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【能力】ここだけ異能者の集まる学園都市【魔術】 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆Fff7L077io :2015/06/27(土) 15:00:58.14 ID:l7kpc+Sq0
このスレッドは学園都市と称していますが、とある魔術の〜シリーズとは世界観の異なるものです。
とあるシリーズを舞台としたスレッドをお探しでしたら、申し訳ありませんがブラウザバックをお願いします。

ここは異能者……能力者が集まる大都市。通称:学園都市である。
この都市は学園都市の名の通り、人口の8割程度を学生が占めている。さらにその学生の殆どが能力者であり、学生は皆、異能の力と共に共存している。そしてまた、その背後には別の異能を操る者の存在も…………。

(世界観や用語について詳しくは>>2参照)


ここは自分自身のオリジナルキャラを創作し、他プレイヤーのキャラとある時は何気ない日常風景、あるときは戦闘などを文章で交流するロールスレッドです。



【キャラクター作成について】
・プレイヤーが使用するキャラクターは、無能力者、能力者、魔術師の中から選択し作成できます。
・能力者はLevel1〜4、魔術師はランクD〜Aまでのキャラが作成可能です。
・学園都市で生活するどのような人物でもルールの範囲内であれば制作が可能です、但し能力者のみは学生に限ります
・また、世界観に関わる組織の長やそれに準ずるような立場の人間はPCにすることは出来ません
・人外、また能力以上に特殊な生態を持つ存在はPCにすることは出来ません
・版権キャラクターをそのまま使用する事は推奨しません


【キャラクターの武装に関して】
・能力者側の特殊な武器(ex.炎で出来た剣、妖刀)の所持することは出来ません
・上記の特殊な武器の使用は魔術師側のみ認められています。
・能力者側は能力の応用で武器を強化する(又は能力を纏わせる)などは可能です
・学園都市内での過度な武装所持は風紀委員(>>2参照)によって取り締まりを受ける可能性があります
・魔術師の魔術の行使には何かしらの装備が必要となりますが、必ずしも武器である必要はありません

【キャラクターの所属する組織に関して】
・世界観を決定づける組織を個人の判断で制作してはいけません(議論スレへどうぞ)
・既存の組織の長にPCを設定することは推奨しません     (こちらも、議論スレへどうぞ)
・既存の組織に所属する事に制限はありません
・小規模、もしくは個人の範囲の組織を設定する事は可能です


ロールについては、スレッドに参加する前に、こちらのサイトによく目を通してください。
なりきりの基本となるマナーやルールが詳しく書かれています。↓↓
http://harmit.jp/manner/manner.php


したらば避難所雑談所
http://jbbs.shitaraba.net/internet/20492/

WIKI
http://www8.atwiki.jp/schoolcitiy/
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

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寝こさん若返る @ 2024/05/11(土) 00:00:20.70 ID:FqiNtMfxo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715353220/

第五十九回.知ったことのない回26日17時 @ 2024/05/10(金) 09:18:01.97 ID:r6QKpuBn0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715300281/

ポケモンSS 安価とコンマで目指せポケモンマスター part13 @ 2024/05/09(木) 23:08:00.49 ID:0uP1dlMh0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715263679/

今際の際際で踊りましょう @ 2024/05/09(木) 22:47:24.61 ID:wmUrmXhL0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1715262444/

誰かの体温と同じになりたかったんです @ 2024/05/09(木) 21:39:23.50 ID:3e68qZdU0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715258363/

A Day in the Life of Mika 1 @ 2024/05/09(木) 00:00:13.38 ID:/ef1g8CWO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715180413/

真神煉獄刹 @ 2024/05/08(水) 10:15:05.75 ID:3H4k6c/jo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715130904/

愛が一層メロウ @ 2024/05/08(水) 03:54:20.22 ID:g+5icL7To
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715108060/

2 : ◆Fff7L077io :2015/06/27(土) 15:01:34.93 ID:l7kpc+Sq0
【基本的世界観用語】
学園都市……数年程前に突如として10代の若者を中心に発現した”異能”、そしてそれを扱う”能力者”を教育収容すべく我が国日本が建設した研究都市。
10万人を超える人口を都市内に有しており、中でも学生の割合は8割を占める。


能力者………数年程前に10代を中心に発現した”能力”を操る者の事。
能力強度(単純な強さである為にその人物の戦法や工夫などは反映されない)によって1〜5までのレベル分けがされており、最高の強度を誇る能力者は俗に『Level5』と称されるが現時点で存在している能力者はLevel1〜4まで。

魔術師………能力が発現されるよりも遥か昔から受け継がれている、”能力”とはまた違ったタイプの”異能”。
数年程前から確認された新たな異能”能力”について調査する為に数多くの魔術師が学園都市に潜入している。
魔術に関わらない学園都市の人間からすればその存在はもはや噂のようなものである。
魔術師にはその技能によってランク分けがされておりランクはD〜Sまで存在する。(キャラ設定が可能なのはD〜Aまでです。)

魔術師はその思考によって大きく組分けがされており、それぞれ

[バルタザール]:穏健派。能力者側との接触の事前調査の為に学園都市に潜入している
[メルキオール]:中立派。能力者側の動向を監視する為に学園都市に潜入している
[カスパール]:過激派。能力者側の危険性を確認する為に学園都市に潜入している

という3つの組分けで、その思考のもとに全世界に様々な魔術組織が存在する。





【組織】
風紀委員会……全体の人口の内8割を学生が占める学園都市において、都市内の治安維持を司る組織。当然の如く、構成員は学生オンリーである。

管理委員会……学園都市の基本方針を司る学園都市の頭ともいえる組織。都市内の規律を制定するだけでなく、都市外との外交も司っている。

学園都市第一学園……都市内の数ある学園の中で最も規模が大きく、校風が自由である学園。
(この学園に必ず属さなければならないというわけではありません。)
3 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/27(土) 15:04:55.50 ID:l7kpc+Sq0
──学園都市。
能力という異能を提げた学生が収容され、其れ等の学生のみで日本の大都市圏の一環を成す。
世界最先端の技術を取り入れ、ハイテクノロジーとかいうモノが占拠している……なんていうイメージがあるこの学園都市。
しかし、憩いの場として機能する”公園”という公共施設はこの都市にも存在するのである。

これはとある日の公園での物語。

「───だぁっ!!やめだやめだ!!」

茜色の夕陽が水平線の彼方に沈まんとしている午後6時頃、一人の学生が公園のベンチに座り、何やら嘆いていた。オマケにプルプルと小刻みに震えている。
よくよく見ると彼女の手にとある携帯ゲーム機があるのが目に映ることだろう。その液晶画面にはGAME OVERの文字。直後に切り替わった画面から察するにスーパーマ○オブラザーズ系統のゲームだろう。

「…………ぁー……もう……ウザってえ。
なんで花が火の玉吐いてきやがんだ…………。」

愚痴の様なものを吐いて、溜息を一つ。
同時にグッタリと背凭れに体を預けた。
その学生……、高天原いずもは第一学園に属する高校生である。少し大きめの学ランを羽織り、ショートカットな頭には真紅の鉢巻きを巻かれている。
顔は女性っぽくはある。声も高い。
しかし胸が無かったりだとか容姿の要素が所謂「男番長」を形容しているようなものなので、
実際、彼女が「女性」であると知っているのは家族を含めた極数人。
容姿の通り、学園内では「番長」を自称しており其れなりに知名度があるが、そのアホさ故に「番長(笑)」だとか嘲られている面が多い……が。

「…………っしゃぁ!もっかい!あと一回だ!ラスト!」

唯一の問題は。
彼女が「だぁっ!やめだやめだ!」辺りからのこの一連の動作を二時間ほどこの場所から離れずに繰り返している事である。

馬鹿みたいに同じ言動を繰り返す彼女に対して、周囲の人間はどのような感情を抱くのだろうか。
もしかしたら、ゲームクリアを手伝ってくれるかもしれないし、先程から喧しいこの少女を注意するのかも知れない。
そして其れは勿論、たった今公園を通りすがった貴方、もしくは貴女次第である。



4 :エリティエ=ニクス RANK D :2015/06/27(土) 15:23:17.39 ID:fRcvoX2qO
>>3
エリティエ=ニクスは不幸体質である。
何かをする度に彼女には何かしらの不幸が降りかかり、被害を受ける。
偶然にしろ何にしろ、それが周囲にまで影響を及ぼすのだから、たまったものではない。
名付けらた冠名は「疫病神」。的確に彼女の性質を表した言葉である。
もちろん、その事を彼女は快く思っていないし、認められないが、長年付き合ってきたそれに慣れを覚えていないかと言えばそれも嘘で。

「はぁ……」

だから、憩いの場のはずである公園に来ても、ギャーギャー騒ぐ女に出くわしたせいでまったく憩えないという不幸に出会ってしまった事も、まあいつもの事かと思って。
見れば、どうやら同じ第一学園に属する生徒のようだ。こんなものと同じ学校に通っていると考えただけで恥ずかしくなる。
関わり合いたくないと思いつつも、やはり迷惑極まりないのも事実であり。

「うるさい…猿以下の知性しか持っていないのかしら…」

などと、ふと呟いてしまう。
風に乗ったその言葉が女の耳に届いてしまうかもしれない、なんて考えもせず。
彼女の座っているベンチの反対側の方に座って、本を読むのである。
5 :雨宮 初音 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/06/27(土) 15:24:20.83 ID:RJvLqSD90

学園都市・とある森林公園。
ビル群が立ち並び多くの人々が往来する街のなか、人工芝で覆われ植林された木々が生い茂るその公園は、都会の空気に疲れた人達にとってはオアシス的な場所。
それゆえに意外にも訪れる人は少なくはないようで。

「んーっ……快適!」

造られた草原の中央付近。植えられた木の下で休息をとるこの少女も、その中の一人だ。
風に揺らめく薄茶の髪とロングワンピースのような病衣。車椅子にもたれつつ、手には本を抱えている。
いかにも患者といった出で立ちの割にはどことなく活発そうな印象のある、そんな少女だ。
そんな少女が手にしているのは化学の教科書、ここで勉強でもするつもりらしい。ぺらりと公式が書かれているページを捲ってみる。

「……うう。いくら場所が完璧でも問題はよくわかんないなぁ。
 また、先生に怒られそうな予感が……うわっ!?」

途端に泣きそうな表情。勉強は苦手であるらしい。
自分の勉強のできなささに嘆く声が、不意に起きた突風によって素っ頓狂な悲鳴に変わる。
運が悪いことに教科書に挟まれていたらしきプリントが一枚、巻き上がった風によって飛ばされてしまい。
そのまま浮かび、地面に落ちてを繰り返しあらぬ方向へと移動してゆく。

/絡み文です…!どなたでもどうぞー

6 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/27(土) 15:35:26.75 ID:bg4djnYw0
>>5
風に飛ばされていったプリントは草原の向こう向こうへと飛んでいき、コンクリートで舗装された街道沿いにひらひらと落ちていった。

「……む」

その目前。緑に生い茂る木陰の道を歩いていた老人が、そのプリントを怪訝そうに拾い上げた。
オールバックの茶髪に立派に髭をたくわえ、ゴツゴツとした顔つきは、日本人のそれとはひと味もふた味も違う。
鮮やかな緑色の目を動かしながら、その落とし主を探し始めると、程なくして彼は、草原の木陰でこちらを泣きそうな目で見ている女学生を発見した。
聞くまでもなく、彼女が落とし主だろう。彼はプリントを掲げ、彼女に向けて若干声を張り上げ、一応の質問を投げかける。

「これを落としたのは、君かな?」

若干枯れてはいるが芯が太く、良く通る低い声でそう聞いた。
7 :ガイスト・ノイラ−ト ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/06/27(土) 15:39:05.28 ID:fJ96wqqV0

学園都市は広い。およそ十万を超える規模の人間を収容できるほどの施設といえば、その大きさも伝わるだろう。
近代的な施設が立ち並び、煌びやかなネオンの光すらないものの、夜は街灯の明かりで道に迷う事は無い。

だが、それだけの人間が生活しているとなれば当然、それ相応の暗がり≠ニ言うのは確実に存在する。
光がある所必ず影がある様に、住宅と住宅の間には隙間がある。店と店の隙間には路地があり、其処から先は光が消える。
純粋な正義、若しくは絶対的な法則に支配されない空間。路地と路地に挟まれた場所で起こりうるものは絶望≠ノ他ならない。
光り射すところが希望であるならば、逆もまた然り。僅かに響くくぐもった声が、しんとした静寂に投石する。

声がするのは地面からだ。其処に転がる様にして呻く人間――服装からして学生だろうか?
髪色は明るい茶髪だが、髪の毛の根元が僅かに黒いところから染めたものであるという事が分かる。
耳元に付けたピアスと乱れた服。だらしのない格好とその目付きの悪さから、現代社会においての秩序に反抗していることは確実だろう。
目立った外傷は無く、ならば何故地面なんかに転がっているのかと辺りを見回せば、その元凶はすぐ傍に居る。

目付きの悪い金髪に、赤色の瞳。明らかに日本人離れした容姿に加え、この学園都市ではあまり見られない黒色のスーツ。
キッチリと絞められたネクタイは彼自身の生真面目≠ウを表しており、推定される年齢は二十代後半。この学園都市では珍しいとすらいえる大人≠セ。

ただ一つ、この学園都市に存在する大人たちと違うところがあるとすれば、それは恐らく…………現実味が無い≠ニ言うところだろう。
子供を守るために、子供たちを教育するために来たのではなく、寧ろ正反対の理由でこの場所に立っているかのような視線。モルモットを見る様な、見下した瞳。
人間として、大人と言う子供に対しての理想とされる人間とは程遠い表情で、その右手に携えた拳銃≠持って、こう呟く。

「なァ? 『二兎追うものは一兎も得ず』って、知ってるか?」
「二匹の兎を追って、支払う代償を渋った奴には何にも残らない」
「どちらかを得るには、何方かを捨てなきゃならないっていう。どうでもいい話さ」


「何が言いたいかって言うと、そうだな…………」

                     
                           「俺はお前が嫌いってこった」

撃鉄を起こし、引き金に指を掛け――――
8 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/27(土) 15:39:42.16 ID:l7kpc+Sq0
>>4
まるで男のような風貌のいずもの耳に、エリティエ=ニクスの愚痴は届かない。
……理由は簡単、既に彼女はゲームの世界へと誘われているのだから。自分が迷惑であるどころかエリティエがベンチに座したことにすら気が付かない。


「…………!……!………よし!
……………よぉし!!…やっとここまで来た…………!!」

液晶画面を前にする彼女の目がクリアを目前とした期待によってキラキラと煌めいた。
映っているのはプレイヤーキャラと見られる中年の男と、その先に立つ怪物……所謂ボスキャラだろう。
──そして、高天原 いずもの指が動く……!ここさえ乗り越えることが出来れば……!

……………………
………………
…………
……


「──ウガァァァァァァォァぁぁぁぁ!!!なんだよこれ!もうやらねぇ!!やめだやめだ!!!」

ダン!とベンチから立ち上がるや否や、悔しさの雄叫びをあげる高天原いずも。
良く良く見てみるとその両眼には薄っすらと涙を浮かべていて。

さて、読書をしている立場からすると周りのことを考えないこんな奴への我慢がそろそろ限界に近づいてきそうな気もするが…………それでも彼女は悲痛で醜い雄叫びを続ける。
誰かが静止させない限り、恐らくこの雄叫びは止まないだろう。
9 :霧峰 京子 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/06/27(土) 15:44:18.86 ID:gjRlffuZ0
>>1
/スレ建てお疲れ様です


都市内の商業館近くにある図書館。
時刻は正午を1時間過ぎた当り、休日であったが、外からの喧騒に窓と扉が遮断すれば冷房の効いた内部は人気の絶えた静寂である。
書架が並ぶ閲覧通路やその周辺も全くの無人――――――――否、

「紙媒体が時代遅れ、だなんて。 酷い事を言うものだわ」

面白みの無さげな呟きを発したのは、眼鏡を掛けた長身の女である。高校生と思しき制服に胸元には風紀委員所属を示すバッジ。
ブラインドから陽光が差し込める窓を背にし、テーブルの端の席にて厚みのある本を読み耽っていた。
タイトルは『時間と逆行』。机上には他にも数冊、時間や四次元に関する書物がそこかしこに。

ふと本を置き立ち上がる――――と思えばもう別の本を手にしていて。
開いた表紙を少しして閉じた、かと思えば次の瞬間には背後の書架で次のタイトルを探している。
多少なりともおかしな動きは比喩ではなく残像が見えそうな速度だったが、それを見とめたり咎めたりする者は今のところ皆無。
先に彼女が呟いた通り、やはり昔からの図書館はもはや時代遅れの代物なのかもしれない。ぺらり、静かな空間に頁を捲る音だけが響く。
10 :雨宮 初音 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/06/27(土) 15:50:56.33 ID:RJvLqSD90
>>6

「やっば、宿題失くしたら確実に説教され──!?」

どうやら飛ばされたプリントは少女に課せられた宿題であったらしく。
ガチャンと車椅子のブレーキを外せば、慌てた様子で取りにいこうとする。勿論動きの制限される少女が飛来物を捕まえるのは容易ではないのだが……と。
そんな風にモタついている間に、通りすがりの男性が拾ってくれたようだった。

「……え?あ、は、はい!わたしのですけど……!あ、今からそっち行きます!」

学園都市と呼ばれるだけあって学生だらけの街には珍しい、やや歳を重ねた男性であること。
なにより外人であることに若干驚いたのか、少女は少し驚いた表情を浮かべる。
だがそれも束の間、すぐに我に返れば急足(?)で男性の元へ向かうだろう。


11 :エリティエ=ニクス RANK D ◆q43ZZ7ZHQ/5v :2015/06/27(土) 16:06:00.67 ID:fRcvoX2qO
>>8
「……………」

イライライラ、イライライラ。ぷつん。
そんな感じに、沸々と沸き上がってきた苛立ちがついに怒りへと昇華した。額に青筋を浮かべているような、そんな感じ。
さすがに許容のできないうるささであった。まったく安らげない、大迷惑である。
やはり私は不幸だと嘆きながらも、今回の不幸は人間である。電柱が倒れてきたりだとか、暴走した車に轢かれかけるとかそんな事ではない。
人間だから対処はできる。いや、対処すべきだ。関わり合いたくなどないけど。

パタン、と本を閉じ、立ち上がる。(ちなみにちゃんと今読んだところまで栞を挟んである)
深呼吸をし、集中。しっかりとターゲットに狙いを定める。

「さっきから、うるさいのよこの猿女が!!」

そして、本を振りかぶり、綺麗なフォームで、女目掛けて投げつける。
本はかなりの分厚さである。それが吸い込まれるように女の脳天目掛けて飛んで行く。しっかりと角が当たるように。

ドストライクになれば当然痛いだろう。かなり。
12 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/27(土) 16:06:48.89 ID:bg4djnYw0
>>10
彼もまた、少女の姿が車椅子である事に対し、若干の驚きを感じていた。
どちらかと言うと、これほど若い少女が、足が不自由であるという制約を背負っているという事実に対する驚きであった。
そんな思いもつかの間、プリントを持って彼女の方に向かおうとしたら、逆に彼女の方から車椅子で駆けて来るではないか。これには彼も驚きを隠せなかった。

「待て、病人に無理をさせるわけにはいかぬ!わしがそちらに……むう」

注意しようとするのもつかの間、彼女はあっという間に彼の眼前に来ていた。
プリントを落とす事といい、どうにも人を心配させるタイプの様だ。

「そんなに速く走って、転んで更に足を悪くしたらどうするつもりなのだ?自分の身体はよくいたわるべきだろう……」

彼は呆れに近い溜息を吐き、彼女の身体を思っての事だが、老人がよく行うような軽い説教をしたのちに、プリントを彼女に手渡す。

「まあ、よい。ケガがないのなら結構だ。……ところで、君も、えーと……そう、"能力者"というやつなのかね?」

自然な流れで、もうひとつの質問を投げかける。
気のせいかもしれないが、彼が「能力者」と言った瞬間、その瞳が一瞬だけ、ギラリと光ったような気がした。
13 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/06/27(土) 16:14:36.49 ID:R8uoc6QqO
>>7
絶望。それを体現せしめる男と、地面に伏した学生らしき男と、拳銃と。
光が満ち溢れる学園都市に、一層色濃く黒を落とす光景がそこには広がっていた。

(やめろやめろやめろ…あたしは研究に潜入してるんだ、こんな危険極まりない場所に…くそ、くそくそくそ……)

生と死が、今まさに交錯しようとしているその場所に、ワイシャツにパンツスーツ、銀縁メガネをかけた場違いな女が通りかかってしまう。
くわえタバコがぽろりと落ちそうになるほど、その突然すぎる光景に唖然としていた。

(銃だぞ、あんなものあたしに何とかなるわけないだろ、でも撃たれるんじゃないかこのままだと…いや待て、もしかするとただの玩具いやいやいやそんなわけない、現実をみろよあたし)

とめどなく考えが流れ、波打ち、かきまざる。

(でも倒れてるのは子供だろ?だよな?何がどうなったらこんなことになるんだよ…あー、もう…)

女の考えがまとまらないうちに、足は一歩、二歩と進み ————やがて、男の視界に入るまでに。
女の表情は、頭の中とは裏腹に、飄々と涼しそうなままで、火の付いていないタバコをくわえたまま、片手でライターを弄ぶ。

「随分と穏やかじゃないね?その物騒なモノを下げるんだ」

しっかりとした声で、女は男に告げた。
14 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/27(土) 16:20:06.29 ID:l7kpc+Sq0
>>11

猿女こと高天原いずもがキーキー喧しく嘆いていると、隣から声が彼女の耳に届いた。
罵倒するような言葉だが、どうやら自分に向けられた言葉らしい。
反射的に振り返って反応してみると……。

「お?誰だおま、え…………グハァッ!!」

振り返った瞬間、目の前には一人の少女が見えた。──然し同時に、彼女の視界が激痛とともに何やら分厚い直方体の物質に覆われた。
昏倒。手に持っていたゲーム機は力を失った手から解き放たれ落下し、彼女自身は後ろに大きく尻餅をついた。

「……ッデェ…………何しやがる!」

男物の制服を纏い学ランを羽織ったその男女は、本が顔面に減り込んだおかげで涙目どころか頬を涙が一筋伝っていた。鈍い痛み、彼女が一番苦手とする地味〜な痛みである。
そんな涙目で尻餅をつきながら少女を目前にして、怒りを投げかけた。

15 :雨宮 初音 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/06/27(土) 16:25:40.40 ID:RJvLqSD90
>>12

「ふう、お待たせしましたー……って、あれ?えっ?えっと…
 ご、ごめんなさい……」

通常のペースより早めに車椅子を操作したせいか、若干疲れを含んでいる様子の少女の声。
それでも、宿題をなくさなかったことの方が気持ち的には勝っているため多少の疲労感は気にしていない。
寧ろ、相手の男性の方が自分の身を案じてくれたようで。
更に足を悪くしたら、その言葉にぎくりと肩を竦ませ、思わず先生を前にしたかのように謝罪する。
まさか見ず知らずの男性に説教を受けるとは予測できまい。

「えへへ…あ、ありがとうございます!とっても助かりました!」

調子を戻すように笑って誤魔化しつつ、男性からプリントを受け取る。
破れているか汚れているか等ざっと見し、無事であることを確認すれば、ほっと安堵の溜息を漏らし。
相手を見上げれば、少し悪戯っぽい印象のある笑みを浮かべつつ明るい声でお礼を述べる。

「……?はい、そうですよ?でも弱っちいですけど…えっと、おじさんはどこかの先生ですか?」

だが。相手からの問いかけには不思議そうな表情に。
能力者が集う学園都市の中では珍しい質問…単純に引っかかっただけであって、そこまでは追求しない。
ここでは若干浮いているようにも思える相手は何をしている人なんだろう。
少し気になってこちらからも質問をした。

16 :ガイスト・ノイラ−ト ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/06/27(土) 16:29:26.60 ID:fJ96wqqV0
>>13

声がする。それは女性の物で、この場所に誰も居ないと踏んでいた彼は僅かな疑問を持って其方の方向へと振り向いた。
拳銃の銃口は少年に向いたまま、僅かに横目でとらえられる程度の視界を保ち、あまりにも余裕≠見せる女性へと瞳を動かす。
瞳の奥には、明らかな猜疑の意思が込められていて。

「……代償は?」

女性に対し、まず最初に返した言葉はその一言。疑問こそあれ、初めに聞く事は彼の中でもう決まっている。

「物事には全て『代償』が必要だ」
「『何かを得るには何かを捨てよ』の言葉通り、こいつを助けるためにお前は何かを捨てなければならない」
「でなければ君の言葉は聞けないし、聞くつもりも一切無い」

代償。何かを得るためには何かを支払う。もし、先ほど少年に向かって呟いた言葉すら女性に聞こえていたというのであれば
彼が人一倍、それ以上に代償≠ニいうものに対して執着していることが理解できるだろう。現に、今この瞬間、彼の意識は僅かずつ女性の方へとそれてきている。
視界が段々と女性に向かってピントを合わせ始め、連動して拳銃の銃口が僅かにブレる。ピクリとも動かなかった少年は、恐怖を讃えながらもその身体を動かそうと声を殺してもがいていた。

代償を支払う必要は無い。幸い少年は全身の打撲以外に目立った傷は無く、あともう少しすれば走って逃げられるくらいの体力すら残っている。
ただ、銃口が此方を向いていたために逃げる事が出来なかった。しかし、今女性が声をかけたお蔭で彼の視界から少年は僅かに外れている。
もう少し、あと少しだけ彼の注意をひきつけるだけでいい。それだけの事で、少年は逃げおおせることができる。路地の間にさえ入ってしまえば、銃弾は壁に阻まれてロクな距離を稼がないだろう。


「恐らく見ず知らずであろうを逃がすため、君が払う代償は…………なんだ?」
17 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/27(土) 16:42:03.31 ID:bg4djnYw0
>>15
彼は、少女の返礼を見て、何やら心に込み上げてくる暖かいものを感じた。
自分の娘の面影を、その無邪気さの中にわずかに感じ取ったのだろう。故郷にひとり残してきてしまったが、今は元気にしているだろうか。

質問の答えはYESだった。この少女が魔術界隈に危険な影響を与えるとは考えづらいが、彼に与えられた使命は果たさなければならない。
何故なら彼は、能力者について調査するべく派遣された、「魔術師」の一人なのだから。

「なに、わしはこのあたりに住んでいる、ただのしわがれた老人よ。まったく"能力"というやつは、未だに慣れんものだな」

そう言って近くのマンションを指差す。まるでずっと前からここに住んでいたような口ぶりだが、本当は彼が日本に来たのはこの任務が初めてだった。
しかしあの仮住居があるために「住んでいる」という答えはあながち間違いでもない。
どちらにせよ相手の質問をそれとなく誤魔化したのちに、次の質問……いわゆる「本題」に入る。

「どれ、少しその「能力」とやらを、わしに見せてはくれぬだろうか?」

能力者を調査する上では、能力を見ておく必要がある……至極当然のことだ。
しかし彼は、裏にそんな考えが渦巻いている素振りを見せることなく、ごく自然に、へりくだった態度で働きかけた。
18 :エリティエ=ニクス RANK D ◆q43ZZ7ZHQ/5v :2015/06/27(土) 16:45:59.04 ID:fRcvoX2qO
>>14
見事本は女の脳天に命中。野球選手も脱帽のコントロールだったと自分で思う。
とにかく、ようやくうるさいのが収まった。本を回収すべく女の方へ歩く。

「何をするって、騒がしい猿を黙らせただけだけど、何か?」

濁った瞳で女を見下ろし、高圧的な言葉を投げる。
それは明らかに彼女を侮辱するものであり、罵倒するものであり、見下すものだった。
エリティエはこの女を心底から見下していた。騒ぐしか能のない猿、低俗な人間だと認識した。

「ここは公共の場、他者の迷惑をかけずに過ごすのは当然の事だと思うけど?常識ってものを学んでいないのかしら?」

本を拾い上げ、汚れをはらう。
勝った、ついに対峙した不幸に初めて打ち勝ったと確信した。
そういえば、思い出した。この女は学園で「番長」を自称している事で有名ではないか。どうりで、低俗なのも頷ける。

「大体、なんで女が男物の制服を着ているのかしら?社会に適応できず、悪い事をするのはかっこいいと自らの悪を正当化し、いざそれが明らかになり罰を受けそうになれば、自分は悪くない社会が悪いなどと泣き喚く、プライドも信念もない屑である"不良"なんてものに憧れているのかしら?"番長"さん?」

薄笑いを浮かべ、馬鹿にした様子で皮肉を込め、番長と呼ぶ。
こうして見下す事で得られる優越感がたまらなく心地いい。
自分の才能の無さを棚上げし、他者を見下す事が、エリティエの唯一の楽しみでもあった。
19 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/06/27(土) 16:51:15.00 ID:R8uoc6QqO
>>16
「…代償、ね。中々の言い草だ、何があったかは知らないが…あいにくと払うもんは持ち合わせちゃいないんだ」

足が震えるのを堪えながら、ちらりと学生を見やる。
そこには段々と瞳に色が戻る姿があり、あとほんの少しで学生の絶望的状況を打破できると予感させる。
代償、そう言い放つ男の言葉には執着や重量を感じさせるものがあった。
只者ではない、それどころか、常識が通用する相手ではないだろう。その身なりと口調と行動とが歪に混じり合う男は、何を求めているというのか。
男が求めている何かを、女が持っているわけもなければ、言葉通り、代償なんていうものを払えるほどの者でもない。
だからこそ、女は ————




「 ————あんたが"どちらの側"か知らないが、あたしを相手にやろうってのかい?」



甲高い音が耳をつく。
女は弄んでいたライターを右手に構え、開いてみせたのだ。
ただそれだけ、ではない。
女の手はライターを開いただけで、指先一つ動いていないというのにも関わらず、パチパチと火花を散らせながら光っている。


「"この街ごと"代償代わりに、吹き飛ばしてほしいのかい?」


女が取ったのは、何をしでかすかわからない男に対しての ————ブラフ。
無論、何かが起きるわけでもなければ、火花が散って指先が光っているだけだ。
火花が散るたび、普通のものとは違う輝きに、暗い道がフラッシュを炊いたように照らし出される。

(こりゃ…痛い目みなきゃいいけど…)

女の頭の中は、明らかに分が悪いこの状況への後悔の念で一杯になっていた。
20 :雨宮 初音 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/06/27(土) 17:02:17.79 ID:RJvLqSD90
>>17

「ふえー……そうなんですかぁ。」

――――ちょっと意外。そう言いそうになってしまったのはどうしてだろうか。
相手は自分自身をしわがれたと形容するけれど実際はそうでもない…なんというか、形容できないけど他の人とは違う感じ。
そんな妙な雰囲気を無意識のままに感じつつ、少女は納得する。
能力を物珍しがるのは当然だろう、と判断する。だって、彼が若い頃には能力だなんて突拍子もないものはなかった筈だから。
あくまでも引っかかっているのは「ただの老人」っぽくはないという点のみだ。

「いいですよ!えっと…これでいっかな。」

能力を見せてほしいという要望には快く承諾。
といっても、少女が操る力は本当にちっぽけで些細なものだ。
期待外れにならないといいなーと心の中で呟きつつ、未だ手にしていた教科書を男性の方へと向ける。
持ち方は。ちょうど手のひらに教科書を乗せた形である。

「…………。」

わずかに目を細め、沈黙する少女。
すると不意に教科書に異変が起こりはじめる。
小刻みに震えだしたかと思えば、やや厚めの冊子は徐々に。だが確実に少女の手を離れ、空中へと浮遊しはじめる。
そして最終的には手から30cm程離れた空中で静止。それと同時に、はあっと大きく溜息をつく少女。

「……こ、こんな……感じ…。」

見る人が見れば手品の一言で済まされそうだが少女は本気でバテている模様。
相手の反応が怖い。いろんな意味で。

21 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io [sage]:2015/06/27(土) 17:08:34.43 ID:l7kpc+Sq0
>>18
「猿…………?オ、オレのことか?
……いでで…………そういえばよくオレの事を女と知ってたもんだな……初対面な気もするけど」

痛みに顔を歪ませつつ、人差し指で自分を指して、分かりきった答えを確認する。
そして続いた彼女の言葉通り、高天原いずも自身、エリティエが放った「猿女」という言葉には驚愕していた。声は高いとはいえどそもそも殆どの人物が彼女を男と思い込んでいる中で、彼女を初見で女と見抜いたのは実に稀であった。
頭から滴った血を、額に巻いた鉢巻で拭いながら、本を拾いに来たエリティエに眼をやった。

「……うへぇ……確かにそうだ……正論だ……何も反論できん。」

シュン……と正論を並べられて大人しくなるいずも。彼女は番長を名乗っている立場でありながら、悪人ではなく。どちらかというとそんな意識は無いのに周りに害を及ぼしている面が多い。
故に。正論を並べられてはぐうの音も出ない。

「……いや。それは違うぜ、No Japanese people.」

番長が屑という事実…其れだけは明確に否定した。頭で顔を抑えながら立ち上がり、フラフラとベンチに凭れこむ。
あと地味に英語の使い方が全くなっていないがその単語だけは流暢に言ってのけた。

「……いやぁー、オレは無意識に周りに害を及ぼす癖があるんだよなぁーー!ほ、ん、と、に!すまん!
…でもな!オレの中での”番長”ってのは良い事をして、
それで、周りから慕われる奴の事だ。少なくともうちのバカ兄貴はそーだったよ」

高天原いずもは先程からの言動で分かる通り、エリティエもビックリの大馬鹿である。然し馬鹿であるが故に、エリティエの罵りは一つも彼女には響かなかった。所謂、「鈍感」。

「……そういや、アンタはオレの事知ってる感じだが、
えーっと…その…アンタ誰?」

先程の罵倒を気にもかけず、彼女は平然としている。
落っこちたゲーム機を拾い上げ、だらしなくベンチに寝転がりつつ、エリティエに問いかけた。
22 :ガイスト・ノイラ−ト ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/06/27(土) 17:12:53.43 ID:fJ96wqqV0
>>19

「そうか」「なら、そのまま黙って―――――」

動かなかった。正確には動かす必要も無いと思っていた&\情が、一瞬で張りつめたそれに代わる。目を刺激する光と、鼓膜を揺さぶるような音が、脳に僅かな痛みを齎す。
この町は学園都市であり、ただでさえ能力を持った少年少女が闊歩している。そして、それをしいたげている彼の様な$l間も数多くいるだろう。
だからこそ、最初にあった時に気が付くべきだったのだ。明らかに警備兵の類では無い女性が何の護衛も無く∞このような路地裏を&烽「ているのかという事を。
基本的に二十を超えた人物は能力者足り得ない。いたとしても少数。であれば、導かれる思考もまた必然。

「そうか…………君は同業者≠ニいうわけだ」

僅かな冷汗が流れ落ちる。まさか此処まで早く魔術を発動させる℃魔ェ出来るとは思いもしなかったし、女性が魔術師であるという事すら考え憑かなかった。
どちら側の人間なのかという言葉で少なくとも魔術側だという事は理解できる。そもそも魔術師はこの学園都市において異分子≠ナあり、それを知っているという事は。そういう事だろう。
少年への興味から、女性への警戒に全神経をシフトさせる。既に銃口は少年から外れ、目の前の火花を散らすソレ≠ノ向けられている。
火花を散らしていることから、恐らくは発火。即座に発動できるという事は簡易℃痰オくは儀式を既に圧縮しているか、またはその両方。

加えて、先ほどの『この街ごと』の言葉を考えると、炎系の魔術によく見られる火力過多の物であると推測できる。ブラフと言う可能性も否めないが、表情が読めない。
此方も打ち消せる手段がないではないが、それを行ってしまえば手の内を晒す事と同義。そして、それをすれば後の戦闘は不可能に近いものになるだろう。
もし仮に女性が連続で発動可能なタイプの魔術師であった場合、迂闊な行動は死を意味する。魔術に姿や年齢が関係ないことは、今までの経験上よく知っていた。
他者を恐れない物は、いずれ死ぬ。代償云々の話が来る前の大前提。魔術と言うのは其処まで個人間で理論や方式が異なるのだ。彼がブラフに引っかかってしまっても、不思議はないだろう。

「――――だが、それはブラフ≠セ」
「通常魔術を発動させる場合、それに見合った時間∞場所≠サして自らの魔力=\――これはそれぞれ言い方があるが、必要だ」

「君はその法則を逸脱している。術式を圧縮して持ち歩いているようにも見えないし、その霊装≠ェそれほどまでの力を宿しているとも考え難い」


「しかし、そのブラフ自体がブラフ≠ナは無いという保証もまた」「どこにもないだろう」

拳銃を、下ろす。理屈の分からない魔術相手に戦いを挑むのは愚の極みだ。上位の魔術師であればそのような事も可能なのだろうが、彼は其処まで高名でも無い。
加えて少年を見逃したところで彼が失うものは僅かな苛立ちのみであり、それと自身が負傷する確率、及び死亡する確率と天秤に掛ければ傾きは一方的だ。
銃を携えたそれをを重力に従って下に下ろし、今此処で戦う気はないとアピールを行う。何より、行動を行うにしても今はまだ速い′フに。
23 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/27(土) 17:26:04.91 ID:bg4djnYw0
>>20
彼女が"能力"を発動させる。彼はそれをじっと見ていたが、教科書がわずかに宙に浮き、その行使でも体力を消耗している。つまりそれは、彼女が非力であると認識する事への罪悪感はあったが、魔術師界隈にはまったく影響はないということだった。
彼は内心安堵する。もし彼女が、あまりに強大な能力を持っていれば……彼は彼女と戦わなければならなかっただろう。
彼は分析を終えた後に、ふと気付く。どうやら、いくばくか無理をさせてしまったらしい。

「礼を言おう。いや、"能力"というのはまったく奇妙なものだ。それよりも……病人に無駄に体力を使わせたようだ、すまなかったな」

彼女が疲れているのを見て、少し心配する。何しろ相手は白衣で外に出ている程なのだ、否が応でも気を使わずにはいられない。
もう敵でないとわかった以上は、これ以上の詮索は必要ない。彼は魔術師としてではなく、一人の人間として彼女に接する事ができるのだ。

「ところで、先程君が落とした紙だが、勉強でもしておったのか?」

だとしたら、自分は少しの間だが邪魔をしてしまった事になる。
彼は若い頃、勉強が非常に苦手だった。毎日のように教室から逃げ、戦いの特訓をしていた毎日を思い出す。
勉強という単語。それだけで何か、懐かしい気分に浸れる気がした。
24 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/06/27(土) 17:48:42.08 ID:R8uoc6QqO
>>22
男が簡単に引き下がる訳がない、そう思っていた。
女の背中を嫌な汗が撫でる。だが表情に出してはならない、出してしまってはそれこそ女のブラフが ————「 ————だが、それはブラフだ」 ————その瞬間、気を失いそうな程に恐怖を煽られる。

(やっぱだめだよな、わかってた、そこまで都合が良いわけないじゃあないか。そうだよな。あー、なんだ、あたしはこんな暗い場所で死ぬってのか?)

死という文字で目の前が埋め尽くされようとしているにも関わらず、男の紡ぎ出す言葉に対して、冷静な振りをしたまま、いけしゃあしゃあと嘘をばら撒く。
その嘘を脚色する、ほんの少しの真実を混ぜて。

「面白いじゃないか…だがそれは先入観ってやつじゃないかい?」

「"これ"は只のトリガーさ、月と太陽、裏と表のように相容れない2つをあたしが独自に改造してやったのさ。それに———— 」

「————魔術師ってのは研究を誰にも見せない、結果…馬鹿みたいな魔術が出来上がったとして、実験対象を探すのは道理じゃあないか、なあ?」

ニヤリと口角を吊り上げるも、このまま魔術を行使していては自身の紡ぎ出す魔翌力が切れてしまう。
男が銃口を下げたのを見計らい、同じくライターを小気味良い音とともに閉じる。
相手が戦意が無いことを示すのならば、それに応じるまでだ。寧ろ応じなければ危うい。

男の口ぶりから察するに、およそ魔術とよべるもの全てに性通しているように思えた。
出来ることならば、敵に回したくない。それどころか、関わっているだけで血生臭いことに巻き込まれそうだ。
自分とは違う、あらゆる修羅場を潜り、尚且つ闇へと足を踏み込むことを躊躇わない姿は、女と相対するもの。

「まだ研究が足りないんだ、だから…ね?」

不敵な笑みを浮かべ、女はタバコをくわえなおしてから火を灯す。
その時のライターからは不審な火花も散らず、普通の火をあげるものだ。
これもまた、悪あがきのような男への刷り込みだ。
明らかに戦力に差があるのならば、小賢しい手はいくらでも使う。

ふぅ、と煙を吐き出すと、甘い匂いが漂う。

「今度は、君と穏やかに会える日を楽しみに待つとするよ」

女は決死の覚悟で背を向け、路地裏から一歩踏み出そうとする。
下手をすれば背中からずどん…だがこれもギャンブルだ。
ひらひらと片手を振って、余裕を見せながら去っていこうとするだろう。
だが、その足取りは怪しい。
25 :雨宮 初音 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/06/27(土) 17:49:34.42 ID:RJvLqSD90
>>23

……さて、どうしよう。これではしょぼいの一言に尽きるし、流石に笑われてしまうだろうか。
若干内向的な考えを頭の中で巡らせつつ、少女は相手の男性の反応を待っていた。
だが意外にも。そう、本当に予想外なことに相手の反応は少女を馬鹿にするでもない。それどころか、こちらを心配してくれるではないか。
慌てて首と手を横に振る動作をして、全然このぐらいは大丈夫だということを伝える……まあ、もっと重たいものだと完全にグロッキー状態になるので、今の状態は至って軽度なのは事実だ。

「お、おじさんが気を使わなくてもいいよ!それにわたし意外と身体は丈夫だから!……常識の範疇では。」

怪我をしている人間が言っても説得力の欠片もない。
もっともこの傷に関しては少女の脆さ関係なく、純粋に受けた攻撃の威力が凄まじかっただけなのだが。
ふと足元に視線を落とせば、ぽつりと呟く。

「……わたしはここでも弱い方だよ。強い人は本当に強くって。やばい人は本当に危険。危なさそうな人には絶対能力見せてって言っちゃダメですよ。」

そういう人の中には好んで無能力者や弱い人間を傷つける人もいるから。
ちょっとした忠告だ。大人であるということは能力者ではない。運が悪ければ男性にも危険が及ぶ可能性もあると、少し心配だったから。

「あ、はい!でもわたし勉強苦手で……こんなの覚えてもぜーっったいに将来役に立つことなんてないのになぁ。」

プリントに印刷された文字の羅列を見て、絶望の混じった声色でそんなことを口にする。
このプリントを作った先生がいる前で言ったら、間髪入れずに出席名簿でひっぱたかれそうな発言だ。

26 :エリティエ=ニクス RANK D ◆q43ZZ7ZHQ/5v :2015/06/27(土) 18:05:54.60 ID:fRcvoX2qO
>>21
「男か女か、それくらいの目利きはつくのよ。私はね」

男にしては声が高いし、いくら男になりきろうとも、どこかしらに女の部分は出てきてしまうものだ。
独り故に他人をよく観察する癖のあったエリティエは、それを見抜けた。

それにしても、自分が見下されている事に気がついていないのだろうか、本当の馬鹿である。
いや、そっちの方が幸せかもしれないが。馬鹿は馬鹿なりの視野しか持っていないのだから、知らない方が良い事もある。
まあ、それは良いとして、"無意識に周りに害を及ぼす"という言葉には自分にも当てはまる点がある。
それは恐らくこの女とは天と地ほど差があるだろうが、共通点がないわけでもない。
"何かすれば周囲に被害を与える"のと、"何もしなくても自分と一緒に周囲に被害"を与える、まったく、どちらが悪いのか。
だからと言ってそれを口に出すことなどしない。この共通点を話題に出して互いに慰め合うお友達にでもなるか?そんなもの、時間の無駄でしかない。

「慕われたいなら、まず迷惑をかけないように気をつけたら?慕われる方法なんて簡単よ?他人に迷惑をかけず、誰に対しても良い顔をし、体面の良い理想を振りかざし、自分には何も関係ない事に余計に首を突っ込んで"俺も一緒についている"なんて言い続け、あたかも周囲に"良い奴"と思わせる偽善者。私は吐き気がするけど」

周りから慕われたいなら、ヘラヘラ笑って偽善を振りかざしていれば簡単なものだ。馬鹿な人間はそれを聖人だ何とかと言ってそれを奉じる。
世の中の人間は、常に自分にとって都合の良い人間を求めるのだから。

「私はエリティエ=ニクス。あなたは学園内で悪い意味で有名なのよ、番長さん」

捻くれ捻れ曲がった、実にエリティエらしい考えであった。この女では到底理解の及ばない程に。
27 :ガイスト・ノイラ−ト ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/06/27(土) 18:08:08.25 ID:fJ96wqqV0
>>24

彼は別段死にたくないという感情が強いわけでは無く、寧ろ自暴自棄と言ったような印象を他者に与えることが常である。
しかし、だからといって死にたがりなわけでも無い。薄々、女性自体のブラフ≠フ本当の意味について見えてきたような気もするが、今はどうでもいいことだろう。
もし女性の言っていることが本当だとしたら、彼にとっては不利だ。言葉として信憑性は無くとも、魔術と言うのはその信憑性の無さ。
限りなくゼロに近い状態を百にでも二百二でもできる出鱈目さを持っている。それに、今日この学園都市にたどり着くまでに儀式を使い過ぎてしまった℃魔煬サ在の状況に大きく貢献している。

「魔術の法則は、術士間でも異なる――――と、言いたいわけか」

魔術に対しては、それなりの知識を得ている。自身で言うのは何だが、彼はそう自負していた。でなければ払った代償に合わない=B

――――

「――――ガイストだ」

「―――――――――次出会う日まで悪霊≠ノ合わない様に」

甘ったるいにおいが消えていく頃、一つの発砲音と共に彼という存在は路地裏から姿を消した。
撃たれたはずの痕、弾痕一つ残さぬまま。そうして、光が差していく…………


//このような感じで〆でしょうか
//絡みお疲れ様でした! 楽しかったです!
28 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/27(土) 18:14:21.29 ID:bg4djnYw0
>>25
彼女が能力者の事について語り始める。その声が沈んだ事や、彼女の語った内容から、何かよからぬことを感じ取ったのか、彼の顔に一瞬、影が曇る。

(……やはり……能力者の中には、魔術を脅かす者もいるという事か)

不吉な考えが頭をよぎる。彼女の意味深な言葉や沈んだ態度。まさか、彼女の脚が他の誰かに傷付けられているとしたら……
予想に過ぎないが、わざわざこのような忠告をしてくるという事は、「もしかして」という気を高めさせる。
しかし詮索をするわけにはいかない。もし当たっていたら、彼女のトラウマをえぐり出す事になってしまうかもしれない。
彼は心の中で、来たるべき「相手」に対し、より一層警戒心と覚悟を強めた。
しかし彼はそんな素振りを見せないよう、彼女に接する。余計な心配をさせる必要はない。

「勉強か……フフ、わしも昔は勉強が大嫌いだったよ……何度も教室を抜け出しては、大目玉を食らっておった」

目の前で絶望的な声を上げる彼女の態度は、まさに幼少の頃の自分とまったくもって同じだった。その姿に彼自身、笑いを浮かべてしまう。

「まあ、そんな思い出も、今のわしにとっては遠い日のことだがな……」

昔を懐かしむようにしながら、彼女の持つプリントを横から覗き込む。そして直後、低い笑い声を上げた。

「フッハッハ、全くわからぬわ」



29 :霧ヶ谷什郎 ◆oejY7a0xu2 :2015/06/27(土) 18:25:13.26 ID:nHxkKiOoO
>>9
学園都市――とある図書館にて、
ある晴れた休日の午後彼はある目的のために学園都市内にある図書館へと赴いていた。
右肩には幾つかの資料とノートパソコンの入った鞄をかけ、とある仕事を行う際の服は脱ぎ黒いvネックでの活動であった。
彼がここを選んだ理由、それは主に二つ、片方は彼の仕事に関する事、もう片方は人がいない場所を選びたかった。それだけの理由。

彼が図書館の受付をくぐり、書架の並ぶ閲覧スペースに足を運んで数分、どこか目立ちにくい場所を探そうとしていた時、彼女はいた。
読書用のテーブルの端に腰かけ、立ち上がり繰り返し本を漁り続ける少女、彼女の服装は紛れも無いこの学園都市特有の学校の物であり胸元には確か...風紀委員を示すバッジが輝いていた。
それ即ち特殊な能力に覚醒した物――能力者を示す物であり自分達が調査すべき対象でもあった。

自らの仕事を片付けるべく訪れた先で新たな観察対象に出くわす、なんと数奇な事であろう。だがこの状況となっても彼の思考は少しの狂いも見せない。
言われた仕事を淡々とこなすだけ、彼は組織から請け負った仕事をこなす事で報酬を得、それによって生計を建てている。仕事をこなす事=生きる事、彼の思考停止とも、社畜根性とも呼べるその思考はここでも忠実に確実に行動を開始した。

彼は少女から遠すぎず、近すぎずの距離の席に腰を掛け鞄を隣の椅子に置き中から持ってきたノートパソコンと資料を取り出し、机に広げる。
そのまま資料を整理しながら報告書を纏め始め、同時に彼女の観察を始める。
観察と言っても特に特別な物では無い、報告書を纏めながら彼女の動向を視界の端で見張るだけ凝視することも無く不自然にチラチラと彼方を見るでも無く、ただひたすらそこに居るだけ彼はそうして発見した対象の観察を続けた。

まぁこの観察と言うのおも彼女に少しでもこちらへの注意を向けられれば危険な事に変わりは無いのだが
30 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/06/27(土) 18:26:40.27 ID:R8uoc6QqO
>>27
路地裏を出てから、人通りの多い繁華街へ到着するまでの間、女は一切歩みを止めなかった。
人混みの中に紛れ、ふと後ろを向けばあの男が此方に禍々しい拳銃を向けている気がしてならなかったのだ。
だから歩き続けた。一時の棲家である汚い廃屋へ。
軋むドアを開けて、一歩踏み込んだ後…

「なんなんだ、あいつ…」

どさりと両膝を付いて大きく息を吐き出す。
両手は震え、視界が滲む程に、生きていることの奇跡に感謝した。
よくも堂々とした態度で殺されなかったと、安堵した。

学園都市、そこは様々な生と死が交錯する場所。
その片鱗を味わった、最悪のスタートだった。



/こちらこそ絡んでいただきありがとうございました!
/拙い文章で申し訳ありませんでしたが、よろしければまた是非とも!
31 :雨宮 初音 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/06/27(土) 18:41:01.70 ID:RJvLqSD90
>>28

「ええっ?」

相手の話を聞き、少女は素っ頓狂な声をあげる。
そして今一度男性の姿を観察してみせる。年齢を重ねているから渋い。
というか落ち着いた雰囲気に見えるのかもしれないが、少なくとも今の男性からは学生時代にヤンチャしていたなんて想像できない。

「おじさんが?うっそだぁ……って本当に分からないんだー!?」

流石に冗談だろう。と思わず勘ぐってしまうが、問題を見て分からないと笑う男性の姿は自分をからかっているようには見えなくて。
その壮年の顔立ちに、青年のような明るさが見えた気がした、ような。
…というか、大人である彼に聞けばこの宿題は解決するのではと淡い期待を寄せていたのも、また事実。
まさかの『詰み』状態に陥った少女はガックリと項垂れる。宿題は終わった。ダメな方向に。
その後は後の祭といったところか。男性に釣られて笑いはじめ、車椅子の少女と外人の男性が揃って笑っているという、なんとも奇妙な図ができあがることとなる。

「あーもう……笑いすぎて泣けてきちゃうよ。ここまで笑ったのは久しぶりかも…。
 あ、そうだ!おじさんの名前、まだ聞いてなかったよね?わたしは雨宮初音っていうの。おじさんの名前は?」

自己紹介をするにしては随分と今更な気もするが、この際だから細かいことは気にしないでおこう。
にかっと屈託のない笑顔を浮かべると右手を相手に差し出す。

32 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/27(土) 18:46:34.59 ID:l7kpc+Sq0
>>26
「……それでも初見で見抜くとは能力ばりの才能あると思うぞ。あれ?もしかしてそういう系統の能力者だったりしちゃう?」

なんて軽く冗談めいた台詞を吐いてみる。
それにしても先程からこの高天原いずもという番長気取った女生徒は、これ程までにコケにされても怒る様子が全く無い。
彼女本来の特性として「馬鹿」なのが主な原因ではあるが、もうそんなのは言われ「慣れ」ているというのも要因の一つと言えよう。
故に、こういった面に対する高天原いずものメンタルは正に決して砕け無い鉄壁である。

「理想………偽善?あーもう……何故オレを馬鹿だと認知しといてんな面倒くさい言葉使うかなぁ……」

「まあ……ただひとつ言えるのはお前の考えはオレの考えとは相容れないってことだな!合ってるか!

………あ、吐くならビニール袋やんぞ」


ベンチに凭れ掛かった体を起こして。
カカカッ、と最後の方は此方が逆に馬鹿にするように歯を見せて笑った。
そして彼女が語った台詞は的を射ている。根本的に馬鹿で物事の詳細も知らずに善と在ろうとする者、そしてそういう者の実態を認知している者……恐らく彼らの考えは相容れ無い。第一に高天原いずもにはエリティエの主張やらが通じ無いので、最初からわかりきった事実ではあるのだが。

「エリティエ・ニクス…略してエリちゃんね。覚えた覚えた。
オレの名前は……知ってるかもしれんが”高天原いずも”!よろしくさん!」

顔半分を血の流れた後が遺るいずもの顔は、何処から誰がどう見ても間抜けで不恰好と言える逸品で。
然し彼女はそんなのは気にせずにエリティエにグッと、親指を立てた右手を笑顔で突き出したのだった。

「──……時にエリちゃんよぉ。
オレが嘆いてて煩かったからその忌々しいブツを俺の顔面にぶちかましたんだよな?

……なら。その対象のオレが何故嘆いてたのかは知らねばなるまい?」

エリティエが本気で嫌悪感を表しそうな無茶苦茶な理論であるが、いずもは返答を聞くことなく、手元の携帯ゲーム機をエリティエの方へと放り投げた。
つまり。嘆きの原因であるそのゲームをやれ、と。
液晶画面に映し出されているのは「スーパーマ○オ」によく似たゲームの画面で、ダンジョンを進んでいく方式のゲームらしい。

因みに。先程まで高天原いずもは馬鹿と描写してきたが、こういう分野に至っては別である。よくよく考えてみれば、こんな時間にこんなところでゲームをしているのだ。下手であるはずがない。
故に、たった今放り投げられたゲーム機の中に内蔵されたそのゲームは、極悪難易度である。
33 :霧峰 京子 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/06/27(土) 18:52:51.81 ID:gjRlffuZ0
>>29

入口の扉が開く時、その開閉音を女は遠くに聞いていた。
その時は顔を上げる事はなく、手は頁を捲るのに忙しい。やがて脚が床を踏む音が近付いてきて、漸く目を本から持ち上げる。

第一には、黒い男という印象だった。
学園都市には珍しいサラリーマンだろうか、大柄な男性とノートパソコンの組み合わせは少しばかりコミカルに感じる。
とはいえ、別段意識を傾ける事も無い。今は読書中だし、静かにしているなら何も問題ない。
一瞬瞳を見とめてから、その目をまた手元に降ろした。

――――

ぴくりと手が止まる。ぱちぱちと二度目を瞬いて、覚えたのは違和感。
掛時計を見ると数分は経っただろうか、針は規則正しく動いている。にもかかわらず、最初に感じた視線がまだ己に纏わりついているのだと、数秒して気付いた。
その出所は――――この中には一人しかいない。

「……何か?」

不愉快という程の感情はない。が、流石に声を発せざるを得なかった。
見下ろす形になるだろうか、丁度立ち上がりかけた位置のまま座っている相手の方へ射抜くような視線を寄越す。
風紀委員の仲間内では目付きが悪いと評される眼差しだ。意識している訳ではないが、威圧感はやはり醸し出しているようだっ
34 :エリティエ=ニクス RANK D ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/06/27(土) 19:06:30.92 ID:fRcvoX2qO
>>32
あぁ、もう、なんというか。
言葉が通じない。まるで言語の違う人間と喋っているようだ。
言わんとしている事がまったく伝わらない。要するに、「私は偽善者が嫌い」なのだと、はっきり言ってやれば良かったか。

「あぁ、そう……よろしくしたいとは思わないけどね、いずもさん」

その笑顔が眩しい。自分のような人間には到底できるはずのない事だ。
故に妬ましい。私にできない事がどうしてできる、不愉快だから早く消えてしまえと、そうも思う。
見下さなければこっちが参ってしまう。直視などできるはずもない。

「は……?」

と、今度は突然ゲーム機を放り投げてきた。これをやれと言うらしい。思わずそれを反射的に受け取る。

「誰がこんなもの…」

ゲームなど人生で一度もやった事がない。それをいきなりやってみろと言われても無茶なもの。
しかし、まったく興味がないわけでもなく、それ故、好奇心がてらついついプレイしてみようと思ってしまった。


……………………
………………
…………
……


「……………」

結果は当然のことながら撃沈。消沈しながら静かに怒りに震えるエリティエは、ゲームを地面に叩きつけようと振り上げた。
35 :霧ヶ谷什郎 ◆oejY7a0xu2 :2015/06/27(土) 19:09:54.55 ID:nHxkKiOoO
>>33
突然、観察していた少女が先ほどまでの規則から外れた行動を始める。
それは書架へと意識の向いた行動では無く、紛れも無い自分へ意識が向いた行動であった。
彼女の視線は真っすぐと此方へ刺すように向かっている。ガンでも飛ばしているのだろうか。だがそんなことは関係ない。
彼は自分の仕事を淡々とこなすべく脳内で最適であろうと思い立った行動を実行に移した

「何か......って何...?」

彼は使う筋肉だけのついた細身な体からこれでもかと言うほど低く声を出し、暗い瞳を此方へと視線を向ける彼女へと向けた。
尚も報告書を纏める手は止めない。閑静な図書館のある一角にのみパソコンのキーを打つ軽快で無機質な音が響いている。
彼女が出しているであろう、常人ならば臆する威圧感に彼はピクリとも眉を動かさず、視線は彼女を、意識はパソコンへと向かせいていた。
彼のここまで無機質で無感情な反応、鋭く磨かれた視線の彼女は一体どう思うだろうか。
尚も彼は彼女を見つめ続けた。
36 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/27(土) 19:25:31.92 ID:l7kpc+Sq0
>>34
「…ったく……悲しいこと言うもんだなぁエリちゃん。」

よろしくしたくはないというエリティエの台詞に参ったな、と頭を掻いて。
まあ先程、エリティエにとっては公害レベルの雄叫びを上げていたのだから無理もない。

「ふふっ」

反射的にそのゲーム機を手にとってしまったエリティエ。思惑通りに事が進み、思わず彼女の唇が三日月のように歪んだ。

「…………ま、エリちゃんみたいなのならやらざるを得ないよなぁ!?……」

プライドの高いエリティエの闘争心を、敢えて煽るような軽い口調で駆り立てた。
馬鹿であるが故の利点として、こういう煽りは特技と言えるほど自信がある。──事実、エリティエの指は吸い込まれるようにそのゲーム機のボタンを押したのだから。
いずもは数分の間、極悪難易度のゲームをプレイするエリティエをニコニコと見つめていた。プレイしているエリティエ側からすれば「うざったい」以外の何物でもない。


…………………………
……………………
………………
…………
……


………………………………………そして数分後。


「──おおおおぉぉおぉいいい!!何やってんだ!それオレの貴重な財産っ!!」

プレイ時間が経過するにつれ、体の振動が激しくなったエリティエを見て一時は笑い転げていたが、ついにエリティエのイライラは最高潮。
振り上げられたゲーム機を見て、彼女が何をしようとしているのか理解したいずもは、絶叫しながらゲーム機キャッチの体勢をとるために両手を上に上げてエリティエの足元へ滑り込んだ。


37 :霧峰 京子 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/06/27(土) 19:28:02.91 ID:gjRlffuZ0
>>35

返ってきたのは同じ疑問の言葉。言葉とは裏腹に、相手の目の色は戸惑いという言葉には最も縁遠いようで。ぴくりと眉を動かす。
恍けられては二の句が継げない。ぐるりと目を動かした末に、正直に意志を述べる事にした。

「貴方の目が……此方を向いているような気がしたので。 気に障ったら謝ります」

す、と伏し目になるくらいの会釈。
風紀委員らしく、曲がった事が嫌いな女としては、間違いがあればそれを認める意志はある。それが自身であっても変わらない。
だが、それよりも――――

「失礼ですが、お仕事は何を?」

最初に感じた違和感。たった1、2語返されただけだがそれは拭われるどころかかえって強まるばかり。
キーボード音が滑らかに流れていく、いかにも普通な眼差しと態度だったが――――普通過ぎるのだ。
本を持たない手で椅子を引く。が、腰は椅子から離れたまま。所謂職務質問とはこのような場でするものではないが、一滴の好奇心が女の仕事スイッチを点火したようだった。
38 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/27(土) 19:29:16.19 ID:bg4djnYw0
>>31
「おい、お前は笑ってはいかんだろうが。わしと違ってまだ学生だろう」

笑いながら、彼女には耳に痛いであろう突っ込みをする。
まあ、どうでも良くなっているのであれば、この突っ込みも効果はないのだろうが。

「まあ、わしは勉強以外にするべき事があったからな。お前もそんな、夢中になって打ち込める何かが見つけられるのであれば、それもよかろうて」

一通り笑い終えてから、自分の人生をもとに、意図せずしてひとつのアドバイスをする。
彼にとってのそれは、組織に仕えしゃにむに戦う、戦士としての道だった。
彼女にとってのそれは何であろうか?道多き若者の行く先というものは、想像するだけで少年のような胸騒ぎがするものだ。
年老いるとはまた、次の世代への期待を託し導く事だと、彼は今一度実感する。

「初音か……よい名前だ。わしの名はヴァシーリー・マーカスという。……こんな老いぼれでよければ、頭の片隅にでも置いておいてくれ」

彼は彼女の差し出した右手に応え、ゴツゴツとした大きな、しかし沢山の皺が刻まれた手で、ガッチリと握手をした。

「お前のおかげで、しばし懐かしい思いにひたることが出来た。感謝するぞ」

握手とともに、軽い感謝を述べる。とは言っても、彼女にとっては少し大層な言葉だっただろうか。
彼は握手していた手を離した後、ふと辺りを見まわし、陽がすっかり傾いている事に気がついた。

「さて、少し長話をしすぎてしまったようだな……もうこんな時間だ。わしはそろそろ帰ろうと思うが、お前はどうするつもりだ?初音よ」

見回していた眼を少女の方へ戻し、問いかける。彼は、彼女が宿題をしなくてはならなかったという事をすっかり忘れていた。
39 :エリティエ=ニクス RANK D ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/06/27(土) 19:52:02.78 ID:fRcvoX2qO
>>36
ゲームを叩きつけ、大惨事になる事は寸前で止めた。
しかし、苛々が収まらないエリティエはどこにぶつけて良いか分からなくなった。
そもそも、生まれて初めてゲームをやる、言うなれば自力で立ち上がろうとする生まれたての鹿のようなもの。
立つ事すらできない難易度のものをやらせ、そしてそれを見て笑い転げるいずもに心底腹が立った。

「生まれて初めてゲームをやるのに、冗談じゃないわこんなの!あぁ、もう!」

ゲーム機をいずもの手の上に乗せ、自身は本を片手に踵を返す。

「………はぁ、もういいわ。私、帰る」

さっさとこの女から離れたい気持ちでいっぱいだった。この女の相手をしていると疲れると、今更になって悟った。
やはり関わったら碌な事にならなかった。これもまた、とんだ不幸であると嘆く。

「それじゃあね、いずもさん。私は、もう二度と会いたくないわね」

最後にそんな言葉を残して、公園を去るだろう。
もちろん同じ学園内なのだから、決して会わない事はない。いずもに少しの憧れを抱いてしまった事実など、すぐに劣等感と嫉妬でかき消した。
できれば二度と関わりたくない。やはり、人と関わるのは煩わしいと、心底思うのであった。

/この辺りで〆ですかね、ありがとうございました!
40 :雨宮 初音 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/06/27(土) 19:53:02.07 ID:RJvLqSD90
>>38

「そ、そこはツッコまないで……!」

やはり現役学生の性なのか。顔面蒼白のまま小刻みに震えつつ耳を塞ぐ。
はいはい何も聞こえないっと言いたげな行動だが、結局現実は何も変わることはない。
……病室に帰ったら徹夜でやらねば。

「夢中になれるものかぁ……うーん、考えとくよ。あんまり勉強はしたくないからねー、あはは……。」

夢中になれるもの。そう言われれば少し思考を廻らせ考えてみるがパッと思いつくものはあまりない。
あるにはあるけど『能力者の通り魔を捕まえたい』なんて不可能に近いし、誰かの前では口が裂けても言えない事柄だ。
せめてもっと明るい趣味があればいい……そんなことを考える。

「ヴァシーリーさん……うん、覚えた!えへへ、絶対忘れないから大丈夫だよ!わたしもいっぱいお話できて楽しかった!」

握手をしながらそう嬉しそうに言葉を紡ぐ初音。
頻繁に入院しているせいかあまり同年代の友人とすら話す機会は少ない方なのだ。
自分の倍近く歳上の人と話すなんて想像もしなかったけど、ここ最近の出来事の中ではとても楽しいひと時だった。

「あ、そうだね…わたしももう帰らなきゃ。宿題少しだけ頑張ってみるよ。
 それじゃあバイバイ、ヴァシーリーさん!またお話しようね!」

もうそろそろ暗くなる頃合い。昔のことも頭を過るし一旦今日は帰ろうとする。
特にしゃべることもなければ、初音は手を大きく振りながら男性に別れを告げることだろう。

41 :霧ヶ谷什郎 ◆oejY7a0xu2 :2015/06/27(土) 19:54:34.17 ID:nHxkKiOoO
>>37
彼女が少し戸惑ったように目を動かし、返ってきた言葉は此方の行動をしっかりと捉えた、正に模範解答とも呼べる答えだった。
そうして彼女は自らの言動が間違っていた際の救済策か、少しばかり会釈をし此方にまたも問いを投げかけた。
その問いも勿論此方が事細か、丁寧に返答する必要は無い。彼は先ほどと同じように平然と淡々と答えならざる答えを返した。

「視線が気になったと言うのなら気のせいでしょう。ここには貴女を見る必要のある人間は誰一人居ない。貴女にストーカーがいなければの話ですけど...」
「自分の仕事?...ただの会社員ですよ。大した成果も挙げられないのでこんな所に飛ばされたんだと......」

先ほどと同じ表情で静かにそう答えるとまたパソコンへと視線を戻す、もうすぐ報告書、さらに彼女を含めた観察結果も完成しそうなのだが、彼女にパソコンを見られては一溜りも無い。
彼は観察結果を書いているウィンドウのみを隠すと彼女へと声を発する。

「....少なくとも、こういう静かな所で仕事をしたいと言う気持ちは貴女にもわかりますよね...?」
「自分は静かに仕事がしたいので...」

そう言い切るとまた一つのウィンドウのみを纏め始める。粛々とキーボードの音が響いている。
無愛想そのものと言うような態度を取る彼をどう思うかは彼女の自由。
彼女が何か行動を起こすまでの間も彼はパソコンから目を離さなかった。
42 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/27(土) 20:09:19.26 ID:l7kpc+Sq0
>>39
「くっかかかか!!すまんすまん!
極悪難易度のままあげちまったな!!悪い悪い!」

反省など全くしていない調子の愉快な笑い声。
高天原いずも視点からすると冷酷そうなエリティエが悔しそうに唸っているのは笑いのネタに十分すぎるものだったようで。
見下す態度をとるエリティエと対照的……と迄はいかないが、彼女もまた、愉快に意地悪い少女であった。どちらかというと精神年齢が幼い、というだけなのかもしれない。

「お?もう帰っちまうのか?………はええはええ。」

そういえば忘れていたが彼女の顔面には本の角が減り込んだ筈であるが、痛い痛いと喚いたのは最初だけで今はもうこうしてピンピンしている。
無駄に明るくうざったい上にタフときた。エリティエからしたら忌々しい存在に他ならない。

久々に珍しい性格の人間との交流。
再会を望まぬエリティエとは対照的に、去っていくエリティエを見据えながら、彼女は再会した時の情景を頭に思い浮かべていた。
……もう少し、もっと話して、仲良くなりたい…!と。

だから。もう二度と会いたく無いと言われて尚、彼女はこういう言葉をエリティエに投げかけて締めくくった。
直前のエリティエの言動を真似するかのように。

「じゃあなぁ!エリちゃん!!……またいつか!」

──既に夕陽は、地平線の彼方へと沈んでいた。

43 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/27(土) 20:10:07.24 ID:l7kpc+Sq0
>>39
//レスに気づくのが遅くなったりで返答遅くなったりすみません!お疲れ様でした!またいつかよければお願いします!
44 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA :2015/06/27(土) 20:22:02.42 ID:bg4djnYw0
>>40
彼の方もにこやかに軽く手を振り、別れの言葉を口にする。

「ああ、またいずれ。その宿題が終わればよいな」

無邪気に笑う少女に、いつの間にか娘を重ねていたのだろうか。つい面倒見の良い言葉が、口をついて出た。
口元に笑みを浮かべながら背中を向け、彼の方も、先程指差したマンションへと帰路につくのだった。

━━━━━━━━
━━━━━
━━━

本日ㅤPM15:30頃
能力者一名と接触。

*情報
姓名・・・雨宮 初音 HATSUNE AMAMIYA
年齢・・・学生
能力・・・微弱な物体浮翌遊能力
魔術師への影響及び
排除の必要性・・・・・皆無

━━━━━━━━━━━━━━報告終了
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤヴァシーリー・マーカス




/この辺で〆ます。お疲れ様でした!
45 :雨宮 初音 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/06/27(土) 20:26:23.64 ID:RJvLqSD90
>>44
/お疲れ様でしたー!とても楽しかったです!
/また出会う機会があったらその時もよろしくお願いします!
46 :霧峰 京子 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/06/27(土) 20:29:06.08 ID:gjRlffuZ0
>>41

「無駄に自意識過剰なつもりはありませんっ」

きっ、と今度こそ明確に強い視線で睨みつける。言葉尻が若干持ち上がり、薄ら頬を染める。
が、確かに視線という曖昧な表現では確認のしようはなし。相手が嘘をついていても、読心能力でもなければそんな事は分からない。
勿論彼が言うように気のせいという可能性だって否定しきれないのだ。テーブルに本を置き、残った感情を溜め息と共に吐き出す。

「外からいらしたのですね」

やはり未成年も含め、特に大人は外部から集められた者が多いようだ。
男の外見から自分より年上であるという判断に狂いはなかったと首肯。しかし、分からない事がある。

能力という未知の分野を扱うため、技術者や研究者を始め、各人員はその道のエキスパートやそれに準じる筈――というのが女の認識。
飛ばされたという言葉は単に異郷にという意味だろうか、それとも――――

「この街が嫌いなのですか?」

こんな所、という表現には少なくとも好ましい感情は窺えない。
学園都市に暮らす身として特別思い入れがある訳ではなかったが、それを置いても此処は住みよい街だと思う。
近年現れた能力者という存在を集めたこの地は、急造で学生主動とは思えないほど平穏に稼働している。
治安など不安要素も残るが、少なくともマイナスに捉えるほどの点は知らない。

「私はこの図書館も含め、嫌いではありませんが……」

吹き抜けの天井を見上げ、男の言う静寂を暫し堪能する。
街と同じ、生まれて間もない施設。新品の髪の香を胸に吸い込めば、人から険しいと言われる眉根が少しだけ下がった。
47 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/06/27(土) 23:22:30.23 ID:YEDX+MxOo
比較的に近代的な建物が多く存在する学園都市。
鮮やかなネオンに彩られた繁華街の中、一箇所だけ雰囲気の変わる場所があった。
レンガ調の壁に木枠で囲まれた小さな窓、窓から覗くアンティークが仄かな光で照らし出された。
高く聳えるビルや激しい装飾に飾られた店舗を横目に平屋で建てられた小さな小屋のような店が其処にはある。

EL・SOL、スペイン語で太陽を意味する店名だけが小さく書かれた看板と今日のオススメと書かれた黒い黒板だけがその場所が何かしらの商いを行っている事を示している。
そんなこじんまりとした店の前に店員と思しき男が現れた。
黒板の文字を布切れで拭い取ると『明日のオススメ アスパラガスのグラタン』と書き込むと曲がった腰を伸ばすように両手を当てる。

「……いらっしゃいませ、まだ開いていますよ?」

それは誰に向かた言葉だったのか、もしかすればその光景を目にしていた貴方に向けられた言葉かもしれない。
何にせよ、学園都市内で営業している軽食店EL・SOL……もしくは魔術師達の交流の場EL・SOLは貴方の為に戸を開いている。
48 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/27(土) 23:58:03.95 ID:iT7V1ESwo
>>47
「なあマスター…まだ開いてるっスか…?」

夜の繁華街、煌びやかな輝きの裏に欲望渦巻く大人の地、そんな所に学生なんかが歩いていようものなら一発補導も不思議ではない。
それでも、尚学生然とした者がいるのならそれは当然『訳あり』な人物に違いないだろう、実際巻島龍也もそうだった。

繁華街では目立つ学ランの少年、男子高校生である事は一目で分かり、またそれがボロボロなのも見て取れるだろう。
フラッとよろめきながら店員の前に現れた巻島は、乾きかけていた頬の血を拭いながら問い掛ける。
渦巻いた白染めの前髪も、心なしか元気無さげだ。

「すんません…金無いっスけど、水を貰えないスかね…」

問い掛けに言葉が返されると、申し訳無さそうに頭を下げて言葉を続ける、口の中が腫れているのか喋り方も覚束ないようだ。
49 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/06/28(日) 00:20:03.42 ID:N52voGqLo
>>48
満身創痍といった雰囲気の龍也の様子を見ると男は小さく微笑むと店の扉を開いた。
樹と樹のこすれ合う軋むような音が妙に心地よく街の喧騒に溶けていく

「水……は無いですが賄いなら少しだけ残っていますよ」

男の言葉は優しく手招きするように店の中へと消えていった。
龍也が店内に入ったならば其処にはオレンジ色の暖かな照明が木目が強く現れた壁や家具を照らしている。
彼が招かれたのは店の半分ほどを占める大きなカウンターの1席だった。

「……好き嫌いはなかったですか、巻島龍也くん?」

名乗った覚えのない自分の名前を何故かこの男は知っており、それを口にしながら鍋を火にかける。
その後は男はただただ笑うだけで、鍋の中身を時折かき混ぜるだけだ
50 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 00:40:27.94 ID:PpTS9lByo
>>49
「あ、いや…オレは水道水で…すんません、へへ」

貰える物はただの水で良かった、口の中の鉄臭い物を流せるだけでそれで十分だったのだ。
だから賄い、とまで奨められると気後れする、吃りながら遠慮しようとしたが、しかし腹も減っているのも事実、結局は腹の虫に負けた巻島は店に入る事にした。

外の景色とは全く違う柔らかな光が体を包む、木製の家具の優しい匂いを嗅ぎながら、案内された席にどっかりと腰を下ろした。
正直歩くのも辛かったから助かる事この上ない、大きな息を吐くと、ふと紡がれた店員の言葉に反応する。

「好き嫌いっスか?特に何も…」

(!?)

何気ない会話、そのように何も引っかかる事なく話し掛けられたものだから、巻島もまた何気ないふうに答える。
だが、すぐに巻島は違和感と、その正体に気が付いた、言葉を飲み込み、目を見開き、鍋をかき混ぜる店員の方を睨む。

             ・・・・
「…おい…アンタ今、巻島龍也っつったよなァ〜?」
「そいつはオレの名前と知って言ったのか?だとしたら何でそんな事を知っている?」
「オレが忘れてたんなら悪ぃけど、ハッキリ言えるぜ!オレはアンタと初対面だ!何故オレの名前を知ってる?答えろ!」

何故、名乗ってもいないのに名前を知っている?巻島はこの店の常連でもなければ今まで来た事もない、全くの初対面であるはずだ。
それなのに、自分に覚えのない奴が自分の名前を知っている、その違和感が店員の態度全てを不気味に感じさせ、その不気味さが巻島の気を立たせる。
カウンターテーブルの下で巻島は武器を取りながら、店員に問い詰めた。
51 :エレナ ◆yD0IHNIkr6 [sage]:2015/06/28(日) 00:40:59.29 ID:xmwoZvl8o
学園都市と言えども、そこにはありふれた街と変わらない日常が――少なくとも、表向きには――ある。
夕時ともなれば、スーパーマーケットは夕餉の買い出しに来た人々で満たされるものだ。
調味料棚の最上段に並んだオリーブオイルを手に取ろうとしている少女も、その一人だった。

「うっ! んーっ、やっ! もう、ちょっ、と、なのにっ!!」

白い肌と薄紫の長髪を有する彼女の身体は、余りにも小さい。第一学園中等部の制服を着ていなければ、どう見たって小学生だろう。
身の丈に合ったサイズを選ぶのはもはや不可能なのか、夏服の半袖シャツは半ば七分丈。
棚の頂上に手をのばそうとつま先を伸ばすたび、だぼついた腰回りの布が波打つ。

やがて自分にはどうしようもない事を悟った少女は、瞳を曇らせながら周囲を見回した。
手近な踏み台はない。そもそも、こんな高さの棚で苦労するのがおかしいということだろう。
店員さんも近くに居らず――かと言って、見ず知らずの人に迷惑をかけるわけにもいかない。
高く高く聳えるてっぺんを恨めしげに睨み、途方に暮れるしかなかった。
52 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/06/28(日) 01:05:38.99 ID:N52voGqLo
>>50
「……やはり知っていてこの店にやってきた、という訳ではないんですね」

矢継ぎ早に捲し立てる龍也とは対照的に男は笑みを崩さず、皿を1つ龍也の前へと滑らせた。
炙られた鰹と大きく切られたオクラの上からトマトと色とりどりのパプリカが飾られ、にんにくで臭い付けされたオリーブオイルで味付けされている。
毒気を抜かれる食欲をそそる香りだった。

「私は助合九郎、情報屋を自称しています。
 貴方と同じ魔術師ですよ、巻島の御坊ちゃま」

続けざまに薄く切られたバケットの入ったバスケットと暖められた牛乳がテーブルを彩る。
バケットは1人で食べるには少しばかり量が多いように思えた。

「この学園都市内で何かありましたら、是非私の方まで」

荒々しい龍也の言葉を凪ぐように九郎と名乗った男の言動は涼やかなものだった。
それが彼からすれば尚更不気味と称するものなのかもしれないが……。
53 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 01:26:08.10 ID:PpTS9lByo
>>52
「……………」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド…

(知っていて、だとォ〜?そっちこそなんでオレの事を知ってんだ!)
(クソッ不気味な奴だぜッ!無理してでも家に帰るべきだったかなァ〜ッ!)


何やら含みのある言い方、どうやらここはただの店、というのでも無いらしい。
巻島はそれが何であるか知らず、知らないから余計に不気味に思い思考を巡らせる、一体奴は何を知っているのか、それをもって自分に何をしようとしているのか。
置かれた料理にも手を付けずに、先手を取るべきかどうか考える、が。

「『魔術師』、だと?」
「…オレと同じ…つまりアンタ、まさかとは思うが親父か爺ちゃんの知り合いか?」
「言っておくが、オレは能力者と対立する気は無ェーぜ、気に入らねー奴はいるけどよ」

『同じ魔術師』という言葉───確かに助合という男が言う通り巻島は魔術師の家系で、自身もまた魔術師であるが、それはこの学園都市では極力隠しているはずだ。
なのに知っている、となれば、助合の言った情報屋故か、もしくは親の知り合いか…親の知り合いとなれば御坊ちゃん呼びも不思議では無いし、名前を知っているのも頷ける。
魔術師であると知られているなら話は早い、魔術師として何か言われる前に素早く巻島は言葉を切り返す、『カスパール』に回るつもりはないと。
54 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/06/28(日) 01:45:03.35 ID:N52voGqLo
>>53
「少し脅かしすぎましたか
 私としては何も争う気はなかったんですが」

カウンターの反対側、つまり調理場に同じ料理ののった皿を用意すると九郎はフォークで器用にパプリカをつつき口に放り込んだ。
同じ鍋から出た料理を食べるのは安全であると言いたいのか、それとも普通に食事なのか。
理由はどうあれそんな動作を何度か行うと言葉を続ける。

「貴方が何をするか、それをどうこう口出しをする気はありませんよ
 ただ必要ならば手を貸します、報酬は頂きますがね」

龍也の質問、巻島の知り合いなのかとの問には答えず九郎はそう答えるだけだ。
賄いだといったその料理を口にしながら曖昧に笑うだけ。

「そういえば、ですがこの店に来られる魔術師の方は過激派の方は少ないです
 何故かはわかりませんが……私のスタンスのせいかもしれませんね」

龍也が席を立ちこの店との交流を切ろうと、料理を口にしようとそれはどうであろうとも彼の表情が笑みから崩れることはないだろう。

//すみません、時間が時間なのでこのあたりで終わりでいいですか?
55 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 02:00:21.39 ID:PpTS9lByo
>>54
(やりにくいぜ…知り合いなら知り合いとそう言えっつーんだよ…)

「つまりなんだ?過激派が来ないっつー事はアンタは穏健派っつー事でいいんだな?」
「そうならそうとはっきり言いやがれってもんだぜ、勿体振りやがってよォ〜…」

何だか飄々としている、まるで自分ばかりが空回りしているような会話に、巻島は少しやりにくさを感じる。
その中で、助合が言った『この店には過激派が少ない』という言葉を拾って自分なりに判断、まだなんとも言えないが、一先ずは敵ではないと見なす事にした。

「まったく…情報屋だか何だか知らねーがよォ〜 冗談が過ぎるぜアンタ」
「折角の飯もマズくなっちま───んマイッ!!」

釈然としない、だが敵ではないならまあいいだろう、巻島は武器をしまうと、ここでようやく料理に手を付けた。
ぶつくさ文句を言いながら、怪しい物を見る目で助合を見て料理を口に運ぶ、物凄く口に合ったようだ、舌は正直である。
文句と舌鼓を同時に打ちつつ、色んな意味で忙しく料理を食べ終えてしまうだろう、バケットの中もすっからかんだ。
料理を食べ終えた巻島は、一応その事にお礼を言うと店を出る、再び訪れるかどうかは、まだわからない…

/わかりました、ではこれで終わりという事で。
/お疲れ様でした。
56 :無銘童子『Rank.A 鬼ヶ島』 ◆Fff7L077io [sage]:2015/06/28(日) 11:31:25.97 ID:hlcoXEK70
──始まりは”路地裏”だった。昼間でありながらこの場所に差し込む陽光は少ない。薄暗く気味悪い淀んだ空気が、連なったビルの谷間を占拠していた。

「………この都市は馬鹿みたいに広いな。」

そんな中、冷たく乾いたコンクリートを踏みしめる人物が1人。フードを深く被っているため、一見どんな人物かを窺い知ることは出来ない。
ただ、愚痴の様に吐き出された短い言葉は太く、そして低い調であった。

「……駄目だな。埒が明かん。」

低い調の声から連想される人物像よりは若干小柄な其の男は、疲れ切った様な声を発してからゆっくりとゴミ箱の上に腰掛けた。懐から「天然水」とロゴが入ったペットボトルを取って開け、水分を口へと運ぶ。
陽光がビルに遮断されるこの場所は、一年中どの時刻もほぼ日陰であるが、今日は暑い。男はパーカーで首筋の汗を拭った。

「此れが後どれくらい続けば気がすむんだ……組織も無駄に面倒な仕事押し付けてきやがって。」

再び愚痴の様な言葉を、空気を吐くように吐き出し。溜息を一つ。野太い声でかつ小柄な青年が、嫌々そうに愚痴を垂らす様はまさに滑稽である。
………学園都市では隠密な行動をとるのは魔術師として最低限のルール。特に彼の場合、額に異形のモノが生えている為に其れは絶対守らねばならない。

──然し。この都市に関して無知であるが故の失敗を彼は既に犯していた。
実はこの路地裏、一部の学生によって近道として利用されている他、チンピラ共の溜まり場、若しくはそれを観察する賢い魔術師の観察場であったり、意外と物語の宝物庫である。
さて、今日彼と出くわすのは能力者か魔術師か……それとも……?
57 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 12:50:11.78 ID:PpTS9lByo
>>56
時刻は昼過ぎの日曜日、行きつけの定食屋で格安ランチを頂いてから、巻島龍也はあてもなく街をふらついていた。
一緒に遊ぶ友人がいないという訳でもない、しかし今日歩くルートは誰かを連れて歩くには危険過ぎる、それが友人であるなら尚更な為に、一人で路地裏を歩く。
何故ならば、良くない噂を聞いたから。学園都市に潜入している魔術師の内、危険な思想を持つものが出没すると。
巻島もまた魔術師である、しかし能力者を危険視したりするような事は生まれてこの方全く思った事はなく、例え能力者であろうとも同じ人間として、友や恩師として学園で接して来た。
魔術師でありながらどちらかというと能力者側なのだ、だから危険な魔術師がいるとなれば、同じ魔術師としてケツは拭くべきという考えがある。

(ま、要はパトロールってやつだぜ)

学ランのポケットに手を突っ込みながら、路地裏を見回る、白染めの捩れた前髪を揺らしながら、ズンズンと歩いていた。
すると、奥の方から溜息が聞こえてくる。ビルの壁に囲まれた路地裏で、他に聞こえてくる喧騒も無く、故に小さな音すらもよく聞こえた。
そちらの方に向かうと、ゴミ箱の上に座って俯いている青年が見える、顔はフードによってよく見えないが、何かあったようだ。
今日は暑い、気温が高ければ陽射しの無い所にいればいいというものでは無く、寧ろそういう所こそ熱中症になり易い、と聞いた事がある。

「オーイ、お前大丈夫か?随分苦しそうだぜ、熱中症か?」
「こんな所でぶっ倒れたらよォ〜 何が起こるか保証出来ないぜ、苦しいならもっと別な場所で休むべきだとオレは思うぜ」

そこにいる人間が魔術師なんて知りもせず、心配そうに声を掛けながら歩み寄る。いや、例え魔術師と知っていても同じ事をしただろう。
見慣れない姿だが、恐らく同年代くらいの人間、別のクラスか違う学年の生徒かもしれない、と思って。
58 :無銘童子『Rank.A 鬼ヶ島』 ◆Fff7L077io :2015/06/28(日) 13:12:50.69 ID:hlcoXEK70
>>57
何処からか響いてきた軽快な足音を、無銘童子の耳は捉えていた。静寂に響いた違和感は、魔術師である無銘童子を警戒させるのに十分なモノで。
彼は素早く迅速に、歩いてきた巻島を視界に捉えた。
フードと少し長い灰色髪の奥から、真っ赤な目がギロリと蠢く。

「…………………………誰だ。」

第一声は問いかけだった。低く、かつ確りとした声が路地裏を反響する。
──反射的に、無銘童子は懐の刀の柄に手を掛けていた。彼の認識からすれば巻島は見ず知らずの自分に声を掛けてきた異界人。
そしてその異界人が、自分に危害を及ぼす場合も、魔術師の世界には存在する。……故に、相手が能力者であろうと魔術師であろうと警戒体制を解くことはなかった。

「──案ずるな。これはただの水分補給。」

一応、巻島の問いかけには答えたが、無銘童子はそれ以上の事を口にする事は無かった。
先ずは先の質問、目の前に立つこの男が何者であるかを知る必要がある。
──確かに。フードを被った無銘童子は小柄で、巻島が「同年代」と感じるのは無理も無いし、事実である。
然し、同時に巻島は感じ取るだろう。睨みつけてきた彼の真紅の目は、この学園都市でいう能力なんかでは無い、もっと異質で悍ましいものを孕んでいるという事を。
59 :無銘童子『Rank.A 鬼ヶ島』 ◆Fff7L077io :2015/06/28(日) 13:35:49.34 ID:4I5kXbovO
//すみません巻島さん次の返信遅れます
遅くても15時には返せるとは思いますが…すみません
60 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 13:44:50.92 ID:PpTS9lByo
>>58
「……………」

折角心配して声を掛けたのに、よく無い反応、少しムッとした。というのもあるが、別の理由もあって、巻島の目付きは鋭くなる。
今まではよく見えなかったが、今見えた、青年が手に掛けた物が、巻島に警戒心を持たせる。
    ・・・
「お前…ソイツは修学旅行で買うみてーな模擬刀じゃあねーみてーだな…」
「そんなもんいつも持ち歩いてんのか?風紀委員にどやされるぜそいつぁ…」

見紛う事は無い、漫画やゲームで何度も見るその形───日本刀───を見ると、巻島の纏う雰囲気が険しくなる。
学園都市で武器を持つ物は少なくは無い、しかし能力者であるなら過度な武装は風紀委員の粛清対象になる筈である。
巻島は風紀委員ではないのでボーダーラインがどれだけかは知らないが、明らかに日本刀一振りは過剰に見える。

「…テメェー この学園都市の能力者じゃあねーな…?」
「答えろよ…この辺りでカスパールの魔術師が出るって聞いたが…テメェーがそれか?」

空気が一瞬にして張り詰め、巻島はポケットの中で何かを握った、まだ青年が魔術師であるとわかった訳ではないが、少なくとも能力者らしくないのは巻島には感じ取れた。
思わず、魔術師内にしか知り得ない単語を出してしまう、しかし巻島にとって今重要なのは、この青年が学園都市に仇を成す魔術師であるかどうか、という事だけだ。

>>59
/わかりましたー
61 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/06/28(日) 14:29:26.34 ID:mOUn5qBZo
――――学園都市、何処かの大通り

ギラギラと照り付ける目が眩むような太陽光を舗装された道が照り返し、その熱は如何にも夏を感じさせた
数えきれない程の人間が暮らす学園都市の、それも大通りとなればそれなりの数の人間が行き来し多くの人間が暑さの中を目的地へと歩を急いでいる事だろう。

だがその一角に異質な光景があった。
仮に空から見下ろす鳥であればその一箇所だけが人が居ないとすぐに気付くだろう、鳥でなくても明らかに避ける様な往来の流れに何かがある事に気が付くはずだ。
ぽっかりと空いた穴の中心、そこには日光を遮る巨大な何かがいた。
それは夏の太陽よりもギラギラとした筋肉を薄手のワイシャツがピチピチに感じる程に詰め込み、腰をかがめているにも関わらず影の大きさだけでも岩の様な巨大さを感じた。
そこから伸びる手足の太さは影からでも凡そ日本人離れして居る事を予想させた。
更にその先端に伸びる部位の影は―――――

―――――――影は、こう、まるで何と言うかそこだけ雑なコラ画像の如く上書きされたかのようにとても綺麗な「いぬ」の形をしていた。

巨漢はその両手をずらす様に重ねて影遊びの「いぬ」を作っていた
人が避けるのもうなづける、間違いない変人だ。
62 :雛形 ◆435bdiv0ac [sage]:2015/06/28(日) 14:56:29.21 ID:uL9KLgXDO
>>61
雛形肇は、道行く人々が先へ先へと歩を進める中、ろくに目的もなく––––––厳密にはあるのだが、特定の行き先が無いので仕方なしに––––––街をただ歩いていた。
今日はとても暑い。できる事ならば家で涼んでいたい所だがそうする訳にもいかず、半ば巻き込まれるような形で人混みに入り込む。
黒髪に容赦なく照り付ける灼熱に辟易しつつ、それを和らげようと時折手を翳して。こんなことならば帽子でも被ってくるべきだった。
……と、不意に全方位からの圧力が消えた。何事かと見回せば、どうやらぽかりと開いた空間に押し出されたようで。
そして目の前には明らかに異様なその––––––見覚えのある、姿。

「……ええと。お仕事お疲れ様です……で、あってますか?」

恐る恐る声をかけてみる。
知り合いという訳では無いが話には何度も聞いていたし、その存在は見てくれの所為もありよく目立つ。遠目に見ることなら何度かあった。
だが、能力のことは人伝にも聞いて試しがなかった。できる事ならば知っておきたい、そんな存在が目の前に現れたのだから好機と言えよう。
……往来でこんな事をしているのだからきっと仕事中なのだろうと予測したが、果たしてあっているのやら。
63 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/06/28(日) 15:20:36.16 ID:mOUn5qBZo
>>62
周囲を蠢く人の声は思ったよりも騒がしい
明らかに地面を向いている男は当然雛形の方を見ているはずも無く、そんな中での小さな呟きなど雑踏に呑まれて消えてしまう事だろう。

「……あぁん?」

だがしかし、そんな小さな呟きに反応してピクリと男の肩が動く、同時に影のいぬの耳も動く。
ほんの小さな動きであったが物が大きければその動きも相対的に大きく見え、それだけで威嚇の様にすら感じ泣いてしまう子供もいるかもしれない程だ。
ゆっくりと腰を上げ膝を伸ばし立ち上がり、同じくいぬも手首をもたげる。

立ち上がればその肉体がどれほどの物かよく分かる。
服に包まれていながらその鍛え込みが見て取れる筋肉!筋肉!!汗とはまさに漢の飛沫と言わん程の筋肉!!!

そんな筋肉がノソノソと大きな足で地を踏み込んで近づいてくるではないか
一歩近づく毎に向こう側の風景が筋肉によって潰されてゆく、また一歩近づけは更に風景を筋肉が占領する。
気付けば雛形の後ろにあった往来がその動きに連動するかのように、筋肉から逃げるかのように無くなっているではないか。

近づいてくる筋肉に対し最早逃げ場はない―――

男は腕を持ち上げそのまま「いぬ」を雛形へと突きつけた。

「仕事中だと分かってんのに話しかける奴が居るかフツーよお!だが最高に退屈だったから許す!」

その言葉と連動するかのようにいぬの口を形作る小指もぴくぴくと上下する
どことなく可愛げ(?)すら感じるかもしれない、いや筋肉だしそんなことは無いかも知れない
64 :無銘童子『Rank.A 鬼ヶ島』 ◆Fff7L077io :2015/06/28(日) 15:31:23.56 ID:4I5kXbovO
>>60
無銘童子の眼は揺るがない。寧ろ、彼らが織り成したこの状況が、彼の体をがっちりと固定していた。

「その質問に俺が答える必要は無い。」

ゴミ箱の上に座ったまま静かに巻島を睨みつける真紅の眼光。そして其の持ち主は静かに口を開きそう言い放った。
また逆に其の言葉は無銘童子自身が「カスパールの魔術師」である事を静かに肯定している。

「…………それで。そんな風に無駄な感情を振りまいているが、それは怒りか?」

「特に止める義理は無いが、そういった調子で馬鹿みたいに自分から情報を振りまいていると……」

この街の能力者であれば知る機会などない「魔術師」という単語。そして続けて「カスパール」という単語。
目の前に立つこの男は間違いなく魔術師で、「カスパール」とは別の二つの思想の何方かに属しているという事は確定した。

「……能力者どころか魔術側に殺されるぞ?」

──張り詰めた空気。火花を散らしながら交錯する二人の魔術師の眼光。
そして其の緊迫した状況を理解した上で、無銘童子はあえて其の事実を投げかけた。
魔術という存在はそのを操る者以外には知られてはならない。
──ならば、其の禁忌を犯す物が存在するというのなら。
答えは一つ、魔術師は其の存在を抹消する。汚い世界を隅々まで理解した彼の言葉は低く、抑揚の無いモノであった。

65 :雛形 ◆435bdiv0ac [sage]:2015/06/28(日) 15:48:47.54 ID:uL9KLgXDO
>>63
視界はあっけなく筋肉に占領された。いつの間にかすぐ後ろだった雑踏も引き、大洋の小島に取り残されたような絶望感もやや覚え始める。
迫る筋肉、反面こちらは細枝のようで––––––勿論、人並み程度ではあるが相対する相手の所為もあり––––––今にも折れそうな軟弱具合だ。いっそ綺麗なまでに対照的だと、道行く人々は思った事だろう。
しまった、声を掛けるべきでは無かっただろうか。まるで蛇に––––––いや、熊に睨まれた仔鹿の如き状態ではないか。

しかし、ずいと迫る犬の鼻面(手)に困惑しているとどうやら勝手に許されたようだ。

「ごめんなさい、つい。他の風紀委員の人と話したりする事もあったので……」
「ところでこれは、ええと……犬ですか?」

影遊びの、と付け足す。それにしてもかわい……いやいやそんなまさか。

「僕も今、犬を連れてるんですよ。ホラ」

ひょい、と出して見るのは携帯に付けられたちょっと古びた犬(?)のマスコットだった。
66 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 16:02:37.40 ID:tB6LIzJbO
>>64
「て…テメェー…!」

確かに、カスパールという単語をつい出してしまったのは自分の落ち度だ、そこを突かれてしまうのも仕方ないだろう。
それを自分でもわかっているから尚更カチンと来た、図星を突かれたのと同じだ、言い返せないから無闇な怒りが代わりに湧いてくる。

「オレは『答えろ』つったんだぜ!テメェーは先生の質問に『答える必要は無い』って答えんのか!このマヌケッ!」
「余裕ぶっこいてスカした事ばっかり言ってっと痛い目見るのはテメェーの方だぜ!」

「テメェーが質問に答えないっつー事はよォ〜ッ!オレが好きに判断していいって事だよなァ〜ッ!」
「『肯定』と見なすぜッ!テメェーがカスパールならオレがぶっ飛ばす!!」

質問に答えない、それを巻島は肯定と捉えた、青年がカスパールであるなら、それはこの学園都市に仇を成す存在だ。
ならばそれをみすみす見逃す訳にはいかない、自分が過ごすこの土地を血と争いで汚すつもりならば早々に排他すべき。
巻島はポケットから両手を抜いた、その手にはそれぞれ一個ずつ、鉄輪を咬ませた木製の独楽を持っている。

「ウラァッ!」

掌を上に向けて広げると、その上で独楽がひとりでに回転し起き上がる、ギュルギュルとスピードを増して勢いを増して行く独楽が風切り音を不気味に鳴らした。
そして、回転している右手の独楽を思い切り青年の顔面へと投げ付けた、ただの独楽とはいえその勢いは凄まじく、また鉄輪で補強されている上にそれが回転しているとなれば、単純に『痛い』では済まぬ威力があるのは一目瞭然だろう。
67 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/06/28(日) 16:14:04.84 ID:mOUn5qBZo
>>65
「犬だ、こう見えて品種は土佐犬だ」

仙の口の動きに合わせて手で形作られた犬もまた口を動かす。
確かにチワワやダックスフントやポメラニアン、ヨークシャテリアと言った愛らしい愛玩犬とは全く逆の方向性を全面に押し出した犬で間違いないだろう。
鍛え込みかゴツゴツと節くれ立った太い指から作られる犬は、なるほど言われれば闘犬の雰囲気を醸し出している。

勿論本気でそんなことを言っている訳も無く、影遊びの、指で出来た犬に品種などあり得ない
ちょっとしたジョークだ、と高らかに笑っている様は筋肉に相応しく清々しく爽やかである。

が、雛形が犬のマスコットを見せるとピタリと表情が固まった。

「ふ、ふーん……その、なんだ。あれか、友達とかそう言う……?」

視線をどことなく逸らしながら仙が返答する。
まさか僕も犬連れてるんですと返されて、しかもマスコット(それも携帯に付けている)を見せられて言葉に詰まったのだ
若干引き気味である事を何とか取り繕っているつもりなのだろう、筋肉の変人に変な奴だと思われている事はほぼ間違いない。
68 :雛形 ◆435bdiv0ac [sage]:2015/06/28(日) 16:35:56.04 ID:uL9KLgXDO
>>67
「あぁ、確かに」と、ついつい納得してしまう無骨さがその犬にはあった。
勿論冗談であると分かっているが、それでもつい口に出て、同時に笑みもこぼれる。
見かけによらず、あまり暑苦しくない男だと思った。これなら仲良くできない事もない。
しかし

「……え?あ、いや、そういうのじゃなくて。いや似てるんだけど、なんていうのかな」
「友達と同じくらい大事……なの…かな、うん。だからけっして脳内のオトモダチとかそういうのじゃ––––––」

共感を呼べると思い口にした言葉だが、どうやら感性に違いがあったようだ。慌てて言い繕うが上手い言葉が出てこない。
変人と思われるのは避けたい、というかもし浮いた存在にでも仲間入りしようものなら魔術師だとバレかねない。が、やはり駄目そうだ。
ならばせめて、話題を逸らさないと

「––––––あ、と、ところでさ。その影遊び、他の形もあるんだよね?」

懐かしいなぁ、と露骨な逸らし方。慣れていない所為もあるがそれ以上に焦っていた。携帯は元あったポケットに慌てて押し込む。
明らかに、暑さによるものではない汗が顔を伝った。
69 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/06/28(日) 17:02:41.20 ID:mOUn5qBZo
>>68
「大丈夫だ俺の筋肉は気も遣える、だから心配するな」

そう言って犬の形を解いた大きな手を雛形の肩に乗せる。
お前の筋肉が使えそうな気はエネルギーの方だろとか、そもそも筋肉が気が使えるとは何だとか、色々と思う所があるかもしれない
だがこれだけは確実に言える、彼の中では何か間違った方向で決着が付いてしまったのだろう。
それを裏付けるかのように何故か仙は「うんうん」と頷いていた。

「手影絵で何が出来るって、ガキじゃねえんだから気になってどうす……いや、そうだな!見せてやろう!そうしよう!」

如何にも「何言ってんだこいつ」と言いたげな表情を見せるが、何か思い当たったのか不自然な程に明るい表情を浮かべて二つ返事で頷いた。
気を遣える筋肉との彼の言葉に嘘偽りは無かった。無かった。

中指と薬指を合わせそこに親指を当てて人差し指と小指を立てればキツネ
両手の平を自らに向けて重ね親指を噛み合わせる様に広げればハト

手の甲を重ねる様に合わせ、上になった手は小指を曲げて中指と薬指を立て曲げた人差し指を親指で外側に押し出す。
下になった手はまるでボールでも握るかのように人差し指、中指、親指だけを立てて握る。

とこれだけを見るとまるで何を作ったのか分からないであろう
だが照り付ける夏の太陽が作った影が、それが何であるかを映し出した。

「ウサギ」だ、それも「いぬ」や「キツネ」と異なり、胴体も―――全身が形作られている。
70 :無銘童子『Rank.A 鬼ヶ島』 ◆Fff7L077io [sage]:2015/06/28(日) 17:06:55.14 ID:hlcoXEK70
>>66

「………………喧しい。」

巻島の文句を無銘童子は其の言葉だけで一掃する。先程と変わらず、真紅の双眸はそのままで。

「……其の荒々しさは……何方かというと俺よりもお前の方がカスパールなんじゃ無いかと思わされる程だな。」
「……行き所の無い偽善を織りなすその感情、心底不快だ。」

巻島を見ての評価を無銘童子は嫌々そうに吐き捨てた。
馬鹿みたいに暑苦しく、善を奢ろうとする。救われた記憶を持たないその鬼にとって、其れ等の行為は途轍もない不快感を齎すものだった。
フードの奥の紅く輝く眼光が、再度輝いた。

───放たれた独楽。警戒こそしていたが穏健派あたりに属するとみていた目の前の男が、いきなり武器を放ったのは割と予想外で。猛回転する狂気が無銘童子を襲う。

「─────────っ!!」

ガツン!!と鈍い音が路地裏に響いた。
フードに覆われた頭ががくりと下がり、腕は脱力した。常人ならば意識を失うかそれ以上の打撃。

「…………………………………………。」

──
────
─────だが然し、彼は常人の域を超越している。


「…………………醜いだろう。然し俺からすればオマエの様な人間の方が醜く感じるな。」

次の瞬間、無銘童子が被っているフードの中にあったモノは、人間の顔では無く。
まるでフードを被った人間にお面を被せたかのような…そんな禍々しい”鬼の貌”。
先程とは雰囲気がまるで違う。触れてはならない、忌々しい殺気を纏った異形の怪物が突如として路地裏に出現した。

「…………こんな汚物が相手でも、尚オマエは其処に立ちはだかるか。」

───そして。その鬼はその貌を保ったまま、低音の篭った声でゆっくりと言い放った。
握られた刀の刀身は先程とは変わって、茜色へと変色をしている。そして、その手を握る右腕も、人間のモノでない事が見て取れるだろう。


//すみません!気づくのが遅れて返信遅くなりました!
71 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 17:36:45.95 ID:PpTS9lByo
>>70
「テメェーがカスパールなら容赦はしねェー、黙って帰らねえなら追い返すのが基本だぜ」
「だがッ!フェアじゃねーから言っておくッ!こいつはテメェーの態度へのオレの怒りもプラスだッ!」

穏健派のバルタザールに属している、とは言え、考え方自体が穏やかであるとは限らない。穏健派、というのはあくまでも能力者への思想の在り方だ。
どうであれ巻島は齢16の少年、青年のような過去を持たないのだから、激情家であっても不思議では無い。
独楽をぶち当て、頭を垂れた青年に言いつけながら、跳ね返った独楽を右手でキャッチする。
トドメを刺そうという気はない、これに懲りてさっさとこの場を去る事を期待して、自分もまたこの場を去ろうと───

「!?」

「て…テメェー……!?」

まだ、気絶した訳では無いらしい、それに気付いて青年の方を向いた巻島の目には信じられ無いものが映った。
まるで悪趣味なお面を被っているかのような異形の貌、しかしお面とは違い、ハッキリとした命があるように見える。

「テメェ〜…人間じゃあね〜…のか…?」

人とは似付かぬその姿、全く見慣れないその見た目に気圧され、冷や汗を流しながら一歩後ずさる。
72 :雛形 ◆435bdiv0ac [sage]:2015/06/28(日) 17:39:29.77 ID:DFIuGfAQo
>>69
「いやいや心配とかそういう……ああぁ」

もう駄目だ、絶望だ、きっと次に学校へ行けば変人として白い目で見られるのだろう。絶望に思わず顔を覆いたくなる。
気を遣われるのが何よりも辛い。今ならそれが如実にわかる。穴があるなら入って蓋をしてしまいたい程。

様々な形を経て最後におかしな形になった変わった椋梨の両手をみる。こうなれば最早やけくそだろう、できるところまでいってやろうではないか。

「影絵って、こんな事もできたんだ……」

と、ポツリ。気を遣われるなら遣われるなりに、せめて会話を持続させようとする。
手と影絵を交互に見て、何処がどの部位なのかと考えてみたりする。

//遅れた割に短くて申し訳ないです……
73 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/06/28(日) 17:54:41.28 ID:mOUn5qBZo
>>72
なるほど上の手の立てた2本指がウサギの長い耳、押し出した人差し指が顔を影で形作る
下の手は人差し指と中指が前足に、曲げた薬指と小指が後ろ脚の膝となり親指がその足に当たるようだ
確かに平面的に見なければ分からないであろう

「手影絵なんてそんな珍しいもんでもないだろ、少し調べれば誰でもやり方分かるぞ」

そう言いながら今度はワイシャツの袖を捲ると肘を曲げ更に手首に角度を付けた。
手はウサギの時とは逆に親指、人差し指、中指だけが握られ残り二本は立てられる。
その状態から二の腕に指を揃えて広げたもう片手を重ねれば「ハクチョウ」の出来上がりだ。

出来上がりなのだが……如何せんその作り方と仙の体躯の相性が良くなかった。

肘を曲げた事によって二の腕が一気に太さを益し、盛り上がった上腕二頭筋が血管が浮かび上がる程に膨れ上がる。
更に手首を捻る事で力が加わった前腕も分厚い筋肉の流れがそのまま見て取れる程に硬く引き締まる
これだけでは終わらず、前三指と言う力の込めやすい部分を握った事で指関節の厚みが晒され、宛ら鉄の拳を体現したかの様な形を見せる

優雅さを感じる白鳥と言うには余りにも力強く、その嘴で獲物を貫く光景すら目に浮かぶ。
そして表現する為のポーズもボディビルダーのそれと言われても可笑しくはない

先程まで雛形が感じていた感動を軽く吹き飛ばし、筋肉の暑苦しさから気温が一気に上がったのではないかと勘違いすら起こさせそうだ。
74 :無銘童子『Rank.A 鬼ヶ島』 ◆Fff7L077io :2015/06/28(日) 17:56:35.19 ID:hlcoXEK70
>>71
先程まで青年の顔だった異形の怪物は、巻島の言葉を聞くや否や眉を顰めた。
”人間じゃあない”。過去に何度も投げつけられた罵倒だった。醜い姿故に、またはその社会的地位故に、虐げられてきた”鬼”の宿命。
路地裏に立ち籠めたドス黒く澱んだ空気が、より一層、彼の怪物としての姿を引き立てていた。
──そして鬼は特有の荒々しい口を開いて、

「……懐かしいな。
幼い頃はそんな言葉を毎日いつ何時も聞かされてきたものだ。
…………見ての通り、俺の身体は何処から見ても醜いからな。」

また、

「……其れは否定する。
……珍しい型ではあるが俺は確かに人間でこれも魔術の一つだ。尤も、俺はこんな醜い姿が大嫌いだがな」

と、静かに言い放ったのだった。
その魔術の名前は「鬼ヶ島」。鬼に纏わる全てをひっくるめて一人の人間の中に内包する魔術。
そして、彼ら一族を社会的地位から没落させた抑もの元凶たる魔術でもある。
故に、醜い姿を齎すこの魔術は無銘童子からすればただの「憎悪」の対象に過ぎない。

「……やりあうと言うのならこの醜さすべてを持って受けて立とう。
…………ただその偽善を振るう勇気が確固として其処に存在しないのならば。」

──その鬼は依然として真っ赤に染まった瞳で巻島を見据えている。ただ一つ、先程と違う点は、彼は今、何時からでも戦闘を行う準備が整っているということ。
そんな怪物は赤赤と燃える真紅の瞳を動かすこと無く、半ば脅すように言葉を発した。

「…………さっさと此処から、消え失せろ。」


75 :雛形 ◆435bdiv0ac [sage]:2015/06/28(日) 18:25:38.02 ID:uL9KLgXDO
>>73
「いやぁ、普段あまりこうやって遊ばないから……なんだか新鮮だよ」

見よう見まねでかたどってみる。影遊びは何歳以来だろうか、不恰好でぎこちなく、どうにもウサギには見えない。なるほど奥が深そうだ。
更に椋梨に視線を向けてみると、今度はどうやら趣向を変えてボディビル……いや、白鳥なのだろう、きっと彼の中では。

「……見事な白鳥だね」

何が、とは言わないでおく。本人も恐らく自覚はしている筈だ。それに、しなやかであるべき姿が猛々しさを演出するなど、なかなか見られるものではない。
しかし見事なのは事実だった。筋肉もそうだが、指先の表現力はそうとしか言い表せない。
負けじとこちらも応戦(?)してみる。筋肉がないお陰で首の細さは表せるが、角度や指先の造形は、矢張りどうにも不恰好だった。

……いつしか雛形は忘れていた。ここが往来の真っ只中だと言うことを。
76 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 18:26:37.34 ID:PpTS9lByo
>>74
「……ゴクッ」

人の体だが、一部分だけが違う、それが異様さを際立たせていて、巻島は生唾を飲み込む。
だが、ここで引いていては魔術師の名折れ、それに男がすたるというものだ。魔術師であるなら異形のものの一つや二つ、見慣れるくらいでなくてはならないと、祖父に言い聞かせられていた。

(爺ちゃん…『これ』に見慣れてたっつーのかァ〜!?)

かと言って、一朝一夕で慣れろというのも無理な話だ、今は落ち着くので精一杯、落ち着いて青年の話を聞くしか出来ない。
だがしかし、その青年の話が巻島の考えに変化をもたらした、巻島の目付きに慣れたような口振りと、『人間である』との言葉。
それを聞いてから、巻島の目付きは変わった、哀れむのでなく、恐れるのでなく、対等な人間に向ける怒りの目付きに。

「…オレぁ頭が悪いからよくわかんねーけどよォ〜…よくわからんが、テメェーが苦労してるっつーのはわかった、何となくだがな…」

「だが!テメェーがカスパールだっつーんなら素直に消える訳にはいかねェ〜なー!!」
「オレは魔術師だがなあ!それ以前にこの学園都市の生徒なんだよ!そいつを傷付けるってんなら守るのがスジってもんだぜェ〜!」

異形であろうと、青年は人間だ、人間ならば、同じ人間として、そうするであろう行動をする。
即ち、カスパール派の撃退、それが巻島がいまするべき行動で、望んだ行動。
立ち向かう、相手が何であろうと、学園都市に牙を剥くなら。自分がそれに合わぬ魔術師という異端であったとしても、護りたいから護る、ただそれだけのことだ。

「ウラァウラァッ!!」

再び巻島は、右手の独楽を青年の顔面へと投げつける、真っ直ぐに向かっていく独楽の回転は衰える事を知らず、寧ろさっきよりも強くなっているようにも思える。
77 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/06/28(日) 18:55:07.48 ID:mOUn5qBZo
>>75
「ふっ……」

互いに白鳥を見せ合うと言う異様な光景に周囲は整然とする中、仙の鼻で笑うような小さな呟きがやけに大きく耳に響く。
突如として彼の白鳥がその頭を天高くに向け、その嘴を大きく開いた。
翼を形作っていたもう片手が指の太さからは想像も出来ぬほど滑らかに淀みなく広がりを見せる。

その瞬間、誰もが目を疑った。

二人の周囲に居た人間達も、空を飛ぶ小鳥も、揺れる草木に潜んでいた虫もそれを目にした。
当然目の前に居た雛形はその光景をありありと目の当たりにした事になるだろう。

【優雅に、しかし生の力強さを持った艶を持った白鳥が、羽搏く為に翼をはためかせる光景】

それが男の腕と重なるようにそこにあったのだ。
いや、仙の腕がその瞬間にだけ本当に白鳥になって居たと言うべきなのか、二つの映像が重なるあり得ない現象が行われたのだから。

幻覚や技術ではない、五感が確かに本物の白鳥は存在していたと伝えて来るであろう。

雛形は知って居るかもしれない、この男『椋梨 仙』の能力名と概要を。
パントマイマー、肉体を用いてそれを実現する能力――――――その片鱗を、お遊びの一環としてただ発動させただけなのだ。
78 :無銘童子『Rank.A 鬼ヶ島』 ◆Fff7L077io :2015/06/28(日) 19:02:50.74 ID:hlcoXEK70
>>76
「────そうか。」

迫る凶器を眼前にして、無銘童子はただ其れだけ口にした。──心底呆れた、と。
そして。次の瞬間には、其処に無銘童子のカラダは無かった。ただ遺されているのは僅かに舞う砂塵と、不発に終わった独楽二つ。

「───オマエが修羅の道を征かんとするならば言った通り、止めはしない。」

無銘童子の身体は、地上から6M程上空にあった。
魔術の行使によって齎された驚異的な運動神経を以ってして、四肢を始動させる────まずは…足。
硬いコンクリートの地面を足の裏で思い切り蹴飛ばして───跳躍。

「…………ただお前の偽善の前には。」

空を舞う鬼は懐の日本刀「鬼人大王波平行安」の柄に右手を掛けた。──刀身が茜色の輝きを放つ。
次に空中にて、刀を真っ直ぐに振り上げる。今にも刃で叩き斬らんとする上段の構え。
刀のリーチに入ってしまえば確実に終わる。鬼の刃は真っ直ぐに身体を両断してしまうだろう。

そして─────落下が、始まる。
落下中尚も無銘童子の言葉は続いた。

「無数の”無銘の鬼”が立ちはだかる事を──!」

真っ直ぐに。

「───忘れてはならない。」

巻島の身体を狙って、真っ直ぐに。
その一本の凶刃は落下のスピードと鬼の腕力の援護を受けながら、巻島の身に迫る。





79 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 19:18:59.98 ID:PpTS9lByo
>>78
「!?」

「ど…どこに消えたッ?」

右手の独楽を投げた、が、その瞬間には青年の姿はそこには無くなっていた。
忽然と消えた姿、逃げるにしてもこの路地裏の何処に逃げる場所があるのか?巻島は辺りを見回して、声が聞こえてきた瞬間ハッと上を見上げる。

        ・
「何ィィィ〜!!上だとォォ〜!?」

あの一瞬で目にも留まらぬ跳躍、あの高さまで飛び上がるなんて、思いもしない跳躍力に、見上げた巻島は声をあげる。
落ちてくる青年と、振り上げられた刀、アレを受け止める力は巻島には無く、回避が間に合う保証もない。
巻島は咄嗟に、左手の独楽を空中の青年へと投げつける、空中でこちらに向かって落下しているのなら当て易い筈だ、部位に狙いは特に付けずに、取り敢えず当てる事を狙って投げつける。
これによって攻撃がブレる事を願いながら、巻島は背後に下がって更に攻撃を躱そうとするが…
80 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 19:20:53.55 ID:PpTS9lByo
>>78
/申し訳ありません、御飯食べて来るので少し遅れます。
81 :無銘童子『Rank.A 鬼ヶ島』 ◆Fff7L077io :2015/06/28(日) 19:56:46.69 ID:hlcoXEK70
>>79
巻島が驚愕した”跳躍力”。”鬼”を体内に宿した状態であるからこそ実現できる圧倒的身体能力。
かの有名な”酒呑童子”や”茨木童子”のような歴史に名を残す存在ではなく、信仰もされず無名かつ無宗教な”鬼”を体内に取り込んだからこそ、
無名といえど其々の良さを継ぎ接ぎのように繋ぎ止めて寄せ集める事で実現する代物である。

「……っ………………一体幾つの独楽を持っているんだ……」

その寄せ集めの無銘の鬼達を統率する彼の目は、落下途中に巻島の手から放たれた独楽を映した。
運の良い事に、無茶苦茶に放たれたかのように思われたその独楽は、そのまま進めば無銘童子の目に突き刺さる軌道を描いていて。

「…………!……………!」

然し、硬質化しているといえどそんなモノが目に入っては堪らない無銘童子としては撃ち落とさねばなるまい。
結果として、巻島を襲うはずの凶刃は飛来してきた独楽を両断するのみとなった。
落下する勢いのまま地面を踏みしめた足。
──ドシン!と音が轟いて、砂が舞って飛び散った。
路地裏に立ち込める砂煙の中、中心に立つ影が何やら声を発した。

「…………中々に小賢しい真似をするな。」
「だが。」

───転換の言葉と共に、影が、消える。
ダン!と大きな音が響いた後に突風が舞い込み、砂煙は霧散した。そしてその時、無銘童子は何処に居たか。────それは。

「───オマエの独楽を俺が受け切った様に、お前はオレの剣戟を受け切れるか?」

それは一瞬の事であったが其処に無銘童子は居た。其処にあったのは巻島から見て右手、建物の壁に重力を逆らう様にして足をつけた化物の姿だった。──ギロリ、と、紅の目が蠢く。

そして。その化物は直様その壁を蹴って、勢いで突撃する。
──次は上下を切り分けんと、再び襲いかかる凶刃。巻島は対抗できるか、否か。

//全然大丈夫ですーごゆっくり!
82 :雛形 肇 『人形使役Rank B』 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/06/28(日) 20:12:32.26 ID:uL9KLgXDO
>>77
思わず、その事象に見惚れてしまった。これがこの男の能力なのか、と。目前に広がる生命は、偽物とはとても思えない程に見事な美しさを持っていて。
椋梨の真似事をしていた腕は自然と力が抜け、暫くは惘然と言葉を出すこともできない。
周囲が動き流れて雑然と化しやや経った頃、漸く口を開き、一言。

「……すごい」

そう、チープとしか言いようのない感想だが、凄かったのだ。初めて見る能力という事もあるが、一瞬にして周囲の視線を惹きつけるあの見栄え。
そして何よりも凄いと感じたのは。筋肉の塊から削り出したのではと疑う程荒々しいその体躯から、精巧に表現された生命の美しいまでの逞しさが現れた事。
今までの生の中で、これ程までに見事な魔術や能力は見たことがなかった。

「……見せてくれてありがとう、とても良い能力だと思う」
「僕のは……今は見せられないけど、いつかは見せられたらいいな」

恥を忍んだ甲斐があったというものだ。変人ととられたのは予想外だったが、今日の成果はこれだけでも上々と言える。
今はただ情報を集めて、深い関係を築くのは自分の立場が定まってからの方がいい。そうでないと、また誰かと決別する事になるかもしれないのだから。

日差しに曝され続けるのもそろそろ限界なのだろう、黒い髪はじっとりと汗で湿り、額に張り付き始めていた。
––––––そろそろ行くねと声を発して、雛形肇は椋梨から離れていく。行く宛は変わらず無い、しかしその表情は先程までとは違うと、明瞭に感じ取れた筈だ。
83 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 20:39:53.91 ID:PpTS9lByo
>>81
「ハァー…ハァー…」

(や…ヤバいぜッ!二つある内の一つがぶった斬られたッ!これでも鉄で補強してるんだぜェ〜ッ!斬鉄剣かよこいつの刀はよォ〜ッ!)
(あんなもんで斬られたら真っ二つ!だぜ…!絶対に当たっちゃならねェー…)

ガムシャラの攻撃で何とか両断を回避出来たが、ただの一度攻撃をかわしただけに過ぎない、それにしては消耗は大きく、そう何度も同じ事が出来ないのは明白だ。
着地しただけで舞い上がる砂埃を見ながら、『とんでもない奴を相手にしている』事を再認識する。しかしそうだからこそ放っておいては大きな被害が出てしまう。
それを承知で一旦退くべきか、立ち向かうべきか、それを考える暇も無く、再び青年の姿が消えた。

「クソッ!息つく暇もねェーッ!って奴だぜ!」

今度は目で追えた、しかし追えただけで、対抗策は思い付かない。
素早く身をかわし、刀の切っ先側に避けて逃げたが、先端が腹を掠めて行く、掠めただけで学ランはスッパリと綺麗に切れ、その下のシャツと皮膚まで斬り裂かれた。

「ぐぅっ!!」

ブシュウ、と血が吹き出たが、傷は浅く済んだ───死ぬよりはマシなだけだが───巻島は素早く移動し、かわされた独楽を回収して青年に振り向く。
一つの独楽が真っ二つになった今、武器にできる独楽はこの一つしかない、これも斬り裂かれてしまえば終わりだ、何とか刀の間を縫って攻撃を当てなければ…

(出来んのか!?オレによォ〜ッ!漫画の主人公じゃあねーんだぜェ〜ッ!?)

それをする方法は、まだ思い付かない。

/遅れました、申し訳ありません。
84 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/06/28(日) 20:40:37.15 ID:mOUn5qBZo
>>82
「そいつぁーどうも」
「俺は能力見て興奮する特殊な性癖は持っちゃいないが、他人が自信を持って見せたがってるモンは見たい程度に好奇心はある」
「だから楽しみにしてるぜ」

一見尊大とも取れる言動からしても仙が自らの能力に確かな自信を持っている事は明白だった。
だから彼は考える、己の能力を見せて尚見せたいと語る程となれば、それは間違いなく彼自身の誇れる物なのだろうと

それは大切な宝物を見せ合うと言う約束のような、自尊心と好奇心と向学心、それと少しの競争心が籠った言葉の掛け合いであった。

片方が歩き出せば、まるで見世物が終わったと言わんばかりに周囲の人間たちも右に左にと操られて居るかのように歩を取り戻していく。
雛形の背に小さく―――それでもその体格から道行く人間より頭一つ高くても大きいから目立つが―――手を振りながら見送ってゆく

そんな光景から数秒して男が腕を降ろすと、いつかと同じく両の手をずらして重ねて再び犬を形作った
羽根が散って居ない事に違和感を感じてしまう歩道に、男は大きな靴跡を付けながら再び歩き出す。

「そんじゃ、“人探し”続けますか」

そういえば彼もまた仕事中であった、人探し、故に『犬』の嗅覚を使用していたのだ。
思い出す、彼が最初に雛形に行った行為――――――

忘れては行けない、彼の胸元で日光を跳ね返し鈍く輝くそれがそう伝えてくる。

――――どれだけ気前が良かろうと、彼は確かに『風紀委員』なのだから。
85 :無銘童子『Rank.A 鬼ヶ島』 ◆Fff7L077io :2015/06/28(日) 21:01:08.32 ID:hlcoXEK70
>>83
「………!……これを躱すか。」

無銘童子の得意戦法として鬼憑依時の驚異的な身体能力を利用した「多角的な攻撃」がある。
初めは上空、そして今回の壁を使った突撃も、それが起因していると言えよう。
──身体能力の強化。其れだけしか無い。技術は当然自分の物を使用しなければならないし、遠距離からの連続攻撃には頗る弱い。
ただ、彼は胸を張って言うだろう。──此れだけで充分である、と。

ズザザッと、躱された為に勢い余った身体を、地面に刀を突き刺す事で相殺した。

「…………まだ続けるつもり、か?」

ふと立ち止まり、鬼は巻島に対して問いかけた。
抑も根本的な事であるが、
無銘童子からすれば巻島と殺戮を繰り広げるのは特に利点が無い。
巻島の優しさを”偽善”と呼ぶ彼からすれば巻島龍也という存在は嫌悪感の塊のようなモノであるが、流石にそれだけで[ピーーー]つもりはさらさらない。

「……少なくとも、俺にはこの戦闘を行う必要なんてモノは無い。
そして、この狭い空間は俺にとって有利環境だ。……それは勿論お前も理解していることだろう?」

前述の通り、「多角的な攻撃」を得意技とする無銘童子。
そして彼の持つ日本刀の長さからして、この路地裏という場所は無銘童子の独断場とも言える場所……言い換えるならばホームである。
……それならば。公平を期すためにもこの戦闘は一旦終えるべき、だと。───彼はそう言った。

「変なプライドを持っているのならさっさと俺にその独楽を投げてしまえ。
……尤も、俺が今提案した、戦闘の終了は、お前にとっても最適解だと思えるが?」



86 :雛形 肇 『人形使役Rank B』 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/06/28(日) 21:07:21.05 ID:uL9KLgXDO
>>84
「––––––どうだった?」
『次に会うときゃ気ィつけとけよ坊や。影絵が本物になるなら最初の犬も怪しいモンだぜ』
『……だが、まぁ、今回の奴は違うだろうよ。安心しときな』

椋梨の目立つ見送りも雑踏に遠く消え、更にその先。未だ周囲を囲む雑踏の中で聞こえる小さな会話。
片方の声は雛形のものだ。誰かと話しているらしい、が、相手の姿は見当たらない。
人混みに紛れ、誰が会話をしているのか、気にする者は誰もいない。
前髪に半ば隠れた黒い瞳は仄かに暗く澱み、二つの声だけがただただ"普通"の調子で紡がれる。

「……そう。じゃあ、今度は別の学校の人でもあたってみようか」

腐っても魔術師、だ。ここにきた目的は、それだけは必ず果たさねばならない。
雛形肇は人混みをするりと抜けて暗がりの路地へと姿を晦ませる。
そこから声が聞こえる事はなかった。
87 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. [sage]:2015/06/28(日) 21:29:43.98 ID:MZaHdRuu0
とある日の、第一学園の校庭。
鹿島 衡湘は単語帳を手にし、一語一語確認しながらも新しい校舎の「探検」をしていた。


「ム…ここまで来れば水道があり」
「そのまま左に行けば自販機…まあ、「水分補給」はここではやりやすい、と」


そして懐から手帳を取り出し、予め描いてあった校舎の図に印をつける。そう、一番「有利」に戦える場所を示す為に。


(───しかし、この学校は何とも広い、いや「広過ぎる」)
(多分校舎以外の施設も校内にはあるのだろう、俺が知る由も無いが…)


印を書き終え、再び単語帳を確認する。来週の小テスト範囲である英語のテスト───。
今まで通ってきた学校が学力優先とはいかなかったのか、新たな環境での講義には少し慣れるのに時間がかかっていた。


「……チッ、確かにトップに立つ為には頭の回転が必要だが」
「こんなに覚えさせられるなんて、却って頭がパンクしちまうぜ」


飽きたのか、ぶっきらぼうに単語帳をポケットにしまう。そして顔を見上げたら、誰かが自分の近くに来るような気配を感じた。

//よろしくお願いしますー
88 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 21:40:08.22 ID:PpTS9lByo
>>85
ギュルギュルギュルッ
手に持った独楽に回転を掛けながら、次の手を考える巻島、独楽をまともにぶつけてもノーダメージという事は、あの変異した部分を狙うのは好ましくない。

(狙うなら…『人間』の部分か…だがあの早さにまともに当てるには隙を突くしか…)

ギリギリまで距離を詰める、相手の射程圏内ギリギリから独楽をブッ込む、そうすれば少しは効果を見込める筈だ。
ジリジリと少しずつ前に進みながら、張り詰めた糸一本程の筋を辿る。

「ハァー…ハァー…!」

そこに紡がれる青年の言葉、それはこの戦いを無益な物として、切り上げてしまおうと言うものだ。
確かに、青年にとっては巻島と戦う理由なんてないだろう、犬に噛まれたようなものだ。だが、巻島には戦う理由はある。
それを投げ捨てて引くという事は、釈然としないというか、納得がいかない、しかし、このまま続けても自分が敗北が濃厚だ。

「…………」

決断しなければならない。こんな時だからこそ。

「…わかったよ…悔しいがオレの方が『下』だ…」
「やめたぜ、この戦い」

青年の言葉を飲み、悔しそうに巻島は、右手に持った独楽を足元に落とす、それは武器を捨て、戦いを諦めたように見えるだろう。
空いた両手で前髪を整えてから、ポケットに両手を突っ込んで巻島はフッと笑う、自分を自嘲したような笑み。

「…ったくよォ〜…ずるいぜその刀、そんなかっこいいもん振り回されりゃ叶わねーぜ」            ギュルギュル
「『人間』じゃあねーっつったのは謝るよ、悪かったな」                            ギュルギュルギュル




「───だから、テメェーも『コイツ』を許してくれよなァ〜ッ!!」

                                                                                  ・・・・・・・・・・・
ギュルギュルギュルギュルッッ!!!捩じ巻く空気が鳴らす音が、突然大きくなる、それは音自体が大きくなったのではない、青年のすぐ近くに音が移動した証明だ。
先程地面に捨てたように思わせた独楽が、密かに足元を移動していた、巻島の言葉の裏で青年へと接近していたのだ。
これが巻島の作戦、巻島の技術、回転の力をかけて自在に物体を操る、無限大の力。
青年へと接近した独楽は地面の小石を踏み台にしてホップ、青年の腹に向かって飛んで行く。
89 :赤羽 卓 Level 4 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/06/28(日) 21:43:47.23 ID:CalxKDEnO
>>87
「やぁ、君はここで何をしているのかな?」

いつからいたのか、彼が場所を呟いているところからいたのか、印を描いているところからいたのか、それは本人にしか知り得ないが。
赤羽卓という少年は、のらりくらりと彼の前に現れた。
その表情は笑っているようにも見えるが、どうにも貼り付けたような笑み。
実に気さくそうな雰囲気を湛えた卓は、迷い人かそれとも別の何かの彼に話しかけた。

「さっきから色んな場所をメモしているみたいだけど、君は転入生かな?迷子にならないようにいちいちメモしている、とか」

そんな憶測を立てて喋る。まあ、実際はなんだって良いのだが。ちょっとした興味本位で話しかけてみただけなのだから。

「単語帳も持ってる。勉強熱心だなぁ、感心するね」

わざわざ単語帳まで持ってきているとはなんて勤勉であろうか。
目を丸くして興味深そうに彼を見る。その様子に、少し馴れ馴れしさが含まれてないかと言えば、嘘であるが。
90 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/06/28(日) 22:01:02.93 ID:MZaHdRuu0
>>89
顔を見上げたら、「無駄に」笑み込んだ人間が自分の目の前に立っていた。
極め付けには「転入生かな?」「勉強熱心だね」という正にテンプレート通りの解答。
まるで何かを「わざと」欠落させているような───そんな気がした。


「───いや、まあ、そんな感じですよ」
「ここの勉強は大変ですねぇ、前にいた学校よりも遥かにレベルが違う」


その言動に多少の違和感を感じつつも、「テンプレート通り」に答える。
そう、自分もまだ「準備期間」であるが為に。そしてこの男がどんな力を秘めているのか分かるはずも無い。


(無駄な事はしない…奴がどんな力を持とうとも、まだこんな所で使う必要もない)


即ち待ちの構え。相手がどう動くか分からない限り、無闇な行動は自滅を意味する。
そして熟考もここでは意味するものではないと察知していた。


「そうだ、ここにいる…という事は同じ第一学園の人かな?」
「君が言った通り俺はここに来てまだ日が浅い───迷子になるなんて実に阿呆らしい」
「なので「校舎案内」と言ったところか…お願いできるかな?」


何時もなら軽く会釈して別れる…つもりだったのだが、どうせならその馴れ馴れしい態度を利用してやろうとして提案を持ち掛ける。
そう───彼と敵対しなければ何の問題もない。「今だけは」。


(初対面から馴れ馴れしく接するならそれにつけ込むまで───取り敢えず「水」が欲しいのでな)
91 :赤羽 卓 Level 4 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/06/28(日) 22:13:15.93 ID:CalxKDEnO
>>90
「あぁ、やっぱり!そんな事じゃないかと思ったんだ。ここの学校は広いからね、確かに最初は迷うのも無理はないよ。もちろん、案内しよう」

テンプレートに次ぐテンプレート。赤羽卓という人間は、テンプレート通りに答える。
広い学園内で、迷子の転入生を偶然見つけ、案内をする―――――実にテンプレートな展開だ。
そのうち、彼にも卓がどこまでもテンプレートな人間だと分かるだろう。まるで、そうでもしないとやっていけないかのように。何かの欠落を隠すためのように。
笑顔の裏で何を考えているかは分からない、否。人間、よく考え観察すれば裏側を読み取るのは容易い。
本当に怖いのは裏の裏の顔だ。そこまで読み取れる人間はそうそういない、何を考えているのかわからない。

卓は彼を一寸たりとも疑わない。その裏を読もうともしなかった。ただ単純に、善意で、迷子の転入生に道案内をしようと思ったのだ。

「ところで、君の名前は?あと、どこに行きたい?」

呑気にも、そんな事を相変わらずの笑顔で問うのだ。
92 :無銘童子『Rank.A 鬼ヶ島』 ◆Fff7L077io :2015/06/28(日) 22:17:41.40 ID:hlcoXEK70
>>89

「…………。」

問いかけに対する回答は承諾。化物の織りなす荒々しい剣の舞による騒音は既に失せ、路地裏は再び静寂を取り戻しつつあった。
自分にも戦う意思は存在しないということを、構えた刀を下げることで巻島に示してみせる。
そして終いには魔術の行使を終了し、彼の体は次第に人間の其れに戻っていった……

───違和感に気づいたのは、この途中である。

(あれ程の執着を見せたのにあっさりと認めた…………?)

巻島龍也という男は、自分と相手に大きな実力差があると認識し実感した上で、
それさえも払いのけてカスパールへの敵意を剥き出しにしていたはずだ。

(…………そして次にわざわざこの刀褒めてくる、ときた。)

一番の違和感は此処だった。先程までかなりの嫌悪を示していた相手の武具を褒めるようなことなどするだろうか?……少なくとも俺はしない。個人の憶測論であるが、それは唯一無二な答えを射抜いている。
そういえばこの男は、”独楽を回転させて”操ってはいなかったか?無銘童子は巻島の思惑に勘付き、地面の方を見遣るが手遅れであった。


「…………ポーカーフェイス。」

迫る独楽を目に移し、無銘童子は吐き捨てた。
然しとて、無銘童子も無能では無い。
違和感に気づいた時から、僅かに右腕の硬質化を再度開始していたのである。
突然であるが故にその硬質化は不完全であるが、腹部への打撃を防ぐには十分なモノだった。
少しだけ硬質化した手で独楽を払うようにして、軌道を反らす。不完全な硬質化で独楽を受けたその右腕は、痛々しく血を噴き出していたが、腹部へのダメージの代償と考えれば高くない。

「…………こんなことされては俺としてもちゃんとやりあわなくてはならないのだが、コレは良しという合図なのか……?」

僅かに硬質化を始めた無銘童子の顔が、そしてその中の真紅の目が、問いただすように巻島へと視線を送った。

//すみません遅れました
93 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/06/28(日) 22:36:37.33 ID:MZaHdRuu0
>>91
(やはり…何かがおかしい)
(まるで良くあるRPGに出てくる街の住人のような、何という狭苦しい受け答えだ)


衡湘はその男の余りにも「決められた」受け答えに息苦しさまで覚えていた。が、直ぐに頭の血を廻らせ考え過ぎないように落ち着かせる。
自分は余りに深く考え過ぎている───自覚はある、気にしなければ問題ではない。そう、たかがまだ会って間もない人間なのだ。
初対面ならば、あのような応対は良くあるし自分だってそうする。
───しかし、あの貼りついたような顔は何なのか?


「───すまないね、俺は自分から名乗る事はしないと決めているんだ」
「いや、人の「信頼」というのを得る為には自分の誠意というのを見せなくては分かるはずがない、そうでもしないと俺は君を「信頼」出来ない」


未だ自分に立ち込める不安を振り切るように喋り、その応対を促す。
奴がその通りならば普通に自分の名前を言うのだろう、と。


「出来れば名前と能力を教えて頂きたい、いや!名称だけで良い…今後の「仲」の為にもそうでなくては「安心」しきれない」


正直敵は少ない方がずっと良い、無理をしてトップに立つなんて毛頭無い。
このような「テンプレ通り」の人間でも、敵でなければ問題では無いのだ。
94 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/28(日) 22:44:28.82 ID:PpTS9lByo
>>92
「グッ!」

巻島としては上手くやったつもりだった、戦いの中止を自分から申し出るとなれば、多かれ少なかれ油断している筈で、それをついた筈だった。
渾身というのではないが、上手く隙を突いたと思っていた───油断していたのは、自分の方だ。
あと一本近ければ、あと少しタイミングをずらしていれば…『たられば』の後悔は枚挙に暇が無く上がってくる。

「…いーや、コイツはただの『最後っ屁』だぜ…どうやら手詰まりみてーだしよォ〜…」
「こうなったら、『逃げるが勝ち』だぜェ〜ッ!!」

跳ね返ってきた独楽が手元に戻って来たのをキャッチし、ポケットに突っ込むと、すぐに踵を返して走り出す。
追い付かれない為に全力疾走だ、最早鼻っ柱を追ってやろうとも思わない。

(『退却も勇気』っつーけどよォ〜ッ!その言葉をバカにしてたオレをブン殴りてーぜ!)
(独楽一つであんなモンに対抗出来るかっつーの!やってらんねーぜ、まったくよォ〜!)

思いっきり逃げる事に全てを賭ける、さっさと路地裏から出て表通りに出て、人通りの多い所で息を吐いて立ち止まる。
後ろを振り向くと、もう路地裏の青年の姿はない、無我夢中で走ったおかげでどうやら逃げ切れたようだ。

「…いッッッッッ………………………てェェェ〜〜〜〜ッ!!」
「こいつは流石にやべーかなァ〜ッ!縫わなきゃダメかも…」

/お疲れ様でした
95 :無銘童子『Rank.A 鬼ヶ島』 ◆Fff7L077io :2015/06/28(日) 22:56:42.37 ID:hlcoXEK70
>>94
巻島の姿が見えなくなると、無銘童子は倒れこむように壁に寄りかかった。
少し……油断してしまった。独楽の回転によって抉り取られた右腕の皮膚を見て、自らの落ち度を再認識する。
無銘童子は独楽を軽々しく弾き飛ばしてしまったかの様に思えたが、その独楽が彼の右腕に残した被害は割と馬鹿にできるものではなくて。

「…………まだまだ、ということか。」

右腕が碌に上がらない。硬質化をしつこく二度も繰り返したところにあの独楽が傷を付けていった為、魔術回路に若干の不具合を施された……そんなところだろうか。
利き腕である右腕が封じられた以上、巻島が逃げてくれたのは幸運であった。恐らく、この状態で戦っていればrank.Aを有しながら、巻島と同等かそれ以下の力しか出せず、勝利は保証できない。
ただ其処は逆に彼もポーカーフェイスを使って見せることでやり過ごした、のだが。

「……割と厄介な相手だな。……なるべく会いたくはない。」

日本刀をゆっくりと引きずりながら、無銘童子は路地裏の闇へと消失していった。

//お疲れ様でした!
96 :赤羽 卓 Level 4 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/06/28(日) 23:04:18.61 ID:CalxKDEnO
>>93
RPGの住民のような決められた受け答え。完璧で普遍的で、どこまでも当たり前の解答。
もはや思考する余地すら必要ない。何故ならば、"既に決まっている"のだから。
きっと、この少年は相手が誰であろうと同じ受け答えをするだろう。その相手が、たまたま彼であっただけだ。
卓の瞳にはもちろん、生気が宿っている。しかし、それはあまりにも不自然に感じるかもしれない。
誰にでも同じような対応をするNPCのような人、それは果たして生きていると言えるのだろうか。役割をただ演じるだけの、道化が。

「あぁ、確かにそうかもしれないね。良いよ」

そして、こんな願いにも、平気で、笑顔で応じる。

「僕の名前は赤羽卓。能力は《思考念動変容弾》と言ってね、まあ、要するに手から思念弾を撃ちだす能力さ」

名前を言い、能力を明かし。
さも当たり前かのように、自らの手の内を明かすような事をする。警戒心の欠片もなく。
97 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/06/28(日) 23:30:39.69 ID:MZaHdRuu0
>>96
やはりか、という確信と共に本当に言ってしまったという落胆が衡湘の心を突いた。
そもそも間違いであったのだ。「彼に」話す事自体、間違いであったのだ。
だがそれは衡湘の嗤いを起こさせる起爆剤にもなった。
何という単純!最早コイツには負ける事もあるまい、と。


「そうかそうか…思念弾、か」
「ククク、クカカカカカ!! 良いねぇ、そういう能力、強そうで良いじゃないか」


まさか能力の中身まで教えてくれるとは僥倖、と衡湘は心の内ではっきりと知覚した。


「では俺の名前も教えておこう、君は「信用」に値するからね」
「俺の名前は鹿島 衡湘。能力は「Level2」の「水を操る」能力だ、君に及ぶような能力ではないけどね───」


騙すということは悪と言われる諸行と良く揶揄されがちであるが、衡湘にとっては騙される奴が悪いのだ。騙されたならば自らの野望に利用し尽くすまでだ、定めている。


(奴を騙すとなっても利用し尽くした時点で消す…能力は少し改悪したが、それでも近い能力を開示してしまったまでには仕方あるまい)


「まあ良いさ、取り敢えず校舎案内とお願いしておこう」
「……一つ、忠告するとならば、「疑う」行為は悪い訳ではない…ま、言っても分かるわけが無いか」


思念弾がどういうものか、分かるまでは敵にはしない…協力関係であろうとメモに書き記し、バレないように服に隠す。
そしてこれから校内を案内してくれるであろう赤羽の指示を待つのであった。

//すいません、そろそろ終わりにして宜しいでしょうか?
98 :赤羽 卓 Level 4 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/06/29(月) 00:00:32.60 ID:W1Tx7AmPO
>>97
「へぇ、なるほど。そいつは強そうだね」

なぜ、卓は彼をまったくもって疑わないのか。道に迷うだけならまだしも、能力の内容をわざわざ聞いてくるという事には、十分疑いえる要素があるというのに。
いや、更に言えば卓程度の人間になら、多少は心の裏を読むことができるはず、なのに何故一切の警戒もしないのか。
もしかすれば、全てを分かった上での事なのかもしれない。全て分かっていながら、笑顔のままなのかもしれない。
だが答えは全て笑顔の中に隠されてしまっている。卓の心の中を知り得るのは、卓しかいない。

「鹿島くんか。これからよろしく!」

いつ裏切られるか知れない、だが、それでも笑顔のペルソナを被った卓は人間の善性を信じて生きている。
人間は善性の塊であると、そう自分に思い込ませている。刷り込んでいる。

「疑う?何の事かな?君を疑う理由なんてどこにもないのに」

だから、本気でそんな事を言える人間なのだ。

「それじゃあ行こうか、時間はかかるけどね」

そして鹿島を連れて、校舎を案内していくだろう。絶えず笑顔で。
これが、卓のテンプレートであった。

/それではここで〆ます!ありがとうございました!
99 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/29(月) 18:25:20.13 ID:mWT4Df0F0
───時刻は正午。高天原いずもは学園都市の中枢を担うこのビル街を、全速力で駆け抜けていた。
彼女の目線の先には、同じく猛スピードで駆けてゆく一匹の黒猫。

「─────くっ……そ!!何であんなにはええんだあの糞猫!!」

息を切らし、汗を首筋に滝の様に流しながらも猫を追う番長風少女。よくよく見てみると黒猫は何か三角形の物を袋ごと咥えて全力逃走している。

「───オレの昼飯……逃がさんぞ!!」

黒猫を追いかけながら、高天原はシャウトした。周りからすれば何処からどう見ても変質者である。
彼女の嘆きの通り、黒猫が咥えた三角形の物質……それはパッケージに包まれたサンドイッチであった。
「高級ハムとふわとろタマゴ」という表示に目を奪われ、ついつい手に取ってしまったその一品。
──値段にして680円。少ない財産をはたき、泣く泣く買った極上品。……逃すわけには行かない。

「──ウオぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

鬼気迫った表情で黒猫に迫る高天原。
目の前には大きな角があり、猫もその角を右へしっかりと曲がった。
…周りの事を見向きもせず角を曲がらんとする高天原。……何事も無ければ良いのだが。
100 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA :2015/06/29(月) 19:29:48.11 ID:+GueZ1iT0
>>99
「ムウ……随分と暑いのだな、日本の夏というものは」

時を遡る事、約一分前。彼女が角を曲がろうとしたその道の先では、一人の壮年の男性が歩いていた。
身長は高めで、茶髪の髪をオールバックに立派な髭をたくわえており、碧色の目を空へと向けながら、汗をぬぐう。
暑い暑いと言いながら、老人にしてはかなり筋肉のある手に持つ清涼飲料をゴクリと一口飲む姿は、老人とは思えぬ若々しさを感じる。彼自身、日本の環境に適応しつつあり、それらを清々しいものだと感じられるようになっていた。

「しかし、よい天気だ……まるで心があらわれるようだな」

それなりに満足している様子で道を進み、そのまま良い気分で道の角を曲がろうと歩を進める。はずだった。
その瞬間、一匹の黒い影が、猛スピードで彼の脇を駆け抜けて行った。

「!」

とっさの事だったので、つい身構えて後ろを振り向く。しかしよく見てみれば、それはただ一匹の猫が走っているのみであった。何かをくわえている様だったが、そこまでは認識出来なかった。
彼はハッと我に帰ると同時に構えを解き、どこか哀愁の混じった溜息をつく。

「……たかだか猫一匹に驚かされるとは……わしも衰えたものよ」

どこか悟った様な口調でそう独りごちて、黒猫の後ろ姿を眺めるのも束の間。何かとてつもない衝撃が、ヴァシーリー・マーカスの正面胸部を襲った。

「ぐ……ぬっ!?」

先ほどまで足をどしりと構えていた影響か、彼はその衝撃では後ろに倒れずに済んだ。しかし問題は、その衝撃の正体が、まだ幼気な少女によるものであったという事である。
彼が後ろに倒れなかったと言う事は、衝撃を与えた側……つまり少女に、角を勢いよく曲がり、突っ込んできた時と同じだけの衝撃が襲う事になるだろう。
101 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io [sage]:2015/06/29(月) 20:10:58.72 ID:mWT4Df0F0
>>100
「───待て!この糞ね…………きゃっ!?」

昼飯を奪った猫を猛追する高天原いずもの目の前にガッチリとした壁が立ちはだかった。
ガツン!と痛々しい音と、何時も男として振舞っている彼女にしては珍しく高い悲鳴が大通りに響く。
──同時に、彼女の身体は吹き飛ばされた。
全速力で突っ込んだ先に強固な男の肉体があったのだ。しょうがない。

「……っだよ…………いててて……。」

学ランを身に纏ったその少女は、右手で頭を抑えて座り込んでいた。
直接接触した部位…………頭。予想以上の衝撃が彼女の首を襲う。
そしてこの時点で彼女の昼飯は還らぬ物となった。黒猫の姿はもう既に人混みに掻き消えていた。……未だ、座り込んだままの彼女はその事に気付いていない。


102 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage]:2015/06/29(月) 20:28:57.37 ID:GfKpx7zhO
>>101
「大丈夫か?」

地面に転げてしまった少女に対し、心配そうな顔で手を差し伸べる。
彼という障害物があったことによって、彼女の弁当をかっさらった猫はどんどん先へ先へと進んでいってしまった。
当然だが、当人はあの猫が彼女の弁当をくわえている事など気付きも、また微塵も思っていないらしく、ちょっとした事故だという風な振る舞いをしていた。

「立てるか?いきなり飛び出して来るとは、わしが車ではなくよかったものだ。今度からは気を付けるのだぞ」

彼女の心中はつゆ知らず、彼は軽く注意をする。彼女の身を思えば当然のことなのだが、彼女は弁当を追いかけていたら男にぶつかり、挙句その男に注意されてしまった、という図が出来上がる事になった。

「それにしても、とてつもない勢いだったな。何か急を要する用でもあったというのか?」

未だ尻餅を付く少女に、続けてふとした疑問を投げかける。この言葉によって彼女は気がつくだろうか。自分が猫を追っていたこと、そしてさらに、事故だったとはいえこの男によってそれを阻止されてしまったことに。
103 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/29(月) 20:44:08.19 ID:mWT4Df0F0
>>102
「…………お、おう…………すまねぇ……」

差し出された手を取って。大男の大きな手の支えを借り礼を言いつつ高天原いずもは漸く立つ。
パンパン、と服についた砂汚れを叩いて落としながらゆっくりと。
──何とも醜い構図。数十分程前に猫に昼飯を奪われ、追いかけるが捕まらず。そして今現在、大男に突撃してしまい、逆に弾き飛ばされるときた。…………そして続く男の言葉で、高天原いずもは更に絶望する事となる。

「…………ぁ。
…………ああ!ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ
あ!!!!!!」

──悲痛の叫び。無論の事、彼女がノロノロと立ち上がった頃には既に黒猫の姿は何処にも見当たらなくて。
そして目の前に広がっているのは大量の人。其々が別々の方向に動き、あの中を潜って抜けるのも一苦労しそうな混雑模様。……今頃猫はやすやすと其れをやってのけ、路地裏あたりで彼女のサンドイッチを目の前に、優雅な昼食をとろうとしているのだろう。

「………………オレのォ……!昼飯…………金ぇ………………。」

高天原いずもの膝ががくりと折れ、その身体は再び地面に伏した。声がハッキリと出ない。
彼女の右手が先にある人混みに向かって伸びるが、直ぐに力を失い、がくりと落ちた。
周りからすればコントのような構図であるが、馬鹿馬鹿しいことにこの番長女は、問いかけてきたマーカスを尻目に涙目であった。
104 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/29(月) 21:14:14.82 ID:+GueZ1iT0
>>103
「?」

絶望的な叫びを上げる少女を前に、ヴァシーリー・マーカスはただ首をかしげるしかなかった。
少女は叫ぶ。それはただ「急いでいたからぶつかった」という事に留まらない、何かこの世の終わりを告げるかのような響きであった。
彼の中で、もしかしたら何かトンでもない事をしでかしてしまったのではないか?という念が次第に強くなる。
しかしそんな不安も、彼女の発した次の一言で、霧と散る事になった。

「……昼飯?」

彼はハッと気がつく。先ほど脇を通り過ぎた猫。何かを咥えて走っているように見えたが、あれはさては、彼女の弁当だったのか?
この絶望っぷり、そしてさらに地面に突っ伏した彼女の姿を見れば、なるほど辻褄が合う。その実に学生らしいというか、彼女が聞いたら憤慨しそうではあるが、くだらない理由に安堵した。
しかし同時に、彼は弱った事になったとも思っていた。間接的とはいえ、目の前の少女の昼食を人混みの向こうへ散らせてしまった事に対しての罪悪感に似た念が、同時に彼を襲ったのである。

どうしたものかと、目の前で項垂れる少女を見ていた時、彼の腹が低く大きな唸り声でもって、正午の食事の時間を告げた。その時、彼に電流が走る。たった今、誰も悲しまないで済む、すばらしい解決策を思いついたのだ。 彼はさっそく彼女に話しかける。

「……おい、君。わしの話を聞けるか?」
「ゴホン……何だ……そう、今のは君の不注意だったとはいえ、角から何かが来ると予見していなかった、わしの不備でもあったな。すまぬ」
「そこでだ。おわびと言っては何だが、わしが昼飯をおごるということで、この件は水に流すというのはどうかな?」

彼は非常に自然に、彼女が弁当を失っているのだという事に気が付いていないフリをして、話を進める。
彼もちょうど腹が空いたところなのだ。こうする事によって、昼飯を奢って貰えるというだけでなく、彼女に「ツキが転がり込んできた」と思わせられる、相乗効果を与えられると考えたからこそ、このような対応をしたのである。
これは皆幸せになれると彼がとっさに考え出した解決策だったが、彼女の理解力が高ければ、彼が気を遣っていると気付きそうな単純なものである。果たして、彼女に対してはどうだろうか。

105 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA :2015/06/29(月) 21:15:14.06 ID:+GueZ1iT0
/申し訳ありません、諸用によりレスが遅れます。
/10:00〜30までの間には返せるかと思いますので、暫しお待ちを
106 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/29(月) 21:31:08.57 ID:mWT4Df0F0
>>104
「…………いやいや…。おっちゃんは悪くねぇんだ…………全ては注意を払わなかったオレの責任…………だっ……。」

黒猫を猛追していた時の威勢は如何した?と馬鹿に出来るほど落ち込む高天原。
終いには大きく溜息を一つ。散々彼女に迷惑をかけられている風紀委員なんかからすれば正にその姿は滑稽であることだろう。

───────────────が、然し。
そんな彼女の耳に、思わぬ天の声。


「お、奢る?…………いやいやいや!でもアンタ知り合ったばっかだし!
オレがそもそも猫に取られたのが元凶だし!……

……いやぁーでも今財布に金無いんだよな……。昼飯無いと……いやいやいやでもぉ!


……というわけで!見ず知らずの優しいおっちゃんの前で絶賛困惑中!みたいな!?……あはは……」

実際にはもっと長く色々と喚いていたのだが……割愛。マーカスの「みんなが幸せになれる解決策」は、彼女に理解されるどころか、彼女をより困惑させる大きな材料と化したのだった。
如何すればいい?と困った苦笑を浮かべながら、いずもは前に立つ男を見つめているのだった。

//了解ですb
107 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/06/29(月) 21:47:53.00 ID:dUhVoviXo
綺羅びやかなネオンが輝く街に吹く夜風が小さな暖簾と風鈴を揺らす。
梅雨の湿り気を多く含んだ風であったがちりん、と涼しげに鳴る風鈴の音と暖簾の大きな「氷」の文字にどこか夏の爽やかさを感じられた。

しかしながら風情のない話である。
その2つが吊るされた壁はレンガを積んだ西洋の建築物である。
名はEL・SOL、スペイン語で太陽を意味するその店名に相応しく丸い小窓からがオレンジの光が漏れる。

「本日のオススメ かき氷はじめました」
店先に出された小さな黒板には几帳面な文字でそう綴られている。
季節には少し早いが確かにこの梅雨の嫌な暑さを解消するにはいいのかもしれない。

今日は夜にしては街は熱を冷ましきれず、冷たく甘い誘惑は貴方をこの店内へと誘うかもしれない。
いや、そうでなくともここの店主――情報屋を自称する男に用があるのなら貴方はその扉を開けるかもしれない。
108 :ライラ・F・モーリス ◆kCKumm9a1uHy [sage]:2015/06/29(月) 22:03:06.66 ID:IETgLHG6o
>>107

この国特有のじっとりとした空気を切って、ひとりの少女が夜街を歩く
少女の髪は夜空に近い藍色で、瞳は月の色にも似た黄金色。顔立ちからはどこか西洋らしさを漂わせる
制服を着て学校へ通うような年頃に見えるが、服装は私服。初夏らしく涼しげなレースの施されたワンピースだ

「―――ここ、ですね」

少女が立ち止ったのは、煉瓦造りの建物の前
洋の東西、統一性がなくちぐはぐなその風景を目にして、少し逡巡したのち、

「ごめんください」などと店内へと声をかけながら、その店の中へと足を踏み入れた。
109 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/06/29(月) 22:22:24.81 ID:dUhVoviXo
>>108

「いらっしゃいませ」

カウンターの奥に佇んでいる男は小さく扉を開くライラを見つめ黒縁眼鏡の奥の瞳を細め微笑んだ。
白のシャツの上に黒のベスト、首元を赤のリボンタイが飾っている青年だ。
黒髪で黒い瞳、肌の色も東洋人のように見えるが、何処か現実味のない印象の薄さを感じる朧げな雰囲気を持っている。

「宜しければカウンターへどうぞ」

男は自分の立つカウンターテーブルの上にメニューを広げた。
それに目を落とせば和洋折衷、さまざまな料理の名前が踊っている。

「オススメはお食事ならばアスパラガスのグラタン、デザートならばフラッペ
 ……ドリンクでしたら貴方ならシンデレラですね」

店の壁に掛けられた黒板に目をやれば似た内容が書かれている。
ドリンク云々は……冗談だろうが
110 :ライラ・F・モーリス ◆kCKumm9a1uHy [sage]:2015/06/29(月) 22:41:51.59 ID:IETgLHG6o
>>109

店内の暖かな光に迎えられ、思わず息を吐き出した
魔術師たる自分は、外の世界、学園都市にとっては異端。
この場所はそういった疎外感から自分を守ってくれる。そんな思いを知れず抱いていた

さて―――とにかく店内に人影はひとり。自然とそちらへ目線を向け、足を運ぶこととなる
そうして勧められるままカウンター席に腰を下ろすと、

「では、お勧めのもの……グラタンを頂けますか?ドリンクは……コーヒーをアイスで」

ドリンクの冗談を微妙な笑みで受け流し、注文。どうやら夕食がまだだった様子

この時間から珈琲を飲んで大丈夫だろうか、などと少し思いはしたが、どうせこの後の話題次第では寝るに寝られない展開が待っていそうだ
それなら、と覚悟を決める意味合いを兼ねて。スティックシュガーを求める動きをする辺り、味覚はまだまだ子供だが。
111 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA :2015/06/29(月) 22:45:57.47 ID:+GueZ1iT0
>>106
「……むう、それもそうだが」

正直の所━━━━ヴァシーリー・マーカスは、彼女の事を少し見くびっていた。
弁当を無くしたという些細な事で項垂れるようなオーバーリアクション。そんな単純さから、自分の「解決策」にもまた、ホイホイと乗ってくるとばかりタカを括っていた。
しかし少女は、彼が思っていたより子供ではなかった。初対面だからという「遠慮」の心を、若くして持ち合わせているというのは、感心させられると同時に再びうならせられる羽目となった。

「しかし君は、昼食を失くしてしまったのだろう?」

ままよとばかりに、彼は物事の本題の核心をいきなり突く。相手の弱い所を突き、退けない状況にしてから自分を通す。それが彼、ヴァシーリー・マーカスの戦場においての理念であり、また処世術でもあった。
しかし逆に考えれば、単純につぐないをしたいというだけでここまで思惑を働かせるというのも、何とも滑稽な話であるのは間違いない。

「わしも腹が減っていたところなのだ。すぐそこにわしの気に入っている店がある」

さらに畳み掛ける。最後までとっておいた"都合のいい偶然"の要素を一気に並べ立て、その言葉に「説得力」を与える。
要は相手に「従わなくては損ではないか」という気持ちを与える事が重要なのだ。実際問題こうする事で、彼の罪悪感は見事晴らされ、彼女の腹は満たされ、どちらにも得があるのだ。
しかも彼が親指で指差した先の店は、とても美味しいことで有名だが、学生にはいささか辛い値段のレストランである。

「まあ、君がどうしてもよいと言うのならば、それもよかろう」

とどめの一言である。
「嫌ならいい」という言葉の裏には、得てして「断るな」という無言の圧力が込められている場合が多い。
無論そんな強制的な意味を込めたつもりはないのだが、彼はとにかく、彼女に対して何かしてやりたい気分で一杯だった。
先程のような絶望的であまりにも可哀想な態度を見せられたのでは、嫌でもそうならざるを得ない。
彼の中で繰り広げられた様々な緻密な計画の元紡ぎ出された言葉に対して、彼女はどうするのだろうか。

112 :弥蛇山 統吾 ◆.uODUUeoe6Sc [sage]:2015/06/29(月) 22:57:32.82 ID:4IJaP2lIo
――――――――夕方。陽が落ちかけ、街は放課後の学生で溢れ返っていた。
学園都市の名は伊達ではなく、この時間帯になると雑貨店から娯楽施設まで、様々な場所が賑わいを見せ始める。
しかし一方で、街の暗部とも言うべき部分も静かに蠢き始めていた――――中心部から少し外れた、路地裏にて。

「……………ったく、大人しくしてりゃ痛い目見ずに済んだってのによ」

言葉を吐き捨てたのは、長身の青年。無造作にはねたボサボサの金髪に、鋭い目つきを隠すかのようにかけられたサングラス。
第一学園の制服を着崩しており、要所要所に銀細工の装飾を身に付けていた――――余程気が抜けた人物でもない限り、堅気の人間には見えないだろう。
傍に転がるのは恐らく同年代ぐらいであろう、血塗れの青年。息はしているため死んではいないのだろうが、白目を剥いて倒れているため気絶していることが分かる。
その上辺り一面に広がる破壊痕、一方で青年の服には汚れ一つ付いていなかった。

「んで、肝心の中身はっと……………」

血塗れの生徒の鞄から財布を取り出すと、中から紙幣だけを抜き出した。
カツアゲである。この場面を見る限りどのような経緯でこの二人が戦い、そして一方的な勝負が行われたのか想像は難しくないだろう。

「ひぃ、ふぅ、みぃ…………たったの三千円かよ、派手な能力の割にはシケてんなァおい」

どうやら想定より収入が少なかったらしく、八つ当たりとばかりに倒れこんだ生徒の腹部に蹴りを入れた。
呻き声は聞こえるものの、気絶しているためそれ以上の反応はない。靴についた血を地面に擦り付けながら、青年は溜息を付いた。
もう一人ぐらい漁ってみるか、それとも今日はここまでにしておくか――――財布をそこら辺に投げ捨て、ポケットから取り出した煙草に火をつけた。
113 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/29(月) 23:00:05.36 ID:mWT4Df0F0
>>111
「…………うっ。それは……そうだけどよ……。」

弁当を失くしたという事実を再度突き付けられ、再び俯いた高天原いずも。善と悪の感情が、彼女の頭の中を駆け巡る。
しかし未だこの事実だけでは、お詫びといえど奢って貰うという事に賛同できないでいた。
らしくなく、番長と呼ばれるその女はモジモジと判断を渋らせていた。

「────!!……なん……だと……。」

「遠慮」するいずもを畳み掛けるマーカスの言葉の連続攻撃。滑らかに自然と発せられる台詞は、年季の入った、熟練魔術師の為せる代物であり。
”偶然”を装い、少女の欲望を満たし、かつお詫びを成し遂げようとするその話術。然も指差す先には到底自分の所持金では行けないような有名レストラン。先程まで追いかけていた680円なんかとか比べ物にならない……。
高天原いずもの善悪のシーソーは。漸くある方向へ傾いた。

「……いや!いやいやいや!!……すみません!是非お言葉に甘えさせてくださいお願いしやす!!」

目の前のマーカスがまるで神聖なる物であるかの様に、手を合わせ拝む様にして頼み込む。
──良い子は覚えておくといい。こういうタイプの人間は悪い人間に必ず誘拐されるタイプのモノだ。
114 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/06/29(月) 23:04:16.47 ID:dUhVoviXo
>>110
「先にコーヒーをどうぞ」

コースターとコーヒーの入ったグラスがライラの前に差し出された。
からん、とグラスの中の氷が崩れ基本が揺れる。
コーヒーの横には小さなバケットが置かれ、中には砂糖とミルクの入った小瓶と数枚のクッキー。

「甘い物が苦手でなければ、是非」

クッキーは既製品ではなく手作りらしく少しばかり歪に焼かれたカントリークッキー。
数種類のナッツが炒られた後荒く砕かれ混ぜ込まれているらしく小麦とは別に異なる香ばしさが口に広がる。

「……さて、グラタンが焼き上がるまでどう時間を潰しましょうかモーリスのご令嬢」

微笑みを崩さず彼の瞳がライラを見つめる。
初対面である筈の彼が何故それを知っているのか、その理由が彼女の目的ともかぶるところにあるのかもしれない。
115 :弥蛇山 統吾 ◆vn3hIMMab. [sage]:2015/06/29(月) 23:16:21.93 ID:4IJaP2lIo
//テス
116 :白井沙羅 ◆/ZKuiOjYL. :2015/06/29(月) 23:27:03.94 ID:Bp2Io3aho
>>112
青年がそのまま歩を進めれば,時期に不審な物音が聞こえ始めるだろう.
おおよそプラスチックが擦れる音と,軽量な金属がアスファルト上に落ちる音.
それと――――

「ふふふ・・・やっぱり足を伸ばしてみて,正解・・・♪」

――――若い女性の,恍惚とした声である.
青年が物音の方へ近づいてきたならば,赤茶けた迷彩柄の作業服に身を包んだ人型があぐらをかいて座り込んでいるのを発見することになるだろう.
彼女が右手に握るドライバーが巧みに舞い,目の前に設置された黒い物体―――おそらくはかなり旧型かつ大型のラジオであろう――――を分解している.
その速度たるや尋常ではなく,素人目に見ても「異常」なまでに手際よく丁寧に,大型の機器を最小単位の部品へと変換していく.

どうやら彼女は先ほどの「喧嘩」・・・とも言えないような戦闘と,彼がこちらへ近づいてくる足音にも気づいていないようで
おまけに自分の世界に没頭しているため,かなりの接近は容易に行えるだろう.
117 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/29(月) 23:27:39.90 ID:+GueZ1iT0
>>113
「フッフッ、そうだろう。そうと決まれば、さっそくついてこい」

彼は彼女が承諾すると共に、満足げで大らかな笑い声を上げる。
もし彼が心まずしき人物であったとしたならば、どこか危険な所にでも連れて行かれてしまったのかも知れないが、ヴァシーリー・マーカスにそのような下心などまったくない。
昔は粗暴だったとはいえ、彼は年齢を重ねて良識をわきまえている上に、義理とはいえ娘もいるのだから、神に誓ってそのような事をするはずがなかった。

よって彼は、共に腹を満たすべく、まるで親子であるかのようにそのレストランへ少女を導いたのである。

「遠慮せず、好きなものを注文するがよい」

レストランに入って彼は、少女に対してランチ・メニューを手渡す。そこに書かれている内容はどれも数千円と、とても昼食とは思えない値段のものばかりだ。
この中から、アニメやマンガのお金持ちよろしく「なんでも頼んでいい」と言われているのだから、ここまで精神的にも肉体的にも美味しい事はないであろう。
実際彼は、若い頃の活躍や、現在も任務に従事する功労ぶりから、組織から多額の報酬を貰っている。だからこそ、このような景気のいい事を言い出せたのだ。
……あまり過剰な頼みごとをされない限りは、だが。

「まあ、ゆっくりと決めることだ」

彼は少女に対し、半ば自分の娘であるかのように接していることにふと気付いた。
幼気な少女を見ると、どうしても故郷に残してきた娘の姿を重ねてしまう。
歳を重ねたからこそ出てくる「庇護欲」というものだろうか。彼は一瞬、しんみりとした表情になった。

(サーシャ……元気にしているだろうか?)

彼はテーブルに置かれた水の入ったグラスを持ち、そのままグイと飲み干した。
118 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y :2015/06/29(月) 23:28:16.62 ID:Bp2Io3aho
/トリップミスです
119 :ライラ・F・モーリス ◆kCKumm9a1uHy [sage]:2015/06/29(月) 23:32:22.89 ID:IETgLHG6o
>>114

「ありがとうございます」

受け取りながら、再び思案。すなわち、どう切り出すか、ということ。
この店が情報屋のものであるということはわかっている。しかし、だからといって簡単にこちらから魔術の話題を口にするのも気が引けた

『魔術師は、その存在の隠匿を第一に考えなければならない』。父から毎朝毎夜聞かされ続けたことだ
この都市へきて数日、こんなにも早い段階でボロを出すわけにはいかない……

などと考えながら差し出されたグラスに砂糖を少量、ミルクをたっぷり入れて。クッキーに手を出し、つまんだところで

「――――ッ!?っけほ、けほっ……!」

相手からの先制パンチに、思わず口に含んだクッキーが変な方向に流れ込む
そして噎せ返りながらコーヒーをがぶ飲み。『ご令嬢』の醜態である

ほんの少しの涙目を拭うと、取り繕うようにわざとらしい咳払いをひとつ。
「さ、流石は情報屋といったところですね……私のことなんてお見通し、という訳ですか?」
「そうですね……折角の『同業者』なんですから、交流を図ろうと思いまして。そういうの、大事ですよね?」
余裕を失いつつも「魔術師」というワードだけは使用しない。盗聴などによる情報漏えいを可能な限り避ける彼女なりの手段だ
相手の余裕っぷりに魔術師としての格差を既に感じながら、無理にでも会話を進めていこうとする。
120 :弥蛇山 統吾 ◆vn3hIMMab. [sage saga]:2015/06/29(月) 23:44:05.57 ID:4IJaP2lIo
>>116

煙草を燻らせながら、宛もなくほっつき歩く。どうするかどうかは、未だ決めていなかった。
このまま誰かに出逢えばやってもいいし、そうでないならば適当に飯でも食べて帰って寝ればいい。
柔軟な対応といえば聞こえはいいが、その日暮らしの適当な判断は、基本集団行動を是としない彼の欠点の一つである。

誰にも会わなければ、不幸な人間が生まれることはない――しかし世の中そう都合よく廻っている訳ではなく。
やがて歩いていると、奇妙な音が耳に入った。路地裏に入り浸り生活している彼だからこそ分かる、普段こんな音は聞こえてこない。
カツアゲ目的が半分、後は興味本位で足をそちらの方向に向けると、急ぐでもなく悠然と歩を進めた。

「…………はぁん、この♂ケか」

音の正体は簡単に割れた。どうやら若い女性が、古臭い大型ラジオをドライバー一本でバラしている音だったらしい。
かなり御機嫌な様子らしく、鼻歌すら聞こえてくる――――こんな場所で気分よくラジオを分解している。凡そまともな人間ではないだろう。
それもその分解速度は機械に疎い青年から見ても、常軌を逸していた。能力上細かい動作までよく視える青年だからこそ、よりその精密動作及び技術力の高さが理解出来る。

「ま、そんなん関係ないんだけどな」

とはいえ高い技術を持っているから見逃す、なんて事はない。彼にとってそんな事は、路傍に転がる石のようにどうでもいい事だった。
問題は金をどれだけ持っているかということだが――――生憎人相から所持金を見抜けるほど、彼の選別眼は優れていない。
奪ってから考える、そんな下劣極まりない思考とともに青年は女性に近づいていき、近付くことが出来れば背後から肩に手を置くだろう。

「よォ、こんばんは。梅雨だってのに良い天気だなァ」
「ところでここ、俺が仕切ってる場所なんだけどよ――――誰に断り入れて、そんな事してるの?」

振り返れば、サングラスをかけた青年が立っているはずだ。年齢は女性とそう変わりなく、同年代か少し下といった所だろうか。
顔立ちはわりかし整っているものの、浮かべている表情は馴れ馴れしく下卑ており、明らかに良い人間ではないということを察することが出来るだろう。
またそんな人間のいう言葉だ、当然仕切ってる云々も口から出任せであり――――そもそも、学園都市に生徒が土地を所有している訳がない。
121 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/29(月) 23:48:16.43 ID:mWT4Df0F0
>>117
「え、遠慮せず……!?…………え、えーと……!!……うー……」

メニューをまるで小学生の様に凝視するいずも。
ページを捲り、そこに載った画像を目を輝かせて見たと思えば、下の価格を見て唖然とする始末。
男装しているといえど、やたらリアクションの多い彼女の様子は、正しく1人の無邪気な少女であった。
導かれるがままに誘導され、果てには「遠慮せず」に好きなモノを頼め、と許可された──であれば。寧ろ「遠慮せず」にはいられない。
メニューとの格闘を繰り広げること約5分。

「こ…………これ……一つ…………!」

遂に彼女は店員に「きのこのクリームパスタ」を頼む事に成功する。値段的にも安すぎず、遠慮したとは思わせない丁度いい感じの値段だった。
値段に怯えて震える指でメニューを指差す彼女の姿は、店員も苦笑するほど滑稽なもので
──まあそれは彼女がこんな服装なのに似合わず優柔不断であるというギャップがあるからこそだろうが。大抵の人間は彼女を男と思い込んでいるのも起因する。


「……オレからぶつかっといて然もお詫びだなんて、本当に申し訳ねぇ……おっちゃん。
…………ってあれ?おっちゃん、どうかしたのか?」

鉢巻きを額に巻いた番長少女の眼は、一瞬のマーカスの表情の変化を捉えた。
何処か懐かしむ様な、しんみりとした顔のマーカスを、いずもは透き通った眼で覗き込んだ。きょとんとして、頭にはてなマークを浮かべている。
122 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/29(月) 23:50:55.71 ID:mWT4Df0F0
>>117
//すみません!ちょっと所用で落ちなければならなくなりました……
凍結して明日の夜かそちらの時間の良い時に再開という形をとらせていただいても宜しいでしょうか?
123 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/06/29(月) 23:55:00.81 ID:dUhVoviXo
>>119

「いえ、お見通しなんてことはありませんよ
 色々なお客様が此処で噂話をされますから」

それを小耳に挟んだだけです、とそんな声がオーブンを開く音とともに聞こえる。
ふんわりと湯気が立ちチーズの焼ける音が広がっていく。

「アスパラのグラタンです。
 熱気払いに熱い物を......とは言いますが、火傷にだけはお気をつけ下さい」

くつくつ、と表面の焦げ目の付いたチーズが揺れる。
その度に食欲をそそるチーズとホワイトソースの香りがライラの鼻に届くだろう。
添えられたフォークでアスパラガスがソースの海に横たわる表面を開き中へと向かえばシンプルなじゃがいもとベーコン、玉ねぎが顔を覗かせる。
カリカリのベーコン、ほっこりと蒸されたじゃがいも、飴色にまで炒められた物とまだ食感が残る物が交互に重ねられた玉ねぎ。
簡単なこの一皿に随分と手がかかっている、そんな印象を受ける。

「では、ささやかですが私からお近付きの印としてサービスを」

そう言って出されたのは小さなロールケーキだった。
しっとりした生地と甘さを控えたクリーム、そしてその上からアプリコットジャムが大げさに盛られている。
クリームの白とアプリコットのオレンジのコントラストが食欲を誘う、そんなデザートだった。

「……今度もご贔屓にしていただけたら何よりです
 此処には色んな方が集まりますから貴方にも損はないと思いますよ」
124 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/06/30(火) 00:06:38.79 ID:N8Tq33VHO
>>120
上々な気分のまま解体を進め,あともう数パーツで完全にバラせるというところで,その肩に手が置かれた.
『誰に断り入れて、そんなことしてるの?』
その言葉を聞いた瞬間,強い恐怖と激しい後悔に全身が粟立ち,体の芯から凍りついていくような錯覚に襲われる.

