【モバマス】P「土をかぶったプリンセス」
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15:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:19:26.32 ID:+jykf0ly0
この現場には女性は一人しかいない。
老人の手を引く彼女の姿。なんとなく光景が想像できるようだった。

プレハブに彼女を呼び、電話があったことを伝えた。

「えっ、まぢ? あのおばーちゃんから? 元気そーだった?」

彼女はそのことを誇るでもなく、照れるでもなかった。

電話口の声は活力があったと伝えると、

「そっかー。よかったよかった!」

と心から笑うのだった。

こんなことが、彼女が入ってから何度かあった。
仕事に対してまっすぐ真面目なのは初日でわかった。そんな彼女は、私生活でもまっすぐな優しい子だったらしい。


素行のいいところは、伝聞だけでなく実際に自分の目で見たこともあった。

まだ肌寒い初春のこと、彼女と退勤時間が被った日、習慣のようにコンビニへ寄った。

店員の手に余裕がないのか、駐車場にはビニル袋や空のペットボトルが転がってそのままになっていた。

素通りするはずだった。
ああ、ゴミが落ちているなとしか思わなかった。とりわけ珍しいとも思わない。そっとしておけば誰かが片付けるものだ。
自分にとっては、それはただの風景に過ぎなかった。

しかし、彼女にとってはそうではなかったらしい。

彼女は携帯を操作していた。青いクマを模した大きめのマスコットがぶら下がっていて、実用的にどうなんだと思わなくもない。
それをコートのポケットにしまい、なんの躊躇いもなくしゃがんで、汚れにまみれたゴミに手を伸ばした。

彼女には、あの風景はどう映ったのだろう。



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