか。
確かに四十萬陀は、犬御が「好き」だ。しかしそれはあくまで、家族愛から一線を越えることは決してない。
今まで犬御なりにアピールはしてきたものの、自分に向けられる感情に鈍感なのか知らないが、何を隠そうここ数百年、犬御は四十萬陀にスルーされっぱなしなわけで。

(……コイツ、何か勘違いしてンじゃねぇのか)

勘だけはいいの犬御は、ふとそう思った。
目の前で拳を握り締める少年が、心なく四十萬陀を傷付けるようには思えない。
それに、四十萬陀の様子を見ていれば、犬御には分かってしまうのだ。
(七生はたぶん、このクソガキのことを好いている)
……わざわざ、それを教える筋合いは全くこれっぽっちもないので、黙っているが。

「――おいクソガキ」

犬御は言うなり、固めた拳で、黒蔵の頭上に拳骨を飛ばした。

「譲らねぇっていっておいて、何だそのザマはよぉ! オラ、殴りたかったら殴ってみやがれ!」

ぎり、と奥歯を噛み締める。
譲らないのはこちらとて同じだ。
四十萬陀と黒蔵は、伝わっていないだけで、恐らくお互い通じあっているはずなのに。
ぎりぎり、ぎりぎり。
羨望が、あまりに苛立たしい。
544 :黒蔵 [sage]:2011/03/16(水) 02:17:54.13 ID:OKfjQYDTo
>>543
がん、と頭に重い振動が来た。
それが犬御の拳だと気付いた途端、黒蔵は犬御に向かって拳を突き出した。
感情に任せての拳だ。
きちんと狙ってもいないし、腰からの力の込め方すらなっていない。

(くそっ!くそっ!)

その悔しさ一杯の攻撃はひどく出鱈目で、闇雲で。
それは殴るというよりも、かんしゃくを起こした子供がぽかぽかと叩く時のようだった。
それでも体格差ゆえか、それは犬御の腹にあたる。
しかし腕の長さの差が埋めがたいために、黒蔵の腕が伸びきった状態で拳が入る。
あと半歩犬御との距離が近ければ、肋骨を折ることくらいは出来ただろう。
545 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/16(水) 02:26:57.83 ID:zKeIYxxSO
>>544
「ってぇ!?」

出鱈目な狙いのくせに、一撃一撃が結構な重みがあることに、犬御は冷や汗をかいた。
忘れかけていた。
見た目は自分より小さくとも、目の前の少年は妖怪なのだ。

「……ハッ、上等ォ! オラァ!!」

ニィと牙をぎらつかせると、犬御は拳を固め、黒蔵に向かいストレートパンチを飛ばした。
相手の真の気持ちを知るなら、殴りあうのが一番手っ取り早い。

「テメェが七生のことを好きっつーんなら、拳で俺に伝えてみやがれ!!」

そう叫びながら、殴りかかる。
動きは大振りで避けやすく、わざとかと疑うほどに、胸ががら空きだ。
546 :黒蔵 [sage]:2011/03/16(水) 02:38:28.10 ID:OKfjQYDTo
>>545
犬御のがら空きの胸に、黒蔵は体ごと飛び込んだ。
がしりと犬御の体に腕を回して抱きついた。
そもそも手脚の無い蛇にとって、殴る蹴るの攻撃は得手ではない。
間合いの範囲への一撃の速度はともかく、飛び掛かったり回避する速度は
四足獣のそれには及ばない。

その代わりに得意なのは、潜んで待ち伏せることと、
捕らえた相手を万力の如く締め上げること。

(捕まえた!)

黒蔵にはこのまま犬御を持ち上げることも可能だ。
さらに締め付ければ体中の骨を折ってしまう事もできる。
そうやって、大きな獲物も飲み込みやすくするのが蛇なのだ。

一方でこの光景は、夜雀に見られたらとっても勘違いされる状況のようでもあるかもしれない。
547 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/16(水) 03:25:37.99 ID:zKeIYxxSO
>>546
「!?」

殴るわけではなく、胸に飛び込んできた黒蔵に、反応が遅れる。
そのまま強い力で抱きすくめられ、犬御は顔を歪めた。

「――っチィィ!!」

ぐいぐいと、黒蔵をひっぺがそうとする。
それに犬御が夢中になっていると、ふと覚えのある妖気がこちらへ近付いてきた。
548 :黒蔵 [sage]:2011/03/16(水) 03:31:38.97 ID:OKfjQYDTo
>>547
ひっぺがされまい、としがみつく黒蔵。
この手を剥がされてしまったら、きっと勝ち目は無いのだ。
ぐっ、と足元に力を入れて踏ん張り、抵抗すると背の高い犬御の体がぐらりと傾ぐ。

「……へ?」

二人はバランスを崩し、抵抗していた力加減も加わってそのまま黒蔵は後ろへ倒れる。
そして犬御にしっかりしがみついたまま、その下敷きになった。
549 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/16(水) 03:43:24.62 ID:zKeIYxxSO
>>548
「のわっ……」

ぐらり。
巨体が傾き、黒蔵をつかんだまま、ゆっくりと地面に倒れ――。



その頃、公園へ小走りで向かう一つの影。
犬御が黒蔵に喧嘩を売りにいったと聞いて、四十萬陀が慌てて飛んできたのだ。

(犬御のばか、なに考えてるじゃん!)

けれど、そもそも四十萬陀が落ち込んでいたから、犬御は黒蔵の元へ向かったわけで。
その辺りの誤解も、解かなくてはいけない。

四十萬陀はやっとこさ公園にたどり着いた。
「そこまでじゃん犬御!」と名前を呼びながら、足を踏み入れる――と。



「「あ」」



四十萬陀が見たのは、
……小さな黒蔵を地面に押し倒している、大男の姿だった。
550 :黒蔵 [sage]:2011/03/16(水) 03:54:46.36 ID:OKfjQYDTo
>>549
(離してたまるか!)

転んでもただでは離さない。そんなつもりで黒蔵はしがみ付いているのだ。
犬御が何かを見て焦ろうが、酷く嫌がろうが、一度食いついたら絶対離してなんてやらないのだ。
だって嫉妬で苦しいのだ。
到底狼には勝てない自分が悔しくて、でもどうにもならない自分に腹を立ててもいるのだ。
……倒れた拍子に後頭部を地面に酷くぶつけて、ちょっとばかり涙目になってはいるけど。

しかしそこで誰かが割って入った。

―――そこまでじゃん犬御!

「え?」

滲んだ涙で歪む黒蔵の視界に、黒い服の人影が映る。

「四…十萬、陀?」

大男の下敷きになった小柄な少年は、夜雀の名前を呼んだ。
もみ合ったせいで、その衣服は乱れて片肌が脱げかけている。
551 :四十萬陀 七生/東雲 犬御 [sage]:2011/03/16(水) 04:07:23.21 ID:zKeIYxxSO
>>550
さああああ、と顔が青くなるのは、犬御も四十萬陀もタイミングが同じだった。
犬御は慌てて起き上がろうとするが、黒蔵がきつく掴んでいるので、立ち上がることができない。
一方四十萬陀は、犬御に押し倒しされ、はだけた状態で涙を浮かべる黒蔵を見て、はわわわわわわと身震いしていた。

そして何を思い立ったのか、真っ青なのか真っ赤なのかわからない顔をした四十萬陀が、犬御に近付いてきた。
げ、と犬御が顔を歪めたのもつかの間、
四十萬陀のチョップが、犬御の頭に直撃した。

「バカ犬御っ!!」
「あだっ」

半分涙声で、何度もチョップをかます。

「黒蔵君に何してるじゃん! 離れるじゃん!」
「あだっ、あだっ」
「こ、こんなとこでこんなこと……ダメじゃん!
 だって、だって黒蔵君には……」

「――露希君が、いるじゃん……」

小さくなる声と共に、段々と弱まっていく、チョップの威力。
四十萬陀の声を聞きながら、犬御は納得した。
――なるほど、こういう誤解か、と。
さて今度は、これを聞いたこの少年が四十萬陀の誤解に気付くかどうか、なのだが。

「……つーかいい加減離しやがれクソガキ!!」

押し倒したままだと、妙な気分になるだろうが! なんか涙目だし、はだけてるし!
とは言わなかったが、それくらいの勢いで、黒蔵を振り払おうとする。
552 :黒蔵 [sage]:2011/03/16(水) 04:21:21.66 ID:OKfjQYDTo
>>551
夜雀の狼へのチョップを目の当たりにして一気に毒気を抜かれた蛇は、
その後に続いた台詞に犬御を掴んでいた手を緩めてぽかんと呆ける。

「露希がいる?俺に?何で露希?」

ヒダル神のせいで拷問されたのは、確かに露希とその兄の家でだったけれど。

「あんなおっかないのを相手にできるの氷亜さんだけだよ?
 四十萬陀だって露希に襲われたじゃんか」

やっぱりイマイチよく判らない。
しかしそこまでで犬御から乱暴に振り払われた。

 ガッ 「ぅつぅ…」

もう一度地面に後頭部をぶつけ、ひっくり返ったままで呻いた。
553 :四十萬陀 七生/東雲 犬御 [sage]:2011/03/16(水) 04:35:19.45 ID:zKeIYxxSO
>>552
「ふぇ?」

ぴたり。
動きを止め、四十萬陀は目を丸くして首を傾げた。

「黒蔵君と露希君って、付き合ってるんじゃないじゃん……?」

氷亜の「二人でいた」という発言で、四十萬陀はそうだと思い込んでいた。
ハァ、と犬御が溜め息をつく。
(……全く、どうしてこう鈍感なんだよ……)
今は犬御にとっても、都合のいいことなのだが。

黒蔵を乱暴に振り払い、犬御は立ち上がった。
「ちょっと!」と喚く四十萬陀を無視し、倒れる黒蔵の足元にしゃがみこむ。
そして、小さな声で囁く。

「クソガキ、この際だから誤解を解いておいてやる。あのなァ、俺たち送り妖怪に向けられる、七生のいう『大好き』っつーのは、家族愛なンだよ。か・ぞ・く・あ・い」

意味が分からねぇならそれでよし、とばかりにそれだけ言って、犬御が再び立ち上がった。
554 :黒蔵 [sage]:2011/03/16(水) 04:49:26.66 ID:OKfjQYDTo
>>553
「つつつつ付き合ってるー?露希と俺が?!嘘だろオイ!」

驚きで声が裏返った。

「どこから出た情報だよそれ?まさか既にあちこちで流れてるなんてことないよな?」

犬御が立ち上がったので、黒蔵もがばっと上体を起こす。
肌蹴た衣服がちょっとばかし危ないが、当人はそんなこと気にしていられる状況ではないようだ。

「そんなのが氷亜さんの耳に入ったら、俺殺されるマジでっ!」

既に一度殺されかけている。

そこでコツンと黒蔵の頭を小突きながら、目つきの悪い狼が割ってはいった。

「…家族愛?」

(そりゃ、あの山の妖怪は皆家族みたいなもんだろうけどさ?)

残念ながら狼の意図した半分しか、鈍い蛇には意味が判らなかったようだ。
山の仲間への家族愛とこの蛇への想いとが同じものなら、露希との件で夜雀は悩まない筈なのだが。
そこに黒蔵が気付くまでは、まだ時間がかかるようだ。
555 :四十萬陀 七生/東雲 犬御 [sage]:2011/03/16(水) 05:00:24.85 ID:zKeIYxxSO
>>554
「……」

裏声になるほど驚く黒蔵を見て、ぽかんとした表情で停止する。
犬御は度々溜め息を重ねると、わっしわっしと四十萬陀の頭を撫でた。

「オラ、誤解は解けただろーが。もう帰るぞ」
「……えっ、あ」
「ハァー……」

安心したのか、肩から力が抜けているのが見るだけでわかる。
にこ、と頬が緩み、四十萬陀は本当に嬉しそうに笑っていた。
――ずきり、と胸が痛む。
それは、俺のために向けられる笑みじゃない。

「……オイ、クソガキィ!」

吐き捨てるような舌打ちと共に、犬御は黒蔵を呼んだ。
四十萬陀の頭に手のひらを乗せ、ぶっきらぼうに宣言する。

「クソガキの割にゃあ本気みてぇだな。だが、俺も譲るつもりはねぇぞ」
556 :黒蔵 [sage]:2011/03/16(水) 05:11:08.33 ID:OKfjQYDTo
>>555
「誤解?」

狼が言うとおり誤解なら、四十萬陀の誤解を解くために彼はここへ来たのか。

(あいつ、ちゃんと先回りして動いてたのかよ。)

かなわねーな、とデキる奴へのささやかな嫉妬。
そこへクソガキ呼ばわりと宣戦布告がきたので、対抗心が煽られる。

「俺だって譲らねー!」

若干気弱なのは四十萬陀が何もいわないでいるからだろう。

「それにクソガキクソガキうるせーんだよ!狼!俺がガキならてめーは何だよ?」

クソガキ黒蔵、約800歳。
何時の間にやらすっかりショタジジィキャラである。
557 :四十萬陀 七生/東雲 犬御 [sage]:2011/03/16(水) 05:30:41.67 ID:zKeIYxxSO
>>556
「見た目がガキだからガキなんだよ!」

とは言っても、実は黒蔵よりだいぶん若い。
黒蔵からすれば、犬御こそガキだろう。
大人なのは見た目だけである。

「つぅかガキじゃねぇなら、もっと勘を鋭くしやがれ!」
「……?? もー、喧嘩しないじゃん」

なぜいがみあっているのかは分からないが、誤解がとけたことで、四十萬陀も上機嫌だ。
二人は揃って公園の出口へ向かう。

「じゃあ、またね黒蔵君」
558 :黒蔵 [sage]:2011/03/16(水) 05:37:32.95 ID:OKfjQYDTo
>>557
(…何か凄く痛いとこ突かれた)

犬御ほどとまでは言わないが、やっぱりもうちょっと背丈ほしいのだ。
あんまり欲張らないから、せめて四十萬陀と同じくらいでいいから。
ショタジジィの願いはいつ叶うのだろう。

「うん、またな。四十萬陀」

肌蹴た衣服を直しながら、帰ってゆく二人を見送る。

(四十萬陀が元気になったみたいでよかったけど、狼のお陰なんだよな)

黒い蛇はちょっぴり複雑な気分だった。


//遅くまでお疲れ様でした。
559 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/16(水) 21:32:25.09 ID:zKeIYxxSO
商店街のショーウィンドウを、難しそうな顔をした四十萬陀が覗き込んでいた。
むうと唸って、ガラスの奥のきらびやからな人間の服を眺めている。
四十萬陀がいつも身に纏っている、黒いセーラー服とは対照的に、どれも明るく輝いている。

(……こーいう人間の服に手を出したことないし、全っ然分かんないじゃん)

はぁ、と四十萬陀は溜め息を重ねた。
560 : :2011/03/16(水) 21:44:22.25 ID:+oTH8+jAO
>>559
「七生?こんなところで何をしているんだ?」

七生の後ろから話しかける。
そして、

「洋服…か?」

と、ショーウィンドウを眺める。
561 :露希 :2011/03/16(水) 21:49:37.82 ID:RDr2R6/z0
>>559-560
「こんばんは。二人ともどうしたの?」

商店街は人が多いため、白龍は手持ちの鞄に入っている(ちっちゃくなる)

二人の眺めているのは服。人間の。露希も最近の人間の服は知らない。 
562 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/16(水) 21:52:49.69 ID:zKeIYxxSO
>>560-561
後ろから話し掛けられ、四十萬陀は驚きに肩を跳ねさせる。

「わっ!? ……びっくりしたぁ、瞳君と露希君じゃん」

後ろを振り向き、二人の姿を見ると、安心したように息を吐いた。
そして再びウィンドウに顔を突き合わせると、困ったような表情になり。

「実はこの間、白い方のセーラー服が破けちゃって……。だから、持ってる服が、今着てるこれ一枚になっちゃったの」

人間の服を見に来てみたはいいんだけど、全然分かんないじゃん。と、四十萬陀は苦笑いした。
563 : :2011/03/16(水) 22:02:02.39 ID:+oTH8+jAO
>>562
「なるほどな。
うーん、残念だが私にも服のことはよくわからないな。」

ショーウィンドウを眺め考える。
瞳は基本は黒い着物を着ているため、服のことはよくわからなかった。


>>561
「おお、露希。いいところに
なあ、露希は服のこと詳しいか?」

少なくとも、自分よりは知っていると思いきいてみる。
564 :露希 :2011/03/16(水) 22:10:02.90 ID:RDr2R6/z0
>>562
露希「破けちゃったやつは縫うことくらいなら出来るんだけど…新しい服となるとなぁ。」

服に興味は無いため、普段は学校の制服かあり合わせの物を着用している。

>>563
白龍「服は、その人の【色】に合ったものを着るといいよ。」

鞄から顔を出した白龍は笑顔で言った。

白龍「普段、黒い服を着てばかりの人でも、明るい色の服を着ると新鮮な感じがしない?

そんな感じで決めるといいかも。」

服については露希よりも、白龍の方が詳しい。
565 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/16(水) 22:18:23.55 ID:zKeIYxxSO
>>563
「瞳君もいつも着物だもんね」

それならば、露希はどうだろうか。
そう考え、四十萬陀が視線を向ける。

>>564
袂山で人の姿でいれば、嫌が応でも服は汚れるし破けてしまう。
山でも歩けるような丈夫な服を買うべきなのだろうが、四十萬陀が眺めている店は明らかにそういうのとは違う店であった。

白龍が瞳にしている助言を聞いて、四十萬陀は頷いた。
(私の色、かぁ。やっぱり黒かな。明るい色は……似合いそうにないじゃん)
そんなことを考えている内、四十萬陀の好奇心がむくむくと起き上がってきた。

「ね、ねぇねぇ。ちょっと入ってみないじゃん?」

わくわく、という音が聞こえてきそうな笑顔で、二人に言う。
566 : :2011/03/16(水) 22:27:15.46 ID:+oTH8+jAO
>>564
「ほう、なるほど。合った色か…
あなたは、服のことに詳しいんだな。」

関心している。
そして、少し服について興味がでてきた。


>>565
「そうだな。入ってみよう。」

乗り気で返す。
567 :露希 :2011/03/16(水) 22:32:56.52 ID:RDr2R6/z0
>>565-566
露希「白龍、凄いね!!

とりあえず、入ってみよう。良い服が見つかると良いね♪」

露希も自分に合う色とかを考えながらうきうきしている。
(たまには黒い物着てみようかな…)
568 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/16(水) 22:36:01.27 ID:zKeIYxxSO
>>566-567
「よ、よし。じゃあ開けるじゃん……」

四十萬陀が恐る恐る、両腕でガラス戸を押し開ける。
からん、からん。乾いた鈴の音が響いた。
子洒落た雰囲気の店中には、ショーウィンドウに飾ってあったような可愛らしく、輝く服が所狭しと並べられてあった。
待ちゆく人間たちが身に付けているようなお洒落な服の数々に、圧倒された四十萬陀が、「おぉ……」と間抜けな声を漏らす。

「いらっしゃいませー」

あどけない人間の店員が、語尾がのぼるあの特徴的な話し方で三人を迎える。
569 : :2011/03/16(水) 22:41:05.43 ID:+oTH8+jAO
>>567
「そうだな。入ってみよう。」

(私に合う…か、)

いろいろと考えながらも入店。


>>568
「凄いな…なんか慣れない…」

店内の慣れない雰囲気に戸惑い、あちこち眺める。
570 :露希 :2011/03/16(水) 22:47:34.00 ID:RDr2R6/z0
>>568
「わぁ、中はこんな風になっているんだぁ。」

辺りにある色々な種類の服を見て、どんなのを着ようか…と考えてみる。

>>569
「瞳は大人っぽい服とか似合いそうだよね。」

会話も少しずつ弾んでいく。
服だけでここまで楽しめると言う嬉しさが、露希の心に染みる。
571 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/16(水) 23:02:37.89 ID:zKeIYxxSO
>>569
「わ、私もじゃん……」

と、いいつつも、興奮からかふんすと鼻息が荒い。
四十萬陀は並べられた服から、適当なものを二枚を選んで、上に持ち上げてみた。
一つは黒のタートルネックに、白いキャミワンピースといったシンプルなセット。
もう一つは、大人っぽいロング丈のワンピースだ。
すると、人懐こい笑みを浮かべた店員が一人、こちらへ近付いてきた。

「試着されますか?」
「え! えーと、私はまだ……瞳君は? どれか、着たいのあるじゃん?」

>>570
こうしていると、三人とも仲の良い、普通の友人同士のようだ。
いや、実際そうであるのだが、まさか彼女らが妖怪とは、端から見れば見当も付かないだろう。

「露希君は可愛い服が似合いそうじゃん」

四十萬陀が、服の引っ掛けてあるハンガーをかちゃかちゃ鳴らしていく。
572 : :2011/03/16(水) 23:11:13.99 ID:+oTH8+jAO
>>570
「大人っぽいか…そうかもしれないな。」

とりあえず、色々見てみようと思い、周りを見渡す。
様々な服がある。


>>571
「え?し、試着…そ、そうだな…試着はまだいいかな。
それよりも、もう少し私に似合いそうな服を探したいかな。」

573 :露希 :2011/03/16(水) 23:24:49.15 ID:RDr2R6/z0
>>571
「可愛い服?このワンピースとジーンズとかの組み合わせはどうだろう?」

自分に合ったような服を考え、見分けて行く。
結果的にはワンピース+スパッツ的な感じになった。

>>572
「(瞳のこんな姿、初めてみたなぁ。)」

普段出来ないことをするというのは新たな発見を見つけられるものであり、楽しみも増える。
今回の体験は露希を大きく成長させてくれるだろう。
574 :黒蔵 [sage]:2011/03/17(木) 22:05:23.12 ID:B2l/FgXTo
傷も埋まってきたし、犬御に言われたとおり少しは勘を良くしよう、と山へ来た黒蔵。
山の生き物や妖怪相手に妖気・気配を読んだり隠したりする練習と、
今動かせるだけ体も動かそうと思ってのことだった。
しかし犬御のいう「勘のよさ」とは、多分そういう意味ではない。

勘違いしたままの鈍い黒蔵は今、森の中でじっと座り、気配を殺して潜んでみている。
妖気も極力抑えて、あたりの気配を読もうとしている。

(何か…いる?)
575 :零&黒龍 :2011/03/17(木) 22:11:50.68 ID:BW5yvBq/0
山道を歩いている一人の少年と龍。

零「露希は帰ってこないし、夜ご飯どうする?」
黒龍「ラーメンは飽きたから、コンビニ弁当とかでいいよ。」

なんとも言えない会話をしていた。
この二人は料理が出来ない為、いつも妹たちにやってもらっている。
その妹たちがいないため、買い出しをしようとここに来たわけだ。

零「(…誰かいるけどいっか。)」
576 :黒蔵 [sage]:2011/03/17(木) 22:30:39.07 ID:B2l/FgXTo
>>575
(この気配って…うわぁぁぁぁ!!)

舌の根に残る不味さの記憶。
一瞬の動揺に、隠しきれない黒蔵の妖気が揺らぐ。

(逃げるなら今のうち!)

そろりそろり、と遠ざかってゆこうとするが、
藪に絡んだ一対の短剣の鎖が引っ張られて、帯に手挟んだそれがしゃりんと音を立てた。
あわてて振り返った視線が、相手のそれとぶつかる。
577 : :2011/03/17(木) 22:32:22.00 ID:1lNKKyaAO
>>574>>575
そのすぐ近く、修行中の瞳。多大な妖気を漂わせながら、技の練習に励んでいる。

「退魔連瞳斬っ!
はぁ…はぁ…駄目だな、まだ完成じゃない…」

578 :零&黒龍 :2011/03/17(木) 22:38:29.26 ID:BW5yvBq/0
>>576
零「……え?」

急に出てきたのにも関わらず、ぽかんとしている。
瞬時の判断が出来ず、しばらく見つめるが、電球が光ったかのように

零「黒蔵君!?」

と驚く。

>>577
大きな妖気を感じ取る。
その先には瞳がいた。

零「こんばんは。露希から話は聞きました。

貴方も強くなられたのですね。」

窮奇のことだ。それ以来、瞳は研ぎ澄まされたかのように強くなっているのが分かる。
579 :黒蔵 [sage]:2011/03/17(木) 22:42:10.83 ID:B2l/FgXTo
>>577
(こっちにもいるーー!)

苦手な妖気2つに挟まれて涙目の蛇。

>>578
「…なんでここに?」

問いかけながらもじりじりと、徐々に後じさり中。
兄も妹も悪意なく酷いことをする相手なのはよーーく判っているのだ。
いざとなったら何とか助けてもらえないだろうかと、期待を込めて黒龍を見やる。
580 : :2011/03/17(木) 22:46:58.75 ID:1lNKKyaAO
>>578
「零か、ありがとう。これも、あなたや露希のおかげだよ。」

そう言って笑いかける。


>>579
「黒蔵、どうしたんだ?零と何かあったのか?」

黒蔵の様子を見て、疑問に思う。
581 :零&黒龍 :2011/03/17(木) 22:56:56.74 ID:BW5yvBq/0
>>579
零「露希が居なくって、夜ご飯食べれないから買い出しに…」

理由を話す。
黒蔵に見られた黒龍は同情し、(いざとなったら助けるから、安心して)とコンタクトを出す。

>>580
「良かった良かった。ところで、先程の修行は技を究めている練習?」

自分とは違い、コツコツと修行する瞳に尊敬の眼差しを向ける。
582 :黒蔵 [sage]:2011/03/17(木) 23:01:12.44 ID:B2l/FgXTo
>>580
そうだった、瞳は少し話が通じる相手だった。
…たまにその視線が心にすごーく痛いけど。

引っかかった鎖をはずしながら、こくんと頷いて黒蔵は答えた。

「零には、この世のものとは思えないものを色々食べさせられたんだ」

胃袋がやたら丈夫な性質でよかったと思う。
栄養価だけはあったらしいけど、あの味は…説明の仕様がない。

>>581
「買出し?なんでそれでここに?」

ここは山の中である。
確かこの兄妹の住居は、街中だったはず。
黒龍のコンタクトに勇気付けられて、おそるおそる疑問をぶつけた。

まだ黒蔵は重要なことに気づいていない。
露希がいない時の零の夜ご飯=今すぐ逃げろ、のサインであることに。
583 : :2011/03/17(木) 23:07:46.15 ID:1lNKKyaAO
>>581
「ああ、そうなんだがなかなか上手くできなくてな。
他の技なら上手くできるんだが…」

上手くいっていないのか、俯き気味に話す。


>>582
「いったい何を食わされたんだ…
というか、二人の関係性がわからない…」

いろいろと疑問に思ったことが増えた。
584 :零&黒龍 :2011/03/17(木) 23:16:14.55 ID:BW5yvBq/0
>>582
もしも、いつもの零ならば「料理を作ったからおすそ分け♪」と言って危険物を出すだろう。
しかし最近になって、紅茶の作り方を覚えた。
紅茶好きのせいか、茶葉の厳選から紅茶を作ることだけは(奇跡的に)まともにできる。

零「用があって…」

黒龍「この山に、いい匂いのハーブがあると聞いて探しに来たんだ。(大丈夫です!)」

と安心させるように口をはさむ。

>>583
零「何って、この野菜炒めとか…」

鞄から取り出した箱の中には異臭を放つ不気味な物体が。(色などは想像で)

零「食べてみますか?」

零はこの危険さに気づいていない。これが普通と思っているほどだから。
585 :黒蔵 [sage]:2011/03/17(木) 23:21:12.04 ID:B2l/FgXTo
>>583
「関係って…」

鳴蛇化した時に露希に捕獲監禁されて、その後しばらく零に飼育されてましたとは言えない。

(どう言えばいいんだ?っていうか正直あんまり言いたくない)

言葉を飲み込んで、黒蔵は困った。

>>584
「いい匂いのはーぶ?」

はーぶってなんだろう。
しかしさっきから良い匂いとは程遠い何かが匂っているのだが。
はて何の匂いか、と疑問に思っていたら…ソレが出た。

「うっ…」

取り出された不気味な物体を露骨に嫌な顔で見て、数歩後じさる。
586 : :2011/03/17(木) 23:26:54.11 ID:1lNKKyaAO
>>584
「な…そ、それが野菜炒めだと…」

驚愕、どうしたらこうなるのか不思議に思う。

「い、いや…遠慮しておくよ。」

こんなものを食わされた黒蔵を哀れに思う。


>>585
「あ、いや、言いたくなければいいんだ。」

黒蔵の様子を見て、なんとなく聞いてはいけないと思い、あわてて言った。
587 :零&黒龍 :2011/03/17(木) 23:32:44.69 ID:BW5yvBq/0
>>585
黒龍「わぁぁぁぁっっ、、零、やめろぉぉぉぉ!!!」

大声で叫び、箱を思い切りぶん投げる黒龍。

黒龍「く、黒蔵君、大丈夫ぅ…?お口直しに甘いものでも…ほら!」

必死にフォローしつつ、飴を黒蔵に食べさせる。

>>586
零「そうですか…ってうわああ!!!!」

黒龍「手が滑った、また作ればいいよ、うん…」

無関係な人に被害が出ぬようフォローする。
588 :黒蔵 [sage]:2011/03/17(木) 23:38:39.54 ID:B2l/FgXTo
>>586
「…ちょっとややこしいことが、いろいろあったんだ」

優しく言ってもらえて、心底ほっとしたように答える。
そして野菜炒め(?)を遠慮する瞳に、その反応で正解だ、とばかりにコクコクと頷く。
その間にもじりじりと、謎の物体からなるべく遠ざかろうとしていた。

>>587
(わざとだ、どうみてもわざとだ!)

しかしわざとらしい黒龍のお陰で零の野菜炒めからは逃れられた。
そしてぽん、と口の中に何かが放り込まれる。

「ん?これ、何?飴?」

硬いもの。そして甘い?
口の中でころころとそれを転がしている。
589 : :2011/03/17(木) 23:47:03.73 ID:1lNKKyaAO
>>587
「な、投げた…?」

箱を投げたことに驚く。

(いいのか?投げてしまって…)


>>588
「…よくわからないが、いろいろあったんだな。深く追求しないようにするよ。」

気にはなるが、あまり気にしないようにすることにした。
590 :零&黒龍 :2011/03/17(木) 23:55:23.80 ID:BW5yvBq/0
>>588
黒龍「(こうでもしないと、黒蔵君は強制的に食べさせられてたかも知れないし…)」

ちなみに黒龍の投げた箱は40mほど離れたところに落ち、周辺の草花は枯れてしまったようだ。

黒龍「なんか色々とごめんな。凄い可哀そうに思えてくるよ。」

零には聞こえない程度に、黒蔵と話をする。

>>589
零「むぅ……」

少し残念そうにするが気を戻す。

零「そういえば技が完成しない…とかって言ってたよね。

私なら、まず大切な人を思い浮かべるよ。やっぱり、支えてくれる人は自分に+になるしね。」
591 :零&黒龍 :2011/03/17(木) 23:56:03.10 ID:BW5yvBq/0
>>588
黒龍「(こうでもしないと、黒蔵君は強制的に食べさせられてたかも知れないし…)」

ちなみに黒龍の投げた箱は40mほど離れたところに落ち、周辺の草花は枯れてしまったようだ。

黒龍「なんか色々とごめんな。凄い可哀そうに思えてくるよ。」

零には聞こえない程度に、黒蔵と話をする。

>>589
零「むぅ……」

少し残念そうにするが気を戻す。

零「そういえば技が完成しない…とかって言ってたよね。

私なら、まず大切な人を思い浮かべるよ。やっぱり、支えてくれる人は自分に+になるしね。」
592 :零&黒龍 :2011/03/17(木) 23:56:49.28 ID:BW5yvBq/0
>>588
黒龍「(こうでもしないと、黒蔵君は強制的に食べさせられてたかも知れないし…)」

ちなみに黒龍の投げた箱は40mほど離れたところに落ち、周辺の草花は枯れてしまったようだ。

黒龍「なんか色々とごめんな。凄い可哀そうに思えてくるよ。」

零には聞こえない程度に、黒蔵と話をする。

>>589
零「むぅ……」

少し残念そうにするが気を戻す。

零「そういえば技が完成しない…とかって言ってたよね。

私なら、まず大切な人を思い浮かべるよ。やっぱり、支えてくれる人は自分に+になるしね。」
593 :黒蔵 [sage]:2011/03/18(金) 00:34:13.38 ID:XuCMQQHOo
>>590
(うわぁ、俺毎日あんなの食べてたんだな)

近眼のため目視はできないが、それまであった生気が枯れ果てた気配に、
改めて酷いものを食べさせられていたと実感する。

「ううん、こっちこそありがと、黒龍。マジ助かった」

ひそひそと、零に聞こえないように話す。

「黒龍は、やっぱ食べたことあるの?アレ?」

一目で食べてはいけないもの、と判る物体だが、あえて試したことはあるんだろうか。
いやそもそも、零は食べないのだろうか?自作のアレを?

「技?」

黒龍と話しながら、零の言葉を小耳に挟む。
そういえば黒蔵も鍛錬のために山へ来ていたのだった。
でもこの一対の短剣は、まだまだ使いこなせる気がしない。

(中が空っぽの短剣だ、って蟹に聞いたけど、これ一体何なんだろうな)

二本に刃がないのも、金属ではないらしいてろりと滑らかなその刀身の材質も、良くわからない。
ただ、何となく引っかかる、気にかかるものではあるのだ。
594 : :2011/03/18(金) 00:38:12.27 ID:kgR1BUXAO
>>592
「大切な人…支えてくれる人か…
そうか!だから風月はこの技を作り出したのか!」

しばらく考え、閃く。
風月の大切な存在、そして今現在瞳の支えとなる人たち、そこに共通する思いに気づいた。
595 :黒蔵 [sage]:2011/03/18(金) 00:39:51.39 ID:XuCMQQHOo
>>594
「風月?」

誰だろう?
瞳の大切な人、なのかな?
先を促すように、瞳を見つめる。
596 : :2011/03/18(金) 01:03:30.98 ID:kgR1BUXAO
>>595
「風月とは、私の大切な人さ…今はもういないがな…
いや、私の志の中にいるのかな。」

どこか寂しそうな表情で語った。
597 :黒蔵 [sage]:2011/03/18(金) 01:14:56.28 ID:XuCMQQHOo
>>596
「今はいない人?そっか…それは寂しいな」

風月とはきっと瞳にとっての家族とか恋人のようなものなのだろう。

「でも大切な人は、まだまだこれからもできるかもな。
 もしかしたら今もう居るのかもしれないけどさ。
 他のやつと深くかかわると、どうしても繋がりってできんだろ?」

瞳にとっては今はまだ友人か知人かもしれないが。

「もしかしたら、もっと違う大切が見つかるかもな」

にっ、と蛇は笑って言った。

「で、その大切な人の技ってやつ、よかったら見せてくれよ」
598 :零&黒龍 :2011/03/18(金) 09:01:33.59 ID:djh1/Gfs0
>>593
黒龍「…不味かった。
でも、快楽とかで満たされて、お花畑に行きそうな気分になった。」

実際は泡を吹き、無残な姿で倒れているところを露希に助けられた…とか。

黒龍「ちなみに零はアレを美味しいと言って食べてるんだけど。」

天然?いや、ただの馬鹿だろう。

>>596
零「瞳…」

なんとか元気にさせようと思うも、言葉が見つからない。
少し黙りこくったまま、考える。

>>597
零「大切な人の…技か。(黒龍は私のこと、どう思ってるんだろう。)」

普段は誰よりも一緒に居る時間の長い黒龍。
でも、好きとか大切とか、考えたことなんてない。

599 :零&黒龍 :2011/03/18(金) 09:15:12.56 ID:djh1/Gfs0
零「黒蔵君、瞳さん、もうこんな時間です。私たちはそろそろ行かなくては…」

黒龍「黒蔵君も、疲れすぎないようにね。」

そして、山道を歩き始めた。
600 :黒蔵 [sage]:2011/03/18(金) 22:58:40.89 ID:XuCMQQHOo
学生服に斜めがけの白鞄。
一見どこにでもいそうな男子生徒がうろついているのは、夜の店が多い繁華街。
警察か見回りの教員でもいたら補導されるところである。

(なんか食べられるやつ居ないかな)

壊れかけた蛇神に酒を買って小銭を使い果たし、今の黒蔵には障りしか食べられるものが無い。
人の多い場所に湧く障りを探して、黒い蛇は人の姿で街をうろついていた。
601 :零&黒龍 :2011/03/18(金) 23:08:47.88 ID:djh1/Gfs0
紺色のジーンズと黒いパーカーの少年が繁華街を歩いている。

零「お腹減ったなぁ…」

昼食を食べ忘れたため、いつも以上に腹を空かせている。
しばらく歩くと、見たことのある少年が。
602 :黒井礼 [sage]:2011/03/18(金) 23:08:51.15 ID:ctX/3O5c0
>>600
「やはり日本はいい。フランスとは違う」

ウイスキーの瓶片手にうろつくロングコートの男。
最近日本に帰国したばかりだ。ふと、ふらついた視線の先に男子生徒を発見する。

「あ、こんな所うろついちゃいけないよ」

吐息が酒臭いアラサーお兄さん黒井が話しかける。
603 :夜行集団 :2011/03/18(金) 23:15:25.50 ID:0WlxCvkQ0
黒蔵の歩いている通りの、彼から見て反対側から二人組のカップルが歩いてきた。
しかし今更説明することはないのだが、彼等はでなく彼女達は双子の姉妹である。

夜行集団の母親役の彼女達でも、流石に買い出しまでは任されていないと言っても、
手にはいっぱいになったスーパーの袋。
先ほどにあげた通りに買い出し、ではなく彼女たちが彼女たちの為にお忍びで酒を買っていた。

「あ、ねえねえ雨子神。目の前にいるのって」
『・・・ああ、なぜか見た顔が集まってる・・・』

ふらふらとそちらの方へ近寄る二人。

>>601
「こんにちは!!
 いつも氷亜が御世話(ry」

>>602
『久しぶり・・・貴方も酒なんだね?』
604 :黒蔵 [sage]:2011/03/18(金) 23:25:05.84 ID:XuCMQQHOo
>>601
(あ、一匹いた)

黒蔵は通りすがりの化粧の濃い人間の女性の後を着いて歩いている。
その女性の首に吸い付いた蛭のような障りが目的なのだが、
傍目にはケバイお姉さんの後をストーカーする怪しい奴である。

高いヒールの靴を履いたその女性は足早に歩いてゆくので、その障りを上手く捕まえるには
女性が立ち止まった瞬間を狙わなくてはならない。

(ああっ、せめて背丈もうちょっとあったら…)

黒蔵はぶつからないように距離を詰め、女性の首に後ろから手を伸ばす。

>>602
そこで酒臭い男が声をかけた。

「…うへっ!?」

黒蔵が吃驚して振り向く間に、女性はどんどん遠ざかってしまった。

「うああ、今日の餌逃したっ!」

なんだか誤解されそうな呟きがうっかり漏れてしまった。

>>603
そこへコートの男に話しかける人物が二人。
酒臭い男の連れだろうか。

(…ん?)

神格のような、そうでないような?
あやふやなその気配に黒蔵は怪訝な表情になった。
服の下の翡翠の輪を、無意識に探る。

(この酔っ払ったのは人間だけど、こっちの二人は人間じゃない!)

鞄の中に隠してある短剣を意識する。
605 :零&黒龍 :2011/03/18(金) 23:33:08.39 ID:djh1/Gfs0
>>602
零「黒井さん!?…連絡もよこさずに、何処に行ってたんですかっ!!」

半分は怒った口調で言うが、眼は涙目。
嬉しかったのだ、黒井に会えたのが。

>>603
「こんばんはっ!!こちらこそ露希がお世話にn(ry」

二人の神様にあいさつ。

(やっぱり双子なのに全然違う…)
>>604
「黒蔵君、こんばんは。制服姿でいると捕まるよww」

『こん〜。』

二人で黒蔵を驚かすように声をかけた。
606 :黒井礼 [sage]:2011/03/18(金) 23:40:57.02 ID:ctX/3O5c0
>>603
「そうだ、酒は明日を生きる原動力!」

ぐいっとウイスキーを一杯飲み込む。
休暇中はずっとこんななのだ。

「君等も酒好きと見える。今夜の楽しみか?」

(大分買ったようだな…)
>>604
「…狙っていたのか。君の好みはケバいお姉様か!」

見事に呟きを誤解。うへへへ、と笑う。

「君はいやらしい奴だな。でも嫌いじゃないわ! 人間の女が好きなのね!」

酔っぱらいはうっとうしいことこのうえない。
人は酔っぱらうと泣いたり笑ったり、特にこの男はうっとうしい
>>605
「あぁ、久しぶり。フランス行ってた」

しれっと答える酔っぱらい。
怒ったような零がよくみたら涙目なのに気づいて照れくさかったのだろう。

「パリのチャンネーは綺麗だったぞ。零も今度は一緒に行くか?」

その後、はっはっはと笑う。
607 :穂産姉妹 :2011/03/18(金) 23:46:11.87 ID:0WlxCvkQ0
>>604
『・・・見ず知らずのものに・・・そう殺気を飛ばさないで欲しい・・・』
「私達は雪男の氷亜の仲間の穂産姉妹です
 警戒せずとも私達に敵意はありませんよ
 
 あなたは黒蔵君、ですね?あのミナクチさんの使いの・・・」

黒井と零に話しかけていた二人だが、横から感じた警戒の念に反応し、両者同時に振り替える。
眠そうな目つきで黒蔵を見つめている雨子神は、そうは言っても見ず知らずのものだから、
警戒されるのも仕方がないことだと思っていた。

>>605
「いえいえ、あの二人には常々かもしだしている春の風に和ませてもらっています。
 氷亜に恋愛、という感情を教えて下さった露希さんには本当に感謝をしているんですよ。

 そういえば貴方は、そちらの方の兆しはあるんですか。」

まだ警戒が解けていないであろうということで黒蔵と話す雨子神の苦労も知れず、
日子神は零の方にふらふらと話しかけた。

>>606
「ふふふ、そうです。
 今夜は仲間に隠れてこれで二人酒です」

嬉々と話し、袋を揺らしている日子神。
飲酒は仲間から厳しく、本当に厳しく禁じられているため、たまにこうして酒を買って盗み飲みして、
やってしまうのだ。
608 :黒蔵 [sage]:2011/03/18(金) 23:52:13.74 ID:XuCMQQHOo
>>605
「もう捕まった」

黒井と双子とを指差しながら零に答える。
黒龍がいるので、ほんの少し安心する黒蔵。

「零はこの3人と知り合いなのか?」

この3人が真っ当な常識を持ち合わせた、安全な人物であってくれることを黒蔵は願った。

>>607
「え…?」

いやらしいと言われて黒蔵は一瞬、絶句した。
そりゃ真っ向から否定できない程度の後ろ暗さは黒蔵にだってある。

(でもそういう意味で好きなのは人間の女じゃないんだけどな…)

胸中でぽつりとつぶやいた。

「俺、人間は好みじゃない。それに今日の晩飯獲ろうとしただけなんだけど?」

初対面の相手の誤解を上手く解く方法なんて黒蔵は知らない。
そもそもそんなに器用じゃない。

>>607
「氷亜さんの?ああ、夜行集団の人なのか」

ほっとした。空腹のときに戦いたくは無い。
そしてその会話から、二人が酒の入った袋を持っているのに気づく。
安堵して気が抜けた黒蔵の腹の虫が誘われて、ぐぅと鳴った。

(俺も早く晩飯捕まえないと)

次の獲物を探して、あたりをきょろきょろと見回した。
609 :零&黒龍 :2011/03/19(土) 00:06:29.34 ID:AoOPBdxm0
>>606
「お酒と女の人が好きなんですね。でも良かった…。」

無事でいることを確認でき、安心した。

「あ、そういえばこの子紹介するの忘れてた。」

『黒龍です、零の武器です。よろしく。』

数か月前まで黒井と一緒に居た時期、黒龍は人前に出なかったため、会うのは初めてだろう。
黒龍は黒井を見て、にこっと笑う。

>>607
「兆し?う〜ん……」

少し考え込む。そしてピンと閃き、

「虚冥さんのことが好きになりました。」

勿論、兄としてだが変な風には伝わらないだろうか?
そう言って、一枚の例の紙を差し出す。

>>608
零「うん、凄くいい人達だよ。」

零から見ればとてもいい人だ。
しかし、黒蔵にはどうだろう?

