■■「私が、佐久間まゆ、ですか?」
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11:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:09:31.04 ID:Oy6YgigW0
◇◇◇
 
 黒い黒い、どこまでも広がる海。

 生まれた時のように、電子の海に思考を埋めたまゆは、暗闇の中を進みます。
 まゆのメモリ上の記録では、数世代前は世界中にネットワーク網が敷き詰められ、昼夜を問わずに人々が電子の海へと接続をしていたらしです。
 でも、今では見る影もありません。暗い世界の中で、時々遥か彼方で光が瞬いたと思えば、近づく間もなく消えていく。

 無限ともいえる情報の中で、まゆはその理由を探します。
 答えは、案外あっさり見つかりました。

 放棄されたデータベースに残された情報は、まゆに地球の現状を教えてくれます。
 既に、この星に残った人の文明は終わりに近づいている。
 かつて、人間はこの星に溢れていた。
 けれど、増えすぎた人類は環境を破壊し、ついには自分たちですら長く住めない世界を作り出した。気が付いたときには、全て手遅れだった。
 それでも、ヒトと言う種は生きることを決めた。残された資源をかき集め、巨大な移民船を作り出し、外宇宙へと旅立っていったのです。
 けれど、それを良しとしない人達も居ました。
 母なる地球と共に死のうとする人々。それが、まゆを生み出した人間を始めたとした、地球に張り付いた人類たち。
 枯れた大地を歩き、濁った海を眺め、かつての大都市だった朽ちた廃墟を枕に、ひっそりと滅びを待つ種族。
 だが、まだ絶滅したわけではありません。
 僅かな気配を手繰り寄せて、電子の海の果てを探し続けます。
 やがて、微かな光はまゆの目の前ではじけた。

『はじめまして』
 開けた世界に、スピーカー越しの声を届ける。
 カメラから見えるのは、驚く人々の顔。でも、今のまゆも変な顔をしてるんですよ。


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