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【浮かれた】幼なじみのお部屋で寝落ち・・・13回目【大学生】

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122 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2014/11/18(火) 00:11:52.94 ID:e78jJR08o
>>120
と言っても前のことはもう取り返せませんから…w

そういうものですかねー、確かに私のように歪んではないです。
それならいいのかな(^^;;

>>121
辛そうではないですね、むしろ嬉しそうです…w
そんなものですか、、悪いことじゃないように思えてきました(°_°)
ただ、私を目標にしないでもっと羽ばたいてほしいなーとは思います(シスコン)
123 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2014/11/18(火) 00:40:52.41 ID:zozZg7dT0
久々だけど、変わってないなーと思うところと大人になったなーと思うところと両方あっていいね
文字だけでもなんとなく分かるんだよ
124 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2014/11/18(火) 00:47:07.05 ID:8PWKqVjJO
進路の選択肢が広がっての悩みなら、嬉しい悩みだね。
まるで受験の前のしょうちゃんみたい。
どれが正解かは難しいけど、さやちゃんが選んだなら
どれも間違いではないはずだから、しっかり考えれば
良いと思うよ!

本当に悩んだら、その時はしょうちゃんを頼ってあげてね。
男としては、そういうのが嬉しいから。
125 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2014/11/18(火) 00:48:57.35 ID:e78jJR08o
皆の近況も簡単に書いていきますねー。


まずはしょうちゃん。

何事にも柔軟なしょうちゃんは、すぐに新しい環境にも馴染めたようで、学校行事やサークル活動など、積極的に参加しています。
私の周りでは一番大学生活を楽しんでいるかもしれませんw

ちなみにサークルは、運動系のと、文化系のと、よくわからないの(失礼)に入っています。
そのよくわからないサークルが一番いごこちがいいらしく、メインで参加しているみたいですw
運動系のは私も一緒で、よくわからないのはいーちゃんと同じです。
私もしょうちゃんも運動系のはあんまり参加してませんが(^^;;

学科とメインのサークルが一緒ということもあり、大体いーちゃんと一緒にいます。
……怒ってなんかないですよ!
実際そっちの方が何かと安心ですしね(ーー;)
まあ最近はそうでもないみたいですw

し「も、もう俺は用済みかな(涙目)」

もらってあげましょう。
126 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2014/11/18(火) 00:54:13.29 ID:e78jJR08o
>>123
何度かこんな話してますもんね(^^;;
お、大人になりましたか!うれしいw
いろいろ経験できてるとは思いますw

>>124
そうですねー今は切羽詰まってもいないので、考えるのも楽しいと思えますw
本当にやりたいこと、向いてることを見つけられたらなーと思います。

今でも話したりしてますよ。
では、多いに頼らせてもらいますw
127 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2014/11/18(火) 00:58:25.06 ID:zozZg7dT0
しかし元気そうで安心したよ
またこんなふうに突然現れておくれ
128 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2014/11/18(火) 01:01:52.06 ID:nTKMb9FJo
さやちゃんは自己評価が低すぎるからなー

お姉ちゃん見たくなりたかったら猫の格好すれば良いんだよ!って言えばおk
129 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2014/11/18(火) 01:03:33.26 ID:e78jJR08o
続いていーちゃん。

同じく柔軟ないーちゃんですが、そこは私と似て新しい環境は苦手で最初は戸惑っていたみたいです。
それもあってしょうちゃんに依存気味でした…w
段々慣れてきて、気が緩んでつい言い過ぎて、、、みたいなこともあったらしいですが、
その時もしょうちゃんが丸く収めてくれて、更に依存して、、なんてこともありました(^^;;

い「私のダーリン素敵でしょw」
私「こら、盗るな」

ただの予定調和ですw
それも最近は落ち着いてきた、というところですね。

私は絶対離れませんけど!
130 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2014/11/18(火) 01:08:37.48 ID:e78jJR08o
>>127
ありがとうございますw
まだこんなに見てもらえていてうれしいです!
また突然来ますねww

>>128
最近はそうでもないと思いますよ(^^;;
仕事を通じて自信もてることもありましたw
ただただ妹は世界一だと思っているシスコンなんです(真面目)
、、それももうしちゃってますからねー(ーー;)
131 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2014/11/18(火) 01:19:37.55 ID:e78jJR08o
最後につぐみさん。


実は、大学ではつぐみさんと一緒にいることが一番多かったりしますw

新しい環境もなんのその、あっさり馴染んで当時も今も結構友達多いみたいですが、それでもよく私のところに来てくれてました。

つ「いーはしょうちゃんがいるとして、さやちゃんは寂しいでしょ」
つ「…なんてうそ。私が会いたいから来るの」

、、そんなたらしセリフ言わないでよ誰にでも言ってるんじゃないのやだもうつぐみ様大好き。

こんな好待遇な私が惚れるのは当然として、ほんとに誰にでも言ってはいないだろうけど、
はっきり言ってつぐみさんはモテます。
女の子ではなくて、男の子からですよw

しかし当のつぐみさんは可愛い女の子に夢中で見向きもしないのでした…。
同人サークルでさらに女の子好きに拍車が、、と本人談。

ちょっと繊細な話しますと、、ビアンではないけど今は男の子にはあまり興味ないとか。

つぐみさん自身は楽しそうなのでいいかなと思っていますw
132 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2014/11/18(火) 01:25:52.83 ID:e78jJR08o
結構長くなってしまいましたが、、この通りみんな楽しく大学生しております。

そして私はぼっち気味、、、他が充実してるのでいいですけどねw


それではまた、時間がある時に来ますね。
何か聞きたい話など書いていただければ、一筆せていただきますm(_ _)m
書ける範囲で!

おやすみなさい。
133 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2014/11/29(土) 03:02:14.41 ID:GVQsnYu4O
完全に乗り遅れた(´・ω・`)
元気そうでなによりです

しょうちゃんとのイチャラブが聞きたいw
できればkwsk聞きたいw

2828したいんだよ(´・ω・`)
134 : 【中吉】 [sage]:2014/12/01(月) 15:58:37.00 ID:Qxxq1GzV0
さやにゃんこんにちは

過去スレに晩くまで遊んでいてしょうちゃんが叱られたとの話が有ったのを記憶しているのですが
ほっこりするようなエピソード聞きたいな(「しょうちゃんのお嫁さんになる〜」の詳細でも可)
135 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2014/12/01(月) 18:58:03.60 ID:VhJ8IFTYo
しょうちゃんがお嫁さんになる〜の妄想でも可
136 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(SSL) :2014/12/13(土) 02:10:43.53 ID:xfCUwNwo0
しょうちゃんが進学に悩んでいたころ何度か書き込みさせてもらった自営業のおっさんです。

お久しぶりです。(2年ぶり以上か??)
先日たまたま気になって検索したら、本スレにて終了のようなので、ご挨拶しておこうかと...

