78: ◆GO.FUkF2N6[saga]
2018/12/26(水) 19:04:36.73 ID:9rFSBGbj0
 「志希おねーさん見てくだせー。仁奈、このまえの漢字のテストで100点とったんだー!」 
  
 「おおー。仁奈ちゃんはすごいねー」 
  
  ご飯を食べ終わって、おしゃべりをしていると小テストの紙を渡してきた。 
  その得意げな顔がなんだかおかしくて、頭を撫でてあげるとくすぐったそうに笑った。 
  
   
  それから、いつもみたいにいろんなことを教えてくれた。 
  アケミちゃんと遊びに行く約束をしたこと、トレーナーちゃんに褒められたこと、学校でサインを求められてびっくりしたこと。 
  
  いっぱいいっぱいいっぱいおはなしして。 
  
  そして、夜が来た。 
  良い子は、寝る時間だ。 
  
  電気を消して、ふたりでベッドに潜り込む。 
  
  
 「志希おねーさん、いままでほんとにありがとうごぜーました」 
  
 「どーいたしまして。ママと暮らせるの楽しみ?」 
  
 「はい! すっげー楽しみです! ……でも」 
  
  俯く仁奈ちゃんから、悲しいにおいがする。 
  
 「志希おねーさんと一緒にいられなくなるのは、さみしいですよ」 
  
 「そうだねー」 
  
  仁奈ちゃんとの記憶が頭をめぐる。 
  
  うん、すっごくたいへんだった。 
  柄にもないあたしの母親劇場も、これにて幕を閉じる。 
  
  明日から自由だ。なにしよっかな。 
  そうだ、あの実験まだやりかけなんだっけ。 
  もう料理なんてつくらなくていいし、これで集中して研究できる。 
  いちいち本を片付ける必要もないし、日をまたぐ前に寝なくてもいい。 
  ママを呼ぶかどうかで喧嘩することもない。 
   
  誰かと笑いながらご飯を食べることも。 
  おはよう、おやすみって挨拶するのも。 
  こうやって同じベッドで一緒に眠るのも。 
  今日で、ぜんぶおしまい。 
  
  
  ……。 
  ああ、そっか。 
  
  あたし、明日から、またひとりになるんだ。 
  
  
  
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