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15、16歳位までに童貞を捨てなければ女体化する世界だったら - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/04/15(金) 12:03:04.86 ID:Y/RmhFP60

避難所 http://jbbs.livedoor.jp/study/7864/
まとめ http://www8.atwiki.jp/tsvip/

まとめではまとめ人募集中
wikiの編集法の知識有無関わらず参加待ってます
編集の手順はwiki内『編集について』を参照のこと
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【進撃の巨人】俺「安価で巨人を駆逐する」 @ 2024/04/27(土) 14:14:26.69 ID:Wh98iXQp0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714194866/

諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714136403/

少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

2 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/04/15(金) 23:19:11.28 ID:x1dQoKSlo
板違いだSS速報でやれ
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/
3 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/04/15(金) 23:44:29.86 ID:t4NWWa6k0
>>1
4 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage]:2011/04/16(土) 14:12:31.97 ID:1ywZr5PK0
>>1

そして前スレの名乗らなかったまとめ人も乙です
5 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/23(土) 08:18:53.14 ID:hwR3hwvo0
前スレ
http://ex14.vip2ch.com/part4vip/kako/1259/12595/1259594237.html

>>2
SSスレという訳でもないんだなコレが
6 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/04/23(土) 11:35:33.01 ID:TPR+sKXNo
SSが投下されてるのにSSスレじゃないとか意味が分からないんだけど
それともSSじゃない、れっきとした小説だ(キリッ とでも言いたいの?
7 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/23(土) 13:32:26.18 ID:hwR3hwvo0
>>6
いや別に。元々VIPの長期スレだし、単にSS専門のスレではないというだけの話
誤解を生んだのならごめんお
8 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/04/25(月) 08:40:18.32 ID:gybF/OGq0
「そういう世界だったら」という妄想スレであり雑談スレではあるのだけど
まとめwikiにあんだけSS(イラストやゲーム企画もあるけど)置いといて
その言い訳は通るのか?と言われると痛いのは確か

在り方を考えるか、移転も視野に入れるかした方がいいんかな…?
9 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/04/25(月) 21:30:40.43 ID:6XD8zDYC0
まー過疎って雑談なしのSSスレになってるのが実情だしな・・・
かといってSS速報は二次創作物というか禁書板だし移動したら場違いな気がしないでもない
10 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/26(火) 20:28:50.49 ID:z3MeKCpho
ふふ、過疎の生み出した悲しい現実よ
11 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/01(日) 16:20:17.45 ID:GuyJRU+ko
何か書きたくなったので安価↓
12 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/01(日) 16:37:02.11 ID:nm6l7tDbo
らんまみたいに水がかかると女になる男が女になって盛り放題
13 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/01(日) 20:24:52.27 ID:juHwiTuAO
>>12

イヤ、設定が違ェ…
14 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/02(月) 01:53:33.27 ID:qBIpybmAO
>>11
安価なら…

「高校に入って1ヶ月、同じクラスの男子が4月生まれの童貞ばっかで、オレ以外は全員女体化…何このハーレムWWW」
15 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福島県) [sage]:2011/05/02(月) 02:20:24.31 ID:D70Acho1o
安価下
16 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/02(月) 02:46:13.16 ID:7gda4kSQo
>>12
主旨が違うだろう、それ。再安価↓
17 :16 [sage]:2011/05/02(月) 02:47:17.18 ID:7gda4kSQo
ぎゃあ、リロードしてなかったから
>>14採用しますorz
18 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/02(月) 02:53:52.27 ID:qBIpybmAO
>>17

おK、脱いで待機しとく
19 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福島県) [sage]:2011/05/02(月) 03:03:28.85 ID:D70Acho1o
安価くれ↓
20 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/02(月) 04:00:16.12 ID:v+Xr2Lf9o
いじめっ子がにょた化
21 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/02(月) 04:53:11.50 ID:7gda4kSQo
>>14のお題で。

「なぁ、いつから学校は楽園になったんだ?」
「お前だけだろ、このクソったれめ。」
「オイオイ、乙女が汚い言葉を使うもんじゃねーぞぅ?」
「誰が乙女だ、誰が。」
「お前だ、お前。女になってから見事にツインテールの美少女になっちまいやがって。」
「バッ、バカ言うな。周りを見てみろっつの。見飽きるくらい居るだろうが、この位。」
「いやまぁ…そうなんだけどな。」

高校に入って1ヶ月、共学のくせに男子クラスなんぞが存在する学校だったので、入学した時は落胆したもんだ。
なにせオレはその男子クラス、通称男クラの一員になってしまっていたからだ。
でもって、今はゴールデンウィーク開けの気だるい五月病にでも襲われそうな憂鬱な朝。
……の、はずだった。
"だった。"というのは、4月中旬から所謂"異性化疾患"とやらにかかるクラスメイトが続出したせいだ。
そして今日、オレ以外の最後の男子が女体化して登校してきた様子を眺めている。

「しっかし、まさかお前以外全員女になっちまうとはなぁ…これじゃ男クラじゃなくて女クラだな。
誕生日被りすぎだろう…このクラス。大体どいつもこいつも童貞ってありえねぇよ。」
「真っ先に女になったお前が言える言葉か?」
「ぐ…うっせぇ!なりたくてなったわけじゃねぇっつの!」

小学校からの男友達だった美少女から胸倉を掴まれる。男としてはある意味至福のひとときだ。

「ハハ…ッ!フハハハハッ」
「どうした、GWボケか。いや、脳でもやられたのか。…そうか!お前も女体化の兆候が出たんだな!そうだろう?!」
「見たまえ!このクラスを!オレ以外は全員美少女!おまけに幼馴染と喧嘩しているこの状況!」
「フハハハハッ!我が世の春がきたぁあああああああッッ!!はグわッ?!」

高説な説法中に、オレの脳天に電撃が走った。

「君らが仲が良いのはこの1ヶ月で十二分に解っているのだから、朝くらい静かにしてくれないかね。」

後ろを振り向くと、学級委員長が英語の辞書片手に突っ立っていた。
もう片方の手には鞄が握られている。どうやら今しがた登校してきたらしい。

「どこ見て言ってんだよ!誰がこんなヤツとッ!?」
「はいはい、ツンデレツンデレ。夫婦喧嘩もそこまでにしてほしいよ、全く。」
「な…なッ?!」

メガネをかけている事に加えて髪型がおさげ。
左右に分けて編んで下げるものではなく、頭上にまとめて後ろへ垂れる形のヤツだ。
22 :21の続き [sage]:2011/05/02(月) 04:54:01.16 ID:7gda4kSQo
「イテテ……朝っぱらから激しいラブコールありがとう委員長。髪型も委員長らしくなったなぁ」
「マゾか君は。……それにこの髪型は母さんが勝手に編んだんだ。僕の趣味じゃない。」
「へぇ、委員長の親御さんは委員長ってものを解ってるなぁ。うんうん。」
「勝手に頷かないでくれないか。気持ちが悪い。」
「いやぁ…いいなぁ、こういうクールっ娘ってのも。」
「……君も考え直した方がいいぞ。こんな男を好きになるなんてどうかしてる。」
「違う!俺とこいつはそんなんじゃないの!只の腐れ縁だって!」
「ハイハイ、そうですか。今日もバカップルご馳走様。」

オレの幼馴染が激しく委員長に抗議しているが、彼女は意にも介さずオレの後ろの席に座る。
ちなみに彼女もこのクラスで初めて女性化してしまった1人だ。
同じ日に男クラに2人も女子が入ってきた時はびびったもんだ。

「ああ、そうだ。君たち、イチャつくなら今の内に。」
「「どういう意味だ?」」

オレと幼馴染が同時に尋ねる。
委員長はメガネをクイっと上げ直し、深刻そうな顔をして机に両肘をつき、手を組む。

「どうやら、1年生のクラスの再編成が行われる話が持ち上がっている。」
「考えてもみたまえ、男女比 1:39って不自然にも程があるだろう。」
「幸い、男子クラスがもう1つ存在するしな。そこと混ぜて通常の混合クラスを2つ作るのではないかな。」
「そうなってしまえば、離れ離れになる事もあるだろう、という事さ。」

どうやらオレの天国もといハーレムクラスは風前の灯火らしい。そんな馬鹿な?!
どこで選択肢を間違えたんだッ?!有り得ないだろう、何1つ間違えていない完璧な行動だったはずだッ?!
これからハーレムルートに入る計画が台無しじゃないかッ!

「君、思考がダダ漏れだぞ。何1つ間違えていないどころか、何1つ正しい行動を取っていたようには思えんよ。」
「な…なん…だと……?!」
「勝手に驚愕すんなよ。どこの死神だ、お前は。ったく、そのままお前の霊圧も消してやろうか?」

冷静に突っ込んでいるように聞こえるが、この幼馴染は青筋を立て、鬼の形相でオレに迫ってくる。
何がこいつの神経を逆撫でたのか、理解に苦しまざるを得ない。

「ま、待て、早まるな!オレはチャドじゃないッ!殴るな!蹴るなッ!消すなァァァァッ!アッー?!」
「この2人は今日も通常運転だね。全く…。だからこそ、救われてるのかもしれないけれど。」
23 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/02(月) 06:53:46.40 ID:qBIpybmAO
おぉっ!
激しくGJ!
24 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/02(月) 09:31:35.46 ID:NevtjkAj0
>>21
新スレ初SS乙GJ!

打ち捨てられた>>12の可能性を考えてみる

まぁ、お盛んなのは置いとくとして
男性→女性という世界の中で男女を行き来できる能力は「水が掛かると発動」という限定があったとしても強力と言えるだろう。
つまり「一緒に可愛い水着選ぼうね♪」とか言いながらデートを楽しみつつ
「泳ぎすぎて身体が冷えちゃったんじゃない?」って、温水シャワーの中で力強く抱きしめてあげれるわけだ。
「わたし……もとオトコなんだよ?」「私なんて男だったり女だったりだよ?」「抱いて!」みたいなロマンスもあるかも……ねぇかww
25 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/02(月) 09:35:07.85 ID:qBIpybmAO
>>24乙!

やはり>>12はなかったかWWW
26 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/05/02(月) 12:46:02.49 ID:GW1y4GoC0
おい安価くれおい↓
27 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/02(月) 14:14:55.83 ID:qBIpybmAO
>>26

施設育ちの孤児
優しい養父に引き取られるも
女体化した途端に養父の態度一変してレイープ
「君がッ!孕むまでッ!レイプを止めないっ!」
「家族がふえるよ!やったねたえちゃん!」
28 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/05/02(月) 14:56:42.06 ID:GW1y4GoC0
>>27

……おぉぅ 把握
29 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/02(月) 22:23:28.57 ID:qBIpybmAO
>>28
楽しみにしてるW

投下がまだみたいだから
ちょっと書いてみた

お通しとしてどうぞ。

はじめてのSSでしかもノープランという暴挙



放課後の教室、残っている生徒は一組の男女
女子の方は先月までは男子であった。

TS症候群によって、童貞だった為に16歳の誕生日に女性化した彼…
否、彼女が頬を染め目の前に立つ男子に告げる。

「オレをセフレにしてくれ」

--------------------------------------
30 :29の続き [sage]:2011/05/02(月) 22:31:14.64 ID:qBIpybmAO


入学式から一週間経ったその日、16歳の誕生日だったオレは女体化を…
まだ、していなかった、
ただ朝から怠く、少し熱っぽい…
保体の教科書に載っていた『兆候』まんまの症状な事に、憂鬱になる。

「…ってきまぁす…」

気怠げに家のドアを開けると向かいの家の玄関先に見慣れた2人の男女がいた。

「うっス!朝からだるそうにしてんな?」
「…っせぇよ…」
「マジに調子わるそうだな?風邪か?」

黒縁の眼鏡かけてるクセに不良っぽいコイツは向かいの家の住人で幼なじみその1、浅倉 篤史だ。
背が165cmのオレより20cm位高いのが非常に気に食わない。

「タクちゃん、本当に大丈夫?」
「大丈夫、風邪じゃない…筈だから」
「?…何か理由とか…訊いてもイイ?」

遠慮がちにのぞきこんでくるショートカットのよく似合う、ちっちぇー顔、
背もちっちぇーけど。154cmとか。
おとなしそうな外見で、性格もそのまんまおとなしい…
天然ボケなトコが可愛いやら、稀にイラっとするやらな
幼なじみその2、敷島 静花だ。
ちなみに篤史の彼女な、…篤史[ピーーー]、氏ねじゃ(ry

それで、『タクちゃん』ってのはオレ、
谷田 拓武のコトな。
31 :30の続き [sage]:2011/05/02(月) 22:34:15.52 ID:qBIpybmAO
「…今日、オレ誕生日…」
「あ、そうだね、おめでとう」
「っ!そうじゃねえだろ静花!…タク、お前…」
「おぅ、多分…オレ女になる、と思う」

体調が悪いのも『兆候』だ、と思う。

「…あっ…ごめん…」
「イヤ、気にすんなよ!…しゃーねぇし」
「…イイんかよ、タクはそれで」
「いいよ、しゃーねぇし」
「イヤ、しゃーねぇじゃねぇだろ!?今ならまだ予防とか間に合うじゃねえか!」
「…っ!」

予防ってのはつまり『国営ソープ』に『童貞証明』持って行ってこいって事だろ?
…そりゃ、女にはなりたくねぇけど…
好きでもないヤツとセックスなんてしたくねぇよ…っ!
出来れば好きなヤツとヤッて、男でいたいよ!!
でも、好きなヤツは…

「…タクちゃん…」
「…っ!!…」
好きなヤツにはもう恋人がいるじゃねぇか…クソっ!

居たたまれなくて走り出そうとした瞬間だった。

---ドクンッ---

周りの人にも聞こえたんじゃないだろうかという音と共に心臓が異常に早く脈打ちだし
背中や腋や額から汗が噴き出す…
足に力が入らない…
オレは立っていられずその場にうずくまった。

「っオイ!?タクっ!」
「タクちゃん!?」


…気が付くと近所のけっこうデカい総合病院のベッドに寝かされてた。
32 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/02(月) 22:45:50.05 ID:qBIpybmAO
この書き方じゃ長くなりそう?
SS自体、ここのまとめで読みはじめて
書き方なんか全くわからんのですが。

文章自体、小学校以来じゃよ…

イイ感じにまとめられる書き方ってないですか?
33 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/03(火) 00:11:05.82 ID:O7zNzBs70
長くなっても全然構わないよ
続きwktk
34 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/03(火) 02:44:11.65 ID:0khU5yKUo
また何か書きたいので安価↓
35 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福島県) [sage]:2011/05/03(火) 04:14:55.09 ID:WyxyJfPTo
36 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/03(火) 13:23:28.98 ID:0khU5yKUo
>>35
難しいお題だな。やってみるけど、出来なかったらごめんなさい
37 :31の続き [sage]:2011/05/04(水) 10:36:34.87 ID:/z2pL+7AO
高熱の為か、纏まらない思考の中で
オレは『あの日』の事を思い出していた…


中学校の卒業式も終わり、人影も疎らになった校舎内。
オレ達3人の定番の溜まり場になっていた図書室の前。

篤史が静花に告白をしている。

それを少し離れた所から見ているオレ。
少し照れくさそうに報告しに近付いてくる篤史と静花。

もう、わかっている。

上手く笑顔が作れるだろうか?
いつも通りに振る舞えるだろうか?

「俺ら、な、付き合う事になった」
「…避妊はちゃんとしろよ?」
「バっ…早ぇよバカ」
「タクちゃん…」
「そういうコトだろアホ。あ、静花、イヤな時はちゃんと断れよ」
「…タクちゃんも篤史くんも私にイヤな事しないでしょ?」
「甘ぇよ?コイツだって女体化すんのは勘弁だろうし」
「イヤ、無理やりとかしねーし、そもそも、そういうのはだな…」
「あのね、タクちゃん…」
「あー、わかったわかった、とりあえずオレは先に帰るから」
「ちょっ…!一緒に帰んねーのかよ?」
「オレ邪魔だろーが」
「一緒に帰ろーよ?一緒が良いよ」
「いや…オカシイだろ?」
「…一緒に帰るぞ、タク」
38 :37の続き [sage]:2011/05/04(水) 10:39:01.61 ID:/z2pL+7AO
「…邪魔…っ…したくねェんだよっ」

篤史と静花がそれぞれにオレの手を引く
オレは涙を堪えるのに必死だ

「らしくねーよ、遠慮とか、それにだな…」

篤史が何か言ってるけど、あんま聞こえない
オレはもう泣いていたかもしれない

「ずっと一緒だよ、タクちゃん」

それは、辛いかもしれないな
2人の幸せを近くで見るのは
でも、
2人がオレがいる事を
3人一緒にいる事を望んでくれるんなら
それで、いいな

それが、いいな


…頬を涙が伝う感触で目が覚めた。


39 :38の続き [sage]:2011/05/04(水) 10:46:50.12 ID:/z2pL+7AO
「拓武、起きた?」
「…オカン…?なんで?」

あぁ、オレ倒れて…
2人が病院まで運んでくれて…
オカンに連絡してくれたのか…

迷惑かけたよなぁ…

…ちゃんと『我慢』も出来なかったし…

「オカン…あの」
「…うん、アンタはね」

その先の言葉はわかってる
でも、それより気になった事があった

「アイツら、ちゃんと学校行った?」
「…アンタ…2人とも病室の外で待ってくれてる」

オカンが着いてから
「もうイイから」と言ったが
「ここで待ってます」と言って聞かなかったらしい

「学校サボらせちまった…謝んなきゃ」
「アンタ、それよりも」
「…気付いてるよ」


いつもより高く響く声
長くなってる髪
小さくなってる手
胸の辺りの違和感
多分、股間も…


「女に…なってんだろ?」
「アンタ…施設とか行かなかったのね」

彼女とかいないのは知ってたけど…と、オカン
ワリーなモテた事なくて…

「…ゴメン」
「謝ることじゃないの、でも、ちゃんと納得してるの?」
「…覚悟はしてたよ…」
「そう…コレで『自分』を確認しなさい」
40 :39の続き [sage]:2011/05/04(水) 10:49:49.53 ID:/z2pL+7AO
オカンからメイク直し用の
少し大きめな折り畳み式の鏡が手渡された

鏡の中にいたのは、オカンにソックリの
『美少女』
ウチのオカンは見た目はどう見ても十代前半という
所謂『ロリオバン』だ。

…とゆう事は…

「…よっと」
「ちょっと、大丈夫?」
「…あ〜…やっぱりかっ…」

ベッドを降りてオカンの横に立ってみる。
身長146cmのオカンと背の高さが
そんなに変わらない、っーか少し低い…
着ている制服がダボダボだ…
ズボンの裾なんか何回巻いてんだコレ?


「…絶望した」
「アラ?アンタ可愛いわよ?」
「…ねーよ」

さっき女になったばっかりだ
『可愛い』って言われて素直に喜べない。
っーか喜べる日なんて来るのか?

「じゃあ、母さん先生を呼んで来るから」
「あっ、うん…じゃあ、オレ2人んトコに」
「動いて大丈夫?」
「大丈夫…礼、言わなきゃ」
「…『ゴメン』じゃなくて『ありがとう』よ?」
「っ…わかってるよ!」
「そう?」

…どんなツラしてた?オレ…

病室を出て直ぐの長椅子に2人はいた。
2人ともすぐにオレに気付いたみたいで
驚いた様な表情をしている。
オレは怯んでしまい2人の方に近付けないでいた。

すると、篤史がこちらに歩いてきて
オレの目の前に立ち

「おー、チビが更にチビになったな」
「…あ?」
「見てみ?静花、コイツお前より小せーぞ」
「…オイ…?」
「ちょっと、篤史くん…でも本当、可愛いー…」
「なー、顔も小母さんソックリでなー」
「萌えっ!だよねー、コレって」
「…テメェら…!」


「いい加減にしやがれよ!?背が有り得ねぇくれー縮んでんのは分かってんだよ!凹んでんだよ!! 察しろよ!!篤史っ!!テメーはワザとだろうけどよ!!」

と、キレてはみたが
肝心なコトをまだ言ってない…


「篤史、静花」
41 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/04(水) 11:11:50.80 ID:/z2pL+7AO
>>33

wktkdクスです
期待にそえれるかアレですが
完結できるように頑張ります!
42 :40の続き [sage]:2011/05/04(水) 12:25:24.18 ID:/z2pL+7AO

「ん?」
「なに?」
「学校サボらせて、ゴメ…っじゃねぇ…ここまで運んでくれて…ありがと、な?」
「」
「」
「…なんだよ?…黙ってんじゃねー…」
「デレたぞ、この生き物」
「すごーい、タクちゃんツンデレなんだー」
「ちょっ」
「うわぁ…やっべぇ、不覚にもマジ萌えた、中身タクなのに」
「すごーいタクちゃん、天才?」
「…なぁ?アレだ?お前らバカなんだ?バカップルなんだ?」

しかも『ツンデレ』って違くねぇか?

「ところで…なぁ、体大丈夫か?」
「ぉん、熱はまだあるっぽいけど、まぁ平気」
「教科書通りなんだねー」
「みたいだな」
「付き添い、しようか?」
「いや、オカンもいるし、この後、多分検査とかで時間かかると思うから」
「じゃあ、帰ったら
連絡してね?わからない事とか相談してね?」
「…うん、サンキュ」
「俺にも報告しろよ?主にその体の(ry」
「死ネ☆」


「それじゃあな」
「あとでね」
「おう!じゃな」
43 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/04(水) 22:33:47.74 ID:/4gMjQya0
GJ!
44 :42の続き [sage]:2011/05/05(木) 07:29:20.73 ID:2cpNKsmAO
その後、色々な検査をされた。
結果、オレの身体は間違いなく『女』になっているらしい。
いずれは心も、と説明された…そっか…
役所に提出する診断書やら証明書とかを渡された。
書類の束の中にカウンセリングの案内とかもあった。
熱や脱力感、筋肉痛とかは人それぞれだがすぐに治まるとか。
あと、今日中に『初潮』が来るとか…。

…生理ェ…。

帰り道、オカンに促されコンビニに寄る。

「何用?」
「間に合わせの普通のパンティーと生理用ショーツ」
「売ってんの!?コンビニに!?」
「何言ってんのアンタ?」

はァー、スゲーなコンビニは。

帰宅後、冷えピタを額に貼り付けながら
オカンのお下がりのパジャマに着替える
っーか何故にピ○チュウのツナギ…

…パンティー?穿いたよ?
何故、あのコンビニは縞パンを置いてたか
店長を呼んで小一時間問い詰めたい。

初パンティーの感想?
思ったよりは普通っーか…
もっと窮屈かと思ってたから…
ただ、なぁ…ウチのムスコはもう帰って来てくれないのだと
現実を目の当たりにすると……はぁ…。

オカンからナプキンの使い方をレクチャーされてる最中、
ちょっとトイレに行ったら

45 :44の続き [sage]:2011/05/05(木) 07:36:54.85 ID:2cpNKsmAO
生理なう。

タイムリーすぎ、自重しれ生理!

…もっと血かと思ったら、なんと言うか、
ウ○コっぽい?…イヤ、スマソ…
最初ウ○コ漏らしたかとビビった…
トイレで騒いでたらオカンに見付かって渋々説明したら

「アラ、おめでとう」

ですって!だんだん血になるらしいよ…
本当の地獄はこれからだ…

「あ、アタシ軽い&短いだからアンタもそうじゃない?」
「こーゆーのって遺伝すんの?」
「知らんがな」
「ヲイっ!」

まぁ、期待しとくか…
教わった通りにナプキン装着!(キリッ
…と、ポーズとるまでには永きに渡る悪戦苦闘がありましたとさ。

ショーツに穿き替えたので
縞パン終了のお知らせ。
ナプキンはオカンのをとりあえず拝借。
自分用はドラッグストアとかで買った方が
店員にアドバイスもしてもらえるので
良いとの事らしい。

「あと、コレ」
「ポーチ?ちょっとデザインかっけー」
「女の子っぽいのイヤでしょ?」
「うん、ありがと…ってコレ、P○RTERじゃん!」
「結構、値段するのねソコの」
「マジありがとう!」
「それから…」
「さらに小遣いとな!?」

46 :44の続き [sage]:2011/05/05(木) 07:37:16.27 ID:2cpNKsmAO
生理なう。

タイムリーすぎ、自重しれ生理!

…もっと血かと思ったら、なんと言うか、
ウ○コっぽい?…イヤ、スマソ…
最初ウ○コ漏らしたかとビビった…
トイレで騒いでたらオカンに見付かって渋々説明したら

「アラ、おめでとう」

ですって!だんだん血になるらしいよ…
本当の地獄はこれからだ…

「あ、アタシ軽い&短いだからアンタもそうじゃない?」
「こーゆーのって遺伝すんの?」
「知らんがな」
「ヲイっ!」

まぁ、期待しとくか…
教わった通りにナプキン装着!(キリッ
…と、ポーズとるまでには永きに渡る悪戦苦闘がありましたとさ。

ショーツに穿き替えたので
縞パン終了のお知らせ。
ナプキンはオカンのをとりあえず拝借。
自分用はドラッグストアとかで買った方が
店員にアドバイスもしてもらえるので
良いとの事らしい。

「あと、コレ」
「ポーチ?ちょっとデザインかっけー」
「女の子っぽいのイヤでしょ?」
「うん、ありがと…ってコレ、P○RTERじゃん!」
「結構、値段するのねソコの」
「マジありがとう!」
「それから…」
「さらに小遣いとな!?」

47 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/05(木) 07:40:33.31 ID:2cpNKsmAO
ミスった…orz
特に大事なコトでもないのにね
48 :45の続き [sage]:2011/05/05(木) 07:46:03.44 ID:2cpNKsmAO
「必要な物を買う為のお金よ!無駄遣いしないように!!」
「ですよねー…」

女体化者は通常1週間休校出来る。
でも、入学したばかりで授業に遅れたくないから
出来れば明日中には準備を済ませたい。
教えられた買い物リストをメモる。

役所の手続きはオカンが出勤前に済ませてくれるらしい。
ウチは両親、共働きでオカンは結構忙しい時期らしいのだが…
本当にありがたい。

「制服は明日の夕方にはお店で用意しとくって、ほら、バスターミナル向かいの…」
「了解〜、把握した」
「買い物には付き添えないけど…」
「あ、静花と篤史にメールしたら付いてきてくれるって」

正確には断ったが「絶対に付いて行く」との事、
おまいら…
静花に関しては助かるが
篤史、邪魔じゃね?
…しょうがねぇ、か。

それから、やっぱり下っ腹が少し痛いので生理痛和らげる薬飲んだ、
薬を飲むのは錠剤でも顆粒でも苦手なのに…
これが毎月とか…憂鬱だ…

あと、オカンにお約束通り言葉遣いと一人称の変更を要求されたけど

「どうか、ご猶予を!」

と嘆願してる最中だったりする。
オレの最早ちり紙同然となった『男』のプライド(と、作者の趣味)の為だ。
49 :48の続き [sage]:2011/05/05(木) 07:59:15.91 ID:2cpNKsmAO
…ん?今、異物が混じった?

そうこうしてるとオトンが帰宅した。

目 が ヤ バ い !

オカンに頼まれたらしい赤飯と鯛の尾頭付きを抱えてる。
もう一度言おう、目がヤバい。
張り切り過ぎだろ、落ち着け。
あと、風呂には一緒に入らん!
オカン、アンタもだっ!
えっ!?髪の洗い方とか男んときのまんまじゃダメなん?
アソコの洗い方?
生理ん時は気を付ける事がある?
…スイマセン、その辺は詳しく…

風呂から上がると用意されてたのは
またもピ○チュウ、コレ何着あるんだろ…

その晩は、夜用のナプキンに慣れない所為か、
そもそも変わってしまった身体の所為か、
寝付けなくてケイタイを弄りつつ
窓から見える空をぼんやり見ていた。

---コンっ---

ガラスに何かが当たる音、
窓の下を見ると…やっぱりだ。
…しょうがねぇ、出るか。

「…何してやがる」
「憂いを帯びた美少女を眺めてた」
「…中身はオレなワケだが…」
「だが、それがいい」
「アホだろ?」
「…なぜにピ○チュウ着てんの?」
「…黙秘する」
「写メ撮って良い?」
「拒否する」
「既にさっき下から撮ってるけど」
「なっ!」
「俺の携帯のカメラスゲーのよ、ホラ待ち受け」
「バっ…静花が見たら怒るだろ!」
50 :49の続き [sage]:2011/05/05(木) 08:12:56.36 ID:2cpNKsmAO
「いや〜、大丈夫じゃね?」

それは、『お互いに信頼しあってます』と
言っているように聞こえて
…少し、ムカついた。

「…あー、話変わるけど…朝、な」
「ん?」
「悪かったな、無神経だった、反省してる」
「…んーん、反省とか別に…」
「『国営ソープ』とかさ、俺も抵抗あるのにさ、スマネ…」

…オメェには静花がいるじゃねぇか!と思った
自分が厭だった…

「…イヤ、オレの方こそ意地張ってた、ワリぃ…っ」

言いながら少し泣きそう…堪えろよっ、オレっ!
お前は出来る子だ!
ちゃんと『平気』でいるのがお前の役目だろ?


ポン、と頭に篤史の手が乗せられて、はっとなる。

「なっ…!」

ヤロー、オレの反応を無視してやがる…
…別に良いけど…
なんか…心が、すごく落ち着く気がするし?
…でも手のひらからの感触や体温が、篤史のものだと意識すると、何か…

しばらくの間、篤史は何も言わずに
オレのアタマを撫でたりポンポンとしたりしていた。

「さて…と」
「…」
「…そろそろ、寝るかな」
「…ぁ…」

その手が離れるのがひどく寂しい気がしたのは、
体の変化で不安だから、だよな?
イヤ、そうに違いないんだけど。

「…何?」
「…えっ、何が……っ!!」

気が付くと篤史のパーカーの裾を掴んでいた。
スゴい勢いで顔が熱くなるっ!

「あああっ!?あしたっ…そう!またっ!よろしく…かいもの、とかっ!なっ?」
「落ち着け、バカ、どうした?」
「〜っ!!なななっなんでもねーよ!バカ!!」

パッと、手を離し
何となく手持ち無沙汰なその手が宙を掻く。

「ふ〜ん?」
「…んだょ…」
「じゃな、おやすみ」
「…ゃすみ」

思わず目を逸らしてしまった。
…なんで篤史如きにこんな辱めをっ…
屈辱だ…バカっ!
51 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/05/05(木) 12:05:27.79 ID:f1VlR8Yko
>>35のお題

「トンネルの入り口で車に乗っていた2人は大雨の中、傘も指さずに道路の脇に立っている少女を見たのさ。」
「2人ともその少女には見覚えがあった。」
「なぜかって?そのトンネルはね。手前にある急カーブのせいで事故の名所だったらしいんだ。」
「そのカーブで起こったとある交通事故が長らく迷宮入りしていてね。」
「だけど、彼ら2人が出発した朝に、その事故の犯人が捕まったとニュースで大々的に報道された。」
「そして2人が見た少女は、死亡した事故の被害者に似ていたのさ。」
「けども、2人とも幽霊と言った類の非科学的なものには否定的でね。」
「ただの錯覚だと決め付けあって気にも止めなかった。」
「しかしだ、トンネルを抜けて助手席に乗っていた運転手の友人がこう尋ねたんだ。」
「なぁ、なんでトンネルの中でワイパーかけなきゃいけなかったんだ?とね。」
「運転していた方は、失笑しながらこう答えた。」
「馬鹿じゃないのか?大雨降ってんだからワイパーかけないと前見えないだろ。」
「それを聞いて助手席の彼は声を荒げてさらにこう言ったんだ。」
「馬鹿お前だ!トンネルの中なのになんで大雨降ってんだよ?!」

「ヒィッ?!な、何で雨降ってんだよ!トンネルの中でッ?!」
「いや…君ね、話はまだ終わっていないのに声を荒げないでくれないか。続きが話せないだろう?」

昼飯を食い終わって微妙に暇が余った昼休み。
元気の余っているヤツは窓の下に見えるグラウンドでサッカーやったりバスケしたりで走り回っている。
梅雨入りした割りに今日は晴れてはいるのだが、妙に蒸し暑い。
暑い暑いとわめいていたら、ならば涼しくなる話をしてやろうと
教室で今の怪談を披露してくれやがったのが、私の友人であるクラス委員長。女体化仲間でもある。

「いい、要らない。その先は要らないッ!!!」
「お前は昔っから、幽霊とか苦手だなぁ…たいした事ねーだろう?この程度。」
「俺がこういうの苦手なの解ってるなら、途中で止めに入れよッ!」
「止めに入れ、ってなぁ…お前興味津々で息を飲んで聞いてただろ?途中でぶったぎったら殴りかかってくるくせに。」

私の涙目の抗議に対し、物凄く冷たい対応しかしてくれない幼馴染。
こいつは男の状態を保ちやがって、妬ましいったらない。
とはいえ、こいつもあと3〜4ヶ月以内に彼女が出来なければ晴れて私たちの仲間入りだ。
どうせ恋人なんかできやしないし、風俗に行くタマでもないだろう。ザマーミロ。
52 :51の続き [sage saga]:2011/05/05(木) 12:10:01.37 ID:f1VlR8Yko
「うっさいッ!だ……大体全然涼しくならないってのッ。」
「いや、別に涼しくなる話じゃなくても暑さを紛らわせる話でいいんだっつの。」
「わざわざ怪談話する必要がどこにあんだよ!頼んでねーし。頼んでねーしッッ!」

私の必死の抗議は続いているのだが、当の2人は謝罪のしゃの字もないどころか呆れ返っている始末だ。
……私か?私が悪いのか?どう考えても悪いのは勝手に話を始めたいいんちょの方だろう。

「はぁ…ほれ、まだ飲んでねーいちご牛乳やるから機嫌直せよ。な?」
「用意が良いね、君。流石は保護者。」
「そんなんじゃねーよ。」

この2ヶ月ですっかり変わってしまった自分の味覚を的確に捉えてくる。
く…くそッ、い、いちご牛乳如きで釣られる私では……

「落ち着いたか。はぁ…女になってから一段と五月蝿くなったなぁ、お前。」
「打って変わって君は一段と彼女の扱いに長けてきているよ。あっと言う間に大人しくなってるしね。」
「だからそんなんじゃねーって。」

言いたい放題言われているが、きょ、今日はこのいちご牛乳の甘さと
頭を撫でて慰めてくれている事に免じて許してやるッ。と、心の中だけで抗議をしておいた。

「さて、それじゃ、代わりの暑さの紛れる話でもしようか。」
「まだネタあるのか。コイツが喚かないような落ち着いたヤツを頼むわ。」
「大丈夫さ、僕らに関係のある話だしね。」
「オレも含まれてるのか?それ。」
「いや、君には関係ない。君の彼女と僕に関係する話さ。」
「だ…誰がこんなやつを彼氏にしてんだよ馬鹿ッ!」

いいんちょは、隙あらば私をからかう事を忘れない実に良い根性をしている。コンチクショウ。
勿論否定しておく。否定しないとドコまでも話が肥大化して、明日には学校中に広まってしまうだろうから。

「君は異性化疾患の原因、って何だと思う?」
「さぁナ?テレビじゃ進化論の延長線だの、宇宙人の仕業だの色々言ってるけど、さっぱりわからねーよ。」
「仮説の1つなのだけれども、魂の一部を抜き取られてしまったかららしいんだ。」
「…魂の一部?おい、オカルトじみてるな。さっきの話と大差がないように聞こえるぞ。」
「だ、大体、魂なんてものがあるかどうかって所もわかんないじゃないかッ!!絶対違う、違うッ!」
「飲み終わるの早いね。折角のプレゼントなのだからもう少し味わったらどうだい。」
「プ、プレゼントってこれはそんなんじゃない!たまたま、たまたまだッ喉が渇いてたから貰ってやっただけだッ!」
「はいはい、ご馳走さまです。それでさ、一部を抜き取られた魂はどうなると思う?」

さらりと受け流したいいんちょは、更に言葉を続ける。苦手だと解っていてこの仕打ち。
絶対にコイツは性悪だ。悪女だ!詐欺師だッ!……考えてみて思ったが、詐欺師はちょっと違うかも。
53 :52の続き(終) [sage saga]:2011/05/05(木) 12:15:06.28 ID:f1VlR8Yko
「死んじまうんじゃないのか、魂取られたんだろ?」
「一部だから死なないさ、だけどその抜き取られてしまった一部は、魂の核を構成するものなんだ。」
「核、ねぇ…それで死なねーって余計におかしく聞こえるぞ。」
「そこが生命の神秘さ、核を失った魂は残った魂で核を作り直して生命を維持しようとする。」
「とは言え、一度失ってしまった核と同じものはもう作れないんだ。設計図なんてものは無いしね。」
「代用品ってわけか。」
「うん。しかも魂の核ってものは、その生命体の生殖機能を司っている場所でもあるんだ。」
「だから、前と同じものが作れない故に性別の転換が起こってしまう。というわけさ。」
「オイ、それじゃ女も男になるパターンもあるんじゃねーの?」
「良い所に気が付いたね。逆のパターンもあるかもしれない。けれども実際には女性化しか確認されていない。」
「そう言った穴があるから仮説なのさ、実際証明する手立てもないわけだけれど。」

厨二病全開の仮説を切々と語る委員長。怪談話よりは百倍マシなのだが、妄想が激しいのも苦手だ。
それに加えて気付いた事もある。恐る恐る委員長に尋ねてみた。

「大体、誰が何の為に、魂の核とやらを抜き取ってるんだ?抜き取られなきゃ起きないんだろ?こんな事。」
「さて、誰だろうね?僕にもわからないよ。」
「っつーかな、そのトンデモ理論はどこの仮説なんだ。た○出版の代表とかか?」
「アレは宇宙人専門だろ、もっとこう、きっと黒魔術だのなんだのって怪しいところだろ。」
「あの出版社のサイト”魂の生まれ変わり”なんて項目もあるサイトだぞ?十分範疇だ。」
「そーだったのか?よく知ってるな。」
「まぁな。オレ、割とこういうオカルト話好きだし。」
「…う”…ぜ、絶対にそんな話は俺にするなよ?!」
「しねーよ。頼まれてもしねーよ。」

私たち2人の様子を見て、クスクスと笑っている委員長。
どうやらコイツは誰が立てた仮説なのか知っているらしい。知っているなら早く言え。

「で、そこの代表って韮なんたらって言ってたよな?そいつがその仮説立てたのか?」
「あははっ。違う違う。コレは僕の仮説。いや、妄想と言った方がいいかな。」
「「…………なんだ、お前のかよ」」

余りのオチに見事にハモってしまう私たち。

「それらしい話をしといて、オチが委員長の妄想でしたって笑えねーな…アホか。」
「ふふ。そう思って何処かの他人のせいにしていないとやっていられないのさ、この病気はね。」
「どうだい、気は紛れただろう?」

彼女が自嘲気味にこの話を締めたところで、昼休み終了のチャイムが校舎内に鳴り響いた。
54 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/05(木) 13:32:20.89 ID:o4kPEKJfo
俺も安価してみる↓
55 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/05(木) 19:35:02.32 ID:2cpNKsmAO
>>54

「よろしい、ならば戦争だ!」
「大戦争を!!一心不乱の大戦争を!!」
56 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/06(金) 02:12:15.47 ID:E2Sru/oQo
なんとなく安価↓
57 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/05/06(金) 08:25:50.43 ID:Njx/wCJ80
ボクの初体験…3つとも、貰ってくれる?
58 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/06(金) 10:48:22.92 ID:w5+PlVwAO
>>57

その発想は素晴らしいな
59 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/06(金) 11:17:54.25 ID:w5+PlVwAO
>>53

なんというGJ!!
どうやったらそんな素晴らしいSSが書けるのか…
60 :51 [sage]:2011/05/06(金) 13:38:52.34 ID:E2Sru/oQo
>>51の誤字
×傘も指さず  ○傘を差さず
61 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/06(金) 13:39:58.69 ID:E2Sru/oQo
誤字の誤字って最悪だ

×傘を差さず ○傘も差さず
62 :50の続き :2011/05/06(金) 20:27:32.95 ID:TBdVQDfX0
部屋に戻り、ぼふっとベッドに倒れ込む。
ダメだ、なんかもう色々ダメだ。

篤史の手が触れた部分がじんわりと熱をもっている。
それが『オレ』の大事な何かを浸食しているような気がして
思わず頭を掻き毟っていると
指先に感じた小さな『傷痕』の感触。







オトンの念願だったというマイホーム。
現在の家に越して来たのはオレの小学校入学に合わせての時期だった。

両親と向かいの家に引っ越しの挨拶に行くと
中学生位の真面目そうな男の人と
いかにも腕白そうな小学3年生位の男の子が出てきた。

「向かいに越してきた谷田です。宜しくお願いします」
「こちらつまらない物ですが」
「ご丁寧にありがとうございます」

ウチの両親とこの家の長男と思しき人が形式通りの挨拶をしている。
次男であろう男の子がじーっとこちらを見ている。
…なんだろう?

「あの、ご両親は?」
「あ、父は今、『外出』していて…母は一昨年他界しまして…」
「それは…申し訳ない…」
「いえ、いいんです」

…この家の父親は『外出』ではなく、
母親の死後に出来た恋人の所で暮らしていると
長男・暁芳さんから聞いたのは、数年経ってからだった。

ウチの両親と暁芳さんの話が途切れたその時、

「おまえさー、幼稚園児?それとも保育園の方?」
「…今年から小学校だけど…」
「おまえ同い年かー?小っせーな!」
「あ"?」
「よし!おまえ今日から友だちな!」
「どうしてそうなるんだよっ?!」
「俺は浅倉篤史!よろしくなっ!」
「おまえ人の話をちゃんと聞きましょうって習わなかったか!?」


『同い年か?』はこっちの台詞だ!!
お前は無駄にデケぇよ!!
体も態度も!!

この後、オレは一度もコイツの身長に追い付いた事はなかった。
コイツが現在も続く親友になろうとは…。
63 :62の続き :2011/05/06(金) 20:30:58.57 ID:TBdVQDfX0


小学校に入学してしばらくして気になったこと、

篤史は特定のグループには属さずに手当たり次第に『友だち』を作りまくる。

篤史は隣のクラスだがウチのクラスにも
相当数の『友だち』がいる。

「友だち100人を実践してみようと思って」
「あー、やっぱバカなんだ」

そういう、あっちこっちのグループに顔を出す、
悪く捉えれば『コウモリ』とも言えなくもない所と
無駄にデカい態度が一部の所謂『いじめっ子』連中のカンに障るらしく

「篤史のヤツさー、調子にノってねー?」
「みんなでシメよーか?」

…と、イヤな会話を頻繁に耳にする。
本人は気にしてないのか、
そもそも気付いてないのか…
オレはなるべく関わらないように
双方に距離を置きたいのだが、

「タク〜っ!遊ぼーぜっ」
「これから晩ご飯だ、帰れ」
「何食うの?」
「…今日はハンバーグだけど…」
「俺も食いたい!!おじゃましまー…」
「帰れっ!」

現在ほどべったりではないが
篤史はしょっちゅうウチに来ていた。
まあ、家も向かいだし、
家では兄と2人だけだし、
寂しいのはわかるのだが…

この頃のオレは篤史に対して
結構冷たい態度で接していたと思う。

それでもめげずに篤史はオレに絡み続けた。
まあ、オレに限った話ではなかったのだが、
その頃は。


もうひとつ、気になっている事…
いや、『人』。

オレは体力がなく、運動が苦手だ。
なんとか克服しようと、スイミングスクールに
通っているが何となく物足りず
この頃から朝夕のジョギングを始めた。
家の近くには県下有数の大きな川があり
その土手沿いはジョギングに適していて
買い物とかには不便なんだけど
すごくの景色も良い。

それは体調が良い日は現在も続けている日課だ。

64 :63の続き :2011/05/06(金) 20:31:58.62 ID:TBdVQDfX0
そのジョギング中に見かける犬と散歩してる女の子、
同じクラスの敷島静花さん、だ。

「おはよーごさいますー」
「…はょっス…」

ショートカットの髪型がよく似合う
スゴく可愛い子で気になるんだけど
いざとなると話かけることも出来ない。
そもそも散歩中は連れてる犬が怖すぎて近付けない。
確かドーベルマンとかいうヤツ…。

敷島さんについて知ってること、
家は同じ町内の大きなお屋敷で
そこに住んでる『社長さん』一家の一人娘。
なんの会社の社長かはわからない、
たしか『ナントカ会系』とか聞いた事はあるんだけど…。

あと、話し方がのんびりしてて天然ボケ。

で、篤史の『友だち』の一人らしいよ?
…あのヤロー…やっぱり気に食わない。

それから、字がスゴくキレイ。
それに気付いた時に、

「敷島さん、さ」
「はい?」
「字、な…すっげーキレイだ、ね」

「!!…ありがとうごさいますー!!拓武くん」

…なんか物凄い喜ばれたのを覚えてる。 なんか、こっちこそありがとうございま
す。



65 :64の続き :2011/05/06(金) 20:36:02.22 ID:TBdVQDfX0
夕方、ジャージに着替えてジョギングに出掛ける。
いつもの土手の道が整備工事中で通れないっぽい。
仕方が無いのでいつもは通らない寂れた公園がある方の道に行ってみた。

公園の方から数人の子供の声がする。
遠巻きに見てみると篤史が『いじめっ子』達に囲まれていた。
よく見るとバットを持ったヤツや、篤史より大きいヤツもいる。
多分、上級生…『いじめっ子』の兄とかだろう。

最初は何人かで押したり罵声を浴びせていただけだが
それが段々と暴力的にエスカレートしていく。

やばいな、誰か助けを呼ばなきゃ…
と思い、振り返ると、敷島さんがいた。

敷島さんも公園の様子に気付いて、
あろう事か公園に向かって走り出した!

「ちょっ…敷島さん!?」
「篤史くんは友だちですっ!!助けなきゃ!!」

なんとか腕を掴んで制止する。
君が行くよりそのドーベルに行かせた方が確実…
って、大事なペットをそんな扱いする訳にもいかねーか。

「…オレが行く!敷島さんは誰か大人の人を呼んできて!」

オレはすぐに公園の方に走り出した。
ちくしょ〜っ、オレなんかが行ったってどうしようもねーだろ?

篤史は抵抗してるようだが
既にボロボロだ…って、バットのヤツが得物を振り上げてる!?
それはねーよ?アホかよっ!?

オレは篤史の方に飛び込んだ!!
66 :65の続き :2011/05/06(金) 20:37:30.49 ID:TBdVQDfX0


---ガッ!!---


頭をかすめる衝撃。
直後、痛みというよりは『熱』。
顔を伝う生ぬるい何か…あ、血か?
どっか切れたんかな?

あまりの事に泣くのも忘れて
連中の方を見ると、青ざめてこっちを見ている。
オレの様子に自分たちがしでかした事に気付いて
冷静になってきたのか、お互いの顔を見合わせ
一斉に逃げて行った。
オレは篤史の方に向き直り、

「…オイ、大丈夫か」
「お前が大丈夫かよ?アホ〜っ…!!」

あの篤史が泣いている。
オレは泣きながら文句の一つも言おうと思っていたが
勢いが削がれてしまった。

「頭っ!スゲー血がっ…!」
「うん、あんまし痛くはないから平気」
「でもっ!!そんなに血…痛くねーとかっ!!バカじゃねー!?」
「なんだと?テメーの方がバカだろーがバカ!!」
「っ…ゴメン」

なんなんだコイツは…?
そうこうしていると敷島さんが黒いスーツを着た
ゴツい大人を数人連れてきた。
あれは敷島さんちに出入りしてる人達かな?

「篤史くん!?拓武くんっ!?大変!!」

敷島さんに指示されたスーツの人にオレ達は応急処置され、
黒塗りの大きな車で病院に運ばれた。

残ったスーツの人達はどこかにむかって走っていった。

車内でも篤史は泣きながら
ゴメン、ゴメンと繰り返している。
67 :66の続き :2011/05/06(金) 20:41:11.14 ID:TBdVQDfX0

「あの、さ、篤史」
「…っ、…何?」
「『友だち100人』だっけ?」
「…うん」
「手当たり次第に誰でも友だちってのとか、な」
「…うん」
「そーいうのイヤがるヤツとか嫌うヤツとかいると思うんだ」
「…うん」
「友だち100人作るよりな、『親友』作らね?」
「親友…?」
「そう、親友」
「……」
「友だちがたくさんいてもな、みんながみんなといっぱい遊べるワケじゃねーじゃん?」
「…うん」
「たくさんの友だちの中には篤史がキライになるやつもいるかも知れない」
「…うん」
「今回みたいに逆に篤史をキライになるヤツもいる」
「…うん…」
「えっと、なんて言ったら良いのかわかんなくなってきたけど…」
「……」
「なんでも話せて、ずっと一緒にいたいって思って、お互いのイヤなとことかも含めて許せる、好きになれる」
「…うん」
「そんな『親友』を探して、作ればいいと思うん…」
「それ、お前がイイ」
「…ん?」
「私もタクちゃんと篤史くんの親友になりますー!」


オレ達が座っている前方、助手席から敷島さんの声。
っーか『タクちゃん』!?

え?オレが2人の親友?
敷島さんと親友は嬉しいけど、篤史も?
え?そういう流れだった?

「よろしくなタク!!あ、静花も!!」
「よろしくお願いしますー」

「どうしてこうなった」

68 :67の続き :2011/05/06(金) 20:44:22.99 ID:TBdVQDfX0
その後、どさくさに紛れて
オレも敷島さんを『静花』と呼ぶことを了承してもらった。

病院で篤史はスリ傷の消毒と打ち身の処置、
オレは傷を2針縫った。

敷島さんは先程から何やらケータイを操作している。
っーかケータイ持ってんだ流石お嬢様。

そういえば、逃げたアイツら。

「なぁ、篤史」
「ん?」
「逃げた連中、どうすんの?」
「あぁー、とりあえず学校の先生とかに…」

「その必要ないよー」
「え?」
「今、報告があったー。全部済んだよー」
「なにが?」
「処理」
「意味わかんね?わかるか篤史?」
「…俺は…知らん…」

篤史、なんで震えてんの?
顔、蒼くね?
どっか打ち所悪かった?
あ、へーき?じゃ、なんで?
ホント意味わかんね?


後日、学校に行くと『いじめっ子』連中が転校してた。
何があったんだろ?変なの。

それからだ…

篤史と静花とは毎日の様に一緒にいる。
お互いの家に遊びに行ったり、
泊まったりもしょっちゅうだ。

それは今も同じ、ただ『心』や『体』が違う…。

2人は恋人同士になって、

オレなんか、女になってしまった。





69 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/07(土) 00:16:35.81 ID:v2Qqoi+S0
wktkwktk
70 :68の続き [sage]:2011/05/07(土) 20:54:24.63 ID:swqKd3mq0

---〜ちっちぱいぱん♪---

ケータイのアラームで目が覚める。
っーかいつオチてたんだろう?

「おはよーございますー」
「おはよう…静…花ッ!?」

なんで静花がとなりに寝てる?
どんな奇跡だ?

「なっ…な…っ!?」
「起こしに来たんだけどータクちゃんがあまりに可愛くて添い寝しちゃったー」
「っ!?早く…出てって下さい」
「やだー」
「スリ寄るなよ!?」

当たってます!
っーか多分コレは…

「当ててんだよー♪」
「ですよねー…ってバカっ!」
「いいじゃんスキンシップだよー」
「女の子がそんなっ…」
「タクちゃんだって女の子だよー?」

…そうでした。じゃ合法?
……そういう事じゃねーしっ!!

「〜っやっぱ恥ずいもんは恥ずいっ!!」

溜まらずベッドから飛び出し一目散にリビングに駆け込むと

「やあ☆おはよう」
「」

爽やか偽装をした篤史さんキタコレ。
もう、な、速やかに帰れ。
普通に我が家の食卓で新聞読みながらコーヒー飲んでんじゃねぇ!
あ、ココアか、お前コーヒー苦手だもんな?

クソっ!新聞読む姿が画になりやがる。
このイケメンがっ!

……あの…だな。その…

「マグカップ…」
「おう借りてる」
「オレんだし…」
「知ってる」

…その辺だし、いつもオレが口つけんの…

「…知ってる、ワザとだし」
「何がだよ!?」

どうしてコイツといい静花といい、こうなんだ?


「……オトンとオカンは?」
「時計見れ」
「…あー、もう出掛けたんな」
「そゆこと、そこに着替え置いてるって小母さんが」

篤史の指さす先、ソファーの上にオカンの『趣味』の服。
つまり、愛がいっぱいフリルいっぱい…
71 :70の続き [sage]:2011/05/07(土) 21:01:46.78 ID:swqKd3mq0

「……」
「おー、ピンクハ○ス!!」
「……ねーよ」
「コレ、その服に合いそうなリボンー」
「静花…余計なコトを…」
「早く着替えよー?メイクとかも教えたげるー♪」

この静花、ノリノリである。
篤史写メをスタンバるな。

「髪まとめるねー」
「おぅ、サンキュ」
「ポニーテールにしたげる」
「まかせるよ」
「髪キレーだねー」
「変わりたてだからだろ」
「じゃあこれからちゃんとケアしないとねー」

「うなじがエロいすなあ」
「篤史、少し黙ってろ」

なんとか用意完了。
今日は市街地にバスで向かう。
新しい女子の制服は帰りに受け取るようにした。

「ところで2人共さ、学校休んで大丈夫なん?」
「おう、届けを出して公休になったよ」
「心配しなくていいよー」

「バスで出掛けるのも久しぶりだねー」
「そうだな前に長距離バスに乗り継ぎの為に…」
「あぁ、卒業旅行で大阪に旅行に行ったときか?」
「3人とも同じ高校なのに卒業予行もねーよな」

「この3人でバスに初めて乗ったのって…」
「小4の頃に映画観に行ったときじゃね?」
「あーそれだー」
「あん時さー帰りにタクが迷子になって」
「そうそうー」
「言うなよ…」
「コイツ置いて帰られたと思って先に家に帰ってさー」
「私たちタクちゃんをずっと探しててー」
「悪かったって…」
「家に着いたらオレらがまだ帰ってないって知って慌ててまたバスに乗ったんだ
っけ?」
「…そうだよ」
「すれ違いになる可能性とかは?」
「考えてねーよ」

2人への申し訳なさとか、
もし事故に遭ってたりしたらオレの所為だとか、
そんな事しか考えてなかった。

罪悪感と不安でそこら中を走り回った。

その後、2人とは無事再会出来たのだが…。
あれは何処だっけ?
72 :71の続き [sage]:2011/05/07(土) 21:03:21.39 ID:swqKd3mq0


「まずは…ユ○クロ?それともG○P?」
「悪くないけどお前そればっかだし…」
「だってそれ以外だと…BE○MSとか…?」
「今のタクちゃんだとB○AMSBOYの方かなー?」

「ピンクハ○スってどこ売ってんの?行こーぜ?」
「却下!いらねーし、今日以外もう着ねーよ」
「えー、似合うぜソレ」
「…もう着ねーし…」

オレはジーパンで良いのに
静花も篤史もスカートばっかり勧めてくる。
…オレは篤史みたいな格好とかしたいんだが…
元々似合わんし、今のオレは
もっと似合わんだろうな。

その長袖Tシャツ、良いな…
え?カットソー?知らん。

篤史、お前が着てるベスト良いよな。
え?ジレ?ナニソレ怖い。

「静花さん?その手に持ってるのは?」
「黒オーバーニーソ」
「で、篤史?お前も何だソレは?」
「白オーバーニーソ」
「…おまいら…」
「ボーダーもあるよー!!」
「黙れよ!!」


「下着は絶対要るから、チュチュ○ンナに行こうねー」
「あー…下着なー…」

そういやそんなイベントがあるんだった…
ところでこの胸にブラとか必要なんか?
乳首以外まっ平らですけど。

「いや、ブラは要るよー」
「ウハっWWW下着屋とかっWWW漲ってきたっWWW」
「お前、今すぐ帰れ」

下着屋での体験は筆舌尽くし難いものがあった。
店員さん、もう少しなんと言うか手心を…
痛くなくても覚えますから…
AAAカップなるものが存在するなんて知らなかった。
…Aより下とかあるのか…
ひんぬーどころじゃなかったな…orz

篤史は店外待機でした。

73 :72の続き [sage]:2011/05/07(土) 21:05:02.69 ID:swqKd3mq0
あとは、メイク道具とか?それと…

「生理用品とか買わなきゃねー」
「ちょっ…!?そんな露骨に…」
「それは必要だろ?お前真っ最中だし」

おめーはなんでそんな素の反応なんだ?
男子のクセに『生理』ってワードに
そのリアクションはどうなんだ?
それにだな…

「なんでオレが生理中とか知って…!?」
「いや、保体の教科書」

「じゃ、マ○キヨ行こっかー」


生理用品コーナーなう。
なに?『おりもの』とな!?
え?コレとコレ何が違うの?
え?布ナプキンってナニ?
初心者には難しいとか、じゃあオレ一生ムリじゃね?
あ、コレはCMで見たことある。
意味はわからんかったけど。

篤史は店外待機でした。



帰路の途中、市街地でも一際高いビルの広場で
FMの公開録音のイベントがしていた。
オレの好きなアーティストがゲストだ。
一瞬、足が止まり聴き入ってしまう。


アレ?2人は?

オレ、はぐれた?
…また迷子とか…orz

いや、携帯!そう文明の利器、
携帯電話があるじゃないか!!

…電池の残りが殆ど無い?!
えっ!?なんで?

昨日充電してねー…orz

一縷の望みを託し…
頼むっ…繋がれ!!

【充電してください】


オワタ\(^o^)/


74 :73の続き [sage]:2011/05/07(土) 21:07:43.46 ID:swqKd3mq0
…どうしよう…っ!
辺りをウロウロしてみるも
それらしい姿は見当たらない。

同じ所を何度も何度も探してしまう。
ずっと駆け足で息苦しい。

ふと、あの日に2人に再会出来た場所を思い出す。



「あの観覧車、撤去されるんだってー」
「じゃあ、帰りに記念に乗るか?」
「そうだな」

デパートの屋上の観覧車を見ながら交わした
些細な約束。

あの日はぐれた後、2人はオレが辿り着く
閉店間近までそこで待っていてくれた。


そして今日も…


「…今回は早かったな」
「…ごめんなさい」
「そんな顔すんなバカ」
「?静花は!?」
「あー他を探してくれてる、今メールした」
「そっか…」
「よし、行くか」

篤史がオレの手を握り歩き出した。

「なっ…」
「またはぐれたら困るからな」
「もうしねーよ」
「信用ならん」
「ごめん…」
「嘘だよバカ」

商店街の時計台の下、静花がいた。

「…オイっ!?手!!」
「ん?」
「離せよ!」
「なんで?」
「静花がっ…」

静花の顔が珍しく不機嫌だ…。
やっぱ彼氏が別の娘と手を繋いでりゃ怒るよな。
中身はオレだけど…

「篤史くんっ?」
「何かな?」

「ズルいっ!」

静花はオレのもう片方の手を掴んだ。

アレ?
間違ってね?
75 :74の続き [sage]:2011/05/07(土) 21:08:47.59 ID:swqKd3mq0

「私もタクちゃんと手をつなぐー」
「なっ…なんで」
「ずっと3人一緒なんだろ?イイじゃん」

「いや、普通に恥ずい…」

結局、オレが女になってもこの図は
卒業式のあの日と変わらなくて。

少し苦い気持ちもあるけど

…でも、オレは幸せだと思った。



その時は。



76 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/08(日) 02:51:07.52 ID:thRbjPs6o
続き期待
77 :75の続き [sage]:2011/05/08(日) 21:07:15.86 ID:6D1mustz0
「谷田 拓武…えっと、改め…拓海です、本日からっ、女子としてよろしくお願いしますっ…」

…わかってはいるが緊張する。

オレは今、黒板前でクラスメートの好奇の目に曝されている。
通過儀礼とはいえ、まだ『男子』の意識がある身でこれは相当キツい、羞恥プレイだ。
特に一部の男子の視線がスゴい…これって視姦じゃね?
…コラ、そこ、誰がロリじゃ!!バカ!

黒板に大きく書いた

『谷田 拓海』の字。
オレが生まれた時と同じ、じぃじが付けてくれた。
オレの新しい名前だ。

そして身を包む真新しい女子用の制服。
紺ブレである。
BDシャツの色はライトブルー。
ネクタイの柄は青系のレジメンタルストライプ。
大体、男女共に似たようなデザインだが、
女子の夏服にはチェック柄の替スカートがあるらしい。


昨晩、我が家で催されたスタイリスト@静花、モデル@オレのランウェイショーでもこの姿は披露させられた。
篤史はいつもの如く写メを構え、オトンは『愛情は手のひらサイズ』を持ち出していた。
…全て削除させたが。

※谷田母がバックアップを保管していました。
 あとでみんなで美味しく頂きました。

「もっとスカート短くすれ」

との篤史の声にいつもの調子で蹴りを喰らわすと

「…さくらんぼのドット柄っ…グフッ」
「〜っ![ピーーー]!死んでしまえ」
「タクちゃん、黒パン穿かなきゃー」
「…静花、余計な入れ知恵をするなっ…ギェっ」


実際に着るまでは
『ギャルゲーのコスプレみたいな制服だとオレ得なのに』
とか思ってましたゴメンナサイ。


「やあ、お疲れ様」
「…八重ん時もこうだっけ?」
「ああ、結構照れたよ」
「すげー堂々としてような覚えが…」
「フフっ…ポーカーフェイスだよ」
78 :77の続き [sage]:2011/05/08(日) 21:08:46.50 ID:6D1mustz0
机に突っ伏して唸っていると
同じクラスの山根八重が声を掛けてきた。
こいつは中3の時に女体化した、
いわば女体化の先輩にあたる訳か。
元の名前は『山根 泰仁』。
知的な印象の整った顔と
スラっとしてるけどメリハリのある体躯…
胸、静花よりもデカい…よな…
羨ましいとか思ってないもん。
身長は162cmと平均より高め…
それはフツーに羨ましい。
長過ぎない黒髪をツインテールにしている姿は
生来の女よりも女らしく見える。
あ、薄ーくメイクもしてんだな。
静花に教わってたからわかったけど…
黒のハイソックスを履いた脚を組む姿なんか、
もう、完璧に女じゃん、こいつ。

「まあ、相談は睡眠中以外なら受け付けるよ」
「頼りにしてるよ」

八重とはスイミングスクールで知り合った。
オレの通うスイミングにやたら見学に来ていた
篤史と静花とも親しい。
いわば幼なじみその3だ。
例の2人と比べ絡む事は少ないが、
結構、大事なタイミングで
アドバイスやヒントをくれる。
信頼出来るヤツだ。

篤史や静花も八重を頼っているらしく、
卒業式のあの日の事も八重に相談していた様で、
篤史が静花に告白する事は最初は八重から聞いた。
オレが何も知らなかったので

「悪いことをしたかな?」

と言っていたが、もしかしたら
八重なりの考えで気を遣って
教えてくれたのかもしれない。

それから、篤史に『少し離れたトコ』から
告白するのを見させてほしいと頼んだ。
篤史は少し気まずそうに

「…振られたらカッコ悪ぃから、OKだったら報告しようと思ってたんだが…」

と渋々了解してくれた。
結果、現在だ。


「お〜、山根と女(にょ)タクのツーショットとは眼福」
「…その略称、次使ったらコロス」
「まあ、殺っても罪には問われないだろうね」
「なんという」

女体化してからオレは篤史に対しての
ツッコミが男の時よりキツくなってしまった様な気がする。
て、ゆーか、ついキツく当たってしまう。


「あの、谷田さん」
「はい?」
79 :78の続き [sage]:2011/05/08(日) 21:12:07.60 ID:6D1mustz0
声の方を向くと普段あまり絡まない女子グループ、
その様子をしきりに窺う先刻の一部のアレな男子グループ。

イヤな予感しかしない。

「背ぇ小っちゃ〜い?何cm?」
「顔も小っちゃくてカワイイ系?あ、でも谷田クンって元々…」
「っーかヤベくねこの目とか?取り替えろっつの!」

…囲まれた…
篤史は頬杖つきながら、
八重は軽く腕組みをして
共にオレの方に生暖かい視線を送る。
わかってはいたが、コイツらどうしてくれよう…

…あの、さっきから質問のペースが早過ぎて一つも答えられてないんだが…

「それにしても、谷田クンが童貞だったのって」
「そーそー結構意外かも」
「…なんで?」
「ほら敷島さんとさ仲良いから」
「『そう』なんじゃないかなって」
「いや、ちがっ…静花は篤史と」

「敷島は谷田・浅倉の性欲処理施設と言う定説は崩れたでゴザルな」
「い、いや、ま、まだ、ゆ、百合の可能性も…フシュー」
「3PとかWWなにそのエロゲーWW」
「敷島まじビッチ」
「静花きもちいすぎてバンザイしちゃうぅっ!バンザイっ、ばんじゃいっばんじゃいっ!ぱゃんにゃんじゃんじゃいぃぃっ!!」
「WWW」

後方のアレな男子グループが笑いながら言う。

「テメぇらっ!!」

「っ!?谷田!」

思わず囲んでいた女子達を掻き分け男子グループへ飛びかかる。
八重の制止の声が聞こえた気がするが知ったことか!!
真ん中に座ってたピザの胸ぐらを掴み、右拳を振りかぶって…

「よせって」
「っ!?」

オレの右手首を篤史が掴んでいた。

「あー、コイツ女体化したばっかで気が立ってんだ、スマンな」
「ちょっ…!!」
「でも、まーキミらの言った事は失礼だよな?静花にもオレらにも」
「ふしゅ?はあ…?」
「謝ってもらえるかな?」

篤史は穏やかな顔を崩さないが
肌で感じる程のプレッシャーを掛けていた。

「ス、スイマセンでした…フシュー」
「よろしい」

篤史はオレの肩を抱き、踵を返す。
席へ戻りながらオレの頭をポンポンと軽く叩く。

「落ち着けバカ」
「…うるせーバカ」

これをされると落ち着くから不思議…
その余裕がムカつくけど、でも…
80 :79の続き [sage]:2011/05/08(日) 21:16:55.47 ID:6D1mustz0

「…ありがと…」
「っ、このアホ」

オレは篤史の顔を見上げながら
礼を言ったが、何故か顔を真っ赤にして
明後日の方を向かれてしまった。
なんなんだ?このバカ。

席に戻るとポカン顔の女子グループとやや、呆れ顔の八重。

「あ…ゴメンな」
「い、いやーウチらこそなんかキッカケ作ったみたいでゴメン」
「静花は篤史と付き合ってるんだ、だからオレはただの友達だよ」


『どちらとも』な、
…言ってて虚しいな。


「ただの友達じゃないだろ?今見ての通り浅倉はお前の飼い主じゃないのか?」
「いや、寧ろ俺が飼われてるし?」
「随分と躾が行き届いたペットだな、ご主人様に『待て』が出来るとは」
「オイっ!お前らがそーゆーこと言うから誤解されんだろーが!バカ!」
「まじめな話、『友達』じゃないだろ?『親友』?」
「…ワリィ、間違えた『親友』」
「よろしい」


「おーい、ヲマイら授業を始めるぞー」
「やべっ」

授業の始まりと共に皆、それぞれの席に戻る。

授業が終えて休み時間。
先程のトラブルを聞きつけた静花が来た。
静花のクラスは二つ離れているが今朝の騒ぎはちょっとした噂になったらしい。

「そーなんだー」

静花はコトの顛末を聞きながら右手で携帯を操作している。
これ、オレらが何かに巻き込まれた時なんかによくしてるけど、癖とかかな?

1週間後、翌日から何故か休んでいた
例の男子グループが全員、
見事な美少女になって学校に登校して来た。
ピザなんかもう別人だろ、アレ。
でも、どこか脅えてるような?

「あいつら全員同じ誕生日だったんだな」
「谷田…それ本気で言ってる?」
81 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/08(日) 21:20:53.11 ID:6D1mustz0
次の投下から話を進めたいなぁ、とか思ったり。
もう少し書き溜めて一気に投下した方が良いですか?
82 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/08(日) 21:26:54.01 ID:6AnI1iT1o
>>81
続きには期待。だけど、自分の好きなペースで投下していいと思う。
83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/08(日) 22:19:04.58 ID:W0/X9z1AO
>>82

今、職場なのでもしもしから書き込み。
dクスです。
マターリと完結まで行きたいと思います。
84 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/09(月) 01:37:22.65 ID:OjRPLFzco
>>57のお題

「3つとも、って何だろうな……」

梅雨明けも間近な6月下旬、窓際の席になった俺は外の大雨を眺めて、ぽつりと呟いた。
今は丁度昼休みになったばかりだ。教室の中は学食にいく連中がほとんどだったようで、がらんとしている。

「それで、お前は告白は受けたのか?まさか断ってないよなッ!
 くぅぅ〜、高校入りたてでいきなりカノジョ持ちかよ!羨ましいなこのヤロウ」

前の席に座っている中学からの友人が、弁当を食いながらけたたましく話しかけてくる。
内容自体はコイツの言っている通り、昨日とある女生徒から俺が告白された事だ。
しかも昼休みに、この教室で、堂々と。

「断るも何も、お前も見てただろ。……いや、気圧されて断れなかっただけだったんだけど。」

昼飯時だったからか、教室には半分位しかクラスメイトは居なかったが
余りにも堂々としすぎた告白だったせいで、その日の内に学校中に知れ渡ったらしい。

「そうかそうか…で、もうヤったのか?入学したてで卒業しちまったのかッ?!」
「下ネタかよ、馬鹿ヤロウ……んなわけないだろ。昨日の今日だぞ。」

唐突過ぎてその時呆気に取られてしまった俺は、思わず頷いてしまって今に至るわけだ。
何故呆気に取られたのかって?そりゃ、相手との接点がまるでなかったからだ。
いや、あると言えばあったのだが、希薄すぎる関係だった。

「なぁ、3つの初体験って何だろうな。」
「またソレか、お前、女の子から初体験って言葉が出てきたら決まってんだろ!」
「お前に聞いた俺が馬鹿だった。もういい、それ以上喋るな。」

この高校は、文化祭が何故か1学期に執り行われる。それもよりによって7月に。
期末試験と被る時期なのだが、それでも1年生だけは比較的マシというか、楽な方。

「なんで俺なんだろうな。学祭の準備でちょっと一緒になっただけなのになぁ…」
「理由なんか考えてどうすんだよ!あんな可愛い子滅多にいねーだろ!」
「そうなんだけど……あの子のクラスって言えば、アレだろ?例の集団疾患にかかっちまったって言う、あれ。」
「ああ、予防接種の前にクラスのほとんどが女体化しちまった、ってヤツだったっけか。」

2年生と3年生はクラスごとに生徒が出し物を決めているらしい。
それに加えて部活の方でも何かしら出店の用意だの展示だのもある。
とは言え、メイド喫茶やお化け屋敷、屋台等といった定番に絞られる事が多いのだが。

「そうそう、つまり…あの子は元男だったわけで、しかも成り立てだろ。
 いまいち腑に落ちなくてな。簡単に中身まで女になっちまうもんなのかね。」
「なんなら、今月にある予防接種拒否っちまえばいいだろ。お前も女になれば解る。
 ま、女になっちまったら?あの子はオレ様がいただいちまうがな!」
「アホか、寝言は寝て言え。お前みたいな下品なヤツがあの子と釣り合うわけがないだろ。」
85 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/09(月) 01:39:10.32 ID:OjRPLFzco
1年生は隣のクラスと組んで郷土史の展示会みたいなのを開くのがこの学校の文化祭通例となっている。
彼女とは、その折に知り合った。今現在もその準備の真っ最中だ。

「下品とは失礼だな!欲望に素直だと言え!」
「余計に性質が悪い。」
「あ…あの。」

悪友と馬鹿みたいなやり取りをしていると、会話に割って入ってきた女の子がいた。
赤毛のストレートヘアーを首筋辺りでひとまとめにして、リボンでしばっている可愛らしい子だ。
髪の色は染めているわけではなく、ハーフだかクォーターだかなので地毛との事。

「お邪魔だったかな?えと、その…一緒に学食にでもどうかなって思ったんだけど。」
「ん?ああ、大丈夫。むしろ邪魔なのはコイツの方だから。」
「そっか、良かった。じゃぁ、行こっ。」

透き通るような白い肌をした綺麗な手が差し伸べられる。
……握ってくれ、という事だろうか。
恋愛経験も無い少年にとっては、いささかハードルが高すぎる。
俺はぎこちなく右手で宙を掻いた。
要するに、差し伸べられた手を握るかどうか考えあぐねているわけだ。
その様子がじれったかったのだろうか、彼女は強引に俺の腕を掴んで引っ張りだしてしまった。

「くぅ〜…見せつけやがってこのヤロウ!さっさと行っちまえ!」

昼飯時の食堂は慌しい。むしろ一種の戦いの場と言っても差し支えないだろう。
食券販売機前には行列でき、その食券を出すカウンターは行列が崩れ、生徒たちでひしめき合っている。
順番待ちに耐え切れず割って入る生徒が絶えないので、罵声が飛び交う事も多い。

「あはは…相変わらず凄い人だかりだね。」
「だな。少し遅かったか…購買のパンにでもしとくかな。」

購買の販売所も食堂の中にある。
のだが…こちらも一足遅かったようで、既に全てのパンが売り切れていた。

「参ったな。今日は昼飯抜きか。」
「ところがそうはいきません。んふふ〜、じゃーん!」

隣にいる彼女が得意げに財布を取り出し、中から紙切れを2枚俺に差し出してきた。

「食券?用意が良いなぁ、何時買ったんだ?」
「4時限目前の休み時間に予め、ね。あ…日替わり定食でよかったよね?」
「あ、ああ…悪い。えっと…600円だったか。ちょっと待ってくれ。」

代金を支払おうとすると、彼女が俺を制止した。

「ボクが勝手にやったことだから、うん。これはボクのおごりで。」
「い、いや、そういうわけにもいかないだろ。むしろ俺の方が……」
「あ……そっか、うん。そうだよね、ごめんね。じゃ、キミの分だけ貰おうかな。」

流石に元男だけあって、察してくれたらしい。
いくら高校生と言えども、女の子に奢られてしまっては恥だろう。
86 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/09(月) 01:40:14.66 ID:OjRPLFzco
人ごみを掻き分け、何とか2人ともカウンターまで辿り着き
いざ定食の載ったトレイを受け取ったまでは良かったんだが…

「席、空いてなさそうだね。」
「ものの見事にな…やっぱり出遅れたって事か。」

テーブルを見渡す限りの人、人、人、いや、生徒か。
満席ないせいか、立ち食いしているヤツも居る。
…俺1人だけなら立ち食いでもいいのだが、今は女の子連れだ。
何がなんでも、席を確保しなければならないだろう。

「ををっ、もう1人の委員長じゃないか、おーい、こっちだ。こっち!」

隣にいる彼女も、俺と同じ様に空席は無いか探していると、彼女に話しかけてくる女生徒が居た。
彼女も軽く相手に会釈する。クラスメイトだろうか?

「ここー、空いてんぞー。丁度2つ。隣にいるの彼氏だろ、つれてこいよー」

渡りに船、とばかりに女生徒に駆け寄る彼女。俺もその後を追う。

「ありがとうね。んっと、あれ?今日はあの2人と一緒じゃないんだ。珍しい。」

案内された席に着くなり、女生徒と彼女の会話が始まる。交友関係があるようだ。
俺の方も女生徒に対して軽い挨拶と感謝を述べた。

「んー…あー。いや、あの馬鹿男は4時間目の体育で怪我しちゃったらしくて今は保健室。
 いいんちょの方は、緊急の委員会で呼び出されてったんだ。」

そういえば、隣のクラスには男が1人しか居ない例の女体化クラスだ。
体育授業の際、そいつだけ女子の中で受けさせるわけにもいかないだろうと
うちのクラスの体育に合流している。
会話の中に出て来ている今日の体育とはサッカーだったのだが、
1人見慣れないヤツが足首をひねった上に盛大にずっこけて怪我をしていたな。
どうやらそいつがこの女生徒の言う「馬鹿男」のようだった。

「お見舞い行かなくてよかったの?」
「もう行ってきた。つーか…ぜんっぜん大した事なくてピンピンしてたからぶん殴って来た。」
「あ、あはは……相変わらず仲がいいね。
 ところでさ、ボクは委員長じゃなくて副委員長補佐、なんだけど…」
「細かい事気にすんなよ。風紀委員も学級委員も似たようなもんだろー?」

何故か隣にいる彼女とはまるっきり別物だ。
流石元男、ツインテールに加えて可愛い顔をしてはいるが、言動は男そのもの。
そして頭の方も今聞く限りでは残念そうにしか聞こえない。

「似てないし、やる事も全然違うよ。確かに学級委員長とは結構いろんな事で協力はするけどさ。」
「ふーん。で、隣に居るのが、例の告白でゲットした彼氏?良い趣味してるなぁカッコいいじゃん。」
「でしょ〜。ふふん、羨ましい?」
87 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/09(月) 01:41:37.45 ID:OjRPLFzco
>>86
誤字発見

×満席ないせいか→○満席なせいか
88 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/09(月) 01:42:44.51 ID:OjRPLFzco
まだ付き合い初めて2日目なんだが、彼女は平然として胸を張っている。
対する俺の方はと言うと、気恥ずかしくて顔を隠すように両手でお椀を抱え、味噌汁をすすっていた。

「でさ、もうヤったのか?どーだった?その…女になるって感覚はさ。」
「ゲホッ?!ゴホッ…」

質問の内容に驚いて味噌汁が器官に入り、むせてしまった。噴出さなかっただけ不幸中の幸いか。
悪友にも先ほど同じことを聞かれたが、女生徒から聞かれるのとは破壊力が違いすぎる。

「やだなぁ、昨日の今日だよ。ボクたちにはまだ早すぎるよね?」

彼女は恥じらうわけでも、怒るわけでもなく、淡々とこちらに尋ねてくる。
頼む、こっちに話を振らないでくれ。返答に困る。

「あ…ああ…そ、そうだ、な。」

恥じらうのは女の子の特権だと思っていたが、どうやら異性化疾患の子には関係が無いらしい。
むしろ男のままである俺の方が恥じらっているわけだが、さて、常識とはなんだったのか。

「へー。もうタメ口聞けるような仲なのか。意外と進展してんなー」
「うん、そうだよ!って、言いたい所だけど、ボクの方からお願いしたんだ。
 堅苦しい敬語は無しにしてほしい、って。」
「昨日の内にか?」
「そ、昨日の内に。」
「その分だと、初体験も結構早くやりそうだな。ななっ、ヤったら教えてくれよ。感想とかさ!」
「オ、オイ、アンタ!頼むから女子の口から初体験だの、ヤるだの、ぽんぽん言わないでくれッ」
「んだよー…いいじゃん、ケチくさい。細かい男は嫌われるぞ。」
「いや、待て、全然細かくない。むしろアンタの方が気にしなさすぎだ。」

等と突っ込みを入れながら、俺はこの「初体験」という言葉に対して一般的なイメージとは違う事を考えていた。
何故かって?それは告白された放課後に彼女から頼まれた事柄に関係していたからだ。

「じゃあ、ボクらの体験談を聞いたら、キミもそろそろ告白とかしちゃったりするのかな〜?」
「なッ?!な、なななんの事だかサッパリだな!」
「いいのかなー?早くしないと委員長に先越されちゃうよ?」
「バッ…あ、あんな馬鹿男、委員長も好きなわけがないだろッ!?」
「え?ボクは別に誰とは言ってないよ?あれ?おっかしぃな〜」
「ぐッ、こ、このッ嵌めたな!風紀いいんちょッ!」
「ふっふ〜ん。お返しでーす。」

彼女はと言うと、軽く聞き流した上にカウンターパンチまで放っていた。
抑揚もなく、かと言って冷淡でもなく、ごく自然な調子で。
何故ここまで意識しないで居られるのだろうか、俺には皆目見当が付かない。
89 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/09(月) 01:45:07.58 ID:OjRPLFzco
彼女の態度には違和感を感じるのだが、
今はその事よりも告白の後に受けた頼みごとの方が気になっていた。

「だ…大体っ、告白なんてのは男からするもんだッ!
 だ、だから俺は待ってやってるだけなんだっつの!」
「へぇ、好きな事は認めるんだ。
 そ〜だよね〜?小学生の頃からの幼馴染だもんね〜?」

彼女から告白後に頼まれた事は、タメ口以外にも3つある。…らしい。
らしい、と言うのはまだ1つしか聞かされていないからだ。

”ボクの初体験…3つとも、貰ってくれる?”

とはいえ、このような意味深な発言もとい妄想しやすい頼みごとだったのだが
1つ目の頼みを聞いてみて、それは間違いだった事に気付く。

「バッ、ち、ちげーよ!ただの腐れ縁だッ!い、家もそんなに近くないぞッ?!」

俺の思案を他所に、女子の会話は思いのほか微笑ましい方向に弾んでいる。
片方の言葉遣いに気を留めなければ、こういうのが一般的な女生徒同士の恋愛話なのだろう。
しかも2人とも結構声がでかいので、周囲にダダ漏れだ。
聞き耳を立てている連中も少なくない。

話を戻そう。その1つ目の頼みと言うのは、”登下校を毎日一緒にしてほしい”と言う願いだった。
勿論二つ返事で承諾した。いや、ホントですよ?んなエロい妄想とかしてないから。マジで。
……確かに少しは期待していたが、彼女自身はプラトニックな関係をご所望だっただけだ。

「おや、噂をすれば影ってやつかな?キミの想い人のご到着みたいだよ?」
「なっ…へっ、えッ?!今の話は絶対内緒だからな!絶対だぞ!?」
「ういーっす。なんだ、やっぱりもう食い終わってんな。隣、いいか?」
「か、勝手に座ればいいだろ。いちいち聞くな!」

親しげにこちらにやってきたのが、先ほどの彼女らの会話に出てきた男だったらしい。
俺と彼女は当に食べ終わっていたので、彼と入れ替わりみたいな形になった。
軽い会釈だけして、俺たちはその場を去る。

「あのコもボクみたいに素直になればいいのにね?」

教室に戻る途中、彼女がそう話しかけてくる。
そうだな、と相槌だけ打っておいたが
本当に彼女は素直なのかと自分の中には疑問の種が撒かれていた。

「あ、今日の放課後も一緒に帰ろうね。終わったらそっちの教室の前で待ってるから。」

3つと言いつつまだ1つしか教えてくれないのは何故なのか?
それに茶化されてもごく自然に振舞えるのは何故なのか?
両方とも、今の自分には問う勇気を持ち合わせてはいなかった。
90 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/09(月) 01:45:54.89 ID:OjRPLFzco
安価ネタの割に長くなりすぎた上に終われませんでした。
続きは後日(´・ω・`)ノシ
91 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/09(月) 01:57:19.10 ID:E/O7bmeAO
>>90

お美事にございます。
続きに期待してる!
92 :80の続き [sage]:2011/05/09(月) 14:51:14.50 ID:M/0adBAM0
「タク、これやるよ」
「…オレに?」

篤史が差し出してきたのはレザーのブレスレット。
ヌメ革を使ってみたらしい。

篤史の趣味はレザークラフトで
その腕前はもはや趣味ってレベルではない。

「いや、静花にやれよ」
「静花にはゴツいだろ?」
「じゃあオレにはもっとゴツいじゃねーか」
「でも好きだろ?」
「…でも、だな…」

会話の中の『好き』に簡単に動揺してしまう。

お前、仮にも彼女いる奴が他の女に手作りの物とかやってんじゃねーよ!バカ。
いや、親友として受け取れば良いんだろ?
わかってるけど、その、な?
オレが静花じゃない『他の女』であることに変わりはなくて…

「いらねーのか?」
「っいる!貰うよ!!」
「じゃ、素直に受け取れバカ」
「うっせーバカ…でも、ありがと」

そう、『女』なのである。
女体化して半月経ち、最初は戸惑う事ばかりだったが、
慣れてきて落ち着いた頃、気付けばオレは篤史を目で追うようになっていた。

多分、静花を見ているのと『同じ目』。
異性として、…恋の対象として。

…認めよう、恋なのだ。
オレは篤史が、好きなのだ。

篤史はカッコいいと思う。
それは男だった頃は憧れと、コンプレックスの対象だった。
でも今はぼんやりと

「カッコいいなあ」

と見とれてしまう。
…なるべく見入らないように気を付けてる。

篤史に頭をポンポンとされるのが好きだ。
頭を弄られるのも、セットが乱れるのがアレだが、まあ、好きだ。
こないだポニーテールを後ろからくりくりと弄られてる時も

「オイ!ヤメロよバカ!」

と言ったが、ずっと触っててほしいと思ってた。
93 :92の続き [sage]:2011/05/09(月) 14:54:02.22 ID:M/0adBAM0

静花への思いはまだ埋み火の様に残ってる。
静花は、もう同性で、結ばれる事など、もう無いのに、だ。
でも、篤史への気持ちも確かに『ここ』に在って…。

オレは、自分が親友2人を裏切っている。
なのに傍らで、笑顔で、変わらずにいつも傍にいられる。
自分が酷く汚い人間の様な気がして凹む。

掃除時間、ゴミを捨てに行った篤史が偶々会った静花と話をしているのを見掛け
た時はどちらに嫉妬しているのかわからなかった。

帰宅時、用事で少し遅れたオレを学校近くの本屋で待ってくれてる2人にオレは声
を掛けるのを躊躇った。
楽しげに話していたから、遠慮したワケじゃない。
逃げたかったんだ。
でも、篤史と静花はオレがいる事を望んでくれる。
だから、『いつも通り』にオレはここにいる。

…辛さは積もるばかりだった。




「谷田、ちょっと良いかな?」

放課後、今日は篤史、静花共に別々の件で遅くなるとの事で珍しく1人で帰ろうと
したら八重に呼び止められた。

ちょっと一緒に来てほしいとの事だが用件も特に確認せず、オレは快諾した。
この頃は1人でいると考える事は篤史と静花のコトばかりで思考が堂々巡りになっ
ていたので八重と話がしたかったから丁度良かった。


すぐ済むとの事で、荷物を教室に置いたまま、八重について文化部室棟のパソ研
の部室へ。
八重はパソ研に所属しているが所謂ユーレイ部員だ。
今日はパソ研は休みだが、忘れ物をした、と顧問に鍵を借りたらしい。

「ま、嘘だけどね」
「なんで、そんな…」
「2人きりで話がしたかったから」

ドアの内側から鍵を掛けながら話す八重。
声はいつも通り冗談とも真面目ともとれる調子だ。
こちらに向き直るが仄暗い部室内、表情が判り難い。

「あ、電気つけようか」
「このままで良い」
「え?でも…」
「好きだ」
94 :93の続き [sage]:2011/05/09(月) 15:01:42.92 ID:M/0adBAM0
気が付くと目の前に立っている八重。
表情はやはり判り難いが、声が先程までの調子ではなく、真剣。

「僕は君が好きだ」
「えっ…な?」
「女になって最初に感じた感情だったよ、気が付けば谷田のコトばかり考えている」
「八重…」
「男の頃は感じた事も無かった感情だったからね、戸惑ったよ」
「…」
「初恋というものなんだろうね、意識せずとも君を目で追っている」

…オレと同じだ。
篤史を、静花を、見ているオレと。

「だから、君が以前から誰を見ていて、今は誰を見はじめているか知っている」
「えっ…?…あ…?」

カァっと、顔に血液が集まる音が聞こえた気がした。
その瞬間、オレは壁に押さえつけられた。
顔の間近に八重の整った顔。
長い睫毛と思わず見惚れてしまう奇麗な瞳。
美しく通った鼻梁。

触れる唇と、唇…?
っ!?…オレ、キスされてる?

「んーっ!!!?…っふぁっ…!」

僅かに離れられて少しの息継ぎをするが再び唇を塞がれ、今度は舌の侵入まで許してしまう。

舌の上を、下を、筋を、歯を、歯茎を、口蓋を八重の舌が這いずり唇から顎に伝い垂れる涎も舐め掬われる。
つと離された互いの唇に唾液の糸がはしり、ぷつりと切れる。

「はっ…あっ、あ…あっ…っ」

オレの唇から離された八重の唇が耳を弄り、次に舌先が耳の裏から顎の付け根を過ぎ首筋へとつうと流れる。

「あ、あ、あっ……っ」

オレの身体はすっかり力が抜けてしまい、完全に八重に預ける格好になっていた。

「や…えっ…っあ…ぁ、ふッ…ぅん」

再び塞がれる唇、口内を八重の舌に犯され貪られる。
もはや抵抗も出来ない程に脱力してしまった身体、僅かに右手だけが八重のスカートの裾を握り締めている。
頬にそえられていた手が今度は耳を塞ぐ。
ちゅくちゅくと口内で罅ぜる水音が耳奥に、頭に、脳髄に響き朦朧とした意識を更に灼く。
もう、何も考えられない。

「んっ…んぅ…」

互いのものが混じり合った唾液をこくこくと飲み下す。
喉を溶かすような熱。
その熱が意識を、理性を侵す。

何、ナニ?怖い、コワイ、こんなのは知らない!

胸の奥をきゅうと締め付ける感覚。
下腹部に溜まっていく先程の熱。
逃げ場を求めてズクズクと疼く熱。
ふとよぎる顔、あれは………。

「…ねえ、谷田?」

唇を離し、八重が話始める。
声はいつもの調子に戻っていた。
95 :94の続き [sage]:2011/05/09(月) 15:06:57.14 ID:M/0adBAM0

「今、誰のコトを考えていた?」
「……あ…」

顔、誰の……

「君が今、求めたのは誰だった?」
「八…重?」

求めてた?誰を?

「…っふぅ!?」

再び疼きだす、熱。

八重はスッと立ち上がり着衣を整ながら
ドアの鍵を開けた。

「…八重?」
「僕では君を満たせないんだろう?」
「…八重……ゴメンっ」

オレはそのまま部屋を出て行ってしまった。



「ふむ…ファーストキスを奪えたのは役得だったかな」



時計台の辺まで駆け足で来てから、教室に荷物を残したままだと気が付いた。
このまま帰りたい気分だったが、息を整えてから教室に向かう。

時間的にもう誰も居ないと思っていた教室に入ると…そこには篤史がいた。

「な、んで…」

動揺して思わず上擦った声が出る。
篤史は此方に気付き声を掛けてきた。

「おー、先に帰るっつてたのに何やってたんだ?」
「おまっ…なんで…」
「いや、教室に戻ったらお前の荷物あったから待ってたら来るかと思ってな」
「先、に帰りゃ…よかったのに」

薄弱とした意識の中でよぎった顔。
その本人の前でぶり返す、先程の熱…。

「お前、顔赤いぞ?バカのクセに風邪か?」
「〜っ…!?」

篤史が額に触れようとするから
咄嗟に突き放してしまった。

「オイ?何だよバ…カ?」
「……っ…」
「…どうしたんだ?」

オレを気遣う、ひどく優しい響きの声。

「…篤史…オレ……」

堰留めていた心が決壊する。
気持ちが溢れ出し言葉を紡ぐ。
もう止められない。
96 :95の続き [sage]:2011/05/09(月) 15:09:59.44 ID:M/0adBAM0

「オレ、お前のことが…好き、だ…」
「は…?」
「オレはお前が好きだ!」

…言ってしまった。

「オレっ…お前と静花の邪魔っ、したくないのに…ッ!!我慢…しなくちゃいけなかったのにっ!!
ずっと平気でいなくちゃうけなかったのにぃっっ…!!」

『熱』が囁く。
『欲求』が鎌首を擡げる。

オレの『男』としての『初めて』は好きな人とは出来なかった。
もう一生、出来なくなった…『女』になってしまったから。

でも、だから…せめて『女』としての『初めて』くらい…

「タク…」
「…なあ、篤史?」

オレは男だったから、知っている。
オレには度胸が無くて出来なかったけど、
好きな人、静花以外とするなんて嫌だっていう
妙なプライドを棄てる勇気が無くて出来なかったけど
結果、女になっちゃったけど、

男は、別に『好き』な相手じゃなくても、
セックスを出来る、という事を。

だから…

「恋人になりたいとか、思わない…そこまで望まない」
「タク?」
「オレ、ズルいんだ…ゴメン、でも」
「……?」
「…『初めて』は…セックスをする相手は…篤史が、いい」
「…っ!?」



「オレをセフレにしてくれ」
97 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/09(月) 15:17:11.18 ID:M/0adBAM0
やっと冒頭のシーンに繋がりました。

拓海「なげーよバカ」

おっしゃる通りで…
もっと簡潔に且つ伝わる文面に出来ないものかと。

まだ、先は長いのですが…一応、次はエロシーンです。
ただ、こんな感じの文章なので果たしてエロくなるのかどうか…

篤史「とっとと書け太郎」

おっしゃる通りで…
98 :96んトコの誤字 [sage]:2011/05/09(月) 15:40:02.45 ID:M/0adBAM0
×→ずっと平気でいなくちゃうけなかったのにぃっっ…!!

○→ずっと平気でいなくちゃいけなかったのにぃっっ…!!

お前、何うけてんだしWWW
コレはヒドイ、台無しだWWW
99 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/05/09(月) 21:06:03.75 ID:3DV/sV6Do
なんだこの投下ラッシュは…
まとめしがいがあるじゃない
100 :修正パッチのお知らせ [sage]:2011/05/09(月) 21:09:36.31 ID:M/0adBAM0
>>93のトコ

×→八重はパソ研に所属しているが所謂ユーレイ部員だ。

○→八重はパソ研に所属しているが既にユーレイ部員候補だ。


オマイラ入学したてだもんね。


>>94のとこ

【オレの身体はすっかり力が抜けてしまい、完全に八重に預ける格好になっていた。】
の下に、

足から力が抜け、立っていられない…肩を抱えられながら床に寝かされる。



ウーム、ヒドイ…気を付けます。


101 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/09(月) 21:16:08.62 ID:GrM4SQ6f0
どっちも続きが楽しみだ
102 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/10(火) 08:46:33.99 ID:JLIOGyF90
イイヨイイヨー、両人ともGJ!

スレの初めでは、やっぱ新スレ要らなかったか…なんて思ったりもしたけど
100レス超えるくらいだし杞憂だったようだネ☆

よければオイラにも安価めぐんでくださいませ↓
103 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/10(火) 15:59:40.70 ID:nxDey4r+o
親友が大好きだが男同士でもんもんとする日々
ある日親友が女の子に!

とかどうですか
104 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/10(火) 16:34:25.48 ID:JLIOGyF90
安価いただきました、ガンガル
105 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/11(水) 20:45:36.24 ID:dSwKWeHGo
>>57のお題    前回: >>84-89

雨だれがグラウンドの土を打ち付ける音はけだるげで、聞いていると五月病の再来を予感させる梅雨明け直前の7月頭。
窓際の席の私は朝のHRまでの空き時間、雨音を聞くだけではなく窓の外のグラウンドも眺めている。
天気予報では降水確率30%だった為か、急に降り出した雨に対する防御壁を持ち合わせていない生徒が小走りに玄関へ走り去るのが見えた。
…防御壁は厨二病すぎる。素直に傘って言えば良かったか。
やたら変な話をするいいんちょの影響が出て来ている可能性が高い。

「おはよう、ツインテールの少女が頬杖をついて物憂げに雨の降るグラウンドを流し見している図。
 随分と絵になるし、乙女チックにもなったね。」
「誰が乙女だ、誰が。彼氏持ちのがよっぽど乙女だ。」
「いやいや、ボク程度、キミの足元にも及ばないほどの芋女でございますですことのよ。」
「さいで。」

やたらと失礼な挨拶をかましてくれたのは中学時代からの友人の女の子。
女体化ハーレムクラスであるこの1年E組では、当然この子も元男だ。

「で、ここから彼氏と相合傘で登校してんの見えたけどさ、進展してんの?結局」
「え?勿論してるよ。多分。」
「なんだ多分って…えらい曖昧というか、どうでもよさそうな感じに聞こえるな。」
「そんなわけないじゃない。人生初めてのカレシなんだからさ。」

首筋辺りで赤毛のストレートヘアーをまとめているリボンを弄って細かい調整をしながら、私の問いを軽く受け流す。
奇妙な敬語も冗談交じり混じっているが、口調には焦りや照れ、果ては惚気すら含まれていない至ってノーマルな雰囲気。
どこをどうすれば、高校上がりたてで恋人が出来た花も恥じらう乙女がここまで冷静でいられるのだろうか。

「今日も学際の準備だっけかね。」
「”今日も”って……始まるまで毎日放課後やってるよ?たまにはサボらないで参加してほしいな。
 同じ班なんだし。大変なのはボクなんだよ?」
「俺はですね、良い仲になっちゃった2人を邪魔しないように気を使っているわけですよ。
 恋人と同じ展示班なんだから、仲を深める絶好のチャンスだろ。」
「………そんな事言って、実の所サボりたいだけでしょ?
 委員長から聞いたけど、商店街の入り口にあるゲーセンに入り浸ってるんだよね〜?」
「ゲーセンは昔から入り浸ってるっつーの。」
「昔は良かったけど、今は危ないでしょ。今のキミは可愛い女の子なんだからさ。」
「だいじょーぶ大丈夫。あいつといいんちょも大体一緒だし、1人で行く事のがすくねーよ。」
「ふーん、へー、ほ〜。なるほど、なるほどね〜?」
「た…他意はねーよ?ねーったら!ないっつってんのッ」

我ながら解りやすい反応で、周囲にバレていると解っていてもやめられない。
心の中は割りと冷静だとは思うのだが、表向きの反応はいつもオーバーリアクションになってしまう。
わざとやっているのではなく、単純に脊髄反射なのだ。
本当に厄介な性格。乙女だ乙女だと言われても実のところは反論できない自分がそこにいる。

「わ……解った。今日の放課後は俺も学際準備行くから、この話題終了、しゅーりょーでーす!」

このまま放っておくと更に突っ込まれるので、さっさと終わらせる。
流石に手伝うと言えば、コイツもおとなしく引き下がるだろう。
106 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/11(水) 20:49:22.50 ID:dSwKWeHGo
「え?ホント?本当にほんと?」
「ああ」
「絶対に必ずきっかりぴったり?」
「ああ、必ずきっかり」
「Really?」
「しつこいな…行くったら行くっつのッ!」

本当に、本当に厄介な性格だ。

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そして放課後。F組と合同である学際準備は、F組の教室で行われている。
ホームルームを終えて教室で一息ついてから隣のクラスへ足を運ぶ。
合同とは言うのだが、両クラス全員が用意しているわけではない。
運動部に入っている連中は基本的には免除される。
まぁ、部の方での出し物の準備に追われているらしいのだが。
文化部の連中はケースバイケース。委員会も右に同じ。

よって、F組の教室に入っても、中にいる生徒数はそれほど多くはない。
2クラスの総計の1/6も居ればいい方ではないだろうか。つまり13人前後。
尚且つ、ほぼ全員帰宅部。
帰宅部の中にも私のようにサボタージュに走るやつも居るので、本来はもっと多い人数が動員されている計算なのだろう。
予定では既に展示物は完成してて、暇になってる時期なのだけどね〜。なんて事を昼休みに聞いた。

ガラガラと教室の扉を開け、中の様子を見た。

「あ…やっと来た。遅いから放送部に呼び出しかけてもらおうか迷ってたんだよ?」

もっと遅れたら羞恥プレイだったんですか、そうですか。
来ざるを得なくなった原因を作った友人がぱたぱたと駆け足で近づいて来る。
え?サボりまくっていたのは自分じゃないのかとか自業自得とか、そういった類の苦情は受け付けません。

「それにしても……」

少ない。何が少ないって、教室にいた人数が少ない。どうみても7〜8人しか居ない。

「け……結構どころか、深刻だったんだな。」
「うん。来てくれてホント助かったんだよ。」

様子を見渡していると、床に模造紙を広げて何か書き込んでいたこの子の彼氏と目が合った。
軽く会釈をすると、相手も頭を下げて応えてくれた。
どうやらこちらの顔を憶えていてくれたようだ。
107 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/11(水) 20:57:31.60 ID:dSwKWeHGo
何やら”製鉄所の歴史”とでかでかと書かれた模造紙を広げているこの子の彼氏が作業中の場所まで案内された。
郷土史とは聞いていたが、興味が無い事だとピンと来もしない。
そんなもんこの街にあったっけ?

「アレ?周辺地図ってどこやったっけ?知らない?」
「昨日借りてくるって言ってなかったか?……無いならまだ借りてないだけだろ。」
「あ……あ”〜〜〜〜〜…お昼休みに借りてくるつもりだったのにすっかり忘れてた!」
「何やってんだ……資料の抜粋する箇所教えるから書いといてくれ。俺が借りてくるから。」
「だ、ダメだよ。ボクが忘れたんだからボクがいってくる!」
「いや、俺のが早く帰ってこ────」

彼氏の制止も聞かずに飛び出してしまった。
呆然とその後姿を見送った後に顔を見合わせた私とその彼氏。
面識がほとんど無い者同士、ただ顔を見合わせるだけ。
乾いた笑いでごまかそうとしてみるのだが、気まずさはごまかしきれるものではない。
周囲を見ても、他の連中は静かに展示物の作製をしているだけだ。

「わ、悪かった。今までさぼってて。」

1分位の間があって、沈黙に耐えかねた私の口から謝罪の意を搾り出す。
この微妙な空気、雰囲気を耐え忍べるほど私の忍耐力は高くない。

「いや、別に。実際面白くとも何とも無いから。最初は20人以上居たんだけどさ。
 今じゃこの有様。」
「へぇ…減った理由ってやっぱりつまらなかったからか?」
「それもある、かな。」
「他に何があるんだ??」
「そっちのクラス、今じゃ女子ばっかりだろ?
 それでうちのクラスの男子が釣れてたんだけど、あまりのつまらなさに来る女子の数が減ってさ。
 おまけに、文化部でもいいから入ってたらそっちに出るって名目でサボれるみたいで
 部活動って理由で抜ける連中も増えたってとこ。」
「花が無くなって働き蜂も寄って来なくなったってわけか……集める蜜もなけりゃ居る理由ないしな。」
「何気に酷い事言ってない?アンタ。」
「婦女子の特権だ、特権。女子にコキ使われてこその男子。」
「すごい理不尽だな。」
「女尊男卑ってヤツだ。大丈夫、俺はそんな差別しねーから。」
「嘘にしか聞こえないぞ。」
108 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/11(水) 20:59:19.47 ID:dSwKWeHGo
物凄く中途半端だけど今日はここまでで。
まだ長くなりそうですみません
109 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/11(水) 22:30:26.15 ID:Wgj/yrq/0
続き期待してます。wktk

セフレのやつの続きは発熱で頭がクルクルパーな為、
本日の投下はお休みさせて下さい。
お詫びにキャラ絵うpりました。
職場で休憩中に力尽きる前に描いた落書きですが…

http://dl8.getuploader.com/g/6%7C1516vip/57/sefri001.jpg

僕的にはこの3人はこんな感じです。
お気に召さない様でしたら各自脳内変換宜しくお願いします。

八重のポーズがラブ注入なのはおふざけです。
描いてる時にたまたま机の上にあった雑誌のモデルの娘が
このポーズしててカワイイと思ったのでつい描いてしまいました。
110 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/11(水) 23:22:03.99 ID:qrGWZR19o
皆GJ そしてイラストGJ ふつふつと創作意欲が刺激されるわぁ
111 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/12(木) 05:33:41.36 ID:1ZZoa1ag0
しまった…
なんかイジってたら絵を削除しちゃったorz

http://dl8.getuploader.com/g/6%7C1516vip/58/sefri001.jpg

再度上げました。申し訳ないです。
112 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/12(木) 22:38:00.52 ID:4T1rszW90
GJ!
113 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/13(金) 03:17:00.61 ID:5EiYIiHjo
>>57のお題 初回:>>84-89 前回:>>105-107

「それで、俺は何をすれば良いんだ?」
「あ、あー…そうだな。後はアイツが地図持って来なきゃ書く事はほとんどないし。
 展示物貼り付けるホワイトボードとか取ってこなきゃいけないな。」
「ホワイトボードね。何処にあるんだ?」
「えーっと…3階の視聴覚教室だったかな。
 おーい、例のホワイトボード取りに行きたいんだけど、俺ら2人だと手足りないから誰かついて来てくれ。」

丁度手が空いていたのは私と彼氏だけだったようで、3台もあったホワイトボードは一度に運べず、1台ずつ運ぶ事にした。
おまけに1年生の教室自体は1階にあるので、えらい手間でもあった。

「あの子とはうまくいってるのか?」

ホワイトボードをF組の教室に運ぶ道すがら、彼女に聞いた事を彼氏にも聞いてみた。

「ん…ぼちぼち、かな。」
「あんまり変わらない返答だな。」
「変わらないって何の事だ?」
「彼女の返答と変わらないって事。煮え切らない所もそっくり。言葉自体は違うけどさ。」
「そっか。ま、付き合ってるし、考え方が似てきたのかもな。
 それにしてもどうしてそんな事を聞くんだ?」
「ん。気になってさ。」
「先を越された、とか?」
「それもあるけど、あの子とはちょっと付き合い長くて心配になっただけだ。」
「…俺、そんなに信用無いように見えるのか。いや、そっちと面識もあんまりないけどさ。」
「何となく、アンタは信用出来ると思うよ。心配なのは彼女の方。」
「そりゃまた光栄な事で。って、普通逆じゃないのか?付き合い長いんだろ。」

普通なら当然、3年位付き合いのある彼女を信じたい。
目の前にいる性格すらよく知らない男子よりは遥かに信頼もしているはず。
はずなんだけど……。

「俺らさ、ほら、元々男子だっただけあってさ…色々不安定なんだよな。」
「色々大変そうだしな。……なんて当たり障りの無い事を言ってみたけど、彼女は普通に見えるぞ。
 …………………可愛いし。」

”可愛いし”の部分は物凄く小声で、多分彼も私には聞こえないように言ったつもりだったのだろう。

「ハイハイ、ノロケご馳走様。
 俺の友達の中じゃ俺も含めてあの子が一番こう、女子にまだ成れてないって言うか。」
「んなッ?!き、聞こえて…いや、えっと、アンタ以上に成れてないのか?
 俺から見たら、その…失礼なんだけど、アンタのがよっぽど。」
「そうだろうな。納得いかないだろうけど、性別が変わっちまうってのは複雑なもんでさ。
 持論で悪いんだけど、ここ3ヶ月間…って言うか、実際自分もなってなのだけど
 異性化した子には大体3種類のパターンがあるんだ。」
「パターン?」
「そ、パターン。」
「ゲームじゃあるまいし…」
「まーまー、黙って聞いてくれ。」
「へーい。」
114 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/13(金) 03:17:58.97 ID:5EiYIiHjo
「まずは一番解りやすい中身も立ち振る舞いも女子になれたヤツ。」
「……ごく当然に聞こえる。」
「だろうな。次に、これは俺も含まれるんだけどさ。
 中身だけ女子で言動その他は男子だった頃のものを続けてるヤツ。」
「………………アンタ"も"?」
「も。………今の僕には理解出来ないって顔してんな。手離すぞ。」
「わ、わったったったッ?!悪かった!謝るから階段降りてる時に手を離さないでくれ!!」
「ま、こんな言動だしな。女扱いしろとは言わない。だけど大抵、演技してるだけなんだけどな。」
「演技なのか?そんな必要が何処にあるんだ?」
「必要はなくて単に照れくさい場合もあるし、本心を隠したい場合も必要だろう。」
「アンタはどっちなんだ?」
「さて、どっちでしょう?」

ちょっとだけ可愛らしく、小首をかしげてみる。
彼は悩むかと思ったんだけど、意外とまっすぐな目をして

「前者って言いたいけど、こんな変な話始めるんだ、後者なんだろ?」

こう、返した。

「ご明察。解ってるなら尋ねないように。……あまり知られなくは無いものだし。」
「別に答えたくなかったのなら答えなくても良かっただろ。」
「ま、そうなんだけど……あの子の彼氏なんだし、予備知識として知ってて貰ってもいいかなってね。」
「予備知識になんのかね。んで、3つ目は?」
「急かさない、急かさない。女の子を急かす男子は嫌われるゾ♪」
「……そ、その台詞を聞くと首がむずがゆくなる。」
「………言うと思ったけど、言わないで。私あのキャラのファンなんだから。」
「話戻さないか?脱線してる。」
「貴方が脱線させたんじゃない。じゃ、本題の3つ目。
 これは貴方の彼女が該当しているのだけれど……」
「彼女が?…なぁ、アンタ、話し方変わってないか?」

流石に二人称まで変わると気付くのだろう。彼から指摘が入る。
これ以上脱線すると、私の方がおしゃべりに夢中になって進まない気がしたので、強引に戻す事にする。

「折角演技だ〜!って見抜いてくれたから少しだけサービスしてるのに。
 話戻すけどいいよね?」 
「あ、ああ…それがアンタの素なんだな。意外過ぎる……いや、悪い、続けてくれ。」
「……釈然としないけど続けるとね、言動、行動その他は女の子に見えるのだけれど
 中身は元々の男の子のまま、ってパターンがあるの。」
「彼女がソレなのか?とても見えないな…」
「男子と女子を見る目が全く違うから、今後気をつけて見るといいと思う。
 私なんか良くいやらしい目で見られてるから解りやすいし。
 本人は気付かれていないと思っているのでしょうけど。」
「信じ難いな…」
「だってあの子の視線、私の胸に集中してるんですもの。体育の着替えの時は特に。
 あの子も私と同じくらい胸大きいのにね。」
115 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/13(金) 03:19:29.52 ID:5EiYIiHjo
ごくり、と生唾を飲み込む音が聞こえた。
指摘されるまで意識していなかったであろう彼の視線は、今は私の体のある一部分に注がれている。

「そうそう、今の貴方みたいな感じ。ま、そこまで露骨じゃないけど。」
「……い"!?ご、ごめんッ!」
「煽ったのは私なのだから、謝らなくていいよ。」

この程度の事で怒るほど自意識過剰でもないので、優しく諭したつもりだったけれど
彼は思いっきり恐縮してしまっていた。
気にしなくて良い、と宣言するのも返って逆効果になりそうだったので、スルーして話を続ける。

「それでね、心配事って言うのは……
 今説明した通り考え方が男の子のままなのに、貴方に告白したっていう事。」
「え?あ……確かに。」
「でも、おかしくはないのよね。あの子は頭の中も切り替えるきっかけに付き合い始めたかもしれないし。」
「んで、俺にそれを話した理由は?」
「勿論、あの子を支えて欲しいから。出来れば末永く、ね。責任を持って女の子にして欲しいの。」
「責任……で、女に…………ごくっ」

また唾を嚥下しているようで、今度はそれに加えて少し前屈みに。
想像たくましい男の子である。

「ぷっ…私はそういう意味で言ったわけじゃないけれど、いっそエッチしちゃうのも効果的かもね。
 でも無理矢理するのは厳禁。」
「んなッ?!ア…アンタ学食で言ってた事とあんまり変わってねーよッ?!」
「当たり前でしょ?言動は変わっていても、本質は変わっていないのだから。」
「……それもそうだ。えっと、少し気になったんだが、言動も中身も男って事は無いのか?」
「無いね。」
「即答だな。断言出来るのか。」
「私が見る限りほぼ存在しない。ま、正確に言うと、発症したその日と翌日位はみんなソレ。
 でも最長でも3日も経てば消えてなくなっちゃうかな。早い人だとなったその日の内に消えるし。
 だからパターンとして含めるのは不毛だと思ったの。」
「不思議なもんだな。」
「不思議でもないよ。精神が体を受け入れられなくても、取り繕おうと思う方が自然。
むしろ取り繕わなければ周囲に性的嗜好がすぐにバレてしまうもの。」
「バレて問題あるのか?」
「貴方が仮にホモかゲイだとして、それを周囲にひけらかしたい?」
「絶対にしたくない。いや、俺は至ってノーマルだけどさ。」
「でしょう?大丈夫、ノーマルなのは解ってるから。
 告白はあの子からだったようだけど、今はベタ惚れだものね。」
「なッ?!い、いや…そ、そんな事は無いぞッ?!」
「あら、じゃあ好きでもない女の子と付き合ってるって事?案外打算的ね。」
「そ、それも違う!んなわけあるかッ!あんなに可愛い子、好きにならないわけがないだろッ!」

思いっきり地雷を踏んだ彼は、立ち止まって放心していた。

「くぁッ!?」

間があって、正気に戻って顔を真っ赤にしている彼は、純情と言うか、純粋と言うか、からかい甲斐のある男の子だ。
彼女が告白したのは偶然なのだろうけど、ピッタリの相手だったのではないだろうか。
116 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/13(金) 03:20:43.15 ID:5EiYIiHjo
「熟したりんごみたいに真っ赤な赤面ありがとう。
 とにかく、そういうわけだから……彼女の事お願いね。」
「えっ?!あ………あ、ああ。で、出来る限りの事はしてみる。
 って…具体的になにすりゃいいんだろう?」
「男の子に戻るか、女の子に順応するか、葛藤してるのよ。
 恋人作ってるってことは、彼女自身は後者を望んでるみたいだし。
 さっきも言ったけど、貴方は恋人として支えてあげればいいの。」
「戻る?戻れるのか?」
「精神的な意味よ。肉体的な意味じゃなくてね。」

丁度話が終わる頃合で、F組の教室に辿り着いた。

「そろそろ教室ね。彼女のクラスメイトのお節介なお話はここでおしまい。
 あ、えっと、こーいう話をした事はオフレコでお願い。私の秘密も含めて色々と全部。」
「解った。友達思いなんだな、アンタ。」
「買い被りすぎだ。俺には出来ない事を頼んだってだけだから。」
「……猫被るの早すぎだろ。」
「あんま見せたい姿じゃねーし。今後ともヨロシクっつーとこで。」
「へいへい」
「返事は"はい"か"yes"で1回だ。」
「はーい。」
「伸ばすなよ。小学生かっ」
117 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/13(金) 03:22:50.02 ID:5EiYIiHjo
とりあえずここまで。
安価ネタなのにまだ終わっていません。申し訳ない
最初ここまで長くなるとは思ってなかったから
登場人物の名前は任意にしたのはまずかったかなぁ…
118 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/13(金) 12:13:07.79 ID:2kkoU5Pa0
乙GJ!
登場人物名が無いとキャラ同士の掛け合いで困るよね…
ソコを逆手にとって俺には思いつかない何かの手法を開発する方向で頑張れ!
119 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/13(金) 21:05:32.50 ID:w+ItpkPU0
さすがのGJ!
キャラが立ってて素晴らしい。
続き楽しみです。

それでは僕もセフレのやつ再開します↓
120 :96の続き [sage]:2011/05/13(金) 21:07:21.85 ID:w+ItpkPU0
「……今日な」
「………え?」
「今日、兄貴がな、夜遅くなるって、メールあって、な」
「…うん」
「……来るか?ウチ…」


「……うん」

篤史はオレの手を握ってくれた。
オレは少しだけ握り返した。

一瞬、静花の顔が脳裏を過ぎって、消えた。

校門を出て、見上げた空は橙と紫紺の混ざった色をしていた。

帰り道の途中で篤史がコンビニに寄る事を提案したので少し寄り道。

コンビニ店内、篤史は弁当と炭酸飲料を選び、オレはペットボトルの紅茶を持ちながら何となく店内を物色している。
篤史は18禁雑誌の棚を真剣な眼差しで見ている。…お前、制服姿じゃエロ本買えないだろJK。

ふと、生活用品のコーナーに目が留まる。

「…いるよな、コレ」

棚からコンドームを手に取る。
今まで気にした事も無かった物だ。
セックス、するんだから、やっぱり要るよな。
…げ、結構高ぇ…、収入源が小遣いだけの高校生にはちとキツい。
あ、でもまぁ篤史は……

「コレは俺が買う、ついでにソレも渡せ」

いつの間にか後ろに立ってた篤史がオレの手からコンドームと紅茶を取ってレジに行ってしまった。
さすがにエロ本は持って行ってないか。

「篤史…?」
「帰るぞ、ほれ」

篤史が手を差し出してくる。
その手を再び繋ぎ、篤史の家へ向かう。

途中、疑問に思った事を訊いてみた。

「なぁ…なんで、さ、コンドーム持ってねぇの?」

まさか、静花と『する』時は、その…ナマなのか?

「いや、俺、まだ童貞だし」
「はァ?」
「コンビニ寄ろうと思ったのも、そうゆうの用意してなかったからで…ついでにメシの調達もだけど」
「え?いや、ちょっ、静花とは…」
「…してねーよ」

こいつの誕生日は来月、童貞ならもう焦りもピークに達してる時期だ。
それなのになんで彼女に手も出してないんだ?
なんなんだ、その読みづらい表情は?

それ以上、篤史は話さない。
訊きたいのに、踏み込んではいけない様な気がして理由は訊けない。
121 :120の続き [sage]:2011/05/13(金) 21:08:41.46 ID:w+ItpkPU0

篤史の家の前、篤史が鞄から鍵を取り出す為に一旦コンビニ袋を預かる。
ドアを開けた篤史に促され中に入る。
いつもの、勝手知ったる篤史の家なのに、今日は特別緊張する。

オレは、今日ここで篤史とセックスをする。

「…おじゃまします」
「ウチでその挨拶言うのいつ振りだよ」

オレの緊張などまるで気にも留めない様な『いつも通り』の篤史の態度にムカつく。
こっちはこんなにテンパってるのに。

リビングの革張りのソファ、いつも座る右隅でいつもよりも縮こまってると、

「ホレ」
「え?あ、ありがと」

さっき買った紅茶を手渡された。
あ、奢られた、か。
…味なんかわからない。
喉が渇いた様な気がするのに上手く飲み込めず、ペットボトルを握ったまま俯いてしまう。

すると篤史がオレの横に腰掛けて、
オレの髪…ポニーテールを触り始めた。
休み時間とかに、よくされている、くりくりってする『いつも通り』の触り方。
…もっとしてほしい、と思ってた触り方。

ゾクッと背筋を何かが走る。
いつもと、同じ…なのに、いつもと、全然違う感覚。

身動きが、取れない。心臓の音、うるさい。
顔が、熱い。額が、熱い。
目頭が、熱い。耳が、熱い。
頬が、熱い。息が、熱い。

「…タク」

篤史の声、真剣な声。
頬に手が触れる、…キス…される、のか。
オレはきゅっと目を閉じた。


……………ん?まだ来ないのか?

違和感を感じて薄目で様子を窺うとケータイを構えてる篤史の姿。
ああ、写メな、よろしいならば戦争だ。

…おもいっきり蹴りを入れてやった。
当然だバカ!

「っ〜…イテぇ…ってゆうか黒パン穿いてんじゃねーよ!?男の子の夢とかナニやらを裏切りやがって!!」
「うるさいバカ!!見てんじゃねー!!死ネっ!!」
「見るよ!!そりゃ見るだろ!!お前だって元男なんだからわかるだろ?」
「……そんな『元男』と、セックスするのか?」

きっと、オレは、ずっとテンパってる。
八重にキスをされてから…いや、あれは単なるきっかけだ、その前からずっと…
こんな、『親友』を2人とも裏切るマネまでして、篤史に静花を裏切らせるコトまでさせて、何がしたいんだ。
122 :121の続き [sage]:2011/05/13(金) 21:09:52.29 ID:w+ItpkPU0

「…するよ、俺はタクと…したい」
「……!!っバカだよ、お前ッ!!…静…花とか、裏切っ…て、ゴメ、っん、でもオレっ…好き、とか…ッ!!」

もう、何が言いたいのかワカラナイ。
篤史を好きな気持ちと、静花を好きな気持ちと、篤史が受け入れてくれた嬉しさと、静花を裏切る罪悪感と、
これからする事への不安と、した後の不安。
自分が悪いのに、篤史に当たる様に喚いて…バカはオレだ。

「…タク」
「……ッん!!?」

抱き締められて、そのまま篤史の唇で唇を塞がれ…キスをしていた。
篤史と、『親友』と、キスをしている。
篤史の唇の感触は、『男』を感じさせるもので、
それを受けているオレは、やはりもう『女』なのだと実感する。

胸を締め付けていた、罪悪感や不安が、徐々に薄れていく。
最初は唇を重ねていただけが、篤史の舌が少しオレの唇の隙間に入ってきた。
オレは抵抗せずにそれを受け入れた。
2人の舌が絡み合う。八重とした、あのキスと同じ、ディープキス。
でも、篤史のソレは八重に比べてぎこちなく感じたけど、それが何故か嬉しく思えた。
口内を擽る舌の感触、息継ぎの度感じる吐息、頬に添えられた掌、少し耳に触れる指先、
篤史を感じられるものが全て甘い快感になる。

あの時、感じた『熱』がぶり返すのがわかった。
でも、あの時に感じた様な恐怖心はなくて。

篤史の体重が掛かる、オレはそれに逆らわずにそのまま倒される。
ソファに沈み込む体、より深くなるキス。
リビングにちゅぷちゅぷと水気を帯びた音が響く。

唇を離し、篤史はオレのネクタイをほどき、そのままシャツのボタンを一つずつ外されていく。
シャツをへそが見える辺りまで開かれ、そこから覗くブラを捲り上げられた。
現れたふたつの微かな膨らみ、その左側の先端に、篤史の唇が触れる。

「んぅ…」

乳首を唇で吸われ、舌で舐められ、軽く齧られる。
その度に重なっていく刺激は引くことなく体の奥に残る様で、それは段々と思考に靄をかけていった。
篤史の左手が残った右の乳房を弄って更に刺激が重なる。

「ゃ…あんッ!!」

一瞬、自分の口から発したのか疑うような声。
恥ずかしくなって思わず両手で口を覆う。
その様をみて、篤史の顔が『ニヤリ』となった。
オイ、ヤメロ!オマエ!オイ!

「んぅ!…ん、ん、ふぅッ…んんっ!」

勃って敏感になった乳首を舌で、指先で、執拗に弄られる、乳房が揉むほどの大きさがないのでそうなるのだろうが。
声が我慢出来ず、手で塞いでいても端から漏れる。

「そんなッ…先っぽばっかし…んぅ…っやぁ…」
123 :122の続き [sage]:2011/05/13(金) 21:12:14.20 ID:w+ItpkPU0

思わず、哀願するが聞いちゃもらえない。
一際強く乳首を吸い上げられもう片方は摘み上げられ、あまりの事に声も上げれず仰け反る。

「ふぅ…んッ…はぁ…はぁ…はぁ」

ようやく開放されたと思って、ぼんやりとしているとスカートの中に入ってくる手の感触。
あっ、と思ったときには黒パンがズリ下ろされその下のパンツも割れ目が少し覗くトコまでずれていた。

「ちょっ…おま…!」
「縞パン…か、流石、分かってるな」
「…バカ」
「…勿体無いけど、脱がすぞ?」

さっきまで好き勝手したくせにココで許可を求めんな、バカ…
オレは黙って頷いた。

篤史はパンツを『左足のみ』抜かせた。
そう、こいつは『紳士』なのだ。やはりバカだ。

露にされた『そこ』を見た篤史が唾を飲み咽喉の鳴る音が聞こえた。

「タク…これパイパ…」
「違うッ!少しだけど生えてるっつーの!」
「いや、どっちにしろロリマ…」
「それ以上言うんじゃねぇぞバカ!!」

『そこ』に篤史の手が触れる。
くちっ…と水っぽい音、既に先程までの刺激で、その『濡れてる』事は分かっていたが、
それは、その…認めたくない若さゆえの過ちとか諸々云々。

「ッ…あっん!!」

スリットに沿って上下している指。焦らす様な刺激。
すると一際大きな刺激に思わず仰け反る。指が、入ってきたのがわかる。体の奥で『つぷッ』と音が響いた気がした。

「はぁ…ぅん!!ん、あ、あ、あ、んんッ…!」

堪え方が分からない感覚にぎゅっと目を閉じてしまう。状況が分からない。
ただ、体の中を多分、篤史の指が行き来している感覚がはっきりと伝わる。
男の時ならもうイってる…息苦しい程の快感。
なのに収まらないそれは絶え間なく溜まっていく。『熱』が逃げ場を求めて下腹部で渦巻いてる。

「あッん、ぅぅ…ッん、ああああああッん!!」

自分ではどうしようもない欲求、オレは篤史の腕にすがりつき…

「…あつ…しッ…もう…いい、か…らぁ…ッ」
「…タク、もう大丈夫か」
「わかん…ないけど…もう、なんか…」

篤史はゆっくりと指を引き抜き、ズボンと下着を脱いで覆いかぶさってきた。
自分のが無くなって以来、久しぶりに見るそれは…ちょっと引く。
つーか、デカくね?コレ。
篤史がさっき買ったコンドームに手を伸ばしている。
…あ、ちょっと待てよ?

「…篤史、それ…」
「ん?」
「お前、初めてなんだろ…?じゃあ…」
「あ、そっか…でも、いいのか…」
「…中に、出さないんだったら…」
124 :123の続き [sage]:2011/05/13(金) 21:16:09.43 ID:w+ItpkPU0

TS症候群を回避する方法、つまり発症するまでに童貞を捨てればいい訳だが、
コンドームを付けてセックスしたのでは意味が無い、と教科書には載っていた。
なんでも、TS症候群の原因になるウイルスに対する抗体が女性の膣内にどうとか…

「…タク、本当に大丈夫か?」
「………うん」

オレが頷くと、篤史のモノがそこにあてがわれた。くちっ、と音がする。
伝わってくる、それの温度。
ちょっと怖気づいて篤史の顔を見上げる。篤史はオレの髪を撫でながらキスをしてきた。
少し、怖い気持ちがやわらぐ。

そして、そこに力が掛かった感覚。

----------ズッ

「〜ッん……ぅああああああッ………!!」
「…っく、う!!」

痛い…痛い、とにかく痛いッ!!
まどろむ視界で、そこが壊れてないか見てみるが角度的によく分からない。
でも、コレって…まだ半分位しか入ってない…?

「…タク?」
「……ちょ…と、だけ…ま……て」
「あ、あぁ、わかった」

オレがこんなに痛いのに、コイツは平気そうな顔してやがる。
それが少しムカつくけど、それどころじゃない!痛い!

「いや、俺も結構キツい…」
「……ッ、思考を…読ぅ……ぃたッ…い…」

ツッコミなんか無理。
息も絶え絶えに何とか堪える。

「動かさずに待っとくから」

頬に手をあてられ、僅かに力みが抜ける気がした。

「うん…ありがと…」

数回、膣内を行き来して奥まで挿ってきた。
篤史を全部受け容れられた気がして、それが嬉しい。

「んッ…ッぅ…ん、ん…」

行き止まりで篤史はしばらく待っていてくれた。
少しずつだけど、篤史の大きさに慣れてきた感じがする。
まだあそこはじんじんと痛むけど

「だ…ぃぶ、平気…ぽい…」
「じゃ、少し動くぞ」

篤史が少しずつ腰を動かす。

「んぅっ…ん、ん、あッ!!…あんっ…!!」

最初は本当に少しずつだったけど、次第にそれは、所謂ピストン運動になっていた。
ソファがキシキシと音を立て軋む。
125 :124の続き [sage]:2011/05/13(金) 21:20:50.32 ID:w+ItpkPU0

「あん!!っあ、あ、あ、あ、あッ!!」

まだ少し痛いけど、それ以上に感じるのは今まで生きてきて感じた事の無い種類の快感。
男の時の射精とかに感じた性的感覚よりも、もっと鋭く、もっと甘い快感。
背筋をゾクゾクと走るソレに身悶えそうになる。
篤史がオレの中を行き来する度にそれは高まっていく。
どこに力を入れて良いのか分からなくて篤史の服にしがみつく。

「タク、可愛い…その顔」
「ぅあ!?…ぅ、見るなッ…あッ、あん、ぅん!!」

それは、それまで溜まっていたものが器から溢れ出す様な感覚。
突然のそれに驚く間もなく意識が飲まれそうになる…怖い…コワイっ!

「あっ、あっ!!っな…にこれっ、篤…史ッ!!」
「っ…タク、急に絞め…っ」

体が痙攣して、縮こまる。意識が白く飛ぶ。



何も考えられない---------------------------------。



気が付くと、ティッシュでごそごそとオレの胸の辺とかシャツとかを拭いてる篤史の姿。
……膣内には出されてない、みたいだな。

「あ、起きたか」
「……うん」
「ごめんな、何かけっこう飛び散っちまって」
「いいよ、替えあるし」

幸い、ブレザーにはかかってないらしい。
……スカートはアウトか。少し、血が付いてるっぽい。

篤史はマグカップに紙パックのココアを注いで持ってきた。
…いや、オレはコーヒー飲めるよ?お前と違って。

ぽてっ、と横に座った篤史の肩に顔を埋める。
まだ、じんわりとさっきの感覚が引ききらない。


………最後の、イった瞬間のまま、何も考えられないままならよかったのに。



この身に残った幸福感、それと同じ位の罪悪感。
オレは、篤史の肩で少し泣いた。そんな資格なんて無いのに。

外は、もう夜。空はすっかり暗くなっていた。
126 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/13(金) 21:26:46.30 ID:w+ItpkPU0
もっと、こう、なんというか
[らめぇぇっ!]なんこつ先生みたいなエロシーンが表現したい。
氏家Y太先生もいい。
127 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/13(金) 23:06:27.32 ID:gAirqJp20
GJすぎる
128 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/13(金) 23:34:52.63 ID:Z8fZDWSAO
>>126

氏賀Y太先生でした。

雑談で誤字とか、何してんだ。
129 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/13(金) 23:44:09.65 ID:Z8fZDWSAO
>>127

dです。
何よりの励みになります。

次回もエロいよ…とか言いたいけど
なにせ、ヘタレなので…

もっとガンガル。
130 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/14(土) 16:23:06.65 ID:kgej8WMp0
頑張れ! 超頑張れ!
131 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/16(月) 02:15:36.38 ID:k+BL2NxMo
>>57のお題 初回:>>84-89  前回:>>113-116

学園祭の開催が明日に迫った夏の朝、真っ直ぐ通学路へ向かうのではなく
自分の家から徒歩10分の一軒家の前で立ち止まる。今日は30℃を越える真夏日になるそうだ。
そのせいか、朝だと言うのに蒸し暑さで息苦しい。インターホンを押す前に深呼吸をして体をほぐす。

───ピンポーン

インターホンを押すと同時に自分の中のスイッチを切り替える。
さて、今からは恋人と一緒に登校する恋に恋する少女なのだと己の心に言い聞かせた。
数秒、間があって返事代わりに玄関のドアが開き、冴えない顔の少年が眠そうな顔をして出てきた。

「おはよ〜、今日も暑いね」
「あー……おはよう、眠い…」
「夜更かししたの?いくら明日から学園祭で授業がないからって今日はまだちゃんと授業あるんだよ?」

通学路を歩く途中に注意を促しながら、彼の腕に絡みつく。
真夏日に引っ付くのは正直辛いが、付き合い始めたばかりでこれをやらないのは怪しまれそうなので仕方が無い。

「な、なぁ…そ、そのあれだ。」
「んー?」

頬がほんのり赤く染まって恥じらいつつ、何か言いたげな表情を僕へ向けた。
通学路には同じ学校の制服を着ている生徒も多数、僕らと同じように登校しているからか
嫉妬や羨望などが入り混じった突き刺さるような視線を多数感じる。
女子の身である僕がここまで感じるのだから、男子である彼へ注がれる視線の痛々しさは想像に難くない。

「ぃ……ぃやッ、今日は暑いからなッ。なんだ、えーっと。
 ほら、そっちもさ、くっつき過ぎると暑いだろ?」

冷静に小首を傾げつつ、頭の上に疑問符を浮かべたようなフリをする。
暑くないよと告げると、彼は察してくれよと言わんばかりに小さく呻く。
ここ2週間、彼とこうやって毎日登校しているのだが、似たようなやり取りを毎日しているのだ。
いい加減慣れて欲しい。……あ、でも簡単に慣れて貰っても面白くはないかもしれない。

「いや、暑いのもなんだけど、む…胸がだな、その、アレだ。あれですよ。
 ほ、ほら、周りの人にもさ、み、見られて……なっ!解るだろっ?!」

しどろもどろになりつつも、満更ではないのか決して振り解こうとはしない。
その煮え切らない態度だと、少々いたずらをしたくなるものだ。

更に力を込めて腕にしがみつき、胸を密着させる。
84のDカップと言うサイズ的に、その感触も中々の物ではないだろうか。
女性化する前に僕もこういう目にあってみたかった。心底彼が羨ましい。
それにしても演技とは言え、自分で自分の行動に嫉妬する状況と言うのもおかしな話だなと、ひとりごちた。
132 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/16(月) 02:21:18.41 ID:k+BL2NxMo
「ひあッ?!お、おまっ、ちょ、ま、待ってくれっ!」

彼が素っ頓狂な声を上げたせいで、周囲の視線が更に激しさを増した。
初めてならまだ解るのだけど、純情にも程がある。
10回以上同じシチュエーションを経験してその反応は男として駄目だろう。
彼のヘタレさのせいで、校内ではバカップルのレッテルも貼られているらしい。
非常に不名誉な事だ。そして不名誉ついでに計算外だった事をいくつか思い出した。

大体だ、女の子から『初体験』なんて言葉を聞けば
普通色々と……それはもう色々と、エロエロな回答を妄想するのが健全な男子たるものだと僕は思う。
それなのに、彼はとんでもない勘違いをしてくれたばかりか、こちらの話を全く聞いてくれなかったのだ。

『ボクの初体験…3つとも、貰ってくれる?』
『は、はははは、初体験?!』
『うん、初体験。』
『ど、どどど、どどどどど…どんな事なんだ?』
『まだ秘密。一度に全部教えちゃうのも恥ずかしいし、さ。』
『そそ、そそそ、そうだなッ』
『あ、そうだ。それとは関係ないのだけど…
 今日からさ、一緒に帰ってもいいかな?明日からは登校も一緒にしたいな。』

呆けた顔で舞い上がっていたらしいこの時の彼は
"一緒に帰りたい" と "登校も一緒にしたい" だけしか聞き取っていなかったのだろう。

『え?あ、ああ、あああああッ!そ、それが1つ目か、うん。って俺んち知ってる……わけないか。』
『へ?』
『ああ、いや、皆まで言うな。か、帰りに家の場所教えてくれよ。あ、明日から迎えに行くから。』
『え"?そ、それは構わないけど、ボクが迎えに行きたいから、キミの家も教えてほしいな。』
『わ、解った。じゃ、俺昼飯買いに、こここ、購買行くからまた後でなッ!』
『うん、でもね、それは"初体験"とは別のはな────』

回想終了。
訂正する間もなく脱兎の如く逃げられてしまい、今更違うとも言えない雰囲気になってしまったのが2週間前の話だ。
いくら何でも他に家が近い男子が居なさそうだったとしても、彼に告白したのは間違いだったのかもしれない。
とは言え今更相手を変更する意味は無いし、人間関係的な意味でも難しいだろう。

僕の予定では1つ目はデート、2つ目でキス。
そして3つ目で初エッチ辺りを想定していたのに、開幕から予想の斜め下を低空飛行するハメになってしまった。
軌道に乗るのは何時になるのだろう。先が思い遣られる。
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短いですが今日はここまでで。ボ○ガ博士、お許し下さい!
133 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/16(月) 11:28:54.81 ID:W5FWWRBL0
>>132
レセプションはもう始まっている
スレを代表する15,16女体化SSがぐっじょぶわけだ

…改変できないwwとりあえず乙GJ!
134 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/16(月) 17:18:21.00 ID:98a9U7EY0
>>132

GJ!
良い、実に良い仕事だ!

…ボ○ガ博士…上手いこと返せないorz
135 :125の続き [sage]:2011/05/16(月) 17:26:19.06 ID:98a9U7EY0
4月末。世間はGWに突入し、敷島家は例年通りに結構な人数で旅行するらしい。
オレと篤史も「一緒に行こーよー」と誘われたが、
篤史はレザークラフトの資金調達の為にバイトを始めたのでパス、オレは…当然、気まずいので断った。

静花がいない、連休…。

夕方、コンビニの帰り道の途中、前方にノロノロと自転車に乗って何やら熱唱してるバカを発見。バイト帰りか?

