8:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:05:31.68 ID:Oy6YgigW0
◇◇◇
ある日のこと、あの人は興奮した様子で部屋に入ってきました。
「まゆ、音声データが見つかったぞ!」
音声データ? それって、まさか……
「これで、まゆも喋れるようになる!」
『本当ですか?』
正直に言うと、喋れるようになるメリットが分かりませんでした。今でも、文字で意思の疎通は出来るのに。
でも、あの人が喜んでいる顔をみると、まゆもうれしくなります。
あの人は、まゆに確認するとすぐにデータの更新を行います。
そして、まゆの中で何かが書き換わりました。
「聞こえ……ますか?」
恐る恐る、声を出す。おかしくないでしょうか。大丈夫でしょうか?
「ああ、聞こえるよ」
あの人は、満面の笑みで答えてくれました。
それだけで、よかった。
「いい声だよ」
「イイ声、ですか?」
反復した言葉に、ノイズが混じります。
「え……」
途端に、あの人の顔が固まります。
「ア……アれ、なにか変ですかァ?」
一部の音声が正常に再現できない。どうしてだろう……データが破損していたのかもしれない。
「まゆ……」
悲しい声と悲しい顔。
「ア……の……ア……イ……」
出てきた音は、深いなノイズ。聞くに堪えない、こんなの、聞いていたくない。
『ごめんなさい』
まゆは、声を出すことができませんでした。
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