「ぁっ、え〜っ……と……」
(ャッッッッべーーーーーー!!!?!?)

完全に後方を取られ,あまつさえ既に肉体に触れられているという手前,下手に動けばナニをされるかわからない.
硬直させた笑顔で口をパクパクさせ,浅い呼吸のまままともに返事をできずにいた.

「これは、あれですか?
 お金で解決するタイプの……問題ですか?」
(クッソ、こういう時に限って金持ってるんだよクソ!!)

ようやく絞り出したのも,震えとかすれが合わさった今にも消え入りそうなもの.
おまけに普段滅多に使わないはずの敬語である.
あっぷあっぷに堪えながらも、お財布事情には何故か速攻で記憶が掘り起こされ,間違いなく諭吉が2枚入っていることが思い出されてしまった.

職員などによる警備が手薄な都市外れの路地裏は危険だと散々言われていたものの「まぁ能力あるし平気」などとタカをくくっていた結果がコレだ.
そんなこんなで思考が完全に飲み込まれ,土地の所有云々の矛盾など気づく余裕が一切ないようだ.

125 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/30(火) 00:22:10.52 ID:saGLexyC0
>>121
彼は震える指でメニューを指差す少女の姿を見、そんなものでいいのか、と心中で苦笑する。
日本の学生はどこまでも「遠慮」の心を忘れないのだなあと、つくづく感心させられる事であった。

しかし彼の表情は、未だ娘の事を考えていたらしく、少女に指摘された事で、ハッと我に帰る。

「いや、何でも……いや……せっかくだ、お前になら話してもよいかもしれんな」

彼も店員に注文を済ませ、もう二杯目のグラスに一口つけた後、ゆっくりと話し始めた。

「わしには一人娘がおってな……学園都市への仕事の際、故郷に一人で置いてきてしまったのだ」

何故彼が学園都市にいるのか、という事を疑問に思われるのはまずいため、あくまで「娘を故郷に置いてきた」というところを強調し、話を進める。

「と言っても、その子は義理の娘なのだ……捨て子の孤児だった。若い頃のわしはふとした事であの子を発見し、成り行きで保護した」
「当時のわしはとても子育てなどする気はなく、親を探していたのだが……次第に愛着が湧いてしまったのだろうな。わしはいつの間にか、男手一人であの娘を十数年も育てていたのだ」

話を続けるごとに、彼の表情はどんどん遠くを見るような、どこか懐かしむような神妙な顔つきになっていく。
いつの間にか二杯目のグラスは空になっている。唇が乾いているのだろうか、それにも関わらず、話を締めるべく言葉を続けた。

「やむをえん仕事であったとはいえ、娘を置いてきた事に変わりはない。今でもお前のような若人を見ていると、何だか娘の顔が浮かんでくるような気がするのだ……」

数秒間の沈黙。丁度その時、店員の声がその沈黙を打ち破る。
熱々のキノコのクリームパスタと、何とも胃に優しくなさそうなステーキがジュウジュウと音を立てて、机の上に乗せられた。
店員が礼をして去っていく。彼は料理に目をやってから、彼女の方を見る。

「何とも湿った話になってしまったな。感傷に浸るなど、わしらしくもない。」
「老いぼれのくだらん思い出話に付き合わせたな。すまぬ。今のは聞き流して、遠慮なく食べてくれ」

彼はナイフとフォークを取り出して、少女の方にもフォークを渡しながら、さあさあと食事を促す。
しかし先程、何とも哀しい雰囲気の中で語られた娘の話は、少女に少なからず影響を与えてしまったかもしれない。
126 :ライラ・F・モーリス ◆kCKumm9a1uHy [sage]:2015/06/30(火) 00:22:53.25 ID:x1Nq1PeNo
>>123

「噂話、ですか。社交場のような役割を?」

モーリス家の名は魔術師の界隈においてそこそこの知名度を誇るため、海を渡ったこの土地で噂されていても不思議ではないか
そんなことを思いながら、漂ってくる香ばしい匂いに鼻をひくつかせる
そして、運ばれてきた料理に頬を綻ばせて

「美味しそう……頂きますね」

フォークを手に取り、チーズとソースのたっぷり載ったグラタンを口に運ぶ
流石に育ちの良さを伺わせる手つきで、チーズの風味と食材たちの食感のコンビネーションを存分に楽しんでいた

「サービスだなんて、いいんですか?」

甘いものには目がないらしく、テーブルに登場したロールケーキに目を輝かせる
グラタンの皿を終えてしまってからそちらにも手を出し、美味を満喫することだろう

「ええ。きっとそうさせてもらいます。
 この街では私たちは外様ですし。かと言ってずっと張りつめていては息が詰まってしまいそうですからね…」

情報を共有するのも勿論だが、魔術について隠すことなく語らう場所として利用するのも悪くない。
現金な話だが、美味な料理を提供されたことですっかりこの場を気に入ってしまったようだ
それに加えて、店主の穏やかな雰囲気がそうさせているのかもしれない
127 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA :2015/06/30(火) 00:23:33.52 ID:saGLexyC0
>>122
/おおうリロードしていませんでした、了解です。
/ではまた明日、都合が取れれば雑談にて連絡させていただきます。お疲れ様でした。
128 :弥蛇山 統吾 ◆vn3hIMMab. [sage saga]:2015/06/30(火) 00:27:47.90 ID:2MHZzGuao
>>124

青年の読みでは、声をかけた後なんやかんやで戦闘になる筈だった。
何故なら此処は学園都市、能力という超常の力を持った子供≠フ集まりだからである。
そう、能力者は皆子供だ。高レベルの能力になればなるほど能力を持て余すのは自明の理であり、大した能力でなくとも調子に乗る輩は一定数いる。
自分たちは特別で、選ばれた人間である――――だなんて勘違いをしている子供を、この都市で見つけるのは非常に簡単だった。

そんな子供たちだ、能力があれば不良に襲われても勝てる――――なんて思っている者も、決して少なく無いだろう。
事実不良など蹴散らせる能力者は腐るほどいるし、だからこそこの相手も反抗してくると彼は思っていたのだ。
虚を突かれるものの出来る限り顔には出さないように努め、あたかも好青年が浮かべるような爽やかさを感じさせる笑顔を浮かべ。

「そうだねー、額によるけれど」

戦わずしてカツアゲ出来るのなら、それが一番楽だ。油断している相手を捩じ伏せるのは嫌いじゃあ無いが、かと言って面倒事を好む質でもない。
煙草の臭いに混じる血の匂い、もしかしたら女性も彼が戦闘を終えた直後であると悟ることが出来るかもしれない。

「俺、少し腹減ってるから…………まあ、三万でいいぜ」

三万。学生が持ち歩く金額ではない。無理を吹っ掛けているのは承知のうえで、彼は三万と口にした。
同時、次いでに分解していたラジオを覗きこんだ。素人目から見ても、手際よく綺麗にバラされているのが何となく分かる。
感心しつつ、油断したのか手を離し一歩後ろに引いた。特に理由はなかったが、もしかしたらその高い技術に僅かな恐怖――――いや感心を覚えたからかもしれない。
高められた技術というのは、能力よりも余程恐ろしい――――それを彼は、知っているのである。
何故なら彼自身が能力のレベルこそ低いものの、戦闘能力に関しては能力レベルに準じないタイプだったからだ。
129 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/06/30(火) 00:43:48.03 ID:JWqvCcMzo
>>126

「確かに私達はこの街では異物ですからね
 それでも少しでも心休まる場所であれるなら良いんですが」

男はカウンター横の小窓から街を眺める。
夜のこの時間にあっても人工の光は眩く光り、星は霞んでしまっている。
その星の輝きがまるでこの街の魔術師達に被って見えた。

「この街で何かありましたらご連絡下さい。この街では助合 九郎で通っています」

助合 九郎、スケアクロウ、案山子。
あからさまに偽名であるを名乗るその男は笑みを浮かべたまま小さく頭を下げる。

「貴方がこの街で何をなさるのかは知りませんが、微力ながら力添えさせて頂きます」

ライラの手の中にあるコーヒーのように深い黒の空を見上げる。
街の輝きも空の星も、同じく輝ける日が来て欲しいと、そんな言葉を小さく呟きながら……。

//この辺で終わりでどうでしょうか?
130 :ライラ・F・モーリス ◆kCKumm9a1uHy [sage]:2015/06/30(火) 01:02:56.73 ID:x1Nq1PeNo
>>129

「可能ですよ。だってこんなに美味しい料理を提供してくれるんですから」

ケーキを食べ終えて満足したような表情でそう言うのは、お礼とエールを綯交ぜにした彼女なりの表現だ
九郎の目線の先を追って小窓の外を伺えど、彼女にとっては外は異界でしかない。


「ライラ・F・モーリスです。ご存知かとは思いますが。
 もしもの時は頼らせてもらいますかもしれませんね」

既に相手から呼ばれているのに名乗り直すのは変な感じだ、などと思いながら、それでも礼儀として。
座席から立ち上がり、これからよろしくと深々とお辞儀を返すのだった

「それでは、今日はこの辺りで失礼しますね。ご馳走様でした」
再び礼を述べながら料理の代金を支払うと、異能者たちの都市へ再び足を踏み出していった

九郎の最後の呟きには、聞こえてか否か反応を返さないままに―――

/そうですね、ではこれで〆ということで!お疲れ様でしたー!
131 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/06/30(火) 01:03:25.01 ID:N8Tq33VHO
>>128
「…さんっ!?」

三万円.
元旦にいただけるお年玉の総計に匹敵するそれは高校生たる彼女からしても安易に集まるような額ではなかった.
ましてや,普段から持ち歩いているようなものでもない.
動揺と完全な「詰み」の感覚が全身を駆け抜け,厚めの作業服の下でどっと冷や汗をかいた.

無理な額をふっかけて他の要求をする典型的な不良だろうか,それとも喧嘩の火種を探すバトルジャンキーなのだろうか.
とかく,もはやどうしようもなくなったこの状況を半ば諦め,とりあえずありったけの諭吉を取り出そうと心に決めたその時.

(あれ?下がった…?)

肩に乗せられた手―――実際には砂袋を担がされたかのごとき重圧を感じていたが―――が退けられ,足音から判断するに青年は少し下がったらしい.
物理的圧力から解放された瞬間,ひと筋の平和的解決法が打ち出される.

「―――御免ッッ!!!」

震える体を強引に奮い立たせて,立ちあがりながら180度身体を回転させる.
と同時に右手に握られていたはずのドライバーが彼女の意識と演算に合わせて一瞬のうちに変化,非常に薄く鋭利なナイフと成っていた.
彼女の右腕が半ばやけくそに振り抜かれ,脚とも腰とも取れない中途半端な位置を切り付けようとする.
当たるか当たらないかはともかくとしても,とりあえずこの鉄臭い喧嘩男と距離を離したい,その一心だ.
132 :弥蛇山 統吾 ◆vn3hIMMab. [sage saga]:2015/06/30(火) 01:32:47.44 ID:2MHZzGuao
>>131

三万はやはり無茶だったらしい、三万を狙うならば作業着を着た女ではなくエリート校の生徒やお嬢様学校の女を狙うべきだろう。
もっともそれは彼も承知の上、何故三万を選んだかと言われれば、はっきり言って特に理由など無く適当ではあったが。
強いて言うのならば、相手がどのような反応を返すのか見たかった――――ただ金だけ奪っても、面白く無いから。

「流石に無理か? まあアンタ、金持ってなさそうだもんなァ」

かなり失礼な事を口にしていたが、実際のところ青年の所持金のほうが遥かに下なのは言うまでもないだろう。
彼の所持金は三千円、先程生徒から奪った物のみである。収入源はカツアゲのみで、仕送りやバイトなども一切無し。
つまりカツアゲのみで生活しているという正真正銘の屑なのだが――――それは逆に言えば、カツアゲで生活費を稼げる強さを持つと言う事。
それも能力者が跋扈する、この学園都市という土地で、だ。そんな彼の能力はあまりに微細で、矮小であり――――。

「――――――――っとォ、ははっ。ちィとばかしビビッたぜ」

――――――――そして、厄介極まりない。
女性のナイフは青年の左腰辺りの制服、そして肌を薄く切り裂いていた。じんわりと滲み出した血液が、シャツを濡らす。
痛さより痒さを覚えながらも、青年は女性がナイフを放った一瞬のうちにしっかりと回避行動を取っていた。
彼の能力は生体電気の操作による『反応速度の強化』、つまり戦闘においては相手の動きをより早く感知するためのスキルとして扱われる。
ならば何故彼が避け切れ無かったのか、それはひとえに女性の能力のせいだった――――ドライバーからナイフへの変化を、予測していなかったのである。
ドライバーとナイフでは攻撃範囲が微妙に広がっている。その差分を見切れず、結果として刃は青年を斬りつける事となった。
とはいえ青年だから反応できたのであって、仮に常人が相手だったならばまさしく直撃コース――――。

「俺じゃなきゃざっくりいってたろ、今の。それとも殺す気だったか?」
「大人しそうな顔して過激だなァ、遊んでくれる分には俺は構わねーけどよ――――」

とはいえ青年は視ることに関しては能力上ずば抜けている。それがレベル1だったとしても、常人は比較対象にすらならない。
彼の目はしっかりと女性の身体が震えている事を捉えていた。つまりは切った張ったの喧嘩に慣れていないと言うことだろう。
それにしても、久しぶりに攻撃にあたった。服は買い換えなければいけないだろう、治療は――――この程度ならば、必要ない。

「つっても俺ぁレベル1なんだ、だから少しは手加減してくれよ――――お姉さん」

そして青年は、ナイフを振り終えた女性の腕を掴もうとする――――そして掴み終えれば、その刃を更に自分の腹部に食い込ませる筈だ。
当然激痛が走る。とはいえ彼は被虐趣味ではなく、痛みに快楽を覚える人間ではない。ならば何故そのような事をしたのか。
まず第一に相手の動きを封じる事。青年が優れているのは反応速度のみであり、身体能力は高いもののあくまで常人レベル。
ちょこまかと動き回られるのは面倒臭い――――というのが一つ目。そして二つ目は、相手を驚愕させるためだ。
簡単に言ってしまえば、戦意喪失させようと考えたのである。喧嘩慣れした者ならばともかく、戦い慣れていない人間は簡単な事で戦意を失ってしまうことも少なくない。
突拍子もない行動を取ることによって相手を驚愕し、同時に戦意喪失を狙う――――成功するかは分からない、はっきり言って頭の可笑しい作戦だが。
彼はリスクの伴ったギャンブルは嫌いではないのだ。痛みをベットに、青年は右拳を握り固め、女性の顔に向かって拳を放とうとするだろう
しかし攻撃に関しては無能力者と同レベル、能力を用いれば、或いは突き刺したナイフの動かし方によっては対応等幾らでもある筈だ。
その上当たった所で威力も常識の域を出ることはない――――ナイフを伝い、血液が一気に溢れ出す。
133 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/06/30(火) 02:25:32.71 ID:N8Tq33VHO
>>132
「失礼しちゃうわね・・・これでもいちおー,収入くらいあんだから」

見た目で所持金を判断し,さらにそれを口にするような人間にまともな輩がいないことは言うまでもないだろうが,この学園都市においては「まともでない」の一言で片付けられる問題ではない.
彼のような横暴な態度の不良じみた学生は確かに多いが,彼の余裕綽々な態度や染み付いた血の感じは並大抵の能力者でないことを想像させるのに十分であった.
彼女としては機動力を奪うことで悠々ラジオの主部品をいただいてずらかるつもりであったが,やはりというか当然というか人生はそう甘くはない.

「こっちはけっこー必死なんでね.はやくおうちかえって趣味に没頭したいわけ」
「――――って、ちょっ!」

あまりにも大振りすぎる腕は,喧嘩慣れした彼が捉えるにはとても易しいもの出会っただろう.
いとも容易く小さな武器を持つ利き腕をの自由を奪われた彼女は,次の瞬間にくるであろう衝撃に目をいっぱいにつぶろうとする―――が
青年がとった行動はあまりにも唐突かつ意味不明なものであった

「ぁ、ひっ・・・ね、なに、すんの・・・?」

双方身体能力は「並」とはいえ,男と女の力の差は歴然だ.
なされるがまま,彼女の持つ鋭利なナイフはみるみる青年の腹に食い込んでいく.
とっさに変形させたにしては市販のものよりも遥かに優れた切れ味を誇るそれは,皮と肉と内臓を貫き傷つけていく.
手から伝わる不慣れで生々しい感覚と,人に致命傷たり得る傷を与える恐怖から一切の抵抗を忘れた彼女が続く拳に反応しきれるはずもなく――――

「――――――ッッたぁ!!?」

ガツン,と心地よいほどのクリーンヒットを食らった女は,ナイフを青年の腹に突き刺したまま手放して,勢いのまま後ろへ吹っ飛んだ.
ゴミ箱をぶちまけながら倒れるも,このままでは追撃という名のリンチが始まる――とすぐさま態勢を立て直そうとする
グラグラする頭をなんとかこらえながら壁に手をついて立ち上がる女の表情は,恐怖,不安,怒りの三種類の感情と涙と鼻水と鼻血でぐしゃぐしゃになっている.
理不尽だ.なんという理不尽.私はただ廃棄されていたおもちゃをばらしていただけなのに,どうしてこんな目に合わなきゃいけないの.

「あん、た、女の子殴るとか、さいってーね」
「そんなんじゃモテねーぞ?」

ズキズキと熱を帯びて痛む頬を左手で押さえつつ,作業帽の下から青年を睨みつける.
金属質の黒みを帯びた肌は各種液体で僅かな光を帯びており,外見的意味合いにおいて人間離れした印象を持たせるだろう.

「せっかくだから,レベル3のお姉さんがお返しにいーもの見せてあげる」

女はゆっくりとした足取りで青年に近づきながら,腰にぶら下げていたモンキーレンチを取り外し右手で握りしめる.
すると鈍色のそれはみるみる形状を変化させ,先端の球が小さめのメイスのような形へと姿を変えた.

もしこの瞬間まで,青年の腹にナイフが突き刺さったままであるならば,その傷口の最も深いところで鋭い痛みが発生するだろう.
青年が経験から推測できるかはわからないが,ナイフは彼女の能力によって少しずつ形状を変化―――さらに細く長くなっていく.
これによって一瞬彼の気を逸らし,また対応させることで隙を作ろうというのが彼女の策―――もとい復讐である.

このまま彼女の思惑通り成長するナイフによって彼が怯めば,メイスを右から左へ思い切り振り切って彼の肩を破壊せんとするだろ.
破壊,とはいえ所詮はそこらの工具を変形させた程度の重みしかないためそこまでの高威力ではないうえ,彼の反応速度をもってすればナイフへの対応からでも反応することができるかもしれない.

134 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/06/30(火) 02:39:04.15 ID:N8Tq33VHO
//今日は眠気が限界なのでもう落ちます・・・凍結か〆かはおまかせいたしますのでよろしくおねがいします
//レス遅くて申し訳ないです。。。お疲れさまでした
135 :弥蛇山 統吾 ◆vn3hIMMab. [sage saga]:2015/06/30(火) 02:59:19.94 ID:2MHZzGuao
>>133
拳は女性の顔面に綺麗に激突、突き刺したナイフをそのままに後方へと思い切りぶっ飛んでいった。
これ以上ないほど綺麗に決まった、あれならば下手な当たり方をするよりダメージが少ないのでは無いのだろうか。
まさか相手は不慣れを装っているだけで実は喧嘩慣れしているのでは、なんて推測が一瞬過ったものの。

「…………そりゃねーわな」

その考えは自分で否定した。相手はゴミ箱に激突し、悪臭漂う中身を其処らに散らしながらもなんとか立ち上がろうとしていた。
倒れっぱなしだったら容赦なくそこに一撃を加えていたところだ、不意を突いて攻撃を直撃させたにも関わらず、判断力はまだ失われていないらしい。
とはいえ顔は涙と鼻水と鼻血で大変なことになっており、冷静さは保っているものの痛みや戦いそのものにはやはり慣れていない事が手に取るように分かる。

「おいおい最低だなんて言うなよ、傷ついちまうだろ?」
「お姉さんみたいな美人に言われたら余計にさァ」

口説いている、という訳でない。完全に表情を様々な負の感情で歪ませている女性を、鼻で笑って馬鹿にしていた。
反応速度を加速させる彼の能力は、同時に痛みを伝える信号も加速させる。つまりは彼は常人以上に痛覚が敏感で、とりわけ痛みに関して言えば人並み以上に強く感じ取ってしまう。
腹部に突き刺さったナイフも当然ながら彼に激痛を与え続けていたが、それでなお崩れない表情――――其処らの不良とは言い切れない底知れぬ強さ=B

「面白ェ、待っててやるからさっさとしな」

女性の能力は推測するに『金属の変形』といった所だろう、ドライバーがナイフに変わったのを彼は目の前で見たのだから大きく外しては居ない筈だ。
金属の精製の可能性もあるが、あえてドライバーを変形させていたところから変形だと見たが――――まあ現状この差に大きな意味は無い。
何方にせよ高レベルならば厄介な能力に変わりはなく、前者ならば変形させる金属さえ与えなければいいが、既に相手の中には素材が握られている。
つまり何方にせよ彼には能力に対する対処は出来ず、先手を打って能力発動前に相手を倒すか後手に回り加速させた反応速度を以って対応するしか無い。
そして彼は後者を選んだ。相手が能力で攻撃してくるというのならば、此方も能力で応じるまで――――なんていう、ただそれだけの理由だ。
136 :弥蛇山 統吾 ◆vn3hIMMab. [sage saga]:2015/06/30(火) 02:59:35.65 ID:2MHZzGuao

しかしこの選択は誤りだった。なぜなら彼の能力の一番の強みは相手の攻撃を見切る≠ニいう点に収束する。
要は躱し続ける為の能力であり、躱さなければ殆ど意味が無い。にも関わらず彼は自ら深手を負い、その上ナイフを放置した。
躱すことに大部分を割いた能力の持ち主でありながら、自らその利点を捨てたのだ――――ナイフが変形し、鋭い痛みが更に肉を抉る。
痛みに敏い彼である、その変化には直ぐ様気付いた。腹部からナイフを抜き捨てるとほぼ同時、相手のメイスが飛来する。
痛みに歯を食い縛る。一瞬だが、怯んだ。そして投擲されるメイス、弥蛇山がその存在に気付くのはメイスが半ば距離を進んだ時であり。

「悪くねぇが――――まぁ、躱すだけでも無いんだわ」

躱すのが第一。何故なら相手の能力は得体が知れず、最悪触れただけで不味いという状況も往々にして存在するからだ。
火や雷、風に毒、突出した防御力を持たない弥蛇山にとっては、どれもが触れただけで危険な代物である。
相手の金属も同様に、どのような副次効果を持っているか分からない――――だが回避が間に合わないのであれば、別の選択肢を取るしか無いだろう。
幸い、今回は条件を満たしている。さほど重くなく∞大きくもなく=\―――掴める大きさだ=B
投げられたメイスを、弥蛇山は掴み取った。常人を遥かに超えた反応速度が成せる技である。無論、掴んだ手に相応の衝撃は走ったが。
さて、これからどうするか――――女性に向かって駆けて行き、再び拳を振り抜こうとした所で。
路地裏に、小さな振動音が鳴り響く。どうやら彼の携帯らしい、青年は舌打ちすると女性に背を向けた

「楽しくなってきたところだが、生憎ともう少しで風紀委員が見回りに来る時間なんでな」
「流石にこの傷じゃ数人相手は面倒だしだりぃから、帰らせてもらうわ」

じゃーな、最後にそれだけ告げると青年はそのままさっさと何処かへ歩いて行ってしまうだろう。
見れば最後に殴りかかった際にポケットから学生証を落としており、それによって名前や能力を知ることが出来るはずだ――――もちろんそれを使えば、通報も容易い。
復讐の材料にも出来るだろうし、もう関わらないと捨て置くことも当然可能だ――――ともかく。
そのままその場にいれば彼の言っていた通り風紀委員が見回りに来るだろう、学園都市の治安を維持する彼らならば、治療なども行ってくれる筈だ。
こうしてまるで天災の如く訪れた理不尽は、あっさりと女性の前から去っていった――――――――。

>>134
//こちらこそ遅くて申し訳ないです……!!
//ということで〆させていただきました、絡み乙です!
137 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/06/30(火) 17:20:56.61 ID:WtoKRks6o
>>135
>>136
自身の能力をできる限り活用した不意打ちは,結果としてほぼ狙い通りに作用したようで,彼の表情に苦悶の色が強く現れた.
ざまぁ見ろと思ったのもつかの間,今度は彼女が驚きの表情を浮かべることとなった.
なにせ投擲した武器を素手で掴まれてしまったのだ,反応速度も常人をはるかに超えるものであるが,とっさの判断も「慣れている」で済むようなレベルでもない.

「へぇ,やるじゃん」

淡白にそうこぼした女の表情は,ひとことに諦めのものであった.
まだ服の中やポケットにネジやらペンチやらが隠されているものの,彼の身体能力―――女は青年の回避や反応を,身体能力のせいだと考えたらしい―――の前ではほぼ無力といってもいいだろう.
なにせこちらは対人に対して完全に素人であるし,先ほどの肉を貫く感覚を思い出しては震えが止まらなくなる始末だ.

青年が走り出し,接近をしてくる.
逃げれば5分5分でなんとかなるかもしれないが,それはあくまでも客観的な判断である.
奇襲が外れた今,目を硬く瞑った彼女の脳内は完全にネガティブな感情で支配されていた.

しかし,想像していた衝撃はほんの小さな振動によって阻止されることとなった.
おそらくは,相手の携帯が鳴っているのだろう,結果として彼女は助かった・・・ということになるのだろう

「―――あ、うん、気をつけてね」
「ちゃんと病院行くんだよ!!」

理不尽な理不尽を突きつけてきた暴風雨のような青年は,意外にもあっけなく自分を諦めて去って行ってしまった.
おそらく彼は本気の金銭目的ではなく,自分を攻撃して楽しんでいたのだろう.そう考えると怒りよりもなんだか呆れの感情が生まれてくる.

最後に投げかけた言葉はホッとしたことによって生まれた余裕と安心感からか,それともそういった性格なのか.
とかく彼女が彼を傷つけてしまったことは確かだ,おそらく正当防衛とはいえ,刃物で足を切りつけ腹に突き刺し鈍器を投げて攻撃したとなれば彼女も「被害者」ばかりではいられないだろう.

「いててて・・・あたしも帰ろ・・・」

風紀委員といざこざがあるわけではないが,彼らに不審者扱いされて話を聞かれるのも面倒だ.
そう考えて大通りへ出るべく足を踏み出すと,作業靴の下から異物の感触.
足を退けて踏み潰したものを拾い上げてみると,学園の生徒である証明書たる学生証であった.

「・・・ん?学生証落としてんじゃん」
「へー・・弥陀山くんか・・・」

今度イタズラでもして仕返ししてやるか,とガキ臭いことを考えながら学生証をポケットに突っ込み,持参していた風呂敷にラジオのパーツを詰め込み始める.
先ほどの攻防で幾つかのパーツが踏みしゃげられてしまっているが,運がなかったということで諦めよう.

面倒ごとを嫌う彼女もまた,風呂敷を担いでいそいそと路地裏を後にするのだった.

//了解です!!お疲れ様でした!
//よろしくればまたどこかで…!


138 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/30(火) 17:35:43.40 ID:ARO+WSi10
>>125
男の向かい側に座った学ランの少女は、男の話を頷きながら確りと聞いていた。
話が終わったのは料理が目の前に来る直前──。マーカスの話が終わり、少女は何を思うか。

「……なんつーかさ。オレには義理だとか仕事の事情だとか、そっちら辺は全くわかんねーけどよ……」

「ただ一つ、わかるのは…………」

「…………おっちゃんは本当にいい奴だって事だ!」

男の暗い話にこの女、高天原いずもが影響されるかも知れない、という懸念は、まるで必要の無いことだった。──笑顔でニカっと笑いながらそう言った。
話の根底は恐らく高天原いずもには理解などできていないし、マーカスに同情するなんて事は彼女はしなかった。
……代わりに。とびっきり至極単純な明るい感想をくれてやったのだ。グッ、と、親指を立てた右手を男の前につきだす。
少女の純粋無垢かつ少し阿呆らしいその感想は、この湿っぽくなってしまった場の空気を晴らすのに十分なものであることだろう。

………………………………………………………………………………


「……そういえば重要な事思い出したわ。
まーだ自己紹介してなかったなぁ。」

「……オレはこの学園都市の番長たる”男”、高天原いずも!
よろしくそしてありがとう!」

食べ始めて少しした頃、既に彼女の皿にはクリームパスタは無く。あっという間に彼女の腹に吸い込まれてしまったようだった。
──そして、彼女は両手の掌を合わせて「ごちそうさん!」といった後……名乗る。外部から来たというマーカスのために、自身の宣伝をするために「番長」という言葉を使って。
そして彼女を女であると気づいているマーカスには明らかに不自然な単語が彼女の台詞の中に混じっているが……。



139 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/06/30(火) 18:53:58.26 ID:ZDO4LzNiO
学園都市、大通り。

「ふーむぅ…」

(ここの学生は殆どが能力者…ひいては、我々…っていっても、一人しかあった事は無いが、魔術師はイレギュラー因子…前の学生から変な噂でも流れて無きゃいいが…)

気難しそうな顔で、大通りの手近にあった店の前に備え付けられていたベンチに座り込み、煙を燻らす一人の女がいた。
銀縁のメガネに、ワイシャツとパンツスーツ。
片手で手持ち無沙汰に転がされるジッポライター。
傍から見れば、それは休憩中のOLに見える女だが ————その実、魔術師。

「考えた所で、研究に使える収穫はなし、か」

ふぅ、と煙を吐き出して、その場で足を組み替える。
魔術師だろうが、能力者だろうが、アクションを起こさねば何も始まらない。
女は何かを吹っ切るようにして、タバコを地面に落として踏み消した。

/誰でもどぞ
140 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/30(火) 20:16:32.03 ID:2htb7pc1o
>>139
「オイ、こらねーちゃん」

女がタバコを踏み付けた瞬間、一人の少年が声を掛けながら歩み寄って行った。
学ランのポケットに両手を突っ込み、天気図の台風のようにネジ巻いた白塗りの前髪を揺らしながら、女を睨み付けて。

「……………」

ただ目付きが悪いだけでは済まぬ、尋常でない睨み方、それはブレること無く女一人に注がれる。
少年はズンズンと歩いて、ベンチに座る女の前に立ちはだかる、かと思えば、ふと地面に向かってしゃがみ込んで。

「ねーちゃんよォ〜…!タバコ…『落としてる』ぜ…」
「…まさかとは思うが……『捨てた』訳じゃあーねーよなァ〜…?」

立ち上がり、女の目の前に差し出したのは、たった今女が踏み消したタバコの吸殻。
たったそれだけ、なのに少年がそれにかける感情は並々ならぬもので、学生とは思えない程にガンを飛ばしている。
141 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA :2015/06/30(火) 20:23:11.30 ID:saGLexyC0
>>138
「……フフ、そうか」

彼は自分の話に対しても笑顔を見せてくる少女に、ただ優し気に微笑んだ。
娘の事は気がかりだが、何かこの少女は、人を元気にさせる何かを持っているらしい。
彼の中で、先程のまでの湿やかな気持ちがどこかへ吹き飛んで行くような気がした。

「では、冷めぬ内にいただくとしようか。おお、これはうまそうだ」

彼はおよそ老人向けとは思えない厚切りの肉を切り分け、口に運び始めた。

しばらくして、少女はかなり早い段階で食べ終わってしまったらしい。
対して彼はまだ7、8割であり、老いている割にはこちらもかなり早いスピードだが、やはり若さかと、彼は内心で感心した。

「……名乗られた手前、こちらも名乗らねばならんな。わしの名はヴァシーリー・マーカスという」

思い出したかのように自己紹介を済ませた少女に、そのまま返事をするように、こちらも自己紹介をする。
彼としては自己紹介などせずとも、少女の顔は覚えたつもりだったが、やはり名前ぐらいは知っておいた方がいいだろう。
……後で聞くつもりの「本題」のためにも。

「ム……男……」

彼は言われてからしばらくして、彼女の発した言葉に混ざっていた「違和感」に気付く。彼は初対面から少女が女であると気付いていたが、にもかかわらず、彼女は"男"を自称している。
「お前は女だろう」と言おうとしたところで、彼はふと勘づく。「彼女は男として見て欲しいのではないか?」と。よく見れば男性用の制服を着ているし、口調も男のそれだ。"BANCHO"という日本文化はよくわからなかったが、彼女の意図は理解できた。

意図を理解したなら、それを汲み取らねばなるまい。かくして彼は、いま一度芝居を打つことにした。

「なるほど、"男"か。うむ……そう言われてみれば確かに、お前の中にある勇ましい態度と……あー……その服装は、まさしく男の中の男、"BANCHO"にふさわしいな」

BANCHOが何であるかはさっぱりだが、称号か職業であることがうかがえる。自信たっぷりな言い方は、少女がそれに誇りを持っていることなのだろう。
しかし少女の言わんとしていた意図を察知し、うまくおだてようとした彼も、少女が番長であるというのは本当だと思っているようだった。
さて、彼女の意図を汲み取り、キズつけないようにおだてようとする彼の言葉を、少女はどう捉えるのだろうか。

142 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/06/30(火) 20:33:47.55 ID:ZDO4LzNiO
>>140
「…」

目の前に男が歩いてきた、かと思えば、地面にしゃがみ込んで先刻踏み消したタバコを掴む。
それを差し出し、食い[ピーーー]つもりではないかと言う程に睨みつけてくる。

見たところ学生のようだが、その見た目に直感する。
あぁ、研究対象(能力者)か。

「捨てた、としたら、一体私にどうしようってんだい?」

挑発的に笑いかけ、差し出された煙草に顔を近づけるも、それを受け取る素振りは見せない。
何よりも、女は思う。

(今度は能力者…しかも煙草の吸い殻捨てたことに怒ってるときたもんだ…私はどこまでアンラッキーなんだよ…)

(なんだ、この子も私に物騒なもん向けたりするわけか、勘弁してくれまったく…)

嫌な汗が額に滲むが、それを感じさせない表情のなま。


「もしそれが気に入らなかったとして、もう少しスマートに声をかけるのが男じゃないのかい?」


飄々としたまま、女はつままれた煙草を左手の人差し指でぴん、と弾こうとするだろう。
それが成功すれば、男の顔に吸い殻が直撃してしまうこととなる。
143 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/30(火) 20:56:16.19 ID:2htb7pc1o
>>142
ピン、と指で弾かれた吸殻が、巻島の額に当たって落ちる。
ピキ、と青筋が浮かぶ音がした、巻島の目に一瞬漆黒の炎が灯ったような気がしないようでもない。

「……………」

だが、意外にも巻島は怒鳴ったりする様な事はなく、再び落ちた吸殻を拾うと、スタスタと歩いて行ってしまう。
向かう先は街に設置されたゴミ箱、それ程遠くない場所にあるゴミ箱の中に吸殻を放り込むと、またスタスタと歩いて帰ってきた。

「アンタ…オレより長く生きててこんな簡単な事も出来ねェーのか?」
「『ゴミはゴミ箱へ』!幼稚園児も出来る『常識』だぜこいつぁーよォ〜ッ!」
「それともッ!アンタは『私は幼稚園児に出来る事も出来ない人間です』って、そう言いてえのかァ〜ッ!?」

一動作いれてから、ようやく巻島は女を怒鳴り付ける、まるで不良が因縁を付けているようにしか見えないが、言ってることは至極まともだ。

「オレの親父も喫煙者だけどよォ〜ッ!ちゃんと吸殻は携帯灰皿に入れてるんだぜッ!それが『責任』だからだッ!」
「アンタみてぇーな奴がいるから、マトモな奴の肩身も狭くなるんだよ!わかってんのかァ〜ッ!?」
144 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io [sage]:2015/06/30(火) 21:01:45.21 ID:ARO+WSi10

>>141
「ゔぁしーりー・まーかすさん……ね!りょかいりょかい!」

彼の名を反芻しながら覚える女。何処かその発音にはぎこちないものがあったが取り敢えずは置いておくとしよう。
次に男、ヴァシーリー・マーカスは続けて彼女を賞賛する言葉を投げかけた。目の前の「男」を装う番長少女の調子を取る筈の言葉であったが……。


「……え?」

───彼女は”番長”と名乗っている。
周りからも呼ばれているのも事実。……然し、そこに賞賛の意味で彼女をそう呼ぶ、または評価する人間は今まで ”誰 1 人 と し て 居 な か っ た”。
抑も周りから番長としての評価を受けた事なんて一度もない。
周囲の人間も、馬鹿馬鹿しくハチャメチャな彼女を見て「番長」の前に「残念」をつけたり、
「番長」の後に「(笑)」を入れて嘲ったりと評価なんてされていない。
──尤もその事実は彼女は知らないのだが、彼女の心の何処かが勘付いていたのかも知れない。

「え?ええ??ちょ、ちょっと待っておっちゃん。
何故か知らんが涙が止まらんちょっとたんま。」

気付いた時には本人すらも知覚できない謎の涙が溢れていた。……其れは今まで得られなかった賞賛の言葉をかけられた所以か。
──然しそれすらも、彼女の意図を汲み取った優しい優しいおっちゃんが一芝居うってくれた結果に過ぎないのだが。
額の鉢巻を緩めて、目に溜まった涙を拭う。紅の鉢巻きで固定されていた前髪がおりていた。

「…………うおお…………なんだよこれ…………っく……!」

周りからは何故泣いているんだ?だとか色々とマーカスに問題があるかのような視線が送られている。
──何処にいても頗る迷惑な番長であることは、間違いないのである。

//すみません遅くなりました!よろしくです!



145 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/06/30(火) 21:14:15.91 ID:ZDO4LzNiO
>>143
男の額に吸い殻が当たった瞬間、女は確実に殴られるか、はたまた胸ぐらを掴まれるか…。
しかし、予想に反して衝撃が来るわけではなく、男は吸い殻改めて拾って近場のゴミ箱へ捨てに行ったではないか。
しっかりとゴミ箱へ捨てると、こちらへ戻ってきて正論をずらずらと怒鳴り…。

女は暫くきょとんとしていたが、小さくため息を吐いてから新しいタバコを胸ポケットから取り出し、火を灯す。

「マトモな奴らの肩身が狭くなろうが私の知ったことじゃあないね、何よりも、その責任を背負う道理がどこにあるっていうんだい?」

そこまで言ってから、煙を深く吸い込み、男へと吹きかける…とまではせず、風に乗せるようにして吐き出す。

「そんな正論はマトモな"人間"にでも言ってやりな、私は法律から外れたやつだからね」

「寧ろ、秩序や法を遵守して人間のフリでもしようっていうのかい?…同業者さん」


挑発でなく、それは ————カマかけ。
最後の言葉になんの意味も無いし、相手はただの学生にしか見えない。
能力者のようにも見えるし、無能力者にも見えるその男は一体どんな反応を見せるのか、女は心中で見定めながら、表情は確信めいたものを浮かべる。

確実に「ただの学生ではないのだろう?」と決めつける口調は、女のブラフ。
どこまでも狡猾に、ずる賢く、汚い。
魔術師なんてそんなものだ、そう言い聞かせるように女は男を見つめる。
146 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/30(火) 21:16:44.55 ID:saGLexyC0
>>144
「……?」

おだてたのも束の間、目の前の少女は突然泣き出してしまったではないか。
ヴァシーリー・マーカスもこれには動揺したが、彼女の涙が悲しみからくるものではない様子に、ひとまず安堵することになる。

それにしても"BANCHO"と呼ばれただけでここまで感銘を受けるとは、よほど名誉な称号なのか?と考える。
しかし少女は自分を自分でそう名乗っていたあたり、疑問は尽きない。
恐らく自分では"BANCHO"と名乗ってはいるが、他人に"BANCHO"と呼ばれたことはないという事なのだろうか?
だとしたら、ますますよくわからない話だ。彼はただただ泣きじゃくる少女を前に、首を傾げるしかなかった。

「……何だかわからんが……まあ、一先ず落ち着いたら出てくるがよい……」

彼は一人領収書を持ち、自分の食べたステーキと、少女のスパゲティの値段を払って先に店を出る。
こういう時は、そっとしておくのが一番だ。

……それにしても、自称している事を言っただけであそこまで感動されるとは、またおかしな話だ、と彼は考えていた。
かくして彼は、未だ扱いに慣れない携帯端末をポケットから取り出し、ブラウザーを開いて、その検索窓に"BANCHOU"の文字を打ち込む事にしたのである。

その後、少女が店を出てくる頃には、何かを察してしまったようななんとも言えない表情のヴァシーリー・マーカスが、少女を待って店の前で佇んでいた。
147 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/30(火) 21:26:05.99 ID:ARO+WSi10
>>146
チリンチリン!とドアを開けると心地よい鈴の音が鳴った。

「……………………はぁ……なんなんだあの涙…………!
オレ、病気なのかな…………?」

アリガトウゴザイヤシターという威勢の良い店員の声と共に店からドアを開けて出てきた高天原いずも。
矢張り阿保なのか馬鹿なのか、其の涙の正体には如何しても辿り着けないご様子で。折角腹拵えしたのに其処で得た水分を全て吐き出し切ったような……そんな、若干やつれた番長女であった。

「……どー思う?おっちゃん」

店から出てきて直ぐに彼女はマーカスへと質問した。ブラウザーが導いた先を見て、何やらとんでもない事を知り、察してしまった男には、何とも反応の難しい質問である事だろう。
148 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage]:2015/06/30(火) 21:33:05.68 ID:Dlr1eM+Do
学園都市の目が届かない場所がある。風紀委員にも、警備員にも。或いは、"意図的にそうなるように作られた場所"すらある。
空き家の多い路地だった。それ故に、人の目は殆ど無かった。そしてその中に、狙い澄ましたかのように、二つの人影があった。
一人は柄の悪い少年だった。スーツを着崩した茶髪の、十八程の少年で、置かれていたエアコンの室外機の上に腰をかけていた。
もう片方はただの女学生に見えた。少年とそう変わらない年齢の、少女だった。
ただ、女学生の方は、酷く苦しんでいるように見えた。そしてそれを見ながら、茶髪の男は表情を欠片も崩す事は無かった。

「梅雨が明けて……暑くなってきたな。そろそろ、初夏って奴だ」

彼は、その女学生に語り掛けていた。だが当の女学生は、話を聞いているようには見えなかった。ただ怯えながら、口元の辺りを何度も何度も引っ掻いているように見えた。
それを見た少年は、立ち上がると、その女学生の下へと足を運んで―――――――――――― その脚を、思い切り腹部へと叩き込んだ。
苦しげに喘ぐ少女だが、然し不自然なまでに声を上げなかった。そしてそれに少年は何の同情心も抱くことは無く、寧ろ。

「人の話は聞けってんだよ、 この低能が!!! 折角この俺がテメェみたいなあばずれに話をしてやってるってのによぉ!!!
 無視するたぁどういう了見だ、あぁ!?」

憤怒の感情を露わにしながら、少女の頭を踏みつけた。そしてその瞬間に、ぱきり、ぱきり、という音がした。
それは少年の足下からで、少女から発せられるものだった。然し少年は指先一つ動かさず少女を踏みつけているだけで、それに力を籠めている訳でもなかった。

「だからよ、お前を、涼しくしてやるってんだよ」


「この初夏に、凍死だ。面白いだろ―――――――――――― ほら、笑えよ」

異様なまでの寒気が、その周辺を襲った。最初こそ少女は抵抗の動きをしていたが、それはすぐに終わり。その後に、ぱきり、という音は鳴り止んだ。
少年はそれに対して、視線を向ける事も無く、携帯電話を取り出して、何処かへと電話をかけ始め。
溢れ出た冷気は、やがて。表路地にまで、ほんの僅かな"妙な予感"と共に運ばれていった。
149 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/30(火) 21:35:46.95 ID:2htb7pc1o
>>145
「……………」

女が言葉を連ねるたび、不遜な態度を取るたびに、空気が重苦しく、淀んでくる。
巻島は女を睨み付けて───は、おらず、冷ややかな目で見つめるようになる。

「『同業者』とか『フリ』とか、何を言ってっかわかんねーけどよォ〜…そうやって悪振るのはダッセーぜ、ねーちゃん」
「人に迷惑かけねェー人間なんていねー…でもな、だからこそ気を使うってもんじゃあーねーのか?」

女は一つ誤算をしていた、おそらくブラフのつもりで言ったのだろう『同業者』の一言だが、そのような物は頭の回る人間にこそ効く物。
この少年、巻島 龍也という男は元来からそれ程頭は良くはなく、物事を普段から考えるような人間ではない。殊更怒っている最中とあれば、何気ない風に言われた言葉を咀嚼するようなキャパシティーは無い。

「…それと、こいつは独り言だ、忠告だとかそーゆーんじゃなくて、独り言」

「そのベンチ、『脚が悪いぜ』」

『独り言』と呟いて、しかし当て付けの如く女に聞かせる為に告げた言葉、『ベンチの脚が悪い』との旨。
その意味はすぐにでも女は理解出来るだろう、巻島がそう言った直後、女が座っているベンチの脚の一つが折れ、『ガコン!!』と突如ベンチが傾く。
女の運動神経が良く、素早い反応が出来ればなんでも無いし、例え座ったままだったとしてもバランスが崩れて驚くくらいだろう。

ついでに、このベンチはそれ程古い物でなく、鉄製の脚は腐っていた訳で無い、自然劣化で折れるなんて事は有り得なかったという事を追記しておく。
女がベンチの脚を改める暇があれば、折れた脚は『何かに削られた』ように細くなっているのに気付くだろう。
150 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/06/30(火) 21:52:23.32 ID:ZDO4LzNiO
>>149
「ふむ…どうやら君は…」

挑発にも、ブラフにも掛からない。
どうやら、この男は女が思うよりも別の所に思惑があるようだ。
何かを言いかける前に、男の声に耳を傾ける。
独り言だろうが何だろうが、こちらに向けられているのは明々白々、それを聞き届けるか届けないかのタイミングで ————立ち上がる。

がごん、という鈍い音を立てて傾くベンチを尻目に、一歩、男へと近づく。

「…懲らしめようなんていうつもりか?ん?答えてみろ」

見下すような、なんて生温い程に冷たい目を向け、とても柔らかな手つきで男の頬へ触れようとするだろう。
その手からは、不穏なパチ、パチチッという音と火花が散る。
しかし、熱さもなければ、害も一切ない。

「懲らしめる、なんていうのは自分の定義する正義にそぐわない者に対するエゴだ。それが争いの元にもなれば戦争のトリガーにだってなる…正義の反対が悪であると誰が決めた?」

「大多数を普遍であると呼ぶのは構わないが、それをイレギュラーに押し付けるのはただの迫害だぞ?」

つらつらと歌うように言い終えると、女は堂々たる態度で言い放つ。

「私を ————この"閃光の魔女"を知らないとはおめでたい子だ」

自信満々の表情で言っている女。
ハッタリでよくもまあここまで言えたもんだと、自画自賛してしまいたい程である。

(…こ、ここまで言えば引いてくれるだろ…さすがに…)

(あぁぁああ…怖いっ……カッコつけるんじゃなかった…私は馬鹿か!愚か過ぎるぞっ…)

女の表情こそ、相手を弄ぶ魔女そのものだが、胸中はこんなものである。
151 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/30(火) 22:01:06.21 ID:saGLexyC0
>>147
少女が店から出て来た。涙を流し切ったのだろうか、目が赤い。
そんな少女の、なぜ涙が出たのかという問いに対して、つい目をそらしてしまった。
"番長"がなんたるかを知ってしまった彼には、その理由が今はっきりとわかる。
リーダーシップをもち、喧嘩は強く、皆から慕われ、仁義に熱く、部下の面倒をよく見て、弱いものいじめを許さない存在。
それは何十年も昔。幾多の戦場を部下とともに渡り歩いた、若き日のヴァシーリー・マーカスのあり方とよく似ていた。
自分が日本で生まれていたらそう呼ばれていたのだろうか?とまで思った。

しかし問題はそこではない。一番の問題は、今まで接してきた限り、この少女がそれらの要素に当てはまっているようには思えなかった。それどころか、どこか空回りしている風にも見える。
だがそう呼ばれて涙を流したということは、身の丈に合っていない自称であることを、彼女自身薄々心中で察していたのだろう。
それならば、「番長はお前に合っていないから」などと、口が裂けても言えるはずがない。

「まあ……あまり無理はするな。」

病気だと思っているなら都合がいい。そう捉えていてもらおう。少女には、「病にかかっているのであればあまり無理をするな」というニュアンスで伝わるように、言葉を濁した。
しかし彼は、この言葉に二つめの意味も込めていた。「無理をして番長になることはない」と。
とりあえず彼にもわからないフリをして、この場はやりすごす事にしたのである。これ以上の深入りをされては困る。彼はとっさに話題を切り替えた。

「ところで、いずもよ。お前も、あれを持っているのか?えーと……そう、"能力"というやつを」

この質問こそが、彼にとって最も重要なことである。しかしこれが重要な問題だと勘付かれてはならない。
だからこそ自然に。ふとした疑問であるかのように。能力という単語がなかなか出てこない振りをして、それこそ能力に対してあまり馴染みのない人物を装い、質問を投げかける。
「能力」という言葉を発した瞬間、彼の瞳が一瞬ギラリと光った事に、少女は気付いただろうか。
152 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/30(火) 22:26:49.45 ID:ARO+WSi10
>>151
「む、無理!?ど、どういう事だ??」

───”番長”。彼女には1人兄がいる。
彼女とは大違いの、”誰からも慕われ”、”誰よりも熱く”、そして自己流の正義を貫き通す孤高の存在。……元より憧れていなかったといえば嘘になる。
そしてそんな兄は最後までちっぽけな正義を振りかざしてその番長の名を降りた。車に撥ねられ、動かなくなった下半身……到底”番長”なんて務まらない。
────だから。その意思を継ごうと。
彼女にとっては絶好の機会であった。
それを機に、女としての自分を捨て去り、番長として誇れる”男”としての自分を創り上げてきた。

一度決めた意思を捻じ曲げたくはない。幾らそれが自分に不向きだとしても受け入れない。受け入れさせない。──本能的に拒絶する。
番長に対する熱意だけは、彼女は何処の誰よりも堅い鋼の意思を持っている、筈だ。
─今現在、マーカスにも察されている通り、空回りしている部分が殆どだが。

────話題は、変わる。

「…………。」

「…なーに言ってんだいきなり怖い目して。学園都市の学生なんだから大抵は能力持ってるっての!
……あ、そうか、おっちゃんは仕事で来てるから知らないのも無理はないか」

ほんの一瞬。其れは極僅かな間であった。
彼女の目に灼きついたのは”魔術師ヴァシーリー・マーカス”の矢を射るような鋭い眼光。
先程のマーカスには感じられない、僅かな違和感を本能的に察知するも、後に続いた彼の言葉でそんな感情は払拭された。
彼女の能力は「爆破剛掌」。能力強度にしてLevel3。
馬鹿にこそされているが、それでいて何故「番長」と呼ばれているのか。馬鹿にするくらいなら抑もそんな風に呼ばなければいい。
──実は、その理由はこの能力の中に秘められていた。

153 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2015/06/30(火) 22:33:32.85 ID:jxMrWHc7o
37 名前:名無しさん@ゴーゴーゴーゴー![sage] 投稿日:2015/06/30(火) 22:04:17.67 ID:pT9zE2di0
前スレでレイカが心理戦上手いみたいな事言われてたけどそうでもないな
ただ相手の動きに乗らずに格上余裕ロールプレイしておきながら苦し紛れのフォローに慌ててる心理描写してるだけの俺TUEEEEEEE

38 名前:名無しさん@ゴーゴーゴーゴー![sage] 投稿日:2015/06/30(火) 22:15:57.60 ID:He3Ei7wL0 [1/2]
どうでもいい可愛けりゃそれでいい

お姉さんキャラの癖に胸がBしかないことをネタにしてレイカちゃんを弄りたい
乳首で何度もイカせてあげてDぐらいまでは成長させてあげたい

お姉さんキャラの癖に胸がBしかないことをネタにしてレイカちゃんを弄りたい
乳首で何度もイカせてあげてDぐらいまでは成長させてあげたい

お姉さんキャラの癖に胸がBしかないことをネタにしてレイカちゃんを弄りたい
乳首で何度もイカせてあげてDぐらいまでは成長させてあげたい

http://yomogi.2ch.net/test/read.cgi/net/1435584846/
154 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/30(火) 22:35:31.44 ID:2htb7pc1o
>>150
(こっ この女ァ〜…!)

自分としては渾身の嫌がらせの筈だった、内心煮えくり返っていた腸を抑えて、少し驚かせでもしてやろうと仕掛けていたのに。
ベンチが崩れると同時に女が立ち上がったのを見て、その失敗を巻島は悟った、憎々しい程余裕綽々の女に歯軋りをする。

(気付いてたのか?音…いや、見てた…いや、違うッ!)
(『オレ』が『教えた』んだァァァァ〜〜〜ッ!!!クソックソッ!カッコつけなけりゃ良かったぜ!)
(そうすりゃ調子に乗らせ無いで済んだのによォ〜ッ!!)

「…こ、この……」

見下すような視線が嫌にムカつくのは、自分が失敗したのもあるからだろう。汗が染み出す頬に女の手が触れる。
視界の端でバチバチと火花が散り、それが自分に触れている女の手から出ていると知ると、ようやく『こいつは何者だ』という考えが湧いてきた。

「…『魔女』…だとォ〜?」
「するってーとアンタ…『魔術師』かァ〜?」

魔女と呼ばれているからって魔術師とも限ら無いのだが、巻島の頭の中では単純にそう結び付く、大通りで人もそれなりにいる場所でそんな言葉を話題に出すのもどうかと思われるが、巻島の声量でも余り周囲には気にされてい無いようだ。
女を魔術師だと見た巻島は、素早い動きで自分の頬に触れている女の手首を掴むと、少し溜めてから問い掛ける。

「…おい、ねーちゃん…アンタが魔術師だっつーんならよォ〜…一つ聞きたいんだが」
「アンタは『カスパール』か?答えろ…」

「沈黙は…肯定と…見なすぜ」

その問い掛け、話にに出てくるワードは、最早それを言うという時点で自分がどういう存在かもバラしているようなものだが、巻島は気にし無い。
女にそう問い掛ける眼差しは真剣なもので、怒っているのとも見下しているのとも違う、真っ直ぐな視線。
155 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/30(火) 22:48:44.50 ID:saGLexyC0
>>152
「やはりお前も持っているのか。能力というものがこうも氾濫しては、何か良からぬ事が起こらぬか心配なものだな」

彼がふと言った言葉は、少女にとっては「犯罪が増える」だとか、そういった心配事のように捉えられるかもしれない。
しかし彼がこの言葉に込めた思いは、そんなものよりも更に重い、下手をすれば彼の存在そのものにも関わる可能性があるほどの、並々ならぬものだった。

そして彼女の方を見る。彼女が危険とは思えないが、「可能性」は調べておかなくてはなるまい。

「しかし、本当に誰でも持っているのだな。良ければ、それをわしに見せてはもらえんだろうか?」

この街では、学生なら誰でも持っている異能の力。能力。
それは衆目に触れず、ひっそりと進化してきた魔術のそれとはあまりにも違いすぎる。

そんなことを思案しながら彼は、少女に"それ"を見せて欲しいと、自然を装って申し出た。
そのような思いが裏にあるという様子など微塵も見せないように。
156 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/06/30(火) 22:49:25.23 ID:ZDO4LzNiO
>>154
もし、彼の独り言に反応しなければ、それこそ情けない事になっていたのは必至。
それが功を奏していたのかいなかったのかはさておき、男が乗ってきたのは好都合であることに違いはない。
口ぶりからするに、相手も魔術師だろうか。

掴まれた手首に込められている力はまさに男のもので、振り解こうとしたところで女などひとひねりで伏されるだろう。
カスパール、たしかに男はそう言った。

(魔術師の思想分け…やはりこの男は魔術師か…いや、この大都市だ、仮に学生でも知っている可能性は否めない、か…)

(それにしても、カスパールに何か恨みでもあるのか?尋常じゃない、何か、何かがある…)

じわりじわりと逡巡し、女は手首を掴まれたまま火花を収め、ただ素直に言う。

「…カスパールじゃあないよ。私も、私の両親も」

「カスパールに恨みでもあるのかい?」

これは、ほんの興味だ。
もしかすると聞かれたくなかったかもしれないが、そんな事は思慮に無い。気になる事は聞く、調べる、それが女の原動力なのだから。

「…からかったのは謝ろう、手、離してくれるかい」

男の声音に交じるものは一体何だったのか。
それを感じ取ったかのように、女はちらりと自分をつかむ手を見やった。
157 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/06/30(火) 23:05:52.89 ID:2htb7pc1o
>>156
「……………」

『カスパールではない』と、女が語り、手を離す事を頼むが、しかしすぐには離さない。
女の目を真っ直ぐに見つめて、まるで心の中でも読んでいるかのように覗き込み、それから、ようやく手を離した。

「『カスパール』かって聞いて、普通に答えるって事は魔術師だな…アンタ」
「…まあそんな事聞くオレも魔術師なんだが…」

女から離した巻島の手に向かって、何かが地面から跳ねてきた、それを巻島はノールックで掴む。
それは、一つの独楽だった、木製の、鉄で補強された掌サイズの独楽、それを学ランのポケットにしまい込むと、巻島は話を続ける。

「…オレはよォー、この学園都市が好きなんだ」
「バカな奴もいるし、嫌な奴もいる、美味いメシ屋ばかりじゃねーし、悪い事もある」
「でもなァーッ なんでか知らねーけど、オレはこの街が好きなんだよ、本当に」

「だから、何の為か知らねーが、この街に危害を加えよーとしてる魔術師共は許せねー、ただそれだけよ、それだけ…」
「『魔術師』の事は同じ『魔術師』がケツを拭くのが道理ってもんだろ?だからカスパールならブッ飛ばす」

女に語られた理由は、それ程面白いような物でもないだろう、ただ単に、学園都市が好きだから、それに影を指す者を排除したいという、少年マンガじみた理由。
誰かを魔術師に殺されたとか、恨みとかではなく、本当に単純なそんな理由だ。しかし、それは全く冗談でも何でもなく、本気でそう思っているというのが目から伝わるだろうか。
158 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/06/30(火) 23:05:59.49 ID:ARO+WSi10
>>155
「ん?あ、ああ。
確かに最近は能力悪用した暴動なんかもどっかの根性なしが起こしてるらしいしな。」

ぶん殴ってやりたい、と両拳を合わせて、右拳をポキポキと小気味良く鳴らしてみせる。
マーカスの懸念とは意味は変わってくるが、彼女の言葉通り実際、能力悪用による悪行は増えつつあった。能力発現から数年が経ち、人々がその便利さに慣れてきた、というのもあるのだろうが。

「勿論いいぜ!!………………と言いたいところなんだけどよ……。」

少女は何か分が悪そうに苦笑いした。
──前述した通り、彼女を一応「番長」という肩書きでと通らせているのは、殆どがこの能力のおかげであると言えるのである。即ち……、

「ちょっとオレの能力は馬鹿力でな。
……こんな街中でぶっ放せばまず受け止めるものなんて無いし、風紀委員に目付けられて面倒くさい事になっちまう。」

爆破剛掌。その名の通り、爆発という事象を起こす事で自身が引き起こした衝撃を数倍にも跳ね上がらせる能力。
まだLevel3止まりであり、コントロールは凄まじく難しい物であるが、彼女が語る通り、その火力だけはそのLevelを優に超えていると言える程。
オマケに彼女はこれまでに何回も街中でやらかしてしまい、風紀委員には目をつけられ、厳重注意対象と認定されている。
故に、此処ではぶちかませないし、残念ながら今の自分では調整して、小さくするなんて事も出来ない。その旨を、高天原いずもはマーカスに伝えた。

159 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/06/30(火) 23:07:20.53 ID:N8Tq33VHO
学園の中心にほど近い公園

昼間は学徒でごったがいするこの辺りも、深夜ともなればほぼほぼ人気がなくなってしまう。
それを見計らって集まってくるような輩も数多いるようだが、今この場所にいるのはこの女唯ひとり、そのはず。

「――――……」

さて、この女もおおよそ「まとも」ともかけはなれた存在であった。
迷彩柄の作業服と、同じく迷彩柄の帽子、軍手、長靴で身を包んだ女は、なんと薄い鉄板の上に胡座をかいて、『浮いて』いた。
1.5m四方の鉄板は1mmの歪みも生み出さずに女の全体重を支えつつ、地面から1mの高さに完璧に静止している。
おまけに女の左右には真っ二つに割られた5kgの鉄アレイが同様に浮翌遊しており、宗教団体も真っ青の異質さを演出していた

「―――………まだ…まだ……」

女は目を固くつむり、かなりの集中を発揮しているご様子。
誰かが近づいてきても、至近距離にまで接近するまで気づくことは、ないのだろう。


/何でも募集でございます
160 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/06/30(火) 23:32:39.53 ID:ZDO4LzNiO
>>157
「この、学園都市が好きだってぇ…?」

「……ふっ」




「ふふっ…アッハッハッハッハッハッハッハ!!この都市が好きだってぇ?ふふっ…!」

一頻り大笑いしたあと、女は離された手首をさすりながら、男の真剣な眼差しを真っ直ぐに受け止めながら言う。

「この都市が好き、ねぇ…世界の果てに棲家を置いてもっぱら魔術しか考えないのが普通だと思ってたが…そうでも、ないみたいだ、ふふっ…」

くわえたまま、ほぼ灰になった煙草を地面に落とす…なんてことはせず、それを器用に靴の裏で消すと ————少し遠くに見えるゴミ箱へ弾く。
それは綺麗な放物線を描き、かさりと中へ。

「少し天邪鬼かもしれないが、今度からゴミはゴミへ、覚えておこうじゃあないか」

そう言って少しだけはにかむと、ふっと声を潜めて男の顔にぐっと顔を寄せる。

とても小さな声で、女は言った。

「…ガイストには気をつけろ」

それだけ言うと、ふっと顔を離して背を向ける。



「私はウィルソン、"これ"しか出せない、しがない魔術師だ」

背を向けたまま右手を胸元辺りまで持ち上げ、パチチッと火花を出すと、すぐにバツが悪そうに両手をポケットへ。

「随分と面白い男にあった…それだけで充分な収穫になった………さ、私みたいな色気のない女のこっとは忘れて、気分転換にでも出かけるとこったね」

男からは、女の表情は見えないだろうが、笑っているであろうことはわかるかもしれない。
何か相手からアクションがなければ、そのまま歩き去って行きそうだ。
161 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/06/30(火) 23:46:21.67 ID:saGLexyC0
>>158
「……ほう」

街中でぶっ放す所がない、という言葉に、彼は少し眉を動かす。
まだ彼女の能力はわからないが、彼の中で少女の能力は「危険かもしれない」という認識まで昇華した。

もし街を破壊出来るほどの能力だったら?という考えが巡る。
それだけで魔術側には十二分な脅威となるし、もしその上で少女が我々を敵対視したとしたら、自分は少女を始末しなければならなくなる。
丸くなったとは言えど、危険物は早期に排除するというその思想はやはり過激派、[カスパール]のそれだった。
実際、少女の能力はそこまで危険な能力ではない。しかし彼は、やはり見てみなくては理解できない。そこで、彼の「魔術」が輝くのだ。

「……その能力、わしに向かって使え」

だからこそ、このようなはたから見ればとち狂ったかのような事を言い出したのである。

「わしは身体が丈夫だ。どんな危険な能力だったとしても、受け止めてくれよう」

少女から見れば、「能力を舐めている」といった風に見えるのだろう。しかし彼は、彼の言った事が実際に可能だった。彼の「魔術」によって。
しかし魔術の存在など知らない彼女にとっては、彼はただ人のいいおじさん、程度にしか思われていないのだろう。
当然彼自身、少女の人柄から、そんな事をする人物でない事はわかっていた。
だからこそ、先程まで理解していた、少女の「誇り」を利用する。

「それとも、老いぼれの頼みひとつも聞けぬ"軟弱者"が、おこがましくも「番長」などと名乗ろうというのか」

「番長」。彼女が異様にこだわるこの称号を逆手に取り、彼女のプライドを刺激する。相手に意地を張らせる事ができれば、能力を使わせればいい。
魔術発動の準備は出来ている。ほんの一瞬、それだけでいい。少女の能力を確かめるには、それだけの短い時間、彼の魔術が使えればいいのだ。



162 :巻島 龍也 [sage saga]:2015/07/01(水) 00:03:51.52 ID:/enJxJ6po
>>160
「わ 笑うんじゃねーよォーッ!!恥ずかしくなっちまうだろォーがッ!」

確かに、今言ったことは本心で、本当にそう思っているが、しかし自分でも余り人に言えないと思っているのも事実。
女に大笑いされるとやはり恥ずかしくなってくるらしく、顔を赤くして叫ぶ。

だが、女が吸い終わったタバコを脚の裏で消しているのを見て、『またポイ捨てするのか?』と少し表情が引き締まる。
その考えは杞憂だったようだ、どうやら必死の説得(?)が通じてくれたようで、女がゴミ箱に吸殻を捨てたのを見て満足そうに頷いた。

「わかってくれりゃーいーんだよ、ねーちゃん」
「出来りゃー最初から───な、何だよ?」

   ・・・・
「……ガイスト?」

グイッと顔が近くなった女から、囁かれたのは聞きなれない言葉。魔術師の名前か、魔術の名前か、もしくは現象か、名前を聞いただけでは何のことか見当もつかない。
女の真剣な声から、冗談のようでもないというのはわかった、小さく頷いて返す。

「その『面白い男』ってオレの事かァ〜?どーいう意味だよそれェー」
「…オレは巻島 龍也ってモンよ、アンタと同じ魔術師だが…」

「頼むぜェ〜ッ!この事は内緒にしといてくれよなァ〜ッ!」
「魔術師だって学校にバレたら通えなくなっちまうからよォーー!」

背中を向けたウィルソンを引き留めるような事はしない、言いたい事は伝わったし、結果的には良い出会いだったと言えよう。
最後に『魔術師である事は内密に』と釘を刺しておくと、巻島もまた別方向へと歩いて行った。

/お疲れ様でしたー
163 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/01(水) 00:18:08.36 ID:O8Ym564+0
>>161
「……は!?無茶だ!
だってアンタ……能力者ってわけじゃあねぇんだろ??」

その反応は寧ろ、”当然”だった。
その能力を有している身であるが故に、その能力の本質と危険性は本人が何処の誰よりも熟知している。
おまけに。動かない的に当てるという行為は、正に彼女の能力の超火力を存分に発揮できる最適な前提条件だった。
それを……恐らく加味した上で、この大男は自分自身に能力をぶちかませというのか……?
──然し。続く男の言葉は思惑通りに彼女の誇りを刺激する最適の言葉だった。


「……………………そうか。」
「そりゃあ”番長”としては貼られた”軟弱者”ってレッテルを…強引にでも剥がさなきゃ気が済まねぇなぁ…………!!」

「見せてやる……”番長”と言わしめる真髄を!!」

静かに、高天原いずもは決意した。
先程の話をして、攻撃を受けるというならば、其処には流石に何かしらの思惑があるのだと。
……何より、「番長」を務める自分自身を貶されては、その汚名は返上しなければ…………気が済まない。
鉢巻きをきっちりと巻き直し。自身の右拳をこれでもかと言うほどに強く固く握り締める。足を肩幅に開き、男の体にダイレクトに叩き込まんと、最適な体勢を整えた。

──マーカスと一定の距離をおいて。
─────大きく深呼吸、精神を統一させる。


「我、高天原いずもが誇る最大火力!!
……万物よ!我が業を以って瓦解せん!」

何故か咄嗟に思いついた決め台詞と共に其れは始まった。
ダン!!と大きく右足を踏み鳴らすと、まるで爆発が起こったかのように。
……そして、その爆風で吹き飛ばされたかのように、彼女の体は猛スピードで魔術師ヴァシーリー・マーカスへと突進する。
──直前、高天原いずもはマーカスの体に向かって、固く握り締めた”右拳”を勢い良く突き出した。
……彼女の能力は、自らの四肢が何かしらの形で衝撃を与えた際に爆発を起こす事でその威力を莫大な物にするというもの。
つまり、彼女の拳がマーカスに届いた瞬間、凄まじい衝撃がマーカスを襲うだろう。──あくまでそれはマーカスが一般人だとしたら、の話だが。


────火力だけならLevel4並みの爆発的衝撃が、魔術師を襲う。
若干、手抜きはしているがそれでも凄まじい火力の筈だ。


//すみません!明日もちょっと忙しく早めに寝なければならないです……長引かせてしまって本当に申し訳ないですすみません!
164 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/01(水) 00:46:17.70 ID:2xMM7yOs0
>>163
思惑通りだ。今まで少女と接してきて、このような単純な煽りは、予想以上の効果を発揮したようだ。
彼は足をドンと構えて、姿勢を低くし、身体で受け止めるポーズを取る。

「来い」

そして少女はこちらへ突進し、拳を勢いよく突き出す。能力を全開に解放し放たれた、渾身の一撃。
しかし、その拳が彼の身体に接触する、ほんのコンマ数秒前。彼の胸から一瞬、光が発せられたような気がした。

『ARMOREDMALE』

瞬間。少女の能力から生み出された恐るべき爆発が、彼を中心に巻き起こされた。
しかし彼女は気付いただろうか。その強烈な光にかき消されているが、その中に、深い紫色の光があったことに。発生するはずのない暗い光が見えたことに。

爆発の後、数秒間の沈黙。それと共に霧が晴れ、現れたのは、コンクリート地面に後ろへ倒されているヴァシーリー・マーカスの姿だった。

「……確かに、なかなかの威力……さすが、"番長"と呼ばれるだけあるものだ」

しかし彼が倒れている姿をよく見ると、少し不自然だった。あれほどの爆発の直撃を受けたにもかかわらず、傷どころかホコリひとつ被っている様子がない。
だが少女の拳には男の手応えが、確かにあっただろう。しかしそれ止まりで、彼は、「少女の拳に押されて倒れた」としか思えない位置にいた。能力の影響を受けたとは、到底思いがたかった。

その正体━━━━それは彼の固有魔術「アーマード・メイル」による"完全防御"。彼の胸に掛けてあるタリスマンを触媒に、深紫色の防護オーラという形で、一分間だけ使用できる「奥の手」。
あらゆる異能やあらゆる衝撃を防ぐそれは、当然少女の攻撃のすべてを防ぎきった。しかし彼は「何かをした」と思われないために、彼女の拳に合わせる形で、わざと後ろに転んだ振りをしたのである。

彼は身をもって彼女の能力を体験し、彼女の能力は確かに乱暴ではあるものの、魔術界隈を危険にさらす程のものではないことに安堵した。
しかしあそこまでの爆発が巻き起こることは想定していなかったため、結果として不自然な位置に倒れてしまった。
彼もそれを懸念してはいたが、あくまでシラを切るつもりだ。砂払いをしながら、彼女のパワーに対して改めて「番長」とほめたてて、この場をやり過ごそうとした。

「珍しいものが見れた。感謝するぞ」

と、感謝の言葉まで言って。
165 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA :2015/07/01(水) 00:46:49.95 ID:2xMM7yOs0
>>163
//了解しました。お待ちしております
166 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/01(水) 06:38:06.28 ID:SVWPelvmO
>>162
/返信が遅くなってしまい大変申し訳ありません
/よろしければまた是非絡んでください、ありがとうございました!
167 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y :2015/07/01(水) 08:42:43.06 ID:NnDV+tNEO
>>159
/まだぼしゅーちゅーです
168 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/01(水) 15:01:48.14 ID:O8Ym564+0
>>164

「……な………………!?」

手応えは───あった。間違いなく彼女の最大火力たる渾身の一撃は炸裂した筈である。
な の に。何故この男、ヴァシーリー・マーカスは僅かに後方に尻餅をついただけで済んでいるのだ?──少女は今一度、確かに能力が発動した筈の拳を握り締めてみた。

「………………なあ、おっちゃん。」

其処に疑問が生まれるのは、最早必然の事だった。能力は確実に炸裂した、──ならば、それによって生じた衝撃は、何処へ消えた?
──そして彼女はまた、能力行使の直前に不可解な物を目撃した。
爆発と共に生じた眩い閃光の中に、存在する筈のない紫の光が、確かにあったのだ。

「…………アンタ、何者だ?」

目の前で起きた不可解な現象。
マーカスはやり過ごそうとはした物の、やはり彼女には勘付かれてしまった。
高天原いずもは真っ直ぐにその男を見据え、問いかけた。
169 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/01(水) 17:09:36.77 ID:2xMM7yOs0
>>168
「……」

この少女は、勘はにぶいが、自分の能力を信じて、また絶対的な自信を持っていたのだろう。影響がない事が信じられない様子で、ヴァシーリー・マーカスを凝視している。
やはりと言えばそうだが、自分が「普通の人間とは違う」事を、少女にどこか悟られてしまったらしい。

彼は少女に、「自分はただの老人だよ」としらばっくれる事も出来た。
━━━━━だが。彼は、なんとなく少女の性質を理解していた。このまま、自分を黙って見過ごすはずがないと。自分が何者であるか知るまで、決して逃がそうとはしないだろうと。嘘を吐いても見抜かれるだけだと、彼は直感した。
こうなっては、誤魔化しても仕方がない。彼は自らの"誤算"を悔やみつつ、静かに目を閉じる。伝えるべきか悩んでいるようだ。自分が「何者」であるかを。

やがて彼は覚悟を決めたように眼を開け、少女の瞳を見つめ返した。

「……好かろう。元よりわしの誤算だ。お前には、本当の事を言ってやる」

……だが。と、彼は続ける。

「……これから言う事は絶対に他言するな」

その瞬間、彼の瞳、そして語調が、今までの好々爺ぶりからは想像も出来ぬ程の威圧的な凄味を放った。
それはまるで「破れば殺す」とまで訴えるかのようだった。逆に考えれば、それ程までの「秘密」を、彼は抱えているという事である。
本来なら、明かされてはならないはずだった。明かしてはならないはずだった。
彼は息を吸い、覚悟をもって、その口から自らの「秘密」を話し出した。

「……わしは"魔術師"だ」

その言葉は、確かに彼の、そして彼等の、秘匿されるべき秘密であった。
しかし、魔術師という存在を知らない少女がこの言葉を聞けば、まさしく理解不能の一言であろう。
下手をすれば彼は頭がおかしいのではないかとか、彼が冗談を言っているのではないかとか、そんな風に捉えられるかもしれない。……むしろその方が、彼にとっては都合が良いのだが。
だが彼の語気は妙に真に迫っており、嘘を言っているようにも思えない。

この言葉をどう捉えるかは、少女の判断力に委ねられるのだろう。
170 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/01(水) 17:37:56.48 ID:O8Ym564+0
>>169


(……然し、傷一つ付けられなかったな。)

マーカスからの返答を待つ間、少女は今一度先程起こった現象を思い返していた。
──何かを殴った感触はあった。然し同時に、得体の知れない何かに”相殺”された、気もした。
結局その違和感は数秒後、マーカスの口から直々に明かされる事となる。
少女は学ランのポケットに両手を突っ込み、返答を待っている。

「…………………………ッ!!」

──思わず、足を引いてしまった。ビリビリッ!!と空気が避けるような緊張感。
高天原いずもが眼前の男から受けたのは眼での「威圧」だった。
そして其れが「殺気」であるという事を理解するのに、多くの時間は要さなかった。
”番長”と名乗るようになって、初めて何かを「怖い」と感じた。
目の前には自分の知らない、見た事も、経験した事もない、謎の脅威が立っているのでは無いかと悟る。そしてその脅威に、今直ぐにでもとって殺されてしまうのでは無いかという…………恐怖。
然し、此処まで来てその正体を知らずにはいられない。高天原いずもはマーカスの話に耳を傾ける。

「”魔術”……………………。」

彼女が対峙した”得体の知れない物”の正体は、この世界に存在するもう一つの異能の概念「魔術」であった。
学園都市にはほんの極一部の人間にしか認知されておらず、
その人間達すらも「噂」だとか「お伽話」だとかで相手にすらして貰えない概念。
ただ彼女の場合、其れを目の前で見せつけられては信じないわけがない。
そしてあと二つ、その正体を知って頭に浮かんでいた質問をマーカスに投げかける。


「…………おっちゃん、すまん二つ質問だ。
勿論おっちゃんが言った様にこの事を他人に話したりはしねぇよ。
……そして今からする質問にも、答えられる範囲で構わん。」

「…………その”魔術”ってのは、オレ達の”能力”とは違うものなのか?ってのが一つ。

……………………あと。」

一つ目の質問は至極単純な物であった。
そして最も重要なのは──────。

「魔術師[アンタ達]は、能力者[オレ達]の…………敵、なのか?」
171 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/01(水) 18:10:39.31 ID:2xMM7yOs0
>>170
「……信じるのだな。意外にも簡単に……」

彼が醸し出す雰囲気は最早先程までの、「優しいおじさん」というものとはかけ離れていた。
無理もない、本来は明かされぬべき"魔術"という存在を、今ここで明かしているのだから。
彼は投げかけられた少女からの二つの質問をジッと聞いて、やがて口を開く。

「お前たち"能力者"は、ただ突然に力を発現し、そしてその本質を理解せぬまま行使する。謂うなれば非常に突発的で、著しく理屈を欠いているものだ」

「……だが。わしらは身体に持つ"魔力"というエネルギーを、触媒によって"魔術"に変換する……無論、方法は人によって差があるがな……」

彼は服の襟元に手をかけ、首にかけられていた銀色のタリスマンをジャラリと取り出す。
周囲に人がいない事を確認し、彼はそれにジッと祈りをこめる。

「……『ARMOREDMALE』」

瞬間。そのタリスマンが突如鮮烈な光を放ち、続いて深紫の暗いオーラが湧き出る。これこそが、先程の爆発の中に紛れていた光の正体。彼の魔術である。
その深紫の光は彼の全身を包み込み、形状を変え、やがて彼は、要塞を体現したかのような、重き鎧の姿へと変貌した。

「……これが、わしの魔術だ。「全ての盾」アーマード・メイル……わしの曾曾曾祖父よりも前から受け継がれてきた、由緒ある力……"お前たちとは違う力"。」

少女には直ぐにわかるだろう。この力が先程、彼女の能力を完全に防いで見せたのだと。

「……少しは、理解出来たようだな」

彼は1分ほどそのままの姿でいたが、やがて魔術は解ける。深紫の鎧は、再び紫色の光となり、太陽の光の中へと消えていく。そこには、元のヴァシーリー・マーカスの姿があった。
彼は話にひと段落つけた後、また言葉を続けた。

「……さて、二つ目の質問への答えだが……」
「「味方である」という約束は、できん」

彼は率直に、そう断言した。
172 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/01(水) 18:36:25.19 ID:O8Ym564+0
>>171
「……そりゃあ目の前であんなもん見せつけられては疑う意味もクソもないぜ?」

目の前に居るのは”魔術師”ヴァシーリー・マーカスである。先程までの彼と同じ人物ではあるが、彼女の認識ではまるで違う、一人の魔術師。
彼女は本来のアホ具合を考慮してもあっさりとその存在を受け入れたのだった。脅威を目の前にして、彼女の脳はフル回転している。

「要は”魔術”ってのは”能力”みたいにわけわからんもんを直接出すってのじゃなくて、
何かを経由して自分のうちに秘めた力を引き出す……みたいな感じか。

そして……それがオレの攻撃を防いだ”魔術”と……!」

正直、”圧巻”という言葉に其れを形容する言葉が見つからなかった。
古来より受け継がれた由緒ある鎧を纏った魔術師の姿が其処にあった。
其処に感じたのは騎士のような「気品」、そして其れを操る魔術師の「誇り」…………様々な物が混同していたが、其れが”魔術”なのだと実感した。その圧倒的な存在を前にして、息を呑む。

「……………………そうか。」

「…………なら”オレの能力”が”アンタのその馬鹿堅い要塞みたいな鎧”と対峙する可能性も、ゼロではないってこったなぁ……。」

その少女は、何処か残念そうに呟いた。
その根底にはつい先程、自分の能力を完封したあの鎧を操るマーカスをどうやって相手すれば良いのかという苦悩もあるが。
その実、大半を占めていたのは”高天原いずも”が先程出会った優しいおっちゃんこと”ヴァシーリー・マーカス”と、異能という世界を隔てて敵として対峙する可能性があるという事実だった。
少女は今一度、ポケットに突っ込んだ右手を出して、グーパーと握り締めて開く動作を繰り返してみた。
そして数秒の静寂の後、”能力者”の番長女はゆっくりと、然し明るい顔で口を開いた。逆に、そんな顔で感情を取り繕うことしか出来なかった。

「……でもよぉ、そん時はオレも容赦しないぜ?
さっきは完封されたけど、そん時はそんな鎧ぶち壊してやるよ!!」

ニカッと、歯を見せて笑う。そして同時に、その右手をマーカスの目の前に突き出したのだった。
173 :雨宮 初音 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/07/01(水) 18:56:11.85 ID:4jfWnd5G0

「ふふふ〜、可愛い〜っ」

夕暮れ刻、茜色に染まるコンクリの小道にて猫と戯れる少女が一人。
少女の名は雨宮初音。薄茶の長いポニーテールにワンピースっぽい病衣、車椅子といった出で立ちだ。
そんな初音を笑顔にさせているのは野良であろう一匹の黒猫。大きさからいって子猫だろう。
初音が猫じゃらしを使用していることから分かるとおり、この一人と一匹が戯れるのは初めてのことではない。
一週間程前、偶然傷だらけのこの子猫を見つけ、なんやかんやで世話をしにきているという。お陰様ですっかり元気なようだ。

「あ〜あ、どうせなら病室で飼えたらなぁ……、流石に無理だろうけどー。」

足元に擦り寄ってくる黒猫ひょいと両手で持ち上げる。
特別動物嫌いでもアレルギー持ちでもない初音は、この黒猫をペットにしたい気満々なのだが、彼女の主治医はそれを許してくれない。
…というか許してくれる方が衛生的には問題なのだろうが。
はあーと深い溜息を吐いて落胆している様子の初音。当の黒猫は呑気に欠伸をしている。

「はあ、もうこれに関してはしょうがないしなぁ…。」
「さーて、気をとり直して今日は帰ろっか!一応いつもの住処のとこまで――――」
「……って、ちょ、ちょっと!?」

そろそろ日も沈む頃、……イコールで治安が昼間より悪くなることを意味する。
『半年前の件』によって一悶着あった身としては早めの帰宅を心がけており、今日もそのつもりだったのだが急に子猫が顔を上げるともぞもぞと動き出す。
初音の手をすり抜けてそのまま地面に降り立てば、なぜか素早かな動きで路地裏へと入ってしまったではないか。
野良犬でもいたら…もしくはもっとヤバい何かがいたらどうするつもりか。
心配になった初音も慌てて猫のあとを追いかけて裏道へ。果たして猫の興味を惹いたモノとは如何に――――?


/またーり絡み待ちしております

174 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA :2015/07/01(水) 19:08:09.04 ID:2xMM7yOs0
//すみません、夕食で返信が遅れます
175 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/01(水) 19:10:14.58 ID:O8Ym564+0
>>174
//りょーかいです!ごゆっくり!
176 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/01(水) 20:01:30.92 ID:2xMM7yOs0
>>172
「……いかにも。わしはひとりの人間である以前に、組織の任務を果たす者だ。……"危険"のある者は、排さねばならぬ」
「それが、わしの望まぬ結果だったとしてもな」

彼もまた、少女と対峙する可能性があることを懸念していた。少女との直接の対峙はない事は確実だが、もし少女の大切な人と刃を交える時、それは起こりうるだろう。
当然、彼は少女と戦いたくはない。だが、もしその時が来れば、やらざるを得ないだろう。彼が言うように、彼は組織の人間なのだから。それに背く事はできない。
彼の絶対的な理念が、ひとりの人間としてのヴァシーリー・マーカスを縛っているのは、また事実であった。

「……だが、」
彼は続ける。
「だが、努力はする。能力者には、お前のような者がいた。決してそのような人間を、罪なき者を殺めてはならぬと、わしから申し出よう。」

彼もまた、戦いたくはないのだ。
自分の娘と同程度の年齢の若者と戦うなど、彼自身気が引けることだ。
だからこそ、それを避けることを努力するというのだ。

その後彼は、少女の「ぶち壊す」という言葉に、少し笑みを浮かべる。

「……フフ、壊す、か……それはよい事だが、わしがただ守っているだけと思ったら大間違いだ。何せ本当に戦うのであれば……」

彼はそう言って、何か、棒のようなものを「にぎる」手の形を作る。
すると、それに合わせて……何か薄透明な、もやのような形状が、空間に浮かび上がってくる。
数秒後。彼の手には、鋭利で凶悪な、非常に大きな刃を持つ、大きな斧が握られていた。

「……これも相手せねばならぬのだからな」

彼はそう言って、自信に満ちたような笑みを浮かべる。
話が一段落ついて、心に余裕ができたのだろうか。彼の態度は、先程までの好々爺へと戻っていた。
これ以上出しておくと、風紀委員に見つかってしまうかもしれない。彼は少女が刃に怯えるかもしれないのを防ぐために、すぐに再び斧を透明化させた。

「さて……これが、わしの秘密だ。先ほども言ったが、この件は内密だ。ゆめゆめ忘れるな」

彼はふぅと溜息をついてから、重ねて注意をした。
177 :西大寺 磨尋 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/07/01(水) 20:25:29.91 ID:Yayd0+800

太陽が大きく傾き、地平線の向こうへ沈もうとしている夕刻。
繁華街と住宅地の、騒がしさから静けさに移り往く辺りの小道に一人の影が落ちた。

「、あら、もうこんな時間」

通りがかった公園の時計を見上げて首を傾げたのは、学校の帰りと思しき若い女である。
小袖に行燈袴という一昔前の形式に則った和装、足元の木履が歩くたびからころと音を立てて。
ヘッドバンドとリボンで結った黒髪をなびかせ、ふらふらと頼りない足取りで夕暮れの街を歩く。

否、頼りないというよりかはあてもないと表現するべきか。

「困りましたわ〜。 今日はお茶の御稽古がありますのに……」

このままでは遅れてしまいます、と眉を八の字にする姿は正しく迷子。肩に下げたポシェットの中の、携帯電話の存在も忘れているようで
どうやら地理に壊滅的に疎いらしく、先程から大通りから離れる一方なばかりか、ひょいと足を向けた先は夕日の射さない路地裏であり。
うろうろと歩き回っては、時折たむろしている髪を染めた若者などにのんびりと道を訊ねたりしている。
物怖じしないと言えば聞こえがいいが、場違いも甚だしい様子にまともに取り合う相手は当然皆無。
女が目的地にたどり着けるのはまだ先になりそうだった。
178 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/01(水) 20:48:14.90 ID:O8Ym564+0
>>176
「ま、オレもアンタとは戦いたくないしな!そこんとこは宜しく頼むぜ!
……オレらが思ってるような生半可な喧嘩じゃなくて、ガチの殺し合いになっちまうんだろうしな……。」

少女もまた、ヴァシーリー・マーカスという一人の男とは拳を交えたくない。其れは、同じ人間として、この男には好感が持てたからだ。
然し其れを、理不尽に発現した”異能”達が阻む。
二つの異なる異能が、同時に同じ世界に存在したならば、其れは必然と言えることだった。
組織の為に、そしてその異能という概念の為に、恐らくこれから、高天原いずもという番長女は数多くの魔術と対峙して行くのだろう。
だが、彼の様な心優しい人間と無意味な殺戮をするということだけは何があっても避けなければならない。
少女は一度、深呼吸して気持ちを整える。

「悪いがおっちゃん………………上等だ。
んな斧もぶっ壊して、んでもってその鎧もぶち壊す!!」

マーカスは少女がその鋭利な武器に怯えることを案じ、早めにその斧を”見えなく”したが、心配ご無用だった。
現実的に無理な場合でも、その火力で強引にこじつける。圧倒的なプラス思考である。
──尤も、そんな状況にならないのが一番なのだが。

「勿論!つか話してもここの奴らには信じて貰えないしな!
………………んじゃ、ここらへんでお別れか?」

話しても信じて貰えない。其れは事実だった。
彼女が馬鹿で無知で相手にしてもらえないというのもその一因ではあるが、その一番の要因はそもそも魔術という存在よりも、「能力」が圧倒的な認知度を誇るからである。
故に、その存在が確認されたとしても一部の人間が信じるだけで、その他大勢は「魔術」?なんだそれ、「能力」でいいじゃん。と、魔術の侵攻に気づかずに能力をのうのうと振りかざすのである。
そして話がひと段落つくと、彼女は別れの話しを切り出した。特に話も終わったため、丁度いい頃合いだろう。

//すみません!気づかなかった……
179 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA :2015/07/01(水) 21:15:16.45 ID:2xMM7yOs0
>>178
「フフ……威勢のいいことだ。昔のわしを見るようだ……その力、誤った事に遣うなよ」

彼は、少女の対応に静かな笑いを浮かべる。
普通なら怖がるかと思ったが、少女はその相手もしてみせると言った。
彼は、彼女のこれからの姿をひそかに楽しみにする事にした。

「……そのようだ。わしもそろそろ、帰らねばならぬようだな……」

彼は「さらばだ」と、一言だけ別れの言葉を告げ、手を挙げてから歩き出す。何事もなければ、彼と少女はこのまま、再び違う道を歩んでいくだろう。
魔術と能力という、どうしても相容れないふたつの道を。

……………………
……………
………
……
本日ㅤ正午
能力者一名と接触。

*情報
姓名・・・高天原 出雲 IZUMO TAKAMAGAHARA
年齢・・・学生
能力・・・肉体的攻撃による衝撃増幅
魔術師への影響及び
排除の必要性・・・・・皆無

━━━━━━━━━━━━━━報告終了
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤヴァシーリー・マーカス

//この辺で〆という事で……お疲れ様でした!

180 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/01(水) 21:30:55.38 ID:O8Ym564+0
>>179
「………………勿論。
───この力は、皆を護るためだけに使う。其れだけで十分だ。」

短く、少女は自らの能力についてそう結論付けた。
自分に関わってくれた仲間を護る為だけにこの能力と自分の身を捧げる。其れは、彼女が憧れ、目標とする「番長」の姿に他ならない。
魔術師と触れた事で彼女の意思はより堅く、強くなってしまった様だった。
そしてその言葉は同時に、護るためならば魔術師とも徹底的に対峙する、という事を暗喩している言葉でもあった。
少女はもう一度、魔術師ヴァシーリー・マーカスに微笑む。吹き込んだ風が、彼女の短い髪と、額に巻かれた鉢巻きを靡かせていた。

「あ……おっちゃん!!
またいつかもし!仲間として会えたなら!!今度はオレがご馳走してやるよ!!」

去っていく魔術師に向けて、彼女は大声で呼びかけた。返事などは期待しない。
彼女が望むのはまた今日の様にこうして平和な日に再会する事だけだった。無邪気な番長は、彼の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

──こうして、
交差した”魔術師”と”能力者”の距離は、異能の隔たりと共に無限に開いた。

//数日間に及ぶロールありがとうございました!そしてお疲れ様でした!
181 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y :2015/07/01(水) 21:56:19.24 ID:WH2XzPJvO
>>173
/まだいらっしゃいますかー?
182 :雨宮 初音 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/07/02(木) 06:23:13.61 ID:3NmtnmMX0
>>181
/ごめんなさい…寝落ちしてました。
183 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y :2015/07/02(木) 11:43:47.35 ID:9ACebO1dO
>>182
/大丈夫ですよ〜
184 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/02(木) 13:19:06.97 ID:RXovdnvjo
>>159
深夜の公園、そこは不良の溜まり場でもあり不審者の出現ポイントでもあり、風紀委員としては何かと目を配っておきたい場所である。
そして例にもれず、風紀委員八橋 馨は見回りと称して一人、木刀片手に公園へと足をのばしていた。
しかし目論見は外れたようで、どうやらそれらしい姿は見受けられない。

「……居ないか」

ぐるりと一通り見回して嘆息。さぁ別の場所へ行こうと公園から出ようとして、遠目に不審な存在があると知る。
物理法則に逆らう存在、能力者か魔術師かは分からないがとにかく、異能の力を使う者が目に入る。見つけた、今日はアレをどうにかするとしよう。
不良ならば補導、善良な都市民なら今すぐ帰るよう指導しなければなるまい。
つかつかと無遠慮に歩み寄った。スニーカーが地を蹴る音がジャリジャリと夜の暗がりに広がる。
そうして近くに近寄ったら、これまた無遠慮に後ろから呼び掛ける。

「そこの君、何をしているんだい」

周囲に他の存在が無いと分かっているので比較的大きな声が出た。
振り返ればそこには、風紀委員の印を付けた女が、やや不機嫌に思われる表情で立っている事だろう。
185 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/02(木) 13:39:48.61 ID:J1vVnUkeo
>>184
静かなる公園に,風紀委員たる女の歩く音のみがよく響く.
通常ならばすぐさま気がつくであろうそんな物音すら作業服の女には届いていないようで,ブツブツ何かを呟きながら瞑想?を続けていた,が

「―――うわっ!?」

彼女からしてみれば「急に声をかけられた」という感じだったのだろう.
素っ頓狂な声をあげて一気に能力が切れ,浮かせていた鉄板と鉄アレイが同時に落下する.
当然その上に座っていた彼女も尻から落下し,痛痛しい悲鳴と落下音が上がる.

「ってててて・・・・なになに誰々?」

目尻に涙を浮かべている沙羅は尻をさすりながら立ち上がり,声をかけてきた方に向き直る.
そこにいたのは不機嫌そうな表情の―――風紀委員.
学園の風紀を取り締まる役員はこんな深夜の徘徊もしなきゃならんのか,などと心の内で感心しながら,それでも少し不愉快そうな表情となる.

「あー・・・風紀委員さんね,ご苦労さん」
「見ての通り能力の練習よ,家でやると,とんでもないことになるからね」

役員やら警察やらはお固いイメージが強く,彼女が苦手とする人種なのだが,声をかけられてしまったらならば仕方がない.
沙羅は落下して地面に少しばかりめり込んだ鉄アレイを差しながら,軽く説明する.

186 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/02(木) 14:08:58.47 ID:RXovdnvjo
>>185
「おっと……すまないね、大丈夫か?」

悪い事をしたな、と苦笑しながらそちらへ手を伸ばす。もしその手を取ったのならば力を入れて立ち上がらせるだろう。
立場上、苦手意識を持たれる事には慣れているのか、嫌そうな面持ちは歯牙にも掛けなかった。成る程、今見た光景を能力とするなら家の中でするのには向いていなさそうだ。

「本当はこんな時間まで見回る必要はないだろうけどね、ついついブラついてしまうんだよ」
「確かに家では面倒そうだ……けれど、時間は選んだ方が良い。夜は不届き者が多いから」

女の態度はあくまで上から、しかし言葉の調子や身振りから生真面目さはあまり感じられないだろう。
実力に自信があるのか知らないが、この時間まで彷徨く能力者は少なくない。しかしこの時間帯は魔術師が動くのにも有利なのだ、気をつけるに越した事はない。
せめて夕方辺りにしたらどうかなと提案を混ぜながら、ちらりと足元に転がる鉄アレイやらを見やる。合計重量は人間の子供程度だろうか、更に自身の体重を足したものを持ち上げるのだとしたら大したものである。


……と、何事もなく会話を続けたのならば、女の表情––––––主に眉や眼など表情の主軸となるパーツ––––––が元来不機嫌そうなものであるのだと、気付けるやもしれない。
187 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/02(木) 15:10:15.28 ID:J1vVnUkeo
>>186
「大丈夫大丈夫、自分でもよくやっちゃうからね」

少々お硬そうな彼女には気にしないで,と念を押してアピールしておく
実際,練度不足で何度も鉄球を落としたり自ら落下してしまっており,公園のあちこちには落下の跡が残っている.
おまけに彼女の作業服の尻部分には何度も鉄板に擦り付けられたのであろう鈍色のシミのようなものがこびりついている.

「確かに、そうね・・・この間ももっと早い時間なのに意味わかんない不良にぶん殴られたわ・・・」
「まぁそいつらにまけないための、修行でもあるけど」

生真面目そうな,いかにも堅苦しい「風紀委員」と言った容姿にもかかわらず,案外話しやすいその口調に沙羅もすこしばかり心を開いたようだ.
それでも業務の類にはストイックなのだろう.そもそもこの時間に見回りなど,相応の責任感がなければするものでもない.

「まー、でも・・・あんたもその不届き者に気をつけなきゃでしょ」
「もしかしてめっちゃ強い能力者だったりすんの?」

風紀委員といえども彼女も一般学生,ましてや女性である.
ひとりで特別理由もなく見回りのためにぶらつくのは,能力者であったとしても危険だ.
ましてや魔術師や喧嘩っ早い不良がいるこの都市ないであれば,なおさら.


//遅れてしまって申し訳ないです.

188 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/02(木) 15:35:34.60 ID:JX6lshLNO
>>187

「そうか、それなら良かった。……、次からはクッションを敷いたらどうかな?」

周囲や服の汚れ具合を見れば、同じような失敗を積み重ねているのだろうと窺える。更に先程の衝撃の度合いを見れば、多少心配にもなった。
そうして話を聞いていれば、白井の言葉に表情を曇らせる。

「それは……念のため、どの辺りか教えて貰える?明日にでも調べてみるから」

予想通り"風紀委員の仕事"には責任を持ってあたっているようで、不良という言葉には食い付きが良い。
大丈夫だったかいとそちらを気遣いながら、話を聞く事が出来れば手早くメモを取るだろう。
そして、白井からこちらを心配するような言葉が出ると、

「……ふふ、こう見えても僕は強いんだ。ただの不良共だったら簡単に熨してやるさ」
「それに、もう何度も今日と同じように出歩いてるからね、慣れたものだよ」

こつこつと爪で木刀を突き、コレもあるしね、と自信満々にニヤリと笑む。
能力について触れる様子はないが、その態度から恐らく強いのだろうと思える筈だ。
189 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y :2015/07/02(木) 16:00:33.89 ID:9ACebO1dO
>>188
「あ、確かにそうね」
「今度からクッション買ってきてやるわ…」

なんでそんなこと気づかなかったんだ…と、小さくぼやいて少し俯く.
落ちた痛みと自分への憤りが無駄になったような気がして、ちょっぴり落ち込んでしまった.

「んーっと、あっちの方の、路地裏だったかな」
「かなり雑なカツアゲされたんだけど、結構やりなれてる感じだから気をつけてね…」

「あ、そうだこれ、あいつが落としていった学生証」

方向と場所を指差しで教えつつ、念を押して警告しておく
ついでに彼が落としていった学生証を取り出し,渡そうとする.
名前と学年と能力の示されたそれは,彼女の怒りによって真っ二つに折り曲げられていた.

「へぇ〜、頼もしいね」
「ってかやっぱこの辺って治安悪いんだ…怖いねぇ」

「能力振るいたい奴らにとってはいいとこかもしれないけど、あたしみたいにほっとんど無理やり入れたれた身としては迷惑な話だぜ」

日本刀のごとく緩やかに湾曲する木刀は,彼女の扱いから見るにそれなりに使い込まれているものなのだろう.
木刀の風紀委員などドラマにしか出てこなさそうな存在だが,実際目にするとなかなか頼もしいし,それっぽい

190 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/02(木) 16:28:05.20 ID:JX6lshLNO
>>189
「カツアゲに慣れてる、ねぇ……ありがとう、今度見回ってみるよ」
「お、良いもの持ってるじゃないか。預かっておこう……弥蛇山君ね、成る程」

警告に対してこくりと頷いてみせる。こればかりは風紀委員として放っておく訳にはいかない。
差し出された学生証を受け取り、名前を確認する。身分が割れればこちらのものだとばかりにじろじろとそれを眺め回した。
幸運にも、本来の持ち主が不良だから学生証もこんなものだろうと、無惨にも折れ曲がっている事を気に掛けてはいないようだ。

「風紀委員だからねぇ、やはり頼もしさがあった方が良いだろう?」

"頼もしい"という言葉がどうやら嬉しかったのか、唇の端を持ち上げて自然と笑顔になる。
このままダラダラと会話を続けても楽しいのかもしれない。が、白井の次の言葉で女は本来の自分の役目を思い出してしまったようだ。

「そうそう、この辺りは危険……、……おっとそうだった、危険だから今日はもう家にお帰り」

何だったら近くまで送ってあげよう、と。どうやら完全に仕事モードに戻ったらしく早く早くと急かし始めた。

//時間的にこれで締めでしょうか?凍結の方が良ければ催促は無視して続けて頂いても大丈夫ですので
191 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/02(木) 17:20:43.87 ID:J1vVnUkeo
>>190
「そうそう,レベル1の能力者らしーけど,ぶっちゃけ喧嘩させたらそーとー強いぜ,あいつ」
「喧嘩慣れっつーのかな」

一応相対し,決して弱くはない能力者たる彼女からして,「強い」と言わしめるもの.
原理はよく分からなかった以上喧嘩慣れというほかないが,彼女の声のトーンには誇張などの色は一切ない.

「そうね,それに多分,「見かけだけ」じゃないんでしょ?」

どことなく嬉しそうな彼女を見て,この人ならあの不良に一泡吹かせてくれるのではないかと期待が募る.
それに,この都市の悪ガキは,あの弥陀山という男だけではないのだ.

「はいはい,じゃぁせっかくだからお言葉に甘えさせてもらうわ」

思っていたより親しみやすい人物であった彼女の好意を無下にすることはできないし,何よりさっきの練習でかなり消耗している.
散々言った通り治安がいいとは言えないここから帰るのに,彼女がいることは心強い.

沙羅は彼女と共に帰路を歩く道中,自身の能力や弥陀山がとった行動―――主に自らナイフを腹に突き刺して動きを封じるおの―――を軽い軽い口調で説明するだろう.


//ではこれで締めで・・・
//ちょいちょい遅くて申し訳ありませんでした・・・機会があればまたお願いします!

192 :雨宮 初音 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/07/02(木) 18:49:10.21 ID:3NmtnmMX0
>>183
/機会があればその時によろしくお願いします…!

/>>173で再募しますー
193 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/03(金) 00:57:05.10 ID:WEsG1ylKo
昼間は学生で賑わい、夜には少しばかりのアルコールを楽しむ大人達の集いの場。
繁華街の一角に佇む軽食店 EL・SOLはそんな店だ。
決して派手な料理は出てこない、だが豊富なメニューと落ち着いたレトロな内装を好み足繁く通う客も多いとか……

しかし、そんな店には裏の顔が存在する。
学園都市で噂程度に飛び交う「魔術師」という単語。
学園都市にとって異物といえる彼らの交流の場、そんな顔をこの店は時折見せる。

今日もそんな夜なのか、扉には貸し切りの札が立ちいつも店先に立てられた黒板は小さく畳まれていた。
それでも魔術の心得を持つものなら何故かその場が自分を歓迎しているようなそんな錯覚を受けるかもしれない。

もしそんな誘いに乗りこの扉を開いたなら、一人の男がこう歓迎するだろう。

「いっらっしゃいませ、ご注文は何になさいますか?」
194 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/03(金) 01:21:15.27 ID:j2VNoFDCO
>>193
「そうだね……コーヒーをブラックでお願いしようかな」

扉の先、落ち着いた内装を肌で感じながら八橋馨はEL・SOLに足を踏み入れる。念の為だろうか、店内をぐるりと一瞥してからカウンターへゆったりと腰を掛けた。
コツコツと硬いヒールが床を蹴る音。身形に多少気を使ったのだろうか、タイトな服装に身を包み、踵の高いヒールを履き、全体がスラリ引き締まって見える。
腰まで伸びた左右に揺れ動くポニーテイルが、それを更に強調しているようで––––––もっとも、それらは全て片手に所持した木刀で台無しになっている訳だが、本人はそれを気にしていないようだ。

「他に何かお勧めのメニューはあるのかな、マスター?」

お酒以外で適当に頼むよ、とカウンターの向こうに立つ助合へ視線を向ける。
どうやら仕事ではなく完全なOFFのようで––––––それなら何故木刀を持っているのかと言われると、最早癖であるとしか言い様がないのだが––––––にも関わらず友人と連れ立っていないのは、軽食屋巡りがこの女の暇潰しもとい趣味のようなものだからだろう。
何にせよ、魔術師に関わりのある場所だとは知らずに、八橋馨はこの店に入ってしまったようである。
195 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/03(金) 01:33:16.71 ID:WEsG1ylKo
>>194

「お食事でしたらトマトとゴーヤの冷製パスタ
 デザートなら……甘いモノが苦手でないならゆずのレアチーズケーキなど如何でしょう?
 その他ですと最近フラッペを始めましたのでそちらも良いかと」

黒縁眼鏡の奥の黒い瞳を細ませながら馨に微笑みかけながら男はそうメニューを開く。
カウンターに広げられたメニューには7月のオススメ、という文字とともにその料理たちが記されている。
どうにもフラッペは幾つかの種類があり、あんみつ風にオススメの記載があった。

「宜しければこちらへどうぞ」

彼が指し示す方へ視線を向ければ
男の正面、木目を強調したカウンターテーブルと椅子が彼女を招くように佇んでいる。


「……そちらのお荷物はお預かりいたしましょうか?」

目の端に捉えた木刀に男は冗談のように軽い口調でそう尋ねる。
初めからこちらに渡す事はないだろうとそんな雰囲気が見て取れるが、彼なりのジョークなのだろう。
196 :奥須 羽扇 ◆8.N5omyrwA [sage saga]:2015/07/03(金) 11:58:59.41 ID:pJSBBIqlO
 昨晩からの大雨の影響は思わぬ果報を朝の寝惚け眼に運びやって来た
 少なくとも羽扇の学年は大事を取り、午前中は休講となるとの事らしい
 高校に上がると同時に買ったスマートフォンの、一斉メールを見た時にベッドにいながら独り言やったと呟いたのはつい先程

「……とは言え、ボーッとしてるのも勿体無いし」

 公園の東屋で弱まって来た雨音をBGMに手紙を書く
 多くの時間を過ごした孤児院の皆との手紙の遣り取りは、羽扇の過ごす中で最も幸福な時間の一つだ

「……っと、よし、書け……あぁっ!?」

 書き上がりに満足し、よしと頷いた直後である
 突然の疾風が一陣駆け抜け、薄緑色のレターペーパーを宙に泳がせて行ったのだ
 勢力を弱めているとはいえまだ雨は落ちている
 慌てて東屋を飛び出し後を追うが、悪戯な風は直ぐには手紙を返してはくれなかった
 小雨降りしきる中、制服姿の小柄な女生徒が傘もささずに手紙と追い掛けっこ
 肩までの髪はしっとりと、より黒を際立たせて濡れている
197 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/03(金) 12:26:51.26 ID:f3gHZX9Oo
>>196
梅雨時とはいえ,こうも毎日毎日雨が降られては気分も自然と下を向くというもので,上下迷彩柄の作業服の女も―――

「やっぱこんな日に授業なんて行ってらんないわ」

―――などと,おさぼりの理由をこじつけて,ぶらぶらと雨の街を散歩していた.
彼女の頭上には,傘を模した鉄板が何の力も受けずに浮翌遊し,主たる女をしとしと雨から守っている.
雨とそれなりの気温にもかかわらず上下長袖に帽子までかぶって長靴軍手を着用する彼女は,どこか不機嫌顔である.

「・・・ん?」
「あら、かわいい。」

ばしゃばしゃと騒がしい足音に顔を上げれば,そこには紙ぺらと追いかけっこをする少女の姿があった.
彼女にそっちの気はないが,雨に濡れてつやつやと輝く黒髪の少女は,なんだか微笑ましくって自然と笑みがこぼれる.
困っている少女をこのまま放っておくのもかわいそうだろう,と,女は鉄の傘を畳んで手に持ち,走り出す

「退いてな、ガキンチョ!!!」

ここはひとつ,格好をつけてみよう.そう考えた女は少女に退くよう声をかけつつ,雨にもためらわずに手紙を追いかけ始める.
ある程度距離が詰まったならば,手に持った傘を思いっきり手紙に向けて投げつけるだろう.

投擲された傘は,手紙に触れる直前で急激に形と軌道を変える.
傘の先端から薄い板のような形状となりつつ,たちまちのうちに手紙を包み込みんで球体となるだろう.
手紙が無事に鉄の球体内へ確保されたならば,女は満足そうな表情でそれを手元に呼び寄せるだろう.

「はぁ・・・はぁ・・・はい、どうぞ」

運動不足な上に急に走り出し,さらに普段滅多にやらない中距離の「変形」と「操作」を行ったためかなり息が切れているが,女は強がって平気なそふりをする.
今すぐにでも座り込んで休息したいが,それではあまりにもかっこがつかない.

女は手のひらに乗せた直径30cmほどの球体の前面を「変形」によりシャッターのように開いて見せ,少女がその手紙を取れるようにするだろう.


//なんか上手く表現できない。。。要は飛んでる手紙を鉄操って球ん中閉じ込めて取ったよ!!って感じです。。。申し訳ない


198 :奥須 羽扇 ◆8.N5omyrwA [sage saga]:2015/07/03(金) 12:44:52.53 ID:pJSBBIqlO
>>197
「えっ? は、はいっ!?」

 掛けられる声のガキンチョ呼ばわり、勿論怖い人だと判断し道を譲る
 手紙も大切だが、我が身の方が優先なのだ
 追い抜かれ様に盗み見る様にはしたが、作業着と帽子に阻まれて顔が、というより肌が覗けない

「……あっ……!」

 あっという間に手紙へ迫り、鉄傘投擲
 紙との重量、そして与えられた明確なモーメントの差は両者の間の距離を迅速に殺して行く
 そこからは実に奇妙な光景であった
 アメーバの様に手紙を呑み込み、そして続けて強固なカプセルへと変化する傘
 どうやら作業着の彼女の能力なのだろう、平然と、だがやや息の上がった様子で差し出されるそれ

「あ、あの、ありがとうございます……
 ……お礼、って、あ、濡れちゃいます、あそこ行きましょっ!」

 開いた鉄球内から手紙を受け取り、勢い良く頭を下げる
 雨水滴る髪から少し跳ねる水
 気が付けば両者とも傘がないという状況、慌てて一先ず東屋への避難をと作業着の彼女の手を引こうとするだろう
 怖い人っぽいという最初の印象は、向けられるポジティヴな表情から相当に薄れている様だ
199 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/03(金) 13:47:16.39 ID:f3gHZX9Oo
>>198
「ふふ・・・どういたしまして」
「え、あ、うん」

颯爽と現れて颯爽と立ち去る算段であったが,少女は意外にも勢いが良い様子.
手をとられるまま引かれるまま,東屋の方へ連れて行かれる.
球体だった鉄の塊は,雲のような形状となって二人の後をのろのろとついていく.

「あーあ、びしょびしょになっちゃったね」
「そうだ、わたし白井沙羅っていうから、よろしく」

あいにくタオルも持ってないし,と零す当の本人は,濡れたことを全く気にしていないようである.
ズボンの裾や肩の部分は重みを感じるほどに濡れてしまっているが.
其の実,素肌や髪を晒したくないだけであるが.

「それで,その手紙、けっこーぬれちゃったけど平気なの?」

先ほど回収できた手紙は,破れてはいないようではあるがかなりしっとりしてしまっているはずだ.
200 :奥須 羽扇 ◆8.N5omyrwA [sage saga]:2015/07/03(金) 13:58:17.32 ID:pJSBBIqlO
>>199
「これ、よかったら使って下さい」

 学生カバンからタオルハンカチを一枚取り出して差し出す
 東屋の椅子にはカバンや傘が置かれており、更にいえば備え付けのウッドテーブルにはレターセット
 つい今までここに居たのだと分かるだろう

「白井さん、ですね。私、奥須って言います。奥須 羽扇
 え?あ、あはは……まぁ、書き直します……」

 はっと気が付いたように名乗る
 助けて貰った相手に先に名乗らせてしまうだなんて失敗だとの内心
 そして水分を含んだ手紙に視線を落とせば丁寧に折り畳みカバンに仕舞った
 ダメになってはしまったが、それでも回収出来たのは心境としては大きい
 知らない誰かに見られる可能性を視野に入れていない文章には、見られたくない部分が多過ぎるからだ

「……それより、何かお礼……ええっと……」

 謝礼用の何かを用意しているなんて都合のいい事がある訳もなく
 カバンの中身を漁るのだが、文具とお弁当くらいしかないのは必然だ
 時折申し訳なさそうに、苦笑して視線を送っている
201 :奥須 羽扇 ◆8.N5omyrwA [sage]:2015/07/03(金) 14:55:53.13 ID:pJSBBIqlO
/すみませんが時間的にこれで落ちます、ありがとうございました/
202 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/03(金) 16:15:43.30 ID:f3gHZX9Oo
>>200
//気づかなかった・・・申し訳ない
「お、ありがとう」

どうやら少女は先ほどまでここにいて,手紙を書いていたらしい.
雨風を凌いでいたカバンから取り出されたハンカチを借り,一応肩のあたりやうなじ部分からわずかに覗く髪を拭いておく.

「奥須ちゃんね,覚えておくわ・・・」
「お礼は気にしなくてわ〜通りすがりのお節介だしね」

気持ちだけ貰っておくよ,とカバンを漁る少女に微笑んで見せた.
おそらくは自分より少し年下くらいだろうが,よほど学生らしいカバンと態度に少し自分が気恥ずかしくなる.
ほとんど学校へは行ってないので当然といえば,当然だが.

「じゃ、わたしバイトあるし、そろそろいくわ」
「風邪ひかないよーにね」

「これありがと」

女はタオルを少女の方へポイと投げ,雨の中を走り出すだろう.
置いて行かれた鉄の塊は困ったようにとろとろとその後を追いかけていく・・・

//了解です。
//ありがとうございました
203 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/03(金) 22:18:06.68 ID:FqSgZtnpO
>>195
勧められた席に腰をおろして、男と向かい合う形に。広げられたメニューへ視線を落とし、ふむ、と一旦考え込む仕草。
左手で頬杖をつき、右手でメニューの文字をなぞるようにしてじっくりと眺めていく。

「……では、ゆずのレアチーズケーキを頂こう」

軽食屋に来たのだから、腹が膨れる食事をしきにた訳ではない。コーヒーと合わせてデザートひとつが妥当といったところなのだろう。
ヘアピンで前髪を留め、早くも食べる気は満々といった所だろうか。


「いや、遠慮しておくよ。店内で物騒な真似はしないから安心して欲しい……こうしておけばいいかな?」

勿論、"自発的に"しないだけなのだが、そこは伏せておく。何より言う必要性も感じられない。
右隣の椅子に立て掛けるように木刀を置いて、助合の様子を伺うように安心を促す。癖で持ってきたとはいえ、他人の手に預けてしまうのは気が引けた。
唯の軽食屋かと思ったが、どうして中々良い店じゃないかと内心吟味を重ねつつ。注文はした。さて、品物が出てくるのを待とうではないか。
204 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/03(金) 23:01:11.66 ID:WEsG1ylKo
>>203
「承りました、少々お待ちいただけますか?」

そう言ったのは数分前。
馨が店内を一巡り目を動かしている間にコーヒーとチーズケーキが姿を表していた。
サクサクに焼きあげられたハードビスケットの上のクリームチーズクリーム。
そしてそれに添えられるのは柚子の皮が荒く刻まれたジュレだった。
本来レアチーズケーキに使用されるレモンの味付けを抑え、柚子の風味でそれをカバーしている、そんな印象だった。
よく冷えたそれは酸味や僅かな苦味は梅雨を抜けたばかりのこのしつこい湿気を払うように爽やかな風味だ。

「そうして頂ければ問題ありません
 一応、此処はどのような方であってもそういった行為は禁物ですので」

もし行われれば……どうなるでしょうね、と男は小さくつぶやく。
笑みを浮かべているはずの男の瞳の奥が凍りつくような冷たさが宿ったように思えたのは勘違いか?
それはともかく此処では喧嘩の一つもやらないほうがいいかもしれない。
205 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/03(金) 23:34:21.53 ID:bQVwJDsYo
>>204
「さぁ、考えたくもないね……っと。ありがとう、頂きます」

一瞬目にした零下を下回るような冷ややかさに、ぞくりと寒気が肌をはしる。戯けたように首を竦めてみせるが、その内にある感情を考えたくはなかった。
しかしどうやら……いや流石にというべきか助合の正体に気付く事はなく。とんでもないマスターがいたもんだと差し出されたレアチーズケーキに手を伸ばす。
一口サイズに切り取りぱくりと口に含めば、広がるのは仄かな柚子の香りとクドさのないチーズの味わい。
ブラックのコーヒーと合わせたならば格別の美味しさだった。どうやらとても良い当たりを引いたらしい。

「……、……うん、美味しい。とても良い腕だな、マスター」

二口三口と味わいながら食べた後、コーヒーを更に一口。そこで漸くほうと息を吐き腕を止める。
決して評論家を気取る訳ではないが、言葉がつい溢れ出た。本心でもあるのだからと訂正はしない。
もう一度、コーヒーを口にする。口腔に未だ残る爽やかな甘みと合わせるとそれは、とても良い協奏を演出してくれるのだ。
206 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/03(金) 23:58:26.37 ID:WEsG1ylKo
>>205
「お褒めに預かり光栄です
 気に入っていただけた是非贔屓にして下さい」

白いキッチンクロスで皿を一つ一つ磨き上げながら男は笑う。
先程からからわず笑みを崩さないが、今回は本当に愉快そうに笑っていた。
どうにもこの男は表情で掴みにくいようでつかみやすいのかもしれない。

「常連になってくだされば貴方にも得なことがありますよ
 私が貴方の好みを覚えますし、お得な情報をお教えできます」

クックッ、と気持ちの良く皿は磨かれいつの間にか新品同然に輝く皿が積み重ねられていく。
それでも意識は手元ではなく変わらず馨に向いていた 。

「……この街にいる異分子の情報、とかですかね
 まあ、私もその1人という訳ですが」

直接的な単語は使わずとも、お互いには通じる言葉はある。
今の状況では、この一言がそれであった。

「この店はそういう方がよくいらっしゃいますので私も小耳に挟むことが多い」
207 :浅倉 瑞樹 ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/07/04(土) 00:20:30.82 ID:MXRyJock0

「ハァッ…………ハァッ………」

荒い呼吸音。深夜の静けさを保つ路地裏に響くそれは、焦りと僅かな安堵感から来る感情が露呈したもの。
声の質からして十代後半の少年のものであり、月明かりが僅かに照らすその外見はいかにもな学生≠ニ言う風貌だった。
黒髪をショートといわれる程度にまで伸ばし、三白眼ほどではないが一目見た印象では目つきが悪いと評される程の目付きの悪さ。
頬に付いている殴打された後と、口元に滲む鮮血。僅かに乱れた服装。そして倒れている茶髪の少年が一人と、それを抱えて逃げるもう一人。

見るまでも無く、喧嘩の後。鮮血を上着の裾で拭い取り、呼吸を整えるために大きな深呼吸を一つ。吸って、吐いて。以下三度。
体中に巡る酸素の量が十分な域に達した(と思える)時点で通常の呼吸へと戻し、路地裏の汚い壁にみっともなく寄りかかろうと体が少しぐらついた。

と、同時に足元からかなり大きな音が一つ。何事かと思って下を見れば、其処には不良たちが落した『金属のパイプ』。背筋に、大きな汗が流れ落ちる。
此処は通常の法則が通用するところでは無い。何の因果でこんな奥深くまでは言ってしまったのかは彼しか分からず、無論大きな音を立ててしまっていい場所でも無い。
全身の血がさっと引く音が聞こえるほどに彼の思考は真っ白になり、思考が止まろうと錆びつき始める。俗にいう意識が飛ぶ五秒前なそれを、頭を思い切り上下に振ることによって制す。


――――

こんな場所でわりかし大きな音を出してしまったという事は、「自身の居場所を露呈させてしまった」という事。即ちそれは、この場所に音を立てる程度の間抜けがいる¥報を当たり一帯に伝達してしまう事。
結論を言うとかなりヤバい=B先ほどの不良たちの挑発に乗って対此処まで来てしまったが、流石の彼もここまでの奥深くに踏み込んだことは一度としてなかった。故に、警戒を怠っていた。
いや、形骸を厳に厳にと考えすぎて、周りの音が極端に聴こえにくくなっている≠ニ言うのが正解だ。

この状況下であれば例え「誰かが近づいてきた」としても、彼が其れに気付く確率は限りなく低い。余程の大きな音を出しながら出なければ、彼は恐らく気付かないだろう。
声でも掛ければまた、別であるが…………。
208 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/04(土) 00:25:50.83 ID:S59ho7OLO
>>206
「…………成る程」

異分子、事情を知らぬ唯の人間が聞けば不届きな奴等の事だと勘違いしそうな単語である。ただ、この女は––––––八橋馨は、そうではない。
かちゃりとフォークを皿に起き、ニヤリと笑う。それはただの大学生のものではない、何かしらの"事情"を抱えてこの都市に来ている者達と、同じもの。

「それは確かにとてもお得だな、マスター」

だが、自分もそうだと口を滑らせる事はない。相手がどの様な存在かも知らぬうちにペラペラと内情を話していては無知蒙昧も甚だしい。
あくまで此方の立場は明かさずに、だ。相手が知っているのならそれでよし、知らないとしても、少なくとも今知らせる義理はないのだから。

「そうだね、きっとまた来させて貰うよ。立場上、異分子の情報は少しでも欲しいから」
「それに何よりマスターの料理を楽しめるのだから、来なければ損だろう?」

違うかい、と挑戦的な笑みでまたケーキを一口。そちらから切り込まぬ限り此方が口を開く事はないぞと、言外に語る。
気付けばケーキもコーヒーも、既に半分近くが女のなかに収まっていた。
209 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/04(土) 01:09:03.44 ID:MrC1Uk4Fo
>>208
「次は日替わりのオススメも試してみてください
 毎日苦労して考えていますので」

今日は店先に立っていなかったがこの店の店先に立つ黒板がそれを示してくれるはずだ。
時折びっくりするようなメニューが書かれている時もあるが外れはないと店主は自負している。

「申し遅れましたが私は助合九郎を名乗る者
 此処の店主と情報屋を営ませて頂いています
……何かお困り事があれば私の方まで」

恭しく頭を下げたかと思えば、その動作でズレた黒縁の無骨な眼鏡を中指の腹で押し上げる。
その動作は決して格好のいいものではないはずだが妙に決まって見えた。

「誰かから支えられる時……それは相手にとっても支えである事があるものですから」

それが何を意味しているのか、情報屋を自称する男のにしかわからない。
210 :助合九郎 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/04(土) 01:10:49.16 ID:MrC1Uk4Fo
//此処で〆させて下さいお疲れ様です
211 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/04(土) 01:33:42.61 ID:S59ho7OLO
>>209
「そうさせて貰おう、通うからには色んなメニューを食べてみたいからね」

幸いにもこの店は、家から通うのに不便のない範囲に収まっている。足繁くとまではいかずとも時折顔を覗かせる事にしよう。
残りのケーキとコーヒーを簡単に食べきって、八橋は椅子から立ち上がる。隣に置いておいた木刀を手に取り、代金は丁度をカウンターに起き、早くも店を出ようと歩き出す、その前に

「…………、八橋馨。マスター、貴方とはどうやらお仲間のようだね」
「僕が不利にならない限りの情報は提供させて貰うよ、だから」

お互いに支え合っていこうじゃないかとカラカラ笑い、今度こそ店の扉へ足を進める。
来た時と同様に鳴る硬い足音が軽快さを孕んで聴こえたのは、気の所為か、それとも––––––––––––

//短いですがこれにて。二日間に渡りお付き合い頂き、ありがとうございました!
212 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/04(土) 13:56:14.91 ID:fKvFM8590
ある日の昼下がり、学園都市内部でも有名な某巨大複合商業施設にて。
学ランに鉢巻といういつも通りの男装で、”番長”こと高天原いずもは施設内のゲームセンターでUFOキャッチャーと対峙していた。1人で。
──別に孤独であるというわけでなく、今日は待ち合わせていた友人が予定より遅く来るらしく、その暇を潰している……という状況である。
数枚の100円玉を握り締め、どの機体をプレイするか吟味している。番長と名乗る割に、番長らしくない少女であった。


「……ああ……こうやってオレの100円は失せていくんだな………。」

──数十分後。
ある機体の前に彼女は突っ伏し、何やら悟ったような調で中の景品を眺めていた。ガラスを隔てて其処にいる可愛らしい熊のぬいぐるみが、彼女を嘲る様に微笑している。
基本的に周りからは「男」と認識されているため、この番長服の気取った若者は、何故こんな可愛らしい物を取ろうとしているのだ?と熊同様、周りの人間も苦笑しながら通り過ぎる。

「………………ナンデオレハコンナコトヤッテンダ」

それから数分後。
遂に番長少女はその機体の前に膝をつき、がくりと項垂れている。
彼女はただ単に物を持ち上げれば良いと考えているらしく、馬鹿みたいに掴んでは弱いアームに翻弄される……というのを繰り返していた。

//絡みづらい導入ですけどもし良ければお願いしますー






213 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/04(土) 14:16:00.35 ID:0ME0DXfBO
>>212
とあるゲームセンター。
そこに、仕事帰りかと思わせるような、パンツスーツにワイシャツの女が通りかかる。
UFOキャッチャーの前で崩れ落ちて伏している鉢巻に学ランの学生の後ろから————

「ちょいとワンゲーム交代しちゃあくれないかい?」

————と、声がかかるだろう。
振り向けば、煙草をくわえた銀縁メガネの女が立っていることがわかる。無論、煙草に火はついていない。
右手の指先では、ころころと器用に100円硬貨を回し、目線は学ランよりも少し上、先ほど狙われていたぬいぐるみへと注がれていることが分かる。

「ふぅむ……耳の角からいけば…タグに引っかかれば"2匹"行けそうだな」

ぶつぶつと呟きつつ、すでに体勢は学生の後ろからぐいと乗り出している状態で、ともすれば、女の胸部か腹部かが後頭部、または顔に押し付けられることとなる。
不躾ではあるが、目先に必死で気にはしていない様子である。

もし交代してくれるのであれば、そのままプレイするつもりだろう。

/つたない文章ではありますが、何卒…!
214 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/04(土) 14:30:55.41 ID:HPECLBJuO
月火水木金曜日、それをまたいで土曜日休日。日頃の仕事から解放され皆が羽を伸ばす時の頃合い。
学園都市の片隅路地裏。燦々輝く陽光の影の中にまた一人、影色の黒子、ぶっ倒れる影がありました。
それはうぅと呻き声を上げ、時々地面にオロオロえずけば、ガンガンと音が響き視界が回る世界で後悔。
”どうして自分はあんなに飲んでしまったのか”酒は飲んでも呑まれるな、呑まれた姿がこの姿。

どうやらこのアジア系のおっさんは皆よりやや大袈裟に羽を伸ばしてしまった模様、人はそれを阿保という。

とりあえず。

黒のズボンにしわくちゃワイシャツ、ネクタイをだらりとしめたおじさんが一人ぶっ倒れておりました。
そんな彼の事を皆が素通り…いや、お掃除ロボが彼をゴミと認識してガシガシと排除しようとしています。

/なりきり経験はあまりありませんがよろしければ!どなたか!
215 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/04(土) 14:45:48.64 ID:fKvFM8590
>>213
「…………ん?ああ……構わねぇけど……?」

半ば無理矢理。その女性の身体に押しのけられる形で高天原いずもは場所を譲る。
そしてその後は勿論、その女性の行動の観察に移る。
自らが取れなかった景品にどのようにして彼女は挑むのか。番長女は自信ありげなその女性に興味津々であった。

「……一応言っとくけど、そのアーム緩いぞー。」

どうせ取れないだろ!というように呆れて見るような口調で、彼女は助言する。
背後の柱に寄りかかり後頭部で手を組んで。
機体の中に目を向ければ嘲笑を浮かべた熊がこちらを見ているような気がして、咄嗟に片目を瞑った。──こんな機械に金をかけた自分が憎い。
ともあれ、その少女は一旦、女性のプレイ具合に目を向けて見ることにした。

//すみません…気付くの遅くなりました……
216 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/04(土) 15:01:36.75 ID:0ME0DXfBO
>>215
「研究に没頭してると、こうやって騒がしいだけでも気分転換になるな…」

「まぁ、そこに座っている君達も、私の実験対象になるんだがな…ここ、かな…それっ」

ガラスで隔たれた向こうに鎮座するぬいぐるみに向かって独り言を漏らしつつ、女は慣れない手つきでボタンを押す。
アームはあきらかにぬいぐるみを掴むような位置取りにあらず、ただ掠るかどうかの位置に。
女はそこまで見届けると、アームが下がり始めたと同時にしゃがみ込む。
傍から見れば、あきらめたようにも悔しがっているようにも見えるその行動の真意は ————。

ぽすぽすっ

軽い落下音と、賞品獲得を祝うような明るいファンファーレがゲーム機から流れて、女は落ちてきた2つのぬいぐるみを取り出し口から出し、満足げに頷く。

「うんうん、やはりタグに引っ掛かってたんだな」

そして、ぬいぐるみの感触を調べるようにもふもふとふたつを触り比べ、一言。

「素材が違うのか…こっちは実験に使えないな……あ、君。そこの学ランの君だよ」

後方の柱に寄りかかる学生 ————先ほどワンゲーム譲ってくれた学生へと声を掛けながら、ひとつぬいぐるみを差し出す。

「譲ってくれた礼だよ、その素材は必要じゃなくてね。良かったら君へ」

差し出されたぬいぐるみは茶色いふわっふわの毛並みに、太陽みたいに綺麗な目をしたクマだ。

「彼女にでもプレゼントするといい。君くらいの男前なら、一人や二人いるだろう?」

冗談めいて笑う女。
どうやら学生を男と思い込んでいるようで。
217 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/04(土) 15:20:03.29 ID:fKvFM8590
>>216

「………………ま、じ……かよ。」

──瞬間、自分の中の何かが崩壊したような気がした。
目の前の女は自身が時間と大量の小遣いを賭けてまで取ろうとしたぬいぐるみを、極僅かな時間で、しかも100円で取って見せたのだ。
番長少女は呆然と、口をあんぐりと開けてそれを眺めている。

「…………オ、オレ?……あ、あんがと。」

差し出されたぬいぐるみを目を丸くして凝視。終いには指を自分にまで指して確認をする。
そして言われるがままにぬいぐるみを受け取った。
──自分の大量の出費が報われた。
正直な所、そのぬいぐるみが欲しくて金を賭けた訳であるので、本来ならば遠慮深い彼女もそれをすぐに受け入れる。

「………!!あ……いや、彼女なんかはいねぇんだけどよ?
本当にいいのか?これ」

でも流石に遠慮しておかなければただのぬいぐるみ飽食と思われそ雨だと、彼女の本能が危機を察知したのか一応遠慮を見せておく。──然し、そのぬいぐるみは確りと彼女に抱かれているが。
また、男と勘違いされているようではあるが彼女は特にそれを嫌という素振りは見せない。寧ろ逆にそれを受け入れている、というように自然に返答してみせた。
218 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/04(土) 15:29:38.01 ID:SMomoKx2o
>>214
「ん?お掃除ロボットじゃん」

いつも通り高校の授業を放り投げて散歩をする女が,路地裏に入っていくお掃除ロボットを発見.
非公開とされる学園のお掃除ロボットのアルゴリズムを日頃から調査している彼女にとって,ごみごみした路地裏でのその活動は興味深いものであった.
小走りにお掃除ロボットを追いかけて入っていった路地裏には,ゴミというにはあまりにも大きい人型が転がっていた.
一瞬「やばいものを見ちまったか」と動揺するものの,わずかに胴体が上下している.

「おーい,おっさん,大丈夫か?」
「うっわ・・・酒くさっ」

人型を異物と認識して排除せんとするお掃除ロボットを退けながら近づいていき,彼の体を揺さぶるだろう.
彼の体の内から感じ取れる「銃型の金属」と「弾丸」の気配を若干懸念しつつも,体を起こしてビル壁を背にする形で座らせようとする.

//よろしくればっ!
219 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/04(土) 15:34:40.79 ID:0ME0DXfBO
>>217
「なんだ、君くらいの男前なら彼女くらい…ん…?」

一つの違和感、それは女の視線を突き動かし、失礼承知の上で学ランのを着こなす相手を上から下までまじまじと見つめさせる。
ぬいぐるみを抱く仕草、声音、それから ————服の上からでもわかる、少し丸みを帯びた腰。
女は少しの逡巡の後、苦笑して謝罪をする。

「これは、すなない、とんだ失礼を言ったね。君は女性だったか。随分と学ランと、その赤い鉢巻がマッチしていて、気づかなかったよ。」

「学園祭でもあったのかい?そんな整った顔をしているんだ、どうせなら可愛い服でも着てみたらどうだ、周りの男子生徒諸君は君を見て花束を差し出すだろうに」

「ぬいぐるみも沢山貢いでくれるんじゃあないかい?」と笑って締めくくり、自分の持つぬいぐるみを振ってみせる。
220 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/04(土) 15:51:03.56 ID:YE7o1zxC0
>>218

―――人の気配を感じ彼は薄っすらと目を開いた。

視界に入るのは薄汚れたと言えば悪く、使い込まれたと言えば良い、紅葉色の作業着。そして
着ている少女もまた日に焼けた様な赤である。赤、赤、赤、弱った目には少し眩い一紅葉

でも、まぁ、こうぼやけた世界では綺麗だなと男はふと思ったり、考えたり…

「あぁ……………」

「大人になると…ね………うぇ」

「まだ若いと思っていても……やっぱ…年……取っているんだよ…」

男は、うつらと言葉を所々吐きそうな感じで少女の言葉に何とか答えた。顔を上げる。死んだ魚の目で相手の目を見る
そして再びばたりと崩れた。完全に二日酔いだ飲み過ぎたんだ!的な感じに、ほら掃除ロボが仕事だと張り切っている…

こつ、こつ、こつん、がつん、がつん、ごん!どん!じゅキューンっ!

「……ま、まぁ…どうでもいいが……水……誰か……水を…」

/あ、あとナイフも鉄なのでわかりますね。腰あたりに仕込まれてます。
/遅れましたがよろしくお願いします!
221 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/04(土) 15:51:24.77 ID:fKvFM8590
>>219
「おおー!わかったか!
あーでも失礼ではねーぜ?寧ろ、オレ的には男呼びの方が良かったりする」

”番長”という立場上、その立場は絶対的に強く優しくなければ成り立たない。
そして彼女が思うに、その”番長”を成り立たせる一つの要因に「男らしさ」が必要である。
──なので。高天原いずもという少女は文字通り少女として生きるのではなく、男として生きている。
が、何気ない仕草や高めの声によって、それなりの観察眼を持つ相手には今回のようにすぐに見抜かれてしまう。

「……オレぁ、この都市で番長目指してっからな!」

番長を名乗る少女は、ぬいぐるみを抱きしめつつ明るい顔でそう言った。女子全開に名乗られても、名乗られた側からしたら説得力皆無である。

そして彼女は思い立った様子で「あ!」と言った後に言葉を続けた。

「そういやアンタは?
見た感じ的には学生って感じでは無いけど。……」

222 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/04(土) 16:16:59.33 ID:SMomoKx2o
>>220
女にどかされたお掃除ロボは,どうやらかなり任務に忠実なようだ.
「俺にやらせろ!!」と言わんばかりに倒れ伏す男へ果敢に挑みかかる.
この社会の闇の底の一端のような光景におかしな笑いがこみ上げてくるが,男的にはわりと笑えない状況のようだ.

「あー、水ね、はいはい」
「えっと、自販機は〜・・・あっちかな」
「ちょっと待ってろよ〜」

彼女的にはコンプレックスたる「錆色」の体色の類を「紅葉色」などと素敵な表現にて認識されているとはつゆ知らず,御節介焼きな彼女もやや億劫そうな表情で自販機へ.
小走りに遣いに走り,適当に水とコ◯ラを購入し,元の場所へ戻って来る.
近代都市は至る所に自販機やらコンビニやらが存在して便利なことこのうえないな,と田舎出身の花序は感心していた.

「ほら,水」
「自分で飲める?」

とりあえず自分用の炭酸清涼水をアスファルトの上に置き,ペットボトルの水のキャップを開けながら男へ差し出す.
自分で飲めないようならば,女がそれを無理やり口に突っ込んで傾けてくれるだろう.

「あんまり飲みすぎるといいことないぜ〜」

未成年ゆえ飲酒経験など一切ない(と言い切る)彼女には,飲み過ぎやら自棄飲みやらの気持ちがわからないのであった.
223 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/04(土) 16:17:33.80 ID:SMomoKx2o
>>220
//っとと,腰のナイフ等、了解です!ありがとうございますです
224 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/04(土) 16:27:35.91 ID:0ME0DXfBO
>>221
「この学園都市で番長、ね……ふふっ、なれるといいな。私は応援させてもらうよ」

微笑んでから小さく頷き、ぬいぐるみと少女 ————あらため、ぬいぐるみと番長を交互に見てまた抑え気味に笑う。
そうしていると、思い出したように自分の事を聞くものだから、女はぐ、と一瞬だけ口を噤んでしまう。
周りを見れば学生だらけで、そういえばここは学園都市で、自分はイレギュラー因子である魔術師。
気まずそうな顔もそこそこに、すぐ表情を先程のようなものにする。

「私は…しがない学者さ、この学園都市にいる能力者ってのを研究してる、無能力者だよ」

嘘を吐き出し、周りにいる学生たちを見回してからダメ押しのように付け加える。

「能力者を研究して、能力者が心地良く生活を営んで、無能力者も能力者も平等に暮らせる、そんな都市を作るためにね」

そこまで言うと、女は興味が湧いたような口ぶりと表情で番長へ問う。

「君も、いわゆる…能力者、というやつなのか?」

女の視線は、どこか鋭い。
225 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/04(土) 16:48:25.47 ID:YE7o1zxC0
>>222
たったった、と足音がして「行ったか」と男は呟き、頭痛が痛いと言葉の矛盾な程痛む頭を働かせ……数秒
その場からお掃除ロボが立ち去った。うぇと男は少しえづけば再び無理はいけねぇと地面に倒れこむ…静かにする
たったった、と足音がして「武器は無いな」とその言葉は昔からの癖で、軽い足跡から武装は軽微と判断した。

そして赤紅葉が一枚現れた。面倒くさそうな顔、されどお節介焼きな少女。優しいのか…打算が、まぁ男は少し嬉しかった

「はっはっは……」

震える手でペットボトルを取り、喉を震わせて一気に半分ほど飲んだ男が最初に一言。情けない弱々しい声
力無く起き上がり、壁に背中を預け改めて少女を見た。顔色は先程の白より少し赤みが増している。

「……とりあえず助かった。ありがとう。これでかなりマシにはなったよ」

「え…っと……いくらだったかな?物価は…うん、国と確か同じ位だったから」

「…コーラ合わせつ300円……小銭がないな」

そして男は財布を漁り、そこから日本で言う千円札を彼女に差し出したのだ。……飲み物代だ釣りはいらねぇよ的な
……ついでにポロリと名刺が落ちる。読んでみれば彼が周囲の学校の臨時講師である事が読み取れるだろう
226 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/04(土) 16:49:02.64 ID:fKvFM8590
>>224
「……おお!ありがとな!」

ニコッとし番長少女は爽やかな笑みを見せた。
尚もぬいぐるみを抱きかかえながら、その少女は笑う。──心なしか、熊のぬいぐるみの微笑みも、嘲笑では無く明るい優しさ溢れる笑みに見えた。
──話は変わる。

「ってことは、研究者ってわけか」

少女は先程までの台詞を思い返してみる。
そういえば100円玉一枚片手にUFOキャッチャーに挑戦した際も、研究……だとか、終わった時も実験、だとか言っていた様な。

──そして同時に彼女は既視感を感じていた。数日前、自身を魔術師と称する男と出会った時も、「無能力者」だという殻を被り、自身の立場を偽っていた。
今回の女性は明確な立場を明らかにしているため、魔術師という存在を知っていながらも追及する様な事は無かった。

──だが。
続く女性の言葉は、彼女の内の既視感を加速させる。

「………………………!!」

その言葉は、数日前に出会った魔術師の言葉とまるっきり同じであった。
自らを無能力者でありながら学園都市に関わっている身分と明かした上で、”能力”についてを聞き出そうとするその言葉、鋭く刺さる様な視線。
そして更に彼女の脳内に、その数日前の魔術師の言葉がこだまする。
──「魔術師が『味方である』とは約束出来ない」と。

「……ん?ああ一応持ってるよ?
まーだLevel1で能力かどうかも怪しいLevelなんだけどな?」

──だからこそ。番長少女はその小さな頭をフル活用させて、自らの境遇を偽るという手段に至った。




227 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/04(土) 16:50:22.71 ID:fKvFM8590
>>226
//訂正

「ってことは研究者ってわけか」

「ほー。学者さん、ねぇ……。だからやたら頭良さそーな事言ってんのか。」
228 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/04(土) 17:01:14.47 ID:SMomoKx2o
>>225
「一気に飲むと体に悪いぜ?」

手渡したペットボトルを痙攣する手で受け取った男は,それを勢い良く喉の奥へ流し込んだ.
砂漠で行き倒れたかのようなリアクションが女にとって面白かったらしく,行動の一部始終をニヤついた表情で眺めていた.

「おお、気前がいいなよっぱらい、さんきゅ〜」

せっかくくれるというのだし,遠慮するそぶりをするのも面倒臭い.おとなしく受け取って,ポケットに突っ込んだ.
ついでに飛び出してきた名刺に反射的に手が伸び,落下したそれを拾い上げた.

「うえ、あんた、せんこーなのかよ」
「偽物じゃないのかこの名刺・・・」

名刺に肩書きは,「臨時教師」というもの.教師の区分はよくわからないが,学校に携わる人間であることは間違いないだろう.
して,彼女の中の認識では「教師は真面目で堅苦しい生徒のお手本」というのがベースにあり,目の前の男はそれとは正反対をいく印象だ.
信じるべきはこの名刺か,それとも本人像か,女は眉をひそめて首を傾げていた.



229 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/04(土) 17:12:50.46 ID:0ME0DXfBO
>>226
「そうかそうか、やはり君も…」

(能力者はそれぞれレベル分けされているのか…能力とよべるかもわからない、レベル1……彼女はまだ微力な発現しか起こってないのか、そうか…)

言葉と思考に速度の差があるのか、脳内では電気信号が音を立てるのでは無いかというほど活発に。
視覚、聴覚、あらゆる感覚器官が研ぎ澄まされているからか、少女に走る違和感を見逃さず。

「別にただ興味があるだけでね、私の目的は力を持っている持っていないに関わらない、安寧と平等にだ、気になることがあれば調べるっていうのは学者の癖みたいなもので、気にしないでくれ」

(っち…他の魔術師が接触した後か…?
こうも警戒されてちゃ、研究対象としてデータが取れないぞ…
あまりスマートじゃないが…この子になら…)

考える。
脳内で思考し、試行し、そして ————実行する。

「君の能力が…データが欲しい」

「何、痛いことも君の損になることも一切しないと約束しよう」

「このままでは……このままでは、私は歴史に埋もれてしまう」

紡ぎ出される言葉は真か偽りか、ただ、女の表情は、真剣なものであることに、一片の偽りも無い。
歴史に埋もれてしまうという言葉の意味は何なのか、それは彼女にしかわからない。
周りの学生たちを混乱させないために、女は一歩少女へ近づくと、声を潜めて少女にだけ言葉を届ける。

「君は、魔術師に会ったことがあるんじゃあないのかい?」

「それがどんな奴だったのかは知らない。だが、少なくとも私は個人的に都市に来ている。組織も思想も一切関係ない」

そして改めて一歩下がり、まっすぐに少女を見つめる。

「私は弱い。
だから、君達の力が欲しいんだ」
230 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/04(土) 17:22:55.53 ID:YE7o1zxC0
>>228
本物か、偽物か。正式に書類審査を通り試験を受け合格した。身分としてはその名刺は本物だ。
されど、登録されているのが偽りの身分である為に。男自体は疑った通りに偽物の存在だ。
故に少女は惜しい。一瞬表に出かけた焦りを、誤魔化す動作は一気飲み。ごくり、ごくりの喉がなる。

彼女が思った通りまさにオアシスを飲み干そうとする遭難者だ……まぁそこまで慌てていたら。

「むっ…ごほっ…けほっ、けほっ…ぐほ」

そりゃむせるわな
まあそのうち治ったら彼は彼女の疑問に答えるだろう。

「こほ……残念ながら本物の教師だよ。」

「リー・ウェンという…名刺に書いてる通り」

「教える科目は……まぁ全部大丈夫だか、しいているなら社会かな」

「……まぁここの学生…君達みたいな能力と呼ばれる物は持ってい無い弱者であるが」

「なに……人生の先輩としては教えられるさ……たとえ”反面教師”だったとしても、ね?」

ぼやくように、誤魔化すように、呟きを。少女を眺めて男は矢張り死んだ目で小さく微笑んだ。
目の前の若者のようにはいかない。明るくなく利発的でもない、疲労と過労がこびりついた笑み。
…死期を悟った老人のような穏やかな笑みである。…ただの教師が浮かべれる種類の笑みなのかは別として
相手が困惑している様ならば番号に連絡してごらんと言葉を付け加える。無論相手先は知ってると答える。
231 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/04(土) 17:34:19.35 ID:fKvFM8590
>>229
「データ?歴史に埋もれる…………?」

──この言葉は何を表すのか。
高天原いずもは自らの少ない思考回路を必死に利用した。……何故、目の前の女は無能力者でありながら”能力”に固執し、聞き出そうとするのか。
……先程までに感じていた違和感の歯車が、漸く此処で噛み合った様に感じた。──其れは二つの要因から成る。

(………………やっぱり……こいつは………、、)

一つ目はこの都市の学者であるのに、何故「能力者」という単語に対して、確信を持てないような言動を取るのか。
これは、前の魔術師にも当てはまる事だった。
二つ目はたった今の言葉だった。
”学者”であるという立場なのに何故”Level1”という最低ランクの能力のデータが必要なのか。学者ならば彼女に限らずともそんなデータなど幾らでも得られるはずだろうに。──これは、能力のレベルを偽ってこそ確信できた事だった。

そして彼女の思考は直ぐに答え合わせに至る。


(……魔術師…………!!!)

至近距離で囁くような言葉を受けて、彼女の思考は”事実”であると自己認識する。
矢張り、得体の知れない存在である”魔術師”という言葉を前にすると、緊張で体が縛り上げられるのを感じた。


──番長少女は、女が一歩下がってから数秒後、口を開いて短い質問をする。

「…………欲しい……とは具体的にはどうする事なんだ。
あ、悪いが頭が悪いオレにもわかりやすい説明で頼むぜ?自称学者の魔術師さん。」


232 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/04(土) 17:43:01.01 ID:fKvFM8590
//すみませんレイカさん
今から所用で9時ごろまで落ちるので次の返信はそれくらいになるかと思われます…
もしその時刻都合が悪ければ一旦凍結もできますが……どうでしょう?
233 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/04(土) 17:48:59.86 ID:0ME0DXfBO
>>231
「わかりやすく、か……君も学生なら、わかるだろう?こんな商業施設内で突然能力を行使すれば、何らかの事件か暴動と思われて騒がれるのは、避けられない」

「人気のない場所で、どんなに微力でもいい、君の能力を最大限に発揮する所を見せてもらえれば、それが十二分のデータとなる」

「勿論、今回の事は誰にも言わないと誓おう
 それに———— 」


少女の警戒に、応えるように紡ぐ。

「 ————魔術師の"誓い"は、神にすら破られないんだ、信じてくれないか、番長」

周りの学生は、ゲームお喋りに夢中で、意識は幸いこちらへ向いていない。
それを見越してか、女はなんと…ぱちぱち、とした小さな火花を ————自らが使える唯一の魔術を見せた。

「どうだい、この光…これもれっきとした魔術で、誰にも気づかれないほど小さくて、弱くて…とても、儚い」

「魔術師ってやつは皆弱くて儚いのさ。君のような強き者が妬ましく、羨ましくて仕方がない。理論も何もかもをかなぐり捨てた、"君だけの"力を、見てみたいんだ」

どんどんと言葉尻は消え入るようで、最後は自身の情けなさを、認めたくなかった何かに押しつぶされそうになっていた。

だからだろうか、癖のようにして吐き出された虚偽を、真実で塗りつぶして、素直に言葉を選んだのは。
どこかの魔術師に言われた、素直さとはこのことか。
234 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/04(土) 17:49:45.07 ID:0ME0DXfBO
>>232
/凍結でもいいですよ!
/またご都合のよろしい時に返信ください!
235 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/04(土) 18:45:15.71 ID:SMomoKx2o
>>230
「それ見たことか」

盛大にむせる男をくつくつと笑いながら眺める女は,リーの焦りにまったく気がついていない模様.
なにせ軽く皮肉ったつもりであり,それ以上の意味も何もない.

「へぇ・・・社会科の,人生の先輩ねぇ・・・」
「ま、たしかに反面教師としてはなかなかって感じだな.」

死んだ魚の瞳でこちらを見つめる男は,とてもではないが教師とは思えなかった.
よくて上司に怒鳴られて自棄酒をしたサラリーマン,わるくて首を切られた妻子持ちの無職だ.
そんな教師に「酒はやめとけ」などと言われれば,説得力がありすぎる.

「いやいや,信じといてあげる」
「教師だろうと一般人だろうと,あたしにとってはあんま関係ないしな」
「がっこーも最近いってないし」

教師を前にしてなかなか度胸のある自白であるが,彼女の様子からはさして病気やいじめを受けているなどの雰囲気は感じられないだろう.
まぁそもそも格好から,学生には見えないようなものであるが.

「んで,おっさん・・・じゃなくて、リー先生はなんだって潰れるまで飲んでたんだ?」
「給料でも減らされたか?」

さてここできになるのが彼が酔いつぶれに成っていた理由だ.
彼女としては興味があるし,教師とこうして話すのは初めてであり,なんだかくすぐったいような感情で,これまた面白い.

//投稿できてなかった・・・遅れてしまって申し訳ないっ
//そして次のレスが遅れてしまいそうです・・・凍結か,このまま〆てしまってもかまいませんです!
236 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/04(土) 19:37:28.07 ID:YE7o1zxC0
>>235
/寝てました……今から文作ります!
えと、とりあえず凍結で
237 :エリティエ=ニクス RANK D ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/04(土) 19:54:42.62 ID:cMPXhTAaO
女としては平均値を遥かに超える背丈、皺だらけのカーディガンにロングスカート。
肩まで切り揃えられた黒髪はボサボサで傷んでいて、長い前髪は目を覆い尽くし、その隙間からちらと濁った瞳が映る。
腐った汁でも出てきそうな瞳からは、まるで全てを疎ましいと思っているような憎悪が発せられており、まさしくそれは学校の怪談に出てきそうな悪霊の姿であった。
それが現在のエリティエ=ニクスの姿であり、幼少に言われていた(恐らくお世辞だと思っている)容姿端麗さ、彼女が名家の令嬢である欠片もない。
他人と関わる事を何よりも煩わしく思うエリティエに、見繕いを整えるという発想はなかった。最低、裸じゃなければ何でもいいとでさえ思っている。
異性に好かれようとも思わないし、世界中を探しても自分に好意を持つ男子などいないだろうと断じていた。

そもそも、想い人以前に友人がいない。

このような異質な容姿、そして、校内にて「無能力」にカテゴリーされるためか、入学当初から悪い意味での注目の的であった。
不幸体質も重なり、クラス内でのトラブルでのとばっちりに遭ったり、弄ばれてきたりの、以前と何ら変わらない生活だ。
女子がイケメンだの何だのとクラスの男子に熱視線を向けている間、自分は便所に放り込まれた体操着を回収するべく疾走していたのだ。
何よりも問題なのが、彼女に友達を作るつもりがなかった、という事なのだろうが。

そんなわけで、昼休み、屋上で一人でしみったれた購買のパンを口に放り込んでいるのである。
より一層喧騒が激しくなる教室は耐え難いものであった。格好のスポットだ。

「ふん、今に見ていれば良いわ…私の潜在能力が発動した暁には、今までコケにしてきた奴らを土下座させてやる」

壁にもたれかかった状態で、ビニール袋を放り捨てる。
あまりにも詭弁である言葉だった。いつもいつも現実はどうだ、何の発現もしやしない。だが、唯一高いプライドがその事実を認める事を良しとしなかった。
その言葉は風に乗ってただ消えていくだけである。
238 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/04(土) 19:55:07.17 ID:fKvFM8590
>>233

(…………人目のつかないところで……か。
この前のおっちゃんとは違う……言ってる通り、魔術師としての力はあまりない……ってことか?)

数日前に接触したヴァシーリー・マーカスという魔術師は彼女とは正反対ともいえる魔術師だった。
己の魔術については誇りを持っていたし、その通りに彼女の超火力を安安と受け止めてのけた。
それに比べて目の前の女性は、小さくてか弱い火花を散らす程度だった。
──勿論、先程この番長自身が行ったように”フェイク”であるという可能性も否めないが。

だが、人を疑う事が苦手な純粋無垢の番長女には、女性のその態度が嘘であるかのようには思えなかった。──だから改めて問う。

「……つい最近、オレはアンタが言った通りに”魔術師”に会ったよ。
そいつはアンタみたいに自分の魔術を見下してたりはしないし、寧ろ能力について誇りを持っていた……。」

「──そう、アンタとは真反対の人間だった。でも、アンタの態度からは嘘とか汚いもんは感じない。」

「オレは魔術師とやらの組織とか考えとか?に詳しくない。だからこそ改めて質問する。」

「『魔術師』……いや。
少なくともアンタは『能力者(オレ達)』の敵……か?でないなら、アンタはどの立場だ?」

「悪いけど、協力するかどうかはそれで決めさせて貰う。
──勿論、嘘をつくことも可能だしそれで裏切ることも可能だけどな。
……その時はアンタの存在と同時にこの学園都市に魔術の存在をバラさせて貰う。」

彼女の脳回路を最大限に利用した、彼女にできる最大限の質問だった。
実は先日出会った魔術師にも同じ質問をしている。その時に得られた答えは「味方であるということは約束できない」との答えであったが。
その魔術師とは正反対に彼女の目に映ったその女性の魔術師は、何と答えるのだろうか。

念の為に釘を刺してみた。先日の魔術師は「魔術」の存在を何が何でも秘密にしておかなければならない様子だった。
──ならば、魔術を能力者に知られるってことはそれなりのリスクがあるということなんだろう。
それを承知した上で、問う。……バラしたら彼女もまた恐らくその魔術師に追われることになる為、大きなリスクを背負う。……彼女自身、そのリスクには気づいていないようではあるが。




//少し早めに戻れたのでお返ししておきます!何時でもOKです!
239 :雨宮 初音【念動能力 Level2】 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/07/04(土) 20:25:46.60 ID:xdyjnaV+0
>>237

相手が放り投げたビニール袋、それは風に押されふわりと上昇し、軌道を変えつつも飛んでゆく。
そんな時だ。不意にがちゃりと屋上へと続く扉のドアノブがひねられ、そして勢い良く開け放たれると――――。

「わぷっっ!?」

飛ばされたビニール袋が絶妙なタイミングで屋上の扉を開けた車椅子の人物の顔面にバッサーン!とぶち当たる。
なんとも素っ頓狂な短い叫びと、扉を開けた状態の体勢のまま硬直するその人物。
そうしている間にもビニールが風にカサカサカサと揺らされている音が実にシュールな雰囲気を醸し出していた。
……が、それもつかの間のことである。

「あっぶ……、びっくりしたー!」
「もう、誰!?こんなところでポイ捨てした人は!」

そう言いながら顔に被さった袋を取ると、その人物…もとい少女はムッとした表情を浮かべた。
薄い茶色の髪をポニーテールに纏め、きっちりと着こなされた制服。片手には赤い巾着袋に包まれた弁当箱を抱えている。
車椅子を使用していること。そして下半身を隠すようにして掛けられている膝掛けの隙間から見える、両足の包帯を除けば、至って普通の少女といった出で立ちだ。
そして今まさにゴミを捨てたであろう女子生徒を見つけると、いつもよりも少し声を張り上げた。

「そこの人!このゴミを捨てたのはあなたかな!?」

ビシッと相手を指差せば、上記の言葉を叩きつけ問い詰めようとする。
まあ車椅子に加え華奢な見た目だ。迫力や凄みははっきり言って皆無に等しいのだが。

/自分でよければ、よろしくお願いしますー

240 :エリティエ=ニクス RANK D ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/04(土) 20:37:45.72 ID:cMPXhTAaO
>>239
背後から声。その方向に振り返ってみれば、自分を指さす車椅子の少女が。
思わずエリティエは顔をしかめる。会いたくもない他人に会い、それに加えて自分に絡んでくるのだから。
わざわざこんな道端の小石に絡んでくるとはなんて物好きだろう、面倒くさいと思いながら。

「そうだけど、それが何か?」

まったく悪びれもせず応答する。
どうやらビニール袋を捨てた事に腹を立てているようだが、こちらからすればそれがどうしたという話であり。
いきなり怒りをぶつけられてとても理不尽であると感じた。

「大体何なのいきなり?人を指さすものじゃないって、教わらなかったかしら?」

ふん、と鼻を鳴らし不遜な態度を取る。エリティエからすればさっさと終わらせたい一心であり。
しかし明らかに少女を見下している態度のせいで、その願望とは逆方向に向かっているわけだが。
241 :雨宮 初音【念動能力 Level2】 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/07/04(土) 20:52:05.20 ID:xdyjnaV+0
>>240

「なっ……、え、えーっと、指をさしたことは謝るけど!」

車椅子の少女・雨宮初音は相手の慇懃無礼っぷりに思わず言葉を失った。
なんということだろうか、相手は思いのほか悪びれないというか……ちょっとキツい感じの性格?である。
だが指を指すなという相手の言い分はよく分かる。さてこれはどうしたものか。
困ったように言葉を濁らせ、んーとえーとと相手に言う言葉を考えているようだ。

「と、とりあえず!そっちこそゴミは捨てちゃダメだって、お父さんやお母さんに教わらなかった?」
「ゴミのポイ捨ては環境破壊の根源になっちゃうかもよ!ポイ捨ては軽犯罪、軽犯罪です!」

何故だか語尾がですます口調になる初音。
風紀委員さながらに注意喚起を促しているのだろうか。知識がお粗末なせいで色々と台無しだが。
何はともあれ初音は相手の方へと向かえば、ずいっとビニール袋を渡そうとするだろう。
とるかとらないかは相手次第ではあるが。

「はいっ!ちゃんとゴミ箱に入れとかないと。あ、ビニールは燃えないゴミだよ?」

242 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/04(土) 20:58:08.77 ID:YE7o1zxC0
>>235

「あー…………」

彼は視線を空に向けながら、五本の指を立てくしゃくしゃと自分の頭を掻いた。

「そうだね」

すぅと、何かを思い出す様に目を細め。

「確か歓迎会……そうだ、新人の歓迎会で飲み始めて……ふむ」

「あぁ、そうだ。そこから生徒の愚痴会に……自暴自棄…悪乗り……給料が…」

「友達なし……独身……恋人………孤独死…皆は子供も………あぁ」

ピタリと止まる。開けてはならぬ禁断の箱と書いて記憶と読む。それを開けた様に
男はふふふと、憂いやら諦めやら悲しみやらが篭った寂しい笑い声で笑ったのだ…

「大人になると……年をとると……若い時みたいに夢を見れなくなってね」

「'嫌でも現実を直視しやきゃあならないんだ。'」

ふと、少女を見つめたその瞳は、……大人って切ないんだなぁって思えるような、そんなくらーいもので

「だから、ね。……教師らしい事を言わせてもらうと…今の内に若さを楽しんだ方がいいん」

「無理とか…出来なくなるからね……わかったかい………えーっと」

微笑みを崩し真面目な顔で、ど真面目な顔で彼は言うのであった。そして最後にふと思い出す。彼女の名前を聞いてないと

「名前、教えてくれないか?」
243 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/04(土) 20:58:54.92 ID:YE7o1zxC0
>>235
/遅れてしまい申し訳ありません!
244 :エリティエ=ニクス RANK D ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/04(土) 21:18:13.11 ID:cMPXhTAaO
>>241
「知ったこっちゃないわ。私が嫌な思いしなければそれで良いもの。指を差された事が単に不快だっただけ、環境?何それ。どうせ私達が死ぬまで何も変わりはしないわよ」

ゴミは捨ててはいけない。確かに一般常識ではそう言われている。
だが、エリティエがここで問題にしたのは決して大衆に染み込まれた陳腐な一般常識などではない。そんな自分を救ってくれないものなど犬にでも食わせておけばいい。
エリティエはただ単に、指を差された事が不快であっただけ。自分が嫌な思いをしたから、ただそれだけの理由である。環境など知った事ではない。
"嫌な思いをしなければそれで良い"、それがエリティエの座右の銘であり、現在まで貫き通している信念である。
身勝手の極まりだが、嫌な思いをしない割合はとても少ない。

「ふん。風紀委員も暇じゃつまらないでしょう。ゴミ拾いの仕事でもやらせておけば仕事ができるってもんよ」

風紀委員が嫌いという事もあり、それを皮肉るようにして、差し出されたビニール袋を奪うように受け取り、そして、今度は柵の外に放り捨てる。
風に乗ったビニール袋はそのままどこかへ飛んでいくだろう。車椅子の少女にそれを止める術があれば別だが。
あまりにも捻くれた反応。恐らく、これを見ただけでエリティエがどれだけ心が歪んでいるか、分かるだろう。
245 :雨宮 初音【念動能力 Level2】 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/07/04(土) 21:43:18.16 ID:xdyjnaV+0
>>244

「……そんなぁ、いくらなんでも極論すぎだって!そんな風に自分のことばっか考えてたら、その、酷い目にあうかもしれないよ!?」

初音はぐっと表情を歪めると、一瞬言葉に詰まる。
自分が行った一動作でここまで相手を不愉快にさせてしまったことは勿論、その相手の言葉に対してもだ。
ただ、この発想は非常にまずい。そう感じ取って思わず声を荒げてしまう。
独りよがりな行動は自分はおろか周囲の人間さえも傷付ける。それは初音もよく知っている。
……若しくは、その浅はかな行動により親友の精神を叩きのめした初音だからこそ、といったほうが正しいか。

「って、あああ――――!?なななっ……なにしてんの!?」
「こ、この――――!」

そして次の相手の行動に目を疑い、先ほどよりもでかい叫び声。
なぜ相手がここまで他人に嫌われそうな行動をとるのか、弱い思考回路の初音には皆目見当もつかないが、流石にこれはショックは大きい。
しかも目の前でやられたのだから、感情的にならない訳にもいかないだろう。

「おばかっちょぉぉぉぉぉぉぉっ!!!結果的に悪化してるよ!?生活指導の先生に見られたら一発でアウトだから――――っ!?」

そうギャーワーと叫びながら慌てて、落ちてゆくビニール袋……ではなく、相手の手を引っ張ろうとする。
屋上にゴミを捨てました。ならともかく屋上からゴミを落としました、なんて教師に見つかったら面倒臭いことこの上ない。
ひとまず下から見えない場所へと移動したほうがいいだろう。車椅子でのバック進みのため、俊敏性とかはほぼ皆無である。

246 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y :2015/07/04(土) 21:53:08.02 ID:D5IwDSFwO
>>242
「なるほど……ね……」

虚ろな瞳、とは恐らく今の彼のような者が持つそれを指すのだろう。
白井がそれを確信する程度には、彼の口からこぼれだす文言とそこから察せられる「現実」は恐ろしい香りがした。

「も、もういいわ。がんばって今のうちにやりたいことやっとくことにする。うん。」

新米教師による人生への警告を素直に受け止め、数回頷く。
やっぱり人生ってめんどくさいなぁ、なんて言うと怒られそうだから、あとでTwitterにでも投稿しておこう。

「そうそう、あたしは白井沙羅ってゆーから、よろしく」
「ほい。」

そう言うと、財布から学生証を取り出して男へかざす。
学年、能力とそのlevelが記された身分証の写真は、やはり作業帽を深く被っているものであった。

/ただいま戻りました!若干投稿ペースが落ちますがよろしくお願いします
247 :エリティエ=ニクス RANK D ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/04(土) 22:09:47.72 ID:cMPXhTAaO
>>245
「酷い目にならもう十分味わってるから。私は私。他人は他人よ。大体、偉そうな事を言うけどあんたに私の何が分かるの?放っておいてよ」

はっきりと言って、うるさい。
初対面の癖に、何を偉そうに言うのだろう。いや、そもそも、一連の発言から"関わるな"と言わんとしている事が分からないのか。
早く罵倒雑言でも言うなり石を投げつけるなどして、どこかへ行ってくれさえしてくれれば良いのだ。

「うるさいわね、何なの?今時教師ですらゴミのポイ捨てくらいしているわ。たかがそんな事如きで騒がないでよ、うざったい。そっちの方がバレやすくなるじゃない、馬鹿じゃないの?」

その濁った眼光を尖らせて、少女を睨みつける。騒ぐ方が見つかりやすくなるという事を考慮していないであろう少女に不快感を露わにする。
うるさい人間は特に嫌いだ。耳がガンガンする。
エリティエは不遜な態度そのままに、柵の方から下がった。どうせ、ビニール袋は風に運ばれてどこか遠くへ行ってくれるだろう。見つかるはずもない。
というか、教師陣もそれどころではないだろう。そんなものを発見したとしたらそれは暇人か、仕事をしていない教師である。

「はぁ、どいつもこいつも下らない。薄っぺらい正義感に、安っぽい理想に、そしてそれにそぐわない者を排除する阿呆ばかり」

エリティエは嘆く。そのような輩に排除される側の人間であるから、誰よりもわかっていた。
子供の頃に抱いていた理想は、現実に押しつぶされ歪み、そして現在の形になっているのだ。
248 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/04(土) 22:30:55.93 ID:YE7o1zxCo
>>246
「能力……『白鋼皇紀』……レベル3」

静かに、静かに確かめる様に男は呟いた。それは相手の”名前”では無く”能力名”
一瞬、ほんの一瞬であるが気配が”変わる”鋭い矢の様な鋭い──彼女が気が付く頃には霧散する

ただのおっさんに戻る

「白井さ…沙羅ちゃんでいいのかな、うん、いい名前だと思うよ…思うが…えっと」

「これは………こう、理由とか聞いてもいいのかな?」

ふと、彼はそっと指をさした。その先には作業帽を深くかぶったその写真
暗に言うならば、どうして顔を隠しているのかい?と聞いているのだが……?

/っと、気が付くのが遅れてしましました
249 :雨宮 初音【念動能力 Level2】 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/07/04(土) 22:39:11.06 ID:xdyjnaV+0
>>247

「………!……あ、あ……えっと――――」

身体の芯から冷え込んでゆく感覚。相手からの冷たい目線。突き放してくるかのような言葉。
自分の行動は正しいって思ってそう行動した。それだけのことが些細な齟齬で誰かとの関係にずれが生じる。
呆然とした直後泣きそうな顔に、それもすぐに堪えるような表情に変われば、相手の方を見て。

「――――ご、ごめんなさい!」

そう涙声で頭を下げたのであった。
先程の相手の気迫に既にやられてたのかその声音は結構ガチ。ガチな方向で泣きそうである。
親や教師に叱られた小さな子供。そう形容するのがぴったりなくらいのビビリっぷり。存外メンタルは弱いらしい。

「……わたし、そんなつもりなくって……いや、言い訳はよくない、よね!」
「確かにあなたの言う通り、大声出したほうがいけなかったかも……本当にごめん!」

自分の行動の方に不義があった。迷惑をかけて申し訳ない、と。
初音は相手に謝罪を述べ自分の否を認める。それはもう心底申し訳なさそうに。

250 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y :2015/07/04(土) 23:01:25.93 ID:D5IwDSFwO
>>248
「………?」

自らの名より先に,僅かにつぶやかれた【能力名】
二つ名のようなものであり,その名で呼ばれることもまぁなくはないが,若干の違和感を感じた。
まぁ、さして気にしてはいないようだったが。

「あぁ、別に呼び方はなんでもいーよ」

「んー、それな、能力のせいでちょっとお肌が汚くてね」
「髪とかもけっこー…こう、色が付いちまってさ」

「この服も元はフツーの迷彩柄だったんだけど、鉄錆とかで黒くなったり赤くなったりすんだ」

おちゃらけたような感じに返しつつも、僅かに覗く表情はあまり愉快そうではなさそうだ。
ま、そこまで気にしてないけどな!と少しばかり強がっておく。

ここで、半ば忘れていたコーラを手に取り、プルトップを持ち上げ、缶に口をつけて傾ける
美味い。人工的な味であろうとも、若干ぬるまっていようとも、うまい。
冷気と炭酸が身に染みて、少しばかり思考が整理される。

「ところでおっs…いや、先生」
「先生の服ん中からけっこーやばそうな銃と、本格的なナイフの匂いがすんだけど……それ護身用?」

先ほどから香っている彼の服内の『きなくささ』が気になって、問いかけてみることにした。
呑み潰れて路地裏でぶっ倒れるほど不用心な男が、果たして銃にナイフと重装備が必要だろうか
暴徒と化した生徒を抑え込むにも、彼が持つそれは『実弾』だ。
251 :エリティエ=ニクス RANK D ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/04(土) 23:18:22.89 ID:cMPXhTAaO
>>249
「そう、分かったのなら良いけど」

考えが本当に浅はかであると思った。何をする事が一番まずいのか、それを第一に考えなければならないのに。
まあそれが分かってもらい、謝ったならそれで良い。だが、もう今後そういう事が起こるのは御免だ。

「分かったのなら今度から気をつける事ね、いつか命取りになるわよ。そういうの」


気付いたら、いつの間にか昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。こんなにも時間を取っていたのかと我ながら驚く。人との会話は時間を要するものだと。
時間の無駄だったと言えばそれまでだ。これらの会話は何も生み出さなかったし、そもそも話したくなどなかったのだから。
とにかく、授業が始まってしまう。そろそろここを立ち去らなければ。

「それじゃ、私は行くから」

それと、最後に言っておかねばなるまい。さっきから言葉に含ませているのに、汲み取ってくれない自分の本心を。
これ以上、関わってもらわない為に。

「私、あんたが嫌いだから。もう二度と関わらないことね」

どんな反応をしようが、黙ってそそくさとその場を立ち去るだろう。やはり、人と関わるのは煩わしい。
人間はつくづく面倒な生き物である、そう思った。


その後、教室に戻った後、鞄の中身がトイレにぶちまけられていて授業に遅刻したのは言うまでもない。

/これで〆で!ありがとうございました!
252 :雨宮 初音【念動能力 Level2】 ◆w6sYG/.r3I [sage saga]:2015/07/04(土) 23:39:14.39 ID:xdyjnaV+0
>>251

「……え?あ、ちょ――――」

精一杯謝罪はしたつもりだが、それも相手に伝わったかは分からない。
あんたが嫌いだから、とさらっと言われた言葉に目を瞬かせている間に、相手の少女はさっさとその場を去ってしまった。
ぽつんと屋上に一人、取り残された初音は深い深い溜息を吐く。

「これは……、本格的に嫌われた、かな?」

別れ際の台詞からして好印象を持たれているとか夢を見るのはやめておいたほうがいいだろう。
自分に対するあの感情は完全にツンデレとか生易しいものではなかった……というか、うっかりまた話しかけたら色々報復を受けてしまいそうだ。
もはや笑うしかないのか苦々しく笑みを零し、屋上の隅に置かれていた何ヶ月も放置されたような空き缶をふと目に留めれば、そっと手を掲げる。
彼女の能力は『静止物』を操る能力。故に先程落下してゆくビニール袋を手繰り寄せることはできなかったのだ。
空き缶を片手に収めれば、今度こそ屋上を後にする。

「――――もうちょい、能力があればなぁ。」

最後に一言だけ、若干悔しさを込めた言葉をつぶやきながら。

/こちらこそ絡みおつありでした!
253 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/04(土) 23:40:48.41 ID:rEYrcWhKO
>>238
少女から発された力強く聞きつけられる質問は、狡猾な魔術師に刺さり、何かを打ち崩し燃やすもの。
真っ直ぐに見つめる少女の瞳に映り込む自分自身は、何と矮小で弱々しいのだろう。
この広い世界で。この大都市で。なんと消え入りそうな存在だろうか。

少女は、様々な思いでその姿を成し、生きてきたのか。
それを考えるだけで、己の無力さが身に沁みる。

リスクを承知で言っているのか、それに考えが至っていないのかは定かでは無いものの、いずれその事に気付いたとしても、その姿勢は変えないのだろう。

少女の視線を、初めて素直に受け止め、何かを考え込むようにポケットへ手を突っ込む。

————そして、取り出されたのは、ジッポライター。
魔術師は、研究結果を誰にも見せない。
だが、今回は、今回だけは ————。


「………私の立場、か」

「私は……思想も何も、組織だろうが何だろうが知ったことじゃあないね。もし、あんたが…番長が危険にあったとしたら、私はあんたを助けるよ。味方としてね。」

「それがもし、同じ魔術師を敵に回すことだったとしても、全世界を敵に回すものだとしても、私はあんたの味方でいるよ」

「悪いね、天邪鬼なやつで」とつけくわえ、小さく笑う。
取り出したジッポライターを少女に向かって投げると、それは柔らかな放物線を描いて胸元へ到達するだろう。
それは、女の作り上げた最高傑作ともいえる、魔術道具の一つ。

「私の魔術の核になる道具だよ。交わることのできない太陽と月の魔法陣を、私が独自に研究して掛け合わせた、他の魔術師にゃあ真似できない最高傑作さ……難しいことはわからないかもしれないが、簡単に言えば、私以外の魔術には作れないし使えない、命みたいに大切なもんだ。」

それを少女に見せるどころか、どれを渡すということは、その理由は言わずもがな。

「私は…番長のように、能力者のように強くない。魔術師と比べれば、私なんて狡猾さがなきゃただの勤勉なマジシャンみたいなもんさ」

「だから……強く、強くなりたいのさ。
 たとえ神に逆らうことだとしても、何かを守れるくらいに強くなりたい…世界を断りを捻じ曲げてでも、だ」

そこまで言ってから、女は小さくため息を吐き出した。
ここまで素直になったのは、初めてだったから。
254 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/05(日) 00:17:30.00 ID:0pc6OT8D0
>>250
武装が見透かされた……”一般人にはバレない様に隠してあった”武装が不意に見透かされた”指摘”された
ナイフに銃、正解である。……ついでに銃弾が10発と付け加えれば花マルを付けることがでした…さて。

「――――――――」

彼が最初に考えたのは、どの手段を使用すれば正面の存在を数秒以内で無力化…最悪殺せるか、であった。
手段(武装)は今この瞬間に言い当てられた。だが手の内(魔術)はばれている可能性が極めて少ないはずだ。
ならば大丈夫、この瞬間。まだこの武装を”護身用”と勘違い出来るほど緩い空気ならば直ぐに…、

彼は間抜けな面の下で、氷の様に冷たく思考する。自分という潜入魔術師という状態。まだ其処には至らない。
だが、その正体に気がつく扉の鍵を掴みかけている存在という不確定要素、自分の安眠を”妨げる”存在をッ!