「…〜壊れた世界で彷徨って私は〜♪」
「引き寄せられるように辿り着いた〜♪」
「……どこから見てた…?」
「喜びも〜悲しみも〜♪の辺りから?」

そっからの話はあんまり覚えてない。他愛も無いコトを喋ってたと思う。
篤史が、「うち寄ってくか?」って訊いた。…正直、少し期待してたかも知れない。

暁芳さんは出掛けていて、家にはオレ達2人だけだった。
どちらが誘うでもなくオレ達はまた……セックスをしていた。

それから連休中何度も、した。




…目を覚ますと自分の部屋じゃなくて、一瞬びびってからここは篤史の部屋だと気付いた。
ベッドの下には、脱ぎ捨てられたオレの服。布団の中のオレは裸で…あ、ニーソは履いたままか。髪もほどいてる。

身体に残ってる倦怠感と…『あそこ』の違和感、それらがさっきまでこのベッドの上でしてた行為の証明の様で、
気恥ずかしかったり、少し嬉しかったり…後ろめたさがあったり。

この部屋の主で、その…した相手である篤史は、机に向かい何やらゴソゴソとしている。
…革を編んでんのか。デスクスタンドの明かりに照らされてるその横顔は真剣そのもので、なんと言うか…
その、なんだ…カッコいい、とか思ってみたり。こっ恥ずかしいコトを考えてるのを自覚して頭を抱えもぞもぞしてると、
136 :135の続き [sage]:2011/05/16(月) 17:32:20.72 ID:98a9U7EY0

「面白れー動きだな」

にやけ顔でこっちを見ている篤史。手にはいつも通りケータイ。…ムービーですか、そうですか。

「………あれ?蹴りが来ないな」
「……この格好でしたら、その…見えるじゃねぇか…」
「だが、それがいい?」
「いや、しねーよ!?」
「いいじゃん、さっき隅々まで見せたんだし」
「〜っば、バっ…バカっ…てめ…」
「お願いしたら『…お、お前にだけ、だからな?』とか言って、自分でくぱぁって…げぶゥ!?」
「それ以上言ったら本気でぶち撒けるからなッ!!!?」
「……いい右だ、世界を獲れるそんな右だ…が、結局丸見えだぞ?タク」
「っ!?滅びろ!!お前なんか絶滅しろッ!!」
「まぁ、これでも着れ」

と、椅子に掛けてたシャツを羽織らされた。つまり、裸Yシャツ完成。

「…随分と『紳士』なんだな…?」
「当然です」
「…ギン勃ちだぞ『紳士』…?」
「当然です」

裸ワイにオーバーニーソの美少女である。まぁ、胸の辺が大変残念ではあるが。
男の時のオレなら「もうガマン出来なーい」とキレていただろう。童貞だから想像だけど。
………今のこのバカみたいに。

「ちょ…篤史…っふぅ!…ん、んぅ…」

オレはベッドに再び押し倒されて、耳に、首筋に幾度となくキスをされている。
軽く、啄む様なそれに体から力が奪われ、抵抗を試みていた手足もいまやふにゃっと弛緩している。

「…っ、やっ、それっ…ダメだっ…て」

顎の付け根の辺を啜られ、甘噛みされる。ゾクゾクと脊髄を電流が走る様な感覚。
トクトクと心臓の鼓動が早くなる。下腹部にとろりとした熱を感じる。…濡れてきてるのが、わかる。

「…本当、コレに弱いよな、タクは」
「そ、んな…弱いっ、とかッ…あッ…あぅ!?」

ぐちっ…と音を立て割れ目に篤史の右手が這う。

「じゃあ、これは?俺よくわからんから説明してくれないか?」
「っ!!?バ…カやろ、見せんな!舐めるなっ!!」
「説明してくれないなら、いいよ?自分で調べる」
「えっ…ちょ…見るなッ……えっ!?…やめっ、あっん、あっ、っくぅ…ん」

舐められてる…。篤史に舐められてる。
真ん中ら辺を、まわりを、おしっこの穴を、先っちょを、穴の中を、全部舐められてる。
137 :136の続き [sage]:2011/05/16(月) 17:35:48.66 ID:98a9U7EY0
柔らかい舌が、まるで突き刺さる様に、溶けて染み込み侵される様に、
複雑に混ざり合うそれらは全て快感で、呆っと頭の真ん中が痺れる。

「はぁ、はぁ…ふぅっ、っ、…くぅんッ」
「っ…ぷぁ…ウム、甘露」
「…嘘つけバカ、苦かったぞ」
「…お前、自分の舐めたの?」
「前にお前が舐めさせたじゃねーか!!指に付いてたヤツ」
「記憶にございません」
「白化っくれんなよ!?前から言おうと思ってたけど、お前『俺ってMだし』とか普
段言ってっけど思いっ切りドSだよな?オレの扱いとか!?」
「個別の案件にはお答えできません」
「やかましーわバカ」
「まあ…黙ってコレでも弄ってろ?女の子はその方がカワイイ」
「…やっぱりドS…」

目の前に出された篤史の…なんだ?エクスカリバー?
…ゴメン、ちょっとアーサー王に謝ってくる。

何回か、その、えっちはしてるけど、どうして良いのか判らず、ずっとツナ缶の如き有様だったから、
その…篤史の息子を扱うのは初めてだ。自分のを思い出しながら、怖ず怖ずと触る。

あー、何か、懐いわーコレー。お前は元気だねー?
ウチの息子は家出しちゃったけどさ?まあ、お前が元気なら、それでいいよ。
今は亡き我が子に思いを馳せる。オレはこの辺が好きだったんだよな、と感慨に浸りながらカリ首の辺を強めに扱いたり、
裏筋に沿う感じで摩り上げたりした。…涙が出そう。

ふと篤史顔を見上げると、えっらい男前な表情…『紳士』のつもりか?
口元をよく見るとプルプル震えてる。
あ、ひょっとして効いてる?コレ。面白くなって口を近付ける。
直前でちょっと躊躇するけど、オレの息がかかってピクっと反応するのが、
なんか自分でも信じれないけど『可愛い』と思えて、ちろりと舐めた。

…少し、しょっぱい?あと、何か…変な、肉っぽい味?
セルフフェラとかした事無かったから比べ様も無いけどこんなもんなんだろうか?
…ここの筋とか、イイのか?ちろちろと舐めてみる。

つぅ…と何かが腿を伝う。……うん、わかってる。オレ、今…興奮してるんだ。篤史のを、舐めて…
少し夢中で舐めてると頭上の気配に違和感。
138 :137の続き [sage]:2011/05/16(月) 17:39:25.75 ID:98a9U7EY0
「やってくれた喃、谷田拓海」

正気でも曖昧でもなく、人でも獣でもない。
『紳士』へ『変貌』した篤史が正体不明の『何か』に『変質』していた。

…魔神篤史ェ…。

ヤバい、犯られる…と思ったらもう遅かった。
股を開かされ篤史のをそこに擦りつけられる。

「やっ…ふッ…ぅッん…」

ゴムを着けたそれが再びそこに触れて、

「挿入るぞ」

そう聞こえた瞬間、ズリュリュと体の奥深くまで押し拡げられる様な圧迫感、息が出来ない程の…
それが快感だと直ぐに分からない位に激しい感覚は篤史がオレの行き止まりにコツっと達した瞬間に、爆ぜた。

「………〜ッ!!!?…ゥ…ッ!!」

ぎゅっと目を閉じ歯を食いしばる。背中が丸まり篤史の胸に顔を埋める様な格好になる。
しがみつく指先は篤史の背中に食い込んでたかも知れない。それでも堪えられない、深い快感。

…イってる……入れられただけで…

「……タク?」
「…はっ、はぁっ…ふっ…くぅ…」
「……へぇ?」

……気付かれた…。イってるって気付かれた。
イヤらしい顔してる、当社比何倍か分かんないけどイヤらしい顔してるよ?この篤史!?

頼むからッ!!頼むから今動かないで!?息継ぎしか出来ない、声が出ない。

「…あッ、あ、あ、っァ、ア、んあ、あっ!」

言葉が紡げない、なのに篤史の動きに合わせて声は漏れる。
ずちずちと肉の擦れる音が直接頭に響く。自分が、篤史が、今どんななのかわからない。
篤史の感触だけが脳に伝わってくる。快感の波がずっと引かずに大きくうねる。

駄目に、なる。こんなの駄目になる。
いや、いや、いや、いや、いや、いや!
ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ……また……来るぅ…っ!!

「っ……きゃっ…ゥっ!!!?」
「…っく!!」

中で篤史がびくんと跳ねた、一際大きな快感を感じてオレは……。




…ぼぉっとして、視界も焦点が定まらない。
篤史がごそごそ片付けをしてるのはわかるけど体に力が入らなくて動けない。
天井をぼんやり見てるような見えてないような、そんな感じでいると手に何か握らされた。

139 :138の続き [sage]:2011/05/16(月) 17:43:18.91 ID:98a9U7EY0
「……なに…これ?」
「ああ、さっき作ったやつ」

それは銀細工が付いた編み込んだ革とゴムで出来た輪っか。

「ヘアゴムなんだよ、これ」
「へぇ…やっぱ、すげーなお前…」

素直に感心する。本当、スゴいと思う。

「…やっぱり、プロ目指すの?」
「……」
「…篤史?」
「あっ…ああ、そうなれたら…良いな」

…なんだ?今の表情…前にも見たような…?

「……前に、な、3人で大阪行った時」
「…うん」
「観覧車乗っただろ」
「…うん」

そう、覚えてる。
あの時に篤史の口からは初めて聞いた、篤史のお父さんの話。
篤史のお兄さん-暁芳さんにはそれより前に話は聞いていたけど、
篤史からはお父さんの事はそれまで聞いた事はなかったから、



観覧車の中で窓の外を指差して、

「あっちの方、あの辺に…親父、住んでるらしい」

と、突然言った時にはオレも静花もびっくりした。只々、びっくりして何も言えなかったけど。
中学の卒業旅行に大阪に行こう、と提案したのも篤史だった。



「中学に上がった頃な」
「うん…」

机から何か取り出す。あれは…

「これが届いたんだ」

それは革のブレスレット。オレが篤史から貰った…今、左腕に着けてるのと同じデザインの。

「俺、別に親父を恨んだりしてないんだよな」

あの時、観覧車でも言ってた言葉。その時は、そこでその話は終わりだった。

140 :139の続き [sage]:2011/05/16(月) 17:45:49.65 ID:98a9U7EY0
「親父、革細工の職人してるんだって」
「…うん」
「最初は…なんとなく、真似て作りだしたんだ」
「…うん」

知っている、レザークラフトを始めた頃。篤史の部屋に明け方まで灯りがついていた。何日も。

「タクの、今着けてくれてるそれも、やっと納得したヤツなんだ」
「そっか…」
「でもな、まだまだで…な」

そう言いながら、篤史はどこか嬉しそうな、誇らしげな、そんな顔。

「…今は、親父のこと…職人としては憧れてる、かも」
「…うん」
「……でも……」

…また、あの表情。

「篤史?」
「…あ、いや…うん、なんでもねー、服着せてやろうか?ホレ、水玉パンツ」
「〜っ、自分で着るっ!!」

もう、いつもの篤史だ。…何なんだ、あの表情。聞きたい、けど、オレにその資格が有るのか?
結局、聞けないままオレは帰宅した。

テーブルには夕食の用意がしてある。
豚の生姜焼き、ポテトサラダ、ひじき煮、ワカメと麩の味噌汁、赤飯……赤飯…だと?

「………あの、オカン?」

多分、全部まるっとお見通しなんだろう。
オカン恐ろしいよオカン…

141 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/16(月) 21:29:42.72 ID:yyghwpXR0
GJ!
続きが楽しみだ
142 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/05/16(月) 22:48:31.04 ID:IYT/lLQoo
まとめ終わったー
間違えてる所あるかもしれないので、確認方願いますです

何か久しぶりに書きたくなってきた
リハビリがてら安価下
143 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/17(火) 00:14:08.71 ID:gtDhUz9x0
ノーブラ巨乳
144 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/05/17(火) 00:30:52.36 ID:GURaouWBo
ノーブラ巨乳把握
145 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/17(火) 01:39:43.38 ID:4VYHnWlAO
>>142 まとめ乙!

ただ、>>14 のお題、
>>21-22 のSSが抜けてないですか?
146 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/05/17(火) 09:19:48.16 ID:GURaouWBo
>>145
『作品一覧(50音順)」』
 ↓
『作品一覧(安価作品)』
 ↓
『か行(安価)』
 ↓
『こ』

にあるはずですよ〜
147 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/17(火) 11:08:59.89 ID:4VYHnWlAO
>>146

うあ・・・・・。
ホントだ見落としてた!大変失礼しました。
148 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/17(火) 18:42:25.46 ID:cjn2KE4Ao
>>57のお題 初回:>>84-89 前回:>>131-132

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たっぷりと彼の反応と周囲の視線を堪能している内に、校門が見えてきた。

「おはよう、今日も見せ付けてくれるね。
 ………風紀委員が風紀を乱してしまっては本末転倒なのだがね。」
「おはよう、委員長。不純ではないから大丈夫なのですっ。」

校門に入ったところで僕の返答に心底めんどくさそうにため息を付くメガネっ娘と出くわした。

「お…おはようございます。」
「あ、ああ…僕に敬語は使わなくても構わないよ。同級生なんだし、堅苦しいのは嫌いなんだ。」

彼女は僕のクラスメイトの学級委員長だ。
僕の彼氏は申し訳なさそうに会釈をして、僕の方はと言うと腕に絡みついたまま胸を張る。

「全く……君達を見ていると異性化してしまった者の風紀は乱れる事が多い事実を突きつけられるよ。
 まさかここまでとは思わなかったけども。
 大体、僕らのクラスメイトの彼氏持ちが多い事多い事………。
 本人たちはバレていないと思っているのが滑稽だ。」
「そうなの?初耳。」
「知らないのかい……実にクラスの6割以上が彼氏持ちだ。非処女も既に4割を越える。
 尤も、君達ほどあけっぴろげなカップルは類をみないがね。」
「へぇ…。って、どうしてそこまで具体的な数字が出せちゃうのかな?」
「ククク…僕の情報網を甘くみないほうがいい。壁に耳あり、障子に目あり。」

くいっと、ずり落ちたメガネを彼女は中指で押し上げた。
瞬間、きらりと委員長のメガネが光る。
彼女にとってはこれが通常運転なのだが、含みがありすぎて不気味にしか見えない。
その様子を見て、隣に居る彼は乾いた笑いしか出てこないようだ。

「相変わらずだね、委員長。そのデバガメ気質どうにかならない?」
「失礼な。別に覗いているわけではないよ。勝手に情報が集まってくるだけさ。」
「嘘ばっかり……女の子になってから井戸端会議好きに拍車がかかってるんでしょ?」
「それこそ偏見だ。女性となってしまった己が身を最大限利用していると言って欲しい。」
「……ハイハイ。遅刻しそうだからもう行くね?委員長も遅れちゃだめだよ。」
「君は何を言っているんだ。僕も行く教室は同じだろう。」

委員長はそう言って、一足先に教室へ向かおうとする僕らを制止する。

「だって委員長が一緒だとカレが怯えちゃってるんだもん…あとから来てよ。」

引きつった笑顔で否定する彼なのだが、さすがにその表情では不安の色を隠せない。
今日こそ進展させようと思っているのに、これ以上委員長に邪魔されては元も子もない。
149 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/17(火) 18:46:59.33 ID:cjn2KE4Ao
「朝っぱらから失敬だな。大丈夫、流石に親友の恋バナを肴にしたりはしないさ。」
「だといいけど。」
「ま、肴に出来るほど隠し事があるかどうかも怪しいもんだがね。
 君の告白はある意味伝説になっていることだし。」
「そんな大層な事じゃないんだけどなぁ…」

隠し事なら山ほどある。
だけどそれについては誰にも話していないし
これからも打ち明けるつもりもないので、彼女の耳に入る事も永遠に無いだろう。

「伝えたい想いを言葉にして、伝えたい相手に声を出して届けるだけでしょ?」
「言うは易し、行うは難し。君は昔から変な所で勇気を見せてくれるよ。」

我ながら、クサい台詞を吐いちゃったものだ。
余りにもクサすぎたせいか、隣の彼はトマトみたいに耳まで真っ赤にしている。
こんな姿を見ると、好きでもないのにちょっとだけ可愛いとか思ってしまう。
……いやいや、可愛いと思った方が僕の思惑も達成されつつある証拠なのだからこれでいいのだ。


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「明日の文化祭の自由時間さ、デートしない?」
「…………デート?」
「そ、デート。」

お昼休み。いつも通り食堂で彼氏と昼食を取っている最中に僕の方から話を切り出した。
からん、と彼は手に持っていたスプーンを取り落とした。……そんなにショックだったのだろうか。

「デデデ…デートですとおおおおおっ?!」
「うん。2つ目の初体験として、さ。………イヤかな?」
「めめめめめめめ、滅相もない!!」
「良かった。……学生服でってのがちょっと野暮だけど
 屋台の食べ歩き出来るし、映画の上映会とかもあるし、割と良い機会じゃないかなって。」

お金もそんなにかからないだろうしさ。と、付け加える。
実は、こんな風にデートに誘う前にキス位はしておいた方がいいだろうと思って、
先に何度かキスをねだってみてたのだけど、彼の方が恥ずかしがってはその都度逃げられてしまっていた。
それならば、と学園祭を機にデートに誘ってみようと思ったのだ。
今時の男子高校生にしては珍しい程の純粋さ。天然記念物に指定したい位だ。

「お前らすげーな…こんな人前でデートの相談かよ。」
「別に聞かれて不味い話じゃないしね。
 どーせ何処で話したって委員長の耳に入って、そっちも知る事になるんだろうし。」

傍らには僕のクラスメイトが2人同席して食事を取っている。どちらも中学からの友人。
片方は僕と同じように女体化してしまっているのだけど、もう片方は男の子のままだ。
150 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/17(火) 18:50:18.09 ID:cjn2KE4Ao
「あ、どうせならWデートにしちゃう?キミ達もさ、そろそろ恋人らしい事した方がいいんじゃない?」
「なっ…ば、バカ言うなッ!誰が恋人だッ誰がッ!
 だ、大体だ、SF研の喫茶店手伝わされる羽目になってんだから、そんな暇ねーよッ!」
「そうなんだ。残念。」

友人想いの僕はついでに彼女たちの仲も進展して貰おうとしたのだが、そうは問屋が下ろさないらしい。
それにしても、声を荒げて付き合いを否定する彼女とは対照的に、彼女の隣に座っている僕の男友達は涼しい顔でラーメンを啜っていた。
ハーレムクラス唯一の男子だし、他に付き合っている女の子がいたりして案外脈無しなのかもしれない。

「ん。喫茶店の手伝いって何するの?やっぱりウェイトレスとか?」
「ああ、しかもメイド喫茶らしいぞ。」

ふとした疑問を投げかけると、帰ってきた回答は彼女からではなく、隣の男の子からだった。

「おまッ?!バラすなッ!!」
「ふごッ!?げほっ………メ…メシ食ってる時にボディはないだろ、ボディは………」
「余計な事を言うお前が悪い!!!!」
「悪かったって、コレやるから機嫌なおせ、な?」

座っていると言うのに、腰の入ったボディブローを喰らった彼は、お腹を押さえつつ彼女にみつまめを差し出していた。
ラーメンとみつまめって、いくらデザートでも合わないだろうにって思っていたけど、そういう用途でしたか。

「……しょうがないな。あんま変な事言うなよ。」

しょうがないと言いつつも、あっさりと機嫌を直す彼女。
扱い慣れているからか、それとも彼だからだろうか。
どちらにせよ、脈無しだなんてとんでもない失言でございました。
ま、口に出してしまったわけではないのだけど。

「キミ達ってさ、つくづく長年連れ添った夫婦みたいに見えるよ。」
「そう見えるなら、お前さんの目は呪われてるぞ。」

僕の感想に反論しつつも、みつまめに舌鼓を打っている彼女の頭を優しく撫でている。
撫でられている方も、これまたふにゃふにゃに砕けた笑顔でそれを享受していた。

「かもしれないね。仲睦まじく見えて、軽く嫉妬をおぼえるよ。」
「そうかい。」
151 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/17(火) 18:54:03.90 ID:cjn2KE4Ao
今日はここまで。
>>118
多分ムリポ

>>133-134
何気なく書いたボ○ガ博士に真面目にレスつけようとしててワロタww

>>142
まとめありがとうございます。
自分の投下時の誤字を1箇所見つけたので修正しておきました。
152 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/17(火) 22:58:15.04 ID:4VYHnWlAO
>>撫でられている方も、これまたふにゃふにゃに砕けた笑顔でそれを享受していた。

それをロコモコをパクつきながらジーと遠くから見つめる漏れ。

アンタんとこの幼馴染が可愛過ぎて生きてくのがツラい。
あと、女体化おっぱい=にょっぱいの表現がけしからん。
いいぞ、もっとやれ。
153 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/18(水) 02:31:36.49 ID:Cl0A1nEj0
ロコモコとかまたハワイアンな料理を食ってんな
久々に食いたくなってきた
154 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/05/18(水) 22:16:51.94 ID:/0RmTXM00
久しぶりに来てみたら、ずいぶん伸びてるなぁ

SS書きたくなってきたし、安価をだしてもいいだろうか。
>>155
155 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/18(水) 22:36:57.55 ID:0Ic5ef+AO
「こんなの絶対おかしいよ。」
「…よろしい、続けたまえ。」
156 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/05/18(水) 22:46:51.44 ID:/0RmTXM00
>>155 すごく難しいが頑張って書いてくる
157 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/18(水) 23:05:04.62 ID:0Ic5ef+AO
>>156
期待してます。
蔘鷄湯ラーメン啜りながら待ってる。
158 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/19(木) 13:15:55.41 ID:YKzkgTTj0
15歳まで童貞だと魔法少女になるのか
159 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/20(金) 16:10:05.96 ID:tFTNjX3p0
そういう特殊能力が付く時もありえる
絶対ルールはただ一つ、元がどんなブサメンでも必ず美少女になる
本人が嫌だと泣き叫ぼうとこの運命からは逃れられない
世界の選択と言い換えてもいい
君も観念してさっさと美少女になりたまえ
160 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/20(金) 17:54:23.01 ID:nqM0hgkAO
「本当に女体化を回避出来る望みがあったの?」
「まさか、そんなの不可能に決まってるじゃないかWWW」

でってゆう会話が聞こえた気がす
淫獣マジおにちく
161 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/20(金) 20:03:45.48 ID:jF5ppLW4o
>>57のお題 初回:>>84-89 前回:>>148-150

「俺は新婚みたいに見えるなぁ…」

彼氏は僕とは違う感想をぽつりと呟いた。
普通なら彼氏の顔面に拳が飛んでくる頃合なのだけど、デザートに夢中で耳に入っていないようだ。

「それはきっと普段の教室での様子を見た事がないからだと思うよ?
 今は彼女がゴネてそれを治めてるだけだけど、地味〜に立場が反対になる事も多いし。」
「意外だな。」
「……はむっ、んぐっ…ふぅ。人がデザート食ってる最中に好き勝手言いやがって。
 ソッチのが新婚っぽいだろ。お前らのラブラブっぷりは見ててヒくっつーの!」

聞こえていなかったわけでは無いようだ。
彼女はみつまめを食べる手を止めて、反論しながらスプーンでボクの方を指差す。

「頭撫でられて、喉を鳴らしているキミに言う資格は無いんじゃない?」
「鳴らしてねーよっ!」
「な、なぁ…ヒートアップするのはソレ位にしないか?学食で火花散らすのも、ほら、な?」

彼氏が周囲を見渡すと、先ほどまでボクら以外は静まり返っていたのに、ガタガタと物音を立てたり咳払いをして目や体をそらす生徒が大勢いた。
世の中には委員長クラスではないにしても、出歯亀気質の人は多いらしい。
乾いた笑いしかでない彼氏に、至って普通の顔をしてラーメンを食べている男友達。
周囲の視線にやっと気付いたのか、みつまめを食べる手が止まったまま、俯いて赤面してしまった彼女。
そして、肩を竦めてため息をついているボク。
四者四様の反応だけど、これ以上言い争いを続けてしまうのは得策ではないと感じたのか、全員黙りこくってしまった。

「あ"ッ?!俺のハンバーグがあああああっ」

遠巻きにこちらの様子を見ていたであろう生徒の1人が不意に叫んだ。
ボクらが沈黙してしまっていたので、咀嚼音しか聞こえていなかった為か、ボクらも含めてその生徒に視線が集中する。
どうやら振り向いた際にどんぶりからおかずを床に落としてしまったようだ。
その生徒が食べていたものは月変わりの新メニューだったか、ハワイの郷土料理と言うには簡素などんぶりものだ。
自然と笑みがこぼれてしまう。ありがとう、名も知らない先輩。おかげで少し和みました。

「悪かったよ。ごめん。
 でもさ、ボクらもキミ達みたいな関係になれたらいいなぁって思って、ほんとに羨ましかったんだよ。」

ソレをきっかけにボクの方から謝罪をした。彼女の方は相変わらず俯いたままだ。

「……べ、別に怒ってないからいいけどさ。ったく、変な所で素直だからやりにくいったらありゃしない。」

表情は見えないが、耳が真っ赤なので機嫌が悪いわけではなさそうなのが救いだ。

「でもこの2人みたいな、か……。ははっ…いや、ボディブローは流石にご勘弁願いたい。」

何を勘違いをしたのか、彼氏は腹を押さえて苦い顔をする。
行動まで同じになるのは想像が飛躍しすぎだと思う。
162 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/20(金) 20:04:22.21 ID:jF5ppLW4o
「雰囲気的な意味だよ?ボクが乱暴な事するわけないじゃない。」
「あ、ああ……そういう意味か。……んぐ…んくッ!?ぶはっ」

ワンテンポ遅れて意味を正確に理解したらしたで、口をつけたお茶が器官に入ったらしく、咳き込んでしまった。
思わずクスリと来てしまう。からかい甲斐のある男の子だ。
案外、男女の立場を入れ替えれば似たようなカップルなのかもしれない。

「ぷはぁ…やめとけ、オレ達を参考にしても不毛だぞ。」
「ふ…不毛なんですか。」
「不毛だ。」
「「………どこが不毛なのかちっとも解らないな(よ)」」

スープを飲み干した彼の言葉に、ボクと彼氏が図らずも二重音声になりながら突っ込んだ所で、昼食会はお開きとなった。


文化祭前日の今日の授業は4時限目までで、お昼以降は全て準備に割り当てられている。
とは言え、ボクらのクラスの用意については昨日まででほぼ終わらせていた。
あとは展示場所にするF組の机と椅子を空き教室へ移動させ、展示物のセッティングだけだ。

「模型の搬入終了っと。別教室で作っといてよかったよ。
 大きすぎて教室においておけなかっただろうし。」
「だな。机と椅子の移動もたった今終わったから、あとは並べるだけか。」
「今日は早く終わりそうだね。」
「一時期は間に合わないと思ってたんだけどな。」
「…はぁ、お前らはここの準備だけで良いのがうらやましいわ」
「「…?」」

作業もひと段落したところで、ツインテールの友人がため息を漏らす。

「昼メシの時言っただろ、SF研の手伝い。この後衣装のサイズ合わせすっから来いとさ。」

と、委員長からの携帯メールをボクら2人に見せる。

「委員長ってSF研だったんだ?」
「ん?ああ、それもなんだが、アイツの兄貴がSF研の部長らしい。
 ぶっちゃけゲーヲタ研みてーなとこだし、女手が足りないんだとさ。」
「ふーん。でもよく引き受けたよね。ウェイトレスって言っても、多分メイド服なんでしょ?」
「……格ゲーの賭け勝負に負けたからしゃーないんだ。誰がすき好んで引き受けるかよ。」
「ちなみにキミが勝っていたらどうなってたの?」
「ゲーム機貰ってた。箱○な。」
「釣られちゃったんだ。」
「大体だ、あのクソ委員長、ゲーセン一緒に行ってもパズルゲーばっかプレイしたから、楽勝だと思ったんだ。
 そしたらさ、あいつの兄貴が闘劇の本選出た事があるらしくて家でその練習相手になってたんだと。
 ………パーフェクト且つストレートで完敗だったんだよ。どっちもバスケにテーレッテーで開幕10割持っていきやがってあのヤロウ。」
「闘劇??……バスケ?格闘ゲームだったんだよね?」
「……いや、知らねーならいいんだ。とにかくだ。」
「嵌められた?」
「Exactly(その通りでございます)」
「………どうしてそこで英語なの?」
「解らないならそのまま流してくれ……」
163 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/20(金) 20:06:14.20 ID:jF5ppLW4o
煮詰まってるので短いですが今日はここまでで…

>>160
どんな世界でもブレないQBさんマジ鬼畜
164 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/05/20(金) 23:03:23.14 ID:UGo1cnSAO
今書いてる単発はこっちに投下しようかな
165 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/21(土) 00:08:16.06 ID:HW2IjjeE0
>>164
投下待ってます
166 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/21(土) 01:39:23.78 ID:AY/EwmwAO
>>「な、なぁ…ヒートアップするのはソレ位にしないか?学食で火花散らすのも、ほら、な?」

流石にツインテールの娘に見とれていたのがバレた訳では無いだろうが出歯亀だと思われてるであろう気まずさから音速を超えんばかりの勢いで身を捩った結果、我が昼食の主役は胃袋に到達する事無く犠牲になったのだ。

「あ"ッ?!俺のハンバーグがあああああっ」

思わず叫ぶ。食べたい盛りの高校生が丼モンの主役を亡くしたのだ、お察し下さい。我に帰ると突き刺さる視線、視線、視線。先程まで見ていた対象にまで見られている始末だ。鬱だ死のう。

「あーあ、勿体な…まあ、コレやるから落ち着け」

後ろから声を掛けてきたのは我が友人。トマトは食べれないからいりません。て言うかお前も食べれないだけだろ。

「またあの娘見てたんだろ?まじストーカーだな」
「そこににょっぱいがあれば視姦するそ、れが正義だ。」
「へーへー」
「見ろ!あの推定Dカップの御胸様、素晴らしい!!」
「お前は鴻上会長か!?」

俺が思わず欲望を解放するとどこからか出したスリッパでシバかれた。そう言うお前は探偵事務所の所長か!?

「お前、会長ならケーキ作ってくれよ?ハッピーバースデーとか叫びながら」
「誰が宇梶さんだ!?で、なんでケーキ?」

俺の趣味はその会長と同じくケーキ作りだ。あんなにやたらと作りはしないし、メダル集めたりもしてないけど。

「ボク、明後日で『女の子』になって一年経つんだけど」
「あー、そうだったな」

つまりこいつの誕生日だ。こいつは童貞ながら奇跡的に男である事を保っている俺と違い、一年前に『なってしまった』側だ。

「去年はあのバタバタで作ってやれなかったからな」
「買い物とかは手伝ってくれたから助かったよ」
「まあ、今年は気合い入れたの作るよ」
「本当か?!お前のケーキ好きだから楽しみにしてるよ」

女体化して一年、最初こそ『可愛く』なってしまったこいつに戸惑いはしたけど、今でも大切な友人だ。……うむ、可愛いとは思うが、あのツインテールの娘や赤毛の娘みたいな『ぽよよん』が足りないから友人でいられるのかも知れないが。

「なあ、だれが無乳だ?思考が筒抜けだぞ」
「馬鹿なッ!?」

167 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/21(土) 01:46:57.99 ID:AY/EwmwAO
俺はただの以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国)だ。そんなSSの主人公みたいに思考が漏洩するなど有り得ない。まさか俺はサトラレ…?

「ネタが古いぞ馬鹿、それにお前は馬鹿だろ」
「馬鹿を重ねるなよ!」
「それにだな…」

右手に押し付けられたやーらかい感触。ザワつく周囲。先程より鋭さを増し突き刺さる視線、視線、視線。ナニコレ怖イ。

「これでも…足りない、か?」
「」

耳まで赤らんだ顔、上目遣いの潤んだ瞳、熱い息遣い、右手の中の程良い膨らみから伝わる鼓動。友よ、それはズルい。

「た、大変素晴らしい、です」
「そっ…か良かった」

なんだその表情、レベル高杉で訓練された童貞の漏れには理解出来ん。なんだこのにょっぱい、こんな小さいのに夢とか希望とか詰まってんのか?胸が熱くて手が離せん。ライフが0になりそうだ。そろそろ周囲の視線が驚愕から憎悪のそれに変わったのを察知して俺達は脱兎の如くその場を離れた。ハンバーグはそのまま床に放置してしまった。ごめんなさい。

後日、ケーキを持ってあいつの家に行ったら、あいつをプレゼントされた。

*******************
思わず松花堂弁当食いながらやってしまった。鯖の塩焼きうめー。
今は反省している。お許し下さい。

煮詰まってるとツラいですね。
無理しない程度にガンガってくだしあ。
続きに期待してます。
168 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/21(土) 01:53:44.17 ID:AY/EwmwAO
誤→「そこににょっぱいがあれば視姦するそ、れが正義だ。」

正→「そこににょっぱいがあれば視姦するそれが正義だ。」
謎の『、』が入ってた。鬱だ死のう。
169 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/21(土) 02:47:13.30 ID:AY/EwmwAO
予防接種云々の設定を華麗にスルーしてた事に今気付いたorz
なんという様だ…嗚呼…申し訳ございません。
170 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/05/21(土) 03:29:21.87 ID:I4/Smqslo
>>169
予防薬には使用出来ない条件も考えてましたので、それに当てはまった人、という事でおっけーです。
っていうかそもそもの主人公も受ける前になってしまった側ですし。
171 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/22(日) 08:14:56.91 ID:5nUUAXUAO
>>170
把握しました。有難うございます。
172 :140の続き [sage]:2011/05/22(日) 09:53:33.15 ID:OId1S3Jz0
連休に挟まれた登校日の朝。いつも通りに篤史んちの前にいる2人。
気まずい、すごく気まずい…心の中でだけ深呼吸。明鏡止水、明鏡止水だ……どんな意味だっけ?
とにかく落ち着け、アイツらは…そうジャガイモだ、ジャガイモ…サツマイモじゃ駄目なのか?
サツマイモって種類どんだけあったっけ?えーと、なると金時、喜界紫、サツマイヒカリ、種子島紫、紅乙女、パープルスイートロード…

「おはよー…タクちゃん?どしたのー?」
「………ぇ!?っな、な、な、くぎゅsうぇrftgh;じこp@!?」
「落ち着けバカ、釘宮病か?」

う、うるへーバカ。てめーは何でそんな落ち着いてやがる。その眼鏡塗り潰すぞバカ。大体、オレの神はみかぴい様だ。

「あ、お土産どうだった?」
「あー…日本一きびだんご?俺は味とか食感は好きだけど、ただ、なぁ…?」
「…北海道で、きびだんごって…オレ的には…ちょっと…そもそも何故に四角にしたのか…」
「あれできびだんごとは…許さない、絶対にだ」
「2人とも意外と地元LOVEだよねー」
「作ってるトコの名前はウケたけどな」
「あー、そうそう、ソレはちょっと狙ったー」
「完全にオレ向けの小ネタじゃねーか!大して面白くもねーし」

…オレ、ちゃんと話せてるか?フツーに喋れてるか?変じゃないか?ちゃんと『いつも通り』に出来てるか?
罪悪感で押し潰されそう。でも逃げちゃ駄目だ。全部、オレが悪いんだから。オレが篤史を誘ったんだから。

でも、『いつも通り』でいる事なんて、もう無理だった。
オレも、篤史も、覚えたてで…ハマってしまっていた。

「んッ…ぅん…」
「…下、触っていいか?」
「ごめ…オレ昨日晩から、生理…」
「あ、そうかスマン」
「あの…口で、しようか」
「…漲る台詞だけどムリすんな」
「ごめん…すぐ終わると思うから」

こんなのはもう終わらせた方がいいのに、それが出来ない。ホント、最低だと思う。
校内でわざわざ人気の無いトコを探して、こんな事をして…バカじゃないかと。

昼休みもあと少し、賑やかな教室でオレは悶々としながら机に突っ伏しつつ捻れていた。

「谷田、今日の帰り少し良いかな?」
「………おう、別に良いけど」
「そんなに身構えないでくれ、落ち込むじゃないか」
「んなコト言ったって…」

ついつい唇に目が行って、あの日の状況を鮮明に思い出してしまう。八重は至って普通の態度なのがムカつく。
コイツといい篤史といい何でそんなにシレっと出来るんだ?

「じゃあ、○ッピータウンの所の○ックにでも寄ろうか、奢るよ」
「いや、奢りとかはいいよ」
「こないだのお詫びだよ、こんなもので済むとは思ってないけどね」
「…ッ!?お前なー!…やっぱ行くの拒否っていいか?」
「ふふ、ゴメンゴメンつい、ね」
「〜ッ…まぁ、いいよ…おーぃ!篤史ー!」
「聞こえてた把握、静花には伝えとく…で、こないだのって何?」
「ッ!?なんでもねー!!」
「思いっきりなんでもなくなさそうじゃね?まぁ、イイけど」
「フフ、じゃあ浅倉ご主人様借りるよ」
「おう、いないと困るからちゃんと返せよ」
「…お前らなー…」
173 :172の続き [sage]:2011/05/22(日) 10:03:07.26 ID:OId1S3Jz0

田舎の○ックとはいえこの時間はフツー混んでるけど、今日は珍しく空いてる。
あ、ハッピー○ットは仮面○イダーかー、ディ○イド超欲しー。ブ○スリャーも良いな。
…って、八重のトレー、何だありゃ!?チョコパイ×10、アップルパイ×5、シェイク(チョコ味)×3…どんだけだよ。

「席、ここで良いかな?」
「何でこんな隅っこ?」
「まぁ、内緒のガールズトーク?みたいな?」
「お前、キャラじゃねーだろ」
「で、処女喪失の感想は?」
「くぎゅsうぇrftgh;じこp@!!!!!?」
「落ち着きなよ?釘宮ウイルス過敏性大脳皮質炎かい?S型は性質が悪いと聞くけど」
「バ、バカバカバーカ!」

……多分オレのはN型だ。お嬢様かわいいよお嬢様。

「で?どうなんだい?僕はバージンだからその辺が興味津々なんだよ」
「……………………してないし」
「うん、即答出来ない、声が小さい、視線を合わせない、言葉で否定しようとそれは肯定だね」
「……………………なんで…わかるんだよ」
「前にも言ったろ?僕は見てるんだよ君のこと」
「……オレ、もう女なんだけど…」
「そうだね、でも気持ちは変わらなかった…君が今も敷島を好きなのと同じだよ」
「……」
「相手は当然、浅倉だろ?」
「……うん」
「後悔してるのか?」
「…してないって言ったら嘘になる……オレは静花を裏切ってる…」
「うん、そうだね、間違いじゃない」
「…出来れば、こんな事はもうやめて、謝りたい…でも…」
「敷島は知ってると思うけどね」
「……は?」
「君達2人の関係の変化、僕は直ぐに気付いたよ…君ら3人ほど一緒にいるわけでもないのに、ね」
「…そんな…」
「話してる距離とか、相手への触れ方とか…気付く要素はいくらでも」
「……」
「髪、弄られるてる時の顔なんか特に……アレは気を付けた方が良いよ?」
「……」
「僕でも気付いたんだよ?敷島が気付かない筈がない」
「いや、でも…だったらなんで…」
「…さあね、それは敷島本人に聞けばいいんじゃないか?」

…でも、それは……つまり…

「どっちにしろ、このままじゃ駄目だと思ってるんだろ?」
「……うん」

…多分、元の3人には戻れないだろうけど、それはオレの所為だから、全部オレの所為だから……。

「で、処女喪失の感想は?僕はバージンだからその辺が興味津々なんだよ」
「流れが台無しじゃね?」


八重と分かれた帰り道、携帯を取り出す。【電話帳:敷島 静花】…数回のコール音。

『もしもしー?タクちゃん?』
「あ、静花……今から行っていいか?」


敷島家は相変わらずデカい。マジでデカい。今日も黒いスーツの人が門のトコに立ってる。
たしか、あの人は昔、公園の件の時に病院に付き添ってくれた…

「やあ、拓武…じゃなかった今は拓海ちゃんか、お嬢に用かい」
「はい樫本さん、お邪魔します」
174 :173の続き [sage]:2011/05/22(日) 10:05:42.55 ID:OId1S3Jz0
旅館を思わせる広い玄関、出迎えてくれるのは虎の剥製。下駄箱の上の辺には額に入った立派な書、コレ静花が書いたらしい。
静花は書道が得意で何度も大きな賞を獲ってる。コレなんかも書のコトはよく解らないけど迫力があって凄いと思う。

「タクちゃん、いらっしゃいー」
「…ぅッス…」

静花の顔を見ると、やっぱり怯む。…でも、ココに来たんだ。逃げちゃ駄目だ。
階段を上がり2階の静花の部屋へ。女の子っぽい…キレイで、可愛いくて、整理された…イイ匂いのする部屋。
フリル多めのカーテンとか、やたらふんわりしたベッドとか、小物やメイク道具が置いてある鏡台とか、
本棚の『君に○け』の隣に並んだケッ○ャムの書籍とか、壁の鳥○実のポスターとか、床に座ってる等身大の九○りんちゃんとか…おや?
この部屋には何度も来てるし、昔は泊まった事もある。…オレはドキドキして寝れなかったけど。

「今日はどうしたのー?八重ちゃんとどっか寄るって…」
「…………」
「タクちゃん?」

息が苦しい、身体が重い、視界が暗い、胸が痛い、話さなくちゃいけないのに口が上手く動かない。

「…静、花……ごめ…オレ」
「タクちゃん」
「篤史と…したん、だッ、その…ック…セックスを、したんだ……」
「……」
「ごめん…ごめん、なさい…」
「うん、私知ってたよー?」
「…ッ!…そっ…か」
「うん…知ってて何も言わなかったのー」
「な、んで…」
「…多分、私は篤史くんが誰とそういう事をしてても気にしなかったと思う」
「え…」
「篤史くんも私がそうしても、特に気にしないんじゃないかなー?」
「…いや、意味がわかんね」
「…相手がタクちゃんじゃなければ、だけどー」
「…?」
「好きなんだー、タクちゃんが」
「は?」
「私は…ずーっと昔からタクちゃんが大好き」

静花の顔はいつも通りのほんわかとした笑顔で……気が付いた。
静花はずっと『この顔』をしている。大体ぼやっとしてるけど、静花はいろんな表情をする、
喜んだり、怒ったり、困ったり、泣いたり、拗ねたり…でも、どれも『この顔』なんだ。全部、同じ感じの顔をしてるんだ。
……オレが字がキレイだねって褒めた時に見た様な、公園でボコられてる篤史を助けようとした時に見た様な、
ちゃんと、本当に感情が入ってるって感じの顔をオレは殆ど見てないんじゃないか?

「…静花、あの…オレ……」
「言わないで」
「静花?」
「駄目……タクちゃんの気持ちは知ってるよー…でも、それは言わないで」
「……静花?」
「…それ、聞いちゃったらー、私…絶対に……だからー、駄目だよー?」
「……静花」
「……ねぇ、タクちゃん…キスしていいー?」
「え……?……あの…」
「タクちゃん」
「………ぅん…いいよ」
175 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/22(日) 10:25:59.81 ID:OId1S3Jz0
前回の投下から随分と間が空いてしまい本当に申し訳ございません。
そして、短くて申し訳ございません。もっとガンガります。
>>142 改めてまとめ有難うございます。自分のまとめを見るとアレですね、もよもよしますね。その内イロイロ直したい。

徐々に職人さんが戻って来てるのがスゴく嬉しいです。皆さんの投下、本当に楽しみにしています。
176 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/22(日) 14:48:21.73 ID:F9A7DkKro
>>57のお題 初回>>84-89 前回>>161-162

終始梅雨前線を背負った友人を眺めつつも、展示の準備は滞りなく終了した。
別れ際に見た彼女の背中から滲み出ていたものは梅雨前線からドス黒いオーラに変わり、すれ違う生徒が避けて通る始末だ。
あれでは折角の容姿も台無しだろう。

「はは……大丈夫かな、あの子。」
「委員長と絡むと最終的にはいつもあんな感じだから大丈夫だと思うよ。」
「酷いな、それ。」
「んー。気になるなら明日の模擬店、見に行ってみる?」
「そうだな。どうせ学祭の間は食堂閉まってるし、昼メシの時にでも行ってみるか。」
「うん。」

下駄箱で靴を履き替え、いつも通りに彼の腕に絡みつく。
一瞬たじろぐ彼なのだが、拒否する様子は見られない。

「えっとだな……その、し、白詰さん?」
「うん?」
「む、胸がですね…こう、アレですよ。ほら、あれなんですよ。」
「それ、朝も似たような事言ってたよね〜。アレアレじゃわかりませ〜ん。」
「……あのなぁ、俺の反応が面白くてからかってるだろう、絶対……」
「良いでしょ〜?今は周りに誰もいないんだし、恥ずかしがる必要もないと思うよ?」
「まぁ……そうなんだけど。でも恋人同士ってさ、いつもこんな風にしてるもんなのか?」
「さぁ?ボクも初めてだから良く解らないけど、多分そうなんじゃない?」
「……解らないでやってたのか。無理してないか?」
「今はしてないよ。」
「"今は"……か。前は無理してたんだな。」
「あ……その……」

空気が変わった。
さっきまでは甘ったるくて蒸し暑さも気にならなくなっていたのに、たった一言で。

「ぃ”…いやいやいや、違う違う。ごめん、言い間違えた。今もしてない。うん、してない。
 絶対に。断じて。誓って。」
「そっか。」

愚にも付かない弁解を吐き出したにも関わらず、彼からの追及はそれ以上なく、下校中終始黙ったままだった。
177 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/22(日) 14:48:52.33 ID:F9A7DkKro
日付が変わって文化祭初日の朝。
すっかり日課となった彼との登校中、昨日の下校時とは打って変わって普通に雑談が出来ていた。
正直険悪になるのかもと心配していたのは取り越し苦労か。
とはいえ、お咎めが丸で無いのもそれはそれで不気味に思える。

頭の中ではまた尋ねられた時の言い訳を考えていたので、どんな雑談だったかは憶えていない。
多分、今日の学園祭どこから回ろうかとか、そんな事だったんだと思う。

「おはよう。今日もお盛んだね。」

校門前で委員長と出会う。壁に寄りかかっているので、偶然ではなく待ち伏せされたようだ。

「ん。委員長、おはよ〜。」
「お、おはようございます。」
「お昼さ、SF研の模擬店に様子見に行きたいけどいいよね?」
「ああ、構わない。但し客としてきて欲しいがね。」
「勿論。」
「しかしだ、君達のデートには不向きな店だとは思うけど……ああ、そうだ。
 2人の展示の見張り番は今日の終了間際に移動させておいたから、ゆっくりデートを楽しんでくれたまへ。」
「やっぱり知ってるんだね。」

どうやら当番の入れ替えを伝えるためだったらしい。そしてごく自然に漏れているボクらのデートの計画。

「当然。ああ、心配しなくてもあの2人から聞いたわけではないから。」
「いや、俺としてはその方が良かった……。」

全く持って同感だ。
178 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/22(日) 14:49:38.24 ID:F9A7DkKro
朝のHRもそこそこに、3日間の学園祭がスタートした。
8時半から10時までは一般開放されず、生徒のみの催しとなる。
委員長曰く『模擬店周りをするなら、この時間帯に限る』らしい。

「最初に行くのは体育館でやってるフリマだったよな?」
「…へ?え?あ……うん。た、多分。」
「……多分って白詰さん、学校来る時『デートコースは考えてあるから』って
 話してくれたじゃないか。しっかりしてく……いや、普通は男の俺が考えなきゃいけないよなぁ…」
「あ、あははは……ごめんね。ちょっとぼーっとしてた。」

今は展示物の最終チェックを終え、手を引かれるままに体育館へ向かっている最中だ。
昨日の帰り際をどうごまかそうか考えていたのだが、どうやらその様子は呆けているように見えたらしい。

「だ、大丈夫大丈夫。ボ、ボクだって元男だしさ、堅苦しく考えなくていいよ。」
「そうは言うけど、今の白詰さんは女の子なんだし。やっぱ俺がリードしないといけねーなぁとかさ。
 思うわけですよ。」
「ふぇっ…?…っぁ、うん、そ、それもそう、かも、ね。」

今日に限って何故か立場が逆転し、ボクの方が狼狽えている。
これからする言い訳がうまくいくかどうか怖くなって緊張してしまっていて、その心持ちのまま答えてしまったからだろうか。

「あ、あのさ、き……昨日の帰る時の事なんだけどさ。」
「昨日?ああ、やっぱりあの子の言った通り無理してるんだな。」

断定気味に返事が来る。昨日と同じ様に、ピンと張り詰めた雰囲気を漂わせた。

「そ、そうじゃなくてさ、そ、その…さ、最初は確かに暑苦しかったりしたんだけど
 恋人っぽい事しないといけないな、って思って。で、でもでもっ今は本当にあんまり気にならなくなってるの。」
「昨日も同じ事言ってたな。どうしてなんだ?」
「い、言わなきゃ駄目……?」
「駄目。ってのは冗だ──」「キ、キミの体温とか呼吸とか近くで感じたいって思うようになったからっ!」
「ん…な、なんですけど……。し、白詰さん?……〜〜〜〜〜っ!?」

ごまかす時は嘘の中に事実を混ぜる。
何かの本で読んだ会話術だ。どこから嘘で、どこから事実かを悟らせないのがコツ。
全て嘘と感じるか、全て事実と勘違いするかは博打になる。
……とは言え、事実を混ぜすぎて胸の奥が熱くなった。
それをごまかす為に慌てて彼の腕にしがみつく。

「お……おわかりいただけたでしょうか?」
「お、おっ、お、おお…おわかりいただけました。」
「ところでさ、"あの子の言った通り"って何の事?
 そもそも"あの子"って所が特に気になるのだけど…」
「へ?……ぁ、あはははは……な、何でもないから気にしないでくれ。うん。」
「うん、わかった。」
「え?」
「……問い詰めてほしいの?」
「い、いいえ、滅相もないッ」

追求しなかったのは、自分がそうされたくなかったからだ。
騙しているのだもの、騙されもするんだろうなって。
179 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/22(日) 14:51:55.08 ID:F9A7DkKro
そうこうしている内に、フリーマーケットが開催されている体育館に着いた。
体育館全てが使われているわけではなく、入り口から約半分位のスペースまでで露店が並んでいる。
ステージ前にはパイプ椅子が整然とならんでいて、何かしらのイベントが行われる事を予想させる。

「結構規模がでかいな。ちょっと侮ってた。」
「右に同じ。」

品揃えはと言うと、女性物のみならず紳士物の古着からアクセサリー類は勿論のこと
古本、日用品、キャンプ用品、果てはこの学校の生徒にしか需要がないであろう本校指定のジャージや体操着に教科書、各種辞典に鞄類まで。

「壮観だね。」
「だな。」
「あ、服から見ていいかな?」
「ああ、買い物とかあんましないし、任せるよ。」

ハンガーラックにかけられた女物のブラウスを手に取り、不意にある事に気付く。

「………そういえばボク、私服全然持ってなかった。」
「え?……いや、1着くらいあるだろ?」
「……男の時のならね。全部サイズが大きすぎて着られなくなっちゃってるし。
 なんで2ヶ月も気付かなかったんだろう…。」
「ああ……そっか。そうだな、あんまり高いのは買ってあげられないけど、何か買ってあげようか。」
「何か、って?」
「いや、服をさ。」
「え?いいよ、悪いし……買うなら自分で買うから。」
「そう言うなって、その…デ、デートなんだしさ。」
「あ、うん。そ、そっか、デートだったよねっ。うん、じゃあキミに選んで欲しいな。」

デートだと意識するだけでお互いに頬を赤く染めた。ボクらの様子に古着露店の店主が恨めしそう顔をしている。

「え"?!な…難易度高いなぁ……女物の服なんて選んだ事無いし…」
「ボクもないから解らないんだよね……化粧品類はある程度解るようになったんだけど、今の今まで私服に気が回ってなかったし。」
「化粧品?化粧……してるのか?今も。」
「うすーくね。ファンデとかは塗ってないんだけどさ、色付きのシャインリップ塗って
 マスカラも塗って。あ、マスカラはビューラーをさ、まつげの根元にあてて3回くらいに分けてカールし───」
「い…いや、待ってくれ。言われても理解出来ない世界だ……」
「だよねぇ。ボクもそうだったし。」
180 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/22(日) 14:52:51.10 ID:F9A7DkKro
彼は陳列された婦人服を眺めたり、ラックから外して手にとってみたりしながらあーでもない、こーでもない、と唸っていた。
一方のボクは、彼がどんな服を選ぶのが気が気でなく、どこかそわそわしていた。

「これなんかどうだ?」

しばらくして、差し出されたのはノースリーブの白いワンピース。
スカートの裾には小さなフリルがあしらわれていて、腰回りは白いリボンで結ばれている。
それ以外は飾り気のない爽やかそうなものだった。
ハンガーラックの近くに姿見が置いてあったので、制服の上からどんな感じなのか確認してみた。

「うん。いい感じ。……んー。でも試着とかできないのかなぁ、これ。」
「できますよ。そこに試着室も用意してありますから。」

と、不意に店主に話しかけられて少し驚く。店主に示された先には洋服店によくある小さい試着室が置かれていた。

「ボク、この学校の学園祭って初めてなんですけど、フリマって思えないですね、ここ。」
「あら、新入生の方だったのですね。初めてなら驚くでしょう。
 中古品を持ち寄ったマーケットではなく、新古品の扱いが中心ですからね。
 いやはや…この時間帯にくる生徒さんならてっきり事情を理解されているとばかり。
 失礼いたしました。」
「いえいえ、お気になさらずに。やっぱり…一般開放された後って混むんですか?ここ。」
「ええ、それはもう……人だかりではなくて人の波と形容した方が良い位に。」
「あはは……偶然だけど、めっけものだったかな。ちょっと試着してくるね。」
「ん。ああ、待ってる。」
「うん。」
181 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/22(日) 14:54:27.81 ID:F9A7DkKro
今日はここまでで。

>>179
脱字発見…
>恨めしそう顔 → 恨めしそうな顔
182 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/22(日) 15:00:59.76 ID:F9A7DkKro
>>118
すいませんっしたーッッ!_○/|_

>>170
予防薬の設定必要ならさらっと出しておいた方が良いでしょうか?
本編では説明する機会多分ないと思うので。
183 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/22(日) 15:09:15.52 ID:F9A7DkKro
レス番間違えてるぅ……
>>170宛てではなくて

>>171宛てです(ノд`)
184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/22(日) 19:25:51.31 ID:5nUUAXUAO
>>183
予防薬の設定もそうですが、こうなると
各キャラのフルネームとか諸々気になります。
特ににょたのスペックうp…ゲフンゲフン

SS乙GJ続き楽しみです。
……漏れも頑張らねば…orz
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/22(日) 22:50:47.88 ID:PteD78XJ0
どっちもGJすぎる
続きwktk
186 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/23(月) 09:16:54.74 ID:7cAN4rkX0
>>175
実は密かに八重ちゃんファン
助言親友ポジなのに恋する乙女ポジなんてマジ切なすぎ、でもソコがいい乙GJ

>>182
スレ住民の「あの子の名前が知りたいな」ていう願いが
エントロピーを凌駕した結果だから大丈夫だ、問題ない

…さん付けか
彼氏よ、ツボをわきまえているではないですかごちそうさまです乙GJ
187 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/05/23(月) 14:49:31.63 ID:ywNP+cKR0
 ボクと契約して魔法少女になってよ、とは、現在ネット上で有名になっているアニメのキャラクターの台詞だ。
 俺は最近アニメを見ないことが多くなったために、有名なセリフぐらいしか知らないのだが、当然少女と言うぐらいだから女の子を対象としているのだろう。
 何でも、その台詞主は相当すごいらしく、敵は『魔女』らしいのだが、魔法少女とは将来魔女になる少女のことらしい。
 と、まあここまで書くと、さすがに魔法少女にはなりたくねぇ、と思うわけだが。
 当然ながら俺は男だ。女ではない。なら、魔法少女になることなんぞ無く、そんな心配もまったくもって必要ない。
 さらに言うと、これはアニメだ。アニメの話なんぞ、所詮妄想、空想。

 ――だから、目の前にその台詞を発したキャラクターが座っていたとしても……、それは空想なのだろう。

 それで。目の前の白い、犬だか猫だかわからない生命体……自称『キュゥべえ』は、俺に頓珍漢な事を言ってきたのだが。
「だから、なんかいも言っているじゃないか。なにを訳のわからないような顔をしているんだい?」
「いや……だから……魔法少女って……言われても……俺は男なんだけど」
「それなら大丈夫。きみはもう少ししたら女の子になるんだから」
 『女の子になる』……?
 一体全体、このヘンテコ生物は何を言い出すのか。
「最近ボクと契約してくれた子がね、言ったんだ。思春期を終わりそうになってもまだ漢に成り切れないような半端な男は、いっそ乙女になってしまうべきだって」
「それが……一体全体どうして俺が女になるのとリンクするんだよ」
「ボクは君たちと契約する代わりに、君たちの願いを一つ、何でも叶えてあげられるんだよ」
「そ……それって……」
「そう。ボクと契約した子が願ったのさ。思春期の誕生日に、童貞のままで居る男子は美少女になるようにって」
 そ、そんな……、つまり、俺は、誕生日を迎えるまでに童貞を捨てないと、女の子になってしまって、それでいて魔法少女なんて得体のしれないものにさせられてしまうのか。
 そんなのは、絶対に嫌だ。
「俺は絶対に男のままでいるぞ……、魔法少女になんてならないっ」
 そう言って俺はその場を駆け抜けたのだが。
 ある事実を思い出した。
 考えてみると、ぞっとするような事実だった。
 そう。キュゥべぇの登場によって、混乱していたためすっかり忘れていたが……
 俺の誕生日は、今日、だ。
 つまり、女体化までのタイムリミットは既に切っていて。
 激しい頭痛と体の重さに耐えかねた俺はその場に伏し、
 激痛は弱まること無く、俺を締め付ける。
 腕が、脚が。悲鳴を上げ、ギチギチという音が聞こえてきそうなほどに、熱を持っているかのように。
 脳が、頭蓋が熱い。お寺の鐘のように、ごうん、ごうん、と唸る。
 目がチカチカして、辺りは絵の具のパレットで色を混ぜたかのような風景になり。ギラギラして、吐き気をもよおす。しかし、嗚咽と当時に出るのは激痛。
 苦痛が苦痛を呼び、痛みは痛みへと連鎖し。
 俺はそばにいるはずのその存在に助けを求めた。
「……助け……て、痛……い……」
「助けてあげようかい?」
 キュゥべぇのその言葉は、まるで神の手が差し伸べられたかのような、そんな感じにさせて、痛みから逃れられる。そう思った俺は、
「いい……の、か?」
「ああ。いいとも」

「きみが魔法少女になるのなら」

 俺は、どこで道を踏み間違えたのだろう。
 こんなの絶対、おかしいよ……。
188 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/05/23(月) 14:53:25.77 ID:ywNP+cKR0
安価>>155 を書いた
とは言っても、まどマギは全然見てないからほとんど知らなかったけど
こんな作品じゃねえから! とか言う文句があったらそっと心に閉まっておいてください

あと、これを考えてる途中に長編のストーリーが頭の中に出来上がってきたから、もしかしたら載せるかもしれません
189 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/23(月) 15:26:22.09 ID:f8Qc6mvAO
>>187
この世界は淫獣の仕業だったのか…。
おのれ淫獣GJだ!

…難しいお題にお応え頂き有難うございます。

>>188
◆440BCpUd8Bibさんの長編…だと…?
wktkが止まらないじゃないかッ!

期待しています!
190 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/23(月) 19:27:41.78 ID:7cAN4rkX0
せっかく良い安価もらったのに構想膨らみすぎて収拾付かなくなってきたorz
ちょっと息抜き


「なー、小遣い足りてる?」
「おこづかい?うー……女体化しちゃってから色々買うもの増えちゃって、全然足りないよぉ……」
「だよなぁ、オンナノコがこんなに金掛かるなんて知らなかったよ」
「だよねぇ……それにアルバイト探そうとしたら『こんな美少女が働くなんてとんでもない!』とか
 よくわかんない事を言われて反対されちゃうし」
「そっちもそうなのか?中身は男なんだから心配する事ないんだけどな」
「うん……」
「そんな訳で、コレやってみね?」
「……桃色にょたん娘☆トーコー写真集?」
「いわゆる『素人の女体化少女がチョットえっちぃ写真を投稿して賞金ゲット!』という雑誌なんだけどさ
 ウチって急遽有名デザイナーに仕立てて貰った制服だから、いわゆるダンシ達に人気あるらしいんだ」
「えーっと、つまり……?」
「うむ、ちょっと制服の襟元緩めた写真を送るだけで賞金ゲット!どうよ?」
「……そういうフシダラなのはちょっと」
「フシダラ違う!芸術作品! 頼むからさ、ちょっと中身を見てから決めようぜ?な?」
「うーん……ちょっとだけ、だよ?」

「すごいね……みんな綺麗で可愛い女の子ばっかり……(ペラ)」
「女体化したコはみんな美少女になる、なんて噂があるけど本当かもな……」
「あと、意外とえっちくないねぇ」
「もっとオッパイ見せてるとかだと思ったんだがな(ペラ)」
「一番上のボタンだけ外して、潤んだ瞳で上目遣いしてるだけなのに……」
「色気と言うか、惹きつけるというか……魅入っちゃうよな……」
「うん……」

「はぁ……(ペラ)」
「ふぅ……(ペラ)」
「……なぁ」
「……ぅん」

互いの熱い吐息がかかる距離。
潤む瞳の中には蕩けた表情の自分が写っている。たぶん、自分の瞳にも彼女が。
どちらからともなく指が絡まりあい、それだけで昂まっていく――そして。

佳作:賞金¥10,000

---
にょたはにょたのことをおもうときゅんきゅんしちゃえばいいとおもいます。
191 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/23(月) 19:30:27.40 ID:7cAN4rkX0
>>188
だいたい合ってるww乙GJ
しかし淫QBを書いてる間に浮かんだ長編だと…?
それは期待せざるを得ない!
192 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/23(月) 19:37:33.00 ID:D0GZLQwpo
>>57のお題 EX

>>184
とりあえず、ぱぱっとお薬の設定だけ。

予防薬の設定:
高校入学時に血液検査でアレルギー反応の有無を調べる。検査には2ヶ月程度必要。
陽性→ショック死の危険性が高いため、投薬には本人の承諾に加えて保護者の承諾が必要
陰性→保護者の承諾無しで投薬可
投薬を受けるか受けないか自体は陰性の場合でも本人に選択権利がある。
権利があると言いつつも、ほぼ全員が投薬を受ける風潮。
投薬については小学校で受ける予防接種のような感じに。費用は自己負担、但し保険が利く。

こんな感じで。もしも、まだ何かしら同じ世界の話を書く場合はお使い下さい。
ところで、クロス的なものはちらほら見たことがありますけど
安価ネタで別作者のスピンオフって初めて見た気がします。

個人的には凄く嬉しいです。でもまとめサイトに掲載される場合どうなるんだろう?

>>188
QBさんの声、脳内再生余裕でしたwwwwwwww
違和感が全くなくてびっくり。
193 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/23(月) 21:27:26.29 ID:i4m6jQ7B0
>>186
漏れ「八重のファン…だと…?」
八重「ありがとうございます。貴方、変態なんだ?」
漏れ「この子ったらぁッ!?」
八重「いや、僕ってにょたレズストーカーのド変態だろ?それのファンって事はつまり変態…」
漏れ「頼む、ちょっとは猫を被れ…orz…安価:『ボクの初体験…3つとも、貰ってくれる?』のシリーズの
   ツインテールの娘を見習ってくれ…」
八重「無理じゃないかな、君にあんな萌キャラ書けないだろ?それよりとっとと続きを書け太郎」
漏れ「ですよねー…」

マジでありがとうございます。そして申し訳ございません。
八重は投下前に一番最初に思いついて主人公にしようとしたんですがこの通りのキャラなので…
書いてる香具師としては幸せにしたい娘です。

八重「キモいぞ?」
漏れ「お願いだから黙って」

>>190
あの…とってもエロぃです…見習いたいGJ!
そして安価作品に期待。

>>192
予防薬の設定あざーッす!また何かある時は有難く使わせて頂きます!
まとめ…何も考えてなかった…OTZ
ロコモコがネタにされてて嬉しくてつい一人祭りになった挙句のGJ代わりだったので…
もしもしからざっくり投下したので改行を完全に忘れてますしね…ハァ…。
194 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/05/23(月) 22:04:25.85 ID:ywNP+cKR0
>>187の文章に滅茶苦茶不自然な部分が……orz
一体全体どこで痛みが発生したんだよ馬鹿だろ俺
まとめの方に載り次第、訂正させていただきます

今現在SSを書いていらっしゃる方々、GJです! 前スレからは考えられないような盛り上がりで作者把握に時間がかかってますw

そして長編の予告みたいなの↓
『友達が医者だった、というのは、俺がこれを記す上では結構重要なポイントとなってきている。
 もっとも、友達、と言っても同年代の友達ではない。俺は十六歳で、そいつは二十五歳。共に男。どうして友だちになったのか、と言われれば、俺は喘息持ちで、そいつは主治医だった、というのが最も大きい要因だと思う。
 さて、どうして重要なポイントなのか、というと。
 俺――平坂 佳奈多(ひらさか かなた)は、女体化症候群の、世界で最初の患者だった。』

こんなふうに過大に煽ってるけど期待はしないほうがよさげw
195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sageズレてなきゃいいが…]:2011/05/24(火) 12:16:41.75 ID:ET5S/6zd0
>>193
YES!アイアム変な人!
ですが八重ちゃんは1つ勘違いをしている
 ボクモウオンナノコナノニドウシヨウ             ゴチソウサマ
”にょたレズストーカー”なぞ、この業界では”正常運転”なのです!

ん?あれ?みんなヒかないで……

>>194
これは病弱少女inサナトリウム的な流れに見せかけつつ
壮大な物語に発展すると見た!
しないほうがよさげと言われても期待してしまいますヨ!
196 :174の続き [sage]:2011/05/25(水) 18:07:04.01 ID:9sOh1a9Z0
それは、甘い唇。綿菓子の様に軽く溶け消え、甘さだけが残る。
…八重としたキスや、篤史としたキスとも違う、胸の奥がきゅうと苦しくなる様な。
ずっと抱えていた気持ちが輪郭を帯び色を濃くなる。それは男だった時に感じていた…

長い間、それは胸の中にあった。いつも近くにいる、近所の幼なじみで、同級生で、親友の可愛い女の子。
なんでもない時でも目で追ってしまう、そばにいるだけでドキドキして苦しくて、でもそれが気持ち良いような。
敷島 静花が好き、ただそれだけで世界は光っていた。敷島 静花が好き、その気持ちがオレにはすごく大事な宝物だった。
『幼なじみで親友』それだけで充分だった。一緒にいられるだけで嬉しかった。そこから動きたくなかった、動くのが怖かった。
この気持ちを伝える事なんて出来る筈もなかった。だから、静花が篤史の『彼女』になった時も直ぐに受け容れられた。
伝えるなんて事はもう諦めていたから。でも気持ちだけは残っていて、嬉しさは小さく、苦しさは大きくなった。
それをどうにかしたくて、静花で…した事もあった。結局どうにもならず、自分の気持ちも静花のことも『汚した』罪悪感で最悪な気分だった。
その頃には『男』でいる事も諦めていたと思う。

「ん…ッ」
「……ずっとね…こうしたかったのー」
「しず、か…」
「タクちゃんはキス…それ以外もだけどー、初めてじゃないんだよねー?やっぱり悔しーな」
「……ごめん」
「ううん…私が、悪いんだよー…」
「そんな…そんな事、ない…」

目の前の、今のオレよりも背が高い女の子がどうしようもなく可愛く見える。
でその表情はさっきまでの、何かを押し殺した様な笑顔は僅かに綻んで…少し辛そうに見えた。
オレもこんな顔をしてたのか…なんとなくそう思った。
オレは篤史と静花はお似合いで、あの2人はいずれ付き合うんだろうと思い込んでたし、事実そうなった。
『私は…ずーっと昔からタクちゃんが大好き』…そんなの思いもしなかった。気付けなかった。
…オレが悪いんだ…オレが、好きな女の子にこんな顔をさせてる。
オレも今更だけど気持ちを伝えたい。でも、それは拒まれた。理由は分からないけど、それは訊いてはいけない気がした。
ふと、篤史の『あの表情』が脳裏を過ぎった…何かが繋がりそうな…

「…ねぇ?おっぱい触ってもいいー?」
「ぅえ?……い、いやソレは…」
「ダメー?」
「あ、あの…オレ、静花より…かなり小さいから…その、恥ずかしぃ…」
「…………タクちゃん、それは見れば分かるー…ってゆーかー、ソレ狙ってるよねー」

何が?と言おうとしたら、ごろんと床に寝かされた。…静花に押し倒されるとかオレ弱すぎじゃね?
視界の端で等身大の九○りんちゃんがペタンと座ってる。見られてる様でアレな感じだけど、この娘なら無問題か。問題あるけど。
とか考えてたら既にネクタイとシャツのボタンが外され、ブラも捲くられてた。…随分慣れてる感じだけど[禁則事項です]なんだろうな。

「タクちゃん…やっぱり、可愛いー」
「ちょっ…静花っ…ひゃんッ!」
「確かにー膨らみはウ〜ムだけどー、じゅーぶんフニフニだし乳首もほんのり桃色でキレーだよー」
「…言わなくてもいいですからッ…ぅン…揉むな…よ…ッ」
「敏感なんだねー、乳首もう勃ってるー」
「うるさい、うるさい、うるさ〜いっ」
「…タクちゃん、やっぱり釘宮病ー?しかもS型…いや、ひょっとしてI型ー?」
「いや、もうそのネタは…」
197 :196の続き [sage]:2011/05/25(水) 18:09:24.84 ID:9sOh1a9Z0
どうしよう、ドキドキが止まらない。静花に触れられてる。好きな女の子に触れられてる。
オレももう女の子なのに。こんな風になるなんてもうないと思ってたのに。お腹の奥がきゅうと熱くなる。
オレ、静花に『して欲しい』と思ってる…ってバカか?フツー逆だろ?いや、見た目は確かにオレの方が色々小さいけど…

「タクちゃん、何もじもじしてるのー?」
「ッ!?何でもない!」
「へへーっ、タクちゃんー?顔まっかかだよー?この状況で何でもない筈ないよねー?」
「っほんとになんでもないからーッ!」
「ぱんつヌギヌギしよっかー?」
「いッ!?ムリムリっ…!い、今っ、せ、せ、生理だからッ!ホントに!」
「へ?……でも、日にち…まぁ、そーゆーのもあるのかー、タクちゃんなったばっかしだしねー」
「う、うん、オレも思ったより早くて焦ったけど、オカンも似たようなコト言ってた」
「私も初潮の次の生理ズレたよー、遅れるパターンだったけどー」
「…正直、周期とかまだちゃんと分かんなくて困る…」
「どうしても変かなーとか思ったらお医者さん行った方が良いよー?恥ずかしかったら一緒についてくしー」

…その方が恥ずかしい様な気が…でも気遣ってくれて嬉しいかな。
……えーっと、胸を揉んでる手は止まってないから…コレ、やめる気はないんだな…orz

「じゃあー、下は触れないからー」
「そ、そうだから…」

「おっぱいだけでイかせたげるねー」

……………………………………………………………………………へ?

「し、静花さん…?…ひゃゥ!?」

つーッと脇腹と胸の『継ぎ目』の辺を柔らかい舌が沿う、もう片方の胸も外側から徐々に弧を描きながら滑らかな指が這う。
じわじわとした刺激、じりじりと先端に近付くそれ、否が応でもまだ触れてない『そこ』に意識が行ってしまう。

「ふぅ、ふぅ、ふ…んッ…」
「んふふー、ほんとにビンカンだねー…すっごい女の子の顔してるよー?」
「ィやだ…そんなの言うなよ…ッ」

胸から離れた舌が首筋を伝う、鎖骨を軽く齧られ、舐られ、そのまま胸の真ん中を通り、また元の胸を旋回する。
決して『そこ』に到達しない刺激。じれったい快感だけが募る。期待だけが高まっていく。

「くッ…ん…ふ…し、ずかぁ…」
「んぅ……タクちゃんがどうしてほしいかわかるよー?でもまーだだよー」
「そ…ッ…んゥ…」

滑らかな感触の指先が『そこ』のふちに触れる。それだけで胸の鼓動が更に速まる。
するとそこを指で押し広げられる…まるで『くぱぁ』されてるみたいで居た堪れない。

「やぁ…やめ…それ、恥ずい…」
「ふーん、じゃあーこの『先』もやめるー?」
「え…?い…や、その…」
「やめるー?」
「…いじめ、ないでくれ…ッ」
「…『先っちょペロペロして下さい』ー…」
「…ふぇ?」
「『先っちょペロペロして下さい』」
「え?な…ソレ…言う…」
「『先っちょペロペロして下さい』さん、はいー!」
「……………先…っ、ちょ、ペロペロ…ぅ……って、く…ださぃ……くッ…死ぬっっ…!」
「……よく出来ましたー」
198 :197の続き [sage]:2011/05/25(水) 18:11:25.99 ID:9sOh1a9Z0
『くぱぁ』されたままのそこはじんじんと熱をもってるようで近付く静花の唇から漏れる息にも感じてしまう。
股は漏れてるんじゃないだろうかと思うほど濡れているのが分かる。

「じゃあ…いくよー」

「………………〜ッッッ!!!!?」

ちろりと舌先が触れた瞬間、一瞬何が起きたか分からなかった。目の前が赤くチカチカとして何も考えられなかった。
まるで性感帯がそこだけに集中してるような、圧倒的な快感。

「ッあ、あっ、あっ、あぅん、あ、あ、あ、あッ!!」

柔らかい舌がペロペロと乳首を舐めてる、ただそれだけなのに、それ以外のことが何もわからない位感じてる。
乳首から伝わる舌先や唾液の温度や感触、ちゅっちゅっと乳首を啜る音、もう片方の乳首も指先でくりくりと弄られる。
お腹の奥に溜まった熱がこみ上げ溢れそうになる。

「うぁ…ッ…うそ、うそ、うそっ…こんな…」

足を突っ張って、身を捩っても逃れられない、一際大きな波。胸をぎゅうと締め付けるような切なさにも似た感覚。
堪えようが無い快感に身体がぶるぶると震える。

「ッ…ひあッ………!!」



…………ふわふわと意識が浮かんで身体に力が入らない、弄られた乳首がまだ熱をもってる。

「ごちそーさまでしたー」
「………………………………ひどい」
「ちょー可愛かったよー、タクちゃんまじ天使ー」
「ちくしょう」
「……タクちゃん」
「…ん」

静花に唇を塞がれる。じんわりと熱の引かない身体…触りたい…静花に触りたい。
『負けっぱなしじゃ、終わんねぇ』……どっかのカラスの声が聞こえた気がした。
199 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/25(水) 18:24:53.27 ID:9sOh1a9Z0
またも短くて申し訳ございません。
次回、拓海のターン。果たしてヘタレによたロリビッチに攻めは出来るのか?出来る、出来るのだ。
……出来るよね?

>>194
うあ…予告ゾクゾクしました!期待するなとか無理ですよwwww

>>195
ボクモウオンナノコナノニドウシヨウ             ゴチソウサマ
”にょたレズストーカー”なぞ、この業界では”正常運転”なのです!

…謎の衝撃を受けました。なにか大切なものに気付いた気がしました、ありがとうございます!

200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/25(水) 21:58:15.05 ID:JxDGULOHo
>>199
1箇所ずつしか出てきてないのですが、『くぱぁ』と[禁則事項です]ってこの板の特別な強制変換でしょうか?
中身が予想つかなくてもやもやしました(n゚ω゚;)
201 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/25(水) 22:54:04.72 ID:lY6oV6jAO
>>200
読み返しました…強制変換ではなくネタのトコでした。
自分でもわかりヅラい…マリアナ海溝より深く反省します。

『くぱぁ』=乳輪を人差し指と中指で左右に引っ張ると言うか…
マ○コをくぱぁと押し広げるみたいにしてる感じです。
血流が乳首に集中して感度が増すとばっちゃんが言ってました。

[禁則事項です]=特殊な訓練でも受けてるんだろうなー…って感じです。

自分の表現力の乏しさに絶望したorz
まとめに載るようでしたらなんとかします。
202 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/25(水) 22:58:40.02 ID:lY6oV6jAO
>>197のトコ、おっぱい責め宣言した後で
首筋とか責めてるし…
なんなんだこの有様…オレは…弱いッ!!
203 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/26(木) 09:14:34.12 ID:uj2SvjVt0
ttp://www12.atwiki.jp/banao/pages/19.html
に載ってるのでいいのかな?他にもあるかも?
そこによると
鮫 島は[禁則事項です]とかに強制変換されるようで
こういう強制変換があるからSS書きにくいって言ってた作者様が居た気がする
204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/05/26(木) 10:00:43.24 ID:B82AYaF+0
>>203 目欄sagaで問題ない
205 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2011/05/26(木) 10:02:34.54 ID:B82AYaF+0
>>20 いじめっ子がにょた化

いじめ……という訳ではない。
ただ単純にこう、頻繁にちょっかいを出してくるクラスメイトがいた。
記憶を遡ると似たような出来事が思い浮かんでくる。
それは、小学生くらいの頃に――。

「あぁ、『いじめっこ』か」

思い当たった単語を何とはなしに呟いてみる。
気になる子とのからみが欲しくて、ただ仲良くても冷やかされるから――。
なるほど、それらしい。 
もう一度噛み締めてみても、それ以外に該当する程の語彙が俺にはなかった。

「なんだ? アイツのことか?」

隣の友人の問いに頷くのを返事として、机に伏せた。
206 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2011/05/26(木) 10:02:59.39 ID:B82AYaF+0
ある放課後のことだ。
下駄箱を見てみると、下履きが無くなっていた。
……と思ったら下駄箱の上に載っていた。
視線を感じたので追いかけてこらしめてやった。

ある昼休みのことだ。
弁当を取り出そうと鞄を覗くと、弁当が無くなっていた。
……と思ったらいつも購買に行っているはずのヤツがいた。
俺の弁当を貪り食っていたので牛乳を飲んでいる間に変顔で咽らせてやった。

あるホームルームのことだ。
一時限目の教科書を出しておこうとロッカーを見ると、あるはずの教科書が無かった。
……と思ったら見覚えのあるエロ本が並んでいた。
案の定ヤツのロッカーに俺の教科書を発見したので、中身だけすり替えておいた。

ある帰り前の掃除の時間のことだ。
トイレ掃除の俺とヤツは、モップ権を賭けて死闘を繰り広げていた。
……と思ったらヤツはいつもより簡単に折れた。
何だか悔しいので俺の華麗な掃除テクを見せてやった。
207 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2011/05/26(木) 10:04:23.08 ID:B82AYaF+0
「しっかしお前も良く付き合うなぁ」

色々思い返している最中に話し掛けるから、おごぉ、と変な返事になってしまった。
そのまま唸りながら考えてみる。
確かに少々面倒ではある。が、楽しくないわけでもないのだ。

「まぁ、嫌いではないからな。 今日みたいにやけに静かな方が逆に調子でないな」

皆勤を貫いていたヤツが休むと担任に連絡を寄越したらしい。
何日か休むかもな、と担任が付け加えたからにはインフルエンザか何かだろうか。
漏れ出してくる安堵の溜息?を出し切りながら、顔を伏せた。

「おい、社会の窓からこんにちわしてんぞ」

「ん? あぁ、Jr.、挨拶なさい。 『コンニチワ!』」

例の窓と手を使った腹話術で笑いを取れるなら安いもんだ。

前の席の女子からバナナで釘が打てそうな視線を向けられた。
208 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2011/05/26(木) 10:04:49.18 ID:B82AYaF+0
放課後、駅までの道のりを一人ただひた歩く作業が俺を待っていた。
それもこれも友人が女の尻ばかり追いかけているからだ。
今度一緒に帰る時にひたすら靴の裏を蹴り上げてやろうそうしよう。

校門前のプラタナス並木を過ぎて大通りに出ると、夕焼けの西空に朱が射して雲を焼き始めた。
ゆるい秋風に少し遅れて旋風がじゃれ合う猫のように近付いて離れた。
独りの帰り道も捨てたもんじゃないなんて考えていた。

自転車で俺を追い越してゆく友人を横目に、住宅街を歩く。
薄暗い路地を経て駅前の銀杏通りへと辿り着いた。
突風と檸檬のように鮮やかな黄色に視界を奪われて、目を戻す頃には目の前に女の子がいた。

「い、いよう。 ぐ、ぐ偶然だな」

正直見覚えのないその娘に声を掛けられ、首を傾げざるを得ない。
彼女がマスクをしているのもあったが、知り合いにこんな可愛らしい娘はいないはずだ。
そんな俺を見かねたか、彼女は腰に手を当てながら言葉を重ねた。

「ど、どうだ? 俺、きき、綺麗か?」

「あああああ! ポマード! ポマードぉおおお! ななな、なんならべっこう飴も……」

引っ叩かれた。 小気味良い音と共に、細い指が抉るように頬の形を変える。
こんのボーイッシュ口裂け娘め、いい"右"をもってやがる……。
打ちひしがれたように横座りをしていると、口裂け娘は大きく肩を落とした。
209 : ◆CI4mK6Hv9k [sage saga]:2011/05/26(木) 10:05:49.55 ID:B82AYaF+0
「どうした口裂け娘」

「どぁれが口裂け娘だ!」

いけない口が滑ってしまった。 
マスクを外しつつ入れられたツッコミを軽くいなし、立ち上がりながら制服の砂埃を払う。
それにしても先程から酷く――既視感を感じる。

「ったく、もう時間じゃねーか。 ……じゃ、またな」

「ん、おう……?」

まただ。 去り際の後ろ姿を見て、また既視感が――。
呼び止めようにも名前も分からない。 彼女の姿が、駅舎へと吸い込まれてゆく。
気がつくと携帯を取り出し、駆け出していた。 もし、もしそうなら、一言物申してやらねば。

【……番線に、列車が参ります……】

顔馴染みの駅員さんに定期をかざし、改札を抜けていつものホームへと走る。
階段を駆け下りながらとあるメモリを呼び出し、通話ボタンを押した。

通話口から何か聞こえるのとホームへと降り立ったのは、ほぼ同時だった。
俺が呼び出したのは、ヤツの携帯。 そして、電話に出たのは――。

「やっぱり、お前だったか」

『なんだ、気付いたのか』

先程の彼女が、照れくさそうにはにかんでいた。
210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2011/05/26(木) 10:06:14.52 ID:B82AYaF+0
以上、遅くなって申し訳ない
211 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/26(木) 13:28:16.68 ID:huhp83yu0
>>210
…凄い…ふつくしい…乙GJが足りない。
212 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/26(木) 13:34:20.33 ID:huhp83yu0
>>203-204
ありがとうございます。参考になります。
213 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/26(木) 16:02:02.32 ID:nt1wJQpRo
女体化したけど顔は元から割と女顔だった上に胸はぺったんこなので
股間の大砲がなくなっただけ・・・
なのに男子人気が上がったとかいうのを妄想した
214 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/05/26(木) 20:00:49.01 ID:huhp83yu0
>>213

「なー帰りカラオケいかねーか?」
「イヤイヤ、何言ってんだよ俺とゲーセン行くんだよ、なー?」
「ちょwwwwお前らバカスwwwwオレとロイホに行くんは決定事項なワケよ?わかる?」
「も、漏れと一緒にメロンブックスに…」

「………」

小学生の頃に水族館でピラニアの餌付けを見たことがあった。
四角く間仕切られた水を漂う肉片に群がる無数のピラニア。差し詰め今のオレはあの肉片だろう。

『女体化したら途端にモテて困っちゃう☆』
よく聞く話だし、ウチの高校にも少なからずいる女体化したヤツらを見る限りそれは事実なのだろう。
女体化者は生来の女に比べて話しやすいとかガードが甘いとかの理由もあるんだろうけど、
やはり一番の理由は女体化した際に『美少女』になるヤツが多いからだろうと思っていた。
そう思ってたんだが…なんだろうなコレ、どうしてこうなった?

16の誕生日、純潔を守り通したご褒美に神様はオレを女の子にしてくれました。
…神は死んだと思うのはオレだけじゃないと思うんだ。

オレはそれが女体化だとはすぐに気付かなかった。
朝起きたら髪が有り得ないほど伸びてたから異常だとは思ったけど
鏡を見てもそれ以外に変わったトコがなかったし、胸も膨らんでなかった。
だから、股間のアハトアハトが消失してるのを確認して初めてコレが女体化だと気付いた…
アハトアハトは言い過ぎた。オレのは小火器でした、畜生。

だから、今のオレは見た目で変わったのは着ている制服くらいだろう。
ちなみに髪は鬱陶しいから男だった頃と同じ位に切った。
元々、女顔で背もクラスで一番低く体格も華奢だったから女子の制服着てても違和感は無いだろうが…。
どうにも自分では女装してるみたいに思えてキモい。
仕上がりも他の女体化者に比べて劣る気がする。まあ、オレは男の時からスペック殆ど変わってないから当然か。
じゃあ、この隙があればオレの周りに群がってくるコイツらは何なんだろうか?
にょたならなんでも良い変態なのか?

「あー!!もう邪魔、邪魔、そして邪魔ッッ!!ホラ、アンタもぼーっとしてないで帰るわよッ!」

ペイペイペイっと薙払われる眼前の男子連中。
見たまんまツンデレ幼馴染キャラなコイツは…つまりオレの幼馴染だ。

「アンタもちゃんとハッキリ言わないからあーゆー連中にいつまでも付きまとわれるのよッ!?」

どうもオレは考え事してると無口になってしまう。元々あまり喋るほうではないし、表情も乏しいんだけど。

「アンタねー、その…気を付けなさいよ?………(元々可愛いんだし)……」

最後のボソボソはよく聞こえなかったけど、気を付けろと言われてもオレがこうなのは昔からだし、
それはお前よく知ってるから今更直るもんでもないのはわかるだろう。

でも、コイツなりにこれでも心配してくれてるんだろうし、さっきも助かった。それは感謝してる。

「大体あんたはー…」
「…なあ」
「んッ?」
「……いつもありがと、な」
「…ッ?!あんたはねー…」

ん?なんでこいつは顔をこんなに鮮やかに赤く出来るんだ?器用だな。

「それを気を付けなさいよバカーッッ!!!」

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

ここまでは妄想出来ました。
215 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/26(木) 21:02:43.26 ID:+Kv+jT3Mo
>>201
すいませんっしたーッッ!_○/|_

こちらの読解力が足りていなくてご迷惑をおかけしました……orz
前スレで>>203のような話があったのを思い出して、ふとそれじゃないのか?って勘違いしてしまったんですよね

>>214
お美事にござりまする。
続きを書いてもいいのじゃよ?
216 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/05/26(木) 21:37:55.81 ID:+Kv+jT3Mo
>>57のお題 初回>>84-89 前回>>176-180

試着室に入り、カーテンを閉めてから鏡の前に立つ。
胸元のリボンを解き、しゅるしゅると衣擦れの音を立てながら夏用の制服を脱いでいく。
脱いだ制服は畳んで持参している学校指定のバッグに入れておいた。

鏡を眺めると、下着姿で起伏の激しい、今ではすっかり見慣れた肢体が目に入った。

「よくもまぁ……ここまで大きくなったもんだよね。
 生命の神秘というか、未だに信じ難いというか…」

胸の下側に手を当て、持ち上げて意味もなく重さを確かめる。
巨乳は肩が凝るってのは冗談だと思っていたけど、実際になってみると良く解る。
そう遠くない未来、ボクも肩凝りに悩まされるのだろう。
普通に生活する上では委員長みたいな貧乳の方が絶対に得だと思う。
多分こんな事を本人の前で喋ってしまうと、一生の秘密にしておいた事が次の日には公然の秘密となってしまう事受け合いだ。
……それにしても、そもそも大きくて得する場面ってあるのだろうか。

「何が大きくなったんだ?」

ぼそっと小声で呟いたつもりだったけど、外で待っている彼に聞こえていたらしい。

「うん?ああ、胸がさ、重くて肩凝りそうだな〜って思って。」
「ああ、胸か………んん"っ!?…そ、そう、か。」

口調から照れている様子が目に浮かぶ。
もう少し彼をからかっていたい衝動に駆られるけど、あまり待たせてしまうのも悪い。
ここは抑えてささっと試着を済ませてしまおう。

選んで貰ったワンピースに袖を通す。
ノースリーブなのに袖を通すって間違ってる気がするけど、意味的には正しいはずだ。
日本語って難しい。

スカート丈は膝下10cm位とロングスカートになっていた。
通気性は思ったより悪く、春物のワンピースの袖だけをカットしたような着心地だ。
しかし麦わら帽子でも被れば深窓の令嬢にも見えなくもない可憐さは悪くは無い。
自画自賛ここに極まる。まぁ、見慣れただけで実感の湧いていない体だからだろうか。
おまけに袖がない分涼しいので生地の厚さについても問題はなさそうだ。
などと考えながら付属のリボンで腰回りを締め、おへその辺りで蝶々結びにした。

「どうかな?」

試着室のカーテンを開け、彼の前でくるっと1回転した後に両手を自分の背に回し、ポーズを取ってみた。

「あの…えっと、似合う?」

返事がなく、しばらく反応もなかった。流石にポーズをとったのは大袈裟だっただろうか。
聞きたい相手からは聞けず、店主の方からは素敵ですよとお世辞が飛んできた。

「………へ?あ、ああ!に、似合ってる」

しばらく呆然と待ってようやく返ってきた感想はぼそっと呟く程度で、それきりボクに背を向けてしまった。
217 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/05/26(木) 21:40:14.00 ID:+Kv+jT3Mo
彼のレスポンスは悪かったが、思いのほか気に入ったので買ってもらう事にした。
値札を外してもらって、着たまま彼に手を引かれてショッピングを続ける。
手を繋いで歩くのは構わないのだけど、何故だか彼は黙ったままこちらを見ようとしなくなってしまった。
試着室を出た時に取ったポーズが余程痛い子に見えて、顔を合わせなくしているのだろうか?
それにしては凍りついた雰囲気が感じられないし、手を引いて貰っている現状とも矛盾している。

「さっきから黙ってるのって、なんで?」
「え?」
「だってほら……これ試着した後からぼーっとしてるし。」
「な、何でもないから。」
「ならボクの目を見て言ってよ。さっきからずっと顔も背けてるしさ……どうして?」
「……り、理由言わなきゃ駄目か?」
「駄目。ボクが悪いのなら謝るし、もし他に理由があるなら知っておきたい。」
「い、いや…白詰さんが悪いわけじゃなくてだな……こう…アレだ。」
「アレって何?」
「その……えーと、なぁ…羞恥プレイに近いんだけど、勘弁してくれないか。」
「羞恥プレイ?……わけが解らないよ?ボクの事嫌いになった?」
「ない!それだけは絶対にない!」
「………?じゃあ理由は?」
「さ……察してくれ!た、頼むよ。」
「頼まれても……解らないものは解らないし。気になってデート続けられないよ。」

立ち止まって手を離そうとすると、強く握られてしまう。
彼の行動の意図が全く読めない。

「い、痛いってば……」
「ご、ごめん。」
「謝らなくてもいいから理由教えてよ。そうじゃないなら手を離して。」
「ぅ……い、言うから、手は離さないでくれ。」
「うん。」

彼の手から力が抜けて、緩やかに痛みが引いてゆく。
離すなと念を押されているので、嫌われたわけではなさそうだ。

「その……白詰さんに、み、みみ、見とれて…
 可愛いとか、可憐だとか、神々しいとか……頭ん中ぐるぐる渦巻いたんだけど
 う、うまく言葉に出来なかったんだよ。み、見てると顔が勝手にニヤけてきたし…
 その……おまけに着たまま行きたいって言われたらさ、直視できなくて当然だろ。」
「え?っと、つまり要約すると……」
「〜〜〜〜っ!し、しなくていい!お願いですからしないで下さい!!」
「えー……。でもそれだと余計に見てもらいたいんだけどな〜?
 あははっ、な〜んだ。はぁ……心配して損しちゃった。」
「か、勘違いさせて悪かった。」
「悪いと思ってるならしっかり見てほしいな。褒められて嬉しいんだからさ。
 第一、キミに選んでもらったのだから存分に堪能してほしいな。」
「た…堪能って、な、何をだよ。」
「んふふっ、それをボクの口から言わせる気?」
218 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/26(木) 21:42:32.04 ID:+Kv+jT3Mo
たった一言褒められただけで機嫌を良くし、鼻歌交じりに隣を歩く。
彼の一挙手一投足に一喜一憂しているようだ。
常々ボクが彼を振り回しているのだとばかり思っていたが、その実逆なのではないだろうか。
きっとこの事を話すと彼は否定するのだろうけども。

「アクセサリも見て良いかな?」
「ああ、って…胡散臭い露店だなぁ。」
「あはは……かもね。」

見つけたアクセサリ屋の様な露店は、駅前の路地裏で木製の大きな鞄を広げ
たむろっている若者相手に商売をして偽物のブランド品を高値で売りつけているような、そんな風貌だ。
学校からの許可を得て出店しているのだから、あり得ない話か。

様々な形のリングやペンダントにイヤリング等が売られていたが、どれも銀細工が主の簡素な物だった。
ひょっとしたら銀メッキなのかもしれない。値段的にきっとそうなのだろう。

「欲しい?それ。」

五芒星のペンダントを見つけ、手に取って眺めていると彼からそう尋ねられた。

「え?うん、星の部分がさ、赤くて綺麗だから買おうかなって。」
「赤って好きな色なのか?他にも青とか白とかあるけどさ。」
「うん。……派手過ぎかな?」
「全然。おじさん、これ下さい。」
「へ?」

眺めていたペンダントをひょいっと取り上げられ、彼が代金を払う。
そして銀で出来たチェーン部分のホックを外し、ボクの後頭部へ両手を回してホックを留め直す。
あまりに自然な流れだったので呆然としてしまったが、要するにちょっと良いなと思って眺めていたネックレスをいつの間にか買って貰っていて、気がついた時には首にかけて貰っていたのだ。

「あ、ありがとう。でも服の上にペンダントまで買って貰うのは悪いような……」
「いいっていいって。さっきのお詫びと思ってくれれば。」
「うーん、でも……」
「安かったしな。」

先ほどと違い真っ直ぐな目で見据えられていた。今度はボクの方が気恥ずかしさから視線を逸らす。

「ああ…さっきの俺ってこんな感じだったんだな。」
「え?」
「いや、ついさっき試着した時のさ。」
「……うん?」
「やっぱ思った事は素直に言わないと勘違いさせちゃうよなぁ…。」
「や、その…さっきのはボクもはやとち──」
「それも似合ってるな。うん、可愛い。」
「!?」

不意打ち気味の一撃で顔から火が出そうだ。
返事が無いのは困るけど、面と向かって褒められても困るのだよワトソン君。
219 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/26(木) 21:43:39.57 ID:+Kv+jT3Mo
短いですが、今日はここまでで。
我ながら安価ネタには不適当な長さだなぁ…
220 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/27(金) 00:08:02.78 ID:DjZKyMzS0
GJ!
221 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/27(金) 08:57:43.34 ID:88QQC0qG0
コレはヤバイ
直視するとニヨニヨ死してしまう
222 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/27(金) 09:07:55.87 ID:PaKdaDUk0
あんかくだしあ><↓
223 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/27(金) 12:12:43.96 ID:88QQC0qG0
「ごめんね、責任は取るから」
224 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/27(金) 13:48:45.59 ID:67FcyWcko
最近活気があっておいちゃん嬉しいひょ
225 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/05/27(金) 14:52:28.83 ID:rKtoGWbt0
>>215
あの書き込みには本当に勉強になりました。ありがとうございました。色々と勉強不足を実感。
>>214の続きっスか?!じゃあ、セフレのやつちょっと悩んでるので(主にエロで)気分変える為にちょっと書いてみます…。

>>216-218
うん、基本的にこのSSは漏れを萌え死なすつもりらしい。イチャツイテンジャネーヨ!チクショウ、チクショウ、クヤシイノウ!
試着室の白詰さんマジけしからん。にょっぱいマジけしからん。もっとやれ!もっと!GJ!!

えっと、それじゃあ恥ずかしながら人生初の安価ください↓
226 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/05/27(金) 15:00:03.61 ID:oHBKxXkx0
可愛さあまっていじめたり冷たくしていた妹が、女体化して華奢で小柄になったとたん逆にこっちを弄ってくる。

恥ずかしいけど距離が縮まったようで嫌じゃない、そんな感じ。
227 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/05/27(金) 15:17:09.68 ID:rKtoGWbt0
おっふ…!こんなに早くお題が来るとは…把握しました。ガンガル!
つか漏れんトコ小柄キャラばっかww
228 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/05/28(土) 20:51:39.78 ID:YMSU8Zmso
>>57のお題 初回>>84-89 前回>>216-218

誰からともなく逃げるように、ボクは彼の手を引いて体育館から出た。
服を買って貰った時とは立場が逆になったのだが、先ほどと違う点を挙げるならば、ボクの心境はまるっとお見通しされている所だろうか。
彼の表情はどことなく綻んでいて、ボクの手を引き寄せるわけでも離すわけでもなく、歩調を合わせている。
眉間に皺を寄せて睨んだのだが、彼は意にも介さず満面の笑みを湛えていた。

「……………むぅ」
「ははっ、白詰さんもそんな顔するんだ。」
「ど〜いう意味かなっ……それっ」

小馬鹿にされたような感覚に陥り、苛立ちを隠せず声を多少荒げた。
にも関わらず、彼の方は主導権を握った優越感に浸っているようだ。

「照れた表情ってのは今日初めて見たから。」
「──そうだっけ?」
「ほら、主導権?ってのをこう、握られっぱなしだったから見た事ないと思う。
 登下校にしろ昼食にしろ、大体白詰さんから率先して、だったしなぁ。」
「解ってるなら、しっかりとエスコートして欲しいのだけどっ」
「はは、面目ない。」
「ぜんっぜん、誠意が感じられないっ」
「悪かったって、ほら、クレープおごるから機嫌直してくれないか?」
「……もう、しょうがないなぁ。」

校舎内の模擬店を回りながら、明らかに我侭としか言い様のない屁理屈にも機嫌を害さず、至って普通に応対してくれている。
今日に限ってどうしてこう、ボクの方が色々な意味で揺さ振られているのだろうか。

「………で、チョコレートとかじゃないんだ?」
「へ?おかしいかな?シーチキン。一口食べてみる?」
「ん、貰おうかな。はむ……(もしゃもしゃ)……んぐ。うん、割と旨いな。」

少し躊躇してから差し出したクレープにパク付く彼。
お返しにとばかりに彼のストロベリーチーズが差し出される。

「でしょ?ぁむ……(もぐもぐ)んぐ。たまには甘いのも悪くはないかな。
 実を言うとさ、甘いの苦手なんだよね。」
「意外だな、ツインテールの子みたいに甘い物好きなのかと思ってた。」
「ん〜。異性化すると味覚変わる人が多いらしいんだけどね。ボクは例外だったみたい。」
「ふーん。案外世間一般の常識って当てにならないもんなんだな。」
「そうでもないよ。風見くんなんかはその典型で甘い物好きになっちゃったし。」
「風見?誰だ?」
「……あれ?言ってなかったっけ?キミの言ったツインテールの子の事だよ。
 よく学食で一緒になったでしょ?」
「名前聞いた事がなかったな。まぁ、聞く機会も無かったしなぁ。
 それにしても、彼女にクン付けは不味くないか?」
「あ〜……そうだね。男の子の時の癖がまだ抜けてないや。」
229 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/05/28(土) 20:54:26.47 ID:YMSU8Zmso
他愛のない雑談をしながらクレープを食べきり、模擬店周りを再開すると聞き覚えのない声に呼び止められた。

「おー、ご両人、早速デートか。」
「なんだ、お前か……邪魔だ、邪魔。声かけんな、シッシ」
「邪険にすんなよー、友達だろー。」

どうやら彼の友人かクラスメイトの様だ。
こちらとしては面識が無いので頭の上に疑問符を掲げていると、彼から説明が入る。

「ああ…白詰さんも会った事あると思う。ほら、俺の前の席に座ってるやつだ。」
「どーも、斉藤っス。こんちわ。」
「ど、どうも。」

軽く会釈を返す。言われてみると確かにF組の教室で見た顔だった。

「で、お前んとこはサバゲー同好会だっけか。……えーと、射的屋か。らしいっちゃらしいが。」
「だろ?」
「景品はどっから調達したんだ?えっらいファンシーだな。」

彼の視線の先を見ると、机を隔てて手の平サイズの様々なぬいぐるみが段々になった棚に並べられていた。
射撃位置から景品までは教室の端から端。距離にすると10mくらいだろうか。

「ああ、うちの部長とSF研の部長が顔見知りでさ、あっちから融通して貰ったんだ。」
「へぇ……ってSF研にあれがあるのも想像付かないな……」
「ははっ、あそこは色々と胡散臭いからな。
 ウチの他に新聞部とも繋がりがあって校内の噂話は全てSF研と新聞部に集まるっつー噂もあるし。」
「初耳だな、それ。」

SF研と聞いてピンと来たので、彼らの会話に割って入った。

「多分、うちのクラスの学級委員長のせいだと思うよ、それ。」
「え?」
「ほら、井戸端会議好きだって昨日に言わなかったっけ?
 SF研の部長って委員長のお兄さんだし、おまけに新聞部にいとこが居るからよくリークするんだってさ。」
「ああ…聞き憶えがあるな。へぇ……妙なつながりっつーか、不気──いや、悪い、聞かなかった事にしてくれないか。」
「あはは……別に言っちゃっていいよ。ボクもそう思ってるし。あ、1回やりたいのだけど、いくらですか?」
「300円だ。弾は5発な。装弾済みだから、そこの木箱に金を入れてくれればすぐ撃てるぞ。」

財布からお金を取り出そうとすると、既にちゃりんと箱の中に100円硬貨が3枚落とされていた。

「ささ、どうぞ。」
「あ、ありがと……」

彼に促されると必要以上に照れてしまうが、気に留めないふりをして射的に使用するライフルを持ち上げて構えようとした。
───のだが、予想以上に重かったのでよろけてしまう。
230 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/05/28(土) 20:58:46.37 ID:YMSU8Zmso
「でもなぁ……今年入学したばっかなのにもうそんな黒い噂が立ってるってのは……」
「噂じゃないよ、本人から聞いたの。ま、お兄さんも委員長と同じ様に情報網が広いから、そのせいもあるんだろうけどって、あわわ…」

転びそうになったのだが、彼に支えられて事無きを得た。ついでにひょいっとライフルを取り上げられてしまう。

「大丈夫?」
「ぅ…ぅん」
「ウィンチェスターM1873カービンだっけか。…………2,1キロあるだろコレ。」
「西部を征服した由緒正しい銃だぞ!」
「アホか……射的向きじゃねーよ。ンだよ、リアサイト外してあるじゃねーか。狙いにくいだろ。」

文句を言いながらも彼はライフルを構えて狙いをつける。
5回連続で小気味良い発射音が聞こえたかと思ったら、先にある景品が5つ倒れていた。
犬にうさぎ、猫、あとはテディベアっぽいのとカエルのキャラクター物にどこかで見た事があるような黄色いネズミのぬいぐるみ。

「ふぇぇ……すごい。」

全て命中させていたので感心してしまっていたボクとは対象的に、店番をしている生徒は何故か怒り出す。

「……狙いにくいっていいながら全部当てるな!お前が撃ったのは無効だ!無効!」
「ケチくせーなオイ。」
「ったく……お前どうしてウチに入らないんだ。何度も誘ってんのにさー。」
「別にいいだろ、確か射撃は好きだけどさ、サバゲーは苦手なんだよ。」
「勿体ねーなぁ…」
「うっせー。弾出せ、リロードするから。」
「ったく、彼女の前だからっつってかっこつけようとしてんのか。ほらよ。」

ちげーよ。と、彼は受け取ったBB弾をチューブぽいものに詰め込み、銃身の先から差し込んだ。
そしてチューブの先を右に回し、コッキングしてボクに渡してくれた。

「あ……ありがとう。」
「今度はよろけないように支えてあげようか。」
「へ?ぇ?!」

断る間もなく彼に手を添えられてライフルを構えた。密着しているというか、背中から抱き付かれたような格好なので彼の息遣いが手に取るように解る。
解るのは息遣いだけではなく、心臓の鼓動も早くなっているようだ。ボクも人の事は言えないのだけども。

「うひょー…お前意外と大胆だな。白詰さんってファンクラブまで出来てる子なのにさぁ…すげーわ。」
「……ファンクラブ?」
「知らないのかよ。」
「知るかそんなもん。」
「E組の風見さんと白詰さんっつったらそらーもう有名なんだけどな。」
「どう有名なんだよ……」

照れ隠しに友人と話を始める彼。ボクは耳元でそれを聞きながら引き金を引く。
お互い耳が真っ赤になっていることだろう。
231 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/05/28(土) 21:00:59.75 ID:YMSU8Zmso
───パンッ

「どう、ってお前、風見さんは今年最初の発症者だったろ?
 ツインテールに垂れ目でロリフェイス。そしてあの胸ッ」
「あっそう。」
「興味なさそうだなぁ…お前。」
「ないな。」

───パンッ

「ま、それに加えて男子の告白ことごとく蹴ってんだぜ、彼女。
 サッカー部のキャプテン筆頭に野球部、テニス部、あとは…どこだったかな。」
「ボクが聞いた話だと生徒会副会長だったかな。副会長も玉砕したんだっけ?」

───パンッ

「そうそう、どこの部のキャプテンもそれなりに人気あるっつーのにさ。」
「で、どうして白詰さんも注目されてんだ?」
「さぁ…?ボクにはさっぱり。ボクも初耳だったし…」
「風見さんとセットで注目されてたんだよ。いつも一緒に行動してたみたいだしな。」
「あー…うん、確かに風見くんとはよくおしゃべりするけど……でもそれだけでってのはちょっと。」

───パンッ

「風見さんに負けず劣らずの巨乳!情熱的な真紅のロングヘアー!
 ややつり目できつい印象を与えつつも、凛々しい面立ち!
 そして見た目の印象に反して性格は温和で話しやすく、割とドジっ娘気質が萌えポイント!」
「あはは……ボクってそういう風に見られてたんだ。なんだかくすぐったいなぁ。」

───パンッ

5発撃ち切って、命中したのは1発だけ。照準はボク任せだったからなのだろう。
撃っている間ずっと支えてくれていたので、背から離れていく彼の胸板が少し名残惜しい。
232 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/28(土) 21:07:27.06 ID:YMSU8Zmso
「注目されてる人物の友人ってポジションも、案外注目されてるっつー例だなぁ。
 実際、白詰さん美人だしな。」
「そういうもんか?」
「そういうもんだ。おまけに風見さんのように色んなやつの告白蹴ってたっつーのに
 お前にあんな大胆な告白しちゃうしな。お前と白詰さんの噂で校内もちきりだぞ、最近は。」
「……なんか腹立つなぁ」
「え?なんでだ?有名になれて羨ましいんだが。」
「ロクに白詰さんと話してもないのに、アレコレ噂されてもな。」
「ふーん。ホレ、景品。」
「ありがと〜」
「ま、精々彼女に嫌われないようにな。」
「お前じゃねーんだから大丈夫だっつの。」
「へーへー。」

命中させた景品のテディベアを受け取って、射的屋を後にする。
次は視聴覚室で行われている映画の上映会に向かおうと言う話になって、階段を登っている最中に彼にこう話しかけた。

「あのさ、さっきの話なんだけど。」
「ん?ファンクラブの事か?」
「うん……もしかして、やきもち焼いてくれた?」
「ぶッ?!ぃ"……いやッ?!そそそ、そんな事ないですよッ?!」
「隠さなくてもいいのに。ボクは物凄く嬉しかったからさ。」
233 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/28(土) 21:11:37.78 ID:YMSU8Zmso
今日はここまで。

>>220
>>221
>>225
楽しんでいただけているようで幸いです(n゚ω゚*)
234 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/05/29(日) 20:35:47.07 ID:WU8wgyTt0
>>226のお題

「っだぁ〜…ぁぁッ」
「アンタ何朝から溶けてんの?締まりの無い顔が余計崩れてるわよ?」

うるへーバーロー可愛いから文句ねーだろ…自分で言っててなんかアレだな。イヤ、流石に口には出さんが。

「………白」
「は?何が…あッ!?……スマン」
「アンタまだ自覚足りてないの?…まぁ、この子もだけど」

ンな事言われても、『私』もソイツもなったばっかしで自覚もクソも無ぇよ…察しろ。
しかし、なんだ?ぱんつ見られただけなのにこの恥ずかしさというか居た堪れない感じ。
仮にもソイツは今は女で…私も『同性』なのに。

「そんなんだから女体化した子はチョロいとか思ってるバカが寄って来んのよッ?!」

キッ!とコイツが周りを見渡すとバツが悪そうに目を逸らしたりワザとらしくケータイ弄りだす輩が多数。まあ、わかるけど。
今の私は見た目はどう見ても三つ編みが似合う小柄で華奢ながら出るトコはしっかり『ぽよん』としてる美少女だ。
…うん、まだ我が身だと自覚が薄いから言えるんだろうな、やはり口には出さんが。

お前が大事に扱ってるソイツも無口で小動物的な可愛いショートカットっ娘だから男子の人気が高いのも頷ける。
…男の時から姿形は変わってないけどなソイツ…元々、一部の連中からはコアな人気が有ったのが女体化して顕在化しただけだな多分。

そんな美少女が女としての自覚も無く無防備にウロウロしてたら、そら『いただきます』したくもなるわな。
……うあ、私が男にヤらてるトコ想像しちゃったよ…恐ろしい、気を付けよう。

「でェ、何でアンタそんな玩具の方のスライムみたいな様になってんの?」
「そこまで溶けてねーだろ!?」
「……グロブスター、みたい」
「え?グロ…スマン、何だソレ?」
「あー、この子のこーゆーネタはスルーが常識でしょッ!で、何かあったの?」
「あ、イヤ…妹がオカシイんだよ」
「アンタの妹?あー、あの大人しそうなちょっと喋り方イタい子」
「大概失礼だな!?イタくねーよ?可愛いだろうが!!」
「ハイハイ…で、そのオカシイ妹がどうしたって?」
「…っあのなー…まあ、いい…なんか私が女体化してから、その、スキンシップが過剰と言うか…」

…最早アレはスキンシップとは言えない部分もあるけど。

「良いコトじゃない、仲悪いワケじゃないんでしょ?兄が姉になって同性だから甘え易くなったとかじゃないの?」
「いや、どうなんかな…ソレにしてはちょっと…なんと言うか…」
「ハッキリ言いなさいよ、どんな感じなのよ?」
「えっと、風呂に入ってたら凸して来たり、いちいち私の着替えを手伝おうとしたり、なんか何かにつけて纏わりついて来んだよな」
「興味あるんじゃないの?どこに出しても恥ずかしいバカ兄がこんな見た目は華奢で可憐な美少女になったんだから…中身はバカ兄だけど」
「なぁ、俺お前に怨まれる様なコト何かしたか?」
「『俺』に戻ってるわよアンタ、それも妹に指摘されて矯正したんでしょ?」

女体化後すぐに温厚な妹が結構マジな感じでコレは指摘してきた。他にも言葉遣いや仕草なんかも直した方が良いと言われるけど
全部対応出来る様になるのは…当分先だろうな…。
235 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/05/29(日) 20:39:30.67 ID:WU8wgyTt0
「ぐぬゥ…わ、私はー…そういう事が言いたいんじゃなくて、えっとコレは妹の『復讐』なんじゃないかと思って…」
「復讐?」
「そう…私な、女体化する前位まで、その…妹が可愛過ぎて結構冷たく当たったり苛めてたりしたんだよな」
「アンタ妹とはいえ女の子をぶったりしてたのッ?サイっテー」
「いや、そういう暴力とかはしてないっ!精々、妹の持ってる『KR○VAのベスト盤』を『鳥○実』に、
 『西野○ナのtoLOVE』を『ちっ○いぱんCD』に中身をすり替えたり、ケータイのデータフォルダを立○夕子と
 野崎○ンビーフの画像で埋めてみたり、『ひだまり○ケッチ』でうめてんてーのファンになった妹の為に録画しといた
 『魔法少女ま○か☆マギカ』を一緒に観てあげたりした位だって、3話辺りで恐慌状態になった妹を見た時など
 胸がすく様な気持ちだったけど」
「……アンタ、それ殺されても文句いえないわよ」
「……マジおにちく」

ん!?間違ったかな?


〜きたくっ!〜─────────────────────────────────────────────────────────


『まぁ、苛めの内容はともかく嫌われてる様子じゃないんでしょ?じゃあ、やっぱり単なる興味とかスキンシップとかじゃない?』

果たしてそうなのか?それにしちゃあ何か違う含みがあるような…。

『アンタも案外「うはッWW妹に纏わりつかれるとかッWWグルーチョ萌エスッッWW」とか思ってんじゃないのッ?』

それは無い。断じて否だ。そういうのはアレだ、幻想だ。妄想だ。実在の妹に萌えとか有り得ない。…可愛いのは認めるが。
大体アイツ私をどーゆー目で見てんだ?あのデコいっぱいに油性マジックで『ツンデレ』って書いてやろうか。

「ただいまぁ」
「お帰りなさぁいです姉の人、鞄持ちますよ」

うん、可愛い。妹は今日も正常運転だ。今朝私の布団の中で添い寝てしてた時はマジ焦ったけど。てか気付けよ私。

「父の人も母の人も今日も遅くなるみたいなので晩ご飯は簡単なのでいいですか」
「うん、私も手伝おうか?」
「大丈夫です、姉の人はゆっくりしていて下さい」
「悪いな、じゃあお言葉に甘えて」

リビングから台所を覗き見る。中学生らしいボーダーの長袖Tシャツにデニムのスカート、その上にエプロンを着けてる姿は
なんつーか、もう『おさな妻』とか『お嫁さん』とかそういう雰囲気あるよなアイツ…。
ウチは両親共働きだからアイツは小さい頃から家事熟してるし。それに比べて私は…駄目だなぁ。
…『お嫁さん』か、私ももう女だからその内彼氏とか出来て、ゆくゆくはそうなるのか…想像出来ねーな。

「あのさ…やっぱ何か手伝うわ」
「?そうですか、じゃあこれにお味噌入れて下さい」
「おう、えーと…」
「あ、これでお箸で溶きながら…」
「え?ハイ…こうかな?」
「えっと、あ、そもそもお味噌の量が…」
「えッ?!あ…ごめん」

お嫁さん…私には無理じゃね?
236 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/05/29(日) 20:40:45.88 ID:WU8wgyTt0
食事も終え、リビングで寛いでると『お風呂が沸きました』のアナウンスが聞こえた。

「あ、お前先に入れよ」
「いえ、姉の人お先にどうぞ入ってください」

屈託の無い笑顔、悪意がある様には到底見えない。でも昨日は私が入ってるとコイツはバスタオル一枚で「お背中流します」って入ってきやがった。
今もソファに座ってるワケだが、距離が不自然な程に近い。ほぼ密着していると言っても良い。なんなんだコレ。

「よっ…と」

ブラウスを脱ぎ、ブラジャーのホックを外す。最初は腕が攣りそうになったもんだが大分慣れてきた。掛け声はいまだ必須だけど。
前屈みになると重力と慣性に遵い揺れる乳房。なかなか立派なもんだ。女体化してすぐは「うはッWWWコレがッWWW」とか思ったが、なんつーかもう見飽きた。
日常生活では邪魔なんだよなコレ、何かと痛い目に遭うし。役に立つのなんか結局『夜』限定じゃね?……駄目だ昨日の悪夢が…。

「……ふぃ〜…」

ウチの風呂は一般家庭にしては大きい。今の私だと充分過ぎる程だ。つい、だらーんと伸びて顎先まで浸かってみる。

「今日もお背中流しまぁす」
「ちょっ?!くぁwせdrftgyふじこlp…っ!!…っゴベバビビュ……!!?ッッ………げはッげはッ…!!」

……全身浸かった。頭の先まで。

「姉の人ぉ、昨日と同じリアクションですよ」
「……じゃあ昨日と同じ事はしないでくれるかな?妹よ」

バスタオルだけを纏った女性らしい肢体。自分のは見慣れたとはいえ、他人の体をナマで見るのはまだ照れる。
いや、妹のなんだけど、そうゆう意味の他人ではなくて…駄目なんだって、まだ私の中には健全な男子高校生(童貞)が残ってんだよ!
エロ本も名残惜しくて捨てれないんだよ!察してくれ!

「キィミトーワァラウーコォノハァルノォヒニーサァイターサァイターサクラーノハナガー♪」
「……」
「…そんなに警戒しないで下さい」
「……だって…」

昨日はこの流れで「おっぱいの洗い方教えまぁす」って……乳を揉まれた。いや、ちゃんと洗ってはいたと思うけど…
アレはもう辱めだと思う。うん、間違いない。なんか変な感じしたし…。

「大丈夫です、今日はおっぱいは自分で洗って下さい」
「お、おう……?」

……なんかされると思ったのは杞憂か?一通り洗い終わってもう一度湯船に…

「姉の人ぉ、まだですよ?」
「はェ?」
「今日は『ここ』の洗い方を教えまぁす」
「……………………………………………………………ッッッッッッッッッッッ!!!!!!!???」
237 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/05/29(日) 20:42:56.73 ID:WU8wgyTt0
待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待てェいッッ!!?
そこはアレだ、危険だ、うん、危険だよ妹よ。落ち着け、冷静になれぇ…そうだ、ここはアレだ素数だよ!
いままでも数々のSSの主人公たちが素数で危機を……脱してねーッ?!!役に立たねーな素数!!

「そんなに縮こまらないで下さい、洗い難いです」
「そ…んなこといったって…こんな…」
「…本当にもうちんちん無いんですねぇ」
「そ、んなの見りゃわか…るッ…だろ」
「…ここはデリケートゾーンっていうくらいデリケートだからごしごし擦っちゃダメなんですよ」
「…ッ…わかったから…そんな…」
「今日は専用ソープ使いますね。よく泡立てて、このまま……」

もう、何か頭がボーっとして、でもイッパイイッパイで、色んな事を考えるんだけど一つも答えが出ない。

「ここのピラピラは軽く摘みながらこうやってやさしぃくきゅきゅってするんですよ」
「……ッ…ッ」
「ここの穴とおしっこの穴は軽ぅく、くりくりするだけでいいです、穴の中は洗わなくていいですよ」
「……ぅん…」
「先っちょは…剥けるますか?」
「……ッ?!」
「…ちょっとまだムリみたいですね、じゃあ付け根と周りだけを…」

何だろこれ、妹に弄くられてるのに…こんな…これ以上は…くっ、くやしい…でも…!

「じゃぁ流して……あれ?姉の人、ここなんかヌルヌルしてますよ?どうしてですか?」
「…………」
「姉の人…?」
「……っ……なさい……めんなさいッ…!」
「姉の人!?」
「ぅッ…ふぅッ…ひッ……ッ…い、ままでッ…いじめ…てて、ごめんッ…なさい……ゆる、してェ…」
「…ッ?!」
「わたっ…わた、しが…わるかった、からァ…もう、こんな……と…しないで…」

「違いますッ!」

背中にバスタオル越しの柔らかい感触。妹の胸が押し付けられてる…抱き締められてる。

「違うんです、姉の人…苛められた仕返しとかじゃないんです…」
「……ふぇ?」
「姉の人が、わたしを苛めてたのって…わたしが可愛くて、好きだからつい…ってことですよね?」
「……うん」

バレてたのか…すげー恥ずかしいな…。

「わたし、知ってました…だから、冷たい態度されたり苛められたりしても、ちょっとはイヤでしたけど…嬉しかったんです」
「…いや、ごめん…本当に、素直じゃなくて…」
「ふふ…『ツンデレ』なんですよね、姉の人…」
「それは違うんじゃね?…いや、合ってんのかも知れないけど」
「だから、わたしが勇気を出さなきゃいけなかったんです、でも出来なくて…だから後悔してるんです…」
「…?何が?」
「兄の人が、姉の人になった事です」
「…??いや、何でお前が後悔…」
「姉の人はわたしのこと可愛いって、好きだって思ってくれてて…わたしも同じ気持ちなのに…」

…ん?何か違う、コレ何かがオカシイぞ…。
238 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/05/29(日) 20:44:46.09 ID:WU8wgyTt0
「だから…わたしに勇気があれば姉の人が、兄の人の時に…『初めて』を貰ってあげられたのに…って」
「いや、ちょ…おま…」

違う、私の『好き』はそっちの意味じゃねー……って何で私仰向けに?!アレ?押し倒されてるッ?!!

「だから…わたし、責任を取ろうと思って…姉の人に、ちゃんと女の子の事教えて…」
「は、はぁ…あ、あの〜…一先ず落ち着こう、な…妹よ…」
「わたしの『お嫁さん』にしようかな…って」

待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待てェいッッ!!?
それはアレだ、危険だ、うん、危険だよ妹よ。落ち着け、冷静になれぇ…でもって人の話を聞いてッ?!
一回だけでいいから、深呼吸しよう。深呼吸してからのヨッシャ!!…って違ッ!!!

なにバスタオル肌蹴させてんの?見えてるってッ?!全部見えてるってッ?!!隠せよッ!!
おっぱい押し付けんなッ!?私のおっぱいにおっぱい押し付けんなってッ!!乳首当ってるってッッ!!!私の乳首に乳首当ってるってッッ!!!!

「大好きです…姉の人…」

アッーーーーーーー───────────────────────────────────────────────────────────

「アンタ何朝からくたばってんの?…ってマジで顔面蒼白じゃない」
「どうしてこうなった」

「……南極のニンゲン、みたい」
239 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/05/29(日) 20:54:16.30 ID:WU8wgyTt0
…はじめて安価ネタを書きましたが、こんなんで良かったのでしょうか?

>>228-232
相変わらず素晴らしいGJです。初々しいカッポーってそれだけで素晴らしい。
…風見さん、か…風見さん、風見さん、風見さん、風見さん…うん、素晴らしい。
240 :226 [sage]:2011/05/29(日) 22:03:46.34 ID:5M0u0n0j0
GJっ!にょたにき可愛いよにょたにき!
にょたっ娘はかくあるべきといったワタワタっぷりに萌えましたww

そして小柄キャラばっかり書かせてしまってサーセンwwww
でも俺、にょたロリスキーなんだ……しかたないね、拓海ちゃん可愛いよ拓海ちゃん。

安価書いてもらってオラ漲ってきたぞっ!
↓お題下しあ(ただし主人公はロリになる可能性高し)
241 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/29(日) 23:06:26.06 ID:poYFpzB20
幼馴染がロリコン
242 :↑のお題 [sage]:2011/05/30(月) 18:41:16.33 ID:EYp4Mdhk0
「なあトシぃ、これ見てみろよっ!」
「ちょっ、和史!教室でんなもん広げんなっ……」
「んだよ、せっかくのレアモノなのに……あっ、この娘とかどうよ?」
「だから広げんなと……あと俺はおっぱい星人じゃないんで」
「大きいことはいいことだろうが。お前ホントにこういうのに食いつき悪いよなぁ、ひんぬー派ですか?それともロリk」
「別にっ、エロに興味がないだけだっての」
「草食も大概にしないと女体化しても知らねぇぞ?」
「童貞が言えた口か。ったく、お前のが誕生日近いんだからエロ本にかまけてないでさぁ……」
「まっ、実際に性転換すんのは全体の数%って話だろ?なんとかなるなる。
 万が一女になっちまったら、親友のよしみでお前の女体化予防してやろうか?守備範囲に入ってりゃあの話だけどwwwwww」
「はじめての相手が和史とか……ねーよww想像して萎えたわwwwwww」
243 :続き [sage]:2011/05/30(月) 18:42:19.09 ID:EYp4Mdhk0
(いつだったか、そんなことも話したっけなぁ……あぁ〜、まさかホントに女体化するとは。)
根拠のない自信に任せて童貞を貫いた俺は、誕生日の朝、布団の中で毎日元気に自己主張していたマイサンが何処ぞへと旅立ってしまったことに気付いたのだった。
(まぁ……なっちまったもんは仕方ない、か。っし、ポジティブシンキン!そいじゃあ早速ボディチェックを……と、うひひwwwwww)

つるん……♪
(うわ、やっぱりないんだ……実際触ると喪失感ががが。ってかこの感触、まさかパイ○ン?wwwwww女体化したてだからか?
 これ以上は後のお楽しみとしておいて、次は俺的メインディッシュのおぱーいをばwwwwww)

ぺたっ……♪
(何・・・だと・・・?)

弧を描いて胸に延ばされた両の手はむなしく空を掴み、ただ指先だけが微妙な柔らかさを伝えている。俺の期待していたモノ(少なくともD以上のきょぬー)がそこには存在していなかった。

「ちょっ、女体化した挙句ひんぬーとかマジ勘弁っ!」

この目で自分の体を確認しようと布団から飛び起きる。
と、途端に亜麻色をした髪が体に纏わりついてきた。どうやら毛質も長さも変わってしまったらしい……
それを払う手も小さく華奢なものとなっており、指も腕も細っこく、それでいてプニプニ柔らかだ。
さらに視線を下に辿り、ダブダブになった寝間着の襟ぐりから覗いたのは

「なんということだ!紛ことなきひんぬー、いや無乳ではないか……ってか、これは」

辺りを見回すと、見慣れたはずの部屋に違和感を覚える。全体的に広く、大きくなってる?
女体化したんだから身長は減って当然なのだが、減り方が半端じゃない。これじゃあ、まるで子供に戻ったみたいな……

「あ……っ」

ガラス窓の向こうに知らない女の子の姿が、かろうじて肩から上だけ映っていた。
小さな顔に、これまた小さな鼻がちょこんとのっている。両の目は逆に大きくクリックリのパッチリ二重。ちょっぴりプクっとした唇は瑞々しく綺麗なピンク色だ。
うん、可愛い。ちょいとそこらじゃお目にかかれないほどの大変に可愛らしい女の子なのだが……なぁ

「はは……っ、おはようじょ」

女の子もとい幼女に呼びかけると、彼女も俺が浮かべたのとまったく同じ、困ったような笑みを浮かべた。
そうなのだ、幼女。どう見ても小学生にしか見えない。身長もどんなに大きく見積もったって140に届いていない、道理で部屋が広いはずだ。

「……、orz」

生の女体を心行くまで探索できる、と少なからず高翌揚していた気分が急に萎え、思わず膝をついてしまう。
すると細く・小さくなり過ぎた下半身では支えきれなくなったのか、ズボンがずり落ちる。パンツも脱げた……やっぱりパイ○ンか、そらそうか。
244 :続き [sage]:2011/05/30(月) 18:43:34.22 ID:EYp4Mdhk0
そこから先のことは正直思い出したくない……
リビングに降りてきた一人息子改め一人娘を目にした両親は、

「ずいぶんとまぁ、可愛くなっちゃって!」
「バカ息子が愛娘になる日が来ようとは……ちょっとパパって呼んでくれないか?」

などと言って、俺の女体化を寧ろ祝ってくれた。どうやら俺が童貞なのはバレバレだったようで、とっくに覚悟は出来ていたとのこと。
挙句の果てには、

「見た目の歳に合わせて小学校通い直してみる?このご時世ならすんなり認めてくれるかもよ?」
「そりゃあいいなっ、お嬢様学校に入れてやるからネジ曲がった性格直してお淑やかになって来い!」

とのたまいやがった。
正直“女子校でゆりゆり〜な関係”には惹かれるものがあったが、大和撫子になる気などさらさら無いし、これまでの自分の過去を隠して生きる気もなかったので丁重にお断りしておいた。
母さんはけっこう本気で残念がっていたみたいで、

「せめて制服だけでも着てみてよ!」

などと言って、お隣の涼子ちゃん(中一)のお古(しかも中学年仕様……)を着せられて写真撮影が行われたのは秘密だ。
まぁ、私服その他諸々もついでにごっそり頂いたのは助かったんだが……年下の女の子のお下がりを着ていると思うと、やはり鬱屈した気分にもなる。
おまけにそんな服を着た姿を涼子ちゃんに

「私が着るより全然似合ってるよっ、カズさん可愛い〜♪」

などと評され、頭をナデナデされました……タヒにたひ。
245 :続き [sage]:2011/05/30(月) 18:44:41.06 ID:EYp4Mdhk0
-----------------------------------------  翌日 -----------------------------------------------

朝(?)の十時、普段ならとっくに授業を受けてなければならない時間だが、今日の俺はまどろみの中。二度寝の気持ちよさは異常〜
役所その他への手続き、制服の採寸・手配にと、諸々の準備のために今日は学校の配慮で公休にしてもらえるのだ。
クラスの連中は今頃数学の小テスト真っ最中……ぐへへ、せいぜい頑張るがいいさwwwwww

「いつまで寝てんのよっ、いい加減起きなさいっ!!」(バサッ)
「ふみゅうっ!?」

三度寝とシャレ込もうと思ったら、無理やり母さんに布団をはぎ取られた。むぅ……寝足りん。

「落ち込んでるかも知れないと思ってゆっくり休ませてたけど、全然元気そうじゃないの。
 お父さんのが『娘の見送りがない』って落ち込んでたよ」
「…………娘バカ乙」
「甘えてあげればいいじゃない、お小遣い上げてくれるかもよ?その分はもちろんお父さんの分から引くけど……
 それとあんた今日は役所まで行くからね、恥ずかしくない格好してきなさいよ。そこに出してあるワンピースなんかおススメ」
「強制ですね、分かります。大人しく着替えるから出てってくんろ〜」
「はいはい……ブラのつけ方まだ分からなかったなら呼んで頂戴ねwwwwww」
「詰め込む肉がないので苦労しません……orz」

そんなこんなで特に手間取ることもなく着替えが終わる。
ちなみに下着関係だけは新品だ。お古をとっておくようなものでもないし、貰えたとしても断固拒否していたことだろう。
ショーツなんかちっさいブリーフと思ってしまえばなんてことはないし、正直つける必要皆無に思えるこのスポブラも、支えるモノがないので被って位置調整するだけのまさに「大胸筋サポーター」だ。
昨日体験した「はじめてのぶらじゃあ」体験にはときめかないでもなかったが、どう頑張っても谷間どころか布地分以上の盛り上がりも作れない現実(AAA)に、装着後は涙目だった。
こんなちっぱいもとい無乳では弄る楽しみもないので風呂でも「女体探索」をする気になれなかった。
下半身は脱衣所で母さんの手鏡拝借して覗いてみたんだが……なんだか裂けそうで怖かったので自重……チキンちがう。
246 :続き [sage]:2011/05/30(月) 18:45:31.40 ID:EYp4Mdhk0
「よぅし、今日も可愛いおはようじょ!」

鏡に映った姿を確認する。うん、黒のワンピがよく似合ってる……なんか仔猫っぽい雰囲気?こんなロリぃのは俺の趣味じゃないけど。
しっかし、見事に歳不相応な外見だことで……うちで一番ちっこいのが148の渡辺だっけか?
それでも10センチ差とか、うぅ……いぢめられなきゃいいけどなぁ。今の俺じゃあ女子にも力で敵わないわけだし

(ブブブブルルッ、ブブブブルルッ)
「ひぅっ!?」

ネガティブな方向に飛んでいた思考が携帯のバイブ音で引き戻されると、何やら自分でも意図せず可愛らしい悲鳴が上がってしまった。
母さんに聞かれちゃいないだろうな、と赤くなりつつ画面を確認すると、トシのやつからメールが来ていた。時計を見るに、向こうは休み時間中か……

(昨日今日とどうした?体調不良とだけしか連絡来なかったんだが、もしかしてお前……)

ありゃりゃ、そういや連絡してなかったっけ?どう返したもんか……

(いやいやww腹出して寝てたらおなかの風を貰っちまって……昨日は便器が友達でしたwwwwww)
(汚ぇ!見舞いにでも行こうと思ってたけど、自粛するわ)
(ちょww今日はもう大丈夫だって!正直半分ズル休み……小テスト乙wwwwww)
(赤ギリギリの俺に謝れ!ほんとに行かんぞ?)
(寂しいこと言うなよぅ、暇なんだよぅ……この前言ってたゲーム貸すからさ、来てくんろ〜)
(分かった分かった、それじゃあ五時ごろな)
(見舞いの手土産希望)

あ、返信途絶えた。まぁ、あいつなら来てくれるだろう……
それで俺の部屋に入ったら見知らぬ幼女が出迎えるわけだww奴の驚く顔が目に浮かぶwwwwww
まぁ、ドッキリは別としてトシにはやっぱり先に知らせておきたいもんな。明日からの学校生活でも、フォローをお願いしたいし。
っし、そうと決まれば腹は決まった!用事が済んだらとびっきりのおめかしをして、あいつを吃驚させてやろう……ぐへへwwwwww
247 :続き [sage]:2011/05/30(月) 18:46:52.63 ID:EYp4Mdhk0
-----------------------------------------------夕方------------------------------------------

なぜか部屋の中央に正座している今の俺は、リボンとツインテールとで亜麻色の髪を可愛らしく飾り、(イタズラ計画に悪乗りした母によって引かれた)リップが瑞々しい唇の色を引き立てている。可愛さ当社比60%増しだ。
だのにその眉間には、愛らしい顔に似つかわしくない皺が見て取れる。

(遅い……)
時刻は午後五時半、自室で待機中の俺は我慢の限界にあったのだった。
(トシのやつ……せっかく俺が気合い入れたってのに、バカみたいじゃないか)
これはあいつにも恥をかいてもらわねば割に合わない。初めは親戚の女の子の振りでもして、ちょっとでもデレデレしたところを見せたら正体ばらして

「ロリコン乙♪」

と笑ってやるのだ。うんそれがいい、そうしよう!
そんな計画を練っていると、やっと玄関のチャイムが鳴る。これは……

「お邪魔します、和史のお見舞いに来たんですけど……」

トシきたああああああああ!!おい、母さんの相手なんてせんでもいいから上がって来いって!!
よしっ、「俺が部屋にいると」はいなかったな……母さんgj
さあバッチこい!今の俺は「和花(のどか)」、役所で変更した新しい名前だけど今は俺の従妹って設定で……っ

(ガララッ)

「う〜す、和史ぃ腹の具合はいかがなもんか……ね……?」
「(びくぅっ)ひ……ひぁっ!?」

なんか分からんうちにトシ乱入。早く来いとは言ったけどさっ、ノックくらいはしてくれ!仮にも女の子の部屋に……って、おかしいおかしい。
こちらもこちらで混乱しているが、向こうも相当驚いているらしい。口をぽかんとあけたまま、こっちをガン見で見下ろしてくる。
まあ狙い通りっちゃ狙い通りなんだが、この空気はなんか気まずい……ここは俺から話しかけるべき、だよね?

「あ、あの…っ、私、従妹の和花って……いいマス。和史…お兄、ちゃんは今…トイレで、その……」
「………………」

おいぃ、なんで無言?ってか、こっち見んな!なんでガン見っ、目がこえぇよっ声震えんだろうがっ!
暫らく無言で見詰め合った俺たちだが、硬直から解けたトシの開口一番がこれ↓

「スカート……もうちょっとで……見え(ry」
「へ……へぁっ!?」

待機中のイライラでそわそわ動いていたからか、綺麗にしてあったはずの黒ワンピの裾が捲れあがってあられもないことにっ!?
頭の中は男でも、いやだからこそパンチラなんて恥ずかしすぎる!キッ、とやつを睨み上げてやる……涙目なんかじゃないんだからねっ!

「あ……ご、ごめん!俺、和史の親友で同級生の森野俊彦っす!」
親友……ねぇ?
「いや、ホントにゴメンっ!初対面の娘相手に何言ってんだか……」
そう言いながら視線が俺の顔と下腹部とを往復してるわけだが……
「ぶつぶつ……(和史ぃ、こんなに可愛い従妹《いもうと》がいるなら紹介しろと)」
なんか俺が呪われてる気が……ってか可愛いって聞こえた!?俺が!?
「隣いいかな?手土産に桃ゼリー買ってきたんだ、和史は食えないだろうから、一緒に食べちゃおうか?」
お、桃ゼリーとは気が利くじゃん♪……ってちょっと待て!今座りがてら胸元覗きこんだだろっ、見てたからなっ!
「しっかし、あいつは従妹ほっぽって便所籠りとか……それでも待ってあげてるなんて、和花ちゃんは優しいねぇ」
 (わしわし……)
頭を撫でるなっ、ってか距離が近ぇよ!なんかいつもと雰囲気違うぞ……正直、キモい!!
「……コン…つ……」
「(わしわし……)ん?」
「ロリコン乙って言ったんだよ!!道理で乳に反応しないわけだよこのド変態っ!!」
「(ドスドスッ)〜〜っ!?ぐ……ぐはっ!!」

やはり図星かっ、幼女姿の俺に罵られたせいかトシのやつ真っ白に燃え尽きてやがる。
……でもなんか気持ち良さそうにも見えるな、キモいので今のうちに距離を開けておこう。
248 :243 [sage]:2011/05/30(月) 18:49:39.15 ID:EYp4Mdhk0
思いのほか長引いたので、とりあえずここまで
安価ありがとうございました。楽しく書いてます。
249 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/30(月) 20:11:52.65 ID:WOcbFef7o
>>239
何気に>>214の続きだGJヤッホイ(n゚ω゚*)
特徴あるキャラクター造形で面白いなぁ。特に妹さんが。

それにしてもどうして名前を連呼してるのですかwwwwwwww
250 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/05/30(月) 21:25:38.17 ID:D+tFbZs00
>>248
続きwktk
251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/30(月) 22:46:22.78 ID:J+ugDgYDO
最近賑わってるな、実に喜ばしいことだ
252 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/05/31(火) 17:51:24.39 ID:HCUwh6qY0
>>240-248
なんという流れwww
そして職人さんのこだわりの性癖wこのノリは大好きです。
凄いッス…凄いッスよ…尊敬します、続きに期待。

>>249
>>それにしてもどうして名前を連呼してるのですかwwwwwwww
「私は風見さんの大ファンですから」とか某ビブリオマニアっぽく言ってみる。

妹も含めこのシリーズ、自分でもキャラの様子がオカシイと思う。
そして相変わらず間違い発見。

冒頭部分↓が抜けてました。無くてもなんとなく雰囲気はわかると思いますが…
〜きょうしつっ!〜──────────────────────────────────────────────────────

×「先っちょは…剥けるますか?」→○「先っちょは…剥けますか?」
「剥けるます」コレはコレで可愛いかも知れんが…

セフレのやつの続きは頑張ってなんとかするorz 拓海を可愛く書きたい。
だが、今は別のが書きたいので…よかったら安価恵んでください↓
253 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/05/31(火) 20:17:03.01 ID:T+Vqkm2do
生粋の女子生徒から見た異性化した元男子生徒

普通すぎる気がした。
254 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/05/31(火) 22:14:11.19 ID:IyKK/23AO
>>253
池○彰「さすがは以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本)さん、いいお題ですねぇ」

果たして漏れに面白く出来るか…そこが問題だが…超ガンガル!
255 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/06/02(木) 02:00:05.54 ID:KxTUYm5go
>>252
「剥けるます」って個性だと思ってそれも含めて面白いなーとか思ってました。
ミスだったとは…(n゚ω゚;)

>「私は風見さんの大ファンですから」
別に風見を優遇してるわけではないんですが、サブキャラのが人気が高くなるものなのかなぁ

>>248
真っ白に燃え尽きたロリコンがどう料理されるのか物凄く気になりますwwwwwwwwww
256 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/03(金) 21:08:53.74 ID:j8HX0+iQ0
>>255
おっふ…!野暮なコトしてたらしい。
やはり「剥けるます」は天啓だったか…
こうなったら「ちちち…違ェーよッ!ホントはうっかりワザとだよッ!?」とか言って訂正を撤回するしか…

>>別に風見を優遇してるわけではないんですが、サブキャラのが人気が高くなるものなのかなぁ
なんか風見さんにツボってるんですよね。風見さんかわいいよ風見さん。
257 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/06/04(土) 01:22:37.96 ID:KQPohBZto
大量の投下があっておじちゃん嬉しいですよ
職人さんも少しずつ戻ってきているみたいですし

ここまでも作品まとめておきました
出来る限り誤字訂正などした…つもりです
ミスある可能性が高いので、気になる方は確認方願いますですです
258 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/06/05(日) 04:35:00.69 ID:z02vI9Hk0
>>253のお題

「…お、おはよう…」
「?おはようございまぁす…」
「あ、やっぱわからないよな…ボクなんだけど」
「はぇ…?」

連休明けの気怠い朝。五月病の実在を実感しているとマンションの隣の部屋から同じ高校の制服を着た見覚えの無い娘が出てきたので
ついジっと見てしまった。バッジを見る限り同じ学年らしい。でも隣の部屋に住んでるのは同じクラスの楠くんの筈だ。
じゃあこの娘は誰だろ?と思っていたら、どうやら楠くん本人らしい。

楠くんは半年程前に越してきた。同じ高校に進学する事もあってちょいちょい話はするようになった。
けど、そこまで突っ込んで親しいわけではなく、要するに普通のお友達だと思う。…ちょっとカッコいいかなとか思ってたのは内緒だ。

15、16歳の誕生日で男性は女性化する。所謂、TS症候群。小学校の3年生位には授業でも習ういわば常識で、
15歳で女性化するのは女性化者全体の1割以下で多くの場合は16歳で女性化するらしい。
そして、女性化した者は殆どが『美少女』とか『美人』だとか称される様な容姿になる…と習った。
回避するには『童貞を捨てる』、要するに女の子とセックスすればいい。彼女とかの、要するに『する相手』がいない人用に国が運営する
『国営ソープ』とか『施設』と呼ばれる場所もあるんだけど抵抗があって結構行かない人もいるって聞いたことがある。楠くんもそうだったのかな。

…第一印象は『ズルい』と思った。

女性化した人ってテレビとかでは見たことあったけど、いざ『現物』を目の前にすると不思議と言うか凄いと言うか、
人間ってこんなに変わるもんなんだなと思った。楠くんは何と言うか『フツメン』だったんだけど、目の前のこの娘は『純和風美少女』って感じか。
腰の辺りまで伸びた長い艶やかな黒髪はシングルテールに結われてる、雪とか白磁とかに喩えられそうな真っ白い肌、幼い印象の整った小さな顔、
何より特徴的な吸い込まれそうな大きな丸い瞳。睫毛も長いよ。なにこのクオリティー。
身長は、前は170cm位あったと思うけど、今は私より多分5cmほど低いから150cm位とか?
スタイルも良さそうだ、おっぱいは小さそうだけど無いって程じゃないのかな?Aとかかな?よしッ、ここだけなら勝つる!
にしても細ッ!!でも不健康な感じがしない細さ。なにそれ羨ましい。足とかもスッラーって超長い。鬱で死にたくなる。
…チートって言うんだっけ?こーゆーの。どうしたらこうなるんだろ…

「……ねぇ、河瀬?」
「ひょぇ?…あ、ごめん呆けてた」
「いや、いいんだけど……ボク、変なトコないかなあ?」

変って言うかふつくしいです。女として生きてきた自信無くすよ、何これ可愛うぃい。
自信無さ気に上目遣いで覗き込むとかテンプレ通りなんだけどそれ故に威力抜群ですねわかります。

「か、可愛いと思うよ?」
「可愛い…か、ハァ…それ、喜んでいいのかな?イマイチ分からないんだ…」

何が不満なのだろう?女の子は可愛いが無いと生きていけないんだよ?可愛いは正義なんだよ?
可愛いはすごいんだよ?ないと困るよ?むしろ可愛いがおかずだよ?下ネタ違うよ?

