道化の道化「狂いながら壊れながらも、一緒に生きよう」
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8:名無しNIPPER[sage saga]
2019/08/01(木) 22:58:07.99 ID:ZeTen5TYO
「儂が駆けつけた時には何もかも遅かった」

怯える僕を睨みつけながら、父は顛末を語る。

「同盟国が奇襲を受けたのはまさに寝耳に水だった。その凶報を知り、急いで救援に向かったが、既に手遅れだったのだ。王城は陥落し、城下町には火が放たれ……全てが終わっていた」

己の無力を嘆く父はこちらに歩み寄り、腰が抜けて立つこともままならない、情けない僕の髪を掴みながら、無知な子供を怒鳴り、問うた。

「お前に何がわかる!? 敵兵に囲まれたあの姫君が! 自らの家族を守る為に! 斬首された父王の首を手に取り! 周りに囃し立てられるがまま! その死に顔に口付けをさせられていたあの道化の気持ちが! お前如きにわかるのか!?」

目の前で愛する家族の命を次々に奪われ。
やれ、あれをしろ。これをしろと言われ。
言われるがまま冷えた骸に口付けをして。
それでも、家族の命を救うことは叶わず。
ひとり、またひとりと喪い、独りとなり。
涙など、とうに枯れ果て、表情を失った。

そんな道化の気持ちなど、僕にはわからない。

「……ですが、お父様」
「なんだ?」
「何故、道化を演じ続けさせる必要が……」
「あの姫君がそう望んだのだ」
「そんな……」
「道化として、死にたいとな」

父に命は救われたとしても。
あの姫君の心までは救えなかった。
故に道化は心が壊れたまま死にたがっていた。


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