『(黒蔵君、何かされなきゃいいけど。)』

そんな黒蔵の無事を祈る一匹。
610 :黒井礼 [sage]:2011/03/19(土) 00:13:12.23 ID:hufNl+yp0
>>607
「夜行の方はどうなってるんだ?」

妖怪集団の情報集めも仕事のうち。
休暇中でもそれは変わらない。

「酒なんて飲んでると反応が鈍くなって危なくないか?」

そういいつつウイスキーを飲み込む。
>>608
絶句した黒蔵の胸中を察したのか、

「大丈夫、男はみんないやらしい。俺もいやらしい。零もきっといやらしい」

いやらしい酔っぱらいのいやらしいお言葉。
今日の晩飯、そうか、誤解してたようだ。

「ちなみに、何食うんだ? 人間じゃないんだろ?」
>>609
「まぁ、俺は断食系男子だけどな」

酒と女性をこよなく愛す断食系男子。
断食系なので時がすぎると大人しくなくなる。

「黒龍…武器…ほぉ、よろしくな」

ニコリと微笑み返す。
611 :穂産姉妹 :2011/03/19(土) 00:20:53.75 ID:p2Te4pV30
>>608
『・・・そうだから貴方も知ってる。
 ・・・僕の持っているこのお酒が欲しいのかな?・・・随分と自己主張が強いんだね・・・
 でも、なんなら少し分けてあげてもいい・・・』

くいっ、と手にもっている袋を上げる雨子神。
しかし、酒だけでは腹は膨れないだろうと思い、夕食の誘いでもしてみた。

『それとも・・・僕の所の晩御飯に呼ばれてみる・・・?
 一人分増えたところで問題ないと思う・・・。』

>>609
「え?狂骨が?え?」

若干混乱と言うか、面食らう日子神。
その様子から、変な風に伝わってしまったのだろう。

「・・・はぁ、BLですか。
 いいですね!私は嫌いじゃないです!」

しばらく考え込んだ後、こう返した日子神の目はなんというか楽しそうであった。
まさかの本物(違う)との遭遇にはしゃぐが、差し出された紙に目を丸くさせ受け取る。
そしてざっと目を通し

「・・・ほう、ありがとうございますね」

天逆毎のところで読む動きが止まる。

「天逆毎・・・これはなかなか、凄いのがいますね・・・」

>>610
「こちらの方は問題なく、特別なにもおきてはいませんねぇ」

紙から顔を上げて応える日子神。
この件は帰ってから考える事にしようと思った。

「私達穂産姉妹は実践担当ではないので問題ないんです。
 へべれけでも」
612 :黒蔵 [sage]:2011/03/19(土) 00:33:24.05 ID:wWV3GLYJo
>>609
「そっか」

双子神の事は夜行集団のメンバーなので安心できる。
しかし人間の男の事はまだよく判らないので、黒蔵は黒井のほうに気を張っている。
そのため、酒という爆弾を抱えた双子神についてはまるっきりノーガードなのだ。
黒龍の危惧は、あながち外れていないかもしれない。

「黒龍って武器だったんだ?」

初めて知った事実。

「虚冥さんか。俺もあの人は好きだよ。助けてもらったし」

もちろん変な意味でなく、零のような思慕でもない。
ただの好悪の問題で言った場合である。

>>610
「何が大丈夫だよ、この場で一番いやらしいのはアンタだろ。さっきの笑い!
 そんな人に保障されても困るよ」

黒井のうへへ笑いから黒蔵はそう判断したのだ。

「何でも食うよ。昔は人間も食ってた。今は障りを食ってる。
 さっきとり損ねたのも、あの女に憑いてた障りだ。
 あんまり美味いもんじゃないんだけどな。
 で、断食系男子って何?」

>>611
「自己主張強い?」

主張した記憶のない黒蔵は、この双子姉妹のペースがよく判らず首を傾げる。

「晩御飯はありがたいんだけど、酒は量が過ぎるっぽいから、俺は遠慮しとくよ」

酔って理性が飛ぶことは無いのだが、
酔わないまま飲むのは酒をどぶへ捨てるようなもので、勿体無いと黒蔵は思うのだ。

(BLってなんだろ)

日子神がすごく楽しそうなので不思議に思った。
さっきの黒井の断食系男子とか、まだ良くわからない言葉が多い。
613 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) :2011/03/19(土) 00:35:28.77 ID:loGKD3A40
614 :零&黒龍 :2011/03/19(土) 00:46:43.62 ID:AoOPBdxm0
>>610
「黒井さん、縄で縛って川へ投げ捨てますよ(笑)」

「にたぁ」とにやける。
【零もいやらしい】という発言を聞き、悪ふざけ半分で言ってみる。
黒龍の方はにこにこしている。

>>611
「ま、待って!!そんなBLとかじゃ…」

やはり、そう捉えられてしまった。なので、必死に否定。
零にそんな悪意はない。

「ちょ、考えてよ!!私が虚冥さんラブとか言っちゃったらあの人死にますよ?」

言っちゃっているのだが。
そして、虚冥には姫がいる。あの人に彼女(彼氏)は出来ない…

>>612
『そう、武器。ただ、普段武器だと…』

「職務質問されるんだよ…」

そこに零が割り込む。

「え!?黒蔵君はBLなのかい?」

615 :黒井礼 [sage]:2011/03/19(土) 00:53:46.70 ID:hufNl+yp0
>>611
「特別何もないのか、平和が一番だ」

特別何も起きていない。なによりの知らせだった。

「なるほど、へべれけ上等と言う奴か。そしてBL好きなのか」

黒井も酔ってはいるが、軽くである。
…神も酒に酔うのか。そういえばそうか。そしてBL好きなのか…恐ろしい。
>>612
「いやらしい、妖怪だこと! 妖怪だろうが人間だろうが皆平等にいやらしいのだ」

もうすぐ三十路。いやらしいアラサー。
酒のせいで本当にいやらしい。

「あぁ、障りね。人間よりましだな。
断食系とは、恋愛を我慢してこいつだ!と決めたらまっしぐらな奴のことを言う!」

さっき2分で考えたのだ。
>>614
「縄で縛るとかいやらしい!」

この男もうだめだ。
アルコールは控えましょう。

「えぇ!零はBLなのかい!?」

もはやこの男、スイーパー兵士にあらず、ただのアル中なり。

>>ALL
「さらばでござる!」

いやらしい奴はコートを翻し繁華街へ消えてった。

/これにて離脱します。乙でした!
616 :穂産姉妹 :2011/03/19(土) 01:00:52.18 ID:p2Te4pV30
>>612
『・・・そうか・・・分かった』

断られたが、別段気にする風もなく微笑む雨子神。
また困った時頼ると良い、と告げて日子神の方に視線を向ける。

『(狂骨・・・あれもなんやかんやでお節介やきなんだな・・・)』

その微笑んだ理由は一つだけでなく、ただBLに反応したからということだけでもなかった。

『そういえば・・・蛇神ミナクチの件・・・あれから進展はあった・・・?
 貴方の所の竜宮城も・・・多少なりとも動いてはくれていると思っているけど・・・』

ふと思い出して黒蔵の方に向き替える雨子神。

>>614
「あの人・・・?誰の事ですか?」

あたふたと、零が否定しているという事は、狂骨との事はただの自分の勘違いだったのだろうと
思いなおす日子神の顔は、なぜか少しがっかりしたような顔になった気がした。

『(日子神・・・そういうのは顔に出しちゃダメ・・・)』

遠くから心の中で突っ込む雨子神。
あの人と言う言葉に疑問符がつき、首を傾げる日子神。

>>615
「本当にそう思います。平和に姫が主になれたら一番ですね。
 BLは、はい。たしなむ程度に」

『(BLにたしなむという動詞はあってないとおもうよ・・・?)』

またも雨子神に突っ込ませた日子神は特別恥ずかしそうにしてはいなかった。
それは天然なのか、本当に腐ってしまったからなのか、土は腐りようがないというのに。

「おげんきでー!」
『窮奇という名には気を付けた方がいい・・・』

黒井に別れの挨拶をする。
617 :黒蔵 [sage]:2011/03/19(土) 01:08:06.35 ID:wWV3GLYJo
>>614
「零、それやるなら俺も手伝うぞ」

黒井への意趣返しなら、一緒に乗るつもりだ。
しかし黒井に強気な零が、双子神へは珍しく必死だ。

(BLって零がよほど困るものらしい)

いつか零を抑えるときに役立つかもしれないと思って、
黒蔵はこの単語を記憶しておくことにしたのだが。
自分もBLなのかと零に聞かれては、正直に無知を白状するしかない。

「そのBLって、一体何?」

>>615
「嘘つけぇ!!」

力いっぱい黒井に叫ぶ。
勘ではあるが、この場合の黒井の言葉は嘘だと黒蔵は思った。

「ちっ、逃げられたか」

先に縛って川へ流してしまえばよかった。
あの酔っ払いに逃げられてしまうまえに。

(次に見かけたら、あいつ食っちゃおうかな)

ちらりと危ない考えが黒蔵の頭をよぎった。

>>616
「蛇神に酒をかけたら皹の入り方少し遅くなったけど、それでも皹は育ってる。
 今は毎晩少しづつ酒を注いでおくくらいしかできないんだ。
 竜宮は武器と薬はくれたよ。後は俺が自分でやれってことらしい。
 自ら助くるものを助く、ってさ。でも俺、武器もまだ使いこなせないんだ」

黒蔵の表情は沈み始めた。竜宮には期待はできない。
618 :零&黒龍 :2011/03/19(土) 01:21:30.11 ID:AoOPBdxm0
>>615
「酔っ払ってるんだから、途中で事故ったりしないでね。バイクにも乗っちゃだめだよ。

じゃあ、また今度。」

色々と注意する。酔っ払いは何をしでかすか分からないから、念のため。
そして、別れを告げる。

>>616
「虚冥さんですよ。きっと、死んじゃいます。」

それよりも、零の料理で死ぬ可能性が高いかもしれない…。

「あ、今度料理持ってってあげよう☆」

>>617
「BLってのは…」

『ちょっと待って、俺が教えるから。零は黙ってて!!』

再び黒龍の乱入。零に任せると黒蔵が大変なことになると思ったからだ。

『黒蔵君のこと…凄く、好きなんだっ/////////

…簡潔に言うとこうなるよ。』

黒蔵の耳元で甘く囁く。
BL好きの二人がいるにも関わらずこんなことして良いのだろうか?
619 :穂産姉妹 :2011/03/19(土) 01:26:55.46 ID:p2Te4pV30
>>617
『好転した・・・ということではないんだ・・・』

氷亜は以前、

―少年の呪いは、呪い手本人を倒すしか解けないらしくてね、
 まあ、あれだよ。 その時は僕が手を貸さしてもらおうかなって―

と言っていた。
それを思いだし、黒蔵の武器というのはそのためのものだろうと納得した。
そして、意外と竜宮の神々は助けてくれるのだなと感心もしていた。

『・・・僕が武器に対して言える事はなにもないけど・・・
 武器といえば・・・瞳というつくもの妖怪が刀の妖怪だったと思う・・・一度聞いてみてはどうだろう・・・?』

>>618
「なるほどそうですね。
 狂骨はそういった方面に耐性はなかったと思います、でも死ぬほどではないとは・・・
 意外と価値観には寛大ですよ」

「はい!!ぜひ作ってやってください!!喜ぶと思います!!」

ここで氷亜の痛恨のミスが発生してしまった。
零は闇属性の物質を生み出すことの叶う存在である事を報告していなかったため、
日子神はその言葉の恐ろしさは知らなかったのである。
620 :黒蔵 [sage]:2011/03/19(土) 01:35:41.14 ID:wWV3GLYJo
>>618
「ちょwwww黒龍wwwwww髭wwwwくすぐったwwwwwwwwやめwwwwwwなにwwwwwwwwww
つまりwwwwwwww俺のことを好く奴がwwwwwwwwwwいたらBLwwwwwwwwww?」

耳とか首筋とかがどうも弱いらしい。
さきほど竜宮の話で沈んでいた顔を真っ赤にして、今は笑い転げている。
そして黒龍の説明は、多分間違った意味で受け止められている。

>>619
「…あー、くすぐったかった」

黒龍から解放されて頬を染め、はぁはぁと息をつきながら黒蔵は双子神に答える。

「うん、瞳は知ってる。この前にもあったんだ」

言いながら頬に掛かった髪を払う。

「でも修行中で時間があまり無いみたいで、あまり話せなかった。
 いる場所は知ってるから、今度会いに言ってみるよ」

しかし零の手料理についての会話は、爆笑していて気いてなかった。
聞いていたら日子神を必死で止めたのだろうが。
621 :零&黒龍 :2011/03/19(土) 01:45:30.19 ID:AoOPBdxm0
>>619
「そうですか!?いっぱい作ろうかな!!」

零は張り切ってしまった。闇属性の物質のLvはとてつもないことになてしまう。

>>620
『はぁ…つまりね、同性で愛し合う…みたいな。

だから、さっきのは…ええと//////』

顔を赤らめて焦る。
ペースが完全に乱れてしまったようだ。

622 :穂産姉妹 :2011/03/19(土) 01:55:40.79 ID:p2Te4pV30
>>620
『・・・!!』

突然暴れ出した黒蔵のせいで、いつも寝ぼけ眼な雨子神の目が大きく開いた。
しばらくじっとしていると後ろに小さな龍、あれに黒蔵はくすぐられていたのかと納得し、
また同じぽやーんとした目に戻る。

『そうか・・・既に知り合い・・・
 ならば都合がいいよ・・・なにか聞く事で得られる事があるかもしれない・・・』

先ほどまで暴れていた黒蔵に真面目に話す雨子神。
ちなみに心の声2↓

『(え?BL!?・・・あー、聞き逃してしまった・・・何の話していたのだろう・・・)』 そわそわ

>>621
「その時は私達もなにかだします!!」

笑顔で会話する零と日子神のはたから見た光景はなんとも微笑ましい事か。
なかではまさに集団食中毒事件が起こるや否やの瀬と際というのに。

    子曰、由、誨女知之乎、
       知之為知之、不知為不知、是知也 (孔子)

超翻訳:無知なやつはダメだね!!

「そういえば、この紙の中にあったのですが、窮奇とかいう妖怪は集団で動いているのですか?」
623 :黒蔵 [sage]:2011/03/19(土) 02:19:16.13 ID:wWV3GLYJo
>>621
「同性で愛し合う?」

鸚鵡返しする。声が大きい黒蔵。日子神はwwktkするだろう。

「なんだそういうことか。性別変わる魚とかいるから、水界だとめずらしくないよ」

勝手に納得した黒蔵。
そういう種族じゃないものの場合を言うことは、多分理解していない。
その台詞は、さらなる誤解を呼ぶかもしれないが。

>>622
「うーん、あまり時間もないし、瞳探しがてら山で餌探そうかな。
 ほんとは障り食うほうが妖力があがるんだけど」

ちょっと行ってくるよ、とそう言いおいて黒蔵は去ってゆく。
624 :零&黒龍 :2011/03/19(土) 02:27:47.55 ID:AoOPBdxm0
>>622
「そう、集団。詳しくはこのノートに。
この会話がすべて聞かれてるかも知れないので、後で見てください。」

差し出したのは黒いメモノート。中には窮奇関連が詳しく書かれている。

そして、さきほどから眠そうにしている雨子神にサプライズをしようと思った。

>>623
去っていく黒蔵を後ろから抱き締める。

「BLって言うのはね、こういう事。」

頬にキスをした。
零の場合、BLはそこまで嫌いでもない。そして、このショタ。

「じゃあね、黒蔵君。」

そう言って、黒蔵を見送った。

/黒蔵君、ごめんなさい。
625 :穂産姉妹 :2011/03/19(土) 02:35:20.22 ID:p2Te4pV30
>>623
「『!!』」

同性で愛し合う”
全身を駆けぬけていったその言葉は、彼女たちに通常の3倍の速度の反応を可能にしていた。
首筋の組織が無理なくしなやかに躍動し、黒蔵と黒龍の方に最短かつ最速のスピードで振り返る。

中学生か、という突っ込みも、彼女たち以外はいないこの空間の中では出来る者はいなかった。

「では、さようなら!      (なんというか・・・お腹いっぱいな感じになりました・・・)」
『良い話が聞けると良いな・・・ (なんというか・・・お腹いっぱいな感じになったな・・・)』

>>624
「集団・・・できるだけなら全面戦争は避けたいですね・・・」

そう言って、少し深刻な顔でノートを受け取った日子神は以前の滝霊王の事を思いだしていた。
それも彼の最後のプレゼントによって中断されたのは、日が火を見るよりも明らかであった。

「『(Good job!!)』」グッ
626 :黒蔵 [sage]:2011/03/19(土) 02:36:12.84 ID:wWV3GLYJo
>>624
急に後ろから被さるように抱きしめられて、零に食われると思った黒蔵。

「ふひぇっ!」

思わず変な声がでる。

(やっぱこいつ危険だーー!)

解放された途端、思いっきり加速してそこから逃げ出した。
627 : :2011/03/19(土) 21:52:50.93 ID:AoOPBdxm0
ある暗い山奥。物音せず、静寂した空間のような雰囲気だ。
そこに、一人の青年が歩いている。

「人間って…本当にいなくなればいいのに…。」

独り言をぶつぶつと言いながら。
628 :黒井礼 [sage]:2011/03/19(土) 22:02:21.59 ID:hufNl+yp0
>>627
「今日も疲れたな」

ぽつりと呟くロングコートの男。
静寂の山奥、落ち葉を踏みしめ歩く。

「ん、誰かいらっしゃるのか?」

青年の独り言を微かに聞き取り、向かっていく。
629 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/03/19(土) 22:05:02.14 ID:a7p6LW7DO
>>627
「…よっと…まったく、妖怪狩ったら金でも出りゃいいんだがなー」

ガサガサッと草むらから音を立て、青年の目の前に一人の男が飛び出した

黒い無造作ヘアーに白ニット帽、隈の深い目、蔓に縞模様をあしらった黒縁眼鏡
目玉模様のシャツに、黒いジャケットとカーゴパンツ
口に棒付き飴をくわえている男

男は右手に異様な液体が滴る木刀を持っている
630 :宝玉院 三凰 :2011/03/19(土) 22:09:41.86 ID:efGkpxkAO
>>627>>628>>629

その上空、全長2メートル程のコウモリが宙を舞う。

「…人間数匹と妖怪数匹か、百鬼夜行に繋がるかもしれんな。」

そう思い、地上に降り立ち、人の姿になる。

631 : :2011/03/19(土) 22:16:26.13 ID:AoOPBdxm0
>>628
「なっ…人間!?来るな…!も、もし近づいたら容赦しないぞ!!」

一人だと思っていたため、突然の出来事に動揺する。
そして、並みの人間でないことを感じ取った。

>>629
「こっちにもっ…っ、目的はなんだ?」

警戒心むき出しのまま、話しかける。
こちらの人間の手には武器を持っていたため、更に警戒する。

>>630
「お前は…人間じゃないだろ?」

明らかに人間とは違う妖気。
少し安心するも、この妖怪が人間の味方なら話は違うが。
632 :黒井礼 [sage]:2011/03/19(土) 22:21:39.01 ID:hufNl+yp0
>>629
「こんな山奥にも人やら妖怪やらがいるもんだな」

ガサガサという音を聞き、何者かが複数いることを知る。
熊じゃありませんように、敵じゃありませんように。

「…熊って人の声したら逃げるよな?」

独り言を呟きながら、目視できる所まで接近していく。
>>630
「でかいコウモリだな」

2mのコウモリが降り立つ姿を見る。
さすがこんな山奥はいろいろ集まる。人も妖怪も。

「コウモリの妖怪、こんばんは」

人となったそれに、やや油断なく話しかける。
>>631
「わかった、近づかない。ただ暇だったんでな」

その場で立ち止まる。
あまり友好的な奴ではないのか、あまり刺激しないのが吉か。

「酒は好きか?」

普段ならこの男は立ち去っただろう。しかし、今日は違った。
633 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/19(土) 22:29:27.44 ID:a7p6LW7DO
>>630

「うん…?妖怪か?」

男ははた、と気付いたようで、道に出て立ち止まり、降りてきた妖怪を舐める用に観察する

>>631

「…と思ったら、あらまあ他にもいたようだな」

蝙蝠の妖怪を観察したあとに周りを見渡そうとして、ようやく他の存在に気付いた
今ようやく気付いた訳で、自分が何気なく呟いた言葉も全く覚えておらず、何故青年が警戒しているのかは解らない

>>632

「熊か、牛みたいな蜘蛛みたいな奴ならさっきいたぞ」

ぶんっ!と木刀を振り払い液体を落として、肩に担ぐ
そして左手の小指を立てたかと思うと、おもむろに自分の鼻に突っ込みながら男にも視線を向けた

「…こんな場所でこんなに出会うとはな、偶然にしちゃ必然じみてるな」

鼻から抜いた指から、何かを弾き飛ばして、誰に向けるでもなく男は呟く
634 :宝玉院 三凰 :2011/03/19(土) 22:33:57.95 ID:efGkpxkAO
>>631
「ああ、僕は人間ではない。
ところで、厄介な人間が二人もいるようだな。貴様はどうするつもりだ?」

全員に警戒しながらも、落ち着いて話す。
どうでるか見ているようだ。


>>632
「馴れ馴れしく話しかけるな人間。
こんな山奥に何のようだ?妖怪でも退治しにきたのか?」

挨拶をする黒井に、若干苛立ちを覚え、不機嫌そうに話す。
軽く話しかけられたのが、気に入らなかったようだ。


>>633
「貴様の目的は…大体見当がつくな。
で、僕をどうするつもりだ?」

木刀をみて、山奥にいる理由を察する。
そして、不機嫌そうに睨みつける。
635 : :2011/03/19(土) 22:43:53.84 ID:AoOPBdxm0
>>632
「酒は…飲めないんだ……!?」

警戒していた筈なのに、相手が人間なのに、口が動いてしまった。
なぜだろう――?

>>633
「(なんだ、この人間…。殺気があるのに、平然としているのはなぜだ?)」

ふと疑問が浮かぶ。

「君は、妖怪を殺 したりするのが好きでしょう?

先程の木刀の液体はなんだ?」

>>634
「僕から見たら、君も厄介な奴の一人なんだが。

……君の好きにするがいいよ。人間なんて知ったことじゃない。」

明らかに挑発的な態度。
そんなことも気にせず眼をそむける。
636 :黒井礼 [sage]:2011/03/19(土) 22:49:20.77 ID:hufNl+yp0
>>633
「牛蜘蛛をその木刀で殴ったのか?」

そういう間に男の鼻、小指、弾き飛ばし。
品がない、黒井の目の前の男への第一印象。

「…確かに偶然にしちゃ必然じみてる。
何かに呼び寄せられたようだ。これも人生ってやつか。
名乗るか、俺は黒井ってやつだ」
>>634
「馴れ馴れしいか?悪いな。礼節は守ったつもりだが」

今日の妖怪達は友好的じゃないな。
運が悪いか、こんな日もある。そう思う。

「そうだ、妖怪退治だ。妖怪も人も関係なく喰い荒らす奴がいたんだ」

本人は気をつけたつもりでも軽い感じが抜けない。昨日の酒が残っているのか。
>>635
「そうか、そうか。酒が飲めるようになるといいな」

軽い。いつもの黒井より何か軽い感じだ。
いや、いつも通りか。

「別に喧嘩しにきたわけじゃないんだ。仲良くしようか」

やや酒臭い。昨日の酒が残っているのは確定のようだ。
637 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/19(土) 22:58:50.23 ID:a7p6LW7DO
>>634
「目的?目的ってなんの事だ?」
「まさか俺がお前らを滅しに来たとでも思ったか?やめてよね、俺がお前らをわざわざ狩る訳ないだろう?」

怠そうに鼻をほじりながら、馬鹿にしてるような言葉で否定する

>>635
「どこの殺人鬼だよ俺は、別に好きだからやってる訳じゃない」
「これだって、襲われたから撲殺…じゃなかった、こらしめただけだ」

「いやー大変だった」と、先程の戦いを思い出しながら彼は言う
女の子かと思って近付いたら妖怪だった、ハニートラップに見事引っ掛かったとは、彼が説明しないかぎり誰も知るよしはないだろう

>>636
「ま、ギリギリで逃げられたけどな、別に金にはならないし見逃したよ」

鼻をほじった指を服で拭いて、その手で飴の棒を掴んで口の中で捻って回す
口の中で歯と飴がぶつかり、カラコロと音を鳴らした

「そうだな、俺は丑三夜中、退魔師をやっている」

妖怪が周りにいる中で退魔師と明かすと、大抵いい反応はされない
それは彼自身でも理解していて、それを解ってわざと言っているような節もあるが
638 :宝玉院 三凰 :2011/03/19(土) 23:05:16.52 ID:efGkpxkAO
>>635
「フッ…僕も厄介な奴か…違いないだろうな。
では、貴様がまだ行動に出ないなら、こちらからでるとしよう。
貴様は、なかなかの力を持っているようだが、百鬼夜行の主に興味はあるか?」

率直にきいてみる。

>>636
「フン…まぁいいだろう。」

馴れ馴れしいのは、我慢することにした。

「で、僕も退治するつもりか?」


>>637
「貴様…」

怒った。腰のレイピアを抜こうとしたが、抑え

「貴様が山へきた目的だ!妖怪退治だろう。
…僕に危害を加えないのならさっさと去れ。僕の堪忍袋の緒が切れる前にな!」

かなり怒っている。
639 : :2011/03/19(土) 23:16:13.78 ID:AoOPBdxm0
>>636
(なぜだろう、この人間からは悪意が感じられない…)

相手が人間と言うことを知っているのに、あんなに人間を恨んでいた筈なのに。

(まさか、あの時のあいつが悪かっただけ…いや、人間は皆…)

「あの…僕が妖怪と知ってて仲良く?普通なら、殺 すんじゃ?」

疑問を投げかけてみる。

>>637
逆に、こちらの人間は違う。
優しさなどが感じられない。行動も良くない。

「自分に害のある妖怪なら殺 すんだ…へぇ。」

>>638
「百鬼…夜行?」

聞いたことはある。妖怪同士で争い合い、頂点に立ったものが権力を握ると言うものだ。

「君はその主を目指すんだ。そして、権力を握り、すべてを支配する―と言った感じか?」

見え透いたように言い、くすりと笑う。

「君はその頂点に立てる自信があるの?力だけで支配するのか?」
640 :黒井礼 [sage]:2011/03/19(土) 23:26:12.18 ID:hufNl+yp0
>>637
「退魔師…」

服で拭く動作、やや綺麗好きな黒井にはなんだか許せない。
気がついたらポケットティシュを男に投げていた。

「俺も退魔師みたいなものだ。俺が言うのも何だがこの状況でよく退魔師と名乗れるな。
後、鼻いじるときはティッシュ使え」

やや呆れ気味の声色だ。わしわしと自分の頭をかく
>>638
「…別に今は退治する気はないが、君は妖怪と人との関係をどう思う?
俺はこのまま平行線を辿るのが一番だと思う」

友好的でなくても理由がないと基本退治はしない。
だが、均衡を破るのなら別だ。

「まぁ、正直に答えてくれ。返答によって襲うとかしないからさ。場合によるが」

それでも、返答があれな場合でもよほどでないと襲いはしないのだ。
>>639
「俺は人間だろうが妖怪だろうが分けて考えない。妖怪だから危害を加えるとかはない。
だが、仕事上人と妖怪の均衡を壊すのなら容赦はしないだけだ」

正直に話す。敵は少なく、味方は多く。
黒井は暗視サングラスを胸ポケットより取り出しかけた。

「君は人と共存しようとは思わないか?」
641 :黒井礼 [sage]:2011/03/19(土) 23:26:33.43 ID:hufNl+yp0
>>637
「退魔師…」

服で拭く動作、やや綺麗好きな黒井にはなんだか許せない。
気がついたらポケットティシュを男に投げていた。

「俺も退魔師みたいなものだ。俺が言うのも何だがこの状況でよく退魔師と名乗れるな。
後、鼻いじるときはティッシュ使え」

やや呆れ気味の声色だ。わしわしと自分の頭をかく
>>638
「…別に今は退治する気はないが、君は妖怪と人との関係をどう思う?
俺はこのまま平行線を辿るのが一番だと思う」

友好的でなくても理由がないと基本退治はしない。
だが、均衡を破るのなら別だ。

「まぁ、正直に答えてくれ。返答によって襲うとかしないからさ。場合によるが」

それでも、返答があれな場合でもよほどでないと襲いはしないのだ。
>>639
「俺は人間だろうが妖怪だろうが分けて考えない。妖怪だから危害を加えるとかはない。
だが、仕事上人と妖怪の均衡を壊すのなら容赦はしないだけだ」

正直に話す。敵は少なく、味方は多く。
黒井は暗視サングラスを胸ポケットより取り出しかけた。

「君は人と共存しようとは思わないか?」
642 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/19(土) 23:32:13.73 ID:a7p6LW7DO
>>638
「人間なんかに馬鹿にされて怒るなんて、器の小さい妖怪もいたものだな」

三鳳が怒ったのが見て解り、それが面白いのか挑発の言葉が激しい物となる

「安心しろよ、残念だが俺の目的は妖怪退治じゃない、今回はな」
「最も、やり合いたいのなら仕方なく相手してあげてもいいわよ〜ん?」

「仕方なく」の一言をやけに強調し、フヒヒと笑いながら死んだ目で三鳳を見詰める

>>639
「…そうだなあ…うん」

息を鼻から漏らし、左手で帽子の上から頭を掻いて

「殺そうとする奴は殺される覚悟もしなくちゃいけないってな」
「それに、その口ぶり、どうやら俺が死んでればよかったー、みたいな言い方だな、そりゃどうなんだ?そんな奴が俺に対して怒りを向けるのはお門違いってもんだろ?」

>>640
「いやー、妖怪の目の前で退魔師って言うのが別格なんだわこれが」
「そう言えば、大抵の妖怪は俺に構ってくれるからな、楽しいったありゃしない」

投げられたポケットティッシュを左手でキャッチ、だが使わずポケットに差し入れた
その言い方からして、どうやら誰かに構ってほしくてわざと言っているようだ、妖怪二人を挑発しているのも、行き過ぎのようではあるがそれに従った物らしい
643 :宝玉院 三凰 :2011/03/19(土) 23:41:48.29 ID:efGkpxkAO
>>639
「まぁ、そんなところだ。
自信?馬鹿なことを聞くな。百鬼夜行の主に相応しいのはこの僕だ。」

自信満々に言う。

「力だけじゃない、僕の全てで支配する。まぁ、悪いようにするつもりはない。」

ニヤリと笑う。

「で、貴様は目指さないのか?」


>>640
「人間など、どうだっていい。どうなろうと知ったことじゃない。
ま、たまに精気を吸ったりはするがな。死ぬまでは吸わんがな。僕は、少食だからな。それに、生きるものなら何だって精気は吸える。わざわざ人間を狙う必要もない。」

冷静に警戒しながら答えた。


>>642
「貴様…!」

怒りが限界を超える。
ついに腰のレイピアを抜く。

「死にたいようだな。いいだろう、愚か者は後悔させてやる!
この宝玉院三凰を愚弄したことをな!」
644 : :2011/03/19(土) 23:54:02.05 ID:AoOPBdxm0
>>641
「人間と共存…」

澪の考えは変わろうとしていた。
すべての人間が悪いと思っていた、しかし中にはこの男のようにいい奴もいる。
自分は誤解していたのかもしれない…

「…ありがとう。少し考える時間をくれるとありがたい。」

先程の警戒が嘘のように、心を少し開いた。

>>642
「……」

黒井とのことで頭がいっぱいになり、質問には答えられなった。
(共存か…)

>>643
「権力が欲しいというわがままな理由で妖怪達を[ピーーー]のか。

僕は、そんなの嫌だね!!」

きっぱりと言い放つ。

「悪いけど、僕は君が主になれるとは思わない。」

645 :黒井礼 [sage]:2011/03/19(土) 23:59:55.00 ID:hufNl+yp0
>>642
「そんなんじゃ、長生きできないぞ」

品位にかけているな。なんてこった。
そんな感じで片手で頭を押さえながら、

「そうやって、あちこちいじくりまわしているのか?
均衡を破壊するならいろんな敵を増やすことになるぞ。人間の評判も悪くなる」

一応の心配の言葉であるとともに、警告的な意味も含まれているようだ。
>>643
「それでいいんだ。それで」

返答に満足したようだ。
警戒しているのを感づいたのか、

「ま、俺のは吸うなよ?ただでさえ疲れることが多いのに」

軽い調子で笑う。そして抜かれたレイピアを見て、後ろへ下がってゆく。

「おい、俺を巻き込むなよ?」
>>644
「そうだ、考えよう。共存できないと末路は悲惨だ」

これまで共存の道を蹴って滅びていった種族をたくさん見てきた。
次は人間の番かもしれない。妖怪かもしれない。

「それとコウモリがレイピア抜いたから巻き込まれるなよ」

そして、心を開いてくれたのだろうか、そう思った。
646 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/20(日) 00:10:59.43 ID:MSsHmWbDO
>>643
「冗談だよ、冗談…と、今更言っても遅いだろうな」
「まあいいさ、そろそろ俺の戦闘も練習しないといけない所だしな」

ぶんぶん、と木刀を手の中で回し、構え直して
木刀を右肩にかけるように持ち、三鳳に体を向ける

>>644
「んで、無視かい」
「いやまあ、今答えられてもそれはそれで困るけどな」

澪から答えが帰ってこない事に、一人突っ込みをいれる
自分の言葉が正論で答えられなかった、なんて思う訳じゃないが、相手なりの考えが聞けなくて少し不満足そう

>>645
「長生きして、何になるってんだ」
「希望が少ないと解っている人生を長々と生きるより、寿命が短くてもそれなりに楽しい方がマシだ」

三鳳に構えたまま、首を少し傾けて黒井に言う
人間にしてはその思想は、少し狂っている物かもしれない
647 :宝玉院 三凰 :2011/03/20(日) 00:18:01.77 ID:W0UVWJFAO
>>644
「わがままだと!貴様に何がわかる!」

大声で怒鳴る。

「勝手に思っていろ!」


>>645
「安心しろ。貴様に危害を加えるつもりはない。」

さっさと去れとでも言うように、チラリとそちらを見る。


>>646
「あいにく、僕は冗談が通じる相手ではないんでな。」

そう言って睨みつけ、レイピアを構え――

「行くぞっ!」

接近し、突きを放つ。
648 : :2011/03/20(日) 00:31:05.38 ID:JAOldYXv0
>>645
「武器の準備しなきゃ。」

左手の義手ががちゃりと音を立てる。
いつ攻撃が来てもいいように、直剣を取り出した。

「そうだ…自己紹介がまだだった。澪です。」

こんな状況にも関わらず自己紹介。少し、この人間を信じたくなった。

>>646
「え…ああ、すまなかった。」

謝罪の一言。
しかし、その言葉は届かなかった。
戦闘が始まってしまった。

>>647
「(駄目なんだよ、一人では主は取れない。どんなに実力があっても…。)」

本当は、こう思っていた。
澪は彼の勝利を祈った。

>>646-
649 :黒井礼 [sage]:2011/03/20(日) 00:37:13.19 ID:RLBdtoG20
>>646
「その考えはわからんでもないが、行動が他の奴の人生を狂わせかねない」

眉間に皺が集まってきている。
酒が抜けて真剣になってきたようだ。

「あまりやりすぎると介入せざるをえなくなる」

短刀を背中のリュック横から抜く。
鞘に入ってはいるが。
>>647
「怪我するなよ」

短刀を手に持ち、後方から観戦する気のようだ。
サングラス下の眼光は鋭い。

「仲裁ならいつでもやるぞ。時間の許す限りな」
>>648
「俺は黒井、黒井礼だ」

戦闘を斜めに体を向けてみながらの自己紹介。

「よろしく、義手なのか。君は」

義手を横目で見る。
650 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/20(日) 00:46:29.81 ID:MSsHmWbDO
>>647
「剣対剣って時に重要なのは間合いだったか」
「レイピアと、木製でも刀だ、間合いはこっちのが上だろ?」

脳内の考えを口に出し復唱しながら、ゆらりと半歩後ろに下がり

「よっと!」

一瞬の隙も置かず、下がった距離よりも大きく踏み出して、同時に右腕を目一杯伸ばしてカウンター気味に木刀を突き出す
真剣で無いにしろ、その先端は鋭く、貫く事は無いだろうが、殺傷力は十分だ

>>648
「いえいえこちらこそ!」

>>649
「いいんじゃないか?俺が他人の人生を変えられるなんて凄い事じゃないか!」
「ま、冗談だけどな!」

二人に対して、三鳳への攻撃行動をしながら答える
まだ戦いながら答えるような余裕はあるようだ
651 :宝玉院 三凰 :2011/03/20(日) 00:54:14.03 ID:W0UVWJFAO
>>648
(もう知らん…今は、戦いに集中だ。)

そう思い、目もくれない。


>>649
「勝手にしろ。」

それだけを言い放った。


>>650
(ちっ…かわされたか…)

そう思った瞬間。
三凰の腹に木刀の一撃。

「ぐっ!貴様!」

だが、すぐに立て直し――

「まだだ!」

もう一度突きを放つ。
652 : :2011/03/20(日) 01:03:42.48 ID:JAOldYXv0
>>649
「黒井礼…さんですね。」

笑顔、この人は自分に笑顔を作ってくれた人―心に名前を刻んだ。

「左手だけですが、義手です。まだ慣れてなくて…」

左手を動かすたんびに、金属音の音がする。

>>650
「…(さっきのふざけた態度は作り物だったのかな…)」

三凰の攻撃をひらりとかわした姿を見て驚いた。

>>651
(なぜかあの妖怪に眼が行ってしまうな。

引き付ける何かがあるのか?)

