結城友奈「これは勇者たちの物語」
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29:名無しNIPPER[saga]
2018/01/14(日) 16:07:35.83 ID:Vac3kRQ0o

*樹海右広域にて・今度こそあなたを『土居球子・伊予島杏』

球子「はぁ……はぁ……大分敵の数が減ってきたんじゃないか?」

杏「……ふぅ……皆が、タマっち先輩が頑張っているおかげだよ」

球子「そんなこと言っている杏のほうがタマよりたくさん敵を倒しているだろ? 相変わらず杏は──っ……!?」

杏「タマっち先輩……? ……ひっ……!」

球子「……サソリ型の、バーテックス!」ギリッ

杏「……っ……」ガクガクガク

球子(……本物のタマたちはこいつに殺された。だから、杏はその時のことを思い出して震えて動けなくなっているんだ……)チラリ

球子「なら!」

球子「ここはタマに任せタマえ!!」

杏「……タマっち、せんぱい……?」

球子「安心しろ、杏。タマがあんな奴すぐに倒してしまうから。──今の強くなったタマならできる!」ダッ!

杏「待って……待って! タマっち先輩!」

杏(……タマっち先輩はまた私を守るために一人で飛び出していってしまった。それなのに私の身体は震え続けていて今も動くことさえできていない。……旋刃盤が弧を描いて蠍座の身体を斬りつける。西暦の頃と違って着実に傷を増やしていくのが見えた)

杏(……タマっち先輩はこのまま勝てるかもしれない。……でも、私はこのままで良いの? 一緒に戦うってさっき言ったばかりなのに私は──)

球子「杏ッ!!」

杏(ハッとして思考から返ると目の前に蠍座の尾が迫っていた。タマっち先輩の旋刃盤が宙を舞っている。蠍座はおそらくその攻撃を回避して、旋刃盤が手から離れた隙を狙ったんだ。迫る鋭い針の光景に私の身体は縮こまってしまい、先ほどよりもさらに動くことができないでいる。……私は前と一緒で何もできないんだね……。あの時みたいな不意ではないから、再び訪れる死がどうしようもなく怖くて──)

球子(タマはまた杏を守れないのか……? ──そんなの嫌に決まっているだろ!!)

球子「輪入道!!」

杏(蠍の尾は私の身体を貫いて──)

ガキン!

杏(……え?)

杏(私の身体は全然痛くなくて、それで、それで──!)



球子「──今度は守れた。大丈夫か、杏?」



杏「……どうして? だって……あれ……?」

球子「旋刃盤もやっぱり凄くなっていたんだな。呼んだらすぐにタマの手元にあったんだ。だから……こうして杏を守ることができた」

杏(私の目の前にはタマっち先輩の小さいけど誰よりも大きくて大好きな背中がある。タマっち先輩の切り札『輪入道』によって大きくなった旋刃盤が盾となって敵の攻撃を防いでくれていた。……タマっち先輩に助けられたのはこれで何度目だろう。もう数えきれないよ……)






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