「(消すか?……いや…….だが”消したほうがよい”のは確実……ッッ)」

「(しかし……”もう一つ【いや】と迷える”…読めない、'相手の能力が読めない')」

「(更にこれはある意味の”機会”…学園都市の学生の……能力…を図るチャンス…)」

「(――――”様子見だ”。このカードで”サイコロふる”……!)」

指先は動かさない、表情も動かさない、先程の様に”意図的”に気配を出し様子を見ることもしない。
少女の発言に《おや、ばれたか》と言った驚いた表情を作り出し、次に困った様に笑い声をあげるだけ。
あくまで装うのは”炭酸が抜けた温いコーラ”の様な相手が見下せる一般人。…ちなみに酔いつぶれてたのは…真実だ!!

「……それが君の能力…いや、その応用かな?……いはやは、まいったな」

「そう、そうだよ。護身用……今日は酔いつぶれていたけど、まぁここは」

「私の様な”無力”な人間には少々危険でね……」

「普段は”人を怯えさせないように”隠してあるんだが……あぁ」

「”臭う”とはどの様に君がこれらの事をわかったのか知らないが…怯えさせてしまったなら」

「”すまない”」

男はゆっくりと言葉をかけた。一つ一つ適当な様で選びながら。あくまで護身用、あくまで自分は一般人。
あえて謝罪を付け加えれ……怪しまれない様に、ついでに匂いに興味を抱き相手が解説するならば”ありがたい”
255 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y :2015/07/05(日) 01:48:42.93 ID:UJc7LlYaO
>>254
//気づくのが遅れてしまい申し訳ないっ……

「あー、まぁ、確かにそうだな」
「先生喧嘩もめっちゃ弱そうだし」

彼がゆるゆる…というよりかは情けない表情を維持する一方で凄まじい思考議論を繰り広げているとは露知らず
女はリーを小馬鹿にしたような表現で、しかし無事男の狙い通りに納得したようだ

彼女はこの学園において、生徒らの能力を監視する組織―――「魔術派」たるものの存在を全く知らないのだ
噂程度には耳にするが,そんなものラノベかアニメの中でやってくれと流すくらいのものであった

「なんか能力のせいでさ、金属の場所とか種類とか構成が分かっちゃうんだよね」
「最近じゃ慣れてうまく制御できてるけど、
 level1の頃は家の中にドライバーがあるだけで気になって眠れないくらいだったんだぜ?」

更に更に狙い通り、彼女はその能力の一端を簡単に解説した
どうやら酔っ払い教師に少々打ち解けた、つもりになっているらしい。


//ちと今日はもうしんどいので寝ます…願わくは凍結でお願いします
256 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/05(日) 01:53:36.59 ID:0pc6OT8D0
>>255
/了解しました!こちらこそちょくちょく遅れてしまい申し訳ない、おやすみなさい!
257 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/05(日) 07:23:52.12 ID:/qtR1MWd0
>>253
「………………ん。」

魔術師から放り投げられたライターを、番長少女は反射的にキャッチする。
──銀と金、二つの輝きが織り成すシンプルかつ美しい造形。
一般人から見ればそれはただのライター……ただの火をつける道具に過ぎないのだろうが、今の彼女の目にはもっと別の”何か”に見えた。
其れは眼前の魔術師のただ純粋な努力による研究の結果、齎されたモノなのだろう。


「……そうか。ありがとな。」

「話してくれて」、と。投げ渡されたジッポライターを返した後、少女は再び背後の柱へ寄りかかる。
──少女は今一度考えていた。
果たして自分という小さな人間が”こんな行動”をして良いものだろうか。
学園都市の頂点に立つ、とか尊大な立場でも無く、ただ単にLevel3の自分が”こんな行動”を実行してしまって良いのかと。

だが然し、其れが良いか悪いか、決断するのにそう長い時間は要さなかった。
魔術師には何やら邪悪な類のものも存在すると聞いた。……自らが手に入れた強さを、弱い者に振るうことで優越感に入り浸る醜い人種。
そしてもしかしたらその中の一人でもが、この学園都市に既に潜入していたりするかもしれない。
──ならば、番長を名乗るの立場故、黙っているわけにはいかない。
高天原いずもは口を開いた。

「……オレは。
”番長”を名乗る立場として、皆を護らなきゃならねぇ。
その対象が同じ能力者であれ、魔術師であれ……オレが誰かを護るってことには変わりはないんだ。

…………だから。オレはもっと「外の世界」に触れる必要がある。」

番長として世界中を護る。
それはたった一人の学生の善行。そして、途轍もなくおこがましくおめでたい夢のような思考なのかも知れない。──アホなのか馬鹿なのか。然し、それを口にする彼女の目はやたら透き通っていた。


─────そして。


「────よし、研究者!
……協力する……! ただしさっき言った通り、俺を”魔術”に触れさせてくれる事が条件だ!
そうしてくれればオレの方も学園都市について、能力者についてある限りの知識をアンタに話そう。」

そして彼女は、右手を差し出した。確固たる意志を持ったその右手には、何処か”番長”としての風格を、一瞬だけ感じさせる。
彼女の言葉は続く。

「…………たった一人の研究者と、たった一人の番長の、ちっぽけな共同戦線だ。
────世界に………………抗うぞ!」


//すみません!お返ししておきます!
台詞の関係上やたら長くなってしまったのをお許しください
258 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/05(日) 07:56:51.84 ID:qguXkzfLO
>>255
男は人知れず”一度心の中で息を吐いた”極度の緊張から解かれたと言っても構わない。安堵の感情だ。
相手の能力がある程度わかった。そしてある程度だが”相手が能力を教えた”つまりは…警戒をしていない

無論、フェイクの可能性がある。能力に自信があって…とあう可能性もある。だが、可能性は低く、自信のある相手は狩れる

……安堵した。安堵したから、少し気が緩んだ。無論、最低限は注意するが

「ふむ……そうか、……それは」

彼のその一言は共感する様な……”彼には能力は無いはずなのに”その様な響きであった。

「それは”大変”だったね…と、僕は同情は出来ない、能力がないからね」

「持たざる者には”わからない”事だろう……故に」

そして、彼は微笑んだのだ。まぁ同じく淡白な笑みなのは確かなのだが。その目は優しいと感じるの事ができるだろう

「教師としては…”よく頑張った”と褒めておこう」

「自分の能力を把握し、自分が操れる様に鍛錬を重ねる……立派な”学習”だからね」

「丸か、二重丸か、花丸か、それは君の心持ちになるが…まぁ”よくやった”」

ふと、彼は自分の昔を思い出す。引き継いだ魔術に操られる。それを制御していく過程。…そうか魔術も能力も

似たようなものか

/おはようございます!返信しておきますね!
259 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/05(日) 11:52:09.43 ID:FP83P6WvO
>>257
「皆を守る、か……ふふふっ、さしずめ、学園都市の守護神だな、君は」

小さく笑い、落ち着いた頃、差し出された右手をしっかりと掴み、透き通った瞳に答えた。


「いいだろう……君と君の守りたいもののために、世界中を敵に回そうじゃあないか」

能力者と魔術師という完全に相対する者の、共同戦線が今成された。
これを知るものがいたならば、もしそれが能力者であれば、少女を非難し、忌避し、魔術師を憎む心はより一層加速するだろう。
もしそれが魔術師であれば、女を批判し、捕まえ、情報を吐かせてからなぶり殺しにするかもしれない。

あらゆる危険をはらんだ共同戦線。
だが、その効果たるや絶大で、途方もない現実を嘲笑う力と力の交換なのだ。
少女の現実とは思えないほどの力と、その威力と理屈を、研究者は己の理論に当てはめ解析し、何度も実験に及ぶ。
そうして、研究者であり魔術師は、少女へあらゆる魔術の理論と世界の理への干渉方法と、それに必要な力を、知識として与えた。
それらは少女へ、番長へどのように聞こえたのか、どのように見えたのかはわからない。
しかし、研究者は途方もない知識を、全てを叩き込む。
番長へ、この学園都市の守護者へと。

今日もまた、この広大な学園都市の中で魔術師が蠢く。
今日もまた、この広大な学園都市の中で能力者が生きる。
己の為に、誰かの為に。


「頭をパンクさせるなよ番長?
私の研究と魔術の全てを叩き込んでやる」








/これは〆た方がいいのでしょうか…?
/とりあえず、お返しです!これで〆であれば日を跨いで絡んでいただきありがとうございました!
260 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y [sage]:2015/07/05(日) 11:59:30.67 ID:eF8YpOevo
>>258

「おぉ、なんかすげー教師っぽい」
「ありがとーな,なんか元気でるわ」

優しい表情で微笑む教師の言葉に,心の底がくすぐったくなるような感覚に,思わずごまかしてしまいそうになる.
それでも,自分の努力は無駄ではないと言われたような気がして,素直に嬉しくもあった.
彼は人に感情移入できるような,根は優しいおっさんなのだろう―――女の評価は,そのようなものとなった.

「先生,案外いい人でちょっとびっくりだわ」
「そのうち幸福な人生が訪れることを願ってるぜ・・・」

失礼きわまりない表現にて教師を褒めつつ,炭酸のほとんど抜けたコーラを一気に飲み干す.
それを片手で粘土のように握り潰し,潰せなかった部分を指でたたみ,更に握り,最終的にぐーにした手のひらに収まるほどの大きさの球体にまで圧縮してみせた.
女が触れただけで,とたんに柔らかくなる―――メンタリストの見せるスプーン曲げのような光景に,魔術師は何を思うだろうか?

「んじゃ,そろそろバイトなんで,いくわ」
「気をつけて帰れよ,おっさん」

右手をひらひらと振りながら,女は路地裏を後にしようとするだろう.
能力によって変形され,球体となった空き缶はそこらにあった居酒屋のゴミ箱へ放り投げられる.

//おはようございます!
//こちらもお返ししておきます
261 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/05(日) 16:47:04.87 ID:YjpAeizMO
夜。それは昼の世界に馴染めぬ者達が––––––異端な者達が跋扈する世界。更に街灯のない細道へ入り込もうものならそこは、己が実力以外に頼れるものは何もない、不良達の巣窟である。
そししてそんな路地裏を、飄々とした様で歩く人物の姿。八橋馨は何時もの如く、風紀委員の活動の一環としてそこを廻っていた。
片手には木刀、腰には真鍮線。ビルとビルとの隙間から微かに届く月明かりがそれらを薄らと照らし出す。


「全く、灯りがないと不便なものだ」

焦茶の長髪は今ばかりは闇に呑まれかけて黒く。きりりと引き締まった表情はかと言って緊張している訳でなく、何事も見過ごさぬようにと常に周囲へ意識をはしらせる。
地面に吹き溜まった砂塵をスニーカーでザリと踏み締め、確と進む。

さてこの女。風紀委員でありながら、バルタザール派魔術師として他の魔術師の動向の監視を組織から請け負っている。
この暗がりに足を踏み入れたのも、単に不良といたちごっこをする為だけではなく、魔術師との遭遇を視野に入れての事である。
果たしてこの細道で出逢うのは、不良か魔術師か、それとも––––––––––––


//戦闘、日常、どちらでもどうぞ
262 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/05(日) 18:16:25.32 ID:Koy1KqexO
>>260
――――男は注意深く彼女の様子を見守った。くしゃりと曲がる様子は飴細工のようである。
どのような原理でその技術を成し得ているのかは、専門家では無い男にはわからないが、ただ思うのは

”魔術と違い楽そうで良いな”程度であった。つまりは”魔術”でも出来る者はいるだろう。
更にはよりちゃんと準備をすればそれ以上の効果を生み出せる魔術も存在するだろう。と

魔術師としては、そう思う。
では先程ふざけて言った”教師”としては?

そこまで気軽に操れるようになるまでどれ程の鍛錬を汗と共にかいた、か……ただの少女が
故に微笑ましく、故に他人事だがどこかで嬉しい……ここで彼は気がついた”自分は教師に毒されている”
気がついた。なぜ自分は様子を見るという選択肢を選んだのか。前ならば……いや全く、この言葉は毒だ。

「先生、…ふむ、いや、私は先生だな」

ふぅ、と男は溜息を小さくついた。
そこで、ふと付け加えたい言葉が浮かんだ。もしかしたら怒るかも知れないが”異能の先達”としてこの言葉を

「ならば…もう一つ先生らしい事を言おうとしよう。……まぁ、あれだね」

「その君の赤は……君が能力をもつ一つの証明みたいなものだろうね」

「ならば厭う事なく誇ってもいいと思うかな….…。”その綺麗な紅葉色を”」

自信の能力を忌む。一部だけ忌むのではなくすべて受け止める。これが私の才能だと胸を張る。
彼女が能力を得る遥か昔より異能と歩む魔術師は、これから未来を歩む若者へこの言葉を

大通りへ去りゆく背中、穏やかに投げかける。相手の反応なぞつゆ知らぬ。怒ったならば相手が悪いさ
……自分が言いたい事は言い終えたと。しゅっ、ぼ。彼はタバコを加え安いライターで火を灯した。
263 :氷熊 右京 ◆flKCwFlbw. [sage]:2015/07/05(日) 20:32:41.07 ID:l/b60ztJo
>>261
「おっと…こんな所に変な奴が居るじゃん。」
路地裏…此処には街灯の明りすら届かず、不良供が居座っている。
まぁ、俺もその一人だけどな…
そんな所に現れた一人の女…
片手には木刀…腰には…何だあれ…線…?
まぁ、この辺で群れるような不良には見えないよな…
だから俺はこの姉ちゃんを“変な奴”と呼んで声を掛けてみた。

「探し物かい?」
あの女、周囲を意識しながら歩いている。
灯りがないって言ってるから、何か落としたのかな…

【八橋に声を掛けたこの男】
【服装は黒いタンクトップに赤いワイシャツ】
【首にはネックレスを身に付け、頭には大仏マスクを被っている】
【こんな男に変な奴呼ばわりされた八橋は果たして――】
264 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/05(日) 21:17:51.20 ID:Ck55iZ5Ho
>>263
声を掛けられ、"変な奴"と呼ばれた女は身体ごとそちらを向く。その拍子に長い髪が月光を浴びながら踊るように揺れた。
氷熊を視界に捉えるや否やすぅと目を細め、まるで獲物を見定める獣のような。
どうやら、想定通り溢れ者に出逢うことは叶ったようだが。果たしてそれが魔術師か不良か、はたまた単なる変質者なのかまではすぐに見当がつけられず、言葉を選ぶのに一瞬の躊躇。

「ふむ、そうだな……敢えて言うならば、君のような輩を探していた所だ」

変な奴呼ばわりは華麗にスルーされた。普段から不良に罵声を浴びせられ続けている為、効果がなかったようだ。
この言動で氷熊が気付くかどうか、彼女は風紀委員である。そして今日の獲物は、どうやら氷熊に定まってしまった様子。

「大人しく家に帰るか僕と遊ぶか。好きな方を選ぶと良い」

不躾な態度で言葉を連ねる。それとは裏腹に今の所は、手に持つ得物を構える様子は無いが……。
265 :氷熊 右京 ◆flKCwFlbw. [sage]:2015/07/05(日) 21:36:15.68 ID:l/b60ztJo
>>264
「俺を探してた…?」
俺のような奴…此処に居るのは不良ばかりだ…
そう、俺を含めて…
彼女は俺の様な不良を探してたのか…
彼女の発言から、彼女が何者か、二通り考えられる。
一つ目は風紀…風紀委員として、この不良のたまり場で不良どもに制裁を加えに来たか…
そして二つ目は…

「遊ぶ?表に出て飯でも食う?」
彼女は俺に、“家に帰る”か“彼女と遊ぶ”かの選択肢を迫ってきた。
だとしたら、彼女は不良っぽい奴が好みで、俺の様な不良に逆ナンを掛けようとこの路地裏にやってきたか…

「俺、氷熊 右京って言うんだ。君は?」
俺は大仏マスクを取り、彼女に対して名前を名乗る。
逆ナン掛けるような態度には見えないけど、名乗っておいても良いかな…
まだ風紀どうか解らないし…
266 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/05(日) 21:58:01.30 ID:Ck55iZ5Ho
>>265
「……。……成る程、すまない言葉が足りていなかったらしい」
「だが、どうやら素直に帰ってくれる訳ではないようだな?」

予想外の相手の動きに瞠目し、思わず苦笑をもらす。まさかこう返されるとは、今までにない反応である。
しかし、仕事は仕事だ。割り切って行動する必要がある……先日の少女とのやり取りは抜きにして、だ。
すらりと長い木刀の切っ先を、不意にそちらへ向ける。距離的にはまだ遠いため直ぐに届くとか刺さるとかそういう危険性は感じられない。ある種警告のようなものなのだろう。

「八橋馨。……そういった"遊び"も確かに悪くなさそうだがな、今は仕事中だ」

その気があるなら後日頼むよと冗談交じりにそちらを睨む。気が強いというか何というか、こんな場所を歩んでいる事からも分かるようにどうにも肝が据わっている。
氷熊の疑惑は果たして確証に変わるだろうか、随分とヒントは出揃っているように思えるが。しかし思い込みは中々解くのが難しいものでもある。
267 :氷熊 右京 ◆flKCwFlbw. [sage]:2015/07/05(日) 22:18:57.49 ID:l/b60ztJo
>>266
「やっぱり、風紀委員だったか…」
信じたくなかったが…
この女は風紀委員として、俺の様な不良供を狩りに来たらしい…
木刀をこっちに向けてきやがった…
だが…

「アンタの言う“遊び”や“仕事”ってのを、俺に実行する権利はあるのかい?」
風紀委員…学園都市の治安を維持する組織だ…
“此処で居座っているだけ”の俺に警告を促して来た。
そう、俺は“居座っているだけ”で犯罪と言える真似を見られた憶えは無い…
いや…

「それとも、風紀委員様の発言は絶対ってか?」
風紀委員の権力がどれほどなのかは解らねぇ…
だが、俺は警察とか、そう言った奴等が大嫌いだ…
俺は質問と同時に彼女に敵意を向ける。
そして俺は、目付きを変え、彼女の目を見て話し、彼女に従う気が無いと言う意思を態度で示す。
268 :白井沙羅 ◆KBsWpQQn4Y :2015/07/05(日) 22:30:28.91 ID:KCo4AZ2oO
>>262
//バイト行ってました…何も言わずに落ちて申し訳ないです

「……かもな。」

背中から投げかけられるのは、励ましなのか褒められなのか、己の肌色を認める言葉。
たとえお世辞だとしても、彼女は頬を赤らめる程度には恥ずかしかったようで―――同時に意図せずにやけてしまうほど、嬉しかったようだ。

「―――……ふふ」

またいつか…そう、例えば学校で、彼の姿を見かけるかもしれない
ならばたまには授業とかいうのを受けに行ってみるかな、などと考えつつ、帰路についたのであった


//絡みおつありでしたっ…!
269 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/05(日) 22:34:55.41 ID:Ck55iZ5Ho
>>267
所謂、屁理屈というものだろうか、しかし一応筋は通っているようにも思えた。暫しの考える素振りの後に、そちらへ向けた得物の先端は一旦、地面へとおろされる。


「ふむ、一理ある。……そうだな。では訊こうか、君は幾つだ?」

反抗してくる事は想定内だ、そもそも不良が素直に風紀委員に従う方が少ない。勿論、特定の人物に対し畏怖の念を抱き退散する事例もあるらしいが、少なくとも今回は初対面である。
明らかな敵意を向ける相手にひるむ事なく問いかけをひとつ。勿論、態とらしさ溢れる高慢ちきも忘れずに添える。

だが、どうやら直ぐ様強引さを見せる事はないようだ。ある意味話が通じる相手とも取れる。納得のいく説明さえあれば引き下がる事だろう。
しかし、それを披露できなければ……想像通り、目前の女は杓子定規な他の風紀委員のように再び氷熊を"仕事対象"と見る事だろう。
270 :西大寺 磨尋 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/07/05(日) 22:43:16.91 ID:PEo4qhZS0

梅雨真っ盛りの中のほんの息抜き、珍しく学園都市に訪れた快晴の日。
公園、と言っても整備された広い芝生に申し訳程度の遊具が付いただけの広場。休日の午後にその原っぱの中央で、日傘をさして座る者が居た。
腰を下ろすビニルシートの上にはバスケット、中には手作り感満載の昼食がきっちりと詰められている。

「お外で頂く御飯も美味しいですわー」

レタスと卵のサンドウィッチ片手に頷くのは年若い少女。
洋風な食事とは裏腹に外見は小袖に袴と幾分昔の和装姿で。尤もこれが制服なので特に問題はなし。
休日にもかかわらず制服なのはそれなりに規律が厳しい学校故にであろう。日曜という日に羽を伸ばして一人で遊びに出た訳である。

「あら、」

風になびいた髪を払いふと気付く。いつのまにやら周囲に数羽のハトが。首を傾げるとその内の1羽の物欲しげな視線とばっちり目が合う。
思い付いて指に付いたパンくずを抓んで落とせば、待ってましたとばかりにぱくりと喰い付いた。

「喧嘩しないで食べるんですのよー?」

すかさずわらわらと集まってくる仲間たち。
仲良くするよう促しながら、小指の爪よりも小さく千切った塊をぽとりぽとりと草原に撒いていく。
一頻り配り終え、鳴き声と羽ばたきで賑やかになった公園で、少女は嬉しそうに二切れ目を咥えた。
271 :氷熊 右京 ◆flKCwFlbw. [sage]:2015/07/05(日) 22:51:58.31 ID:l/b60ztJo
>>269
「17だけど…?」
俺は素直に年齢を応える。
嘘を付いても、多分バレるだろう…
だが…

「…………チッ…」
彼女の質問の意図を予想し、思わず舌打ちが出る。
未成年がこんな所で徘徊しているんだ。
風紀委員なら、スルーはしないだろう…

「それで?どうするんだ?未成年徘徊を目の前にした風紀委員様は…
 おっとそれから、俺はあんた等みたいな警察みたいなのが大嫌いだ。」
俺は敢えて彼女を挑発してみせる。
風紀委員の権力がどれほどかは知らないが、
彼女はその木刀で俺に制裁を加えてくるだろう…
だが…俺はこう言う奴に背中を見せたくない。
コイツがやるって言うなら…

//すいません、続きは後日で
272 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/05(日) 22:57:41.31 ID:/qtR1MWd0
>>259
「…………成立、だな?」

しっかりと、差し出した右手が握られた。そして同時にその番長少女は何とも嬉しそうにニカッと明るい笑みを見せるのであった。
──交渉は成立した。そして成されたのは構成員たった2人の共同戦線。
護る者を持つ”番長もどき”と、自らを変えんとする”研究者”の、世界に比べたら蟻のように小さい協力体制。

だが、それが”世界”に対して大きな意味を持つことは言わずとも明確だった。
───”能力”と”魔術”。相容れないと思われたその道が、今日この瞬間を持って交わる。

「……望むところだ、研究者。
お前こそ、オレの能力に押し潰されるなよ?」

小さな2人による世界への反抗が、今、始まる。


//こちらこそありがとうございました!所用により中々返せず遅れてすみません!
これから絡む機会が増えると思うので、その時はよろしくお願いします!
273 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/06(月) 18:11:10.68 ID:0KU0NAsco

短い安息日は終わってしまい始まるのはいつもの日常というものだ。仕事に学校回る社会
それはどの国でもどんな場所でも同じこと。月曜日、週の始まり、学園都市もその流れは変わらない。

と、まぁ、その日常は皆が一緒というわけでもないのだが…

「……やれやれ…はは…困ったな、うん、ちょっと困ったぞ」

踵が壁についた感触を味わいながら、くたびれたおっさんは正面で自分を取り囲む若者×3を見た
全員が改造したりだらしなくシャツを出した学生服である為にまぁ学生であることは判断ができる。

問題はなぜ”自分を路地裏で追い詰めている”のかであるが何処か嘲る目、ニヤニヤとした笑み
手元の鉄パイプやらナイフやら武装で即攻撃する事なく自分を脅すように揺らす姿を見れば…まぁ、ね?

「うん、何が困っているのかって?ほら、君たちの目的はわかるが私だって…君たちにわたすもの…」

「……………」

どうにか穏便に説得しよう(相手が金を持っていない現実)としたがゴラァ!と非言語で阻止される。
なぜかここの学生であるにも関わらず相手は言語を使用しない種族のようだ。と分類完了
ならばさっさと渡してしまおうと思ったが先日少女に渡した千円が余剰分でこれ以上は餓死してしまう

「(……”[ピーーー]”か?いや、それはない…そもそもこの程度の相手をやっても”笑えてくる”だけだ)」

腰に隠すように刺している刃物と、自らの能力を確認。相手の無力は出きっちゃ出来るが…
そんな事をしてしまえば”更に具合が悪くなる”故にその選択肢も無い……さて、どうしようか



”カツアゲ”という不良(ドロップアウトs)の日常に巻き込まれてしまった男は、薄暗い路地裏で
糸の様に目を細めニコニコと…相手を宥めながら…何か来るのを例えば…”助け”とかを
じぃっと待っていた。……その様子を眺めていた猫はいつものことかとにゃぁと鳴く。そして男も泣きそうであった
274 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/06(月) 20:36:59.13 ID:XcNZgZqWo
>>271
「では僕の言う事はひとつだ。"18歳未満がこんな時間に保護者も連れず徘徊するもんじゃあない"」
「僕は18以上だからこの限りではないけれどね。まぁそういう事だ」

氷熊の想像通り、だろう。親や警察官のように女は説教じみた言葉を流暢に紡ぐ。お前はどうなんだと言われる事を想定してか、後出しのように自身の事も付け足して。
降ろされていた木刀は振り上げられ、再び氷熊へ向けられる…………かと、思われたが意外にもそれはなかった。振り上げられた木刀は女自身の肩で、トントンと場にそぐわぬ軽い音を鳴らす。

「何とも軽い挑発だな。君に嫌われたとして、僕には何の不利益もないというのに。……さて。では君にもう一度、今度は分かりやすい選択肢を与えようか」
「"保護者"と共に大人しく家へ帰るか、"風紀委員"と揉め事を起こすか、だ。簡単だろう?」

どちらを選ぶも君の自由だがな、と鋭い視線のまま女は強気に笑む。果たして氷熊に言葉の意図が伝わるかどうか、それは分からないが。
どうやらこの風紀委員、問答無用で叩きのめす事はしないようだ。もしかしたら最初の木刀も、武力行使も吝かではないという単なる脅し付けのようなものだったのかもしれないと、感じ取れるだろうか。
何にせよ、言動でどちらを取るか示さない限りは、女は直接的な行動はしなさそうである。最初の問い掛けに答えていないという事実を気付く事が出来れば、それはきっと確証に変わるだろう。
275 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/06(月) 20:50:27.25 ID:0KU0NAsc0
>>273
ま、まだいますよー!
276 :氷熊 右京 ◆flKCwFlbw. [sage]:2015/07/06(月) 21:07:49.25 ID:TxZvx8Kvo
>>274
「確かに、簡単だな…」
冷静な奴だ。俺の挑発は、無意味だったらしい…
“大人”って感じだ…
そして再び、俺にもう一度迫られた選択肢…
一つ目は保護者と共に大人しく家に帰るか…
そして、もう一つは風紀委員と揉め事を起こすか…
確かに簡単だ…
俺はその答えを出す為に、掌を馨に向けて…

「これが、答えだ!!」
俺が掌から放つのは火の玉。
火の玉を地面に投げ付けると、馨と俺の間に炎が上がる。
その炎で馨の視界を阻み、俺は逃げる事を試みる。
この女…俺が帰るって言えば素直に帰しただろう…
だが、素直に従うのも個人的に嫌だからな…
能力を使って火を起こし、俺は逃走を試みたわけだ…
そして逃げる際、路地裏の至るところに俺の炎で焦げ跡を遺しておいた。
路地裏ってのが残念だがな…
そう…俺が取った選択肢は帰るか揉めるかじゃねぇ…
“能力を使って暴れて逃げる”だ…
格好は付かないが、俺から仕掛ければ、俺は奴の口喧嘩に負けた事になる。
だからと言って、コイツから仕掛けて来る事は無いだろうな…
そして、能力を見せた時点で…

この女、次に会った時は…

//いきなりですが、〆ます。
//パー速で長引かせてもあれなので。
277 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2015/07/06(月) 21:38:03.41 ID:gYPYka7JO
ウンコうめえ
278 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/06(月) 21:48:58.69 ID:XcNZgZqWo
>>276
突然の炎に熱気を吸い込まないよう口元を守るのが精一杯で、また炎を越えて追いかける事が困難で、女は氷熊を追いかける事ができない。
炎が消えた後に残された小火の後を辿ろうにも、網膜に焼きついた明るさで視界が安定性を失いチリチリとぶれ、これもまた困難である。
見事、目論見は成功した訳だ。常に冷静さを保っていた女も、この時ばかりは苛立ちに顔が歪む。

「……面倒な事をしてくれたものだ」

忌々しげに呟いて、女はクルリと踵を返す。コンディションが悪化していては務まるものも務まらないというものだ。
……だが

「顔は覚えたぞ、氷熊右京。次に会った時は用捨しない……!」

そう、忘れてはならない。この女に名乗っている事を。大仏マスクの下に隠れた素顔を見せている事を。
次も生意気な態度ならば斬り捨ててやる、と。女が風紀委員だとしても物騒な台詞がその場に吐き捨てられる。
荒々しい足音が去った後、その場に残されたものは何もなかった。

//お疲れ様でしたー
279 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/06(月) 23:34:35.62 ID:Pdygpqbvo
学園都市、少々交通量の多い交差点で事故が起こった。
何人かの一般人を巻き込んで、それは青信号を突っ込んで、横断歩道を渡ろうとしていた何人かの人間を跳ね飛ばしてビルへと突っ込んでいった。
運転席は拉げて潰れ、ドライバーは出てこない。車の通り過ぎた後には、何人もの人間が倒れ込んでいて、止め処なく血を流していた。

東郷国充はそれを見届けると、群がる一般人の間を擦り抜けて其処から外れていった。
それから大きな路地から細い路地へ、また細い路地へと入り込む。やがて彼は薄暗い路地裏へと辿り着くと、スーツの内側から携帯電話を取り出した。
今となっては旧式の、折り畳み型の携帯電話だった。それのキーを何度かカチカチと押すと、それをその用途の通りに耳元へと当てる。

「……終わった。簡単な仕事だったぜ。ブレーキとエアバッグをちょっと凍らせるだけでいいんだからな」

「ああ、間違いなく死んでたよ。ぐしゃぐしゃだ。何だったら保険に凍らせとこうかと思ったが、その必要も無かった」

不穏な会話だった。
それがただ、思春期の人間が起こす間違いならば、その方がマシだっただろう。だがその声色は、そして東郷国充の口調と素振りは、その外見同様に軽薄でこそあれ。
"冗談"は欠片も感じさせなかった。何かこう、真面目な商談を行っているような、少なくとも其処に無かった事実をつらつらと連ねているようでは無かった。

「ピンハネすんじゃねぇぞ、糞野郎。次やったら今度こそぶっ殺すからな。……ああ、そうだろうよ」
「俺の代わりはいくらでもいる。だが、テメェの代わりだっていくらでもいるだろうが」

それから、彼は通話を切ると、彼の周囲を始めとして、一瞬だけ強力に温度が下がり、そして握る携帯電話が凍り付いていく。
そしてそれを足下へと放って、粉々に踏み砕いた。
280 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/07(火) 00:13:05.39 ID:5i+QbxTbo
>>279
/まだいらっしゃいますか?
281 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/07(火) 00:16:19.66 ID:cvSRXwGao
>>280
/いますー
282 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/07(火) 00:30:15.99 ID:5i+QbxTbo
>>279
──ぱきりと、氷が割れる音が路地裏に響いた。

彼が……東郷国充が、携帯電話を凍りつかせてしまった際についでに薄く張り付いた地面の霜が”割れる音”だ
よく耳を澄ませなくとも、冷たさを耐える様なため息が耳につくだろう。目を見張らなくとも白い息の痕跡が見れるだろう

偶然か、狙ってか、路地裏の入口辺りにスーツをだらしなく来た男の姿が見て取れるだろう
彼はこの寒さに不思議そうに目をぱちりとさせて、ごしごしとワイシャツの上から腕を擦っている。

年齢は”おっさん”と呼べるものである老けた顔、ほうれい線が目立つ、肌は張りもなく、目はどこか死んでいる。
少なくともこの学園都市の学生には見えることはないだろう、だとしたら消去法で関係者ということは分かる。

もし胸のバッチに注目すればそれは”教師”を表しているものだと分かる

「……ん?こんな場所に人がいるのかい? まぁ…なんというか……”危ない”よ?」
283 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/07(火) 00:32:10.50 ID:5i+QbxTbo
>>281
あ、ではよろしければ絡ませてください!
284 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/07(火) 00:51:35.85 ID:cvSRXwGao
>>282>>283
東郷の神経が一瞬。その凍結は決して彼自身へと影響しないと言うのに、凍り付いた。簡単な仕事だったが故に。少々、気が緩んでいたのかもしれない、と東郷は思った。
この領域は今、真冬の如き寒さに満ちている。そこに入り込んできた、あの中年の男の吐く息を見れば分かる。それに間違いは無い筈だ。
そして東郷は、その寒さに頬を赤らめる事もなければ、白い息を吐く訳でもなく。その寒さの主が彼である、という事は、察しが良ければ分かってしまう事だろう。
ならば、どうする、と思考する。東郷は激情家ではあるが、頭の回転が鈍い訳では無かった。故に、短絡的に殺害に至る、という極論を見せる訳にはいかない、と。
そういう思考を持つことは、出来ていた。だからこそ、その言葉を聞く事が出来た。

「……あ?」

その問いかけは、余りにも拍子抜けだった。同時に、東郷は強く安堵した。
その口振りからすれば、東郷の先程までの会話は聞いていないのだろう、という察しは容易についた。ならば、どうすることもない。
学園都市に彼の様な歳を取った人間は、それなりに珍しいが……教師であると言うのならば、特別警戒するものでもない。
知らないならば、適当に切り抜ければいいのだ。この一帯に能力を充満させている理由など、黙っていれば分からないし、追及されれば適当な言い訳を吐けばいい。

「……チッ、分かってんだよそのくらい。さっさと帰りゃあいいんだろ、さっさとよぉ」

その外見に違わない、粗暴で、反抗的な口調で彼へとそう言った。

/こちらこそ、よろしくお願いしますー!!
285 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/07(火) 01:03:56.99 ID:5i+QbxTbo
>>284
まるで邪魔者扱い……いや実際に”邪魔者”であるが、荒い学生の言葉に男は腹を立てる…
そういった様子も無く、少々満足した様子で僅かに肯けば、体を反らし大通りへの道へ誘った。

「いい返事だ。学生というものは”それくらい元気がなきゃ”ね」

今のこの状況、路地裏に冷凍庫のような冷気が蔓延っている状況に男は特に疑問を抱いていない。
いや、僅かに眉をしかめてはいるが、正面の彼の”能力”と理解していないようで”尋ねる”事も無い。

ただ学園都市の冷房機能が部分的に狂ったんだろう、といった様な様子であった。

「…あぁ。帰りは気を付けてくれたまえ」

「先ほど大通りで事故があってね。…大きな事故だった。死者も何人か出たみたいだ」

「──実に、教師として心が痛むよ。」
286 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/07(火) 01:20:26.31 ID:cvSRXwGao
>>285
東郷国充は思考を続ける。今はまだ、彼の琴線に触れるものはなかった。正常に考える事が出来ていた。
この男は、本当にただの教師……で、合っているのか、と言うのが東郷の疑問だった。少なくとも、自分に対して何らかの殺意や、敵意を持っていない事は明らかだったが。
何か、こうして反抗的な自分に対して思うところも無いように見える。無論そういう教師もいるだろうことは分かっていた。それに、それが唯の考え過ぎだ、というのも頭にあった。
だが一つ気にかかるのは、この異様な寒さに何か疑問を持っているように見えない事だった。何か、勘違いをしているのならそれが一番良いが。
然し自分から言い出すのは流石にできなかった。だから、何食わぬ顔で、彼に対して顔を向ける事も無く、過ぎ去って行こうとした。だが。

「……事故、か」

思わずその歩みを止めた。当然の事だった、この状況で、自分が実行した事故に見せかけた"暗殺"の話をされるとなると、疑惑は更に増えていく。
無論、それが確実に統合と結びつく物かと言えば、そういうわけでもないが。警戒心は、より深まっていった。
まだ、この男を野放しにするわけにはいかない、と思った。ただ単純に、彼が教師として心配した可能性の方が高いだろうが。"その可能性"も、無いわけでは無い。

「馬鹿馬鹿しい話だよなぁ、"一人のミスで無関係な人間が大勢死ぬ"なんてよぉ」
「教師じゃなくたって心の一つや二つ痛むだろうよぉ。それに……"明日は我が身"かも、しれねぇしなぁ」

だから、探る事にした。彼がそう言う人間か、そうでないか。
一人のミス、車のドライバーだ。彼は大きな失態をやらかして"ああなった"。そして、それを知った人間は"同じようにしなければ"ならない。
察しの良い人間ならば分かるだろうし。そして、それで特異な反応が無ければ、ただの通りすがりの、中年の教師、でということでいいだろう、と。
287 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/07(火) 01:49:37.80 ID:5i+QbxTbo
>>286
教師は……男は、”授業で手を上げた真面目な生徒の話を聞くように”言葉を挟まず黙って…
じぃと彼の目を見ながら、話を聞くと『まったく』だとボヤいて、返す言葉はどこか”悲しげ”であった

「”全くだ”故に人は生きる際には…いや”何か”をする際には”十全の注意”を持って怠らなければならない」

「最初は、この手段は正しいかを考え、次にこの”タイミング”は正しいかと考え、行う時はミスはないか…」

「そして終わった後も”気を抜いてはいけない”──ほら、言うだろう?【遠足は帰るまでは遠足です】って」

変わらず、男は少年から目を逸らすことなく。生徒の質問に答える”教師”のようにその言葉は硬い
ただ、その手は彼の右ポケットに自然に差し込まれていた。タバコを探すように、小銭を探すように。

ガサゴソ、ガサゴソと”何かを探すように”

「……あぁ、そうだ。聞いたところによると事故は”能力”に関係がある………らしいね?」

「────これも”聞いた話”だが。どうやら犯人は”氷”に関連がある能力者らしい。まったく」




そして男はニッコリと、くたびれた覇気のない、老人の様な笑みでもう一度”気をつけろよと”付け加えた
288 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/07(火) 01:52:18.09 ID:5i+QbxTbo
>>286
/遅れて申し訳ありません!!!!!!
289 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/07(火) 02:08:19.46 ID:5i+QbxTb0
>>287
ついでに訂正

「”全くだ”故に人は生きる際には…いや”何か”をする際には”十全の注意”を持って怠らなければならない」

「”全くだ”故に人は生きる際には…いや”何か”をする際には”十全の注意”を持ってそれを怠ってはならない」
290 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/07(火) 02:10:54.56 ID:cvSRXwGao
>>287
>>288
確定だ。最早疑う余地は無い。全ては覆った。此処からはもう"何も我慢する必要は無い"。この男を生かしておく選択肢は無い。
この男の素性がどういうものか、東郷国充にはどうでもよくなった。そういう人間が接触する事は知らされていない、彼は単純に、この"依頼"の中のイレギュラー。
足を止めて正解だった。警戒しておいて正解だった。自分の勘を信じていて、"正解"だった。

「ああ、それとよぉ……こうも言うよなぁ。"来た時よりも綺麗に"、ってなぁ……」

ぱき、ぱき、という音がした。周囲の冷気がより強くなっていった。
東郷国充から、わざとらしい苛ついた表情が抜けていった。両手をポケットに突っ込んで、靴のつま先で地面を軽く、とん、とん、と叩いていた。
その度に、ばきり、ばきり、という音がした。何かが割れるような音。"氷が割れるような音"。


「――――――――――――――――――回りくどいこと抜かしてんじゃねぇぞ狸ジジイッ!!!!!!!!!!」


音の発生源は"足下"。地面は既に、凍結を開始していた。東郷国充の能力は、既に彼を凍てつかせようと牙を剥いて、吠え声を挙げていた。
彼の下へと、一直線に"地面が凍っていく"。そしてそれに触れたのならば、その部分から少しずつ、地面と同様に"凍結させようとするだろう"。
対象へのダメージ、それと同時に対象の移動を制限する事を目的とした最初の一手。東郷国充は、Level.4の能力者であり。そして、"激情家"だった。

「テメェが何様かどうかなんて、"俺個人としては"一切興味ねぇ! この後全部バレようと、俺の知ったことじゃねぇ!!!」
「だが、テメェは俺を虚仮にしやがった! あまつさえ俺の遂行を邪魔しやがった!! テメェは、許さねぇ!!」

「苛つくんだよ、馬鹿にしやがって。テメェも粉々に砕いてやる……!!」



/大丈夫ですよー
291 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/07(火) 02:43:03.51 ID:5i+QbxTbo
>>290

───彼との会話で男にとって予想外があったとするならば彼が思ったより”キレやすい”事であった。
つまり今、少年が激情に滾りガソリンが引火した様に激しく叫ぶ”今”が男が予期しなかった展開だ。

目測を誤ったとも言えようか。

男は心の中で近頃の若者の切れやすさと己がそれを理解してなかった愚かさを同時に呪いため息をついた。
既に相手は戦闘態勢。彼が望むことなど出来ない。空気は凍りつき場の展開はいらぬ方向へ動いている。

「(あぁ”予想外”だ。───強大な能力を操る者は”冷静”でなくてはならない。が…まったく)」

「(事故の反対方向を気にもせず歩く”若者”。怪しくない訳がない!…だから接近し、話しかけ)」

「(”カマをかけた”聞いた話なぞ無い……全部嘘だ、うまく載せれたと考えていたが…くそっ!)」

「(こうなった以上はこれ以上の”情報の収集”は望めない。”冷静な話し合い”も不可能だ──)」

「(──ならば私はどうする?)」

”こうするしかないよな”と彼は声無き声で呟いた。───そして”自らの隠遁魔術”を解除する。
”自分が相手に向かって凶器(デリンジャー)を構えている”という姿を隠していた魔術を──解除!
銃口の狙いは既に定まっている…相手の心臓では無く、膝関節。[ピーーー]つもりなど毛頭ない……後は

「”引き金を引くだけだ!!”」 ──そして、銃声が木霊する。殺意無き暴力

相手から見れば”瞬きをしたその次の瞬間には既に完璧に銃を構えられていた。”動作など無い
氷が迫る…迫るが”銃弾”の方が”一手”がそして、圧倒的に”速度”が速い──さて、だが。しかし。
銃弾程度で能力が止まってくれたよし、止まらなければ、避けようとした男の片足を捉え食らいつく!
292 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/07(火) 03:11:43.83 ID:cvSRXwGao
>>291
相手が取った手段は、小型の拳銃だった。それが予想できていなかった訳ではないが、然し……ここで、能力演算を停止させれば。止めてしまえば。
"先ず最初の機会"を逃す事になる。戦闘とはいつまでも続く物でもない他愛のない一撃が、何時の間にかその戦いを終了させている、そういうことも十二分にあり得る。
だから、それを逃したくは無かった。それに、相手が持っているのは小型拳銃、それも『デリンジャー』。殺傷能力は通常の物よりは格段に"低い"。
急所に当たれば、勿論致命傷だ。だが、狙いは、そうじゃない。ならば。

「だから、この俺を!! 嘗めんじゃあねぇっつってんだろがぁ!!!!!!」

その弾丸は、容赦なく東郷の右足の関節を抉った。じくり、と先ず、何か熱いものを感じる。
東郷国充は、その放たれた弾丸を躊躇なく受け止めた。様々な要因はある。狙いが急所では無かった事、銃が小型の物であった事、しかしそれよりも、何よりも。
"彼の銃弾からは殺意を感じられなかった"こと。それが決定打だった。故に、東郷はその弾丸を右足で受け止め、そして"耐える事"が出来た。
そして、東郷の放った"凍結"は。彼へと"辿り着くだろうか"。

「容赦なく、躊躇なく。他人に対して銃を向けて、そして撃てる判断力と、それを実行に移せる"イカれた"精神」
「それも、殺意を抱かず、そして正確に俺の足を狙って。只者じゃねえのは分かってる。だがなぁ――――――――――――」
「この俺だって学園都市の"闇"で生きてんだよなぁ。何人の人間を砕いて来たのか分かんねえくらいに! 分かるか、その意味が!!」

もしもそれが、彼の足下へと達したとき。彼に触れた時。冷気は先ず彼の靴を凍てつかせた後、内部へとその冷気を伝わらせていく事だろう。
そしてその冷気は彼へと達したものとはまた別に――――――――――――細く、彼の後方へと伝っていく。然し、それが何かを起こす事は、今は無い。


「戦う気の無い人間一匹、殺すことなんざ爪を切るよりも雑作も無いって事だ」


激情、身を焼くような激怒に駆られながらも、銃弾に足を撃たれながらも、東郷は、攻撃の手を緩めようとはしなかった。
然し、激怒がアドレナリンを放出し痛みを誤魔化しているが、東郷の、少なくとも機動力が奪われている事は間違いでは無く。足を引きずるように、二、三歩、下がった。
293 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/07(火) 03:50:03.57 ID:5i+QbxTbo
>>292
──よし、なのだ。あくまで能力が止まってくれたら”よし”つまりは”止まってくれたら儲け物”であり
相手の能力を止めることが目的では無い。まぁ22口径ライフル弾を悲鳴なく”耐えられた”のは少々意外

「いや、私が”舐めていた”だけの事だね…訂正しなければ、近頃の若者はいや君は”強い”」

そして男は押し寄せる氷の魔の手にあくまで冷静に、静かに片足を握らせた。──足裏から突き抜ける冷気
脳内を撫でたそれは”嫌な事がバレた時に覚える悪寒”にも似ていた。つまりは当たり前だが”よくない”物だ
彼は咄嗟に僅かに足を振るい冷気を払いのける……氷の線は背後に伸びており、相手は何かを企むか?

だが、なんでもいい。なんだっていい、何もかもの企んでくれて構わない
なぜならば既に”手段はとった”だから構わない。おそらくは自分の”障害”にはならないからだ

「”強い”──素晴らしい、素晴らしいが…ただ、”それだけのことだ”」

既に彼の姿は”その場から消えていた”残るものは青年の足に残された、彼の足をじうじう痛ませる銃弾のみ
最初から何もなかったように、男性の姿なぞ無かったように、青年の目の前には自らの”能力後が残るのみ”

「無駄なんだ。無駄無駄──”強いだけじゃ無駄なんだ”」

ネタばらしは簡単である。ただ彼が意識を逸らした瞬間、”演算が切れなくてもいい”一瞬でも傷に意識が取られた瞬間
そのタイミングで銃を収め、能力によって自身の姿を透明にしただけの事…いわば発砲は囮と次の一手の誘導。
挑発する様な声は路地裏に木霊する。足音は凍りつく音と遠くからの”サイレン音”に消え、足跡も冷気で即覆われだろう。

「さぁ”終わりの一手だ”」

──そして青年の前方から”確かに一歩踏む音”が確かに聞こえるであろう。
挑発するような声、攻撃をするぞ!と知らせるような、だがそれはフェイント──男にとっては、”逃亡”の為の一歩であった。

/あ、確定で視線を外したような感じにやっちゃってますが、もし相手から一瞬でも目をはずさねーよ!って
場合でしたら消えた瞬間をみた、と感じに返していただいても構いません!!!あ、靴は半分位凍ってる感じです!!
294 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/07(火) 04:11:58.82 ID:cvSRXwGao
>>293
凍結は不十分だ。だが、まだいい。むしろ、相手に"凍結"が通用したことが分かったならばそれでいい、と東郷は一人思考する。
彼の背後に伸ばした氷の線。それは、"彼の逃亡を阻止する"為の物であった。それは彼の背後で広がり、何時でも彼を路地裏から逃がさないように"準備"していた。
戦う気が無いのならば、取る手段は"逃走"だ。故に東郷は、彼をこの路地裏で確実に始末する為に、既に網を張っていたのだった。
だが。ほんの僅かに、銃弾に撃たれた痕に意識を向けた時、それが東郷国充という男の不運だった。

「……何だと、クソッ!!!!」

その刹那に、彼の姿が"跡形も無く消えていた"。この一瞬でこの場から去っていく事が出来るなど、通常ならば考えられない。
空間転移、ならばもっと早くこの場から逃げ出す事が出来た筈だ。ならば……考えられるとするならば、高レベルの偏光能力による、人体の透明化。
それを裏付けるように、この場にはまだ気配を感じる。移動しているのか、していないのかまでは分からないが、兎も角ここには、まだいると、分かった。
だとしたら、どうするか。東郷国充ならばどうするか。無論、殺害する。弾丸は一発を使ったのみ、まだ残っているはずだ。
姿が見えないとは、即ち絶対安全圏である。そしてその内側から、それを撃てば――――――しかし、あの男に殺意は感じられなかった。
然し、とまた思考が一転する。先の殺意が無かった事は、ただ単純に、"その一撃で殺す気が無かった"のだとすれば。

「ふざけやがって、テメェ……ムカつくんだよ、見えねえ場所からべらべらと偉そうに、陰湿なんだよ……」

悪態は反射的な物だった。東郷国充は苛立っていて、然しその苛立ちの中でも思考を必死に回していく。
次の一撃で、殺すのだとしたら。それは首か、頭か、心臓か。至近距離から撃たれれば死ぬ。だが、もし。これが逃走の手段だとしたら。

「――――――――――――チクショウがぁ!!!!!」

東郷国充は。自分の身を守る事を選んだ。
首、頭部、心臓に、演算を集中させて、其処に高密度の"氷の装甲"を創り出す事によって、急所を撃ち抜かれないように防御する事を、選択した。
即ち。――――――――――――東郷国充は、この一瞬の間のみ。彼の逃亡を妨害する演算処理を、放棄していた。
295 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/07(火) 04:44:09.31 ID:5i+QbxTbo
>>294
彼の行動は”正解”であり、彼の”狙い通り”であった。開かれた逃走経路、相手に”今”阻止する術は無い。

「(………そうだ、それでいい。もし狙ってくるなら私は”容赦なく”撃った。その”心臓を狙って”)」

「(激情だけの人間と見えても、実にその思考は彼の能力の様に”冷たい”──丸を与えてもいいだろうね)」

演算とやらを最大限にしているのだろう、分厚い氷の鎧を急所に纏う青年を眺め、あぁ、素晴らしいと男は笑う。
この装甲ならば現在の武装では太刀打ち出来ない。そもそも直接殺し合えば男は青年に”勝つ”事は出来ない。
それを味あわせてくれる能力行使、その実力と思考能力。魔術師としては非常に脅威でしか無いが

彼の職業……教師としてはこれ程の才能の”原石”を見るのは”快く”もあった。

そして”背後”には罠があるならば、態々それを”踏み抜く事も無い”逃走経路は青年の横を通り大通りへ出る事で…
男性はすらりと人の手から抜ける魚の様に青年の傍を通り、そのまま悠然と”通り過ぎれば”……無論の事だが
警戒はしない”相手を怠らない”逃走の行動にさえ十全の準備と最新の注意を払い迅速に駆け抜ければ──通りである。

ゴール地点のテープの様に路地裏の闇を振り払い、迎える観客の様な白銀色の光を浴びる。すぐに人に紛れて魔術を解く
大幅な能力行使と銃声による”サイレン音”つまりは警邏隊の合図を耳にしながら、彼は楽しげだが疲れた様に呟いた。

「…あぁ、銃を破棄しなければ行けなくなった。再度用意するには手間がかかるんだが……仕方ない」

「まぁ、今は最後に囁いた”[ピーーー]気だけの人間一匹、逃げることなんざ爪を切るよりも雑作も無いって事だ”」

「このセリフを聞いて”彼がどんな反応をするか”それだけを考えて気でも紛らわそう」

流石に悪趣味だったかなあ?と考えながら男はタバコを加え、安物のライターでしゅ、ボと火をつけた。
漂う紫煙に思いをはせる。今度会ったら即殺されるだろうなぁと考えながら、男は学園都市の夜のその姿を消したのであった…

/というわけで…えっと、時間も時間なので逃走させていただきました!
/ちゃんと戦わず申し訳ないです…こ、今度は!!と絡みありがとうございました!

296 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [saga]:2015/07/07(火) 04:46:14.51 ID:5i+QbxTbo
>>295訂正
「まぁ、今は最後に囁いた”[ピーーー]気だけの人間一匹、逃げることなんざ爪を切るよりも雑作も無いって事だ”」

「まぁ、今は最後に囁いた”殺す気だけの人間一匹、逃げることなんざ爪を切るよりも雑作も無いって事だ”」
297 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/07(火) 04:59:16.20 ID:cvSRXwGao
>>295
一秒、二秒、三秒、四秒。それが二桁を刻んでも――――――――――――来ない。銃撃は、何処にも来ることは無かった。
そうして、東郷は自分の判断ミスを垣間見た。つまりは、東郷は、あの教師の排除に"失敗した"。
捕まる事は、恐らくだが、無い。だが、面倒な事にはなるかもしれない。この事をばら撒かれでもしたら、自分の立場が危うい、と。東郷は、冷や汗を伝わせた。
真正面からやりあえば、東郷国充に負ける気は無かった。しかしこれは、つまるところ。深読みに深読みを重ね続けて、そしてそれを外した、東郷の敗北だった。

「……な」

氷の鎧が、地面へと落ちていく。辺りに満ちる冷気が、段々と霧消していく。
頭に、血が昇って行った。彼への怒りと、自分の失態による、戦闘中の物とは比べ物にならないまでの怒りだった。
足下の氷を踏み砕いた。両手は思い切り握り締めて、爪をくいこませ、そしてそこから僅かに血を滲ませていた。


「――――――――――――ふっざけやがってぇッ!!!!!!」


何度も何度も、氷を蹴りつけた。然しずっとそうしている訳にもいかない、警備員にでも見つかれば面倒に面倒を重ねる事になる。
路地裏の、奥深くへと溶け込んでいく。サイレンの音から逃げるように、太陽の光から逃げ出す様に、東郷国充は、その身に迸る激情を必死に抑え込みながら。
その場から、去っていった。

/絡み乙でしたー!!いえいえ、こういう駆け引き的なのも楽しかったです!!ありがとうございましたー!!
298 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/07(火) 18:03:00.41 ID:etCfhTHXO
学園都市、廃墟群。
艶やかで輝かしい電飾に彩られた都市中心部とは離れた、ガラクタ置き場とも呼べる場所に、女が一人。

白いワイシャツを腕まくりし、くわえ煙草をふかしながら、瓦礫の上に足組しながら座る。
自身の両手の掌を見つめ、我慢出来ないといった風に小さく声を漏らす

「神に抗う力、か……ふふっ…とんだお伽話だが…面白い」

妖しげに笑う女は、銀縁の眼鏡を指先で押し上げると、そのまま空を見上げる。
曇天模様の空は鉛色を湛え、明日も雨である事を予感させる。
今でこそ雨足は遠のいているものの、数刻前までは小雨だったのか、ひび割れた地面や崩れ落ちた壁はしとどに濡れる。
しかし、不思議なことに女の座っている一帯だけがくり抜かれたように乾き、その近くには灰と綺麗なまま脱ぎ捨てられたような服が数着散乱しており、異様を呈していた。
その服の中から灰が出てきているような、はたまた、"それを着ていた者が灰になった"かのような。
雨上がりの廃墟群の一角に、異様を呈しながら小声で笑い続け、紫煙を燻らす女は、一言だけ、空が残した雨粒のように呟く。

「もう、誰も"閃光魔女"の名を馬鹿にはさせないからねぇ…?」

とん、と軽やかに立ち上がり、女は落ちている服の一着に手を伸ばし、それを持ち上げる。
首元には、知っている者は知っている魔術師の過激派集団のエンブレムバッヂが付いているのがわかる。
女子供に喜んで手を掛けるような集団であり、実力自体は未知数であるものの、危険であることにかわりはない。
そのバッヂがついた服が目測でも5〜6着。
一体何が起きたのかは、この学園都市では言わずもがな。

「さぁて、もう一服しようかね」

女はは、持っている服と落ちている服からバッヂを乱雑に引き千切ると、それらをポケットにねじ込み、改めて瓦礫に腰を下ろす。
この場には、灰と女と瓦礫だけ ————。



/絡みづらいかもですがよろしければ誰でも…
/遅レスお許しください…
299 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/07(火) 18:36:11.00 ID:ykGRZ0Oio
>>298
その耳に届くだろうか、徐々にその場へと近づいてくる、ひとつの足音が。その目に捉えられるだろうか、ガラスを無くした窓枠を、すぅと横切るひとつの影が。
もしそれらを感じ取り、方向を見定められたのならば、やがて現れるのはひとりの女……いや、レイカから見たのならば少女と言うべきか。
傘を持たずに外を歩いたらしく、白いシャツは水気を帯び所々で肌にぴたりと張り付いて。自慢の長い髪も同じく濡れて幾つもの束を作り、しなやかに揺れる事はない。

「……おや、こんな所で人に会うとは」

やけに白々しく驚いて、そちらへと向かう手には木刀、腰のベルトには何やら金属質な線。その姿をよくよく見れば、確認できるのは風紀委員の証。
女の周囲に散らばった部分的に破れた服には気づいているのかいないのか、それらへ露骨な視線を向ける事はない。
飄々とした風に笑い掛けるその様は、堅苦しい風紀委員とはどこか違うと、感じられるかもしれない。

ここは学園都市の外れ。普段ならば人気は無いに等しく、あったとしても不良が殆どで……その"殆ど"に入らないような人間に会う事は、珍しい。
これは期待出来るかもしれない、と。八橋馨は、少しでも気を抜くと歓喜に歪んでしまいそうな口角を抑えるのに内心苦労していた。

//よろしければ……!
300 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/07(火) 19:00:22.12 ID:etCfhTHXO
>>299
凛とした声が鼓膜を打つと、反応に首を動かした反動で煙草の灰が地面へと力無く落ちる。
視線の先には、雨雲のほうが余程黒いと思わせる程に真っ白な少女。
見られたか ————と嫌な汗が背を伝いそうになるが、それを理性で抑え込み、至極軽い声音で首をぐらりと向ける。

「やあ、こんな所で人に会うとは」

同じような言葉を返しながら、腰を下ろしていた瓦礫を軽く蹴って降りる。
こつ、こつ、とヒールの音を響かせ、二歩ほど相手へ歩み寄ると、女はゆっくりとした動作で煙草を離し、ポケットから取り出した携帯灰皿に押し込むと、漸くもって煙と言葉を盛大に吐き出す。

「むしろ、私のセリフだ……風紀委員の子どもがこんな所で何してる」

肺胞を潰されるように低い声音だが、敵意は無く、ただ一介の少女であり学生が、廃墟群で何をしているのか心配しているようで。
しかし、その中に妙な熱を持った言葉も。


「私の実験場で、何をしている ————? 」


警戒する様子は無いものの、妙な威圧で相手の瞳を捉える。
301 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/07(火) 19:32:48.00 ID:ykGRZ0Oio
>>300
「何って、そりゃぁ––––––」

風紀委員の仕事じゃないか、と。至極当然の言葉であるが、恐らくは女の疑問の全てが解消された訳ではないだろう。
ヒールの硬質の足音とは違い、柔らかみのあるゴム質が床を踏み締める音。
こちらへ数歩近づく女には怯まず、立ち止まったレイカの数m手前で歩を緩め、見計らったかのように"地面に落ちている灰"を見やる。


「"異端者"を探すついでに足を伸ばしてみたところで、君を見つけたのさ。……それで、実験というのはコレかい?」

つい、と視線が動く。灰くずから流れるように女へ目を向けて、また、ニヤリと笑んだ。
威圧に屈せず対等に振る舞おうと胸を張り、"ただの少女ではない雰囲気"を言葉尻から醸し出す。
思考が辿り着くだろうか?この学園都市に、他の魔術師も潜入している事に。そしてこの目の前の少女も"それ"だという事に。

//あああごめんなさい遅くなりました……!
302 :ガイスト・ノイラート ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/07/07(火) 19:48:52.83 ID:rfer6LHp0
学園都市は広い。およそ十万を超える規模の人間を収容できるほどの施設といえば、その大きさも伝わるだろう。
近代的な施設が立ち並び、煌びやかなネオンの光すらないものの、夜は街灯の明かりで道に迷う事は無い。

だが、それだけの人間が生活しているとなれば当然、それ相応の暗がり≠ニ言うのは確実に存在する。
光がある所必ず影がある様に、住宅と住宅の間には隙間がある。店と店の隙間には路地があり、其処から先は光が消える。
純粋な正義、若しくは絶対的な法則に支配されない空間。路地と路地に挟まれた場所で起こりうるものは絶望≠ノ他ならない。
光り射すところが希望であるならば、逆もまた然り。僅かに響くくぐもった声が、しんとした静寂に投石する。

声のする方向に目をやれば、其処に倒れ伏しているのは初老にもなりそうな男性が一人と、それを見下ろしている男が一人。計二人の人間がそこに居る。
周りには僅かに魔力の残滓が振り撒かれ、初老の男性が僅かに流す鮮血とはまた異なる血液が、よく見ればわかる程度に散らばっているだろう。
男は拳銃を男性の頭蓋に照準を向けて構える。僅かに顔を上げて男を睨む初老の男性の瞳には明らかな殺意と、言葉にならない程の怒り。
明確な殺し≠フ覚悟を持ってきていたようで、倒れ伏しながらもなんとか腰に隠し持っていた触媒≠右腕で探り取ろうとするが――――もう遅い。

此方の右足で腰に伸びかけていた右腕を踏み潰す。ミシリと言う音が響き、呻き声がさらに増して路地裏へと木霊する。
気にすることは無い、なんてことは無いんだという表情をそのままに、彼は右手に携えた回転式拳銃≠フ撃鉄を親指で後ろに倒した。


「なァ? 『ギブ&テイク』って知ってるか?」
「一つのものを手に入れるには一つの代価が必要で、何かをすれば何かをされる」
「二兎追うものは一兎も得ず。捨てる神あれば拾う神あり」

「つまり、何が言いたいかっていうとだな…………」


                   
                          「自業自得だ」


引金に手を掛け、それを撃つ。開店した弾倉と、乾いたガラスの弾ける音。まるで視えないなにか≠ノ体を捩じ切られるようにして、男性はその体躯を弾けさせた。
血飛沫が飛び、知覚に居た彼に赤い斑点を付ける。だがそれだけでは弾け飛んだ血液は満足しないらしい。
そう、もしかすれば偶々≠アの現場を見ていた。若しくは現れた貴方に、血飛沫がかかる可能性は――――――――――ゼロではない。
303 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/07(火) 19:49:21.59 ID:etCfhTHXO
>>301
女の思考はすぐさま音を立て、歯車かパズルのように、相手から紡ぎ出された情報と視覚から得られる推測とを嵌め込み、廻し、違和感があればまた組み直し ————大凡考えられないスピードで状況の把握に徹する。

少女は威圧に一切の怯みを見せない ————ともすれば、現実非現実を行ったり来たりしているような人種か ————非現実の毎日を送る人種か。
何よりも、少女の口ぶりと、灰になった"何か"に対する反応。

それを見れば、自ずと合点がいく。
だからこそか、少しだけ声音は柔らかく、しかし確固たる意志を含ませる。

「異端者とは随分な言い掛かりじゃあないか…」




「確かに、実験っていうのは"それ"だ……無論、それは"結果"だがね……あんたも私の研究を盗みに来たクチじゃあないだろうね?」

だったら ————否、最悪のケースはしまっておこう。
相手は風紀委員、学園の人間だ。
素性はどうあれ、とある共同戦線を結んだ日から、学生は研究対象であっても排除する対象ではない。
むしろ、守ることが目的なのだ、血生臭い所は見られて気分のいいものじゃないだろう。

「あんた ————"どっち"なんだい?」

確認、それは相手が味方か敵かの、簡潔な二択。
304 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/07(火) 20:20:59.31 ID:ykGRZ0Oio
>>303
「まさか、僕は"実験"だとかそういう事には興味ないよ」
「それにしても、"どっち"ときたか。……そうだね」

片手を顎に添えて思案。この女に答えて良いものか、果たしてまだ確証は持てないが……。

「……少なくとも、君の敵ではないよ。"今の所は"、だがね」
「君こそ、"どちら側"なんだい?」


––––––悩んだ末に、答える。視線はじっとりと粘質を帯びて、舐め回すようにそちらを観察する。もし仮に魔術師なのであれば、更に質問を投げかけなくてはならないだろう。
自分は魔術師でありながら身分を能力者と偽り、学園都市に潜入している身だ。組織から託された使命の事もある、確認しない訳にはいかなかった。

こい、と思った。はやく、はやく答えてくれ。興奮でカチカチと小刻みに震える歯をぎりと抑え込んで、口角がつり上がる。
脳内では思考が渦巻いて留まる所を知らず、歓喜に打ち震える身体を制御するのでやっとの状態。
……あくまで冷静にと振舞ってはいるものの、内面はごちゃごちゃと入り乱れていた。
305 :無銘童子 ◆Fff7L077io :2015/07/07(火) 20:24:53.29 ID:KBYKJb2X0
>>302
「───それを自業自得と呼ぶのなら。」

──突然。その声は路地裏に響いた。
呻き声の様な断末魔と血飛沫が飛散して、その僅か数秒後の出来事だ。
路地裏。その場所を”谷”と形容するのであれば、其処には当然”山”が存在する。
……そしてその声の持ち主はその”山”の上、即ち、建物の屋根に腰をかけ、ガイストを見下ろす様にしていた。
深く被ったフードで、路地裏の闇も相まって顔は良く窺えないが、若干小さめの男である事は、ある程度の観察力があれば解るだろう。
月の光に怪しく照らされた其れは重く、深い、低音の声を発した。

「…………これは。”因果応報”と呼ぶべきか。」

その男は、建物から飛び降りて路地裏の闇へと着地した。フードから僅かに覗かせるその眼光は、何か獲物を狩る獣の様な獰猛で荒々しい輝き。
そしてその男の手には一本の刀。路地裏に差し込むほんの僅かな灯りが、怪しく……かつ鋭く其れを際立たせる。
続けて、その人物は言葉を発する───。


「…………………………オマエは、何処の”魔術師”だ。」


306 :ガイスト・ノイラート ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/07/07(火) 20:38:46.52 ID:rfer6LHp0
>>305

声がする方向に目を向ける。当然右手に携えた拳銃も視線と同じ方向を指し、目に入るのは一人の男。
フードを被っているために年齢や正確な顔などは理解できないが、身体つきや声の質からして恐らくは男だろうという事は理解できた。
以前もこのような事があったな。と思いながらスーツに着いた血液をポケットから出したハンカチで拭き取り、呼びかけられた声に返答する。

「ドコ≠チて聞かれても答えようがない」
「俺は俺であって、ドコ≠ナも無い」「強いて言うなら、フリー≠チてのが一番近いな」

答え方は酷く適当で、曖昧。その言葉使いからまともに答える気%剳@から皆無な事は、言わずともわかるだろう。
ただ、彼は余裕なわけでは無い。事実屋根の上に座る男の眼球。フードの奥から二つだけ光るそれを視界に入れ、行動を起こせばすぐさま反応できるように身構えている。
警戒。その表現が最も正しい。他者の危険性をまだ完全に把握できておらず、加えてそれを迎撃¥o来るかどうかすらの算段すら付いていない。

更に、現在男に向かって構えている回転式拳銃の残弾は二発。先ほどの魔術師との戦いで四発程を使用してしまっていた。
もし仮に男が此方を敵と認識した場合、この二発で男を仕留められるという保証は無く。どうにかして弾丸を弾倉に装填する時間を稼ぎたいところだと彼は考える。

故に、言葉の応酬を今は選択する。僅かに相手を挑発するように言葉を濁しながら、その両眼で男の正体≠看破してやろうと。僅かに力を込めながら
307 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/07(火) 20:44:31.94 ID:etCfhTHXO
>>304
「私か?愚問にも程があるな……どちらか、といえば、私は私……魔術師、レイカ=ウィルソンさ。
私は"友人"の味方で、それ以外の敵さ」

瞬間、口角を釣り上げた少女にぐっと近寄り、右腕を伸ばして、あまつさえ少女の胸倉を掴もうとする。
もし掴めたならば、吐息を感じれるほどに顔を寄せて、囁くように言うだろう。
掴めなければそれまでだが。


「 ————————いい加減子どもぶるのはやめにしようじゃあないか……"匂う"んだよ、私と同じような匂いがなぁ…?」


その確信めいた口調、それは女の勘とでもいおうか。
実験場、そして灰の散らばる地面、それらを見聞きしても尚興味津々に深淵を覗こうとするその姿勢……"魔術師の悪い癖"だ。
無論、どちらともとれる女の言葉は、少女を殆ど脅しているようにしか見えないだろう。


その証拠に、胸倉を掴んだ手とは逆の左手から、威嚇のように無数の火花が散り始めているのだから。
308 :無銘童子 ◆Fff7L077io :2015/07/07(火) 20:58:02.82 ID:KBYKJb2X0
>>306
「………………そうか。」

回答を受けた無銘童子の言葉は極端に短いものであった。
適当かつ曖昧な単語を並べた目の前の男を、まるでどうでも良いかのように短く、端的に。
然し……それは一つの合図でもあるのかも知れない。
何処の魔術師……少なくとも自身の思想とは違う存在であるのならば、組織的には目の前の男は敵に相当する。

──つまり、フード男の極端に短い言葉の真意は。


「……………”因果応報”の続きだ。
……まあ根本的な話、その因果は直接俺自身には関係無いんだがな。」

手に携えた日本刀を、闇夜に翳してみせる。闇に曝されたその妖艶な輝きは、限りなく鋭い。
言葉は、ガイスト・ノイラートという男を”敵”と見做した合図であった。
──其処には特に私怨なんてものは無く。ただ組織の使い物として扱われる彼の立場からすれば、逆にそれは必然でもあり。
過激派思想と呼ばれるのも、この獰猛さを孕んだ考え方に基づくものだろう。

「………………さて。…オマエに、この俺と対峙する……

─────覚悟はあるか?」

フードが男自身の手によって取り去られた。
──自らの正体を…否、自らの魔術を曝け出す。
そしてその瞬間、ガイスト・ノイラートの双眸に映るのは「人間」とはかけ離れた……「化物」の顔面。強いて言うならば「鬼」。
得体の知れ無いその怪物は、静かに低い声でガイストへと問いかける。
309 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/07(火) 21:10:39.70 ID:ykGRZ0Oio
>>307
「なるほど……成る程。同業者か、君もこの都市の異端者というわけか」

抵抗はない。少女はあっけなく胸ぐらを掴まれ、引き寄せられる。生暖かさを帯び濡れそぼった服はたくし上げられたように柔らかな腹部を晒し、胸元を保護するように張り付いた。
くつくつと喉をならして、今度こそ八橋馨は、隠匿していた歪みを解放する。この女が相手ならば隠す必要がないのだ、躊躇う必要がないのだ。


「––––––では問おう、魔術師レイカ=ウィルソン。僕は君の何になり得るのか?」

引き寄せられたのはある意味都合が良かった。空いている左手でレイカの後頭部を掴み、更にお互いの顔を寄せようとする。
意図はわからないが、もし成功したのならば、二人の視界はお互いの表情で埋められるだろう。
そして、答えたまえと尊大に言い放つその少女の表情は、身の内から溢れんばかりの狂喜で満たされている。
威嚇に屈しない様からよほど自信に満ちているのだろうと想像するだろう。しかし実際は、"視えていない"……すなわち、認識されていないのだ。
恐らくは一種の興奮状態なのかもしれない、兎に角今は目の前の魔術師の事で"頭が一杯"だった。
自分自身がもしかすると、地面に積もり風に散る"恐らくは人間だっただろう灰"と同じになるかもしれないと言うのに、危機感は全くもって持ち得ていなかった。
310 :ガイスト・ノイラート ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/07/07(火) 21:23:00.25 ID:rfer6LHp0
>>308

「対峙する覚悟はあるか――――?」

少しだけ、眉が動く。なるべく表情に出さないようにしていたつもりだが、顔の表情が平常時に倉へ遥かに硬くなっているのは明白だろう。
顔が人では無い=Bこれが相手の魔術によるカモフラージュと考えられない事も無いけれど、今気を張っている状況下でそれは無いと断言できる。
であればこの人間はなんだ? 恐らく魔術師の事を知っているという事は同じ魔術師と見て間違いなく。加えて顔面が鬼≠フそれ。
明らかに通常の魔術師では無い。少なくとも、彼が相手にしてきた底辺の魔術師等と比べても段違い≠フ異常であることだけは理解できた。
派閥に属していない人間を殺す魔術師。考え付くのなら今殺した男の同類=B暗殺者や討伐者などの類だろう。


(…………人では、な……い?)

――――同化型=B依然古い文献で読んだことがある。
人の身でありながら、人とは違う理で生きる者。人と言う形に異形を押し込め、その力を人間として行使する者。
人を素材とした実験であるが故、古き時代に淘汰された魔術体系だと学んでいたが…………どうやら、今でも細々ながら残っているらしい。
彼の考えが間違いなければ、モチーフは鬼=B他の化け物にも見えなくもないが、全体的な意匠がそれとなく和風であることからそう推測した。

であるなら、この場の行動はどうするべきか。本来ならば、素直に見逃してくれと頼むのが正解。
彼の様にまだ人間を捨てていない者が、人の理から外れた者に対し拳を振るうなどまず不可能に近い。
仮にできたとしても、身体能力の歴然な差がそこには聳え立つ。そもそも、彼自身の身体能力は並みかそれ以下なのだから。

「ギブ&テイクだ」
「俺はお前とだ対峙するために必要な覚悟を代償としてやろう。」



                        「だから――――――――対価にお前の死≠寄越せ。」

相手が此方を敵とみなしたのであれば、例え逃亡したとしても背後から背中を貫かれる。そうしても逃げ場はない。
であれば先ず先手≠とることを考えろ。言葉を言い終わるか言い終わらないかの絶妙な時間に、鬼≠ノ向け回転拳銃は音を鳴らした。
撃鉄が中に入っている弾丸状の管を叩き、ガラスの割れた音が路地裏に響く。子気味の良い音を男が感知すれば――――続いてくるのは風の感触。
正確には、まるで巨大な拳が迫ってくるかのような′揶ウが風となって男の辺りに吹いているだけで、風は只の予兆に過ぎない。
本命はすぐにやってくるだろう。姿は見えず、ただ顔面を殴りつける衝撃波≠ェ、彼の銃器によって発生させられた魔術であり、威力としては人間を軽く吹き飛ばす程度の物。
当たればただでは済まないが、如何せん規模が小さい。加え、銃口の向いた方向通りに衝撃波は突き進んでいくため、鬼≠フ感覚がもし鋭いのならば、躱すのはさほど難しいことではないだろう。
311 :無銘童子 ◆Fff7L077io :2015/07/07(火) 21:45:59.10 ID:KBYKJb2X0
>>310
「───よし。」

「…………ならば、俺は”傲慢”だ。」

「寧ろオマエの命という”報酬”までも根刮ぎ奪い取ろう。」


路地裏に現れた二人の魔術師が──動く。
先ずは初撃……──ガイスト・ノイラートが先陣を切る。……音と共に無銘童子に迫り来るのはたった一つ命を削る一つの凶弾。
先に鬼の元に辿り着いたのは”風圧”だった。暗がりであるが故に敵の動向はあまり掴みにくいが、確かにその風圧が何かの前兆であることを、鬼は感じ取る。
──目を見開く。鬼の目……獰猛で残忍なイメージを人々に齎せるその忌々しき姿。明らかにこの世の物では無い物であるが故、その不完全さは自らの技量で補わねばならなかった。
だからこそ、”童子”の名を冠する其の男は──。


「………………ッ!!………!…だがッ…」

”強く”あらなければ。
ガイスト・ノイラートの凶弾は、一本の輝きによって切断された。勿論、其れと対峙するガイストには知覚できるであろう…………その鬼が握る、刃がその正体。
躱すという手段は取らず、あえて切断して路を切り開く。──そして攻撃後の人間に訪れるのは、一瞬の「隙」。

「─────────次は俺の番だ。」

凶弾を切り拓き、その間隙を縫ってその童子は一本の刀と共に駆ける。
「鬼」と化したその体躯の織り成す駆動力は、言葉のまま、「人間」なんて比ではなく。
脚をダン!と地面に打ち付けると、その鬼は2秒も満たずしてガイストを斬りつけられる位置……間合いに入り込んだ。
そして───斬。鬼の刀が……ガイストの身体を上下に分断せんと……襲いかかる。
312 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/07(火) 21:47:00.99 ID:etCfhTHXO
>>309
後頭部を掴まれた、そう認識した次の瞬間には眼前に愛らしい少女の顔が広がっていて。
魔術師を押さえ込んでいた理性は、ぎりぎりの所で持ち堪えているが、興味が、知識欲が、独占欲が、支配欲が、どんどんと脳に染み込んでいくように広がる。
この少女の力が知りたい。
この少女の知識がほしい。
この少女の全てを支配したい。

あわよくば、そのまま ————。





「私の目に……手足に……私の身体に……」



眼前にある少女両目から一切目を逸らさず、ただ魔術師らしく、否、魔術師同士らしく。
もし目の前の少女が自分のものになれば?
学園都市の中枢とも呼べる風紀委員に、彼女は何らかの組織の力を借りて潜入しているのだろう。単独で中枢まで潜り込むのは到底不可能なのだから。
しかし、少女が女の手中となれば、話は別だ。
少女のパイプは己のパイプになり得る。
それに、少女は女と"同じ" ————魔術師だ。

「世界抗い、神に逆らい、ただ私がしたいままに、ほしいまま ————その第一手に、私はお前が欲しい。未知数のお前が ————アルファなのか、オメガなのか、再生か破壊かわからないお前が、どうしても欲しい」


吐息が感じれるほどに近い距離をギリギリまで近づけ、あとほんの少しで触れる寸前で、囁く。


「 ————私のもの(助手)になれ ————難しくは無いだろう?」


灰になるかどうするかは、お前が選ぶといい。
そんな囁きとともに、まだ湿り気を帯びる柔らかな腹部を火花を散らしたままの左手で触ろうとする。
熱くもなければ冷たくもない、バチバチとした不穏な音と光だけが響く左手。

そう、魔術師たる女は、少女の狂喜と興奮に負けたのだ。
自身の唯一保ってきた理性を完膚なきまで叩き壊され、己の力量も知らぬまま、風紀委員の少女に掴みかかった時から、敗北していた。
理性を失った研究者など、研究者たり得ない。
言うなれば、今この場には欲にまみれた純然たる魔術師しかいないこととなる。

貪欲な魔術師は、少女の牙に食い殺されるのか ————?
313 :ガイスト・ノイラート ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/07/07(火) 22:07:53.24 ID:rfer6LHp0
>>311

「俺の魔術≠――――斬りやがったッ!?」

魔術切断。いや、黒魔術によって引き起こされた現象自体を切断≠オた?
まだ完全に出して≠ヘ居ないが、それでも他者に害を為す♀T念そのものを込めた魔術をいとも容易く切断するとは。流石の彼も目を見開いて驚愕する
であれば、彼に隙が出来るのは必然。弾倉が回転し次の弾丸を発射するよりも速く、右手の指が引き金を引くよりも速く、鬼≠ェ眼前に迫る。

通常、魔術と言うのは同程度のレベルの魔術をぶつけて相殺するか、もしくは相手より大きい魔術をぶつけて上書きする≠ゥの二択に分かれる。
以前彼の法則外で発動する魔術を見たため一概にそうとは言えないが、大体の魔術はその法則に当てはまって行使されているといっても間違いはない筈だ。
しかし、あの瞬間鬼≠ェ魔術を使っているような動作は見られなかった。恐らくは術式を圧縮して刀に刻んでいるのだろうとは思うが、それでも速過ぎる=B

近接型の魔術師というもの自体が珍しく、彼が中距離型の魔術師であったことも災いして距離は一瞬にして詰められた。
目で追えるほどの速度を為していない、純粋に速い=B人間としての根本がズレ≠トいるからこそできる芸当なのだろう。
迫る凶刀はすぐ目の前。このままでは何も反撃できずに死に至る。死ぬ。黒魔術を使用しておきながら、他者に害を与えるという魔術を使用しておきながら
此処であっけなくその命を代償とする。ギブ&テイク。あの男を殺した代償に自分が殺される。理不尽に、それもあっけなく。あの男と同じように

「―――――ッッ!!」

体を無理にでも動かし、全身に活力を込め、魔力を熾す。キッチリと止められていたスーツの前のボタンを強引に引きちぎり、自由になった腰回りに存在する管≠空いた左手で二つほど掴んで引き抜く。。
腰のベルトに結合する形で存在するホルスターから引き抜かれたそれは、ガラスのような色をして。まるで試験管をそのまま小さくしたかのような形状をしていた。
加えて、その内容物は鮮血の赤。動物の血をそのまま濾して注がれた簡易的な命の器=B彼の黒魔術の媒介にして、彼が今此処で命を失う代わりに支払う代償。

発動するのは爆発=B正確にいえば、空中に投擲―――彼と鬼の間、その僅かな隙間に滑り込んだ二つの管が、体内に内包した血液≠管を破壊して撒き散らす。
黒魔術の一つであり、悪魔喚起に入らない魔術。効率が悪く、本来の使用用途ですら一切使用されない無意味≠ネ魔術だが、展開と発動までの時間は彼の知る魔術の中で一番速い。
能力としては内容物を撒き散らすだけの単純なものだが、それを鬼≠ヘ知らない。彼は魔術師であり、それを鬼も理解している。

――――即ち、これはブラフ≠セ。今まさに彼を両断せしめんとしている鬼に対し、この魔術は危険だ≠ニ思わせ、少しでも後退させられればそれでいい。
ネタさえ見抜かれてしまえば意味が無く、寧ろ騙される方が不思議かもしれない。しかし、今この状況下で拳銃≠フ引金を引けば彼まで巻き込みかねない=B
そのリスクを考えれば、此処でこの行動に出る行為自体は間違っては≠「ないだろう。鬼がこのブラフに引っかかるかどうかは、よくて五分五分と言ったところか…………
314 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/07(火) 22:23:22.94 ID:ykGRZ0Oio
>>312
「––––––––––––良いだろう。では今から僕は君の眼となり、手足となり、身体となり––––––同時に、宿主を滅ぼしかねない病魔となってやる」
「君がもし僕の理念から外れるようであれば、僕は躊躇いなく君を喰い殺す…………だから精々」


レイカの言葉に、少女の両の瞼が細められた。喉元からせり上がり飛び出そうとする言葉を、勿体振り、ゆるりと時間をかけて紡ぎ出す。
少女の……八橋馨の鋭い牙は未だレイカの首元を捉えたままに。しかし皮一枚を挟んで留められている。
欲望に忠実で、貪欲で、それ故に盲目な魔術師だ。ただ誰かの言い成りになる事などある筈がなく、少女の言葉もある種当然なものかと思えた。

後頭部を掴んでいた手は自然と力が抜けて、レイカの肩にしな垂れ掛かる。最早目前の女は手中に収めたも同然と言えた。腹に向けられ漸く気付いた不穏は、どうせただの脅しつけだろうから。
利用できるのだから利用し尽くすのみ。それに、邪魔になれば斬ってしまえばいいのだ。魔術師同士で共同戦線を張るのは決して悪い事ではない筈だ。

「…………精々、僕の牙が君の首元に届かないよう、頑張りたまえ。そうならない限りは、僕は君の思うがままさ」

吐息を零して、囁き返して、少女は狂気を孕んだ笑みを見せる。これは誰にも見せた事のないものだ。
教師にも、友人にも、風紀委員の仲間にも––––––果ては、育ての親にさえも。
315 :無銘童子 ◆Fff7L077io :2015/07/07(火) 22:29:25.71 ID:KBYKJb2X0
>>313
──無銘童子。彼が扱うのは自分自身の身体に魔術刻印を施し、自らの身体自体を媒体とする事でその力を振るう魔術である。
……故に。彼の持つ刀には彼の身体をよりスムーズに動かすという使い手と武器が共鳴した協調性以外には特に効果は無い。黒魔術を斬って退かれたのは、凄まじく速い刃に、余韻残す事なく切断されたからだった。──半ば強引。弾丸という黒魔術の形状がシンプルであっただけで、恐らくこの手は複雑な構造には通じない。
そして現在はその”鬼”の番。彼の凶刃がガイストを斬らんとした、、───その一歩手前。

「……な、ン…ッ………!?」

無銘童子の鞘を握る右腕に、刹那の迷いが生じる。
斬る対象の前に立ちはだかったのは「未知数」という名の脅威であった。──見た事も無い、管。
この刃を避ける訳でもなく、其れを放ったというのならば……恐らくそこには何かしらの狙いが有るのだろう。
──だからこそ、その手を容易には振るえなかった。もし相手が使う魔術がこの刀の刃によって何かを引き起こすなら、──この手は悪手。
奴の魔術は完全にはその鬼には「認識」されていない。
──そして、無銘の鬼は、魔術そのものの戦力差、ランクという概念を。ガイスト・ノイラートとという男の戦術によって縮められていようとは…………気づきもしない。


「…………チッ」

刀をガイストには振るわず、その先を地面に突き立てることで支柱とする。そして突っ込んだままの勢いを上に逃がすことで、その怪物は飛躍する。
────飛躍した先は、再び路地裏の建物の上だった。


「………………オマエ自信からは俺以上の魔翌力を感じないが……侮ったな。」

月に照らされたその怪物は口を開く。──とりあえず一旦は後退、高所から、ガイストの動向を伺う様子らしい。

316 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/07(火) 22:46:06.43 ID:etCfhTHXO
>>314
狂犬を捕まえるとは、どのような心境なのか考えた事も無かった。
首輪も手綱も無い狂犬を相手に、どの様に立ち回ればいいのか。
しなだれ掛かる手を感じた瞬間、女の理性が何かを振り切ったように鈍い衝撃を与え脳を揺さぶる。

何て恐ろしい奴を相手にしてしまったんだ、と。

この学園都市という巨大な都市の中枢に、単身潜入してあまつさえ実権を握る立場にある少女に、勝ち目があるものか。
梅雨場に太陽を望むくらいに絶望的な穴へ、誘い込まれたか、或いは引きずり込まれたか。

「私は魔術師だが、研究者だぞ?お前の事を研究し尽くして————一生私に縛り付けてやる 、覚悟しておくことだ」

強気でもなんでもなく、この言葉通りに出来なければ、女に残されている道は唯一、死、のみ。

急ぐべきだが、急ぎ過ぎると少女に食い殺される。
遅ければ遅いほどに、他の魔術師に都市が冒される。
二極化した状況は好転か悪展か。
だが、シンプルだからこそ、覚悟も出来る。

この少女は病魔であると同時に、今の女にとって最強の武器であり、最強の鎧だ。


————強さ、それを少女は持っている。
私が持っていない全てを。

なんと甘美な響きか。眩暈がするような感覚に、女はしなだれ掛かった少女の手に、火花を収めた左手を重ねて、甘く、優しく囁く。

「そろそろ廃墟に住むのも飽きたところだ……学園で教師というのも面白そうだし、お前も私も常に傍で生活できる……学園に私の研究施設を用意出来るな?」

毎朝、一緒にコーヒーでも飲もうじゃないか。
そう言う女の顔は ————酷く歪み、悪魔のように醜悪で途方もなく美しい笑みが貼り付けられていた。
友人にも家族にも見せない、魔術師の、研究者の笑みを。

女は、重ね合わせた少女の手を取り、歩きだそうとするだろう。

我が身体が導いてくれるはずだ。
この錆と瓦礫に埋もれた廃墟ではない、もっと恐ろしく、美しい学園都市の中枢へ。
317 :ガイスト・ノイラート ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/07/07(火) 22:59:01.66 ID:rfer6LHp0
>>315

「あー…………クソ。スーツが台無しだ」

管が爆発≠オたことで起こる血液の洗礼を浴びたのは彼一人。即ちそれは、彼の目論見が成功したことを意味する。
背中に書いたじっとりした汗に加え、前面に浴びた鮮血の赤。乾いていたスーツを赤く染め直したそれは、ハンカチなどでは到底取れそうにない。

(そんなに人の上≠ェ好きかよ……)

やさぐれたような、そんな瞳。睨みつけるというには少し違うそれで、鬼を見る。
そもそも彼らの言うランク≠ニはあくまで指標≠ノ過ぎず。もっと言ってしまえば、純粋な殺傷能力≠指さない。
人間が人間に対して付けた値札であり、この魔術にはここまでの価値がある。この魔術は此処までの歴史と強さがある、と言う風に決めつけ≠驍アとで自らの力を強くさせているに過ぎないのだ。
彼の魔術は彼自身がノイラート家を出てからの六年で作り上げたもので、それは何処の魔術師にも披露していない。披露したとしても、それは今回のようなやむを得ない場合だけ。
であれば、彼の魔術自体のランクが正当≠ネ物であるともまた限らない。根本的な存在の違い≠熨鰍ワって、彼の魔術はそれなりに使い物にはなる。
最も彼が以前家の教育によって手に入れた知識と、豊富な想像力≠ェ無ければ、この程度の魔術で生き残ることは出来なかっただろう。

だが、どうやってもランク≠ニ言う絶対的で、どうしようもない壁は存在する。現に、彼は今鬼に押されていた。
本来であれば使う必要のない腰の管まで使用してしまい、且つ最も魔術効率の悪いとされている爆発≠フ魔術を使わざる得なかった。
この使わされた≠ニ言う部分が彼の危険信号をかき鳴らす。目の前の男は根本からして彼とは異なる存在であり、しいて言うなら奈落の底=B
勝てる未来は見えない。しかし、それは幻想だと思い込む。彼の築き上げたばかりの魔術では、鬼には到底対抗できないだろうとしても、此処で死ぬのは流儀に反する。
単純に死にたくない。不格好で情けない思考が今の彼を動かし、思考を促進させ、勝利の為の行動を模索している。人間的で、およそ天才には相応しくない平凡な理由。
だからこそ、彼は長≠ノなれなかったのかもしれない。

「ムカつくぜ…………」

年甲斐にもなく苛立った声が喉から出る。首元を締め付けていたネクタイを空いた左手で緩め、高所で此方を見下している鬼を睨む。
弾倉に残った弾丸は一発。当てられなければ間違いなくヤバい=Bそれに、先のような中途半端な殴打≠カゃあまったくもって意味が無い。


なら…………使うしかない。そう決意するのは簡単だった。
そして、一度それを使うと確信≠オたのであれば―――――自らの頭蓋に銃口をあて、引き金を絞るだけでいい。



――――銃声とは違う、ガラスを砕いたような音が路地裏に響いた。
そして、路地裏に発生≠キる魔力。彼本人のそれとは異なる魔力であり、明らかにこの世界にとって異質≠ネもの。
人と鬼の境に存在する眼前の男よりも明白で、確実におかしい≠ニ認識できる存在。魔力によって編みこまれ、概念によって肉体を構築する。




                                   「――――――バンダースナッチ=v


悪魔喚起≠フ法則によってこの世界に引きずり出された≠サれは、異形=B人とは異なる理で生きる悪魔=Bそのデッドコピー
彼の背後に立つ巨大な影。体長は恐らく二メートル半。人型をしてはいるが頭部が明らかに人間のそれでは無く、右腕に至っては筋肉を覆う表皮が一切として存在しない。
それ以外は全て黒く変色した肉片で構成されており、僅かな異臭は間違いなく気持ちの悪い≠烽フ。リンゴが潰れたような頭に二つの赤い光を明滅させたそれを、彼はバンダースナッチ=Bそう呼んだ。
318 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/07(火) 23:14:23.74 ID:ykGRZ0Oio
>>316
「やりたければそうすれば良い、僕は逃げも隠れもしないのだから……君こそ、尻尾を巻いて逃げるような真似はしてくれるなよ」

もしそうしたら、どうなるのか……理解出来ない程この女はバカではない筈だ。重ねられた手に視線を一度向けて、完全に手中に堕ちたと確信する、やっと使い勝手の良い手駒を手に入れた。
己に自信がある故に、八橋馨はレイカに従う事を……都合のいい手駒として、下から操る事を決める。
丁度いい、能力者の調査は彼女に一手に任せてしまおうか、そうすれば他の魔術師の動向を探る時間をその分だけ増やす事もできよう。

「……良いだろう。住居も、研究施設も、用意してあげようじゃないか」
「君から餌が貰えるのを楽しみにしているよ……なぁ、"御主人様"?」

歩き出す女に歩調を合わせ、少女もまた足を前に進める。進む先に待ち構えているのが果たして絶望だとしても、今日は何故だか、足取りが軽かった。

––––––––––––数日後、魔術師レイカ=ウィルソンは教師となり、また、いち研究者として施設を与えられる事だろう。

//流れ的にこれで〆でしょうか?ありがとうございました!
319 :無銘童子 ◆Fff7L077io :2015/07/07(火) 23:19:45.88 ID:KBYKJb2X0
>>317
「──────何だ……コレは。」

ガイスト・ノイラートという男の司る黒魔術は、既に無銘童子の想像を遥かに凌駕するものだった。
見下ろして居ながらも。そして自身も同じ怪物であるにも関わらず。──169cmの怪物は、確かに、目の前の”異形”に圧倒された。
そして眼前の”異形”をその目に灼きつけられた鬼は思わず「悪魔」を連想した。
──世界の憎悪の対象、悪の特異点……、自らに宿す「鬼」と似て非なる存在。西洋と東洋の隔たりが生む認識の違い。……少なくとも、東洋の怪物は、その西洋の怪物に一瞬、慄いた。

「………………自らの血肉、魔翌力を以ってして、”悪魔”を形成したか。」

「俺の魔術と”悪”という性質だけは似ているが……。
俺の不完全たるが故の強さとは正反対に、魔術解釈によって生まれた”悪魔”、そのものの具現、そして強さ……。」


無銘童子は刀を構えて、1人の魔術師と悪魔を見据える。気持ちの悪い悪臭が路地裏に蔓延している。
───目の前の異形が何を仕掛けてきても良いように意識を集中させる。
先程の爆発がトラップであったことを加味すると、眼前の男は素晴らしくトリッキーな戦術を得意とする。故に、その異形までをも利用して、此方を騙してきかねない。──慎重な判断が要求されている。
この並外れた駆動力で処理できないのであれば、最悪、奥の手の技を使う必要があるかも知れない。この瞬間、得体の知れない物を目にしている無銘童子の集中は、極限まで達していた。
320 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/07(火) 23:26:41.40 ID:etCfhTHXO
>>318
————翌日、学園都市研究施設内。


「御主人様、か……あの魔術師め、とんだ雌狐に捕まったかもしれないな……」


研究施設を用意しろ、その一言でぽんと明け渡されたのは、最新鋭の設備と馬鹿馬鹿しいほどに広いこの施設。
学園からすれば研究者に対する最低限のもの、とのことだが、女一人には些か広過ぎる。
ここで実生活も送ることになるのだから、ある意味では広いことに越したことはないのだが。
それに加えて研究用の白衣には、ご丁寧に学園のマークが。

「これで晴れて学園の一員、もといは、あの女の手駒……お互いに食い殺 し合う仲だ…楽しめそうじゃあないか……」

強気な言葉とは裏腹に、女から大きなため息が漏れる。
さて、ここからどうしたものか ————。

だだっ広い施設の真ん中で、パイプ椅子に腰を下ろしてコーヒーを一口。


共同戦線にまた一つ、巨大な力が加わった。


/こちらこそ絡みありがとうございました!!
/また是非とも絡んでくださいませ…!
321 :ガイスト・ノイラート ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/07/07(火) 23:43:38.37 ID:rfer6LHp0
>>319

鬼の創造した通り、彼は自身の死≠代償として悪魔≠喚起≠キる術式を今発動させた。回転式拳銃に圧縮されている術式であり、先ほど放った衝撃波≠烽サの残滓に過ぎない。
元より黒魔術とは他者を呪うため悪魔を召喚し、その悪魔の為す技によって他者に害を与える。と言った方法を主流としていた。しかし、現世界で悪魔の存在はほぼ否定されている。
故に、悪魔は存在しないという世界の概念を一時的に崩し、魔術によって悪魔を喚起させる℃魔ナ実際に悪魔をこの世界へと顕現≠ウせる。
悪魔喚起の法則を持って、実際に悪魔を喚起させる。それが彼の近代式黒魔術≠フ神髄であり、ノイラート家が代々受け継いできたインサニアス≠フデッドコピーを使用した魔術≠ナある。

ただ、此処で疑問点を上げるとすれば、彼は死を代償として悪魔を喚起したはずなのに、何故彼は死んでいないのかという事。
それはつまり、弾倉の中に入っていた管。ガラスの中に閉じ込めた命≠ェ関係している。言ってしまえば、自身の命の代償を、他者に払わせているのだ。
動物の魂の入った器。肉体とも言えない血溜まりに魂を溶け込ませて錬成した命を、自らの死の代償にする。それをア円滑に運ぶための回転式拳銃=B
ハンマーがガラスを砕き、内部にある命を殺す。そうすることで可の命を消費する事無く、彼が発動しようとした術を発動できると言った仕掛けだ。

「其処まで分かってるんだったら――――さ」
「とっとと死のうぜ?」

魔力とは自らの生命エネルギーを指し、魔術と言うのはその魔力を使用することで発動を可能とする。
そして、鬼と戦闘を始める前からすでに幾度か魔術を発動させており、そのままの管を用いた爆発は異常なほどに魔力の燃費が悪い。
加えて今回の魔術を使用したことで、体中の魔力が段々と枯渇し始めてきている。僅かずつだが、体中に力が段々と入らなくなっているのが自分でも理解できた。

時間は無い。彼の集中が切れればバンダースナッチ≠ヘ彼をも殺す。悪魔とは仲間では無く、契約者だ。
魔力と言う契約の証明が途切れれば、彼がバンダースナッチ≠限界させるために使用した魔力を使い、彼自身を殺そうとするだろう。
悪魔と言うのは人間に使われることが大嫌いなのだ。古来からの黒魔術でも、人を呪わば穴二つ≠フ言葉通り、他者を呪ったものは悪魔によって必ず同等の対価を支払わされる。
現時点で払っている対価は命が一つ。それもすり替えによってすり替えたかりそめの命であり、この魔術法則が通じていなければ悪魔を制御するなど彼には不可能だった。

だから、時間が無い。彼が命令するのはただ一つであり、思考回路を読み取ったバンダースナッチ≠ヘ忠実にその行為を遂行する。
バンダースナッチ≠ェ僅かな呻き声を発して消える=B否、彼には見えないが鬼にはその動きを捉えることができるだろう。巨体からは考えられない程のスピードで動いたために、眼が追い付かなかっただけ。
動きは酷く単調だ。先ずは彼の後ろに位置する場所から地面に足跡を付けるほどの力で跳躍し、鬼の立っている屋上よりも僅か上空まで飛び上がろうとする。

それを妨害されなければ、その建物ごと°Sを叩き砕いてしまおうと。筋肉が剥き出しになり膨張し切った右腕を主生き血叩きつけようとするだろう。
このバンダースナッチ≠フ怪力は強力だが、これはあくまでデッドコピー。動きも単調で行動が読みやすく、本来逸話として残っている速度も出ていない。
只、力任せに移動して力任せに攻撃を叩きつけるという単純な方法だけに厄介だが、鬼の並外れた駆動力であれば躱すことはたいして難しくないだろう。
そして、回避若しくは迎撃が成功すれば――――ただの大きい的≠ナしかない。
322 :無銘童子 ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/08(水) 00:16:42.61 ID:YhVi0LDO0
>>321
「──其処まで解っているのだったら……と言ったな。」

──生命を代償として悪魔を喚起する魔術。自身が対峙してきた魔術の中でも、屈指の禍々しさを持つ魔術だろう。……加えてこの男、ガイスト・ノイラートという男の策が味方するならば、其れはランクというただ単の格付けを嘲る程に凄まじく手強い魔術である。

──だが然し。此処でガイスト・ノイラートという魔術師はとある小さな間違いを犯した。

「……其れはイコール。其れなりの対策を講じることが出来ているということだよ。」

其れはたった一つ。この得体の知れない”黒魔術”が、無銘童子がガイスト・ノイラートを”侮っていた”という事実を、
無銘童子自身に”知覚”させたという……一点だけである。
相手が他人の生命を貪り、其れを媒体とした悪魔を召喚するのであれば。俺自身は自分の生命を削り取って”鬼”という概念を具現化する──。
……そしてこの時点で、巨大な悪魔の闇は建物の上から見下ろす鬼の眼前までへと迫っていた。

渾身の一撃が炸裂する………僅か数コンマ手前。無銘童子は”何か”を口にし、一瞬だけだが、その鬼の瞳には魔法陣が浮かんだ。
────その何か、とは。

「……其ノ眼ニ映セ、鬼ヶ島。
…………『誰モ知ラナイ何時何処カノ鬼物語』」

──空間の、”ズレ”が生じた。
この鬼が実行した魔術は「多重憑依」という技術。普段彼の身には一体の鬼が憑依し、魔術刻印を媒体としてその鬼が露わになるという仕組み。……つまり。自らの身に多重憑依させる事で耐えきれなくなった身体からの放出を待ち、外部へと具現化する。
端的に表すならば「影分身」。寸分の狂いもない鬼の身体が、その路地裏には3つ存在していた。
──そして其れは一瞬。路地裏に突如として現れた3つの童子は、悪魔という大きな的へと一辺に交差する。鋭利な刃は、一体につき数回に及んでその身体を奔り。──遂には悪魔の身体を細かく裁断してみせた。……既に、三体の鬼の姿は、無い。

「…………魔翌力を使いすぎたか……。」

魔翌力は途轍もない量を使用した。然しとてそれは相手も同じ事だろう。……鬼は依然として、血飛沫を浴びつつも何も表情に出す事無くガイストを見下ろしていた。勿論、痛み、苦しみはある。然し彼は……完全なポーカーフェースでごまかして見せる。
さて、ガイストはどんな反応を見せるだろうか……?

//すみません、眠気がひどくて続けられそうにないですので明日にはお返しできるのですが……すみませんすみません!



323 :ガイスト・ノイラート ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/07/08(水) 01:47:40.53 ID:KxfJJIKD0
>>322

「―――――――な。」

彼の喚起≠オたバンダースナッチ≠ェ、まるでおがくずの様にその身を変貌させる。
仮にも悪魔であり、その肉体は尋常では二ほどの硬度を持っているにも関わらず、それを感じさせない程の切れ味=B
彼が真に警戒すべきは鬼だけでは無く、鬼の持っている刃≠ノこそあったのかもしれない。そう理解する頃にはもう、遅すぎたが。

――――

ガイスト・ノイラートと言う男は、平凡である。天才になり切れなかった弱者≠ニ言い換えてもいい。
常に気を張り、臆病で、死に恐怖する想像力を持つ。人間的ではあるが、それ故に強者としては為り得ない。
ただ、以前からの積み重ねが、血反吐を吐くほどの過去が彼という存在強度を肯定しているにすぎず、本r内の彼は酷く脆い。

故に、彼は不注意をする。傲慢、慢心とすっらいってしまってもいいかもしれない、戦闘においてもっとも行ってはいけない行為。
彼には六年もの実戦経験があるが、所詮それは曖昧≠ネ物でしかなく。今回の様な状況下において冷静な判断力を保てるほど利口でも無い。
既に魔力の過半数は出し尽くしている。掛け値なしの全力=B魔術としてみだりにみせてはならない真髄≠フ一つをこうも簡単に打ち破られたのでは、彼に勝ち目は満に一つとして無いだろう。
彼方側の大分消耗していると見えるが、それでも未だに表情に疲労が現れない。こちらは既に肩で呼吸しなければならない程の疲労≠蓄積させているというのに。

どうする? このままでは魔術を発動することも無く殺される=B冷や汗が背筋を駆けのぼり、僅かに垂らした汗が地面へと小さな染みを作る。
如何にかしてこの状況を打破することができるのであれば―――――――もう一度、一か八かやるしかない。

「――――――クソが」

相手が動く、動かざるに関わらず。彼は右手に携えた銃を自らのこめかみへとあてがう。
ポーズとしては先ほどと同じ悪魔喚起≠フ構えであるが、弾倉の中には弾丸がもう込められていない。すり替えるべき対象は、此処にはない。
ならば、自分≠使えばいい。自らの命を絶ってしまうかもしれない選択に、歪な笑みが浮かぶ。クールを気取っていた表情≠ェ、完全に剥がれ落ちた。
本来は只の卑屈な男。魔術を使う事しか出来ない、魔術で人を殺す事でしか自己を表現できない存在。人間として欠陥品であり、存在としては忌まわしい。


先程と同じバンダースナッチ≠フ喚起。悪魔を呼びつけ、その存在を意のままに操る契約の術式。
既に亡くなった代償の代わりに支払うのは――――――自身の左腕。及び、それ以後に訪れすあらゆる行動への不便と引き換えに、悪魔を喚起する。
左腕がそのまま血液となり、弾ける。凄まじい痛みと左腕の死≠ノよる虚無感。魔力の過剰消費による脱力感が自身を襲い。代わりにもう一度あの異形≠ヘ復活≠キる。
悪魔に死と言う概念は無い。現界出来なくなったら消えるだけ。そして、同じ手順で呼び出せ魔無限に呼び出すことが可能である。

生み出された悪魔は性懲りも無く、先ほどと全く同じ軌道≠ナ鬼に向かって再度全く同じ攻撃≠行おうとするだろう。
これが正真正銘「最後」の魔術。だが、彼はその平凡性′フに―――――――――そのバンダースナッチ≠生贄として、自身は逃走≠図ろうとするだろう。


//大変遅れてしまい申し訳ありません
//どう展開させるべきか悩んでいました
324 :無銘童子 ◆Fff7L077io :2015/07/08(水) 06:21:50.36 ID:YhVi0LDO0
>>323
「……マ、ズい。」

その言葉を発したのは意外にも、この戦闘において有利な立場に立っていた無銘童子だった。
それはどういう事なのか、という訳だが、実は先程彼が短い詠唱と共に使用した「誰モ知ラナイ何時何処カノ鬼物語」は彼の必殺技とも言える技であり。──その技自体が強引であるがため、必殺技特有の「溜め時間」が存在し、連発する事は出来ない。
見た所、もう既に生贄に捧ぐための生命は無くなっていたかのように思えたが……まさか自身の身体の一部を生贄にするとは。鬼は焦りの色を見せる。

「………………これは、本気で俺の左手も喰われるかも知れないな。」

先程の例の必殺技でもかなりの魔翌力を消費した鬼は、ふぅ、と息を吐いて冷静さを装った。……そうでもしないとこの危機的状況において精神が持たない。
考えられる危険性は二つ。一つ目はそもそもの強さの問題。この「鬼化」には制限時間は無いが、実は彼の服の下は、右腕が鬼の其れと化してているだけで、顔とその右腕以外は人間のものである。そもそもの術式が彼自身に埋め込まれているので、全身の強化は為されているが、耐久性はその限りでは無いのである。必殺技無しでの戦闘で、この身体が持つかどうかというのが一つ目。
二つ目は”学園都市”に対してだった。恐らくもう失う代償が無い……有るにはあるが流石に其れ等は捨てきれないだろうので。ガイストは悪魔という異形を残して其処から立ち去るのだろう。
恐らく長期戦になるバンダースナッチとの戦闘。ここは学園都市。能力者に見られでもしたら……。───だから、マズい。

「………………糞野郎が。」

ガイストの目論見は成功、逃走も難なく遂行できるだろう。取り残されたのは術者を失った魔術の異形と、それと対峙する一体の鬼。
今一度、鬼は自らの鋭い日本刀を握り締めたのだった。──化け物達による二回戦目が、始まる。


…………………………………
…………………………
…………………
…………




45分後、その路地裏の壁にもたれかかる様にして座り込んだ無銘童子の姿があった。現在は鬼ではなく、術式を解いて人間の青年の姿である。

「……この都市……いや、魔術師にも俺が知らない馬鹿強い相手がいる……か。
この任務、想像以上に厄介だぞ…。」

よく見れば数十分前の彼の言葉通り、彼の左腕がだらんとぶら下がっていた。魔術の複数回行使、そして悪魔との戦いで、その体が耐えきれなかった。
──恐らく、その左手は暫くの間は使用することが出来ない。
彼は改めて思い知る。世界は広い、と。今回の戦いも、もしあの弾倉とやらをもっと用意されていたならば彼に勝ち目は無かっただろう。──近接型の宿命か、馬鹿みたいに魔術行使で魔翌力を消費していくのは必然とも言えた。

次出会った時は、恐らく万全を以ってして自身に襲いかかってくるのだろう。……どうしようか。
そんな想像と共に、路地裏での短い決戦は終了したのだった。


//遅れてすみません!選択肢はありましだが、リアル事情もありますので凍結とさせていただきました!お疲れ様でした!
325 :無銘童子 ◆Fff7L077io :2015/07/08(水) 06:22:44.30 ID:YhVi0LDO0
>>324
//凍結じゃない……何言ってんだ……〆、です
326 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/08(水) 18:27:17.91 ID:jUT6dzcRO
”一日幸せでいたければ床屋にいきなさい”というイギリスの諺があるが男に言わせれば
”一日幸せでいたければ本を買いなさい”であった。流行りでもそうで無くてもよい。ただ
気に入った本を買えばいい。読む時は勿論、読むまで内容を想え、読んだ後は余韻に浸れる…

「………………」

雨が降った後の夕暮れ時

じめりとした梅雨の空気を西風が吹き抜け、太陽の余韻…纏わりつく熱を攫い
加えて何処かで凛、と風鈴が快く鳴れば、身も心も涼しい初夏の一時である。
校門から続く大通りから少し南へ…学生向けのお惣菜屋や精肉店などが並ぶ
どこか懐かしい気配の商店街。学生達で賑わう道を早めの帰路に着く男が歩く。

「……………」

”一日幸せでいたければ床屋では無い。本屋に行くべきだ”と男は声無き声で呟いた
手からぶら下げる袋には今夜の夕食と、書店で買った昔流行った恋愛小説が並ぶ。
つまり男は今珍しく”幸せ”であった。充実感や達成感では無い。身にしみる優しい気持ち。
それを胸にぶらりと歩く。風に揺れるボサボサの黒髪とヨレヨレのワイシャツ。穏やかな時。

非常に気分がいい、だから……もし、誰か”困ってる人がいれば率先して声を掛けていい”


そんな事を、考えていた。
327 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/08(水) 19:28:55.51 ID:syvC/DTmo
>>326
もし、見ず知らずの誰かが助けを求めていたなら、それを助ける人は一体どれくらいいるだろうか。
そう聞かれて『はい』と答えるのは簡単だ、しかし実際にそんな立場になっても果たしてそう答えられるか?
『困っている』なんて生易しいものではない、本気で助けを求める悲痛な叫び声だ。

『助けてくれ!!』

叫び声がした、泣きそうな声で、助けを求める言葉が、路地の奥から響いて来る。
周りを歩く雑踏には聞き流されているようで、聞こえる可能性があるとしたら、路地の近くを調度通りかかったリーのみで、聞こえたとしてもその路地の先に行くかはリーの判断だ。
そして、もし路地の奥へ、叫び声の主を辿れば、程なくしてあるものを見つけられるだろう、路地の真ん中にいるので見逃すことはそうそう無い。

「はい、大きな声でもーいちど、さんハイ」

「たすけてー!!=v

「…オイ、言えよこら、俺がバカみてーだろーが!」

地面に倒れ伏している一人の中年男性と、その中年男性の背中に座り、煙草を吹かず少年の姿があった。
少年は、椅子にしている男に助けを求めるよう強要し、それに応じなかった男の顔面をコンクリートの地面に叩きつける。調度そんな場面がリーの目の前に現れるだろうか。

「あのさぁ、もっと大きな声出さねーとマジで死んじゃうよ?仲間くらい呼ぼうよ意地張ってないでさぁ?」
「あ、それともなに?オッサン、奥さんと娘さんを狙われたい?それならそれでいいけどさ、俺は」

煙草を吹かしながら少年は、椅子にしている男の財布からバラバラと中身を地面にぶちまける。
札やカード、商品券などが落ちる中から、一枚の写真を手に取るとそれを眺めながら一言、聞いた男の表情がハッとする。

…そんな場面を見て、それでも助けようと思うのなら、だとしたら、少年の注意を引くべきだろうか。
328 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/08(水) 20:26:06.77 ID:PDt71hO20
>>327
/おうふ…今気がつきました…今から返します!
329 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/08(水) 20:57:55.58 ID:PDt71hO2o
>>327
"普段ならば助けない"そう”普段ならば”────残念ながら、今のその”普段”ではないのだ。
雑踏に消えそうなその声を男は聞いてしまう。助けてやってもいいと思った直後に聞いてしまう。

全く、私も運が悪いな。と男は渋い顔で呟いた。

そのまま彼は、手荷物を傍の店に預ければ…ポケットから出した”連絡機器”を取り出し操作すれば
戻し、目を細める、声の先を睨む。眼下に伸びるは火を通さぬ暗闇。一足速い夜の闇、行きは宵宵帰りは怖い。

「通りゃんせ…さて、出るのは確実に蛇か鬼だが」

”ま、どうでもいい”と懐に連絡機器を仕舞えば迷うことなく、戸惑う事なく、路地裏の闇に飛び込んでいく。
その瞬間がちりと彼の脳は”切り替わっていた”日常から非日常へ、教師から”魔術師”へ

─────……

「キミの目的はよくわからないが」

そして男は少年の前に”平然と”現れた。目の前で広がる少々暴力的な光景に態とらしい程眉をひそめながら
それであれ言葉に怯えや驚きも無く、ただ授業中に騒がしい生徒を注意する。そのようなめんどくささがあった。

「……まぁ、そうだな、色々言いたいがとりあえず。”その男性から離れ即刻謝罪をしなさい”」

「君が行っている行為は明らかな”暴力行為”という違法行為だ。直ちにその行為を”やめなさい”」

少年がめんどくさがらずに男の姿に注目をすれば胸元に”教師”を表すバッチが輝いていている事、更に加えれば
注意してきた教師の”ポケット”に滑り込ませている手が僅かに”震えている”事が見て取れるだろう。
330 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/08(水) 21:26:19.11 ID:syvC/DTmo
>>329
「ほらほら、わかったらさっさと呼べよ、情けなく大声上げてよぉ」
「呼んでも来ないならそろそろぶっ殺───おっと、来たじゃねーか」

来い来いと言っていたら、本当に来た。まさか来るとは少年自身も思っていなかったらしく、意外そうな声をあげて、かけられた声のした方向を見る。
目玉模様のついたパーカーのフードの下から、凶悪そうな眼差しがリーに突き刺さる、ギザギザの歯を見せて、少年───黒繩 揚羽は笑った。

「あー…お前教員か、学校行ってねーから知らねーわ」
「つーか教員?教員じゃ『違う』か?…いや、もしかしたらって事もあるかもな…」

リーが見せた教員バッジ、それを見たところで怯んだりする事は全くなく、むしろうざったそうに言葉を吐く。
その後、何やら少し考え込むようなふりをして、それから倒れた男の髪を掴み、顔を上げさせる。

「おいオッサン、あいつ知ってっか?あ?知らない?嘘じゃねーよな?…あ、そう」

「じゃ、死ね」

男に対して何かを聞く黒繩、男はリーの姿を見て、首をブンブン振って否定した、それを聞き遂げた黒繩は、そのまま男の顔面を思い切りコンクリートに叩きつける。
顔面から血を流しピクリとも動かなくなった男の上から立ち上がると、黒繩は笑顔を浮かべながら、リーを睨む。

「はい、『やめた』…もう声も聞こえてねーだろーし謝っても謝らなくても一緒だろ?」
「しかし…違法、違法ねぇ…ヒヒッ!『違法』なのはどっちなんだっつー話だよ…」

「なあ先公よー、今後いい教師として青春真っ盛りのガキどもと乳繰りあってたいなら黙って帰った方が身の為だぜ」
「それとも…この学園都市の『闇』に首突っ込むかぁ!?まともじゃ帰れねぇぞ?」

動かなくなった男は、どうやら死んではいないようだ、しかし黒繩の言う通りこのままリーが去れば、助ける者がいなくなる。
つまりは、見捨ててしまうか、助けるかの選択。もし助けるという選択を取れば、黒繩の言う通り学園都市の闇を見る事になるのだろうか。
331 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/08(水) 21:52:00.27 ID:PDt71hO2o
>>330
じぃ、と眺めていた。潰された対象の顔辺りからはザクロが潰れた様に血が広がり始め、少年は楽しげに嗤う
その言葉には正気は無いが”理性”はあった。つまりはそのよく動く口で語る”闇”とは本当の事だろうかと

……頭の片隅で、一昨日の記憶を再生する。

氷を操る、生み出すか、そういうタイプの”能力者”その彼も”誰かに指示を仰いでいたようであった”……つまりは
その彼も目の前の彼も同類の様なものか、と彼は推測する。ならばそこで”寝てる”男も影があると読むべきか…

──男は一つ、ため息を吐くと再びポケットをごそりと動かした。五分か、十分か、紡ぐのは唇だけの動き

「そうか…ふむ、そうだね。”帰らせてもらおう”」

それだけ言えば男は相手の事を”切り捨てた”つまりは小さく【しょうがないな】と言うように笑えば”背を向ける”
コツリ、コツリと足音を響かせながら、少年に言われた通りに”学園都市の闇”とやらを見ないようにするだろう
まるで自分の保身を一番に図る”臆病者”の様に、それか損得を冷徹に考える”それ以外”の存在のように

ただ、すんなりと、とてもあっけなく、

「”今後いい教師として青春真っ盛りのガキどもと乳繰りあってたいなら”…………ね?」

この現場から彼は”立ち去ろう”とするだろう
332 :赤羽 卓 Level 4 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/08(水) 22:10:02.87 ID:Dm0xu8jnO
理想とは、かくも儚きもの。

理想をかざして生きる者が救われた事例は少ない。なぜなら、理想は現実に否定され、実現する事がないからだ。
綺麗に生きるだなんてとんでもない。正直者が馬鹿を見るという言葉があるが、正直者が元々馬鹿なのだ。
人間とは欲望のままに生きる事を、生まれ落ちたその瞬間から世界に承認されている。人間はそうできているのだ。
それに目を背け、無欲に生きようとする者は愚か者であり、偽善者である。
欲望とは人間の性であり、人間が存在する限り永遠にそれと向き合わなければならない。人間とはエゴの塊なのだから。

「……………」

夜の路地裏を歩く一つの影。おぼつかない足取りで、街を徘徊している。
この少年は誰よりもその事を理解している。あまりにも理解しすぎて、"壊れた"。
瞳には一点の光も感じられない。まるでマネキンのように、生気を感じられない様子は一目で異常だと分かる。異常者だと他人に分からせる。
真理を知ってしまった人間の末路だ、世界の欲望と対峙した結果がこれである。絶望以外の何物でもない。
だが、このままでは生きていけない事も分かっていた。だから、仮面を取り付けて真実を見なかった事にしようとした。

「………はっ、ボーっとしてたみたいだ」

唐突に、体がビクンと跳ねてその目に光が宿る。まるで電源が入ったかのように、その体に生気が宿った。

「……あれ、ここどこ?」

仮面を外して街を徘徊している時の記憶はまったくない。気付いたら、真っ暗な路地裏にいたというのが彼の状況である。
最近は、こんな事がよくある。気がついたら別の場所にいたとか、時刻が進んでいたりとか。

「まぁ良いや、帰ろう…それにしてもこんな暗いと噂の魔術師にでも出くわしそうだなぁ。本当にいるなら、会ってみたいけど」

真理を知り、絶望した彼が付けた仮面は偽善の仮面であった。
欲望を否定し、自分より他人を優先するという、理想の塊であった。
演技で心を食いつなぎ、誰に対しても笑顔を向けるその様は、まさしく道化そのもの。
赤羽 卓という人間は、そういうものであった。
333 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/08(水) 22:12:09.69 ID:syvC/DTmo
>>331
「…随分物分かりがいいじゃねぇか」
「ま、そりゃそうだよな、賢明な判断だよ。テメェらはそうやって呑気に鼻垂れて過ごしてんのがお似合いだぜ」

学園都市という地域において、能力者やら魔術師が闊歩する世界で渦巻く思惑は限りなく混沌としていて、それは往々にして水面下で行われている。
裏を返せば、それらに我関せずと言った態度を貫けば平和に生きていられるという事で、つまりはリーの取った行動はある意味では大いに正しいのだろう。

───ただ、一つ間違いがあったなら。

「でも、その態度が気に食わねぇから、死ね」

『黒繩 揚羽』という少年と会ってしまった事であろう。
『帰れ』なんて言って帰ったものを素直に帰す、そんなに物分かりのいい人間ではない。『障らぬ神に祟りなし』という言葉を真正面から蹴っ飛ばす人間は確実に存在して、彼がそうであった。
圧倒的理不尽、しかしそれが黒繩 揚羽という人間なのであって、そこに道理や常識なんて通用しない。

歩き出したリーの背中に向かって突如として開いするのは、全体が影で作られたかのように真っ黒なナイフ状の刃物、それが空中に突如として現れ、切っ先をリーに真っ直ぐ向けて飛んで行く。
このナイフが刺さった所で、傷付けられた所で、血は出ないし肉はおろか薄皮一枚斬れやしない、全くの無傷のままで済む。しかし、その『痛み』だけは格別で。
ただのナイフが刺さったり、斬られたりするよりも遥かに激しい痛みだけがリーに襲い掛かる、そういうものだ。
334 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/08(水) 22:32:25.79 ID:PDt71hO2o
>>333
……ナイフは確かに男の背中に”突き刺さった”つまり少年が扱う能力条件は満たされている。
”ピタリ”と止まる男の姿、ゆっくりと振り向く。その視線、その表情、その動き──何も、何も

先ほどから何も変化がない。”まるでそんな攻撃などなかった”かのように”平然とした様子”であった。

「はて……先ほど”[ピーーー]”と聞こえたような……気がしたが……」

「何かをしてくるのかな?それか──” 既 に 何 か を し た の か な ? ”」

少年を真っ直ぐと見つめて男は哂った。
こつりと再び足音だ…それは少年に近づいていく。男が少年へ歩んでいく。
335 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage saga]:2015/07/08(水) 22:33:56.69 ID:PDt71hO2o
>>334
あ、ピーの内容は「死ねと聞こえたが…」的な内容です!
ちなみに痛みを感じないのはちょっとした魔術の使用で、次のレスでネタバレします!
336 :ライラ・F・モーリス ◆kCKumm9a1uHy [sage]:2015/07/08(水) 22:58:14.26 ID:idldbmPCo
>>332

「ふむふむ、やっぱり街の大半は学生、って感じですよねえ
 ま、その辺りは事前の情報通りですけど」

少年のいる路地裏から大通りへ出る交差点。そこでひとりの少女が壁にもたれ掛っていた
第一学園の制服を着た彼女は、通りを歩く人の目を避けるような位置取りで
通行人たちの様子をキョロキョロと見まわしては手元のメモに何かを書き込んでいく

「能力の発現しているのは子供が中心、ということですしー……この辺も詳しい調査が必要ですかねえ」

ブツブツと呟きながら忙しなく視線をあちらこちらへ向け、右手を走らせる様子はどこかの新聞記者か、そうでなければ不審者さながら
赤羽のいる路地裏は丁度背後の死角にあたり、彼の姿には気づいていないようだが……?

/まだいらっしゃればー
337 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/08(水) 23:06:48.74 ID:syvC/DTmo
>>334
よし、当たった、大当たりだ。
深々と突き刺さったナイフを見て、黒繩は笑みを深くする、自分の能力なのだから、この先起こる事はよく知っている。
痛みに悶え、苦しみ、困惑と驚愕の表情を浮かべて、それが段々と恐怖の表情へと変わって行く、楽しくて楽しくて堪らない瞬間。

「───あ″?」

だった、筈なのに。
一体、どういう事だ?確かにナイフは突き刺さった筈だ、自分の能力で生み出した刃物が刺さって、平然としていられる人間なんていなかった。
だったら何故、この男は何も感じず立っている?歩いている?有り得ない光景に、黒繩の顔から笑みが消えた。

「おいおい、見間違えか?んな歳じゃねーよな俺」

困惑、何が起きたかわからない様子で、自問自答しながらも、右手に新しい刃物を召喚する。これも全体が真っ黒な、刀の様な形状の刃物だ。
そして、それを歩み寄ってくるリーに向かって片手で袈裟斬りに振り下ろす。そこに一切の躊躇いは無く、まるで鍵を閉めたドアノブを確認で回すかのように、さっぱりと行われた。
338 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/08(水) 23:56:50.90 ID:PDt71hO2o
>>337
──まったく、と歩きながら魔術師は”安堵”していた。”警戒”しておいてよかったと
背中を向けたと同時に全力で耳を澄ます。ついでに”僅かな傷みが起こった瞬間に魔術で痛みを隠匿する様に”心がける。
この二つの”警戒”がある為に今このように平然と居られる。……”相手を思考する”時間が稼げる。

「(さて、問題は私は”何をされた”だ。この痛みを隠すために要した魔翌力から考えて……)」
「(まず”実態は無い”傷があれば”もっと膨大な魔翌力がいる”…だが実際に異物が混入してる”感覚がある”…それは?)」

一歩、近づいた。笑みは絶やさず堂々と、これが彼が行える一番の時間稼ぎである……さぁ、
考えよう思考しよう思案しよう推測しよう。考えるのは魔術師の基本であり真髄だ。時間が足りない?ならば
分を秒に秒を小数点にバラバラに切り刻んでその間の思考を挟む、脳が熱を持つ感覚。これでいい

こ れ が い い 。

「(……私は認識しているが魔翌力【肉体】が認識しきれていない。”僅かな傷みを極端に広げる能力”…それか)」
「(そもそもダメージ自体を”誤認識”させる…言わば”幻術的な?”…まだ読みきれないが……まぁ一つわかるのは)」

男性は心の中で惨めに笑い声を上げるのだった。”このダメージは大きすぎるだろう”つまりは”私には耐え切れない”
と結論をつけたからである……つまり痛覚の隠匿をやめた時点で彼自身はその痛みで”行動不能”とであり

そうであるならば”彼はもう自身の魔術をこの場で使う事は出来ない”上に”これ以上そう食らう訳にはいかない”となる

「(──実質、魔術を封じられタイムリミットを……かけられたようなものか…)」

……そして、彼の目の前で少年が再び刃を握った。裏路地に蔓延る闇を集め形どった様な漆黒の短剣
あれで切られたのならばそれは”痛い”と創造する。だがその一撃を”男は避ける訳には行かなかった”──知らせる為に
’この男に自身の能力は通用しない’と知らせる。いや錯覚させる為に彼は歩みを止めた。その一撃を”受け止める”

「いや……見間違えてはいない。キミはまだ”若い”のだからね」

刃か体を裂いていく光景に、僅かばかりの吐き気を覚えながら、男は生徒に答えを教える様に優しく言う。
いや、これも言うふりだ。押さえ込む魔翌力が増える。だがいくら”痛覚を隠匿”しても想像力は働いてしまう
過去にイヤほど味わった傷み。湧き上がる嫌悪感。──だが数十年魔術師の前線で戦った”鉄の精神”で押さえ込む

「……あらためて触れてみると傷がない、つまりは……私を誤認させる能力かな?ふむおもしろい」

「──そうだな”こういった幻術系?”というべきなのか、こういう能力はまぁ…私にとってはあれだが」

「”こんな能力”を人にためらわず扱えるキミの”精神”に”花丸”をあげようじゃないか」

ぺたりと自身の切られた後を確認すれば、男は笑顔で褒めるのだ。教師として、少年より遥か昔から”闇”にいた存在として
まぁ内心は”頼むからこれで引いてくれ、お願いします神様”的な感じで必死に祈ったりでハッタリをかましているのだが……
339 :赤羽 卓 Level 4 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/09(木) 00:21:57.08 ID:epq9i0UeO
>>336
「ん…女の子の声…?」

帰ろう、と踵を返そうとした時、何やら人がブツブツ喋っている声が聞こえた。
それは女の声、赤羽は声のした背後に振り返ってみるが、人の姿は見えない。

「誰かいるのかな…?」

路地裏を抜けたところには交差点がある。そこに足を進めると、ようやく少女の姿が確認できた。
キョロキョロと挙動不審な様子で、メモを書いているのが見える。

「君、こんな時間にこんなところにいたら危ないよ。この辺りには能力者の不良がうろついてるから危ない」

赤羽は、こんな時間でこんな暗いところに女の子がいてはいけない、と思った。
そういえばここら一帯は、夜になると不良やチンピラがうろついている場所。犯罪の温床でもあるという話を聞いた事がある。
そんなところにいては危ない事に巻き込まれるかもしれない、という誰もが考えるであろう普通の事を思った。
少女の境遇がどうであろうと、誰であろうと、例え仮に魔術師であろうと、きっと同じ事を思った。

/すいません完全に発見が遅れました…
340 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/09(木) 00:26:42.62 ID:ueICmaygo
>>338
今度こそ間違いない、確かに斬った、傷は無いが、肉は裂けないが、確かに『妄想』の刃は肉体を通り抜けて。
そうしたら、相手の肉体は、神経は勘違いをする筈だ、『斬られた、痛い』と。ただの思い込みが実感を増して、真実以上の虚構の痛みを生み出す。
その筈なのだ、例外は無い、だってそれが黒繩の能力なのだから。目で見ていれば発動するし、果たして我慢出来るような生易しい苦痛ではない。

「…は、はは」

手の中に残る、リーを切り裂いたばかりの刃が消える。
二度も攻撃を受けて平然としているリーを見て、黒繩は笑った、『こんな事は有り得ない』と。
何故だ何故だ何故だ、絶対だった能力がいとも簡単に壊される、どうしてなのかわからない。

「…ざけんじゃねぇぞ」


「ふざけんじゃねぇぞテメェェェェェェェェェェェ!!!」

───激昂。
笑みを浮かべていた黒繩が、突如声を荒げて叫ぶ、と共に、現れたのは黒≠フ『群れ』。
闇よりも濃い黒色が、群れを成して現れる、黒繩の背後の虚空には大量の黒い刃が並び、その切っ先を全てリーに向けていた。
いつ全弾発射されてもおかしくはない光景、これ程の数であっても傷なんて一つも残らない、あるのは地獄のような苦痛だけだ。

「何をしたァッ!テメェ…俺の能力を受けて何でそんな平然としていられやがる!!」
「どんなカラクリだ!?あぁ!答えろよ!」
「舐めやがってよぉ…!何で俺の能力が効いてねぇんだ!有り得ねェだろ!」

焦燥している、自分の能力なのだから、先天的に効かない人間や、相性の悪い相手くらいは理解している、しかしまさかリーがそうであるとは思わず、『ただの一教師』であると思っていた為、それが効かなかったのがどうにも許せない。
何より、その態度が気に食わなかった。まるで歯牙にもかけていないというようなその態度、それが黒繩のプライドを逆撫でして、苛立たせる。

『二度効かないなら、物量で』 黒繩はそう考えた、『もしかしたら防げるだけのキャパシティーが存在するのか』と。
だとすれば答えは簡単だ、『防ぎ切れなくなるまで攻撃する』実にシンプルで単純な答えである。
実際行動に移そうとするのは早かった、物は試しとばかりに、召喚した大量の刃物を射出しようとした、その瞬間───

突然、携帯の着信音が鳴り響く、それはどうやら黒繩のポケットからなっているようで、暫し無視していた黒繩も余りにしつこく鳴る為に携帯を手に取った。
通話ボタンを押して耳に当て、数秒後、大きな舌打ちをしながら携帯をポケットにしまい、それに伴って背後の刃物も全て消える。

「…命拾いしたなぁ、お前…だが、次はねーぞ」
「なあ、次は確実にぶっ殺す、わかったな?」

名残惜しそうに言葉を紡いだ黒繩は。素早くこの場を去っていく。
どこへ向かったのか、何に呼ばれたのかはわからない、しかし、リーの判断と行動が行動を絞ったのは確かで、正しいものであったと言えよう。

/お疲れ様でしたー
341 :ライラ・F・モーリス ◆kCKumm9a1uHy [sage]:2015/07/09(木) 00:42:18.46 ID:kgC6LROTo
>>339

話しかけられて振り向いた少女は、明るい黄色の瞳が印象的な異邦人だった
背後から現れるとは思いもしなかったらしく驚いた風な表情を浮かべると、

「ご忠告ありがとうございます。すぐに大通りに出られるから大丈夫かと思いまして」

魔術師として潜入してきている彼女だが、書類上では無能力者だしむやみに魔術を使うつもりもない
それでも大通りに出れば、これだけの人通りだ、誰かが助けてくれるだろうとたかをくくっているようなそぶりを見せた

「この街、学生ばかりですけどそんなに治安悪いんですか?」

先の少年の発言を受けて、疑問に思ったことを率直に口にした
ひょっとしたらその原因の一部は自分と同じ魔術師にあるのかもしれない、などと予感しながら
342 :赤羽 卓 Level 4 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/09(木) 01:18:12.09 ID:epq9i0UeO
>>341
「油断すると襲われる可能性があるからね、相手は能力者だし何をしてくるかわからないよ」

この街では油断が命取りである。
何せ、能力者という常人より強力な人種が人口の大半を占めているのだから、それが襲いかかってきたらたまったものではない。
殴る、蹴るよりも恐ろしい暴力が飛んでくる可能性があるのだ。
赤羽はこの少女の正体を知るはずもない、そういえば制服を着ているので同じ学校に通っている、程度の事に気付いただけだ。

「治安は良いとは言えないだろうね。不良はもちろんいるし、魔術師という人たちがここに潜入しているって噂もあるし、それを排除する集団もいるって噂だし、夜は何が起こるか分からない。何もかもが都市伝説のレベルだけど、ないとは言い切れない。陰謀だらけの街だよ、ここは」

全てが噂で、実際に見た事はないが、治安が良いとは言い切れないだろう。
魔術師が潜入しているせいで争いが起こっているのなら、そこに魔術師の責任はあるのだろうか?

「でも、仮に魔術師がいるから争いが起こっているとしても、僕はそこに責任はないと思うよ。僕は魔術師だって人間のはずなんだから、悪い人と良い人がいる。実際に会って、仲良くしたいって思う」

だが赤羽はこう言い切った。魔術師と友達になりたいと迷いなく包み隠さず言い切った。
能力者も魔術師も関係なく平等に接する、いわば他者の同一化だ。
能力者だろうと魔術師だろうと、彼の意識の中ではそんな些細な肩書きなどミキサーにかけられ、均等に混ぜられるのだから。

/すいません、これ以上はきついので凍結でお願いします…
343 :ライラ・F・モーリス ◆kCKumm9a1uHy [sage]:2015/07/09(木) 02:07:07.02 ID:kgC6LROTo
>>342

「まあ、そうですよねー……突然異能の力に目覚めちゃったら、増長する人が出るのも自然ですか」

私は能力持ってないのでわからないですけど。そう続けて彼女は肩をすくめてみせた
基本的に魔術があるのが当然な環境で育ち、他者からそれを教わる魔術師とは異なる出自をもつ能力者たちだからこそ起こりうる事態だろう
そういった増長する能力者が暴走しないかを見定めるために魔術師たちがここにいる。彼女は現状をそう捉えているのだが

「魔術師……?」

目の前の、どこから見ても「普通の学生」であるところの少年から突然そのワードが飛び出し、眉を顰める
思案する事項は1つ。つまり、「何故この少年がそれを知っているのか」だ

それに対する可能性は、考えられるのは3つだ。つまり、

(何処かの魔術師が下手を打ってそんな噂が流される程に目立った行為を行ったか、
 この男が魔術師と遭遇し、それを知ったうえで生き延びたか。
 あるいは、この男自体が魔術師か……この3つね)

思考は一瞬。違和感を感じさせないスピードで、彼女は予め決めていた反応をとる

「魔術師だなんて、そんなのファンタジーの世界じゃないんですから。
 特別な力を持った人が、その中でも更に特別を装いたくて勝手に名乗ってるだけなんじゃないですか?」

一般人が「魔術師が存在する」と言われた時の一般的な反応、模範的な解答だ。

「え、それとも本当に信じちゃってるんですか?えーっと……あ、私ライラって言います。第一学園の一年生です」

名前を呼ぼうとして、それを知らないことに気付き慌てて名乗る少女
丁寧にぴょこんとお辞儀をして赤羽から隠した表情に、密かに影が差す

(「仲良くしたい」ですって?こっちから願い下げよ、まったく……)

『魔術師とは恐れられ、疎まれ、忌避されて然るべき人種である』。我がモーリス家に代々伝わる魔術師としての理念だ
この理念は、ひとえに一般人の目から逃れるため。魔術というものを隠匿するための効率的な手段だ
先の三つの選択肢のうち、どれが正しい解答なのかはわからない
しかし、魔術師と能力者の境界を越え、此方側へ土足で踏み入ろうとする者を彼女が許すわけにはいかなかった

/凍結了解ですー
/平日はまとまった時間を取るのは難しいかもですが、ちょくちょく覗くようにするので時間気にせずにレスしていただければっ
344 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/09(木) 20:56:11.40 ID:TdXLDclaO
>>340

「いやはや、全くだ。まったく…予想外に”効いたな”」

────……白い清潔な、病院のベットの上で、男が目覚めたのは三日後の事であった

あの奇妙な出逢いの後、少年が再び闇の中に消え、男が辛くも死ななかった夕方の後。
無数の殺意に囲まれ、自分が死ぬか相手を[ピーーー]か天秤にかけ、ならば相手を殺そうと、
その覚悟を扱う事もなく。どこかほっとした男は、その場の色々とした”後片付け”をした。

其の後起爆直前の爆弾を抱えながら訪れたのは病院であった。と、正確には入り口までしか持たなかったが…

「…………」

爆弾の大爆発…つまり、二発分のダメージを”見て見ぬ振り”をしていた代償は高く付く。
自らの意識を魔術で落とすまでの数秒間に襲ったまさに”内側から引き裂かれる”痛みを
男は恐らく死ぬ迄の間忘れる事は出来ない。そして忘れようとしても痛む全身の神経が”忘れさせない”

無理をした”代償”というものだ。全身を蝕んだ痛みと言う呪いは彼の神経を極端に敏感にした。

「ま、しばらくは薬を手放せない生活か。」

「残念というかそういうべきではないか….」

「”存在しないと思い込める。こませれるが、無かった事には出来ない”」

「……ま、彼にとって僕は”相性が悪かった”でもまぁ…僕は彼にも”勝てないだろうけどね”」

あの冷酷さと勢い。不気味な存在に怯えず攻める若さに二重丸を。男は心の中でチェックを入れ
顔面に包帯が巻かれている隣人をちらりと眺め側のリンゴを一つ拝借すれば、病室を出る。
三日振りの運動に身体はまだ慣れず慣れぬ痛みに吐き気をするがまたそれも懐かしいな感覚。
明るい院内を昔の自分を思い出しながら歩み。ふと外の様子を眺めてみる。……あぁ、そこには

そこにはとても綺麗な青空が、学園都市の全ての生徒の可能性の様に、果てしなく広がっていた。

/っと、遅れましたが絡みありがとうございましたー。
345 :赤羽 卓 Level 4 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/10(金) 00:48:49.00 ID:PWeM5d4kO
>>343
「いや、まあ、ただの噂だけどね?魔術師の存在だって本当かどうか分からない都市伝説さ。でも、都市伝説だからこそ本当にいたら凄い事だよ。そもそも、能力と魔術の何が違うかなんて分からないけど。本当にいるなら、僕は友達になりたいな」

何故、赤羽が魔術師の存在を知っているかなどなんということはない。ただ、そういった噂を聞いただけだ。
どこから流れてきたとも知れない、単なる風の噂を"偶然"聞きつけただけ。それ以上でも以下でもない。
しかし、どうやら相手の少女は信じていないようで…と、赤羽は受け取った。まあ、それが普通なのだろうけど。

「僕は赤羽 卓って言うんだ。よろしく、ライラ」

自己紹介に自己紹介で返す。隠れた表情に、影が増した事に赤羽は気付いた様子はない。

「それにしても最近は物騒になったなぁ、こういう変な都市伝説が流れ始めてからここの治安も悪化し始めたんだよね。偶然にしては出来過ぎだけど、ことごとく証拠は消されるか見つからないかで真相は分からずじまいだよ。気になるなぁ」

この学園都市では何かが蠢いている。表と裏で世界は分かれ、裏の住人が世界を動かすのだ。
裏の世界で起こった出来事が表の世界に出てくる事は決してなく、証拠は全て隠蔽される。

ところで、赤羽は先ほどから笑顔のままその表情を変えていない。自然であるが、まるで貼り付けたかのような笑み。
食えない人物であるとか、何も考えていなさそうとか、それにどう評価を下すかはライラの自由であるが。
346 :ライラ・F・モーリス ◆kCKumm9a1uHy [sage]:2015/07/10(金) 07:12:50.95 ID:fX+mBNN4o
>>345

「ええー、でも得体の知れない相手ですよ?怖くないですか?
 私だったらあんまり関わり合いになりたくないかもです」

もし魔術師がいたとしたら、という体で言葉を紡いでいく。
怖いから近寄らない、得体が知れないから距離を取る。未知への恐怖心を煽れば、この少年が魔術師への興味から身を引くことを期待していた。

「赤羽さん、ですね。学校とかでも会うかもしれないですし、よろしくおねがいしますね。
 いやでも学園の生徒の知り合いが出来て良かったです。まだあまり友達がいないので」

本心をひた隠しにして溌剌とした笑みを浮かべるライラ。
実際のところ、この街に来て日が浅い彼女は周辺の地理などにも疎くて。
能力者だとか魔術師だとかの事情はさておき、知人が出来たことは素直に喜んでいいだろうと思いながら。

(気になる、ねえ……)

恐怖心が彼女の味方とするなら、彼女の敵はそれだ。
時として恐怖心にすら打ち勝って人を突き動かす、好奇心という感情。それこそが彼女の家系にとって最大の敵と言ってもいい。
それを口に出されたとなっては、此方としても注意せざるを得ない。

「気になるからって、妙なことしないでくださいよ?」

終始表情を変えない男にある種の違和感か、何故か沸き立つ小さな苛立ちのような感情を覚えながら会話を続ける。
そうして言葉を放ってから、自分が釘を刺すような言い方をしたことに気付き、
「さっきの話じゃないですけど、ほら、危ない人たちがいるそうじゃないですか」なんて、どこか言い訳めいた言葉を後付で加えるのだった。
347 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/10(金) 20:38:07.21 ID:Xz6+rrnXo
夜も更ける頃、学園都市の暗い路地裏。そこに一人の少年が居た。少年の名は、天地煉夜。腕にチェーンを巻き付けたこの白髪の少年の正体は、学園都市に潜入する魔術師の一人だ。

「ええ、分かっています。我々にとって有益な情報を掴んでみせます。」

声を発する少年。だが、周囲には他の人間の姿は見えない。どうやら、携帯電話を右耳に当て、誰かと通話をしている様子だ。しかし、彼は何故わざわざこんな人気の無い場所で電話をしているのだろうか?答えは単純。聞かれたくない会話をしているからだ。彼の住む寮では、隣人に聞かれる可能性もある。
こうまでして、隠す話の内容。それはつまり、魔術師としての活動に関することだ。

「ええ、分かりました。必ずや――天地の名にかけて。」

最後に魔術師界隈を知る者ならば、聞いたことがあるかもしれない『天地』の名を口にし、電話を切った少年。携帯をポケットにしまうと、周囲を見回した。人気の無い路地裏と言えど、誰一人通らないという訳では無い。もし、誰かに会話を聞かれていたら、少々厄介だ。
果たして、この会話を聞いた者、もしくわ彼を目撃した者は居るのだろうか?
348 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/10(金) 20:43:58.28 ID:jA/5pMzOo
学園都市の裏側───とは言ってもただの路地裏だが───そこには、この都市の闇が凝縮する。
表向きは明るい学生の街、表が光に包まれているからこそ、裏の顔は深く暗いものだ。

「…っかしーよな、やっぱりよぉ」
「俺の能力にはまるで狂いはねぇ…って事はつまり…やっぱりあの野郎が何かしてやがったって事かぁ?」

「そういう事だよなぁ!?えぇ!?オイ!!」

日も落ち始めいよいよ闇が深くなり始めた路地裏では、今日も喧嘩が行われていた。…いや、喧嘩と言うには余りにも差がありすぎる。
立っているのは一人の少年、その周りには数人の少年が倒れていて、立っている少年が倒れている内の一人に蹴りを入れている真っ最中だ。

「痛覚遮断か無効化か…いや、重要なのはそこじゃねぇ…重要なのは、あいつが『本当に能力者か』って事だ」
「クソが、確かあいつ教員だったな…情報を洗うか…?」

立っている少年───黒繩 揚羽は、パーカーのフードの下の目を伏せて、ぶつぶつと呟き何かを考える。
それ程大きく無い声だが、静まり返った路地裏にはよく響いて…もしかしたら、それより少し前に、「ぎゃあ」とか「ひぃ」とかいう悲鳴が響いていたのも誰かが聞いていたかもしれない。

349 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/10(金) 21:19:45.74 ID:sSeh23DG0
>>348
路地裏の入口辺りから、何やら声があった。
明るくて陽気で無邪気な声。路地裏に少しだけ灯り齎す古臭い電灯に照らされたその声の主は、
学ランを身に纏い鉢巻を額に巻いた……青年の様な出で立ちであった。

「───オイオイ、なんだよこりゃ。」

入り組んだ路地の合間には、学園都市の暗黒面が鎮座する。其れは今日の限りでは無いのだが、取り敢えず今日の暗黒面は、その番長もどきが目に映した路地裏の光景だった。
幾つかの身体を飾りとして周りに突っ伏させ、その中心に存在する彼の姿。──その番長少女は硬く拳を握り締める。

「……まあわかりきった事ではあるんだけどよ?──コレ、お前がやったのか?」

番長を名乗る番長もどきは、この光景を見逃す事は出来ない。都市を護ると宣言した立場故、其れがどんな人間であっても、自分だけはその人間の味方であらねば──と。
少女は声の調を低くして、黒蠅に言葉を投げかけた。
350 :氷熊 右京 ◆flKCwFlbw. [sage]:2015/07/10(金) 21:37:49.49 ID:KME80plQo
>>347
「で?有益な情報は掴めたかい?」
路地裏――
ここに居るのは携帯で誰かと話している男。
そして、その会話を聞いてしまったこの俺…
こんな場所で話してるのは、誰かに聞かれたくないからだろう…
偶然、その会話を聞いてしまったんだ…
俺は興味本位でこの男に声を掛けてみた。
そして…

「天地君だったか?」
天地――この男の苗字か。“名にかけて”って…
大物か何かか…少なくとも、俺は聞いた事は無い…
俺が気になったのはこの初めて聞く苗字だ。

【その声を掛けた男――】
【黒いタンクトップに赤いワイシャツ】
【大仏マスクを被っており、素顔は確認できない】
351 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/10(金) 21:38:30.28 ID:jA/5pMzOo
>>349
「あぁん?」

「なんだぁ?テメェ…」

深く俯き、考え込んでいた所にかけられた声、首をくいと曲げると、そこにいたいずもを睨み付けた。
フードの目玉模様と、その下の目が鋭くいずもを視線で貫く。ゆらりと体を僅かに仰け反らせ、ギザギザの歯を見せた。

「コスプレ大会はここじゃやってねーぞ、さっさと帰りな」
「…あ、それとも何?俺がこれやったから何だって?俺の方が『無勢』だぜ?」

いずもの服装、それを見て呆れたように右手をシッシッと振って冷たく言い放って、それから挑発的な言葉を続ける。
確かに倒れている人間が同じ集団だとすれば、一人で立ち向かった少年の方が不利であった筈である…しかし、それにしてはやり過ぎ、だろうか?
黒繩の方には全く傷が無く、それどころか倒れている少年達にも傷が少ないのがわかるだろう、そこから考えられる事柄と言えば…。
352 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/10(金) 21:53:55.88 ID:Xz6+rrnXo
>>350
「む……何だ貴様は?怪しい奴め……」

しまった、聞かれていたか。そう思い、若干の焦りと共に声を掛けてきた男の方へ赤い瞳を向ける天地。
見ると、大仏マスクで顔を隠した怪しい男。警戒心の強い煉夜は、すぐに警戒体勢に。いや、警戒心が強くなくても、マスクで顔を隠した相手だ。普通は警戒するだろう。
それにしても、この男、魔術師か能力者か?何の目的で声を掛けた?何故、顔を隠す?なんにせよ、このまま逃げたりしたら怪しまれる。先ずは確かめよう。

「天地の名に覚えがある者か?それと、何故顔を隠す?強盗でも働いてきたのか?」

相手が魔術師ならば、天地の名に聞き覚えがあるかもしれないし。そう考え、質問する。まぁ、素直に答えてくれるとは限らないが。
353 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/10(金) 22:07:49.48 ID:sSeh23DG0
>>351
「何意味ワカンねぇこと言ってやがんだよ。
お前は何かしらの訳ワカンねえ力を振りかざしてこいつらをボコボコにした、違うか?」

──あえて。「能力」という言葉を使わずに「訳のわからない力」とその異能を分類して表現することを避けた。
相手が能力を有する異端者か、それとも学園都市に潜入した魔術の異端者か。
取り敢えず、疑わしい者と遭遇した際にはこういう様に言葉を濁して表現しろと、何処かの魔術師に教わった。──其れを実行したまで。

「襲われそうになったから身を護った……ってんならわかる。
だが見る限り?身を護ったという……ようには見えないんだけどなぁ……。……そうならオレはお前を見逃す訳にはいかねぇんだよ。」

番長もどきの少女は、相手を探るように黒蠅を凝視し、その疑問の理由を語る。

//遅れてすみません気づくのが遅れました……しかも文短くて申し訳ない……
354 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. [sage]:2015/07/10(金) 22:10:08.28 ID:kB2+pJMV0
「成る程…ここが、第一学園の第二運動場…」


鹿島 衡湘が探索と称して辿り着いたのは第一学園第二運動場───所謂「模擬戦場」と呼ばれる場所である。
第一学園では、能力者同士の力比べとして良くこの場所が使われるらしいが、詳しく衡湘は知る筈もなく……。


「運動場といっても何個かの区画に分かれている…普段はテニスなどのスポーツでもやっているのか?」


区画がある分、広い場所を使うスポーツではなく、ある程度狭めのコートでも使えるような運動部などが今は使っているらしい。現に区画の一つはテニス部らしき人達が汗水垂らしてラケットを振っている。


「らしいな、能力者にとっては運動能力を求められるのは当たり前だがそれ以上に…」
「頭だ、機転さえあればさらに能力を高める事だって出来る、俺にとって今はそれが重要だな」


まるで誰かに話しかけるように、頭をコツコツと軽く叩き頭脳戦が必須だと説明する───といっても、誰かの気配を感じたからこそ問いかけていたのであって。


「なあ、そう思わないか…誰だか分からんけど、何となく気配を感じたからさぁ」

//よろしくお願いしますー
355 :氷熊 右京 ◆flKCwFlbw. [sage]:2015/07/10(金) 22:13:57.36 ID:KME80plQo
>>352
「わりぃ、それが聞いた事が無いんだ…」
そう、初めて聞く名前だ…
だが…その口振りからすると、何処にでも居る様な家族じゃ無いのは確かだ…
何かこう…

「“知る人ぞ知る”的な…?」
一部の人間が知ってるって感じなんだろう…
少なくとも、俺は知らない…
もしかすると…

「此処に来て、日が浅くてな…解らねぇ事ばかりだ…」
そう、俺は学園都市の生まれじゃ無い。
来たばかりの俺が知らないだけで、学園都市の中では…

「顔?おっと、これの事か?イイだろ?“地元”の雑貨屋で買ったのを持ってきたんだ」
俺は被っていたマスクを取り、応える。
俺だけ質問攻めしても、失礼だろうからな…
それに…

「氷熊 右京って言うんだ。」
俺がコイツの名前を知っていて、コイツが俺の名前を知らないって言うのも不公平だろう。
そう考えた俺は、コイツに自分の名前を名乗る事にした。笑顔で。
356 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/10(金) 22:31:39.97 ID:jA/5pMzOo
>>353
「…ハッ!」

「『訳ワカンねぇ力』…ねぇ…ヒヒッ」
「テメェ…『知ってる』な?」

ギン、と黒繩の目が鋭くなる、バカにしたような眼差しだった物が、真面目さを少し増して、いずもを訝しむように。
そうさせたのは、いずもの言葉選び、能力か魔術か、それをボカした言い方をしたのが、黒繩の思考の端っこに引っかかる。

「なぁ、普通よぉ、『能力』しか知らねぇならそんな風に言わねぇよなぁ?能力そのものを知らないなら話は別だ…が、ここ学園都市にいながらそりゃありえねぇ、だろ?」
「…つまり、テメェは『能力』以外の『異能』を知ってる、そして俺がそれじゃねぇかと思ったから、カマを掛けた…違うか?」

「…なぁ、オイ、俺をあんま舐めんなよ?」
「テメェが『能力者』か『魔術師』か、どっちか知らねぇが、どっちでもいい…重要なのはテメェが『その存在を知っている』っつー事だ」

嗚呼、もうこの状況に対して言い訳も弁明も誤魔化しもしない、する必要がない、いずもが思う事がそのまま真実で、だからと言ってもうどうでもいい事だ。
『見逃す訳にはいかない』?それはこっちの台詞だ、恐らくいずもは魔術師の存在を知っているのだと考えて、だとしたらこのまま放っておく訳にはいかない。
学園都市に蔓延る異端者───魔術師を狩る、それがこの少年の所属する組織に課せられた使命、その為の手段は指定されてはいない。

「吐けよ」

「知ってんだろ?魔術師の事をよ、言えよ、なあ?」
「今すぐ言ったら、痛い目見ないで済むぜ?」

一触即発…いや、最早爆発しているか。黒繩は口角を上げ、敵意を表す笑みを浮かべながら、胸の高さに右手を挙げる。
掌を上に、軽く開いた右手の上に、黒い闇が凝縮していく、真黒な闇が形を成して、両刃の短剣の姿を模ると、黒繩は右手にそれを握った。
357 :山風 明衣 [sage]:2015/07/10(金) 22:32:56.17 ID:L669qo98o
「えっ?もしかしてあたしに話しかけてる?」
ちょっと後ろで呟きを聞いていた体操服姿の女子生徒……山風 明衣はやや驚いて辺りを見回した。いくら左右を見ても誰もいない。間違いなくこの言葉は自分に投げかけられたものだった。

「あー…うん、作戦とかそういうのって必要だよね!パワーだけで押してくだけじゃなくってさ。あとセンスとか?」
なんだかさっきから一人でブツブツ言ってる
し、ずいぶん長い独り言だなぁ……と思ってその様子を傍観していた明衣はどぎまぎしながらも肯定的に答えた。

「えーと、テニス部の見学に来た人…かな?男子テニス部ならここじゃなくてもう一つ向こうにあるコートだよ?」


//よろしくお願いします!
358 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/10(金) 22:34:54.45 ID:Xz6+rrnXo
>>355
「……武道の家元って奴だ。尤も、分家で僕自信にはたいした実力は無いがな。」

まさか、魔術師の名門だなんて言える筈も無く、咄嗟に嘘をつく。だが、これは少し苦しい嘘だった。わざわざ、暗い路地裏でこそこそと武道の家元が電話だなんて、よく考えなくてもおかしい。しかし、これで分かった。この男は、恐らく能力者。すなわち、調査対象だと。

「酷いセンスだな……そういうものは、パーティーグッズであって日常的に被る物ではないだろう。」

マスクに対して素直な感想が出る。日常的なアクセサリーとしては、どう考えても不自然なそれ。この男、変人だな。と、内心失礼なことを考える。

「……天地煉夜だ。」

相手が名乗ったのだ、此方も名乗るべきだろう。そう考え、本名を名乗った。ちなみに、此方は笑顔をまったく見せない。随分と無愛想な表情だ。
本名を名乗ることに、デメリットはあるが、メリットもある。天地の名を明かすことで、解る者に魔術師だと知らせることが出来るのだ。こうすることで、無駄な争いを避け、同じ志の魔術師と情報の共有が出来る。そのため、本名で学園に通っているのだ。

359 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/07/10(金) 22:48:10.26 ID:kB2+pJMV0
>>357
「いや、テニス部なんて入る気ないさ…というか今さっきの説明した通り!」
「この俺にはまだ勉強が足りない、頭脳戦で勝つ為にはあらゆる手段を揃え、且つ機転が無いと意味がないんだ」

そう言って、山風 明衣に視線を傾ける。

「君に話した理由としては、まあ近くにいたから…かな?」
「だが、それと同時に今自分がどれ程の力を有しているのか確かめるのも手だと感じてな───」

懐から水の入ったペットボトルを取り出し、そして彼女を誘導するかの様に第二運動場のある区画を目指して歩き始める。

「早い話が折角ここまで来たんだ、ちょっとした「模擬戦」、とやらをやろうぜ?」
「それなりに女子にしては筋力もありそうだし、中々に良い勝負になりそうだと俺は思うし、君も「運動」したいならうってつけだと思わないか?」

ペットボトルの蓋をクルクルと開け、中身の水を少し飲み、そして手を山風に向けて「来いよ」と挑発する。戦闘態勢は整っている。後は彼女が此方に乗るか───?
360 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/10(金) 22:52:37.10 ID:sSeh23DG0
>>356
「──因みに聞いとくんだけど、オレが今その事実を初めて聞いたってなったらどうなる訳なんだ?」

黒繩の反応をその眼に映して、少女は真っ直ぐに言葉を放ち返した。──然し、少女は既にその解は凡そ見当がついている。
恐らく相手が”魔術師”であるのなら、「証拠隠滅」の為に何も知らない彼女を消す……つまり、戦闘が開始される。逆に知っていたとしても、彼女は「情報分散の阻止」の為に殺されるのだろう。
彼女は既に起こってしまった、変わりようのないその事実をただただ確認しただけだった。


「まあじゃあ逆に言わせて貰うけどよ。

オレからしたらお前が「魔術師」だろうがさ。「能力者」だろうが、そしてそんなお前がオレを黙認できない、だろうが、……そんな事はどうでもいいんだよなぁ。」

「──ただただ其処に転がってる奴らが無意味にそんな風にされたっていうなら、其れだけは見逃せない。」

──そう、どうでもよかった。学園都市そのものやその外部を彩る異端者の存在なんかは、直接彼女の行動方針に関わりはしない。

──だから。魔術という異端に無知なその番長もどきは拳を握り締めなければならなかった。
その異端者から非難される弱者を「番長」の立場として救い出す為に。……路地裏に一陣の風が舞い込んだ。

学園都市の人々を脅かし、傷つける忌々しき存在が其処にあるのなら

「……”番長”の出番だ。」

361 :氷熊 右京 ◆flKCwFlbw. [sage]:2015/07/10(金) 23:04:47.21 ID:KME80plQo
>>358
「へぇ…じゃぁ煉夜も、その名前に誇りを持ってるワケだろ?」
武道の家元か…
“名にかけて”って言ってる以上、分家でもその名前を背負っているワケだ。
自分の家族に誇りを持つって言うのは、それほど素晴らしい家族なんだろう…
もしそれが…

「もしそれが…“本当”だったらな…」
そう…本当だったら…
俺は“武道の家元”って言葉に違和感を感じた。
そんな大層な家元なら、コソコソと電話する必要が無い。
何かを隠しているんだ…
だが、ストレートに聞いても答えないだろうな…
知られたくない筈だから…
だったら…

「そんなに天地家が凄いトコなら、知っとかないと田舎者がバレるだろ?
 見せてくれよ…その実力…」
俺は人差し指を向け、小さな火球を精製する。

「やるぜ…やるぜ俺は!!」
球は弾となり、煉夜の身体に向かって飛んでいく。
パチンコ玉みたいな小さな弾だが、炎を濃縮させた弾だ。
一般人に当たれば、火傷じゃすまない。
そう、それが一般人なら…
此処は学園都市だ。煉夜が一般人かどうかは今は解らない…
能力者かもしれない…
金属を溶かすとは言え、煉夜に効くかどうかは解らない…
俺が先制攻撃を仕掛けたのは、煉夜が何者を知る為…
そう、煉夜が武道の分家って奴なら…それなりにレベルも…

【彼はこの時点で“魔術”と言う言葉を発していない】
【“学園都市にて日が浅い”と言う言葉が本当なら彼は“魔術”の存在を――】
362 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/10(金) 23:13:30.52 ID:jA/5pMzOo
>>360
「あぁん?知るかよ、テメェが知ってるか知らないかは俺が判断する事だ、テメェが何言おうが関係ねぇ」

いずもが思っているよりも遥かに黒繩は単純明快な男だった、単純な『悪党』、白を黒にするよう強要するような、そんな男。
つまり、いずもが魔術師の事を知っていようがいまいが関係の無い事だった、やる事は結局変わらないから。

そう、この男にまともな矜持や、信念なんか無い、守るべき物も無ければ、失う物も無い、ただ独り、自分独りで思うがまま。
さすれば、いずものような人間の言う事なんて理解出来よう筈もない、震えた声が喉から漏れ出す。

「……ぷっ…ヒヒ…」
「ヒャーッハッハッハッハ!!ヒヒ…何?え?何だって?」
「『番長』っつったの今?だからそんな格好してるワケ!?マジでお前?冗談だろ!?」

大笑い、いずもの想いを真っ向から否定するのに十分過ぎる答えが、そこにあった。

「ヒャハ、ヒヒ…あーやべ、笑い死ぬわ、やべーやべー!おいおいその能力は卑怯だぜ!勝てる訳ねーよ!」
「ヒャハハ…あー腹いてーから死ね」

笑う、嗤う、嘲笑う、邪悪を煮詰めたような笑いを一頻り起こした後、それは不意に。
ヒュン、と空気を裂くような音、黒繩は唐突に右手に持っていた短剣をいずもに向けて投擲した、投げられたそれは真っ直ぐに、切っ先をいずもに向けてダーツのように飛んで行く。
この短剣が刺さった所で、いずもの肉体には血一滴すらも流れない、全くの無傷で、体には擦り傷すら生まれない。しかし、この力による痛みは格別で、ただのナイフが突き刺さる事よりも遥かに激しい痛みを、そこに生み出す。
363 :山風 明衣 [sage]:2015/07/10(金) 23:21:51.49 ID:L669qo98o
>>359
「はぁ…。つまり今のままじゃ経験が足りない、と?」
鹿島につられて歩を進めながらぼんやりと考える。どうやら彼は自分の実力を試す相手として自分を選んだようだ。そこまでは察することができたのだが……

(模擬戦って"何の"だろう?卓球かな、それともバトミントンの?)
それが能力者同士で技能を試すための「模擬戦」であるところまでは至らなかった。彼の真意に気づいたのは運動場に着いた頃で、気づけばもう相手はすっかりやる気になっていた。

「なるほど、そっちのことかぁ…。あんまり得意じゃないんだけどな」
やや困り顔になりつつも明衣はゆっくりと身構えた。呼吸を整え軽く目を閉じる。二人の間に微風が吹きぬけていく。

「それじゃ……いきますよっと!」
そして風が不自然にうねり出す。微風は突如、強烈な突風となって轟音と共に鹿島に向かって吹き荒れた!

まずは単純な攻撃「吹き飛ばし」である。相手がどんな能力を持っているのか分からない明衣はとりあえず間合いを取ることにした。
364 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/10(金) 23:27:32.81 ID:Xz6+rrnXo
>>361
「…………」

“本当”だったら。その言葉に肩をピクリと動かす。勘づかれたか?この男、馬鹿ではないらしい。いや、今のは自分のミスか?頭の中を考えがめぐるが、考えている暇は無さそうだ。

「フン……いいだろう。受けてたつ!」

わざと攻撃を食らい、一般人を装うことも考えた。だが、天地の名を明かした以上、そんな真似は出来ない。わざと負けて、天地の名を汚すことなど、許されないのだから。それに、相手は能力と魔術の区別が出来ないだろう。ならば、能力者を装うべきだ。そんな考えから、煉夜もまた戦うことを決意した。

「はっ!」

先ずは、迫り来る火球に対処。腕に巻き付いたチェーンを伸ばし、更に腕に巻き付けていく。そして、腕を前に出しそれで火球を防ぐ。表面部分のチェーンは、溶けるが皮膚には達っさなかった。

「それが貴様の能力か……」

煉夜は、隠すこと無く魔術を使用した。最早、武道家だと嘘をつくのは限界だろう。

365 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/10(金) 23:30:35.71 ID:sSeh23DG0
>>362
──瞬間、眼を見開く。先程から黒繩がその右手に携えた闇の短剣……その姿が不意に彼の手から消失したのが、眼に映る。
正直な所、この路地裏という戦場は高天原いずもにとっては圧倒的に不利…否、黒蠅揚羽という能力者にとって有利すぎる環境である。
彼が形成した闇の精製物は路地裏の闇に紛れていて。──少女からすれば僅かな灯りと、己の感覚だけが頼りだ。
その中でも、その”闇の短剣”という「幻覚」が理解できてしまったのも大きな不利であるといえよう。
そもそもその”闇の短剣=幻覚”が目に映らなければ、彼女が危機感を覚える事も無ければ、覚える必要が無い。

「ってェ…………!!!!!!」

──故に、反応が遅れた。微妙に見えてしまう幻覚は、「躱さなければ自分の身に害を及ぼす物質」として既に身体が認識している。
左に身体を倒すも、右の頬を闇の短剣が翳めた。然し、そこに傷は生まれず。余韻としてそこに鎮座していたのは切り傷は思い難い程の「激痛」だった。
思わず顔を顰めてしまう。頬に手を当ててみるが、そこに原因と思しき傷は何処にもない。

──何なんだ?この能力は。

「オレも余裕こいてる暇は無さそうだな……クソ野郎が!!」

歯を食いしばって、黒繩を捕捉した。
然し、そのような台詞を吐いていながらも少女は動く素振りを見せず。ただもう一度拳を握り締めて、足を肩幅に開き、臨戦態勢を整えた、それだけ。──不意をつかれたが故に負った苦痛。その脅威を目の当たりにして尚、彼女はまだ動かないのだった。相手の反応は、どうか。
366 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/07/10(金) 23:41:47.16 ID:kB2+pJMV0
>>363
「…風、か!?」
「クク、こいつぁ…相性が悪いなぁ!」

前方から吹き荒れる突風に身を任せ、着地を注意しながら風を利用して相手から距離を取る。同時に、山風も距離を取ったので今の距離はさっきの倍以上もある。

(水…ただの水だとしても、加速を加えた水にしても、あれだけ強い風を吹き付けられれば精度は落ちる、だろうな)

最初から水をブチかますつもりだった鹿島は考えを改め、山風に向かってS字軌道で走り出す。

(幾ら風でも追尾してまで吹かせる程の能力はない筈……せめて当たる面積を最小に、受け流す様にすれば風など問題ではない!)

右手に蓋を閉めたペットボトルを持ち、「射程圏内」に入った時に水をブチまけようと左手を蓋にかけた。

「君も察したと思うが、俺はこのペットボトルで勝利を手に入れる!」
「この街では勝利を求めるこそ最高の思考を生み出せる!」

S字軌道を続けながら遂にペットボトルの蓋を開け捨て、中から「100ml」の水を出す。その水は鹿島の思考に合わせ、鹿島の足元から山風の足元へ駆け巡っていった。
367 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/10(金) 23:46:39.20 ID:jA/5pMzOo
>>365
「ヒャハッ!痛ぇだろぉ!?その様子じゃ掠ったみてぇだな…」
「ヒヒッ!ブッ刺さるとその程度じゃ済まねぇぜ!?」

生物の進化ではないが、暗い路地裏の中にいる事が多い黒繩は、この闇の中で視界が慣れている、それに加えて黒繩の武器はこの闇に紛れる黒い刀剣、黒繩が有利なのは言うまでもないだろう。
それは黒繩自身もよくわかっていた、負ける気がしない、だから自然と気も大きくなるし、調子付く。
投げた短剣がいずもに当たった、その後からいずもが全く動く様子が無く、その場に構えたまま動かない。おそらくは迎撃の構えかと黒繩は読んで、対応を選ぶ。

「オイオイそんなとこ突っ立ってどうしたオラァ!?チビって動けねぇかぁ!コスプレ女ァ!!」
「何が『番長』だよ!笑わせるぜ!古いんだよタコ!!」

わざわざ相手の土俵に立ってやる必要はない、周到に卑劣にリスクの少ない行動を選ぶ。吐き連ねる言葉とは逆に黒繩の判断は冷静だった。
即ち、相手が待ち伏せをするならこちらはその範囲外から狙う。黒繩は再び右手に短剣を作り出すと、いずもの腹目掛けて投擲した。
368 :氷熊 右京 ◆flKCwFlbw. [sage]:2015/07/10(金) 23:58:15.15 ID:KME80plQo
>>364
「それ、“武道”じゃねぇよな…」
やっぱり、煉夜は嘘を付いていた。
腕に撒いた鎖を使って、俺が放った火球を防いで見せた。
武道なワケが無い…
これが煉夜の能力…あれ…能力だと?

「煉夜のその“能力”…違和感を感じる。
 わかんねぇけど、“能力”って感じがしないんだ。」
違和感…俺はこれを能力と呼ぶことに違和感を感じた。
俺が知ってる“能力”と何か違う…此処に来て日が浅いとは言え、俺も自分以外の能力者を見てきた。
だが、どれも違う…こんな感じは初めてだ…一体何故だ…?
もしかしたら、“能力”以外の…?だったらそれは何だ?
それだけじゃねぇ…

「だが、天地家が“知る人ぞ知る”って奴なのは、間違いなさそうだ…」
そう、武道家ってのは確かに嘘だが、間違いなく煉夜は“天地の名にかけて”って電話で話してる。
それに、アイツが敢えて“能力の様なモノ”で防いだのも、タダの自己防衛じゃねぇ…
あいつの中から、決意を感じた!
多分、天地家って奴を背負っているんだろう…
やっぱり、天地家ってのは何かあるんだ…!!

「煉夜から男らしさを感じた。気に入った…やるぜ、やるぜ俺は!!」
カマを掛けるだけのつもりだったが、この決意を感じた以上、勝負を止めるワケにはいかない。
俺は拳を握り、炎を放出させて拳に覆わせる。
そして煉夜へ炎の鉄拳を浴びせる為、煉夜の下へ走る!!
小細工は無い…タダ正面へと…!!
俺はアイツの決意を正面から受け止める!!
369 :山風 明衣 [sage]:2015/07/11(土) 00:00:54.06 ID:2S7tcw0IO
>>366
明衣は雰囲気で察した。「彼は少なくとも自分より戦い慣れしている人だ」と。対する明衣はというとその真逆だった。

あんまり得意じゃないどころかこういった模擬戦をやったことはほとんど無いし戦法すらまともに持っていない。
完全なるど素人であることは明衣の慌てる様子から一目瞭然だろう。元々持ち合わせているスペックがそのまま戦闘に活かされるとは限らない。

「うわわっ…!!」
ペットボトルから撒かれた水は意思を持った生物のようにこちらへ向かってくる。あれに近づけば何かしら不利なことが起きるのは確実だ。

(でも どうすれば?)
その答えを導き出すよりも速く水は足下に到達した。反射的に後ろへ下り逃げ出そうとするが…。
370 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/11(土) 00:14:25.17 ID:Mr/UHRQqo
>>368
「フッ……そうとも、僕は能力者だ。」

もう武道家を名乗る必要は無い。次は能力者を名乗る。後程怪しまれるだろうが、仕方あるまい。

「何を言っている?能力で無かったら、なんだと言うのだ?」

自身の魔術が怪しまれている?焦りを感じ、頬に汗を足らす。この男、予想よりもずっと鋭い。いずれ、自分の正体を知られるかもしれない。となれば、早いうちに始末を考えた方がいいかもしれない……
氷熊を危険視しはじめる煉夜。以外な鋭さといい、その能力といい、侮れない存在だ。もし、敵になれば厄介な存在だとすぐに分かった。

「フン……力比べといこうか!!」

とにかく、今は相手の能力とその実力を確かめよう。煉夜はそう思い、氷熊の炎の拳に、自身のチェーンを巻き付けた鉄の拳をぶつけた。
371 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/07/11(土) 00:14:35.76 ID:DcCkhWV80
>>369
「ム……?」

相手の慌ただしい様子を見て、鹿島の走っていた脚は止まる。
代わりに流れ、山風の足元へ近づいた水はまるでねずみ花火のようにさらに足場を減らさんとばかりにその速さを武器にして山風の足元を巡っていくように滑っていった。

「まだ、こういうものには慣れてなかったか?」
「だがこの学園にいる限り、能力が必要にならない時なんて無い…それは戦い以外にも関わるぜ」

そう言って、再び鹿島は距離を詰める為に走り出す。

(この俺から真っ直ぐに下がるというならば、ここで決着をつける為に仕掛ける──!)

「勝つ為ならば手段を選ばないが、これでは手段を選ぶのに時間がかかっちまうなぁ!」

相手がこの挑発に乗れば自分の「作略」に引っかかってくれるだろう、と意を込めてワザと大袈裟に挑発して、「真っ直ぐ」走り出した。
その手にはまだペットボトルの中に水があり、「次弾」を放たんとばかりにペットボトルを握った。
372 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/11(土) 00:26:00.16 ID:E8OwLAcF0
>>367
闇の刃が頬を掠めて僅か数秒後。爆発を主に武器とする能力者の番長は、圧倒的な力量を目の前にして戦慄していた。
本当に自分なんて存在がこの化け物に一矢報いることが出来るのか。──でも、彼女は一歩足りとも引くことは許されない。
……其れは番長と名乗る立場故。ここまでコケにされていながらも少女は依然として番長を張り続ける。

──彼女に迫る二度目の投擲。闇の刃が空を切り、路地裏の闇を縫って彼女の腹部に穴を開けんと突っ込んだ。
─然し、その数秒ほど前に。彼女の姿はその闇から消失をしていた事に、黒繩は気付くだろうか。

「──ウオぉおぉぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!」

その叫び声ははそれからわずかな間隔を置いてから……なんと上空から現れたのだった。
能力の爆発的な駆動力で路地裏の空を舞い、そしてその爆発的な火力を重力と共にねじ込む為に。
番長もどきの拳が、黒繩へと襲いかかる…!!