戦い方などを観察。戦う準備は出来た状態で。

653 :黒井礼 [sage]:2011/03/20(日) 01:10:02.14 ID:RLBdtoG20
>>650
「君はかなりの腕前のようだ」

戦うその姿をしっかりと見つめている。

「その力ならば用意に他人の人生を変えてしまえる。恐ろしいな」

微かに首を振る。
>>651
「あぁ、勝手にさせてもらう」

首をグリグリと回し、肩を微かにほぐし始める。

「痛そうだな…」

木刀が当たるのを見て一言。
>>652
「最近の義手はすごいようだな…」

そういった後、すぐに振り返る。

「…悪いが、仕事ができた」

何かを見つけたようだ。
そういって暗い山道を黒井は駆けていった。

駆けていく先に、白い服を着た男が立っているのが見えたかもしれない。
その姿はすぐに見えなくなった。

/落ちます。みなさんありがとうございました
654 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/20(日) 01:24:39.85 ID:MSsHmWbDO
>>651
「おっと、タフだな」

攻撃を加えたにも関わらず、すぐさま向かって来る三鳳に少々の驚愕と称賛の意を篭めた言葉を送る

「…が、また同じ攻撃方法ってのはどうなんだ?」

突きと言う攻撃の特性状、かわさなければいけない範囲は小さい
余り大きな動作をせず、体をひらりと右側に半回転させ、三鳳と同じ方向を向いて並ぶ位置になるように翻る
レイピアの先端が腹を掠り、小さな一文字の傷を作った

「足元がお留守ですよ!って言ってみたいだけだけどな」

攻撃をかわす動作をしながら、右足を伸ばして足をかけようとした

>>652
戦うその態度に余裕はあれど、相手を見くびっているような様子は見て取れない
ふざけている態度は取っていたが、常にそういう訳ではないようだ

>>653
「自分の人生も変えられない奴が、他人の人生を変えられるなんて理屈は無いだろう?」

そう言うと、見送る事も無く戦いの相手に意識を向けた

/お疲れ様でした
655 :宝玉院 三凰 :2011/03/20(日) 01:30:34.88 ID:W0UVWJFAO
>>652
(あいつ、なぜ逃げないんだ…?
いや、今は戦いに…)

観察されていることに気づく。


>>653
「こんな攻撃、どうってことない。父上の攻撃の方が何倍も痛いな。」

強がってみせる。
実際、結構痛かったようだ。


>>654
「くっ!舐めるな!足など地につけなければいい!」

攻撃が来る前に巨大なコウモリの姿になり、飛び上がる。

「消えろっ!」

2メートル程のコウモリが急降下で迫る。
そのまま、空中から体当たりを仕掛ける気だ。

656 : :2011/03/20(日) 01:39:30.14 ID:JAOldYXv0
>>653
「え…仕事ですか。また今度、どこかで。」

彼のおかげで、少し心を開けた澪。
気分も、テンションも上がりつつある。

>>654
華麗な身体能力を見て、澪はうずうずしていた。
剣からは人間ですら感じられる異様な妖気を出していた。

>>655
「(あの攻撃…当たったらひとたまりもないな。)」

そして、澪は決心した。
あの妖怪と戦うことを。

/お疲れさまでした
657 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/20(日) 01:42:25.19 ID:MSsHmWbDO
>>655>>656
「あ、きったねえぞ、こっちは空なんて飛べないのに」

飛び上がった三鳳に向けて、冗談めかした文句を言って見上げる
手の中で木刀を持ち替え、柄の底に掌が当たるような持ち方にする

「妖怪なんだからこれしきで死んだりするなよ?むやみに[ピーーー]と寝付きが悪くなるからな」

構えた木刀を、まっすぐに三鳳に向けて突き出す
武器等無しに生身で体当たりしてくるなら簡単に突きが体に入ると見て、その場から動かず反撃をした

(木刀の間合いの分、こちらの方が攻撃は早く届く、躊躇ってよければ振り出し、そのまま突き抜けて来たらちとまずいか)
(にしてもあの巨体だ、あの速さで木刀だけかわすなんて器用な事…ん?あれ?俺死亡フラグ?)
658 :宝玉院 三凰 :2011/03/20(日) 01:55:47.68 ID:W0UVWJFAO
>>656
空中のため、そちらは見ていない。
というか、見えていない。


>>657
(父上は以前言っていた。いかなる戦いでも、相手を見くびってはいけないと、考えうる全ての攻撃に対処しろと!貴様は、攻撃をかわせないと僕を見くびっている。
つまり――)

「見え見えだっ!」

木刀をかわ――せなかった。
ギリギリのところで間に合わなかったのだ。
額にモロに攻撃をうける。

「ぐああっ!そんな…馬鹿な…」

そのまま、倒れる。
相手を見くびっていたのは、三凰の方だった。
659 : :2011/03/20(日) 02:02:09.81 ID:JAOldYXv0
>>657-658
瞬間の出来事、何が何だか分からなかった。
ただ、妖怪の方が倒れたので急いで駆け寄った。

「おい、しっかりしろ!主になるお方がこんなところで倒れてもいいのか!?」

必死に声をかける。
(人の為に一生懸命になったの、いつ以来だろう?)
660 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/20(日) 02:08:48.51 ID:MSsHmWbDO
>>658
「………………」

倒れた三鳳を前に、カランカランと木刀が右手から落ちる
ついでに、少し遅れて右腕もだらりと垂れ下がった

「…やべ、折れたかも」

人間パイルバンカーなんて馬鹿げた事をして、しかも相手は巨大な蝙蝠、更に攻撃中
そんな行動をすれば、当然使用された右腕へのダメージは半端ではなく、感じる痛みに顔を青ざめさせる

>>659
「いやー…やっぱりかわせばよかったかなー…馬鹿だなー俺…」

左手で右腕を抑えながら、溢れそうな涙を堪えて一人呟く

「あ、そいつ大丈夫?生きてるか?」
「結構思い切りだったしあたり所悪そうだからな…やべ、どうしよ」

痛みからか心配してか、冷や汗を浮かべながら三鳳へと近寄って行く
661 :宝玉院 三凰 :2011/03/20(日) 02:14:16.94 ID:W0UVWJFAO
>>659
「…うるさい…黙れ…」

苦しそうな声だが、減らず口を叩く元気はあるようだ。

「僕は、これくらい平気だ…
それよりも…」


>>660
キッと悔しそうに丑三を睨む。
よく見れば、涙目だ。

「僕をどうするつもりだ…?」
662 : :2011/03/20(日) 02:20:45.84 ID:JAOldYXv0
>>660
「生きてるが、君の方は…腕折っちゃったかもね。」

いくら気に入らないとは言え、見過ごすわけにもいかない。
奇跡的に持っていた包帯で手を括り付け、応急処置。
この人が人間と言うことも忘れて―

「(戦わなくて良かった。)」

>>661
「怒ってその気になったのが悪い。」

頭をぽんと叩く。でも澪の表情は嬉しそうだ。
無言で手当てをした。
663 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/20(日) 02:25:49.74 ID:MSsHmWbDO
>>661
「どうするって、どうされたい?」
「食っても美味い訳じゃなさそうだし、依頼されて討伐した訳じゃないから首も意味が無い、キスなんかもごめんだ」
「勝手に俺が目的あるみたいな、悪人みたいな言い方は止めてくれよ、俺は喧嘩したいなら付き合ってやるって言ったんだ」
「それにむやみやたらに[ピーーー]のは趣味じゃない、取り付かれて寝付きが悪くなったらどーすんだ」

「おわかり?」と首を傾げて見せ左手で木刀を拾って背中に仕舞う

>>662
「お、すまないな、手際がいいじゃないか」
「代わりに飴食うか?納豆味があるぞ」

澪の気持ちは露知らず、治療されれば素直に礼を言う
次いで、ポケットから左手で棒付き飴を取り出して澪に差し出した
664 :宝玉院 三凰 :2011/03/20(日) 02:33:49.48 ID:W0UVWJFAO
>>662
「…っ!」

言い返せない。

「誰が手当てしろといった…僕は平気だと言っただろう…」

と、言うがさすがに手当て無しではまともに歩くことも飛ぶこともできない。
しかし、三凰にとって負けた姿を見られた上に手当てをされるなどこの上ない屈辱だった。


>>663
「どうもされたくないな…」

辛そうだが、立ち上がる。

「どうする気もないのなら、さっさと行け…」

再び悔しそうに睨みつける。
665 : :2011/03/20(日) 02:44:30.30 ID:JAOldYXv0
>>663
「ありがとう…」

納豆味と聞き、おかしいと思った。
しかし、悪い奴でもなさそうだ。

>>664
「君を見過ごすわけにはいかないよ。未来の主になる方だからね。」

蝙蝠をじっと見つめて、再びくすりと笑う。

「強がりww」

>>ALL

「ひとまず僕は帰らなきゃ。あ、そうそう、名前は澪。

もしまた会ったらそう呼んでよ。」

なんとも遅い自己紹介。
先程貰った飴を舐めながら、家へと帰って言った。
666 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/20(日) 02:47:08.21 ID:MSsHmWbDO
>>664
「何故そう、いきなり出ていけと言う話になる?」
「俺は散歩もしちゃいけないのか?この山はお前一人の物か?」
「別に俺は山を荒らしている訳じゃない、襲われりゃ反抗するが流石に殺しはしないしな」

右手に持った飴をふりふり、三鳳を見て

「自分が気に入らないなら目の前から消えろか?流石にそれはないだろう?」

>>665
「お礼をしっかり言える奴は友達が増えるぞ、俺は例外だがな」

澪が飴を受け取ると、ひらひらと手を振った
667 :宝玉院 三凰 :2011/03/20(日) 02:57:15.46 ID:W0UVWJFAO
>>665
「貴様…馬鹿にしてるのか?
礼は言わんぞ…じゃあな、澪。」

言葉は怒っているようだが、実際は怒っていない。
むしろ、助けられて暖かい気持ちになっていた。三凰本人は認めようとしないが

>>666
「じゃあ、僕が貴様の目の前から消える。これで、満足だろう。」

不機嫌そうに言った後、ぺっと口から血を吐き出し、コウモリの姿になり飛び去って行った。



/ここで落ちます。絡み乙&ありがとうございました。
668 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/20(日) 03:02:05.37 ID:MSsHmWbDO
>>667
「……………」

ポリポリ、と頭を掻いて、三鳳を見送る

「…何で、って聞いて、答えが返って来た事がないな…」
「聞き方が悪いのか?妖怪ってのはよく解らん…」

浮かぶ疑問を呟きながら、闇の中に消えて言った

/お疲れ様でした
669 :平次郎狸 [sage]:2011/03/20(日) 22:06:18.62 ID:WkyPZmJ0o
鬱蒼と森が茂る山の中。
そこだけぽっかりと広場のように開けておりその中心に赤ジャージの男が座っていた。
目の前には何かが燃えたような焚き木の後。
そう、ここはあのヒダル神の少女を供養した場なのだ。
平次郎は供養した後、時間を見つけては此処に来て念仏を唱えるようにしていたのだった。
670 :黒蔵 [sage]:2011/03/20(日) 22:14:46.94 ID:FY4Rn6Kgo
>>669

(ちっこい鼠一匹か…しけてんなー)

山にも春の気配が訪れているとはいえ、まだまだ獲物はそう多く見つからない。
藪の中にしゃがみこみ長時間粘って、ようやく鼠を捕まえた黒蔵は、
がさりと茂みをかきわける。

「…ん?」

小柄な少年は、開けた場所に誰かいることに気づいた。
この妖気は覚えがある、確か…。

鼠の尻尾を口の端から垂らした黒蔵と、赤ジャージの男の視線がばっちり合った。
671 : :2011/03/20(日) 22:20:26.11 ID:W0UVWJFAO
>>669
「ふぅ…大方の技は極めた。後は、奥義だけだな。」

修行を終えた瞳、山を歩く。

「おや、あれは…」

平次郎狸に気づく。
「あなた、もしや平次郎という名では?」

672 :露希「」&黒龍『』 :2011/03/20(日) 22:24:52.24 ID:JAOldYXv0
>>669-671
「零って本当に有り得ない!!なんであの危険物質を白龍に食べさせたんだろ?」

『…食べた白龍も悪いと思うんだけど。』

白龍がお腹を壊したと言う理由で、自生する薬草を取りに来た露希と黒龍。
しばらく歩くと、見たことのある妖怪達が。

「皆どうしたの?」
673 :平次郎狸 [sage]:2011/03/20(日) 22:36:00.27 ID:WkyPZmJ0o
>>670
「おぉ、黒蔵君じゃないか! すっかり治ったようだね! 元気してたかい?」

目の前の少年が顔見知りだと気付きいつも通りの大声で呼びかけた。
しかし少し表情を暗くし声のトーンも少し落として黒蔵に問いかける。

「そういやぁ、ミナクチ様はどうしてるのかねぇ?」

心配するのも無理は無い。あの時の最後、結局ミナクチ様の安全を確認することは出来なかったのだから。

>>671
「おん? 嬢ちゃんは確か――誰だったっけ?」

顔を見たことはあるのだが誰だったか思い出せない。
何時ぞや町を飲み込もうとした大妖怪に共に立ち向かったような……。それ以外でもどこぞの茶屋でケーキを食べているような姿を見つけたような……。
まぁいいや。平次郎は頭の中の疑問を追い払い少女に声を掛けた。

「いかにも。俺は平次郎狸と言うものだが……」

>>672
「あらま、また増えちゃって。しかも龍まで……つか、黒いから前の白いのとは別種!? 少なくても二頭は龍がこの町に居ることになるのか」

多くの妖怪が集まる予想外の出来事に少し思考が止まりかけるがその声は何処と無く嬉しそうだ。
生物として苦手意識のある龍に対しても悩むフリをしながら受け入れている節がある。

「よう! 露希の嬢ちゃん。俺は今あの子の為に念仏唱えてたところさ。他の奴らは知らんがね」

どことなく声が弾んでいる。賑やかさを好む平次郎にとってこの状況はやはり嬉しいのだろう。
674 :黒蔵 [sage]:2011/03/20(日) 22:50:24.14 ID:FY4Rn6Kgo
>>671
(あ、瞳)

黒蔵が山へ来たのは、この九十九神を探していたからだった。
まだ上手く扱えない武器を、使いこなす手助けを求めるつもりだったのだ。

>>672
(うわぁぁぁ!!)

背後から徐々に近づいてくる妖気に、たらりと冷や汗がにじむ。
どうかあっちへ行ってくれますように、との祈り空しく、声をかけられてしまった。
ちゅるん、と鼠の尻尾が呑み込まれて消える。

「ああ、露希。あれ、きょうは黒龍が一緒?」

黒蔵の予想しない組み合わせだったので、恐怖に好奇心が打ち勝った。

>>673

「うん、実はあの後、また腹に大穴開いた。今はもう治りかけだけど」

ミナクチのことを聞かれて、首にかけた紐を探って、服の下から翡翠の輪を取り出す。
3分の1程が黒く染まっているように見えるのは、細かく広がる黒い皹によるものだ。

「蛇神がこれ。今はこうなって、この穢れに抵抗してるらしいんだ。
 でも全部黒くなったら、多分…」

黒蔵の声が沈んだ。

「だからその前に、この皹の元になった奴を倒せって竜宮で言われたんだ。
 窮寄って妖怪。その手下らしいひょろっとした変な男に負けて、俺、腹に穴開いたんだよ」

腰の後ろに挟んでいた一対の短剣が、しゃりん、と鎖の音を立てて鞘ごと抜きとられた。

「俺、まだこれが上手く使えなくてさ。だからここで、瞳を捜してたんだ」

片手に蛇神の翡翠、もう片手に短剣。
九十九神の少女のほうを見ながら、黒蔵は続けた。
675 : :2011/03/20(日) 22:54:31.24 ID:W0UVWJFAO
>>672
「おや、露希。私は、修行帰りだ。
露希こそ、何をしにここへ?」

露希が黒龍といることを疑問に思いつつきいた。


>>673
「やっぱり。」

黒蔵との話にミナクチの名を確認する。

「どうやら、蛇神様には会えたようだな。良かった。」

とりあえずは、安心。


>>674
「黒蔵、私に用か?珍しいな。
ところで、蛇神様とはどういう関係なんだ?」

話しが掴めずにいたので、率直に聞く。
676 :露希「」&黒龍『』 :2011/03/20(日) 23:05:59.69 ID:JAOldYXv0
>>673
「こんばんは、平次郎さん。

毎日、ここへいらっしゃるのですか?」

あの時は凄かった。見てるしか出来なかったが、この人は良くやってくれた…。
いつしか、尊敬できる存在になっていた。

>>674
『白龍が、零の危険物質食べて倒れたんだ。』

普通の妖怪などに聞かれたら言わないが、黒蔵は零を良く知っているので言ってあげた。
黒蔵の恐怖心は更に増すだろう。

『それよりも、瞳に出会えて良かったな。頑張れよ!』

>>675
「お腹にいい薬草を取りに来たんだ。まぁ色々あってさ…。」

…ふと黒蔵の言葉が耳に入る。

「短剣の扱い方…?てことは瞳が刀に?見たいみたい!!」

こう見えて刃物は大好きな露希。うきうき、わくわく。
677 :平次郎狸 [sage]:2011/03/20(日) 23:13:11.70 ID:WkyPZmJ0o
>>674,675
「腹に大穴って!? お前頑丈なんだなぁ」

半ば尊敬の意を込めて言う平次郎。
しかし蛇神の姿を見つめる態度は一転。表情を苦く歪め悔しさがにじみ出る。

「そうか……」

しかし黒蔵の言に希望を見つけた。

「なるほどぉ。窮奇を倒せば一件落着な訳だ。なるほどねぇ。」

表情を無に、しかし怒りを胸中に秘め呟く。
まぁ、ここで猛っても致し方ない。冷静になるように努めるのだった。

「ふぅむ、短剣ね。それでこの……瞳の嬢ちゃんを探したと」

そういって少女の姿を見やる。ここで狸は記憶が蘇った。
そういえば少女は剣を使って戦っていたことを。
合点がいったようにしきりに頷く。

「となると嬢ちゃんに師事しに来たわけだ」

>>676
「おう、こんばんわ。いやぁ、毎日って訳でもないんだがいつも暇を見つけて此処に来ててな……」

そういってあのヒダル神に堕ちてしまった少女を弔った場所を見つめる。

「確かにみんなで最善を尽くして彼女を救った。これは間違いなんかじゃないと断言できる。
 しかしなぁ……あの子は余りにも幼かった。それなのにあんなことになってしまっては不憫でなぁ。
 もうちょっと世の中の面白いこと、楽しいことを見せてやりたかったと思うのは間違ったことなんだろうかなぁ」

空を見やる。その顔を若干寂しそうだ。
678 :黒蔵 [sage]:2011/03/20(日) 23:20:41.27 ID:FY4Rn6Kgo
>>675
「俺は、蛇神の神使なんだ。
 昔、蛇神に捕まって、それからずっと使えてる」

でも今、その蛇神は自分の失態のせいで死に掛けている。

「俺の罪が神を食らったことなのは、前にも瞳に言ったよな?
 そのヒダル神はずーっと、俺の腹の中で、暴れないように封じてあったんだ。
 取り除くことは何度か試したけど駄目だった。
 俺はそこを窮寄につけ込まれて、封を解かれちまったんだ」

またやっちまったんだ…。自嘲めいた笑いが口の端をゆがめる。

「この平次郎さんのお陰でヒダル神は供養されたけど、蛇神は…俺のせいで今死にかけてる。
 俺の腹からヒダル神を押し出そうとして、窮寄の残した術に掛かったんだ」

どこか淡々と、黒蔵は瞳に説明した。

>>676
「短剣、見てみるか?」

対になった短剣は、およそ6尺の長さの鎖で繋がれている。
ゆるく沿った刀身は金属というより磁器のような艶やかさで、尖ってはいるものの刃はない。

「竜宮が貸してくれた武器だよ。金気じゃないから、金属では出来てないらしいな」

由来はよくわかんないそうだ、と続けた。

>>677
「頑丈っていうか、鍛えられたっていうか。
 そもそも俺、罪漱ぎに体削られてんだよこの二百年。
 マムシ粉末が欲しいとかいうスケベ爺ぃが竜宮のお偉方にいるせいでさぁ」 

血とか肉とか持ってかれるのにはいい加減慣れた、とか黒蔵は言っているが、
僧侶の前でこんな生臭い話をしていいのだろうか。

「師事、っていうか、うん、そんなとこだな。
 蛇の道は蛇、っていうじゃん?剣のことは刀の九十九神が詳しいと思うんだ」
679 : :2011/03/20(日) 23:29:53.05 ID:W0UVWJFAO
>>676
「まあ、待て露希。
まずは、黒蔵の話を聞かなくてはな。」

期待する露希を落ち着いた表情で見て話す。


>>677>>678
「なるほど。二人の話で、だいたいの事はわかったよ。
蛇神様は、今危機的状況なんだな。よし!黒蔵、私も蛇神様に助けられた身だ。できる限りのことはするよ。」

強い意志を込めた目を黒蔵に向ける。

「もっとも、私はまだ未熟、剣技を教えることはできない。それに私の剣術は、所詮我流剣術だからな。
だけど、刀としてあなたに教えられることはあるはずだ。」

自分の考えを語る。自分にしかできないことだ。
680 :露希「」&黒龍『』 :2011/03/20(日) 23:42:25.18 ID:JAOldYXv0
>>677
赤ジャージを引っ張り、彼の顔を見て、思うことを話した。

「平次郎さんの判断は間違っていませんよ。
貴方の優しい気持ちは彼女や、ボク達にも伝わってきました。

きっと、天国で楽しく過ごしています。
今、ボク達が出来ることをやるのが彼女の幸せになるんじゃないかな?」

>>678
「わぁ、金属じゃないんだね、質量とか凄くバランスが取れてる。

これを作った人は何を思って作ったのかな…?その目的に応じて使えるように作ったのかも?」

短剣を見て、思ったことを言ってみた。
露希は双刀だから、戦い方は教えられないが少しのヒントになるかも知れない。

>>679
「う、うん。そうだね。」

気持ちを落ち着かせ、ゆっくりと黒蔵の話を聞く。

「瞳はやっぱり凄いね。改めて思うよ。」

キラキラとした眼差しで見つめる。
681 :平次郎狸 [sage]:2011/03/20(日) 23:49:34.92 ID:WkyPZmJ0o
>>678,679
体削られてる発言に仰天し目を丸めた。

「お前、そんなことやってよく生きてたなぁ。余りにも辛いようじゃあ俺にすぐに言えよ?
 お前の組織のことはよく分からんし慣れたとか言ってるがどちらにしろ辛いことには変わらんだろう。
 あんまりひどいようじゃ俺が竜宮に殴りこみかけてやる」

しまいには過激なことまで言い出し息巻く始末。

「それにお前も戦い方の基本をあんま知らんようだ。
 これから身を守るためにも、窮奇共を倒すためにも瞳の嬢ちゃんにしっかり学べよ」

瞳の確固とした意志を放つ目から心配はいらないようだと安堵する。
しかし、いい事を思いついたかのように唇を吊り上げた。

「そうだ! 刀のことには詳しくは無いが喧嘩の仕方は教えてやれるぞ。
 お前が良かったらいつでも相手してやる。それに瞳の嬢ちゃんの剣術にも興味がある。
 いつか手合わせしてもらえればいいかなぁと思うんだが……」

新しいおもちゃを目前にした子供のような瞳で少女に熱視線を送る。
正直、その姿は気持ち悪い。

>>680
「そうかぁ。露希の嬢ちゃんはそう思うかぁ。
 そう言われると救われるなぁ。ありがとう、なんだかすっきりしたよ」

憑き物の晴れたような顔で露希の手を取りブンブンと凄い勢いで上下に振る。
素直な喜びを表しているようだが傍から見ると非常にうざったかった。
682 :黒蔵 [sage]:2011/03/21(月) 00:02:19.94 ID:slmOFbNPo
>>679
「頼むよ。俺に必要なのは剣技じゃないんだ。
 間合いのとり方とか、剣術での体の使い方とか、相手の行動の読み方とかの
 そもそも剣技以前のところなんだと思う。
 それにこの短剣、刃が無いだろ。切るのじゃなくあらかじめ力を封じておいて使うもんなんだ」

ちょっと見ててな、と短剣の一本を地に突き刺すと、ずん、と地中から1mほど岩がせりあがった。

「刺したものの骨をつかう力とやらを乗せてある。今は地面に刺したから、岩になるわけ。
 で、一度使ったら、また力を封じなおさないと駄目なんだ」

もう一度同じ短剣を地に刺すが、今度は何も起こらない。

>>680
「何を思って作ったんだろうな。
 鎖で繋いであるから、片方持って振り回したり、絡めたりはできる筈なんだ」

その割には、刃が無いなんて変だよな?と黒龍に同意を求めてみる。

「露希なら、これ、どう使う?」

>>681
「いや、ある程度辛く無いと、罪漱ぐことになんないしさ。
 そもそも持ってかれた血肉は、俺が食っちゃった者たちにまず捧げられるんだし?」

蛇神も居ない今、平次郎狸に竜宮へカチコミかけられたら自分の罪状がもっと重くなる!
と、黒蔵は内心慌てた。
既に十分重いのは失念しているし、自分も少し前に竜宮で海牛相手に暴れたのは棚に上げている。

「それに、そんなことより喧嘩の仕方教えてくれるほうが助かる!」

何とか平次郎狸の気をそちらから逸らそうと必死だ。

「俺、蛇だから殴り合いはあんまりしたことないんだ」

絞め[ピーーー]とか咬むとか呑むとか、そっちなら得意だ。
683 : :2011/03/21(月) 00:12:00.64 ID:iFls34EAO
>>680
「そ、そうかな?そんなに凄いかな?まぁ、でも、ありがとう、露希。」

少し、照れくさそうに礼を言う。


>>681
「私の剣術なんてたいしたものじゃないよ。ある人の我流剣術をさらに私が、真似ただけだからな。
でも、私でよければ修行としての手合わせはするぞ。」

手合わせに関しては、乗り気なようだ。

>>682
「うーむ、随分と変わった剣なんだな。
そもそも、短剣と刀じゃ戦い方が違うし、その剣は普通の戦い方じゃ使いこなせそうにないな。
戦い方の基本なら、平次郎に教わったらどうかな。私よりも、役にたつよ。」

ここで、一息いれる。自分にできることはある。

「私にできることは、武器を使いこなすことのヒントを教えることかな。」
684 :露希「」&黒龍『』 :2011/03/21(月) 00:23:59.89 ID:YVtzJgKj0
>>681
「あわわわわわ」

手を上下に振られる。しかし、嫌ではない。
振り終わると同時に一つお願いをした。

「平次郎さんなりの喧嘩って言うか、戦いを教えてください!!」

>>682-683
『刃がない…その鎖を自分の手に巻きつけて、妖気を流すとかどうだろう。

妖気によって力加減が出来るから、戦いやすくなるとか。』

ふと閃いたことを言ってみる。

「剣と自分を一体化させるってことかな?」

瞳を見る。刀と自分の一体化が目的ならば、彼女自身が知ってるはず。

「瞳は、刀と意思の二つがあることで良いと思ったこととかある?」
685 :平次郎狸 [sage]:2011/03/21(月) 00:34:30.19 ID:MH2b80Luo
>>682,683,684
黒蔵の持つ短剣を観察してその感想が身も蓋も無く――――

「やたら厄介そうな剣を使ってるなぁ……。まぁ、そこらへんの使い道は瞳の嬢ちゃんと露希の嬢ちゃんに任せるとしよう。
 剣は門外漢だからなぁ。俺が教えるのは戦闘の基本だ。」

平次郎は今まで身一つのみを使って生き抜いてきたため武器などへの造詣は深くは無い。ただ、扱い方を知らないだけで対策は身に付けているのだが。

「おぉう! 露希の嬢ちゃんも乗り気だな。いいぞ、二人に俺の一番基本的な戦闘理論を教えてやるよ。よぉく聞けよぉ」 

既に平次郎自身が一番乗り気なようで語り口からは熱気が感じ取れる。そんな平次郎からトンデモ戦闘理論が展開されていった。

「いいかぁ? 戦いの基本は何よりも気合いだ、気合い」

なんという  根  性  論  !!
そんなものでどうにかなったら悩まないはずだ。

「俺達化け物は往々にして桁外れの身体能力を持ってる。そりゃピンからキリまであるわけだが……。
 そんな俺達が勝敗を決するのは心だ! 心で相手に打ち勝ち相手の心を圧し折るわけだ」

物凄い勢いで持論を捲くし立てる。

「そりゃ相手の息の根を止めるなんて方法もあるが実力差がないと難しいし、なにより殺生は虫が好かん。
 とりあえずこの事を心に留めておけよ。
 それじゃあ二つ目だ。強くなりたいと言うならば実践あるのみ! 俺はそうやって生き抜いてきた。
 色んな相手に喧嘩を売って打倒し己の力を研鑽してきた。なにより短期間で技術を得ることは難しいからな。
 黒蔵君は組み手やって経験値溜めるのが一番だろう。戦いの中で自分の持てる力を引き出す方法を学ぶことだな」

ここでようやっと一息入れて瞳の方を見やった。

「ほれ見ろ、瞳の嬢ちゃんだって手合わせに乗り気だろ? 強いやつはこうやって強くなんだよ。
 とりあえずの指針としては剣は瞳の嬢ちゃんと露希の嬢ちゃんに教えてもらえ。
 それを実践する相手は幸いなことに数には困っちゃいない。いくらでも面倒みてやるさ」

ニカッと野性味溢れる笑みを浮かべる。それを良く見ると肉食獣のそれが混ざっていることがよく分かるはずだ。
どうやら平次郎は既に黒蔵を鍛える為スパルタ教育する気満々なようだ。
686 :黒蔵 [sage]:2011/03/21(月) 00:42:15.58 ID:slmOFbNPo
>>683>>685
「二人に頼むよ。
 これを使いこなせて、ちゃんと戦えるようにならないと蛇神を元にもどせないんだ」

今は酒を供えることで皹の進行を遅らせているが、その酒を購う金はもう無い。
今ある酒が尽きる前に、皹が翡翠の輪を覆い尽くす前に、窮寄と戦わなくてはならない。

>>684
「妖気を流す、か。できんのかなそんなの?」

短剣の一本を持ち、手首に鎖を絡めてみる。
黒蔵の妖気が鎖に絡みつき、伸びてゆく。
妖気がもう一本の短剣まで届くとそれは、不意に黒蔵目掛けて飛んできた。

「のわっ!」

すんでの所で黒蔵は横に逃げ、顔に突き刺さるのを免れた。

「…一体化っていうか、殺されそうになるな、これ。前にも覚えあるし」

もしかしたらこの短剣、黒蔵を殺 すつもりなのかもしれない。

>>685
「気合と心?」

平次郎狸の言葉を聴くほどに弱気になる黒蔵。

(なんでこんなに不安になるんだろう)

喧嘩慣れした強い相手からの教訓を受けているはずなのに。
不安の原因のひとつは、具体的なものは何も無い精神論のみのアドバイス、
もう一つはじっと見つめる平次郎狸の肉食の視線であることに、黒蔵は気づいていない。
ただ漠然と
「大丈夫?ホントに大丈夫?騙されてるんじゃないよね俺?」
的な不安が感じられているのみである。

そんな黒蔵は今、隙だらけである。
もし平次郎狸の一撃でもあれば、簡単に吹っ飛ぶはずだ。
687 : :2011/03/21(月) 00:53:57.33 ID:iFls34EAO
>>684
「確かに、妖気を纏えば刃がなくとも攻撃になるな。」

黒龍の言ったことに納得し、頷く。

「ああ、武器の力を生かすには自分とシンクロさせるのが大切だと私は思っているよ。
もちろんあるさ。昔、生まれたばかりの頃は意思なんていらないと思っていたが、あの人と会ってからは意思を持っていて本当に良かったと思っているよ。
意思を持っていなければ、こうして露希と話すこともできないしな。
刀であることも、良かったと思う。私の刃は大切な存在を守るための刃だからな。」

笑顔を向け、そう答えた。


>>685
「心か…
うん、その通りだな。心の力、思いの力、そう言うのって大切だと思う。実際、私は気持ちの面で迷いが生まれて負けてしまったことがあった。」

肉吸い戦のことだ。実力では、ほぼ互角だったようだが、気持ちの迷いで瞳は負けた。

「逆に、打ち勝ちたいという強い思い。
そして、大切な存在を助けたいという思いで、あの窮奇の紫水晶の呪縛を打ち破ることもできた。」

これは露希や風月、他の友人たちへの思いがあったからこその結果。


>>686
「それじゃあ、少しばかり黒蔵に質問をするぞ。」

真剣な眼差しを向ける。少し怖いくらいだ。

「なぜ、あなたは蛇神様を救いたいんだ?」

688 :露希「」&黒龍『』 :2011/03/21(月) 01:10:46.19 ID:YVtzJgKj0
>>685
「つまり、心を強く持てば自分の成長に繋がるんですね!!」

平次郎の言葉を聞き、納得した様子。

「うん、平次郎さんの言った通り頑張ってみるよ!」

純粋な笑顔で笑いかける。
その中には強くなりたいと言う意思が込められている。

>>686
『ぷっww(黒蔵ってドジなのか…?だから多くの敵を作ってしまうのかなwwww)』

黒蔵の行動を見て吹いてしまった。必死に笑いを堪えている。

「黒龍、そろそろボク達もやってみようよ。」

露希に声を掛けられ、笑いは治まるが黒蔵には興味を持った様子。

>>687
露希は黒龍に話しかけた。

「気持ちを一つに…集中しよう。」

『そうだな…』

光に包まれると同時に、露希の手には黒龍剣が。
それも、零の時とは違う、優しい妖気を漂わせて。

「瞳っ、本当にありがとう!一体化出来たよ!!」

親友のおかげで、また一歩成長できた。その時は凄く嬉しかった。
689 :平次郎狸 [sage]:2011/03/21(月) 01:15:22.91 ID:MH2b80Luo
>>686,687,688
「ん? なんだか不安そうな顔してんなぁ。だぁーから考え込んだり悩んでるだけじゃどうにもならないんだぜ?
 だったら行動するしかないだろ。
 あぁ、とりあえず今できるアドバイスとしてはだなぁ……
 お前は頭を使って戦闘した方がいい。俺みたいに馬力があるやつは勢いで行けばいいんだがお前はそんなタイプじゃなさそうだしなぁ。
 とりあえず相手の動きを避ける術とそれを解析出来るくらいの冷静さが必要だな。
 相手の挙動から目を離すなよ。相手の呼吸を読み取れよ。相手の意識を感じ取れよ。
 集中すりゃそのくらいできるはずだ。まぁ多少の練習は必要だろうがなぁ」

瞳と露希の方に視線を向けアイコンタクト。

「なぁ、瞳の嬢ちゃんと露希の嬢ちゃんからしてもそう思うだろ?」

その目を意訳:とりあえず瞳の嬢ちゃんのその質問の答え貰ったら黒蔵君に一発叩き込むから。二人とも手出しは無用だよん☆
690 :黒蔵 [sage]:2011/03/21(月) 01:23:26.83 ID:slmOFbNPo
>>687
「蛇神は俺の、良心の要なんだ。居場所でもある。
 俺が、歪む心配なく安心して罰を受けられるのは、蛇神が居るからなんだ。
 でなければ誰かを恨んで、苦しさを他の者のせいにして、漱ぐどころかまた、罪を重ねる」

言いながら伏せられた視線は、酷く不安気に揺れている。
もしもそうなってしまったら、もしも蛇神を失ってしまったら。
きっと際限なく堕ちるのだ。黒蔵にとって大切な、他の誰かを巻き添えにして。

>>688
黒龍には笑われ、露希にはLv.up音を聞かされ、ますます黒蔵には立つ瀬が無い。
他者の成功を見て奮起するより凹み、割り切るよりも諦観するのがヘタレの王道である。
熱い血なんて流れていない。
だってコイツは蛇だもの。

どんよりと濁った妖気を纏って、黒蔵は沈み続けた。

>>689
「頭を、使う?」

挙動から目を離さないのはできるけど、頭を使うのは…できるんだろうか?
平次郎狸の挙動を、黒蔵は目を離すことなく見ていた。
ただひたすらに、ぼ〜〜っと。

目を離さないというより、ただ見てるだけ、である。
691 : :2011/03/21(月) 01:32:15.98 ID:iFls34EAO
>>688
「おお!凄いじゃないか、露希!」

親友の成長、それをまるで自分のことのように喜ぶ。

「あれ?でも、それって零の剣じゃ…?」


>>689
「凄いな…平次郎からは学ぶことがたくさんある。戦闘のスペシャリストと言ったところかな。」

関心し、自分も心に留めておこうと思った。

「そうだな。」

アイコンタクトの意味を理解し、頷いた。


>>690
「良かった。あなたにとって蛇神様は大切な存在のようで。
あなたなら、きっと…いや、必ず蛇神様を救えるよ。」

答えを聞いて、優しい口調になった。
そして、チラッと黒蔵の短剣を見る。

「あとは、その剣の力を信じて、その剣に思いを乗せるんだ。
物は、普通心を持っていないが、思いには答えてくれるはずだ。その剣を信じるんだ!」

692 :露希「」&黒龍『』 :2011/03/21(月) 01:45:19.06 ID:YVtzJgKj0
>>689
「平次郎さんは人を見る目がありますね。知識が豊富ですし…。」

そしてアイコンタクトをされて意味を理解し、こちらもアイコンタクトで返す。

「(黒蔵君をお願いします!)」

>>690
『ごめんごめん、ちょっとな…。

ただ、応援はするから。大切なミナクチ様の為に、しっかりとやるんだよ。』

しっかりと意味を理解すれば、この後のことは分かるだろうが…。
果たして、どうなってしまうのか。

>>691
「実は決まってないんだ。ただ、普段一緒に居るからって理由で白龍剣を使ってたけど。

万が一にも備えてね。」

剣を戻し、瞳の横に立つ。
残るは黒蔵。黒蔵の健闘を祈った。
693 :平次郎狸 [sage]:2011/03/21(月) 01:51:36.91 ID:MH2b80Luo
>>690,691,692
更にアイコンタクト
意訳:協力感謝。けど何か黒蔵君暗いから精神面でのフォローよろしく。

黒蔵の心を案じる意がその目から見て取れた。
気を取り直し黒蔵へと向かい合う。

「そうだ、頭を使うんだ。戦闘的思考で相手を見るって言えば分かりやすいか?
 まぁ、とりあえずは相手の姿をよく見ろ。そこから始まるんだ。そう、そこからなぁ」

何処となく暗い雰囲気が黒蔵から感じられ少し焦る平次郎。かといって策が見つかるわけも無い。
思い立ったとおりに一発黒蔵に叩き込むのはやめないようだ。
願わくば彼が突きを避けてくれることを。

「フンッ!」

突如繰り出される突き。狙いは鳩尾のようだ。威力は当たった場合軽く吹っ飛ばされる位になっている。
もし黒蔵がしっかりと平次郎を観察していたら攻撃にでようとする微細な動きが感じ取れた筈だ。
694 :黒蔵 [sage]:2011/03/21(月) 02:04:03.68 ID:slmOFbNPo
>>691
「思いを乗せる?これに愛着持っても、変じゃない?」

この短剣が瞳のように意思を持って喋ってくれたらいいのに、と黒蔵は思った。

「俺、これに妙に惹かれたんだ。武器庫入ったとき、これに呼ばれたような感じだった」

しかしさっきの飛んできた短剣を見るに、相性がいいのか悪いのかよく判らない所がある。

>>692-693
露希と黒龍に見守られ、平次郎狸と向かい合う。

(よく見る)

まず平次郎狸の全体像を見つめる。
一瞬、平次郎狸の手元がブレたように見えた。

(手)

平次郎狸の動きに合わせて自分も動く。そして目で捉え続ける。
そんな行動の結果、平次郎狸の鳩尾を狙った筈の突きが、
拳の位置に合わせて屈んだ黒蔵の顔面を捉えた。

(あれ?)

軽く吹っ飛んでから、ようやく、何かが変だと気づく黒蔵。

「…もういっぺん、試していい?」

ひっくり返ったまま平次郎狸に聞いた。
695 : :2011/03/21(月) 02:10:43.75 ID:iFls34EAO
>>692
「そうだったのか。じゃあ、どちらも使いこなせるのか。凄いな。」

話し終わった後、共に黒蔵を見守ることにした。


>>693
(了解。)

と、こちらもアイコンタクト。
そして、静かに黒蔵を見守る。

(黒蔵、頑張れ!)

>>694
「全然変じゃないさ。武器は、大切にしないと本当の意味で答えてくれないんだ。
だから、その剣を信じて、な。」

それを言うと、口を閉じ黒蔵を見守る。

(さあ、黒蔵!)

「って、ああ!」

696 :露希「」&黒龍『』 :2011/03/21(月) 02:17:44.08 ID:YVtzJgKj0
>>693-695
「(これ、平次郎さん本気なのかなぁ…)」

と思った途端、黒蔵がふっ飛ばされた。

「(あれ…?平次郎さんの突きは鳩尾を狙った筈なのに…?)」

何か不思議なことが起きているが、よおく黒蔵を見る
697 :平次郎狸 [sage]:2011/03/21(月) 02:21:53.79 ID:MH2b80Luo
>>694,695,696
「おぉ! やったぞ、黒蔵君! 今、お前は俺の突きに反応した! 瞳の嬢ちゃんも露希の嬢ちゃんも見てたよな!
 って、起こす方が先だよなぁ」

そう言い助け起こすため手を差し伸べる。

「もう一回か? いいさ。何回でも付き合おう」

ニッコリと笑みを浮かべて言う。そこには先程とは違い優しさが垣間見えるのだった。
当初と同じ位置に戻り平次郎は体の力を抜いた状態でいる。

「いいか? さっきと同じように相手の動きを良く見るんだぞ。
 相手の動きを一度でも見切れるようになったら後は簡単だ。いくらでも避けれるようになる」

口を閉じ集中し始める。沈黙が周りを支配する。緊迫した場の中、平次郎が動いた。
今度は顔面、唇と鼻の間の人中を狙って突きが繰り出される。
人中は人の急所とも生き返りのツボともいわれる場所。
言わずもがな狙いは急所。といっても微弱に体がしびれる程度だ。
今回も速度は同じ。さっきの突きに反応できたならこれも反応できるはず。
698 :平次郎狸 [sage]:2011/03/21(月) 02:22:20.32 ID:MH2b80Luo
>>694,695,696
「おぉ! やったぞ、黒蔵君! 今、お前は俺の突きに反応した! 瞳の嬢ちゃんも露希の嬢ちゃんも見てたよな!
 って、起こす方が先だよなぁ」

そう言い助け起こすため手を差し伸べる。

「もう一回か? いいさ。何回でも付き合おう」

ニッコリと笑みを浮かべて言う。そこには先程とは違い優しさが垣間見えるのだった。
当初と同じ位置に戻り平次郎は体の力を抜いた状態でいる。

「いいか? さっきと同じように相手の動きを良く見るんだぞ。
 相手の動きを一度でも見切れるようになったら後は簡単だ。いくらでも避けれるようになる」

口を閉じ集中し始める。沈黙が周りを支配する。緊迫した場の中、平次郎が動いた。
今度は顔面、唇と鼻の間の人中を狙って突きが繰り出される。
人中は人の急所とも生き返りのツボともいわれる場所。
言わずもがな狙いは急所。といっても微弱に体がしびれる程度だ。
今回も速度は同じ。さっきの突きに反応できたならこれも反応できるはず。
699 :黒蔵 [sage]:2011/03/21(月) 02:27:04.93 ID:slmOFbNPo
>>695-697
全員の目の前で、ひょこん、と黒蔵が起き上がる。

「あー吃驚した。痛かった」

首の後ろを摩りながら頭を傾げている。
ちょっぴり鼻血が出ていたり、見る見るうちに顔に青タンが出来ていったりするが
痛かったという割りにその声は痛そうに聞こえない。

「これでいいの?あってるの?」

平次郎狸に褒められて、一気にテンションが上がる。
どうやら今度はやる気モードらしい。
そして再びの挑戦。

さっきとは違う目の輝きで、平次郎狸をわくわくしながら見つめる黒蔵。
顔面に向かってくる拳に素早く反応して……ぱくりと咥えた。

(捕らえた!)

