梨子「──"私の音"と誕生日。」
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6: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2017/09/19(火) 00:03:26.44 ID:lKcuUgd9o




学校から駅まで徒歩で数十分。

真夏の灼熱の太陽もだけど、立ち並ぶ高層ビルからの照り返しも相まって、かなり暑い。


梨子「日が沈むまで、音楽室にいればよかったかな……」


連日お祭りのように人が溢れる道中を見て辟易とする。

ああでも、あのままだとさっきのクラスメイトの子が音楽室の音を聞きつけて、入ってきちゃったかもしれないし……。


梨子「……そういえば、あの子。私の名前知ってたんだなぁ。」


一学期も終わって、クラスメイトの名前も知らない私の方が、特殊なんだけどね。

ピアノピアノピアノで頭がいっぱいでクラスメイトの子とはほとんど話さないですごした一学期だったし……

たぶん、二学期も三学期も……ずっと孤独にピアノを弾き続ける。

寂しくないと言ったら嘘になるけど、関わればピアノを弾く時間が減ってしまう。


梨子「今は……そんな暇はない」


雑踏に掻き消えてしまうような、小さな独り言を呟きながら、人ごみをするすると縫いながら駅へと向かう。

……そうだ、今はそんな暇ないんだから。





    *    *    *





子供のとき習ったピアノが楽しくて、辞める理由もなくて

気付いたらピアノを弾いてるのが私にとっての当たり前だった。

中学に上がる頃には好きとか、嫌いとか言うより……本当にただ弾くの当たり前だっただけで。

その流れで……って言うのも変な話だけど、中学二年生のときに出たピアノコンクールで私は賞を貰った。

もちろん、それは嬉しかったけど。

なんとなくずっと続けてきたから、なのかななんて思って。

それが自分の才能だとか、特別な努力だとは余り思えなかった。

でも、周りの反応違って……その年の年度末のことだった。



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