122: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2015/05/19(火) 20:05:49.10 ID:AAAmLQu+O
  
 これがジュウは苦手なのだ。 
 こちらを見つめてくる雨は、まるで静止画のように微動だにしない。 
 その透けるように白い肌も、引き結んだ小さな唇も、掴めば手折れそうな華奢な体躯も、そして清流のような青みがかった黒髪も。 
 視覚だけでなく、まるで全身で見つめられているような、そんな感じがする。 
  
 「……おい」 
  
 「……っ、はい?」 
  
 耐えきれなくなってジュウが声をかけると、雨はワンテンポ遅れて反応する。 
 雨にしては珍しいことだったが、ジュウは状況の改善を最優先にして、言葉を続ける。 
  
 「確認は済んだだろ。さっさと自分の教室に帰れ」 
  
 「……御意に」 
  
 恭しく手を胸に当ててお辞儀をする雨。 
 そのまま教室の入り口まで歩いて振り返ると、失礼します、と付け加えて出て行った。 
 それを見送り、嘆息するジュウ。 
 静まり返っていた教室は、徐々に騒がしくなっていった。 
  
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