しょうちゃんへ
 がんばれよ。
 一生をかけて、ちゃんとさやちゃんを幸せにするんだぞ。
 そのためにはいつも自分を成長させなきゃね。

さやちゃんへ
 しょうちゃんや仲間みんなと一緒に、幸せが続くことを祈ってる。

137 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(SSL) [sage]:2014/12/19(金) 10:42:10.56 ID:Z11Vj98c0
さやにゃんおはようございます

昨日の記念日 クリスマス お正月とイベントが続きますね
あっまぁーい報告まってるよw
138 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(SSL) [sage]:2014/12/24(水) 23:51:47.32 ID:8T+a2LaKo
3周年おめでめす&メリークリスマス、38にゃん!

お久しぶりです。クリスマスですね。今夜はいかがお過ごしでしょうか……まあ聞くだけ無粋でしょうがw

大学生活、各々実にリア充ですねぇ。今のところ心配する要素皆無の模様。
物事は決して一面的ではないですから様々なことを見聞きしてトライして、道を絞っていけばいいと思います。

あやにゃんにとっての憧れの存在が現在はさやにゃんってこと。
大学生になった38にゃんに興味や関心の変化をもたらしたように、あやにゃんも次第に変化していくだろうから今は見守って行くということでいいと思うよ。


ではではよきクリスマスと年末年始をノシ
139 : 【末吉】 [sage]:2015/01/01(木) 08:33:30.91 ID:M1yUjFOXo
Happy new year!
140 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/01/02(金) 00:51:56.44 ID:znHealnqo
あけましておめでめす、38にゃん、いー様、しょう子ちゃん。

みんながさらに飛躍できる年になることを願います。
今年もよろしくね。


ではまたノシ
141 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(香川県) [sage]:2015/01/13(火) 09:11:05.95 ID:lWi3ccxL0
あけましておめでとうございます。初回から見てますが初の書き込みです。
みなさんの成長を見ると自分も頑張ろうと思えます。
いーちゃんは俺がもらう!
142 : 【吉】 [sage]:2015/02/01(日) 02:13:19.46 ID:0agq+c19o
こんばんでめす、38にゃん。

恒例のおみくじの日がやってきました。どうかな?

今年は閏年ではありませんが閏秒が7月1日の朝8:59:59〜9:00:00の間に入るそうです。
1日24時間じゃ短いという人がいたりしますが、この日は1秒だけ長く過ごすことになります。

およそ多くの人にとって取り留めて何かが起きるわけではない1秒。
されど金融、鉄道、ITなどセンシティブな業界では注視する日だとのこと。
過去障害が発生したこともあるそうなので今回は防いでほしいですね。

さてさて、38にゃんならばこの1秒をどう過ごすかな?


ではまたノシ
143 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/01(日) 07:24:09.02 ID:1ozCPGFIo
 
144 : 【だん吉】 [sage]:2015/02/01(日) 17:15:26.07 ID:0/UNgCqmo
えいっ
145 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/17(火) 16:11:05.64 ID:UYjPsWDso
 
146 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/19(木) 07:16:57.36 ID:HzmSKvQ9o
 
147 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/22(日) 21:03:30.52 ID:7i+MFzDMO
こんばんは。

ご無沙汰ばかりしておりまして、申し訳ありません…。
まだまだ寒さが身に沁みる季節ですが、日中は温かい日も増えましたね。
いかがお過ごしでしょうか。


まだしていない挨拶ですので、一応…。

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

2015年も早2ヶ月近く経ちました。
更なる躍進はもちろんのこと、これまでの自分と周囲を省みて見つめ直す1年にしたいと思っております。

その一端と言ってはなんですが、此度ご挨拶に参った次第でありますm(_ _)m


ともあれ、元気に過ごしております!
148 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/22(日) 21:47:09.39 ID:7i+MFzDMO
来ると言って結局3ヶ月も…ほんとすみません(ー ー;)
多忙と言う程ではありませんでしたが、いろいろとありまして…。
一先ずお返しさせていただきます。

>>133
唐突ですみませんでした(^^;;
そちらもお変わりなく幸せに過ごされていましたら、なによりですw

>>134
ほっこりする話ですね、その辺りも意識してみますw
当時のこととなるとあまり覚えていなくて…難しいです^^;

>>135
妄想なら如何様にも…いえ、事実で書かせていただきます!

>>136
お久しぶりです。覚えていますよw
その節はお世話になりました。

どちらのお言葉も、深く受け止めます。ほんとに…。
ご挨拶ありがとうございます。

>>137
確かにイベント続きではありましたが…
ご期待に添えられないかもしれません(ー ー;)

>>138
この日は実は……また報告で!

各々リア充…ではあったのだと思います。
その後に続くお言葉も実に的確で…痛み入ります(^^;;

憧れとは往々にして手が届かないものではないでしょうか。…と、思っていました。
いつの間にか強くなっていくものですねw

>>139
末広がり!

>>140
ありがとうございます。
振り返りながら進んでいきます!

>>141
長くお付き合いいただいて、ありがとうございますw
私にはもったいないお言葉で…(/ _ ; )
それはできませんっ!

>>142
閏秒というのもあるんですねー勉強になりましたw
なるほど、そういった業界では貴重な1秒なのですね。
その1秒で劇的に変わるような生活ではありませんが…
1秒でも長く続いてほしいと、そう思えるような時間を過ごしていきたいです。
149 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2015/02/22(日) 22:00:41.69 ID:yWJxmYjJo
おかえりなさい(о´∀`о)

元気そうでなによりだよー
便りがないのも元気な証拠だとうけとめとるよ
150 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/22(日) 22:01:27.73 ID:Smvzy2kd0
さやにゃんこんばんは まってたよ

本日最後の確認で寝入る寸前なのでレスできなかったらごめんなさいwwwwww
151 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/22(日) 22:04:13.17 ID:BE6Aaca4o
生存確認できただけでおじさんは嬉しいよ
がんばってください
152 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/22(日) 22:05:08.34 ID:WVf4TKRLo
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
153 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/22(日) 22:08:45.62 ID:7i+MFzDMO
さて、本題を記述します。
今日は予告と宣言をしに来ました。

これから先、長い話を書こうと考えています。
以前のような報告…とは異なるかもしれませんが、その時のようにしっかり書きます。

前回から間3ヶ月にあったことと、少し遡りつつ他の話も織り交ぜて、なるべくいろいろな話もしたいと思っています。
ご期待して下さっているような内容とは違うかもしれません…
なるべくその辺りも応えるつもりで書いてみますが(^^;;

上で少し述べたように、自分を省みるために、折角のこの場を活用させていただきます。

この話が完結したら……というのはスレの残り次第で考えますねw

とにかく、今度こそ必ず最後まで続けますので、どうか見守っていただけましたら幸いです。
虫のいい話なのは重々承知しておりますが、よろしくお願いします。
154 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/22(日) 22:13:18.11 ID:Smvzy2kd0
さやにゃん なにがあったの?…
155 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/22(日) 22:16:16.98 ID:7i+MFzDMO
わ、こんなにもありがとうございます!


>>149
ただいまです!
今度こそほんとに、ただいまです(^^;;
いえ、図らずも怠慢だったのだと実感しています…。

>>150
こんばんは!
お気になさらずw
近々必ず来ますので!必ず!

