去り際、まだかろうじて息の残っていた人間を見つけた。倒れ伏し、胸を膨らましたり縮めたりしている。 いつもなら息を吐くように止めをさしていたに違いない。だが、今日はその幸運な生存者を見逃した。 その自分の行動に強い違和感を覚えて、またもや自己診断プロトコルを起動する。 "NO ERROR"。ありがとう、クソの役にも立たない空気も読めないポンコツプログラム!
そう言って、彼女は懐から二枚のプラスティック・カードを取り出す。一枚をレナートに手渡し、もう一枚を老人の手元へと投げて寄越す。 黒地に真島重工のロゴと社名が刻まれ、その下には白いフォントで印字された文字列。 「MASHIMA H.INDUSTRIES――EVERYTHING COMES FROM TECHNOLOGY」――神をも恐れぬ所業とは、この事か。