男「明日死ぬ彼女に向けて」
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8:名無しNIPPER[sage]
2019/06/11(火) 12:32:42.37 ID:8Kxlpx7EO

 彼女は、何も言えなくなった。
 僕の言い方は、卑怯にも思える。でも、必要な言葉だ。
 だから。

「誰かを助けれるときは助けよう。自分を犠牲にしないようにしよう。本当に叶えたい理想は、胸の奥にしまっておこう」
「……」
「ただ祈るだけでいいんだ。優しい世界でありますように、って」

 僕らに誰かを助ける義務なんてない。

 ……身の程を知った。僕らは何もできない子供だと。

「それで、いいの?」

 彼女はそれを認めなかった。認めたくなかった。僕だってそうだ。

「それでも」と僕は言った。

「僕らがするべきことは現実の範囲で、できる限り正しいことをすることなんだよ。それだって十分に尊い」
「そうだけど」

 彼女の瞳が揺れる。迷いとわけのわからない感情が、ごちゃ混ぜになったような表情。

「現実は結果に依存する。僕らは間違っていると言われたら間違っていることになる。独りよがりになる」
「結果を常に出すような行動をしなきゃいけないの?」
「そうだよ」

 彼女は悲しそうに笑った。

「この結論は正しいね、きっと。悲しいぐらいに一つも否定できない」

 もう、お互いに納得はできた。
 言いたかったのは先にあった。

「じゃあ、私はそれを踏まえて話すよ」
「うん」
「私は結果を出せなかった」
「でも君は間違ってない」
「……なんで!」

 怒声が滲む。

「なんで中途半端に私を庇うの? 私は間違ったんだよ!」
「世界からみたらそうだよ。でも僕からみたら違う」

 ずい、っと彼女に詰め寄る。

「努力が認められないんなんて悲しすぎる。……それでも! それが現実だとしても! ……僕だけはきみを認めるんだ!」

 彼女はぽかん、としていた。気圧されたような、そんな表情。


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