「それだけ可愛かったら多分みんな大騒ぎだと思うよ?」
「うぁ…それ考えたくないな…やっぱもう少し休めば良かったかなあ…」
「誰かに相談したの?」
「話した奴はいるけどね…そいつ学校別だから…高校で親しいって程の友達がまだいないんだ」
「はぁー…ツライね、それ」
「仕方ないけど…なんか、今更だけど…後悔とか、ね」
「…そのぉ、何で…『施設』とかに行かなかったか…訊いていい?」
「……うん…あのさ、ウチ母子家庭って知ってるよね」
「うん」
「親の離婚の理由な、父さんの浮気だったんだ」
「…うん」

マズった、意外と重い話っぽい…もっと単純に「あーゆートコってなんだか怖そう」的な軽ぅい感じを想定してた。
259 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/06/05(日) 04:37:31.41 ID:z02vI9Hk0

「父さん、母さんと別れる直前まで『あいつとは気の迷いだった、愛してるのはお前だけだ』とか言い訳してて」
「…うん」
「…ボク小4の頃だったんだけど、それ見てて…なんか、好きでもない相手と何で『そういう事』が出来るのか信じられなくて…
 それまで尊敬してた父さんの情けない姿とか…父さんを見る母さんの冷め切った眼とか…本当…凄くイヤで…」

おぉぅ…やっぱトラウマ系の話かぁ…もろ地雷だったね。あー、もの凄い弱々しい顔してるし…やびゃい保護りたい。

「だからボク『施設』とかで好きでもない……ッて、ぅえっ!?かッ…か、か、河瀬ッ?!」
「……(あるぇ?)」

気が付いたら抱き締めてしまっていた。…だって可愛いし。あー、いー匂いするー。

「あの、ね?わたしなんかで良ければ相談でもなんでもしてよ…力になりたいんだ」
「…河瀬……いいの?」
「うん、わたし実は前から楠くんともっと仲良くしたかったんだよ?」
「ふぇッ?!ぇっと…あ、あの…その…そ、それ…って…」
「…友達として」
「あ、あーッ!?で、ですよねー!?わかりますッ!…わかりますよ、ハハ…」

楠くんの力になりたい、守ってあげたいと思った。これは本当だ。
でも、慌ててる様子があまりに可愛くて思わずちょっとだけ嘘をついてしまった。

登校してからはそれはそれは大変だった。まーそりゃーそーだろーねー、楠くん可愛いもん。
クラス内カースト中位の男子は楠くんの机に群がり、上位のイケメン達は遠巻きに様子を伺い、下位のヲタ・池沼達はチャンスの順番に備えている様だ。
女子も反応はそれぞれで「可愛いー」とか「キレー」とか言ってきゃいきゃい騒いでる子もいれば、やっかみの視線を送っている子もいる。
予想はしてたけど大変そうだなー。なんとかしなきゃ!

わたしはなんとか楠くんを連れ出し今はトイレトーク中だ。

「いやー、やっぱし凄かったね」
「暫くあの感じが続くのかな…勘弁してほしい…」
「しょうがないよ、楠くん可愛いもん」
「河瀬ぇ…」
「うーむ…可愛いのはホントだけどぉ、このままじゃ大変だもんねー…とりあえずウチのグループに入る?」
「グループ?」
「あー、深く考えないで、要するに友達を紹介するよってコト」

友達付き合いの感覚も男女では少し差があるかも知れないけど、今の楠くんには一人でも多くの味方が必要かなと思った。
予想していたとはいえ皆の反応が激しい。わたし一人ではフォローし切れないだろうし、いじめとかあっても困る。

「…というわけで〜、楠…えっと、下の名前って国久のままじゃないよね?」
「桂ぁ、HRの時の自己紹介で言ってたろ?聞いてなかったのか?楠来未ちゃんだよね」
「…『ちゃん』とか…恥ずかしいから、やめて…」
「よろしくねー、来未ちゃんー」
「あ、よろしくおねがいします…えっと、日比野さん、敷島さん」
「そんな緊張しなくても…まぁ宜しくね!…なんかお姫様っぽいから姫って呼んでいい?」
「いや、それも勘弁…」
「姫ちゃんかわいー、女性化した子ってみんなかわいーよねー」
「ホントなぁ、静花がいっつも一緒にいる子も入学してすぐ女になってたよな?」
「うんー、タクちゃんは可愛いってゆーかーマジ天使だよー、姫ちゃんにも今度紹介するねー」
「…いつの間にか姫ちゃんに確定されてる…」
「まぁ、女子のノリなんてそんなもんだよ姫ちゃん」
「河瀬ぇ…」
260 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/06/05(日) 04:41:38.34 ID:z02vI9Hk0

それから暫くはクラスの皆の反応も落ち着き、懸念してたいじめ等の問題も無かった。
まぁ、なんだかスゴイらしいあの『敷島 静花ちゃん』と同じグループだからへたに手出しなんて出来ないだろうけど。
わたしらからするとフツーに可愛くてぽやっとしてる子なんだけどなぁ静花ちゃんって。

楠くんは放課後にはわたしらと一緒に学校近くのカフェや蔦屋に寄り道したりして、なんとなく『女の子』馴染んでいってるようだ。
クラスでも男女問わず少しずつ打ち解けていてる感じだった。

日曜日、そろそろサ○"エさんが始まるかなって時間、マンションのロビーで楠くんと一緒になった。

「あ、BMX」
「うん、この体にも慣れてきたからまたはじめようと思って」
「じゃあ、すぐそこの公園で練習してたんだ」
「久々にやったら夢中になっちゃって…もう少し早く切り上げるつもりだったんだけど…でも楽しかったー」

BMXをしてる楠くんは何回か見た事がある。普段おとなしくて、どちらかというと地味な印象の楠くんが
一生懸命にトリックを練習してるのを見てわたしは…カッコいいなと思っていた。
今、目の前にいる子は姿形は違うけど、その笑顔は男の子だった時の楠くんと同じで…

「楠くん、カッコいいね…」
「え…?」
「へ?」

…しまった、思考が口から漏れてしまってたらしい…

「い、いや〜、あはッあはッ……じ、実はねぇ、わたし楠くんのコト、ちょっとカッコいいかなーとか思ってたりしたんだよねぇ…」
「か、河瀬…ッ!?」
「いや、好きとかそういうんじゃないんだよ?それ、BMXとかしてるの見てぇ、一生懸命に汗してるのとか素敵ぃとかそんな感じなだけ…」
「あ…う、うん、ありがと…」
「いやいや、こちらこそ…だからね、今は楠くんとお友達で、前より仲良くなれたから、嬉しいんだよ!」
「河瀬、あの…」
「じゃ、じゃーねーッ!また明日ッッ!」
「あ!待って河瀬っ!」

照れ臭くなって部屋に逃げ込もうとしたら楠くんに手を摑まれてしまった。…やばい、もっと照れ臭い状況じゃん。

「河瀬…あの、ありがとう」
「ほぇ?」
「女の子になってから…河瀬がいなかったらボク、一人で途方に暮れてたと思う…だから、あらためて言いたかったんだ」
「い、いやーいいよそんなの」
「本当にありがとう河瀬」
「へへへ、照れるね…」
「それからさ、ボクのこと男の時の呼び方のまま呼んでくれるのも河瀬くらいだし」
「へー、そうなんだ」
「うん、もう他の皆は『姫』とか『ちゃん付け』で呼んだりとかだから、なんか寂しくて」
「寂しい?」
「うん…女の子扱いが当たり前になっていって、それに慣れて…段々と男だった頃の自分が薄くなって、消えていくみたいで…
 ボクはもう女の子だから、それで当たり前なのかも知れないけど…じゃあ、男だった頃の自分はなんだったのかなって…思ったり」
「楠くん…」
「だから、男の時と同じ呼び方とかされたりすると、変かもしれないけど…嬉しいんだ、だから…」

……にょたっこも複雑なんだなー…それよりもさ〜、楠くん…あの〜、その…
261 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/06/05(日) 04:42:55.52 ID:z02vI9Hk0

「…………手」
「え?……ッ?!!あ、あーッ!?ご、ご、ご、ご、ごめんッ!!」
「いいよー、女の子同士だし」
「え、あ、いや…そういう問題じゃなくて…その」
「へへへーッ、そりゃッ!」
「か、か、か、河瀬ェッッ?!!」

思い切り抱きついてみた。楠くんが可愛いのが悪いんだと思います。

「フムフム、やっぱりおっぱいちいちゃいね」
「か、河瀬…その…」
「むふーぅ、ドキドキしてる?」
「っ…河瀬ーッ!」
「…楠くんはね、楠くんだよ」
「…え?」
「女の子に抱きつかれて顔を真っ赤にしてドキドキしてるんだよね?じゃあ、楠くんの中の『男の子』はまだ楠くんの中にいるよ」
「…河瀬」
「楠くんが女の子に慣れていっても、その『男の子』は楠くんの中にちゃんと残ってるとおもうよ?それに…
 わたしはずっと覚えてる、わたしがカッコいいって思った男の子の楠くんをずっと覚えてる!」
「……」
「これから、女の子の楠くんと過ごす時間の方が男の子の楠くんと過ごした時間より長くなっても、わたしは男の子の楠くんを忘れないし…
 今、目の前にいる可愛い女の子の楠くんも、カッコいい男の子の楠くんも、同じ楠くんだと思うよ!」
「…河瀬……ありがとうッ…」
「えへへー、どういたましてぇッ!うーん、やっぱ可愛いねー楠くんは」
「……頭を撫でないでよ」

…わたしも抱きついた時にドキドキしてたのは内緒だ。…バレてるかな?まぁ、楠くん凄くキョドってたからバレてないか。
それにしてもやっぱり『ズルい』と思った。もう楠くんは女の子なのに…ズルい。
262 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/05(日) 04:54:48.61 ID:z02vI9Hk0
…まじめに取り組んでるつもりだったのですが…気が付けばいつもの仕上がりでしたorz なんかレズってばっかじゃね?
投下も思ったより遅くなってしまいました。不甲斐ない…申し訳ございません。

>>257
まとめありがとうございます。
やはり自分の書いたのが載るという感覚は慣れません///…ハズイ、モヨモヨシチャウ。
263 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/05(日) 05:25:18.72 ID:4C8q2tbAO
恒例の間違い発見orz 落ち着いて書けよ漏れ…

>>260のトコ

×それから暫くはクラスの皆の反応も落ち着き、懸念してたいじめ等の問題も無かった。

○それから暫く経って、クラスの皆の反応も落ち着き、懸念してたいじめ等の問題も無かった。
264 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/05(日) 20:24:58.68 ID:nv99sx80o
なんかキュンときた
すっごい良かった乙
265 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/06/07(火) 19:00:13.86 ID:UJ+RQ7NT0
>>264有難うございます。何よりの励みになります。

なんか最近、また人居ない感じです?寂しいので、つい…

「……」
「あ〜…え〜っと…スマン…」
「…最低だよ…お前」
「いや〜…でも、ほら、女が男の部屋に泊まるってそーゆーコトじゃんか」
「昨日寝るまでオレは確かに男でしたッ!」
「そーでしたねー…」
「普通いくら女体化したからって…親友を…ヤるとか…っーかレイプじゃねーか!?」
「いやいや、それは違うって」
「いーやアレはレイプでしたッ!無理矢理キスしてきたし…オレ、ファーストキスだったのに…舌とか入れてくるし…」
「お前、唇離したら潤んだ瞳ェして『もっと…』ってねだってきたよな」
「そのまま胸とか揉むし…乳首しつこいくらい弄るし…」
「あの辺でもうお前完全に表情蕩けてたよな」
「挙げ句いきなり挿入れてくるし…オレ当然処女なのにお前勝手に動くし…最後、膣内射精だったし…」
「射精す前、お前の膣内『きゅううぅッ』ってなったけど、アレってイってたろ?いや、俺も童貞だったからよくわからんけど」
「…馬鹿ッ…お前なんか…もう親友じゃねーよ」
「じゃあ俺、お前の彼氏になろうか?責任取って」
「おまッ…馬ッ鹿じゃねーか!?って近付くなよ!?この強姦魔ッ!!」
「俺、お前に一目惚れなんだが」
「ふへッ?!」
「…好きだ」
「ば、馬ッ鹿じゃねーか馬鹿ッ!!」
「お前は?俺を今どう思ってる?」
「…ほっぺた触んな……好き、じゃない…」
「…もう一回、するか?」
「……馬鹿」

…みたいなべったべたな妄想してしまったんだが誰かなんとかしてくれ。
266 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/06/07(火) 23:04:43.66 ID:80Kj8wNA0
GJGJGJ!
267 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海・関東) :2011/06/08(水) 10:22:41.55 ID:Wpc0DXoAO
朝だしこっそり安価でも置いておく↓
268 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/06/08(水) 12:26:04.53 ID:5v8io+SV0
にょたにき(貧)とにょとうと(豊)で仲良く姉妹喧嘩
269 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/06/08(水) 12:26:43.19 ID:5v8io+SV0
にょたにき(貧)とにょとうと(豊)で仲良く姉妹喧嘩
270 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/06/08(水) 12:27:52.52 ID:5v8io+SV0
おぅふ、二重投稿になってもうた……すまぬ
271 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/08(水) 13:41:56.22 ID:jhAWkOV10
兄弟喧嘩と聞いて「魔乳剛掌波」とか「無乳転生」とか言いながら乳繰り合う
にょた姉妹を妄想した私は色々終わっているかもしれない
272 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/06/08(水) 15:30:15.74 ID:iiQXqDGzo
「弁当が食べたい」

「…どうしたんだ急に?」
唐突にそんなことを言い出すものだから、不審に思い聞き返した

「手作り弁当が食べたい」

なるほど、なんとなくこいつの言いたいことがわかったぞ
…しかし残念ながらその案はいただけないな

「ほか弁でも頼んだら?」
「女の子の手作り弁当が食べたい」

くっ…間髪いれずに返してくるな…
でもここは妥協するわけにはいかない
あ、そういえばこいつには…

「お姉さんいるんだし作って貰ったら?」
「俺は、お前の、手作り弁当が、食べたい」

ああ、やっぱりね…
「はぁ……あのな?」
「おお、作ってくれるのか!?」

そんな嬉しそうな顔されると言いにくいなぁ…
「あ〜…俺が不器用なの知ってるよな?」
「おう、お前の書く絵とかやばいもんな」

うん、とりあえず殴っとこう
「すまんすまん」
くっ…ケロッっとしてやがる…

「…あのね、期待してるとこ悪いんだけど、俺料理苦手なんだよ…」
「そうか?前に作ってくれたチョコは美味かったけど」
そりゃ元々は市販のチョコだしね…

「一応お母さんに鍛えられてるんだけどね、中々上達しないの…」
自分で言ってて段々悲しくなってきた…うう、なんかウルウルしてきたぞ…

「っ!?あ、その、だっ、大丈夫だって!お前なら絶対上達するって!」
慌ててフォローするくらいなら最初から言わないでよ全く…

「…ほんとに?」
「あ、ああ…勿論」
拗ねたように見上げて尋ねたら今度はなぜか目を反らしやがった
くそう、なんだか腑に落ちないけど…
「一応ありがと…でも、せめて上手になるまでお弁当は待ってて欲しいな」
まあ、美味しいって…喜んでもらいたいし

「う、わかった…悪かったな、無理言っちまって」
「ううん、いいよ」

――その晩

「…妙に張り切っちゃって、一体どうしたの?」
「別にいいでしょ、お…私だっていつもより頑張りたくなるときぐらいあるよ」
「ふ〜ん?それと!いい加減『俺』って言うの直しなさい、そんなんじゃ誰かさんに嫌われちゃうわよ?ww」
「〜ッ!いいのっ!」
273 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/06/08(水) 15:33:10.35 ID:iiQXqDGzo
という保守

長めでキュンとなるSSを書こうと思ったけどどうしても話が続かない・・・
もといスレに活気が戻ってきてくれたおかげでキュンキュンしっぱなしで幸せなのでひっそりとROMってることにします
そして職人様&まとめの方々GJ乙でございます

だが覚えておくがいい!スレが再び止まったとき・・・私は短編保守しに戻ってくると!
274 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/08(水) 19:08:33.79 ID:iMhMD/w1o
なんか最近VIPサービス系統の鯖が全体的に重いよねぇ
275 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/08(水) 21:48:56.80 ID:JJSmwiWAO
>>273
グゥッジョォ〜ヴッッ!!
キュンってなった…キュンってなったッ!
こんなにキュンとさせといて後はROMるなんて絶対許さないんだからねッ!
どうしてもROMるって言うんなら私が変わりにROMるッ!

SSの投下楽しみにしてます。
276 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/06/08(水) 23:55:35.47 ID:AyB7aQRvo
>>274
5月末に忍法帖リセットが1回あったらしいし、そっち関係で重いのかもしれない
277 :247の続き [sage]:2011/06/10(金) 01:21:53.07 ID:IlYljaNp0
「……つまり、和花ちゃん=和史でお前はやっぱり女体化したと?」
「そーそー、そいでトシはそんな俺に欲情した……と」
「欲情言うな!ただ俺は若さあふれる蕾の美しさを目出ていただけでだなぁ……」
「キメぇよっ、やめい!ったく……マジメ君かと思ったらとんだ変態だったわけか」
「……っ!!その侮蔑の目でもっと見つめて欲しい、って言ったらどう思う?」
「……………………………」
「おぅふっ!(くねくねビクンビクン)」

……なんだこれ?目の前で悶えまくる男があの冷静な幼馴染とはとても思えない。

「……ふぅ、ちと取り乱しちまったな」
「いや、ちょっとどころじゃない気が……ったく、これじゃあ普通の反応を期待できないじゃあねぇか……」
「……?どういうことだ?」
「いや……その、今の俺ってあれだろ?その、お前みたいな犯罪者予備軍が反応するようなロリボディなわけで……言ってみりゃあ極度の発育不良なわけじゃん?」
「案ずるな、充分すぎる程に魅力的だ!」
「茶化すなっ……不安なんだよっ!ただでさえ女体化したってだけで奇異の目で見られるかもしれないのにっ、
 俺……皆にちゃんと受け入れてもらえんのかな?お前の目から見て変に映らないか?」
「……………………」
「黙んなよっ……こんな身体じゃあ、苛められたって抵抗のしようがないだろ?見る人見る人デカくて怖ぇんだよ!」
「……………………」
「だから、お前さえ迷惑でなきゃ俺を守ってもらえないかな……なんて。なぁ、なんか言ってくれよ?
 俺はまだ、心は男のつもりなんだ。だから女友達なんかできなくても、お前がいてくれりゃあ……おい、さっきからなに黙りこんd(ry」
「………………も、萌えぇぇぇえええ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「〜〜〜っ!?うひゃぅっ!!!」

内容は兎も角、それまで黙っていた相手にいきなり大声を出されて怯んでしまう。自分より三回りも大きな相手となればなおさらだ。
思わず縮こまって怯えた目で見上げると、トシは何かが(主に鼻から)こみ上げてきそうなのを抑えながら、俺の頭に手を載せてきた。
278 :247の続き [sage]:2011/06/10(金) 01:23:32.86 ID:IlYljaNp0
「ん、まぁお前の心配してるような事態にゃならんだろ(わしゃわしゃ)」
「ふぇ……?」
「にょたっ娘の例に違わずお前も可愛いっ、いやマジ天使と言っていいだろう!」
「……………」
「けどまぁそれで女子連中の嫉妬を買うことはあるまい、主にスタイル的な意味で」
「あぁ〜〜、納得(ぺたぺた♪スカスカ♪)」
「それに組は違えど体育ん時は晶(あきら)と一緒になるしな。着替えとかで最初はひと悶着ありそうだけど、そこは幼馴染のよしみでフォローしてくれんだろ。
 お前おっぱい星人で通ってるけど、実際行動に移せないチキンだったからこうして女体化してるわけだもんな」
「……っさい!」

……そっか、晶がいたんだ。最近疎遠になってたけど、頼ってもいいのか?
ってか、あいつにまでこの情けない姿を晒さにゃならんのか……なんか学校行きたくなくなってきた。

「そんなわけで、苛め云々は心配に及ぶまい。
寧ろうちのクラスの雰囲気を考えるに、妹兼マスコット的に可愛がられたりはしそうだが……そういう意味では“いぢめられる”と言うのもあながち間違いではない、か」
「市川とか佐々木とか吉田とかなぁ……恐ろしいこと言わんでくれ」

いつも賑やかにしている三人娘を思い出す。吉田はいい乳をしてたんで目で追ってたが、あのキャピキャピした雰囲気はどうも苦手だ……いや、悪い娘らじゃないんだが。
可愛いもの好きっぽいあいつらに絡まれたら、撫でられすぎた猫のようにノイローゼを起こしてしまいそうだ。

「俺としてはいいんだけどな、高1女子の集団の中で一人揉みくちゃされてる幼女の図……うん、実にイイっ。
 そして俺は、座してただそれを鑑賞するのみ。割って入るなどと無粋なことはしないから、安心して愛でられてくれ」
「いや助けろよ!?そこは割って入ろうって!!」
「だが断る。こんな美味しい絵を逃す手はないだろうがっ!」
「美味しいとかっ、お前んなこと言うキャラと違うだろっ!」
「バレちまったからにはこれ以上隠すこともないからな、ようやっと腹を割って話せる仲になったわけだ親友よ……
 っと、もっともお前は本日をもって俺の中で親友から天使へとクラスチェンジを果たしてしまったわけだが」
「んなっ!?」
「天使がいやなら姫でもいいぞ?となれば差し詰め俺はナイトってわけだ。
 お前に下心向けるような野郎は寄せ付けないし、万が一にも苛めに遭うようなことがありゃあ守ってやるから安心しろって」

そう言って、やつは俺の手を取り……そして

「〜〜〜〜〜っ!?」
「ま、報酬代わり兼誓いの接吻ってことで……ごちっす。フヒヒ、思った通りスベスベなのなwwwwww」
「〜〜〜っ、は……恥ずっ!!ってか、さっきから言ってることがキザ通り越して寒いんだよっ!!」
「顔真っ赤にして言っても怖くないってか、激しく萌えるんだが……もしかして感じた?」
「ねーよっ!手だけで感じるとかどんだけだよっ!?むしろサブイボたってきそうだわっ」
「いや、世の中にはにょたロリビッチという言葉もあってだな……にょたっ娘の感度が高いのはデフォだろ常考
 んで、どうなん?その体で“そういう”ことはしたんすか?」
「してねぇっ!こんな無乳に興奮なんざしないし、下は……その、やっぱ怖いし……さ」
「ヘタレめ……だがお前がおっぱい星人でよかった。その清らかな身体が知らずに失われてしまっては、目も当てられんからな」
「ちょっ……お前何言って」
「いや、いつだったかの話を思い出してさ……なんだっけ?『万が一女になっちまったら、親友のよしみでお前の女体化予防してやろうか?』だったっk(ry」
「おまっ……調子乗んなこらっ、もう出てけぇぇぇえええっ!!!」
279 :247の続き [sage]:2011/06/10(金) 01:24:06.90 ID:IlYljaNp0
両手を突き出して全力でトシを追い出しにかかる。……重っ!?向こうは全然力を入れてる様子がないのにっ

「HAHAHA、幼女が涙目で頑張っている姿はイイものですなぁ……具体的には庇護欲に訴えかけてくる反面、こう、嗜虐心が刺激されるわけで」

45度前傾姿勢でやつを押している俺の視線の先、学生服のズボン部分に妙な膨らみが……〜〜〜っ!?

「お、おまっ何おっ勃ててやがる!これ以上荒ぶるようなら母さんに警察呼んでもらうかんなっ!?」
「おお、こわいこわいwwそいじゃあ退散するとしますか……明日から登校だよな、いつもの時間に出んのか?」
「いんや、明日は母さんと一緒に山センと用語の土屋さんに挨拶すっから早い。
……ってか、まさか一緒に行くとか言い出す気だったんじゃないだろうな?お前ん家からじゃ遠回りになんだろうが」
「幼馴染のロリっ娘と仲良く登下校なんてシチュを逃す手があるかっ、何時起きだろうとドンと来いだ!……ってなわけで、明後日から送り迎えは任せろ〜(バリバリ)」
「やめてっ!……って言いたいとこだが、正直助かる。明日は車だからいいけど、こんなナリじゃあしばらくは目立ってしょうがないだろうからさ。
 せいぜい人目除けにこき使ってやるから……よろしく、ね?」
「お、おぅ…………」

これから世話になるんだし、ちょっとだけサービスとばかりに上目づかいで微笑みかけると、とたんに赤くなって口ごもるトシ。
分っかりやす……ちょっと女の子らしく振舞っただけで、さっきまでの余裕が消え去っている。
なんか可愛いかも……って、いやいや待て待て待て!これはあれだっ、こいつがこれだけモジモジデレデレしてんのが滑稽なだけでだな、決してアッーな意味はなくっ

「おい……和史ぃ?どうしt(ry」
「なっ、なんでもないっての!いいからお前もう帰れよっ!!」

再び全力でタックルをぶちかます。今度は抵抗はなかった
ったく、まるで嵐が去ったみたいだ……階下であいつが母さんに何事か喋っているようだが、耳をそばだてる気力もない。
気疲れからか若干ふらつく足取りで、俺はそのままベッドに伏せるのであった……
280 :247の続き [sage]:2011/06/10(金) 01:24:51.09 ID:IlYljaNp0
----------------------------------------------夕飯時-------------------------------------------------

「ねえ、あんた森野君となんかあったの?あれから部屋から出てこなかったじゃない」
「なっ、なんもないっす!俺が部屋に籠んのなんていつものことだろっ」
「そう?お母さん森野君に『和史のことは任せてください、と言いますか、俺に和史を下さいっ!』
って言われちゃったから、てっきりあぁん♪なことやこぉん♪なことがあったかと……ww」
「んなっ!?」
「おいっ和花、どういうことだ!?父さんはまだそんな事認めてはおらんぞっ!!」

おいいいいいいい、あのバカなに言ってやがんのぉぉぉおおお!?
てか父さん、鬼の形相なんだがっ…………これはあいつタヒんだんじゃねぇの?
冗談でも「(手の甲とはいえ)キスさりました……グスン」などとは言えない怒気が俺に向けられている。コワイコワイコワイ!

「お父さんっ、和花が怯えてるじゃないのっ」
「ん、あぁすまん……しかしだな、こんなに小さいのに恋愛なんて」
「………………」
「それこそちょっと前までは『パパのお嫁さんになるっ』って言ってくれたのに……」
「お父さん、和花も女の子なんだから。知らず知らずに成長していくものなのよ……」

二人してイイ雰囲気なところ申し訳ないけど、俺の過去がナチュラルに捻じ曲げられてるのはなんだろう?機関の工作か?
いずれにせよ、俺が野郎と恋愛なんて無いから……ない、よな?いくら相手があいつだとしたって……
だ〜っ、もうこれ以上考えんのはやめっ!今日はさっさと寝ちまうに限るっ!!
281 :247の続き [sage]:2011/06/10(金) 01:25:35.51 ID:IlYljaNp0
----------------------------------朝だあっさっだ〜よ〜----------------------------------

「……そう言うわけですので、どうかうちの娘を宜しくお願いいたします」
いつもは肝っ玉カーチャンで通る母さんが、珍しく深々と頭を下げている。
つられてペコリとお辞儀する俺が身に纏っているのは、学校指定の制服(在庫一点限りだったsssサイズ:ただしこれでも随分と大きい)だ。
今日から女生徒として復帰ということで、母さんと一緒に担任に挨拶に来たわけである。
御年53歳の山田先生はこういったケースを何度か経験していたようで、落ち着き払っていたのが好印象だった。
母と別れ、教室に向かう間にいくつかの連絡事項を伝えられる。
一つは今日から俺の席が最前列真ん中に移動となること(身長的に当然の配慮なのだが、正直ありがた迷惑……)
二つ目に、それを提案したのがトシのやつだったってことと、あいつが俺の後ろに移ったってこと(ってか、最前列真ん中って吉田の隣……あいつ謀ったな!?)
三つ目に、これからトイレや更衣室は女子のものを使うようにとのこと(さすがに元男とはいえ、諸手を挙げて喜べるようなことではない……いざとなったら晶を頼るか)
その他諸注意を聞いているうちに、気づけば教室の前。山センに指示され、俺は廊下で待機する。

「あ〜……休んでいた藤本だが、今日から復帰することになった。ただ、君らも知っているように(云々かんぬん……)
「……と、そういうわけだ。藤本、入っていいぞ」

うわっ、ついに来たか……緊張で震えそうになる足をなんとか制して中に踏み込む。できるだけ顔は伏せて、俯きながら……

「え……?あれ、藤本君?」
「ちょっ……全然別人なんだけど!?」
「髪キレー、頭小っさ!やっぱ女体化すると美少女になるって本当だったんだ……」
「ってか、背ぇ低っ!俺の小5の妹より小さいかも……」
「(フヒヒ……制服姿もまた良しっ。セーラー服でないのが残念だが、袖から手の出ないブレザーもそれはそれでwwww)」

〜〜っ!俺が入る前から落ち着きを無くしていた教室の、いたる所からザワザワと声が上がり、無数の視線を向けられて俺はすっかり縮こまってしまっていた。
っつうか、いま小さいって言ったのは長谷川だな?覚えとけよっ、だれが小学生じゃいっ!
そして最後のは安定のトシ……視線だけでも言わんとしていることが充分分かってしまうのがキモい!

「っと、こんな姿になっちまったけど……藤本和史、です。これからは藤本和花として、まあ仲良くしてやって下さい」

それだけの簡潔な挨拶をすませてとっとと席に着く。もともと友人も多くない俺だし、変に愛想を振りまく必要もあるまい。
…………って、なんだ?あれだけザワついてた教室が急に静かに?
ちら、と隣の吉田を見る…………何すかそのキュンキュンと擬音のつきそうなオーラは!?
あ……目があった、男の頃だったら彼女の巨乳もあいまってデレデレしていたに違いない極上の笑みを向けられる。
だが、今の俺にはそれがご馳走や新しいオモチャを目の前にした子供のような顔にしか見えなかった。
…………こりゃあ休み時間はお約束の質問タイムってやつですかぃ?できればご遠慮願いたいなぁ〜、なんて
282 :247の続き [sage]:2011/06/10(金) 01:27:16.65 ID:IlYljaNp0
「これがあの藤本君!?うそっ、ちっさぁ〜っ……ねぇねぇ、身長いくつ?」
「昨日測ったら137っした……体重は3(ry」
(予想通りこうして例の三人娘に囲まれてるわけで……ってか、一番冷静な市川まで目を輝かせてやがるっ!?)
「言わんでいい、言わんで!その身長考慮してもこっちが太って思えてきちゃうから……顔も小っちゃいし手足も長いし、うらやましいわ」
「…………(このツルペタボディのどこがうらやましいと、佐々木よ?)」
「涼ちゃんってば、藤本君も女の子になったばかりでそんなこと言われても困っちゃうよ
ところで藤本くん改め和花ちゃん……ギュッってしてもいいかな?いいよね♪」
「うぎゅっ、吉田さん!?なにして……っ!?」

ちょ、肩に柔らかな感触ガガガっ!流石は吉田、なんかこう「のっかってる」感がハンパねぇ……てか

「いいのかよ、ほんのつい最近まで男だった俺にこんなことして……っ?」
「えっ、今の和花ちゃんだったら全然気にならないよ?細いけど柔らかいし、いい匂いだし?」
「いや、そういう意味じゃあなくてだな……」
「まあ、茉莉がそうしてるんだからアンタは無害ってことなんでしょ。エロい奴かと思ってたけど、案外ヘタレ草食男子なのねww
 うぎゅっ、とか言っちゃってww可愛い反応だったけど?」
「だっ、だれがヘタレ男子だっ!誰がっ!」
「そうだよ涼ちゃんっ。和花ちゃんはもう可愛い女の子なんだから、ヘタレ男子よばわりは良くないよ?」
「いや、そう言う意味でもなく……」

283 :247の続き [sage]:2011/06/10(金) 01:27:56.10 ID:IlYljaNp0
---------------------------------きゃっきゃ、きゃっきゃ♪--------------------------------

「でも朝急に席替え提案したってことは、やっぱり森野君には先に知らせてたんだ?」
「ん、まぁ幼馴染だし……」

俺と三人組の視線が後ろのトシに集まる。……なんだその“いいぞもっとやれ”みたいな表情は?
背後に視線は感じていたがこの野郎、ホントに質問攻めに遭った俺を見てニヤニヤしてやがったのかよ。

「俺も知ったのは昨日だったけどな、しかもこいつときたら下手なドッキリまで仕組んでくれてさ(わしわし)」
「んなっ、頭撫でんなっての!」
「まあ、戸惑う所もあるかもしれないけど、俺からも宜しく頼むよ。
 こいつも俺とばっかりつるんでるわけにはいかないだろうしさ、ひとつ女子の付き合いってやつを教えてやってほしい。」
「トシ……」
「おぉ〜、男の友情ってやつ?」

突然の真面目な声と表情に、さっきまでの怒気が萎んでしまう。なんだ、あいつもあいつで俺を気遣って見守ってくれてただけなのか……

「それと、だ」

……あ゛?

「俺と和花との関係は男の友情から男女の恋慕へと変化したので、そのあたりも宜しくお願いしたい」
「んなっ!?」
「「「……へ?」」」

あくまで学校でのいつもの冷静な態度を崩すことなく、高らかに宣言した我が親友。表情もさっきの真面目な表情のまま。
対して三人組は皆揃って口をポカンと開けて目を見開いている。当然の反応だろう、俺だってきっと同じ表情をしているはずだ
って……このバカ今、何……言って……〜〜〜〜っ!!!

「ねぇ藤本君、今のって……」
「ちっ、違うぞ市川!今のはこいつの妄言で……おいトシっ、お前教室のド真ん中でいきなりなにをっ」
「二人っきりならいいんだ……」
「それもちがうっ、佐々木!とにかく俺とこいつの間にそんな感情はないからっ、俺はいたってノーマルだ!」
「だからいたってノーマルな男女の仲だろう?お義母様には挨拶を済ませたし、前から俺の女体化はお前が防いでくれると約束を……(ry」
「お前もう黙れよっ!?」

(ざわ……ざわざわ……)

俺があまりに興奮して大声上げてしまったせいか、気づけば教室中の注目を集めてしまっていたようだ。あちこちでひそひそ声が聞こえてくる。

「ねぇっ、森野君と藤本君が……」
「女体化防ぐって……それも前からって、つまり……!?」
「キャーッ!!」

「森野君、ちょっといいなぁって思ってたのに……でもあの可愛さじゃ仕方ないかぁ」
「や、どう見たってロリコンでしょ……類は友を呼ぶってわけね」

「ちっくしょっ、森野の奴抜け駆けしやがってぇぇぇえええ!!」
「幼馴染でロリな彼女とかっ、どんだけ勝ち組だよっ!!」

「(……こいつら、好き勝手言いやがってぇ!)」
「だっ、大丈夫だよ和花ちゃんもう女の子だし!男の子が好きになっても全然問題ないって……私、応援するよっ!」
「吉田ァ…………」

こうして初日からトンデモない誤解をクラス中に植え付けられてしまった俺は、ただでさえ先行き不安な高校生活の今後を憂いて机に突っ伏すのであった……
と、ここで終わっておけばまだ良かったんだ。
隣のクラスにまで届いたこの噂が、まさかあんな事態を引き起こすなんて……俺には想像もできないわけで。
今はただ、このバカにどんな制裁を与えてやるかという思考に没頭することで周囲のざわめきを頭から押し出すのに精いっぱいな俺であった。
284 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/06/10(金) 01:38:10.65 ID:IlYljaNp0
とりあえず終わっとけ

なにやら続きそうな雰囲気を残したのは、書いてる途中で
「安価の幼馴染って、もしかして女の子だったんじゃ?」ってな考えに至ったわけで、時間が出来たら幼馴染(♀)版も書いてみたいなぁ……なんて

>255
いじられるにょたっ娘が好きな自分なんで、必然的に幼馴染は弄る側の変態キャラになってまった。
ご期待に副えなかったら申し訳ない

>257
まとめ乙です。


285 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/06/10(金) 02:09:30.83 ID:Y4EKolTWo
>>284
>ご期待に副えなかったら申し訳ない
期待以上でした。ごちそうさまです。ニヤニヤがとまりませんでしたわww
286 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/10(金) 11:08:40.44 ID:K/RV9bcU0
続きがキタZE☆GJヒャッホウ!萌えました!!
しかもまだ続きそうとかワクテーカです。

にょたロリが上手く表現できない漏れマジ涙目でしたww
和花ちゃんマジ天使。
287 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/06/11(土) 08:55:32.64 ID:DfveXZnE0
すっごくお久しぶりです。若しくは初めまして。
超個人的諸事情により、ネカフェにて、まとめに断絶してた個人的な中二趣味全開の記憶喪失にょたっ子と探偵のヘンテコ話の続きを少し載せました。荒らしとか乗っ取りの類ではないので、気が向いたら読んでくれるとうれしいです。

288 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/06/11(土) 22:09:46.22 ID:P2/ZPCFb0
お久しぶりです!
乙乙!!!
289 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海・関東) [sage]:2011/06/11(土) 22:26:44.08 ID:qqv2xzUAO
最近わりと活発みたいだし、一つ書いてみようかな。
というわけで安価↓(ただし、書き上がるのは遅い模様)
290 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/11(土) 22:36:38.90 ID:dIMOwdswo
文化祭の出し物がガールズバンドになった件
291 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/11(土) 22:45:46.24 ID:gDiocUuAO
どさくさに紛れて漏れも安価↓
292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/06/11(土) 23:05:26.55 ID:26U0cXQ+o
ファミレスとコーヒー
293 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/11(土) 23:59:08.55 ID:26U0cXQ+o
>>57のお題 初回>>84-89 前回>>228-232

学園祭中、視聴覚室は終日映画を垂れ流している。
上映されているジャンルはアクション映画からホラーにパニック物、恋愛ものetcと一通り揃ったラインナップだ。
但し一昔前の、レンタルで貸し出し期間1週間、5本で500円、みたいな代物ばかり。
その代わりに営利目的の上映は禁止されているのでタダで見放題。
ま、普通に外でデートして話題の映画でも見た方が良かったんじゃないかと思うけど、私服を持って無かった事が発覚したので外デートはしなくて正解だった。
制服姿で外デート……考えただけで寒気がする。これからはお洒落にも気を使わねば……

一応上映スケジュールを調べ、丁度恋愛映画の時間帯になるようにこれまで行動していた。
苦手なジャンルではあるけど、下手にアクション映画で興奮して彼に引かれでもしては元も子もないのでこのチョイス。
居眠りしないように頑張ろう。
…………こう思う時点で既に駄目な気配がするのはきっと天狗の仕業に違いない。

「間に合ったかな。」
「え?何に?」
「上映時間に。ちょっと古いやつだけど、こういうのは雰囲気が大事なんじゃないかなって思って選んだのだからさ。」
「選んだ?」
「うん、死んだはずの奥さんが1年後にちょっとだけ戻ってくるって言う恋愛小説の映画化されたやつね。」
「あー…聞いた事あるような無いような……」
「あはは…やっぱり興味無かったかな?」
「い、いや、興味ならある。うん、あ、あるから。」
「大丈夫。ボクもあんまり興味ないから。」
「えっ?!じゃあどうしてこれを……」
「ほら、2人してギャグ映画見て笑ってるのも変だろうし……」
「………それもそうだな。」
「でしょ?」

彼の手を引いて視聴覚室へ入る。
攻められっぱなしは性に合わないので主導権を取り返したい。
そう、なけなしの男としてのプライドが囁いていた。
まぁそんなもの、女となってしまった今では犬の餌にすらならないけど。

「席、どこにしよっか?」
「真ん中辺りでいいんじゃないか。」
「そだね。」

隣同士の席に座った所で窓が全て暗幕で遮られ、スクリーンに光が灯る。映画が始まった。
結婚どころか主人公と付き合う前のヒロインが、とある事故で未来にタイムスリップしてしまい、ヒロインと死別した後の主人公と出会ってしまう。そんな話だ。
元の時間軸に戻った後、主人公と結婚すると早死にすると解っているのに主人公と逢おうとする心情は、テレビで見た時はいまいち理解できなかった。
その時はまだボクが男だったからか、それとも理解が及ばない程幼かったからか、あるいはその両方か。
294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/06/12(日) 00:00:28.21 ID:63CuAfSko
そんなストーリー展開はさておき、上映中彼の手を握ろうかどうしようか、たったそれだけの事で意識が宙を漂う。
座るまで手を握っていたので恥じらう必要性が皆無なのに。……皆無なのに。
彼の顔を覗き込む。居眠りどころか、彼の視線はスクリーンに釘付けだった。
それにも関わらず、こちらが迷っている事を平然と行ってくる。
……つまり、ボクの手の甲にごく自然と彼の手が添えられていたのだ。
添えられた時はびっくりして小さく悲鳴を上げてしまった。
心配そうに彼からこちらの様子を伺われるが、微笑んで指に軽く力を入れ、彼の手を握る事で取るに足らない事だと伝えた。

単に映画を見ながら手を握っているだけで、徐々に胸の奥が暖かくなってくる。
ずっとこうしていたい。手なんて登下校で握るどころか腕すら組んでいるのに、シチュエーションの違いだけでここまで高翌揚感に違いが出るらしい。
手を通じて心まで繋がっているような、そんな感覚。
恋人同士なだけでここまで陶酔してしまうのだから、愛し合う夫婦だと比べ物にならないのだろう。
一度知ってしまうと、例え死んでしまうとしても失う事に耐えられない。
一種の麻薬の様な感覚のおかげでヒロインの気持ちが少しだけ解った気がした。


──────
────
──


「結構面白かったな。」
「興味無かったのに?」
「……縁が無かったからなぁ。白詰さんはどうだった?」
「今ならあの女性の気持ち少しわかりそうだったよ。」
「興味なかったんだろ?」
「む〜。今日に限ってなんだかいじわるじゃない?」
「気のせいだって。」
「そうかなぁ……」

映画を見終わって時刻は2時過ぎ。妙に弄られるので頬を膨らませていたら、何故か上機嫌の彼。

「もう2時か、昼飯にしちゃ遅いけど何か食う?場所もだけどさ。」
「風見くんの様子見も兼ねてSF研の喫茶店かな。お昼時は過ぎちゃってるから混んでないと思うしさ。」
「ああ、それでわざと時間ズラしてたのか。」
「うん、メイド服の風見くんが居るしね。お昼時に行ってたらどうなってたかは……」
「情景が目に浮かぶな……」


──────
────
──


SF研の模擬店は想像以上に盛況だった。お昼時を過ぎて一段落ついているはずなのにほぼ満席だ。
客のほとんどは男子生徒と外部からの男性客。どの客もウェイトレスに視線が釘付けだ。当然ながら、女性客はボク1人だった。
我ながら抜けているとは思うのだけど、委員長の『デートには不向き』と言った意味をここに来て初めて理解した。
295 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/12(日) 00:03:07.24 ID:63CuAfSko
「おかえりなさいませ、ご主人さ………ま"っ?!」
「や〜、風見くん。」
「……帰れ。」
「え〜……」

出迎えてくれたのは、かなり軽装なメイド服姿の風見くん。
黒を基調とした背中と胸元がぱっくりあいているノースリーブのエプロンドレスに黒いフリル付きのカフスを着けていた。
おまけにスカート丈は膝上15cmくらいのミニスカートで、黒のニーソックスを履いている。
靴も黒いエナメルタイプの少しヒールが高いやつと徹底していた。勿論白のヘッドドレスも忘れてはいない。
彼女の胸の大きさのせいか、今にもぽろっと胸元がこぼれ落ちそうな気がしてならない。

「ひょっとしてそれヌーブラ?」
「まぁな……そうじゃないと肩紐見えちゃうしな……」
「ぶっ?!し、白詰さん何聞いてんのッ?!アンタも答えなくていいだろっ」

相変わらずの彼の反応。突っ込んでいても仕方がないので2人してここはスルーの構え。

「でさ、席空いてる?」
「ああ…不本意ながら。」
「案内してよ。」
「……来なく良かったのに。」
「え〜〜…つれないなぁ。ほら、メイドさんらしく接客してよ〜。」
「あら、お友達?」
「ああ……クラスメイトとその彼氏。」

入り口で風見くんと話をしていると、彼女に良く似たウェイトレスが奥から出てきた。
見た感じは20代前半辺りで背は風見くんよりも一回り高く、顔立ちは風見くんに似ていて、髪型も彼女と同じツインテールなので風見くん(大)みたいな雰囲気だ。
彼女の姉とか従姉だろうか?

「あらまぁ、この子も変わっちゃった子なのね。」
「え?……っと、風見くん、お姉さん居たんだ。」
「何言ってんだ、俺の───モガッ?!」
「妹がいつもお世話になってますぅ〜」
「あはは、こちらこそお世話になってます。お姉さんもお店手伝いに来てたんですね。」
「ええ、この子ったら、人手が足りないから手伝ってくれ〜だなんて泣き付いてきたのよねぇ」

風見くんは何故かお姉さんに手で口を塞がれ、もがいている。
ミニスカメイド姉妹がじゃれ合っているのも周囲のお客さんには眼福なのだろうけど、早く席へ案内してほしい。

「ぷぁ……っ、何が『妹がお世話になってますぅ』だよ!母さん!!」

お姉さんの手を振り解いた彼女の口から衝撃の事実が飛び出して来た。

「「え?」」
「あらやだ。んもぅ……バラさなくてもいいじゃない〜。」
「若作りしすぎだっつの……つーか、直人、俺んちひとりっ子なの知ってるだろ。」
「そういやそうだったね……や、ほら、親戚の方かも、とか思っちゃって。」
「私としては〜、勘違いされたままでもよかったのだけどぉ〜。」
「ったく……いくら母さんの趣味のメイド服だからってはしゃぎすぎなんだってば。」
296 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/12(日) 00:04:42.39 ID:63CuAfSko
どうやら彼女の母親らしい。見た目若すぎ。常識的に考えてこれはおかしい。
彼も唖然としていて、お互いに小声で『アレは間違ってないか?』『おかしいよね』等と囁きあった。

「あはは……」
「この子ったら、普段は用意しても可愛らしい服全然着ようとしないから照れてるのねぇ〜。」
「母さんのがいい歳してアグレッシブすぎるだけだと思う……」
「そうねぇ〜………私も異性化したての頃はそうやって恥じらっていたものだったわぁ〜」
「俺の話聞いてくれよ……」
「もしかして……風見くんのお母さんも?」
「そ、俺らと同じ。」
「初耳……」
「聞かれなかったしな。」
「聞かないもん普通。」
「だろうな。」


──────
────
──


ようやく席に案内されて注文をして一息ついた。
中々どうして、彼女のウェイトレス姿も様になっている。

「ご注文を繰り返します。
 スパゲッティナポリタンがおひとつ、クラブハウスサンドがおひとつ、アイスコーヒーがおふたつ。
 以上で宜しいでしょうか?」
「うん。」「ああ。」
「似合ってるね。」
「うっせーよ。」

「すいませーん、コーヒーのおかわりいいですかー?」
「はぁい、ただいまぁ。」
「…ぷっ」
「笑うなッ!」
「そういや委員長は?」
「今は交代で厨房に回ってる。」
「料理できたんだ、委員長。」
「まぁな。俺も交代で入ってるし、母さんもいるし、おまけに委員長の兄貴も料理旨いからなぁ」
「あはは……すごいね。ボクはさっぱりだよ。」
「彼氏に弁当の1つでも作ってやれよ。」
「そうしたいのは山々なんだけど……残念ながらボクの料理センスは壊滅してるからさ。」
「練習しろ、って話だ。そんな難しい話でもないぞ?」
「……それは出来るから言える事なんだよ。」
「すいませーん、コーヒーまだっすかー」
「やべ……今いきまぁ〜す♪───んじゃ、また後でな。」

彼女はパタパタと駆け足で裏に引っ込んで行った。走る仕草も妙に女の子っぽくて、男性客の視線を集めていた。
スカート短いし、ひょっとしたら見えていたのかもしれない。
297 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/06/12(日) 00:09:04.09 ID:63CuAfSko
今日はここまで
安価ネタなのに遅くてすみません(´・ω・`)
考えれば考えるほどどつぼに嵌っている気がしてなりません……orz

>>287
地味に続き待ってました。自分の貰った安価が終わったら読ませて頂きます(n゚ω゚*)
楽しみです。……その前に自分の分が無事書ききれるかどうかが心配ですが。
298 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/12(日) 00:40:37.17 ID:A+a7GQ9M0
安価把握しました。有難うございます、ガンガルっス!

もうね、白詰さんと彼氏は末永く爆発して下さい。ニヨニヨw
そしてッ!風見さんのエロウェイトレス入りましたーッッ!!ニョッホイッ!!
にょた母も来ましたーッッッ!!!ナニコノオレトクwww GJ過ぎる…

>>287
あわわッ…青色1号さんが来てる!?は、はじめまして!
以前からまとめで読んでました。続き楽しみにしています。

なんなんだ最近のこの感じ、スレに参加して一ヶ月ちょいの初心者の漏れには刺激が強すぎる…皆様乙GJ!
299 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage saga]:2011/06/12(日) 01:15:46.50 ID:x5dxrJEGo
目欄はこれで大丈夫かな?
亀田亀田亀田

ちょっとだけお借りしまうす
300 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:17:37.29 ID:x5dxrJEGo
 とある世界の日本。ここは、文武両道を掲げる、とある名門校である。

 校門へ続く道には見事な桜並木。舞い散る花びらが、春の到来を声高に知らせる。
桜吹雪の中、続々と登校して来る生徒達の中に、一人の人物の姿があった。
彼の存在に気付いた生徒達は、誰からとも無く立ち止まり道を開け、ゆっくりと校門へ向かう彼の姿を見送る。

 ボロボロの学生帽に、使い込まれた下駄を鳴らし、長ラン詰襟姿が凛々しいこの人物。
 彼こそが、当校が誇る花の応援団、その団長を務める『鬼の藤堂』こと藤堂 魁(さきがけ)その人である。

 ・・・しかし、泣く子も黙る応援団長の彼には、ある秘密があった・・・


「サキ姉ーーー!!!」

 背後からのけたたましい足音と、呼びかけるその声に気付くと、藤堂は振り返ることなく走り出す。

「ちょ、ちょっとサキ姉ーーー!!!なんで逃げるのよーーー!!!」

 藤堂の後を追って走るその人物・・・藤堂の実の妹であり、チアリーディング部一年の藤堂琥凛(こりん)であった。
彼女の手には毎朝のお決まりの通り、茶色の紙袋が提げられている。そして、その中身とは・・・

「折角今日も制服持ってきてあげたのに!!今日こそは女の子の格好で授業受けてもらうんだからーーー!!!」

「・・・俺は男だ!必要ない!」

「どっからどう見ても女の子じゃないのさーーー!!!女の子は女の子の格好するべきだって相場が決まってるんだからーーー!!!」

 そう、全速力で校門を抜け、唖然とする生徒達の間を駆け抜ける彼、応援団長藤堂魁は女だったのである・・・
301 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga 吐きそう]:2011/06/12(日) 01:19:28.79 ID:x5dxrJEGo
「・・・ん?」

 放課後、定例の報告を受ける為に部室の扉を開けた藤堂であったが、室内に誰の姿もないことに気付き首を捻る。
訝しがりながら扉を閉めようとしたとき、背後から野太い叫び声と共に誰かが駆けつける足音が聞こえてくる。

「だ、団長ーーーーーーー!!!!!」

振り返り、遠くに見えるその人影を確認すると、それは二年団員篠原 栄作であった。

「・・・なんだ」

「お、押忍!し、失礼します!!じ、実は、あの相良のやつが・・・」

「・・・何?」

その名を耳にした瞬間、藤堂の纏う空気が変わった。



相良 聖。

応援団にとって現在の最重要ターゲットであり、また目の上のたんこぶとも言える存在である。

中学時代『狂犬』の名で恐れられ、
入学以来校内の不良だけで飽き足らずあらゆる格闘技系の運動部すら数週でシメてしまった筋金入りの喧嘩屋である。
町の道場のいくつかも彼の毒牙にかかり、その軍門に下ったなどという噂まであった。

そして彼は、応援団団長藤堂魁が、ここ三年間で唯一膝をつかせることが出来なかった相手でもある。

そしてもうひとつ、相良と藤堂には運命的な共通点があった。それこそが・・・
302 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:20:59.98 ID:x5dxrJEGo
「もうやめなよ、やめなさいって!」

「お前は大人しく見てろよ。オラッ!大人しくしてるうちにネガだのなんだの全部残らず出しやがれ!」

「ひっ、ひひぃい!!」

校舎裏、端正だがきつめの顔が印象的な少女に止められながら、長い髪と白磁のような肌も麗しい美少女が、
小太りの男子生徒二人を代わる代わる両足を持って逆さに吊るし、振っていた。
振られるたびに男子生徒たちのポケットから小銭だの鉛筆だの女性ものの下着だのが零れ落ちていた。

「なんだよ、色々持ってるじゃねぇか。で、女子更衣室のお着替えシーンをバッチリ収めたカメラとネガはどこだよ?」

「ひっひひぃい!わ、わかりませんん」

「そっかそっかー、なわけねぇだろうが!あァ!?」

「ひっ、ひぐもっ」

次の瞬間、両足を持った相良が勢いよく腰を落とし、男子生徒の頭がなんと杭の様に地面にめり込んでしまった。
しかしまた次の瞬間、ズボッと音を立ててすぐに引き抜かれた。

「こいつが知らねぇならお前が知ってんのかコラ?」

「え?ひ、ひっはぁぁあああ!!」

「もういいから!やめて!」

すでにのびている顔が土まみれの男を投げ捨て、もう一人の方に拳を鳴らしながら近付いたとき、
ついに見かねてきつめの少女がその前に立ち塞がった。

「もういいってなんだよ?この豚どもに盗撮されたのはお前だろ?
ツン!お前にゃ被害者意識ってモンはねぇのか?負けっぱなしでかまわねぇのか?
女ならなぁ、泣き寝入りしてないでトコトン戦えるトコまで戦うんだよ!
そうだ、なんならお前もこいつらに一発入れてみねぇか?」

「ひひひひぃいいい!!や、やめてkづああああlんじゅじゅえ」

掴みあげられた男は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら必死に逃れようとしていた。
ツンと呼ばれたきつめの顔の少女は嘆息して肩をすくめた。
303 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:22:38.05 ID:x5dxrJEGo
「そういうことを言ってるんじゃないの。あんたはいつもそうやってなんでも暴力で解決しようとするからいけないのよ。
大体こんなのあんたやあたしがこんな風に出しゃばるんじゃなくて、風紀委員だとか先生だとか、あとは直接警察に」

「けっけけ警さtあqwせdrftgyふじこlp;@」

警察という単語を聞いた瞬間、言葉にならない叫びを残して男子生徒は泡を吹いて気絶してしまった。
掴みあげていた本人もツンも、ついつい唖然としてしまった。

「うーわ、なんだこいつ根性ねーな」

「まさか気絶しちゃうなんてね。じゃあこれからどうしよっか?」

「・・・まぁネガを回収したら見せしめに裸に剥いて昇降口にでも吊るしとけばいいんじゃねぇか?
しかし、それにしてもこいつらカメラ何処に隠しやがったんだ・・・」

「カメラならここだぜ。ちなみにネガなんて古めかしいものの代わりにメモリースティックを使うんだぜ、このデジタルカメラはな」

声に反応して二人が振り返ると、そこにいたのは金髪に染めた髪を炎のように突っ立てた、強面でいかにもな風貌の男だった。
少なくともツンは初めて見る顔であったが、着ている制服からこの男がこの学校の生徒であることだけはわかった。
そして男の手にはその言葉通り、レンズ部分がやたらに長い一眼レフのカメラがあった。

「お前、確か先月、極殺高校から転校して来たとかいう・・・」

「血に餓えた狂犬殿に覚えてもらえてるとは光栄だな。そう、その沢渡様だ」

極殺高校とは・・・

この学校へ赴任した教師の離職率42%、自殺率17%。
在学中から組の舎弟として動いている者さえいるといわれる、
卒業後の暴力団への就職率32%を誇る県内有数の極悪高校である。
そんなマフィアの養成校からこの沢渡がこの学校へ転校して来たのは、校庭に竜巻も多いいつもの春の事だった。
304 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:24:57.19 ID:x5dxrJEGo
「おっと!」

一瞬で間合いを詰めて来た少女から、沢渡はひょいっと遠ざける格好でカメラを守り、にやりと笑った。

「へへっ、油断も隙も無い奴だ・・・言っとくが、このカメラを壊したって
そこでのびてるオタクが泣き喚くだけで俺にはなんのダメージもないぜ。
画像の入ったメモリースティックが俺様の手にある以上は、大人しくしてた方がオトモダチのたm」

「ああ、メモリースティックってのはこいつのことか」

「えっ」

少女の手には小さなチップがあった。

「な、貴様!いつの間にッ!」

沢渡は慌てて制服の内ポケットを探る。

「おっ、おおっ、あった・・・てめぇ!脅かしやがって!」

安堵しながら沢渡が内ポケットから取り出した本物のメモリースティックを確認するやいなや、
少女はそれを一瞬で掠め取って後ろに立っていたツンにひょいっと投げ渡した。
メモリースティックを取り出した格好のまま沢渡は、一瞬の内に何が起こったか理解できず固まっていた。

「で、これからてめぇはどうすんだ?サル回しさんよ」

悠然と振り返りながら、少女はそう吐き捨てた。

「はっ・・・!」

少女の言葉で我に返った沢渡は、脂汗をかきながら口の端を歪めて笑った。

「はっ、はははは、そ、そいつはすぐに返してやろうと思ってたんだよ、と、とっとけよ」

「そうかよ。じゃあてめぇの出番はコレで終わりだな」

少女が拳を鳴らしながらゆっくり歩み寄るその迫力に、沢渡は一歩後ずさった。
極殺高校という暴力のエリート校で二年間過ごしてきた沢渡には、
この一見美しいだけの少女がどれほどの実力を内に秘めているかは身に纏った気配でわかっていた。
いくら自分でも、コレに挑めば少なくとも無事では済むまい。

「て、てててめぇら!出て来い!」
305 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:26:26.83 ID:x5dxrJEGo
沢渡の号令で、隠れていた沢渡の子分らしき男達が前後の退路を塞ぐように現れた。

「ま、俺様が直接相手してやっても良かったんだが、流石に無傷で済む自信は無かったからな」

ツンを背中に庇いながら静かに構えを取る少女に向かって、沢渡は調子を取り戻したように勝ち誇った顔で言った。

「こいつらは俺様が街で手なずけた忠実な子分たちさ。みんな一日一回は血を見ないと気が済まん奴らだ。
お前に会えるのを楽しみにしてたんだぜ?」

「御託の多いサルだな。すぐにテメーも畳んでやるから待ってろよ!」

「ハッ!い、粋がってられるのも今の内だぜ。やっちまいな!」

手下たちに号令をかけながら沢渡は、少女の一瞬見せた表情に戦慄していた。
その瞬間彼女の目は確かに、これから流される血を思って歓喜に爛々と輝いていた。

「よっしゃあ!行くぜ!」

迫り来る男たちの巨躯に少女が今まさに飛び掛らんとした瞬間だった。

「そこまでだ!!校内での私闘は校規で禁じられている!!」

校舎の壁をビリビリと鳴らさんばかりの声に一同が振り返ると、
そこには直立不動で整然と並ぶ長ラン姿の男たちの姿があった。

「応援団副長補佐、二年リーダー長の桃井である!!校規に則って、君達全員を生徒指導室に連行する!!」

長ランの集団から一歩進み出て、気合のこもった声でそう言い放った青年・桃井国仁は、
今まさに戦いを始めようとしていた沢渡の手下たちの間に見えた少女の姿を見て一瞬にして目の色を変える。

「貴様は・・・相良聖!!」
306 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:29:20.75 ID:x5dxrJEGo
「うわっ、面倒臭せぇのが出て来やがったな」

相良と呼ばれた少女は、言葉通り面倒臭そうに頭をかいた。

そう・・・血に餓えた狂犬こと相良聖と応援団団長・藤堂魁の共通点。
それは、彼ら二人が、女体化シンドロームを経験してしまった者であるということだった。

相良がそうなってしまった理由は・・・藤堂とさして変わらないと考えてもらえれば良いだろう。
・・・要するに、彼は彼の心に決めた道に対して忠実すぎたのである。

「ここで会ったが百年目という所だな・・・覚悟しろ!相良聖!!」

「お、おい桃井。宗像副長から『相手が抵抗の意志を見せるまではなるべく手を出すな』と言われたろう」

相良の姿を見た瞬間に見境をなくした桃井の姿を見かねて、
横にいたその親友たる神保源三がそう声をかけた。

「ええい止めるな神保!ヤツに無抵抗の三文字は無い!ヤツの存在自体が抵抗の意志だと思え!」

先日、相良に無抵抗のところを遠慮なくぶちのめされて以来、桃井は相良のこととなると見境をなくすようになっていた。

「な、なんてこと言うのよ!こいつがいくらバカだからってそんなの流石に横暴よ!」

あまりに酷い桃井の言いように、今度はツンが大声で反論した。

「バカとはなんだよツン!?」

「何よ!間違いないじゃないの!」

言い返しながら相良はしかし、ツンはともかく桃井の言い分が間違いでないことを心のうちに確認していた。
拳を収める気など毛頭無く、また昔からそうしたことも無い。
次の瞬間その心に去来したのはやはり、獲物が倍に増えたことへの歓喜であった。

「・・・で、テメーらどうするよ。両方とも振り上げた拳を引っ込める気は無いんだろ?」

意気揚々と準備運動を始める相良に、沢渡の手下と応援団の両者は小さな戦慄を禁じえなかった。

「あ、当たり前だ!!狂犬め!!今日こそは貴様を押さえて、我らはこの学校の平和を脅かす存在をついに根絶やしにするのだ!!」

真っ先に答えた桃井に、相良はにやりと笑う。

「・・・じゃあもう御託はいらねえな。全員まとめてかかって来いや!!」

「「「ウ、ウオーッ!!!」」」

沢渡の手下たちと応援団は、相良の声と共に飛び出した桃井に引きずられるようにお互いに向け雄叫びを上げて突進を開始した。
307 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:31:16.59 ID:x5dxrJEGo
「はぁ、はぁ、だ、団長!!こちらです!!」

「・・・これは」

篠原を伴って藤堂がその場に到着したとき、沢渡の手下と桃井を初めとする応援団の面々は、
既に相良の毒牙にかかり両者入り混じった屍の山(実際は死んでいないが…)を形成していた。
そして、その山を眺め悦に入る女が一人。

「また貴様か・・・相良」

藤堂の、怒りのみなぎる視線を受け、振り返る相良。

「やっとのご到着か、団長さんよ」

振り返るなり悠然と構えを取り始める相良。
もはや、やる気は満々であった。

「貴様・・・どれほど俺の邪魔をすれば気が済むんだ?」

藤堂のあまりの怒りにひきつった顔は、しかし歓喜の笑みを浮かべているようにさえ見えた。

「そいつは心外だな、お前らの代わりに盗撮野郎とヤクザ予備軍共を伸してやったんだぜ?
学園の平和に貢献してやった俺様に対して感謝しろよな」

「感謝か。いいだろう・・・礼は俺の拳で構わんな?」

「ああいいぜ。折角だしお礼の拳をこっちからもつけてやるよ」

次の瞬間、不安げにその様を見守っていたツンと神保の視界から二人の姿が消えた。
聞こえてくるのは風を切る音と、拳と拳の激しくぶつかり合う音。
先日保健の先生によって阻まれ幻となった伝説の戦いが、
この瞬間この校舎裏という場所で、また始まろうとしていた・・・
308 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:34:10.30 ID:x5dxrJEGo
「・・・しまった、間に合わなかったか」

騒ぎを聞きつけ、まさかと思い駆けつけた中野翔だったが、
彼が問題の校舎裏に辿り着いた頃には既に相良と藤堂の決闘は始まってしまっていた。

「あ!中野くん?」

彼を迎えたのは、ふたりの決闘をオロオロと見守るしかないツン。
そして・・・

「応援団参謀役副長の宗像巌・・・」

「よう、遅かったじゃないか中野」

宗像は山のような巨躯を傍らの木に寄りかけながら、暢気に手を振ってきた。

「宗像、お前・・・いつから見ていた?」

「無論、お前の相良くんがそこでのびてるカメラ小僧をシメてる辺りから見ていたよ」

この宗像はそのガタイに見合わず、気配を消すなどの隠密行動に異様に長けていた。
その笑ったようなつくりの顔も相まってなんとも不気味な男に思えた。

「・・・こじれるのを待ってやがったってことか」

「いいや。こじれたら止めようと思っていたさ。
だが、出て行こうとしたタイミングで面白そうなことが起こってしまったからな」

相変わらず緊張感の無い語り口の宗像を尻目に、
相良と藤堂の決闘は続いている。
中野はため息をついた。

「・・・で、結局は何が原因だったんだ?」

「まあ直接の原因は桃井の勇み足と言えなくもないが・・・
最初は相良君が友人を盗撮した連中をシメているときに、ここで山になってる連中が横槍を入れてきたんだ。
まあ実際盗撮を命じたのはこいつらのボスである沢渡という男で、その狙いも女子更衣室の盗撮自体でなく、
それをネタに相良君をどうにかすることだったようだがね」
309 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:35:45.16 ID:x5dxrJEGo
「で、その黒幕の沢渡は何処に行った?」

「ヤツなら、桃井達が踏み込んだ直後に逃げたようだな」

「逃げたようだなって・・・」

中野は呆れて言葉を失ってしまったが、宗像は相変わらず人のいい笑みを浮かべて藤堂達を眺めていた。

「心配はいらん。高校生の身でまして校内の事件の為にどこかに高飛びすることは考えられん。
校門やヤツの所属するクラスで張っていればいずれ片は付く話だ。今は逃がしておいて問題なかろう」

「なるほどな。で、あれをお前は止めないのか?」

「どれをだ?」

中野の言葉に宗像はわざとらしくとぼけてみせる。
そんな様子に中野はため息をつくと、黙って藤堂と相良のもとへ向かおうとする。

「まあ待て。お前も、この前つけられなかった決着がつくのを見たくは無いか?」

進み出て中野を制しながら宗像がそう語りかけた。

「・・・あのな、宗像。これがバレたらどれほど面倒なことになるかお前もわかってるだろう?特にアイツは、
今度こんな大掛かりな揉め事を起こしたことがバレたら今度こそ内申に響く。礼子先生も今度ばかりは抑えられんだろう」

彼女自身はそんなことを知るよしもないであろうが・・・
相良がこれだけ自由奔放に振舞いつつも平和な学園生活を送れるのは、
実は周囲の人々の陰ながらの努力によるところがあったのである。

「フフ。かと言って、あの二人の間に入ればお前とて無事ではすまんだろう?」

「まあな。だが黙ってみているわけにもいかんだろう。何が何でも俺は止めるぞ」

「・・・じゃあこうしよう」
310 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:37:15.77 ID:x5dxrJEGo
それでも進み出ようとする中野の前に立ち塞がりながら、宗像は丸眼鏡の奥の目を細めた。

「相良君は、これでも応援団にとって最大の宿敵であり、現在の応援団における最重要ターゲットだ」

「・・・何が言いたい」

中野の怒気が自分に向いたのを確認すると、宗像は満足げに笑った。

「このまま団長が相良君を倒せばそれに越したことは無い。
しかし、もし勝てなかった場合・・・俺は、勝ち残った満身創痍の相良君に止めを刺すつもりだ」

「なんだとッ!!」

中野の高まっていく怒りを肌で感じながら、宗像は感極まってクックックと笑い出した。

「どうする、中野。お姫様を守る為には、どうやら俺を倒して今すぐ彼女をここから連れ出さなければならないようだぞ」

「・・・いいだろう。お前のそのニヤニヤ顔にもそろそろ嫌気が差してたところだ」

「気に入ってもらえて光栄だな。俺が勝った暁には毎晩眺められるようにブロマイドでも作って渡してやろう」

「御免だな・・・行くぜ!!」

「来い!!」

「・・・もう、みんないい加減にしてよ!!」

ただ一人、ツンだけがこの状況から取り残されてしまうのだった。
311 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:40:34.39 ID:x5dxrJEGo
「息が上がっているようだな。そろそろ降参してはどうだ?」

「はぁ、はぁ、冗談!テメーこそ足腰に来てんのが見え見えだぜ」

間合いを開けて藤堂と相良は体勢を立て直す。
一進一退の攻防は長時間にわたり、頭上にあった日も傾きかけていた。

そして、その傍らではもうひとつの決闘が繰り広げられていた。

「クッ・・・さすがだな中野!まさか俺の拳がほとんど入らんとは」

「お前、口を閉じたことあるのか?」

「フフ、それに答えるお前も口数の多い男だな」

中野と宗像は拳を交わしながらこうして憎まれ口を叩きあっていた。
宗像は巨躯を生かした重い一撃を中野に見舞おうとするものの、そのほとんどは中野の動きに捌かれてしまう。
対して中野の攻撃は、ほぼ百発百中で宗像の巨躯に叩き込まれ、中野自身も大きな的に自らの拳が確実に入る手ごたえを感じていた。
しかし・・・

(・・・こいつ、痛みを感じないのか?)

確かに中野の拳は宗像の急所を的確にとらえていた。
しかし、急所に重い拳を何発もモロに喰らっている筈の宗像は、一向に怯む気配を見せず攻撃を繰り出していた。
それどころか、激しく動いて体力を消耗する中野に対し宗像は、最小限の動きで体力を温存しようとしている気配もあった。
現に、息を弾ませる中野に対して宗像は、汗ひとつかいていなかった。

「これならどうだッ!!」

「ぬうッ!!」

一瞬の隙を突き、中野が放った体重の乗った膝蹴りが見事に宗像の鳩尾付近に入り、
流石の宗像もうずくまる。
その気配をいち早く察知し、更なる追い討ちをかけようと中野が飛び掛らんとしたとき・・・
突如宗像の上半身がぎゅるんと後ろに向かって反った。
312 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:41:30.14 ID:x5dxrJEGo
「うおッ!!」

咄嗟に身体を反らした眼前を、宗像の足が恐ろしい速度で通り過ぎ、その風圧で中野は一歩後ずさった。

「フム、今のがかわされてしまったか」

一回転して着地した宗像は、体勢を立て直しながら残念そうにそう言った。

「だまし討ちをかけるには流石に、相手が悪かったようだな」

「攻撃を受けていたのはやっぱりわざとか・・・ナメたマネしてくれるじゃねえか宗像」

宗像のサマーソルトを寸でのところでかわした中野の学ランの胸は、掠めた風圧で裂けていた。

「フフ。だが、そのナメたマネは目論見どおりの結果をもたらしてくれたようだな」

余裕で拳を鳴らす宗像に対して、中野の息は上がりかけていた。
宗像の術中に知らず知らずの内にはまっていた自分を思い、中野は歯噛みする。

「まあしかし、手品の種はバレてしまったわけだ。残念だがここからは、本気で行かせてもらうぞ!」

口数の多かった宗像は、中野を休ませない意図であろう、その言葉の後すぐに向かってきた。
先ほどとは比べ物にならない速さだった。
体力を消耗していた中野は、息つく間もなく繰り出される重い拳を紙一重で捌くのが精一杯だった。

「くうッ!まだこんな実力を隠してやがったとは・・・人が悪いじゃないか副長!」

「一気に片をつける!」

もはや舌戦にも乗ってこなかった。
力と手数で一気に押し切るつもりらしい。
中野は身の危険をより現実的に感じ始めていた。

しかし、宗像の力に追い詰められる中野の目にはそのとき・・・強敵との戦いに対する歓喜が滲んでいた。
313 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 01:43:17.22 ID:x5dxrJEGo
一方宗像の心には、切り札を中野にかわされてしまったことへの焦りが見え始めていた。
口では余裕をかまし、態度で無傷を表して相手を精神的に追い詰めるのが彼の常套手段のひとつであった。
そうすれば敵は焦りからあらぬ行動を取り、必ず弱みをさらけ出す。
その弱みを突くことでどんな戦いも切り抜けてきた宗像であったが・・・

(・・・こいつ、強いな)

中野は、体力の消耗こそ隠しきれないものの、宗像が引きずり出したかった精神的な弱みを全く見せなかった。
それどころか、こちらの攻撃が激しくなれば激しくなるほど闘志が高まっていくように見えた。

何より、初めにとっていた、わざと攻撃を受けて敵に優勢を意識させ慢心を引き出し、
その隙を突いて大技で片をつける作戦を破られたのは、
彼が入学して団長の座を争った藤堂を相手にしたとき以来であり、
このことで宗像は逆に精神的なダメージを負うことになってしまった。

更に、宗像の身体には、表には出さないものの中野の攻撃のダメージが確実に蓄積されていた。
攻撃を受ける振りをして捌きながら戦っていたものの、中野の攻撃は宗像の予想以上に重かった。
要は、中野の攻撃が鋭すぎて宗像の思ったとおりに捌ききれなかったのである。
持ち前の異常な打たれ強さをフルに駆使して態度では余裕をかましていても、
もはや力で押し切って早々に決着をつけなければ危ない域まで来ていた。
もしも中野にこのラッシュを耐え抜かれたら、最悪彼の敗北すら見えてくるかもしれない。

(・・・しかし、俺も男だ。負けるつもりは無い!!)

弾みで始まったこの決闘に宗像は、確実に本気になっている自分を感じていた。
314 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage saga]:2011/06/12(日) 01:45:52.27 ID:x5dxrJEGo
思った以上に長かったしバイバイさるさんとかバーボンとか怖いので一旦お休み入れます
一時間以内に戻ると思います
あとこの話は◆Zsc8I5zA3Uさんのお話とのクロスなので、
先に『漢と漢』というお話を読んでもらった方がわかりやすいかもしれません
ごめんね
315 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/12(日) 02:05:06.48 ID:A+a7GQ9M0
リアルタイム投下とかマジビビるんですけどッ?!
しかも、(うДT)さんだし! 応援団シリーズですね、大好物です!
狼さんの勘違いシリーズも大好きです!
316 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/12(日) 02:19:28.84 ID:UFNRinIdo
GJ――いわゆるひとつの神業ってやつだ!
wwktkして続きを魔闘
317 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga 嬉しいです]:2011/06/12(日) 02:29:20.29 ID:x5dxrJEGo
一方、藤堂 対 相良の戦いもこのとき、佳境を迎えつつあった。
藤堂の拳を捌き損ねた相良がその一撃を腕で受け、一瞬よろけたのである。

「そこだッ!!」

気合一閃、藤堂の全体重の乗った突きが相良の胴体を捉えた。
・・・かに見えた。

「それを待っていたぜ!!」

「何ッ!!」

相良の胸の中心を捉えたかに見えた藤堂の腕は、
相良の手により関節をガッチリ極められ彼女の一寸先で静止していた。

「これは・・・合気道か!」

相手の力を利用して戦う合気道は、相手の力が強ければ強いほど威力を発揮する。
藤堂の腕は藤堂自身の力によって、相良の手の中で強力に捕らえられていた。

「ぬうッ・・・抜け出せん」

「へっ、無理に抜け出そうとすれば関節が外れるぜ。どうする?団長さんよ!」

「簡単だ」

「なに?うおッ!!」

藤堂は、極められた腕ごと上体を持ち上げ、そのまま逆の手で相良を掴みあげて投げ飛ばした。
あまりのことに流石の相良も対応できず、藤堂の拘束を解いて上手く着地するだけで精一杯だった。

「お前・・・イカレてるな」

立ち上がって服についた土埃を払いながら相良は歪んだ笑みを浮かべる。

「さあ、続きを始めるぞ」

藤堂は、おもむろに上着を脱ぎ捨てると、腰を落とし独特の構えをとった。
318 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga 嬉しいです]:2011/06/12(日) 02:30:57.75 ID:x5dxrJEGo



「・・・おっと、残念だが潮時みたいだな」

「・・・なんだって?」

突然拳を止めて藤堂たちの方を振り返る宗像に、中野は訝しげに尋ね・・・
そしてすぐに、その意味するところに気付いた。

「貴様ら、何をやっとるかああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

校舎二階の窓から響き渡った怒号に、流石の相良と藤堂もびくりと身体を震わせて振り返らざるを得なかった。

「ゲェッ!礼子先生!」

「くッ・・・!」

二階から鬼の形相で彼らを見下ろしていたのは・・・
彼ら二人の最大の天敵である保健の先生、春日礼子その人だった。
319 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:32:19.99 ID:x5dxrJEGo
鬼の形相で二階の窓から飛び降りてきた礼子先生に宗像と中野が一通りの事情を説明し、
とりあえず相良の無実を理解してもらったあと、応援団は傷の浅かったものが深かったものを介抱し、
また沢渡の手下は校外から侵入した紛れもない不審者たちだったために警察が速やかに回収していった。

「まったく・・・仕方なかったとはいえ、もっと平和に解決できないの?私も人のことを言えた立場じゃないが・・・」

「いつもすみません、先生。自分の方からよく言い聞かせておきます」

そう言って頭を下げる宗像。

「・・・フン。行くぞ、桃井」

「・・・んあ?お、押忍!」

足元でのびていた桃井を蹴って起こすと、藤堂は一同に背を向けてその場を去ろうとする。
それに真っ先に反応したのは相良だった。

「あ!おい待てよ!逃げんのか?藤堂!」

その言葉に振り返り、ぎろりと相良を睨みつける藤堂。

「のぼせるなよ狂犬。今日のところは春日先生に免じて捨て置いてやろうというだけだ。
この決着はいずれつけてやるから覚悟しておけ」

「上等だ、いつでもかかって来いや団長さんよ」

「もう・・・ところで藤堂さん」

「・・・なんですか春日先生。これでも今日あるはずだった定例会のために急いでいるんです」

礼子先生に呼び止められると流石に振り返らざるを得ない藤堂は、困惑と焦りの入り混じった言葉を返した。
藤堂の様子に嘆息しながら礼子先生はおもむろに口を開く。

「・・・それ、折れてるわよ」

「あ」

藤堂の右手首が紫色にはれ上がり、外れたらしい関節がぶらぶら揺れていた。
320 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:34:34.92 ID:x5dxrJEGo
保健室での礼子先生による関節入れの荒療治を終えた後そのまま病院に直行し、
大袈裟過ぎると思うのでイヤだったが一応怪我した腕を布で肩から吊って藤堂が家路に就いたのは、
そろそろ7時を回る頃のことだった。

(ふう・・・イヤだな)

これから先家で起こるであろうことを思い、藤堂は心の中で嘆息した。
藤堂は木造の重々しい門を開いて庭を入り、大きな日本家屋の我が家の玄関を暗澹たる心持ちで開く。

「ただいま帰りました」

と、廊下の奥へ向かって声を張った。
その声が廊下の奥まで響くのを確認して間もなく、衣擦れの音と共に、
着物を上品に着こなした、そろそろ50代に差し掛かるであろう、
美しく洗練された佇まいの中年の女性がゆっくりと出迎えに来た。

「お帰りなさい沙樹さん。今日の部活はどう・・・その腕はどうしたのです、沙樹さん」

「お母さん、これは・・・」

母は藤堂・・・沙樹の肩から布で吊り下げられた腕を見て一瞬にして顔色を変え、そう迫った。

ところで普段は応援団団長・藤堂魁として鳴らす藤堂であったが、実際のところ女体化したその日に、
母の意向により『沙樹』という女性名に改名が済んでおり、藤堂の妹たる琥凛が『サキ姉』と呼ぶのも、
実はこの戸籍上の本名に基づいているのであった。
321 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:36:43.19 ID:x5dxrJEGo
「これはなんなのです、沙樹さん。母は、あなたがその身体になって応援団を続けたいと言った時、
あなたが危ないことを絶対にしないという条件でそれを認めると確かに申したはずですね」

「は、はい・・・」

しゃんと正座して相対する母の気迫に、鬼と呼ばれる藤堂もただ小さくなるばかりだった。

「それなのに、あなたはそうした大怪我をして帰って来た。これはどういうことなのですか。
それともこの母に、これは応援団の活動の外で行ったことが原因で負った怪我だとでも申すのですか?」

「そ、それは・・・違います」

藤堂にはただ、下を向いてそう答えることしか出来なかった。

「・・・ならば、あなたは、あなたの亡きお父様の仏壇の前でこの母に誓った約束を違えたと申すのですね」

「・・・ごめんなさい」
322 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:38:25.98 ID:x5dxrJEGo
「このままでは、あなたを、立派な、一人前の女性に育て上げるとお父様に誓った母の約束も、守れぬことになってしまいます」

「・・・」

静かに、しかし気迫のこもった口調で語り続ける母の顔を、藤堂はもはや見上げることすら出来なくなっていた。
母は尚も厳しい表情で続ける。

「沙樹さん。明日一日、あなたの外出を禁じます」

「で、でも、学校は・・・」

「そんなもの、休んでしまいなさい!!!」

突然の怒声に、藤堂は言葉を失ってしまった。

「その代わり、明日は病院に行った後で一週間分のお稽古を、一日かけてみっちり受けていただきます」

ちなみに藤堂家の一週間分の稽古とは・・・

月曜:日本舞踊
火曜:お琴
水曜:武道
木曜:歌
金曜:英会話
土曜:武道
日曜:書道、生け花、茶道

・・・などなど、母の意向で毎日帰宅後に受けさせられているものである。
ちなみにそれぞれのメニューは必要に応じて入れ替えられたり増やされたり減ったりする。

「・・・わかったなら、今日はもうお部屋に戻りなさい!お風呂も沸いています!」

「・・・はい」

小さくなったまま藤堂は玄関を上がり、母に伴われて廊下の奥に消えていった。
323 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:40:34.24 ID:x5dxrJEGo
「・・・ふぅ」

ゆったりとした木の湯船に浸かって、沙樹は過去の記憶を思い起こしていた。
道場でひとり座禅を組み、瞑想する父の背中を。
男なら、道に忠実であれ。その道を違えることなかれ。
幼い沙樹・・・その頃は魁という名であった・・・に、父はそう言い聞かせ、
ある日突然、病によってこの世を去ってしまった。

強い父だった。

だから、父が逝った後も、幼い沙樹はそれを受け入れられず、
いつかひょっこり帰って来るのだと信じて何日も道場で彼を待ち続けたものだった。

「・・・お父さん、私は、どうすればいいのですか」

ひとりごちて、ちゃぽんと頭まで湯に浸かった。
324 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:42:29.03 ID:x5dxrJEGo
翌朝、朝もやに包まれる藤堂家の庭に、腰を落として隠密の内にそこを横切る藤堂の姿があった。
植木から植木へ、周囲を警戒しつつ慎重に進む藤堂。
やっとのことで塀まで辿り着くと、それに手をかけ一息に上へ上がる。

塀の上で一瞬止まり、慎重に周囲を確認すると、音を立てないよう道路に飛び降りた。

(ごめんなさい、お母さん・・・)

そう心の中で呟いて我が家に背を向けたとき・・・藤堂は目の前のもやの先からほとばしる闘気に気付く。

「どこに行くのです、沙樹さん」

「お母さん・・・?」

そこにいたのは、たすきで着物の袖を縛り、白い鉢巻を頭に、右手に薙刀を携え、
また布に包まれた細長いものを左手に、静かに佇む母だった。

「母は昨日、外出を禁じると申したはず。それなのにあなたは、
どうしてここにいるのです?すぐに家に戻ってお稽古の準備をするのです!」

「お母さん・・・それは、出来ません!!」

藤堂は、目を瞑ってそう言い放った。
母は黙ってそれを受け止める。

「私は・・・私は、身体は女であっても心は男なのです!
私は、応援団を、天に恥じることのない最高の組織に育て上げると、男である自分の誇りにかけて誓ったのです!
その誓いを・・・違えることなど私には出来ません!!」

精一杯の思いを込め、藤堂はそう叫んだ。
それを黙って聞いていた母は、一瞬目を閉じたあと、おもむろに口を開いた。
325 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:44:29.57 ID:x5dxrJEGo
「・・・沙樹さんの言いたいことはわかりました。
どうしても今日、応援団の為にもここを通りたいと申すのですね?
それがあなたの誇りを、そして義を守り通すことになるのだと」

「・・・はい」

藤堂は静かに、しかし力強く頷いた。

「わかりました」

母はそういうと、左手に持った細長いものを沙樹に向かって投げ渡し、薙刀を勢いよく構える。
藤堂が受取った細長い包の中身は・・・いつも家の道場に飾られている、父の遺した真剣だった。

「・・・どうしてもここを通りたいというなら、その刀でこの母を殺して行きなさい!!!」

藤堂は、自分の周囲の世界がガラガラと音を立てて崩れ落ちていくかのような錯覚を覚えた。

「父と母への誓いよりも大切な誇りなら、今すぐその剣でこの母との絆を断ち切って進みなさい!!どうしたのです!!」

薙刀を構え迫る母の前に藤堂沙樹こと応援団長・藤堂魁は・・・
入学して以来の三年間で初めて・・・他者の前にその膝を・・・大地につくことになったのだった・・・
326 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:46:37.55 ID:x5dxrJEGo
世界中が一瞬だけ歪み、勢い良く戻ったような錯覚を覚えた。
非常に、気持ちが悪かった。

凄まじいお稽古の応酬を切り抜け、倒れるように眠り翌朝目覚めた藤堂は、
押入れの中のいつもの場所に、昨夜確かに収めたはずの長ランが無いことに気づいた。

「・・・!!」

荒々しい足音すら置き去りにするような勢いで一階に駆け下り、
母がいるであろう居間の障子をバン!と開く。

「お母さん!!!」

「どうしたのです沙樹さん。もう朝食の準備が出来ていますよ」

割烹着姿の母が炬燵の前、いつものように電気釜から白飯を茶碗によそりながら答えた。
妹の琥凛はその手前で、背筋を伸ばしてすまし顔で味噌汁をすすっている。

「私の制服を・・・私が応援団の先輩方から受け継いだ大事な制服を、どこにやってしまったのですか!!!」

目の前が真っ赤になりそうなほど力をこめて藤堂は叫んだ。
それに全く動じる様子も無い母は、しかしながらその言葉への疑問に首をかしげながら答える。

「なんの話をしているのです?沙樹さん。そんなことより早く朝食を食べてしまいなさい。冷めてしまいますよ」
327 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:48:24.40 ID:x5dxrJEGo
「そ、そんなこと、ではありません!!!わ、私を応援団に行かせないためとはいえ、
こんなことを・・・こんなことをするなんて酷すぎます!!!
あれは・・・あれは先輩方の思いがこもったかけがえの無いものだったんです!!!そ、それを・・・」

「いい加減になさい!!母にはあなたがなんの話をしているかさっぱりわかりません!!
朝食を取る気が無いのならもう学校に行っておしまいなさい!!」

自分をキッと見据えながらそう言い放つ母に、
藤堂は視界を涙で滲ませながら背を向け、二階の自分の部屋に駆け込み、ベッドに突っ伏した。

どうして母は、自分の誇りだけでなく、大切な仲間まで侮辱するようなことをしたのか。
信じられないような出来事に、藤堂の心のうちには怒りや哀しみ、申し訳なさの入り混じった混乱が渦巻いた。
しばらくの間突っ伏したまま心の内の混沌を鎮め、ふと顔を上げると、
時計の針があと少しで応援団の朝練が始まるという時間を指していた。

「・・・気は進まないが・・・仕方ない」

昨日までは確かにそこに掛けられてはいなかったはずの、
しかしまるでいつもそこにあったかのように部屋の風景に溶け込んだ女物の制服に嫌々ながら袖を通し、
藤堂は部屋を飛び出した。
328 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:50:25.67 ID:x5dxrJEGo
「これは・・・どういうことだ?」

慣れないスカートの風を切る感触に戸惑いながらいつもの通学路を駆け抜け、学校に辿り着いたはずの藤堂であったが、
辿り着いたその学校は自分のいつも通っている学校とは似ても似つかぬ場所だった。
校門前の桜並木は影も形も無く、ただただ何処にでもある住宅街のアスファルトの道の先に校門はあった。
そしてその奥の校舎は、いつも通っている学校と一見似ているようでもあったが、
よく見ると外壁の汚れ具合などから建物の築年数が違っているように見えた。
綺麗で、新しかったのである。

初めは来る場所を間違えたのだと思った。
思い返してみれば、自分が走ってきた道も、いつもの通学路とは違っていた。

しかし、奇妙なことに、そのいつもと違う道こそいつもの通学路だと語る記憶が自分の中にはあった。
それどころか、初めて見るはずのこの校舎の内部の構造を、藤堂は正確に思い出すことが出来た。
”思い出すこと”が出来たのである。

「ここは・・・私の学校なのか?」

「そこのお嬢さん!!」

頭を抱えてふらふらとうずくまりそうな心地でいた藤堂に、背後から声がかけられる。
振り返ると、がっちりした長身に若干癖のある長い髪と鋭い目が印象的な、他校の制服を着た青年が一人立っていた。
329 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:52:12.50 ID:x5dxrJEGo
「・・・なにか?」

「お、俺は茂名三高一年の月島という!実は、この手紙を、二年X組の相良聖という人物に渡してもらいたい!」

「相良・・・」

相良という名を聞いて藤堂の中の凶暴なものが目を覚ましそうになったが、
ふと藤堂は冷静になる。
・・・この学校に、相良聖がいる?
それどころか、私は・・・

「・・・月島君、といったか?」

「え?あ、ああ!そうだ!茂名三高の黒き一匹狼、月島だ!」

「相良聖は、二年X組じゃないぞ。彼女は、二年Y組だ」

「な、なんだって!?」

藤堂は、その相良がどのクラスにいるか正確に把握していたのだ。
言葉を交わしたことは無いが・・・彼女のことは印象に残っている。

・・・言葉を交わしたことが無い?

ふと、吊り布は取れたもののまだ包帯を巻いていた筈の手首を確認してみる。
包帯が取れているどころか、怪我の跡すらなかった。

それだけじゃない。
相良聖は自分と同じ3年生だったはずだ。
しかし今、藤堂の口からは2年という言葉が抵抗無く出てきたのだ。
330 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:54:49.35 ID:x5dxrJEGo
「ま、まあいい!あなたが、彼女の教室を知っているなら話は早い!ならば、是非この手紙を・・・」

「・・・月島君。その手紙が、私の思ったとおりのものだとしたら、それを渡すのはあなたの手で行うのがいい」

「・・え?」

突然の藤堂の言葉に、月島は間の抜けた返事を返した。
その顔を見据えて藤堂は続ける。

「そういった手紙を、自分の身内ならともかく、
私のような何処の誰とも知れない他人に託すべきじゃないと、私は思うぞ」

「だ、だが、俺が直接行けるくらいなら、まどろっこしいから手紙になんかしないような・・・」

「それなら、あなたの口から直接伝えることだ。それが女である彼女に見せるべき男の気概・・・そうは思わないか?」

失礼する・・・そう言って藤堂は月島に背を向け校門を入っていった。
後には、その背中に熱い視線を送る月島だけが残された。

「そ・・・そうか・・・この溢れる恋心を伝えるには、自分の口から!その通りだな!」

そう言って何かを掴んだような爽やかな表情で顔を上げた月島は、校門に背を向け走り去っていった。
このときの藤堂の言葉によって彼がこの後、傍目からはストーカー行為に見えるような行動に走ってしまうのはまた別の話である。




「やれやれ・・・今度は他校生からの果たし状か。相良も大人しく出来ん奴だな」

いまいちわかっていなかった藤堂であった。
331 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 02:56:52.12 ID:x5dxrJEGo
(おかしい・・・これはどういうことなんだ?ここは一体なんなんだ?)

学校の敷地内の様子は、明らかにおかしかった。
運動部の部室や体育館などの配置はいつも通っている学校とほとんど同じであるものの、
ところどころ内装や外装の色や形が違っていて、通りがかる部室の表札がテニス部だったものがサッカー部に入れ替わっていたり、
トイレだった場所がどこかの部の倉庫になっていたりもした。

(応援団・・・応援団の部室は・・・)

混乱する記憶を頼りに、校庭の片隅に位置するその場所に辿り着く。
そこには・・・

「・・・あった・・・」

そこには確かに、『応援団』の表札のかかった部屋があった。あったのだ。
藤堂は、この何かが致命的に違った世界で、不安に押し潰されそうになっているそのときに、
もっとも大切なその存在を確認できたことが何よりも嬉しかった。
こんな世界の中にも、いつものままの姿で存在していてくれたことが嬉しくてたまらなかった。

喜びと安堵に震える手でそのドアに手をかけようとしていたときだった。

「・・・あれ?おはようございます会長。今日は早いですね」

振り返ったとき其処にいたのは・・・何故か野球のユニフォームを着てはいたものの、
二年副長補佐の桃井国仁だった。

「・・・桃井?」
332 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 03:01:08.47 ID:x5dxrJEGo
「え?ええ。おはようございます。倉庫の様子を見に来たんですか?おっしゃってくれれば自分が代わりに見に来たのですが」

桃井は、不思議そうに藤堂の顔を覗き込みながらそう答える。
その様子で自らが女生徒用の制服に身を包んでいたことを思い出した藤堂は、大慌てで釈明を始める。
どうして私が、下級生の、しかも桃井相手に言い訳なんてしなければならないのか・・・

「も、桃井、こ、この格好は・・・す、すぐに着替えるつもりだったんだ、れ、練習が始まるまでに・・・」

「練習?もしかして野球部の練習を応援に来てくれたんですか?
いやあ、嬉しいです!会長が来てくれればきっと、みんな気合が入りますよ!」

桃井は何事か勘違いしているようで、そう言いながら顔をくしゃくしゃにして笑った。

「・・・野球部?」

「ええ、たった今走り込みが終わってキャッチボールとノックを始めたところですが」

「いやいや待て!私が会長?」

「は?」

桃井はポカーンとした顔で藤堂の顔を見返した。
それだけじゃない。
この桃井は受け答えからして圧倒的に絶対的におかしいし、
それに桃井の口からはもっと疑問になる言葉が飛び出していたのだ。
その全てをこの目の前の桃井に問いただしたいが、
混乱する頭の中を整理できるような余裕は今の藤堂にはなかった。
333 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 03:04:39.51 ID:x5dxrJEGo
「も・・・桃井、お前は、何を言っているんだ!それに、応援団の朝練はどうした!!」

「え?応援団って・・・春の選抜は終わったし、夏までしばらく練習はないはずでしょう?」

桃井は藤堂の言葉を明らかに理解し兼ねている顔をした。
その様子に黙っていられず、藤堂は桃井の胸倉を勢いよく掴み上げた。

「何を言ってるんだ・・・どういうことだ!!インターハイが遠くても、
練習はいつもやっていただろう!?それに、応援以外の仕事だって・・・」

「お、落ち着いてください会長!お、応援団は、去年の夏を最後に部員不足で廃部になったじゃありませんかっ!」

「なん・・・」

藤堂の目の前が真っ暗になった。
身体中から血の気が引いて、桃井を掴みあげた手がするりと抜けた。
力も抜けてしまって、仕舞いにはその場に座り込んでしまった。

「応援団は部としての実体を失って、運動部の大きな試合が近くなったときにだけ生徒会からの選抜で組織される、
生徒会の下部組織になるって決定がなされたはずでしょう?それに・・・」

「・・・それに・・・?」
334 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/12(日) 03:06:27.36 ID:x5dxrJEGo
心配そうに覗き込む桃井の顔を、ほとんど朦朧としながら藤堂は見上げる。

「その決定をしたのは、あなたのはずでしょう、会長・・・」

私が、応援団を終わらせた・・・?
違う、私はそんなことしない。
自分が命より大切に思っているものを、そんな風に・・・

ふらふらと立ち上がり、手を貸そうとする桃井を押しのけ、部室のドアノブに手をかける。
この中には、いつもの風景が。
下級生が整然と並んで、腕組みして笑う宗像が待っているはずなんだ。
ここを開ければ、いつもの日常が戻ってくるはずなんだ。

ドアを開いた先にあったものは・・・

「・・・会長、表札はそのままですがここは、催し物で使う道具を入れておく倉庫になったんです・・・」

蛍光灯の取り外された暗い室内に、体育祭の大きな飾りや太鼓、表彰台、棒倒しの長い棒や
体育で使う平均台、カゴいっぱいのサッカーボールなどの道具が積み上げられた、ただの倉庫だった。

そして、自分の中に、広い会議室の中、立ち上がって、
応援団の解散決定を宣言する書面を読み上げた記憶を、確かに今"思い出した"のだった。



【つづく。】
335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage saga]:2011/06/12(日) 03:14:54.60 ID:x5dxrJEGo
今回の投下分は以上です
この後団長は徐々に天然っぷりを露呈することになります

すごく久しぶりに書き込ませてもらったのですが、
こんな古いのでも覚えていてくれる方がいてくれて本当に嬉しいです
スレのほうも力作揃いで、投下に踏み切るまでにすごく勇気が要りましたwww
送信ボタン押すまでリアルに吐きそうになってたのは内緒ですwww

ここまで読んでいただいてありがとうございました
途中で消えてしまわないように頑張りたいと思います!
336 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/06/12(日) 06:08:45.80 ID:63CuAfSko
>>294の誤字というか saga忘れで謎な変換が挿入されているのを発見(ノд`)

>シチュエーションの違いだけでここまで高翌翌翌揚感に違いが出るらしい×
                         高翌揚感            ○

これって何で翌が挿入されるようになるんでしょう?他にも同じようなのがあるし。
337 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/12(日) 06:10:22.94 ID:63CuAfSko
訂正のメール欄にsagaを入れ忘れてて酷いことになってるwwwwwwww
ごめんなさい………orz

高翌揚感×
高揚感 ○

ってことでお願いします(ノд`)
338 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage saga]:2011/06/12(日) 16:18:59.69 ID:x5dxrJEGo
ググってみたらこういうことだったらしいwwwww

ttp://jrca.dotpp.net/?%CB%E2%CD%E2%CE%CF
339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/12(日) 17:17:27.75 ID:63CuAfSko
>>338
なるほど、他機能の弊害だったわけですね
これからはsaga忘れしないようにしないとまずそうだなぁ

教えてくれてありがとうございました
340 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/06/13(月) 03:46:23.88 ID:Xxlxd4cu0
先日、まとめに投下した分の続きをこちらに投下します。
PCでの投下はなにぶん初めてなので至らぬ点があると思いますが大目に見ていただければこれ幸いです。


 【赤羽根探偵と奇妙な数日】あらすじ。

 売れない探偵、赤羽根が新宿の路地裏で偶然出会った少女。彼女は自分に関する記憶を殆んど無くしていた。唯一の手がかりは、彼女がごく最近女になる病気"異性化疾患"を発症した可能性が高い、ということだけ。とある切欠で、彼女は"名佳(なのか)"という仮の名前を与えられ、赤羽根の妹として共同生活を始めることになる。
 不信感の募る前途多難な暮らしの中で、次第に名佳は赤羽根に気を許していく。
 さまざまな人間の思惑が絡む中、赤羽根の手を離れ、遂に名佳としての高校生活がスタートしようとしていたが……。


 多分こんな感じだよね。うん、自身皆無。
341 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/06/13(月) 03:49:25.35 ID:Xxlxd4cu0
 【赤羽根探偵と奇妙な数日-4日目朝2-の続き】

 オレの胸元あたりの高さで軽快なリズムを刻むチョークの音。
 聞き慣れたその音が終わるや否や、リズムを刻んだ張本人は背丈に合わないハニーブラウンのロングヘアを躍らせながらくるりと観衆に向き直る。
 その可愛らしさ、可憐さに、クラスの人間の殆んどが目を奪われていた。

 ……ある一人を除いては。それはオレもよく知る人物で、そいつを含めると見知った顔は二つだけだ。

「"宮内 さつき"です。よろしくお願いします」

 ひとつは、オレの真横で深々と頭を下げながら憮然とした口調でどこぞのアニメ映画会社から告訴されそうな偽りの自己紹介をする、見た目詐欺の女刑事―――ゴロリンさん。

 もうひとつは、窓際の奥席でグラウンドを退屈そうに眺めている斑な色の髪を拵えた少年―――前田 陸。

 ……よりにもよって、この二人と同じクラスなんて。しかも、そこに坂城さん、御堂さんといった事情に精通する協力者の姿はない。
 何度も見回したけど、視線を三往復させた時点で諦めた。
 ……ああ、ホントに憂鬱以外の何物でもない。

 ゴロリンさんが身分を偽って此処にいる理由も分からないし、前田 陸にいたっては朝のイザコザ以来口も利いていない。

 はぁ……こんな色々と面倒な状況で、一体何をどうしろって言うんだよっ、赤羽根さんは!

「―――ね……赤羽根っ!」
「……ぇ?」

 不意に、呼ばれ慣れていない声で呼ばれ慣れていない苗字を言われ、顔を上げるとクラス内のありとあらゆる視線がオレに集まっていた。
 ……う、視線の見えないドリルで直接胃を攻撃されてる気分だ。

「……だいじょぶ?」

 ゴロリンさんが可愛らしく首を傾げながらオレの顔を覗き込んでくる。記憶を失くす前のオレはそういう性癖でもあったのか? 思わずドキッとしてしまった。
 そんな心境を悟られまいとした本能が功を奏したのか、オレは辛うじてその問い掛けに頷き返すことが出来た。結果オーライ。

「……無理しちゃ、ダメだかんね? はい」

 オレの首肯に一応は納得したらしく、ゴロリンさんは使い古されて殆んど円形状になった白チョークを差し出してきた。
 ……え、と。なんですか、コレ?
342 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/06/13(月) 03:50:48.52 ID:Xxlxd4cu0

「……ホントに、だいじょぶ?」

 再度、不安そうなゴロリンさんの反則的ロリータフェイスが近付く。
 ………。
 あ、そっか。
 オレの番だっけ、自己紹介。

「……ちょこっとだけ、緊張してるかもしれないです」

 自分の心境なのにうまく言い表せなくて、ありふれた言葉に頼ってしまう自分が情けなかった。
 ……けど、そんな泣き言を吐いたところでどうにもならない―――と思うから、オレは、恐らくヘタクソであろう作り笑いを浮かべながら、チョークを受け取って黒板に向き直る。
 えぇ、と。
 字、間違わないようにしなくちゃ。
 赤、羽、根、名、佳……と。
 ……よしっ。

「あかば―――」

 ―――改めて自己紹介しようとした振り返り様、不意にオレの左横の引き戸がゆっくりと開いた。

「―――ふぇ?」「―――ね……」

 その引き戸から現れたのは、ふんわりした髪―――ミディアムボブっていうんだっけ?―――が印象的な、平均値より少し背の高い女の子だった。

「えー、あー、ほえぇ……」

 まだ眠気が覚めないらしくボンヤリとした表情で、オレとゴロリンさんの顔を見比べては首を傾げている。

「ぅあ、ごめんなさいぃ。クラス、間違えちゃいましたぁ……失礼しまぁす」
「え、いやいやいやっ! 合ってるぞ!! お前のクラスはココだ!!」

 引き戸が閉め切られそうになる寸でのところで先生に呼び止められて、その女の子はおずおずと半開きの引き戸から顔を覗かせた。

「あ、……あぁ、ホントだぁ。
 遅ればせながら、おはようございますぅ……」
「……また遅刻か、"佐伯"」
「え。あ、はい。すみませぇん……バスが混んでて遅刻しましたぁ」

 バスの乗車率は遅刻にさほど影響が無い気もするけど。
 どうやら日常茶飯事のことらしく、担任は怒るのも面倒といった表情で形だけの苦言を呈したけれど、当の本人は悪びれる様子も無い。
 なんていうか……マイペースな子だな。人の顔色を窺うことなんて知らないんだろうな。
 ある意味、羨ましい性格をしてる。
 そんなことをぼんやり考えながら彼女を見ていると、急に頭上で豆電球が点灯したかのように目が見開いた。

「おぉっ、転入生さんですかぁ!?」

 瞬間湯沸かし器顔負けのテンションの急上昇。

「……今、自己紹介中だ。いいから席に着きなさ―――」

 ―――カシャっ
 という作られたシャッター音が担任教師の注意喚起の途中で響き渡る。
 それは、彼女の携帯電話から発せられたもので恐らくは……って、なんでオレらにレンズが向けられてるんだよっ!?
343 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/06/13(月) 03:52:15.41 ID:Xxlxd4cu0

「いいですねいいですねぇっ!! 綺麗な子、可愛い子は大っ歓迎ですよぉ!!」

 な、なんなんだ、この子っ!?
 それまでの寝惚け眼が嘘みたいに、興奮したような……というか大興奮の表情で佐伯さん――だっけ?――は、無邪気にはしゃいでいる。
 クラスの連中も半ば"またか"と言わんばかりのテンションで呆れ返ってるし……。

「佐伯ッッ!」
「……あぁ、ごめんなさいごめんなさいぃ」

 些かボルテージの上がった担任の言葉に我に返ったらしく、彼女はいそいそと自分の席であろう後ろから二番目の空席にちょこんと座る。

「さささ、どうぞお気になさらず続きをどーぞぉ」

 ………え?
 ………え、教室内の空気引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、後のこと全部オレに丸投げですか!?

 見るな、そんな憐れんだ目でオレを見んな、みんな。

 って……ん?

 なんだ?

 今、ゴロリンさん……あの"佐伯"って子を睨んでいたような……?
 まぁ、あんなにも自由気ままな子だと気持ちは分からなくもないけど。……ま、いいか。
 こんな時にアレコレ考えあぐねたって仕様がない。これ以上目立つのも避けたいし。とりあえず、自己紹介だけは終わらせておこう。

「……赤羽根です。下の名前は"めいか"じゃなくて"なのか"って読みます。よろしくお願いします」

 よし。
 いかにも、この名前で十数年の人生を過ごしてきたみたいなアピールも出来た。後は野となれ山となれだ。


「―――ふむ。赤羽根は、目は良い方か?」

 何かを考えていたらしい担任が藪から棒に問いかけてくる。

「え? あ、はい。……まぁ、それなりに」

 "名佳"として測ったことはないけれど、別に裸眼の視力で生活に支障を来たすことはなかったし……ま、多分大丈夫だろう。

「それじゃあ、宮内はそこの一番手前の席、赤羽根は……あそこの奥の席に着くように」
「「え?」」

 思わずゴロリンさんと同じ言葉が口から漏れ出た。
 担任はこともあろうに、オレには、窓の外を不機嫌そうに眺めている斑柄の茶髪男子の右横の席、ゴロリンさんには体格的配慮がなされた最前列の席をそれぞれ指定してきたのだ。

「何か問題でも?」
「「いえ……」」

 かくして、オレとゴロリンさんはそれぞれの不服を押し隠し、それぞれ最も望まない座席へと腰を下ろすことと相成ったわけである。

 ……憂鬱のための交響曲、第一番、溜息二重奏。終曲。
344 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/06/13(月) 03:53:38.70 ID:Xxlxd4cu0





 ―――赤羽根さんって、スタイルいいね。羨ましいなぁ。

 ―――宮内さんって、髪キレー。

 ―――どこに住んでるの?

 ―――なんでこっちに越してきたの?

 ―――わ、肌スベスベー。化粧水どこのブランド使ってるの?

 ―――メアド交換しよーよっ、赤外線付いてる?

 ―――部活やってた? よかったらウチの部に……


 ………つ、疲れる。
 転入したての女子ってこんなにも根掘り葉掘り訊かれたりするものなのか? あ、駄洒落じゃなくて。
 人生初の経験だから、どうにも勝手が分からない。
 遥か遠くに見える、もう一つの人だかりの中心にいるゴロリンさんは、流石社会人として揉まれているだけのことはあるらしく無難に受け答えしているけど。
 オレはボロが出ないようにするだけで手一杯だ。
 あぁ、もぉ……目立たないようにするってこんなにも面倒なことなのか!? あ、駄洒落じゃ……もういいや。

「うるせーな」

 ふと。質問攻めの渦中にあったオレの左隣から。すこぶる不機嫌そうな低い声が飛んでくる。
 ……斑な茶髪の学ラン――前田 陸だ。
 食事を邪魔された野良猫みたいな目つきでこちらを睨みつけている。

 ……なんだよ、今朝の仕返しでもしようっていうのか?

「―――転入生に訊きてぇのは、ホントはンなコトじゃねーだろが」

 え?

 その学ランのぶっきらぼうな一言で周囲の空気が凍りつく。
 なんて言えばいいんだろうか?
 凄く大袈裟に言えば、集団で決めた不文律とか禁忌とか……そういうモノに触れた瞬間の胃が締め付けられるような……そんな雰囲気。
 そんな異常な空気の中で、その事情を把握しきれてないオレとゴロリンさんだけが取り残されていた。

「いい加減、うぜーんだよそーいうの」

 ハリネズミみたいな髪を掻き毟りながら低く吐き捨てる学ラン。
 ……なんなんだよ、オレに今朝の仕返しがしたいんなら直接言えばいいじゃないか! なんで関係のない子たちに当り散らすんだよっ!?

「……何よ。フツーに質問してるだけじゃん」

 質問攻勢の中心核にいた綺麗なストレートヘアの女子が、果敢にもあの不良崩れに対して抗議する。
 ……ああもうっ! オレを抜きでオレを出汁にして、何をいがみ合ってるんだよ!?

「友達になりたいから色んなことを訊きたいだけ。それの何がいけないの?」

 ―――あれ?

 字面だけを追えば、その彼女の言い分は当然のものに聞こえるはずなのに……オレは違和感を覚えた。

 今、オレ……あの子に睨まれた……?
345 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/06/13(月) 03:54:00.97 ID:Xxlxd4cu0





 ―――赤羽根さんって、スタイルいいね。羨ましいなぁ。

 ―――宮内さんって、髪キレー。

 ―――どこに住んでるの?

 ―――なんでこっちに越してきたの?

 ―――わ、肌スベスベー。化粧水どこのブランド使ってるの?

 ―――メアド交換しよーよっ、赤外線付いてる?

 ―――部活やってた? よかったらウチの部に……


 ………つ、疲れる。
 転入したての女子ってこんなにも根掘り葉掘り訊かれたりするものなのか? あ、駄洒落じゃなくて。
 人生初の経験だから、どうにも勝手が分からない。
 遥か遠くに見える、もう一つの人だかりの中心にいるゴロリンさんは、流石社会人として揉まれているだけのことはあるらしく無難に受け答えしているけど。
 オレはボロが出ないようにするだけで手一杯だ。
 あぁ、もぉ……目立たないようにするってこんなにも面倒なことなのか!? あ、駄洒落じゃ……もういいや。

「うるせーな」

 ふと。質問攻めの渦中にあったオレの左隣から。すこぶる不機嫌そうな低い声が飛んでくる。
 ……斑な茶髪の学ラン――前田 陸だ。
 食事を邪魔された野良猫みたいな目つきでこちらを睨みつけている。

 ……なんだよ、今朝の仕返しでもしようっていうのか?

「―――転入生に訊きてぇのは、ホントはンなコトじゃねーだろが」

 え?

 その学ランのぶっきらぼうな一言で周囲の空気が凍りつく。
 なんて言えばいいんだろうか?
 凄く大袈裟に言えば、集団で決めた不文律とか禁忌とか……そういうモノに触れた瞬間の胃が締め付けられるような……そんな雰囲気。
 そんな異常な空気の中で、その事情を把握しきれてないオレとゴロリンさんだけが取り残されていた。

「いい加減、うぜーんだよそーいうの」

 ハリネズミみたいな髪を掻き毟りながら低く吐き捨てる学ラン。
 ……なんなんだよ、オレに今朝の仕返しがしたいんなら直接言えばいいじゃないか! なんで関係のない子たちに当り散らすんだよっ!?

「……何よ。フツーに質問してるだけじゃん」

 質問攻勢の中心核にいた綺麗なストレートヘアの女子が、果敢にもあの不良崩れに対して抗議する。
 ……ああもうっ! オレを抜きでオレを出汁にして、何をいがみ合ってるんだよ!?

「友達になりたいから色んなことを訊きたいだけ。それの何がいけないの?」

 ―――あれ?

 字面だけを追えば、その彼女の言い分は当然のものに聞こえるはずなのに……オレは違和感を覚えた。

 今、オレ……あの子に睨まれた……?
346 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/06/13(月) 03:55:34.11 ID:Xxlxd4cu0

「言いたいことがあんなら聞くぜ? 皆塚(みなづか)」
「っ」」

 胸につかえた違和感の正体を突き止める間もなく、前田 陸は敵意を通り越した呆れにも似た低いトーンで返す。
 まるで、最初から彼女―――皆塚さんの言葉には正当性がないと言わんばかりに。

「……行こ、シラけちゃった。次、化学でしょ? 遅れちゃう」

 皆塚さんは、手入れの行き届いているであろうつややかなロングヘアを大仰に翻して、事跡に戻っていく。それにつられるようにして周囲の女子達も一人、また一人とオレの席から離れていく。
 ……少し名残惜しい気もしたが、オレは胸を撫で下ろしていた。
 やっぱり、皆塚さんが女子グループのリーダー格なんだろうか。気付いてみれば、それまで騒がしかったオレやゴロリンさんの周囲に落ち着きが戻っている。
 ……というか、大多数の男子達からは異性の転入生との距離を測りかねているような感があるものの、女子は、あからさまにオレ達に触れないようにしている。そんな節が感じ取れるような気も―――
347 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/06/13(月) 03:56:26.26 ID:Xxlxd4cu0

 ―――カシャ

「………で、なんで君はそんなトコからオ……私に携帯カメラを向けているかな」

 教室後部の出入り口近くから聞こえた音のほうに目を向けると、案の定、朝のHR中に散々ヒトのコトを引っ掻き回してくれた例の"佐伯"さんが、引き戸越しにこちらを見つめていた。
 ……手元のものを含む3つの目で。

「えへへっ、私のことはぁ……空気だと思ってくださぁい」

 ……随分と騒がしい空気だことで。

「その辺にしとけ、佐伯。
 ……転入生が直ぐ転校生になっても知らねーぞ」

 言いえて妙な言い回しが真後ろから飛んでくる。……転校、ね。

「う、むむぅ。そ、それは困りましたねぇ……。赤羽根さんや宮内さんのブロマイドは欲しいし……ぅう……」

 学ランの白々しい物言いを真に受けて、真剣にアタマを抱えている佐伯さん。……なんていうか、オレが少し見上げるくらいの背丈があるせいかすこぶるギャップのある構図だなぁ……。

「―――おはよ〜」

 アタマを抱えている佐伯さんの肩越しに聞いたことのあるアルトの声がした。
 ……皆塚さんに負けず劣らずの綺麗なセミロングヘア。
 御堂さんだ。イチ早く反応したのは私的な交流が深い学ランだった。

「どうした?」
「え、と。例のすっごい可愛いってウワサの転入生さん達にご挨拶したくて。
 えーと……そっちのお二人、かな?」

 学ランとは正反対ともいえる自然な微笑みを浮かべ、左右を見回しながら教室に入ってくる御堂さん。
 ……あ。ゴロリンさんからは見えない位置で御堂さんからウインクされた。……ちょっとドキッとしてしまう。
348 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/06/13(月) 03:57:32.13 ID:Xxlxd4cu0
「"初めまして"、だね。
 私、御堂 初紀っていいます。クラスは違うけど、体育は一緒になるんで、その時は……お手柔らかに」

 ―――うん? 今、御堂さん、少しどもったような……? 気のせい、か?

「んー、よろしくねー。あたしは宮ま……宮内 さつきです。こんなナリだけど一応同い年だから……だからねっ」

 ―――うん、ゴロリンさんのどもりには説明がつくからどうでもいいか。

「赤羽根です。よろしくね、御堂さん」
「……ありゃりゃ、なーんか私、お邪魔虫っぽいですねぇ……」

 仲睦まじく話すオレ達に疎外感を感じたのか、佐伯さんはしょんぼりしたように自分の席に戻り移動教室の準備を始めた。
 ……別に、仲間外れにするつもりはないんだけどな。

「んー。なんか可哀想な事しちゃったかな。……あたし、佐伯さん―――だっけ?―――と一緒に行くよ」
「被写体になる覚悟はしといた方がいいですよ?」
「ま、いいんじゃないかな。減るもんじゃなし。同性に見向きされなくなったらオシマイでしょっ」

 そういって、ゴロリンさんはかなり身長差のある女の子の後を追う。
 ……何ともまぁ、ゴロリンさんらしいというかなんというか。
 普段は物事にあんまり固執しない性格なんだろうか?

 ……まぁ、その性格に赤羽根サンは適用されないらしいけど。
349 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/06/13(月) 04:05:26.92 ID:Xxlxd4cu0
とりあえずここまでです。

…実は既にもうちょい先まで話は出来ているのですが、毎回ネカフェにて手作業で文章を起こしているので時間がものすごくかかってます。うへ。
PCだと三点リーダとかダッシュってすこぶる面倒なんですねえ、とほほん。

お目汚し失礼しました。
>>345あたりは脳内あぼんしていただければ幸いです。

では。
350 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/13(月) 07:05:55.58 ID:yi94XTTAO
携帯から失礼。
乙GJ!!
351 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/13(月) 07:59:08.87 ID:bHT/AsBAO
いつまでこの夢は続くのか…乙GJなどと言う言葉では最早足りないッッ!
352 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/06/13(月) 09:37:46.96 ID:Xxlxd4cu0
あ、今気付いたけど、主人公の赤羽根さん(兄)がまだ出てない。
一週間(なのか)限定の兄妹話書くだけでどれだけ時間かかってるんだかちょっと泣きたくなります。

しかも、結構スレの志向とは違う話なのに……ホント、皆さんの懐の深さには頭の下がる思いです。

353 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/13(月) 13:53:32.21 ID:4LvT1L860
職人様いっぱいキター!
皆さま乙GJでございます!

……あづい
聞いた話によると、女の子はクーラーに弱いと聞いた
コレはつまり、女体化すると夏を涼しく過ごせるという事だ
きっともじゃげもじゃげしてる脛毛とかがつるんと抜けて冷却効果を高めるのだろう
冷房費が削れれば節電にもなる
日本の未来のために、みんな急いで女体化してほしい
354 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/06/13(月) 19:14:12.69 ID:Eu5qF/pj0
>>353

「だぁ〜ッ!あっづい…クーラーつけろよ」
「ヤだよクーラー苦手なんだよ、ホレ団扇」
「〜ったく、前はそんな事無かったろーが…女になった途端にコレだから」
「男女には体感温度に差があんだよ、女の方が体感温度が低いんだからしゃーねーだろ」
「へーへー…しっかしこうも暑いとだな…コレちょっともらうぞ」
「あ…」
「あ?」
「それ…オレの飲みさし…」
「……」
「……」
「……前はそんな事気にしてなかったよな」
「…あ、あー、い、今の無し、気にしない…うん、別に気にしないから」
「いや、今更無理があるだろ」
「……だって…」
「……」
「……」
「……暑いな」
「…うん」

余計に暑くなる気がした。
355 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/06/13(月) 21:57:10.43 ID:R2PSi1VL0
>>354
非常にニヤニヤした。
画面の前でニヤニヤしてる俺キメェw

みなさんお久しぶりです。
作品の方ですが現在絶賛スランプ中という……
徐々に職人ももどってきている中で私なんかが長編なんぞ投下していいのかとも思ってますがw
頑張って書くつもりですので、よろしくお願いします
356 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/06/15(水) 17:03:42.95 ID:fgaExyyo0
三点は中黒変換ですぐ出てこない?
1セット辞書登録はデフォ
357 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/06/15(水) 23:22:08.83 ID:KvokFPlRo
結構前に貰った安価を投下しまする
リハビリがてらの作品なので、誤字脱字は勘弁……
358 :安価『ノーブラ巨乳』1/2 ◆yhNqGdIG7M [sage]:2011/06/15(水) 23:23:32.54 ID:KvokFPlRo

梅雨時の夕方、空を見上げるとどんよりとした灰色の雲が広がっている。
夕方から夜にかけて雨が降りますよ、と朝見た天気予報でも言っていたっけな。
濡れないうちに帰ろうと、ペダルを踏む足の力が心なしか強くなる。

ふと土手の上を見ると、ランニング中の女子高生が複数人。
何の部活かは分からないが、全員赤いブルマーに白い体操着というド真ん中ドストライクな格好。
その中に一人、たわわに実ったおっぱいを装備した巨乳ちゃんが目に付く。

「このおっぱい……只者じゃない……!」

おっぱいマイスターと名高い俺の目が光る。
えいおーえいおーと黄色い掛け声が開始の号令。
自転車を180度回転させ、来た道を戻る。
全く、少しだけ、少しだけだぞと、鼻の下を伸ばし、口元を緩ませながら後を追いかける。
傍目から見ればかなり怪しい学生だが、そんなの気にならないぐらい性欲が頑張っていた。
359 :安価『ノーブラ巨乳』2/2 ◆yhNqGdIG7M [sage]:2011/06/15(水) 23:24:10.66 ID:KvokFPlRo
―――と、五分も経たないうちに雨粒が一つ、二つと、数えていられるのもほんの数秒。
降ってきたかと思った瞬間には、バケツをひっくり返したかのような土砂降りとなる。
俺が濡れればもちろんその子達もずぶ濡れ。
真っ白な体操着は肌にぴっちりと密着し、赤白黄色と綺麗な花が咲く。
あたふたしている様子をにやにやと眺めていると、巨乳ちゃんだけ何か様子がヘンなことに気が付く。
スケスケだけれども、あるはずのそれが浮き出てこない。
俺の見間違いなのだろうと思い、その子を正面から見られる位置に移動。
見間違いだろうとぶつぶつ呟きながらも、心の中ではガッツポーズ。
次の瞬間、うひひっと変な声が漏れる。
漫画に出てきそうなぐらい綺麗な形をしたおっぱいがががががが。
ヤッパ釣鐘型ヤナ!
それだけで十分なのに、突起したモノが二つ。綺麗な色だ、うひょひょーい。
今晩のおかずにしようと、記憶に留める作業に入り、ジーっと眺めていると、ふと気が付く。
胸のところに書いてある名前、見たことがある気がする。

「大豆生田……」

雨で少し滲んでいるが、こんな苗字はそう居ない。
でもあいつは……いや、可能性は……無くも無いのか。
色々考えていると、巨乳ちゃんがジトっとした目で俺のことを見てきている。
この変態が、何見てるんだよと言わんばかりの冷たい目線、あの何を考えているのか分からない表情、もう俺は確信した。

「……いつから気付いてた?」
「すれ違った時から」
「まあ、その、なんだ、いいおっぱいだな」
「久しぶりに会ってそれかよ、まあお前らしいからいいけど」

ケラケラ二人で笑いながら、俺は挨拶する代わりに乳首をつねってあげた。
360 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/06/15(水) 23:26:00.53 ID:KvokFPlRo
と、まあ駄文投下ですいません><

大豆生田は北関東ではとある県にある苗字です
「おおまめうだ」とも「おおまみゅうだ」とも複数の読み方があるそうです
361 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/06/16(木) 00:09:28.14 ID:YsIyWq6l0
GJ!!!
362 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/06/16(木) 00:23:50.52 ID:LphnJQPmo
ここまでの作品まとめておきましたですです

最近の方はコテトリ付けない人が多いんですね
せっかくの良作も、誰が誰なのか分からない><
363 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福島県) [sage]:2011/06/16(木) 01:20:14.77 ID:xQh/tJN9o
>>362
ヒント っ【まとめでサイト内検索】
364 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/16(木) 01:49:46.83 ID:4SL5Hsmmo
>>362
安価ネタばかりで、つながりは示唆してても
単品でも読めるようにしてたんでトリ必要ないよなーとか勝手に思っていたんですが

付けた方がいいんでしょうか?
365 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/16(木) 02:21:12.56 ID:dogpux4AO
>>362
そういう流れだと思ってた漏れ参上。つまり何も考えてませんでしたorz

確かに書いた人がわかった方が良いですね。
366 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/17(金) 12:14:14.18 ID:av0uDW9x0
まとめ内でも見返してほしいなって人はコテ付ければいいし
リハビリ兼ねてなんでちょっとまだ名前は出せないなって人も居るだろうし…
付けないとどうなるかを踏まえたうえで、トリ付けは各作者任意って所が落とし所だと思う

>>354
上手く話題を振ると逆安価(というかリクエスト?)になる、俺覚えた
こういうきっかけから暑い夏が始まってしまうのですね乙GJ!
367 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/17(金) 14:26:39.76 ID:riDEgf9O0
あーテス、テス…トリ付けってコレでおk?
368 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/17(金) 14:37:55.21 ID:riDEgf9O0
コテトリ付ける事にしました。あと、漏れが今まで書いたヤツを載せときますです。番号合ってるよな?

>>29-31>>37-40>>42>>44-45>>48-50>>62-68>>70-75>>77-80>>92-96>>120-125>>135-140>>172-174>>196-198
以上が何故か長編になりつつあるヤツです。グダグダです。漏れ、書き始めに『お通し』とか言ってたよな?
現在停滞してますが何とかします…って続き読みたい人っているんでしょうか?ちなみにノープランなのは相変わらずです。
タイトル付けるとしたら『オレをセフレにしてくれ』とか?センスがないのでにんともかんとも…

>>166-167 流れ自体は>>152から始まってる?安価『ボクの初体験…3つとも、貰ってくれる?』の
>>161の食堂シーンの無断スピンオフという暴挙ですw作者様その節は失礼致しました。書いてる時はノリノリでしたw

>>214 >>213へのレスで書いたヤツです。何気に自分ではキャラが気に入ってるので続きは書きたい…って事で>>234-238に続きました。

>>234-238 安価『可愛さあまっていじめたり冷たくしていた妹が(略)』 シリーズ化したいなーとか思ってますw

>>258-261 安価『生粋の女子生徒から見た異性化した元男子生徒』 何気にセフレのヤツのキャラが出てる。

>>265 漏れは何を考えてたのか…orz コレまとめで☆付いてなかったけど大丈夫なのかな…基準がわかんね。

>>354 >>353へのレスです。◆440BCpUd8Bibさんにニヤニヤしてもらえたなら本望ですw

>>265>>354はまさかまとめに載るとは思ってませんでしたwww
…チラ裏書き始めて一ヶ月ちょい……先生、もっと上手く書きたいです。

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>>362 あらためまして、まとめ有難うございます。
369 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/17(金) 19:39:26.08 ID:Q+eopgrqo
>>368
安価たどったら不覚にもおっきした
370 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/06/17(金) 23:06:07.69 ID:t0LHsrbvo
コテトリ議論でなんかちょっとごちゃごちゃさせてしまった…
何か申し訳ないですorz

>>368
思いもがけないものも、自分が作品だと感じたらまとめちゃうんです><
371 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/18(土) 23:23:33.91 ID:fHoCXqFY0
>>360 鉄オタさんが来てた…スッゲーGJ!

>>369 それって本懐ですw

>>370 コテトリについて考えるきっかけになりました、感謝!
まとめについてもアレを拾って頂けるとは書いてる香具師としては嬉しかったです!
372 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 03:59:25.74 ID:yncY5J+Qo
少しお借りしまうす
>>300-334の続きですよ

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こんなとき、宗像なら・・・宗像ならどんな判断をする?

何かが大きく歪んでしまった世界の中で、藤堂はいつも隣で控えていた宗像の姿を探した。
だが、今まで宗像をよく見かけた場所が、この学校にある保障はない。
桃井を振り切って校舎へ足を踏み入れた藤堂は、朝も早くまだ人気の無い廊下の真ん中で途方に暮れてしまった。

しかしすぐに、あることを思い出す。
この学校に宗像が存在するのだとしたら、相良聖のときと同じように、その手がかりは自分の記憶の中にあるかもしれない。
そのことに思い当たるとすぐに、藤堂は目を閉じて意識を集中させ、宗像のことを一心に思った。

だが、先ほどとは違い、全く宗像に関する手がかりは頭の中に浮かんでこない。
やり方が悪いのか、それとも・・・この学校に、宗像はいないのか。
考えたくないことだった。

寄る辺の無いこの世界で、頼れるのはもう宗像だけだった。

出来る事なら、あの憎たらしい笑顔をもう一度見たい。
心からそう思った。
373 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:01:26.51 ID:yncY5J+Qo
必死の願いも叶わず、沈んだ心持ちのまま、予鈴の鳴る直前になってようやく自分の教室の引き戸を開けた藤堂だったが、
その願いはあっさり叶うことになる。

「今日は遅いんだな、沙樹。もう風邪は治ったのか?」
「あ・・・」

藤堂の記憶によればいつもの自分の席である席のその隣りに、他の誰でもない、宗像巌の姿があった。
やたらにたくましくてごついガタイも、小さな金縁の丸眼鏡をかけた人の好さそうな顔も、いつものままだった。

「お、おい・・・どうした?」
「・・・え?・・・は、離れろ!」

藤堂は、反射的に自分が宗像のたくましい胸に抱きついていたことに気付き、慌てて両手で突き飛ばす。
しかし実際は体格にかなりの差があるため、傍から見れば藤堂が大慌てで離れたように見えたのだが。

「お前に抱きつかれるなら悪い気はせんが・・・今日はどうした?様子がおかしいぞ、沙樹」
「ま・・・待て!宗像、その呼び方はなんだ!!」
「呼び方?いつも通りだろう?」

顔を真っ赤にして自分をビシッと指差し声を張り上げる藤堂に、宗像は肩をすくめた。

「だ、だって、お、一昨日まで・・・苗字で呼んでいたじゃないか!!」
「お前の言う一昨日がいつから数えて一昨日のことかは知らんが・・・俺は恋人のファーストネームも呼んではならんというのか?」
「恋人・・・」

一瞬唖然としてしまった藤堂だったが、すぐにそれがいつもの宗像の冗談だと解釈してまた声を張り上げる。

「と、とにかく!学校ではその名前で呼ぶなと言っただろう!!わ、わからないなら今すぐその身体にこの拳で・・・」
「わかった沙樹。まず落ち着いて、周りをよく見てみろ」

宗像に促され、藤堂がふと周囲を見渡してみると・・・
教室中の視線が見事に自分たち二人に集中していた。

「・・む、宗像!お前、ちょっと付き合え!!」
「お、おい、朝のホームルームがもうすぐ始ま」

藤堂に手を引っ張られながら、宗像は教室を飛び出していった。
残されたクラスメートたちは呆然とそれを見送っていた。
374 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:03:46.47 ID:yncY5J+Qo
「一昨日まで通っていたはずの学校とこの学校が違う・・・と?」
「ああ・・・でも、この学校のことも記憶しているんだ・・・」

図書室の一角で身を潜めながら、藤堂は宗像に自分の置かれた状況を告白していた。
巨大な本棚の森に隠されたこの場所は若い恋人同士の逢引現場としてはなかなか燃える場所だと宗像は思っていたが、
目の前の藤堂のいつになく深刻な調子からそんな雑念はすぐに吹き飛んでいた。

「一昨日までは応援団は存続していて、私はその団長で、お前は副長だった・・・でも」
「応援団は去年、解散したはずだな」

その言葉を宗像の口から聞いたとき、わかっていたこととはいえ、
それが現実のことであると改めて目の前に突きつけられたようで落胆が隠せなかった。

「ふーむ・・・混乱しているお前が今それをすぐに思い出せるかはわからんが、お前が応援団員だったことは確かにある」
「・・・なんだって?」
「だが、お前は一年の夏に女体化したことを切欠に、退団したはずだ」
「そんな・・・」

藤堂が一年の夏、女体化によって応援団に居続けることが危ぶまれたことが確かにあった。
しかし、一週間続いた朝夕の土下座と、長い髪を坊主にしてまで嘆願したことが先輩方に認められ、
応援団に残ることが出来たはずだった。

「・・・なあ沙樹、本当に覚えていないのか?」
「くどい。わからないからこうして聞いているんだ」

鼻をフンと鳴らして藤堂がそう答えると、今度は宗像が目に見えて落胆した表情になる。

「・・・お前は、俺の告白を受け入れたから、応援団に残らない選択をしたんだろう?」
「え・・・?」

何を言われたかわからず、藤堂は硬直してしまう。

「告白・・・って・・・なん・・・の?」
375 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:04:54.34 ID:yncY5J+Qo
「はぁ・・・」

苛立たしげに、しかし少し寂しげにため息をついて、宗像は答える。

「俺が、お前と、男と女の関係になりたいと思っている。そういうことだ。
つまり俺は、お前に、俺のためにも女として生きてくれと頼んだんだ」
「違う!」

私は、お前の告白を断って応援団員として、男として生きる道を選んだ。
お前の気持ちがあったからこそ、私は頭を丸めて先輩たちのところに行ったんだ。
それが、藤堂の一昨日までの記憶だった。

「そこまできっぱりと否定されてしまうと、流石に傷つくんだがな」

宗像は頭をかいた。
藤堂は、ほとんど放心状態でそれを見つめていた。

「続きを・・・」
「なんだって?」
「それから応援団が・・・どうなったのか・・・続きを教えてくれ」

気が遠のきそうになりながら、藤堂はやっとそう口にした。
見かねて宗像が手を貸そうとしてきたが、藤堂はそれを振り払った。

「ふう・・・その後、二年の半ば、俺が団長を引き継いだとき、お前も知っていると思うが、
ある事件で二年団員の大半が去り、その後、お前を会長に迎えた生徒会の決定で応援団は解散になった。こんなところだ」
「そう・・・か・・・」

藤堂の記憶では、団長を引き継いだ藤堂の指揮と、
副長補佐だった宗像や桃井を筆頭とする一年団員の努力の甲斐あって見事その危機は乗り越えられたはずだった。
この危機の詳しいところは別の機会に語られることになるだろう・・・
それはともかく、宗像の語る事実はその全く逆のことだった。
宗像は団長として応援団を指揮し、藤堂は生徒会長となる。そして訪れた応援団の危機。
そして、その危機に手を差し伸べることもなく、それどころか止めを刺した自分。
376 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:06:07.06 ID:yncY5J+Qo
「・・・なあ沙樹、お前は、平行世界という言葉を聞いたことがあるか?」
「平行世界・・・?」
「そう。言い換えると、"IF"の世界だな」

そう言って宗像は書棚のある一角で真剣に本の背表紙を見極め、
目当ての本を見つけると閲覧用の長机の並んだスペースに移り手招きした。

「どういうことなんだ?」

分厚くて硬い表紙をめくる宗像の前に座りながら藤堂は尋ねた。

「端的に言えば、『ある世界から分岐し、それに平行して存在する世界』のことだな。
例えばお前が一年早く生まれていたら?または、お前の両親が結婚していなかったら?
もっとスケールを大きくするなら、第二次大戦で日本が敗戦していなかったら?恐竜が絶滅していなかったら?
そんな様々な歴史や人、自然現象のIFの集合体が、平行世界。パラレルワールドという考え方だ」

分厚いが、妙に新しくてどことなく胡散臭い本を広げながら、宗像は説明した。
ちらりと見るにどうも、SF小説のようであるのだが・・・

「その平行世界のひとつが、今私が居るこの世界だと言いたいのか?」
「お前の話を聞くに、これは十分通る話だと俺は思う。
いわばここは、お前にとって『藤堂沙樹が女として生きる道を選んだ世界』だな」
「私が・・・」

女として生きることを選択した世界・・・
そんな突拍子も無い話、いつもなら絶対に信じないが、実際目にしてしまっているのだから信じざるをえない。
ぼんやりと考え込んでいた藤堂はふと、思いついたことを口にしてみる。

「腕の怪我が・・・」
「なんだって?」
「腕の怪我が・・・治っているんだ」

藤堂が腕の怪我の経緯を話すと、宗像は少し考えて答えた。
377 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:07:26.44 ID:yncY5J+Qo
「ということは・・・身体自体はこの世界の藤堂沙樹のもので、心が向こうの藤堂沙樹のものだということかも知れんな。
それならば、お前がこの世界の記憶を持っていることの説明もつく。その記憶を持った脳は、この世界の沙樹のものだからな」

つまり、藤堂の魂だけがなんらかのきっかけの為に、この世界の沙樹と入れ替わってしまったということか。
しかし、どんなきっかけがあればそんなことが起こるというのか・・・

「元には・・・戻れないんだろうか」
「ふーむ・・・申し訳ないが、元々の根拠が空想化学、つまりフィクションの話だからな。
はっきりしたことは言えんが・・・そのはっきりしない根拠によれば、同じ状況を作ることができれば元に戻れるパターンが多いな。」
「同じ状況・・・」

地獄のようなお稽古の応酬か?それとも母との対峙?

