真壁瑞希「恋するアセロラ・サイダー」【ミリマスSS】
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[saga]
2018/11/12(月) 22:52:54.40 ID:NGPIxQq80
改札を抜け、事務所へ続く道に出た。午前とはいえ、秋晴れ広がる空の下は暖かだ。上を仰ぐと、ビルとビルの隙間に、一つ、真っ白で大きな雲が浮かんでいた。横広に楕円で、片方は尾ひれが付いていて、それは空飛ぶクジラのようだ。
信号待ちの間に、シャツやスカートにしわが寄っていないかどうか、開店前の喫茶の窓を鏡にして確認する。……うん、大丈夫。髪型も、気付いてくれたらいいなと期待しながら、念入りに整える。
事務所のドアを開けると、プロデューサーの姿が真っ先に目に飛び込んだ。居るのは分かっているのに、心がぴょんと飛び跳ねる。
「おはよう、瑞希」
デスクワークをしていた彼は、私の方を見て、手を振って応えた。
外観もそうだが、相変わらず味のある事務所だ。室内はただでさえ狭いのに、給湯室や応接スペースは薄いパーテーションで仕切っているから、さらに狭く感じられる。ビニルの床タイルは所々擦れており、書いては消してを繰り返したホワイトボードは薄く黒ずんでいる。それでも、室内はいつも綺麗に手入れされているし、不思議と気分が落ち着く場所だ。そろそろ、エアコンを修理すべきではないかと思うのだが。
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