15: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:32:11.07 ID:rmJoFnhWo
  
 「あっ」 
  
  思わず声が洩れる。 
  
16: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:32:41.60 ID:rmJoFnhWo
  
 「へえ。もう見つけられたんだ」 
 「本当に何となくっすけど」 
 「たとえ不確かでも、あさひが見つけたのならきっとそれが正解だろうと思うよ」 
 「正解、なんすかね。たしかに、もうこれしかない、って気はするっすけど」 
17: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:33:18.57 ID:rmJoFnhWo
  
 「何って、何が?」 
 「わたしの中で青空と水とを結んでいたものの正体っすよ」 
  
  まるで息を止めたような沈黙の後で、彼女は言った。 
18: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:33:55.17 ID:rmJoFnhWo
  
 「海」 
  
  降り始めたばかりの雨みたいに静かな声だった。 
  
19: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:34:27.93 ID:rmJoFnhWo
  
 「そうっすね」 
  
  私は頷いた。 
  決して同じ空をみられなくたって、私たちは同じ空をみているのだと思えるのなら、それだけでも私は嬉しい。 
20: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:34:59.54 ID:rmJoFnhWo
  
 「しかし、そう考えると、あさひの言った水槽の喩えはなかなか面白いな」 
 「そうっすか?」 
 「空の青さに水を連想することはさして珍しくもないけれど、その場合、普通は私たちが水の側にいるんだよ」 
  
21: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:35:33.16 ID:rmJoFnhWo
  
 「もう行くんすか?」 
  
  私は尋ねる。 
  
22: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:36:30.82 ID:rmJoFnhWo
  
  最初の一歩を踏み出したのは、プロデューサーさんのほうが早かった。 
  その背中を追いながら、私は好奇心で訊いてみる。 
  
  「プロデューサーさん」 
23: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:37:07.67 ID:rmJoFnhWo
  
  彼女が何と答えるのかは、何となくだけれど予想がついていた。 
  それでも私は尋ねた。 
  理由なんて特にない。 
  あったのは、だから、ただの好奇心それだけだ。 
24: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:37:39.28 ID:rmJoFnhWo
  
 「どうだろうね」 
  
  彼女はわずかに首を傾げて、口元に微かな笑みを浮かべた。 
  こんなにも冷たい冬の中で、まるで春の陽気に思いを馳せているような、穏やかで柔らかい笑顔だった。 
25: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:41:14.88 ID:rmJoFnhWo
  
 終わりです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 
  
  
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