「もしくは、何か精神的な要因で超常的な大きな力が働き、こんな状況になっているのだとすれば、
その解決の方法はまずお前自身の心配事を解消すること、だな」
「私の・・・心配事?」

宗像は本を両手でぱたんと閉じながら答える。

「例えば、元の世界に戻りたくない理由があってここにお前がいる」
「戻りたくない理由・・・?」

そんなもの、無いように思う・・・第一、応援団の解散したこの世界に居ることで、
今の藤堂は心にぽっかりと穴が開いたような喪失感を味わわされているのだ。

「人がそういった時空すら飛び越えてしまうような力を働かせるのは大抵の場合、深層意識によるものだ。
深層意識は今お前が思考している表層意識に守られている、お前自身にもわからない言わば無意識の領域だ。
今のお前が気付いていないだけで無意識では、なんらかの強いストレスが蓄積されていたのかもしれないな」
「私自身も気付かないストレス・・・そんなの、わかりっこないじゃないか」

言ってもしょうがないことだとわかってはいたが、藤堂はそう反論せずにはいられなかった。
宗像は曖昧に笑った。
378 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:09:29.62 ID:yncY5J+Qo
「後は、もう少し現実的な話もあるが・・・聞きたいか?」

本をさっさと返してきた宗像は、椅子に座りなおしながらそう問いかけた。

「なんだ。何かあるなら一々聞かなくていいから早く話せ」

やけにもったいぶる宗像に少しイラつきながら藤堂は答えた。

「ふう・・・わかった。初めに言っておくが、怒るなよ?」

気が進まない様子の宗像を、藤堂は訝しげに見つめた。

「お前のその記憶は、既視感や未視感で説明がつくかもしれない」
「どういうことだ?」

歯切れの悪い宗像に苛立ちながら藤堂は先を促す。

「既視感というのは例えば、初めて見たはずの場所なのにそこに以前来たことのあるような記憶があるように感じること。
未視感というのは、日常的に見ていた、来ていたはずの場所に、まるで初めて来たかのように感覚すること。
この両者、特に前者はSFの題材によく取り上げられたりするが、一般的には単なる脳の錯覚だと言われている」
「・・・つまり?」
「・・・お前が、そうだと思い込んでいるだけ」

反射的に宗像の顔に向かって突きを繰り出していた。
避けもしなかった宗像は、拳をモロに喰らったにも関わらず、
「おお痛い痛い」という言葉とは裏腹に平然としていた。
思ったとおりのタフさに忌々しさを感じながら、藤堂は背を向けて出口へ向かう。

「困ったらまた来い、沙樹」
「なんだって?」

引き戸を出て振り返ると、そこにはいつもの作り笑いではない優しい微笑を向ける宗像の姿があった。

「残念ながら俺がお前の悩みを代わってやることは出来んが・・・相談にはいつでも乗る。
それに俺は、お前の話を信じているぞ。俺はいつでもお前の仲間だ」
「・・・黙れ、バカ」

涙ぐんでいるのを悟られないように、藤堂は背を向けたまま引き戸を閉めた。
379 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:10:28.34 ID:yncY5J+Qo
しかしながら、机上でいくら論をこねくり回したところで実際に行動できなければどうなることでもない。

二人で周囲からの好奇の視線を無視しながら教室に戻り、
どうできるわけでもないのでいつも通り授業を受けていると、
藤堂を取り巻く状況は何一つ進展しないまま、結局時間は正午を回ってしまった。

「さて、今日はどこにする?」

昼休みを告げるチャイムの後も机に頬杖をついて考え込んでいた藤堂に、
隣の席から宗像が声をかけた。

「どこにするって、なんだ」

意図がつかめずに聞き返した藤堂に、宗像は困ったような顔で答える。

「昼飯のことだろう?今日はどこで食う?」
「なんでお前がそんなことを聞くんだ。私がどこで昼食を取ろうがお前には関係ないだろう?」

藤堂がつっぱねるようにそう言うと、宗像はあからさまに寂しそうな顔をする。

「なんだ、今日は一緒に食わないのか?」
「一緒に?今日は?私はいつもお前と昼食をとっていたというのか?」

藤堂が慌ててそう聞き返すと、宗像は「やれやれ」と肩をすくめ、嫌々ながらといった風情で頷いた。

「・・・その様子だと、弁当も作ってきてくれなかったんだろうな」
「なんだって?」

藤堂は唖然として宗像の顔を見つめた。
380 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:11:18.83 ID:yncY5J+Qo
「ハァ・・・お前の作った出汁巻きは絶品だというのに、今日はそれが口に出来ないと思うと・・・」
「待て!私は、お、お前と昼食を共にするどころか、べ、弁当まで手作りで用意していたというのか!?」

藤堂の顔が羞恥で真っ赤に染まると、宗像が心なしかにやりとしたように見えた。
その様子に藤堂がはっと気付いたときには、もう遅かった。

「・・・また嘘か」
「気付いてしまったか。ばれなければ明日何かの間違いでお前が作ってきてくれたりするかと思ったのだがな」
「ええいやめろ宗像!貴様、どこからが嘘だ!
まさか、私からこの反応を引き出すために最初から最後まで全てでっち上げたのではあるまいな!!」

藤堂が机を蹴倒して立ち上がり構えると、宗像はおどけるように一歩後ろに下がった。
机の倒れる派手な音に、クラスの全員が振り返った。

「いやいや、思いついたのはお前が俺からの誘いを断ろうとしたときだ。つまり、嘘は手作り弁当のことだけだ」
「それは、本当なんだろうな!」
「ああ嘘じゃないさ。嘘をついている顔には見えんだろう?」
「お前が詐欺師の顔をしていないときがあるか!!・・・ふん、まあいい」
「おいおい、どこへ行くんだ?昼飯はどうする?」

翻るスカートの裾を気にしながらもさっさと教室を出て行こうとする藤堂の背中に宗像が声をかけると、
先ほどよりも赤みを増したように見える顔が振り返り、キッと睨みつけた。

「ええいお前となど食えるか!!私はひとりでどうにかする!」

バンとすごい音を立てて教室の引き戸が閉められた。
381 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:13:49.83 ID:yncY5J+Qo
「弱った・・・」

屋上、階段室の屋根の上、いつもの場所に寝そべりながら藤堂は、
どうやら宗像に弱みを握られているらしい自分に気付いた。
しかもその弱みの中でも藤堂にとって最も厄介な、『惚れた弱み』というやつだ。

勿論、その『惚れた弱み』を握られているのはこの世界の沙樹であるのだが・・・
その弱みを握られている限り藤堂は、沙樹の代わりに恐らくずっと宗像に先ほどのように弄ばれることになるだろう。
普通なら口でなく拳でわからせてやるところだが、
流石に宗像相手ではそれも骨の折れる仕事になるであろうことが予想できた。
それに口喧嘩であの宗像に勝てるとも思わなかった。

この世界の沙樹に一抹の恨みを感じながら寝返りを打つと、
藤堂は、近寄って来るある気配に気付いた。

「あーれー?なんだよ今日は可愛いネーチャンが寝てンのかよ」

目を開けずに気配を探ってみると、
藤堂の寝ている屋根の上より下に立っているであろう気配は四人だった。
香水や整髪料のきつい匂いと、それに混じって漂うタバコの臭いから、どうやらチンピラのようだった。

「そこは俺たちの場所なんだぜー」
「うっほ、よく見るとすっげえいい女」
「場所代でももらっちまおうか、お代はもちろんカラダで」

下卑た笑い声を上げるチンピラたちの前に、藤堂は音も無く飛び降りる。
何が起こったかわからずきょとんとする四人の中のリーダー格らしい金髪男の懐から、一瞬でタバコの箱を奪った。
ピアスの沢山ついた顔の前で箱を振って見せた時に、どうやら箱の中にタバコは一本しか残っていないことがわかった。

「・・・そろそろ買ってこないとな」

タバコの箱を男の胸ポケットに返してやりながらそう囁いた。

おっと。
咄嗟に気付いて乱れたスカートの裾を整えた。
これだからイヤなんだ。女の服は。
382 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:15:05.86 ID:yncY5J+Qo
呆気にとられて固まっていたピアスの男は、
やっと我に返って前のめりになって凄んできた。

「お、おおい!てめぇ、なんのつもりだコラ!?痛てぇ目に遭いてぇのかこの糞アマ!!」

唾を散らしながら喚く男から、藤堂はうんざりした様に顔を背けた。
屋上や校舎裏に出て行ってチンピラに絡まれるなど、お決まりのパターンではあったが、
こんな小物が幅を利かせているところを見ると、応援団亡きこの学校の治安はどうやら思った以上に悪いらしい。

「待てよ、どこに行くつもりだ?」

さっさとその場を去ろうとした藤堂の腕を、チンピラの一人が掴んだ。

「このまま行こうってのかよ」
「落とし前ってやつをつけてから行けよ」

そう言いながら、四人は既に藤堂の周りを取り囲んでいた。
さすが、このような状況にはずいぶん場慣れしているようだった。

先ほど自分の身体のポテンシャルを確かめるつもりで男のタバコを奪ってみたが、
どうやらこの世界の母の鍛え方も藤堂の世界の母と変わらぬ厳しさらしい、
思ったとおりの動きが元の世界の藤堂と寸分違わぬ速さで出来た。

藤堂の強さは確かに応援団で培ったものだが、その多くは母の行う過酷な訓練の賜物でもあった。
だからこそ応援団亡きこの世界の沙樹も、この藤堂と互角の力を持っていた。

だが、この愚か者たちに身の程を教えてやるついでに、
更なる追加試験を行ってみるのも悪くないと藤堂は思った。

「落とし前?・・・どうしてやればいい?」

わざとらしく聞き返す。
383 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:16:43.50 ID:yncY5J+Qo
「あぁん?そうだな・・・」
「な、なあ、この女、旧校舎に連れ込んでマワしちまおうぜ」
「橋口、お前確か童貞だったよな?このネーチャンに筆おろしさせてもらえよ」
「マ、マジっすか!げへ、げへへ」

ひきつった顔で相談を始める男たちを尻目に、
藤堂は四人の足を払うべく膝から崩れ落ちるような動作でしゃがみこむ。

そのときだった。

「楽しそうだな、俺様も混ぜろや!」
「ゲェッ!お、お前は!」

チンピラ達が振り返りその姿を確認すると、驚愕と絶望の入り混じった奇妙な悲鳴を上げる。
藤堂がしゃがみ込んだ姿勢のまま声のしたほうを振り向くと、そこにいたのは・・・

「血に餓えた狂犬こと相良聖様だ!てめえら大人しく俺様の昨日編み出した新技の実験台になれや!!」

長い髪を風の中で振り乱し、楽しげに構えをとりながらそこにいたのは紛れもなく、
応援団が不倶戴天の敵として追い続けて・・・いた、相良聖その人だったのである。
384 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:18:04.04 ID:yncY5J+Qo
「ひ、ひひいい!か、勘弁してkべぐ」
「う、うわわわあああgふ」
「せ、先輩たち、待ってくdふでぶ」

この相良の動きは一年若いためか、藤堂の世界の相良ほど洗練されてはいないものの、それでも見事だった。
逃げようとする三人は、唯一の出口で待ち構える相良によって一瞬で叩き伏せられてしまった。
その場には、呆気に取られて硬直したリーダー格の金髪だけが残された。

「さーて、あとはテメーだけだな」

拳をボキボキ鳴らしながら迫って来る相良に、金髪はのけぞるように一歩下がるが、
はっと気付いたような顔をした後で気を取り直したのか、ひきつった顔に不遜な笑みを浮かべた。

「お、お前がこの学校をシメてる中野とかいう奴の女だっていう相良聖だな?」
「・・・なんだって?この学校の番は俺だ!!あいつこそこの学校をシメてる相良聖のお、男、オトコ・・・」

何故か顔を真っ赤にしている相良を、今度は藤堂が呆気にとられて見つめた。

「こ、こっちから出向いてやろうと思っていたが手間が省けたぜ。俺はこの前極殺高校から転入してきた沢渡様だ。
お前には中野をおびき出すエサになってもrげふう」

何か言おうとしていた沢渡のピアスだらけの顔には既に相良の右ストレートがめり込んでいた。
そして、相良がめり込んだ拳をスポッと引き抜くと、沢渡は、ひじょーーー・・・なスローモーションで前のめりに倒れた。

「へっ!御託の多いサルだったぜ!・・・ま、まあともかく・・・大丈夫かよ?お前」
「・・・え?」

藤堂に、相良の白磁のような手が差し伸べられた。
そういえば藤堂は、先ほど四人の間でしゃがみ込んだ姿勢のままだったのだ。
その手をしばらくぼんやりと見つめていた藤堂だったが、相良の急かす声で我に返ってそれを取った。

「あ、ありがとう・・・」

胸中で複雑な思いを渦巻かせつつも、相良に立たせてもらいながら藤堂はなんとかそれだけ言った。
それをどう解釈したのか、相良は鼻だけでため息をついた。

「まあ、この学校は俺様がシメてるとはいえ、たまにああいう勘違いヤローが現れるから気をつけろよな!」
「あ、ああ・・・すまない」

この私が、あの相良に、説教されているだと?
藤堂の思いは更に混迷を極めた。
385 : ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/19(日) 04:19:16.64 ID:yncY5J+Qo
いや、それだけじゃない。
単なる勘違いとはいえ、あの相良聖に、藤堂は助けられたのである。
傍から見れば、チンピラ四人に囲まれて腰砕けになってしまい座り込んでしまっている所を。

「それにしても、お前も女だろ?だったら、やられっぱなしで腰なんか抜かしてるんじゃねえ!
女ならこう、どんなときでも諦めず男の急所を狙ってでもだな」
「おい、もうそのくらいにしておいてやれ」

別の方向から響いた男の声に振り返ると、そこにいたのは藤堂の思ったとおりの人物だった。

「なんだよ中野!俺達は今女同士の話をしてるんだよ!がーるずとーくだがーるずとーく!」
「・・・そんなお下品なガールズトークがあるかバカ」

殺戮の天使こと中野翔は、壁に頬杖をつきながら嘆息した。
そして今度は自分を見つめる藤堂の視線に気づき、まじまじとその顔を見つめ返す。

「あんたは確か・・・生徒会長の藤堂先輩?」
「なにっ!お前、生徒会長だったのか・・・!!」

中野の言葉に、相良は藤堂から一歩後ずさった。
なんだ、この世界の相良は、応援団ではなく生徒会と揉めているのか?
些細な符合に藤堂は知らずに笑みをこぼしていた。

「・・・ああ、お前は生徒会選挙みたいな全校集会は残らずサボっていたからこの人の顔も知らんよな」
「う、うるせえ!・・・とにかく!今のは別に俺がしたくてした喧嘩じゃねーからな!
お前を助ける為にやむなくやってやったんだから、後から難癖つけやがったら承知しねーぞ!」

それだけ言うと、相良は中野の手を引きさっさと下階へ消えていった。



【つづく。】
386 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage]:2011/06/19(日) 04:22:14.43 ID:yncY5J+Qo
以上お目汚し失礼いたしました。
ていうかずっとコテ間違えてたwwww
申し訳ありません
ではまた近いうちに。
387 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/19(日) 04:40:28.19 ID:csAY4LiT0
一瞬コテ略したのかと思いましたw
乙GJです!団長かわいいよ団長…続きに期待。
388 : ◆Zsc8I5zA3U :2011/06/20(月) 01:32:22.90 ID:gZDRBXfA0
こんにちわ、お久しぶり、始めまして。
懐かしさあまりに濡れちゃった
389 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/06/20(月) 07:40:18.60 ID:wG5FNmlDO
ちょちょちょ、すごく懐かしい方が戻ってきてくれた…
嬉しくて朝からテンションアップです><
390 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/20(月) 10:26:08.91 ID:yZrdXsqv0
◆Zsc8I5zA3Uさんキター!はじめましてッ!
前スレの1000が言ってた通りこのスレには神が多数降臨してるな…もっと来い来いーッ!
SS投下も待ってます。
391 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/06/21(火) 11:20:11.92 ID:ddbGeGjC0
やっぱこの世界って天然女性の需要が下がってるんかな?


「ねー女さん、ちょっと頼みがあるんだけどさー」
「なに?」
「俺さー、このままだと女体化しそうなんだよねー」
「えっ!? ……ふ、ふーん、それは大変ね(男くんって童貞だったの!?)」
「それでさ、こんなの女さんにしか頼めないんだけど……」
「な、なに?(どどどどうしようっ、男くんに抱かせろなんて言われたら……キャーッ!)」
「おっぱい揉んでいい?」
「……は?」
「無くなる方はともかく、くっつく方がどんなモノか今のうちに慣れておこうと思ってさ……頼むよ」
「え?あ?う? ……い、いいけど」
「ありがとな!それじゃ二人きりになれる場所行こっか」
「う……うん(これってあたしの胸と一緒に気持ちも揉みほぐしその流れで一気にってコト!?キャーッ!キャーッ!キャーッ!)」

(中略)

――さんざんお胸を弄り回された揚句「やっぱこんなもんか、さんきゅっ」って放置されたあたしは女性失格なのでしょうか。(相談者:女さん(15))


みたいな
392 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/22(水) 03:29:35.48 ID:C5HLnrjSo
>>391
むしろ天然女性の彼女持ちってステータスになってそうだけど

「おはよー」
「あ、おはよう……はぁ……」
「どうしたんだ、朝っぱらから溜息なんて」
「朝っぱらからアンタ見たら、女としての自信がなくなっただけ」
「随分と失礼だな。自信?綺麗だと思うけど、どこに自信がないんだ?」
「だってさ、成りたてのアンタのがさっさと彼氏作ってるなんて、女の沽券がずたぼろなわけですよ……」
「バッ…バカッ、アレとは別に何でもないっつーのっ」
「だったらその弁当箱っぽいものは何かなー。2つもあるのはなぜー?」
「た、たまたまっ作りすぎて勿体ないから詰め込んだだけだっ」
「ふーん」
「だ、第一だな……アイツの理想は女体化してない人だって言ってたぞ」
「そーなの?」
「そうなの」
「じゃー、ライバル宣言とかしちゃったりしなくもないのだけどー」
「えっ?!そ……それは困る」
「どーしてー?彼氏じゃないんでしょー?」
「う"……それはそれ、こ、これはこれ……」
「素直じゃないなー」
「うぅ……」
「あー…ごめんごめん、冗談だから気にしないで。でもさー、さっさとコクっちゃった方がよくない?」
「それはちょっと無理……にょたカノって差別だの偏見だのが多いみたいだし………」
「当人同士が良ければ気にしなくていいと思うけど」
「でもさ、アイツの理想はまず天然の女の子って話聞いちゃったし、この場合は気にするしない以前の問題であって……」
「じゃー、諦めて他の男釣ってみるのはー?引く手数多でしょ」
「それはちょっと……アイツ以外と付き合うのは……」
「どーして?」
「想像が付かないくらい怖くて気持ちが悪いんだ……」
「?」
「男だった時のアイツとの付き合いを思い出すとさ、何となく、あー、性別変わっちゃったんだなーって意識できるんだけど、それ以外の男って考えたら同性に見えてきて……」
「ふーん、アンタもアンタで複雑なわけなのですね」
「なのですよ」


―――

これはちょっと違うか
393 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/22(水) 05:56:29.89 ID:079SCr9r0
>>392

たしかに天然女性の需要は高まる気がする。


「…な、なに?そんなジロジロ見て…」
「あー、やっぱり色つきリップつけてるッ!」
「あ、うん…変かな?」
「ううん、すっごい可愛ぅいよッ!」
「はは…やっぱ喜んでいいのかまだわかんないや…」
「喜べばイイんだよッ!女の子にとって可愛いは正義なんだよッ!」
「う、うん…」
「だからー…そのシュシュも可愛いッ!!」
「あ、えっと…あ、ありがとう…」
「ウム、よしッ!」
「……でも、ボクは……の方が…可愛いと思う…」
「ん?何ー?」
「ななな、なんでもないッ!」
「変なのー?でもさー、そんだけ可愛いと男子も大変だねー」
「…?なんで?」
「競争率だよッ!…ねぇー、誰かに告白とかされた?」
「無い無い無いッ!?そんな告白とか無いって!!」
「ムムっ?!オカシイなー、男子のみんな牽制してんのかなァ?」
「イヤイヤ、ボク元男だよ?」
「いやいや、そんだけ可愛いんだから関係無いっしょッ?」
「そんなもんかなー…」
「うん、わたしが男だったら絶対告ってるよッ?」
「ふぇッ!!?な、なッ……」
「?どしたのー?顔真っ赤だよ?」
「ななな、なんでもないですッ!!」
「変なのー?」
「……(ボクは、別に……が女の子でも…って何考えてんだよ、ボクもう女の子なのに…)」

―――

…にょたスレで天然女性無双でFAはマズイか
394 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/22(水) 08:59:36.86 ID:C5HLnrjSo
>>393
落としやすくて付き合いやすい(と、言う世間的評価)代わりに社会の偏見や差別のあるにょた娘か
見栄が張れる(と世の男どもが勘違いしている)代わりに面倒くさい(等と男どもが馬鹿なレッテルを貼っている)天然か

って所でFAではなく常に流動的、相対的な評価になりそう。


「全くもって失礼な話よね」
「あはは……ま、まぁ、ちゃんと理解してくれる相手を見つければいいって話だよ」
「それはそうだけど………癪じゃない?アンタにしてみれば元々は同じ性別で、ソイツだって同じ目に合うかもしれなかったのにさ」
「でも天然っていうと別な意味に聞こえるよね」
「アンタにはそっちも含まれてそうだけど」
「……しれっと酷い。でもさ、流れ的にボクのようなにょたって養殖もの、になるのかな」
「世の馬鹿どもに言わせるとそうなるかもね」
「勝手だね」
「勝手だわ」
395 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/22(水) 16:10:05.92 ID:079SCr9r0
>>394

「…アタシは可愛けりゃなんでもイイと思うけど?」
「男からしたら一概にそうとも言えないってコトだろ?」
「そーゆーコトを大真面目に考えてる時点で男ってバカなのよね」
「イヤ、私も元男だからなんとも…まぁ、男がバカってのには異論無いけど…」
「アンタは女体化してもバカのまんまよね」
「なぁ、私やっぱりお前に怨まれる様なコト何かしたか?」
「……単にツンデレなだけ」
「なッ…何言ってんのよバカッ!」
「そうだぞコイツは私に対しては『ツン』でしかないぞ、『デレ』が出るのはお前に対してだけだろ」
「アンタも何言ってんのよバカッ!!」
「……フラットウッズ・モンスターみたい」
「あ、ソレはわかる『真っ赤』って意味だな」
「だ、だ、黙んなさいよバカーッッ!!!」


…なんかこの流れのテーマで1本書けそうな感じですね。しかし男目線だと本当バカな考えにしかならない件orz
にょたと天然女性(つい『天然女』って書きたくなるけど、それだとホントに別の意味になるな)の
対比とかは職人さんによって扱いが違ってて実に面白い。
にょたに対しての偏見や差別とかも職人さんが書いてる世界観によって異なってくるだろうし、
書き様によっては天然女性に対する逆差別とかももちろん有り得るでしょうね。

まぁ、漏れの場合にょたと天然女性がレズっちまうパターンが多いのでいよいよカオスな訳ですがw
396 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/22(水) 20:54:54.59 ID:079SCr9r0
つか、>>253で求められたのってこーゆー対比とかだったのかなって今更思ったり。
もしそうならばクルクルパーな漏れには書くのなんて無ー理ーなーのーよーねー…申し訳ございませんorz
397 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/22(水) 21:32:10.60 ID:C5HLnrjSo
>>396
今の流れだと「男から見た視点」だから、安価とは勝手が違うかと

「うむ。正義なのは良い事だ」
「単純だなぁ……」
「シンプルイズベスト テンプレも時にはいいもんよ」
「なのかなぁ……?」
「ほら>>395見なさいよ。使い古されたツンデレでも、自分に向けられていたら、って考えたら中々に乙なものよ?」
「……何気に失礼だよ?!」
「あらそう?褒めているのだけど」
「微妙にけなしてもいるよ……あ、こっち見てる」
「え?大丈夫よ。あの子にべったりだもの」
「よく見てるね」
「全然、王道も王道、一目見れば粗方の理解を得られる手軽なジャンルよ?手軽が故に王道、王道が故に人気」
「……やっぱり失礼だってば」

――――
むしろこの流れ自体が1本になってる気がします(n゚ω゚*)
398 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(広島県) :2011/06/23(木) 18:13:29.40 ID:v36qf+w8o
初めてなんですが・・投下しても大丈夫ですか?
399 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山陽) [sage]:2011/06/23(木) 18:19:07.35 ID:7C4x3iZAO
バチコーイ
400 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:19:38.13 ID:v36qf+w8o
これはとある世界・・女体化という現象が日常にある世界のお話。




いざ異国へ・・



                  ◆Zsc8I5zA3U





舞台はとある学校、時期はちょうど10月半ば・・全校生徒及び一部教師まで巻き込んだ相良 聖VS藤堂 魁の決闘もようやく落ち着いてきた。そしてこの時期になると学校の2年生にはある一大イベントが待っている・・

「修学旅行か! 楽しみだぜ!!!」

「ああ、いい思い出になるといいな」

校舎の屋上で和気藹々と会話をしている2人・・それぞれの名は女の方が月島 狼子、そして男の方が
木村 辰哉と言った。彼等は高校2年生、これから起きる修学旅行に思いはせながら日々を過ごしている、それに今回の修学旅行の旅行先は歴代の修学旅行先とは別の意味で違う。

「それにしても凄いよな・・何せ今年の修学旅行はアメリカだもんな」

「そうそう!! もしかしたらあのSAORIと出会えるかも」

「おいおい、そりゃないだろ。SAORIっていったら世界を代表する女優だろ? そう簡単に会えないって」

「この野郎・・俺の夢を壊しやがって!! 噛んでやる!!!!」

「うわっ!! や、やめろ〜!!!!!」

いつものように狼子に噛まれる辰哉の構図、これもお約束のうち・・

401 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:20:01.59 ID:v36qf+w8o
そんな大盛り上がりの後輩組と違って一方の先輩組はというと、かなりふてくされているようである。

「ガァァァァ!!!! なんであいつ等はアメリカなんだよッ!!!!!」

「おいおい、別に・・」

「この俺様がアメリカに行けねぇなんてふざけてるに決まってる!!!」

この2人に関してはあえて追求はしないが、一応紹介はしておこう。この学校の名物であり中学時代は各学校の不良達を恐怖のどん底までに恐れさせた伝説のツートップ、相良 聖に中野 翔。この2人の馴れ初めはこの際関係はないので省かせて貰おう、さて翔はともかくとして聖が非常に機嫌が悪いのは今年の修学旅行の行き先である。

「全く、狼子や辰哉達が行けてなんで俺達は行けれぇんだよ!!」

「あのなぁ・・確かに俺達の頃は国内だったけどそれなりに楽しめたじゃねぇかよ」

「うるせぇ!! こうなったら生徒会へ殴り込みだ!!!」

ここまでくれば流石の翔でも聖は止められない、まるで氾濫を起こした河川の如く生徒会総本部へと向かう。

402 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:20:49.49 ID:v36qf+w8o
生徒会・・学校内の全てを統括しており校内での影響力は凄まじいものではある。しかし一般の高校の生徒会はそこまで影響力はないはずなのだが、この学校の校風は生徒の自由性を尊重しているのでこうした生徒会も存在できるのだ。勿論、ただ自由に任せるのではなく教師の監視もついてはいるのである程度の体裁は守っている。そしてその生徒会の総本山とも言えるべきところがここ生徒会室、中には生徒会長である和久井 奈美(わくい なみ)と
その秘書的立場でもある1年の生徒がおり、業務の真っ最中である。

「会長、書類の準備が整いました」

「ご苦労。この書類を職員室へ提出すれば一段落ね」

生徒会長の奈美は女体化者でありながらも仕事をテキパキとこなすし成績もかなり優秀な部類に入る、全体的な生徒からの人望は不明だが可もなく不可もなくと言ったところ。そんな静けさが広がる生徒会室に嵐は唐突にやってくる・・

「さて今年の修学旅行に関しては生徒会はここまでね」

「はい、次は各部活の・・」

「そりゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」

いきなりぶち破られた生徒会室のドア。そして颯爽と登場した聖を2人は唖然としながらみつめていたが奈美も伊達に生徒会長をやっていない、表情を戻しそのまま聖を見据える。

「・・我が生徒会に何の用事かしら? 相良さん」

「用事だと・・決まってるだろ!! 今年の修学旅行についてだ!!!!」

生徒会室中に響き渡る聖の怒声。そんな聖とは対照的に一方の奈美はそのまま平静を保っていたが、聖にして見ればそれが更に気に食わないようだ。

「なんで今回の2年は修学旅行先が海外なんだよ!!! 俺達の時とは大違いじゃねぇか!!!!」

「一応、生徒会の方でも厳正なる議論の末に承認されたんだけど。それに先生達も今回の修学旅行で他国の文化に触れてもらおうと・・」

「うるせぇ!!! 生徒会の意見なんざ関係ねぇ!!!!」

一向に聞く耳を持とうとしない聖であるが、奈美はそのまま目を瞑りながら静かに聖の主張を聞き入れる。
403 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:22:02.72 ID:v36qf+w8o
「なんで俺達の時は海外じゃねぇんだよ!!! 黙ってないで少しは答えろ!!!」

「・・留年」

「は?」

「私は生徒会長よ、一般の生徒を留年させるぐらいどうと言う事はないわ」

いくら生徒会の権限が大きくとも一人の生徒を留年させたり退学処分にまで追い込むのは不可能に近い、せいぜい停学がやっと・・だけども奈美は生徒会を統べる生徒会長。当然として教師達からの信頼も厚いもので、もし奈美が校長に聖の留年を直訴したらすぐさま職員会議が開かれる。それに聖は過去にも色々とやらかしている事がかなりあるのでますます留年の可能性は高まる。

「いくらてめぇでも生徒一人を留年に追い込むのは不可能だ!!!!」

「・・他校との乱闘、そして普段の授業態度に加えて成績に当校生徒及び教師への暴力行為の数々。ほんの一部だけどそれを私が校長や理事長に言ったらどうなるかしらね」

「だけどそれはてめぇじゃなく先公達が決めるんじゃねぇのかよ!!」

「それに留年したら・・彼氏と一緒に大学へ進めなくなるわよ」

「――ッ!!」

聖自身も留年は絶対避けたいところでもあるし自身の持っているプライドがそれを許さないし、何よりも将来の進路は翔と一緒に大学へ進学する事・・そのために翔と一緒に勉強をしているのだ。

「それでも抗議するならどうぞご自由に」

「・・チッ、胸糞悪い奴だ」

そのまま聖は意気消沈に近い感じで生徒会室を後にする、奈美はその姿を見てようやく一息つく。

「ふぅ・・全く、手のかかる人」

「流石です会長! あの相良さんを説得させるなんて・・」

「別に、誰だって出来るわよ。それにああ見えても根が単純そうだったからああいったまで」

そもそも奈美は聖を留年させようと本気で考えていない、さっきのは脅し・・聖を納得させるのと現実を解らせるため。

「例の柔道部の元部長みたいな非道な人間じゃないわよ、私は」

「は、はぁ・・」

「まぁ、春日先生ならもう少し巧く言うんでしょうけど・・さて、仕事仕事っと」

生徒会長、和久井 奈美の仕事はまだまだ続く・・


404 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:23:21.01 ID:v36qf+w8o
あれから聖は不貞腐れながらいつものように保健室に足を運ぶ。

「畜生ッ! なんか丸め込まれた感じだッ!!!」

「はいはい、気持ちは解ったから落ち着いてね」

いつものように礼子は仕事の傍ら聖を宥める、こんな光景は毎日のように続いているので特に驚くことではない。

「なんで俺達はアメリカじゃねぇんだよ!!!!」

「別にいいじゃないの、今じゃなくても卒業したら彼氏とも行けれるでしょ」

「そりゃそうだけどよ・・」

礼子にして見れば早いところ聖を大人しくさせて自分の仕事を片付けたいのが本心だが一応聖にはそれなりに気に掛けているのでもう少しだけ慰める事にする。

「ま、今回は私も留守番だから愚痴でも聞いてあげるわ」

「・・わかったよ。というかなんで礼子先生は行かないんだ?」

「学校の事やら色々あるしパスポートも申請しないと行けないから今年は断ったの」

礼子は養護教諭であるために必然的に修学旅行に付き添うことにはなるのだが、今回の修学旅行先はアメリカ・・礼子の持っているパスポートは既に期限が切れているのは事実、しかし昔に比べてパスポートはデジタル化しているので前のパスポートと書類を役所に提出すれば申請には僅か1日程度で済む。しかし礼子は今回の修学旅行の付き添いを断ってこうして学校に留まっているのには個人的なものではあるが、とある理由がある。

(あそこには徹平もいるが、忙しいから会えないだろうし・・それにアメリカにはあいつもいる)

過去に礼子はSAORIこと、平塚 沙織と少しだけ揉めあいを起こしている、それは傍から見れば単なる揉めあいに過ぎなかったのだが・・礼子はその時の沙織の顔が未だに忘れられず深い思い出として残っている。礼子にとって自らの過去はあまりいい物ではないし聞いてもいい話ではない、要するに礼子は沙織と会うのが怖いだけなのだ。

「そういやさ、SAORIやその旦那の社長は礼子先生と同世代だよな。もしかして同級生だったりしてな」

「・・そんなわけないでしょ。早く教室に戻りなさい」

「ちぇ・・わかったよ」

少し強引気味に聖を下がらせる礼子、そのまま聖が出たことを見計らうとタバコを吸いながら一人ごちる。先ほどの聖は偶然にも真実をついており礼子は動揺を悟られぬために聖を追い出したのだ。礼子自身も少し大人気なかったと思うのだが過去と言うのは出したくはないし、それに自分の経歴を考えてもおいそれと簡単には公言できるものではない。

「俺も情けねぇな・・」

いつも吸い慣れているタバコが苦く感じる礼子であった。

405 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:24:19.54 ID:v36qf+w8o
場面は変わってアメリカ、ニューヨーク。この国の象徴である自由の女神を一望できるこの部屋に一人の男が書類と格闘していた。

「この書類は内容が曖昧だな、やり直しだ」

アメリカの都市であるニューヨークのオフィス街に本社を置くここ平塚グループ。会社としての歴史は浅いもののその規模は凄まじくあらゆる分野に積極的に顔を出しながら画期的かつ斬新的なアイディアの数々を秘めた商品をこの世に送り出し、凄まじいぐらいの利益を収めている。利益が金を産み会社は瞬く間に急成長を遂げており、今や世界規模でも支社が存在する。企業の長者番付ではもはや常連であり、世界中で知らぬものはいない。そんな大企業を率いているのが平塚 明人社長、他の大企業の社長とは比べたらまだまだ若いがその卓越した先見の明や緻密な戦略を駆使しながら
今日まで平塚グループに多大なる利益をもたらしている。更にはその妻に今や世界的に有名になっているSAORIなので世間からの注目が凄まじいものだ。

そんな彼は現在、秘書に見守られつつ各部署から社長宛に提出された書類を手際よく捌きながらいつものように業務に励む。

「これは今度我が社が主催するパリで行うファッションショーの企画書か。・・承認するか、担当部署に繋げろ」

「了解しました」

秘書はすぐに回線を取り出すと担当の部署へと繋げて明人へ手渡すと、明人はそのまま電話を受け取り話を進める。

「私だ、例のファッションショーの企画書を読ませて貰った。・・予算に関しての詳細や関係各所の手はずをしておけ、20日以内に全てをまとめあげて俺に提出しろ。以上だ」

電話を切って明人は更に書類を捌く、今回のファッションショーは規模も大きいので他の大手企業もこぞって参加することは間違いないだろう。それにファッション業界でブランドを展開している企業との関係を更に密接させる必要もある、先週にとある老舗ブランドとの提携で商品を出したばかりなのでそれの宣伝にもうってつけなのだ。

「・・この後の予定は?」

「役員会議とヴィトンの会長との食事会・・後は大統領との非公式会談です」

秘書から述べられるスケジュールを頭の中に入れながら明人は書類を全て片付けて、頭と身体に休息を叩き込む。大企業の社長ともなると仕事の量はかなり膨大でそれ故に休む時間も限られてくる。一時期、明人は休み時間を極限まで削り全てを仕事に費やしたために無理が祟って体調を崩してしまったことがあるので、それ以来時間が空いた時は出来るだけ休みに取り入れるようにしているのだ。暫しの休息・・心地よい時間が静かに流れる中で社長室にノックが響く。

「・・入れ」

「失礼しますよ・・っと、休まれてましたか社長?」

入ってきたのは、この会社のナンバー2である副社長の十条 兼人。明人とは幼馴染兼友人の間柄ではあるのだが今は公の場なので自分の立場に沿って明人に接する。
406 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:25:48.24 ID:v36qf+w8o
「十条か。丁度良い、休みついでに報告を聞こうか・・君、暫く席を外して置いてくれ」

「解りました。では後ほど・・」

明人は秘書を下がらせると、そのまま窮屈そうに寛ぎながらも休息を続ける。兼人も秘書が完全に下がったのを確認するととあるサインを明人に向ける。

「・・大丈夫だ、盗聴器の類はない。というか普段からチェックさせているのだから良い加減に慣れろ」

「そうかい、だけどお前が本社を留守にしてあんまり日が経ってないからな」

「お前と腹の探り合いをしても仕方ないだろ」

「・・そういう身内に対する甘さは足を掬われるぜ?」

「忠告として留めておこう」

先ほどまで厳粛な顔つきだった兼人はようやく安堵しながら昔と変わらず明人に話を投げかける。会社という組織である以上は内外問わず様々な派閥の覇権争いがある、特に現在のトップであるこの2人にはあらゆる派閥の人間が手段を問わず上から蹴落とさんと虎視眈々と見据えているので明人はそういった部類の人間達に出来るだけボロを出さまいと会社内外を問わず社長として厳格な態度を取り続けている、でなければトップとしての示しがつかないし何よりも情で流されてしまうような甘い考えに走らないようにとの戒めでもあるのだ。全ての上に立っている以上は個人の能力と実績を全て考慮した上で的確に指揮を握り続け、手塩に掛けて育て上げた会社の存続を常に考えなければならないのだ。

「全く、会社に来ると色々疲れる」

「その意見には同感だが・・組織である以上はそれなりの体裁を示さないと付け入る隙を与えてしまう。俺はまだまだ引退する歳でもないよ」

「ハハハッ、全くだ。しかし毎日美人の秘書と一緒に仕事しやがって・・浮気はするなよ」

「悪いが沙織以外の女など信じない性質なのでな」

「へいへい・・一生言ってろ」

兼人は少し苦笑しながらもタバコを吸いながら更に談笑を続ける、2人にとってこの談笑の時間こそがリラックスできる時間であり自然と気が楽になるのだ。
407 : ◆Zsc8I5zA3U [sage やはりこの時間は誰も居ないな]:2011/06/23(木) 18:26:53.08 ID:v36qf+w8o
「それより、日本から来る修学旅行の一団が本社を見学したいようだ」

「書類は見ている、そこ等は全て担当に任せてある」

平塚グループの本社は一般用の見学スペースも充分に管理している。明人として見れば会社の歴史も知ってもらえる良い機会でもあるし、新たなるユーザーを獲得できるのだ。それに学校の授業の一環にもなるのでアメリカにある殆どのスクールでは平塚愚ーぷ本社の見学が毎年盛り込んであるほどだ、そのお陰もあってか教職員からはおおむね好評である。狼子達の修学旅行先でも当然、明人の会社の見学が盛り込まれているのだが・・兼人はとあることを思いつく。

「どうだ? 日本から高校生が来てくれるんだから、たまにはお前が案内してみろよ」

「お、おいッ!! 別に俺が態々出向く必要がどこにある」

「別にいいじゃないか? 良い機会だと思うぞ?」

元々、明人は人前に出ることが余り好きではないもので仕事ならまだしも高校生の案内をするのは正直言ってごめん被りたいものである。

「そんなものは担当に任せて置けばいいだろう。それに第一俺は社長だ、一介の高校生達に・・」

「・・自分の息子達が見学した時に極秘に監視を付けたのはどこのどいつだ」

「――ッ!! あ、あれは・・だな」

明人の息子である慶太達もスクールの行事として、ここ本社に見学をしたのだが・・明人はよほど息子達の授業姿を見たかったのか、極秘に監視をつけてビデオに撮るように指示をしている。こう見えても明人はいわゆる隠れ子煩悩という奴なので自分の息子達が来訪してくるスケジュール等を予めレクチャーしており、特に見学場所は綿密に安全やら見学する資料や果てには試食のサンプルやカフェテリアの衛生面まで考えていたほどだ。まぁ、当の息子である慶太は既に見知っている施設ではあったので退屈そうではあったのだが、兼人の娘である香織は結構はしゃいでいたようだ。

「今回は俺達の故郷からはるばる来てくれるからな。・・それにお前もたまには気晴らしに別の仕事してもいいんじゃないか?」

「・・考えておこう」

会社では決して見せない明人の姿を兼人はタバコを吸いながら面白おかしく見つめるのであった。


408 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:27:17.23 ID:v36qf+w8o
なんやかんやで日が経ち、修学旅行当日。礼子が諸事情により修学旅行を辞退したため教員達は外部からの協力を得ることによって、どうにか解決できたようだ。そして空港前で生活指導の教師からお約束とも言える注意事項が発せられる。

「え〜・・今回の修学旅行は海外ということなので我が校の名誉に恥じぬ行動はもとより、日本人らしい慎みある行動を」

「なぁ、辰哉! SAORIに会えるかな」

「だから会えるわけないだろ・・って噛むなぁぁぁ!!!」

「人の夢を壊した罰だ!!!!!」

大概の生徒達は教師の話などまるで聞いちゃいないもので真面目に聞いているのはほんの一部と行ったところ、大半は先ほどの狼子のように興奮を抑え切れずにはしゃいでいる。

「それにしても先輩達はやけに大人しかったな」

「まぁ・・今回ばかりは事情が事情だし、聖さん達にはお土産でも買ってくるさ」

今回の修学旅行にあれだけごねていた聖が急に大人しくなったのには辰哉や狼子も少し疑問に思っていたところなのだが、あれ以来は聖も修学旅行については興味が失せてきたのか修学旅行については普通の言及に留まっている、しかし平穏になるならそれにこした事はないものだ。

「さて、もう搭乗の時間だけど手荷物は大丈夫か?」

「当たり前だ!! ボディーチェックで引っ掛からねぇよ!!!!」

「ハハハッ・・ん?」

ふと視線を泳がせていた辰哉であったが、なにやら慌しい騒動が目に付く。よくみて見るとどうやらボディーチェックのところで若い男女のカップルが係員と揉めているようだ。
409 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:28:01.54 ID:v36qf+w8o
「てめぇ!! この俺様が何でボディーチェックさせられなきゃなんねぇんだよ!!!!」

「で、ですから・・当社の規定でして」

「うるせぇ!!! こちとら修学旅行でむしゃくしゃしてるんだよ!!!」

係員に怒鳴り上げている1人の女性・・元より聖、それに前の方では翔の方も確認できる。

「おいおい、あんまり騒ぐなよ。辰哉達も同じ空港にいるんだからあんまり騒ぎと大きくするな」

「うるせぇ!!! ・・全く、他に空港はなかったのかよ」

「仕方ねぇだろ、他になかったんだし・・」

何とか聖を止めようとする翔。ここでもし聖が暴れてしまえばこの極秘旅行も全て水泡に帰してしまう、あれから奈美に説得されていた聖ではあるが内心ではまだ納得がいかないようでそれを見かねた翔は狼子達の修学旅行に日程を合わせた旅行を提案したのだ。しかし予定をあまり確認していなかったのか当初の修学旅行の日程が変更になっている事も知らずに辰哉に目撃される羽目となったのである、ただ唯一の救いが目撃者が辰哉だけであったのでまだ良い方だろう。2人とも本来は学校なので教師に見つかってしまえばまずは連れ戻されて説教は間違いないだろう。

翔としてみれば説教は元より余計なことで内申に傷をつけたくはないので何とか宥める。

「だけどよ、俺達は一応お忍びの身だ。ボディーチェックをしなくても所持品だけ見せればそれで済む話だからな」

「・・わかったよ」

そのまま聖は素直に係員へ自分の持っている所持品を突き出す。

「ほら、これでいいだろ!!!」

「え、ええ・・結構です。お通り下さい」

最近は時代の流れなのかボディータッチの正当性も薄れてきているので危険物持込の審査も、もっぱら機械が主流となっているので誤差は殆どない。しかし機械にまかせっきりということもあるので今でもこうしてボディーチェックの風習は残っている、だけども先ほどの聖のように係員に自分の所持品を見せれば通るのだ。全ての一部始終を見ていた辰哉は内心溜息をつきながら、視線を元に戻す。辰哉達もボディーチェックの時間でクラスごとで受けており、辰哉のクラスにも順番が回ってくる。
410 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:29:00.99 ID:v36qf+w8o
「辰哉! ボディーチェックをやり過ごしたら暫くは自由時間だ!!」

「予定表にも書いてあったじゃないか。ついでに言っておくと国際線は余裕を持って出発するのが常識だから時間には空きが出来るんだよ」

「し、知ってるぞ!! ちゃんと予習済みだからな!!!」

「・・それに荷物も引っ掛からないように俺の家で確認しただろ。心配するなって、それに旅行の時に使った常備薬もちゃんと持ってるか?」

「ちゃんとあるぞ!!」

「んじゃ、行くか」

そのまま辰哉達は難なく機械を通り抜けると、そのままクラス事に担任の軽い説明から解放されて国際線の待合室のロビーでゆったりと時間を過ごす。

「うわぁ、空港土産って意外に揃ってるんだな」

「あんまり無駄遣いするなよ」

「そうよ。もう少しで向こうで換算するために財布を回収されるんだから」

「友まで言われたら仕方ないな。そういえば刹那、外人に会った時は宜しく頼むぜ」

「・・わかった」

途中で合流した友と刹那らと一緒に談笑を始める狼子、そんな狼子の様子を見計らいながらお決まりの文句を言い出す。

「悪い、ちょっとトイレ行って来る」

「早く済ませよ」

「わかってるって・・」

勿論トイレに行くのは真っ赤な嘘、この場から抜け出すための口実に過ぎない。そそくさと歩きながら辰哉はとある場所へと歩みを進める・・国際線から国内線のロビーにお目当ての人物はそこにいた。

(おっ、いたいた・・)

辰哉が探していたのは聖と翔の2組、周りに知り合いがいないことを確認するとそのまま辰哉は聖達に近づく。
411 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:29:46.74 ID:v36qf+w8o
「先輩〜」

「ゲッ、辰哉・・」

「おいおいマジかよ・・」

辰哉の登場に明らかに動揺を隠せない二人・・お忍び同然の身である二人にとって近しい知り合いとは絶対に会いたくはない。それに辰哉を通じと狼子達の耳に入れば最悪な数珠繋ぎがあっという間に完成してしまい、最悪な状況になるのは目を見ても明らか・・だからここは無理をしてもしらばくれる必要があるのだが、傍目から見ても一線を画す美男美女の2人にとっては焼け石に水に等しいものだ。

「えっと、その・・なんだ?」

「あれだよ。おr・・じゃなかった、私達は〜とある観光客で」

「おい! 日本語がおかしくなってるぞ!!」

「うるせぇな!! てめぇだって慌てまくりじゃねぇか!!!」

明らかな動揺を見せる2人に辰哉は正直言って面白おかしくて仕方がないが、状況を察しながら2人を安心させる。

「・・大丈夫ですよ、俺の胸に留めておきます」

「そうか、助かったぜぇ〜」

「辰哉で良かったぜ」

辰哉の言葉に安堵する2人、そのまま辰哉は2人から事の経緯を説明してもらい複雑そうな表情を浮かべる。

「この時期に・・旅行ですか」

「いやよ、海外は流石に無理だったんで国内の安い所にしたんだ」

「全く、金がないのは苦労するぜ・・椿も苦労するな」

「あのなぁ!! てめぇも少しは働けっての!!!!」

「うるせぇ!!!! この俺様に労働なんざ似合わねぇし糞喰らえだ!!!!!」

いつものように所構わず良い争いを始める2人に辰哉は少し後悔に似た感情を抱いてしまうが、何とかぐっと抑えながら話を続ける。

「・・ところで学校にはなんて連絡してるんですか、それにご両親には?」

「ああ、一応親や学校には適当に伝えておいたから大丈夫だ。さて俺達は国内線だからもう時間はないしな、お前も一生に一度の旅行を楽しんでおけ」

「次こそは絶対に海外進出してやる。それに辰哉!!! ・・狼子達を守らねぇと承知しねぇぞ!!!!!」

「わかってます。・・こんなこと俺が言うのもなんですがお気をつけて」

「土産はちゃんと買ってきてやるから、心配すんなよ!! あばよ」

(何だか・・会わなきゃよかったかな)

意気揚々と2人を見送る辰哉、これが自分の先輩と思うと少し泣きたくなってしまうのであった。

412 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:31:52.17 ID:v36qf+w8o
辰哉が聖達を見送って数分後、ようやく辰哉達も搭乗の時間となり各自持っているチケットで振り分けられた席へと座る。幸運にも狼子一行はそのまま近くの席へと座れることになったのだが・・飛行機に乗ったとたんに狼子の調子が優れない。

「辰哉・・気分が悪い」

「おいおい、まだ動いてないんだぞ!?」

「アチャー・・いつものね、薬はあるの?」

「ちょっと待て。確かここに・・あった!!」

辰哉は自分の手荷物から礼子に貰った薬を取り出し、狼子に飲ませる。実は狼子は極度の乗り物酔いであり、前回の旅行では翔やドクオの安全運転も大きいが礼子から貰ったこの薬の効果が大きいもので今回も礼子から多めに支給して貰ったのだ。薬を飲んだ狼子は症状が落ち着きつつあるが、まだ会話する元気はないようである。

「ま、礼子先生からは薬を多く貰ったから当分は大丈夫だろうな」

「・・心配」

「薬が効いたらいつものようになるさ。刹那ちゃん」

「黙れ、[ピーーー]ぞ」

「・・・」

相変わらずの刹那の毒舌が日増しに辛い辰哉、前回の旅行の時は刹那の方は個人的な事情で出られなかったようだし聖と魁の決戦の時は病欠だったので何かとイベント事についていない刹那。その鬱憤が元の毒舌に更なる重みを増しているのに違いないと最近辰哉は思う、最近は狼子の影響で無愛想だった刹那にも徐々に人間らしさが出てきてはいるもので特に聖に関してはペットのように懐いている、友にもそれ相応の感じでいるに関して自分に関しては出会った頃のまま・・でも考えようによってはこれを機に刹那との距離を縮める良い機会なのかもしれない、そう考えた辰哉は珍しく刹那と会話を続ける。

「あのさ、刹那ちゃん。・・よく狼子や相良さん達と一緒に居るようだけど、楽しい?」

「・・」

「それに相良さんには懐いているようだし、ツンさんには何やらお菓子とか貰ってるみたいだね」

何とか話を途切れさせまいと話を続ける辰哉、それが功を奏したのかポツリとだが刹那の方から言葉が出る。
413 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:33:33.84 ID:v36qf+w8o
「あの人達は・・優しい」

「そうか。俺もそう思うよ」

「・・だから出会えてよかったと思う」

それなりだが、会話らしい会話が成り立っているので辰哉として見れば嬉しいものである。

「まぁ、刹那ちゃんは変わったと思うよ。転校して来た時はそりゃもう・・」

「黙れ、[ピーーー]ぞ」

「・・」

(まだまだ、青いね)

友のコメントと同時にフライトは開始する。
414 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:34:56.05 ID:v36qf+w8o
さて、同じ2年で修学旅行に参加しているのは何も狼子だけではない・・応援団筆頭桃井リーダーも勿論参加している。旅行前日に団長の藤堂 魁一同から熱い激励を受けてやってきたのだ。

(はぁ〜・・何もあそこまでしなくてもなぁ)

身体一杯に溜息を付く桃井、そして同様に溜息をついている者もちらほらと見受けられ、彼等の表情を見ると桃井と同様にその表情は疲労が見受けらており、それに彼等にはとある共通点がある。・・彼等はみな校内では頗る有名な応援団の団員であり、屈強としても知られているが・・彼がここまで溜息をつくにはとある理由が存在する。

その経緯を説明するには修学旅行前日に遡る・・

「ふぅ〜、ようやく終わった・・」

当時、自宅でようやく荷物をまとめた桃井であったが・・まるでそれを見越したように桃井の携帯が鳴り響く。

「メールか・・折角、荷物が終わったのに誰からだよ」

だるそうにしながら携帯のメールを見ていた桃井であったが、宛先を見たとたんに桃井の表情は見るみると険しくなる。

「こ・・これはッ!! 団長からのメール!!!!!」

桃井の目に飛び込んできたのは団長から直々のお達し・・文面は“すぐにいつもの所へ来い・・以上”と非常にシンプルなもの、桃井に緊張が走る中でまた電話が鳴り響く、相手は同じ学年の応援団に所属する友人だ。

「もしもし・・」

“おい桃井!! ・・メールを見たか”

「・・さっきな」

どうやら友人も今の自分と同じ状況らしい、感情を抑え切れずに焦りがモロに伝わってくる。

“やっぱりお前のところにもか・・行くしかないよな”

「死にたいなら断ればいいだろ」

“いやいや!!! ・・んじゃ、またな”

強引に電話を切られ、桃井の中には更なる緊張感が走る。

「これは・・行かなきゃやべぇよな!!!!」

あれから桃井は鳴り響く携帯を無視しながら、とある場所へとダッシュする。あれから携帯のメールを見ながら推測するが、どうやら2年の応援団員は荷物をまとめ終えた後に一斉に藤堂からのメールが入り応援団御用達の神社へと集合になったようだ。普段なら無視しても構わないレベルだし迷惑極まりないのだが、応援団・・しかも団長自らのメールは勅命に等しいもので断ってしまえば命はない。桃井達は慌てて制服を着用して神社へと向かうと・・そこには後ろに控えている1年を背景として3年生が軍隊並みの整列といった重々しい出迎えが待っていた。

そしてその中の中心にいたのが団長である藤堂と副団長である宗像 巌・・張り詰めた空気が緊張を呼び、自然と2人に呼応するように風が吹き荒れる。
415 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:35:52.96 ID:v36qf+w8o
(何で!! 1年や先輩方はこの際ともかくとして・・そもそも団長達がいるんだッ!!)

暫くの静寂が流れる中で藤堂が口を開く。

「今回呼んだのは言うまでもない、明日の修学旅行についてだ。いいか!!! 我が高は元より、応援団の恥となるべき行動を取った場合は・・坊主の上に切腹だ!!!!!」

凛々しくも厳格ある言葉で周囲を制する藤堂、この言葉を聞かされた桃井達も自然と身が引き締まるもの・・しかし修学旅行前にこんなことされるとは思っても見なかったもので、彼等の心境は早く帰りたいの一点張りだし、申し出自体は有難いのだがここまで大々的にしなくてもその気持ちだけで充分なのだ。

「宗像からも一言頼む」

(まだあるのかよ・・)

「え〜、言われたことは殆ど言われてしまったが・・とりあえずは担当教師の話を良く聞き、節度ある行動をとるように!! ・・俺はからは以上だ」

宗像からの挨拶が終わり、藤堂は更に語気を強める。

「よし!! 初の海外の者も多いだろう、ここで我が応援団から2年の者に激励を送る!!! 俺に続けぇぇぇぇぇ!!!!!!」

「「「「「「「「「押忍!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」

団長の藤堂と副団長の宗像が誘導し、それに続いて1年生と3年生が目一杯の声援・・もとい、激励を桃井達に送る。彼等なりに修学旅行とは言え異国へと赴く桃井達を快く送り出そうとはしているのだが、不器用では語りきれないほどの熱々しさである。暫くの間、神社には応援団による激励の声援が鼓舞となって響き渡る・・

「こんなものでいいだろう。2年は明日の修学旅行に向けて英気を養うようにッ!! 以上!! 解散ッッ!!!!」

(団長達には悪いけど・・行く前から余計に疲れる。明日倒れなきゃいいけど)

こんな経緯があるので桃井達は気分が冴えない、はっきり言ってこんなことなら今までどおりに国内の方がまだマシだ。アメリカへと飛び続ける飛行機の中で桃井はただただ同じ空が流れる景色を見つめる事しか出来ない。

「俺・・こんな空みたいに気軽になる日はいつ来るんだろ」

複雑そうな表情を浮かべながら、真っ青な空を見続ける桃井であった。

416 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:36:25.52 ID:v36qf+w8o
アメリカ・・その巨大な国は世界のあらゆる頂点に立っており、全てをリードして来た超大国。国をまとめる国際連合も本部はここアメリカに設立されてから、その長い歴史をこの国と共に歩み続けていた。女体化というこの星の自然を根幹から揺るがす出来事が起きた時でも早急にその事態を重く見て国連を通じながら各国に懐柔して女体化を主にあらゆる病気を撲滅を目的とした医療機関を設立、以後は女体化を主に治療法の確立ための研究を今日までに続けている。

さて今回の狼子の修学旅行先でもあるが、とある3人組が空港近くのショッピングモールで買い物をしていた。

「ほら、來夢! ここにも色々あるわよ」

「ま、待ってよ香織さん」

駆け巡る2人の少女・・そして荷物の塊になっている1人の男。彼等の名はそれぞれ平塚 慶太、十条 香織・・そして平塚 來夢といった、彼等は小さい頃からお互いに家族同然に過ごしているのでこんなことも日常茶飯事だ。

「おいおい、少し休ませてくれ」

「この程度で情けないわね。鍛えている意味無いじゃない」

「あのなぁ!! あれは親父達が無理矢理・・」

いつものように慶太と香織の良い争いが始まる、2人は小さい頃から喧嘩ばかりするのか・・顔を合わすたびに口喧嘩が耐えないものであるが、周囲からは喧嘩すればなんとやらとしか思っていないようである。

「まぁまぁ2人とも、せっかく遊びに着たんだから楽しもうよ」

「待て待て!! 別に俺が居なくとも宅配で・・」

「男ならこの程度楽勝でしょ!? それともか弱い私達に持たせる気なの!!」

「だからそのために・・!!!」

普通ならこのくらいでは中々いい争いは収まらないものなのだが、こと來夢がいる場合は多いに話が違ってくる。

「へー・・だったら僕が帰れば良い話だね♪ 2人とも折角付き合えたんだから僕はただのお邪魔虫だしね」

「「え・・」」

唐突な來夢の言動によって2人は喧嘩をやめてしまい、その場から静止する事しか出来ない・・慶太は昔から來夢を溺愛に近い程に可愛がっていたし、香織もなんだかんだ言いつつも來夢に対しては持ち前の強気な部分が出せないのだ。だから來夢が一度行動を起こせば慶太と香織はまず逆らう事が出来ない、2人はお互いの喧嘩よりも真っ先に來夢を取り持つことにする。

「待て待て待て!!! わかったから帰らないでくれ!!!」

「そ、そうよ!! 來夢の好きな服も沢山あるし・・パフェでも奢るわよ!!!」

「だから・・もう少し付き合ってくれ!!!!」

「2人とも大げさだよ」

2人の必死のお願いに來夢も肩の力を抜きながらそのまま了承する。平塚 來夢・・元々は立派な男だったのだが見事に女体化、しかし元々母親である沙織の容姿を濃く受け継いでいたので周囲からは余り違和感も無く溶け込めることはできたのだが・・來夢自身、元から身体がとても弱く何度も病気にかかったりしていたが、何とか健康に過ごせていた。しかし女体化は何もいい事だけではない、元から身体の弱かった來夢に女体化はかなりの負担があったようで身体の組織の一部がガン細胞と化してしまう、しかもこのガン細胞は通常のものとは違ってあらゆる抗がん剤が全く効かず現在の医療の技術では治療不可能となってしまっている。そんなガン細胞なのだが一般とは違ってその進行は極めて遅くその症状は未だに初期症状のまま、しかしそれが却って恐怖感を感じるもので今でも來夢は底知れぬ不安に包まれていると思われるようであるが、來夢は持ち前の明るさと周囲の協力のお陰で何とか毎日を送っていた。
417 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:37:41.50 ID:v36qf+w8o
「しかし、街に出ても暇ね。面白いところは・・あっ!!」

「どうしたの香織さん?」

空港で香織が目撃したもの、それはようやく長い旅路を終えてここアメリカへと渡米した狼子達であり、現在彼等は長旅による疲れが癒えぬまま教師の説明と言うながったるいイベントの最中にいた。

「えー、しおりにも書いてあるとおり空港内にあるホテルで宿泊を取ることになっている。各自ホテルで荷物をまとめたらここへ集合、時間厳守を心掛けるように」

「「「「「「「「「「ウォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

教師の話が終わったのを見計らったかのように各自一斉に旅行先のホテルへと向かう。それに狼子達も例に漏れずに空港内のホテルへと歩みを進める、最近はホテル業界もかなり手広くやっているようで観光に来た旅行客をターゲットにした都市部の駅内やはたまた空港内にも大規模なホテルを建設しており業績も良好だ。

「ようやく着いた!!!!!」

「飛行機の中ではダウンしてたのに外に出たとたんに元気だな」

「そんなのは関係ねぇ!! 噛んでやる!!!」

「痛たたたた!!! アメリカに来てもこれかよ・・」

一時の間とはいえ国を離れても2人のやることはあまり変わらないようである。

「ようやく着いたね〜」

「・・楽しみ」

「俺達は部屋も一緒だけど・・辰哉は別だな。俺が居なくて寂しいだろ〜」

「別に俺も修や翔と一緒だし・・お前こそ寂しくなって俺の所に来るなよ」

「辰哉の癖に生意気な!!!」

今にも噛みそうな勢いの狼子ではあるが友の方が何とか押さえ込む。

「まぁまぁ、部屋で荷物まとめたら映画の都のハリウッドに行けるんだからね」

「わかったよ・・」

友も伊達に長年狼子の友人はやっていない、これでも狼子の性格は十二分として解っているつもりだし友人としての役割もちゃんと心得ているつもり。
418 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:39:15.12 ID:v36qf+w8o
「それよりも刹那。ハリウッドだぜ? 楽しみだよな!!!」

「うん。映画は好きな方・・」

「楽しみだよね。あのSAORIの衣装も展示してるかな〜」

(ハァ・・これからどうなることやら)

辰哉は再び心の中でぼやきながらホテルへと向かって行く。・・一部始終を全て目撃していた香織達はなにやら複雑そうな表情だ。

「あれって・・何?」

「さぁね・・僕にはよくわからないや」

「思いっきり噛んでたよな・・」

どうやら3人とも狼子の行動に衝撃が走ったようだ。ここアメリカで全てを過ごしてきた3人ではあるが狼子のような人物は初めて、この国は様々な人種の人が暮らしているしそれ故に様々な人間を見てきたつもりだけども狼子のような人物は今までに出会ったことすらない。だけども3人には狼子と言う人物に興味すらそそられるもので是非とも会ってみたい衝動も湧き出ている。

「ねぇ、あの集団って学生よね。えっと・・コウコウセイってやつね」

「ああ。親父や母さんに聞いたが、今の時期は確か修学旅行って奴があるらしいな」

「そうだね、母さんから聞いた事がある。アメリカにはないから新鮮だよね」

3人は英語も堪能であるが両親の教育方針からか日本語の方も幼い頃から勉強してあるのでそこらの日本人よりかは解している。しかし肝心の文化の方は馴染みが余り無いのか日本では一般的な風習とかはよくわかっていない、だから修学旅行についてもあまり関心がないのだ。

「あの人達はもう少ししたらハリウッドに行くみたいだね」

「そうだな。でもあそこは昔から行ってるし・・何がいいんだろうな」

慶太達にして見ればハリウッドなんて珍しいところではない、小さい頃から何度か沙織に連れて行ってもらっている所なのであまり関心がないのだ。それに慶太にして見れば早いところ家に戻ってゆっくりと寛ぎたいもの、日本の学生にも興味はあるが余り干渉はしたくはないのだが・・どうやら香織の方は考えが違うところにあるようだ。

「・・ねぇ、先回りして行ってみましょうよ。日本のシュウガクリョコウって奴に興味があるわ」

「別に放って置けばいいだろう。俺達には関係ないし・・」

「あんたには好奇心ってのがないの!?」

「香織さんも落ち着いて・・僕もちょっと興味があるな。行ってみよう」

「おい、來夢まで・・」

「決まりね、こうなったら行くわよ!!!!」

3人は買い物を変更しハリウッドへと向かう・・無論交通費は慶太持ちだったのは言うまでもないだろう。

419 : ◆Zsc8I5zA3U [sage 誰か居ないかな?]:2011/06/23(木) 18:39:50.22 ID:v36qf+w8o
「おーっ!! さすがハリウッドだぜ、テレビで見るよりかは全然違うぞ!!!!」

「当たり前だろ。・・それよりもいいのか、友ちゃんや刹那ちゃんと一緒に行かなくて」

「俺は辰哉と一緒に行ったほうが楽しい!!」

「そ、そうか・・」

屈折のない笑顔を見せる狼子につい見とれてしまう辰哉・・なんだかんだいってもしっかりと青春らしい青春を送っているようである、傍から見ている香織達は少し羨ましそうに感じだ。

「あの2人、付き合っているみたいだね」

「・・そのようね」

「まぁ、こんなもんだろ。・・どうする?」

「続行よ。見てて面白いし・・」

そのまま香織は一瞬だけ慶太に視線を移すと、そのまま静かに観察を続ける。

420 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:41:03.90 ID:v36qf+w8o
あれから狼子と辰哉は様々な場所を回り、現在は映画の記念館へと足を運んでいる。ここには映画で使われたセットやら衣装など縁のあるものが数多く展示されており、映画好きにはたまらないところだろう。

「流石に本場はスケールが違うな」

「すげぇ!! これってSAORIが着た衣裳か・・俺も着れるかな」

「大丈夫だろ。それにあっちで試着できるみたいだからやってみろよ」

「ああ!」

辰哉に促された狼子はたくさんある衣装の中から1着を選ぶと試着室へと入って行く。数分後・・そこには衣装を着た狼子の姿、普段とはまるで違う狼子に辰哉は完全に見惚れてしまい言葉も出ない状態だ。

「ど・・どうかな?」

「・・すっごく似合ってるよ」

「そ、そっか・・俺ばっかもなんだから辰哉も着てみてよ」

「あ、ああ・・それじゃこれにしようかな」

今度は逆の形で辰哉も衣装を選ぶとそのまま試着室へと入る。そして試着室から出た辰哉も選んだ衣装を纏いながら狼子と対面する、今度は狼子の方が辰哉に見とれてしまって暫し言葉を失う。

「・・どうだ?」

「カッコイイよ。辰哉・・」

「ハハハッ!」

何とも微笑ましい光景である、香織はおもむろにカメラを取り出し2人の姿を写真に撮っていた。

「・・いい画ね」

「そうだね、初々しい感じだよ」

「まぁね。いいもの見させて貰ったわ」

一方の香織達にして見れば映画の衣装など沙織がたまに持って帰ってくるので見慣れているし、記念館に展示している衣装は殆ど慶太の家にあるのでいつでも着ることが出来る。

「それにしても母さんもよく映画出てるよな。小さい頃は余り関心がなかったけど」

「あんたね・・沙織さんは女優よ? カンヌの映画際やエミー賞にしょっちゅう出てるんだから凄いに決まってるじゃない」

「まぁ、家に帰れば台本が沢山置いてあるからね。んで、香織さん・・まだ続けるの」

「そうね・・ま、もう少しで切り上げましょ」

観察はもうちょびっとだけ続く、しかし観察している3人はとある失念をしていた。狼子と辰哉を見て居たのは3人だけではなかったのだ。

421 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:42:14.45 ID:v36qf+w8o
記念館でのドラマチックな出来事を経て、2人はハリウッドのとあるはずれで食事を取っていた。さっきのドラマチックな展開が功を奏したのか結構良い感じで過ごしている、まさに平穏と呼べる者なのだが・・そんな穏やかな空気を徐々に影が挿していく。

「おっ、あそこにホットドッグの店があるな。買ってくるわ」

「んじゃ、頼むわ」

そのまま単独でホットドッグの店へと向かう辰哉、そしてそれを見計らったかのように狼子へと忍び寄る2つの黒い影・・そしてそれはゆっくりと強かに狼子との距離を確実に詰める。

「あいつ、英語できたのか? ・・ん」

『OH〜、こんなとこに日本人の女じゃん!!』

『俺達はついてるな〜』

日本にもこういった輩がいるように世界規模の人口を誇るアメリカでは断然に多い、白人2人は野獣の如き舐め回すような視線で狼子を見据えている。それにここアメリカでは日系人の数も多いので日本人を知っているこの2人は賢い部類と言える・・が、現在修学旅行を楽しんでいる狼子にして見れば迷惑以外何者でもない。

「な・・何だお前等はッ!!!」

『おいおい、スティーブ・・訳の分からんこと言っているぜ?』

『HAHAHA、きっと俺達と遊ぶのを楽しみにしているんだろ』

相手がいくら英語を話そうが、これからやろうとしていることは手に取るように解る。日頃から聖と街を歩けばこういったナンパの一つや二つなど当たり前、狼子はそのまま黙って立ち上がろうとするが2人は当然それを逃さない。

『どこにいくんだい? もっと俺と愉しもうぜ』

『相棒、がっつくのは嫌われるぜ』

『冗談きついぜスティーブ。だけど火傷しない程度に終わらせるさ』

「こ、この野郎・・離せ!!!」

必死に抵抗をする狼子であったが、2人の体格は屈強とはいわないがかなりの大柄・・聖であればものの見事に倒せるのだが、自分が聖ほどの力がないのは狼子も分かりきっている。それに今狼子達がいる場所は平日ではランチタイムの時期になると人通りが多いのではあるが、昼を過ぎるとその数は極端に減るので観光には充分気をつけなければならない。
422 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:44:37.99 ID:v36qf+w8o
『痛ッ!! 噛むとは・・この女まるで野良猫みたいだ』

『落ち着けたかが噛まれたぐらいだろ。・ここら辺は人通りは少ないが、また増えるかわからん。誰かに見つかると面倒だ』

『・・肝に銘じておくよ相棒』

2人はそのまま腰元からナイフを取り出し狼子にちらつかせる、どうやらこういったことは今までにもやっているようで元から嫌らしい顔つきだった2人はナイフを手にしたことにより更に3倍増しとなっている。それにここアメリカでは法律が厳しくなったとはいえ銃社会は未だに存在する、州の法律によって見解は異なるのだが昔と違って銃刀類の購入は厳しく制限はされているが・・所持については未だに罰則がない。それにいくら法律で購入が厳しくなっても手に入れようと思えば手に入れられる。日本では警察騒動は確実ではあるが、こういった光景はアメリカではさほど珍しくはない。

『ヘヘヘ・・大人しくしてくれよ』

『あまり脅かしもんじゃないぜ』

「そ、そんな。卑怯だぞ!!!!」

しかし言葉とは裏腹に目の前の刃物に狼子はただただ震えることしか出来ない、恐怖に怯え身体が竦んでしまう狼子・・危機迫るこの状況を1人の男が打破しまいと颯爽と駆けつける。

「狼子!! 大丈夫か!!!!」

「辰哉――!」

颯爽と現れたのは丁度ホットドッグを買い終えた辰哉、運良くホットドッグを買い終えた時に脅されている狼子を見つけて急いでここまでやってきたのだ。辰哉はそのまま狼子を守りながら2人を睨みつける。

「おい!! 狼子に何をするんだ!!!!!」

『おいおいスティーブ、男がいるんじゃ予定外もいいとこだぜ、こんなところをポリ公に見つかったら豚箱行きだぜ?』

『落ち着け相棒。逆に考えるとこいつを切り刻めば大丈夫さ』

「クッ・・ナイフで脅すなんて汚い真似を」

颯爽と現れた辰哉であったが、ナイフを持っている男2人に立ち向かう術などない。それにここでしくじってしまえば狼子は元よりこれが公になってしまえば学校の問題を大きく通り越して国際問題に発展してしまう可能性もありうる、だけども一番は狼子を守る事・・辰哉はこの人生最大の修羅場をくぐり抜けるために全てを働かせる。

423 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:45:03.28 ID:v36qf+w8o
そのころ、狼子達を見守っていた香織達もこの状況は予想できずにあたふたしている。

「ど、どうするのよ!!!! ・・こうなったら私が直接出向くわ!!」

「香織さん。落ち着いて・・」

慌てまくる香織を何とか必死で抑える來夢。事実香織は慶太と同様に格闘技の経験も豊富で一般人相手なら軽くいなせれる程の実力は有してる。慶太と共に幼い頃から格闘技を始めとして軍事訓練も受けており、通常のみならず武器を持った相手とも組み手をしているのだ、今にも飛び出さんとしている香織を慶太はじっと見つめながら來夢に目配せする。

「・・來夢、こいつを抑えてろ」

「え? 兄k・・」

來夢が振り返った瞬間、そこに慶太の姿はなかった・・
424 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:45:58.22 ID:v36qf+w8o
何とか膠着している辰哉達であるが状況はかなり拙い、辰哉は何とか狼子を守りながら必死に頭を働かせて流れを待つ。しかし2人はナイフをちらつかせながら辰哉達を見据える。

『スティーブ、女は兎も角として男はどうするよ』

『決まってるじゃないか相棒。・・始末するんだよ』

(クッ・・先輩達がいない中で狼子を守りながらこの状況はキツイ)

「辰哉・・」

「心配するな、俺が守る」

と半ば自分に言い聞かせている辰哉であったが、状況はかなり拙い・・このまま引き摺ってしまえばしまうほど最悪な状況に陥ってしまうし周りには武器と呼べる代物はない。この場から狼子と共に逃げる算段を立てている辰哉であるが・・こうなれば最悪狼子だけでも逃がしていくほかない、覚悟と決めた辰哉はそのまま呼吸を整える。

「狼子・・スマン!!!」

「?」

辰哉はそのまま狼子を突き飛ばしてそのまま2人に向かって殴りかかる、2人は辰哉の突然の行動に咄嗟の判断が出来ずにそのまま辰哉の拳をもろに受けてしまうが・・冷静さを取り戻した1人が辰哉の腕を力強く握り締めたとたんに快進撃はそこでお終い。

「し、しまったッ!!!」

『この野郎・・舐めた真似しやがって!!!』

『ちょっと痛い目見させて貰おうか・・なッ!!!!!』

「こ、ここまでか・・」

「辰哉!!!!!!」

恐怖心に駆られて思わず目を瞑ってしまう辰哉、しかしそこに聞こえてきたのは男の叫び声・・ゆっくりと目を開けた辰哉は驚くべき光景を目にする。
425 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:46:45.44 ID:v36qf+w8o
『アガガガ・・』

『これで暫くは動けない筈だ。骨を折られていないだけでもマシだと思え』

「な、何が起きたんだ・・」

辰哉が目にした光景・・先ほどまで自分を刺そうとしていた男が、脂汗びっしょりで苦汁の表情のまま腹を抑えてる。そしてよくよく見ていると更に見知らぬ男・・もとい慶太が立っており男達を冷静に見据える。後1人の男を視線で捜すがどこにも見当たらない、そして更に響き渡る男の叫び声・・2人は同時に声の元へ振りかえると狼子を襲おうとしていた男が香織に打ちのめされている光景であった。香織はそのまま手を抜かずにナイフを蹴り上げるてキャッチすると、男を押し倒して腕をねじり上げながらナイフを男の頬に当てる、冷たいナイフの感触が痛みに苦しんでいる男から更に恐怖心も助長させる。

『さぁって・・いつも振り回している刃物の感触はどう?』

『はわわわ・・た、助け』

『女の敵は消えなさい!!!!』

香織はそのまま男の頭部を踏みつけると男はそのまま沈黙する、どうやら痛みと恐怖の同時攻撃に耐え切れなくなり気絶したようだ・・香織は少し満足感に浸っていたのだが、慶太の怒声が容赦なく響きわたる。

『素人相手にやりずぎだ!!! それにお前は來夢が抑えていたはずだぞ!!!!』

『アンタばっかに良い恰好させて溜まるもんですか!!!!』

『お前な・・少しは加減という物を考えろ!!! 大体昔から俺と訓練した時だって・・』

『うるさいわね!!! あんたこそ詰めが甘すぎるのよ!!!!!』

いつものように始まる2人の口喧嘩、辰哉と狼子はきょとんとしながらも自分たちの身が守られた事を喜びたいのは山々なのだが慶太と香織の存在に思わず呆然としてしまう。それに日本語でなく英語で口喧嘩の応酬を繰り返しているのだから何を言っているのかはサッパリ解らない、見たところ2人は自分達と同じ日本人で知り合いのようだがどこか近いものは感じる。

『別に私が活躍しても問題ないでしょ!!』

『全く・・勝手に行動しやがって』

「何言ってるんだろう・・」

「俺にもわかんない・・」

狼子達がぽかんとしつつ2人の口喧嘩が繰り広げられている時、慶太にやられていた男がゆっくりと動くが慶太はそれを見逃さない。

『・・この隙に』

『おい!! ・・これ以上痛い目に遭いたくなかったらそいつを連れてさっさとこの場から消えろ』

『ひ、ヒィィィィィィ!!!!!!』

慶太の凄みに完全に臆した男はそのまま逃げるようにその場から立ち去る。
426 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:48:40.56 ID:v36qf+w8o
『さて、これで大丈夫だろう』

『また襲ってもガードが既に警戒しているわ』

ようやく落ち着いた慶太と香織、どうやらこれで全てが終わったようだ。それに彼等には専属のガードがついているので2人の男がこれから何をしようが彼等の手により事前にキッチリと守ってくれる。何せ彼等の影についているガードは並の連中ではなく元はある軍隊の特殊部隊のメンバー・・並の人間はおろか、ある程度訓練を積んだ人間でも彼等の網を掻い潜るのは至難の技である。

『これで終わりだな、ところで來夢はどうした?』

『來夢なら・・あそこにいるわ』

香織が指差す方向には狼子達と談笑をする來夢の姿、どうやらあの後來夢は狼子達を落ち着かせるとあらかたの経緯を話していたようである。

「本当に助かったぜ・・一時はどうなるかと思った」

「いや、僕は何にもしていないよ。兄貴と香織さんが殆どやっつけたし」

「でも狼子の言う通り本当に助かった、礼を言うよ」

そのまま談笑し逢う3人であるが本来の功労者である慶太と香織はどこか割に合わない。

「ちょっと來夢!! どこにいたのよ!!!」

「ゴメンゴメン。この2人と話してたら盛り上がっちゃって」

「もう・・」

「全く來夢には心配させられる」

事、來夢に関しては慶太と香織は基本的に甘いというか逆らえないのが事実・・そんな3人の相関図は元より狼子と辰哉は來夢を見つめているととある事を思い出す。
427 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:49:03.67 ID:v36qf+w8o
「なぁ・・見間違いだったら悪いんだが、あんたSAORIに似てないか?」

「ああ、俺も思った。何だか面影があるんだよな・・」

「へっ? そ、それは・・」

辰哉達の質問にしどろもどろしてしまう來夢、普通なら認めたい所ではあるのだが彼等の場合は親が親なので余り大っぴらに言う事は出来ない、もし言ってしまえば嫉妬が引き起こす余計な怨恨を買うことにもなるし余計なトラブルが起きてしまう恐れがあるので極力は言わないようにしているのだ。2人は先ほどのお返しと言わんばかりに來夢の様子をじっと見守るが、流石に慶太が助け舟を出す。

「残念だが人違いだ。よく似てるって言われるけどな」

「そっか・・辰哉が変な事を聞くからだぞ!!! 噛んでやる!!!」

「お、お前もだろ!!!!!」

いつものように噛まれるオチの辰哉・・彼等にとっては何ら変哲もないごく平凡なものではあるがそれが何故だか面白く感じる慶太達、ますますこの2人に対する興味が深まってくる。

「で、次の予定は大丈夫なの?」

「「あっ!!」」

いくら修学旅行とはいっても自由時間には限りがある、次の予定地まで時間も残り少ない。
428 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:49:35.08 ID:v36qf+w8o
「や、やばいぞ!」

「遅刻したら洒落にならん!! 本当はもっとお礼が言いたいんだけど時間がないし・・」

「だったら宿泊しているホテルの場所と部屋を教えて。改めてこっちから遊びに行けばいいわけだし」

香織の思わぬ提案に狼子と辰哉は顔を見合わせるが、ここは助けて貰った身分だし教えても罰は当たらない、それに自分達を救ってくれるのだから充分に信頼の置ける相手だと判断した狼子達は香織達に部屋の場所を教える。

「まぁ、助けて貰ったからいいか。えっとホテルはここで・・俺達の部屋はここだ。じゃ、辰哉急ぐぞ!!」

「ああ!! それじゃまた!!!」

辰哉と狼子は慌ててながら集合場所へと走り去っていった。残された3人組はと言うと香織がかなりにやけた表情で狼子から教えて貰った場所をまじまじと見つめている。

「さて、部屋の場所も分かったし・・やることは一つね」

「まさか香織さん・・」

「これから面白くなるわよ!! あんたはホテルの予約と支払いよろしく♪」

「えっ!! 何もそこまでしなくてもいいだろ」

慶太にして見れば狼子達には興味はあるものの正直言って早く家に帰りたいのだが、香織はそんな慶太の心境などお構いなしに予定を組み立ててこれからの行動を着実に起こす。

「いくわよ!!! これからが楽しみね、來夢もたまにはいいでしょ」

「おい、來夢はまだ!!」

「何言ってるの、これもいい療養になるわよ!!!」

「・・そうだね、僕もあの2人には興味があるしね。付き合うよ」

こうして來夢の承諾を得られた事で慶太の苦難は決定する、來夢を抱え込んだ香織の勝利とも言えよう。
429 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:52:10.40 ID:v36qf+w8o
あれから狼子達はそれなりの出来事もなく無事に決められたスケジュールを消化して1日目は無事に終了、ホテルの豪華さにはしゃいだり絶景とも言える夜景に目を輝かせたりと学生らしい反応と言えるが・・一方の3人組はと言うと香織が慶太に無理矢理取らせたスイートルームで退屈そうに佇む。

「・・暇ね」

「あのなぁ、高い部屋取ってるんだから少しは楽しめ。それに向こうだって都合があるはずだ」

「そんな事ぐらいわかってるわよ!!!!」

「まぁまぁ2人とも・・」

ふてくされる香織に無気力の慶太・・なんとか來夢が2人を宥めているもののいずれ限界は目に見えているものでたまらなくなった香織は來夢を引き連れて爆発させる。

「もう我慢ならないわ!!! 行くわよ來夢!!!!」

「え? ちょ、ちょっと香織さん!!!」

香織は強引に來夢を引き連れるとそのまま部屋を出る、一人残された慶太はそのままホテルに供えてあったテレビを見ながらごちる。

「全くどうしようもないな。・・だけどあいつの意見にしては珍しく悪い気分ではないな」

母親である沙織が出ている番組を見ながら慶太はそのまま1人でのんびりと寛いでいると慶太の携帯に着信が・・一連の騒動に疲れていたのか確認もせずに電話に出るとそこには思いもがけない人物からの電話であった。

「もしもし・・」

“どうした? いやに元気がないな”

「か・・母さん!!! どうして・・仕事の筈じゃ」

“何驚いているんだ? たまたま暇になったからに決まっているだろ”

電話の相手は母親である沙織、普段ならその多忙ゆえに絶対に連絡が取れないはずなのでこんな時間に電話をするのは滅多にない。

430 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:53:57.43 ID:v36qf+w8o
“しかしオーストラリアは今の時期は過ごし易い。別荘の購入も検討せねばな”

「真夏のサンタクロースは俺としてはあまり・・」

“あいつに似て変なところは頑固だな。ところで來夢と香織ちゃんはいるか?”

「あいつらは別行動、今は俺一人だ」

“珍しいな。お前も可愛い妹と愛しい彼女に会えなくて寂しいだろう”

「あのなぁ!! 來夢は元より・・あいつは彼女なんかじゃねぇ!!!!」

慶太の反応に沙織は電話越しでありながらも笑いがこみ上げる。沙織にして見れば息子の成長も喜ばしいものだし、何よりも夫である明人の容姿を濃く受け継ぐ慶太はからかいがいがあるのだ。テレビでは可憐で華やかに写ってはいるが本当の沙織はこんな感じ、全世界の人達は果たして本当の姿を見たらどう思うのだろうかと慶太は思う。

“フフフ・・お前はやっぱり面白いな”

「俺もいい歳なんだからちょっとは控えてくれよ・・」

“何を言う。息子の反応を愉しむ母親の楽しみを奪ってくれるな”

「全く・・それよりも母さん。修学旅行ってどんな感じだった?」

“修学旅行か・・懐かしいな。それがどうかしたのか?”

「いいから答えてくれ」

修学旅行という懐かしい言葉に沙織は懐かしむ、自分の息子がこんな事を聞いてくれているのだから自然と頬も緩むもの。

“そうだな。お前達には分かりづらいと思うが、学校とは違った場所に仲の良い友達と過ごすのも楽しいもんでな”

「ふーん。日本だとそんなものなのか・・まぁ、分からなくもないけど」

“アメリカと違って日本は狭いからな、大半は地元で過ごすのが普通だ。地元から出るだけで旅行気分なもんだ”

慶太にして見れば聞きたかったのは沙織の思い出話よりもあくまでその時の心境だったのだが、自分から話を振っているので無理に話題を変えずに黙って聞いておく。

「なるほどな。日本は狭そうだからな」

“まぁな。だけどな友達と喋るのも楽しいが・・現地の人との交流も格別だぞ”

「へー・・母さんもそういう事があったんだ」

“ああ、結構面白かったぞ。それがどうかしたのか?”

「いや、何でもない。ただ聞いてみただけだ」

“我が息子ながら変な奴だな。・・そうそう、言い忘れていた事があった。明日には帰れるから3人で落ち合わせ場所を決めて置け、じゃあな”

「お、おい!!! ・・切りやがった」

電話を切った後、しばらく慶太が頭を悩ませたのは言うまでもない。


431 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:54:45.34 ID:v36qf+w8o
一方の狼子は事前にあてがわれた部屋に友達と過ごしながらお風呂に入り、備え付けのマッサージチェアでまったりと過ごしていた。

「ふぅ・・やっぱ風呂上りには格別だぜ」

ここでは辰哉とは別行動、部屋は別々ではあるが会おうと思えばいつだって会えるんだしたまには一人でこうしてのんびりするのも悪くはない。

(それよりも聖さんはともかくとして・・祈美へのお土産をどうするかな?)

「あっ!! いたよ、香織さん」

「案外意外なところにいるものね」

狼子の姿を見つけた香織と來夢、しかし自分の事で夢中の狼子は2人の存在に全く気がついていないようだ。

(いや、だけど聖さんには何を買えば・・)

「・・全然気がついていないみたいだね」

「仕方ないわね。・・よし!」

何を思ったのか香織は瞳を輝かせながら気配を殺してそろりと狼子の背後を取る、お土産に夢中な狼子は当然として香織の存在に気付くはずもなく果てしない自問自答を続けていたが・・香織は一気にそのまま狼子の身体を微妙な力加減でありとあらゆる所から触りまくる。

「ふ、ふぇぇぇぇぇ!!」

「この私を! 無視するなんて! いい度胸じゃないのッ!!!」

「か、香織さん・・やりすぎだよ」

突然の香織の行動に狼子はたじろくしかない、それにしてもその表情はどこか恍惚に近い物ではあるが・・香織が狼子に何をしたのかは謎である。

「一体なんだ・・って、えええええええ!!!!!!!!!!!!!」

「全く、命の恩人の存在に気がつかないなんてね」

「ハハハ・・また会ったね」

突然の來夢と香織の出現に狼子は驚きを隠せない。あの時は香織達に部屋の番号を教えたのは間違いはないが、まさか本当に来るとは予想外にも程があると言うもの・・慌てまくる狼子を香織は楽しそうに見つめていたが來夢の方は落ち着かせるために状況を説明する。
432 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:55:24.78 ID:v36qf+w8o
「まぁ、普通は驚くよね。とりあえず少し落ち着こう・・ね」

「ああ・・」

來夢のお陰で少しずつ落ち着きを取り戻す狼子、だんだんと今の状況にも慣れてきたようで來夢も狼子の様子を伺いながら徐々にではあるが自分達の状況を話していく。

「2人がいる理由も何となく分かった・・っと、そういえばお互いに自己紹介がまだだったな」

「そうだったわね。私は十条 香織」

「僕は平塚 來夢、よろしくね。えっと・・」

「俺は狼子。月島 狼子だ!!」

「へぇー、日本人にしては珍しい名前ね」

香織の言う事も尤もな話で狼子の名前はかなり珍しい部類に入るので狼子もそこら辺はちょっぴりと気にしてはいる。

「香織さんに來夢ちゃん・・2人はもしかして日本人なのか?」

「ええ、そうよ」

「といっても親が仕事の影響で育ちはアメリカだけどね」

香織と來夢は出来るだけ話題をソフトに運びながら展開を進めていく、狼子も2人の話を興味深くしながら素直に耳を傾ける。
433 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:55:50.38 ID:v36qf+w8o
「ま、私達についてはそんなところかしらね」

「えっと・・そういや、もう一人いたよな?」

「・・ああ、あいつね」

慶太の話題が出るととたんに口を噤んでしまう香織、そんな姿を見かねたのか來夢がまたまた助け舟を出す。

「もう一人は僕の兄貴でそこにいる香織さんとは恋人同士だよ」

「ら、來夢!! 余計なことは言わないの!!!!」

「まぁまぁ、別に嘘は言ってないし」

「全く・・」

兄弟がいない一人っ子の狼子から見れば2人の姿を見てるとまるで仲の良い姉妹のように見えて羨ましく感じるもの、暫く2人の掛け合いを眺める。

「2人とも仲がいいんだな。ちょっぴり羨ましいぜ」

「まぁ、小さい時からずっといるからね。狼子さんには兄弟はいないの?」

「俺は一人っ子なんだ。だから兄弟って言うのが昔から羨ましかったんだよ」

狼子の家庭は少し複雑なのでなんだかんだで一人っ子だったのでよく小さい頃には寂しさからか、そういった兄弟が欲しいと思った感情があったのだが・・それも昔の話で今は辰哉を始めとした数多くの友人などがいるので胸を張れる事も出来る。

「私も一応は一人っ子だけど昔から家にいたようなもんだしね。・・まぁ、こんなとこで立ち話もなんだし私達の部屋に来ない?」

「そうだね、兄貴も暇してるんだし良い機会だし・・一緒に行こう」

「じゃ・・お邪魔じゃなければ」

こうして狼子を加えて自分達が取っている部屋へと案内する、狼子も香織達が泊まっている部屋も自分と同じように普通のものだと思っていたのだが・・その考えは根底から覆る。

434 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:56:31.26 ID:v36qf+w8o
天と地・・現在泊まっている自分の部屋と比較した狼子が真っ先に思い浮かんだのがこの言葉、香織達が泊まっているスィートルームにはただただ圧巻されるばかりで言葉も出ない。

「すげぇ、俺達と泊っている部屋が大違いだ」

「まぁ、最高級の部屋だしね」

ただただ呆然としている狼子を尻目に香織は飲み物を適当に出して準備する、來夢はそのまま部屋を探って見るが慶太の姿が見当たらない。

「そういえば兄貴がいないね、どこにいったのかな?」

「どっかでほっつき歩いてるんでしょ、さて私達は楽しむことにしましょうか・・月島さん」

「ああ」

狼子はそのまま香織から飲み物を受け取ると一気に飲み干す、その豪快な飲みっぷりに香織の気分も盛り上がる。

「良い飲みっぷりね、お酒じゃないのが残念だけど」

「まぁ、男の時にも似たようなことやっていたからな」

「へー・・女体化って奴か」

香織は女体化に偏見は持っていないもののあまり良い感情はない、來夢が女体化の影響で重い病を患ってしまって以来は香織も独自で女体化の歴史について調べてはいるものの中には思わず目を瞑りたくなるものばかり・・それでも先人達が遺した歴史を紐解きながら特に病気の項目を調べ続けていたが結果は余り著しくない。そんな香織も個人的に狼子が気に入っているのかルームサービスで様々な料理を頼み始めて部屋には様々な料理が並ぶ。

「おおっ!! こんな豪華な料理・・」

「お腹減ってるでしょ、出会った記念に食べまくりましょう!!」

「か、香織さん・・いくらなんでも頼みすぎじゃ」

「大丈夫よ。あいつのポケットマネーでなんとかなるでしょ」

今回の香織達の費用は慶太が直接負担している形となっているのだが、慶太とて自分の所持金には限りがあるしこの部屋を取るのでさえも色々と工面していたのだが・・香織達のルームサービスで予算の破綻は避け切れないだろう。

「さて、パァーっとやりましょ!!」

「うおおお!!!」

(お金、大丈夫かな・・)

香織による豪華な狼子への歓迎会が盛大に行われている中で慶太達はというと・・

「・・王手」

「えええええ!!!!!」

連敗街道に差しかかっている辰哉の悲鳴をバックにのんびりと将棋を指していた、事の始まりは沙織との電話が終りに遡る。

435 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:57:03.33 ID:v36qf+w8o
沙織との電話も終わって慶太はようやく一息入れようとしたのだが・・どうも沙織との電話以来、心になにやら引っ掛かりを覚えていたのでこうして辰哉の部屋に訪問をしたというわけ。偶然にも辰哉の方も丁度誰もいなかったので暇を玩んで適当に遊んでいた時に丁度良く慶太の来訪、それからは香織達と同じように互いについて語り合いながらまったりと過ごしていた。

「じゃあ、慶太さんはアメリカ育ちなんですか」

「ああ。親父や母さんは日本人だが、俺達はアメリカだよ」

「ほうほう、それは凄いですね」

こんな感じで、淡々とした会話を続けていた2人であったが流石に時間が経つに連れて会話もネタも底を突いてしまう。

「へー・・慶太さんは様々な資格があるんですね」

「ああ、殆どは親に言われて取ったものだが格闘技系列は役には立っている。辰哉君は何かないのか?」

「いや、大した事ないっすよ。原付の免許だけです・・」

慶太の習得してる資格の幅広さに辰哉はただただ圧巻されるばかり・・そんな会話が続く中で長くは続かないと思われていたのだが、偶然にも部屋の隅っこに放置されていた将棋盤を辰哉が発見すると対極をそのまま慶太に提案する。実は辰哉はこう見えても将棋に関してはそこそこの実績と知識を持っており、狼子は元より・・翔でさえも勝てないほどの実力の持ち主なので慶太に勝てる自身は勿論ある。

「慶太さん、俺と勝負しませんか?」

「いいが・・これは何だ?」

「え? 将棋を知らないんですか!?」

「ああ・・恥ずかしながら日本については親父達から話を聞くものの、あまり接した事がないから文化とかは疎くてな」

慶太は日本についてはある程度は知識はあるものの、こういった娯楽についてはからっきしなので将棋というものはあんまり馴染みがない、いくら日本語が解るからと言ってもこういった娯楽に関しては完全に欧米寄りである。

「えっと・・これは駒なのか?」

「そうですよ。まぁ、最初は俺も手加減しますんでやっているうちに解りますって!!」

将棋ともなると基本的な事を説明するのはかなり難しいので実戦で学んで貰った方が手っ取り早いので実際に将棋を指しながら辰哉は解り易く解説しながらゲームを進めるが、慶太は将棋を指しながら自分がもっとも得意とするあるゲームに置き換える。

(ふむ・・駒の扱いからしてチェスに似ているな。だけども駒は少し違う動きをするものもある)

「・・どうですか?」

依然として手加減しながらも勝利を積み重ねてきた辰哉ではあるが、そろそろここいらで手加減なしの本気でやってみたい。しかしながら肝心の慶太の方が未だに将棋を理解し切っていないのか駒の動きは初心者以前の問題なので辰哉としては面白みの欠片もない、本音とすれば全力を出したい辰哉ではあるがその気持ちを押し[ピーーー]のもそろそろ限界なので慶太がこのままだったら後1局で打ち止めにする予定。そして慶太の方は今までの駒の動きを1つ1つ思い出ながら、将棋というゲームを頭に叩きこんでいた。それに実際に指して見るとチェスと比べて駒の動きは多少は違うものの、基が同じなのでやり方は基本的に代わりはしない。

(駒の特性にその傾向・・なるほど、チェスとは違うが本質を掴んだぞ)

「あの・・慶太さん?」

「あ、ああ・・すまない。辰哉君、次からは本気で掛かってきてくれ。ルールは完全に理解した」

「(これが終わったら切り上げて何か適当に時間を潰すか)・・わかりました、本気で行きますよ!」

「さて、ここからが本番だ」

そしてこの対局を機に辰哉の連敗街道は幕を開ける・・

436 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 18:58:36.18 ID:v36qf+w8o
一方の香織達はというと話の華も咲かせて、話題は來夢中心へと移る。

「へー、來夢ちゃんは料理が得意なのか」

「うん。昔はダメだったけど、今はある程度は作れるよ」

來夢の特技は料理・・小さい頃からの積み重ねで徐々にデパートリーを増やしていき、今では和洋中の料理はほぼ独学で体得している。

「俺も料理は得意な方なんだ。いつも作っているのはカレーだな」

「カレーか・・お肉は牛か豚のブロック肉? 野菜の下ごしらえに・・それにカレー自体は何日間寝かしているの?」

「へ?」

あまりにも専門過ぎて狼子はついていくのが精一杯で何とか來夢の話に合わせようとするのだが、來夢の話は更に止まらない。

「あとカレーはスパイスだよね。スパイスで有名なのはインドだけど中華系のも加えたらコクが出るよ。それにカレー自体を作る時の調合は・・」

(お、俺とはレベル自体が違う・・)

それもそのはずで來夢は独学で料理を学んだとはいえ、その腕前はもはやプロ級とも呼べるもので普通に店に出しても問題ないぐらいで実際にも明人や兼人も食品関係の仕事をする時は専門家に聞くより料理の全てをほぼ把握している來夢の案を取り入れていることが多い。

「來夢は昔から料理を作っているの、今出ている料理だって來夢1人で作れるぐらいよ」

「ハハハ、香織さんちょっとヨイショし過ぎ・・それよりも狼子さんは将来の夢とかあるの?」

「それは私も気になるわね」

「俺の将来の・・夢」

突然の話題で狼子も言葉が詰まる、自分の将来の夢など今まで一度も考えた事などなかった。一応進路を考えてはいる聖とは違って、狼子は未だに自分の未来に不安があるようだ。

「ヘヘヘ・・まだ考えてないや」

「まぁ、誰でもそんなものよね。将来なんて・・來夢は例の調理師学校へ進学するんでしょ?」

「うん。自分の力も試して見たいし・・兄貴や香織さんみたいに自分に誇れるものを見つけたいしね」

來夢の言葉に狼子はある種の感銘を覚える、自分の年下でこんな立派で聡明な考えを持っている人物などあまりいない。

「來夢ちゃんは偉いなぁ・・俺も見習わなきゃな」

「狼子さんだって僕達のように信頼できる大切な人が隣にいる。僕にはそれが眩しく見えるよ」

「そっかな・・」

誰だって将来のことは分からない・・だけどずっと辰哉と一緒に過ごせれる事をちょっぴり祈って見る狼子であった。

437 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:00:28.32 ID:v36qf+w8o
惨敗、いくら本気を出したとはいえ辰哉は心のどこかで慶太を見くびっていたのかもしれない。再戦後の慶太の手は今までとは違って辰哉の駒を奪い華麗に王手を決める、しばし詰みで降参もさせられた。それから気持ちを切り替えて辰哉は今までの経験をフルに活用して本気で挑むものの、慶太はまるで赤子の手を捻るように辰哉の動きを全て読み切って駒を着々と進めてまた最後の一手を決める。

「王手。これで俺の勝ちだな」

「またかよ〜〜〜!!!!!!!!!!」

こうみえても慶太はチェスを幼い頃から嗜んでおり、教えた明人はすぐに完敗してそこそこの実力がある沙織や兼人をも余裕で追い越しながらその実績は小学生の頃に大人子供交えた全米で毎年開かれている大規模な大会を制覇し、オンライン上でもその圧倒的な強さからトップを堅持し続けている。

「ま、待った!!」

「別にいいが・・」

必死に待ったをかける辰哉に対し慶太は余裕の表情・・正直言って辰哉は将棋を教えるんじゃなかったと内心後悔はしていたが、男たるものせめて一矢は報いたい。必死に考察して手を考える辰哉ではあるが、圧倒的な差に既に声も出ない状況で敗戦が濃厚に出ている。

「(まずいぞ!! 落ち着いて考えろ・・)こ・・これだ!!!」

「では飛車を進める」

「え? ってことは・・」

「ここで飛車を進めたら詰み・・だな。まだするか?」

「いえ、参りました。・・これからは師匠を呼ばせて下さい」

辰哉の白旗宣言で将棋対決は幕を閉じた。


438 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:01:22.63 ID:v36qf+w8o
狼子は香織達による豪華な持て成し、辰哉の方はささやかながらも将棋で対局と男女ながらに格差があるもののそれ相応に楽しむ事ができたようである。そして2日目、狼子達一行は現在のホテルを後にしてこの旅行最大の胆である平塚グループの本社へと向かう、今回の本社見学の際には校長が直々に頼み込んでいるのでそんな経緯を把握している教師達も緊張は隠せない。

「え〜、これからあの平塚グループの本社へと向かう。行く前に言っているので解っているとは思うが、我が高の名誉に恥じる行動はもとよりとして最低限のモラルを守るように」

「それにしても俺達より先生達が緊張しているな」

「まぁな、なんたってあの平塚グループの本社ビルを見学するからな」

「・・楽しみ」

平塚グループと言えば今やあらゆる分野に進出を果たしており、その名を全世界に轟かしている超大型企業で提携している企業を含めてもその影響力は凄まじい、そんな会社の本社に行くのだから生徒を預かる教師達の緊張の目は隠せない。

「それでは本社に向かう。後日にレポートを提出して貰うのでしっかりと見学をしてくること」

「「「「「「「「「「ええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

レポート提出と言う単語は本社の見学に浮かれていた生徒達を絶望の淵に叩きつけるには充分の威力を発揮したようで狼子等も落胆の声が上がる。

「ううう・・俺にレポートは[ピーーー]って言っているようなもんだぜ」

「大げさだぞ。まぁ俺もちょっと苦労するが・・最悪先輩のを参考にさせて貰うかな」

「何だと!! 辰哉だけずるいぞ、噛んでやる!!!」

「痛ててて!!!」

はたまたいつもながら見慣れた光景ではあるのだが、今の空気から察すると流石にまずいものですぐに教師に目をつけられる。

「そこ! うるさいぞ!!!」

「「・・すんません」」

一人の教師の一喝によって流石の狼子達もこればかりは大人しくしたようだ。

439 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:02:17.62 ID:v36qf+w8o
平塚本社ビル・・

アメリカの都市に堂々と居を構えるこの本社ビルの歴史も今では立派な風景の一部と化しており、平塚グループに籍を置いている社員にとって本社で働くのは文字通り“栄転”に等しいもので地方にいる社員は上の評価を少しでも上げようと我武者羅に仕事をして実績を重ね、本社に在籍している社員もその立場を守ろうと日夜膨大な仕事と格闘し成績を保っている。例え大企業であっても地盤を作るのは一人一人の社員のこうした血の滲むような実績のお陰といっても過言ではない、更に上に食い込んでいくと社員の統括に加えて派閥争いなど血みどろの激戦を制した果てに社長と言う椅子が用意されている。平塚グループの方針は事業の拡大と共に年々変わりつつはしているものの・・“チームワーク”“上は質実剛健、下は仕事を真っ当”といった創業時からの基本プロセスは頑なに貫き通している、それに加えて徹底能力及び実力主義や充実した福祉制度の飴と不祥事及び隠ぺい工作の類が発覚した社員には本社及び関連会社の採用は一切なし(発覚した場合は罪の重さを問わず世間に公表)と言った鞭を絡め合わせているので、こうした大企業にありがちな不祥事は殆どと言って見かけない。

代表的なのは社員の教育の部分、能力も勿論ながら会社員や人としての精神的な指導も専門家を駆使して新人ベテラン問わずに取り仕切っているし、独立した調査機関を設けて密かに社員一人一人の動向や動きなどをチェックしている。そういった反面で社内には産婦人科や企業では珍しい精神科を始めとして一通りの医療施設や保育士完備の託児所や教育機関を設立したり、食堂もあらゆる文化層に対応した料理を提供できるように整えて住宅地もかなり良い部類が当てられている。育児休暇の方も社員が産休を受理した段階から3年間は完全な休業扱いとなって給料は勿論の事、役職などもきちんと保障する。それに本人の希望があれば休暇中であっても自宅で仕事を出来るように設定できるので完全に遅れを取る事もないし、復帰後にありがちな軋轢なども緩和している。上記のことは勿論関連会社にも対象となっており、そうった社員重視の方針を貫いたお陰か、社員達は今日も一枚岩となって平塚グループの繁栄と発展を支えているのだ。

そんな本社の中にあるフロアに宛がわれた狼子達ではあるが・・その豪華さにはただただ圧倒されるばかり、周りの生徒達もその興奮が抑えきれないようだ。

「すげぇな・・」

「ああ、ただの部屋なのに造りが全然違うぜ」

さすがの狼子もここまで豪勢な作りに言葉が出ないというもの、そのまま暫く時は過ぎて担当の者が部屋に入るのだが・・その姿を見るや否や周囲は驚愕を通り越して絶句してしまう事となる。

「え・・君達の見学を担当する事となった、平塚 慶太だ。今日はよろしく頼む」

「「「「「「「「・・・ええええええええっ!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」

まさかのトップ登場に部屋中には静寂が流れ、瞬く間に衝撃へと変貌する。そもそもこんな経緯になったのは狼子達が会社に到着する数時間前・・社長室にとある電話が掛かってきた事から始まる。

440 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:03:24.70 ID:v36qf+w8o
数時間前、あらかたの仕事を終わらせた明人達は切りの良い所で夕食を取っていた。

「おっ、今日は弁当か」

「ああ・・來夢に作ってもらった。お前の分も預かっているぞ」

「おお!! そういや來夢には小さい頃から料理を俺が教えたもんだし、どれだけ成長したか楽しみだ」

実のところ平塚家一族はあらゆる分野で才能を発揮しているものの、家事関係は全くの素人に同然なので炊事洗濯に関しては來夢がほぼ一人で執り行っている。最初の頃は明人や沙織も挑戦はして見たものの日々の仕事の忙しさから断念してしまい、それを見かねた兼人を初めとした周囲の人間が行っていた。それからは來夢が生まれるまでそれは続いたものの來夢がある程度は成長してから幼心に家の状況を見かねたのか少しずつ失敗もしながらもこなしていき、今や平塚家の家事を全て掌握していると言っても過言ではない。特に料理に関しては小さい頃は兼人が來夢に基本を仕込んで以来はめきめきと成長を見せており、今では家事という枠を超えて殆どの国の料理を作れるようにまでなってきている。

「それにしてもお前達一家は家事が全くダメだよな。來夢がいなかったらどうなっていた事やら・・」

「・・お前が來夢に料理を教えてくれたことには感謝している」

「できれば仕事で感謝されたいところだけどな」

「それとこれとは話は別だ。いらんのなら俺が食べる」

「下らない職権乱用するな」

雑談を繰り返しながら2人は來夢お手製の弁当に舌鼓を打ちながら昼食を取る。どうやら今回のコンセプトは野菜が中心のあっさりとしながらもメインは魚料理、全体の味の調和は勿論ながら見た目やカロリーバランスに加えて栄養面も申し分なく自然と箸が進んでいく。

「いつ食べても美味いな。もはや俺でも同じのは作れないぜ」

「・・子供に弁当を作って貰うのは父親としても微笑ましいものだ」

穏やかに流れる静かな時間、社長として膨大な仕事をこなしている明人にとって來夢が作ってくれた弁当を食べるのが唯一訪れる至福の時間である。そんな時に一本の電話が鳴り響くがワンコールも経たないうちに兼人が受話器を取る。

「どうした? ・・わかった、こっちで処理する」

「何かあったのか?」

穏やかモードから一転として顔を険しくさせる明人、どんな小さなトラブルでも後には大きな火種となる・・あらゆる自体を頭の中で想定しながら明人はゆっくりと話を進める。
441 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:04:49.23 ID:v36qf+w8o
「で、今度はどうした? 幹部が何かやらかしたのか・・1ヵ月後の株主総会でかなり響きそうだな」

「・・勝手にシリアスになっているところ悪いが、別に不祥事とかそんなのではない」

「だったら何だと言うのだ!! この会社をここまで大きくするのにどれだけ苦労したのか忘れたのか!!!」

思わず声を荒げる明人、トラブルではないにしても完全な障害を取り除かない限りは安堵は出来ない。兼人はそんな上司兼友人を内心では面白おかしく思いながらもゆっくりと真相を話す。

「あのな、酒抜きで昔話をする趣味は俺にはない。・・これから社内見学を希望している集団が来るのだが、部署の人手が足らないみたいでな」

「だったら他の所に廻せば良い話だろうが。そんな下らない事で一々電話を掛けるとは・・」

「それが丁度空いている人物がいないようでな。お前やって見るか?」

「誰がやるか!! 俺は社長だぞ、そんなの他の奴に任せればいいだろう」

兼人の提案に真っ先に拒否を示す明人、この反応も今の自分の立場から考えても当然と言えば当然の事。社長として膨大な仕事が山済みにされている中で担当外の仕事を引き受けるのはもってのほか、第一そのようなことは担当の部署内で片付けるべき問題であるのでトップである2人が態々出る必要性が全くない。

「全く、職務怠慢にも程がある」

「それはそうだが・・しかもその集団ってのは日本から来てな、修学旅行の一環で着ているそうだ。俺達の時代なんて修学旅行は国内だったからな」

「話をはぐらかすな。とにかく他に手が空いている奴にやらせろ」

「・・ほー、ならお前は遠く異郷の地にいる学生達を訳も分からん人間に会社を案内させる気だな。
お前も良く知っているとは思うが、修学旅行と言えば建前は学習だけども本音は思い出と遊びが最大の楽しみだ。お前も小林とあんな事やこーんな事で楽しんだ口だもんな」

兼人の呟きに僅かながらもしっかりと耳を傾ける明人、それを流し目で確認した兼人は更に畳み掛ける。

「それにお前が出れば、そいつ等の思い出にも残るし・・何よりも子供達に一生自慢が出来るぞ」

「ッッ!!」

そのまま明人は暫くの沈黙の後で静かに告げる。

「・・十条、俺の予定はどうなっている」

「この後は書類の決算だろ? そんな事も忘れたのか」

「そうか・・ならば遅らせても大丈夫だな。後は任せたぞ」

(素直じゃねぇ奴・・)

兼人の微笑と共に明人は久方ぶりに社長室を後にした。

442 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:06:09.97 ID:v36qf+w8o
こんな経緯があって明人は狼子達の案内人を勤めている、対する狼子達は教師達を筆頭に緊張感が中々拭えないもので普段は悪さばかりしている一部の生徒もこの時ばかりは武者震いが止まらずに素直に団体行動をしている。

「ここが・・我が社で開発した製品が時系列に並んでいる。どれも全世界で流通したものばかりだ」

(おっ、これは俺が愛用しているシューズじゃないか! 狼子は何かなかったか?)

(いつも使っているワックスとシャンプーがある。・・だけど辰哉)

(何だ?)

(・・どうして俺達はこそこそと喋らなきゃならないんだ)

(それは・・暗黙の了解って奴だろう)

狼子達の例にも漏れず、友や刹那もだんまりとしながら明人の話に耳を傾ける。そんな明人達の集団をこっそりと隠れ見ている人物が一人・・これもまた例に漏れず兼人である。明人にああいった手前もあるが、元々プライベートでも口数が多い方ではない明人が案内役を勤めるのは難しいもので心配になって見てみれば想定していた不安が見事に的中してしまう形となる。

「あっちゃ〜・・考えて見ればあいつは昔からプレゼン関係がダメだったからな」

元来から明人は人と喋るのが余り得意ではなく、口が必要とされるプレゼンや宣伝やらの営業関係は全くダメな方でそういったのは全て兼人任せである。妻である沙織も普段は口が達者な方ではないのだが、あちらは職業が職業なので演技と割り切れば普通に出来てしまう。そもそも明人に案内役をやらせたのは何も狼子達の思い出作りとかでもなく、口下手な明人を少しでも大人数相手に自分の会社をアピールさせれる力を養わせようとする兼人なりの心遣いである。いくらなんでも世界を代表する企業の社長が自身の会社をまともに宣伝できないとなれば会社としての信用はおろか今まで築き上げてきたものが一気にパァとなる恐れがあるのだ。いくら兼人が口が巧いとはいっても一人ではフォローをするのも限界もあるし、まともに自分の会社さえも案内できなければこれから先が思いやられる。

「これからはまともな講義ぐらい出来なきゃな。よく今までこれで持ったかと思うとゾッとしてく・・」

「あ、パパじゃないの!! こんなとろで何してるの?」

「香織!! それにお前達こそ何しているんだ」

突然の香織達の来訪に驚きを隠せない兼人、香織達もまた狼子達の後をつけてきたら自分の親が勤める会社に入っていったので3人ともそのまま顔パスで行けれたわけ。そしたら偶然にも兼人と出会ってしまったので傍から見ればちょっとした偶然である。

「おじさんもこんなとこで何していたの?」

「來夢にはちょっと解らない大人の事情だよ」

「・・大方、あそこで案内しているおじ様の様子でも見てるんでしょ」

「ううっ・・我が娘ながら勘が鋭い。それにしてもお前達もなんでここにいるんだ?」

別に隠す事でもないので香織達は今までの経緯を兼人に全て話す、ただ香織が話してしまえばあらぬ誤解を産んでしまうと考えた慶太はすかさず話を切り出して事実を全て話して事をスムーズに流していく。
443 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:07:45.07 ID:v36qf+w8o
「・・と言うわけなんだが、おじさんも大変だな」

「まぁな。あいつも息子のお前みたいに饒舌だったら俺も苦労はしないんだが」

なんだかんだ言っても兼人とて小さい頃から3人を良く見ているのでその特徴は大体の所までは把握している、それにしても現在この場にいる狼子達と自分の子供達が繋がっている事実は考えれば考えるほど奇妙なものである。

「お前達も行動力旺盛と言うかなんと言うか・・」

「ずっと昔にママ以外の女と同棲してたパパにだけには言われたくないわよ」

「――ッ!! い、痛い所を突くなぁ・・パパ参っちゃうよ。お小遣いでもせびるのか〜」

「それは後で必要経費としてちゃんと貰うけど、パパにはもっとして欲しい事があるのよね」

満面の笑みを浮かべる香織ではあるが、彼女がこんな表情をする時はろくでもない事が起きる前兆なのを慶太と來夢は昔から良く知っている・・香織はそのまま一呼吸を置くと兼人にとんでもない要求を突きつける。

「私達はあの子達とまだ遊びたいの」

「お、おい!! 俺はもう・・」

「うるさいわね!! あんたの意志は関係ないの!!! ・・それでパパ、さしあたってあの子達のTeacherと話をつけて頂戴!!」

「お・・おいおい!! それはいくらなんでも」

香織の要求に兼人は空いた口が塞がらない、流石の來夢も兼人に助け舟を出す。

「香織さん・・それはいくらなんでもまずいんじゃない? そりゃ僕も興味があるけどおじさんの事考えてもちょっと無茶すぎる要求じゃないのかな。それに後で母さんとも会うんだし・・」

「そ、そうそう。來夢の言うようにいくら俺でも公私混同は流石に立場上からしてもな・・小林だって大困りだし、あいつも昔とは違って傍から見れば大スターだからな」

來夢を味方につけたと確信した兼人は遠まわしに言いながら香織の説得を試みる、なんだかんだ言っても3人の中で一番権限を握っているのは他ならぬ來夢である。普段ならば來夢にここまで言われたのなら大人しく引き下がる香織ではあるが・・しかしながら今回ばかりは香織も退くに引き下がれないので更に自分の意見を押し通すためにまたもや來夢を懐柔するためにとある言葉を囁く。

「だからさ、今回は・・」

「ねぇ、來夢・・こういった機会は滅多にないのよ。もしかしたら今後一生来ないのかもしれない・・」

「そりゃそうだけど・・」

「あんたは昔から引っ込み思案すぎるのよ。もう少し楽しむ事を覚えた方がいいわ」

香織の説得に來夢も心が揺れる、ここ最近になって來夢にも多少ではあるが時間のゆとりが出来ており精神的にも余裕が生まれている。來夢自身の病気が分かった時には全てに参ってしまいそうになった時期があったのだが、慶太と香織を始めとする周囲の支えもあってか何とかうまくいっている。

「おいおい、來夢はなぁ」

「・・いいよ兄貴。僕もちょうど暇してたからね」

「てな訳でよろしくね!!」

「わかった、わかった。だけどちゃんと節度を持って遊べよ・・」

「わかってるわよ〜」

小悪魔に近い笑みを浮かべる娘に兼人は苦笑を隠せなかった。
444 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:08:18.39 ID:v36qf+w8o
それから明人はぎこちないながらも狼子達の案内を慶太達が見守る中で無事に勤め上げて狼子達の見学は終わった。只ならぬ雰囲気の中で見学していた狼子達は見学が終わったとたんに緊張の糸がプッツリと切れて周囲からは一気に疲労感と溜息が募る、ちなみに現在は自由時間なのでこうして2人きりで過ごしているわけ。

「ハァ〜・・疲れた」

「そりゃ、世界が誇る超一流企業の社長が出てきたらなぁ・・俺も生きた心地がしなかった」

2人とも喋れる気力はあるものの足取りの方は非常に重い、これから科せられるレポートもあるのだが何よりも明人の存在にただただ圧巻させられるばかり。しかし明人の顔をよくよく思い出して見ると心なしか2人は慶太を思い浮かべてしまう。

「なぁ、あの社長って俺達が昨日出会った香織さん達に似てないか?」

「・・いいか、狼子良く聞け。俺も恥ずかしながらあの社長が慶太さんに似ているとは思ったが、きっと俺達は疲れているんだ。少し休んで・・痛ててててて!!!!!」

「この俺をアホ呼ばわりするな!!!」

いつものように辰哉を噛みまくる狼子、2人の言っていることは藪にも真実を突いているのでタイミングを伺って狼子達と合流しようとした香織達も顔を出しづらい。何せ自分達の親達のことは周囲の影響も考えて決して口外しないようにと小さい頃から明人達に言われ続けている、明人達も自分達の社会的地位を考慮した上での決断であるし、成長してから世の中の仕組みを理解していた3人も両親達の方針には理解を示している。

「だけどよ!!」

「それよりも部屋に帰って疲れを取ろうぜ」

「だけど折角の修学旅行なんだからもう少し遊んだほうがいいんじゃない?」

「そうだぞ!! 折角の修学旅行だから・・って香織さん!」

再び狼子達の前に舞い降りた香織達、ちなみに狼子達が遅刻をしても兼人が教師陣に話をつけているはずなので何も咎められることはない。

「どうしてこんなところに・・」

「それは・・秘密よ」

そのまま口を噤む香織ではあるが代わりに來夢がここまでの経緯を捏造した説明を始める。

「じゃなくて平塚グループの本社は一般の娯楽施設もかなりあるんだよ。アメリカでは定番のデートスポットにも数えられてるぐらいだしね」

「確かに・・」

狼子達が周りを良く見て見ると会社の中には大型のショッピングモールに多数のフードコーナや映画館にゲームセンター等の娯楽施設・・加えて果てにはアパレル関係の店もチラホラと見える。
445 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:09:21.37 ID:v36qf+w8o
「何だかアメリカって凄いんだな・・日本だったらこの会社がなくても遊ぶ所としては充分過ぎるぜ」

「会社があるから意味があるんだよ。父さ・・じゃなかった、社長の方針は企業と消費者の調和。ここに出ている店は全部平塚グループの傘下だよ。本社の周りにこういった施設を多数作っておけば会社の宣伝にも繋がるし何よりも来てくれる人達に支持されやすいからね」

「なるほどな。やっぱり海外はすげぇ!!!」

「アハハ・・さて全員揃ったところで何をしようか?」

珍しく場を先先と進める來夢、普段は控えめな彼女がここまで積極的なのも少なからず狼子達の影響もあるのだろう。そんな來夢に合わせるかのように慶太も少しの思考を経た所でとある提案を打ち出す。

「それでは遠出というのはどうだ? 丁度ここには俺の車も停めてあるからいいんじゃないか?」

「あんたにしては珍しくいい意見ね。その案乗ったわ」

「珍しいは余計だ。・・それじゃ少し待ってろ」

自分の車を取りに行くため、慶太は少し席を外す。

「それにしても車か・・なんか凄いスケールだ。狼子、あれは大丈夫なのかよ?」

「当たり前だろ。あの薬は一度飲めば効果は1日以上も続くといった画期的なものだぞ!!!」

「ま、それならいいけど」

礼子からもらった薬は乗り物酔いの即効薬みたいなもので一度飲んでしまえば1日以上はその効果を持続し、副作用もないのが大きな特徴だ。昔から乗り物酔いが激しかった狼子はこの薬をいつも礼子に処方して貰っており、今回は修学旅行と言う事でいつもよりも多めに貰っているのでかなりの余裕があるのだ。

「さて今からどこに行くか決めなきゃね」

「でも2人の予定も考えないといけないから・・そこら辺は兄貴に任せよ」

さり気なく自分の兄へキラーパスをする來夢、本人は無自覚なのでそんな気はないが慶太の苦労も暫く続きそうである。

446 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:12:07.94 ID:v36qf+w8o
慶太が戻り、全員車に乗り込んだところで行き先を決めるのであるが・・狼子達はアメリカに来たのは初体験なので場所は必然的に香織達が決めることになる。

「そういえば慶太さんは車も乗れるんですか?」

「ああ、免許は一通りに持っている。それでどこに出かけるんだ」

「言いだしっぺはあんたなんだから決めて頂戴」

「あのなぁ・・ま、適当に走っていくか」

考えるのをやめた慶太はとりあえず車を走らせることにする、行き先など何も決めていないグダグダなものではあるがそれでも車を進めているうちに周囲はそんなことは全然気にしなくなったようだ。それに狼子達にして見れば行く場所よりも初めて目にするアメリカの景色の方がとても新鮮で何よりも楽しめられさえすれば彼等にとってはどうでもいいようである。

「やっぱアメリカって凄いな!!」

「そうだな。やっぱり日本とはスケールが全然違うぜ!」

行く先々で興奮を隠せない狼子達であるが、その分の楽しさは計り知れないもの。暫く景色を楽しんだ後で香織の提案でそこらへんの店で昼食を済ませるとそのまま昼食が終わると香織は単独で狼子を呼び出すが・・狼子の方はと言うといきなり香織に呼び出されたのでどうしてもいいかわからずにアタフタしながら香織の出方を素直に待っている。

「ええええっと!!! わわわ、私は!!!!!」

「そんなに緊張しなくても良いのよ。無理矢理連れてきた私が悪いんだから」

「あ・・アハハハハ」

無理矢理笑いながら自分をリラックスさせる狼子・・まぁ余り打ち解けていない人間に半ば強引に連れ出されたらどうする事も出来ないものである。

「で、俺に何か・・?」

「見てて気になったんだけど・・やっぱり彼氏は好きなの?」

「へ・・ええっと! その・・なんて言っていいか//」

「じれったいわね!! ・・じゃあ、他の男に取られてもいいんだ」

「それはダメだ!!」 あいつはその・・親友で恋人だからだ!!

