【モバマス】P「土をかぶったプリンセス」
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14:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:18:47.63 ID:+jykf0ly0
4.

工事現場の作業員に、いい印象を持っている人はたぶん少ないだろう。
基本的に工事はやかましい騒音を立てるし、道路をふさいだりもする。仕事なんだから仕方のないことなのだが、それでも時折クレームが入る。
こちらの不手際を責められるなら謝罪の言葉もすらすら出るが、仕事上のやむを得ないあれこれにいちゃもんをつけられるとどうにも敵わない。

ある日、仮設小屋に通している固定電話が鳴った。基本的に業務連絡等は携帯を使って行うから、その電話が鳴るのは外部からのコールが多い。
嫌々ながらも受話器を取った。

できるだけ愛想よく聞こえるように応対する。相手は現場の近所に住む老婆だった。
おや、と思った。言葉の端に棘はなく、口調も穏やか。珍しい。

『ああ、もしもし?工事現場の方かしら。
こないだね、マーケットにお買い物に行ったんだけど、ついつい買い過ぎちゃって。荷物を運ぶのに苦労してたんだけどねえ、それ、持ってくれた子がいたのよお。
優しい子でね、家まで付いてきてくれて。ツナギを着てたから、たぶん、あなたのところで働いてるんだと思って、私電話しなきゃって。
ありがとうって言ってたって、伝えてあげてもらえるかしら』

……本当に、珍しい内容の電話だった。十五年ほど勤め続けてきて、経験のない内容の電話だった。なんなら感動さえ覚えたように思う。

言いたいだけ言って切ろうとする老婆を止め、誰に伝えればいいのかと尋ねた。

『ああ、ごめんなさいねえ。ええと、名前は聞いてないんだけど、キラキラした髪の女の子だったわあ』



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