301: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:24:03.59 ID:Bg3Eqo0s0
  
 今もそうであるが、公演の打ち上げのとき、彼は時々こうしてお酒を控えることがあった。 
 そして、そういう時に限ってこのみたちの誰かが酔い潰れたりして、結局プロデューサーに車で送ってもらうことになる、なんて事もよくあった。 
 このみは、彼がお酒を飲まないときは、自分達が安心をして、それで飲みすぎてしまうのだろうと思っていた。 
 けれど、二人の手の内をのらりくらりと躱し続ける彼を見て、このみはきっとそれだけじゃないのだと直感した。 
 彼は何も言わないけど、彼がこうしてお酒を飲もうとしないのはきっと、今日くらいは思いっきり羽目を外しても大丈夫、という彼なりの優しさなんだ、と。 
  
 その彼の気遣いが、このみはちょっぴり嬉しかった。 
 ただ、自分たち3人が御猪口で日本酒を飲みかわすのに、彼だけグラスで水を、というのは少し気が引けた。 
 どこか、彼を置いて行ってしまうような気がして、嫌だった。 
 とはいえ、これ以上無理に勧めることも、彼の好意を無下にしてしまう。 
 このみは、行き違う二つの気持ちの間で、どうすべきなのかと思いをめぐらした。 
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