黒蔵は嬉しくて目を輝かせているが…平次郎狸の拳は無事だろうか?
700 : :2011/03/21(月) 02:35:29.16 ID:iFls34EAO
>>696>>697
「そうか!反応は出来ていたのか!」

完全にかわせなかったが、凄いことだ。
今のは、瞳でも反応できなかったかもしれないからだ。


>>699
「凄いぞ!黒蔵!あと一歩で完全に避けれる!」

言った後、黒蔵の様子を静かに見る。

(反応した!)

咥えるとは思わなかったが、これは凄い。
701 :露希「」&黒龍『』 :2011/03/21(月) 02:42:48.17 ID:YVtzJgKj0
>>698,700
「こんな瞬時な判断を、短時間で…

心って素晴らしい物なんですね!!」

きっと黒蔵もミナクチのことを思ってやったのだろう。
静かに黒蔵の成功を祈る。

>>699
「『(咥えた!!)』」

反応したのも凄かったが、咥えたのもまた凄い。
しかし、咥えられた方はどうだろう…。
平次郎へ視線を向ける
702 :平次郎狸 [sage]:2011/03/21(月) 02:46:03.94 ID:MH2b80Luo
>>699
予想外の対応方法に驚く平次郎。
腕はそのままに目を丸くしていたが終いには笑い始めた。

「フフフフフ、アハハハハハ! そう! そうだよ! どんな形であれ反応できればいいんだ!
 素晴しいよ、黒蔵君! あぁ〜、腹が捩れそうだ!」

腕をえいやと引き抜きぶんと振る。いまだに表情は愉快そうに笑っている。

「それが君の見つけた対応方法か。非常に良いと思うぞ。なにより君にあっている気がする。
 そういや君も蛇だろう? そのまま丸呑みするなりなんなり技のバリエーションが増えた訳だ。
 真に素晴しい! 二人もそう思うだろ?」

子供のようにはしゃぎながら二人に同意を求める平次郎。少し見苦しいがはっきりとそこには喜びが見えている。

「これで反応に関してはもう大丈夫だろう。スジも良いみたいだし、なによりその奇抜な発想が君の武器になるだろうね」
703 :黒蔵 [sage]:2011/03/21(月) 02:51:52.07 ID:slmOFbNPo
>>700-701
かわしたというより、わざわざ当りに行ったようなものなのだが、
それでも瞳にも褒めてもらえるのは嬉しい。
平次郎狸の拳を咥えたまま、黒蔵は両手を振ってみせた。

>>702
「うーん、でも俺、毒牙はないんだよ?」

もしかしたら拳にちょっぴり歯が刺さったかもしれない、と思って
慌ててフォローを入れる黒蔵。
…さっきはマムシがどうたら言って居た筈だが。

「昔、毒牙抜かれちゃってさ。
 丸呑みするにもまず相手を即死でもさせないと無理なんだけど」

蛇は簡単に顎が外れたり、そもそも左右の下顎骨が前で繋がっていなかったりするので
無茶なサイズまで口が開くのだが、呑み込む速度が速いわけではない。
704 : :2011/03/21(月) 02:57:07.09 ID:iFls34EAO
>>701
「これも、黒蔵が頑張ったからだな。本当、流石だよ。」

嬉しそうに黒蔵の方を見る。
そして、露希の方を向き。

「私たちも頑張ろうな。」

優しく、しかし強い意志で言った。


>>702>>703
「本当に凄いよ、黒蔵。なんだか、さっきより頼もしくなった感じだ。」

黒蔵の成長は瞳にはしっかりわかった。
705 :露希「」&黒龍『』 :2011/03/21(月) 03:12:20.97 ID:YVtzJgKj0
>>702
「怪我は無いようですね。」

安心しつつ、

「今日はお世話になりました。
自分を磨くために、これからも頑張ります!」

と笑顔で言った。

>>703
「黒蔵君、本当に凄かったよ!それに、ミナクチ様への気持ちも伝わってきたよ。

頑張ってミナクチ様を助けようね。」

褒めつつ、ちゃっかりと頭を撫でる。
黒龍も笑顔で見つめていた。

>>704
「そうだね、力を合わせればどんな苦難も乗り越えられる。

瞳、貴方がいて良かった。」

精一杯の感謝と、意志に応えるような気持ち。
不思議と、心が気持ち良かった。

>>ALL
『そうだ、白龍の薬草は?』

「ああっ!死んでなければ良いけど…。

ごめんね、先に帰るよ。今日はありがとう。」

黒い龍はその少女を乗せて、空へと飛び立った。

/絡みお疲れさまでした!
706 :平次郎狸 [sage]:2011/03/21(月) 03:23:13.49 ID:MH2b80Luo
>>703
「あぁ、そうなのか……。後は攻撃方法か……。
 今さっきの場合は相手の動きが止められているのだから、開いてる両手で切りかかるなり殴りかかるなりすればいいだろう。
 しかし攻撃手段に乏しいというのは問題だなぁ。そこらへんは瞳の嬢ちゃんに任せるとするか。
 それにしても攻撃の見切りはできるようになったんだ。これでより一層相手に対して冷静に対処できるようになったわけだ。
 それは自慢にしてもいいと思うぜ」

そういって優しげに黒蔵を見るのだった。

>>704
「だろ? 一歩またこれで成長できたんだよ、あいつ」

余り大したことはしてない癖にやたらドヤ顔で語る平次郎。
しかしその目はしっかりと優しさを物語っていたのだった。

>>705
露希の明るい宣言を聞き心の暖まる平次郎。
娘を見守る心境とはこのような感じなのだろうか。

「おう、頑張れよ。応援してっからなぁ。じゃあなぁ」

空に飛び立つ一人と一匹を手を振って見送った。

「っは!? 時間!? ってやべぇ! もうこんな時間かよ! 二人とも悪ぃ。今からバイトのシフトが入ってるんだよ。
 すっかり失念してた! 俺も行かせて貰うぜ」

目まぐるしい動作で慌てまくると踵を返し走り始めた。木に一気に駆け上がり飛び移りながら移動していく。

「黒蔵君お疲れさぁーん! 今日の感覚忘れんなよー! 瞳の嬢ちゃんもありがとなぁ! 組み手の約束忘れないでくれよー! じゃあなぁ!」

走りながらも振り返り叫ぶ平次郎。
その姿は麓の方に消えていくのだった。
707 :黒蔵 [sage]:2011/03/21(月) 03:28:31.01 ID:slmOFbNPo
>>704
二度ほど拳骨食らった程度でヘタレが激変するのかどうかはさて置き、
煽てられたら調子に乗るのが馬鹿の常である。
得意そうな顔をするが、鼻血と青タンがあっては締まらない。

「今度時間があるときでいいからさ、瞳の剣技、見せてくれる?」

思い出したように瞳に頼むこむ黒蔵。
だがしかし、剣技には相手が必要なことを黒蔵は忘れている。
…もしかして、自分が斬られるのだろうか?

>>705
なでっ

(露希が頭なでてくれた。というか、なでられるだけですんだ)

氷亜と居たときの危ない露希とは別人過ぎて、ちょっと唖然とする黒蔵。
ミナクチを助けようね、と言われたときもまだ驚きが覚めずに、曖昧に頷き返した。

「白龍にお大事に、って伝えて」

そこまで言うのがやっとだった。

>>706
「平次郎さん、また今度鍛錬の相手して…って、もういっちゃったぁ?!」

なんと平次郎はもう走り去っているでは無いか。

「待ってよーっ!」

慌てて平次郎狸の後を追って黒蔵も走り始めたのだった。

//皆さんお疲れ様でした
708 : :2011/03/21(月) 03:34:55.23 ID:iFls34EAO
>>705
「ああ、私もそう思うよ。じゃあな、露希。」

笑顔で露希を見送った。今、瞳は露希と同じ気持ちだ。


>>706
「ああ。では、また会おうな。」

走りながら、去っていく平次郎に手を振り見送った。


>>707
「ああ、もちろんだ。参考になるかわからないが、私の剣技であればいくらでも見せるよ。じゃあな。」

この時点では、瞳も相手が必要なことを忘れているようだ。


「さて、私も帰ろう。今日は、得るものが多かったな。」

そう言って、ゆっくりと山を降りた。



/皆様、お疲れ様&ありがとうございました。
709 :白井礼 [sage]:2011/03/21(月) 22:41:42.87 ID:+ZOlw0b40
街 深夜

人通りの絶えた街の中を白いロングコートの男が歩いている。
その眼光は鋭く、前から歩いてきたチンピラさえ道を譲った。

「今日の獲物はどこのどいつか…」

そういって口元を歪める。
暗い、夜。街頭に照らされたロードミラーに写ったその顔は、黒井にうりふたつだった。
710 :黒蔵 [sage]:2011/03/21(月) 22:47:24.69 ID:slmOFbNPo
白コートの男が歩いてゆく道の先で、黒い学生服の少年が一人路地裏にしゃがみこんでいる。
少年が黒いカサカサ動く何かを幾つか捕まえて口に放り込むのを、
切れかけて点滅する街灯の明かりが照らしていた。

「ん?」

明滅する暗がりで、男のほうを振り返ったその少年の目が光る。
暗がりで光る目の人間なんて、居ない。

「あ、お前!この間の酔っ払い!」

黒蔵は白井を黒井だと思い込んでいる。
711 :白井礼 [sage]:2011/03/21(月) 22:54:41.41 ID:+ZOlw0b40
>>710
光る少年の目を、男は見逃さなかった。

「お前、妖怪だろ」

明滅する明かりの中、どこからか真っ白な短刀を抜き、男は黒蔵へ一直線に走り出す。
その加速は、人のそれより早く、男の発する妖気も人の出せるものではなかった。

「俺は酒と妖怪が大っ嫌いなんだよ」
712 :黒蔵 [sage]:2011/03/21(月) 23:02:34.65 ID:slmOFbNPo
>>711
暗がりで白い男と白い刃はよく目立つ。

「ちょっ!!何すんだよおいっ!?」

あからさまに敵意をむき出しに迫る白井に慌てて、
小柄な少年は暗がりの路地を走って逃げ始める。

(マンホールどこだっ!)

逃げていてふと、ここで戦わないといけないんじゃないか、という思いが心をよぎる。
平次郎狸には場数をこなせと言われたのだ。

路地の明かりが途切れたあたりで、横っ飛びで暗がりに飛び込んだ。
黒い服は暗がりに溶ける。
白井が気づけばよし、気づかなければもっとよし。
近づく足音を黒蔵は息を潜めて聞いていた。
713 :白井礼 [sage]:2011/03/21(月) 23:12:39.49 ID:+ZOlw0b40
>>712
暗がりに溶け込んだ黒蔵。暗がり。
真っ白な男の足音が消える。立ち止まったか、それとも。
消えた足跡の代わりに紙が擦れるような音がし始める。

「妖怪、逃げても無駄だ」

夜空を見上げればお札サイズのものが数枚飛んでいるのが見えるかもしれない。

(これで見つからなければ場所を変えてやろう。
イタズラに突っ込んで我ら人間に被害をあまり出したくはない)

少なくとも夜目が利く方ではないらしい。
714 :黒蔵 [sage]:2011/03/21(月) 23:21:49.58 ID:slmOFbNPo
>>713
戦わなくちゃ現実と、と立ち止まったところでやはり恐いものは恐い。
でも心構えだけはあったから、白井の攻撃を見ることはできたのだ。

(なんだ、あれ?)

お札までは高さがある。低身長には手が届かない。
黒蔵は足元の小石を一つ拾い、一枚の札に向けて投げつけた。
この行動でおそらく白井に居場所はばれるだろう。ならば。

暗がりに佇む白い影に向かって、今度は黒蔵が走り出した。

(どうせ見つかるなら、こちらから仕掛ける!)

白い刀を掻い潜るか叩き落すかして、男に体当たりするつもりだ。
小柄な少年の姿でも本性は大きな蛇、その気でぶつかれば立ち木くらいはへし折れる。
御所山ではうっかり神社の鳥居を倒して、波山に怒られたこともある。
715 :白井礼 [sage]:2011/03/21(月) 23:33:30.27 ID:+ZOlw0b40
>>714
石に当たったお札は青い炎を出し、燃え散った。

「そこか!」

白井は白い刀を構える。
お札は妖怪の妖気を探るセンサーだったのだ。
そして走り出した黒蔵。振るわれる刀。

「くっ」

刀をかいくぐり、黒蔵の体当たりが命中する。
強力に吹き飛ばされ、道路に叩きつけられる。
しかし、男は何事もなかったかのようにすぐに立ち上がる。

「うれしいなぁ。最近逃げる的ばかりで暇だったんだ」

ニヤニヤとにやける男。並の人間の耐久力ではないようだ。
男は銃が描かれた一枚のお札から白く塗装された自動小銃を取り出した。
716 :黒蔵 [sage]:2011/03/21(月) 23:41:12.26 ID:slmOFbNPo
>>715
「げっ!」

白い男の取り出した武器は、形こそ違うが覚えのあるものだった。

(また、あの飛礫かよ…)

人間って奴はほんと嫌な道具使いやがる、と苦い顔になる黒蔵。
しかしうれしい、と言われて一瞬怪訝な顔をする。

「そんな飛び道具使うなら、そりゃ逃げるだろ普通!!
 そもそもなんでアンタは俺を狙うんだよ!!」

さっぱりわっかんねーよ!と文句を言いながらまた走って逃げだそうとする。
717 :白井礼 [sage]:2011/03/21(月) 23:50:47.90 ID:+ZOlw0b40
>>716
「逃げるのなら、銃はやめてあげようか?」

銃を札に戻す。
なんとなく不満そうな顔だ。

「せっかく、活きのいい的になってくれると思ったのにな」

といいつつ追いかける。今度は先ほどの刀だ。
この男は戦いを楽しむタイプのようだ。

「お前らみたいな妖怪を滅っするのが俺の仕事だからだよ。相手してくれよ、金が入らない」

逃げる黒蔵の前に一台の黒いバイクが現れる。

バイク乗り「ぱぁ、出たぁ」
718 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 00:00:03.67 ID:s5JYXZ0Lo
>>717
「その台詞、自分で的を経験してから言いやがれ!」

黒蔵は既に的になって腹に大穴をあけた。

「お前と戦っても、俺に利益は何一つねーんだよ!逃げるだろそりゃ!?
 お前が俺の立場だったら、逃げない保証はあんのかよ?」

そう言って逃げ出そうとする黒蔵の目の前に、バイクが。

「ちっ!」

挟み撃ちにされ、追い詰められた黒蔵は小さいほうに狙いを絞る。つまり、白井だ。
白井を睨んで黒蔵の目が光る。
その姿が黒い大蛇へと変わった。
719 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 00:01:39.93 ID:s5JYXZ0Lo
>>717
「その台詞、自分で的を経験してから言いやがれ!」

黒蔵は既に的になって腹に大穴をあけた。

「お前と戦っても、俺に利益は何一つねーんだよ!逃げるだろそりゃ!?
 お前が俺の立場だったら、逃げない保証はあんのかよ?」

そう言って逃げ出そうとする黒蔵の目の前に、バイクが。

「ちっ!」

挟み撃ちにされ、追い詰められた黒蔵は小さいほうに狙いを絞る。つまり、白井だ。
白井を睨んで黒蔵の目が光る。
その姿が黒い大蛇へと変わった。
720 :白井礼 [sage]:2011/03/22(火) 00:07:08.46 ID:weDC+IsL0
>>718
「的を経験したから言ってるんだよ。最高だろ?的の気分は!」

再び銃を取り出し構える。
狙いは、大蛇。

「逃げるもなにも、俺も追われる立場なんだよ。でも逃げたことはないな」

白井がそういい終わるか終わらないかで、バイクの男が黒い大蛇に手を降る。

バイク乗り「おい、待て俺お前の味方」
721 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 00:18:10.39 ID:s5JYXZ0Lo
>>720
「そんなに最高かい?ふん」

皮肉げに鼻を鳴らし大蛇がゆっくりと白井に近づいてゆく。
鎌首を高く持ち上げて、大蛇はバイクの男をちらりと振り返る。

「味方?人間だろお前。こっちくんな、巻き添え食うぞ」

声にあからさまな怒りと不信感とが滲む。
どうやらバイクの男のことは信用していないらしい。
その間にもゆっくりと白井との距離を詰めて、既に白井は蛇の攻撃範囲内だ。
722 :白井礼 [sage]:2011/03/22(火) 00:27:12.06 ID:weDC+IsL0
>>721
バイク乗り「いや、俺妖怪だっての!ほら見て!」

あからさまな怒りと不信感を感じ必死に説明するライダー。
手袋を脱ぐと毛むくじゃらのその手は明らかに人間のものとは違っていた。

「やはりお前は最高だ」

白井の目が怪しく光る。
お札が白井の影から多数出現し、空中を飛び回る。

バイク乗り「周りを見てくれ!街が街じゃなくなってるぞ!」

空は淀み、街の暗がりからはうめき声。
723 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 00:33:26.13 ID:s5JYXZ0Lo
>>722
「なら尚更、今のうちに逃げな。こいつ、妖怪なら手当たり次第に[ピーーー]気だとよ」

大蛇は酷く怒っているようで、言葉の端々に威嚇音が混じる。

「街が街じゃない、だから何なのさ」

どの道この状況では、戦うしかないのだろう。

(蛇神は短剣と一緒に泉に置いてきちゃったけど、それで良かったのかな)

黒蔵は覚悟を決めた。
724 :白井礼 [sage]:2011/03/22(火) 00:42:18.71 ID:weDC+IsL0
>>723
バイク乗り「白井がやばい奴ってことぐらい知ってるよ!
怨霊大量発生してる上にここ異次元だっての!」

バイク乗りはその後何か言おうとしたが走って去っていった。

「バイクの妖怪はたしか見覚えがある。スイーパーだなありゃ」

そういうと白井は自動小銃にランチャーを取り付ける。
そして跳躍。

「食らえ!」

十二発の銃弾がうなり声を上げ、大蛇に迫る。
725 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 00:51:41.78 ID:s5JYXZ0Lo
>>724
銃口から、弾がまっすぐに飛ぶものなののは黒蔵も判っていた。
そしてその速度は音速を超える。到底、追いつくものではない。
だから発射直後に、銃身に向かって横方向から攻撃できるように構えていたのだ。
的を絞りにくい長い体が、こういう場合は有利である。

弾丸数発が体に当たるのとほぼ同時に、黒蔵は銃身に噛み付いた。
白井から銃をもぎ取り、破壊するつもりである。
痛みで激しくうねる体は、白井をそこへ巻き込むかもしれない。
726 :白井礼 [sage]:2011/03/22(火) 00:58:16.81 ID:weDC+IsL0
>>725
黒蔵が銃身にかみつくを見てにやける白井。
白井の肉体もかなりの力を誇っているがそれでも大蛇ほどではない。
あっさり銃をもぎとられる。

「あげるよ。爆弾を」

その直後、痛みで激しくうねる体に巻き込まれ、弾きとばされる。
コンクリートの壁に激突するが、ニヤニヤとした笑みは崩さない。

かみついた銃がその場で爆発した。
727 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 01:06:03.79 ID:s5JYXZ0Lo
>>726
爆煙が消えると、口から血を流した大蛇がふらふらと頭を持ち上げた。
口の中は焼け爛れているが、まだ咬みつく事はできそうだ。
大蛇はコンクリートに激突している白井を見つけると、コンクリートの壁ごと打ち潰そうと
その尾を撓らせてたたき付けた。
尾の攻撃で隙が出来れば、頭が攻撃するか胴体で巻き込もうとするつもりだ。

(火、が好きなのか。こいつは)

銃と爆弾から、黒蔵はそう判断した。
728 :白井礼 [sage]:2011/03/22(火) 01:14:30.99 ID:weDC+IsL0
>>727
砕け散るコンクリの壁。瓦礫に埋もれる白井。
すると空中のお札が一斉に大蛇に殺到する。

一枚のお札のみ白井の元に向かったのは見えただろうか。

殺到するお札は熱い障気を放っている。
振れると皮膚を焼くようだ。
729 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 01:21:30.07 ID:s5JYXZ0Lo
>>728
向かって来る札は無視して、黒蔵は乱暴に瓦礫を崩し始めた。
札よりも、大元である白井を狙ったほうが手っ取り早いのだ。

殺到するあまたの札へ、黒蔵はうっとおしげに黒い物体が混じった水を吐きかけた。
先ほど食べていた黒い虫のような障りが、札に受け止められる。
紙である札には水を、その孕む瘴気には同じような存在の障りをぶつけたのだ。

崩した瓦礫の下に白いものが見えた。
730 :白井礼 [sage]:2011/03/22(火) 01:31:09.87 ID:weDC+IsL0
>>729
札は全滅し、惨めに地面に撒かれた。
崩れた瓦礫、白い者が起きあがる。

「久しぶりだ…ここまで楽しい敵は!この前倒した神みたいだ」

右手に刀、左手に手榴弾。
回転しながら跳躍し、左手の手榴弾を大蛇の頭へ叩きつけようとする。
当たれば当然手榴弾は爆発し、白井も吹き飛ぶだろう。
とはいえ、自らの妖力で作り上げた手榴弾で白井にダメージが入るかは微妙だが。
731 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 01:43:45.94 ID:s5JYXZ0Lo
>>730
目立つ右手の刀のほうに警戒したのに、左手の小さな丸いもののほうを叩きつけられて
反射的に大蛇は白井の左腕ごと手榴弾をがぶりと咥えた。
咥えられて白井は一瞬、大蛇の口からぶら下がる格好になる。

小さな丸いものは大蛇の口の中で白井の指からこぼれ、それを大蛇はつるりと飲み込んだ。

 (どん!!)

腹の中でくぐもった炸裂音がして、驚いた大蛇が口をあけ、白井の腕がその中から抜けた。

「げふ!」

落ちていく白井に、大蛇は黒煙交じりの大きなげっぷを一つ吹きかけた。
そのまま攻撃を再開したところを見ると、どうやら何ともないらしい。
今度は右手の刀を狙って、大きく開いた蛇の口が迫った。
732 :白井礼 [sage]:2011/03/22(火) 01:55:21.84 ID:weDC+IsL0
>>731
迫りくる蛇の口。
白井は右手の刀を投げつけた。武器は、消耗品。

「頑丈だな。ほれぼれするよ。それからげっぷを人に浴びせるなんて、品がないよ」

そのまま飛来したお札を蹴り空中で跳躍し、少し離れたところに着地する。

「お前、やはりいい。なぁ、兄弟」

その一声でビルの上に、暗闇から、数十人の白井が現れる。

「君も俺達、“人間”になりなよ」
733 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 02:03:11.38 ID:s5JYXZ0Lo
>>732
かちん、と飛んできた刀は咥え取られる。
咥えた刀を、ぷっ、と吹いて飛ばし、大蛇はあたりを見回す。

(幻術か?本物だとしても、どうみても人間じゃないよなこいつ)

ビルの上には数十人の白井がいるが、戦いで汚れ、大蛇の涎がついた白井はただ一人。
最初からいる白井だけが、大蛇のターゲットである。
大蛇は先ほど崩したコンクリート壁の破片を、ターゲットの白井に向けて尾で弾き飛ばした。
734 :白井礼 [sage]:2011/03/22(火) 02:11:09.09 ID:weDC+IsL0
>>733
弾き飛ばされたコンクリートの壁の破片は、ヘラヘラと笑う白井の鉄拳で真っ二つに破壊された。

「今、俺が人間じゃないと思っただろ?違うよ、“ニンゲン”なんだよ」

ビルの上の白井から今戦っている白井へと、刀が投げ渡される。
どうやら幻影ではないらしい。
刀を手に向かってくる白井。
735 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 02:17:44.99 ID:s5JYXZ0Lo
>>734
(嘘だな)

あそこまで丈夫な人間は居ない。
それに妖気を持ったら人間ではない。鬼である。

(本当に人間なら、心を操れる)

向かってくる白井と、蛇は視線を絡めた。
じっと心を覗き込み絡めとる魅了の力は、人間であれば効くはずだ。

(心を開いて見やがれ。人間ならな)

大蛇の目がぬらりと光った。
736 :白井礼 [sage]:2011/03/22(火) 02:25:32.80 ID:weDC+IsL0
>>735
「心を開…く」

白井の、動きが止まる。
白井によって支えられていた辺りの空間がゆがみ始める。

本当に人間なのか、白井の動きが止まる。
発していた妖気も少なく、今ならがら空きだ。
737 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 02:29:21.63 ID:s5JYXZ0Lo
>>736
(語れ。お前の真実を)

大蛇が先ほど辺りに吐いた水の水溜りが、水鏡となる。
この大蛇が神使として担うのは、真実を映す力。

(お前は誰だ。そしてなぜ、こんなことをしている?
 妖怪を狩り続けてその先に、一体何を望む?)

これからこの水鏡が映すのは、白井の真実。
何を白井は語るのだろうか。
738 :白井礼 [sage]:2011/03/22(火) 02:38:57.76 ID:weDC+IsL0
>>737
水鏡に映されるのはどこかの研究所。薄暗い実験室。
捕らえられた妖怪。そして手術台に載せられた人のようなもの。

「私の名はタイプホワイト甲型。改造妖怪。世界の平定のために製造された」

映される妖怪達の最期。そしてその魂を集め生まれる白井。

「私が望むのは新たな妖怪が人に成り代わった世界。その為に古い妖怪を排除し、新しい秩序を我らが【パスワードを入力してください】の為に」

映し出される映像が曇っていく。
739 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 02:48:11.15 ID:s5JYXZ0Lo
>>738
よく判らない言葉も混じっていたが、大体のことは察した。
どうみても人間ではない白井が、執拗に人間だと言い張るのも、何となく判ったような気もした。
しばし大蛇は迷ったが、白井の心にこれ以上の真実はおそらくかなりの負担だ。

(今日はもう眠れ、そして忘れたいことは忘れていい)

時として真実は心への重荷になる。
特にこんな風に強制的に揺り起こされた真実は、忘れたい心の傷を抉ってしまう。

(お前は人間だよ)

白井の中にその言葉を置いて、神に使われる蛇は開いた心をそっと閉じた。
740 :白井礼 [sage]:2011/03/22(火) 02:59:49.76 ID:weDC+IsL0
>>739
「わ、私は人間…」

閉じられた心。その中に置かれたあたたかい言葉。
白井は、いや、個体番号1990は動揺し、崩れ落ちるように眠りに落ちた。

黒蔵はいつの間にか元の町に戻っていた。
ビルの上には彼らの姿はなく、また眠る1990の姿もなく、ただ、黒井礼が黒蔵の前に立っていた。

黒井「…彼らがなぜ、俺の姿をしているのか、黒幕は誰か、その思想も含めてわからない。
……だが、…ありがとうな」

そういって黒井は小さく頭を下げた。
741 :黒蔵 [sage]:2011/03/22(火) 03:09:47.94 ID:s5JYXZ0Lo
>>740
ありがとう、と言われて、はじめて黒い蛇は黒井が目の前に居るのに気づいた。
何か言おうとしたが、口の中が焼け爛れていて音は言葉にならない。
体力も妖力も消耗して酷く疲れているが、この姿のまま街中に居ては不都合だ。

人の姿に化身して、黒蔵は地面にへたり込む。
新しく出来た幾つかの銃創に口の火傷、せっかく食べた夕食もさっき全部吐いてしまって
空腹がつのる。
…目の周りの青タンは元からだが。

眠れ、と言って眠らせた白井よりも、実は黒蔵のほうが眠かった。
黒井の前で血まみれの少年は、そのまま意識を失った。
742 :黒井礼 [sage]:2011/03/22(火) 03:15:52.25 ID:weDC+IsL0
>>741
「大丈夫…じゃないな」

そういうと黒井は治療用のお札を傷口に張り付けていく。
最後に黒井は黒蔵の口に体力妖力回復用の薬液を飲ませた。

「これでしばらくしたらましになるかな」

そういって看病をしばし続けた。

/乙です
743 : :2011/03/22(火) 09:02:32.13 ID:H4exgPz/0
黒井たちと接触したあの山の数日後の朝。
霧で包まれ、視界が悪い中、叫び声が聞こえてくる。
やがてその叫び声は聞こえなくなり、聞こえた方から一人の青年が歩いて来る。

よたよたと歩き、服や顔には無数の傷と返り血が付いている。

「モット…殺 スンダ…」
744 :宝玉院 三凰 :2011/03/22(火) 09:10:10.68 ID:M1BpYqjAO
>>743
「確か、この辺だったな。酷い霧だ…」

霧の中、2メートル程の巨大コウモリが飛ぶ。
そこで、聞こえる叫び声。

「なんだ?」

やがて目にする澪の姿。

「…貴様か。礼を言いに来たが、そんな場合ではなさそうだな。」

その様子を見て、ただならぬものを感じる。
745 : :2011/03/22(火) 09:16:20.40 ID:H4exgPz/0
「オマエハ…!!」

三凰の姿を確認するとよたよたと近寄っていく。
眼はとろんとし、焦点は合っていない。

「僕ハ…百鬼夜行ノ主ニナルンダ!!

オマエヲ倒シ、ソノ糧トシテヤル!」

剣を取り出し、迫っていく。
いつ襲うか分からないだあろう。
746 :宝玉院 三凰 :2011/03/22(火) 09:22:28.94 ID:M1BpYqjAO
>>745
「なんだと?百鬼夜行の主の座には興味ないと思っていたが…」

人の姿になり、腰のレイピアを引き抜く。

「どういうつもりだ?」

レイピアを構え、怒りを含んだ視線を向ける。
747 : :2011/03/22(火) 09:28:00.67 ID:H4exgPz/0
>>746
「主ニナレバ…人間モ翌妖怪モ滅ボセル。

僕ニ酷イコトシタ人間ニ、思イ知ラセルンダ…ハハハハハハハ!」

前までの姿はどこにもない。
笑いながら、三凰の腹を目がけて、剣を振る。
748 :宝玉院 三凰 :2011/03/22(火) 09:33:00.11 ID:M1BpYqjAO
>>747
「くっ!」

バックステップで、剣を避ける。

「貴様…何があった?とても、まともな状態には見えないぞ。」

澪の異常な状態に疑問を覚える。
749 : :2011/03/22(火) 09:38:30.35 ID:H4exgPz/0
>>748
「人ノ心配ヨリモ、自分ノ心配シタ方ガイイト思ウヨ…」

剣からの妖気は更に増す。
そして、三凰に掴みかかろうとする。
750 :宝玉院 三凰 :2011/03/22(火) 09:45:03.69 ID:M1BpYqjAO
>>749
「別に心配している訳じゃない。正気じゃない相手が僕に勝てる訳がないと言っているんだ。」

と言い終わったところで、掴まれてしまう。
そして思い出す父の言葉
“見くびってはいけない”

「フッ…前言撤回だ。本気で行く!」

そう言って、掴んだ腕を振り払おうとする。
751 : :2011/03/22(火) 09:49:04.27 ID:H4exgPz/0
>>750
「チッ…」

あっさりと振りほどかれてしまった。

「本気…?イイヨ、僕ノ本気ヲ見セテアゲルヨ。」

剣を地中に刺すとともに、下から水が吹き出る。
そして、池のようになる。

「戦イニハ、場所モ影響スルンダヨ?」
752 :宝玉院 三凰 :2011/03/22(火) 09:54:33.03 ID:M1BpYqjAO
>>751
「水…確かに身動きが取りにくくなるな。だが――」

ジャンプし、コウモリの姿に変化。

「空中では無意味だ!」

そのまま、飛び突進。以前と同じ戦法だ。
753 : :2011/03/22(火) 10:00:25.22 ID:H4exgPz/0
>>752
「君ガ飛ベルコト位、分カッテルヨ……」

水を操り、無数の波を飛ばす。
威力は極端に低いが、数で勝負する…と言う作戦だ。
その数は、マシンガンのように飛んでいく。
754 :宝玉院 三凰 :2011/03/22(火) 10:05:20.61 ID:M1BpYqjAO
>>753
波により、突進の威力は著しく低下。

「くっ!この程度で…止まるかぁ!!」

だが、突進は止まらない。そのまま、澪に迫る。
ただし、その威力はかなり低下したため、当たってもたいしたダメージを与えられないだろう。また、避けるのも容易だろう。
755 : :2011/03/22(火) 10:09:34.00 ID:H4exgPz/0
>>754
「ぐ…痛い…」

このような体では避けるのは困難。そのため、直撃。
しかし、その直後、三凰を再び掴みかかろうとした。

756 :宝玉院 三凰 :2011/03/22(火) 10:13:15.96 ID:M1BpYqjAO
>>755
「貴様にはもう二度と掴まれん!」

そう思い、人間の姿に戻る。的が小さくなれば、掴みにくくなると考えたからだ。
そして、掴まれる前にレイピアの突きを当てようとする。
757 : :2011/03/22(火) 10:17:03.61 ID:H4exgPz/0
>>756
ざくり…鈍い音と共に、レイピアが腹へと突き刺さった。
血が吹き飛ぶと共に、本来の澪が少しずつ戻ってくる。

「コ…これは…何が起きてる…の?」

急に意識が朦朧とし、倒れかかる。
758 :宝玉院 三凰 :2011/03/22(火) 10:22:41.45 ID:M1BpYqjAO
>>757
「…?わからないのか?貴様は、正気ではなかったようだが。」

レイピアを傷口から抜き、腰の鞘に収める。もう戦えないとの判断だ。
そして、そのまま澪の様子を見ることにした。
759 : :2011/03/22(火) 10:30:25.57 ID:H4exgPz/0
>>758
「あの夜、頭痛がして…(蝙蝠…ヨクモ…)それからは全く覚えてない……(コノ恨ミハ必ズ…)

大きな力に抑え込まれたような…、でも君の声が聞こえてきて…っ」

倒れたまま、すべてを話した。
途切れ途切れに、先程の澪が出て来るが、最後には無くなった。

760 :宝玉院 三凰 :2011/03/22(火) 10:40:09.48 ID:M1BpYqjAO
>>759
「何が起こっているのか理解し難いが、今は平気なようだな。まぁ、また暴走し僕を狙うようであれば、相手になってやる。」

止めてやる、とでも言うように言った。

「それじゃあ、僕は行く。」

そう言って、背を向けるが再び父の言葉を思い出す。
“礼は言ったのか?”

くるりと向き直り、懐から包帯を取り出す。
自分の額の怪我の替えの包帯だ。

「これは、礼だ。」

そう言って、丁寧に澪の傷口に包帯を巻く。
と言っても、その傷をつけたのは三凰自身だが。
761 : :2011/03/22(火) 10:43:51.01 ID:H4exgPz/0
>>760
「…ありがとう、最後に、名前は?まだ聞いてないよ…」

知らぬ間に笑顔になっている。
こんな風に、妖怪と接したことはあまりないからだ。
三凰の優しさから、澪は何を思ったのか。
762 :宝玉院 三凰 :2011/03/22(火) 10:50:17.88 ID:M1BpYqjAO
>>761
「別に、優しさから貴様を手当てした訳じゃない。ただ単に、借りを返しただけだ。」

くるりと再び背を向ける。そのため、表情は確認できない。

そして、振り向いてこう言った。

「僕は、宝玉院三凰。百鬼夜行の主になる男の名だ。忘れるなよ。」

そう言って向き直り、歩いて去って行った。



/この辺で落ちます。絡みお疲れ様&ありがとうございました。
763 : :2011/03/22(火) 10:57:02.74 ID:H4exgPz/0
>>762
「三凰…ありがとう!!」

感謝の気持ち、三凰には届くのだろうか?

こうして、三凰のおかげで、元に戻ることが出来た澪。
しかし、またあの状態になってしまうだろう。そんなことを知らない澪は三凰を見送った。

/お疲れさまでした
764 :露希「」&白龍『』 :2011/03/23(水) 10:22:37.46 ID:6xCEfDAL0
「白龍、お腹の具合はどう?」

『露希の薬草のおかげで、かなり良くなったよ。ありがとう。』

晴れた山道を歩く少女と龍。
その時、ある気配を感じた。
765 :黒井礼 [sage]:2011/03/23(水) 10:28:28.52 ID:BMBGb7mi0
>>764
「……」

大木の大きな幹に逆さに縛られた黒井。
ああ、なんという目をしているのだろうか。まるで子犬だ。

「ボンソワール」

死にそうな声で挨拶。
766 :露希「」&白龍『』 :2011/03/23(水) 10:33:25.74 ID:6xCEfDAL0
>>765
「えっ……」

その光景に唖然とする少女。
助けた方がいいのか、スルーした方がいいのか分からず、その場に立ち尽くした。

「えと、助けた方が…いいですかね?」
767 :黒井礼 [sage]:2011/03/23(水) 10:37:52.75 ID:BMBGb7mi0
>>766
「是非…助けてください…」

しわがれた声で助けを乞う黒井。後4年ほどたてば三十路。
今にも死にそうな顔。長時間このままのようだ。

「…あぁ…時が見える」

見える!見えるぞ!
768 :露希「」&白龍『』 :2011/03/23(水) 10:42:23.51 ID:6xCEfDAL0
>>767
「(大丈夫かな…この人。医者に連れてった方が…)」

と思いながら吊るされた人を助けた。

ふと、フランスのことが思い浮かぶ。実は、この少女もある期間にフランスに行っていた。
まさかと思いつつ、聞いてみた。

「すいません、貴方、フランスに行ってませんでしたか?」
769 :黒井礼 [sage]:2011/03/23(水) 10:47:50.65 ID:BMBGb7mi0
>>768
「た、助かった…感謝します」

土色の顔が少しづつ元に戻っていく。時も見えなくなり遠ざかる。

「ん?フランス?行ってたよ。フランスで俺を見たのかな?」

フランスの山奥でドンパチやったり、ワイン飲んだり、ワイン飲んだり。
そんなことを思い出しながら落ちていたサングラスを拾い、胸ポケットにしまう。
770 :露希「」&白龍『』 :2011/03/23(水) 10:53:05.00 ID:6xCEfDAL0
>>769
『「(やっぱりそうだったー!!)」』

そう、この少女は上空から何かやっているのを見てしまったのだ。
黒井の質問にこくこくと頷きながら沈黙する。
ちなみに、露希は黒井が零の知り合いであることを知らない。
771 :黒井礼 [sage]:2011/03/23(水) 10:59:47.56 ID:BMBGb7mi0
>>770
(く…もしやこの娘!見たな!)

フランスの山奥でバ○ルドーム!超!エキサイティン!
深夜のクラブでナンパ!
泥酔!泥酔!泥酔!嘔吐!

「あぁ…お恥ずかしい、あれだよ。仕事きついし、いつどうなるかわからないからこう…羽目をはずすんだよ…君もあるでしょ?そういうとき」

顔を背け、赤面。いや、ちゃんと仕事もしてたが。
772 :露希「」&白龍『』 :2011/03/23(水) 11:08:17.02 ID:6xCEfDAL0
>>771
「羽目を外す…まぁ、ありますけどあそこまでは……。」

赤面する彼に言う。傷ついてしまうかも知れないが。

「ところで、貴方は何をしていたんですか?」

普通ならば、吊るされるなんてことは無い筈なのだが。不思議なことばかりだ。

773 :黒井礼 [sage]:2011/03/23(水) 11:14:21.18 ID:BMBGb7mi0
>>772
「あそこまでは…ねぇ」

傷ついてはいないようだが、テンション下がりっぱなしである。
そして、なぜ吊るされていたか、

「いや、部下と喧嘩して…ゴニョゴニョ」

要約すると、部下と仕事の事を話し合っていたが、意見が合わず殴り合いに発展。
殴り合いを黒井は優位に進めるが部下の仕掛けた罠に引っかかって吊るされたようだ。
774 :露希「」&白龍『』 :2011/03/23(水) 11:21:28.96 ID:6xCEfDAL0
>>773
「で、放置と言うことですね。」

内容を理解した。
意見が合わないだけで殴り合いに発展すると言う話は初めて聞いた。
そしてまた不思議度メーターが上昇する。

「もう一つ質問。貴方は何者ですか?」
775 :黒井礼 [sage]:2011/03/23(水) 11:28:57.45 ID:BMBGb7mi0
>>774
「はい、放置してトラックで帰っていきました」

トラックで帰る刹那、奴はこう言った。
“今日がおまえの!命日だ!”

