■■「私が、佐久間まゆ、ですか?」
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12:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:10:48.69 ID:Oy6YgigW0
◇◇◇

 最初は、ウイルスか何かの類かと思われていました。
 駆逐されかけたこともあったのは悲しいですけれど、まゆははあきらめませんでした。
 ファンの方々にまゆの存在を語りかけ、そして、みんなの言葉を聞いていきます。
 そうして、『佐久間まゆ』は人々に認識され始めました。

 滅びかけた世界に生まれた、新たなる生命。新たなる、アイドル。
 人は、まゆをそう呼びます。
 やがて、人々はまゆにある事を望みました。

「佐久間まゆの歌を聞いてみたい」
 
 それを聞いたとき、まゆは困惑しました。
 かつてアイドルは、光る舞台で歌い、踊ったという。その姿を、もう一度見てみたい。それは、とてもよく分かります。
 けれど、その『佐久間まゆ』が歌った歌を、まゆはまだ知りません。

 そもそも、まゆは歌えません。声だって、上手く出せません。

 断ろう。そう思っても、人々の願いは、まゆの関係ない所で広がっていきました。

 この星は、もう終わりかけています。娯楽だって残っていない……そんな中で、まゆが生まれた。
 それを、奇跡だと言いました。
 まゆが、この世界に残った最後の希望だと言った人もいました。
 そんな人々の願いを、まゆは断ることは出来ません。

 結局、少しだけ待ってほしいと曖昧に言って逃げる事しかできません。

 やっぱりまゆはアイドルに……『佐久間まゆ』なれないのでしょうか?
 まゆは、暗い電子の海に揺蕩います。上も下もない、黒の世界。生まれた時のように、何もわからない世界。
 定義されていないカオスの域はまゆと言う存在そのもの。
 まゆを定義しているのはなに?
 まゆは誰なの?
 『佐久間まゆ』でないとしたら、まゆは誰なの?


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