【モバマス】P「土をかぶったプリンセス」
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6:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:10:31.14 ID:+jykf0ly0
うわべだけの判断ならば、彼女はあまり真面目そうには思えない。だからしばらくは、別の作業をしながらも彼女の仕事姿を遠巻きに見守っていた。

比較的、楽なだけで、彼女に任せた仕事は決して楽ではない。シャベルで土砂を掬うのも、猫車を運ぶのも、トラックに運んだ土砂を移すのも全身を使う重労働だ。
正直、三十分もてばいいと思っていた。名門野球部に所属していたと言って二年前に入ってきた男がいるが、彼は確か一時間経ったあたりで手を抜き始め、一時間半で作業を止めた。

どうなることやら。期待は薄かった。
しかし、それを謝らなければいけないなと反省することになった。

彼女は、一時間経っても、一時間半経っても、作業の手を緩めることさえしなかった。
脇目も振らずに愛らしい猫車に土砂を積んでは、運搬用トラックへとせっせと運ぶ。
無論ペースが際立って早いわけもない。男がやるよりも一度に運べる量は少ないし、運ぶ速度もやや遅め。
それでも、彼女が力を尽くしているのは一瞥しただけでわかった。手を抜く様子すらない。

いい意味で期待を裏切ってくれた。
一度休憩してもらおうと手招きで呼んだ。

「んー? どったん親方。……あっ、もしかしてー、アタシなんかミスったりしちゃった系?」

ミスなどあるはずもない。首を横に振った。

この現場では作業員は各々の裁量で勝手に休みを取る。だから、一時間半に一度ぐらいは軽い休憩を取っていいと伝えた。それと、昼休憩は一時間、十二時からだということも。

「そなんだ? りょーかいちゃん!」

彼女は軍手のはまった手でひたいの汗を拭った。
夏はとうに終わって暑さはしばらく感じていない。しかし、彼女の顔には珠のような雫がいくつとなく流れていた。

真面目なんだな、と冗談めかして言った。

「へ?」

浮かんだのはぽかんとした表情だった。



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