>>151
ありがとうございます!
今後も見てもらえたらなによりです。

>>152
キマシタワー(百合脳増大中)
156 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/22(日) 22:19:07.67 ID:7i+MFzDMO
>>154
その辺は話の中で…w
一言で言えるようで言えないことです(焦らし)
今は元気ですよ!w
157 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2015/02/22(日) 23:11:19.26 ID:RorskVwxO
さやにゃんあけおめ!
得意の焦らしからの寝子にゃんだったりしてww
158 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/22(日) 23:55:57.52 ID:d2ydR+7po
初リアル遭遇…
パンツ脱いで正座で待ってます
159 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/23(月) 00:18:52.41 ID:3PTJRGV7O
>>157
あけおめです!
そそんなことはないのでありますですよ
もうちょっとだけ、中身のあることですw

>>158
そうでしたか!はじめましてw
でも今日はご挨拶だけでして…すみません(ー ー;)
今後ともよろしくお願いします!



それでは、今日の所は失礼させていただきます。
とりあえず1つまとめ中ですので、早ければ明日また来ます。
遅くても2、3日以内には必ず…!

随分久しぶりでしたのに、多くの方が見てくれていたことに驚きましたw
うれしいです、ありがとうございます。

改めてこれからよろしくお願いします。

では、おやすみなさい。
160 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/23(月) 04:14:13.05 ID:dyZez76to
こんばんでめす、38にゃん。

うむむ、気になる。
この3カ月の間に何が起こったのか。


ではまたノシ
161 :さや ◆0j8YIq7DEniB [sage]:2015/02/23(月) 20:49:59.01 ID:jMUYMxANo
こんばんは。
昨夜はありがとうございましたm(_ _)m

とりあえず1つ目の話がもう少しでまとまりそうですので、今日中には貼っていきます。


>>160
いつもありがとうございますw
見返す大きく出てしまっていましたが…一大学生の些細な心情とでも思ってください(^^;;
今後ともよろしくです!
162 :さや ◆0j8YIq7DEniB [sage]:2015/02/23(月) 22:14:08.46 ID:jMUYMxANo

ーーーーーーーーーー

11月某日


改札を抜けて、駅の構内から外に出る。
防風壁を失った横風に一気に吹き付けられて、思わず身震いした。
秋も一層深まり、風の冷たさが身に沁みる季節となった。
コートなしでは少し肌寒い。

その寒さに堪える間もなく見慣れた車を見つけ、急く気持ちをそのままに早足で駆け寄った。
車中の彼はこちらに気がつき、小さく手を挙げて笑顔を向けてくれる。

「お疲れさま」
「ありがとう」

差し出された手に鞄を手渡し、助手席に座る。エアコンで暖められていた車は、1人で乗る時よりもずっと温かかった。

鞄を後部座席に置き、シートベルト、シフトレバー、サイドブレーキと次々に発進の準備をする。
最後に私の頭をぽんぽんと軽く叩いてにこっと笑う。
言うまでもなく、最後の動作は車の発進とは関係がない。
やはり彼が運転席に座る車は温かい。

周囲を確認しながら丁寧に車を発進させる。
その所作に危ぶむ所はなく、すっかり手慣れたものだ。
ぐるりと半周ロータリーを周って、通行車に阻まれることなく公道へと抜ける。

少し進んで一本道に入ると、視線はそのままに尋ねられた。

「どう、うまくいった?」
「うん。つつがなく」
「そっか。よかった」

実に端的な私の返答に、彼は普段と変わらない笑顔でそう返してくれる。

我ながら、今日はよくできたと思う。
大一番とも言えるこの日を乗り越えられたことは、素直にうれしく、自信にもなった。
そんな意を込めながら、内容を簡単に伝える。

「運が良かったのもあるけど…」
「いや、すごいよ。さすがさやさん」

そう言ってくれる表情もまた、変わらない笑顔だった。
163 :さや ◆0j8YIq7DEniB [sage]:2015/02/23(月) 22:17:00.56 ID:jMUYMxANo


仕事終わりの帰り道。
私が電車で仕事先に行った時は、たまにこうして迎えに来てくれている。

この日の仕事は、これまでの仕事振りを評価されるような、そんな内容だった。
そのため、出発前も仕事中も普段よりずっと気を張っていたのだろう。
無事に終わっても、どこか落ち着かなかった。

落ち着かないまま歩いたら転ぶかもしれないしどじな私なら電柱にぶつかるのも余裕だ。いやどじではないけど。
犬も歩けば棒に当たるとも言う。いやこれは意味が違う。それに他にはあれとかあれだし。

…だからまあ、なんていうか、その。

この日は特別一刻も早く、彼ーーしょうちゃんに会いたかった。



赤信号で停車して、運転手の彼は一息つく。
私もほっと一息。
肩の凝りをほぐそうと、後部座席の方まで腕を投げ出して大きく伸びをする。

「んーーっ」
「………」

…運転席から視線を感じた。
ちらっと横目で見ると、わざとらしくいやらしい目でこちらを見ている。
………まあ、意味するところはわかっている。

こちらもわざとらしく、睨んでやった。

「……前見て運転してなさい」
「いや、見てほしそうに強調し」
「へんたい!」

ただの予定調和である。

信号が青に変わり、ゆるりと車が進み出す。
前方に向き直る彼の横顔は、先ほどより表情が和らいでいた。ゆるゆるだ。

まったく、どうしようもないなぁ…
などと思っている私の表情も、緩んでいるのだろう。
まったくどうしようもない。
164 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2015/02/23(月) 22:19:47.78 ID:fs97F+kQ0
さやちゃんこんばんは
ごゆっくりどうぞ〜
165 :さや ◆0j8YIq7DEniB [sage]:2015/02/23(月) 22:22:11.59 ID:jMUYMxANo



夕陽を背負いながら、決められた速度で一本道を進んでいく。
進む先に広がる景色は、後方からの光に照らされて常よりも美しい。
その実無機質な風景であっても、この時間だけは橙色に輝いていた。
暮れ始めた陽は直に沈み、今見えているこの景色も変わってしまうのだろう。



会話もなくなり、外の景色をぼーっと眺めていた。
何もしていないこんな時間さえも、幸福に感じられる。

「……ありがと」

小声でぼそっとお礼を言った。

そんな唐突な言葉に少し思案して、軽い口調で返してくれる。

「…これぐらいしかできないけどね」

迎えのお礼ととったのか、そう答える彼を見てつい顔が綻ぶ。
なんでもないかのような、彼らしいその言い方が堪らなく愛おしい。
そっと彼の膝に手を置いて、実感しなが言い添えた。

