照「わたしに妹はいない」久「……そう」
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195:名無しNIPPER[sage saga]
2018/09/02(日) 18:43:05.10 ID:rr1Aanow0
後悔の念をさらけ出す優希に、不可解と言いたげな色が混じる。口が滑った。本当はもう少し慎重に事を進めたかったけれど……格好なんてつけるもんじゃないわねまったく。言ってしまった以上はしょうがない、四人のところに切り込むとしよう。

「まこ、牌譜のコピーどうなった?」

「ん? おお、ここの職員室でコピー機を借りてくれるそうじゃ」

「そっか、一応話は済んでるのね。じゃあ宮永さん、弘世さん、麻雀しましょうか」

「麻雀?」

「……なにを言い出すんだ竹井」

「なにって、私と麻雀勝負を始めましょうって言ってるんだけど。咲との、あの話を賭けて」

弘世さんが目を見開く。経験上、こういう反応してくれる相手は話の主導権を握りやすい。でも残念ながら今回はそう都合よくいかないらしい。

「屁理屈なら聞く気はないから」

睨むように目を細めて、宮永照が釘を刺してくる。待っててなんて言ったけど、前言撤回しておかなければならない。

「ゆみ、まこ、少し外してくれるかしら。和と優希も」

「えっ、どういうことですか?」

「咲のことは任せて。大丈夫、10分くらいだから」

「……」

およそ返答とは呼べない返事だと自分でも思う。まこも和も予定外の出来事に不服なご様子ながらも部屋を後にする。これで、室内には昨日賭けの話をした三人だけとなる。皆には堪忍願いたい、私にとってもここから先はアドリブなんだ。咲と会わせる。そのためにもう、なりふり構ってはいられない。


「……さて、ごめんなさいね段取り悪くて。なにか言いたいことがあったらどうぞ。それとも私から喋ったほうがいいかな」

「じゃあ原村さんの代弁をさせてもらおう。どういうことだ。賭け麻雀はもう済んだはずだろ」

「それはどうなんだろう。今回の賭けの内容覚えてる?」

「……。『私たち白糸台と清澄で2対2の麻雀勝負。ルールは原則として大会と同じ、ただし赤ドラは無し。私たちが勝てば照の意思を、そちらが勝てば照の妹の意思を尊重する』だったろ」

「違うわね」

「はあ……?」

「正確には足りてない。よく思い出して。私は宮永さんにこう言ったはずよ。『半荘やって私が勝ったらあなたは咲に会って、そちらが勝ったら私は咲と会わせようとするのをやめる』」

「同じじゃないか」

「いいえ、れっきとした差があるわ。『私が勝ったら』って言ってるんだから、この半荘ってのは私が卓にいて然るべきでしょ?」

「なんだそれ、じゃあさっきの半荘はなんだったんだ」

「うーん、練習試合? いや練習って感じはしなかったから、野試合かしら」

「ふざけるな。そんな屁理屈持ち出して、小学生か」

「弘世さん、屁理屈っていうのは道理に適わないことを言うのよ。私の話はたしかにインチキくさいと思うかもしれないけど、筋が通ってないとは言えないんじゃない?」

「そうかもしれないが、しかし……」

「わかってくれた? じゃ、まこが戻ってきたら始めましょうか」

弘世さんが言いよどむ。よかった、言いくるめられてくれたようだ。こういうやり取りは、ノリと勢いさえあれば案外相手にもそれらしく聞かせられる。喋っていて自分で思ったけれど、今の理屈はその気になれば揚げ足を取れた。『咲と会う条件』は私が勝つことだが、『咲と会わない条件』では私に勝つことは含まれていない。昨日の私がそれを含んでいたかは覚えてないけれど、そこを指摘されたら水掛け論になっていた。もちろんただの揚げ足取り、それこそ屁理屈だろうけれど、元が元だ。泥仕合になれば大義名分は、正々堂々一勝している向こうにあっただろう。

「いいや、やらないよ」

「……どうして宮永さん」



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