70: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:59:53.13 ID:9pdDfgPfo
   
 「《何日か一緒に遊んだりしたんですけど、 
  エミリーったらいつの間にかすっかりその子に懐いちゃって……帰国するときにお別れを言うのが大変でした》」 
 「《初めて会ったのは、エミリーのお父様が仕事のお付き合いで日本人の客を招いてパーティーを催されたときですよね?》」 
 「《そういえばそうだったような……よくご存じですね?》」 
71: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:01:24.91 ID:9pdDfgPfo
   
 * 
  
 「──思ったより早く届いたのね」 
 「《せっかく送ったのに、こんなに早く帰ってくるなんてね……》」 
72: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:02:33.24 ID:9pdDfgPfo
   
 その後エミリーの自室にお邪魔して二人で部屋の整理を手伝っていると、エミリーは私に訊いてきた。 
  
 「《どうして、こんなところまで私と一緒に来たんですか?》」 
 「《お父様が仕事の都合で付き添いが難しくなったからよ》」 
73: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:03:19.03 ID:9pdDfgPfo
   
 * 
  
 すっかりイギリスでの日常に溶け込もうとしているエミリーに、私は何もできなかった。 
 折を見て幼い頃の、つまり“よりちゃん”の話を持ちかけてみるも、やはりどこか心ここにあらずで手ごたえがない。 
74: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:04:36.44 ID:9pdDfgPfo
   
 「《最後にひとつだけ聞かせて》」 
  
 俯いているエミリーに向かって、私は構わず続けた。 
  
75: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:05:55.54 ID:9pdDfgPfo
   
 「《そうね……エミリーが一番辛いってこと、忘れてしまっていたわ。 ごめんなさい》」 
  
 ゆっくりと肩をさすって落ち着かせながら、できるだけ優しく話しかけていく。 
  
76: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:07:01.59 ID:9pdDfgPfo
   
 視界が狭くなってうっすら暗くなったような気がした。 
 エミリーの言葉が頭の中でグルグル回り、だんだんとそれが胸まで下りてきて蔦のように心臓を締め付けてくる。 
 エミリーも言いすぎたと思ったのか、一瞬息を呑んで私の反応を伺っているように見えた。 
  
77: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:08:25.72 ID:9pdDfgPfo
   
 「……なんでよ…………ここまでしてるってのに…………バカ……バカ……バカバカバカバカっ……!! ばかぁっ!!」 
  
 力の入らない両腕でエミリーの肩をわずかに揺する。 
  
78: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:08:59.61 ID:9pdDfgPfo
   
 綺麗に分けた前髪をグシャグシャと崩して、だらんと顔の前に垂らしてから、ハサミを開いて額に当てる。 
  
 「《何して……!?》」 
 「あんたがいつまで経っても忘れたまんまだからでしょうがっ……!」 
79: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:09:44.45 ID:9pdDfgPfo
   
  
  
  
  
80: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:10:25.69 ID:9pdDfgPfo
   
  
  
  
  
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