ここまで辰哉の事をハッキリと言える狼子に香織は少しばかり羨ましく感じてしまう。何せ自分は慶太とはあれだけ苦労して付き合ってもいざ顔を付き合わせて見れば毎日喧嘩ばかりなので付き合う前と余り変わっていない。元々慶太とは家族ぐるみ以上の付き合いをしていたともあって慶太にして見れば香織と付き合ってもあまり日常的に感じていないのか・・それに元々の性格もあってか、いつもの習慣で香りと接してしまうわけなのだが・・香織にして見ればそんな日常がもどかしくて常にフラストレーションが溜まってて来るのが悩み所。

だからこうして素直に彼氏の思いを素直にぶつけられる狼子が新鮮で眩しく思えるのだ。
447 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:13:07.84 ID:v36qf+w8o
「まぁ・・変な事聞いて悪かったわね」

「なんか香織さんからそんな事聞かれるなんて意外だな」

「今まで私をどんな風に見てたのよ・・」

少しばかり苦笑してしまう香織に対して今度は狼子も逆にお返しと言わんばかりに意外な質問を香織にぶつける。

「そういや香織さんって・・慶太さんとはどこまで進んでるんだ〜?」

「べべべ、別にいいじゃないのよ!!! なんであいつが・・」

「あ、俺に質問しておきながら自分だけ答えないのはズルイですよ」

「うううっ〜・・そこを突かれると痛いわね。わかったわよ」

狼子の前に降伏宣言を出した香織、このまま穏やかな時間が流れていくものだとこの時は誰もが思っていた。少なくともこの2人も含めて・・

「仕方ないわね。・・で、何を聞きたいの?」

「そりゃ勿論! 二人のかんk――ッ!!」

ここで狼子の意識は一時的に失われる、代わりに香織の前に立ちはだかるのは2人の男・・片方は気絶している狼子を抱えながら、もう片方も香織に向けて銃口を向ける。香織も即座に隠し持っている銃で応戦しようとするが咄嗟の判断で遅れを生じてしまって構えを取れずにいた。それに相手もこないだの素人の動きではない、表情では平静を保っている香織も内心はかなりの焦りが生じていた。

「十条 香織だな。俺達と一緒に来てもらおうか」

「・・あんた達、何者? それにガードはどうしたの」

「俺達がここに来た事が答えだ。・・余計な詮索はお前達の寿命を縮めるぞ、車に乗れ」

この2人の動きは狼子達を襲ってきた連中とは断然違って言動には一辺の隙もなく相当に訓練を積んだもの。香織達をガードしているのも一般人ではなく、その全員がかつて国連に身を置いていた特殊部隊の出ばかり・・そんな彼等から潜り抜けているのだからその腕は確かなものだろう。現に香織も彼等に抵抗をせずに大人しく用意された車に乗り込んでいる、慶太と共にあらゆる訓練を積んでいる香織ならばこのまま自分だけでも助かろうとするのも可能ではあるが狼子と言う人質を取られてしまえば
その行動はかなり制約される。

「一つだけ聞かせて。・・私達は一体どうなるの?」

「それはお前と両親の行動次第だ。後は所持品を全て出して貰おうか、身につけているものも含めて・・な」

「・・わかったわ」

男に促されるまま香織は全ての所持品が入ってるバッグを男に差し出したとたんに車は無常にも走り出す・・


448 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:14:30.22 ID:v36qf+w8o
異常事態・・事態はまさに緊迫を当に超えていた。特殊部隊から要人を警護する立場へ変わった今でもその難度は変わりはない、そんな彼等が作戦を失敗してしまうのはあってはならぬもの・・特殊部隊時代からの長の顔色も心なしか思わしくないが、部隊を指揮する者として的確に事態を把握し、冷静かつ適切な判断力を求められるため部下からの報告にじっと耳を潜める。

「以上! 報告を終了します!!」

「・・お嬢様の警備に当たっていた部隊は?」

「お嬢様の警備を担当していたイエロー部隊は指揮官含め5名が負傷、うち最前線で警備に当たっていた2人がいずれも重症です。

重傷者の傷を見る限り。銃で右腕を1発、脚をそれぞれ1発ずつです、摘出した弾からして銃の口径は44で間違いはないかと・・」

普段ならば卒倒してもおかしくはない状況ではあるが、かつて戦線に身を置いていた彼等からすれば襲撃された事実などさして驚くべき事ではない。彼等はどのような状況で襲撃されたのかが気になるところで、あらかたの報告を聞いた全員は隊列を崩すこともなく隊長とその副官の顔色を伺っている。

「イエロー部隊には実戦経験が浅い人間が経験を積ませる為に最前線へ送り込んでいましたが・・それが裏目に出ましたな」

「副官、今更それを嘆いても仕方ない。犯人の手口とその背後は?」

「はっ! 犯人は確認できるだけでも2人・・組織の規模は現在パープル部隊が調査中です。今の所は目立った動きはありませんが・・いずれ声明を出すでしょう。実行犯は手口から見ても間違いなく軍隊上がりの人間が行った者と見てまず間違いありません、恐らく経歴も相当長いと見てもいいはずです。以上、報告を終了します!!」

最後に敬礼をして部下は報告を終了する、あらかたの情報を頭の中に入れた指揮官はすぐに各部隊に指示を飛ばす。

「パープル部隊は引き続き犯人グループの調査を行え! 各戦闘部隊はパープル部隊の報告を受け次第、いつでも出れるように充分の弾薬や補給及び各系統の整備を行い、いつでも出られるように待機を!! 諸君、相手を見る限り組織性の可能性が高いのでそれ相応の対処をして置くように!!!!」

「隊長・・依頼主様及びお坊ちゃん達の報告は?」

「依頼主様への報告は私自ら行う。このような結果を招いたのも全ての部隊を率いている私の恥だからな」

国連時代からこの部隊を育て上げた指揮官にとって見れば今回のことは部隊の緩みからでてしまったこと・・彼にとって部隊の失敗はそれ以上に率いている自分の恥なのだ。

「了解しました、ではお坊ちゃん達への報告は私が行います。所で負傷したイエロー部隊の様子は?」

「現在、病院で治療中です」

「ならば復帰した時に伝えておけ! イエロー部隊の現地指揮官及び副官は解任し、以後は持ち場を最前線へ転属。以上!!」

「・・では諸君等の健闘を祈る!!!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「サーッ!! イエッサーッ!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

全員が一糸乱れぬ隊列のまま最高指令の2人に敬礼をし、2人も全ての部隊に敬礼で返す。この2人がいなくなっても彼等の動きに淀みはなく、すぐに各部隊の指揮官が的確に指示を飛ばして組織を動かしていく・・彼等も持ち場が変わってもなお、昔から2人の考えには同調しているので無闇に指示を与えられなくても持ち場を離れずに的確かつ合理的に動く・・この1枚岩とも言える組織体制こそがかつて国連直属の部隊としてあらゆる国家を怖れさせ畏怖された姿は警備会社に籍を移した現在でも健在である。

449 : ◆Zsc8I5zA3U [sage そろそろ寂しくなったな・・]:2011/06/23(木) 19:15:37.27 ID:v36qf+w8o
突然の香織と狼子の拉致・・自ら出向いた副官の報告に慶太と來夢は勿論の事、辰哉に至っては驚きを通り越して卒倒寸前である。

「お・・狼子達が」

「拉致だと!!! あなた達が就いていながら・・」

「誠に申し訳ございません。全ては私達の不備が招いた結果です」

「全くだ!! それにあいつもあいつで勝手な行動をッッ!!!!」

「兄貴、落ち着きなよ!! まだ考える限りは2人とも無事だよ!!」

「そ、そうだな・・すまん」

なんとか來夢が慶太を宥めながら副官も交えて今後の対策に乗り出す。

「今の所の対策は?」

「現在、我が部隊が総力を上げて2人の場所を特定しているところです」

「・・わかった、俺も一緒に同行しよう。來夢は辰哉君と一緒に家で大人しく待っておけ、俺は直接現場に乗り出す・・依存はないな?」

「うん。僕は異存ないよ」

慶太の実力を知っている來夢はすぐに承知をする。慶太に関しては明人と沙織の方針・・というより2人の両親があまりにも社会的有名な地位に立ちすぎたためにそれを嫉む輩は無論の事、本人の関係なしにあらゆる犯罪に巻き込まれる恐れがあるので幼い頃からあらゆる格闘技に加えてあらゆる銃器は一通り扱えるようになっている。更には軍隊の経験もそれなりに積んでいるので下手な素人と比べても圧倒的に強い、香織に関しては最初は慶太に対抗する形で混じって行ったのだが最終的には慶太と同様の訓練も受けているのでスペックはかなり高い方だ。

「あいつもただではやられないだろう。・・僕も同行させてもらって構わないでしょうか?」

「お嬢様や坊ちゃまの実力は私や隊長も充分把握しております。この場に隊長はいませんが私と同じ判断を取るでしょう」

「助かります」

「あ、あの!! ・・俺も連れてってください!!!」

突如として名乗りを上げた辰哉。しかし悲しきかな、現実は既に彼の手の届かないところまでに進行している。相手が素人なら兎も角として本物の軍隊に一介の高校生である辰哉が太刀打ちできる相手ではない、しかし辰哉にも意地と誇りがある・・恋人を拉致られたまま大人しくしておくのは無理な話ではあるが、それでも狼子を救いたいという気持ちは紛れもなく本物である。きっと彼が敬愛する先輩も同じような状況に直面した時は同じ事を言うだろう・・慶太もそんな辰哉の気持ちは痛いほど解るのだが、素人である辰哉を連れてしまえば慶太達にして見ればメリットどころが逆に足手まといになってしまう恐れがある。

既に事態はそこまで緊迫した状況に進行しているのだ。

「お願いします!! 俺・・狼子を助けたいんです!!!!」

「お気持ちは解りますが、ここは堪えてください。私達と坊ちゃま達で必ずお救いします」

「だけど!! 俺は狼子の恋人としてあいつを・・あいつを救いたいんです――!!!!」

辰哉の嘆願に副官は何とか穏やかに説得しようとするが、ここで沈黙を保っていた慶太が怒声を上げる。

「いい加減にするんだ――!!! ・・悪いがここから先は君では足手まといだ、來夢と一緒に家に戻ってくれ」

「でも! 俺は――」

「最後に君だけに俺達について正直に話そう。・・その前に親父達にこのことは?」

「・・依頼主様へは隊長自らが出向いております、恐らくは伝わっているでしょう」

「そうか。・・では木村 辰哉君、俺達について話す前に最初に君に謝っておく。――巻き込んですまない」

辰哉の前に深々と礼をする慶太。これから慶太から話される衝撃の事実は辰哉にとってとても理解しがたいものであった。
450 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:16:08.74 ID:v36qf+w8o
平塚本社社長室・・

「以上、ご報告を終了致します!!」

指揮官の声が響き渡る中でここ、社長室の雰囲気は頗る重い。社長の明人を筆頭に普段は明るい兼人でもその表情は暗い、暫くの静寂の中で明人は椅子から突然と立ち上がり屋上から広がる大風景を眺めながら言葉を発する。

「・・我々が君に始めて依頼した時の言葉は覚えているかな?」

「ハッ!! 忘れもしません!!」

「君達の実績を評価し、不甲斐ない我々は自分の子供達を守る役目を君達に譲った・・」

親として子供が命の危機に反した時にはすぐに駆けつけたいもの、明人や兼人も出来る事なら自分を犠牲にして行きたいのは山々だが、それらをぐっと堪えてこうしてこの場に立って居る。

「これでは君達の警備会社に掛けた金も無駄だったようだな」

「返すお言葉もございません」

「・・まぁいい、こうして君に質問する時間も無駄だ。すぐに現場に戻りたまえ」

「了解であります!!! 必ずや我が部隊の威信に懸けて犯人確保及びお嬢様を奪還いたしますッッ!!!!」

敬礼と共に指揮官は社長室を後にする。残った2人には気まずい空気が流れる中でようやく兼人が言葉を投げかける。
451 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:16:34.36 ID:v36qf+w8o
「小林には伝えたのか?」

「・・ああ、もう少しで来る。それよりも十条」

「政府を通じてマスコミ対策はちゃんとしてある。これでも抜かりはない・・後は彼等の高校の教師陣についてだが」

「俺が出向く。・・これでも親だからな」

そのまま明人は電話を取り出すと狼子達の教師や高校へと電話を掛けるとそのまま各関係者に説明を行う、平塚グループの社長である明人が行う説明に教師陣はおろか校長もたじろいでしまい、反論も出来ずに黙って聞いているだけだったと言う。

一通りの電話が終わった明人はそのまま受話器を置くと今回の事件の経緯を改めて推察する。

「十条、奴等の狙いは何だと思う?」

「恐らくは俺達の資産を狙った企業テロと言ったところが妥当なとこか」

「・・万が一には“家”の方にも連絡を取ろうと思う」

「お、おい!! ・・“家”とは余り穏やかじゃないな」

ほぼ怖いもの知らずの2人にも怖れるものがある、それは“家”の存在・・2人の会社の設立もこの“家”の財力と力があってこそなのだが、それ故に当主には逆らえない存在となっている。

「とにかく・・“家”は最終手段にしておけ、出来るだけ俺達で解決するぞ」

「ああ。既にこの会社にある資本を可能な限り現金化にしてある、後は交渉次第だ」

「まだ犯行声明が出ていないのが救いと言うべきか・・」

「犯人達の要求を待つほかあるまい」

社長室には今もなお沈黙が続く・・
452 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:18:48.03 ID:v36qf+w8o
「ええ――ッ!!! 香織さんのお父さんって・・あ、あの平塚グループの副社長!!!」

「静かにしなさい!! ・・ちなみにあいつと來夢の父親は平塚グループの社長に母親はSAORI、全ては紛れもない事実よ」

あれから香織達は車での移動の後にとあるホテルへと身柄を移されて軽い軟禁状態へと置かれている、そのまま目覚めた狼子は何が何だか状況が解らないままで香織から話された衝撃の事実・・狼子の頭はぐるぐる回って何が何だかもわけがわからない。だけども香織は慌てずに狼子を落ち着かせながら話を進めて行く。

「慌てるなら全てが終わってからにしなさい。・・今は冷静になる事が大切よ」

「あ、ああ・・」

「まぁ、私達は拉致られた身分だからね。慌てるのも無理はないか」

狼子にして見ればここまで冷静な香織の方が却って不気味にみえてしまう、まるでこんなことが一度や二度でもないような感じだ。

「なぁ・・香織さんは怖くないのか?」

「全然!! ・・と言ってしまえば嘘になるけど、似たような状況になら訓練で何度かあるけどね」

「アハハハ、俺とは全然違うや」

これが聖ならば持っている力で全てを粉砕しそうな気がするのだが、残念ながら狼子にはそのような力はない。自分の無力を呪う狼子であるが香織は冷静に状況を判断しながらある頼みをする。

「何腐ってるのよ。・・それよりあんたにしか出来ない頼みがあるの」

「え!?」

「いい、よく聞いて。これから犯人達と会うと思うけどあんたはさっきの話を忘れなさい、そうしたら何も知らないって判断されてすぐに解放されると思うわ。

それともう一つ、私達を拉致して犯行声明が出されると思うけどそれまでにあんたには“手紙”を書いて貰うわ」

「手紙・・?」

「内容はあんたに任せるわ。ただ書いた後に私がちょっと細工するけどね。・・いい、私ができるだけフォローしてあげるからあんたは何も言わずに従いなさい。そうしたらすぐに解放されると思うわ」

香織にして見れば狼子を出来るだけ早く解放してもらうようにするために尽力を惜しまないつもり、自分と違って狼子は紛れもない一般人でこういった事とは無縁なので出来る限り解放を目指す。香織達が細かい打ち合わせをしている時に犯人の1人が部屋へと入ってくる。
453 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:19:34.48 ID:v36qf+w8o
「出ろ、ボスがお呼びだ」

「はいはい、行きましょ。あんたは普通に人質をしてくれればいいから」

「ああ・・」

犯人の1人は香織達に銃を突きつけながらボスのいる部屋へと案内させる、案内されたのは少し広い大部屋・・周囲は少人数ながらも全員が軍隊上がりなのは間違いがない所だろう。そして中心にいるのが彼等のボス・・この犯罪の黒幕と言っても過言ではない、ボスの方は冷静さを保ちながら2人を冷ややかな視線で見つめる。

「さてゆっくりして貰って結構。君達は大事な人質だからな」

「随分余裕なのね。・・それで私達をどうするつもり?」

「とりあえず金を毟り取って・・後は想像しなくても解るだろう。さて後少しで犯行声明も出すので楽しみにしておけ、これからは長旅になるからな」

「そうね。私達は休ませて貰おうかしら、早くしないと人質の価値が下がってしまうわよ」

「人質にしては態度が癇に障るが・・いいだろう、監視はつけさせてもらうがな」

「話が早くて助かるわ」

香織達が部屋へと戻る瞬間に犯人も入れ替わって女の方が2人に銃を突きつける、そのまま素直に部屋を戻った香織達であったが女のためにそのまま部屋へと一緒に過ごす羽目となってしまう。

「考えたわね、私達の監視に女性を寄こすなんて・・」

「完璧でしょ。不確定要素を出来るだけ排除するのがボスの方針よ、こそこそ話されたらこっちが堪らないわ」

「汚いぜ!! さっさと俺達を解放しやがれ!!!」

「それはあなた達の行動次第ね」

「畜生!!!」

状況にも徐々に慣れてきたのか元気になる狼子とは対照的に香織は冷静にこの状況の打破を考える。

「あんた達の前で隠し事は無意味・・ね。よくわかったわ」

「よく解ってるじゃない、十条 香織さん。データ通りにあなたは賢いわね。そういうの嫌いじゃないわ」

「これから犯行声明を出すんでしょ、だったらあんた達のボスにこれを渡してくれる?」

香織が指し出したのは先ほど狼子に書かせた手紙、女は懐疑な表情のまま鋭い視線で手紙を見つめ続ける。

「ただの手紙・・?」

「見たかったら見ても良いわよ。向こうにして見れば人質である私達の安否さえいいわけだし、あんた達にもデメリットはないでしょ」

「ま、いいでしょう。渡してあげる」

「よろしく♪」

香織のやり取りに狼子はただただ圧巻させられるばかりなのだが、当初の打ち合わせどおりに自分は余計な事を考えずに香織の邪魔をせず普通に人質をやっていればいいのだ。

「俺、喉乾いたな」

「飲み物ならそこの冷蔵庫にあるから好きなだけどうぞ。あと食事も何かリクエストがあれば応えてあげるわ」

「本当か!! 案外人質も悪くないもんだな」

(本当に大丈夫かしら・・)

いくら人質とはいえ相手のペースに乗せられる狼子を見て香織は一抹の不安を覚えられずにいられないのであった。
454 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:19:55.84 ID:v36qf+w8o
「・・というわけだ。俄かには信じがたい話ではあるが」

「そんな、慶太さん達が・・」

「事実だよ。だからこういったことは兄貴に任せて僕と一緒に家に帰ろう」

辰哉も狼子同様に慶太達の経歴に唖然とするしかない、全てを話し終えた慶太はそのまま後ろに振り向き足早に立ち去ろうとするが・・それでも辰哉は食い下がり続ける。辰哉自身には何か目立った特技があるわけではないが狼子達を救いたいという気持ちはここにいる慶太にすら負けてはいない。

「お願いします! 俺も連れてってください!!」

「俺の話を聞いてなかったのか。ここから先は・・」

「何があろうと俺は構いません!!! だから一緒に連れてってください!!!」

何度も食い下がる辰哉の姿に慶太は暫し考えるが、ここで來夢が口を挟む。

「・・兄貴、多分彼は本気だよ。いくら僕達が引きとめたって今の彼を止めるのは無理だよ」

「俺は狼子を・・狼子を救いたいんです!! あいつを守るために――!!」

そのまま、糸が退いたようにガクリと腰が退いてしまった辰哉・・そんな辰哉を見て慶太は暫し目を瞑りながら決断を下す。

「・・・わかった。ただし、これから先は一生を賭けて一切の他言無用を誓えるか?」

「は、はい!!!」

「時間が惜しい、先遣隊と合流するぞ。來夢・・後は頼む」

「わかった。気をつけてね・・兄貴」

軽い見送りを済ませると慶太と辰哉はそのまま車へ乗り込む、命を掛けた文字通りの実戦が始まる。

455 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:20:43.75 ID:v36qf+w8o
慶太は辰哉を乗せたまま車内で装備を整えると次から次へと入ってくる莫大な情報を瞬時に頭の中で整理をすると的確な行動を整える。そんな慶太の様子を見て辰哉は実戦と言う物を肌で感じ、思わず身震いをしてしまう。

「さて、装備はとりあえずこの程度でいいな。重火器に関してはどうなっている?」

「装甲車を含めて手配のほうは完了しております」

「了解だ。・・さて辰哉君?」

「は・・はい!!」

緊張のあまり声が高くなってしまう辰哉。これから狼子達を救おうと言う心意気はの良いのだがそれが極度の緊張へと変わってしまったらこれからの辰哉の命は保障は出来ない。
慶太は一呼吸置くと辰哉の緊張を解しに掛かる。

「そう緊張しなくてもいい、奴等は香織達を拉致した後とあるホテルで潜伏してたみたいだ」

「“していた”ということは奴等はもう・・」

「ああ、先ほど先遣隊が到着していた頃には既に蛻の殻だった。奴等のアジトは俺達が総力を上げて捜索している。本来ならば先遣隊と合流して叩いておきたかったがな・・これから俺達は作戦本部へと向かう」

「作戦本部・・?」

「ああ、君もよく知っている。・・あの場所さ」

慶太の含みがある言葉に何が何だか分からずじまいの辰哉であったが、幸いにも緊張は解すことはできたようだ。
456 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:22:49.40 ID:v36qf+w8o
場所は再び平塚本社ビルへと戻る、香織達の危機を聞きつけた沙織はこれから予定されていた撮影を急遽中断して撮影先のオーストラリアからここアメリカへと戻ってきたのであった。いつもは平静を保ち続けていた沙織であったが、会社へ着いた途端に感情を剥き出ししにしながら明人と兼人に詰め寄る。

「どういうことだ!! 香織ちゃんや一般人まで巻き込むとは――!!!」

「沙織、今の所2人は無事だ・・」

「無事かどうかはわからないだろ!!! これでは真菜香さんに申し訳が立たん!!」

沙織の勢いは留まるところを知らずに2人に思いのたけをぶつけ続けた。沙織にして見れば慶太や來夢もだが香織に関しては今は亡き友人の遺児であるのでその想いは計り知れないほど大きい、だからこそ今回のこのような事態には沙織も気が気ではないし香織と狼子の無事を祈る事しか出来ない自分に腹が立つのだ。

「私は――私は何もする事が出来ないのか・・私は無力な自分が恨めしい」

「沙織・・」

「悪いが2人とも状況が状況だ。場所を移動するぞ」

「「え?」」

きょとんとする平塚夫婦を尻目に兼人は社長室から場所を移してエレベーターを移動して本来なら社員専用の駐車場しかない地下へと案内させる。

「お、おい十条。ここは地下だぞ・・」

「ああ。そうだな」

明人の問いかけにも兼人は相槌を合わせるだけ、この態度に沙織が声を荒げる。

「十条ッ!! こんな状況なのにお前はふざけてるのか――!!! 私達がこうしている間にも香織ちゃんは――ッ」

「落ち着け、沙織。十条にも考えが・・」

「これが落ち着いていられるものか!!! 十条ッ!! お前は自分の娘が心配ではないのかッ!!!」

そのまま沙織は一呼吸して荒げた息を落ち着かせる、明人も沙織を落ち着かせながら兼人の動向が気になって仕方がないが・・いくら幼馴染とは言え今の明人には兼人の考えが全くと行っていい程分からない。そんな2人を尻目に兼人は地下を歩き続け目当ての部屋へと到着する。
457 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:23:43.72 ID:v36qf+w8o
「ついたぞ」

「ここは? こんな所に部屋など作った覚えはないぞ」

「当たり前だ。ここの部屋の存在は俺やごく一部の者しか知らせないようにしていたんだ。勿論、社長であるお前にもな」

「・・なんだと」

兼人の言葉に明人は己の耳を疑うが、こうして目の前に存在している地下室が事実である事を否でも認識させられてしまう。恐らくこの部屋はこの会社を建築する段階から立案されたのだろう、本来ならば社長である自分に必ず報告が上がるはずなのだが、極秘で緘口令を敷かれてたようだ。だけどもこれは明らかに明人への越権行為であることは間違いない個人的には見逃しいてあげたいのは山々ではあるが、それだと会社としての体裁が保てない。

しかし当の兼人はと言うと涼しい顔を保ったままカードキーを通してパスワードを入力する。

「・・小林、俺達は昔からの夢を叶えた。だがその結果として社会的立場が上がり過ぎてしまい、それを維持するために親としての職務を俺達は放棄してしまった」

「だから私達は親として当たり前のことが出来なくなってしまった。一般の家庭なら当たり前にしていることが・・な」

「そうだ。俺達は叶った夢を維持することばかりに夢中で肝心の親の責務を後回しにした・・いや、正確には自分が必死で積み上げてきたものを手放すのが怖かったのかも知れん。その結果として俺や沙織は子ども達を守れなかった・・」

薄暗い地下室での静かな会話、3人とも昔からの夢を叶えた・・しかし今度は叶った夢は高すぎる社会的地位となり3人に試練として襲い掛かる。高すぎる地位は些細な事でも過敏に反応してその地位にいるものは常に危険な綱渡りを強要され、常にそれを維持するためには徹底した露払いをしなければならない。兼人はパスワードを打ち終えると先ほどの言葉の続きを述べる。

「だが、そんな俺達でも出来ることはある。
・・小林、さっきの言葉の反論だ、俺は自分の娘と一般人を命を賭けて救い出す。

これから入る部屋が俺なりの答えだ」

そして部屋の扉が開く、そこに現れた光景に明人と沙織は絶句するのであった。

458 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:25:08.66 ID:v36qf+w8o
明人と沙織が目撃したもの・・それは常日頃から自分の子ども達をガードしてくれる警備会社の人間達の姿であった。周囲にはペンタゴンで使われている最新の軍事コンピューターを始めとして最新の拳銃の弾薬や最新の重火器や果てには戦車をはじめとした装甲車に戦闘機の姿も見える。ここまできたら会社と言うより完全なる軍事基地と言うべきだろう、その設備はそんじょそこらの軍事基地よりも遥かに充実しており、どこかの部隊といっても過言ではないだろう。

「会社の地下にこんな設備があったとは・・」

「彼等の警備会社を俺達の会社の本社に直結させれば有事の際はすぐに動ける。・・だが世界的に有名な平塚の本社にこんな軍事組織があると知られれば反戦団体が五月蝿いし、世間的にも良いものではない。何よりも国家間の無用な争いに巻き込まれる恐れが出てくるからな。だからここの存在は秘蔵したんだ、社長のお前にも秘匿してな、お前に知れれば真っ先に反対されそうだからな」

タバコを吸いながら兼人は説明を終える、このような軍事システムが世界的にも圧倒的な地位を誇る平塚にあるとわかれば世間はきっと許してくれない、明人は平塚の社長だ。公私共にクリーンな存在でならなければならない、だからこそ兼人はこの軍事システムの存在を厳重な秘匿を重ね続け今日に至る。

「これが俺の答えだ。・・俺を処分するなら全てが終わってからにしてくれ」

「・・全く、お前の行動力には驚かされる。処分はとりあえず保留しといてやる」

「十条。・・さっきはすまなかった、お前がここまで考えているなんて」

「俺はお前達夫婦が表で輝いてくれればそれでいいんだ。小林、お前は良い母親だよ・・演技でもない本物のな」

ようやく落ち着きを取り戻した3人の目の前に警備会社の社長・・指揮官が姿を表す。

「ふ、副社長殿!! それに社長殿や奥様まで・・」

「俺が通した。・・状況はどうだ?」

「ハッ! 現在の所、諜報隊が総力を上げて犯人の捜索に当たっております。犯行声明は未だに上がってきておりません」

「そうか。未だに犯行声明がないのが気がかりだな」

「十条、犯人との交渉は私がやる」

「沙織・・大丈夫なのか? ここは十条が適任だと思うが」

いくら沙織が女優だからとはいえ演技と現実は違う、それは沙織が一番分かっている事だ。交渉事なら普段からしている兼人が適役だと思うのが明人の考えだが沙織は頑として譲ろうとする気配を見せない。

「いいじゃないか。世界的に有名な小林なら相手も油断してくれる」

「・・わかった。沙織、任せたぞ」

「心配するな、私は女優だ。しくじりはせんよ」

あらかたの役割が決まった後、再び来訪者が現れる。
459 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:27:12.23 ID:v36qf+w8o
「遅れて申し訳ない」

「ど、どうも・・」

新たに部屋に現れたのは慶太と辰哉、2人もまた香織や狼子を救い出すためこの作戦本部へと足を運んだのだ、慶太と辰哉の存在に明人と沙織は驚きを隠せない。

「け、慶太ッ――!! ・・なんでお前がここにいる!!」

「俺が呼んだんだ。お前等も知っての通り慶太なら実戦を知らん人間でもないからな・・ただ、そいつは誰なんだ?」

「悪いなおじさん、こいつは誘拐された一般人の恋人だ。どうしても着いてくるって聞かないもんだからな、何かの役には立つだろうし」

「慶太、これはお前がしていた訓練とは違うんだぞ!! もしお前の身に何かあれば・・」

「母さん、親父・・それぐらいのことは訓練や実戦をしてた時から覚悟してたさ。だからこそ俺はあいつ等を助け出す」

慶太の並々ならぬ覚悟に沙織と明人は確かな成長を感じ取る、そしてその慶太の覚悟に辰哉も己の気を引き締めて全てに集中する。

「全く、いつの間にか私の子どもは逞しくなったものだな・・」

「そうだな。・・それで君は確か本社の見学にいた?」

「へ? あ、ああ俺は・・」

「た、大変です!! 犯人からの犯行声明が上がりました!!!」

「何だとッ!! すぐに回線をこっちに廻せ!!!」

「ハッ!!」

すぐさま回線が廻され、全員が固唾を呑んで見守る中・・ついに犯人からの声明が上がる。
460 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:28:24.66 ID:v36qf+w8o
“ごきげんよう、諸君。
我々は・・そうだなパープルレインとでも名乗っておこうか。さて我々がこうして声明を上げたのは他でもない、平塚コーポレーションの副社長の一人娘と日本人を誘拐した。人質の命が大事ならばすぐに現金90億ドルと純金500kを要求する”

「随分と無茶苦茶な要求だな」

「現金と純金に分けたのは犯行の長期化だろうな、人質の消耗を狙って俺達の動揺も狙っているとみえる。・・それじゃ、頼んだぞ小林」

犯人の無茶苦茶な要求に明人と兼人は思わずたじろいでしまったが、人質がいる時点で状況的にはこっちが不利なのは明白。後は沙織の交渉次第でどれだけ有利に転ずるか・・誰しもが自然と沙織に注目が集まる。

『・・その要求をこっちが呑めば2人とも解放するんだな?』

“へぇ〜、その声はあのSAORIかい? 俺、ファンなんだよね。大女優に誓って約束しよう、渡すものさえ渡してくれれば人質は解放しよう。指定場所はまたこちらから連絡する”

『その前に2人は無事なんだろうな?』

“ああ、無事だとも。声は聞かせてやることはできないが姿だけなら見せてやろう”

「ろ、狼子!!!」

画面上からではあるが、口を縛られた狼子と香織の存在が映し出される、その光景に沙織は目を堪えそうになってしまうがそれを表情には出さず淡々と見守る。

「・・・母さん、一つだけ確認してほしいことがある。受け渡し時の人物はこちらで決めて良いのか?」

『受け渡し時の人間に条件はないのか?』

“2人だ、ただし・・丸腰でな。そうしたら人質は返してやろう。人員は好きにすればいいさ”

『わかった』

犯人の回線が閉じられる、周囲から重苦しい空気が立ちこめる間もなく指揮官の檄が飛ぶ。

「発信機の逆探知は出来たのか!?」

「ハッ! 発信機の場所からして場所はカルフォルニアの郊外ですが、恐らくそちらには既にいないでしょう。既に先遣隊を向かわせましたが結果は同じでしょう」

「手掛かりを決して逃さぬよう先遣隊にいっておけ!!!」

指揮官の檄が飛ぶ中で慶太は冷静に状況を推察しながらこれからの行動を組み立てていく。

「受け渡しの人選だが、俺とこの辰哉君で向かおうと思う」

「慶太が行くのに私は問題はないが・・ところでそちらの少年は一体誰だ?」

「ああ、彼は・・」

ここで慶太が先ほどのあらましを説明する。慶太から全ての説明が終わった後、明人がどっと疲れた表情を滲みだす。狼子の学校には明人が自ら説明をして半ば強引に納得させたのにまたあの話し合いをするのにはかなり骨が折れる。しかし連れてきてしまったものは仕方のない事だしここまで来てしまったら辰哉に期待するしかない。
461 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:29:40.55 ID:v36qf+w8o
「全く・・しかし連れてきてしまったものは仕方がない。辰哉君と言ったな、慶太はああ言っていたが大丈夫なのか?」

「は、はい!! 俺は・・香織さんと狼子を救って見せます!!」

「辰哉君、言葉で決意を言うのは少しだけ勇気を出せば簡単なことだ。だけどそれを実際に行動に移すのはそれだけではダメだ、それ相応の働きをここにいる小林達に見せ付けなければならないんだぞ?」

タバコを吸いながら兼人は辰哉に重く問いかける、兼人の非常に重い問いかけに辰哉は一瞬だけではあるが迷いが過ぎってしまう。しかし伊達に辰哉とて聖や翔と一緒に行動していたわけではない、聖や翔はこれくらいの迷いを振りきっている・・自分も彼等の後輩なのだからこれくらいの事で折角の決意がぶれてしまうようであったら容赦なく2人に怒鳴られてしまうだろう。

辰哉は一呼吸置いて大人3人に全ての想いをぶちまける。

「俺は・・俺は確かに何も出来ないちっぽけな人間だ。だけど狼子を救いたいという想いはここにいる誰にも負けません!!!!

慶太さんと比べて技術はないけども・・狼子を救いたいというこの気持ちは誰にだって負けません――――!!!!!!!!」

辰哉の心からの叫びに一同は静寂を保っていたがここで沙織が真剣な眼差しで辰哉を見つめながら言葉を投げかける。

「・・君の気持ちは解った。慶太、彼も同行させてやれ」

「わかった。母さん」

「ありがとうございます!! 俺・・絶対に2人を救って見せますッッ!!!!」

辰哉の精一杯の決意表明がどうやら沙織に心を突き動かしたようだ、明人はそんな2人のやり取りを見ながら少しだけ微笑を見せる。

「いいのか、沙織?」

「ああ・・私達のような老人よりも若い人間の方が適任だ。私達は若い人間を支えてやるのが丁度いいさ」

「・・そうか」

「悪いが時間が惜しい、俺はこれから辰哉君と軽く準備を整える。行くぞ」

「はい!」

慶太は辰哉を引き連れてそのまま別室へと引き連れる、慶太とて素人の辰哉をそのまま連れて行くわけではない。出来る限りの知識と技術を短い時間の間で辰哉に全てを叩きこむ腹積もりであった。
462 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:30:22.94 ID:v36qf+w8o
薄暗い一室、その部屋に女の監視付きで香織と狼子は人質として拘束されていたが、既に2人の拘束具は外されており割と自由な格好でジュースを口にしながら人質としての生活を送っていた。

「ふぅ、これで犯行声明としては上出来でしょ」

「あなたには頭が上がるわ。“私達を拘束してくれ”って・・人質が言う台詞じゃないわね。それに現金の純金に分けるなんて・・ボスも感心してたわ」

今回の犯行声明は本来の彼等の声明とは大きく違っている、人質の拘束と現金と純金の受け渡しを提案したのは香織だ。彼等からしてみれば現金さえ貰えばそれでいいのだが、そこに香織がケチをつけてわざわざ現金と純金の2種類の受け渡し方法に変更させたのだ。隣にいる狼子もここにいる香織の思惑が全く持って分からない・・

「一つだけ聞かせて、何で私達にここまで優位な方法を提案するの? あなたは人質なのよ」

「別に大した事じゃないわ。私達はあくまでも人質なんだから・・それにあなた達も世界的な大企業に喧嘩を売るんだから、やるならばもっと大々的にしたほうがいいでしょ?」

「あなたって・・一体どっちの味方なの?」

「さぁね」

そういって香織は平然とソファで寛ぎながらのんびりとテレビを見つめる、監視の彼女からしてもここまで肝の座った人質は早々見た事がない。本来こういった状況ならば恐怖心が勝ってパニックになってしまうのが通例ではあるが、こと香織に関しては捕まった時と同じように平然としながら持ち前の余裕を全然崩してはいない。

「香織さん、俺達・・」

「そう不安になる事はないわ。後は彼等を信じましょ・・愛する彼に手紙も出したことだしね。それにしてもこのテレビは面白いわよ!!」

「そうなのか・・おお、SAORIが出てるじゃないか!! やっぱりアメリカでも有名なんだな」

(な、何なの・・この娘達、人質としての恐怖はないの!)

監視の彼女は狼子と香織の余裕に疑いを覚えてしまうが、末端の自分がいくら疑惑を持ってもボスが承認しているのだからいくら考えたって無駄と言うものだろう。それに今度は自分が下手に行動を起こしてしまえば不穏分子として逆に処分されてしまうかもしれない、ここは自分に科せられた任務として彼女達が変な行動を起こさないように目を光らせるだけで良いのだ。現に彼女は昔からそういった訓練を受けているので人の動向を見守る事など簡単だ、それに彼女達の武器は全て回収したので出来ることなど限られるし今の自分でも簡単に処理できる、

「ま、残り少ない人質生活でも送っておきなさい」

「そうさせてもらうわ。それと受け渡し場所についてはボスは何か言ってた?」

「ええ、承認したわ。狙撃ポイントも皆無だし安心して受け渡しが出来るわ」

「よかったわね。それじゃこのパソコン借りるわね、娯楽があるって便利ね」

そういって香織は静かにパソコンを起動させながら彼等の決起を待ち続ける、香織に出来ることは全てやった・・後は彼等の動きを待つだけだ。
463 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(広島県) [sage]:2011/06/23(木) 19:32:24.83 ID:v36qf+w8o
ちょい飯休憩。食ってから続き投下します
464 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:42:01.58 ID:v36qf+w8o
緊張が走る作戦本部では別室で特訓していた慶太と辰哉が急遽呼ばれ指揮官主導の元、集合が掛けられていた。

「どうしたんだ?」

「あれから犯人のアジトを特定した後、こんなものが発見されました」

「何だ? ・・手紙、しかも辰哉君宛てになっているな」

「え!? 俺ですか・・」

あれから先遣隊の努力によって犯人の第二のアジトが発見されたがやはり蛻の殻だったのだが、代わりに残された手掛かりとしてとある手紙が発見された。しかもその手紙は辰哉宛だったので辰哉として見れば余計に緊張が走る、辰哉は手紙を受け取ると封書を明けて手紙の中身を全員の前で読み上げる。

「え〜っと・・“辰哉へ、俺はこの修学旅行はメッチャ面白かった。こんなことになって残念だけど、俺は俺なりに辰哉の無事を祈り続けている。聖さん達に暫く会えないのが辛いけどそこはうまいところ辰哉の口から伝えておいて欲しい・・犯人からの要求は既にそっちに伝わっていると思う、受け渡し場所はCADの1456番地というとこで日付は明日の昼だ。美味いこと渡すものを渡してくれればまた辰哉と会えると思う、決して変な気は起こすんじゃないぞ。俺は辰哉が生きてくれればそれでいいんだ。
聖さんに聞かれてしまえば怒鳴られちゃうかもなじゃあな、無事でいてくれ  月島 狼子。

PS、この手紙はシャーペンで書いているので消えないように気をつけてくれ”

狼子・・あいつ等!! 慶太さん!!! 俺は狼子を・・」

「焦るな!! 気持ちを昂ぶらせてしまえば付け入る隙を与えてしまう。ここは受け止めるんだ」

慶太に抑えられ、辰哉は昂ぶる気持ちを必死に抑えながら冷静さを取り戻す。若干興奮が収まらないまま、手紙をよくよく見て見るととあることに気がつく。

「この手紙・・前に旅行した時に買ってやったものだ。確か付属の蛍光ペンがあれば浮かび上がるやつだったよな、ちょっと面白そうだったから俺が狼子に買ったんだっけ」

「何だと。・・――ッ! 辰哉君、その蛍光ペンに消しゴムを貸してくれないか?」

「は、はい・・どうぞ」

そのまま辰哉は付属していた蛍光ペンと消しゴムを慶太に手渡す、そのまま慶太は手紙を取り出すと・・あろう事が内容を消しゴムで全て消し去ろうとしていた。突然の慶太の行動に辰哉は無論、沙織や明人・・兼人まで驚きを隠せないでいたが慶太はそんな周囲の様子などお構いなしに手紙の文面を消し続ける。
465 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:42:44.09 ID:v36qf+w8o
「け、慶太さん!! 何をするんです!!!」

「そうだぞ!! 貴重な情報を・・!!」

「この文面が全部シャーペンだとしたら・・よし、後は消した部分をこの付属の蛍光ペンでなぞれば!!」

綺麗サッパリ文面を消し続けた慶太はそのまま付属の蛍光ペンで消した部分をついでになぞり続けるととある文字が浮かび出す、その文面は先ほどの狼子の筆跡とは違って香織のものであった。慶太はその文面をまじまじと見つめるとようやく全ての意図を把握する。

「あいつ・・」

「坊ちゃま・・どうされました?」

「さっきの文面は奴等を欺くためのフェイクだ。これが本来俺達に伝えたかった文面だ、奴等の人数と組織関係に連中の武器の詳細が事細かに書いてある」

「何ですと!!」

指揮官が手紙を見ると文面からは犯人達の情報とこれからの行動が事細かに書いており、指揮官は目を丸く刺せながらまじまじと文面を見ていた。辰哉も文面を見させてもらうと香織の鮮やかとも取れる大胆さに感心しつつも闘志を湧きあがらせていた。

「よしっ! 犯人達の目星は突いたなら俺達がここで行動を起こせば・・ッ!!」

「待て、ここで俺達が動いてしまえばそれこそ人質の無事が保障できなくなる」

「し・・しかしっ!!」

「坊ちゃまの言う通りだ。ここで我々が行動してしまえばお嬢様の努力が水泡に帰してしまう。受け渡し場所はまっさらな荒野で周囲には狙撃ポイントがないのが痛いがこっちにはこの情報を元に装備を整えればいい」

「香織ちゃんが戦ってくれているんだ。俺達もそれに応えなくてはな・・十条、手はずは整えられるか?」

「ああ、既に現金化は完了している。後は・・お前達次第だ」

自然と辰哉と慶太に周囲の視線は集中している、2人はそれ以上言葉を発することはなかったがプレッシャーを力に変えて戦いの時を待つのであった。
466 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:43:14.20 ID:v36qf+w8o
そして翌日、待ち合わせ時間の三時間前に辰哉と慶太は両腕にアタッシュケースを抱えながら姿を表すと場所を確かめながら周囲を入念にチェックしながら地雷等の罠がないかを細かく洗い出す。一時間掛けてようやく周囲の安全を確信した慶太はアタッシュケースを置くとそのまま水を取り出し水分補給をする、さすがに夏を過ぎたとはいっても現地の温度はかなり暑い・・2人とも最新型の防弾チョッキを装備しているとはいっても蒸し暑さが身体に纏わりつく。

「ふぅ、流石に暑い。辰哉君、大丈夫か?」

「はい! 狼子達の苦しみに比べればこんなの屁じゃないです!!」

「頼もしいな。・・一応、今の状況について説明しよう。俺達の所在地は人工衛星を通して作戦本部と連動している、幸いにも荒野なので視界は余りよろしくはないので目視で気ないギリギリの所で仲間が待機している」

辰哉達の行動は最新の人工衛星を通じて作戦本部に通信されるので万が一何かあってもすぐに対応が可能となる、それにこの発信機の特徴は音声だけでなく映像までもが衛生に内蔵されているカメラを通じて受信されるので彼等の行動が常に把握できるのである。

「俺達の装備は拳銃と弾薬だ。教えた通り、大事に使うのは勿論だが使うところはきちんと使っておけ。安全装置の解除の仕方は把握しているな?」

「はい」

「・・よし、もう少しで時間だな。辰哉君、早まった行動だけはするなよ」

「わかってます。・・!!」

上空からヘリコプターのプロペラの音がけたたましく鳴り響く、大型のヘリが着陸を終えると中からは狼子と背後に銃を突きつける。

「辰哉!!」

「狼子!!」

『おっと、騒ぐのはそれまでにしておけよ。さぁ・・早いところ物を寄こしな』

『まずは人質の解放が先だ。・・と言っても信じて貰えないだろうからまずは目視でこれを確認して貰おう』

慶太は持っていたアタッシュケースを開けるとドル札がぎっしりと敷き詰められている。
467 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:43:57.14 ID:v36qf+w8o
『本物だろうな?』

『本物だ』

『・・中で確かめる、暫く待っていろ』

「辰哉ァァ!!」

「お、狼子!!!」

犯人はアタッシュケースを抱えながら狼子を引き連れて再びヘリの中へと入っていく。

468 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:44:24.87 ID:v36qf+w8o
ヘリの中・・狼子は香織のいる別室へと連れていかれ男達は早速アタッシュケースの中のドル札を念入りに確認していく、狼子は香織の居る部屋へと戻ると監視役の女が狼子に話しかける。

「どうだった? 久々の恋人との再会は・・」

「辰哉・・」

「あらあら・・ショックが大きすぎてダメね」

女が狼子の様子を観察し終えると香織はジュースを飲み終えてそのまま監視役の女へと手渡す。

「もういいわ。ごちそうさま・・後は飲んで頂戴」

「あら? どう言う風の吹き回し・・あなたの作戦どおりに事が運んでいるのに」

「・・つべこべ言わずに早く飲みなさいよ」

「強情ね・・いいわ、乗ってあげる」

女は香織から手渡されたジュースを一気に飲み干すと突如として女の身体からは強烈な酸い間に襲われる、朦朧とする意識の中・・女が最後に見た光景は勝ち誇る笑みを浮かべた香織の姿だった。

「あ・・あなたっ!! 仕組んだわね!!」

「この時を待っていたわ。あなたが隙を見せる瞬間をね!! プロならば相手のさり気ない動向を見逃さないことね・・それじゃ、お休み」

「そ・・そんな・・・」

女は意識を失い、香織はそのまま女が装備していた銃を奪うと狼子を引き連れて部屋を進む。一方の狼子は突然の出来事に頭がついてこれなくなって軽いパニックを起こしてしまう。

「え、えええ!! か、香織さん・・一体何がどうなって」

「いい!! あんたは私の後をしっかりとついてきなさい。じゃないと・・死ぬわよ!!」

「は、はぃぃぃぃ!!!」

香織は間髪入れずに狼子を落ち着かせると銃を構えたまま部屋から部屋へと突き進み、拳銃一つで並み居る猛者どもを順続けに倒し続け途中からマシンガンと拳銃のカートリッジを奪いながら狼子を安全な場所へと避難させながら犯人グループを順調に倒していった。

469 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:45:00.30 ID:v36qf+w8o
その頃、辰哉達も銃声を聞きつけた瞬間に慶太が辰哉に突撃の合図を掛ける。

「よしっ、辰哉君。銃の安全装置を解除して俺の後について来い! 雑魚は俺が蹴散らすから君は俺の後方をしっかりと着いていくんだ!!!」

「はい!!」

慶太と辰哉は銃を構えるとそのまま中に突撃を開始し、中にいた並み居る軍人上がりを一人残らず撃破し続けながら香織達の元へと突き進む。

『だ、誰・・グワッ!』

「こいつは弾薬か。それにマシンガンとは有難い!!」

「す、すげぇ・・慶太さんってこんなに凄い人だったのか」

(あいつ・・どこにいやがるんだ!!)

内心に若干の焦りを宿しながらも奪ったマシンガンで敵を倒し続ける、一方の香織は狼子を引き連れながらもマシンガンで敵を蹴散らしていたのだが、弾切れによって拳銃に切り替えて狼子を引き連れながらそのまま引き続き敵の包囲網を次々に突破していった。そして慶太の方も警戒心を全く解くことがなく、順調に蹴散らしながら曲がり角を突き進むと・・とある人物と銃を突き合わせる。

「「・・・」」

慶太と香織、銃を突き合わせながらではあるがようやく再会することが出来たようだ。そして一方のこの2人は・・

「辰哉ぁ・・辰哉ァァァァァ!!!!」

「泣くなよ狼子。また俺を噛んでくれ」

「バカヤロウ・・」

がっちりと抱き合いながら感動的な再会を迎える辰哉と狼子・・たった僅かな時間ではあるが離れ離れになった2人にとってこの光景は一生忘れられない思い出となるだろう。

「・・さて、いくわよ」

「あらかたの敵は全滅させた。ヘリの周囲はガード達で固められているから安心だろう」

「そうね、残るは主犯格のみ・・一気に叩くわよ」

「ああ、このまま行くぞ!!」

そのまま慶太と香織は銃を構えたまま一気に残りの犯人達の所へと突き進んだ、辰哉と狼子もいてもたってもいられずに2人の後を自然と追う。

470 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:45:48.67 ID:v36qf+w8o
主犯格のボスは2人の人間と共にようやくアタッシュケースの中のドル札の鑑定が終わり一安心しきっていた、勿論外の様子など露知らずに・・

『ようやく、終わったな』

『はい。金は全て本物・・後は人質を連れてこのヘリを動かせましょう』

『そして残りの純金も回収すれば歴史に名を残す平塚への企業テロは完璧に遂行です』

3人は高笑いをしながら勝利の余韻に酔いしれる、この計画を実行に移すまで1年近く・・最初は來夢を拉致する予定だったのだが、思わぬ形で辰哉と狼子と言う存在を掴んだのは思わぬ収穫を彼等にもたらす事となる。そもそもこのグループのボスはアメリカ軍では名誉除隊を受けたほどの地位を持つ高翌歴の持ち主でもあったため武器やヘリなどは闇ルートを介せば、あっという間に揃えるのは彼にしてみれば容易なことであった。そもそも彼が名誉除隊を受けた時、思いついた野望は世界的圧倒的なシェアを誇る平塚への企業テロ・・人数のほうも元エリート軍人と言う地位ということがあってか現役時代からそれなりに伝はあったし、皆も自分の主旨を話せばあっさりと賛同してくれた。

計画を立てて実行に移した時・・全てを完遂したら男の全てが満たされる。

『フフフ・・それにしてもあの女はとても素晴らしい、とても平塚の副社長の娘とは思えんくらいだ。このままうまい事こっちの元に寝返ってくれないかな』

『そんなの・・死んでもお断りよ!!!!』

『だ、誰だ!!!!』

扉を突き破って現れたのは慶太と香織、2人はそのまま持っていた銃で一瞬で部下の2人を仕留めると銃口をボスに突きつける。

『大人しく降参しろ。お前の仲間は既に誰もいない』

『き、貴様等!!! どうやってここに・・それにお前は監視が付いていたはずじゃッ!!』

『・・決まってるじゃないの飲みかけのジュースに即効性のある睡眠薬を飲ませたら一発で眠ったわ』

『お、おのれ――・・』

もはや自分の最期を感じてしまった男であったが、ここで辰哉と狼子が現れる。
471 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:46:45.74 ID:v36qf+w8o
「間に合ったか・・慶太さんっ!!」

「この野郎・・よくも俺をこんな目に合わせてくれたな!! 聖さんから教わったこの喧嘩術で・・」

『――!!』

男は香織と慶太の一瞬の隙を突いて狼子の背後に廻りこむと顔に銃口を突きつけてお決まりのポーズで狼子を人質に取る。慶太と香織はそのまま男に銃口を突きつけようとするが、男は大声で2人を制止させる。

「え・・」

『動くなッ!!! この女の命が惜しければ・・武器を全て捨てろ!!!』

「クッ・・」

「なんで・・あんた達がここにいるのよ!!」

慶太と香織は苦渋の表情に満ちながらも持っていた武器を全て捨て去る。男はそのまま慶太と香織を充分に警戒しながら様子を伺う、一方の辰哉はこのとんでもない状況に内心はアタフタしながらも必死に冷静さを取り戻そうとするが・・狼子との感動の再会を果たしたのにまたもや狼子を人質に取られる状況になってしまって後悔と絶望感が脳裏を伝って心身ともに一瞬で支配されてしまう。

「そ、そんな・・折角――折角狼子と会えたのにまたこれかよ!! 畜生ォォォォォォォ!!!!!!!!」

何も出来ない自分への歯がゆさからか、思いっきり床を何度も叩く辰哉・・そんな辰哉の様子を狼子は静かに見つめることしか出来ない。

「辰哉・・ごめんなさい。俺のせいでまた迷惑を掛けてしまって・・」

『さて、これで形勢逆転だ。この際、純金も全て渡して貰おうか――ッ!!!』

「チッ、こんなことなら早めに仕留めておけば・・」

「あんたが柄にもなく格好つけるからこんなことになったのよ!!!」

「う、うるさい!!! 元を糺せばお前が油断したからこんなことになったんだろ!!!!」

「なんですって!!!! 後でその生意気な口ごと撃ち抜いてやるわ!!!!!」

こんな状況にも拘らず、相変わらずの舌戦を繰り広げる2人に男のイライラもピークを迎える。

『この女の命が惜しくないのかッ!!! ならば引き金を引くぞ!!!!』

「辰哉―――ッ!!!」

「や・・やめろォォォォォォォォ――――!!!!」

472 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:51:49.34 ID:v36qf+w8o
引き金の音が部屋中に響き渡る・・慶太と香織が舌戦を中断するとそこには銃を構えていた辰哉と・・右肩を撃たれて痛みのあまり狼子を離してしまった男の姿があった。辰哉はそのまま銃を投げ捨てるとそのまま腰がひけてしまってヘナヘナとその場に座りこんでしまう。狼子は一目散に辰哉に駆け寄りそのまま泣きながら辰哉を抱き締める。

「ハァハァ・・」

「バカ野郎ォ・・ほんとにお前は大バカだよぉ・・・」

『グハッ・・こ、この餓鬼ィィィ―――!!』

男は痛みを堪えながら今度は銃口を辰哉に向けようとするが慶太に先ほど撃たれた右肩を殴られ、倒れた瞬間に香織に顔面に蹴りを入れられて額に銃口を突きつけられる。

『観念しなさい。・・今度は本当に撃つわ』

『く、くそぉ・・』

男は出血の影響でそのまま戦意を喪失し気絶してしまう、その瞬間に一気にガードの人間がその場になだれこみ今回の誘拐事件は終息を向かえるのであった。
473 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:52:40.34 ID:v36qf+w8o
サンフラシスコ空港・・


「それじゃ・・」

「色々とお世話になりました」

本来なら辰哉達のクラスは他の学年と合わせて昨日の時点で帰国しているのだが、2人はと言うと礼の誘拐騒動のおかげで帰国が1日伸びてしまったのでようやく帰国を果たす。

「また遊びに来てくれ、俺達はいつでも歓迎する」

「今度また僕の料理も食べに来てね」

「次はちゃんとした旅行をしなさいよ」

慶太、香織、來夢の見送りの言葉が送られる中、明人と兼人が2人にこれからの状況を話す。

「君達の学校には俺が表向きに旅行上のトラブルという形で話をつけている。だから安心して学園生活を送って欲しい」

「帰国したら話したい気持ちは解るが、俺達の存在はあまりおおぴらにしないでくれ。じゃないと変なトラブルに巻き込まれるからな」

「はい、色々とご迷惑をお掛けしました」

「辰哉の癖に生意気な!! 噛んでやる!!!」

「痛ててて!! 別れぐらい素直にさせてくれ!!!」

辰哉と狼子の様子を見て周囲から笑いが広がる中、最後は沙織が締めくくる。
474 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:53:11.61 ID:v36qf+w8o
「日本に帰国したらある人物へ伝言を頼まれてくれないか?」

「ある人物って誰ですか?」

「もしかして礼子先生のことかな」

「礼子・・だと・・」

ふと、狼子が漏らした礼子の名前に沙織は反応を示す。かつて沙織と礼子は過去にひと横着を起こしており、沙織としては長年礼子の存在が頭からちらついて中々離れずにいたのだが、まさか狼子達の関係者になっていたとは・・偶然とは恐ろしいものである。

「あの・・礼子先生がどうかしましたか?」

「いや、いいんだ。会ったら伝えてくれ・・“私はもう一度小林沙織として会いたい”とな」

「よく解りませんがあったら伝えておきます」

「ああ、頼んだよ。それにそろそろ時間じゃないのか?」

狼子と辰哉は腕時計を見るとフライトまで10分を切っており、慌てて2人は空港乗り場へと駆けだす。

「ヤベッ!!! 狼子、早くしないと乗り遅れるぞ」

「マジかよ!!! そ、それじゃ・・あばよ!!!!」

平塚家と十条家の一家総出の見送りの中、辰哉と狼子は猛ダッシュで消え去った。狼子達が消えた後、慶太達は色んな意味で今回のことを振りかえる。
475 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:54:33.10 ID:v36qf+w8o
「面白い2人だったね」

「まぁな。日本は凄いんだな」

「さてこうして皆揃った事だし・・どこかへ行きましょ」

「お前にしてはいい提案だな。乗ってやるよ」

和気藹々としている子ども達とは対照的に大人達も今回の出来事を振り返りながら青春真っ只中の辰哉と狼子に昔の自分達をダブらせる。

「若いって良いな。私も昔が懐かしい」

「そうだな。俺も沙織と日本にいた時のことを思い出してしまった」

「そこで昔のバカップルに戻って勝手にやってくれ。・・さて、お前等こいつら放っておいてどっかにいくか!!」

「「「OK!!」」」

こうして辰哉と狼子の一生の思い出に残る修学旅行はここで終わった。

476 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:55:04.21 ID:v36qf+w8o
飛行機の中、辰哉と狼子も今回の出来事を振りかえる。

「今回の修学旅行は凄かったな」

「ああ!! 聖さん達には大っぴらに自慢は出来ないけど・・俺はすっげぇ楽しかった!!」

「俺もだ。・・狼子、俺h」

辰哉が決め台詞を言おうと思った矢先・・狼子が絶叫の叫びを上げる。

「ゲェェェェェ!!! 聖さん達にお土産買うの忘れたァァァァァァァ!!!!!!!!」

「何だと!! そういえば俺も先輩に買っておくの忘れた・・」

辰哉と狼子も今回の修学旅行では一生忘れたくても忘れられない深い思い出を作る事が出来た。少なくとも当人達にとっては・・



fin

477 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 19:55:29.48 ID:v36qf+w8o
おまけ


無事に東京の空港に着いた辰哉達、ボディーチェックをやりすごしてそのまま出口へ向かおうとした時・・辰哉がとあるカップルとぶつかってしまう。

「あっ、すみま・・」

「てめぇ!! この俺様に向かってしや・・辰哉に狼子じゃねぇか!!!」

「聖さん!!」

「せ、聖さん・・それに先輩!!」

辰哉がぶつかったのは極秘旅行から帰ってきた聖と翔、行く前から出会っていた辰哉はさして驚かないが狼子は驚きを隠せないでいた。

「聖さんに先輩!! 何でこんな所にいるんですか!!!」

「そ、そりゃ・・なぁ・・俺達だって色々あんだよ」

「え、えっと・・お前等だって何でここにいるんだ? お前達は昨日が帰国だった筈なのに・・」

まさか辰哉に会うと思わずしどろもどろしてしまう翔であったが、冷静さを取り戻すと逆に狼子達に突っ込みを入れる。

「あ、ああ・・まぁ色々あって」

「そ、そうそう。色々あったんですよっ!!」

「ふーん」

内心翔はつこっみたい気持ちはあったが、自分達も極秘行動の中の非公式な旅行なので学校関係者に見つかったら色々と拙い・・というか確実に進路に繋がる内申に多大なるダメージを与えてしまう。ここはお互いのためにも突っ込まない事を決めると聖にとある合図をする。

「ほ、ほら・・辰哉、お前赤福大好きだったろ?」

「え? 別に大好きでh・・」

「いいから遠慮なく食え!!! この相良様が全てやるっていってんだからありがたく受け取れよなッ!!!」

「し、しかし・・」

「遠慮なく受け取れってんだろッッ!! さっさと狼子とこれ食って今日のことは忘れろ!! いいな!!!!」

「と、と言うわけだ。じゃあな」

そのまま聖と翔は逃げるように狼子達の姿から消え去って行った。大量の赤福を抱えた辰哉と狼子は2人の行動が疑問に残って仕方ない。

「な、なぁ・・聖さんと先輩達はなんだったんだ?」

「さ、さあな。とにかく今日のことはお互いが忘れた方が良いみたいだ」

後日、聖と翔によく似たカップルが礼子の手によって保健室へ強制連行されたのを見た人間が大勢いたという。

478 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/06/23(木) 19:57:42.99 ID:Sq/RuSN20
帰ってきてこのスレをのぞきに来たら◆Zsc8I5zA3Uさんのリアル投下と遭遇とはw
乙です!
479 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/06/23(木) 20:01:36.60 ID:v36qf+w8o
パー速規制UZEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!

こんにちわ、お久しぶり、始めま(ry
久々に顔出したんだから手土産に投下しました。一夜限りの復活だったが・・投下している時の感触はいいもんだwwww
この話は先ほどの狼子の人の世界観と繋がっていますのであしからず・・

今回は相良さんメインではなく慶太達をメインに話を組んで見ましたが・・いかがでした?
やっぱ久々に書くとブランク感じるな。

それに単独で占拠させて貰ったけど悪い気は全然しないんだZE☆


さて狼子の人にもwwktkしながら期待をしつつも人もいないよう出し素直にROMろうかな
みんなの小説でまたこのスレが盛り上がりますように・・


じゃ、最後に・・みんな見てくれてどうもありがとさんwwwwwwwwww
480 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/23(木) 20:25:37.04 ID:FxAa5yzk0
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!
リアル「見てくれてありがとさんwwwww」だ!まさに神業!乙っしたッ!!
481 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/23(木) 20:34:14.00 ID:FxAa5yzk0
>>292 お題:『ファミレスとコーヒー』

井上 唯織は『便所姫』、そう呼ばれてる。『公衆便所』とか『ヤリマン』とか、そういう意味の蔑称だ。

彼女はボクの1コ上の2年生。1年生のときに女性化した元男。今ではウチの学校だけでも30人位と寝たって話だ。
…ウチの学校ってそんなにロリコンいたんだ、と思った。だって彼女は凄く小さい…小学生と間違えるくらい見た目が幼い。
校内で何度かすれ違ったけど身長162cmのボクより頭ひとつ分よりもっと背が低く、140もないんじゃないかな、
顔立ちも可愛いんだけど美少女っていうか幼女の様で、栗色のふわふわな猫毛は短めのボブカットにしていて良く似合う。
体つきも凹凸が無く、小さい・薄いって感じ…本当にアレ年上か?
あんなのによく皆、欲情できるよな…『大きすぎない程度の巨乳派』のボクには信じられない。

まあ、そんなウルトラビッチというか、にょたロリビッチにはこちらから関わるような事は無いだろうけど…

そんなふうに考えていた時期がボクにもありました。

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いつもより少し遅い下校時間。雨上がりのアスファルトの路面を雲間から射した夕日が照らしていた。
校門へと続く道に並んだ葉桜を揺らす風は微かに夏の気配をはらんでいた……ちょっとくらい現実逃避させて下さい。

悪漢に絡まれてる幼女の図@駐輪場なう……出来れば無視したいなぁ。
もちろん絡まれてるのは件の井上先輩で、絡んでるのも2年生かな…もう見るからにDQNな感じのDQNだ、うへぇ…
やれ「なぁ、ヤらせろよ?ゴルァ!」とか実に品の無い男の声が聞こえる。別に聞きたいわけでもないんだけど
何でああいった輩って無駄に声がデカいんだろ。耳障りだなぁ。井上先輩は明らかにイヤがってる様子で…
まぁ、ボクは自転車通学じゃないからこのまま華麗にスルー…井上先輩と目が合ったよ。ハァ…
助けろフラグですね?わかりたくありませんでした……へし折れちまえこんなフラグ。

「あの〜…彼女嫌がってますよね?」
「ぉあ"?んだよオメぇ?関係ねぇだろ?ゴルァ!」

うーん、わかってたよこうなるって。出来るだけ穏便に済む様に笑顔は崩さず言ったんだけどなぁ。
出来れば『あ、そうですよね?ではまたの機会に致しますゴルァ!』ってなってほしかったなぁ。
ところでそういうでかいピアスってどうやって穴開けるんだろ?

「みっともないですって先輩?惨めですよ?哀れですよ?」
「ぉあ"?ナメてんのかゴルァ!」

案の定掴みかかってきた。その手首を軽く掴んで相手の力の流れを去なしながら均衡を崩し『ひねる』。
ポンっと宙を回転する相手の体。怪我をされると厄介なので少し力を加えて尻から『落とす』。
尻餅をついてころがるDQ(ry。何をされたかわからないって間抜け顔だ。

「な、なんじゃぁゴルァ!?」と立ち上がりざま勢いで殴り掛かって来るDQ(ry、そんなテレフォンじゃ当んないですって…
避けつつ相手の腕に手を添えて、また同様にひねる。再びポンっと宙を回転する相手の体。今度は背中から落とす。
すかさず耳元で「…次は頭から落とします」と囁いてやる。
「お、覚えとけよゴルァ!」と捨て台詞を残して走り去るDQ(ry…ホントに捨て台詞を言う人初めて見た。

井上先輩の方を見遣るとポカン顔…逃げるなら今かな。
「じゃ、ボクはこれで」と言い残し立ち去ろうと…「待てコラっ!」と捉まった。やっぱ無言で走り去ればよかった。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
482 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/23(木) 20:36:15.92 ID:FxAa5yzk0
「なぁ〜、こーゆートコのコーヒーって添加物で水増ししてるらしいぞ」
「今現在進行形でコーヒー飲んでる人に対してよくそういうこと言えますね?」

しかも店内で、営業妨害だと思う…何故かボクは今、井上先輩とファミレスにいる。

「マジマジ、なんかナントカ酸ってヤツで何倍も搾り取って…風味が悪くなったのは香料で誤魔化してるって」
「あー美味しいなぁ、コーヒー超美味しいッ!」
「あ、さっき入れてたコーヒーフレッシュもミルクじゃなくてサラダ油みたいなモンなんだってよ」
「あんたは一体なんなんだッ!?」

…調子が狂う…間近で見る先輩はやっぱり頭に超が付くほどの『美少女』で、好みのタイプではないにしても変に緊張する。

「って先輩もカフェラテ飲んでるじゃないですか」
「紛いモンでも美味いものは美味い」
「……大体、何でボクをこんなトコに引っ張り込んだんです?」
「だから助けてくれたお礼に奢るって言ったじゃねーか」
「お礼ならもっと楽しく食事出来るように創意工夫して下さいよ」
「食事っつってもアンタ、ドリンクバーしか頼んでねーじゃん」
「…別に腹減ってないですし、帰ったら多分晩飯用意されてると思いますから」

なんというか、喋り方とか、表情とか、見た目とのギャップが凄いなこの人。
噂に聞いてたビッチのイメージとはほど遠い、普通に男の先輩みたいな感じだ。面白い人だな。

「しっかしさっきのスゴかったなァ!アンタ見た目可愛いのに強ぇーのな!こう…ポーンって」

いや、先輩に可愛いとか言われたくないですよ?アンタのがよっぽど可愛いだろ。

「アレは母方の祖父に小さい頃から仕込まれて、本当は当身が主なんですけど…でも妹の方がボクより強いんですよね…」
「はぁー…つか妹のが強いて…」
「あ、妹っていっても双子で、先輩と同じで元男なんですけど」
「…オレ元男だって言ったっけ?…アンタ、もしかしてオレの事知ってんの?」
「あ…」

しまった、つい…

「ああ…ふーん、まぁ有名らしいしな…『便所姫』とか?」
「…噂はよく聞きます」
「大体合ってると思うよ、その噂…」

ボクが黙ってると先輩は「勝手に喋るぞ」と語りだした。

「30人…とかだっけ?そこまではいかないけど、かなりの人数とはヤったよ」
「誰でも良いってワケじゃなくて一応選んでるよ?出来るだけ真面目そうなヤツ限定…だからさっきみたいな輩はパスな、病気とか怖ぇし」
「…なんつーか実感が欲しいのかもな、女の…自分がもう女だってゆうのを感じたいんだ」

…そういう人もいるとは聞く。ウチの妹も最初はそうだった。でもすぐに順応してたし…
ましてやこの人は女性化してから結構経ってるはずなのに。

「…なぁ、アンタ童貞?」
「ぶッ…!!!?なんですか?急にぃ!?」
「いや、だから童貞かって」
「ど、ど、ど、ど、童貞………です」
「ふぅん…筆おろし…してやろうか?」

ごきゅ…と咽喉が鳴ってしまった。なんだ?急に雰囲気変わったぞこの人。

「け、け、け、け、結構です…」
「こーゆーロリぃのは好みじゃねぇか?でも意外と抱き心地良いらしいぜ?この身体…」
「本当に結構ですッ!!」
「何?アンタ女になりてぇの?」
「いえ…そういうワケじゃ…」
「じゃあ、オレの…でもよくね?アンタの…をオレのココに突っ込んで……」

なにこの人エロい…こんな小っちゃいのに…表情とか、仕草とか、指の動きとか…
でも、どこか……いや、それどころじゃない、この雰囲気は耐えられないっ!
483 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/23(木) 20:37:28.50 ID:FxAa5yzk0

「あ、あのッ!ボクもう帰りますッッ!」
「あっ…オイっ!」

店の外に飛び出すと、すっかり日も暮れていた…クソッ…

「……アレ?もう逃げられたかと思ったんだけどな」
「…女性を一人でこんな暗い中、帰らせるわけにはいきませんから」
「ふーん、やっぱ真面目だねー?」
「…ッ、行きますよ」
「腕でも組むか?」
「結構ですッ!!」

先輩の家までの路をひた歩く。ボクは出来るだけ黙って先輩に目を向けないようにしていた。
沈黙に耐えかねたのか、先輩が「なぁ…」と話しかけてきた。

「…悪かったよ、からかう様なマネして」
「やっぱりからかってたんですか?」
「いや、別に本気にしてもいいぜ?オレなんかが相手でよけりゃ…」

…なんでこの人はこんな…それに、なんだよこの胃の奥がザラつくような感じ…

「オレは…嫌です」
「あ、やっぱオレなんかが相手じゃ…」
「そうじゃなくてっ、そんな軽いノリではしたくないって事です!それに…先輩にもそんな風にしてほしくないッ!」
「は?」

何を言ってんだボクは、こんな…

「女性化して色々複雑なんだろうとは思います、今のボクには到底理解出来ないような葛藤とか悩みとかもあるんでしょうけど…
 それでも、ボクは、先輩に自分をそんな風に扱ってほしくないッ!」
「自分でも変だと思いますよ、今日初めて話したばかりの人にいきなりこんな事言って…本当は先輩とだって関わり合いに
 なるつもりなんてありませんでした、関わりたくないと思ってました!でも…」
「何か、何故か、わからないけど嫌なんです!そうやって『オレなんか』とか言って自分を軽んじたり、さっきみたく
 男を誘っってるクセにどっか悲しそうだったり……そんなの気になるじゃないですか、何でかわからないけど、嫌だって…思うんです」

何でボクはこんな、泣きそうになってんだ?なんでこんな苦しいんだ?
先輩は、やっぱり驚いたって顔で…それから少し困った様な顔をしてボクの方に近付いた。

「アンタさぁ……なぁ、ちょっと屈めよ」
「…はい?」
「イイから屈めよッ!」
「…はい」
484 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/23(木) 20:39:31.93 ID:FxAa5yzk0

言われたとおりに屈むと、襟を掴まれてグイっと引っ張られ…柔らかい感触…って、コレ先輩の唇ッ?!!
え?な?…舌が入って…口内を這い回る先輩の小さな舌の感触…息継ぎの度に鼻先を擽る先輩の吐息…
女の子の特有の甘い匂いと微かなカフェラテの香りと味…脳が灼けるみたいだ…もうわけがわからない。

「…ぷはッ…さっきファミレスでアンタ、コーヒーしか飲んでなかったから…
 オレ、メシも奢るつもりだったからな、コレはそれの代わり」
「な…なぁ…ッ」
「お?そのリアクションだとキスも初めてか?じゃあ、逆にゴチソウサマかな?」
「〜…ッ!」
「あ、ゆっとくけどキスしたのはこれでも2人目だからな?」
「…な、え?」
「アンタさぁ…そういや名前聞いてなかったな?なんつーの?」
「え?あ…山根…康臣、です…」
「山根 康臣ね…あ、オレん家すぐソコだから、もうココまででイイぞ?じゃ、またなー山根ッ!」
「あ、ちょ…ッ」

足の力が抜けてその場にヘタリ込んでしまう。

ヤ ら れ た

完全にヤられた。心臓がバクバクと喧しく鳴ってる。
地面についてしまった掌からぬるいアスファルトの温度がジワリと伝わる。
道端で野生化した紫陽花がそれは見事に咲いていた。

「なんなんだよ……畜生」
485 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/23(木) 20:47:21.98 ID:FxAa5yzk0
色々と消化不良だけど終われッ!お目汚し申し訳ございませんorz
書けない時は本当に書けないなと実感。でもどうしても書きたかったの『にょたロリビッチ』。
◆Zsc8I5zA3Uさんが上げきったハードルを下げるのには役に立ったかと思いますw

>>397
オチはどうしましょうwww
486 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/23(木) 22:08:53.36 ID:McnTSyYSo
>>485

「オチって都市伝説じゃないの?」
「なんで伝説化してるのか聞きたいです」
「え?」
「…え?」
「ぐだってるんだから存在するわけがないだろう」
「でもきちんと締めないと次に進めないじゃない」
「君は変な所で律儀だな」
「律儀じゃなくてこんなのは普通です」
「普通について定義―――」
「あー、ストップストップ。哲学やりたいわけじゃないからね?もっとこうハイかイイエで答えられるような
 普遍的な回答が出来る質問限定です」
「面倒だなぁ…」
「面倒でも、です」
「大体だね、元が流動的で常に比較する事で認識する話題なのだから無理があるのだよ?
 私たちの会話ですら即興で進められているのに、今更何を」
「メタい事も禁止っ!」
「君は堅いな。さっきから私の行動を制限してばかりだ」
「してません」
「してる」
「してませんっ」
「しつこいな」
「先輩ほどじゃないですっ!」

「女同士でいちゃつきやがって、爆発しろ!」

――――
(´・ω・`)考えてなかったです

487 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/23(木) 22:13:17.51 ID:+UtcmStAO
>>486
ムチャ振りにお応え頂きあざーっスww
乙GJであります!
488 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/24(金) 00:54:15.05 ID:w+APRrMOo
>>485
むしろ投下が何もないとハードルが上がってるなーって感じるのですけど、珍しいのかなぁ

>>487
安価ネタが中々書きあがらないので息抜きになってたり(´・ω・`)
489 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/24(金) 01:04:02.03 ID:UBOhwUtAO
>>488
漏れはどっちにしろ投下の度に吐きそうになるけどネ☆

お互いに完結出来る様に頑張りましょう!

アレでしたら息抜きに単発書いてはいかがです?
490 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/06/24(金) 01:59:10.60 ID:6l8+cViAO
【とある高校の昼休み】





「はあ……」
「どうした、レミ。溜め息なんかついて。珍しく悩み事か?」
「珍しくって……まあ、悩み事があるのは本当だけどさ」
「そうか、頑張れよ」
「ユウタ、私の悩み事聞いてよ。友達でしょー」
「特に興味無いしな。それにいいかげん僕をユウタと呼ぶのは止めろ。今はユウだ」
「ああ、ゴメン。意識してないとついユウタって呼んじゃうんだよ」
「僕が女になってからもう一ヶ月だぞ。いいかげん慣れろ」
「まあ、そこはおいおい慣れてくよ。それで悩み事なんだけど……」
「勝手に悩み事を話すな。僕は興味無いって言っただろ」
「そんな事無いよ。ユウにとっても関係無い話じゃないし」
「ほう、なら聞いてやる。話してみろ」
「……上から目線なのが気になるけど、今はいいや。悩み事って言うか願い事って言った方が近いのかもしれないんだけど」
「どっちでもいい。早く言え」
「おっぱい大きくしたいなって」
「……なにかと思って聞いてみれば、それか」
「私、真剣だもん!」
「僕には関係無い」
「……私より小さいくせに」
「うるさいよ」
「だって本当の事じゃん」
「とにかく、僕には関係無い。」
「大きくする良い方法無いかな〜?」
「知らん」
「今日のユウ、冷たい……」
「知らないから知らないって言ってるだけだ」
「ちえっ、貧乳同士良いアイディア出してくれると思ったのに」
「人に頼る前に、自分でなんとかしろ」
「しょうがないかー……あ、そういえば揉んでもらえば大きくなるってよく言われてるけど。揉んでもらえば大きくなるって」
「何故、二回言う。そして何故、僕の方を見て言うんだ」
「揉んでもらえば……」
「揉まないからな」
「ケチ!」
「うっさい。そもそも、揉めば大きくなるってのはデマらしいぞ」
「えっ、そうなの?」
「ああ、科学的な根拠は無いそうだ」
「じゃあ、なんで揉めば大きくなるって言われてるの?」
「さあな、だけど揉めば云々は真っ赤な嘘だ」
「うーん、あ、じゃあ牛乳飲んだり乳製品食べたりすれば大きくなるってのは」
「それも根拠は無い」
「ええーっ!」
491 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/06/24(金) 02:00:21.46 ID:6l8+cViAO
「まあ、牛乳含めて乳製品はカロリーが高い物が多くて、胸は脂肪の集まりだから、もしかしたら大きくなるかもな」
「でもそれって、要は脂肪が付くって事だから……」
「ああ、腹とかの余計な所にも脂肪が付くかもな」
「乳製品食べるのは止めとく」
「ま、好きにしな。止めようが太ろうがお前の自由だ」
「ところでさ、ちょっと気になる事があるんだけど」
「なんだ?」
「一ヶ月前まで男だった割には、やけに詳しいね」
「い、一般常識だ! だいたい半年も女やってて知識の無いお前が無知なんだ」
「でも、同じくらいの歳でも信じてる女の子、結構いると思うよ」
「う……そんな事、僕が知るか」
「自分が言われる発端を喋ったくせに〜」
「う、うるさい! 元・童貞が!」
「はいはい、ユウも同じでしょ」
「くっ……!」
「それで話は戻るけどさ」
「戻さなくていい!」
「だが断る。胸についての知識があるって事はさ、自分の胸を大きくしようとして、調べたの?」
「そ、そそそんな訳ないだろ」
「そっかー、じゃあすでに実践して効果が無いから、デマだって言ったんだ」
「ち、違う!」
「ん? 何が違うのかな? 私、あまり頭良くないからちゃんと言ってくれないとわからないよ?」
「お、お前……っ!」
「ねえ、ちゃんと言ってよ。何が違うの? さあ、何がどう違うの?」
「〜〜〜〜っ! 黙れ!」
「あっ、あいたたたたたたた!ちょっ、アイアンクローは止めて!」
「さあて、どうしようかな!」
「痛い、痛いぃ! 謝るから! 調子にのってすいませんでした!」
「ふん」
「あ〜……痛かった、酷いよユウ」
「調子にのりすぎたからだ」
「それにしても、慌てふためいて真っ赤になったユウ……可愛かったなぁ」
「まだやられたりないようだな」
「ゴメンゴメンゴメン!」
「……ったく!」
「それで、実際のところはどうなのさ」
「何がだ」
「だから、調べたの? それとも実践?」
「言わないからな」
「言わないって事はどっちかは本当って事なんだね?」
「……チッ」
「舌打ちしないでよ」
「お前がしつこいからだよ」
492 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/06/24(金) 02:01:07.83 ID:6l8+cViAO
「でも舌打ちするって事はどっちかは本当なんでしょ! ねえ、どっちなの? 調べたの? 揉んだの? それとも、まさか両方とも!?」
「落ち着け……調べただけだ」
「調べたんだ。そっか、やっぱりおっぱい無いの気にしてたんだね」
「……まあな。それに胸が無いって程、絶望的でもない」
「それにしても、おっぱい大きくしようとするなんて、ユウも女の子らしくなっていたたたたたたた! アイアンクローは止めてってばー!」
「お前が、事あるごとに、僕の胸が小さい事を、いじるからだ・ろ・う・が!」
「いだだだだ! さらに力込めないで! ゴメンってば! もう二度とおっぱいの事でからかったりしないから許してえええ!」
「今度、胸の事でいじってみろ。アイアンクロー十分間の刑だからな」
「き、気をつけます……」
「その言葉、忘れるなよ」
「はい……ところでさ、調べたんなら、おっぱいを大きくする効果のある方法って何か見つかった?」
「そうだな……指圧によるツボの刺激とか、かな」
「ツボ? おっぱい大きくなるツボってあるの?」
「あるみたい。まだ試してはないがな」
「それって、どこがツボなの? 教えて!」
「いや、一応胸の近くだから上半身裸にならないとわかりづらいし、ツボも押しづらいだろうけど……さすがに学校でやるのはな」
「んじゃ帰りにユウの家に寄るから! いいよね! はい、決定!」
「おい、勝手に決めんな! まあ、用事は無いからいいけどな」
「ようし、卒業するまでに大きくなってやる!」
「あんまり期待はすんなよ…………おっと、そろそろ昼休みが終わる頃だな。早く教室に戻るぞ」
「あっ、待ってよー!」
493 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/06/24(金) 02:01:56.96 ID:6l8+cViAO
ここでおしまい。

何気に久しぶりの単発で色々と書いてはボツを繰り返した挙句、会話のみで進行するという話になってしまいましたが、少しでも目を通していただけたら幸いです。
ちなみに胸についての話はネットで拾ったものですので、信憑性は薄いです。
494 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/24(金) 05:42:22.80 ID:eWt97RSW0
( ゚∀゚)o彡゚にょっぱい!にょっぱい!
ようこそファンタさん!さ・す・が!ニヤニヤしました。
ゴチソウサマです!乙GJ!
495 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/24(金) 06:01:18.98 ID:eWt97RSW0
おーう、間違い発見…>>483のトコ
×「オレは…嫌です」→○「ボクは…嫌です」
主人公の一人称が違ってた、テヘ☆
496 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/24(金) 10:30:29.77 ID:wTeUdvR60
100レス近く進んでるから何事かと思ったらww

>>398
確かにココでは初めてかもしれないけどwwww
vip時代と違って、dat落ちの恐怖が無い=ねまらほ不要だから
皆さまの閲覧サイクルが1回/dayとかになってるだけで
単に投下タイミングに巡り合えないだけだと思うのですよ

>>485
1つだけ言いたい事がある、ビッチと言えば「やあよやあよ」ではないだろうか!
「ふぇぇ、なにかあふれてきそうだよぅ…あっふぁん」
「女の子として生まれ変わったばかりだから粗相をしてもいいんだよ〜?さぁ、どんどんお漏らししちゃおうね〜」
「やだぁ…もうお漏らしやあよモードなのにぃ…」
あれ、なんかビッチと違う…?

>>493
こっちは貧乳にょた×無乳にょたかっ!
なんか胸は想い人に揉んでもらうと効果があるとかないとか…?
とりあえず最近のテレンドはおっぱいがちっぱいにょた、俺理解した
最近のトレンドはろりにょたなのか
497 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/24(金) 15:16:10.69 ID:dOsqRBRXo
朝は普通だったのに調子悪くなってので保健室で寝て起きたら女になってるという
昼休みから女体化というのを思いついた
498 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/24(金) 16:53:59.46 ID:wTeUdvR60
>>497
理由は分からないが
日が高いうちから飲酒してるような背徳感を感じた
499 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/24(金) 18:17:13.57 ID:eWt97RSW0
うーん、昨日投下したヤツ読み返してみると変なトコがいっぱいあるんだぜ…orz
まとめに載ったらナントカします…申し訳ございません。

>>496
なんじゃあ?いや、エロいっスけどw
勉強になります。使い所は分かりませんがw

>>497
とりあえずそのネタのSS投下に備えてパンツ脱いで待機しときます。

>>498
そう感じた貴方が天才だという事は理解した。
500 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/06/24(金) 22:37:23.86 ID:6l8+cViAO
>>494
どうもです。
両者とも貧乳だが、それでもご馳走になるんですかい?

>>496
ろりやちっぱいか……自分が書くにょたはやけにちっぱいが多いような。
ろりも書いてみるべきか。

>>497
密かに期待。
501 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:49:58.77 ID:tpgIDk0uo
>>57のお題 初回>>84-89 前回>>293-296

注文を待つ間、何を話そうか考えあぐねていると

「直人って、もしかして男の時の名前だったりする?」

と、彼に尋ねられた。否定する理由も隠す理由もないので頷く。

「訂正しなくてよかったのか?今の名前とは違ったよな。」
「風見くん相手だしなぁ〜…特に気にしたことはないよ。
 なんだかんだで彼女も男の部分が残ってるってとこで納得してる。」
「そういうものなのか?」
「そういうものです。」
「第一付き合い長いし、今更呼び名変えられても逆にこっちが戸惑っちゃうかも。
 あ……でも鈴城くんは今の名前で呼んでくれなきゃ駄目だからね。」
「そりゃまぁ、当然。男の時の白詰さんの事は何も知らないわけだし。」
「ボクとしては男だった時の事なんて知られたくないけどね。」
「どうしてだ?」
「どうしても何も今更昔の事聞かれても……もう戻れないのだし。」
「……ごめん。」

彼の一言で急に苛立ちを覚え、先ほどまでの雰囲気をぶち壊してしまった。
男への未練か、それとも芽生え始めた女心が傷つけられたせいか。
どちらにせよ、どうして傷ついたのかはいまいち把握しきれない。我ながらめんどくさい女になったものだ。
ボクが元々女性ならこんな悩みは無いんだろうな。

「ボクの方こそごめんね、変な空気にしちゃって。」
「いや、俺がデリカシーなさすぎたな。悪い。」

やや間を空けてから意味もなく謝罪しあった後、2人とも俯いて押し黙ってしまった。
注文を待つ間、周囲の喧騒しか聞こえてこない。

「お待たせ致しました。こちらアイスコーヒーでございます。」

2人の間に立ち込めた暗雲を払拭するかの如く、風見くんがアイスコーヒーを運んできてくれた。
タイミングを見計らっていたのだろうか。

「残りのご注文につきましてはもう少々お待ち下さい。
 ………ってこのまま引っ込みたい所だけど、何やってんだ色男。」
「え?いや、ははっ……悪い。」
「直人泣かせたら承知しないぞ。」

きっとボクらの様子を見ていたのだろう。彼を一方的に咎めている。
咎められている最中、彼は申し訳なさそうにぽりぽりと頬を掻いていた。

「……ったく………何の為にあんな話をしたと思ってんだ。」
「あんな話?」
「あ…………」
「な、なんでもない。」
「はは………」
502 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:50:52.72 ID:tpgIDk0uo
ぽろっと零した彼女はしまったという表情し、笑ってごまかす。
一方、それを聞いた彼は怨嗟を込めた表情を風見くんに向けていた。
今朝口走っていた話なんだろうな。と、記憶の糸を手繰り寄せる。

「……鈴城くんに何か吹き込んだの?」

何故だか苛立ちを隠し切れず、静かに怒気を込めて彼女に尋ねた。
今朝は彼から聞き出そうともしなかったのにも関わらず。
―――どちらから聞いても事実は変わらないはずなのに。

彼女からの返答はなく、暫しの沈黙。
周囲の喧騒は遠くに聞こえ、ボクら3人だけが切り取られてしまったかのようだ。

アイスコーヒーに入っていた氷が少し溶け、カランと音を立てた。

「な……なんでもないからさ、き、気にしないでくれると嬉しいな。」

ようやく開かれた口からは、納得のいく返答は出てこなかった。
出来るならボクもそうしたかったよ。
いや、今朝はそうしたんだ。

「いたっ…直人、ま、待って!引っ張らないでっ!」

席を立ち、彼女の腕を引っ掴む。

「ごめん、鈴城くん。ちょっとここで待ってて。」
「え?あ、ああ……」

彼に向き直って一言だけ声をかけてから彼女を廊下へと連れ出した。
他の客や店の人たちの注目を集めていたのは想像に難くないだろう。
尤も、今はその様子を確認する気は無い。
目の前の不愉快な出来事に比べれば些細な事だから当然か。

「――――――委員長!出来るだけ早く戻るからあとお願い!」
「猫の手も借りたい位なのだけどね。……出来るだけ早く戻ってくるんだよ。」

引き摺られながらも、彼女はカーテンで仕切られていた店の厨房らしき場所から出てきた委員長に声をかけていた。
交代の時間だったのだろうか。

「青春ねぇ〜。」
「あの2人、変にこじれなきゃいいのですが……」
「大丈夫よぉ〜、あの子から仲良しだって話はよく聞くもの〜。」

店を出る間際、彼女の母と委員長が何かを話している様子が伺えた。
503 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:51:24.52 ID:tpgIDk0uo


――――――――
―――――
――



模擬店は校舎の3階、すぐ上は屋上だ。
店は階段近くの教室を使っていたので、そのまま彼女を屋上へ連れていった。

「…………………」

階段を登っている最中、彼女は黙ったままだ。
ボクへの弁解でも考えていたのだろう。

―――ギィ〜

錆び付いたドアノブを回すと、屋上への扉が軋んで音を立てた。
扉を背にして、彼女を前へと押し出す。

「もう1回尋ねるけど」
「……………」
「鈴城くんに何を言ったの?」
「えっと……その…………」
「ごまかそうなんて考えてないよね?」
「や……その、どうしてそこまで怒ってるの?」
「質問してるのはボクの方なんだけど?」
「……………………………」

彼女は俯いてスカートの裾を掴んで、雨風に晒されてしまった子犬のように震えていた。
本来なら隠し事をしていた彼女が責められていて然るべきなのに、これではボクの方が罪悪感を感じてしまう。
おまけにこのままではだんまりを決め込まれて埒が明かない。
ここはボクの方から答えて逃げ道を失くせばいいか。

「ボクの預かり知らぬ所で、ボクの事で彼と内緒話してたのが気に入らなかったの。
 風見くんだったから特にね。」
「わ、私だったからなの……?」
「そうだよ。………ったく、いきなり弱々しくなっちゃって。
 いつもの雰囲気は何処に行ったんだか。
 大体、人の恋人にちょっかい出すなんてどうかしてるよ。」

答えるついでに挑発じみた言いがかりをつけてしまっていた。
頭では理解しているのに口は止まらない。
504 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:51:49.29 ID:tpgIDk0uo
「そんな気は全然……」
「大方、片想いの相手と駄目だった時のキープ、とか考えてたんじゃないの?」
「ち、違う違う違う……だってその………と…………ってるから」

ボクに責め立てられているせいか、彼女の返事は声が弱々しく掠れて聞き取れず、その事で余計にイライラして声を荒げてしまう。

「ぜんっぜん聞こえない!はっきり言ったらどうなの?!」
「……だからっ!アイツと……氷山と付き合ってるから!アイツ一筋だからっ!
 キープなんて考えてもないし、ましてやちょっかいなんて出すわけないっ!」

彼女の口から出てきた名前は、彼女の十年来の幼馴染であり、我がクラス唯一の男子生徒だ。

「…え?………えぇッ?!う、嘘だよね?」
「嘘じゃないっ!アイツに確認してもらっても構わないから…!」

彼女の目は真剣そのもので、嘘を付いている様にはとても見えない。
馴れ初めには興味が湧いたけど、今は後回しにして本題に入ろう。

「はぁ……解った。確認するまでもなさそうだし。………それで、鈴城くんに何を話したの?」
「そ、そこに戻るんだ…」
「当然。ボクはキミの質問に答えた。今度はキミがボクの質問に答える番。」
「い、言わなきゃ……駄目?」
「駄目。」



――――――――
―――――
――

505 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:52:17.73 ID:tpgIDk0uo
「………風見くんはエスパーか何かなの?」
「只の一般高校生。超能力なんて持っていませんの事よ。」

風見くんが彼にした話とやらは、概ねボクの意図を捉えていた。
妙に突っ込み所満載の返答だったのでイラっと来たのだが、突っ込むと彼女のペースに巻き込まれるので敢えて流す。

「……だったら何でボクの思考が筒抜けなのか教えてよ。」
「否定しないの?」
「……また質問に質問で返してる。」
「ごめんごめん、つい、ね。まぁ……直人って昔からソコらへん解りやすかったしさ。」

ソコらへんとはどの部分なのだろう。
そもそも、自分はおとなしくて感情を表に出さない方だと思っているのに。

「どういう意味?」
「…んー。だから、思い立ったら即行動!脇目も振らずに目標に向かって猪突猛進!───って感じ。」
「……え?」

速攻で自分自身の評価を覆されてしまった。

「確かに見た目はおとなしいし、表情には出さないんだけど、行動に出ちゃってるのよね。色々と。
 ちょっとした視線だったり、仕草だったり、あの告白だったり。」
「………それで、全部彼に話したんだよね?」
「全部と言っても、あの時はあくまでも私の推量でしかなかったけどね。」
「はぁ………」

屋上に来る前は頭に血が登って噴火しそうだったのに、今では鎮火どころか背筋が凍りつく思いだ。
溜息の1つや2つ、漏れてしまっても仕方が無い。

「いきなりどうしたのよ、さっきまでは嫉妬塗れの橋姫みたいな顔してたのに、今はすっかり青ざめちゃってまぁ……」
「どうしたもこうしたも……だってさ、鈴城くんは全部知ってるって事じゃないか……」
「そうとも限らないけど。まさか私の話を全部鵜呑みにするほど馬鹿じゃないでしょ?」
「だと良いけど……もしもそれが原因で別れる事になったら、一生風見くんを怨むからね……」
「んー…流石にそんな事は無いと思うよ。その……ごめんね。直人の事だからつい心配になっちゃってさ。」

彼女の言葉にまたもやイラっとしてしまう。
親切心もここまで来れば憎悪の対象になるのだなと、しみじみ思う。

「心配なんかしなくてよかったのに………」

俯いて、怨みがましく突き放したのにも関わらず、彼女は慈しむような目でボクを見ていた。
その事に、そして自分自身の愚かさにも嫌気が差してくる。

「あれだけ様子が変だったら流石にね。心配しない方がおかしいって。」

悪気が無いのは解る。純粋に友人として大切に思われているのも解る。
解るが故に憎らしい。
506 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:52:38.42 ID:tpgIDk0uo
「………心配なんかじゃなくて、ボクの事見下して優越感に浸ってたんじゃない?
 さすがクラスの誰よりも早く女の子になった人だよね。おまけに余計なお節介まで…っ」
「優越感なんて無いし、ましてや見下してなんか……その、確かに余計なお節介だったかもしれないけど、私は友達として苦しんでる直人の事を……」

彼女の行動はお節介どころか最善だったと思う。
そう思うのに、今だけはどうしてもそれが許せない。

「それが見下してるって言ってるの!!勝手に見抜いて、ボクから相談したわけでもないのに勝手に動いて
 勝手に鈴城くんに変なこと吹き込んで……先に女になった余裕ってやつなの?」

あとはもう、異性化してから溜まっていた鬱憤が堰を切るように溢れ出し、それを彼女にぶつけていた。

「そんなつもりじゃ………私だってそれなりに苦しんでやっとこの体を受け入れられたんだよ?
 なのに随分と酷い言い草じゃない!」
「苦しんで?やっと受け入れた?……やっぱり解ってないんだね。」
「私が何を解ってないって言うのよ……」
「キミの環境だよ。異性化した環境。友達でも、家族でも、クラスでも。」
「直人、何を言って──」
「キミが羨ましいよ!いつも傍に親友が居て!守って貰って!ボクの知らぬ間に異性としても気持ちを通じ合わせてて!
 それにキミのお母さんも同じ経験してるんでしょ?!おまけに異性化した時はクラスのほとんどは男子だったよね?!
 キミは自分で認識する前に、周囲から自分が女になったって理解してもらって!」

ああ、そうか。ボクは、すんなり女性になった(と、ボクは思っている)風見くんが羨ましかったんだ。
羨ましくて、首が痛くなるほど彼女の事を見上げていた。だから彼女の親切を見下されたと勝手に勘違いしたんだろう。
やっと許せない理由が理解できて、でもそれはボクに非があるはずなのに、俯いたまま恨み言を全てぶちまけていた。

「それは……そうだったかもしれないけど…」
「だったかもじゃなくて、そうだったの!それなのにボクの時は自分で認識しているのが当然で!
 クラスは女子だらけになってて、見えない壁がはっきりと感じられて…………
 輪に入っていけなくて…………寂しくて………」
「……………………………」
「だから必死に……罪悪感に苛まれながらでも女の子になろうとしてるのにっ!!」
「………ちょっと待って、罪悪感って何の話?」
「鈴城くんに対してだよ!好きでもなかったのに告白したんだもん、騙したようなものじゃないかっ!だからだよ!!」

取り繕う隙間もない位吐き出した後、彼女からの返答は何も無かった。
只の我侭なんだから当然だ。
きっと侮蔑の目を向けられているだろうと思って見上げると、彼女はボクを見ていなくて、何故かボクの後ろに視線を注いでいた。
……後ろ?
507 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:53:09.51 ID:tpgIDk0uo
「…………え?」

疑問に思って振り返ると――――

「……どうして…」

―――喫茶店で待っているはずの

「嘘……ど、どこから聞いて……」
「……ほら、注文来てたし戻って食べないか?」

―――バシッ

差し伸べられた彼の手を払い除け、屋上から脱兎の如く逃げ出した。

「あ……」
「………どうして最悪のタイミングで出てくるの?」
「悪い!説教なら後で聞くッ!」

3階への階段を一足飛びで駆け下りて、廊下を走り抜けた。
後方からは誰かが追いかけて来る足音が聞こえる。当然、彼だろう。

「直人の足に追いつけないだろうけど………そういう問題でもないか。」



――――――――
―――――
――



それからは校舎内を駆け回っての2人だけの鬼ごっこだ。
鬼は彼、ボクは逃げ惑う憐れな村人A。………本当に色んな意味で憐れだった。
同情も軽蔑も区別も分別も要らない。只逃げる事だけを考えての全力疾走。

―――ギィ…バタン

校舎はA棟とB棟の2つに分かれていて、先ほどまで居たSF研の模擬店があった方がA棟。
たった今逃げ込んだ屋上があるのがB棟。
一度A棟の1階まで降りて体育館、学食前、講堂、その他諸々の場所を経由して撒いたのを確認してからB棟に移ったのだから、バレる心配もないだろう。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

ここまで肩で息をする程に走り回ったのは2ヶ月ぶり。
発症してからやめた陸上部の練習以来だっただろうか。
508 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:54:20.15 ID:tpgIDk0uo
「―――こんなものさえ付いてなければ辞めずに済んだのにさ。」

自嘲気味に胸を持ち上げてみると、しっかりとした重みが両手いっぱいに広がっていた。
嬉しくともなんともない。極度のナルシストでなければこんなものは只の邪魔にしかならないのだ。

「そもそも女にならなければ良かったのになぁ……」

付け加えた愚痴が更に己が惨めさを際立たせる。

「思いっきり自爆しちゃったし……恋愛ごっこもコレでオシマイ。」

溜息混じりに事実を確認するように呟いて、自身にトドメを刺す。
そして、たった今何気なく出した独り言を反芻する。

恋愛"ごっこ"。少なくとも彼にとっては本気だったであろうごっこ遊び。
けれども、それはこちら側にとってみれば過程に過ぎず、欲しい結果は別にあった……はずだ。

「でもこんな終わり方って無いよね……ぶちまけて嫌われて逃げ回って終了、だなんて。」

その上結果にも辿り着いたとは言えず、只ボクが酷い奴だったと知られてしまっただけ。
涙が一筋、頬を伝う。

「何で……泣いてるんだろう。嫌われたく、なかっ―――」

ここまで呟いて、はたと気付く。ボクは嫌われたくなかったんだ。どうして?
……………そんなの決まってる。

「ははっ……失恋した後に自覚できたなんて、性質の悪い冗談だ……」

どうしてあの時逆ギレしたんだろう、どうして屋上へ連れて行ったんだろう、どうしてドアを開けっ放しにしていたんだろう。
自身の想いを自覚すると、後悔が止め処なく溢れ出す。
出入り口の脇にあった貯水タンクに背を預け、座り込んで未練がましく泣きじゃくった。

―――ガチャッ

しばらく泣いてようやく落ち着くと、今度は唐突に扉が開かれそうになっていたので、慌てて出入り口からは見えないように貯水タンクの裏側へ隠れた。
誰か来たのだろうか?催し物も特になく、立ち入り禁止の札が貼られていたはずのこんな場所に。

「本当に居るんだろうな?さっきも屋上だったじゃないか。」
『多分ね。直人のやつ、悲しい事があったらいつも屋上に隠れる癖があったからさ。
 それにそこはB棟の屋上、さっきのはA棟の屋上。場所が違うよ。』
「屁理屈だろ、それ……」

影からこっそり誰が来たのかを視認すると、携帯電話片手の鈴城くんだった。
誰かと話しながらの様だ。
ああ、そうか………
会話内容までは聞こえないけど多分電話の相手は風見くんで、勿論彼女の入れ知恵でここまで来たのだろう。
509 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:54:50.89 ID:tpgIDk0uo
「余計な事を……」

彼には聞こえない様、ボソっと呟いてから彼の様子を観察する。
隙を見て脱出しなければいけないからだ。

「で、ぱっと見、ここには居ないぞ……」
『隠れてるに決まってるでしょ。あ、ちょっと待って。下手に探すと逃げられるかもしれないから。』
「じゃあどうすんだよ。」
『……あのね、物凄く機嫌が悪いのは解ってるけど、半分自業自得なんだからね。あの時キミが出てこなければ、まだ穏便に済んでたはずなんだよ?』
「う"……そこを突かれると痛い。いや、その…な?喧嘩になりそうだったから止めようと思って……」
『はいはい、ったく、直人の為じゃなかったらこんな手伝いしないんだからね?須々木野ーっ、ちょっと直人に…話か…て……る?』
「……電話が遠いぞ、誰と話してんだ?」
『いいから、そこでじっとしてて。』
「あ、ああ?解った。」

暫く話していたかと思ったら、今度はピタリと静かになった。
特にボクを探す様子も無く、何か待っているような……

―――プルルルル

「ひっ?!」

ポケットに入れていたボクの携帯がけたたましく鳴り始めた。
……しまった。そういう事か。慌てて取り出して相手の番号を見ると、委員長からの電話だった。
電源切っておけば良かっ―――

―――ガシッ

「えっ?!あ、や…その……」

携帯に気を取られている隙に彼に腕を捕まれていた。我ながら中々に間抜けな構図だ。
とりあえず、携帯をポケットにしまい込む。

「……やっと見つけた。」
「………は、離してよ。」
「駄目だ。」

てっきり恨み言でも浴びせられるのかとビクついたのに、語調自体は柔らかだった。

「………どうして?全部聞いてたんだよね。」
「全部じゃないけど大体は。」
「……だったらわかるよね?」
「何がだ?」
「だからその………」
510 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:55:56.44 ID:tpgIDk0uo
どうして怒らないのだろう、どうして何も言わないのだろう、どうして―――

「泣いてるのか?」
「?!……な、泣いてないよ。」
「嘘付くなよ。目、真っ赤だ。」

極力俯いて顔を見せないようにしていたにも関わらず、彼にはお見通しらしい。
ハンカチが差し出される。首を横に振って拒否をした。

「どうしてそんなに優しいの……?」
「彼女に優しくない男なんて居ないだろ。」
「……ボクみたいに酷い女じゃなくてさ、もっと良いひと探した方がいいよ。
 どうせまだ2週間しか―――――」
「2ヶ月前」
「え?」

彼に言葉を遮られ、思わず顔を見上げてしまう。
頭の上に疑問符を抱えているボクとは違い、彼の目はその心を表すかのように真っ直ぐボクを見据えていた。

「2ヶ月前、ちょうど連休明けにさ……校門前でこう、そわそわしてなかった?」

五月の連休明けと言えば、丁度ボクが発症してしまってから初めて学校に行った日だ。
あの時は不安や恐怖で押し潰されそうになっていて、校門で踵を返して家に駆け戻り、学校を休もうかとも思った位だった。
その様子を見ていたのだろうか。

「……うん。もしかしてあの時、ボクの事見てたの?」
「見てた、っていうか、すれ違った。……おはよう、って声もかけたんだけど、やっぱ憶えてないか。」
「へ?……ぜ、全然……でもその時って鈴城くんと知り合ってなかったよね……?」
「だな。悲しそうな顔しててさ、折角綺麗なのに勿体無いな、って思わず声かけちゃったんだよ。」
「……ごめん、憶えてなくて。」
「いや、俺もその時は事情知らなかったしさ、軽率だった。……まあ、それは単なるきっかけに過ぎなかったんだけど。」
「………きっかけ?」

皆目見当の付かない話を彼は続けている最中、ボクの腕を掴んでいる彼の手からは力が抜け、リラックスしているように見受けられた。
今なら振り解いて逃げられるかもしれない。
だけど何故か話の続きが気になって、その場にじっとしていた。

「そうそう。次の日からさ、校門くぐる辺りでほら、俺ら1年の教室見えるだろ。2階だし。」
「……うん。」
「こう、何の気なしに自分の教室の窓見上げたらさ、目に入ったんだよね。白詰さんが空見てるのが。」
「え?」

確かにボクの席はその当時窓際の席で、馴染めない自分の体とクラスに辟易していて、朝は窓から外の風景をいつも眺めていた。
遠くを飛ぶ鳥の姿や雲を見て、自由って良いなぁ等と馬鹿げた事を本気で夢想していたのだ。
511 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:56:25.61 ID:tpgIDk0uo
「やっぱりその時も白詰さんの表情はさ、どっかこう……哀愁が漂ってて、どうしてそんな顔してんのかなぁって考えるようになったんだ。」
「………?」
「それから、毎朝校門くぐる時にE組の教室……っていうかまぁ、その、白詰さんの事を目で追うようになってたんだ。」
「…………どうして?」
「言わなきゃ駄目…か?」
「……………気になる。」
「い、いかがわしい意味じゃないからなっ。い、至って健全な……えっとだな…」

肝心な部分になると答え難いらしい。ひょっとしたら、今ボクが一番聞きたい言葉を彼から聞けるかもしれない。
ボクの様な酷い人間が抱いてはいけない期待が否が応でも膨らんでしまう。

「まぁ、その、なんだ……白詰さんにとっては誰でも良かったんだろうけど、以上の事からして俺としては願ったり叶ったりだったわけで………」

婉曲ではあるけども、一応の回答は得られた。得られたけども、曖昧にぼかしてあるのでイマイチ納得がいかない。
だけど、彼の照れ隠しも理解出来なくはない。

「………何が?」

が、しかし、どうしても遠回しなのが癪に障ってぶっきらぼうに尋ねてしまった。

「えっと、その…付き合う相手が。」
「………ボクだって―――」

告白する相手くらい、きちんと選んだつもりだった。

「―――選んだよ。選んで、望んで、鈴城くんに告白したの。」
「そうか。……理由、聞いてもいいか?」
「別に……構わないけど。」
「じゃあ、教えてくれ。」

今度はボクが胸中を吐露する番の様だ。
このまま逃げるのも可能だっただろうに、何故か動いてくれたのは足ではなく、口だった。

「鈴城くんだけだったんだ。ボクの目を見て話をしてくれた男の子が。」
「下心見え見えで声をかけてくる男子や、告白してきた男子のほぼ全員がさ、胸とか腰とかばっかり見てボクと話をするんだよね。」
「まるで体だけ求められてるみたいで気持ち悪くて怖かった。………だけどキミだけは違った。」
「学祭の準備で知り合った時から話すようになったけど、話す時は大抵目を見て話してくれた。」
「……………だから、キミを選んだ。怖くなかったから。」
「……えっと、自惚れてもいいかな?俺。」
「え?」
「駄目か?」
「……でももうボクなんか嫌われてて当然だろうし。」
512 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:57:28.44 ID:tpgIDk0uo
彼は大きな溜息を付くと、ボクの背に両手を回して抱き寄せた。
勿論抵抗なんて出来るはずもないし、してもいないのに、口だけは感情とは正反対に拒絶の意思を示す。

「駄目だよ……キミの事は特に好きでもなかったんだから……鈴城くんの気持ちを弄ぶような事したんだから……」
「そりゃあさ、告白してくれた時は"好きでもなかった"って過去形なんだろうけどさ、今はどう?」
「い"…い、いいい…今?」
「そう、今。俺、何の断りもなく抱きしめちゃったけど、拒否してるようには見えないしさ。」
「………でも、嫌われて当然のような事したんだし。」
「あのさ、俺が嫌ったっていつ言った?」
「……え?」
「ひとっことも言ってないよな?……白詰さん、思い込み激しくない?」
「そ……そんな事は………ない、はず。」

う〜ん、と一言唸った彼は、意を決した様にボクの目を見据えてこう切り出した。

「恥ずかしながら一目惚れでした。俺、白詰さんの事が好きだ。付き合って下さい。」
「……!………う、嘘でしょ」

一番欲しかった言葉を、一番言って欲しい人から聞いたのに、口だけは疑いの目を向ける。
確認するかのように、彼の次の言葉を誘い出すかのように。

「嘘じゃない。これから先ずっと君を好きでいる。」
「………根拠は?」
「無い。」
「無いの…?」
「無いけどはっきり言える。男だった時の白詰さんも含めてもずっと好きでいられる。」

異性化してしまってから結構な数の男子から告白された経験はあった。
だけど、ボクが男だった過去も飲み込んでくれるような事を言われたのは初めてだった。
多分もう、ボク自身はこの時蕩けてしまっていたに違いない。

「……自信、たっぷりだね。」
「そりゃあ、これから喧嘩もするだろうし、不安にさせる事もあるだろうけど、約束する。」
「……………」
「返事は―――」
「い、今こ、こここッ……ここでッ?!」
「―――返事は言葉じゃなくていい。嫌だったら、突き飛ばしてくれ。」
「………んっ」
513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:59:05.60 ID:tpgIDk0uo
優しく顎に手を添えられ、少しだけ上に持ち上げられた。
背に回されていたもう片方の腕には力が込められ、より密着した形となる。
嫌だったら〜何て言っておいて、逃がす気が全く無いのが白々しい。
完敗だ。全く持って完敗だ。清々しい位に完敗なのだから、敗者は敗者らしく静かに目を閉じて甘んじて受け入れようじゃないか。
……それを嬉しく感じてしまうのは若干気が引けたけども。

白々しい行動とは裏腹に唇同士が触れるだけの優しいキス。まるで彼の性格を反映しているかのようだ。
息継ぎの吐息はお互いに荒く、おそらく初体験だったのであろう事を想像させる。
拙さが故の悦び、悦びが故の愛おしさが胸いっぱい込み上げてきた。
そのせいか、時間にすると数秒しかなかっただろうに周囲の時間が止まってしまったかのような錯覚を覚える。

そして唇が離れる瞬間、少しだけ寂しさを感じた。

「………参りました。」
「えっと……受け入れてくれた、で、いいんだよな?」
「………うん。」


――――バタン

気持ちを確かめ合った直後、開けっ放しであった屋上の扉が風に吹かれて音を立てて閉じた。
この時は気が動転していて、誰かに見られたのではないかと2人とも勘違いしてしまっていた。

「ぃッ?!」
「だ、誰ッ?!!」

お互いに先ほどとは違った理由で心臓の鼓動が早くなる。
周囲を見回すが、それらしき人影は見えるはずが無かった―――

「……誰もいないな。」
「ううん……」

―――はずなのに。
入り口近くの物陰からテール状にまとめられた髪が一束見え隠れしていた。
サイドテールかツインテールか、はたまたポニーテールか。
ま、こんな趣味の悪い出歯亀をしそうな人物且つ、テールな髪型の人は生憎と1人しか知らない。
頭隠して尾を隠さず。

「ん?見つけ――」

先ほどの会話中にポケットにしまい込んでいた携帯電話を取り出す。
その様子に気付いた彼の口に人差し指をあて、静かにするように促した。

「……なんで携帯出したんだ?」

今度は小声でボクに尋ねる。返事代わりとばかりにボクはとある友人の番号を呼び出した。
514 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 03:59:52.46 ID:tpgIDk0uo
「し・か・え・し♪」
「………仕返し?」

―――Pi
『交わしたや〜くそく、忘れないよ。目〜、を閉じ、確かめる。押し寄せ〜た闇、振り払ってす〜す……』

「うわぁああああッ?!」

只の着信音ではなく、何かしらの着メロが響き渡ると同時に明らかに女の子のものであろう悲鳴も響き渡った。
勿論逃げられないように音のした場所に駆け寄り、隠れていた人物を引っ捕まえた。

「……ひぃッ、ま、待って、直人、これは誤解なの!」
「ど・こ・が?……見たよね?見たよねッ?!」
「だ、だ…だってさ、須々木野がさ!……あれ?」

ボクに腕を掴まれながらも、風見くんは何故か辺りをきょろきょろしていた。

「どこ見てるの?面白いものでもあった?」
「い、いや、だから……須々木野が様子を見ておかないと危なそうだから、ってさ……」
「委員長はここには居ないよ?キミ1人だよ?いない人に罪をなすりつけようとするのはズルくないかな?」
「チクショウ…須々木野逃げてるし………あ、いや、その……な、何も見てないから!見てませんからッ!」
「………本当に?」
「…うん」
「絶対に?」
「うん」
「必ず誓ってきっかり見てない?」
「…あー、もうッ!しつっこいなぁ!直人がキスしてるとこなんて見てないからッ!!」

ボロを出してしまった彼女を見据えると、否が応でも彼女の腕を掴んでいる手に力がこもる。

「………ふ」
「あ…………」
「ふふふふふ…………」
「え、あ、や、その、えと………」
「やっぱり見てたんじゃないかぁあああああああああ!!!!!!」

腕を引き寄せ両手で頭を鷲掴み、こめかみに拳をぐりぐりと擦り付けた。

「い"いだいいだいいだいぃぃぃぃっ?!ご、ご、ごめ"ん"〜〜ゆ"る"じで〜〜〜〜……」
「ゆ・る・さ・な・いぃぃいいいいいい!!!」

しばしの間、痛みに悶える彼女の悲鳴が屋上に撒き散らされた。

「な、なぁ……もうその辺でいいだろ?な?」
「だ〜めっ。……大体、鈴城くんも怒っていいんだよ?」

言葉とは裏腹に溜飲も多少は下がってきた頃合で、屋上の扉が音を立てて軋み、開かれる。
誰がやってきたのかと一瞥すると、それは風見くんの彼氏であろう男子生徒だった。
515 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 04:00:15.58 ID:tpgIDk0uo
「………何やってんだお前ら」
「お仕置き中」
「なんだそりゃ……」
「と"ーや"〜〜だずげで〜〜〜……」
「おまっ……あー……なぁ、白詰。そこらへんで勘弁しといてくれないか?ハルが何やったかは知らないが。」
「しょうがないなぁ〜、風見くんの彼氏に頭下げられちゃったら離すしかないじゃない。」

彼女は解放されるとよろけながら氷山くんの胸に飛び込んだ。
そして優しく抱きとめられ、頭を撫でられ、いつも通りにふやけていた。
実は痛がっていたのは演技だったんじゃないだろうか。そんな事を思わせてしまう程に良い笑顔だ。

「んじゃ、オレ達は店戻るから。お前らもなるべく早く店に戻って来いよ。バッグ取りにな。」
「あれ?氷山くんもSF研のお店手伝ってたの?」
「ああ、こいつに頼まれて。まぁ、裏で皿洗いだけどな。」
「知らなかった。」
「教えてなかった。ごめんな、コイツが2人に迷惑かけちまって。」
「あはは…いや、俺は気にしてないから別に。」
「……鈴城くん、そこは気にしてほしい。」
「いや、気にする以前にどうみてもやりすぎだったろ……涙目だったじゃないか、その子。」
「む〜〜…」
「仲良くやれよ。」

ドアノブに彼が手をかけた所でふと気が付く。

「あ、氷山くん、どうしてここに居るのが解ったの?」
「ああ、コイツの帰りが遅いから探してたんだが、すぐそこの階段から降りて来た委員長に聞いた。」
「へぇ……」
「…………やめとけって、もう十分にウサは晴れただろ。オレ達の事もバレちまってるみたいだし。それで十分だろ……な?」
「ヤケに委員長のこと庇うんだね?」
「そんなんじゃねーよ。友達同士が喧嘩するとこなんて見たくねーだけだ。」
「はぁ……ちょっと前なら今の言葉も弄るネタになったのになぁ……」
「今は違うのか。」
「だってすごい真面目な顔してるし、風見くんとの仲も知ってるし、今のその様子見て弄ろうとするなんてボクには出来ないよ。」
「そうか、良かった。」

――――バタン

2人が屋上から居なくなると、キスをするまであった甘ったるい雰囲気も見られた後の張り詰めた空気もなくなり、微妙に白けてしまっていた。
白けた雰囲気にあてられたのか、多少自嘲気味に口を開く。

「あーあ、3つ目さ、言う前に奪われちゃった。」
「3つ目?」
「うん、ほら、ボクが最初に告白した時にさ。」
「あー………駄目だったか?」
「ううん、逆に嬉しいくらいだよ。只、キミに先を越されて悔しかっただけ。それに……」
「それに?」
516 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 04:01:02.42 ID:tpgIDk0uo
これから言おうと思う事を考えるだけで、恥死しそうな位足のつま先から頭の天辺まで熱くなっていく。
なので、顔を見られないように彼の胸に顔をうずめた。

「ボ、ボクも鈴城くんの事、す、すす、す…好きになりました。
 その、いつからか、ってのは……自分でもイマイチはっきりしないけど……」
「はっきり解る事のが少なそうだ。」
「そんなもの……かな?」
「そんなもんだ。でもまぁ…白詰さんも俺の事好きになってくれてたってのは何となく解ってたけど。」
「え…えぇぇっ?!い、いつ?!どうして解ったのそれッ?!」

自分でも自覚出来たのはついさっきだと言うのに、この男は随分前から実は知ってましたみたいなドヤ顔をしている。
物凄く悔しいので理由を尋ねてみた。

「まぁ、その、確信を持てたのは今日なんだけどな。デート中の白詰さんの様子見てたら、なんとなく。」
「………え?」
「いやぁ、良い反応をどうもありがとうございました、みたいな。」
「…………ひょっとして、ボクにカマかける為に今日はいつもと違っていじわるだったんですか?」
「だったんです。」
「〜〜〜〜〜っ!?」
「良い赤面をありがとう、白詰さん。」
「な、ななな、なにそれッ!そんなものに感謝しないでよッッ!!」
「ははっ、悪い悪い、白詰さんが可愛いから、つい。」
「つ、つい、って…もう………」

弄ばれている事にどうしても不満を持ち、頬を膨らませる。
不満の裏には嬉しさとか楽しさとか、悦びが見え隠れしているのだけども。

「悪かったって、そう拗ねないでくれないかな。お詫びに1つだけ何でも言う事聞くからさ。」
「……ほんとに?」
「まぁ、俺に出来る範囲で、だけど。」

こんな魅力的な提案をされてしまうと、考え付く願いごとはたった1つしかない。

「………じゃあ、名前で呼んで欲しい。勿論今の名前で。」
「えっ?!……いや、それはちょっとハードル高くないっスか?!」
「キャラ変わってるよ、鈴城くん。……いいじゃん、その……せ、折角両想いになったんだし。
 無理難題ってわけじゃあないよね?」
「ぐ……出来なくはないけど……」
「じゃあ、お願い♪」
「その代わり、ナオも俺の事名前で呼んでくれないか?」
「……ぇ?」

さらっと名前を呼ばれた事と彼の反撃が合わさって、途轍もない破壊力を持ってボクの意表をブチ抜いた。
………要するに、また顔から火を噴いたわけで。
517 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 04:01:37.14 ID:tpgIDk0uo
「駄目か?」
「駄目じゃない、けど………あのさ、今の状況わかってるよね?」
「状況?」
「そう、状況。」

やられっぱなしでは悔しいので、近寄って彼の背に両手を回し、抱きついた。
邪魔でしかないボクの胸が、良い感触と共にぽよんと押しつぶれて形を変える。

「こんな状況でコウくん♪なんて呼んじゃったら、我慢……出来なくなっちゃうよ?ボク。」
「な、ななな、なんの我慢ですかーーーーーっ?!」
「あれあれあれ〜〜?腰辺りに硬いものが当たってるんですけど〜?」
「い、いやいやいやいやいや、こ、こここ、ここでは不味いだろっいくらなんでもっ?!」
「あははっ、流石に学校じゃあ、ね。冗談だよ。」
「はぁ……か、勘弁してくれよ。り、理性が持たない……ッ」

彼の再反撃も誘発しかねない諸刃の剣だった反撃は、どうやらクリティカルヒットしてくれたようだ。
勿論、再反撃されるのは覚悟の上と言うか、むしろされたかった位なのでちょっと残念ではあったのだけど。
しかしながら、やはり彼の狼狽えている姿を見ると気分が落ち着く。精神的に優位に立てるからだろうか。
彼としては甚だ不本意だろう事は承知の上だけど、やめられそうにない。

「そうそう、コウくんはやっぱりそういう反応をしてくれなくっちゃ。」
「い、いや、しかしだな……ペースを握られるのは男の沽券に、その、あれだ……」
「……ふーん。そんなにリードしたい?」
「まぁ……そりゃあ、出来れば。ナオが嫌がらない程度に、だけどさ。」
「そんなコウくんに耳寄りなお話があります。」
「どんな話だ?」
「今日ね、ボクの両親……帰りが遅いんだ。」
「え、えっと……そ、そ、それはその……お、俺達にはまだ…は、早くない、か?」
「ど〜せコウくんの事だから、こうでもしないと進展してくれません。初キスまで2週間もかかったんだよ?」
「し、し、ししし、しかしだな……」
「しかしもかかしもないんだよ。ボクとしてはこんな風に誘うのすんごい恥ずかしいんだからね。」
「……そ、その割りには随分落ち着いてるな。」
「落ち着かせてくれたのはキミなんだけどなぁ。観念しなさいっ。それとも、やっぱりボク相手じゃ………嫌?」
「んなッ?!そんなわけあるかッ!好きだッ!」
「〜〜っ!?……またそうやって不意打ちするし、答えになってないしっ!」
「悪い、不安にさせたと思ってさ。」
「じゃあ……ボクを不安にしたお詫びも兼ねてさ―――」



「ボクの初体験、貰ってくれる?」


おしまい
518 : ◆3gJlaqFfe2 [sage saga]:2011/06/25(土) 04:02:44.96 ID:tpgIDk0uo
あとがき

Q1.>>184
>各キャラのフルネームとか諸々気になります。
A1.
主人公s:
白詰 奈緒
鈴城 幸

E組クラスメイト:
風見 春
氷山 冬弥
委員長(須々木野 夏奈)

F組クラスメイト:
斉藤

Q2.>>184
>特ににょたのスペックうp
A2.
白詰:身長160cm 50kg 3サイズ上から 84 59 83 のDカップ
風見:身長155cm 48kg 3サイズ上から 88 58 84 のEカップ
委員長:身長163cm 47kg 3サイズ上から 72 57 78 のAカップ

SIMPLE2000シリーズ ザ・格差社会。

Q3.長すぎor(and)おもんない
A3.すいません…orz

Q4.寸止めですか?
A4.寸止めです。

Q5.他には何か書いた事はあるの?
A5.安価お題『高校に入って1ヶ月、同じクラスの男子が4月生まれの童貞ばっかで、オレ以外は全員女体化…何このハーレムWWW』と『魂』

Q6.上記のと世界観繋がってんの?
A6.繋がってますが、続き物ではないので別に読まなくても。

Q7.トリ付けないの?
A7.迷ってます。一応今回はあとがきにのみ付けてみました。

Q8.このあとがき、どっかで見たことある
A8.気のせいです

Q9.まだ何か書くの?
Q9.安価↓

お粗末様でした。
519 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 04:06:10.72 ID:tpgIDk0uo
>>489
とりあえずあのレスの応酬が息抜きになったようです(´・ω・`)
もうあんまし長い妄想はしないようにしようかなーとか思ったり思わなかったり。

誤字脱字は一応チェックはしていますが、多分どっかにあるはず……
あ”−、校正で読み返すのが地味にはずい(ノд`)
520 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 04:07:11.84 ID:tpgIDk0uo
(ノд`)あとがきで安価出してるのに自分で潰してるわー……
というわけで再安価↓ もうしわけない
521 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/25(土) 04:30:26.24 ID:89xcx5KAO
>>517の続きww

…さあ、何が言いたいかわかりますよね?
522 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/06/25(土) 08:24:23.51 ID:xsYfOzlr0
 【赤羽根探偵と微妙な前日談-委員長室の二人-】

 ガチャ

るい「ノック位しましょうよぉ、変質者だと思って迎撃しちゃうじゃないですか」

赤羽根「……とりあえず、そのオミ脚を下げてくれ、見えんぞ?」

るい「どーせ興味ないくせに。……あ、せんせーなら留守ですよ?」

赤羽根「みてーだな」

るい「報告書ならデスクにどーぞ。後で目を通しますんで」

赤羽根「相変わらずやる気のない敏腕秘書様だな」

るい「頑張ってますよアピールは嫌いなんです。求められてるのは結局のところ、結果なんですから」

赤羽根「"経験者”の言葉は重みが違うな」

るい「……」

赤羽根「……あーわり、失言だったわ」

るい「……せっかくなんで、謝る代わりに教えてほしいんですけど」

赤羽根「あん?」

るい「赤羽根さんは、今、自分が幸せだと思いますか?」

赤羽根「新興宗教の勧誘文句みてーだな」

るい「茶化さず答える」

赤羽根「……さあな、よくわかんね。今が幸せかなんて、結局はてめーの心持ちの問題だろ?」

るい「そ、結局はそういうことです」

赤羽根「どーいうこった?」

るい「くすっ、ご自分でご自由にご推察ください?」

赤羽根「可愛くねーの」

るい「そういう赤羽根さんって……私、結構可愛いと、思います……よ?」

赤羽根「ッ」

るい「あ、赤くなった」

赤羽根「この部屋あちいんだよっ!!」

るい「はいはい♪」
523 :青色1号 [sage]:2011/06/25(土) 08:29:20.67 ID:xsYfOzlr0
名佳と会う前にこんな会話したかなっていう妄想の単発一発ネタです。続きません。すみません。





※るいはにょたっ子です。
524 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/25(土) 08:41:05.93 ID:89xcx5KAO
>>523
くっそ…にょたスレで探偵のあんちゃんに萌えるなんて…
525 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/25(土) 10:06:47.03 ID:+cXEXuRz0
よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!やっと帰宅ゥッ!!夜勤ザマァァアアッッ!!!
これで『ボクの初体験…3つとも、貰ってくれる?』をゆっくり読み返せるぜぇッ!!
まぁ、職場でケータイから2、3回読んでましたけどw
休憩時間にリアルタイム投下に遭遇した時は泣きそうでした、つか軽く哭きました・゚・(*ノД`*)・゚・
GJGJGJGJGJ…グッジョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオヴッッッ!!!!

そして、鬼畜なお題出して申し訳ありません…_○/|_
脊髄反射的に出した風に見せかけて書き込みまでに相当悩んでます…空気は読んだつもりです…
ちゃんとあとがきも読んでますが…その、つい…反省はしてますが後悔はしてませんw

>>518
>風見:身長155cm 48kg 3サイズ上から 88 58 84 のEカップ

Eカップ…だと…?なにその大量殺戮兵器…ゴクリ
あ、漏れ書いてるヤツでわかる通り基本ペド野郎ですがにょたに限り巨乳おkですwむしろにょたの巨乳は正義!

>>500
もちろん、ちっぱいも正義!ご馳走様ですです!セッソウ?ナニソレオイシイノ?
ファンタさんがロリ萌え所持者なら書いてみるよろし!個人的にはすっげぇ読みたいですw
526 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/25(土) 11:58:10.47 ID:+cXEXuRz0
パー速には必要ないねまらほw

いやー、最初に>>57のお題見た時は…

「ボク、やっぱり女の子になっちゃいそうなんだ…」
「あー、それはご愁傷様……で、なんで俺は縛られてんのかな?かな?」
「うん、ボクが女の子になったらボクの女の子の初体験…ふたつともあげるから、ボクの男の子の初体験…貰ってくれる?」

アー――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

…でってゆう短絡的な想像してた漏れよ死ね。◆3gJlaqFfe2さんはやっぱスゲーです。

>>518
アンダーは?トップは?お椀型か?釣鐘型か?ブラに不慣れな内はフロントホックだったのかにゃ?
きょぬー組は下着に金掛かってしょうがねーとか近所の店に自分のサイズねーとか夜用のブラがどうのとか
クーパー靭帯がどうのとか話してんでしょうかねw高校生だとまだまだ育つし大変そうだw
まあ、その後が本当の地獄なんですけどwあー、妄想が止まりませんwww

これからの季節、白詰さんと風見さんは汗疹とか大変そうだが…
まあ、それに限らずちっぱいでもブラ着けてりゃお肌が弱いと大変なんだが…委員長もガンガレw
つ『桃の葉ローション』漏れ愛用w

にょたの彼氏の皆さん…おっぱいは宝物ですので大切に扱いましょう!乳揺れはビジュアル的には素晴らしいですが
おっぱいの為にはいくないので、あんまりタプタプとかしておっぱい遊びはしないよーにw
527 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/25(土) 13:17:44.88 ID:WOyB0Rbuo
>>518
地味に楽しみにしてたから終わっちゃってすっきりしたような寂しいような

>>522
羞恥に染まる赤羽根ぺろぺろ
528 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/06/25(土) 14:18:13.50 ID:xNTfQ4xT0
安価↓ 絵でもお題でも
529 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/06/25(土) 14:38:41.35 ID:JysNpCSDO
元体育会系の超非力女子
530 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/25(土) 20:30:22.59 ID:tpgIDk0uo
>>521
把握



……ちくしょー

>>525-526
テンションたかいなー

>>525>>527
当方の拙い駄文で楽しんでいただけて幸いです。

>>522
探偵さんの出番がこれからも増える事を願ってぺろぺろ

>>526
その発想はなかった。男の時の初体験含めるのはないわーwww
どこが短絡的なのか問い詰めたい(´・ω・)
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/26(日) 03:10:34.19 ID:Q+u0eKyZo
久々に来てROMってたら
地元が出てきてびっくり
セフレの書いてた人、多分近所じゃww
532 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/26(日) 03:11:07.80 ID:Q+u0eKyZo
あ、ついでなんで安価もらおう
安価したー
533 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/26(日) 03:26:18.26 ID:Bu5UNWEH0
観音院



……別にどこのとは言わんけどw
534 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/26(日) 03:33:09.49 ID:Bu5UNWEH0
まぁ、なんちゃって政令市の晴れの国にもにょたはいるんですよw
セフレのヤツはなんとかしますので…つか今も書いては消ししてんですようwww
535 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/26(日) 04:31:44.63 ID:Q+u0eKyZo
安価はあく

なんかツーカーのような安価を頂いて恐縮でございます
この安価もらえれば、安価把握するまでに妄想してたネタが書けるなって

思っていたのです!
げひげひ
536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/26(日) 05:17:31.55 ID:Q+u0eKyZo
安価『観音院』

タイトル「裸の付き合い」

2月の半ば、寒さも絶好調のなか、とある会陽(えよう)が開催される。
日本三大奇祭。とも言われる会陽は観音院と言われる場所で開催され、全国から参加者が集まってくる。
地元民の俺は毎年恒例でこの会陽に参加する。とある団体の代表として。
その団体は大所帯で、メンバーだけでも40人は超える。12年ほど前は8人くらいのどこにでもある団体だった。
何があってこんな大所帯へ変貌したのか・・・それはこれから語ろう。

「明日・・・じゃな」

「おう。今年もワシらがもらうけーな」

男の傍らには女性がいた。その女性の腕には赤ん坊が抱かれていた。
2LDKの借家に男女と赤ん坊が3人。誰が見ても彼らは夫婦であり、その赤ん坊は二人の愛がつむぎ出した結晶と思うだろう。

「万風会の大久保さん所も、二人目の赤ちゃんができたんだってな」

男の妻は言葉に何かの意味を孕ませて、自分の子供を撫でながら夫に流し目を送る。

「・・・・3年前はアイツんトコの息子に花を持たせてやっただけじゃわ・・・!心配せんでええ。今年はワシがもらうけ」

「わかっとるって、絵美〜今年はお父ちゃんがあんたにええモン送ってくれるで〜?そういえば、あん時の大久保さん、ぼっけえ勢いじゃったもんな、うちらの会の連中ときたら、皆びびってしもうとったしな」

「思い出させんな・・・アレは神聖な儀式じゃ、皆本気じゃ!あんときは、アイツが強かったんじゃ!」

「じゃあ、今年はアンタが最強じゃな?」

「あたりめぇじゃ!絵美、期待してまっとけよ。ワシがお前に宝木をプレゼントしちゃるけーな!」

生後数ヶ月の絵美と呼ばれた赤ん坊が、少し微笑んだような気がした。

「お、絵美が喜んどるで!」

「ほんまじゃ〜!でも寂しいわぁ、もうウチにはプレゼントしてくれんってことじゃがん・・・」

「サチにはもう何度もやっとるが」

「はいはい。どーせうちはもう役立たずじゃー」

一見普通に見える微笑ましい家族の会話。サチと呼ばれた男の妻の言葉。
この言葉の奥にはこれから語るエピソードが隠されていた。



後は妄想でお願いします
なんていいません。
が、眠いのでいったん寝ます。
続きは後日・・・長くなりそうな安価ですまんです
537 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/26(日) 05:42:57.14 ID:Bu5UNWEH0
まさかここで会陽ネタを読める日が来るなんて…続きwktk!
538 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/26(日) 20:27:15.03 ID:Bu5UNWEH0
良い夜だ…静かで、穏やかで、何も思い浮かばない…そんな夜だ。
何も思い浮かばないから、お題の一つも欲しくなる…そんな夜だ。

恥を忍んで安価下
539 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/26(日) 20:30:20.87 ID:SA7JLD8yo
蚊取り線香
540 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:27:40.28 ID:jPvC2T1jo
チョモランマー
今回は輪をかけて詰まんないと思うー

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(3)『生徒会』

 放課後、藤堂は生徒会室を訪れていた。

 もし宗像の言った通り、何か元の世界にいたくない理由があってここにいるという
仮説が信頼に足るものだとしたら、逆にこの世界の沙樹にそのようなこの世界にいたくない理由があって、結果自分が代わりにここへ飛ばされてきた、という仮説も通るのではないかと藤堂は考えたのだ。

 だとするならば、彼女を知る為に、この世界の沙樹が恐らく多くの時間を過ごしている
であろうこの部屋を訪ねてみる価値はあると思った。

 この身体の持ち主たるこの世界の沙樹の曖昧な記憶を苦労して掘り起こすまでもなく、
生徒会室はすぐに見つかった。場所は、藤堂の教室のすぐ隣りだったのだ。
教室の半分程度の広さであろうその部屋の、ひとつしかない引き戸に手をかけて
ゆっくりと開いてみる。終業のチャイムが鳴って間もなかったせいか、
中にはまだ誰の姿も無く、オレンジ色の西日だけが灯りの無い部屋に射し込んでいた。

 左手すぐの壁に据えつけられた灯りのスイッチを入れると、
部屋の右半分を占領する資料が整然と並べられた本棚が照らし出される。
その反対側にロの字型に並べられた長机の上には律儀にも、
一つ一つの席に恐らく今日の議題となるのであろう資料が、綺麗に重ねて配られていた。

 何の気なしにそのうちのひとつに腰掛け、配られた資料を確認してみる。
内容はどうやら、校内での携帯電話使用の是非、体育祭実行委員の班分け、
後は学食前に設置された飲料自販機の数を増やしたい、など、
重要なのかそうでないのかよくわからないものばかりだった。
541 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:29:23.34 ID:jPvC2T1jo
 資料をペラペラとめくっていた藤堂だったが、ふと、
あるページに差し掛かったときぴたりとその手が止まった。

「あ、会長!おつか・・れ・・さ・・・」

 振り返った藤堂の視線を受けて、引き戸を開いた姿勢のままその女生徒は
硬直していた。いまどき珍しい三つ編みのおさげ髪に、度の強そうな丸眼鏡をかけた
小柄な少女だった。

「あ、あの・・あの・・・」

 藤堂の目つきがあまりに恐ろしかったのか、眼鏡の女生徒は胸に抱えた資料を
取り落とし、仕舞いには引き戸に両手をかけたまま座り込んでしまった。
そこで流石の藤堂も気付いて、座り込んでいる女生徒に手を貸すために席を立った。

「その・・・大丈夫か?」
「あ・・・ありがとう・・・ございます」

 藤堂の差し出した手を女生徒はおずおずと取って立ち上がり、
伏し目がちに藤堂を見つめた。

 ふと気付いて、藤堂はしゃがんで女生徒の足元に散らばった資料を拾い始める。
屈んだりすると、長い髪が垂れてきて邪魔だ。影を作っているほうの髪を左手で
たくし上げ、耳にかけながら思った。

 その仕草をうっとりするように見つめていた女生徒だったが、
ハッと気付いて慌てて自分も屈んでそれに加わる。
しかし、未だにその手はおぼつかず、結局藤堂は資料のほとんどを拾って
女生徒に手渡してやっていた。

「・・・ほら」
「あ、あの、ありがとうございます・・・」

 藤堂から資料を受取ると、そう言って女生徒は俯いて頬を赤らめた。
542 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:31:02.66 ID:jPvC2T1jo
 女生徒のおかしな反応に首をかしげながら藤堂は、
ふと気になったことを彼女に尋ねてみる。

「今日は、生徒会の集まりがあるのか?」
「あ、は、はい!前の時間に資料のコピーも済ませておきました!」

 だから資料が既に配られていたのか。

「そうか・・・ところであなたは・・・」
「アゲハです!一年書記の安芸野(あきの)揚羽です!」
「そ、そうか」

 安芸野 揚羽は、藤堂が曖昧な沙樹の記憶を掘り起こすのを待たずにそう答えた。

「・・・それじゃあ安芸野さん」
「あ、あの・・・良かったら・・あ、揚羽って呼んで下さい!」
「・・・それじゃあ揚羽」
「は、はいっ!!」

 眼鏡の奥の瞳をキラキラさせながら揚羽は答えた。

 それにしても、昨日までは女相手では口を聞くのも抵抗があった自分が、
今は手を貸したりファーストネームを呼ぶことすらすんなりやってのけている事が
不思議だった。普段と違って自分が女の格好をしているからだろうか?
少なくとも、いつもの長ランの時のように気合の入る感じではないが・・・それとも、
やはりこの身体がこの世界の沙樹のものであるから、彼女の認識が自分の心に
影響しているのか?

 藤堂がそんなことをとりとめなく考えていると、
それをどう解釈したのか揚羽が不安そうな顔で見つめているのに気付いた。
543 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:32:43.00 ID:jPvC2T1jo
「あ、あの・・・会長?」
「あ、ああ、すまない・・・少し、座らないか」
「は、はいっ!」

 元気のいい返事をするやいなや、揚羽は窓際の席へ颯爽と飛んでいき、
その椅子を引いて「さあ早く来て!」と言わんばかりに目をキラキラさせた。

「その席が、いつもの私の席なのか?」
「は、はい!そうです!」
「そうか・・・」

 藤堂が窓を背にしたその席に腰掛けると、揚羽はその隣りに腰掛け、
キラキラした視線を藤堂に送った。

「あなたは、いつもその席なのか?」
「今日は、私が書記の当番ですから!」
「そうか」

 ということは、その日の当番の書記がそこに座るのか。

「ところで揚羽」
「は、はいっ!!」

 元気よく返事した揚羽はしかし、きりりと気合の入った顔は長く続けられず、
すぐに蕩けた様な目を藤堂に向けてきた。この娘は、何かがおかしい・・・藤堂は
なんとなくそう感じ始めていたが、これから聞こうとしていることには恐らく関係ない
だろうし良かろう、と、そんな疑問を思考の隅に追いやることにした。
学年が違うとはいえ同じ生徒会で仕事する彼女なら、この世界の沙樹がここに
居たくなくなった理由に繋がる手がかりをある程度持っているかもしれないと思ったのだ。

 とろんとした目つきの揚羽に、藤堂は少し考えてからこう質問した。

「あなたは・・・私のことをどう思う?」
544 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:34:47.06 ID:jPvC2T1jo
 ・・・この聞き方は違ったか?

「え・・・えぇえっ!?あ、あのっ、それっ、てっ・・・それって・・・」

 ・・・やはり違ったようだ。

 揚羽が顔を一層真っ赤にして目を白黒させているのを見て藤堂は慌てて言い直す。

「ああ、いや、すまない・・・普段の私のことについて、揚羽は、よく知っているのかどうか
聞きたかっただけなんだ」
「あああ、そんな、よく知ってるかだなんて、そ、それは、いつも見てますから、あの、
その、人並み以上には、その・・・」
「人並み以上か。良かった」

 どうやらこの世界の沙樹は、生徒会ではこの揚羽と仕事をすることが多かったようだ。
ならば、最初に彼女に会えてこうして話せたのは運が良かったかもしれない。
藤堂はそう解釈した。

「その、こんなことを聞くのはおかしいと思われるかもしれないのだが・・・昨日までの
私は何か、悩んでいるような様子があったりしなかったかな?」
「えっ、ええっ、そ、それって、どういう・・・」
「わからないかな・・・」

 やはり、宗像の言った通り、沙樹の抱えたストレスは表面から見えないもの
だったのか・・・。
545 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:36:20.91 ID:jPvC2T1jo
 藤堂が表情を曇らせると、揚羽は顔を真っ赤にさせたまま大慌てで何か言おうとする。
上気する頬の熱で眼鏡が曇らんばかりだった。

「あっ、ああのっ、わ、わかる、かもしれないんです、けど、で、でも、わ、わたしも、
そんな、風な聞き方、されると思わなくて、あの、心の、準備が出来てないというか」
「わかるのか?」
「あっ、いっ、いえっ!で、でも、私の口からはとっ、とても申し上げられないというかっ!」
「遠慮しなくていい!私が君の口から聞かせて欲しいと頼んでいるんだ!」
「でっ、でもっ、でもっ!」

 ついに目の前に現れかけた手がかりに藤堂が思わず熱くなってそう言うと、
揚羽はついに席を立ち上がってしまう。その顔はもう茹蛸のように真っ赤だった。

「きょ、今日はっ!失礼しますっ!!」
「あ、待て!」

 藤堂が止める間もなく、揚羽は生徒会室を飛び出していってしまった。



「か、会長ったら・・・!
自分が私への恋心に思い悩む様をお前は見ていたかだなんて・・・!
そんなことにも気付かなかった罪な私の罪悪感をえぐるような口説き方されたら、
そんなに簡単に答えられるわけないじゃない!
・・・で、でも・・・その気持ちに答えてあげなきゃ・・・会長を傷つけることに
なっちゃうじゃない!
私・・・どうしたらいいのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ・・・」

 廊下を全速力で駆け抜けながら、揚羽は一風変わった青春の痛みに
声にならない叫びを上げるのだった。



546 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:37:57.60 ID:jPvC2T1jo
 せっかく掴みかけた手がかりが目の前から消えてしまい、藤堂が途方に暮れていると、
数人の下級生を伴った宗像が部屋に入ってきた。持っている資料からして、
下級生たちも生徒会の役員であるらしいことがわかる。

「今日も早いな、沙樹」
「・・・お前が遅いだけじゃないのか?」

 宗像も藤堂と同じクラスであるので、教室からこの部屋まで当然目と鼻の先だ。

「俺はこいつらの相談を受けていたからな」
「相変わらず人望の厚いことだな」

 宗像に示された下級生たちが藤堂に向かい綺麗に揃って頭を下げてきた。
元の世界の応援団での下級生の相談役と言えば、立場上の理由も勿論あったが、
いつも藤堂ではなく宗像が請け負っていた。
それはどうやらこの世界でも同じであるようだ。

「ところでお前、昼休みに屋上で不良どもに絡まれてたって?」

 宗像が藤堂の隣りの席に、巨体を押し込むように腰掛けながら言った。

「ああ・・・そうだが・・・いや、それよりお前はどうして私の隣に座るんだ?」
「言っていなかったか?俺は生徒会書記だ。そしてこの席は書記の定位置というわけさ」
「なるほど。ちなみにそこには今日の担当の書記である安芸野揚羽が座ると聞いたが?」
「バレていたか」
「・・・呼吸するように嘘をつくな」
「ところでこの席にいるはずの安芸野君がこの部屋から顔を真っ赤にして
駆け出していくのを見たが、お前、何か言ったのか?」
「顔を真っ赤に・・・」

 やはり、彼女の気分を害するようなことを言ってしまったのだろうか。
だとしたらそれは申し訳ないことをしたと思うし、何より彼女の持つ情報を引き出すのに
かなり骨の折れる手順が必要とされることが危惧された。
藤堂がそのことを言うと、宗像は何故か笑い出した。
547 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:39:19.18 ID:jPvC2T1jo
「はははは、なるほど、普段のお前について彼女に聞くのはある意味正解だ。
普段そばにいる俺にさえわからんようなことも知っている可能性がある。
しかし、彼女が逃げていったのは多分、お前が思っているような理由のためではないぞ」
「・・・どういうことだ?」

 藤堂が尋ねると、宗像は意味深な含み笑いとともに
「知らない方がいい世界もあるということさ」と言った。

「まあ、安芸野君に関しては俺のほうから、事情は明かさないようさりげなく尋ねてみるよ」
「くれぐれも頼むぞ?・・・ところで今日は何をすればいいんだ?」

 そこまで言ったところでふと周りを見てみると、席についた他の役員たちが
きょとんとして藤堂を見ていた。

「・・・沙樹は今、飲んでいる薬の影響で少し記憶が曖昧なんだ。
すぐに元に戻るだろうが、それまでは何か困っているようなことがあったら助けてやって欲しい」
「そうだったんですか・・・」
「わかりました!わからないことがあったらなんでも私に聞いてください!会長!」
「お察しします!」

 宗像のフォローにあっさり納得したらしい下級生たちだったが、
今度は妙にキラキラした視線を藤堂に送り始めた。

(お、おい宗像!・・・この視線はなんなんだ?
揚羽にもこんな視線を送られた気がするんだが)
(なんだ、安芸野君とは名前で呼び合うような仲にまでなっていたのか?)
(・・・茶化すな!)
(この世界でのお前はな、人気者なんだよ)
(人気者・・・?)
548 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:41:55.82 ID:jPvC2T1jo
 その後まもなく他の役員たちも続々と加わり、結局藤堂の隣に居座っている宗像の
号令で会議が始まった。宗像がどうやら、今日の議長であるらしい。
本来そこに座るはずだった副会長らしい二年生は、結局戻ってこなかった揚羽の
代わりに書記席に座り、黙ってペンを執っていた。
しかしながら、藤堂が何より驚いたのは、現れた役員の何人かが藤堂もよく知る
応援団員だったことだった。

(・・・榎本や篠原も役員なのか?それから三年の久我山や柳生も?)
(榎本は会計副委員長、篠原は風紀副委員長、久我山は奉仕委員長、
それに柳生は保健委員長だ)

 この四人の役割は、どうやら藤堂の世界の応援団内の組織とほとんど同じで
あるらしかった。この学校における執行部は、数人の生徒会専門の役員に加えて
各専門委員会の委員長と副委員長で構成されている。これは各委員会と執行部の
連携を強め見解の食い違いなどの軋轢を最小限に食い止める意図による
組織形態であるが、それらの細々とした説明はこれからの話にさして関係あるわけ
でもないことであるのでここでは割愛する。
この四人以外の各委員長は、ほぼ女性で構成されており、藤堂が応援団で
普段感じていたものとはまた違った緊張感がこの部屋を占めていた。

 まもなく宗像の進行で議題が読み上げられる。しかしながら今回この場で議論される
べきことはほとんどないらしく、読み上げられた議題に対して各委員会が行った
施策の報告が主な内容だった。藤堂も、時たま求められる同意にとりあえず答えながら
話を聞いているだけで、一時間もしないうちに定例会議は終わりに近づいていた。

「―――次の議題に移る。それでは風紀委員、お願いします」
「はい」

 呼ばれて立ち上がったのは、風紀副委員長の篠原。委員長は都合により欠席だそうだった。

「今回ご報告申し上げたい・・・と申しますか、この場での検討をお願い申し上げたい
ことは、恥ずかしながら、その・・・我が風紀委員だけでは手に負えなくなってしまった
問題についてであるのですが・・・」
「・・・要点をはっきり言え」

 藤堂が、篠原の歯切れの悪い様子についイラついていつもの調子でそう言ってしまうと、
周囲の役員たちが唖然としてこちらを見つめるのがわかった。
549 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:43:50.20 ID:jPvC2T1jo
目に見えてガタガタ震えだす者までいた。
もう少し、優しい言い方をするべきだったのだろうか。
しかし、これははっきりしない態度をとった篠原が悪いのだから仕方がない。
しばらく呆然としていた篠原だったが、
すぐにはっと気づくと慌てて手元の書類を読み上げ始める。

「も、申し訳ありません。今回検討をお願いしたい問題は、
前回と同じく二年Y組の相良聖という生徒に関することであります」

 その名が読み上げられた瞬間、
生徒会室に先ほどとは違った緊張感が広がったことに、藤堂は驚きを感じた。
相良の言動から、彼女が生徒会と揉め事を起こしているのはなんとなく承知していたが、
まさかこれほどとは思わなかったのだ。

「前回の仮処分以降、一応は大人しくなっていた相良なのですが・・・どうも、
今日の昼休みにまたしても暴力行為を働いたようでして」
「・・・昼休み?それは」
「なんて人なの!」

 藤堂が気になって尋ねようとするより前に、
他の委員であろう女生徒が声を荒げてそう言った。

「再三に渡る注意も聞き届けず、またしてもそんな下品な行為に走るなんて!」
「野性のサルか!あの女は!」
「会長、もう先生方に判断を委ねてしまいましょう!」
「あ、いや、それは」

 すごい剣幕で怒鳴りあい始めた役員たちに、藤堂は思わず気後れしてしまう。
そんな様子を見かねたのか、宗像が助け舟を出そうと口を開く。

「みんな、落ち着いてくれ。その現場に、この藤堂が居合わせた・・・というか、その、
絡まれて困っていたのは実は彼女自身だったのだが」
「なんですって!?」

 宗像の、珍しく歯切れの悪い説明のしかたのせいで話が
中途半端な伝わり方をしてしまい、結果彼らを燃やす火に油を注ぐ結果になってしまう。
550 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:44:57.39 ID:jPvC2T1jo
「他の生徒だけでは飽き足らず、あろうことか会長に牙を剥くなんて・・・!!」
「いや、そうじゃなくて私は・・・」
「名前どおりの狂犬だ!」
「もう、退学処分しかないわ!そうよ!次の総会でそう提言しましょう!」
「あんな女がこの学校に通っていることがまず信じられないんだ!
あんな女、いつまでものさばらせていたらこの学校の伝統に傷をつけるだけだ!」
「ねえ、でもこれだけじゃ退学にまで出来るとは限らないし、
最近多発してる窓ガラスの損壊事件とか、下級生への集団暴行とか、
教職員に対する覆面強盗事件とかも全部相良のせいにしちゃえばいいんじゃない?」

 そんな物騒な事件があったのなら真っ先に議題に上げられてもいいはずなのだが・・・
それはともかく、生徒たちのヒートアップはとどまることを知らない。

「あ、それいいな。ていうかどうせあいつがやったんじゃないか?」
「・・・待て、それは」
「どっちだって平気よ。あんなの。ほっといたって同じような事件また起こすんだろうし、
その芽を摘み取って上げるってんだから。
あいつも将来少年鑑別所に行くことにならずに済むんだし、
感謝されることはあっても恨まれるような筋合いないわよ」
「そのとおりですね。それでは会長、そんな感じで―――」
「・・・俺が“待て”と言ったの、聞こえていたか?」

 藤堂のその一言で、場の空気が一瞬にして凍りついた。
551 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:45:57.62 ID:jPvC2T1jo
「・・・風紀副委員長の篠原」
「は、はい」

 突然指名され、しどろもどろになる篠原。
しかし、そんな彼に容赦する藤堂ではもちろんなかった。

「なんだその返事は!!!貴様、男なら力いっぱい押忍と答えてみろ!!!」
「お、押忍!!」
「声が小さい!!!もう一度!!!」
「押忍!!!!」

 篠原の青ざめた顔に浮かぶ汗に、
藤堂の横で腕組みして高みの見物を決め込んでいる宗像は苦笑した。

「・・・相良の暴力行為の報告は、誰から受けた?」
「お、押忍!に、二年の、沢渡という生徒に・・・」
「・・・なるほど。それを貴様ら風紀委員は鵜呑みにしたと」
「う、鵜呑みにしたとは・・・」
「ならば、誰がここでその通りの報告をするよう判断した?委員長か?」
「そ、それは、自分が・・・」
「貴様は本当の間抜けか!!!その二つの目は節穴か!!!!」

 藤堂の怒号に、生徒会室の窓は言葉の通り、びりびりと震えた。
呆然と見守る生徒たちは、無意識に両手で耳を守っていた。
552 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:47:41.46 ID:jPvC2T1jo
「・・・篠原。貴様の命にかけて、沢渡の身辺を探れ。
あいつはただで信用していい相手じゃないことがわかるはずだ」
「は・・・はい・・・」

 藤堂の『貴様の命にかけて』という言葉に、篠原は戦慄を覚えた。
失敗すれば、自分の命はこの人に奪われるのではないかということが
現実的に思われたのだ。

 そんな篠原の様子を気にかける様子もなく、藤堂は正面に向き直ると、
長机に両手をつき、他の全員に向けておもむろに口を開く。

「・・・先ほど宗像が言ったとおり、あの場に俺・・・いや、私と相良がいたことは事実だ。
そして、相良がその沢渡に暴力行為を働いたのも事実だ。
しかし、それは沢渡に・・・か、絡まれていた私を助けるために彼女がやむなく行ったことだ」

 もちろん藤堂一人でその場を切り抜けることは造作もなく出来たが・・・そこは
胸の内にグッとしまうことにする。

「そ、そんなまさか・・・」
「で・・・でも」
「私が信じられないのか?」
「「い、いえ、そんなことは」」

 反論しかけた二人の生徒は、藤堂の一言にユニゾンで回答しながら黙ってしまう。

「それに・・・あなたたちのさっきまでの態度はなんだ?
相手がまともにしつけられていない野生動物のような人間ならどんな罪も擦り付けていいのか?」
「・・・」
「・・・」
553 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage saga]:2011/06/26(日) 21:48:55.06 ID:jPvC2T1jo
「彼女の行動と、今のあなたたちの言動の、
どちらが非常識か・・・あなたたちにはわかるはずだろう。
それに・・・相良聖は・・・その・・・弱い人間や、罪のない相手を、
・・・簡単に傷つけたりする人間じゃないんだ。
彼女の行動は、下品で礼儀のかけらもないかもしれないが・・・それでも、
いつでも思いやりがその裏にはある」

 藤堂は自分が何を言っているのか、途中からよくわからなくなっていた。
それでも、自分の言葉に嘘偽りがないことだけは何故かわかっていた。

「し、しかし、相良には沢山の前科が・・・」
「相良の仕業ではない。証拠は、私の心だ。私の心がそう言っている」

 もはや、反論する気勢はそがれてしまっていた。

「・・・話は以上だ。今日の集まりはこれで終わりでいいな?議長」
「ああ。それでは解散。みんな、ご苦労だったな」

 待っていたようににやりと笑うと、宗像は手を打ち鳴らしながら解散を宣言した。
そのイヤに満足そうな様子を見るに、相良が不利になるようなものの言い方をしたのは
わざとか・・・皆が部屋からはけた後にそう追求してみても、
宗像はいつも通りしらばっくれるだけだった。

 藤堂と宗像がとりあえずの後片付けを終えて部屋から廊下に出てくると、
引き戸の横で真剣な顔をして仁王立ちする揚羽の姿に気がついた。

「・・・揚羽?」
「あっ・・・あのっ、会長!!!」
「な、なんだ?」

 藤堂が尋ねると、揚羽は何か、気合を入れるように深呼吸すると、
腹の底に力をこめて廊下全体を震わせんばかりの声で叫んだ。

「お・・・お姉さまとお呼びしてもいいですか!!!!!」

 背後で宗像が噴出すのを聞いた気がした。



【つづく。】
554 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/26(日) 21:51:13.94 ID:jPvC2T1jo
次はもう少し面白いと思います
まだ全く書いてないけどそうなってくれればいいと思います
ていうか徐々に短くなってるのが気になるといえばなると思います
バーイ
555 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/27(月) 00:21:29.59 ID:th2GJOqBo
>>554
個人的にはこういう雰囲気と進行はすごい好きです
珍しいのかなー…
556 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/06/27(月) 00:53:45.96 ID:blFjEBJAO
>>553
これで面白くないとか、ハードル上げるのやめてぇえええぇぇっ!!!!
や、結構本気で言ってるんです、ええ。



……で、なんで赤羽根がペロペロされてんだろ……。



 【まとめるまでもない赤羽根兄妹の珍妙な会話】

赤羽根「なぁ名佳、前から気になってたんだけどよ」

名佳「ん? なんだよ、藪から棒に」

赤羽根「嬢ちゃん達は、お前のこと名前で呼ぶだろ? あー……ほら、なのちゃんとか、そういうフランク&フレンドリーな感じでよ」

名佳「……まぁ、その、うん」

赤羽根「なのに、お前だけ二人のことを名字呼びってのは変じゃねーか? 俺が居ないとこで色々フォローしてもらうんだから肩肘張ってねーで、ちったぁ砕けてみたらどーよ」

名佳「……うん、まぁ、………うん、努力は、する、………うん、多分」

赤羽根「歯切れ悪過ぎだろ」

名佳「う、うるさいなぁっ、アンタに言われなくたってそのつもりだって!」

赤羽根「んじゃまぁ、ちょっち練習してみっか」

名佳「なんで」

赤羽根「お前、若干コミュ障の気があるし」

名佳「っ、う、うるさいなっ」

赤羽根「おー、自覚はあるみてーで何よりだ」

名佳「知るかっ!」

赤羽根「とりあえず。ほれ、俺を嬢ちゃん達だと思って、ドンとカモンっ&」

名佳「……」

赤羽根「なんだよ?」

名佳「今、"来るな"って言ったばかりじゃないか。英語で」

赤羽根「"Don't come on"じゃねーよっ!!!」
557 :でぃーゆーれぃにぃ [sage]:2011/06/27(月) 01:18:14.24 ID:c1xYntVAO
もしもしから失礼。

>>539
実に絶妙な安価把握。有難うございます。
多分、考えて考えた挙げ句いつもの感じ落ち着きそうな予感。つか確信。

>>554
相変わらず団長かわいいよ団長v

>>555
禿同、漏れもこの感じ好きです…つかニヨニヨしてしまうww

>>556
じゃあ赤羽根兄妹まとめてペロペロしときますねww
558 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/27(月) 15:14:23.48 ID:Nsx5xWQr0
岡山ってわりと近いな
559 : ◆XFPROZh.pg [sage]:2011/06/27(月) 18:54:38.26 ID:ExfN0HNO0
安価「幼馴染がロリコン」書いた者です。
続きで「幼馴染(♀)がロリコン」書くべき、(♀)さんに安価↓で要素付加お願いしまう
560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/27(月) 18:58:45.77 ID:piRt108p0
素直クールなドS
561 : ◆XFPROZh.pg [sage]:2011/06/27(月) 19:03:05.91 ID:ExfN0HNO0
おk、把握した。
のんびりお待ち下せぇ
562 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/27(月) 23:08:45.63 ID:th2GJOqBo
>>557
せーぜー安価ネタでなやむがいー。

>>521のお題が鬼畜過ぎて進まない腹いせじゃないですよ?ですよ?(ノд`)
まー、書きたくないわけではなくてむしろ書きたいけど思いつかないみたいな変な状態ですが。


>>556
探偵さんぺろぺろ。
露骨に名佳ちゃんの天然をアピールしているようですが、勘違いされるような可愛い事を口走った探偵さんを見逃さないのがペロリスト
勿論名佳ちゃんも可愛いのですが。
563 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/27(月) 23:10:32.78 ID:th2GJOqBo
>>557
せーぜー安価ネタでなやむがいー。

>>521のお題が鬼畜過ぎて進まない腹いせじゃないですよ?ですよ?(ノд`)
まー、書きたくないわけではなくてむしろ書きたいけど思いつかないみたいな変な状態ですが。


>>556
探偵さんぺろぺろ。
露骨に名佳ちゃんの天然をアピールしているようですが、勘違いされるような可愛い事を口走った探偵さんを見逃さないのがペロリスト
勿論名佳ちゃんも可愛いのですが。
564 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/06/27(月) 23:11:40.92 ID:th2GJOqBo
おかしいな、何故か長文レスが書き込めなくなった…うーん?
565 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/06/27(月) 23:16:53.73 ID:th2GJOqBo
おかしいな、何故か長文レスが書き込めなくなった…うーん?
566 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/06/27(月) 23:19:12.79 ID:th2GJOqBo
失敗したって出たのに書き込まれてる事になってるーーーー(ノд`)

連投失礼いたしました…
567 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/28(火) 05:26:58.26 ID:yMQ/Wm3AO
>>562
こやつめ、ハハハ!
568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/28(火) 07:35:26.64 ID:+SFLDVNGo
>>567
ぎゃーすいませんすいませんすいません……
このままでは何か悪いので、寝起きに追加安価を所望致しまする……↓
569 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/28(火) 08:00:05.43 ID:yMQ/Wm3AO
>>568
『ローション風呂』☆

こっちこそすいませんすいませんすいません……
漏れって奴は…ww
570 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga ただいま帰宅]:2011/06/28(火) 08:59:22.35 ID:ikI3kTID0
以下のお題も候補でした。

『妊娠フラグ』☆ 白詰さん…ってゆーか鈴城くん…(ノд`)ガンガレ
『飲尿』☆ それはないわーwいや、あるかもしれんがwww
『剃毛』☆ それは(ry
『アヘ顔Wピース写メ&きもちいすぎてバンザイ三唱』☆ …世界観にそぐわんwつか想像出来んw
『パイズリ』☆ 多分、言われなくても…w
『ボクをセフレにしてくれる?』 ねーよw今更それはねーよw

と、いう訳で悩んだ結果の『ローション風呂』☆ヤッタネタエチャン!

