11:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 23:54:34.54 ID:AZDT1Nlu0
  
 対向車のハイビームが一瞬だけ車内を照らした。 
 濡羽色の髪の中に、一輪の藤が咲いていた。 
  
  「あなたに頂いた、大切なものですから」 
  
  「……流石に自分でも安直過ぎると思ったやつだけどな」 
  
  「お気に入りなので、大丈夫ですよ」 
  
  「どういう理論なんだ」 
  
 しなやかな指先がバレッタを撫でる。 
  
  「似合いますか?」 
  
  「ああ。似合ってる」 
  
  「こちらを向いて言ってくださらないと」 
  
  「運転中だ」 
  
  「では、着くまでおとなしくしていましょう」 
  
 肇はそれきり口を閉ざした。 
 本当におとなしくなってしまうと、それはそれで毒気を抜かれてしまうが。 
  
 窓の外を眺める表情は、先ほどよりも少しご機嫌に見えた。 
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