新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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27: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:37:11.72 ID:5kzXp0UHO

ーー七月二十三日・美城プロダクション・CPルーム

美波はソファに身を沈めて、深く息を吸い、気持ちを切り替えようとする。

美波の脳裡には、六ヶ月以上前に読んだブレイクの詩がまだこびりついていた。「無垢の歌」の少年と「経験の歌」の少年。はじめて詩を読んだ冬から春を経て、季節が夏に移行するあいだ、韻文が生み出す詩のイメージに美波の当時の記憶と想像が流入し、極めて個人的なイメージに変化していった。幼い少年のまえから去っていく父親の隣には連れそってゆく子どもがいる。年月が経ち、成長した子ども同士が再会すると、片方の子どもの愛情はパン屑を啄ばむ小鳥ときょうだい家族に区別をつけなくなっている。そんな子どもの存在は、司祭によって糾弾され火をもって消し去られる。火は子どもの肉体を食み、皮膚や筋肉や骨や細胞は黒い粒子と化して、狼煙のように空に昇ってゆく。

混在する赤と黒がおどろおどろしく踊り跳梁する悪夢のイメージは、まるでそれがほんとうの記憶であるかのようにたびたび美波の脳裡に浮上してきた。ブレイクの時代ならともかく、現代の日本で火刑などまずありえないというのに、この言い知れぬ不安はなんなのだろう、と美波は思った。いや不安というには、あまりにも生々しいリアリティがブレイクの詩から想起させられた。




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