…追加も鬼畜ですかそうですか、本当に申し訳ありません…_○/|_
571 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/28(火) 12:50:28.51 ID:vgXEwWVk0
横取り安価「セフレパイズリアヘ顔剃毛飲尿妊娠フラグ」

「つまりキミってば、にょたっ娘にこういう事したかったんだ」
「す、すいませんっ」
「しかも妄想で済ませておけばいいのに、ボクとちょっとイイ仲になったからって口に出しちゃうんだ」
「すいませんっすいませんっ」
「……いいよ、してあげる」
「え?」
「ほら……コッチおいでよ」
「は、はいぃっ」

「ふごーっふごーっ」
「つるつるになっちゃったアソコをパイ生地でズリゴリされて喜んじゃうなんて、とんだヘンタイさんだね」
「んごごーっ」
「どうしたの?もう限界?」
「んぐっんぐぐっ(がっくんがっくん)」
「ふーん、頑張らないとさっきのおしっこみたいに逆流させちゃうよー?」
「んぐぅーッ!」
「あはは、もう色々とぐっちょぐちょ〜
 こんなになっちゃうと、男の子でも妊娠しちゃうかもね!
 知ってる?『快美恍惚の涅槃境においては、男子でも孕む事があります』らしいよ?」
「!?!?」
「さ、そろそろ観念しようねー?気持ちよかったらさっき教えた通りバンザイするんだよー?(ごりごりごりっ)」
「――ッッ!!!(バッ!)(バッ!)(バッ!)」


しまったセフレが入りきらなかったww
てゆかキミらはもっと相手を慈しんだ安価にしてあげなさいなww
572 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/28(火) 15:07:09.38 ID:ikI3kTID0
>>571
せっかくにょたがいる世界なのに背孕みとか誰得www
有難うございます乙GJ!

>てゆかキミらはもっと相手を慈しんだ安価にしてあげなさいなww

漏れは確かに◆3gJlaqFfe2さんは好きだし、安価『ボクの初体験…3つとも、貰ってくれる?』も超好き。
ううん、愛してると言ってもいい!(*´Д`)オレキメェwww

なのに漏れって奴はァ…orz
573 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/28(火) 19:17:54.83 ID:+SFLDVNGo
>>569-570
把握




…ちくしょー



ちくしょおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!(ノд`)


>>571
全部載せふいたwwwwwwwwwww
574 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/28(火) 19:46:15.95 ID:yMQ/Wm3AO
>>573
…ごめんね…許してなんて言えないよね…酷すぎるよね…追加安価↓
575 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(広島県) [sage]:2011/06/28(火) 20:38:51.34 ID:U7t7/PvQo
さぁ、ちょっと顔出して見たよ〜
安価なら主婦
576 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/28(火) 21:08:05.23 ID:yMQ/Wm3AO
安価把握!ガンガル漏れッ!


『蚊取り線香』と『主婦』か…どうやってエロくするか…
そもそも、話になるのか…出来るのか?漏れに?
…これがッwwwwwwカルマッwwwwww
577 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/06/29(水) 00:05:58.95 ID:7BCim8HL0
 それは、受験も無事終了しこれからようやく皆は休みになるのか、というような時期に差し掛かった頃のおはなし。
 俺は持病の喘息の所為で中学校の二学期後半から主治医の小さめの診療所で療養をしていた。と、行ってもこの場所にきてからの主治医だけれど。親元を離れて地方の診療所に主治医と一緒に住むようになった俺は、中学三年の後半のほとんどを授業に出ること無く卒業をして今に至るわけだった。
 すこしばかり話は変わるが、昨日は俺の誕生日。
 春休み、俺の誕生日は大体がその期間中に有った。今回も例外ではなく、知り合いも居なかったこともあり祝ってくれたのは主治医と、電話で両親。
 無事十五歳を迎えたことを喜んでくれて、さらに高校入学の祝い金と合わせて結構な額をくれる、とかいう話にもなった。
 そんな楽しい、しかし寂しい誕生日が明け、朝になってのことだった。
 ふと、体の痛みとともに目が覚めた。
 そこまで極端に痛い、というわけではなかった。体の中から、波打つように弱い痛みがずーん、ずーんと外側に向け伝わっているのだ。
 心配になった俺は、となりの部屋に寝ている主治医――古川 瀧(ふるかわ たき)の部屋を訪れた。
 ――連日の仕事で疲れてるだろうからな。あんまり起こしたくはないんだけど。
 小さな町。そこで数少ない診療所である古川診療所は、首都圏の診療所なんかよりよっぽど混み合う。
 だから連日瀧は忙しい体に鞭打って診療し続けていたのだ。
 カチャ、と扉が開く音が静かな廊下に響く。
 八畳ほどの部屋の隅っこ、そのベッドに寝ている瀧の元へと早足で移動する。
 瀧は、医者として優れている、というのもあったがそれよりも先に家柄の問題で、大分出世するのが早かった。現在二十五歳。それで、既に診療所の医者と成っている。
 ここら一帯の地主の家系らしく、それゆえにいろいろなところとつながりがあるのだが、そこら辺は割愛。
 兎に角、この体の内側から来る痛みについて、すこしばかり確認を取らなければ。
「……瀧。……瀧」
 俺の声を聞くなり、もぞもぞっと動き出し、そして上半身を起こしてからから、目をこする。
 未だに垂れ下がりそうなまぶたをしながらこちらを一見し、もう一度目をこすり、すぐ横のライトスタンドに置かれた眼鏡を手に取り、それを掛けジトッと見つめる。
「……誰だ? あんた」
「……は?」
 その回答に、寝ぼけているのだろうか。疲れているのなら、このまま寝かせてしまった方がいいのでは、という考えもよぎる。
「は? って、それはこっちの台詞だっての。誰なんだよ、あんた」
「俺は佳奈多だけど」
 それを聞いた瀧は、眉間にシワを寄せ、
「佳奈多……って、お前……平坂だとでもいいたいのか?」
「わかってるじゃないか。そうだよ。それ以外に何があるんだよ」
 なんだよ、からかってるのか? そんな想像も浮かんだが、どうにもそうではないらしい。
「……お前が……佳奈多? 俺が知ってる佳奈多は……男なんだが」
「……なあ、瀧。何が言いたいんだ? 俺は男じゃないか」
 ふざけてるようにも見えない、その真面目な眼光に射ぬかれ、徐々に不安になってくる。なんだ? 俺の体が何かおかしなことにでもなっちまってるのか?
 その想像は真に的を射ている答えだったみたいで。
「一回自分の胸に手を当ててみろ」
 半目の瀧に命令され、胸元に手を当てる。
 俺の手が触れたのは、普段の薄い胸板。――ではなく。なにやらふよっとした、言い換えれば太っている人のお腹にも近い感覚で――
 頭が真っ白になった。
「……は……?」
 そのままの勢いで、股間部に手を移動させる。
 いくらそこを触っても、触れなければいけないものが存在しない。
 なぜだ? なぜなんだ?
「お……い、た、き?」
「……な、なんだ」
 ゴクリと生唾を飲み込む音が鮮明に響き、
「俺……どうしちゃったんだ?」
「……俺にもさっぱり分からん」
 混乱した二人。そのうち片方は、どうにも女になってしまったようだった。
578 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/06/29(水) 00:06:48.21 ID:7BCim8HL0

――――――――
――――

 目が覚めた。天井は、見慣れた診療所のもので。
 昨日は、どうしたんだっけか。
 ああ、誕生日会をやって、それで、夜になって……
 急に、ぞっと鳥肌がたった。昨日は、嫌な夢をみた気がした。
 それもとびっきり。
 思い出せ、思い出せ。
 そう。昨日の夜、俺は微妙な痛みを感じて瀧の元に行ったんだ。それからどうした。えっと、
 そこからしばらく思考を巡らせたのだが、どうにも出てこない。
 結局、思い出せないということはその程度の夢なのか、と思い寝返りをうった瞬間、思い出した。
 それは夢でも何でもない、という最悪の事実と共に。
 布団に"胸"が押し付けられた。
 俺は男であるはずなのに、唐突に現れた"胸"。そして、同じく唐突に消えた"男性器"。
 ――昨日の出来事が頭に蘇ってくる。
 そうだ、あの後俺は泣き崩れ、そしてそのまま気絶したんだ。
 きっと瀧が看病してくれたのだろう。
 忙しいのに、そんなことをさせてしまったのか。
 そんなことを考えていると、不意にカーテンが開いた。
「起きたか」
「瀧……か」
 よく周りを見渡すと、ここは俺の部屋ではなく、診療所の診察台だった。
 そこには、俺に声をかけた白衣姿の瀧の姿があり。
 なにやら書類を眺めている。
「ふむ。身体的な特徴は、佳奈多と同一、か。念の為に聞いておくぞ? ……本当に佳奈多、なのか?」
「そう、だけど」
「まあ、そうなんだろうな」
 そう言うと、手に持った書類を適当にペラペラめくり、
「寝てる間に調べられることは調べたが、身体的な特徴はほぼ失ってしまっているようだ。残ってるのは記憶だけ、って所だろうな。で、だ。これから血液検査を行う」
 診察台の横においてあった台のカバーを外すと、採血用の道具が現れる。
「調べるのは血液型。んで、採血してる最中に質問するから、答えてくれ」
「ん。……わかった」
 瀧は、俺に腕を出すように指示する。俺はそのとおりに台に腕を乗せると、ゴム管で二の腕あたりを縛られ、注射針を刺される。この痛みも、病気と長く付き合っていると慣れてしまうもので、既に平気になってきている。っと、それはどうでもいいか。
「まず、そうだな。俺の名前、は既に言ってるか。じゃあ、お前の年齢と血液型と趣味を言ってみろ」
「……昨日で十五歳。血液型はO型。趣味は読書だ」
「当たり、か」
 その返しにそもそも本人だ、とつぶやく。
「ま、だいたい分かってはいるんだけどな、ここまで変わられちまうと疑うのも仕方ないってもんだから」
「俺……そんなに変わっちまってるのか?」
「そうだな、少なくとも"俺"が似合うような顔じゃないな。あと、間違いなく人目をひく」
 瀧は、終わったぞ、と言いながら注射針を抜くと、さっさとトイレに向かうように促した。
「一回でも顔を見てきたら、自分でも納得出来るんじゃないか?」
「…………わかった」
579 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/06/29(水) 00:07:18.59 ID:7BCim8HL0
 そう言って、トイレへと向かう。
 朝起きてからトイレに行っていないため、ちょうど行きたくもなっていた頃だから、ちょうどいいと言えば、ちょうどよかった。
 トイレに着き。鏡を眺めて呆然とした。
 ショートヘアーの、ずいぶんな美少女が目を丸くしてこちらを凝視していた。
 目の前に存在するそれが、"鏡"だとは到底思えないような。そんな感覚にとらわれる。
 手を鏡に触れると、少女も同じ動作で鏡に手を触れる。
 目元まで垂れ下がった髪の毛。それを、"俺"が掻き上げると、少女のきれいな顔が顕になった。
 大人びては居なくとも、十分に魅力的な顔。
 綺麗だが、俺の心はどんどん冷めていった。――この少女は、俺。俺は、この少女。ありえない世界に足を踏み入れてしまったかのようで、恐ろしくなる。
 全くどうして、女なんかになったのだろうか。
 少女は、今にも泣きそうな顔で、寂しそうにこっちを見ていた。
 自分の顔、と理解しても頭が認識していない今は、少女がこっちの気持ちを理解してくれているようで、嬉しくもなれた。
「そりゃ、泣きたくなるよな……」
 乾いた笑いも出てくる。
 一筋だけ、涙がツーッと零れ落ちるのを確認した俺は、人の目につきそうなこの場所に居たくなくなって、個室トイレへと逃げ込んだ。
 便座に腰をおろし、そこでついに決壊した。
 ポロポロと大粒の涙が溢れてくる。どうして俺が女にならなきゃいけないんだ、という気持ちも有ったが、それ以上に、一体何が起こったのか、これからどうするのか、という不安的要素も涙の大きな要因だった。
 十分ほど、泣きに泣いてから、トイレを出る。
 診察室へと戻ると、相変わらず瀧がその場にいて、すこしばかり安心。
「……佳奈多」
「……なんだよ」
「……期待はしないでおいてくれよ? ……治したいか?」
「治るんなら。けど、予め断っておくって事は、つまり治る見込みなんてほとんどないんだろ?」
 俺の言葉が図星だったのか、うつむいて、唸る。
「俺は医者だが、こんな症例診たことないからな。安心させるために嘘は言いたくないからハッキリ言わせてもらえば、ほぼ確実に治らないと思う。でも、こんなありえない事が起こるんだから、ひょっとしたらの可能性も考えて、だ」
「そっか……」
 瀧の言葉は、俺の心にぐさりと突き刺さる。確かに、この場で「絶対治る」なんて行って欲しくはないし、瀧のようにハッキリと言ってもらったほうが俺的には助かるんだけど。
「…………」
「…………」
 変な沈黙が部屋に生まれる。
 十秒、二十秒とその沈黙が続き、それを打ち破ったのは瀧だった。
「佳奈多」
「……なんだよ」
「戸籍、変えにいくか」
「は?」
「戸籍だよ、戸籍。お前の親御さんにもきっちり連絡して、この事は俺ら身内だけの秘密にするんだ」
 なんでだよ、と言いかけたその時。
「日本じゃありえないが、モルモットになんてされたくないだろ? ハッキリ行って、この事が公になれば大変なことになる。だから、公になる前に、片付けよう」
「そ、そうか。……わかった。でも、出来るのか、そんなこと」
「最近は性同一性障害の広がりも有って、戸籍を変えることは以前と比べれば全然楽になってきた。見た目が戸籍の性別と違えば戸籍の変更はさせてもらえるだろ。……それに、ここら辺の役場なら、俺だってだけで融通は利くから」
 その力強い言語に、俺は分かった、と頷くのだった。
580 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/06/29(水) 00:07:43.65 ID:7BCim8HL0

――――――――
――――

 俺と瀧は町から出て、少しばかり大きな洋服店へとやって来ていた。
 買うのは、俺の洋服。言い換えれば、女物の下着と、女物の洋服。瀧は診療所を臨時休業にして、俺に付き合っている。
 ちなみに母さんに電話を掛けたところ、ものすごく驚かれたが、瀧の説明で、半信半疑ながらも納得してくれたようで、費用を即座に入金しておく、と言ってくれた。ただし、先に述べた誕生日と入学祝いの分を、という条件だったが。
 下着は既に見繕ってある。ものすごく恥ずかしかったが、それでも我慢してサイズを図ってもらった。……胸はBだそうだ。よくよく見てみると、発達はしていなかった。だからこそ、最初に気がつかなかった、というのもあるが。
「……なあ、瀧」
「なんだよ」
「洋服、どうやって選ぶのか分からないんだけど」
「俺だって女物は分からないっての」
 瀧に話を振った俺も馬鹿だったが、瀧はその後店員さんを適当に捕まえると、「こいつに似合う洋服を探してもらえますか」といい、どうにかなりそうな雰囲気になったのだが。
「ずいぶんと手馴れてるな」
「人と接する機会だけは多いからな」
「……ふーん」
 まあいいや。
 俺の前の店員さんが、俺に向かって、
「では、付いて来てください」
 と言った。俺は為す術も無く、それに逆らわず従い、店内をとことん連れまわされた。

 一時間ほど経っただろうか。
 ようやく店員さんから開放された。選ばれた洋服は総合計で二十着ほど。俺のもらったお金でまかなえるのかどうかがものすごく不安なラインに達していたが、不足分は瀧が補う、と言ってくれた。申し訳なくなったが、瀧いわく後で助手として働いてくれればいいとのことだったので甘んじてるけることにする。
 そして、そのうちの一着。俺的にあんまり違和感のないスリムジーンズとブラウスを着て、帰宅するのだった。
 今日はもう、なんにもしないで診療所にこもっていよう。いつも以上にそう思ったのだった。
581 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/06/29(水) 00:08:07.95 ID:7BCim8HL0
――――――――
――――

 診療所に帰り、夕飯の支度(なにもしないつもりだったが、結局俺がやることにした)をしていると、瀧の声が聞こえてきた。
「はい。……はい。そういう事ですので、はい。詳しい事情等は……はい。はい。ありがとうございます」
 どうやら、電話のようだった。
 ルーを入れた鍋を混ぜていると、受話器を置いた瀧がこちらに向かってくる。
「高校の校長に、電話しておいたから」
「……なにを」
「うーん、なんというか書類上にミスがあった、ということで性別を女性に、って」
「それ、表面上の話だろ」
「さすがにバレるか」
「当たり前だ」
 どうして俺が、表面上の話だと分かったか、というと。瀧と俺が通う学校の校長は知り合いなのだ。勿論、家柄的に、だが。
 それで、顔が利くし、信頼もしているそうだった素振りを見ていたので、おそらくは、話したのだろう。事の真相を。
「ま、表面上はそういう事で通るから。安心して学校に通えるって訳だ。よかったよかった、コレが学校始まってからってわけじゃなくて」
 心底安心した、というような笑顔をこちらに向けてくる。それにつられて、俺も笑う。
「確かに、ね。怪しまれずにも済みそうだ」
「…………」
 瀧は、俺の言葉にかえさず、急に渋い顔になる。
 どうしたのか不安になり、
「ど、どうした」
 と聞いたが、帰ってきた答えは予想だにしないものだった。
「口調」
 清々しい顔をして、瀧は高らかに言った。
「口調を変えよう。一人称も、俺じゃなくせめて私、には変えておこう」
「な、なんでそんなことお前が決めてるんだよ」
「怪しまれる因子を除去するためだ。いつまでも男口調じゃ、そのうち怪しまれるぞ」
 言ってることはそのとおりなんだけど。
 でも、
「すっごく嫌だ」
「変えろ。命令だ。というか、矯正、いや強制する」
 壁にかかったカレンダーを確認し、
「新学期まで後一週間。みっちり仕込んでやるから」
 その時の瀧の笑顔がどうしようもなく怖かった。
582 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/06/29(水) 00:11:06.31 ID:7BCim8HL0
お久しぶりです。
長編を書くと言ってからものすごい時間が開いているにも関わらず、こんななに短くてすみません。

最近ずいぶんと賑わっているようで、嬉しいです。
これからも、不定期になってしまうと思いますが、よろしくお願いします!
583 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/29(水) 13:26:58.51 ID:d8kgoZDz0
◆440BCpUd8Bibさんの新作お待ちしておりました。
読んだ瞬間思わず描いてしまいました(ノД`)

http://dl3.getuploader.com/g/6%7C1516vip/59/du-02-001.jpg

多分イメージ違うよなー…拙い絵で申し訳ございませんorz
584 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/06/29(水) 20:11:44.43 ID:7BCim8HL0
>>583
うおおおおお! なんというか、イメージ通りで感激というか、自分の作品のキャラを書いてもらえるという感動ww
ありがとうございます!
コレで一層作品を書くモチベーションが上がりましたw 保存させていただきました!
585 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/29(水) 23:41:48.60 ID:iYDU0jovo
>>568のお題 『ローション風呂』

「へー…結構広いのね」
「みたいだな。……でだ」
「……………本気でやるの?それ」
「当然!」
「………はぁ」

私は今、彼氏と休日のデートを謳歌している。え?真昼間からラブホに入っていて謳歌もクソもないだろうって?
確かにそうね。これじゃ只の発情した動物だもの。尤も、計画を練る当初はこんなはずではなかったと言い訳させて欲しい。

――二日前、私の部屋にて――

「それで、万年発情期のとーや君は珍妙な袋を取り出して何とおっしゃいましたか?」
「発情期はひでーな。それじゃいつも相手してくれるハルも同類だ」
「…………はぁ、否定はしない。(まぁ…惚れた弱みで拒否出来ないってのもあるけど)」
「そりゃ光栄だ」

溜息交じりに聞こえない様に呟いたはずなのに、この馬鹿はしっかりと耳に刻み込んだようだ。
どうして私の声に限って地獄耳なのか問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。

「で?もう一度言ってくれない?私の耳が聞き間違えたかもしれないからさ」
「だから何度も言ってるだろ?風呂だよ、風呂。ローション風呂!」
「…………何処で買ったのよ、ソレ」
「通販だ。知ってるよな」
「あったり前じゃない!!……だって私のPCで発注して、さっき私の家に送られてきたもの。どっちもアンタが居るときにね!」
「だったらわざわざ確認するなよな」
「戒めも兼ねてるの!いつも言ってるでしょ、お風呂に一緒に入るのだけは恥ずかしいからやめてって!」

冒頭のラブホに入った日より一週間前、普段は見向きもしない私のPCの前に座って『ちょっと買いたいもんがあるから貸してくれないか』
と、頼まれて何の気なしに許可したのが仇となった。
商品の搬送先もウチに指定したいと希望した時点で気がつけばこんな事には……どうせエロ本の類なんじゃないかって思っていたらコレだ。
エロ本より遥かに性質が悪い。

「いーじゃねぇか、初めてした時は一緒に入ってくれただろー?」
「………あの時は…私も異性化してから一ヶ月しか経ってなくて体に慣れてなかったし、おまけに処女だったもの。
 腰が抜けててとーやに勝手に連れていかれただけじゃない」

これは私の屁理屈だ。その時は拒否感よりも恍惚感が勝っていて、望んで彼に連れられていったのだ。
勿論、意識もはっきりしていた。そんな事は今では何度も肌と心を重ね合わせている彼に看破されないはずもなく……

「一ヶ月しか、ってまだ三ヶ月だろ?それにあの時嫌って言わなかったよな?」
「…………失神してて言えなかっただけだもん」
「嘘つけ、起きてた」
「………………もう。それで?ウチの浴槽で使う気?いくらなんでもふざけすぎよ。ごまかせるわけないじゃない。
 ……普通のお風呂なら入ってあげるから、良いでしょ?それで」

私(というよりは私達、か)は、いつもこうだ。
初めは彼の要求を私が拒絶するのだが、なんやかんやで言いくるめられてしまって、受け入れてしまうのだ。
いつも悪い気はしないのが憎らしいのよね。愛情の裏返しなんだろうけど。………まだ子供なのに何馬鹿言ってんだか、私。

「いや、折角買ったんだから使うぞ」
「ならアンタんちで使うの?」
「それもキツい」
「………じゃあどうするのよ……………(ちょっと楽しみになってきたのに)」

ぽろっと呟いた本音に全力で耳を傾けたこのサルは、にやにやと気色の悪い笑みを零してこう続けた。

「ホテルだ」

―――そして冒頭に戻る―――
言い訳と回想終了。ハイ、言い訳にもなっていませんでした。すいませんっしたー。
……ちくしょー。色んな意味でちくしょー。
ま、発症しなければこんな関係にもならずに、コイツのあんな顔も見られなかったわけで。
ある意味こんな病気を作った悪魔に感謝……ではなくて、えーと、その、なんでしょうね……。
586 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/29(水) 23:43:07.95 ID:iYDU0jovo
「ん?お前も飲むか?」
「いらない。こういう所のドリンクは高いんだからやめておきなさいよ」

デートが始まってからずっと鼻の下を伸ばしっぱなしで、今も馬鹿面さげてルームの冷蔵庫を漁っている。
やめろやめろと再三注意しているのに、彼は全然聞き入れちゃくれない。
大体、こんな場所のものはどれも定価の1,3倍〜1,5倍になるもの。下手すると倍以上だ。
それでもこういう場所だからこそ欲しくなる客の心理を突いた商売だ。別にソレ自体を咎めるつもりは無い。
けれども、それに嵌ってしまうのが自分自身だとか、恋人だとかなのが我慢にならないだけ。
高校生な私達は無駄な出費は避けないとロクに遊べないのだから。
……まぁ、バイトでもすればいいのだろうけど。

「いやー、浮かれてるわ、オレ」
「……見れば解る」
「ハルだって浮かれてるだろ?」
「………別に」
「そうか?服装と髪型、気合入れてるみたいだけど」
「どこが……」

普段の学校生活では長めの黒髪をツインテールに束ねている。
趣味ではないのだが、成り立ての頃に母に『折角だから可愛い髪形にしなくちゃね』などと強引にさせられてしまったのが始まりだ。
それでも今では割りと気にいっていて、学校の間はそれで通している。しかしながら、やはり本来の好みでもない。
こいつもこいつでツインテールが好み、ってわけでも無いのでデートの時やプライベート(高校生には大げさか)の時はほどいている。
勿論今も。曲がりなりにもデート形式なのだから当然。

「髪型はいつも通りでしょ、服装だって結構手抜いてるし」

そう、今の私の服装は女性用のジーンズと黒のタンクトップに、適当に薄手の上着を羽織っている。
多少首周りに花柄のレースが装飾されているものの、基本的に洒落た格好ではない。
今の服装は男だった時に好んで着ていた服装に似ている。コイツと付き合うようになったから意識するようになっただけ。
基本的に私は(悪い意味で)適当なのだ。

「そうか?お前さ、気合入れてる時に限って普段通りにしようとする癖あるだろ?」
「………え?」
「ハルさ、今じゃそうでもないけど、ちょっと前までスカートとかモロに女物避けてたよな」
「そりゃね。いくら頭では解ってても恥ずかしかったもの。………だから今は手を抜いてるってわかるでしょ?」
「違うな。今じゃすっかり逆になってるだろ?手抜きするなら、ぱぱっと女物着て来るだろ?」
「………さてどうだか」
「すっかり感覚が反対になってるんだろ?わざわざ男ものっぽい服装選ぶのは苦労しただろー」

はい、照れ隠しの嘘があっさりバレました。
……どうなってんの、私とスる前まで表向きは喜んでても、本当は女が苦手だったはずなのに。
どうして

「どうして解るのよ」
「何年付き合ってんだっけか?オレ達」
「友人だった時も含めると十年ね。……ホント、癪。女が苦手だったとはとても思えないわ」
「ソイツはちがうなー。今もまだ苦手だ」
「………アホな事言わないでよ。じゃあどうしてさっさと見抜いちゃったのよ。私の女心?みたいなものをさ」
587 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/29(水) 23:44:34.48 ID:iYDU0jovo
イマイチ自信が無かったので疑問形。
友人の彼氏には『発症者のパターン』なんて偉そうに解説をした事があるものの、未だにさっき見抜かれた自分の中途半端さには辟易してたりする。
おとなしく可愛い服でも着てくればよかったかなぁ…

「ハルのだからだ」
「…………(ドキッ)」
「オレが女心なんて複雑なもん理解してるわけねーだろ、ハル限定だ、限定。良い意味でも悪い意味でも良く知ってるからな」
「女扱いされてなくて喜んでいいのやら、怒ればいいのやら」
「ハルはハルだ。どっちに偏った扱いしてもハルは満足しないだろう?」
「……そうかもしれないけどさ」
「かもじゃなくてそうなんだよ。オレが言ってんだから間違いない」

そりゃそーだ。そうじゃなきゃ私がここまで良いように扱われてないもの。
心の中でそう納得して惚れ直していると、彼に後ろに回りこまれてベルトに手をかけられていた。

「え、ちょ……いいけどさ。一言確認が欲しい。唐突だとびっくりする」
「拒否しないのな」
「するわけないじゃない。……ぁっ、ちょっ、首筋舐めないでッ!匂い嗅ぐなっ!」

彼は器用にもベルトを外しながら私のうなじに舌を這わす。
性欲旺盛な彼にすっかり開発されている私の体は、たったそれだけで否が応でも感じてしまう。

「お風呂入る前に一戦やらかすつもりなの……?」
「んー……それも勿体無いな。ほれ、バンザーイ」

ベルトを外され、上着を剥ぎ取られ、次にタンクトップの裾を掴まれる。両手を上にあげると、するりとそれを脱がされた。

「……あのさ、こういう時はいっつも脱がすけど、私を脱がすの好きなの?」
「好きだ」
588 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/29(水) 23:46:15.04 ID:iYDU0jovo
Q1.つづくんですか?
A1.つづきます

Q2.また寸止めですか?
A2.また寸止めです

Q3.ちくしょー
A3.ざまぁwwwwww

Q4.また長いの?
A4.そんなに長くならない予定です
589 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/29(水) 23:52:38.18 ID:iYDU0jovo
………訂正が1箇所
>>568のお題じゃなくて>>569のお題でした。

間違えて申し訳ない。
凡ミス多いなぁ……
590 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/30(木) 00:59:23.33 ID:bGJ8aVrAO
>>588
職場でパンツ脱いだ漏れに謝れwwwwww
591 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/30(木) 09:03:45.56 ID:Xc4GeijJ0
うぉぅ、とーや君が予想以上にヘンタイだ
しかも紳士な振る舞いなくせに、恋人のPCからえっちな注文とかキチクヘンタイだ
愉快なヘンタイすぎて他になにレスしようとしたか忘れてしまったじゃないかww
ナイスヘンタイ、いいぞもっとやれっ
592 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/06/30(木) 10:46:01.51 ID:PYLpcHEAO
本編が煮詰まって来たので現実逃避がてら久しぶりに安価でも。

赤羽根キャラでも過去作品のキャラでも新規でもエロでもピュアでも可。

や、優しくしてね……?


>>593
593 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/30(木) 11:30:42.51 ID:Xc4GeijJ0
「ピュアなあの子に優しくしてあげたいたいのに、なぜかいつもヘンタイ展開」
594 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/30(木) 11:32:10.52 ID:KvVieOgJ0
ヘンタイ盛り過ぎワロタwwwwww
595 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/30(木) 11:42:16.38 ID:Xc4GeijJ0
>>594
タッチの差で安価もらっちゃったぜイェイ

片手間になっちゃうけど何か気晴らしが欲しいので何かくださりませ
>>596
596 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/30(木) 15:16:09.31 ID:KvVieOgJ0
ペロペロ
597 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/06/30(木) 15:22:48.92 ID:KvVieOgJ0
探偵さんペロペロ支援

http://dl3.getuploader.com/g/6%7C1516vip/60/akabaneperopero.jpg

ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ_○/|_
設定色々間違ってると思います、そもそもイメージ違うと思いますゴメンナサイ_○/|_
598 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/30(木) 17:36:33.22 ID:Xc4GeijJ0
あんまり鬼畜じゃなくてホっとした安価「ペロペロ」

「それでね、男ったら『アイドルちゃん可愛いな、ぺろぺろしたいなー』なんて呟いてたのっ!
 キッモイよねー!にょたも気をつけなきゃダメだよー?」
「女ちゃん、それは違うよ」
「え?」
「ペロペロは女ちゃんが思ってるよりもずっと一般的なんだよ?例えば――」
「きゃっ」
「ほら、おとぎ話なんかで騎士様がお姫様の手の甲にキスするでしょ?
 あれって子供向けな表現で、本当はこんな風に愛情を持ってペロペロしてたんだって」
「ヤっ、くすぐったぃよ」
「靴を舐めるのが屈服の証であるように、コレも相手への信頼と服従、そして深い愛情を表現する古来からの習わしなんだよ」
「あ、あいじょう?」
「うん……ボク、女ちゃんのコト大好きだから、こんな事も平気で出来るんだ」
「にょたがあたしのこと……そんな風に……」
「女ちゃんは?ボクの事、キライになっちゃった?」
「ぇ?……ううん、嫌ってなんかいないよ……」
「じゃぁ、ボクの指も……して?」
「やぁ……くちびるなぞるのやめて……」
「無理しなくていいよ、ちょっとずつ……ね?」
「ん……んちゅ……」
「女ちゃん、まっ赤になっちゃって可愛いー」
「はぅ……恥ずかしい事言わないで……」
「それじゃこうやって、女ちゃんの指とボクの指をからませて……」
「ぬるぬるの指がえっちくて、なんだか……なんだか……」
「でもほら、これって恋人繋ぎ♪」
「あ……」
「女ちゃん……一緒にぺろぺろ、ね?(ぺろぺろ)」
「にょた……にょたぁ……(ぺろぺろ)」

「確かに俺は、にょたなお前にならと……失言を挽回するために力を貸してくれと言ったけどさ」
「うん、反省してる」
「にょた大好きっ、ぺろぺろ♪ぺろぺろ♪」


ハッ、鬼畜安価でもないのになんでこんな内容にww
気晴らし安価ゆえ、お目こぼしくだされ
599 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/30(木) 19:43:00.78 ID:jlqtGr7xo
>>569のお題 初回且つ前回 >>585-587

――――ガラガラガラ
やたらペッティングされながら服を脱がし脱がされ、いよいよもって例のローションを使うお時間と相成りました。
透明なガラスの引き戸で中身が部屋から丸見えのバスルーム。お互いバスタオル一枚で引き戸を開け浴室へ入り、設置されている西洋風のバスタブにお湯を張る。
蛇口を捻るだけでお湯が出るのは楽でいいなぁ……

―――キュッキュッキュッ…ジャ〜

「で、その変なのローション、どうやって使うか解るの?」

彼は持参した紙袋からごそごそとローション風呂用の説明書と使用する薬剤?の入った袋を取り出した。

「えーと…『浴槽にお湯(40℃前後)を一般的な浴槽で約1/3まで溜めます』か」
「わ…とと、ちょっと入れすぎてる?」
「どうだろうな?少し位多めでもかまわんだろ」

―――キュッキュッキュッ

「そうね。で、次は?」
「『中身の固形物と液体をしっかりもみほぐして、馴染ませましょう。中身を浴槽全体にまわるように入れます。
※袋の底の沈殿物まで全て入れ、手早くかき混ぜましょう』だとさ」

彼は説明書の通りにぐにぐにと袋の上から揉みほぐす。今は夏場だからいいけども、冬場にコレをやったら風邪を引きそうだ。
………と、ここまで考えて

「あのさ、服脱ぐ前に準備した方がよくなかった?」
「…………そーだな。なんで今まで気付かなかったんだろう」
「……ぷっ」
「ぷははっ、二人そろってなんか間抜けだ」
「だよねぇ」

ある程度中身を揉みほぐすと、袋の中身をダバーっと1/3ほどお湯を張った浴槽に流し込む。

「ほら、ハルもかき混ぜるの手伝ってくれ」
「はいはい」

二人して跪いて浴槽のローションをかき混ぜている図はやたらシュールだ。
かき混ぜている内に浴槽のお湯にとろみがついて来た。両手で少量掬い取って手の甲に塗りつけてみると、ぬめぬめした感触がしっかりと感じられた。

「うわー、うわー、うわー……これすごいね……ぬるっぬるのつるっつる…」
「すげーな……」

お互いにローションの感触を手や腕で確認すると、感嘆の声を漏らす。手に取っただけでこれなのだから、浴槽に入って抱き合うとどうなるかは想像に難くない。
―――ごくり

「ハル、今唾飲み込んだか?」
「……うん」
「オレも飲み込んじまった」
「だよね」
「仕方ないよな……」
「仕方ないよね……」
「浸かる前に……舐めてもらってもいいか?」
「……うん」

彼はバスタブの横側に背を預け、浴室の床にあぐらをかいて座り込む。タオルで隠されていたはずの怒張はすっかりテントを張っていて、自己主張が激しかった。

「ガチガチじゃない」
「……仕方ないだろ」

お互いにタオルを取り払っていざ咥え込もうとしたところで、彼に制止された。

「あ!……ちょっと待ってくれ、ゴムを財布に入れっぱなしだ」
「……ぁむっ」
600 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/30(木) 19:45:56.97 ID:jlqtGr7xo
別に今言わなくても……等と言った反論代わりに、喉奥まで使って勃起している肉棒を一気に咥え込んだ。
牡の強い匂いと味が鼻と口いっぱいに広がる。

「い、いきなり咥えるな……っ!」
「んっ…じゅる……ずずっ…れろっ」
「ひ…っ、こらっ!取りに……いけな……っ…ぅあっ」

根元まで飲み込んで、亀頭と根元までゆっくり往復しながら口の中で陰茎全体に舌を這わし、右手の人差し指と親指でわっかを作って陰茎の根元に添え、口の動きに合わせて陰茎部分を扱く。
一方の左手はと言うと、袋の方をふにふにと優しく揉みしだいた。舐め上げられる度に彼の怒張全体が震え、声を上げて悶えている。
私の口と手から与えられる刺激でまともに立ち上がる事すら出来ないようだ。

「まじ…っ、やめろって……っ!んぁっ!?」
「ずずずっ……ぷはっ…大丈夫、ピル飲んでるから、取ってこなくていいよ」

一旦口から離してそう伝え、今度は浴槽からローションと化したお湯を手で掬って胸の谷間に塗り付けた。

「………初耳だぞ」
「言ってなかったもの」
「じゃあどうして今になって言ったんだ?」
「や、その……だってさ、毎回とーやがリードしてて、でも最初以外しっかりゴムつけててくれて言う暇なかったんだもん」
「いや、それでもだな……まぁいいや、とりあえずゴム取ってく―――るッ?!」

彼が立ち上がろうとしたので彼のふとももを両手で掴み、上半身に体重をかけて彼の股間にのしかかって身動きを止め、怒張を胸に挟み込んだ。

「マジやめ……っ、お、おいっ、今舐められたら……〜っ!」

塗り付けたローションのおかげか、つるんと谷間に入った怒張の先端をちろちろと舌でねぶる。
バストサイズはトップ88のアンダー67でEカップ。クラスでもかなり大きい方らしいので肉棒を包み込むくらいは簡単に出来た。
そういや委員長が巨乳派で羨ましがってたっけ…本人は虚乳だからか、それとも男としての性欲が残ってるからか…どちらか定かじゃないけど。
ちなみに私が男の時は貧乳派でした。委員長と好みの胸の大きさで火花を散らした日々が懐かしくも馬鹿らしい。
………もしも、うっかり本人の前でこんな事漏らしたら彼との赤裸々な性生活を学校中にバラされかねないなぁ。

そんな馬鹿げた事を考えながら両手で胸を圧迫し、挟んだイチモツに刺激を与える。勿論上下に胸を動かして陰茎をしごくのも忘れない。潤滑油たるローションのおかげで動きもスムーズだ。
陰茎をしごく谷間にひょっこり顔を出していた亀頭に口付けをし、含んだまま中で唾液を垂らして少しずつ出てきた我慢汁ごと啜り上げた。

「ちゅっちゅっ…ずずっ…」
「まっ…?!ど、どこでそんな……こ……ぅあっ!そ、それヤバイって!?」
「ずずずずっ…ぷぁ……んー。ネトゲで知り合った女性の人から。ローション使わないとこーいうの気持ちよくないらしくてさ」

また亀頭から口を離して返答をした。聞いた話だとローションが必須らしいので今までやる機会がなかったのだ。
……だってさ、ローション買って用意してまで女の方からパイズリしてみたいなんて言ったら退かれそうだったし。

「そんなところでそんな話すんなよッ!……ちょっ、ま、まだ続けるの……かっ?!」
「ぁむ……じゅるっ…じゅるるっ……ずずずずっ」

勿論イかせるまで続けるつもりで、今度は啜りながら尿道口に舌の先端を少し捻じ込む。
陰茎がピクピクと小刻みに震え、射精が近い事を予想させた。

「や、やめろって、もうで……出るっ…!」
「……ちゅぅ…ずずっ…らひへぇ…」
「咥えたまま喋るなっ!離せ……マジ……〜〜〜〜っ!」
―――どくんっ…びゅるっびゅるるっ

一際大きく肉棒が震えたかと思ったら、咥えていた亀頭から白濁液が吐き出され、私の口内を犯した。
むせ返るような強い男の匂いと精液の苦味をじっくりと鼻と舌で味わい、射精が終わるまで唇を離さずわざと音を立てて飲み込んだ。
離す瞬間、尿道に残っていたと思われる精液がほんの少しだけ飛び散り、私の顔を汚した。

「んっんっんっ…んぐ……ごくんっ…ぷあっ……いつもよりなんかノドに絡みつくなぁ…濃いっていうんだっけ?こういうの」
「………はぁっ…はぁっ…ハル……エ、エロすぎだろ…」
「仕込んだのはとーやでしょ?」
「いや、そうだけどさ……」
「気持ちよくなかった…?」
「………………気持ちよかったです」
「ふふっ、ならよかった」
601 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/30(木) 19:47:20.61 ID:jlqtGr7xo
彼の様子を確認すると、少しだけ満足げになる。
飛び散った精液を指で掬い取って舐めとり、再び怒張を咥えて尿道に残っていた精液を余さず吸い取った。
その際、左側の後ろ髪が前に垂れて来て邪魔だったので、左手で耳に沿ってかきあげる。

「ンっ…ずずずっ」
「も…もういいって!」

残った精液を吸い取り終わるや否や、彼に頭を引き剥がされてしまった。
首をかしげていると、息の荒い彼がこう応えた。

「……また出しかねないから、しなくていい。……そろそろ入りたい」

恐らく浴槽と私の中の二重の意で言ったのだろう彼は、浴槽の端を背にして腰を下ろし、足を伸ばす。
お掃除フェラで再び勃起させた肉棒が、ぬるっとした透明度の高いお湯の中にあるのがぼんやり見えた。
手招きされた私も恐る恐る浴槽の縁を手で掴んで、転ばないように注意しながら足先から入り、彼の胸板に背を預ける形で腰を下ろす。

「……ぬるぬるする」
「そりゃ、ローション風呂だしな」
「そうなんだけど……髪さ、後ろで括っておけばよかったかな。半分くらい浸かっちゃった」
「かもな。まぁ、手遅れか」
「うん」

彼の両手が私のおへそ辺りに回されて、ゆっくりとお腹や恥丘を撫で回された。
普段と違ってローションのせいか、ひっかかりが全くなく、ぬめぬめと舌を這わされているような感覚がする。

「ハルにもお返ししないとな」
「え?何を――」

それ以上聞くまでもなく、彼の指が私の秘裂をなぞり始めた。
先ほどのフェラですっかり昂ぶっていた私にとって、擦られるだけで背が仰け反ってしまう。

「ひゃんっ?!」
「おっ…良い反の……うわっ!」

仰け反った反動と体中が浸かっているローションのせいでつるっと頭の天辺まで湯船に滑り落ちそうになる。
慌てて彼が腰を掴んで支えてくれたので事無きを得た。

「………ありがと。これ、気持ち良いけどすごい危ない」
「だな……」
「……あのさ、触らなくていいから、もう入れていいよ」
「いいのか?」
「……うん、とーやの舐めてたら濡れちゃったし」
「…………ハル、手加減させないつもりか」
「いっつも最終的には本気になってるじゃない。何を今更……」
「まぁ…そりゃいつもハルが悪い。あ、ゴム――「要らない」

またコンドームを持ってこようとする彼の言葉を遮った。
避妊への意識が高いのは大事にされている証なのだけど、今日は生で彼を感じたい。その為にピルを服用しているのだから。
………と言っても、ピルの服用も母の勧めだったりする。提案された時は彼との関係がバレた事で顔から火が出る勢いだった。
さすが異性化疾患の大先輩、何でもお見通しというわけだ。

「あのなぁ……」
「いいから。大丈夫だから…たまにはとーやのありのままを感じたいの。………駄目?」

少し離れて体を回し、彼の胸に前から抱きついて、上目遣いに懇願してみた。
実を言うと、抱きついた時に既に怒張の上に跨っていて、亀頭を秘裂の入り口に押し付け、拒否しようがしまいが返答を聞いたらこのまま腰を落とすつもりだった。

「………拒否権ねーのに聞くな」
「でも、とーやの答えが聞きたい」
「…………」
602 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/30(木) 19:48:14.51 ID:jlqtGr7xo
彼は私の腰をがしりと掴むと、一気に下へ引き寄せ、肉棒を膣の一番奥まで突き立てた。
いつもなら、私には大きすぎる怒張が膣壁を削り取るかのように抽挿されるのにも関わらず、今の私はローションのせいで、滑り込むかのようにあっさり根元まで咥え込んでしまった。
イチモツの熱さもゴム越しで感じるものよりは遥かに熱い。熱いのにぬるぬると膣壁の至る所を優しく擦り上げ、お腹の中に甘い痺れを生み出した。

「………い、いつもより…す、すご…ぃ…ぃぃっ」
「ハ、ハルの中……熱いな……わり……っ…動けないから、頼む」
「……うん」

浴槽の、しかも張られている液体はお湯ではなくローションなのでかなり動き辛い。
必然的に腰の動きも緩慢になる上に、ローションと化した水の抵抗も馬鹿に出来なかった。
―――ぐちゅっずちゅっ
妙な水音を立てつつも、ゆっくりと腰を上下に動かして膣内を彼の怒張で味わう。

「……ぁんっ…ぁっぁっぁっ……!」

初めての時に感じた生の熱さと激しさを思い出す。
但し、今は熱さだけが先行して、思うように膣内を掻き回して貰えないのがもどかしい。
おまけにローションの纏わりつくぬるっとした感触のせいで怒張が何度も滑って膣から抜けてしまい、その度に手で入れ直すハメになった。
まるで初めて騎乗位でシた時のようだ。あの時も上手くできなくて何度も膣から抜けてしまって、かなりイライラしてしまったのだ。
思い切り動かしたい、掻き回されたい。そういった想いが頭の中を渦巻いて、疼いて疼いてしょうがない。

「とーや…とーやも……うご…ぃて……んっ!ぁふ……これ、うまく……うごけ…なぃ…っ!」

彼は返事代わりに私を抱き寄せ、激しいピストン運動を始めた。
私が動かしている様子を見て勝手を掴んだのだろうか?的確に肉棒が膣内を余すところなく舐り倒す。
――――ずちゅっぬちゅっずぶっ

「ぃっ?!ひぁっ!……ぁっぁっ…ンンっ!ふぁっ!あんっぁっんぅっ!」

やっと欲しかった強烈な快感を受けた私は、思い切り声をあげて彼の腕の中で喘いでいた。
その様子を彼は満足げに見つめている。

「ゃっ!ゃぁっ!…とーやっ!とーやぁっ!」

ローションのぬめりと生の肉棒の熱さと激しく抽挿されている事が重なって、全身が溶け、彼と一つになっているかのような一体感を覚えた。
――――ずぶっ!ずちゅっ!ずぶぶっ!
彼の抽挿が更に速さを増し、限界が近い事を想像させる。
私の方は既に何度も達していて、ぎゅうぎゅうに膣で肉棒を締め付けているのだが、ローションのせいでするりと滑って上手く固定できずにイきたての中を擦られ続けていた。

―――ちゅぅ

急に後頭部に片手を回されたかと思うと、強引に唇を奪われ、舌は勿論の事、歯や歯茎、頬の裏側など口内の全てを舐め尽くされる。
不意打ちに近いディープキスで私は一際大きな波が来そうになる。寸でのところで我慢しきったかと思うと、思い切り腰が押し付けられて子宮口まで肉棒の先端が捻じ込まれた。

「んぅぅぅぅぅぅ?!」

――――ドクッドクンッドクンッドクンッ

子宮をノックされた衝撃で盛大に達してしまうと同時に、締め付けた肉棒が精液を大量に子宮へ注ぎ込む。
肉棒よりも更に熱さを帯びた白濁液が子宮の壁に叩きつけられ、私は頭の中が真っ白になり、全身を蕩けさせた。

「はぁっ……はぁっ………はぁっ…はぁっ」

長い射精を全てお腹の中で受け止めきると、私はぴくぴくと震えて動けなくなった。
……おまけに達した余波で全身の筋肉が弛緩してしまい、潮とは思えない体液をローション風呂の中に漏らしてしまっていた。
水というかローションの中に漏らしてしまったので、音が立たなかったのが不幸中の幸いか。

「……ごめ…ん……も、もら…した………かも」
「……気持ちよかったか?」
「………よすぎてどーにかなりそ……」
「オレもだ……」

暫く繋がったまま抱き合って余韻を楽しんだ。
……まぁ、たまにはこういうのも悪くないかな。うん。
603 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/30(木) 19:50:08.82 ID:jlqtGr7xo


――――――
――――
――


十分に余韻に浸った後、全身に絡みついたローションをシャワーで洗い流してから、後始末に取り掛かった。

「これ、このまま流して良いの?」
「駄目っぽかったな。ちょっとまってくれ」

浴室の端っこに置かれていたローションの入っていた紙袋から、小さな紙切れと何か粉の入った袋を取り出した。
紙切れの方は説明書だろう。もう片方の小さい袋はなんだろうか?

「えーと…『溶解剤1袋(80g)を全体に入れ、よく混ぜます』とさ」
「溶解剤って、それ?」
「みたいだな」

―――さらさらさら

「入れたらどうなるの?」
「お湯に戻るみたいだな」
「じゃあこのまま捨てちゃえばいいのね?」
「いや、待て、急ぎすぎだ」
「え?だめなの?」
「15分から20分くらい待ってから排水しろってさ」

ぴらぴらと説明書をはためかせながら、彼はそう言った。
………15〜20分か……や、でもシたばっかりだし、そんな、私から誘うのも、ちょっと……
顔を見られないように俯いてそんなことを考えていると、いつの間にか背中から抱きしめられていた。

「……なぁ、思わず中に出しちゃったけどさ、万が一の時は責任取るから」
「え?」
「……いやまぁ、オレみたいなガキが言っても説得力ないけどさ」
「そんな事ないよ。とーやじゃなきゃやだ。でもさ、ピル飲んでるから大丈夫だってば」
「あのなぁ……つーかいつから飲んでんだ?飲んですぐ効く薬じゃないだろ?」
「えっと…5月中旬くらいから飲んでるから平気」
「……そんな前からか」
「うん。それにさ、私はちゃんと、とーやが大切にしてくれてるって解ってる」
「そっか。あー…………あとさ、待つ間もう一回……良いか?」
「…………………ぅん」

結局、溶解剤とやらが効果を発揮するまで待つ間どころか、休憩時間の大半を様々な体位で絡み合い、体の隅々まで彼に犯される事となった。
あ、勿論望んで犯されたというか、受け入れているというか……愛し合ったとかのが良いのかな。……でもまだ子供だしなぁ。
……はぁ、それにしても今日の私は乱れ過ぎだ。友人にでもバレたら折角作り上げた私のイメージがぶち壊しですよ。
まぁ、ラブホなんかでバッタリ出会うなんて有り得ないだろうけどさ。

「チェックアウト5分前だってさ」
「はーい。うん、これでいいかな」

その後、二人とも汗や精液に愛液などの混ざり合ったものを綺麗に洗い流し、手早く身なりを整えた。
最後に手鏡で確認しながら携帯用の櫛で髪型を整え、いそいそと二人で部屋を後にする。

―――ガチャッ
―――ガチャッ

「「「「………え?」」」」
「白詰…と、彼氏か?」「……ナオ、と…鈴城君?!」
「やっぱり風見くんだ!ほら、ボクの言ったとおり」「……マジだ」
604 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/30(木) 19:52:10.28 ID:jlqtGr7xo
うん、フラグ回収乙でした。
早い、早いよ!
おかしいですよ!白詰さん!?
Know thyself (汝を知れ ※自分自身を見失うな。という意味のことわざ)
Walls have ears (壁に耳あり ※障子に目あり)

などと脳内議会も大パニックだ。


「アレどうだった?氷山くん」
「ああ、アレすごかったぞ。お前らはどうだった?」
「うん、ボクらもかなり、ね〜?」
「〜〜〜〜〜っ!」

何故そこでナオよりも鈴城君が赤面するのか不思議だ。いや、そんな事よりもまさか…いやいや、馬鹿な。
私の予想が間違っている事を祈りながら、恐る恐る偶然居合わせたノースリーブで白のワンピースを着たクラスメイトの女の子に尋ねた。

「………まさかローション風呂って――」
「うん?ボクが氷山くんに教えたんだけど、よくなかった?」

………………………
一瞬、先ほどとは違う意味で頭の中が真っ白になった。

「それにしてもさぁ、風見くんってシてる時の声おっきいんだね〜。隣のボクらの部屋まで響いちゃってさ〜」
「………だったな」
「ま〜、そのおかげでボクらも盛り上がっちゃったんだけど。てへっ♪」
「い………」
「い?」
「いやぁぁあああああああああああああっ?!」

頭にかぁっと血が上り、火を噴出しそうになる。頭を両手で抱え込んで、折角整えた髪が乱れるのも構わず、頭を左右に激しく振った。
取り乱した私を見たとーやが後ろから抱きしめて頭を撫でてある程度落ち着かせてくれた。……ありがと。

「や〜、でも偶然居合わせるなんて運がいいねぇ〜」
「そうだな。教えてくれてサンキューな。マジ良かった」

とーやが私を抱きしめたまま、ナオと例のローション風呂について談笑している。
対する私は先ほどよりは幾分か落ち着いたものの、彼の腕の中で縮こまって耳まで真っ赤にして赤面中。
そして私と同じように赤面しながらナオの隣に立っている鈴城君。
…えっと、対比するなら普通、私とナオ それに とーやと鈴城君、ではないだろうか?

どうして私と対になってるのが鈴城君で、とーやと対になってるのがナオなのか問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。

「……なんでナオは平気な顔してるのよ」
「ハルこそ何言ってんだ。昔の白詰ってこんな感じじゃなかったか?」
「……そうだっけ?」

ナオも私と同じように異性化疾患の発症者だ。それに加えて中学時代からの友人。
……なので、とーやに言われた通りに昔の記憶を掘り起こす。
昔と言っても1〜2年前くらいで十分だけど。

「……………確かにとんでもないエロ小僧だった。しかもあけっぴろげの」
「だろ?」
「うん♪」

おい、馬鹿やめろ、この会話は早くも終了ですね。
っていうかそんな可愛い笑顔で『うん♪』とか言って肯定するなっ!
学園祭前までの花も恥じらう恋する乙女は何処に行った!?天国ですかっ!?親父ギャグかっ!!
全く……これじゃ私の方が恥ずかしいし、ナオの彼氏も困ってるじゃない……

結局この後、ナオ達とWデートと相成りました。まさかこんな形で行う事になるとは夢にも…
しかも意外と楽しかったのが癪だ。但し、休日明けの学校でバツが悪かったのは言うまでもない。


おしまい
605 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/06/30(木) 19:53:13.06 ID:jlqtGr7xo
あとがき
Q1.本お題中の時期は?
A1.7月中旬

Q2.キャラや世界観は>>57のお題『ボク初』の流用?
A2.yes
ガチエロで新規キャラは難しすぎたので番外編みたいな形にしました。
とは言え、これ単品でも読めるように仕上げたつもりでもあります。

Q3.今回の主人公二人の名前は?
A3.
風見 春
氷山 冬弥

Q4.エロくないor(and)おもしろくない
Q4.すみません……

Q5.校正はした?
A5.
校正どころか推敲も余りせずに勢いだけです。
誤字脱字稚拙表現間違いは脳内変換をお願いします

Q6.
>>590
>職場でパンツ脱いだ漏れに謝れwwwwww
A6.
しょwwwくwwwばwwwwwwざまぁwwwwww
いや、マジで自宅で読みましょうよ。自宅で。

Q7.
>>591
>うぉぅ、とーや君が予想以上にヘンタイだ
A7.仮にヘンタイだとしてもヘンタイと言う名の紳士だよ!

Q8.鬼畜安価ざまぁww
A8.ちくしょー


お粗末様でした。

ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおお!!(ノд`)
606 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/06/30(木) 19:54:22.84 ID:K/+mFtuV0
リアル投下まじおいしいですww
超GJ!
607 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/30(木) 20:19:03.00 ID:bGJ8aVrAO
>>605
ふぅ……



けしからん、本当にけしからん……
バンザイ!バンザイ!バンザーイッッ!!
超グッジョブ!!!

……イカン、また…
職場のトイレなのに……wwwwww
608 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/06/30(木) 21:14:27.09 ID:bGJ8aVrAO
>>598
……ちっくしょッ…どいつもこいつもえっちい……!
いいぞもっとやれ!もっと!!
609 :しんしです ◆HVh5q8Srf. [sage]:2011/07/01(金) 11:14:01.53 ID:RKBLbmHAO
「う〜んやっぱり僕と同士だっただけあって君は変態だねぇ」
 笑い話のような軽い調子で伝えた(とても女の子に向けて伝えてはいけない)俺の願望を聞いて、ベットに腰掛けながら少女(こう呼んでいいものなのか判断しかねるが)は言った。
彼女は色素の薄い金色の髪をゆらゆら燻らせ、目を細めてこちらを見据えている。
 浮かべた微笑み(恐らくは苦笑であろうが)が俺への侮蔑を現しているようで、なんだかとても情けない気持ちになってしまう。
 彼女は何も言わず、俺は何も言えないまま、無言の時が流れた。
正座したままの俺の足が痛みを持ち始めた頃、彼女が口を開く。
「あはは、何この空気。少し前までは似たような話しててもお互い何でもなかったのにねえ」
 笑いながらそういう彼女は、口にする言葉は軽く笑い飛ばすようではあるが、頬にはかすかに赤みがさしている。
 その上、俺からも目をそらしてしまったのだから、彼女も変わってしまった性別に戸惑っているのだろう。
 いやただ単に、俺の発言が依然から話題に上っていたことはあったにせよ、あまりに衝撃的だったからなのかもしれないが。
 そして、前から上っていた話題とは……。
「まあ、実際に女になっちまってから言われると結構戸惑っちゃったけど……。
 今度は今みたいな空気にしないから、もっかい言ってみてよ。お前の頼み事」
 ――どっちかが女になってしまったら、男の方の性癖に全力で応えてやろう。という内容。
 しかし、今の彼女の対応を見るに、このまま行けば笑い話で終わるだろう。
 現に彼女は薄い笑みを浮かべたままであるが、その笑みは苦笑というよりも、笑ってやるための準備、というふうにうつる。
 当然、以前の――男同士であった頃の関係に近いままでいるのであれば、笑われてしまった方がいいに決まっていた。
 そして恐らくは、彼女は以前の関係のままの方がいいと考えている。
 だが俺は、元の関係のままでいたいとは思えなかった。
 ――もしかしたら、一目惚れだったのかもしれない。友達であった元男に一目惚れするなど、まともではないと自分でも思う。それでも……。
「……本気なんだ。俺は、お前と、そういう事をしたい」
 本心からそう言って、彼女と目を合わせる。
「ふぅん……」
 俺が思っていたほど意外そうな素振りも見せず彼女はこちらを見据えるようにする。
610 :しんしです ◆HVh5q8Srf. [sage]:2011/07/01(金) 11:19:07.76 ID:RKBLbmHAO
 彼女の金色の髪は相変わらず風に揺らめいていて、どこか茫洋とした印象を与えている。
 そのためか、彼女の心のうちが那辺にあるのか、欠片もつかむことができなかった。
 しかし気が付けば彼女はまた微笑みの色を変え、こちらを見つめている。
 先程までよりもずっと強い印象を与えるその微笑みのまま、確かに嗜虐的な表情であるその微笑みのまま、口調にも侮蔑を露にこう呟いた。
「それなら、本当に本気だって言うのならさ。
さっきみたいに笑かすみたいに言うんじゃなくて。
 冗談みたいに伝えるんじゃなくて。
 ……本気の言葉で伝えてみてよ」
 ――お前の、その恥ずかしい性癖をさ。
 その口調のあまりの凄惨さに、思わず背筋が震えた。
「さぁ、早く、教えなさい」
 なおも言いつのる彼女に対し俺はやっとの思いで口を開いた。

なんだかHな流れだったので初投稿してみました。
推考どころか誤字とか一人称の確認もしてないので、いろいろミスがあるかも


その上性癖が特に思い浮かばなかったので安価↓
611 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/01(金) 12:55:26.80 ID:BgjQIhNX0
足責め
612 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/01(金) 13:04:33.64 ID:Coj55udAO
>>611
勿論それってサイハイニーソ着用の上で、お互いの関係が同士=親友である事を強調した実況パワフル足コキだよね?ね?
613 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/01(金) 13:37:07.35 ID:BgjQIhNX0
「お願いするんだから、それ相応の態度ってものが(ry」とか言って足舐め強要
                   ↓
不覚にも感じちゃいつつ、照れ隠しに言葉責め。「元男友達にこんなことされて恥ずかしくないの」云々
                   ↓
なんだかんだノリノリで踏み+足奉仕までは想像できた。
嫌悪の表情を作って口では「厭で厭でたまらないけど」なんて言いながら、最終的には顔面にソックス脱ぎ捨ててくれるとなお良し
614 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/01(金) 14:13:10.33 ID:Coj55udAO
「…ハァハァ、友のムレムレ靴下…」クンカクンカ
「しょっぱくて美味しい…」モグモグゴチソーサマ
「変態!!変態!!変態!!変態!!」
「キレイ……友……キレイ……」


……ハっ!?しまった、すっかり妄想してた……
ビッチっポイにょたの見え隠れする羞恥って御馳走ですww
変態紳士さんの投下楽しみにしてます!
615 :しんしです ◆HVh5q8Srf. [sage]:2011/07/01(金) 16:21:57.09 ID:RKBLbmHAO
>>611
了解しました


……実況パワフル足こきってなんぞww

方針的には>>613ちっくな感じになると思います
616 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/07/01(金) 17:36:02.75 ID:vtCNa4BAO
ふぅ…
617 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/01(金) 19:14:36.86 ID:92ISD6mTo
(´・ω・`)ガチエロ安価書き上げてHな流れにしてすみませんでした…

>>610
とか言いつつ続き超期待

>>607
だから自宅で読みなさいとあれだけ言ったのにwwwwwww

>>607>>616
賢者多すぎwwww修正されるねwwwwww
618 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:50:02.46 ID:VnGEmA0Qo
ギャップっていいよね
男のときと女のときで著しく違えば違うほどよし
たとえば身長190cm近くのやつが140cmぐらいの合法ロリになったりね!
619 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/07/02(土) 01:07:40.99 ID:p1myJ8M8o
>>618
それもいいけど、こう、にょたがじりじりと男としての感覚を削られて行く様にゾクゾクします。
葛藤しながらも、元同性の親友に対しての気持ちの変化とかで
「ひょっとして俺はアイツの事を……」
みたいな。
620 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/07/02(土) 14:08:30.95 ID:RHbhjyiA0
「これってちょっと前の西ちゃんの状態だよね?」
「何を藪から棒に…」
「いや>>619だけど西ちゃんも親友くんのコトそんな感じで見てたなーと思って」
「べ、別にアイツはそんなんじゃ…」
「え?今は付き合ってるんじゃないの?こないだ親友くんと使ったんでしょ?ってゆーか浸かったんでしょ?『ローション風呂』」
「………………は?」
「『トロケアウ』でしたっけ?いいなーお相手がいる人はー」
「あー…一応訊くがソレ誰から…」
「勿論、親友くん。訊いても無いのに事細かに教えてくれました」
「…あんの野郎」
「でも好き…とか思うスィーツ(笑)乙女(笑)な西ちゃんざまぁwwwwww」
「うぐぅ…そ、そもそもだなッ!アレはお前の鬼畜安価の所為でッ…」
「そーゆーこと言わないでよー?ボクなんかコレどうしようかと思ってんだよー?『主婦』はともかく、『蚊取り線香』?
 ウチはベープ派だからわざわざ近所のプラッツ(スーパー)で買ってさー、もう本来の用途を忘れちゃう位に眺めてんだけどね?
 ほら、今も持ち歩いてんだけど何も思い浮かばないんだよねー」
「それは自業自得だろド低脳。四の五の言わず、ムダレスせずにとっとと書け太郎」
「ひどいなーww でもさー>>585-587 >>599-604って体験談なんだね?西ちゃんドスケベw パイズリとか中出しもマジネタ?ねーねー?
 西ちゃん神乳だもんねー。いいなーボクなんてドひんぬーだよ?この格差社会はどうにかすれ!けど今の与党じゃムリくね?」
「そうですか、シバキ合いですか。把握。よし、表ェ出ろ!」
「暴力いくないwwあー、でも太陽が落ちるまで拳を握り殴り合って傷だらけのままで『似た者同士』と笑ってた、とか素敵♪」
「未来永劫那由多の果てまで黙れバカにょた。その中華風お団子を頭皮ごと引っ千切って頭の風通しよくしてやろうか?あ?」
「痛いッス!?痛いッスよ!!マジで引っ張らないでよ西ぢゃむ!!」
「フム…お前、元はブサ…しかも度し難い程の顔面災害だったクセに女性化した途端に随分とまぁ見れる顔になったから
 そういう苦痛に悶える表情も中々クるね、リョナの人の気持ちが少し理解出来たよ」
「痛たたたぁ…そんなガルネクを開かないでよー…ドっ変態だなー西ちゃんはー。それにさーボクは天使だもん!」
「……あ"?……いや…うん、よろしい続けたまえ」
「ほら、ボクって女の子に生まれ変わってー、見ての通りの天使じゃん?だからー元男でブサだったとか言ったらダ・メ・ダ・ZO☆?」
「イラッ!」
「いや、『イラッ!』って口に出さなくても」
「あー…ちょっとお前、その、さっきの蚊取り線香貸してみろ」
「え?あ、うん…ハイ」
「さっき、コレのネタが思い浮かばないとかほざいていたな?」
「あ、うん…あ、でも何とかガンガル、よ?」
「よし、協力してやる。天と地の間にはお前みたいなクルクルパーのなけなしの知識では思いもよらない事があることを思いしらせてやる」ファッ
「ちょッ?!何?え?何するの?離してよ西ちゃんッ!?」
「いや、何お前が自分を天使だって言うからね?マジ天使にしてやろうと思って」
「え、は?あ、イヤ、えっと、ハイ、調子にノってましたサーセンwwwwwwwwwww」
「うん、いいよ?遠慮しなくても。だから天使なら天使らしく、天使なら天使らしく、マジ天使になろうよ?」
「やめてッ?!そのハイライトが入ってない瞳マジ怖いッッ!!?」
「そんなに怖がらなくてもいいよ?すぐにクリムゾンしちゃう様になるから。その頃には立派なマジ天使だよ?さあ…」
「…………きゃぁ…やめ…そんな…ッ…はぅ……………… びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛ぃ゛」


「なぁ、アレ止めなくてもいいのか?あの巨乳の方、お前の彼女だろ?」
「そのロコモコ美味そうだな?ハンバーグくれよ」
「よりによってハンバーグをよこせはねーよ?つか、アレはスルーなのかよ」
「うん、テンプレは正義。にょた同士がイチャつくのも正義」

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

マジごめんなさいwww

にょたが男の時の感覚が薄れていきつつも、不意に男の時の感覚がぶり返して天然女性やにょたにキュンキュンしちゃうのとかが好物です。
…ってレスしようとしたんだけど、どうしてこうなった?

安価ネタはちゃんとガンガル…
621 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/02(土) 21:45:52.53 ID:p1myJ8M8o
>>620
どう見ても安価ネタを肴にした漫才です。本当にありがとうございました。

と、これだけでは悪いので
気晴らしに別安価でも  ↓
622 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/02(土) 22:09:13.56 ID:VwThBbgAO
停電の夜
623 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/02(土) 23:32:25.24 ID:p1myJ8M8o
>>622
把握
624 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/03(日) 00:38:05.15 ID:i0axeFAh0
wktk
625 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:55:59.10 ID:csLd3mgpo
あれか停電して電気復旧したら女になってたとかそういう
プリンセス・テンコー的な
626 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/03(日) 01:12:45.89 ID:Wr0+eL4Bo
>>625
今まさにそれ書いてたのに、プロット変更しなきゃだめになったじゃないかー
バカーーー(ノд`)
627 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/03(日) 01:18:55.70 ID:1lXc+hIAO
>>626
くやしいのうwwwwwwくやしいのうwwwwww
628 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/03(日) 01:38:18.95 ID:/gD9Ca5J0
無防備にょたっ娘に招かれてゲーム合宿→熱帯夜で停電
             ↓
暗がりにラッキーイベント発生→冷房切れてしっとりボディーにむらむら

ってな流れじゃないのか!絶望した!!
629 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/03(日) 02:00:41.87 ID:1lXc+hIAO
予想レスらめぇぇっな西たんペロペロ
630 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/03(日) 02:25:22.44 ID:Wr0+eL4Bo
>>622のお題
『停電の夜』

「ねみぃ」
「寝るな!仲間を見捨てる気か?!」
「……只のゲームじゃねーか。ミラなんたらくらい一人で倒せ」
「つれねぇなぁ。もっと盛り上がろうぜ。夜はこれからだっ!」
「折角の休みに男同士で何を盛り上がれっつーんだ。盛り下がる一方だっつの……先寝るわ」
「いや、お前今は女だからな。ったく仕方ねぇな……ここは俺様のガンランスの出番か。最強の矛と盾、激龍砲バンザイ!!」
「体は女でも心は男だっつーの。つーかお前、今日も俺んち泊まるのか?」
「帰ってもどうせ一人だしなぁ……だー、こう、どっかに甲斐甲斐しく世話焼いてくれる女の子いねーもんかなー」
「暑っ苦しい工学部に来といて寝言をほざくな。そして俺をチラチラ見るな。キメーよ」
「くくくっwwwしっかし傑作だったなぁ、合コン中に発症しちまうなんてよ」
「うるせー!リア充の貴様に童貞の何がわかるってんだよォオオオ!!」
「いや、今のお前処女だから、童貞じゃなくなってるから」
「うるせー、考えないようにしてる事をイチイチ口に出すなッ!」
「だがなぁ、童貞と違って処女はある種ステータスなんだぞ、誇っていいぞ」
「だぁ…ッ!それセクハラだっ!……あー、サークルの連中のヤらせろオーラを思い出しちまったじゃねーか」
「男扱いしろと言うくせにセクハラもカウントされるのか、都合のいい奴め」
「今の俺は複雑なんだよ」
「へーへー。はぁ……その割に危機感もねーし、ほんっと危なっかしい奴だ」
「は?危機感?何のはな――」

―――ゴロゴロゴロ…ピシャーン

「ひぁっ?!」
「やばい!紫電の槍(ライトニングスピア)だ!!」
「………お前はヴァナに帰れ」
「おう、抱きついてるてめー様が離れてくれたらな」
「……だって怖い…んだもん」

―――ピシャーン

「おおぅ…今度は近かったな」
「ひぃっ?!!!」
「はぁ……マジで離れろって、昨日までこの程度の雷怖がってなかっただろうが」
「……そうだけど、今は怖いんだからしょうがないだろ」
631 :630の続き(終) [sage saga]:2011/07/03(日) 02:25:53.75 ID:Wr0+eL4Bo

――ブツン

「真っ暗になったな」
「ぇうっ?!」
「停電か。ブレーカー何処だ?」
「げ、玄関の上………」
「ブレーカー上げてくる。でだ、離してくれないと動けないんだが」
「……怖い」
「あのな…」
「…………怖い」
「……だーァッ!解った、お前も来い」
「………(こくり)」

――カチリ

「はァ……俺の自制心に感謝してくれねーか。ブレーカー上げた代わりに俺の理性が落ちそうになったっつの」
「…………ごめん」
「てめー様の巨乳は俺にとっちゃラージャンの怒りビームより危険な代物だっつーのに、惜しげもなく押し付けてくんなよ」
「…………」
「でだ、雷も収まったし、電気も付けた。早く離れろ」
「…………」
「あのなー……俺も男なんだからホイホイ部屋にあげたり、くっついたりすんなって。大変なのは解るが……下手すると食い物にされんぞ」
「……じゃあお前が守ってくれ。その代わり好きにしていいから」
「おまっ……?!意味解ってんのか!?」
「………女慣れしてるし、今彼女居ないって昨日聞いたし、昔からよく知ってるし」
「本気かよ……」
「どうせ男にめちゃくちゃにされるのなら、お前がいい………」
「駄目だ、俺ァ本気になる相手にしかそんなことしねーし」
「…………(じーっ)」
「ぅ……目を潤ませるな、しなだれるな、凶器を密着させるなぁああああ!」
「ひっ………俺みたいなのはやっぱり好みじゃないのか?」
「……そッそういうわけじゃねーけど」
「ならいいじゃん……据え膳食わぬは男の恥だぞ」
「ちくしょう………後悔しても知らねーぞ……」
「……するわけないじゃん。お前が女には優しいって良く知ってるし」
「………はァ、参った。降参だ。リクエストはあるか?」
「……できれば優しくシてほしい」
「仰せのままに、お姫様」
632 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/03(日) 02:27:55.89 ID:Wr0+eL4Bo
Q1.またまた寸止めですか
A1.予想レスが多すぎてついカッとなってやった。後悔はしていない
633 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/03(日) 02:38:09.09 ID:Wr0+eL4Bo
>>630にて訂正1箇所
×激龍砲→○竜撃砲

Fしかやった事ない上にうろ覚えで書くとこんな間違いを起こす馬鹿な自分に乾杯……orz
634 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/03(日) 02:43:31.50 ID:1lXc+hIAO
>>632
うぁぁああん(ノДT)
635 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/07/03(日) 07:34:21.42 ID:06yQIASAO
>>593が出来たので投下します
636 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:36:23.75 ID:06yQIASAO
 【青色通知番外編-ピュアな(ry-】

 放課後の屋上。

 本日十数回目となる財布とATMの明細書の交互チェックをして、俺は本日数十回目となる溜め息を吐いた。

 預金残高、3ケタ未満。財布の中身、2ケタ未満。
 バイト代が入るのは明日の0時過ぎで、土日祝日の前倒しもなし。
 絶望だ。俺に金が居るのは今日、たった今だってのに。
 しかも、その事を白状しようと初紀に声を掛けたら逃げられちまうし……はぁ。

「―――やほぅい、ひーちゃんっ。
 ……って、ありゃぁ? こりゃまた、見事な黄昏っぷりけど、どーかした?」

 人の気も知らずに教室に入ってきたのは、いつものように青いリボンでセミロングのふわふわした髪をポニーテールに結わい付けた少女、坂城 るいだった。

「……別に」

 俺は力なく顔を背けるしか出来なかった。金が無いから貸してくれなんて口が裂けても言えねっつの。
 いくら、るいの奴が委員会の仕事でそれなりの金を貰ってるっつっても、イコール金を借りていいっつー理屈にはなんねぇし。そもそも俺自身がそんなの許せねぇ。

「………はっはーん。そーいえば、今日って―――」
「―――なっ、違ぇかんなっ!!?」
637 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:37:13.74 ID:06yQIASAO

 思わず脊髄反射で振り返った先で、悪戯っぽく口角を上げたるいがわざとらしく首を傾げていた。

「あれあれ、まだ何も言ってないんだけどなー?」
「………」

 勝ち誇るポニーテールの少女。
 ……ダメだ、勝てる気がしねぇ。
 なんでったって俺の周囲の発病者って例外なくポテンシャルがえげつなく高ぇんだ……?
 男としての立つ瀬無しだな……。

 ―――んで、結局コトの顛末を洗いざらい白状するしかなくなったワケで……。

「―――初紀ちゃんの誕生日直前に出費が嵩んでプレゼントを買えなくなったって……うわ……なかなかにラブコメしてるねー、ひーちゃん」
「るせぇっ! 地デジ化マジ半端ねえよ……」

 まぁ、お袋と妹からの執拗なまでの口撃に俺が屈したのが悪ぃのかもしんねーけどよ……にしてもタイミングってのがあんだろーがよ……。

「……んー、初紀ちゃんなら正直に話せば笑って許してくれると思うけど」
「そ、そーか?」

 そこで、るいの目が一瞬光ったような気がした。
638 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:37:57.84 ID:06yQIASAO

「でもなー、初紀ちゃん朝からすごーくそわそわしてたしなー」
「……うっ」
「女の子になってから初めてひーちゃんから貰う特別なプレゼントだしなー」
「……うぅっ」
「初紀ちゃん、きっとガッカリするだろーなー」
「……だぁぁああっ!! 要するにダメなんじゃねーかよっ!!! それに、初紀だって俺のこと避けてたし……」
「あははっ、オトメゴコロというのは多分男の子にとってスパコンのアルゴリズム以上に複雑難解なものなんだよ、ひーちゃん?」
「……何を言ってっかさっぱりわかんねぇけど、とりあえずヤバいってのは分かった……。はぁ、マジでどうすっかなぁ……」
 初紀だったら確かに笑って許してくれそうだが……絶対ぇ、見てるこっちが首をくくりたくなる位の痛々しい笑顔が向けられるんだろう。
 ……ヤバい、涙出そうだ。

「………もー、そんな顔しないの。おねーさんが一肌脱いじゃうからさ」
「……え?」
「あ、えっちい意味じゃないからね」

 いや、わぁってるよ。……ちょっとだけ期待しちまったが。
 ンな阿呆なコトを考えてる内に、るいは鞄から女の子が使うには少し地味な手帳を取り出していた。
639 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:39:21.10 ID:06yQIASAO

「さらさらさら……っと」

 そこに何かをボールペンで書いていくと、その1ページを破って、四つ折りにして差し出してくる。

「はい。これ、ナカは見ないで初紀ちゃんに直接手渡してね?」
「……なんだよ、コレ」
「万事をまぁるく収めるためのチートアイテムでーっす♪」

 なんだそりゃ。

「くすっ、大丈夫、きっと上手くいくからっ、おねーさんの太鼓判だぞ?」
「……いや、るいのが俺より誕生日遅いだろ」
「もー、せんせーみたいなコト言わないっ。モテないぞ?
 ほら、行った行った。この時間だったら初紀ちゃん、一人道場で型の稽古してるから」
「……あんがとな、るい」
「んー、じゃあ今度カフェラテおごってね?」
「お安い御用だ」

 差し出されたメモを受け取って、俺は昇降口に向かって一目散に駆け出した。



「……あーあ、私までラブコメしちゃってるなぁ」

640 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:41:35.98 ID:06yQIASAO



 御堂空手道場。

 相変わらず"初心者大歓迎"の達筆が表の門に貼られていて、威圧感が満載だ。
 それにも拘わらず最近じゃ門下生も増えてるって話を初紀から聞いたが、詳しいことは分からない。何故か初紀も話したがらねぇし。
 ……つーか、勢いでここまで全力疾走してきたものの……どうするよ? これで呼び鈴鳴らしてあの親父サン出てきたら。
 あの親父サンから技を食らったら、今度こそ三途の川の対岸までひとっ飛びなんじゃねぇのか……?

「―――よい、しょっと」
「うぉっ!?」

 及び腰になっちまってる俺を尻目に、突如、重苦しい摩擦音と共に門が開いていく。

「あら? まぁ、陸くんじゃないですか」

 ……俺は思わず深い安堵の溜め息を吐いていた。
 出てきたのが親父サンじゃなくてお袋さん――初葉さんの方だったからだ。

「こ、こんちはッス」
「はい、こんにちは」

 
641 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:42:46.27 ID:06yQIASAO
「あ、……えと、その、は、初紀……さん、居ますか?」
「はい。今、道場で稽古してますよ?
 あ、そうそう。
 良かったら上がっていってください」
「……へ?」
「今、主人は本家の方に出向していまして数日は帰らないんです。私も副業のこれから打ち合わせに行くので帰りが遅くなってしまうので………。
 ……女の子だけで留守を任せるのも、ちょっと不安でしたし。陸くんが居てくれたら私も安心して出掛けられますね」

 ………この女性は、狙って言ってんのだろうか? イロイロと。

「それじゃ、お願いしますねーっ?」

 考えあぐねている内に、初葉さんは遥か遠くで手を振っていた。
 あの、俺の意思意向は無視なんスか?

 はぁ……仕様がねぇ、故意か無意識かはこの際置いといて、るいや初葉さんが折角チャンスをくれたんだ。
 ……いや、委員会と制約を結んじまってる以上、俺はその、最後までは無理(※青色通知最終話参照)なんだが。
 ……つーか、誕生日だからってエロいことするのが当然ってワケじゃねぇだろ!? 落ち着けバカッ!! いやバカじゃねーよッ!!!

 ………一人でなにしてんだ俺。

 馬鹿馬鹿しい考えを振り払いながら、門を潜り、戸を閉め―――

「ん、ぐぎ……ッ!?」

 ―――なんだこりゃっ!?

 この門、重いにも程がある。開閉するつもりなんぞ端から無いみてぇにビクともしねぇっ!
642 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:45:19.09 ID:06yQIASAO

「こ、の、や、るぉぉぉッ!!!」
「―――何してるの?」

 必死で門を閉めようとしてた背後から不意に白い綺麗な手が俺の手に添えられる。……このちっこい手、間違いない。

「初紀……」
「……そんな力任せじゃ絶対閉まらないよ。ちょっとだけコツがあるの。
 少し門戸を持ち上げるの意識しながら押さなきゃ。
 いくよっ、いっせーのっ、せっ!!」

 初紀のやたらと可愛らしい掛け声に合わせて踏ん張ると、さっきまでビクともしなかった門が、先程と同じような重苦しい音に合わせてゆっくりと閉じていく。

「はぁ……はぁっ」
「………」

 体力の大部分を使い果たしへたり込む俺を尻目に、初紀はさっさと道場の方へ足を向ける。……やっぱ怒ってんのか?
 ……そういや、初紀が女になってから、稽古着姿なんて見たことなかったけど……なんつーか……あーいうのもイイな。上着は普通の胴着なのに下は脚線美を損なわないタイトなスパッツとか―――

 ―――じゃなくてっ!!

 我に返って初紀の後を追う。追い付いたのは、道場にたどり着いてからだった。
 靴を脱ぎ、背を向けたまま正座する初紀に駆け寄る。

 ―――その前に機先を制されてしまった。

「ごめん、ね」
「……初紀?」
「……私、最低だ。
 誕生日だからってクラスの子達から、陸のプレゼントのコトでからかわれて……凄く恥ずかしくなっちゃって、陸のこと避けちゃって」

 ……初紀の背中越し声に少しずつデクレッシェンドとビブラートが掛かっていくのがわかる。
 泣いてん……のか?

「どうして、かなぁ……好きな人がいるって恥ずかしいことでもなんでもないのに、どうして、変に見栄、張っちゃうかなぁ……本当の女の子じゃないから、かなぁ……?」

 ……そうか。今でも初紀は戦ってんのか。その不幸な病気が産み出した偏見とか、先入観と。

「ごめん、本当に……ごめんなさい……」
「っ、謝んじゃねぇッ!!!」
「ふぇっ!?」

 自分の不甲斐なさに押し潰されたくなくて、俺は、初紀を背中から抱き締めた。
 小刻みに震えた、温かな温もりを伴った小さな体躯はまさしく俺と同世代の女の子そのものだ。
643 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:48:07.70 ID:06yQIASAO

「……頼むから、謝んじゃねぇ……っ。
 俺は、なんつーか、その……っ」

 他の、青色通知の世話になんねぇような野郎だったら、もっと気の利いた台詞を呟けたのかもしれない。
 もっと初紀を安心させられたのかもしれない。

 ……そう思うとてめぇの口下手さにうんざりした。

「……ありがと。どんな言葉よりも、こうしてくれた方が、ずっと……伝わるよ?」

 振り返った初紀は困ったような喜んだような、そんな綺麗な泣き笑い顔を向けて俺のギュッと腕を掴んでくる。

「えへ……言葉にするとなんか恥ずかしいね」
「………初紀、これ」

 俺はポケットから、るいに手渡された四つ折りのメモ用紙を差し出す。

 ……段取りが悪いなとか言うな。
 なんつーか、タイミング的に今しか無さそうだったんだから。

「ごめんな、プレゼント……間に合わなくて」
「これ………っ!?」

 初紀がメモ用紙を開く、と同時に素っ頓狂な声を上げた。背中越しにそのメモ用紙の中身を見ると。

 "ハッピーバースデー初紀、あなたを愛しています"の文字。

 その右下に斜線が引いてあり隅には小さく"御堂初紀が前田陸を好きに出来る券"とか書いてある。

 るい……これのどこがチートアイテムなんだよ……!!?

「……ぷっ、くくっ、あははっ!」
「笑うなっ!!」
「や、ごめっ、……ふふっ、あはははっ」

 ……俺が書いたわけでもないのに、なんでだ? すげー恥ずい。死にたい。

644 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:49:59.06 ID:06yQIASAO

「………っつ!?」
「初紀!?」

 それまで臍で茶を沸かしそうなくらいに笑い転げていた初紀が急に顔をしかめて右肩を抱くように蹲る。

「ぃたた……最近稽古サボり気味だったのに、急に無茶したから……肩、痛めたみたい……っつつぅ……」
「え、おいっ、大丈夫か!?」
「だ、いじょぶ、平気、だよ」
「痙攣してんじゃねーかっ!? 待ってろ、今湿布取ってくる―――」
「―――待って」

 立ち上がろうとして、制服の裾を初紀に引っ張られる。

「―――これ。もったいないけど、今使うから。……一緒に居て」

 メモ用紙に書かれた"俺を好きにしていい券"を弱々しく差し出す初紀。
 ったく……券よりもお前のその表情のがよっぽど強制力があるっての。

「……わぁったよ。ただし、ちょっとマッサージするからな。そのまま放置するとクセになっちまう」
「ん……」

 首肯を受けた俺は稽古着の上から初紀の右肩を掴む。

「……ん、っ……つぅっ、……や……」

 俺の手の動きに合わせて身悶える初紀がなんとも扇情的……って、そうじゃねぇだろ!!

「っ、痛むか?」
「その……痙攣の痛みじゃなくて、胴着がコスれて……その……」

 初紀の言わんとしてることは分かった。こういった稽古着は強固に出来ている分、素材が荒く、強く擦れると赤くなったりするからだ。
 ……かと言って脱げとも言えねぇし……。

「……っつ!?」

 ……馬鹿か、初紀が痛みを訴えてんのに何てめぇの事情で躊躇してんだ!?

「……悪い、右肩の胴着、少しはだけさせてくれ」
「えっ、あ……う、うん」

 ……稽古着の隙間から、するりと初紀の白い肩が露になる。
 ……ヤバい。これ、相当クるモンが……。
 って、そうじゃねぇっての俺の馬鹿!!
645 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:55:14.55 ID:06yQIASAO
「その、……ブラ着けてねぇのか?」

 ああああ俺の馬鹿!
 本能に任せるように言い終えてから、後悔が津波のごとくに押し寄せる。
 ……散々な罵倒の挙げ句に小さな正拳が放たれる、かと思いきや、初紀は俯いたまま小さく首肯するだけで。

「……う、ん。母さんが胴着の時はサラシだけにしなさいって……」

 初葉さん……なんつーありがた迷惑な置き土産を……!

「痛……っ!」

 再び、苦悶の表情を浮かべる初紀。

「っ、悪い、少し伸ばすぞ」

 白くて細い二の腕を掴み、後ろにゆっくり持っていく。

「ん……っ、や……っ」
「っ、ゆっくり息を吐け」

 ……頼むからあんま声に出さないでくれ。悶々とするから。

「ふぅ……んっ、あぅ……はっ、う……」

 はぁ……念を送っただけじゃ無理、だよなそりゃ……。

 下半身を漲らせるには十二分な切なげな声だけが響く。
 こんなにも悶々とするのなら、もういっそ、一思いに殺せ、殺してくれ。

「……腕、戻すぞ。もっかいゆっくり息を吐け」
「……っ、ふぅうう……んぅ……っ」

 だから、なんでこうも一声一声、俺の脳髄と下半身を直撃するような声を出すんだっつの……?!
646 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:56:10.33 ID:06yQIASAO

「……どうだ?」
「う、ん……よくなった、かな」

 心なしか、初紀の顔色が上気したように見えた。……はぁ、とりあえずの窮地は脱したか。色々と。

「あんま無理すんなよ? その……前とは勝手だって違うんだろーし」
「ん……ごめん」

 別に責めるつもりはないのだが、親に叱られた幼子のように悄気る初紀。
 ……う、気まずい。
 そう感じたのは俺だけじゃなかったらしい。

「ひ、陸ってマッサージ上手なんだね」
「……誉めてもなんも出ねーぞ」
「……む」

 何が癇に障ったか知らないが、初紀は不貞るようなジト目でこちらを睨んでから―――

「………折角だから、他のところも頼もっかな」
「……は?」

 ―――ゴロンと仰向けに寝転んだ。

 ……おい、何かおかしくないか?

 百歩譲ってマッサージを続けるのは良いとしよう。るいが用意した"俺を好きにしていい券"があるからな。
 が、何故、仰向けなんだ?
 マッサージする箇所って大抵背中側だろ? この体勢でどこマッサージしろっつーんだよッ!?

「―――ダメ……かな?」

 右肩を晒したまま仰向けに寝転んだ初紀が涙目で懇願してくる。
 いや、むしろ本音はすげー触りてぇですよ。反応も一々ムラムラさせてくれるし。 これで、委員会との制約が無けりゃルパンダイブ確定だわな。はーつきちゃーんってなもんで……って、いや……てめーのキャラ考えろよ、俺。
 ……だぁーくそっ!! なんなんだ、このリアル性欲我慢大会はっ!!?
647 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:58:09.28 ID:06yQIASAO

「……初紀、お前とんでもなく危ねぇこと言ってるって分かってんのか?」
「……なんで? 危なくなんてないよ、何にも」

 ……本気で、言ってんのか?

「だって、陸だもん」

 よく分からない理由を細い胸を張って呟く初紀。
 バカにされてんのか、信頼されてんのか図りかねる無垢な笑みと、無防備な体勢で晒された素肌と―――。

 あぁ、頼むから保ってくれ俺の理性と良心。
 この歳で多額の違約金なんざ払いたくねぇよ……。

「……どうなっても知らねぇかんな」
「大丈夫……だよ……?」

 なんだ、このやりとり。
 勘違いすんなよ、ただマッサージするだけだぞ?
 ここだけ切り取って録音されたりしたら十中八九勘違いされるかもしれねぇけど……。
 尤も、勘違いしてんのは"もしもの第三者"だけじゃなかった。敢えてドコがとかまでは言わないが。
 今もし、二番目の願いが叶うなら、この初紀の肌や吐息の感触を忘れない内に自室のベッドに潜りたい。三ヶ月は使える。敢えて何にかまでは言わないが。

 首を左右にぶんぶんと振り、雑念を振り払う―――フリをする。
648 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 07:58:57.79 ID:06yQIASAO

「……んで、ドコをマッサージすりゃいいんだよ……?」
「あの……っ、え、と……最近蹴りとかの練習しすぎて辛いから、その……恥ずかしいんだけど……っ」

 初紀は目を閉じ顔を赤らめながら、スパッツに覆われた左内腿をさすって見せた。
 おい初紀、わざとじゃねぇか? お前、俺の理性にトドメ刺しに掛かってんじゃねぇのか……?

 ………いや……初紀だって俺の事情くらい知ってるじゃねぇか。
 だから、純粋にマッサージして欲しいんだよな……? そうだよな?

「……膝……少し曲げんぞ」
「う、ん……」

 こんがらがったアタマを無理矢理納得させて、初紀のすらりとした脚に手を伸ばす。
 その白い素肌に触れた刹那―――

「や、ぁ……っ!」
「―――っ!?」

 ―――甘い嬌声と身動ぎに初紀の脚から手を離してしまった。
 ……ヤバい。
 これは比較的マジな部類でヤバい。
649 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 08:01:32.27 ID:06yQIASAO

「く、くすぐったいよ……っ」

 ……今の今まで忘れてた。

 毎晩毎夜の初紀のバージンチェックに余念のない居候娘曰く、初紀の肌の敏感さは折り紙付きだっつーことを。

 ……これ、収集つかなくね?

 ………。

 ……バカか俺ぁっ!!

 日頃から女として肩肘張って生きてる初紀を癒せるまたとない機会に、何弱気なこと考えてんだ!?
 俺の欲求なんざ、捨てろっ!
 今のただ、目の前で俺を頼ってくれてる女の為に、俺の出来る最大限のことをしてやるまでだろーがっ!!!

 腑抜けてんじゃねぇぞ前田 陸ぃっ!!!

 ……意を決し、初紀に向き直る。

「……初紀、これはお前への誕生日プレゼントだ。……少しくすぐったいかもしんねぇけど、なるべく痛くないようにしてやる。なるべく、気持ちよくしてやる。
 だから、ちっとだけ……ちっとだけ、我慢してくれ……」
「陸……うん。来て……」

 覚悟を決め、再び初紀の左脚に手を伸ばし、膝を掴む。
 初紀は反射的に身体を強張らせたが、すぐに俺の手に身を任せてくれた。

「いくぞ……なるべく力抜けよ……?」
「う……ん」

650 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage saga]:2011/07/03(日) 08:04:05.25 ID:06yQIASAO

 ……ゆっくりと初紀の屈曲した左脚に体重を脚に掛けていく。

「ん……あぁ……っ―――!」

 初紀がくすぐったさに耐え兼ねて甘い声を漏らした……その時だった。



 ―――ガラッ



「「――――っ!?」」
「たっだい……ま……」

 世界の全ての時が制止したかのような錯覚。
 上気した顔で力なく仰向けに寝そべった初紀に、俯せにのし掛かる俺。
 振り返ると、そこには、満面の笑顔のまま凍りつくるいの姿。

「………」
「………」
「………」

 ……血の気が引くかわりに冷や汗が止めどなく流れ出た。

 ヤバい。

 この構図は非常にヤバい。

 俺たちだけ固まった世界で、無言のまま、るいはポケットから携帯を取り出して素早く耳に当てた。


「……もしもし、せんせーですか? はい、実は緊急で残念な報告をしなければならなくなりまして―――」
「―――だぁあぁあぁあっ、ストップストップ!!! 違うっ、誤解だっ!!!!」
「あ、あと至急警察を呼んでもらえますか?」
「人の話を聞けぇえぇえっ!!!」


 ―――結局、るいの誤解が解けたのは、御堂空手道場にパトカーが到着した後だった。




 おしまい。
651 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/03(日) 08:11:53.70 ID:1lXc+hIAO
なんだこの寸止め合戦ww
大変ぐっじょびww
652 :青色1号 [sage]:2011/07/03(日) 08:13:16.80 ID:06yQIASAO
 なんか朦朧として書き上げた感の強いアホ話です。こいつらが何をしたいのかオイラにもさっぱりわかりません。
若干安価に沿ってなかったかもです。

コイツら誰? とか思ったらまとめ見てくれたら幸いでございます。


>>597
うぉ、なんか随分とかっこいいぞバカバネのくせに。名佳がちょい病んでるように見えるのは気のせいでしょうかww

653 :でぃゆ(ry [sage]:2011/07/03(日) 08:18:49.65 ID:1lXc+hIAO
>>652
あ、確かにケータイで見たら目の影が濃いかも…
パソの画面で見た時はそうでもなかったんですが…反省orz
654 :青色1号 [sage]:2011/07/03(日) 09:11:34.86 ID:06yQIASAO
>>653
いあ、絵が描けんオイラからしたらすげぇ上手しな訳ですが。


つーか寸止めじゃないよっ、それ以前の問題だよっ!!








……こんな奴らに名佳は守られてんのかと思うと赤羽根兄妹が不憫で仕方ない。
655 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/03(日) 10:16:38.34 ID:Wr0+eL4Bo
>>653
ものすごく彼女たちらしくて良いと思います

どんなシチュエーションでもそちらのお話は面白いな〜…妬ましい
656 :青色1号 [sage]:2011/07/03(日) 13:05:36.73 ID:06yQIASAO
うあ、校正してなかったからざっと読み返しただけで二つも誤植がぁあああ……

>>636でめっちゃ"屋上"て書き出してるのに、るいが教室に入ってる。

 最初は教室で話を展開する予定書き出して、クラスの準ぼっちである陸が思い悩む場所は教室じゃないだろと急遽屋上に変更し、るいに関するくだりを修正し忘れたためこんな四次元空間が出来上がる結果に。

>>650の冒頭で多重に"脚"という単語を使っている。

 初紀=美脚貧乳のイメージがこびりついてるらしいです。大事なことなので(ry状態に。胴着にスパッツとか個人趣味(初紀母の)過ぎる。オ、オイラじゃないんだからねっ!!


 大変失礼いたしました。



>>655
そう言って貰えると嬉しいです。
いやかなりマジで。
657 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/03(日) 19:53:39.62 ID:ugvZGeSlo
最近活気づいてて羨ましいので安価下
658 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/03(日) 20:02:51.86 ID:1lXc+hIAO
夏休み
659 :でぃゆ(ry [sage]:2011/07/03(日) 20:50:19.02 ID:1lXc+hIAO
絵は何年かサボってた為リハビリ中なのです(TДT)
やっぱり描き続けないとダメになるものですね。実感。
660 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/04(月) 02:08:40.43 ID:EOcd+vfBo
久しぶりに覗いてみたらこの投下量
まとめがいのある投下量だぜぃ…
661 :安価『夏休み』 ◆zK/vd3Tkac [sage saga]:2011/07/04(月) 02:32:45.03 ID:9rFH+5ebo
「駄目だ……このままでは」

 私は、ソファに座って頭を抱えていた。私にとってこの狭苦しい事務室で、目の前の机にある数多の書類の中、その中のたった一部の書

類が圧倒的な存在感を放っていた。
 もう一度、A4の用紙を数枚綴じた書類をパラパラとめくる。最近白髪の混じり始めた頭を掻きながら、じっと書類とにらみ合いをして、

すぐに力を抜いてソファにまたもたれかかった。

「ここまで順調に来たのに、世論はこれでも不満なのか……世間体ばかり気にして、国が滅んでもいいのか?」

 くたびれた姿を見せることは許されないスーツも、心なしか私の心を映すようにしおれている。
 私はまた書類に目を落とした。
『少年の女体化現象対策に関する予算の不足について』
 そんな表題が付いた書類は、私の目下の悩みの種である。

「このままでは……いずれ破綻する。……根本的解決しかないのか?」

 私はまた頭を抱えて、冷静に状況を整理しようとしていた。
 20XX年、世界が歪に姿を変えて、各国は対応に追われた。
 人種に関わらず、ある特定の年齢層の男子が女へと、肉体上の性別が変化する、通称「女体化現象」 その発生条件が分かるまで2年と

3ヶ月。その後、主要各国が法整備を行うのに3年を要した。
 その中でも日本は、女体化対策特別委員会を早期に設置し、女体化者への人権保護政策、物的、精神的支援政策を早期に整備し、女体化

少年への支援策は充実しているはずだった。
 しかし、女体化者への救済策は予算を逼迫し、維持すら困難になりつつある。それを打開するために、私は頭をひねっているのだが……



「休憩しませんか?」

 と、私の傍らに、コップに注がれたコーヒーを置きながら、いつの間にかそこに居た彼女はそう私に問いかけた。
 彼女は私と違って雰囲気の上でもパリッとしたスーツに身を包んでいる。
662 :安価『夏休み』 ◆zK/vd3Tkac [sage saga]:2011/07/04(月) 02:35:56.19 ID:9rFH+5ebo

「あ、ああ。ありがとう。助かるよ」
「いえ、秘書ですから」

 彼女は、すっと窓に歩み寄り、窓を開けた。部屋に風が流れこんでくると、彼女のショートカットの髪が揺れ、さっきまでの陰鬱とした

空気が少しだけ和らいだように感じた。

「悪いな、いい気分転換になる。しかし最近暑いな……」
「もう、夏も近いですからね」
「ああ、夏か……」

 私は外の晴れ渡る青空を見て、目を細めソファから立ち上がり、軽くストレッチをする。最近体が思うように動かなくなってしまってい

けない。

「座ってばかりだと、能率が落ちていかんな。少しは動かないと」
「ラジオ体操でもしますか?」

 彼女はくすりと、いたずらっぽく微笑みそう言いながら、追加の書類と思しきものを私の机に置いて、処理済みの書類を引きとる。書類

を小脇に抱えた。

「あはは、子供じゃあるまいし――」

 子供……

「――そうだ!」
「な、何ですか?」

 私が突然大声を上げたことに驚いたのか、彼女が振り向いてこちらを見た。私はそんなに素っ頓狂な声を上げただろうか。コホン、と軽

く咳払いをしてから私は彼女に向き直り、今思いついた名案を声高らかに言った。

「夏休みだよ、夏休み!」
「は、はぁ……」

 彼女は私の言葉を聞いて戸惑うようにそう声を漏らした。
663 :安価『夏休み』 ◆zK/vd3Tkac [sage saga]:2011/07/04(月) 02:37:27.02 ID:9rFH+5ebo

「女体化の条件はなんだった? 女体化予備軍の少年たちに、夏休みデビューしてもらえばいいではないか」
「デビューって……」
「いいかい、やることは環境づくりだ。直接的な国営風俗機関の設立が頓挫した今、スムーズに交渉に持って行けるだけの環境づくりしか

残されては居ないだろう」
「一理ありますね」
「早速リストアップしよう」

 私は早速紙とペンを取り出し。また頭を捻る。
 彼女は私の横に立ち、その様子を伺っているようだった。

「やはり、未成年だから周りの目が気になるはずだ……特に親のな。かといってホテルを利用させることもできない」
「しかし、国営でそういった空間を提供するのは……」

 そうだな、国営風俗施設はおじゃんになった案だ。似たような案は通らないだろう。

「なに、難しく考えなくても、カラオケ店などの若者向けの遊戯施設での取締をゆるめるだけで効果は見込めるはずだ」
「不純異性交遊を故意に見逃すのですね」
「ああ、性感染症対策は忘れてはいけないがな」
「しかし、それだけでは劇的な効果はないと思いますが」
「なに、まだある。学校側での休み期間中の行事の励行だ」
「疎遠になる夏休み期間の男女関係の改善ですか?」
「そうだ。それに、積極的な出会い支援」
「年端も行かない男の子に出会い系ですか、それは世論の反対が……」
「そう極端な話でなく、他学年との交流や他校との交流行事ということさ」
「……確かに、それも出会いですね」
「この二つは同時に出来るだろう?予算もそのまま倍かかるわけではないはずだ」
664 :安価『夏休み』 ◆zK/vd3Tkac [sage saga]:2011/07/04(月) 02:38:30.13 ID:9rFH+5ebo

 と、そこまで言って、詰まった。私の発想力が貧困なのが露呈する。
 そのまま彼女に話を振ってみることにした。

「後は……他に何か案はあるか?」
「そうですね……節電にかこつけて冷房使用制限と薄着の励行はいかがでしょうか」
「露出が増えると……か? まぁ……一応それも加えておこう」

 ふと見ると、紙にはいくつかの案が並んでいた。あとはこれを実現するにはどんな障害があるかを吟味し、まとめていく必要がある。
 ここまで来れば私の仕事だった。秘書に礼を言って、元の業務に戻らせることにする。

「手を止めて悪かった。ありがとう、助かったよ」
「いえ、仕事ですから」

 彼女はそう言うとこの部屋から立ち去った。その時見えた横顔は、どこか楽しそうな表情に見えた。


 それから2ヶ月が経った。ちょうど夏も本番の8月上旬である。
 あの時秘書が提案した冷房制限で、官庁や公的機関は積極的に冷房制限をかけたためこんな真夏に扇風機だけで凌ぐことになってしまっ

ている。暑い。私が薄着になっても誰も特をしないと思うのだがどうだろうか。
 と、そんなことを考えている間に、この部屋のドアがノックされて、秘書の声が聞こえた。

「失礼します」
「どうぞ」

 もちろん秘書も薄着だ。といってもそこは大人の女性。過剰な露出は避けている。
 が、シャツが七分袖になっていたり微妙な違いはあるようだ。

「結果、来たか?」

 私が聞くと、すっと、彼女は書類を差し出した。
 すぐさま受け取り、ざっと内容に目を通すと7月の女体化申請受理数の昨年との比較グラフが目を引いた。

「……いろいろやったが、駄目だったのか」
「やはり、行事が増えても、すぐには効果は現れないようですね」

 私も秘書も、少し落ち込んでしまった、数値の変動は微々たる物である。

「そうか……そうだよな……そんなに人間単純ではないか」
「まあ、誕生日との兼ね合いもありますし、今後に期待しましょう」
「そうだな……まだまだ始まったばかりさ」
665 :安価『夏休み』 ◆zK/vd3Tkac [sage saga]:2011/07/04(月) 02:38:56.47 ID:9rFH+5ebo

 それから一月後のことである。

「失礼します」
「今回は、どうだった?」

 私はおそるおそる書類に目を通した。8月の女体化申請受理数は、誤差の範囲では片付けられない程度には減っていた。
 実に2割減である。

「やった……やったぞ!」
「まだですよ。政策との相関関係と今後の減少傾向の検証があります、まだ始まったばかりです」
「そ、そうだな……頑張りどころだな」
「それでも、一応の成功ですよ、やりましたね」

 秘書が微笑んで、私も笑った。

 そしてその年はそれからも一定の減少傾向は続き、施策した夏以降明らかに女体化者が減少しているということが確定した。
 翌年以降からは同時に行った各々の施策の効果や費用対効果などを検証し、さらに効率的な方法を模索していくことになる。

666 :安価『夏休み』 ◆zK/vd3Tkac [sage saga]:2011/07/04(月) 02:39:44.81 ID:9rFH+5ebo
 ……そして数年後。
 あの頃とは違う部屋……いや建物になったが、秘書は変わらずそこに居る。
 そして私達は、今度は満足のいく成果が記された書類を前に昔話をしていた。

「いや、まさか、薄着励行があれほど効果的だったとはね」
「提案した私自身も驚いております」
「人間、本能には逆らえないということか」
「そうですね……」
「しかし、減少したと言ってもまだまだ減らせる余地は有りそうだ……」
「ダメ押しの何かもう一つ、いい案はないものか」
「そうですね、でしたら――」

 秘書はにっこりと笑った。

「――今度は、クリスマスに仕掛けるのは、いかがでしょうか?」

<了>
667 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/04(月) 02:44:13.53 ID:9rFH+5ebo
>>658「どういう事だ、にょたっこの夏休みでちょっとエッチな話はどうした」
私  「にょたっこどころか主人公おっさんですが何か?」

という開き直りで書いた期待の斜め右下を行く文章、どうしてこうなった……
668 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/04(月) 02:53:18.99 ID:VqrB4+PAO
>>667
こやつ儂の思考を読むとは、ハハッ!やりよるわ……
って、ぴぬさんッ?!
読んでて只者じゃないとは思いましたが…流石です。
グッジョブ!!
669 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/04(月) 03:45:40.90 ID:EOcd+vfBo
投下してくれた皆さん超GJGJ!
ここまで投下された作品はまとめておきましたです

まとめるまでもない作品までもまとめてしまっていますので、気になる方は確認方願います><
670 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/04(月) 04:27:21.98 ID:+7Ufb/zAO
>>661-666
こういうの嫌いじゃないぜ。
……むしろ好物です。はい。

>>669
おー大量のまとめスーパー乙でございます。
しかも本人がまとめなくていいと言った作品までww さてはSですな。








さて、ここでネタバラシ。
というか暇潰し程度の小ネタ。
「俺(あたし)の数分をドブに捨ててやるぜっ!」
と胸を張って豪語出来る方のみどうぞ。

昔懐かしのツールで遊んでみただけです。






赤羽根兄妹の脳内
http://d2.upup.be/HjnUWuPltW

委員会組の脳内
http://e2.upup.be/eIijTU4cOD

過去作品の主要人物達の脳内
http://c2.upup.be/5uYxRdY5nR

ある警察官の脳内×2
http://c2.upup.be/cWNP3LrOiy
671 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/04(月) 05:52:36.95 ID:VqrB4+PAO
>>670
ちょwwwwwwゴロリンwwwwww
……青色通知の2人ヒデェけど正解っぽいww
672 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/04(月) 07:35:36.07 ID:VqrB4+PAO
>>669
お疲れ様っしたーッッ!!
何やら嬉し恥ずかしな小ネタまで拾って頂いてこのサドめww
本当に有難うございます!
673 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/04(月) 10:06:26.54 ID:ykrDynzo0
>>636
わーい、甘ピュアヘンタイだーキャッホー!
しかしるいさん、あんなプレゼントを仕掛けといてそのタイミングで現れるとは
鬼ですか?小悪魔ですか?それとも両方ですかそうですかww

週明けで覗きに来ると、レス数が一気に増えてていい感じっすね!
ちなみに前スレ>>1
1 : 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/01(火) 00:17:17.63 ID:gTmE/nA0
>>1000
1000 : 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします (神奈川県) [sage]:2011/04/18(月) 06:22:50.26 ID:o1q7W3uq0
と、一年半近く掛かってるわけで…どれだけ盛り上がってるかが良くわかりますね
674 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/04(月) 12:21:40.04 ID:zX6KHH1DO
ここに書き込まれた時点で全て皆さんの大切な作品です><

これだけ投下があるとまとめ人のおじちゃん喜んじゃいますよ
675 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/04(月) 16:47:56.09 ID:ykrDynzo0
もう身の程をわきまえた、オイラにゃ長編なんてムリ無理かたつむり、切ない心理描写なんて知るもんかっ
最近ちょっと気になってる要素を無理矢理取りこんで……あれ、コレ文章として破綻してね?


安価『親友が大好きだが男同士でもんもんとする日々……ある日親友が女の子に!』

優しい手つきで、あなたの頭が撫でられています。
ゆっくりと……あやすように……慈しむように。
ああ、またこの夢だ――と、あなたは左手を伸ばして優しい手を掴もうとします。
もう少し。もう少し伸ばせば優しい手に届きそう。
そして、あとほんのちょっとという所で、優しい手はするりとにげて行ってしまいます。
ざんねん。
かなしくなってしまったあなたは、しょんぼりしたきもちで、またふかいねむりにおちます。
ふかーく。
ふかーく……。

「おはようございます」

目覚めを促す声に誘われ、あなたはゆっくりと覚醒します。
瞼を上げ、声を掛けられた方向を向くと、可愛らしい少女があなたに向かって微笑みかけています。
まるで夢の続きのよう。
あなたは彼女に微笑み返そうと表情を緩め……はたと思いだしました。
彼女があなたの幼馴染で親友だという事。
そして、彼女は彼女ではなく彼、つまり男の子であると言う事。

「今日はいつもよりも寝ぼすけさんですね」

そう言って、彼は微笑みながらあなたの頭を撫でてくれます。
いつもなら男同士でこんなコトするなと拒否するのですが、
なんだかぼーっとしてきて、あなたは優しい手のなすがままにされてしまいます。
優しい手からじんわりと暖かさが伝わってきて気持ちいい。
気持ちよくて、あなたの全身から力が抜けてしまいます。
なでなで。力が抜けていく。
なでなで。もっと力が抜けていく。
ふかふかのお布団。柔らかい日差し。優しい手。なでなで。
とても幸せな気分。
せっかく開いたあなたの瞼が、また閉じてしまいそう。

「眠ってしまうんですか?」

乙女と見まごうあなたの親友が、優しく耳元で囁いています。

「眠っちゃったらイタズラしちゃいますよ?」

いたずらは困ります。何をされてしまうかわかりません。

「だいじょうぶ」

男同士なのに。だいじょうぶなわけないのに。

「だって、もう女の子ですから」

そうでした。この世界は女体化する世界でした。それなら安心ですね。

「おやすみなさい……」

彼女に優しく撫でられて、あなたは深い眠りに落ちます。
深く。
ふかーく。
676 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/04(月) 16:48:59.50 ID:ykrDynzo0
優しい手つきで、あなたの頭が撫でられています。
ゆっくりと……あやすように……慈しむように。
そう、またこの夢です。あなたは左手を伸ばして彼女の手を掴もうとします。
そして、あとほんのちょっとという所で、またも彼女の手はするりとにげて行ってしまいます。
ざんねん。
とてもかなしくなってしまったあなたは、泣き出してしまいそう。
すると、彼女の手が戻ってきて、あなたの手をつつみこんでくれます。
ちいちゃくて、すべすべで、あたたかくて、いい匂いがして、優しい手。
うれしくなったあなたは、右手も伸ばして、彼女の手をじぶんのものにしようとします。
すこしずつ、すこしずつ。
彼女の手は逃げません。
もうすこし。あと、ほんのちょっと。
彼女の手は逃げません。
そうして、あなたの右手が彼女の手に触れると、彼女はあなたを迎え入れます。
彼女はあなたを待っていてくれたのです。
あなたの手と、ちいちゃな手が、にぎり合い、からみあい、ひとつになり、しあわせになる。
あなたのこころはあたたかいきもちでいっぱいになります。

「おはようございます」

目覚めを促す声に誘われ、あなたは覚醒します。

「よく眠ってましたね……夜更かしさんだったのですか?」

あまりにも近い距離で囁かれました。

「それとも、日ごろの疲れがたまっていたのかな?」

横を向くと、至近距離に彼女が。

「お布団、気持ちいいですね」

同じベッドの、あなたの隣に、彼女が。

「あったかい、です」

彼女の匂いに、ぬくもりに、包まれています。

「……また、ねむっちゃうんですか?」

彼女に微笑まれて、彼女の手を自分のものにして、彼女に包まれて、あなたはしあわせで、いっぱい。

「また、イタズラ、しちゃいますよ?」

彼女のイタズラは……しあわせ。

「くすくす、おやすみなさい……」

彼女に優しく囁かれて、あなたは深い眠りに落ちます。
深く。
ふかーく。
677 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/04(月) 16:49:46.84 ID:ykrDynzo0
優しい手つきで、あなたの頭が撫でられています。
ゆっくりと……あやすように……慈しむように。
そう、またもやこの夢です。
ですが、彼女はあなたのもの。
彼女の何もかもを、あなたはあなたの好きなように出来るのです。
そして、あなたは彼女のもの。
あなたのなにもかもが、彼女に優しくされるかもしれませんし、愛されるかもしれません。
どきどき。
期待に胸の鼓動が早くなります。
どきどき。
彼女の鼓動が期待で早まります。
どちらからともなく、あなたと彼女の指がからみあい、すこしずつ顔がちかくなって、そして

「おはようございます」

目覚めを促す声に誘われ、あなたは覚醒します。

「こんなに近いと、なんだか恥ずかしいです」

あなたの両手は彼女の腰にまわされています。

「そんなふうに見つめられたら……困ります」

彼女の両手はあなたの背中にまわされています。

「……えっち」

彼女の唇が、濡れています。

「おやすみなさい」

彼女に優しく微笑まれて、あなたは深い眠りに落ちます。
深く。
ふかーく。

「おはようございます」

目覚めを促す声に誘われ、あなたは覚醒します。

「わたしのこと、愛してくれますか?」

あなたは目を細め、小さくうなずきます。

「わたしも、あなたのこと、愛しています」

彼女の言葉で、幸せが溢れてしまいそう。

「……」

彼女に組み敷かれ、見つめ合い……いよいよ、その瞬間が来たようです。

「……きて」

あなたは、小さく、でもはっきりと彼女に伝えました。
678 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/04(月) 16:50:55.37 ID:ykrDynzo0
「……やっぱり、やめましょう」
「……ぇ?」
「今からわたしがみっつ数えると、わたしが掛けた暗示は全て解けて、綺麗さっぱり無くなってしまいます」
「1」
「2」
「3」
「はいッ!」

彼女のカウントと合図で、あなたは全てを思い出しました。
彼女は彼女ではなく、やはり男の子であるという事。
男の子ではあってもいわゆる「男の娘」であるという事。
彼と自分は恋仲であったという事。
そして、女体化してしまったのは彼ではなく自分自身だったという事。

「わたし達が結ばれるためだからって、にょたちゃんの初めてをこんな風に奪うなんて……出来ないよっ」
「だ、だからって、仕方ないだろ!
 俺はまだ男の意識が残っちゃってて、ヤられるのは怖いし!
 かといって、もうお前が女体化するまで、もう猶予は無いし!」

男の娘の方が誕生日が早いので、予定では彼が女の子に生まれ変わり、二人はめでたく結ばれるはずでした。
しかし何の因果か、男の娘より先に彼女が……にょたちゃんの方が早く女体化してしまったのです。

「で……でも、それでも!にょたちゃんの初めてが催眠でふわふわしてるうちに勢いで、なんて……だめ、だよ!」

予定がひっくり返り、恋人達は戸惑いました。
ですが、互いの役割が入れ替わろうとも愛する気持ちに変わりは無い、と二人は苦難を乗り越えたのです。

「じゃぁどうすんだよ……お前まで女体化したら、それこそ俺達は、もッ……ぅ」

男の娘に苦しげに見つめられ、にょたの中の何かがドクンッと揺れた。
先程までの催眠の残滓か、それとも窮地に立たされた故の本能の胎動か、それは分からない。
だが、愛する者からの求めに対して、応えたいという想いが彼女の中で急速に大きくなっていく。

「なぁ……今なら、出来るかも、しんない」
「……え?」
「い、いまなら、ひょっとしたら……きっと……」
「え?えええ!?」
「ば、ばっか、何度も言わせんな!」

まっ赤になってそっぽを向くにょた。
彼女の手を取って、両手で包みこむ男の娘。

「……にょたちゃん」

優しく囁かれる。

「にょたちゃんの初めて、わたしにください」
「ぅ……あ……」

にょたの全身から力が抜け、恋人にしなだれかかってしまう。
慌てて支えた彼の耳に、幸せが溢れ出てしまった彼女が囁く。

「……きてっ」
679 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/04(月) 16:51:27.37 ID:ykrDynzo0
ニ人称視点に見せかけた催眠風味のお話ってのを作ってみたかったわけですが…出来ていませんなorz。
これ、やっぱ催眠の勉強しないと無理なのかお?それ以前に文章力の問題かお?
やっぱ変なこと考えずに男の娘×にょたん娘にするべきだったか…

たぶんこんなの読んでも暗示なんて掛からないと思いますが、
もし頭がぼーっとするような方が居たら、伸びを打った後、2,3回深呼吸して可能なら仮眠を取ってみてください。
いぢょ!
680 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/04(月) 18:14:35.56 ID:VqrB4+PAO
>>679
こんな、こんな寸止めなんて……大好きだッ!!
うぁぁぁああん!!すげぇGJッッ!!


この夏のトレンドは寸止めか…把握。
681 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/04(月) 19:25:07.13 ID:/3hoJqnTo
>>679
なんとなくふわふわするような感覚があるなぁと思ったら
やっぱり催眠系のテイストが組み込まれてましたか

暗示ってのは音で入る事が多いだろうから、あまり気に病むような事ではないと思います

>これ、やっぱ催眠の勉強しないと無理なのかお?それ以前に文章力の問題かお?
>やっぱ変なこと考えずに男の娘×にょたん娘にするべきだったか…

これはこれで好きです
682 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/05(火) 01:38:02.27 ID:NNOsoSZu0
あ、スレあったんだ
683 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/05(火) 03:48:06.60 ID:LC9KxwhAO
おいでませ
684 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/05(火) 13:43:42.17 ID:V841zYiB0
>>680
や、万が一にも暗示が効いちゃってたら、男の娘に色々捧げちゃうおにいちゃんとか出てくるかもなのでww
寸止めは自分に自信が無いからなのですだよ…あなたならきっとやれる…やれる…やれる……

>>681
軽くでも暗示が入れば臨場感とか没入感とか満載になって、読み手が男の娘に可愛がられるお話が出来るはず!だったのですが…
能動的な「読む」より受動的な「聞く」じゃないと、上手くいかないのでしょかねー…うん、もうニ度とやんないっすww

にょた「ほぉら……もう女の子になれなくなっちゃうぜ?」
男の娘「お願い……許して……」
にょた「この学園ににょたは一人で充分、お前らは醜いメタボオヤジになっちまえばいいのさ!」
男の娘「いや!ちょびひげすててこびーるばらなんていやぁ!お願い、ばーこーどは……ばーこーどだけはっ!」
にょた「イイ顔になって来たなっ!はなげむなげうでげはらげすねげ……全部だ!全部受け取れっ!」
男の娘「だめええっっ!加齢臭!加齢臭来ちゃうぅ!」

男の娘×にょたん娘って、こう?ww
685 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/05(火) 19:21:24.77 ID:TVpcobFWo
>>684
それは
にょたっ娘×男の娘 や!

っていうか催眠の内容が変わってるwwwwww
おかしいですよ!カテジ○さん!!
686 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/07/05(火) 19:45:44.62 ID:FKPkGqxz0
>>684
>や、万が一にも暗示が効いちゃってたら、男の娘に色々捧げちゃうおにいちゃんとか出てくるかもなのでww

男の娘「やぁ…やめ……あぅ…かはッ…」
おにいちゃんA「いやー、オレもホントはこんな事したくないんだけどさー、催眠の所為でね…」
男の娘「いぁ…嘘…そんな、してない…」
おにいちゃんA「マジマジ、全部催眠の所為なんだって、悪い奴だよね催眠って(笑)」
男の娘「やぁ、イヤ、そんなに…動かないでぇ…めくれちゃうぅ…」
おにいちゃんA「このまま射精したら男の娘でも妊娠しちゃうかな?しちゃうよね?してほしーなー!」
男の娘「無理…そんなの無理だから…出さないでぇッ…」
おにいちゃんA「>>571でも出来るって言ってたし、イけるっしょ?じゃ、中出しけってーい」
男の娘「いや、いや、いや、いや、いやぁ…ッ!」
おにいちゃんA「お?男の娘ちゃん、フル勃起してんじゃん?おにいちゃんイイ物持ってんだ♪コレ使ったげるね」
男の娘「……ッ!やッ?!そのタマゴいやぁッ!!入れるんならにょたちゃん、にょたちゃんのがいいのぉッ!!」
おにいちゃんA「あーソレ無理無理、だって今にょたちゃんの穴どっちも塞がってるから、ホラ」

にょた「あ…あ、あ、あッ…ンぅ…イヤ、見るなッ…見ないでぇ男の娘ぉ…」
おにいちゃんB「どぅも〜、おじゃましてまーす☆」
おにいちゃんC「さすがにょたちゃん、元男の子だけあって後ろもイイ感じだね♪」
にょた「いやだ…こんなの……ぅん…なのに…アっ…変…俺、なんか変なんだよぉ…男の娘ぉ」

男の娘「イヤああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ………ッッ!!!!」

おやおや、捧げるどころか奪われちゃったようですね。
ざんねん。

>あなたならきっとやれる…やれる…やれる……

テヘ☆
687 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/05(火) 20:20:12.57 ID:ZaIgOkg2o
なんという香ばしい変態の集うスレなんだッ・・・!

抜いた
688 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/05(火) 22:01:12.37 ID:LC9KxwhAO
>>686
× おやおや、捧げるどころか奪われちゃったようですね。
  ↓
○ おやおや、捧げられるどころか奪われちゃったようですね。

くやしいっ…こんな小ネタで間違うなんてっ…ビクビクッ!

>>687

ふふ…ぬいたなんて…あなただってへんたいさんでしょ?
689 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/05(火) 23:29:31.37 ID:TVpcobFWo
流れが止まらないなー
ここは真面目に安価消化で流れを一般的な(このスレで何を言っているのか)流れに戻せたらいいなー
あ、別に安価するわけではないですよ。元々あと1つ安価貰ってますし。

>>686
こうかはばつぐんだ!
でもこの後ににょたと男の娘がいちゃいちゃして救われて欲しいとかちょっと思ってしまう夏の夜。
どーしても、ネタでもNTRはもにょもにょしてしまう……
690 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/06(水) 01:23:43.51 ID:akMTnfDI0
女になったら間違いなくマゾになるからむしろNTRは萌える
691 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage saga]:2011/07/06(水) 02:27:04.99 ID:S13zmYvp0
−−−−ガシャーン

??「僕、参上… さぁ、お前の罪を数えろ」
おにいちゃんA「な……ッ?!お、お前はリリカル…」
??「リリカル言うなー(>A<)」ドギャーン!メシャ!
おにいちゃんA「ゲブぅッ!?」
おにいちゃんB・C「ひぃぃッッ?!」
??「えぇい!いきなり僕の必殺技パート2『ゲノムブレイカー』!!」ズギャーン!!

おにいちゃんA「な……B、お前巨乳になってるぞ?!」
おにいちゃんB「そういうお前はロリじゃねーか!?」
おにいちゃんC「オレが…手の平サイズ…だと…?」

??「そして『処女膜再生ビーム』!」ビビビビビ!
男の娘「!?にょたちゃん!」ガバッ
にょた「ちょッ?!ドコ見てんだよ男の娘ッ?!」
男の娘「…治ってる…処女に戻ってるよにょたちゃん!!」ダキッ
にょた「ちょ…男の娘ッ…はずかしいよ…」カァ///
??「それから『アフターピル』」シンテイ
にょた「あ、ありがとうございます…(そこは普通なんだ…)」
男の娘「貴方は一体…(みんな知ってると思うけど…)」
??「通りすがりの魔法少女だ、別に覚えなくていいよ」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

西たん「さすがですね、ありがとうございました。これ、約束の品です」スッ
??「……確かに。じゃあ、僕はこれで…」

でぃゆ(ry「いやー、魔法少女ってスゴイねー西ちゃん」
西たん「元はといえばお前の下衆な妄想の所為だろう、猛省しろ馬鹿ッ!!」ガシッ!
でぃゆ(ry「痛い痛い痛いって?!やめて西ちゃんッ!!」
西たん「はぁ…これに懲りたら二度とNTRネタはするな」
でぃゆ(ry「NTRじゃないよー?心まで堕ちてないからアレはレイプだよー?」
西たん「屁理屈をぬかすな。なんならお前、素っ裸で首に『1PLAY 100円』の下げ札装着で男子校のトイレに縛り付けてやろうか?」
でぃゆ(ry「やめてッ?!想像しただけでアクメしちゃう」ジュン
西たん「駄目だこいつ…早く何とかしないと」
でぃゆ(ry「あー、一応あの2人にはお詫びの品を渡しといたよー?ほら『ローション風呂』…」
西たん「…………」ガシッ!
でぃゆ(ry「痛い痛い痛いぃッッ…!!」

??「芋羊かん♪芋羊かん♪」

後日、恥ずかしそうにラブホに入ってくにょたと男の娘を見たとか見ないとか…

【おしまい】


…西たん!技を借りるぜっ!!……新潟さんすいませんっしたーッッ!_○/|_
西たんNTRとかしてゴメンなさいッ!すいませんっしたーッッ!_○/|_
(うДT)さん、一部ネタをお借りしましたーッ!すいませんっしたーッッ!_○/|_
お芋さん、色々すいませんっしたーッッ!_○/|_

NTRについては…好き、なのぉ……大好きなのぉ…ドMだから…
さて、死ぬには良い日だorz
692 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/06(水) 09:38:48.32 ID:qcqwqnVP0
>>686,691
しっかり暗示に乗っかって、なんてヒワイな事をww
しかもリリカルお○たんとか懐かしいネタがwwww
朝からすっかり目が醒めちゃったじゃねぇですかwwこのドMさんめwwwwww

>>689
ごめんよごめんよ
でもオイラもヘンタイさんなのですよ、お○たんに言わせればドッ変態の分類なのですwwww

頑張って表現控えめなの考えてみるか…よければどなたか安価ください↓
693 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/06(水) 10:47:36.60 ID:LBmJud9AO
>>691
公開処刑乙wwww

>>636を見てたら何となくその後日談書いてみたくなった
まとめにクロスおkって書いてあるし…原作レイプやもしれんが、清水寺ダイブ気分で投下してみようかな……

先に謝っておきます ごめんなさい
694 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/06(水) 11:14:45.97 ID:LBmJud9AO
うわ、安価取ってたことに今気づいたorz

>>692
安価おkなら『髪型の悩み』
695 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/06(水) 11:43:13.68 ID:qcqwqnVP0
安価把握

>清水寺ダイブ
やっちゃえやっちゃえwwww
696 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/06(水) 15:18:15.19 ID:qcqwqnVP0
安価『髪型の悩み』

「あうあうあ〜、女装子〜助けてくれ〜」
「うわっ……なんだその髪、身長当社比3割増しみたいになってるぞ?」
「男の娘に女の子らしい髪形教えてくれって頼んだらこんな事に……」
「男の娘が?あいつ、ウチでは一番乙女なヤツだろ……お前、なにしでかした?」
「ぎく」
「動揺を口に出さんでもよろしい、んで?」
「ちょっと俺設定ノートを見られただけだよ……
 15の誕生日に備え、色々準備してきた男の娘。
 しかし運命は彼を裏切り、少年は少年のまま朝を迎えてしまうのだった。
 絶望、葛藤、悲哀……さまざまな感情が男の娘の精神を引き裂く。
 だが希望は残っている。女体化の症例は15、そして16歳の誕生日に集中しているのだ!
 次回、魔法少女まだか☆にょたか『負け組』
 彼は未来に希望を託し、今日も平らな胸にパッドを当てる。
 みたいな」
「おーけーベイベ、おめーはたった今から全国の男の娘と女装子の敵だ」
「だから言いたくなかったのに〜」
「はっはっは、昇天ペガサスからのドラゴンスクリューマウンテン盛りにしてやるから感動にむせび泣け」
「おーたーすーけー」
697 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/06(水) 15:18:55.72 ID:qcqwqnVP0
「内容がアレとはいえ、個人的なノートに登場しちゃうとか愛されてんなぁ
 俺も男の娘に転向して乙女目指しちゃおうかな……」
「はぅ……女装子さんたら、もう……」
「なんつーか、お前らは中身交換しとけ」
「てへへ……ね、女装子さん」
「んー?」
「わたし達って、この先どうなるのかなって」
「あー……女体化症候群のおかげで、ジェンダーに関しては暫らくカオスな状況が続くだろうさ
 その間なら、俺達はこうやって好きに生きていけるんじゃないか?」
「ごめんなさい、そうではなくて……わたし達って、将来お嫁さんやお婿さんになった時、どうなのかな?って
 ちゃんと祝福してもらえるのかな、両親とか喜んでくれるのかなって……」
「なんだ、そんな事か」
「むぅ、そんな事って……」
「いいか?(ぎゅっ)」
「きゃっ」
「こうやって抱きしめた時に伝わるぬくもりは、まっとうな男女でも、俺みたいな変態でも
 もちろんアイツだって……みんな一緒なんだ
 仮に世間が否定し世界が敵に回っても、俺やクラスメイト達はお前を祝福するよ……それじゃ足りないか?」
「あ……う、ううん、足りなくなんかない、すごく……嬉しい」
「だろ?まぁ、男の娘がそれだけじゃ足りないって言うなら、いっそう努力するしかないけどな」
「努力?」
「世間に俺たちみたいなのを認めさせる、そんな努力」
「……認めて貰う、努力……」
「残念ながら、何をどう頑張ればいいかまではさっぱり分からない、アホの戯言なんだけどな」
「戯言なんかじゃない……すごく、立派だと思います!
 少なくても、わたしの心に明かりを灯けてくれたもの」
「お姫様にそう言ってもらえるとは恐悦至極
 ところでさっきから俺に密着して抱きしめ返してくれちゃってけど、期待してもいいの?」
「ぇ?……ふええ!?(あわあわ)」
「いやホント、なんでお姫様は女体化してないカナー(でこちゅー)」
「!?!?」
「おおっとよろめいてくちびるがあたってしまったこれはじこだなーうんうん」
「あぅ……女装子さんのいぢわる……」
「はっはっは、また何かあったら相談乗ってあげるよ……女体化後だったらもっと嬉しいけどネ」
「うー、女装子さんなんて知りませんっ! ……ありがとうございました」
「あいよ〜」

「女装子じゃなく、にょた目指すべきだったかねぇ
 ま、同じ条件だからって、お姫様が振り向いてくれるとは思えんけどネ
 はいはい御馳走様でしたっと
 ……俺もあーいう可愛いお相手欲しいなぁ……」
698 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/06(水) 15:20:24.16 ID:qcqwqnVP0
以下「まだか☆にょたかって書きたかっただけだろ」禁止ww

ちなみに
にょた:心は男、体は女、服装中性
男の娘:心は女、体は男、服装女性
女装娘:心は男、体は男、服装女性
という設定っす、見た目はみんな美少女ww
皆さまの解釈と異なるかもしれませんが、そこはよしなに
いぢょ
699 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/06(水) 17:06:01.37 ID:GDKBkKeAO
>>698
お笑い系かと思いきや切なくもっていくこの芸風。
…ずるいわ〜ww
ごちそうさまでした!