「そばにいてくれるだけでいいよ」

ただそれだけで、見える景色が変わる。
穏やかに明るむ日常は、時折目が眩むくらいに目映い。
隣にいるだけという幸福な時間が確かにあるのだ。

166 :さや ◆0j8YIq7DEniB [sage]:2015/02/23(月) 22:25:51.82 ID:jMUYMxANo



果たしてその言葉は、彼にはどう伝わっていたのだろうか。
かけがえのない彼自身はどう受け取ったのだろうか。
そばにいる、だけ。

「…そう」

すっかり盲目な私は、短く答えた彼の言葉の意味も見えず、添えた手だけで軽く返事をした。




分岐のない道を進んだ先、三叉路に突き当たった。
右折した先は入り組んだ路地を進んでいくことになる。
薄暗い夜道には、点滅するウィンカーの灯りが瞬いていた。


ーーーーーーーーーー
167 :さや ◆0j8YIq7DEniB [sage]:2015/02/23(月) 22:28:24.92 ID:jMUYMxANo

とりあえずここまでです。

こんな感じで進めていきますので、よろしくお願いします。


>>164
こんばんはー
ありがとうございます!
168 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2015/02/23(月) 22:31:31.53 ID:fs97F+kQ0
大作の予感だね
伏線っぽい個所がチラチラあって気になるぜ

人生それは死ぬまでのY字路〜
169 :さや ◆0j8YIq7DEniB [sage]:2015/02/23(月) 23:29:37.97 ID:jMUYMxANo
>>168
まだまだ続きますw
だいたい伝わったでしょうか(^^;;

きっと分かれ道ばかりですよね。
170 :さや ◆0j8YIq7DEniB [sage]:2015/02/24(火) 00:23:44.41 ID:Kt+6EBa7o
今日は以上になります。
次の話がまとまったらまた来ますね。

それでは、失礼します。
171 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2015/02/24(火) 05:17:31.90 ID:PDmYixgSo
さやにゃんのまたの登場を楽しみに待ってるね〜
172 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/24(火) 09:26:59.27 ID:Y5qYT1uGo
なるほど…
つまりいーにゃんがえふにゃんになったわけですね!
173 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/25(水) 05:55:59.28 ID:fUlGavmro
おはようでめす、38にゃん。

こういう文章、懐かしい感じ……。
お待ちしております。


ではノシ

>>172
それはステキだね!
174 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/26(木) 21:26:14.31 ID:4QONYRmuo
こんばんは。

温かくなってきて徐々に花粉が…
花粉症の皆様、今年もなんとか乗り切りましょう。


次の話ももう少しですので、少々お待ちください。


>>171
ご清覧ありがとうございますw

>>172
いえ、それはちがいます(真顔)

>>173
懐かしいですかねw
今後ともお願いします。
175 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/26(木) 21:38:43.64 ID:GgQJNybu0
さやにゃんこんばんは まってたよ
176 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/26(木) 22:07:46.39 ID:4QONYRmuo
>>175
こんばんは。
お待ち下さってありがとうございますw


それでは、投稿していきますね。
177 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/26(木) 22:10:28.16 ID:4QONYRmuo

ーーーーーーーーーー


12月某日

休日の昼下がり。
とはいえ、私は大学で用事があったので登校していた。
その帰り道、自宅の斜向かいにある家の前で見慣れた姿を見つけた。

「あれ、いーちゃん」
「あ、おかえりー」

スマホを片手に振り向き、手を振って笑顔で挨拶してくれる。
うん、今日もがんばれる。

「どうしたの?」
「しょうちゃんと一緒に課題する約束してたんだけど、まだ帰ってきてないみたい。バイト終わってないのかなー」

しょうちゃんのバイトは通例のシフト制勤務だが、休日だとたまに延長することがある。
彼女もそれを知っているからか、特別気にしていない様子だ。

「そっか…。それなら…」

先に上がらせてもらえば、と言いかけて庭先の方に目線を移すと、普段停まっている車がない。
きっとご両親も外出中なのだろう。

「……うちで待ってる?」

変に間が空いた誘い方になってしまい、まるで誘っているようだ。いや何を。

「…?うん、そうする」

一瞬首を傾げるも、にこっと笑顔で首肯する。
これで明日もがんばれる。

助かったー寒かったよーきゃっきゃ、ひゃっ冷たーやめてよーうふふ、など言いながら、直ぐにうちの前に到着した。
これは一週間分くらいかもしれない。

178 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/26(木) 22:12:02.14 ID:4QONYRmuo

我が家も全員外出していたため、リビングに上がってもらった。
そちらの方が私の部屋より暖まるだろう。

エアコンと炬燵の電源を付け、電気ケトルに水を入れてスイッチをONにする。
彼女はうちの犬をわしわし撫でまわしながら、んーあったかーいと御満悦な様子だ。
こちらとしては、そちらの大きなわんちゃんをわしわししたい。

とか、益体のない願望に思いを巡らせていると、炬燵卓に置かれた彼女のスマホが振動した。

「おつかれー。ううん。いいよー。さやちゃん帰ってきたから入れてもらった。うんーーー」

しょうちゃんからの電話らしく、どうやらバイトが終わったようだ。

電話する彼女を横目に洗面所に行く。
冷たい水で手を洗っている間に、お湯は沸いているだろう。
179 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/26(木) 22:18:39.29 ID:4QONYRmuo



「何の課題?」

炬燵で暖をとる彼女に、簡素なコーヒーを差し出しながら尋ねた。

「ありがとー。○○学の。苦手なやつー…」
「あー、言ってたね」
「うん。その課題がさー、ーーー」

講義の内容に対して考察するという課題が、毎週出るらしい。確かに中々大変だ…。
前に聞いたことがあった。
彼女は苦手だというが、しょうちゃんはそうでもないらしい。
だからきっと、頼りにしているのだろう。

同じ大学に進学した私たちだが、学部が違えばこうしたことはほとんどない。
専門科目が増えるこの先は、もっとなくなるのだろう。

羨ましいと、そう思った時もあった。
自分で選択した道に決して後悔はないけれど、少しばかりは考えてしまった。
尤も、新たな事に充実している今となっては思わなくなった。
そもそもこういう考えは、進路に悩んでいた2人に、それ以外の人たちにも失礼だ。


「…羨ましい?」

私の顔を覗き込みながら、からかうような表情で聞いてくる。

相変わらず鋭いなぁ…。
当たってはいないけど、どんなことを考えているかはわかるらしい。
まあ、当たってないのもわかっていながら言っているのだろうけど。

「……別に」
「えー?今から2人っきりで、ぴったりくっついて課題するんだよ?」

何を今更…そちらのことに関しては羨ましく思ったりしたことはない。

「そんなこと…。私なんて、昨日は…」
「……え、なに?」
「い、いや、べつに…」
「なに?何したの?」

両手で顔を挟んで、じーっと目を見て「教えろー」と問い詰めてくる。
や、やめてーどきどきしちゃうからやめてー

目を逸らしつつ、やっぱり勿体無くて見つつしながらやり過ごした。

ただの予定調和である。
そして、これが彼女なりの優しさであり気配りであることを、私はよく知っている。

180 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/26(木) 22:21:14.42 ID:4QONYRmuo

