3: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 00:01:55.37 ID:xMQ2bOga0
 undefined 
4: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 00:05:10.01 ID:xMQ2bOga0
  
 ─────その朝少女は夢を見た。それは、とても現実的な夢。 
 少女の記憶にある通りの世界で、知っている人物たちが登場する遊迷(ゆめ)の迷宮で。 
 リボンの少女は声にならない悲鳴をあげて呼んでいる。誰かの名前を呼んでいる。 
 でも介入することが出来ない。抗うことが出来ない。許されたのはただ、見ていることだけ。 
5: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 00:07:29.67 ID:xMQ2bOga0
 「はぁ……はぁ……っ」 
  
 少女は息を切らして濡れた枕から頭を持ち上げる。目尻には今も滴が流れていた。 
 最悪の目覚めだった。出来れば二度寝をして綺麗さっぱり忘れてしまいたいほどに。 
 時計の針は5時過ぎを指していて、セットしてあるアラームが鳴るよりも随分と早い時間だ。 
6: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 00:09:05.02 ID:xMQ2bOga0
 ごめんなさい……結局間に合わなかったせいか焦ってるな 誤字訂正 
 起き直し→置き直し 
7: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 00:12:43.08 ID:xMQ2bOga0
 「何で……あんな夢なんか見たんでしょう……」 
  
 朝食を食べながら、まゆは今朝の夢を思い返していた。 
 と言っても、起きてから時間が経っていく内に自然と夢の内容は抜け落ちていってしまい、 
 細部や他に誰がいたのかさえ覚えていない有り様なのだが。 
8: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 00:23:17.32 ID:xMQ2bOga0
 事務所に着いて、まゆが真っ先に向かったのは事務室にあるプロデューサーのデスクの下。 
  
 「おはようございます、乃々ちゃん、輝子ちゃん」 
  
 そこでまゆとシェアハウスしている共有者の二人は各々時計を見ながらぼーっとしていたりキノコを愛でたりしていたが、 
9: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 00:36:32.55 ID:xMQ2bOga0
 同じ場所で過ごすと言っても、基本的に彼女たちはあまり言葉を交わさない。 
 同じ机の下に居ながら、違うものを見て、違うことを考えて、違うことをやっている。 
 そんな不思議な関係が、彼女達「アンダーザデスク」であった。 
  
 そんなこんなで、少し時間が経った頃。 
10: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 00:39:16.68 ID:xMQ2bOga0
 「あんまり大人数になっちゃうと、まゆさんも疲れちゃうかもしれないから…… 
 そんなに豪勢にしないで……でも、明るく。 
 紗枝さんとか、小梅ちゃんとか……その辺に声をかけて、みたりする予定……だ。 
 あ、勿論……先約があったらそっちを優先してほしい、かな」 
  
11: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 00:48:03.52 ID:xMQ2bOga0
 入るなりプロデューサーは肩に提げていた鞄をデスクの上に置いて、 
 中の書類物を引き出しや机上ラックへと収納し整理整頓を終わらせる。 
 一通り終えたあと腰を落ち着けると、アイドル達へ向き直った。 
  
 「あっ……!プロデューサーさん」 
12: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 00:54:51.61 ID:xMQ2bOga0
 「ええ、そんな……プロデューサーさん無しだと……もりくぼの責任も重大……」 
  
 早くもプレッシャーで胃を痛めそうになる森久保。 
 勿論、今まで一人一人の誕生日を大切にしてきたプロデューサーのことである。 
 努力に努力を重ねた末のどうしようもない結末であり、 
13: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 01:07:42.95 ID:xMQ2bOga0
 事務所から、数十分といったところか。 
 夜の都会の街並みを抜け、少し田舎然とした場所で車は停止した。 
  
 「よし、着いたぞ」 
  
14: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 01:16:54.87 ID:xMQ2bOga0
 星々の灯り以外に頼るものなどない暗夜、 
 二人は足元に意識を集中させ、苔むした階段を一段一段と丁寧に登っていく。 
 石段を登りきると、今度は舗装されていない真っ黒な坂を上っていく。 
 その中途で土に濡れた三毛猫が忙しそうに通り過ぎて行き、虫は静かに合唱していた。 
  
15: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 01:23:14.75 ID:xMQ2bOga0
 undefined 
16: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 01:33:13.57 ID:xMQ2bOga0
 「……月が綺麗ですね、プロデューサーさん」 
  
 「…………ああ、そうだな」 
  
 小さな世界から、大きな月を見上げた。 
17: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 01:37:51.80 ID:xMQ2bOga0
 多幸感で胸がつっかえそうになる中、まゆは深い息と共にその言葉を吐き出した。 
  
 「奏さんが言ってました。アイドルとプロデューサーは、まるで月と太陽のようだ、って。 
 太陽が居てくれるからこそ、月は輝ける。アイドルもそうだと。 
 明るい光で照らしてくれたから、私達は真っ暗闇から輝きを放つことが出来たんだって」 
18: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 01:42:48.90 ID:xMQ2bOga0
 「…………これが、俺からお前への誕生日プレゼントだ。 
 今この場所で、開けてみてくれないか」 
  
 そう言って、プロデューサーはまゆに包装された箱を手渡した。 
  
19: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 02:01:58.38 ID:xMQ2bOga0
 ……赤い月光だけが視界を覆う中、暫し舞台は静寂に包まれていた。 
 とてもとても長い沈黙に思えたが、 
 実際のところあれから数分程度だったのだが。 
  
 「……プロデューサー、さん。手を……出してくれませんか?」 
20: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 02:14:08.60 ID:xMQ2bOga0
 嬉し涙を浮かべながらも、余裕そうな表情でまゆはプロデューサーを見つめて言う。 
  
 「まゆは『いつでも』準備できてますって、言ってましたよね? 
 あれは冗談なんかじゃないですから。まゆはいつだって本気です。 
 だから……貴方へと贈るエンゲージリングだって、持ち歩いてて当然ですから♪」 
21: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 02:33:58.44 ID:xMQ2bOga0
 婚約指輪(エンゲージリング)。一般的には、男性が愛の告白をするために女性に贈るもの、とされている。 
 でも、女性が男性へ贈ってはいけないという決まりなどない。 
 事実、両思いのカップルがお互いに指輪を渡すことだって普通にあるのだ。 
  
 それは、一つの約束。今はまだすぐには結婚できないけれど、きっといつか2つめを渡す日が来るから。 
22:欠星1203[sage saga]
2017/09/08(金) 02:42:45.43 ID:xMQ2bOga0
 …………ライトに照らされていた二人の姿が消えて行く。 
 坂の頂上には、依然として赤い月の光が射し込んでいた。 
  
 赤い月。それは、表裏一体の運命の象徴。 
 時に、幸せを運ぶストロベリー・ムーンとして 
23: ◆0PxB4V7kSI[sage saga]
2017/09/08(金) 02:47:08.83 ID:xMQ2bOga0
 以上です 細かいミスが点在してごめんまゆ…… 
 誕生日おめでとう これからも永遠にずっと担当 
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