133: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2015/05/26(火) 21:40:31.08 ID:9m0+RSJ8O
  
 鍵を開け、電気を点けてから中に入る。 
  
 「……またか」 
  
 部屋の中央にある応接用のソファとテーブル。 
 二つあるソファのうち、小さい方の上で器用に丸まりながら眠っている女性がそこにいた。 
 長袖の革ジャンに季節感の無いジーンズのホットパンツ。 
 床にはブーツとニーソックスが脱ぎ散らかされ、タオルケットのようにマフラーをかぶっている。 
 そして、何故か黒いリボンだけがポールハンガーにかけられている。 
 最大出力でかけられた暖房が、彼女の明るい色の髪を微かに揺らしていた。 
 彼女の名前は斬島切彦。 
 男のような名前だが、正真正銘の女性だ。 
 真九郎はその安らかな寝顔を見ながら、一直線に窓へと向かう。 
 窓際のリモコンを手に取り、エアコンの運転を停止。 
 同時に、窓を全開に開け放った。 
 冬の冷たい風が顔面を通り抜け、温められ過ぎた部屋の空気を一掃する。 
  
 「……ふ……っくちゅ」 
  
 後ろから聞こえてくる可愛らしいくしゃみ。 
 振り返ると、切彦が身体を横たえたまま眠たげな目で真九郎を睨め付けていた。 
  
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