男「明日死ぬ彼女に向けて」
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9:名無しNIPPER[sage]
2019/06/11(火) 12:33:13.12 ID:8Kxlpx7EO

「……ありがとう?」
「どういたしまして」
「……混乱してきた」

 つまりは。

「現実は僕らの努力を認めてくれないこともある。でも、せめて身近な人の努力は、身近な人が認めてあげよう」
「なるほど」
「だから、きみも僕を認めてね?」
「……もちろんだよ」

 約束事。身の程を知らされた、僕らの妥協案。
 でもできる限りのことはできるようにしよう。身近な人のことだけは、周囲が否定しても、自分だけは味方になってあげよう。
 もうすぐ、あたりが暗くなる時間だ。この地下都市は、ある時間を境にどんどん照明が暗くなる。

「すっきりした?」
「おかげさまで」
「帰ろう」
「帰ろっか」

 重い腰を上げる。
 現実的な問題は、何一つ解決しちゃいなかった。
 でも、これからはきっとよくなる。
 影が揺れる。まだ彼女は立ち上がらないのかな、と思って足元の影を見た。
 彼女の影。両手を広げている影。
 僕は後ろを振り返った。彼女は今にもなにかを抱きしめようとしているような、そんな恰好をしていた。

「……」
「……」

 沈黙。

「なんでもないよ?」
「なんでもないね」

 時間が再び流れ始めたような感覚。
 二人並んで歩く。家路につく道へ。



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