新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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25: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:34:39.52 ID:5kzXp0UHO

圭は姉のことを嫌っているわけでも、非難しているわけでもない。美波が圭と結び直したいと願っている関係性に、単に関心がないだけだった。弟は、家族の枠組は守られているのだから、なにも不満に思うことはない、とでも考えているようだった。呼びかけられれば、応える。それだけ。子どものころの思い出の品物がふたたび目の前に帰ってきたとして、それをなつかしむことはあっても、それをふたたび子どものころのように使うことはあるのだろうか。その品物が存在することだけに満足して、またどこか押入れにでもしまい、現在の生活に戻るのが、大方の人間のすることだろう。

弟は、現在の生活に過去の面影がなくても平気なのだ。

美波がブレイクの詩を知ったのは、このような出来事があった直後のことだった。「一人の失われた少年」の最初の八行、ーー少年が父親に向かって挑発するような言葉を突きつける部分ーーを初めて読んだとき、美波の手の動きも、目の動きもピタリと止まり、左側のページの英詩と右側の訳詩に釘付けになった。まるで魔術の力が作用したかのように美波は動けなくなり、弟の内面がすべてそこに記述されているようにしか思えなくなった。「経験」的な少年の言葉は、まるで「無垢」なる態度そのものへの反抗のようでもあり、ついさっきまで無根拠に抱いていた美波の家族再生の物語が、圭が幼少期の友情を否定したことで間接的に否定されたことでもあるかのようだった。




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