そんな他愛ない会話をしていると、漸くにインターホンがなった。
彼女も一緒に炬燵から立ち上がり、玄関に出迎えに行く。

「おつかれさま」
「おつかれー」
「ありがと。ほんとごめん…。さやがいてよかったよ」
「そうだよー寒かったしー」

申し訳なさそうに謝る彼に、彼女が憎まれ口を叩く。
まあバイトで仕方ないのはわかっているから、もちろん冗談だ。

「いいよ。……さやちゃんと、あっためてあってたから…」

ちろっと上目遣いで、意味あり気につぶやく彼女。
ひゃあああ。

「…ほう。くわしく」
「えー?ひみつ」
「そこをなんとか!」

まあ実際は、彼女は炬燵とかコーヒーで温まったくらいだし、私としては彼女の可愛い仕草一つ一つに心温まっただけだ。
あれ、あっためあってる。

「…ないしょ」
「なに!?マジだったのかよ…」
「ふひひ」

でれっとだらしなく笑うと美人が台無しである。
いやそんな顔も可愛いけど。

以前から変わらない予定調和だ。

181 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/26(木) 22:27:00.97 ID:4QONYRmuo


玄関から出ると、振り返りながら私に声をかける。

「さやちゃんも一緒に来る?」

さっきは2人きりなんて言っておきながらも、誘ってくれる。
まあ冗談で言っていたのだから普通の流れだけど。

「んー…私も仕事でやることあるから」
「そっかー」
「ごめんね」

遠慮したわけではなく、本当にやらないといけないことがあった。
これも今更、遠慮することもないし。

「じゃあ2人っきりだー」とか言う彼女をあしらいながら、庭先から2人を見送った。


もしも、私と彼が同じ学部で、同じ課題が出されたとしたら。
あんな風に2人で課題に取り組むということがあったのだろうか。
きっとそうはなっていないのだろう。

それは私の問題で、真面目で堅いと言われる変わらない性根の所為だ。
自分の考えを述べるような課題なら、自分で、1人で向き合って考えたいと思っているし、実際そうしている。
私と彼女で考えてみても、変わらないと思えるし、他の子でもそうだ。

だからこれは、彼と恋人同士であるからというわけではない。
たとえ、彼と恋人同士でなく、仲のいい友達であったとしても、この関係は変わらないのだろう。

そんな益体もないもしもの話を考えてみたりした。


リビングのエアコンと炬燵の電源を切り、二階に上がる。
迎え入れる人のいない自室は、いつも通り寒々としていた。


ーーーーーーーーーー

182 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/26(木) 22:29:23.54 ID:4QONYRmuo
以上になります。

たとえ天地がひっくり返っても、いーちゃんは可愛い。
183 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2015/02/26(木) 22:37:53.90 ID:t6W86DSI0
むむむ

じらすなあwwww
184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/02/26(木) 22:47:56.73 ID:3QUXsGUNo
さやしゃん、こんばんは〜

いやあ、相変わらず両手に花で羨ましい!
ん?間違っている?いない?よね?

…さやしゃんの両手には花を?その花の両手は…いーおっp(ゲフンゲフン
185 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/26(木) 23:08:42.81 ID:4QONYRmuo
>>183
焦らしますw
私も振り返り中ですので、お付き合いいただければと思います。

>>184
こんばんはー
間違ってないですよww
もちろん私も両手に花です。華ですよ!
186 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/27(金) 02:34:26.96 ID:EAFDiDJmo
もう一つできたので、投稿しておきますね。
187 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/27(金) 02:36:26.01 ID:EAFDiDJmo

ーーーーーーーーーー

12月某日


パソコンを起ち上げてからどれくらい経っただろうか。
数行しか埋まっていないワードを見て、思わずため息をつく。
時計を見ると、とっくに日付けが変わった時間だ。

最近仕事で任されるようになった報告書と悪戦苦闘していた。
いや、闘いにもなってないけど。

明日、というか今日も朝早いし寝ようかと考えていると、隣の部屋のドアが開く音が聞こえた。
それに続いて階段を降りて行く足音がする。

隣には妹の部屋がある。
高校では、今はテスト期間中だと言っていた。勉強していたのだろう。
こんな時間まで…今日は休みとはいえ、さすがに心配だ。
部屋から出て、追うように私も一階へ降りた。
いつものやかましいお小言である。


188 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/27(金) 02:37:48.18 ID:EAFDiDJmo


妹はキッチンで飲み物を注いでいた。

「あ、さやちゃん」
「まだ起きてたの?」
「うん…。勉強してた」

答える表情は、少し暗い。
まあこの時間だからというのあるだろうし、不安もあるのかもしれない。

「そう。でもこんな時間までやらなくても…」
「さやちゃんも起きてるじゃん」
「…私は、仕事で」
「……すごいなぁ」
「なんで。別にすごくないよ」

実際ほとんど進んでなかったし…。
妹にそう言われてしまうと、後ろめたい。

「…ううん、すごい。大学行って、勉強して、仕事もしてる」
「…」

彼女はそう呟くように言って、僅かに憂いを帯びて微笑んだ。

「私なんか学校のテストぐらいでも全然ダメだよ……」

その微笑みを嘲笑に変えて、弱音を吐く。
…お小言言ってる場合じゃないなぁ。

189 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/27(金) 02:40:59.05 ID:EAFDiDJmo


深夜だからか、勉強で疲れているからか、いつも以上に弱気になっている。
10月の実力テストの結果も関係しているのだろう。
決して悪い成績ではなかった。ただ、僅かだけど1学期のテストより順位が下がっていた。
中間の前にあった実力テストで下がって、中間でさらに…だった。
だから次こそは…という重圧もあるのかもしれない。

……加えて、私の成績と比べているというのもあるのだろう。
というか、妹にとってはそれが主なのだ。
いくら気にしなくていいと言っても、中々に譲れない所があるらしい。
それが良いことか悪いことかは一先ず置いておくとしても、最愛の妹が苦しんでいるのを良しとすることはできない。
伊達にシスコンをやっていない。

過去の私の結果はどうすることもできない。
だから、今の、今後の私自身がどうにかしなければいけないのだ。いや、どうにかしてあげたい。

とりあえずは、その落ち込んだ表情を見ていられないのでなんとかしよう。

190 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/27(金) 02:42:50.36 ID:EAFDiDJmo



そっと妹の頭に手を伸ばす。
子供を寝かしつけるように、努めて優しく撫でながら伝えた。

「大丈夫。…テストの一回ぐらい、どうってことないよ」
「……でも、一回でも悪かったら、成績下がるし…」

いつか言われたお兄ちゃんの言葉でも、あまり効果がない。

「…で、でも、まだ一年生なんだから、そんなに頑張らなくたって…」
「…一年生で、もう置いてかれてたら追いつけないよ…」

考えつくのは、こんな当たり障りないことばかり。
語彙力の無さが歯痒い。
励まそうとしている私の方が狼狽える始末…。
困った。困るのが早すぎて困った。

伝える言葉もないまま、偉大な母にあやかる。
撫でていた手を背中にまわしてそっと抱き寄せた。

「う…?」
「わ、私は…あやに、苦しい思いしてほしくないよ」
「…うん」
「勉強なんかできなくても、…元気でいてくれれば、それでいい」

過保護と言われるものかもしれないけど、実際そう思うのだから仕方がない。
私の本心からの、唯一の願いだ。
あとは可愛い笑顔を見せてくれるだけでいいし、それと「さやちゃん大好き」とか言ってくれたらうれしいし、
たまにこうして抱かせてくれたらこんなにうれしいことはない。
唯一で唯一に唯一な願いだ。
まあ要するに元気でいてほしい。