>>692-693
貴方達が笑ってくれるなら死んだ甲斐があったってもんよww

よろしい、清水寺ダイブ!何度でも飛びたまえ!
700 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/06(水) 20:01:15.18 ID:ZwqotYjAo
>>691
僕ァ、どこの天津飯っすかwwwww
そういや天津飯って宇宙人設定でしたっけ。全然関係ないけど。

少しだけマジレス
趣味趣向は様々ですから、謝罪はしなくても。
あと、あんなふうになっても、トラウマを抱えつつも二人で寄り添って幸せになる展開とかのが好きです(´・ω・`)


>>693
思ったんですが、安価お題って『清水寺ダイブ』でよかったんじゃ

少しおふざけが過ぎるか


>>698
その後、女装子の前に契約厨が現れて
『ボクと契約して魔法少女になってよ!』って迫ってくるんですね解ります
701 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/06(水) 20:40:58.70 ID:GDKBkKeAO
>>700
天津飯は三只眼吽迦羅では?じゃ餃子は无?

>趣味趣向は様々ですから、謝罪はしなくても。

つい謝っちゃうチキンな漏れ可愛い…無いな、早く女体化してーorz

>あと、あんなふうになっても、トラウマを抱えつつも二人で寄り添って幸せになる展開とかのが好きです

その展開も一瞬頭を過ぎりましたがレスネタにしては
長そうだなと思って書かなかった漏れを誰か
慈しむように、でも辛辣になじって下さい(TДT)
702 :693 [sage]:2011/07/06(水) 23:30:13.85 ID:LBmJud9AO
かなり卑猥なものが出来上がりそう。
ごめんね原作の方orz
703 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/06(水) 23:33:56.16 ID:GDKBkKeAO
>>702
よろしい、貴方の性癖を解放したまえ!
まとめに☆を刻むがいい!
704 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/07(木) 14:50:52.60 ID:XKlWbYj/0
>>701
にょた「俺らって、話が長くなりそうだからってあんな目に合わされたワケだ」
男の娘「えと、何か事情があったから仕方がなかったんですよね?」
にょた「いーや、ドMさんの事だから罵られたくてワザとって事も」
男の娘「そ、そんな事ないはずだよ?わたし達のことちゃんと考えてくれてるよぅ」
にょた「ふーん……どうなのかなぁ?(じとー)」
男の娘「わたし、信じてますからっ(うるうる)」

辛辣さが足りなかったら増量しますぞww


>>700
ふた娘『ボクと契約して魔法少女になってよ!』
女装子「それは女体化とは違うのか?」
ふた娘「歴代のリリカル魔法少女さん達のように戦う運命を背負わされる代わりに
    願い事を1つだけ叶えてあげる……そんな契約だよ!」
女装子「……願い事3つにしてくれ、こいつら巻き込むから」
にょた「うゅ?」
男の娘「ふえ?」

女装子さんはきっとクールビューティ……を、装いつつ仲間が欲しい寂しんぼ
あれ?これって黄色い人フラグwwww


結構適当に書いてるのは分かってる、ゴメンヨ、暑くて蒸してるのがワルインダヨー
705 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/07/07(木) 22:26:25.51 ID:j/m9tXYAO
【花火と浴衣】





「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんっ!」

学校から帰り、夕飯まで時間潰しに自室で本を読んでいたら、やけにテンションの高い妹がノックも無しに部屋に入ってきた。

「サチ……お願いだからノックくらいしてよ」
「ねえねえ、明日花火大会あるの知ってるよね?」

無視ですか。

「うん、知ってるよ。七夕の花火大会は毎年恒例だからね」
「見に行こうよ!」

テンション高い理由はそれか。まあ、僕も毎年楽しみにしているし、今年も見に行きたい。

「よし、じゃあ行こうか」
「やったー!」

妹は弾けるような笑顔を浮かべ、僕の部屋から一目散に出ていった。

「おかーさん、浴衣出してー!」

少しして、居間の方から妹の声が聞こえてきた。
妹は浴衣を着るのが好きらしく、夏は浴衣を普段着にしている程だ。
今はまだ洋服だけど、そろそろ浴衣に衣変えする頃だな。
ま、僕は妹ほどのこだわりもないし、普通に洋服で行く。
僕も女の子だったら妹に浴衣着るようにせがまれてたかもしれないけど、男だからそんな事ないし。
そんな事を考える度につくつぐ思う。
男って楽でいいなー。



翌日。
今日は七月七日。
花火大会の日だ。
楽しみにしていた花火大会の日なんだけど、僕のテンションは低い。
なぜかというと。

「ねえねえ、浴衣着てよー!」

妹が僕に纏わり付いて、浴衣を着るようにせがんでいるからだ。
もちろん、去年までの経験から言って、妹が男である僕に浴衣を着ろとせがむ事は無い。
つまり、なぜ今、僕が浴衣を着るようにせがまれているのかというと。

「せっかくお兄ちゃんもお姉ちゃんになったんだから、可愛くなってよー!」

はい、そういう事だ。
僕、今日授業中に女体化しちゃいました。
授業受けていた途中、いきなり猛烈な目眩いがして、そのまま気絶。
目が覚めたら、既に女の子になった状態で保健室のベットに横たわっていた。
その後、大事をとって早退したが特に体調に異常もなく、花火大会に行ける事にはなったのだが……妹が学校から帰ってきて事情を話したら、この有様である。
ちなみに鏡で自分の姿を見てみたらかなりの美少女だったんだけど、その話はまた今度。
706 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/07/07(木) 22:27:20.60 ID:j/m9tXYAO
「ねー、浴衣着てよー!」

妹が僕の服を掴み、ガクガクと揺さぶる。

「仕方ないだろ。僕の分は無いんだから」

そうなのだ。ウチには妹はいても姉はいない。それに僕自身も浴衣は着ないから、僕に合うサイズの浴衣が無いのだ。

「やだー! お姉ちゃんと一緒に浴衣着たいの!」

妹が癇癪を起こす。
まいったなあ。無い物は無いのに。

「サチ、心配しなくても大丈夫よ」
「あ、母さん」

癇癪を起こした妹を見かねてか、母さんが口を挟んできた。

「大丈夫って?」

あ、食いついた。

「ほら、これなーんだ?」

母さんが両手に持った布切れを広げてみせた。
いや、布切れと言うには何だか形がおかしいし、妙に綺麗な模様も入ってるし、これってもしかして……。

「あっ、浴衣!」

サチが驚きと喜びの混じった声をあげる。
確かに浴衣だ。これ以上無いくらいに浴衣だ。

「……って、ちょっと待って。僕用の浴衣無いんじゃなかったの?」
「無いわよ。だから、私が昔着てた奴を仕立て直したのよ」
「仕立て直したって、僕が女になってからまだ四時間くらいしか……」
「あたしにとっては四時間もあればお釣りが来るぐらい余裕よ」

なんか母さんがかっこよく見える。

「とりあえず、せっかく浴衣を用意したんだから着ていきなさい」
「えー……」
「何よ、不満なの?」
「不満って訳じゃないんだけどさ」
「じゃあ、なによ」
「なんか着るの面倒そうだから……」

瞬間、母さんが大きな溜め息を吐いた。

「まったく、このものぐさ息子ときたら……いや、今は娘か」

凄く心外な事を言われた気がする。

「んじゃ、あたしが着せてあげるからこっち来なさい」

浴衣片手に手招きする母さんに近づく。

「いいけどさ、あんまり時間かかんないよね?」
「一分とかからないわよ」

い、一分?
僕の耳が正しければ一分って着替え済むって聞こえたんだけど。
普通の着替えでもそんなに早く終わらないよね?
十分の聞き違いかと思い、もう一度聞き直そうとした時。
707 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/07/07(木) 22:28:29.86 ID:j/m9tXYAO
「さ、ちゃっちゃと終わらせるわよ」

母さんの手が僕の体をスルリと撫で……たかと思った、次の瞬間にはパンツ一枚に剥かれて、一瞬前まで僕が身につけていた服は母さんの隣にキチンと畳まれている状態で置いてあった。

「え、あ、あれ?」

な、なにこれ? 手品?
五秒とかからず、僕ほぼ全裸にされたんだけど!?

「さ、次ね」

何でもないような口調の母さんは、僕の頭に浴衣を被せて……それから二十秒とかからずに浴衣の着付けが終わった。

「三十秒か……予定よりちょい早く終わったわね」

ちょっと満足そうな口調の母。
ちょいどころか凄く早く終わった。

「しっかし、あんた胸無いわね〜。さすが、あたしの娘!」
「ちょっ、何言って……って、そこは普通悲しむトコじゃないの?」
「いいのよ。あたし、貧乳萌えだし」

何言ってんだろ、この人。

「そのおかげでくびれ消しのタオルも少なくて済んだし」
「え……あ」

母さんの言葉の真偽を確かめるために、腰のあたりに手をやる。
確かに違和感。
腰から感じる感触から考えてもタオルで間違いないだろう。
いつの間に巻いたんだろう……。

「ああ、あとこれも脱がしといたから」

母さんが両手で摘むように持っているアレは……!

「そ、そそそれは……」
「そう、あんたがさっきまで穿いていたパ・ン・ツ♪」

念のため、本当か確認中……………………本当に脱がされていた。
う、うううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!

「あらあら、ノーパン程度で真っ赤になっちゃって」
「か、返してよ……」
「ダーメ、男用の下着なんて着けていくんじゃないの」

母さんはそう言うや否や、パンツをゴミ箱に捨ててしまった。ひ、酷い……。

「じゃあ、次はサチの着つけね」

母さんは平然とした調子で、サチの着つけを始めた……………………終わった。
他の人の着つけを見て思った。
早すぎて、何をしているのかわからないうちに終わっている。
708 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/07/07(木) 22:29:35.15 ID:j/m9tXYAO
「はい、おしまい! さ、混まないうちに言っといで!」
「うん! 行こ、お姉ちゃん!」

母さんに軽く背中を押されたサチは、僕の手を取りぐいぐいと引っ張る。

「あ、ちょっ、引っ張らないでっ!」

サチに引っ張られながら、なんとかサンダルを履いて外に出る。

「もう、こんな時間か」

空は夕焼けの光で綺麗なオレンジ色に染まっていた。

「さ、急ごうか。サチ」
「うん!」

こうして僕達は花火が良く見えるスポットへと向かった。





翌日、朝。

母さんが僕の部屋のドアを叩いている。

「こらー、開けなさい! 学校遅れるわよ!」
「行きたくない。今日休む」
「ちょっ! ……どうしたのよ。サチ、なんか知ってる?」
「うん。昨日ね、お姉ちゃんがね、男の子に告白されてたんだよ」
「…………マジ?」
「うん、マジ」
「……………………わかったわ。今日は休みなさい」

急に母さんが優しくなったのが、逆にいたたまれない。
ま、いいや。今は何も考えたくないや。
ゆっくりと休もう。
709 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/07/07(木) 22:31:53.21 ID:j/m9tXYAO
おしまいです。

花火大会中の話も考えてありましたが、それやると話長くなるのでカットしました。
興味のある人がいれば投下するかも?

作成時間が三時間と自分的に突貫作業なので、駄文成分が多めですが、お許し下さい!
710 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/07(木) 22:56:57.89 ID:iLA/70IAO
>>704
おぉう、にょたと男の娘に責められるとかwwんぎもぢいぃwwww
あ、間違ったwwごめんよごめんよう…
違うんだよう、>>701で言及した展開は>>686の後って事なんだよう(ノДT)
とゆーわけで君らが穢されるのは必然なのでザマアミロ(^ω^ )

謝罪はするけど自重はしない、それが漏れの正義!

>>709
>「うん。昨日ね、お姉ちゃんがね、男の子に告白されてたんだよ」

ちょwwwwwwそこ端折っちゃらめぇえwwwwww
…なんかアレですね。
こーゆーさわやかな良作読むと自分がいかにヨゴレてるかってね…orz
711 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/08(金) 16:17:58.73 ID:uUnV0DM10
>>709
省略されてる花火大会で妹ちゃんが無邪気に活躍してくれちゃったヨカン
今のうちにエールを贈っちゃおう、いいぞもっとやれwwww

>>710
にょた「しまった!予想以上に悦ばれた!」
男の娘「ど、どうしよう?」
にょた「この手のドMさんにはきっと褒め殺しの方が有効なハズ!」
男の娘「そう……なの?」
にょた「間違いない、男の娘だって「可愛いね」って女の子扱いされると、嬉し恥ずかしで逃げ出したくなるだろ?」
男の娘「えぇ!? わ、わたしなんかよりにょたちゃんの方が可愛いよ?」
にょた「い、いやいやいや、今はそういう話では無くて……嬉しいけどさ(ぼそ)」
男の娘「ふふ、にょたちゃんまっ赤だよー?かわいいー♪」
にょた「うあああ、待て待て待て!ドMさんの前でそんな風にからかうんじゃありませんっ」
男の娘「じゃぁ二人きりだったらいーい?」
にょた「う゛っ、それは、その……」
男の娘「じゃぁアッチで最近タンスに増えてきた女の子の服についておはなししよーね」
にょた「おいぃ?なんで俺の部屋のタンス事情とか知ってますか?」
男の娘「愛?」
にょた「ぶっ」
男の娘「それではドMさん、失礼しまーす」
にょた「ちょ、こら、ひっぱるなってば、うおーいっ」

ザマミロされたので放置プレイにしてみたwwww
712 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/08(金) 19:23:51.51 ID:x/wz3MMho
軽めのものしか今は書けないかもしれませんが、なんとなく安価↓
713 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/07/08(金) 19:28:17.15 ID:fajXOATyo
この私でwwwwww
714 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/08(金) 20:30:56.84 ID:x/wz3MMho
>>713
把握………?
言葉通りに受け取っていいのでしょうか?
715 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/08(金) 20:34:20.09 ID:jpZ4oIPAO
>>714
さすが◆Zsc8I5zA3Uさんスゴイお題やでぇwwwwww
716 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(広島県) [sage]:2011/07/08(金) 20:36:28.05 ID:fajXOATyo
>>712
勿論。さぁ・・先人達が遺したの輝きを!!
717 :693 [sage]:2011/07/08(金) 21:12:13.16 ID:VsaLThwAO
さて、かなり微妙だけど>>693で宣言した通り出来上がったから、清水寺紐なしバンジーの決行をば

あー胃がツッキンツッキンしますよ。

ていうか何か面白いことになってるし空気読んで静観も一興じゃね?
718 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/08(金) 21:19:55.73 ID:jpZ4oIPAO
>>717
そのエロネタを解き放て!
宜しくお願いします。
719 :693 [sage]:2011/07/08(金) 21:26:05.03 ID:VsaLThwAO
まぁ、そんなにぶっちゃけた話エロくならなかったんだけどね。
んじゃ、投下します。

……いまだに姿が見えない青色さんが怖いけど、あの人にヌッ殺されたら骨は拾ってくだされ
720 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 21:38:12.57 ID:VsaLThwAO
【青色通知-After a birthday-】


 ふと気紛れに窓の外を見下ろすと、桜の幹が徐々に紅く色づき始めていた。
 春が近いとはいえ陽の出ていない時刻は、まだまだ暖房器具に頼らざるを得ない、そんな土曜日の執務室。

 ……傍目から見たら判りづらいのかもしれないが、僕は苛々していた。そう、苛々している、のだろう。……多分。
 それが何故か――と問われると僕自身も"コレが原因だ"と断言できないでいるのが現状だ。臨床心理学曰く『自己は最も疑うべきもの』というのが通説らしいが、かくも僕は、僕自身に対しての理解が乏しいとは思いもしなかったな。

 閑話休題。

 そんな自身の情けない姿を他者に晒したくないと、僕は委員長に与えられている執務室に籠り、再来月に提出する予定の新法案の資料整理をしていた訳だが―――。

「……ねぇ、せんせー?」

 ―――その同室で、うら若きポニーテールの少女が備付のソファに寝転んだ無防備な体勢で、無拍子にこちらに頗る怠そう目を向ける。
 ……やれやれ、年頃の娘が……はしたない。
 彼女が今日中に済ませるべき仕事―――資料整理や報告書の提出―――は終わっているし、出入口の施錠はしているとはいえ……まったく、一応ここは職場だということ自覚はあるのだろうか?
 そう苦言を呈そうとして、打算が働いた。
 彼女を委員会側に引き込んだのは他でもない僕だし、彼女の許可なしに私設秘書に据える手続きを勝手に行ったことを責められたら堪らない。
 勘が鋭い彼女に思考の揺らぎを悟られたくはないので出来うる限りの自然な笑顔を意識した返答を心掛ける。

「なんだい?」
「………なーんか、ネガティブなコト考えてましたね?」

 ジト目で睨まれた。
 ……営業スマイルというのは、どうも苦手だ。研修医の頃から、そういう類の注意を教授から散々受けたくらいに。

 流石に大多数の大人の目を掻い潜り、違法に通知受取人資格を所持していただけのことはある、か。
 ……かといって、今の彼女の質問を肯定する必要性は皆無だが。
721 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 21:41:58.48 ID:VsaLThwAO

「別に……なんでもないよ、僕は仕事に集中していただけ―――」「―――嘘ですね」

 僕の言い分等聞く耳持たず、と言わんばかりに、彼女は負荷から解放されたバネの如く跳ね起きると同時にこちらに駆け寄り、小さな両手をトンっ、とデスクに軽く叩き付けた。
 その衝撃が伝わったのだろうか、この寒空の時期には不相応な薄手のブラウス越しに、彼女の発育良好な胸部が二、三度揺れる。

 ……近い、な。

 違法にとはいえ、仮にも青少年の相手役を買って出ていた女性のものとは思えない距離感だ。

「何怒ってるんですか?」
「何のことだかさっぱり、だね」
「ほぉら、やっぱり嘘。
 ある意味素直ですよね、せんせーって」

 カマを掛けたのか、僕が余程致命的な反応をしてしまったのかは判らないが。
 彼女はアメリカ人顔負けの『やれやれ』と言いたげな大仰なリアクションで僕から背を向ける。
 彼女が左右に首を振る度に、短めのポニーテールと青いリボンがそれに倣うのがなんとも可愛らしい、が。
 ……可愛さ余ってなんとやら、とはよく言ったものだ。

「ならば、君自身の胸に手を当てて考えてみることをオススメするよ」
「……やっぱり怒ってるんじゃないですか」
「怒っているとは言ってないが」
「同じようなものじゃないですかっ」

 冬眠前の子栗鼠を連想させるような膨れ面で、彼女は再度僕に詰め寄ってくる。
 やれやれ。
 一体この数分で執務室のデスクとソファを何往復すれば気が済むんだ?

「……"あの二人"だって恋愛を楽しむ権利はあると思うんですけど」

 不貞るように彼女は言う。

 ……また、その話題か。
722 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 21:47:53.18 ID:VsaLThwAO
 暈した言い方はしているが、十中八九、彼女の―――友人、兼、想い人である二人のことだろう。
 確かに、彼女の言ってることは正しい。

「あぁ、それには同意するよ」
「じゃあ、なんで怒る必要性があるんですかっ?」
「別に怒ってなどいないよ」
「嘘ばっかり。……誰かさんそっくりですよ?」

 誰のことを言いたい? そういう意味合いで彼女を見やる。

「良心とか、常識とか、人の目とか、そーいうのを気にし過ぎて、イザという時に感情をストレートに表に出せなくて、自分の中だけでフラストレーションを溜めてっちゃう、どこかの女の子そっくり」

 ………。

「……誰だかは知らないけれど、別に似てなどいないだろう」
「外見とかの話をしてるんじゃないんですっ。……わかってるくせに」

 再び、彼女は不貞るように僕からくるりと背を向けた。

 ―――わかってるくせに。

 そう彼女に吐き捨てられた刹那に、心臓の手前側がチクリと痛んだ気がした。
 単なる軽傷だと思ったその痛みは、段々南下していき、丁度胃の辺りで止まったかと思うと、小石を投じられた水面のようにじわじわとその痛みは軟化しながら拡がっていく。

「せんせーの、そういうとこ、キライです」
「……嫌われるのには慣れているよ」
「そうやって、捨て鉢になるところもそっくりです」

 何故、一回り以上も年下の発病者にこんなにも辛辣な言葉をぶつけられなければならないのだろうか?

 ……あぁ、苛々する。

「何が言いたい?」
「せんせーが、"あの二人"に固執する理由が知りたいだけですよ。
 ちょっと二人の関係を『つっついた』くらいで、そんなにもせんせーがイラつく理由を知りたい、とも言い換えられますけど」

 警察まで呼んで大仰に騒いだことを"つっついた"と表現するのか、最近の子は。

「それは君も知っての通り―――」
「―――委員会としての"抗体被験者保存"っていう建前は聞き飽きました。
 私は、せんせーの―――"神代 宗"個人としての理由を知りたいんです」

 ……まるで、僕が彼らに対して個人的な感情が働いていると言わんばかりだな。

 ……あぁっ、苛々する……っ!

 冗談じゃない、僕は仕事に感情を持ち込むなんて―――。
723 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 21:53:18.43 ID:VsaLThwAO

「―――"嫉妬"ですか? 大事な妹をとった、ひーちゃんに―――」「……っ!!」

 デスクから、耳をつんざくような打撃音がして、執務室に一瞬の静寂が戻った。

 掌が、じんと痺れる感覚で僕がデスクを両手で叩きつけたのだと自覚する。

 それよりも、僕の動きに物怖じもせずに―――むしろ心底愉しそうに―――妖しい笑みを浮かべている彼女に苛立ちが募った。

「びっくりしたなぁ、もぉ。
 でも……くすっ、せんせーのそういう顔、初めて見ました」
「……人をからかうのもいい加減しないか」
「だって、そうでもしないと誰かさんそっくりの潔癖症で、自分の汚い部分を認められないような人の真意なんて察せませんから」

 言いながら、彼女は僕を冷たい目で僕を見据えてくる。
 ……その目は、既視感を覚えるものだった。
 今から何年も昔の話だ。彼女が、まだ"彼"だった頃の、冷たい目。


「寂しかったんですか?」
「……答える義理はないよ」
「否定はしないんですね」
「……同じことは言わない」
「意気地無しなんですね」

 彼女の言葉の一つ一つが、胸に突き刺さり、またそれが身体を南下し、また痛みが軟化し……また沸々と、苛立ちがが募っていくのがわかった。理由は判らないが、兎に角、苛々した。


「もう、ラチが明かないですね。そんなチキンなせんせーは――」

 そんな僕の感情の揺らぎなど知らないと言わんばかりに、彼女は自身のトレードマークであるポニーテールを結った青いリボンをするりと外して見せた。
 一纏めになっていた髪が、万有引力に引き寄せられてふわりと揺れ落ちる。

「――お仕置き、です」

 何故か、自分の心音が一度だけ聞こえたような気がした。

「……仕置き? はっ、生憎僕に被虐趣味はないよ」

 全ての男が簡単に君に靡く訳じゃない、その現実を君は知るべきだ。

 そう鼻で笑って見せても、彼女は殊更愉しそうな笑みを浮かべていた。
 結わく際についたクセで、軽くウェーブの掛かった髪を下ろしているせいか、普段よりも大人びたように見える。

「はい、知ってます。
 ただ……私を―――坂城 るいを"飼い慣らせる"なんて思い込みは早々に取り払っておきたい、それだけですよ」
「――っ、な……っ!?」

 俄かには信じられない光景が目の前に映り込み、僕は無意識一歩後退っていた。
724 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 21:59:26.51 ID:VsaLThwAO

 彼女は、学校指定の襟元に着けるリボンをパチンという小気味良い音と共に外し、投げ捨てるだけでは飽きたらず、首元から半透明のボタンを一つ、また一つと外していったのだ。

 キメの細やかな若々しい素肌が一秒ごとに露になっていく。

「気でも違えたか……!?」
「まっさかぁ。
 ……私は正気、ですよ?」

 言葉に動きが伴っていない―――。
 そう異議を唱えようとする間もなく、逃げ場を失った僕と、乱れた着衣のまま詰め寄る彼女の距離はゼロになる。

「ね、せんせー……? 今、どんな気分です……?」

 ……頗る混乱しているよ。
 とは口が裂けても言えず、執務室の隅に追いやられた僕は窓へと目を背ける。
 窓の外は茶色の並木だけで現実逃避の原材料になりそうにない。

「ね、答えてくださいよ、せんせー……」

 襟元の開いたブラウスから年相応以上の豊満な女性の象徴が押し付けられ、湿り気を帯びた甘く温かな吐息が首元に掛かる程の近い距離から、彼女に囁かれる。

「……っ、今すぐに離れろ。誰かに見られたらどうするつもりだ」
「くすっ、ヤです。
 そもそも、人払いの為に、この部屋を施錠したのは何処の何方でしたっけ? 誰も入って来ませんし、出ていきません。
 誰も……ね?」

 顔をいくら遠ざけても、彼女の髪から仄かに香るシャンプーの匂いと、甘えるような、それでいて挑発するような声から逃げ出せない。
 あぁ……苛々する、本当に……っ!!

「あ……っ、……へぇ」

 彼女は、僕の不覚にも―――というか意識してそうなるものでもないが―――怒張させてしまった下半身に密着させた自らの左脚と僕の顔を交互に見やってから、辱しめるように笑う。

「くすっ、……男の人って心と身体は別なんですよね?」

 君自身もそうだった筈だろう。それとも、その感覚は既に忘れてしまったとでも言いたいのか?
 そんな思索とは裏腹に、下半身は素直に反応していく。
 ……苛々する。
 本能を律することが人としての常ではないのか?!
725 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 22:03:40.87 ID:VsaLThwAO

「……あははっ、いーですねぇ。その顔。
 ジレンマを抱えてるくせに、そこから逃げようとしてる狡い部分が見え隠れしててっ!
 ……せんせーも血の通った人間なんだって、今ならよぉく、わかりますよ?
 あ、でも……、今はその血も"こっち"に集中しちゃってるみたいですけど……ね?」

 こっち、という言葉と共に彼女は強く、リズミカルに脚を上下させてくる。

「っく……ぅっ」

 ……もう十年は異性との肉体的接触がご無沙汰な僕にとって、それはかなりの刺激。意図せずに何とも情けない声が漏れ出ていた。
 ……く、屈辱だ。

「あはっ、せんせー気持ちいいんですね?」
「ふ……っ、ざ……けるな―――ッ!!!」

 何かプツリと、途切れた。

「……や……ッ!?」

 鈍い音が執務室に響く。

 それは、僕が、彼女との立ち位置を即座に入れ換えた瞬間に、細い両手首を右手で抑えつけた瞬間のものだった。

 ……我に返って、その光景を疑う。

 これでは僕が元患者、現私設秘書を手込めにしようとしている構図みたいじゃないか!?
 彼女も、僕がこういった行動に出るとは予想外だったらしい。
 デスクの引き出しに忍ばせた鏡にどう映ったかは分からないが、きっと普段以上に女性を怖がらせるものだということは、掴んだ手首の震えから容易に想像が出来た。

「……っ、私の好きだった人にも、こうやったんですか?」

 どうやら、畏怖から我に返ったらしい彼女が僕を見上げてくる。その目は先程の妖艶なものとは全く違う、幼い敵意を孕んでいた。

「前委員長のことか? 残念ながら、君が考えているような間柄ではなかったよ」
「……でしょうね、"ハルさん"はせんせーに靡くタイプじゃないでしょうし」

 今度は、彼女が僕から目を背ける番―――。

「ご理解いただけたようで何よりだ」
「ただ―――」

 ―――だった筈なのに。
 彼女は、両手の自由を自らの頭上で奪われたまま、再び僕に顔近づけてきた。
726 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 22:08:25.06 ID:VsaLThwAO
「―――ハルさんだけじゃない。今、この瞬間でも、せんせーは"私"すら見ていないですよね」

 そう眼前で彼女が囁いた瞬間に……震えが、止まる。かと思いきや、またカタカタと手が震えだす。

「じゃあ一体、せんせーは誰を見ているんでしょうか? "私"を通して……一体誰を」

 その震えは彼女のものではなかった。……僕が、震えていたのだ。
 一周りも年下の女の子に見据えられただけで、政財界の魑魅魍魎を相手にしている筈の僕が……震えている。
 位置関係ですら優位に立っているのに……情けないが、それが事実だ。

 その事実に僕は嘆息を吐かざるを得なかった。それを彼女は回答と受け取ったのだろう。

「……くすっ、答えられないなら、私が代わり答えてあげましょうか?」
「っ」

 ―――やめろ。

 僕じゃない僕が、僕に囁いた。
 そんなこと、僕に言ってどうする?
 自問する。

「せんせーは、きっと、はつ―――」
「―――やめろッ!!」

 自答する。

「――――んぅっ!?」

 葛藤は、彼女の圧倒的な……むしろ僕にとって致命的な言葉に押し流された。
 ……彼女の口を塞ぐだけなら他にも方法はあった筈だ。
 そんな次善策が、彼女の唇に吸いとられていく錯覚に陥る。

 ……僕から能動的に起こした行動なのにも拘わらず。だ。

「せ、……んっ、せ、や……っはぁ……ん、む、ぅ……っ??」

 艶かしい水音と、湿った吐息の音だけが執務室にどれだけの間、響いただろうか?

「んっ……んぅっ、んっ、……はぁ、ぅんっ!?」

 彼女の嬌声と唾液には、非合法な何かが含まれている。そう、思わなければ、自身の蛮行が信じられなかった。
 愛情など何処にもない、肉欲本能だけの口づけ。

「や………っ、ん……ふぅ……」

 先ほどまでは強気で挑発的だった彼女が、涙を浮かべ、しおらしい表情で僕を見つめてくる。
727 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 22:13:01.41 ID:VsaLThwAO

「せん、せー……」『―――宗………く、ん』

「―――っ!?」

 ―――その涙を溜めた彼女の表情が、ほんの僅かにブレて僕の眼に映り込んだ……気がした。

 露になった豊満な肉体と、可愛らしさと妖艶さの危ういバランスを持った泣き顔。……その扇情的な魅力は、他の男なら欲望の導火線に火が点いたのかもしれない。
 けれど、僕はそうならなかった。
 その女性らしい凹凸のある肢体に触れようとした直前に、僕は彼女の手首から手を離し、密着してた彼女の体から、自身を離していた。

 ―――違う、今のは視界がブレたんじゃない……。重なっただけだ。

 彼女の表情は、僕の旧い罪悪感を呼び起こすには十分なものだったから。

「………随分と情熱的でしたね?」

 余裕を装ってはいるが距離を取った今でもハッキリ分かるほどに彼女の目は腫れているし、肩も小刻みに震えていた。
 ……これが、大人のすることか?!
 笑えない。まったくもって笑えない。

「……………すまない」

 謝って済む話ではないことは重々承知しているが、頭を下げずにはいられなかった。こんな思いは二度としないと誓ったはずなのに。

「あれ、どうしました? もう、おしまいですか?」

 それでも、彼女は挑発するように笑ってみせた。むしろ、健気にも見えた。

「……坂城さん」
「呼び捨てでいいです。私はせんせーの秘書なんですから」

 そう言って彼女は目を伏せる。

「……るい君」
「呼び捨てでいいって言ったのに。……なんですか?」

 着衣の乱れもそのままに、彼女は涙目を隠そうともせずに平坦な口調で応えた。
728 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 22:16:45.89 ID:VsaLThwAO

「君は―――罰がほしかったのか? ただ許され続けている現状を享受していることへの、罰が」

 混乱した頭で考えうる限りの仮説を組み立て、披露する。
 自分が犯した過ちを償えないことの苦しさを……僕はよく知っているから。
 でも、彼女の心は微動だにしなかったように見えた。

「………さぁ? ただ、私はそんな殊勝な考え方が出来るほど……素直な人間じゃないですよ」

 ……それは、どうだろう。

 確かに彼女は素直に意志を表現するような人間じゃないが、その行動理念は素直そのものだ。
 自らの目的に対する優先順位を確実に位置付け、実行に移す行動力を持っている。
 そして、今の彼女の優先順位の第一位は―――……そう、か。そういうことか

「……では。
 君は、君なりに―――二人のことを考えてた訳か」
「っ…………」
「それで、その目的の最大の障壁である僕に揺さぶりをかけた、違うかい」

 彼女は、僕の言葉に応えなかった。それが何より雄弁に彼女の図星を物語る。

「もしかしたら、君自身の望んだ贖罪の意味合いもあったのかもしれないが」
「……流石、ですね」

 観念したのか、彼女は漸く着衣の乱れに手を掛ける。どうやら僕を貶めようとする意志は、消えたように見える。

「……でも、ちょっとだけハズレです」
「そうなのか?」
「始めに言ったじゃないですか。私は、せんせーが、ひーちゃんと初紀ちゃんに固執する本当の理由が知りたいって」

 ………僕は、呆気に取られ、気が付けば思うままに言葉を紡いでいた。
729 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 22:19:15.45 ID:VsaLThwAO

「………そんなことを知って、どうするのだろうか?」
「私が、せんせーを信じたいだけです。
 それには、お互いの傷を知ることが一番です。
 せんせーは私の傷を知っている、なのに私はせんせーの傷を知らないなんて……不公平ですよね」

 俄かには信じられなかった。
 それだけの為に、こんな自己犠牲を……彼女は自らに強いたというのか?
 だとしたら……。

「……申し訳ない。今は、まだ言えない」
「―――そう、ですか」

 落胆する少女の声に、僕は、執務室の決してセンスの良いとは言えないデザインの天井を仰ぐ。

「……昔、何処かに居たという、ある愚かな青年の話だ」
「……?」

 そう……これは、喩え話。
 自身に心で言い聞かせ、僕は眼を閉じた。
730 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 22:31:09.25 ID:VsaLThwAO

「青年は、ある女性に恋をしていた。
 青年の家系は血筋を重んじる古臭いところでね。一族からすれば絶対に許されることはない、恋だったと聞いている。
 ……結論から言うと、青年の想いは叶わなかった」
「どうして、でしょうか?」
「彼女は他の男性と結婚し、男の子を設けたからだ。

 その子は両親の愛情を受けてすくすく育っていく中で、愚かな青年はそれでも彼女達を側を離れようとはしなかった。

『いつか自分にチャンスが廻って来る』という若者独自の根拠のない自信を振りかざして。

 ……まぁ、その想いが叶うことはなかったらしいけどね。

 ……やがて、その子は青年の心中など露知らず、彼のことを兄と慕ってくれるようになった。

 その度に、男の子に対する罪悪感と、夫となった人に対する嫉妬に駆られたそうだよ。

 でも、その子の成長を見守る内に、青年の心にある思いが芽生えた。……同時期、世の中を騒がせていた不幸な病の流行を止めたい、この子に同じさせたくない、とね」
「………」

 彼女は何も訊かなかった。
 同情、憐れみ、優しさ。
 どんな感情が働いたかは分からないが、ありがたい。僕はストーリーテラーよろしく喩え話を繋いだ。

「―――それから十数年の月日が流れた。だが彼の努力も虚しく、願いが実を結ぶことはなかった。
 結局、その子が病に冒されてしまったからだ。決して治ることのない不幸な病に。
 そして、青年は、自身の願いが手遅れになった今でも……その子の本当の幸せを見つけようと、そして見つけられないでいるらしい」
731 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 22:35:02.00 ID:VsaLThwAO



「……つまらない話をした。忘れてくれ」
「……それが―――"あの子"ですか」
「っ……」

 沈黙は図星の肯定、そう自分で結論付けたのに、彼女に問われて言葉に詰まる。
 やれやれ、変なところで無粋なのだけは変わっていないらしいな。
 ……実に彼、いや彼女らしい。

 ―――トゥルルル トゥルルル

 沈黙を埋めるように、執務室の内線コールが鳴り響いた。

「この話は、これっきりだ。君と、僕だけの」
「……こんな話、誰も得しませんよ」

 ……消沈した声で彼女はブラウスのボタンを締めながら、そう呟く。

「―――それに、せんせーがあんなにテクニシャンだったなんてオイシー情報、他の誰にも教えたくありませんし?」

 そして、打って変わった悪戯っぽく明るい声がした。

「……あれだけで判るものなのか?」
「『キスの仕方で男の人の技量の大体わかるものですよ?』って、せんせーも知ってる人が言ってました」

 彼女が真似た、その穏やかな口調。僕には覚えがある。

「………誰のことだい?」
「くすっ、多分、せんせーのご想像の通りの方かと」

 ……やれやれ敵わないな。この子にも、あの女性(ひと)にも。
732 :693 [sage]:2011/07/08(金) 22:42:57.35 ID:VsaLThwAO
 ……とりあえず、彼女に持ちかけた"秘密共有の交渉"に対する回答をイエスと受け取った僕は、複雑な気分で受話器を手に取る。

「―――はい、委員長執務室です」
『お忙しい時間に失礼いたします。受付に"代理"に面会を希望されているお客様が二名いらしております』

 一応補足させてもらうが、ここで言う"代理"というのは、"異性化疾患対策委員会委員長代理"の略、つまり僕、神代 宗のことだ。

「来客? どなたでしょう、お名前は伺っていますか?」
『はい。"赤羽根"と名乗る男性と、"宮前"と名乗る女性の警察の方です、警察手帳も確認いたしました』

 ―――あの、二人か。

「……わかりました。そのまま、執務室にお通ししてください」
『畏まりました』

 ……受話器を、ゆっくりと置く。
 通話中に着衣を完璧に戻したらしい彼女が首を傾げてみせた。それに、彼女のトレードマークであるポニーテールと青いリボンが続く。
 ……やはり、こちらの方が彼女には似合っている。

「誰か、来るんですか?」
「………僕らの仕事を支えてくれる大切な仲間だ。どうやら何かトラブルに巻き込まれたらしい」
「トラブル、ですか?」

 彼女の顔が不安の色を帯びる。
 あぁ、少し語弊があったようだ。

「大したことはないと思う。
 ……そうだ。るい君にも、紹介するよ。これから長い付き合いになるだろうしね」

 ……そんなとりとめのない会話をしてる内に、部屋の外から騒がしい声が聞こえてきた。防音効果の強いこの部屋にまで聞こえてくるとは。
 ……若さとは、凄まじい。

「―――あ、せんせーは座ってて下さい。私がお通ししますから」

 内鍵を解錠しようと扉に足を向けた瞬間に、るい君からストップが掛かった。
733 :693 [sage saga]:2011/07/08(金) 22:45:42.65 ID:VsaLThwAO

「何故だ? それくらい僕がやる」
「私、せんせーの秘書ですから。
 ……それに」
「……なんだい?」
「……その、私のせいですから」

 彼女の視線の先に僕もやった。

 いきり立った自身に、一瞬の沈黙が流れる。

 ……僕は、苦笑するしか出来なかった。
 釣られて彼女も、悪戯っぽく笑っている。

「……情けないな」
「あ、世の中には"臨戦態勢"になれない人も居るんですから、贅沢ですよ。そーゆーの」

 嘆息を漏らすや否や、一周りも年下の私設秘書から軽い説教をされてしまった。
 ……やれやれ、僕もまだまだのようだ。

「ささ、お仕事しますよ、せんせー?」
「言われなくても、承知しているよ」

 ―――気づけば僕の苛立ちは何時の間にか霧散していた。

 それが、彼女のおかげ、とは思いたくないのは男のプライドか、はたまた大人の意地か。
 ……その回答は、先送りにさせてもらおう。

 ―――今は、眼前のトラブル解決の方が、急を要する仕事らしいからな。


【青色通知-After a birthday-】
734 :693 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/07/08(金) 22:48:06.45 ID:VsaLThwAO
以上です、長い割に読み返してみたらそんなにエロくなかったし、よくわからん展開になってました。

本当に原作者の方には大変な失礼をいたしました。この場を借りてお詫び申し上げます。












……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、皆さん死刑にしないでください。
735 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/08(金) 23:03:45.06 ID:jpZ4oIPAO
>>734
HAHAHA、お茶目な人だwwwwww

取り敢えず、『坂城るいたんに蹴られ隊』の隊員としては
ロリコン死すべしと言わざる得まいww
べろちゅーけしからん!マジけしからん!もっとやれ!!

御馳走様でした!GJ!
その内投下されるであろう青色さんのガチエロに期待ww
736 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/08(金) 23:40:06.03 ID:x/wz3MMho
>>713のお題『この私で』

「君もそろそろ17だな」
「あー、そうだな」
「誕生日プレゼントは何がいいかね?」
「……いや、それ本人にストレートに聞くのかよ」
「欲しくないものを貰ってもしょうがないだろう」
「かもしれねーけど。欲しい物っつってもなー……思い浮かばない」
「欲の無い男だな」
「さいで」
「ふむ、ならばこういうのはどうだろうか?」
「?」
「プレゼントとして私が君の筆下ろしの相手になろう。予防にもなるだろうから一石二鳥だ」
「ブッ?!アホかっ!!駄目に決まってんだろうがッ」
「何が不満なのかね、君は!」
「いや、不満だとか満足だとかって話じゃなくてだな」

もうすぐ夏休みが始まろうとしていた7月下旬。例年通り猛暑になるであろう夏は嫌いだ。
汗っかきな上に肌が弱い俺にとっては地獄の季節だからだ。湿疹がよく出来て痒くてたまらない。

「じゃあどの様な話なのか是非聞かせて貰いたいものだ。運良く男のまま16歳を迎えたようだが、今年もそう上手くいくとは限るまい?」
「そーっすね。だがお前に関係はねーよ」
「だから、相手してやろうと言っているではないか」
「………どうしてお前さんは上から目線なのかね。同じ童貞だったくせに」

窓からぼけっと空を眺めている最中、けたたましく話しかけてくる眼鏡+お下げ姿の見た目だけ美少女。

「だが今は処女だ。攻めた事のない兵士と攻められた事のない城とでは価値が違う。天と地ほどの差がな」
「はいはいそーっすね」
「でだ、筆下ろしの相手がこの私で何の不満があるというのだ!」

おおよそ今までの言葉のドッジボールを聞いてもらえば解ると思うが、この学級委員長スタイルのスレンダーな女の子は所謂発症者だ。
スタイルどころではなくて、実際に委員長でもあるんだが……朝っぱらから、しかも学校で風紀を乱しっぱなしな提案をつらつらと並べている。

「全部だ」
「なんだと!」
「恥じらいを持て、慎みを持て」
「据え膳食わぬは男の恥ではないのかっ!?」
「つーかお前学級委員長のクセに風紀を乱しすぎだろ。朝っぱらから……」
「それは風紀委員の仕事だ!学級委員長の範疇ではない!」
「てめー…人の話聞いてるか?」
「聞いているぞ、全部、きっかり、きっちりと」
「そーか、そーか。なら足りてないのは頭のクロック数と処理能力か」
「オーバークロックし過ぎると熱暴走を起こすものだぞ」
「なるほど、知恵熱か。勉強になったわ」
「馬鹿にするなっ!」
「おー、そこはちゃんと理解してるのな」

他愛のない雑談から始まったはずだったのに、今では何故かこいつとスるかシないかで揉めていた。
勿論、クラスメイトの連中から嫉妬、懐疑、驚嘆etc……様々な視線の矢を浴びせられている。
俺の方は心にチクチクとダメージが蓄積しているのだが、目の前の熱暴走した馬鹿にはてんで効果が無い。
お前は童貞と一緒に羞恥心を置き忘れてきたのか。

「ここで会ったが百年目という所だな・・・覚悟しろ!相良聖!!」
「お、おい、副長から『相手が抵抗の意志を見せるまではなるべく手を出すな』と言われたろう」

そんな俺たちの馬鹿話に割って入ってきた怒鳴り声が1つ。窓の外のグラウンドからだ。

「おー……またやってんなー。援団と例の3年生の喧嘩。なんだっけかね、殺戮の天使?とか変な名前ついてたよな」
「それは転校生の方、あっちは通称"血に餓えた狂犬"の相良先輩」
「どっちにしろすげーあだ名だな。厨二病っつーんだっけか?あれ」
「だが、二人とも相応の力は持っているようだぞ……ほら、応援団が次々とノされてる」
「……うっわー…普通あんだけ囲まれてたら負けるだろうに。すげー……触らぬ悪魔に呪い無し、って感じだな」
「はッ?!そうか!」

二人でグラウンドの大騒動を眺めていると、不意にこいつは何かに得心したらしく、しきりと頷いていた。
737 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/08(金) 23:41:19.47 ID:x/wz3MMho
―――次の日

「これでどうだ!」
「……さっぱりわからん。勝ち誇られてもどうも言えん」
「なぜだ!」
「俺が聞きたいっつーの」

翌日の朝、校門の前でばったり会った馬鹿は、何故か右腕に包帯を巻いた姿で登校してきた。
理由を聞いてみたいものだが、聞くとどうせコイツのペースに巻き込まれる事請け合いだ。

「厨二病が好みなんだろう!?これでどうだ!抱きたくなっただろうッ」

ふふん、と無い胸を張られて反応に困る俺。何がこいつの頭にクリティカルヒットしているのかは知る由もない。

「チェンジ」
「何故だッ!!!」
「……いや、俺厨二病が好みだとか一言も言った憶えがないぞ」
「なんだとっ?!昨日の乱闘騒ぎの時に憧れてそうな雰囲気を出していたじゃないか!」
「………はぁ」
「溜息をつきたいのはこっちの方だ!」

「サキ姉ーーー!!!」

背後からのけたたましい足音と、呼びかけるその声に気付くと、俺たち二人は走り去る二人の女子生徒を目で追っていた。

「ちょ、ちょっとサキ姉ーーー!!!なんで逃げるのよーーー!!!」
「折角今日も制服持ってきてあげたのに!!今日こそは女の子の格好で授業受けてもらうんだからーーー!!!」
「・・・俺は男だ!必要ない!」
「どっからどう見ても女の子じゃないのさーーー!!!女の子は女の子の格好するべきだって相場が決まってるんだからーーー!!!」

そう、全速力で校門を抜け、唖然とする生徒達の間を駆け抜ける二人。
片方は左右でそれぞれまとめた長い髪が印象的な少女で、確かチアリーディング部一年の藤堂琥凛さん。
もう片方は藤堂さんの姉である藤堂沙樹先輩。但しこの姉君は応援団の団長であり、発症後も校内では男として通しているらしい。

「……朝っぱらから元気だなぁ…藤堂先輩たち」
「うむ。さすがは我が校のアイドル姉妹」
「アイドルねぇ……するってーと親衛隊だのファンクラブだのあんのかね」
「あるんじゃないのか?チア部にはファンクラブらしきものが有ったはずだけども」
「ふーん、まー、二人とも綺麗だしなー。可愛らしい髪型もしてるし」
「…………!!」

昨日と同じ様に得心した馬鹿は、何故か踵を返していた。

「お前、何処行くんだ?校門まで来ておいてサボる気なのか」
「……ぬ。それもそうだ、皆勤賞狙いが崩れてしまう……くそ!明日は憶えていろよ!」
「いや、忘れとくわ」
「忘れるなっ!!」

―――更に次の日

「ok無理」
「なぜだッッ!!この私で駄目な理由を説明してもらおうか!!」
「はぁ………」

朝のホームルームが始まるまでの短い静寂を打ち破る学級委員長が一人。勿論、我がクラス切っての大馬鹿者だ。

「なんで髪型変えてんだ。ツインテールは俺の好みじゃないんだけど」
「なにッ?!昨日言っていたではないか!『可愛らしい髪型もしてるし』と!」
「ああ、言ったな。確かにお前さんにも似合ってる」
「なら何も、問題は、ない、だろう?!」
「有りすぎだ」
「何故だっ?!」
「もうやだこの委員長………」

理解も誤解もへったくれもなく暴走しすぎだこのアホ委員長。
738 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/08(金) 23:41:53.92 ID:x/wz3MMho
「おはよ〜」

俺が頭を抱えている最中、我がクラスのアイドルこと学級委員長補佐の少女だ。
この委員長のフォローは並大抵では務まらない苦労があるだろうに、よく引き受けたものだ。

「ああ、おはよう。副委員長……聞いてくれないか?この男は私では欲情しないらしい」
「へ?……えーっと、頑張ってね?」
「うぬぬ……次の作戦を考えねば………」

そろそろホームルームの時間なので、とぼとぼと自分の席へと戻って行く委員長。
そして、俺の後ろの席な副委員長が席についてから、俺にこう訊ねた。

「………そろそろ委員長の気持ちに応えてあげればいーのに」
「断る」
「むー……応援するよ?」
「しなくていい」
「どうして?」
「……今日はやけに絡んでくるなぁ、副委員長」
「だってここ2〜3日のやり取りはいつになく激しいからさ〜。それに、キミだって鈍感ってわけじゃないよね?」
「まぁな、あれだけアプローチされれば嫌でも気付く」
「なら―――」
「だけど」

彼女の言葉を遮って、こう答えた。

「いつも誰かからの借り物なんだよな、あいつの行動って。今日の髪型にしろ、昨日の包帯にしろ」
「………?」
「だから、アプローチが変な所でストレートなクセに、肝心な部分は遠回し過ぎなんだよ。
おまけに気を惹こうと努力した部分は借用書付きだ。そんなんじゃ惚れるに惚れられないだろ」
「ふーん、結構考えてるんだね。でも、今の話、あたしが彼女に告げ口したらどうなるかな〜?」
「多分しないだろ、教えてもアイツの為にならねーし」
「ちぇっ、バレてた?」
「バレバレだ」
「でもさ、もう二ヶ月だよ?そろそろ模範解答を示してあげてもいいんじゃない?」
「駄目だな、あいつ自身が気付いてくれたら好きにさせるつもりだけど」
「そんな事言ってぇ〜……ほかの男の子に盗られても知らないよ?」
「それならそれで、アイツが幸せになれるなら構わねーよ」
「愛されてるなぁ……」
「どーだかな」
「またまたぁ〜、惚けちゃって」

おしまい
739 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/08(金) 23:43:26.78 ID:x/wz3MMho
Q1.他作者のキャラをお借りしたんですか?
A1.お借りしました。お気に障られたら申し訳ありません。

Q2.こんなお題だっけ?
A2.とりあえず言葉通りに受け取ってみました。
740 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/08(金) 23:47:23.71 ID:x/wz3MMho
>>738
一箇所、文の抜け落ち発見

×俺が頭を抱えている最中、我がクラスのアイドルこと学級委員長補佐の少女だ。
○俺が頭を抱えている最中、俺達に割って入る少女が一人。我がクラスのアイドルこと学級委員長補佐の少女だ。
741 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/07/09(土) 11:21:03.79 ID:K28L0MKY0
「……あ、もう撮って…?」
「うん、撮ってるよ。じゃあ名前から訊こうかな」
「あ、カツミ…です」
「カツミちゃん、ね、何歳?」
「16歳、です」
「へー、高1?」
「はい」
「『なった』ばっかしかな?」
「はい……先月、誕生日でした」
「もう誰かとエッチしたの?」
「…してない、です」
「じゃあ今日初めてなんだ」
「……はい」
「大丈夫?」
「…はい」
「オナニーはしてみた?」
「…女になってからは、まだ、です」
「じゃあ、まっサラの新品だね。…ここ触っちゃうよ?」
「あ…は、い…」
「最初は直だと痛いかもしれないから、パンツの上からね…」
「ッん…」
「男の子だったと思えないなー、可愛いパンツだね?」
「…ゃ…恥ず…かしぃ、です」
「恥ずかしがっちゃダメだよ?もうちょい足開いて」
「ん…んん…ッ」
「わかる?ここ…この下が女の子の穴だよ?」
「んぅ…はッ…はぁ…」
「湿ってきたね?感じてる?」
「……わ、かりま、せん…んッ」
「横から、ちょっとだけ触るね」
「ッ…やっ…うんんッ」
「やっぱし、ヌルってなってるよ」
「はっ…ふぅ、んっ…」
「もったいないけど、パンツぬぎぬぎしよっか?」
「……」
「じゃあ、カツミちゃんの女の子の部分がどうなってるか見せて?」
「……」
「あー、もうちょいさぁ、足広げて…『くぱぁ』ってわかるかな?」
「……こう、です…か?」
「そうそう、おー、いいねー。ちゃんと可愛い女の子だよ、カツミちゃんのここ」
「……っ」
「上もさ、たくし上げてオッパイ見せてくれるかな?」
「…あの、オレ、じゃなくて…私の…」
「あー、『オレ』でいいよー?その方が良い」
「あ、はい…」
「で『オレの』何?」
「あ、オレ…胸…そんなに大きくないですけど…」
「うん、それは見りゃわかるよ?あ、恥ずかしい?」
「そ、うじゃ…ないんですけど…大丈夫ですか?その…」
「ん?あーあー、うん、問題無い無い、逆に好きな人も多いから。カツミちゃんは巨乳派だったのかな?」
「……はい…って、こういうの言ってもいいんですか?」
「うん、それ狙いの質問だからね。カツミちゃんが元は男の子だったんだなーってのは欲しいトコだから」
「そう…ですか」
「じゃあ、続けるよー?オッパイ見せて、ね?」
「…はい」
「おー、ブラも可愛いねー?パンツもだけど花柄好きなの?」
「違っ…ソレはお母さんが…」
「ふーん?そのリアクションも可愛いね♪」
742 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/07/09(土) 11:23:52.68 ID:K28L0MKY0
「っ…!」
「乳首、見たいからさ、ちょっとずらすよ」
「……ぅ」
「乳首もちっちゃいね?色も薄いし、キレーだよ」
「ぅぅ…」
「ちょっと味見…」
「あッ…んぅぅ…」
「…揉むのにちょっと邪魔だから、ブラも取っちゃおうね?」
「……ん」
「おーやわらけー…ちっちゃいっつっても揉めないほどじゃないよ?カツミちゃん」
「ふぅ…ぅん…ふぅ…」
「むしろ手の平サイズって俺は好きだけどなー」
「ん、ん、んぅ…」
「ほら、乳首も固くなってるよ?」
「やッ…あん」
「こんなコリコリになってる、なんか健気だなー」
「ぃ…や、です、その触り方…」
「あーイヤだった?じゃあ、こうかな?」
「ぃヤ…っ…やぁ…」
「その『ぃヤ』は厭ってのじゃないねー?」
「んんッ、ぁッ…あんッ…」
「じゃ、こっちの方は食べちゃお♪」
「やぁ…あッあッあッん、それ…舌…やぁ…ッ」
「んー」
「ゃっ…噛まないでッ…ぅ…ください…っ」
「ふ…ぅ、軽く齧っただけだから痛くはなかったでしょ?って、気持ち良かったって声に聞こえたけどー?」
「〜ッ…違いますッ!」
「そのリアクションもツンデレっぽくて良いねー♪…じゃあ、次はべろちゅーだよ」
「ぁ……」
「…ほら、カツミちゃんから来て」
「あ、はい……ん」
「……ん」
「!……ぅ…ん、ん、んー…ふぅ…ん…」
「…ぷぁ、ゴチでした。じゃ、俺のコレにも『べろちゅー』してもらおーかな?」
「ッ!?」
「やり方はわかるよね?男の子の時にエロDVDとか見てたでしょ?」
「……はい」
「手も使いながら、咥えてね」
「……ん…んぅ…ふう…んっん」
「ははっ、さっすが元男の子、ツボがわかってんねー…」
「ん…んん…」
「…でも、こっちはすっかり女の子だね?ホラ、さっきよりも…」
「んんゥ!!?…ぷぁ…はぁ…ッん、ん、ん、ぅん…!」
「休んじゃダメだってぇ、お約束じゃんこんなのー」
「はぁ…ごめん、なさぃ…」
「まぁ、こっちも準備出来たっぽいし…そろそろ『初めて』してみよっか?」
「……ッ…はぃ…」
「その前に…『使用済み』になる前のワレメ、しっかり撮っとくね♪」
「……」
「やっぱ可愛いね、もったいねーなコレ、綺麗な桜色なのになー…」
「……ん、んぁ…ッ、ぅん…」
「うわ、こんなグチョグチョなのに、指でもキツい…でも、これから俺のが挿っちゃうよー?」
「ぅぅ…」
「じゃ、いただきまーす」

ズッ…プン――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
743 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/07/09(土) 11:24:29.65 ID:K28L0MKY0

「…………っ……ア…ッ…!」
「…はぁ…キッツぅー……ほら、カツミちゃん…挿入ったよ…」
「はぁ…は…ぁ…いあぁ…ぅう…」
「先ずは、処女卒業おめでと♪」
「……んんゥ…」
「あは、泣きそーな顔もかわいー…マジ泣きさせてー……じゃ、少しずつ動かすよ?」
「ゃっ…まだ…」
「却下、駄目だよ♪」
「あッん、あん!あんぅ、あ、あ、あ、あ、ぅあ……ッ!!」
「痛そうだけど…それだけじゃない、かな?」
「ぃ…痛い、だけ…で、す…ゥッ…」
「ホントに?…ココとかは?」
「んんッ…!」
「へへッ…イイんだ?ココが?わっかり易い女の子だなカツミちゃんは」
「あ…ぅあ…くぁ…あ…んンッ」
「膣さぁ、ガシガシ擦っちゃっても大丈夫そうだね?」
「アッ…やめ…あぅん…あッあッあー」
「おっ?ほら、わかる?今、カツミちゃんの一番奥に当ってるよ?」
「ぅあ…?ゃああぁ…ッ」
「ほら、オッパイも弄ってあげるし」
「やあっ…そんな、それ、いぁ…乳首、クリクリ、するのダメっ…」
「膣、きゅってしてるね?気持ちいいんだ?可愛いよカツミちゃん」
「やめ…かわいい…っとか、いわ…ッない、で……ぁッ…」
「女の子って気持ちいいだろ?なってよかったね、カツミちゃん」
「いぁッ!あっあっあっあああっ」
「もうこの穴、俺のに馴染んじゃってるよ?カツミちゃん女の子のセックスの才能あんじゃね?」
「やぁッッ…きゃぅっ…いやぁ、あんん」
「あー…やべ、そろそろ出そう…中に、出すよ?」
「ぇあッ?ダメ…それダメ…ぁうッ、あ、やッ…あっ」
「おーっ♪狙ってんでしょソレ?男って拒否られた方が萌えるんだよね。さっすがわかってるねー?」
「ちがっ…本当に…あぅ、あッ…」
「…ッあ、出る出る…やっべ、マジで……あ"…ッ!!」
「…………………………〜ッッ!!?……んんんぅ…ぅ…」
「はぁっ、出た出た全部出たぁ…スッげぇ良かったよカツミちゃん♪あ、今抜くからね」
「…ぅ…ぁッ」
「ハハッ、ごちそうさま♪…ほらカツミちゃんのココから精子出てきた。どう?久々の『射精』の感じは?」
「……ッ」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
744 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/07/09(土) 11:28:18.60 ID:K28L0MKY0

「……けしからん、実にけしからん」

地デジに対応する為に新調した自室のテレビの画面に向かって思わず呟く。

「裏…だよなコレ、なんでこんなエゲツないの持ってんだアイツ…」

放課後、ツンデレな友人が「今日、アタシ用事で遅くなるから。アンタ、この子をちゃんと送っていきなさいよ?」と
大切なお姫様の護衛を強要された。
帰り道々、折角の元童貞男子のにょたオンリーなワケだから久々の下ネタトークに花を咲かせた
…まぁ、私が一方的に喋ってアイツは頷くだけなんだけど。
私が「男の頃のズリネタとか妹に処分されちゃってさぁ…つか隠し場所とか何で知ってんのかね?あー、久々にエロDVDとか観てー!」
と言うとアイツは「……貸す、レアモノ」と鞄の中から取り出して渡してきたのがこのDVDだった。
……なんでこんなモン持ち歩いてんだよ…。

「確かにレアモノなのかも知れんけど…つか、この出演てる娘…」

似てる、今の私に…おっぱいは私の方が大きいけど…うん?自慢じゃなくて、逆に羨ましい気がしないでもない。邪魔なんだよコレ。
なんというか、妙な気分だ。アイツ…これを、使ってたんだよな?……いや、うん、考えちゃダメだ…考えまい。
てか、こんなの…この子に感情移入して観ちゃうじゃねーか。コレじゃあ目的が微妙に違う。
私的には『男だった頃』の気分で、懐かしむ感じで鑑賞したかったのに…その、なんだ……つい、シーンを『本番』のトコに戻す。

「うっわ、がっつり入ってるじゃん…」

画面に食い入る様な姿勢になってしまう。さっきも観た筈のトコなんだけど、
あまりの内容に放心していて観てはいても脳に届いていなかった。
改めて観ると、これは大変な事なんじゃないか?イヤ、元々童貞で現在処女とはいえセックスがどういう事をするか位は当然知ってるし、
フツーのエロ本やエロDVDはもちろん、裏DVDや無修正画像とかは何度も観たことがあった。でも…

「本当に…入るのかよ?ココに…」

自分の股間に意識が行く。制服のスカートとパンツの生地越しに、そこを右手の人差し指と中指でくっと押さえてみる。
何か妙な罪悪感というか、背徳感を感じるのは未だにこの身体がどこか自分の物だという自覚が足りないからなんだろうか。
自分ではもう女になってしまった自分を受け容れているつもりではいるし、実感せざる得ない事も何度もあった。
でも、男の自分も心のあちこちに残っていて、それがこの感覚の原因なんだと思う。正直すごく惑う、けど…

「ん…ッ…はっ…」

股間を押さえる指に少し力を込める。軽い衝撃と甘い痺れ。思わず息が漏れる。自分の中で揺らぐ男と女、それすら興奮を助長してるようで…
ドキドキと鼓動が早くなる。気が付けば右手はスカートの中で、私の女の部分を撫でていた。

少し躊躇しながらパンツのクロッチの部分を指で擦る。くちっ…と水音が聞こえた気がした。
前に、お風呂場で妹に弄られた時にもこんな風になった事があったけど、その時はイッパイイッパイで何が何だか解らなかった。
…途中で何とか逃げたしな。でも今は自分でもえっちい気分になってるのが解ってる。
女って、ホントにこんな風に濡れるんだ…そう、思った。

「………ん、ん、ふっ…ふぅ…うんッ」

テレビの前、うつ伏せでクッションに顔を埋めながらパンツの薄い布越しに『穴』の辺を指で押さえ何度も上下させる。
お腹の奥から熱い感覚が湧いてくる。顔も、息も、身体も熱い。何より指先が触れている部分が熱い。

快感はある…気持ちいいとは思う…でも、どこかじれったいそれは溜まっていくだけで、どうしていいのか解らない。
やっぱり、直接触ったり…入れたり、しないと…
745 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/07/09(土) 11:29:26.47 ID:K28L0MKY0

「直接触るんでしたら、とりあえず手は洗った方が良いですよ?姉の人」
「ッッッ?!!」

私の横、ちょこんと座る妹、え?なッ、えぇ??な、な、な?!

「えっ…と、ノ、ノック…そう、ノック…ノックしないとダメ、ってあの」
「しましたよ?声も掛けました。入りますよって。それで、『うんッ』って聞こえたので入りました」
「い、いや、それ…って、そのッ」
「それより姉の人、帰ってから手洗いしてないですよね?オナニーするんでしたらとりあえず手は洗ってからの方が良いですよ?」
「ち、違っ…これはその…」
「あ、あと初心者は膣よりクリトリスの方がイき易いと思いますよ?膣は鈍感なんで最初はイくのが結構難しんです」
「え…あ、そ、なの?」

あ…なんかマズったかも…この雰囲気…

「……じゃあ、今日は女の子のオナニーを教えますね?」

ぅあ、やっぱ、そうなるか…

「……それにしても姉の人、まだこんなの持ってたんですね。全部捨てたと思ってたのに」
「いぁ…違うッ!コレは借りたヤツだから、捨てちゃダメだよ!?」
「あ、そうなんですか?…まぁ、いいです。じゃあ今日はコレを観ながら、ね?」
「…うぅ」
「それじゃあ…まずは手を洗ってきましょうか♪」
746 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/07/09(土) 11:44:38.38 ID:K28L0MKY0
なかなか安価ネタが思いつかないので、とりあえず今夏のトレンド『寸止め』を書いてみた。

>>711
桂正和先生の『M』を愛読書にしてる漏れにとって放置プレイはゴチソウですよ?
まぁ、ゴチソウになりっぱなしではなんなので裏ビデ撮影してるおにいさんを派遣しときますねw

そして>>686へつづく…無限ループって怖くね?

>>739
掛け合いの会話上手いなー、ちくしょうその文章力マジ羨ましい!
あと委員長が想像以上に破壊力のあるキャラクターで悶えた。主人公マジ裏山。
747 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/07/09(土) 12:34:10.54 ID:yreCdliAO
>>739
Q3 厨二と言われたご感想は?

A3 認めたくないものだな、若さ故(ry

Q4 安価の意図は?

A4 ぶっちゃけ、お遊びwwwwwwwwwwww

…ちょっと書きかけの作品書いてみる。ネタないけどwwwwww

ベターに何にするか迷う

Q5 んなことより、感想は?

A5 乙wwwwwwwwwwww
748 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/09(土) 14:40:10.58 ID:gUeAtoDgo
>>747
勝手に使った上、ぞんざいに扱ってしまい申し訳ございませんでした……
安価の『この私で』という部分で、トリップを付けられていた本人という意味と
『私が相手でどうだ!』みたいな二重の意味かと深読みしてしまった結果であります…orz
749 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/09(土) 19:58:29.53 ID:r+bXVtYAO
>>747 前から気になってたけど偽酉
750 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/09(土) 20:07:24.46 ID:TcHPZgJAO
>>749
雑談時と投下物等(安価含む)と分けてるとかじゃないの?
751 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/09(土) 21:52:03.26 ID:OmS9Skapo
どんどん出てくるなぁー皆GJ
そして安価↓よろしく
752 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/09(土) 22:05:17.08 ID:b0wGnBZAO
日焼けあと
753 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:52:37.29 ID:vGSGNRNyo
>>746
そう言っていただけると嬉しいです。まじで。
でも読み返すと校正足りてない上に、抜け落ちもあったりで結構散々だなーと内心思っていたり……

勢いで書き殴るとダメなようです。
まぁ…時間かけたからといって良い物が出来るわけではないので困りものですが

あと、>>521のお題が全然進みません。ボスケテ(ノд`)
754 :でぃゆ(ry [sage saga]:2011/07/10(日) 07:17:49.90 ID:lhrfQuUx0
>>753
あらためて鬼畜安価申し訳ございませんm(-ω-m)
いや、『高校に入っ(ry』から『ボク初』の最後まで読んで、このスレの志向の王道を往く(キュンとする的な意味で)この人ならば
漏れなんぞには到底書けない、さぞ胸キュンな処女喪失譚を書けるだろうと思ったんです。
別に「何が寸止めだよ、ガチエロSS投下しろオラァァァ」ってワケではないんですよぅ……ホントだょ?

>でも読み返すと校正足りてない上に、抜け落ちもあったりで結構散々だなーと内心思っていたり……
>勢いで書き殴るとダメなようです。
>まぁ…時間かけたからといって良い物が出来るわけではないので困りものですが

イタイイタイイタイ、心がヘシ折れる…(TДT)校正どころかそもそも話やキャラの構成すらダメダメな漏れはどうしろと…
勢いだけで恥の多い生涯を送って来ました。投下したものも同様ですw

ちなみに>>521>>569で合わせて一本書くのかと思ってたのは内緒なんだぜ…ほら、ローション風呂も家庭用サイズで…
まさか風見さんがラブホでトロケアウとは…なんという俺得www
755 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/10(日) 22:35:29.26 ID:EMWsoRQAO
うむ?なんか静かだな?

前スレの最後ら辺で投下されてた鈴木さんと近藤君(関西弁のヤツ)の
話の続きが気になるとか今更tweetしてみる…
作者様が(岡山県)になってたから特に。
756 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/11(月) 00:49:26.51 ID:e8jcZDTMo
>>521のお題
安価お題>>57の続き

『再演奏(アンコール)』

B棟からA棟へ移る渡り廊下を並んで歩いていると、彼は頭を一頻り掻き毟った後に上擦った声で

「もっと、その…時間かけなくても良いのか?」

などと殊更ボクに確認をさせる。

「据え膳食わぬはなんとやら。ボクが良いって言ってるんだから、敢えて確認する必要はないんだよ?」
「武士は食わねど高楊枝、とも言うだろ」
「………コウくんは武士なのかな?」
「いや、違うけどさ」
「なら良いでしょ〜」
「……勢いというか、軽はずみにヤって傷付けてからじゃ遅いしな」

傷付けるも何も、ボクの方は文字通り傷物にされたがっているのだけど、どうにも彼は堅いというか、真面目というか。
ま、身も蓋もない言い方だけども。

「じゃあボクが他の男と結ばれても良いのかな〜?」
「……駄目に決まってるだろ。怒るぞ」
「ごめんごめん。でもさ、ボクの事誰かに盗られたくないよね?」
「当たり前だ」

つい先ほどとは正反対に神妙な顔付きをしている。おまけに身に纏う気配だけは少しだけ怖かった。
真剣に怒ってくれていたのだろう。その静かな口調と相まって、思わずたじろぎそうになるのを堪えて続きを話す。

「だったら、唾付けといて損はないと思うよ」
「つ……唾ってあのなぁ……女の子がそんな事言っちゃ駄目だろ」
「い〜の。ボクが付けられたがってるんだからさ〜」

今度は彼の方が困惑の色を隠せずにたじろいでいる。楽しい。
いや、きっと嬉しいんだろう。ボクの事で彼の心をかき乱せている事が。

「あのなぁ……」
「色々ありすぎてお腹空いちゃった。早くいこ〜」
「あ、ああ……」

お互いの指を絡ませるように彼の手の平を掴んで、前に前に急かすように引っ張った。
勢いが良すぎたのか、彼はバランスを崩してつんのめりそうになる。

「こういうのってさ、恋人繋ぎって言うんだよね?」
「っとと……だと思う。………そういや、いつも腕掴まれてばっかりだったなぁ」
「うん、我慢……ではないけど、遠慮と言うか、一線引いてたから」
「やっぱり無理してたんだな。……いや、タンマ。腕掴む方が恥ずかしくないか?」
「全然。昨日までは意識してなかったし。んー…なんだろ〜な〜。ああいうのってさ、別に恋人限定ってわけじゃないでしょ?」
「……そうか?」
「仲の良い兄妹とか夫婦でもやりそうじゃない?」
「あー、確かに」
「だから、こっちの方がボクも恥ずかしいの」
「なぁ……無理はするなよ」
「ううん、無理以上に……してみてかったの。やっと受け入れられたからさ」
「……俺に、か?」
「コウくんにもだけど、自分自身が、かな」
「そっか」
757 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/11(月) 00:50:22.60 ID:e8jcZDTMo


――――――
―――



手は恋人繋ぎのまましっかりと握り締めてSF研の模擬店に戻ると、ボクらが座っていた席の上にバッグが置かれていた。
勿論、学校指定のボクらのバッグだ。

「おかえりなさいませ、鈴城様、白詰お嬢様」

恭しく迎えてくれたのは、例のメイド姿の風見くん。おまけにボクらだけ特別な呼ばれ方だ。
サービスのつもりなのだろうか。……おっと、そんな事よりも大事な事を忘れていた。

「ごめんね、色々と迷惑かけちゃって」
「ううん、私の方こそ……勝手に出しゃばっちゃってごめんなさいね」

ボクが謝罪される筋合いはないのだけど、彼女とボクは何故か謝り合っていた。
あっさり目だけど、これで多分仲直り。中学の頃からボクらはこんな感じだったなぁと、さほど遠くもない思い出を掘り出した。
でも今回は、どことなく彼女に負い目を感じてしまっている。

「や、ボクが悪かったんだから、風見くんは別に謝らなくても……」
「うーん……でも私が余計な話をしなかったら、もっとすんなりいけてたんじゃないかなーってさ」
「そんな事無いよ。……あ、そうだ。お詫びに何か手伝える事ない?」
「え?や……急に言われても…うーん?」

その負い目からか、気が付いたら変な提案をしてしまっていた。具体的な詫びの内容が伴っていない所も含めて変だ。

「じゃあ、明日からこの店を手伝って貰うのはどうかな?」

割り込んで具体的な提案を示したのは、風見くんと同じ服装なのに若干胸元が寂しい委員長だった。

「………待て、待ってくれ。ナオにその格好させる気なのかっ?!」

コウくんが声を荒げた。主に動揺と言う意味で。
758 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/11(月) 00:52:11.37 ID:e8jcZDTMo
「ふふふふふ……我がE組の二大巨乳揃い踏み、集客効果が倍増する提案だとは思わないかね?」
「……須々木野、落ち着きなさい。私のみならず、奈緒までアンタの毒牙にかけるわけにはいかないのよ」
「毒牙とは心外だなぁ風見君。君は公正な勝負に負けた結果なのだよ」
「……あれもあれで……あー、もう…ややこしくなるから私のはそれでいいけどさ、奈緒にさせるのはどうかと思う」
「何故だい?」
「……だーかーらー、さっきようやく彼氏が出来たのよ?その彼氏の前で、こんな服着させて、給仕しろ、って酷いでしょ?」

彼の抗議はどこへやら、意にも返さず風見くんと委員長が激しく口論を始めてしまった。
当事者であるはずのボクとコウくんは置き去りにされてしまっている。どうしてこうなった。

「だがね、予想以上の客足で人手が足りない。猫の手も借りたい位なんだ。君の負担も減ると思うのだけど?」
「う"………そこを突かれると痛い」
「だろう?」

どうやら、予想以上に繁盛しているらしい。うん、確かにその格好は少し恥ずかしいけど、その程度の事で風見くんの負担が軽減されるのなら安いものではないだろうか。

「……あ、あのさ。ボクで良かったら手伝うよ。明日からだよね?」
「?!」
「……ナオッ?!ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
「おお……持つべきものは良き友人だね」
「……貴女それで良いの?ほら……男にこう、いやらしい目で見られるの凄い嫌がってたでしょ?」
「うん。でもさ、今は嫌悪感なんかより、風見くんに借りを返さなきゃって。……ごめん、コウくん」
「はぁ……ナオが決めたんならしょうがないな」
「じゃ、今日の放課後、この教室に来てくれるかな?衣装のサイズ合わせは勿論、接客についても教えなければならないし」
「えっと、そんなに時間かからないよね?」
「いや……すまないがかなり時間がかかるだろうな。その代わり、バイト代は弾むよ」
「………え"?」

バイト代がどうのより『時間がかかる』方が物凄く嫌だった。だけど、ボクから一度引き受けると決めてしまったので、もう後に引けない状態だ。
自然と瞳が潤んでくる。そして、何気なく隣に居るコウくんを見ると、何故か一安心と言った風体で、胸を撫で下ろしていた。ああ、うん……理由は何となく解った。
こ、こんな筈では……折角の初体験が今日はお預けになるのかっ

「………はぁ……うん、解った。あのさ、話もまとまったと思うから、席に案内してくれないかな」
「あ、ああ、そうね。わ、忘れてた……」

ある程度相談がまとまったので、ボクらはバッグの置かれた席に案内された。
でもって、バッグを床に置いて、二人とも席に着いて落ち着いた所で、風見くんに一つ訊ねた。

「そういやさ、もうボクの事『直人』って呼ばなくなったね」
「ん?うん、今の奈緒は女の子になってるからさ。前の名前だと失礼じゃないかなって」
「……む。やっぱり上から目線」
「え?あ……ごめんなさい。そんな気は全然無かったのだけど……つい」
「くすくす……別に気にしてないから良いよ。ちょっとからかっただけ。風見くんは本当に一つ上にいるからさ」
「そんなことないってば」
759 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/11(月) 00:56:52.80 ID:e8jcZDTMo
とりあえずここまで

Q1.長くなるの?
A1.わかんね(´・ω・`)

>>754
期待はしない方が良いです。絶対。
っていうかですね。>>521>>569を合わせて一本とか無理がありすぎるwwwwwww
おまけに、こちらとしては、そちらのが語彙に溢れていると感じていたりも…

>>755
自分もその続き気になってます。
もういないのかなー…実はROMりながら書いてる最中だったりすると嬉しいんですけども
760 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/11(月) 13:21:12.58 ID:unQtGJdM0
週明けにスレ覗くと、色んな作品が増えてて幸せっす
皆さま乙gj!
もうげつようびなんかこわくない!

>>746
>…無限ループって怖くね?
つまりこのループを崩すには全ての魔女をうんぬんしなきゃいけなかったのか!
こうなったら女神様に何とかしてもらわないと……って、にょたの女神様ってどんなんだww


どなたか派遣のおにいさんをどうすればいいか安価ください↓
761 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/11(月) 13:47:01.96 ID:Ffa3PsSAO
ワルプルギスの夜(性的な(ry)
762 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/11(月) 14:29:59.04 ID:Ffa3PsSAO
>>761
しまった!寝惚けて必殺・鬼畜安価をしてしまったwwwwww

スマヌ…(ノДT)
763 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/11(月) 14:46:34.48 ID:unQtGJdM0
安価キターだがちょっと待ってほしい
あのデカくて逆さまで笑い袋なアレを
AVのおにいさんが性的にどうこうした話が読みたいと言うのか

おk把握ww
あとDUの人は下半身歯車萌え、これも把握wwww
764 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/11(月) 17:32:56.25 ID:unQtGJdM0
彼は理解できないでいた。
奇異の目で見てくる同僚、敵に回る上司、すべてが彼には理解できないでいた。
困窮する業界を新たなステージに導く企画――プロジェクト・ワルプルギス。
救世主であるはずのソレが、彼を苦しめていた。

にょた化寸前の少年を捕らえ、ドレスで着飾り、逆さに吊るし、昇り詰めない程度の刺激を与え続ける。
すると、どうなるか。
『夜が来て、女体化の瞬間まで興奮してしまっていると面白い事になる。
 女体化の衝撃で溢れだしたお前の子種が、そのままお前の子宮に流れ着く。
 処女のままの懐妊、自分自身からの受精、お前だったものとお前になるものとの不浄な営み。
 結果生まれる、神に追われるべき子……まさに悪夢の夜の子だ。
 お前はその母になるのだ!』
絶望に染まる犠牲者の、その魂(Soul)が反転する様を録る。
股間から白濁液を吹き出しながら、変態を繰り返し、妖しく艶やかに輝いていく肢体(DarkAngel)の魅力を余すことなく世界(Video)に刻み込む。
今まで無かった領域、魂をも犯し抜くAV作品(Pain)となるはずなのだ。

彼はその作品がもたらす淫靡さや背徳感、そして次代への展望を熱く語った。
だが周囲は一片の理解をもみせず、彼を放逐した。
中二乙、と。

だが彼は諦めなかった。
目覚めた衝動は走りだしたのだ。未来を描くために。
だが、ワルプルギスの夜を具現化するためには、人手も元手も何もかもが足りない。
一人になってしまった彼はまず仲間を募った。
『ワルプルギス参加者募集』
一般人にはまるで意味が通じないだろう。だがしかし同好の士(SoulMate)には響くはず。
そして奇跡的におにいちゃんA、B、Cという仲間達が揃ったのだった。
彼はもうひとりぼっちじゃない……もう、なにも怖くない!
だが、彼の歓喜は>>686>>691と経て、謎の魔法少女により潰えてしまう。
手となり足となって働いてくれたABCは、それぞれ
ろりちゃん、ぽちゃちゃん、ぺたちゃんと変わり果て、彼のもとを去った。
当座の稼ぎとするはずの乱交ビデオも、混乱の中で失われてしまった。

全てが失われたのだ――だが、彼の魂はむしろ燃え上がる。
『魔法少女が実在するのならワルプルギスの夜もまた実在する!』
彼は唯一残った自身の身体。これを使って魔法少女と夜を呼び寄せることに決めた。

「止めてみるがいい、魔法少女よ!
 我はこの身を性転換手術にゆだね、にょたの盟主として名乗りを上げる者なり!」

魔法少女リリカル○芋 〜ワルプルギス兄さんと性的な夜〜


「あー、これって僕のせいじゃないよね?ほっといてもいいよね?害無さそうだし」

いいと思います。
765 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/11(月) 17:38:57.60 ID:unQtGJdM0
「安価があまりにも鬼畜すぎた、これじゃ何もできない」系の事を言っていたがもうダメ
色々繋げようと試みたせいで無茶苦茶な事になったorz

>>762
次はもうちょと優しい安価でヨロシク\(^o^)/
766 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/11(月) 17:45:33.81 ID:Ffa3PsSAO
>>764
夢の中で>>761った、ような……漏れって、ほんとバカ…
フツー、そこは『わたしの、最高の友達』とかだろ…orz
でも、投下はとっても嬉しいなってww
でもさー、こんなの絶対おかしいよwwwwww

>>759
アンコールキターッ!
漏れ的ふわふわ時間の始まりだ!全裸待機だッ!!
西たんのSSはないと困るよ、むしろ西たんがおかずだよ♪

>こちらとしては、そちらのが語彙に溢れていると感じていたりも…

バ、バ、バーロー!バーロー!バーローッ!!

>にょた「この手のドMさんにはきっと褒め殺しの方が有効なハズ!」

…………ばーろぉ…///
767 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/11(月) 17:52:29.54 ID:Ffa3PsSAO
>>765
ぎぁッ?!リロードしてなかったらお叱りの書き込みが…orz
本当にスイマセンm(TДTm)
768 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/11(月) 17:58:01.94 ID:unQtGJdM0
>>766
夢うつつで>>761とか恐ろしい子!
んでシラフになったら「AV派遣おにいさんの最高の友達」とか
どーいう層に需要があると言うのかwwww
お叱りじゃナイヨ、オネダリナンダヨ☆

>ばーろぉ…///
あ、デレたww
西の人はそのままこの子を堕としちゃえばいいとおもいます
769 :安価『日焼けあと』 ◆zK/vd3Tkac [sage saga]:2011/07/12(火) 20:46:22.59 ID:RmpGtdzPo

『悪い、明後日の約束してた海水浴行けなくなった。埋め合わせはまた今度』

 そう携帯メールを友人に送って、俺は状況を整理していた。といっても何かことさらに面倒なことに巻き込まれているという訳ではなく

、単なる生理現象だ。
 女体化である。
 昨夜、友人とプールに行き、疲れてへとへとになって寝ていた俺は、今日が15歳の誕生日だということも、自分が童貞だということも忘

れてのんきに眠っていた。
 そして今朝起きてみると、めでたく女体化していた。母は赤飯を炊き、うちはお祝いムードに包まれた。朝起きた時点ですでにして枕元

に女物の服があったあたり、親は俺が童貞だと知っていたようだ。
 息子の童貞を喜ぶ親は、俺からしてみると心外だが、両親とも女の子が欲しかったと前々からぼやいていたのでこうなることを望んでい

たに違いなかった。
 そして、手続きなどを終え、もう午後6時を回ろうとしていたとき。ふと明後日友人と海水浴に行く約束をしていたことを思い出し、こ

うしてメールを送ったわけである。
 理由はいたって単純、単に女物の水着を着るほどの気持ちの切り替えができないだけである。女体化することは当たり前だとはいえ、そ

れでも昨日までは男だったわけで。俺はそこまで開き直れないでいた。
 すると、携帯が振動してメールが着信した。開いてみると案の定友人である。

『何か予定でも入ったん? 今日休みだったけど、もしかして病気か何か?』

 と、心配するような内容が返ってきたので、心配性な友人に端的に事実だけを記したメールを送ることにする。

『15になったから女になった。よって海水浴は無し。学校は明日から行く』

 飾り気も何も無い文面を、そのまま送信した。これでとりあえず友人の心配もなくなるだろう。そう思って俺はとりあえず男物の服の処

分の続きを始めようとした。
 しかし、すぐさま携帯が振動する。今度はメールではなく電話のようだ。とりあえず出てみると、友人からだった。

「まじまじ女体化したの!? 童貞おめでとー!」
「いきなりなんだそのデリカシーの欠片もないお祝いの言葉は」
「うわマジで女の子の声がする! そっかーやっと女になったかー」
「やっとって何だやっとって、まるで最初から希望がかけらも無いような言い方しやがって」
「え、希望、あったの?」
「いや、改めて聞かれると、確かに彼女も居なかったし希望なんか無かったよこんちくしょー!」
「あはは、悪い悪い。まあそれはそれとして、なんで海水浴だめなん? せっかく海開きしたんだし海いこうぜ海海ー!」
「あのな、まだ俺は女になってすぐなんだ、ちょっとは察しろ」
「察しろ? じゃあ……。お前のビキニ見たいからビキニ着てこいよビキニビキニー!」
「おまえはストレートに言うのなそういうの……」
「まあ、お前がどうしてもって言うなら海パンでもいいぞ?」
「海パンなんか着られるかバカ!?」
「いや、むしろ海パンd――」
「――黙れ変態」
「ともかく、海水浴くらいいいじゃねーか、行こうぜ」
「まぁ。気が変わったらな、じゃあな、まだ俺忙しいから」
「はいはいー」
770 :安価『日焼けあと』 ◆zK/vd3Tkac [sage saga]:2011/07/12(火) 20:46:50.79 ID:RmpGtdzPo
 慌ただしい電話だった。しかし、いつものノリがあまり変わってなくて安心してもいた。女体化で男友達と疎遠になるなんてよくある話

だ。
 それから、海水浴についてもう少し考えてみる。まあ、奴はビキニとか言ってたけど、そこまで露出の多く無い水着なら……挑戦してみ

てもいいかもなと思った。

 
 そして約束の日である。
 結局、昨日学校で奴に押し切られ、行く約束をさせられてしまった。
 母に聞いておとなしめの水着を用意してもらうハズだったが、結局母は妙に張り切って、『女のプライドが〜』とか『せっかくのプロポ

ーションを生かさない手は〜』とか言いながらビキニを用意してきた、しかも黒。いい迷惑だ。
 特訓の成果で着用するにあたって特に困ったことはなかったが、やはり布面積の少なさから若干落ち着かない。
 それでもここまで来てしまっては引き下がれようはずもなく、意を決して更衣室から飛び出した。

「お、お待たせー」
「おお、黒の長髪に黒ビキニとはオツじゃないか! 俺のアドヴァイスを受け止め――」
「――受け止めてねぇ! 親が用意したんだよ!」
「さすがお前のママン」

 ぐっと親指を立てていい笑顔をする奴に腹が立ってきた。

「親指たてるなバカ」
「つーかさ」
「何だ?」
「それ、エロすぎだろ」

 と、彼は俺の腰の当たりを指差し、そのまま指の動きに釣られて目をやった。
 するとどうだろうか、つい先日プールで焼けた海パンの日焼け跡が残っているではないか。ビキニタイプだと余計に白い肌の部分が強調

されてどうしてか恥ずかしい。

「傍から見ると何だこのプレイは状態じゃね?」
「そ、そんなつもりはない! か、帰る!」

 俺は踵を返して更衣室へ向かおうとしたが、ぐっと奴に肩を掴まれた。おい離せ。

「まぁまぁ落ち着けって、今日一日海で遊んでけば日焼け跡もたちまちビキニ型になるってもんだろ?」
「それはそれでなんかヤダな……」
「まあ、そうしたら次はビキニの日焼け跡を拝ませていただくがな!」
「拝ませねーよっ!」


おわり
771 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/12(火) 20:49:03.94 ID:RmpGtdzPo
>>752
遅くなった割に短いというね。すんませーん
毎度のことながらエロは無し。
期待してたらごめんねー
772 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/07/12(火) 21:04:13.16 ID:IYx4Z07h0
>>577の続き

 謎の異性化現象を迎えてから、二日ほど経った。私みたいな例は特殊だったが着実に増えていて、マスメディア各種が特番を組むほどに至っている。
 朝食を食べがてらテレビをつけたら、相変わらずの異性化特集だった。
「……やっぱり俺……わ、私みたいな例は増えてるんだな」
 ぎこちない問いかけに対して、トーストにジャムを塗りながら、瀧は静かに言った。
「"増えてるんだね"」
「――増えてるんだね……はぁ……」
 私の発する言葉はこうして瀧により訂正され続けている。全く、一週間やそこらで口調が変わったらそれこそ恐ろしいと思うんだけど。
 ……それでも口調が変わりつつ有る自分に驚いてるけどね。
「ため息をつかない」
「しょうが無いじゃないか。今まで女の人の口調なんて使ったことないんだから。……疲れるって」
 頭の中で考える分には楽なんだけど、口に出すとどうしても、もともと使ってる男口調が出てきてしまう。コレばっかりは慣れていくしかないか……。
 そう諦め、トーストにジャムを塗りながら、テレビに耳を傾ける。
『異性化現象を迎えてどうですか?』
『えっと……その、……』
 テレビでは、異性化現象の特集が流れ続けている。だんだんと、日を追うごとに患者が増えているらしく、危険な病気として扱われているらしい。
 ネット上でも噂は広がっているらしく、生物実験だ、とか人類は進化した、だとか、いろいろ言われている。
 ただ、噂ばかりで具体的に治る方法とかはまだ見つかってないらしい。
 はぁ、とため息をつきつつ、トーストを頬張る。
「お前の口調、来週の入学式までには定着させないとな」
「ハードスケジュール過ぎるでしょそれ……。……確かに、"ああ言う風"はなりたくないからやるけどさぁ……」
 ああ言う風、とはマスコミによる取材をうけている異性化患者である。
 ハッキリ言って、取材とかそう言うのだけは勘弁だ。
「ごちそうさま」
 ようやくパンを一枚食べ終わる。なんだか、女性になってから胃が小さくなっている気がするのは、おそらく気のせいでは無いと思う。
 私は壁掛けの時計に目を移し、
「そろそろ扉開けて受付行ってくる」
「ああ、ありがとう」
 あれから私は瀧の診療所を少しでも手伝おうという気になった。
 洋服代の件もあるけど、それ以外に理由がある。毎日異性化患者が山のように押し寄せてくるのだ。
 日に日に異性化患者は増える一方だし、私だって異性化患者の一員だ。不安なのもよくわかる。
 小さなこの町では瀧の所に来るしかない。
 ……瀧を頼るほか無い。
 だから、せめて瀧のバックアップをしたい、と私から頼んだんだ。
 食器を片付け、部屋へ戻ると小さめに作られたナース服を着こむ。
 小さめに作ったって言われたけど……それでもぶかぶかなんだよなぁ……これ。
 まあ、受付で座ってるだけだから何の問題もないんだけど。
 袖をニ、三回ほど折り曲げ、ようやく手のひらが見えるサイズだ。
「よしっ」
 ナースキャップをかぶり、鏡で姿を確認する。
773 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/07/12(火) 21:05:01.60 ID:IYx4Z07h0
「ははは……なんかもう、すっかり女の子って感じだよなぁ……」
 口調もそうだけど、徐々に違和感がなくなっていく感じがする。
 このまま段々と男だった頃の感覚を忘れていくのだろうか。
 そういえば、性欲は薄れたなぁ……。男の頃はあんなに…………、っとこんな事考えてる暇ないんだっけ。
 思考を止め、受付へと急ぎ、診療所の扉の鍵を開けると、CLOSEの看板を反転させる。
 いつもよりも少し早めの時間に開けたため、まだ人は着ていない。
 受付の椅子に座って少し待つことにした。
 ……どうして、女の子になってしまうのだろうか。
 どうして、私、いや、"俺"だったのだろうか。
 そういえば、最近瀧から聞いたんだけど、現在のところ"異性化するのは男だけ"らしい。また、"二十歳よりも上の人間が異性化した記録はない"。
 コレが一体どういう事を表しているのか。
 何度考えたって、答えは出てこない。
「はぁ……」
 頬杖を付きため息。
 出てくるのは問題ばっかりだ。
「またため息か」
「……瀧か」
 朝食の時に出したコーヒーを啜る瀧を一度見て、つぶやく。
「なあ……瀧」
「なんだ、佳奈多」
「……"俺"……もう元に戻れないのかな。このまま"私"になっちゃう……のかな」
 "私"が"俺"としてそう言うと、瀧は黙りこんでしまった。
 いじわるな質問だったと、我ながら思う。
 いや、こんなの質問ですら無い。多分、もう答えは出てる。
 元には戻れない。それを、漠然と心で理解した上での、ただのぼやきだ。
 黙りこむのも当然。
 逆の立場だったとしたら、どんな答えを出すだろうか。
「……佳奈多」
「なに、瀧」
 振り向くと、とてもバツの悪そうな顔をしていた。
「……元に戻れるよう、最善を、尽くす」
「……ありがと」
 絶対、と言わないところが瀧の良い所なのかな。
 確証がないから、言えない。
 私なんかより全然知識を持ってる瀧だからそういう言葉になるんだろう。
 瀧から視線を外すと、ちょうど診療所の扉が開いた。
 ……小さめの女の子とその母親と思しき人達、二名。
 また、かな。
「診察券、こちらにお入れください」
 私が笑顔でそう言うと、瀧は静かに診療室へと戻っていった。
 今日も。
 今日も、いつもと変わらず異性化患者から診察が開始した。
774 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/07/12(火) 21:05:52.90 ID:IYx4Z07h0
――――――――
――――

 ようやくのお昼休み。診察よりも早めに受付が終了すると、私はお昼ごはんを作って最後の診断が終わる頃を見計らって瀧を食卓へと呼び出した。
「おつかれ、瀧」
「ああ……ありがとうな、佳奈多」
「別にいいよ」
 ちなみに作ったのは、炒飯。
 レンゲを探したけどなかったから普通にお箸で。
 私も瀧の対面に座って食べ始める。
「大変そうだね」
「まあ、な……。でも頑張るしかないだろ。……そうすればお前を治せるかもしれないからな」
「…………うん」
 素直に、嬉しいと思う。
 でも……
「なにか、受付のほかに手伝うことってある?」
「うーん……さすがに、これ以上はないな」
「……そっか」
 それもそうだよな。第一医者の仕事を素人が手伝おうなんてのが無理があるんだ。
 本当に受付ぐらいしかできないと思う。
 掃除なんてのは日常的にやってるし、他にはなんにもない、か。
「気持ちだけで十分なんだよ、佳奈多。受け付けやってくれてるのもありがたいくらいだから」
 そう言って、頭に手を置かれる。
 突然のことだったので、首が少し傾くも、こらえる。
「……って、なんで頭に手を乗せてるんだよ……。さりげなさすぎるだろ」
「ん? ああ、わるいわるい」
 そう言いながら頭を開放してくれたはいいものの。
 なんだか……いや、癪だからこれ以上考えるのやめよう。
 瀧に視線を移すと、なんだかニヤニヤしてる。
「なんだよ」
「いや、その……なんだ、可愛かったなと思ってな」
「んなっ……おま……」
 なんだコイツ、元男に欲情しちゃうような奴だったっけ?
 ……考えたくない。
775 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/07/12(火) 21:06:22.89 ID:IYx4Z07h0
「変な目で見るなよ。お前だって自覚は有るんだろ? 可愛いって」
「……まああるっちゃあるけどさ」
 当然、男の目から見たら、であり、女になってからは段々と薄れてきてしまっているけど。
 なんだろうなぁ……。
 そういえば、この診療所に来る異性化患者も、皆可愛らしい気がする。
 共通点の一つ……なのかな……。
 そういえば、共通点といえば、だ。
「なんか分かったこととかあるの?」
「いや、特には。コレといった収穫はなし、だ」
 瀧は右肩をグルグルと回し始める。
「肩こってるのか?」
「すこし、な」
 疲れてる、もんな。
「なあ、肩、揉もうか?」
「ありがたいな。でも、大丈夫だ」
 そう言われて、また頭に手を置かれる。
 くぅ……なんだか、すごく悔しい。
 でもなんというか……その……あああああ、考えるのヤメっ!
「っつあー! 離せ瀧っ」
「そんなに嫌だったか」
「見て分からないか」
 そう言って睨みつけると瀧は頭から手を離した。
 ようやく解放された私はそのままものすごい勢いで炒飯を平らげると食器を片付け、受付まで足早に移動した。
 ……何だってんだよ……。
 異性化現象は、すごく怖い現象だ。
 だって……
776 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/07/12(火) 21:07:12.68 ID:IYx4Z07h0
――――――――
――――

 一週間と少しが経った。その間に私は少しばかり男っぽさを残したままだが、女口調に慣れ、ほとんど素の女性と見分けがつかないほどになっていた。
 また、母親とも会った。忙しいらしく一日しか来れなかったが、大層驚いて、また、心配してくれた。
 母から色々(主に生理とかそっち関係)と聞き、これで生理が来ても安心だ。
 ……もうすっかり女で生活をしてしまっていることに心底驚かされてるけど。そう言った事を思うたびに、もう男には戻れないと再認識させられる。
 さて、一週間と少しがたった、ということはつまり学校には既に通っている。
 今年の入学式は、なんというか、一線を画していた。
 入学した生徒の割合。男・四 対 女・六。もしかしたらそれ以上かもしれない。そろそろ、あれ、ここは元女子高か何かか、と思ってしまうほどに女子の割合が多くなっている。
 これが異性化現象の仕業だということは火を見るより明らかであり、また純男子、純女子からの風当たりも相当なものだった。
 勿論、今でもその風当たりが解消されているワケもなく。
「ねえ、平坂さん。あの人達の近くにいたら、感染っちゃうかもしれないわよ?」
 掃除中の私にそんなことを言ってきたクラスメイトが一名。
 私の隣の席の女子であり、名前は上原 文(かんばる ふみ)。
 このセリフの通り、周りと何ら違わず異性化現象に対して何らかの拒否感情を持っていることは明らかだ。
 どうしてそんな彼女に私が普通に接してもらえているかというと、当然、私の戸籍は女であり皆異性化患者だとは思っていないためだ。
 そのため、半ば差別をうけている異性化患者の事を思うと、少しばかりバツが悪い。
「大丈夫だよ、上原さん」
「"文"か"上原"」
 思わぬところで訂正を食らった。なんだか数日前までの瀧との会話を思い出す。
「……文ちゃん」
「よし。……で、なんでそう言い切れるのよ」
 さすがに"既に異性化してますから"とはいえないだろうから、適当にニュースでもてはやされているあの特集から根拠を取ってくる。
「ほら、異性化した人って、たいていが男の子でしょ? だから、私は大丈夫。ほら、女だし」
 ね、と付け加えると、どことなく心配そうな顔でこちらを見てくる。
 しかし、その顔のままため息をつくと、
「あなたは診療所住まいだったわね。……だとしたら、正確な情報が伝わってるんでしょうから……」
「じゃあ、普通に接したりは……」
「……それは……家族に心配をかけちゃうから」
 やっぱり文ちゃんも、また、その家族も。怖いんだね、と心のなかで毒づく。
 まあ、当然だろう。感染るか感染らないかが定かでない病気など、怖いに決まっているし、治るならまだしも異性になって戻らない。
 私が異性化してなかったら同じ反応をしただろう事は明白だし、責めることはできない。
「しかし、その推論が正しいとしたら……大変ね、男子も」
「……"も"?」
「ええ。だって、ほら。見てみなさいよ。異性化した人たちは全員、それこそアイドルかと思っちゃうほどにきれいな顔になってる。……今は風当たりが厳しいけど……そのうち大変なんじゃないかしら?」
 クスリと笑う文ちゃんも、結構可愛いんだけどなぁ。
 口に出したら何をされるか(いじられる的な意味で)わからないから言わないけど。
 しかし……そうか。
777 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/07/12(火) 21:07:58.78 ID:IYx4Z07h0
 皆可愛いもんなー。
 コレはやっぱり共通点なんだろうなぁ。
「……まあ、とりあえず私は異性化はあんまり気にしてないよ」
 異性化することは、だけど。既に異性化してしまったのだから気にする必要がないというか。
 幾分か返事を待ったが、その言葉にはなんにも帰って来なかった。
 特に返すような内容でもなかったのだろうと勝手に結論づけ、掃除を続ける。
 端から端まで掃き、文ちゃんの元へ向かう。塵取りを手に持っていた文ちゃんはそのままホコリを小箒で綺麗に掃きとり、ゴミ箱に捨てる、この一連の動作も診療所で幾度と無くやっているためずいぶんお手のものだ。
 私はともかく、文ちゃん手つきいいなぁ……。診療所に来てくれないかな。
 この地域は子供……いや、人の数が少ないから、診療所を手伝ってくれるような人があまり居ない。アルバイトとして来ていた人は数人いたけど、専属のナースなんてものも居ない(今は私がその立ち位置なのかもしれないけど)。
 また、人が少ないのだから、当然学校も小さくなる。外から生徒が通いに来たりしないのか、と聞かれれば。私みたいな特別な例でない限り来ることはあまり無いらしい。
 高校だというのにも関わらず一学年に三クラスしかない、と知ったときには心底驚いた。
 その分、噂というのが広まるのは早いものだ、なんて無駄な考えもしていたが、それによりだいぶ時間が過ぎ去ったようで、
 ――キーン……コーン……カーン……コーン
 という、鐘の音が構内に響き渡る。
「上ば……文ちゃん、時間だよ。戻ろう?」
 数秒待っても、返事が来ない。
 ……なにか考え事でもしているのだろうか、文ちゃんは廊下に視線を落とし、そのまま直立不動で居た。
「おーい……文ちゃーん……」
 ……無視? いや、それはないだろう。さっきだってあっちから話しかけてきたんだし。
 だとしたらやっぱり考えにふけっている?
 今度は文ちゃん
の目の前で手を振りつつ、
「文ちゃんやーい」
 身長の低さを生かし、下からアピールする。
 すると、ようやく気がついたような、はっとした顔をして
「……え、えっと……なんの話だったかしら」
「……文ちゃん? チャイムが鳴ったから教室へ戻ろう? って言ったんだよ」
 それを聞いて、ようやく顔を縦に振り、
「……え? あ、ああ……そうね」
 ぎこちなく、そしてうつろな目をしてつぶやいた文ちゃん。私は、文ちゃんが何かを迷っている、そんな気がした。
778 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/07/12(火) 21:09:35.29 ID:IYx4Z07h0
今回はここまで。

壮大そうな伏線を無自覚に貼ったりしてるかも。回収大変そうだ。
というかスランプで二週間かけても10KBしか書けないって……
今回はものすごい亀投下になるかもしれない。その分推敲はきっちりするつもりです
779 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/15(金) 01:55:33.01 ID:VjunbKWco
個人的行き詰まりが酷いので気分転換に深夜にこっそり安価↓
780 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/15(金) 02:02:09.71 ID:UQXHRW+3o
安価なら「本当に私のことが好きで言ってる?」
781 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/15(金) 02:28:03.95 ID:VjunbKWco
>>780
把握
782 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/15(金) 09:08:03.43 ID:MsYE3tAd0
おおっと、パー速復帰してた

>>771
なんというフェティシズム、これは職人の犯行とみて間違いないGJ
あと「童貞おめでとー!」が、なんか突き抜けてて新しい!
実際言われたら萌えるのか死ぬるのか分からんけどww

>>777
にょたのナースさんだ
にょたナース……
にょたナース様……        ィィ
783 :でぃゆ(ry [sage saga]:2011/07/15(金) 11:06:30.13 ID:crKNGk970
お、やっと生理が終わったかパー速。

>>771
>海パンの日焼け跡が残っているではないか。ビキニタイプだと余計に白い肌の部分が強調されてどうしてか恥ずかしい。

つまり、ぴぬさんはコレがエロくないと申すか?恐ろしい御人だ…性癖が百八式まであるとでも言うのか?
本当にごちそうさまでした。いいぞもっとやれ!

>>778
毎度毎度、すんげぇなこの御方はッ!書き手としてはさぞ書き甲斐のある話だと思います。妬ましい脳味噌だじぇ…
こんなん見せられたら漏れは部屋の隅でガタガタ震えながらwktkするしか…

◆Zsc8I5zA3Uさんの書く男性キャラが悉くツボです。というより男性とにょたの距離感が…なんつーかもう卑怯です。
あと、フェチポイントの捻じ込み力がパネェ!にょたんこナースとかナニゴトですか?!おかわりッ!!
784 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(広島県) [sage]:2011/07/15(金) 19:33:21.53 ID:0iN0MzcYo
レスに応えるために書き上げなきゃ・・現在制作率20%以下だがwwww
785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/16(土) 06:48:08.50 ID:ob37T0SAO
>>783のレスのがオカシクなってた件orz
寝起きにレスとかするもんじゃねーな…

×◆Zsc8I5zA3Uさんの書く男性キャラが悉くツボです。というより男性とにょたの距離感が…なんつーかもう卑怯です。
あと、フェチポイントの捻じ込み力がパネェ!にょたんこナースとかナニゴトですか?!おかわりッ!!

○あと、フェチポイントの捻じ込み力がパネェ!にょたんこナースとかナニゴトですか?!おかわりッ!!


あ、まとめ読んでて思ったんですが◆Zsc8I5zA3Uさんの書く男性キャラが悉くツボです。というより男性とにょたの距離感が…なんつーかもう卑怯です。


もう、自分でもイミフだよ…バカ杉だろww
786 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/07/16(土) 17:43:12.55 ID:KkqryuVV0
>>539>>575のお題『蚊取り線香と主婦』

ドア越しに聞こえるケータイのアラーム音(着う○フル)。こちらも強めにノックを続ける。実に喧しいアンサンブル。
でも、中から返事は無いし人が動いてる気配も無い。ハァ…

部屋の中に入るとこの部屋の主は寝乱れた様子も無く穏やかな寝息をたてている。
枕元ではケータイが奏でる『また君に番号を○けなかった 』が結構な音量で鳴り響いてるんだけど。
きれいな顔してるだろ、ウソみたいだろ、寝てるんだぜ?この状況で…
致し方ない、ここは一つ渾身の永久絶対究極氷結風斬(EFB)でも…

「……氷獄の怒り、凍界の慟哭、氷結の常闇よ戒めを解き放ち白刃を成…」
「死魔殺炎烈光 (DDB)」
「なっ…詠唱破棄…だと…?って起きてんじゃねーかッ!」
「朝から何を中二しているんだ阿呆、王子様を目覚めさせたいならキスのひとつでもしてはどうだ阿呆?」
「王子様を自称してんじゃねーよ、この変態が」

実際、『王子様』は自称のみならず他称でもあるんだけど、ソレをオレが認めると更に調子に乗るのは明らかなので認めてやるもんか。
ラファエロの天使画を想起させる色素の薄い髪を掻き上げながら、
その無駄に美麗な顔に皮肉と自信をメガ盛りにした笑みを湛えるコイツは與謝野 陽示。オレの従兄弟様だ。
ちなみに同い年で、同じ高校で、同じクラスなんだよ。勘弁してくれ。

コイツの両親――伯父さん夫婦は5年前に交通事故で他界していて、それ以来コイツはウチで暮らしている。
元々、伯父さん家は目と鼻の先でコイツとも兄弟同然の関係だったから一緒に住むコトになった当初は何の問題も無いと思っていた。
つまり、今は問題がある。先月16歳の誕生日にオレは女になった――所謂TS症候群。
お蔭様で年頃の男女がドキドキ一つ屋根の下状態だ。まったくもって冗談じゃない。どんなエロゲだよ。

「遠慮はしなくてもいいぞ?美月ならオハチューをする事くらい許そう」
「やかましいドッ変態!」
「甲斐甲斐しく僕の身の回りの世話を焼く美月だからこそなのだが…この期に及んでツンデレか?まぁ、それもにょたの風情か」
「おーおー、寝起きから随分な正常運転だな?フツーに家事してんのがテメーに奉仕してる事になんのか?」
「誤解は無いと思うが?事実こうして制服の上にエプロンを着けて毎朝起こしに来るのも僕への愛故なのだろう?」
「スゴイ勢いの恣意的解釈だな?さては馬鹿だな?無駄口たたいてないでとっとと着替えて顔洗って歯ぁ磨いて家畜の如く飯を食え」
「僕の場合おそらくは犬食いをしても天上界の美を表現出来ると思うが礼儀作法を重んじる人間として遠慮しておこう」
「とてもそうは見えん!大体、黙って身支度も出来んのかこの馬鹿は」
「ならばお前も黙っていつもの様にはにかみつつ着替えさせてくれれば良いだろう?」
「いつオレがお前を着替えさせたよ!!妄言も大概にしとけよッ!?」

言っておくけどコイツの態度はオレが女体化したからこうなったのではない。元々こうだ。生粋のドッ変態だ。
それから、お解かり頂けると思うがオレは多忙で留守がちな両親に代わってこの家の家事を担っているだけだ。
決してこのスカポンタンの為にしてるワケではない!絶対にだ!

「とりあえずオレは洗濯物干すから、その間に用意済ませとけよ?あ、飯食った後の皿はちゃんとシンクに溜めてる水に浸けとけよ」
「自分の洗い物ぐらいは自分でするが」
「晩にまとめてするから良いっていつも言ってんだろ?その為に朝飯も皿一枚に収めてんだろーが。水使うのもタダじゃねーんだから」
「ふむ、流石は美月だ。見事な主婦ぶり」
「あとなッ!脱いだモンはちゃんと表にしとけと何度も言ってんだろーがボケが!」
「…否、最早オカンか」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
787 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/07/16(土) 17:49:33.49 ID:KkqryuVV0
蝉の音が響き、こころなしか空の色がその青みを深め、強い陽の光がジリジリとアスファルトを焦がす通学路。
あづい…何で女物の下着って汗を吸わない素材が多いんだ?まだ慣れないブラが早くも鬱陶しい。それ以上に横を歩くコイツが鬱陶しい。
その顔には家での態度とは打って変わってアルカイック・スマイルがへばり付いている。偽装乙。
路行く同じ学校の女生徒らに挨拶をされれば丁寧に挨拶を返し、その度にきゃいきゃいと騒がれる。スゴイデスネー…
コイツの被っている猫は非常に従順で、家の中、というよりオレの前以外ではご主人様から一切離れない。
クラスメイトの前でソレを暴露した事もあったがコイツは「猫は被るものではなく愛でるものだよ美月?まあ僕は君を愛でたいのだけど」と
頓珍漢なコトをぬかし、クラスメイトからは「惚気話ですね?御馳走様です」「……リア充死すべし」等と逆に非難された。ちくしょー。

「はよー」
「おはようございます」
「おーす箕縞、今日も麗しの王子様と同伴登校か。羨ましいことで」
「なんだったら替わるか立迫?替わってくれるか?それがいいそうしよう」
「だが断る。王子様だって当然私より箕縞が良いだろうし、な?」
「ええ、立迫さんには申し訳ないですが僕は美月の方が…」
「コラコラコラコラ、オカシイだろ?自らすすんで誤解を深める様な言い方はやめろよッ!」
「誤解じゃないだろ?同棲してるクセに何を今更」
「同棲違う!同居だと何回も言って(ry」
「僕は同棲だと思われても一向に構わないけど?寧ろその方が「黙れ馬鹿!」」
「おはよーッ!って、このクソ暑いのに朝から王子様とにょた姫の夫婦漫才とか見たくないんだけどッ!?」
「ちょッ…由茅それは違っ」
「……リア充絶滅しろ」
「おはようございます、由茅さん、赤我部さん」
「箕縞、アンタ自重しなさいよ?節電だか自粛だか知らないけど冷房も効いてない教室でいちゃこらされたんじゃ堪んないのよッ!」
「だからいちゃこら違う!それに言わせてもらうがテメーも赤我部から離れてやれよ?レズも大概暑苦しいぞ」
「だッだッ、誰がレズよバカッ!?アタシは旭を変態どもから守ってるだけよッ!!」
「いや、レズだろ常識的に考えて。まぁ、ツンデレは優子の生態だもんな?」
「うっさいわよッ!?竜紀なんか妹とレズってるじゃない!にょたにきガチレズ近親相姦とかどんだけ盛ってんのよッ!?」
「うぉいっ?!それってば禁則事項だよ優子さん?!」
「……レズ自重」
「てゆうかねー、どいつもこいつも律儀に純潔守って女体化してんじゃないわよ!アタシこん中で紅一点だったハズなんだけどッ?」
「いや、それは面目ない…でもまぁ確かに今や與謝野が黒一点だもんな?見た目『黒』っていうか『金』だけど」
「まさか王子様まで女体化するってオチはないでしょうね?にょた王子とかちょっと見てみたい気もするけど」
「それは心配には及びませんよ、僕は非童貞ですので」
「「「へ?」」」
「……よろしい、続けたまえ」
788 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/07/16(土) 17:50:41.84 ID:KkqryuVV0
ガッ!とオレに向かって一斉に注がれる視線。その意味なんぞ解りたくもない…もうやだこの馬鹿。
癪だがここはその馬鹿に倣いアルカイック・スマイルで誤魔化しを試みるが今のオレの顔色はRGBのRだろうなこんちくしょう。

「何何何?やっぱアンタら出来上がってんじゃないッ!?直ちに爆発しなさいよバカッ!!」
「そうですか、毎日らめぇ…ですか把握。つか箕縞、お前マジでエロゲ乙じゃねーか?安直過ぎるだろ」
「……リア充裏山」

違うんです!違うんですよッ!?ついカッとなってヤったんです。いや、カァ…///だったかもしれませんけど…
ちょっと考えてもみてほしい、思春期=発情期真っ只中の男女が両親不在がデフォの家で一緒に暮らしてて何もないとか無理がある。
しかもこの馬鹿は家ではあのノリで…最初は勿論イヤでしたよ?そんな、ウホッ!じゃあるまいし冗談じゃないって…
でもですね?あからさまな好意を向けられて満更でもなかったらその気になっちゃうのが女心ってゆーか…
そんなもんいつ発生したんだと思いもしましたけどね?しょうがないじゃないか女になっちゃたんだから!!
身体の変化は突然なクセに心の変化は自覚出来ない程に緩やかで、気が付いた時には自分が思う以上に女になってるから余計に戸惑うんだよ?
それでなくてもこの馬鹿はスキンシップ過剰だから乙女回路が暴走するのも仕方ないと思うんだ。だからアレは仕方ねーんだって!!

その後もエッチってどの位気持ちいいもんかとか、処女の痛みは喩えるならどの位かとか、ちゃんとイけるもんなのかとか云々かんぬん
根掘り葉掘り訊かれ猥談は放課後にまで及んだ。その様子を満ち足りた笑顔で見つめる馬鹿は死ねばいいのに…本当に死なれちゃ困るけど。

「で、要するに今迄の態度はツンデレだったと?」
「いや、違うんですよ?聞いて下さい立迫のねーさん…」
「ナニが違うんだバカ!バカ!ま○こ!!」
「ひでぇッ?!サイテーだ!!」
「アンタがツンデレなのがいけないんでしょッ!?」
「うぁ、由茅にツンデレ扱いされるとか…鬱だ死のう」
「……そんな事はどうだっていい、初オルガスムスに達した際の感想をより詳細に…」
「赤我部、落ち着いて?な?……あ、あー!?そろそろかえってゆうはんのしたくしなくっちゃー」

オレは光速で鞄と糞馬鹿をひっ掴んでズッコケ3人娘の罵声を背に教室を飛び出した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
789 :でぃゆ(ry [sage saga]:2011/07/16(土) 17:55:04.18 ID:KkqryuVV0
後半へつづく(キートン山田)
あまりに何も思い付かないので勢い任せの超見切り発車です。推敲?校正?なにそれ怖い…
多分エロ有りになります。まとめの★は勲章さ。さて蚊取り線香め、どうしてくれよう…

ちなみにズッコケ3人娘は

立迫 竜紀=にょたにき
赤我部 旭=無口
由茅 優子=ツンデレ

つい出しちゃったけどゴチャゴチャしてしまった。


>>784
それって漏れの単発ネタ何本分ですか?www
790 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/07/16(土) 22:54:35.84 ID:8tOOPncK0
最高です!
二人の初体験についてkwsk
791 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/17(日) 04:09:20.20 ID:wRm0sogWo
なんてことだッ・・・!
寸止めどころか、もう終わった後だったなんてッ・・・!!
792 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/17(日) 05:23:48.24 ID:d7KjrEYEo
後半までの暇つぶしでもどうぞ
(´・ω・)っ>>780のお題「本当に私のことが好きで言ってる?」

期末試験が終わり、もうすぐ夏休みだというこの時期に、私の気分は冬の様に凍り付いていた。
何の事はない、昼休みに今目の前にいる男子生徒に呼び出され、告白を受けたからだ。

「本当に私のことが好きで言ってる?」
「も、もちろん」
「ふーん……あんた、昨日E組の子に告ったらしいよね?断られたから次は私?」
「……えっ?!い、いや、そ、そそ、そんなことは無い…ぞ」

相手の目が泳ぎ、あからさまに私から視線を逸らす。

「私達の情報網、舐めないで欲しいかな。裏もちゃんと取れてるんだから、今更ごまかしても無駄無駄」
「……………」
「どうせ夏休み前に彼女欲しいって位か、童貞捨てとこう、とか思ってるだけなんでしょ」
「ち、ちが……」
「違わない。私ら全員が全員ガード緩いと思ったら大間違い。あんたも女になってしまえばいいのよ」
「………な、なぁ頼むよ……一回だけでいいから」
「やっぱり本音はソレか、絶対嫌。女になるのが嫌なら国営風俗にでもいけば?」
「ぅ……」
「さっさと自分で解決しときなさい。私の様になりたくないなら!」

―――ギィ
踵を返し、さんさんと太陽に照らされる屋上から退散すべく、ドアノブに手を掛けてからもう一言付け加えた。

「同情はするけど、同情だけじゃ付き合えないの………解るよね?」
「……ごめん」
「謝るくらいなら最初から告らなければいいのに。数撃っても当たらない鉄砲もあるんだから」

―――バタン


――――――
―――



教室に戻って席に着いて弁当箱を取り出す。暖めたわけでもないのに妙に弁当箱が温いこの季節は大嫌いだ。

「はぁ……」
「どうしたの?溜息なんかついて。ああ…そういや尾花さん呼び出されてたね。また告られたの?」
「うん、斬ってきた。最近は特に多くて……」

前の席に座っている友人が話しかけてきた。げんなりしていた私の様子を見て心配でもしてくれたのだろうか。

「これで何人目だっけ?」
「七月入ってから六人目」
「うわ……全部断ってるの?」
「勿論。ヤリ捨てられるの目に見えてるし」
「手厳しいなぁ……あたしなんか告白された事すらないんだけどー」
「そりゃ、御形さんが元男じゃないからだと思う」
「……それってあたしバカにされてるの?」
「逆逆、俺のような元男が股緩いと思われてんだよ……」
「あ、また言葉遣いっ!女の子が『股緩い』なんて言っちゃダメでしょーがっ」
「………慣れてねーんだからいいじゃんもう。告白断る時はボロ出さなかったんだからさー」
「だーめ。あたし現場は見てないもの」
「へーい……」

友人と言ってもこの高校に入学してからの友人で、私がまだ男だった頃にちょっと良いなと思っていた子だ。
異性化のおかげで親密になれたものの、あくまでも友人としてなのでどこか不毛さを感じずにはいられない。
そもそも既に女同士だという点も忘れてはならないだろう。
793 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/17(日) 05:25:36.74 ID:d7KjrEYEo
―――ドドドドドッ
夏場なので教室の入り口や窓はほぼ全て開けっ放しにしてある。
その入り口から土煙を上げるかの如く私の隣の席に突進してくる女子が一人。

「学食いこーっ!」
「今日もお熱いことで。……つーか真夏日の気温をこれ以上上げるなよ、バカップル」
「……むう。バカップルじゃないもん!」

その女子生徒は隣に座っている男子生徒に抱きついてから、私の意見に抗議をする。

「okok、多数決を取ろうじゃないか。周りを見てみろ。どんな視線が突き刺さってるか理解出来るだろう?」

そう促して、クラスの様子を見渡す。当然彼らバカップルに視線が集中していたのが良く解る。
私に続いてバカップルも周囲を確認したので、わざとらしい咳払いやガタガタと椅子を動かす音が聞こえた。

「な?恥ずかしいだろ?」
「全然。ね?」
「……いや、俺は恥ずかしい」
「え〜〜〜……」
「けど、嫌ではないかな」
「えへへ〜」
「……なんなのこのクソカップル」

公衆の面前で堂々とイチャつくな、ときっぱり突っ込みを入れるも、軽くあしらわれてしまう始末だ。

「尾花さん、羨ましいの?」
「別に」

御形さんに唐突に話を振られる。内心妬ましい事この上ないが、ここは敢えて否定しておく。

「羨ましい、って話なら、誰かの告白okしてるだろうしな」

バカップルの片割れがここでフォローを入れてくれた。評価を少し上げてやろう。但し-100点が-99点になった程度だが。

「お前ら付き合い始めてもう1ヶ月になるだろ、そろそろ昼飯時の平穏な時間を返してくれないか?」
「む〜〜〜」
「ふくれっ面も可愛いが、今の俺には効かんぞ。既に異性化した身だからな!
……はぁ、言ってて空しくなってきた。つーか、お前らなんで上手くいってんの?」
「「……?」」
「二人して不思議そうな顔するな!」
「や、だって、ねぇ?」
「だなぁ……尾花、否定しといてやっぱり興味津々なのか」

上げて落とすかこの野郎。評定-200点まで一気に下げてやる。

「………別に」

否定の言葉を絞り出すが、図星を突かれて若干気恥ずかしさが湧き上がり、頬が熱を帯びた。
気温のせい、という事にしておきたい。

「あ、赤くなった。可愛い!」

何故か御形さんまでノリノリだ。やめてくれ、君は僕の心のオアシスなんだ。オアシスが干乾びると死んでしまうッ

「ぶっちゃけ、尾花が思ってるほどうまくいってるのはごく最近からなんだけどな」
「そうそう、ボクらも最初は結構大変だったのです」
「そうだったんスか」
「そうだったんですっ!」

ふんすっ みたいな音を立てて胸を張るバカップル一号(女)

「意外だな……最初っからそんなノリだっただろうに」
「それは表向きだけ、かな」
「ふーん……」

異性化した者同士、なんとなく通ずる所があるからだろうか。おぼろげながらバカップル一号の話がすんなり飲み込めた。
794 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/17(日) 05:27:06.21 ID:d7KjrEYEo
「悩みがあるなら相談に乗るよ?」
「遠慮しとく」
「そう?きっとボクなら解るかもしれないけど」
「かもな、アンタも同じだったんだっけか。むしろ先輩か」
「うん、ボクは5月頭になっちゃったし……あ!解った」
「何がだよ」
「もしかして男の子から告白受けすぎててうんざりしてるとか?」
「まぁ、それもあるか」
「じゃあ、うんざりしてる所にボクみたいなのに彼氏が居て、付き合えてるから不思議でたまらない、とか?」
「ピンポンパンポン、正解者には厚焼き玉子をプレゼント」
「わーい。あ〜ん」

箸で弁当箱から玉子焼きを一欠片掴み取り、バカップル一号の口へ放り込んだ。

「もぐもぐ……んぐっ。また腕上げたの?前より美味しくなってる」
「ああ……御形さんに鍛えられてるからな」
「良いなぁ…ボク全然出来ないから諦めてるのに」
「そーっすか」
「そ〜なんです」

「おお、今日もやってるな。トリオ漫才」
「どこが漫才だ、どこが」

昼休みの平穏を乱すもう一つの理由が教室に顕現した。
私は仏教徒なんだから、祈りを捧げた憶えはないし、そろそろ天界か地獄へ還って欲しい。

「何処も糞もなぁ…見たままだろう」
「俺は毎日似たような被害にあっててうんざりしてるっつーのに……てめー様も原因の一つなの忘れてやがるな」
「おっ…今日は初っ端から俺様モードか。マジで機嫌悪そうだな」
「解ってるならゴマ位すり潰せ!形が残らないようにっ」
「今日はすり鉢持ってねーから無理だわ。いやー……残念だなぁ」
「嘘つけコラッ…嗚呼、忌々しい忌々しい……」
「よーし、良い解決方法を教えてやろう」

顕現した馬鹿男は奇しくもバカップル二号(男)の後ろの席。購買帰りなのか、昼食のパンが入っていそうな紙袋を抱えていた。
そして今までの会話もいつもの光景となりつつある夏の昼下がり、いい加減ツッコミに使うエネルギーを節約して午後の授業に回したい。

「ok、どうせロクでも無い内容だろうが聞いてやる。話して進ぜよ」
「俺の愛を受け入れる事だッ」
「うん、聞いた俺の思慮が至らなかったな。よし、死ね。今すぐ地獄へ行け」
「扱いひでーなぁ…本気だっつーのに」
「てめー様がトンチキな発言するからだろ。何が『俺の愛を受け入れる事だッ(キリッ)』だ。精々恋だっつの。馬鹿じゃね」
「うおお……いつにも増して辛辣な言葉の刃が俺の心に突き刺さる……ッ」
「嘘付け、いつも跳ね除けてるくせに。そうじゃなきゃ俺が変わった日からずっと言ってないだろ、テメー」
「なんだ、バレてたのか」
「はぁ……」

トリオ漫才が夫婦漫才にシフトして、そろそろ御形さんに締められて終わるのがいつものパターン。
……別に『夫婦漫才』と例えたからと言って、この馬鹿と付き合っているわけではないのでソコんところは勘違いしないで欲しい。
たとえ、こいつとは私が女になった日から毎日こいつに告白され続け、毎日私が断っている間柄だったとしても、だ。

「最近溜息が多いなぁ、尾花。溜息つき過ぎると幸せが逃げちまうぞ」
「原因の大半が黒葉、テメーなんだけどな」
「つれねーなぁ……俺はお前一筋なのに」
「信じられないね。どうせ他の女にも調子の良い事言ってんだろ」

今日は御形さんの突っ込みが入らない。そればかりか、バカップルの二人すら喋らなくなった。
周りが急に静かになり、私と黒葉だけが取り残されたような感覚になる。
蒸し暑いはずの空気が急に凍り付き、妙な緊張感が漂い始めた。

「無いな。それは無い。お前以外興味ないし」
「……キモッ。なんだよ、真面目な顔しやがって。どうせてめーも童貞捨てたいってだけなんだろ」
「それこそどうでもいいな。女体化しちまっても別にかまわねーし。例えなったとしても、尾花を好きなままだ」

黒葉は愚とも冗談とも取れる様な素っ頓狂な事を口走る。異性化を甘く見すぎているクセに、真剣な眼差しなので性質が悪い。
795 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/17(日) 05:29:29.62 ID:d7KjrEYEo
「(………そろそろ、何とも思っていない相手なんだから、相応の態度でばっさり斬り捨ててやるのが礼儀なのかもしれないな)」

そう思った私は深呼吸を一回して、気分を落ち着かせてから言葉の刃を振りかざした。

「本当に私のことが好きで言ってる?」
「ああ」
「思春期特有の劣情だけじゃないの?別にあるのは悪いとは言わないけど」
「違う」
「じゃあ仮に私が絶対にさせないって言っても我慢出来る?」
「勿論だ」

終始、黒葉は私の目を見ながら質問に答えた。緊張している事もなく、かといってふざけているわけでもない。
真面目に、真剣に、真摯に、心の底からの返事にしか聞こえない。
おまけに彼の二つの黒い瞳に映る私は、全て見透かされたようにその瞳に吸い込まれ、暑さも忘れてじっと見つめ合ってしまった。
彼と見つめ合う間、自分の心臓がトクン、トクンと脈打つ音がよく聞こえる。
頭の中でどこからともなく現れたもう一人の自分が問いただす。『本当にこいつのことを何とも思っていないの?』と。
あ……これは墓穴だった、かな。

「…………」
「返事は?」
「ふぇっ?!え?…な、何の?」

解りきっている事柄なのに、陶酔していた私は妙にうわずった声で聞き返してしまった。

「俺の告白の返事」
「…………えと」

今更気付いた想いを口にするのは気恥ずかしくて、どうにも口篭って中々返事が出せない。

「………はぁ、そうか……解った。俺もそろそろ諦めるわ。いい加減惚れた女の迷惑になるのもアレだしな」
「えっ?!」

私の煮え切らない態度を否定と取ったのか、彼は席を立ち上がり、教室から去ろうとしていた。

「ま、待って!」
「ん?」

思わず彼の腕を掴んで制止させた。

「返事、言う……から、待って」
「解った」

必死に脳内回路をフル回転させて返事の言葉を考える。
や、返事のベクトルは決まっているのだけど、それをどう伝えるべきなのか迷っているだけだ。
結局、どう答えて良いのか解らずに、二分くらい彼の腕を掴んだまま考え込んだ。
796 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/17(日) 05:29:56.57 ID:d7KjrEYEo
「ふ……不束者ですがっ…よっ…宜しく…お、お、おお、お願いします……」

そして出した結果がコレだ。
うん、私どんだけヒートアップしてんだ!これじゃ交際の返事じゃなくて結婚の返事じゃないか…ッ?!
ま、間違えているにも程がある。意図は伝わるからそこのところは大丈夫……だといいな。

―――ガシッ

彼は私の返事を聞くと、もう片方の手を私の背に回して抱きしめた。
私の方はというと、嬉しいやら恥ずかしいやら、様々な想いが綯い交ぜになっていて、顔を見られまいと彼の胸に顔をうずめていた。

「…………すげー」
「尾花さん、ついに落ちちゃったかぁ。あたしの予想通りね!」
「うーん…ボクの予想は外れちゃったか。まさか教室でなんて、ねぇ〜?」
「……あのなぁ、同じように告ったナオが言えた義理じゃないだろう」
「え〜……ボクの時はもっとあっさりしてたでしょ〜?」

……え?

「しかも公衆の面前でしっかりと抱き合っちゃってまぁ、うふふっ、双方ベタ惚れじゃない?」
「うん、初々しさと大胆さ、普通なら同居する事の無い相反する雰囲気が上手く溶け合った甘ったるいカップルの誕生だね〜」
「どっかの料理番組の評価みたいな言い方だな」

ああ、うん。そうだった。
ここは私の教室で、今は昼休みと言えども1/3くらいはクラスメイトが居て、さっきまで馬鹿話してた友人たちも勿論居て………

「いやぁああああああっ?!」
「あ、正気に戻った」
「ま、待って待って待って!!こ、これはその…えっと、あのですね……」
「尾花さん、彼氏が出来た感想をどうぞ」
「…………か、勘弁して」

教室に残っていた生徒全員の注目を集めてしまった私は、彼の腕の中で借りてきた猫の様に大人しくするしかなかったのであった。
やたら目立つ顛末を晒してしまったので、その日の内に黒葉との仲が校内中に知れ渡り、私への告白ラッシュはこの日を境にぴたりと止まったのは言うまでもない。


人が仮にといった話を真に受けたこの馬鹿を、我慢できなくなった私の方から押し倒す羽目になったのはまた別なお話。
797 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/17(日) 05:34:47.32 ID:d7KjrEYEo
Q1.気晴らしにしては長いな
A1.だってあっちは筆が進まないんだもん(´・ω・`)


>>789
蚊取り線香ってそんなに鬼畜な安価だったかなぁ……

それはさておき、続きが楽しみです。安価的意味は除いて。



798 :でぃゆ(ry [sage saga]:2011/07/17(日) 06:13:40.12 ID:gIEf1c260
>>790-791
ありがとうございます!
ビギンズナイトも書けという事ですね?想定していませんでしたorz
…よしッ、漏れガンガル!把握ッ!

>>797
>蚊取り線香ってそんなに鬼畜な安価だったかなぁ……

勝手にドツボってます(TωT)これも一種のスランプなんだろうなー…

それよりちょっとまってほしい、なんだろうかこの凄まじい名作は?
ニヤニヤが止まらん!ハードル上がったなんてもんじゃねーぞ!?
ちきしょうッ!くやしいのうッッ!グッジョヴじゃ!!
799 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/18(月) 03:53:09.61 ID:wV6fMDbk0
スレタイの設定だったら....
不細工な♀が大量生産されるだけだろうjk

800 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/18(月) 22:08:05.89 ID:jMmXJEFAO
この中にサッカーの造詣が深い職人様はいらっしゃいませんか?
にょたサッカーネタをプリーズ(≧ω≦)
801 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 01:12:10.13 ID:LxlEPr+Co
サッカーはサッカーでも
ブラッドサッカー(吸血鬼)になら多少は・・・
802 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/20(水) 01:30:59.58 ID:Oib5fpGAO
一瞬ボトムズかと思ったww
吸血鬼も大好物です!
ワラキアの串刺し公絡みだと特に
803 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/20(水) 03:10:42.79 ID:N3+1FayEo
気がつくと、青空ではなく天井が目に入った。先程までグラウンドで走っていたはずだが、いつの間に屋内に移動したのだろう。全く状況が飲み込めなかった。
「おはようさん」
声のした方へ目を遣ると、キャプテンが座っていて、その背後にベッドが見えた。そこでようやく理解した。ここは保健室だ。
でも、どうして?
「熱中症だな。水分ちゃんと摂ってたか?」
僕の困惑した様子を察して、キャプテンが説明してくれた。ランニングの途中で僕が倒れ、キャプテンが介抱してくれたらしい。
「あ、ありがとうございます」
「いいっていいって。それより、きちんと休んどけ。お前は即戦力なんだから、そうそうぶっ倒れられちゃ困るんだよ」
と、優しい笑みを僕へ向け、キャプテンは保健室から出て行った。

キャプテンが出ていくと、保健室には僕一人になった。手持ち無沙汰になって、体を横たえると、先程の会話を思い返した。
僕は熱中症で倒れたらしい。それで、保健室へ運ばれた。
確かに、日射しは強く、風もなかった。アスファルトからの熱気は肌を押すように感じられた。暑かったことは間違いなかった。
だが、水分はこまめに摂っていたし、睡眠時間も十分に確保していた。体も丈夫な方だ。それなのに、熱中症になんてなるだろうか。
「……考えても仕方がない、か」
人生、何が起こっても不思議ではない。いつだったか、甲子園を目指していたピッチャーが熱中症で亡くなったという話を、テレビで聞いた。その人に比べれば、僕なんか大したことないじゃないか。
そう思い直すと、僕は再び、意識を手放した。


今思えば、これは予兆だったのかもしれない。
でも、これが予兆だと、この時の僕には気付けるはずもなかった。
何も知らない、この時の僕には。
804 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/20(水) 03:11:09.13 ID:N3+1FayEo
気がつくと、青空ではなく天井が目に入った。先程までグラウンドで走っていたはずだが、いつの間に屋内に移動したのだろう。全く状況が飲み込めなかった。
「おはようさん」
声のした方へ目を遣ると、キャプテンが座っていて、その背後にベッドが見えた。そこでようやく理解した。ここは保健室だ。
でも、どうして?
「熱中症だな。水分ちゃんと摂ってたか?」
僕の困惑した様子を察して、キャプテンが説明してくれた。ランニングの途中で僕が倒れ、キャプテンが介抱してくれたらしい。
「あ、ありがとうございます」
「いいっていいって。それより、きちんと休んどけ。お前は即戦力なんだから、そうそうぶっ倒れられちゃ困るんだよ」
と、優しい笑みを僕へ向け、キャプテンは保健室から出て行った。

キャプテンが出ていくと、保健室には僕一人になった。手持ち無沙汰になって、体を横たえると、先程の会話を思い返した。
僕は熱中症で倒れたらしい。それで、保健室へ運ばれた。
確かに、日射しは強く、風もなかった。アスファルトからの熱気は肌を押すように感じられた。暑かったことは間違いなかった。
だが、水分はこまめに摂っていたし、睡眠時間も十分に確保していた。体も丈夫な方だ。それなのに、熱中症になんてなるだろうか。
「……考えても仕方がない、か」
人生、何が起こっても不思議ではない。いつだったか、甲子園を目指していたピッチャーが熱中症で亡くなったという話を、テレビで聞いた。その人に比べれば、僕なんか大したことないじゃないか。
そう思い直すと、僕は再び、意識を手放した。


今思えば、これは予兆だったのかもしれない。
でも、これが予兆だと、この時の僕には気付けるはずもなかった。
何も知らない、この時の僕には。
805 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/20(水) 03:12:02.84 ID:N3+1FayEo
気がつくと、青空ではなく天井が目に入った。先程までグラウンドで走っていたはずだが、いつの間に屋内に移動したのだろう。全く状況が飲み込めなかった。
「おはようさん」
声のした方へ目を遣ると、キャプテンが座っていて、その背後にベッドが見えた。そこでようやく理解した。ここは保健室だ。
でも、どうして?
「熱中症だな。水分ちゃんと摂ってたか?」
僕の困惑した様子を察して、キャプテンが説明してくれた。ランニングの途中で僕が倒れ、キャプテンが介抱してくれたらしい。
「あ、ありがとうございます」
「いいっていいって。それより、きちんと休んどけ。お前は即戦力なんだから、そうそうぶっ倒れられちゃ困るんだよ」
と、優しい笑みを僕へ向け、キャプテンは保健室から出て行った。

キャプテンが出ていくと、保健室には僕一人になった。手持ち無沙汰になって、体を横たえると、先程の会話を思い返した。
僕は熱中症で倒れたらしい。それで、保健室へ運ばれた。
確かに、日射しは強く、風もなかった。アスファルトからの熱気は肌を押すように感じられた。暑かったことは間違いなかった。
だが、水分はこまめに摂っていたし、睡眠時間も十分に確保していた。体も丈夫な方だ。それなのに、熱中症になんてなるだろうか。
「……考えても仕方がない、か」
人生、何が起こっても不思議ではない。いつだったか、甲子園を目指していたピッチャーが熱中症で亡くなったという話を、テレビで聞いた。その人に比べれば、僕なんか大したことないじゃないか。
そう思い直すと、僕は再び、意識を手放した。


今思えば、これは予兆だったのかもしれない。
でも、これが予兆だと、この時の僕には気付けるはずもなかった。
何も知らない、この時の僕には。
806 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/20(水) 03:13:42.02 ID:N3+1FayEo
気がつくと、青空ではなく天井が目に入った。先程までグラウンドで走っていたはずだが、いつの間に屋内に移動したのだろう。全く状況が飲み込めなかった。
「おはようさん」
声のした方へ目を遣ると、キャプテンが座っていて、その背後にベッドが見えた。そこでようやく理解した。ここは保健室だ。
でも、どうして?
「熱中症だな。水分ちゃんと摂ってたか?」
僕の困惑した様子を察して、キャプテンが説明してくれた。ランニングの途中で僕が倒れ、キャプテンが介抱してくれたらしい。
「あ、ありがとうございます」
「いいっていいって。それより、きちんと休んどけ。お前は即戦力なんだから、そうそうぶっ倒れられちゃ困るんだよ」
と、優しい笑みを僕へ向け、キャプテンは保健室から出て行った。

キャプテンが出ていくと、保健室には僕一人になった。手持ち無沙汰になって、体を横たえると、先程の会話を思い返した。
僕は熱中症で倒れたらしい。それで、保健室へ運ばれた。
確かに、日射しは強く、風もなかった。アスファルトからの熱気は肌を押すように感じられた。暑かったことは間違いなかった。
だが、水分はこまめに摂っていたし、睡眠時間も十分に確保していた。体も丈夫な方だ。それなのに、熱中症になんてなるだろうか。
「……考えても仕方がない、か」
人生、何が起こっても不思議ではない。いつだったか、甲子園を目指していたピッチャーが熱中症で亡くなったという話を、テレビで聞いた。その人に比べれば、僕なんか大したことないじゃないか。
そう思い直すと、僕は再び、意識を手放した。


今思えば、これは予兆だったのかもしれない。
でも、これが予兆だと、この時の僕には気付けるはずもなかった。
何も知らない、この時の僕には。
807 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/20(水) 03:14:36.22 ID:N3+1FayEo
ぶっは、書き込めてないと思ったら重複とかorz
申し訳ないです。

続き

翌朝、目を覚ますと、熱っぽかった。
「風邪でも引いたかなー……」
そうぼやき、体温計を探しに階下へ降りると、母が弁当を作っていた。
「あら、おはよう」
「おはよう。母さん、体温計どこ?」
「そこの棚の3段目だけど……熱でもあるの?」
「ん、何か熱っぽい」
体温計を取り出し、脇に挟んだ。その間に、母が風邪薬を出してくれた。
「はい。試合が近いんだから、体調管理はしっかりしなさい。あと、今夜は鉄板焼きだから、早めに帰ってきなさいよ」
「はいはい」
そう言いながら、ソファに座り、テレビの電源を入れた。丁度、ニュースの占いコーナーが始まったところだった。
『今日の鳥はハト、ツバメ、ワシ、ペリカンです。どれか1羽選んで下さいねー♪』
「ツバメかな」
直感で選ぶと、すぐにレースが始まった。選んだ動物の着順で運勢が決まるタイプの占いだ。
『1位はペリカン! 選ばれた方、おめでとうございます!』
1位はペリカンになった。ペリカンってどう考えても一番遅そうだが……と思っていたら、あれよあれよと言う間に、ツバメが最下位になってしまった。
『4位はツバメでしたー。選ばれた方、ごめんなさい。今日は突然のトラブルに要注意です! た・だ・し、今日がお誕生日の方はいいこともありそう!』
テレビから聞こえるお姉さんの声を僅かな落胆とともに聞き流していると、体温計が鳴った。確認すると38.4度。これは微熱では済まされない。
「はい、お弁当。熱はどうだったの?」
母に訊かれ、慌てて答えた。
「微熱かな」
「そう、あんまり無理するんじゃないわよ。大体、暑いからってお風呂上がりに」
「あー、あー、弁当ありがと」
そう言って母の小言をかわし、弁当を受け取ると部屋へ逃げ帰った。

---

いつも通り、朝練の1時間前に学校に着くと、部室でユニフォームに着替えた。ユニフォームの方が部室の掃除をしやすいからだ。
部室には窓がない。放っておくと埃がどんどん溜まってしまう。そうならないように部室を掃除するのは、僕の日課だった。

ロッカーから箒を取り出し、部室の奥から扉側へと掃き始めた。早朝とは言え、夏の湿った空気の中で体を動かしたせいか、みるみるうちに汗が噴き出した。顎から落ちた汗の雫が、足元の埃の山に染みを作った。
「あっつ……」
思わず独りごちた。そう言えば、熱があったのだ。病人であることを忘れていた。
熱があることを思い出すと、途端に体が重くなったように感じた。同時に、手のひらに力が入らなくなって、箒を取り落とした。
「あ、れ……?」
視界が霞んだ。ももから膝、ふくらはぎ、足の裏へと、筋肉が弛緩していくのが分かった。

ああ、倒れるんだな。

そんな当たり前の予想とともに、体と意識は地面へと沈んでいった。
808 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/20(水) 03:15:01.49 ID:N3+1FayEo
「ん……」
目が覚めると、見覚えのある天井が目に入った。
と言うか、デジャヴだった。だから思った。どうせまた、熱中症で倒れたんだろう。情けない話だ。
そう思いつつ横に目を遣ったが、キャプテンの姿はなかった。代わりに、カーテンの隙間から養護教員の先生の姿が見えた。
とりあえず話だけでもと思い、体を起こそうとした。しかし、体は鉛のように重かった。
「何だこれ!?」
びっくりして、思わず声を上げてしまった。その声に気付いたのか、先生がこちらを向いた。
「あら、目が覚めた?」
先生は微笑みながらこちらへ歩み寄ると、僕の頭を優しく撫でた。何だかくすぐったかった。
「サッカー部の子が背負ってきてくれたのよ。後でお礼を言わなきゃね?」
そう言いながら、先生は頭を撫で続けていた。
「あの、」
頭くすぐったいです、と言おうとして、言葉を失った。先程は気付かなかったが、発せられた声に聞き覚えがなかった。周囲を見たが、他に生徒がいる気配はなかった。
「……え? 何で?」
口をついて出た声には、やはり聞き覚えがなかった。だが、この状況から導き出される解はひとつだった。
この声は、僕の声だ。
「何、この声……」
「私は可愛いと思うけど」
「いや、おかしいです。いくら風邪でもこんな女みたいな声には」
その瞬間、先生は何かを悟ったような顔をした。
「……もしかして、誕生日が近い?」
「え、ああっ、そう言えば今日が誕生日です。すっかり忘れてた」
「そう。なるほど、なる、ほど」
先生は立ち上がると、机の引き出しから手鏡を取り出して持ってきた。
「はい、ちょっと顔を見てみて」
「? 何ですか?」
そう言いつつ、手鏡を見ると、そこには見知らぬ少女が映っていた。そして、全てを理解した。


ああ、なるほど。僕、女になったのか。
809 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/20(水) 03:19:17.23 ID:N3+1FayEo
というわけで地の文が非常にうざったい、プロローグ的な何か。
誰か続き書いt(ry

重複投稿ホントすみませんでしたorz
810 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/21(木) 01:31:12.36 ID:Kmge5h+AO
>>809
やった!投下が来た…と思いきや
寸止めどころじゃなかったでござるの巻orz

……続きを書いてもいいのよ?
つか書いて下さい(TДT)
811 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山陽) [sage]:2011/07/23(土) 21:07:04.95 ID:M+V+MWZAO
誰もいないな…
812 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/23(土) 22:34:24.84 ID:b1t05WRAO
夏バテしてるんじゃ?
813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/24(日) 00:44:57.03 ID:RY2seB6AO
申し訳ない、連勤も30日を越えるとマジで脳が働かない(ノДT)
なんとかしたい
814 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/24(日) 01:25:17.83 ID:KdIwyDJro
>>811
貰った安価が全然書き進まないので書き込めないのです。
どうもすみません…
815 :でぃゆ(ry [sage saga]:2011/07/24(日) 04:20:15.38 ID:UEpplDnV0
あまりに駄文が書けないので、とりあえず休憩中に描いた落書きにテキトーに色を着けたヤツをうp

http://dl8.getuploader.com/g/6%7C1516vip/61/shirotumesan001.jpg

何故か文庫本の表紙風。一応支援のつもりなんですよう…(ノДT)
間違ってリボンじゃなくてシュシュにしちまってた件orz
ほかにも色々ミスってたりデッサンが酷かったりするので、その内リベンジしてもイイでしょうか?