//送った気になってた……すみません!
あと申し訳ないのですが眠気で落ちてしまいそうなので、ここで凍結お願いします!
373 :山風 明衣 [sage]:2015/07/11(土) 00:43:49.21 ID:2S7tcw0IO
>>371
鹿島との間合いが急激に縮まっていく毎に頭の中で警鐘が鳴り響き、思考するあまり集中力が途切れ風が吹き止んでしまう。完全に無防備な状態になってしまった。
このまま何もできずにやられるだけ…かと思いきや

短い悲鳴と破裂音のような音と共に足下を囲んでいた水が弾けて地面から引き剥がされて鹿島の目の前から明衣が消えてしまった。左右を見てもその姿は見えない。

…しかし上を見ればすぐに見つかるはずだ。
明衣は鹿島の丁度真上を飛んでいる。

「ふぃ〜、あぶなかった!」
器用にも風に吹かれた木の葉のように綺麗に一回転をして鹿島の真後ろに着地した明衣。咄嗟とはいえ自分でもまさかこんなことができるとは思っていなかったようだ。
ややふらつきながらも鹿島に向けて再び突風を吹かせると同時に鹿島から離れていく。
374 :氷熊 右京 ◆flKCwFlbw. [saga]:2015/07/11(土) 00:49:23.92 ID:AuD/PaQBo
>>370
「…!!やっぱりだ…」
煉夜が放ったのは鎖を巻いた拳。
俺の拳を拳で受け止めやがった…
俺の拳を纏っていた炎は弾ける様に周りへと飛び散り、周辺に焼け跡を残す。
拳を纏った炎は消えた。痛てぇ…どうやら、打ち抜く事は出来なかったらしい…
だが、これで解った…

「その“能力者”ってのも、違うんだろ?」
そう、能力者って言葉にも違和感を感じた。
無能力者が能力者を名乗るとは違う感じの…
やっぱり、俺が知ってる能力とは違う何かなんだ…
それが何かは解らない。だけど…

「もう一つ…アンタは天地家ってのを背負ってる。
 例え武道家じゃ無くても、特別な家系なのは確かだろう?」
確かに、煉夜の言葉は隠し事や違和感が多い…
だが、その拳に小細工は感じられない…
煉夜は天地家って奴に誇りを持っているんだ…
持っているから、俺の拳を…!!その拳で…!!
そして…

「負けたぜ…レベル…いや、実力差を感じた…だが、気に入ったぜ…
 煉夜に興味が沸いた。煉夜が俺をどう思おうが、俺はアンタをライバル視させてもらうぜ。」
レベルと言う言葉にも違和感を感じたが、俺は後ろへ下がり…

「また会おうぜ!!」
火の玉を精製し、地面にぶつけて煉夜の視界を遮る為の火柱を上げる。
その隙に俺は逃げ去る。
今じゃ俺は煉夜に勝てない…だが何時か…!!

//落ちます
375 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/07/11(土) 01:01:16.20 ID:DcCkhWV80
>>373
「──消えた!? いや、違う…」

追っていた者が突如姿を消したかのように見えたが、それは違っていた。

「真上を跳んで、水を避けるか───グァ!?」

そして振り替えようとした直後、突風が鹿島の身に襲う。真っ直ぐ走っていて、尚且つ後ろからの「追い風」……体感速度が倍に感じる程の突風を受け、吹き飛ばされる。

「いや、まだ策はある!」

山風を追っていた「100ml」の水を集め、さらに「100ml」の水を加える。そして、意をこめるように念じると、水の塊は2つに別れ、山風を挟撃せんとばかりに猛追し始めた。

「少し侮っていたな、流石に今のは俺でも予測出来なかった…!」
「だがこれで確信した、風だけでは俺にはもう通じない、とな!」

鹿島も猛追する水に合わせるように山風を追いかける。ペットボトルの中は、依然水が残っている。
376 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/11(土) 01:13:48.24 ID:Mr/UHRQqo
>>374
表情を変えずに、炎の拳を止めた煉夜。相変わらずの無愛想だ。

「いいや、僕は能力者だ。」

そして、相手の問いにあくまでも能力者だと言い張る。言い張るしかない。いずれ、自身の正体を知られるかもしれないが、だからといって自分からバラす訳にもいかないのだから。

「……ま、待て!?……貴様、何を言っている!?」

厄介な奴に気に入られてしまったようだ。と、困惑する煉夜。だが、相手は待ってはくれず、火柱により視界を遮られる。視界が開けたころには、すでに氷熊の姿は無く――
勘の鋭い相手との必要以上の接触は、避けたいところだと考えていたが……

「……ライバルだと……それに、負けた……?冗談じゃない……」

そう言って、右手――さっき拳を受け止めた方の手のチェーンを、外していく。すると、その下の皮膚には生々しい火傷があった。

「利き腕を潰しておいて負けただなんてな……」

熱伝導により、火に当てられたチェーンの温度が上昇し、皮膚を焼くに至ったのだ。火傷は軽いものでは無く、暫くは右手をまともに使えそうにない。つまり、このまま戦いを続けていたら、煉夜は劣勢を強いられていただろう。

「引き分け……だろうな。能力者……やはり、侮れんな。」

悔しそうに呟くと、煉夜は静かに去って行った。


/お疲れさまです。絡みありがとうございました!
377 :山風 明衣 [sage]:2015/07/11(土) 01:34:19.80 ID:2S7tcw0IO
>>375
「ごちゃごちゃ考えるのは合ってないね、兎にも角にも…」

「…感じたままにやるのが一番かな!」

自らの脚に追い風を纏わせて跳ねるように二つの水塊を避けていく…。しかしいつまでも逃げるわけにはいかない。
相手は水を武器に攻撃しようとしているのだ。この戦いに勝つには相手を叩きのめし戦意喪失させるか、武器を使えなくして戦闘不能に持ち込む必要があるのだが……

突然、明衣は逃げるのを止めてしまった。二つの水の塊が明衣に迫る。
攻撃をするには絶好のチャンスのようにも見えるが、さっきまでの彼女とは少しばかり様子が違う。
鹿島は果たしてどう出るだろうか?

378 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/07/11(土) 01:57:13.74 ID:DcCkhWV80
>>377
「流石に運動しているだけ、足は速い…が!」

鹿島の指示した通りに、2つの水の塊は山風を狙って進んでいく。だが思いの外、彼女が速い為、上手く捉えられずにいた。

「しかし、それも終わりにしよう」

急に立ち止まり、こちらを見据える少女を視界に捉えながらまたS字軌道を描いて走り出す。再び攻撃をするならば、またあの突風…かもしれない。そう感じたからである。
しかし水の塊は依然として山風を猛追する。既に足元を這うように動かず、山風の頭の位置までの高さへ合わせつつあった。

(まだ機転が利くならば、どのような仕掛けをしてくるのか、見定める必要があるな)

「お前がどのように其処から行動するかは知らない───が、それを越える行動を取るつもりだ」

水はさらに勢いを増して山風に迫り、そして鹿島の懐から「もう一つ」のペットボトルが見え隠れしていた。
379 :山風 明衣 [sage]:2015/07/11(土) 02:37:57.36 ID:2S7tcw0IO
>>378
水の塊がもうすぐそこまで迫り明衣の頬に触れようとした時、その冷たさを感じたと同時に明衣は大きく前進した。
標的を捉えることなく二つの水の塊が明衣の背後で一つにくっ付く。そして

「…吹き飛べっ!」
微弱な風の流れがまた大きく変わる。
今まで後ろへと押し出していた突風とは違う空気の流れ。目に見えぬその流れを砂塵と横に引き伸ばされた水の塊が教えていた。運動場のフェンスが微かに揺れ動く…。

明衣は今ここで、自分を中心に小規模な竜巻を起こそうとしているのだ。
小規模とはいえその勢いは侮れない。水をかけようにも逆巻く風が巻き上げてしまうだろう。
その竜巻を纏ったまま明衣は鹿島に向かいさらに前進する。水もろとも竜巻で高く巻き上げてしまおうと
380 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. [sage]:2015/07/11(土) 03:00:52.56 ID:DcCkhWV80
>>379
「成る程、自らを竜巻にすれば俺の水を寄せ付けず且つ突撃できる…!」
「戦い慣れていないような顔をしていたが、充分に強いじゃないか!?」

思わず歓喜のような悲鳴を上げてしまう。この学園都市でNo.1を目指す鹿島にとって、全てを学ばなければその頂に辿り着くことは出来ないからだ。

「ならばこちらは周囲に包囲陣を作る……そうだな、作戦「四面楚歌」とでも言わせてもらおう」

背後の水塊を振り切った山風に対し、背後の水塊をさらに高い場所へ移動させ、山風と自分の間に水を振り落とせる。

「そしてコイツを…貰っていきな!」

ペットボトルの水───残りの「300ml」を前面にばらまき、自分の壁になるように配置させる。

「後は奴の行動に賭けるだけだが……これは保険だ」

もう一つのペットボトルの蓋も開け、走る事を止め、迎え撃たんとばかりに構える。

「次こそ決めてやる───来いよ!」
381 :赤羽 卓 Level 4 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/11(土) 03:21:30.41 ID:TpxXJ6koO
>>346
「そう?僕は例え得体の知れない事でもよく知りたい。僕は、皆と友達になりたいからね」

赤羽に恐怖心だとか、そういったものはない。
あるのはただ、未知への好奇心と、"友達になりたい"という感情のみだ。故に、自らが身を引く事はない。
空っぽを演じ、普通を演じる彼の人格は好奇心が強い性格だ。空っぽを満たすために、そういった欲求が必要なのである。
また、ライラに対して何ら疑いすらも持っていない。普通の生徒として、彼女を認識している。

「もちろん、変な事はしないよ?困っている人を助けるとか、そういうの以外はね」

釘を刺すような言い方を特に指摘する事もなく、のらりくらりと飄々とした態度を続ける。
表情が変わらないため、何を考えているか読めないかもしれない。
自らの領域に近づかれる事を恐れる赤羽の本心は、無意識のうちに笑顔の壁を作っているのだ。悟られないように。

「まあ、僕も能力者の端くれだし、いざとなれば能力で対処すれば良いんだけどね」

一応、護身だけはできるという事は示しておく。不良に絡まれても大丈夫なように。
結局、彼が何故魔術師を求めるかと言えば、その理由の大半は友達作りである事に起因するのだ。
382 :山風 明衣 [sage]:2015/07/11(土) 03:32:54.08 ID:OuwFL03mo
>>380
歓喜する鹿島に対し明衣はというと能力の行使により疲労し始めていた。
普通に運動するよりも消耗は激しく、これ以上の戦闘は危険だ。

(やっぱりきっついなぁ…。なんだか重たくなってきた)
しかし明衣は退かない。降参、リタイアという選択肢は完全に除外されていた。そのまま進行方向を変えることなく前進する。

前進、前進、前進……。

行く手を阻むように撒かれた水に仕組まれた作戦の意味を考えるよりも先に直感的に身体を動かし能力を奮う。
「次で決める」というのは明衣も同じであった。心なしか明衣の纏う竜巻が一回りばかり細くなった。


383 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/07/11(土) 04:05:49.04 ID:DcCkhWV80
>>382
「案の定、来たか」
「さあ、俺の罠に……引っかかりな!」

前に張り付けた水塊を竜巻に向かって飛ばす。無論、その水塊は為す術なく四方に飛び散っていくが──それが狙いであった。

「捉えた」
「丁度ベストタイミングで野鳥を撮らえた時のように…!」

上から落ちる「200ml」の水滴、そして空中に散らばった「300ml」の水塊を「500ml」として「捉えた」。

「本当に視界に入らなければ、お前が其処にいなければ、包囲陣を作り上げる事はできなかった」
「そして限界の「500ml」……ほぼ単調な動きしか出来ないが、それで充分!」
「狙うはお前の顔面、呼吸器官である鼻と口を塞ぐつもりで突っ込めッ!」

威勢ある声で一気にオーダーする。その瞬間、一瞬だけ鹿島の視界に映った水は動きを止め、そして山風に向かって一斉に飛び交う。精度を極端に下げ、ほぼ直線、そして速度だけを重視した水滴攻撃。
勢いこそあれど、竜巻が弱まらなければ吹き飛ばす事は出来るであろう。
384 :山風 明衣 [sage]:2015/07/11(土) 04:33:24.59 ID:a3+yl817O
>>383
まさに飛んで火に入る夏の虫。鹿島の策にひっかかり水の弾幕の中へと明衣は突っ込んだ。竜巻がまた一回り細くなる。
いくら風で吹き飛ばすことができても消耗した精神力では十数秒も持たないだろう。それは明衣の表情にも現れていた。だが…

「これで…どうだ…!」
一寸の虫にも五分の魂。最後の力を振り絞り明衣は今まで纏っていた竜巻を弾けさせた。
瞬間的に吹き、地を這って四方へ吹く風の勢いは凄まじく、風の爆弾といっても過言ではない。
水はおろか人さえも何かに捕まっていなければ大きくはじき飛ばされてしまう威力を有したそれを鹿島の目の前で炸裂させる。
水か風か、知恵から紡いだ作戦か直感か、その決着がどうなろうと数秒後に明衣は膝をつき倒れるだろう。
385 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/07/11(土) 04:57:50.99 ID:DcCkhWV80
>>384
「最後のイタチっぺと言った辺りか…!」

風爆弾と化した山風の竜巻は編み込んだ鹿島の作略すら弾き飛ばし、風は鹿島を襲う。

「……クソッ!」

残った水滴、もう一つのペットボトルから水をありったけ出して、水で形成した壁を作り上げて鹿島の前面に張るが───。

「勢いが…強すぎる……グォッ……!」

といっても山火事に雀の涙。水の壁も一瞬だけ防いだだけで、風の勢いに負けて身体を吹き飛ばされていく。

「……クソ、ここまで暴略を見せつける、とはな!」

崩壊しつつあった水の壁から大きな水塊を取り出し、考えもなしに山風の鳩尾を狙うかのように腹部へ水塊を勢いよく飛ばす。
水は質量と速度によって時に凶器と化す。丁度この水塊ならば拳骨程の大きさの石をぶつけられたような威力を発揮するだろう。

「俺も最後の足掻きよ…どちらが先に立てるかね…?」

運動場のフェンスに背中からぶつかる。鹿島も思わず「グエッ」と情けない悲鳴を上げてしまう。
386 :ライラ・F・モーリス ◆kCKumm9a1uHy [sage]:2015/07/11(土) 07:25:21.53 ID:UAWCvK+to
>>381

「皆と友達、と来ましたか……なんか一気に絵空事じゃないですか?」

気が合うとか合わないとか、相手が自分のことを嫌っていた場合の事とか考えないのだろうか。
目の前の少年は恐怖を興味だけで乗り越えて、知りもしない者、それも皆と仲良くなろうとするという。
本気で言っているとしたら絵空事を飛び越えてもはや病的だと彼女は思う。
友達になりたい。仲良くしたい。仮面のような笑顔でそう繰り返す赤羽に、どこかうすら寒いものを覚えた。

(何なの、この人――――それとも能力者って皆こうな訳?)

彼が特別なのか、それとも能力者とは皆こうもどこか『外れている』ものなのか。彼女にはまだ判別がつかない。
分かるのは、赤羽卓という少年にとっては好奇心とは恐怖心を大いに上回る感情であるということ。
それならば、どれだけ口で言っても同じことだろう。

「能力があるなら、多少の事なら対処できそうですね」

笑顔から一切変化しない表情。
これなら無表情となんら変わりないな、と内心でぼやきながら相槌を打って。
そしてその笑顔を崩す一言を無意識のうちに捜している自分に気づき、自戒するように首を横に振った。
そんな一言があったとしても、今はまだ放るべきではない。
友達になるなどという彼女にとっては下らない理由であったとしても、魔術師を求める彼に自分が『それ』であると悟られる訳にはいかないのだ。
単なる一般人、無害な無能力者を装え。そして可及速やかにこの場を離れるのだ。

「さて、結構話し込んじゃいましたね。」

ぐ、とわざとらしいほどに大きい伸びをひとつして。何事もなければ、そろそろ失礼しますお辞儀を一つしてからその場から去っていくだろう。
去り際が唐突すぎると思うのならば―――それを問い詰めてみるのもまたいいだろうが。
387 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/11(土) 13:02:26.84 ID:qc7aNuAio
昼。ジリジリと照り付ける陽射しの中、学園都市内にあるとある公園の東屋で、ぐったりテーブルに伏せって溜息を吐くひとりの女。
恐らくはランニングでもしていたのだろう、上下ともさっぱりとしたジャージで身を包み、片手に持ったタオルで汗の粒が浮かぶ額を拭っている。
テーブルの上には中身の半分以上が無くなったスポーツ飲料のペットボトルが一つ。横倒しのままだだくさに転がっており、余程うだってしまい、休んでいるのだと窺い知ることができた。

「……、……暑……」

気怠そうに東屋の外へ視線を向けてみる。大凡今の状態では飛び出して行けそうにもない陽射しの照り付け様である、梅雨とは一体なんだったのか。
朝の天気予報では晴れ後曇りで気温は高くなく、時折雨がパラつく可能性があるとまで言っていたというのに、いざ外へ出てランニングをしてみればこのザマだ。全くもって情け無い。

それでもまぁ、この東屋に転がり込んだ時よりかは幾分か気分は良くなっていた。暇を潰せる物は何一つとして持ち合わせて居ないが、幸いな事に金目の物もそれは同様。
なれば、いっそのことここで暫く惰眠を貪るのも良いかも知れない。

「––––––––––––……」

試しに瞼を落としてみると、予想通り暖かな外気が身体を包み込む感覚は何処と無く心地の良いもので。連続して運動するのにはやや厳しい気温だが、精根尽き果てた身体を睡眠へ誘うにはもってこいだった。
いつの間にやらすぅすぅと寝息を立てて、周囲の警戒を怠っているこの女。起きるとしたら、近くで他人に声を掛けられてからだろう。
果たして、彼女に声を掛ける人間はいるのか……。

//ちょっと絡み辛いかもですが……どなたでもどうぞー
388 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/11(土) 15:27:07.27 ID:js9OvFGao
>>387
/まだいらっしゃいますか?
389 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/11(土) 15:33:28.46 ID:qc7aNuAio
>>388
//はい、おりますよー
390 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/11(土) 15:50:28.12 ID:js9OvFGao
>>387
──北から吹く風がじめりとまとわり付く空気から熱気を奪う。休日の午後、太陽は地面に照りつけるが
日陰にいる分にはそう、暑くはない。ひんやりとした東屋。遠くから子供達の笑い声がする穏やかな時間帯

「…………ふむ」

来客が”また一人”ヨレヨレのワイシャツにスラックス。ボサボサの黒髪を中折れ帽で隠した中年男性
──死んだ魚のような目をしている。その男は先客、つまりは寝息を起てている少女を一瞥すれば
僅かに考えこむ素振りをとり……犯罪者と間違われない為か、東屋の隅に腰を下ろせば、ポッケからそれ

最近はやりの恋愛小説を取り出せば、寝息をBGM…には流石にしないが環境音の一つとして読み始める。

そうして静かな時間が流れ始めるであろう。もし、場面が進むのであれば……例えば乱入者が訪れる、か
少女がうたた寝から目を覚ます、かはたまた少女が”男から僅かに漏れる魔術の痕跡を察知するか”か

さてどれか……無論、何事もなくこの時間が終わるというのが一番なのかも、しれないが
391 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/11(土) 15:51:07.88 ID:js9OvFGao
>>389
/ではよろしくおねがいしますっ!
392 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/11(土) 16:14:31.87 ID:qc7aNuAio
>>390
穏やかな眠りに包まれて暫く経つ頃、ふと、頭が意識の覚醒を促してくる。このままうだうだと眠っていたいのに、自身の中の何か"本能的な部分"がそれを許さない。
まだ眠気の強く残る頭で、まずは周囲の音を窺う。遠く聞こえる子供達の歓声、時折東屋をひゅるりと通り抜ける風、そして、程近い場所から聞こえる、定期的に紙をぱらりと捲る心地の良い音。
眠っている間にどうやら誰かが来たらしい、そろりと瞼を持ち上げてみる。と、擦れきった服装の中年男性が寝ぼけ眼な視界に入った。

「––––––……」

さてどうしよう、とついつい悩んでしまう。話しかけようにもどのように声を掛ければ良いのやら、何か繋がりの出来そうな物は無いものか。
覚醒のしきっていない頭では、意識を揺り起こした"本能的な部分"が何なのか未だ検討が付かない。ただ、どうやら目前のこの男性に関わりがあるのだろう、そうぼんやりと思い至るだけ。

「……その本、面白いですか」

充分な間思考を巡らせた末に、本の話題を振ってみる事にした。相手の見た目にはそぐわない趣向の本だが、女子が興味を持つにはあまり違和感が無いように思える。
男性からすると、環境音の一部にしていた少女が起きて読書の邪魔をしてくるのだから、たまったものではないかも知れないが。

//こちらこそ、よろしくお願いします!
393 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/11(土) 16:20:09.22 ID:CVNKu/l9o
>>372
「あァん───?」

黒繩が気が付いたのは、短剣を投擲した瞬間だった、今までそこにいたいずもの姿が無い。
結果、短剣は対象を見失い奥の闇へと飲み込まれていく、それを確認する間も無く黒繩は素早く思考を巡らした。

(消えた…いや違うな、躱したかぁ?)
(だったら何処に───この狭い場所で逃げるっつったら決まってんだろ!)

「上≠ゥぁ!!」

黒繩が答えを導き出すのと、いずもの雄叫びはほぼ同時に、上を見上げた黒繩の視界には落ちてくるいずもの姿が捕らえられた。
とはいっても、反撃するのは間に合わない、したとしても真っ直ぐ落下してくる相手に撃ち落とす判断は、黒繩の能力からしてリスキーだ。
黒繩は素早く飛び退き、すんでの所でいずもの拳を回避する、しかし離れた距離が足らず、いずもの拳によって砕けたコンクリートが礫となって黒繩を襲った。

「クッソ…この、馬鹿力がァ!!」

顔や体を打ち付ける礫に一瞬怯むも、この近い距離を無碍にするのは惜しい、防御を捨てて無理矢理切り返す。
黒繩の両手に一つずつ握られる黒い刃───先程の短剣よりも遥かにリーチのある、日本刀のような刀剣───を、腕を広げるように構えると、それを振るう。
二文字の横斬りだ、強靱な虫の顎が如き凶刃が、着地した瞬間のいずもに左右から襲い掛かる。

/返しておきますね。
394 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/11(土) 16:30:48.30 ID:js9OvFGao
>>392
本の内容は言ってみれば”陳腐”であった。これまでにも無数にある似たような話。
ロミオとジュリエットを下書きに、能力者と非能力者が互を求め合うラブロマンス、話”は”はやり陳腐だ

ぺらり、ぺらりと、規則的に捲られるページの音。そこにいつからだろうか物音が混ざり始めたのは
ずるずると僅かに身じろぐその音は正面から、その”雑音”に男は小さく顔を、正面へ上げた。

ふと……こう、目がバッチリあった。

「……あぁ、実に”興味深い”ね」

面白いのでなく”興味深い”のである。実はこの本は外の本では無く、学園都市のみで出版された物
つまりは”学生が書いたもの”であり故に興味深い、彼ら彼女らが能力を持ってどう”考えている”のか

そう、思考しておいて男はそれがただ気まずさを誤魔化すただの現実逃避という事に気がついた。

「………昼寝の邪魔をしてすまない。そうだな…私の事はいないモノと思ってくれていいよ」
395 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2015/07/11(土) 16:32:13.02 ID:js9OvFGao
>>394
最後の文に追加です!

そうして、男は再び文庫本に目を落とした。僅かに息を殺し気配を消す。
その動作は、相手の昼寝の邪魔をしないように、という気遣いということは言わないでもない
396 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/11(土) 16:54:12.28 ID:qc7aNuAio
>>394-395
「……内容、面白くはないんですね」

男性の言葉の選び方が、妙に引っかかった。面白いではなく興味深い……まるで何かの研究者のような、若しくは観察者のような、当事者の中に入ろうとしない第三者的な言葉。
興味だけでよくもまぁ、面白くもない情報を摂取し続けられるものだと。そんな関心すら覚えかねない陳腐で幼稚な"その本"の内容を、以前友人から聞いていた事を思い出す。
当の本人は素晴らしい話だと絶賛していたが、馨にはどうもそうは感じられなかった。……能力者でない事が原因でもあるのかなどと、考えた事もあった。

「いえ、別に……ただの休憩のつもりだったので」
「……そういう本、よく読むんですか」

気にしないでください、と、合ってしまった目を逸らす。気遣いを無下にしてしまうようではあるが、再び眠る為の"気遣い"ならそもそも必要は無かった。
故に、続けざまに放つ言葉は意図して"相手の邪魔をする"ものであって、男性はもしかすると苛立ちを覚えてしまうかもしれない。
自分を叩き起こした男性の"何か"が一体何なのか、分からないままでは引き下がれないという魔術師の矜持のようなものが、そうさせた。
397 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/11(土) 17:12:22.46 ID:js9OvFGao
>>396
……少女の意図を考える。といっても恐らくはただの興味である事は間違いはないと思うが
ならばその興味を抱いたポイント、男が恋愛小説を読む姿か、それとも本自身か、それが”それ以外か”

くすりと男は心の中で哂った。それ以外か、まったく嫌な癖だ。どうも魔術師というものは”疑い過ぎる”

「──”勉強”でね」

子供の”意図的な”妨害など、教師をやっていれば一日に片手に収まらないほどある為に、その言葉
男の言葉には苛立ち等はなく、ふたりの間に流れる風のように澄んでいた……無機質とも言ってもいが

「これでも教師をやっているんだ……だから勉強──”生徒の勉強”とでも言えばいいのかな?」

「彼らの気持ちを知る、彼らの考えを知るそれは”教師にとって重要な事でね”……まぁ」

少女が感じたように、まるで何かの研究者のような、まるで観察者のような、透明な第三者目線。
そしてその言葉には嘘などは混じってはいなかった…嘘は混じっていない生徒を能力者と置き換えれるだけで

「似合わないのはわかっているさ……時に君に見たいな若い子の瞳から見れば、変という事も」
398 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2015/07/11(土) 17:14:06.11 ID:js9OvFGao
>>397
/おっと、また描写忘れです…・

『男は本から目を離さず言った。ぺらりと規則正しく…いや多少遅れている事を考えれば、妨害の意味はあるかもしれない』

と最後に突っ込んどいてください!
399 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/11(土) 17:31:03.73 ID:qc7aNuAio
>>397-398
「成る程、先生でしたか」

男の連ねる言葉に違和感はない、しかし決定的に何かが"違う"と、"魔術師としての八橋馨"が訴えかける。表面的に普通の言葉を並べ立てて、その実違う意味合いを持たせて相手を探る、それは、まるで––––––

「先生は何故ここで教師をやろうと思ったんですか?ここは……その、普通じゃない生徒ばかりじゃないですか」

まるで、魔術師のようじゃないか。今まさに狩り狩られる仲にある、あの研究者のようじゃあないか。
パラパラと頭の中で思考の邪魔をしていた壁が崩れ始める。眠気はとうに醒めきって、逸らした視線もいつしか再びそちらを向いて。
大変でしょう?と問い掛ける様はまさしく年頃の少女のようで、しかし言葉には仕返しのように"含み"を持たせて。

そうでないならそれでいい、だがもし魔術師だとしたら……利用できるか出来ないか、早々に見極めてしまう必要性があった。
牙を向け合う関係は、増えれば増える程に厄介で扱い辛いものになるのだから。
400 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/11(土) 17:53:51.30 ID:js9OvFGao
>>399
男を見つめる少女の瞳は恋するそれと同じように……だと幾分かマシなのだが実際にそれは
完全に目を覚ましこちらを”探っている”それになっていた。警戒する子猫は……流石に失礼か

──まぁ、少し釣り糸を垂らしてみるかと男は考えた。気がつかなくてもいい、気が付いてもいい
勘違いをしてもいい、ただ気がついた場合僅かにでも警戒すれば”ビンゴ”というものだろう

「……”普通ではない”では無いよ。彼らは、”君と同じ子供”、ちょっと特別な可能性を持ってしまっただけのね」

彼は手を止め少女を改めて見た。透明な目、死んだ魚のような目、ガラス細工の目、疲れきった目
”感情”を見せないその瞳、そして男は死期が近い老人にも似た悟った笑みを浮かべて、言った。

「そう”可能性”……僕はこの学園の生徒たちの”可能性”を見るために教師になったんだ」

「可能性を”観察”し──伸ばしてあげてもいい…そしてそれを”妨害する輩”から彼らを守ってあげよう、とか考えながらね」

「…っと、これが私の教師としての理由と、おまけに”そのあり方”だよ。…いやぁ、まったく言うのは恥ずかしいね」


401 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/11(土) 18:06:12.35 ID:E8OwLAcF0
>>393
「っしゃらァァッ────!!!」

夕闇が占拠する狭い路地に鳴り響いたのは、恐ろしい程の轟音だった。形容するならば”爆弾”、正にそれほどの威力を持った拳が冷たいコンクリートへと打ち付けられる。
サークル状に地面が割れ、そして瓦解した。能力によって生じた爆風が巻き起こり、その破片を周囲に撒き散らす。──黒繩にもある程度のダメージは与えられた。

「……やっぱ当たらねぇか。」

然し、その結果は高天原いずもという人物を満足させることは無かった。
黒繩の言う通り、彼女の一撃は「馬鹿力」……否、それさえも上回る超火力ではあるが、絶対的に「当てづらい」。形上では番長を語り、ある程度の戦闘にも慣れている彼女にも、途轍もなく扱いづらい代物である。

──だが。

「な…に……!!!??」

満足だか不満足だか、そんな事を考える暇すら、その凶刃は与えない。
準備は出来ているか?然し、彼女がそれに気づいた時点で、それ自体が彼女の死角であった。

「────がぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

──兎に角、叫ぶ。彼の刃は二本とも彼女の身体を横切った。其処には傷などはなく、ただの激痛が彼女の精神を蝕む。
思い込めば思い込むほどに深く斬り込んでいくその架空の痛みは───消えない。彼女の頭が至極単純であるが故に、彼女の身体にはダイレクトにその苦痛が伝わった。

「ぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!ぁあぁあぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁ…!!」

どれだけたっても……その痛みは癒えない。彼女はついには叫び声と共にその辺に身体を打ち付け出した。
傷は付いていないのに何故か其処に残る不可解な痛み……彼女の身体の中枢はその本質を、解析できていない。

//遅れてすみません!お返ししておきます
次少し遅れるかもです!
402 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/11(土) 18:18:19.77 ID:qc7aNuAio
>>400
餌を目の前に吊るされた魚は、食い入るようにそれに集中していた。言葉に聞き入って、吟味するようにそちらを見つめ続ける。

「……そう、ですか」

––––––やがて、少女は溜飲が下がったかのようにあっさりと男性の言葉を受け入れた。男性の頭に違和感を植え付けかねないほどに、あっさりと、さっぱりと。
けれど依然として、ねっとりと睨めつけるような視線は男性の双眸を捉えたまま。その後の出方を窺うような"それら"はまさしく先程考えた"それ以外"のような。


「凄いと思います、僕はそんな立派なことを考えた事なんかないですから」
「……僕も、"先生と同じ目標"を持ってみたいです」

しかし、裏腹に、"まるでただの学生のような"言葉は紡がれ続ける。尊敬できる存在を見つけたような、そんな軽やかな弾みを持ったそれら。
そんな中に、含みを持たせた"それ"も混ぜ込んで、気付かれにくくして。

釣り上げられるつもりなど毛頭無いと、餌を目前にした魚は、釣り師を挑発してみせる。……もっとも、今現在、警戒や敵意を剥き出しにしてはいないが。
403 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/11(土) 18:40:36.02 ID:CVNKu/l9o
>>401
今度こそ通った、『あの男』のように不可解な反応はしない、まともに入った刃はいずもの痛覚をめちゃくちゃに混乱させ、有りもしない架空の痛みを作り出す。
そう、これこそが黒繩 揚羽の異能。傷一つ残さず苦痛を与える事だけを考えた凶悪極まりない力だ。

「ハァ…ハァ…ヘッ!ヒヒヒハハ!!どうだァ!?俺の《有害妄想》の味はよぉ!?」
「痛ぇだろ!!めちゃくちゃ痛ぇだろぉ!?死んだ方がマシに思えるくらいになぁ!?」
「今まで調子乗ってた奴が急にギャーギャーギャーギャー泣き喚いてよぉ!!堪んねぇなぁオイ!!」

いずもの反応からして、どうやら効果は覿面らしい、何とも愉快な事だろうか。
悲鳴を聞いて興奮する黒繩はこれ以上無いまでに笑い声を上げ、のたうち回るいずもに叫ぶ。…聞こえているのかは知らないが。

「…そんじゃあ、まあ、『お話』を聞くとしますかね。テメェがどれだけ知ってるかよ」
「運び易いように気絶させてやるから、我慢すんじゃあねぇぞ?」

当初の目的、それはいずもから情報を引き出す事。『魔術師』について何かを知っていそうないずもから情報を引き出す為には、この場だけでは不十分だ。
極簡単な方法がある、攫って、閉じ込めて、拷問にかける。拷問となれば彼の能力はこれ程までに向いている物は無い、まずは暗部の隠れ家に連れ去ってから、ゆっくりと。
そうする為には暴れっぱなしのいずもを連れて行く訳にはいかず、まずは大人しくさせる必要があった。黒繩はいずもにゆっくり近づいて行くと、右手に持っている刀剣でいずもの体を貫こうとする。
痛みによるショックでいずもを気絶させる魂胆だ。しかし、わざわざゆっくりと歩み寄るのは何故か、それは正しく『油断』しているからで、まさかこの状態のいずもが反撃するなんて思ってもいない。
つまり、いずもに何か考えがあるなら、反撃の手立てがあるなら、十分過ぎて有り余る程の隙があるという事で。
404 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/11(土) 18:48:57.92 ID:js9OvFGao
>>402

──……男はぱたりと本を閉じた。

「そうか”教師”として目標に思ってもらう程嬉しい事はないよ……さて」

そのままそれを……本をポッケに突っ込めば、音もなく立ち上がる。

「そろそろ夕暮れ時。僕はお暇ようかな…食事の支度もあるしね……君も」

「君もそろそろ寮に戻るといい、女の子に夜道は危ないからね」

男は釣りの”釣り”に大した反応をする事なく……いやむしろ、会話を打ち切るかのように空気を変えた。
相手の正体はどういった存在か、どうでもいい……いやある程度”見極めがついた”とも言わんばかりに
少女から視線を外して僅かに沈み掛け赤色が混ざり始めた世界を眺める。……そして、ふぁとアクビをかました。

「(普通の生徒ならば”私の正体”を探ろうとなんて思わない。つまりはあんな目をしない…いや出来ないかな?)」
「(ならば先日から遭遇率が上がってる彼らか…その可能性も考えたが、まぁ、能力者の話の際に自分を省いた印象が残る)」
「(無能力者の可能性は……ならば探ろうとはしないかな。ならば…というか、そもそも、だね──あの様子)」

「(自分がわからないから極端に相手を探ろうとする、ってのは魔術師としての悪い癖、だしね)」

男はのんびりとそう、考えながら東屋の外に出る。斜めから照りつける夕日に目を細める。眩い赤色だ。
その光景を、少女が眺めるならば男の気配はひどく薄い物に見えてしまうだろう。言わば影法師を眺めている様な
そして影は……二、三歩歩いたところで少女のへ振り返り、生徒に語りかけるように優しい口調で言うのであった

「あぁ…そうそう、最近は少し危ないからね。”裏”路地に気をつけなさい……出来るだけ”人目”が多いところに行くように」

「あれならば私がある程度君に送っていっても構わないが、…ほら、嫌だろう?おじさんに見送られるのは」
405 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/11(土) 19:26:17.17 ID:E8OwLAcF0
>>403
「…………ぁあ……………… っく………」

──身体が、言う事を聞かない。顔は苦痛に歪み、前は目を覆う水滴で良く見えない。
さっきまで硬く握り締められていた両拳はだらしなく開き、ピクピクと痙攣している。脚は耐えきれない痛みを如何にかしようとして、その両膝を擦り合わせている。
──凶器を持った相手を前にして、この様な有様である事は…言葉で形容するのであれば「絶体絶命」だった。
嘲笑し愉悦する黒繩が…迫る。──歪んだ笑みを向ける死神が運んできた死が……直ぐそこに。

──だが。

「……………………ぉ……れ……は…………ぁっ……」

────彼女は宣言した。
自分がこの都市を護る「番長」であると。嘲笑われても表情一つ変える事なく、何処か誇らしげに。

「………………………………ぉ…お…れは…………っ……!!」

─────言葉が失いつつあった力を、取り戻していく。そして同時に、彼女の痙攣していた右拳も、徐々に力が込められる。

「…………………オレは!!!」


──────────────そして。

「──────負けられない!!!」

ダン!と、勢い良くその右拳を地面へと打ち付けて、彼女はそれを支えに立ち上がってみせた。
…身体を弄ぶ様に蝕むその激痛。彼女はそれに対する解決策を見つけた訳ではない。
慣れてきてしまった、というのもあるかもしれない。……然し、彼女の”起立”の大多数を占めているのは、ただの「我慢」だった。
現に未だに彼女は苦痛に顔を歪めているし、その足取りもあまり正確では無い。
状況は「絶体絶命」が「危機一髪」へと変わっただけ。
──せめて、刃を手に迫る死神を退けるとっておきの一撃を…!
咄嗟に頭に妙案が思い浮かんだ彼女は再び拳を握り締め、それを大きく思い切り振り上げた。

「『爆破剛掌』路地裏限定応用編…、
───────『破空剛掌-エアロブラスト-』!!!!!」

そしてその右拳は、番長の踏み込みと共に大きく振るわれる。瞬間、彼女とその前方3メートル程に、凄まじい爆発が生じた。
空気の流れが悪いこの路地裏でこそ発動できた前方への爆発……!!
彼女の「爆破剛掌」というものは衝撃を与えた瞬間に爆発する能力ではあるが、空気を爆発させるという事は出来ない。
──然し、一度行使された能力は取り返しがつかない。ならば、その行き場の無い「爆撃」の行き着く到達点は。

「…………ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

彼女の右手、能力を行使したその拳自身。その爆発は、空気と彼女の拳の境目……または彼女の肉体という超至近距離で炸裂する。
──故に、その応用編と言われる技は正に”諸刃の剣”そのものだった。──恐らく、これが現時点この路地裏にいる「番長」の最大火力。これが黒繩に当たるかどうかは別として、彼女はまもなく気絶し、その右腕はしばらくは使い物にならないだろう。

//無駄に描写詰め込みすぎた……長ったらしくてすみません!
406 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/11(土) 19:37:41.70 ID:qc7aNuAio
>>404
ぱたん、と、それまでの全てを断ち切るような音に合わせて、瞬きをひとつ。それと同時にねっとりとした視線も、挑発するような態度も、少女は全てをやめてしまう。

「そうですね……確かにそろそろ、帰った方が良さそうです」

挑発に乗らない……つまり向こうは、ある程度こちらの情報を掴み終わったのだろう、だからこれ以上"与える情報は無い"、と。
今の所の危険性は低そうだが、長い目で見れば油断はならない相手だ。年季が違うだけでこうも振り回されようとは、自分もまだまだ若いのだと……弱いのだと痛感させられる。

男の後からゆっくりと腰をあげて、気分を変えるように首を振るう。弱々しい様を見せていては舐められるだけだ、せめて威勢だけでも、自分は強気でいなければ。
だから……

「お気遣いありがとうございます。……ですが、僕は"風紀委員"ですから」
「危ない場所だとしても、一人で大丈夫です。……流石に今日は、安全な道を通りますけどね」

だからこれは、"仕返し"だ。若輩者から、老輩者への、ほんの細やかな。せいぜい、困惑すると良い。どうせ自分の事を魔術師だと勘付いた時から、それ以外をあまり疑っていないだろうから。

//お、お待たせしました……!
407 :山風 明衣【エアロキネシス Lv.2】 [sage]:2015/07/11(土) 19:39:33.97 ID:m7gPheB4O
>>385
炸裂した風は鹿島をフェンスに叩きつけると瞬く間に弱まった。
それは明衣が限界を迎えた証拠でもある。

「あぐ…っ」
カウンター気味に飛んだ水弾をかわすことができず明衣もまた地面へと伏してしまう。
そしてその体は動かなくなってしまった。
もしここに第三者…審判でもいればどちらが勝ったのか分かっただろうが、ここは鹿島と明衣の二人だけ。
どちらが先に倒れたかで勝敗を決することは限りなく不可能に近かった。

「………………………」
轟くような風の音は止み、運動場はしんと静まり返っている。

//昨夜は寝落ちすみませんでした。ここから再開です。
408 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/11(土) 20:05:21.02 ID:CVNKu/l9o
>>405
ゆっくりと迫る、踏み出すたびに路地裏の砂利粒が靴底と擦れて、摩擦音が鳴る。一歩一歩鳴るそれは、死へのカウントダウンのようだ。

「安心しろよ、殺しゃしねーさ、用がある内はな」
「あ、でもテメェは女だから話を聞いた後でもそれなりに『使える』かもなぁ!ヒヒヒヒヒ!!」

下卑た笑い声、自分が圧倒的に有利であると確信しているが故に出る感情、下衆な言葉を吐いて、勿体振るように足を踏み出す。
だが、その足が不意に止まった、あと二歩も歩けば届く距離なのに、いずもが何か声を発した瞬間に不審そうに立ち止まる。

いずもが紡ぐ言葉は、笑って捨てるような物だった、信念だの誇りだの、何にもならない馬鹿げた物だと見下す物だった。
だが、何故だか足が止まる、いずもは逆に、体を動かす、痛みで震える体を奮い起こして、立ち上がらんとする。

「…テメェ…!!」

そして遂にいずもは立ち上がった、以前よりも遥かに力強く、遥かに大きく。
それを見た黒繩は目を見張り、苛立ちを強く表情に表す、有り得ない有り得ない、この痛みは我慢なんかでなんとか出来る物では無い筈だと。

「───っザッケンなテメェェェェェ!!!」
「何立ち上がってんの?何頑張っちゃってんの?バカかテメェは!黙ってぶっ倒れてろよ!!」
「番長だか何だか知らねぇけどよォ!!ンなもんで物事を覆せたら何も苦労はねぇんだよ!!」

「黙って…ヤられてろやァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

理解が出来ない、何が彼女をそうさせて、何が彼女を立ち上がらせるのか、黒繩には全く何もわからなかった。
だから黒繩は激昂する、痩せ我慢なんて簡単に踏み潰してやろうと、拳を構えたいずもに突進した。
その瞬間、黒繩が突き出した刃がいずもに触れる瞬間に、いずもの拳が炸裂する。

「ガッ……ァァァァァァァァァァァァッッ!!?」
「こんな…こんなふざけた奴に…クソがぁァァァァァァァァ!!!!」

爆発した衝撃波を間近で受け、踏ん張ろうとするも無駄な努力、黒繩を踏み留まらせる思いは無い、故に思いの強さで黒繩は負けた。
地面から捲られ、吹き飛ぶ砂利やゴミと同じ様に、黒繩の体は真後ろに思い切り吹き飛び、遥か遠くへと運ばれて、コンクリートに頭を体を強かに打ち付け転がっていく。
409 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/11(土) 20:31:26.90 ID:E8OwLAcF0
>>408

「…はは…………………………」

技が炸裂し、それが黒繩に確りと伝わったのを見て”満身創痍”の高天原出雲は微かに口角を上げた。
彼女の右腕は使い物にならないのでは無いかというほどにボロボロに焼け焦げて黒ずんでいて、学ランは裾から肘付近まで焼失していた。
先程まで体を甚振っていた激痛は黒繩が倒れた事からか、それとも今度こそ彼女が慣れてきたからなのか、かなり和らいできている。

「…………オレは…………よぉ…………」

がくり、と番長もどきの膝が折れる。
──既に彼女の限界は通り過ぎている。ただでさえ力の消費が多いこの能力と、馬鹿みたいに体力を掻っさらっていった黒繩の能力は相性が悪かった。
余力は無い。黒繩の凶刃は不可解な激痛と共に彼女の力すらも削り取っていたのだった。
──然し、そんな中でも彼女は明るい笑顔をその顔に浮かばせていた。
それは戦いが終わった安堵からか。……いや違う。

「…………番長……だから……よ……。。。

バタン!と今度こそ彼女の体は地に伏した。
そしてそこにあったのは心底幸せそうな番長もどきの顔と、路地裏にこだまする救急車のサイレンの音だった。誰かが騒ぎを聞きつけて通報したのだろう。

──彼女の笑顔の理由……それは。
───”番長もどき”たる彼女ただ一人にしかわからない。

//ここら辺で締め?でしょうか!
〆であればお疲れ様でした!何気にこいつの発動初戦闘でとても楽しかったです!
410 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/11(土) 20:49:22.94 ID:CVNKu/l9o
>>409

「───ハァ…ハァ…クソッ!」

遠くからサイレンが聞こえる、それから逃げる様に黒繩は路地裏を歩いていた。
フラフラと覚束ない脚で、壁に手をつき、いずもとは逆の方向へと。
ポタポタと血が流れる大きな傷を作った顔は、真っ赤な血に濡れている、その下で眼光を闇に光らせて、憎しみに満ちた声を絞り出した。

「あの女ァ……!舐めやがって…!ぶっ殺してやるァ……!!」
「ハァ…!ハァ…!ヒヒ……ヒヒヒハハハ!!ヒャーッハッハッハッハハッハッハ!!!」

手負いの獣を逃した代償は大きい、憎しみを糧に力を増し怒りを増し、牙を喉元に突き立てる日を待ち望む。
狂気の笑い声を響かせながら、黒繩は闇へと消えていった。

/お疲れ様でしたー
411 :赤羽 卓 Level 4 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/11(土) 21:25:19.68 ID:TpxXJ6koO
>>386
「よく言われるよ。でも、僕はいろんな人の事を知りたい。困っていたら全員助けたいし守りたい。ただ、それだけなんだ。僕には、それ以外の価値はないから」

絶望を仮面で誤魔化した赤羽は大きく矛盾している。矛盾を隠すために、更に思考は異質なものになる。
人間など性悪である事を知りながら、自らは性善であろうとするのだ。善である事だけに自分の価値があると思い込んで。
自分より他人を優先するなどという偽善で、目指しているのはおよそお花畑としか言えないような、理想である。
だから、他人を助けるためならば自分の命などどうだって良いと平然と言い放つだろう。
更に言えば、分け隔てなく仲良くするというのなら、それは誰に対しても同じ反応をする事と同義だ。
もっと言おう。赤羽は人を自分と他人と敵の3つでしか区別していない。
他人と仲良くしたいとは言いつつも、その他人は他の他人と区別されていないのだ。だから、誰に対しても同じ反応ができる。赤羽には、他人がみんな同じに見える。
また、他人のために命を投げ出せるというのなら、彼は、誰に対しても自分の命を投げ出せるという事だ。それが自分の価値であると、それしかないと仮面の赤羽はそう信じている。

「あぁ、ごめんね。こんな話に付きあわせちゃって。僕も帰るよ。それじゃ、また学校で会えたらその時はよろしく」

どうやらかなり話し込んでいたらしく、そろそろ帰らなければと思い立つ。ライラも帰るらしく、それならばと自分も帰路につく事にした。
魔術師という存在には未だ出会えていない。しかし、学校内のどこかに必ずいるはずだ。ちょっと探してみようかと、好奇心で思った。

道化は今日も笑顔。不自然なまでに自然な笑顔を、周囲に振りまく。それが脆い仮面である事は本人ですら気づかずに。

/度々遅れて本当に申し訳ありませんでした。連日のロールありがとうございました!
412 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/11(土) 22:13:54.29 ID:js9OvFGao
>>406
そうか、と男はニコリと微笑んだ……いや改めて”ちゃんと相手を見たのだ”
死んだような目?いや違う、相手のことを全て見透かそうとする魔術師の底がない目だ

ここで男は初めて相手を認めた。君はただの学生では無くてそう”魔術師”なんだね、と

「そう、か……それは失礼した」

それだけ言えば彼は少女に背を向けて、さらばと言わんばかりひらりと手を振るう
彼は心の奥で考えている。あぁ、やはり若さは良いものだ。その勢いは素晴らしい
少女が、能力者ではない少女が風紀委員に入り込める。その度胸と手際の良さに二重丸

そして男は木陰に紛れ、いずれ見えなくなるだろう。

「また会おうじゃないか風紀委員君」

/気が付くのが遅れました……絡みありがとうございました!
413 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/11(土) 23:05:35.34 ID:qc7aNuAio
>>412
底の見えない深い瞳に吸い込まれないように、精一杯の虚勢を張って。あくまで表面上は去り行く教師を笑顔で見送る学生のまま、しかし内面ではぞくりと走る堪え難い寒気に若干の恐怖を感じてしまう。
あの男性は強い。戦闘技術に長けているとか、交渉術が上手いとか、そういう事ではなくただただ"つよい"のだと、思った。
今の自分では恐らく丸め込まれて終わりだろう、あの時のように上手い具合に事が運ぶ可能性は、低い。

男性の姿が遠退き、完全に見えなくなってから、ぽつり、苦々しく呟いて。

「––––––先生。出来る事なら、敵として巡り会う事がありませんよう」

そう、先生だ。一丁前に張り合いこそしたが、彼の方が何枚も上手だったのだから。教師などでは無い、読んで字の如く"先を生きる者なのだ、彼が"。
夕闇が徐々に迫る。いつの間にやら子供達の気配もなく、周囲に人影は見当たらない。そんな中で、溜息を吐いて。

「散々だな、今日は……」
「……だが、まあ。また一人分、魔術師の存在が判ったのだから、良しとしようじゃあないか」

もう一度気分を切り替えよう、と両頬をぱしり。周囲を覆い始めた仄暗い闇の中で、少女は一人、笑う。埋められなかった実力差を、餌を垂らされくるくると良いように操られた屈辱を、終始徹底して見下げられていた自分を、嘲笑う。
……今度こそ普段通りの少女に戻って、八橋馨は東屋を後にする。涼しげな風に長いポニーテイルを揺らめかせて、軽快なテンポを刻むように地面を蹴って、その姿は直ぐに宵闇に紛れ込んだ。

//こちらこそ、ありがとうございました!
414 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/07/11(土) 23:07:28.27 ID:DcCkhWV80
>>407
「…………」

静まり返る運動場。双方共に倒れ込んでいるが───?

「……フェンスにぶつかっただけで簡単に意識ぶっとばす男がいてたまるか…!」
「KUU……背中は痛いが、だがそれだけだぞ?」

能力多用による疲労の差では、鹿島の方がまだ少ない方であったのか……痛む背中を摩りながらも立ち上がる。

「しかし、派手にやられてしまったモノだ」
「やはり水では威力が弱すぎる、いや速度が足りないのか?」

倒れている山風をそっちのけに、鹿島は今回の模擬戦による反省を始める。相性が悪かったか、最後は結局我慢勝負となっていたのは誰が見てもそう思うだろう。

「戦略性が無ければ…更に上のレベルに立つ事は出来ない、まだ、俺には力が足り───」

自身の中で結論がついたのか、ようやく倒れている山風に目を向けた。

「っと、オイお前───立てるのか?」

//よろしくお願いしますー
415 :山風 明衣【エアロキネシス Lv.2】 [sage]:2015/07/11(土) 23:15:37.11 ID:HZF+Ed+Xo
>>414
「………………」
鹿島の問いかけに対し明衣は何も答えなかった。ただ地面にうつ伏せに倒れている。
その顔は髪に隠れて見ることができない

意識を失っているのかピクリとも動かなかった。それどころか、生物特有の気配も全く感じない……

しかし、しばらくすれば彼女が寝息をたてて爆睡していることに気付くだろう。
能力を多用したその反動により明衣は眠ってしまったのだ。おそらく揺すっても目を瞑ったまま起きはしないだろう。
放っておくのも何処かに寝かせるのも鹿島次第だ。
416 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/07/11(土) 23:27:30.48 ID:DcCkhWV80
>>415
「……反応しない、いやまさかな…?」

声を掛けてもうつ伏せのまま、全く反応の色を示さない山風に対し、少しばかりの疑念と焦りを感じつつも近づいて身体を揺すろうとする、が…。

「オイオイ、まさに爆睡って奴かよ…」
「いや、あんな爆発的な風を出したらこうなるのも仕方、ないのか?」

取り敢えず山風の目の前まで近づき、何時起きるかどうか暫く待つ事に。

「といっても、何時までも地べたに倒れたままでは良くないだろうし…まだ起きなければ向こうのベンチの上まで運んでおこう、か?」

そう言って鹿島は山風の目の前でしゃがんで身体を担ごうとして手を伸ばす。このタイミングで意識が覚めるのは彼女次第であるが……。
417 :山風 明衣【エアロキネシス Lv.2】 [sage]:2015/07/11(土) 23:35:50.23 ID:HZF+Ed+Xo
>>416
「うーん むにゃむにゃ…」
抱き起こそうとしても明衣は目を覚まさなかった。
完全に深い眠りに落ちてしまっているようだ。

よく見れば身体のあちこちに擦り傷ができている。
しかも倒れたときにぶつけたのか額や鼻、頬がうっすらと赤らんでいた。
しかしそんな痛みなど知らないかのようにぐっすりと眠っている。

「すー……すー……」
不恰好ながら出せるだけの力を出し切ったからか。
その寝顔はどこか安らかで、なんとなく満足げだった。
このままベンチに運び寝かせておけば問題ないだろう。
418 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/07/12(日) 00:08:50.76 ID:bfnarKh30
>>417
「……寝たままか、仕方ない」
「まあ、運んでやるのも当然の処置だ、地べたに置きっ放しなのも良くないだろうし」

山風の側にしゃがみ込んで、うつ伏せで倒れている彼女の肩を持ち、そのままお姫様抱っこのような形で担ぐ。

「しかし…鍛え方が違うな、筋肉のつき方がそこらの女子とは段違いだ」
「頭脳戦頭脳戦と言っていたが…その前に筋力が無ければ何も出来ないだろうし、俺も考えてみるかな」

担ぎながらも、その筋肉による重さ、つき方の違いに若干の衝撃を覚えつつも、ベンチまで運んでいく。

「っと、辿り着いたか…よいしょ」
「俺はこれからまだ講義がある……って言っても寝たきりの女子に何言ってんだか、俺は」

ベンチに仰向けにそっと寝かせ、側にスポーツドリンクを置いて、痛む背中を摩りながら鹿島は第二運動場を去った。
この戦いで、やはり戦いにおいて戦術を組む以前にそれに耐えられる程の身体の強さの必要性をひしひしと感じた。名前こそ聞けなかったが、再び会った時、どう身体を鍛えているか聞いておこう……そんな事を考えていた。

//取り敢えずこんな形で終わらせてよろしいでしょうか?
419 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/12(日) 20:15:43.74 ID:G842JN7no
「フーッ……」

茹だるような暑さの熱帯夜、夜の街は縁日でもあるのか活気が多く浴衣姿の者もちらほら見える。
そんな明るい空気の中でもそれに乗らない人間はいて、そういった奴はどうしようもなくアウトローな雰囲気に溢れている。
ここ、街の中を歩きながら、タバコを喫う少年もそんなタイプの人間だった。

「クソ…イラつくくらい暑ぃな…」

浮かれる人間も、ただ歩いている人間も、どいつもこいつも腹立たしく思えるのは暑さのせいか、その苛立ちを隠す事なく表情に表しながら、あてもなくフラフラと少年は歩いていた。
その様子は危なっかしくもあるし、何よりも違法行為増し増しだ、しかし周囲の人間は迷惑そうに少年を一瞥するだけで、何も言えない。
この少年に注意をするような正義感の高い者はいないのか、もしくはフラつく少年と肩か何処かをぶつける者もいるかもしれない。
420 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/13(月) 23:40:26.49 ID:s0AR90dv0
深夜の学園都市。
空はもはや宵闇に染まり、煌めく星々は発達した都市光により掻き消され、ただ静寂が辺りを覆うばかりだった。

細く人通りの少ない路地の一角。年老いた"魔術師"ヴァシーリー・マーカスはそこにいた。
茶色の髭をさすり、緑色の目を細め、何やら気難しそうな顔をしている。
彼は紙切れを耳に当て、まるで誰かと話しているかのように、独り言を喋っていた。

「……言っておるでしょう。"能力者"はそう簡単に危険に晒すことはないと」

「そう直ぐに人を排除する、などという言い方を……確かに、わしが言えた事ではないが……」

彼がしているのは、紙に刻まれた"遠信"の効果の魔法陣による"通話"。
魔術師には、必ずしも文明の利器は必要ないのだ。尤も、文明がそれに追い付いてきている節はあるが。
通話は続く。何やら言い争っているようで、その声色は段々と強くなる。
そして、ついに声を張り上げてしまった。

「……!魔術を晒す"可能性"だけで決めるなと言っている!」

そして、ヤケになったかのように、直ぐにそのルーンに火を付け、捨てた。焼失、隠蔽の為に。
彼は溜息をついて顔に手を当て、星空を見上げる。

小さいとはいえ、そのルーンの燃え痕の火の粉に興味を惹かれ、寄って来る者がいるかもしれない。
あるいは、先ほど彼が、叫んだという程ではないがはっきりと口にした"魔術"という単語を聞いていて、反応する者がいるかもしれない。
どちらにしろそれを待ち受けるのは、星空を見ながら佇む、年老いた魔術師である。

/予約です
421 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/14(火) 00:08:16.31 ID:oX+Il7E7O
>>420
静寂に包まれた学園都市。生徒達の殆どは既に自宅で就寝しているか、少なくとも街へ繰り出していく様な時間帯ではない。
だが、だからと言ってその少女自身が周囲から切り出された様な存在感を放っているのは気の所為ではあるまい。
ツインテールに纏めた長い黒髪に、それと同じ色のシャツにスカート。昼間ならば多少視線を受ける程度で、特に気に留められることも無いだろう。
しかし今は深夜、背景と同色に揃ったその姿は、逆に人々の警戒心を掻き立てかねない雰囲気を醸し出していた──本人は気にも留めていないが。

「……んー……っと」

日本人と西洋人のハーフの様な容姿の彼女が歩いているのは、人通りが少ない路地裏。特に特筆すべきもないその道の先に、彼女が目をつけた場所があった。

「……通信、ね」

"強聴"などと名付けられた魔法陣が描かれた紙が、彼女の手元にある。その内容は言わずもがな、聴覚の一時的な強化にある。
比較的簡単なこの魔法陣が描かれた紙は、彼女が言う「情報収集」にいつも持ち歩いている物だった。

『…………いる!』
「やっぱりか」

会話の中身を完全に──とまでは行かないが、少しだけ盗み聞きした少女は、当事者の元へ尋ねることにした。

煌々と輝く星空の下、一つの闇が降り注ぐ。
老人が見上げるその先に、影が生まれた。

「《スカイジャンプ》……っとと」

忍者の様に闇夜を蹴っては、また別の所で空中を跳躍する。その影は少しづつ大きくなっており、容易に気付くことが出来るだろう。
そして幾らか距離を開けながら──しかしハッキリと声が聞こえるであろう位置で少女は闇を足場に止まり、老人へと話しかけた。

「やぁ、奇遇だね? こんな真夜中に……」

少女は"強聴"の魔法陣をペラペラと見せびらかす様にして笑い、老人の目を見る。
それは暗示だ、自分が魔法を使えること。そしてもう一つ、既に全て知っている、と。

老人はもしかすれば知っているだろう。バルタザールのとある組織が送った「精鋭」の噂を。
そしてそれが、年若い少女であることを。
422 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/14(火) 00:30:39.36 ID:5ngUtaT70
>>421
「……ム」

魔術の気配がした。その次の瞬間、ただぼんやりと眺めていただけの暗い空にひとつ、明らかな人影が視界に入った。
彼は寄り掛かりの体勢を一先ず解くが、彼女の態度、語り口、位置どりからして、どうやら敵対しようという訳ではないらしい。
彼女が能力者ではなく魔術師である、ということは、その身体と魔術から発せられる強い魔力の気配ですぐに理解した。
では何故彼が顔をしかめたのかと言えば、彼女が見せびらかすように振って見せた"強聴"のルーン……先ほどの会話をある程度聴かれたと言うこと。

「……盗み聞きとは、趣味が良くないものだな。年甲斐もない言い争いを、聴かれる事になろうとは」

彼女の魔術からは、およそその齢で身に付けられるとは思えぬ程強い"闇"の魔力を感じる。
自分は組織を通して他組織の情報に介入する事もある。恐らくはその中で話に聞いた、バルタザール派の若き刺客か。
ここで事を起こしても"負ける事は無い"だろうが、相手にその気がないのであれば、仕掛ける必要はない。
彼は相手の出方を伺う。

「……その魔術、"バルタザールの宵闇"か。もはや老いぼれであるわしから、何を知る事がある?」

ある程度憶測はつかめるが、まだ彼女の正体は確定していない。念のため鎌をかけ、相手が乗って来たのならばそれでいい。
だが真に重要なのはそこではない。もっと重要なのは、彼女が何を求めているかだ。
と言っても先ほどの会話は、組織への要求のようなもの。重大な機密を話していたわけでもなく、むしろ聞いていたのが能力者でなく良かったとすら思っている。
だが、やはり盗み聞きをされるのは気分がいいものではない。
彼は彼女の真意を問いた。
423 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/14(火) 00:45:12.26 ID:oX+Il7E7O
>>422
老人からの、まるで説教か何かのように聞こえるそれに顔を緩めながら、少女は地面へと降り立った。警戒はされているようだが──まぁ自分の身の振り方を考えれば当然である──敵意は無いようだった。
とはいえ全くの無防備ではない。コンマ秒で防御、反撃が可能な様に準備はされており、炎から出た煙の様に闇が少女の周囲を漂っていた。

「趣味が良くない、ってのは心外だね。これでも仕事なモンで……まっ、何でもかんでも報告してるかって言えばしてない事の方が多いんだけど、ってそうじゃなくて」

しょうもない事を口走っている様に見えて、その目は常に老人の目を、顔を、体を、一挙一動を逃さぬように捉えている。この会話も含めて、今の所は彼女の想定内にあるという事だ。
しかしそれよりも、次いで紡がれた自分を指す名前に彼女は反応した。

「"バルタザールの宵闇"っていうのは私の事だよね。そういう広まり方をしてるのは知ってたけど、人に言われたのは初めてかなー」

暗闇の中で笑みを浮かべながら、少女は視線を老人に向け続ける。決して逸らさず、隙を見せず。

「私の行動範囲は飽くまで"潜入調査"だから、言って他組織に対しての直接介入は範囲外なわけ。だから上に報告はするけど、脚色もしなければ意見も言わない」

ともすれば許しを請うているかのような物言いだが、少女の意図は其処にはない。

「それで見逃してくれるかは関係ないけどね──逃走劇で負ける気は無いし。どう? このままバトる? 場合によっては……」

一拍置いて、少女は続ける。

「アンタと協力するのも悪くない」

先ほどより「排除」「魔術の露見」などと話していた彼ならば分かるだろう。その対象となるであろう人間の擁護を目的とすることを。
424 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/14(火) 01:22:37.50 ID:5ngUtaT70
>>423
「ほう、やはりか。その若さにしては、すさまじい魔力よ」

彼は彼女を取り巻く闇を見て、心からの感想を漏らす。
彼女はやはり情報のうちの一人と確定した。ならば、出来る限り戦闘は避けなければならない。
組織情報として公に取り上げられる魔術師とは、そこらの一兵卒ではつとまらない。それだけで"他組織に於いての重要なカード"という事を示す。
もしここで手を出せば、組織間に亀裂を生む事になるだろう。ましてや他方は穏健派、こちらに非難が及ぶのは確実。どちらにせよ、こちらの方が不利な状況にある。
とは言え相手に今のところ戦闘の気はない以上、こちらから刺激しなければいいだけの話だ。

そうして相手の出方を伺っていれば、すると妙な事を口走ったではないか。
彼は一瞬驚いたような顔をしたが、彼女の口調を聞いていれば、その理由もわかるような気がした。
彼女は正規に組織に縛られている訳ではないらしい、彼女の善意であるのか、と。
彼は相手の提案に、一先ず乗って見ることにした。目を閉じ、静かに語り出す。

「……どうせ聞かれておったのだ……よかろう。……わしの組織は"カスパール"に属する、古く由緒ある組織だ」

「……だが、古いということは、新しいことを受け入れづらいきらいがあるという事……固定観念を拭い去れずにおるのだ」

彼は目を開き、彼女を見つめる。

「率直な言い方をすれば、"危険"というだけで"消す"というのは、おかしいのではないかという事だ」

彼女を一旦信用したとはいえ、未だその頼りがつかめていない。よって全てを明かす事はなく、遠回しな言い方をする。
しかし同意を求めるような言い方からすれば、彼は何かきびしい現実と格闘しているのであろう事も伺える。
彼は実のところ、仲間が欲しくて仕方がないのだ。だが、それを見ず知らずの他人に話すには、いかんせん手づるが少なすぎた。
425 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/14(火) 01:41:34.07 ID:2s/tvcoc0
>>424
「ま、散々鍛えられたからねぇ」

しみじみとした感想を述べながらも、少女の周囲を取り巻く闇が引く気配はない。今は警戒しているというよりも、寧ろこれが自然体であるかのような状態だが──事実そうなのだろう。
所謂「切り札」。彼女の存在自体が他組織への牽制となり、万事において通ずる究極の手札となる。
まぁ、つまり、そんな「最終兵器」が弱い訳が無いのである。彼女が組織の最後の砦なのだから。

──しかし、本人の人格も人間離れしているかと言えば、それはそれで別の話である。
彼女は組織に所属はしていて、命令されれば私情を[ピーーー]のは容易い。だが常日頃から組織を思って生き、組織に死ぬつもりであるかと言えば首を傾げざるを得ない。
彼女はただ、一人の少女なのだから。

そしてその少女は、老人の話を聞いてから、こう言う。

「なんていうか……組織の上層部って馬鹿ばっかりだよね」

とんでもない爆弾発言である。しかし、彼女の目は老人をからかっている訳でも、ましてや相手組織を挑発しようとなど思ってもいない。

「いやー、うちにも居るんだよねそういう奴ら。バルタザール(穏健派)なのは良いけどだからと言って無理に媚び売っても意味ないでしょうに──ってこれは関係ないか」

先にも言った通り、彼女は切り札である。特別視される存在であれば、当然上層部のゴタゴタに巻き込まれることなど日常茶飯事であるということだ。

「固定観念が拭い去れないなんてのはよくある話だけど、それでも組織を捨てきれないアンタも大概だよね……まぁ」

少女は老人の心を探る。挙動から、声色から、そして彼の置かれているである状況から。

「"そんなこと"で消されるターゲットにすりゃ、確かに理不尽も良いところだね、そりゃ。私は断固反対しておくわ」

きっと彼は、組織への忠誠やら何やらに縛られてはいるが、"善意の側の人間である"だろうと。
426 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/14(火) 02:10:08.72 ID:5ngUtaT70
>>425
若き頃のヴァシーリー・マーカスは、彼女と同じだった。
主力として重要視され、あらゆる対立組織を壊滅させる「切り札」……
しかし彼の生き方は、彼女とは正反対だった。
組織の為に働き、組織の為に強くなり、組織の為に殺し、そして、組織のために死ぬと誓った。
そして今でもそれは、変わる事はない。

「……余り悪く言うのはよせ。それでも、わしの大切な居場所なのだ」

彼女の言葉に難色を示しつつも、しかし否定する様子はない。彼自身どこか、思うところがあるという事か。

「……たとえ組織がどうなろうが、わしは組織だけは裏切らぬつもりでいる。……仕えるとは、そういうことだからな」

彼はどこか遠くを見つめる。
悟ったような、何かを諦めたような……
そこには、自分の立場ではどうにもならない空虚さが垣間見えた。

「わしは任務は遂行しなければならん。たとえ、それが間違っていたとしても……」
「……だが、わしはこの街の人間に触れるうちに、分かったのだ。能力者たちもわしらも、ひとしく人であるということに……」

「魔術を脅かす、ただそれだけで、罪なき者が血を流すなど、あってはならぬ……だがわしには、組織を裏切ることだけはできぬのだ」

彼は少女に目を合わせる。
その瞳は何か、行き先を失ったように不安定だった。

「バルタザールの手の者。……わしに、協力すると言ったな。」
「お前は……お前は、決して人を無闇に傷付けぬと、約束しろ」

その要求はごく単純。だが、彼にとっては非常に重要なことだった。
"自分の出来なかった事"、それを少女に託そうと言うのだ。
もとより彼女に誰かを傷つける気が無かったとしても、彼にとっては、それだけで救われるのだ。
「人を傷付けない人間がいる」、その事実が生まれるということに。

/済みません、ここらで中断とさせて頂いても宜しいでしょうか……
427 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/14(火) 07:51:50.56 ID:2s/tvcoc0
>>426
「あははっ、ごめんごめん」

何時からか少女の声色は軽く、明るいそれへと変わっていた。彼女が見据える先に居るのは、一人の老人。変化していく組織と忠誠に挟まれた、一人の人間だ。

「組織に仕える、っていうのも大変だね。まぁ、私の場合は彼処が『家』なんだけど……裏切って逃げ切る算段はもう付けてあるんだよね」

その言葉は真実か否か。少なくとも冗談で話している訳では無い。

「私は忠誠なんてのは『訓練』の最中に捨てた。組織なんて枠組みに一々囚われてたら、いざという時にどうしようもなくなる」

そう言って、老人の目を見る。虚無とも空虚とも言うべき視線を感じながら、少女はまるで存在も知らない祖父と話しているかのような気持ちになっていた。
だから、その老人の、不安定な、不安そうな目を見て、言う。

「……約束しよう。絶対に、私は人を……能力者で有ろうとも傷付けない」

そう言って微笑む少女は、次いで言葉を付け足した。

「それに、分かってるんじゃないかな? 私が"可能性"で人を見る人間じゃないって言うのは」

身を以て知ってる筈だよ、と付け加えて、少女は笑った。
428 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/14(火) 12:27:52.53 ID:jNyi3nmbO
騒がし蝉の合唱が木霊する。青々と澄み切った大空は見たものを吸い込みそうに深い
中央に浮かぶ太陽は燦々と輝き、じめりとした大気を更に加熱する。纏わりつく熱気

暑い、梅雨終わりの午後。

「………」

とある学校の屋上に設置された東屋の日陰の中、日光は防がれ北からの風が熱を浚う
……屋上では一番涼しい所で、男がベンチに腰を下ろし足を組み、本を読んでいる。
男性にしては少し長めのボサボサの黒髪、第一ボタンまで開かれた皺々のワイシャツ
黒のスラックスは……まぁやはり皺が目立つ、一言で言えばだらしない服装の男性か

「………この学園の生徒であれば、情報収集も楽なんだ…けど?」

彼は……この学園の臨時教師である。

(適当だがまぁ教え方はまし、適当だが話は少し面白い、結構怪しいおっさん?by生徒)
(仕事少し真面目にしてくれ、時々ふらっと何処かにいくな、給料下げるぞ!!by同僚)

とまぁ、基本的にはサボリ魔として生徒やら教師やらに有名な感じなのだが……
今回も適当に仕事を同僚に投げ出してここにいるらしい。故に少し隠れる様に影の中
”持ち出し厳禁”と表紙に書かれた資料をペラペラ捲りながら、退屈そうに独り言
429 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/14(火) 12:42:21.47 ID:KERMMpBTO
>>428
少し湿った風が吹く屋上の、金属製の重たい扉が鈍い音を立てて開く。
そこから顔を出したのは、くわえ煙草を燻らす白衣の女だった。

前方を見れば、そこには何度か目にした臨時教師の姿があった。
ボサボサのだらしのない髪に、皺だらけのスラックス。何処か教師という雰囲気を纏っているものの、第一印象はやはりだらしない、そんな男の姿が。

ペラリと捲るのは、持ち出し厳禁とある資料らしきもの。
女は、湿った風に白衣を翻し、煙を吐きつつ背後から声を掛けた。

「持ち出し厳禁の資料片手に、何を企んでいるのかね」


「 ————————先生」

何かを含ませたような言い方をしながら、ゆっくりと男へ歩み寄っていく。
しかし、女はそのまま男を素通りすると、その先にある金網まで行き、くるりと振り返ってガシャンとそこへ凭れ、男と向き合う形に。
銀縁メガネに白いワイシャツ。シワ一つついていない白衣を纏う、もう一人の学園教員。
430 :リー ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/14(火) 13:07:49.54 ID:ZA3P5/QVO
>>429
「………………」

ビクビクッッ

男は余程集中していたのか、彼女の存在に話しかけられるまで気がついて居なかった模様
背後から背中をぽんと叩けた猫の様に少し飛び上がれば、ガタガタとベンチから滑り落ちた……

「いやぁ……あー……えっと、レイカ先生……でしたっけ?」

そのまま彼女は優雅な足取りで歩み寄り、男は変わらず”驚いた様に”相手を眺めれば
なんとも頼り無さそうな雰囲気で、その言葉は弱々しくオドオドと……まぁ作り過ぎな具合で
そーと、こう無駄な努力な感じでもとりあえず資料を隠す様に背中をゴソゴソさせれば、言うのだ!

「も、持ち出し厳禁の書類なんて…いやはや、私みたいな若輩者が見れる事なんて、はは…ははは」
431 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/14(火) 13:41:23.26 ID:KERMMpBTO
>>430
余りにも驚くので、女は先程よりも目を細め、懐疑的な視線を相手に突き刺す。
背に隠された資料を目線で追いながら、言葉を紡いで場を繋ぎ止める。

「覚えていただけていたとは実に光栄だ、リー先生。」

「そんなに堅くなくとも、我々は"同業者"なんだ、リラックスしていこうじゃあないか」

ふぅ、と一息煙を吐き出すと、短くなった煙草を指で摘み、逆手で新しい煙草を取り出してくわえる。
そして未だ消していなかった煙草の火種を押し付けて火を灯す。
短い方の煙草は白衣から取り出した携帯灰皿に押し込む。

如何せん学園に不慣れなせいで、どう他の教員と接して良いものかわからない女だが、自分の素で接することで無駄に緊張しないようにしていた。
だからこその、男に向けられる懐疑的な視線。

学園といえど何が持ち出し禁止で何が持ち出し許可されているのかなんて調べがついていない。
ただ"気になっただけ"。
だが、女には別の何かが喉に引っかかっていた。

「学園になれるのが早いことだ……ここに入るのが目的だったみたいに…」

それに女が気づき、迫るのは ————




「なぁ、"先生"?」



————もう、すぐかもしれない。
432 :新規 ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 13:58:35.57 ID:pxTcu6kU0
テスト
433 :新規 ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 13:58:35.57 ID:pxTcu6kU0
テスト
434 :新規 ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 13:58:47.51 ID:pxTcu6kU0
テスト
435 :新規 ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 13:58:47.51 ID:pxTcu6kU0
テスト
436 :新規 ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 13:58:47.51 ID:pxTcu6kU0
テスト
437 :新規 ◆HtqUxpDThE [sage]:2015/07/14(火) 14:06:56.29 ID:pxTcu6kU0
四重書き込みて

すみませんでした
438 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/14(火) 14:10:14.11 ID:LktKPDs+o
>>431

──あぁ面倒だな、と男は心の中で呟いた。

持ち出し厳禁の書物を読んでいることを咎められたのが面倒ではない、その後の事
ギャグテイストに馬鹿馬鹿しく、愚かしく”誤魔化そうとした”それで”流されない”から厄介であった。

「そんなそんな…これはただの”勉強”の為に借りただけですよっと」

男はゆっくりと立ち上がった。懐疑の視線に浴びる中、やや緊張したような面持ちを”作って”
背中に隠していた冊子を、ベンチにぽんと置けば、再び彼女の方へ……唇から溢れる紫煙を眺めた。

置かれている書類に目をやれば、生徒の個人情報が乗ったファイルだとわかるだろう。

「……で。”慣れている”…ですか、はは……それは、そうですね」

「”前にも”教師…ではありませんでしたが、人を教えていた事があったので、だからでしょう」

「────まぁ逆に」

「レイカ先生は”まだ慣れていない”ようで、教えるのは”初めて”……ですか?」
439 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/14(火) 14:42:48.53 ID:KERMMpBTO
>>438
男がバサリとベンチに投げ出した、生徒のプロファイル。何かを調べていたのは明らかではあるのだが、教師という立場上見ていても不思議なものではない。
それに、男は女よりも先に学園にいたはずだ。自分よりも生徒に詳しいはずではあるが、なのに何故…。
湯水のように止めどない思考の海の中、ただもがくような歯痒い感覚だけが女を責める。

それから、白羽の矢を立てたはずだった自分に対して跳ね返ってきた言葉に、思わず一瞬だけ言葉に詰まる。

「っ……私は独り身で、引き篭もりだったものでね。誰かに教える事なんてしたことなかったのさ。」

しまった、と思った時というのは、大体において時は既に遅し。
素直に答えてしまっては相手に疑問を与えてしまうではないか、と。
取り繕っているようには見えないよう、慎重に気を使いながら言葉を選ぶ。

「この学園に知り合いがいてね。教員をやってくれないかと頼まれたのさ。幸い私は人に教えたことがないにしろ、理系分野も文系分野もある程度知識があったし、……小遣い稼ぎみたいなものさ」

嘘に嘘を重ね、真実で覆い隠す。
それは隠匿に慣れた者の常套手段。

————だが、隠匿するには相手が悪過ぎた。
女は、肌を引っ掻くような違和感を覚えているものの、それにまだ気付けないでいた。

焦りと動揺からか、煙草の灰を落とすのに強く弾き過ぎ、火種が地面へと落ちてしまう。
おや、という顔をしながら足で踏み消し、白衣からライターを取り出して火を灯す。
カチンと甲高い音を響かせながら、手でもて遊ぶそれは、魔術師が見れば異様な品である事がひと目でわかるものだろう。

太陽と月、相容れぬ2つを繋ぎ合わせて一つにした、この女魔術師の最高傑作である。
440 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/14(火) 15:20:12.87 ID:LktKPDs+o
>>439

”独りきり”の”引きこもり”に何故教師という職を頼もうか。少なくとも───この学園都市という箱庭
能力者の”教師”というある意味テストケースで”不安の新人”を放り込むなどは……等の不自然を

男は”指摘”する事もなく、一歩踏み出し、女の方へ、木陰から日向の境界線、わずか先の眩い光に目を細める。

「──レイカ先生、先生という存在が”そんなに慌ててはいけない”よ」

人差し指をピンと伸ばし、己の唇に軽く当てれば、しぃと、幼子に注意するように、小さく息を付く
ふたりの間に澄んだ音が広がった。彼女の手元にあるライターをその輝きをちらりと眺めて男は言葉を唄う。

「”教師”という存在は学園でいる限り”教師”でなくちゃいけないんだ」

「実の姿が”なんであれ”僕が実は”能力者”であっても、Reika=Wilson、貴方が実は”魔法使い”であっても」

「この学園に、この校舎に、生徒たちの前では”僕らは教師だ” ”生徒の可能性を開花させる者だ”」 

「───故に」

男は、ライターの時点で彼女がある程度どういった存在か、”察してはいる”魔術師の最前線にいたんだそう
”鈍くはない”だが、彼は言葉を優しく、だが少し叱る様に紡ぐ。けして”問い詰める”ものではない……つまりは
”魔術師”では無く、少なくとも彼女より早く人に教えていた者、”教師”として、この言葉を述べていた。

「”慌てたらいけない”よ……”レイカ先生”」 

「我々は”教師”という凡ゆる可能性の先にある者を演じなければならないから、ね?」
441 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/14(火) 15:38:05.59 ID:KERMMpBTO
>>440
「っ………」

女は驚きと動揺のあまり声を出しそうになるも、くわえた煙草のフィルターをぎりりと噛み締めることで踏み止まる。
見透かされている。理解し、玩ばれ、あまつさえ女を魔術師であると。
理不尽と思いたい程に格の違う相手に、肌を引っ掻き回す違和感はそれを強めた。

「な、何を言い出すかと思えばリー先生……私は、慌ててなど…!」

普段あまり笑わない女が、愛想笑いを浮かべるとはなんと滑稽な事か。
威をかる虎も居ないこの屋上で、あまりにも女は世間知らずで、実地経験が浅すぎた。
浅はかなる女の末路は…ただ、目の前の男に黙らされるだけ。

「リーせん、せ、い……?」

ふと、女の動きが止まり、愛想笑いは消える。
何かが、女の脳内にある膨大な引き出しの一つに引っ掛かる。
何かが、脳内にある膨大な図書の栞を開こうとする。

私は何故彼を恐れる?
私は何故彼の一歩先を行こうと必死に?
私はなぜ彼に隠匿する必要がある?


隠匿 ————————?




ガチン、と頭の中で大きな音がした。
噂だけ、聞いた事がある。
それも都市伝説と笑われる魔術師の中でも、とんでもない都市伝説。

その物の存在を、その者の存在を秘匿し、隠匿し、隠蔽し、最後には消し去る、"魔術史上最高"と言われ、同時に、"魔術史上絶対命題"と言われた実現することは不可能とされている魔術を"手に入れた者達"。





「 ————————隠匿の魔術師(オールデリート)————!?」



その名を知るものは多いが、二つ名を知るものは少なく、女もまた、特殊な魔術師の一人が故に、それを知ってしまっている。


「……失礼な事を、しまし、た…!」

その場で片膝をつき、静かに頭を下げる。
ただ、それしか出来ないほどに格が違う相手に、これ以上何が出来るというのか。

確信めいたそれは…否、確信したそれは、間違いない。
彼は、彼こそが、魔術師に出来ないことをやってのけた一族の一人だと。
442 :星乃マーガレット ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 17:34:28.55 ID:pxTcu6kUo
夕刻であるもののまだ日の高いビル街は、穏やかな喧騒に包まれていた。
そんな中、颯爽と人混みを掻き分けるように歩く人影。
それは頭ひとつぶん高く、なおかつ異様な出で立ちをしていた。

「あああーん、もうッ!!」

ハイセンスなシャツにぴっちりと身を包み、中肉中背というよりも細く筋肉質よりの肉体。
毛むくじゃらの動物のようにわさわさの長髪は、寒色が複数混じっていた。
水色のきついアイメイクをひきつらせ、赤い鮮烈な口紅を歪ませ叫ぶ。
誰から見ても、それは背格好的にも容姿的にも、男であった。

「最近の若い子ってばなーんでおブスばっかりなのかしら!?
事務所に来る子なんて量産型じゃない!!ロボット!?
化粧のしがいも無くなるってもんじゃない!!そういうレベルじゃないのよッ!!」

それを主張する彼の周辺には、レベルが高いと言われるような美人ばかり。
近辺を歩く小学生すら愛らしいというのに。

「そうよ、私は、ただの可愛い子じゃつまんないのよッ!!」

なんとも。

それは革製のバックを肩で担ぎ、往来で立ち止まると、むかむかした顔でベンチに腰かけた。
443 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/14(火) 17:52:40.57 ID:+iv5hFeg0
>>442
「───んあ。」

──丁度その時。ベンチに腰掛けて何やら嘆いている"男"の前に立ち止まるが1つ。
短い髪に額には真紅の鉢巻。そして黒の学ランを羽織った男装の少女であった。
声は若干高いものの、何も言われなければ女性とは思われないような「漢」の服装。──まあ、目利きが良い人間には簡単に見破られるのだが。
因みに、先日の戦闘の名残からか鼻頭には絆創膏を貼っつけ、右手は白の包帯でぐるぐる巻きにしている。…鞄は左手にぶら下げて。
立ち止まった理由としてはただ一つ。"番長"を名乗る"番長もどき"こと高天原いずもの目には、目の前に座ったオネエが悩んでいるように捉えられたから。──そして彼女は発する。

「…おい?なんか嫌なことでもあったのか?
見ず知らずのオレでいいなら聞かせてくれよ。」

非常に軽い口調で、その少女は尋ねた。
彼女の中で「番長」というのはどんなに小さいことでも誰かの願いを聞いてあげられる優しい人物のことであり、名乗るからには自分もそうでなくてはならない。
…超男装かつ番長もどきの少女と、一人のオネエの物語が始まる──。
444 :星乃マーガレット ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 18:16:14.98 ID:pxTcu6kUo
>>443

「ん!?」

最初に声をかけられた際、非常に食い気味でじろっと睨んで返答する。
感情が昂るときつさの出てくる性格故か、見ず知らずの少女(見た目は少年)にもそんなひどい対応を、

「…」

とるかと思いきや、その容姿に呆気に取られたらしかった。
ほけっとした顔で見返すと、突然返したのはそんな無言である。

「…アナタ…?男なの?女の子なの?」

彼女、もとい、容姿は彼である少女に対してのリアクションは結構ガツガツいった。
このオネエ、彼女の服装含め、見た目は男なのだろうと判断している。
しかしオネエは、思春期少女独特の雰囲気というものを知っている為か、薄々違和感に囚われたようで
少年なのか、男装している少女なのか、の判断で揺らいでいた。

「ビビーッと来てるんだけど判断に迷うのよ、どっちなの?」

失礼である。しかもしつこい。

「…そうね、アタシただの女の子はキョーミないって言いたかったの」

思い出したかのように、問いかけに答えると、またふてくされていた。

「普通の女の子を化粧して着飾ってお写真撮るのに飽きちゃったのよ
あれらは単なるおブスなの、おブス」

ののしってる。
445 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/14(火) 18:34:57.75 ID:+iv5hFeg0
>>444

「はっ!?」

とりあえず予想の極限まで斜めをいく回答に対して、その"少女"は後ずさりする。
質問を質問で返されてまだ思考が追いついていないという事もあるのだが、それ以上に目の前の人間の強烈な口調と質問に気圧された。
──そう。この番長スタイルの人間はマーガレットの睨み通り、紛れもない"少女"である。
限りなく平らではあるが僅かに膨らんだ胸部、そして何よりは女性特有の丸みを帯びた体つき。学ランの上からで見分けにくくはあるが、それは間違いなく少女の体だった。

「………ま、まあ…一応、性別的にはアンタが言ってるほうだけどよ…」

一度だけ大きく息を吸い込んで、落ち着きを取り戻してから少女は返答をした。
あえて女であるという事を堂々と言葉にしなかったのは、"女"である事をあまり露見させたくない為である。──強い男の象徴たる"番長"、を名乗る身が故に。

「……化粧…ってこたぁ、アンタ、なんかそういうモデルの化粧とかなんだかやってる人か?
…なんつーんだっけなあの職業。」

罵りはとりあえず軽くスルーして、マーガレットが口にした「化粧して着飾って…」という部分に話を向けてみる。
当然、彼女は今時を生きる女子高生とは遠く離れているため…というか無理やりそうしているため、そういう知識は皆無に近い。
446 :星乃マーガレット ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 19:07:24.22 ID:pxTcu6kUo
>>445

彼女の困惑する顔は、やはり愛らしさはある。
渦中で悩んでいたが、しかしその返答を聞いた瞬間、ぴくり、と体が震えた。
この目の前の番長めいた若者は、少女である。
少女。

この男はこの瞬間、彼女の戸惑う様子を、正しく花を散らして写ったのだ。


「ーーメェェェェェイクアップッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
アァァァァァァァティストッ!!!!!!!!!!!!!!」


うるせぇ。

もはや周囲が何だあいつ、という目で不審がられるレベルで叫んだ。
立ち上がりながら叫んだ。
それほどまでに、刺激的で烈々とした女男は、いきなり彼女に満面の笑顔を向ける。

「アタシは星乃マーガレットッ!!
アタシはアナタみたいなオンナノコを探してたのよッ!!」

いきなりすぎる勧誘。
この時点で無理矢理引き込むつもりはないらしいが、まさに押し付けがましく、というか図々しく募っている。

「麗しの赤き流星ちゃん、アナタは才能の塊よ!!

その体躯に纏った黒い学ラン!!
顔も可愛いのに髪も短くして、オトコノコみたいに見えちゃうトコッ!!
危うさ!儚さ!なのにその身で青春を体現する!!
正に青き時代へ送る挑戦者!!アナタはね、宝石よッ!!

アナタはなんて名前なのッ!?」

唐突にあだ名なのかなんなのか分からないもので呼ぶ野郎。
ころっと態度を変えた図々しいそれは、彼女を上から下まで美術品を観賞するかのように恍惚に見とれた。

「あああっ、オンナノコって分かったら眩しすぎて目が潰れるわッ!!
なんて美しいのかしら!!」

うるせぇ。
彼女の愛らしさにようやくやられたらしく、顔を両手で覆って嘆いている。
そろそろこの暴走男にツッコミを入れるべきかもしれない。
447 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/14(火) 19:24:23.38 ID:+iv5hFeg0
>>446
「……っ!?
お、おい!落ち着け!落ち着けって!!…っざけんな!周りから変な目で見られてんじゃん!
やめてやめて!…ヤメロぉぉぉぉぉ!!」


と、普段ならば喧しい高天原いずももこれに流石には慌てて落ち着くように促した。
迫ってくるようにして言葉を投げかける男を抑えるように両手の掌をを前に突き出して静止の合図。
突然絶叫した不審な男と、その近くにいる彼女に、周りから変なものを見るような視線が降り注ぐ。
周りをキョロキョロと見渡してその状況を把握するやいなやあたふたと慌てる"男女,であるが、
"女男"こと星乃マーガレットの勢いは止まらない──!

「…たっ…"高天原出雲"!!
だけど!今はとりあえず落ち着け!
オレまで変人に見られちゃたまんねーよ!おっ…おい?静かに!
わかるか?し・ず・か・に!!

…ああーん!もう嫌だぁぁぁあなんなんだこいつ!!!」

初めて彼女は「番長」と名乗ることを後悔した。
いくら注意を促しても彼の勢いは止まることなく、周りからは一層、嫌悪の対象として鋭い視線が突き刺さる。
そろそろ普通なら風紀委員あたりが来そうではあるが"高天原出雲"という人物は風紀委員に毎日の様に迷惑をかけている有名人なため、
恐らくそれを発見してもいい気味だと嘲笑っているだろう。
遂に精神的に追い詰められた彼女は、止めるどころかがくりと膝をおって半分涙目なる始末である。
448 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/14(火) 19:46:53.42 ID:LktKPDs+o
>>441

存在自体を”なかった”事にする魔術の後継者。ある種の因果律を捻じ曲げる大魔術──奇跡とも言う
それを単独で、あっさりと作り上げた魔法使いが数百年前にいたと言う。確かに彼はその脈絡の一部だ。

「(…だが、私は───)」

されど、彼は”それだけ”彼女の思い浮かべる奇跡は起こせない。それを起こせる魔法使いは何処かに”消えた”
魔法は朽ち果て残り香が魔術として彼の一族に伝わったのみ……されど彼女はそれを知らない、奇跡があると信じるのか

「(…ならば?)」

たかが残り香の神秘性を信じ、いらぬ膝を魔術師に付かせた。……その責任を取るならばそれは誤解だとは言えぬだろう。
故に男は先ほどの自身の台詞を実行する。自身は教師である。教師とは”無限の可能性を観せる者だ”まぁ……そうだな

たかが残り香されど残り香、本来の魔術の10分の1にも及ばずとも、魔術の”可能性”は見せられるだろう

「…………探求する者、魔術師──Reika=Wilson」

男は片膝を付く魔術師を見つめ、僅かに小さく微笑めば、日陰から日向へ、その一歩を踏み出したのだ。
その際に蜃気楼がふわりと掻き消える様に僅かな瞬間、男の姿が完全に世界に溶け込み消えたのは”幻想”では無い
こつりと足音がすれば再び男の姿が現れるだろうが……そして男は女性の目の前へそして”同じように片膝をついた”

「君に知って貰えていたとは実に光栄だよ、ライカ先生。」

「だけど……」

「そんなに堅くなくとも、我々は"同業者(先生)"なんだ、リラックスして…いこうか、ね?」

彼女の視線を合わせて、地面に触れる手にそっと己の”人間”の手を重ねれば、男の口調は優しげで……
静かに微笑み、……まあ死期を悟った老人のような笑みだが、まあ怯えた生徒に語りかける様に言うだろう

/遅れて申し訳ないです!!
449 :星乃マーガレット ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 19:52:27.40 ID:pxTcu6kUo
>>447

「あぁ、泣かないで麗しちゃんッ!!
分かったわ、クールダウンすればいいのね

このKY、彼女の心中も察することなく。
寧ろ周囲が『てめーが泣かせてるんだろうが』と察する事が出来るレベルだっただろう。
よしよしと労るような声がけを行ったのち、嬉しそうに己の両手ですりすり、くねっと気持ち悪く跳ねていた。

「出雲ちゃんね!!キャッチーにイズ○ズなんてどうかしら!?」

国の関係に差し当たりそうなギリギリのあだ名にしかけた。

「いえ、イズイズはダサいわね!!
アタシはアナタのことイズムって呼ぶわ!!イズム!!可愛いでしょ!!」

動かす人間もこの流れが辛くなってきたところで、彼女の心労を増やすようなあだ名を勝手に決定した。
正直風紀委員もいずもに救いの手すら差し伸べそうな気もする。


「イズム!!アナタ、モデルに興味はあるッ!?」


今度こそ、それはほんとの『勧誘』タイムに入ったのだった。
出し抜け一番そんなことを聞く。

「ああ、いますぐに返事が欲しい訳じゃないの!!
アナタは見たところ番長だし、とびっきりの強さを求めてるってカンジ
それを生かしたモデルってどう!?ってアタシは考えたのよ!!」

キラキラした目で、なにか言っている。
450 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/14(火) 20:01:03.89 ID:KERMMpBTO
>>448
何かを悟っているような、何かを知っているような、いや、何もかも知っている様な男の目に、女はどの様に映っているのだろうか。
その姿が幻のように掻き消えた瞬間、思わず自らの両目を疑ってしまう。
彼は本当に存在したのか?と。
隠匿する魔術師は、ふとまた目の前に現れ、ただただ女は混乱するばかり。

「探求する者などと、そのような ———— 」

否定の言葉は、重ねられた手に遮られた。

「 ————ありがとう、ございます」

胸中に湧き上がるものを抑え込みながら、女は顔を伏せる。
数瞬して顔を上げれば、そこには師のような表情をした男がいて。
何をどうやって言葉に変えようか考えあぐねても、いつもならロジカルに組み上がるものも組み上がらない、そんな風に何度か口を開きかけては閉じる。

それから、やっと紡がれた言葉は、とても切実なものだった。

「私は……私は、魔術師として能力者を研究し、能力者と触れ合い、理解しました……彼らは、決して脅威ではないと…歩み寄れば、きっと…互いにわかりあえば……」

様々なことが頭を過る。さながら走馬灯の如く。
胸中に湧き上がる気持ちを隠したままに、言葉は途切れた。

「……」

そして、小さく息を吐いて言葉を投げる。

「……危険な魔術師たちも、この都市に潜んでおります…どうか、この学園の生徒をお守りください……どうか……」

消え入るような声音は、嘘か真か。
ただ、女は相手に頼み込むように、顔を伏せた。
451 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/14(火) 20:05:29.57 ID:+iv5hFeg0
>>449
「…ぁあ…もうイズイズでもイズムでもIZAMUでも何にでもしてくれ…」

もうどうにでもなってしまえ。
既に色々と精神的に追い詰められている高天原いずもは、もう彼のテンションに着いていく気力が無い。──死にかけの声である。
先程からチラチラと周りを見てみるが、誰も彼女を救おうとする者は居らず。
…何人かクスクスという嗤い声が聞こえてきたが、もうそれを怒る気力すら彼女には無かった。


そんなハイテンションのオネエから次に繰り出されたのは「勧誘」であった。
そう言えば先程、化粧だか何だかとか言っていたな、と彼女の脳内に状況がフラッシュバックする。

──モデル。それは、今時を生きる多くの女子の憧れの的である。
日々の流行の大きなキーマンとされる人間。
……人気者。……多くの人間から慕われ、信仰心の様な感情を抱かれるという点では何処か「番長」と合致している物なのかも知れない。
そんな肩書きに憧れない女子がいるだろうか?いやいない。
どんな女子も一度は憧れたことがあるはずだ。ないというのであればそいつは嘘つきだ。

──────────────だから。


「─────あるわけねぇだろぉがぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!」

とりあえず絶叫して、それらを全否定してみた。

//すみません!次返すの遅れます!
452 :星乃マーガレット ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 20:20:04.09 ID:pxTcu6kUo
>>451

「いっ、いやぁぁぁんッ!!」

彼女の否定もごもっともである。
初めて気圧されたような態度を取るオネエである。
しゃがみこみ、がくっと落ち込んだようなそぶり。
さめざめと泣くような素振りで顔を再び両手で覆い、時々チラッチラッと指の隙間からアイメイクに彩られた瞳を見せた。

「な、何で断るのよぉっ!!

イズム、アナタに断られたらアタシこの先やってけないわ!!
アタシアナタ以上の宝石に会った事無いもの!!
アナタはアタシの世界を照らしてくれたのよ!!」

泣き落とし作戦。

周囲の目もそろそろ「見ちゃだめなやつね…」という判断にもなってきそうである。
しくしく泣いているふりをしていたが、
突如す、と両手を構えると、彼女の前でしゃがんだ体勢から、ゆっくりと立ち上がりつつ、

「…逆に、逆に?ぎゃ、く、に!?ぎゃ、く、に!?」

手をぱんぱんと叩いて、まるで飲みのコールでもするかのように煽る。
凄くニヤニヤしていた。
そこまできて希望を持つのもすごい。

//分かりました!
453 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/14(火) 20:37:26.74 ID:LktKPDs+o
>>450
安請け合いは……出来ないな、と男は考える。もう一度、男はそれほど万能ではないのだから
刺せば、撃たれれば、燃やされれば、凍らされれば、死ぬ。手は二本しか無く、魔術も未熟だ……だが

まぁ、と男は苦笑と共に心の中でため息をついた。

「わかった────とは言えない」

静かに男は首を振る。凡ゆる可能性を巡回させて男は結論を下すだ。魔術師らしく冷酷な判断で

「”私一人には”ね?」

そして、こう、言葉を加えた。凡ゆる可能性を加えれて男は結論を加えたのだ。教師らしく可能性を見つめて

「私には無理だ。ならば君にも手伝ってもらおう。先ほど言ったじゃないか」

「我々は”教師”だ。生徒を守るのは私だけではなくて、”私たちの仕事”だ」

ふと、男の手は女の鮮やかな赤銅色に覆われた頭をぽん、と撫でた、ぽんぽんとまぁ失礼かもしれないが
プライドを捨て、こうべを垂れる。そこまでの深い愛情に言葉だけでは少し足りぬと考えて……ふと彼は思う。
彼女はまだ伸びるだろう。自分とは違う可能性を見れる者なのだから。ならば、自身にとっては”  ”になるのか

「……そして君は、私が”できる限り助けよう” ”魔術師と能力者が手を繋げる可能性”」

「その未来(可能性)を君が抱き続ける限り、ね?」
454 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA :2015/07/14(火) 20:38:04.85 ID:YYeMT8JyO
>>427
少女の返答を聞き、彼のその顔にはどこか陽射しが差したような微笑が浮かんだ。
少女がそれをしない事はわかっていた。だがしかし、"傷付けない"それを約束してくれる人物がいる、それだけで何か、救われるような気分になったのだ。

「フフ……わしも歳をとった。いくぶんか、感傷的になったらしい」

彼は組んでいた腕を解いて、壁に寄り掛かるのをやめ、しっかりと地面に立つ。
そして改めて、上に立つ少女を見た。

「礼を言おう、"宵闇"。……再び見える時は、味方である保証はないがな」

茶化すように付け足しながら、心からの感謝を述べる。
どういった風の吹き回しかは知らないが、彼女により自分が大きく救われたというのは確かだった。
組織と自分の間で揺れる気持ちに変わりはないが、それでも何か、安心が得られる気がした。

「……わしの名は、ヴァシーリー・マーカス。このような老いぼれの名でよければ、覚えていてくれ」

そして思い出したかのように、自分の名を告げる。
ヴァシーリー・マーカス。カスパール派組織において最高クラスの脅威とされた"要塞の騎士"の真名。
と言っても、それが通名となっていたのはもはや30年近く昔の話。その魔術も今や衰えるばかりである。
彼女は恐らく、彼を知っているという事は無いであろうか。
455 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/14(火) 20:59:39.87 ID:KERMMpBTO
>>453
一瞬の否定に、女の肩がビクリと震える。
しかし、糸の如く紡がれた言葉にばっと顔を上げた。

「私達の、仕事……」

ぽん、と頭に置かれた手に、きょとんとした顔のまま、ただなされるがまま。
嫌ではなかった、寧ろ…————。

「私の力で良ければ、いつでも…っ」

それは、教員同士の結束。
同時に、魔術師同士の結束でもあった。
女は、しばらくの間手の感触に浸っていたいとも考えたが、それよりも先に、思い出したように乱雑に白衣に手を突っ込み、何かを探る。
握りしめ最初に出てきた煙草を地面へ「こ、これじゃないっ」と投げ、取り出したものは ————一つの鍵。

それをちょっとだけ見つめた後、おずおずと差し出す。

「私の研究施設の鍵、です……そこに居住スペースもありますので、宜しければ、いつでも……」

少しだけ目が泳いでいるのは、気のせいではないだろう。
何せ伝説と思われていた魔術師の脈絡の一部に出会えたのだ。あまつさえ、力を貸そう、そう申し出てくれたのだから。
とんとん拍子にも程がある、その現実が心地良かった。

私は、一人ではないと知ることができたのだから。

地面に投げた煙草を拾って白衣に収めると、丁度学園のチャイムが鳴り響く。

部活帰りの生徒の談笑や、居残りしている生徒が開放されて喜ぶ声がそこかしこから聞こえ始め、ようやく女はずっと地面に伏していることに気付く。
慌てたように立ち上がり、膝を数度払うと、男を向いて頭を下げた。

「そ、そのっ……え、と………」

生徒たちの声を聞いて、現実に引き戻された女は、大きく咳払いをしてから、どこかぎこちないままに言う。

「教員同士、これからもよろしく頼む……です…」

見栄を張ったものの、最後には気圧されたように小さく敬語をつけてしまうも、ペースを取り戻すように煙草をくわえて火を灯す。

「い、いつでも来て良いとは言っているが、タイミングは、ちゃんと見計らいたまえよ、リー先生!」

少しだけ大きな声でそう言うと、くるりと背を向け、金網の向こうに広がる広大な都市に視線を逃がす。

何か胸中に抱えたような、そんな雰囲気のまま。
456 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/14(火) 21:35:52.82 ID:LktKPDs+o
>>455
男はクスリと笑えば、すく、と立ち上がり……そして彼女の声を聞く。そして日常の空気に戻る。
ソコには神秘の残り香を扱う魔術師も、凡ゆる事を探求する魔術師もいない、ただ二人の教師だけで。

「ええ、そこは気をつけて来ることにしますよ……レイラ先生」

だらしない服装の、弱々しく、オドオドとした教師と、クールビューティな女教師
言わば真逆な二人で……その二人に妙な同盟が生まれたのは誰も想像はつかないだろう。

そして鍵を受け取っていた男はそれを懐に仕舞うと彼女と背中合わせに、コツりと足音がした。
チャイムや学生達の声に混じり遠くに消えていくそれ、少し離れれば存在感すら薄れてくるだろうか

そのまま何もなければ彼は普段と変わらぬようにだらしなぁく、その場を去っていくだろう

/遅れて申し訳ございません!
457 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/14(火) 22:02:33.47 ID:KERMMpBTO
>>456
足音が消えるまで、女は背を向けたままだった。
完全に足音が消えた後、ふっと振り返る。

もちろん、そこにはもう誰もおらず、ただ学園の喧騒だけが空気を震わせている。
少し見回す。だが、もう誰もいない。それでも注意深く、じっと辺りを見回し ————クスリと小さな笑い声を漏らす。

微笑む表情の裏側はわからない。

動き出した女の歩みに一切の迷いは無く、屋上から構内へ。すれ違う生徒たちの挨拶に頷いて返したり、片手を小さく上げたり、だが、歩みは止まらない。

そして ————程なくして、学園中央に位置する自らの研究施設へ到着し、ドアノブへ手を掛け、ガチャン、と鍵が掛かっている事を確認する。白衣から予備の鍵を取り出すと、ドアを開けて内部へ。

広々とした施設内。壁一面に魔法陣や意味不明な数式や、学園都市の地図などが乱雑に貼り付けられている。その施設内に響くのは、女の足音と、小さな笑い声。

「ふふっ……くっくっくっ………ただいま、諸君」

奥へ進むにつれて聞こえる、呻き声。その正体は、身体を拘束された ————数名の生徒達だった。

「喜びたまえ……私に同盟が増えたぞ?リー先生、知っているだろう?」

『むぐぅ!むー!んむー!!』

口を粘着テープで塞がれた生徒達は呻き声しか上げれず、暴れようにももぞもぞとするだけ。それを見て女は白衣を脱ぎ捨て、眼鏡を押し上げ、一人の女生徒に近づく。

「消失…隠匿の魔術の使い手だ……いやはや、私も泣き落としはどうかと思ったんだが…中々に女優だったと自賛したい程だ」

一人で話しながら、女生徒の頭を撫でてから背を向け、デスクにある資料らしきものを眺める。

「約束したのだよ……学園を、この都市を守る、とね……」

資料には ————数名の生徒達の情報が。加えて、それは女が独自に調べたと思わせる直筆のもの。内容は……彼らが、過激派の魔術師と能力者である、という事実。

「彼を失望させちゃならないからね……それに、いずもや八橋もいるんだ、君達が私の"同盟"を傷付ける前に捕まえて良かったよ……さ、今日も実験といこうか……まずは、私の魔術に耐えてもらうことから始めようか————? 」


バチッ ————バチチッ ————と女の両手が光る。

「 ————すぐに灰になってくれるなよ?





実験対象(モルモット)諸君 ————————」



研究施設が、炎に包まれた。
声一つも逃さないままに。


/長い絡みありがとうございました!お疲れ様です!
458 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/14(火) 22:04:32.80 ID:+iv5hFeg0
>>452
「否定するに決まってんだろ!あ?なにか!?じゃあ三つ理由を言ってやる!!」

周りの人間は寧ろ「見てられない」とその場から散り始めている。残った数人は嘲笑いながらも落ち着くのを待って、そこで一網打尽にしてやろうという風紀委員ってところだろう。
先程の馬鹿みたいな絶叫から、瞬間優位にたった彼女は調子づいて反撃を開始する。

まずは────────、

「1つ!オレはずっとこのファッションのままでいい!
そこらへんのガキみたいなチャラチャラしたりなのは嫌だ!
あとどっかの宮殿の王女なんかが着てるドレスなんか見てのとおり似合う筈がない!よってこれを@とする!」

次に。

「2つ!番長名乗ってるんだからこんなもん載っちまったら何やってんだこいつ!みたいな目線で見られるの!オレは舐められたくないの!わかるか!!…そしてこれをAとする!」



……最後には。

「そして第一の要員だ!アンタが──────────生理的に無理だ!!これをBとする!」

「@ABより!オレがアンタのお着替え人形になるのはありえない!証明終了!!」

───そう、彼女は半ば自慢げにバッサリと切り捨てて見せたのである。びしぃっ!と指先をマーガレットに向けてみせた。

//遅れてすみません!
459 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc :2015/07/14(火) 22:16:32.26 ID:2s/tvcoc0
>>454
老人の──ヴァーシーリーの礼を聞いて、少女は手を振った。礼など必要ないとでも言いたげな雰囲気だが、それを実際に口に出すことは無かった。代わりに少女は、態々敵でもある自分に名乗った男に軽く会釈をして、こう言った。

「此方こそ。私の名前はガイア=アスファ。《宵闇》の名と、大地の女神の名を受けた、未熟者でございます」

からかう様な敬語だが、少女の目も、顔も、笑っていた。

「貴方の噂"だけ"は聞いてるよ。今となっては全盛期が見られないのが残念でならないけどね……《騎士》の力と、一度ぶつけ合って見たかったってのも本音だよ」

爽やかな笑みを「大先輩」に向ければ、次いで少女も思い出した様に何かを取り出した。

「永続効果の《情報》の魔法陣ですが……まぁ、中身は変な物じゃありませんよ」

それは魔翌力を流すと特定の情報を使用者の頭脳へと転送する魔法陣。通常は機密暗号などに使用されるそれを、少女はその場で紙に描いた。
中身はなんの事はない、この学園都市における彼女の立ち位置や所属、そして拠点としている場所などが記されていた。

「派閥はあれど私達は魔術師……情報共有は戦術の基本だよね」

しかし、魔術師だからと言って必ずしも安全という訳ではない。通常この様な行為は組織に目を付けられ兼ねない危険な行為なのだが……彼女自身、"その程度"の規則に従う訳がなかった。

「もうそろそろすれば、学園都市内の魔術師の情報網も出来上がってくる。能力者が"敵"かどうかは派閥次第。でも、情報は誰が持っていても、問題ないでしょ?」

彼女の目論見は、派閥を超えた情報網の形成。その計画自体も、その《情報》の魔法陣へとインプットされているのだろう。
460 :星乃マーガレット ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 22:23:54.60 ID:pxTcu6kUo
>>458

「いやぁぁぁッ!!!!!!」

びしゃー!!と背景に落雷でも落ちたかのような衝撃を受けつつ。
(むしろ受けて当然なのだが)
まさに夫人が顔を青ざめた際のような少女漫画顔で落ち込んだのであった。

「そ、そんな…アタシのファーッショナブルでセンセーショナァル…イズム…!!」

それもそうである。
もともと興味無い、威厳が無くなる問題、そもそも生理的に無理となると最早反論の余地もない。
これ以上の勧誘では逆に嫌われてしまう。
完全なるQEDを聞かされたオネエは、再度、始まりの時と同様にベンチに腰掛けた。

「…分かったわ、イズム、アタシはアナタを諦めるわ…」

そこまで反論されるととでも言わんばかりに、寂しそうに笑いかける。

「ただ、覚えておいて頂戴。アナタのことを気に入ったオネエがいるってこと…
これは一夏の…そうね、イズム。アナタにまた会う時までの、パンドラの思い出…」

すごいいい笑顔で。

「夢を見させて貰ったわ…じゃあn



とでも言うと思ったかしらーんッ!!?!!」

いきなり立ち上がると、鞄から煙玉を取り出そうとする。
取り出す瞬間も見える。俊敏な動きではあるものの、この至近距離であれば止められるだろう。
もし見逃した場合でも、地面に叩きつけてそのまま逃げるのみらしい。

//いやいや!!むしろレス遅めですみません…
461 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/14(火) 22:39:53.35 ID:+iv5hFeg0
>>460
「…アレ?妙に素直だな…よかったよかった。」

やれやれ、と落ち着いた溜息を1つ。
周りの人間は既に失せ、おそらく紛れていたであろう風紀委員の姿も見当たらず。
落ち着いた様子で彼女は後ろ頭の方に手を回した。どうやら、先程やたら騒いだおかけで額に巻かれた鉢巻が緩んでしまったらしく、それを締め直すに至った次第である。


「……まあまあ!落ち込むなって!オレなんてもんより煌めく宝石??はいくらでもいるってのよ!」

はっはっは!と言葉とは裏腹に落ち込んだ様子のマーガレットを大きな声で笑っていた。
元気づけるような明るい笑いではあるが、実際は「オレの勝ち!」という勝ち誇った意味合いの方が大きい。

──しかし。番長を名乗る立場としてそれなりに戦闘をこなした彼女には、見え見えの死角など存在しない!
高天原いずもの目がギラりと煌めいた。マーガレットが何やら鞄に手を突っ込むのが見えた瞬間、彼女もまた懐から何かを取り出す───!!

「──って!おめぇは何やっとんじゃぁぁぁぁ!!!」

──先程から、違和感はあった。なんでこいつこんなにあっさりと諦めるんだ、と。
勿論それはこちらにとっては利益しか無いのだが、それにしては都合が良すぎないか?と。
そしてその違和感は、マーガレットの行動と照らし合わされた結果、少女を"警戒"させた。
彼女が煙玉の出現よりも早く懐から取り出したのはハリセン。
何故持っているのかはわからないが、高天原いずもはそれを相手の脳天に炸裂させんと、振るう。
マーガレットが避けたりしない限りは煙玉よりも先に、彼女のハリセンの方が炸裂することになるが…?
462 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/14(火) 22:50:09.59 ID:5ngUtaT70
>>459
「ガイアか、よい名前だ。……わしの事を知っておるとは、まさしく若さに似合わぬものよ」

20年も経過すると、誰からも忘れられているとばかり思っていたが、未だそれを知る少女がいる事に、少しだけ驚きを見せる。
だが、それも仕方の無い事だと彼は思った。何しろ、あれだけ暴れたのだから。
自分も若かったのだな、と、改めて過去の戦いにあけくれる日々を思い出した。

「何を言うか、わしはまだまだ。若者にも引けは取らぬ」

自分で衰えを実感してはいるが、残念そうな口調の少女に対し、彼はついつい見栄を張る。
その語り口は、何か元気を取り戻したようだった。

「……む」

頭に何かが流れ込んで来る。情報魔法でも使ったのだろうか?すると確かに、彼女の情報や任務内容などの詳細が理解できた。
確かに自分たちは魔術師同士であるが、このような情報をおいそれと他人に流す、その行為自体に疑問を持ったのだ。
ほどなくして、その理由が理解できた。彼女の"目的"に。

「……派閥を超越した情報共有……?そんな事は……いや、しかし……」

彼は一考する。
確かに組織間での交流は無い事はないが、自分たちの手の内を明かす事はない。己が身を滅ぼす事になりかねないからだ。
しかし。それが魔術師全体に関わる問題であったらどうだ。重大な"イレギュラー"であったら。

能力者。魔術を脅かしかねない存在。力を持ちすぎた者。それを、もしかしたら消さずに済むかもしれない。
その情報をすべての魔術師で共有し、"対策"すれば……たとえ消さずとも、事態は避けられるかも知れない。

「ふむ……確かに、そうだな」

彼は少女の考えに対し、賛成の色を見せた。


463 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/14(火) 22:57:08.26 ID:LktKPDs+o
>>457

そして日が訪れ世界に闇が蔓延る夜となる──誰も居ない学園の資料室が僅かな灯りで男が矢張り資料を読んでいた。
ぺらり、ぺらり持ち出し厳禁の機密書物のページが捲られる。時々男はメモをとり、やはりと頷くように言葉を吐いた。

「(………行方不明になっているのは能力至上主義及び、逆に嫌悪していると思われる生徒たち、か)」

学園生徒に秘密裏に行われた素質性格凡ゆる適正検査データと銘打たれた書類を男は軽く投げる
ぱさりと置かれた机の上には数枚の写真、どれも”最近行方不明になっている”生徒達の全体像を写した写真であった。

「(年齢、性別に関連性は見られない。能力適正も一貫した共通点はない……ならば、共通点は?)」
「(一つに”この学園の生徒である” ”一つに±どちらかに指針が触れている” 後は時期が似ている、ということか)」
「(この中でジャンルを分けるとするならば”身分の偽造”があるかないか、ある方は…まぁ私と同じ存在だろうか)」

男はそこまで思考を回した所で、懐から普段生徒たちの前では吸わない煙草を加え……あえて火をつける事も無く
数度ぴょこぴょこと動かせば、今日の屋上で出会った魔術師の姿を、その底のない欲を宿した瞳を思いだす。ふう、と
──視線を逸らせばホワイトボードにはその彼女がこの学園に入り込む際に提出したデータと冷たい色の表情の写真。

そして銀色の鍵がぶら下がっていた。

「Reika=Wilson。君を教師と魔術師としては信用したが、”暗殺者”として信用したわけではないよ」
「……犯人は君かい?それとも他の”誰か”か。やれやれ……この学院には何人”厄介な者”が潜んでいるのやら」

「まぁいい──私が知らない、誰も気づけない透明人間」

「まだ”見ていてあげよう” これはこれで”新しい可能性が目覚める機会になるかもしれない”」 「だが」

「やりすぎるなら……”覚悟するべきだよ”────”見えない隣人”はいつでも”首を絞めることができるから”さ」


そして電気がふわりと電気が消えた。物音一つ無く誰もいなくなった闇の中
───遠くの様な近いどこかで、全てを喰らい溶かす火炎の息吹が鳴った様な気がした。

/こちらこそ、長い間ロールありがとうございましたーー!!



464 :星乃マーガレット ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 22:58:10.69 ID:pxTcu6kUo
>>461

「へぶーッ!!!!!」

目玉が飛び出した。すぱーっと叩きつけられたハリセンの威力に、思わず煙玉がころっと転がった。
目の前がチカチカする衝撃に耐えながらけっけ!!とかなり怒っている様子である。

「ちょっとー!!髪型崩れちゃうじゃないのッ!!
イズムってばデリカシー無いわね!!もうッ!!ニキビ増えちゃえ!!」

それはてめーだ。
目の前の番長たるや、やはり隙は見せない。く、と悔しそうに呻いてから。

「ちょーっと煙玉でドロンするくらいよッ!!
ついでにその瞬間アナタの写真を撮って可愛い服とコラージュして楽しむだけよ!?なにかおかしいッ!?
アタシ帰るだけよッ!!」

もう一度ハリセンが飛んできてもおかしくない、むしろ拳でクリティカル判定食らうレベルの発言。
いずもの能力で無限の彼方に吹き飛ばされてもおかしくない。

街灯が点くくらいのとっぷりした時間帯になってきたのだから、
むしろいずもを帰すべきではないだろうか。

「アタシ帰るだけだもの、なーにも怪しくないわッ!!
イズムも帰らないといけないでしょッ!?」

鞄に突っ込んだ手は、既に何かを、というかカメラをいつでも出せるようにスタンバイしてる。
既に足腰はクラウチングスタートにも近い低姿勢を取り始めている。
その無謀さたるや、イズムから逃げられるとでも思ってるのだろうかーー。
465 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/14(火) 23:13:01.33 ID:+iv5hFeg0
>>464
「なぁんにも可笑しくねぇと思ったら、中間に馬鹿みたいにでかい爆弾仕掛けてんじゃねぇか!」

既に使ってしまったハリセンはそこらへんに放り投げて、マーガレットの言葉にツッコミを入れる少女。──本来、彼女が周りを振り回しながら暴走するタイプであるので、慣れておらずかなりヘトヘトなご様子である。
流石にこんな馬鹿げたやりとりで能力行使して彼を吹き飛ばす…という考えは馬鹿である彼女も思い浮かばなかったようではある。取り敢えず、マーガレットの首は飛ばすに済んだのである。

そして、またもや彼女の目はキラリと煌めく。
恐らくそこにあるのはカメラだろう。レンズが光で反射する様がしっかりと見えた。

ここで彼女は「…ったく。」と呆れたように言葉を吐いたのであった。後頭部を少し掻きながら。


──そして次の瞬間、彼女からは信じられない言葉が発されるのである。

「……おい、そこにあんのはカメラだろ??
あんな事言ったあとで尚も撮ろうとする神経は馬鹿なオレにもよく分かんねぇけどよぉ……?」



「…どうせ撮るなら、一緒に撮ろうぜ?
その方が記憶にも残っていいだろ?
てかむしろ一緒に撮らないのなら全力で抵抗する…能力使うのも視野に入れちゃうんだぜ!」

馬鹿みたいにその馬鹿は笑顔で言ったのであった。
466 :星乃マーガレット ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 23:29:04.05 ID:pxTcu6kUo
>>465

「なっ」

その言葉に、予想外と言わんばかりの表情を浮かべる。
ここまで人から嫌われそうな態度を取るオネエだというのに、
いずもという少女は、明朗快活に、晴れ渡った笑顔で迎えてくれたのだ。

こんなにも暖かな少女は、マーガレット自身見たことがなかった。
思い出にも残したくないようなオネエのことを、残すように促すなど。

彼女の真髄は、その容姿ではなくーー。

「…」

無言で呆けて見つめてから、負けたわ、と言わんばかりにカメラを取り出す。

「…イズム、アナタやっぱりおブスじゃないわね」

僅かに唇を上に引くと、いずもの隣まで歩み寄り、自撮りの要領でカメラを上に構える。

「まぁ、折角の頼みだし
アタシ含めて可愛く写すわよ、麗しちゃん」

またそのような、素直ではない言葉を伝える。
しかし彼女に冷たくという訳ではない、どこか柔らかな表情でシャッターの掛け声をする。
光の調節をしてくれるカメラが、番長とオネエを写してくれるだろう。

「はい、プリントアウトしとくわね」

二枚ほど出てきた印刷にて、一枚を渡す。
467 :五百蔵 和哉 【空気捕食】Level.4 ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/07/14(火) 23:35:16.58 ID:CeGGzKvR0

―――――――視界にチラつく影に、舌打ちを一つ。

これは幻覚だ。そう理解してはいるものの、思わず本物ではないかと考えてしまうくらいには、理想に近い存在だったと言えるのだろう。
そんな影を振り払うように、彼は拳を振るう。目の前に存在する男子高校生を殴りつけ、力に任せて二メートルほどその体躯を吹き飛ばす。
昔から腕力と能力だけは強かった。初めから、そう初めから強かった。努力する必要も無く、工夫する必要も無く、ただ赴くまま≠ノ生きていれば、それだけで誰にも負けなかった。


「なぁ―――――」



                「―――――――ムカつくから、死んでくれよ。」


彼女≠フ影に、そう言い訳をして。


――――

路地裏よりもさらに深い闇=B街灯の暗がりに照らされた広場は、幾つもの倒れ伏した人間で賑わっており、其の中心に立つのは一人の男性。
丁度少年を抜け、青年の域に達しようとしているその顔はやや精悍で目つきが悪く、頬には自分の物では無い血液が付着。心なしか付着した血は黒い。
夏だというのに首元にはマフラーを付け、歩くたびに腰に付けたチェーンから金属音が鳴る。拳に巻いたテーピングにこびり付く、内側から滲んだ血。
黒色の瞳が左右に動けば、今この瞬間彼の範囲内≠ノ動いている人間はいない事を理解し、僅かにさざめいていた風が止む。息を少しだけ吐き出して、その拳をだらりと脱力させた。

体中の血液が沸騰しているかのような感覚に僅かな違和感と高揚感。まるで自分が世界の中心にでも立っているかのような錯覚を得るには、やはり他者を倒すことでしか得られない物。
人間として最低で最高な生≠フ実感。自分がこの世界に存在しているという事を証明することのできる唯一の方法。ドクリドクリと心臓は脈動し、荒い息は夏だというのに白い空気を吐き出している。

このまま目を瞑るかと言う程にまで細められた瞳が開いた次の瞬間。不意に風が騒ぎ出した。正確に言えば彼によってその動きを強制的にとらされているに過ぎず、風の悲鳴がぎぃぎぃと声を上げた。
空間が軋むような重低音がひとしきり響いた後、其処にはもう『誰も』居ない。彼という能力者以外の存在は最早この範囲内に存在しない。そう言い切れるほどに、その痕跡は抉り取られて≠「るのが分かるだろう。

もし、この場所に誰かが居た≠ニ気付けるのは恐らく能力者のみ。いや、彼の知らない法則によって動く魔術師¥o会ってもこの痕跡を理解するのはそう難しいことでは無い。
明らかな戦闘痕と、意図的に抉られた地面。染み着いた血液の欠片。推測できる要素は腐るほど存在し、合点がいくのはそう遅くない。彼の目が貴方≠ノ向いたとき、掛ける言葉は…………
468 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/14(火) 23:38:47.81 ID:KERMMpBTO
学園都市、繁華街地区。

きらびやかなネオンが所狭しと頭上を彩り、人々が波のように行き交うその場所に、男がビール瓶を片手に歩く。

「あー……あーあーあー……どっこの飲み屋も満席や満席や言うて…何やねんホンマに…」

特徴ある方言の男。緑色のズボンに白いシャツというラフな格好で、繁華街に溶け込んでいるように見えるが、一点、腰から下げる異様な雰囲気を纏った刀が主張するかの如く重い色を落とす。
長めの髪を逆手に掻き上げ、煙草をくわえたまま煙を吐き出し、重い足取りだ。

「今日の仕事も終わったしなぁ……もう一杯くらい飲んで帰ろかなぁ……」

そんな一言を漏らし、近場にあったゴミ箱に空になったビール瓶を投げ入れる。
大きな音がして何人かの通行人がそちらを見るが、その音の原因である男を見て目を逸らす。

それもそのはずだ、刀をぶら下げて酒を飲んでる男など、危険極まりないのだから。
しかし、そんな視線もどこ吹く風に、男はふらふらと歩き続ける。
何かを探すように。


/人待ちです
469 :高天原 いずも [Level3-爆破剛掌] ◆Fff7L077io :2015/07/14(火) 23:50:10.25 ID:+iv5hFeg0
>>466
「ははっ!どーいう意味だよそれっ

…んじゃまあ、よろしく頼むわー」

マーガレットの言葉に若干の疑問を抱きつつも、それを軽く笑って受け流した。
そして、レンズを真っ直ぐ見て、左眼をつぶってウインクするようにして。親指を突き立てた右手を邪魔にならない程度に伸ばして見せる。歯はニカッと爽やかに。──ちゃっかり映り方は若干女子っぽい、良く分からない番長である。


「…おっ、サンキュー!大切にするぜー」


「…そろそろこんな時間か。俺も帰るかねぇー」

写真を受け取り、少女はもう一度爽やかな笑みを浮かべて見せた。彼女の台詞通り、くだらないやりとりを繰り返している最中に時間はかなり経過していたらしく。
そんな感じで彼女は自分の帰る道の方向へと向いて。手には大切そうに優しく持たれた先程の写真があった。

「んじゃ!オレじゃあ期待には答えられなかったけどさ!ほかにもっといい奴いるよ!!
───────────────またいつか!!」

なにか用事でもあるのか、彼女は半ば急ぎ足でその場を去っていく。
時折振り返りながら手を振る…マーガレットの姿が見えなくなるまでその姿を数回繰り返して。
少女はとあるやりとりで泣きっ面こそ見せたもののそれから暫くは無邪気な笑顔であった。

──この写真のように、また会える日はいつかくるだろうか。面倒くさくはあったが、あんな風にはしゃげたのは久々であった。
…もう一度、こんなくだらない話をしたい。…と、今になって高天原いずもは感じていたのだった。


//半ば強引ですが頃合かな?と感じたので〆、です!途中遅れてすみません!ありがとうございました!
470 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/14(火) 23:52:52.93 ID:2s/tvcoc0
>>462
「まあ、これでも一応《精鋭》なもので」

教え込まれてきた数々の技術や情報、その中には当然他組織の主要メンバーの、知られている範囲ではあるがその経歴、能力なども入っている。あくまで噂レベルの話だが、目の前の老人のそれは余りにも印象が強すぎた。

「経験は重要、か……その身に積み重ねてきた経験を相手にするのもまたいい」

はぁ、と溜息を吐いて、対照的に活力を取り戻した様な老人に苦笑する。
生涯現役、などというのはよく聞く話ではあるが、もしや彼もその類ではなかろうか。

「まぁ、貴方なら分かるよね。歴史の縮図みたいに組織、派閥で争ってきた魔術師には、共通の『特異点』が出来た。それによって動くのは、表の世界だけじゃない」

そう、魔術師達も動くだろう。派閥などに縛られていては、対抗するにしろ、協力するにしろ、無関心を貫くにしろ、その影響力は分散し、弱体化する。

「まずは情報共有から。まぁ、計画は秘密だけどいつかは学園都市内にそれが出来る酒場、っていうかカフェみたいなのが出来ないかななんて上とは話してるよ」

そして彼女は、最後に最も率直で、最も正解に近いと思う回答を提出した。

「まぁ、こんな殺伐とした裏社会で、私は純粋で居たいの。学園都市も、魔術組織も、そして表の軍隊も……」

そこで引き合いに出した結論は──

「それを追うために全て敵に回すシナリオも含めて、私の想像は止まらない」

──彼女自身が全てをひっくるめた《特異点》となるデッドエンドだ。

「中身はただの女子高生だからさ、まぁ適当な戯言だと思って聞き流しといてよ」

そう断って、しみじみとした雰囲気で言う。それは何処か世界を達観しているかのような印象を持っている。視線の先には夜の星空。輝くそれは、人口の光によって少し曇って見えた。

「……世の中、平和にならないかなぁ?」

そう言って老人の顔を見る少女の表情は、どこか悲しげな、そして諦観を含むような苦笑いだった。
471 :山城莉音 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/14(火) 23:58:00.66 ID:SPFZpet1o
>>468

「……あのさ、おっさん」

繁華街を我が物顔で歩き続ける知暁の背後からそんな声が聞こえてきた。
そちらに視線を向けたなら学生服に身を包んだ青年の姿があった。
夜の繁華街には似つかわしくない学生服であったが彼の右腕に嵌められた風紀委員の腕章だけで彼が何故此処に居るのかの証明になっていた。

「酔っ払うなとは言わねぇけど、一応此処は学生の街だからさ
 あと……それなんだけど」

今し方外されたばかりのフルフェイスのヘルメットを小脇に抱え、青年は困り顔で彼の腰を見つめている。
異質な雰囲気を放つ……刀。
それが本物であろうと偽物であろうとアクセサリーというには少しばかり派手であり乱暴過ぎる。

「模造刀だよな?
 だとしても酔っ払いが持つには少し危ないぜ、預からせてもらっても良いか?」

腕の腕章を強調するように知暁の目前に差し出すと、彼の進行方向を遮ろうと歩み寄っていく。
472 :星乃マーガレット ◆Nh0l8MYZR2 [sage]:2015/07/14(火) 23:59:00.81 ID:pxTcu6kUo
>>469

「…言っとくけど、あんまり諦めたつもりは無いんだからねッ!?
アンタは逃がさないわよ、イズム!!」

と、またわがままなことをのたまうと、ふっと笑いかけて、その場を見送る。
もう夜も更けた、うかうかしてると美容時間も過ぎそうだ、と慌てて帰り支度を始める。
いずもという少女の、日光にも似た暖かさに、微笑みがもれた。

何気なく、鞄から電話を取ってみる。

「…マネージャー!!明日から仕事張り切っていくわよ!!
明日事務所に来る子のリスト、今日中に仕上げたらメールで送りなさい!!良いわね!?」

そんな風変わりな会話は、夜の町にしんしんと響く。
ハイヒールの音も、付いてくるように騒ぎ立てた。

この後は、すこしは退屈しなさそうだと笑った。

//いずもさーん!!!!!!!!!ありがとうございました!!
473 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/15(水) 00:12:31.39 ID:PqkBZ5kgO
>>471
「あぁ…————? 」

背後からの声に振り返れば、其処には学生らしき青年の姿があった。
くわえた煙草の灰が落ち、丁度自らのズボンの太ももにかかり、それに舌打ちしながら払って言葉を続ける。

「出会い頭に言うてくれるやんけ坊主……酔っ払っても誰彼構わず絡んだりせえへんから安心してくれや、な?」

淀んだ瞳の男はそう言って、軽い感じではあったがすまない、という風に片手を上げて応える。
だが、継いだ言葉には否定の色を強く示した。

「模造刀ぉ?あー、これか……悪いな、これは渡されへんわ。これ俺の商売道具やねん。」

そう答えてるうちに進行方向を塞がれ、対峙する形になるも、濁ったままの瞳は変わらず、青年の姿を写しているのかいないのかわからない。
重苦しい空気が辺りを包み、繁華街を行き交う人々はいつしか人だかりとなり、喧嘩か何だ何だと野次馬の壁を形成していく。

男は野次馬たちに向かって声を荒げるわけでもなく、声音は軽いままにいなすように。

「あーもう、見てみぃ、お前がそんなけったいな声の掛け方するから野次馬だらけやんけ……別に喧嘩ちゃいますからー、気にせんといてくださいねー?ごめんなさいねー」

そして、青年だけに届くような声の大きさで言葉を投げる。

「ほんで……学生でもない俺に何の用事や、風紀委員さん」

少し威圧するような雰囲気は、上から押さえつけるようなもの。
474 :山城莉音 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/15(水) 00:24:46.18 ID:cTyImWWuo
>>473

「悪い悪い、アンタがどうかしたって話じゃないんだけどな
 一応俺も仕事って事で勘弁してくれよ」

知暁の戦法に回り込むと頭上から迫るような威圧感に頬を引き攣らせながらも形を竦めた。

「いやこれは此処だけって話じゃなくて日本だったら何処だってそういうの腰にぶら下げちゃ駄目なんだぜ
 日本に侍がいたのってもう百年単位で前なんだからさ」

そうでなくともこの街には『異常』が溢れている。
もし模造刀だったとしてもそれに何かの効力を加える異能なら莉音にも簡単に思いつく程度には。
学生ではないと目の前の男は言うが彼の年格好からなら『能力者』である可能性は否定出来ない所だ。

「預かるのが駄目なら飲み歩く前にその腰のをどっかに仕舞っとこうぜ
 そうすればアンタも荷物が減って楽、俺も仕事が済んで両方ハッピーだろ?」

好きな場所までアイツで送るから、と彼が指差す先には大型のバイクが停車してあった。
サイドカーの付けられた銀のフォルムがネオンに照らされてキラキラと輝いている。

475 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/15(水) 00:28:31.88 ID:6DdvMWkr0
>>470
「酒場か。うむ、それはよい考えだ。交流の場というのはいつも必要なもの……」

問題は、もう酒を飲むような歳ではないという事だが、と、冗談混じりに付け加える。
彼は、彼女の言葉に軒並み同調の意を示している様だ。
そこに魔術師以外の者が介入してくるという不安はあるが、いずれ明らかになる事だろう。

そして彼は、彼女の何か悟った様な表情を見て、口を開く。

「……若いうちから人生を見据えるのはよい事だ。……だが、お前は少々煮詰め過ぎているな」

若くから力を持っていると、常に不安がつきまとう。他者に利用されるうちに、社会の闇にも触れる機会が多くなり、余計な事を案ずるようになる。
彼女の考えと直面する問題、それは決して"余計な事"ではない。だが、彼女がそれを案ずるには、まだ早すぎる。これは、説教のようなものだ。彼女と同じく、力を持った者の。

「学生の本分は、学業にはげむこと……まあ、わしが言えた事ではないが……学生なら学生らしく、そのようなくだらぬ事を考えず、暮らしておればよいのだ」

これは何も、彼女の実力を見くびって発言しているわけではない。
若いうちからそのような事を考えていると、いずれはそれに押しつぶされてしまうだろう。それに対する心配だった。

「……これは何もお前だけの問題ではないのだ。そのような難しい問題はだな、ガイアよ。お前のような次に羽ばたくべき世代ではなく、われわれのような、もはや過ぎた世代が請け負うべきなのだ」

彼もまた、空を見上げる。星々は都市に掻き消されつつあるが、それでも抗うように輝き続けている。
彼は改めて視線を戻して、言った。

「……若いうちから、重く考えるのはよせ、ということだ。ただの年寄りの説教……頭の片隅にでも、置いておくがよい」
476 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/15(水) 00:38:04.50 ID:PqkBZ5kgO
>>474
「ほーん、お前も仕事かいな、まぁ……そんならしゃーないわな、悪いな口悪ぅ言うて」

そう言ってまた片手を上げるかと思えば、何と小さく頭を下げる男。悪いやつ、では無いようではある。

「まぁ……"こんなもん"ぶら下げてたら怖いんはわかるけどやな……お前もわかるやろ?この街はこんなもんより怖い力持ってる奴なんてそんじょそこらで買いもんしてんねんで?」

「そら見た目には怖い言うても、わけ分からん力持ってる奴よりめっちゃマシやわ。そやろ?」

と、正当防衛にも似た正論を言って煙草を地面に落として踏み消す。
足を退けて、火種が消えたのを確認すると、改めて拾い上げてゴミ箱へ起用に投げ入れ、ダメ押しとばかりに付け加える。

「俺も何だかんだ言うてるけど護身用みたいなもんや、変な奴にも絡まれへんし……ま、兄ちゃんには絡まれてしもたけどな!」

カラカラ笑うと、指を差された先を見る。

「うっわ何やあれめっちゃ渋いやん!何々、あれに乗っけて送ってくれんのん?」

テンションが上がったように声音は高く、表情は綻ぶ。瞳は依然として曇ったような濁ったようなままだったが。

「じゃあ家まで送ってもらおかなー!ちょっと入り組んだ場所やけど、あれやったら入れるやろしな!兄ちゃんすまんな!ありがとう!」

言うが早いか、男はずかずかと大型バイクまで近付いて、それをマジマジと眺めながら、ほーん、とか、へぇー、とか声を上げつつ感動しているようだ。
何ぶん、こんな豪華なバイクを間近で見る事なんてあまりない。
477 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/15(水) 00:50:40.73 ID:mMrSky5w0
>>475
「それを言えば私もお酒飲めないんだけどね……ここ日本だし」

フランスなら飲めるんだけど、と付け足す。どうにも国の垣根というのは人の認識との差異を生み出しやすく、うっかりしていると法に触れてしまうことがある。

ふとマーカスが零した声に、少女は溜息を吐く。それは相手に向けてではなく、嫌という程分かっている自分に対しての物だ。

「あぁ、うん……よく言われる。ちょっと歪だね、発想はただの女の子なくせに、置かれてる状況も持ってる力も違う……」

老人のお節介、しかし経験に裏打ちされたであろうその言葉は、不思議でもなく当然の結果として、少女の心へと響く。

「……はぁ、まさかそんな道徳的な説教を《騎士》様に言われるとはねぇ……私もそろそろヤバイかも?」

しかし直ぐに気分を持ち直したのか、少女は皮肉交じりに言う。

「まぁ、分かったよ……丸投げするつもりはないけどね……取り敢えず長い物には巻かれておく。特に未だ現役の老騎士様なんかにはね」

星空はやはり、煌々と煌めいていて。
その光は、"現実"に抗う何者かの様に感じられた。

「さて、と」

少女は踵を返して、右手を上に掲げる。
不意の行動だが、少女は振り返りながら笑った。

「じゃあ、最後に──」

とびきりの、輝くような笑みで。

「──お手合わせ願います大先輩様ッ!!」

右腕に纏った長さ5mという巨大な闇の──しかも炎の大剣を。
因みに当然の如くフェイントである。纏っている炎に込められた魔翌力は非殺傷性。しかも少しでも硬質な物体に触れれば連鎖的に闇が全て弾けてしまうという脆いとすら言えない代物である。

しかし、これを"手合わせ"の起点にするには、どちらにとっても十分足る物かもしれない。
478 :山城莉音 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/15(水) 00:53:35.40 ID:cTyImWWuo
>>476

「あ、あぁ……わかってくれたようで何より」

急に変わった知暁の態度に拍子抜け、と言った様子で目を丸くした。
人の良さよりも何よりも不気味さを先に感じたのは莉音の臆病さからか、それとも別の何かのせいなのか。

「乗っけるって言ってもサイドカーになるけど良いよな
 本当に入り組んだ場所だってんなら、コイツは外さねぇと行けねぇけど」

大型バイク、GSXR1000に近づく知暁に続くように彼の横につくとサイドカーの中に収まっていた彼の荷物らしきリュックを肩に背負う。
サイドカーの中には何故か妙に可愛らしい猫のプリントの入ったクッションや丸められた寝袋が搭載されているが人一人が乗るには充分なスペースを有していた。

「結構揺れるし、クッション使ったほうが良いぜ」

フルフェイスのヘルメットとライダーグローブを身につけた青年が一回頷くとバイクへと跨った。

「んで、お客さん何処まで?
 安心安全、山城タクシーは学園都市内だったら無料だぜ?」
479 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/15(水) 01:03:12.03 ID:PqkBZ5kgO
>>478
「行ける行ける!多少狭くても余裕やろ!」

アバウトな事を言いながら、一言「んじゃ、失礼しますー」と断ってサイドカーへ乗り込む。しかし、クッションなどは使わないようだ。

「こんな可愛げあるもん尻に敷けるかいな!申し訳ないわ!」

らしい。
そして、山城タクシーの運転手へ場所を告げる。
その場所は繁華街を抜けたオフィス街で、夜半の今は殆ど明かりも灯っていないような場所だ。
詳しい行き先を意外と丁寧に説明した後、男は「俺の事務所兼自宅や!頼むで運ちゃん!」と笑ってみせる。

腰に下げた刀は、バイクを傷つけないように外してから抱えるようにして持っていた。
傍から見れば、完全に連行されていく不審者である。
バイクが走り始めれば、男ははしゃいだように声を上げる。


「うひゃー!サイドカーなんて初めて乗ったわ!すっごいなぁ!なんか怖いけどええやんか!」

煩いかもしれないが、初めてなのだから致し方なし。
声も表情もはしゃぎ喜んでいるものではあるが、瞳は一切笑ってなど居なかった。

なにせ、行き先は ————暁屋という、男の仕事先だから。
480 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/15(水) 01:19:06.62 ID:6DdvMWkr0
>>477
「……」

彼女の冗談交じりの皮肉は、意外にも彼の心に重く刺さったようだ。
自分でも思うが、このような説教をするようになるとは、本格的に老いを重ねたということか。
しかし寄る年波には勝てないという言葉もある。ありとあらゆる攻撃は防げても、人の定めには抗えないのだ。

彼はしみじみとした思いで、同意した様子の彼女に返事を返す。

「うむ、それでよい。まだお前はわしの娘と同じくらいの幼気な少女、そのような未熟者に未来を任せては━━━━」

彼はついつい増長した様子でそこまで口にしかけて、何かの"予感"に身体が支配されるのを感じた。
身体が言っている。彼は脳が命令するよりも早く、自らの"魔術"を発動した。

『ARMOREDMALE』

彼の胸の光のエンブレムが輝きを放ち、直後に深い紫のオーラが彼の身体を包み込む。
そして、彼が"騎士"と呼ばれた所以……深紫に彩られた魔力の重鎧は、彼女の繰り出した炎の大剣を、その身で受け止めていた。

不意打ちに対するその反応速度は、見てからというよりも、本能が彼の身体を動かしていた。
戦いの中に身を置いてきた彼の本能が、彼の身体を老いてなお奮い立たせたのだ。
炎は消える。彼は久々によみがえる戦いの感覚に、また上気した声で、鎧の下から言った。

「フフ……面白い!このヴァシーリー・マーカス、老いたとて若者に遅れは取らぬわ!」

相手から仕掛けてきたのだ。手合わせ、という事ならば問題はあるまい。
彼は服の下から一本の手斧を取り出し、空中の少女に投げ付ける。

まずは小手調べ。ハチェットは回転しながら彼女へと向かう。
その投げの精度は、老人とは思えぬ正確さであった。
481 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/15(水) 01:38:18.49 ID:mMrSky5w0
>>480
言いかけた口を閉じ、老人は視認する前にどういう訳か「反応」して見せた。これが経験の違いなのか、自分などとは厚みが段違いである。
だが、負けるつもりはない。何なら老いぼれに引導を渡すぐらいでないと、恐らく……。

「あれが"要塞"か……《反迎刀》!!」

少女は弾けた大剣の闇を再収束させ、圧縮。一本の刀を生み出して手斧を迎え撃つ。その刀は、物体に触れると弾けるという闇の特性を生かし……。

「喰らえっ!」

手斧に当たると同時にその表面に闇を散布。更に一部の闇が爆発して手斧を丁度反射する様に弾き飛ばした。
一直線に老人へと進む闇の手斧を追うように、少女も闇を踏みしめて老人へと肉薄する。

(私の火力であの鎧を抜くのは……いやいやいや、無理でしょ、普通に考えて)

感じる魔翌力は自分の物よりも格下……であるはずなのだが、そもそもの「存在」の大きさが、比べ物になっていない気がしてならなかった。

(それじゃあ機動戦から始めるかなぁ……)

少女は四肢に闇を生み出すと、それを炎の中の四肢の様に揺らめかせ、体へと纏った。

「アクロバットってのはよく言った話だよね!」

装術《黒鎧》……四肢に纏った闇を利用した壁の生成と爆発による作用で三次元機動を人の身で体現する技である。その速度は普通ならば目に追えるようなものでは無い……普通ならば。

少女は再び空中に飛び上がると、老人の真上に陣取った。

「《拡散射撃(スプレッド)》!!」

そして、闇の炎による爆発で打ち出された、これまた闇の弾丸が雨のように降り注いだ。
482 :山城莉音 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/15(水) 02:07:45.12 ID:cTyImWWuo
>>479

「ん、了解……この位置ならすぐ着くぜ」

伝えたれた地名に莉音は頭の中で地図を展開する。
夜間には人気のない地域であるのは理解できてていた。
一瞬の躊躇、だがそれを悟られないようにバイクのエンジンに火を入れる。

「あー…山城莉音、オフィス街に向かうぜ」

フルフェイスのヘルメットの顎の辺りを小突くように掌底で殴るとカチャリ、と何かが嵌ったような軽い音。
ヘルメット内に彼の声が響くとラジオか何かのような機械音が小さく漏れ出た。
風紀委員の通信だろうか、仕事というのは本当だったらしくこういう街だからこそこういう面にも几帳面に動いているのだろう。

「事務所兼って仕事どんな事やってんの?
 この学園都市で普通の仕事ってんじゃないんだろ?」

荒れるエンジン音、そしてスピードによる風切り音。
それに掻き消されないように大声で知暁に会話を向ける。
そんな会話をしている内にもう目的地は目と鼻の先まで向かっている。

483 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage]:2015/07/15(水) 02:10:02.90 ID:6DdvMWkr0
>>481
闇をまとってはじき返された手斧は、微動だにせずその一連の様子を見ていた彼の鎧にガギンという高い金属音とともに闇もろとも激突し、そのまま地に落ちる。
彼の魔翌力は衰えたとはいえ、その性質自体は変わってはいない。彼の纏う"防護魔翌力"は、未だ全てを防いで退けるに足るもの。
しかし衰えは確実に別の処に響いており、彼の魔術の効力はたったの一分間。しかし所詮は手合わせ、戦闘をやめるには丁度よい時間であろう。
ならばそれまでに、お互い"本気"を出し合うべきだと考える。彼は彼女の動きから、大怪我は与えられないであろうと踏んでいるし、彼女側は言わずもがなであるからだ。

「随分と、多彩な戦い方をするのだな」

彼は自在に刀や剣を生み出す彼女の魔術を、物珍しいように見る。
ただ守り、防ぐ事を追究した彼の魔術とは大違いの代物だ。
だが彼の戦いは、防ぐだけで終わりではない。魔術とは利用するもの。
敵陣に単独で乗り込み、滅茶苦茶に暴れた、あの頃のように。彼は両手を構えた。

「よかろう」

見る間に空間に何かが浮かび上がり、やがてそれは銀に輝く鋭利な大斧を形取って、彼の手に握られていた。

彼は彼女の動きを観察する。見るも凄まじい三次元機動、人の目に捉える事は彼であっても難しい。
これでは自分は攻撃を受けることはないが、自分からも攻撃はできないだろう。
しかし彼は、彼女が攻撃する瞬間、頭上かり闇をばらまかれた事により、彼女の"場所"を認識する。

彼はそこに向けて、勢いよく大斧を投射した。……しかし恐らく、当たってはいないだろう。頭上では、相手に合わせたとしても命中させるのは難しい。

「ぬう……!」

効果はもう少しで途切れてしまう。
彼女にも、彼の魔翌力がガリガリと弱まっていくのを感じられるだろうか。
おそらく次の瞬間が、この小さな戦いの決定打となるだろう。
484 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/15(水) 06:52:34.00 ID:PqkBZ5kgO
>>482
出発する前に横目で見た、通信のような行為。
学園都市ではこのような青年達が治安維持をしているのだと理解するには十分だった。
警察組織として動いているのかもしれないし、もしかすると別働隊として警察と連携を取っているのかもしれないが、今の男にそれ以上を知る術などは未だ無かった。
胸中では、自分の仕事さえ出来ればいい、という至極簡潔な思いしか無かったというのが、実情であるが。

それはさておき、バイクで繁華街を疾走する最中、青年の問に男は同じく掻き消されないように応える。

「俺の仕事かー?ペテン師みたいなもんや!悪霊退治とか、幽霊退治とかなー!一応、これでも儲けてるんやで!こんな街やからな!異様な存在も異様じゃないっちゅーこっちゃ!!あ、その信号過ぎたら左やわ!下道通ったほうが早いできっと!」

素直な返答ではあるものの、信じ難い仕事内容かもしれない。無論、ペテン師とは言ったが嘘は一つもついていない。見た目に反して妙に素直であるようだ。
それもそのはず、学園都市には、ここに住まう人物からの依頼でやって来たのだから。そこから別の仕事を、また別の仕事を、と繰り返している内に、事務所を開くようになり、住み着くようになった。
能力者の溢れるこの街に取り憑かれたように。

「まぁ、隠す事もないけどやな!暁屋っちゅーボロい場所で商売しとんねん!そろそろ着くやろ!」

繁華街を抜け、暫く。
雑居ビルが群れをなす、学生とは中々に無縁な場所の一角を指差すだろう。
その先には、小さな雑居ビルが。ほとんど明かりは消えているが、一つだけ光が灯った階があるのが見えるかもしれない。
その場所こそ、この男の住処。
485 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc :2015/07/15(水) 07:43:37.95 ID:mMrSky5w0
>>483
「……っ!」

投射された大斧を、体を捻りながら横に跳んで回避する。すぐ側を斧の刃が通り過ぎて行き、風切り音が耳元で鳴り響くのが分かった。

「末恐ろしいですね、全く……ならば、こちらも……!」

何処で火が付いてしまったのか、彼女の顔には笑みが浮かんでいた。この戦いを、《騎士》との一騎打ちを、心底楽しんでいるかのような、そんな笑みを。

「全力で……最大火力ッ!」

上に飛び上がり、更に少女は上昇する。そして遥か上空で両腕を上に伸ばし、闇を纏わせて行く。
まるで蛇のような黒い渦が少女を取り巻き、すぐに竜巻の様な魔翌力の奔流が生み出される。
相手の魔翌力から戦いの終わりを感じ取ったのか、これが正真正銘「全力」だった。

「《黒楼──零式》ッ!」

少女の体に集まった闇が一つの棒状の物体を形成し、巨大な一本の槍となる。その穂先は蜃気楼を生み出す程の熱を放っている──が。

(まだ……まだ足りないッ!)

限界を超えて槍を更に圧縮、臨界点を突破しても尚、少女は魔翌力を使った力技で形を維持して、更に小さく、鋭く研ぎ澄まして行く。一本の日本刀を打ち続ける、職人のように。
その様子は、魔翌力を感じられる者ならば容易に分かるだろう──余りにも無茶苦茶だ、と。

「《負式》……」

そして、その槍を持った少女は一直線に老人に向かって突っ込んでいく。その速度は、既に人間が耐え切れる限界にも迫ろうという域にあった。

「《黒槍天》!!」

槍を持ちながら少女は、一直線に、速く、威力だけを求めて、空を突き進む。
486 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/15(水) 12:37:20.56 ID:6DdvMWkr0
>>485
回避された斧を、柄に付いた鎖を手繰り寄せ、すぐさま回収する。
彼女が空中で停止したのを確認したが、彼は手斧を取り出す事はなかった。
彼女の"覚悟"のようなものを感じ取ったからだ。本気の一撃が来る、と。
残り15秒。

「……来い!」

彼は大斧を再び不可視の状態にさせ、大きく手を広げ、ドンと受け止める形を取る。
彼女の本気に対しては、自分もこの魔術で立ち向かおうというのか。

彼は彼女の様子をジッと見ていた。次第に増大していく、濃密な魔力の槍。
魔力は次第に膨れ上がっていくが、槍の質量は変わっていない。あれほどまで圧縮された槍、常人、それどころか並大抵の魔術師でさえも霧になってしまうだろう。
そしてその魔力が途方もない規模となった時……彼に向けて一直線に、その槍を構えて直進して来る。
あまりにも速く、あまりにも強い。彼は雄叫びを上げた。
そして黒き槍は、その深き紫の鎧に激突する。その衝撃は、凄まじい魔力の余波を生んだ。

「………」

黒い霧が晴れた頃にそこに居るのは、魔術が解け、紫のオーラが当たりを待っている、一人の老人だった。
彼の周囲の地面には、切り取られたかのように彼だけを残し、焦土と化している。
彼は、彼女の魔術をその身で防いだのだ。彼は口を開く。

「……すさまじい魔力よ。これが若さ、と言ったところか」

彼はゆっくりと拍手を送る。
もはや自分の魔力は尽きた。今の彼は、ただの一人の老人だった。
彼女の闘いぶりとともに、その力に対しての拍手だった。

「……わしはこの状態ではもう戦えん。ただのしわがれた老人よ。これではお前を楽しませる事もできまい」

彼は終戦の合図を送る。
彼女にもわかるだろう。彼の魔力が、たったこれだけの時間でカラッポになってしまった事が。
487 :五百蔵 和哉 【空気捕食】Level.4 ◆sMIhmWAwY2 [sage saga]:2015/07/15(水) 13:22:50.52 ID:E9YdiYJD0
>>467で再募集します
ゆったりと待っているので、どなたか宜しければ…
488 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/15(水) 18:01:58.27 ID:LpJJAVWHO
>>486
焦土と化した地面と、そこに佇む老人。まるでそこを原点としたかのように広がる破壊の跡の中に少女は居た。
正真正銘、全力の一撃。スピード、威力共に自分が出せる限界点を放出した結果が、今の惨状だった。
そしてその破壊の跡が残っているのは、少女自身も例外ではない。

「はぁ……はぁ……ほんっと、化物かよ……」

自分が放った魔法の反動か、はたまた余波を至近距離で食らった所為か。
どちらにせよそのダメージは、目の前の老人なんかとは比にならない程に大きかった。

「……《負式》なんて捨て身技を実際に打ったのは初めてなんだけど……なんで無傷なのかなぁ、アンタ」

拍手を受けながらも、恨めしそうに少女は老人を睨む。少しでも手加減──《零式》であればまだ追撃も出来るだろうが、今打った技の後ではマトモに体を動かすことも難しそうだった。
あと数十秒もすれば多少は回復するだろうが、戦場における数十秒は途轍もなく長いのである。

「《要塞の騎士》……もう時間は凡そ1分って所ですかね…でもまぁ、確かに噂に聞いた現役の時と変わりない防御力をお持ちのようで……」

[ピーーー]つもりで打った筈なんだけどなぁ、と言いながら、少女は焦土の上に転がった。

「こりゃ、戦い方を間違えれば相手にもならない……経験とか年季のの差って本当にあるんだね」

しかしその顔は笑っていて、寧ろ少女はあの短い戦闘の余韻に浸っている様子だった。
だが、一つ。
先ほどから見て見ぬフリをしている事がある。

「はぁ……そういえば、どうします? この後」

"後始末"などというしょうもない言葉が、少女の脳裏をよぎった。
489 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/15(水) 18:38:09.99 ID:6DdvMWkr0
>>488
「……物騒な事を言うものだ。仮にもバルタザールの人間だろう」

手合わせにしては強過ぎる攻撃に対し、どこか呆れたような態度を見せる。
だが、仕方のない事だ。かつて全てを防いだ魔術というのだから、いざ手合わせして破りたくなるのも、当然というもの。
自分も彼女の身に立っていれば、全霊の攻撃を撃ち込んでいたことだろう。

「ふ……いや、お前は確かに高い才能を持っている。かつてのわし以上の力を手にすることも、あるかもしれんな」

「……しかし、いくらなんでもこれはやり過ぎではないか?」

彼女の言葉に呼応するかのように、彼は辺りを見回す。
彼女の攻撃で、地面一帯が焦土となり、強い魔力の余波が残存している。これは朝までには消えるであろうが……
ただ焦土になっているというだけならまだ、誤魔化すのは簡単だったかもしれない。だが、彼はそれをその身で防いでしまったのだ。
すなわち彼の立っていた方向だけ、綺麗なコンクリート舗装の地面が剥き出しとなっている。これでは人為的なものにしか見えず、明らかに不自然だ。

彼はただ、溜息を吐くしかなかった。

「よかろう……ガイア。こういうどうしようもない時、どうすればいいか。わしの経験を教えてやる……」

次の瞬間、彼はとたんに踵を返し、老人とは思えぬ速さで疾走した。

「……"逃げろ"!」
490 :メルラン=ウォル=ラクトムル [sage]:2015/07/15(水) 19:08:08.01 ID:oLwlp34T0
''魔術師,,
その存在は学園都市では噂程度で未だその存在が確定されていない
しかし魔術師は実在する。そしてその存在は意外とすぐ近くに────


────────────

「あれー?もう終わりー?ちょっと弱すぎない?」

外の光が届かない、そこはまさに別世界と呼ぶべき場所、"路地裏,,
そこにはよっぽどのことが無い限り人が来ることはない。それ故によく良からぬ輩が集まる場所にもなったりする。
そしてそれは今も例外ではない。

『な、なんなんだよクソが…!てめぇみたいな餓鬼に……!』

「あら?まだ戦える力は残ってるのかしら?」

二人のそんな言葉が路地裏に響く。片方は地面に膝をつけ、もう片方は口元に笑みを浮かべながら立ち尽くしている。しかしその身長差は明らかに子供と高校生ぐらい。なのに立っているのは子供の方。だが子供だからといってその実力が明らかに目の前の男よりもずっと上なのは、一目瞭然だった。

『クソが…!ぶっ[ピーーー]…!餓鬼が舐めるなよッ!!』

「ふふっ、いいわ、来なさい♪」

まだ戦える力があったのか、男は立ち上がり殴りかかろうとする。しかし今この状況で男が勝てる見込みが無いことは素人でもわかるだろう。だが男は頭に血が昇りまともな思考すら出来ていない。もし彼を止めるものがいなければ、この場は血に包まれることになるだろう。

//10時頃までですがよろしければ……
491 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/15(水) 19:13:32.05 ID:oLwlp34T0
>>490
//ぬいぐるみを持っている描写を書いていませんでした……


''魔術師,,
その存在は学園都市では噂程度で未だその存在が確定されていない
しかし魔術師は実在する。そしてその存在は意外とすぐ近くに────


────────────

「あれー?もう終わりー?ちょっと弱すぎない?」

外の光が届かない、そこはまさに別世界と呼ぶべき場所、"路地裏,,
そこにはよっぽどのことが無い限り人が来ることはない。それ故によく良からぬ輩が集まる場所にもなったりする。
そしてそれは今も例外ではない。

『な、なんなんだよクソが…!てめぇみたいな餓鬼に……!』

「あら?まだ戦える力は残ってるのかしら?」

二人のそんな言葉が路地裏に響く。片方は地面に膝をつけ、もう片方は口元に笑みを浮かべながら立ち尽くしている。なにやら手にはぬいぐるみらしきものを持っていてその場に不釣り合いなそれがその少女を不気味に見せる。
しかしその身長差は明らかに子供と高校生ぐらい。なのに立っているのは子供の方。だが子供だからといってその実力が明らかに目の前の男よりもずっと上なのは、一目瞭然だった。

『クソが…!ぶっ[ピーーー]…!餓鬼が舐めるなよッ!!』

「ふふっ、いいわ、来なさい♪」

まだ戦える力があったのか、男は立ち上がり殴りかかろうとする。しかし今この状況で男が勝てる見込みが無いことは素人でもわかるだろう。だが男は頭に血が昇りまともな思考すら出来ていない。もし彼を止めるものがいなければ、この場は血に包まれることになるだろう。
492 :山城莉音 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/15(水) 19:37:59.34 ID:cTyImWWuo
>>484
「そりゃペテン師っていうより霊能者とか―――」

―――今噂の魔術師ってやつじゃねぇの?

知暁の軽口に合わせるように莉音も軽い口調でそう答える。
今学園都市で実しやかに語られる『魔術師』と言う存在。
昔話から飛び出してきたようなそんな名前だが超能力者がいるこの街にそういう都市伝説が蔓延っているのも面白い。
そう、この男山城莉音は考える。
誰しもが特別に憧れる、ありえないと想ってもそういう空想に身を委ねるのはよくある話だ。

「商売にまで俺たちは口出ししないけどそれ本当に儲かんのかよ
 この街で悪霊がー、とか言っても『超能力だろ』の一言で済んじまいそうなもんだけど」

小さな雑居ビルの前で砂煙を巻き上げながら大型バイクは走行を終えた。
地面に軽くタイヤ痕が残るような乱雑な止め方だったら青年は特に気にした様子もなくバイクから離れヘルメットを引き抜く。
雑踏ビルの一角から漏れ出る人工的な光以外には灯りが存在しないような錯覚があるほどの静けさ。
人の一人も知暁と莉音以外には存在しないのかと思えるほどだ。

「到着したぜ、頼むから酒は程々にな」

493 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/15(水) 19:51:09.30 ID:PqkBZ5kgO
>>492
「霊能力者…まぁ、そんなもんやなぁ!ほんでもわからん奴にはわからんからな!ペテン師みたいなもんや!はっはっは!それに魔術師なんてかっこいいもんちゃうで!俺ぁ退魔師っちゅーやつや!ちょい強引な退魔やけどな!」

そこまで言うと、タイヤ跡が残るほどにブレーキをかけられるものだから、男は前のめりになり、自らの持っている刀を額にぶつけ、「いったぁ!おま、ほんま優しくブレーキせぇよ!!」と叫ぶ。

閑話休題。

到着した、男の住まう雑居ビルの前。
酒は程々に、と窘められた男はくつくつと笑ってバツが悪そうに頭をかき、それに同意する。

「そやなぁ…いやぁ、悪かったな!送ってもろて!酔いもぼつぼつ覚めてきたし、ツーリングのお陰で悪酔いもせえへんかったわ、ありがとう!」

そこまで言うと、あっさりと別れるように歩みを進め始めるが…数歩進んだところでふと、青年に振り返ってから意味深な言葉を投げる。
それは、学園都市に移り住む前に、"クライアント"から警告された言葉が脳裏をよぎったから。

『学園都市で魔術師だとか、退魔師だとか言わないでくださいよ、あそこの能力者のほとんどは、そういうのを"排除"しようとしてくる可能性が高いですから』

胸中で、(あっちゃぁ…おもっくそ言ってもうてるしな…)と後悔しているものの、あまり気にしていない風でもある。
だが、それは自分が気にしていないだけで、相手は違うかもしれない。だからこその、意味深な言葉。

「兄ちゃんは、魔術師とか能力者とか、どない思ってる?」

きちり、という音を響かせながら、刀を握りしめる男。淀んだ瞳からは何も読み取れない。
ただただ深淵のような黒が色を湛えるだけ。
風紀委員。
治安維持に乗り出している者達の集まり。下手をすればこの青年も能力者であるかもしれない。
それを加味したうえで、男は刀を腰に固定しないまま、ただだらりと腕を下げ、握りしめるだけ。
494 :山城莉音 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/15(水) 20:24:34.70 ID:cTyImWWuo
>>493

知暁から投げられた問。
『魔術師とか能力者とか、どない思ってる?』
その言葉に莉音は一瞬の硬直を伴い、自身の右手を見つめた。

「俺は……風紀委員とか言ってるけど能力とかなくてさ
 俺にとっちゃ能力者も、噂に聞く魔術師も同じに思えるよ」

この手の中にはない『特別』
それを持つものだというならそれはどういう違いがあるのか、彼には理解がつかない。

「だから俺の区別は其処じゃない
 能力者だって魔術師だって拳銃持った馬鹿だって……
 俺が好きなこの街を、俺の『特別』であるこの街にとって善か悪かってだけだ」

―――だから聞く、と莉音は息を呑み彼の刀へと視線を向ける。
ジリジリと両足から体重を大地に込め、ヘルメットを抱えていない左手は拳を作る。

「………アンタはこの街にとって悪なのか?」
495 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/15(水) 20:41:36.80 ID:WqpKxEFQo
夕暮れ時、学生の多くが帰路につく時間帯。当然、ここ薄暗い路地裏なんかには人の姿は見られなかった。一人の少年を除いて

(能力と魔術、一目で区別するのは難しいと思うのだがな……どうにも勘の鋭い奴には分かってしまうのかもな……)

少年の名は、天地煉夜。名の有る魔術師の家系、天地家の一人息子である。そんな彼が、こんな路地裏で何をしているのかというと。

「鍛練する場所にも気を使わねばな……」

どうやら魔術の鍛練をしに来たようだ。その事を小さく呟くと、煉夜は腕に巻き付けていたチェーンを伸ばし、降り下ろした。

「はっ!」

金属音と空気を裂く音が辺りに響く。次に、金属が地面にぶつかる音。煉夜は、チェーンを地面に叩きつけたのだ。
暫く同じことを繰り返した後、小休止と地面に腰を下ろす。そして、ふと考えた。いくら人気の無い路地裏とは言え、少し音を立てすぎてしまったなと。今の音で、誰か来なければいいが。もしまた勘の鋭い者に出会えば、今度こそ魔術師だと言うことを隠し通せないかもしれない。
不安感を覚える煉夜だが、果たして――?
496 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/15(水) 21:15:19.61 ID:PqkBZ5kgO
>>494
「悪、か…そやなぁ……」

わざとらしい逡巡。刀を握る右手はそのままに、左手は悩んでいるように頭をかく。
そして、導き出されただらだらと長い言い訳。

「俺のやってる商売は、きっとええことやで?ほら、悪霊とか幽霊とか怖いー!って言うてる人のこと助けてるわけやん?そら、被害とか出ぇへんように気ぃ使うし、アフターケアも万全のつもりや?」

「俺の…俺とか、商売とか?そこらへんに助けを求めてくれる人には、俺は絶対的な善やし、絶対的な正義や。当たり前やん、クライアントやもん。それは守らんとあかんやろ?」


ここまで言ってから、男は自分のこめかみをとん、とん、と二度左手の人差し指で小突き、「俺も頭使わんとあかん商売しとるから、そこらへんは、なぁ?」と自分に言い聞かせるように呟く。
無論、言い訳じみて聞こえるが、これは本音であり男は正しいと思っているからこそ、そう行動している。
しかし、次いで紡ぎ出された蜘蛛の糸のような言葉は、あまりにも残酷で、あまりにも無情で、無常で、霧状に広がって夜のオフィス街、その一角で対峙する二人の間に張り付く。

「けど、この"街"にとって正義かどうかって聞かれたら ————





————————————自分勝手してる分、俺は絶対的な悪や」

そう、青年に言い放って、申し訳なさそうに笑いかける。

「悪いなぁ、兄ちゃん……俺は、兄ちゃんみたいにこの街が好きなわけでもあれへんし、この街の事なんてどうでもええねん。"怨み"さえ晴らせれば、それでええねん」

「あ、別に俺の怨みではないで?いや、うーん……俺の怨み、でもあるんやけど、難しいねんなぁ……どう言うたらええかな…」

言葉を選んでいるように見えて、青年を怒らせないように気を使っているようにも見える表情は、段々と暗く、夜の街に溶けていくように無表情に変わっていき、最後には、何を考えているか一切わからない、能面のようなものに。

「まぁ、"俺の家族の怨み晴らすため"に、この街を選んだだけや、ただ、それだけやで」

そう言うと、男はその場で煙草を取り出し、火を灯して一口だけ吸うと、すぐに指で弾いて捨てる。
紫煙を吐き出しながら、何を思ったか、その場で刀を ————ガチャンと地面に突き立て、能面のような顔のまま、青年に言葉だけ申し訳なさそうに謝る。

「悪いなぁ、兄ちゃん……バイクで送ってもろたのに、こないなしけた話してもうて…ほんじゃ、まぁ…




————……ここで死んでくれや」



轟、と一陣の湿り気を帯びた風がビルとビルの間を駆け抜ける。
首にまとわりつくような、そんな風は首に張り付くように不快。
瞬間、どこからともなく呪詛の経がそこかしこから響き始め、男の周りの光だけが地面に吸い込まれていくように消えていく。

明らかに何かが、来る。
497 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc :2015/07/15(水) 22:04:06.21 ID:YI7Dx7Z9O
>>489
「気にしたら負けだよ……っと!」

魔翌力が回復したのか、少女はすぐに立ち上がる。異常なまでの回復スピードだが、それは訓練の賜物である。
継続戦闘力を高めるために、魔翌力の回復量というのは重要な位置にあるのだから、ある種必然的とも言えるが。

「いや、まぁ力の使い方について本当に色々と考えきゃいけない気はしてます。えぇ、今さっきから」

焦土と化した地面と、老人が防いだ痕跡。どう足掻いても隠しきれる気がしない。
やはり力の使い方はよく考えるべきだと言うことだ。

「はぁ……?」

目の前でマーカスが勿体振る様に言いながら、踵を返す。

「まさか……」

そして、老人とは思えないほどの身体能力で一目散に逃げた!