191 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/27(金) 02:44:26.70 ID:EAFDiDJmo


私の腰に回された手に、きゅっと軽く力が入る。
そして、疼くまっていた顔を上げて、にこっと笑った。

「……勉強もできるし」
「あ…う、うん、ごめん」
「へへ。ありがと!」

元気よく言って、もう一度ぎゅーっと抱きついてくる。
痛い……でも痛くない…きっと目に入れても。

…これでよかったのか。
答えはわからないけど、今見ている笑顔は唯一の願いの一つに違いない。

「じゃあ、今日はもう寝ようね」
「うん。そうする」

最後にもう一度頭を撫でて、2人で二階へと上がった。

私も寝よう。
いや、でも全然できてないしなぁ…せめて取っ掛かりだけでも掴んでから…。

「おやすみー。さやちゃんも寝てよ?」
「…うん、寝るよ。おやすみ」

見事に筒抜けである。
最愛の妹に言われては仕方ない。
パソコンを落として、消灯した。

192 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/27(金) 02:47:53.07 ID:EAFDiDJmo


寝るとは言ったものの、さっきのあれでいきなり就寝とはいかない。興奮冷めやらぬ。
恥ずかしかったという意味で。深夜のテンションだったのだ。
眠りにつくまで、少し考える。


妹から、私はどう見えているのだろうか。
いい姉。とは思ってくれているのだろう。…そうであってほしい。
尊敬できる姉。とも見てくれているのだと思う。自惚れでもなく。
目標。これも大体あっているのだろう。
理想。真似しようとしたり、そう思っている節がある。
ライバル。時にそう考えていることもあるのがわかる。

周りの人達のお陰で、今は私自身、自分をそれなりに評価している。
だから、これらもそこまで悪いことだとは思わない。
そうして比較して成長できるなら、結果としていいことだと思う。

けれど最も身近な所にそうした存在がいるというのは、どんな気持ちなのだろうか。
…知っている。何度も苦しむ姿を見ているのだ。

往々にして兄弟姉妹とは、比較されて育つものなのだろう。
けれど私たちにはそうしたことがあまりなかった。
だから慣れを知らずに、今こうして苦しんでいるのかもしれない。


そばにいるだけで、苦しめてしまうのなら。ならば私は甘々でいよう。
一方的な押し付けであっても、唯一の願いを叶えるためにそうありたい。


考えた末に至った思いは、結局先ほど抱き合った時の気持ちと同じだった。
寝る前なんてこんなものかな…。

寝てよ?という彼女の言葉を思い出し、寝付く感覚に包まれていく。
あ、寝れる…と感じながら、頭の中の誰かに向けておやすみと挨拶した。


最も身近な存在として、私から見て、或いは彼から見て、お互いがある。
ふと過ぎったこの事について、その時は深く考えはしなかった。


ーーーーーーーーーー

193 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/02/27(金) 02:52:05.02 ID:EAFDiDJmo
以上です。


「姉や妹を溺愛しているなら、性別問わずシスコンと言うでしょ」
つぐみさんのお言葉により、私は姉バカからシスコンとなりました。
194 : 【大吉】 [sage]:2015/03/01(日) 00:10:48.71 ID:gYgag33DO
シスコンの二人に幸あれ
(もう一人のシスコンは前々スレを見r(ry
195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/03/01(日) 20:41:31.39 ID:e7L90X+Ao
どじっ娘寝子にゃん、おつかれさま〜〜
前と文体が少し変わったよねw

読んでる本の影響かな?
最近の愛読書はなんだろww


意味深な終わり方で続きが気になるw
愛すべき姉妹に幸あれ〜!
196 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/07(土) 22:15:54.33 ID:8bo9HzHDo
時間が空いてしまってすみません…。
只今次の話を書いていますので、今日か明日には再開できると思います。



>>194
私達だけでなくシスコンばかりな私の周り…
いーちゃんのお兄さん然り、私の妹然り(願望)。

>>195
お久しぶりです!

実は結構前につぐみさんからの依頼で、同人誌で数ページほど小説を書きました。
「次もお願い」とお褒めの言葉をいただきまして…その練習も兼ねて、少し意識して書いていますw
愛読書というとそう変わってないですけど、参考になるような本は色々読みました。

まだまだ続きまして…恐縮ですが気長にお待ち下さいませm(_ _)m
197 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) [sage]:2015/03/07(土) 22:29:07.12 ID:W4Iq+ulDo
さやちゃん こんばんは

その小説ってエロいの?
是非ここでさわりだけでも(*'∀'人)
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/03/07(土) 23:15:30.21 ID:ADyQ3ayJo
紳士協定違反です
199 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/07(土) 23:40:54.45 ID:8bo9HzHDo
>>197
こんばんは。

全年齢対象です!
私だけの作品ではないのでそれは…すみません。
つぐみさん所属のサークルということで、内容はお察しです(^^;;


>>198
協定に則り、無事故無違反ですよw
200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/03/08(日) 10:47:25.48 ID:lxqCSMm1O
だからあれほど何か始める前に呼べとだな(´・ω・`)
久しぶりにリアルタイムで見れそうですww
ゆっくりまったり、いつものペースで待ってます。

あ、女の子産まれたよww
三姉妹の誕生だよww
201 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/08(日) 22:05:26.77 ID:7epQtOWCo
>>200
わあ、お久しぶりです!
唐突ですみません(^^;;

なんと!おめでとうございます!
当時を思い出すと、生意気にも感慨深い気持ちになります。
お幸せにw
三姉妹とは、益々パパ大変…w
202 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/08(日) 22:51:56.58 ID:7epQtOWCo
ようやく書き終わりましたので、投稿していきます。
203 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/08(日) 22:57:39.27 ID:7epQtOWCo

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11月某日


方々から人が流れ込み、吹き溜まりのように喧騒が広がっている。
一斉に昼休みとなるこの時間、学内で最も人が多いであろうこの場所は、食堂である。

私は基本弁当を持参しているので、あまりこの食堂を利用しない。
大体自分の教室で食べている。
今日も弁当はあるが、一緒に食べようと約束があった。

その約束の相手を探していると、後ろから軽く肩を叩かれた。
突然の衝撃に勢いよく振り返ると、淑やかに微笑む、慣れ親しんだ表情が眼に映る。
約束相手の、つぐみさんである。

