【モバマス】琥珀色のモラトリアム
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18:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:29:31.73 ID:vBuyWfgt0
彼は朗らかな笑みを浮かべると、デスクへと戻り再びPCへ向かい始めた。ボクは手持ち無沙汰で、事務所の仲間達が出ている雑誌をなんとなく開いてみた。そこには最早お子様と笑えぬ程に成長したビートシューターの二人が大きく取り上げられていた。共に過ごしたオーストラリアでの日々が、遥か昔のように感じられる。

「なぁ、プロデューサー」

「どうした?」
以下略 AAS



19:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:30:18.58 ID:vBuyWfgt0
時計の針が、ボクを急かすようにうるさく時を刻む。読んでいた雑誌をテーブルに置くと、自分の手が僅かに震えていることに気づいた。ボクはそれを隠すように、エクステの端を指で弄ぶ。

「……虚勢(うそ)だよ、そんなものは」

「悩み事、か?」
以下略 AAS



20:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:31:03.48 ID:vBuyWfgt0
「……前にも言っただろう。直観だよ。理由なんて無い。ティンと来たって奴だ」

「ただ黄昏の公園で口笛を吹いていただけの子供にかい」

「ああ」
以下略 AAS



21:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:31:51.95 ID:vBuyWfgt0
気付いていた。気付かない振りをしていた。
彼がボクの仕事へ同行することが減り始めたのはいつからだっただろうか。成人組に監督を任せることもあったが、一人で向かうことも増えていった。打ち合わせ以外での会話は稀になり、コーヒーブレイクを共にすることも無くなっていた。
まるで彼が、ボクを怖れて逃げているかのようにさえ、思えた。

キーボードを打つ手が止まる。
以下略 AAS



22:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:32:22.54 ID:vBuyWfgt0
「お前を信頼しているからだ。飛鳥なら、一人でも大丈夫だろう?」

そう、騙った。


23:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:32:50.36 ID:vBuyWfgt0
あぁ、そうじゃない。そうじゃあないんだ。
ボクが欲しい言葉はーー

「……キミは、いつもそうだ……」

以下略 AAS



24:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:33:30.54 ID:vBuyWfgt0
「キミは……キミは!いつだってそうやって一歩退いて己を隠してしまう!傍観者のつもりか!?それとも愚か者に助言を与える賢者か!?どうして…どうしてボクの隣にいようとしてくれない!!」

決壊した心から溢れ出した感情が、怒鳴り声となって撒き散らされる。抑え込むことも出来ず、激情のままにテーブルを打ち叩き立ち上がる。デスクに積まれた書類の山を左手で叩き潰しながら、右の手で彼のネクタイを掴み、犬歯を剥き出しにしてただ只管に叫んだ。


25:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:34:16.70 ID:vBuyWfgt0
「キミはあの時ボクに言ったじゃないか!『甘えるな』と!蘭子と心から向き合えと!!理解した心算になったままで終わるんじゃなく、真に理解り合わなければならないんだと!それなのにどうしてキミは決してボクの前でその仮面を外してくれない!『担当だから』!?キミはキミの意志ではなく、義務としてボクを導いているのか!?ボクには……ボクにはもうキミの言葉が理解らない!キミの心が理解らない!今はその優しささえ気に触る……!」

頬を伝う雫が妙に生暖かく感じる。
理解らない。どうしてこんなにもボクは喚いているのか。どうしてこんなにも、ボクは哀しいのか。


26:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:34:52.14 ID:vBuyWfgt0
「教えてくれプロデューサー……ボクはキミにとって一体『何者』なんだい……?」

その先の言葉を紡ぐことが出来ず、支えを失ったように冷たい床へとへたり込む。
力無く両腕で頭を抱え、情けなく嗚咽を漏らしながら。


27:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:35:33.74 ID:vBuyWfgt0


ほんの数十秒間ほどの沈黙が、永劫のように感じられた。
PCと空調の稼働音が嫌に大きく聞こえる。

以下略 AAS



28:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:36:05.66 ID:vBuyWfgt0
「……何故謝る。謝らなければならないのはボクの方なのに……」

「いや、俺にも……謝らなきゃいけない理由がある」

彼はそっと、躊躇うかのように臆病に、ボクの頭をその手で触れた。
以下略 AAS



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