藤原肇「ただ静かに、あなたのそばで」
1- 20
19:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 18:29:24.70 ID:6HNBSVHX0

 「ですが……中でも昔。奈良、万葉集の頃、『花』は『梅』を指していたそうです」

 「梅?」

 「あるいは桃を。宮中が習っていた大陸由来の文化でしょう」

とすると、何かが違っていればこの辺りは一面梅だったかもしれない訳だ。
危ないところだったなと見上げてみても、彼らは涼しい顔で揺れている。

 「花見の起源は宮中の梅木鑑賞会だとも言われています」

 「なら、昔は梅見で、今は桜見と呼んでいたって不思議は無い筈だ」

 「ここからが推測になりますが」

気付いたように肇が髪を撫でる。
伸ばした指先には桜の花びらが摘まれていて、すぐどこかへ飛んでいった。

 「主流がどうあれ、人は自らが心乱される花こそを愛でたいのではないでしょうか」

 「つまり?」

 「つまり……桜でも梅でも……花見は、自由であっていいと思うんです」


言い終えてからしばらくして、肇が小首を傾げた。
顎に指先を添えて、しばらくうんうんと唸って。
少し照れたように笑い、俺から視線を外して桜へと笑いかける。

 「……すみません。上手く纏められませんね」

 「いや、何となく言いたいことは伝わったさ」

 「文香さんのように弁が立てば良かったのですが」

なるほど。
恐らくだが、今の話には鷺沢さんから伝え聞いたものも含まれているのだろう。
学ある人物の傍で過ごすと、自然知識も身に着いてくる。


 「前置きがここまで長くなってしまいました」



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
26Res/19.56 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice