道化の道化「狂いながら壊れながらも、一緒に生きよう」
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10:名無しNIPPER[sage saga]
2019/08/01(木) 23:02:44.14 ID:ZeTen5TYO
「おまたせ! いや〜参ったよ!」
「……」

部屋に戻ると、道化はその場から動かずに帰りを待っていてくれて、その滑稽でありながら気品に満ちた佇まいを見て、思わず溢れそうになった涙を堪え、僕は道化として振舞った。

「父上ってば話が長くてさあ!」
「……」
「こっちはもうトイレがしたいってのにくどくどと長ったらしい説教をされちゃってさあ!」
「……」
「ほら見てよ! この通り、我慢出来ずにとうとう漏らしちゃったんだよ! 笑えるだろう?」
「……」

股間に出来た尿の染みを見せびらかして笑いを誘うも、道化は無表情のまま、じっと感情の欠如した視線をこちらに向けるだけだった。

「君が笑わないなら、僕が笑ってあげる!」
「……」
「あはっ……あれ? おかしいな……あははは!」

半ばヤケになって自嘲しようとしても、上手く笑うことが出来ず、僕は狼狽え、困り果てた。
笑顔のやり方。笑い方が、わからなくなった。

「あはは! いや、違う……こうじゃない」
「……」
「ご、ごめん! すぐに君を笑わせるから……」
「……」
「あは……くそっ。違う、違うんだ。僕は……」
「……」
「僕は、ただ君に、笑って欲しくて……僕は!」
「……」

目の前の女の子ひとり笑わせることが出来ない僕は、そのあまりの無力感に打ちひしがれ、堪えきれずに涙を流すと、道化に頬を拭われた。


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