あ、大丈夫です。練炭は用意してますんでいつでも逝けます。
816 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/07/24(日) 12:21:14.62 ID:KdIwyDJro
>>815

「えへへ」
「やけに機嫌がよさそうだな」
「ほら!描いて貰ったから嬉しくてつい」
「ああ……そういや俺達の中だと初か」
「うん。実を言うとさ、風見くんのが先に描いてもらえるんじゃないかなって思ってたから余計に嬉しくって♪」
「……羨ましい(じ〜)」
「うわッ?!急に出てくるなよ、ビックリするだろ……」
「ふっふーん。所詮風見くんはサブキャラ扱いなんだから、僻まない僻まない」
「……ぐぬぬ」
「おまけにさ、描き直しをしてくれるらしいよ。勿論二つ返事で承諾しちゃった」
「奈緒のクセになまいきだっ!」
「えへへ」
「無視しないでよっ」
「ナオ、さっきからにやけっぱなしだなぁ……」
「や〜、もう、嬉しくって嬉しくって……えへへ」
「ええいッ、入り口コケ地獄の刑にしてくれるわッ」

「……馬鹿やってねーでそろそろ帰るぞ」
「わ、ちょっ、は、離してよ!と、とーやッ?!」
「帰りにパフェおごってやっから機嫌直せ」
「……………うん」
「悔しさよりもスイーツ(笑)な風見くんはベタ惚れの彼氏に連れられてこの場を去るのでした♪ちゃんちゃん」
「このっ!言わせておけばぁっ!」
「はぁ……(ポカッ)」
「あだっ?!なにすんのよっ!」
「小学生みてーな喧嘩すんなっつってんだ。二度としねーようにパフェの後お仕置きな」
「ふぇっ?!」
「痛くしねーから、安心してくれ」
「……待って!それいつもより焦らされるだけじゃんっ!やだ!あれ気が狂いそうになるからイヤだってばッ!」
「わりーな、邪魔して」
「あ、ああ……」
「やだっ!いやだってばッ!いやあぁぁぁぁぁ………(フェードアウト)」

「そういや、コケ地獄に弱体が入ったから、入り口で魔水のループ作った方が強かったよなぁ、ゆ○なま3」
「そうなの?……っていうか、コウくん、突っ込む所そこなの?」
「いや、去り際のアレに突っ込みを入れると下ネタにしかならないだろ?」
「うん」
「だから止めといたんだ」
「う〜ん……そういやさ、下ネタで思い出したんだけど、例の18禁安価の時にさ」
「いや、ナオさん?穿り返さないで貰えませんか?!それとメタ禁止だ!」
「え〜……」
「開けっぴろげすぎなんだって」
「そうかなぁ…?コウくんがお堅いだけだと思うけど」
「っていうか話が脱線しすぎてるからここら辺で〆とこう」
「あ……うん。そうだね」
-----------------------------------------------------------------------------
描いてもらったのを見た瞬間から顔がにやけっぱなしです(*´・ω・)
817 :でぃゆ(ry [sage]:2011/07/24(日) 23:28:47.45 ID:RY2seB6AO
>>816
殺されなくてひと安心。絵の投下は駄文より緊張します。

リベンジ承認有り難うございます!漏れ頑張る、ガンガルじゃ(ry
あと風見さんも描けということですね?よろこんで!
あ、見ての通りの底辺絵師なので期待はなさらぬよう…(ノДT)

風見さんだと、やはりローション風呂か…ならば差分が…ゴニョゴニョ
…期待はしないよーに
818 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/25(月) 08:40:39.84 ID:vf9d+i5C0
|゚q゚) ニョキ
どなたか、安価ください↓
|ミ サッ
819 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/25(月) 10:32:38.75 ID:HXIkrk7AO
ボクの初体験…お前になんかやるもんかッ!
820 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/07/25(月) 13:06:07.32 ID:vf9d+i5C0
安価把握
だがしかし、そのリクは出す相手が間違えているのでは?

でも、もーらったww
ニヨニヨキュンッな話には(力量的に)できないんだからねっ
821 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/25(月) 14:49:35.60 ID:vf9d+i5C0
安価「ボクの初体験…お前になんかやるもんかッ!」

「ぷっ!おめぇ、今の状況が分かっててそんなコト言ってんの?」
「……」

組み敷かれ、目に涙をためつつもキッと不届き者達を睨みつける美少女。
だが、彼女のような美しい少女がどんなにキツイ眼差しで睨みつけようとも
それはかえって不良共の嗜虐心を煽ってしまうのだった。

「たまんねぇなぁ……ちゃーんと忘れられねぇ初体験にしてやるから安心しろよ」
「こいつ、女体化したヤツだろ?女体化者は一度快感を覚えちまったら止まらなくなるって聞いてるぜ」
「マジか!?ソイツは……楽しみだな……(ジュルリ)」
「生で、はじめてなのにいっちゃうー!を拝見出来ると聞いて」
「……ッ! ねぇっ!誰か……誰かいないのっ!助けてっ!!」

にょた少女は焦った。
女体化した夜、家族が寝静まった頃にこっそり行った悪戯が、
自分の意思では止められずに、危うく最後の一線を越えそうになってしまった経験があったからだ。
興味本位だけで、しかも自分の指であったにも関わらず止められなかったアレを、
強引で力強い異性の指でもたらされてしまったら……自分はいったいどうなってしまうのか。

「無駄だっつーの、この廃倉庫は俺らのシマだからな
 お前が大声で叫んだって誰もこねぇよ!
 ここに連れ込まれた時点で詰みだっつーの!」
「……ッ!」

詰み宣言とともに軽く脇腹を撫でられる。
それだけで身体が勝手に反応する。
かたくなであろうとした心を簡単に裏切ってしまう我が身の過敏さに、にょた少女はすすり泣いた。

「うはっ、イイ反応!」
「おーおー、そそるねぇー」
「おい、録画の準備は?」
「任せとけって……ヒヒヒ」

にょた少女を本格的に穢さんと、幾本ものケダモノ達の腕が触手のように蠢きはじめた。
822 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/25(月) 14:50:21.25 ID:vf9d+i5C0


えっちな人には見れない書込み

823 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/25(月) 14:53:24.05 ID:vf9d+i5C0
もう身体も、心すらも、言う事を聞いてくれない……。
絶望に彼女が沈もうとした時、スっと誰かの笑顔がよぎった。
そうだ、従姉妹のなーちゃんは確かこう言っていた。
『本当にピンチの時だけだよ?こう、親指を立てて――』

「ぃ、Yes!にょたんこっ!」
『のー・たぁ〜っち!!!!』

その瞬間……照明の陰から、機材の裏から、荷物の後ろから、その他諸々の場所から謎の全身白タイツマン達が湧いてきた!

「なっ!?誰だ貴様ら!」
「お茶の間で話題の某スレ住人!」「全国のにょたんこスリスリしたい!」「謎の仮面マント変態紳士集団!」「にょたんこ意外に名乗る名など無い!」
「にょた少女の幸せを踏みにじる貴様らに……」「天!誅!」

――閃光、爆音、怒号と悲鳴……それらが止んだ頃、
七色に輝く虹とそこに掛かる『Yesにょたんこ!Noタッチ!』の看板。
そして何かをやりきった様子の変態達が佇んでいた。

                        ∩   ∩
       _ _∩           (⌒ )   ( ⌒)       ∩_ _ 
        (ヨ,,. i             |  |  / .ノ        i .,,E)
        \ \          |  |  / /         / /
  _n      \ \   _、 _  .|  | / / _、_    / ノ
 (  l     _、 _  \ \( <_,` )|  | / / ,_ノ` )/ /    _、_   
  \ \ ( <_,` ) \         ノ(       /____( ,_ノ` )    n
    ヽ___ ̄ ̄ ノ   |      /   ヽ      | __      \     l .,E)
      /    /     /     /    \     ヽ   /     /\ ヽ_/ /


――しまった、これは罠だ!
あなたが、この駄文が出席取りのための釣りだと気付いた時には、すでに何もかもが手遅れだった。
この駄文を読んでしまった人は『Yesにょたんこ!Noタッチ!』と書き込まねばならない!

Yesタッチな人が居たら…どうしようww
ところで、やっぱ我々は15,6歳で女体化した美少女コンプレックス、略してにょたコンと言う事になるのでせうか?
824 :でぃゆ(ry [sage]:2011/07/25(月) 22:45:18.99 ID:HXIkrk7AO
漏れを誰だと思ってやがる!
Yesにょたんこ!Yesレ○プだ!こんにゃろー!!
釣りは良いけどちゃんとにょたっ娘の処女膜を
天元突破するトコは書かなくちゃダメでしょ?もー!

…ん?漏れこそとっとと書け太郎?サーセンwww
825 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/26(火) 03:05:31.29 ID:rZIP3jw0o
にょたっこがいて、幼馴染なり親友なりとくっつくことになるとして
キスやらドッキングやらの寸前になって
顔真っ赤にしながらごごごごごめん、やっぱ無rって言いかけたところで
男側が強引にドーンですよ
826 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/26(火) 04:53:05.31 ID:uVqjXi7AO
>>825
なにそれ素敵
827 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/26(火) 08:17:43.97 ID:GGyWtkq40
えーと、たまたまかもしれないですけど
このスレ住人の生活圏は22:00、3:00、4:00である、と
…みんな睡眠時間ちゃんと確保できてるのか…?

>>824
へ、変態だ〜(褒め言葉)
ごめんよごめんよ、点呼目的とはいえ、流石にあの投げっぱなしは酷いよね
後日あの安価でもう一度やり直しさせてください、先生ッorz
828 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/26(火) 12:01:21.54 ID:GGyWtkq40
カキタカッタダケー

「それでは、7月度にょた研究会を始めよう」
「今月の検討企画は『何とかして、にょた本人に悟られず、気持ちよくなっちゃってるトコロを見せてもらえないか』です」

「本人に悟られずに……か?」
「そうです、先月の『頼み込んで見せて貰う』作戦は無謀もいいとこでした」
「何人もの会員が(社会的に)抹殺されてしまった、あの悲惨なオペレーションか」
「冷静に考えれば、あれでは紳士的変態行為ではなく、単なる変質者と変わりませんでしたから……当たり前の結果とも言えます」
「ふぅむ」

「しかし悟られずに……というのは難しくないだろうか?」
「天然気味とはいえ、年齢相応の知識は持ち合わせているもんな……」
「そこです」
「?」

「彼女達は確かに15、6歳相応の知識は持ち合わせていますが、女性としての経験はゼロです」
「そりゃまぁ、女体化したばかりだから当たり前だろう?」
「その女体化したばかりの純真無垢な常識を狙い撃ちにするのです」
「ほほぅ?その口ぶりは既にプランまで完成しているようだな」
「はい、名付けて『女子トイレって……すごい///』作戦です」
「女子トイレ……にょたが可愛く戸惑うマニア垂涎メインイベントの1つか」

「詳細を聞かせてもらおう」
「作戦は単純です
 我らが研究会の技術班に、ウォシュレットをエロティックカスタマイズしてもらうのです」
「ウォシュレット……だと?」
「そこに目を付けるとは、やはり天才か」

「何も知らないにょたがエロティック洗浄スイッチ……略してeビデを起動させると
 高感度センサにより誘導制御された洗浄水発射機関がぬるま湯を射出、
 にょたの無防備な局所を、正確に、執拗に、いやらしく、嬲りつくします」
「なるほど、ビデの本来な機能が分からぬ為に、にょたは甘んじてその責めを受けてしまうのだな」
「思わず声を洩らしそうになって、音姫連打となるのか……これはソソるぜ……」

「作戦は以上です」
「分かった、技術班および潜入班に通達しておこう、eウォシュレットすり替えオペレーションのキックオフだ」
「ありがとうございます」
「成功の暁には、にょたコン勲章の授与も検討しよう――Yes、にょたん娘!」
「Noタッチ!!」

変態仮面軍団による羞恥と恐怖のオペレーション。
危うしにょたの貞操!
しかし、完璧と思われた作戦も、予想外のトラブルにより中止へと追い込まれる。

「しまった!敵性生物OKANだ!!」
「情報遮断急げ!退避っ!退避――っ!!」

「なによこの便座!座っただけなのにバキバキとか失礼しちゃうワ!!」

――OKAN、人類最強生物の前には科学は無力なのであった。
829 :でぃゆ(ry [sage saga]:2011/07/26(火) 17:20:56.67 ID:2gfMUQQX0
恒例の駄文書けないから落書きうpのコーナーw
ハイ、毎度っ!職人様に無断でヘタクソなイメージイラストを描くという
まさに神をも畏れぬこのコーナーw 今回の犠牲者は…

http://dl6.getuploader.com/g/6%7C1516vip/62/ookamisanhyoushi.jpg

つか、前回に引き続き白詰さんを描き直してたら何か違う、
でもコレ誰かのイメージに…気が付いたら狼子さんになってましたwww
塗りが相変わらずイイ加減過ぎですね漏れよ死ね!

……えっと、(うДT)さん、狼子さんに噛み殺されるなら本望です!
本当にスイマセンでしたーッ!!!!!!
「ここがちげぇよ!つか全てちげぇッ!このカスッッ!!」とかあったらご指摘下さい…
あ、尻尾については色塗りの最中に気付きました。
某香辛料のコと混ざってしまった…(某所にこないだヘタ絵を投下したばっかだから)
狼子さんに尻尾はねぇよ…あぁ、死にたい…orz

白詰さんと風見さんは気長にお待ちください。申し訳ないですorz

>>827
よろしい、書きたまへ。つか、書いてくださいお願いします!wktk

>>828
この人イチイチ天才だなwww
830 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/26(火) 22:01:59.94 ID:Jzfam+9ho
>>829
単刀直入に言うと萌えた
831 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/07/27(水) 03:53:30.48 ID:EhzajKAAO
( ^ω^)……


ちなみに偽酉じゃなくて携帯だから一々酉を表示するのがめんどくさいだけwwwwww

ミスったら下手に晒しちゃうし
832 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/27(水) 14:27:17.43 ID:fV4eL4ht0
>>829
少し期待持たせてどーでもいいオチにもってくのが得意技ッス!
無駄にwktkしてもイイコトないんだぜー?

>>831
いっそ普段はコテ表示無しという手もあるかもですぜ?
でも名無しで投下しても文章力と執筆量で一発特定されますけどww
833 :でぃゆ(ry [sage saga]:2011/07/27(水) 15:16:58.34 ID:/2JILWZA0
>>830
まさかの反応ッ?!想定外でした

>>831
……ッッ?!!(((゚Д゚;)))セ、センパイ!チーッス!!

>>829
うん、一日置くと粗が目に付いてしょうがない。やっぱ落書きとはいえ下書き位はちゃんとしないとダメだな…orz
デッサン崩壊しまくってやがる、色々不自然極まりない謎の絵になってる。惨劇だな ( ´ー`)ミチャイランネェヤ・・・

と、いう訳で…今までうpした絵、全部描き直します!でもって8月31日にうpしますッ!!
そんでもって死にます!8月31日は漏れの命日ッ!!
白詰さんは勿論、◆440BCpUd8Bibさん宛てに描いたヤツも赤羽根さんも狼子さんも描き直します。+α有ります。

予定としてはこう↓

◆3gJlaqFfe2さん 『ボクの初体験…3つとも、貰ってくれる?』『ローション風呂』
◆440BCpUd8Bibさん 『幸せ』
青色1号 ◆YVw4z7Sf2Yさん 『赤羽根探偵と奇妙な数日』
(うДT) ◆nMPO.NEQr6さん 『狼さんの勘違い』

全部表紙風にする予定です。お気付きでしょうが◆440BCpUd8Bibさん、『幸せ』描いて良いですか?
それともやっぱ平坂さんのにょたんこナース姿のが良いですか?

『ボクの初体験…3つとも、貰ってくれる?』と『狼さんの勘違い』は構図とかは特に変えるつもりはございません。
デッサンや細部の仕上げをやり直す感じになると思います。

赤羽根さんはさすがにペロペロをやり直すのではなく一から描きます。

あと、余力があれば他にも描きます!描けるだけ描きます!大して描けないと思いますけど。
こんなヘタい絵で良ければ「しょうがねぇ…ホレ、オレのキャラを描けよクズ絵師」っていう奇特な職人さんがいればご一報を。
悦んで描きます。豚の様に哭きながら。
「オレのはぜってーに描くなよハゲ」って場合はもちろん描きません。そちらもお手数ですがご一報を。

あ、◆Zsc8I5zA3Uさんの作品は何か描きます。でもって死にます!

基本的に絵はリハビリ目的ですので可能な限り頑張りますがクオリティーは期待なさらぬように…
尚、今うpってる絵は近日中に削除します。
834 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/07/27(水) 17:23:42.68 ID:fV4eL4ht0
>>833
製作宣言による背水の陣…だと?
お絵かきにかかる時間は詳しくないけれど、あまり一気に先の予定まで決めると辛くなるようなー?
あまり無茶されなきよぅ、ご自愛くだされぃ
835 :でぃゆ(ry [sage]:2011/07/27(水) 20:35:19.77 ID:Kmd8JLkAO
>>834
漏れの場合、絵は駄文と同じで構図とか考えるのに
時間が掛かるんですけど、描き始めたらサクサク描けます。
上の『狼さん〜』ので3時間位。
勿論、丁寧に描けばもっと時間掛かりますけどね。
本当はその半分位の時間で描けて然るべき絵ですが
仕事の忙しさにかまけてサボってたツケですね。反省。

チキンですので日数はかなり余裕をみてますww
じゃなきゃこんな宣言とか無理><
いあ、記念日には何かしようと前から思ってたんですが…
本当は1日1枚うpします!とか言えたら
カッコいいんでしょうけど、無理無理(ノДT)
モノクロならイケるでしょうけど…

底辺絵師のリハビリですが、お付き合いくださると嬉しいです。
836 :でぃゆ(ry [sage]:2011/07/27(水) 21:01:36.70 ID:Kmd8JLkAO
あ、駄文もどうにかしたいんですが
何も思いつかないボスケテ

…さて、仕事に戻るか
837 :(うДT) ◆nMPO.NEQr6 [sage]:2011/07/27(水) 22:18:12.39 ID:EkZdRhNlo
>>829
お礼を・・・

昨日寝る直前に見つけたせいで興奮して寝付けなくて仕事に支障きたした礼をwwwwwwwwww





冗談ですww
すごく嬉しくて何回も見直してます
もちろん100万回くらい保存しました
あと、尻尾が無いと明言してるのは確か本人だけだったはずなので、
今日から尻尾がある設定にします
838 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/07/28(木) 12:00:55.26 ID:cpSVkjLj0
>>836
そういう時は外伝書くつもりで安価貰って世界やキャラに深み持たせれば
モチベが戻る時があったり地獄が深くなったりするってばっちゃがいってた

オイラも賽を振ってみよう、安価ください↓
839 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/07/28(木) 12:13:28.11 ID:ZQ5bV88Bo
懐中電灯
840 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/07/28(木) 12:14:05.92 ID:ZQ5bV88Bo
懐中電灯
841 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/07/28(木) 12:15:10.39 ID:ZQ5bV88Bo
ぎゃあ、連投失礼
842 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/07/28(木) 13:02:26.05 ID:cpSVkjLj0
安価把握!

しかし懐中電灯…
「懐中電灯に照らされるとにょたはウフンアハンしちゃうくらい敏感さんなの!」
さすがに無理すぎか…考えてくるデス
843 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/07/28(木) 16:15:01.62 ID:cpSVkjLj0
安価「懐中電灯」

「えーっと、ごめんください?」
『あ、男クンいらっしゃーい、ロック外したから入って来れるよー」
「おぉう、カメラ付きインターホンか……おじゃまするぜー」

「うーん……やっぱ自家発電装置が組まれてるようなマンションって、色んな家具がハイテクなんだなー」キョロキョロ
「オール家電マンションなんて、みんなこうだと思うよ?」
「そうなんか?あー……ちなみにお家賃はおいくら万円なんだ?」
「いちまんえん」
「……うそん!?」
「ホントはもっとすると思うよー?
 よく分かんないんだけど、女体化した子を支援する団体からお金が出てるから大丈夫みたい」
「はー……時代は女体化優遇なんだな」

「男クンも女体化しちゃう?」
「いやぁ……まだ迷ってるんだよね」
「いっぱい迷って悔いのない判断した方がいいと思う」
「……そうだな」
「え、えっと、ゴメンネしんみりしちゃう話して……
 ホラホラ、計画停電中でも自家発電のおかげでクーラー使えるんだよ?
 外暑かったでしょー?涼んでって?ね?」
「おぉう、天国キタ!メイン目的キタ!さんきゅーな♪」
「ボク何にもしてないけど、どういたしましてー♪」

「はー……楽園だー……」ゴローン
「男くん、今日どうする?晩ご飯食べてくなら御馳走するよー?」
「御馳走!?いや、停電が21:00までだから、
 それまでお邪魔しようとは思ったけど、さすがに晩メシは悪いよ」
「むー……カレーにしようと思っていたから、食べて行ってくれると助かるんだけど」
「カレー?」
「うん……カレーってね、一人だけだとなかなか作る機会が無いんだぁ
 だから、男クンがカレー食べてくれるとボク助かっちゃう」
「助かっちゃう、のか?」
「うん」
「そ、そか、助けになるなら……御馳走になろうかな!」
「おっけー♪」

(……おぃおぃ、元親友同士とはいえ今は男と女なんだぜ?
 一人暮らしの家に無防備に上げたうえに、夕飯御馳走って……俺、ひょっとして誘われてる?
 いや、ねぇな、アイツ天然だもんな)
844 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/07/28(木) 16:16:24.15 ID:cpSVkjLj0
パチン!キュウゥー……ンン

「うぉ!?」
「え?え?停電!?だって、自家発電が……」
「にょた!大丈夫か!?」
「えっとえっとお鍋の火!は電気が止まれば大丈夫だし……水!も止めてあったし……た、たぶん平気かもー?」
「そっか……しかし照明も何もかも落ちたみたいだな、例の自家発電装置に何かあったのかもしれないが……
 にょた、何か電池式の明かりとかないか?ケータイの画面をライト代わりにするには正直充電量がマズイ」
「あ……そ、そっか、携帯電話……」ペカー
「にょたー?懐中電灯みたいの無いのかー?」
「えとえとえと……そうだ、玄関のトコに緊急用のペンライトが備え付けられてたはず!」
「おし、じゃぁ俺が取ってくるからにょたは大人しくしてろよ?」
「う、うん……」

「えーと、ペンライトペンライト……あの壁に備え付けられてるのがそうか?」
「んー……この金具を引っ張って……と、よし取れた!えーとスイッチは……」カチッ θ゙゙ ブルブルブル
「ちょっ!?」
「コイツはペンライトに模したアレ……だよな……」
「……」

「あ、男クンおかえりなさい」
「……」
「男クンが居てくれてよかったよー、ボク一人だったら慌てちゃって大変だったと思う」
「……」
「とっても感謝してるんだよ?ありがとぉ」にこー
「……」
「……男クン、どしたの?ボク、怒らせるようなコト言っちゃった……?」
「……取って来た」
「あ、懐中電灯だね!ありが」θ゙゙ ブルブルブル
「えええええ!?!?」
「……」
「これってこれってあのあれだよね?な、なんでこんなのがウチに!?」
「……にょた」
「ひゃい!?」
「俺さ、もう晩御飯いらないわ……その代わり、別の物を御馳走してくれよ」ひょいっ
「!?!?」
「にょたがソコまで俺の事考えてくれてるなら……俺も覚悟決めるよ、だから……な」ちゅっ
「んッ!?……ふぁ……」
「俺はその、初めてでアレかもしれないけど……コイツも居ることだし、期待してくれ」θ゙゙ ブルブルブル
「え、えっとえっと……なんでこうなったかよく分かんないけど、ふつつか者ですがよろしくお願いしますっ」
θ゙゙ ブルブルブル


「作者が展開に困ると現れるのが、そういう事に協力を惜しまない我々にょた研究会だ」
「ふふふ、本物のペンライト型懐中電灯は回収ずみなのです」
「すりかえておいたのサ!」ドヤッ
845 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/07/28(木) 16:23:38.98 ID:cpSVkjLj0
しまった、インターホンのカギカッコが『」になってたorz

え?内容の方を悔いるべき?
フッ、悔いても改善しないものはさっさと諦めるのがオトナなのさドヤッ
846 :でぃゆ(ry [sage saga]:2011/07/28(木) 21:20:05.21 ID:TixIohEm0
夏風邪なう、クルクルパーなので
あ"〜、咽喉が…これが女体化の兆候ならいいのに…

>>837
(うДT)さんのHPに載ってる絵を参考…というよりほとんど模写なんですがあんなんで良かったんでしょうか?
こちらとしては自分では思いつかないキャラデザなので描いてて楽しかったです♪
でも、ミスってるとこは悔しいのでもっぺん描かせてください!

>今日から尻尾がある設定にします

と、取り返しのつかない事を…取り返しのつかない事をしてしまった…(゚д゚lll)

>>845
夏のスンドメ祭り続行中orz
847 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/28(木) 21:38:54.89 ID:N6LAIVzeo
じゅびゅばばー

まとめ滞ってしまって申し訳ないです><
近日中に行いますので、今しがたお待ちを…
848 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/07/29(金) 01:03:58.98 ID:+ctRmP7Mo
寝る前に何か安価を下さい↓
849 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/29(金) 02:06:26.14 ID:7L0Dcj7AO
向日葵と芙蓉
850 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/29(金) 05:48:31.59 ID:8mnuZ9zAO
無粋だけど気になって>>849をwikiで調べてみた。

芙蓉(ふよう)……ハスのこと。花言葉は"雄弁"

向日葵……埼玉県春日部市在住の某家の長女のこと。花言葉は"私の目はあなただけを見つめる"

両方とも夏の植物だぁね。
851 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/29(金) 08:45:15.78 ID:7L0Dcj7AO
>>850
ちょ、春日部wwwwww

芙蓉は木芙蓉か水芙蓉かで種類自体が異なりますのだ。
勿論、花言葉も。
向日葵も品種によって花言葉が違ってたりして面白いです。

まあ、他にもそれぞれの花にまつわる話とか
花そのもののイメージとか。

wktkです。
852 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/07/30(土) 10:46:44.50 ID:jtz5eskAO
新潟さーん!無事かー?
853 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/07/31(日) 16:26:16.55 ID:cZW+cntd0
学校の方で書かなきゃいけない小説の方が忙しくて、来れなかった……

>>833
久々に来てみたら、何やら嬉しい書き込みがw
幸せ、の方ですが、全然大丈夫です! むしろ、描いていただきたいw

そして、執筆の方ですが全く進んでいませんので、すみません←
854 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/01(月) 09:27:28.24 ID:L/7laijY0
>>852
「だ、大丈夫だから入ってこないで!」
「大丈夫って、あんなコトがあったから心配してるんだよ、ていうかその声……」
「な、なんでもないっ!なんでもないんだったらっ!」
みたいな展開を夢見ましたが現実はしょっぱかった。まる。

大雨でしたがウチの方は無事です。
でもおねえちゃんのおしごとするばしょがつくえのうえくらいまでみずがきちゃったそうです。がんばれー。
しりあいのひとはだんすいのせいでおやすみはずーっとみずくみだったそうです。こっちもがんばれー。
現状報告終了!

せっかくなので安価ください↓
855 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 16:18:36.72 ID:poDRKJtho
ラムネ
856 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/01(月) 18:50:30.25 ID:L/7laijY0
安価「ラムネ」

――ヤバイ、ドキドキしてきた。
いやドキドキってなんだよ、コイツは親友だろ?
ラムネなんて昨日まで普通に回し飲みしてただろ?

あー、確かにコイツは女体化したさ。
予想よりちょっと……かなり……滅茶苦茶可愛くなっちまったけど!
腕も脚も細く白くなって、腰とか中身あんのかってくらい華奢になっちまって!
胸とか尻とか控えめで、色気ドバドバのボンキュッボーンって訳でもないのに!
なんで目が離せないんだよ、つーかなんで俺こんなに緊張してるんだよ!

うあぁ、ラムネを受け取る手がちっさ!
ちいさくて可愛くてスベスベしてそうで……やばいやばいやばい、マジ目が離せない。
落ち付け!てゆーか落ち着け!
ただの回し飲みだ、回し飲み、直接、俺のに口を付けて、美味そうに、喉を鳴らして、飲む……って何考えてんだ!
そうだよ間接キスだよ!
って、そんなの昨日もやったよ!男同士だけどな!
じゃあ今日のは……コイツの女の子になってから初めての、ファースト(間接)きっす……?
待て待て待て、俺の、初めての、女の子とのファースト(間接)きっすでもあるわけだからして……
つまり二人は初めて同士!?

やっっべぇ〜〜!!もうほとんど初夜みたいなモンじゃねぇーか!
いつ結婚式済ませてんだよ!唐突過ぎだろ!?
誓いの言葉は?指輪交換は!?それより、キスは!?キスキスキスキス!!
参列者の皆さまの前で、ヴェールをそっとたくしあげて、潤んだ瞳の花嫁なコイツに、ぶっちゅ〜〜って!!
ズルイって!俺の知らないうちに話進めるなって!
やり直しを要求するぞ!あぁ、断固やり直しだ!でなけりゃ離婚して再婚して再結婚式だ!
そうだとも、×が10付いてでも満足するまで誓いのキスしても構わんよ!!キスのためならバツ充とかカモンカモンよ!?

待つんだ待つんだ、誓いのキスも大切だが初夜を迎えてベッドで震えてる乙女を放っとくのもどうなんだ!
そうだ、やり直しはそれからでも遅くない!
い、痛いけど……幸せ!みたいなセリフを10回リピートとか最高すぎる!
そうだコイツを幸せにしてやらなきゃいけない、その為には男である俺がしっかりしないとダメだ!
こんなファースト(間接)キスでうろたえてどうするっ!まずは俺が強い気持ちでリードしてやらないと……
コイツは女体化したばっかりで不安なんだ、俺が全部責任持ってやらなきゃいけないんだ!
そうだ、俺がやるんだ!俺からやるんだ!俺が、俺が!俺がっ!!

ばたーん!

「ちょ、大丈夫?……うわ、顔真っ赤にしてのぼせちゃってる!?だ、誰か力を貸してー!」
「俺が……俺が……俺が……きゅぅ」


よっしゃ、勢いだけで駆け抜けきったぜwwww
857 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(広島県) [sage]:2011/08/02(火) 07:44:15.47 ID:4gmYhEfTo
さて誰もいないいまのうち・・
858 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 07:44:37.51 ID:4gmYhEfTo
蝉時雨、夏を象徴する風物詩・・そして夏の恒例行事と言えば夏休み、学生時代には何気なく謳歌していたものではあるが結婚して主婦になってからはそんなものは無いに等しい。


“今年の夏は例年どおり遠出される方が多いですね、皆さんは計画を立ててますか?”

「・・そんなのあるわけないでしょ」

いつものようにテレビのニュースに無駄なコメントをつけながら、私は一人溜息をつく。いつもであれば気だるい日々を送るはずなのだが・・この時期と言えば全国の子ども達は例外なく夏休みと言うものを迎える。
私も女体化をする前はよくカブトムシを取りに行ったり、姉と一緒に真夏の空の下でアイスを食べながら一人せっせこと夏休みの宿題に追われていたのだが、あれから私も女体化を経て結婚していざ母親になってみると
当時とは違ってこの時期が来るたびに気苦労が耐えない。

「腹減った!! おやつはないの?」

「あのね・・さっきお昼食べたでしょ、わがまま言わない」

そう、本来なら我が息子の卓はこのお昼の時間帯では学校なのだが夏休みなので私にとってはおちおちと休まる暇もない。

「子どもは子どもらしく遊んだらどうなの? 学校のプールとか解放されているでしょ」

「飽きた。それに皆はどっかに行ってるし…」

まずい、ここからの流れは容易に予想できる。子どもの気持ちを考慮すれば叶えてあげたいのは山々なのだが我が家の家計は余り宜しくないのでここはなんとしても断固として阻止の準備を整える。
859 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 07:46:16.32 ID:4gmYhEfTo
「俺もどっかに行きたい!! 連れてってくれよ!!!」

「白根家にそんな余裕はありません!」

「ええっ!! 頼むよ、美由紀ちゃん〜」

「パパの真似をしてもダメなものはダメ。…それにあんたのパパがボーナスの一部を勝手に横領したから無理なの」

家計を預かる身とすればこれ以上の出費は避けたいのが本音だけども、卓の気持ちも理解は出来るので中々無碍にすることは避けたいところではあるのだが・・どうも家の旦那が私に黙って今年の夏のボーナスの一部を横領しており、おかげで家計の貯蓄が削られる形となってしまっている。旦那と結婚してからは母と姉直伝のやり方で家計を預かっている私だが、どうも付け入る隙を与えてしまったようで見事に旦那に一杯食わされてしまった。妻である私に無断で横領するとはいい根性の持ち主ではあるが、そのお陰で白根家の家計はとんでもないことになっているのを果たして理解しているのだろうか?

「今回は大人の事情でダメなのよ」

「ううっ〜…」

だけどもこのままではちょっと母親としては心が痛むので少し打開策を考えて見る。

「ま、後でおじいちゃんに電話してあげるから」

「ほんと!! よっしゃー、これでどっかに行けるぜ!!」

「電話するだけだから、余り期待するのは…」

「楽しみだなー!! じいちゃん家に行けるのか!!」

ルンルン気分で立ち去る卓を見ながら私は再び盛大な溜息をつくのだった。
860 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 07:47:03.48 ID:4gmYhEfTo
その夜、珍しく旦那が遅いので卓と2人で夕飯を済ませると私は即座に携帯を取り出して旦那に電話を掛ける。

「……出ないわね、今日は何もないはずなんだけど」

何度も何度も旦那を待ち続ける私なのだが、一向に電話に出てくる気配すらない。そんな時間が大分経って数時間後、家のインターフォンが鳴り響く…

「こんな時間に誰かしら?」

既に時間は夜中を当に廻っており、普段の私だったら眠っている時間なのだが今回ばかりは卓とのやり取りがあるので旦那とは絶対に話さなければならない。恐る恐る玄関のドアを開けると…そこにはぐでんぐでんに酔い潰れた旦那とそれを支える後輩の姿であった。

「うぃ〜…美由紀ちゃん、ただいまー!!! 愛しの旦那様だー!!!」

「先輩、声が大きいですよ…」

その姿に暫し唖然としてしまった私であったが、何とか平静を取り戻して問いただす。

「一体どうしたの」

「あの奥さん、実はですね…」

「もぅ、今月のボーナスで飲み屋でハシゴしまくりよぉ〜!!」

…どうやら、今回の横領したボーナスは旦那の飲み代に消えてしまったようだ。心なしか旦那の後輩の顔も引きつっており、私の中でも何かが切れ始めた。

「あ、あの奥さん…?」

「どうも、家の主人が大変お世話になりました。後はこちらでやっておきますので」

「そ、そうですか。じゃあこれで…」

「ありがとうございました」

主人の後輩を返すと私は完全に酔い潰れた旦那をソファに運ぶとそのままさっきの話を続ける。
861 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 07:48:07.44 ID:4gmYhEfTo
「うぃ〜!! やっぱり綾香ちゃんより美由紀ちゃんの方が一段と可愛いね」

「…誰、綾香ちゃんって」

「そりゃ、にょたっこクラブの…」

どうやら、私の想像以上に飲み歩いていたようだ。流石の私でもこればかりは容認できないし聞いているだけでだんだんむかっ腹が立ってくる。

「そりゃ、これだけ働きづめだから〜 たまにはこれくらい…」

「あなたの言うことはよ〜く解りました。今日はお休み、優治君」

「へ? 美由紀ちゃん??」

呆れかえった私は自分の部屋に戻るとそのまま軽い仕度を済ませ、そのまま眠りについた・・

862 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 07:48:28.97 ID:4gmYhEfTo
青い空、白い雲・・旅行日和にはうってつけの晴天。電車に揺られながらはしゃぎまくっている卓と一緒に手始めに旦那の実家へと向かう、私の実家へ向かうのも良いのだが旦那の実家とも昔から見知っている。

「すっげぇ!! すっげぇ!!」

「はしゃぐのも結構だけどちょっとは大人しくしなさい」

「へーい」

あっけらかんな返事をしても子供は子供・・その持ち前の好奇心を簡単には抑えようとはせずに再び私の前ではしゃいでくれる、とりあえず旦那の実家と自分の実家には事前に連絡を取っているので後は普通に向かうだけだ。

「そういえば父ちゃんは?」

「・・知らないわ」

「な、なんかあったのか?」

「大人の事情」

さぁってあのアホは今なにをしているんでしょうね・・

863 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 07:49:03.70 ID:4gmYhEfTo
目的の駅に到着し、改札を抜けてホームへと向かった私達親子を出迎えてくれたのは旦那のご両親達であった。

「爺ちゃん!!」

「おおっ! 卓、よくここまで来たなぁ〜」

義父と卓が感動の再会を交わしている間に私は義母と挨拶を交わす。

「美由紀ちゃんも久しぶりだね」

「ご無沙汰しております。義父さんや義母さんもお元気そうで何よりです」

「この歳になってから俺達夫婦は元気だけが取り柄だからな!! さ、こんな所に突っ立ってないで車に乗ってくれ」

「あんた! 美由紀ちゃんや卓もいるんだから安全運転で行くんだよ!」

「あいよ!!」

私達はそのままご両親達に先導されながら駐車していた車へと乗り込んで旦那の実家へと向かう。道中では楽しげな雑談を交わしているとあっという間に旦那の実家へと到着する、旦那と付き合って初めてこの実家へと足を運んだのも今では懐かしい思い出の一つだ。あれからかなりの月日は経っているが何一つ変わっていないこの場所を見ていると感慨深い物を覚えてしまう。

「母さん、早く入ろうぜ!!」

「・・え、ええ。お邪魔しましょう」

どうやら思ったより自分の思い出に耽っていたらしい、卓に先導されながら私は久々に旦那の実家へとお邪魔する。卓はそのまま消えていき私はそのままリビングに腰掛けながら義母が淹れてくれた紅茶を飲みながらのんびりと寛ぐ。
864 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 07:49:36.78 ID:4gmYhEfTo
「それよりも2人で押しかけてどうしたんだい?」

「ま、まぁ・・色々あったんで」

一応旦那のことは来る時に濁しながら曖昧な説明で終わらせていたのだが、ここまで来ると引き伸ばすのも結構難しい。

「お、義母さんもお元気そうでなりよりです。私も最近は家事と育児で忙しくて・・」

「卓の時期を考えたらそんなものよ。・・もしかしてうちの息子はサボってどっかで現抜かしてたりしてる?」

「うっ・・そ、それはないですよ。休みの日には卓の面倒は見てくれていますし・・」

「ま、もし美由紀ちゃんに苦労させるようなことしたら歳関係なく私達が躾けてあげるから心配しないで」

「アハハハ・・」

正直言って笑えない、やはり本当の理由は話すのは拙そうだ・・旦那の名誉やこれからのこと考えたら。

865 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 07:50:02.66 ID:4gmYhEfTo
そのまま私は卓を旦那の実家に置いていくと今度は自分の実家へと向かって文字通りの帰省するのだが・・実家で私を出迎えてくれたのは姉だけで肝心の両親はどこにも姿がなかった。

「姉さん・・父さんと母さんは?」

「あの2人なら旅行してるわよ」

「へ? だ、だって一応行く前に母さんには言っておいたのに・・」

一応これでも旦那の両親と合わせて自分の両親にも来る前に連絡はして置いたのだが・・ちゃんと伝わってなかったのか?

「きっと母さんが忘れていたんじゃないの。昔からどこかそそっかしかったし・・まぁ、父さんも定年退職したんだし有り余った金で有意義な老後を過ごしてるんでしょ」

「ハァ・・そんでどうして姉さんがここにいるの?」

「旅行が終わるまでの留守番」

のんびりと麦茶を飲みながら姉はのんびりとごちる、うざったるしい蝉の鳴き声が響き渡る中で何を考えたのか私は冷蔵庫からビールを取り出すとそのままグイッと飲み干す。

「あんたがお酒飲むなんて珍しいわね。何かあったの?」

「たまに帰ったんだからお酒ぐらい飲ませてよ」

「別に自分の家なんだから好きにすれば」

「・・そうする」

そのままたっぷりの氷水を用意すると冷蔵庫にあったビールをまとめて入れると冷蔵庫にある余ったもので適当なおつまみを作るとそのままビールを開けて夏の気だるい暑さをアルコールで紛らわせる。

「ま、何かあったのかはしらないけど好きなだけ飲みなさい。後は私がやってあげるから」

「ありがとう・・」

「夫婦の喧嘩だけは持ち込まないでよ」

姉のよく解らない慰めが心に響きながら酒が進む・・
866 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 07:50:33.22 ID:4gmYhEfTo
あれからどれだけ時間が経っただろうか? つまみが面白いように減っていき、酒の本数もかなり増えて徐々に身体も火照ってしまい自分でも何を言ってしまっているのか良く解らない。

「さっ、戻るわよ」

「・・どこへ行こうっての?」

姉に半ば強引に引き摺られて余り神経のない酔った身体を姉に支えてもらいながら、そのままひたすらと歩く・・暫く歩き続けていると見慣れた家がぼやけた意識に朧に写る。

「どこ・・ここ?」

「あんたがちょっと前にいた場所。ま、今晩はここで寝かせてもらいなさい・・」

そのまま姉は私を抱えながら家に入って行くと・・何やら怒鳴り声というか、何やら様々な声が私の脳裏に交わされている。しかし姉はそんな様子すら何ら気にせずに強引と言うべきかそのままずけずけと私を再び引き摺りながら揉めあいの中に入って行く。

「どうもご無沙汰しております。うちの妹がご迷惑をお掛けしたみたいで・・」

「おっ、あんたは!!」

「息子を躾けていたらとんだお客様だよ!!」

家のリビングにいたのは旦那のご両親・・そして良く周囲を見渡すと小さくなっている旦那の姿がそこにあった。しかし私もお酒の影響かそこまで頭が回らない・・
867 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 07:50:56.77 ID:4gmYhEfTo
「ね、義姉さん・・」

「お久しぶりね、白根君。・・一応事のあらましはここで潰れてるうちの妹から聞いたけどね」

「は、はぁ・・」

小さくなってた旦那の姿は更に小さくなって写る・・というか気分が悪い、昔に比べて酒が弱くなってしまった証拠だ。妊娠して子供を産んでからお酒なんて数えるほどしか飲んでなかったので耐性がなくなったんだろう。

「本当にご迷惑をお掛けしました。後は2人で話をさせますので・・」

「と、とんでもない!! 元を質せばこのバカ息子が発端です、いい歳なのに皆様にご迷惑を・・」

「まぁまぁ、男ならば一時の過ちが強くさせるんだよ」

「あんたは黙ってなさい!! この親子は本当に・・」

ついでに旦那と一緒に小さくなっている義父を見ていると歴史と言う物は繰り返されるようだ。

「あたしはDNAというもんが憎いよ・・」

「後は私に任せてお休みください。卓が起きてしまったら元も子もないですからね」

「そ、そうだな!! ここはお姉さんに任そうじゃないか。なぁ!?」

「・・あたしは疲れたよ」

姉の一声によってご両親はそのまま寝室へと戻る、私達3人・・何だかとても気まずい。

「んで、2人とも・・とやかく問い詰める気はないけど。とりあえず何か作って上げるわ、美由紀は酔いを醒ませなさい・・白根君は好きにしていいわ」

「「はい・・」」

姉が暫く退散すると、旦那と2人きり・・方や酔っ払いに方や小さくなっている姿、何ともミステイクなもんだ。
868 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 07:51:36.83 ID:4gmYhEfTo
「・・・どうして来たの?」

「そ、そりゃ・・起きたら卓と一緒にいなくなってたからな。そんで実家に帰ったらお袋に説教されるわ殴られるわ」

ま、災難と言えば災難というしかない。多分義母のことだから直感でなにかしら感じたんだろう、母親と言うのは偉大だけども妻としては正直複雑な気持ちだ。

「ゴメン。・・今度は美由紀ちゃん達に何かするよ」

「・・冬のボーナスはしっかり管理させて貰いますからね」

今回の騒動は私の管理不足もあるので次の冬のボーナスは旦那より先回りをしてしっかりと確保して置かないといけない。ま、今回のことは水に流しておくか・・

「で、でもさ・・付き合い程度の飲み屋巡りはダメ?」

「・・程ほどだったらいいわよ。プライベートで突っ込んだら本当に知らないわよ」

「へい・・」

全く旦那の管理も妻としての嗜みという事なのだろうか・・主婦ってやっぱり難しい。




fin
869 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(広島県) [sage]:2011/08/02(火) 07:53:27.29 ID:4gmYhEfTo
終了。
ま、このスレの作品を借りさせてもらいました。久々に書いたから色んな意味でスッキリしたんだぜ?

そして見てくれてありがとさんwwwwww




感想少ないのが難点かのぅ・・
870 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/02(火) 09:27:35.62 ID:l6/ccfQO0
乙GJ!あと、にょたっこクラブという疲れた大人達の心のオアシス的なものについて詳しくww

VIPで頑張っていた頃から比べると、見てる人も書く人も減っちゃいましたから
ある程度反応が薄いはしょうがないかと
「男の娘」が少し流行った時に、似たジャンルとして便乗・凱旋する手もあったかもですが…
871 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 18:29:57.80 ID:xxRysyYAO
>>870
にょたっこクラブはピンキリのお値段でやらせてもらってますwwwwww

良心的な店だったらセット、キープ、アフターは優しいお値段かと……

あくまでも良心的な店の場合だけどな
872 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 18:30:27.73 ID:xxRysyYAO
>>870
にょたっこクラブはピンキリのお値段でやらせてもらってますwwwwww

良心的な店だったらセット、キープ、アフターは優しいお値段かと……

あくまでも良心的な店の場合だけどな
873 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 18:30:56.27 ID:xxRysyYAO
>>870
にょたっこクラブはピンキリのお値段でやらせてもらってますwwwwww

良心的な店だったらセット、キープ、アフターは優しいお値段かと……

あくまでも良心的な店の場合だけどな
874 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 18:31:21.75 ID:xxRysyYAO
>>870
にょたっこクラブはピンキリのお値段でやらせてもらってますwwwwww

良心的な店だったらセット、キープ、アフターは優しいお値段かと……

あくまでも良心的な店の場合だけどな
875 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 18:31:49.10 ID:xxRysyYAO
>>870
にょたっこクラブはピンキリのお値段でやらせてもらってますwwwwww

良心的な店だったらセット、キープ、アフターは優しいお値段かと……

あくまでも良心的な店の場合だけどな
876 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 18:32:16.31 ID:xxRysyYAO
>>870
にょたっこクラブはピンキリのお値段でやらせてもらってますwwwwww

良心的な店だったらセット、キープ、アフターは優しいお値段かと……

あくまでも良心的な店の場合だけどな
877 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 19:14:00.55 ID:xxRysyYAO
>>870
にょたっこクラブはピンキリのお値段でやらせてもらってますwwwwww

良心的な店だったらセット、キープ、アフターは優しいお値段かと……

あくまでも良心的な店の場合だけどな
878 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/02(火) 19:19:01.85 ID:xxRysyYAO
連レスしてしまった…orz
879 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) [sage]:2011/08/02(火) 21:39:05.77 ID:Wk6sTWWPo
重要度が伝わってきたわ GJ
880 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(静岡県) [sage]:2011/08/02(火) 21:43:06.76 ID:vQkevP0t0
これほど入りたての初々しい娘がもてはやされる店もないだろうなww
881 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/03(水) 08:40:43.41 ID:XNNMonTZ0
作中のぐでんぐでんな若奥様より作者の方が萌える件ww

良心的じゃない場合、にょたを偽った天然女性が脚の相手をするという
謎の逆転現象が起こるのですねわかります
ホンににょた風俗はやでぇ…
882 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/03(水) 18:25:38.82 ID:FPr5yaAAO
>>881
良心的じゃない場合は……いかついお兄さんが待機しとる
883 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/03(水) 23:56:36.70 ID:WTsMD7Cuo
にょたっこの実兄が待機してるんだろ
空手7段ぐらいの
884 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/08/04(木) 00:58:44.34 ID:J/KrxVyAO
なんというYesにょたんこ!Noタッチ!
が、こんな窮地をまっていたッ!!
885 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage>881ぐでんは漏れの方でしたorz]:2011/08/05(金) 08:06:44.80 ID:LPUWqTmB0
ちょっと待つんだ
そんないかつい実兄が居たら、いつ間違いが起きてもおかしくない
政府は早くそういう店舗を取り潰し、行き場をなくしたにょたをこっちに回すべきではないか
886 :◇Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/05(金) 09:20:53.14 ID:JnpklMmAO
ま、様々な店があるなか…飲み屋関連は女体化で潤ってるのは事実なのは確か
887 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/08/06(土) 02:35:45.46 ID:cOhruZPAO
【花火と浴衣・裏側1】





「ねえねえ、お姉ちゃん」
「ん、なに?」

妹はその場でくるりと一回転し。

「サチの浴衣どう?」

と聞いてきた。
サチの浴衣は普通の浴衣と違い下半身の部分がスカート型になっている物で、薄いピンクの背景に花柄模様があしらってある。

「うん……可愛いんじゃないかな」
「やったあ!」

無邪気に喜ぶサチを見て、僕の顔も緩む。

「お姉ちゃんのは涼しそうだね!」

サチの言葉に、僕は自分の着ている浴衣を改めて確認してみる。
僕の浴衣は、サチのスカート型とは違い普通の浴衣で、流れる水をイメージしたのか何本も重なった水色の線と、水面の波紋を表現したかのような何重もの円があしらわれている柄だ。
水をモチーフに据えた柄だけあって、見ていると心なしか涼しくなってくるような気がする。

「そうだね。夏にはちょうどいいデザインだ」

そんな事を話しながら歩を進めると、橋が見えてきた。

「もう少しで着くな。時間の方は……」

腕時計に視線を移す。時計の針は六時五十分を指していた。
花火大会は七時からだから、あと十分か。

「なんとか間に合ったな」

ここから少し進んだ河原に花火を拝めるちょうどいい場所がある。
楽しみだ。

「もうすぐ花火始まるんだよね、楽しみー!」

サチもテンション上がってきたらしく、表情が満面の笑顔で固定されていた。

「うん、花火楽しみ……ん?」

なんなんだ、今の感覚は?
何か強烈な違和感、とはちょっと違うような感じがする。

「どうしたの、お姉ちゃん?」
「いや、なんでもない。さ、早くしないと花火始まるよ!」

違和感を無理矢理頭の中から閉め出し、これから始まる花火の事だけを考えるように務めた。

「……んー」

サチは僕の答えを不審に思ったのか不機嫌そうに唸っていたが、河原近くで開かれている屋台を見つけた瞬間に猛ダッシュで屋台へと駆け寄っていく。
888 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/08/06(土) 02:36:45.14 ID:cOhruZPAO
「お姉ちゃん! わたあめわたあめ、わたあめ買って!」

屋台の前で、小さく飛び跳ねながらわたあめをねだるサチ。
そういえば夕飯食べてないし、お腹減ってるだろうな。
しょうがない。

「すいません。わたあめ一つ下さい」

屋台のおじさんに言う。
僕の財布にはあまり入ってないけど、わたあめ一つくらいなら買える。

「はいよ、わたあめ二つ」

わたあめ一つ分のお金を渡して、代わりに渡されたのはわたあめ二つだった。
聞き間違えたんだろうか。
でも、渡した代金はお釣り無しの一つ分だけだし。
なぜなんだ。

「お嬢ちゃん、美人だから一つサービスするよ。持ってきな」

屋台のおじさんはニカッと笑い、僕にわたあめを二つ手渡した。

「えっ、あっ、ありがとうございます!」

言われ慣れない台詞に戸惑いながら、わたあめを受け取る。

「はい、サチの分」

サチはわたあめを受け取ると、間髪入れず食べ始めた。
さっきまで、花火花火と騒いでいたのに今ではわたあめを食べる事に夢中になっている。
花より団子。
そんな諺が頭をよぎった。

「花火よりわたあめ優先するあたり、うちの妹はまだまだ子供だな」
「お姉ちゃん!」

聞こえていたらしく、サチは不機嫌な表情を僕に向ける。それでも、わたあめを食べる事は止めない。

「あ、そろそろかな」

不機嫌そうなサチの視線から逃げるために腕時計を見ると、七時まであと二分しかなかった。

「ほら、始まっちゃうよ!」

サチに手招きしながら河原の方に進んでいく。

「あっ、待ってよー!」

サチが慌てて追いかけてくるのを視界の端で確認し、花火を見物するのにちょうどよさそうな場所を探す。

「うーん…………あそこらへんがいいかな」

河原には人がたくさんいたが、あそこなら人口密度が薄く、邪魔になる事もされる事もなさそうだ。
しかし、あそこに行くには人混みの中を通らなくちゃ辿りつけないが……まあ、大丈夫だろ。

「お姉ちゃん、先に行くなんて酷いっ」
「ごめんごめん。代わりに良さそうな見物場所見つけたから、行こう」
889 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/08/06(土) 02:37:55.51 ID:cOhruZPAO
今から人が結構いる所を通るので、はぐれるかもしれない可能性を考えてサチと手を繋ぐ。

「サチ、手離しちゃダメだよ」
「うんっ」

サチが頷くと同時に握ってある手の力が強くなった。
その事を感じ、僕達は人混みの中に突入した。
人混みの中にも一応、一人ぐらいなら人が通れるくらいのスペースがあり、その狭いスペースを伝ってなんとか人混みを突破した。

「抜けたぁ!」
「はあ、はあ……人がいっぱいでぎゅうぎゅうしてて大変だった、ふう、はあ……」

見た目以上に人口密度が高く、かなり疲れた。
サチもたくさんの人を避けながら進んだせいか、息があがっていた。
去年はこんなに大変じゃなかったのに……なんで今年に限って大変な事が続くのか。
花火を見に来た事を少し後悔しかけた時、不意に夜空から光が射した。
空を見上げると、夜空に浮かぶ星の光よりも綺麗な光の花が咲いていた。

「おお、一発目からでかいなあ」
「ふわあ……大きい」

二人して、一瞬で花火に目を奪われた。
花火の火花が消える直前、花火の炸裂音が耳に届く。
ドン!という音が空気を伝い、鼓膜を震わせる。
やはり、この音が無いと花火といった感じがしない。
オープニングの一発が消えた後も間髪入れず、花火は上がり続け、ギャラリーは魅入り、歓声をあげた。



そして、あっという間に二時間が経過し、花火大会は終わってしまった。
河原にいた大勢の人達が、少しずつ姿を消していく。
さて、僕達も帰るか。

「さっ、帰るよ、サチ」
「うん……ふわぁ〜」

疲れたのか眠たそうに欠伸をするサチ。

「眠いのか?」

コクリと頷いた。

「家まで歩けるか?」
「わかんない」

うーん……見た感じ、無理っぽいな。仕方ない。

「ほら、おぶってやるから乗れ」

サチの目の前でしゃがむと、妹は背中によじ登り首に腕を回した。
これでおんぶ完了。
さて、家に帰るか。
歩き出した瞬間、前方に六人ほどの男女の集団を見かけた。
別にそれだけならたいした事ではない。
でも、僕は六人とも知っている。
だって、彼らは僕の通っている高校のクラスメイトで友達だから。
890 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/08/06(土) 02:38:53.51 ID:cOhruZPAO
そして彼らを見た瞬間、さっき感じた違和感のような感覚の正体が判った。
実は、今朝このクラスメイト達と花火の話をしていて、その流れで花火見物に行こうって話になって僕も一緒に行く予定だったんだけれど、女体化&その後色々あったせいで、その……すっかり忘れていた。
なんで、僕は友達との約束を今の今まで忘れてたんだろうか。
軽く自己嫌悪に陥りつつ、後ろめたさから彼らに見つからないように違うルートを通って帰ろうとした。
しかし、彼らの中の一人が財布を落とし、その事に気づかないまま歩いていくのを見て、僕の体は勝手に動いた。
財布を拾い、クラスメイト達に声をかける。

「ねえ、財布落としたよ」

僕の呼びかけに反応し、六人が一斉に振り返る。
それから財布に視線が移り、話し合いによる持ち主の特定が始まった。
話し合いとは言っても「俺のじゃない」「私のじゃない」なんていったごく短い言葉のやり取りなのだが。

「あ、それ俺の財布だ」

一人の男子が手を上げた。
どうやら、小学生の頃からの友達である長井の財布だったみたいだ。
早く返してあげよう。

「はい、な……」

長井、と言おうとしたがギリギリで口に出すのを踏み止まった。
約束を忘れた罪悪感から、今みんなの前に顔を出すのは精神的に辛い。
つい条件反射的に財布を拾って呼び止めちゃったけど、さっさと財布を返して、さっさとみんなから離れればそれで済む。
しかし、今のみんなに僕が僕だと知れたら、逃げる間もなく捕まって長時間拘束されるだろう。ただ、幸いな事に僕の女体化した姿はまだこの中の誰にも知られていない。
だけど、勘の鋭い奴が結構いるので注意は必要だ。例えば、ちょっと前に長井の苗字を呼びそうになった。
長井は極めて一般的な男子で特に有名というわけでもなく、そんな長井の苗字を呼べるのは、長井の知り合いくらいしかいない。
そして、長井達にとって見ず知らずの女子が長井の苗字を呼ぶ。
これは十分におかしく思われる。
さらに、さっきも言ったけど勘の鋭い奴が結構いるので、僕が僕である事を見抜く奴がいるかもしれない。
これから先、迂闊な発言は一切できない。
891 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/08/06(土) 02:40:15.33 ID:cOhruZPAO
「な、無くさないようにな」

長井と言うのを踏み止まり、言い出しかけた『な』で始まる不自然じゃない言葉をなんとか絞り出しながら、長井に財布を半分押し付けるように渡す。

「じゃ、僕達は家に帰るから……」
「あ、待って!」

財布を渡し、そのまま百八十度向きを変え立ち去ろうとしたが、女子の一人……北山に呼び止められてしまった。

「な、何かな?」

嫌な予感しかしないが、呼び止めた理由を聞いてみる。

「あの、あなたの家ってどっちの方にあるんです?」
「ん? あっちの方だけど……あ」

しまった。つい普通に家のある方を指さしてしまった。

「私達もそっちの方に家があるんで、よかったら一緒に帰りません?」

輝かんばかりの笑顔を僕に向けて、北山は聞いてきた。
これはチャンスだ。一緒に帰るのを断るだけでここから抜け出せる。

「駄目ですか?」

さあ、キッパリと断ろう。





それから五分後。
僕は、六人と一緒に帰路についていた。
断りきれなかったよ。「駄目ですか?」って言われた時の残念そうな顔を見て、断る事が僕には出来なかった。
つくづく、嫌になる。
自分の意思の弱さ、優柔不断さが嫌になる。

「落ち込んでいるような顔してますよ。どうかしました?」


北山が、僕の顔を覗きこみながら聞いてきた。

「もしかして、疲れてます? 妹さん背負っている事ですし」
「ええ、まあ……」

北山からの質問に頷く。
確かに少し疲れてはいるが、今の表情を構成している要素は、自己嫌悪といつ僕だとバレるかもわからない緊張感から来るストレスのせいであって、疲労のせいではない。
しかし、北山ってこんなに気を配る奴だったかな。
僕の知ってる北山は、頭の回転はいいもののあまり周りに気を配る事のない奴だったのに。
初対面(と思っている)の人物が相手だから、ネコを被ってるのだろうか。敬語も使ってるから多分そうなんだろうけど。
ま、なんにせよ正体がばれなきゃいいさ。
892 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/08/06(土) 02:41:01.88 ID:cOhruZPAO
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫」
「辛くなったらいつでも言ってくださいね」
「うん、ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」

笑顔の北山はそのまま僕の耳元へと顔を近づけ、一言呟いた。呟きの内容は僕の名前。

「な……っ!?」
「私が気づかないとでも思った?」

得意げに呟く北山の顔に張り付いていた表情は、いつもの自信ありげな笑顔だった。
893 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/08/06(土) 02:41:52.35 ID:cOhruZPAO
とりあえずここまで
>>705の続きというか語られなかった花火大会とその後を書いてみましたが、予想以上に長くなりそうなので一旦途中で切ります
894 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/08/06(土) 20:16:08.64 ID:moGDiisAO
よっしゃー!花火編キター!
楽しみにしてました、続きに期待ッ!
895 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/08(月) 14:41:33.09 ID:kPFlrxWD0
わーい、告白編だー!
続きwktk

おしごとみすったーorz
ククク…追いつめられてる時こそ胸を張れ…自分を追い込めッ
どなたか現実逃避用安価ください↓
896 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/08/08(月) 15:32:03.54 ID:Lq60guEAO
「本当に…するの?」
897 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/08(月) 16:13:08.48 ID:kPFlrxWD0
安価「本当に…するの?」

「ぼく、昨日まで男の子だったんだよ?」
「知ってる」

「ちゃんと女の子みたいにできるか全然自信ないよ?」
「マグロで構わない、ていうか処女にそんなの期待してない」

「男に抱かれるなんてキモチ悪いって暴れるかもしれないよ?」
「今、こうやって組み敷かれてるのに抵抗しないってのは、そんなに嫌悪感無いんだろ?」

「でっ、でもでも、展開早すぎるよぅ」
「何年友達やってると思ってる、長い時間を一緒に過ごしてきただろ?」

「せめてこういうのはちゃんと手順と言うか……」
「言われてみればそうだな――(ちゅっ)まずはキスからだよな?」

「ふ……ぁ……やっぱり、だめぇ……」
「安心しろ、ちゃんと女の子として……いや、お姫様みたいに扱ってやるからさ」

「……」
「そうやって頬染めて瞳を潤ませて……お前は間違いなく女の子だよ、しかも極上級に可愛い女の子」

「はずかしいこと……ぃわないで……(ぷいっ)」
「そういう反応しといて女の子じゃないとか……わかったよ、俺が自覚させてやる
 お前はもう女の子だって……俺の物なんだって事をな!」

「んくッ!……俺の……物って……」
「何度でも言ってやるよ、お前は俺の物
 ここもそこも、この可愛いところも、こっちの熱くなってる所も、全部……愛してる」

「愛……?」
「そうだ、ずっと好きだった……結婚しよう」
「…………はぃ」


「――と、こういった口説き文句で、女体化した貴女の身体を親友だったケダモノは狙ってきます、注意してください」
「……なんだそれ?」
「国の機関が女体化を目前に控えてる人に配ってるパンフだよー、いくらなんでもコレハナイ!だよねー」
「あ、ああ、ソウデスヨネーアハハー」
「……」
「……」
「本当に……するの?」
「ギックーン!?!?」


うん、また寸止めなんだ、すまない
でもストレス解消出来た気がする〜、時間的にも追いつめられた気もする〜
キャッホー\(゚∀。)ノ
898 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/08/08(月) 21:29:00.77 ID:HGc2w4/M0
GJ!
899 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/08/08(月) 22:15:17.02 ID:Lq60guEAO
新潟さん、アンタ今輝いてるよ…

キャッホー\(゚∀。)ノ

で、大丈夫?
900 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/08/09(火) 09:12:13.47 ID:C8hu5f9T0
えへへー、大丈夫だよー
スッゴイ大丈夫、ゼンゼン大丈夫、全く問題なし、イケルイケルー…………

よし、頑張ろう
901 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/10(水) 09:17:21.39 ID:G/2yQ4pWo
女体化したとたん別の高校の番長に拉致られるわ
どこかの国の王子に求婚されるわ、障害を乗り越えるRPG
902 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/10(水) 11:35:08.02 ID:zGHTwnBL0
番長を倒した!
愛がアップ!魅力がアップ!男らしさがダウン!
とか出しながらくるくる踊る
ドット絵にょたとか想像して萌えてしまったんだが


旅立ちの日に女体化した勇者。

その事実を魔王軍に気取られないよう、王国は近衛騎士を偽勇者に仕立て仮初めの魔王討伐パレードを行った。
勇者は人々の最後の希望。
それが、女の子になっちゃって旅立てませ〜んでは済まないのだ。
なぜなら『魔王に対抗できるのは勇者だけ』だから。

国民や魔物たちの目を引いておき、裏では姫様外遊のお付きメイドとして真の勇者が旅立つ。
だが、剣も満足に持てぬその細腕で、彼女に何が出来ると言うのか――。

誰かが安価くださいってレスったら速攻で貼ろうと思ってるのに…悔しい、ビクンビクン
903 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/08/11(木) 22:35:58.35 ID:C1CgYNvx0
RPGツクールで作成まだー
904 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/08/12(金) 08:04:16.51 ID:uNirUsQAO
>>902

|ω゚) フガイナクテゴメン


|ミ サッ


|っ【安価↓】
905 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/08/12(金) 10:57:53.22 ID:LOIN+txR0
百合お姉さまが手に入れたのは、可愛いにょた仔猫ちゃん。
にょたっこが手に入れたのは、歳上の異性の恋人。
906 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/08/12(金) 11:03:54.55 ID:LOIN+txR0
おおー、パソコンじゃなくても
ちゃんと新潟ってでるんだね

にょたちゃんの眼差しは、お姉さまがよく知る愛玩される者のそれとは
ちょっと違うようなのです。
と、追加要求もつけちゃおっと♪
907 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/08/12(金) 11:26:25.52 ID:uNirUsQAO
ツイッターでエアコミケしてたらお題が来てたでござる
お題、把握!
期待はしないでね…(;ω;)
908 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/14(日) 08:35:44.35 ID:zUGVLeySO
もうすこし、時間がありゃあ…VXでシコシコ作成できるのに
なんちゃって、アドベンチャー風に安価を消化みたいな

前の安価まだかけてないけど
909 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/08/15(月) 18:32:27.26 ID:nI/q2rQi0
まとめの人乙〜っ!!
……と、安価募集したのにろくに筆の進まん俺が言ってみる。

うぅ、来週からっ!来週から本気出すからっ!!><
910 :でぃゆ(ry [sage]:2011/08/15(月) 22:42:56.69 ID:+C254wjAO
まとめ有難うございます。
安価ネタ…絵と並行して頑張ってますorz
どうか見捨てないで下さい(TωT)
911 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/17(水) 08:12:29.11 ID:3IMAgUUt0
コミケの人もお仕事の人もお疲れ様ッス

連休ボケ覚ましの安価が欲しいなぁ…↓(チラッチラッ)
912 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/17(水) 19:49:18.65 ID:DQvEMlh20
連休ボケ的な何か
913 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/18(木) 19:32:37.70 ID:ClQ6TZ5E0
安価「連休ボケ的な何か」

「よっす」
「……」
「……どした?ぼーっとして」
「男くん、だいすきー」ぎゅ
「!?!?」
「好きなの……もう気持ちを隠してられないの……」
「ちょ、ちょっと待てって!」
「もう待てないよっ!
 男くんはボクの事キライ?やっぱり女体化したコなんかじゃ……ダメ?」
「い、いや、ダメじゃないこともないこともありきこともあるというか」
「はっきりしてくれないの?ボクは、ボクのコトぜーんぶ、男くんにあげちゃっても構わないのに」
「ぜ、んぶ?」
「全部だよぅ……身体も、心も、みんな男くんの好きにして貰いたいの」
「……(ゴクリ)」
「男くんが望むなら、ミニミニスカートだってメイドさんだって、恥ずかしいけど裸エプロンだって頑張るよ?
 旦那さまとか……ご、ご主人様とか、そういうのだって……やるよ?」
「ごしゅじん……さま?」
「ボクのこと、そういう風に扱っても構わないってコト……だよ」
「そ、それは……」
「そのかわり、男くんの愛を、ボクにください」
「うぁ……」
「……」うるうる
「……ッ」
「やっぱり、胸が小さいのが悪い、の?男くん、巨乳派だもんね」
「や……そんなことは……」
「前に聞いた時、そういうことゆってた
 でもでも、ボクだって一応まだまだ成長期だもん、これから大きくなるんだもん
 むしろ男くんが大きくしてくれたっていいんだよ……?」そっ
「ちょっ、待てっ(うああ、小さいくせにやわらかい……)」
「心臓ドキドキしちゃってるの……わかる?」
「(やらかい……おっぱいてこんなにやわらかかったのか……)」ふに
「んぅッ!」
「あああああ、わ、悪いっ!」
「ううん、嬉しい
 ボクのこんな胸でも男くんに喜んで貰えるんなら……もっと、して?」
「う、うわあああっ」ふにふにっむにむにっくにくにくにっ

「勝負あり! にょたっこの勝ちー!!」
「にょたっこ乙!焼肉おめー!」
「こうもあっさりとは……いくらなんでも男は情けなさすぎー」

「え?え?」
「ふっふっふー、約束通りみんなに焼肉おごって貰うんだからね?」
「やく、そく……?」
「今更シラを切っても駄目だよー?
 お休み前に『連休明けに俺を誘惑してお前に手を出させたら、この場の全員に焼肉おごっちゃる!』って……
 みんな友達とか呼んで凄い事になってるよ?」
「……」
「正直な話、際どいところまで服はだけて誘わなきゃダメかなって思ってたけど
 男くんてば、素のフリしちゃうんだもん、かえってドキドキしちゃったよ」
「……」
「宝くじ当たったからって調子乗りすぎだったねー、って……男くん、どしたの?」

「……連休マジ怖い」
914 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/18(木) 19:35:55.96 ID:ClQ6TZ5E0
本当はもっとながーくイチャイチャラブラブしてからオチに持っていく予定ですた
実際、たまには際どいトコまでーとも思ってました…おかしいなぁ
ただいま猛烈反省中――あれ、オイラってばエロエロ書けない人ってコト?
915 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/08/18(木) 22:27:43.41 ID:ERFgperH0
GJ!
だがエロも見たかった
916 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/08/19(金) 09:42:01.53 ID:I1oWt1fAO
>>914
乙GJ!
新潟さんはやれば出来る変態と確信
だからその欲望を解放しろ(メダルチャリーン
917 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/19(金) 16:45:41.32 ID:Vk6hrWTI0
>>915,916
えっちぃ欲望は解放済みだよ!エロ妄想が脳内で渦巻きまくってるよ!

『おっぱいがちっちゃいコとか萌えるよなぁ』
「!? コレって……」
「男だった時のお前と話してた猥談を録音しておいたヤツ」
『きっと、ちっちゃいくせに敏感で、そーっと撫でるだけで感じちゃったりしてさぁ』サスサス
「やっ!……んッ……」
『桜色に色付いて震えてる先端部とか、ふ〜って息を吹きかけるだけで仰け反っちゃって……』フゥー
「ッッッ!!」
『唾いっぱい乗せて、ねぶる様にしゃぶったりしたら、ソレだけでイッちゃったりするんだぜ?可愛いよなぁ』
「自分に責められるってどうよ? イけそう?」レロォ
「だ……めっ! ダメっ!絶対ダメだからっ!!」
「イけそうじゃん」ベチャヂュルルゥ

みたいなシチュエーションとか…いつも途中で破綻しちゃうから困るorz
918 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/23(火) 03:51:15.71 ID:xhUHtxsh0
最終的に本番を目標にすれば破綻せず頑張れるよきっと!!
919 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/08/23(火) 04:12:10.15 ID:lSbfpjbAO
……そうだったのか(何
920 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/08/23(火) 08:53:42.76 ID:CSIquu870
>>918
むむぅ、「いくよ」「……うん」ウニョウニョで終ってるからダメだったのか
勉強になりますっ!

>>919
ちょww
921 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/25(木) 20:32:10.96 ID:QF1EygFJo
中学時代に○○中に2人の巨神あり・・・とか言われるぐらい背でかくて喧嘩強くて
有名だった片方が女体化してハイパーロリっ子になったりとか

あ、ごめんなさいただ単に身長差カップルが好きなだけです
922 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/26(金) 21:19:51.30 ID:DqB4HmiB0
身長差カップルってアレだろ?
女のか弱さが強調されるからツボにハマるんだろうなたぶん
SとMどっちにも受けるシチュエーションだと思うの
923 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) :2011/08/27(土) 02:52:20.12 ID:anAbGsqAO
元はデカブツDQNのクセに今はマイクロロリにょたとかマジ胸熱
924 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/28(日) 02:20:41.83 ID:wP3tf6J2o
昔ボコった不良たちにさらわれてさわられるとか胸熱
925 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) :2011/08/28(日) 02:51:20.66 ID:VGgDejwAO
>>924 チベット自治区に漏れのドッペルが居たとは…
926 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/28(日) 06:54:30.17 ID:F+JDFt8b0
このマゾどもめ
927 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/08/28(日) 20:47:33.26 ID:GMin55lIo
>>849のお題「向日葵と芙蓉」

暑苦しい真夏のど真ん中、オレは何故か学校に居る。
いや、生徒全員が来ているわけだからオレだけが補習を受ける羽目になったとかではない。
単に夏期講習という名目で夏休みの半分をこの学校に奪われてしまっただけだ。
この様な、ある種のスパルタを施してもこの高校は県下で2番目の進学校だと言う評価が付いて回る。
教育方針が悪いのか、それともオレたち生徒の出来が悪いのか、果てはその両方か。

「やあ、珍しいね」
「うっす」
「ひょっとして何か部活動でも始めたのかい」
「ねーな」

今日の講習も終わり、待ち人を待つ間(保険の先生が居ないので無断で)1階にある保健室のベッドで休んでいると、開けっ放しだった窓の外にいた園芸部員に話しかけられた。
勿論、そいつの目の前には花壇が広がる。見るのがうんざりするほど数が多く、見事に咲いた向日葵だ。
園芸部員の方も顔見知りだ。同じ中学だった奴で、中学でも園芸部員だった。ゲームで遊ぶわけでもなく、スポーツに興じるわけでもなく、何故か草花を愛し、土弄りが好きだと公言する変わった男だ。
この高校に入学しても、当然のごとく園芸部に入部して花を愛でている。何がそんなに面白いのかオレには理解が出来なかった。
だが理解は出来ずとも、別段不快だとか、嫌いだとかの感情が湧くわけでもなく、かといって親しい間柄でもない只の同級生というポジションをお互い保っている。
そんな奴が何故オレに話しかけて来たのか疑問が湧いた。

「あのな、ベッドでごろ寝してるオレが部活動なんか始めるわけないだろう」
「それもそうだね。でも学校に残っているって事は何か用事でもあるのかい」
「人を待ってるだけだな」

何故かオレの動向を訊ねられたので簡素に答える。隠さなければいけないモノでもないからだ。
オレの返答を聞いたそいつは何故か必要以上に納得しているようで、うんうんと頷いている。

「彼女を待っているんだね。羨ましいよ」
「……いや、あのな?」
「違ったのかい」
「ちがわねーけど……こう、な?解るだろ」
「なんとなくね。それ以上は聞かないから、安心して欲しい」
「ならいいが」
「時間がかかりそうなのかい?」
「聞かねーって言ったばっかりだろう……」
「違うんだ。もし暇ならちょっと相談したい事があってね」

どうにも要領を得ない会話が続く。相談、と言われても思い当たる事柄が無い。
と、すればオレの彼女に相談したい事があるのだろうか?いや、「暇なら」と訊ねて来ているのだからオレに対するもので間違ってはいなさそうなんだが

「あいつに相談か?それなら明日に―――」
「君に相談したいんだ。君以外に適当な人が思い当たらなくて」

一応の確認を取ってみると、やはりオレに相談があるようだった。花言葉はおろか花の名前すら解らないようなオレに園芸部員が何の相談なのだろうか。

「まぁ、長くかかりそうだっつー話だから時間だけならたっぷりあるだろうが、植物の知識は皆無だぞ」
「植物の話ではないんだ。……君と彼女の馴れ初めを聞きたくてね」
「待て、それ相談じゃねーだろ」
「参考にしたいんだ」
「参考、か……」

鸚鵡返ししつつ、意味を深く考えてみる―――までもなく、オレたちの話が参考になる相談ごとなんて種類が決まりきっている。

「不毛だぞ、オレたちのなんか参考にもなんねーって」
「どうして?」
「イヤ待て……あー…一応そういう場合もあるのか。で、槌田が惚れた相手は誰なんだ?」
「………ッ?! や、そ……それはその……」

オレの問いに急に口篭る園芸部員もとい槌田。
要するにこいつは恋愛相談をオレに持ちかけたわけだな。相手について訊ねる意味は無いのかもしれないが、オレ達の馴れ初めを話すかもしれないんだ、相手の事を聞くくらい良いだろう。
928 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/08/28(日) 20:50:08.13 ID:GMin55lIo
「2年生の先輩で君の彼女と同じように……先月"変わってしまった"人なんだ」

相手の名前は言いたくないらしいが、おおよそのイメージが湧くような文言だけは得られた。
つまるところ、にょたカノ持ちのオレににょた相手の恋愛相談っつーわけだ。
ここだけ聞けば、オレに持ちかけて然るべき話なのかもしれないのだが、現実はそうはならない。

「……だからオレに相談したいって事か?」
「そうなんだ。……その、恥ずかしながらそう言った事に縁が無くてね。おまけに女性化してしまった人相手だと、物凄く難しいらしいんだ」
「まぁ……普通の恋愛じゃなくなるしな」
「やっぱりそうなのかい?」
「だな……しっかし、先輩相手ってなるとだ」
「問題でも?」
「アリアリだ。オレ達の馴れ初めなんて参考のさの字にすらならないぞ」
「………どうして?」
「疑問が多いなオイ。……はぁ、オレらは所謂幼馴染だったんだよ。そこらの女体化恋愛小説だのドラマだの映画だのでお馴染みすぎる境遇の」
「だから?」
「お前そこまで聞いてまだ解らないのか?だから槌田の場合とまるっきり相手の立場が違うだろ」
「え?あ、うん。そうだね」
「"そうだね"……じゃねーよ、馬鹿。お前の相手はこの高校入って初めて会ったんだろ?」
「そうなるね」
「だったら………何処をどう捻じ曲げればオレ達の幼馴染話が参考になるっつーのかご説明願おうか」
「………あ」
「あ、じゃねーよ……」

誘導尋問ならぬ誘導理解をさせてようやく合点がいったのか、途方に暮れたような顔をする槌田。
この一連の流れ自体が夏の日差しと合わさってお互いの体力を削っていた。

「どうしよう……他に相談する相手なんて思いつかないし……」
「まぁ、馴れ初めを話す意味はねーけど、相談には乗ってやれない事もねーよ」
「ほんとに?!」
「ああ。期待はすんなよ。……つーか、オレ以外にもにょたカノ持ちなんて結構いるだろ」
「え?」
「うちの委員長の話じゃE組女子全体の6割近くが彼氏持ちだそーだぞ」
「……知らなかったよ。君だけかと思ってたよ。学校中噂になってたから」
「そんなにオレって有名なのかよ」
「うん。何せこの学校で20年ぶりに女性化してしまった生徒の彼氏なんだから」
「いや、それもうちのE組のほとんどがそうじゃねーか」
「最初の、って意味だね。良くも悪くも有名なんだよ」
「まぁ…あいつにはファンクラブもあるらしいから、当然っちゃ当然か」

槌田の話に肩を落としつつ、オレは保健室の窓から花壇のある外へ出た。槌田のやつは驚くわけでもなく、向日葵の花壇の方に向き直ってから地べたに座り込んだ。
オレも胡坐をかいて向日葵を眺める。この暑い日差しをものともせず、むしろ太陽に向かって顔を突き出しているかのように咲いていた。
ほんの一割程度で構わないから、向日葵の体力を今のオレにも分けて欲しい。

「んで、そろそろ具体的な相談内容について聞かせてくれねーかね」
「あ、ああ……うん。その……君はどうやって告白したのか教えてくれないか?」
「………は?」
「いや……その、悶々と気持ちを抱えているのは苦手でね。明日にでも告白しようかと思っているんだ」
「で、オレのソレを参考にしたいのか」
「そうだね」
「……告白してねーしなぁ」
「え?」

オレの返答を聞いた槌田は殊勝を越えた間抜け面を引っ提げてオレの顔をまじまじと見つめている。

「何となく、気が付いたら付き合ってたみてーな感じなんだよ」

実の所、これは半分嘘だ。だがしかし、何の見返りもなしに言える事柄でもないので黙っておく。
………仮に見返りがあっても言う話でもねーし、恥ずかしいからじゃないぞ。絶対に、断じて。
大体だな、告白なんてもんは本人の言葉で伝えるべきで、誰かしらの前例を参照するようなもんじゃねーのよ。
などと、誰に言い訳してんだか解らない事を考えながら、槌田の質問に答えている。
929 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/08/28(日) 20:52:19.15 ID:GMin55lIo
「まー、オレの話なんざ参考にせずにだな。園芸部らしく花束でも渡しながら告白すりゃいいんじゃねーの。目の前の向日葵とか」
「それは冗談で言っているのかい。向日葵は贈り物には向かないよ」
「そうなのか?」
「花言葉が複数あってね。意図が伝わり難いんだ。おまけに花束にするなんて聞いた事ないよ」
「流石に詳しいな。例えばどんなのがあるんだ?」
「有名なのは『あこがれ』や『私の目はあなただけを見つめる』位かな。天邪鬼なものは『いつわりの富』や『にせ金貨』などがあるね」
「色々あるんだな。つーか、別に最初の2つって意味なら贈り物にもぴったりじゃねーの?」
「それはそうなんだけど……後者の意味も知っているひとだから、万が一勘違いされようものなら僕は……」
「心配性なんだな。しっかし、なんで『いつわりの富』なんっつー花言葉ついてんだ、コレ」

何気ない疑問を投げかけると、槌田は目を輝かせ始めた。
ああ、この目はアレだ。あいつもたまになるんだが、何かしらの知識を語る時はいつも今のこいつと似たような目をしていたな。
種類は違えどヲタという者は知識自慢という自己顕示欲があるらしい。
今回の場合はオレから疑問を投げかけたわけだから、疎ましいわけではないのだが、そう嬉々とされても反応に困るものだ。

「向日葵はさ、ペルーだと太陽信仰と結びついていて、神聖不可侵な花として崇拝されていたんだ」
「信仰か、今んとこ富と全然関係がないな」
「話はこれからだよ。それで、太陽の神殿の巫女たちは純金で作られた向日葵をかたどった冠を被っていたんだ」
「高そうだな。どっかの博物館で見られんじゃねーの」
「はは、かもしれないね。そして、その冠を誰かに奪われた事から『いつわりの富』や『ニセ金貨』っていう花言葉が付いてしまったんだよ」
「意外と短い話だな」
「花言葉だからね。早々小難しい話が付いて来ても困りものだよ」

身構えた割にはさっくりとした説明を聞き終わり、向日葵の隣にある花壇を眺めた。

「じゃああっちの花でいいんじゃねーの」
「木芙蓉だね。……うーん。アリかもしれないな」
「もく?ってなんだ」
「ああ、芙蓉って名前はハスの別名でもあるんだ。そこにある花はそれとは違うから、区別する為に木芙蓉というんだよ」
「花言葉はなんだ?」
「繊細な美」
「いいんじゃねーの。ある意味繊細だしな……変わったやつって」
「経験談っぽいね。君の恋人の事かい?」
「それも含む、だな。クラスメイトがソレだらけだ」
「そうだったね。……曲解されないかな?」
「されねーだろ。槌田の相手ってそんなに卑屈なやつなのか?」
「どうだろう……ここ最近は複雑そうな顔ばかりしてるよ。心当たりはないかい?」
「オレに聞くなよ。会ってもない人間の心情なんてエスパーでもなけりゃよめねーよ」
「はは……それもそうだ」

こう答えはしたが、思い当たる節は無きにしも有らずで、言うか言うまいか一、二分迷った挙句

「あくまでも聞いた話だから、鵜呑みにすんじゃねーぞ」

と、付け加えてから話す。

「変わっちまうと体は勿論、自分の立場や価値観が180度ひっくり返るからな。否が応でも周囲を巻き込んで迷惑かけちまう上に、自分自身の立ち位置が定まらず宙に浮いたようになるんだとさ」
「彼女からの受け売り?」
「まーな。大方その先輩も、似たような感じなんだろ。支えてやれりゃー、モノに出来るんじゃねーの」
「な、なな、何を……」
「いや、最初からそういう話だっただろ」
「……じゃあ君はそういう手で彼女と付き合うようになったのかい?」
「それは秘密だ」
「意外とケチだね」
「ケチじゃねーよ」

「ねね、誰がケチなの?」

不意にオレの待ち人がオレの肩から顔を覗かせた。驚いたオレは一瞬仰け反る。
930 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/08/28(日) 20:55:02.82 ID:GMin55lIo
「ぷっ…驚いたの?すっごい間抜け面なんだけど」
「急に出てくんな!用事は終わったのか。……終わったらメールで連絡するっつー話は何処にいった」
「や……えーと。ごめん、すっかり忘れてた」
「忘れるなよ」

「悪いね、彼氏をお借りしてたよ」
「ん。お借り、って何の話をしてたの?」

一瞬、槌田と目を合わせると、首を小さく横に振っていたのでこう答えた。

「秘密だ」
「えー……私との間には隠し事なんてしないって言わなかったっけ?」
「オレに関するものならな。槌田の話だ。聞くなら槌田から聞いてくれ」

彼女は槌田に向き直ると、じろじろと舐めるように睨んでいた。お前はコイツに怨みでもあるのか。

「どんな話してたの?」
「え、いや……あはは……嫉妬されるような話ではないから、秘密にさせてもらえないかな」
「し、嫉妬なんかしてないっ!」
「……顔真っ赤にして否定されても説得力ねーぞ。つーかお前……男相手に嫉妬してどうすんだ?」
「あはは…マリーゴールドみたいな人だったんだね。知らなかったよ」
「マリー…?何ソレ」
「ああ、こっちの話だから」
「花の名前なんだろうけどな。花言葉はなんだ?」
「嫉妬と可憐な愛情」
「……ああ、ぴったりだな」
「〜〜〜〜っ?!」

何故かポカポカとオレの背中を叩き始めた。いてーよ馬鹿、と抗議するも彼女の手は止まらない。
槌田はオレ達のその様子を笑顔で眺めていると思っていたら、不意にオレの彼女の更に奥に視線を移していた。

「えっと……本人が来ちゃったから、さっきの話は終わりでいいかな」
「ん?ああ、っつーか、コイツが来たせいで元々話せなくなったしな」
「何よ、私が邪魔者みたいじゃない?!」
「……みたいもなにも、そのものだ」
「むぅ……」
「むくれるなよ。帰りにつじりこおり抹茶おごってやっから機嫌直せって」
「……ならいーけど」

ようやくなだめた彼女の頭をそっと撫でていると、その後ろから女子生徒が一人ここに来ていた事に気付いた。

「あら、入部希望の方?」
「せ、先輩。いえ、違うんです。ただの友達でして」
「あー。うん、なるほどね。噂通りのカップルなのね」
「失礼しました。すぐ帰るんで勘弁して下さい」
「失礼ついでに園芸部見学していかない?二人一緒に入部してくれるともっと助かるけど!」
931 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/08/28(日) 20:56:10.62 ID:GMin55lIo
やや強引なお誘いを受けるが、オレは元より彼女も乗り気ではなく、断ろうかと思っていると

「これからカレと用事がありますのでお暇させて頂きます」

隣にいた彼女がぺこりと頭を下げ、強引にオレの腕を引いてその場を立ち去ろうとしていた。

「あははっ、彼の事取ったりしないってば!ほんっと、可愛い子ね〜。うん、男子連中が放っておかないのも解るわかる」

オレの彼女はその言葉で更に不機嫌オーラを強め、表情のみならず全身から『邪魔するな』と言っているようだ。

「見ただけじゃまるっきり女の子よねぇ……私も貴女みたいになれたらいいんだけど。何か秘訣とかない?」

何故か羨望の眼差しを向けていた女子生徒がそう言葉を発した。それだけで槌田以外は事情を察するには十分で、二人して不意に気の毒そうな顔をしてしまう。

「えっと……そういう相談なら、後日きちんとお聞きしますので、今日はその、約束を優先させて下さい」
「いいのいいの。大した事じゃないからさ。引き止めてごめんね」
「いえ、こちらこそすみませんでした」

そう言い残して、オレ達はそそくさとその場を後にした。
その後、駅前に移動中のバス内で再度彼女に訊ねられる。

「で、何の話だったの?」
「お前しつこいのな。マジで男に嫉妬してどうすんだよ」
「だって気になるもん」
「……仕方ねーなぁ。絶対に他で喋るなよ。オレじゃなくて槌田に悪いから」
「うん。あんな綺麗な人もいたし、もしかしたら、って思うじゃない?」
「あー、あれは多分槌田の片想い相手じゃねーか。先月なっちまったって話だったし」
「そうだったの?」
「そうだったんだよ。だから、オレにどう告白すりゃいいか、とかな」
「ふーん。んで、あの二人は上手くいきそうなの?」
「本人次第だろ、そこまで深く関わってねーし。っていうか今日話して上手くも糞もわからねーよ」
「それもそっか。……でも上手くいくと良いよね」
「だな。しっかし……おまえ案外独占欲強いのな。すげー剣幕だった」
「……べ、別に……あー、もう……そうよ!アンタだって独占欲強いくせに、私が強くて何が悪いのよ!」
「悪くねーって。意外と可愛かった」
「………もう」

後日、槌田とその先輩がどうなったかは聞いていない。
だがたまに廊下ですれ違うと幸せそうな顔をしていたので、概ね上手くいったのではないだろうか。
932 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/08/28(日) 20:58:08.64 ID:GMin55lIo
あとがき

残暑お見舞い申し上げます。

Q1.おせーよ馬鹿
A1.ごめんなさい。どうにも筆が進まなくて伸ばし伸ばししてるとこんな時期に…

Q2.他の続きはどうした?
A2.マジで止まってます。期待しないほうがいいかも……こちらも本当にすみません。
933 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/08/28(日) 22:43:46.69 ID:yG8z6s4M0
GJ!
934 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/08/29(月) 00:41:32.31 ID:CH0fc0BAO
仕事が手につかなくなった…… ど う し て く れ る ww

おかえりなさいませ西日本様!乙GJ!!
よしッ!これで再びスレに活気が戻る…よね?

お前もガンガレ←ですよねー…orz
935 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/08/30(火) 03:43:37.09 ID:ojMBbrEAO
弱小芸プロが社運を賭けてプロデュースした、少年ダンス&ボーカルユニット
インディーズで好調なセールスを上げ、いよいよメジャーデビュー
その矢先、メンバー全員が女体化!
だが、彼女達の本当の伝説はここからだった…

とかいう話マダですか?
936 :でぃゆ(ry [sage]:2011/08/31(水) 19:59:11.15 ID:c84mLdrAO
先ずはスンマセンしたー!

今日、絵っつーかチラ裏を投下予定でしたが既に職場なうですorz
出先で呼び出しとかマジ怖い…職場直行とかマジ怖い…
…明日にはなんとかなんとか(;´ω`)



久しくパソから書き込んでないなぁ(白目
937 : ◆Zsc8I5zA3U [sage]:2011/08/31(水) 23:07:49.78 ID:EZHO46l4o
ノ・ω・ノ
938 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/01(木) 00:39:07.00 ID:9JKLEP0Ko
9月だー!夏休みデビューでにょたっ子でぇーい!
939 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/09/01(木) 01:29:35.82 ID:yW/GFIDAO
【花火と浴衣・裏側2】





北山にバレた。
この後の展開はもう決まったようなものだ。
北山がみんなに僕の正体をバラして、僕は長時間拘束されてしまうんだ。
ただでさえ罪悪感でみんなの顔をまともに見れないのに、長い時間一緒にいるとなると罪悪感で押し潰されそうになる事が容易に想像できてしまう。

「なんて顔してんのよ」

北山が苦笑いになりながら、呆れたかのような口調で言った。
多分、この時の僕は血の気が引いたような情けない顔をしていたのだろう。

「そんなに心配しなくても、皆には言わないであげるから」
「えっ?」

思わず聞き返してしまった。
だって、今の状況で僕が一番してほしい事を的確に言い当てたのだから。

「だから、今のアンタの正体を黙ってあげようと思ったんだけど……違うの? てっきり、そうだと思ったんだけど」
「い、いや、違わないんだけどさ……なんでわかったの?」
「アンタさ、私達に花火大会について連絡入れなかった事を忘れてたでしょ」
「ご、ごめん、わざとじゃないんだよ」
「わかってるわよ。今日、女の子に変わったんだから、色々あったんでしょ」

こういう時、頭の回転が早い人が相手だと理由を話さずとも、真実かそれに近い推測してくれる事が多いので助かる。

「うん、まあね」
「んで、アンタは細かい事を気にするタイプだから、私達に対してなんらかの負い目みたいなものを感じてるんじゃない?」
「う……」

しかし、こうもズバズバ言い当ててくるとは。
北山が探偵に見えてくる。

「まったく、アンタは変な所で真面目というか……しなくていい心配までするんだから」

返す言葉もございません。

「ま、とりあえずそういう事だから、あんまりシケたツラすんなって言いたい訳よ!」

北山はそう言うと、僕の額に強烈なデコピンを放った。

「いたた……」
「軽くやったんだから、痛い訳ないでしょ」

か、軽く……?

「……絶対嘘だ」
「なんか言った?」
「なんでもない」

僕はジンジンと痛む額をさすりながら、他の皆と一緒に自分の家に向かって歩きだした。
940 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/09/01(木) 01:30:28.32 ID:yW/GFIDAO
「ところでさ」
「なに?」
「私、アンタを見て気になってる事があるんだけど」
「なにかな」
「あのさ、アンタ浴衣の……」

北山はそこまで口にしてから、一度言葉を切って声の音量をヒソヒソ声の領域まで落とし、話を続けた。

「浴衣の下、何着てる?」
「下? サンダル履いてるけど」
「そういう意味じゃねーわよ。私が言ってるのは浴衣の下……直接的に言うと下着を着けてるか、聞いてるのよ」
「え……し、した……?」

僕はしばらく北山の質問の意図を理解できず、うろたえているばかりだった。

「言っとくけど変な意味はないわよ。ただ、普通浴衣って下着のラインとか浮き出やすいんだけど、アンタのには出てないからどうなのかなって。ただの好奇心よ」

北山はあらぬ誤解を受けていると思ったのか、少し慌てた様子で説明した。
なるほど。浴衣は下着のラインが出やすいのか。
でも、今の僕はノーブラ&ノーパンだから出るはずないね。
……今さらだけど、恥ずかしくなってきた。

「さ、どうなのよ?」

北山は僕に答えを促す。

「つ、着けてない……けど」

答えなければ、北山が不機嫌になるだけなので仕方なく答える。だけど、さすがにハッキリと告げるのは恥ずかしいので小声で言う。

「え、なに? もう一回言って」

どうやら、僕の聞こえなかったらしく、北山は顔を小さく歪め、もう一度言うように促してくる。
正直、一回言うだけでもかなり恥ずかしく、もう一度言うには結構な勇気がいる。
なにせ、友達に今自分はノーブラノーパンって宣言するんだから、ごっそりと精神力を持っていかれる。
もういっそブラもパンツも着けている、と嘘をつこうかと思っていたら、北山に後ろから覆い被さるように抱き着いてきた女子により言い出すタイミングを失った。

「二人とも離れた所でなーにをこそこそしてんのさ?」

北山に抱き着いている女子……東が僕に視線を向けながら質問してきた。
941 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/09/01(木) 01:31:12.00 ID:yW/GFIDAO
「こ、こそこそなんて、そんな……」
「ん? この人かノーパンかどうか確認してただけよ」

北山よ、なんて事を言ってくれたんだ。
せっかく当たり障りのない回答をして、この場をやり過ごそうとしたのに。

「ノ、ノーパン?」

ほら見ろ、僕を見る東の目に疑惑の色が浮かんでいる。

「んで、わかったの? ノーパンかどうか」
「まだよ。答え聞く前にアンタが乱入してきたからね」
「ふーん……ねえ、キミってノーパンなの?」

東が僕にストレートな質問をしてきた。実に東らしい豪快な聞き方だ。

「そ、それは……秘密」

さすがにここで「ノーパンだ!」と言えるほど度胸がある訳でもないので、黙秘する。

「ほう……」
「秘密ねえ……」

僕の言葉を聞き、二人はニヤアと可愛げのカケラもない笑顔になった。
なんか嫌な予感がする。

「秘密と言われると、ねえ……」
「知りたくなるのが人の性、だよねえ……」

手をワキワキさせながらにじり寄る二人を見て、僕は自らの失敗を悟った。
嘘をついてでも、二人の興味を無くすべきだった。
祭の夜という事でテンションが上がり、今現在のような羽目を外しすぎな行動に出る可能性はあったというのに。

「さあ、おとなしくしなさい」
「痛くないよ〜……痛くないから〜」

僕が後ろに一歩下がると二歩、二歩下がると三歩と、一歩ずつ距離を詰めてくる。
このままじゃノーパンかどうか直接的に確かめられてしまう。
確かめられてしまう部分が部分だけに、そのような事態は避けたい。
しかし、現実とは無情なもので僕はあっと言う間に壁際へと追い込まれた。
二人は依然としてにじり寄り、ついに僕の浴衣に手がかかった。
だ、誰か助けてくれ!

「いたっ!」
「いてて……」

僕の祈りが通じたのか、暴走しかけていた二人の頭に一発ずつチョップが入った。

「はぐれたと思ったらこんな所で何しようとしてたんだ?」

チョップを放った人物……長井が、痛みに頭を押さえている二人を呆れた視線を向け、それから僕の方に顔を向けた。
942 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/09/01(木) 01:32:00.51 ID:yW/GFIDAO
「その……大丈夫でしたか? そこの二人に何か変な事されませんでしたか?」
「あ、うん、大丈夫……」
「よかった」

つい、いつもの感じで答えてしまったが、特に怪訝に思われる事もなかった。

「ほら、二人ともちゃんと謝れよ」
「わ、悪かったわ、ごめん」
「あはは。ちょっと調子に乗っちゃったよ、ごめんね〜」

長井に促され、北山はやや罪悪感を感じているように、東は済まなそうにしながらも明るい口調で謝った。

「い、いいんだよ、結果的に僕は何にもされなかったんだし」

それに、謝らなきゃいけないのは僕の方だよ。連絡忘れちゃったんだし……さ。
それにしても、これだけの騒ぎの中だというのに、背中の妹は一向に起きる気配がない。
将来は大物になりそうだ。



それから十五分ほど歩き、僕と長井は家の方向の関係でみんなと別れて別方向の道を進む。

「……………………」
「……………………」

お互い無言で、気まずい事この上ない。
しかも、さっきから長井がそわそわと落ち着きがなくて、とても気になる。
それに、僕の方にチラチラと視線をよこしているのも気になる。
よし、聞いてみるか。
黙ったままのこの状況を打破できそうだし。

「あの、長井……くん?」

名前を呼んでから、まだ名前を教えてもらってないと気付いた。
まあ、北山に教えてもらったってことにでもしておこう。

「な、なにか?」

長井は誰が見てもわかる程に落ち着きを無くしていた。

「さっきから落ち着かないけど、なんか気になることでもあるの?」
「い、いえ、特には……」

いや、さんざん挙動不審な様子を見せておいてそれはないだろう。

「嘘だ。絶対なんか隠してるよ」
「うえっ!?」

長井は核心を突かれた動揺からか、今まで一度もあげた事のないような奇妙な声を出した。

「な、なんでわかったんです……」

いや、あの状態を見て正常だと思う人はいないだろう。
と馬鹿正直に言うのも躊躇われたので、適当な事を言っておこう。

「勘……かな。あ、でも隠し事の内容まではわかんないな」
「勘かあ。女の勘ってやっぱ凄いんですね」
943 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/09/01(木) 01:32:55.81 ID:yW/GFIDAO
あっさりと騙された長井は、僕に好意的な視線を送る。

「あはは、ま、まあね」

そんな長井に、僕は渇いた笑いを返す事しかできなかった。
だがとりあえず、その話のおかげで長井との間にあった沈黙は無くなり、とある交差点に付くまで会話が途切れる事は無かった。

「じゃ、僕の家こっちの方だから……」

長井の家とは反対の方向を指す。
本当は、長井の家と同じ方向にあるのだが、何度も僕の家に遊びに来ていて僕の家の場所を記憶している長井と一緒に帰るのはよろしくない。

「あ、はい……」
「またね」

どこか名残惜しそうに返事する長井に軽く手を振り、背を向け歩きだす。

「……ま、待ってください!」

数歩ほど歩いた時点で、長井に呼び止められた。

「ん、なに?」
「あ、あの……」

長井は何か言いたそうで、でもなかなか口に出来ずにいる、そんな雰囲気を醸し出していた。

「…………」

話そうとしている内容こそわからないが、それが長井にとって大切な話だと直感で理解した。だから、僕は長井が決心して話すまで無言で待つ。

「…………あの……あなたに」
待つこと数分、決心がついたのかようやく長井が口を開いた。

「恋人っていますか?」

その質問は僕にとって完璧に予想外だった。

「こ、恋人?」
「はい、恋人です。もしくは好きな人でも構いません」

な、長井はいったい僕に何を聞いてるんだ!?
いや、こんな事を質問して何をする気になんだ!?
い、いかんいかん、慌てるな、落ち着くんだ。
慌てるのは後回しにして、とりあえずは質問に答えよう。

「こ、恋人も好きな人も今のところはいないけど」
「ほ、本当ですか!」

長井の顔には、明らかな安堵の表情が浮かんでいた。
なんで僕に恋人がいないと、コイツが喜ぶんだ。
わからない。

「そ、それじゃあ……」

長井はさっきより落ち着きなく体をそわそわさせながら言葉を紡ぐ。

「お、お、俺と付き合ってください!」

…………え?
い、今なんてった?
ぼ、僕と付き合ってくれって、長井が、告白、僕に?
い、いや、これはよくある勘違いだ。付き合うってのは恋人関係という意味ではなく、特定の場所に付き合ってくれって意味だ。
944 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/09/01(木) 01:33:39.88 ID:yW/GFIDAO
うん、そうだ。そうに決まってる。
いや、でもそれだとわざわざ僕に好きな人いるのか聞いた意味がないし、それにそういう質問するって事は…………やっぱりそういう意味、なのかな。

「あ……う……えと」

何か言おうと口を動かすが、告白の衝撃と頭の中に台詞が用意させてない事で、まともに喋れない。

「へ、返事は今じゃなくても……あ、あのここの近所に公園あるんで、明日の夕方六時に来てください。返事はそこで…………それじゃっ!」

僕はしばらく、走り去っていく長井の背中を呆然と見ている事しかできなかった。

「お姉ちゃん、告白された。モテモテ?」

呆然としていた僕の耳に妹の声が響く。

「お、起きてたの?」
「うん」
「い、いつ頃から起きてた?」「えっとね『僕の家こっちの方だから』くらいから」

って事は告白部分は丸聞こえですか……。

「空気読んで黙ってたよ」

どこか自慢げな口調で妹は語る。
空気読んだのは偉いけど、どうせなら寝ていてほしかった!
妹に告白丸々聞かれるとか何の罰ゲームだよ!

「お姉ちゃん、モテモテ?」
「……ノーコメントで」



この後、どうやって家まで帰って来たか覚えていない。
家に帰ってきた後も、何もやる気が起きず、自分の部屋に直行し浴衣のままベッドに寝転び、そのまま寝てしまい……現在に至る。
ドアのノックが止み、サチと母さんの話す声が聞こえる。
でも、今は何も考えたくない。
ゆっくり、ゆっくり休もう。
僕は再び目を閉じ、眠気に身を委ねた。
945 :ファンタ ◆jz1amSfyfg [sage]:2011/09/01(木) 01:34:16.75 ID:yW/GFIDAO
とりあえずここまで
>>887の続きで告白パートです
一応、次回でラストの予定です
次回は今月中には投下できるかと
946 :でぃゆ(ry [sage saga ただいま帰宅]:2011/09/01(木) 13:15:10.06 ID:EjG91p3Q0
眠い…そして挫けそう…>>833の書き込みで予告した絵うpりましたが
またも謝らなければならない事態が…

◆440BCpUd8Bibさん、スイマセン…イラストうpしようとしたらファイルが破損してましたorz
つまり描き直しです…死ねる…
近日中に描き直してうpりますのでお許し下さい…

あと、表紙風に加工したかったのですが現在メインPCがイってしまっていて
標準のフォントしか積んでいないノートで作業しているので無理でした…色が塗れてるだけでも奇跡ですw
ホント、重いうえに色が解らない…早くどうにかしたい。

http://dl7.getuploader.com/g/6%7C1516vip/68/akabane001.jpg
http://dl7.getuploader.com/g/6%7C1516vip/69/du001.jpg
http://dl7.getuploader.com/g/6%7C1516vip/70/du002.jpg
http://dl7.getuploader.com/g/6%7C1516vip/71/du003.jpg
http://dl7.getuploader.com/g/6%7C1516vip/72/du004.jpg

えーと、赤羽根さんが貞本風になってしまいました…鰤っぽい絵を目指した筈なんですが…どうしてこうなった
あとは、まぁ…誰を描いてるかわかりますか?
947 :でぃゆ(ry [sage saga]:2011/09/01(木) 13:26:27.24 ID:EjG91p3Q0
1個ミスってた><スイマセン!

http://dl8.getuploader.com/g/6%7C1516vip/73/du004.jpg
948 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/09/01(木) 13:29:50.52 ID:N9k3q4oOo
  _  ∩
( ゚∀゚)彡
 ⊂彡
949 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/09/01(木) 16:53:37.63 ID:v+NPDxe80
まさか兵庫県に同志がいるとはな!

>>944
GJ! ファンタさんの長編も次で終わりかぁ。。
初々しくて萌えた。続き待ってるお
950 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(広島県) [sage]:2011/09/01(木) 19:12:44.54 ID:GDNGFnwpo
誰の作品の絵かご解説を願います、教授!!
951 :でぃゆ(ry [sage saga 職場です]:2011/09/01(木) 20:17:54.32 ID:cLVfJheAO
>>950
上から青色1号 ◆YVw4z7Sf2Yさんトコの赤羽根探偵さん。
意識せず描くと絵柄が貞本風になる癖が遺憾なく発揮されたw

◆Zsc8I5zA3Uさんトコの狂犬・相良さん。
それだけでは何となく寂しかったので団長さんも追加。
アレ?コレだと(うДT)さんの作品の絵にならね?

◆3gJlaqFfe2さんトコの風見さん。
持ってるのはローション風呂の素です。
おっぱいおっぱい。

(うДT) ◆nMPO.NEQr6さんトコの『狼さん〜』描き直し版。

◆3gJlaqFfe2さんトコの『ボクの初体験〜』描き直し版。

以上です。
952 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/09/01(木) 20:41:05.41 ID:dFqS9uCKo
>>946-947

手に”トロケアウ”をさりげに持たせてる上にその格好はなんですかwwww誘ってるのかwwwwちくしょうwwwwwww
でもイメージどおりでにやにやするうぅぅううう


「………で、差分はねーのかよ」
「さ、差分……って何の話?」
「いや、ほら、言ってたじゃねーか。>>817辺りで」
「……ぃ"…い、嫌よ!絶対嫌ッ!」
「減るもんじゃねーし、良いじゃねーか」
「……とーや以外に見られるのはヤなんだけど」
「……ッ!?あー…うん。そうだな」
「そ、そういう話は置いといてさ、あれだね」
「なんだよ」
「奈緒の気持ち解ったわ。描いて貰うと自然とにやけちゃうのよ」
「そーか。良かったな」
「うん」
「……でも差分見てーな」
「………アンタねぇ、まぁ……少し位なら良いけどさ」
「(にやにや)」
「……あー、もう!そんな事より!」
「ん?」
「ありがとうございました(ぺこり) ほら、アンタも」
「ああ、どーも」
「やる気ないなぁ……まぁ、男性陣は描写がほとんどないからねぇ」
「別にそういうんじゃねーよ。描いてもらっても誰得だしな」
「んー、私得ではあるんだけど、とーやの格好、一切描写ないから無理だろうね」
「はっきり言うなよ」
「ごめんごめん、今日はサービスするから許してね」
「……お前はまたそーいう事を。どうなってもしらねーぞ。……はぁ、んじゃ帰るか」
「うん。だいじょーぶ、全部受け止めてあげるから」
「〜〜〜っ?! ハル……絶対誘い受けだろ」
「さぁ?何の事やら」
「確信犯め……」
「♪」
------------------------------
ありがとうございました
953 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(静岡県) [sage]:2011/09/01(木) 21:57:59.44 ID:qircRYx50
>>946
DUさんご自身のキャラ絵も見たいな〜(チラッ)
前にタクちゃんマジ天使な絵は見たけど、たとえば妹×にょたにきとか、ズッコケ三人娘とか

いずれにせよGJ!!
954 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(広島県) [sage]:2011/09/01(木) 21:59:10.80 ID:GDNGFnwpo
>>951
把握した。恩返しは何にしようか迷うなぁ
955 :でぃゆ(ry [sage saga おはようじょ]:2011/09/02(金) 08:24:38.51 ID:yGNuzcvAO
>>945
ファンタさん、ニヤニヤが止まりません
おつぐっじょび(´∀`*)

>>948
なん…だと…?( ゚∀゚)o彡゚

>>952
なん…だと…?(差分…だと…?……忘れてた←オイ!)

>>953
なん…だと…?(漏れのキャラ…だと…?想定外過ぎるwww)
>>954
なん…だと…?(期待w)
956 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/09/02(金) 21:26:04.99 ID:KaK5v4u8o
絵を描いてもらうのウラヤマシスww
ああいうの見たら俄然やる気が出るんだろうなあ…(チラッチラッ)
957 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/09/04(日) 01:15:49.90 ID:8/F4T8vAO
>>956
|ω゚)〈 サクヒンメイウp


|ミ 〈 キタイハシナイデネ
958 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/09/06(火) 00:18:37.31 ID:hABLxpDko
>>957
もしかしたら、描いてもらった人の投下が増えるって期待してるのかもしれない
959 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/09/06(火) 00:49:13.69 ID:586plCAAO
じゃあ頑張るから漏れのヤツも誰か描いてくれないかなーww(チラッチラッ
960 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/09/06(火) 17:15:59.13 ID:Jd9EwwxAO

  【赤羽根探偵と奇妙な数日-fist contact-】

 ―――なんだよ。オレになんか用?

 湿気った苛立ちだけが、ただ一つの原動力だった。
 その僅かなリザーブタンクをだましだまし酷使して、無数に行き交う傍観者達を睨み付ける。

 傘で目線を隠せばバレないとか思った? 分かるんだよ、そんなの。あからさますぎて笑っちゃうね。笑わないけど。

 ―――中途半端な正義と、与り知らない人間への自己犠牲。

 その二つを両天秤に掛けた時、大抵の人間は後者の受け皿に傾くもの。
 そんなことを責めるつもり毛頭ない。

 だって誰だって、そうだから。

 誰だって安全圏から遠巻きに見て、正論を吐いていたい。その方が楽だし、気分が良い。

 誰だって、そう。

 だから別に、傍観者の心中の天秤の動きを責めるつもりは、ない。
 ……でも、だったら……。

「最初から、見てるんじゃ、ねーよ」

 自身のものとは思えない高音で地面にそう吐き捨てる。誰にも届いていないのも承知の上だ。
 どうやら、オレの口はそういうスラングな言葉を言い慣れていないらしい。
 どうも上手く口が回らないし、違和感が残る。
 ……尤も、単に全身が冷えきったせいかもしれないけど。

961 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/09/06(火) 17:17:32.63 ID:Jd9EwwxAO

 ………。

 アスファルトに叩きつけられて飛沫を撒き散らすほど冷たく強い雨の中、ビルの合間に踞ってから、一体どれだけの時間が過ぎただろう。

 寒いと感じるはずの肌は痛み、歯の音を鳴らすことすら出来ない。

 ……オレ、死ぬのかな。

 走馬灯ってヤツすら見えないのに。当然といえば、当然、なんだけ、ど。

 雨に滲んだ視界の中で傘を持った沢山の人影らしきものが無軌道に流れていく光景。


 ………こ、んな味気、ないのが最、期の景色か。呆、気ないもんだな、ホ、ント。

 ……も、う、どう、で、も、いいか。



「――――風邪ひくぞ」



 雨と雑踏のノイズに掻き消されてしまいそうなバリトンが、そう呟いたような気がした。
 滲んで使い物にならない視界を、首と眼球の動く限り探した。
 でも……見当たらない。再び見ようとする気力すら起きなかった。

 ……空耳、か。
 今更、そんな、ご都合展開に期待するなんて、オレ、はロマン、チストだ、ったの、か?

 引力の赴くまま落とした視界の中に、履き潰された革靴が映る。

 あ、れ。

 聞き、違いじゃ、ない?

962 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/09/06(火) 17:18:33.20 ID:Jd9EwwxAO

 首が、言うことを聞かない。
 自分の脳や頭蓋骨の重さが、この時ほど恨めしいと思ったことはなかった。
 ……あぁ、どう、し、よう。
 こんな言葉にも、オレは応えられないのか。
 ……い、やだ。そ、んなの、いや、だ。いやだ。


「……アンタ、誰?」

 辛うじて、動いた。
 口が、喉が。
 言葉を、紡げた。無対象じゃない、"誰か"に対して。
 それだけなのに、なんでオレは思い出したように震えているんだろう。

「―――ヒトに名前を訊くんなら、まず自分が名乗るのが社会のルールだろーが」

 よくわからない感動を後目に、安全圏に立たない正論が耳に響く。
 ……そりゃ、そうだ。こいつの言ってることは正しい。
 こいつにオレの事情なんて分かりっこないし、オレがどれだけの窮地に立っているかも分からないのだから。

「……悪い」

 乱れた呼吸に言葉を乗せる。

 ……反応はなかった。

 あぁ、呆れられたか。
 そう、だよな。
 オレは名乗れって言われてるのに、絞り出せた言葉はぶっきらぼうな謝罪だけ。
 こんな奴、相手にしないな。普通。
963 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/09/06(火) 17:20:19.63 ID:Jd9EwwxAO

 …………。

 なんだよ、立ち去ら、ないのか?

 言葉に出来ない意思表示を込めて、視線を持ち上げる。

 そこで、彼を初めて見た。

 左手に傘、右手に煙草、薄汚れたジャケットに、焦茶色のハットをした……お兄さん、とも、おじさんとも呼称しがたい男が、そこにいた。

 切れ長で、一見ヒトを寄せ付けそうにない無愛想な目が、真っ直ぐにオレを見つめている。

 ……何故だか、オレは確信した。

 ―――あぁ、この人は、オレの言葉を待っているんだ、と。

 そう思った途端、冷えきっていた感情と身体が溶けていく気がした。

 ……言わなきゃ、でも、なにを?

 何て言えばいい? わからない。

 オレ自身がわかっていないのに、何を言えばいいんだ?

 どうしよう。

「―――オレ」

 整理がつかないまま、感情だけが先走る。


「……誰なんだ?」


「…………あ?」


 時間が、止まったような気がした。

 彼の右手から煙草が滑り落ちて、火種がジュッ、とアスファルトの水に浸って消える。

964 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/09/06(火) 17:21:30.20 ID:Jd9EwwxAO

 その刹那に、オレの視界に自身の手足とアスファルト以外のものが写り込んできた。
 それはオレのより二回りは大きいであろう彼の掌。
 思ったよりも綺麗な手をしていて少しだけ驚いた。
 引力に逆らって見上げると、無愛想な顔が、真っ直ぐにオレを見つめている。

「……立てるか?」

 普段なら難度の低い質問に、力なく首を横に振る。
 どれだけの間、この場所でこうしていたかは定かじゃないけど、冷えきった手首足首から先の感覚が無いのだから。

「―――チッ」

 舌打ちが聞こえた。
 そりゃ、そうだ。
 こんな得体の知れない奴なんて関わりを持った時点で後悔するものだろう。

 ……どうせ、オレなんか。

 冷えきった背中が、突然柔らかな熱を帯びる。

「え………?」
「羽織ってろ、ちったぁマシだろ」

 これ、こいつのジャケッ―――

「―――せぇのっ!」
「え、あ、……わ……ゃっ?!」


 彼の気勢と共に、身体から地面の感触が消える。

965 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/09/06(火) 17:22:28.53 ID:Jd9EwwxAO

 代わりに膝の裏側と上半身がほんのりと温かみを覚えた。と、同時に彼が持っていた傘がひっくり返って地面に落ちる。
 景色はあっという間に様変わりし、今しがたまで遥か上に位置していた焦茶色の帽子が映る。

「っ、オイ、男のクセに変な声出すなっ、誤解されんだろ。ったく」

 男は周囲をキョロキョロと見回しながら傘を拾い上げ、不機嫌そうに毒づいた。

「……あ、び、びっくり、した、だ、けだ……! って、え……っ?!
 っ、けほっ、けほ……っ!」
「いーから黙っとけ、下手すると死ぬぞお前」

 全てお見通しだ。
 そう言わんばかりに、男は鼻で笑いながら末恐ろしいことを言ってのける。
 ……けれど、それが冗談でないことはオレが一番よく分かっていた。

「っ、見せもんじゃねぇぞ、興味本位で見てんじゃねぇッ!!!!」

 周囲に対して敵意を撒き散らす男。
 ……ははっ、オレなんかより数倍堂に入っている。悔しいような、嬉しいような複雑きわまりない気分だった。

「ったく、重てぇな……いや、"軽い"のか」
「な、にが―――」
「―――黙ってろっつの」
「………うん」


 ―――……今は。今だけは。


 名も知らない、この背中の温もりを信じてもいいか。……微睡む景色の中でそう思った。


966 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/09/06(火) 17:23:20.35 ID:Jd9EwwxAO



 ―――前言撤回。



967 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/09/06(火) 17:24:23.55 ID:Jd9EwwxAO

 今、オレは後悔している。

 甘っちょろいことを言ってた自身を全速力の助走をつけてぶん殴ってやりたい。
 なんで身体が弱ってたとはこんな外道にほいほいと連れてかれたのかと。

 ……現状を説明しよう。

 今、オレは外気に触れて冷えた肌を両腕で隠しながら、今しがたまでオレが着ていたびしょ濡れTシャツを両手に持つド変態を睨み付ける。
 意識を取り戻したオレが最初に目にした光景から、数秒が経過していた。

「な、にすんだ、てめぇっ!!?」

 今しがたオレが突き飛ばしたド変態が、非難の声を挙げる。

「そ、そ、それはこっちの台詞だッ!! ヒ、ヒトが気を失ってる間に……な、な、何するつもりだったんだッ!!?」

 慣れない胸の膨らみを押さえながら言葉を返す。……やっぱり見ず知らずの人間を頼ったりしたオレがバカだったんだ……!

「……"うん"っつったのはてめーだろが」

 な、なな、何を訳の分からないことを……!

968 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/09/06(火) 17:25:40.73 ID:Jd9EwwxAO

「返せっ、そのシャツ返せっ!!」
「やーなこったっ、とォ」

 無愛想にそっぽを向きながら、ド変態は、ベッドの置かれたこの部屋の向こう側に見える玄関近くに備え付けられた、20世紀の遺産とも言える古そうな洗濯機に、オレが着ていた紺色のTシャツをバスケの3ポイントシュートよろしく放り投げる。

 丸まった紺色のそれは綺麗な放物線を描いて、洗濯機の中心に消えていく。

「ヒュウ、ナイッシュー俺」
「っ、お前ぇえぇっ!!!」
「今、手ぇ出したら見えちまうぞ?」

 振りかぶった手を引っ込めざるを得なかった。
 別に恥ずかしいとかじゃないからなっ。
 このド変態に対して視覚的にサービスすることが適切でないと判断しただけであって……その……あーもうっ!

「そんだけ元気がありゃ、てめーで歩けんな? ほれ、回れ右」
「は?」
「は? じゃねぇよ、そっち行け。
 使い方くらいは分かんだろ?」

 ド変態は溜め息混じりに玄関側ではない背後の磨りガラスの引き戸を指差した。
969 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/09/06(火) 17:27:00.22 ID:Jd9EwwxAO

「着替えは、あー……そっちのタンスの上の段から適当に見繕え。サイズは……多分大丈夫だろ、俺ンじゃねぇし。
 ちなみに断っとくが、脱衣場なんて豪勢なもんはウチにはねぇからな」

 そう言ってド変態は、玄関側の部屋から戸を閉め、デスクのキャスター付きの椅子に腰掛けた。

 その動作の途中で、さっきまでオレの背部の保温を助けてくれていた上着をその椅子に引っ掛ける。

 ………なんだよ。冷たい身体じゃ萎えるから温めとけっていうのか?

 そんな手に誰が乗るか―――

「―――へくしっ」

 ……まぁ、身体を温めて、頭を冷やしてから逃げる手だてをじっくり考えればいいか。

 向こうの部屋から死角になる位置でジーンズと下着を脱ぎ捨て、磨りガラスの戸を引く。
 そこには小さな鏡が備え付けられた古いシャワールーム。
 何処からか流れ込んでくる外気に、堪らず赤い蛇口を捻って出てきた温水に身を固める。

 ……そこで、オレはオレと向き合った。

「―――誰だよ、お前」

 当然、といえば当然だった。
 オレに見知った顔なんて、ない。……あるはず、ない。
970 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2011/09/06(火) 17:28:22.08 ID:Jd9EwwxAO

『―――生きてるかぁ?』
「っ!?」

 不意に磨りガラス戸ごしにバリトンが響く。

『あー、死んでたら返事しろ』

 どっちにしろ返事出来ないじゃないかっ!?

『―――ま、色々と思うトコはあっかもしんねーけど、今日ンとこは大人しくしとけや。明日、知り合いの公僕に話を訊いてみっからよ』
「………名前」
『あ?』
「名前も知らないような奴なんて、信用できない」
『………信じるも信じねぇもてめーの勝手だ、好きにしろよ』
「…………」
『…………赤羽根だ』
「え?」
『赤羽根 真司、26歳独身、職業、私立探偵。
 これでいいか? 別にこれで信じろたぁ言わねぇけど、せめて礼がくらいは聞きたかったなぁ?』
「………」
『バスタオル、置いとくぞ』
「…………あ、り……が、と」
『あ? 何か言ったか?』
「〜〜〜〜っ、なんでもないっ」

 ―――ド変態、もとい赤羽根サンとの初対面は、今から考えたらとても印象深いものだった。
 そう、オレは振り返る。
 ……その後に降りかかる不幸を差し引いたとしても、オレはこの人に会えたことを感謝している。


 ………。


 ま、あのバカ兄貴には口に裂けても言うつもりはない、けどな。


【赤羽根探偵と奇妙な数日-first contact-】


  完
971 :青色1号 [sage]:2011/09/06(火) 17:31:36.32 ID:Jd9EwwxAO
今更ながら絵描いてくれてありがとーっ!!

お礼にもならんけどバカバネさんが多分カッコよかったと思われるシーンを書いてみた。

本編は適当なトリック思い付いたら書きます、多分。

972 :でぃゆ(ry [sage saga 底辺絵師です]:2011/09/07(水) 01:14:50.71 ID:MRNC4k3AO
>>971
こちらこそありがとうございますッ!
赤羽根さん楽しく描かせて頂きました!
つか、あんな仕上がりで申し訳ございません(><)
タバコねー、忘れてましたorz
次の機会があれば是非リベンジさせて下さい!
名佳ちゃんも描かせて下さい!!

しかし名佳ちゃん可愛い…探偵さんカッコカワイイ(ペロペロ
ごちそうさまです!乙グッジョブでしたッ!
973 : ◆yhNqGdIG7M [sage]:2011/09/07(水) 20:25:57.55 ID:D22dq7MAo
>>957
|ω゚)〈 勇気をつばさにのせて

|ミ 〈 ナンダカモウシワケナイ
974 :でぃゆ(ry [sage saga うぉッ!?]:2011/09/07(水) 22:52:05.85 ID:MRNC4k3AO
>>973
鉄オタさんだった!Σ(゚д゜;)
うおぉぉ…マヂですか…結構前に読みました。
印象に残ってる作品です。コレはやり甲斐があるなぁ…(´∀`*)
把握しました!





つか、漏ればっか楽しんでるけど、他の絵師さん降臨しないのかな?
975 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/09/08(木) 00:25:37.08 ID:967c0bLa0
>>974
絵師さんは衰退しました
976 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/09/08(木) 01:30:44.23 ID:Fcgjb9GAO
>>975
(´残`)(´念`)
せっかくの『くぱぁの日』なのに…
にょたっこのくぱぁ絵が見たかったな…(チラッ





……漏れは無理よ?ww
977 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/08(木) 13:44:42.02 ID:m3N5XQf/o
幼馴染で親友同士
ある日自分が女体化したけど友情の絆は変わらないと思ってたら・・・
見たいな一歩踏み外したらBADENDにも簡単に持っていけそうな話を思いついたけど
SSにするまでには到らない、非才の身を嘆く
978 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海・関東) [sage]:2011/09/08(木) 13:57:51.25 ID:pA9HCImAO
>>977
書こうと思ったら先駆者がいたでござる。しかもオイラがこのスレ見始めたキッカケの方。

http://www8.atwiki.jp/tsvip/m/pages/140.html?guid=on#atwiki_jp
979 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/09/09(金) 05:45:14.84 ID:mu6nDsVAO
>>978
P90様はマジ神すぎる

ところで、避難所で書き込みしてた人いたけど
中野と谷屋のマンガって投下あったんですか?
個人的にかーなーりー読ーみーたーいー!!
980 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/10(土) 00:25:24.70 ID:CBfEBb1Go
本屋で女体化BLなる文言を見たときちょっとどういうことなのか真剣に悩んだ
981 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/09/10(土) 01:10:07.76 ID:imdiDbwb0
>>980
女体化しても心は男だからBLでおkって理屈
男×男がどうしてもダメだったり、男×女(男)に攻めと受けの至高があると考える腐女子は
受け側を女体化させてニヨニヨするんだよ
982 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/09/10(土) 06:20:49.17 ID:GRx6q/eDO
>>979 ありましたよ
983 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/09/10(土) 06:45:13.87 ID:hSKnDFNAO
>>982
まぢっスか!?Σ(゚□゚;)
うあ読みてーww でも今更見付けられんでしょうかね…orz
984 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/09/14(水) 15:28:57.72 ID:vs9r0+wAO
アレ?まとめ消えてる?
985 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長崎県) [sage]:2011/09/14(水) 16:36:32.35 ID:yWhR9IOJ0
まとめ接続できなくなってる
986 :でぃゆ(ry [sage saga]:2011/09/14(水) 16:45:16.09 ID:+o33DbwD0
携帯からも接続試みた。削除されてるっぽい。
マジかよ…orz
987 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/09/14(水) 17:11:15.39 ID:MzS9lFUGo
大丈夫、接続できる
988 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage]:2011/09/14(水) 17:28:12.10 ID:ef84SS/lo
繋がった。
一時的に接続が出来なくなってただけみたい?

ところで次スレはいつ立てるんだろう?
989 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/09/14(水) 17:37:48.11 ID:+o33DbwD0
お、復活してる!なんだったんだ…
あと、ついでにいらねーかもだけど次スレ建てた

スレ建てるの初めてだけどコレでおk?

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1315989292/
990 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(西日本) [sage saga]:2011/09/14(水) 17:41:06.13 ID:ef84SS/lo
前スレから見始めたからよく解らないのよね
まぁいいや、埋め用の安価plz↓
991 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/09/14(水) 17:53:16.72 ID:vs9r0+wAO
>>990
修学旅行
992 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage]:2011/09/14(水) 18:00:29.98 ID:iFDxc7R0o
触手
993 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福島県) [sage]:2011/09/15(木) 02:04:52.88 ID:8zK3YtWXo
annka↓
994 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) [sage]:2011/09/15(木) 07:01:06.60 ID:30Qf2H5AO
>>921 のヤツ
995 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/16(金) 19:39:12.55 ID:1QDBbrZ8o
うmえ
996 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage]:2011/09/17(土) 00:59:22.89 ID:mK5/iYMUo
うめ
997 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/09/17(土) 02:57:30.36 ID:9uxSrr4ao
埋め用安価↓
998 :でぃゆ(ry [sage]:2011/09/17(土) 06:05:03.74 ID:DiMu+erAO
黒歴史





岡山県の同志様!オッスオッス!!
999 :DU-02 ◆ZyOpxOUauRgt [sage saga]:2011/09/17(土) 14:40:05.79 ID:60Eh9POV0
>>992 横取り穴埋め安価『触手』

授業も終わり、さて帰って録り溜めしている濃厚なホモヒーローアニメでも観るかなと思っていたら
変態に声をかけられ、強引に科学部部室に連れ込まれたから「おまわりさん、コッチです」しようかと思っている。

「随分だな」
「当然の措置だ。で、なんだコレは?」

目の前にはウネウネと生理的に受け容れ難い動きをする謎の物体。もう見るからにアレ。
イソギンチャクを巨大化させて触手を少なく、その分太くしたみたいなの。先っちょちんこになってる系。

「見ての通り『触手』だ」
「……」
「まあ、待て。通報するのは話を聞いてからでも遅くないだろ」
「いや遅い、そんな悠長に構えてたら手遅れになる」
「イヤイヤ、これは決してお前が考えてるような悪い物ではないんだ。女体化してしまった友人へ俺からのささやかなプレゼントだよ」
「うん、オレが考えてるような悪い物そのものじゃねーか。見ろあの禍々しい姿と動き」
「おい、なんだ?折角ひとが丹精込めて手作りした触手に対して」
「手作りするんならクッキーとかにしとけよ。それにアレ生きてんだろ?あんな姿に創造されて、悲劇そのものじゃねーか」
「…愛らしいじゃないか。ペロペロしたいレベルで」
「あー、お前の目ん玉の黒いトコ、孔だったんだ。なるほどな」
「ひでーな!ちゃんと黒目です!!…まあ、プレゼントにかこつけてはいるが、俺の研究の成果でもある。存分に可愛がってやってくれ」
「丁重にお断りだ。こんなもん研究してないで科学部なら科学部らしくペットボトルロケットでも作って文化祭とかで発表しとけ」
「さっきからホント酷いな。嫌いなのか?触手」
「なあ?好きになる要素が本当に有ると思うのか?そこまで全身全霊で馬鹿なのか?変態なのか?或いはその両方か?両方だったな」
「…ひょっとして、マジでお嫌い?『触手が嫌いなにょたっこなんていません(キリッ!』って聞いたんだけど?」
「ソースはなんだよその情報…」
「うーむ…なあ、モノは試しで使ってみてはくれないか?」

やけに真剣な口調と眼差しの変態。視界の端には蠢く触手。腹立わー、両方とも。…………特に、この変態に。

「……なぁ、お前はそれでいいのか?」
「…何が?」
「アレを使うってコトは、オレの初めてはアレってコトになるけど、お前はそれでいいのか?」
「……へ?」
「……オレの初体験の相手が、あの触手でいいのか?オレの処女がアレに奪われて…お前は、それでいいのか?」
「………?スマンが、真剣に意味がわからん」
「ッ!…………こ…んの鈍感ヤローがッ!!もう知らん!!帰るッ…!!」
「え?えっ!?ちょッ…」
「てめーはその触手にケツの穴でもほじられてろ変態ッッ!!!」

後日、結局何も理解してない変態に業を煮やしてオレの方から告白して、その日の内に…した。

「なあ、触手も使ってみないか」
「…断る」

実は少し、ほんの少しだぞ?……興味はある。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ザ・勢い! >>1000 は任せたZE☆
1000 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/09/17(土) 20:00:56.62 ID:apqa531K0
1001 :1001 :Over 1000 Thread

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
  | |  (・)。(・);    このスレッドは1000を超えました。|
  | |@_,.--、_,>    このレスを見たら10秒以内に次スレを建てないと死にます。
  ヽヽ___ノ    次スレを10秒以内に建てても死にます。

パー速@VIPService
http://ex14.vip2ch.com/part4vip/

ローカルルール変更に伴い、1000到達の報告が不要になりました。

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
とばりのなか @ 2011/09/17(土) 19:47:42.65 ID:/PI9rPgc0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316256462/

A雑で一番嫌われてるのって誰? @ 2011/09/17(土) 18:09:16.46 ID:uJQkNNHUo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1316250556/

AKBSKENMBHKTSDNスレってホントデスカー?ありがとうございます @ 2011/09/17(土) 17:51:17.07 ID:966gYqQho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1316249476/

生まれて初めてデートに誘われたわけなんだけど @ 2011/09/17(土) 16:40:15.53 ID:PCkxq2oAO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1316245215/

大好きな先輩♀に誕生日プレゼントを贈りたい @ 2011/09/17(土) 15:21:02.20 ID:P18tE5EO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1316240462/

デートからセクロスに持ち込む具体的な手順を書いてください @ 2011/09/17(土) 15:10:15.99 ID:WKpgFmFIO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1316239815/

母ちゃんに「これ美味しい」って言うとそれしか買ってこなくなる現象に名前つけようぜ @ 2011/09/17(土) 14:08:52.95
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【チャプチェで】そこのメンズちょっと来い!あ、レディースも104【マッコリ】 @ 2011/09/17(土) 13:30:55.75 ID:n5eODxHRo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1316233855/


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