21:名無しNIPPER
2018/07/24(火) 19:53:29.63 ID:D6YqytWR0
―――
「――プロデューサーさん」
俺が回想にふけっていると、幸子が声をかけてきた。
幸子の方を向くが、薄暗い病室で彼女の顔が見えにくくなっていた。
「最近、ボク晶葉さんの実験を手伝っているんですよ」
少し、沈んだ空気を払しょくするように、幸子は楽し気に喋りだした。
「何でも、着けた人の本音が分かる機械だそうですよ」
それを言う幸子の顔を見て、俺は激しい不安感に駆られた。
幸子の笑顔が、妖艶に変わる。
「ところで、プロデューサーさん」
その時、病室の薄暗さを消すように人工の光が唐突に点く。
俺は小さく悲鳴を上げていた。
「リンゴ、食べませんか?」
胸元まで上げられた、リンゴの乗った皿。
右手に持つ、何も刺さっていないフォークがあの日を彷彿させる。
そして何より――
「美 味 し い で す よ」
幸子の瞳は、黒く塗りつぶされたかのような色をしていた。
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