名前はきっとスマイリー
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24:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 23:05:49.68 ID:bHIAf+4c0

 思えば、僕は彼女たちのことを全然知らなかった。
 少女としての彼女たちを。

 三人とも、年はいくつだったのだろう。
以下略 AAS



25:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 23:11:41.79 ID:bHIAf+4c0

 魔法少女だった彼女たち。
 イメージカラーのあった生活。
 三人の魔法少女が去ったこのアトリエは奇妙な雰囲気がいささか薄れ、淋しさの量がちょっとだけ増し、とてもとても広々としていた。

以下略 AAS



26:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 23:23:04.46 ID:bHIAf+4c0

 薄手の上衣を羽織り、外に出た。
 道沿いの桜の蕾はまるまると膨れていて、家々の前庭に植わっている百日紅はつるりとその細身を際立たせていた。
 季節の巡りの凝縮の切れ端がそこかしこに落っこちていた。


27:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 23:29:26.27 ID:bHIAf+4c0

 ぽつんと残された炊飯器。
 手近にあったものを突っ込んでスイッチを押した後、炊飯器はそのまま放っておくことにした。
 僕の役目はそれで終わりのような気がした。
 魔法でぴかぴかに清潔になった炊飯器の釜のなかで何が起ころうが、もはや僕の手に負えるところにはないのだ。
以下略 AAS



28:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:38:30.61 ID:qwsOQIk10

  *****

 最寄りの駅まで歩いて行き、電車に乗った。
 裏庭の向こうを走る例の小さな電車だ。
以下略 AAS



29:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:39:17.44 ID:qwsOQIk10

 その車内で僕はスマイリーと顔をあわせることになる。
 スマイリーとの出会いがこの一日の、そしてこの一年を締めくくる最後の出来事なのだ。
 一応僕にとって、と付け加えてはおく。
 スマイリーは僕にこう話しかけてくる。


30:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:40:29.31 ID:qwsOQIk10

「あの、すみません。以前どこかでお会いしたことは?」

 僕の隣の席に座っていた一人が、突然声をかけてきた。
 その顔を見た途端、僕は白い気球とそれを運ぶ渡り鳥の声、ひつじ雲、ポップコーンの複合映像を脳裡に見た。
以下略 AAS



31:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:41:09.09 ID:qwsOQIk10

 スマイリーが僕の隣に座っていた。
 とてもスマイリーという顔をしていて、スマイリーの手足そのままで、ほとんど完全なスマイリーだったけれど、僕は目の前のスマイリーに以前会ったこともなければ、見覚えも全くなかった。


32:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:42:06.72 ID:qwsOQIk10

「ちょっとわからないです」

 すみません、と僕は言った。

以下略 AAS



33:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:42:58.38 ID:qwsOQIk10

「驚きましたよ。
 だって隣に、当のその人が浮かない顔をして座っているんですから。
 浮かない顔、そのまんまですよ」

以下略 AAS



34:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:43:43.90 ID:qwsOQIk10


「失礼に当たるかもしれません。
 でも、あなたの名前をお聞きしておきたいんです。
 ありふれた一日を特別に彩る思い出として」
以下略 AAS



35:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:44:49.71 ID:qwsOQIk10

 いくつかの駅に停まりつつ、電車はたえず走り続けた。
 その間に四人で暮らしたあの奇妙なアトリエも通り過ぎた。
 いつも通りの、木造で古めかしい見てくれの平屋だった。
 僕とスマイリーはお互い黙って、窓の外の空や風景を眺めていた。
以下略 AAS



36:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:45:38.03 ID:qwsOQIk10

 次第に電車は速度を増していった。
 窓の外の風景が徐々に輪郭を失っていったかと思うと、風を切る唸るような音が響きわたってきた。
 小さな車体と不釣り合いに、猛スピードで走り続ける電車に揺られて、僕もスマイリーも前へ前へと進み続けた。
 直線を彼方まで突き進んでいるのか、差しわたり無限の円をぐるぐると回り続けているのか、どちらにせよ同じことだった。
以下略 AAS



37:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:46:53.43 ID:qwsOQIk10

 僕は僕の、
 スマイリーはスマイリーの、
 少女たちは少女たちの、
 遠くにある目的地をめざして。
以下略 AAS



38:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:48:26.03 ID:qwsOQIk10
Serani Poji - スマイリーを探して / where is smiley?

という曲から着想を得て、書いてみました。


39:名無しNIPPER[saga]
2017/12/15(金) 23:49:38.77 ID:qwsOQIk10
最後までお付き合いいただいた方、ありがとうございました。

少しでも、よかった、と思っていただければ幸甚です。


40:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:24:19.62 ID:uBzuvIrgo
イミフだが雰囲気は良かった。外国の詩っぽいなと思ったらまさかのゲームソングか
そしてとんでもない電波ゲームを教えてもらった。サンクス


41:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 01:02:30.62 ID:TXSIKpn/0
ぜひ曲も聴いてみてくれよな


42:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 01:31:56.28 ID:uBzuvIrgo
爽やかないい曲だった


43:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 01:49:16.82 ID:TXSIKpn/0
聴いてくれたのか、ありがとう
そうなのだが、不安げな歌詞とラストの和音がどうにも捉えがたくてね……
それがまた喚起力となっているのだけれど


44:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 22:49:16.38 ID:1rUa7pfDO
タイトル見てセラニかと思って見てみたら案の定だった
ワンルームサバイバルいいよね


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