13: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 01:07:42.95 ID:xMQ2bOga0
 事務所から、数十分といったところか。 
 夜の都会の街並みを抜け、少し田舎然とした場所で車は停止した。 
  
 「よし、着いたぞ」 
  
 片側に寄せたとはいえ、完全に路駐の格好になってしまったが…… 
 一通なのも幸いして車通りは少なく、 
 時刻はまだ22時。深夜のパトロールには届かない時間帯であるため、 
 駐禁を切られる心配はないだろうと楽観視して車を降りる。 
  
 車を降りると、すぐそこに池があり奥には看板も立っていた。 
 看板に掘られた文字は薄暗い以前にところどころ窪んでいて読みづらいが、 
 池の隣に並んでいる長そうな石段から、そこが何らかの施設であることが窺えた。 
  
 「ここは如月神社って言ってな。まあ名前の通り神社なわけだが、 
 もう長いこと祭事はやってないんだ。俺が小さい頃からやってなかったと思う。 
 人が住むスペースもないし、鳥居と社が無人で放置されてる感じでな。 
 高い所にあって眺めが良いんだが、座る場所もないし外観がこんなだから 
 町内会の集まり、あとは小中学生の肝試しくらいしか人が来ない場所なんだ」 
  
 成程、とまゆは納得する。住宅街の中にぽつんと置かれた神社ながら、 
 夜の雰囲気はかなりおどろおどろしく、蛇や狸でも出そうな感じである。 
 自然豊かなため虫もいっぱい住んでいそうで、星見をするなら同じ高度のマンションの屋上の方が快適だと思われる。 
  
 「ふふ、でも逆に言えば誰にも邪魔されない秘密の場所なんですね」 
  
 「ああ、そうだ。今日は近所で花火大会の予定もないし、きっと誰も通りかからない。 
 まあいざとなったら俺が居るから大丈夫だ」 
  
 秘密基地……と言ったら少し小学生男子っぽいが。隠れスポットと言えば聞こえはいい。 
 ……まあ、寂れた神社を隠れスポット扱いするのは何となく不信心な気もするが、 
 特に厚いわけでもない日本人の信仰心なんて、そんなものである。 
  
 受験期とかデートとか、即物的な出来事の前にのみ神を信仰し敬ったり、 
 入場料が取られない場所までに限定して参拝し、その境内を自由に右往左往したり。 
  
 しかし、誕生日祈願をするわけでもないのに何故神社なのか……まだ疑問でいっぱいのまま、まゆは石段に足をかけた。 
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