942: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/08/18(日) 20:32:52.55 ID:TPJ777ywO
永井「やだね」
永井は弾薬ポーチから麻酔銃を引き抜いた。
永井「ぜったいに、いやだ」
接近する佐藤に麻酔銃を向けるが、これほどの強風が吹く中でまともに当てるのは難しいとすぐにわかった。麻酔銃そのものが風のせいで激しく振動した。永井は両手に力を入れ、ノズルの先についているフロントサイトに効き眼をあわせ、佐藤を待ち構える。胴体を狙う、もっと近付いてから、胴体を撃つ。早鐘を打つ心臓を落ち着かせる呪文を唱えるように、永井は心中でつぶやいた。
平沢「楽しかったよ」
平沢の声はやけにやさし気で、思い出を慈しむようで、声のする方向から考えても平沢が佐藤ではなく永井を見つめながら言ったのはあきらかで、だから永井は平沢へと視線を向けた。
平沢「息子たちを見てるようで」
永井を見つめるふたつの眼があった。ひとつは眼鏡越しに見える平沢の瞳、もうひとつは黒くてちいさな銃口。永井の眼はその黒い穴に注がれた……一瞬だったが、長い時間のように感じられた……ともかく、その瞬間はやってきた。
平沢が引き金を引いた。
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