「あいつ半妖なんだよ。種族的に気性荒いタイプの…って俺?」

何者かと聞かれたら、答えてやるのが世の情け。
すでに露希は“あるモノ”事件に巻き込まれている。教えておいてもいいだろう。

「黒井礼、スイーパーだよ。スイーパーってのはあれだ、人と妖怪の均衡を保つのが仕事だ」

そう、均衡。大義名分は。
776 :露希「」&白龍『』 :2011/03/23(水) 11:39:09.56 ID:6xCEfDAL0
>>775
「黒井さん…?スイーパー?どこかで聞いたことのあるような無いような…

まぁいいや、黒井さんは人と妖怪の共存に賛成するってことですね?」

昔、そのようなことを聞いたかもしれないと思った。
そして黒井の言う人間と妖怪の均衡という言葉に安心感が芽生えた。

777 :黒井礼 [sage]:2011/03/23(水) 11:45:10.98 ID:BMBGb7mi0
>>776
「まぁ、どこかで聞くこともあるだろう」

人と妖怪の共存、大いに賛成だ。
黒井という男は、人と妖怪を分けて考えることはあまりしないのだ。
それは育ちによるものだが、それはまた別のお話。

「共存には賛成だ。それが一番だ。君はどう思う?」
778 :露希「」&白龍『』 :2011/03/23(水) 11:50:26.30 ID:6xCEfDAL0
>>777
「私も、共存には賛成です。争いのない、平和な世界が一番です!!」

露希も共存は賛成派の妖怪だ。ここで、思い出したように「あ!」と声を出す。

「そう言えば、私の兄がスイーパーの誰かとラーメン屋に行ったとかって話してました。」

まさしく、彼のことである。黒井は気づくであろうか?
779 :黒井礼 [sage]:2011/03/23(水) 12:00:59.97 ID:BMBGb7mi0
>>778
「そうだ。それが理想だ…」

均衡、それを守るためにスイーパーは争いを引き起こすこともある。
これは本当に共存の為なのだろうか。しかたない。彼はそう思った。

「ラーメン屋?あぁー、零とはいったような気がする」

もしかしてこの娘の兄かな?
780 :露希「」&白龍『』 :2011/03/23(水) 12:09:45.27 ID:6xCEfDAL0
「均衡を保つには…多少の争いもあります。それは避けられませんよね…」

露希も同じ考えだ。犠牲は出てしまうが、それでも共存したいのだ。

と、ここで知っている名前が出た。

「黒井さん、零と知り合いですか?じゃあ、その誰かって黒井さんだったんだ…。

零はボクの兄です。だらしない、ヘタレですが…。」

ここで、すべてを理解できた露希。
零の知り合いが、良い考えを持ってくれた人で良かった…とひしひし感じる。

「黒井さん、ボクこの後、用事があるので失礼します。」

と言い残し、走って行ってしまった。

/絡みお疲れさまでした!!
781 :黒井礼 [sage]:2011/03/23(水) 12:16:21.62 ID:BMBGb7mi0
>>780
犠牲…いなくなる仲間…巻き込まれる者…
共存か…

「あぁ、そうだったのか。零君はいい人だ」

この前家に泊めてくれたし。
任務に協力してくれるし。優しいし。

「用事があるのか、じゃあな」

見送り、別の道を辿って帰っていった。

/絡みお疲れさまでした!
782 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/23(水) 20:45:05.78 ID:BMBGb7mi0
あなたは街角で、山奥で、海岸で、あるいはまたどこか。
歌を聴く。それは優しく心にしみいっていく。そんな歌。

気がつくとあなたは高速道路にいた。
何かに乗って走っている。または飛んでいる。大型トラックの荷台に乗っている。

あたりは白い靄が発生しており、遠くの様子は伺い知ることはできない。
ただ、アスファルトの地面が流れていくだけ。
空を見上げる。空はなく、灰色の天井が靄の切れ間にかいま見えるだけ。

ただ、ただ、あなたは高速道路にいた。
783 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/23(水) 21:49:46.94 ID:6xCEfDAL0
「あれ、ここどこ?」

『本当だ。前にも似たようなことが…。』

二人はトラックの荷台に居た。
何が起きているか全く分からないまま。
784 :黒蔵 [sage]:2011/03/23(水) 21:54:16.05 ID:WWnXTN/Yo
>>782
(なんだここ)

不愉快な揺れに濃い人間の匂い。そして、何とも表現しがたい排気ガス臭。
どうやら黒蔵は四角い箱のようなものに載せられて居るようだ。
真新しい傷に、振動が嫌な感じに響く。
他にも誰かがいる気配に、黒蔵は立ち上がろうとしてよろめいた。
785 :宝玉院 三凰 :2011/03/23(水) 21:57:42.31 ID:kBneZZVAO
>>782
「何が起こった…?」

三凰は、先ほどまで山を飛んでいた。しかし、気がついたら高速道路だ。

「……どうやら、厄介事に巻き込まれたようだな。」

辺りの妖気を察知し、表情を曇らせた。
786 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/23(水) 22:03:30.80 ID:BMBGb7mi0
>>783>>784
トラックはただ走っている。
荷台には箱がたくさん積まれている。
火気厳禁。箱には日本語と英語で書かれている。
>>785
下を見ればトラックが走っており、零や黒蔵がいる。
火気厳禁の箱と共に。
上空には天井があり、あまり高度を上げられない。
>>ALL
外部スピーカーより男の声。

運転手「やべぇ…やべぇよ…ここ異次元だ…なんてこった」

そしてしばらくして全員に気がつく。

運転手「お前等も運がないな。おそってくるぞ。敵が」
787 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/23(水) 22:09:17.67 ID:RX3ngmsDO
>>782
「あああぁぁああぁぁああぁぁあばばばばあばばあば」

トラックの荷台の上に、奇声をあげながら強風に煽られる一人の男がいた
わざとらしく開いた口に空気がなだれ込み、内側から頬や唇を押してベロベロと暴れ回る

「やばいやばい寒い死ぬ死ぬ凍死する風やばい」

男の黒い無造作ヘアーは風に揺れ、白ニット帽は脱げそうなくらいになっている、隈の深い目は珍しく見開かれ、蔓に縞模様をあしらった黒縁眼鏡が風に押されて鼻当てが減り込む
バタバタ激しいダンスをする目玉模様のシャツに、黒いジャケットとカーゴパンツ
ゆっくり味わう暇もなくただ口に棒付き飴をくわえている男がトラックの上に立って、強風の脅威をその身に受けている真っ最中だった
788 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/23(水) 22:18:11.94 ID:6xCEfDAL0
>>784
『「あ、黒蔵君。」』

なぜか、一緒に巻き込まれてしまったらしい。
しかも、怪我をしていた。

『ちょ…大丈夫?今、痛み止めを…』

撫でながら、どうこうしてるうちに、敵が来てしまった。
零はトラック内にあったライフルを構えた。

>>785
トラックの上に居るので気づかない。
しかし、その妖気は感じ取っていた。

>>786
スピーカーより流れる声を聞き、この2人はどう思ったのか…?
「(たまには[ピーーー]かww)」
『(黒蔵君を愛でる最大のチャンス?)』

>>787
『大丈夫ですか?』

相手が風と戦っているのにも関わらず、平然と聞いてみた。

「敵が来ますよー。」
789 :黒蔵 [sage]:2011/03/23(水) 22:19:13.33 ID:WWnXTN/Yo
>>783
(んげっ!やばいのが二人いる!)

そのやばい二人の前で、内心の想いが口に出ないのは幸いだろうか。
口の中の火傷で思うように喋れない。いや、喋りたくない、できるだけ。

>>786>>787
(なにこれやっぱり人間も乗ってる?!)

見知った人間の退魔師が乗っていることに、黒蔵は恐怖の色を露にした。
人間は怖い、露希達も怖い。
しかもなにやら敵が襲ってくる状況らしい。おまけに自分は洒落にならない重傷だ。

(いやぁぁぁぁぁ!!!)

>>785
逃げ道を探してあたりを見回すと、空中を飛ぶ大コウモリと目が合った。

(まさか、アレが敵?!)

黒蔵は荷台に詰まれた箱の後ろへ隠れようとして、じりじりと身を縮めて移動する。
790 :宝玉院 三凰 :2011/03/23(水) 22:25:34.53 ID:kBneZZVAO
>>786
「異次元だと…?まったく、想像以上に面倒だな。」

面倒くさそうにため息をつく。

「まぁいい…おい!運転手!敵とやらを倒せば、元の次元に帰れるんだろうな?」

トラックに接近し、運転手に話しかける。


>>787
「チッ…」

会いたくない人間が一人。
思わず小さく舌打ちした。

「そのまま、凍死してしまえ…」

小さく呟いた。


>>788>>789
(奴らに敵と勘違いされては困るな…
まぁ、いずれ本当の敵が来るだろう。ここは、奴らの攻撃が当たらないように…)

そう思い、高度を上げる。霧を利用し、姿を隠すつもりだ。
791 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/23(水) 22:33:32.51 ID:BMBGb7mi0
>>787
運転手「ばっかも〜ん☆奇声上げるな!敵くるだろ!」

キレる運転手。周りには火気厳禁の箱がたくさん。

運転手「ちなみにそれ武器だから。火薬いっぱいだから!火、ダメ絶対」
>>788
運転手「順応早いなオイ。ライフル大事に使えよ。それ後で作戦で使うから」

なんだかんだでそれを許す運転手。
実はこんなことは慣れっこなのだ。
>>789
運転手「お前怪我し過ぎ!がんばれ!超がんばれ!」

箱の中にはアサルトライフルや手榴弾がいっぱいだ。

運転手「振り落とされるな!」
>>790
運転手「倒せば帰れる!この前もそうだった!」

運転手は歴戦。
大丈夫だ、問題ない。
ちなみに天井はそれほど高くない。だが、隠れることには成功した。
>>ALL
運転手「あぁ、キター!」

後方の靄を突き破り現れる輪入道の群。
これが敵だ。数十体はいる。

輪入道「餌だ!者ども!かかれい!」

輪入道達はトラックに迫ってくる。
792 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/23(水) 22:39:56.61 ID:RX3ngmsDO
>>788
「敵っつーかこの風と状況が一番の強敵かなあばばばば」

風に煽られながら男は答え、背中から取り出した木刀を杖代わりに持ちこたえる

>>789>>790
「おいマジどうにかして本当お願いします」

知り合いの妖怪二人がいるとも、その両方にいい気を持たれていないのも気付かない
正面から襲い来る強風が鼓膜を揺らし、耳へと常に雑音が送られているためよく聞こえないのだ

>>791
『落ち着かんか!これしきの風で怯むでないわ!』

ぼわっ!と男の傍らに燃え上がった人魂が、そう喝をいれる

「うるせぇ!実体がねぇ奴は黙ってろ!!」

しかし余裕がないので一蹴した

「敵とか無理無理マジ無理まず寒いし立てない」
『待て夜中、儂の考えを聞け』
「簡潔に頼む」
『ここがもし彼奴等による空間ならば、彼奴等を滅せば帰れるのではないか?』

「いよっしゃあああああああああああぁぁぁ!!!かかってこいやヨコ○マタイヤ共がああああああああぁぁぁ!!!!」

希望を見出だした人間は何よりも強い、と誰かは言う
男は今までが嘘の様に力強く仁王立ちし、後方の輪入道に向けて木刀を構えた
793 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/23(水) 22:49:26.47 ID:6xCEfDAL0
>>789-790
『黒蔵君…君を死なせはしないからね。ボクが絶対に守るから…』

黒蔵の治療をし、頬を撫でる露希。
その表情は「自分を犠牲にしてでも彼を助ける」と言うような、笑顔。
そんなのもつかの間、銃声が響き渡る。

「あれ、当たらないよ?三発も撃ったのに誰も倒れない…。」

『(うわぁぁぁぁ!!不器用なの忘れてた…)』

そう、遠距離戦になれていない零が銃を使えるわけがない。
その三発の銃弾は隠れた筈の三凰の横を通り過ぎて行った。

『零は黒龍となんかやってていいよ…』

絶望、自分で何とかしようとアサルトライフルを撃つ。すべて頭を狙って。

>>791
「すいません、三発も外したので遊んでます。」

零は黒龍に乗って、空を飛び始めた。

>>792
『木刀でどう戦うんですか?』

笑顔で聞く。
その笑顔からは「あ?てめぇ、ふざけんなよ(笑)」と言うような酷い物だった。
794 :黒蔵 [sage]:2011/03/23(水) 22:57:56.63 ID:WWnXTN/Yo
>>791>>792
がんばれ、とかいきなり言われても何をどう頑張れと言うのだろう。
箱の中にはあの、忌々しい飛び道具と、白井に飲まされた丸っこい小さいものが一杯。
人間の武器の使い方なんて黒蔵は知らない。見回しても他に扱えそうなものも無い。
一対の短剣ならいつも通り腰の後ろに挟んであるが、追いかけてくる輪入道や
空を飛ぶ相手に通用するのだろうか。

そしてどうやら退魔師のほうも、こちらに構っている余裕はなさそうだ。
ならばこの人間について心配するのは、輪入道を何とかしてからでも良い。

>>793
(痛みはお陰で引いたけど、あんま触んないでお願い…)

心の中だけでつぶやく。
既にこの兄妹に触れられることすら、黒蔵には精神的ダメージである。
なにしろこの二人は、次にどう行動するのかがまったく読めない相手なのだ。
露希は優しくなでた後に、いきなり絞殺とかしてきかねない。
零の時みたいにちゅーされても困る。

>>790>>791

(……むぅ)

既にコウモリは見えない。
どうしようか少し考えた結果、黒蔵は「火気厳禁」の木箱の蓋をべりべりとはがし、
その釘の突き出た板材を二つに割って、輪入道の群れの中へ投げ込んでみた。
普通に回転をかけてぽいっと投げただけであるが、この馬鹿は力のほうも馬鹿力である。

そして板をぶん投げた直後に黒蔵は後悔した。
背中の銃創がぱくりと開いた気配がしたのだ。
795 :宝玉院 三凰 :2011/03/23(水) 23:03:13.24 ID:kBneZZVAO
>>791
「なら、さっさと倒して帰るとしよう。」

チラリと後方の輪入道を見る。

「奴らか、僕の姿は見えているのか?」

しばらく、様子を見ることにした。この行動には、他の者の実力を見るという意味もある。


>>792
(ま、こいつの実力は知っているがな…)

おそらく三凰より、一枚以上上手。
三凰本人は、絶対に認めないが
あくまで、自分と同等と思っている。


>>793
「なっ…!」

頬をかすめる銃弾。

「き、貴様!使い慣れていないなら、そんな物使うな!
危うく、当たるところだったぞ!」

怒り、つい姿を現してしまう。


>>794
(意外な物を使ったな…
さて、奴らはどうなる?)

姿を現した三凰は、輪入道の反応によって、次の行動を決めようとしている。
796 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/23(水) 23:13:55.71 ID:BMBGb7mi0
>>792
輪入道「何!?ヨコ○マタイヤ!?何故我らの神の名を!?」

輪入道達に動揺が走る。
しかし、トラックの並走に成功した二体の輪入道がトラックに体当たり。
すごく揺れる。

輪入道「落としてくれる!」
>>793
運転手「おいぃぃ!遊ぶな!がんばれ!もっと熱くなれよ!」

空中は靄が発生して視界が悪い。
もしかしたら靄の切れ間にトラックの通った後の道路が消滅していくのが見えるかもしれない。
>>794
馬鹿力によって投げ込まれた板材は輪入道の頭に突き刺さった。
巻き込まれ崩れるようにして横転していく輪入道達。

輪入道「よくも仲間を!」
>>795
輪入道「あそこだ!落とせ!」

輪入道は火炎の塊のようなものを頭の周りの火から発射してくる。
その数、十六発。
>>ALL
並走している入道がトラックに体当たりしてくるため、かなり揺れる。
振り落とされないように気をつけた方がいいだろう。

そして徐々に輪入道の群がトラックに追いつきつつある。

運転手「誰か手榴弾投げてー!あいつら頭の周りに火ついてるから荷台に乗られると箱に爆発してみんなやばいよ!」
797 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/23(水) 23:25:16.96 ID:RX3ngmsDO
>>793
「どう戦うのかって?これだから素人は困るな」
「木刀は真剣と比べりゃそりゃ確かに切れないし弱そうだ、だがそりゃ違うぞ」
「木刀でも思い切り殴れば骨が砕ける、胸を突けば灰は砕けるし喉を突けば気道が潰れる」
「ついでに、真剣と違って扱うのに技術なんて殆どいらない、打撃武器としちゃ最適だ」
「そして、この愛刀柄楠狩刃は魔よけのおまじないつきで税込み19800円だった」

かっこよく説明しているようだが、肝心の武器はつまり市販されている怪しい物である

>>794>>795
「とりあえず妖怪二人頑張れよー、タイヤ男なんかに負けんなよー」

やる気があるのかってくらい適当な激励、というか気付いていたのか

>>796
「マジでヨコハマ○イヤかよ、あんなの俺は神とは認めないぞ…っとっとっと!?」

ぐらぐら揺れる荷台の上、木刀を杖に振り落とされないよう踏ん張る

(かなり接近でもしてこない限り木刀は役に立たないな…大人しくある物使うか)
「つーかなんでこんな物騒な物が積んでるんだよ…っと!!」
「そーら、ご飯よー」

考えるとすぐさま実行、言われた通り荷台の手榴弾をポイポイ手当たり次第に投げ始めた

「ついでにこれとか邪魔だし捨てちまえ」

さらに誰の許可も取らず、火薬箱まで蹴り落とす始末
798 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/23(水) 23:34:47.35 ID:6xCEfDAL0
>>794
黒蔵の思っていることなど分かる訳がない。
戦いつつも、撫でたり、撫でたり、撫でたり……。
>>795
「ごめんなさい…」

外して、怒られて、テンションはガタ落ちしてしまった。
ぼけーっとしながら、輪入道の動きを観察し始めた。

>>796
激しく揺れる車内。
露希はふっ飛ばされて、角へ頭を強打。
頭を押さえながら、無言で撃ち続ける。
>>797
無言だが、「期待してます」と言うような視線を送る。
行動はある意味凄いが、実力も凄いと見込んだ上で。
799 :黒蔵 [sage]:2011/03/23(水) 23:37:25.75 ID:WWnXTN/Yo
>>795-798
コウモリがいきなり現れた!しかもなにやら酷く怒っている。
びっくりしたのと丁度トラックが輪入道に揺らされたのとで、黒蔵はバランスを崩し
荷台の縁に強かに体を打ちつける。
低い呻きが焼け爛れた口から漏れた。

(開いた!今ので完全に背中の傷開いた!もうやだ泣きたい……てか手榴弾って何?)

ゆれる荷台には、蓋の開いた箱からこぼれた丸いものがコロコロしている。
手にしてみれば、石の代わり位にはなりそうな重さだ。
見れば退魔師もそれを投げている。

(もう投げられるものなら何でもいい。投げられるうちに投げちまえ)

ピンを抜くことも知らない黒蔵は、手榴弾をそのまま輪入道に投げつけた。
それは露希の撫でさすりから逃れるための行動でもあった。

傷の痛みもあり、先ほどの板よりは遅い速度で、手榴弾は輪入道にぶつかってゆく。
さらに退魔師が箱を蹴り落とすのを見て、黒蔵も木箱の一つに手をかけて持ち上げ、
渾身の力でそれを投げ飛ばす。

…黒衣の下でぬるりと背中を流れ落ちるものを感じつつ。
800 :宝玉院 三凰 :2011/03/23(水) 23:44:00.27 ID:kBneZZVAO
>>796
「チッ…見つかったか…」

炎が来る直前に、人間の姿へと変化。
そして、レイピアを抜き――

「はっ!はっ!はあっ!こんな攻撃!僕の前では――無意味だっ!」

レイピアで炎をすべて弾く。
しかし、そのことにより、トラックと差ができてしまった。

>>797
「フン…貴様の出る幕はない。大人しく、飴でも舐めているんだな。」

やる気のない奴は放っておこうという考えだ。


>>798
「まったく…」

(この状況下ではあまり戦力にならないようだな…
今のところな…)

まだ、表情には怒りが見えるが状況を分析。


>>799
「さて、これからどう戦おうか…?
この手榴弾乱舞、下手に近寄れば巻き沿いだ。」

コウモリの姿に戻り、輪入道を追いつつ戦況を見る。
しばらく考え、爆発に巻き込まれない高度に移動。

「不服だが、手榴弾から逃れた奴の相手をするか。」

弱った奴を狙うみたいで気が進まないが、他に戦う方法が思いつかなかった。
801 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/23(水) 23:50:25.92 ID:BMBGb7mi0
>>797
爆発。爆発。爆発。
その度に宙を舞い吹き飛ぶヨコ○マ…いや、輪入道。
密集しているため効果抜群だ。
そして、

運転手「火薬箱だめぇ!」

火薬箱、大爆発。熱い風が吹き抜け、多数の輪入道を吹き飛ばした。やるじゃない。
>>798
次々と倒れていく輪入道。倒れた輪入道に輪入道がぶつかり、ドミノ倒しが起こっている。
手榴弾攻撃と合わさり、急激に敵を減らしていく。

運転手「うまいな!その調子だ!」
>>799
輪入道「ぐはぁ!」

爆発しない手榴弾が命中し、横転。横転した個体は群の下敷きに。
ナイスコントロール。

投げ飛ばした木箱。中身は刀剣類だった。
破壊された木箱から溢れ出たそれらは地面にバウンドして輪入道達を傷つけていく。
>>800
運転手「トンネルへ突入するぞぉぉ!トラックへ着陸しろ!」

早くトラックへ行かないとコンクリートの壁にぶつかってしまう!
>>ALL
トンネルが見えてきた。
輪入道は引き返していく。
802 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/23(水) 23:57:23.56 ID:RX3ngmsDO
>>798>>799
「大丈夫かー?落ちた奴はいないかー?いたら返事しろー」
「…する訳ないか」

ポイポイ爆発物を放り投げながら周りに安否確認の声掛け
恐らくは本人も心配いらないと思っているが、一応の事もある

>>800
「喋ってると舌噛むぞー、あと、またむやみに突っ込むと燃えるから気をつけろー」

三鳳の言葉に対しても馬鹿にするような言葉をきっちり返す、ある意味しっかりしている

>>801
「うん?引き返していくな?」
『これで終わった…とも思えぬな』

トンネルに突入し、輪入道達が引き返すのを見て一旦攻撃を中断

「ていうか木刀いらない、マジいらない、こんな事なら剣じゃなく銃の道に進めばよかった、ついでに刀探すのも止める」
『いきなりふざけた事を吐かすな!!?』
803 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/24(木) 00:09:47.20 ID:xTXiDsjg0
>>799
一旦、攻撃を中断して黒蔵の方へ振り向いた。
なんともないと思い安心するが――足元に出来た赤い液体を見た。

『なっ…その怪我はどうしたの?』

慌てて駆け寄った。

>>800
「私は戻りますよ…」

警告があったため、荷台へ戻る。
まだ、怒られたことがショックのようだ。

>>801
「はぁ…疲れた。なんか悪いことばかっりでやだなぁ。」

疲れることなどしていないのに愚痴る。

>>802
「手榴弾攻撃凄かったですよ。私とは大違い…」

戻ってきた零は声を掛けた。
さらに、テンションが下がる。

804 :黒蔵 [sage]:2011/03/24(木) 00:12:12.52 ID:rR89JN8Ko
>>800-803

(駄目だ、もう投げられない)

荒っぽくゆれる荷台の縁に引っかかって、体力の尽きた黒蔵は流れ行く路面をぼんやり見下ろす。
がくがくと振動に揺すぶられながら、後ろへ飛び去ってゆく路面の白線を眺め、徐々に眠くなってゆく。
引き返してゆく輪入道もコウモリも、荷台の人間も駆け寄る露希のことも意識の中に無い。

白線、白線、また白線。後ろへ飛んでゆく白線の果てしない繰り返し。

トラックがトンネルに入ったとき、黒蔵は荷台からずるずると落っこちてゆくところだった。
805 :宝玉院 三凰 :2011/03/24(木) 00:19:25.50 ID:rSmplk6AO
>>801
「何っ!」

急いで、トラックに飛び乗る。
そして、着地と同時に人の姿に

「間に合ったか。」

>>802
「フン…その心配はない。」

トラックの上で無感情に返した。


>>803
「ああ、引っ込んでろ。あと、気にし過ぎだ。」

それだけ言うと、何か使える武器はないか探し始めた。


>>804
武器探しの途中、輪入道達の様子を確認するため辺りを見ると、落ちていく黒蔵が目に入る。

「っおい!貴様、何やっている!落ちるぞ!?」

驚き、大声を出す。
806 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/24(木) 00:25:42.41 ID:xPbid7pG0
>>802
運転手「木刀いらないだって?後ろ見てみな」

後ろには真っ黒な人型が。手には剣。
人型は無言で剣を振りかざす。敵だ!
>>803
運転手「己が剣を振るえ!」

黒い人型が次々と荷台に現れている。
人型がゆらゆらと剣を振り回しながら迫ってくる。
>>804
人型「眠るの?ねぇ、眠るの?」

斧を持った人型が荷台に、そいつは落ちそうな黒蔵を掴もうとする。
笑いながら。
>>805
使える武器はアサルトライフルにミサイル、刀剣類だ。
それよりも、

人型「遊ぼうよ」

槍を持った人型が飛びかかってくる。
807 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/24(木) 00:33:56.01 ID:hGOQwPCDO
>>803
「何、ただ投げただけだ、大した事は無い」
「いやーしかし、ゲームの腕が役立つとは思いもよらなかった」

後ろをじっと見つめ、警戒しながらそれに答える
手榴弾を投げるタイミングはゲームで培ったらしい、本当かよ

>>804
「そんで、なんかいきなり黙った…と思ったらこれかい!!?」

ふと黒蔵を気にした時に、荷台から落ちそうになった黒蔵が見えた
反射的に左手で服を掴んで阻止しようとする

>>805
「騒いでないで掴んで掴んで!お前飛べるんだからこういう時に頼れるのはお前じゃないの!!」

黒蔵を掴もうとしながら三鳳に顔を向けて叫ぶ、珍しく表情に微妙な焦りが浮かんでいるようにみえる

>>806
「ごめんやっぱ木刀いるわ!助けて僕のエクスカリバアァァ!!」

自分も黒蔵を掴もうとしながら、黒蔵を掴もうとする敵に右手の木刀で殴り掛かる

「こいつは渡さんよ!ほしいなら可愛い女の子でも連れてくるんだな!交換してやるから!!」
808 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/24(木) 00:46:11.66 ID:xTXiDsjg0
>>804,806
『黒蔵君をありがとうございます。今、彼を助けますので。』

丑三に御礼を言いつつ、意識がほぼ飛んでしまっている黒蔵の応急処置をする。
「愛でる」と言った考えは何所かに吹き飛び、ただ助けたいと言う意思で手当てする。

>>805
「近距離戦なら怒られないと思うよ。黒龍っ!」

双刀と化した黒龍を持ち、人型の物を切る。
切るごとにテンションが戻り、動きも俊敏になる。

>>806
「切られる気分はどうですかっ?」

一発一発をしっかりと当てる。
さらに調子に乗った零は手榴弾も投げる。
809 :黒蔵 [sage]:2011/03/24(木) 00:52:45.28 ID:rR89JN8Ko
>>805-808
「んぎゃぁっ!」

黒い人影の手と丑三の手がそれぞれ黒蔵を掴み、そして血で滑った。
一度は持ち上げられ、再度荷台の縁に叩きつけられた痛みで黒蔵は覚醒し、
さらに露希の接近で命の危機を感じた。せっかく治療しようとしてくれたのに。

さらに零が手榴弾を投げて、その爆発でパニックを起こし、
黒蔵はトラックの荷台でいきなり大蛇化した。
黒い人影が増えてただでさえ狭いのに、これで一気に足場が悪くなる。
誰かの足が蛇の背中の傷を踏むのも、時間の問題だ。
810 :宝玉院 三凰 :2011/03/24(木) 00:58:37.65 ID:rSmplk6AO
>>806
「フッ…やはり、僕の武器にはこのレイピアが相応しいようだな。」

槍を右にかわし、そこからレイピアを抜き、突きの一撃を放つ。


>>807
「見て分からないか?戦闘中だ。」

三凰は先程現れた、人型との交戦中。
敵を始末することを優先することに決めたため、黒蔵を助ける隙はない。


>>808
「ほう…近接戦ならなかなかのようだな…
って、おい!手榴弾を使うな!トラックが壊れたらどうする?」

怒りというよりも、呆れ顔で話す。


>>809
「くっ…狭い…大丈夫なのか、このトラック。」

爆発と大蛇、それによるトラックの心配をする。
811 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/24(木) 01:03:25.75 ID:xPbid7pG0
>>807
殴られた人型はへらへらと笑い、斧をでたらめに振り回す。
殴られた部分から黒い煙が出ている。

人型「僕の斧、すごいんだ」
>>808
切り刻まれる黒い人型。
しっかりと当たった一撃一撃、そのたびに煙となって小さくなった人型は、投げられた手榴弾で消し飛んだ。
あぁ、トラックの一部とともに。

運転手「調子に乗っちゃダメー!」

トラックの右側、運転席後方の部分に穴が空いた。

運転手「おいぃぃ!これ組織の車だからね!俺減給だからね!」
>>809
運転手「って、おいぃぃ!」

だが、巨大化したために何体かの人型はトラックから落ちていったようだ。
大蛇が現れた為に車が遅くなる。
>>810
人型(王)「僕はこのトンネルの王なんだ。僕を倒せる?」

突きの一撃で体の一部が煙となる。
しかし、他の個体より強いのか、怯むことなく槍を突き出す。
シンプルだが、洗練された一撃。
812 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/24(木) 01:13:15.93 ID:hGOQwPCDO
>>808>>809
「おいどうすんだこれ!カオスってレベルじゃねえぞ!?」

とりあえず黒蔵を引き上げたはいい物の、目の前で何やらでかくなりもうした、というかこんな事できたのか、あの時喧嘩にならなくてよかった

「もう誰かそいつ落ち着かせといてよもう!私知らない!」

>>810
「ちっきしょう!そんな素っ気なく返す事ないだろ!長生きの癖にネチネチしつこいぞ!」

とりあえず黒蔵は自分では何とも出来ないと判断、荷台の後ろ側に立ち、木刀を構えて敵を待ち構える

>>811
「うるせぇ!俺のマグナムの方がすげえわ!!」
「余り時間は掛けられない、鬼鉄!」
『ようやく儂の出番か!』

す、と伸ばした左手に人魂を掴み、それを木刀に押し入れる

『儂の魂の炎に焼かれれば、何であろうと刃と化す!』
「いくぜおい!」

豪、と燃え上がる様に蒼い闘気が木刀に纏われ、木刀が刀の様な切れ味を持つ

「足元が隙だらけだ!」

それを以て、人型の足元を薙ぎ払い、足を崩して荷台から落とそうとする
813 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/24(木) 01:26:33.26 ID:xTXiDsjg0
>>809,812
『知らないって…しょうがないか。』

黒蔵を元に戻す為に何か方法を考えてみた。
…が、ここには零の物がある訳でもなく、不可能と言う結論に。
しょうがないので(ラスト一回)そのまま治療しようとした。

>>810
「え、呆れ顔…。何が不満ですかっ!」

と言って、更に手榴弾ry

>>811
「え…投げちゃった……しょうがないよね。」

開き直ると、また人型を切り始めた。
運転手のことなど、考えず。
814 :黒蔵 [sage]:2011/03/24(木) 01:30:40.86 ID:rR89JN8Ko
>>810-813
(ひーん、痛いー怖いー)

なんとこの大蛇、でかい図体で泣いている。存在だけでうっとおしいことこの上ない。
ついでに果てしなく邪魔である。
ただ、大人しくはしているので露希の治療には差し支えない。

しかし役立たずの蛇にオカマ臭い台詞を吐いた丑三の薙ぎ払いによって
たたらを踏んだ人型が、ついでに蛇の背中の銃創を踏んだ。
蛇の脳天へと突き抜ける激痛が走る。

「しぎゃぁぁぁぁぁっ!!!!」

痛みか怒りか生存本能か、露希のお陰で多少体力が戻った黒い大蛇は、
衝動のままに黒い人型の頭から胸の辺りまで、がぶりと一口に噛み付いた。
2本の毒牙は抜かれているが、鋭い歯ならばまだ十分にある。
815 :宝玉院 三凰 :2011/03/24(木) 01:34:06.97 ID:rSmplk6AO
>>811
「フッ…どうやら貴様が親玉のようだな。」

他の個体より、丈夫なことを見ての判断。
槍の突きに、レイピアの突きをぶつける。
このまま、レイピアで槍の攻撃を止めるするつもりだ。


>>812
「うるさい!無駄口を叩いてないで、戦いに集中しろ!」

三凰、目の前の敵で精一杯の様子。
人型の王は、それほど強く感じた。


>>813
「おい…トラックだ、本当に壊れるぞ!」

大きな声で言う。


>>814
「ええい!うるさい!静かにしろ!
まったく…何なんだこいつは…」

そう言っている三凰に、微かな隙が――
816 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/24(木) 01:39:58.31 ID:xPbid7pG0
>>812
すばらしい一撃。足元が消滅した人型は荷台から落ちていった。

運転手「おわー!助けて!」

運転席のドアに黒い人型がつかまっている。
>>813
運転手「のわー!」

今度は左側に穴があく。
人型は簡単に煙となって消えていく。

黒井「ずいぶんと調子良さそうだな…」

ぼろくなったトラックの横をバイクで並走する黒井。
>>814
さすがの牙である。黒い人型は煙となって消えた。
意外とうまい。
後四体ほどいる。

運転手「怒りをお沈めくだしあ!」
>>815
王「そう、親玉…っ!」

レイピアの攻撃で槍が止められる。
そのため、こちらにも隙が生まれた。

王「やるね」
817 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/24(木) 01:47:34.93 ID:hGOQwPCDO
>>813>>814
「…うわー、めっちゃこえー…」

黒蔵がいきなり動き出し、人型に噛み付いたのを手を出さず見ていた
正確には出せなかった―――だが、なんにしろ彼は今「あそこにいるのが自分じゃなくてよかった」と思った

>>815
「おいおい、お喋りする余裕もないのか?何なら手伝ってやろうか?」

右肩に木刀を担ぐようにして、左手で飴の棒をくりくり捻る

>>816
「…と、言いたい所だが、今はちょっと無理っぽいわ、頑張れ蝙蝠貴族」

「じゃ」と軽いノリで三鳳に言った後、荷台から運転席屋根上に移動

「無賃乗車は御遠慮願いまーす!!」

木刀を逆さまに両手で持つと、そのままドアにしがみつく人型にまっすぐ突き落とす
818 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/24(木) 01:59:47.34 ID:xTXiDsjg0
>>814
黒蔵も少しは元気になったようだし、戦おうと思うが目眩がした。
先程の衝撃で頭を撃ったところから流血していた。
そのままへなへなと座り込んでしまった。

>>815
「壊れない壊れない。それよりその人型、厄介だね。手伝おうか?」

再び手榴弾を取ろうとしたが箱が空になったため、箱で人型を叩きつけた。

>>816
「黒井さん!」

箱で殴りつつ、笑顔で話す。ぼこぼこ。
どうしてトラックがここまでぼろになったのか、黒井は知らないだろう。

>>817
「そのエクスカリバーってカッコいいですね。

ロマンを感じます!!」

強さ、見た目、名前の響きから、なぜロマンになったのかは分からない。
819 :黒蔵 [sage]:2011/03/24(木) 02:01:29.21 ID:rR89JN8Ko
>>815-818
黒蔵の胃袋のほうは毒でも炎でもどんと来い、なのだが口から喉まではそこまで頑丈ではない。

白井に口の中を焼かれてから、ずっと水しか飲めなかった。
あの時最後の食事を吐いたのは、とても勿体無かったと後悔もしていた。
今噛み付いたこの人型が、あれ以来始めて黒蔵が口にしたものである。
この黒い人型は煙となるので、焼け爛れた口でも食べることが出来る。ついでに旨い。

(あれ?コレってけっこうイケる)

人型の優しい口当たりと味わいに満足した腹ペコの大蛇は、
丑三がドン引きしているのにも気づかずに、首を伸ばして次々と捕食を始めた。
既に戦闘ではない。

(久しぶりのご飯ー♪)

おかわり4杯目。
820 :宝玉院 三凰 :2011/03/24(木) 02:08:39.70 ID:rSmplk6AO
>>816
「ここからが、本番だ。全力で行く!」

言い終わると同時に渾身の突きを放つ。

「これが、宝玉院家の力だ。」


>>817
「黙れ!誰が貴様の手など借りるか!」

そちらは見ずに怒鳴り散らした。


>>818
「うるさい!僕一人で十分だ!」

反発。意地でも自分一人で倒すつもりだ。


>>819
「おい!僕の相手には、手を出すなよ。コイツは僕一人で倒す。」

三凰が自分一人で戦うことにこだわるの理由は二つある。
一つは、助けを借りることにプライドが反すること。
もう一つは、これしきの相手を倒せないのであれば、百鬼夜行の主など不可能だと悟っているからだ。
821 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/24(木) 02:18:27.91 ID:xPbid7pG0
>>ALL
トンネルを抜けた。
高速道路からは遠くのほうに夜景が見える。
と、ともに左から現れるのは旧ソ連製攻撃ヘリコプターハインド。
妖気を発している。
>>817
木刀は人型に真っ直ぐ突き刺さり、人型は煙となって消えた。

運転手「ちょっと!なんか本格的な攻撃ヘリきたよ!どうすんの!なんとかしてくれ!」

もはやぼろぼろのトラック大ピンチ。
>>818
黒井(え…、これ手榴弾の後だよな…)

トラックを分析。
箱で殴りつけた人型は消え去った。
トンネルを出たため弱くなったようだ。

黒井「ハインド来てるぞ」
>>819
人型は全滅したようだ。

運転手「ハインド来るとかどうすんだよ…蛇、なんかない?」
>>820
王「うぐっ!」
槍でなんとかはじき返す。
もう余裕はない。
こちらも最大の力で望もう。

王「この一撃でぇ!」
王は全力をこめ、稲妻をまとった槍を振るった。
そして、大きな隙が生まれた。
>>ALL
ロケット弾がトラック両サイドに着弾する。
揺れる揺れる。
ハインドはトラックの真上を通る。手が届きそうな距離。
感のいいあなたは感じるだろう。
今こそ必殺の一撃をハインドにたたき込むときだと!
822 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/24(木) 02:31:36.88 ID:hGOQwPCDO
>>818-821
「いやふざけるなよ、何あれ、何あれ?ヘリ?え?あんなの落とすの?」

トンネルを抜けた後は、ヘリでした

「無理だろ常識的に考えて」

ぐらぐら揺れるトラックの上で、木刀を杖にして持ちこたえる
屋根に刺さっている気がするが気にしない事にした

「っ…一応妖気は感じるから妖怪か…?付喪神にしてもヘリってお前…」
「…弱点さえ見付かりゃ、一発ぶち込めるんだが…!とうっ!」

ヘリが接近してきたのをチャンスとばかりに、木刀を口にくわえて両手を伸ばし、ジャンプしてヘリにしがみつこうとする

(あるとしたら内部か?その前に俺が死にそうだけどな)
823 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/24(木) 02:45:47.06 ID:xTXiDsjg0
>>819-822

「トンネルは抜けたけど…ってヘリコプター?」

特に驚く様子も無い。
妖気を発していることから、普通じゃないことは分かった。

『くっ……』

ロケット弾の衝撃で横たわっている露希にかなりのダメージが蓄積された。

「…本気だそう。あの蝙蝠君にも見せなきゃ…」

零の双刀から、溢れ出るほどの妖気が発せられる。
黒く、漆黒と化した双刀でハインドを捉えた。
824 :黒蔵 [sage]:2011/03/24(木) 02:47:30.80 ID:rR89JN8Ko
>>820
(それ、一番美味しそうなんだけどな)

でも、他人の獲物に横から手を出しちゃいけないのは蛇も判っている。
もし横取りするなら、その獲物の主ごと食べる気でかからないといけない。

(コウモリって美味しいのかな)

ちょっぴり物騒なことも考え始めたようだ。

>>821-823

(はいんどって何?あのうるさいのがはいんど?)