「えっ? いやいやいやいやいや!!? 現実逃避ってはっやぁぁああ!?」

後を追うようにして少女も走る。しかしどういう訳だろう、消耗しているとはいえピッチピチの若者が老人と徒競走のごとく並走し、しかもやや老人に遅れを取っているのだ。

そのまま少女は老人の後を追い、しかも若干引き離されながら路地裏から消えていった……。

//ここら辺で〆ですかね?
498 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage]:2015/07/15(水) 22:12:06.89 ID:6DdvMWkr0
>>497
//そうですね。長期にわたりありがとうございました!
499 :山城莉音 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/15(水) 22:15:54.90 ID:cTyImWWuo
>>496

莉音の身を縛る見えない糸のような緊張感。
だがそれを引き裂くように青年は声を上げる。
肺にこれでもかという程に息を吸い込み、全身を震わせる獅子の咆哮を―――。

「だったら、アンタは俺の敵だ!」

それは明確な決別の言葉だった。
其処からの行動は迅速、手首だけを捻るように振るいフルフェイスのヘルメットを投擲。
正確な狙いで能面めいた知暁の顔面へと緩い弧を描きながら迫り行く。
当たった所で痛くも痒くもないだろう、そんな勢いのない投擲。
だが一瞬でもこれに意識が無かってくれれば其れでよかった。

「……俺は特別にはなれない、でも其れを守ることなら出来るかもしれない!」

震える脚に力を込める、目の前の敵は何かの準備を始めたことは感覚と経験から掴めていた。
能力を持たないものからすれば一見無意味な行動が『彼ら』にとっては絶大な意味を持つことがある。
刀で斬りかからずそれを突き立てるように構えたのもそうであると莉音の勘が彼に告げていた。

「―――だから動け、よッ!」

地面を蹴る、自身が持ち得る最速で。
加速を重ね硬く硬く握った拳を振り、そして―――


……逃げた。青年は男の目の前から走り去る。

何もかも振り捨てて背後の確認など考えずただ只管に逃げ惑う。
目的地は自身のバイク、轟々と大型のエンジンがまだ唸りを上げたまま主人の帰りを待つ愛機。

迫り来るかもしれない知暁の追撃などなりふり構わず、山城莉音は縋るようにそのバイクのハンドルへと飛び掴んと、跳ねた。
500 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/15(水) 22:47:45.31 ID:mAVvtzTtO
>>499
ガコ、という鈍い音が男の鼻骨を伝い頭の中を掻き回す。
それと同時にバイクへ走っていく青年が見えたが、それよりも先に痛みが男の行動を途切らせる。

「っ……やってくれるやんけクソ坊主…」

次に男が目を向けた時には、すでに相手はバイクの目前。
何をしてももう遅い。逃げられてしまうのは明白だろう。
ぽたりぽたりと鼻から生温い血が滴るのも気にせず、再度刀を鞘のまま突き立てる。

「誰が逃がすかいな、死んでもらわな困んねん…




なぁ、袂(まい) ————」

その声に呼応して、闇が瞬時に収束し、呪詛の声が大きくなる。
ぽたり、ぽたり、と、今度は男の鼻から滴る朱ではなく、どす黒く、生臭く、醜悪な"首だけ"が男の前に姿を表す。
ごぇ。ごぽ。そんな音を響かせる生首が、悪夢のように。

『お、゛に゛ぃ…ざ…ま……』

男はただ目を閉じ、その声を聞きたくないという風に顔を思い切り歪ませる。

『怨め゛しぃ…憎…ぃ゛……ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁああぁぁぁああああ……』

刹那、袂と呼ばれたその生首は、糸で吊るされているかの如く浮いていただけと思われたその生首は、一直線に青年へ飛翔する。
狙いは足首か、脹脛か。ただ一直線に、頬の裂けた口を開いて、血を流しながら鋭利な牙のようになった犬歯をぬめらせ、飛翔する。
だが、すでに青年はバイク跨る直前。間に合うかどうか、ギリギリだ。
もし間に合わなければ、そのまま糸が切れたように生首は地面に激突してしまうだろう。
間に合えば ————悪夢の始まりとなってしまう。
501 :山城莉音 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/16(木) 00:03:26.07 ID:JHEUzIVao
>>500
//すみません、雑談の方見てもらえますか?
502 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/07/16(木) 00:18:18.86 ID:9cztUXEeo
>>499>>500

パン、と乾いた短い音が響く。

それは極度の緊張状態であった双方の中ほどで木霊し、闇に溶けるまでの間長々と残り続けた。
いや、もしかしたらそれぞれの耳に焼き付いてしまったのかもしれない。
この空間でなる事が余りにも不自然で、しかしこの場に居る物であれば余りにも聴き慣れていたから。

小さな火薬が弾けそれによって何かが飛ぶ、独特の炸裂音。
一般の人間であればその音で一瞬にして竦みあがり、仮に聞き慣れていた人間であったとしても緊張状態に入らざるを得ない魔性の音。
それでいて軽々と命を奪う音。

銃声だ。

音の方向に一人の男が立っていた。
肌と容姿から程若い事が分かるが、その体躯は大男と言って差支えが無い男だ、縦に長いのは無論の事ながら横にも猛々しさを感じる程に太い。
シャツに押し込められた筋肉はその形を浮かび上がらせるほどに分厚く、正しく筋肉の鎧に身を包んだ……いや、肉の武装の塊と言っても過言ではない程だった。

「ナイスな判断だ山城女史、良くもまあ通信機のスイッチをオンにしてくれた。
 おかげでこんなに早く助けに来れたぞ、仕事が熱心な俺を褒めるが良いぞ。」

そう言う男子生徒は張り付けたような賺した表情のまま口元を大きく吊り上げた。
唇の赤で作られた三日月は頬の筋肉を押し上げさぞ愉快そうな表情を作る。
作られた笑顔から感じられる雰囲気はその表情と――――は正反対の『良く面倒事を作ってくれた』とか『無駄な仕事を増やしてくれてありがとう』とかスパイスと呼ぶには余りにも露骨すぎる皮肉と怠惰が見て取れる。

そんな男の胸元にはきらりと薄明りを跳ね返す金の証が鎮座していた。
この街に居れば誰しもが知って居るであろう者達の証、風紀委員に所属する者のみ与えられる特別なバッチだ。
そこからスッと視線を動かせはその手には大型の拳銃が握られていた。

いや、正確には握られて等いなかった。

ただ人差し指と親指が立てられたゴツゴツトした大きな手がそこにあるだけなのだ、しかしながら大型の拳銃の姿が垣間見える。
銃は手の中に握られている訳ではない、掌そのものが銃と重なっている様な、奇怪にして異常な映像と現象がそこにはあった。
しっかりと手が指を認識出来るが故に『掌自体が拳銃に変化した』のとは明らかに違う。
しいて言葉にするのであれば『手が拳銃を再現した』とか『手と拳銃と言う存在が同時に存在している』とか……歯切れの悪い言葉でしか表し様が無い。

「とりあえず格好付けで適当に撃っちゃったけど後で説明を求むぜ、山城女史。」

嘯くように軽く舌を回す風紀委員【椋梨仙】は山城と男との間に割り込む様に位置を取る。

しかしその指先は最初に差し向けた先から一寸とも銃口を動かしていない、その延長戦に存在するのは何らかの方法で生み出された生首。
先程の銃声の元凶がこの指であるならば、同じく先に放たれた銃弾が行き着く地点は当然―――――。
503 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/16(木) 00:48:16.06 ID:9Sam7xjnO
>>502
乾いた銃声に思わず顔を跳ね上げる男。そこには、猛々しい体躯をした大男が、青年を助けに来た、とでもいおうか。いや、そうなのだろう。
その証拠に、青年はバイクに跨って颯爽とエンジン音を響かせながらビルとビルの隙間を縫っていくように闇夜へ姿を消してしまう。

追従し、銃声の先にいた血を滴らした首は、獲物を失って地面へ水音をさせながら激突してしまう。
ごしゃ、という耳障りな音、瞬間、どちゃりという果実が弾けたかのような音と、真っ黒な飛沫が上がる。

首が、ただ"銃を模した手"に吹き飛ばされたのだ。

最愛にして最怨を灯す、我が首が。

「っぐ……ぅ…痛っ…!!!」

その首の影響をもろに受けてか、男は後頭部を抑え込み、その場に蹲ってしまう。
蹲る男、頭を半分吹き飛ばされた生首、その異様な光景にも、きっとあの大男は怯みすらしないのだろう。

「か、かっこええ所で助けにくるやんけ……あんたも兄ちゃんのお友達かいな……ええやろ…こんなもん見られたとこで生きて帰ってもらっても困るしな…」

蹲ったまま、頭を抑えたまま、男は顔だけを相手に向けて吐き捨てる。
ずる、ずるり、ずずず、ずるり、ずるり。
痛みから逃れるように男の元へと這いずる生首、それが男の足元まで来たところで、男は悲しい顔をしながら半分以上吹き飛び、脳漿が垂れるそれを撫でる。
気味の悪い音も、何もかもが、悲しいといった風に。

「あぁ…こんなになってしもて……痛かったやろ……」

『お゛に、さ……い、いい、いた…ぃ゛ぃ゛……ぁ、ぁぁ……』

「そうか、そうやな……少し、休んだらええわ、な…?」

————ごしゃ。
そんな音を響かせ、男はあろうことか、地面に突き立てた刀を持ち上げ、生首を側頭から思い切り潰す。
そうすれば、金属をすり合わせたかのような音は失せ、ただただ呪詛の経が響くだけ。

「……はぁ…"家族総出で"相手せなあかんか…ほんま、けったいな奴らやであんたらは……


————港(みなと)」


声音に呼応、現れるは、朱色の着物を纏う、腐った肉のこびり付く骨。
コンクリートの地面であるというのに、それは腐食したかのように黒ずみ、かたかたずるりと、妙な音とともにやってくる。

「どんな原理か知らんけど、飛び等具くらいじゃ俺の"姉貴"は止まらんで……さっさといねや…なぁ…!?」

男はその場から、決して動かんぞ、という意思を表すように、どしゃりとあぐらをかく。
以前として刀は地面に突き立てられたまま。

朱色の着物を纏う腐った骨は、ゆったりと、本当にゆったりとした速度で大男へ迫っていく。
その間、地面へ落ちたヘルメットを踏んでしまうが ————べぎっ、といともたやすく潰れてしまう。

『あな、怨めし……怨めし…宵醒める、前、に……そなたの、臓物、を…ささげ、…』

ぽたり、ぽたり、蛆を落としながら、先ほどの生首よりも鮮明な声音で、意味不明な言葉をつぶやきながら迫っていく。
動きはゆっくりで、一直線。

大男は、どう動くか。
504 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/07/16(木) 01:16:26.47 ID:9cztUXEeo
>>503
「おえっ、ちょっとスプラッター過ぎたかもしれん」

自らが放った弾丸ではあるが予想以上に……いや、面白いように生首を吹き飛ばした光景に仙は口元を隠した。
その動きが余りに演技染みていて、それでいて如何にも見たくないものを見たと言いたげな視線を這いずる生首擬きへと向ける。

「確かに銃で頭打ち抜かれたら痛いだろうな、やった身としては何だがやられたいとは微塵も思わない」

這いずるそれに向けて追撃をする様子はない、言葉通り己が手で吹き飛ばしてしまった生首に、怨霊に同情しているのか。
それとももう真面に動かせないと判断して、あえて見世物にして心中で嘲笑っているのか――――仙の表情からはとても伺い知れないであろう。

そうして達観している様な、傍観している様な、事が終わるまで待っていた仙の前に新たに男が出したのは明らかな死骸。
その見目から条件反射的に腐臭を感じたのか口元を覆っていた指を鼻まで覆い隠す様に伸ばす。

「おいおい……今度はゾンビかよ、お化け屋敷から飛び出してきた訳じゃねえんだぞ」

そう言いながら椋梨は両の手の人差し指と中指を合わせる様に立て、それぞれを互い違いに重ね合わせた。
男が魔術師であれば分かるであろう、これは『刀印』と呼ばれる護法の印、即ち陰陽術等の魔術に用いられる手の形である。

「―――――――。」

そうしてから椋梨は何かを口早に言い始めた。
まさかの陰陽術……ではない、能力者である椋梨は当然魔術に属するそれを扱う事など出来やしない。
むしろ魔術師である男からしてみればそれが呪文とは比べる事すらも烏滸がましい、ただ適当にそれっぽい言葉を束ねただけの物だと分かるであろう。
しいて例えるであれば念仏であろうか、無論神も仏も知った事ではない余所者が適当に言っているだけの代物だ。
それこそ「ナンマイダナンマイダ」と墓の前で唱える事に似ている、そうするにしても両の掌を合わせた拝みの姿勢で唱えるべきであり、刀印とは何の関連性も無い。

椋梨はその間違った拝みの姿勢から動こうとしない、ましてやそれ以上のアクションを取ろうともしない。
神に祈れば悪霊が消えるとでも言いたいのか、それとも奇跡が起きて陰陽術が使えるなどと本当に思っているのか、それとも―――――。
505 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/16(木) 01:45:48.91 ID:qGpa3ws6O
>>504
どんどんと精神が蝕まれ、どんどんと感情が傾れ込み、男の頭は倒錯しそうになっていく。
奇妙な音と共に行進を続ける朱色の後ろ姿、それだけを見ればまだ"あれ"が生きているんじゃないかと思える程に。

「あー………さっさと終わらして帰って寝るで俺ぁ……胸糞悪いわほんま……!!」

ぎりりと奥歯を軋ませ、恨めしいという感情を無理矢理抑え込む。
本来なら止まってもいいはずの鼻からの出血も、収まらないままだ。口で小さく行きを吐き出し続け、ぎゅっと目を閉じる。

大男の姿は…姉の背で見えないまま。
しかし、ふと、歩みが止まる。

「あぁ?なん、や……どないした湊……はよ行かんか……」

ふらり、と一瞬バランスを崩したように横に逸れる骸。それが逸れれば、線上には大男の姿が。
気味の悪い悪夢のような呪詛が響くこの場所で、何をしているのかと思えば ————刀印を結び、早口に経を唱えているではないか。
見様見真似ではあるものの、男は思い切り舌打ちをしてしまう。

「っちぃ……よぉそんなめんどい事思い付きよるわクソ坊主がっ……」

それが何を意味しているか。





『私に……経を……向け、るで……ない……やめ……ろ……ぉぁぁ……!』

「湊っ!!やめ——————— 」




『 ———— あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ!!!!!!』


「ぐぅっ……ぁっ………!?」

プシッ、と小さな音がする。
決壊したように男の鼻からの出血が増えたのだ。
何かを思い出したか、何かを彷彿としたか、骸は鈍い動きのままではあったが、両腕を振り回しながら鋭利な爪で壁や地面を抉る、抉る、抉る。
迫りながら、両手を己の腐った血で塗れさせながら、大男へと向かっていく。
その距離はどんどんと縮んで行き、骸の両の腕が切り裂かんと切迫するほどまでになる。
このまま回避しなければ ————彼は骸に右肩口から袈裟がけに切り裂かれることとなるだろう。
愚鈍な動きではあるが、当たってしまえば、目も当てられない事になるのは必至。

男も男で、出血も痛みも酷くなっている様子。
このまま骸を操り続けるのは危うい。
506 :山城莉音 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/16(木) 01:59:06.65 ID:JHEUzIVao
>>504-505

「早すぎるぜ、ヒーロー!
 ちょっとぐらいヒロインの足掻きを見てくれても良かっただろ!」

大威力のエンジンの爆発的加速に引き摺られるように飛び出した流線型の銀がドリフト煙を伴って反転。
知暁と仙より数m程後方で轟音を伴って、随分と余裕なさ気に微笑んだ。
自分の名前を皮肉ったような女史という彼の言葉に合わせた軽口も本当になんとか捻り出したようだ。

「……仙、どうする?」

目の前で繰り広げられる『能力を使用した戦い』に莉音は次の行動をほぼ決定しながらも仙に問う。
この場で莉音に出来る事などほとんど存在しない。それは仙も理解しているところだろう。

だから選択肢は、莉音1人で逃げるのか、2人で逃げるのか―――

「―――なんなら地獄まで相乗りするぜ」

無能力者であっても、無力であっても
特別な力なんてこれっぽっちもなかったとしても……2人で戦うのか、3つに1つだった。
507 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/07/16(木) 02:18:58.24 ID:9cztUXEeo
>>505
呪文に意味など無い、経の内で知って居る部分など「ぎゃーてーぎゃーてー」と騒ぎ立てる部分がある程度だ。
無論この詠唱に意味のない事等分かり切っている仙からして見れば、
【湊】と呼ばれた怨霊が操作していた男のコントロールを離れ勝手に発狂して勝手に暴れ回って勝手に近づいてくるだけと言う状況もすぐに理解できた。

「―――――ありがとよ!」

暴虐を振るいながら近づいてくる躯に対して仙は吐き捨てる様に短く感謝の言葉を口にする。
適当で無意味な経を本物だと信じてくれた事に対する礼ではない、発狂した事こそ想定外であったが、大方この状況が生み出されるであろう事を予想してやったことだ。
この状況とは何か。

発狂した事であろうか、否。

暴れ回る事であろうか、否。

もっと単純に、ただただ無防備にも『間合い』に入ってくれた事への感謝に他ならない。

刀印とは右の手を刀に見立てる結びを指す、左手に札を持った陰陽師が右手を動き回らせる光景を思い浮かべて貰えれば分かりやすいだろうか。
つまり言ってしまえば刀印とは右の手だけで成立する、では重ねた左手は何の意味を持つのか。
左の手は右手――――刀に被せる様に覆う、刀に被せる物、即ち鞘を意味する物に他ならない。

椋梨仙は魔術も、呪術も、陰陽術も扱う事は出来やしない、故に刀印の護法であるとか厄除けであるとかそんな効果は最初から期待してなんて居ない。
なのでこの行為に於いて重要なのはシンプルに一点のみ。

その形が『刀と鞘を表現している』と言う一点に尽きる。

瞬時、両の手の形をそのままに椋梨は己の左腰に溜める様な位置へと滑らせる。
腰深く、そして重心を保ったままに足の力を抜く、恰も踏みしめる様なその姿勢から感じる紛れもない『静』の流れ。

しかしながら己の間合いに入れるという事は必然躯の間合いに仙が存在して居ると言う証明でもある。
故に構えに入り一呼吸置いた直後に、愚鈍でこそあれ触れる物見な抉り裂く躯の剛腕は迫った。

同時―――――白銀の閃光が仙から放たれる。

より正確に言えば溜めていた仙の腕からその白銀は現れた、軌跡は弧を描くように、凡そ人の指からは想像しえない輝きを以って。

何故刀印であったのか、むしろ何故鞘が必要であったのか。
刀だけでは到底繰り出せず、刀と鞘が揃って初めて生み出される業がこの世には存在する。
曲がりなりにも刀を用いていた男であれば、仙が何を模倣し、何を行い、何を再現したのかが理解できるはずだ。

椋梨仙は刀と鞘とした己の体を用い、在ろう事か神速と呼ばれる業の領域に踏み込んできたのだ。
相手の攻撃に対し後の先を取ることが出来る紛れも無く最速の剣技、幾多の剣士たちが用い達人が昇華した業。

『抜刀術』にて、躯を薙ぎ払わんとしたのだ。
508 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/07/16(木) 02:28:54.06 ID:9cztUXEeo
>>506
「やだやだ、相乗りするなら女の子の方が良いに決まってるだろ」

いくらお前の名前が女みたいでも、と仙は続ける。
『静』から『動』へ、『0』から『100』への一瞬の刹那に放たれた斬撃と共にこの言葉は放たれた。
声が仕草が表情が明確な逃走拒否、戦闘続行をありありと示していた。

同時に彼の硬く隆起する著しく発達した背筋が、巨大な背中が雄弁に物語る。
『守ってやる』と。
509 :山城莉音 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/16(木) 03:10:25.07 ID:JHEUzIVao
>>508

「わかった、帰り歩きは辛いだろうしな付き合ってやるか」

ハンドルの裏、本来なら存在しない機構を弄るとカシャンと何かが外れるような音が響く。
サイドカーを蹴り飛ばせばそれはなんとも簡単にバイクの車体から分裂。
本来のフォルムを取り戻したバイクに跨ったまま、仙の後方で彼に守られるように戦場を見つめ続ける。
前線で何が出来る訳でもない、それは痛い程に理解が出来る。
だからこそタイミングを間違えてはいけない、少ない『活躍の場』を間違えないように……。

「出来る事は少ないけど、な?」

戦う意志を示す仙の意思をねじ曲げても戦況が動けば尻尾を巻いて逃げる必要があるかもしれない。
こちらが優位に立った時、敵が何かしらの逃亡手段を使用するかもしれない。
大した頭ではないが知識が知恵が必要になるかもしれない。

だから間違えないように、弱いからこそ弱者だからこそ余裕と思考だけは切らさないように今の状況を頭の中で反芻する。

風紀委員内で……いや、莉音が知りうる能力者の中でも仙の能力は幅の広い応用の効く能力だ。
だからこそ、敵の情報が多ければ多いほど相性の面で優位に立つことが出来る。
実際に現在の状況が其れだろう、彼の使う刀印が悪霊を思わせる敵の能力を相性の面で苦しめているように見えた。

「……そういえばその男、霊能者を名乗っていたな
 怨みを晴らすとか悪霊が云々ってな。仙それっぽいのは他にないのか!」
510 :Reika=Wilson ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/16(木) 06:52:38.10 ID:qGpa3ws6O
>>506 >>507

いつのまに戻ってきたか、青年の声が耳をつく。
それに応える大男の声が、やけに明るく、男の鼓膜を叩く。
それに反応を示すことすら、今の男には難しかった。出血は止まらず、頭は怨み辛みで支配されかけ、何かを考えようとすれば、憎い、悔しい、復讐を、そんな言葉たちに遮られてしまう。
ある意味、純粋な怨みだけがその場にあったからこそ、相手の行動に対して口が聞けた、とも言えようか。
刀印を結んでいた相手、それが ————抜かれる。


「……アホか、トウシロが…」

その言葉の意味は、身を持って知ってもらうことしかできないだろう。

骸が切り裂かれる。振り回された両腕が止まる。
一閃されたそれは、確かに骸を切り裂いた。
腐り落ちそうだった肉は散り、着物は落ち、醜悪な体躯が顕となる。
普通の人間であれば数瞬置いて地面に伏すのだろう。だが、骸は違う。

一度死んだ者に、刀で切り裂かれた人間に、二度目の死を恐れることがあろうことか。

『……捧ぐ、臓……物…な、ど………もう、ありま、せ、ぬ………あぁ、怨めし、や…無念、や………』

上半身は下半身に別れを告げ、ずるりと上半身がずれ、地面へ落ちる。
だが、未だ動きを止めぬ骸は、上半身のみとなっても右片腕を振るい、切りかからんと大男の太腿に腕が迫るr。

「トウシロさんが見様見真似したとこで、いっぺん死んだもんがビビるわけないやろ……ぅ…っく………かっこつけんのもしまいにしとけ、クソ坊主ども…さっさと…死んどけや………!!」

それだけ吐き捨てると、男は刀を握らぬ左手で血を拭う。
生首を撫でた後だからか、死臭が鼻腔に突き刺さるが、それすらも気にすることができなかった。
ただ、ただただ、怨みを、恨みを、無念を、無情を晴らすためだけに、執念だけで意識を保っていた。
511 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/16(木) 07:08:16.63 ID:qGpa3ws6O
>>510
/名前欄ミスです
512 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/16(木) 19:41:27.35 ID:teTVDnCJ0
今どき珍しくもないセルフサービスのファストフード店で、少年は琥珀色の眼を爛々とメニューを見上げていた。
歳の頃はおおよそ高校生あたりといったところだろうか、夏にも負けずくすんだ赤のパーカーを着て、マフラーを巻いている。
その隙間から覗く鮮やかな赤の髪は、町中にあってはいささか耳目を惹きそうだ。
一方ではやけに印象の薄い顔つきは小柄な身体と併せて、漠然と頼りなさげな印象を与えるものであるかもしれない。
彼は典型的なおのぼりさんといった態できょろきょろと落ち着きなく店内を、次いで手元に店員の持ってきた盆を見、ぼそりと呟く。

「おお、これがハンバーガー……。」

これが世間知らずな箱入り娘の独白であったのならばいくらか可愛げもあったろう。
しかし自分がそれに能わないだろうことは百も承知している。だから声は潜めてひっそりと。
かように少年は思慮深くことを運ぶ技術に長けていた。
予想外だったのは思っていたより少々大声になってしまったことくらいのものだ。フードの後ろに架空の視線がぶつかるのを感じ、頬を掻く。

ともあれ少年は、ダブルチーズバーガーとカルピスを盆に歩みを進める。
内心の動揺を押し殺し、九牛の一毛たる空席を目指して心もち速足で――ぐきり。
いきなり足をくじいてしまったのは、単なる不注意によるところであった。瞬間、ひやりとこめかみを伝う汗、
宙を舞うハンバーガー。そしてカルピス。

「っ、……やばい」

数秒後。いくつかの食物が着地する騒音が過ぎ去ったのち、少年は突然の災難に見舞われた不幸な座席を振り返った。
そこが幸いにして空席であることに、精いっぱい期待をしながら。
513 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/16(木) 19:42:09.63 ID:D4PkbUxGo
路地裏は酷く冷え切っていた。肌寒い、なんてほどじゃなく。そしてその中にいる少年は、右手にツツジの花を持っていた。
とは言っても少年は、そのようなものに感慨を寄せるような殊勝な心を持った人間では無かったし、事実それを握る手は、花を大事にしようと言う意思は感じられなかった。
そしてその少年の前に、一人の壮年の女が蹲っていた。高級そうなスーツに身を包んだ女だったが、然し彼女は必至の形相で、口元を何度も何度も引っ掻いていた。
何か、呻き声のような物を漏らしてはいるが、声を挙げることは無かった。その表情は恐怖と焦燥に染め上げられていると言うのに。
何度も何度も自分の口元に爪を立てるだけで、然しその爪はその女の唇を傷付けることも無かった。

「液体窒素で凍らせた花は、粉々に砕く事が出来る……って、知ってるか。ちょっとした理科の実験だ」
「小さい頃にテレビで見たんだ、一度な。小さい頃だからよく分かんなかったがな、感動したぜ。花が砕け散る様には」

少年が握ったツツジの花を握りつぶすと、それは粉々になって少年の足下へと落ちていった。
落ちた花びらに、その柔軟性は失われていた。ひらりひらりと舞う事も無ければ、何か小さく、然し硬質な音を響かせて、アスファルトの上へと"破片が広がっていった"。
少年は当然のような顔をしていた。女はそれを視界に入れる余裕も無く口元に爪を立て続けていたが、しかしその動きは本当に、ゆっくりとしたものになっていた。

「液体窒素が植物が含む水分を完全に凍結させ、細胞を破壊する事で、だとか、何とかだ」
「詳しいことは俺にもよく分かんねぇ。だが、一つだけ言えることがある」

ようやく少年はツツジの花から目線を外して、その女を見下ろした。
その色は、何の感情も映さないものだった。然しそれは少年にとっては絶対だった。殺す対象に対して、正の感情を抱いたことなんて無いし、彼は"殺せれば"それで良かった。
其処にある対象がどんな背景をしていて、どんな理由で殺されるのか。そして今現在、どんな思いで死んでいくのか。全てどうでもよかった。何処までも自己中心的であるとも言えた。


「低温ってのは暴力だ。それだけであらゆるものを殺すことができる、究極の暴力なんだ」

その女が幾度かの痙攣の後、完全に動きを止めると、路地裏に充満していた、酷く不気味な低温は、余りにもあっさりとその場から退いていった。
女の口元からは、少ない量ではあるが、水が流れ出ていた。少年はそれにしゃがみ込んで、一度だけ手を翳し。それから、スーツの内側から携帯電話を取り出した。
514 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/16(木) 19:42:56.35 ID:teTVDnCJ0
今どき珍しくもないセルフサービスのファストフード店で、少年は琥珀色の眼を爛々とメニューを見上げていた。
歳の頃はおおよそ高校生あたりといったところだろうか、夏にも負けずくすんだ赤のパーカーを着て、マフラーを巻いている。
その隙間から覗く鮮やかな赤の髪は、町中にあってはいささか耳目を惹きそうだ。
一方ではやけに印象の薄い顔つきは小柄な身体と併せて、漠然と頼りなさげな印象を与えるものであるかもしれない。
彼は典型的なおのぼりさんといった態できょろきょろと落ち着きなく店内を、次いで手元に店員の持ってきた盆を見、ぼそりと呟く。

「おお、これがハンバーガー……。」

これが世間知らずな箱入り娘の独白であったのならばいくらか可愛げもあったろう。
しかし自分がそれに能わないだろうことは百も承知している。だから声は潜めてひっそりと。
かように少年は思慮深くことを運ぶ技術に長けていた。
予想外だったのは思っていたより少々大声になってしまったことくらいのものだ。フードの後ろに架空の視線がぶつかるのを感じ、頬を掻く。

ともあれ少年は、ダブルチーズバーガーとカルピスを盆に歩みを進める。
内心の動揺を押し殺し、九牛の一毛たる空席を目指して心もち速足で――ぐきり。
いきなり足をくじいてしまったのは、単なる不注意によるところであった。瞬間、ひやりとこめかみを伝う汗、
宙を舞うハンバーガー。そしてカルピス。

「っ、……やばい」

数秒後。いくつかの食物が着地する騒音が過ぎ去ったのち、少年は突然の災難に見舞われた不幸な座席を振り返った。
そこが幸いにして空席であることに、精いっぱい期待をしながら。
515 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/16(木) 20:09:20.84 ID:teTVDnCJ0
>>512 >>514は取り消します。お騒がせしました!

>>513
寒いのは苦手だった。敢えて言うならば涼しいのも苦手だ。それでも少年が路地裏を辿るのを止めなかったのは、余りにも寒すぎたせいだ。
換言するなら好奇心と一言で済む。――ともあれ彼は、路地裏を歩き続け、あたり一面のコンクリートを新鮮に面白がりながら、そこにたどり着いた。
まず目に入ったのは携帯電話の画面の光。次いで死体、流れ出る水。くらりとくる後悔と共に、元通りの気温を知覚する。

「っ、あ、あー……」

眩暈に襲われたかのようにぐらりと身体を揺らし、壁に手を突く。
そうして少年は、引き攣った笑みを浮かべた。

「ちょっと、タイミング悪かったみたいですかね」

白々しく、場違いに口角を吊り上げてみる。ここで「うわあ」なんて叫んで背を向けたなら、もう命は無いだろうという気がしたのだ。
お気に入りのテレビドラマではそういう展開がよくあった。焦っているときほどくだらないことを思い出す。
どうしよう。
両手を挙げ、じりじりと後退してみる。熊と鉢合わせた時はこれが一番だとお気に入りのニュースが特集していた。

少年の前に姿を見せたのは、歳の頃は高校生程度、赤いパーカーとマフラーを纏った少年であった。
印象の浅い顔立ちと相反した赤い髪、特徴といえばそのくらいの、一般人然とした人間である。
516 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/07/16(木) 20:18:35.18 ID:9cztUXEeo
>>509>>510
何かを切断した感触はこの刀……指にあった。
人を切ると言う感覚は久しく感じていなかったが、脂に触れる柔らかな感触であるとか骨を断つ抵抗であるとかそう言った物を確かに感じた。
しいて言葉を上げるとすれば記憶に残る人の感触とは差異があった事だが、何分相手はゾンビだ、それも些か仕方のない事であろう。
と、感じてしまった、不覚にも『そう』感じてしまったのだ。

(銃が効かないってのはこういう事かい!!)

両断されたはずの躯はそれでも尚暴虐を振るう事を止めなかった、いや最初から止まる事を知らなかったと言うべきなのだろうか。
男が口にした『飛び道具等では止まらない』その意味を履き違えていたのだ、銃弾程度の大きさでは損傷にならないと言う意味だとばかり考えていた。
だからこそ相手を懐に入れての接近戦を挑んだ訳だがその回答こそ間違っていた。
この瞬間に情報を正しく訂正するならばこうであろうか、銃弾『が』効かないのではない、銃弾『も』効かない、と。

「哈―――――――――――――!!!」

凡そ人の物とは思えない異音、椋梨が喉を震わせ出した声は劈く様な怪音となり天高くまで木霊する。
同時、彼は腰に当てていた左腕を振り上げ、あろう事か低く据えていた左脛表面を地に付けたのだ。
転瞬、既に半身を失った躯の一撃は振り下ろされる、肌が裂ける。血が散る。肉が飛ぶ。
躯は、男は、「浅い」と直感したはずだ、だがその思索よりも強く強く思考を引き付ける奇妙な光景がその眼前に広がっていた。
血も肉も分かる、その一撃によって大地を砕き塵が舞う事も分かる、だがしかし、そうだとしても、『羽根が舞う』事などありはしないと。
白昼夢か幻覚か、茶と肌色の縞模様の羽根達は地に触れる事無く消えて行く、存在の名残りを惜しむかのように。
羽根達の大元はその巨翼を広げ身を翻し、ばさりと風切の羽音を響かせながら先程の位置から後方へとその足を爪を休ませた。

「『――――咄嗟に使っちまった』」

男の口が開く、熟した麦よりも色強く真鍮よりも鮮やかな巨大な黄色の嘴も開く。
男がゆらりと身を揺らす、夜闇に紛れる四又の刃を潜めた齢重ねた大木の様な足が感触を確かめる様にアスファルトを裂きながら踏み慣らす。
椋梨は片足で立っていた、深く折り曲げた片足に先ほど裂かれたもう片足をまるで胡坐をかく様に。
乗せた足に触れるまで倒された体の上半から宛ら翼が如く大きく広がる左右の腕、そしてそれと一体化しているかの様に瞳へとその存在を主張する映像。

果たしてズブの素人が居合いの体勢を作り出せる物なのか、答えは否、少なくとも重心の置き方、力の抜き方は何らかの術を知らなければ再現することは難しい。
そして椋梨仙の著しく発達した筋肉、中でも広背筋はある動作を繰り返し繰り返し行って来た者独特の付き方。
それは『引く』、伸ばした腕を引き寄せると言う単純な動作であるがそんな事をする者達は一握りしか存在しない。
即ち、打ち出した拳を素早く引き戻す事を生業とする者達―――――『格闘家』のそれしかないのだ。

椋梨は小さくまとまっているはずなのにその場に重複して存在している巨大な狩人の双眼が男と躯を見下ろすと言う情景。
先程までの銃や刀が子供の頃のごっこ遊びの延長線だとすればこれは火を見るよりも明らかな戦闘体勢、人の領域を軽々と踏み越える『人でありながら人でない』と言う矛盾すらも踏みつぶす能力の使用法。
この構えは数百の年月を重ねた大陸の拳法にして鷹の象形拳である『鷹爪拳』、故にここに存在するのは人間等では決してない、対面するは人食らう大鷹だ。

「『……おっさん、それの事姉貴って言ってたな
 もう一度家族が殺されたくなかったらさっさと消えな、加減しないぜ』」

大鷹はその慧眼に獲物を捕らえたまま嘴を開き人の声で語る、後ろに居る山城は男を霊能力者だとかなんとか言っていた。
生憎だが御経だとか呪文だとかお祓いだとかは知らないし出来る訳もない、しかしながら『霊でも殺せそうな存在』は知って居る。
だが人を[ピーーー]というのはどうにも寝付きが……いや悪霊だからこそ余計に寝付きが悪いではないか、それに足の傷は深くも無ければ浅いなんて事は決して無い。
何せ『存在を重ねている』だけの生身が故に傷が治る訳ではないし、五体が欠ければ形を作る事も難しくなる、ここからは短期決戦で加減など出来ないだろう。
後ろには山城も居る―――、これが最後の警鐘だった。
517 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/16(木) 20:27:56.36 ID:D4PkbUxGo
>>515
好奇心猫を殺す、というのはイギリスのことわざだ。彼がこれからどうなるかは分からないが、彼は経った今、災難に巻き込まれた、という意味で言えば。
彼は間違いなくそれに当てはまった。好奇心に先にいたのは、少なくとも。"関われば面倒なことになるのは確定している"人間だった。
腹立たしげに携帯電話を閉じた。ばちっ、という音と共に、周囲の温度がまた一気に低温へと引き下げられた。

「……一度ならず、二度だ」

現れた彼の選択は。余りに過剰な反応をせず、かと言ってその状況に対して慣れていない、というものを醸し出す彼の姿は、一見してみれば賢明であった。
それだけで、その髪だけを除けば一般人然とした彼のことを無害で、無関係な人間である、ということを証明して見せる。
東郷国充にもそれは分かった。だが、東郷は用心深い人間だった。先に起こった出来事が、理由の一つ。もう一つは―――――― 彼自身の性格だ。
突然に、転がる死体の頭を思い切り蹴り飛ばした。それは嫌な音をこの路地裏に短く響かせて、その頭を可笑しな角度に捻じ曲げた。


「―――――――――――― 二度目だ! この短い間隔に二回、俺のことを邪魔しやがる人間が現れるのは!!!!」


東郷は、例えば熊のように。生き残るための戦いをしている訳では無い。
それでは何か、と言われれば、熊と人間の間の大きな知能の差として、細かい感情がある。単刀直入に言おう、東郷国充は余りにもよく"キレ"る。
彼がその場に現れた、ただそれだけの理由で東郷国充の心は揺さぶられた。それは一気に激情となって、東郷の頭に血を巡らせた。
東郷の足下で、"ぱきり"、という音がするだろう。それに僅かでも視線を向けてみれば―――――――――――― 白い冷気がそこに湧きたって、"凍結"していた。
そしてその凍結は、彼の下へと奔っていく。音を立てながら、急速に。そしてそれに触れたのならば、彼の足を"凍結させて、そこに縫い付ける"だろう。

「なんだ、なんだってんだよ、糞が!! 俺が無能だとでも言いてえのか、テメェらはよぉ!!!」
「ふざけやがって、クソッ!!! 俺が今まで何人の人間を始末してきたと思ってやがんだ、ああそうだ、雑作もねぇんだよ、人の一人や二人殺すのなんてよぉ!!!!!」

―――――――――――― 路地裏に現れた彼の何が悪かったのかは、彼自身が言った通り、"タイミングが悪かった"。
彼が此処に来るのが、ほんの僅かでも遅ければ。途中で靴紐がほどけて、それを結び直す時間があったのならば。
彼にとっての、そして東郷国充にとっての不幸など、起こり得なかっただろう。
518 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/16(木) 20:38:00.00 ID:PcEopu9Mo
夕暮れ時、学生の多くが帰路につく時間帯。当然、ここ薄暗い路地裏なんかには人の姿は見られなかった。一人の少年を除いて

(能力と魔術、一目で区別するのは難しいと思うのだがな……どうにも勘の鋭い奴には分かってしまうのかもな……)

少年の名は、天地煉夜。名の有る魔術師の家系、天地家の一人息子である。そんな彼が、こんな路地裏で何をしているのかというと。

「鍛練する場所にも気を使わねばな……」

どうやら魔術の鍛練をしに来たようだ。その事を小さく呟くと、煉夜は腕に巻き付けていたチェーンを伸ばし、降り下ろした。

「はっ!」

金属音と空気を裂く音が辺りに響く。次に、金属が地面にぶつかる音。煉夜は、チェーンを地面に叩きつけたのだ。
暫く同じことを繰り返した後、小休止と地面に腰を下ろす。そして、ふと考えた。いくら人気の無い路地裏とは言え、少し音を立てすぎてしまったなと。今の音で、誰か来なければいいが。もしまた勘の鋭い者に出会えば、今度こそ魔術師だと言うことを隠し通せないかもしれない。
不安感を覚える煉夜だが、果たして――?

/昨日の使い回しですが
519 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/16(木) 20:42:26.10 ID:DyI/W7duO
>>516
只者ではない?否、それは人ならざる者。明らかに人智を超えた動きをする大男に対し、巻き上がる風に男は目を見開く。これが、能力者か、と。
己が生きる四半世紀に、そのような存在は皆無だった。鼻から垂れる血は徐々に引き、止まった頃には、両断された我が姉は、ただの肉塊と化していた。

もう一度家族を殺されたくなければ、さっさと失せろ。

失せろ、失せろときたものだ。どちらが先に現れたのかなど明々白々であるというのに、男に失せろ、と。

男の脳髄に染み渡る怨み、怒り、それらは悪霊の影響か、否か。
だが、確かなことは、男の意識が段々と朦朧とし、金属をすり合わせたかのように不気味な声になっている、ということ。
意識を持っていかれていないだけでも、十二分に人間という枠から外れている。

「もういっぺん、殺されたく、無かったら、か……クソ坊主、知った口聞いてくれるやんけ…なぁ……何で家族は殺されたと思うよ?



この国のためなんやぞ!!!!!くそったれが!!!!!」


叫ぶや否や、男はあぐらをかいた状態のまま、刀をしゃん、と持ち上げて宙へ投げる。
空中で鞘走りしたそれは、刀身を顕にし、呪詛の彫られた刃を光らせる。

ざん、と、地面へ突き刺さった瞬間、オフィス街を申し訳程度に照らしていた街頭がちらつきはじめ、暗雲が立ち込め始める。
どんどんと嫌な空気を出すそれらすべてが、突き刺さった刀に一転集中したかと思えば ————アスファルトをごしゃりと裂き、綺麗な手が刃をつかむ。

ずず、ずずず、と裂き現れる、死んだ者とは到底思えない和装の女。
全貌が明らかになれば、刀をかちゃりと持ち上げ、一振り。ひゅ、という空を裂く音は、一切の無駄がない動きを体現せしめる。

「この国のために死んで、まだ迫害しよるか……あぁ、鬱陶しい…あぁ、怨めしいっちゅう気分がよぉわかるわ……」

「さっさと殺せ ———— ————紗代」

そこまで言った瞬間の出来事だった。
ぷつん、と男の意識が途切れ、その場にどさりと仰向けに倒れ込んでしまう。
それを予感していたかのように紗代と呼ばれた女は刀を持ったままに走り、男の元へと馳せ参じると、それを守るようにして、大男を睨みつける。
だが、現世に身体を齎した男がいない今、その行動はただ悲しく、ただ無意味に。
程なく、女も意識が途切れたように項垂れるも、最後に、刀を男のそばに突き立て、握りしめて覆いかぶさるように膝をついたまま、この世をもう一度去った。



その場に残るのは、脳漿をぶち撒けた生首と、胴体が別れた腐った骸と、綺麗な身体のままに、男を守るようにして膝をついた女と、鼻から、口から、なんと涙までもが血にまみれた、男。

凄惨過ぎるその場所を支配するのは、人間の生み出した残酷さと、悲しさと、無情と怨みだけとなる。

大男も、バイクにまたがる青年も、男の事を自由にできるだろう。
活かすも[ピーーー]も、自由である。
気を失ってはいるものの、まだ、その息はあるのだから。
520 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/16(木) 20:54:15.47 ID:teTVDnCJ0
>>517
男と眼が合う。背筋がひやりと冷えるのを感じ、数泊遅れて、それが再び気温が低下したことによるのだと分かった。
ごくりと唾を飲む。いったいこれから何が起きるというのか。ちらと死体に視線を送り……泣きたくなるのを堪える。
頭が捻じれた。

「ひ、――――ッ」

冴え冴えとした空気に満たされた路地裏の一角ににわかに亀裂が走る。
前触れのない激情のまえには愛想笑いも雲散霧消を余儀なくされて、彼には力なくその場にへたり込む他ない。
息苦しさ、寒さ、恐怖、がんじがらめにされた彼には抗いようもなく、その足は氷の腕に釘づけられる。
ひとの殺意に触れるのは初めてで、――それは、自分にっとってひどく堪えるものであると、少年は知ることになった。

「あっ、あの、俺は、――俺は、別に、邪魔をしようとか、そんなことは、思ってなくて、ですね」

足が冷たく、痛かった。かえってそれは少年に正気を取り戻させてくれたようにも感じられたが、強がりとも知れない。
もつれる舌を何とか動かし、懸命に言葉を紡ぐ。自分にできるのはせいぜいそのくらいだろうと、そういう思いもあった。

「と、とりあえず、落ち着きましょ。……ね?」

定まらない視線を強いて固定し、……そして目撃する。コンクリート造りの建物の上に、月がのぼっている。
はっと思い出すことがあった。それが自分の能力についてだと知れば、この男はどんな反応を示すだろう。
ろくに使う機会もなかった、埃をかぶった能力。
自分に出来るだろうか?
内心の動揺と恐怖、板挟みの状態で震えながら、少年はじっと男を見上げた。
521 :城ヶ崎 斬久 ◆UZZXtTVUYY [sage]:2015/07/16(木) 21:26:34.59 ID:Bw00VCZK0
>>518
――――コツリ、コツリ
同じく、何かがコンクリートの地面を叩く音。
が、金属を力一杯にぶつける少年の音に比して、こちらはどちらかというとやや軽やかで、また規則性を有していた。

茜色に染まり上がる表の都市――そして、それに先だって宵闇の洗礼を受ける裏路地の奥底。
その恐ろしさについて聊かでも見識が有れば、「悪魔の住処」とでも人は形容しそうな、都市の闇。
そこから響き渡る音。コツリ、コツリ。愈々それは音を増していく。

同時、そんな早すぎた闇夜の奥から一つの輪郭が浮かび上がってきた。
音の増大と比例するように浮き彫りになってくるそれは、どうやら人のものであるらしい。
不安の感情を抱く少年にとり、それはあまり歓迎できる類のものでないことは容易に想像がつく。

ピタリ、やがて足音の静止と共に全貌を露わにした、"彼"の全身。
髪色は黒、かつ長めに垂らされた無数の刃物のような前髪の合間からは、何色をも映さぬサングラスが見える。
また上半身には灰色のドレスシャツの上に黒いライダースコート、下半身には黒い革製のズボン、そして先程までの足音の正体たる黒い革靴。
見たところでは成人男性であることは明らかだが、目元を隠匿するサングラスという事実がその実年齢の程度を特定させない。
また何よりの特徴は、彼の背中に背負われた、砲の付いた大剣――成程、これほどの大きさならば帯刀などと洒落た真似を許さぬ代物であると理解せらるであろう。

「――――"同業者"……とでも云うべきかな?君の事は」

この言葉を聞いて少年に合点がいったのであれば、正にその通りである。
この男は正に先程の怪しげな金属音を聞きつけてやってきたし、またその主たる少年の"何者か"を確かに"認識<し>る"だけのものを持っていた。
勘や第六感の類といえば、それは不正解になる。そうではなく、もっと確固たる確信を与えてくれるような、言ってみれば五感と同格な、魔術師に特有の世界認識の一手段――
――魔翌力の感知、である。
同様に、この怪しげな男からもその"同業者"たる証が、少年にも感じ得るのだろう。

「……ああ、嚇かすつもりは毛頭ないのだがな。
今は――そう、少し話がしてみたいのさ。"同類"として、あるいはそれを超えて、"仲間"として」

かちり、外されたサングラスの奥に眠っていた双眸は、低めの声から一般に想像されるよりは若い印象がある。
男はその顔を見た限りでは20代そこらといった感じを得るが、その整った顔立ちと表情にはちゃらついた感じはなく、寧ろ氷山のように厳然と世界を見据える真剣さが勝るであろう。

さて、言葉を聞く限りでは――また可能ならば、気配を読む限りでは――薄暗い裏路地に二人きりという状況に反し、この男に敵意やそれに類する危険なものは一切感じ取れない。
信用するか否かは無論、少年の判断に委ねられる。

「――それで、君の他には誰も見当たらないが……邪魔をしてしまったかな?――修練の」

//もし未だいらっしゃれば……
522 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/16(木) 21:27:38.21 ID:D4PkbUxGo
>>520
東郷国充は聞く耳を持たない。落ち着かないし、落ち着けなかった。
彼の説得は東郷の耳には届かない。彼が悪い訳では無いし、誰がそうしようと同じ結果になっただろう。だから、彼は何も悪くは無い。
悪いのはこの東郷と言う男の人間性だ。迸る殺意も何もかも、彼に責任がある訳でも無い。ただただ、東郷は、激情家だった。

「――――――――――――邪魔なんだよ」

彼の言い訳は否定した。そしてその通りに、東郷にとっては、彼が"此処にいる"という時点で、どうしようもないくらいに"邪魔"だった。
この死体を目撃された時点で、東郷は絶対に彼を殺さなければならなかった。彼がどんな背景を持っていようとも、彼が頭の中でどんなことをおもっていようとも。
絶対にこの事を暴露される訳にはいかなかった。彼をこの場から逃がすわけにはいかなかった。
仮に彼がこのことを絶対に、誰にも言わないと誓っても、東郷は許さなかった。喉を潰し、両手を切断しようとも、彼の事は絶対に殺害する気だった。
そして、東郷国充はまた、そう言うことに"慣れ切っていた"。

「テメェは俺の仕事の現場を見た。だから殺す。お前は始末しなきゃならねぇ。"二回ともなれば"俺の立場に関わる」
「お前が今からどうなるか教えてやろうか? 分かり切ったことを、お前が今まで夢物語だと思ってたことを、今ここで教えてやるよ」

彼の足を凍らせた冷気が、ゆっくりと彼の身体を昇っていく。
そして、近付けば近付くほどに、東郷の周囲の余りにも鋭敏な、殺意が形を成したかのような冷気が、彼へと明確に伝わっていく事だろう。
目前へと辿り着く事が出来れば――――――――――――東郷国光は、ゆっくりと。彼の顔へと手を伸ばす。

「お前をぶっ殺す。真夏に凍死だ、珍しい死因だと思わねぇか?」

そして、彼の頬を右手で掴んだのならば――――――――――――行われるのは、先ず"唇"と"鼻"を、"吐息に含まれる水分を用いて"凍結させ、そして閉じさせる。
それから、それでも彼が脱する事が出来ないのであれば。最後に彼の"喉"の内側を、"凍結により"完全に閉ざす事で、仕上げとする。
其処に転がる女にやったことと、同じことだった。その結果はきっと小学生にも分かる事だろう。"窒息死"だ。
だが、同時に――――――――――――東郷は、"彼に触れられるほどに"、"近付いていた"。
523 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/16(木) 21:35:13.46 ID:ChmBFKIwo
人々が忙しなく行き交う大通り。殆どの人間が気にせずに通り過ぎてしまうような細く暗い路地から、勢い良く飛び出してまるで逃げているように見えるのは、1人の不良。

『……っクソ、何なんだよアイツ!本当に能力者かよ?!』

……と怯えながら、片腕を押さえて慌ただしく駆けていく姿。一瞬騒めいた人の群も直ぐに「なんだ、ただの不良の喧嘩か」と、元の流れに戻っていく。
路地から一連の流れを眺めるのは、服に付いた汚れを叩いて落としている1人の少女。ボサボサの髪に何日も着回したように皺だらけのダボっとした白シャツ、履き古され天然の穴が幾つも空いたダメージジーンズ。
曇った墨色の瞳で上目遣いに大通りの方を睨め付けて。最早日課のひとつであると言わんばかりに疲れた様子は一切無く、やっと去ったかと小さくため息。

周囲を這う蛇へ視線を向けだだくさに数匹掴み取れば、何を思ったのか服の中へ突っ込んでしまう。
白布の下で蠢くそれらを襟口から満足気に覗き込んで、にこりと微笑むその口元にはまだ乾いていない赤黒い血がついていた。

「––––––…………」

無言。のろのろと動く小柄なその姿からは大柄の不良を撃退する膂力があるとは到底思えない––––––先の不良の"本当に能力者か"という言葉からして、何らかの力を持っているのは確実。
しかし、どのようにして勝ちを収めたのかまでは、少女の姿から連想するのは難しいだろう。
524 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/16(木) 21:49:09.61 ID:teTVDnCJ0
>>522
彼の返事は素っ気なく、そして有無を言わせないものだった。少年の精いっぱいの弁解は何ら目に見えた成果をあげることなく、
そして目の前の男は変わらぬ殺意を陽炎のように揺らめかせていた。――ああ、と、少年は理解する。
いくら言葉を尽くしても無駄にしかならないような、そのような存在があるのだということに。余りにも遅すぎただろうか。
いや、そんなことはないはずだ。……少年はそう願い、そして覚悟する。

「そ、そこを何とか……。わざわざ教えてもらわなくても、俺は大丈夫、です、から」

無意味と分かっていながら言葉を連ねるのは、それで何となく落ち着くような気がしたからだ。
口を閉ざしてしまえばそのまま全身が凍り、すべてが終わってしまうような、根拠のない予感。
そんな少年の視界を、少しずつ男が覆ってゆく。こつこつ、小さな音を立てて、近づいてきている。
手の感触が頬にあたる。濃密な殺意はすぐそこにある。目じりに涙が溜まり、視界がぶれる。
今しかなかった。

「こ、このやろっ、――!」

ゼロ距離まで縮まった二人の間に割り込むように、少年の影を出所として、ひとつの力がほとばしる。
それは蜥蜴の尾の形を成し、高熱を伴って、男の伸ばした腕をアッパーの要領で突き上げようとした。
危機的状況からの脱却、そしてあわよくば凍結した足の解凍。
彼の取りうる、たったひとつの反撃だった。
525 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/16(木) 21:52:32.06 ID:PcEopu9Mo
>>521
「……何者だ……?」

振り回していたチェーンを止め、周囲に警戒を配る。その耳には、確かに足音が聞こえていた。その方向を向き、煉夜は腕のチェーンを浮かばせた。いつでも戦闘に入れるように

「同業者……?ああ、成る程、貴様もか」

やがて姿を現した男。戦闘経験がそう多くない煉夜でもすぐにわかる。こいつは、ただ者ではないと。
そして、その同業者という言葉と、確かに感じられる魔翌力。間違いない、この男は魔術師だ。

「フッ……いいだろう、ちょうど鍛練にも飽きてきた頃だ。話をしようじゃないか。」

だが、魔術師だとしても“仲間”であるとは限らない。魔術師には派閥がある。それだけではなく、あたりまえだが個人個人にも考えがある。

「そうだな。情報交換は勿論として、能力者についても話したい。貴様が能力者に対し、どう考えているか、そしてこの先どう行動を起こすかをな。」

ならば、率直に聞こう。隠したって、この手の相手には見透かされてしまうだろうから。そもそも、以前分かった事だが、自分は隠し事が苦手らしいし。煉夜は、そう思考し話す。

/いますよー。よろしくお願いします!
526 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/16(木) 22:11:06.60 ID:D4PkbUxGo
>>524

べき、という間抜けな音がした。少なくとも、何かを凍てつかせる音では無かった。
頬に触れた筈の腕が、何時の間にか跳ね上げられていた。よく見てみると、右腕の前腕部の中途から、まるで一つ間接が増えたように折れ曲がっていた。
そして、この季節には似合わない、長袖のスーツの袖の一部が溶けていた。そして其処の下にある皮膚に、酷く熱く、鈍い痛みが広がっていった。

「――――――――――――あ?」

東郷国充という男は、現状の理解に伴ってそんな言葉を吐き出した。そしてその言葉の後に急速に、彼の身体に起きた、彼がやった事を理解した。
酷い骨折の痛みが、その瞬間に東郷の脳味噌が理解した。そしてその瞬間に――――――――――――この低温の世界の中で、どっと脂汗を出した。
跳ね上げられた右腕の前腕部の中途から先が、ぶらりと重力に従った。それと同時に、東郷国充の激怒は、膨れ上がった。

「――――――――――――何を」

「――――――――――――しやがんだぁ!!!!!!」

その瞬間、更に周囲の温度が低下した。再度、彼の足下へと冷気が伸びていった。
それから、東郷は拳を握り締めた。それから、彼の事を思い切り殴り付けようと振るい――――――――――――そしてその瞬間に、触れた部分を凍らせようとした。
彼の能力は、触れたものの温度を極端なまでに低下させる。この気温も、彼に伸びた冷気も、それが正体だ。そして、彼に直接触れたのならば、それは"より早い"ものとなる。
東郷国充は、激情家ではあったが、しかし同時に何処までも冷静な判断が出来る人間だった。その腕の痛みに激情し、息を荒げながら、"最優先事項は履き違えなかった"。

「俺の、俺の腕を、へし折りやがった……テメェ、能力者か! くそっ、なんつーことだ、いてぇ、いてぇんだよ、クソぉ!」
「おまけに……熱か、嘗めやがって! 人のことをとことん馬鹿にしてくれやがって、殺す、殺す、絶対にぶち殺してやる!!!」

「俺の、"俺だけのゼロの世界"で!! テメェ如きが凍えずに居られると思うなよォ!!!!!」

息を荒げ、叫び。そして冷気は、東郷の背後や、そして彼の左右や後ろにまで、当たる事なく伸びていく。"滅茶苦茶に、冷気を以てしてこの路地裏を凍結させようとしていた"。
――――――――――――但し、それは激情を以てして行われた物ではあるが、決して"意味の無い"行動では無かった。
周囲の温度が、また下がった。東郷の激情に、反比例とでもいうか。それとも――――――――――――"呼応"してとでもいうか。
527 :城ヶ崎 斬久 ◆UZZXtTVUYY [sage]:2015/07/16(木) 22:25:51.31 ID:Bw00VCZK0
>>525
土足で、されど敵意なきように、また素顔を晒して少年の領域に踏み込んだ男の態度――或いは、烏滸がましいことを云えば、誠実――は、確かに言葉によっても裏付けられたであろう。
男は云う――"仲間"――されど、どうやら少年の様子を見る限りでは、未だ"其方"はそこまでの認識には至っていない……そのような印象を男は得た。

当然と云えば当然である。只ならざる者達の、只ならざる場所における邂逅。
少年と男――否、二人の魔術師の交錯――そんな異様かつ不気味な状況を、どのような美辞で飾り立てようとそのような行為は無意味に帰するしかなかった。
まして、派閥の分立、究極的には個人の思考の差異――丸裸で接すれば、丸裸の他者が無条件的に協力してくれる――そんなものは、楽観者というよりは愚者の戯言である。

表都市を茜色に照らしていた陽は地平の向こう側へ愈々沈み出し、路地にも昏く濃い影が差してゆく――――

――――
「……ああ、矢張り、君もそういう"目的"だったか
否、分かりきったことだろうがな……今やこの都市――学園都市の存在を知らぬ魔術師などこの世には居ない――そうとすら思えるほどに」

男の云う目的とは、言う迄もない――能力者の監視である。
だが、同じ魔術師とて、前述の通り思考も、云ってしまえば個人単位での信念すら異なる。故に、今の男には、それ以上に具体的な少年の目的など知る由もなく、"目的"という言葉にも"そういう"という曖昧な形容を施した。

少年からは、向後の行動についても質問する旨が示唆された。
が、男とてそうぺらぺらと自らの手の内を明かすようなことはするまいと、それが最早魔術師という一種裏社会の徒として彼の中で常識化していた。
故に、先ずは比較的明かしても問題がなく、かつ相手の共感、ないしは反感を誘い出せそうな、抽象的な理念や思想の部分から手を付けることとするのであった――――

「そうだな……能力者、あいつらは言ってみれば――

サングラスを懐に仕舞い込み、やや歩き出して少年よりも路地の出口側に立つと、未だ光の領分たるそこを見つめ。
そしてそのままに、男は語る。

――"ダイヤの原石"――そういうものじゃないかと、私は考えている。」

「あれには、真新しい可能性が詰まっている。無論、我々魔術師にはない何か、というものも含めてな……
中には――とりわけ保守的な魔術師は――"可能"性ある彼らを"危険"性の権化と見做す者も居るようだが……

……ああ、端的に云えば、私はそのような考えには反対ということだ。
未知のものであれば全てを怪物と同列に扱うのは、ハッキリ云って賢者ではなく、臆病者の臆病心の顕れにすぎん。
例え少しのリスクは伴うとしても、有効な利用すら考え付かずに斬って捨ててしまうにはあまりにも惜しい存在――それが能力者……そうは思わないか?」

振り返り、少年に問うた。
冷徹ながらも真摯さを帯びた特徴的な眼差し、そのままに。
528 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/16(木) 22:40:55.21 ID:teTVDnCJ0
それは今までに感じたことのないような暖かさだった。
するりと伸びた尾は男の干渉を圧し折り、凍てついた皮膚を溶かしていく。氷の監獄に一筋のほころびを垣間見たような、そんな気になり、
少年は目じりに溜まった雫を拭う。――ついにやった。やってしまった。今まで能力を他人に使ったこともなければ、怪我をさせたこともなかった。
男は腕を折られ火傷を負い、怒りをさらに蓄積させている。一線を越えた、そんな気がした。――感慨に浸っている暇はなかった。

「っ、……や、やれるもんなら」

絶叫。身が縮み上がる。先ほどまでの怒りは少年にとっては理不尽とも感じられるものだったが、今は違う。彼の激情は自分の行為に向けられている。
その事実は彼を堪らなく不安にさせる。彼の意思が挫かれずにいるのはひとえに熱を孕んで屹立する自身の能力の結晶のおかげであった。
周囲の温度がさらに下がったのが分かる。ごくりと息を呑む。来る。さっきのような油断に、再び期待することが出来るだろうか。

「やってみ――っ、う、」

男が打擲せんと伸ばした腕、それにとっさに反応できるほど能力を使いこなせてはいない。
反射的に急所を庇った両腕が、鋭い痛みに襲われた。0が1にぱっと変わるように、あっという間に両手が氷に呑まれる。
今さら自分の軽率さを呪っても溶けてはくれはしないだろう。――予想外の痛みに息が詰まる。このままではまずい。

彼は尾を低い位置から男に這わせ、向かってくる冷気を相殺しながら彼の足に巻き付かせようとした。
足。足さえ焼いてしまえば、追ってくることは出来なくなるだろう。回らない頭でたたきだした結論だった。
しかし尾は熱を伴っているとはいえ無尽蔵のエネルギーを秘めているわけではない。溶かし続ければ限界も来る。
それに結果として少年は男の伸ばした冷気から一時的に無防備となる。リスクは小さくない。
529 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage]:2015/07/16(木) 22:53:09.59 ID:ImARR3N30
>>523
/まだいらっしゃいますか?
530 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/16(木) 22:54:21.90 ID:ChmBFKIwo
>>529
//はーい、居ます居ます
531 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA :2015/07/16(木) 22:55:32.74 ID:ImARR3N30
>>530
/了解です、おそらく持ち越しになってしまうかと思われますがよろしくお願いします!

532 :無銘童子 ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/16(木) 22:59:58.13 ID:uc8YTiDs0
>>519>>516>>509
ダン!!という音と共に突如として畏能の近くの地面の一点に亀裂が生じた。
その上に立ち、気絶した畏能を見て独り言を垂れる人物。

「───ああ、そうだな。
これは。能力者共に渡してしまうには影響が大き過ぎる異形だ。」

そのフードの男は、何処からともなく極普通に自然とその戦場へと降り立った。
正確には高所から飛び降りて、風紀委員と畏能の間に割り込むようにして着地した、である。
──学園都市調査の徘徊の一環として、たまたまこの地区に来た所、彼は興味深い物を目にした。

それは魔術師、と能力者の戦闘のことではあるが、特に目を惹かれたのは魔術師が使っている「異形を操作する」魔術。
「異形」たる「鬼」を自身に宿す彼からして、間違いなく同族であるその魔術。

───何処の誰かは知らないが、同じ系統の魔術を操るという点では共通している。いわば同胞。

──だから。そのフードの青年は同じ魔術師を救うために戦場へと赴いた。

「……風紀委員、だったか?
協力してそこに転がっている幽霊使いを追い詰めた、という点は評価しよう。
…俺から見てもそいつはかなりの魔術の使い手だ。」

フードの青年は、二人の風紀委員の方に体を向けてから言葉を紡ぎ始める。──全てを血に濡らした男を背後に据えて。

「……だが。俺というイレギュラーを此処に舞い込ませてしまったのは大きな誤算だ。
勿論、オマエラは"自分達は何もしていない"だとか宣うんだろう。
しかし、それらを総て考慮しても、俺が参戦するという状況を作り出したオマエラの誤算だ。」

ピシッ…ピシッ…。何やら何かが割れるような、奇妙な音色がその場に響く。
──その音が鳴る最中、フードの青年は自分のフードへと手を掛ける。


「…俺は同胞としてコイツを全力で死守しよう。
あくまでオマエラがコイツを連れ去ろう、という考えを持っているならばという前提があることが条件ではアるが。」


「……ソノ場合、オマエラは俺と戦う覚悟を持て。



────この"無銘童子"を相手にするという、命懸けの覚悟を。」


パサっという音と共に、彼はフードを脱ぐ。──そしてそこにあったのは、人間の頭ではなく。
文字通り、「鬼」其の物であった───。
まだ動きはせず、自身の姿を明かすことで相手の反応を伺ってみる。
533 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/16(木) 23:01:28.72 ID:PcEopu9Mo
>>527
「それはそうだろう。ここにいる魔術師の目的と言えば、只一つだ。」

能力者の監視。学園都市にいる魔術師ならば、例外も無くはないだろうが、ほぼ間違いなくこの目的で此処に来ている。それほどまでに、能力者という存在は、魔術師に影響を与えたのだ。だが、その先に見据えているものは違っていて――

「尤も、動機は別々だかな。」

だからこそ、魔術師同士であろうと警戒する。警戒せざるを得ない。

「……ダイヤの原石か……成る程な……磨けば、何者をも貫く矛にもなる。何者をも守りぬく盾にもなる。何者をも魅了する装飾品ともなる。または、ただの石屑にもなる。言えているな。」

磨けば何にでもなる可能性を秘めた存在か。確かに言えている。同意する煉夜であったが、それもこの例えのみ。

「……臆病者か……」

“臆病者”その言葉を聞いて、表情を曇らせた。まるで、自身のことを見透かされているような不快な感覚。
事実、臆病者と言われても否定は出来ない。煉夜は、能力者はいずれ魔術師の存在を脅かす可能性のあるものと、恐れているのだから。その事実に苛立ちを覚えた。だが、それを表情に出さず、口を開く。

「……フッ……だが、戦場で生き残るのは臆病者だ。生き残る為には、臆病心も必要なんじゃないか?最後に生き延び、笑った奴が勝ちなのだよ。たとえ勇者でも、無駄に[ピーーー]ばただの馬鹿だ。……どうやら、僕らは相容れぬ存在同士のようだな。」

たとえ臆病者だと暗に言われても、自身の考えは曲げない。魔術師の未来の為に、自身の未来の為に。
534 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/16(木) 23:02:10.24 ID:D4PkbUxGo
>>528
東郷国充が暗部組織に使われる理由は様々だ。だがその一つとして、目標達成の為の執念がある。
東郷は、自分のダメージを基本的に顧みない。如何に激情に駆られようとも、自分が傷つきながらも、課せられた任務を遂行する。今回とて、例外では無かった。

「う、うぉぉ、テメェ――――――――――――!!!!」

脚に巻き付いて来た爬虫類の尾。それが東郷の足を焼いていく。そして東郷は、それに対して"温度操作"を以てして対抗していた。
無論、相殺出来ている訳では無かった。自分自身の足を凍らせるわけにもいかず、飽く迄応急の処置ではあったが、東郷にはそれで十分だった。
彼の攻撃を両脚に受けながらも。この状況で、任務を遂行させる手段と、"自信"があった。両脚を奪われようとも、もう"決して逃がさない"自信があった。

「く、くくっ――――――――――――ああ、チクショウ。油断してた。油断したぜ。だが、終わりだ、もう終わりだ」
「俺の足の一つや二つくれてやるよ。俺はここから動けなくなるだろうよ。だがなぁ……先に王手をかけたのは、俺の方だぁ!!!!!」

その瞬間、更に周囲の温度が低下する。今の今までの、まるで"真冬"であるかのようなそれとは、更に訳が違う。
まるで、強力な"冷蔵庫"の中にいるかのような冷気だった。ただ、そこにいるだけで。眠くなってくるかのような、"極寒の世界"に其処は成り果てていた。
その正体は先に東郷がばら撒いた"冷気"だった。それはこの路地裏の一画に、限定的ではあるが"極低温の世界"を創り出した。
東郷は笑っていた。この"極寒"の世界の中で、東郷の吐く息は白く濁らず。髪の毛が凍てつくことも無ければ、寒さに身体が震えることも無かった。

「これが俺だけの世界。これが極低温の世界。何もかもが動くことを止める世界。全ての生物が生きるのを止める"世界"」
「この世界ではただ俺だけが、生きる事が出来る。俺以外の全てが、凍結する」

「もう一度言ってやるよ――――――――――――"お前如きが、凍えずにいられるかよ"」

彼の温度がどれ程の物かは知らないが――――――――――――"それごと凍結させる自信が東郷にはあった"。
東郷には、油断は無かった。だが、彼のそれは"成った"。東郷はその場から、もう動く事は出来ない。
彼がこの場から逃げ出す事が出来るか、それとも先に"東郷を殺すか"。それとも、自分が彼を先に"凍えさせる"か。その勝負だと、東郷は思っていた。
535 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/16(木) 23:10:06.00 ID:ImARR3N30
>>523
大通りから逃げてきた不良に、何かが激突した。不良はそのまま転倒し、怯えた顔をする。
それは人間だった。不良より一回りほど大きな身体を持ち、黒髪に透き通るような緑眼をした、日本人ではない人間だった。
不良はなんということはない、彼の緑色の眼を見て、錯乱状態であったのか恐怖の声を上げる。
彼はその様子に何かただならぬ雰囲気を感じたのか、片足立ちになり、倒れた不良を問いただした。
不良が逃げてきた路地をジッと見つめながら。

「……どうした?」

『ひッ、あいつ、あいつが!』

不良はまるで見当違いな答えと共に、彼の見つめる路地裏を指差し、起き上がって逃げていく。
しかし彼はそれで、何が起こったのかを理解するには十分だった。逃げていく不良を目で追いながら立ち上がる。
彼はロシア人だった。不良という存在を知らなかった。しかしどちらにしろ、人を痛めつけ、恐怖に陥れた者がそこにいることは事実。

彼は路地を睨みながら、のしのしとそちらへ向かっていく。
やがて覗き込んだそこにいたのは、口にべっとりと血をつけた、一人の少女だった。

彼はこんな少女が、と一瞬だけ疑ったが、すぐに彼女のただならぬオーラを察知し、身構えた。
彼女は、一体?

「……彼に何をした?」

彼は彼女をジッと見つめながら、ただ簡潔に、それだけ聞いた。
536 :山城莉音 ◆ovoaach7AA [sage]:2015/07/16(木) 23:13:58.83 ID:JHEUzIVao
>>516>>519>>532

男は只々立ち尽くす。
目まぐるしく変化する状況に対して、山城莉音はあまりにも無力すぎた。
傷を負う仲間、血に塗れながら意識を手放した敵……そして新たな乱入者。

エンジンが放つ轟音の中でも耳に痛いほど響く乱入者の言葉。
それは音量などという意味ではなく、その存在が放つ威圧感に圧され脳が揺らされてしまっている。
声が響き終わった今、フードが捲られ其処で現れたの異形の姿、鬼。
不気味、困惑、危機、幾つもの感情が頭を駆け巡るが最後に残ったのは―――恐怖だった。

「―――せ、仙!引くぞ!!」

震える脚で何とかバイクを動かし、仙の前方にバイクをつける。
サイドカーが外された今タンデムシートのみが彼の乗り込める場所になるが大柄な彼を考慮し、自分の座る位置を若干前へと動かした。

「あれはやばい、お前も怪我してんだ、これ以上はまずい!」

仙がタンデムシートに乗るのも確認せず、莉音はフルスロットルにエンジンを蒸す。
仙の準備さえ整えばこのバイクの加速力を活かし直ぐ様この場を立ち去る事だろう。
537 :椋梨 仙【象形意掌-Level4】 ◆3VOOLEyGw2 [sage]:2015/07/16(木) 23:30:04.51 ID:9cztUXEeo
>>519>>532>>536
椋梨が構えを解けば大鷹は霧の様に、日に焼かれ溶け消える雪の様に、風に攫われ削れ行く砂の様に世界に混ざり消えて行く。
最初からそこに無かったかのような違和感だけが暗がりを支配する。

「人の事言えた義理じゃないけどナイスなタイミングだ」

新たに表れた男が語る最中も彼はマイペースに靴を脱ぎ捨てる。
次いで引き抜いた靴下を投げ捨てる、元来身を守るために作られたそれらが邪魔だと言わんばかりに。
まず片足、次にもう片足……淡々と、しかし着々とそれは行われた、露わになった足は子供のそれでは無かった。
幾つも豆が出来ては潰れてを繰り返したのであろう趾の肌は擦り打ち潰しを長く長く行ったのであろう
見目からして岩肌のようで、厚く盛り上がった指の肉によって爪が小さいと言う錯覚すら感じさせた。

「なのでもう一度言う」

加減を確かめる様に足に力を籠めれば、浮き上がる筋肉がより強固に固められ、最早『拳』と称しても相違が無い。
それが終わると共に男の言葉へと耳を傾けながら地に這わせる様に片足を前にだし、下げた足の腿をを内側に、出した足を維持する様に股関節を絞り込む。
同じく上半身を閉める様に水平に閉めてそのままゆったりと重心を後ろへと倒して行く。
するとどうか、倒れる事無く体を揺らめかせる様な姿勢が作り出された。
能力者である椋梨に気や功と言った物は無い、しかしその熟しのなんと堂に入った事だろう。
積み重ねてきた鍛錬……いや功夫がその肉体以上に示された瞬間である。

「連れて消えろ、OK Ma―――――」

空間を空けて上下に向かい合う様に置いた両の手をゆっくりと持ち上げて行く、籠る力がその手を柔らかく開かせ、しかし個々の指先は鋭さすらも感じられる。
男の存在が何であるかを見、聞いた上で余りにも悠長な動きであるが、それを咎められるものがどこに居よう。
何故ならば先ほどの光景を目撃している、つまり悠長どころか既に姿勢に入っている事を示しているのだから……と、ここまでは格好良かった。

突如彼らの間に割って入る者さえ居なければ。

「いやいやいや折角良い所なのに逃げるって何言ってんだお前……」

先程までの剣呑とした雰囲気は綺麗さっぱり、お風呂掃除した後の清々しい気分の様に吹き飛んでしまった。
山城に対して訝し気に顰める眉と表情とは異なり、首から下だけは未だ臨戦態勢であることもまた哀愁を誘う。

「って痛い引っ張るな!待って待って靴と靴下だけ回収するから!!」

急かす山城に袖口を引っ張られ、泣く泣く構えを解いた椋梨は撤退の為に回収活動を始める。
格好付けて脱いだ数秒後に靴と靴下を拾う様は何とも情けない、それも筋肉モリモリマッチョマンが暗がりを丸まりながら探しているのであれば尚更だ。

「待って!まだ靴下片足見つけてないから!待っ―――――!!」

明らかに体躯で上回る椋梨が何故か山城に引っ張り込まれると、言い終わる前にバイクは走り出した。

ただただ戦闘の爪痕と片足だけの靴下を残して――――――
538 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/16(木) 23:30:18.61 ID:ChmBFKIwo
>>535
イリヤーは見る事が出来ただろうか。裏路地を指差す不良の腕に空いている、血がとろりと湧き出る"二つの穴"を。


––––––ふと、大通りから差し込む光に人影が写り込む。いや、写り込む事自体は普通だが"それ"は自分のいる路地へ正面を向いて立ち止まったのだ。
つい、と視線を動かして、イリヤーの顔を食い入るように見つめる瞳は曇り、活き活きとした生気は微塵も見受けられず。


「……?」

新しい不良か、と思った。どうせまた、適当に見つけたここに入ろうとしているのだろうと。しかしそれも違う。
身構えて、声を発するのが見えた。こちらを睨みながら、きっと怒気の篭った低いものだろう声を発するのが。

「彼に何をした?…………どっか行ってって追い払ったの。乱暴な人は嫌いだから」

イリヤーの問いかけを反芻するように––––––確認するように呟いて、少女はかくりと首を傾げ、困惑した表情を浮かべる。何故怒っているのか、わからない。
ただ、きっと答えなければもっと怒るのだろうな、と思い、仕方なく答える。抑揚のない、無機質な声はもしかすると少女の異様さをより一層引き立てるかもしれない。

首を傾げた拍子に白シャツの襟口からひょこりと一匹、蛇が顔を覗かせる。シュルシュルと舌を出し入れしながら少女の首を這い上がり、それはどうやら頭頂の方へ向かっているようだった。

「––––––あなたもさっきの人と、同じ?」
539 :城ヶ崎 斬久 ◆UZZXtTVUYY [sage]:2015/07/16(木) 23:33:40.98 ID:Bw00VCZK0
>>533
男の、振り向き様の問いかけ。
それに対しては、少年は、この路地裏其の儘に昏い表情で返した。

「(――……どうした)」

男は確りと見開いた眼をやや窄め、鋭い視線をくれながら訝しむ。
振り向き様にくれていただけの視線はやがて男が向き直ったことにより、正面を向かい合った形で少年の表情に突き刺さることとなる。
字面から想像されるような敵意はない。或いは、軽蔑の類でもない。只々、"訝しむ"だけの――自らの眼前に顕現した世界の一態様を観察する、正しく中立者の視線。

"臆病者"――もし自らの放ったこの言葉が寸鉄の如く少年の心に突き刺さったならば、それはそれで男の狙い通りになる。
何も共感を求めるわけではない。自分のするべきことは"観察"、ないしは"監視"――そう、魔術師達が能力者にするのと同じようなそれを、男は――メルキオール派『城ヶ崎』の人間たる彼は任務とする。
そう、それはただただ、ビーカーの中の化学反応の帰趨を見守るだけの、価値中立的な、人情に欠ける観察者の視線でしかない―――――

とはいえ、昏い表情それだけでは未だ実証的な判断材料に欠ける。
現に、少年の意志により、彼はその内部の苛立ちまでもは表情に出していない。
観察を続けるべく、少年が口を開くのを見据え、今度は意識の耳のほうへと傾けるのであった。


「――ああ、君の云うことも尤もだ。
賢慮と臆病は実の処紙一重――恐れるからこそ人は生きていけるのだとも云えるだろうな。

そうだな……もし"臆病者"という私の独断的な評価が気に障ったのならば、それは私の無神経だったと云うしかない。非礼を詫びよう。」

恭しく、腰を折り曲げて。
だが表情からも語調からも、それが皮肉か何かの類であろうことを断定できるような確定的な材料はない。
真剣な男の表情は崩れぬまま。だがそれは逆に無表情と変わらぬとも云える。仮に男の腹の奥底に何が煮え滾っていようと、それを外観から判断する術などない――――


「――そこでだ。私はこのように考えを改めることとしよう。
能力者は確かに可能性の塊だ。だが――彼らを全面的に信用することには、消極的になるべきだ……と。」

「人と動物の最大の違いを挙げるとしたら、それは……前者は幾らでも自分を"偽れる"ということだ。
能力者も人間であることには変わらない――だとすれば、信用に足るには、彼らの仮面をひっぺ返せるだけの"事実"が必要だ。」

「事実は決して裏切ることはない
――例え能力者に対しても、その力が未知のものであったとしても、それが現実に引き起こした事象を観察すれば、必ずや彼らの真実に至れるはずだ、と……

そう思うことにしよう。それには、互いに"観察結果"に関する情報交換が必要なはずだ」

云うと、男は懐から何やら機械端末らしきものを取り出した。
黒色のスマートフォンである。

「連絡先――交換しないか?
例え互いの本心は見透かせなくとも、どちらも疑いようのない"事実"が欲しいという点で、どうして我々が相容れぬと云えよう?――――」
540 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/16(木) 23:34:20.96 ID:teTVDnCJ0
>>534
彼の狙いは的中した。尾は正確に男の脚に絡みつき、傷を残した。――しかしそれで事態が好転したとは言い難い。
少年の与えたダメージは致命傷と言うには遠く、そして男は不敵に笑っている。寒気を覚えたのは決して気温の所為だけではなく。
声に成らない悲鳴、焦燥が、彼の胸を満たしていた。不可視の死がすぐそこまで迫ってきているような錯覚。
果たして思い過ごしではなかった。

「――ぁ、」

更なる気温の変化。ぐらりと意識が遠ざかる。それは想像を絶する冷たさだった。もともと彼は冷気には強くない。
格が違う、などと、今さらになって思い至る。全身がだるく、甘い眠りを求めているようだった。――もはや痛みも感じない。
少年は男を見た。非生物の世界に超然と立ちはだかる男。その姿を人と認めるには、彼の頭は凍えきってしまった。

終わりだ、とどこかで声が聴こえる。もう勝てっこない、疲れた、そこまで生に執着する理由がお前にあるのか――
少年は視線を落とす。絡みついた尾が見える。その姿を眼に焼き付け、――彼はぴくりと指を動かす。

口を開く余力もなく、それは疑いなく彼の最後の抵抗だった。
男を縛る尾が霧消、代わりに再び自身の影を源に現出する。そして思い切り自身の腹を突き上げさせようと試みた。
氷をぱきりと割ってしまうに、動かない身体に刺激を与えようというのがひとつ。刺激どころか骨まで響いてしまいそうだが、構う余裕はない。
そして力の入らない身体を数メートルふっとばし、その熱による作用と併せて、氷の呪縛を解いてしまおうというのが目論見だった。
幸いにして路地は壁と壁との間隔が狭く、急所さえ外せば骨が折れていても手を支えにして逃げていくことが出来るだろう。希望的観測だが、縋るほかはない。
もし尾を再び召喚することが出来るとばれていて対策されていたのなら、すべては無駄な行為となろうが。
541 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/16(木) 23:47:25.27 ID:ImARR3N30
>>538
不良の負傷部分は、彼自身どこか変だとは思っていたが、其処まで気に留めなかった。
しかしこのような幼気な少女が、人を傷付けたというのが理解しがたいことだった。

彼の無機質で機械的な態度は、不気味ささえ感じさせる。それは彼の警戒をより一層強めたが、攻撃しようとはして来ないらしい。彼は質問を続ける。

「"追い払った"?住処という事か、ここが」

なぜ追い払ったはわからないが、追い払うにしても多少、過剰すぎる。
不良が何をしたかは知れない。しかし彼が心の底から怯えに震えていたことは事実だ。

その時、彼はハッと息を呑む。蛇が彼女の身体から、顔を覗かせていたのだ。先程の不良の負傷の痕と照らし合わせる。
紛れも無い、"それ"がやったのだ。

「Змея(ズミヤー)……蛇……?」

彼は訝しむ視線を、再び蛇から彼女へ向ける。

「……彼が何をしたかは知らない、だが、彼をあそこまで追い詰める必要はあったのか」

彼はさらに聞く。
この返答次第では……彼は、彼女と戦うまであるだろう。
542 :無銘童子 ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/16(木) 23:54:22.93 ID:uc8YTiDs0
>>537>>532>>519
──そう、山城が抱いた通りに姿をあらわにした無銘童子の姿は明らかな異端だった。
様々な時代、様々な場所で存在する憎悪の対象……鬼。
そしてそれを自らの身体を以て体現するという、彼にだけ赦された魔術。
悪を担う化物の姿は、恐怖、迷い、悲しみ、全ての負の感情を目にした者に齎す。

「怖いか?……そうだろうな、それが一般的な考え方なんだろう。
──だが、俺からしたら無駄な善を振り翳すオマエラこそが最も恐ろしい。」

……………………………………………………………………………



そして、山城と椋梨が退散の姿勢を取るのを見て、その鬼はカツカツと異形の口を動かす。

自らに対抗しようとする風紀委員。
然し、万全の鬼を目の前にして逃げる道を選択するもう一人の風紀委員。
対極的な二つの思考が集ったならばその先にあるのは───。

「……この状況で連携が取れていないとはどういうことだ風紀委員……。」

鬼は基本的に無表情である。それは骨格的に口は上手く歪ませることは出来ないし目はほぼ固定。デフォルメキャラにでもすれば、目の感情程度は瞳の形を変えるだけで表現できるのだがそうは行かない。
…目の前の風紀委員の有様を見て、その童子は呆れていた。その先にあったのはただの鬼の「呆れ」であった。

「…ただその策は正しい。万全、そして技も使える状態の俺と既に戦闘をしたオマエラでは明らかに俺に有利だ。」

バイクで走り去る二人を追撃するような事はしなかった。最初の目的は「畏能」の保護であるため、無駄に損傷するのは避けたい。

「………さて。これはどうしたものか。」

僅かな時間の対峙を終えた無銘童子が見つけたのは靴下であった。
揃っていない…片方の靴下。
嫌な物でも見るかのように忌々しく手でつまみあげ、倒れた畏能の方に放り投げてみた。流石にこれでは起きないか…と妙な期待を抱きつつ。

//逃走ということなので風紀委員お二方とはとりあえずお別れ…てわすかね?
543 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/16(木) 23:57:20.76 ID:D4PkbUxGo
>>540
緩やかに眠れば、其処には苦しみなどなく。東郷国充という男が行う"殺し"の中では、それは余りにも"優しい"死に方ではあった。飽く迄も、死を救いとみるならば。
そのまま眠ればいい、と東郷は思った。一般人が、余りにも唐突な死に晒されることがどれほど理不尽な事か。
東郷は、"暗部"に身を堕としているからこそ理解していた。それは同情などという感情から来るものではないが、せめて楽に死ねたら幸せだろう、と客観的に思った。
目を見ればわかった。彼の眼は虚ろで、死を目前としていた。その瞬間に――――――――――――東郷は、勝利を"確信"してしまった。

「Rest in Peace――――――――――――安らかに眠りやがれ」

そして東郷は、彼の指先が動いたことを見逃した。彼の能力が解けた瞬間、それは彼が"眠った"のだと一瞬だけ思った。それが仇となった。
爬虫類の尾は、"一度"だけでは無かった。それは再度出現し、"彼自身"を殴りつけて、吹っ飛ばした。結果として、氷による縫い付けから解除されることとなった。
この路地の一画だけが、極低温の世界と化している。その範囲は余りにも低い。其処から脱すれば、東郷はこれ以上彼を追う事が出来なくなる。
間違いなく、東郷は"油断していた"。思い切り歯噛みした。そして、この場から逃すまいと……両脚を、引き摺りながら、余りにも鈍足ではあったが、彼へと近づいていく。

「くそ、くそ、くそ、クソォッ!!!! どこまでもこの俺を虚仮にしやがって……!!」
「いや、これは俺の油断か……あぁ、チクショウ!!! やってられねぇ、やってられねぇ!!!!」

悪態をつきながら、ずるずると、彼へとゆっくりと迫っていく。それが、東郷国充が"暗部の一員たる由縁"であった。
暗部に身を置くことを、東郷は"覚悟"してここにいる。それ故の執念だった。暗部の一員としてどうしても、彼を"排除"しなければいけなかった。
彼から逃げ出す事は、恐らく簡単だろう。脚部への負傷の程度は、東郷の方が遥かに大きい筈だ。簡単に逃げ切れる。
――――――――――――だが、彼を完全に見失うまで。東郷は、追跡を続けることだろう。
544 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/16(木) 23:59:40.42 ID:PcEopu9Mo
>>539
「別に気に障ってなどいない……」

嘘である。表情こそ変わっていないものの、声からは不機嫌さが聞き取れる。
だが、それは城ヶ崎に対する怒りではなく、自身に対する怒りだ。臆病者である自分と、臆病者であることを受け入れきれない自分。それに怒りを覚えていた。

「成る程、事実か……」

確かにその通りだ。動機は様々だが、魔術師はあくまで能力者の調査に来ている。そう、能力者という存在には未だ謎が多い。また、魔術師が人間であるのと同様に、能力者もまた人間だ。真実を見つけ出すのは、答えを出すのはまだ早計すぎる。

「いいだろう。連絡先を教えてやる。」

今の自分に必要なものは、事実。それを理解した煉夜は、ポケットからスマホを取り出す。
545 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/17(金) 00:07:10.83 ID:lRX5K6TOo
>>541
「そう、だってここに住んでいるんだもの。乱暴な人が家に来たら、追い返すでしょう?」

答えのようで答えでない、そんな言葉。至極当然といった風に言い切るがやはり、何処かズレているのか。
無機質な声と一切逸らされない視線はそのままに、少女は首元の蛇をずるりと服から引きずり出す。蛇は、抵抗しながらもそれを受け入れるように掴まれ、頭の上にぽすりと置かれた。服の中にいる他の蛇は、変わらず自由に蠢いている。

「……ずみやー?蛇?…………何言ってるのか分からないけど」
「あの人、"ここは俺の場所だ"って何回も来るから。いい加減にしてって噛み付いてやったのよ」

疑わしげにじろじろとこちらを見やる大男に対して、あっけらかんと、悪びれる事なく。言葉から察するに先程の不良、暫く前まではここ周辺を"治めて"いたのだろう。
よく口の動く男だなと思いながら、少女はぺろりと口周りの血を舐め取る。さっきからぬるぬるとしていたのはこれの所為か、とばかりに。


「––––––それで、あなたもさっきの人と同じなの?違うの?」

もう一度、問う。まるで、答えるまでは何もしないと言っているような。
546 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/17(金) 00:16:24.99 ID:oyCZT65P0
>>543
叩きつけられ、一瞬息が止まる。身体中をかき乱されるようなショックを受けるが、少なくともここに酷薄な冷気はない。
荒く息を吐きゆっくりと――しかし出来うる限り全力で――身体を起こし、少年は逃げた。
氷点下の世界で微睡んでいた苦痛が眼を覚まし、途端に彼を苛み始める。氷の解けかけた腕を必死に動かし、光を目指す。

「いっ、いやだ、来るな、来るな、頼む、から――、」

確実に近づいてくるのが視界外にあっても確信できる。彼はそういう男なのだ。殺意と執念、そして冷たい――。
もつれる脚を必死に動かし、懸命に逃げた。男の脚が傷を負っているからといって安堵するほどの余裕があるわけもない。
遠くから聴こえる声はそれ自体が冷気を伴っているようにすら感じられ、少年をまた怯えさせる。
そうしてどれくらいの時間が経過しただろうか。

――。結局彼がようやく安全を確信し、意識を失うに至るまで、
その脳裏には絶えず自分を追う声が反響し、忘れえぬ記憶として刻み付けられることとなるのだった。


/お疲れ様でした。ありがとうございました!!
547 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/17(金) 00:19:59.81 ID:+YdoQPvu0
>>545
「……?」

その答えは、日本語がまだ十分に理解できないせいもあるだろうが、あまりに遠回しなその真意を、彼は汲み取る事が出来なかった。
理解できるのは、ここは今"彼女の場所"というだけだ。
釈然としないまま話に耳を傾ける。すると何やら気になる言葉が出て来た。
先の不良は、どうやら元の居場所を奪われたらしいという事を察知する。

「……私が"この場所"を奪いにきたのかと聞かれたら、答えは"Нет(NO)"だ」

「……しかし、彼は元々この場所にいて、後から来たのは、そちらではないのか?何度も来るという事は、そういう事だ」

"おまえ"だとか"俺"だとかいった言い回しを知っていれば確実に使っていただろう、どこか不自然な語り口で問いかける。

「……それであれば、私はそちらから"この場所"を奪い取る覚悟だ」

他人のものを奪い、自分のものとする事。それは真に自分のものではない。
奪い取ったものは、他人から奪われることも、また覚悟しなくてはならないのだ。
そんなものは他人が奪い取れるような、たったそれだけの価値のものであるのだから。
もっとも、早とちりである可能性は否定できない。
548 :東郷 国充 ◆k4Y1r7aLsg59 [sage saga]:2015/07/17(金) 00:21:59.37 ID:bA6wVyV/o
>>546
/こちらこそ、絡みありがとうございましたー!!
549 :城ヶ崎 斬久 ◆UZZXtTVUYY [sage]:2015/07/17(金) 00:33:23.71 ID:c6tpwvUd0
>>544
「(――――)」

怒気の籠った少年の声に、敢えて男は反応することがない。
これ以上の少年の内面の掘り崩しは無意味であるばかりか、更なる逆鱗に触れれば――人目に付かないこの状況だ、交わすものが言葉でなく、直に暴力になりかねない。

「(そうだ……これでいい)」

人の交流は第一印象が大事であると聞く。
ならば、相手との最初の邂逅が血で血を洗う鉄火場であったとすれば、それこそ自分に関する最悪の印象を相手に植え付けかねない。
故に斬久は選ぶのだ――相手の反応を伺うために明るみに出した(やや能力者贔屓に傾けた)本心を今度は引っ込め、譲歩という形で互いに穏便に済ませることを。

正に、中立者の思考。
偏った思考に凝り固まっていないからこそ、事を荒立てず柔軟に両極の思考を吸収・包摂できる。

「ああ、"事実"こそが今最も必要なものだ。
疑うべくもない事実は、ただ我々の率直な眼によってのみしか得られない――」

馬鹿馬鹿しい。自分の言葉ながら、斬久は心の中でそれを斬り捨てる。
わずかでも味方意識らしきものの醸成のためにあえて"我々"なる代名詞を使ったが、本当のところは、事実認識だけなら"我々"の眼でなくてもよいのだ。
――まして、真実の語り手と自らを恃む人間でさえも、認識を誤ることもあろうに……

だがこれも必要なことである。相手は人である。人は言葉によって動くところ頗る大きい。
ならば、自らの望む展開に持っていくためには、上手く自分を偽り、相手の望む「誠実な」自己を演出する術を持ち合わせていなければならない。
相手も仮に能力者に敵対する立場であるなら、先ずはその情報が欲しい筈である。敵を知ることは戦略の基本であるのだから。

低音を生かし、恰も重々しいように言葉を並びたてていく斬久の表情には、その実一つも内心が綻び出ることはなかった――――


「――ああ、宜しく頼んだぞ。
互いに、望ましい未来の為に邁進しよう。」

またしても、言っている斬久本人が斬り捨てたくなる、美辞麗句。
リアリストである彼からすれば、もし他人が同じことを言っていればお笑い草だが、自ら道具として使用しない道理はない。

「既に日が墜ちる頃合いだ。――また、何でも実が上がったら報告し合おう。
では、な……」

連絡先の交換を終えると、表通り方面に路地を進む斬久は、そう短く別れの言葉を継げるだろう。
彼が去り行った路地の入口すらも、既に殆ど影が支配する宵闇の領域であって。

"城ヶ崎 斬久"――連絡先に記されたそのメルキオール名家の姓を見て、果たして天地に思い当たることがあるだろうか。

//ここら辺で〆になりますかねー
550 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/17(金) 00:38:15.93 ID:lRX5K6TOo
>>547
「……そうよ、後から来たのは私。だって、普通の家に住むとみんなすぐに怒るんだもの、ここしかなかったの」

怒る理由は何となく察する事が出来るだろう。恐らくは彼女の周囲を這い回る蛇たちが、近隣住民に被害を及ぼすのだ。それ故に少女は、ここに来るしかなかった、と。

「……でも、そう。あなたも同じなのね、私の場所を盗ろうとするのね––––––」

イリヤーの答えを視て、少女の雰囲気が変わる。無機質なままに、それでいて肌の粟立つような、悍ましさ。

––––––––––––みし、みしり

少女の身体が"鳴る"。曇りのあった瞳はまるで生気を得たかのように輝きを取り戻し、ギラギラとそちらを射る視線は獣のような。
服の中で蠢いていた蛇たちが何を感じたのかぼとぼとと地面に落ちて、果ては頭頂にいた蛇までも地面へと逃避し、離れていく。

……そして、最後にそこに残るのは、漆黒の鱗でぬらぬらと光を照り返し、頭に一振りの角を生やした、全長10mを越す大蛇。

鎌首を擡げてシュルシュルと舌を動かし、牽制するように尾で地面をばしりと叩く、異形。それが、少女と同じ抑揚の無い声で、言うのだ。

「––––––それなら、あなたにも同じ事してあげる」
551 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/17(金) 00:55:03.85 ID:+YdoQPvu0
>>550
「……ならば戦うしかない。"彼"の名誉のためにも」

たかが不良、一人。よほどのお人好しでなければ、そんなもののために戦いはしないだろう。
だが彼はそういう人間だった。理不尽をきらう人間だった。
だからこそ、他人の理不尽のために戦うことができるのだ。

彼は少女の様子をジッと見ていた。しかし、明らかに様子がおかしい。
彼女は蛇を使役する"能力"とばかり思っていた。しかし……彼女の体は、徐々に人ならざる形を取りはじめる。
━━━━やがて一人の少女は、一匹の大蛇となり、少女と変わらぬ声で語りかけた。
明らかに能力ではないそれを、彼は知っていた。かつて会った者から教えられた、能力とはちがう異能の正体を。

「……"魔術"!」

彼は身構えた。下手をすれば、追い払われるだけでは済まないだろう。
彼は自分に"能力"を適用させた。彼の右側の瞳と手が、紅の光を帯び始める。
それは大いなる自然の力。神によって引き起こされる、偉大なる力。
山の炎、"火"属性。

「"火(プラーミャ)"」

彼は鎌首をもたげる怪物の腹に掌を向けて、始まりのゴングとばかりに炎の光線を放つ。
しかし、仮にも相手は少女。出力は弱めたが、相手はどう出るだろうか。
出力を弱めたことが、逆に裏目に回る結果になるかもしれない。

552 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA :2015/07/17(金) 00:56:21.51 ID:+YdoQPvu0
>>550
/申し訳ない、続きは明日お返しします。恐らく17時頃には返せるかと思います。
553 :天地 煉夜 [sage]:2015/07/17(金) 01:04:18.14 ID:orgN9TsXo
>>549
「フッ……そうだな。真実を見極めてみようじゃないか。魔術師の未来の為に。」

煉夜は、これからより一層、能力者の調査に奮闘するだろう。その先に彼は何を知り、何を見るのか。答えはまだ分からない。だが、彼の見据えている場所は変わらない。魔術師の未来一点。それだけは譲れない。

「……さて、鍛練の続きを……と、その前に奴の名を確認しておこう。」

連絡先の交換を終え、鍛練を再開。辺りが暗くなろうとも気にしない。いや、むしろより目立たなくなるので、その方が都合がいい。さっそく行動に出ようとするその前に、連絡先の確認をしようとスマホを見た。

「……城ヶ崎……奴が……」

ただ者ではないとは分かっていたが、あの名家城ヶ崎の者とは。だが納得だ。あれ程までに、侮れない雰囲気なのだ、無名という筈はない。
ちなみに、天地家も城ヶ崎家程ではないが、また名家である。この二人の出会いは、今後どのように作用するのだろうか――

/はい、ではここで〆で。絡みありがとうございました!





554 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/17(金) 01:33:51.80 ID:lRX5K6TOo
>>551

迫る炎を避けきれず、ばちりと鱗が弾けるような音と、ほんの僅かな煙臭さ。辛うじて直撃は避けたものの熱は確りと通ったようで、悶えるように大蛇は巨体をうねらせる。


「…………魔術?魔術ってなに?さっきから、分からない言葉ばっかり、使わないでよ!」

困惑するような言葉を吐きながらうねり続け、感情に任せて当てずっぽうに太い尾を振り回す。当たるかどうかは別として、ぶおん、と空を切る音を聞けば威力を推し量る事は容易い。
叫ぶような声と共に開かれる口には、長く鋭い牙が二本。大きさからして先程の不良を襲ったのはこの牙だろう、少女の口周りが血に塗れていたのは、不良があまりにも怯えていたのは、その為か。

「––––––嫌、痛い、聞こえない、剥がさないで、見えない、嫌わないで––––––」

こんな事は初めてだ、今までの人間は全部周りの皆を見て逃げるか、自分の姿を見て逃げるばかりだったのに。目の前のこいつは逃げもせず、能力まで使って来たのだ。
譫言のように言葉を羅列しながら、勢いをそのままに少女だった異形は其方へ這い寄り、鎌首すら擡げぬままに頭を……鋭い角を突き出す。
狙いも何も定めていない、兎に角追い払えればそれでいいという乱雑さ。攻撃に対する反応の鈍さや痛みへの耐性の低さからしても、明らかに"戦い慣れしていない"と分かるだろう。

>>552
//了解しましたー
555 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/17(金) 11:30:33.49 ID:63G0hEgQO
>>542
恨み辛みだけが男を生かす、怨念だけが男を鼓舞し、怨念だけが快楽と愉悦を与えてくれた。
いつしかそれが日常となった時、男の心は閉され、くすみ淀みきった瞳をするようになった。
声音だけが明るく、表情だけが明るく、どんどんと心は死んでいった。

————ぱさり。死者を辱めないための布か。それは男の顔を覆う。

嗚呼、この無情な世界に救いがあるというのならば、何故俺は救われなかったのか。
何故こんな力を持ち、何故死者を蘇らせ怨みに戦わせるのか、戦うのか。
もう、これ以上の怨みを抱え込むことは「くっさ!!!!!!!!!なんやこれ!!?!????」

顔にかかった布、もとい靴下を掴んで己の顔面から引き剥がす。
男の視界が開けたところで、次いで目に飛び込んでくるのは ————怨霊、もとい己の生み出した異形の姿。

「うっわ怖っ!!??ってオカンかい!!」

一頻り騒いだ後、男は自分が気絶していたことを思い出して辺りを見回す。
すると、一人の、否一匹の"鬼"が佇んでいる事に気付き「うっわ鬼がおるやん何やこれドッキリ!??!?」とまた叫ぶのだった。
夜明けのビル群に木霊する男の声は妙に剽軽で、今しがたまで起こっていた事は全てが悪い夢だったのではないかと思う程に。

しかし、気が付いた事は確か。
陽が差すにつれて、地面に転がった骸は淡い炎に包まれ、瞬時に灰となり、風に攫われ散っていく。
散り行く躯達を見送る事も無く、いたた、と声を漏らしながらふらふらと立ち上がり、乾き始めた血を拭いながら鬼へと声を掛ける。

「なんや、自分が助けてくれはったんか?」

地面に落ちた刀を拾い上げながら問う姿からは、相手への恐怖など微塵も感じられない。
ただ、一言。


「すまんな、格好悪いとこ見せてもうて……ありがとう、助かったわ」

素直に謝辞を述べるのだった。
556 :無銘童子 ◆Fff7L077io :2015/07/17(金) 11:50:16.79 ID:LH6RnJFh0
>>555
畏能が目を覚ますと、少し離れた場所に佇んでいた無銘童子は其方へと目を向けた。鬼の貌であるが故に表情を一つも変えることの無い正確な動き。
自らの姿をまるで当たり前のように受け入れるその男に対して、鬼は鋭利な歯をちらつかせながら口を開いた。──言葉が、紡がれる。

「──ふむ。俺の貌を見て尚、当たり前のように接するというところから見るとオマエはこういう異形の”取り扱い”ということに精通している。」

「───勘違いはしないほうがいい。
俺はオマエの味方であるわけでもなく、ただオマエという人材を”学園都市”に渡すのは惜しいのでな。
状況が良かったから結果的にこうなったものの、悪ければ俺はオマエ含めた全員の息の根を確実に止める予定だった。」

──そう、味方ではない。自らの”魔術師”の立場として”魔術”の利益の為に手助けをしたまで。
其処に”仲間だから”という仲良しこよしの思考は存在しない。──故に、その鬼は戦闘が終わった尚もその能力を解いて真の姿を晒そうとはしなかった。

……だが、彼が使う”異形”に興味が無かったかと聞かれ、違うと答えれば嘘になる。
鬼と怨念、形は違えど明らかにそれは性質的には似た異形である。……だから、接触した。

そしてその鬼は次にシンプルに問いかける。

「──その魔術は………………何だ?」


557 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/17(金) 15:21:07.79 ID:63G0hEgQO
>>556
「んな難しい顔して喋らんでええがな……別に"鬼くらい"普通やろ、探したら意外とおるもんや」

男はズボンについた土埃を払いながら、血が染みてしまった箇所を見て舌打ち。どうやらお気に入りのものだったようだ。
さておき、男は鬼の言葉に淡々と返答するだけで、煙草を取り出して煙を燻らせ始めるくらいには、落ち着いてきたようだ。
片足を引き摺りながらビルの壁まで行くと、背をもたれてずずず、と改めて座り込む。
ふぅ、と煙を吐き出す。

「勘違いも何もあれへん…あんたの顔、"興味湧いてる"っちゅー感じやで?」

へらへらと笑った後、男は助けてくれた礼の代わりと言うように、相手へ刀を見せる。
そして、その場地面をこん、と鞘先で叩くと ————またも、血生臭い匂いとともに、地面が変色し、腐食し、現れるのは、生首。
生首は、鬼を睨んだかと思えば ————瞬時、飛びつこうと牙を向く。
だが、それは叶うことなく、振り乱した長い髪の毛を男に掴まれ、暴れるように歯を鳴らしながらどす黒い血を撒き散らすのみ。
煙草をくわえ、顔を顰めながら、男は妙に悲しそうな声音で言うのだ。

「……俺の"妹"や。異形なんかちゃう、れっきとした家族やで」

「魔術、っちゅーんか?まぁ、俺のは秘術やな……怨みを現世に縛り付けて、それを扉代わりに何回もあの世から戻る、人でなしの業や」

「姉ちゃんとオカンとこいつ……めっちゃ昔に死んでんねん。最悪な殺され方でな……んま、俺はそれ使って商売してるドアホっちゅー感じ?」

そこまで言うと、男は妹と呼ぶ生首を引き寄せ、それを腹に抱いて押さえ込むようにしながら撫でる。

「すまんな、袂……堪忍してや」

めき、という篭った音の後、生首は大人しくなり……大人しくなった生首を日向へと投げる。
陽射しに当たった瞬間、それは宙で燃え、灰となり、散る。



「こないな力が、お前は欲しいと思うんか?えぇ?」

泣き笑いのような顔で、鬼に言う。
558 :無銘童子 ◆Fff7L077io :2015/07/17(金) 16:58:52.61 ID:LH6RnJFh0
>>557
「確かに”鬼”自体はシンプルな世界共通の憎悪の集合体ではあるが……まあいい、別に魔術の仕組みについて魔術師に話す必要もなかろう。」

──彼の魔術名は「鬼ヶ島」。様々な時代、様々な地域に存在する憎悪の対象である「鬼」を彼の身体を媒体として一極化した魔術。
解説兼余談にはなるが、その「鬼」の選定条件として、「無名」の鬼であるということがある。──故に、無銘童子を名乗る彼は「酒呑童子」や「吸血鬼」などと言った名前の残る鬼の様に抜きん出た特性は無いものの、雑魚である無名の「鬼たち」の良い部分を継ぎ接ぎのようにして強さを得ている。──シンプルにして複雑な力強さ。
代表例をあげれば彼の魔術の名の由来でもある「桃太郎」の”鬼達”をあげればわかりやすいか。
──と、上記の説明をするには時間がかかりすぎるので、無銘童子はその本質については口にしなかった。

「殺された…………⁇」


眼前の男が使う魔術は”怨念をこの世界に降臨させる”という、魔術の類ではあるが”異質”なものであることは彼の説明から理解できた。
然し、さり気なく、自然に男から吐き出された事実にその鬼は疑問を抱く。
──畏能は使役する妹、そしてまだ目にしてはいないもののもう二人の怨念は「最悪な殺され方」をしたと聞いた。
「最悪な殺され方」をした……、人生を崩された。何処か其れは自身にも当てはまると、無銘童子は頭に過去の自分を思い浮かべてみる。

「こんな力……か。その言葉を聞く限り、やはりオマエにはその”秘術”とやらで過去の怨念を繋ぎ止めることに若干の迷いがあるな。」

「──断言すると、俺とオマエは同じ系統の術者といえど明らかな差がある。」

──そうだ。この畏能という男の魔術は何処か自分に似ているのだ。
彼が扱う「鬼ヶ島」も、その原点を深く突き詰めれば、”自分の幸せ”を奪い取った”社会”に対する憎悪から生まれた魔術だった。
……まるで「桃太郎」のように善を振りかざす若者に……”両親”を殺された。──過去の出来事、過去の怨念に、その異能をもってして縛り付けられる。
──然し、彼らには決定的に差が存在した。

「……俺にはこの力を使うことに抵抗が一つも無い。この魔術もオマエが使うものと同じように様々な怨念が合わさってできた”無駄”と”後悔”の集大成だ。……でも、厭わない。

質問を質問で返す形で悪いが、俺からすれば”この力”で社会に”復讐”したいとは思わないのか?だな。」
559 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/17(金) 17:30:27.28 ID:63G0hEgQO
>>558
彼は ————鬼は、どれだけ壮絶な過去を送ってきたのだろうか。虐げられ、虐げられ、虐げられ続け ————あまりにも、悲し過ぎるではないか。
齢が幾分も離れた相手に突き付けられる己の迷いと弱さを、男は否定出来なかった。
否定しようもない、男は謂わば偽悪。
言い訳に言い訳を重ねた所で、本質は変わらない。


復讐したくはないか?


なんと甘美で、麗しい響きか。
それが成せるならば、どれだけ報われようことか。
一日一日が流砂の如く、それらに意味が出来るとしたらば、どれだけ救われる事か。
男は、妹の血に濡れた手を眺め、静かに、ただ静かに涙した。

「あー、煙草の煙めっちゃ染みるやんけ……くわえ煙草はあかんなぁ」

震える声でケラケラ笑いながら、鬼に顔を向ける。
その顔は、泣いていて、笑っていて、複雑なものだった。

「復讐したいか聞かれたら、そらしたいで?あぁ、したいわ!!めっちゃなぁ!!」

「……せやけど…なぁ……?」

「……怨みは晴れるかも知らんけど、家族は喜ばんやろ…?」

「そやから俺は、家族の怨みで、よそさんの怨みも悪い心も全部晴らしたんねん……えぇ銭にもなるしな」

最後は笑ってみせるも、煙草を持つ指は震える、何かに耐えているように鼻をすすっている。

「でも、あんたの怨みは否定せんで。好きなだけ怨み晴らしたらえぇ……好きなだけ暴れたらえぇ……そしたら、一緒に酒でも飲もうや、な?」

男はそれを最後に、刀をかき抱くように持ちながら大きなため息を吐き出した。



「体中ばっきばきや……鬼の兄ちゃん、ちょ、ちょいこっち来て……こら、一人で帰られへんわ……」

少しだけ、情けなくとも。
生きている。それだけは現実だった。
560 :無銘童子 ◆Fff7L077io :2015/07/17(金) 18:02:09.22 ID:LH6RnJFh0
>>559
堪え切れなくなった感情を吐き出す男を前にして、その鬼は無表情ながら目を瞑ってみる。
自らの記憶の断片にピッタリと今の畏能に当てはまる少年の姿があった。家族の死を前にして、泣きじゃくりこれからどうするべきかわからないで困惑している…………かつての自分が。
自分の魔術を理解し、そしてそれで人を殺めて……泣いているのかよくわからない顔で死体を嗤う……自分が。

然し、この年齢にして既に其れ等を乗り切った無銘童子は至って冷静だった。思うところがあっても、一つも表には出さなかった。──きっと、鬼の貌の下にある自分は、今にも泣きそうなくらいに彼の心に寄り添っているというのに。

「───そうか。
感情、性格の点においても我々は決定的な差があるらしい。
……俺はとうの昔に”誰かが悲しむ”から……何て事は捨て去った。とっくの昔に人間という生き物が振りかざす偽善を理解した。」

……眼を開く。正直、ここまで人生という物を達観している自分が嫌いだった。まだ若い癖に、馬鹿みたいに悟りを開いた自分が憎かった。
──でも、そうしていないと、今にも心が壊れそうで。こんな感情はとうに乗り越えた筈なのに、目の前の男を見ていると何か思い出してしまう。

「……だから俺は、ありとあらゆる偽善を消す。……悪を消すんじゃ無い。悪を誕生させる元凶たる偽善者を、この手で切り捨てる。」

「──”桃太郎”という童話を知っているだろう?主人公が”取り敢えず”「悪者」に仕立て上げられた鬼を殺し、日々の平穏を取り戻すという物語だ。

……鬼達の暮らしを知ろうともせずに周りの風潮に流され、容赦なく斬り落とした。。悪だ悪だと囃し立てられ、偽善を奢る勇者に斬り捨てられた……!

そして其処に残ったのは子供の鬼だった。両親を無慈悲な正義で斬り殺され……、でもそいつはしょうがないと割り切った!!……馬鹿な奴だ。
然し其奴は育つに連れて怨みを持つようになる……それが今の俺だ。……過去の怨念を武器にする卑怯者の俺だ。」

話すに連れて口調が早くなり、そして鬼の声色が強くなっていく。畏能の元へは近づかない。


「──だから。勘違いはするな。俺はオマエの仲間ではないし、オマエが怨念をもってして悪を[ピーーー]と言うならば俺は間違いなく敵になる。

……だから………!!……さっさと失せろ。」

……感情を抑えきれなかった。だから、その鬼はまるで逃げるように言葉を吐き捨て、その場から去っていく。
自分と似た境遇の人間を、初めて見た。……故に感化された。こいつは俺と同じである……と。
……出来れば殺したくはない。然し、同じ怨念を扱えどそれを他人の怨念晴らしに使う者と自分の復讐に使う者、とでは圧倒的な差がある。
……其処に残ったのは、血にまみれた畏能と、それに投げかけられた言葉の、余韻だけだった。


//すみません!かなり強引なのですがここら辺で締め……でよろしいでしょうか……
561 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA :2015/07/17(金) 19:48:47.81 ID:+YdoQPvu0
太い尾の一撃が彼の眼前を通り過ぎる。その擦る音、尋常ならざる威力だという事は容易に理解できる。
彼女が大きく開けた口から覗く牙は、言い様のない威圧と恐怖を感じさせる。
彼は攻撃に備え、新たなる属性を自らに適用させる。紅の光は群青へと変わり、能力となる。

「"水(ヴォーダ)"」

すぐに攻撃が飛んでくる。しかしそれは何か"攻撃"というには余りに雑な精度。
彼女の言葉といい、何か戦い慣れていない様子を窺わせる。

彼は飛んできた角の攻撃を横飛びに回避し、水の噴射により押し返そうとしたが……
彼女の何やらただならぬ様子に、彼は一旦攻撃の手を休めた。

「……戦いは初めてか?」

彼は再び、属性を変更する。
群青の光は再び紅となり、赤い右目は蛇となった少女を見つめる。

「その痛みも恐怖も、彼が味わったものだ。……わからないだろうな、そちらには」

当然だ。この様な大蛇、見つけた瞬間に普段の自分なら逃走していただろう。
しかし今はちがう。彼女とは戦う理由があるのだ。そのためには、勇気を振りしぼって戦う事ができる。

対して彼女は、降りかかる火の粉を払っているに過ぎない。戦いの覚悟などあるはずはない。慣れない戦いにただ怯えている。
だがそれは"因果応報"とも言える。
他人からものを奪う事は、他の誰かに奪われる事も覚悟しなくてはならない。

彼はそこで、ひとつの提案をする。

「……彼にあれ以上危害を加えないと約束するならば、これ以上は攻撃しない。私も君に謝罪しよう」

「……どうだ?」

彼女からすればこの提案は、攻撃さえしなければもう襲われない、至極単純なものだ。
しかし、この提案に乗ってくる事はあまり期待できなかった。ここは今、"彼女の場所"なのだから。
562 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA :2015/07/17(金) 19:49:24.13 ID:+YdoQPvu0
>>561
/>>554宛てです
563 :メルラン=ウォル=ラクトムル [sage]:2015/07/17(金) 20:07:42.52 ID:PhERIjlH0
日が落ち始めてきた学園都市。
この時間帯から徐々に街には光が増えていく。その光に彩られた繁華街はまるで現実ではないかのような錯覚をもたらす。
しかしそんな光が届かない場所もある。そしてそういうところには大抵面倒ごとが転がっているものである。

「ちょ、返しなさいよぅ!!」

『誰が返すかよ〜、はははっ!』

そこに居たのは1人の少女と二人の男たち。男の1人は目の前の少女から奪ったのであろうウサギのぬいぐるみを空へと突き上げていた。身長差があり少女が飛び跳ねても届かない距離にある。少女はそれを懸命に取ろうとするがやはり届くことはない。

『餓鬼が年上に生意気な口聞くからこうなるんだよ!悔しかったら取ってみろよ』

恐らくただの不良だろう。
いつもならこんなもの簡単に蹴散らすことが出来る。だが魔術のキーであるぬいぐるみが無くては魔術の発動すら出来ない。つまり今のメルランはただの子供と一緒ということだ。

「このっ!このっ!」

『ばーか、届きゃしねぇよ、がははっ!』

ぬいぐるみをみすみす奪われてしまった自分の爪の甘さといつも下に見ていた存在にこのようなことをされている恥辱感で、メルランはもう今にも泣き出しそうな状態。
果たしてこのような現状を救ってくれる誰かは現れるだろうか。
564 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/17(金) 20:24:42.34 ID:LH6RnJFh0
>>563
「─────おっと悪い、手が滑った。」

何処からか、不良の頬へと右拳が突き刺さった。
そしてその拳の持ち主……高天原いずもの姿が、メルランの瞳にも映る事だろう。
その番長もどきは、数メートル程前の地点で能力を用いて……加速して、そして飛来して、自慢の拳を一人の不良へと叩き込んだ。凄まじい助走と共に叩き込まれたその一撃は、不良を吹き飛ばし、近くにあったゴミ箱へと見事に入れて見せた。

「……お、ナイスショット!!」

──次に高天原いずもはもう一方の不良の方を睨む。縫いぐるみを高くに掲げ、少女を嘲笑っていた方の不良だ。

『──ひぃぃいいいいいいいいいいい!!!!!』

その馬鹿力を見せつけられて。大した能も持たないその不良は、吹き飛ばされた仲間を気にかける事もなく一目散に逃げ出した。
無我夢中にその場から立ち去ろうとしたために、そもそもの元凶たる縫いぐるみは地面に落下した。

番長スタイルの少女はその縫いぐるみを拾い上げ、今にも泣き出しそうだった少女の方に向き直る。

「…ほらよ!良い縫いぐるみじゃねーか、大切にしないと駄目だぜ?」

爽やかな笑顔と明るい声と共に、その縫いぐるみを少女の前へと差し出した。

//よろしければ!



565 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/17(金) 20:38:48.34 ID:lRX5K6TOo
>>561
結局攻撃は一つも当たらず、苛つきは募るばかりで。戦い慣れていない少女は未だイリヤーの相手になる強さなど持ち合わせていなかった。
更には言葉も通じないのか、疑問にも答えて貰えずに一方的に言葉を投げかけられる。分かる訳が、ない。
しかし、最後に出された提案は

「––––––…………ほんとに?」
「ほんとに痛い事、しない?」

ぴたりと異形の動きが止まる。蛇の鋭い眼光で傍のイリヤーを見あげ、表情こそ無いがまるで懇願するような。
余程痛みを嫌っているのだろうか、見る限りでは先程の攻撃もあまり大きなダメージは与えられていないようだが。

「さっきの人に噛み付いたりしなかったらいいの?そうしたらもう痛くしない?ほんと?」

普通ならばまず受け入れない条件にも関わらず、少女はあっさりと引き下がってしまう。ゆらゆらと左右に小さく揺らめく姿は、心情を表しているような、そんな風にも見受けられる。

少女にとっての優先事項は"痛みを受けない事"なのだろう、イリヤーが嘘だとしても「そうだ」と言ってしまえば、きっと異形は大人しくなるのだ。
答えを急かすように、ぐいと頭を持ち上げ擡げ、口を開いた。
566 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/17(金) 20:42:40.53 ID:PhERIjlH0
>>564

「もうっ!返し──」

もうメルランの我慢が限界を越しかけたその時────
不良の一人が突然消えた。いや消えたのではない、吹き飛ばされたのだ。
1人の人間の手によって。

「あ、あなた何を──」

目の前に現れたのは男──いや女だ。男物の服を着ているが声や容姿から目の前の人物が女だということがわかる。
しかし人一人をあそこまで吹き飛ばすなど普通の女性には決して出来ないだろう。だとすれば恐らく能力者。
その力に恐れをなしたのか先ほどぬいぐるみを高く掲げていた不良の方はぬいぐるみを地面へと投げ捨て逃げ出した。
そして女性はそのぬいぐるみを拾い上げ、こちらへと返してくれた。

「あ、ありがとう……」

いきなりの出来事にどう反応すれば分からなかったが、とりあえずお礼を言いぬいぐるみを受け取る。
良いぬいぐるみと言われ恥ずかしかったのか顔を赤くして受け取ったばかりのぬいぐるみに顔を埋める。

「どうして私をその…助けたの…?」

「私とあなたは知り合いでもないのに……」

どうやらどうして自分を助けてくれたのかが気になっているらしい。
メルランはいずものようなタイプの人間には会ったことがない。それ故になにか見返りを要求してくるのではないだろうか、もしや金を巻き上げに……、とそんなことを考えながら恐る恐る目の前の女性へと聞いた。
567 :高天原いずも ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/17(金) 20:58:22.04 ID:LH6RnJFh0
>>566

「──ん?何で助けたかって?……
……うーん。そんな当たり前の事を突き詰められてもなぁ……」

ぬいぐるみに顔を埋め、そして其処から少しだけその眼を覗かせつつ問う少女。
少女からしては「初めて」であるから彼女の行為には疑問を抱くのだろうが、番長自身からするとこの行為は「当たり前」の人助け。
──日常で当たり前のように行っている行動に「理由」を求められたなら、上手くは答える事が出来なかった。
だが其処は高天原 いずも。ただ心に浮かんだ事実をそのままに口にする。

「…強いて言うなら、キミが困ってたから?
……ってか、人助けにそれ以外の理由ってなくね?」

番長少女はまるで漢らしく見せるように少女の前で腕を組んで見せながら、言葉を発した。
──そう、それは単純な”行動原理”。困っているように見えたから”取り敢えず”助けに駆けつけた。……番長ってそんなもんだろ?と軽く、かつ強引に結論付けた。
見返りなんて必要はない。無理矢理にでも挙げるなら、彼女にとっての報酬は人を助けたという事実を前にして自己満足を得られること。……それだけでいい。

「………そういや、一応名乗っとかないとアレだな!オレは高天原 いずも!!この学園都市の番長になる予定だ!」

深紅の鉢巻を額に巻いた学ラン服の少女は、ふと思い出したように自己紹介をした。
568 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/17(金) 21:22:07.61 ID:PhERIjlH0
>>567

「私が困ってた…から…?
そ、そんな理由で…?私から見返りとか……」

そう口に出すが恐らく目の前の女性がそんなものを求めていない、そのことをメルランは何となく感じ取っていた。
しかし目の前の女性は恐らくではあるが能力者、始末すべき敵。
なのにそんな相手に助けられるなんて……
しかしあのままこの女性に助けられていなければ──

「……変な人…」

思わず声に出してしまった。
慌ててぬいぐるみで口を隠すが時既に遅し、一度口に出したことは取り消せない。
助けてくれた人物にこれはあんまりだと思い、小さな声で「ごめん…」と一応謝るが聞こえているかどうか。
普段ならば能力者相手には高圧的な態度を取るメルランだが、なぜだかこの女性を相手にしていると調子が狂ってしまう。
律儀に名前を名乗るいずもというこの女性。名乗られたのに名乗らないのは流石に失礼どころではない。ぬいぐるみから顔を離し、一回咳払いをしてからメルランは名乗ることにした。

「メルラン……メルラン=ウォル=ラクトムル ……」
569 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/17(金) 21:35:36.53 ID:LH6RnJFh0
>>568
「見返りなんて求めねぇっての!
キミが言う通り、オレは変な人だからな!ははっ!」

頭を軽く掻きつつ愉快に笑いながら少女と接する少女。
恐らくメルランの方も感じ取ってはいるだろうが、この高天原いずもという人種は馬鹿であり、鈍感であり……つまり色々な所に疎い。
変な人、何て言われても微塵にも思わない。何より自分が馬鹿で変な人なのは自分がよく分かっているが、故に。

「め、るら、ん……おおーメルラン!!
やっぱ外国人さんって皆、beautifulな名前なのなー。」

英語の箇所だけは妙に流暢であった。
馬鹿みたいにノリで会話が始まったら、もう完全に彼女のペースである。


「そういえば何より気になってたんだけどよ、メルランは何でこんな危なっかしい所に?」
570 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/17(金) 22:03:36.04 ID:PhERIjlH0
>>569

「本当に変な人……」

恐らくこの高天原いずもという女性は裏表など全くない、本当に心からそう思っている。なぜそんなことが出来るのか、自分の利益を顧みず、人の為だけに動く。なぜそんなことが──

「な、なんでそこだけ流暢なのよ……
ほんと、あなた馬鹿みたいっ」

気付けば自分は笑っていた。こんなに会話が弾んだのはいつ振りだろう。
「楽しい」、そう思ったのだ。今までならこんなことあるはず無かったのに──
しかしその後のいずもの言葉でそれもすぐに消えることとなるのだが。

「何でってそりゃ能力者の排──」

そこまで言いかけたところでメルランは口を止める。
これを話せばいずもはどう思うだろうか。
──いや、迷うことはない。元はと言えばいずももまた「敵」なのだ。排除すべき存在なのだ。ならば迷うことはない。

「……能力者の排除よ
あいつらを殺そうとしてたの」

メルランはそうただ冷たく言い放った。
571 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/17(金) 22:10:38.55 ID:+YdoQPvu0
>>565
「そうだ。……私も物騒な事はできるだけしたくはない」

返答はYES。
少女は、これ以上痛めつけられたくないだけなのだろう。
人からものを奪った者とはいえ、それは少女なのだから。

「……彼を追い詰めなければそれで良い。奪い合いは最も……愚かな行為だ」

何故、怒りに燃えていたはずの彼が、ここまであっさりと彼女を許したのか。
それは彼に、それ以上に気になる事があったからだ。

「ところで、その大蛇の姿だが……」

「……君は、本当に能力者なのか?」

バッサリと核心に触れる。
特性、で判断したというわけではない。だがその異能は、明らかに何か能力とは違うものを感じる。
前までの彼なら「変な能力だ」と切り捨てていたのだろうが、今の彼は「知って」いた。
その違和感の正体を。



572 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/17(金) 22:17:16.94 ID:LH6RnJFh0
>>570
「んー?………能力者の排除……となると、お前さん、魔術師って奴か?」

場の雰囲気が、少女の一言でガラリと変化したのが、彼女にも分かった。
……予備知識が無い状態であれば「能力者の排除」と聞いても馬鹿馬鹿しく嗤っていただろう。
──然し。今現在の彼女は数ヶ月前の無知な自身とは違う。とある魔術師達との接触で、「魔術」という異能の存在……そしてその危険性はある程度は理解しているつもりだ。
その危険性を踏まえた上で、その番長少女は更に踏み込んだ話をする。

「んー、となるとやっぱオレは敵になっちゃうわけ?……怖いもんだなぁ

因みに聞いとくんだが、そんな風に排除とかいってると不味いんじゃねぇか?
オレが接触した魔術師数人はなるべくオレたち能力者にその存在が知覚されないようにひっそりとしてたぞ?」

でもその話を進める上で、自分が彼女の敵である事が判明した今でも高天原いずもという少女は普通に接していた。
何もわからないくせに、アドバイスめいた言葉を「敵」に向けて発するその少女。特に思惑があるわけでもなく……いうならば馬鹿、だった。

「んあー……もしかしてもしかすると……。ここで話したからにはもう消さねばならない!みたいな展開……だったり……しない……よな?」

573 :獅子・トラ子 ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/17(金) 22:31:49.43 ID:Q++y8Ff1o

……────何時もは騒々しい大通りは、今沈黙と戸惑いに包まれている。
なにせ黒夜堂々起こった暴徒騒ぎが即座に鎮圧されれば……”普通の少女”に鎮圧されれば

周囲の学生たちは棒付き飴を加えた少女の姿を見つめていた。
呻くモブ達のオブジェの中心、少女は、舞台女優の如く、背中まで流れるポニーテールを揺らした。

「ハッハッハッ!!! さぁ見てくれ観客諸君、私がこいつらを叩きのめしたぞ」

その視線に恥じることなく少女は更に胸を張る。手を広げれば更に視線を求めるように
雄々しくニヤリと嗤うのであれば、観客は怯えるように輪を作る……あぁ、だが少女は動じない

「奴らを倒したのは獅子・トラ子。”正義の味方”だ!!」

自らの道に間違いは無いと言わんばかりに、世界に己の存在を主張する。
そして足元のホッケースティックをヒョイと拾えば、彼女はグルンと演舞のようにソレを振るった。

クの字の先端は、真っ赤に血に塗れてた

/絡み募集しますっ

574 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/17(金) 22:37:32.28 ID:lRX5K6TOo
>>571
イリヤーの言葉を受け、少女は安心したように魔術を解く。そうすれば再びの軋む音の後で、少女はすっかり元どおりになってしまった。
ただ一箇所だけ脇腹辺りに、元どおりでない場所。チリチリと服が焦げ付いているのは、恐らく先程の攻撃によるものだろう。

「––––––わかった、私はもうしないよ」

愚かな行為だとか、難しい言葉はするりと受け流して。ぱたぱたと服の汚れを落とす様子は、先の不良の時と全く同じ。
鋭さが消え煙った瞳でじぃっとイリヤーを見上げ、やっぱり質問ばかりだと不満を顕にしながら答える。


「多分能力じゃないと思うけど……何なのか、分かんないの」

しかし、その答えは恐らくイリヤーの望むものではない。魔術であろうと感じる異能を駆使しながらも、それの正体は"分からない"のだ、と。
それ以上は何も語らず、ただ只管にイリヤーの顔から視線を外さない。気付けばさっき逃げた蛇たちが、ずるりと這って再び少女に近寄ろうとしていた。
575 :メルラン=ウォル=ラクトムル [sage saga]:2015/07/17(金) 22:44:10.95 ID:PhERIjlH0
>>572

「そうよ、魔術師。
どうやら魔術師の存在は知ってたみたいね」

どうやら魔術師という存在をいずもは知っていたようだ。そして更にいずもは言葉を重ねる。その言葉からいずもは以前に他の魔術師と接触していたようだ。
そしてその魔術師達はどうやら見つからないようひっそりとしていたようだ。
バルタザールかメルキオールか、だがそんなことは関係ない。
自分は自分の仕事を全うするだけだ。
能力者は自分たち魔術師に危険を及ぼしかねない「敵」だ。

「魔術師にも派閥みたいなものがあるのよ。私は能力者の危険性を確認して、そして能力者は危険だと、魔術師に害を及ぼしかねないと判断したわ。」

「だから能力者を排除する。魔術師のためにね」

どうして自分の正体を晒しているのにいずもは先ほどと同じように接してくるのか。
その理由が分からず、そして自分の中にあるモヤモヤした気持ちに苛々していた。
なぜこんな気持ちになるのか。なぜこんなにも──

「さぁどうしようかしら?
でもそうね、魔術師の存在を知っているようだし──」

これも全部このいずもという女のせいだ。
きっとこいつを殺せばこの気持ちも収まる。その筈だ。

「殺そうかしら?」
576 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/17(金) 23:03:44.54 ID:LH6RnJFh0
>>575

「……なんかさ。どっかズレてんだよなぁ魔術師達ってよ。
オレが馬鹿だから理解できねーだけなのかもしれないんだが、オレ達の何がお前らにとって危惧すべき存在なんだ?
オレ達が魔術師達の道に介入してしまう事か?それとも能力とかいう便利なもんがあったら魔術師としての威厳が保てなくなるから…か?

──でもそれってさ、メルラン。”魔術師”という全体の総合的で独断的な総意に……利用されてるだけなんじゃないのか?」

其れは魔術師と接触してから、ずっと胸の何処かにつっかえていた違和感だった。
”魔術師”は何をもってして”能力者”の事を危険な存在であると認識するのか。……そして其れを何故排除しようとするのか。
高度な思考を持ち合わせて居ないが故にたどり着いた違和感。彼女にはどうも、この都市に潜入する魔術師…特に能力者の排除を目的とする魔術師が……何処か、何者かの手駒として操られているように思えていた。

「……殺されるのは……やだなぁ。
どうしてもってんならオレは此処からは逃げないよ。
………ただこれは無駄な戯言と思われるかもしれないけど、オレはお前とは戦いたくないなぁ」

其れは僅かではあったが、先程彼女の笑顔を目に映したからだった。叶わないかもしれない願望を、一応その番長は口にしてみた。
577 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/17(金) 23:03:48.44 ID:+YdoQPvu0
>>574
「君は、何かと気になる事が多いからな」

路地裏にいて、不良を倒し、蛇となり、明らかに能力と違う何かを使う、文字通り謎に満ちた少女が相手なのだ。
質問ばかりになるのも仕方ない。彼は少女の顔から質問責めであることを自覚した。
そして。質問の答えは、何やら不明瞭なもの。彼は考え込む素振りを見せた。
しかし、本人が多分能力でない、と感じているのであれば、それは恐らく能力ではないのだろう。
自らの力が能力であるかそうでないか、それを知るのは自分が最も確かだ。それが不明瞭となると、違うという可能性は高い。
彼は口を開く。

「……私が知る限り、おそらく、君のそれは"能力"ではない」

「私もよく知らないのだが、"能力"の他に、この世界には"魔術"という別の力があると聞く」

「君は、何か心当たりはないか?」

学園都市の外で異能を使う者を見たことがある、もしくは彼女が、幼少からそれを使えたのだとしたら、その可能性は確固たるものとなるだろう。
しかし余り期待はしていなかった。"能力"育成の場、学園都市にいる以上、自分のそれが能力でないと感じつつも、能力だと思い込んでいるであろうからだ。
578 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/17(金) 23:31:38.36 ID:lRX5K6TOo
>>577
「その魔術っていうのが、どんなのか分かんないんだけど……心当たりって言われても」

考え込む素振りを見せて、少女は黙り込んでしまう。能力と魔術の違いを理解できていない以上仕方のない事ではあるが、如何せん、長い。
すっかり蛇が近付いて、器用に少女の足を登り始めた頃に漸く、何か思う所があったのか口を開く。

「ただ、私は小さい頃からずっと"こう"だったの。能力ってみんな、少し大きくなってから憶えたんでしょ?だから、能力とは違うのかなって」

魔術かどうかは、分かんないけど、と。皆と違う為に共感出来ず、孤立し、挙句こんな所に引きこもっているのだろう。
それ以外にも理由は幾つか有りそうなものだが、それはそれ。取り敢えず今、聞いた限りではこの少女は魔術師なのである。

「……ねぇ、さっきから魔術って何回も言ってるけど、それって何?魔術を使う人には、私と同じ人、居るの?」

至極当然の質問であるが、明確な答えを求めている訳では無いようで。こんな場所に居ようとも見た目は幼い少女だ、きっと心細さもあるのだろう。
今までは蛇たちでそれを誤魔化していたのかも知れないが、自分と同じかも知れない存在を知ってしまえばもう、満足する事は出来ないのだ。
579 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/17(金) 23:33:12.78 ID:PhERIjlH0
>>576

「利用…?そんなわけない…そんなわけないっ!!
あの人たちは私に希望をくれた!居場所をくれた…!そんな…そんな人たちが…!そんな筈ない!私は全ての魔術師のためにやらないといけないの!利用なんかされてない!私は自分の意思でそうしてるの!だから利用なんかされてないっ!!」

それは最早子供の言い訳。図星を突かれたからこその言い訳。
本当は分かっていたのだ。分かっていてそれを認めずにいた。認められなかった。自分がただ利用されているだけなんて────

「うるさい…うるさいうるさいっ!!
私は間違ってない!私は間違ってなんかいないっ!!」

ついにメルランの感情が弾けた。魔術師だとしてもメルランはまだ子供。子供の精神にはキツすぎた。
最早いずもの言葉も頭に入ってこない。涙を流し、ぬいぐるみを強く抱き締め、メルランは魔術を使う。
地面が盛りあがり、土がなにかの形を創っていく。やがてそれは獣のような姿になり、獣のゴーレムが出来上がる。
創り上げられたゴーレムの数は2体。どちらも中型だ。

「殺して…!あいつを殺してっ…!!」

命令を聞き入れ、それぞれのゴーレムはいずもの元へと駆け出す。最早言葉が通じる状態ではないことは見ての通りだ。
2体のゴーレムは土の牙をいずもに突き立てようと前方から迫っていく。
だがしかしその動きは比較的単純。恐らく喧嘩をしたことがない一般人でもその軌道を予測することは容易いだろう。
580 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/17(金) 23:45:39.52 ID:+YdoQPvu0
>>578
「小さい頃から……」

自分に能力が発現したのは数年前。学校でも、数年前に突如発現したものと教えられてきた。
少女の幼少、というのが何年前かはわからないが、自分で小さい頃、と言っている以上、それより前である事は確か。
彼は頼りを得たように、少女に告げる。

「ならば君のそれは、魔術だ」

とはいえ、自分にも魔術と能力の違いなどわからない。
同じく異能を人の身で操る人間、人ならざる力。そこに能力も魔術も違いなどないというのが彼の解釈だった。

だからこそ、彼女の質問には答えかねた。
自分は魔術もではなく、ただ話を聞いただけ。
しかし彼女の次の質問には答える事が出来た。

「いる。君と同じく、魔術を使うものは確かにいる。」
「魔術が何かは、私にもわからない。だが、その人に会ってみれば、教えてくれるかもしれない」

彼は、少女の質問に全て答えられない事に申し訳なさそうな顔をしながらも、彼女と同じ魔術師は確かにいると伝えた。

「レイカ=ウィルソン。……高校の研究員だ。私はその人に聞いた。」

話を聞くまで、その人が魔術師だ、などと思ってもみなかった。
だからこそ、少女は学園都市でも十分な生活ができるはずなのだ。
たとえ人と違ったとしても、このような路地裏で暮らす必要など、どこにもないのだ。
581 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/17(金) 23:51:27.68 ID:LH6RnJFh0
>>579
「………………だから。
お前の今の感情含めて、全てそうなるように”魔術師”全体の総意に巧みに操られてるんじゃねぇのか?そう言ってるんだよ、メルラン。」

涙を頰に伝え、自らの感情を爆発させるメルラン。然し、彼女のこの行為で高天原いずもは彼女なりに確信した。
魔術師を排除しようとする者の中には、争いを好まない……もしくはその争いの理由がわからずただそういう思考を選ばされている者が、居るということを。
──だからこそ、この試練は乗り越えねば成らない。生命を絶たんと無慈悲に襲い来る土の造形の脅威を……潜り抜け無くては……!!

───”番長”を名乗るその女は、自らの右拳を、限界まで握り締める。爪が食い込んで、出血する程に力強く……その拳を──。

───自らの神経と能力を……右拳の一点に。


「───おおおおおおらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

攻撃こそ最大の防御なり。其れを体現する彼女のシンプルかつ高火力の能力は、相手が単調な動きをすればする程に精度が上がる。
超火力の火種を持った右拳を、迫り来るゴーレムへと打ち込むだけ。──つまり、相性が良い。

彼女の右拳がゴーレムに突き刺さった瞬間、凄まじい轟音と爆風と共に、二体のゴーレムの土の体が崩壊する。
大地の力に、其の番長少女は圧倒的爆発力で応戦した。然し、その強さによる代償が無い訳でもなく、彼女の右手の親指は焦げたように変色している。

「………アレが幾つも出されるとかじゃねぇだろうなぁ…流石に指が持たん。」

彼女は自分から攻めようとは……しない。
582 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/18(土) 00:14:48.35 ID:vFhoCffr0
>>581

「うるさい!もう喋らないで!
これ以上私をおかしくしないでっ!!」

既にもうメルランの頭はパンク寸前。これ以上何かを言われればそれに堪えられるだろうか。いや、耐えられるわけがない。
子供のその精神で耐えられるわけがないのだ。
自分の今までが全て否定されることになるのだから。そんなことに耐えられる筈がないのだ。

「邪魔っ!消えろ!!」

次に生み出されるのは三体の小型のゴーレム。しかもそれは鳥の姿をしている。今度は壊されないようスピードで、確実にダメージを与えていく算段だ。
だが相変わらずその動きは単純。メルランの精神状態に影響しているのだろうか。
とにかく今のメルランのゴーレムで幾ら攻撃したところでそれは簡単に崩せてしまうということがわかるだろう。
しかしゴーレムは懲りずにいずもへと一直線に突撃していった。
583 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/18(土) 00:15:47.71 ID:WCH9FPRMo
>>580
「……そっか。これは魔術で、同じ人も、いるんだね」

良かった、と胸を撫で下ろす。もしこれで"同じ人"が居なければ、正真正銘少女は孤立してしまっただろうから。
流石に同じような経験をしている人は居ないだろうけど、とは口にせず。
続くイリヤーの言葉に、真剣な表情で視線を向けながら、少女は続ける。

「わかった、じゃあそのレイカ?って人、探してみる。どんな人か教えて」
「探して、魔術って何なのかきいてみるよ……それで何か変わるなんて、思わないけど」

ついに肩まで登りきった蛇に触れながら、それでも見るからに今までより真面目な態度で。少女自身、気になっているからでもあるのだろう、あどけない見た目にそぐわぬ真面目さは些か滑稽ではあったが。
それでも確かに"分からない"から"魔術かも知れない"まで進歩したのだから。こうなればとことん突き詰めてやろう、そう思ったのだ。
584 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/18(土) 00:31:37.08 ID:1wLoATbi0
>>582
「こ、こりゃあどうすれば…………」

正直、こういう精神状態の相手との戦闘は不慣れだった。普段から不良を相手にして、肉弾戦で全てを解決している彼女にとってこの状況は非常に不味い。
戦闘に於いてはメルランの精神状態を加味すると間違いなく番長の方に軍配が上がるといえよう。
──然し。彼女の技の火力が強すぎるが故に、自分よりも5歳も下の少女には全力では戦えない。
そして、何よりこの能力は強さの制御が難しい。

「……ちっ…………!方法が浮かばねぇ!!」

飛来する土の鳥を引きつけ、そして其れが自らに当たる前に拳を地面に叩きつけた。
──バゴン!地面に円環状の亀裂が入り、爆風が巻き起こる。爆風と共に巻き起こるコンクリートの無数の破片の礫が、鳥を撃墜した。
でも。攻撃を防いだとて、状況は変わらない。彼女の能力の火力が強すぎるが故に攻撃手段が無い。

「……風紀委員やらそこらへんがこの状況を見つけてくれるのを待つしか……ないか?」

風紀委員など学園都市の多くのことに関わる人物が現れれば、魔術師たる彼女は退散せざるを得ないだろう。
攻撃を防ぐのは楽……であれば、ここは時間を稼ぐしか…ない。
585 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/18(土) 00:47:48.45 ID:CX1Atnwc0
>>583
「……他にも沢山の魔術師がいると聞いた」

彼女の態度から、何か彼女のただならぬなにかを感じ取ったのか、他に沢山の人間がいるであろうことを付け加える。

彼はその後、彼女の真剣な態度を見る。
信じる気になった、という事だろう。
その気持ちに応えるため、出来る限り詳細に、彼女の情報を伝える。
普段は担任であるのだから、細かなところまで思い出す事が出来た。


「所属は先刻言ったように、第一高校。女性で……そう、メガネが分かりやすい……クールな人物だ」

しかし悲しいかな、彼の日本語力ではそれを細部まで説明するのは難しい様だった。
だが彼女は実際、メガネを掛けたクールな女教師という印象が強いので、そういう意味では非常にわかりやすい説明と言える。
……何も知らない人物に対する説明としてはいささか無理があるが。

「……そんな所だ。"魔術"について、これ以上私は何も知らない」

586 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/18(土) 00:55:20.61 ID:vFhoCffr0
>>584

「早く…死んで、よ……!」

先ほどからメルランはかなり魔翌力配分が適当になっている。過剰にゴーレムに魔翌力を割り振り過ぎているのだ。そんなことを続ければいずれは魔翌力が切れるのも時間の問題。だが今のメルランにそんなことを考えられる余裕はない。

「なら、これで……!終わらせる…!」

小型でも中型でも通じない、なら後は大型だけ。だが今大型のゴーレムを出せば、ただでさえ大型は魔翌力消費の激しいのに今メルランは魔翌力の配分が上手くできない。魔翌力がすっからかんになるのは目に見えている。
だがまともな思考が出来ていないメルランはそれを使う。ただ自分の中のこの気持ちを鎮めるために────

『ウガアァァアアッッ!!』

現れたのは人型、それも全長7メートルは優に超えていた。
体を硬いプロテクターのようなもので覆い、さながらそれは鎧を纏った兵士。
土の兵士はその大きな拳をいずもへと向かい振り抜く。圧倒的質量と力から繰り出されるその拳は当たればタダでは済まないだろう。しかしこの攻撃かなりの大振り。避ければ土の兵士には多大な隙が生まれることだろう。
587 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/18(土) 01:10:18.07 ID:1wLoATbi0
>>586
「……!…………そうか、魔術ってのにも能力と同じように力の限界ってもんが有るはずだ。……其れを引き出せれば……!!」

──たった一筋の光明。風紀委員の目を引く……というのは風紀委員が気づかないのであればどうしようもないため、かなりの運要素。
然し、相手の魔翌力を消費させるというだけならば彼女一人でもできる……!
改めて、高天原いずもはメルランの正面に立ちはだかった。

「壊せるか……⁉︎……くそ‼︎
…迷ってちゃダメだ!……うおおおおおおおおああああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!」

ダン!彼女の裏がしっかりと冷たいコンクリートの地面を捉え、そして力強く支える。
馬鹿でかいゴーレムを前にして、自らの能力じゃあ及ばないのではないのかも知れないという懸念で、彼女の反応は僅かに遅れた。
大きな土の拳と、番長の拳が激突する。凄まじい轟音と共に巻き起こる轟音……土の破片。

「……くっそ!遅れちまった!!……!っで!!!!」

然し、彼女が一歩遅れを取ってしまったが故に、少女が引き起こした爆発は万全の物ではなかった。──故に、ゴーレムの力技に及ばなかった彼女は、ゴーレムのフルスイングと共に数メートルほど吹き飛ばされた。─まさに防戦一方であった。
588 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/18(土) 01:12:33.83 ID:WCH9FPRMo
>>585
「他にも、たくさん……たくさん」

自身に言い聞かせるように何度も反芻して、少女は考える。他にもたくさんいるのなら、いつか"あのこと"を打ち明ける相手ができるだろうか。

「えっと……第一高校で、女の人で、メガネね。ありがとう」

明らかにヒントが足りないが、少女はそれに気付かないようで。指折り確認しつつ比較的明るく見える表情で礼を述べて、ついさっきまで血に濡れていた口元も微かに笑っているような。
きっと伝えられたキーワードに当てはまりそうな人物を手当たり次第に探るつもりなのだろう、肝心な所で頭が回らないというか、何というか。

「あなた、痛い事しないって約束してくれたから、怖くない人だって信じてる。もし私に会いたかったら、この道にずーっと入っていってちょうだい。そしたら、臭いで分かるから」
「蛇がたくさんいるけど、気にしないで。みんなお腹一杯だから、怖い事しなかったら良い子だもの」

そしてこの言葉も、頭が回らないからこそ出たものだろう。本当に信用出来るかなどまだ判断出来ない筈だろうに、簡単に良い人だと信じ込んでしまって。
明らかに世間慣れしていない。会話のぎこちなさや、感覚や仕草の違和感も、これのせいなのか。
再び会いたければここを進めと言うのだ。不気味に薄暗く、細く、蛇の蠢くこの裏路地を。しかしそうすれば、"臭いで分かる"から逢える、と。
589 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/18(土) 01:27:35.63 ID:CX1Atnwc0
>>588
彼は彼女から信用を勝ち取ったが、しかし彼はだからと言って、そこに漬け込もうなどとは思わなかった。
彼もまた、彼女を信用していた。
その人間性には信用をそがれる要素もあるものの、彼女は人を傷つけることはないだろう。
彼はその言葉に薄い笑みを浮かべる。こんな所で暮らす必要があるのかという疑問はあったが、飼っている蛇のためなのだろうと、さして気には留めなかった。

「Да свидания(ダ・スヴィダーニヤー).……いや、"また会おう"」

彼は別れの挨拶をする。
さようなら、ではなく、また会おうというのだ。
彼は必ずまたいずれ、ここに来るだろう。
その時は、少女が魔術師として存在することを願って。

何も声を掛けなければ、彼はそのまま踵を返し、再び大通りへ。日常へと去っていくことだろう。
590 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/18(土) 01:44:23.17 ID:WCH9FPRMo
>>589
「うん、またね」

バイバイ、と手を振って。少女がイリヤーを引き止める事は無かった。引き止めた所で、これ以上何を話せば良いのやら、分からないから。
肩の蛇も少女に倣ったようにゆらゆらと頭を高く掲げて、そうしていれば次第にイリヤーの姿は人混みに紛れ、視界から消えてしまった。

(そういえば、名前、聞くの忘れてた)

そんな事を今更思い出しても後の祭り。イリヤーの行動範囲が分からない以上、次に彼が訪ねてくるまで待つ事しか少女には出来ないのだ。
再び、無口になる。饒舌になるのは相手がいる時だけだ、独り言も、自分に聞こえないのだから少女には無意味な事。
だがそれでも、"初めて"マトモに交流する事が出来たのだ。

足取りは軽く、表情も無機質さを何処かへ押しやって。嬉しさを噛み締めながら少女は路地裏の暗がりに消える。
後に残るのは、ほんの僅かな魔力の残滓と血の香り。それから、気ままに地を這う蛇だけだった。

//良い感じなのでここで〆ますね、ありがとうございましたー!
591 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/18(土) 12:45:14.95 ID:qJgsxdBPO
>>560
「過去を武器に、ねぇ…ええやん、別に過去を武器にしても。それは兄ちゃんの未来を犠牲にしてるわけじゃないやろ?未来を作るんは、自分の行動と力や、過去も関係あるかもしらんけど、んなもん、ちょろーっとしか関係してへん」

「今できることを、今この瞬間にやるっちゅうのが大事なんや、兄ちゃんが俺を助けてくれたみたいにな」

「ま、とりあえず、難しく考えてもしゃあないやんか!ぼつぼつうまい飯でも食うてさ!うまい酒でも飲んでさ!のんびりやろうや!なぁ?」

自らの心中を吐露していく鬼の口調は段々荒く、荒くなる。それを受け止めるように何度もうなずき、そうか、そうやな、そんな言葉を漏らしながら、言葉を解き、飲み込んでいく。
煙も気圧され、ほう、と散っていくような感覚の中、終いには、鬼は去れ、という言葉と共に消えていってしまった。
男は少し悲しそうな顔で笑い、煙草を地面に押し付けて頭をかいた。

「あーあー……怒ってもーたわ…」


「 ————俺も、取り残された鬼や…家族を殺された、哀れな鬼や……せやから、一人が嫌なんやで、兄ちゃん」

届かない言葉、それは地面に落ちて、血溜まりに溶けていく。
血だらけのまま男は立ち上がり、もう乾ききった顔の血を指先で触りながら、上を見上げる。
ビルに見える、自宅を見上げながら、少しだけ逡巡し、ふっと背を向けて歩き始める。
思い出したような、行かなければならない場所があるような足取りで。

「……暁屋…暁……夜明け前が一番暗くて、怖いんや………絶対、一人にさせへんぞ、誰もな…」

その言葉の意味や如何に。
それを知る者は、知暁という己の名を知らない男ただ一人。



/ものすごい遅れてしまって申し訳ありませんでした…
/救っていただき感謝感激雨あられです…ありがとうございました!!
592 :獅子・トラ子 ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/18(土) 14:23:46.23 ID:wxYGOU+i0
>>573
/これの舞台を昼にして再募集しますっ
593 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/18(土) 15:20:31.48 ID:3drMU4T+O
>>573
夜半の疲れを癒やしにとある居酒屋にて飲み終えた、とある男。
血まみれのシャツをなんとか拭っては着ているものの、まだ多量の血痕の残る服のまま、腰に刀をぶら下げてギャラリーのたかるその場所を通りかかる。
まだ飲み足りない、という風に、片手に日本酒の小さめの瓶を持ったのんびりとした格好のままで通りかかれば、中心から少女の声がするではないか。

思わずその場で立ち止まり、男はくわえたままの煙草を地面に落としてから踏み消す。

「うーわ……風紀委員に捕まった後に、これは…きっついやろ…」

その呟きと視線の先には ————血にまみれた棒を振り回す、少女。

「アカンやつや……あれ絶対に関わったらアカンやつや…」

危険を察知し、男はそろりそろりと背を向けて去ろうとするが…。

『あ、お、おい!暁屋の!あれ見ろよ!!あの子一人で男どもぶっ潰しちまったんだ!!』

「ちょちょちょ、ちょ待て!!マジでアカンて話しかけんなて!!暁屋!?なんやそれ初めて聞いたわごめんな!ほんじゃ帰るわ!」

スーツ姿のサラリーマン、それは知り合いだったのだろうか。
男の肩を掴んで行くや行かんやと言い合いつつ、どうやらサラリーマンは体格と風貌に似合わないあまりにも華麗な鎮圧劇にでも感動したか、感動を分けてあげんと話しかけたのだろう。
男は冷や汗を垂らしながらちらちらと少女を見て、完全に及び腰だ。
血まみれのシャツにの男を掴むサラリーマン、逃れようと謝り倒し頭を下げまくる情けない男。
妙な構図の騒ぎは、いずれ少女の耳に届きそうだが…?
594 :獅子・トラ子 ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/18(土) 15:56:47.11 ID:wxYGOU+io
>>593

ギ ロ リ と 少 女 が 気 が つ い た

「ほう、どうした観客よ。トラブルかピンチが大変か!?」

その瞬間周囲の見物人たちの静まり返り、少女が見る方向へざわりと向いた。
其処には妙に目立つ男が二人、見つめる見物人は皆思っただろう、あぁ、目を付けられてしまったと。

少女が軽く跳ねてみれば、ふわりと体は宙へ浮かぶ──浮翌遊、”重力を無視した跳躍”そして二人の元へ着地した。

”ズドン” と妙に重い音が二人の耳に届くだろう。

「ならばいうがいい、どちらが悪いどれが悪い、それかはたはたどちらも悪い、か?」

磨かれた黒水晶の様な瞳、それに宿る真っ直ぐな感情が二人を見つめるだろう。

/よろしくお願いします!
595 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/18(土) 16:11:50.00 ID:YUOtMU6uO
>>594
ふわりと浮かんだ身体が視界の端に映り込む。
それだけで十二分に能力者である予想はついた。魔術師ならばここまで目立った動きはできないだろう、ましてこの数のギャラリーが集まっているのだ、そこで堂々と行動出来るということは、学園の関係者か、齢を見れば、学園の生徒か。
ふわりと浮かんだ身体が、人間ではありえない対空時間を経て着地すれば、ずどん、という重低音を響かせて目の前に。
サラリーマンの男は驚きに腰を抜かし、情けない声を上げながら後退りするも、ずるずると情けない速度。逃げられるわけがない。
一方、男はと言うと ————。

「あーもう…ほらなぁ!?言うたやんもう絶対アカンやつやぁ言うて!!
 今の見た!?飛んだんやで!?ぽーんちゃうで、ふわぁやで!ふわぁて!
完っ全に危ないとか通り越してるやつやんかもー!!あーあー!」

サラリーマンを責めるだけ責め立て、少女にくるりと向き直ると、その目線に合わせるようにして腰をかがめ、サラリーマンを指差しながら言うのだ。

「この人がお姉さんの事ぶん殴ってやるって言うてましてん。俺めっちゃ止めたのに、いいや絵zったいぶん殴ったるって聞きませんねや…どない思いますー!?」

一般人で無能力者を、売っぱらうという悪魔の所業を魅せつける。
無論、サラリーマンは少女を見ながらぶんぶんと千切れんばかりに首を横に振って否定する。
よく考えずとも、サラリーマンがそんな事を言っていないのは明白だが、男はさも自分は本当に止めたんですよ、という風に困った顔。

「こんな可愛い女の子殴ろうとかー!あーあー!最低やわー!
 えーと、お姉さんの名前は?まあええわ。
 お姉さん、殴られる前にさっさとここ離れた方がええですわ、行きましょ、ね?行きましょ行きましょ!」

この場から離れるのを促しながら、男はサラリーマンに後ろでにしっしと手を振って逃げろというジェスチャー。
何をしようとしているのか、というのは分からないかもしれないが、まず先決されるのは、ギャラリーの溢れるこの大通りから能力者と思しき少女を離れさせる事。

(これ以上ここで暴れられて、酒屋でも潰されたらたまったもんちゃうからな……正義の味方やなんや言うてたけど、まぁ…正義の味方自称してんねんから、ワガママは言わへんやろ……こんな可愛い子がもったいない…)
596 :獅子・トラ子 ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/18(土) 17:02:09.46 ID:wxYGOU+io
>>595

ふむ、と少女は頷き──。

「殴りかかるか──ほう、”面白い”」

……少女はニヤリと哂った。

すぅと目を細め、ケラケラと、血塗れのホッケースティックを握り直せば、ずいと一歩踏み込んだ。
その姿は獲物に飛びかからんとする虎の如し、さぁ始めるか執行をと、だがその勢いは潰される。

「いいだろ、その度胸をみとめ…………ぐむ、むむ」

必死に決死に道化の様に、連ねる言葉と身振り手振りのリアクション、少女の動きはぴしりと止まる。
その勢いに圧倒された。と言わんばかりだ。出鼻を崩されたと言ってもいいだろう。──そしてごとりと

スティックの先端はコンクリを叩いた。

「……むむ、私は、どうすればいいの、だ?」

「私を殴るといったこのバカを倒せばいいのか」  「はたまた、この騒がしいバカをぶん殴ればいいのか」

「……むむむ」

考え込むように、ずしんずしんとそれを振るう、地面からひび割れた地面、そこから破片、そこから石へ
石を砕けば小石になり、小石を砕けは砂になる、少女は悩ましげに、唸るのであった……
今ならば、”あ、両方ぶっ倒せば楽じゃん”と考えつく直前である今であれば、彼女の手を引き何処かに

引っ張っていくこともできるだろう

/は、発見が遅れてしまいました、返事が遅れて申し訳ありません!!!
597 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/18(土) 17:17:22.41 ID:7K+waVCPO
>>596
コンクリートを砂利に、砂に、塵に、それを見た男の顔もサラリーマンの顔も真っ青に。
どんどんと砕く様を見ているとここが廃墟になってしまうのも時間の問題だと思わされるほど。
男はサラリーマンに最後に小さく「はよ逃げぇアホっ」と呟く。無論、少女には聞こえないように気をつけた。

そして、むむむと逡巡を続ける少女の腕をぱしっと掴み、男はにこやかにその場から離脱を図る。

「まぁまぁまぁまぁまぁ!正義の味方のお姉ちゃんも疲れたやろ!あー…えーと……そや!飯奢るわ!飯!なーんでもええで!この街を護った正義の味方に是非とも貢がしてぇな!ええやろ?さー!行こ行こ!」

そのまま少女の腕を掴んでささーっとギャラリーの壁を抜けていく。
しばらく少女の言葉も耳に入らず、ただただ歩く。歩く。

漸く止まったかと思えば、とあるカフェテラスに到着し、入店を促す。

「人に紹介してもろた店なんやけど、まぁまぁ美味い飯もあるし美味いデザートもあるし、とりあえず食べに入ろや、な?」

かららん、という心地よいベルの音を響かせて入店すると、店員に案内されるがままに座る。
座れれば少女にメニューを手渡し、自分ももう一つメニューを取って適当に注文する。

「あー、俺コロナビール一つ、とりあえずそれは先に持ってきて。後でこの子のメニュー取りにきてー…んじゃ、頼んます」

どこか手慣れたように注文を済まし、漸く少女へ顔を向け、男は胡散臭い笑顔のままに問う。

「あー、姉ちゃん、何であないな場所で男どもしばきまわしとったんや?」
598 :獅子・トラ子 ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/18(土) 17:42:23.70 ID:wxYGOU+io
>>597

「うえ、あれ、あ、な、あれれ」

ぐいと、腕を引っ張られた彼女は、あれよあれよと連れ去られる。人この光景を誘拐と言うだろう……と
その間彼女は抵抗をしない、というか環境の変化についていけない。幼子の様に慌て戸惑うのみであった

そして気がついたら、ちりんちりん、と連れてこられたおしゃれなカフェテラス
小奇麗で内装もオシャレ……若いカップルなどが多い店内には血に汚れた二人は少々”似合わない”が

少女は子供が初めて遊園地を訪れたように、物珍しいのだろう、目をキラキラ指せながら周囲を眺めており

「…………は、はい!」

故に男の問いかけに、少女の反応は遅れた。不意と突かれた様な慌てた返事。
視線を男に向けると、僅かに考え込むようすを見せれば、あぁ、そうだったと呟き返答をしようと…した

その時であった、店員が少女にメニューを開き渡したのは。

「あれは確か私が散歩していたときでな………あ、」

少女の目線がメニューへと写った。口調が止まる。写っていたのは彼女が”初めて見る鮮やかなメニューたち”
すぅーとそれを彼女を眺めて話が止まって約十秒、そして”いいこと”でも思いついたのだろうか

彼女はにやりといたずらっ子にように笑ったのだ

「ふ、ふん。誘拐犯め! お前の言うことにホイホイ聞いてやる義理もないぞ」
「ど、どうしても、話を聞きたかったら…こ。これだ、直ちにこれを注文するのだ!」

ない胸をなぜか張り、少女はメニューを突きつけ指をさした、其処には結構お高めのパフェが示されていた。

599 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/18(土) 18:45:03.58 ID:7K+waVCPO
>>598
「ほーん…話は"タダ"じゃあれへんっちゅうわけやな……よっしゃ、ええやろ!そのパフェ頼みぃや!あー、店員さん、このパフェ一つ!後はぁ……このケーキセットも一つ、ドリンクバーつけといて。あとビールもう一本頼むわ。」

運ばれてきたビールを受け取りつつ、新たなビールを頼むという所業。
酒が好きなのか酒に好かれているのかなんていうことは置いておき、話を聞けるならデザートの一つや二つ安いとでも言わんばかりに追加注文していく男。
やはり少女は少女だったか、甘いものを見て顔を明るくするものだから、男も思わず顔が綻んでしまう。
といっても、この少女の正体は大男達を数分足らずで伸してしまう暴れ者なのだ。気を引き締めねば、そんなことを胸中で思うも…

『彼女さんですかぁ?ふふ、いいですねぇデートなんて』

と、店員が妙にフレンドリーかつ気を遣って話してくる。

「そやろ?可愛いんやけどちょっと暴れん坊さんやねん。こうやってデザートで機嫌直してもらお思てね、パフェに乗ったアイスとかサービスしてやー?」

『わっかりました!店長にお願いしてみますね?』

ふふん、とにこやかに立ち去っていく店員を見送った後、男はメニューを収めてから改めて少女に向く。

「さ、パフェも頼んだしケーキも頼んだ、コーヒー紅茶飲み放題や。少しは話してくれる気ぃになってくれたんかいな?」

表情こそニコニコしてはいるものの、この少女の力は尋常ではない。
跳躍力、対空時間、それらを見るだけでも能力はかなり厄介なものだと想定できる。
自分が関わって良い相手かどうかはさておき、この少女は一体なんの目的であそこまで暴れまわっていたのか、ただ純粋にそれが気になった。

「なんで、あの男達しばきまわしたんか……それと、お姉ちゃんの名前、教えてくれへんか?」

そう問う男は、一口ビールを瓶のまま煽り、ごと、とテーブルに置いて火のついていない煙草をくわえる。
600 :獅子・トラ子 ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/18(土) 19:33:56.68 ID:wxYGOU+io
>>599
「うむ、私はその彼女とかいうものだ。なのでバンバン持ってくるがいい!!」

調子に乗るな

と、男に尋ねられてた少女がまぁ、よろしいと言わんばかりに大げさに頷いた。
先ほどまでメニューを握りつぶさん程(いや実際にメニューには握られたあとが残っていた)持っていたためか
それを取り上げられてしまうと手持ち無沙汰と言ったらしい、机の上のフォークを弄び始めた。

「トラ子、獅子トラ子(シシシトラコ)だ───で、理由か、”実に簡単”だな」

そして彼女はつぅと目を細めた。表情から笑が消え、真剣の如き鋭さを、真面目に、真面目に、答えるように

「私は”正義の味方”だからだ」

「正義の味方が道端で暴れ、観客に迷惑をかけている悪を見逃す訳なぞないだろう?」

その目に嘘偽りの光なし、あるのは己の信念が絶対正義と信じ込む輝きよ。子供の様に純粋無垢な

「お前は私のことを暴れん坊と言っていたな。違う、それは違う、私は私の”正義を執行した”だけだ」
「暴れるとは考えもなしに暴力を振るだけと先生が言っていたぞ、ならば私は違う、私は”正しく暴力を振るったのだ”!」

見つめ、ただ男を見つめ、逸らすこともなく彼女は言った。
”正しい暴力の執行により、血まみれになるまで暴徒10人以上を頑丈なスティックでぶん殴った”少女は臆せず言った
601 :メルラン=ウォル=ラクトムル [sage]:2015/07/18(土) 21:09:53.68 ID:vFhoCffr0
>>587

いずもの拳とゴーレムの拳が重なり合う。轟音と豪風が辺りを覆い、土煙が周りを舞う。
手応えはあった。だが同時に違和感もあった。

「はぁ…はぁ…!これで…!」

もはやメルランは限界だった。魔翌力もほぼ底を尽きかけている。
そんな中であのゴーレムの操作は自殺行為に等しい。
見ればメルランは吐血し、かなり肉体にも負担が掛かっている。このまま行けば確実に命に関わる。

土煙が晴れる。
そこにあったのは吹き飛ばされたいずもと────既に半壊しているゴーレムだった。
先ほどいずもを吹き飛ばした腕はボロボロに崩れ、その身体は徐々に崩れ始めていた。
もはや戦えはしないだろう。しかしメルランはゴーレムをいずもの元へ進ませる。

「がはっ…こ、[ピーーー]……私は…間違ってなんて……」

しかしそこまでだった。
ゴーレムは限界を迎えついに完全に崩れ落ち、砂になり掻き消える。
ゴーレムがここで消えたおかげでメルランは一命を取り留めたが、しかし危険な状態であることには変わらない。
メルランはその場にまるで人形の糸が切れたように崩れ落ちる。
だがまだ死んではいない。息はあるし意識もある。まだ助けることも可能だろう。
602 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/18(土) 21:38:59.54 ID:7K+waVCPO
>>600
「お、おー……正しく、暴力をなぁ……そうかそうか……そ、そしたらや!大の男を10人くらいやったかな…?ええわそんなん…その男どもをがーっとやっつけたんは偉いと思うわ!トラ子すごいわ、めっちゃ偉い!」

「んでも…血だらけになるまでしばきまわさんでも良かったんちゃう…?」

冷や汗を額に浮かべつつ、男は驚愕を押さえ込んだ。
何せ、この少女、一つも悪い事をした、やりすぎたなどと思っていないようなのだ。
寧ろ私は正義を執行し悪を倒したのだ、褒めろ、と言わんばかりの嘘偽りなき瞳。これを責める事は出来るものか。否、正しいことをしていると思い込んでいるのだから責める事など出来はしない。
出来ることと言えば、やり過ぎたのではないかと少し咎める程度で、行動は否定してはならない。
あの不思議な力を応用したような方法でこちらが血まみれにされる未来が見えてはならないのだ。というより、見たくはない。
だからこそ、男は運ばれてきたパフェやケーキセットを見て一切の迷いも見せずにすべて少女へ。

『おまたせしましたー、季節のフルーツパフェとよくばりケーキセットでーす』

「あー、全部この子のや、全部な。
 ……ほんで、トラ子ちゃん、俺ちょこーっと気になったんやけど…トラ子ちゃんの正義て、なんなん?
 トラ子ちゃんの思てる、悪い人って何?」

「いやぁ、俺賢くないから、びびーっとわかったりせぇへんねや。
 トラ子ちゃんのそこらへんの話とか、聞かしてくれへんかなぁ……このケーキセットで手ぇ打ってぇな!な?」

ずずい、と大皿に乗った様々な種類のケーキを全て少女に明け渡しつつ、パフェ用のスプーンも手渡す。
話が聞けるなら安いもの…それどころか、この少女は力が有り過ぎる。
自分がやられないためならば大サービスものだ。一切迷うことなどありはしない。
603 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/18(土) 21:52:49.48 ID:1wLoATbi0
>>601
「───っそ!!お前!!
こんなになるまで馬鹿みたいに使いやがって!!」

魔術とは、此処までに身体に疲労を齎す物なのか。恐らく彼女の昏倒の原因には「精神状態」が不安定であるというのが大きな要因として存在するのだろうが、逆に「精神状態」で此処までに不安定になる物なのかと、思い知らされた。
……まるで魔術とは、術者の心をそのままかたどって具現化した物なのではないか、と。
崩れ落ちたメルランを目にするやいなや、急いで彼女の元へと駆けつけた。
──然し、これからどうすればいい。
あの研究者の元へと連れて行くか?否、駄目だ。魔術師を接触させるわけには行かない。……病院からは距離がある。

「……くっそ!どうすりゃいい!?」

せめて……乗り物でもあれば。然し、現実は非情であり、役立ちそうな物は何もなかった。
番長少女は……無力だった。
604 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/18(土) 22:22:31.40 ID:vFhoCffr0
>>603

倒れ、力を使い果たしたそこまででやっと正気が戻ってくる。そして同時に痛みも。

「あ゛あ゛ゔ…私…は……」

身体の至る所が痛む。自分は死ぬのか、仕方がないことだろう。全て自分が悪いのだ。確かに間違っていたのかもしれない。
だが他にこうするしかなかった。これも報いだろう。ならば大人しくそれを────

「嫌だ……死にたくない…死にたく…ない……!」

受け入れることなど出来なかった。
まだ生きていたい。死にたくない。
当たり前だ。まだ年端もいかない少女が、そうやすやすと死を受け入れられるはずがない。
勝手なことだとは分かっている。我儘なことだとも分かっている。
それでも生きたい。生きていたい。
それが例え自分勝手だったとしても────
605 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/18(土) 22:43:01.83 ID:1wLoATbi0
>>604
「───っ。……しょうがねぇ。
風紀委員の馬鹿どもに殺されるレベルで迫られるだろうけど……やるしかねぇ!」

自らの生命の危機を前に、何かに縋るように声を発する少女。魔術とは、こんなにも儚いのか。
──然し、それを見捨てることなんてのは彼女の「心」が許さない。自らの立場の危険を顧みず、彼女は始動する。
まずは崩れ落ちていた少女をお姫様抱っこの形で抱えあげた。此処は狭い路地裏、目の先の街の光を見据える。

「……こっから……病院までは……よし、場所は把握できてるな。」

何かを、するつもりだ。走って急いで病院に向かうのが通常の人間の行動であるが、彼女は能力者。それも……脳筋馬鹿の能力者、である。
──だから。その馬鹿力の火力を、自らの走力に上乗せする。

「────うおおおおおおお!!!あぶねぇぞどけどけえええええええぃ!!!」

──路地裏に轟音が響く。凹み具合からすると、彼女の足裏がコンクリートを踏み締め、爆発的に彼女の体が動いた……ような感じだった。
彼女の体は、大きく飛躍する。
──次に着地した先は、なんと大通りのど真ん中。然し容赦無く、少女は再度爆発を起こす。……道路が抉れ、その周辺の車達が軽く吹き飛んだ。──後で風紀委員に殺される。

そんな爆発的駆動を繰り返し、超速度で器物損壊を……否、生命を救わんと動く出雲。

───然し。現実はまたも彼女らの道を阻む。

「……!!まじかよ!…力が……出せねぇ……!!」

──能力行使の限界。魔術師に置き換えれば魔翌力切れ、即ち能力がもう暫くは使えないことを意味している。しょうがなく、番長少女は歩き始めた。
──病院までの距離はまだ数百メートル程ある。それまでにメルランの体は……耐えてくれるだろうか。

//とりあえず投下です!絡むとしたら此処らへん……かな?
606 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/18(土) 22:59:10.22 ID:QxJTvoJyo
>>604>>605

いずもが歩く大通り、人々がどよめき道を開けるその中で、全く動かずにそこにいて、いずもの姿を見ている者がいた。
偶然か必然か、どちらにせよ、そこにいたその男は、とにかく最悪とも思えるかもしれない存在で───いずもにとっては、記憶にあるだろう。

「あぁん?聞き覚えのある声がしたと思えばよぉ───」
「どういう状況だこいつは、なぁオイ?」

血のような真紅の髪、目玉の模様が目立つフード、恐ろしく鋭いギザギザの歯並び、高く痩せた体型…。
以前いずもに挑み、退治された筈の少年が、黒繩 揚羽が、そこにいた。

「オイこら、『番長』さんよォ…!随分と探したが、まさかそっちから現れるとはな…!ラッキーだぜ…!」
「あの時の仕返し…じゃねえ!決着付けてやるぜオラァ!!待てやコラ!!」

嗚呼、なんて運が悪いのか、この少年は明らかにいずもに対して恨みを抱いていて、救いの手なんて望めそうにもない。
その証拠に、いずもの姿を認めるとすぐに駆け出し、叫び声を上げながらいずもを呼び止め、道を塞ぐように前に出ようとするだろう。
…しかし彼も人間、まだ事情がわからない彼にはいずもの事しか見えてないのだから、もしかすれば話せばわかってくれるかもしれない───多分。

/乱入させていただきます!よろしくお願いします!
607 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/18(土) 23:11:45.63 ID:1wLoATbi0
>>606
「────ああ?」

番長少女の自己犠牲の爆発駆動は、何時の間にか大勢のギャラリーを生んでいた。
…爆発して地形破壊しながら幼女を抱えて走る番長が居るぞおおお!っと。……まあ、これほど派手な馬鹿力であるからそれは、必然ではあるのだが。
……ゆっくり。それでいて気持ちは速めに目的地である「病院」を目指す。
──然し、その途中において何処からか自分を呼ぶ声が聴こえた。……そしてその声の持ち主は。
先日、路地裏で対峙した一人の魔術師の男であった。───非常にマズイ。

「……なんでこうも次から次に面倒くせえのが出てきやがる……!!
……魔術師。悪いがお前に構ってる暇なんてねぇんだ!後で死ぬほどぶっ飛ばしてやるから今はとりあえず…………、、」

流石にこの状況とあれば、話しかけてきた「厄介者」の魔術師に嫌悪感を示すいずも。同時に、思うように進まない自らの体にも苛立ちを覚えていた。
”とりあえず”……という言葉の次。何故かその次の言葉が、口から出てこなかった。
……恐らく其処にあるのは”迷い”だろう。自分に抱かれた瀕死状態の少女、メルランは魔術師。……であれば、魔術師に託すのが最善。……然し、目の前のこのいかにも凶暴な男は自らの願いを聞き入れてくれるのか?


───でも、彼女には選択肢が無かった。

「………………頼む。助けてくれ。」

今にも消えそうな生命の光を胸に抱いた少女は、力無く、その青年に助けを求めた。……これくらいしか、彼女には出来なかった。から。
608 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/18(土) 23:13:16.22 ID:vFhoCffr0
>>605 >>606

身体が宙に浮く、いや持ち上げられたのだ。
目が霞み上手く前が見えない。だが恐らくはいずもだろう。
あれだけのことをして、殺そうとまでしたのになお自分を助けようとしてくれる。
本当に──なんて優しい────

その直後、メルランの耳に轟音が響く。
周りの景色が次々と変わっていく。これは一体──

しかしそれはすぐに終わりを告げる。
そして刻一刻とメルランは「死」へと近づいていく。
そしてそんな最中、こちらに近づいてくる人影があった。
しかし「死」は待ってはくれない。
段々とメルランから精気が薄れていくのがいずもへと伝わるだろう。
果たしていずもは間に合うか────。
609 :高天原いずも ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/18(土) 23:20:57.94 ID:1wLoATbi0
>>607
/すみません!この魔術師関連のところは無視しちゃってください!……恥ずかしい
610 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/18(土) 23:32:50.89 ID:QxJTvoJyo
>>607>>608

「あぁん?何言ってんだテメェ、俺は魔術師じゃねえ───」

目の前に立ち塞がったはいいものの、よく見たら何か不自然だ、と黒繩は気付く、というより、不自然どころの話ではない。
自分を魔術師だと勘違いしているのは置いておくとして、どうにもしおらしい雰囲気のいずもに眉を顰め、それからようやく彼女がその腕に抱いているメルランに気が付いた。
頭は良くないが勘の良い黒繩、すぐに合点が行く。『ははぁ』と思い付いて、嫌らしい笑みを浮かべた。

「あぁ?今何つった?『助けて』?え?今助けてって言った?」
「ひ、ヒヒ、ヒヒヒハハ!!オイオイなんだよ助けてって!?チョーウケるんだけど!一体どうしちゃったの番長サン!?」
「そのガキ、テメェがやったのか?テメェがやったんだろ?何?助けてってアレ?『殺したのが見つかるとまずいから助けて』って事?」

「あぁ、それともさ、もしかしてだけど───『俺にそのガキの命を助けてくれ』って言ってんの?マジで?」
「ヒャーッハッハッハ!!爆笑だぜ!テメェ誰にそんな事言ってんのかわかってんのか!?」

当然、素直に聞くはずもなく、大笑いしていずもを煽る、これはただの挑発だ、本心でバカにしているのも確かだが、それ以上に意識していずもを怒らせようとしている。
戦法の基本は相手の冷静さを欠くことだと知っているから、そうしていずもを怒らせて戦闘を有利に進める───いずもとメルランの置かれている状況を知らない黒繩は、完璧にいずもを倒す事を念頭に置いている。

「…だが、まあ俺も鬼じゃねぇ…どんな理由かは知らねぇけど、助けてやってもいいぜ?」
「『地面に頭擦り付けてお願い』しな、そうしたら考えてやるよ」

嫌味な笑みをこれでもかと浮かべて、状況を更に悪い物に進めていく黒繩。
勿論無視してもいい、そうした場合は後ろから狙われる危険性もあるが───何より、黒繩は今いずも達がのっぴきならない状況にあるという事を知らないから、この挑発に乗ると完璧に思っている、それこそ彼の思う壺だが。
611 :高天原いずも ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/18(土) 23:44:43.57 ID:1wLoATbi0
>>610
助けを求めた先にあったのは自らを嘲笑う声。眼前に広がっていたのは……煽り。
生命が懸かっているというのに、目の前の男は尚も自らの悦楽の為に番長に挑発を投げかけた。
……”ふざけやがって”。番長は先程から感じていた苛立ちと共に、その怒りを自らの右拳に内包した。───迷いは、無い。


「───頼む……!こいつの生命が懸かってんだ!!
どうしてもオレが憎いってんなら、幾らでも相手してやる!でもそれは、全て片付いてから!その後でだ!!

