16: ◆Xk..svTef9j1[saga]
2017/09/23(土) 20:09:06.64 ID:u1+Fwgaf0
豊音「貸してー」
「え?」
豊音は彼女に声を掛け、手から本を奪い取り、本棚の空きスペースに戻した。
豊音の身長なら余裕で届く。
豊音「何か取る?」
「え、あ、はい。それじゃあ、その横の四巻を……」
豊音「これだねー。はい」
彼女が御所望の本は、分冊された数学の参考書だった。
先に持って行った巻には目当ての単元が載っていなかったのだろう。
なんにせよ、おかげで豊音にもう一度チャンスが訪れた。
「ありがとうございます」
豊音「どういたしまして」
中身を確認し、晴れやかな表情になる彼女。豊音にぺこりと頭を下げ、自分の席に戻っていった。
豊音も満足げである。
きっと、これが豊音のワクソワの原因。
あれが豊音のやりたかったこと。やってみたかったこと。
豊音は高い所にある本が取れなくて困っている誰かを、助けてあげてみたかったのだと思う。
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