森久保乃々「ええっ。もりくぼ以外、もりくぼじゃないんですけど」
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2: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/05/20(土) 01:35:40.15 ID:XLADNSTB0
遠い日の記憶に浮かぶのは、新入生身体測定。小学校一年生になる前の時のこと。
4月の春の陽気に桜の薄い色が映えて、とっても綺麗だったのを覚えています。
私は視力検査が怖くて、心臓ばくばくでした。

「目にちゅうしゃをするんですか?」
以下略 AAS



3: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/05/20(土) 01:36:20.39 ID:XLADNSTB0
〜〜〜〜〜〜〜
も、もりくぼです。
今日もまた机の下にいます。今、事務所にはもりくぼ以外誰もいません。独占してます。
照明もつけてませんから薄暗くて落ち着きます。無音で落ち着きます。ほっとします。
たまに「パキィ!」とか「ミシィ!」とかいう家鳴りがするのは本当に勘弁して欲しいですけど……
以下略 AAS



4: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/05/20(土) 01:36:58.28 ID:XLADNSTB0
「すぅー……はぁー……」

「すぅー……はぁぁーー…………」

「すぅー……はぁぁぁぁーーー………………」
以下略 AAS



5: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/05/20(土) 01:37:31.52 ID:XLADNSTB0
行く。行くの。行く。行く。行きたい、行きたい、行かせてほしい、着いて、早く着いて。早く、早く。着いて、着いて。早く。

そう祈りながら、私は体がどんどん軽くなっていくのを感じます。いい感じです。
私はこれからたどり着くそこのことを「もりくぼの森」と呼んでます。
もりくぼにしか行けない、もりくぼにしか見えない、もりくぼの好きなものだけが集まってる、そういう森です。
以下略 AAS



6: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/05/20(土) 01:38:16.11 ID:XLADNSTB0
気づいたらもりくぼは黄緑で、背丈の低い草が地面を覆う広い場所に座っていました。
周りは木が覆っています。上を見上げると空が木々の枝葉の隙間から狭く見えます。

空は夕焼けと昼と夜が混じって、赤紫色と群青色の筋が、コーヒーにミルクを溶かしたばかりのようにまだら模様に混ざり合っていました。
大地はどこまでも草と木に覆われて、裸足の足元を風がくすぐっていきます。
以下略 AAS



7: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/05/20(土) 01:38:52.21 ID:XLADNSTB0
あと、もりくぼの森にいるともりくぼは羽が生えて空が飛べます。
十分速く走った後に足に力を入れて空に飛び出します。
不思議な力を足から肩、肩甲骨のあたりに移すと、ぶわっと大きな翼が生えるんです。

もりくぼの森はとても広いですから、何処へでも飛んで行けます。
以下略 AAS



8: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/05/20(土) 01:39:37.69 ID:XLADNSTB0
手のひらに花びらが降りてきました。すぅっと鼻から息を吸い込むと、鼻腔に花びらの甘く爽やかな香りが広がります。
吸った息そのままふぅっと吹きかけてやると、花びらは数百万もの花吹雪になって、もりくぼの森へと散らばって行きました。
やがて花びらが地面の草と草の間に落ちると、そこから大きな花びらを携えた花が、次々と咲き始めました。

まさに百花繚乱。そんな言葉が似合う光景でした。
以下略 AAS



9: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/05/20(土) 01:40:04.67 ID:XLADNSTB0
今は大体……夕方の2つくらい手前です。藍子さんのように、量の指をカメラみたいな形にして空を覗くと、うっすらと文字が浮かびました。
これはもりくぼがポエムや絵本を書く時に使ってる文字ですから、もりくぼ以外には読むことも書くこともできません。

その文字たちは花のような、蔦のような形をしています。

以下略 AAS



10: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/05/20(土) 01:40:42.39 ID:XLADNSTB0
それと同時に、空が固まって氷のように透き通る大きな透明ガラスになったのです。もりくぼは文字通り空の上にいます。
空の上にいるようで実は空じゃないんです。さっきは木と草の森でしたけど、今は氷の森なんです。

上空を見つめると群青で雲ひとつない空に、キーンと厳しい冷たい風が通り抜けました。
寒さを感じないようにするのは難しいので、代わりにもりくぼは髪を前から後ろに撫でるのです。
以下略 AAS



11: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/05/20(土) 01:41:16.03 ID:XLADNSTB0
ふと時間が気になりました。そうするともりくぼの森は敏感にそれを感じ取って、景色は一点に集約されてしまいます。

あぁ、今日は短かったなぁ。そう思いながら、白と黒の扉の前にもりくぼは立っていました。

白の扉をくぐるともりくぼの森から抜けて、真っ白の世界にとどまって、銀色の痛い光が黒く世界を塗りつぶして、現実に戻って来ます。
以下略 AAS



12: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/05/20(土) 01:41:44.05 ID:XLADNSTB0
扉をくぐる前に、こうやって、事務所の好きな人に会うという儀式があります。
この凛さんは森の凛さんだから、本物の凛さんではないけれど……

凛「おいで、乃々」

以下略 AAS



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