川島瑞樹「ミュージック・アワー」
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18: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 00:59:56.42 ID:Ai+XpKnp0
「まあ、ほっとけば」

早苗はそう言った。
瑞樹は、非通知にした10ケタの番号を思い浮かべながらも、抵抗した。

「ほっとくって……親よ?」

「親の言いなりになるような歳じゃないでしょ、お互い。
 親で人生潰すのは10代だけで十分よ。

 それともなに、アイドルになったこと後悔してるの?」

早苗は口を尖らせた。
瑞樹は初めて、早苗の攻撃的な一面を垣間見た。

「してないわ」

「じゃあいいじゃん。
 子どもがずうっと自分の思い通りになるって思ってる親なら、いっそ捨てちゃいなよ。

 親の命令で結婚して、旦那と子ども作ってさ。
 親が死んだ後、今度はその旦那と子どもに振り回されるわよ。

 それであーっという間におばあちゃんになっちゃうの。想像できる?」

 想像したくない。瑞樹は強くそう思った。

「注文お願いしまーす」

 黙っている瑞樹をよそに、早苗はコールフォンで店員を呼んだ。
 常連の瑞樹より手慣れた様子で、てきぱきと料理と酒を頼んでいく。

「とりあえずビール。ジョッキで2つ。
 枝豆、タコの唐翌揚げ、それからこの、期間限定の石焼ビビンバと……その、サラダで」

 店員が戻ったあと、瑞樹は口を開いた。

「サラダ」

 早苗が、ぽりぽりと頭をかいた。

「サラダで、ごまかせない?」

「ごまかせないわ」

「記念日だから……」

「旦那いないでしょ、アンタ」

 瑞樹はさきほどの応酬の、ささやかな復讐を成し遂げた。
 アイドルとしては早苗が先輩だが、ダイエットについてなら瑞樹が上手だ。



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