ロケット弾が着弾・炸裂する。人間が使う飛び道具に独特の、あの嫌な火の匂いだ。

(あれ、あんまり美味しくなさそう)

でもさっきの黒いのを食べさせてもらったのだし、なんかないか、と頼まれたら
何かしないといけない気もする。

頭の悪い蛇はとりあえず、飛び去ろうとするはいんど、って奴の尻尾(テイルローター)の付け根あたりに
噛み付いてみることにした。
それがどれだけ危険か、なんて蛇は知らない。鳥でも捕まえる感覚でぱくっと行くのだ。
トラックの荷台からずるずる、っとそのまま引きずりだされる可能性とかは考えていないので、
もしそうなったら慌てて何かに尻尾を絡めて捕まろうとするかもしれない。
運悪くそこへ巻き込まれる人がでたら、まことにご愁傷様である。

蛇がヘリに向かって持ち上げた鎌首は、飛び上がった丑三の丁度いい踏み台になるようだ。
蛇の頭を蹴ったら、上手くヘリの扉から中に飛び込めるかもしれない。
ただ、もしも頭に捕まっていたらそのままテイルローターのほうへ連れて行かれてしまうので、
丑三は一瞬で判断しなくてはならない。
825 :宝玉院 三凰 :2011/03/24(木) 02:54:37.68 ID:rSmplk6AO
>>821
「フッ…全力の攻撃というのは良い判断だったが…」

隙を見て、冷たい笑みを浮かべる。

「隙だらけだ!」

一気に接近し、高速で突きを叩き込む。

「僕の夢への踏みだいとなれ!」


>>822
(ヘリ…次はあれが敵か…?まったく、次から次へと…)

面倒そうな表情でヘリコプターへと視線を移す。


>>823
(コイツ…これほどの妖気を…)

内心、敵でなくて安心していた。
尤も、いつ敵として対峙してもおかしくない立場なのだが。

>>824
そんな黒蔵の考えは、知らずに今はヘリコプターの方を見ている。
たとえ、戦力は足りていようとも戦わないのは、宝玉院家の名に泥を塗ることになる。だから、戦いに参加しようと様子をうかがっているのだ。
826 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/24(木) 03:00:20.14 ID:xPbid7pG0
>>822
>>824の通り、彼はヘリの扉へ入ることができただろうか?
>>823
その一撃はハインドの両兵装を完全に破壊した。
そこから血が吹き出す。
当然ただのヘリではないのだ。
>>824
このハインドのテイルローターは、やらかい。
そして、まずい
プロペラ回して飛んでいるのではない。
妖気で飛んでいるのだ。
そして、このヘリには力がない。引きずられることもないだろう。
>>825
全力の一撃…悔いはない…。
王は光の粒となって消えた。
彼はいつも全力で生きたのだ。
ヘリはなにやらやらかそうだ
827 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/24(木) 03:08:58.09 ID:hGOQwPCDO
>>823-826
ヘリへとジャンプした彼の目に、ある物が映った

「見えた!これだ!」

黒蔵の頭を、何の躊躇いも無く踏み付け、足場にして

「突入ぅぅう!!!」

ゴロゴロ転がりながらヘリ内部に突入した

「どや!?」

制止後のポーズもバッチリ決める
828 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/24(木) 03:12:38.13 ID:xTXiDsjg0
>>824-827
「あとは、エクスカリバーの人たちがやってくれるかな…」

『…何が起きてるの?』

「怪我治すから、大人しくしてて。」

怪我を治しつつ、全員の無事を祈る。
829 :黒蔵 [sage]:2011/03/24(木) 03:14:36.02 ID:rR89JN8Ko
>>825>>827
(コウモリは飛べるんだよなー。いいなー)

低空飛行のハインドの尾をひょいっぱくっと捕まえに行けるほどでかい図体の癖に、
この蛇は飛べるコウモリがうらやましいらしい。

そして最後の人型が三凰の夢への踏み台となったころ、蛇の頭は丑三の踏み台になっていた。

>>826>>828
ぶよぶよと、魚の腹のようにやらかいハインドの尻尾。
食らいついて直ぐに蛇は後悔した。
そこから噴出す血は、酷くオイル臭かった。
その味に、蛇は露希に食べさせられた、零お手製のチョコレートを思い出す。
そして人型ほど口当たりの良くないハインドは、焼け爛れた口にはとても痛かった。

(これ、早いとこ、ぺっ、したい)

特に引きずられることはなかったので、蛇は口にハインドを咥えたまま、
これどうしたらいい?と尋ねるように運転手のほうを見た。
830 :宝玉院 三凰 :2011/03/24(木) 03:18:58.11 ID:rSmplk6AO
>>826
王の消滅を確認。

「さて、残るはあのヘリだけだ。」

ヘリの様子を注意深く見る。
何かやらかしそうだ。とっさにレイピアを構える。

「何をするつもりだ?」


>>827>>828>>829

(内部、尾、もうあのヘリは終わりだろう。いや、普通のヘリじゃないならまだだ。まだ何かある。)

そう思い、いつでも攻撃または飛行に移れるように注意する。
831 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/24(木) 03:25:21.89 ID:xPbid7pG0
>>827
素晴らしいポーズだった。評価は百点中、九十点かもしれない。
白目を向いた男の首が壁から生えている。
劣化がひどく、きれいな顔ではない。

どうやらそこから妖気がでているようだ。
>>828
黒井「ヘリが出てくるとはな。これは困った」

トラックはもはや廃車だろう。

運転手「減給…まずいなぁ…おまえのせいだぞ」
>>829
運転手「…こっちみるなよ。中の人が出るまで耐えなさいよ」

廃車となるだろうトラックを停車させる。
見るも無惨である。
>>830
黒井「あのヘリはもうおしまいだ。木刀お兄さんがやっつけてくれるだろ」

首をグルグル回す黒井。
バイクを停車し、周囲を見渡す。

黒井「王をやったんだな。やるじゃないか」
832 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/24(木) 03:30:51.18 ID:hGOQwPCDO
>>828-831
「お前が親玉か?まったくいきなりこんな所に呼びやがって、何考えてやがる」
「…話が通じているか解らないが、答えるまで三秒待ってやる、答えても話が終われば撃つけどな」

口から木刀を右手に取って肩に担ぎ、左手の袖からすとんと手の中に何かが落ちる
リボルバー式拳銃をその左手に持って相手の眉間に向け、カウントを始める

三秒立つか、話が終わると躊躇い無く引き金を引くだろう、退魔の力を込めた、特製の弾丸だ
833 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/24(木) 03:36:02.51 ID:xTXiDsjg0
>>829-832

「廃車…え、なんで私のせいですか!!

木刀お兄さんとかだって手榴弾は…」

酷い良い訳。破損の8割は零がやったと言うのに。

「もうすぐ、ヘリは終わりますが、私たちはどうなるのでしょうか…」
834 :黒蔵 [sage]:2011/03/24(木) 03:39:49.47 ID:rR89JN8Ko
>>830-833
トラックが停止したので蛇はヘリを地上へ引っ張り下ろそうとする。
上手くいけば丑三以外の者も攻撃しやすくなる。
そしてあまりに美味しくないので、咥えるよりも体を巻きつけて締めてみたいのだが、
そこまでする体力はない。
しかし、やわらかヘリなので、もし締め上げたなら中の丑三が困りそうではある。

(まずい…まずすぎる……)

じっと我慢してヘリを咥える蛇に、ひゅーと風が笑いかけていった。
835 :宝玉院 三凰 :2011/03/24(木) 03:45:26.33 ID:rSmplk6AO
>>831
「ん?貴様は、いつかの人間。
なんだ、もう終わりなのか?まぁいい。これで、元の次元に戻れるんだろう?」
わざわざ、面倒な戦いをした理由である異次元からの脱出。それが、可能か尋ねる。
しかし、この戦いは三凰の良い修行になってもいた。

「まぁな、僕の勝利だ。」


>>832>>833>>834
「しかし、退屈だ。ヘリが崩壊するまで待つのは…」

しびれを切らし、声を上げる。

「おい、早く済ませろ!でないと、突撃するぞ!」
836 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/24(木) 03:50:25.39 ID:xPbid7pG0
>>832
白目は何も喋らない。聞こえないのだろう。
まるで妖気を出すための動力源のようなイメージを受ける。

三秒経った。さぁ、撃って脱出しよう。
今は怪我ができないほど高度が低い
>>833
運転手「…トラックの上に投げるとかもうね…」

運転手はトラック座席でぐったり。
黒井は報告書を書かないとでぐったり。

黒井「いつも通り、ヘリが落ちれば帰れるだろ、自動的に」
>>834
ヘリは着地した。
もうヘリも動こうとしない。
離しても大丈夫だろう。

運転手「おつかれーい。まずかっただろ?よくがんばったじゃん」
>>835
黒井「ああ、帰れる。最初、歌を聞いただろ?なら帰れる」

帰ることは可能である。
きっと、元の場所へ。

黒井「あの王は俺も追ってたんだがな。先を越された。はっはは」
837 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/24(木) 04:00:10.42 ID:hGOQwPCDO
>>833-836
「…どうも、何かありそいだな」

発砲し、すべてを終えた後
銃をくるくる回してしまい、ヘリから脱出する

「みんなー!やったぐぶぁ!!」

…トラックの上に着地するはずが、少し外れた場所に着地してしまったが
838 :零「」&露希『』&双龍 :2011/03/24(木) 04:04:22.26 ID:xTXiDsjg0
>>834-837
「ヘリが落ちたと言うことは、お別れの時間ですね。

露希、立てる?」

『う、うん…。』

露希に関してはへなへなで、結構やばい状態。

「黒井さん、今回のことは、後で詳しく聞かせてください。

それでは、また現実世界で合いましょう。」

/お疲れさまでした&ありがとうございました!!
839 :黒蔵 [sage]:2011/03/24(木) 04:05:13.43 ID:rR89JN8Ko
>>835-838
おつかれーい、と言われて蛇はほっとする。
もうくたくただ。口の中も痛い。

(あの人、はいんど食べたことあるんだろうか?)

まずさを知っている運転手さんは、ゲテモノ食いの黒蔵からゲテモノ食いの疑惑をかけられている。

人の姿に化身して、黒蔵はトラックの荷台でぐったり。
白井に撃たれた時の銃痕は、黒蔵の背中で5つがW字型にならんでいる。
露希に応急手当はしてもらったので止血はしてあるが、中に弾とか残ってるんじゃなかろうか。

目の前の敵は片付いたが、まだ人間の対魔師と黒井、運転手が残っている。
この体で戦えるだろうか。
840 :宝玉院 三凰 :2011/03/24(木) 04:10:24.58 ID:rSmplk6AO
>>836
「帰れるのか、ならいい。」

少しだけ、安心したような表情を見せる。

「貴様の獲物だったのか?悪いな、だが早い者勝ちだ。奴には、僕の夢への踏み台となってもらった。」


>>837
着地に失敗した丑三を見て

「…やたら、格好つけるからだ。まったく、愚かだな。」

と、笑ってみせる。
やたら格好つけるのは、三凰なのだが…

>>838>>839
「どうやら、本当に帰れるようだな。」
841 :イベント ハイウェイチェイサー [sage]:2011/03/24(木) 04:18:09.55 ID:xPbid7pG0
>>837
ヘリはドロドロと溶解し、消滅した。
後には、何も残さず…。

黒井「お疲れ。面倒な奴だったな」
>>838
黒井「おう、また詳しく話す」

にしてもトラックに手榴弾投げるとはなぁ。
と思う黒井だった。
>>839
運転手の名はセルゲイ・アントノフ。
その昔、ハインドを操縦し、旧ソ連のry

黒井「とりあえず今日は家に帰ってゆっくり休むといい」
  (あの傷跡…銃で撃たれたようだな…)

運転手「人型うまかったか?」

運転手もぐったりだ。疲れている。
>>840
黒井「確かに早いものがちだよなぁ。
まぁ、今度は獲物を捕らせないがな!」

そういう黒井の背後が歪んでいく。
どうやら帰れるようだ。

>>ALL
あなたは気が付いたら元の場所にいた。

/終了です。お疲れさまそしてありがとうございました!
842 :黒蔵 [sage]:2011/03/24(木) 04:25:01.89 ID:rR89JN8Ko
>>841
疲れたから、トラックの荷台でちょっとだけ目を瞑るはずだった。
人間がまだ3人残っていたし、彼らが妖怪をあっさり逃がしてくれるとも思えなかったので。
しかし、気がついたら黒蔵は元の場所、公園の泉の傍にいた。

(なんだ、夢だったのか)

今度こそ、傷ついてくたくたの黒蔵は眠りに落ちた。
843 :宝玉院 三凰 :2011/03/24(木) 04:42:06.31 ID:rSmplk6AO
>>841
「フッ…別に貴様と競い合うつもりはないが…貴様が競い合う挑戦をするなら…受けてたとう。」

そう言うと、歪んだ空間に向かい歩き出す。


気づけば、元の場所。

「フッ…悪くない戦いだったな。」
844 :鹿南 [sage]:2011/03/24(木) 21:46:56.38 ID:rR89JN8Ko
山から人里へつづく道。
かつて道祖神のあったその道をくすくすと笑いながら、ほっそりした影が一つ跳ねて下っていた。
臙脂色の着物に芥子色の兵児帯。
裸足の脛が夜目にも目立つ。

(莫迦だね莫迦だね、人間は。里の守りを自らのけた)

今日はどの子と遊ぼうか。
年のころなら12,3、人の娘の姿に化けて、山のもののけは人里を目指す。
もう少し下れば道にも明かりがつき始める。
その少し先、橋を渡れば人の家が並ぶ場所。
845 :平次郎狸 [sage]:2011/03/24(木) 21:53:13.73 ID:jT9/zuzOo
>>844
橋の向かい側、街頭に照らされた道を人を挑発するような赤が見える。
それは段々と近付き人の形を成した。
その正体は赤ジャージを着た平次郎狸。
どうやら山に行く途中らしい。

「あん? こんな夜更けに餓鬼? む? 人じゃないのか……?」

夜に子供の姿を見掛けてしまい驚いたがその子供の雰囲気や姿からなにやら面妖なものを感じたので戸惑っているようだ。
846 :鹿南 [sage]:2011/03/24(木) 22:00:49.13 ID:rR89JN8Ko
>>845
橋の中ほどで、くすくすと笑いながら子供が平次郎狸を見ていった。

「そういうおじちゃんも、人じゃないのよね」

鮮やかな赤と金で彩られた手毬を一つ、胸の前で大事に持って裸足の子供は佇んでいる。
無邪気に笑っているはずなのに、子供はあまりにも妖しげで異様だった。

「あたしはこれから遊びにいくの。おじちゃんそこを通してね」

ぽん、と投げ上げられた手毬がくるくると宙を舞って、また受け止められた。
847 :平次郎狸 [sage]:2011/03/24(木) 22:08:56.79 ID:jT9/zuzOo
>>846
おじさんと言うワードに苦笑してしまう。

「おいおい、お兄さんと言ってくれよ。おれはまだまだ若いんだぜ?」

本人曰く「自分は遅咲きの花だからまだまだ成長する」らしい。
何年経っても向上心だけは失わないようだ。

「それにしても、遊ぶったってこぉんな夜更けに嬢ちゃん一人でかい?」

目線を合わせるようにしゃがみこんで問う。

「子供は早めに寝るのが一番だぜぇ? 成長しねぇぞ? どうしても遊びたいっつうならお兄さんが付きやってやるよ」

少女のをまじまじと観察し確信する。やはり人では無い。
こんな夜に、時代錯誤な服装の少女が一人でいる。
こんなにおかしいことはない。
848 :鹿南 [sage]:2011/03/24(木) 22:14:12.02 ID:rR89JN8Ko
>>847
「夜おそくまで寝ない子が、あたしの遊び相手なんだよ」

もののけが笑う。

「ふーん、じゃお兄さんといってあげるわ。
 あと、あたしも嬢ちゃんじゃなくてお兄さんだよ。まぁ、このカッコじゃ間違えるのも無理ないけどね」

いきなりの爆弾発言。
そう、こいつは立派なオスである。
849 :平次郎狸 [sage]:2011/03/24(木) 22:22:36.01 ID:jT9/zuzOo
>>848
「あ゛!? オスかよ、てめぇ!?」

今までの自称紳士然とした姿をかなぐり捨てて叫ぶ。

「ファッ●! 神は死んだ! なんでこんな可愛らしい姿してんのに付いてるもん付いてんだよ!」

期待を裏切られた反動か、物凄い勢いで毒ずく。
この男にフェミニストのような面があるのは否めない。
だがこれはあまりにもひどいと言えよう。
しかしこれはこの少年が人外に属しそれ相応に年を重ねているだろうことを省みての毒舌だ。

「よっしゃ、分かった、坊主。Uターンして帰りやがれ。どうせ碌なことしやがらないんだろうからなぁ」

すぐにでも中指を立てかねない勢いだ。

「それでも帰らないなら俺が遊んでやんよ」

挑発的な笑みを浮かべてのこの発言。
本当に齢四百を数える僧狸なのだろうか。
850 :鹿南 [sage]:2011/03/24(木) 22:31:29.43 ID:rR89JN8Ko
>>849
「あら何?お兄さんってそういう趣味?やぁね」

子供の姿のもののけは、眉をひそめてまるで犯罪者をみる目つきである。

「あたしは子供なら性別関係なく平等に扱うけど、お兄さんは幼女趣味かしら?
 言っとくけど、あたしのこの姿は子供に近づくのに都合がいい姿をとってるだけよ」

さげすむような目つきで子供が言う。

「変態に邪魔されて、素直に帰る気はないわねぇ」

ぽん、と鞠が投げられる。軽やかに子供が跳ね回る。
鞠の数が跳ねながらどんどん増えて、平次郎狸の周りを囲んだ。
くすくすと笑い声が増えて、跳ねる子供の数もまた増えてゆく。
851 :平次郎狸 [sage]:2011/03/24(木) 22:43:30.66 ID:jT9/zuzOo
>>850
冷たい視線に負けず胸を張って言い返す。

「っは! 人を犯罪者みたいに言うなっての。俺だって子供は平等に好きさ。
 ただてめぇみたいに餓鬼のふりして人を惑わすやつを子供にカテゴライズすんのが嫌だっただけだ!」

周りを取り囲む怪異にも余裕綽々の笑みを浮かべる。

「いいねぇ。乗ってきたなぁ! 俺も遊んでやるよ。覚悟しろよぉ。今の俺は優しくねぇぜ?」

拳を打ち合わせ金属に変えると両手を下げ力を抜いた体勢をとる。
しかしその姿は抜き身の刀のような鋭さを思わせた。
852 :鹿南 [sage]:2011/03/24(木) 22:51:03.15 ID:rR89JN8Ko
>>851
「狸さん狸さん、遊ぼうじゃないか」

平次郎狸を取り囲む子供と鞠の輪が歌いながらくるくる回る。
楽しげに誘う色鮮やかな惑わしの輪。
本来は子供を夢中にさせてついてこさせるための幻だが、今は平次郎狸の感覚を狂わし
標的を隠すために使われている。

平次郎の周りで次第に早く輪は回りはじめ、やがて色彩の渦となる。
もはや鞠と子供の区別はつかず、ぼんやりと幻のようだ。
853 :平次郎狸 [sage]:2011/03/24(木) 22:57:44.06 ID:jT9/zuzOo
>>852
「ほう………、こりゃまた厄介な……って酔いそう!?」

直視してはなんか危なそうだ。
しかしこういった手合いの小細工は体験したことがある。
まわりに呑まれずただただ回りに集中し、気配を感じ取ればいい
視覚だけにたよらず嗅覚、聴覚、果ては周りを囲む空気にすら集中する。

「ってやっぱ酔う……。こうなりゃあ……」

何を思ったのだろうか。平次郎狸は目を閉じた。
視覚を惑わされぬようにする心算のようだ。
854 :鹿南 [sage]:2011/03/24(木) 23:05:29.76 ID:rR89JN8Ko
>>853
ここは橋の上である。誰かが跳ねれば振動でゆれる。
目を閉じた平次郎狸の感覚は、振動と匂いを感じるだろうか。
それとも、揺れでさらに酔ってしまうだろうか。

そしていつのまにか歌が変わっている。

「かごめかごめ、かごの中のとりは」

はたして後ろの正面に、注意は必要なのだろうか?
855 :平次郎狸 [sage]:2011/03/24(木) 23:20:08.38 ID:jT9/zuzOo
>>854
未だに集中する平次郎狸。
勿論全方位とはいっても隙は存在する。後方のごく僅かな範囲。
意識の届かない場があった。

「んむぅ……。やはり面妖な……」

先程小細工と称したが評価を改めねばなるまい。
見事にそれは感覚を惑わし平次郎を追い詰めつつある。
856 :鹿南 [sage]:2011/03/24(木) 23:25:20.08 ID:rR89JN8Ko
>>855
「うしろの正面、だぁれ」

平次郎狸の背後に、大きく広がった角を低く構え、前足で地を掻く、金色の大鹿が居た。
目は炭火の色に燃え、荒々しい鼻息を一つ噴くとその大鹿は突進してきた。

妖怪ガンゴジ。

西日本でガンゴゼ、ガゴゼなどと言われる元興寺の鬼とは、似た名であるが由来は違うらしい。
子供をとって食う、という部分は共通するのだが、
この鹿の食らうのは親の言いつけを聞かない子供である。

角は大人が両手を広げたほどの大きさである。鋭い先端は左右それぞれの角に8つずつ。
それが平次郎狸を背後から掬い上げ、鞠のように投げようと向かってくる。
857 :平次郎狸 [sage]:2011/03/24(木) 23:31:02.13 ID:jT9/zuzOo
>>856
平次郎狸とてただの馬鹿ではない。
自分の力量を正当に計りきっている。
自分の長所、短所、得意、不得意、美点、弱点を分かっている。
そんな彼が自分でも気配の読み辛い背後に重きを置くのは自明の理だった。
自分の隙を自覚し、それを利用する。

「見切ったっ! 後ろ!」

しかし哀しいかな。惑わされた五感は反応を鈍くし自分の体が宙を舞うことを許してしまう。
858 :鹿南 [sage]:2011/03/24(木) 23:37:50.70 ID:rR89JN8Ko
>>857
「てんてん手毬の、手がそれて」

鞠のように跳ね飛ばされた平次郎狸が落ちてくるところを狙い、
大鹿は後足で蹴り上げようとする。

草食動物の蹄を侮ることなかれ。ただの馬が軽く蹴っても骨を砕く。
ましてコイツは妖怪だ。ひと蹴りすれば岩でも砕く。
偶蹄目なので蹄の先は馬より鋭い。
体をひねってかわすとしても、鹿は敏捷さと跳躍力をもって、その動きを追ってくる筈だ。
859 :平次郎狸 [sage]:2011/03/24(木) 23:50:08.58 ID:jT9/zuzOo
>>858
「のぉおおおお!? ハハハハハハ!」

驚きながらも、角の先端に背を傷つけられ、空を舞いながら平次郎狸は笑う。
自分に怪我を残した相手への愛おしさが腹から込み上げる。
やはり戦闘狂か。いかなる状況でも楽しむことを忘れていない。

空に上がった体をそのままにはせず反転させ下を向く。
堕ちながらも狙いをつける。標準は今正に己を狙う後ろ脚。
宙を許す限り回転し勢いと重力を味方につけた踵落しを炸裂させた。
金属が鳴る高い音と共に平次郎の体が静止する。
どうやら威力が拮抗しあったらしい。
直ぐに飛びのき体勢を整える。

「そいつがてめぇの正体か!」

組み手の構えになり妖気を漲らせる。
860 :鹿南 [sage]:2011/03/24(木) 23:58:19.09 ID:rR89JN8Ko
>>859
「あら、ま。そういえば、狸さんはぶんぶく茶釜の術があったわね」

響いた金属音に大鹿はちょっぴり残念そうである。

「もうちょっとこの歌の続きまで行きたかったわねぇ」

平次郎狸を「飛んでった飛んでった」させるつもりだったらしい。ここ橋だぞおい。

「正体もなにも、あたし別に隠してるわけじゃないしぃ?
 子供誘いにいくからそれなりのカッコしてただけよぉー。
 狸さんだって尻尾だしたほうがやりやすいこともあるんじゃなぁい?」

立派な角の牡鹿はオネェ言葉で優雅に角を揺らめかせた。
861 :平次郎狸 [sage]:2011/03/25(金) 00:08:55.96 ID:hNSiBg1Yo
>>860
「ご名答! もう俺の四肢は鋼に変わったさ」

両の手を打ち合わせても脚を地面に打ち合わせても金属音が聞こえる。

「しっかしてめぇの手毬歌に付き合わされるなんて怖じ気がするね! 最近の流行はK-POPなんだよ!
 つかてめぇ女言葉使うな! さっきの衝撃がフラッシュバックてイライラすんだよ!」

腹立たしげに地団太踏む。先程の男女詐称は平次郎狸の心に傷を残したらしい。

「アァ……、尻尾のことには触れるな……」

尻尾のことを言われた途端に覇気が消えた。
ここで化け狸の昔話を少し振り返って欲しい。どの話も大体尻尾から変化がばれて退治されるケースが多い。
どうやら彼もその例に漏れずなにかしらの失敗があるようだ。

「ええぇい! んなこたぁいいんだ! 今度はこっちから行かせて貰うぜ!」

気を取り直し前方に集中する。
ある程度距離を取っていたにも拘らず消えたような加速で突っ込むとそのまま喉元目掛けてえぐるようなヤクザキックをかます。
なかなかえげつない。
862 :鹿南 [sage]:2011/03/25(金) 00:21:09.80 ID:qBbijSrio
>>861
「女言葉って言われても困っちゃうな。
 あたし、生まれたときからずっと、周りにメスしかいないんだもの」

何気に現在進行形でハーレム状態らしい。

「もしかして尻尾、きられちゃったりしたの?
 K-POPはねぇ、軽くってあんまりあたしのアンテナには響かないのよねぇ
 POPよりも、もっと重厚な奴がいいわぁ」

ヤクザキックを、首をかしげて角の片方で受け止めながらお喋りに花を咲かせる鹿。
そのまま牡鹿が首を反対側にひねれば、平次郎の足を角で絡めて掬える。
863 :平次郎狸 [sage]:2011/03/25(金) 00:28:51.03 ID:hNSiBg1Yo
>>862
脚を取られ冷や汗流しながらも答える。

「さらりと羨ましいこといいやがるやつだ……」

しかし笑みを浮かべて言葉を続ける。

「俺の尻尾は切られちゃいねぇよ。拝みたいなら拝ませてやる!」

脚を角で受け止められたということは脚で角を固定しているのと同義。
相手の頭が動かぬよう注意し残った左足でそのまま首の頚動脈あたりに回し蹴りを放った。
支えを失った体を蹴った勢いで反転させ下に前から倒れるように計算した。
その蹴りの勢いは凄まじい。蹴り抜いてそのまま倒れるに足る勢いだろう。
864 :鹿南 [sage]:2011/03/25(金) 00:38:23.70 ID:qBbijSrio
>>863
どん、と首に重い衝撃を受けて、牡鹿は前足でたたらを踏む。

(じつは地に足が着く限りは大丈夫なのよね、あたし)

しかし今は橋の上だ。牡鹿の目算ははずれて、がくりと前足が折れた。

「あらぁ?」

なんでこうなったのかしら、と牡鹿は首を捻ったまま不思議に思う。
頭を起こそうとしたが、今の一撃で首の筋を痛めたか、
角に絡んだ平次郎狸の重さと自分の角の重さの両方は、首が支えられない。

「痛ったぁーい!」

角が絡んだままだと頭が起こせないので、鹿は再び人の姿になる。
ちょっぴりむっとした表情で下唇を突き出し、ふくれっつらの子供が首をさすっていた。

「で、あるなら尻尾だしなさいよ、おじちゃん」
865 :平次郎狸 [sage]:2011/03/25(金) 00:45:34.10 ID:hNSiBg1Yo
>>864
そのまま蹴り抜いた勢いで下向きにうつ伏せで倒れる。
もちろん腕と脚で体を支えべったりというわけではない。

「おらよ!」

倒れたまま赤ジャージの尻からにゅっと尻尾が出たかと思うと芯の部分を鋼にし子供の頬目掛け往復ビンタをかましかける。

「俺のことはお兄さんと呼べっつたろうが!」

怒る所が非常にせせこましい。
しかしその子供の表情を見て攻撃の速度が鈍る。

(あれ? もうこいつやる気無ぇのか?)
866 :鹿南 [sage]:2011/03/25(金) 00:51:15.75 ID:qBbijSrio
>>865
「なんだ、ちゃんと尻尾あるんだ」

いいながら子供は尻尾をつかむ。

「ふさふさー。さすが狸の毛皮、人間に狙われるわけよねー」

口先では褒めながら、子供は狸の尻尾をがっつり握り締める。ぎゅうぎゅうぎゅう。
幸せそうな作り笑顔をしてみせるのは忘れない。

「立派ないい毛皮ー」

そしてお兄さんとよべ、という要求にはさりげなく無視をする子供。
867 :平次郎狸 [sage]:2011/03/25(金) 00:56:10.97 ID:hNSiBg1Yo
>>866
別に尻尾が弱点などという展開も無く素直に賞賛を受け入れる。

「そうだろう? いいだろう! 自慢の毛並みだ!」

意外や意外、しっかりと自分の毛皮が自慢だったらしい。
得意げだったがそれも訝しげになってきた。

「それはいいとしていつまで掴んでんだ? そろそろこそばゆくなってきたぞ」

少しばかし尻尾に力を入れ意志を示すように動かす。
868 :鹿南 [sage]:2011/03/25(金) 00:59:56.09 ID:qBbijSrio
>>867
「狸さんの背中の毛皮とかおなかの毛皮も触りたい!」

子供は平次郎にもふもふを要求した。

「お兄さんだって、さっきあたしの本性みたじゃなーい。あたしにもみせなさいよぉ」

要求するときだけはちゃっかりお兄さん呼ばわりをする。
流石はオネェ。女性的駆け引きは身についているようだ。
869 :平次郎狸 [sage]:2011/03/25(金) 01:07:26.41 ID:hNSiBg1Yo
>>868
どうやらもう戦闘する気は無いようだ。平次郎は拍子抜けしたように息を吐いた。
そのまま立ち上がると要求に答えるべく変化を解く。

「ったく、しょうがねぇなぁ」

等と言いながらも表情は緩んでいる。なんだかんだ子供の前では形無しだ。
ポンッという音と共に煙が巻き上がり身を隠す。
煙が晴れるとそこには袈裟を着た人間大の狸が直立していた。

「おら、こいつが俺の本来の姿さ」
870 :鹿南 [sage]:2011/03/25(金) 01:16:49.65 ID:qBbijSrio
>>869
「今の音、どこから?ねぇ、狸さんなのになんで人間の服着てるの?」

言いながら袈裟のすそをまくりあげて、その下の腹をさわろうとする子供。
ぺたぺた、と手が狸の腹をさわる。

「狸のお腹が太鼓になってるって話は嘘なのね」

期待を裏切られた声音だ。
狸の金玉八畳敷きを確認される前に、この子供を止めたほうがいいかもしれない。
871 :平次郎狸 [sage]:2011/03/25(金) 01:22:34.27 ID:hNSiBg1Yo
>>870
子供らしい尽きぬ好奇心に答えようと頑張る平次郎。

「今の音は妖術の応用だなぁ。後この袈裟は俺が坊さんだからさ」

腹を触る行為も寛容に許し、そのまま語り続ける。

「いや腹太鼓は打てるぞぉ。俺が腹に力を入れなきゃ無理だがなぁ。どら、ちょいと見てなぁ」

そう言って手を退けさせ息を吸い腹にくっと力を込める。
手を丸めとんと腹を叩くと正に太鼓を叩いたような軽快な音が聞こえてきた。

「おら、本当だろ?」

これでこの子も期待も裏切らずにすむだろう。それに、もっと喰いついてくれるはずだ。
872 :鹿南 [sage]:2011/03/25(金) 01:30:16.55 ID:qBbijSrio
>>871
「ほんとだ!すごい!妖術すごい!」

見た目太鼓じゃないのに、ちゃんと太鼓の音がした。

「あたしにも何か楽しい音が出せるといいんだけどね…」

鹿の鳴く声は和歌にも歌われたが、実は繁殖期の牡鹿の声ってあんまり美しい音じゃない。

「でさでさ、狸の金玉ってホントに八畳?」

忘れるな、こいつは男だ。
その手のことに羞恥心は期待しないほうがいい。
873 :平次郎狸 [sage]:2011/03/25(金) 01:37:45.57 ID:hNSiBg1Yo
>>872
「ん? この腹太鼓は俺達の種族としての特徴みたいなもんなんだが……」

まぁ、講釈をたれたところで意味もなし。

「楽しい音なんていくらでも満ち溢れてるもんさ。人の世の中にゃたくさんあるぜ?」

自らの体で何かの音を出したいというのならば別だろうが。
しかし遂にきてしまったあの質問に平次郎は固まってしまう。

「んぅ? あぁー、あれはだなぁ……まぁ術に拠る所が大きいんだが俺は修得してなくてなぁ」

思い出されるは長老の奥義の数々。
めぼしい術は大体あれを参考に独力で学んだがこれだけはやる気がしなかった。

「ほかの狸だったらできるだろうぜ?」

なかば苦し紛れの転嫁
874 :鹿南 [sage]:2011/03/25(金) 01:48:45.97 ID:qBbijSrio
>>873
「数をこなさないと駄目とかそういう方面なのね。ふーん、そっか」

子供は勝手にうんうんと頷いているが、
それは遠まわしに平次郎狸を独り寝の寂しい奴呼ばわりしている可能性もある。

「そういえば狸さんの名前、まだ聞いてないね。あたしは鹿南(シカナ)。
 いっつもこのカッコに化けてるわけじゃないわよ?」

年齢相応の人間の外見に変化しなおす子供。
25,6ほどの、ちゃんと男と判る見た目だが、羽織っている着物だけは派手な色の女物だったりする。
875 :平次郎狸 [sage]:2011/03/25(金) 01:53:10.22 ID:hNSiBg1Yo
>>874
「こっ……こいつはぁ……」

子供にそんなことを言外に含まれるとなんともいえないものがある。
まぁいい。となんとか気を取り直し質問に答えた。

「俺は平次郎狸だ。よろしくなぁ。
 しっかし、お前の姿はまた……いや、もはや何も言うまいよ」

姿を見て、もはやなんだか脱力してしまう。
876 :鹿南 [sage]:2011/03/25(金) 01:59:14.92 ID:qBbijSrio
>>875
「平次郎さん、ね。お近づきのしるしに、これあげるわ」

赤と金の鞠がぽん、と平次郎に投げられた。
鞠の中からは麝香が香る。

「今日は子供とは遊べなかったけど、あなたと遊べたからもうそれは必要ないのね」

橋を山のほうへと戻ってゆきながら、内心、平次郎狸の反応が狙い通りで
ほくそえんでいたりする鹿南だった。


//絡みありがとうございました。
877 :平次郎狸 [sage]:2011/03/25(金) 02:02:56.66 ID:hNSiBg1Yo
>>876
「おう、ありがたく貰い受ける」

まじまじと見るとなかなかの良い物だ。なにより赤色が良い。

「またなぁ〜。また今度はちゃんと遊んでやんよ〜」

そう言って姿が手を消えるまで手を振り続けた。
内心、なんだか今回は振り回され続けたなぁという反省を残して。
878 :黒井礼 [sage]:2011/03/25(金) 21:57:43.99 ID:q8xkXEX70
ある日の夕方。
ここはスーパー、ただのスーパー。その名を“スーパー大切断”。
外観はよくあるスーパー。内装もまたしかり。

「たまには自炊するか…」

入り口の自動ドアへと歩いていく黒井。
879 : :2011/03/25(金) 22:04:04.84 ID:YBQVKWNh0
その普通のスーパーの前を通り過ぎようとする少年。
今は、学校帰りで制服を着ている。

「ん?あの人まさか…」

スーパーをふと見ると、知っている人が。
880 :黒井礼 [sage]:2011/03/25(金) 22:10:19.71 ID:q8xkXEX70
>>879
「さて、魚でも焼こうかな」

ふと、視線を感じ振り返る。
零を発見。今日は学校帰りか。

「お、零。そうだ。俺の所で何か食っていけよ」

そういって手招きしながらスーパーへ入っていく。
881 : :2011/03/25(金) 22:14:58.71 ID:YBQVKWNh0
>>880
「え、いいんですか?」

零もスーパーへと入る。
今日は特にすることもないので、お邪魔することにした。

「今日は何を作るんですか?」
882 :黒井礼 [sage]:2011/03/25(金) 22:19:46.89 ID:q8xkXEX70
>>881
「今日はサバでも焼こうかな。塩焼き」

そういって黒井はサバを買い物かごへ入れていく。
黒井はあまり手の込んだものは作れないのだ。

「あれ?あんなコーナーあったっけ?」

視線の先には、大人の雰囲気漂う怪しげな暖簾。通路の行き当たりに配置されている。

「これも時代の流れかな」
883 : :2011/03/25(金) 22:29:01.95 ID:YBQVKWNh0
>>882
「塩焼きなら凄く好きです!」

零は黒井の後ろを着いていく。
制服姿で、こんなことしてて良いのだろうか?
と、ふと目に入る怪しげなところ。

「このスーパーにはこんなのがあるんですか…。」

零はこのスーパーに来たのが初めてである。
884 :夜行集団 :2011/03/25(金) 22:30:07.36 ID:DGsZ/B000
>>882>>883
彼らのいる方へ、歩いてくる二人の人影は大きくなったスーパーの袋を、
両手いっぱいにして、以前の反省会をしていた。
反省会というのは、あのせっかく買いだめた酒を虚冥に没収されたからだ。

「だからね、雨子神。
 屋敷に入るからいけないんだよ。いっそ外でね・・・」
『やってもいいけど・・・どこが一番かな・・・?』

すると、目の前によく見る顔が二人。
怪しい暖簾の前で談笑しているという光景は、いささか
大人の世界の前にいる中学生のようであった。

『こんにちはついでに聞くけど・・・』
「こんにちはついでになんですけど、向こうは何売り場なのですか?」
885 :黒井礼 [sage]:2011/03/25(金) 22:37:10.12 ID:q8xkXEX70
>>883
「塩焼きは簡単でいいよな」

そのとき自動ドアが開いたのだろう。
一迅の風が吹き抜け、暖簾がひらり、浮かび上がる。
その奥にいたのは…、

店長「ヘルシー、吸ってみるぅ?」

ヘルシーと書かれた何かを持ったおっさん。邪悪なオーラ。ダメ、絶対。
ゆっくりと、しかしはっきりと聞こえた。おばさんの話し声をはねのけ。

「さて、買うもの買ったし、帰るか」

黒井は気付いていない。おっさんは黒井に向かってくる。邪悪が、向かってくる。
886 :黒井礼 [sage]:2011/03/25(金) 22:41:24.51 ID:q8xkXEX70
>>884
「お、君等もうちに来るか?フランスワインがあるぞ」

二人に気づき声をかける。
そして迫ってくる邪悪なおっさん。

店長「ヘルシー、吸ってみるぅ?」

ダメ、絶対。
887 : :2011/03/25(金) 22:43:06.70 ID:YBQVKWNh0
>>884-885
「こんにちは。この暖簾の向こうには何があるのでしょうね。」

零もよく知らない。
隣にいた礼に聞こうとするが、知らないおっさんに話しかけられていた。

「アネさん、あのおっさん怖い。」

黒井をほったらかして、姉妹に助けを求める。
888 :穂産姉妹 :2011/03/25(金) 22:52:34.49 ID:DGsZ/B000
>>886
「え?
 
 やったよ雨子神!!ワインだって!!」
『だって!!
 じゃないよ・・・日子神はもうちょっと全体を見て欲しい・・・
 
 澱酔どころかトリップものだよ・・・』

日子神にたしなめつつおっさんの誘いを断る。
今だ理解していない日子神とは違い、雨子神は黒井の方に声を掛ける。

>>887
「こらこら零くん、人を見かけで判断しちゃだめですよ?」
『うん・・・日子神は見かけで判断する事を覚えようね・・・』

寄ってきた零に説教をする日子神だが、
今彼女が言ってもあまり説得力がないだろう。
ここは零にあれがなにか教えても良い、しかしそれよりも知らずにいさせた方がいい、
と雨子神は黙って置く事にした。

『・・・とりあえず・・・見た目怪しい人に
 ホイホイついて言っちゃだめってことかな・・・?』
889 :黒井礼 [sage]:2011/03/25(金) 23:02:52.93 ID:q8xkXEX70
>>887
店長「ヘルシー、吸ってみるぅ?」

「どうしたんだ?俺の家行こうぜ」

黒井には、おっさんは見えていないようだ。
店長なのに。

「暖簾の向こうは大人の世界だ。子供はダメ、絶対」
>>888
「みんなどうしたんだ。おかしいぞ」

黒井にはおっさんが見えていない。

「よし、行こうか」

そういって黒井はスーパーから出ていく。
>>ALL
スーパーから歩いて三分、黒井の住むアパートに到着した。
下はラーメン屋、二階がアパート。
見かけは綺麗じゃない。

「ついてきてくれ」

黒井は階段を登り始めた。
そして部屋の鍵をあけ、中へ。
その部屋の中にはタンス、テーブル、テレビ、ベッド、DVDプレイヤー等。

「調理するからほら、そこらに座って待っててくれ」

黒井は調理を始めた。
テーブルの上にはフランスワイン。

「大人の人は飲んでいいよ。飲めない人はテレビでも見てて」
890 :零「」&黒龍『』 :2011/03/25(金) 23:10:53.87 ID:YBQVKWNh0
>>888
「アネさん、あの怪しい人が良い人とでも言うのですか!」

説教されたので少し反発した。
この人はあの危ない人が見えないのか!!