…………だから…………頼む…………。」


数秒後には、その番長は膝を折り、額をその地面へと勢い良く叩きつけていた。少女を隣にゆっくりと寝かせて、極めて真剣な表情で。
其れだけに……”必死”だった。全ては自分が彼女に入り込んだ為に起きた激昂が齎した結果だ。
自分の失敗は自分で償うのが道理。そんな事は番長として生きようとする彼女は嫌という程理解できている。──でも、1人じゃあ……あまりにも、無力すぎた。

612 :獅子・トラ子 ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/18(土) 23:53:18.95 ID:wxYGOU+io
>>602

「…………」

キラキラキラキラ──星屑のように輝く彼女の目、その先にあったのは山のようなスイーツ(乙女の夢)であった……
彼女は男の言葉に返事を返さなかった。話半分馬耳東風、その意識の半分以上はそれに注がれて

「トラ子の…悪い……あぁ、これは……うん、悪いのは…ショート…ケーキ」

いや、ケーキは悪者でもなんでもないだろう

銀のスプーンを渡された彼女はうわ言のように呟けば、返事をちゃんと返す事もなく、銀のさじを武器に戦いを始めた。
母の愛の様に甘く清らかなショートケーキを、恋心の様に甘く仄かに酸味があるチーズケーキを
大人の愛の様に苦味が聞いたデビルケーキ、シュークリームは夢の味、乙女の心なジャンパフェを一口含めば

桜のように頬を赤らめ、向日葵の様に眩く輝く、コスモスのように平凡だが、薔薇のような乙女の笑顔

「あぁ、これが、これが、先生、トラ子は。トラ子は…楽園を見つけました──」

あぁ、今が青春人生の真っ盛りと彼女は今は遠き理想郷を走り回る。男の話?今は聞いている場合ではないのだ…
傍目から見れば片手にスプーンを、片手にフィークを器用に動かしオーケストラの指揮者のように軽やかに食事をする
ごく、ごく普通の少女の姿に見えるだろうか、今ならば彼女のシャツについてる血もブルーベリーのソースにも見える。

と────彼女が食べ終わるまでそう時間はかかる事もない。
食べ終われば、実に幸福そうに紅茶を味わいながら、彼女は夢心地に覚めぬ間に男の言葉を思いす。

「…………あぁ」

「トラ子の正義は……あれだ……トラ子が許せるか……許せないのか。だ」

「だから誘拐犯──運がいいな、もし……ここのケーキが絶品ではなければ──形は残さなかったぞ、このデザートたちの様に」

空になったお皿たちを残念そうに眺め、既に平らげてしまったケーキたちに思いを馳せながら
ぐでりと行儀を悪く姿勢を崩す、椅子に立てかけていたスティックが地面にカランと倒れれば、下に落ちていたクッキーを叩き割る

「うむ……よかった、な誘拐犯、誘拐犯………えーっと…誘拐犯、名前は…あれ、誘拐犯でいいのか?」
613 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/18(土) 23:56:34.83 ID:QxJTvoJyo
>>611
『怒っている』、いずもの僅かな仕草、表情から見抜いた、挑発は効いているようだ。
どこの誰とも知れぬ少女の事なんて黒繩にはどうでもよかった、ただ、自分をコケにしたいずもへの禍根を晴らせれば、それだけで。
だからこそ、いずもの次の行動は予想外で、面食らったような表情になって、いずもの事を見つめていた。

(…オイオイ……)

ここは人通りだってある、それに自分といずもの関係は最悪にも近い筈で、それを知っているからこそこんな風に言ってやったのに。
それなのに、いずもは頭を下げた、言われた通りに、ただ一人の少女の為にプライドを捨てた。

「───チッ!……ちょっと待ってろ」

バツが悪そうに舌打ちをして、振り返ると、『待ってろ』と言い残して何処かへと歩いて行く。
数分もしない内に黒繩は帰って来た…車に乗って。顔をボコボコに腫らした『運転手』付きだ。
その車の窓から顔を出して、黒繩はいずもに言う。

「乗れ、ボサッとしてんなよ」

イラついた風に言いながらも、乱暴にドアを開けていて。
いずも達が乗り込めば、黒繩は泣きそうになっている『運転手』に命令して車を発進させるだろう、歩くよりもずっとずっと早く病院へ着く筈だ。
614 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/19(日) 00:54:57.58 ID:9TqyQSNqO
>>612
誘拐犯と呼ばれ続ける男は苦笑しながら少女へ首を横に振り、遅ればせながらの自己紹介をする。

「誘拐犯ちゃうて…俺の名前は知暁、暁屋っちゅー祓い屋やってるただの商売人や。ほら、あのリーマンのおっさんも言うてたやろ?って、聞いていへんわな、あんなところじゃ」

そこまで言うと、地面に落ちたスティックを器用に片足で拾い上げ、これまた器用に蹴り上げれば ————ことん、と先ほどの位置に立てかけられる。
あまりにも自然な足さばきで、どこか"戦闘慣れ"しているようにも受け取れる。

そこで、男は漸く少女の言う正義感の話を聞いて、煙草に火を灯して紫煙を上げながら難しそうな顔で眉をひそめる。

「トラ子が許せるか、許されへんか……んじゃあ、あの男達はそれに引っ掛かってもーて、はっ倒されたわけやな。うん、うんうん、そこらへんはわかったわ。ものっそい簡単な理由なわけや。いや、トラ子にとって簡単かはわからんけどな?」

「まぁー、トラ子めっちゃ強そうやけど、学生さん、かな?
 さすがに親御さんも心配するんちゃうかなぁー……お兄ちゃんとかお姉ちゃんはおれへんのか?オカンもオトンも心配するでー?こんな血まみれになるまで暴れたらー…」

そう、真っ先に心配の先にある、両親や家族。
彼女にもいるであろうそれらに対し心配をする男の顔は、どこか妹を見る兄のような感じで、本当に心配しているのが伺える。
服についてしまったラズベリーソースか血かわからないものも、少女の座る椅子に立てかけられた血まみれ☆スティックも、この街ならではのものかもしれないのだが、年端も行かぬ少女がバイオレンスに身を投じるなど、あまり褒められたものでもない。

「ここらで学園言うたら……あそこくらいしか無いわなぁ…
  トラ子、よかったらそこまで送っていくわ。まぁ、袖ふれあうのもなんかの縁や、断らんと送らせてぇな。あ、この一本終わるまで待ってな、紅茶か何か自由に飲んでてええから」

男はそう言うと、ドリンクバーを指差してから煙草を早々と吸い始める。
それが吸い終われば、会計をして少女と店先まで出るだろう。
無論、送らせてくれとこちらから頼んだのも訳がないということではない。

(学園に潜り込めれば、何か仕事とってこれるかもしれんしな……もしかしたら、クライアントさんにも会えるかもしれへん)

どこまでも、せこいやつである。
615 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/19(日) 05:55:16.21 ID:WhuB/fNS0
>>613
「───悪ィ!恩にきる!」

車が停車するや否や、高天原いずもはメルランを抱き抱えて大急ぎで乗り込む。
痛々しく顔面が腫れている運転手を見て、恐らく隣にいる”コイツ”がやったのだろう、と隣を一瞬睨むが、今は説教する暇なんて無い。
この数分のやりとりで、確実にメルランの生命の灯火は弱くなっている。抱き抱えたメルランの体温が伝わってきて、それを理解するのには然程の時間はかからなかった。

「運転手さんも申し訳ねぇ!とにかく近場の病院へと頼む!なるべく大急ぎで!」

いずもがそう言うと、運転手は何も発する事なく車を走らせた。良い意味なのか悪い意味なのか……然しこの状況において、運転手は良い意味で理解力がある。
恐らく黒繩の何かに怯えているのだろう。──然し、こんな力技は高天原いずもという「番長もどき」には決して出来ない技だった。理由も無い人を傷つける事を嫌う、彼女には。
運転手をボコボコにしてまで服従させるその姿勢は賞賛すべきものでは無いが、この状況に限って、彼女も感謝をしていた。

「…………着くまでに死んでくれるなよ、メルラン!じゃねぇとオレが精神的にもたねぇ!!」

何て事を言いながら、メルランの生命が消え無いように必死に声を掛ける。──間に合うか。


//すみません……寝落ちしてしまいました……お返ししておきます
616 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/19(日) 11:02:00.20 ID:dv5xyOpao
>>615
「オラァ急げオッサン!ガキの命がかかってんだ!歩道走ってでも止まんじゃねぇぞ!!」

走り出した車の中で怒号を上げ、運転手に無茶振りを掛けながら前の座席を蹴りつける、なんと傍若無人な振る舞いか。
それでもそれは、病院に一秒でも早く着く為の物であるし、やり方がやり方なだけで気を使っての事だった…それと、多少のイラつきもあるが。

(…チッ、何やってんだ俺は……)
(今ここでこいつをぶっ倒しゃそれで終いだろうが…)

思えば、何故いずも達を助ける気になったのか自分でもわからない、本当なら頭を下げた所でそれを踏みつけてやるべきだった、黒繩 揚羽とはそういう男だった。
それなのに、何故───憎む相手に頭を下げてまで命を助けようとするいずもに心打たれたか、それとも『こんな状態のいずもを倒しても意味がない』とでも思ったか。
あの一瞬、どうして、どう思っていたのかがわからない、だから今黒繩は後悔しているし、苛立っている。

「…おい番長、そのガキ、テメェがやったんだろ?」
「加減が出来てねぇだとか、それ自体をどうこう言うつもりはねぇが……テメェ、何かやる度にそうやって後悔して、大騒ぎするつもりか?」
「テメェは何を考えて、どうして俺やそのガキに力を使った、そいつは紛れもなくテメェの考えで、選択だろうが」
「それで、『やり過ぎました、ごめんなさい』なんて後で思うくらいなら番長なんてつまんねーもん辞めちまえ。みっともねーんだよメソメソしやがって」

苛立ちを収める為に、何となくいずもへと言葉を吐き出す、自分でも何を言っているのかよくわからない言葉が、口からつらつらと紡がれる。
言い終わった後、ハッとして黒繩は溜息を吐くと、それからは黙っていた。
───やがて、随分と早く病院に到着するだろう。
617 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/19(日) 11:43:08.80 ID:WhuB/fNS0
>>616

「───そうだな。」

その番長少女は、まず素直にその事実を肯定した。厳密に審査するならば黒繩の言っている事実は、違う。彼女はメルランに能力を使うどころか、馬鹿力を宿した拳で触れてすらいない。
──でも、こうなってしまったのは自分の行動の結果だ。少女の心も考慮する事なく、それを全て否定するような言葉を吐いた自分の責任だ。
──だから。オレが悪い。そしてオレは、弱い。

「……お前の言う通りだよ。
オレは馬鹿みたいな力を振るって傷つけて、それでいてその行き過ぎた結果を修正しようとする……いわば馬鹿だよ。とっくの前にオレ自身が「番長」なんかには向いていないなんてことは理解できてる。」

──それでも少女は。

「……でもな。オレは自分がやった事に対して後悔なんて事は殆どしてないよ。今までの人生でも数え切れるくらい、少ない。

こうなってしまったなら、責任を取ればいい、やれるだけの事を尽くせばいい。
……後悔なんてのはもし全てが終わってしまってからすればいい。
そしてその後悔があるから、オレは「番長」を張り続けなけりゃならねぇんだ。」

車体前方に病院が映り始めた時、その少女は自らの行いの殆どを後悔していないと言った。
自らの行いを後悔するのは、全てが終わってしまった時……即ち、大切な物を失ってしまった時にすればいい。──そしてそれを、殆どした事がないと言った。
目の前に助けられそうな人間がいたなら、かつて番長だった自らの兄の真似をして、一人残らず助けてきた。……そして同時に、幾つかの後悔もあった。
様々な記憶が折り重なるからこそ、彼女は「番長」を張るという事を何処の誰よりも渇望する。



──そして間も無く、少女の生命を乗せた車は病院へと到着する。……到着するや否や、ドアを蹴破る勢いで車外へと飛び出した。

「助けてくれて、ありがとな!!
お前の言葉!オレの意思を固めるいい材料になってくれたぜ!


……似合わないかもしれないけど、”私”はこれからも番長を張り続けます、ありがとう。」

爽やかな笑みを浮かべて、大きな声で感謝の言葉を口にした後、大急ぎでメルランをお姫様だっこの形で抱えて病院の中へと駆け込んだ。
最後の方の言葉は、その番長の言葉とは思えないほど、誰に言ったのかもわからない囁きのような声で。──まるで自分自身に誓いをたてるように。

運び入れた後、後は医師に任せるしかない。小さな少女の身体を医師に預けた後、番長少女は治療室の外の椅子に腰かけた。
618 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/19(日) 11:44:48.31 ID:VDWLgVoe0
夜のとばりに覆われた公園。明滅を繰り返す外灯の光は太陽のそれと比べて些か頼りなく、
したがって日中には息を潜めていた諸々が動き出すのにふさわしいと言える時間帯である。
普段は閑静きわまりない此処に、今はふたつの人影が認められる。

ひとつ。金髪。学ラン。がっしりとした体格に、剣呑な目付き。モブらしからぬ厳つい見た目の彼は、
もう一方の人間に対して今はやりの壁ドンを実践していた。
とはいえそこにあるのは甘いムードなどではなく、もっと切迫した何かである。言うまでもなく。

「あ、あの、本当に勘弁してください……」

もう一方、男の熱烈なアプローチを受けているのは、高校生くらいの年齢と思しい少年である。
取り立てて特徴のない頼りなさげな顔立ち、その印象を裏切る赤髪に、夏をも恐れぬ厚手のパーカーを着こんでいる。
彼のおかれた些か危機的な状況は、もともと小柄な彼をますます小さな存在に見せている。。
眉をハの字に曲げ時々なにか言おうとするも、結局は男に気圧されて俯く。舌打ちにびくりと肩を跳ねさせる様子はいかにも情けない。

そんな少年の態度にいよいよイラついたのか、男は怒鳴り声を伴いパーカーの襟首を掴んで乱暴にゆすり始める。
眼を回す少年。彼の脳裏には少しの恐怖と、葛藤があった。
揺れた視界が下を向く。――月の光が砂利の上に、綺麗なふたつの影を作り出している。
619 :メルラン=ウォル=ラクトムル [sage]:2015/07/19(日) 12:36:45.05 ID:uG+MIxRQ0
>>617

──それからかなりの時間が経ち、治療室の中から医師らしき人物が現れた。
治療が終わったのだろうか。医師は現状を伝えるべくいずもの元へと。

『えぇー、一命は取り留めました。
ただ一時的にとはいえ魔術回路が閉じてしまっているので、しばらく魔術は使えないでしょう。
今はかなり安定している状態なので、どうか側に行ってあげてください』

ニコニコとそう告げると医師はそのまま行ってしまう。
メルランは助かったようだ。しかし医師の言葉から、魔術の使用が出来なくなっているらしい。

『あ、そうそう……』

何か言い残したことがあったのか医師が立ち止まり、いずもの方へ振り返る。

『あの女の子には、無理矢理体に魔術回路を埋め込まれた跡がありました。
今回の暴走も、恐らくそれが原因でしょう。きっかけは貴女ですが、いずれはこうなっていたでしょう。むしろ貴女がこの暴走を引き起こしたお陰で、ここに連れてくることができたんです。だから自分を責める必要はありませんよ。
では、私はこれで……』

その言葉を残して医師はその場を去っていく。
最後の言葉は一体、何を示していたのか。
魔術回路が無理矢理埋め込まれた──、つまりは元はメルランは魔術が使えなかったということだ。では一体誰が────。
医師が去った後の治療室の外には、沈黙だけが残った。
620 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/19(日) 12:38:03.12 ID:dv5xyOpao
>>617
「…チッ…あっそ、だったら勝手にしろ」

こんな言葉を言われて本当に折れるようであれば、それこそいずもを見限っていたかもしれない、『相手にする必要も無い』と思っていただろう。
ある種、期待していたのだ───いずもがそうやって、自分を貫くことを。
そんな風に考えていた自分が小っ恥ずかしくなって、いずもから目を逸らし外を見つめていた。

「…借りだなんて思うんじゃねーぞ、次会ったらぶっ殺す」

病院に着いた後も、いずもには目も向けず、見送りもせず、いずも達が降りるとすぐに運転手に命じて車を出させる。
黒い煙草に火を付けて、甘い香りの紫煙を車内に充満させながら、ボンヤリと黒繩は呟いた。

「『番長』か…ケッ!バカバカしい」

「オラ、オッサン!次はゲーセン寄ってけや」

不幸な運転手に命令して、気紛れな狂人は夜の街並みへと消えて行く…

/先に離脱します、乱入させていただきありがとうございました!
621 :高天原いずも ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/19(日) 12:53:31.35 ID:WhuB/fNS0
>>619


「……埋め込ま……れた?」

──時は、医師がメルランの現状を報告した直後。静寂が鎮座する治療室を前に、高天原いずもは立ち尽くした。
……どういうことだ?魔術とは自分の意思で発現する…意思の具現のような物であると勝手に解釈していたが。
「無理矢理埋め込まれた」という意思の言葉が、彼女の脳内を駆け巡る。やたらと魔術に詳しそうな学園都市の医師に若干の疑問が残るが、それを掻き消すように伝えられた事実。
自分と現在進行形で共同戦線を張る研究者は、自分の魔術を嬉々として考察を繰り返していた。…てっきり魔術なんてのは自らがいいように自由に扱える夢の力なんだって、思い込んでいた。
妙な違和感が胸に残る、が自分の小さな脳では答えには辿り着かない。──先ずはメルランと顔を合わせるのが先だ。

「………よ、よお!……アレ?こういう時ってどういう風に言葉かけるのが正解なんだ?
さっきまで敵対してて、で怒らせた挙句病院に運んで……アレ?これ世界中で初めての事案なんじゃね?」

単純に言えば、言葉が浮かばなかった。少女は自分の髪を右手で少しだけ弄びつつ、明るい声でメルランへと声をかけてみた。
622 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/19(日) 13:34:18.91 ID:uG+MIxRQ0
>>621

能力者に魔術は使えない。そして同じように魔術師に能力は発言しない。
魔術回路とは魔術を使うための、魔翌力が流れる血管のようなものだ。
魔術師の家系に生まれたものや、魔術の才能に秀でたものにはこれが最初から存在しているが、能力者や魔術の才能が無いものにはこれは存在しない。
しかしそれを無理矢理体内に埋め込まば、理論上魔術の行使が可能になる。しかしそれは理論上の話で、実際にはそれを行おうとすれば身体が拒絶反応を起こし、最悪死んでしまう。
だが稀に、身体と魔術回路が拒絶反応を起こさずに一体化することがある。
しかしこれによって生まれた魔術師は、魔翌力を体内に留めておくための器官を持っていない。そのために何かに魔翌力の貯蔵庫が無ければならないのだ。
そして、それに使われるのは「心臓」。
ここならば魔術回路に魔翌力を流すこともでき、魔術の行使が出来る。
だが心臓は人体の中で大事な臓器の一つ。
しかも人口の魔術回路は身体にかなりの負荷が掛かる。
それ故に、これによって造られた魔術師は総じて"短命である"。

しかしこのことをまだ──メルランは知らない。

「あ…いずも……」

治療室の扉が開き、そこから聞き慣れた声が治療室に響く。
メルランは近くのベッドで横になっていた。しかしいずもの姿が見えると体を起こす。
言わなければ、一度殺そうとまでした自分を助けてくれた彼女に礼を────。

「あ、あの…!ありがちゅっ…!」

噛んでしまった。
顔がみるみる赤くなり、慌てて口元を押さえる。
仕切り直しと言わんばかりに咳払いをして、もう一度向き直る。

「あの…ありがとう。私、貴女を殺そうとしたのに……、それにあんな酷いこと……
だからその…ごめんなさい……」

どうやら戦闘中にいずもに発した言葉を気にしているらしい。
バツが悪そうな顔をして、何か言葉を探すがうまく出てこず、結果黙りこくってしまった。
623 :獅子・トラ子 ◆CmqzxPj4w6 :2015/07/19(日) 13:51:51.88 ID:FLLq2we/O
>>614
じりぃと短くなっていく煙草を少女は眺めながら再びティーカップに口を付ける。律儀に待つ所送る事に拒否は無いと……
そしてコクリ、と頭が動き船を漕いだ。僅かに細まる瞳はやや虚ろになり、ふぁと口から溢れた小さな欠伸、なんか眠そうだ。

ふと、思い出すように彼女は呟いた。

「両親か………両親か」

そして、まぁ、男が煙草を吸い終わる頃には少女は元気にはなっているだろう。お会計は無論出さ無い財布すら出す気配が無い
というかそもそも持ってきて無いので出せ無い裏事情。外に出ればくるり周りでぺこりとお礼。そして先立つように歩き出す。
カランカランと地面に引きづられるスティックの悲鳴と共に、歩き先はやはりこの都市最大の学園の校門だ。その前で言うだろう

「ふむ、ここでいいぞ!そもそも此処からは部外者立ち入り禁止というやつだ」

「先程はありがとうございます。だ。うむ、あれ程美味いものを食べたのは初めてだっ!」

「あー、えっと知暁とか言ったな。貴様を私の友達に認めてやろう。困った事があれば大声で呼ぶが良い」

後者をバックに、鮮やかな夕日の赤に彩られながら、彼女は綺麗に微笑んだ。


/ね、寝落ちておりました…返信が非常に遅れてしまい申し訳ありません…
624 :高天原いずも ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/19(日) 13:51:52.61 ID:WhuB/fNS0
>>662
(……埋め込まれていた……………か。ここら辺はレイカにでも詳しく聞いてみる必要がある。)

レイカ……とは番長たる彼女と共同戦線を張っている魔術師の研究者の事である。
恐らく、彼女の身の回りにおいて彼女より魔術に秀でている者はいない。いずもが武器であれば、その研究者はその武器の使い手。
魔術に関しては彼女の頭脳的役割をしている人物である。

「………………………………!!
………………………………………気にすんな!
オレが好きでやった事だ。……寧ろ、オレが謝るべきだよ。ごめんな、オレがお前の気持ちも何も知らずに言っちまったせいで……」

高ぶったメルランの感情と、その具現の人形に”殺されかけた”。──それでもその番長は全てを了解し、自らの行いを詫びた。
そもそもの元凶たる激昂を生み出したのは他の誰でもない高天原いずも本人だ。……頭を、下げる。
話しかける直前、実は一つだけ不安があった。……こうやって話しかけても心の底から拒絶されてしまうのではないか。…二人の距離が無限に開く気がして、怖かった。
───でも、メルランは拒絶どころか、彼女を責めるような事はなかった。その反応に安堵し、顔の緊張が少し緩む。


「──んでもって!!そんな暗い話はやめだやめだ!!
……オレは何とも思っていないから……な?」

突然声を上げる番長少女。周りの患者からすれば凄まじく迷惑な愚行であるが、彼女自身、これくらいしか自分には出来ないと感じた。
ベッドに横たわる少女の頭へと、能力行使でボロボロになった右手を進める。特に抵抗がなければその頭を撫でるつもりだろう。
──その番長の顔には負の感情は一切なく、少女の不安を取り除くような暖かな笑みがあった。
625 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/19(日) 14:32:59.93 ID:uG+MIxRQ0
>>624

「そ、それは違うっ!
貴女の言ってたことは多分間違ってなくて……全部、私の心が弱かったから…招いたことで……」

確かに自分は利用されていたのかもしれない。ただの傀儡として使われていただけなのかもしれない。
この時初めて、メルランは組織を疑った。今までそんなことは思ったことがなかった。自分は組織のためになんでもするつもりだった。
こんな感情になったのはいずものお陰で──、むしろお礼を言うのはこっちなのだ。

「んっ…ありがと……」

その感謝の言葉はとても小さく、今にも掻き消えそうな声だった。
もう少し、このままで居たい。
出来ればずっとこのまま──だがそれは出来ない。
これからどうやって生きていけばいいか。
それをメルランは分からずにいた。
倒すべき敵、その敵の存在が揺らいでいる今、どうしたらいいのか。

「……ねぇ、いずも…私これから、どうしたらいいと思う…?」
626 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/19(日) 14:56:30.77 ID:WhuB/fNS0
>>625
「……どうすればいい……か。」

──咄嗟の質問だった。……考えてみる。
目の前の小さな魔術師は、現在の自分の居場所を”見失っている”。……否、その居場所の本質を”疑っている”という表現が正しいか。
自分の居場所について疑う……という事が起きるならば、恐らくその道は間違っているんだろう。
これからの少女の進む道について、心当たりが無い事はない。──でも、それは………、

「……ちょいと厳しい事を言う事にはなるけど、そいつぁオレじゃなくてメルラン、お前が決める事だ。
自分を救ってくれた”魔術”について違和感があるんならそれを突き詰めればいい。
この都市で触れ合った人間が暖かいと感じたならその輪に入り込めばいい。

……”何か”が間違っている、ってことはわかってんだろ?……じゃあ、その答えを探すべきだ。

”魔術”とかいう大きな総意なんかを悉く無視した、メルラン=ウォル=ラクトムル独自の。解答をな?」

実際、高天原いずも自身もその”答え合わせ”の真っ最中だ。
自らが憧れた「番長」について”何が”それを番長と言わしめるのか。
そして…兄の残像を追いかけるように守護者として立とうとする自分自身は一体……”何”なのか。
永久に答えなんてない答えを、自らの身体で体現する。……それが取り敢えず彼女を「番長っぽい」人間にしているだけなのだ。
───少女の言葉は更に続く。


「でも、その答えを導く”公式”としての役割ならオレにもできる。

……あ、公式ってそのくらいの年でも習ってたりすんのかな……はは、まあいいや。」


「はは……そうだなぁ…………────オレと一緒に…来るか?」


……道標の提示。高天原いずも独自の思い込みかも知れないが、恐らく自分自身がこの少女に進むべき道を示してあげられるのに最も近い存在だと感じた。
──だから、その番長は提示する。
他人を助けるという過程の中で、自分の答えを探る旅に出てみないか、と。勿論、それを否定するも肯定するもメルランの自由である。

627 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/19(日) 15:36:47.56 ID:uG+MIxRQ0
>>626

「私独自の…解答……」

一体自分の解答とはなんなのだろうか。
カスパールには感謝している。孤児院で一人だった自分に居場所を与えてくれた。
もしカスパールに入っていなければ、今頃はどうなっていただろうか。
その恩返しのためにと今まで戦ってきた。
だが、もしもそれが自分を利用しようとしていたためなのだとしたら────

「私は…知りたい。
私を助けてくれた組織の人たちが、一体なんのために能力者を危険視してるのか、それを知りたい。
そして能力者は全然危険じゃない、こんなに良い人も居るんだってことを知らせて、魔術師とこの学園都市がいつか、それぞれが手を取り合えるように……」

それは子供だからこそ想い描くことができる、儚い想い。
現実はそう甘くない。だが子供だからこそ、こんなことを想うことができる。
そして子供というものはありとあらゆる可能性を秘めている。
もしかすればメルランのこの想いも────

「私はほとんど独学で魔術を学んだのよ?
公式ぐらい分かるわよ。
いずもが、私を導いてくれるの…?……ありがとう…」

いずもは自分を「導いてくれる」と言った。
自分が公式となり、答えを導き出す手伝いをしてくれると。
視界がぼやけていく。きっと目にゴミが入ったからだ。そうに違いない。
いずもの言葉に対するメルランは──無言。
だが言葉の代わりに、いずもへと抱きつく。
泣きじゃくる子供が、まるで母親に甘えるようにメルランは声を上げて泣いた。
思えばこんなに泣いたのは、これが初めてかもしれない。
628 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/19(日) 15:53:42.79 ID:WhuB/fNS0
>>627
「”独学”か……そりゃあ凄い事だよ。
……でも……そんなん寂しかったろ。もっともーっと!周りから認めて貰いたかったろ。

──安心しろ、今日からはオレがお前と一緒に居てやるからよ、絶対。」

抱きついてきたメルランを優しく包む学ラン服。
宥めるような言葉と決意、そして笑顔と共に、泣きじゃくるメルランの頭を優しく撫でた。
──そして同時に、彼女の心の根底にふつふつと湧き起こるモノ………”怒り”があった。
こんなにも無邪気で暖かい生命を、まるで駒のように扱い進める”魔術”に対しての憤り。そして何より、此処に至るまでに少女を傷つけた”社会”の愚かさへの呆れ。
その少女は今一度、拳を握り締めなければならないと決意する。

「そういやぁお前って、どっか住む場所とかあんのか?……まあ組織から派遣って形なら何処かしらは知らされてたりするんだろうけど。

…もしアレだったら退院したら、ウチくる?」

暫く時が過ぎて、まずは抱きついたメルランをゆっくりと離して、会話ができる姿勢へと落ち着かせる。
そして、何処からか自分の家の鍵を取り出してその輪っかに指を引っ掛けてクルクルと回しながら言葉を発する。……因みに、彼女は一人暮らしである。
629 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/19(日) 16:37:06.80 ID:uG+MIxRQ0
>>628

「い、いや私はまだ12歳で…住む場所とかも特に知らされてなかったから…その……近くの森で野宿を……」

幸い、魔術を使い獣などを狩ることは出来たし、近くに川もあったので風呂等はそれで済ましていた。
生活はできていたので別段それに不満はなかったが、やはりまともな生活をしたいとは思っていた。
そんなメルランにとっていずもの提案は願ってもないことだ。断る理由がない。

「え…!?い、いずもが良いなら……もう明日になら退院できるって医師も言ってたし……
そ、その…不束者ですがよ、よろしくお願いします……」
630 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/19(日) 16:55:39.94 ID:WhuB/fNS0
>>629
「……の、野宿!?
ってお前……魔術師ってのも鬼畜な事要求してくるのな……。」

まさかこんな齢の少女を野宿させるとは。流石にこの事実には彼女も驚きを隠せず、目を見開いた。
正直、自分がこの最先端の都市で野宿するなんて事は考えてもみなかったが…過酷な環境下である事はこの土地に住んでいる者として十分推測できる。
──然し、それならば都合が良い。一人暮らしにも少し退屈していたところ、メルランにとってもこの交渉は利益にしかならない。

「良い……ってかその衝撃の事実聞かされた上なら何が何でも連れてくっての……。

ふははっ!かてぇかてぇ!そんな礼儀正さなくてもいつも通りでいいぜ?」

住処を提供する、となれば少しばかし礼義正しくなる少女を見て、番長は顔を綻ばせる。
──満面の笑み、其処に邪気などは一切なく。
暫くして笑いが収まると、番長は改めてメルランの方へと向き直る。
そして右手を差し出し握手を試みた。

「……んじゃまあ、、よ、よろしく?……だな!!」
631 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/19(日) 17:13:51.80 ID:uG+MIxRQ0
>>630

「そ、そう?ならいつも通りに……
って、そんなに笑うこと無いじゃないっ!」

いずもに笑われたことに些かヘソを曲げるが、なんだか自分もおかしくなり一緒に笑ってしまう。
一通り笑い終えると差し出された手を見て、一瞬きょとん、とするもすぐにメルランもそれに応える。

「うん、これからよろしくね、いずもっ!」

いずもには周りを明るくしてくれる何かがある。
そのお陰で今の自分があるのだと、今なら分かる。

「あ、そういえばいずもも学校に通ってるのよね。
それなら私も通っておいた方がいいのかしら……」

確かに学校に通っておいた方が何かと都合がいい。
だが正直学校というところがメルランにはよく分からない。
勉学に励む場所だとは分かっている、が実際どんなところなのかは学校に通ったことがないメルランには分からなかった。
632 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/19(日) 17:47:15.97 ID:WhuB/fNS0
>>631
「学校……ねぇ。取り敢えず能力者する為に作られたここは色々と管理がばがばだから、ちょいと申請送るだけで通えるんだろうけど………

──うん、そうだな行ったほうがいいと思うよ。
触れ合える機会はなるべく増やしたほうがいい……って、サボリ魔のオレがいっても参考になんねーか!ははっ!」

高天原いずもは17歳……つまり、其れは高校二年生である事を意味する。
それなりに学校生活をこなしてきた立場からすれば”間違いなく通うべき人生の過程”……。
幾らメルランの頭が良く出来ていても、それ以上に過ごす仲間との”関係”は得て損は無い。
──なんて偉そうな事を言ってるが、彼女の言葉にもある通り、高天原いずもはサボりの常習犯。
サボっては、町の器物損壊、風紀委員からの説教、学校からの説教……と負の循環が回っているような人間。……参考になるか、否か。

「”能力者”と接触する機会があるってのはお前の”答え”を探す上ではかなり重要になってくるだろうしさ。
………ま、頗る頭がいいであろうお前にとっては勉強はつまんねーだろうけどなぁ。」

──何せ12歳で独学で魔術を身につけ、然も学園都市で野宿するという知恵まで有しているのだから。


──そんなこんなで時間が経ち、病室から窓の外を見てみると。
夜の闇が既に学園都市を占拠し、人々はそれに抗わんと人工的な灯りの下で生活している。まるでイルミネーションのように煌びやかなその風景は、もう時刻が遅いという事を示していた。

「んじゃまあ、オレから言うのはこんだけ、だな!
…そろそろこんな時間だし、色々と準備する必要もあるだろうから、帰るとすっかねぇ。
明日退院……なら時間見つけてなるべく早くここに来るとするよ。」

そんな言葉をメルランへと発すると、彼女は自分の荷物を片手に……しようとしたところでとある事実に気付く。
”荷 物 が な い。”───そういえば、先程の狭い路地に置いてきた…ような…!?
「やべぇぇっ!!」と軽く嘆くと、扉の前で「じゃな!!」っと明らかに焦っている調で学ラン服を靡かせながら病室から去っていったのだった。


───実はこの後、彼女はお待ちかねの”風紀委員”に連行される事となるのだがそれはまた別のおはなし。


//こんな感じで〆な感じですかね……?ありがとうございました!
633 : ◆y7QHc6jCko [sage]:2015/07/19(日) 17:59:22.32 ID:VDWLgVoe0
>>618
再募集してみます
634 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/19(日) 18:23:02.43 ID:uG+MIxRQ0
>>632

『そう言うと思って、手続きはもう済ませておいたよ』

「っ!?あ、あんたは……」

横から口を挟んできたその人物は先ほどの医師だった。
その手には何かの紙が握られていた。
その紙は学校への転入届。
しかし小学校への物ではなく、「高校」へのだ。

『君の頭脳なら小学校は退屈だろうと思ってね。
まぁ僕なりの少し早い退院祝いと思ってくれ。
あぁ、安心してくれ。12歳の君でも通えるようこちらで手配はしておいたからね』

「一体あんたは……」

『おっと、すまないが別の診察が入っている。では僕は失礼するよ』

そう言って医師は立ち去っていった。
かくしてメルランの学園生活が始まったのであった。

──────────────


しかしメルランの体内に埋め込まれた魔術回路。
それは確実にメルランの体を蝕んでいく。じわり、じわり、と。
それはあと数年の間にメルランの身体全体に巡りやがて────
635 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/19(日) 18:27:12.51 ID:dv5xyOpao
>>618

「邪魔だ」

それは突然の事だった、不機嫌そうに告げられた短い宣告と共に、鋭い前蹴りが横から金髪の男を襲った。
それが当たるか当たらないか、当たったとしても少年が助かるかはわからないが、何にせよ、蹴りを放った主は逃げもせずにそこに立っていて。

「俺の通ろうとしてる道で乳繰り合ってんじゃねーぞクソ共、さっさとそこをどきやがれ、目障りだカス」

そこにいた少年は長身痩せ型で、お世辞にも強そうとは見えない体型だ、だが、身体つきではなく纏う雰囲気が兎に角『ヤバい奴』っぽさをこれでもかと放っていた。
金髪の男を、まるで害虫でも見るかのような目で睨み付けながら、低い声で罵詈雑言を浴びせまくる。
636 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/19(日) 18:30:06.80 ID:Th8QYzBF0
>>618
「ЧТО АД ТЫ ДЕЛАЕШЬ!!!(What a hell are you doing!!!!)」

金髪のごろつきが青年に、いよいよその拳を掲げ、暴力による解決を図ろうとした時。
砂利の中に突如、三つめの影が現れた。金髪の頭に向けて、異国の言葉と共に、目にも留まらぬ鉄拳がもたらされる。
金髪はその衝撃で吹き飛ぶように地面に倒れ、自らに一撃を加えた人物を、目を霞ませつつ見上げた。

彼の姿が、明滅する街灯の光の中に照らし出されている。金髪よりも一回り大きくガッシリとした肉体。黒く少しパーマのかかった髪。透き通るような緑の瞳が、彼を興奮した様子で睨んでいた。
その見慣れない異国の不気味な瞳に、得体の知れぬ恐怖感を抱いたのか、その金髪は反撃することなく、しかし睨みつけながら逃げていく。

彼は異国の言葉━━━しかし確実に罵倒の言葉を言っているとわかる━━━を呟きながら金髪を睨み返した後、例のカツアゲされていた男子生徒を見下ろした。

「大丈夫か?」

と、それだけ口にした。
彼はロシア人だった。何を言っているかはよくわからなかった。
しかし、確実に何か良からぬ状況であるということ、それだけは理解できた。
だからこそ、金髪を突然に殴るという、思い切った行動ができたのだ。
637 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA :2015/07/19(日) 18:30:55.19 ID:Th8QYzBF0
>>618>>635
/oh……リロード忘れてました、申し訳ない
638 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/19(日) 18:50:57.90 ID:VDWLgVoe0
ぐらりと大きな横揺れがあったかと思うと、襟首にかかった強い力からふっと解放されていた。呆然としたのは一瞬、
とても品の良いとは言えないいくつかの言葉と共に、ひとりの乱入者が現れたことを知る。

蹴り飛ばされた方はと言えば身体中に怒りをみなぎらせながらゆっくりと立ち上がろうとしているところだった。
しかし闖入者の方を見るや、赤黒い顔にあからさまな躊躇が浮かぶ。相手の格好、……いや、雰囲気から察するものがあったのかもしれない。
彼は残る二人の顔を交互ににらみ、覚えておけよと一言毒づき背を向ける。凄んだ様子とは裏腹にその逃げ足は早々としていた。


「……あ、あの」

取り敢えずの脅威は去り、公園には再び二人の人間が残ることになる。少年はおずおずと、救世主の様子を伺った。
ひょろりとした長躯に、赤い髪、とりわけどぎつい目付きと鋭い歯並びは、近寄りがたい印象を彼に与えた。
彼は無言のうちに思う。――これはいったい、本当に助かったと言えるのだろうか。

「助けていただいて、その、ありがとうございました……?」

とはいえ、状況的にはそれが事実である。
お礼に幾らか寄越せよ、なんて、脅されるような嫌な予感もあったが――杞憂に終わってくれはしないだろうかと、内心祈りつつ。
少年はぺこりと頭をさげ、お礼を言った。そしてフードをきゅっと目深にかぶり直す。人は見かけによらない。きっと、そう。
639 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/19(日) 18:52:35.22 ID:VDWLgVoe0
/安価わすれ >>638>>635さんあてです
/>>636 すみません…また機会がありましたらよろしくお願いします!
640 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/19(日) 19:09:46.35 ID:dv5xyOpao
>>638
「あ?なんか文句あんのかテメェ?おいコラ」
「それはこっちの台詞だよ、面ァ覚えたからな…!」

睨まれたなら、睨み返す、毒付かれたなら、脅し返す。本気で何をやっても不思議では無い一触即発の空気を支配する少年───黒繩 揚羽は、逃げていく男の背中をつまらなさそうに見つめていた。
それから、短く息を吐き捨てて歩き出そうとした所で、ビクついた声が掛けられて足が止まる。向けた顔の表情は、そのつもりは無くとも元来の目付きか睨んでいるようで。

「あぁン?何だテメェ…って、アレか、あいつとよろしくやってた奴か」
「…『助けた』だぁ?はぁ?誰がだよ、俺はただ通行の邪魔な石ころを蹴飛ばしただけだ」

「つーか、んだよテメェ、フードなんか被りやがってよぉ、俺の真似かオラ」
「似てる格好の奴がバカにされてたら俺までバカにされてるみてーじゃねーかコラ」

…なんと言う言い草だろうか、自己中心的にも程がある。
助けたどころか、少年の事は全く気にも留めて無かったし、その上今度は少年にまで絡み出した、その内容も『似た格好がバカにされてたら自分もムカつく』とかいうもの、とんでもない理論だ。
641 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/19(日) 19:32:17.87 ID:VDWLgVoe0
>>640
捨て台詞も容赦せず追及していく青年。顔を覚えたとの一言に逃げていく男はあからさまに不安を覚えたようだった。
その様子を見ていた、少年はぼんやりと感心していた。あの恐ろしいガタイの男を、ここまで怯えさせるなんて、と。


「な、なるほど……?」

納得できたような、意外なような。彼の行動論理はどうやら予想もつかないようなものだったらしく、
少年は中途半端に首を傾げる。――とはいえ、先ほどの相手とは違って金銭を要求してくることも手を挙げることもなく
どうやら悪い人ではないのかもしれない……決めつけるには早すぎるとは考えつつも、そんなことを思う。
同時に「よろしくやってる」という言い方はなんだかアレなので止めてほしいな、とも感じていたが、口には出せなかった。

「いや、これは真似してるわけじゃないんですけど、その」

彼の言う通り、見た目に関してはずいぶんと似ている。ただ少年がフードを被っているのは真似をしようとしていたわけではなく、
そこを指摘され彼は少々慌てた。時と場合を考えず、その本当の理由をしゃべってしまうくらいには。

「なんというか、赤色の髪って周りの眼とか気にすると恥ずかしくて、だから隠して――あっ、」

「似ている」と言われた直後に、「恥ずかしい」と口にすることのうかつさに、喋るまで気付けないなんて。
少年は自分を呪い、あとずさる。壁に頭が激突する。少し痛い。

「すいません、俺には似合わないって言いたかっただけで、別に赤が悪いとかそういうことじゃ……」

勝手に口を滑らせ、勝手に動揺している。青年はそんな彼の様子に、いったい何を思うのだろうか。
少年が願うことはただひとつ、壁に頭をぶつけるよりも痛い思いをせずにすみますように、ということだった。
642 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/19(日) 19:49:55.61 ID:dv5xyOpao
>>641
「あぁん?『恥かしい』だぁ?」

和泉が口を滑らせて、言ってしまった本心、『赤い髪は恥かしい』という言葉は、そのまま黒繩への罵倒にもなる。
ドスの効いた声で聞き返すと、黒繩はスルリとパーカーのフードを脱いだ、フードの下の、真紅のウルフカットが露わになった。

「自分で染めておいて恥かしいって何だよ?バカかテメェは?」
「それとも、そんな色の髪で自毛かぁ?何処の国の人間だよ」

そう、黒繩も赤髪ではあるが、和泉とは事情が違う、自分の意思で真紅の色に染め上げているのだ。
それはある意味趣味でもあり、世間への反抗心でもある───それはそれとして、自分の髪が染髪であるからこそ、和泉の髪もそうであると思い込んでいて。
その為、そんな言葉が出る、『染めた自分の責任だろう』と。

「つーか、オドオドすんじゃねぇ、腹立つ、ブチ殺すぞテメェ」
「大体あんな雑魚にビビってんじゃねぇよ、能力くらいテメェも持ってんだろ、そいつではっ倒してやりゃよかったんだよ」

相手にデカい態度を取られると当然ながらムカつくのだが、何もしてないのに怯えられるとそれもムカつく、相手が自分と似た姿なら尚更だ。
黒繩からしてみれば、鏡の向こうの自分がヘタれている感覚だろうか、彼なりの激励なのかもしれないが、言葉遣いと雰囲気が悪過ぎる。

/申し訳ありません、少しの間飯落ちします。
643 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/19(日) 20:39:04.72 ID:VDWLgVoe0
>>642
万が一聞き逃してくれることはないかと期待していたものの、青年は鋭い声でもって彼の失言に反応してきた。
ますますもって身を縮める。露わになったウルフカットの赤髪は、やはり似合って見える。お世辞などではなく。
今さら言っても、遅いのだろうが。

「あ、いや――」

青年の反応は予想外だったが、考えてみれば当然のことだった。赤髪が地毛の日本人なんて居ないだろうし、
自分で染めておいて何を言っているんだと思われるに決まっている。なんと説明したものだろう。

「ひっ、すみませ――あ、いや、なんでもない、です」

とりあえず思ったより怒られなかったことにほっと安心していると殺す、と声がかかる。
思わず誤ってしまいそうになるが、それこそ相手の嫌がる態度なのだろうと思い至り途中で言葉を止める。
その慌て方こそ相手をイラつかせているとはわかるのだが、なかなか自分の思うようにはいかない。

「――」

彼の言い分は最もで、思わず言葉を失ってしまう。たしかに能力を使えば撃退することはできたのかもしれない。
ではなぜそれをできなかったのか。がしがしと頭を掻く。
気が付けば、自然と口が開いていた。

「俺の髪、能力が身に付いた時に自然とこうなっちゃったんです。似合ってないと、思うんですけど」

フードを脱ぐと、少年の悄然とした面立ちと相反する赤髪が露わになった。

「能力もこの髪と同じでしっくりこないというか……相手を殺してしまったらどうしようとか、いろいろ考えちゃって――」

途中ではたと口を閉ざしたのは先ほどと同じで、後悔が湧きだしたためだった。
初対面の相手に自分は何を話しているのだろう――思わずため息が漏れる。

「なんか、すみません」

きまづくなって、頭をさげる。――そして思い出した。
おどおどするなと言われたばかりだったな、と。

/こちらも遅れました、すみません…!
644 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/19(日) 21:07:57.52 ID:dv5xyOpao
>>643
「──────」

和泉が頭を下げる、何故だろうか、全くわからない、わからないが。
『オドオドすんな』と言って、舌の根も乾かぬ内に頭を下げた和泉がムカついた。

ドンッ≠ニ黒繩の蹴り足が出る、和泉の脇スレスレをすり抜けて、向こうの壁を思い切り足裏で蹴りつけた。
その体制のまま、黒繩は和泉を睨み付け、煙草を取り出して火を点ける。黒い巻紙から、甘ったるい匂いの紫煙が立ち昇った。

「テメェは鳥頭以下か?あ?『オドオドすんな』っつってんだろ?」
「なーにが『殺しちゃうかも』だよ、どんだけ自分の能力に自信持ってんだテメェは」
「大体、殺したら殺したで、構わねーだろうが、掛かってきた奴が力量の差もわからないバカだったっつーだけの話だ、そうだろ?」

「俺だったら構わず殺すぜ」───そう付け加えながら、黒繩が見せた左掌の上に、和泉の目の前で漆黒の短剣が形作られた。
闇が凝縮するように、何もない空間から現れ、左掌に乗ったそれを片手で弄び、見せびらかして、それから先端を和泉の眼前に近付けて。

「ムカついた、だから今からテメェをぶっ殺す…つっても、テメェはまだ『殺しちゃうかも』とか言って何もしねぇのか?」
「なあ、おい…俺はマジだぜ?」

和泉に短剣の先を突き付けたまま、煽るようにそう言って、口に含んだ煙草の紫煙を吹きかける。
冗談だとは思えない、そんな雰囲気が本当に黒繩にはあって、今この瞬間にも短剣を和泉の顔面に突き立ててもおかしくはない。
645 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/19(日) 21:35:08.73 ID:VDWLgVoe0
背後の壁が物騒な音を立てる。どこかで見たような景色。だけれど原因は全然違う。悪いのは自分だ。
だからといって謝れば許してくれるとは、とても思えないけれど。
唐突に立ち込める甘い匂いもさして気にならない。目の前の彼が漆黒の短剣を取り出したからだった。

「っ、――」

脳裏に浮かぶのはつい先日の光景。本気の殺意に初めて会ったあの日。あのときは確かに躊躇なんてしなかった。
しかし躊躇しなかったことに後から怖くなって、――。
今はどうだろう。視界いっぱいに鋭利な金属があり、殺意がある。
紫煙が目にかかり、じんわりと涙がにじむ。ごくりと唾を飲む。――やはり躊躇なんて、出来そうもなかった。

「――!」

壁に浮かんだ少年の影から、突如として突起物が現れる。
それは――高温を伴うトカゲの尾は――眼前に揺れる短剣を絡め取ろうと試みるだろう。
646 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/19(日) 21:35:56.93 ID:VDWLgVoe0
/>>645>>644宛てです……
647 :芽取匁 ◆W5gVdFwf2A [saga sage]:2015/07/19(日) 22:01:34.64 ID:uDrm/jS3O
夕暮れの学園都市
下校時間からしばらく時間が経ち夕陽も落ちてきて暗くなっていく学園都市は昼の活気も薄れ人数も疎らになっている。
そんな道を見下ろせる場所にある無人らしきビルの屋上に灰色の髪を伸ばした学生服の男子が佇んでいた。

「こういう時間は魔に逢うから逢魔ヶ刻って言うんだっけ?本当に怖いのは人間だって言うのにみんな何に怖がってるんだろうね」

誰に言うでもなく屋上の柵にもたれながら傍にある紙袋からハンバーガーを取り出し口にする。
ハンバーガーを食べながら眼下の疎らになった人波を見る。学生出会ったり、成人であったり、補導にきた風紀委員であったりと様々な種類の人間がいて街はまだ忙しそうだ。
口の中のものを飲み込み長めの溜息をつく。

「ほんっと…ここは目まぐるしいよ、この距離からでも酔いそうだ」

長い前髪を右手で少し弄ってから食べかけのハンバーガーを口にする。男の左手は怪我でもしたのかボロボロの包帯で巻かれていてこれまでの動作には一度とも使っていない。

648 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/19(日) 22:07:59.88 ID:dv5xyOpao
>>645
「───ッ!?」

和泉の顔面を貫く時を、今か今かと待ち望む黒き短剣、そしてそのタイミングを握っているのは黒繩だ。
だが、突如として現れた何者か───いや、『ナニカ』が、黒繩の意識外から襲い掛かり、その手から短剣を絡め取り、その手に火傷を残していく。
黒繩は一瞬驚愕の表情を浮かべ、しかしすぐに、ニヤリと口角を上げると、壁に付けていた脚を引き。

「オラァ!!」

そのまま、その脚を横に振り抜き、和泉にミドルキックを放つ。
恐ろしく鋭い、脇腹を狙った蹴りだ、威力が恐ろしく高いという程ではないが、痛い場所を的確に狙ってくる。

649 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/19(日) 22:25:03.89 ID:VDWLgVoe0
>>648
短剣を奪い去り、束の間息をつく少年。――そこを横ざまに衝撃が襲った。
彼には能力こそあれど戦い慣れているわけでなければ能力を使いこなせているわけでもなかった。
激しい痛みと共に全身に土砂を纏いながら、その場でゆっくり立ち上がる。
本当にやるつもりなのか。

「俺はこんなこと、――」

望んではいなかった。それでもやるしかない、さもなければ、未来はない。
きっとそういうことなのだろう。
少年は初めて相手のことを睨み付けた。痛みに歪んだその表情は不格好なものではあったが。

彼は再び能力を呼び起こす。今度の対象は、青年の影である。
そこから一メートル程度の尾が飛び出し、相手の右足首を捉えようとするだろう。
ただし痛みのなかで呼び出したそれはいささか耐久に問題があるものだった。
対処しようと思えばそう難しくはないだろう。
650 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/19(日) 22:44:56.75 ID:dv5xyOpao
>>649
蹴り足を降ろしながら、飛んで行った和泉の方に体を向ける、余裕を見せ付けでもするかのように紫煙を吐いて、顎を上げてニヤリと笑って見せた。

「やりたくないじゃ済まねえんだよ、死にたくないならやれ」
「相手はテメェの気持ちなんて考えちゃくれねぇぞ?だったらテメェも我を通すしかねぇんだ、そうだろ!?なぁ!!」

黒繩の両手に続いて現れるのは、ふた振りの刀、漆黒の日本刀がそれぞれの手に握られて、黒繩は駆け出した。
脚を狙った尻尾を跳び上がって回避しながら、空中で刀を両方とも振り上げる、慣性の法則によって空中を移動しながら接近し、和泉の体をX字に斬り付けようとした。

この刀は───延いては、黒繩の作り出す漆黒の刀剣は、斬りつけた所で相手に傷を作り出さない、血も流れなければ皮膚すら切れない、全くの無傷のまま体を擦り抜ける。
しかし、その刀剣が体を斬りつけた時、その時には確かな痛みをそこに残して行って、しかもその痛みはただの刀剣が生み出すそれよりも遥かに痛い、激痛を残す。
651 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/19(日) 23:04:10.05 ID:VDWLgVoe0
彼はあくまでいくばくも余裕を残して煙草をふかしていた。それが不思議でもあり、うらやましくもあった。
彼のように確固とした価値観を持って、躊躇いなくいられたらどれだけ良いだろうか。
そんなことをぐだぐだと考えている暇は無い。青年の言う通り――やりたくないでは済まないのだから

「あなたはどうして、迷わないんですか――っ」

二振りの日本刀が迫る。今度は距離に余裕があったため少年にも反応することができた。

少年の影から2mほどの尾が現出し黒繩のみぞおちを目掛けてその先端を突き出す。両の刃が自身を捉えるより早く、
多少の火傷とともに脅威を遠ざけようという目論見だった。
しかし少年自身は無防備であるために、迎撃の失敗には多少のリスクも伴うものだ。
652 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/19(日) 23:36:06.21 ID:dv5xyOpao
>>651
襲い掛かる黒刃に、迎え撃つ炎の尾、手練れであるなら尾に対して斬りかかり、対処する事も出来た…が。
黒繩はそうする事もなく、寧ろ防御する事もなく、舌打ちをするとそのまま腹部に尾の激突を受けて吹き飛ばされる。

「ガハッ!!」

吐き出される多量の空気と胃液、だが、空中で受けた分体の抵抗が減ってダメージは少なく済んだ。その分吹っ飛ばされて転がったせいでそれ程差はないが。
黒繩の両手から離れた刀が転がり、闇の靄となって消えて行く、吹っ飛ばされた向こうで、黒繩は立ち上がりながら、咥えたままだった煙草を脇に吐き捨てた。

「…『なんで』…?ハッ!決まってんだろ!」
「『迷ってるのは辛いから』だよ!簡単だろ!?」
「目の前に邪魔な奴がいりゃ迷わずぶっ潰す!それの何が悪い!!なぁオイ!?」

立ち上がり、和泉の問い掛けに吠えて答えるも、受けたダメージは決して無視出来る物ではない。
鳩尾に大きな衝撃を受けたのだ、普通なら意識を保つのすら辛い筈なのに、こうして立って、声を張り上げている。

「わかったんならよぉ…いつまでもウジウジしてんなよ!!ムカつくんだよテメェは!!」
「所詮此の世は弱肉強食なんだよ!出来なきゃやられる、それだけだ!!」

叫ぶ黒繩の目の前の虚空に、黒い短剣が生成される、一本や二本ではなく、視界を覆い尽くさん程に大量に。
そのどれもが切っ先を真っ直ぐ和泉の方に向けていて、黒繩が右腕を振るうと同時に怒涛の勢いで発射され、一斉に和泉に襲い掛かる。
653 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/19(日) 23:56:18.38 ID:VDWLgVoe0
>>652
二振りの刀は地に落ち青年は大きく吹き飛ばされる。
ほんの少しの間あいてを思わず相手を心配するが、そんな心は殺してしまえと云うのもまた同じ相手だ。
其の場に直立し次の攻撃に身構える。満身創痍のはずなのに、彼にそんな様子は見られない

「……っ」

青年は吠える。――その通りだと思った。迷うのはつらい。
彼もそれは、知っているのだ。

飛来するおびただしい数の短剣。外灯の光がついに力尽きたかのように、視界が染まる。
すぐさま尾をもって迎撃するが、全てを弾くには尾は短すぎ、小さすぎた。ひとつ、またひとつ、
烈火の防御を掻い潜り、少年のもとへと飛来する。もはや回避する手段は残されていない。

「っ、あああああああ!!」

それは今までに感じたことのない激痛だった。
一瞬ふっと意識が飛びすぐさま痛みに呼び戻される。耐え難い衝撃に彼の両足はあっさりと崩落した。
その場にがっくりと膝をつき、手を支えに辛うじて倒れ込むのを抑えた。吐く息は荒く、赤髪は土まみれにくすんでいる。
俯いた顔の額には脂汗が浮かび――気が付けば彼の相棒たる蜥蜴の尾は、どこにもなくなっていた。
654 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/20(月) 00:16:06.48 ID:3RweKeJBo
>>653
「ハァ…ハァ…ハァ…!」
「…ケッ!!」

攻撃を受けた腹部を抑え、折れそうになる膝を必死に抑える、倒れた和泉を見詰めながら、脚を引き摺るようにして近づいて行く、ゆっくり、ゆっくりと。
内臓がひっくり返りそうな感覚が何度も何度も襲って来るも、それを意地で耐えて。

「オラァ…!どうしたァ!?それで終わりかァ!?」
「ぶっ殺すっつっただろうが…!ンな所でぶっ倒れてっと簡単に死んじまうぞ!」

「…それともよぉ、まだそのショボい尻尾程度で、俺を『殺しちゃうかも』なんて思ってんじゃねぇだろうなァァァ!!!」

右手に作り出すのは、今までの刀剣の中でも何より巨大な大剣、鋸のようにギザギザの刃を持つ、ビジュアルからも凶悪さを窺わせる一振りだ。
それを引き摺りながら、倒れた和泉を煽り───或いは激励して───近づいて行く。和泉にその気があるなら、立ち直る時間は十分にある筈だが…?
655 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/20(月) 00:38:30.18 ID:MyqHoTAF0
>>654
何かを引きずるような音に吸い寄せられるようにして、少年の視線が再び持ち上げられる。
そこには唖然とするような大きさの剣が――人肌などたやすく削り取ってしまいそうな――眼にも残酷な武器が、近づいてきていた。
もう十分すぎるほどの痛苦を味わったと思っていた。短剣だけであれだけの痛みなのだ、あんなものに耐えられるはずがない。

「――ッ、」

先ずあったのは恐怖だった。あれを喰らえばいままでに経験の無いだろう痛みを感ずることは確実で、想像もしたくない。
そして沸々と湧き上がってきたのは怒りだった。なぜ自分がこんな痛い目に合わなければならないのか。こんな仕打ちを受けているのか。
それらの感情は理性によるくびきを一瞬ならず解き放ち、少年の琥珀色の眼には再び爛々と意志の光が舞い戻り。――彼は立ち上がった。

「俺はこんなところじゃ、――死なないっ!!」

先刻までとは別の生き物であるかのように、彼の使い魔は跳ねる。
赤熱を纏った長大な尾が、無秩序な軌道でもんどりうって敵を跳ね飛ばさんと驀進する。
そこには躊躇いもなければ慈悲もなく、ただ強い意志のみがあった。
656 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/20(月) 01:01:26.94 ID:3RweKeJBo
>>655
引き摺る音は激しく、怪物の鳴き声のように夜に響く。とてもとても恐ろしい音が、何処までも抜けて行く。
だが、引き摺られた後のコンクリートにはまるで傷一つついていなかった、当然だ、だってこれはただの『妄想』なのだから。
黒繩と、和泉だけが見ている『妄想』、『そこに剣がある』とお互いに勝手に思い込んでるだけで、実際には存在しない、だから、痛みはあってもダメージは無い、それが《有害妄想》という名の、黒繩の能力だった。
ある意味それは凶悪だ、血の一滴も流さずに相手を苦痛に沈める事が出来るのだから、しかし、裏を返せばそれは、相手に手傷を負わせられないという事でもある。
いくら斬ったって、痛いだけで肉体はまるきり無事…つまり、相手が強靭な精神力さえあれば、死ぬ程の激痛を耐える事が出来れば、逆転を許してしまう。

「世界はなぁ、理不尽で出来てんだよ」
「テメェが幾ら望まなくたって、逃げたって、首根っこ引っ掴んで来るんだよ」
「だったら戦うしかねぇだろうが、殺すしかねぇだろうが!えぇ!?」

思えば、何故黒繩は和泉にこんな事をしたのか?まるで自分にも言い聞かせているような言葉を吐きながら、立ち上がった和泉に迫る黒繩は、自分でも自分の行動を省みる。
思ってみれば、放っておけばよかったんだ、こんな奴、少し髪色と服装が似ているからって、こんなに態度にイラつく必要も無かった。
じゃあ、何故だろうか、何故自分はこんな事をしているのか───あの時≠ゥら、少し自分がおかしくなっている気がした。

「─────────」

悪態を吐いた、小さな小さな声で呟いて、黒繩は鞭のように暴れ回る炎の中へ突っ込んでいった。
黒繩の生み出した刀剣に実体はない、故に防御に使えるような物でなく、取った行動はノーガードでの接近戦。
ただの一撃を入れる、その為だけに、尻尾の中を掻い潜り、和泉へと接近する。揺らぐ空気は熱く、スレスレで回避しても火傷を残し、熱気を帯びた空気を吸い込む度に体力が奪われる。
致命的な一撃だけは回避しながら、一歩、二歩、確実に接近して、巨大な大剣の刃先に和泉が入る距離、そこで引きずっていた大剣を振り上げて───

その瞬間だ、勝利を確信したその一瞬の隙が生まれ、そこにちょうど良く尻尾の一撃が入った、振り上げられんとしていた大剣からは手が離れ、崩れた体制の黒繩に次々に尻尾の打撃が襲い掛かる。
体を四方八方から打たれ、焼かれ、慈悲のない連撃に黒繩の体はボロ雑巾のように打ち砕かれ、弾き出されて地面を転がった。
657 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage saga]:2015/07/20(月) 01:23:35.65 ID:MyqHoTAF0
青年はあくまで揺るがなかった。決死の一撃を前にしてなお痛みに恐怖することもなく、幾重もの打撃を掻い潜り、真っ直ぐに歩いてくる。
無茶だと思った、しかし彼はそれを着実にこなしている。そこには彼の覚悟があるのではないか、ふとそんな気になる。

戦うしかない、と叫び続ける彼の姿。その頑なな彼の言葉は、あるいは彼自身に向けられたものではないか――
彼もまた何らかの過去を背負い、そしていまの姿になったのではないか。だから炎の輪を歩いてこられるのか。
考えすぎだ。そう感じながら、しかし思わずにはいられなかった。

「――っ」

最後の一撃は当たらない。そして大剣の一振りが――そこまで考えた直後、青年の姿が揺れた。
尾は間一髪のところで対象を捉え、その身体を容赦なく苛んだ。能力を止めるという発想が生まれる前に、
公園は元来の静寂を取り戻した。 青年は倒れ伏し、後悔がじわじわと競りあがる。それは理性を失った自分に対する、羞恥心のようなものだった。
多少のふらつきと格闘しながら、少年はゆっくりと相手の方へと近づいていく。
距離が詰まるにつれ見えるぼろぼろの身体。そしてようやく自分がほぼ無傷であることに気づく。――ぐっ、と息が詰まる。

言葉を探した。ここで「すみません」とは、言ってはいけないと思ったから。

「……生きてますか?」
658 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/20(月) 01:41:44.60 ID:3RweKeJBo
>>657
熱い、夏のど真ん中の気温で、さらに炎に焼かれて、酷く熱い。暑いのは苦手だ、寒いのも嫌いだが。
それに痛い、骨が何本か折れているようだ、だからってどうする事も出来ないが、何となくそう思った。
熱いし痛い、まだ神経が生きている証拠で、脳がそれを理解している証拠で、自分が生きている証だ。

清々しいなんて言えるような殊勝な人間ではないが、また悔しさなんかも無い、ぼんやりとする頭で、何か取り留めの無い事を考えていた気がする。
ムカつく程に輝く星が見下ろしているのが見える、仰向けに横たえた体は動かず、和泉が近づいてくるのだけがわかった。

「───死に損なった」

卑屈な皮肉を含めて、和泉の問い掛けにそう返す。

「…どうする?殺すなら今のうちだぜ?俺はしつこいからよ、俺を負かした奴には必ず仕返しに行く」
「俺は出来るなら容赦なくテメェを殺しに行くぜ、それが嫌ならここで俺を殺しておくんだな」

「…そうしたくなけりゃ、もう黙れ、黙って帰れよ、『すいません』とか言ったらそれこそぶっ殺すぞ」
「先に仕掛けたのは俺だろうが、返り討ちにしといて謝るっつーのはサイアクの侮辱だ」
「テメェの行動はテメェ自身が選んだ事だ、自分で選んだ行動は何にも間違っちゃいねぇんだよ、覚えとけ」

659 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage]:2015/07/20(月) 02:01:56.52 ID:MyqHoTAFo
>>658
返事はあった。驚くほど平板な声だった。――ほっと息を吐き出す。
口が悪いのは相変わらずのようだ。きっと彼は、殺されることになっても意識の途絶える直前まで、
この態度を崩さないでいるのだろう。 流石にいまは、びくびくするだけの体力も残っていなかったが。

「――ありがとうございました」

[ピーーー]か、さもなくば帰れと凄む彼に、静かに頭をさげ礼を言う。
それはひょっとすれば野暮な行為であったかもしれないが、少年にとりそれは必要な行為だと思われた。

「別にあなたに気を遣って言ってるんじゃありません、俺が言いたいから言うんです。
 ――相手のことより自分のやりたいことをやれってあなたが教えてくれたんですから、これなら問題ない、ですよね」

そう言って彼は、やや悪戯っぽく弛緩した笑みを浮かべる。
それはどこかつきものの取れたような様子で、皮肉や嘲りの類では無さそうに見える。

「あなたのおかげで、何かつかめた気がするんです。――それが何かは、まだ分からないですけど」

やがて少しの沈黙を挟んだあと、頼まれもしない言葉をとつとつと紡ぐ。
声は小さく、またこの人は怒るかも知れないと少年は思っていたが、黙って立ち去る気にはなれなかったのだった。
そうして彼は、「手、貸したら立てますか? それとも救急車呼んだほうがいいですか」と呼びかける。
その眼には強い意志が見て取れて、相手からすればおどおどしているのとは別のベクトルで苛立つような光景かも知れなかった。
660 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/20(月) 02:23:23.98 ID:3RweKeJBo
>>659
ちょっとイラついた。
和泉の行動は、まあ、多分間違ってはいないのだろう。黒繩だって和泉を叩き直すつもりでやったのだろうし、『自分で選んだ行動は正しい』と言ったのだから。
でも、この黒繩 揚羽という男は傍若無人な人間で、自分勝手に発言を捻じ曲げる奴だから、普通に理不尽にイラついた。

「…知るか、俺はただテメェがムカついたからブッ殺そうとしただけだ」
「勝手に何か見付けただか言って、勝手に礼してんじゃねえ」

少し不機嫌そうに、少し照れ臭そうに、それでもやっぱり不機嫌さが強い表情で言い返す、素直では無いとは思っても口にしない方がいいかもしれない。

「チッ、ほっとけつったろ、テメェがいなくても立てるし、病院行くのは面倒なんだよ!」
「…わかったら、もう帰れ、じゃねーと殺すぞ」

661 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage]:2015/07/20(月) 02:36:42.37 ID:MyqHoTAFo
>>660
青年は相変わらず不機嫌そうで、それでこの場を離れても何とかなるだろうと判断することにする。
[ピーーー]とまで言われれば、それが一番良い選択肢なのだろうと察しもつく。小さく頷いて、表情を歪める。
蹴られた脇腹をはじめ、身体のあちこちが悲鳴をあげている。休息が必要なのは相手ばかりでもなさそうだ。

「俺、和泉って言います。和泉 秋介。……もし殺しに来る気なら、できるだけ後回しにしてもらえると助かります」

脱いだフードを被り直し、それだけ口にする。深い意図は無かった。
なんとなくそういう気分だったというか、悪く言えば調子に乗っているというか、そんなところだろう。

「……それじゃ」

ともあれ少年は遠慮がちに手を挙げたのち、彼に向かって背を向けた。
時折予想外の部位からの痛みに身体を引き攣らせながら、緩慢なスピードで公園を後にする。
今日の出来事をどう受け止めたものかと帰路に思案を重ね、かくして長い一日が明けていく。


/かなり長時間になってしまいましたがお疲れ様でした、ありがとうございました!
662 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/20(月) 02:40:41.38 ID:3RweKeJBo
>>661
/お疲れ様でしたー!
663 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/20(月) 06:46:42.80 ID:4n2gBcDd0
──夜、夕闇が学園都市を包み込むその時刻にて。……彼女は何やら部屋の中に居た。
高天原いずもという番長の紛い物はとある少女を送り届け、路地裏に忘れてきた鞄を取りに行く…………筈だった。
彼女が今現在いる”部屋”は正確には「風紀委員の支部」である。普段から器物損壊を繰り返す彼女は数えきれないほど来た事はあるが、今回もその”器物損壊”の案件に当たる。

「ふーんふーんふふーん♫
……さあて、今日の担当ちゃんは誰よ?」

後頭部で手を組み、足をクロスさせて一つの机を前に椅子に腰掛ける。
──明らかにアウェイな環境下で悠々と担当の風紀委員を待つ少女。……悪い意味で此処に来る事は慣れてしまっている。
目をやれば周りには彼女にいつも迷惑を被っているからなのか、彼女を冷たい目で睨んでいる者が多数。「これで何回めだよ」「あいつは二度と担当したくない」何ていう愚痴まで聞こえてくる始末。

「あらあら、そんな事言っちゃうくらいならさっさとかえしてくれるとありがてぇんだけどなぁ……?
……ねぇそこの君!どうにかしてくれよこの手錠!!」

後頭部で手を組み……という表現をしたが、実はそれは「手を組まざるを得ない」なのである。
彼女の両手首には手錠、馬鹿力であるがためか、彼女の椅子の下には鉄球がズシリと床を歪ませている。
──今回彼女を取り締まってくれる正義の風紀委員様は誰か。非難しまくっている風紀委員ではあるが、ほんのごく一部の人間は彼女の器物損壊は「人助けの延長線上」である事を理解していたりもする。
さて、今回の風紀委員はどちらか。



664 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/20(月) 14:21:32.70 ID:bC453uyIo
>>663
「そんな事を言う程暇があるならば、彼女の担当を君たちの誰かと代わって貰っても良いんだぞ?」

冷たい野次を飛ばす風紀委員らしからぬ奴らをからかいながら、しっしと手で追い払う動作。そちらへ近づいていく歩みに躊躇いなどは一切見受けられない。
外野は自分で言った通り担当になりたくないのだろう、ひそひそと小声で何事かを囁きあいながら各々の仕事へと戻っていく。
それらが完全に居なくなるまでをしっかりと見届けてから漸くいずもへと向き直り、苦笑してみせる。

「まったく……やあ、いつもすまないね。あんなでも普段はいい奴らなんだが」
「話は多少だが聞いてるよ。それ、邪魔だろう?鍵は貰ってきたから、早速取ってしまおうか……よし、と」

いずもの腕に付けられた枷を指して、悪戯っぽくちらりと手中の鍵を見せる。そのまま躊躇いなく鍵穴とあわせれば、すぐさまいずもの両手は自由になってしまった。
女はというと、その結果に対し満足気に頷いて、悠々とした足取りで机を挟んで向かい側の椅子へと腰掛ける。

「さて。……それで、今回はどんな事をしてきたんだい?」

ゆったりと足を組み、いずもの口から語られる言葉を楽しみに待っているような表情。明らかに他の風紀委員––––––例えば先程の外野のような––––––とは違う、陰険さの欠片も見当たらない、そんな女。

理解しているかしていないかで言うと後者に含まれる八橋馨が、どうやら今回の"いずも係"なのだった。

//まだいらっしゃれば……!
665 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/20(月) 14:22:16.88 ID:bC453uyIo
>>664
//名前ミスです
666 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/20(月) 14:52:41.41 ID:4n2gBcDd0
>>664
カシャン!と小気味の良い音と共に解錠された手錠。その鍵の持ち主を見るや否や、少女は声を上げた。

「───お。今回の担当は八橋ちゃんか?
おーおー久しぶりー!ご公務お疲れ様っス!

まー、度々ぶっ壊してるからあんな風になるのもしゃーねーな。」

いずもの行動を束縛する拘束具を外し、取り締まる側として悠々な態度で机を隔てた向かい側の椅子に腰掛ける八橋。
どうやら彼女の発言からすると”高天原出雲”と”八橋馨”という人物は多少の面識があるらしく。
自らの記憶の引き出しを開けてみれば、かなり前にはなるが確かに”八橋馨”は自分の取り締まりを数回か担当していて、その影響か名前くらいは覚えていた。
八橋からの問いかけに対し少しだけ眉間に皺を寄せて考える素振りを見せると、単調な頭の持ち主である高天原いずもはすぐに回答を始める。

「どんな事…って言われても見ての通り、能力の暴発で道路ぶっ壊した、窓ガラス割った、とかそんな感じっスかねー?

いやぁ、急いでたんだよ!うんうん!
ほら!トイレいきたくなったら誰をも押しのけて蹴飛ばして我先にと急ぐあんな感じ?」

その話に「魔術師」が絡んでいる事を知れると、厄介な事になる。
この時点で彼女らは知る由も無いが、この2人は同時に同じ1人の魔術師と共同戦線を張っていたりする。そのとある1人の魔術師の謀略で、その互いが接触するという事はまず、あり得ないが。
──相手は風紀委員。隠密に行動している魔術師の立場からすると、最も正体を知られたくないだろう相手……であるという事は彼女にも理解できた。
だから。妙にふざけた調でその行動理由についてはかなり濁らせて話した。これが、脳筋馬鹿である彼女ができる最大限のポーカーフェース。

//よろしくお願いしまーす!
667 :高天原いずも ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/20(月) 14:58:16.38 ID:4n2gBcDd0
>>666
//訂正
八橋ちゃん→八橋先輩
668 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/20(月) 15:36:15.37 ID:bC453uyIo
>>666
「相変わらず元気そうで安心したよ……些か元気過ぎる気もするけどね」

久しぶりという言葉に和かな笑顔で返して、ほんの少しの考え事の後に並べられる言葉へと耳を傾ける。
八橋にとっていずもは風紀委員の仕事の中でのちょっとした"癒し"のようなものだった。
風紀委員というだけで陰湿な扱いを受けたりする中、底抜けな明るさと実直さを兼ね備えたいずもは、対応の楽さもありとても"疲れない"相手なのだ。


「なるほど、ね……言いたい事は分かるよ。……じゃあ、そうだな、何故急いでいたのか訊いても良いかい?」
「ほら、後で話を纏めないといけないだろう?だから細かく……出来るなら最初から教えて欲しいんだ」

いずもの精一杯の誤魔化しは、しかしどうやら八橋には通用していないようで。手元にあった適当な紙にサラサラと走り書きながら、頼むよ、という言葉と共に申し訳なさそうな顔をそちらに向ける。
仕事だから仕方ないんだよと、もしかしたら以前もいずもへ言った事があるかもしれない。見えない所では好き勝手する事が多い八橋も、流石に"見られている所"では真面目に振る舞う必要があった。

シャープペンシルが走った後の紙。覗いて見たならば、まだそこには小さく箇条書きで「能力の暴発による器物損壊」「急いでいた為」としか書かれていなかった。
669 :畏能 知暁 ◆fEEVECiwnU [sage]:2015/07/20(月) 19:07:03.83 ID:LG9wLEzzO
>>623
両親、という言葉を反芻するも、それを飲み込めないでいる少女を眺めながら男は口を噤む。
そうこうして店を出て少女を学校まで送るのだが、道中、男は笑っているような困っているような顔で黙り込んだままだった。
何を思い、何を考え、何を感じているのか。

「お?おー……部外者立ち入り禁止なんかい…ま、ええわ!しっかり送ったからなー!」

ふっと少女に顔を向けて微笑み、男はひらひらと気楽な感じで手を振る。
学校の場所も外観から大体の位置も把握できた、かなりの収穫だ。
独りで彷徨いていたら通報されかねないが、少女を送り届けたという大義名分があれば問題無いだろう。
それに、素直に謝辞を述べる少女も機嫌が治っているようで何より。
困ったことがあれば呼べと言う少女に、男は笑って頷く。

「そやなぁ、いらん輩に絡まれたらトラ子呼べば一瞬で解決やろしな!頼りにしてるでぇ?」

そうして、校舎へと歩いていく少女をぼんやり眺め、帰るか、と踵を返そうとした瞬間 ————。




「 っ————! 」



あまりにも綺麗に、儚く微笑むものだから。
男は思わず取り出していた煙草を取り落として、見惚れてしまう。
それも、すぐに気を取り直したようにハッとして煙草を拾い上げ、次に顔をあげた時には、夢のように消えていた。




「………トラ子……トラ子、な……」


「出来れば、やり合いたくない奴やで……ほんま………さっ、俺も帰ろかなぁー!」


男は何を思うのか。

ただ、呪いを背負いて、黒の刀を引っさげ歩みを進める。



もう、夜がくる。



/返信めちゃくちゃ遅れてすみませんでした……
/絡みありがとうございました!!
670 :高天原いずも ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/20(月) 20:09:55.76 ID:4n2gBcDd0
>>668
「ちぇっ…………やっぱ先輩には通じねーか!他の奴らなら大抵は適当に言ったらそれで処理してくれるんだがなぁ…」

──実は、この公害のような番長少女は。以前にも八橋馨という風紀委員から取り締まりを受けていて、その際は適当な話で済ませようとするのだが、その手が通じた事は無かった。
他の風紀委員なら「あーはいはい、りょーかい気をつけるよーに」と面倒くさがって終わらせるのが多いのだが、目の前の風紀委員は「例外」に当たる。
少ししてから「わかったよ。」と軽く決意したように真剣な表情を浮かべるいずも。
そして、紡がれた言葉は────。

「───オレが路地裏歩いていたらさ……その……いたんだよ。

…………
………………傷付いた可愛らしいゴスロリ幼女が。」

彼女はその俄かにも信じ難い話を、真顔でゆっくりと目の前の八橋へと伝える。
事実に忠実に言うならば”高天原いずもとの戦闘で傷付いた”ゴスロリ幼女であるが、其処は魔術と何より高天原いずもの名誉のために割愛。

「……んで、なかなかにやばい状態だったんで能力馬鹿力全快で病院に駆け込んだってわけよ。
──あ、心配しなくともその娘に”何かトンデモナイ事”された痕みたいなのは無かったから安心してくださいッス。

あと誤解産むの強いから一応、オレはレ○でもロ○コンないのでー。」

オレからは伝えられるのはこんな感じの事だけだな、と軽く言った後、真顔が緩み、明るい笑顔が彼女の顔を彩る。
──まあまあ事実に近いからか、彼女は、至って真剣だった。

//すみません!遅くなりました……!
671 :メルラン=ウォル=ラクトムル [sage]:2015/07/20(月) 21:10:40.95 ID:dEbAfLok0
すいません、査定スレの方で反応無いのですがこれって本スレの方で運用しても大丈夫なのでしょうか?
672 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/07/20(月) 21:11:06.10 ID:dEbAfLok0
>>671
//誤爆です
673 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/20(月) 22:04:07.21 ID:ZdogaMkhO
>>670
「他の奴らと一緒にして貰っては困る、"ここ"に来たからにはそれなりの対応をしないとね」

それこそ舐められてしまうから、と苦笑を漏らす。決していずもが自分の事を舐めるだとかそういった懸念はしていないのだが。
変に相手で態度を変えると、後々面倒になる可能性が高い。面倒ごとだけは避けたかった。
真剣な面持ちになったいずもに呼応するように表情を引き締め、メモに文字を増やしていく––––––と、その途中

「……。」

ぴたりと筆を止めて、じっくりと聞き入りながらいずもと視線をあわせる。その瞳は何やら複雑なものを内包しているようで。
いずもの話が一通り終われば、メモの一部の文字ににシャッと丸を付けて、考え込むようにトントンと机を指で叩く。
そして、

「––––––さっきの説明と少々違う部分があるようだが、どういう事かな?」

語り終え、満足げないずもとは対照的にやや険しい顔で。くるりとメモの向きを変えていずもが読みやすいようにして、分かりやすいようシャープペンシルの先で示してみせる。丸が付けられているのは先程書き込んだ「能力の暴発」の部分。
尋問……とまではいかないが、和やかだった彼女の雰囲気は一転、融通の効かない所謂"お堅い風紀委員"のものになった。

//お、お待たせしました……!
674 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/20(月) 22:17:37.10 ID:4n2gBcDd0
>>673

「うおぉ……先輩怖い顔になっちゃってんよー落ち着いて落ち着いて。」

因みにこれも過去に少しなら経験をした事があるような……ないような。
取り敢えず話を早く終わらせたいいずもが適当に言った言葉、そして見破られて言った真実。──当然、その二つには相違点が生まれてしまう訳で。
やっちまったか……?と硬くなってしまった場の雰囲気を和ます為に笑顔で接する。……効果があるかどうかは別として。

「……その、さっきの説明はかなりまとめた要約みたいなもんだからな。
オレがとある幼女を送り届ける為に能力を使い、その結果あんな事になってる訳だけど、
”都市全体”の風紀を司るアンタたちからしたら、そんなのは理由にもなんねぇんじゃねぇんスか?

……まあ、略しすぎたのは謝りますよっ。ごめんなさい先輩」

……と、彼女はその相違点の理由を説明する。と言っても理由というよりは彼女の「想像」に当たるかもしれないが。
言い終わると、番長少女は至って軽い態度を改める事なく、少しだけ頭を下げた。

//いえいえ!私も遅れましたので!
675 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/20(月) 22:55:20.85 ID:bC453uyIo
>>674
「…………」

八橋は暫く無言のまま、考え込むように視線をメモ書きへと落とす。いずもの言葉が正しいならば、引っかかった"少々の違い"は無理やりに省略した事による言葉の選び間違いだが……。
痛い程の沈黙の後、彼女は大きくため息を吐いて顔を上げる。まだ堅さが残りながらも、多少柔らかくなった表情から察するならば。

「……君に限って、何か悪事を働くという事は考えにくいからな。分かった、書類にはさっきの言葉通りに書いておこう」

いずもの試みは一応、成功といった所だろう。苦笑を見せてこめかみ辺りを軽く掻き、纏め用のメモ書きはこれで完成だという風に八橋の手元まで下げられ、裏返された。

「……それにしても、君が能力を使う程急ぐのだから、その子はとても酷い怪我だったんだろう?大丈夫だったかい?」

……だから、ここから先はあくまでただの世間話だ。少なくとも、はたから見るとそうとしか感じられない、そんな言葉。
しかし八橋は違う、彼女はまだ先程のいずもの"言い訳"に納得しきっていない。引っかかりに関わっている可能性のある、被害者の幼子についての話題を"敢えて"、違和感のない程度に振るのだ。

……人が嘘を付く理由は、自分の為と誰かの為の何方かだ。いずもが風紀委員を煽るような言葉を使ってまで隠したいだろう事実は何なのか。
自分か、幼子か、幼子に大怪我を負わせた誰かか……少なくともこの3人。いずもの話に関わりのある人物の為の嘘。
何が目的でついたのかは見当も付かないが、嘘である可能性が潰えるまでは––––––目的が達成されるまではしつこく粘るのが、この八橋馨という女なのだ。
676 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/20(月) 23:18:59.56 ID:4n2gBcDd0
>>675
(………やっぱ探ってくるか……………。)

確かに、いずも自身も自らの言動が相手に何らかの関心を持たせるようなものである事は察していた。
能力を暴発する勢いで使わなければならない程に急いでいたのなら、その娘の容態はどうなった?てかそもそもその子は誰だ?何故路地裏に傷ついた状態でいたんだ?
……今振り返ってみれば、相手に関心を持たせてしまうという点においては彼女の言動は”欠陥だらけ”だったのだろう。
この時点で彼女は八橋が魔術師であるなど知る由もない。だが、救った娘が”魔術”と関連した傷を負ったという事実だけは、誰に対しても死守しなければならないものだ。

「んあ……まあ何とか一命は取り止めたって感じだったッス。
…まあその娘の保護者でもあるまいしお医者さんから大した話は聞いてないんですけどね

…てかオレの頭じゃあ難しいモンは理解できないッスよ?んなオレが聞いたところでクソの役にもたちやしない。」

──然し、彼女はその欠陥の埋め合わせをしなければならない。其れは病院へと運ばれた少女の為でもあるし、または自分の為、広くを見れば其れに加担してくれた黒繩という青年の為でもある。

……彼女の武器の一つに「ポーカーフェース」がある。其れは彼女が”単純すぎる”性格であるために、事実に反していてもそれと近い事を言えば”真実”であるかのように振る舞える。
…演技力、とはまた違う、生来特有の性質だ。
そんな”至って普通の番長である高天原いずも”は、目の前の八橋にもそれを振るった。
尤も、それが通じるかどうかは眼前の八橋次第──であるが。
677 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/20(月) 23:47:39.30 ID:bC453uyIo
>>676
「……そうか、それならば良かった」

にっこりと、"風紀委員らしい笑み"で八橋は短く言葉を紡ぐ。これ以上追及したとして、利点はほぼないと言ってもいい。
綻びを見せないのだから……見せまいとしているのだから、詰まりはそういう事なのだ。それが分かれば後は、自分で動くだけ。
"追い詰められると鼠は時に牙を剥く"のだから、敵対したくないと思う相手を必要以上に追い込むのは止すべきだ。そして目前の少女は、敵対したくない相手の一人なのだから。

「その子の怪我とは関係無いだろうけれど、最近は物騒な噂もたっているようだからね。……いずも、君も気を付けた方が良い」

……しかし、追及と「八橋馨が魔術師の存在を知っている可能性」を匂わせる事では話は別だ。
君は強いから大丈夫かもしれないけどね、と笑う様子からは、ついさっきまでの堅さは微塵も感じられない。ここからは風紀委員としてではなく、八橋馨個人として……魔術師としての行動だ。
これは賭けでもあった。ここでのいずもの反応によっては、彼女は立ち振る舞いにより一層気を付けなければならないのだから。
678 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/21(火) 00:06:45.56 ID:f1STU3kY0
>>677
「物騒……………ねぇ。」

八橋の言葉を聞き、腕を組み、ふと窓の外を見てみる。
ガラス窓を仕切りに隔たれた世界は既に闇が広がっていて。それに抗うように活動を続ける人々の灯りが何処か印象的だ。
そしてこの都市の何処かに───その”物騒”の根源は無数に潜んでいる。
当たり前のように闇に佇む”奴ら”は神出鬼没。その危険性は幾つかの対峙経験を経た彼女は十分理解している……が、目の前の”先輩”がその危険性を孕んだ人物であるとは、高天原いずもの思考にはこれっぽっちも存在していなかった。
八橋には間違いなく好都合であるといえる。

「オレも最近何か可笑しいとは思いますよ。

さっきのゴスロリ幼女ちゃん然り、何となくっスけど空気が違いますもん学園都市。

──そこんところ、学園都市の正義こと風紀委員さんは何か掴んでたりするんスか?……あーでも、あれか?一般人に言うような事ではない!みたいな?」

これは、純粋な疑問だった。
勿論勘付かれないように……もう遅いかもしれないが、何も知らない体で話題提示をする番長。
自分自身はその”空気の違い”とやらの正体は知っている。
……では、学園都市全体ではどうなのか。……否、学園都市の”正義”はどこまでその概要を掴めているのか。
彼女の会話にも出てきた”ゴスロリ幼女ちゃん”を保護するという危険をこれから伴って行動するであろういずもは、知らなければならない事実だ。
679 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/21(火) 00:31:47.22 ID:PMYxCIY+o
>>678
少女の行動をなぞるように窓の外へ視線を向ける。硝子一枚を隔ててそこに広がる世界はまさしく物騒な因子が活動するのにもってこいのものなのだ。
全ての魔術師が不穏な空気を纏っている訳ではないが、少なくともこの女は"纏っている"側の存在で。

「さてね、僕だって全ての記録に目を通している訳じゃない。もしかすると何かを知っている奴が居る可能性はあるが……流石に風紀委員会の総意は僕にも分からないさ」
「ただ、噂になっている……能力者ではない存在だったか?それがこの街に居ると言われても、"僕個人がそれを否定する事は絶対に無理だ"よ」

この言葉の捉え方は大きく二つ。「既に魔術師と接触した事がある」のか「彼女自身が魔術師である」か、だ。
この話題への食い付きは悪くないものだった。ならば、敢えて暈す事で相手の興味を引き、どこまで伝えるべきかを推し量る事も可能だろう。
しかし、いずもが思惑通りの捉え方をしてくれるかどうかは分からない。自分と性格や考えが似通わない為に、そしてその単純さ故に、いずもの言動の予測は難しいものだった。

「だから、そうだな……確定している事を挙げるならば、"能力者でない者の噂が流れている"事と、それが仮に事実だったとして"それらについて何か知っている者が少なからずいる"という事……だな」
680 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/21(火) 01:11:18.84 ID:f1STU3kY0
>>679
「それって先輩………つまりアンタは」

先日とある魔術師と共同戦線を張って以来、馬鹿で単調だった高天原いずもの思考はある程度の進歩を遂げている。──故に。
八橋の言葉の中の”否定する事は絶対に出来ない”という部分が、何処か引っかかった。
そもそも、”オレ”が少なくとも認識している”八橋 馨”という人物は、何処か侮れない人物の筈だ。
鈍感である彼女にも、数回の邂逅の間になんとなくは理解できている。
──然し、その進歩というのも微々たる物であって彼女の考えに浮かんでいるのは「彼女が魔術と接触したことがある」という物だけ。その”本質”についてはまだ確信出来ていない。
だから、一方の考察を告げる。

「───ある程度は”それ”について掴んでいる……だろ?
その正体がわからねぇんであれば、そんじょそこらの連中みたく否定してしまえばいいんだ。」

事実、学園都市において”能力”とは別に何か異能があるのではないかという思考は存在する。
……だが。そこに存在している”能力”が便利過ぎるが故にそんな事は考える必要がない。……極一部の人間を除き、”別の異能”に興味を持つものはいなかった…………そう、極一部を除き。
番長は思い切って、とある補足を付けてみることにした。

「…八橋先輩、正直に言いましょう。
恐らく貴女が勘ぐってるように、オレもそのわけのわからない”何か”……の様なものは見た……かもしれない。
……そもそもその”何か”の本質がわからないもんだから、それはただ能力っぽくない能力なのかもしれないし、断定はできないっスけどね。」

…………と。



//すみません!明日朝が早くて一旦凍結させていただいてもよろしいでしょうか?
681 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/21(火) 02:36:16.42 ID:PMYxCIY+o
>>680
ゆっくりと瞼を閉じて、息を吐きながらゆっくりと開ける。そうすればその下から現れる瞳には、刃物のような鋭い何かがあった。
周囲に他の人物の存在は無いが、万が一という物もある。決定的な言葉は使わずに、それでいて相手には伝わるようにと脳内だけで考えるのは、中々骨が折れる作業だ。

「そうだな……あぁ、そうだ。僕はそれを少なからず"知っている"」
「だから判る、君が遭遇したのはそれで恐らく間違いないと。そして、君がその区別に悩む理由も、同じ様に」

しかしこれは、伝えねばならない言葉だ。意思を持って発言している以上、責任は付いて回るのだから。"今日この日発言した全ての言葉"への責任は、果たさなければ。
だから、答える。動作を、言葉を、雰囲気を……己の総てを以ってして、いずもへと、応えるのだ。

「……能力も、それも、似通った部分が多い。力を見ただけで"そう"だと判別できるものは少ないだろう」
「もし判別したいのならば……、……その人物の人格を知ると良い。彼等はその殆どが己の欲望に忠実で、とても利己的だ」

その欲がどんな形であれな、と付け加える。言葉に躊躇いがあったのは何故なのか、それは八橋しか知る由のない事だが。
欲。欲望。例えそれが善であろうが悪であろうが魔術師は関係無しに、"自分の想いの実現"を念頭に置いて活動している者が殆どだ、と。

––––––まるで、自分が"とても多くの"それらを見てきたかのような、口ぶりで。

//了解しましたー
682 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/21(火) 18:25:40.36 ID:f1STU3kY0
>>681
「──────!!!」


それは、ほんの一瞬だった。
──然し、高天原いずもは確かにその眼に写した。刹那、番長の目が見開かれる。
目の前の”八橋 馨”が今までとは別の……”得体の知れないもの”の様に感じ取れた。身体の何処かに既に刃を突き立てられてるのではないか、彼女の防衛本能を一瞬にして駆り立てた……鋭利な眼光。
初めて魔術師に会った時と、何処か似た感覚。


「……はは…………先輩アンタ…………いや、やっぱやめとくわ。

────まだオレ達は敵対すべきじゃあねぇ……ッスよね?
オレはKYって奴だから空気ぶち破りますけど、だから……遠回しに伝えたんだろ?」

周りに他の風紀委員が居ないのをいい事に、番長少女はそれを口にした。

全ての話を終えて、高天原出雲は漸く”八橋 馨”という女性の本質に気づくに至る。
…確信を持つのに役立ったのは、彼女の防衛本能を一瞬にして駆り立てた八橋の眼、そして何より彼女の言葉。──明らかに”知りすぎている”。

──解ってしまったならば、もはや隠す必要は無い。
最後の言葉の後、ニヤッと、少女は不敵に笑って見せた。

「……ま、オレだってアンタとそういう関係になるのは望みはしませんよ。
…先輩の”欲”の中にオレがいるんなら、そういう関係になるのは必然かもしれないっスけどねー?」

然し、少女は至って彼女のままだった。衝撃の事実を目の当たりにして尚、友好的な態度は崩さない。
────そして最後に、彼女は一つ質問をしてみた。……爽やかな笑顔を浮かべつつ、核心をつくような一言を。

「───どっからどこまで、先輩の”計画通り”、ですか?」

事実……いつの間にか単調頭の彼女は隠したかった事実を明かしてしまったのだ。だから、問う。
オレはいつからアンタの掌の上で踊らされながらアンタと話していたんだ?と。
683 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/21(火) 19:13:03.67 ID:PMYxCIY+o
>>682
「……さて、何時からだろうな?……最初は、この話を君に伝えるつもりは無かったのだけれど」
「ただ、生憎と僕は"隠し事をされるのが嫌いな性分"なものでね」

複数の意味を––––––この場にいない相手へ向けての嫌味も、ここぞとばかりに––––––混ぜ合わせ、練り込み、慎重に八橋は言葉を紡ぐ。
八橋がこの行動を取らざるを得なくなったのは、全てにおいて然る魔術師の行動が原因で。言ってしまえば"今日出会った当初から"、八橋はいずもに対して自身の事を多少なりとも伝える気で臨んでいた。
無論、その事を目前の少女に伝える気はさらさら無いのだが。


「純粋に、君とは仲良くありたいんだ。……そう、例えば、互いを助け合うような関係だとか、ね」
「勿論、君がそれを望まないならば無理は言わないつもりだ。……そうすると僕の"欲"に君が含まれる可能性も、無いとは言い切れなくなるが」

全ては君の自由さ、と。椅子の背凭れにギシリと背中を預け、後は穏やかな表情で、いずもの反応を待つように。

言うなれば今回の一連の行動は、"ここに居ない彼女"に対する病魔からの……飼い犬からの嫌がらせなのだった。
自分と対面するこの少女が、いつか喰い殺すだろう主人に良いように扱われていると密かに知った時から決めていた事が、八橋にはあるのだ。
684 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/21(火) 19:46:42.64 ID:f1STU3kY0
>>683
「……ははっ!
その言葉すらもオレから何かを引き出す為の伏線に聞こえてくるようで……いやぁ、恐れ入りますわ先輩。」

敵わない、と言葉の最後に付けて、番長少女は机の上に突っ伏した。
勿論、彼女は八橋が発した言葉にはもっと別の意図があるという事に気づくはずも無く。
突っ伏したままの少女から、更に言葉が発せられる。腕と机が顔を覆っているおかげか、篭ったような番長の声が。

「────だから。申し訳ないっすけどその”共同戦線”みたいなのは辞退するよ。」

断る理由は二つ──。
一つ目は既に別の魔術師と共同戦線を交わしているという事。二つ目は彼女の言葉にもある通り、心の底から信用できるとは思えないから。

…レイカ=ウィルソンという魔術師と、八橋 馨という魔術師には、大きな違いがあった。
前者の方は演技全開で弱い自分を演出して、彼女の「護る」精神を煽った。…後者は演技では無く、ただ純粋に彼女との共同戦線を申し出た。

この両者を比較した場合、彼女の単調な脳筋思考からすると効果があるのは「護る」精神を煽る前者が圧倒的。
人を引き込むという点についてはどちらも並の人間を凌駕しているが、今回においてはレイカ=ウィルソンが上であった、というだけの話。八橋の敗因を挙げるとすれば「八橋 馨らしすぎた」という点だろう。
悪気なんてモノはない。純粋な笑顔で彼女の提案を拒絶する──。
ふと顔を上げて。

「先輩と組むってのは間違いなく良い展開なんだろうよ。
……でも先輩は自分自身の身は自分で護れるだろ?……むしろ、オレが邪魔になるほどにアンタは万能に近いと思うよ。
…オレが名乗ってる”番長”ってのはさ、皮肉にも”弱い者”を救って優越感に浸る……そんなモンだよ。でもオレはそれを何より誇りに思ってるし、それが醜いオレ自身のあり方なんだと思う。

……だから、オレはまだ先輩の味方にはなれない。」

そして一つ……高天原いずもの間違いを挙げるとするならば。
”自分をか弱いと称した魔術師”の闇に気づかず、”番長”の力を振るっていることであろう。
──現時点での高天原いずもは、”護る”べき者が根本的に違っている事を。利用されている事を。
……まだ、知らない。
685 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/21(火) 20:20:15.38 ID:PMYxCIY+o
>>684
「……深追いをする程馬鹿じゃあない。君がそう決めたのなら、僕はそれで構わないさ」

分かったと頷いて、魔術師はあっさりと引き下がる。いずもが信用出来ない相手と共同戦線を組む程考えなしではないと証明されただけでもまぁ、収穫と言えよう。
それに、少女は言ったのだ。"まだ味方にはなれない"と……つまりそれは、味方になる可能性もあるという事で。
ガタリと椅子から立ち上がると、メモ書きを手に取りゆるりと歩き出す。もうお開きにしよう、と。

「随分と長話をしてしまったな。もう夜も遅い、好きに帰っても良いぞ」

そうやって少女へと微笑みかける姿は、以前と変わらぬ何時も通りの八橋馨で。先ほどまでの雰囲気を微塵も感じさせないこの様子もまた、八橋を信用しきれない理由のひとつとなってしまっているのだろう。
ならば。いや、なればこそ––––––

「……それから、これは、魔術師としての僕からの助言のようなものだと思ってくれ」

––––––それを利用しない手は、ないのだ。

「レイカ・ウィルソンという女には、関わらない方がいい。理由は聞くな。僕にも……その女にもな」

一石、たった一石投じてしまえば波紋は際限なく広がる。今はこれだけで充分だ、何時か彼女を喰い殺す時に"自分の正しさが証明されれば良いのだから"。
そうなれば、自分の立ち振る舞いにさえ気を使えば、目前の少女は自然と自分を信用出来る筈なのだ。

「気を付けて帰るんだぞ、番長。夜は魔が彷徨く時間だから、な」

それだけ言い切って、八橋はいずもの反応も待たずに歩調を早めてしまう。幾ら言葉を掛けても止まらないだろう。止めたければ、手を掴むなりしないと難しそうだ。


//〆っぽくしましたが、続けたければ取っ捕まえるなり何なりして下さってOKです!
686 :高天原いずも ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/21(火) 20:50:54.97 ID:f1STU3kY0
>>685
「おお!マジで!?やっと帰れんのやっほーい!!」

先程の張り詰めた緊張感を何処かへと焼却した彼女をどうにか許してほしい。……彼女は本質的にこんな人間だ。
椅子から勢い良く立ち上がると、「ん〜〜〜〜楽々!」と大きな背伸びを一つ。

──「番長」というのは非常に単純な生物で。数分ほど前に彼女自身が語った通り醜く言えば「弱い者を救って優越感に浸る」という性質を持つ。
弱い者…にどのような定義があるかはわからない。だが彼女の目に、少しでも傷ついた姿が映ればそれは”助けを必要としている者”だ。
それがゴツいおっさんであろうが人外であろうが、敵であろうが関係は無い。其れ等を救う事で、確かに”彼女”の存在意義はある。──尤も、現在はそれが空回りしているのだが。

思い出したように追加で八橋 馨から発される言葉。「ん?」と疑問符を浮かべて立ち止まるいずも。
────そして、語られた”魔術師の名”は。


……………………………………………………
……………………………………
………………………
…………


──路地裏。彼女がメルラン=ウォル=ラクトムルという少女に出会い、一時の物語を創作した彼の地にて。
今にも消えそうな声の少女は一人、路地裏に茫然と座り込んでいた。己の傷ついた拳を見つめ、一人。

「…………なあ神様。
…ぉ……オレは……よぉ…。…………一体誰の為に”番長”を張ればいいんだ…………?」

孤独な番長の声は深くドス黒い闇に反響して、寂しく路地裏に響いた──。


//〆ですね!お疲れ様でした!


687 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/21(火) 21:14:01.62 ID:lBoOkjJXo

──賑やかで騒がしい夜の繁華街

「そこの君、君は学生だろう?この時間帯の外出は認められていな…ふむ、それもそうだな」

「ならばせめて友人と帰るように、色々危ないからね」

学生と思わしき若者に次々と話しかけ注意を促す男がいた。

「そこの君は……飲酒か、年齢は?…学生証を出しなさい、…ふむ、ギリギリセーフか、無理はないよう楽しみ給え」

一目見ればだらしない……微笑ヒゲが目立つ、バッチを見れば教師と分かるが──
男は懐中電灯を持って、ただこの時間帯に出かけてる生徒らしき姿を見れば声をかけていた。

「……いや、すまないが仕事中でね。いつもの様に飲みに来たわけでは無いんだ」

学園の臨時教師にして”現役の魔術師”何を考えているかわからないやら、どこにでもいるやら
こう、色々”変なあだ名”が多いこの男は、今日はなぜか”夜回り先生”的な事をやっていた。


「──さて、君は?」

/絡みを募集させていただきます!
688 :詐欺間 湊 :2015/07/21(火) 22:03:24.59 ID:T+C58Cyn0
「はぁあ〜…暇だねぇ……」

学園都市繁華街。そのネオンが入り乱れる煌めき、そしてその雑踏の中を1人の男が歩いていた。
夏だというのに、その服装は見ているだけでこちらが暑くなるほど。
その男──詐欺間 湊は自らが被っていた帽子をクルクルと指で回し、退屈そうに呟いた。

「そうだな…そろそろ本格的に動き始めるか……」

プルルルル、プルルルル

と、何処かへと歩いていこうとしたその時、ポケットに入っていた携帯の着信が鳴り響く。
見ればその電話の主は、詐欺間の情報屋に以前依頼をしてきた人物からだ。
詐欺間にとってはつまらない依頼だったため、すっかり情報を渡すことを忘れていた。

「あぁ〜はいはい、こちら情報屋『おいッ!依頼の件はどうなってんだよッッ!!』

なにやら男の激しい怒号が電話の奥から聞こえてくる。
まぁ当然だろう。前払い制なのにまったく連絡が無いのだ。
詐欺に遭ったと思われても仕方が無いだろう。

「あぁその件ね。
警備人数は10人、配備されている場所は後で画像を送ろう。
えぇと、確か強盗目的だっけ?」

どうやらどこかの建物の警備人数とその配備場所についての依頼だったらしい。
しかしその情報は聞くからに普通に伝えていい情報ではない。ましてや強盗目的の相手には尚更だ。
しかし詐欺間はそれを全く気にしていないようで、興味が無さそうな顔で会話を続ける。

『お、おぉそうだ。
じゃあすぐに送れよ、こっちはてめぇに金払ってんだからな』

「はいはい、じゃあ毎度あり〜」

「────まったく…本当にくだらないな……」

そういって携帯を操作して、先ほど言っていた画像を送るよう操作する。携帯から発せられる電子音と共に、画像は依頼主の男の元へ。
こうしてここ学園都市でまた一つ、犯罪が起こることとなった。

──しかし先ほどの会話は丸聞こえ、余程耳の悪いものでも無い限り詐欺間の声は丸聞こえだろう。
689 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage]:2015/07/21(火) 22:42:39.78 ID:m/06G+zpo
>>687
どうしてこんなところに先生がいるんだ。彼は検問を続ける一人の立ち姿を認め、あからさまに動揺していた。
そして考える。――面識はない、はずだ。自分でもあのバッチが無ければ教師とは分からなかったくらいだ。
転校してきてそう日も経っていないので、よほどの記憶力でもなければ相手も自分のことは分からないだろう。

「――」

少年はいつもの赤いパーカーのフードを被り、心もち歩速を上げて、そそくさとその場をあとにしようとする。
特徴の薄い顔――これはこういう場合に便利だ――そして赤い髪――これは間違いなく不利だろう――
これらの要因が作用した結果なのか、さもなければ少年の努力が足りなかったのか。
男はあっさりと声を掛けてきた。

「あっ、あー…。こんばんは。えっと、塾? に行ってたら帰りが遅くなっちゃって――」

彼はフードの奥から得意の愛想笑いを浮かべる。
これは都合の悪い事実をうやむやにする道具としてはなかなかのものだ。もっと具体的に言うなれば、
頬、腹、二の腕、などなどに残るあざや打撲痕を見とがめられる前に、この場を抜け出したいわけだった。
そのためには多少の説教も甘んじて受けようではないか――高校生程度と思しい少年は、
そんな心持でもって、夜の繁華街にて教師と向き合っている。

/まだいらっしゃれば……!
690 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/21(火) 23:24:45.03 ID:lBoOkjJXo
>>689
照らしだしたライトの安っぽい明かりの中、怯える様に佇む少年を男は眺め……眺め
ただ”妙に目立った”から声をかけてみたが、と男は考えを続ける。さて、妙に目立つ傷はなんだろうかと

「(塾は……言い訳みたいだな。まぁ打撲がメインとして……対応できる分には無事と)」

少年の目から見れば”男は何か勘ぐる様子”と伺うことが出来るであろう。目を細め観察する。冷たい…表情

「……ふむ、”塾で遅れた”か」

男は言葉に出さずに考える。これは学生同士の喧嘩か、はたまた”それ以外の何か”かと
前者なら学生の自由だ死なない程度に青春したまえとなるが後者ならまた”別の話になるのだが”

「(とまぁ、”彼は生きている上に軽傷だ。魔術師に襲われたという事は無いか”)」

脳裏を過るのは先日接触した”女性魔術師の姿” あの僅かな接触ではあるが…まぁ彼女なら、
獲物を取り逃がすようなミスは犯さないだろうと己の中に結論付け……とりあえずは

教師として、一応状況判断に務めるかと、言葉を連ねる

「”わかった”、遅れたならばしょうがないね──次は送れない様に気をつけること」

そして彼はひと呼吸を置いて、告げる

「あぁ…そうだ。キミの通ってる”塾”はどこかな?教師として”ちょっと注意”をしなきゃならないし。ね?」

──とここで彼の悪い癖が出ていた。それは魔術師としてのサガか、それとも彼の魔術の特性故か
『一見意味が普通でも、わかるものには違い意味に聞こえるように話す』といった”周囲から素性を隠す為の話し方”
今回ならば塾が”君が襲われた場所”であり、”ちょっとした注意”が制裁となるといった言葉であるが…

/は、発見が遅れました、申し訳ありません、え、えっとよろしくお願いします!




691 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage]:2015/07/21(火) 23:53:36.77 ID:m/06G+zpo
>>690
品定めをするような表情に、内心は俎上の鯉も同然と言えた。生徒を注視する教育者とは性質を異にする何か、
そんなものが冷たい表情の中に去来したようにも感じられたが、――おそらくこれは焦りの生み出した妄想だろう。
少年は男のさばきが下るまでのあいだそんなことを考え、居づらそうに視線を左右している。

「は、はい! 次は気を付けます――」

それは予想より遥かに優しい言葉だった。これで解放されるなら、あれこれの心配は全て杞憂だったということになる。
あからさまに表情を和らげ、努めて模範的な受け答えを全うする。

そうしてようやく、これで終わりではない、ということを知るのであった。

「っ……」

それが額面通りの意味でないことは、示し合わせた訳でもないのに自然と理解することができた。
男はこちらの嘘を信じていない。疑ってもいない。――分かっている。少年の笑顔の端が引き攣る。さて、
どうしたものだろう。この教師のセリフが真に意味していた言葉までは把握することができなかった。
しかしこういなった以上嘘を重ねて甲斐があるとも信じられず……頭を掻く。

「とりあえずここは、人通りが多いですから……」

そういって少年は、静寂の保たれた路地の方へと男を誘導しようとするだろう。
儚げな街灯の光、映るのは二人の影をおいて何もない。――そういう、場所へ。

「……どうして、嘘だってわかったんですか」

もし彼が予想通りについてきてくれたのなら少年は振り返らずに問うだろう。
それは自白も同然の言葉であったが、しかし既に躊躇う理由はないように思われた。
この教師がどんな反応をしてくるか、何を隠しているのかどこまで分かっているのか、少年には分からないことばかりで、
確かに言えるのはきっと、帰りは遅くなるだろうなと、その程度のことなのだった。
692 :リー・ウェン ◆CmqzxPj4w6 [sage]:2015/07/22(水) 00:07:03.98 ID:WRO2LZJdo
>>691

”どうしてわかったのか”

赤毛の少年の質量がこもった言葉が、静寂包まれた路地裏に落ちて、空気を揺らした──

「…………そうだね」

男は、僅かに思案した後に、こう、答えるだろう

「────私は”教師”だから、かな」

朧げな白色の中、浮かび上がる赤色を、その小さな背中を見つめながら、恥じることなく堂々と


怪我をしていたのがバレバレ、や顔が嘘をついていたなどの答え方は存在したが、やはり、
それらを考慮して何かがあったというのを察したのはやはり彼が”教師”として”生徒”をよく見た
否、見た上で、関わると判断した、彼の後についていった──その理由が、これであった。
693 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage]:2015/07/22(水) 00:26:39.28 ID:RjTkrYVmo
>>692

「……そうですか」

わずかな沈黙の末に導き出された答え、それを聞き、少年は小さく頷いた。振り返る。
無数の光芒のもとに彼の顔、そして傷痕が現れる。彼は再び笑っていた。より正確を期すならば苦笑という表現が相応しい。。

「この傷をつけた相手は今ごろ病院だと思います。――おれがやりました」

少年は最初こそ教師の方を向いて告白をしていたが、視線はまもなくぷいと他所へと向けられた。
さて自分のしたことをどのように説明すべきだろう。それを頭の中で整理しながら、
とつとつと言葉を紡いでいく。

「わざと不躾な視線を送ったり近くであからさまに溜息をついたりして、つっかかってきたやつを、こう、――」

腕をスイングさせる。殴った、とでも取れそうなジェスチャーだが、彼の小柄な体躯から推察できる通り、
その喧嘩には拳以上のものが用いられたことは自明であった。

「先生。やっぱりおれのしたことって、悪いこと……ですかね?」

問いかける表情には幾らかの罪悪感も見てとれた。被害者よりも加害者に近い自分の立場を、自分でもてあましているようでもあった。
慣れないことをしでかした時のような危うさが、彼にはあった。


/すみません、本当に早いですがこれ以上起きていられる自信がないのでここで持越しをお願いいたします……!
694 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/23(木) 16:43:01.18 ID:uoIUEox70
「──これって変装の意味あんの?てか顔隠してない分、変装って言えんの?」

茹だるような暑さが都市を襲う真昼間に路地裏の壁に寄りかかった”少女”が一人。…その少女の名は間違いなく「高天原いずも」なのであるが、今日は見た目から何処か根本的に違う。
一つ目に、彼女は彼女のアイデンティティとも表せる「学ラン」を身につけていない。
代わりにヘソ出しタンクトップにショートパンツと凄まじく清涼感漂う風貌であった。
二つ目に、彼女の髪はショートヘアから短いポニテへと変化。そしてその短いテールを造形するべくゴムのように扱われているのは彼女のシンボルでもある紅い鉢巻である。
───つまり、普段の”男らしい”格好ではなく、極めて”少女”の格好。

「…………いや、確かに動きやすいけどなぁ。
ま、いいや。……さてと、観察行きますか。」

そんな高天原いずも(特別版)の目的は都市情勢の傍観である。

様々なモノを”番長”として見て、介入して……それが彼女の生き様だった。
──然し、つい先日その素直すぎる生き方はドス黒い闇を前に立ち尽くすこととなった。
だから。少しだけ”番長”とは違う立場から都市を見てみよう、と今回の暴挙に至ったのである。
──だから、今日の彼女は高天原いずもであって高天原いずもではない。

彼女の心配とは裏腹に、今までのイメージが強烈であるお陰か今の彼女は別人レベルに変化している。一目見るだけでは誰?レベルに。
とある魔術師から助言を得てこうなった。

……そして、突如として彼女の前に現れた貴方は誰だろうか。彼女の知り合いか。それとも初対面か。

//変わり種ですが誰でもどぞ
695 :芽取匁 ◆W5gVdFwf2A [saga sage]:2015/07/23(木) 17:43:30.07 ID:QZ5SKi3NO
/まだいらっしゃいますかね?もし居ましたら10時ごろに置きか凍結になってしまわれますが絡んでもよろしいですか?
696 :高天原いずも ◆Fff7L077io :2015/07/23(木) 17:45:57.40 ID:uoIUEox70
>>695
//勿論OKですよ
奇遇なことに私も夜に予定入っちゃいまして……
置きスレにでも移りましょうか
697 :敦田 熱志 [sage]:2015/07/23(木) 20:51:08.79 ID:3Klz5/23o
日が沈み始めた夕暮れ時、辺りは薄暗くなり、多くの学生達は帰路につく。だが、この男は未だ帰ることなく、街を歩いていた。

「この時間帯から風紀を乱す者が活動を始めることが多いからなっ!しっかりと見回りをしなければ!」

やたら大きな声が周囲に響く。声の主の腕には、輝く“風紀”の腕章。この時間に風紀委員の一人、敦田熱志は見回りを欠かさないのだ。特に犯罪率が高い路地裏。そこは念入りに見ておかねばならない。それにしても、街は広く路地裏は複雑だ。

「……む、もしや……迷った!?」

気がつけば、自分のいる場所がわからなくなってしまったようだ。

「な、なんということだっ!この私があぁぁぁ!!」

路地裏に悲しい叫びが響き渡る。
698 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/23(木) 21:42:49.54 ID:eSfuhF++o
>>697
「……だれ?」

路地の暗闇の向こうから、何かが複数這いずる嫌な音がする。そして、小さな問いかけ。
そちらの方へと目を向けたならば確認できるのは小柄な少女。だぼだぼの白いシャツに裾の余ったジーンズを履き、どちらも長期間着込んだように依れていて、古臭い。
虚ろな瞳と色のない表情で敦田を凝視する彼女の周囲には、蛇。ちろちろと舌を動かして、窺うように首を上げ、ゆらゆらと不穏に揺れる。

「ここから後ろは、私の場所。近づかないで」

抑揚のない声で淡々と告げて、通せんぼをするかのように細い路地で精一杯立ちふさがる。
一見浮浪児のように––––––いや、実際に浮浪児なのだが客観的に見た場合––––––思える彼女が、風紀委員の目に止まればどうなるかは

「……もし近づいたら、痛いことしてやるんだから」

明白であるように、感じられる。

//まだいらっしゃいましたら……!
699 :敦田 熱志 [sage]:2015/07/23(木) 22:01:47.41 ID:3Klz5/23o
>>698
「む?誰と聞かれれば答えん訳にはいかないな!名乗らせて頂こうっ!第一学園二年、風紀委員所属敦田熱志っ!!」

誰と聞かれれば名乗らずには要られない熱志。無駄に大きい声で自己紹介。
一通り名乗った後に、その少女が普通ではないと気づく。まず目に入ったのは蛇。これは彼女が飼っているものだろうか?そして、私の場所?ここは路地裏。誰かの所有地ではない筈だが……

「その蛇は……君が飼っているものかね?それに、ここから後ろが君の場所?君はいったい……」

どうにもおかしい。そもそも、こんな治安の悪い場所で少女の一人歩きとは関心出来ない。危険ではないか。無理矢理にでも連れだそうと一歩近づくが

「わ、私に敵意はないぞ!!」

痛い事とは……まさか、彼女、能力者か?どちらにせよ、戦うつもりなどない熱志は足を止め、両手を上げ、敵意はないと示す。

/まだいますよー
よろしくお願いします!
700 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/23(木) 22:18:08.19 ID:eSfuhF++o
>>699
「第一学園で風紀委員の、あつだあつし。わかった」

無駄に大きな声のお陰で、聴力の乏しい少女の耳にもその声は辛うじて届いた。きっと普通の人なら耳がちょっと痛くなるだろうなと思いながら、神代は頷く。
じろじろと不躾な視線を送る相手にむず痒いような表情を見せて。敦田が一歩近づけば、併せるように一歩下がってしまう。

「かってないけど、みんな友達。ご飯はあげてる。ここから後ろは、私のお家があるから、来ちゃダメ」

ぽいぽいと投げ掛けられる問いに、これまたぽいぽいと答える。何故こうも、会う人会う人全てが問いかけをするのか不思議でならない、といった風体で。
両手をあげて敵意の無さをアピールする敦田に、やや疑うような眼差しを向けた後で、不承不承ながらもそれを信じる事にしたようだ。

「それなら、良いの。……用事が終わったら、早くどっか行ってね」

どうやら、以前のイリヤーとの彼是がかなり影響を与えているようで。敦田は知らないだろうが、これでも随分と態度が軟化している。
それでも矢張り、通せんぼ状態は続いているのだったが。
701 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/23(木) 22:19:40.87 ID:eSfuhF++o
>>700
//うおおうひどいミスを……あつだあつし→あつたあつし でお願いします!
702 :敦田 熱志 [sage]:2015/07/23(木) 22:29:59.03 ID:3Klz5/23o
>>700
「なんだ。君の家があるというだけか。いや、すまないな!どうやら、私は勘違いをしていたらしい!非礼を侘びよう!申し訳なかった!」

自分の場所=家。そんなの当たり前じゃないか。それなのに、自分は無駄に少女を疑ってしまった。なんたることか、風紀委員として恥ずべき行為だ。
深々と頭を下げ、謝る熱志。

「うむ!それでは、私は去るとしよう!君もあまり出歩いていないで、家に帰りたまえっ!ここら辺は、少々物騒でな、少女の一人歩きは危ないのだ。ではっ!さらばだっ!」

背を向け、去ろうとする熱志だったが、数歩歩いたところで立ち止まる。思い出してしまったのだ。自分が迷っていたことを

「……本当に申し訳ないのだが、道案内頼めるだろうかっ!?」

ああ、情けない。学園都市に来て、それなりの時がたつというのに……またもや風紀委員として恥ずべき行為だ。
熱志は振り返り、少女に頼み込む。
703 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/23(木) 22:48:47.29 ID:eSfuhF++o
>>702
勢いに押され、仰け反るようにして少女は更に一歩下がる。まるで嵐のような目まぐるしさに、なんだこの人間は、と思わず呆れてしまう。
少女の足元で舌を出し入れしていた蛇はいつの間にか彼女の足を這い登り、ボサボサでグネグネの髪の中から肩口あたりに顔をひょっこりと出している。
そしてまた、目まぐるしいままに押し付けられた頼み事を、

「道案内……わかった。してあげる」

少女は受けてしまうのだ。とは言っても、少女にも少なからず利益––––––道案内をすれば、敦田がこの場から去るという––––––のある話だったので、悪くは思っていない。
しかし如何せん、目的地が分からなければ道案内のしようが無い。先程よりは表情の見えてきた瞳でじぃっと敦田を見上げ、問う。

「……けど、どこまで案内したら良いの?この近くなら、だいたいわかるよ」

先日の彼よりは、言葉が聞き取りやすい事に安堵しながら、少女は蛇の頭をするりと指で撫でた。
704 :敦田 熱志 [sage]:2015/07/23(木) 23:03:25.76 ID:3Klz5/23o
>>703
「おお!恩に着るぞ!」

先程非礼を働いてしまったのだから、てっきり断られるかと思った。だが、道案内を引き受けてくれるというではないか。少なくとも、この娘は悪い者ではないな。いや、むしろ親切だと熱志は思う。

「大通りの方まで頼む。」

とりあえず、路地裏から出れればそこからは知っている道だ。学園にも戻れる。

「それじゃあ、案内を頼むぞ!ええと……名前、聞いていなかったな。差し支えなければ教えて欲しい。」

ここまで言って少女の名前を聞いていないことに気が付いた。この親切な少女の名を覚えておきたい、いつか恩を返す為に。そんな考えから、熱志は少女に名を尋ねた。



705 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/23(木) 23:20:08.57 ID:eSfuhF++o
>>704
実の所、少女が先の事を失礼だと認識していない所為もあるが、まぁ、それはそれ。

「……大通りの方なら、こっちに行ったら早いけど。別が良いなら、そっちでも良いよ」

と、少女が示すのは先程から通せんぼし続けていた"自分の場所"の路地である。少々躊躇いながらも、効率を重視してなのか、渋々といった風に身体を退ける。
しかし、指し示しているのは光の一切届いていない闇の道だ。早いというだけで他にも道はあるのだから、最終的な判断は敦田に任せるらしい。

「私の名前?名前は……えっと。神代、瞑」

多分、と自信なさげに極々小さく付け足して。永らく名前を名乗る環境で無かった為に、記憶が随分と曖昧になってしまっていた。
そもそも、以前から名前で呼ばれる事などごく少数しか有りはしなかったのだが。……兎に角、少女は名乗り、敦田の判断を待っていた。
706 :敦田 熱志 [sage]:2015/07/23(木) 23:36:06.16 ID:3Klz5/23o
>>705
「神代殿か……うむ!良い名だ!」

多分という言葉は聞き取れなかった様子だ。特になんの疑問も持たずに、熱志は会話を続ける。

「それでだな、急がば回れという言葉があるだろう?私はその言葉が嫌いだ。急ぐのなら、回り道している場合ではない!迷っている場合でもない!真っ直ぐ突き進む!それのみだ!」

かと思えば、余計なことをペラペラと語る。道を選ぶだけだというのに、一々声が大きい。そして、大袈裟な動作と共に暗闇の道を指差した。

「故に私は!此方の道を選ぶ!」
707 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/23(木) 23:51:26.70 ID:eSfuhF++o
>>706
良い名、と言われると複雑な心境ではあるが、きっと相手は本当にそう思って言っているのだろう。曖昧な表情でその言葉をやり過ごして、少女は言葉をはなつ。

「わかった、こっち。……蛇、たくさんいるけど、何もしないでね」

と、そう告げればくるりと身体の向きを変えて、躊躇いなく闇の中へと足を踏み入れる。少女にとっては慣れ親しんだ道なのだから当たり前とも言えるが、些か暗すぎるような気もしないではない。
ついてきているか確認するようにちらちらと後ろを振り返りながら、ふと、思い出したかのように、

「……私、耳、聞こえないから」

それだけ、とあっさり言って再び歩き出す。ある意味衝撃的と言える事実が、少女の口から飛び出した訳だが。
しかしよくよく考えれば、只管に視線を顔から外さない様子や、嫌に抑揚のない声の調子も、それで納得がいくことだろう。
そして、敦田の様子を矢張りこまめに確認しながら、少女は蛇だらけの細道を迷いなく進んでいく。
708 :敦田 熱志 [sage]:2015/07/24(金) 00:04:38.77 ID:39U2/CPUo
>>707
「うむ、わかった。心配しなくとも、私は君の友達に危害を加えたりしないぞ!こう見えて、小動物は好きなのだ。両生類も例外ではない!」

蛇は爬虫類です。
まぁ、嘘はついていない。それに、素直に少女の後をついて行くだろう。ただ、歩きは遅い。暗いなか急ぐのは危ないという、急がば回れ的思考だろう。さっき嫌いだと言っていたのに。

「な、なんと!そうだったのか!?ならば、手話とか使った方がいいのか?いや、でも、私と会話をしていたよな?」

さすがに驚いた表情を見せる熱志。
そもそも、会話をしていた筈だが?嘘だろうか?たがしかし、こんな唐突にそんな嘘をつく理由などないし……
混乱する熱志。だが、彼女の行動を思い出してみれば納得いく。

「ああ、読唇術か?」
709 :神代 瞑 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/24(金) 00:24:39.23 ID:esv9L3Pto
>>708
「それなら、いいの」

ほっとした表情を浮かべる少女。先程からちらちらと振り返っていたのは、"まさか何かするのでは"という疑惑も合わさったものだったようだ。
学はあまりないのか、蛇が何故か両生類呼ばわりされるという違和感には気付けなかった。残念な事に訂正は無い、二人とも見事に勘違いしたままである。
歩き続けてとある場所で立ち止まると、振り返り、言う。

「そう。口を見れば、だいたいわかるの。たまに、分かんない言葉もあるけど」
「……この道、まっすぐ行けば、大通り」

つい、と曲がり角を指差して。確認してみれば、確かに遠く街灯の光と、その下を通る多くの人影が見えるだろう。
つまり、少女の案内はここまでという事。見えるならばもう迷わないだろうと、そういう意味を持って明るい道を指されているのだ。

敦田がこのまま去って行けば、少女はそれをしっかり見届けてから再び路地の暗がりに消えていく事だろう。

//眠気が来始めたので〆の方向でお願いします……
710 :敦田 熱志 [sage]:2015/07/24(金) 00:40:43.35 ID:39U2/CPUo
>>709
「おお!灯りが見えるぞ!」

ずっと暗闇が続いていた為か、眩しそうに通りの方を見る。そして、安堵の表情を見せた。知らぬ道から知っている道へ、ずっと迷っていたのだからその安心感は大きなもの。

「ここまでの道案内、心より感謝する!」

ペコリと頭を下げ、感謝を示す。ここから先は知っている道だ。もう迷うこともないだろう。

「それじゃあ、また会おう。今日の恩を返したいのでな!」

絶対に恩を返そう。無駄に義理堅い男は、それだけ決意すると、軽快な笑みを浮かべ去っていった。

/了解しました。では、ここで〆で
絡みありがとうございました!
711 :詐欺間 湊 [sage]:2015/07/24(金) 12:32:53.51 ID:yAyDh9wn0
「まったく…どうせ能力なんて発現しないんだ。
それに俺なら尚更。だいたい成績は良いんだ、学校に行く意味なんてあるのかねぇ」

真昼間の繁華街。普通この時間帯には学生は学校、社会人は会社で仕事をしている時間。
こんな時間にここをうろついているのは仕事等をしていない者か学校をサボっている不良か。
詐欺間 湊はいわゆる後者だ。しかし不良というわけではない。
成績も良く、特に問題をよく起こすわけでもない。
ただよく学校をさぼったりするため、教師陣からは良く見られてはいない。

「それにしても暇だな…
……そうだ、まだあまり魔術師共の情報が少ないし、今日は学園都市に居る魔術師の情報を集めてみるか。
3つの派閥のそれぞれの方針とかも知りたいしね」

口笛を吹きながら詐欺間は繁華街を歩き始める。
全身黒尽くめの詐欺間の姿は周りからかなり目立つ。
更に先ほどの言葉も周りには丸聞こえ。だが普通の者ならばただ魔術師の存在、噂話を本気にしている高校生にしか見えない。
だが魔術師の存在を知っている、または魔術師にはその詐欺間の言葉は、魔術師のことを知っていると分かるだろう。
しかも3つの派閥、つまり「バルタザール」「メルキオール」「カスパール」のことも知っていることから、かなり奥の方まで知っている様子。
712 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/24(金) 12:48:42.57 ID:qDxN3uE00
>>711
「と、っとと」

真昼間の繁華街、この時間帯に街中で活動している人間は数少ない為、辺りを回ってみるには丁度いい時間帯だ。
因みに彼女──ガイアは、今日は病欠という事になっている。余りしょっちゅう休む訳には行かないが、偶に休んでこうして情報収集に動くのは常だった。

そんな少女が何をしているのかと言えば──三段に積まれたアイスクリームを落とさないように掌に立てて歩くという、まぁ良く言えば挑戦的、悪く言えばそれはもう子供でもそうそうやらないことをやっているのである。
偶にそれを見つめる目は微笑ましげな物だったり迷惑そうな物だったりと様々だが、彼女はこれでも重宝活動中だ。

証拠に、魔翌力を持たない者には見えない魔法陣が耳元を覆っている。これは"強聴"という魔法で、遠くの音を纏めて使用者へと伝えてくるというものである。

「……ん?」

よって、彼女は今無数の声を聞き分けながら動いている訳だが──ふと一つの声を聞いた。

"魔術師""三つ""派閥"

かなり近い。独り言の様だが、魔術士がこれを簡単に口にする訳もない。つまりこれらの単語が意味するところは──

「能力者、か……一度接触するべきか……なっっと」

器用にアイスクリームを放ってから全てを落とさずにキャッチし、順番が入れ替わって一番上に来たイチゴ味のアイスに口をつける。──先の"独り言"を呟いた人間を見据えながら。

「ん……?って、全身黒尽くめで何やってんのそこの高校生」

至って(不)真面目な声色で話しかけた。
自分も高校生であるというのはお愛嬌であるし、私服とはいえそれは簡単にわかるだろう。
713 :詐欺間 湊 :2015/07/24(金) 13:06:12.53 ID:yAyDh9wn0
>>712
「まずはネカフェにでも行って魔術師のことを──」

その時、横から聞き慣れない少女の声が耳に入る。
「全身黒尽くめ」とは恐らく自分のことだろう。しかし自分はこの少女に見覚えがない。
特に学校に友達なども居ない詐欺間は、なぜこの少女が自分に声を掛けてきたのかを考える。
確かに服装は目立つが声をかけるほどでもない。ならば先ほどの独り言か────

「そんな君こそ何をやっているんだい?
見た所君も僕とそう年は変わらないだろう?」

魔術師か、はたまた魔術師の存在を知っている能力者か
そのどちらにしても詐欺間にとって好都合。
予定変更、今日は彼女から情報を聞き出すことにしよう。

「それで僕に何か用かい?
もしかして、僕に一目惚れしたとか?」

ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべる詐欺間。
それが冗談だということは明らかだが、どことなく掴めない雰囲気を纏う詐欺間にガイアはどう対応するか。
714 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc :2015/07/24(金) 13:25:40.98 ID:qDxN3uE00
>>713
「んー? 病欠だけど、何か?」

「何か」ではない。どこが病気なのだろうか。見るからに現に有り余る女子高生であり、その声は冗談めかした物だ。

「あ、一目惚れとかはー、ほら恋愛は進路決めてから、とか言うじゃん? まぁまぁ気にしない気にしない、そういう淡い希望は30年前に捨てたんだ」

30歳、んなわけが無い。丸っきり嘘である。というか、生まれてから20年も経ってない。

「いやまぁそれは良いとしてさー」

周囲には今、誰もいない。このタイミングなら問題ない筈だ。

「アンタ、無能力者か能力者かは知らないけど、魔術師のこと知ってんでしょ? だったら……」

ちょっと笑いながら、ちょっと照れたように、全力で表情を作っていう。

「情報交換がてら、軽くデートでもどうかなー、ってね」
715 :詐欺間 湊 [sage]:2015/07/24(金) 13:35:56.60 ID:yAyDh9wn0
>>714

「でも高校生活もすぐに過ぎていくよ。
今のうちに出来るだけ青春を謳歌しておいたほうが良いんじゃないか?」

心にもないことを言う。
青春など元から楽しむ気など無いだろうに。

「……僕は無能力者だよ。
しかしやはりさっきの僕の独り言を聞いて声を掛けたということか。
僕も迂闊だったな、周りにひと気が無いからつい口走ってしまった」

やはり予想は当たっていたようだ。
能力者か魔術師かは知らないが、まさかこんなことに巡り合えるなんて。どうやら今日はついている。

「いいよ、じゃあ平日の真昼間からデートと洒落込もうじゃないか。
まぁあまり僕にそっち方面での期待はしないでおくれよ?生憎人に気を使うのは得意じゃない」
716 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc :2015/07/24(金) 13:41:11.02 ID:qDxN3uE00
>>715
「じゃあその言葉そっくりそのまんま貴方に返すわよ。真昼間からこんな所歩いてるくせに」

だがまぁ、そういう彼女も全く否定できないのだが。青春を謳歌する、などと一体全体考えたころがあっただろうか? まぁ、先ほどからアイスクリームを舐めている様にそれなりに楽しんではいるようだが。

「まぁまぁ、独り言なんて意外に誰でも聞いてるモンだって」

実は魔法を使って聴力を強化しました、などとは口を滑らせても言えないことである。
それに、無能力者とはいえこの学園にいる人間である以上警戒はしなければならないだろう、それなりには。

「あははっ、まるで不良のカップルみたいだねー、これじゃあ。
まっ、私も人を気遣うのは慣れてないんだけどねぇ……何方かと言うと人を容赦なく潰すように教えられたモンで、それでも"隠密派"なんだけどね?」
717 :詐欺間 湊 :2015/07/24(金) 13:52:00.17 ID:yAyDh9wn0
>>716

「まったくだね、ぐうの音も出ない」

他愛のない会話。
周りから見れば学校をサボった男女二人が仲良く歩いているだけにしか見えないだろう。
だがその目的はかなり仲良くとは程遠い。

「それにしても、君は随分と耳がいいんだね。
少なくとも僕が見える範囲には君は居なかったはずだ」

なにか能力か魔術を使ったのだろうか。
だがまぁこんなことを考えていればきりがない。まずは彼女が何者かを知らなければ。

「隠密派ねぇ……
単刀直入に聞こう。君は能力者か?それとも魔術師か?」

こういうのは回りくどく言っても意味がない。
幸い相手もすぐにこちらを[ピーーー]気は無いらしい。ならば彼女から聞きだせるだけの情報を聞き出さなければ。
718 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc :2015/07/24(金) 13:56:45.00 ID:qDxN3uE00
>>717
「本当、彼氏の一人でも……なんて言われたことすらないわよ、私」

どうでもいい会話を挟みつつ、ガイアは相手の動きを監視する。仮に能力を持っていれば、不意打ちされた瞬間に絶命ということさえありうる。そこまで体は柔くないが、そっちも警戒しておくに越したことはない。

「ふふふ……じゃあ、二つ、纏めて返すわ」

少女は紙を取り出す。それは何も書いてない無地の紙──ではなく、魔翌力によって陣が引かれた物である。

「"バルタザール"……もしかしたらその言葉とこれだけで色々と分かるんじゃないのかしらね?」

紙をヒラヒラと見せびらかすようにして、少女は笑った。
その先に、相手の少年の目を捉えて。
719 :詐欺間 湊 :2015/07/24(金) 14:21:37.25 ID:yAyDh9wn0
>>718

「そうなのかい?モテそうな顔立ちをしているのに」


「──それと、警戒しても無意味だよ。
僕に戦闘能力はこれっぽっちも無い。君に危害を与えるつもりも毛頭ないよ。
まぁ信じる信じないは君の勝手だけどね」

どうやら警戒されていたことには気付いていたようだ。いや、知らない人間と、しかも全身黒尽くめという奇妙な男と居れば警戒しないほうがおかしいだろう。
だが情報屋というのをやっている以上、雰囲気は大事だ。
第一印象は相手との交渉に最も大事な要素の一つだとも言えるのだから。

「────なるほど、確か"バルタザール"は穏健派だったかな」

自分の情報にこの少女のことも加えておかなければ。
バルタザール所属の魔術師、名前はまだ分からないが所属が分かれば上々だ。

「なるほどね、で?そちらは何か僕に聞きたいことはあるかい?
僕が持ってる情報は、この街に居る能力者と魔術師の名前、容姿、それと能力名、魔術名だ。まぁ全員分のを知っているわけじゃないけどね」

その後、事実、君のことは知らなかったわけだし、と付け加えた。

「まぁ立ち話もなんだし、あそこにでも座ろうか」

そういって詐欺間が指差したのはとある喫茶店。
人も空いているので会話を聞かれることもないだろう。
720 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc :2015/07/24(金) 14:36:18.95 ID:qDxN3uE00
>>719
「……気の所為よ、きっと」


「……忠告ありがと、でもまぁこれは本能に染み付いちゃってるから解こうにも難しいのよね」

ぶっちゃけて言えば自分の服を見てみろ、と言った所だが、相手もそれは分かっているに違いない。実際戦闘向きではなさそうだが、ある程度の警戒だけは残しておこう──というか残さざるを得ない。

「やっぱり知ってるのね……っと」

一先ず喫茶店の中で席に着いて、そこから話を始める。

「まあ、自己紹介と行きましょうか……ま、私は"組織"の広告塔でもあるから、一応言っておくわ。出来れば言いふらしておいてね」

そう前置きを──どう考えてもおかしいが──して、まず彼女は自己紹介から入る。
口振りからするに、情報屋稼業かそれに近いことでもしているのだろう。

ならば自分は、対価として金銭ではなく、情報を渡そう。

「私の名前は"ガイア=アスファ"。バルタザール派閥の組織の一員で、異名は"バルタザールの宵闇"……私自身は知らなくても、この名前は聞いたことあるかもしれないわね」

彼女は、所謂"牽制"としての役割を持っている。一定の実力者の名を知らしめることで、相手側の動きをある程度抑える動きをしているのだ。

「魔術名は意外と知られていないけど、まぁ中身も有名だから良いわ……"黒魔術零式"、RankAよ。まぁ詳しい中身は教えないけどねー」

そこまで言い切ってから、少女は相手の目を見据えて言う。
情報屋は、信用が命とはよく言った物だが……。

「じゃあ、今のを対価に貴方は私に何を教えてくれるのかしら? まぁ、まずは貴方の自己紹介と……ちょっと過激な能力者の人達の名前と能力者名、容姿かな。対価が別に必要なら出すわ」
721 :詐欺間 湊 :2015/07/24(金) 15:14:20.63 ID:yAyDh9wn0
>>720

「まぁ無理に警戒を解けとも言わないさ。
一応自分の無害性を伝えたかっただけだしね」

「まぁね、これでも結構、能力者や魔術師のことには詳しい方だ」

もし詐欺間の目的を伝えれば彼女はどうするだろうか。
自分を[ピーーー]?それとも放っておく?
まぁいずれにしても話す気はないが。

「ふぅん…ガイア・アスファ…か。
"バルタザールの宵闇"か、中々かっこいいじゃないか。
じゃあその時にはしっかり言いふらしておくよ」

彼女──ガイアは自らの魔術名までも教えてくれた。
それにRank.Aということはかなりの実力者だ。

「こちらも名乗っておこう。
詐欺間 湊、この学園都市で一応情報屋をしている。
それと過激な能力者の情報だったかな?」

「まぁ俺が過激だと思う能力者は──こいつだな、暗部組織《サークル》のメンバー黒繩 揚羽。
こいつは良く魔術師狩りをしている。しかも能力者や無能力者にも手を出してくるからタチが悪い。
容姿は…そうだな、ちょっと待っててくれ」

そういって詐欺間はポケットの中から何かを取り出す。
何やら小さいカードケースのようなものの中には、様々な人の写真が入っていた。

「えぇと…そうそうこれだ。
能力名は有害妄想《パラノイア》。Levelは3だよ」

そこから取り出したのは黒繩の写真だ。
どうやらこの男、常日頃これを持ち歩いているらしい。
もしこれを落として別の者の手に渡ったらと思うとゾッとする。

「彼は色々問題を起こしたりしてるからね。
情報はすぐ集まるよ。
だが残念ながら僕はあまり詳しい情報を持っていない。
彼のような目立つ行動をしている者の情報は集まるが、他の能力者の思想や思惑まではまだ分かっていない。
すまないね、力になれなくて」

「あ、そうそう。
お詫びに利用できる能力者の名前も言っておこう。
まぁこいつは知っているものも少なくないけどね。
高天原いずも。お人好しだからきっと、なにか適当な理由を言えば味方につけられるかもしれないよ」
722 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc :2015/07/24(金) 15:44:16.19 ID:qDxN3uE00
>>721
「詳しい……か、やっぱ只者じゃないなぁ」

ニヤニヤとした笑みを浮かべるが、情報が語られ始めるとすぐにその目は真剣な物になった。
別に相手と協力するつもりはない。しかし今後も付き合いを続けるかは兎も角、情報自体は信用できるだろうし、相応に必要な物だなのだからこの機会をを利用しない手はないだろう。

「詐欺間……ね。狙ったような名前だけど偽名かしら? まぁそれは兎も角……」

黒繩 揚羽。暗部組織の噂は聞いていたが、それなりに存在だけは知っていた人間だ。だが能力はおろか性別さえも知らない人間である。

「……なるほどね、覚えておくわ」

見た所同年代の男性だろうか、そして有害妄想(パラノイア)というぐらいだから精神に悪影響を及ぼす系列の能力者だろうか。確かパラノイアには「偏執病」とかそういう意味があったと思うが──

「まぁ、聞けば割と最近になってから表に出てきてる奴らも居るし、その情報だけでも十分なぐらいよ」

自分も所謂スパイなのだから、情報というのは「等価交換」で売り買いされる物であると認識している。
そして、お詫びと言われて渡された情報も。

「高天原……? そういえば学校で名前だけは聞くわね」

素性は知らないが、しかし同級生とあれば偶に耳に入ってくる。広い学園都市ではあるが、学生同士のコミュニティは馬鹿にできない物があるのだ。

「へぇ……なるほどね、中々良いじゃない。利用できる人は多い方がいいし……同性の同年代、ね。しかもお人好しとくればそれこそ願ったり叶ったりよ」

少し黒い部分を含む微笑を浮かべ、ガイアは外に目を向ける。

「さて……まぁぶっちゃけアンタとのコネ作れただけでも今日は十分過ぎるくらいなんだけど……ま、情報3つも貰っちゃったしね……どう? あんたは何か聞きたいこととかないの? それとももうお開きにする?」

余り長居をしていても怪しまれてしまうが──


「あ、そうだそうだ。何ならさ……」


「本気で付き合っちゃう? 私達」


表向き恋人なら割と簡単に解決できそうな問題でもあったりするのである。
723 :詐欺間 湊 :2015/07/24(金) 16:04:15.63 ID:yAyDh9wn0
>>722

「そんな評価しないでくれよ。
あくまで僕はただの"無能力者"さ」

含みがある笑みを浮かべながら詐欺間は先ほどの写真が入れられているカードケースを再びポケットにしまう。

「さぁ?偽名かもしれないし本名かもしれない。
そこは君の想像に任せよう。
まぁ役に立てて良かったよ」

魔術師の協力者が居るのは中々頼もしい。
いくら詐欺間と言っても、流石に魔術師のことを深くまで調べるのは無理だろう。
内部に通じるものが居ればより一層、たくさんの情報を収集することができる。

「高天原は正義感が強いって聞く。
だからそれっぽいことを言っておけば力になってくれるだろう。
でも、彼女の前では本性は見せないほうがいい。なかなかそういうところには鋭いらしいからね。野生の勘とでも言うべきなのかな」

正義感が強い人間は利用しやすい。
それは長年の詐欺間の経験から言えることで、事実そういう輩を詐欺間は何度も利用してきた。

「ほかに聞きたいことか……
なら魔術師の3つの派閥で、それぞれが現在の能力者に対する方針みたいなのが知りたいな。
魔術師が今、能力者をどう思っているのかが気になる」

それが分かれば魔術師を能力者に、またはその逆にけしかけやすくなる。
そうすれば両者の敵対意識をさらに煽りやすくなるだろう。
そうすればまた一歩目的に近づく。

「……君のような女性と付き合えるのは願ってもないことだが、やめておいたほうがいい。
君のお株が下がることになるよ。僕は結構、学校じゃ評判悪いからね」
724 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/24(金) 17:21:01.06 ID:qDxN3uE00
>>723
「高天原ねぇ……」

確かに、この場で名前が挙がってくるのだから、彼女とて只者──それがいい意味とは限らない──とは言えないだろう。しかし、やはり同年代においても自分が置かれた位置が非常にアプノーマルであるとは思っているつもりで、もしや学園都市内部にそれに匹敵する様な人間が居るのか、ということも考えてしまうのだが。

「あぁ、その程度ならお安い御用よ。貴方も聞いたことあるでしょうけど"カスパール"は過激派。"メルキオール"中立派。"バルタザール"が穏健派、って大まかにはなっているわ」

そこで一度切って、三本の指を立てる。その内まず薬指を握って、言う。

「バルタザールは私が所属している組織も含む穏健派思想のこと。ここら辺は組織によってちょっと差があるかもしれないけど、基本的に能力者とは協力関係を築く方針で動いてる人間が多いわ。可能な限り有効的な関係を築く為に、今は学園都市内部の観察中とでも言えば良いかしらね」

薬を折り、今度は中指。

「メルキオールに関しては、まぁ単純に言えば"傍観"ってとこかしら。こっちはバルタザール側の人間も余りマークはしていないわ。どっちかと言えば『能力者との関係なんてどうでもいい』ぐらいの考えで、まぁ一応学園都市内の監視はしているみたいだけど、そこまで派手に動いたって話は聞いたことがないわ」

そして最後、残った人差し指である。

「カスパールはご存知の通り過激派。能力者を危険視していて、この思想絡みでの事件も実は幾つかあったりする。基本的には"能力者=敵"の認識があると見て良いわ。この前接触した魔術士は割と人格的だったけれど、みんながみんなそうではない。というかカスパールに限って言えば、何か別の理由がない限り所属が判明した瞬間に先制攻撃してもおかしくないくらいよ」

そして全てを折って、今度は三本の指を再び立てる。

「これが魔術師の三つの派閥の考え方、って感じ。貴方なら馬鹿なバルタザールの人間が居れば使いやすいんじゃないかしら? あ、丁度私みたいに?」

自分で馬鹿と言ったが……いや、その行為自体が馬鹿馬鹿しいので案外その言葉も間違いではないのかもしれない。しかしそれは兎も角、彼女自身も余りベラベラ喋ると組織にマークされかねないので、割と考えて喋っているのだ。

「あら、そうなの? こんな顔して?」

妖艶、というよりは好奇の目を向けながら、ガイアは身を乗り出していう。そのまま手を伸ばし、詐欺間の頬に触れようと──

「持っといてよ、一応ね。コネは無くしたくないの」

──する直前に、一枚の紙を詐欺間の膝元へと落とした。
中身は彼女の、知られても問題ない程度の個人情報──主に現在の拠点など──だ。

725 :詐欺間 湊 [sage]:2015/07/24(金) 17:46:11.17 ID:yAyDh9wn0
>>724

「なるほどねぇ…いや、いい情報が聞けた。
これで魔術師相手の仕事がやりやすくなったよ。魔術師っていうのはどうも思考が読めない人間が多くてね」

ガイアの情報を聞く限り、やはりカスパールを刺激するのが一番のようだ。
ほとんどの能力者は魔術師の存在を知らず、知っていたとしてもその派閥までは知らないだろう。魔術師は全部同じと見ている連中がほとんどだ。
だとすればカスパールの魔術師に襲われても、ただ魔術師に襲われた、としか思わない。

「いや、僕が見るに君はかなり頭が回る。
そんな相手を使うのは御免こうむりたいね。後ろから刺されかねない」

最後のは冗談だが、最初の方は詐欺間の本音だ。
事実、彼女と会話している最中も、どこか自分を見定めている、そんな感じもあった。

「あぁ、最初は女子にチヤホヤされたりしたけど、みんな僕の性格を知ったら逃げて行ったからね。
まぁ性格が悪いのを僕は気にしてないけどね。
おかげでいつも学校じゃ1人だよ」

本人はそのことを笑いながら言っているので、特別気にしてはいないだろう。

と、そこまで言ったところでガイアがこちらに手を伸ばしてくる。
突然のことに詐欺間も少し驚くが膝元に落ちた紙を見てやれやれといった表情を見せる。

「まったく…今のには少し驚いたよ。
でもこちらも君とはこれから仲良くしていきたいと思ってるんだ。
魔術師の情報源なんて僕には居ないからね」

そう言って今度はメモ翌用紙とペンを取り出し、何かを書き始めた。
詐欺間が書いていたのは詐欺間の仕事用の携帯番号ではなく、詐欺間のプライベート用の携帯番号だ。

「何かあればここに連絡をするといい。
基本僕は暇してるからね。すぐ出られると思うよ」
726 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/24(金) 18:18:14.03 ID:qDxN3uE00
>>725
「まぁ、魔術師なんてそんなもんよ。自分で所属していても誰がどんな思想なのか、そこら辺の組織構造が分かるまでに結構掛かったしね」

組織間の細かい相関や、思想ごとの分類などを纏めて覚えるのは難しい。既に頭に入っているとはいえ、それは現在も刻一刻と変わり続けているのだから。

「あら、そう見える? なーんだぁ、別に使ってくれても良いのになぁ……何を、とは言わないけどね?」

ニヤニヤした笑みの奥には何があるのか──というか普通に悪戯心であろう、これは。

「そうなの? 性格なんて些細な問題じゃない。問題なのは頭が切れるかどうか、これだけで十分よ。──ま、場合によっては切れない人間の方が組みやすいんだけど」

その場合は一方的な利用になるから好きじゃないんだけどね、と言って少女は笑う。
恋愛にまで駆け引きを持ち込むとは何事であろうか。

「あら、良いじゃない良いじゃない。ちょっとドキッとしない? こういう雰囲気も……いや、私達には似合わないか」

呆れた表情を見せる詐欺間に対して、してやったり、といった感じの笑みを浮かべるガイア。側から見れば爆発させたい人間に含まれるのだろうが、生憎──彼女の悪戯なんかは置いておくとして──そんな関係ではないのだ。

そんなことを考えていれば、一枚の紙を渡される。何かに気づいたように眉を上げて、笑みを深めてガイアはそれを受け取った。

「……これ、携帯の番号じゃないの? 仕事用かしら? それとも普通の? まぁ何方でもいいけど……」


「有難く頂くわよ。私としても学園都市内の情報網は大きい方が良いからね」

これは魔術師と能力者の、情報交換の繋がり。こういう情報網を作ることに関しては、ガイアは一級品と言っても良いかもしれない。

そしてここからは、"そういうの"とは別の至って不真面目な話。

「でさー、真面目に考えてくれないのー? 組織に私の保護者役の人が居るんだけどさー、これがまた男の一人でも作って来いって煩いんだよねー。ほら、さっき青春がどうたら言ってたじゃん。よくわかんないけどこのまま行ったら賞味期限どころか消費期限も過ぎて万年ボッチで過ごしそうだからさ、ね?」

……コイツは本当に何を考えて居るのだろうか。

というかことこの手の話題に関しては何も考えて無いのではなかろうか。
727 :詐欺間 湊 :2015/07/24(金) 18:44:27.09 ID:yAyDh9wn0
>>726

「まったく…本当に君は食えない女だね。
僕は普段は掻き乱す方なのに、今日は君に乱されっぱなしだ」

心底疲れたといった様子でガイアを見つめる。
だがそれはあくまで親しみの証であり、詐欺間自身このガイア=アスファを気に入っていた。
どこか自分と似ているような気がするのだ。

「まったく…そろそろ他の学生たちも帰宅する時間だ。
こんなところを見られたら誤解させるよ」

……だがその心配をするには遅すぎた。
すでに喫茶店の窓の外からこちらを見つめる学生が居るではないか。
しかも一人ではなく3〜4人、更に女子だ。
学園内での噂はあっという間に広がる。
もしこれで学校をサボり喫茶店で二人でイチャイチャしていたなどという噂が広がれば────

「しまったな……長居しすぎた……。
あぁ、それは僕のプライベート用だよ。君は僕にとってある意味、特別な人だからね」

そんなことを話したその後、更にまたガイアは先ほどの話をまたしても掘り返してくる。これには流石の詐欺間も苦笑い。

「一体僕のどこにそこまで必死に言い寄る程の魅力があるんだい?
僕はただの根暗な無能力者だ。それに君のその容姿なら男の一人や二人、捕まえることもできるだろう?
それに窓の外を見てみろ、あの女子共、恐らくクラスメイトだろう。
僕と付き合っているなんて噂が流れたら、それこそ君に他の男は寄り付かなくなるぞ?」
728 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc :2015/07/24(金) 19:00:19.13 ID:Nri10sMv0
>>727
「ふっふっふ……まぁマイペースだとは思うけど、割と良い交渉術でしょ」

マイペース……マイペースと言えるのだろうか。もはやそんな次元ではない気がする。というよりも、これは交渉術というよりも素の会話の様にも感じられるのだが。
非常に良いドヤ顔を見せてから、ガイアは笑った。

「誤解? あぁ、時すでに遅し、ってね」

ニヤニヤしながら見つめる先にはクラスメイトの女子達の姿。ヒソヒソと話していて普通なら「そんな訳ないじゃーん」とか否定するところを、彼女は──

まず詐欺間を指差す。
そして次に自分を指差す。
ついでに最後にハートを指で作る。

──完璧だ。噂どころではない、完全に確信犯である。

「え? 何々? あ、プライベート用ね……じゃあイタ電したり情報渡したりするわ。8:2ぐらいの割合で」

酷い割合もあったものである。冗談なのだろうが、その様子はタダのバカップルである。

「ま、無能が寄り付かないなだ全然オッケーよ。それに、貴方にも個人的な興味は尽きないから……ね?」
729 :詐欺間 湊 :2015/07/24(金) 19:21:26.67 ID:yAyDh9wn0
>>728

「なっ…き、君は……
これじゃあ噂どころじゃ……なるほど、つくづく君という人は……もうこれは誤解は解けないぞ……」

仮に詐欺間の力を使ったとしても全ての噂を消すのは至難のわざ、ほぼ不可能だろう。
先ほどの女子達はガイアの行動を見て、何やらキャーキャー言っている。
今にも店内に突撃してきそうな勢いだ。

「流石にそれは止めてくれ…せめて6:5だ」

もうどうにでもなれと言った様子で詐欺間も答える。
そんな会話を見て外の女子達も合わせて騒ぐ。
取り返しは恐らくもうつかない。

「興味ねぇ…それはただ僕を弄りたいだけじゃないのかい?」

と、そこまでで遂に我慢出来なくなったのか喫茶店の入り口に先ほどの女子達が。
そしてこちらを向くやいなや全員で駆け込んでくる。

『あ、あのあの!!さっきのってやっぱり二人は付き合ってるんですか!?』

『いつから付き合ってるんですか!?』

『もうキスはしたんですか!?』

──まさに質問の嵐である。
730 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/24(金) 19:48:09.26 ID:t6+V/c/PO
>>729
「あはははっ、まぁまぁ青春を謳歌しようよ湊君?」

遂に下の名前で呼び始めた。交渉をしていた筈なのに、いつの間にかラブコメになって居る件については無視するとしても、悪ノリはもう止められないのである。

「えー? まぁ、良いけどねー」

見るからに疲れた様子の詐欺間を見て、からからと笑うガイア。当然反応する外の女子。

そして詐欺間の問いかけに対し、彼女は──

「あ、バレた?」

──悪びれもせずに肯定した。

「いやまぁ、普通に興味もあるけど何ならこのまま表舞台に引き摺り出しちゃおうかなって。ほらなんかつまらなそうな感じしてたし」

と、喫茶店の入り口から先程の女子達が入ってくる。一応クラスの中ではそれなりに美形、しかもハーフ寄りである。なんだかんだ言って話題性には事欠かないだろう。

「んー? どうだろうねぇ。でもこの子もなかなかいけずなんだよねぇ? ほら、私のアプローチも中々答えてくれなかったり。ね?」

最後に詐欺間の方を見る。因みにアプローチとは先の告白(?)のことである。間違ってはいない、間違ってはいないのだが限りなく誤解を生む発言である。
731 :詐欺間 湊 :2015/07/24(金) 20:08:47.53 ID:yAyDh9wn0
>>730

「……はぁ…いや、もう何も言わないよ……」

既にもう色々と諦めた様子。
完璧にガイアのペースに飲まれて流されっぱなしだ。

「まぁそんなことだろうと思ってたよ……
まったく…どこからこんな話になったのやら……」

「表舞台にね……
僕は今の学校での立ち位置に満足しているんだ。
あまり掻き乱さないでくれると────」

先ほどの女子達と何やらガイアは会話をしている。
どうやら彼女はクラスでは割と人気者らしい。詐欺間とは大違いだ。

「あまり僕に話を振らないでくれ……
それにあれはアプローチというのか?ほとんど君が強引に行ってきていただけじゃないか」

二人の会話は女子達にはただのカップル同士の会話にしか見えていない。
しかもガイアの言葉でそれにはより一層拍車がかかっている。
最初に自分は今日はツイていると言ったが訂正しよう。
──今日は「厄日」だ。
732 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/24(金) 20:19:52.83 ID:t6+V/c/PO
>>731
詐欺間の受け答えに如何にも不満「そう」な表情をして、ガイアは言う。

「む……だってさー、態々私がアプローチしてるのに立ち位置がどうのこうの言ってたじゃん。そういうのはどうかと思うなー湊君?」

そして下の名前で呼ぶのは直す気が無いらしい。

「でもさー、湊君も案外いい人だよー? ほら、ちょーっと人付き合いが苦手なだけで、ね?」

そして今度は詐欺間の席──というか詐欺間の膝の上に──腰掛ける。身長はたった3cmしか違わないが、そのままガイアは手を詐欺間の首の裏へと回そうとする。

「ねー、湊君?」

トドメである。というか此処までするのは悪ノリというレベルではない。実際、ガイアの目には結構危ない光が灯っていたりもするのだが──。

少しづつ顔を近づけ、女子達の興奮を煽るようにしてみる。本当に、本当に最初の頃はなんだったのだろうか。
733 :詐欺間 湊 [sage]:2015/07/24(金) 20:42:47.23 ID:yAyDh9wn0
>>732

(くっ…こういう演技だけは……)

先ほどからガイアは下の名前で呼んでくる。
屈してはいけない。最後まで抵抗しなければ。

「なっ…ど、どこに座って……!」

これには流石に動揺を隠しえない。
いくら興味が無いとはいえ、こんなことをされれば誰だって動揺の一つや二つするだろう。
しかもそこに更にガイアは追撃を加えてくる。
このままでは確実に危険だと、本能が告げる。
決して屈しは…屈しは……

「ま、待てガイア…!
ひ、人前でそんなことは……!」

屈してしまった。
今まで頑なに名前で呼んだりはしなかったのに遂に名前で呼んでしまった。
それでまた女子は盛り上がり、二人に熱い視線を向ける。
とにかくここで止めなければまずいことになる。
だがここでガイアが止めてくれのか────
734 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/24(金) 20:52:51.63 ID:qDxN3uE00
>>733
心拍数が上がっている。何方が? 何方もだろう。少なくともガイアだけが一方的に上がっているという展開ではなさそうだ。

「ねー? ちょっとぐらいイイじゃん、ほら、見せつけちゃえば」

詐欺間の警戒が上がっていくのがわかる。だが、今更抵抗など出来るのだろうか。というよりも、彼女自身もそろそろ自分自身に歯止めを掛けられるギリギリのラインへと到達しそうなのである。

首筋へと顔が近づいていき、一瞬だけ唇が触れる。そのまま押し付ける──かと思えば、すぐにガイアは顔を引いた。

「あんまり過度なのはお店に迷惑掛けちゃうからねー、ね? 湊君」

してやったり、といった笑顔──ではなく、やや上気した様な、妖艶な笑みを浮かべていた。

「こういうのは、家でー、ゆっくりやらないとねぇー?」

今度は顔に近づいて、一言。
ストッパーを掛けられているのかどうなのか、それは本人にとっても怪しいが……少なくとも公開処刑は免れたとは言えよう。

だが、今の発言は家に帰ればもっと大変なことが待っているかの様に受け取れるため、女子達が騒ぎ出すのは必至であった。
735 :詐欺間 湊 :2015/07/24(金) 21:06:06.47 ID:yAyDh9wn0
>>734

「だ、だめだ…!ほ、本当にやめ…!」

抵抗しようにも膝に座られているため動くことも出来ない。
かといって他の女子が居る状況で下手なことも出来ない。
そんなことを考えている間にもガイアの顔は徐々に近づいて──

「っ…!?」

一瞬首筋にガイアの唇が当たる。ピクリと体がそれに反応する。
もう見ていられないと瞳を閉じる詐欺間だったが、それ以降特に何も起こらなかった。

「あ…あぁ…そうだね……」

力が抜け、ほっと安堵。
ガイアの顔を見れば先ほどまでの笑みとは違い、どこか妖艶で吸い込まれそうな──

「っ…だめだだめだ…落ち着け俺……」

小声で呟き、少し魅了されてしまった自分を落ち着ける。
これはその場の成り行きのせいで決して自分がそう思っているわけではない。それを頭に叩き込む。

「家でって…もういい……僕は今日は帰る…そこを退いてくれ……」

そんな詐欺間の顔は今までとは違い酷く疲れた顔をしていた。
736 :ガイア=アスファ《闇魔術:零式 RankA》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/24(金) 21:22:32.77 ID:qDxN3uE00
>>735
「あはは、ちょっとやり過ぎたかな?」

そんなことを言うガイアだが、その顔に反省の色は見られない。というか寧ろノリノリである。

「えー? 今日"は"これで終わりなの?……まぁいっか、じゃあゆっくり休みなよ。また今度電話するから」

そう言ってガイアは立ち上がり、振り返る。そして耳元で囁くようにして言った。

「ま、頑張ってね?」

ガイアは踵を返し、その場を後にする。
サラッと支払いを任せる辺り、中々にえげつない行動ではあるのだが──と思いきや。

『これとさっきのキスは今日の情報のお礼って事で』

いつの間に書いたのか、そう書かれた手紙と共に明らかに支払いには大きすぎる金額が詐欺間の手元に置かれていた。

女子達はガイアに着いて行くか迷っている様だが、すぐにそうするだろう。

ガイアは最後に入り口で詐欺間を見ると、ニッコリと笑った。

//ここら辺で〆ですかね?
//最初のノリが何処かに行ってしまいましたがありがとうございました……(笑)
737 :詐欺間 湊 :2015/07/24(金) 21:35:05.52 ID:yAyDh9wn0
>>736

「まったくだ…あまりそういうことは控えてくれ……」

あんなことを言っているが恐らくは反省などしていないだろう。
むしろ楽しんでいる感じがヒシヒシと伝わってくる。

「あぁそうするよ……
電話は…まぁそれぐらいは……」

こんなことをされるよりは電話の方がまだマシである。
ガイアも帰るのか立ち上がると、振り返りなにやら耳元で囁いてきた。

「…はぁ…今度学校にどんな風に行けば……」

そこでふと、いつの間にか手元に置かれていた手紙に気づく。
内容を読めば、先ほどのことを思い出してしまい少し顔が赤くなる。

そして詐欺間も会計を済ませるため立ち上がり、こちらへと笑みを浮かべるガイアを見て呟いた。

「まったく…困った恋人だな」

//ロールありがとうございました!
//まさかこんなことになるとは思いもしなかった…!
738 :マーヤ≪黒山羊の大釜Rank.B≫  ◆/Y0vP6RR0Cy1 [sage]:2015/07/25(土) 22:31:46.52 ID:Ri1zunhEo
路地裏。普通の人なら誰もが目を背けたくなるような闇が広がるときもある場所
今日はそんな場所で少し不思議な事が起こっていた


「ダメ…男性の方が女性に手を上げるなんて。マナーがなっていません」

「それも複数で。マナーもルールも全然ダメ」

地面に尻餅をついた男たちが驚愕の表情で見つめるのは黒い女
黒い喪服の様な服に真っ赤なヒール、短めの黒い髪、そしてベール越しに見えるほんのり笑っている真っ赤な唇


「……良いわ、逃げて」


その言葉と共に散り散りに逃げる男達。どれも情けない声を上げている。

よく見ると路地裏の壁は所々抉られたようにへこんでいたり、ヒビが入っていたり
しかも結構大きな音が鳴っていたので人が来たら大変だ
739 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/25(土) 22:46:28.05 ID:jqNmhLyio
>>738
何となく歩いていた、つまりは散歩だ、暑くて家に居てもイラつくから、少しでもイラつきを抑えられないかと外に出てみる事にした。
まあ、外を歩いたからといって何か変わる訳でもなく、ストレス発散の相手を探して路地裏を歩いていた。
そんな事をしていたら、なにやら向こうの方が騒がしくなってきたのに気付く、少年は天邪鬼にも逃げ出してきた男共の間をすり抜けてその方向へ向かっていった。

その表情は笑み、ギザギザの歯並びを見せた笑みを浮かべた赤髪の少年が、目をギラつかせながら少女の元へと現れた。
頭に被った黒いパーカーのフードに描かれた目玉模様が、少年の鋭い目と共に少女を睨む、まるで狂犬のような雰囲気で。

「オイオイ…何だか愉快な臭いがすると思えば…何だァ?まーた幽霊かァ?オイ」
「そういうオカルトはB級ホラー映画の中だけで十分だっつーの、なぁ?」

740 :マーヤ≪黒山羊の大釜Rank.B≫  ◆/Y0vP6RR0Cy1 [sage]:2015/07/25(土) 22:50:54.84 ID:Ri1zunhEo
>>739

「あら…夜も遅くに御機嫌よう」

ひょいとスカートの裾を持ち上げて睨みつけてくる少年に対して一礼
ただ、ベール奥の顔は一切笑っていない

「酷いわね。人の事を見て幽霊だなんて」

ハァとわざとらしい程に大きなため息をつく


「でも否定できないのも辛い物ね」
「あたし…幽霊じゃないけど魔女だから」

クスッと笑い、人差し指を一本立てて何もない空間でクルクルと回す
まるで今現在魔法を使っていますよ――――と少年をからかうように
741 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/25(土) 23:13:06.18 ID:jqNmhLyio
>>740
「ンな喪服みてぇな服着て歩く奴なんざ、幽霊か趣味悪い奴しかいねぇよ」

挑発するような溜息をした少女に、不機嫌そうな態度のままで、悪態を吐いて返す。
つり上がっていた口角はそのまま、下に下がって苛立ちを表している。

「…魔女だぁ?それはつまり、テメェアレか、魔術師っつー事か?」
「…ヒヒッ!こいつぁいいぜ、そこらへんの馬鹿共をぶっ飛ばしてストレス発散しようとしてたが丁度いいモン見つけたなぁ!」

からかうような一言、しかしそれが迂闊で、まずかった、魔術師だと少しでも思わせるような言葉を聞いた瞬間、目付きが変わる。
高揚した心を隠さずに声色に表しながら、彼の右手の中に漆黒の刀が作り出される、継ぎ目の無い漆黒の刀剣だ。

「───魔女は狩られるモンだって、知ってるか?」

742 :マーヤ≪黒山羊の大釜Rank.B≫  ◆/Y0vP6RR0Cy1 [sage]:2015/07/25(土) 23:22:31.06 ID:Ri1zunhEo
>>741

「黒は高貴な色なのよ?趣味が悪いなんて…貴方に言われたくないわ」

にっこり微笑んで悪態を皮肉で返す
少年とは反対にこの女はニッコリ笑っているままだ、いったいどんな心境なのか


「魔術…師?ああ…ええ。そうね」
「なぁに?もしかして物騒な事…考えて居らっしゃるのかしら?」

突如少年が構えた刀。今さっきの一般人連中とはわけが違う
一瞬だけピリッとした雰囲気を醸し出したが、それは白昼夢のように消える

「古い考えね…。男は常に新しい考えを持たないとダメよ」

突如として彼女の右手に握りしめられる真っ黒の杯
陽炎の様に魔翌力がもやもやと滲み出ている
まるで獲物を探す触手の様に
743 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/25(土) 23:53:09.53 ID:jqNmhLyio
>>742
「ヒヒッ…!そう言いながらやる気まんまんじゃねぇか…!」
「ブチ殺してやるぜ魔女サンよぉ!学園都市に来た事を後悔させる間も無くなぁ!!」

少女の手の中に現れた真っ黒な杯、自分の持つ刀と同じくらいに禍々しいそれを見て、少年───黒繩 揚羽は、戦闘開始の合図と見た。
まず黒繩の取った行動は先手必勝とばかりの突撃、右手に刀を構えながら、それ程遠くない距離を一気に詰めていく。

距離が詰められたなら、黒繩は右手の刀を振り上げて、少女に袈裟懸けの斬撃を見舞おうとするだろう。しかし、刀の達人でも何でもない少年の攻撃、戦い慣れてる者が見れば隙や無駄が多い。
その上、彼の持つ漆黒の刀剣に斬られたとしても血は一滴すら出ず、服の繊維すら斬れる事はない、全く傷一つ生まれず、しかし痛みだけは確かに発生する。
その痛みと言えば筆舌に尽くしがたいもので、ただ斬られただけの痛みではなく、更にその上に粗塩を刷り込まれたかのような、激しい痛みを少女が襲う事となるだろう。
744 :マーヤ≪黒山羊の大釜Rank.B≫  ◆/Y0vP6RR0Cy1 [saga sgae]:2015/07/26(日) 00:00:05.86 ID:Ri1zunhEo
>>743

「自分の力を把握できていない人が多いのね。ココって」
「安心して。あたしは殺さないから…多分」

素早くこちら側に駆けてくる青年、女はそれを回避しようとはしない
というより服装が服装なため動きづらいと言った方が良いだろうか?
女は別にそれを不利とは全然思っていないが


「ふふっ。出でなさい」

女が何もせず袈裟懸けを食らうかと思った瞬間、杯から禍々しいマダラ模様の液体が噴出する
それは見る見るうちに巨大な一本の触手のような形を取り、剣を弾こうとするだろう

可能ならば剣を絡め取ろうともしてくるかもしれない
745 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/26(日) 00:28:08.55 ID:SnqqhBqzo
>>744
振り上げた刀が、聖杯から這い出た触手に絡め取られる、いとも簡単に黒繩の手から刀が奪われた。
だが、黒繩の表情は少しも慌てていない、武器が奪われた事を全く意に介さずに、寧ろ『わざと』奪わせ、油断させたようで。

「その言葉、そっくりそのまま返してやるぜェ!」
「俺は構わずブッ殺すけどなァ!!」

斬り下ろそうと振り上げていた右手に武器はもうない、だが刀を奪われるその瞬間にも、黒繩は左手に新しく漆黒の刀を作り出していた。
右手の刀が奪われた瞬間に左手を振り上げ、反撃にマーヤの体を斬り上げんとする、やはりこの刀も傷は作らず、破格の痛みだけを与えるもの。

…と、言うより、黒繩の作り出す漆黒の刀剣は須らく能力により生み出された『妄想』であって、その場には存在しない幻覚である、ただの妄想を、自分と周囲に『存在しているように』見せているだけだ。
故に、刀剣による物理的干渉は無く、精神に干渉する、それが彼の能力《有害妄想》だあった。
746 :マーヤ≪黒山羊の大釜Rank.B≫  ◆/Y0vP6RR0Cy1 [saga sgae]:2015/07/26(日) 00:36:49.43 ID:DbBiM/uMo
>>745

剣を取り上げた時マーヤは「してやった」と思った
けどそれは少年の表情を見て「やらかした」と言う物に変わる
先ほどの一般人戦のせいで少し余裕をとりすぎていた

「……嫌な男」
「女の子に手を上げるなんて…嫌われるわ?」


予想通り。やはり少年は新たな手を用意していた
対するこちらは杯一つ。大釜を召喚しようかとも考えたが…こんな狭い場所で使えば自分にまで被害が被る
なのでマーヤは結局何もできず――――

「―――――!!」

切り上げられると同時にベール奥の唇が苦しそうに歪む
声すら出してない物の痛みは相当。杯を落としそうになってしまった


「…お返しよ」

痛む腕を押さえながら、触手に攻撃させる
なんと驚くべきことに触手は幾重にも分岐する、威力こそは下がったものの、広範囲の攻撃を仕掛けようと言う算段らしい
747 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/26(日) 00:55:06.36 ID:SnqqhBqzo
>>746
「ヒャハハハハ!!どうだァ!?痛ぇだろォ!?」
「もっと身体中切り刻んでやんよォ!!痛すぎておっ死ぬまでなぁ!!」

悲鳴は上げないが、しかし、確かにその刀はマーヤの体を斬り裂いたし、それによる痛みに悶える顔は伺えた。
声を抑えたその表情、それがいつか堪えきれずに泣き叫ぶ姿が頭に浮かぶようで、その時が楽しみで楽しみでたまらない、調子に乗った奴をそうして殺していくのが何よりも愉悦。

目の前に広がった触手の群れを、素早いスウェーで回避していく、刀は持っていても防御はせずに───と、いうより実体が無いので防御には使えないのだが───体を左右上下に揺らして躱し続ける。
しかし、それも長くは続かない、ある一撃が脚に当たり、そこでタイミングがズレた所に更なる追撃、その上にもう一発と、一度軽い攻撃に引っかかった所に一気に触手の攻撃が襲い掛かる。
身体中を打たれた黒繩は背後へ吹き飛び、触手の範囲外で地面を転がる、少なくは無いダメージだが、まだ立ち上がる元気はあるようだ。

「───グ……ッ!…ヒヒッ!軽いんだよ…!この程度で、調子乗ってんじゃねぇぞタコ!」
「まだまだ…いくぜェェェェェェェェェ!!!」

ふらふらと立ち上がり、口の中に溜まった血を唾液と混ぜて吐き捨てる、激しい打ち身を受けたが、それでも黒繩は止まらない。
この程度の痛み等慣れきっているのだろう、そのまま反撃の構えを取った黒繩の目の前に闇が凝縮し、一振りの大剣が作られる。
鋸のようなギザギザの刀身の大剣だ、それが空中に浮遊している。

「コイツは痛ぇぞ…覚悟しなァ…!」

パチン、黒繩が右手の指を鳴らすと、浮遊していた大剣が回転しながら、真っ直ぐにマーヤに向かって飛んで行く。
この大剣もまた妄想の産物、物理的に触手やマーヤを斬ったりはしないで、激しい痛みだけを残していくもの、その痛みがどれほどかは、見た目から想像してほしい。
勿論触手によって弾くことも出来るが…先程の刀のようにはいかないだろう、何しろあの刀よりも遥かに重く感じるからだ。
748 :マーヤ≪黒山羊の大釜Rank.B≫  ◆/Y0vP6RR0Cy1 [saga sgae]:2015/07/26(日) 01:10:43.19 ID:DbBiM/uMo
>>747

「一言で言うなら…あたしちょっと不愉快」
「それと少し怒ってるわ、謝っても多分許さない」

下卑た笑い声を響かせる相手の少年、木霊する声は痛みより深いかもしれない
いや…痛みを忘れさせてくれるという点では物凄く感謝しないといけないといけないのかもしれないが
そんな事はどうでもいい、少年がマーヤを傷つけたという事実、そしてそれで楽しんでいるという事実、それがマーヤをイラつかせている真実なのだから

「戻って」

触手が少年を滅多打ちにしてくれたのを確認すると、触手を杯に戻す
威力なんてどうでもいい、少年に攻撃を与えられたことが満足。


「……貴方。無闇に汚い言葉を使ってはいけないわ」
「とても安くてちっぽけに見える。これは警告よ…。安くてちっぽけな物はいつか捨てられる」
「……この言葉の意味。理解できないでしょうけど」

突如として現れた禍々しく殺意の滲み出る大剣。しかもそれは浮遊している
もしかしてこれを遠隔操作できるのか?そう考えると相手の力は恐ろしい

「魔女の本気…仕方ないから少しだけ見せてあげるわ」

マーヤも自分の目の前に巨大な大釜を召喚。そこから出てくるのは「巨大な人型」
いや…実際には生物ではない。ヌメヌメとしたまだら模様の体表。そう、これは釜の液によって形作られた無機物
気味の悪いそれは迫りくる大剣に何をするでもなく、両手を広げたまま受け止める体制を見せた

749 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/26(日) 01:34:21.27 ID:SnqqhBqzo
>>748
空気を斬り裂きながら、マーヤに向かって突撃していく黒い大剣、目の前に現れたまだらな巨人にも変わる事なくそれは飛んで行く。
巨人の胴体に斜めに突き刺さり、深々と刀身を沈めて止まる、それ以上に何も無い。
痛みを感じない物には黒繩の能力は効果を持たない、つまり無機物である巨人を斬り裂いた所で、全く意味も無く止められてしまうのだ。

「警告どうもありがとうさん!あぁそうさ!俺は『安くてちっぽけ』だよ!テメェから見たらな!!」
「でもなぁ…百均で売ってるナイフでも人を刺したら殺せるし、捨てられた空き瓶でも殴りゃ殺せるんだぜ?」
「この言葉の意味が理解出来るか魔女サンよぉ!?つまりだ!俺が言いてえのは───」

巨人の体に突き刺さり止まった大剣、それはそのままにして、更にもう一つの大剣を作り出して、同じように発射する。
狙いは巨人、ではなく、その体に突き刺さった大剣だ、突き刺さり止まった大剣に更に衝撃を加え、巨人の体を貫いて向こうのマーヤを間接的に斬り裂こうと画作して。

「───勝ちゃいいんだよって事だ!!」

そして───マーヤは忘れてはいなかっただろうか?黒繩が左手に持っていた、刀の事である。
それがいつの間にか黒繩の左手から消えている、能力を解除して引っ込ませたかと、そう思うには非常に悠長。実際、黒繩は密かにその刀で攻撃動作を完了していた。
やってくるのは『上』、マーヤの頭上から、漆黒の刀が切先を下に向けて降ってくるだろう。この程度なら一歩動くだけでもかわせる筈だ───気付いていたなら。
黒繩は、最初の大剣を飛ばし、巨人が現れた瞬間から、左手に持っていた刀を高く高く放り投げていた、遥か高くに投げ上げられた刀は高空で放物線を描き、そしてタイミングをずらして落下し、マーヤを狙う。
目の前の大剣と、頭上の刀、二重の攻撃を強かに行う黒繩は、戦いにおいての狡猾さを持っていた。
750 :マーヤ≪黒山羊の大釜Rank.B≫  ◆/Y0vP6RR0Cy1 [saga sgae]:2015/07/26(日) 01:53:46.47 ID:DbBiM/uMo
>>749

「勝てばいい…ね。あたしそう言うの好きじゃない」

やはり少年は巨人越しに攻撃を与えようとしてくる。けれどマーヤが釜の中身に巨人を象らせたのはきちんと意味がある
それは…――――防御しながら攻撃すること


「そう…だったら。もうどうなっても知らないわ」

頭上の剣。それに気づいたのは少し前の事。
巨人の体にできた僅かな隙間、そこから見た少年の手には先ほどまであった剣が無かった
もしかすると自分の周りに相手が剣を仕込んでるかもしれない
いや…相手の性格なら十中八九あり得る

「こっちも動くわ。出でなさいな」

まず巨人は両腕を先ほどの触手の様に分岐させながら少年に殴り掛かっていく
先ほどより全てが二回りほど大きい触手、威力は見た目の通りである


そしてどこかに仕込まれているであろう剣。
それに対しては杯から魔力を噴出させ、自分の周りを囲わせた
薄い膜の様な物ではあるがあるとないでは全然変わってくる


「魔女をあまり怒らせないで」

マーヤは膜に包まれながらそう呟いた
751 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/26(日) 02:16:51.45 ID:SnqqhBqzo
>>750
「───ヒ、ヒヒヒ……」

正面突破の一撃も、同時に出した搦め手も、その両方が防がれた───そうか、これが『魔女』か。
恐ろしいまでの力の差、今まで簡単に屠って来た魔術師とは違う、確かな強敵。
だからって逆に燃えるだとか、絶望するだとかそういうのではないが、しかし高揚していると言えばしている、自分の力が通用していない相手に出す感情は、いつも一つだ。

「…舐めんじゃねぇぞ……テメェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!」
「たかが一、二発攻撃を防いだだけで調子に乗ってんじゃねぇ!!その程度でよぉ!!」
「勝ち誇ってんじゃァねぇぞォォォォ!!!」

触手と化した腕で殴りかかる巨人に対して、黒繩は両手にそれぞれ刀を一振りずつ握り締め、突進する。勿論この刀では防御は出来ないし巨人を斬り払う事も出来ない、そんな事は知っていた。
怒りを原動力とした黒繩の選んだ行動は推し通る事、触手の嵐の中を無理矢理突進し、直接マーヤを斬り刻む、そんな単純な獣じみた考え。
だが、それは余りにも無謀、いくつも体を打ちながらも無理矢理に攻撃を抜けた黒繩は、しかしマーヤまで届く事はなく、巨人の懐まで抜けた所で足取りを覚束なくして、やがてはマーヤのすぐ足元でうつ伏せに倒れるだろう。
もう気合でも怒りでも立ち上がる事は出来ず、作り出した刀剣が消滅した事が能力の解除を示す。しかしその目は、ギラギラと輝いて憎々しげにマーヤを睨み付けていて。
752 :マーヤ≪黒山羊の大釜Rank.B≫  ◆/Y0vP6RR0Cy1 [saga sgae]:2015/07/26(日) 02:28:46.95 ID:DbBiM/uMo
>>751

