喜多見柚「アタシにとっての奇蹟」
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8: ◆tues0FtkhQ[saga]
2017/12/25(月) 18:04:02.54 ID:WtWlSgcZ0
 

 地元のこの街はキライじゃないけれど、遊びに行くにはちょっと狭くて面白くなかった。だから、遊びに行くときは電車で東京まで出ていくことが多い。はっきりとした行き場所も思いつかないまま、あてもなく駅に向かっていく。外の空気は凍ってしまいそうなほど冷たくて、これじゃあクリスマスデートは寒くて厳しいかなぁなんて、いらない心配をしてみたり。


 駅に着いた時、雪で電車がちょっぴり遅れていることを知った。そっか、あんまり雪なんて降らないもんね。お天気を決めてる神様は本当に気まぐれだなぁ。思った通りの電車に乗れなかったことが、なんとなく上手くいってないことを表してるみたいで少し悔しい。パーカーのポケットに突っ込んだ手を、暖めるようにぎゅっと握って、1本遅れてきた電車に乗った。


 ガタゴトと揺れる電車の窓の向こうには、厚い雲が広がってきていて、世界が灰色にちらついて見えた。きっとこんな気持ちはアタシだけなんだろうけど、気分まで暗くなってくるような天気だなぁと思う。


「何か面白いコトないかなー」


 ぱっつりと切り揃えられた前髪の向こうに見える景色は、ぼんやりと夢をみるには、はっきりしすぎていて。見れて嬉しいものも、あんまり見たくないものも隠してはくれなくて。アタシは、その光景をまぶたの裏に隠すように、深くフードを被った。


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