79: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/01(火) 00:45:51.82 ID:RkvSB8Q60
 そして現在、ロミオの焦りは、彼の精神を確実に蝕んでいた。 
 状況を顧みない独断専行、作戦指示の聞き流し、明らかに身についていない戦法への急転換…… 
 彼自身は何でもないかのように振る舞っているつもりで、私達には絶好調だと嘯くけど、流石にこれ以上は看過できない。 
 ジュリウスは"黒蛛病"対策の研究を進めるべく、フライアへのアラガミ素材の搬送を行っているため、 
 しばらく極東支部を離れている。 
80: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/01(火) 00:50:04.97 ID:RkvSB8Q60
  
 ◇ 
  進歩のない現状への焦り、資質を持つ者への羨望、着いていかない肉体。 
 おいそれと指摘できないのは私達共通のものとして、私個人としては、ロミオのそうした状況にどこか既視感を覚えていた。 
 記憶上の人物の人物を辿ってもその解は出ない。 
81: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/01(火) 00:53:38.19 ID:RkvSB8Q60
  
 「――シエルも、ギルも、ナナも、別に"血の力"を欲して手に入れたわけじゃないよ」 
 「だから、ロミオにだって」 
  
 「"赤い雨"に曝されて、強いアラガミとやり合って、"アナグラ"から抜け出せってのか?」 
82: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/01(火) 00:55:43.75 ID:RkvSB8Q60
  
 そこまで言いかけて、ロミオがハッと我に返る。 
 おずおずと相手の様子を見やった後、 
  
 「……わりぃ、言い過ぎた」 
83: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/01(火) 00:57:04.06 ID:RkvSB8Q60
 神機使いになる前の、何もできない、あるいは、何もしなかった自分。 
 父に言われるがまま従って、内心では使うことのない牙を研いでいた過去。 
 今まで乗り越えたつもりでいたけど、そうじゃなかった。 
 過去を忌避して、思い出そうとする度に振り払って、無意識の内に触れようとしないだけだった。 
  
84: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/01(火) 00:59:56.90 ID:RkvSB8Q60
 ロミオ脱走5秒前まで 
 言う程隊長とロミオって絡みないよなと思って付け足したら余計にロミオが嫌な奴になってしまった… 
  
85: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/03(木) 23:46:32.59 ID:gD1asC0l0
  
 ◇ 
 「いやー、楽勝、楽勝!もう"ブラッド"に敵なしって感じ!」 
  
 その日何度目かの任務を終え、私達"ブラッド"は"アナグラ"に帰投していた。 
86: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/03(木) 23:48:49.36 ID:gD1asC0l0
  
 「―――」 
  
 「……あぁ、もちろん副隊長の指示もいい感じだよ!」 
  
87: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/03(木) 23:50:54.00 ID:gD1asC0l0
  
 数秒の沈黙の後、口火を切ったのはロミオだった。 
  
 「――やる気が、ないだと?」 
 「取り消せよ……」 
88: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/03(木) 23:52:33.34 ID:gD1asC0l0
  
 ◇ 
  何時かと同じく、暗く沈んだ雰囲気のラウンジ。 
 窓から見える空には例の赤い積乱雲が広がっており、このイレギュラーの出現によって、ロミオの捜索は直前で打ち切られた。 
 ジュリウスにも既に連絡はしてあるけど、あちらもほとんど同じような状況だ。 
89: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/03(木) 23:54:07.34 ID:gD1asC0l0
  
 「……現在、ロミオの扱いは脱走兵、ということになるのでしょうか」 
  
 「脱走兵……!?」 
  
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