相手が激昂して自分に向かって突き進んでくる
まるで獣。正直言ってこんな人は初めてだ…。マーヤも少し戸惑った
けれどポーカーフェイスは崩さない

「……本気?」

滅多打ちにされながらも突き進もうとする少年に彼女は絶句
正直突破されることも覚悟した…が。間一髪それは免れ


「消えて」

突っ伏した少年。今まで叫んでいた獣の様な少年、自分を切った少年
そしてこの町に来て初めて自分を傷つけた少年。色々な感情を自分に抱かせた少年
だけど決して止めを刺すことはせず。「消えて」の言葉で消えたのは大釜の方。


「私の名前はマーヤ。この町の魔女。魔女以外の何物でもない存在」

突っ伏した少年に聞こえてるかどうかは分からない。もしかしたらただの独り言かもしれない

「―――――貴方に情けをかける」

少年の頭上にマーヤが落としたのは自作の軟膏。一回ですぐ無くなる量だが、釜で作ったため普通の物より効き目は良いはず
これで打ち身を治せと言う事なのだが、もう一つ意味がある
それは少年に情けをかけると言う事でプライドやメンタル面に攻撃すること。ささやかなマーヤの仕返し

もし少年がもう何もしてこないなら、マーヤはそのままここを後にするだろう


753 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/26(日) 02:50:44.51 ID:SnqqhBqzo
>>752
倒れたまま、地面に顔を擦り付けたまま、しかしそれでも睨む眼の強さは変わらず、突き刺すようにマーヤを睨む。
息を荒げて、立ち上がれず、しかし反抗心だけは折れず、きっとそれだけで生きて来たが故に。

「ハァ……!ハァ……!……テメェ…絶対にブッ殺す…!!」
「斬り刻んで…ブン殴って…辱めて……泣き叫んで命乞いして、自分から死を選ぶようにしてからブッ殺してやるよ……!!」

「後悔するぜ…!ここで情けをかけたこと……ヒヒ、ヒヒヒ……ヒャーッハッハッハッハッハッハ!!」

去っていくマーヤの背中に語り掛ける言葉は、きっと負け惜しみにしか聞こえないだろう。いくら憎悪がつまっていても、動けぬ人間の言う言葉だ。
高笑いを響かせながら、マーヤの姿が見えなくなるまで睨み続ける、獣を手負いのまま生かす事がどういう事か、それを知る事になる時は来るのか…。

/お疲れ様でした!
754 :マーヤ≪黒山羊の大釜Rank.B≫  ◆/Y0vP6RR0Cy1 [saga sgae]:2015/07/26(日) 02:54:08.00 ID:DbBiM/uMo
>>753
/新規にお付き合いいただきありがとうございました!お疲れ様です
755 :詐欺間 湊 :2015/07/26(日) 11:10:52.75 ID:4j/cvJpf0
「…………」

学園都市にあるとあるカフェ。
そこで詐欺間はコーヒーを飲んでいた。普段ならば詐欺間に注目すべき点は殆どない。あるとすれば、季節外れの服装ぐらいである。
だが今詐欺間には学生達からの視線が集まっていた。
その理由は先日の騒動のせいである。
ガイア=アスファの謀略により、恋人として仕立て上げられたのだ。しかもあのガイアのクラスメイトが誰かに伝えたのだろう。
そのお陰で今や一部の学生の中ではかなり噂になっているらしい。

『ねぇあの人が…?』ヒソヒソ

『なんか真っ黒だな…やっぱ噂はデマか……?』コソコソ


「……これじゃあ静かにコーヒーも飲めやしない……
店を変えるか……」

コーヒーを飲み干すと、詐欺間は座っていた席を立つ。
そのまま会計を済ませ店を出るが、やはりまだ注目されている。
そこで詐欺間は、路地裏へと入っていく。それを見て、何人かの学生がその路地裏を見に行くが、そこには既に詐欺間の姿は無かった。


「これじゃあろくに仕事も出来ないぞ…まったく……」

どうやら学生達は巻けたようだ。今日は日曜というのもあって繁華街は人混みも多い。
近くの壁に寄りかかりながらこれからどうするかを考えていると不意に携帯の着信が鳴る。

『お前が情報屋か?』

「そうだけど、何かご依頼かな?」

『あぁ、ある能力者のことを調べて欲しい』

「なるほどね、で?
そいつの名前は?」

しばらく依頼について話す詐欺間。
その詐欺間の話を聞けば、彼が情報屋やその類の仕事を請け負っているということに気付くだろう。

「──オーケー。
大体は分かったよ、それでここに電話してきたってことは支払い方法は分かっているだろ?」

『あぁ勿論だ。じゃあよろしく頼むぞ』

最後に支払いの確認をして詐欺間は電話を切る。
ここは能力者同士の争いが頻繁に起きる。誰かのことを調べて欲しいといった依頼は後を絶たないのだ。

「さてと、仕切り直してまた他のお店を探すかな」

詐欺間は先ほどのような邪魔が入らないような安息の場所を探し、歩き始めた。
756 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/26(日) 12:06:52.90 ID:X/eKAMU20
>>755
詐欺間が歩く道の先、50m程先の角から、1人の茶髪の老人が現れる。
その髪と、立派に蓄えられた髭の色は、染められている風には見えない。
ガッシリとした顔立ちは日本人のそれとはかけ離れており、気のいい外国のおじさんと言った印象を与える事だろう。

ヴァシーリー・マーカスは、ふとした事を考えていた。
ガイア=アスファの事だ。

彼は魔術師として、この街に"潜入"している。当然、危険度の高い人物たちの情報を集めたり、学生たちの他愛ない噂話に耳を傾けたりする事は至極当然だ。
そうした話を集めていた、つい最近の事だ。ガイア=アスファと、詐欺間という男が付き合ったという話を耳にし、仰天して思わず後ろに倒れる所だった。

ガイア=アスファは彼もよく知っている。"宵闇"とまで呼ばれる程の魔術師の精鋭である彼女は、能力者と付き合うなど考えてもいなかったが……バルタザールなど、元よりそんなもの。
平和を望んでいるのならまだしも、危機感も持たずに自分がそれを謳歌する事も厭わない姿勢に、少しばかり呆れを感じたのだ。
魔術師と能力者の接触。そこにどんな思惑が蠢いているかはわからないが、だからこそそれを問い質しておくべきだろう。
その詐欺間とかいう男が、どのような要素を持つ相手なのかも分からないのだから。

目の前をその張本人が歩いているとも気付かずに、そんな事を考えていた。

「ぬっ!?……す、すまぬ」

彼は歩行中に、その思考を中断された。
目の前を歩いてきた男と、考え事をしていた所為で、正面衝突をしてしまった。
幸い相手も割りかし背が高く、転倒の心配はないだろうが、ぶつかってしまったのはこちらの責任。
ひとまず謝罪をし、相手の顔を見ると━━━噂に上っていた、その顔があった。

「!」

彼は目を丸くする。
普段ならばそのままお互いに立ち去ってしまうところだろうが、彼はそれをしなかった。
この男には、聞く事がある。

「……失礼な事をお聞きするが……お主はもしや、詐欺間、という名ではあるまいな?」

しかし確証が持てたわけではない。
ひとまず彼の正体をあばくことから始めなくてはならないだろう。

……尤も、彼がウソをつく可能性は十二分にあるのだが。

/まだいらっしゃれば……
757 :詐欺間 湊 :2015/07/26(日) 12:27:55.25 ID:4j/cvJpf0
>>756

一体どこの店が良いだろうか。
出来るだけ人が少ない場所がいい。これ以上人に色々と見られるのは御免だ。
そんなことを考えながら店を探していて、周りが見えていなかったのだろう。
目の前を歩いていた老人にぶつかってしまった。

「おぉっ!?あぁいえ、こちらは大丈夫ですよ。
そちらこそ怪我はありませんか?」

笑顔で老人を心配しているのを装うが、この老人、どこか油断出来ない雰囲気を持っている。
恐らく一般人ではないだろう。
だがそんなものは詐欺間が気にすることではない。このまま立ち去ればそれで済むこと。
詐欺間は頭を下げそのまま店探しを再開しようとしたが、目の前の老人が自分の顔を見るやいなやどこか驚いた顔をしている。
自分のことを何か知っているのだろうか。

「どうかしましたか?僕の顔に何か──」

詐欺間が尋ねようとしたその時、老人の口からは驚きの言葉が飛び出した。
何故この老人が自分の名前を知っている?
まさかこのような老人が学生達の噂を間に受けるわけなど、しかもこうして直接名前を尋ねる理由など無い筈だ。
一体この老人は何を考えているのか。
それが詐欺間の好奇心を揺さぶった。

「さぁどうだろうね?
もしそうだったとしたら、どうするんだい?」

先ほどまでの雰囲気とは打って変わり、ニヤニヤと笑いながら詐欺間は言った。
758 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/26(日) 13:04:52.76 ID:X/eKAMU20
>>757
「いや、違うのであれば失礼した。だが……」

相手の反応を見る。ニヤニヤと笑っている所を見ると、大方こちらの出方を伺っているのだろう。
恐らくはこの"ジョン・ドゥ"が詐欺間という人物なのだろうかと踏むことは出来たが、まだ確証が持てない。

彼がガイアと本当に接触したのだとすれば、魔術師の存在などとうに知っていることだろう。
よって彼はその情報をちらつかせつつ、相手の出方を伺う事にした。

「……その人物が、ガイア=アスファという女性と付き合ったという……あくまで"噂"ではあるのだが。」
「わしは"彼女"と少しばかりの関わりがあってな。それが本当かどうか、本人に確かめたかったまでのことだ。」

ガイア=アスファという名前を突如出し、本題に斬り込んでいく。
彼が彼女と少しでも関係を持ったのなら、この会話の返答により判別できるだろう。
常人であれば、「あっそう」と言ってそのまま立ち去るところであろうが、彼が詐欺間なのであれば、それはちがう。
噂になっていることなど百も承知であろうし、何より彼女は、魔術師である。
その知り合いであることを明かす事により、自らも魔術師であることを暗に示唆する。相手の出方によって、これからどうするか決めるつもりだ。

尤も、ありえない事ではないが……万が一ガイア=アスファが、自分の立場をひた隠しにして健全に恋焦がれているというのであれば、この揺さぶりもほぼ無駄に終わる。
前述の通り、「あっそう」と言って別れられるに違いないのだ。むしろここから追い詰められる可能性すらある。
会話において、突然に確信に触れるというのは、手っ取り早い解決手段であり、同時にリスクの高い諸刃の剣となる。
この剣は、"ジョン・ドゥ"に対してどう働くのであろうか。
759 :詐欺間 湊 :2015/07/26(日) 13:32:53.05 ID:4j/cvJpf0
>>758

「なるほど、そういうことか」

どうやら、この老人はガイア絡みらしい。
関わりがあるということは魔術師だろう。
すぐに攻撃してくるような行動はしないことからまだ常識がある方だと分かる。
ならば一般人の、無能力者の自分を今すぐ襲うということはないと踏み、詐欺間は呆気なくその事実を認めることにする。

「あぁそうだ、僕が詐欺間 湊だよ。
ちなみに彼女と交際しているという噂は、一応本当だよ」

ここまで噂が広がってはもう否定しても無意味だろう。
だが勘違いして欲しくない。
あくまで成り行きでなったからして、そこに詐欺間の意思はまったくなかったということだ。

「言っておくけど、これは向こうが無理矢理言ってきたことだ。
僕は最初は無理だと言ったんだが、外堀から固めてきてね。
こうしてこんなに噂が広がればもう付き合っているようなものだよ。まったく…僕としたことがずっと遊ばれっぱなしだ」

思い出すのは喫茶店での出来事。
ガイアの突然な大胆な行動に思わず恥を晒してしまったという敗北感。今でも鮮明に覚えている。まぁそれ以外にも覚えていた理由もあるかもしれないが。
とにかくあの状況では断ることが出来なかったということを分かってほしい。

「で、そんなあなたが僕に何の用です?
彼女に付きまとう虫を排除する……とかそんな感じじゃないんだろう?
それとも仕事の依頼かな?これでも僕は情報屋をやらせてもらってるんだ」

本題に入る。
この老人はどんな理由で自分に話しかけてきたのか。ただ噂の真偽を確かめるためだけではないだろう。
それともう一つ、この老人がガイアとどのような関係なのかを知らなければ。
760 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/26(日) 14:12:32.82 ID:X/eKAMU20
>>759
「無理矢理……か」

そうまでして交際を強要するとは、何か彼女側に事情があったのか。
まだ一度しか接触していない為に彼女の人間性を判断しきれているわけではないのだが、そうでないとすればもう一つ理由は考えられる。
この男が何か余程役に立つ人物である、という事だ。
その疑問はすぐに解決する事になる。

「情報屋……なるほど。ガイアが手を組みたがるわけだ」

この学園都市に関する様々な情報を知り、それを個人で運用できるだけの才を持っているのなら、タッグを組みたくなるのは当然。
現に自分も今、彼に俄然興味が湧いてきたところだからだ。だからといって彼女がただ彼を利用しようとしただけとは言い切れないが。

「……ふむ。一方的に素性を明かさせるというのは、よい行いではないな。」

彼は辺りを見回し、人が至近距離にいない事を確認し、名乗り出る。

「わしの名はヴァシーリー・マーカス。御察しだろうが、魔術師のひとりだ。所属は"カスパール"」
「……彼女とは、情報共有者、といったところか」

一通りの自己紹介と共に、彼女の関係を明かす。対して深い仲ではないのだが、情報共有をしているという所に意味があった。

「……彼女を疑っていたわけではないが、無関係な者に余計な情報をバラすわけにはいかぬのでな。」
「彼女に、君がどんな人物なのか、問い質すつもりでいたが……いや、手間が省けてよかったというもの」

彼は何か安堵したような口調で言う。
能力者にひろく魔術という存在が知れ渡ってしまえば、活動こそしやすくなるが、同時に潜入の存在意義が問われる事になりかねない。つまりは……任務失敗だ。
しかし相手が事情を知る人物であり、なおかつそれを商売にしているとあればまったく問題はないというわけだ。
そして、ここからは個人的な話になるのだが……

「ところで……君、情報屋を請け負っていると言ったな。この街に、"危険度の高い"能力者や、組織のようなものは……いるかね?」

ここで彼が聞く"危険度の高い"というのは、広義での危険度だ。
他人に害を及ぼすだとか、他人に甚大な迷惑をかけたことがあるとか、魔術に影響を与えかねないとか……そんなもので良い。彼の財布には今、結構な額の金額が入っている。ここで対価を請求されたとしても払える腹積もりでいた。

761 :詐欺間 湊 :2015/07/26(日) 15:06:49.31 ID:4j/cvJpf0
>>760

「向こうはただ僕を弄って遊びたいだけだと思うけどね。
この街前も散々からかわれたよ……
それと情報屋と言ってもなんでも知ってるわけじゃない。
精々顔と名前、それと能力名ぐらいだよ」

その人物の過去とかは流石に分からない、と笑みを浮かべる。
この老人の名はヴァシーリー・マーカスと言うらしい。
所属はカスパール。良い機会だ、ここで学園都市の能力者とカスパールを対立するようにすれば──

「それで教えた僕が能力者を[ピーーー]のかい?
せめて目的ぐらいは教えてもらわないとね」

もしマーカスがその能力者を殺しに行くのだとしたら、中々面白いことになる。
既に魔術師の情報はガイアから手に入っている。
元々そのつもりだったのだ。ガイアというイレギュラーがあったにせよ、詐欺間が求めるのは楽しさ。

「……マーカスさん、はっきり言おう。
俺は魔術師と能力者を対立させるために行動している。
その為なら嘘の情報だって平気で流すし、そのせいで死ぬ覚悟も出来ている。
俺がそんなことをしてる理由はただ楽しさを求めてるからだ。
でも時々思うんだよ、本当にこれが楽しいことなのかってね」

どうしてこんなことを話しているのか。
嘘の情報を教えればそれで済む話だ。なのになぜ自分はこんなことを──
あのガイアとの事件からずっと悩んでいた。本当に自分はこれが楽しいと思っているのか──それに疑問が生じていたのだ。
あの時詐欺間は、こんな日常も悪くないかも──そんな風に思ってしまったのだ。
この老人は今まで様々な修羅場をくぐり抜けてきた、そんな感じがする。だからこそ、何か詐欺間のこれからの生き方の答えを教えてくれる、そう思ったのだ。
詐欺間の瞳は真剣、決して冗談を言っているようには見えなかった。

「あなたは、俺のこの考え方をどう思う。
俺は先日のガイアの件からずっとこのことが頭から離れないんだ……
俺は一体…この先どうやって生きればいい…?」
762 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/26(日) 15:55:28.01 ID:X/eKAMU20
>>761
「……その者たちが本当にいるのか、それは置いておいて……だ」
「わしはそれが本当に危険なものだと判断したら、イレギュラーとして"排除"する腹づもりでいる……向こうに他者もしくは、魔術を排除しようという意思があるのなら、だが。」

今、詐欺間とこうして穏便に━━━穏便、と言える内容ではないが━━━話を進めている以上、彼は手当たり次第に潰そうというつもりではないらしい。
力を持ち過ぎた者、もしくは魔術を自動的に排除しようという意思がある者。それらに対する対抗の決意のように見える。
彼は最後、どこかしおらしい雰囲気で話をした。出来ることなら、自らも進んで戦いたくはないのだろうか。

その直後、詐欺間の口から、信じがたい言葉が飛び出る。
正確にはその少年にしては余りにも歪んだ考え方に、信じがたい気持ちを抱いたのである。
対立を眺め、そこに快楽を見出す。そんな人物は組織内にも大勢いるものだが、そんな考えを持っているのは大抵、俗世に染まり、よこしまな考えに染まった老人たちだ。
だからこそ、そのような快楽を見出す詐欺間という少年に、驚愕の色を示したのだ。
しかし、それを相談する彼の目は真剣なものだった。自分の生き方に少なからずとも、疑問を抱いているのだろう。
彼は考え込む素振りを見せて、やがて口を開いた。

「……何かを対立させ、それを自分の利益にまわそうとする……そのような者は何も、君だけではない。」
「しかし君は少しばかり、その考えを持つのが早すぎたらしいな……自らの手を汚さずして利益を得る。そんなしたたかな生き方は、味をしめ我欲に満ちた、世渡り上手で狡猾な者のすること……」
「……わしはそんな考えを持った者たちに利用されてきた。よく知っているとも……」

だが、と彼は続ける。

「その生き方を否定はせんよ。それはお前の選択だ。……どうせもう、後戻りはできないのだろう?」
「いずれ能力者と魔術師が戦いになったとして……その時は、そこで見ているがよい。」

「そしていつか、お前の選択が間違っていると思ったのなら……いつでもガイアのもとへ戻ればよい。人生は長いもの……最後に笑っていれば、それでよいのだよ」

そこまで言って、彼は口を閉ざす。
そして程なく詐欺間に対し、ガイアとは正式に付き合っているわけではなかったな、と笑った。
彼もまた、詐欺間よりもたかだか三十年程度長く生きているだけなのだ。
これから何が起こるかはわからないし、これからどのような思想に染まるかもわからない。
だが、今の彼は確実に"笑って過ごせる"人生を送っている。
問題は詐欺間が、その生き方のもとで、本当に心から笑って過ごせているのか、という事なのだ。
763 :詐欺間 湊 :2015/07/26(日) 16:39:45.55 ID:4j/cvJpf0
>>762

「最後に…笑っていれば……」

今の自分は、笑えているのだろうか。
今詐欺間が過ごしている平穏。それを居心地良く感じている自分。
このままで、良いのだろうか。自分はこの平穏を、平和を受け入れても良いのだろうか。
この、歪んだ自分を受け入れてくれるのだろうか。
親が死んだ時の快楽、あれは恐らく本物だ。
自分がおかしいことは分かっている。そんな自分でも────


「……ありがとう、やっぱり年長者の言うことは違うな」

とりあえず今は、この平和を楽しもう。
この先、また自分は魔術師と能力者を敵対させるためにまた動くかもしれない。
ただ、その時までは────
虫のいい話かもしれない。今まで詐欺間に人生を狂わされた人間も居る。
そのことは絶対に忘れはしない。
償いとは言わない、詐欺間に償えることなど無いのだから。
だからせめて、これからは少しでも魔術師と能力者の──いや、そんなのはどうにもしょうに合わない。
まぁこれからどう生きていくかはまたいつか考えよう。

「ありがとう、ルーカスさん。
まだどう生きていくかは決めてないけど、最後に笑えるよう努力してみることにしたよ。絶対に後悔しないようにね。
今日、あなたに出会えてよかった」
764 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage]:2015/07/26(日) 16:47:36.32 ID:X/eKAMU20
>>763
/済みません、次のレス返しは遅れそうです
765 :詐欺間 湊 :2015/07/26(日) 16:48:41.35 ID:4j/cvJpf0
>>764
//了解しました
766 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/26(日) 18:53:52.28 ID:X/eKAMU20
>>763
「フフ、気恥ずかしいものだな……」

彼は満更でもなさそうに、礼に対しての返事をする。
もはや老いぼれとなり、戦う力を失いつつある彼に出来る事など、これぐらいが精一杯なのだ。
説教は老人の特権という言葉があるが、それもあながち間違いというわけではないのかもしれない。

「……お前の答えだ。わしは、それでよい」

彼がこれからどのような人生を歩み、進んでいくのか。それはすべて詐欺間 湊という男にゆだねられる。
自分の役目は先を照らすだけだ。これからの道を示す事は、彼が干渉すべき問題ではない。
たとえその先に、咎められるべきことがあったとしても。

「……さて、湊よ」

彼は話にひと段落ついたところを見はからって、話を切り替える。
彼が最も知りたかった事だ。

「わしがおまえの質問に答えられるのは、ここまでだ。今度は……おまえが、わしの質問に答えてほしい」

「……魔術や他人を傷つけ、もしくは排除せんとしているような人物……もしくは組織の存在を、教えてほしい。」

彼はそのような人物たちと敵対するだろうと踏んでいる。
新たに大きな力を持った以上、いないはずがないのだ。その力を必ずしも、よいことに使おうとしない思想を持つ者が。
その中で魔術という存在を知ったものは、きっとそれを排除しようとしてくるに違いない。
何か心当たりはないだろうか。
767 :詐欺間 湊 :2015/07/26(日) 19:21:45.77 ID:4j/cvJpf0
>>766

「あぁ、分かった。
今回はお代は結構だよ。貴重な話を聞けたからね、それがお代代わりってことで」

思い当たるのは暗部組織《サークル》。
魔術師だけではなく、他の能力者や無能力者までにも危害を加えている。
ルーカスが探しているものにはピッタリだろう。

「そういえば、あなたと同じことをガイアも僕に聞いてきたよ。
やっぱり所属は違えど、考えていることは同じなのかな。
それと、あなたが言ったところに当てはまる組織は、暗部組織《サークル》だよ。
彼らは基本魔術師を狙うが、能力者や無能力者も襲われたという報告もある」

恐らくこの学園都市で一二を争う危険組織だろう。
彼らに襲われたという報告はごまんとあり、詐欺間も日頃警戒している。
戦闘能力が無いということは、かなり不便だ。
せめて戦う手段があれば──

「彼らのような者は僕のような無能力者には天敵だからね。
日頃マークしているんだ。他には何かあるかい?」
768 :ヴァシーリー・マーカス [『アーマード・メイル』Rank.C] ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/26(日) 19:42:59.52 ID:X/eKAMU20
>>767
「……そうか……そんなものが……」

彼は暗部組織についての話を聞き、年甲斐もなくふつふつと怒りが煮え滾って来るのを感じた。
昔こそその場で激昂し、あろうことかその怒りを目の前の詐欺間にぶつけていただろう。だが、落ち着きを身につけた今、そのような事はしない。
しかし彼は確実に、それほどまでに激しく、同時に静かに怒りを抱いていた。魔術ばかりでなく、あろう事か一般人にまで危害を加える。
そんなものは、ただの暴力に過ぎない。力を手に入れたばかりに増長し、超えてはいけない線を超えてしまったのだ。

異端者(イレギュラー)。裁かれるべき存在。彼は、それらの事をそう認識した。

「よくわかった。情報をありがとう。……そうか、ガイアも同じ事を……」

彼は詐欺間の言葉に深く安堵した。
それはかつて交わしたガイアとの約束。無闇に人に危害を加えないという約束。
彼女がそれを聞いたという事は、その約束を守ってくれているという事。彼にはそれがたまらなく嬉しかったのだ。

「お前も、"暗部組織"にはくれぐれも注意するようにな。これ以上の質問は、今のところない。……また聞きたい事があれば、いずれ見える時もあろう……」

彼はサッと紙を渡す。一見妙な魔法陣にしか見えないが、数秒後には詐欺間の脳内に、彼の立場や住所などの連絡先が流れてくる事だろう。
言わば情報共有、というものだ。詐欺間に渡したのは、一般人に対しても害のない"転送"の魔法陣。

「では……そろそろお別れの頃合いかな?……フフ、ガイアとよろしくやるがよいよ」

彼は最後に詐欺間をからかうような冗談を言って、何事もなければ、その場から立ち去るだろう。
平和に暮らすだけでなく、幾分か特殊な生き方をする少年もいる……この街は本当に不思議な所だと、彼は改めて思うのだった。

769 :詐欺間 湊 :2015/07/26(日) 20:31:52.48 ID:4j/cvJpf0
>>768

「分かっているさ、これでも情報屋。
街の雰囲気とかには敏感なんだ。
……ん?なんだい?その紙は……うッ!?」

マーカスが奇妙な紙を渡したすぐ後に、頭の中に何かが流れ込んでくる。
流れてきたのは連絡先などといった個人情報。
これが魔術というものなのかと詐欺間は感心したように紙を眺める。

「凄いな…これが魔術か……
実際に自分に使われたのは初めてだな……
ほら、これが僕の携帯番号だ。
えぇと…プライベート用の方でいいか」

メモ帳を取り出してそこに携帯の番号を書くと、マーカスに渡す。
ガイアに渡したものと同じプライベート用の携帯番号。
彼らは詐欺間にとって貴重な人材。
魔術師視点からの情報というものは中々手に入らない。

「なっ…!?だ、だからガイアとは……」

困った老人だと呆れ顔をすると、詐欺間もまた人混みの中に消えていく。
その顔はどこか、スッキリして、凛々しい顔をしていた。
770 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/28(火) 21:48:22.05 ID:q9f3Wsn00
イリヤー・ミハイロヴィチは先程から、見知らぬ研究施設の中を縦横無尽に練り歩いていた。
それは彼が、教師レイカ=ウィルソンに風紀委員になりたいと言ったのが切っ掛け。
日本語が完全でなく、よって人探しが苦手なイリヤーは気遣われ、彼女に「八橋という生徒を探せ」という言葉と共に、とある研究施設の鍵まで預かった。
そんな最大級のヒントを貰ったにも関わらず、彼はこの施設で迷っていた。
無駄に広いところを歩き回るのは慣れている。だが問題は、彼は日本語の表記が読めない事にあった。
八橋という単語もその読み方しかわからない。だからその女子生徒がここに居たとして、部屋に表記があったとしても意味がないのだ。
人に聞こうにもここは研究施設。無闇に邪魔立てをするわけにも行くまい。

……そんなわけで彼は今、片っ端から研究施設の鍵を開け続けていた。

「Это не здесь……дерьмо(ここにもいないな……くそ)!」

流石の彼も、このだだっ広い施設を歩き回るのに疲労を感じてきたのか。
ドアに移り鍵を開けるスピードがだんだんと早く、投げやりなものへ変わっていく。
そして彼はまた、レイカ=ウィルソンから拝借した鍵を、またひとつドアに差し込む。

「Еи……Вот только пустая комната(ええい、空室だらけかここは)!?」

ロシア語で悪態をついた後、ドアノブに手をかけ扉を開ける。
その先に、彼が探す人物はいるのだろうか。
そもそもこの施設に、彼の探す人物はいるのだろうか?彼はそうとすら考えた。





771 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/28(火) 22:25:51.80 ID:wYJrEKmKo
>>770
扉を開けると、そこには一人の女の姿。レイカではない。長い黒髪をポニーテイルに纏め、椅子に腰掛け足を組み、テーブルに片肘をついて、一冊の本をパラパラと詰まらなさそうに流し読み。
テーブルの上には木刀。それから、イリヤーは見た事があるかも知れない、レイカ・ウィルソンのライターが置いてある。

「……ん?やぁ、どうした。随分苛ついているようだが」

扉が開いた直後、本から視線をあげてそちらを見る。恐らくは直前の荒っぽい声が聞こえていたのだろう、苦笑しつつも動く事なく、出迎える。
この施設の鍵を持っているという事は、恐らくはレイカの関係者。ならば邪険に当たる必要性は皆無だ。

「探し物か?なんだったら手伝おう、丁度暇をしていた所だ」

そう、女はとても退屈だった。友人に恋愛小説を薦め……押し付けられ、あまつさえ感想を求められて渋々読んでいた所だった。
そして、イリヤーの目的を知らなかった。まさか自分だとは思うまい、普通はそうだ。

……女の服には、風紀委員の証。金色に輝くバッヂが、強い存在感と共に本の陰から見え隠れしていた。

//よろしくお願いします……!
772 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/28(火) 22:46:25.32 ID:q9f3Wsn00
>>771
「!」

適当に開けていたドアのひとつ、ついにまともに話せそうな、こう言っては失礼に当たるかも知れないが、暇そうにしている人物を見つけた。
あの特徴的な金色のバッヂ、風紀委員関係者だろう。話に聞いた女という特徴も合致している。恐らく彼女が八橋という生徒なのではないだろうかと彼は踏んだ。
しかしいまいち確証が持てず、彼女の背格好を暫く眺めていたが、彼女の言葉にふと、我に帰ったようになる。
彼は自分の答えを待っていると思しき彼女に、咄嗟に言葉を返した。

「Я ищу……あぁ、私は人を探していて……」
「……あなたは恐らく風紀委員ですね、丁度良かった。八橋という生徒を知らないですか?」

少し不自然さがあるが、丁寧な口調。しかしその語気はフランクなものである。単にそういった、くだけた表現を知らないだけなのだろう。
彼は真っ先に、最も聞きたかった事を質問する。彼女が八橋である可能性は高いが、そうでない可能性もある。
だが本人に直接「お前は八橋か」と聞くのは、失礼に値する。だからこそ「八橋という生徒を探している」とだけ告げた。
前の生徒が"八橋"であったとしてもそうでなかったとしても、確実に返答が返ってくるであろうからだ。

しかし彼がレイカ=ウィルソンのライターをあと10秒早く見つけていれば、遠回しな聴き方にならずに済んだかもしれない。
目の前の、ガタイのよい外国人が探していたものが自分自身であることに、彼女はどう反応するだろうか。
773 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/28(火) 23:18:44.48 ID:wYJrEKmKo
>>772
「人探しだったか……ふむ。僕がその八橋だ」
「良かったな、僕はあまり一箇所に留まらない質でね……今日で無ければ会えなかったかもしれない」

どうやら相手は思慮深い、礼節を弁えた人間のようだ。こんな限定的な所で人探しをしていながら、相手を"きっとそうだろう"と決めつけた言動を咄嗟に避けているのだから。
パタンと本を閉じる。こんな詰まらないものを見ていても仕方がない、折角"面白そうな人物が訪ねてきた"のだ、そちらを優先しよう。

「何か用があって僕を探していたんだろう?……話を聞こうじゃないか」

こんな所……レイカ・ウィルソンの研究所で自分を、八橋馨を探していたということは、即ち"そういった"関係の話を知っているという事だろう。
でなければ、無関係の人間に鍵を渡すなど不用心にも程があるというものだ。流石にあの女がそこまで阿呆だとは考え難い。
それに、無関係の人間が自分を……風紀委員を探すならば、研究所ではなく街中や学校周りを探す筈なのだ。


トントン、とテーブルを指で叩き、向かいを示す。座れという事だろう、示された先にはご丁寧に椅子が置いてあった。
774 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA :2015/07/28(火) 23:36:12.91 ID:q9f3Wsn00
>>773
「Oh、あなたが。丁度よかった。レイカ=ウィルソンに、ここに来いと言われて」

彼はその言葉とは裏腹に、余り驚いていなさそうな様子でそう呟きながら、示された通りに椅子に座る。
最初から彼女が八橋かも知れないという目星を立ててはいたので、当然と言えば当然だが。

「突然だが、八橋……ええと……八橋、さん。」

彼は席にかけて程なく、話を切り出す。
ロシアにおいては、人の名前はフルネームで呼ぶ事によって敬意を表す。だが彼は、彼女のフルネームをまだ知らなかった。
慣れない様子で、彼女に"さん"を付ける。こう言った文化的な面は、日本で数年過ごしてきたとは言え、未だに抜けていないのだろう。
そして彼は、肝心の話の核心に触れる。

「……私を……風紀委員に入れては貰えないだろうか」

わざわざ来訪して来た用事とは、ごく単純で、一見他でも済ませられそうなもの。
しかし、風紀委員になるためには数々の書類に目を通さなくてはならないのだ。
ただでさえ日本語が不安定に見えるこのロシア人に、果たしてそれが可能かと言う話である。


775 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/28(火) 23:58:07.59 ID:wYJrEKmKo
>>774
「……、……あぁ、八橋馨だ、好きに呼んでくれて構わないよ」

名前を呼ぶ際に言い淀む様子を見て、察したようにフルネームを伝える。八橋は、他国の文化にも多少の理解を持っていた。
それは育て親が与する組織にいつか関わる身として持ち得ていなければならないものだったし、学園都市に来るに当たっても必要とされるものでもあった。
次に発せられたイリヤーの言葉を聞いて、顔にはにこりと笑顔が浮かぶ。早くも同志として歓迎するように、表情は柔らかく。


――――――しかし、内心は穏やかでは無かった。
レイカの差し金で来たという事はほぼ間違いなく"自分と似た関係"を築いている人物だろう。それを風紀委員に入れるよう差し向けたという事は、つまり。

(僕の強みを潰しに来たか、或いは……)

純粋に目前の人物が、風紀委員になりたいと望んだか。打算的なあの魔術師の事だ、恐らくは前者なのだろうが……しかし、それは些か早すぎるように思える。確信は持てないまま。

「……ふむ。……まぁ、君は彼女の関係者だ。僕に出来る限りは協力しようとも」

何事か考える様子を見せつつも、あっさりと協力を申し出る。今はこれしか、選択肢が無かった。
776 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/29(水) 00:22:55.03 ID:hIwfyxuU0
>>775
「……私はИлья Михаилович(イリヤー・ミハイロヴィチ)。今更だが、よろしくお願いします、八橋馨。」

彼は名乗られた事に対して、つられたように自己紹介を返す。
フルネームで名を呼ばれる事に慣れていないと、彼の言葉が少しむずがゆく感じるかも知れない。

彼はその後、彼女の快諾に対し、本心から喜ぶ様子を見せる。

「спасйбо(ありがとう)。貴女に会えて良かった」

その様子は、何か裏がある様には見えない。彼は本心から平和を望み、またそのために風紀委員に入りたいと思っているのだ。
彼は、レイカ=ウィルソンの、助手になるという誘いを断った上でここに来たのだから。
彼には今、彼の思惑しか存在していない。だがそれもまた、彼のみぞ知る事実だ。それによって今、彼女に疑われている事すら、彼は知らないのだ。
……最も、彼が無意識のうちにレイカ=ウィルソンの思惑に加担しているという可能性も否定はできないのだが。

「……ではまず……そのバッヂはどうしたら手に入るのか、聞かせて欲しい」

彼はそう言って、彼女の胸元を指差す。そこには光り輝く、象徴的な紋章の金環が飾られていた。

/申し訳ない、続きは明日という事で……
777 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/29(水) 00:27:54.90 ID:jUnDloGzo
>>776
//了解しました、また明日宜しくお願いします
778 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/29(水) 17:08:14.09 ID:jUnDloGzo
>>776
「あぁ。こちらこそ宜しく、イリヤー・ミハイロヴィチ」

慣れない呼ばれ方も呼び方も、心が擽ったいものだ。人を呼び捨てにする事は普段からしているが、敬意を込めてフルネームで呼ぶ事は、日本では中々ない。
それに、多少の知識こそあれど、ロシア人と関わりを持つのは今回が初めてだった。言葉の"かたさ"や母国語混じりの会話にある程度、相手の日本への慣れ具合を見て。
まだ慣れきっていないならば、わざわざ自分を探させたのも頷ける、風紀委員になるためには色々な書類に目を通し、書く必要があるのだから。
指差された金色に、一度だけ視線を落として

「……これは、風紀委員と認められた際に渡されるものだ。欲しければ風紀委員になる為に書類を幾つか必要とするが……その様子だと、大変だろう」
「書類が手に入ったら僕の所まで持ってくると良い。読むのも、書くのも、とことん付き合ってやる」

そうやって、八橋は気の良い人を演じる。演じると言うには普段に近すぎる気もするが、兎に角"普段より幾分か人当たりの良い態度"でイリヤーに接する。
残念な事に今は……否、普段もだが、そんな書類は持ち歩いていない。イリヤーが持っていれば話は違うが、彼が今持っているとは考え難い。


「……時に、イリヤー・ミハイロヴィチ。君はレイカ・ウィルソンの関係者ではあるようだが」
「協力者か、どうか……教えて貰っても構わないかい?」

イリヤーの問いに答えた後、八橋はゆっくりと言葉を口にする。その視線は、やや鋭く―――そう、まるで何かを探るような。

憶えているだろうか?レイカ・ウィルソンの"八橋は私の助手だ"という言葉を。それは目前の女がイリヤーが断った"それ"だと、はっきりと断言したもの。
勘繰る視線は何処となく、打算的なものを帯びていて。肘をついたまま上目遣いに、問いかける真意は果たして、どこか。

//早いかもしれませんが、時間ができたので返しておきますね
779 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/29(水) 18:03:59.85 ID:hIwfyxuU0
>>778
「書類……」

一度申請に言ったので、書類の内容は覚えている。
漢字だらけの、見ているだけで何か吐気にも近いものを感じる。得てして未知のものを見た時は、恐怖に近い感情を抱くものだ。
だが、日本人にとってのロシア語も同じようなものだろう。
彼は露骨にうんざりしたような顔をしながらも、彼女の厚意に対しては応えるつもりで返事を返した。

「レイカ=ウィルソンの事ですか……私は、断りました。」

その結論は簡潔なものだった。彼は今、レイカ=ウィルソンの協力者ではない。
彼はこのタイミングで意外な事を聞くものだ、と思った。
しかし事前に彼女がレイカ=ウィルソンの助手であるとは聞いていたので、やはり気になる物なのだろうか、と思い、対して気に留める事なく、言葉を続ける。

「……確かに言われました。レイカ=ウィルソンに、力を貸して欲しいと。」
「しかし……この力を、私だけの力を、他の人と共有するのは危機感を感じた、それだけです。」


「……逆に聞きますが、八橋馨。貴女は……どうして彼女の助手に?」

質問を返す。
彼がレイカ=ウィルソンの助手にならなかったように、彼女にも、レイカ=ウィルソンの助手になった理由があるはずだ。
彼がそれを聞いたのは、ただの興味本位。それだけだった。
780 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/29(水) 18:44:57.81 ID:jUnDloGzo
>>779
イリヤーの言葉を受けて、八橋の視線から打算的なそれは消え去る。そして同時に今度は試すような、確かめるようなものが混じり。
嘘をついているような様子はない。よっぽど彼が嘘をつくのが上手いだとか、そういう能力であるとかでない限りは、第一印象通り思慮深く聡い人物だと思えた。

「成る程、君の言い分は尤もだ。そして選択も、賢い判断だと思う」
「そして、僕が何故彼女に協力しているかだが……、……ふむ」

ほんの数秒、言葉を吐くまでの躊躇。しかしここで止めては意味がない、言ってしまえばいい、この人物は人を謀るような言葉の巧みさをまだ、少なくとも"日本語では出来ない"だろうから。


「……僕は、風紀委員として学園都市に居る身ではあるが、同時に魔術師でね」
「魔術師として、主に任された事があるんだ。その為に、彼女に協力していると都合が良い」

肝心な所は、暈したままに。これで更に食いついてくるようならば、その時は、今度こそ全て明らかにするつもりで。
ただ"訊いてくるだけ"の相手ならばこれ位の答えで充分だ。だがそれ以上ならば、こちらも相応の応えをしなければいけない。

足を組み替えて、肘をつくのをやめて、姿勢をある程度正す。ここからは頼み事ではない、歴とした対話なのだ。
781 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/29(水) 20:00:15.69 ID:hIwfyxuU0
>>780
イリヤー・ミハイロヴィチには日本語は難しい。彼はここで暮らす上で、相手の仕草や目線を見るくせを付けた。
心理学者を気どるわけではないが、彼はそれらから相手がどんな感情を抱いているのか。それを感じ取るのが、人よりも得意だった。
だからこそ彼は、彼女の目付きが変わったことに対し、今の自分の返答が、彼女にとって感情に影響を与える何かであったことを悟った。

「魔術師……」

何度か会ったことのある存在だ。
レイカ=ウィルソンに路地裏の少女。魔術師とは、その立場を隠して生きている。
彼女もそうであったとは思いもよらなかったが、何処か納得した様子で話を聞く。
魔術師の関係者が魔術師だったところで、何の疑問も抱きようがない。

彼が疑問を持ったのは「都合がいい」という点だった。
彼がレイカ=ウィルソンに推薦を受けた時は、平和を守るためだと言われたのだ。
だからこそ、彼女も同じ事を思っているのだと思っていた。だが、その答えは妙に漠然としているし、都合がいいとは、どういう事だろうか。
彼の好奇心は控えめな方だ。だが気になる事は、とことん追及するタイプだった。

「……どのように?」

それだけ口に出す。
透き通るような緑の双眸が、彼女を見つめていた。
782 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/29(水) 20:34:16.68 ID:jUnDloGzo
>>781
澄んだ視線に射止められ、黒い双眸は閉じられる。息を吐き、ゆっくりと開く。己の気の持ち方を改めるために、少年の問いに応えるために。

「……君にならば、話しても良いだろう。僕の目的は……いや、僕の主の目的は、学園都市に潜む危険な魔術師の監視、ならびに排除だ」
「危険性を見極めるには、ある程度懐に潜り込む必要が出てくる事もある……そう、今回のように」

「魔術師というものは狡猾で、だからこそ、鈍い。己を偽らず、利点を示せば大半は美味い話に"のせられる"のだよ……それは僕も同じだが」

瞼を開けば、そこにあるのは底の見えない黒、語る事が決して嘘ではないと裏付ける光のないそれ。
しかし、確かな真剣さは垣間見えるだろう。だからこそ、瞳の闇も女が敢えて見せているのだと、気付けるだろう。
語る間笑みは消えて、イリヤーを試す視線も消えて。今あるのはただ、魔術師が腹の内を語る時の、ほんの僅かばかり、見えるかどうかという程の些細な"怯え"だ。
当然だろう、会ったばかりの人間、しかもレイカから送られてきた客人を相手に打ち明けるというのは、中々に覚悟が必要なものなのだから。
それでも些細なまでに抑えられたのは、八橋が己をひた隠しにする術を持っていたためだ。尤もそれは、未熟な所為で生死を賭ける程の駆け引きには到底使えるものでは無かったのだが。


「……長々と語ってしまったが、まぁ、詰まりは"監視のため"なんだよ。僕が彼女に協力している理由は」

ここで漸く、八橋の顔にほんのりと笑みが戻る。あとは賭けだ。得物はすぐ手の届く場所には無い、せめてこの目前の相手が"本当はレイカの協力者だった"という事が無いよう祈るだけ。
783 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/29(水) 21:23:22.63 ID:hIwfyxuU0
>>782
彼は彼女の話に、真剣な様子で聞き入る。その事実はまた、彼女にとって深く、非常に重要な事なのだろう。
魔術師でない彼は、その奥深さにいまいち共感する事ができなかったが、彼女の態度から、彼女がそれを話すに至る覚悟のようなものを察する事ができた。
それはかつてのレイカ=ウィルソンが、己を明かした時に見せたものと同じであったからだ。

「……随分と、複雑な事情を持っているらしいですね」

だからこそ、彼はただの感想しか漏らす事が出来なかった。
魔術師でない以上そこに口出しする道理はないし、彼はレイカ=ウィルソンの駒でもないからだ。
魔術師のことを知っていながら、そこへ必要以上に首を突っ込まず、干渉しない姿勢は、一種の冷徹さすら感じる。
彼は椅子にもたれ、何かを考えるように、その緑眼を天井に向けた。

「……魔術師は能力者を監視して、貴女はその魔術師を監視する……そして、貴女は貴女の主に監視されている。……まるでマトリョシカだ」

と、他愛のない冗談を言う。
その言葉にはなんの裏も思惑もない、心から出た一言であった。
彼は何処までも、ただの能力者なのだから。

784 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/29(水) 22:03:48.58 ID:jUnDloGzo
>>783
賭けは、どうやら勝ちに収まったらしい。

「……君は矢張り、聡明だな」

ふ、と緊張を解くように緩んだ笑みを見せる。そう、能力者は魔術師の事に"首を突っ込まない方が良い"のだ、そして同時に魔術師も、能力者に己の存在を明かすべきでは無いのだ。
しかし、そう考えていながらも八橋は明かす事を選ぶ。全ては"本当の主の為に"……打算的な行動は、それのみを目的として動いていて。

「マトリョシカ、ね……そう言えない事もない」
「だが一つだけ訂正させて貰おう、僕は主に監視されてはいない……主と言うのは"かたちだけ"のようなものさ」

また曖昧な言葉を使い、暈す。しかし今度は追究を赦さぬ鋭い視線で、まるで"そうなのだ"と納得するよう無理矢理に働きかけているような。
それ以降は、一切打算的な表情を見せないままに、元の人当たりの良い風紀委員に逆戻りしてしまう。自分からの話はこれで終わりだ、と区切りを付けているように。

「……さて、本題から随分と逸れてしまったな。他に何か、僕に頼みたい事はあるのかい?」
「僕にできる限りなら、何でも聞こうじゃないか……君は彼女の、関係者だからね」

先に言った言葉を、繰り返すのは何故か。それは八橋のみぞ知る所だ。
785 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/29(水) 23:05:01.89 ID:hIwfyxuU0
>>784
「かたち?……Да(ダー)、そうですか」

日本語の「かたち」という単語には様々な意味がある。
ロシア語で同じ事を表す単語は、ただ物の形状を表す物だが、日本においてそれは非常に広義だ。
彼は頭を掻き、どうにも釈然としない様子であるが、それに応じる。
わざわざ遠回りな言い方をする以上、何か理由があるはずだからだ。
元より、彼は他人のことに余り首を突っ込むタイプではないのもあった。

「そうですね……私が風紀委員に入ろうとしているというのを、事前に組織へ伝えておいて下さい。そうすれば私は助かる……」

そして彼は、彼女の言葉に甘え、ひとつの頼みごとをした。
彼一人で風紀委員になる旨全ての話を通すのは難しい。その上での頼みだ。

「……こんな所でしょうか。あ、書類の読み方もお願いします。漢字は勉強しているが、読めないものが多くて」

今は能力者と魔術師同士での対話ではない。ただの学生同士、風紀委員としての先輩との、他愛ない会話だ。
最も魔術師でない彼は、先程までの会話も、他愛ないただの自己紹介のようなものだと認識していたが。


786 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/07/29(水) 23:34:51.67 ID:jUnDloGzo
>>785
閉じられた本に挟まっていた栞を抜いて、胸ポケットに挿すされたペンでサラサラと文字を書きあげる。
一度確認するように目でなぞってから、それをイリヤーの方へと差し出し、笑う。

「二つとも、承った。……、……これが僕の連絡先だ、何かあったら呼ぶと良い」
「聡明な君の頼みならば、よほど僕に不利でない限りは助力しよう。風紀委員としても、魔術師としても」

これまたあっさりとした承諾。聡い者を敵に回す馬鹿は、したくないのだ。
話が終われば、テキパキとテーブル上の自分の物を手にとって、立ち上がる。まるで何かに急かされているような機敏さだが、今彼女を追い立てているものは何よりも

「そろそろ巡回するのに良い時間だ、他に用が無ければ僕はこれで失礼させて貰うよ」

風紀委員としての役割だった。時計を見れば、丁度夕方から夜へと移り変わる大禍時の頃合い、おそらくはそれ以降の巡回が彼女の本分なのだろう。他に用が無ければなどと言いながら、八橋はイリヤーそっちのけで扉へと歩き出す、そして。

「……あぁ、そうだ。今日ここで話した"僕の事"は誰にも内緒で頼むよ」

……と。扉を閉める直前に、人差し指を立てて口に当て、悪戯っぽく笑うのだった。
ばたんと閉じられた扉、もし何かまだ伝える事があるならば、今なら、追いかけて扉を開けば伝えられる筈だ。

//そろそろ〆でしょうか?まだ何か続ける事がありましたら続けてくださいな
787 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/07/29(水) 23:49:11.72 ID:hIwfyxuU0
>>786
「……спасйбо……ありがとう、八橋馨。またいずれ会いましょう」

彼は紙を受け取って、ポケットにしまう。
彼女の妙に機敏な動きに怪訝そうな眼を向けるも、直ぐにそれが、風紀委員としての役割だとわかった。

「……巡……回……」

彼女が出て行った後の部屋で彼は立ち尽くす。
巡回。今まで考えていなかったが、風紀委員となる以上は、そういった「面倒な仕事」も請け負わなくてはならないのだ。
彼は思案する。しかしもはや逃げ道などない。今からキャンセルなど、優しくしてくれた彼女への冒涜にも等しいではないか。
彼は心の中が暗い雲に埋められていくのを感じながら、彼女の後に続くように部屋を出る。

「дерьмо,Также беспомощным……(クソ、どうしようもねえってのか)」

だが、彼はそれ以上に平和を望んでいるのだ。部屋を出てから思い悩んだ末、覚悟を決めたように出口へと歩き出す。こうなった以上、やらねばなるまい。
歩きだしてからその後彼は、出口を探しあて、施設からの脱出に30分以上の時間を費やした。

/お疲れ様でした!途中返信が遅くなって申し訳ない……
788 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/07/30(木) 21:14:30.54 ID:zHCoXXBI0

蜘蛛の巣――――を思わせる、学園都市内に張り巡らされた線路の一つ。
そびえる高架の上、ビルの谷間を駆ける姿は近未来の装いそのもの。広告を其処此処に貼り付けた車体が自転車より少しましなくらいの速さで流れていく。
扉が開けば降りてくるのは制服だったり背広だったりと年齢や体格も様々。学園都市の名の通り学生が圧倒的に多いそんな中、その一人であろう女がとある駅に足を降ろす。
スーツにサマーベストを着た社会人然とした姿、眼鏡の奥の疲れ目が説得力を後押しするが、御団子に結った頭には紺の警帽を載せるちぐはぐさ。

「あちゃー、お昼は弁当買えないかもなぁ」

モノレールの改札口から出でて、軽くなった財布を振って額を押さえる女。
草臥れた二つ折財布から取り出した新品のIDカードには『第17支部』の刻印。そしてベストの胸元に添えられたバッジは彼女の所属をより明確に映し出す。

「風紀委員第十七支部……っと」

駅前のマップを仰ぎ眼鏡を指でくいと。そのままの姿勢で十秒、二十秒。表情は眉一つ動かさぬまま、徐々に眉間に刻まれる皺が深くなる。
目的地の表示すら見つけられないのは土地に慣れぬゆえだろうか。上から下まで目を走らせるが、たった九文字の答えは影も形も見当たらない。
空腹と焦りを抱えて正午の駅前に立ち尽くす新米風紀委員の姿に、目を留める人は殆ど居なかった。
789 :篠原 澄香 Level 3 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/30(木) 22:25:23.27 ID:odbj/JLYO
>>788
「あら、どうしました?迷子ですか?」

蜘蛛の巣に張り巡らされた線路。そこに、まるで引っかかって身動きの取れないような少女がいた。
篠原澄香はそこを偶然パトロールしていた為、彼女に声をかけるに至った。困っている学園都市の人間を助けるのが、風紀委員の仕事である。
黒髪は丁寧に下ろされ、スカートはしっかり膝丈まで。制服を一切着崩れさせず、こんな暑い中でわざわざワイシャツの第一ボタンまで閉めている。
そして、胸元には自身の誇りを主張するかのように、風紀委員のバッジが輝いていた。

「………あれ、そのバッジ。あなたも、風紀委員ですか?」

彼女の胸元にあるバッジに気づき、そんな事を尋ねる。
そういえば新入りが入ってくるという話があったようななかったような。ともあれば、迷子か。

「運が良いですね、私に見つかって。どこの支部ですか?良ければ、お連れしますが」

このまま放っておくのも酷だろう、せっかくだから彼女を送ってやろう―――と思いついた。
もちろん拒否する事も可能だが、果たしてどうするのか。
790 :創ノ宮 つくり ◆Fff7L077io [sage]:2015/07/30(木) 23:35:08.61 ID:W1sQGTh80
──学園都市、某広場にて。
容赦無く学生達を襲う日光は学園都市の熱気を悪い意味で最高潮にまで上げており、
昼間の学園都市を闊歩する者たちは首から流れ落ちる汗に嫌気が指していた。
……そして、この広場においてはさらなる”熱気”の要因がある訳である。その声は何か機械的に響いてくるようにその鼓膜を震わせるだろう。

「えぇーーーっ!!ワタシの愛する機械ちゃんいりませんかぁーっ!!……あっ、でも愛してるから手放したら可笑しいか。いやいやでもこれ商売ですし!
今ならなんとぜーんぶ1000円!!ほぅらそこのお兄さんお姉さんどーですか!!」

その女性は公園に駐車した白の軽トラの荷台の上に仁王立。そして、拡声器で喧しく叫んでいた。

セミロングの金髪に碧眼、その頭に付けられたスチームパンクなゴーグル、身に纏う如何にも作業着なタンクトップとオーバーオールよ着崩しスタイル…………如何にも整備士風貌のその女性の名前は”創ノ宮 つくり”という。
学園都市のとある場所に存在する知る人ぞ知る便利道具の名店「創工房」の店主を若くして務める女性はの名だ。
自宅にいても暇なので出てきて売り込みにきた……というのが今回の目的ではあるが……。

「えぇー〜〜ー!?勿体無いですねー!
ワタシの機械ちゃんたちの凄さがわからないとは…!!

……お!!丁度いいところに!そこのあなた!こっちおいでください!かもん!」

という訳で、彼女は手当たり次第に言葉をかける次第。ほら、今回はあなたが当たったらしい。
───さて、一見ガラクタのように見える機械達を荷台に積んだ整備士少女を見て……あなたは何と思うだろうか。
791 :創ノ宮 つくり ◆kTMzhUQpOkH2 :2015/07/30(木) 23:36:00.91 ID:W1sQGTh80
//これ旧トリだ……てす訂正
792 :創ノ宮 つくり ◆kTMzhUQpOkH2 [sage]:2015/07/30(木) 23:40:35.80 ID:W1sQGTh80
//よくよくみたら誤文字が酷いことに……
脳内補完お願いいたします!
793 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 [sage]:2015/07/30(木) 23:43:25.65 ID:W1sQGTh80
//トリ変更テスト
794 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/30(木) 23:57:06.59 ID:sT8EZwtK0
>>790
熱を持った光線が人々に突き刺さる、今日この頃。何度目か分からない今年の最高気温更新の情報を片耳に付けたイヤホンで聞きつつ、少年は溜め息を吐く。
周囲を取り巻いているのは、人、人、人。それぞれが己の目的地へと向かうべく、学園都市の中を闊歩していた。

さて、そんな真昼間の事であるが、どうにも先程から暑くてしょうがない。いや、暑いのは元々だが、熱気が一層増した様な気がしてならないのだ。
その原因を探すべく少し背伸びをして辺りを見回して見れば、一目でその原因を捉える事が出来た。

「なんだ、アレ……」

見れば、何故か白い軽トラの上から拡声器を通して声を響かせる金髪碧眼の女性の姿があった。

もしや、この都市は十八歳以上であれば被選挙権があるのだろうか、などと荒唐無稽な妄想を過ぎらせつつ、少年は荷台に積まれた何かを見る。
一見すると、まるでガラクタに見える。だが、無造作に組まれた、意味の無い物体かと言われればそれも何かが違う様に思われた。
それは明確な意図を持って"設計"された"機械"であり、何らかの用途がありそうにも思える。まぁまず、彼女が先程からしている演説を聞くに、意味の無い物を廃棄処分として売ってる訳では無さそうなのは確かだ。

「……ん? 俺?」

そして、先程から手当たり次第に声をかけていた少女の照準が自分に合った。回避する手段を探す必要を考えたが、この後別に用事も無いので少しここで道草を食うのも良さそうだと思い、女性の元へと歩く。
そういえば、ついこの前この女性を見かけた様な覚えがある。金髪碧眼はこの土地では珍しい──筈なので、まぁ見間違えでは無いだろう。

「えー……っと……」

何と声を掛けようか少し逡巡していると、ふとある事を思い出す。
そういえば目の前の女性は確か……

「……あ、『創工房』の人だ」

……噂で聞いて、丸一日掛けれ探し当てた工房の店主だった様な覚えがある。あの時は「客」というよりも「見物人」だったが、どうせなら何か買ってみるのも悪くないだろう。

「何売ってるんですか? ……機械には強くないのでぶっちゃけ外見から機能が予想出来ないんですけど」

しかし、商品の有用性は保障されても何に使えば良いのか分からない物が大半であるというのも事実であった。
795 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/07/31(金) 00:21:27.16 ID:wcPbgHAv0
>>794
「おっおーーーっ!!ワタシの事知ってくれちゃってたりするんですか!?
案外有名人とかお姉さん嬉しすぎんぜチキショー!」

─────────つ か ま え た。
見事につくりの言葉に反応してしまった朱鳥。その直後に近辺にいた人々が凄まじい速さで失せていくのがわかるだろう。
人間というのは途轍もなく汚い一面を合わせ持つ生物であり、周りの人々の行為もそれに値する。──面倒ごとからは逃げる。即ち、”誰かに押し付ける”。……人間の持つ典型的な責任転嫁の思考だ。

……………という事などは既に客を獲得したつくりには関係がない事である。
一人の客を得たならばその客に自らが愛する子供達を思う存分自慢する、のみ……!!
つくりはヒョイっと軽トラの荷台から飛び降りた。

「何?HAHAHA!!面白い事を言うぜ少年!!
ワタシが創りしワタシの愛する機械達は何でもできちゃうんです!……んー、例えば学生の君にはこいつ!!」

そう言うとその女性は荷台からガサゴソと棒状の物を一本取り出した。……一見、やたらメカメカしいシャープペンシルの様だが…。

「なーんとこれね!!ここのボタン押すと!」

──ガシャン!と小気味良い音がしたならば、そのシャープペンシルは3つに枝分かれした。……プロペラ……??

「扇風機になります☆」

途轍もなくしょうもない発明だった。恐らく静寂となるだろうその場に残るのは虚しく回転するプロペラ(シャープペンシル)。……然し確りと回転はしており、風もつかんでいる事から扇風機としての役割は十分に果たせる模様。

「あっ!あとこいつ押すと……ライトにもなっちゃうんです!」

ポチッと小さなボタンを押したなら、プロペラの回転が止まり、その中央部がいきなり突き出してきた。先端には電球のような物がみえる。
プロペラは元のように折り畳まれ、数秒後そこにあったのは何処からどう見ても小型懐中電灯である。

「どうっ!!凄いでしょう!!??」

ふっふっふっ、と自慢げなつくりである。
796 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/31(金) 00:38:54.14 ID:cSrVJbjhO
>>795
「有名っていうか、意外と噂に……あれ?」

先程まで以上に集中していた熱気が、強烈に冷めて──否、急速に"退いて"行くのが分かる。
その理由は、火を見るよりも明らかだった。

一歩、いや数歩。

周囲の人が文字通り"退いた"。
ある意味奇跡的な場面を目撃したことの感動も忘れ、只々少年はこう思った。

やっちまった──。

と。
ぶっちゃけ一人の客に粘着するのは商売としてどうかと思うが、目の前の女性は何方かと言えば商売よりも「自分の作った機械の素晴らしさを説く為のプロパガンダ」といった方が自然に理解できる様にも思える。

まぁ、今更嘆いても事態は好転するまい。ならばとことん付き合ってみるのも、悪くはない……のだろうか?
そんな事を思っていると、目の前の女性は、何故かやたらと機械的な──恐らくシャープペンシルと思わしき物体を手にした。

そしてそのシャープペンシル(?)のボタンを押すと。

ガシャン!

「は?」

何故かプロペラが出現し、徐に回転し始めた。
そして目の前の女性は宣言する。

──これ、扇風機?

扇風機の定義に一瞬の悩みが生じるが、手持ちファンの派生と考えればあながち間違っては居ないのかもしれない。
その元の物体が筆記用具であることを除けば。

「いやいやいや、それプロペラ回ってたら書けな……え?」

そして、更にもう一段階。
今度はプロペラが折りたたまれ、電球が出現する。

「……いやなんでそうなる!?」

商品という意味で、日本人をも超える「合体」──ラジカセなどがその最たる例だ──を見せた少女に対して、思わずツッコミを入れる。

「凄いけど! いや凄いけど何か間違ってない!? 主にシャープペンシルにその機能を付ける辺りが!!」

この少女の思考はどうなっているのだろう、この機械自体も正直嫌な予感しかしないのであるが──

「っていうか、え? っていうことは"コレ"全部そういう類の奴? っていうか貴方の作品?」

軽トラに積まれたこれらの物体の方が遥かに問題がある様に思われた。
797 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 [sage]:2015/07/31(金) 06:36:11.00 ID:wcPbgHAv0
>>796
「へっへん!名付けてぇ!!──”扇風機付きシャープペンシルライト!!どう?ど直球でしょ、!!」

「HAHAHA!!そりゃ違いますよお客さん!!
例えば、授業中とかに暑くてどうしようもないって時ありますよね!?
そんな時にこいつを使えば何かいわれても『This is a pen.』だけでやり過ごせるんですよ!!もっとも!既に冷房ついてる学校が多いのが難点ですが!!

さーらに!肝試しなんかで授業の名残で『あ!胸ポケットに入れたままだった!』なんてことありますよね!?
そんな時にこいつを使えば側に彼女さんが居てもかっこつけて『This is a pen.』で道を照らして暗闇の恐怖をやり過ごせるわけなのですよ!!」

熱狂したのか知らないが、この炎天下の中で更に暑苦しく迫る創ノ宮つくりである。後半の説明は取り敢えず勢いで行ってしまった為か”意味がわからない,。
恐らくもう既に朱鳥は察しているかも知れないが、この女、重度の機械オタであった──。
まだまだゴーグル整備士こと創ノ宮つくりの勢いはとどまることを知らなくて。

「もっちろん!ワタシの愛する子供達です!
まあーそういう類のが多いってのは事実ですかねー?……創作に必要なもんはただ”思いつき”をカタチにすることだけなのですよ!」

ビシッ!と親指を突き立てた右手を朱鳥の目の前に突き出してウインクして見せた。
……取り敢えず、彼女なりの決め台詞ではあったらしい。

「んんー、君達ぐらいの年齢が夢見そうな空飛ぶ機械ってのもありますよー?背中に背負う型の。
品質は保証できますが充電式ってのと、やはり危険性があるんで皆買ってかないんですよねー……これ!学園都市の辛いとこね!」

事実、能力を有した彼女が創る製品は何処のどのような商品よりも正確で安全性を持つ物であるが、やはり未知の機械であるために人々は寄ってこない。故にこんなにも機械が溜まってしまっているのである。


//遅れて申し訳ないです……
798 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/31(金) 08:04:53.54 ID:+qiysQdd0
>>797
「おおう……」

紛れもなくド直球である。それもストライクゾーンの中心165km/hの。
そんな発言だけで日本人の最速記録を抜き去ろうとしている少女を見ながら、感嘆の息──呆れが多分に混じったそれを吐いた。

そしてついでに、予想通り彼女の解説もマトモな物では無かった。

「っていうか"This is a pen."とかカッコつけられてない気がするんだけど。それ言ったら盛大に場が白けるよ、多分」

第一「これはペンです」などと言いながらペンを取り出し、更にそれが変形して懐中電灯になったら寧ろ彼女にドン引きされる気がする。
セリフもそうだが、主に謎のシャープペンシルに対して。
もはや全部にツッコミを入れるのも諦めたのか、迫ってくる女性に対してなす術もなく一歩後ずさりする。

というか、これはアレだ。
所謂「機械オタ」だ。

それもどうしようもなく重症な。
そしてそれを証明するかの如く、彼女の決め台詞が追い打ちを掛けた。

「あぁうん、思いつきを"特に選ぶことなく"、"片っ端から"実現したらまぁこうなるよね、うん」

つまりまぁ、この少女は「見境なき発明家」とでも言うべき存在なだけであり、まぁ特に所謂マッドサイエンティスト的な物ではないのだろう。

無いと信じたい。

「それもう、軍にでも売った方が早そうだけどね……っていうかまぁ、能力者なら危ないつっても人によっては大丈夫な人も居るからね……そういう人達を狙って商売したほうがいい気がするんだけど」

──こんな所でやるよりも、よっぽど効率的な気がする。

「っていうか、まず其処にある物体の問題点は『何に使うか分からないこと』、次点で『使う場面が限定されること』じゃないのかな。まぁまず空飛ぶ機械……ジェットパック的な? 奴も安全性の保証がどっかから貰えれば良いんじゃないかな」

とは言え、別に其方の専門でも無いので特にそういう伝手も無い。というか一般的な高校一年生がそんな伝手を普通持っている筈もないのだが。
799 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/07/31(金) 08:37:31.04 ID:wcPbgHAv0
>>798
「チッチッチ、それは違うぜ少年!
──『ええっ!それ懐中電灯なのっ!?』かーらーのー!……『No.This is a pen.』とくる意外性が素晴らしいんじゃないですかー!
……おお、でも盛大に白けさせてイチャイチャしているカップルを崩壊させるってのも…ぐへへっ!また僥倖ってヤツですねー!」

ツッコミを諦めた朱鳥に畳み掛けるようにして迫るつくりの言葉。最後の方は何処か恐ろしい意味を孕んでいた気もするがまあ置いておくとしよう。
取り敢えず彼女は手に持っていた”扇風機付きシャープペンシルライト”なるものを軽トラの荷台にそっと置いた。
次に投げかけられた朱鳥の言葉に対してつくりは、うーんと腕を組んで考えるようにして軽トラに背中を預けた。


「ゲッ!?そんな難しそーに言われるとお姉さんわかんないですよー。
その安全性のほしょーって『創工房』だから大丈夫!!って話にはなりませんよねー?……あ!ワタシこう見えて意外と自信家なんですよ!
……うーむ……これが知名度の差か……いろいろ許可とか保証取ろうにも面倒ですし…。」

意外と自信家なんてものではない。
寧ろ”自信家”でなくては困る程にテンションが高ぶっている、金髪碧眼の上タンクトップ下オーバーオールゴーグル作業着女であった。

「まあでもワタシは金儲けなんてことは企んでないですからねー、まずお金には困ってませんしー?
こういう街角であなたみたいな方に少しだけでも機の良さを知って貰えればそれで良し!なのですよ。
……だから!そういう保証なんてものまで得てまで売りつけようとは思わない…かな?」

彼女が営む『創工房』というのは表向きには”馬鹿みたいな機械”を創作するという事で有名である。
然し、実際の本業……つまり儲けになるような金を作り出すのは”物品の修理”だ。
新しいものを買ってしまえー!なんていう現代の思考もあるが、昔のものはなるべく使っていたい……という願いが一定数存在するのも事実。……だから、彼女はその手伝いをするカタチで自らの生活費を得ているというわけだ……。
つまり、この”創作”に至っては彼女の趣味という事が大半を占める。……機械の良さを知ってもらうための、創作。
妙にカッコつけて言った彼女であるが、その次に続いた言葉はそれを台無しにするものであった。

「……お!!決まったな!
今の完全にカッコ良く決まったでしょ!?よし!これ決め台詞だ、練習しよう!」

800 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc [sage]:2015/07/31(金) 16:29:30.36 ID:fBpgqvmZO
>>799
──感想。

(ダメだコイツ……早くなんとかしないと……)

とまあそれは兎も角として、本当に彼女はどうしてしまった──否、"日頃から"どうしているのだろう?
意外性について説き始めたかと思えば、カップル崩壊のストーリーを作って剰え「僥倖」などという感想を漏らした。
そして、今度は自分の言葉に対して軽トラに背中を預けて考え込むようにしている。

「……いや、なんでこう言うよく分かんないの作れる癖にそこで頭が回らなくなるんだよ」

全くもって、人類の脳構造というのは謎が多い。

まぁこの場合、目の前の少女の趣味が偏りすぎているのが最たる原因である気もするのだが。

そしてこういう人間の場合、「目的=開発」「手段=金儲け」という逆転的な方程式が完成している場合もあるので、やはり一概に括るのは難しかしいのだろうか。
というよりも、事実彼女がそう宣言している。

「金儲けじゃなくて、アレか。機械LOVE的な何かか」

人間というのは脳構造もそうだが執着や恋愛の感情も謎が多いらしい。
だがまぁ、そういう生き方も幸福追求の一種と考えるならばやはり人間として理に適っている訳である。

内心で感心しながら、朱鳥は目の前の少女を見た。
ついでに、その感心を台無しにしてくれるようなセリフもバッチリ聴いていた。

「決め台詞っていうのは狙って言うもんじゃないだろ!!」

もっとこう、自然と出てくる物では無かっただろうか?
801 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/07/31(金) 16:55:16.82 ID:wcPbgHAv0
>>800
「そのとーり!……ってか貴方答え言っちゃってますよ?
こんな”よく分かんないの作ってる”んだから機械LOVEに決まってるじゃないですかー」

……と荷台に積み込まれた機械達を指差しながら心底楽しそうに語る彼女。
明らかに彼女の脳は”機械”の方へと傾き過ぎた構造となっているが、それ以前に彼女の心が機械を愛している。──だから、其処に無駄な欲望なんて必要ない。愛したい物を趣味で愛しているのだから、無駄に金なんて取りはしない。
……然し先ほど彼女は全部1000円!だとか言っていたような気もするが……。──続く彼女の言葉はその答えを示す。

「………ま!タダで貰うと逆に怪しまれるんで一応、お代はいただくようにしてるんですけどね?
こいつらタダだよー!なんて言っちゃうと逆に興味削がれちゃうんですよー」

「へっへっへ!甘いぜ少年!!……あ、これ今日何回目でしょうか。
漫画のかっこいいセリフを吐いたところで”うっわ、くっせ〜”だので馬鹿にされるでしょ?

…だからあえて”決め台詞”ということを宣言することで”決め台詞”っぽさを出すんですよ!
ぶっちゃけ今自分で何言ってるかわけわかんない!!」

結局何を言いたかったのか言葉からも伝わりづらいし、妙に早口な点も分かりづらかった。
取り敢えずゴーグル作業服女の言葉を要約すると

”冗談で決め台詞を言ったっぽさを出して馬鹿にされた時の保険をかける”ということらしい。

「何はともあれ…………機械ってのは本当に素晴らしいです!この学園都市にだってどれだけの機械があるか……考えるだけでうずうずしますよ!」

……と目で光を遮りながら、大通りの方の車を見据える創ノ宮つくり。
そう話す彼女はとても陽気で、まさに「自由」というものを体現しているかのようにも見えた。
802 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc :2015/07/31(金) 17:37:48.15 ID:VsUAUbnn0
>>801
「いや、"よく分かんないの"って自分で言っちゃダメでしょ、普通に考えて」

他人から理解されないことを自分で認めてしまっては意味のない気もするが、一旦そこは置いておくことにする。

「あー、なるほど。そこはちゃんと考えてるんだ」

だが、彼女の目的は「金儲け」ではなく、言わば「布教」であるため、その値段設定となっているのだろう。だとすればまぁ、納得できる。

「あぁ、あれか。スベったら恥ずかしいから保険かけとく、と」

詰まる所そういう事だろう。

「いやまぁ、確かにこの都市なら一杯ありそうだけどなぁ……」

どっちかと言うと自分で作るでしょ、と付け足しておく。
803 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/07/31(金) 17:54:48.27 ID:wcPbgHAv0
>>802
「ほっほー!よくお姉さんの事がわかってきたじゃないですか少年!
珍しい機械見つけてもそれをさらに上回る作品を創り上げるのがこのワタシですから!」

と、左手をピースの形にして自分の眼に当てるつくり。その後にはまたしても鮮やかなウインクがあった。よくよく見ればこのピースウインクにヘソ出しタンクトップと……精神年齢が低い様にも見受けられる。
彼女が語った……否、朱鳥が見抜いた彼女の行動はど直球な正解だ。
この学園都市は日本の中でも、いや世界の中でも有数な都市であるため、最新鋭の設備は自然と集まってくる。
であれば興味を示さない筈がないのがこの女であるわけで、珍しい機械を見つけたら直ぐに買うなり、数時間程機械の前に座って構造を観察していたりするのだ。……風紀委員から”極度の変人”であると称される程に。

「……っと、貴方がワタシが何たるかを理解したところで!!もう少しだけ補足でも入れましょうか!
ワタシは知っての通り、”創工房”店主、創ノ宮つくりと言います!こーみえて19!
…うーんそうだなぁ『つくつく』とでもお呼びください!」

──自己紹介、自分の詳細を朱鳥に語る。正直ニックネームは即興だ。由来はただ苗字と名前の同じ文字を引き抜いただけである。
次に彼女は半ば強制的な問いを投げかけた。

「……じゃ、少年!次はキミの詳細をお聞かせ願おうかぁ!」
804 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc :2015/07/31(金) 18:21:33.45 ID:VsUAUbnn0
>>803
「ああ、やっぱり……」

大体そんな予感はしていた。というか、大体この少女の非常に単純かつ明快な行動心理が分かってきてしまった気がする。
だが、そんな思いも次の言葉で吹っ飛んでしまった。

「19……!?」

まさかの年上である。いや、年上なのは分かっていたが、大学生である。"コレ"が。

「嘘……だろ……」

年齢感覚がおかしくなったのだろうかとまず自分を疑ってみるが、多分まだ大丈夫だ。
だがまぁ、行動パターン諸々を考えても、どうせ風紀委員にでも目を付けられているのだろうなどと思いつつ、振られた話題に答えることにする。

「俺? 別にアンタ程キャラ濃くは無いんだけど……名前は朱鳥 響、15歳で高校一年。部活は剣道部、以上」

相手とは打って変わって何の面白味もない自己紹介である。

というか、目の前の人間の様にマシンガントークを続けられる人間の方が少数派であると言っておこう。
805 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/07/31(金) 19:43:12.85 ID:wcPbgHAv0
>>804
「…?……何がですか?」

朱鳥の呆れる様な口振りに、頭上にはてなマークを浮かべて疑問の意を示すつくり。
然し、特にその後に言葉が続く事もなかったので追求するなんて事はしなかった。

「あすか、ひびき……!!おお!いい名前です!しっかり覚えましたよー!」

と自らの頭を右手の指で指し示してみる。
朱鳥には知る由も無いが、この女、創ノ宮つくりの能力は”膨大な記憶を維持する”能力である。
尤も、彼女自身は自らは無能力者であると思い込んでいるため、
その真価が発揮されるのは彼女がゴーグルを着用した時───『集中モード』に限られるのだが。
───そして。

「よろし………っと、汚れてるな。……ゴシゴシ……ッと。
よしこれで大丈夫!響クン!今日はありがとうございました!話聞いてくれただけでありがたかったですよ!」

そう言うと彼女は右手を差し出した。作業か何かで汚れていたのか、ヘソ出しタンクトップでそれを拭いつつ。
朱鳥が応じれば握手、という形になるだろう。
「そういえば」……と彼女はさらに話を切りだした。


「……響クンは何処かに向かう途中だったのですか?…こうして時間取らせた訳ですし、なんであれば送りますけど……?」

//お返ししておきます!次返信が20:30までに来れば直ぐにお返ししますが、出なければ22:00くらいになります……すみません!
806 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/07/31(金) 19:55:19.42 ID:IWJh+7yM0
/>>788で再募集します
807 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc :2015/07/31(金) 19:59:49.76 ID:VsUAUbnn0
>>805
「……なんでか分からないけど凄まじく不安になる」

次回会った時に名前を忘れられてるのは、まだ良い。
だが目の前の女性はそれでは済まない──具体的には、思いっきり名前を間違えられる予感がヒシヒシと伝わってきた。
言いようのない不安感に苛まれ、内心で頭を抱える。

と、そこで目の前に差し出される相手の右手。タンクトップで拭い、差し出されたそれを、逡巡し、僅かに照れながらも握る。
女性の手を握る機会などそうそう無いのだが、この場合は異性というよりは性別の垣根を越えた友情といった方が良いのだろうか。

「あー、えーっと……いや、ちょっと商店街の方に用事があっただけなんで、この後は家に帰ります」

こっから歩くとなると少し疲れてしまう。電車という方法もあるのだが、それでも歩く距離はそう短くはない。

「あ、でもえっと……創ノ宮さん。もし送ってくれるならお願いしても良いですかね?」
808 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/07/31(金) 20:21:47.06 ID:wcPbgHAv0
>>807
照れ臭そうに自分の手を握る朱鳥を目に映し、彼女の顔には笑みが浮かんでいた。
何処かこの出逢いを大切にしているような……そんな人懐っこさを孕んだ優しくも明るい笑み。本職の店主としての精神の表れだろうか。
──手を解くと、朱鳥の言葉が続いた。続く言葉を耳にした彼女は、

「……なら!勿論送って行きましょう響クン!!
送るのにコイツ(軽トラ)は使いませんけど……ねっ!!」

そう言いながら、つくりは軽トラの荷台のひょいと飛び上がり、多種多様な機械の中でもやたら目を引く大型バイクの前に立つ。
軽トラに備え付けられていたボタンを彼女の指に押されると、荷台の一部がスロープへと変形する。……そのスロープを利用して、彼女はその大型バイクを荷台から下ろした。
……ふぅ、と一息ついた後に彼女の説明は始まる。

「……これは商品じゃなくてワタシの愛車です!
名前は『ISKANDAR--Mk.U』といって、御察しの通り色んな機能ついてるワタシの最高傑作なのです!!」

ISKANDAR……とある王国のとある征服王の名を冠したそのバイクは黒を基調として白のラインが施された近未来型デザインのバイクだ。
彼女が最高傑作……と称した通りに荷台に積まれた他の機械と比べて明らかに格が違うのがわかるだろう。やけに自信満々なのも頷ける。

「久々にドライブしたかったんですよ!
──さあ!乗りなさい少年!未知なるドライブが待ってるぜ!!」

既につくりはそのバイクに跨り、朱鳥を見て搭乗を促している。
スチャ……と彼女の目に装着されたのは赤のスチームパンクなゴーグル。陽光が反射してやたらメカメカしい見た目になったつくりは、親指を突き立てた左手で後ろの空いたスペースを示している。


809 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc :2015/07/31(金) 20:45:03.75 ID:VsUAUbnn0
>>808
「え? 軽トラじゃないってまさか……」

視線の先、そして少女が手に取ろうとしているのは近未来的なデザインのバイク。明らかに他の物とは一線を画するそれを見て、僅かに笑みが引き攣ったのに気づく。
嫌な予感と、それを上回る好奇心を唆されて、少年は笑っていた。

そして相変わらずブレない──トラックの荷台までも変形するとはどういう事だろう──機械オタクを見ながら、その説明を聞く。

「愛車? って、何というか……」

素晴らしく、悪寒を感じる。
言いようのないそれが、背筋を撫でる度にゾクゾクと湧き上がる物があった。

「……分かった」

それだけ返事をして、おとなしく少女の後ろのスペースの乗る。二人乗りなど風紀委員に見つかればお説教物だろうが、今更その程度のことを気にしてはいられない。
それよりも、このバイクの性能を知る方がよっぽど大事な様に思えた。

「じゃ、案内はしますんで……飛ばして良いですよ?」

伊達に体を鍛えている訳ではないのだ。……だが。

「……これって何処掴めば良いですかね?」

そもそもバイクを、二人乗りどころか単独で乗ることさえ出来ない少年はが戸惑うのは自明の理だった。
810 :篠原 澄香 Level 3 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [sage]:2015/07/31(金) 22:01:36.35 ID:WCT95rkSO
>>809
/>>789の文章で再度お願いしても大丈夫ですか?
811 :篠原 澄香 Level 3 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [sage]:2015/07/31(金) 22:04:17.62 ID:WCT95rkSO
/>>806でした…すいません
812 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/07/31(金) 22:12:35.95 ID:wcPbgHAv0
>>809
「あぁ〜〜言いましたね響クン。
──なら全力全開全力疾走で我が征服王の力を見せつけましょうかねぇ?」

つくりの後ろに腰掛けた響に対して、悪戯心を込めてこんな言葉を言ってみる。
唇から僅かにはみ出した舌がその悪戯心を表しているのは朱鳥にも感じ取れることだろう。……そしてその言葉は同時に、朱鳥の感じる悪寒を加速させるものであった。
──彼女の場合、言葉だけで止まるような人間では無いのだがひとまず其れは置いておく。

「何処って……うん、バイク乗ったらとーぜんのこと運転手にしがみつくもんですよ!
ワタシにしがみついたところでラブコメのような馬鹿げたイベントは存在しませんのでお構いなく!!
うーん強いて言うならお腹にでも手回しとけばいいんじゃないですかね?」

朱鳥が掴む場所の候補といえば、間違いなく前に座るつくりの体の何処かになる訳だが。
その言葉と同時に彼女は露出した自らの腹部を指差した。特に自慢……という訳ではないが大型機械などを扱ったりもする職であるだけに、しっかりと引き締まった身体つきをしている。

次に彼女は振り返ったまま、ゴーグルの奥から朱鳥を見据えてこう問いかけた。

「準備できたら出発しますが……Are you ready??」


813 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/07/31(金) 22:21:18.60 ID:IWJh+7yM0
>>789

初めは自分が声を掛けられたと気付かなかった。
風紀委員という単語と、胸のバッジを覗き込む動作で漸く、相手の言動の意味と所属を認識する。
遊びの無い髪型と隙を許さぬ制服姿は、風紀を取り締まるお手本のような姿。掲示板から目を離し、背恰好の似た相手に向き直る。

「あ、一七支部です、すみません。」
「今日から転属になって、遅れちゃまずいかなって」

予定では夕刻に顔を出すつもりだったが、駅の時計を見るとまだ1時にもなっていない。照れたように頬を掻く顔で、ばつが悪げに少しだけ笑う。
親切に対しては断る理由もない。険のある見た目ほど人嫌いしない宙は、喜び首肯で申し出を受け取る。

「本日付けで4支部より配属となりました、箕輪です」

形式ばったという程ではないが、礼を失さない程度の敬礼。
警察に憧れでもあるのだろうか、警帽に軽く手を添えて名乗りを上げた。

>>810
/昨日はすみませんでした……大丈夫です、よろしくお願いします!
814 :篠原 澄香 Level 3 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/31(金) 22:49:41.64 ID:62PNXqLcO
>>813
「転属なんですか。それは大変ですね…あ、17支部なら、それほど時間はかかりませんね」

風紀委員として、風紀委員の支部、病院、交番の場所、災害が起きた時の避難経路――――などなど、学園都市のマップは全て頭の中に入れてある。
こうして何かあった時の為の迅速な移動、道を聞かれた時などに必要不可欠だ。澄香からすれば、これくらい「風紀委員として当然の責務」なのだけど。

「私は第1支部所属、篠原澄香です。よろしくお願いします」

敬礼に敬礼で返す。警察に憧れがあるわけではないが、この学園都市に愛着があり、守りたいという気持ちは事実だ。
そして、その風紀を乱す者を徹底的に排除しなければならないと強く思っている事も、また。だからこそ、風紀委員に入った。

「それでは、行きましょう。こっちです」

挨拶も済んだところで、澄香は歩き出す。歩きながら話す事もあるだろうか。風紀委員歴の長い澄香なら、教えられる事はたくさんあるかもしれない。
815 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc :2015/07/31(金) 22:55:25.37 ID:VsUAUbnn0
>>812
(あ、やべ、なんかミスったかも)

即死フラグをヒシヒシと感じるが、今更後戻りは出来ない。
止まらない悪寒の加速については完全に諦めつつ、一先ず生存ルートを探すことにした。

「あ、やっぱアレって普通なんだ」

よく不良やらヤンキーやらが前の人の胴に手を回しているのを見るが、アレがデフォルトだったとは思っていなかった。まぁそもそも、バイクの運転どころか乗ったことすらないのだから当然ではあるのだが。

「あー、んじゃ、まぁ取り敢えず」

そういう事ならまぁ、仕方ないだろう。本当はバイクを掴んでいたかった──目の前の少女の服がヘソ出しなので尚更だ──が、何事もないなら良いかもしれない。
思春期ならではの一種の落胆と良心の狭間で板挟みになるが、思考を放棄して手を回す。

「っていうか、普通に体しっかりしてるんですね」

見た目でも分かることだが、所謂「仕事人」の身体つきという奴だろうか。自分も運動はするので比較的胴回りは締まっているが、これはスポーツや運動というよりは日々の作業に最適化された状態なのだろう。
もはや機能美の域である。

「今更退かないよ……I'm OK. Let's go」

英語ならば英語で返す。よく洋画などで見る、一度はやってみたかったやり取りである。
謎の感慨を覚えながらも、何故か流暢な英語で出発の合図を出した。
816 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/07/31(金) 23:07:13.73 ID:IWJh+7yM0
>>814

「よかった、最寄駅まで間違ってたらどうしようかと……」

安堵の顔で胸をなでおろす宙。
無論都市の脳内マッピングなど一般人と大差ない。精々本線でよく使う駅名を言える程度。職務歴の差もあるが熱意の問題だろうか。
しかし転属を繰り返せば、土地に馴染むのは難しいと悟ってしまう。
自己紹介も終わり、よろしくと元気な二つの声が周囲に残った。

「篠原さん第一ですか、憧れるなぁ」
「私みたいに転属される人って結構居たりするんですかね?」

下らない話だが1の付くものには漠然とした何かを惹き付けるものがあるように思う。
仕事を覚える前に各地を渡り歩く己など新米と変わらない。恐らくそんな者は滅多にいないだろうがと内心で窘めつつ。
道路側に並んで歩きながら、とりとめのない会話に花を咲かせる。
817 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 [sage]:2015/07/31(金) 23:17:43.90 ID:wcPbgHAv0
>>815
「しっかりしてるってもー!響クンたらお世辞が上手ですねー!!
……あ、でもそれ普通の女の子に言ったらぶち飛ばされますよー?」

まるで自分が普通ではないかのような口振りである。
確かに、手を回されて直にその皮膚に触られているのだから何らかの反応を示しても良いものであるが、彼女には恥も何も一切存在しない様子。
彼女の内に存在するのは───久々に乗れるという”高翌揚感”ただ一つ。タンデムシートに座す朱鳥に右手でグッジョブサインを示す。

ゴーグルを確りと整えて、前方を見据える。目の前は大通り、かなりの数の車が行き来しているが……。バイクの方向性を司るグリップが……彼女の両手に握り締められた。
朱鳥の返答を聞くや否や。右グリップ付近にある大きなボタンをかちりと親指で押す────、そして──。

「───────────GO!!!!!」

──始まりは突然に。
既に右グリップのアクセルを手前に回しながらボタンを押した彼女達のISKANDAR号は恐ろしい速度のスタートダッシュをきめる。
これぞこのバイクの第一機能、スタートダッシュを極限まで早くするためにあらかじめ駆動用のエネルギーは溜め込んで置いて、ストッパー(先程のボタン)を押すことで爆発的な初速を生む──。

そしてそのまま彼らの機体は大通りを凄まじい速度で突き進んでいく。車の間は速度を保ちつつするりと抜けて攻略……!
朱鳥も感じるとは思うが、荒々しい速度ではあるがこの女、凄まじい程にその荒々しい機体を乗りこなしているのだ。……流石は製作者といったところだろう。

「さて、瞬時に判断しますので道順をお教え願いますか!!?」

彼女の勢いは。止まることを知らない。
818 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/07/31(金) 23:18:20.13 ID:c/HY1/IYo
茹だるように暑くて、とてもじゃないが寝られやしない、そんな熱帯夜だった。
苛立ちを表情に表しながら、黒繩 揚羽は夜の街を歩いていた。人通りの少なくなってきた街道、明るく地面を照らす街灯の下。
口に咥えた煙草から紫煙を上げて、右へ左へ揺れながら、我が物顔で道を行く。

「…チッ、イライラが収まんねえ…」
「何人ぶっ飛ばしたっけ?ああ足りねえ…全然スッキリしねえ…」

黒繩は先程まで喧嘩を繰り返し、先程丁度5組目の相手をボコボコにして来た直後であった、砂埃で汚れた服や口元の血などを見れば、それがどれだけ激しかったかわかるだろう。
そんなファイトクラブじみた事で苛立ちを解消しようとはしたものの、そんな事では全く苛立ちは消えず、寧ろ大きな疲労と傷だけが増えて行った。
その事実が更に苛立ちを募らせ、新たな相手を探させる、狂戦士のような思考で戦闘を繰り返した黒繩の体は本人の知らぬ所で限界を迎えていて。

「……あ″?」

───気が付けば、黒繩は道の真ん中でうつ伏せにぶっ倒れていた、本人も気付かずに。
起き上がろうにも、体が別の物になったかのように力が入らない、人通りも少ないこの道で、そんな少年が助けを求めるべき人間も、彼の脳内には浮かび上がらなかった。
819 :篠原 澄香 Level 3 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/07/31(金) 23:18:53.35 ID:62PNXqLcO
>>816
「いえ、そんな事はないですよ?私だって何度も何度も転属を繰り返して、色んなところを自分の足で歩いて、やっと学園都市のマップを覚えられましたから。箕輪さんも、経験を積めば大丈夫ですよ」

もちろん、澄香だっていきなり全て覚えられたわけではない。
自分だって新米の頃は道をよく間違え、パトロール中に迷い、遅刻し、こっぴどく怒られた事もあったものだ。
それでも挫けず、コツコツと経験を積んでやっと今、こうして堂々と風紀委員として行動できているのだ。
誰しも始めからできるわけではない、大切なのは、挫けない気持ちと熱意なのである。

閑話休題。

話は変わって、澄香は突然こんな事を聞いた。

「ところで、箕輪さんは"魔術師"の噂を聞いた事がありますか?この学園都市の風紀を乱す危険な存在の事ですが」

"魔術師"、一度くらいは聞いた事があるだろうか。この学園都市で暗躍している存在という噂を。
澄香はこれを"学園都市の風紀を乱す存在"と断言した。その目には、魔術師に対する強い怒りが現れているのが分かる。
箕輪はこの澄香の様子を見て、何を思うのか。
820 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc :2015/07/31(金) 23:36:43.60 ID:8mBm84y3O
>>817
「いやまぁ、貴女が普通じゃないのはもう折り込み済みですんで」

酷く今更である。まさか目の前の少女を一般的な女子として扱う訳にもいくまい──色々な意味で。
だがまぁ、自分も特に何も感じてないとは言え相手もそうとなればこれはもう性別など些細な事では無いのか。

心の準備をして、少し前傾姿勢を取る。運転手ならまだしも自分で制御が出来ない自分にとっては対ショック体勢は非常に重要なのだ。
グッジョブサインを見て、次にカチッという音が鳴る。そして──

「え? まさかスタートダッシュってうぉあ!?」

一体全体、何m/s/sの加速度が出ているのだろうか。少なくとも普通体験することはない慣性力によって、体が一気に引き剥がされそうになる。
それをどうにか堪え、ふと周囲を見てみると、流れていく景色と共に一種の爽快感が吹き抜けていった。
縫うように人ごみの中を抜けて、人々を抜き去っていく。

「ははは……はははは!! 凄え!!」

思わず笑ってしまう程には、このスピード感は癖になってしまいそうだ。

「道順ね? OK! えーっと、7つ先の交差点を右に──」

ランナーズハイとも言うべきか、どうやら少年も感化されているらしかった。
821 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/07/31(金) 23:58:49.65 ID:wcPbgHAv0
>>820
「なかなか楽しんでますねー!よしよし!!
これも機械信仰の一環だぜ!!」

何度体験しようと、忘れられない快感が朱鳥だけでなく彼女の身の内にも沸き起こっていた。
爆走するISKANDAR-Mk.Uとそれに相反するように吹き抜けて、心地良い清涼感を与える風。
凄まじい速度で走り抜けるその機体は彼女のライディング技術によって、現時点で学園都市の道路を走る機体中、最速という化け物速度を叩き出している。
──ということで突き進むバイクは駅前を通過。運が良ければ風紀委員たる>>819>>816にも目撃されてしまっているかもしれない。

ゴーグル下の彼女の目に映るのは、7つ先の交差点の信号。……とはいえ現時点では3つ先までに近づいているのだが。
交差点が3つ先……2つ先……と近づいてくる。そして、1つ先であるところで彼女の目には赤から黄色に変わるのを目にした。
目の前にはもうすぐ現れる赤信号に怖気づいた数台の車達。
──然し彼女はそれを嘲笑う様に……足元のボタンを思い切り踏んづけた。
直前に「しっかりつかまっててください!」なんてのも言っているが、この爆速の中で響の耳には届くだろうか。

「……ひゃっほおおおおおお!!やっぱりこの快感は止められないっ!!」

彼女が足元のボタンを踏んづけた瞬間、バイクは大きな飛躍を見せた。勢いがつき過ぎて、彼女らを乗せた機体が一回転する程の──飛躍。
彼女が今踏んづけたのは”バネ”ボタン。スタートダッシュ用のボタン機構とは違って彼女の遊び心による作品。
スピードを保ちつつ飛躍したその機体は、見事に空中で一回転したのちに交差点のど真ん中に着地、瞬時に方向を右に傾ける。
信号は赤………交差するもう一方の道の信号が青に切り替わる直前である。
そして彼女は至って冷静に、その交差点を右に回って見せたのである。……と落ち着いてきた彼女が漸く朱鳥へと口を開いた。

「……さて!次の道を教えてください!!
……ってか大丈夫ですかー?響クン」
822 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/07/31(金) 23:59:53.97 ID:wcPbgHAv0
//見えるかもしれないってだけですので安価はしてますが、もう一方のお二方は絡む必要は全然ないですー!勘違い生みそうなので…
823 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc :2015/08/01(土) 00:10:27.64 ID:hv1NR19y0
>>821
明らかすぎる速度違反だが、もはやそんな物にツッコミを入れる程野暮では無い。
中々染まってきた少年も、その口角を吊り上げていた。

「ん? て、ちょっ、赤信……」

信号無視するのか、いやそれ以上にその手前にある車によって阻まれているため、当然減速する──そう思っていた時期が彼にもあったらしい。

「は?」

突然の飛躍。一切の前触れもなくバイクは空中で一回転し、そのまま交差点のど真ん中へ──の前に、当然少年の体は放り出された。

「マジ……かよっ!!」

そしてその直前に、一瞬だけ日本刀"黒楼"を鞘ごと召喚。タンデムシートに鞘の切っ先を突き──剣道部としてあるまじき行いである──空中に身を躍らせた。
バイクはそのまま地面に着地、そして右方向に進路を転換。

それとほぼ同時に、何とか体勢を整えた少年がタンデムシートの後ろへと手を突いて着地した。
実に無茶苦茶な機動であるが、能力者なのだから問題はない──筈だ。
まぁ、まず身体能力強化などされていない生身の体で可能なパフォーマンスを最大限引き出した結果ではあるのだが。

取り敢えず"黒楼"の召喚を解き、先程の体勢に戻る。

「大丈夫な訳ないでしょ……空中3回転捻りとか体操部じゃあるまいし……」

しかしそれでしっかり着地できる辺りは、今までの戦闘によって培った経験の賜物かもしれない。
824 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/01(土) 00:13:32.23 ID:vrZ4ctuo0
>>819

「へえぇ……篠原さんのそんな時期は想像できないなぁ……」

まるで胸中をのぞかれたようにどきりと胸を押さえる。意外な実態と予期せぬ励ましに驚きを隠せない。
どの仕事も地道な努力が実を結ぶのだろうが、果たして自分は其処まで至るのだろうか。複雑な気分で腕を組む。
底に投げ掛けられる問いに、殊更首を傾げる事となった。

「んーと、聞いた事はないですね」

宙自身が魔術師にカテゴライズされる存在である。異能だけ見れば魔力使いというのが正しいか。
どちらにせよ本人にその意識はない。出自自体を知らないのだから自然とこの結論に至るのも当然であった。

「ヤバい不良の集まりか何かですか――――おぉう!?」

問いかけた時、後ろから追い抜いて行く大型二輪。爆走するその背は男女の二人乗り(>>821)のよう。ヘルメットはしているだろうか。
危ないなぁ……と呟くも徒歩では手も足も出ない。横の篠原をちらりと見る。

825 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/08/01(土) 00:26:33.84 ID:HV+NdNwS0
>>823
「ほほーう……中々やりますねぇ……。
然し!!そういう事を言えるという事はまだ元気が有り余ってる証拠であります!
……って事でワタシにしっかりしがみつくべしべし!」

と、交差点を右に曲がる前にほんの少しだけ背後を振り返って元気よく言葉を紡いだつくり。
恐るべきなのは彼女は慣れすぎているからなのか、その運転に全く動じていないという点である。
空中でアクロバティックな回転を極めた後でもその少女は余裕の笑みを浮かべてそこに座しているのだから、割と恐怖だ。
交差点を右折して直後に広がる直線道路をその眼に映しながら、直ぐにアクセルを引き、近未来デザインのそのバイクは走り出す──。

「……それが能力……ってやつですかー?いいですねー!それあればワタシの知名度上げられたりしませんかね!!」

実現出来ないであろう淡い期待を抱きつつ、朱鳥の剣技に賞賛の言葉を送る少女。

「さてっ!!さっきと同じく直進するわけですが、道の案内はよろしくお願いしますね!」


826 :篠原 澄香 Level 3 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/08/01(土) 00:40:46.63 ID:P7NhzFdBO
>>824
「そう、ですか。なら、教えておきましょう」

箕輪は魔術師の噂すら聞いた事がない、ときた。
ならば、ここでしっかりと魔術師の危険性を教えこんでおけばいい。いずれは魔術師を狩る者として、自らの意思で動いてもらいたいものだ。

「不良なんて生易しいものじゃありませんよ。
魔術師―――奴らは、人間の皮を被った化け物です。人の弱みに付け込む悪魔のような存在です。
奴らは人に化けてこの学園都市に潜入し、自らのものにしようとしているに違いありません。
本当に汚らわしい、塵以下の存在です。奴らは生徒や教師、一般人に扮し、期を見てこの学園都市の風紀を脅かそうとしています。
まず、優先的に、徹底的に弾圧すべき存在である事に間違いありません。
そして―――――この風紀委員内にも、魔術師のスパイが紛れ込んでいるかもしれないのです」

魔術師は学園都市の敵であり、悪であるという事を説く。一言一言、言葉を強調して。
澄香の中では、淘汰すべき存在であり、学園都市から消え去るべき存在なのだ。学園都市の平穏を守る為に。
風紀委員内に潜んでいるなどと、本当に恐ろしい事である。なんとか見つけ出して、排除しなくてはならないのだ。

と、そこに>>821が通り過ぎる。本来ならば執行対象なのだが、追う事はできない。

「二人乗りとスピード違反…はぁ、いつになってもああいう輩がいるから困ったものですね」

ああいう軽い違反ならまだ可愛いものだ。取り締まればそれで終わりなのだから。
本当に恐るべきは魔術師。存在事態が違反であり、この学園都市に存在する事があってはならない。

「さて、見えてきましたよ」

そんなこんなで、17支部の施設が目に入ってきた。大体、駅から10分かかったか、かからないか。
そろそろ、ゴールである。
827 :朱鳥 響《刀身一閃:Level3》 ◆eF38STmZJc :2015/08/01(土) 00:48:00.31 ID:r9gXAne3O
>>825
「いやいやいや、結構限界だからね? 一応言っとくけど人間って能力使わないと三次元軌道出来ないんですよ? あとついでに言うと自分の能力そういう類じゃないですから」

あんな運転をしておいて、後ろにいる人間を放り出して、そしてそれでも尚一切動じない。
一体全体何者だコイツ、などとしょうもない疑問を抱きながら、再び手を回した──今度は離れない様に、割と真剣に。

「いやもうアンタの場合は機械弄りとそのドライブテクが能力って事で良いでしょ! っつーか十分だよ寧ろ正真正銘の無能力者で学園都市でやっていけてるなら誇っていいと思うよ!?」

別方向で凄いとは思う。自分なんかの役に立つような立たないような微妙な能力よりも、よっぽど生産的な力だ。

「ああもう!! どうにでもなれ!! 次!! 5つ後のT字を左!!」

半ばヤケクソ、殆ど理性が吹っ飛んだ様な状態で少年は少女へと指示を出した。


//すいません、眠気がそろそろ限界なのでここで〆でよろしいでしょうか?
828 :メルラン=ウォル=ラクトムル [sage]:2015/08/01(土) 01:01:18.62 ID:LN/CnmNt0
>>818

人通りが少なくなり、静寂が木霊する街道。そんなところを歩く者はほとんど居らず、まるで世界に自分しかいないかのような錯覚に陥りそうなほど。
そしてそんな道を歩く一つの影が。

「やっぱりまずは情報ね……
魔術師側と能力者側が今どんな感じなのか……」

メルラン=ウォル=ラクトムル。
彼女は今現在つくもの家にお世話になっているが、こうしてよく夜な夜な散歩をしているのである。
ウサギのぬいぐるみを抱きながら歩くその姿はとても愛くるしいものだが、考えていることは愛くるしいなどとは思えない内容。
前回の一件からもうだいぶ時間も経ち、魔翌力を使えるようになったメルランは今、魔術師側に能力者が危険ではないということを伝える、そして友好な関係が築けるようにと、それが信じられる証拠を探しているのだ。

「一体どうし──」

そこでふと、何故かメルランは立ち止まった。独り言も止め、なにかを見つめていた。
その見つめていたものとは、倒れている人だった。
しかしこの人物、どこかで見たことが……
朧げな記憶を掻き分け、どうにかしてこの目の前の男が誰だか分からなければ。

「──あ!あの時ドライバーをボコボコにして、私といずもを乗せてくれた」

どうやら無事思い出せたようだ。
しかしこの男はどうしてこんなところで寝っ転がっているのだろうか。
メルランは思い切って、訪ねることにしてみた。

「ね、ねぇ…大丈夫…?
なんでそんなところに寝転がってるのよ……」
829 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/01(土) 01:08:30.94 ID:vrZ4ctuo0
>>826

堰を切ったような鬼気迫る解説。
対して宙は相槌のみで、相手の話すがままに任せ暫くは無言を貫いていたが。

「怖いなぁ……その魔術師も、篠原さんも」

終わってみて呟く帽子の下は、畏怖は無く怪訝な表情。

「いやほら、凄い悪い人たちなのは分かるんですけど、そこに至るまでの背景があまり見えてこないというか」
「なのでちょーっと、私としては賛同しかねますね」

眼鏡を上げて口憚ることなく述べる物言いは、初対面にもかかわらず遠慮の欠片も無い調子。
意志が強いというより、言う前に考えるという過程が欠如しているのだろう。
案外これが転属を繰り返す理由の一因なのかもしれないが。

「具体的な悪事を教えてもらえるなら、少しは取締りに協力できるんですけど」

今は無理ですと、ばか丁寧に頭を下げる。申し訳なさげな顔からは、決して敵対が本意なのではないというのが分かるだろうか。
目を上げたところに、今までに何度か見たのとよく似た、都市由来の建物の一つが飛び込んでくる。

「あ、あれかー! 意外と近い……――いやホント助かりました!」

覗き上げて間違いないと、もう一度今度は嬉しそうに気持ちで頭を下げる。嫌がられなければ相手の手さえ握ろうとするだろう。
否定したり感謝したりと忙しいが、宙の中でこれは並列するのみで交差する事はない。
風変りだろうか、意見が対立するからと言って距離をおく必要性は感じない性質なのだ。

「一度寄って挨拶と、さっきの二人乗りの報告入れておきますね」

では、と最後に頭を下げて別れの言葉と締めくくる。
再三礼を述べる事から相手への感謝は変わらない。しかし同じく魔術師とやらの話を鵜呑みに出来ない姿勢も、相手が攻め方を変えない限り不変であろう。
平然と業務連絡を付け加えて、何事も無ければそのまま足を支部へ向けようとする。
830 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/08/01(土) 01:15:02.09 ID:epp2jjqjo
>>828
───暑い。
地球温暖化だかそれは嘘だとか色々聞いたが、とにかく理論だの理屈だのではなくて、暑い。
熱が逃げきっていないコンクリートに体をへばり付かせながら、黒繩はそんな事ばかり考えていた、『今度こそ死ぬかもな』とも。

「あーあ…」

体が動かないならせめてこんな暑苦しい所でなければよかったのに、蒸し焼きになって息絶えるのはいやだ。
そうは思うが起き上がる事は叶わず、力無く諦めの声を漏らしていると、何だか高い声が聞こえて来た。
鋭い目付きで声のした方向を見ると、何だかよく知らない少女がいた…いや、どこかで見た事があるような気がする。
どこで会ったか?こんな子供に喧嘩を売った覚えは無いし───

「───あ、思い出した」
「テメェ、あの時の死に掛けのガキか、よく生きてたな…いや、あの世からお迎えに来たか?」

そういえば、と黒繩はメルランの事を思い出す、憎き『番長』に連れられていて、その番長を逃す事になってしまった理由の少女、そんな風に黒繩は認識していた。
あの時のメルランは殆どボロボロであったが、回復した様子を喜ぶ事はなく、倒れたままでも憎まれ口を叩いて返す。
831 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/08/01(土) 01:24:23.87 ID:HV+NdNwS0
>>827
「あらぁ?ってことは2つの能力持った所謂”デュアルスキル”ってやつですか?
おぉー!ワタシ最強じゃん!!」

何処の何を以ってして最強と宣っているのかはわからないが、彼女が確かに”凄い”人物であるという事は間違いない。
”凄い”というのは勿論性格の面が多くを占めるが、その性格から引き起こされる行動も色々と”凄い”のである。──それは現在進行形で朱鳥が経験している紛れも無い事実。
……といってもまるでその世界の匠のような荒業を繰り出す彼女に何も仕掛けが無いわけでもなく、

「へっへっへ!このゴーグルあると気分的に盛り上がるんですよ!そのせいかもしれないですね!」

勿論、彼女自身その本質には気づいていない。
理由はそれを証明するための確固たる証拠が存在しないから。
彼女はゴーグルを着用中にその能力を無意識に発動する、そしてその上能力を行使しているときに特に変化もない事から、それを能力と決めるのは難しい。
オマケに記憶に依存する能力であるがために、正確な計測が出来ないという要因も存在する。
”既視感”を感じさせる事で判断能力を素早くする能力……そんな能力を使用しつつバイク乗り回したり機械作成したりすることで、彼女はレベルアップしてきたのだろう。

「んじゃ!!ちゃちゃっと曲がっちまいましょうか!!────よいショ……っと!!」

キキィィー!!っという甲高い摩擦音と共に、大きな機体は綺麗な曲線のラインを描いて左折した。ここにおいても彼女の技術は光る。
その曲がりを終えて安定したところで、彼女は朱鳥に問いかけた。

「さて……そろそろ着く頃……ですかね?」


//了解です!ありでした!
832 :篠原 澄香 Level 3 ◆q43ZZ7ZHQ/5v [saga]:2015/08/01(土) 01:29:53.62 ID:OFTizJN9O
>>829
「………そうですか。いずれは分かりますよ、奴らがいかにこの学園都市に混沌をもたらすかを」

今は信じてもらえないだろう、しかし、いずれ魔術師が動き出した時にきっと分かるはず。
なのでしつこく言う事はない。自分の目で見て、判断してもらう事も重要だ。
学園都市に蔓延る闇を、一度は垣間見る事もあるだろう。

「いえ、お礼をされる程では。これくらい、当然です」

17支部に到着、これにて任務完了である。手を握られるのを振り払いもしない、黙って握られるまま。
やはり、こうして感謝される事は気持ちの良い事である。風紀委員の仕事の魅力は、そこだ。不良には一生分からない、綺麗な事なのだ。

「えぇ、よろしくお願いしますね。それと―――あなたも、魔術師には気をつけるようにしてください。では、私はパトロールに戻ります」

それでは、とお辞儀をして、踵を返す。
風紀委員の仕事が終わる事はない。山積みの案件もこなさないといけないし、大変な仕事だ。
しかし、それをやっているからこそ学園都市の平穏が保たれている事を忘れてはならない。
秩序を作り、守る。それが、風紀委員なのだから。それこそが、正義である。

「魔術師―――――見つけ次第、"刈り取り"ます」

懐にしまいこんである鎌が薄く光ったのは、偶然か。

/これで〆で!ありがとうございました!
833 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/01(土) 01:34:36.69 ID:vrZ4ctuo0
>>832
/ありがとうございました!
834 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/08/01(土) 12:48:02.03 ID:LN/CnmNt0
>>830

「もし私があの世からの迎えだったらなんであなたの所に来るのよ、ほとんどお互いのこと知らないのに」

飽きれたような顔をして黒繩の頭の上にしゃがみ込み、顔を覗き込む。
実際はそんな迎えがあるのかは知らないが、もしあるのだとすればほとんど関わりのない者が迎えに来ることは無いだろうが……

「あの時の礼とは言わないけど……
病院まで運んであげようか?なんだか動けないみたいだし……」

ぬいぐるみを指差し、そう提案するメルラン。
しかしメルランの魔術を知らない黒繩からすればそれは笑い話も良いところなのだが。
と、そこで気になったことがあるのかふと思い出したかのようにメルランは黒繩の身体を見つめる。

「そういえばあなた…なんでそんなことになってるのよ?
喧嘩でもしたの?」

確かにまずはそれを確認すべきだろう。
まさかなにもしないでこんなことになったわけではあるまい。
不思議そうに黒繩を見ながらメルランはそう尋ねた。
835 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/08/01(土) 13:35:30.23 ID:epp2jjqjo
>>834
「ヒヒッ!理由ならあるぜェ…」
「俺はあの時死に掛けのテメェなんてほっといて、番長サンをぶっ殺してやろうとしてたしなァ…ま、知らないならいいけど…」

迎えに来る理由になるのかはわからないが、恨まれる理由なら心当たりがある、というか大有りだ。
何故ならあの時黒繩は、メルランを見殺しにして自己の欲を満たそうとしていたのだから、結果的に助けたとはいえそれをメルランが知っていたなら…と、黒繩はある程度自分の性悪に理解を示しているような返答をかえす。

「…暑苦しくてムカついてな、ストレス解消でもしようかと思ってそこら辺のチンピラをボコったらこのザマだ」
「ヒヒッ…!魔術師一人ブッ殺すのよりも骨が折れるぜ、この気温はよォ…」

黒繩はメルランが魔術師である事を知らない、それはメルランにとっては幸運であったかもしれないだろう。
何しろ、たった今彼が口走ったように、黒繩は魔術師を始末して回る側の人間、魔術師にとっては派閥の関係無しに脅威となる存在であるから。
それを知っても尚手を貸す気であるならそれでもいいし、トドメを刺そうというのならそれもまた良いだろう。

「…オイ餓鬼ィ…ぬいぐるみでお医者さんごっこなんていいからポ○リ買って来いポ○リィ…」

…魔術師でなくともこの傲慢無礼な態度の少年を助けたいと思うのか、という話になるが。
836 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2015/08/01(土) 20:47:17.55 ID:TaHs7mofO
/こんばんは。参加したいのですが…
837 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/08/01(土) 20:53:30.34 ID:HV+NdNwS0
>>836
//こんばんはー!いらっしゃいませー!
取り敢えず>>1にあるurl踏んでしたらばにお越しください!後は自分が使いたいキャラの概要を投下スレに投下いただければOKです!

質問あればしたらばの雑談スレとかの方でお願いいたします!
838 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/01(土) 22:48:02.81 ID:vrZ4ctuo0

夕刻、シティホテルからカプセルホテルまで混在する地区。
ワイシャツにサマーベストを着た眼鏡の女が、陽炎残る道を歩いていた。

「転居願にー、部署異動届にー、……能力登録書ぉ? また1から登録し直しなの?」

帰り道夕日に背を照らされて漏れるぼやき。手にはハードカバー並みの厚さとなった書類がある。
胸元には風紀委員のバッジが光るも。一枚一枚を流し読みしながら、その都度険のある目がくるくる動く。

「暑っつい……ちょっと休憩」

うす暗くなった空を見上げた目からふっと光が抜けた。
日が暮れても暫くは熱気が残る。肌に貼り付いたシャツに、これ幸いと書類で襟元から風を送る。
折よく足を止めた傍にあった公園に舵を切った。

「コーヒーか、紅茶か――」

数分経って小銭片手に決めあぐねる女の姿。
自販機横であれこれと悩む傍ら、ベンチに置いた紙束から中身が数枚巻き上げられた。
839 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/08/01(土) 23:20:42.39 ID:OonL8pjw0
>>838
『風(ヴォズドゥハ)』

風に巻き上げられた書類はしかし風に流されて行くのではなく、自然力とは思えぬ力……即ち能力によって、元の位置へと戻って行った。
その使用者はベンチの側に佇んでいた。身長は高めで黒い髪を持ち、そして何よりも特徴的なその緑色の眼が、自販機前で悩む女性に向けられていた。
彼の名はイリヤー・ミハイロヴィチ。彼の服には金色のバッヂ、すなわち風紀委員の証が輝いている。
彼女が連絡によく目を通す人間であれば、「彼」が風紀委員に入る事は、前もって知っていただろうか。
彼は新入りだった。見回りついでに、同業者である彼女を見つけたのだ。挨拶をしておこうと思った。

「あなたは、風紀委員の……」

先に声を発したのは彼だった。
日本語ではあるが、怪しい発音。日本に来て数年しか経っていないのだ。
彼女は突如現れたロシア人に、どのような反応をするであろうか。
ただ会釈を返すか、怪しいと訝しむか、それとも……

/まだいらっしゃれば
840 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/01(土) 23:51:15.63 ID:vrZ4ctuo0
>>839

「も。 めんどいし、両方で良いや」

悩んでいた時間はなんだったのか。今までの推考が嘘のように
けろりとした顔で大目に硬貨を入れて手際よく缶とボトルをラックに落とす。

「っと」

不意に吹いた風に飛ばぬよう帽子を押さえる。
がこんがこんと落ちる音で、続く背後からの声は半分ほど遮られて女の耳に届く。
そうして振り返った先には――――壁が立っていた。

否、徐々に首を持ち上げていけばそれは人であると直ぐに分かる。
頭一つ以上高い顔、日本人離れした眼差しに辿り着くまで、途中見覚えのある金色の光が。
ゆっくりと視線を上げて、ふと脳裏に走る刺激。


「は、はろー?」

左手には財布と飲み物二本。
業務連絡に敏感でない事をあっさり露呈させて、宙はおずおずと空いた片手を持ち上げた。

/おります、よろしくお願いします!
841 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/08/02(日) 00:07:44.74 ID:+uQlwsEB0
>>840
「……私の事は、知らされていないのですね」

彼は怪しい発音でありながら、しかしはっきり日本語であるとわかる言語で話す。
戸惑う彼女をよそに、初めて自分を見ただけかも知れないと思い、彼は自己紹介に入る事にした。

「Миня заву……私……私の名前はイリヤー・ミハイロヴィチです。今日から……そう、風紀委員となりました。」
「八橋馨から、話を聞いていないですか?」

丁寧口調ではあるが、その語気にはフランクさが多分に含まれている。
恐らくそういった言い回しを知らないだけであろう。彼には「私」という自称よりも「俺」の方が合っていると、そんな印象を与える。
彼は一方的に自己紹介を済ませると、彼女の横、すなわち自動販売機に目を向け、まじまじとそれを眺めた。

「……前から気になってはいたですが……自動販売機、ですか?こんな人通りの悪い場所なのに、なぜ盗まれないのか?」

目の前の相手に聞いてもいないというのに、紛らわしい質問口調の独り言で呟く。
ロシアに限らず、暗闇で滅多にものが無くならないのは日本ぐらいなものだ。
いつも気になっていた事を口に出しただけなのだが、彼女がそれを知る由もないだろう。
余計に困らせてしまっただろうか。

842 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA :2015/08/02(日) 00:34:22.46 ID:+uQlwsEB0
>>840
/自分から絡んでおいた手前申し訳ないのですが、このロールは明日に持ち越しという事で構いませんでしょうか?
843 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/02(日) 00:42:35.53 ID:jcAg7JM/0
>>841

「……、」
「あ、箕輪 宙(みのわ そら)っ、です。 私も、今日からここに転属で!」
「八橋? さんは今日会った中には居なかったかな?」

篠原が言っていた通り、やはり人の入替りは激しいのかもしれない。しかしまさか外国人まで手を広げるとは。
国際化が進んでいるとはいえ、流暢な日本語に目をぱちくり。一拍置き慌てて手を降ろす。
何度見ても大柄な相手に呆けていると、彼の視線が横に移るにつれ、己もつられて自販機を振り返る事となり。

「え? 子供の頃大人に教わりません? 他人の物を盗むのは悪い事なんですよ」

首を傾げる様は少し信じ難いものを見るような眼差し。
人生の大半を学園都市で過ごしている宙にとっては、比較的治安の良いこの地が世界の全てである。
都市の為になる教育を受けてきて、その時の幼い正義感がそのまま大きくなったような顔で得意げに眼鏡を持ち上げる。

「みんながそれを知っているから、日本ではいつでもどこでも冷たい飲み物が買えるんです」
「イリヤーさんは何処出身ですか?」

はい、と左手の2つの飲み物を差し出す。一本あげるという事だろう。
エメラルドを思わせる眼を覗き込むようにして、最初に気になっていた疑問を訊ねた。
844 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/02(日) 00:45:04.35 ID:jcAg7JM/0
>>842
/大丈夫ですよ、また明日よろしくお願いします!
845 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/08/02(日) 16:19:54.40 ID:Xb+AFb/E0
>>835

「そうなの?まぁもう過ぎたことだし別に良いわよ。結果助かったんだし」

どうやらメルランは黒繩のことを恨んだりはしていないらしい。子供ながら達観しているというかなんというか…
だがそれが彼女の持ち味なのだろう。子供であるのに高い知能を持ち、魔術まで扱える。しかし精神の方がそれについてこれているのか。

「チンピラをボコってたって……なにやってるのよほんとに…」
「魔術師を殺……まぁ確かに今日は暑いわね…私も死にそうなぐらいよ」

黒繩の魔術師への発言。その言葉でメルランはこの目の前の男が自分たち魔術師の敵であることがはっきり分かった。
しかしここで荒事を起こすわけにはいかない。それに一応黒繩のお陰で助かったとも言える。
ここは黙っているのが最善か。

「はぁ…分かったわよ、買ってくるわ」

そう返事するとメルランは近くの自販機に行き、飲み物を買い戻って来た。
そしてそのメルランの手に握られていたのはポ○リではなく──

「はい、これでいいの?」

アク○リアスだった。
846 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/08/02(日) 18:07:26.88 ID:+uQlwsEB0
>>843
「よろしくお願いします、箕輪宙。ソーリャと呼んでもいいですか?」

よくわからない提案を持ちかける。
彼の言う"ソーリャ"とは、彼女の名前である「そら」をロシアの愛称風に変形したものだ。
だが、そこまで理解できずとも、彼の言い口から彼女をあだ名で呼びたいという趣旨はわかるだろう。

彼は彼女の言葉に一瞬、何か思考をめぐらせるように固まった後、渇いた低い声で静かに笑った。

「いや、そういう事ではないです。暗闇はзлодей(ごろつき)達の温床、女性が一人で歩く事すら危ない。日本はセキュリティがかなり行き届いている様ですね。」

そう言ってから、我々はそれを裁く側だった、と再び笑う。
彼にとって当たり前の事も、彼女にとっては非常なのだ。それが文化、もしくは世界の壁というもの。
そんな事など考えもせず笑う彼の姿は、彼が、彼女の知らない世界で過ごしてきたという事の証明でもあった。

「私の祖国ですか。Россия……日本語で言うと、ロシア、でいいでしょうか」

彼は彼女の何気ない質問に、読みを大げさに強調して答えながら、彼女の手の中の飲み物に目を移す。日本語の性質はだいたい分かっていた。母音と子音の組み合わせ、それをはっきり発音すればよいという事を。
人から買わないと信用できない性質のせいで自動販売機から飲み物を買った事は1度もないのだが、彼は彼女の言葉を信じていた。

「こちらはコーヒーですね。分かります。こちらは……チャ……に……Красная(赤)?ええと、これはどう読むのでしょうか」

彼は心底申し訳なさそうに、彼女の持つ飲み物のラベルにゴツゴツとした指を伸ばす。
それは紅茶の二文字。訓読みがなっておらず、未だ熟語の意味も不完全らしい。
コーヒーの方は英語でCoffeeと書かれていた為、読めたようだ。

「漢字は勉強しています。が……まだ足りないらしい」

飲み物の名前ひとつ読めない自分の無力さに、彼は苦虫を噛み潰したような顔で悔しがった。

/お返ししておきます
847 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/02(日) 18:44:52.83 ID:jcAg7JM/0
>>846

「そりゃ? あは、変な呼び方っ」

聞き慣れぬ発音に取り繕わぬ感想を漏らす。
変な、とは言葉通り聴けば良い意味では無いのだが、笑いを添えている点からして決して嫌な意味では無い。
言葉を選ばないのは屡ば見られる宙の欠点であった。

公園に二人分の笑いが暫し響く。途中聞き慣れない単語もあったが、この街が褒められたという事は分かる。悪い気はしない。
親を知らぬからだろうか、宙は今どきの若者には珍しく愛国心――に近い感情を持っている人間であった。

「らしーや……ロシア! ロシア人かぁ」
「それはね、コーチャ! えーと、イギリス・ティー? であってるかな」

それを言うならブリティシュティーではなかろうか。眼鏡で知的さを醸し出そうとしても悲しいかな学力の底は明らか。
こめかみに手を当ててううんと唸ってひねり出した答えは残念なものであった。
気になるなら、と右手に持ち替えて紅茶のボトルを差し出す。

「えー、それだけ話せれば十分だと思うけど。こっちに来てから日本語勉強したんですか?」

その国の言語で意思疎通が出来ている時点で彼の頭脳と適応力は相当なものであろう。寧ろ宙の敬語の方が若干怪しいくらいである。
立ち話もどうかと、飲み物を渡す手で向こう側を指しベンチへ誘う。風紀委員歴は短いらしいが、彼はこちらに来て長いのだろうか。


/今日もよろしくお願いします
848 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/08/02(日) 19:57:25.52 ID:+uQlwsEB0
>>843
「コーチャか……Teaですね、わかります。イギリ……イギリス?……ああ」

彼は日本に来て数年になるが、日本で紅茶を味わったことはない。
この飲み物の正体はわかった。日本ではグレートブリテンをイギリスと呼ぶことも知っていたが、やはり実際に会話文に出されると戸惑うものだ。

「ロシアにもTeaはあります。ジャムを舐めながら濃いものを飲むんですよ」

彼は自国文化の豆知識を披露しつつ、せっかくだからと紅茶を受け取る。
案内された通りにベンチに座って、彼は自分のことを話すことにした。

「……私は、3年前に日本に送られた。当時、日本語は何もわからなかった……」
「ですが、先生やクラスメイト達の協力で、ここまで喋れるようになった……今は漢字を勉強しています」

ロシア語が通じる先生が居で良かった、と笑う。
日本にいるということは、周囲に日本語の先生がいるのも同然。
彼らとだんだんとコミニュケーションが取れるようになっていったのが嬉しかったと、彼は語った。

「上の人に話すには、ケーゴがいるのですよね?」

彼の固い口調はおそらく、先生に日本語を教わった影響であろう。
自分の使う言葉が敬語であるかどうかもわかっていないのだ。彼の認識は「とりあえずdesuかmasuを付けておけばいい」というようなものだった。

「妙なものですね、日本語というものは。二千もの漢字を覚えなければ、日常生活すらままならない。その組み合わせで別の意味にもなる……」

呆れたような感心したような口調でそう言った。
彼自身、理解度が深まるのは楽しいとはいえ、勉強に少しばかりうんざりしている節はあるのだろう。


849 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA :2015/08/02(日) 19:57:47.15 ID:+uQlwsEB0
>>848
/>>847宛てです
850 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/02(日) 20:32:08.03 ID:jcAg7JM/0
>>848

「えっ、ジャムってパンに付けるだけじゃないの?」

宙の脳内に苺ジャムの瓶片手にバケツのようなカップで紅茶を飲むイリヤーの姿が浮かぶ。
豪快さに補正が掛かっているのはロシアという国土のおおらかさを考慮してだろうか。
彼を先導するようにしてベンチに戻り、左側に腰を下ろす。

「3年でそこまで話せるんだ。やっぱりエリートだね」
「うん。でも友達とかと話す時は普通でいいんですよ?」

送られた、という事は留学生なのだろう。大使館などから選ばれてくるだけあって、まさにエリートと呼ぶに相応しい。
学んだ環境に隔絶した差があるのも知らず、あっけらかんと訂正を促す。普通とは何か、定義するのは難しい。

「そうだねー、大昔に中国……チャイナから漢字が来て、それを簡単にしたのがひらがなとカタカナ、だったっけ?」
「多分昔の人もイリヤーさんと同じで、覚えながら、自分なりに解釈していったんじゃないかな」

身の回りに理解にある人が居たとしても、一番はやはり彼自身の努力の賜物だろう。
苦しみながらも漢字を覚えようとする姿勢は人種を越えて尊敬すべきものがある。
――と、そこまで宙が考えている筈も無く、呑気な台詞と共にプルタブをぷしゅ、と引っ張った。

「ていうか、私たちも時々うんざりする事ありますよ?」
「例えばいっぱい書類で渡されたりした時とか……あれ、なんかぐちゃぐちゃ……」

言いながらベンチの上に目を落とす。二人の間に置かれた紙束は、来た時と比べて幾分繁雑さを増して並んでいた。
風の悪戯とそれを彼が阻止した身体とは知る由もない。訝しげに裏表や上下を片手で直していく。
悩みの種である転居願や登録書など、一番上は17支部に所属する生徒の一覧表であった。
851 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/08/02(日) 21:25:06.27 ID:+uQlwsEB0
>>850
「普通?」

仲のいいクラスメイトと接するときは、彼もですますを付けずに話す。
彼女は、それと同じように接しても良いと言っているのだろうと解釈した。
ある程度親密な仲となったのだ、それぐらいならいいのだろうと心の中で納得し、彼女の言う普通で接してみることにした。

「よし。これで良いか、ソーリャ?」

言われるがままに口調を直す。彼の外見的イメージに少しばかり近付いたような気がするが、本人にはわからない。

「……純粋に文字が多いのは、日本や中国ぐらいなもの……」

彼は神妙な顔つきのまま、彼女と同じように紅茶のキャップを開ける。
そして飲み口を咥えたと思えば、そのまま突然ボトルをラッパのように掲げた。

「!…………」

十秒ほど天に向けてボトルの底を向け、彼の喉が大きく音を立てる。
そして再びボトルから口を話し、唇を拭った時には、その残量は既に1/3以下となっていた。随分と豪快な飲み方をするらしい。

彼は、彼女の言葉に深く同調する。……書類は鬼門だ。
漢字すら満足に読めない自分が風紀委員になるに当たって、最も苦労したところだ。
書類に目を向けると、先ほど『風(ヴォズドゥハ)』で飛散を防いだはずの書類の並び順が滅茶苦茶になっているではないか。
まさか自分のせいだとは言えないので黙っていたが、彼が口を開いたのは、書類の内容についてだった。

「17支部……私の配属先か」

最上部の書類を指差しながら、そう呟いた。
852 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/02(日) 22:07:41.66 ID:jcAg7JM/0
>>851

「いいよ、これで話しやすくなった。私もイリヤーって呼ぶからね」

後は一人称を俺にすればだいぶ『らしく』なるのではないだろうか。冗談交じりにそんな事も言う。

「やっぱりロシアより暑い?」

凄まじい勢いで渇きを潤す男。見た目通りの豪快さに目を瞠る思い。
感心混じりに述べる感想は、やはり環境の違いから。何度となく過ごしても日本の夏は身体に堪える事だろう。
つられて己も杯を仰いだところで、思わず喉を止める言葉が。

「え、ウソ」

慌てて書類を上から順に指でなぞる。そして新人の一覧に彼の名を見付けた。

「ホントだ、イリヤーも私と一緒! 嬉しいなっ」

衒いなく隠匿もなくそのまま感情をストレートに伝える宙。書類を放り出しぱんぱんと彼の肩を叩こうとする。
そこではたと気づいて眼差しが喜びから悪戯っぽくきらりと光る。

「イリヤー、今から一緒に漢字の勉強しない?」

853 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/08/02(日) 22:38:28.32 ID:+uQlwsEB0
>>852
「……地獄だ」

夏の暑さについて聞かれた彼はそれだけ答え、まるで暑さに気付いたようにベンチにもたれかかる。
彼の顔は、よく見たら汗だくだ。乾いた冷たい気候で暮らしていた人間にとって、日本人ですら辛い、蒸し暑い夏の夜はそれだけで拷問にも等しい。
つい先程までもコーラを飲んでいたばかりなのだ。彼はたまらず、もう1/3もあっという間に飲み干し、ボトルをゴミ箱に投げ捨てた。

「……хорошо(ハラショー)、本当か。それはよかった」

偶然もあるものだ。彼もまた彼女の喜びに応えるように喜ぶ。友人との接点が深まるのは嬉しいことだ。
束の間、彼女の発した言葉に、彼は少しばかりの驚きを見せる。

「漢字を?」

彼は今まで漢字は小学生用のドリルを購入するだけで、ほとんど独学に近かった。
だがコーチが付いてくれるというなら、これほど頼もしいことはあるまい。

「……では、その書類を一通り読めるようにしたい」

彼はその言葉に甘んじる事にして、早速目の前の厚い書類を指差す。
彼のわかる漢字を除いたとしても、これ全てはかなり時間がかかるだろうが。
854 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/02(日) 23:01:43.48 ID:jcAg7JM/0
>>853

「ま、こればっかりはね。自然が相手だし」

それこそ気候を操る能力でもない限り日本の多感な四季は変わらない。
せめてもの情けにと、ポケットから出したのはハンケチ。滴る彼の額に押し当てようとする。
優しさは100%厚意から――――であれば良かったのだが。

「オーケー、じゃあ私が言う通りに書いていってね」

ハラショー、言質は取った。と続き笑って差し出したのは鉛筆とボールペン。
山とある書類も、二人掛かりなら時間的にも気持ちの面でも楽になる。イリヤーは日本語の勉強が出来て、宙は仕事が捗る。
お互い得のある取引だ。

「大丈夫、読み方は教えてあげるから!」

恐らくそのはずである。
855 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/08/03(月) 00:07:49.77 ID:N2gHNxyS0
>>854
言われた通り、書類に漢字を書き込んでいく。彼はまんまと彼女の思惑、書類の消化に付き合わされる結果となってしまった。
思っていたよりもずっとしたたかな人物だ……そう彼は思った。しかし勉強になるのは良いことだと言い聞かせ、ひたすらに書き込んで行った。

小一時間が過ぎた。
彼女の山積みであった課題たちは、みごと完成品となって再び山と積まれていた。
……ペンを持つ右手が痙攣しているイリヤーの前に。

「……今日は……これで……終わりだ」

長く手を動かす緻密な作業には彼はあまり向いていない。暑さも相まって非常に疲れた調子で、完了した書類に目を向けた。

「……また、飲み物を買わなくてはならないな……フフフ」
「よければまた、漢字を教えてくれよ……もう少し楽なやり方でね」

皮肉っぽく冗談を言う。本当に疲れたのだろう。小一時間も見知らぬ、彼にとってエイリアンのような文字を書き続けるのは、精神を大きく削ったに違いない。
だが教わったこと自体は楽しかったようで、またやりたい、というのは本心からの言葉だ。

/済みません、作業をしていて返信が遅れました……
856 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/08/03(月) 00:38:37.11 ID:Nt1FopMio
>>845
「そうだよ、これでいいんだよこれ……ってこれポ○リじゃねーじゃねーか!俺はポ○リ買って来いっつったんだよ!」

わざわざ買って来てくれた相手に『これじゃない』と怒鳴り付ける、酷い奴だというか、どういう拘りなのだろうか。
それでも背に腹は変えられないとアクエ○アスを受け取ると、喉を鳴らして一気飲み、空になったボトルを潰してポイ捨てる。
水分を補給すると大分楽になったようで、上体を起こしてガードレールに背中を預ける体制になった、当然ながら礼はない。

「あー…テメェ名前何つったっけ?まあいいや、番長の野郎は元気か?あいつ俺以外にヤられてたらタダじゃおかねェ…」
「…いや、そんな事はどうでもいいんだよ、よくはねぇが…あいつの心配してるみたいじゃねーか…あーくそ、頭まわんねー」

ガードレールをソファの背もたれのように使い、両腕を乗せた体制で空を仰ぐ、譫言のようにメルランに質問したり、首を振ったりしているが、どうにも自分的に要領を得ないようで。
それもこれも暑さのせいだと思いながら、煙草に火を点ける、甘い香りのする紫煙をたっぷり吐き出しながら、靄の晴れて行く頭で考えをまとめる。

「…テメェ、今『魔術師』って単語に普通に反応したな?まるで聞き慣れてるみてぇによ…」
「…何か知ってんな?魔術師の事…」

そう、そうだ、これこそが黒繩の聞きたかった事、魔術師を始末する人間が故の鋭さ、たった一言の短い言葉に口撃の糸口を見付ける。
ギラリとした目がメルランを睨み付ける、それはまるで野生動物のように。
857 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/03(月) 01:06:37.36 ID:z3QYTib50
>>855

「終わったー!」

陽も暮れて街灯に照らされるベンチに、地獄から解放された者の叫びが響く。

「いやごめんねー、助かっちゃった」

疲れを隠せないのは宙も同じだが、こちらはどちらかといえば喜びの色が多い。
さっと立ち上がったかと思えば、両手にボトルを抱えてすぐに戻ってくる。今度はコーラとサイダーが一本ずつ。
痙攣する男の手元へ感謝を込めて好きな方を渡すだろう。

「あは、流石にもうこんなのはないから安心して」
「じゃあ、詰所に居る時でもまた一緒に勉強しようよ。待機時間の見方はさっき教えたよね?」

学校こそ異なるものの、支部に来れば放課後にでも会える。なにより宙の勤務表は殆どイリヤーに書いて貰ったのだ。
飲み物をあおり公園の時計を見ると、ここに来てから既に長針が一周を過ぎた頃。

「取り敢えず一旦支部に寄って帰ろうかな。イリヤーはどうする?」

ぽんぽんと手をはたいて帰宅を促す。風紀委員とはいえあまり遅くまで外にいる道理はない。
もし一緒に出るなら彼の道に付き添ったうえで支部へ戻るだろう。そうでないなら、また支部でと告げて手を振る筈だ。

「あ、」

帰り際、思いついたようにイリヤーの顔をじっと見る。

「今度は私にもロシア語教えてほしいな?」

強かなと評価を受けた宙は、そう言って屈託なく笑った。


/いえ、こちらこそ遅くて申し訳ありません……夜も遅いので一先ずこれで〆とさせていただきます
/二日間お付き合いくださりありがとうございました!
858 :イリヤー・ミハイロヴィチ level4『стихия』 ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/08/03(月) 01:32:56.06 ID:N2gHNxyS0
>>857
「ああ、спасйбо(スパシーバ)……」

彼は感謝の言葉を述べて、迷わずコーラを選択する。
左手でボトルを持ち、再びそれを一気飲みする。大きなゲップをしたら、彼の顔に生気がみるみると戻った。

「……ふぅ。やはりこれはいい……ああ、私はそろそろ帰る」

風紀委員になった後で、手ぶらで公園に寄り道したのだ。
今更、支部に逆戻りする事もない。おそらく逆方向に帰る事になるだろう。

彼は去り際に、彼女の言葉に対して、ニヤリと笑みを浮かべる。
そして別れの言葉代わりに、一言ロシア語でこう告げた。

「Моя подготовка является жестким(俺の特訓はキツイぜ)!」

/こちらこそ、お疲れ様でした!
859 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/08/03(月) 15:29:10.68 ID:llk5NK8L0
>>856

「なっ!?わ、わざわざ買ってきてあげたのになんなのその物言いっ!?少しは感謝しなさいよ!」

メルランの言っていることはもっともである。
だがそんなことを気にする黒繩でもないだろう。それは黒繩の今までの物言いから大体分かることで、もう特にそのことについてなにか言うのはやめたようだ。
立ち上がった黒繩を見て、メルランは大丈夫そうだと少し安心する。

「いずものこと?えぇ元気よ。なによそれ、いずもを倒すのはこの俺だ、とか漫画的なやつ?やっぱり日本人はそんなこと実際に言うのね」
「ほんとは、いずものこと心配してるんじゃないのぉ?ふふっ」

そうわざとらしく笑うと、この男にも案外優しいところがあるのかも、と安心する。
煙草を吸う黒繩を見て、若干嫌な顔をするメルラン。あまり煙たいのは苦手らしい。

「……ねぇ、あなたってまだ二十歳なってないわよね?吸っていいの?体に悪いわよ」

と、そんなことをメルランが注意したその時、黒繩がしたメルランにとって一番知られてはいけないこと、『魔術師』のことについて聞いてきた。
ここは誤魔化すしかない。黒繩は恐らく魔術師と敵対関係にある。もしバレればこの場で戦闘に発展しかねない。

「い、いずもから聞いたのよ。あの時も実は魔術師に襲われたてね、それでいずもが助けてくれたのよ。
じ、自分が襲われた相手に反応するのは当然でしょう?」

咄嗟に思いついた嘘だが、これならば不自然ではない。
まぁこれに黒繩が上手く騙されてくれるかは分からないが。
860 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/08/03(月) 19:04:43.61 ID:Nt1FopMio
>>859
「…知るかよ、こちとら生きるか死ぬかだ、寿命なんて気にするだけ損だ」

ぷかーと煙草を喫いながら、ぶっきらぼうに言って返す。普段からどんな生活をしているのか定かではないが、そんな理由で未成年喫煙は許されない。
そんな風に言って、メルランが魔術師を知っていた理由をぼんやりと聞く、空を見上げて何処に焦点を合わせているかもわからず。

「…ふーん…そうかい、あいつからね…」
「そんじゃ、テメェを襲った魔術師って奴はどんな奴だった?顔くらいは覚えてんだろ?」

「そいつぶっ殺してくるからよ」

メルランの誤魔化しに深く突っ込みはしない、本当に誤魔化せたのか、もしくは泳がそうとしているのか…実際は暑くて頭が回らず考えるのが面倒くさくなっただけだ。
それから黒繩はメルランの言った魔術師について問い掛けた、ギラリとした目付きを再びメルランに向けて、凶悪な声で、その魔術師の情報を求める。
『ぶっ殺す』という言葉は脅しなんかではなく、本気で言っている事が伺えるだろう、それは敵討ちだとかそういう物では決して無い事も。
861 :七瀬凛太郎 ◆tkv10FHsb. [sage saga]:2015/08/04(火) 14:38:08.80 ID:w+1jbQ8G0

炎天下が道行く人々を無慈悲に照らす今日この頃。
真昼間にも関わらず猫耳帽子と茶髪、何より子ギャル風味な女子制服姿に身を包んだ七瀬は青年と共に現在路地裏にいた。
カラフルに塗られた爪に彩られた指先は、路地裏の壁に寄りかかって立つその高校生らしき青年の肩を掴んで、身動きが取れないように壁に押さえつけている状態。
俗に言う、壁ドンである。

「……まったくもぉ、諦め悪すぎー……、汗かいちゃったじゃん?」

そう言ってニヤリと笑えば押さえつけられてる青年は再び暴れ始める。
だが背丈が幾分高い男相手といえど並大抵な一般人レベルの腕力ぐらいで振りほどけるほどの七瀬の能力は腐っていない。逃げるのはまず不可能であろう。

……念のため言っておくが、これは白昼堂々変な気を起こしている訳ではない。そもそも自分は学生のお手本な風紀委員だし、女装してるけど男だし。
これはステルス能力者の万引きを目撃してしまい問い詰めたら逃走されたので追いかけて……と。
自分の役割をしっかりと務めてからのこの状況なのである。自分は何も間違った行動はしていないのだ。

「あははっ、おいかけっこはリンの勝ちだね!
さってーとー、盗んだモノはどこかなー?ここかなー?」

だからこの体勢のままで相手の荷物検査をやってもなんら問題はない。
だって仕事だからね、問題ないない。
見た目JCに力負けしている気分はどう?どんな気持ちよ?と完全に愉悦スイッチが入っていて荷物チェックを行おうとする七瀬。
この状況に至るまでの全力鬼ごっこの疲労感のせいで頭がよく回らず、ここでちょうど通行人が来てしまう可能性とかは何一つ考えていなかった。
862 :高天原 いずも ◆Fff7L077io :2015/08/04(火) 15:41:01.63 ID:DwX/IWJD0
>>861
「───真昼間からこんなところで何やってんだ、アンタら……。」

七瀬凛太郎の背後から反響して、その耳に届けられるのは1人の少女の声であった。その声の持ち主は、丁度路地裏の曲がり角で壁に寄りかかる様にして七瀬達の行動を目に映している。
その者、黒の学ランをその身に纏い、真紅の鉢巻を額に確りと巻きつけた…………名を”高天原いずも”という。一見どこから如何見ても”男性”だ。
恐らく風紀委員であるなら七瀬も耳にした事があるかもしれない……番長の名を被る番長もどきにして”器物損壊”の常習犯だ。

如何やらそんな高天原いずもの目には彼らが何やら如何わしい事をやっているように映ったらしく、注意すべく声をかけた次第である。

「………いやぁ、こんな嘘汚れた場所じゃなくてもっといいとこあんだろ。」

と、近くのゴミ箱の上に腰掛けて呆れた様に言葉を発する番長少女。七瀬の”荷物検査”をその眼に映してから、勘違いは加速しているらしい。

──さて、高天原いずもは風紀委員とはそれなりには顔見知りである。
勿論その殆どが”器物損壊”による取り調べ……などであるが、その器物損壊が”人助け”の延長にあるという事を知っている人物も極少数だが存在する。逆に、彼女の名を聞いた事すらない人間もいる。
七瀬凛太郎は……どれに当てはまるだろうか。

//よろしければ……!
知り合いかどうかは都合の良いようにしちゃってくれて大丈夫です!
863 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/04(火) 15:42:32.72 ID:DwX/IWJD0
//鳥違い
864 :七瀬 凛太郎 ◆tkv10FHsb. [sage saga]:2015/08/04(火) 16:23:12.42 ID:w+1jbQ8G0
>>862

「んー?何ってただの荷物検査だよぉ。万引きした悪い人はコロコロするの〜……って、あれぇ?」

ごそごそと男子高校生のズボンのポケットを漁りつつ、何の気なしに聞こえてきた言葉に荷物検査の手はやめずに返答する。
ずるっとポケットの中身をまるごと取り出せば、ビンゴ。値段タグがついたままのセンス悪そーなメタルアクセサリー数個と学生証をゲットした。
それに上機嫌になっていた七瀬だがワンテンポ遅れてあることに気付く―――なんか第三者の言葉が聞こえたような?
万引き犯から一旦視線を外し、声のした方向を見るとそこにはどこかで見たことがあるような顔が。

「……んー、あれれ?たしか器物破損常習犯な〜、番長さん?だっけ?
 リンはこれでも風紀委員だから…っ、いかがわしーことは何にもしてないもんっ。」

直接喋ったことはないが連行されてきた相手を見たことはある。
その特徴的な姿と器物破損の前科持ち多々という割と有名人なため覚えていた程度。こうして出くわすのははじめてだ。
まあ今は相手の誤解を解くことが先決だろうか。背負っていたリュックからスマホを取り出し、大きめのリング状のストラップの紐をぶちりと口で引きちぎる。
……否、それはリング状のストラップではない。なんとマジもんの手錠である。慣れた手つきでガシャンと青年の片手に手錠をつける。

「……で、なになに?番長さんはそっち系だと思って見にきちゃったの?見かけによらずムッツリさんだね!」

そしてもう片方の手錠は適当なパイプのところへガッチャン。これで一安心であろう。
ようやく相手の方へ目を向ければ、途端に面白そうなものを見つけたような表情になる七瀬。
挨拶程度にからかってみる。番長は中学生の自分と比べればどう見ても歳上なのだがガッツリタメ口である。

/よろしくお願いします!
865 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/04(火) 16:46:04.87 ID:DwX/IWJD0
>>864
「…………風紀委員……!?……ああ……どーりで初めてあった気がしないわけだ!」

彼女が連行された回数は、数えても数え切らない程に多い。──故に、話した事がないと言えども人間の脳とは便利なもので、七瀬にぼんやりとした既視感を覚えていた。
キラリと輝く手錠……かしゃん!と小気味良い音と共に青年の腕に取り付けられたそれを見ると、少しだけ彼女を悪寒が襲った。
何度アレがオレを苦しめてきたか………寧ろ憎しみのような感情すらも生まれてきたところで、そんな彼女の彼女は一先ず置いておくとする。

「そっち系にはオレは耐性ねぇから無理だわ、うん。
……オレはここで飯食おうと思って来たの!
んで!そのランチタイム場所にとんでもないやりとりをしてるのが眼に入っただけ!

まあ、”そっち系”では無くて良かったぜ。」

タメ口で接されて尚、特に彼女は気にする様子もないようだ。……寧ろ彼女の性格からすると、そういう風に対等に接してくれる方が話しやすいといったところか。
数秒後、ゴミ箱の腰掛けた彼女は「ほれ!しょーこだよ。」と右手に携えていたビニール袋を七瀬に見せつけてみる。ビニール袋にはコンビニのロゴ、中には数個のおにぎり。

「それにしても……お前さん仕事慣れしてんなぁ。
風紀委員はそういう感じのエキスパート、ってイメージはあるけど、こんなごついの倒しちまうんだもんなぁ。」

と、おにぎりを頬張りつつ拘束された青年の方にその双眸を向けつつ、七瀬に話しかけた。
青年の方は如何しようもない事がわかって、もうおとなしくしている様子。
866 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/04(火) 16:46:54.71 ID:DwX/IWJD0
>>865
//訂正
そんな彼女の彼女は……

そんな彼女の感情は……
867 :七瀬 凛太郎 ◆tkv10FHsb. [sage saga]:2015/08/04(火) 17:07:00.49 ID:w+1jbQ8G0
>>865

どうやら相手も此方を覚えていたようだ。
「いつもお世話にしてまーす☆」と冗談なのか本気なのか分からない台詞を言いつつ警察官さながら敬礼してみる。
それと一緒に片足をあげてるあたり若干あざとい。勿論狙ってやっているのだが。

「ふえー、さすが番長〜……硬派なのかな?ちょっとつまんなぁい。
ま、こんなトコでご飯食べようとする感性直さなきゃ彼女とかできなさそーだねぇ。リンがアドバイスしてあげよっか?」

どうしてここにいるのか、っていう相手の回答は至極真っ当。だが個人的にはちょっとつまらないものだった。
えー、と弄るネタを失ったことで理不尽に口を尖らせる七瀬。そして一言余計である。
七瀬は見た目通り相手は男だと思っているのでそれを前提とした話を振ってみせる。流石に路地でご飯を食べるのは相手に負けず劣らず「色々と個性的」な七瀬的にも有り得ない行動らしい。

「ふふんっ、すごいでしょ、すごいでしょ〜?女の子『みたい』なのに強くてかっこいい!
 これってステータス的にもビジュアル的にも最強だよね!」

相手に褒められれば心底嬉しそうに胸をはる。
どやっと満足そうな顔をすればちょっと饒舌に語り出す。そう、七瀬はおだてられれば喜ぶという単純体質なのだ。
ふわりと生温い風にくるくるとした髪の毛先を揺らし、舞い上がりそうになったミニスカートを抑えつつ、割と(バレたら)とんでもないことを口走るのだが。
868 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/04(火) 17:32:32.20 ID:DwX/IWJD0
>>867
「……うっ。
……いや、全然大丈夫だから!教えてもらわなくてもやってけるから!!」

……何というか、割と弱点を突かれた気がした。
彼氏彼女だとかそこら辺は興味が無いので如何でも良いスルー対象であるとして、感性が乏しい、というのは結構痛い。
でもこういう路地裏で食べるのが番長っぽくね?と言うも、やはり”感性ナシ認定”のダメージが少なからずあるのか苦笑い。
勿論、男扱いされるのに慣れている為に彼女の男である事を前提とした言葉に特に難色を示す事はなかった。

「うん!!そのあざといのがどうにかなればもっといいと思うぞ!!」

───弾丸直球アドバイス。恐らくあの態度は自らの好みでこれが良いと思い込んでのモノだろうから、効果があるとは考えにくいが。

……確かに”彼女”はオレよりも小さく、明らかに幼いのにこんな男を扱ってるんだからかなり手練れなのだろう。こんなのを相手にしたら……オレもフルボッコにされそうだ。
──なんて、自らが器物損壊をまたやらかした時の想像を働かせてみる。こんなか弱そうな女の子に負けている自らの図……。

─────あれ?……あれれ?

……然し、彼女の耳に不協和音の如く残った耳障りな単語が彼女に違和感を齎した。
──いや、ちょっと待て。待ってくれ。こんな可愛いらしい女の子?がそんな筈は……!!無い筈だ!!!……謎の違和感が最高潮に達したところで、その番長もどきは口を開く。

「………なあ、お前今……女の子”みたい”って言わなかった?」

単純明快な違和感を、七瀬へとぶつける。
869 :七瀬 凛太郎 ◆tkv10FHsb. [sage saga]:2015/08/04(火) 18:27:44.48 ID:w+1jbQ8G0
>>868

「ええ〜〜、まあいいけどぉ……。」

意外とガード硬いなこいつ。
こちらに揺らがない相手に心の中で軽い悪態と舌打ちをしつつ、流石は番長を語るだけあると感嘆の念もあったり。
まあ同性相手に本気に恋する気なんて微塵もないけど異性と偽ってからのどん底に落とすのはなかなか愉快である。
自らの性別をネタばらしするならある程度親しくなってからであれ。うーん、我ながらクズの発想だ。よく風紀委員になれたなと自画自賛しちゃいたいくらい。
とりあえず断られたことには残念そうな反応を示すのであった。

「チッチッ、まだまだだねぇ番長さん。
 騙されやすい馬鹿な男……じゃなかった、単純な男の人はこれぐらい分かりやすい態度の方がウケるんだよ☆」

言葉の語尾に星を撒き散らしつつデココッツンしてみせる姿は、七瀬がもう少し成長したら痛々しさ極まりないポーズだ。しかも内容に一部ブラックな単語もちらり。
ある意味中学生という身分であるということが辛うじて免罪符になっているのだから、使えるうちにあざとさは使っておいた方がいいだろう。
最近身長伸びてきたしなぁ、と小さな悩みを思い浮かべつつ、相手を見ると何やら不思議な表情をしている模様。
それは七瀬が何度も何度も見てきた、「あることに気付いちゃった」表情なような……?
にやっと口角をあげる。あざとい笑顔ではなく、してやったような、明らかに悪そうな笑みだ。

「……ぴんぽーんっ!そこに気付いちゃうとはさっすが番長さん!」


「 どーもー、風紀委員の七瀬凛太郎でーす。」


前半の声は先程までの甘ったるいもの、後半は何とは言わぬが地声である。
「ブッフォア!!!!!」と万引き犯君が盛大に咳き込んだ。うんうん、これぞナイスリアクション。
もっとも声変わり自体はまだまだなのだが聞けば少年だってバレちゃうような声。勿論普段からこの格好でその声だと似合ってない、ので。

「きゃは、驚いたぁ?」

すぐさまきゃるるんとした声に戻ってにっこりと笑ってみせる。相変わらずポーズはあざとい。
完全に愉快犯の思考だが気にしてはいけない。

/お待たせしました…!
870 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/04(火) 18:42:01.69 ID:DwX/IWJD0
>>869
「何か風紀委員にあるまじき言葉があった気がすっけど……まあいいや」

勿論、その語句が彼女の耳に入らない筈が無く。あざとさの中に孕んだどす黒い感情に寒気を感じながらも深く追及することはしなかった。
───更に、”策士”と形容しても強ち間違いではない少女(?)から馬鹿に驚愕の事実が告げられた。

─────────マジ、か。

数秒の間、ポカンと口を開けていた彼女であったが、見事に盛大なリアクションをかます万引き犯のお陰で我に帰る。
途轍もない”何か”を失ったように虚ろな双眸へと変化する万引き犯。……高天原いずもはそれに近寄って肩をガシッと掴み───、



「───ウオオオォォォォォォォォ死ぬなァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

男の娘だからってなんだ!いいじゃねえか可愛いんだから?な?な?!
あぁ!!ぶっちゃけオレも死にたくなってきた!」

我を忘れて虚空をその眼に映す万引き犯の肩をゆっさゆっさと大袈裟に揺らしつつ、シャウトする。
暫くの間、そんな動作を繰り返し、ある程度万引き犯が落ち着いた(気絶した)ところで彼女は一度咳払いをして、言葉を紡ぎ始める。

「驚くも何も目の前で死にかけてるヤツいるんですが!!……ッてかあざとい!やめろ!」

と、気絶した万引き犯を指差しながら必死に訴える番長もどきの少女であった。

871 :七瀬 凛太郎 ◆tkv10FHsb. [sage saga]:2015/08/04(火) 19:05:41.69 ID:w+1jbQ8G0
>>870

「あははは、オーバーリアクションだなぁ。」

吹き出したり燃え尽きそうになってたりそれを全力で慰めたりシャウトしてたり。
そんな自らのカミングアウトのせいで巻き起こった阿鼻叫喚の図への感想が、これである。
もっとも淡白そうな発言に反してその表情は満面の笑みであった。
最早漫画でよくあるキラキラとしたエフェクトが舞っていそうな程度にはとてつもなく嬉しそうだ。ドッキリ大成功といった感じか。
ドッキリしすぎて心臓止まっちゃいそうな人が約一名いるがそこはまあ気にせずに。

「えー、そもそもリンは一言も女だとは言ってないもーん。
 番長さんはともかく万引犯の田中さん(仮名)は自業自得だと思うよぉ?」

全く懲りてない悪びれてない態度を地で行く七瀬。
お手上げだよぉ、とでも言いたげに肩を竦めれば真っ当な釈明っぽいけど全然言い訳になっていない言葉を言う。
気絶してしまったチャラ男万引き犯の田中さん(仮名)の生徒手帳を器用にくるくると手先で弄んでいる辺り、精神的ショックを与えたことに対して反省とかはしていない。

「それにー、ここまで精神的にダメージ受ければもう万引きなんてしないでしょ?」

ごもっともな意見、を七瀬は言っているつもりだが、少しの妥協もなく女装している変態には言われたくはないだろう。
一先ず田中さん(仮名)には安らかに眠ってほしいところだ。
872 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/04(火) 19:17:07.56 ID:DwX/IWJD0
>>871
「オーバーも何もお前の格好がオーバー過ぎてんだろ!性別の垣根オーバーしてんじゃねぇかよ。」

……何もそれは目の前の七瀬凛太郎だけ当てはまる事象じゃあない。
数週間前だってコーディネーターを語るアクティブなオネエと遭遇したし……ああ、あれは寧ろバレバレだったからカウントはしないのか。
──というか、真っ先に思い当たる例が自分自身なのであるが。それは置いておくとする。
はぁ……と溜息を漏らしつついずもは言葉を発し始めた。

「男だとも言われてねぇんだからどう考えたって女と受け取るだろ、その格好とあざとさ。」

チラリと横目で先ほどの万引き犯……目の前の風紀委員曰く「田中さん」を見ると、魂が抜け落ちた様に目を安らかに閉じて気絶していた。

然し、何処か幸せそうに見えるのは……───目を瞑っておくとしよう。

「そっちの精神的ダメージと万引きって直結すんのかよ?……ぶっちゃけオレはこいつがオマエみたいなのの道に進みそうで怖い。」

……と何処か幸せそうに横たわる万引き犯こと田中さん(仮)を眺めて一言。


873 :七瀬 凛太郎 ◆tkv10FHsb. [sage saga]:2015/08/04(火) 19:50:26.83 ID:w+1jbQ8G0
>>872

「……その駄洒落は流石にどうかとおもうよー?」

見事なツッコミ、噂だけだと色々と引っ掻き回すタイプだと思っていたが、もしかしてこの人案外苦労人枠なのか?とか思ったり。
性別の垣根をオーバーしてる?大いに結構。そういうツッコミは大好きだ。
親父ギャグっぽくなってるのがマイナス点だけど、と脳内で謎の採点をしていたのだが、次に放たれた相手の言葉には少し考えものだったようで。

「あー……確かにねぇ、男って言ってなかったら軽く詐欺ってるのかぁ―――、
 ……あっ!じゃあ今度から自分のことをボクって名乗ることで気付く人には気付けるように!」

……とてもじゃないがそれで解決できる問題ではないということに本人は気付いて い る。
全く反省していない上に再び番長にツッコミを求める謎のボケ魂。もういい加減無視られても可笑しくなさそうだ。
まあとりあえず何かしら改善する気は更々ないということだろう。
そもそもこの万引き犯と同じシチュエーションは滅多に起こり得ないし多分大丈夫なはずだ。

「大丈夫、大丈夫ー。ボク男の人が好きでこんなカッコしてる訳じゃないし。仮に告られたらきもいですってフってあげるよ。
 さーてーとっ、いい感じに意識落ちてくれたしそろそろ連行しちゃおっかなぁー。」

もう普通に毒を吐くようになりつつも、気絶した青年の手錠を一回外してあげて、今度こそ両手にかっちりと嵌め込む。
そして次の瞬間、左腕に能力を発動させてひょいっと片手で青年の体を担ぎ上げる。
七瀬が小柄なせいで頭と足先の地面との距離が危ういのだが、そこら辺は一応怪我をさせないように移動するのだろう。

「あ、そーだ。番長さんも状況説明とかで来ちゃう?」

空いた手に持ったスマホからぶら下がるはスペアらしき手錠ストラップ。
そしてコミカルなキャラクターを模したリュックの横にはキーチェーンに繋がれたマスコットと一緒に二本一対の明らかに鈍器がガチャガチャ揺れている。
フリルのついた腕章と缶バッジに紛れて帽子に飾られている金色のバッジを見せつけるように、七瀬はさらりと爆弾発言を投下する。
勿論、冗談なのだが。
874 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 [sage]:2015/08/04(火) 20:09:44.81 ID:DwX/IWJD0
>>873
「世の中にはボクっ娘属性好きも……いや?でもお前男だし…あーもう!わけわかんねぇ!!」

とりあえず高天原いずもの思考が破綻した。
基本的に番長たる彼女はその破天荒な性格で周りを振り回し、物を壊し、兎に角ひっちゃかめっちゃかにする様な人間であるが、
目の前の七瀬の様に明らかにキャラが濃すぎる人間には手も足も出ない。完全に自己の防衛へと力を注ぐ。
「あと、さっきから本性だだもれだぞ。」と言葉を添えて、腕を組んで壁に寄りかかる。

「…んあ、凛ちゃんあんた…あれか。
身体能力強化的な能力者……??」

その小柄でこんな恍惚とした表情を浮かべる大柄な男を片手で持ち上げるのは、無理がありすぎる。……であれば、それを手助けする能力があるのだろう。素朴な疑問を投げかけた。
因みに凛ちゃんというのは彼女の即興のあだ名生成による産物。……まあ、ちゃんをつけただけの凄くシンプルな出来であるが。


次に彼女の耳に届くのは、戦慄し、驚愕するのに十分な男の娘の言葉だった。





────『番長さんも状況説明とかで来ちゃう?』
高天原いずもの脳内で、その言葉は凄まじい速さで反響を繰り替えした。……と同時に血の気が引いていく番長の顔。
まるでギャグ漫画の様に、先程までツッコミで忙しく喧しいように火照っていた顔は、一瞬のうちに青へと変化した。
…………そして、彼女が行うのは。


「ぜっっっっっっったぁい!!お断りだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぉぉぁぁぁぁあぁぁあぁあいぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!」


全力疾走…否、”全力逃走”である。
自分を言葉で武装する…ということから自分を逃げるという形で安全にする…というシフトチェンジ。

女装男子と男装女子の奇妙な出逢いは、一旦ここで幕を閉じるとしよう。


//すみません!このあと用事であるが故に、少し強引になりますが締めさせでいただきました!
絡みありがとうございました!とても楽しかったです!
875 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/04(火) 20:20:49.03 ID:VBfbkCj10

『箕輪さーん、明日の巡回代わってくれなーい?』

その言葉を聞いたのはほんの数十分前の事である。真新しい机での事務仕事を終え、書き終えた書類束を整理していた時の事。
明日の放課後市街の警邏を任されていた2つ上の先輩の言葉は、帰り支度をしていた宙に向けられたものだった。
眼鏡を持ち上げてふむ、と。メモ帳を確認するまでも無く特にこれといった予定は入っていない。転属手続きを済ませて、転居先以外の身辺整理はあらかた済んだ。
いいですよ、と二つ返事で快諾すると先輩はガッツポーズをし、宙の手を握ってぶんぶんと振ってきたのであった。

――――――――

「先輩、ものすっごい喜んでたなー」

帰り道呟いたのは、仕事を終え結っていた髪を下ろしてブラウスとカットオフパンツ姿の女である。素足にサンダルで駅前で貰った団扇片手に、夜食を探して繁華街を独り歩いていた。
道すがら思い出すのは先輩のとびきりの笑顔。良い事をしたあとは気持ちが良いと、にへらと頬を緩ませる。
しかし、パソコンの見過ぎで疲れた目をぐっと指で押さえた時、ちょっとした疑問が浮かんできた。

「でも、なんで明日なんだろ」

不意に立ち止まった宙を通行人が追い抜いていく。特に何の変哲もない平日の筈だが、何か大事な予定でもあったのか。
いやそれなら前から休みを取っているだろう、という事は急な用事であろうか。

「うーん、8月5日、八月五日……――――あっ」

二人連れ男女のカップルが後ろから追い抜いていく。楽しげな会話にふと気になるワードがあり。
つられて二人が指差す、とある幟(のぼり)を目にしたとき、漸く自分が嵌められたと気付いた。

――――

「そーだよ明日から夏祭りじゃん私のおバカ!」
「くっそぉ、あんにゃろデートかデートですか先輩ぃぃぃ……」

誰よりも長くこの街に住んでいるというのにこの失態、我ながら自分が許せなくなる。
最近は身の回りの煩雑さに感けて色々動き回っていたとはいえ、学園都市住民として情けないの一言。
そう言えばあのあと先輩、誰ぞやと愉しげに携帯でやり取りしていたなー等々考えて。
祭りに向けてか幾分気の早い気のする立ち食い屋台、そこに並びながら時折あーっと叫ぶ不審な女が居た。
876 :七瀬 凛太郎 ◆tkv10FHsb. [sage saga]:2015/08/04(火) 20:29:36.01 ID:w+1jbQ8G0
>>874

とりあえず見事にパニクっている番長さんを見て再びにっこり。
別にドSな訳ではないがやはり他人をおちょくるのは楽しいものである。
それにしてもこうやって考えると自分が位置するカテゴリーってよく分からない状態だな、と思う。
進んで女装はしているが精神的には男。文面にしてみるとカオスの極みだ。

「うんっ、そんな感じ〜。あ、そういえば番長さんの名前ってまだ――――、……って、あぁ……?」

これでもLevel4、と言ったら相手は驚くだろうか?ああでも、まあ相手も補導されちゃう程度の被害範囲のある能力持ちだろうし驚かれそうにないか。
と。ふと相手が自分をニックネーム(?)で呼んだことにより、そういえば相手の名前を知らないことに気付く。
ここで出会ったのも何かの縁と別れついでに聞こうと思ったのだが―――、

なんとその言葉が言い終わる前にダッシュで逃げられた。それはもう、逃走中の田中さん(仮)越えしているくらいのスピードで。
追いかけるという選択肢は流石にない。というか、いくら能力で怪力になっていてもでかい荷物を抱えつつ、走るのは流石に嫌なのだ。
どうせ気絶させたやらなんやかんやで始末書は書かされるのだし、あの青年の名前を聞くのはもう少し先になりそうだ。

――――その番長「青年」が自分となんとなく似た存在であるということは知らぬままである。


/こちらこそありがとうございました!七瀬のキャラがガッチリ掴めたのでいずもちゃんには中の人共々感謝です!
また出会うことがあったらよろしくお願いします!
877 :SPECIAL EVENT《超聖夏祭》 [開催期間8/5〜8/9]:2015/08/05(水) 07:59:24.59 ID:lnJKb1Rl0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


────ヒュゥゥ………ドカン!!
昼間の学園都市に一つの爆発音が木霊した。
学園都市遥か上空で炸裂した其れは、ビル街などの障害を受ける事なく音を伝えていく。

学園都市は創設されて数年しか経過していないものの、其処にはやはり独自の文化が築かれつつあった。
……然も、今回のこの行事の場合”元ネタ”たるものは日本中……下手すれば世界中に十二分に存在するため、行われるのは必然とも言える。

──太鼓と鼓笛が織り成す美しき調律。
──日本独自の和の音感。

都市の大通りを埋め尽くすのは所狭しと連なる屋台達。……かき氷を始めとし、りんご飴、わたがし、焼きそばにたこ焼きその他諸々……!
そして其れに群がるように集う学生達。交通規制が敷かれている為に、その様はまさに”お祭り騒ぎ”。
───────────その行事の、名は。


『───学園都市ッ!!夏を彩る最大級のお祭り!!

