真壁瑞希「恋するアセロラ・サイダー」【ミリマスSS】
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37: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/11/12(月) 23:15:08.49 ID:3wSsqTkg0

 プロデューサーに付いて行く形で、暗い並木道をしばらく歩いていると、CMの撮影スタッフから先ほどの演技が好評だったと彼が言った。

「特に間がよかった、ってすごく評判だったよ。相手役の言葉を遮るタイミングとか、あと何より、告白するときの溜めが完璧だったって。いやあ、べた褒めだったよ」

 まるで彼自身が褒められたかのようだ。ニコニコと楽しそうに話している彼の姿が容易に想像できる。だからこそ、私はなおさら辛かった。

 あの告白の瞬間は何と虚ろな感情だったであろうか。薄っぺらい感情に乗せられた想いの言葉は、何と軽いものだろうか。

 そもそも、仕事にそんな私情を挟むなんて、もってのほかだろう。芸能に携わる一応のプロとしてどうなんだ、と情けない気持ちになる。それでも、虚ろに響いた私の告白を、プロデューサーに見られたということが、とても耐えられなかった。

 どうしても想いを伝えたい人には、その言葉を伝えることができないのに。

 道沿いのナトリウム・ライトが一斉に点き、独特の鈍い光が並木道を照らし始めた。





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