新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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28: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:38:23.12 ID:5kzXp0UHO

記憶野と想像野にどっちつかずのまま架け橋のように横たわる火刑のイメージ。それはやがてもうひとつ変化を遂げた。黒く焦げた肉体が千切れて一部となり、その一部がまた千切れ、粒子の段階まで分解される。周囲に漂いはじめた粒子は、風もないのに運動を見せはじめ、洪水のように押し寄せてきては視界いっぱい黒に染め上げる。ここ一ヶ月、美波が夢を見るときはこのようなノンレム睡眠と見分けがつかない、深海のような暗黒の光景ばかりが夢に出てきた。なにも見えないのに、これは夢だとわかるのは奇妙だな、と美波は朝起きるたびに思った。

夢を見た日にアナスタシアと会うことになると、夢と彼女の対照に美波はそのたびごとに驚いた。透き通った結晶体のような容姿をしたこの少女はけっこう子どもっぽいところがあり、昨夜電話で話したときも美波とおしゃべりできるからという単純明快な理由を隠すこともなく、声を弾ませていた。リビングのテーブルに置きっ放しにしていたスマートフォンをさきに夕食を済ませ自分の部屋に戻ろうとする圭が持ち上げ、美波に手渡した。画面にははじめて見る番号が表示されていた。通話ボタンをタッチし、スマートフォンを耳にあてる。スピーカーから聞こえてきたのは親しい馴染みの声だった。


アナスタシア「こんばんは、ミナミ」

美波「アーニャちゃん。あ、そっか。スマホ、新しくするって言ってたね」

アナスタシア「ダー。前のは、スメールチ……お亡くなりになりましたから」


パタンという音がして、見ればリビングの扉が閉められていた。廊下を歩く音がして、弟が二階に行くのがわかった。




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