プロデューサーは、双葉杏を咲かせたい
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1: ◆oCJZGVXoGI
2019/02/14(木) 18:24:25.27 ID:HCYRpEUW0
「女は恋をすると綺麗になる」
それには化学的根拠が存在する。
少女たちは初恋を経験することで ある“生理現象”が働き、
大人の女性へと成長していく……。
その姿は、蕾が花開く様子に喩えられた。
この物語は思春期を迎えてなお
蕾のままの少女と、少女の咲いた姿を見るために奮闘する男の物語……なのかもしれない。


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2: ◆oCJZGVXoGI[saga]
2019/02/14(木) 18:28:00.95 ID:HCYRpEUW0
東京都某所、とあるアイドルプロダクション。
ここには100名を越える女性アイドルが所属している。
下は9才から上はアラサー。実に幅が広い。
彼女達は主なプロデュース方針により『キュート』『クール』『パッション』の3部署に分かれ活動をしている。
尤も、必ずしもそこでしかアイドル同士の交流が無い訳ではなく、この分類もあくまで形式的なものである。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:29:38.58 ID:HCYRpEUW0
「よいしょっ、と」
書類の束を両腕に抱え、ソファーに深々と座ったこの男はキュート部署のプロデューサーの1人。
年は若いが、言動が所々中年臭い男である。
「ちょっとー、杏が寝てるんだから他所に行ってよ」
男が座ったソファーに先に寝そべっていた小柄な少女の名前は双葉杏。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:31:12.07 ID:HCYRpEUW0
「プロデューサーは小さい小さいって言うけどさ、杏だって昔から小さかった訳じゃ無いんだよ?」
「ほーん?」
書類に目を通しつつ、杏の言葉に耳を傾けるプロデューサー。
この時、杏の語る言葉が今後の彼の動向を左右することになるとは思いもしていなかった。
「杏さ、3年生くらいまでは女子の中では背の順だと後ろの方だったんだよ」
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:32:18.19 ID:HCYRpEUW0
女性の成長期は一般的に15〜16才までとされている。
成長期に入るのが遅かった場合は22才頃まで身長が伸びると言われている。
杏の場合はピークが早かった。と言ってしまえばそれまでだが、しかしそれだけでは説明が付かないと感じるのも事実だ。
「杏、そろそろレッスンの時間だろ?」
「プロデューサー、代わりに受けてきていーよ」
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:33:51.41 ID:HCYRpEUW0
退勤後、プロデューサーは同僚でもあるアイドル数名と居酒屋にいた。
日々忙しい彼らに話の種が尽きるという事は無く、今日もその日の出来事を肴に酒をあおっていた。
「そう言えば今日杏と仕事中に話してたんですけど、あいつって子どもの頃からチビッ子って訳じゃ無いんですって」
「あら、そうだったんですね」
プロデューサーの言葉に相づちを打ったのは柳清良。元看護師という経歴を持つキュート部署所属のアイドルだ。
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2019/02/14(木) 18:35:36.75 ID:HCYRpEUW0
「そうですねぇ。ナナも小柄ですが、流石に小学生の頃に止まったりはしませんでしたよ?」
美世の言葉に続けるのは安部菜々。こちらもキュート部署のアイドル。
自称ウサミン星人の“永遠の17歳”。彼女が飲んでいるのがなんなのかはここでは重要では無いので触れない事にする。
「うーん、言われて見れば確かに早すぎな気もしないでもない、のか?」
「もしかして杏ちゃん、『少女性徴覚醒』が起きていない、とか?」
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:36:33.61 ID:HCYRpEUW0
『少女性徴覚醒』、それは恋をすることで身体の成長を促す女性特有の生理現象。それが始まった少女たちは『咲いた』と言われる。
思春期の証明のようなものである。
詳しくは週間ヤングジャンプに連載中の『花待ついばら めぐる春』を読んで頂きたい。
つまり、清良は杏の身体に『少女性徴覚醒』が起きていないが為に小柄なままなのでは無いかと仮定したのだ。


9:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:38:20.72 ID:HCYRpEUW0
「へぇー、女体の神秘ってやつですね」
「保健の教科書に載ってる事ですよ?」
「それを読み込む奴はスケベ扱いを受けるので殆ど読んで無かったですね」
性の扱いというのはデリケートなものである。身近に母や祖母以外の異性がいないとその手の知識は入ってこないものである。
「でもさ、それって杏ちゃんが今まで誰にも恋をしたこと無いって事でしょ? そんな事ってあるのかな?」
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:39:17.29 ID:HCYRpEUW0
恋をする相手は教師や親兄弟、画面の向こうの俳優やそれこそアニメのキャラクターでも構わないのだ。更に言えば性別すらも厭わない。
それが起きていないという事は、人を好きになる気持ちが分からないという事を意味する。
「んー、でも杏ですよ? 案外あり得るんじゃないですか?」
「プロデューサー、杏ちゃんをなんだと思ってるんですか!」
余りにも無礼なプロデューサーの言葉に菜々が怒り、それを2人が宥めつつその日の宴は幕を閉じた。


11:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:40:31.73 ID:HCYRpEUW0
翌日、プロデューサーは昨日とは異なり自身のデスクで仕事をこなしていた。
が、その目線は書類やパソコンの画面ではなく度々杏へと向けられていた。
「ねぇプロデューサー。さっきからなんなのさ。落ち着いて昼寝も出来ないよ」
杏はたまらず不満を口にした。チラチラと見られて気分が良くないのは尤もだ。
「あー、そんなに見てたか?」
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:41:25.84 ID:HCYRpEUW0
「すまん杏。……ちょっと聞きたい事があるんだが、いいか?」
「何さ、改まって」
普段とはあからさまに態度の違うプロデューサーに怪訝な表情を浮かべる杏。
プロデューサーは杏が寝そべっているソファーの向かいに腰掛け、話を切り出した。
「なぁ杏。『少女性徴覚醒』って知ってるか?」
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:42:27.82 ID:HCYRpEUW0
「おま、それがどういう意味なのか知ってるのか?」
「もちろん。杏、今まで恋ってしたこと無いんだよねー」
初恋とは人間誰しも通る道である。中には
『ボクは愛など信じないよ』
などと口にする者もいるのだろうが、そんな者だって大抵は物心ついて直ぐに誰かを好きになるものだ。記憶に残っておらずとも。
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:43:32.80 ID:HCYRpEUW0
『双葉杏が少女性徴覚醒を迎えたらどうなるのか』
双葉杏は美少女である。
生活態度こそだらしなく時には目を逸らしたくなることもあるが、そこは揺るぎ無い事実だ。
そんな美少女が成長をしたら、どんな風になるのか。気にならないという方が嘘になるだろう。
もちろん中には少女性徴覚醒を迎えても肉体的に大きく成長しない者もいる。
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:44:18.25 ID:HCYRpEUW0
「なぁ、杏。俺の為に咲いてくれないか?」



16:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:46:55.90 ID:HCYRpEUW0
プロデューサーは杏の前に膝を立てた状態で座り、彼女に目線を合わせてそう言った。
瞬間、プロデューサーの目には咲き乱れる花弁が目に写った。
……が、それは杏からではなく彼らの後方から舞ったものだった。
振り向くと、そこにはキュート部署所属の小学生アイドル、古賀小春の姿があった。
「プロデューサー、やっぱり王子様だったんですねぇ〜♪」
以下略 AAS



17:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:48:20.57 ID:HCYRpEUW0
では小春はプロデューサーに恋をしたのか? 否。では杏に? それも否。
『恋に恋するお年頃』という言葉がある。
小春は、プロデューサーと杏に自身の理想を垣間見たのだ。
それが小春が咲くきっかけとなった。
「はあー、素敵ですぅ〜♪」
以下略 AAS



18:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:49:29.37 ID:HCYRpEUW0
今さらながら、自身の言葉の意味に気付いたプロデューサー。しかし後悔先に立たずとは言ったものである。
振り向くと既に小春の姿は無かった。恐らく自分の見た感動を共感して貰いたくて誰かに話しに行ったのだろう。
「ど、どうしよう……?」
「知らないよ。それに、さっきの言葉はお断りだね」
「な、なんでだ? 別に俺相手じゃなくてもいいんだぞ?」
以下略 AAS



19:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:50:21.82 ID:HCYRpEUW0
「プロデューサー、私を咲かせて下さい〜!」
プロデューサー撃沈の翌日、キュート部署のフロアに大胆な告白が響き渡った。
声の主は日下部若葉、20才。
彼女は身長148cmと小柄であり、また童顔な事がコンプレックスであった。
彼女は昨日、小春から広まった噂を耳にしてこう考え付いたのだ。
以下略 AAS



20:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:51:18.64 ID:HCYRpEUW0
「あー、若葉? 自分が何を言ってるのか分かっているのかい?」
昨日の自分の事を棚にあげ、プロデューサーは若葉に言葉の真意を尋ねた。
「はいっ! 私、気付いたんです〜。私がおっきくなれないのは少女性徴覚醒がちゃんと起きてないからだって!」
自信満々に告げる若葉。
小さな胸を張るその姿は確かに義務教育を受けている最中だと言われても納得してしまえるだろう。
以下略 AAS



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