「うぅぅ、アニさん〜(泣)」

そうこうする家に、黒井宅に到着。

>>889
『「お邪魔しまーす。」』

部屋に入ると、様々な物が置いてあった。
零はベッドにちょこんと座って、キョロキョロしている。

「黒井さん、ワイン頂きますね。」

こう見えてワインは飲める。
姿は学生だが、ワインは飲める。酒は無理だが。
891 :穂産姉妹 :2011/03/25(金) 23:17:15.20 ID:DGsZ/B000
>>890
「良い人かどうかは解らないですよ?
 いつもへらへらしている狂骨もしかり、です」

『はいはい・・・日子神は御人よし加減が底なしなんだ・・・』

零の頭を撫でながら雨子神は日子神の危うさに困っていた。

>>889
「『へ?』」

どうやら黒井には見えない類のようである。
妖怪か、または自分の欲望が幻影として出たか。

『(でもおかしい・・・妖怪なら彼でも感じるし・・・
  欲望だとしたら・・・零も見えているという事は違うか・・・)』
「(まだお酒飲んでないのに幻影見てる――!!)」

二人は各々思うところがあったのだが、黒井に付いて行くことにした。

本来、女性がなんの警戒もなく男の家に行く非常識さはあるのだが、
仮に、仮に黒井に魔が差したとして、彼女達はそうそう危機には陥らないと踏んでいる。

男の独り暮らしの部屋に入り、とりあえず腰を据える二人。

『ほら・・・日子神。
 あんなとこに行かなくても、今こうして僕達の目の前にあるじゃないか・・・』

思わぬごちそうに手を伸ばした雨子神の手を、日子神が止めた。

『どうし・・・』
「雨子神・・・私達お酒は我慢した方がいいかもしれない・・・」
『・・・なんで?』

892 :黒井礼 [sage]:2011/03/25(金) 23:27:03.37 ID:q8xkXEX70
>>890
「おう、そういや、人間じゃなかったな。
あまり酔っぱらうなよ」

ワインは甘い。
キョロキョロすると写真立てには幼少の黒井と少女とバ○ルドーム。
その後ろの大きな写真には迷彩服で坊主頭の黒井とその仲間たちの写真。
ベッドには低反発枕が乗っている。

「ヘルシーかけるか」

サバに粉を振りかけている。
ヘルシーとは調味料だったのだ。
>>891
「おいしくなるおまじない!ヘイヤレ、ロトティーヤ!」

サバ(黒井裏声)「うわぁ!僕、おいしくなっちゃうよ!」

ヘルシー絶賛振りかけ中。

「別に妖怪を襲う気なんてさらさらないぞ。
酒飲んで暴れても多少なら平気だ。ここでは妖怪の力が鈍る場所なんだよ」

風水とお札、この場所の歴史的経緯が重なりあいこの場所が生まれた。
ようするに特殊な結界のようだ。
893 :零「」&黒龍『』 :2011/03/25(金) 23:35:43.90 ID:YBQVKWNh0
>>891
「アネさん、あんなにワイン飲みたそうだったのにどうしたの?」

ちょっと心配する。あんなにお酒好きの人が飲まないなんて、おかしいからだ。
零は考えていないようだが、仮に酔っ払った彼女達、また黒井が襲ry

>>892
「はい、黒龍。ワイン美味しいよ。」
『おっ、ありがとう。』

写真立てにある写真を見つめてみる。
しかし、「(やっぱり黒井さんなんだなぁ。)」と思ってしまう。
でも幼少の頃の写真があるのは意外だった。
894 :穂産姉妹 :2011/03/25(金) 23:41:09.41 ID:DGsZ/B000
>>892
「・・・今度は幻聴が・・・」
『いや・・・僕もがっつり聞えた・・・黒井さん・・・
 (その呪文は心筋梗塞のリスク高まらないのかな・・・?)』

傍から見る黒井はなんとも楽しそうな事か。
しかし、それを見つめる穂産姉妹の目、彼女たちにそんな目が出来たのか、と
思いがけずため息がこぼれる。

『だよね・・・スイーパーといっても・・・誰かれ構うことなく、
 なんて血気溢れるタイプじゃなさそうだもんね・・・』

「まあ!!
 飲んでもいいのですか!!ありがとうございます!!」

仮に悪酔いしてしまっても大丈夫な空間だということに、日子神の緊張の糸は切れた。
今の彼女にはヘルシーの事など頭にないのだろう。

とくとくと上機嫌でグラスにそそぐ穂産姉妹。
しかし、彼は飛んだ間違いを犯してしまっていたのだ。

>>893
「ヘルシーの幻影が見えた気がしたんです!!
 お酒も頂いていないのに、とちょっと恐くなったものですから。

 ですが今!!そんな躊躇はいりません!!」
『・・・日子神そんなこと考えてたんだ・・・』

ワインを口にする二人、それはとても久しぶりというもので、
つまり悲劇も久しぶりという事になる。

「ああ・・・この葡萄の柔らかな香りが良いんですよね・・・」
『ああ・・・ひさしぶりのだ・・・』
895 :黒井礼 [sage]:2011/03/25(金) 23:51:31.46 ID:q8xkXEX70
>>893
「その写真は俺が…五歳の時だったかな。まぁ、バ○ルドームをよくやったものだ」

懐かしそうに喋っているうちにサバが焼けたようだ。
皿に盛りつけしている。サバ大きめ。

「零は小さい頃の写真はないのか?」
>>894
サバ(黒井裏声)「う、くるし」

楽しそうだ。
確かにいつもよりやらかい目をしている。

「まぁ、スイーパーはいろんな訓練受けるからな。誰彼かまわんなんてことはない」

黒井は未だ気付かない。恐ろしい、過ちに。
>>ALL
焼けたヘルシーなサバがテーブルに置かれた。

「冷めないうちに食ってくれ」

そういうと換気扇を回し、箸を皆に回し始めた。

「この部屋にこんなに人が集まったのは初めてだ」

楽しそうに笑う。
896 :零「」&黒龍『』 :2011/03/26(土) 00:01:16.37 ID:Ieqz7+XL0
>>894
「ヘルシーの幻影ってなんですか〜。」

軽く酔っ払った口調で、笑いながら話す。
零もワインはかなり久しぶりだ。(紅茶の存在に気付いて以来、紅茶しか飲まなかったから。)
彼女達がどうなることかも知らずに、楽しい時を過ごしていた。

>>895
「写真…あったかどうかも分からないなぁ。」

零は元は人間だったものの、時代がかなり昔なため、覚えていない。

>>ALL
「サバが焼けたんですね〜。頂きまーす。」

焼けたヘルシーなサバをもぐもぐと食べる。
そのヘルシーな味わいと、驚きの触感に感動した。

「アネさん、アニさん、美味しいですよ〜。このヘルシーry」

さらに酔っ払った零は黒龍をかじる。

「美味しいww」
『ぎゃああ!!』
897 :穂産姉妹 :2011/03/26(土) 00:06:07.04 ID:X1xXkfL20
>>895
「でも近頃は、妖怪と見たらただちに消去、という方が多いですからね・・・
 貴方が柔軟な方で本当に良かったと思います。」

目の前のサバはとても美味しそうで、気がついたら箸が伸びていたというように、
するすると手をだしサバをほうばる雨子神と日子神。

『ほう・・・なかなか料理が上手なのだな・・・
 これは酒がすすんでしまう・・・』

そう言って二人の酒を飲むペースは少し早くなる。
しかしそのような事をしないでも、もともと弱い方の二人は酔いが廻っていく。

>>896
「それがですねぇ、ヘルシーすってみるぅ?とか聞いてくるのですよぉ〜
 でもそれが黒井さんには見えてないみたいでぇ、気持ち悪いったらぁ・・・」

若干毒毛がにじみ出す日子神と

『ははは、それは零のつまみじゃないよ!!
 つまみなら僕達のするめとかがあるから!!』

若干呂律が良くなり始める雨子神。
898 :黒井礼 [sage]:2011/03/26(土) 00:16:30.83 ID:1YKRgmFS0
>>896
「…まぁ、過去の写真があるのは幸せなのかもしれないな」

二つの写真を見つめる。
迷彩の方の写真に写っている何人かは訓練中の事故で、
あるいはスイーパーに志願し、作戦中消息を立った者もいる
サバは絶妙にヘルシー。サバはヘルシーを吸ったのだ。

「まずいサバじゃなくてよかった。…ってそれ黒龍だぞ。零…酔ったのか?」

大丈夫か?と、声をかける。
>>897
「柔軟に考えられない奴は長生きできないものだ」

実際、黒井の周りにもそんな奴がいたが行方不明となった。
サバはとてもヘルシーだ。ヘルシー吸って、こうなった。

「うまいか?ありがとうな」

酔いが回っていく二人を見て、

「あまり酔うなよ。帰れるくらいの冷静さは残しておけよ?ゆっくり飲まないと脳梗塞になる」

脳梗塞はとても怖いのだ。
899 :零「」&黒龍『』 :2011/03/26(土) 00:23:06.68 ID:Ieqz7+XL0
>>897
「私が食べてるのはスルメですよ〜。

アニさん大丈夫ですか〜?」

いや、大丈夫じゃないのは君だよ。
もうすでに意識が飛びそうな零。

>>898
「このスルメにヘルシー吸わせたらもっと美味しいのかなぁ?」

『零…やめ//////』

完全に酔い潰れた零は低反発枕を借りて、寝てしまったようだ。

『ふぅ。黒井さん、御馳走様でした。ヘルシーな魚、美味しかったですよ。』

寝てしまった零の変わりに言う。久しぶりに、楽しい時間を過ごせた零と黒龍だった。

/落ちます。絡みありがとうございました!!
900 :穂産姉妹 :2011/03/26(土) 00:24:56.63 ID:X1xXkfL20
>>898
「あいあ〜いぃ、でも酔っても黒井さんの家だからぁ泊らせてもらおうかなぁ〜
 仮にぃ、なにか変なことしたら玉潰すからねぇ」

大きく伸びをする日子神へのその注意は、もはや手遅れだったのかもしれない、、
しかし間にあったとしても彼女達は飲み続けただろう。

『さて!!ここで独り暮らし男性宅の定番行事!!

 赤裸々なトレジャーハント、始めるよ☆!!』
「あらぁ、おもしろそうじゃん」

おもむろに黒井のベッドに探りを入れる雨子神。
日子神は悪ノリにのっかってきた。
901 :穂産姉妹 :2011/03/26(土) 00:26:49.49 ID:X1xXkfL20
>>899
『僕はいたって大丈夫さ!!
 むしろ通常時の100倍なくらいさ!!』

グッと親指を立てるが間違いなく大丈夫ではない。

//お疲れ様でした!!
902 :黒井礼 [sage]:2011/03/26(土) 00:38:30.35 ID:1YKRgmFS0
>>899
「黒龍も大変そうだな…」

しみじみと、スルメを見て言う。
そして酔いつぶれた零に布団をかけ、

「おやすみ、黒龍もありがとう。また食いに来てくれ」

そう言って微笑んだ。黒井にとってもとても楽しい時間だった。

/お疲れさまです。ありがとうございました!
>>900
「何もせんよ…。ていうか泊め…、まぁいいか」

たまにはいいか、こういうのも。
そう思ったときにベッド探り、トレジャーハント。

「あ、しまった!待て、やめろぉ!」

必死に止めようとするが、遅かった。
あぁ、見つかってしまった!なんということだ!
ベッドの下より現れし、一枚のDVD…。

題名“極悪!抜け(以降は汚れて見えない)”
903 :穂産姉妹 :2011/03/26(土) 00:45:45.16 ID:X1xXkfL20
>>902
「な〜にぃこれぇ〜、極悪って悪趣味ぃ〜」
『なんともあんにゅいなパッケージだね!!
 これじゃなんのDVDか分かったもんじゃない!!』

めぼしいものかは分からないが面白そうなものを見つけた二人。
日子神は好きなだけ毒を吐き続ける。

『という事でーーーーーー、再生!!』
「これがもしあれだとしても、黒井さんの性癖は歪んでいるわぁ」

雨子神は目にもとまらぬ速さでDVDプレイヤーにDVDを入れ、
再生ボタンを押した。
904 :黒井礼 [sage]:2011/03/26(土) 00:54:25.63 ID:1YKRgmFS0
>>903
「や、やめろおおおぉぉぉお!」

エコーがかかった叫び!
この男、必死である!
なぜなら、このDVDは!

映し出される映像。
現れたのは可愛らしい女性ではなく、一人の男性。
その男は、

店長「ヘルシー、吸ってみるぅ?」

あのおっさんだ。

店長「このDVD見た奴は、明日ハゲます。助かるには…」

そこで映像は途切れた。
すさまじいハゲパワーを感じる。
やばい、どんくらいやばいってとマジやばい。
明日ハゲるきがする。超する。

「なんということだ、これは超ハゲ妖怪の罠なんだよ…」

助かるには…。
905 :穂産姉妹 :2011/03/26(土) 01:04:00.32 ID:X1xXkfL20
>>904
『リ○グ(呪いのビデオ)の方だったーーーーーー!!!』
「はははははは、黒井さん。
 貴方、明日からツルッパゲなのねぇ!!」

見事に罠に引っかかった穂産姉妹。
日子神は自分も対象者だというのに、黒井の身の上で大爆笑している。

「黒の髪と黒の服と黒井なのに、頭は肌色だなんて・・・

 ぶっ、ははははは!!」
『黒井さん!!黒井さん!!
 これの続きはないんですか!?僕嫌です!!
 僕、ハゲなんて・・・
 
 うええええええええええん!!!!!』

黒井の服に涙目でしがみつき、泣き始めた雨子神に、ただひたすら黒井で笑い続ける日子神。
いつもの彼女らしくなく本当に騒々しい。
906 :黒井礼 [sage]:2011/03/26(土) 01:14:01.01 ID:1YKRgmFS0
>>905
「笑い事ではない!笑い事ではないぞ!」

もはや涙目である。
黒い黒井なのに明日からハゲ。
超ヤバくない?

「泣くな!雨子さん!まだ、まだ希望はある!」

そう言って立ち上がり、窓を開く。
見えるのは、あのスーパー。

「呪いを解くには、あのスーパーの調味料ヘルシーをあるだけ買い占め、全部吸うことだ!待っていろ!」

そう言うと黒井はしがみついた雨子神を振り払い、スーパーへ走っていく。
あぁ、髪を守るため、男は走るのだ。

ちなみに呪いは嘘っぱちなのだが、初見の人はハゲ妖怪の力で信じやすくなってしまうのだ。
907 :穂産姉妹 :2011/03/26(土) 01:21:43.54 ID:X1xXkfL20
>>906
『お、お願い!!ぐすっ、で、できるだけ早くに!!ぐすっ』

振り払われた雨子神は部屋の隅ですんすんと泣いて固まっている。
ショートカットでボーイッシュな彼女もちゃんと乙女、髪はとてもとても
大事なのだ、だから泣くのだ。
それを日子神に笑われていたとしても。

「(私達は土こねれば、体なんてどうにでもなるのにね、この子は・・・。
  面白!!見てて飽きないわぁ!!)」
908 :黒井礼 [sage]:2011/03/26(土) 01:28:42.37 ID:1YKRgmFS0
>>907
「帰った、帰ってきたぞ!」

山ほどのヘルシーを抱えて戻ってきた男。
あぁ、ハゲとうない。ハゲとうない。

「吸うしかない」

ヘルシーの袋を開け二人に中身を吸わせようとする。

「あえて言おう、ヘルシー、」

黒井・店長「吸ってみるゥ!?」

別に吸わなくて良いのだ。店長の嘘っぱちの悪ふざけなのだから。
909 :穂産姉妹 :2011/03/26(土) 01:37:20.94 ID:X1xXkfL20
>>908
めそめそ雨子神が泣き伏せていると、玄関の戸が強く開いた。
そこに立っているヘルシーの山となった黒井は逆光なのかなんなのか、
光り輝いているように雨子神は見えたという。

『ありがとう!!さっそく吸ってみるよ!!
 
 グッバイ!!抜け毛!!』

予想通りに雨子神だけがヘルシーを吸っていた。
おぼれるものはなんとやら、実際溺れていないと言っても、
今の雨子神はプラキシーボ効果で溺死してしまうのだろう。

『スーーーー・・・・

 ブホッ!?』

余りに吸い過ぎたため、ヘルシーが気管に入ってしまい咽る雨子神。
日子神は日子神で、咽る彼女にお腹をかかえて笑っている。
910 :黒井礼 [sage]:2011/03/26(土) 01:49:42.16 ID:1YKRgmFS0
>>909
「俺も吸う…ぜ…?」

なぜだ?なぜなんだ?なぜ、なぜなのよー!
買ってきたヘルシーがなくなった。目を離したうちに!
今あるのは雨子神が持っている袋のみ。

「消えた…!?」

まさか、この俺が見失うなど…!?
疑問はすぐに解けた。

店長妻「……なんかごめんなさいねぇ、うちの主人のせいで…」

開け放たれた扉に立っているのは、店長の妻!手には先ほどのヘルシー!

店長妻「髪が抜けるのは嘘なのよ。主人にはよく言っておくから、またご贔屓にね」

そう言って去っていった。

「え……?」

はっと、正気に戻る。笑う日子神、そうだ俺はいったい何をしていたのか。

「雨子さん、雨子さん、危機は…去ったよ…」
911 :穂産姉妹 :2011/03/26(土) 02:03:24.41 ID:X1xXkfL20
>>910
『え?ホント?』ゲホッ

むせながら黒井の言葉を聞いているが、
どうやら種明しの部分は聞いていないようで心底安心した様子だった。

『日子神!! ゲホッ
 僕達やったんだよ!!ハゲなくて良いんだよ!! エホッ』
「・・・でも勝手にビデオを見た貴方は、二重に呪いがかかっているわ」
『え・・・・・・・・・・・・』

日子神が雨子神の耳元で囁いたその言葉は、雨子神の心に追撃をあたえていた。
足元から崩れ落ち、気絶してしまった雨子神を背に

「散々笑せてもらったわぁ
 もう満足したしぃ、帰らせてもらうおうかしら。」
912 :黒井礼 [sage]:2011/03/26(土) 02:09:43.62 ID:1YKRgmFS0
>>911
「本当だ。あの時、家に店長を招き入れなければ…こんなことには…」

過去を思い出す。苦々しい顔。
なんてこった。
そんなことを考えている間に、雨子神が気絶してしまった。

「大丈夫か!?ヘルシーか?ヘルシーなのか!?」

今日は恐ろしかった。二人を巻き込んでしまった。

「ああ、帰るといい。気をつけてくれ。すまなかった」
913 :穂産姉妹 :2011/03/26(土) 02:15:59.61 ID:X1xXkfL20
>>912
「いや、この子はメンヘ・・・
 って言っても雨子神が起きてなくちゃ意味がないわね・・・」

Sは陰口などではなく、真正面からの棘で遊ぶのが楽しいそうだった。
満足した顔でのんびりと雨子神を抱える日子神。

「じゃあまた招いて貰おうかしら

 この独身男の家”に」

とても鋭利な言葉を残し、二人は帰っていった。
914 :黒井礼 [sage]:2011/03/26(土) 02:21:49.22 ID:1YKRgmFS0
>>913
「…メンヘ…何だって?」

ああ、禿げなくてよかった。
と同時に非常に申し訳ない気分。

「“独身男”…ぐふっ!」

ひざまずく独男。やわなハートはぐっさりと傷ついた。

「結婚してやる!三十路までに!」

堅く、誓った。

/お疲れさまでした!ありがとうございました!
915 :黒蔵 [sage]:2011/03/26(土) 22:28:04.26 ID:JMSYa0fWo
とある寺院の裏の墓地。
墓参りに来た人が墓前に供えたらしい牡丹餅を、勝手にとって貪っている低身長のクソガキが一人。
故人の好物だったのかカップ酒もあるが、こちらは蓋を開けられてすっかり空だ。

(旨い!旨すぎる!)

十万○饅頭の宣伝ではないが、そんな事を思いながら食っている。
916 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/26(土) 22:35:13.63 ID:5As/YwzDO
>>915
「おーいこら、何やってるそこの蛇神、罰当たるぞー」

そんな黒蔵の背後から、声をかける男がいた

「お前人の供え物勝手に食うのは駄目だろ、せめて手合わせたか?」

黒い無造作ヘアーに白ニット帽、隈の深い目、蔓に縞模様をあしらった黒縁眼鏡
目玉模様のシャツに、黒いジャケットとカーゴパンツ
口に棒付き飴をくわえている男は、黒蔵にそう問い掛ける

ちなみに彼は右肩に掛けるようにして木刀を持ち、墓石の上にヤンキー座りの体制。お前が言うなと言われても仕方が無い体制である
917 :黒蔵 [sage]:2011/03/26(土) 22:46:57.07 ID:JMSYa0fWo
>>916
「んー?あわへはほ(あわせたよ)」

振り返れば、いつぞやの飴男。
もっとはっきりしゃべれるように、黒蔵は牡丹餅の最後の一口を呑み込んだ。
実はちょっぴり名残惜しい。

「何か食わなきゃ、傷が埋まんないんだよ。あと、俺は蛇神じゃない。その代理だ」

供物泥棒と非難されても仕方ないのはわかるが、こっちにも事情はあるのだ。
久しぶりに飲んだ酒のお陰で、腹の中がじんわりと温かい。

「って、俺、お前に蛇だって言ったっけ?なんで知ってんだ?」

夜雀の少女と一緒のときは、黒蔵は人間の姿のままで居たはずだ。
ハイウェイチェイサーでの件は、黒蔵は夢だと思っている。
918 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/26(土) 22:53:10.16 ID:5As/YwzDO
>>917
「合わせたなら許す!!」

お前は何の立場で物事を言っているんだ、とりあえず合わせたならいいらしい

「代理なら代理で呼び方が変わるな、蛇神代理って読んでやろうか」
「そりゃお前あれだ、こないだの一件で蛇になっただろ、俺もいたの覚えてないか?」

彼が黒蔵が蛇だと知ったのはそのハイウェイでの一件であり、彼はそれを実際にあった事と捕らえている
まあ頭を踏み付けて足場にしたりしたので、黒蔵が覚えてないならそれはそれでいいのかもしれない
919 :黒蔵 [sage]:2011/03/26(土) 23:04:12.77 ID:JMSYa0fWo
>>918
「こないだの一件ってなんだ?
 お前に会ったのって、公園の泉の傍であって、それっきり……だよな?」

一度しか会っていない筈だが、なぜか普通にこの退魔師と喋っている自分に黒蔵は戸惑った。

「蛇になった時…一緒にいた?」

あれは夢だった筈。だが、あの夢の中ではよく判らない言葉が色々あった。

「もしかして…はいんど?とか、ヨコ○マタイヤ?ってのを知ってるとか?
 俺の見た夢を知っているのか?お前?」

人間って、こういうよく判らない部分が侮れない。

(もしかして俺、凄く厄介な人間にであっちゃったんじゃなかろうか?)

丑三を見つめるその表情は、さっきの盗み食いを見つかったとき以上に「なんかヤバイ」、と書いてある。
920 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/26(土) 23:13:15.56 ID:5As/YwzDO
>>919
「お前は気付いてなかったかもしれないけどな、俺もあのトラックに乗ってたんだよ」

右手に持った木刀を上下に動かし、まるでまごの手のように背中を掻きながら
思えば不思議な体験だった、いきなりワープして戦い、またワープして元の場所に戻された訳だから

「なんだ、覚えてるじゃないか」
「ハインドってのはお前が噛み付いた空飛ぶでかい奴で、ヨ○ハマタイヤってのは最初に来た車輪に顔がついた奴らの事だ」
「いやー参ったなあの時は、寒いし狭いしお前はぶっ倒れて落ちそうになるしかと思えば蛇になって更に狭くなるし」
「…一応言っておくが、夢じゃないからなあれ」

「いやー参った参った」と、目を閉じ惨状を思い出しながら軽い口調で言って
言った後、開いた目でジトッと見詰め、夢ではない事を伝える
内心、黒蔵の表情を楽しみながら
921 :黒蔵 [sage]:2011/03/26(土) 23:20:02.18 ID:JMSYa0fWo
>>920
「嘘だろ……」

黒蔵は弱弱しく頭を振った。あれは夢であって欲しかった。

(だって、あの四角い箱の上で、俺泣いてたんだもん)

そう、露希や零におびえ、手榴弾の爆発におびえ、傷の開いた痛みで泣きべそをかいていたのだ。

(あれが現実だった上に、その時この人間がその場に居たなんて!)

がっくりと落ち込む黒蔵のそれは、丑三を満足させるには十分な表情の変化だった。
922 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/26(土) 23:30:10.89 ID:5As/YwzDO
>>921
「…まあ、そうだな」
「お前が驚いたのも無理は無いわな、俺でさえビビったし」

「だから子供みたいに“泣いてた”としても無理はない、そんなに気に病むな(笑)」

その言葉は、上っ面だけの慰めの言葉、慰めと言う包装紙に包まれた蔑みと言う彼にとっては甘い甘い飴玉
その表情からは「ププッ、偉そうにしてる癖に泣いてやんのwwww」と言う感情が見えるかもしれない

「まあ、そんな話は俺にとっちゃどうでもいいんだけどもね」

そういうと、一瞬にしていつもの無表情に戻る
どうでもいいのに馬鹿にした意味はあるのか、それは彼にしか解らない
923 :黒蔵 [sage]:2011/03/26(土) 23:37:10.76 ID:JMSYa0fWo
>>922
(しっかり覚えてんじゃねーかよーーー!!嫌味な奴!)

蔑まれているのを感じて、じとり、と恨めしげに丑三を睨む黒蔵。

(俺のほうはあんまり夢でのこいつの事覚えてないのに……ん?)

恨めしげな黒蔵の目が、別の気配を帯びた。

「そいやお前、あん時、俺の頭踏んだろ?」

ようやく踏み台にされたのを思い出したらしい。
半ば八つ当たり気味に黒蔵は丑三へそう指摘した。
924 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/26(土) 23:46:06.30 ID:5As/YwzDO
>>923
「そんなー、そりゃねーっすよセンパーイ」
「アンタずっと前に俺の魂喰おうとしたじゃないっすかー、おあいこっすよおあいこー」

黒蔵に睨まれてもびくともせず、ふざけた態度と話し方で帰す
未遂と実際にやったとでは大分違うとは思うが

「それよりも、一つ質問していい?」

さらっと話をすり替える様に、さらっと質問した
925 :黒蔵 [sage]:2011/03/26(土) 23:50:48.44 ID:JMSYa0fWo
>>924
「ああ、あん時。食っときゃ良かったな」

これは掛け値なしに黒蔵の本心だ。

(今すぐにでもとって食おうか?)

ちらりと物騒なことが黒蔵の頭をよぎったりもしたが、そこへ丑三から質問が投げかけられた。

「…何が聞きたい?」

少し迷ったものの、まずは聞いてみようと黒蔵は先を促した。
丑三を食うのはそれからでも遅くは無いのだ。
926 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/27(日) 00:01:03.55 ID:dnl8c5oDO
>>925
「ぶっちゃけ次はねえぞあんな事、おふざけでやってるならまだしもマジで命かかるんならな」
「他のの命奪うってのは奪われる覚悟もしなきゃいけないんだ、あれしきでわんわん泣いてるお前にその覚悟が出来るかな?」

言っている事は挑発を交えた言葉、しかしその雰囲気はふざけ等ない真剣そのもの
生命という物に対して、決して彼は軽んじている訳ではないようだ

「ここら辺でさ、黒いスーツ…いや、喪服?着た長い黒髪の男見なかったか?」
「そんで、見たとしたらそいつ刀持って無かった?鞘から柄まで真っ黒な奴」
「それか、犬、二匹」

左手で飴をくりくり回し、右手の木刀で肩を軽く叩きながら尋ねる
よく見れば、彼の頬等見える肌に小さな引っ掻き傷や、体に獣の体毛や涎が付着している
927 :黒蔵 [sage]:2011/03/27(日) 00:17:14.46 ID:y8fvcUuSo
>>926
「ああ、お前の言うとおりさ、俺は命をとられるのが嫌だから今生きてるんだ。
 だが、命ってのはそういうもんだろ。
 取られるときは嫌でも取られる、取られるのが嫌だからしぶとく生きる。
 奪われる覚悟とかカッコつけて構える前に、それが当たり前だろ」

どこか皮肉げに黒蔵は笑った。
かつて贄に取られ、それでも生きたいと願ったから黒蔵は生かされている。
そして今また泥沼に嵌っている。
死んだほうが良かったかと考えたこともあるが、生きることには覚悟なんて必要ないという結論に落ち着いた。

「お前、前に会ったときより普通に話せるようになったな。
 だから教えてやるが、俺は犬も男も見てない」

話が通じる相手となら、黒蔵は腹を割ってもいい。

「だが、探す手伝いならできるな」

手がかりの匂いも、相手の一部も、丑三に付いているのだから。
928 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/27(日) 00:31:58.28 ID:dnl8c5oDO
>>927
「あ、お前今俺の魂のバイブルディスりやがったな、[ピーーー]覚悟がある奴は殺される覚悟もしなくちゃいけないって言ってたんだぞ」
「いやでもまあ、奪う奪われるなストイックな生き方ならその通りだな、俺は浪漫や格好付けにこだわるタイプだし」

はっはー、と軽く皮肉を笑い飛ばして彼は言う
彼にとっての真剣な戦いは命のやりとりであり、それは上手くは表せないが言うなれば穢す事の出来ない行為である
漫画やゲーム等、フィクションに侵されすぎだろうが、何かに置いて何か思いを持つのは大切な事

「だってふざけたら怒るじゃん?今は聞き込みに来てるんだから」
「お?手伝ってくれんの?なんだお前優しいな、ツンデレ?」

フヒヒ、と楽しそうに笑い、黒蔵を見る
付着した獣の痕跡はただの獣の物にあらず、微かな妖気の残滓を感じるだろう
勿論それを付けている本人もそれには気付いていて、だからこそ何処か危惧するように感じている
929 :黒蔵 [sage]:2011/03/27(日) 00:38:49.54 ID:y8fvcUuSo
>>928
「バイブル?ディスる?ツンデレって何だそれ?」

丑三によく判らない単語を聞き返しながら黒蔵は、先ほど供え物をぱくった墓石の花活けから
菊の花の束を持ち上げ、花活けの水を少し地面に零してまた元に戻した。

「ちょっとこっち来い。この、変な毛の持ち主が探したい犬だな?」

丑三の体から獣の毛を摘み取って、零した水に落とすと、その水面が鏡となって
毛の主がの帰る場所を映し出す。

「今居る場所は流石に映せないけど、お前の探す犬が帰る場所なら、多分これで判る」

この毛の主が一番好み長く過ごす場所、を水面は映し出すだろう。
930 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/27(日) 00:53:17.32 ID:dnl8c5oDO
>>929
「ああ、そういう言葉知らないんだもんな」
「よし、手伝ってくれる礼だ、今度から解らない言葉があったらなんでも俺に聞け、解る範囲で教えてやる」

ニヤッと笑いながら左手親指で自分を指す
こいつに何かを聞くのは危ない気がするが、どうするかは黒蔵の意思である

「便利だなそれ、上手く使えば女子高生の部屋とか覗けるんじゃね?」

とかなんとか不純な例えを口にしながら墓石から飛び降り、水面を見詰める

映ったのは…

「…なんだこれ…?建物なのは解るが……廃墟みたいだな…?」

水面に映った、暗い石の壁と床
材質はコンクリートであろうその場所の床は様々なゴミが散乱しており、彼の出した廃墟と言う予想は大体当たっているだろう

931 :黒蔵 [sage]:2011/03/27(日) 00:58:37.83 ID:y8fvcUuSo
>>930
「女子高生の部屋?覗いてどうするんだそんなもん?」

黒蔵は不思議に思ったが、それよりこの廃墟らしいものをもう少し調べなくては。

「もう少し、範囲を広げてみるか」

さらに水を足して、廃墟の入り口付近まで見えるよう、範囲を拡大してみた。
壊れた窓からの風景も見えるかもしれない。
932 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/27(日) 01:09:01.76 ID:dnl8c5oDO
>>931
「そりゃあ…ナニするに…嫌、言わないでおくか」

ある意味人間らしいような、よこしまな答えである

「…なるほど、わからん」

範囲を広げたとしても解るのは廃墟で正解だったと言うだけ、割れたガラスから見える景色も月と夜空と揺れる木の枝くらいだ

「廃墟マニアって程じゃないからなー…まったく何処だか解らん」
「レーダーみたいに現在地が解る仕様だったら…それじゃ楽勝すぎか」

「案外、本犬達は俺達の近くにいたりして―――」

その時であった
犬…狼とも言っていいような獣が、丑三の右側から飛び掛かったのは
そして次の瞬間に、今まで丑三の首があった場所で牙を噛み合わせ、向かい側に通過して言ったのは
ほぼ、一瞬の出来事であった
933 :黒蔵 [sage]:2011/03/27(日) 01:18:20.05 ID:y8fvcUuSo
>>932
「ホントだ、直ぐ近くにいたなー。よかったな、探す手間が省けて」

黒蔵は丑三の幸運を祝った。
獣が自分に向かってくることは、想定していないわけでもないが、
今、獣の狙いは自分ではないのだ。

(犬かぁ。あんまり美味しくないんだよなー)

あまり犬に食指は動かない。犬よりは、実を言えば人のほうがずっと美味しい。
934 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/27(日) 01:26:31.32 ID:dnl8c5oDO
>>933
「マジ死ぬかと思った、犬は小型だなやっぱり…」

「いやー危なかった」と彼は左手で帽子を抑えながら起き上がる
どうやら一瞬で後ろに転がり、なんとか避けたようだ

「…でも、あれだけな訳じゃないんだろうなあ」

立ち上がって辺りを見回せば、墓石の上に先程の犬が立っていた
しかも一匹だけではなく、その犬の対岸側、丑三と黒蔵を挟んだ反対側の墓石のもう一匹

先程丑三に飛び掛かった犬は口を開き、一本の角がある
もう片方の犬は口を閉じ、角はない
どちらも、妖気を放っている
935 :黒蔵 [sage]:2011/03/27(日) 01:32:44.47 ID:y8fvcUuSo
>>934
「んだよ、狛ちゃんか。
 おい人間、お前狛ちゃん怒らすような悪さしたのか?」

神を守る狛犬が、丑三を探してこんな墓地まで出張ってきている。
こりゃ、何か罰当たりなことをしでかしたんだろうと見当をつけて、黒蔵は丑三に聞いた。
神に使われる立場としては、黒蔵と狛犬はほぼ同等なのだ。

ただし、一方は狛犬を置けるほどの社を構える神、他方はただの石の塚に祀られる神、と、
使える神の格が大分違いはするのだが。
936 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/27(日) 01:45:18.94 ID:dnl8c5oDO
>>935
「そうだな、余り信仰心が無いとか?」
「若しくは、昔シーサーと狛犬の違いが解らなかったとか?」

二匹の狗両方に気を配り、木刀を構えつつ答える

「…冗談は置いといて、こいつら多分神じゃないぞ」
「姿は似ているが別物だ」

《その男の言う通り、我等姿は似れど神に非ず》
<左様>

《主人が為、使わされた番犬成り》
<左様>

「…あ、なんだジ○リか」

狗が喋った、それだけで普通驚くような物だが、普通に的外れな答えを出して一人納得する
937 :黒蔵 [sage]:2011/03/27(日) 01:50:31.60 ID:y8fvcUuSo
>>936
「ああ、知ってるよ。狛犬が使える主が神なんだ。
 蛇神に使える俺が神じゃないのと同じさ」

丑三に頷く黒蔵。

「狛ちゃんは何でこんな人間のとこに出張ってんの?
 あんな廃墟が当座のねぐらってことは、主の社からは結構遠いんだろ?」

丑三に聞くよりも、狛犬に尋ねたほうが正しい情報がもらえるだろうと黒蔵は踏んだ。
938 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/27(日) 02:06:00.29 ID:dnl8c5oDO
>>937
「いやでも俺なんか神怒らせる事したかな…」
「つーか、あいつが神様って事か?いやそりゃ無いだろ」

ぶつぶつと呟いて、頭の中の情報を整理する
これがもし神の使いだったとしたら身に覚えがない神を相手にしているでかなりピンチだが、まさかそんなはずが無い

《我等が従うは神に非ず、妖怪にあらず、その男と同じく、人間成り》
<左様>
《我等が主人の命により、その男は我等の敵となった》
<左様>

《我は阿形》
<我は吽形>
《<主人の命に従い、その者を屠り去る>》

「まじで、俺狙われてんの?狙われた丑三夜中?」
939 :黒蔵 [sage]:2011/03/27(日) 02:13:24.23 ID:y8fvcUuSo
>>938
「人間に使えてんのか?へー、珍しいね。
 ところでこいつ、君らの主人怒らすような何をやらかしたの?」

すっかり丑三が何かしでかしたものと決め付けている黒蔵。
だって丑三は信用できないのだ。

(どこかの神さんに狙われるようなことやってても、全然不思議じゃない)

日ごろの行いって大事だよね。
940 :丑三「」&鬼鉄『』 :2011/03/27(日) 02:26:46.80 ID:dnl8c5oDO
>>939
「酷いなおい、何でもかんでも俺のせいじゃないぞ!」

プンプンとわざとらしく怒り顔を黒蔵にむける、こんな状況でもやはりふざけるらしい

《我等が主人の意思は知れず、ただ命を受けた故に》
<左様>
《主人の命のまま死んでもらう》
<[ピーーー]>

それで無駄話は終わりだ、と言わんばかりに、会話を止めて狗二匹が丑三に襲い掛かる

「ちょっとまてよ…って、アッー!!」

その攻撃をひらりとかわすと、丑三は黒蔵に背中を向けて

「いやーすまない、ちょっと逃げるわ俺!礼はまた今度するからな!」

二匹の狗に追われ、ダッシュで逃走していった
941 :黒蔵 [sage]:2011/03/27(日) 02:35:28.32 ID:y8fvcUuSo
>>940
「おー、しぶとく生きろよー」

黒蔵は遠ざかる丑三に手を振って見送る。あんな人間、生半なことじゃ死なないだろう。
狛犬達も厄介な仕事を引き受けてしまったものだ、と黒蔵は思った。

しかし自分自身もまた、
ひのきの棒とはした金で竜退治を押し付けられたどこぞの勇者よろしく、
窮寄の討伐を安上がりに押し付けられていることには、まだ気づいていない黒蔵だった。
942 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/27(日) 21:54:16.55 ID:lIeEq3ySO
壁に蔦が伸びっぱなしになった人気のない民家の上で、四十萬陀はぼおっと膝を抱えていた。
短く斬り揃えられた黒髪に合わせて、黒いプリーツスカートも揺れる。
遠い目をしている少女が何を考えているのか、外からは分からない。
実際、何を考えいるかといえば――



(はー、やることないじゃん)

殆ど何も考えていないのであった。
943 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/27(日) 21:54:41.27 ID:lIeEq3ySO
壁に蔦が伸びっぱなしになった人気のない民家の上で、四十萬陀はぼおっと膝を抱えていた。
短く斬り揃えられた黒髪に合わせて、黒いプリーツスカートも揺れる。
遠い目をしている少女が何を考えているのか、外からは分からない。
実際、何を考えいるかといえば――



(はー、やることないじゃん)

殆ど何も考えていないのであった。
944 :黒井礼 [sage]:2011/03/27(日) 22:01:09.35 ID:JeBQzprb0
>>943
その民家の前に一台の黒いバイクが止まる。
降りた男はヘルメットを取り、バイクにできた目立つ傷を確認している。

「あぁー、やっちまった!くそっ、あの上半身野郎!」

ほどなくして、民家の上の少女に気づく。

「ありゃ…人間か?」
945 : :2011/03/27(日) 22:06:51.79 ID:I3R30G+AO
>>943
「おや?七生、こんなところでどうした?」

修行に向かう途中の瞳、偶然七生を見つけ声をかけた。


>>944
「ん?あなたは、たしか黒井だよな。久しぶりだな。」

久しぶりに見た黒井に話しかける。

「何かあったのか?」
946 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/27(日) 22:11:35.07 ID:lIeEq3ySO
>>944
バイクの音に聞き耳を立てた四十萬陀は、屋根の縁へずりずりと移動する。
下を眺めると、傷を見てぼやく男の姿を見る。

(おっ、人間じゃん)

人食行為をやめた今、取って喰うようなことをつもりはない。
純粋に暇なので、四十萬陀は縁に腰掛けると、ぶらんと両足を降ろした。
どうやら向こうもこちらの存在に気付いたようだ。

「こんにちわぁ、おにーさん」

にへら、と人懐こい笑みで話し掛ける。

>>945
「あ、瞳君じゃん!」

知り合いを見掛け、四十萬陀は片手を持ち上げる。

「いやぁ、することなくてぼうっとしてたんじゃん」

てれてれ、と持ち上げた手で頭を掻く。
947 :黒井礼 [sage]:2011/03/27(日) 22:21:41.77 ID:JeBQzprb0
>>945
「あぁ、瞳さんか。上半身しかない奴に襲われたんだ」

コツコツと指でバイクにできた傷をつつく。
黒井はなんともめんどうそうな顔。なぜなら、

「こんな傷でも妖怪絡みなら、報告書とかサインしないと上がうるさいんだ」

めんどくさがりの黒井には報告書とかもう最悪なのだ。
>>946
「こんにちは、妖怪さん」

屋根の縁の少女にあいさつを返し、再びバイクに向き直る。
あぁ、報告書…。

「君は、報告書を書いたことはあるか?」

もはや頭の中は報告書地獄。めんどくさがりの天敵。
948 : :2011/03/27(日) 22:24:32.83 ID:I3R30G+AO
>>946
「なるほどな。なら、ちょっと私と話さないか?」

と、提案する。
しかし、少したって。

「と言っても、特に話題はないんだがなぁ。」


>>947
「上半身?そいつの他の特徴はどんなのなんだ?」

心配そうな表情で黒井を見る。

「大変だな…怪我はないか?」
949 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/27(日) 22:34:49.29 ID:lIeEq3ySO
>>947
瞳と知り合いということは、妖怪について『知っている』人なのだろう。
敵意を感じないところを見ても、安心していい相手らしい。

「私、夜雀の四十萬陀 七生じゃん。よろしくじゃん」

にっこりとあどけない笑みを浮かべる。

「報告書? にゃはは、ないない」

けらけら笑いながら、手を左右に振る。
四十萬陀の属するような小さなコミュニティならば、報告書など書かなくても、口頭で十分。
むしろ噂でも何でも、一晩しない内に全体に伝わってしまう。

「なになに、君、報告書書かなくちゃいけないの?」

といいつつ、興味はあるらしく、軽く身を乗り出す。

>>948
「うん、話すじゃん!」

頷き、人差し指を顎に添える。
話題でも考えているのだろう。
しばらくして、思いついたのか、人差し指を弾いた。

「犬御がこの間、病院で夜間警備してた時、面白いものみたって言ってたじゃん!」
950 :黒井礼 [sage]:2011/03/27(日) 22:42:03.79 ID:JeBQzprb0
>>948
「他…、他か…。なんか内臓引きずって動き回ってたな」

眉間にしわを寄せた表情。
黒の車体に、傷は意外と目立つ。

「怪我はない。短刀でやっつけといた。
ゴキブリみたいにいっぱい居そうだから君も気をつけてくれ。心配してくれてありがと」

うらめしや、テケテケ。
>>949
「俺は黒井礼。退魔師だよ」

あどけない笑みに対し、こちらはなんとも渋い表情。

「君はないのか、いいなぁ。お兄さん、報告書大嫌い、もう食べたくない。
テケテケに襲われて、もう、ね…。君も変な奴には気をつけるんだ」

黒井の属するコミュニティはやや堅苦しいのだ。
ぐったりバイクにもたれる。
951 : :2011/03/27(日) 22:48:24.23 ID:I3R30G+AO
>>949
「黒井は、変わっているところもあると思うがいい人だよ。」

黒井の方を見てそう言った。

「面白いもの?なんだ、それは?聞かせてくれ。」

どうやら、興味ある様子。


>>950
「そうか、それなら良かった。」

安堵の表情。
この良かったは、怪我はない事と、やっつけた事の2つに対してだ。

「しかし、危ない奴みたいだな。私も気をつけるよ。」
952 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/27(日) 22:56:08.62 ID:lIeEq3ySO
>>950
「退魔士」という言葉に、少しだけ四十萬陀は眉をひそめた。
瞳とも普通に会話しているし、敵意も感じられない。
だけれど、『脅威』になりうる力を持っているということ。

