20:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 18:39:07.94 ID:6HNBSVHX0
  
  「……前置き?」 
  
 目線で訊ねると、肇はゆっくりと、だがしっかりと頷いた。 
  
  「夜明けまで、しばらく時間があります。ゆっくり、お花見を楽しみたくて」 
  
  「ああ」 
  
  「つまり……その、つまり、ですね」 
  
 組んだ指先をくるくると回しながら、肇が咳払いを繰り返す。 
 三回目でむせて、脇に置いたままだった水筒のフタを慌てた様子で開けた。 
 ごくごくと緑茶で喉を潤すと、細く長く息をついて。 
  
  「お花見ですね」 
  
  「花見だな」 
  
  「桜を愛でるのも、たいへん結構だとは思いますが」 
  
  「ああ」 
  
  
  
  「……藤の花を愛でてみるのも、なかなか――悪くないと……思います」 
  
  
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