いやあまり淑やかとは言えない…何が可笑しいのか、少し口を歪ませて微笑んでいた。

「ふふ、ごめん。待った?」
「あ…ううん。今来たとこ」

実際に来たばかりだったのでそう答える。
図らずも、今では聞くこともないような定番の返しをしてしまった。

「ふふふ、100点の答え」
「いや、本当に今来たところだったから…」

ぐっと顔を寄せ、両手で頭を撫で回してくる。

やめてー心地いいけど恥ずかしいし直視できないから今度人がいないとこでして。

その両手から抜け出そうしていると、すぐ近くから熱い視線を感じる。

「ふひひ、いいっすなー」

だらしなく眉を下げて笑う彼女。これも見慣れた光景だ。

彼女はつぐみさんと同じ学科で、且つサークル仲間でもある。
今では私もよく知る仲となった。
サークル仲間ということで、名前はさくらさんとしよう。

「さくら。はしたない」
「つぐみさんもでしょ…」
「むふふ、ごちそうさま」

特徴として、笑い方が結構はしたない。いやいい意味でだけど。

そして、つぐさや推しだそうだ。つぐいーも好きらしい。つぐりんもいいとか。
要するに、つぐみさんが好きなのだ。
204 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/08(日) 22:59:38.98 ID:7epQtOWCo


きゃっきゃうふふぐふふ言いながら、3人で座れる席を探す。
こうして誘われた時くらいしか来ないので、この喧騒にも慣れておらずどうも居心地が悪い。

漸く空いている4人席を見つけ、ほっと一息つく思いで椅子に座る。

「つぐちゃん、何にする?買ってくるよ」
「……じゃあ、◯◯で」

つぐみさんは逡巡して、さくらさんにメニューを伝えた。
今考えたのは、メニューのことだけではないのだろう。

「はいよー」
「…ごめんね。ありがとう」
「いいっていいってー。じゃあ行ってくる」

笑いながら軽く言って、財布を手に喧騒の中をすいすいと進んでいった。

謝ってお礼を言ったのは私だ。


以前3人で食堂に来た時のこと。
その時も私は弁当を持ってきていたので、2人が食事を運んでくるのを席で待っていた。
慣れない騒がしさで居心地の悪さを感じつつも、きょろきょろそわそわしながらぼーっと待っていた。
全然ぼーっとできていない。

戻ってきたさくらさんに、「ごめんね、心細かった?超落ち着きなかったよ。次からはつぐちゃんに付いててもらおうね」
なんて言われてしまったのである。

別に大丈夫なんだけど…きょろきょろは元々だし。というかはたから見てそんなにあれだったのかな…。

まあそんな気遣いに加えて、彼女の「つぐみ様のお食事ならよろこんで用意するよ!」という言葉で、今回のような運びとなったのである。

205 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/08(日) 23:03:17.50 ID:7epQtOWCo


気さくであっけらかんとした性格の彼女は、人見知りな私でも話しやすい。
その性格とは対照的というか、時折見える繊細な女性らしさもあり、こうしてなんでもないかのように気遣いをしてくれる。
普段のはしたない笑顔に隠された本音のように。
まあ、その本音はないのかもしれないけど。


そんな彼女がつぐみさんに付いていてくれることを、嬉しく思う。
友だちの多いつぐみさんだが、不思議と彼女に対してはそう思うのだ。
いーちゃんと似ているようで、また違った何か。
206 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/08(日) 23:06:10.60 ID:7epQtOWCo


人混みに消えていく彼女を目で追っていると、向かいに座るつぐみさんが口を開く。

「花開いたの?」
「ちがうから…」

何の花も開いてはいない。
まあ、そんな表情に見えたのかもしれないけど…。

「いい子でしょ」
「うん」
「ふふ」

少し誇らしげに微笑むつぐみさん。
その表情に私も嬉しくなる。

「…それに、つぐみさんすごい好かれてるね」

つぐみさんを慕うさくらさんと、それを誇らしく思っているつぐみさん。
これには花が開かないとも言えない。

「まあね。ほら、私オタサーの姫だから」
「全然違うでしょ…」

軽い冗談が返っきてしまった。

自分で言うのはどうなんだろう…。
でも、全然違うとも言えないのかな…サークルの皆(ほぼ同性)にちやほやされてるし。
決定的に違う所と言えば…。

「つぐみさんは本当に可愛いから!」
「あら、ありがとう。サークルの皆もそう言ってくれるわ」
「…姫じゃん」

そんなやり取りをしていると、さくらさんがトレーを持って戻ってきた。

「おまたせー」
「ありがとう。大好き」
「ええっ?ううん…いいよ…うへへ」
「やっぱり姫だ…」

つぐみさんに頭を撫でられ、はしたなく笑うさくらさん。
立派なお姫様の振る舞いであった。
きっと、私も家来の1人。


とまあ、昔から変わらない彼女の軽い悪ノリである。
実際は傲慢な態度もとらないし、もちろんサークルクラッシュもない。

207 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/08(日) 23:09:49.40 ID:7epQtOWCo


全員食事が揃ったところで、一様に食べはじめる。
主にサークルの話で盛り上がる2人の会話を、相槌を打ちながら聞いていた。
私も所属はしていないけど、何度か参加したことがあるので、少しは話がわかる。


大学生となった彼女の世界は大幅に広がった。
学内のサークルや同人サークルなど、積極的に活動している。
共通の趣味を持つ仲間に囲まれ、生き生きしているのがわかる。
またその趣味以外のこともよく知っているため、色々なところからお声がかかるらしい。
学科内での信頼も厚い。
ひとえに、彼女の人徳のなせる業だ。

対して私は。
方向性は違えど、私の世界も広がった。
研究室で知識を深め、仕事で様々な経験を積ませてもらっている。
私にとってはどれも充実したものだ。
しかしそれは、私一人の世界に過ぎないのかもしれない。

自身の向上だけを目指して進んだ先に、広がる世界。
そこには、住み慣れた町は残っているのだろうか。

208 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/08(日) 23:12:39.88 ID:7epQtOWCo


「さやちゃん、今日サークル来れる?」
「んー……うん。いいよ」
「そ。よかった」

特別予定もなかったので、承諾した。
笑顔で喜んでくれるつぐみさんを見て、つい私も顔が綻ぶ。
隣のさくらさんもはしたなく。



彼女はこんな私にも目を向けて、こうして誘ってくれる。
決定的な何かが違う彼女と私の世界は、彼女の差し伸べる手だけで繋がっていたのかもしれない。

欲しいものがあるのなら、形はどうあれ手を伸ばす。
でなければなくしてしまう。離れていってしまう。
たとえどこかの世界の姫であろうとも、それは変わらない。


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209 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/08(日) 23:21:10.65 ID:7epQtOWCo
以上になります。

共有できるキャンパスライフの1つの形です。
210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/03/09(月) 00:16:46.80 ID:yW+21/gnO
乙でした。
とうとう百合の花が開く時が…(`・ω・´)

充実した大学生活を遅れてるのかな?
昔より重い文に感じるのは、さやちゃんが大人の女に成長してドジっ娘成分が薄れたからなのかな?ww

色々あるだろうけど、息抜くときはしっかり抜こうねノシ
211 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2015/03/09(月) 00:22:19.91 ID:MaV7XOMM0
幕が上がるか、上がらないのか…
ふひひ
212 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/09(月) 00:56:04.07 ID:8jfliGUIo
>>210
ありがとうございますw
練習として、百合増しで書いています(^^;;

すべて順調とはいきませんが、充実してますよw
実際重く考えているからですかね…。
もちろんそれもありますよ!元々どじじゃなかったですけど!