「……黒井君ね」

鸚鵡返しして目を細める。
脅威に細心の注意を払うのは、弱い妖怪だからこそだ。

「にゃはは、随分お疲れみたいじゃん?」

警戒、といっても心構えのようなもので、上辺にはそんな心もみせず、先程と変わらず受け答えする。
ぐったり倒れこむ黒井を、気の毒そうに眺める。

「テケテケ? 襲われたの?」

四十萬陀は聞き返して、さっきより身を乗り出した。

>>951
「ん、瞳君が言うんならそうなんだろうね」

目を伏せて、何度かうなずく。
瞳がいなければ、退魔士と知った時点で早々にこの場を離れていたかもしれない。

「ええと、確か夜に病棟を巡回したら、病室から声が聞こえたんだって。それもたくさん。
 そこの病室は、この間たくさん人が死んでたところで、空き部屋になってたんだけど」

普通の人間がこの話を聞けば、あきらかにホラーなのだが、彼女らは妖怪である。
953 :黒井礼 [sage]:2011/03/27(日) 23:03:53.46 ID:JeBQzprb0
>>951
「黒井、良い人、嘘つかない」

※普通に嘘つきます。機密保持とか、機密保持とか。

「そうだよ、良かったんだよ。…バイク傷つく前は。
気をつけろぉ、一匹見たら三十はいるぞ。やっつけてもきっとお腹に脱出卵だよ」

脱出卵。それはゴキブリやっつけると飛んでったりするアレである。
>>952
「そう、黒いもの大好き黒井」

目を細め、注意されていることを感づいたのか。感づかなかったのか。
おそらく後者だが。

「あれよ、退魔師とかいっても見境なく襲わないし、仰るとおりお疲れだし。
テケテケ、道路走ってたらめちゃくちゃ爪で襲ってきた。刀でやっつけた」

短刀は黒井の背中のリュックの横に鞘に入った状態で、キーホルダーのように小さくなっている。
おそらく退魔術の応用。
954 : :2011/03/27(日) 23:10:49.70 ID:I3R30G+AO
>>952
「それは、何とも奇妙な話しだな。
だけど私は、人は死んだらそれで終わりではないと思っている。もしかしたら、死者の声かもな。妖怪の中にも、元は人間だったものもいるしな。」

目を瞑り、ゆっくりと落ち着いた口調で話した。


>>953
「はは…よくわからないが、そのテケテケも元は人間だったのかもな。
いや、複数いると考えるとその線は薄いかな?」

昔聞いた、テケテケの怪談を思い出す。
ちなみに、同じテケテケの怪談でもバリエーション違いを複数聞いたことがあった。
955 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/27(日) 23:19:14.93 ID:lIeEq3ySO
>>953
「黒いもの好き? にゃは、同じじゃーん」

見るからに、四十萬陀も全身真っ黒だ。
闇が溶けたような深い黒が真っ青な空にくっきりと浮かんで、少しばかり現実味がない。

「ふうん……」

テケテケの話に耳を傾けながら、背後に視線を逸らす。
山に訪れたという話は聞かないし、他に同じような妖怪がいたとしても、まず仲間たちに危険はないだろう。

「やっつけたの? すごいじゃん!」

ほうと息を漏らし、両手の指を合わせる。

>>954
「その通り、それは霊の声だったじゃん。でもこの話にはちゃーんと続きがあるじゃん」

制するように手のひらを瞳に向けて、にたりと笑う。

「一応警備をしてるわけだから、誰かが忍びこんでる可能性もあるし、犬御はその部屋の扉を開けたじゃん。そしたらなんと……その部屋で四人の霊が、麻雀してたらしいの!」

……どこから麻雀を持ってきたんだよ、というツッコミはさておくとしよう。
956 :黒井礼 [sage]:2011/03/27(日) 23:27:50.38 ID:JeBQzprb0
>>954
「テケテケ、都市や年代によってバリエーションが豊かだ。
元人間だったり、足と頭だけの奴がいたり、俺が出会った奴がいたりな。
俺には複数いるかどうかはわからない。初めて出会ったし」

人を追いかけるだけのテケテケ。人を食べる奴、骸骨にする奴等々。
波動拳でやっつけられた奴もいた。

「あー、空は綺麗だ」

空を見上げ始めた。報告書に対する現実逃避。
>>955
「同じか、君も真っ黒、俺も真っ黒」

黒井の服装はロングコートにカーゴパンツ。真っ黒。ブーツも真っ黒。
空の青と黒って意外とありだな。と、黒井は彼女を見て思った。

「すごくないよ。バイクに傷ついとるがな。
そうだ、君は人間をどう思う?」

バイクにぐったりとしたまま喋る。
957 : :2011/03/27(日) 23:35:35.54 ID:I3R30G+AO
>>955
「ま、麻雀?なんというか…もう少し場所を選んで欲しいな。何も、病院で…
まぁ、土地に縛り付けられていたなら、しょうがないが…
しかし、麻雀とは…よっぽど、麻雀に未練があったんだろうな。」

驚くような、呆れるような表情を見せ話す。


>>956
「まぁ、怪談というのはそういうもの何だろうな。広まっていくにつれて変化したり、時がたつにつれて変化したりな。」

と、どこかで聞いた話しをする。
958 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/27(日) 23:44:57.53 ID:lIeEq3ySO
>>956
「にゃははん、黒は好きじゃん。夜の色だもん」

奥の見えない黒を湛えた瞳を細める。
妖怪には黒という色が多い気がする、と四十萬陀はふと思った。
『夜の色』、だからだろうか。
幼なじみである犬御も、元は少女と同じように真っ黒だった。今は分け合って、白くなっているのだが。

「人間?」

唐突な質問に、四十萬陀がきょとんとした。
ふむ、と難しそうな顔をして膝を抱える。
今は食料でもないし、かといって深入りしようとも思わない。
なんと言えばいいだろう。
んー、と少しだけ唸って、四十萬陀はぽつりと応えた。

「……同じ世界に住んで、同じように生活してるんだから、妖怪と同じなんじゃないかな?」

多分、と僅かに首を傾げて、苦笑と共に付け加える。

>>957
「そうなんじゃん。でも、麻雀に未練があったわけじゃなくて」

指を振りながら、四十萬陀が続ける。

「犬御が「早く成仏しろ」って言ったらしいんだけど、その人たち、死ぬ以前の記憶がなくって、何に未練があるか分かんなくて成仏できなかったらしいの」

妖怪と幽霊では性質が異なるため、そういうこともおこりうるのだろう。

「だから暇なもの同士、ずうっと麻雀してたんだって。犬御が警備に来るまで」
959 :黒井礼 [sage]:2011/03/27(日) 23:54:39.85 ID:JeBQzprb0
>>957
「妖怪もそうだ。携帯の妖怪やら、車の妖怪やら」

そういった後、人間もそんな感じかな、と思う。
携帯依存人間とか。

「人がいる限り怪談は増え続け、それを媒体に新たな妖怪も生まれるだろう」

そして、それらは怪談の風化と共に忘れられていくのかもしれない。
だとしたら、少し寂しいかなと表情がやや曇る。

「そう言えば瞳さんは刀の妖怪だったかな?」
>>958
「黒、落ち着く。逆に俺は白はだめだ。そわそわする」

白い服は一枚も持っていない黒井であった。
そして、妖怪と同じという彼女の言葉を聞いてわずかに笑みを浮かべる。

「俺も同じ意見だ。人と妖怪を分けて考える必要はない。
人も妖怪も似たようなものだ。お互い、生きていけばいいんだ」

そう言ってバイクから起き上がり、背伸びをする。
960 : :2011/03/27(日) 23:59:44.55 ID:I3R30G+AO
>>958
「そうなのか。でも、なんで麻雀なんだ?というか、麻雀のやり方は覚えているんだな。」

不思議そうに話す。
霊は、よくわからないのだ。


>>959
「ああ、私は刀の妖怪。九十九神だ。」

と改めて言った。
961 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/28(月) 00:08:57.85 ID:U6e4xrlSO
>>959
「確かにそうかも」

うん、と黒井の言葉に同意する。
四十萬陀は以前白いセーラー服を着ていたこともあったのだが、どうも落ち着かなかったのを覚えている。

背伸びをしながら起き上がる黒井を見ながら、四十萬陀は膝に少し顔を埋めた。
――お互い、生きていけばいい……
ならば生きる為に人を襲うのは、どうなるのだろう。
人は生きる為にそれに抵抗し、抵抗に敗れれば喰われる。
成功すれば、妖怪は殺される。

「……そーかも」

四十萬陀は反芻するようにつぶやいた。
どちらも責められたことではないのだ。ただお互いに、生きているだけなのだから。

>>960
「うーん……好きだったからかなあ?」

随分曖昧である。

「とにかく、そのままにしておくわけにはいかないから、今日犬御が医者の先生に、その人たちの生前の資料を見せてもらうって言ってたじゃん」

しかし、病院ならそのような幽霊はたくさんいるだろう。
犬御が別の意味で忙しくなるような、そんな予感がする。
962 :黒井礼 [sage]:2011/03/28(月) 00:17:34.39 ID:VFVhsKX80
>>960
「九十九神さん…テケテケやっつけたときに“おぉほ!痛え!”って刀が叫んだ気がしたんだけどこれって気のせい?」

黒い短刀を取り出し見せてくる。
別に妖気は感じられない。

「妖気を発しない刀の妖怪っているのか?こいつ喋りかけても反応しないし」

当然、鞘からも妖気が出ていない。
>>961
「ま、中には妖怪食う人いたり、人間食う奴もいるが。
個人的にはうまく代用食を見つけてもらいたいものだ」

そうは言ったが、黒井は人間であり、人間として育ってきた。(よく妖怪と遊んではいたが)
やや、人よりな意見かもしれない。

「あー、牛食いてぇ」

この理屈だと牛と一緒に生きていくためには本物の焼き肉が食えなくなるな、
と思いながら膝に少し埋まった少女の頭を見る黒井であった。
963 : :2011/03/28(月) 00:23:36.00 ID:kNLGZxGAO
>>961
「犬御も大変だな…」

申し訳なさそうな気の毒そうな顔をした。


>>962
「うーん…気のせいじゃないか?
でも、大切に使ってたら武器というものは答えてくれるさ。」

以前、黒蔵に語ったことと同じように言う。
964 :四十萬陀 七生 [sage]:2011/03/28(月) 00:34:15.22 ID:U6e4xrlSO
>>962
「……妖怪喰う奴は初めて聞いたじゃん」

元とはいえ、人間を喰う側だった四十萬陀はぽりぽりと頭を掻きながら、所在なさげに言う。
ミナクチの伝手により、今は魚を代用食にしているが、たまに人間が食いたくならないかと尋ねられると、食べたいと答えるものが仲間の内には幾匹もいるのだ。

(まあ、人間のほうが栄養あるし、美味しいしねー)

しかし、『人を喰わない』――これは、犬御を救った人物との取り引き、命令でもある。
四十萬陀は、そういうところは律儀なのだった。

>>963
「きひひ、扱き使われて大変って言ってたじゃん」

その割りに、四十萬陀は楽しそうだ。

「瞳君にもお世話になってるみたいだし、いつも犬御をありがとじゃん。よろしくしてやってね」

にっこり笑って、四十萬陀は頭を下げると、おもむろに立ち上がった。

「お昼時だし、少し山に戻るじゃん。じゃあねー」

そう言って二人に手を振ると、一瞬で夜雀へ姿を変えて、
山に向かって飛んでいった。
965 :黒井礼 [sage]:2011/03/28(月) 00:41:41.35 ID:VFVhsKX80
>>963
「…だな。気のせいだな。大切に使…」

少しの間。何か聞こえたのだろうか。
ゆっくり刀を鞘にしまい、元の位置に戻す。

「……でもなんか気味悪いな。宇宙人でも乗り移ってたらどうしよう。
帰ったら交換しておこう」
>>964
「妖怪の肉を焼いて食う退魔師がいるそうだ」

きっとやたら強いんだろ…いや、もはや妖怪化してるんじゃないか?
夜雀となって飛んでいく姿を眺め、
>>ALL
「俺もそろそろ目的地へ行くか…じゃ、また今度」

傷バイクに乗って道路を走っていった。

/お疲れさまでした。自分も落ちます。ありがとうございました!
966 : :2011/03/28(月) 00:47:40.76 ID:kNLGZxGAO
>>965
「宇宙人て…いくら何でもそれはないだろう。」

呆れ顔で返す。

「それじゃ、またな。
さて、修行に向かうとしよう。」

黒井を見送った後、修行場所に向かった。




/絡み乙&ありがとうございました。
967 :四十萬陀 七生&東雲 犬御 [sage]:2011/03/28(月) 23:12:25.62 ID:U6e4xrlSO
「今日は仕事休みなの?」
「あー……まあな」

並木通りを歩く二人の男女には、50cm以上の背丈差があった。
少女は黒いセーラー服に、大男は黒いジャケットに。
二人並ぶと、景色から浮くほど黒いのがよく分かる。

犬御は久方ぶりの休みに羽を伸ばすついで、四十萬陀と散歩に出掛けていた。
こうやって並んで歩くのも久しぶりで、彼にとっては感無量の極みである。
四十萬陀のほうは、いつもと変わりないのだったが。
968 :夜行集団 :2011/03/28(月) 23:22:49.25 ID:a0tiXKuJ0
>>967
二人の並木道を歩く光景は、なんとも言えない甘酸っぱさがあった。
そんな道の反対側からあるいて来るのは銀髪のホスト。
特にあてや目的があるでもなくふらふらと、街の散策、という奴である。

ちなみに彼の今回選んだ乳製品は、当社が言った事を鵜呑みに説明すると日韓合作の先駆け
『キムチとミルクが冬の雪中で出会った。
 その辛味と甘みは溶けあい、優しく、そして刺激的な愛が生まれた。
 本来合うはずのない二人、その先に待ち受けるものは・・・!』
であった。

「うん、牛乳が死んでるっていう」

一度突っ込みだすと止まらなくなってしまいそうなため、彼は味の批評にだけ専念した。

「お!!
 四十萬陀じゃねえかっていうwwwwww隣のそれは誰だ?
 
 てかもしかしてデートwwwwww?」

早くその合作品の魔境から逃れたい彼は二人に話しかけた。
969 :四十萬陀 七生&東雲 犬御 [sage]:2011/03/28(月) 23:36:17.77 ID:U6e4xrlSO
>>968
「あ、虚冥君じゃん!
 ……まーた変な牛乳飲んでるじゃん? 絶対それおいしくないじゃん!」

向かい側からやって来る、銀髪の青年を見た四十萬陀は、ふりふりと手を振ると、
彼の持つ明らかに地雷臭い牛乳を指差して、けらけらと笑った。
そこにずいっと割り込んでくるのは、隣の大男である。

「あ゙ぁん? テメェ誰だ」

邪魔してんじゃねーよ、という心中を赤い目がありありと語っている。
しかし、ドスの効いた声と睨めつける顔は完全なるチンピラだ。

「ちょっとやめるじゃん、馬鹿犬御」

すぱーんっ、といつものごとく四十萬陀がチョップで制止を入れる。
当然ながら犬御の心中には気付いていない。

「違う違う、ただの散歩じゃん」
「ぐっ……」

照れもせず否定されたことに、犬御はちょっぴり顔を顰めた。
970 :虚冥 :2011/03/28(月) 23:46:04.08 ID:a0tiXKuJ0
>>969
「『生きるとは常にあらゆるものに探求し続ける事だ』、
 とどこかで偉い人が言ってたっていうwwwwww」

つまりどんなに不可解な牛乳であったとしても、そこにカルシウムがあるというのなら、
彼はどんな時も手を伸ばす、という事らしい。
しかしながら、その偉い人もまさか『キムチミルクに挑め』、なんてレベルの事は言っていないはずだ。

「なんだっていうwwwwwwこの図体も態度もでかい奴はwwwwww」

喧嘩腰な彼。
その四十萬陀に対する思いは容易に把握できてしまい、あえて説明させ、
この男に追い打ちを与えようとした。
971 :四十萬陀 七生&東雲 犬御 [sage]:2011/03/28(月) 23:56:49.26 ID:U6e4xrlSO
>>970
「いやあ、挑戦しすぎだと思うじゃん」

ぶんぶん、と真顔で手を左右に振る。
……と言いつつも、しげしげと眺める所を見るに、興味がないわけではなさそうだ。
怖いものみたさ、というやつだろう。

「なんだと!?」
「あー、大声出さないじゃん。このでっかいのは、送り狼の東雲 犬御。まあ所謂幼馴染みってやつじゃん」

「……ぐぐぐ……」

歯を食い縛り、犬御が虚冥を睨み付ける。
「幼馴染み」という単語が出るたび、一々悔しがらなければならないのか。
972 :虚冥 :2011/03/29(火) 00:06:09.65 ID:q4wNXFO00
>>971
「なんだ”唯の幼馴染み”かっていうwwwwww   (片想いご苦労様ですwwwwww)
 俺は虚冥、四十萬陀とは知り合いだ、よろしく!!   ()」

相手は自分をよく思っていないみたいなので、
取り敢えず自己紹介はしておくべきだと、心に刃付きであいさつする虚冥。

四十萬陀がこちらを見つめている。厳密にはキムミルクを、だが。
どうやら彼女はなかなかチャレンジャーなようである。

「おいwwwwwwこれ試してみろwwwwww
 大丈夫だっていう、口は付けてねえからwwwwww」

先ほど牛乳が死んでいると虚冥は評価したが、
実際にはキムチの方も凄惨な死を遂げてしまっていた。
973 :四十萬陀 七生&東雲 犬御 [sage]:2011/03/29(火) 00:18:13.69 ID:0JYmcToSO
>>972
「あ゙あ!?」クワッ
「いや、いきなり何キレてるじゃん……」

心の刄に牙剥き出しの犬御に、四十萬陀が呆れ顔で溜め息をつく。
半分この少女なのだが、本人は全然意識してないのが悩みどころだ。哀れな片思い狼の。

「え? いいじゃん?」

ぱっと顔を上げた四十萬陀は、キムチミルクを受け取ると、
緊張した面持ちでそれを口に含んだ。
ごくん、と少女の喉が動く。

「…………」

味の余韻を感じているのか、そっと目を伏せている。
しばらくして瞳を見せた四十萬陀は、キムチミルクをじっと見つめると、

「……地獄絵図じゃん」

静かに呟いた。うん、牛乳もキムチも共倒れで、誰も生き残ってないです。
というか普通に不味かったらしく、四十萬陀が「お腹壊しそうじゃん」とぼやきながら、げえげえと舌を出す。
974 :虚冥 :2011/03/29(火) 00:23:41.81 ID:q4wNXFO00
>>973
「wwwwww」

少女の反応に満足いったのか、楽しそうに笑っている虚冥。
雪中で出会った初対面同士が命のとりあいをしたという、バッドエンドであった。

「そういや、お前らなんだここにいるんだっていう?

 四十萬陀の友達なんだから、恐らくそこのでかいお前も山の妖怪なんだろ?」
975 :四十萬陀 七生&東雲 犬御 [sage]:2011/03/29(火) 00:32:40.98 ID:0JYmcToSO
>>974
「うう〜……」
「オイ、大丈夫かよ?」

そんな明らかに不味そうなモン飲むから、と呆れ顔しながら、どさくさ紛れに背中を擦る。
……そして、どさくさ紛れにチラチラ四十萬陀の飲みかけのキムチミルクを見ている。どうやらこの狼はムッツリらしい。

「ん、同じ袂山の送り妖怪じゃん。
 今日はただの散歩じゃん。暇だし、久しぶりに犬御の仕事が休みだったから」

まだ口の中が気持ち悪いのか、舌を出しながら虚冥に答える。
976 :虚冥 :2011/03/29(火) 00:43:46.08 ID:q4wNXFO00
>>975
「wwwwwwお前みたいな時代錯誤の番長見たいな奴が?wwwwww
 どこが雇ってくれたんだよ?っていうwwwwww」

見るからに凶暴な見た目からは想像できなかった動詞、働く。
虚冥はそこがどうやらツボに入ったらしく、お腹を抱えて指をさしながら爆笑していた。

「そうだwwwwwwてめえもこれ飲んでみろwwwwww

 四十萬陀の方は働いてるのか?っていう」

四十萬陀に質問している裏で、虚冥はウインクを犬御に向けていた。
その意味は、こいつ引きつけておくからやるなら今だぜ?
男の煩悩にまみれたテレパシーである。
977 :四十萬陀 七生&東雲 犬御 [sage]:2011/03/29(火) 00:52:33.90 ID:0JYmcToSO
>>976
「うっせぇなァ誰が番長だ! そこの病院で働いてンだよ!!」

がるる、と威嚇するように怒鳴る。
しかし確かに、この明からさまにチンピラな大男が病院で働いているとは誰も思わないだろう。
「まあ病院っていっても、雑用だけどねー」と、四十萬陀が小さく補足する。

「私? 私は全然――」
(こ、こいつ……)

煩悩テレパシーを感じ取った犬御は、手に持った『今なら七生の間接キス☆』なキムチミルクを見て、ごくりと唾を飲んだ。
――いいのか!? やるのか!? 男としてやっていいのかー!?

(……ええい、ままよ!)

犬御は何かの覚悟を決めると、キムチミルクを一気に飲み込んだ。
ごくごくごくっ!

「………………ぶううっ!!」
「えぇ!? なに!?」

そして、あまりの不味さに勢い良く吐くのだった。
978 :虚冥 :2011/03/29(火) 01:01:05.08 ID:q4wNXFO00
>>977
「病院!?
 お前、それマジで言ってんのかっていう!?」

虚冥の目が大きく開いた。
目だけでなく、毛穴も、今の驚き具合ならばチャクラだって開眼するかもしれない。

「お前、あれだろ!!
 病院つっても、ウイルスが漏れ出してバ○オハザードになってるようなところだろ!?」

そんなこんなで驚いていると、案の定虚冥の口車に乗せられた哀しき犬が、
薄ピンクの牛乳を吐き出した。
その様に今度はまがまがしい笑みを浮かべ、にやにやと犬御に近づく。

「あーあ、これは一気に飲んだら咽る上に後味がこびりつくってのにwwwwww

 ま、うぶな奴がこちらに不用意に手を伸ばすからこうなるんだっていう」

今、ここで言う”こちら”とは、なんなのか。
それはあまり生きていく中で必要ない、むしろ知らないほうがいい世界である。
979 :四十萬陀 七生&東雲 犬御 [sage]:2011/03/29(火) 01:12:03.11 ID:0JYmcToSO
>>978
「ぜぇ、ぜぇ、ちゃんとしたとこに決まってンだろボケッ……おええぇ」
「何やってるじゃん地獄絵図って言ったばっかりなのに!」

まんまと乗せられた上にむせ返るどころか吐きそうな不味さに目眩を覚えながらも、間接キスに加えて介抱してもらって、何だかんだで犬御は嬉しそうであった。頭の幸せなやつだ。
……しかし、不味いものは不味い。
口車の発端である人物を、ぜえぜえ息を巻きながら睨み付ける。

「こちらだぁ……? つぅかテメェ“コレ”狙ってただろ……!!」

コレとはつまり、犬御が気持ち悪さに膝をつく結界のことだ。
四十萬陀には一体何のことだか分からないが、とりあえず地面に散った汚いキムチミルクを風で吹き飛ばしていた。
980 :虚冥 :2011/03/29(火) 01:21:46.34 ID:q4wNXFO00
>>979
目の前で大男が牛乳一つで片膝を付いていた。
もはやこれほどの攻撃翌力ならば、珍味といはず沈味と言っても良いかもしれない。
Sの毛も持つ彼にとってはなかなかの絶景だったらしい。

「狙ってた”ってなんですか〜?
 俺は別に、飲めとは言ってないような気がしたんだけどな〜っていうwwwwww

 それにてめえの顔見てるとまんざらでもないような?」

三つ目の言葉で安全圏内に隠れる虚冥。
まんざらでもない、この言葉を言及すれば、四十萬陀はなにかしら感じるところが
出てきてしまうかもしれないからだ。

そして今度もまたウインク。
その意味は
キムチミルク吐き出したのが、俺だけなんて納得がいかない。お前も道連れだっていう。
981 :四十萬陀 七生&東雲 犬御 [sage]:2011/03/29(火) 01:34:02.85 ID:0JYmcToSO
>>980
――こんな不味いモン、初めて飲んだぜ……。
昔風邪引いた時に飲まされた薬草より不味い、と犬御の脳裏に一瞬走馬灯が走る。
しかし、このまま苦しそうな姿を見せても目の前の虚冥がヨロコぶだけである。

「クソが……!!」
「ちょ、犬御っ!?」

犬御はよろよろと立ち上がると、虚冥に掴みかかろうとする。
しかし、三つ目の言葉と共に、犬御の動きが止まった。
四十萬陀が、「え?」と首を傾げる。

「まんざら? 犬御、これ美味しかったじゃん?」
「い゙っ!? いや、違、そういうンじゃなくてだな……。
 ッテメェ〜〜……!!」

ギリギリ、再び歯を食い縛る。
勘のいい犬御だ。ウインクの意味も何となく察したが、とはいえこっちも納得いくはずないのだった。
982 :虚冥 :2011/03/29(火) 01:43:53.50 ID:q4wNXFO00
>>981
「wwwwww己の精神を鍛えることに毒は必要だっていうwwwwww
 俺は単にその修行にとって、まんざらでもない毒、と判断したと思ったんだけど?」

虚冥は人を馬鹿にする時、通常よりも思考のスピードが上がる。
つまり、限りなく人にちょっかいをかけるために進化したということである、何と無駄なことか、
と時の女神は白目をむくだろう。

そして笑顔で犬御に視線を送る。とてもしらじらしく。
983 :四十萬陀 七生&東雲 犬御 [sage]:2011/03/29(火) 03:26:49.41 ID:0JYmcToSO
>>982
「…………〜〜行くぞ七生!!」
「うえぇ? あ、またね虚冥君!」

言い返すに言い返せなくなった犬御は、少女の手を引っ張って行ってしまった。
半ば引き摺られていく四十萬陀は、焦りつつも虚冥に別れを告げると、
よく分からないまま、ずるずると流されていったという。

//寝落ちすいません…;; ありがとうございました
984 :露希「」&白龍『』 :2011/03/29(火) 22:16:23.29 ID:+2NeBvmM0
繁華街を歩く少女。
頭には包帯を巻いている。

「今日の晩御飯は何が食べたい?」

『て言うか、もう歩きまわって平気なの?』

つい最近、ある物に巻き込まれたため、怪我をしてしまった。
その為、外出は久しぶりである。
985 :黒井礼 [sage]:2011/03/29(火) 22:26:21.21 ID:mbyeTRB30
>>984
「ヘルシー売り切れかよ…」

キョロキョロと辺りを見回す黒いサングラス。

「今日はコンビニの弁当で我慢するかな…」

ヘルシーとは調味料。何にでもあう万能調味料。
あのスーパーで売り切れ、この繁華街で探し回っているのだ。
986 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/29(火) 22:28:13.26 ID:0JYmcToSO
>>984-985
「たっく何が買い出しだよクソ医者が……ただのパシリじゃねーか……」

ぐちぐち言いながら、繁華街を闊歩する人相の悪い大男。
彼が歩くと、自然と人が道を開けるため、ぶっちゃけ迷惑極まりない。
2mを越える巨体(しかもチンピラ)が白衣を来て歩いているものだから、目立ってしょうがない。

今日彼が繁華街に来た目的は、東雲曰くクソ医者から、「買い出し行って来て下さい」との命――つまり医者の昼飯をパシられている訳だが――からだ。
腹いせにクソ不味い……あのキムチミルク的なものを買っていってやろうか、と眉間に皺を寄せながら考える。
987 :黒蔵 [sage]:2011/03/29(火) 22:42:17.04 ID:eFdGnCwio
>>984-986
くぅ、と腹がなる。
黒蔵は物欲しげにパン屋のガラス窓や、総菜屋の店先をうろうろしていた。
小銭を使い果たした黒蔵には、繁華街の食べ物を扱う店の匂いは切ない。
その姿をまもなく露希に気づかれるとも知らず、ため息をつく。

(裏どおりで障りでも漁ろう)

諦めて振り返った時、犬御とばっちり目が合う。

(げっ!)

傷が塞がっていない今、黒蔵にとって犬御はなるべく会いたくない相手だった。
988 :露希「」&白龍『』 :2011/03/29(火) 22:44:32.89 ID:+2NeBvmM0
>>985
「あ、いつしかの黒井さん。」

ヘルシーを探し回る黒井に気づいた様子。
ゆっくりと歩き寄る。

「先日は零がお世話になりました。ところで、何をしているのですか?」

>>986
「東雲さん、なんで白衣なんか…。」

唖然としてしまう。前に見たときは黒い服装だったのに、今は自分と同じ白。
何があったのか見当もつかず、ただ返答を待つ。

>>987
「…ああ、黒蔵君。どうしたの?」

いつものテンションより沈んでいる。
きっと害は少ない筈だ。
989 :黒井礼 [sage]:2011/03/29(火) 22:53:06.51 ID:mbyeTRB30
>>986
「でかい奴だな…」

その姿を見て呟く。
黒井も背はある方だが彼ほどではない。

「すいません。ヘルシーどっかに売ってませんでした?」

声をかける。ヘルシー中毒と化した黒井にはヘルシーの欠乏は死活問題なのだ。
>>987
「ああ、あれは…」

腹が減っている。あれは腹が確実に減っている。
なのに自分は贅沢にもヘルシーを!

「何かおごろうか?」

話しかける。この前の件もあり、申し訳なく思った。
>>988
「あ、どうも。零君にはこちらこそお世話に。
ヘルシー探してたんだけどね。
黒蔵君見てたら申し訳なくなって」

手にはレジ袋。その中身は酒。

「日頃いかに自分が贅沢してたかわかった」

申し訳なさそうに頭をかく。
990 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/29(火) 23:00:33.67 ID:0JYmcToSO
>>987
「あ゙?」

目線の先にあった、自分よりも背丈の低い少年の姿。
忘れもしない、にっくき恋敵。

「……クソガキじゃねぇか。奇遇だなァ」

開口一番、苛々を隠そうともしない低い声だった。いっそ清々しい。
買い出しを頼まれていることも忘れ、東雲は大股で惣菜店の前にいる黒蔵のところまで歩いていく。
>>988
「お前確か……着物女といた、七生のダチか」

何故自分の名前を知っているのか、と一瞬首を捻ったが、思い出したらしい東雲が一人頷く。
以前の真っ黒な服から、変わって真っ白になった東雲。
前の姿を見ているものなら、余計に違和感を感じるのも当然だろう。

「……働いてんだよ、そこのソーゴー病気で」

雑用として、とまで付けないのは彼のプライドか。
しかしパシられていてはプライドもなにもあったものではない。

>>989
「ヘルシーだ?」

繁華街を眺めて回ったこともなければ、特に人間の食い物に関して知識があるわけでもない犬御は、面倒そうな顔をする。

「知らねェよ。なんだ、ヘルシーって」
991 :黒蔵 [sage]:2011/03/29(火) 23:05:05.12 ID:eFdGnCwio
>>988-989
「あ、や、露希と白龍。ちょっと、餌漁りに来たんだ」

前門の露希、後門の狼。
テンション低めでも露希は露希。ちょっぴりびくびくしながら挨拶する黒蔵。
そして黒井にも気づく。

「黒いほうの酔っ払い!」

こんなところをうろうろしていたら、餌=人間、と黒井に思われても仕方がない。
なのに黒井はおごろうかと申し出てくれた。

「…いいの?ホントにいいの?」

恐る恐るたずねてみる。
殺される心配はないようだが、まだ、この人間のことは良くわからないのだ。

>>990
「クソガキじゃねぇ!黒蔵だ!」

50cm以上の落差を見上げて、口先だけは虚勢を張っている黒蔵。
しかし鼻のいい狼なら、嗅ぎ付けられるかもしれない。
黒蔵から何かが腐ったような微かな異臭が漂うことに。
992 :露希「」&白龍『』 :2011/03/29(火) 23:17:46.72 ID:+2NeBvmM0
>>989,>>991
「え、ヘルシーですか?私も知ってますよ。」

なんと、露希もヘルシーを知っていたのだ。
毎日、料理で使っているのに零は全く興味が無かったらしい。

「黒蔵君かぁ…大変だよね。ボクも何か奢るよ。」

黒蔵を見つめる。そして、ちゃっかりと撫でる。悪意はない(多分)

>>990
「…そうなんですか。頑張ってくださいね。」

何か裏があると思い、詳しく聞くことを止めた。
そう言えば、今日はもう一人の可愛い子がいないと思い、

「今日は、七生ちゃんは一緒じゃないの?」

と尋ねる。
993 :黒井礼 [sage]:2011/03/29(火) 23:25:00.23 ID:mbyeTRB30
>>990
「あれだよ。調味料だよ。…でもやっぱいいや。
黒蔵君見てたら申し訳なくなった」

はぁ、と肩を落とす黒井。
その表情は無念、そんな感じ。そして、

「ん?…君、妖怪の類か?」
>>991
「今日はまだ酔っぱらってない。後で酔っぱらうけどな」

今日はまだ、まだ酔っぱらっていない。そのため酒臭くない。
黒井は仮に彼が人を食っているとしても、現場を見なければ、
そう確実断定的に聞かなければ何も言わないし何もしないだろう。
酔っぱらうとおかしくなるが。

「そんなおそるおそる聞くなよ。何食いたい?」

(あんまり高いの頼むなよ…!)
>>992
「知っていたか。もはや俺はヘルシーなしでは生きられなくなった」

いつからか黒井は食事が楽しくなくなった。
彼は年のせいか、とあきらめていたが万能調味料ヘルシーに出会う。
そして、見事に中毒になった。

「君も、零も、ヘルシーの使いすぎには気をつけるんだ…。俺のようにいつか中毒になる」

その目はサングラス越しに何かを投げかけていた。
994 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/29(火) 23:29:57.86 ID:0JYmcToSO
>>991
「……悪かったよ、ちょいと苛々しててな、ついクソガキだなんて呼んじまった」

なんとこの狼、神妙そうな顔をして謝るではないか。
50cm下を見下ろしながら、四十萬陀が見たら「ありえないじゃん」と震えて首を振りそうないい笑顔を浮かべ、黒蔵の頭に手を置く。

「悪かったな、チビ」


……やっぱり全然ひっとかけらも反省してません。
先程の優しい笑みとは千里も遠い、完全に馬鹿にした顔で嘲っている。大人気ない。いや、黒蔵のほうが年上なのだが。

「つーか何だよクソガキ、ひでェ臭いだな」

鼻をつく、酸っぱい悪臭。
近付いたことでより感じたのか、顔を顰めて鼻を摘む。

>>992
「そりゃ、仕事の途中だからな」

流石に東雲といえど、否、東雲だからこそ、仕事中に四十萬陀をひっぱり回そうとは思わない。
というか、頼んだところで着いてきてくれないだろう。
多分、「ちゃんと働くじゃん」とでも言って。

「……」

一人で想像して、一人で落ち込んだ東雲であった。

>>993
「へェ」

とてもどうでもよさそうだ。
何しろ、東雲は何でも生で食べる派だからだ。基本肉だが。
しかし、黒井の一言で、

「……何モンだ、テメェ」

東雲の目の色が変わった。
警戒を、滲ませた色へ。
黒蔵たちと知り合いなようだが、目の前の彼は明らかに人間だ。
995 :黒蔵 [sage]:2011/03/29(火) 23:36:23.65 ID:eFdGnCwio
>>992-993
「露希も?いいの?」

逃げるほどのエネルギーを使えない黒蔵は大人しく撫でられている。
露希の手のひらに、黒蔵の頭の温かさがじんわり伝わってゆく。

「米なら何でもいい。お握りとか、餅とか、酒だったら嬉しいけど。」

黒井への警戒も次第に薄れてきている。それほど空腹なのだ。

「へるしーって、何?」

もしかしたらそれは、聞いてはいけない質問だったのかもしれない。
ヘルシー、駄目、ゼッタイ。

>>994
(ぐさっ!)

50cm上から悪意が振ってきて、深く心に突き刺さった。
匂いのことも指摘されて、黒蔵は何ともいえない嫌な顔をする。

「…煩せーよ、ほっとけ」

拳の一発くらい犬御のわき腹にお見舞いしたいところだが、今はそうも行かない。
中に弾の残った傷が、腐ってきているのだ。
996 :露希「」&白龍『』 :2011/03/29(火) 23:45:33.72 ID:+2NeBvmM0
>>993,>>995
「黒井さん、あの中毒性にやられちゃったのですね…」

悲しい目で黒井を見つめる。
自分はそうなりたくないと言う目で。ダメ、絶対。

「お握りならコンビニで買えるね。ちょっと買ってくるよ。」

と言って、近くにあるコンビニへ行った。
そして、3分程して、戻って来た。
袋の中には、色々な味のセブ○イレ○ンのお握りとお茶。

>>994
「ぷっww」

何やら落ち込んだ様子だったので吹いてしまう。
しかも、大きな人が落ち込むと言うのがツボに入ったらしく、一人で堪えている。
997 :黒井礼 [sage]:2011/03/29(火) 23:51:18.24 ID:mbyeTRB30
>>994
「ヘルシー、特に肉にかけるとすごくうまい」

中毒者が言うんだから間違いない。
そして、警戒されていることを感じたのか、

「そんなに警戒するな。俺は退魔士だ。別に喧嘩する気はない。
ただ、俺は、ヘルシーが欲しかっただけなのだ…」

退魔士であり、スイーパーという組織の兵士である。
微かに今日、命令を受け撃破した妖怪のにおいもする。
>>995
「待ってろ、おにぎりだな」

そういって店でおにぎりを買ってくる黒井。
そしてもう片方の手に握られたのは…。ああ、なんということだ。

「これがヘルシーだ!食うんだ」

おにぎりにヘルシーを少しかけて手渡す。
味はとてもヘルシー。同時にこれ飲め、といって酒も手渡す。
>>996
「ああ、もうだめだ。俺は、味覚を支配された…」

どことなくげっそりとした様子の黒井。
ヘルシー。ダメ、絶対。

「帰ったらヘルシー山盛り食うんだ…。この次の任務で仲間にも食わせてやる。
ロンドの捕虜にもスープに混ぜて飲ませてやる」

※ヘルシーとはかつおぶしのような万能調味料です。
998 :東雲 犬御 [sage]:2011/03/29(火) 23:57:55.84 ID:0JYmcToSO
>>995
「テメェな……」

黒蔵の態度が気に入らなかったのか、眉間に深い皺を寄せる。
が、東雲の鼻は、すぐに黒蔵の臭いの正体を突き止めた。

(傷の臭いじゃねーか)

ふと、脳裏に自らの命の恩人の姿が浮かぶ。
クソ医者だ何だと呼んでいるが、しばらく側で治療を見ている以上、腕は確かだ。
正体の分からない東雲を預かり受けた、懐の深さもある。

(あの医者ならコイツの傷も……って何考えてンだ俺は、クソガキだぞ!?)

東雲は目を見開くと、ぶんぶんと頭を振った。
……けれど、けれども。彼がこの傷で苦しめば、四十萬陀も悲しむのではないか。
何せ、あの少女が好きなのは――。

「…………オイ、そのクッセェ臭い、傷が原因だろうが。その傷どーすんだよ」
(一応、聞いてみるだけだ。聞いてみるだけ)

>>996
「……テメェ……」

笑ってんのバレてんぞ、と。
ビキビキ青筋を立てながら、笑いを堪える露希を睨む。

>>997
(何か食ったらいけねぇ気がする)
「……いや、俺はいらねぇな」

目の色が違う黒井を見て、ちょっと引き気味に首を振る。

「退魔士っつって警戒すんなって言われてもな――って、お前もしかして」

黒くて、退魔士で、この雰囲気……。
この間、四十萬陀が会ったという男にそっくりではないか。

「黒井って野郎か?」
999 :黒蔵 [sage]:2011/03/30(水) 00:06:24.08 ID:B+eLo6Nmo
>>996-998
「露希……。ありがとう」

怖がって警戒していたことを黒蔵は後悔した。露希はやっぱりいい人だったのだ。
ここで黒井にヘルシーおにぎりを押し付けられていなければ、
黒蔵は露希にぎゅっと抱きついたかもしれない。

「これが、へるしー?」

黒井に握らされたお握りをぱくりと一呑みにした黒蔵は、なにこれ美味い、とつぶやいた。
そもそも空腹だったところにヘルシー摂取である。何を食おうが美味い筈なのだ。

犬御がためらっている間に、さらにこのショタは酒まで飲み始めた。これはもっと駄目、ゼッタイ。

「傷ゥ?だから今、こうやって埋めてんだよォ!」

一度はくっついても、弾が入っているからまた開くのだ。
そうしているうちに腐り始めた背中の弾傷。
黒蔵の目の色がさっきまでと違う。正気じゃない。ヘルシー、駄目、ゼッタイ。
1000 :露希「」&白龍『』 :2011/03/30(水) 00:13:28.85 ID:Nh6ZeBa00
>>997-999
「黒井さん、貴方危険ですよ…。でもヘルシーは美味しいですよね。」

笑顔を見せつつ、黒蔵を撫でる。そして、撫でる。

「え、笑ってるの分かりました?

だって東雲さん…あはははは」

睨まれているにも関わらず笑い始めてしまった。
この後どうなるか分からないのに、とにかく笑う。

最後に、不意にきゅっと黒蔵を抱いて、買い物があるのでまた、と言って走って行ってしまった。

/お疲れさまでしたっ!!
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ネトウヨの釣り方おしえてくれ @ 2011/03/29(火) 23:10:17.85
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固法「――……風紀委員です。先輩」 @ 2011/03/29(火) 22:50:47.88 ID:/PiAdqIY0
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