梨子「──"私の音"と誕生日。」
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14: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2017/09/19(火) 00:08:30.89 ID:lKcuUgd9o




自分勝手な自分が嫌い。独りよがりな自分が嫌い。傲慢な自分が嫌い。

努力した気になれなくて? 賞を貰ったことに驕って、そこで努力するのを辞めただけじゃない。

するのが当たり前だった? 誰のお陰で当たり前に出来ていたの? それは貴方が用意したものじゃないでしょ?

体の良い言い訳して、逃げ道作って、結局何も出来てない……

周りの期待も、心配も……色んな想いから平気で目を逸らして、私にあるのはピアノだけだからって言って。

そんな逃げた先にあるピアノも満足できない私は一体なんなの?

……でも、今さらどうすればいい?

やってしまったことはもう元には戻らない。

裏切ってしまったことも、出来なかったことも、なくしてしまった居場所も。

いや、居場所なんて最初からなかったけど……じゃあ、私は

──飛び出した先で真っ先に向かった、音楽室の戸を開ける。

ピアノが目に飛び込んでくる、それ同時にこの前同様の吐き気が襲ってくる。

気持ち悪い……でも、もう……もう、私にはこれしか残ってないんだ

どうにかして、私の音を見つけることしか、私が出来る罪滅ぼしなんてないんだ……

込み上げる吐き気に必死で耐えながら、鍵盤の蓋を開ける。


梨子「──」


ポロン──置いた指が白い鍵盤を鳴らした。

久しぶりに聴いた、ピアノの音。


梨子「──私……っ」


音楽室の中で響いて消えていくその単音を聴きながら、私は膝から崩れ落ちた。


梨子「ごめんなさい……っ……。ごめんなさい……っ……。」


……私は誰もいない、音楽室でひたすら懺悔した。

期待を裏切ってしまったこと、心配を無碍にしてしまったこと……そして、ピアノが大好きだった昔の自分に対して……。





    *    *    *



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