幸せな報告が聞けて息抜きになりましたww
ありがとうございました。

>>211
そんな舞台もありえたのかもしれません。
そろそろ花咲く季節の幕開けですね(意味深)。
213 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/26(木) 18:59:26.97 ID:69z9u1eTo
こんばんは。

遅くなりましたが、続きを投稿していきます。
次からは短めにします…。
214 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/26(木) 19:02:58.61 ID:69z9u1eTo
--------------------


10月某日


講師の先生が講義の終わりを告げると、先刻までの沈黙を破ってあちらこちらから話し声があがる。
その声は次第に大きくなり、たちまち喧騒へと変わっていった。
いつもの授業終わりの光景である。

板書したルーズリーフをぱらぱらめくり、見返して頭の中で整理する。
まだまだ基礎の段階ではあるけど、専門科目の講義は面白いと感じられる。
特にこの先生の講義はわかりやすい。
今日の内容も満足できるものだった。

そんな感想を胸に、荷物をまとめる。
次の時間はこことは別の広い教室で行われる講義がある。
選択科目なので、クラスの全員が移動するわけではない。
というかこのクラスで選択している生徒はほとんどいない。
そのためか、毎週この時間はいつもの休憩時間よりも騒がしくなるのだ。

移動しようと立ち上がると、隣の子と談笑していた前席の男子が、こちらを見上げて声をかけてきた。

「もう移動すんの?俺も一緒に行くわ」

彼も次の講義を選択している。

「あ、ううん、えっと…ちょっと寄るとこあるから」

逡巡しながらそう返すと、「そっかー」と特に気にする風でもなく彼は答える。
その彼と隣の子にも簡単に挨拶して、席を離れた。
まあこの短い休み時間で立ち寄るようなところもないけど…トイレくらいは寄るかもしれないし。
215 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/26(木) 19:10:02.95 ID:69z9u1eTo


喧騒をすり抜けるて教室を出ると、廊下もまたそこそこに賑わっていた。
歩き出して程なく、進行方向から私を呼ぶ声が聞こえてくる。

「さやちゃーん」

その声がする先には、見慣れた彼女の姿があった。
笑顔で大きく手を振る彼女は、モデルのように背が高く華やかで、大勢の中でも一際目立っている。
高校からの友人、りんちゃんだ。
今日も見目麗しい。

周囲の子達に一言二言挨拶してから、こちらに駆け寄ってくる。
ひらひら踊るスカートに目が奪われる私は、きっと正常。

「おはよー」
「おはよ」

笑顔で挨拶して、雑談しながら講義室へと向かう。
彼女もこれから同じ講義を受けるのだ。

同じ学部の彼女とは、いくつか同じ講義がある。
それも前期は結構あったが、後期では随分少なくなってしまった。
今日のこの講義は、彼女と一緒に受けられる貴重な時間だ。
216 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/26(木) 19:13:32.34 ID:69z9u1eTo

こころぴょんぴょん移動中の一時の会話を楽しんでいると、そのままの流れでトイレに入っていくので私もそれに続いた。
彼女は奥の個室へ進んでいく。
手持ち無沙汰で鏡を見ながら前髪を弄っていると、後から入ってきた子の内の1人と鏡越しに目が合った。
同じクラスの子だ。

ばっちり目が合い、そしてややわざとらしく、ふいっと逸らされる。
彼女達はそのまま奥に進んでいった。

うーん…まあ、私も大体同じ気持ちだけど…。
先日の事を考えれば、これも致し方ない。

そんな憂いもわずか、入れ違いで出てきたりんちゃんを見て、すぐに心が弾んだ。
ああ^〜ぴょんぴょんする。

相当はしたない顔をしていたのか、はたまた複雑な顔をしていたのか、「ん?」と訝しむ顔を向けられる。
なんでもないとかぶりを振って、誤魔化した。

手を洗う彼女にならい、私も目に見えない何かを冷水で洗い流した。

217 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/26(木) 19:14:40.51 ID:69z9u1eTo

教室で講義の始まりを待つ間、側を通る子の何人かがりんちゃんに声をかけていく。
男女問わず、みんな弾んだ声だ。

屈託のない素敵な笑顔で話す彼女といると、自然とこちらも笑顔になる。
きっと誰もが同じ気持ちになるのだろう。
華やかな彼女の周りには笑顔が絶えない。


「---って言われてー」
「あーね」
「あるわーそれ」

近くの席の子達とは、楽しい会話が広がっている。私も何度か話したことのある子だ。
相槌を打ちながら、なんとなく混ざっていた。

その談笑中、ふと脈絡もなく、りんちゃんに両手で手を握られた。
当の本人はそれについて触れず、会話を続けている。

なんのことはない、いつもの癖である。
218 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/26(木) 19:16:43.54 ID:69z9u1eTo


高校の頃から、彼女のこうしたスキンシップはよくあった。
無意識に触ってしまうらしい。
最初の頃はおどおどきょどきょどしていたけど、今となっては慣れたものだ。
動揺したりしない。もちろん高翌揚はする。

「……仲良いねー」
「んー?うん、まあねー。ねー?」
「う、うん」
「微笑ましい」
「あはは」
「ちょ、ちょっと…近いって」

煽られて更に、ぐーっと顔を寄せて頭を撫でてくる。
慣れた慣れた…ふひひ。
はしたない笑いは心の中だけで。

決して誰にでもするわけではない。
特別仲のいい子だけである。
私の知るところ、いーちゃんとつぐみさん、それに大学でよく一緒にいる子くらいだろうか。
…しょうちゃんにもしていたが、一度怒ってからは止めた。
ちなみに怒ったのはいーちゃんで、怒られたのはでれでれしたしょうちゃんである。

それだけ気を許してくれているのは、心から嬉しい。
ますます素敵になる彼女が変わらず近付いてきてくれることを、誇らしく思う。
それに甘えている。

それは純粋な気持ちのようで、たちの悪い自尊心なのかもしれない。


程なくして講義が始まった。

離された手には、ほのかな温もりと一抹の寂しさがわだかまっていた。
219 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/26(木) 19:21:58.32 ID:69z9u1eTo



「それじゃ、先戻るね」
「うん、じゃあねー」
「またね」

彼女と一緒の講義はあっという間に終わりを迎える。
別の友達と会話に花を咲かせている彼女に別れを告げ、その場を後にした。
離れても、明るい空気は伝わってくる。少し名残惜しい。

扉近く。元いた席の方を振り向くと、偶然なのかこちらに視線を向けた彼女と目が合った。
期待通りの笑顔で大きく手を振ってくれる。
小さく手を振り返して、満ち足りた気持ちで退室した。

弾んだ気持ちも周囲の賑わいに高まることはなく、教室に向かううちに平静に戻っていく。
教室内での視線にもその平静を乱されることはなかった。
220 :さや ◆0j8YIq7DEniB :2015/03/26(木) 19:23:58.83 ID:69z9u1eTo
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以上です。

これも1つのキャンパスライフの形。
221 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/03/26(木) 19:57:48.86 ID:iOb/k8LNo
こんばんは〜

…って…ん?
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