59: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:47:39.82 ID:9pdDfgPfo
   
 * 
  
 「……一応、心当たりはあるんだ。 分かるよな」 
  
60: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:49:00.06 ID:9pdDfgPfo
   
 「──大和撫子に憧れていなかったら、日本でアイドルになんてならなかったかも知れない」 
 「……ちょっと、それ」 
  
  
61: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:49:40.89 ID:9pdDfgPfo
   
 ビル前の路地に強引に車を停め、そのまま二人して二階の事務所玄関へと駆け上がり、飛び込むようにドアを開けた。 
  
 「エミリー! エミリー!! ちょっと待って!!」 
  
62: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:50:32.17 ID:9pdDfgPfo
   
 * 
  
 「エミリーのお父様、何て?」 
 「……だめだ。 いくら説得しようとしても取り合ってくれなかった」 
63: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:51:55.02 ID:9pdDfgPfo
   
 結局のところ、エミリーは頭を打って記憶喪失になってしまったのだ。 
  
 ただし彼女が失ったのはほんの一部の特定の記憶──つまり日本語の言語知識だった。 
 これについて、俺たちはエミリーが幼い頃に使っていた昔の教材を用意した。 
64: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:52:40.95 ID:9pdDfgPfo
   
 「確かにエミリーが子供の頃の話を忘れてしまってることは確かなんだ。 
  だから思い出させるために何とかやってみる価値はある、ってとこまでは理解してもらった」 
 「じゃあ、何でそれを試す前に帰らせるのよ?」 
 「肝心なその子についての情報が全くないから。 どうやってエミリーに思い出させるかのアテが何もないせいだよ」 
65: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:54:18.32 ID:9pdDfgPfo
  
   
 * 
   
 翌日、朝一番で事務所にやってきた伊織は俺を見るなり言った。 
66: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:55:23.14 ID:9pdDfgPfo
   
 「……伊織」 
 「何?」 
  
 俺はここ最近の伊織に対してずっと抱き続けていた疑問を、思い切って投げかけてみた。 
67: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:56:18.41 ID:9pdDfgPfo
   
 「伊織……」 
  
 じっと動かない彼女に、やめてくれとだけ伝えた。今度は俺の目を見つめて返事を待っているようだった。 
 ここまでされてしまえば、流石にこちらが折れるしかないようだ。 
68: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:57:17.32 ID:9pdDfgPfo
   
 ────── 
  
 ヒースロー空港から地下鉄で一時間ほどの場所にある、ロンドン北部の高級住宅街──エミリーの実家はその一角にある。 
  
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