新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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26: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:36:05.15 ID:5kzXp0UHO

そんなふうに読めるのは、あまりにも個人的な事情に引きつけて詩を読んだせいだ。しばらくしてから美波はそのように思い直し、止まっていた手を動かして詩の続きを読んだ。また美波の手が止まった。ブレイクの詩によって動揺の次にもたらされたのは、恐怖だった。詩の後半で、先の言葉を側で聞いていた司祭が少年を引っ立て、両親の懇願もむなしく、涙に咽ぶ少年を火刑に処してしまう。


《そして少年を聖なる場所で焼き殺した、/そこは多くの者がこれまで焼き殺された場所。/両親が泣き叫んでもむだであった。/こんなことがアルビヨンの岸辺で今でも行われているのか。》


恐怖の感情は一瞬で落ち着いた。いくらなんでも、こんなことはありえない。さっき、個人的な事情に引き付け過ぎていると反省したばかりなのに、すぐこのような読解をしてしまうとは。

美波はブレイクの詩集を閉じ、年末から年始にかけてのスケジュールを確認することにした。スケジュール帳を開き日程を確認していくと、少年が火刑になったことへの予言的な恐怖は、吹きつける風が灰の粉を川へ掃いていくかのように、次第に消え去っていった。

恐怖は去っていった。だが美波の心の内には自分でも自覚できないほど微かに、澱のように沈殿する不安がこびりついていた。灰と化した少年の身体が火刑場となった広場の地面の溝を埋め、火刑場が廃れてもなおそこにこびりついているかのように、その不安はいまでも確実に彼女のなかに存在していた。




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