”超聖夏祭”ィィィィィ──!!!
…開幕ぅウゥうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううっッ!!!!』

都市中のありとあらゆるスピーカーから、凄まじい音量で甲高い声が放出された。……全学園都市民に伝える為の大仕掛けである。

”超聖夏祭”……閉鎖的に学生を溜め込んだ学園都市にて学園都市主催、学園都市による学園都市の為の夏祭りのことだ。大通り一帯の道路は全て封鎖され、なんと5日間かけて行われるという。

学園都市に住む人間の”娯楽の祭典”とも呼ぶべき「超聖夏祭」が────今、幕を開ける。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


【概要】
常時開設型の夏祭りイベントです。
開催期間中は学園都市の中心部をはじめとして、学園都市全体が”夏祭り”と化します。
何時もの学園都市の舞台に”夏祭り”という状況が付与されだけなので、行動に制約はありません。

夏祭りの影で暗躍しようにも純粋に祭をたのしもうにも、夏祭りの警備でもしようにも、個人(キャラ)の自由です。また、夏祭りっぽい小イベントなんかも歓迎です。
ロールの展開作りの材料としてご活用ください。

【開催期間】
8/5〜8/9の5日間



878 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/08/05(水) 18:03:10.59 ID:KMFaEd8J0
>>860

「そ、それは無理よ。いくら自分が襲われたからって人の命を売るほど落ちぶれてなんかいないわ」

ここで答えるわけにはいかない。幸い黒繩は今本調子ではない。
黒繩の実力は定かではないが、メルランにもつけ込める余地はあるはずだ。能力と魔術の判断をつけるのが難しいということに感謝である。メルランの魔術は適当に念動力と言っておけば特に違和感もないだろう。

「どうする?力づくで聞き出す?
言っておくけど私も一応能力者よ。簡単には負けないつもりだけど」

乗り切れるか、このまま──
平静を装ってはいるものも、内心は不安で溢れていた。
ここを乗り越えなければ戦闘。しかも魔術師だと知られれば命懸けのものとなる。
それだけは回避しなければ。傷を負って帰ってはいずもに心配を掛けてしまう。
いずもにはどうしても、自分のことで悩んで欲しくはないのだから。
879 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/05(水) 18:39:07.96 ID:lnJKb1Rl0
>>878
//既にご覧になられているかもしれませんが、できればしたらば雑談スレの>>557をご確認くださいませ
880 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/08/05(水) 18:40:30.82 ID:KMFaEd8J0
>>879
//見落としていました……
881 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/08/05(水) 19:24:38.03 ID:yvvxxy+qo
>>878
メルランの返答は尤もだ、例えそのつもりが無いとしてもその魔術師について教えれば、メルランは他の魔術師から『同士を売った』ととられてしまう。
そうなってしまえばメルランはおろか、一緒に過ごしているいずもまで危険にさらされる事になるだろう、今の状況よりも遥かに悪くなっていた筈だ。
そんな返答を受け取った黒繩は、空を仰ぎ、喉を鳴らして笑い始めた。

「…ヒヒッ……ヒッヒッヒ…」

テレビの悪役がするような、邪悪で、下卑た笑い声。

「ああ…舐められてんなぁ俺…なぁ…テメェ俺を舐めてんだろクソガキィ…!」

「ああアレか、テメェそうか…今の言葉が『お願い』とかそういう風に取ったのか?」
「なあ、これはお願いや提案じゃねぇんだ…『命令』してんだぜ?───さっさと魔術師のツラ教えろよ」
「本気でブッ殺すぞ?なあオイ、テメェの[ピー]切り取って番長に送り付けんぞ?」

怪我をしていようと、弱っていようと、獣は獣───助けたからといって感謝して恩返しをするなんて美談はお話の中だけだ。
メルランをこれでもかと睨み付ける眼は苛立ちに溢れていて、立ち上がりはしない物のその殺気は針のように突き刺さる。
『力付くで』と言った事は悪手だったかもしれない、そう言った事で、黒繩もその気になってしまったから。
882 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/05(水) 21:50:39.05 ID:gjlFVxyj0

「あーあ、」

外套で夜も眩しい歩道は頭上に仄かな提灯の群れが咲き乱れ、大気はお囃子のリズムとソースの焼ける香りで満ちている。
普段は排気ガスで走行音で満たされている道路は、歩行者天国と化し浴衣姿の行き交う人で足元も満足に見えない程。
年に一度の夏祭りにもえる学園都市にて、ぽつりと漏れた一つの不満。

「あーあ!」

良く晴れた天気と裏腹に、不満たらたらの顔で歩く女が一人。日々の仕事から解放されラフな服装の人が多い中、ぽつねんと浮いたサマースーツ。
クールビズとはいえ半袖ワイシャツの襟元は第一ボタンを除ききっちり留められて、胸元には金色のバッジ。
頭には無論警帽――――ではなく、ささやかな反抗だろうか、安物の簪で御団子を涼しく結いあげている。
そんな風紀委員箕輪宙は、超聖夏祭にもえる都市の中心にて孤独に両手を突き上げた。


「――……駄目だよね、こんなの」

と叫んだのも一瞬の事、挙げた手は肩を落として力無く。項垂れた顔は少しすると、憑き物が落ちたように光が戻ってくる。
そうだ、今日自分は風紀委員の仕事で来たのだ。何時までも引き摺っていてはいけないと、ぱんと頬を叩いて表情を引き締めて。

「えっとなんだっけ、20時から展望台の経路案内と……」

屋台の列から目を逸らし、わざとらしく仕事のメモを詠唱する。ようやく調子を取り戻せるか。
――しかし見まいと、意識すまいとすればするほど鮮烈に目に飛び込んでくる光景はやはり心に痛い。
ぐっと目を瞑れば耳に愉しく、耳を塞げば香ばしげに鼻孔を衝く。今日一日の我慢、耐えるのだと繰り返し己に言い聞かして――――

――――


「すみませーん、オムそばのMサイズ一つ!」

数分後、信念と食欲の狭間で戦い見事敗北した女の自棄っぱちな声が、屋台の前で虚しく響いていた。
883 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/08/06(木) 00:19:47.36 ID:k/R01R2No
>>882
カロン、カロンと下駄の音。人々の喧騒に呑まれながらゆるりと移動するそれが、箕輪のいる屋台の前でふと、止まる。

「オムそばをひとつ。サイズは……Sで良いかな」

凛とした声が注文を店主に伝える。そちらを見たならば、浴衣を着た女の姿が目に入るだろう。
朝顔の花で彩られた落ち着いた紺の浴衣に、赤の帯。長い黒髪を上にあげ、くるりと器用に巻いてトンボ玉の簪で留めてある。左手には小さな巾着と、赤い金魚が2匹入ったビニール袋を一緒に提げていて。
この女は箕輪と同じ風紀委員、もしかすると顔や声に憶えがあるかもしれない。もっとも女の方はと言うと、隣に居るのが同僚だとはつゆ知らず、夏祭りを楽しんでいる最中だったが。
様子を見れば分かる。女は誰とも連れ立っていない所謂"ぼっち"だ。しかしそれを欠片も気にせずに、たった今店主に代金を渡しているところだ。

……祭りというものは、軟派な輩が徘徊し、獲物を探すのにはもってこいの場だ。そしてこの超聖夏祭も、勿論例外ではない。
女を狙うように後ろからチラチラと視線を送る複数の存在が居るという事に、箕輪は気付くだろうか。
884 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/06(木) 00:32:29.52 ID:MksIl3tb0
>>883


自棄になっていたのも数分前。お金を払う頃には熱々のソースと卵に目を奪われている。
待ちきれないお腹を抱えてお釣りと袋を受け取っている時、普段は聞き慣れない履物の音が傍に来てふと顔を上げる。
すると着物美人がそこに居て。

「えーと……」

結われた黒髪で大分印象が変わっているが、顔には覚えがあった。
確か風紀委員の人である。名前は――――

「あ! 、……さん、じゃないですか!」

宙の性格上、仕事中であろうと知り合いに声を掛ける事は躊躇しない。しかし名前の部分はゴニョゴニョとぼかした。割と最低である。
先に買ったオムそば片手に親しみを込めて横から声を掛ける。尤も彼女の後ろの輩を考慮してではない。そも、そこまで賢ければまずこの場に居ないのであるから。

「おひとりですか?」

そして、遠慮がないのも宙の持ち味であった。
885 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/08/06(木) 00:55:12.98 ID:k/R01R2No
>>884
声を掛けられ、誰だろうと顔を向ければ見た事のある顔。この人は………

「……ええと。17支部の、箕輪さん……で、あってるかな?」

一緒に仕事をした事は無いが、名簿で見た事がある。最近異動していたと思う、自分とは支部が違うが、確か……イリヤーと同じだった筈。
苦笑しながら、それでも愛想よく返す。店主からオムそばのパックが入ったビニールを受け取り、からんと足音を立てて向き直る。

「さっきまで一緒だった友人達と別れてね。どうせ用事もないし、暇潰しに回っていたところだよ」
「君は?見た所、仕事中なようだが……ここに居るということは、サボりかな?」

と、笑いながら言ってしまう辺り、不真面目さが分かるだろう。
886 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/06(木) 01:07:24.41 ID:MksIl3tb0
>>885

「凄い、私の事知ってるんですか!?」

苦笑いする相手とは対照的に驚きを露わにする宙。新人の方が顔と名前を覚えていないのも問題だが。

「んぎっ……、違いますよ買い出しです」
「花火まで時間がありますからね、燃料を入れておかないと」

別に食べたかったわけじゃないと強がって腕を組む。しかしお囃子の中きゅるりと鳴る腹の虫。
ごほんと咳払いで誤魔化す顔は、どうせ事件なんか起こりっこないと高をくくっているのが透けて見える。

「先輩暇なんですよね、なら手伝ってほしいです!」
「あ、序でに飲み物買いません?」

遊ぶのか仕事するのか、どうせなら両方を満喫すると開き直ったのか。
悪びれずに向こう側の屋台を指差して誘う。名前は諦めて先輩呼びでお茶を濁すらしい。
887 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/08/06(木) 01:24:00.53 ID:k/R01R2No
>>886
「名簿にはこまめに目を通すようにしていてね。まあ、分からない時の方が多いが」

箕輪の事を知っていたのは、言ってしまえばイリヤーと同じ支部だからである。レイカの関係者である彼の配属先だけあって、他より念入りに憶えていただけ。

「なに、誤魔化す事はないさ。よっぽど真面目な風紀委員以外は、だいたいがどさくさに紛れて祭りを楽しんでいるだろうから」
「ただし、有事の際はしっかりと働いて貰いたいかな」

つまり、それ以外なら別に良いでしょ?と言いたいようだ。かたっ苦しい言葉遣いながら、性格は結構おおらかなようで。

「……分かった。どうせ暇なんだ、暫く付き合おう」

腹の虫の訴えには気づかないフリをして、小さくクスリと笑いながら軽やかな音と共に移動する。
これでしつこい連中も散るかな、と内心打算的な事を考えつつ。
888 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/06(木) 01:40:39.66 ID:MksIl3tb0
>>887

宙はと言えばまさかイリヤーの知り合いとは夢にも思わない。
狭い世界とはいえ、普段の彼女を知らないのもあるが目の前の浴衣の八橋といかにも外国育ちの彼を繋げて考えるのは難しかった。


「っしゃー!」
「ダイジョブですよ、お祭りなんですからどーせ何も起こりませんって!」

態々フラグを重ね掛けして自信満々で胸を張る。
相手の内診など露知らず駆け足で後ろへ付いて回る様は正しく後輩。喋り方は正反対でも大雑把な点は案外共通するのかもしれない。

「ビール……、はないか」
「じゃサイダー1つ! 先輩は?」

ぱっと流し見てアルコール系の飲み物が無いのを確認し、ちぇと舌打ち。流石は学生が大半を占める学園都市というべきか。
見た目には解り辛いが無論宙は未成年(のはず)である。なのだが、何食わぬ顔で炭酸系を注文し財布片手に相手へ振る。
889 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/08/06(木) 01:53:24.17 ID:k/R01R2No
>>888
「さて、祭り"だからこそ"何かが起こりそうなものだが……まあ、起こらないうちは楽しもうじゃないか」

からからと笑いながら品目に視線をやる。流石と言うべきか、アルコールの類いは取り扱っていないらしい。
普段からよく飲むコーヒーを探してみるが、こちらも無い。仕方ないかと選んだのは、

「……そうだな、では、同じものを」

無難な選択とも言える、箕輪と同じ瓶のサイダー。浴衣に金魚、更にサイダーまで加われば、如何にも「お祭、楽しんでます!」というような恰好になる。
巾着から小さな財布を取り出して、お金を払う準備。そして、気になった事。

「そういえば、僕は何を手伝えば良いのかな?」

おそらく見回りの手伝いでは無いだろう、ならば何を手伝うのか。ほんの少しだけ、嫌な予感がした。
890 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/06(木) 02:09:28.42 ID:MksIl3tb0
>>889

飲み物まで揃った先輩の姿は、祭りの代名詞としてウィ●ペディアに載せておきたいくらいに似合っていた。
自分はと見れば、オムそばとサイダー、同じものを持っている筈なのに、スーパーで惣菜を買った帰宅OLにしか見えない。
この差は果たして歳の差だけの問題だろうか。深く考えないようにする。それよりも――

「あれ、先輩って女の人……ですよね?」

無駄に耳聡い時もある宙は、普通ならスルーするところも突っ込むことを恐れない。
お金を払いながら一人称が僕なのが気になったよう。とはいえ好奇心にも満たない些細な疑問なので口にはするが直ぐに流す。

「ほら、今夜の花火大会あるじゃないですか。私たちは時間になったら観覧エリアへ誘導する係です」
「流石に此処で皆座り見しちゃうと混雑も膨れ上がっちゃいますからねー」

要するに道路工事の整理員みたいなものだ、と例を交えて解説。違うのは相手が自動車ではなく交通ルールの無い人間である事と、その膨大な人数。
座り〜で思い出すが、ご飯もまだ出会った。話すすがらきょろきょろと、八橋の浴衣の袖を引いて道沿いの花壇を指差そうとする。
891 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/08/06(木) 02:27:46.39 ID:k/R01R2No
>>890
この頭にお面でも乗っけてやればきっとパーフェクトだろう。果たしてそんな物を八橋が買うかどうかは、ほぼ分かりきった事だが。

「……ん?ああ、これは小さい頃からの癖でね。今更私と言うのも気恥ずかしくて、直せていないんだ」

おかしいだろう、と再びの苦笑。表面に雫のたっぷり付いた瓶を首筋に当てて涼みだす。
いかに夜と言っても夏は夏、昼間のうだるような暑さの名残が人混みで増幅し、むわりとした湿気も相まってむしろ昼間より暑く感じられさえするのだ。

「ああ、やはり誘導か。この恰好では疲れそうだが……約束したからな」

約束してしまったのだから仕方がない、手伝うしかないだろう。それに軟派な連中から、無意識とはいえ助けて貰った恩もある。
袖を引かれ、指差された場所に素直に座る。花火の開始時間は知っている、確かあと1時間も無かった筈だ。ならば腹ごなしはさっさと終わらせなければ。
座って早々、パックを開けてオムそばを一口。焦る必要はないのだが、食後にはできるだけゆったりとしたかった。

「……美味しいな、当たりの店だったか」
892 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/06(木) 02:49:59.63 ID:MksIl3tb0
>>891

「むー、確かにあんまり似合ってない気はしますけど。 昔は意外とやんちゃだったんですね?」

フォローも碌に入れずにおかしいと感じれば包み隠さず応える。嫌味が無いのだけが救いだがあまり褒められたことではない。
照れたような仕草に、自分も真似してサイダーをおでこにあてる。額を伝ってつうと雫が頬を流れた。
熱気の残る夜風の中、額周りだけがほんのりと涼しい。声が掛けられるまでしばらく目を瞑ってそうしていた。

「え、あっ、ズルい!」

我に帰ればすでに八つ橋は食事に手を付けている途中であった。
遅れてはならぬと、黄色い卵に頭からかぶり付いてソースの味を存分に堪能する。きちんと掛けられた青のりとかつ節の香がすぅと鼻に抜けていった。

「ホントだ。これは他の店にも期待が持てますね!」

青のりをくっ付けた幸せな笑顔は、この一軒で終わらせるという気配は微塵も無い。
結構胃に余裕があるらしいが果たしてこの後の仕事が務まるのか。
893 :八橋 馨 ◆435bdiv0ac [sagesaga]:2015/08/06(木) 03:08:33.80 ID:k/R01R2No
>>892
寧ろ、そういった直球さが八橋には心地良く感じられた。いずももそうだが、どうやらこの女は嘘を付つけない人間が好みなようで。

「他の店も食べたいなら、尚更早く食べないとな……、……さて、御馳走様」

暑い時に熱い物を食べるのはあまり好きでは無かったが、祭りとなれば話は別。雰囲気を楽しんでいれば熱い物でも気にせず食べられてしまう。
サイズの違いもあり、食べ終わるのは早い。箕輪が食べ終わるまで、ほんのひと時の休憩を楽しむ。
先ほど買った飲料をちびちびと飲みながら幸せそうな表情を眺めながら。しかしやはり八橋も風紀委員、やるべき事はしっかりとやりたいようで。

「―――ところで、時間は大丈夫かい?」

と、尋ねるのは八橋なりの"そろそろ時間だぞ"というサイン。それに気付くかどうかは箕輪に委ねられているものの、催促である事に変わりはない。
……やるべき事はしっかりと、だ。八橋はこの後の手伝いもきっちり熟す事だろう。

//無理矢理ですが、そろそろ時間が厳しいので〆でお願いします……
894 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/06(木) 03:29:18.21 ID:MksIl3tb0
>>893

「わ、食べるの速いですね」

サイズが違うのもあるが、宙の場合箸自体が時間配分とは程遠いペース。最早すっかり楽しむことに特化した様子で。
暢気に面を啜っていると、それを遮る八橋の疑問。時計を見ると、20時まであと5分もない。

「わーっ、ヤヴァい!」

勢いを増してもぐもぐと掻き込む向こう側で、しゅるしゅると景気づけに上がる音が聞こえてくる。
サイダーで流しこみ漸く立ち上がる頃には、轟音と共に夜空を金色の大輪が彩るだろう。

「さ、先輩行きますよ! 私たちの仕事はこれからです!」

二人分の容器をゴミ箱に投擲しようとしながら誇らしげに。
これでは待たせていたのはどちらなのか、寧ろ何様なのか。明るくなり始めた空を指差して、片手を差し出す。
八橋にも見せた幸せな笑顔は、きっと手伝って貰いながらも、仕事の後の屋台巡りに思いを馳せているのだろう。
果たしてそこまで付き合ってもらえるかは定かではない。

こうして超聖夏祭の一日目は、しめやかとは程遠い賑やかさで始まっていったのだった――――



/ではこの辺りで〆させてもらいます、遅くまでお付き合い頂きありがとうございました!
895 :敦田 熱志 [sage]:2015/08/06(木) 20:35:58.59 ID:yWfV2mT2o
超聖夏祭――今年もこの時期がやって来た。辺りは賑わいを見せ、この夏の一大イベントだと実感させる。だが、全ての人が遊びに来ている訳ではない。この少年、敦田熱志もそうだ。
キラリと輝く風紀の腕章、風紀委員敦田敦志は、当然のごとく見回りとしてこの場に来ていた――のではなく……

「うむ!チョコバナナクレープが一つですね!了解しました!」

頭には三角巾、身には可愛らしいひよこ柄のエプロンといった出で立ちで、屋台でクレープを売っていた。しかしこの格好、あまり似合っていない。

『いやー、すまないね熱志君!屋台手伝ってもらっちゃってさ!』

そう声を掛けたのは、同じくエプロンと三角巾を身に付けた中年男性、彼の叔父だ。父親を亡くした後の熱志の面倒を、なにかと見てくれる人物。学園都市の熱志の元にも、よく来てくれるらしい。熱志にとって感謝してもしきれない人物だ。

「いえ、他ならぬ叔父上の頼みです!断る理由などありはしませんっ!今日は、風紀委員の仕事も入ってないので、とことん付き合いますよっ!!」

どうやら、叔父は熱志に屋台の手伝いを頼んだようだ。

『嬉しいこと言ってくれるじゃないか!よしっ!それじゃあ、叔父さんと熱志君で今日は売りまくるぞ!!』

「うむ!了解しました!!」

クレープの匂いを漂わせ、二人の男が屋台に勤しむ。
896 :メルラン=ウォル=ラクトムル [sage]:2015/08/06(木) 21:20:10.52 ID:y7QTx51b0
>>881

「舐めてるのはそっちの方じゃない?
子供だと思ってると痛い目見るわよ、それに私は戦う気なんてないの。
手負いの獣なら私にも戦えるわ」

あくまで引かない姿勢を取るメルラン。
少しでも弱みを見せれば殺られる──そう思ったのだ。
しかしこのままでは戦闘は避けられない。しかしどうにかして戦闘を避けなければいずもへと迷惑が掛かる、それは不味い、それだけは避けなければ──

「そちらだってこれ以上傷を負えばそっちだってマズイはずよ。
通り掛かったのが私だったから助かったものをもしあなたに敵意をもつものだったらあなた、即刻殺されてたわよ?
今度そのまま倒れ伏せて、私みたいな人が通りかかるとは限らないわ」

確かにメルランの言う通りだ。恩を売ったつもりではないが、向こうもそんな事態は避けたいはず。
果たして黒繩はどう出る。
897 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/08/06(木) 21:48:44.66 ID:WDIi+LXyo
>>896
「…オイ、何だクソガキ…?今、何つった?」
「テメェどの立場から俺を見て物言ってやがんだ?まるで…なんだ、そいつは…その言種はよォ…!」

「上から物言ってんじゃねぇぞ…!」

警告はした、再三言っていたのに従わないという事はつまり、実力行使に出てもいい合図だ。
何より黒繩は、メルランの態度が気に食わなかった、上から目線のその態度が、自分を見下ろす体制が、子供の癖に生意気だと、自らも子供っぽい理論で敵意の理由となる。
恩だなんて微塵すらも感じていない、役に立つか立たないか、ただそれだけの話であって、確かに飲み物を持って来た時は役に立ったが、今はそうではない。

役に立たないのなら、どうしようと躊躇いはない、黒繩はフラつきながらも立ち上がり、目線の高さは逆転する。
フードの下から影の差した両目がメルランを睨み付けて、だらりと垂れた両手にそれぞれ一振りずつ、漆黒の短刀が握られた。
夜の影が集まり凝縮したようになって形作られた短刀は、禍々しい雰囲気を持って黒繩の手からメルランを威嚇している。

「…アクエ○アスの分だけもう一度言ってやる」
「魔術師のツラ教えろ」
898 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/08/06(木) 22:09:17.45 ID:y7QTx51b0
>>897

「上から?手負いのあなたと私、この立場は普通だと思うけど?
それにね、あなたには少し腹が立ってたのよ、そりゃあの車の時は感謝してるわ。
でもねぇ、あんたのそのいずもに対する物言い、それが気に入らない」

もうこうなっては仕方がない。自分も力に訴えるしか。
ぬいぐるみを握りしめ、表情を怒りのものへと変貌させメルランは頭上の黒繩を睨む。その眼には黒繩のものとは対照的に、確かに光が灯っている。

「もし私が勝ったら、金輪際いずもに喧嘩を売らないで」

距離を取る。それと同時にメルランの足元。コンクリートが盛り上がる。
やがてコンクリートに亀裂が入り、出てくるのは土。そして土は形を変え、その姿は二つの人骨へ。
片手には直剣を持ち、その虚ろな空洞が黒繩を見据えていた。

「チンピラに喧嘩売ってそうなったって言ってたわよね?
なら…複数の相手には弱いってことよね!!」

メルランが手をかざすと二つの骸は黒繩へと走り出す。
カラリ、カラリ、と音を立てながら剣を振りかざし迫る骸。しかしその動きはかなり単調で見極めるのは容易だろう。
899 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/08/06(木) 22:33:11.21 ID:WDIi+LXyo
>>898
「ヒヒッ…泣かせる事言うじゃねぇか…命の恩人を守ろうってかァ…?」
「あいつの心配よりテメェの心配しろよ…なぁオイ」

ゆらゆらと揺れる体、グラつく視界、焼け付いたように痛む頭が、苛立ちを更に煮立たせる。
もう殆ど熱中症も併発しているが、しかしだからそれがどうしたのかと、自分にすら非道に鞭打って、黒繩は笑った。

───『複数の相手には弱い』、違う、しかしメルランの異能は確かに、黒繩との相性は良かった。
作り上げられた無機物の人骨を見た黒繩は、舌打ちを小さく鳴らすと、一歩足を踏み出す、覚束ない足取りが揺れて、力が入らないのか転びそうに体が前へと倒れた。
いや、違う。倒れるように見えた黒繩の体はそのまま急角度の前傾姿勢となって、前方向へと駆け出していく、自分が倒れそうになる勢いも乗せて、スピードを上げ、人骨の間を急加速ですり抜けようとする。

「rrrルァッッ!!」

人骨の間をすり抜け、メルランに接近出来たなら、黒繩はそのままメルランを押し倒す勢いで、右手の短刀をメルランの腹部に突き刺そうとするだろう。
この短刀が刺さっても、血は一滴も流れはしない、薄皮一枚どころか服にすら傷は無いだろう、しかし確かに肉体を貫く事は出来る。
それは実体の無い妄想の刃、そこにある様に見えて、そこには存在しない物が、黒繩の力によって見えているだけなのだから。
そして、その妄想の刃は触れた物は傷付けず、しかし確かに、刃が触れた物に苦痛を残して行く、ただ斬られるより貫かれるより、遥かに激しい痛みを。
900 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/08/06(木) 22:58:52.16 ID:y7QTx51b0
>>899

「そうはさせない!!」

骸をすり抜けこちらへと接近しようとする黒繩。しかしそう簡単に通すメルランではない。
骸のうちの一体を黒繩の前へ道を塞ぐように立ち塞がせる。
所詮は捨て駒、これで黒繩の動きを止められれば御の字。止められなかったとしても動きを緩めさせることはできるだろう。

「……怒りで本来の目的を忘れてたわ。
いずものことは大事だけど…これで私が怪我したらいずもに心配を掛けちゃう」

そうだ、そうだった。いずものことを考えるあまり周りを見失っていた。
これで勝ったとしてもいずもは喜ばない。むしろ彼女なら怒るかもしれない。「どうして戦ったんだ」と。

「だから逃げることにするわ。
ごめんなさいね、折角乗り気になってたのに」

そういうと骸に相手をさせ、自分はその場から立ち去ろうとする。しかし骸程度では止められるかどうか。もしも黒繩が骸を突破してくればメルランは間違いなく黒繩の攻撃を受けるだろう。
実際骸の動きもメルランが離れるにつれどんどん雑になってきている。突破することはそう難しくないことだ。
901 :黒繩 揚羽 [sage saga]:2015/08/06(木) 23:16:57.74 ID:WDIi+LXyo
>>900
メルランに突き刺す筈だった短刀は、骸の体に突き刺さり、絡め取られ、また激突した黒繩の動きもそこで止まる。
だが、石で出来ている筈の骸を、黒繩はその激突だけで大きく弾き飛ばした、一度立ち止まり顔を上げた彼の額からは血が流れ出ている。
つまりは、それだけ容赦無く、躊躇い無く突っ込んだという事だ、例え防がれたとしても、一瞬たりとも立ち止まらなかった。

「ヒッ……ヒヒヒヒヒッ!!オイオイ!逃げんのかよ!?折角楽しくなって来たってのによォ!?」
「あの雑魚共よりよっぽどやり甲斐があるぜクソガキィ!ヒヒッ!テメェのツラは覚えたぜ!あの番長と一緒なのもなぁ!!」
「ぶっ殺してやるよ…テメェも、番長も!ヒヒヒハハハハハ!!」

立ち塞がる骸を、黒繩は短刀を投げ捨て素手で相手をする、拳で殴り、足で蹴って。石で出来ているそれを殴る度に、黒繩自身の体も傷付いていくが、しかし、それを意に介さず。
言っておくが、黒繩の体は特に鍛えたものでは無い、武術の『ぶ』の字も無ければ、ただ単純に暴力を振り回しているだけ、ただただ原始的な喧嘩だ。
だがそれは、黒繩が自身の体すらも労らないやり方をする為に、単純に強力な武器となっている。

それはそれは凄惨な光景だ、石で出来た人形を容赦無く殴り、自身が傷付きながらも破壊を続ける。
だが、メルランが逃げる時間稼ぎは十分に果たせるだろう、何故ならば、黒繩の形相は既に何処か別の場所を見ていて、とにかく目の前の骸を破壊する事しか考えていないのだから。
902 :メルラン=ウォル=ラクトムル :2015/08/06(木) 23:46:37.98 ID:y7QTx51b0
>>901
「……!狂人め…!!
そんなこと…絶対にさせない…!!」

メルランはそう吐き捨てると、黒繩とは反対の方向へと走っていく。
狂っている、あぁいう者を戦闘狂《バトルマニア》というのだろうか。その場に広がっていたのは、ただ狂気染みた凄惨な光景。
自らの身を傷付け尚も戦い続ける、そんな光景だった。

「…絶対にいずもには手を出させない。
今度は私が恩を返さなきゃ……」

その呟きは闇の中へと消えていく。それは自らに立てる誓い。恩人へ対するメルランなりの恩返し。
背後からはまだ戦いの音が聞こえてくる。だがもうあの骸は消え去りただの砂となるだろう。
果たしてメルランはその骸と同じ運命を辿らないことが出来るのだろうか──
903 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/07(金) 15:51:41.45 ID:QR+Q5N0P0
>>895
都市中が超聖夏祭で沸き起こるこの時期。この都市の学生は最早自分達が学生である事さえも忘却し、その祭へと没頭していた。
そして、この番長もどきこと”高天原いずも”も例外ではなく少し変わった服を身に纏っていた。
下はいつも通り黒の長ズボンである。となれば次に続くのが学ランであるのが通常の高天原スタイルであるが、今日は違う。
白の半パンに、上半身を覆うのは水色の半被である。背中には──『祭』という力強い一文字。
額に巻かれた深紅の鉢巻が辛うじて”番長”という印象を残しているが右手には祭とかかれた団扇、完全にお祭りモードだ。

「──お、クレープあんじゃん。」

そんな彼女がとある屋台の目の前で立ち止まる。自分……否、それ以上に暑苦しい雰囲気を醸し出すそのクレープ店。やたらクレープを売る事に燃えている二人を一瞬だけ冷ややかに見据える彼女だったが、1人、知り合いがいる事に気付いた。
いずもは屋台の方へと歩みを進める──、

「……あれ?熱志じゃん、何やってんだお前。」

二人の年齢は17歳……そう、見事に合致している。更に目の前の敦田熱志という男は風紀委員……彼女がほぼ毎日お世話になる組織に属している。……であれば知り合うのは必然とも言えるもので。
屋台に歩み寄った彼女は軽く話し掛けた。


「……お前って風紀委員じゃなかったのかよ?」

と単純な疑問を口にする番長……いや、半被少女。さて、風紀委員こと敦田は何と答えるか。

//もしよければ……無理やりですが年齢同じということで知り合いっぽくさせていただきました…
この番長少女を男か女か知っているかどうかはそちらで決めてくださって大丈夫です!
904 :敦田 熱志 [sage]:2015/08/07(金) 20:44:10.42 ID:KeGEYhKmO
>>903
「おや、誰かと思えば高天原殿ではないか!……よかった、今日は何も壊したりしていないようだな。」

普段とは違った服装だったため、一瞬気づかなかったが、声を聞くとすぐに気がついた。風紀委員の間ではいい意味でも悪い意味でも有名な、あの番長ではないか。

「うむ!確かに私は風紀委員だっ!!」

そう言って誇らしげに自身の腕に付いた腕章を見せ付ける。

「だが!しかし!今はクレープ屋でもある!」

続いて、出来立てのクレープを手にとって見せ付けた。しかし、これでは風紀委員の仕事はどうしたのかという説明になってない。

『熱志君は、今日風紀委員の仕事無いらしいよ。』

そんな熱志にフォロー(通訳?)を入れる叔父。

「うむ!それで暇を貰った私は、叔父上の屋台の手伝いをしたという訳だ!そういう訳で、クレープ一ついかがかね?」

/今気がつきました……
まだ大丈夫でしたら……
905 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/08/07(金) 21:54:09.71 ID:cmuBFzUO0
「……何故俺がこんな事をしなければいけないのだ」

はぁ、と心持たない溜息をつき、鹿島 衡相は学園内の大きな校庭に建てた屋台に備え付けられたキャンピングチェアに座り込む。
今宵は超聖夏祭、学園都市全体で盛り上がる夏祭り。当然、第一学園でも各クラスで催しがあり────。

「俺が水を操れる事を良い事にまさか「金魚掬い」と「スーパーボール掬い」を同時に任せられるとはな!」
「俺はこういう催し物では仕事はしたくない、寧ろ遊びたいに決まっているというのに…」

鹿島が担当するのは金魚掬いとスーパーボール掬い。どちらも夏祭りでは必須の、いやあって当然のモノだが…折角のこの夏祭りを楽しみたい鹿島にとって、このようなひたすら客が来る事を待たなければならないという仕打ちに若干の苛立ちを覚えていた。
しかも任せられた理由は「水を操れる」という事だけであり、金魚掬いやスーパーボール掬いならば水を操る能力者ではなくても大丈夫なはずである───簡単に言うと面倒事を背負わされたという事である。
勿論、任せた連中は皆浴衣など風流に乗った服を着て、各自様々なクラスへ行って楽しんでいるようだ。

「……まあ、俺も浴衣は着てきたからにはお化け屋敷などに行ってみたかったが…何時になれば交代出来るのだろうな」

クラスの皆は全員楽しむ為、催しは交代制にしたようだが時間になっても鹿島と交代する人がなかなか来ない。恐らく、忘れているのだろう。
鹿島は腕時計を眺めながらまだかまだかと交代するクラスメートを顔を顰めて待ち続けていた。

906 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/07(金) 22:32:16.98 ID:QR+Q5N0P0
>>904
「ははっ…いつも迷惑かけて悪ぃな!……」

と彼女を見るや否や”番長による被害”を気にかける敦田という青年。
それに対して彼女は指を揃えた右手を顔の前に持ってくることで反省の意を表すジェスチャー。
最近は良く迷惑を掛けているためにある程度反省はしているのか、彼女の顔に浮かんでいるのは誤魔化すような苦笑いだった。


「…お、おう…………わかったわかった。」

そして続くのは畳み掛けるように彼女に投げつけられる言葉の数々。何より彼女を追い詰めるのは番長たる彼女以上の暑苦しさ……!
顔の前に翳していた右手をそのまま、敦の前に掌を向けるようにすることで静止するように促した。
その後、半被少女は敦田の隣の中年男性……曰く敦田の叔父の言葉を聴いて納得する。

最後に彼女に飛来してきたのは購入を促す謳い文句と鼻腔に届くクレープ生地の甘い香り。気づくや否や「お、そうだな」と反応して──、

「……んじゃあ、二つ頼むわ。んー…このチョコバナナクレープってのよろしく。」

この場に1人しか居ないのに2つであるのは彼女の家に居候しているメルランという魔術師と自分用…である。
勿論、そんな事を敦田は知る由も無いが、>>563から続く一連の流れを風紀委員という立場を以って知っているのであれば勘づくかもしれない。

クレープの出来上がりを待つ間、支払う料金をその右手に握りつつこんな事を口にしてみた。

「……そういやあれだな、お前、その口調相変わらずなんだな。」


//全然大丈夫ですよー
いつでもどぞー
907 :敦田 熱志 [sage]:2015/08/07(金) 23:20:19.59 ID:KeGEYhKmO
>>906
「うむ。反省しているのならば、まぁ」

熱志は考える。彼女は悪意を持って破壊行為を働いているわけではないのだろうと。そもそも、番長=不良ではない訳だし。理由はどうあれ破壊行為は誉められるものではないが、今ここで色々口煩く言うのは間違いだろう。
故に、熱志はこれ以上は番長の被害について口にすることはなかった。誤魔化すような苦笑いも、特に気にすることもなく。
そして、注文が入れば――

「『まいどありっ!』」

『チョコバナナクレープが二つだね!あいよ!少々お待ちを』

無駄に大きな声がハモる。 叔父の方は、注文を確認するとお玉を取り、慣れた手付きの二枚分の生地を伸ばし、焼いていく。

「うむ!私の話し方は変わらんぞ!」

『熱志君の口調、兄貴にそっくりになってきたよね。……っと、焼けたかな。』

バナナやチョコレートソースを用意しながら答える熱志。どうやら、この話し方は父親譲りの様子。叔父は、どこか寂しげに熱志を見つめた。

そうこう話しているうちに、生地が充分に焼けたようだ。そこにバナナとチョコレートソース、更に生クリームをトッピング。後は、巻いて完成だ。

『はいよ!お待たせ!チョコバナナクレープ二つ!一つは、彼氏さんの分かな?』

出来たクレープをいずもへと差し出す。その際、叔父はニヤニヤした表情で言う。もう一つは彼氏の分かと。それに対し、熱志は

「はっはっは!何を言っているんですか叔父上?高天原殿は男の方ですよ?」

『え?いやいや、熱志君。君こそ何言ってるんだい?女の子に向かってさ。』

「え……?」

どうやら、熱志はいずもの性別のことを知らなかった様子だ。そして、叔父は年の功とでも言うべきだろうか?すぐにいずもが女性だと気づいたらしい。

/ありがとうございます!
908 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/07(金) 23:41:46.69 ID:QR+Q5N0P0
>>907
「兄貴……………ねぇ」

息をする様に極自然的に敦田の叔父から発された単語。それに対してピクリと眉を動かして反応を示す。
高天原いずもという少女には、数歳年上の兄がいる。数年前に事故に遭い碌に会話もできない状態……所謂植物人間になってしまった兄が。……医者にも生命はそろそろ尽きるだろうと宣告すらされている。
この兄というのが彼女の”番長気質”を創作するそもそもの元凶で、植物人間となり”番長”を止めざるを得なかった兄の意思を継いで、現在の彼女があるわけなのである。
……と、そんな事を考えつつぼーっと作業風景を眺めていたところ、二つのクレープが唐突に突き出された。

「あー…………」

と、クレープを受け取ると展開されるのは男だ女だの論争。呆れた様にやれやれと頭をかきつつ溜息をつく番長。
叔父の言葉に反論するが返され、きょとんとなってしまった敦田であったので、取り敢えず正解を述べる事にした───。

「おっちゃん中々の目の持ち主だな!!初見でオレの本質を見抜いたのは……いち、に……さん……えーと……何人目だっけか。」

と、八重歯をちらつかせて無邪気な笑いを浮かべつつ、指を折って考える素振りを見せるいずも。結局、自らの記憶の中からは明瞭な答えは得られなかったのだが。
よくよく見れば、男と表すにしては妙に丸みを帯びた身体つき、サラサラすべすべな肌……と半被を着ているが故に判断できる材料が幾つか。普段の彼女であれば、学ランを身に纏うなりしているのでその印象が強すぎてまず女性であるという印象は得られないだろう。

「……ま、オレはんなもんは捨ててるから逆に同性として接してくれた方が助かるぜ?熱志。
因みにおっちゃんの質問に答えると、このクレープはうちの居候用だぜ!ちょっと厄介なもんを保護しちまってな!!」

……と料金を二人に差し出しつつ言葉を紡ぐ。
さて、衝撃のカミングアウト後の敦田の反応はどんなものであろうか。
909 :敦田 熱志 [sage]:2015/08/08(土) 00:10:48.07 ID:8XeODZoeO
>>908
『はっはっは!だろう!おじさん、人を見る目には自信あるんだ。』

何年も人と接してきた経験があるのだろうか。自慢気に笑う叔父。実際はいずもの本質は結構な人数に見抜かれているようだが、そこは気にしていない。
そして、まったく気づいていなかったこの男は

「……ま、まさか女性だったとは……」

まぁ、そりゃ驚く。未だに呆然として、頭の中ではいままで女性に対し失礼なことを言ってしまったのではないか?と、疑念が渦巻く。

『おじさんの勝ちだね!』

「ま、負けた……いや!なんの勝負ですか!?」

そんな熱志に、冗談めいた口調で話しかける叔父。それにノリツッコミを入れることで、熱志はようやく普段の調子を取り戻した。

「う……うむ!そうだな!ならば、これまでどおり、君が問題を起こしたら風紀委員として説教させて貰う!女性だからと加減はしないぞ!」

いずもの方へ向き直ると、これまでどおりに長い説教をすると宣言。
そして、気になるのは――

『厄介なもの?』

「まさか……」

何かに気づいたような反応を見せる熱志。これまでにない真剣な表情を見せる。そして、次に口を開いた熱志は――

「子犬かっ!?子犬なんだな!?だが、子犬にチョコバナナはいかんぞ!チョコは犬にとっては毒だからな。」

見当違いもいいとこだ。厄介なものが子犬であることを前提に話し始めた。
910 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/08(土) 00:26:44.31 ID:jT5Qi9sD0
>>909
「んじゃあ、ま、これまでどーりよろしく頼みますわー」

……と敦田の熱い宣言に対して至って軽い口調で返すいずも。
勿論幾ら説教されようと彼女にはあまり響かないのだが、女扱いされるとちと面倒なことになってしまう。何より”番長”としての威厳?が保てない。───それだけは回避せねばならないのだ。

そして、次に敦田から発された言葉はとんだ勘違いであった。……見当違いな敦田の想像に再びやれやれと溜息をつく始末。
流石に”魔術師”という語句を口にする訳にもいかないので──、

「……ちゃんとした”人間”だっつの。
ん…と……何て言えばいいのかな。
────………そうそう、記憶喪失?そういう感じの幼女保護しちまった。」

と敦田の間違いをダイレクトに否定しつつ、答えを述べるいずも。勿論のこと、記憶喪失というのは嘘であるが、会った事もない彼らであれば疑う事もないだろうという考えである。

「……ま、人間的な知識とかは残ってる感じだっからまず安心だけどな。」

実際問題、その幼女は幼女でありながら凄まじいほどに頭が良い。勿論それも魔術とやらが関連してくるのであるが、一切そこについては触れなかった。
911 :敦田 熱志 [sage]:2015/08/08(土) 00:51:52.57 ID:8XeODZoeO
>>910
「なんだ人間か……ははは!勘違いしていたよ。それなら安心だな!」

一安心する熱志。人間ならばチョコを口にしても問題はない。よかったと安堵の溜め息をつくが、その後に耳に入った言葉は

「…………き、記憶喪失!?記憶喪失って君!それ、一大事ではないか!?」

記憶喪失。しかも幼女ときたもんだ。いったい何があったのか?何やら事件性も感じる、と焦る熱志。

「びょ、病院へは行ったのか!?あ、あと身元とかは!?」

『まぁまぁ、熱志君。落ち着きなよ。彼女が保護したって言ってるんだから、大丈夫でしょ。』

「そ、それもそうですが……」

そんな熱志に対し叔父は、なだめるように言った。次いでいずもの言葉。生活には問題はなさそうだと判断し、熱志は落ち着きを取り戻す。
とは言え、やはり少し心配な様子だ。
912 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/08(土) 01:18:33.90 ID:jT5Qi9sD0
>>911
「………まあ、ちょっち複雑な事情が絡んでてな。そいつのプライバシーの為にも詳しくは言えないんだけど、さ。」

と、暑苦しく心配する敦田を軽く笑いつつ現在置かれている状況を口にする。
勿論その言葉は偽りで固められたものなのであるが、複雑な事情……という点ではある程度共有しているとも言える。
魔術師はどうやら能力を宿命的な存在と捉えているらしく、そんな人間と手を組んでいる……などと知られれば命の保証は無い。……故に、記憶喪失なんかよりももっと複雑で危険性を孕んだ裏事情だ。
──それを知っているから。彼女はそれ以上介入されない様に釘をさすような言い方をしたのだった。

「安心しろって!!
オレがいるんだから大丈夫!…じゃなきゃ、番長なんて務まらねーからな!!」

現在もあまり務まっていない……というのは御察しの通りである。
……と此処で一度周りの状況を確認する半被少女。馬鹿騒ぎをしているからなのか、先程よりも明らかに人が集まってきている……!敦田達からすれば絶好の商売時である。

「……んじゃ、オレぁここら辺で失礼するわ!商売頑張れよ!!」

GJと親指を突き立てた右手を突き出す高天原いずも。次に隣の叔父に小さく一礼した。
「またいつかな!」と手を振りながら、その半被少女は人ごみに紛れて消える。そして彼らにおそいかかるのは………集まってきた沢山の客の注文だ。

//強引ですが、こんな感じで〆させていただきます!楽しかったです!お疲れ様でした!
913 :敦田 熱志 [sage]:2015/08/08(土) 01:36:52.76 ID:8XeODZoeO
>>912
「う、うむ!それもそうだな!」

本人がそう言うのなら、きっと大丈夫なのだろう。不安が残らないと言ったら嘘になるが、熱志はいずもを信じようと思った。

「うむ!また会おう!出来れば、また私が風紀委員としての立場でない時にな!」

熱志だって好きで説教をしている訳ではないし、いずもだって好きで破壊行為を働いているわけではないのだろう。ならば、出来れば風紀委員としての再会は避けたいところだ。

『おや、混んできたね。さて、熱志君!人頑張りいこうか!』

ふと気がつけば、人がこんなに沢山。恐らく、本日一の盛況っぷりだ。そんな光景を見て、熱志の叔父は嬉しそうな表情を見せる。

「ええ!では!人頑張りいきましょうか!」

「『いらっしゃいませー!!』」

二人の声が再びハモる。
超聖夏祭はまだまだ続く――

/ お疲れさまでした!遅くまで絡みありがとうございました!
914 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage]:2015/08/08(土) 02:54:25.14 ID:s+WRo1rbo
>>905
雑踏を構成する人々は一様に顔を綻ばせ、学園都市最大規模の祭りが放つ熱気に酔いしれている。
そんななかにあって独り、心の底から楽しんでいるとは言い難い思案顔の少年が金魚すくいを前に立ち止まる。

「――金魚、か」

彼の脳裏を占めているのは、笑声飛び交う真っただ中にあってぼっちで歩みを進めるうら寂しさであった。
好きなように回れるうえに誰かを待つ必要もないと自分を慰めてみても、素直には楽しみきれないところである。
そこで金魚とでもいっしょにいられるのならば、いくらか気分も変わるだろうかと、そういう訳であった。

何しろこの都市に来てからというもの会うのは殺人者にカツアゲ目的の不良、クラスメートとも私的に会うほど仲良くなく、
心の隙間を埋めるのに非人間を選んだとしても無理からぬ状況では、あるのかもしれない。

「すみません、――ひとつ、お願いします」

申し訳程度に口端を持ち上げ愛想よく、青年に向かって硬貨を含ませた右手を差し出す。
キャンピングチェアに座り店番に終始する彼の顔立ちは心なし沈んでいるように見え、やはり
遊ぶ側でありたいのだろうかと、そんなことを思ったりもする。

独り金魚すくいに訪れた少年は浴衣ばかりの通りにあって紺のパーカーを着こみ、かえって目立っているような状態である。
印象の薄い顔立ちを裏切る鮮やかな赤の髪は夜風を受けてわずかにそよぐ程度の長さ。
琥珀色の眼は目当ての金魚を探して左右にきょろきょろと揺れながら、提灯の光を受けそれでも楽しげに輝いていた。


/よろしくお願いします……!
915 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/08/08(土) 03:22:18.84 ID:CFhtOSOs0
>>914
この学園ではクラスが多く、また学生の数も他の学校とは比べ物にならない程多い事で有名であり、同様に催し物でもジャンルによってはクラス間での売上げ競争に繋がる事も多い。
鹿島のクラスでは金魚掬いとスーパーボール掬い。どちらもありがちな催し物である為に他のクラスでも採用している所が多くある。故に、個々の売上げは決して高い方ではない。簡単に言えば、ありがち過ぎて人が来ないのだ。実際に鹿島の向かいの隣のクラスの屋台でも鹿島と同じ様に金魚掬いをやっており、敵を見るかの様にこちらを睨みつけていた。

「そんなに睨んだって───売上げ上がるわけ無いだろうに」

睨まれた事に苛立ったのか、スーパーボール掬いの方の水槽から水の塊を浮かばせ睨んだ別クラスの店番の顔に当てる。面食らったような顔をこちらに向けたが、鹿島の知った事では無い。
徐々に溜まった苛立ちを発散させたのか少し表情も緩やかになった所で何者かが目の前に現れる。

「…………あ?」

最初は漸く交代要員が来たかと少しガン飛ばし気味で相手を見つめたが、どうにもこの顔は同じクラスの人物ではない……何とも、鹿島にとっての初の客であった。
客である事を知った上で、取り敢えず態度を改めて、

「…あい、いらっしゃい」
「一つ、と言われましても…金魚とスーパーボール、どちらが良いんだ?」

鹿島は言葉と共に金魚がいる水槽、スーパーボールがある水槽を指差しどちらにするのか尋ねる。

「金魚の場合は、もし捕れたなら取って置きのサービス、まあ余興でも見せてやるつもりだ」

そう言って鹿島は自分の右手の人差し指の先に水の塊を浮かばせる。そしてそのまま和泉の方へ指を向けて、

「でもウチはこんなありがちなコンテンツのお陰で金魚もスーパーボールもそうそう数が少ないんでねぇ。 捕っても構わんが捕らせる気はないぜ?」

備品箱に入った金魚掬い用のポイを左手に持ってそれを水の塊で射抜く。都合良く金を稼ぐ為ならば、このようなちょっとしたアレンジも必要なのだと言いながら和泉を見る鹿島の目には少しの愉悦感に浸るようであった。

//よろしくお願いしますー
916 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage]:2015/08/08(土) 03:42:51.13 ID:s+WRo1rbo
>>915
軽い気持ちで店番に声を掛けてみたものの、返ってきたのは予想外に険のある対応。
何か悪いことでも、と怯みかけるが、客だと分かれば態度も変わってきた。どうやら誰かと勘違いされたらしい、
とポジティブに解釈しておく。

「ああ、そっか。ええと……金魚のほう、です」

彼の頭の中では既に金魚がぐるりぐるりと気持ちよさげに泳ぎ回っており、挑戦するのが金魚すくいなのは自明であった。
しかしながら相手にそんなことが伝われるはずもなく。――照れ隠しに頭を掻きながら、正しい答えを口にだす。

すると何やら不思議なことが起こり始めた。プールの水が浮き上がり、青年の指先に捉えられたのである。
水塊はなんと金魚すくいのポイを打ち抜き、大きな穴を空けた。彼はちょっとしたアレンジと言い、
楽しげに、あるいは挑発的に、こちらを見据えている。

「そ、そんな……」

対する少年の表情は、何の張り合いもなくしぼんでいった。金魚すくいですら素人なのに、こんなポイで捕れるはずもないと、
しょんぼりとした顔立ちからでもそれだけのことは読み取れる。しかしそんな表情は、すぐさまはっと何かに気づくような様子にとってかわられる。
彼は能力を使ったのだ。それなら自分も、というわけである。

照明の位置を確認する。金魚のプールを真上から捉えるライトの光は、あちらこちらに影をつくっていた。

「俺だって祭りを楽しむためですから、――負けません」

何に負けないのか。きっと金魚だろう。
だが少年は、目の前の能力者であるらしい青年に挑戦的な視線をむけて、にっと口角を吊り上げた。
917 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/08/08(土) 04:24:18.29 ID:CFhtOSOs0
>>916
ポイを水の弾で射抜いて見せた時、和泉の顔色が少し暗めになった事を見てか、鹿島は少し不安を覚える。

「あー……そうか、低レベル能力者なのか貴様は?」
「ま、そんな取って食うような程俺は金の亡者じゃないから安心しなよ」

今さっきの自分がやった事は飽くまでもちょっとしたパフォーマンスだと解釈しようとしたが───相手は何かを感じたのか、さっきとは変わって挑戦的な目つきに変わったので思わず口を紡ぐ。

「…フフ、おたくさん、やる気かい?」
「では最初は小手調べと行こう、ポイは一つにつき100円、1人に対しては最大5個までしか与える事ができない」
「流石に客を独占すると他のクラスから煩く言われるのでな」

ポイを一個、和泉に渡した後、鹿島は金魚掬い用の水槽に手を振りかざして、「流れ」を変え始めた。途端に横に長い水槽はレジャー施設の回るプールのような流れを作り始め、中の金魚もそれに沿って普段よりも速く泳ぎ始める。

「一応言っておくが、俺はこの学園内で一番金魚掬いに厳しいと自負できる程、金魚を掬わせないアイデアを持っている」
「それでも挑戦するならば、まずはこの水槽から一匹工夫して捕ってみな!」

回る水の流れはポイを破るほど強くは無いだろうが、それと同様に速く泳ぎ始めた金魚達を真正面から掬おうとするならばあまりの速さにポイまで突き破ってしまうだろう。和泉はこの水槽からどのような攻略をするのか、ようやく暇が潰せそうだと思った鹿島は和泉の挑戦を笑みを浮かべて見下ろした。
918 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage]:2015/08/08(土) 04:46:11.90 ID:s+WRo1rbo
>>917
ちょっとした位置関係にも気づかず、味方に様子を任せていた人物が、
ようやく動き出したようであった。楽しむためのものだと言いながら、笑みを見せている。
少年は能力を発動。――青年の背後にある椅子の影から蜥蜴の尾を召喚し、青年の背中をつんつんとつつかせる。
もし少年が不思議に思って振り向いたのならば、

すぐさま能力を解いてぽいの資格にある影から小さな尾を取り出し、誰もみていないうちに金魚を手に入れてしまおうと、
若干の無理を顧みずに、そんなことを考えている。

「――!」

上記のとおり。
もし青年の注意をずらすことができたのならば、突き破られたポイを無駄にせずにすむだろう。

/すみません。眠気が迫ってきたので、ここでいったん中断か終わりをお願いします…!
919 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/08/08(土) 05:10:32.88 ID:CFhtOSOs0
>>918
和泉の挑戦がどのようなモノになるのか、その行く末を見守る最中、不意に何かに背中をつつかれるような錯覚を覚える。

「ああ……?」

しかし、椅子の後ろは備品箱や水分補給用のスポーツドリンクしか置いてなく、さらにその後ろは壁である。が、それを鹿島は忘れていたのか気になって背後を振り向いてしまう。振り向いても何もない事は知っていたが時既に遅く。

「───っと、…………!?」

また振り向き直した時には、和泉の持つ椀の中にスイスイと泳ぐ生きのいい金魚が一匹いた。
………「ポイは破られていたが」。
大凡、自分が意識を別の方に向いた時に「何か」仕掛けていたのだろう。しかしそれを踏まえても自分を出し抜いたという事に思わず笑みが零れる。

「ほぉーお客さん、なかなか面白い技を覚えているとはなぁ」

しかし良く見るとポイを映す影…水槽の中の影の部分に不自然な「蜥蜴の尾」が人知れず漂っている。鹿島はそれを見抜き、それがどのような能力なのか聞こうとしたが───。

『スマーン! ちょいと遊び過ぎてたわ、交代の時間だ!』

2人を割り込むように走ってきたのは鹿島と同じクラスメート。そんなに急いでいたのか、額には汗が垂れ、浴衣の背中の部分もうっすらと汗が染み込んでいた。

「おっと。 もう交代の時間か…」
「お客さん、まあ余興の分としてパフォーマンスしてやろうかと思ったが交代だからなァ〜……続きはまた今度って事で───じゃあな!」

待ち遠しく感じたのか、交代した途端に屋台から飛び出し、一刻も早く楽しむ為に走っていく。その最後の捨て台詞は、

「取り敢えずポイ一個分として100円払うのを忘れるなよ、蜥蜴野郎!」

という随分と間抜けなものであった。

//これで締めます、お疲れ様でした
920 :詐欺間 湊 :2015/08/08(土) 15:32:24.73 ID:WD2jVDp30
超聖夏祭が行われている学園都市。そこのとある屋台の一つ、そこにちょっとした人だかりがあった。
特に人気な屋台というわけでもない。ではなぜこんなにも人が──

「まぁ、たまにはこういうのを楽しむのも悪くないか
久しぶりだな、こういう祭りは」

屋台の前に立ち、詐欺間は呟く。普段の服装とは違い、ジンベエを身にまとい、口には何かを食べた後であろう串を加えている。
そんな詐欺間が居る屋台は、射的だった。
しかし妙だ。棚に並んでいるはずの射的の的は無く、全くの更地。
それもそのはず、全て的は地面に落ちていたのだ。
もちろんその犯人はこの男。

「おっさん、これで終わりなの?
もう景品はないのかい?」

『か、勘弁してくれ坊主…これじゃあ商売にならねぇよ……』

どうやらこれが原因のようだ。基本こういう場で能力を使うのはマナー違反。
しかしこの詐欺間は特に能力を使った様子もないのでここまで人が集まってきているようだ。
人混みの中にはただ感嘆の声を上げるものや、何かインチキをしたに違いないと疑う人まで様々だ。
それをどう思うかは人次第、ただ中には詐欺間のことを知っている者も居るようでヒソヒソと噂にはなっているらしい。
921 :和泉 秋介 ◆y7QHc6jCko [sage]:2015/08/08(土) 22:29:39.14 ID:s+WRo1rbo
>>919
少年の目論見どおり、穴の開いたポイは無事にその本懐を果たしてくれた。
不正ではあるものの能力を使ったのは相手も同じ。文句は無いだろうとやや得意げに、胸を金魚を見せつける
とはいえ能力をどの程度知られたかというのはひとつの関心ごとである。何かした、というのはさすがにばれているだろうが……

「あ、はい、――」

期待していたパフォーマンスやらはどうやらお預けらしい。とはいえ屋台のイスにくすぶっていた青年の晴れやかな表情を見れば、
仕方ないとも納得できる。その勢いの良さにうらやましさというかほほえましさを感じながら、ゆったり片手を挙げ応える。

「っ、と、とかげ……!?」

そこまでばれていたのか。
別れの際になってまで驚かされながら、百円玉を手にする。
そうして少年は、忙しない相手の背中を見送るのだった。

/随分遅れましたがお疲れ様でした、ありがとうございましたー
922 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/08/09(日) 03:06:52.76 ID:hDo/s4SA0
>>920
───射的をウリにお客から金を稼ぐその屋台。大抵のそういう系統の屋台は”取れにくい”ように色々と弄っているものだが、如何やら其れを完璧極まりない攻略をした人間がいるらしい。
……屋台の周りに形成された小さな人の塊の中に、感情の掴めない碧眼でその様子を傍観する人物が1人。
多くの人が驚愕の表情を浮かべ拍手喝采を贈る中、その人物は不敵な笑みを浮かべる。ニィーッと頗る機嫌の良い愉快な歪み。

「………………………………。」

人の塊の中に不敵な笑みを浮かべながら佇むゴーグル少女───創ノ宮つくりの右手には1丁の拳銃があった。そして其れを静かに……構える。
引き金を司る人差し指に力が入り始める───、


「───ッ!!…………どう……ですかね?」


──其れからは直ぐだった。パァン!という乾いた音が彼女の拳銃から弾が放たれた事を示す。
拳銃から放たれたのは普通の弾ではなく、矢の先に吸盤のついた特殊弾。
勢い良く拳銃から放たれたその特殊弾は、吸い込まれる様に詐欺間の射的銃へと飛来する。
突然の来訪者に唐突な弾丸。
人混みから放たれたその凶弾(?)に詐欺間はどう反応するか、果たして。
見事ヒットしたならば、どよめきが起こり、その犯人の姿が露わとなるだろう


//遅すぎますが、もしよければ……!
いつ返してくださっても構いませぬー

923 :詐欺間 湊 :2015/08/09(日) 11:45:17.87 ID:/c5H9qt50
>>922

「歯応えがないことだね、さて今度はどこの店を──」

もうここには用は無い。詐欺間が次の獲物を求めその場を離れようとしたその時──

パシュンッ!!

突如として現れたその飛来物は、詐欺間の射的銃へと。
周囲の視線はそれを放った人物へ自然と動く。そこには銃を構えた女性が不敵な笑みを浮かべていた。
いきなりの急展開に周りの人混みがざわめく中、詐欺間だけはその女性と同じ、不敵な笑みを浮かべる。

「これはつまり…僕への挑戦状かな?
中々面白いことをしてくれるじゃないか」

吸盤がくっついた射的銃を尻目に、詐欺間は言う。それに反応して再びどよめきが起こる。この状況、しかも祭りの熱に当てられた学生たちが盛り上がる。
さぁ場は整っている。果たしてつくりこの場をどのように振る舞うのか。
924 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/08/09(日) 13:31:23.78 ID:hDo/s4SA0
>>923
「……ふっふん♪命中命中〜♪」

風紀委員が近くを見張ってない事を良い事に行った”発砲”。放たれた悪戯弾は見事、詐欺間の射的銃に綺麗過ぎる直線を描いて着弾する。
それを見るや否や、右手に持った銃を肩あたりの高さまで掲げて自慢げに笑うその女。
都市のはずれで『創工房』という知る人ぞ知る機械屋を営む女店主。情報を広く扱う詐欺間の脳内にも、もしかしたら存在しているかも知れない。

人混みが動き、つくりと詐欺間の間の道を形成する。銃をクルクルと回しながらそのゴーグル金髪女は愉快なステップを刻みつつ、詐欺間の元へと歩みを進めていく。

「いやぁ〜〜、別にこんな事をする予定は無かったんですけどね?
射的でもやろうかなぁと思ってぶらついてたらこんなに賑やかな催し事があったもんですから!」

詐欺間との距離は約3メートル程。程よい距離感を保ったまま、彼女は言葉を紡ぎ出す。

クルリン──と、先程から回していた拳銃を宙に放り投げる。
それが重力という力を前に、再び彼女の右手に戻ったかと思えば…彼女はその銃口を詐欺間へと向けた。悪戯ッ子のような笑みを浮かべて──、

「────勝負をしましょう。射的を完全攻略した何処かの誰かさん?」

──思い切った宣戦布告。言葉と同時にウインクをして、詐欺間の返答を促して待つ。


925 :詐欺間 湊 :2015/08/09(日) 14:08:52.73 ID:/c5H9qt50
>>924

「いやだなぁ、僕はただ"遊んでた"だけだよ」

この祭りでは喧嘩はよくあることだ。しかし今回のようなことは珍しく、いつの間にかギャラリーは先ほどの倍ぐらいに増えていた。
しかしそれには目もくれずに詐欺間はつくりの方を見ている。

「…なるほど、どこかで見たことあると思えば、君は創工房の店主か。
その目立つゴーグルを見て思い出したよ」

「ふっ、いいだろう。
その勝負、受けてたとうじゃないか」

詐欺間の勝負の承諾に歓声が上がる。もはやちょっとしたイベント状態である。
口にくわえていた串を手に持ち、まるで狙いを定めたかと言うようにつくりを指す。

「だがただ勝負をするのはつまらない。
どうだい?祭りが終わるまで負けた方が勝った方の言いなり、なんていうのは」

詐欺間が示すその条件はつまり、残りの祭りの時間すべてを賭けることに等しい。
だがこれぐらいリスクがなければ面白くない。どうやら自分も祭りの熱に当てられたようだと内心笑う。
だがこの状況を詐欺間は楽しんでいた。
この祭りに来て良かった、こんな楽しいことが待っているとは。

「さぁどうだい?受けるか受けないかは君の自由だ」
926 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/08/09(日) 15:15:01.12 ID:hDo/s4SA0
>>925
「──おお、最近ワタシの知名度上がってきてます?オオォ!!キタァァァァ!!」

…と銃を構えて割と真面目な対峙の場なのだが、詐欺間が自分の事を知っている言動をしたので謎のガッツポーズ。──だって、店に知名度は大切だからね!
…そんな気分の盛り上がりが暫く続いた後、彼女は漸く元の勝負を受ける姿勢に戻った。
ゴーグル内の双眸は、至って冷静に詐欺間の姿を見据えている。彼女も、周りの観客達の姿などこれっぽっちも目に映しては居なかった。
自らの宣戦布告をあっさりと承諾した詐欺間に対し、彼女は待ってました!とばかりに三日月型に口を歪ませた。彼が提示した”賭け”とやらにも、全て了解した笑みである。

「──勿論、ワタシがふっかけた勝負なんですからそのくらいの賭けは乗るのが道理。
……全てを了解して、「創工房」店主、創ノ宮つくりが受けて立ちまーす☆」

ピース。高翌揚した気持ちを表すように掲げられる元気な二本指。──あざといと捉えられても何ら可笑しくない立ち姿であった。
…と此処である事に気付いた工房店主は「そうだ!」と分かりやすく言葉を発して、それを伝え始める。

「……恐らく、ワタシ達ならこの屋台で普通に射的勝負しようにも簡単すぎて勝負にはなりません。
……なので、どうせやるなら。
───本当の撃ち合いにしませんか?勿論弾は先程の悪戯弾を使って。」
927 :詐欺間 湊 :2015/08/09(日) 17:09:05.29 ID:/c5H9qt50
>>926

「い、いや君の知名度っていうか、僕はこの学園都市については結構詳しいから知ってたんだけど……
まぁ実際人気なのには変わりないか」

まさかあの店の店主がこんな性格だったなんて。
テンションが上がると周りが見えなくなるタイプだろうか。暫く盛り上がっているつくりのテンションが下がるのを待ち、勝負を受ける姿勢に戻ったのを確認すれば仕切り直す。
こちらを見定めるかのようなゴーグル内の瞳は冷静にこちらを見定める。

「じゃあ早速勝負といこうか──って言っても、まだルールもなにも決めてないけどね」

さてどのようなルールで決闘をするか。それを考えようとしたとき、丁度つくりがあることを提案した。
確かにそれなればお互いの実力によって勝敗を決めることができる、もちろん断る理由などない。

「おーけ、じゃあそれでいこうか。
あ、銃はどうするんだい?まぁ僕は別にこれでも構わないけど」

そういって詐欺間は自らが持っている射的銃を示す。これは屋台のものであって詐欺間のものでは無いのだがそこら辺は気にしない。
928 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/08/09(日) 18:35:11.25 ID:hDo/s4SA0
>>927
「……銃、ですね!
流石にその射的銃だと貴方の全力は出し切れないですよね?───────ならばッ!!

……ちょっとお待ちくださ〜〜〜〜〜〜い!!」

全力を出し切れない……というよりか、もし詐欺間があのスナイパーライフルの様な射的銃を使用するのであれば彼女としては圧倒的に有利だ。
照準の定めにくいスナイパーライフル型と比べて、スピーディな戦闘が要求される対人戦では彼女の右手にある拳銃型が、俊敏性においては凌駕している。
創ノ宮つくりも勝負を吹っかけるだけあって技術はかなりのもの。それは、人混みの中から詐欺間が手にしていた射的銃に見事弾を命中させた事から十分に察せるハズ───。
突然、声を上げつつ彼女はその場から走り去った。少し離れた所にある茂みに入ったかと思えば数秒後、何かを持って急いでこちらへと駆けてくるつくりの姿。

詐欺間の前に立ち、「どうぞ」と短く言ってからそれを差し出して言葉を続けた。

「ワタシが持っているものと同じものを用意しました。……弾もセットしてあります」

──然しこの銃。何かがおかしいのである。
何故かその銃には”普通の銃ならばないはず”のボタンが二つ程付いているのである。
だが彼女はそれを敢えて口にはせず、そのボタンに気づかれない様に何気なく渡した。

─────────────────────────────

▼銃のボタン機構
赤→変形して明るいLEDライトに変化。
青→変形して特殊警棒へと変化。

どちらも同じボタンを押せば元に戻る。

─────────────────────────────


「あとは……これを胸につけてください。
此処に命中させる事ができればその人の勝ち!ですね!」

と的の様な物を渡す。彼女の言葉通りに使用できるように、裏面は強い粘着性がある様だ。


「ギャラリーも集まってますし……始めますか?」


チラリと横目で見れば、彼女達の姿を録画するカメラマンが。こいつは決して偽物ではなく、面白そうな事が起こってたのでそれを番組材料にしようという連中である。
つまり──この様子は、絶賛生放送中継中。風紀委員が勘づくのも時間の問題だ。
詐欺間が彼女の言葉に応答したら……それが開戦の合図となる。

929 :詐欺間 湊 :2015/08/09(日) 19:19:20.22 ID:/c5H9qt50
>>928

「……いや、僕はこちらで行かせてもらおう。
僕は結構射的が得意でね、そういうタイプの銃より、慣れ親しんだこっちの方が上手く立ち回れそうだ」

なんとあろうことか詐欺間 湊、拳銃タイプの物ではなく詐欺間が今持っているスナイパーライフルタイプの銃を使うと言うのだ。
これには辺りのギャラリーも困惑を隠せない。この銃では大きさの関係で立ち回りには不利、明らかに拳銃とは相性が悪い。なのになぜわざわざそちらを──

「これをちょこっとカスタムすればっと……」

詐欺間はどこから取り出したのかその射的銃にぴったりとはまるアイアンサイトを持つと射的銃に取り付ける。
そして次に施すのは、何やら一旦射的銃をバラし、何か仕掛けを施した。この仕掛けというのは、この銃を撃つ時にフルオート機構を付けることができるというもの。
これで簡易的だが、普通のものよりも大きいアサルトライフルぐらいにはなっただろう。
まさか情報収集の役に立つかもと思って持っていたものがここで役に立つとは──

「えっと、これを胸にね。
なるほど、だいたいのことはわかったよ」

「ギャラリー…?ってなんでこんなに……
…カメラマンまで居るじゃないか…!あまり目立つと今後の仕事に差し障るんだが……
というかこれ以上変な噂を流されて欲しくない」

「変な噂」というのはガイアとの交際のことだろう。この一件で詐欺間はあまり目立たないように過ごしてきたのだ。
しかしこれではもろに目立つ、目立ちまくる。
早めに試合を終わらせた方が賢明か……?

「あ、始める前に弾丸の数を教えて欲しい。
わがままを言ってすまない」

確かにそれはかなり重要な情報。これを聞ければ詐欺間はすぐに動き出すだろうが──
930 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 [sage]:2015/08/09(日) 19:41:55.77 ID:hDo/s4SA0
>>929
「ほう……!……ですがワタシもそんな甘くは無いですよ?有利なのに変わりはありません!
───あ、これ所謂”フラグ”ってヤツですか。」

……と断られてしまった拳銃は左手に。どうやら2丁拳銃として扱う様子である。
実はここで更に彼女に有利な条件がプラスされた事になるのである。
──予めセッティングされた弾丸の数は6発。勿論、詐欺間の手にする射的銃もその例外では無い。
…であれば、一つの拳銃につき6発を×2所持している2丁拳銃使いの彼女に有利。当たれば…の話であるが。

「はっはー!超聖夏祭ってこんなもんですよ!面白いものに群がってそんな感情を共有する……今宵、私達はその引き立て役となるのです!!

…ってかそんな流されるような事やっちゃう様な人なんですかあなた」

ビシッと親指を突き立てた右手を顔の前に突き出す。彼女にとってこういう盛り上がった環境は──GOOD。
変な噂が流れる事を心配する詐欺間を一瞬だけ怪しいものを見るかの様に目に映した。

「弾……は6発です!勿論、それが尽きたら他に手段は無いですしその時点で終了となります!」

「──では……Are you ready??」

開始の返事を促すつくり。これに応答したなら、今度こそ玩具の戦乱の開幕である。
931 :詐欺間 湊 :2015/08/11(火) 16:42:03.66 ID:ycsQLZyV0
>>930

「あぁ、僕にはこっちのほうがやりやすいんだ。
下手に慣れてない武器を使うのもね」

実際詐欺間はあまり武器などは使わない。だがこれならば射的で何度も触ってきた、拳銃なんかよりもよっぽど慣れているだろう。
それになにも接近戦をずっとやれというわけでもあるまい。距離が離れれば離れるほど射程距離が長いこちらのほうが有利。
それに2丁拳銃ならば照準を定めるのも難しいはず。

「僕はあまり引き立て役とかはね、僕にピッタリなのは裏方だよ。
裏から色々なことを仕組んでそれ通りに事が動く、最高だと思わないかい?」

なんとも趣味が悪い、これが詐欺間に人があまり寄り付かない理由の一つでもある。
こんな奴が身近に居たらまぁいい気はしないだろう。

「なるほど6発ね、弾が尽きても負け……
だいたいルールは分かったよ。
じゃあ、その前に握手でもどうだい?こんな遊びでも礼節はきちんとしないとだからね」

そういって手を差し出す詐欺間。しかし詐欺間は先ほどつくりが自分へと向けた、自分を怪しむその瞳が気になっていた。
このつくりという女性、なかなかの観察眼を持っている、情報屋にとっては自分の素顔を知られるのは信頼できる人間だけの方がいい、それに至ってこの女性はそれに値するのか──

「──安心しろ、俺はお前が思ってるほど危険な人間じゃないよ」

少々からかってやろうと、もし詐欺間と握手をするのであれば詐欺間はつくりの耳に口を近づけこう囁く。
もし握手に応じようと応じなかろうと、そうすればつくりとの距離を取ろうと詐欺間は走り出すだろう。
932 :創ノ宮 つくり ◆BDEJby.ma2 :2015/08/11(火) 17:52:54.37 ID:py2OBwkYO
>>931
「へへ、確かにそういう風に手の平で”躍らせる”感をお好きな方もいらっしゃいますねー!
……そういうのもいいですケド……ワタシはばーん!と目立つのが好きです!はい!」

…とウインクで星マークを眼から飛散させるつくり。先程からの彼女の行動からも察せる通り、その言葉は完全なる事実だ。──目立ちたがり屋。
普段は自身が営む機械屋の狭苦しい空間に幽閉状態となっているため、休店かつこんなお祭り騒ぎの日は彼女の”自己主張意欲”を駆り立てるのだ。
一年に一度の都市全体の宴……羽目を外すのも悪くない。こうして彼女は意気揚々と詐欺間の射的銃に弾を飛ばしたのだった。

──────────────握手。

創ノ宮つくりは彼の手に直ぐに応じた。作り物か……否、恐らくは天然の物であろうその陽気な笑みと共に手を強く握り返す。
そして耳元で囁かれる様にして伝わってきた詐欺間のからかいについては───、

「───どうですかね?危険な人ほど自分を弱者として演じるものです!」

直ぐに詐欺間は走り去った為、その言葉が彼の耳に入ったかは定かではない。

……観察眼。詐欺間が評価した彼女特有のソレは”能力”と、何より”長年の接客”によって得られたものだ。
そんな眼を護るゴーグルの位置を整え、彼女は距離を取る詐欺間を見据えながら、こう呟いた───。

「…………集中モード。」

……たったこれだけ。他人はおろか自分でさえも気付いていない能力のスイッチだ。
彼女の碧眼が夜の闇に似合わず、一瞬だけ煌めいた様にも感じる。

「……先手必勝ォ!!」

その直後に行われるのは───射撃。
威勢の良い声を上げ、拳銃を手に相手の行動を見定めながら二発………!
両手の拳銃から一発ずつ走り行く詐欺間へと弾が放たれる。……まずは詐欺間の足元を狙う小手調べ。
舌をべろりとチラつかせつつ、詐欺間の対処を待つ。


933 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/13(木) 22:05:59.76 ID:qJXjGyAP0
「……………流石に、こんなとこに置いてる訳ねぇよなぁ……」

学園都市の中央区に存在する図書館。発明される先端技術やインターネットなどによって情報が容易に手に入る今、その存在価値が軽視されている場所である。
確かに情報を得られる速度・気持ちの手軽さであればスマホやらPCやらの機器が凌駕している。
──だが、今現在番長姿の少女が探しているのはそんなネットの世界の何処にも存在しない、否、存在してはいけないモノに関する文献。
外界に漏れる事すら禁忌とされるソレの名は───、

「───”魔術”。
錬金術だとか胡散臭いのならあるんだけどなぁ。もう寧ろハリ○タでも読んだ方が参考になる気がする。」

某有名魔法使いの小説を挙げて、膨大な資料を前に愚痴を零す。
眼前に広がるのは所狭しと連なる分厚い本の数々であるがそのどれにも”魔術”に関する記述はない。見落としている可能性があるのを考慮しても、情報が限りなく少ないのは明確だ。
「ん〜〜」と一度大きく背伸びをしつつ、再びその文献を読み漁る…………これを繰り返す事約半日。そろそろ彼女の脳も限界に近づいている。
”魔術”っぽい記述のあった幾つかの本を抱え、貸し出しカウンターへと向かっていく。
───────────────然し。

「────────うわぁっ!!」

少女の間抜けな声が静寂に包まれた図書館内に響く。どうやら妙な溝があったらしくソレに足を引っ掛けて盛大に前に倒れこんだらしい。
何処か普通の少女らしく胸にその本を押し付けて両手で包み込むようにして運んでいた為に、それらの方は少女の前方へと勢い良く飛んで行った。
……何とも憐れなその醜態。真面目の集う図書館に彼女を助ける者などは今現在居ない。

さて、時と場所を同じくして彼女を目にした貴方は──────どんな人物なのだろうか。
番長を名乗る少女は今も床にぴーんと伸びて這いつくばっている。


//二刀流……否、三刀流!
遅くなりますがよければどぞどぞー
934 :御厨伊織 ◆IT8q7Zitvg :2015/08/14(金) 12:39:23.99 ID:+z403nu1O
>>933
「…すみません。」

少女の頭上から声がする。ただことではない物音を聞きつけて駆けつけてくれたのだろうか。

「起きてくれませんか。邪魔なんですけど。」

…違ったようだ。
声の主がかけた言葉は少女を気遣うどころか邪魔だから早くそこを退いてくれと言っている。
普通ならすぐに手を貸すものだが声の主は声をかけただけで何もしなかった。
そして…そのまま手を貸すことなく1〜2分が経過した頃、声の主は仕方ないといった風に大きなため息をつくと少女が撒き散らした本を拾い集める。
本を拾うだけで少女に手を貸すことは無い。飽くまで助け起こすということはしないつもりらしい。

「打ち所が悪かったのか…?まさかな。起きてくださいよ。本、拾っておきましたから。」

少女が顔をあげれば、灰色の髪をした細身の少年が集めた本を持ってしゃがみ込んでいるのが見えるだろう。
少年はいかにも面倒臭そうな顔をして少女を見下ろしている。

//ここでは初めてロールします。良ければよろしくお願いします。
935 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/14(金) 16:15:04.57 ID:3GkmLhQ30
>>934
「…………ってて………………ん?」

見事な転倒を極め、眼前に広がるのは白く綺麗な床。そして頰に走る痛み……強打した。
頰を摩りながら起き上がろうとしたその時、頭上から自らを蔑む様な言葉が降ってくる。
なるべく迅速に体を起こし、座り込むことで声の主との視線の高さを合わせる番長服姿の少女。
眼に映るは灰色の髪の青年。そしてその手には自らが放り飛ばしてしまった数冊の分厚い本があった。

「……ん……ごめん………。」

本の捜索に凄まじい程の精神力を費やし、殆ど有力な物を見つけられなかった挙句、転倒し「邪魔」と投げかけられる始末。
漢!という雰囲気をその服装から醸し出す少女は何処か似合わず、シュンとして謝った。
人の言葉を真っ当に受け取る彼女からすればストレートな「邪魔」は割と堪える。

「…えっと……その……本……。」

依然として座り込んだまま、彼女は青年の手にある自らが借りる予定の本達を弱々しく指差した。
柄に似合わず公共の場を汚してしまったという若干の罪意識があるらしく、遠慮しがちな人差し指。
自らが借りる予定であるのに関わらず、青年の手にある本を受け取っても良いのかどうかしどろもどろしているのだった。
936 :御厨伊織 ◆IT8q7Zitvg :2015/08/14(金) 16:44:12.06 ID:+z403nu1O
>>935
「本……あぁ、お返ししますよ。」

少女が指差したそれを少年は差し出した。本の表紙と少女を見比べ怪訝そうな顔をしている。
そして本を渡すや否や少女に何も了承を得ず先に貸し出しの手続きを済ませにカウンターへ向かった。
そして少年は手早く手続きを済ませると、再び少女の下へ戻ってきたのであった。
他に何か用事があるのか。それとも、まだ言いたいことがあるのか。

「あの…、重いんならその本持ちましょうか?」

少年が口にしたのは辛辣な言葉ではなく気遣いの言葉だった。
言い慣れていないのか少女から目線を少し逸らしながら。
937 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/14(金) 17:31:58.81 ID:3GkmLhQ30
>>936
「………………あ、ありがと。」

何処か嫌な比較をされた様な気がしないでもないが、其処は気にするべきではない。
青年が差し出した本を短い感謝の言葉と共に受け取りつつ、服についた埃を払いながら立ち上がった。
「邪魔」という言葉が心に残っていたのか、直ぐにカウンターへと向かった青年をぼーっとした顔で眺めていた。──何たる間抜け面。

暫くして我に返った少女は、ビクッと肩を震わせた。気が付いた頃にはその青年は自らの前に立っていたのだから。
また愚痴でも言われるのか、と身構えつつ彼の言葉を待つ。その言葉は直ぐに彼女の耳へと届いた。

「───────え?
……あ、いや、いいよ。重いとかそんなんじゃなくて見事に其処の溝に足掛けちまってさ………」

彼女へと飛来してきたのは意外にも”気遣い”。
地面に伸びた番長服を見て「邪魔」と言った青年とは思えない、優しい心遣いだった。
よく見てみれば何処かぎこちなく、こちらへと視線を合わせようとはしない青年。そんな様子に番長服の少女は口を綻ばせた。

そして「あ、ちょっと待ってて」と片手で静止を促す素振りを見せ、急ぎ足で重たい本を抱えてカウンターへと向かっていく。
御厨が既に本の貸し出しを終えた様なので、取り敢えず其れに合わせよう……ということらしい。


─────────────
────────
────
──


「……いやぁ、ごめんごめん。
さっきはあんがとな!邪魔……ってのは案外キタけど……ひょっとしてあれか?ツンデレって奴?」

……と貸し出しを終えて戻ってくるや否や、馴れ馴れしく感謝を述べる残念番長こと高天原いずも。
喧しい程の笑顔をその顔に浮かべつつ、さらに言葉を続けた。

「……オレは高天原いずもってんだ、よろしく。
お前は………………?」

と右手を差し出しつつ、名前を聞き出そうとする少女。其れに応じたならば握手……ということになるだろうが果たして…。

938 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/14(金) 17:32:40.34 ID:3GkmLhQ30
//すみません気づくの遅れました……
言い忘れてましたがよろしくお願いします
939 :御厨伊織 ◆IT8q7Zitvg :2015/08/14(金) 18:16:25.49 ID:+z403nu1O
>>937
「そうですか。それじゃ…俺はこれで。」

少女が手助けを必要としていないことを確認した少年は、あとはもう用など無いといった風にその場を立ち去ろうとする。
すると少女は、待っててほしいと少年を呼び止めた。仕方なく少年は彼女が手続きを終えるまで出入り口付近の壁に寄りかかり待つことになった。
少しして手続きを終えた少女が戻ってきた。彼女が喧しい笑顔と共に投げかけてきた言葉に少年は露骨に嫌そうな顔をした。

「違います。あなたが床に突っ伏したまま動かなかったから…他の人の目もあるし。だいたいそういう格好をしてるから、変に目立つ羽目になるんですよ。」

人によっては気さくと捉えるかもしれない。しかしこの時少年はそうは捉えなかった。何より少女の装いが異様だった。まるで一昔前の番長そのものではないか。
かくいう少年もきっちりと黒い学ランを着ていながら髪は灰色という、人のことなど言えないような姿なのだが。

「御厨、と言います。御厨伊織。」

差し出された右手に応えて左手でそれを握るがその力は弱々しく、ひんやりとしていてどこか強張っていた。

//すみません、こちらこそ言い忘れていました…よろしくお願いします
940 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/14(金) 18:42:37.83 ID:3GkmLhQ30
>>939
「お前……………………っ…」

───番長姿。季節や場所構わずに彼女が身に纏っている其れは”高天原いずも”という人間を象徴するシンボルといっても過言では無い。
身の内の嫌悪感を少女に投げつける御厨。その言葉に少女は少し俯き、歯軋りをした。両手の拳も固く握り締められる。
自分自身がどんなに言葉によって汚されようが、構わない。……ただ、”番長”という概念が言葉によって汚されるのは我慢ならなかった。
其れは高天原いずもという少女にとって憧れ………否、夢と捉えても問題のないものだった。─────────────だから。

少女は歪んだ顔を真っ直ぐにあげる。嘲られた”番長”に対して憤怒の形相を浮かべるのか──、

「っ…ははははは!!なぁに言ってんだ!
お前だってっ…はははっ!目立ちまくってんじゃねぇかっ」

然し、其処にあったのは依然として、御厨の嫌悪の対象たる爽やかな笑みであった。
……どうやら先程の歯軋りは”怒り”や”悔しさ”なんて禍々しい感情ではなく、ただ単に笑いを堪えていただけらしい。黒も灰色…反対色とはいかないが目立っているのは事実。
──キラリと煌めく八重歯。少年っぽくもありながら少女っぽくもある、無邪気な笑顔だった。
暫くして落ち着いたのか、其れとも図書館内の人間の冷ややかな視線をその身に受けたのか、静寂を取り戻す。
其れを取り繕うような言葉と素振りを加え。
──青年の名前を耳にした少女は。

「……おっほん。伊織……かっけぇな!
これも何かの縁だ……!よろし……く……?」

握り返された右手に一筋の違和感が走る。まるで病人の様に弱々しい力で握手に応じる青年の手。
訝しげな表情を浮かべつつ、その双眸で御厨の様子を伺ってみる。…心配の意を表する言葉を添えて。

「……お前…大丈夫か?やたら冷たい……けど」
941 :御厨伊織 ◆IT8q7Zitvg :2015/08/14(金) 19:04:11.06 ID:+z403nu1O
>>940
「……なんですか。」
少女…いずもに対し表情を一つ変えずにそう返す。
動じてないように見えるがこの時少年…伊織はこの不用意な発言と行動を後悔していた。
自身の口の悪さと心根の捻くれ具合。自身の身に起きた異変とそれによって激変した環境。転校し一人でこの学園都市に移り住むことでそれはさらに拍車がかかり。
そんなものだから相手を拒絶し、必要以上に突っぱねてしまうのだ。
しかしそんなことは相手にとって関係無いだろう。殴られようが蹴られようがやられて仕方がない。そう脳内で結論付けた時……少女が笑った。

「……っ、あっ、あなたよりはマシですよ!」

つい大きな声で反論してしまった。その結果周りの視線は2人に集中することになる。
その視線にとても耐えきれなかった伊織は握手を済ませるといずもの心配をよそに図書室を出ようとする。
その声はさっき冷たい言葉をかけた人物と同一とは思えぬくらい起伏に富んでいた。

「そんなことはいいですから…ここを出ましょう。もうここに用事は、ありませんから…!ここでなくても話はできるでしょう…?」
942 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/14(金) 19:29:40.99 ID:3GkmLhQ30
>>941
「うお……!こりゃまずいな」

ふと視線を移せば二人に冷酷極まりない眼光を飛ばす学生達の姿。図書館で勉強している真面目ちゃんからすれば自らのオアシスが汚されかけているのだ、堪ったもんじゃない。
「馬鹿」を体現する高天原いずもにも一般常識は備わっている。
ささっと退散する御厨と同じ様に足早に図書館を立ち去ることにした。……重い荷物で若干もたついたが。

─────────
───────
────



かくして図書館を出て、目の前の大通りを背が同じくらいの二人の男女が歩いていた。もっとも、女の方は完璧な男装である為に一見その判別はつきにくいが。
分厚い本を何冊も抱えた少女は、歩きつつ横にいる少年へと問いかけた。先程の問答の続きだ。
自らが感じた違和感を投げかける。

「……んで伊織、大丈夫か?
さっきの握手で妙に冷たく感じた……というか……。」
943 :御厨伊織 ◆IT8q7Zitvg :2015/08/14(金) 19:40:40.05 ID:+z403nu1O
>>942
殴られはしなかったが変な注目を浴びてしまった。
なるべく目立たぬように行動することを常日頃から心掛けていた伊織は自身の行動を酷く後悔し、恥じた。
いずもと並んで歩くも決して彼女を見ることは無く。終始俯いたまま歩く。

「手は…平気です。元から…そうですから。」

左手を庇うように右手を重ねる。
確かに血は流れているはずなのだが、それにしては彼の手は常人よりやや冷たかった。
これ以上触れて欲しくないのか、それとも単純な興味なのか。今度は伊織がいずもに話しかける。

「高天原さんは本が好きなんですか?それとも…調べごととかですか?さっき拾った本、なんだか見慣れないものばかりでしたけど…。」
944 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/14(金) 20:00:59.53 ID:3GkmLhQ30
>>943
「…………ん、そうか。」

何処か落ち込んだ様な御厨の様子を、高天原いずもはその眼に映していた。”番長”を名乗るだけあってそれなりに他人と接する機会は多い。
短くそう言い切った少年の言葉は、これ以上は聞くべきでは無いという意識を少女を喚起させた。
……なので、これから其処に触れる事は極力避ける様に意識を向けた。


「─────!!
……あ、ああ。オレの友達にやたらこういうのが好きな奴がいてなー!暇だからお使いやってやろうか………と。」

突如として投げかけられた話題。学ランを羽織る高天原いずもはビクリと肩を震わせた。
抱えた方を見ると「錬金術」や「魔法」や「西洋科学」「ハリー・○ッター」などの分厚い本が山積みである。
これは”魔術”についてを調べる為の書物であるが、”魔術”なんて物騒な単語を初対面の人間に軽々しく話すべきではない。
……でも、自分が厨二病だと思われて引かれるのもまた許し難いので架空の友達を作り上げてそいつに責任を押し付けたのだった。
若干動揺を隠せないいずもだが、それを見た御厨は……どう感じるだろう。
945 :御厨伊織 ◆IT8q7Zitvg :2015/08/14(金) 20:25:00.24 ID:+z403nu1O
>>944
いずもが借りた本はいずれも魔術に関するものだった。ハリー・○ッターはちょっと違う気がするが…。
その友人とやらは余程魔術に興味があるのだろう。いずもがでっちあげた事情を聞くと御厨はこう返した。

「へぇ…そうですか。好きなんですね、そういうの。俺はそういうの全く興味無いから読んだことないです。」

笑い混じり…それも冷ややかな笑い。
この都市に来て間もない彼は魔術というものを信じていなかった。異能というものをその身に宿していながら…。
異能だけで十分だ。魔術なんて出てきたら世も末ではないか。彼の零した笑いはそういった思いを内包していた。

「それじゃあ、その友達のために本を借りに行ってたんですね。その…さっきはすみませんでした。少し…言い過ぎて。帰ったら、冷やしたほうが良いですよ。」

いずもが「邪魔」という言葉を気にしていたことを先ほどの発言で知った伊織は、目こそ合わせなかったものの冷たすぎた自分の発言を謝った。
彼の右手は自身の片頬を指差している。
946 :高天原 いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/08/14(金) 20:53:49.33 ID:3GkmLhQ30
>>945
「……ん…ああ、別にいいっての!
邪魔だったのは紛れもねェ事実だったわけだしよ。
こいつも慣れっこだ!」

……と自らの人差し指で赤みがさす右の頬を指差した。先程の転倒で見事な強打を極めた箇所だ。
少し腫れていて不恰好ながらも、そんな事は諸共せずに少女の顔には笑顔があった。
よくよく見れば彼女の右手はボロボロの包帯でぐるぐる巻きにされていたり、身体のところどこに痣があったり……と彼女の「慣れている」という発言を説明付けている。
確かに最近は色々と事情が重なって戦闘での怪我が多いな、と彼女も身の内で感じるほどだった。

話題を切らさないように、再びいずもが口を開いたその時──、

「……ん?」

プルルルル!と勢い良く、彼女の学ランのポケットから響く着信音。
怪訝な表情を浮かべつつ、御厨に「ちょっち待ってな」と一言おいてからスマートフォン端末の画面をタップして電話に応じた。

「……あー……マジか。…………すぐ行かせてもらう。」

……と待つ少年をよそに電話で会話する少女。
然し、それほど時間はかからなかったらしく彼女が再び端末を自らのポケットに入れたのは僅か1分ほどであった。
何気無く頭を掻きつつ御厨の方を向いて、

「ごめん伊織、もっとオレぁ話したかったんだけど…ちょっと外せねぇ用事が出来ちまったみたいで。」

と顔の前で両手を合わせつつ、申し訳なさそうに一礼。
豪快な番長を気取る人物が人通りの多い歩道でこんな事をしているのは正に珍百景とも言えるが。
余程の急用なのか、「すまん!」とキッパリ言い切ったのちにその場から走り去っていった。
────自らの連絡先が記された紙切れを、その場に残して。


//すみません!ちょっとこれならリアルの方でも急用入ってしまいまして…
強引で身勝手で申し訳ないのですが……これで〆とさせていただいてもよろしいでしょうか……?
947 :御厨伊織 ◆IT8q7Zitvg :2015/08/14(金) 21:03:19.09 ID:+z403nu1O
>>946
「…そうですか。なら俺に構わないで、急いで行ってあげてください。」

急用が入ったと告げるいずもに伊織は特に名残惜しそうにするわけでもなく早く行くべきだと言った。
別れの言葉を言う暇もなくいずもは疾風のような速さで遠くへ駆けていく…。伊織はその背中を小さくなるまで見送っていた。

「…ふぅっ」

また一つ大きな溜息をつく。短時間とはいえ人と言葉を話すことなんてそう無かったので、伊織は疲れてしまった。
気がつくと足下に紙切れが。拾えばそこには彼女の連絡先が記されているではないか。
じっくり見ることなく伊織はそれをズボンのポケットに突っ込んだ。

「全く…変なやつに拾われたらどうするんだ。また会ったら…返さないと。」

そこで自分がおかしなことを言っているのに気づく。そんなことをしなくても捨ててしまえばいいのに。なのに伊織はいつのまにか「また会ったら」という言葉を口にしていた。
らしくないことを口にしてしまったと呟きつつ、伊織は今日も1人帰路につくのであった。

//絡んでくれてありがとうございました!どうかリアルのほうを優先してください。お疲れさまでした!
948 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/08/21(金) 16:40:08.06 ID:u6SyC30N0
学園都市内、第一学園付近。鹿島衡湘は自分の通学リュックともう一つ、手提げの鞄───中にはとある本を入れて帰途に着いていた。

「校内の図書は自分としては全て読破した、つもりだったのだが───」
「このような本は初めて見る気がする、いや、あの新しい本棚から借りたとして怪しい…が、だからこそ読む気が湧いてくるという事なのか?」

家まで戻って読むまで我慢が出来なくなったのか、鹿島は道路から裏路地へ、人気が少ないような場所を選び移動する。

「だけど…面白そうだな。 これは最近勉強した英語の成長具合を確かめる分にも充分」

壁に寄りかかり、鞄を下ろしてしゃがみこむ。鞄から取り出した「借りた本」は主題からして英語、いや、ラテン語か。明らかに日本語では書いてないその本を開く───。

……科学が進歩し、周辺国よりも著しく成長した学園都市では、その中で世界がどのような事態になっているのか把握する事は、生徒には難しいものであり、認識する為にはこのような外国語で書かれた書物…新聞や雑誌、本からでなければ大抵知る由もないのだ。鹿島のクラスでは調べ学習の一環として世界情勢を書物から勉強するという宿題が課せられていた為に、このような事態に至る。
勿論、第一学園内の図書館でも世界の文献はあり、鹿島もそのつもりでこの本を借りていた。
故に気づく事が出来なかった。鹿島が借りた本は学園都市では知られるはずの無い「魔術」関係の本、魔道書があるとは誰もが気づかなかったであろう。

「……英語じゃないが、何となく、だ」
「何となくだが読める………魔、術? 魔術?」

しかし理解する事ができたのはこの鹿島が借りた本は「魔術」関係であるという事。そして───

「魔術、という事は…能力以外にも異能がこの街に存在するという事なのか?」

だが確証は持てるはずがなく。もし、この場に誰かが居たならば、この問いを鹿島は投げかけるだろう。それが「能力者」であっても「魔術師」であっても、だ。
949 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [saga]:2015/08/21(金) 20:06:44.22 ID:Q4SwX41V0
>>948
/まだいらっしゃいますか?
950 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/08/21(金) 20:54:07.80 ID:u6SyC30N0
>>949
//良いですよー、0時辺りまでなら出来ますがどうでしょうか?
951 :箕輪 宙 ◆oEVkC4b3dI [sage saga]:2015/08/21(金) 22:06:04.79 ID:Q4SwX41V0
>>950
/すみません、23時に一度落ちるので今日の所はまたの機会にさせてください
/こちらから言い出しておいて申し訳ないです……
952 :鹿島 衡湘 【Level.3 流動操作】 ◆6DCo2Q6QI. :2015/08/21(金) 22:10:51.99 ID:u6SyC30N0
>>951
//了解です、まだ>>948は募集中という事で
953 :ゲリライベント《”悪”を担いし”制裁者”》 :2015/09/09(水) 19:49:28.31 ID:KStO6F4Q0
「─────嗚呼、憐れな贋物共。」

──学園都市。その響きは何処か「最新」だとか「最先端」だとかいう心地良い物であるが、その中にも”廃れた場所”という概念は存在する。
厳密には、急速に発展した学園都市に乗り遅れた過疎地域……であろうか。
所狭しと林立する倉庫街はシャッターを閉ざして、寧ろ繁栄を退けているかのようにも思える。そしてそんな場所こそ”不良”などのならず者達にとってはオアシス的存在であった。
──然し、明らかに様子が可笑しい。普段ならば閉ざされたシャッターが全開し、断末魔のような叫びが轟いている。既に日は地平線の彼方へと落ち、周囲は血生臭い闇が占拠していた。

「贋物が”悪”を語るお陰で相対的に”正義”までもが贋物と成り下がる……負の循環よ。」

『…………や…めて……くれ……』

その倉庫には僅かに明かりが灯っていた。不良達が利用していたのだろうか、倉庫内を照らす蛍光灯は何処か使い古された感じを覚え、よく目を凝らせば埃などの汚れがこびりついている。
─────そして、そんな薄明かりの下。
散らばった無数の”身体の残骸”と血に濡れた床の上に堂々と立つ人物と、隻腕の青年、そして制服姿の少女……の3人。

「…………故に、俺は制裁者。総ての善悪を司る裁きの必要悪也。」

『……っ!!やめてください!お願いします!!なんでもするッ!!何でも言うこと聞くから──ッ!!」

淡々と語り近づくフードの男に対し、隻腕の青年は身体を血だまりへと沈めもがき、懇願していた。どうやら無数の身体の残骸というのはこの青年の仲間らしく、この惨劇を齎したのはこのフードの男であるのは語るまでもない。
制服姿の少女についてはフードの男を凝視し、硬直。目に見えてわかるほどの畏怖に染まり、身体を大袈裟にも思える程に振動させていた。

『許してくれッー!!本当に!!俺にできることならなんでも………』

「……時間切れ。


来世では───いや、来世も見込みなし、か。」

『何でも”………──え”あ”!?!?』

フードの男が青年の頭へと手を伸ばすと、次の瞬間その頭は無残にもグシャグシャに弾け飛んだ。
反動で青年の眼球はへたり込んだ制服姿の少女の前へと転がり、少女は更に身体をビクつかせる。最早気を保つのが精一杯、いつ失神してもおかしくない。
─────次の瞬間、フードの男が少女の方へと振り返った。


「……さて」



血の海という言葉で形容しても強ち間違いではないほどの赤く染まり切った倉庫内。
明らかに異常な空間の中で、フードの男は更なる制裁の為に少女へと着々と歩み寄る──。
偶然か否か、この状況を目にした其処の貴方は……何を思うか。
954 :城ヶ崎 蔵人 ◆UZZXtTVUYY [saga]:2015/09/10(木) 22:10:54.33 ID:Qs0+lNp80
>>953
「…………」

倉庫街。
繁栄の光からは置き去りにされ、ただ退廃の闇だけが取り残された領域。
そんなガラクタ程度の価値しかないように思われる都市の暗部に、酔狂と云うべきか、ある一人の"ふつうの青年"が足を踏み入れていた。

否――より正確で、それでいて奇妙な云い方をすれば、身を寄せていた――とでも云えようか。
ある日、この都市のとある公園で不良数人と交戦、末に撃退した経験は、青年の心にある種の"影"を落としていた。
そしてその影は、青年の心に憑りついたきり終ぞ離れることがない。
とりわけその得体の知れぬ影は、青年の心の奥に潜む――否彼のみならず恐らく万人にとり抜きがたいであろう――ある黒い本性を捉えたきりまるで離さない。
――というよりは、最初から彼らが一体であったかのように、分かち難く結びついているのである。

端的に云えば、"共感"であろうか――それも、自らが撃退した不良達への。
"力"があればそれを使いたい。自分の力の強さを証明ないし確認することで優越心や自尊心を満たしたい。
力こそあれ、暴力沙汰とは程遠かった事なかれ主義な青年が、それこそ初めて味わった勝利という名の美酒。
免疫のないその青年だからこそ、欲望という病魔は何らの抵抗すらも受けずに彼の心を蝕んでゆく――

故に彼は"ここ"へやって来た。同じ自己愛の病人が蔓延る闇黒の領域へと。
何も明確な一つの目的があるわけではない。不良たちを観察するか、あわよくば彼らと接触をするか、あまりにも無軌道な足取り。
いずれにせよ、彼にとっては少し散歩をするぐらいの軽い気持ちであるのだが――

「――――!?
……何だ……!?」

視界を汚す鮮血の海、ヒトならざるヒト、刃物の如く鼻腔を突き刺す鉄臭い異臭。
そして言語を絶する恐怖に見舞われる少女、彼女に歩み寄る"何者か"――
よもや先程から同じ倉庫街の空気を吸う者達が、知らぬところでかのような惨劇を繰り広げていたとは。

青年はどうか。
多少の恐怖?――無きにしも非ず。
非日常との遭遇に対する好奇心?――それも同じく。
またこの学園都市である、襲われた不良達とて戦う能力を持っていたとしてもおかしくない。もし彼らが束になってもあのフードの男に勝てなかったのだとすれば?
否――そんなものはこの際どうでもいい。今青年の心において支配的なのは、"力"を持つ若者としての驕りであり、蛮勇だった。
それに今襲われているのはどうやら女らしい。ならば彼女を助けだし、その後何らの関係の契機とするのも、案外助平な心の持ち主である青年にとっても悪い話ではなかった。

口元が歪になると同時、駆け出し、青年――城ヶ崎蔵人は自身の能力『観念写像<Idea Mapping>』を発動する。

「――――待て!!」

その光景は、フードの男と少女からは、闇のなか突如として燦然と放たれた白い光として現れるだろう。
同時に響く、邪な内心には似合わぬほど真剣な叫び。
光の中から駆けだしてきた蔵人の、白く逆立った髪にワイルドな顔立ち、黄金に輝く瞳、
そして程よく筋肉が付いた背恰好は、少なくとも見た目だけを見るならば頼りがいのある男と映ろうか。

小気味好い足音を数度鳴らした後に前方跳躍した彼は、空中で右足を突き出し、フィクションのヒーローさながらに飛び蹴りをフードの男に喰らわせようとするだろう。
彼の能力強度は未だ最弱の『Level 1』。変身に伴う身体能力向上も異能者の世界においては常識的な域を出ないが、果たしてどうなるか。
955 :《”悪”を担う制裁者》 :2015/09/10(木) 22:38:27.26 ID:3x7YOmMa0
>>954
倉庫内はフードの男が不良を”圧殺”した為に静寂に包まれていた。……其処に残るのは不良の断末魔の余韻と少女の畏怖である。
カツン……カツン………。凄まじい制裁衝動に駆られ一時の間は周りに気を配らなかった制裁者であるが、その足音は確かに彼の鼓膜を震わせていた。

──────────────!!


その”邂逅”は思ったよりもずっと早い到来であった。血に染まりあがった倉庫の支配者の如く仁王立ちする制裁者に対し、城ヶ崎蔵人という青年は躊躇無く行動を起こした──。
ダン!という乾いた衝撃音が倉庫に響いたと同時、制裁者は城ヶ崎の蹴りを自身の顔の前で両手をクロスさせる事で受け止めて防御する。
恐らく、ここで城ヶ崎に走るのは違和感。人間と表すには明らかに硬いフードの男の腕の感触だろう。

「────ほう。」

思わぬ来客の到来に、”善悪”を司る制裁者は右頬が焼け爛れた剥き出しの口を三日月に歪ませる。
蹴りを防御したフードの男はまだ行動は起こさず、後退することで様子を伺う事にした。勿論、制服少女を抱えて人質の様な役割をもたせてから、である。

「…………なかなかの”正義”じゃないか。
其処に散らばった”贋物”は反吐が出る程に”不良”の域を出ないゴミ共だったが……!

────これは楽しめるかも知れないな。」

フードの男は自らの手をポケットへと入れ込み、フードの下から覗く邪悪なる真紅の瞳をギラつかせていた。ボソボソと言っている為に城ヶ崎に聴こえているかどうかは定かでは無いが、聴こえていても彼の言葉は理解し難いものであろう。

次にその男は比較的声量をあげて言葉を発し出した。──これは問いかけ、である。

「……こんばんは、ヒーローになれるかも知れない青年よ。
もし良ければであるが、名を教えてはくれないか?」

956 :城ヶ崎 蔵人 ◆UZZXtTVUYY [saga]:2015/09/11(金) 18:11:46.83 ID:7phw+7lN0
>>955
飛び蹴りを防がれる。
そのとき、反動が右足に響くと同時、蔵人の心の水面にも小さな波紋が立つ。

「(――――こいつ何者だ?異能者であることは間違いねぇが……
俺と同じ能力者か……それとも魔術師か……――――)」

その異形じみた男の腕の感触に対する考察は、2者の存在を同時に浮かび上がらせた。
蔵人が魔術師の存在を知っているのは、かつては自らがそうだったからである。

フードの男が後退すると同時、蔵人も蹴りの反動を利用して空中で身体を後転、
そのまますたり、とこれまたヒーロー気取りな低姿勢に構えて接地した。
同時、頭を擡げると、闇夜にも色褪せぬ黄金の双眸がきっ、と正面の敵を見据えた。

「("正義"?"贋物"?――どういう意味だ……)」

男の魔性を更に裏付ける様な邪な目色、そして意味深な言葉。
変身により人間の基礎的な能力が向上した蔵人は、研ぎ澄まされた聴力で、ともすれば雑音になりかねないその危うい声色を確りと捉えた。
しかしながらその意味は男の本性と同様に、未だ闇の中。今は触れる余地もない。

だが正義――か。もしそれが自分のことを云っているのなら、満更でもない。そう蔵人は思った。
自らの姿が外界にはそう映るのなら――すなわち、正義とは程遠い自己愛と好色を内に秘めておきながら、それが偽装されるのならば――
人の心の壁は最大の砦である。誰も直接にはその中を垣間見ることすら能わない。
周到に取り繕いさえすれば、これほどの安全地帯もなかろう。
蔵人もまた、悪辣な微笑を浮かべる。但し、心の中で。誰にも到達できない完全に閉じられた領域の中で。

そして――

「――――『城ヶ崎 蔵人(じょうがさき くらと)』
……そうだな、"城ヶ崎 蔵人はヒーローである"、か……悪くねぇな。

そういう"定義"を、その名に与えるのもな……!!」

名乗り、そして高らかに宣言した。
心の奥底の本性とは似つかわしくもない、きり、と構えた堂々たる相好にて。
頭に続いて、ゆっくりと身体を持ち上げる。その雰囲気だけを見るなら、高踏的な何かを感じられないではない。
957 :《”悪”を担いし制裁者》 :2015/09/11(金) 20:17:16.61 ID:K2tVCPlw0
>>956
制裁者は依然としてフードの奥から焼け爛れ、不自然に湾曲した口元を覗かせつつ、青年の名を記憶へと刻み込んだ。
その時点からでも既に彼の”魔性”が露わになっており、明らかに異常な性質を持つ人間であるという事を城ヶ崎に知覚させるだろう。
──系統からすると彼が扱う異能は”魔術”。
即ち彼は魔術師であるのだが、ただの魔術師とは訳が違う。城ヶ崎がそれなりの戦闘経験を積んでいるのであれば、目の前に立ちはだかる”悪”が所持する魔翌力は並外れて膨大なものである事を察せるかも知れない。

「………”城ヶ崎蔵人”の名を持つ青年よ。
クックック……こいつは中々に面白いな。
──自己顕示欲、自己満足……大いに結構だ。寧ろそれこそが”正義”の側面……最早核心でもあるとも言えよう。」

制裁者の歪んだ口が僅かに開き、渇いた笑いが倉庫内へと響く。
深く、暗く、黒く、低く……何より'悪く'。あらゆる負を内包しているかの様な無機質めいた笑いである。……制裁者の言葉は尚続いた。

「────それで。ヒーローを名乗る前提として、君はこのお嬢さんを救うのだろう?
……物語には”設定”が付き物だ。という訳で因みに言っておくが、このお嬢さんはそこらに散らばった肉片に誘拐されたらしい。……つまり、こいつを俺から奪う事が出来れば君は完全に英雄となれる訳さ。」

ジャキン!と制裁者の右手に真紅の刀身を宿した刀が現れた。倉庫側面に見当たる斬撃跡を見ると、恐らくそれを施したのはこの刀である。
……左手では制服の少女の髪を鷲掴みにして。
フードの奥から、これまた血の様に赤い双眸を覗かせた男は言い放つ──。

「───さて、採点の時だ。”悪”を担う制裁者、”無銘童子”を以って罪を裁く……!

…………………………城ヶ崎蔵人、お前の”正義”、俺の”悪”に見せたまえよ。」

────然し、その男がとった行動は意外にも”制服少女を城ヶ崎の方へと突き放す”というものであった。
だが、それでいて、”制裁者”こと無銘童子は容赦などはしなかった。
少女を突き放して数秒後、少女の背中へと斬撃を叩き込むべく、大きく飛躍したのである。

──城ヶ崎を狙うのではなく、敢えて不安定な状況下の少女を襲撃。酷く嫌らしいものであるが、これを問えば無銘童子は冷酷に告げるだろう。
その行為が嫌らしくても、小技であっても、もしそれが何の意味を成さなくても。


────────『これこそが”悪”なのだから』と。
958 :イリヤー・ミハイロヴィチ『стихия』level4 [sage saga]:2015/09/11(金) 21:18:05.20 ID:LyVOmG4d0
>>956>>957
対峙する少年と、圧倒的な存在。両者に走っていた緊迫は張り裂け、開戦の火蓋は今まさに切って降ろされようとしていた。
その時。一足早く、それを降ろした者が居た。
それは外に広がる闇から、一筋の紅の閃光として現れた。闇を照らす炎の線は一直線に、"悪"を名乗る男へと走る。
そして光に照らされて、闇の奥に浮かび上がる男の顔は直後、その声を倉庫へ木霊させた。

「……おかしい、と……思っていた……」

彼、イリヤー・ミハイロヴィチは、風紀委員としての職務を全うしようとしていた。
風紀委員でさえ通らぬ倉庫などを通ったのは、彼が風紀委員となって日が浅い事から来る……言わば偶然に起こった事だ。
しかし、彼がここに差し掛かった瞬間、何か途轍もない"違和感"が襲うのを感じた。
日常の平和とはかけ離れた雰囲気、そして圧倒的な"何か"の気配。
倉庫のひとつ、闇の中を覗き込み。そして彼はそこで、すべてを見た。

発した声は明らかに震えていた。その中には、恐怖も確かに存在していた。
だが……彼の中では、それよりも大きな気持ちがあった。先ほど放った熱線に照らされて、はっきりと見てしまったのだ。バラバラとなった、かつて人間であった肉体を。
生命を辱め、貶められた人物がここに存在している。……その事実は彼の中で、許しがたいという気持ちを増幅させた。
そして今その心情は、赤き右目と右腕の光、熱き炎の力として現れていた。
何よりも強い"怒り"として。

「……Я УБЬЮ(生きて帰れると思うな)!!」

怒号が響く。彼が激情にまかせてもうひとりの少年も攻撃しなかったのは、ただの偶然に過ぎない。この言葉は、この場のすべてに向けられている程に大雑把で、それでいて感情的だった。
彼の胸には風紀委員のバッジが輝く。だが、そんな肩書きなど彼にとってはどうでもよかった。ただ彼は、目の前の事象を許す事が出来なかったのだ。
命を侵された、また今まさに侵されようとしている人物が存在しているという、その事実が。

彼は倉庫内へ確固たる足取りで歩を進める。そこに迷いのようなものはなかった。
この悪夢を、この悲劇をすべて終わらせる。彼はその思いで一杯であった。
凍てつく土地から来た男、彼の瞳の赤き輝きは、目の前の者達を見境なく睨んでいた。
959 :《”悪”を担いし制裁者》 :2015/09/11(金) 22:12:14.45 ID:K2tVCPlw0
>>958
その存在──イリヤー・ミハイロヴィチ・ドブロリューボフという青年の乱入は、制裁者にとっても予想外なものであった。
──圧倒的な闇に強引に割り込んできた閃光は、制限の少女を救うには十分過ぎる。火は制裁者のフードへと引火し、彼の体を焼き焦がす。
イリヤーの抱えた怒りの如く、勢い良く紅蓮の炎が巻き上がる。血に汚れた倉庫内に煙が立ち込め、僅かに視界を曇らせた。
……然し、此処でそれを目にした者には違和感が走るであろう───、

「…………審判の邪魔をするか、”正義”を驕る愚かな風紀委員よ。」

何故、このフードの男は何なく言葉を発しているのか……?と。
立ち込める紫煙の中から発された、無機質でかつ確りとした声が倉庫内に反響した。

「……否。その怒号は組織性ではなく本来の人間性に満ちているな。
自治組織の肩書きを武器に偽善の権利を驕るのが風紀委員であると思っていたが……失礼、それなりの人間もいるらしい。」

一陣の風が巻き起こり、制裁者の体に纏わり付いていた紅蓮が一瞬にして消失した。
残るのは依然として制裁者の体を覆う煙と、生身の肉が焼けたような異臭である。後者は、先程まで制裁者の近くに転がっていた肉片に火が移り焦がした事による産物だろう。

───徐々に煙が晴れ、制裁者の身体が露わとなっていく。だが然し、その身体は。

「……でも”審判”は既に開始されているぞ、憐れなる能力の檻に閉じ込められし正義達よ。」

───”鬼”だった。単純かつ明快な”悪”を示すそのフォルムは圧倒的な邪気を放ち、異能を操る者二人を相手にしながらも気圧される事は何一つ無い。
寧ろ、此方から恐怖を与えてやろう……と。先程までは小さかった彼の声は、徐々に確固たる悪を成し二人を威圧するかの様な凄みがあった。

「……一つ目に、徹底的な”悪”というのは隙を与えないんだ。同志がいるからって仲良しこよしの時間なんて与えない。───故に。」

刹那、鬼の身体が視界から消失する。人外ならざる身体の持ち主であるならば、それから繰り出される駆動も……また人を超越するもの。
──────────煌めきが、あった。






「──骨の髄まで善に染め、刹那を謳歌しろ。
乱れた時こそ”正義”の死を意味する。」

凄まじい速度でイリヤー……ではなく城ヶ崎の頭上へと飛躍した無銘童子。すぐ様落下が始まり、何もしなければ真紅の刀身が城ヶ崎と…制服姿の少女の身体を斬る事となる。
標的を城ヶ崎に絞った理由は、城ヶ崎の方へと少女を突き飛ばしたからに他ならない。だが実は、”標的を絞る”事自体が一対一に突飛した無銘童子の弱点…二人にとっては一筋の光明…。
並外れた超速に、彼らは歯向かえるか────。








960 :城ヶ崎 蔵人 ◆UZZXtTVUYY [saga]:2015/09/11(金) 22:26:17.61 ID:7phw+7lN0
>>957
「(あいつ……本当に人間なのか?
それにこの感じ――なんか懐かしい気がするが……まさか"魔術"か?)」

未だ虚空を泳ぐような思惟であるが、朧気ながら敵の像を心の眼にて結んでいく。
蔵人の脳裏に蘇る感覚、それは"魔力"――魔術師の行使する力である。
能力と入れ替わるように魔術を失った今ではもはやそれを察知する感覚も衰えてしまったが、心の片隅に残っていた記憶が敵の魔力の存在を仄めかす。
だが、上記の事情の上に未だ実戦については未熟な蔵人に、制裁者の本当の強さを見抜くことはできなかった。

「なっ……

――おいおい、何ワケ分かんねえこと言ってんだ?んなもんは正義でもなんでもないだろうが!」

ハッタリか、それとも本当に――いずれにしろ、心の奥底をその不気味な紅い視線に見透かされたような気がして、蔵人は一瞬動揺を見せる。
事実、制裁者の言は誤っていなかったからだ。
最強の砦と自ら恃んでいた心の壁に空隙が生じたか、それとも制裁者の観察眼が常軌を逸した鋭さであるのか、分からない。
悪辣な敵の哄笑が、蔵人には自らの精神の内奥をも揺さぶるように感ぜられる――――

「へっ……物語か、面白いじゃねぇか!確かにヒーローものにはヒロインが付きものだからな!!
――待ってろ、今助けるからよ……」

戸惑いを振り払うように啖呵を切る。そして囚われの"ヒロイン"に送った言葉はややなるべく優しめな調子だった。
無償の手を差し伸べて誰かを救わんとする正義。否、これは誰よりも自分自身に向けられていた。正義、否、"大義を失いたくない"がために――――

きらり、薄暗い空間の中で制裁者の刀の真紅の刀身が、自らを睨み付けた――蔵人にはそう感ぜられた。
あの刃により、これより自らの罪を裁かれるとしたら、罪状は決まり切っている。自分でも分かっている。
制裁者は自らを"悪"と称した――が、彼も裁く立場にあるのなら、裏を返せば何らかの"正義"があるのかもしれない。
正義と悪は表裏一体――これは正義対正義の戦いか?ならば――その裁定は力を以って成すのみ。
一つの正義を塗り替えられるのは、より強い別の正義だけである――――


「――――…………ッ!?」

開幕――同時に、蔵人の口元が引き攣った。
なんという卑劣。なんという外道。なんという悪――――!
否、最早悪の権化のような彼の業は、"悪"という言葉を措いて如何なる言葉によっても形容できぬものかもしれぬが――

慌てて蔵人は突き放された少女を受け止め、そして彼女が敵刃の錆になる前に、彼女を抱えつつ自分から見て右へ転がり込んで攻撃を避けようとした。
これで恐らく少女の命は救えた。が、ざしゅり、という音と共に微量の鮮血が周囲の血の海の一部となった。

「ぐっ……!」

蔵人の右手が自らの左腕の上腕部を抑える。大事には至らなかったとはいえ、そこに斬傷を負ったことは明白である。

>>958
「何……!?
てか、風紀委員か……!?」

闇夜を照らす熱線。視線をやれば、その主が乱入者であることが分かった。
学園に通う蔵人にとって、彼の胸に輝くバッジの意味を理解することは容易かった。
馴染みのない言語で怒号を飛ばす彼だが、その表情と声色から、眼前の惨劇に対して怒りを露わにしていることは明らかである。

「(本当は俺だけでどこまでできるか試してぇが……仕方ねぇ。
今はヤツを……"悪役"をぶっ飛ばすことだけに専念するとするか……!!)」

「――おい、風紀委員!犯人はあいつだ!」

少女を庇いつつ、右手で制裁者を指差した。
その言葉によって如何なる信用を得られるか分からないが、これが共闘の意思表示となるか。

>>959
息をつくのも束の間、すぐさま蔵人の頭上に無銘童子が現れた。
鈍い左上腕の痛みに気を取られて反応が遅れた。
イリヤーの対応は、如何に?
961 :《”悪”を担いし制裁者》 [sage]:2015/09/11(金) 23:41:49.63 ID:K2tVCPlw0

───古から伝承されてきた”魔術”の世界には、”学園都市”の様に大きく統括された組織は存在しない。
その代わり、様々な思考派が独自の集団を作り上げる”魔術組織”は無数に存在している。
『悪の制裁者』を語る無銘童子はその魔術組織の中でも”群れない”という特異性を持った『戒律ノ制裁者』という組織に属する。
各々が自身の掲げた”基準”を元に審判を行い、世界の礎を築く事を目的とするこの組織は魔術に於いても指折りの実力者が集う。
──そして、無銘童子とてその例外では無い。

「…………2対1か。ククッ、いいじゃないか。
鬼自身の性質として多数との戦闘は向かないからな……これで丁度良いレベルにはなったろうさ。」

これは”慢心”であると捉える者もいるであろう。──然し、恐らくはこの倉庫内にいる三人だけがその事実を知覚出来ている筈だ。この鬼は無責任に”悪”を担っている訳でなく、それ相応の”力”を有しているということを───。

「……でも、これで俺は”油断”する事がなくなった。言っている意味がわかるか?
死の淵を彷徨う境界ギリギリの勝負だからこそ、俺という”悪”は精鋭化される。」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


迫るイリヤーの攻撃に、無銘童子の刃『鬼神大王波平行安』が滑らかな軌道を描く。
よく目を凝らせば無銘童子はイリヤーの方を一つも目に映して居ないという事がわかるだろう。腕だけが不自然かつ正確に動き、イリヤーの攻撃を相殺したのであった。
──これこそが無銘童子の強さの真髄。単純な身体強化では上位互換は幾らでも存在するが、彼の場合、複数の鬼の意識を同時に宿しているため、部分ごとに全く異なる動きが可能となるのである。

「…………ちっ。」

無銘童子は舌打ちと共に硬く冷え切ったコンクリートの地面へと降り立った。攻撃は防いだとはいえど、攻撃するには態勢が悪い。
ふぅ……と感情の読めない深呼吸の後、刀を上に掲げて。牙の露出した鬼の口が開く───。

「────九百九十九の刃、鍛えし鍛治在り。
燃ゆる焔は虚偽を讃え、冷めし刃は愛を成す。
矛盾は輪廻し、最後の一振りを構成。
輪廻は矛盾し、数多の刃を創造する。

現界せよ、妖の無銘刀『鬼神大王波平行安』。」




962 :《”悪”を担いし制裁者》 :2015/09/11(金) 23:42:39.04 ID:K2tVCPlw0
>>961
//ありゃりゃ先読みの書きだめが送信されてしまいました……無視してください!すみません!
963 :イリヤー・ミハイロヴィチ『стихия』level4 [sage saga]:2015/09/12(土) 07:04:07.11 ID:NrHZENnX0
>>958>>959
焼けゆく男の身体。燃え落ちるフード。
冷静に穏やかな口調で語りかける男の言葉は、彼の耳には話半分にしか入ってこなかった。
だが何か、違和感を感じていたこともまた事実であった。
相手の態度は、攻撃を今まさに受けているにも関わらず。あまりにも"冷静すぎた"。

そして男の身体は、そこで露わとなる。鬼の肉体、人とは一線を画す存在。
人よりある程度強靭な肉体を持つ彼は、鬼という存在には馴染みがなかったが━━━━━それでも、非常に威圧感のあるフォルムだと感じた。

だが彼は立ち止まらなかった。彼の意志は確固たるものとして、目の前に向けられている。
圧倒的悪。それが相手であるならば、自らは圧倒的な正義として立ち向かおう。

「━━━━俺に隙が出来る時は、手前がくたばった時だ。МОНСТР(化け物が)!」

鬼が突如、少女へと斬りかかる。しかしその幼気な肉体を抱えた別の存在は、それを身を呈して護ったではないか。
その様子を見て、彼は初めてその少年を"味方"と認識した。
彼の能力にクールタイムが無ければ、熱線は少年の方にも飛んでいたかもしれない。
先ほどまで、それほどの半錯乱状態にあったのだ。目の前の事象は、彼の怒りにさらに油を注ぐ結果となることは明白だった。
やや燻んだ瞳の輝きが、煌々とした赤へと変わる。━━━━━冷却は終了した。
あとは灼けつくこの炎を、またも眼前の敵へとぶつければいい。
他の感情はない。巨悪に立ち向かうだけの勇気と信念が彼を包み込んでいた。
だからこそ彼は今、右手を向ける。腕の輝きが最大限に達した時、輝ける炎の光線が発せられる。

「『炎(プラーミャ)』!!」

狙いは少年へ落下しつつある鬼へ。軌道を読んだ熱線は鬼以上の圧倒的な初速度で突き進む。
その炎は鬼の身体を焼け焦がす事が叶わずとも、少年を救うには十分だろうか。

体勢を立て直しつつある少年へ、彼は一言、言葉を放つ。

「彼女を逃せ」
「………狙われるぞ」

彼は次なる鬼の攻撃に備えるかのように、右眼の光を蒼の輝きへと変化させた。
964 :イリヤー・ミハイロヴィチ『стихия』level4 :2015/09/12(土) 07:04:47.98 ID:NrHZENnX0
/>>958>>960宛の間違いです
965 :《”悪”を担いし制裁者》 :2015/09/12(土) 07:51:12.74 ID:ZvvbVhaK0
>>960
───古から伝承されてきた”魔術”の世界には、”学園都市”の様に大きく統括された組織は存在しない。
その代わり、様々な思考派が独自の集団を作り上げる”魔術組織”は無数に存在している。
『悪の制裁者』を語る無銘童子はその魔術組織の中でも”群れない”という特異性を持った『戒律ノ制裁者』という組織に属する。
各々が自身の掲げた”基準”を元に審判を行い、世界の礎を築く事を目的とするこの組織は魔術に於いても指折りの実力者が集う。
──そして、無銘童子とてその例外では無い。

「…………2対1か。ククッ、いいじゃないか。
鬼自身の性質として多数との戦闘は向かないからな……これで丁度良いレベルにはなったろうさ。」

これは”慢心”であると捉える者もいるであろう。──然し、恐らくはこの倉庫内にいる三人だけがその事実を知覚出来ている筈だ。この鬼は無責任に”悪”を担っている訳でなく、それ相応の”力”を有しているということを───。

「……でも、これで俺は”油断”する事がなくなった。言っている意味がわかるか?
死の淵を彷徨う境界ギリギリの勝負だからこそ、俺という”悪”は精鋭化される。」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
>>963>>960

迫るイリヤーの攻撃に、無銘童子の刃『鬼神大王波平行安』が滑らかな軌道を描く。何かを振り払うかのように、優雅な弧であった。
よく目を凝らせば無銘童子はイリヤーの方を一つも目に映して居ないという事がわかるだろう。腕だけが不自然かつ正確に動き、イリヤーの熱線を相殺したのであった。
──これこそが無銘童子の強さの真髄。単純な身体強化では上位互換は幾らでも存在するが、彼の場合、複数の鬼の意識を同時に宿しているため、部分ごとに全く異なる動きが可能となるのである。───然し。

「硬質化しているといえど魔術は魔術──、無理矢理ダメージを抑え込むには無理があるか。
……ふむ、中々の高出力だな、風紀委員。」

イリヤーの正義の闘志は確実に無銘童子へとダメージを与えていたのである。刀が齎した風により炎自体は相殺されたが、そこから生じた熱……その痛みは無銘童子の硬い皮膚を穿っていた。
少なからず態勢を崩した無銘童子は、斬りかかる事はなく少し離れた地点に着地する。

「──ほう、”正義”を驕る立場故、”悪人”の性質はそれなりには理解しているようだな。……良い…良いじゃないか!」

と、イリヤーの「少女を逃せ」という一言に感嘆の意を表す鬼。少女を逃がさなければ、この鬼は卑劣にも再び少女を第一優先に狙う算段であったのだ。

「───────でも。」
「一つだけ言っておこう、”油断”を消失して”本気”となった俺は空気が読めない。」

「特に窮地でも無いが、一つ目の”業”を使おうか。」

そんな鬼の声が聴こえた瞬間、倉庫内が迅速に静寂に包まれた。
あまりにも早いソレの到来に息を呑む者もいるだろうが、これこそが徹底的な”悪”。
相手が自らよりも下でも同等でも一切力を抜かない、油断しない、慢心しない。2人で共闘するという事は戦力の補強というメリットと引き換えに、”鬼の本気”というデメリットまで抱えている。────連撃は、悪は、待ってはくれない。

「────九百九十九の刃、鍛えし鍛治在り。
燃ゆる焔は虚偽を讃え、冷めし刃は愛を成す。
矛盾は輪廻し、最後の一振りを構成。
輪廻は矛盾し、数多の刃を創造する。

現界せよ、妖の無銘刀『鬼神大王波平行安』。」

パリん!という音が木霊し、同時に鬼の手にあった刀──『鬼神大王波平行安』が瓦解する。
そして漂うのは──破片。非常に小さいが、各々が確かな斬れ味を有する凶器。

「────『鬼神連撃』。」

破片が、無銘童子に対峙する”正義”と守護すべき者に一斉投射された。勿論、凶器は小さい事もあってそれぞれが明確な殺傷能力は有さない。
──であれば狙いは何か。正解は”程よく痛めつける”為。
圧倒的な数の暴力が、正義へと襲いかかる。
──然し、これは鬼が”業”と称した通り、莫大な力を有する物。ここを凌げば間違いなく無銘童子には隙が生まれる。

迫り来る怒涛の死とそこに垣間見える生きる為の一筋の光。
────”正義”よ、”悪”に抗え。
966 :城ヶ崎 蔵人 ◆UZZXtTVUYY [saga]:2015/09/12(土) 10:58:09.80 ID:PK2mzBbK0
>>963>>965
「あっ……ヤベェ……!!」

蔵人が危惧を覚えた時には、既に鬼の刃は回避不可能な領域にまで突入していた。
このままでは蔵人は致命傷とまではいかずとも重傷を負い、続けざまに守るべき少女まで刀の錆になっていただろう
――そう、イリヤーの援けがなければ。
先程と同様の熱線が己の頭上を照らしたかと思うと、態勢を崩した鬼はやや離れて着地。

「……おうよ!!」

それを見た蔵人は、イリヤーの一言に反射的に従う。
安全な場所に避難するよう少女を逃がすとイリヤーのもとに駆け寄り、改めて敵と対峙する。

「(こいつ……中々やるな。それに敵もどうやら底知れない力を持ってるようだしよ……
共闘は正解、かもしんねぇな。)」

多少なりとも鬼を怯ませたイリヤーの力には素直な賞賛を心で送った。
実力や経験の差もあろうが、決定的には、自尊の本性を包み隠した偽りの正義と、義憤からくる純粋な正義との差か。
元々は自分の力を試す目的でこの修羅の地に足を踏み入れた。明白な力量差を見せつけられることは蔵人にとっても穏やかならぬことだが……
それでいて心の底では仲間や友を欲しがるのが彼の地金でもある。共に戦う仲間ができるのにも、満更ではなさそうである。
「フッ」と、多少余裕のある笑みを浮かべ、その黄金の双眸は怯むことなく眼前の異形を睨み付ける。

「本気……!?
――へっ……上等だぁ!!」

――既に遠慮は要らぬ。人質は逃がした。
今ここには戦う者しか居らぬ。純粋な力が――否、力に裏付けられた正義が勝敗を決す。正義の法廷とは、力の戦場なり。

「――――……ぉぉおおおお!!!」

硬質なものが割れる様な音と共に漂う破片が、我々に迫り来る。
刹那、蔵人の両手と両足が燦然と白い光を帯びた。同時、両足が駆けだす。
迫る無数の凶器は正しく凶器の形容に相応しい、数の暴力。
なれば回避は困難。であれば、無駄な動きで逡巡するよりは、いっそ愚直なまでに突進するべき。
蔵人の直感はそう告げた。

自らに迫る破片の数々を、手と足の出る限りで次々に叩き落とす。正に荒業。
無論イリヤーに迫る分に構う暇はないが、強い彼ならば自力でも問題なかろうと蔵人は信じている。
ダメージは最小限に抑えるつもりでいる。だがこの暴力の洗礼を無傷で切り抜けられるなどというのは幻想だ。
対処しきれなかった分が蔵人の皮膚をちくりちくりと痛めつける。
辛くない――筈はない。何らの死線をも切り抜けた事のない少年蔵人に、それは如何ほどに無茶な要求か。
だが不思議と悪くはないと思っていた。何せ自分は"ヒーロー"になると決めたのだから。
例え動機がなんであれ、今己がこうして苦難に立ち向かっているという事実――正に英雄譚の一節である。

薄暗い空間の中で純白の尾を引く蔵人の四肢。
それはあまりにも苛烈な悪に抗う、一縷の光となってその破片の嵐を縫うだろうか。
そしてそれが成ったとき、精一杯の踏込と腰の捻りを加え、彼は血塗れの右拳を、鬼の顔面を狙い抜き放つだろう。
967 :イリヤー・ミハイロヴィチ『стихия』level4 [sage saga]:2015/09/12(土) 13:48:51.77 ID:NrHZENnX0
>>965>>966
「風紀委員……そんな名刺など関係あるものか」
「俺の名はイリヤー・ミハイロヴィチ・ドブロリューボフ、地獄に帰って伝えておけ!」

彼は風紀委員と呼ばれた事、概念的な事象として扱われた事が、気に食わなかったらしく━━━━大声で自らが自らであると示す存在証明を行う。
その名はもちろん、傍の少年にも向けられている。流れではあるが、共に戦う事になる上で、指標は必要なことだ。"逃げない"、それは戦いの意思だと彼は解釈していた。

彼は横目で少年が彼女を退避させたことを確認し、小声で「Да(よし)」と呟いた。
侵されるべき生命はなくなった━━━━ならばこれからは、生命を侵す存在を無くせば良い。
彼は次なる攻撃を見極めるごとく、右腕に四色の光を順に帯びさせる。
そして鬼を前に、2対1の図式が出来上がる。側に駆け寄って来た少年に、彼は声をかけた。

「何を隠しているかわからない。ここは、私の後ろに……」

彼が話しかけたのも束の間。鬼が何らかの詠唱を始める。大技に備え、彼はその右眼の蒼光を、いっそう輝かせて待ち構えた。
彼の四つの大自然の力のうち、今は『炎』が使えない……次の大技は、"防ぐ"。

攻撃が放たれる。鋭い刃片が無数に迫るその時、その青き力は解放される。
"蒼"は水。雄大なる海として、荒れ狂う津波として。彼は人の身で、その力を顕現させた。

「……『水(ヴォーダ)』ッ!」

彼の身体から、激しい水の流れが巻き起こる。その水圧は迫る刃を巻き込んで、床の血液を滲ませる。同じく破片は床へと叩き落された。
彼は、彼自身の防御はした。精一杯であったが、少年の様子はどうかと後ろを見れば、どこにも見当たらない。
ふと前へと目を向ければ、遮二無二走り行く少年の姿が、そこにはあった。

「やめ……」

あまりに無謀だ。そう思って制止の声を掛けようとも思った。だが少年のその足取りは、確かに勇気と信念、そして確固たる自信に満ち溢れているように感じた。
だからこそ、彼は止めない。むしろその勇姿を、信頼と希望を含んだ瞳で見つめ、ニヤリと笑みを浮かべた。
そして……彼は床に散らばった、刃の破片を見つめる。直後、良い事を思い付いたと言った風に、彼の笑みは一層深まる事になる。

「……あの勇気は、俺も見習わなくてはな」
「さて、Монстр(怪物野郎)……俺に投射物を投げ付けると言う事が、どういう意味を持つか教えてやろうか」

彼の瞳の色が、再び変化する。それは鮮やかな薄い緑の輝きと化して、鋭く鬼へと向けられた。
そして直後。彼は迷いなく、その力を行使した。

「『風(ヴォズドゥハ)』」

床に散らばった刃片は、彼が右手を上げると共に宙空へと浮かぶ。それらを滞空させたまま、彼はその双眼でもって、鬼をきつく睨みつけた。

「ロシアにはこんな言葉がある……
Собаке собачья смерть(犬は犬死にするものだ)!」
968 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(大分県) :2015/09/12(土) 15:32:01.75 ID:ZvvbVhaK0
>>966
「─────────そうか。」

無銘童子の仕掛けた”業”は突破された。然し、眼前へと迫る城ヶ崎の勇姿を目にして尚、その鬼は毅然とした態度で何処か納得した表情を浮かべるのである。
『鬼神大王波平行安』という刀の真価を見せた事による反動で無銘童子の身体は硬直──。
確固たる意志を宿した真紅の拳を、ただ見ているだけであった。そして────炸裂!

「────────ド、う、やら俺は、甘んじた。」

鈍い音と共に城ヶ崎の拳が鬼の顔の正面を捉えた。近くに迫った城ヶ崎ならば、微かに……そして妙に鬼の口が蠢いている事がわかるだろう。
残念ながら外見での損傷は特に見当たらない。あるとすれば僅かに顔の表面が抉れた程度か。
然し、殴った本人であれば今の一撃は確実に鬼の内部にダメージを与える事ができたと知覚できる筈だ。

「───────”悪”を!!!」

─────なのに何故。……この鬼はこの2人に焦りすら抱かないのか。
自らの武具を利用され、正義はより一層強靭な武器を有しているというのに。表面化こそしないが、身体が内側から確実に壊れているというのに。
無銘童子の大きな声が倉庫内に木霊する。目の前に相手の拳を据えながら、その口は動く。
そして……注目がその男の声に注がれる中、無銘童子の右手がするり……するりと妙な動きをした。

「…………────なあ?正義達よ。
まさかまさか先程の攻撃を凌いだからといって躍起になってるんじゃあ……ないだろうなッ!!」

無銘童子の右手が閉じられる。そしてその拳は迅速に、拳を顔面へとあてがっている城ヶ崎の腹部めがけて振るわれた。
”力強く””悪い”として伝承される”鬼”を参照にした魔術であるから、先程から彼らも味わっている通りその拳は凄まじい威力を誇る。
そして現在、無銘童子と城ヶ崎の位置はイリヤーの正面。破片を武器として利用されはしたが、「敵を盾にすればどうということはない」。
2対1という有利なら状況が唯一抱えるデメリットといえば現在のこの状況に当てはまるだろう。

「───甘いなァ、ロシア人。確かにそれは正義の枠には入るが……さっさとその破片を此方へと寄越してしまえよ。」

「─────同志を傷つけたく無いからか?」
969 :《”悪”を担いし制裁者》 :2015/09/12(土) 15:32:33.78 ID:ZvvbVhaK0
>>968
//まーた途中送信!申し訳ない
970 :《”悪”を担いし制裁者》 :2015/09/12(土) 15:42:03.55 ID:ZvvbVhaK0
>>966
「─────────そうか。」

無銘童子の仕掛けた”業”は突破された。然し、眼前へと迫る城ヶ崎の勇姿を目にして尚、その鬼は毅然とした態度で何処か納得した表情を浮かべるのである。
『鬼神大王波平行安』という刀の真価を見せた事による反動で無銘童子の身体は硬直──。
確固たる意志を宿した真紅の拳を、ただ見ているだけであった。そして────炸裂!

「────────ド、う、やら俺は、甘んじた。」

鈍い音と共に城ヶ崎の拳が鬼の顔の正面を捉えた。近くに迫った城ヶ崎ならば、微かに……そして妙に鬼の口が蠢いている事がわかるだろう。
残念ながら外見での損傷は特に見当たらない。あるとすれば僅かに顔の表面が抉れた程度か。
然し、殴った本人であれば今の一撃は確実に鬼の内部にダメージを与える事ができたと知覚できる筈だ。

「───────”悪”を!!!」

─────なのに何故。……この鬼はこの2人に焦りすら抱かないのか。
自らの武具を利用され、正義はより一層強靭な武器を有しているというのに。表面化こそしないが、身体が内側から確実に壊れているというのに。
無銘童子の大きな声が倉庫内に木霊する。目の前に相手の拳を据えながら、その口は動く。
そして……注目がその男の声に注がれる中、無銘童子の右手がするり……するりと妙な動きをした。

「…………────なあ?正義達よ。
まさかまさか先程の攻撃を凌いだからといって躍起になってるんじゃあ……ないだろうなッ!!」

無銘童子の右手が閉じられる。そしてその拳は迅速に、拳を顔面へとあてがっている城ヶ崎の腹部めがけて振るわれた。
”力強く””悪い”として伝承される”鬼”を参照にした魔術であるから、先程から彼らも味わっている通りその拳は凄まじい威力を誇る。
そして現在、無銘童子と城ヶ崎の位置はイリヤーの正面。破片を武器として利用されはしたが、「敵を盾にすればどうということはない」。
2対1という有利なら状況が唯一抱えるデメリットといえば現在のこの状況に当てはまるだろう。
そして殴る直前、無銘童子はこんな事を口にしていた。

「───甘いなァ、ロシア人。確かにそれは正義の枠には入るが……さっさとその破片を此方へと寄越してしまえよ。」

「─────同志を傷つけたく無いからか?武器を手に入れたからといって叫ぶだけでそいつを利用しないんじゃあ……意味がねぇだろうが。」

城ヶ崎に迫るのは打撃、イリヤーに迫られるのは能力行使か停止かの決断───。
城ヶ崎の事を考えるのであれば間違いなくあの破片は振るわれない。振るわれ、城ヶ崎が負傷しようものならば無銘童子本来の戦闘スタイルである1対1に迫る事ができるし、振るわれないのであれば此方は無銘童子、城ヶ崎、イリヤーの順に並ぶように戦闘を行えば今のところはイリヤーによる破片攻撃の実質的な無効化が図れる。
そして城ヶ崎はダメージを避ける為にはまず迫る拳をどうにかしなければならない。
悪を精鋭化し過ぎたが故に編み出された正義への対処法。打開策は───────あるか。




971 :《”悪”を担いし制裁者》 :2015/09/12(土) 15:43:26.68 ID:ZvvbVhaK0
>>970>>966-967宛になります
972 :城ヶ崎 蔵人 ◆UZZXtTVUYY [saga]:2015/09/12(土) 16:45:49.73 ID:PK2mzBbK0
>>967>>970
「ゼェ……ゼェ……――どうだ……!?」

してやったり。そんな表情を浮かべながら蔵人は肩で息をする。
蔵人は愉悦に酔っていた。初めてこの敵に与えたダメージらしいダメージ。
それがこれほどまでに気持ちよく決まるとは本人も思ってはいなかった。
――これが、"ヒーロー"の感覚か。漫画の中の出来事が、愈々現実の血肉を帯びて顕現するように思われる。

「――……!?」

それでいて敵も、夢見心地に浸ることを許さぬような狂気を発した。
その声が雷のように蔵人の鼓膜を揺るがすと、間髪入れず、腹部を猛烈な鈍い痛みが襲った。

「グッ……!!」

変身の効果で打たれ強くなっていることだけは救いである。
が、強烈な鬼の拳は先程の意趣返しと言わんばかりに蔵人の腹部にめり込む。
あまりの衝撃に数歩の後退を余儀なくされ、イリヤーの正面で力無く膝を付いた。

「おい風紀委員――じゃなくて、イリヤー、とか言ったか?
俺のことは気にせず攻撃してくれや……何、"ヒーロー"はそんな軟(やわ)じゃねぇからな……!
巻き込まれそうになったら勝手に避けるし、万一のことがあっても死にやしねぇ……

が……お前も無茶すんなよ……もう人質は逃がしたしな……
別にこいつをぶっ飛ばすのは……いつだって構わねぇだろ……?」

蔵人は云う。
無数の破片を逆に利用した攻撃を繰り出せば、よしんば鬼の命脈を絶つことならずとも、撤退のための足止めにはなるだろう。
その攻撃で倒せなくて尚且つ戦闘を続行するとしても、負傷した蔵人は、今後足手まといにしかならない。
自らの言葉を裏付けるように、立つ。
白い光が脚全体を包み込む。その様子を見れば、どうやらその言葉もやせ我慢というわけではないことが察せられようか。

最早自分から殴り掛かる程の余裕はない。威力のあるパンチには腰の捻りをも要するが、腹部を痛めた今では無茶もいいところである。
残されているのは足。そして、――青臭いことを云うならば、折れぬ"正義"の心である。

「――――うぉぉぉおおおおおお!!!」


――――さぁ、時は来た。
命と、正義を賭する瞬間が。

突き進む蔵人の視線の延長には、鬼。
どんな攻撃が来ようと避け、攪乱せんとの己の覚悟を信じて。
そして、時間を稼げれば、イリヤーが一撃を決めてくれると信じて。
973 :イリヤー・ミハイロヴィチ『стихия』level4 [sage saga]:2015/09/12(土) 17:26:51.73 ID:NrHZENnX0
>>970>>972
少年の一撃は確かに、怪物の顔へと完璧に命中していた。
あとは怯むであろう鬼目掛けて、この無数の"身から出た錆"をぶつけてやろうと思っていたが……
彼は鬼の力を過少に、また少年の力を過信しすぎていた。
鬼は依然として余裕ある振る舞いを見せ、大仰に自らの立場を示す。一切怯む様子も見せなかった。
マズい、と思う間も無く……鬼の強烈なまでの拳が、少年の腹部へめり込んだ。音だけで、それが並はずれた威力であることがわかる。
そして鬼は明らかに、少年をこのまま肉壁として利用するつもりだ。彼はその様子を静かに眺めたまま、舌打ちとともに呟いた。

「……卑怯者が」

だが、彼が対峙している存在は、元よりそういうものだ。
人の"優しさ"や"絆"に付け入り、それを引き裂こうとする存在。
━━━━━であれば、自分が取るべき選択は……
彼は息を切らしながら語る少年の言葉を聞き入れ、無言で頷く。
今ここにあるのは、この圧倒的巨悪を前にした団結。言葉には出さないがはっきりと存在する絆が、両者を結んでいた。
自分が……我々が今取るべき選択は、互いを信頼することだ。イリヤー・ミハイロヴィチはこの境地において、そう確信する。
だからこそ彼は、皮肉めいた口調で、冷徹にこう告げた。

「……悪いが、私は不器用だからな……人の事は、あまり気遣えない」

倉庫内に、一陣の風が吹いた気がした。
直後、煌めく無数の刃が、先程とは逆の方向へ、破壊的加速度でもって、嵐のように少年へ……そして、鬼へと吹き荒れていった。

「……死んでくれるなよ」
974 :《”悪”を担いし制裁者》 :2015/09/12(土) 18:49:41.24 ID:ZvvbVhaK0
>>973
「──卑怯者?……大いに結構。
悪とは元より”卑怯”だとか”卑劣”だとか人間の正義の影の部分が露出したモノだ。」

無銘童子はイリヤーの”卑怯者”という罵倒を聴いて、むしろ歓喜するかの様に声を弾ませた。
通常の人間から見ればただの罵りに聴こえるそれは、”悪”を司る無銘童子からすればただの褒め言葉。そして無銘童子はその卑怯さを肯定した上で、一つの反論を述べる。

「……ただな、風紀委員。お前らが驕っている”正義”だってよく見つめれば”卑怯者”なのだよ。
世間一般的に見れば正義と捉えられる事を行い、特に理由もないまま、悪と結論付け、無理矢理それを”正義”という枠組みに抑え込む。

──そんな理不尽な”正義”に踏み潰され”悪”と成った”正義”がいるという事を忘れてはならない。」

そう語る怪物の眼は何処か虚ろに満ちていた───。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆
>>972-973

「……ああ…良いぞ良いぞ……!!
命を賭けた制裁とは、やはりこうでなくては……ッ!!」

───無銘童子は対人戦のエキスパートである。
幼少期から”戦う”という事を余儀無くされ、それでいてその状況を全て吸収して”鬼”と化した天才の端くれ。
城ヶ崎の腹部に重撃を叩き込んだ無銘童子の口元は愉快に三日月型を作っていて。自身に残る力を振り絞って迫る城ヶ崎をも、嘲笑うかのように冷酷な視線を浴びせていた。
──人間を超克した素早さは、いとも簡単に城ヶ崎の脚による打撃を捌いていく。見る者全てに”圧倒的な差”を見せつける身のこなしであった。
──────だが然し、”悪”は侮っていた。

「─────な─────ッ!!」

──敗因。それはイリヤー・ミハイロヴィチ・ドブロリューボフという”正義”をあくまで”風紀委員”という肩書きの副産物と捉えていた点だろう。
先程彼はイリヤーの激昂を”人間性”によるものであると賞賛したが、実のところは”風紀委員”が齎した”正義感”程度に留めていた。
城ヶ崎の言葉もあってか……いや、どちらにしろイリヤーには”正義”を通す為に犠牲を出す決断をする勇気があった。───「目の前の正義は予想外の信頼性を内包していた」のである。
一つの巨悪に立ち向かうのは信頼によって繋がれた正義の絆。……無銘童子は悪と正義という概念に心酔するあまりそれを繋ぎ止める”モノ”の存在を軽視していた。

───完全に反応が遅れた。イリヤーを小物であると断定していたが為、または二人の間の絆を軽視していたが為の……隙!
その到来は早く、超速の嵐は凄まじい勢いで無銘童子の身体を飲み込んで吹き飛ばし、倉庫の壁面へと叩きつけた。血こそ流れないが、凄まじい速度で迫る刃の破片は、少しずつ鬼の身体を抉っていて。

「………が…………あ……………………。」

叩きつけられた無銘童子は片膝を折り、眼前に広がる光景をよく見えない眼を凝らして見ていた。
血の海に…………前に立つのは二人の正義。
数十秒後、無銘童子はゆっくりと口を開く。

「…………信頼…………か。……俺はこんな面倒なモノを軽視していたというのか…」

そしてそんな言葉の後、一瞬にして二人の目の前から無銘童子の姿が消失した。
慌ててその場を見渡してみたならば、倉庫の二階部分に彼の身体がある事に気付くだろう。

「─────ここまで、だな。」


975 :《”悪”を担いし制裁者》 :2015/09/12(土) 18:50:51.10 ID:ZvvbVhaK0
────────そして。

「……ああ。良い正義だ青年達よ。」

二階部分から無銘童子の声がする。異形の身体には所々損傷が見当たり、先程の”信頼”は確実に彼にダメージを与えていた事を彼らに改めて実感を湧かせるはずだ。
然し、先程の一撃を以ってしても彼の命を奪い取るには遠く及ばなかった。其れは、身体にダメージを受けて尚、評価するように彼らを見下ろす無銘童子の姿を見れば理解は容易い。

「…………正しき正義を振るう青年達よ。この邂逅も何かの縁だ、教えといてやる。」



「────『戒律ノ制裁者』が動き出した。
科学に溺れた能力者(オマエタチ)が知っているかは知らんが、魔術を操る魔術師の組織だ。」

無銘童子が拳に力を入れる素振りを見せると、彼の周りの窓が一斉にぱりん!と割れた。
更に”悪”を司る”制裁者”の言葉は続く。

「───そこの風紀委員、お前にはこの事を風紀委員として公表するという”道”がある。──然し、「魔術なんて存在しない」という都市全体の風潮にお前一人で抗えるかな?」

制裁者は都市の現状を皮肉に語りながら、その異形の顔で嘲笑している。

「…………”本物の正義”とはそういうものだ。いつだって悪と隣り合わせで、いつだって孤独。」

「……っと、無駄話はここまでにして。
───そろそろ俺は退散するとしよう。
では二人の正義の芽よ、次の再会では…………、





───────悪(オレ)を倒してくれよ。」


一陣の風が倉庫へと吹き込み、無銘童子は其処から跡形も無く消失した。
その倉庫に残るのは無銘童子の残した「正義の余韻」と
二人……否、都市中の正義に課せられた「脅威への対策」─────だけだった。


976 :城ヶ崎 蔵人 ◆UZZXtTVUYY [saga]:2015/09/12(土) 19:57:16.43 ID:PK2mzBbK0
>>973>>974
「――フッ!!……オラッ!!」

対する城ヶ崎蔵人は、一言で云えば戦闘の素人であった。
蹴ってはいなされ、蹴ってはいなされの繰り返しは、彼我の実力差を雄弁に物語る光景だった。

だがその文字通りの"足掻き"は何か?危険を顧みず突っ込んだことの意味は?
その背中の語るものは何か?
言語なき会話――正義と正義を繋ぐ、何か。
如何に表面的な状況は絶望的でも、蔵人の表情までは絶望していなかった。

一陣の風が頬を撫でる。蔵人はそのことに込められた意味を一瞬で理解した。
同時に、足を揃え、愈々足の光の輝きが最高潮に増し――

「――――……ッッ!!」

地面を打ち抜かんばかりの全脚力により、跳躍。
蔵人自身が飛ぶというよりも、脚力が彼の躰を投げ飛ばしているというような状況だ。
そして、ほとんど入れ替わるようにして彼の位置に破片の嵐が到達した。
977 :城ヶ崎 蔵人 ◆UZZXtTVUYY [saga]:2015/09/12(土) 19:57:49.01 ID:PK2mzBbK0
//続き

「――――はぁ……はぁ……
ひーーやれやれ、どうやら、巻き込まれずに済んだみてぇだな……」

その言葉を裏付けるように、蔵人に新しい傷はなかった。
強いて言えば全脚力を行使した負担がまだ響くが、最悪致命傷を負うことになったかもしれないと考えれば安いものである。

「……ヤツは何処だ?」

直後に響いたあの悪辣な声の音源がその答えを告げた。
如何なる術を使ったのか2階に瞬間移動した鬼は、あのように語る口があるのだから、やはりと云うべきか未だ死とは程遠かった。
が、今はヤツの声に耳を傾けることとした。

「(『戒律ノ制裁者』……?聞いたことがねぇな……
魔術師の組織ってったって思想も規模もピンキリだからな……その組織に何か特別なことでもあんのか?」)」

脳裏で疑問を巡らせる。
曲がりなりにも魔術師の家系の生まれである城ヶ崎蔵人は、幼い頃からそういった方面の教育も受けてきたものだ。
3年前に能力が発現してそれきりで半ば勘当されるように魔術師の世界から切り離されたこともあるかもしれないが、どうしてもその組織名には見当がつかなかった。

「…………"正義"、ねぇ……」

待て、などと制止する気力もなかった。
満身創痍。寧ろ自らの重い身体が、更なる戦いをどこまでも拒絶するだろう。

無銘童子が去ると同時に蔵人は変身を解き、その場に力無く膝を付く。
怒髪の如く逆立っていた髪は重力に従って自然に垂れ、髪と瞳の色は黒に戻り、表情も柔和な普通の男子高校生のそれに緩み、
筋肉量も減り、その姿は、これまで変身後しか見ていなかったイリヤーにとってはまさに別人の如く映るであろう。

「"正義"――"ヒーロー"――"絆"――
ふっ……柄にもなく泥臭い展開になったが……案外悪くないかもな。」

そして、イリヤーへと向き直る。

「その……助かったよ。礼は言う。
俺は、城ヶ崎 蔵人(じょうがさき くらと)――2年D組だ。
見ての通り……"変身"の能力を持ってる。」

そう自己紹介をする彼の口調は、慣れのなさからくるのかぎこちなさげだ。
変身後の溌剌な感じに比し、どこか憂いを含んだような調子で、云い終えたが否や、人と視線を合わせるのが気恥ずかしいのかすぐに別の方向を向く。

「あいつ……また来るよな。
その時も機会があれば、一緒に戦おう……イリヤー」

友――そのような概念に一端でも接するのは、果たしていつ振りか。
格好を付けてそれを拒んでいた自分は、それこそ過去の自分になりつつある。
やがて去りゆく、逞しくもない普通の高校生の背中は、夜の闇の中へと消えゆく。

欲望の闇に魅入られ闇黒の領域に足を踏み入れた少年は、そこで繰り広げられた悲劇を契機に、新たな精神の片鱗を手にした。
予感される戦いの中で、彼、城ヶ崎蔵人は、果たして如何なる"自分"を手に入れるのか。
ゆらり、彼の瞳の奥底の光がうねりだすのであった――

//お疲れ様でした!
//イリヤーさんよろしければ2人はこのとき連絡先交換したことにしてもOKです
978 :イリヤー・ミハイロヴィチ『стихия』level4 [sage saga]:2015/09/12(土) 20:49:12.22 ID:NrHZENnX0
>>974->>977
破片の嵐は鬼を巻き込み、そして少年はそれを見事な手際で回避する。
その連携は、まるで彼らの絆が偽りではなかった事を克明に示しているかのようでもあった。
諦観の言葉と共に、鬼が消失する。頭上からかかった声に顔をふと向ければ、いつの間にやら移動していたという現象もよそに、鬼の言葉に耳を傾けるだろう。
そして鬼は、少年たちに別れを告げる。彼はずっと、ある事を考えていた。
あの鬼の力、明らかに能力のそれではない。
であれば━━━━━━

「……魔術」

静寂の中。彼は一言だけ、ポツリと呟いた。

━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━━

勝利の余韻。根本的な解決とはなっていないが、危機は去った。
その後に訪れるのはやはり、共に戦った味方への激励の場だ。
それは今においても例外ではなく、彼は少年の━━━城ヶ崎蔵人という男の自己紹介を受け、それを返した。

「私は……私は、イリヤー・ミハイロヴィチ・ドブロリューボフ。2年A組……私の能力は……」
「四つの大自然の力。стихия……そう私は呼んでいる」

自らの情報を明かすと共に、右目の淡い緑の輝きは失われ、その両目には異国の緑色の瞳ばかりがあった。

「ああ、こちらこそ。困った時は……いつでも力になろう。……互いに」

友とは、共に過ごし、共に楽しみ、そして共に信頼し合う事によって生まれる。
そして彼らは今、共に死線を潜り抜けた。その間には、言葉にせずとも、目的を同じくする者たちの無言の絆があったのだ。
そして戦いが終わった今、その繋がりは友情へと昇華する。彼は人生で初めて、"親友"をもったような気分になった。
そして、それは事実である。

蔵人が去った後、彼は退避させた少女を見つけ出し、風紀委員の下で保護した。
誰もが血に塗れた少女と、疲れ切った様子のイリヤーに対して疑念を抱いた。
だが彼が経緯を説明しても、すべてを丸ごと信じてはくれなかった。
だが、彼は抗うだろう。悲劇は起こしてはならない。それを未然に防ぐために風紀委員に入ったのだから。
彼の正義の心は燃え落ちる事はない。彼はやがて、蔵人へ助けを求めるだろう。
初めて出来た親しき友と、その悲劇へのバリケードを築くために。

//皆さん、長きに渡ってお疲れ様でした。
//ありがとうございました!
979 :『始動』 :2015/09/12(土) 22:19:46.56 ID:ZvvbVhaK0
───学園都市。近年になって突如として発現した学生専用の異能”能力”を収容する都市。
能力を持つ者が自治を行い、生活をする…いわば学生による学生のための独立都市。
自治の一環として生じた風紀委員や管理委員会などといった統率組織の甲斐あって、能力という膨大な力を有して尚、平穏は保たれていた。
──然し、それを脅かさんとする組織が一つ。各々が定めた『戒律』を基準として人々に理不尽な制裁を与える。───組織の名は『戒律の制裁者』。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「………あ〜〜らぁ、名無しちゃ〜〜ん?馬鹿みたいに色目使って逃しちゃってぇ〜〜ん。ほんとっ、甘いんだからっ!」

都市内某所にて。窓すら存在せず四方を黒の壁に囲まれた長方形の空間で数人の人間が会話していた。……始めは女性の声。
そしてその声の先には先日二人の”正義”と対峙した”悪を担いし制裁者”こと無銘童子の姿があった。

『”制裁”という観点に於いて、あの二人には”善”の指数が十分過ぎる程にあった。……であれば”施し”を与える必要も無かろう。』

「んもうっ!……だーかーら!いつもいつっも”あの子”の力を借りる事になっちゃうのよ!
ん迷惑だとは思わない?────ねぇ……??」

妙に色っぽく妖艶な雰囲気を醸し出すその女性は無銘童子の後ろのほうで体育座りをしている少女へと問いかけた。少女は僅かに膝小僧から顔を覗かせつつ、小さな声で言葉を発した。

「…………………私……は……これくらいしかできないので……。」

「……ああもうだめね!!全員、魔術に於いては抜きん出ているのにどうして此処まで阿呆が多いのかしらぁ?」

──此処に来て一時の静寂。この女性が語る通り『戒律ノ制裁者』は魔術界に於いても指折りの実力者が集う少数過激派組織であるが、変人が多いらしく。──この女性も例外ではない。

980 :『始動』 :2015/09/12(土) 22:20:18.70 ID:ZvvbVhaK0

─────────────
─────────────
────────
────────
─────
─────
──
──

数分の静寂の後、無銘童子が例の妖艶なる女性に対して言葉を発した。簡潔な問いかけである。


『──────────”動く”のか。』

「………ええ。いつまでも”認識不可の部屋[ココ]”に籠っているのも退屈なのよ……ねぇ〜〜。
──其れに、そろそろ頃合いでしょ??魔術が僅かに認知され、途轍もなく不安定な状況下に置かれた”学園都市”を崩すには。」

『それは”制裁”という観点──「ああもう!難しい言葉はやめてちょうだい!吐き気がするわ!!」

無銘童子が何か発しようとしたが、女性は強引に言葉で制止した。無銘童子は”制裁”に趣向を向けすぎている。──女性の言葉は続く。


「──私の”戒律”は”崩壊”。自己中心的と言われようが何でもいいわ??
この阿呆どもの掃き溜めのような組織は、むしろそういうものだもの。
名無しちゃん、あんたは違うみたいだけど言い換えれば此処は私利私欲の権化みたいなものなのよ?」

『…………………………。』

「…………始めは……なるべく小さくしてください………。後処理が大変なので………。
あと……あの”糸と蟲”を持ち帰らないで………。」

と此処で割って入ったのは体育座りの少女。過去に経験があるからなのか、先にいる女性に忌々しそうな視線を浴びせかけている。
そんな少女を気にかける事なく、”崩壊”の制裁者を名乗る女性は───、

「………うふふ、如何かしらねぇ!?ま、どっちに転ぶかは”壊れて”からのお楽しみよ…!」

という不穏な言葉と共にその部屋から消失した。
その姿を見届けた無銘童子はふぅ……と低く渋い溜息をつき、体育座りの少女は膝へと顔をうずめる。
───無銘童子が二人の正義との邂逅の際に告げた通り、遂に『彼ら』は動き出す。
明らかに意志を持って指導したのは”崩壊”を司る女性。無銘童子とは違った史上最悪の理不尽を有するその”制裁”の手は───確実に”学園都市”を蝕み始めている────。
981 :高天原いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/09/20(日) 18:14:17.59 ID:iOIqHNEj0
「…………………ん。」

──学園都市のとある公園。黒の番長服を身に付けて威勢の良い赤鉢巻を巻き付けた人物が、草の茂みを前に立ち止まっていた。
彼女の視線の先には何やら大きなダンボール箱の様なものがチラついている。
友人に誘われて急いで集合する途中での出来事なのであるが、この人物──高天原いずもは目の前の未知の箱に興味津々。
それが彼女にとってのパンドラの箱であるとも知らず、自ら進んで手を伸ばすのであった。

───────ワン!
彼女の手がダンボール箱を引くと、すぐにその中身が明らかとなった。割と元気の良い高い声がダンボール箱の中から鼓膜を震わせてくる。
そうして箱の中を覗いた彼女の顔は、たちまちパーッと明るくなったのであった。

「か……可愛いぃぃぃぃ!!なんでこんな天使みたいなのがこんなところに捨てられていやがる!?」

─────然し。
数分後、同じ場所には一匹の可愛らしい犬の入ったダンボール箱を前にうずくまった高天原いずもの姿があった。

「…………っても…オレんちはもういっぱいいっぱいだしなぁ……。
風紀委員の連中もこんな事には手ェださねぇだろうし……そもそもあの子達オレの事嫌いみたいだし……。」

───そう、このダンボール箱は高天原いずもにとっては凄まじいパンドラの箱であった。
何かを「救う」だとか「護る」事に心酔しているといっても過言ではない彼女は、この子犬をどうにかしない限りこの場を立ち去る事は許されない。──否、自分自身が許さない。
そして、彼女が行き着いた最後の手段は──。

──────────
───────
─────
───
──




「……………………オラァ!誰か拾え!」

……何故か”自分自身が箱の中に入る”というものだった。
彼女の貧相な胸のあたりには子犬が構えられており、抱えたまま周囲に呼びかけているが、寧ろ逆効果である。
さて、そんな彼女と子犬に、救いの手は現れるか──否か。
982 :メイ・フリーフライド ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/09/21(月) 01:09:14.99 ID:y5sn45BI0
>>981
「……あら。」

彼女がこの公園を通るのは珍しい事ではない。
第十区への通学路に面したこの公園に立ち寄り、ジュースでも買おうかと考えたまでの事だった。
しかし、途中で何やら、面白いものを見つけたではないか。
彼女━━━━━メイ・フリーフライドは、嘲笑だとか馬鹿にしたような感情ではなく、純粋に面白がる様子で、クスクスと笑った。

「何やってるの?あなた」

透き通るような可愛らしい声。それでいて冷静な口調で、まずそう問いかける。
グリーンの長髪と制服姿のスカートが風に揺れ、後ろ手に回した腕に強調される大きな胸。
目の前の番長服の少女とはほぼ対極をなすと言っても過言ではない、女性的な佇まいであった。

彼女はこれまたグリーンの瞳を、ふと少女の胸元の犬に向ける。
それで何かを察したように、彼女はひと呼吸おいてから、再び彼女の目を見た。

「その子、可愛いわね。でも……」
「……私のアパート、ペットは飼っちゃいけないの。ごめんなさいね」

学校指定の寮ではないが、大抵がマンションのこの学園都市。
ペットが飼える場所が限られるのは当然。彼女は申し訳なさげに、しかしはっきりと言い放つ。
意外にズバズバとした物言いで、かくして少女に差し伸べられかけた救いの手は、いとも簡単に引っ込められてしまった。
背中に背負った、彼女に似合わぬ無骨なアーチェリーの弓矢が、風にカラカラと音を立てた。
983 :高天原いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/09/21(月) 07:02:38.49 ID:/l9ENqS50
>>982
(…お?こっち来るぞ…………?)

先程から遠慮無く彼女達の目の前を通り過ぎていく通行人。──然し、一人だけ明らかに此方に興味を示している女性がいた。
高天原いずもと子犬はもしかしたら助けてくれるのでは……という無事数分後に崩れ去る事になる淡い期待を抱きつつ、その到来を待ったのであった。

「………………何してるの?…ふっふっふ!何を隠そう、オレは貴女を待っていたのだよ!!」

問いかけられるや否や、片手で子犬を抱きつつ立ち上がってメイに指差して言い放つ少女。
遂に話し掛けてくれた……という喜びと引き取ってくれるのでは……というメイへの希望に胸を踊らせる少女。────しかし。

「……………………だ、だよねー!
──クソ!普段自由な癖して何で無駄に堅いところがあんだよ学園都市!!生類憐みの令知らねーのか!?」

わかりやすく崩れ落ちて膝をつき、ダンボール箱の中で力無くがくりと項垂れるいずも。指差してからのこの間、僅か10秒程度で彼女の希望は幻想となってしまった。

「…………なあ……オレどうするべきだよこれ………風紀委員サマは忙しくてとりあってくれるかも怪しいし…………。
…………えっと…………誰だっけ?アーチェリーのおねえさん……?」

とダンボール箱から落胆した様子を保ちつつ、メイを見上げながら問いかける高天原いずも。
偶然の一致か、奇跡か。子犬もいずもと同じように落ち込んだように頭を下げていた。

//お願い致しますなのです!
984 :メイ・フリーフライド ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/09/21(月) 10:49:00.58 ID:y5sn45BI0
>>983
「さあ……あなたも飼えない、私も飼えない。なら残念だけど、元に戻しておくべきね。」
「捨てられてるのは可哀想だけど、それは元の飼い主の問題よ。その子を放っておいたとしても、あなたは悪くないわ」

別れを惜しんで犬を想い、固執する少女と違い、冷酷とも取られかねない発言をする。
無理なものは無理、諦めるべき事はスッパリ諦めるべきと言うのが彼女の見解であった。どうしようもない事もある、と少女を諭そうとする。
だが、この程度で少女が引き下がるだろうか。

「メイ・フリーフライドよ。第一高校の三年。男装趣味なんて、あなたも好きなものね」

少女の男装については早い段階で見破っていたらしい。
そしてふと、彼女の高校では男装で噂高い下級生がいたはずだと記憶をたどり、ある質問をする。

「……あなた、高天原いずもって名前だったりする?その子、けっこう有名人なんだけど」

彼女は少女については、ひと昔前の番長服を着た美少女が下級生にいる、それぐらいの噂しか知らなかった。
だがその男勝りな口調、そして聞き及んだ情報とあまりに合致する容姿から、少女のことではないかとふと思ったのだ。
彼女は、名前を聞いて何をしようという風には見えない。純粋な好奇心と、ちょっとした推理をためしてみたい気持ちがあった。
985 :高天原いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/09/21(月) 12:14:50.61 ID:/l9ENqS50
>>984
「…………いいや、オレは諦めねぇ。」
「片っ端から探して…それでも無理なら………………まあ!なんとかなる!なんとかならなくても……オレがなんとかする!」

──高天原いずもという少女は基本的に狂った程の理想主義者なので。
諭そうとする現実的思考を前にしてもその「助ける」という理想は揺らぎもしなかった。
最終的には根性論。現実思考よりも圧倒的に効率にかけるソレだが、今までの人生、ソレに助けられた事も少なくない。──いわば心の拠り所だ。
少女は姿勢を正して子犬を抱きつつ、子犬の頭を撫でながらそんな根拠の欠片もない自論を平然と述べるのだった。

「…………はーん…一発で見抜かれたってことは素晴らしい観察眼をお持ちの様で……先輩。
それとも何?最近やらかしてるせいで若干認知されつつあったりしちゃったり!?……」

器物損壊といえばコイツと言うほどに風紀委員の中では悪名高い彼女。
確かに最近は魔術だとかが絡むおかげで随分と戦闘による産物である損壊が増えつつある。その過程で認知度が高まり、女であるということが暴露つつあるのなら……少女は心の中で猛省する。
──然し、メイの次の言葉は更に彼女を現実へと引き戻した。

(……オレの名前を知ってる……?
”有名”って、認知されつつあるからか…………?…………それとも……まさか…な。)

魔術師との戦闘を何回か経験しているからか、彼女には危険意識が芽生えだしていた。もしその戦闘の中で自らが魔術師側に危険と認知されようものならば、襲撃される可能性は否めない。
特に、この学園都市においても「魔術」そのものを知っているという特異性から、証拠隠滅として抹殺される……だとかいう可能性もある。
──故に、明らかに能力者のメイを前に、彼女は慎重になってしまっている。

「ああ、そうっすよー?”番長”こと高天原いずもたぁオレのことだぜ!
有名人かぁ……やっぱ最近暴れすぎなのか……!」

然し、その不安は押し殺して。心のモヤモヤを振り払う様に首を振る仕草を見せた後、いつも通りの明るい声で答え合わせするのだった。
986 :メイ・フリーフライド ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/09/21(月) 21:08:59.61 ID:y5sn45BI0
>>985
「後先考えないのね……私、あなたみたいな人は好きよ」

彼女は、いずもの暴的感情論に少しばかり興味を示したらしく、クスクスと笑い声を上げる。
だがだからと言って犬をもらうわけではないと、釘をさしながら。

「私、これでも人を見抜くのは得意なのよ?私の能力のおかげね」

観察眼を褒められた事に対し、素直に返す。
彼女は魔術など知る由もない、ただ学園都市という枠組みの中に生きる、一人の能力者だ。
ゆえに魔術など分からないし、少女を消そうなど考えにすら上がらない。……相手がゴロツキであったなら、また別の話であるが。
ゆえにいずもの警戒は杞憂に終わるであろう。それが安心すべき事であるかは、また別の話だが。

「……あなたは暴れてるって言うけど、多分そうでもないと思うわ。第十区じゃ、爆発なんて日常茶飯事だもの」

随分と殺伐とした世界に生きているらしい。第十区といえば、学園都市でもっとも治安の悪いと知られる場所だ。
彼女はそこに住んでいるというのだろうか。そう意識してみれば、背中に背負ったアーチェリーの弓矢にも、何か含みがあるかのように感じられる。

「よろしくね、番長さん。素行が悪い人だと思ってたけど、案外話せる人ね」

彼女は手を差し伸べる。握手のサインは、たとえどのような立場の人間同士であろうと、それらを繋ぐ重要なジェスチャーであるのだ。
987 :高天原いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/09/22(火) 00:17:42.99 ID:ww/VebEq0
>>986
「……はは、そりゃサンキュー。」
「───能力……か。………んなら安心だ。」

……と単純思考が故に、メイの言葉を受けて僅かな安堵を得るいずも。
こんな簡単に信じこませられるものならば、本物の魔術師と対峙したら……という不安も残るが、ひとまずそれは置いておくとする。

「──ああ、第十は風紀委員ちゃん達も手を出しかねてる……っぽい感じだしな。」

──学園都市第十学区。番長を名乗る立場故にそ学区で過ごす事もあるが、確かに「異常」が日常茶飯事の無法地帯であった。
番長、としてその馬鹿力を振おうにも、それを上回る実力者も希少ではあるが存在する。……故に、彼女の”番長”が行き届いていない地域でもあるのであった。
ふとメイの背中の弓矢へと視線を移す。この状況において明らかに存在感を放つそれは、護身用……なのだろうか。

「─────あいよ、巨乳アーチェリー先輩。
ははっ……オレぁ、基本的には常識人だからな!」

とニカっと歯を見せて握手に応じるいずも。メイを称するその言葉は反対に自らの魅力のなさを浮き立たせるものであるが、女を捨てた彼女には何ら関係のない事であった。


「…………っと……次はコイツをどう片付けるか、だな。」

……と握手の後、彼女の片手に抱き抱えられた子犬へと視線を落とした。

988 :メイ・フリーフライド ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/09/23(水) 14:20:37.12 ID:AhN80hX60
>>987
「ええ、風紀委員でも滅多に来ないもの。自分の身は自分で守らなくちゃね」

不敵なものを含んだ微笑を浮かべる。態度や容姿と裏腹に、随分と強かな女性らしい。

「勝手に大きくなっただけよ。防具の面積も減るし、友達にはいじられるし……」

彼女はいずもの言葉にぼやくが、本心から嫌だと思っているわけではない様子が伺える。
自分の身体は大事にすべき、という事だろうか。
そして彼女といずもはやがて、本来の問題に改めて直面することとなった。

「そうね……さっきは何とかするって言ってたけど、今の状況じゃどうしようも……」

いずもと違って現実主義のようで。困ったという様子で犬を見る。
元の位置に戻し、新たなる飼い主の来訪をただ待つ。彼女にとってこれが最善の策であったが、それをいずもが許すだろうか。
きっと自身の力でなんとかしようとするに違いない。でなければ、初めて見たときのように、半ば変人とも取られかねない行為をするはずがないからだ。

「じゃあ、あなたが飼うのはどう?……それが出来れば、今頃困ってないわよね」

ペットショップに売るとか……と彼女は漏らしたが、それではいずもは納得しないだろうか。
989 :高天原いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/09/23(水) 15:31:03.02 ID:r+ANyMjg0
>>988
「──ははっ!先輩、そいつぁそういう系の事で悩んでる奴に言ったら殺されるぜ?」

……とメイの豊満な胸部をちらりと見つつ一言。
彼女が怒りを露わにしていないということはそういう事───。高天原いずもは自身の魅力の無さには全くもって悩んでいないようだ。
最後に一言、ほんの冗談で付け足して。

「その魅惑のボディ見せつければ危険なんてちょちょいのちょいじゃね…?」

───そして、話題は切り替わる。

「───先輩、流石にオレぁ、そんな手段を思いつかねぇほど馬鹿じゃねぇっての!
普段の生活費……弁償代……おまけに最近は居候までいる!!ほああぁ……」

普段の生活費……。節約好きである彼女は昔から身についていた節約技術でそれさえも極限まで抑えていた。──それを帳消しにする存在があるからだ。
──まずは弁償代。自らの能力が不器用であるのに無駄に威力が大きいおかげで思いもよらないモノを壊してしまうため、その産物として生まれる負の要素だ。
そして、”居候”。こちらは完全に高天原いずもという少女よ善意に生まれた──”魔術師の居候”であるが、やはり今までの生活が一人分想定な為、若干苦しくなってくる。
そんな現状を改めて思い出し、彼女は頭を抱えて深い溜息をつくのであった。

「………………あ。……もしかしてあれか?先輩ってSっ気あったりすんの?」
「…………いや…………出来ねぇこともねぇけど…………ふぬう…………。」

と頭を掻き、溜息をつき……というような素振りを見せつつメイに向けて声を発した。
990 :メイ・フリーフライド ◆3XNDKmtsbA [sage saga]:2015/09/23(水) 18:10:58.72 ID:AhN80hX60
>>989
「居候なんているの。学生なのに養えるの?」

彼女は心配するように、だがあくまで他人事として何気なしに聞く。
聞いた理由は彼女の言うように、学生の身で居候がいるという事実が気になったまで。
無論プライベートに深く侵入しようという気はないので、いずもが少しでも言葉を濁せば、追及はしないだろうが。

「別にSなんかじゃないわ。細かいのが性に合わないだけよ。」
「何度も言うけど、私が飼うのはできないわ。その子のために私が追い出されるのは、少し考えものだもの」

とはいえ、彼女にも彼女の事情が存在する。
彼女も犬を思っているからこそ、いずもとの会話にここまでついてきているのだ。
しかし、彼女といずもとの犬に対する思い入れは、大分違うものがある事も確かであった。

「そうね……保健所はどう?ここのならまず殺処分にはならないし、苦労して里親を探す必要もないわ」
「捨てた飼い主が責任を取れなかっただけ。あなたが気を張る必要もないでしょう?」

いずもにはやり過ぎなまでの気遣いがあるが、彼女にはそれはない。
その辺に捨てられている犬をどうかわいいと思ったとしても、彼女は通りすぎるだろう。
少し冷酷な含みはあるが、しかしそこまでしてやる理由がない事もまた事実。世の中のほとんどの人は、見て見ぬふりをするだろう。

「……優しいのね、あなたは」

その点において彼女は、いずもに対してそんな認識を抱いていた。
991 :高天原いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/09/23(水) 20:18:45.67 ID:r+ANyMjg0
>>990
「……ま、うちの居候はちょいと特殊で多少は外部からの収入があるらしいから……なんとか……?かな。」

───自らの責任で傷付け”魔術師”が何なのかを見失いかけていた”魔術師”の少女。
深くそれを語ることは無いが、それが高天原いずもが保護し、居候として共に生活する人物の正体。”魔術師”としてはそれなりの上にいるらしく、多少の収入はあるのだとか。
だが然し、それを以ってしても矢張り彼女の家計は…………。

「…………ほけん……じょ……?
あんまそっち方面には詳しくねぇけど、とりあえず其処に預けりゃなんとかなる……のか?」

学園都市の保健所は外部とは特殊で”殺処分”といった手段は取らないのだとか。──やはり学園都市といった空間が閉鎖的で、外部からの干渉が及ばないからであろうか。”学園都市は学園都市”という完全に独立した体制であるため、その中の生物が増えまいが大して影響はないからだろうか。
───まあ、それは置いておくとして。

「……優しい……ってなら多分大抵の人間がそうだと思うぜ?
オレは日頃馬鹿みたいな振る舞いしてるから、こんな風に出しゃばって行動に移すことができる……ってだけよ。」

……と抱き抱えた仔犬に顔を舐められたりだとかでじゃれあいつつ言う少女。
暫くそうしていると、少女の脳裏にふと考えが過る。

「…………あー……でも……」

先程まで”保健所”に預けるという決意を固めていた少女だったが、脳裏に過った一人の存在がそれを思い留まらせる。──彼女の家にいる居候の少女の顔だった。

(………ああ、こいつを連れて帰ればあいつ喜ぶのかな……。)

ただ単純なそんな考えが、ふと浮かんだのであった。
暫くして、少女は口元を緩めて笑い、メイに向けて言い放った。

「考えてもらったくせして申し訳ねーけど、やっぱオレ、こいつ家に連れて帰るわ!
────まあ、なんとかなる!!」

と、いつも通りの無駄に明るい笑顔を見せて。

992 :メイ・フリーフライド ◆3XNDKmtsbA [sage]:2015/09/23(水) 21:36:01.97 ID:AhN80hX60
>>991
「え?でもあなたさっき……」

突然に、自分の家で飼うという決意を決めたいずもに対して、少し戸惑う様子を見せる。
だが彼女はすぐにそれを受け入れた。眼前の人間は、そういった類の人間であると、なんとなく理解できていたからだ。
彼女もまた微笑を浮かべる。

「そう。でも頑張ってね?動物を飼うのって、けっこう大変よ?」

だからこそ捨てる人間も出てくるのだ、と言いながら。
いずもがそんなことをする人間とは思っていなかったが、あまりにも簡単な言い方に少し心配が生まれたのだ。

かくして、犬の件も解決の兆しを見せる。そろそろ、話題も無くなってくるだろうか。
彼女はバッグを背中側に持ち替え、踵を返す。

「じゃあ、私はそろそろ帰るわね。番長さん。もしあなたが危ない目に遭ってたら、いつでも助けに入るわ」

と、ちょっとした別れの挨拶を告げて去っていこうとする。何もアプローチをかけなければそのまま自販機でジュースを買い、帰路につくであろう。
そして数歩歩いたのち、ふと振り返って。不敵な笑みと共にこう言った。

「━━━私、そっちの方が向いてるから♡」


/この辺で〆ですかね?
/絡みありがとうございました!
993 :高天原いずも ◆BDEJby.ma2 :2015/09/23(水) 22:22:00.69 ID:r+ANyMjg0
>>992
「……はっ…仮にも番長なんて名乗ってんだ。
ヤンキー共相手にしてんだからこんな犬っころぐらい余裕のよっちゃん!」

「……そうだな、オレもそろそろ……っと。」

───取り敢えず。取り敢えずは自分が犬を引き取るということで解決としておこう。
生活費だとか散歩の時間だとかそんなものは帰ってから存分に悩んでしまえばいい。
面倒事の予感に後頭部を掻きつつ。そんなこんなで別れの時間は迫ってきた。

「───危ない目?……そーだな!
なるべくそんな状況に遭わないようにしとくが……ま、そんときは頼むぜ?先・輩?」

……と元気な声で親指を立てた右手を突き出しつつ別れを告げる高天原いずもであった。
───空いた方の手では犬を抱えていて。彼女の姿を見送った後、その犬の方へ視線を落として何気なく言葉が発された。

「…………危ない目……か………………。」

冷ややかではあるが確かな正義を宿す”先輩”との邂逅。……この時はただ単に良い知り合いが出来たとしか認識していなかった。──危ない目、なんてものが訪れるのはまだまだもっと先の事だと。───まだ平穏は続く、と。
……この少女は愚かにも危険な領域にある自身の身を軽視していた。


◆◇◆◇◆◇


─────そして。彼女はそれから数日後、忘れる事の出来ないであろう一人の圧倒的な”正義”と対峙する事となる。

『────全ては”正義”の為に、だ。』


//避難所のロールの方に若干繋げられそうな感じにしてみたのです…ありがとうございました!
994 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2015/09/28(月) 06:24:40.48 ID:OCYw8Xiro
【能力】ここだけ異能者の集まる学園都市【魔術】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1443388584/
995 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2015/09/28(月) 07:01:40.80 ID:YE5K9E9Mo
私の予想では李の人が此方にいらっしゃると考えておりますが、もしいるのであれば此方にご連絡ください。。お話したいことがあります。

pick-co-jp@excite.co.jp
996 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2015/09/28(月) 09:36:15.03 ID:obKMVsQao
早い
997 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2015/09/28(月) 09:36:37.51 ID:obKMVsQao
998 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2015/09/28(月) 09:37:17.47 ID:obKMVsQao
たしかにそうかも
999 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2015/09/28(月) 09:37:30.81 ID:obKMVsQao
ね?
1000 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2015/09/29(火) 03:11:26.37 ID:yLuk+iYYo
1000
1001 :1001 :Over 1000 Thread

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
  | |  (・)。(・);    このスレッドは1000を超えました。|
  | |@_,.--、_,>    このレスを見たら10秒以内に次スレを建てないと死にます。
  ヽヽ___ノ    次スレを10秒以内に建てても死にます。

パー速@VIPService
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ローカルルール変更に伴い、1000到達の報告が不要になりました。

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
友「男同士の!」男「約束な」 @ 2015/09/29(火) 02:02:07.72 ID:erFUQnzlO
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【安価・コンマ】幻想日記【東方】4冊目 @ 2015/09/29(火) 01:41:16.41 ID:dMrMmPBiO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443458476/

【安価・コンマ】幻想日記【東方】3冊目 @ 2015/09/29(火) 01:40:45.16 ID:VhsA4ryRo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443458444/

【安価・コンマ】幻想日記【東方】二冊目 @ 2015/09/29(火) 01:06:38.19 ID:AAimoBPU0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443456398/

凛「お腹すいた」李衣菜「ふーん」 @ 2015/09/29(火) 00:50:20.76 ID:onngy7opo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443455420/

【ゆるゆり R18】京子「えっ、結衣本気?」 @ 2015/09/29(火) 00:46:23.05 ID:eblNoQbQo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443455182/

真夏の夜のAA雑談 @ 2015/09/29(火) 00:24:25.20 ID:ij7ajkbjo
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モバP「前川…お前…消えるのか?」 @ 2015/09/29(火) 00:21:22.86 ID:JU5OyRYC0
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